(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】マルチロール型観察光学機器用レティクル
(51)【国際特許分類】
F41G 1/38 20060101AFI20230615BHJP
G02B 23/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F41G1/38
G02B23/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571345
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 US2021033396
(87)【国際公開番号】W WO2021236925
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520168099
【氏名又は名称】シェルタード ウィングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン デイヴィッド エム
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテムズ ジョー
(72)【発明者】
【氏名】パークス スコット
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル リチャード
【テーマコード(参考)】
2H039
【Fターム(参考)】
2H039AB66
(57)【要約】
本開示は、標的捕捉及び関連装置、特に例えば静止及び移動標的に対する至近距離、中間距離及び遠距離のところでの射撃精度を達成するために用いられる観察光学機器及び関連機器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レティクルであって、
a)前記レティクルの光学中心に向かって半径方向に延びていて、前記レティクルを少なくとも3つの四分円弧に分割する少なくとも3つの非交差クロススヘアを含むクロスヘア特徴と、
b)前記レティクルの前記光学中心のところに位置決めされかつ不連続リングによって部分的に包囲されている中心部分を備えた中心ドットと、
c)以下の特徴、すなわち、
i)第1の射程推定特徴、
ii)ドロップ着弾点推定特徴、
iii)風着弾点推定特徴、及び
iv)移動標的着弾点推定特徴のうちの少なくとも1つを有する、レティクル。
【請求項2】
前記クロスヘア特徴は、前記レティクルを上側四分円弧及び下側四分円弧に二等分する少なくとも左クロスヘア及び右クロスヘアを含む、請求項1記載のレティクル。
【請求項3】
前記少なくとも1つの特徴は、前記移動標的着弾点推定特徴である、請求項1記載のレティクル。
【請求項4】
前記移動標的着弾点推定特徴は、前記中心ドットを通る不連続線を形成するよう直線的に配置されかつ前記中心ドットと交差した2つ以上のマークを含む、請求項3記載のレティクル。
【請求項5】
前記2つ以上のマークは、前記左クロスヘアと前記右クロスヘアとの間に不連続線を形成する、請求項4記載のレティクル。
【請求項6】
前記マークは、少なくとも3つの辺を有し、前記辺のうちの2つの辺は、長さが等しくかつ前記2つの辺が前記中心ドットの方へ向くように頂点のところで互いに交差している、請求項4記載のレティクル。
【請求項7】
前記少なくとも1つの特徴は、前記第1の射程推定特徴である、請求項1記載のレティクル。
【請求項8】
前記第1の射程推定特徴は、前記少なくとも3つの四分円弧のうちの1つの中の前記中心ドットからの距離である、請求項7記載のレティクル。
【請求項9】
前記第1の射程推定特徴は、
プライマリー垂直軸線を含み、
前記プライマリー垂直軸線と交差する複数の水平クロスマークを含み、前記水平クロスマークは、互いに異なる長さを有し、
前記複数の水平クロスマークのうちの少なくとも1つと関連した少なくとも1つの標印を含む、請求項7記載のレティクル。
【請求項10】
前記少なくとも1つの特徴は、前記ドロップ着弾点推定特徴である、請求項1記載のレティクル。
【請求項11】
前記ドロップ着弾点推定特徴は、前記中心ドットに隣接している、請求項10記載のレティクル。
【請求項12】
前記ドロップ着弾点推定特徴は、
前記中心ドットから下方に延びるプライマリー垂直軸線を含み、
前記プライマリー垂直軸線と交差する複数の水平クロスマークを含み、前記水平クロスマークは、互いに異なる長さを有し、
前記複数の水平クロスマークのうちの少なくとも1つと関連した少なくとも1つの標印を含む、請求項10記載のレティクル。
【請求項13】
前記少なくとも1つの特徴は、前記風着弾点推定特徴である、請求項1記載のレティクル。
【請求項14】
前記風着弾点推定特徴を有し、前記風着弾点推定特徴は、少なくとも4つの対をなすマークを含み、1つの対をなすマークは、前記ドロップ着弾点推定特徴の前記水平クロスマークのうちの少なくとも2つの各端から直線的に延びる、請求項13記載のレティクル。
【請求項15】
前記マークは、ドットである、請求項14記載のレティクル。
【請求項16】
観察光学機器であって、請求項1記載の前記レティクルを有する観察光学機器。
【請求項17】
周囲及び光学中心を有する円形レティクルであって、前記レティクルは、
a)前記光学中心に向かって前記周囲から約90°の角度をなして半径方向に延びる右クロスヘア、前記光学中心に向かって前記周囲から約270°の角度をなして半径方向に延びる左クロスヘア、及び前記光学中心に向かって前記周囲から約180°の角度をなして半径方向に延びる下クロスヘアを含むクロスヘア特徴を有し、前記右、前記左及び前記下クロスヘアは、前記光学中心と交差しないで、前記レティクルを少なくとも上側四分円弧、左下側四分円弧及び右下側四分円弧に分割し、
b)前記レティクルの前記光学中心のところに位置決めされた中心ドットを有し、前記中心ドットは、不連続リングによって部分的に包囲された中心部分を含み、
c)前記右クロスヘアと前記左クロスヘアとの間で、計算された間隔で直線的に延びる2つ以上のマークを有し、それにより、移動標的着弾点推定特徴を形成し、
d)ドロップ着弾点推定特徴を有し、前記ドロップ着弾点推定特徴は、
前記中心ドットから下方に延びるが、該中心ドットと交差しないプライマリー垂直軸線、
前記プライマリー垂直軸線と垂直に交差する複数のクロスマーク、及び
前記複数のクロスマークのうちの少なくとも1つと関連した少なくとも1つの標印を含み、
e)少なくとも4つの対を成すマークを含む風着弾点推定特徴を有し、1つの対を成すマークは、前記ドロップ着弾点推定特徴の前記水平クロスマークのうちの少なくとも2つの各端から直線的に延び、
f)前記上側四分円弧内に位置する射程推定特徴を有し、前記射程推定特徴は、計算された長さを有するとともに計算された距離だけ隔てられた複数の垂直クロスマークと計算された間隔で交差したプライマリー垂直軸線を含み、前記計算された長さ及び前記計算された距離は、ほぼ18インチ(45.7cm)の幅及びほぼ40インチ(101.6cm)の高さを備えた標的領域を有する標的に基づいている、レティクル。
【請求項18】
観察光学機器であって、請求項17記載の前記レティクルを有する、観察光学機器。
【請求項19】
観察光学機器であって、
ハウジングと、
前記ハウジングの第1の端部内に設けられた対物レンズ組立体と、
前記ハウジングの第2の端部内に設けられた接眼レンズ組立体と、
前記対物レンズ組立体と前記接眼レンズ組立体との間で前記ハウジング内に設けられた1つ以上の光学部品と、
前記対物レンズ組立体と前記1つ以上の光学部品との間で前記ハウジング内に設けられた請求項17記載のレティクルとを有する、観察光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、標的捕捉及び関連装置、特に例えば静止及び移動標的への至近距離の射程、中間距離の射程及び遠距離の射程における射撃精度を達成するために用いられる観察光学機器及び関連機器に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2020年5月21日に出願された米国特許仮出願第63/028,084号の非仮出願であってかつ該米国特許仮出願の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
銃器のユーザは、かかるユーザが警察官であれ、兵士であれ、オリンピック射手であれ、スポーツウーマンであれ、スポーツマンであれ、ハンター(猟師)であれ、又は週末愛好者であれいずれにせよ、1つの共通の目標、すなわち、自分たちにとっての標的に正確かつ一貫して命中させるという目標を持っている。至近距離標的と遠距離標的を交互に変える場合、精度は、主として焦点を高信頼度で変えることができるかどうかで決まる。
【0004】
観察光学機器用の現行レティクル設計品は、一般に、至近距離射程/中間距離射程又は長距離射程向きに設計されている。至近距離/中間距離のための観察光学機器用の現行のレティクル設計は、平均的な射手にとって複雑過ぎるか、技術的に発展している光学設計技術により提供される高い倍率を活かしていないかのいずれかである。異なる射程に対応しようとする他のレティクル設計は、結果的に手に負えないほど複雑で、しかも込み入ったビューをもたらすほどに過剰な細部をもたらすか、一般に有用なツールが利用できないほどに単純化しすぎる表示をもたらすかのいずれかである。例えば、既存のレティクルの中には、中心ドットの左及び右ならびに上及び下の両方に多くの特徴、例えばミニットオブアングル(minute-of-angle)スケーリングを提供し、これの特徴は射手がこれらの特徴を利用する上で訓練を積むとともに時間をかけていることを前提としている。これらの特徴は、レティクル上の相当大きい空間を占める場合があり、その結果、低倍率では中心エイミング(照準合わせ)部分がぼんやりし、高倍率では込み入ったビューになる。他方、既存のレティクルの中には、もたらす情報が少なすぎ、たとえば、スケール表示を省き、又は風、ドロップ及び移動を考慮に入れるエイミングツールの範囲/射程を限定するものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、例えば、低倍率と高倍率での実用性のバランスを取るレティクル及び/又は大抵の射手にとって有用なツールを依然として提供した上で、低倍率と高倍率でのビュー内における手間を最小限に抑えるレティクルを備えた標的捕捉装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態では、本発明は、レティクルを提供する。一実施形態では、レティクルは、a)レティクルの光学中心に向かって半径方向に延びていて、レティクルを少なくとも3つの四分円弧に分割する少なくとも3つの非交差クロススヘアを含むクロスヘア特徴と、b)レティクルの光学中心のところに位置決めされかつ不連続リングによって部分的に包囲されている中心部分を備えた中心ドットと、c)次の特徴、すなわち、i)第1の射程推定特徴、ii)ドロップ着弾点推定特徴、iii)風着弾点推定特徴、及びiv)移動標的着弾点推定特徴のうちの少なくとも1つを有する。
【0007】
さらに別の実施形態では、レティクルは、a)光学中心に向かって周囲から約90°の角度をなして半径方向に延びる右クロスヘア、光学中心に向かって周囲から約270°の角度をなして半径方向に延びる左クロスヘア、及び光学中心に向かって周囲から約180°の角度をなして半径方向に延びる下クロスヘアを含むクロスヘア特徴を有し、右、左及び下クロスヘアは、光学中心と交差しないで、レティクルを少なくとも上側四分円弧、左下側四分円弧及び右下側四分円弧に分割し、b)レティクルの光学中心のところに位置決めされた中心ドットを有し、中心ドットは、不連続リングによって部分的に包囲された中心部分を含み、c)右クロスヘアと左クロスヘアとの間で、計算された間隔で直線的に延びる複数のマークを有し、それにより、移動標的着弾点推定特徴を形成し、d)ドロップ着弾点推定特徴を有し、ドロップ着弾点推定特徴は、中心ドットから下方に延びるが、該中心ドットと交差しないプライマリー垂直軸線、プライマリー垂直軸線と垂直に交差する複数のクロスマーク、及び複数のクロスマークのうちの少なくとも1つと関連した少なくとも1つの標印を含み、e)少なくとも4つの対を成すマークを含む風着弾点推定特徴を有し、1つの対を成すマークは、ドロップ着弾点推定特徴の水平クロスマークのうちの少なくとも2つの各端から直線的に延び、f)上側四分円弧内に位置する射程推定特徴を有し、射程推定特徴は、計算された長さを有するとともに計算された距離だけ隔てられた複数の垂直クロスマークと計算された間隔で交差したプライマリー垂直軸線を含み、計算された長さ及び計算された距離は、ほぼ18インチ(45.7cm)の幅及びほぼ40インチ(101.6cm)の高さを備えた標的領域を有する標的に基づいている。
【0008】
さらに別の実施形態では、レティクルは、a)光学中心に向かって周囲から約90°の角度をなして半径方向に延びるとともに中心から、計算された間隔のところで終端し、その結果、移動標的着弾点推定特徴とみなされるようになった右クロスヘア、光学中心に向かって周囲から約270°の角度をなして半径方向に延びるとともに中心から、計算された間隔のところで終端し、その結果、移動標的着弾点推定特徴とみなされるようになった左クロスヘア、及び光学中心に向かって周囲から約180°の角度をなして半径方向に延びる下クロスヘアを含むクロスヘア特徴を有し、右、左及び下クロスヘアは、光学中心と交差しないで、レティクルを少なくとも上側四分円弧、左下側四分円弧及び右下側四分円弧に分割し、b)レティクルの光学中心のところに位置決めされた中心ドットを有し、中心ドットは、不連続リングによって部分的に包囲された中心部分を含み、c)計算された間隔で直線的に延びる2つ以上のマークを有し、それにより、左及び右クロスヘアを含むがこれらには限定されない移動標的着弾点推定特徴を形成し、d)ドロップ着弾点推定特徴を有し、ドロップ着弾点推定特徴は、中心ドットから下方に延びるが、該中心ドットと交差しないプライマリー垂直軸線、プライマリー垂直軸線と垂直に交差する複数のクロスマーク、及び複数のクロスマークのうちの少なくとも1つと関連した少なくとも1つの標印を含み、e)少なくとも4つの対を成すマークを含む風着弾点推定特徴を有し、1つの対を成すマークは、ドロップ着弾点推定特徴の水平クロスマークのうちの少なくとも2つの各端から直線的に延び、f)上側四分円弧内に位置する射程推定特徴を有し、射程推定特徴は、計算された長さを有するとともに計算された距離だけ隔てられた複数の垂直クロスマークと計算された間隔で交差したプライマリー垂直軸線を含み、計算された長さ及び計算された距離は、ほぼ18インチ(45.7cm)の幅及びほぼ40インチ(101.6cm)の高さを備えた標的領域を有する標的に基づいている。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、本明細書において提供するレティクルを有する観察光学機器を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、観察光学機器であって、ハウジングと、ハウジングの第1の端部内に設けられた対物レンズ組立体と、ハウジングの第2の端部内に設けられた接眼レンズ組立体と、対物レンズ組立体と接眼レンズ組立体との間でハウジング内に設けられた1つ以上の光学部品と、対物レンズ組立体と1つ以上の光学部品との間でハウジング内に設けられたレティクルとを有することを特徴とする観察光学機器を提供する。
【0011】
他の実施形態は、いかに提供する詳細な説明と一緒に参照される図面を検討すると明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の観察光学機器の光学部品を示す略図である。
【
図2】銃身に取り付けられた観察光学機器を示す銃器の一例の部分側面図である。
【
図3A】本発明の非限定的な実施形態に係るレティクルの正面図である。
【
図3B】本発明の非限定的な実施形態に係るレティクルの正面図である。
【
図4】本発明の非限定的な実施形態に係る
図3Aのレティクルを用いた射程推定プロセスを示す図であり、標的の18インチ(45.7cm)幅の角度測定によって推定される300ヤード(274.3m)のところの標準の競技用標的を示す図であり、標的のセンターマスが弾道ソリューション基準で捕捉され、エンゲージされ、着弾点が示された図である。
【
図5】本発明の非限定的な実施形態に係る
図3Aのレティクルを用いた第2の射程推定プロセスを示す図であり、平均的な人の胴の下から頭の上までの高さがほぼ40インチ(101.6cm)であることにより射程が500ヤード(457.2m)であることが推定される手法を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る
図3Aのレティクルを用いた第3の射程推定プロセスを示す図であり、幅約12インチ(30.5cm)であることが知られている標的について射程が400ヤード(365.8m)であることが推定される手法を示す図である。
【
図7】本発明の非限定的な実施形態に係る
図3Aのレティクルの横風着弾点基準ツールを用いる方法を示す図であり、幅約12インチ(30.5cm)であることが知られている標的について射程が400ヤード(365.8m)であることが推定される手法を示すとともに、風が左から右へ毎時約10マイル(16.2km)で吹いていると推定される手法を示す図、標的のセンターマスが弾道ソリューション基準で捕捉されてエンゲージされる図、飛翔体に加わる風力に起因した着弾が示された図である。
【
図8A-8B】本発明の非限定的な実施形態に係る
図3Aのレティクルの移動標的基準ツールのために着弾点を用いるプロセスを示す図であり、標的が左から右へ1時間当たり10マイル(16.2km)で移動していると推定され、所与の方向に時速10マイル(16.2km)で移動するものに合わせて弾道ソリューション基準に合わせて調整される図、図示の飛翔体の飛行時間に起因した着弾が示された図である。
【
図9】本発明の非限定的な実施形態に従って1×の倍率で示す
図3Aのレティクルの正面図である。
【
図10】本発明の非限定的な実施形態に従って
図9に示されたレティクルの正面図の模擬図であり、反射面の総表面積が低倍率でレティクルの「赤色ドット」状の錯覚を生じさせることを示す図である。
【
図11】本発明の非限定的な実施形態に従って8×の倍率で示す
図3Aのレティクルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
今、添付の図面を参照して本明細書において開示する装置及び方法についてより完全に以下において説明する。しかしながら、本明細書において開示する装置及び方法は、多くの異なる形態で具体化できるので、本明細書に記載した実施形態に限定するものと解されてはならない。これとは異なり、これら実施形態は、本開示が徹下的にかつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるよう提供されている。
【0014】
当業者であれば理解されるように、1組の特徴及び/又は機能をスタンドアロン型観察光学機器、例えば兵器用サイト(照準器)、フロント取り付け型又はリア取り付け型クリップオン式兵器用サイト、及び現場で配備される光学兵器用サイトの他の構成との技術背景の中で容易に適合させることができる。さらに、当業者であれば理解されるように、特徴及び機能の種々の組み合わせを、任意の変形例の既存の固定又は可変観察光学機器をレトロフィットするためのアドオンモジュールに組み込むことができる。
【0015】
本開示での数値範囲は、近似であり、したがって、別途示さない限り範囲外の値を含むことができる。数値範囲は、いずれかの下限値といずれかの上限値の間に少なくとも2単位の分離幅が存在するという前提で下限値から上限値までのこれらの値を含む全ての値を1単位の増分で含む。一例として、組成上の特性、物理的特性又は他の特性、例えば、距離、速さ、速度などが10~100である場合、それは、10、11、12などのような全ての個々の値、及び例えば10から44まで、55から70まで、97から100までなどのような部分的範囲を明示的に列挙するように意図されている。1よりも小さい数又は1よりも大きくて1未満の数を含む少数(例えば、1.1、1.5など)である値を含む範囲に関し、1単位は、適宜0.0001、0.001、0.01、又は0.1であると考えられる。10よりも小さい1桁の数字(例えば、1~5)を含む範囲では、1単位は、一般的に0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図するものの例に過ぎず、列挙する最低値と最高値の間の数値の全ての可能な組合せを本発明の開示において明記すると考えられたい。本発明の開示の範囲では取りわけデバイスのユーザから標的までの距離に関する数値範囲を提供する。
【0016】
本明細書では、図に示す1つの要素又は特徴の別の要素又は特徴に対する関係を説明するのに記述のしやすさの目的で「下」、「下方」、「下側」、「上方」、及び「上側」などのような空間相対性を表す用語を使用する場合がある。これらの空間相対性を表す用語は、使用時のデバイスの様々な向き又は図に描く向き以外の向きを包含するように意図したものであることは認められるであろう。例えば、図のデバイスが反転された場合に、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」にあると説明する要素は、これらの他の要素又は特徴の「上方」に向けられることになる。したがって、「下方」という例示的な用語は、上方と下方の両方の向きを包含することができる。デバイスは、他に向けることができ(90°回転又は他の向き)、本明細書に使用する空間対性記述子は、相応に解釈することができる。
【0017】
本明細書で用いられる「及び/又は」という表現は、関連の列挙した用語のうちの1つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。例えば、「A及び/又はB」のような表現について使用する「及び/又は」という用語は、AとBの両方、A又はB、A(のみ)、及びB(のみ)を含むように意図している。同様に、「A、B、及び/又はC」のような表現に対して使用する「及び/又は」という用語は、A及びB及びC、A又はB又はC、A又はC、A又はB、B又はC、A及びC、A及びB、B及びC、A(のみ)、B(のみ)、ならびにC(のみ)を含むように意図している。
【0018】
要素又は層が別の要素又は層の「上」にあり、これに「接続され」、又は「結合され」ると記載されている場合、当該要素又は層は、他方の要素又は層の上に直にあり、直接的に接続される、又は直接的に結合される場合があることは理解されよう。変形例として、介在する要素又は層が存在する場合がある。これとは対照的に、要素が別の要素又は層の「上に直接」あり、これに「直接的に接続され」、又は「直接的に結合され」ると記載されている場合、介在する要素又は層は存在しない。
【0019】
本発明は、標的捕捉及び関連装置、特に例えば静止及び移動標的への至近距離の射程、中間距離の射程及び遠距離の射程における射撃精度を達成するために用いられる観察光学機器及び関連機器に関する。本発明のある特定の好ましいかつ例示の実施形態について以下に説明する。本発明は、これら実施形態には限定されない。
【0020】
本明細書で用いられる「バリスティックス」(又は「弾道学」)という用語は、多くの要因に基づく弾丸の軌道を正確に計算する手法である。
【0021】
本明細書で用いられる「銃器(firearm)」という用語は、物体又は飛翔体(本件の場合は事実上、弾丸を意味する)例えば制御可能な平射、照準線、発射線で推進する任意の器械、例えば、何らかの媒体を介する任意口径方向の拳銃、ピストル、ライフル、ショットガン(散弾銃)型スラグガン、先込め式ライフル、単発ライフル、半自動ライフル及び全自動ライフルを意味している。本明細書で用いられる「銃器」という用語はまた、「銃器」が位置と方向性銃身配向状態の自動検出機能を備えた遠隔サーボ制御型銃器を意味している。射手は、銃器を1つの場所で位置決めし、そして標的画像の取得及びエイミングのために別の場所まで動くことができる。本明細書で用いられる「銃器」という用語はまた、チェーンガン、ベルトフィードガン、マシンガン、及びガトリングガンを意味している。本明細書で用いられる「銃器」という用語はまた、高エレベーション(仰角)かつ超水平線飛翔体(弾丸)推進装置、例えば、任意口径のアーティラリー、迫撃砲、カノン砲、戦車カノン、又はレールガンを意味している。
【0022】
本明細書で用いられる「レティクル」という用語は、1つの実施形態では、弾丸用のクロスヘアエイミング点である。別の実施形態では、「レティクル」は、弾丸用のエイミングパターンである。
【0023】
本明細書で用いられる「弾道」という用語は、重力、空気密度、弾丸形状、弾丸重量、砲口初速、銃身ツイスト方向、銃身ツイストレート、飛行経路の真の方位、銃口の垂直角度、風、及び多数の他の要因の影響を受ける距離に関する弾丸飛行パターンである。
【0024】
本明細書で用いられる「観察光学機器」という用語は、標的を選択、識別、又はモニタするためにユーザ、射手又は観的手によって使用される装置又は組立体を指す。「観察光学機器」は、標的の目視観察、又は例えば赤外線(IR)撮像、紫外(UV)撮像、レーダー撮像、熱撮像、マイクロ波撮像、又は磁気撮像、X線、ガンマ線、同位元素放射線、及び粒子放射線を含む放射線、暗視、超音波、音パルス、ソナー、地震振動、磁気共鳴を含む振動の感知器、重力感知器、電波を含むブロードキャスト周波数、テレビジョン感知器及びセルラー感知器、又は標的の他の像に頼る場合がある。観察光学機器によってユーザ/射手/観的手に提示される標的の像は、未修正とするか又は例えば拡大、増幅、減算、重複、フィルタリング、安定化、テンプレート整合、又は他の手段によって改善されたものとすることができる。観察光学機器によって選択、識別、又はモニタされる標的は、射手の視線の範囲にあり又は射手の視界に対して接線方向である場合がある。他の実施形態では、射手の視線は、観察光学機器が標的の合焦又はピント合わせ標的像を提示している間に遮蔽される場合がある。観察光学機器によって捕捉される標的の像は、例えば、アナログ又はデジタルであり、また、例えばビデオ、物理的なケーブル又はワイヤ、IR、電波、セルラー接続、レーザパルス、光、802.11b、又は他の無線送信により、例えば、html、SML、SOAP、X.25、SNAのようなプロトコル、Bluetooth(登録商標)、シリアル、USB、又は他の適切な像分散法を用いて1人以上の射手及び観的手のネットワーク内で共有、格納、保存、又は送信することができる。「観察光学機器」という用語は、「光学照準器」と互換的に用いられる。
【0025】
本明細書に使用する場合に「外界シーン」という用語は、標的を含むがこれに限定されない現実世界のシーンを指す。
【0026】
図1及び
図2に例示されているように、観察光学機器10(本明細書では「スコープ」とも言う)は、銃身38と固定関係をなして設けることができるハウジング36を有する。ハウジング36は、好ましくは、鋼又はアルミニウムで構成されるが、光学機器を構成するのに有用である事実上任意の耐久性があって実質的に剛性の材料で構成できる。ハウジング36内にはその一端部のところに対物レンズ又はレンズ組立体12が設けられている。ハウジング36内には反対側の端部のところに接眼レンズ又はレンズ組立体14が設けられている。
【0027】
本明細書で用いられる「レンズ」という用語は、光線、熱線、ソナー(超音波)、赤外線、紫外線、マイクロ波又は他の波長の放射線を合焦させ又は違ったやり方で投射して像を作る手段としての物体を意味している。当該技術分野においては、従来、光を合焦させるために研磨されて磨き仕上げされたガラス又は他の光学材料(例えば、透明なプラスチック)の単一片か、例えば光を合焦させるために光学的に透明な接着剤などと一緒に設けられたかかる材料の2つ以上の片からレンズを製作することは周知である。したがって、本明細書で用いられる「レンズ」という用語は、光学ガラス又は他の材料の単一片、光学ガラス又は他の材料の多数の片(例えば、色収差補正(アクロート)レンズ)、光を合焦させるために一緒に設けられた2つ以上の片、又は光を合焦させることができる他の材料で構成されたレンズを含むものである。現在知られており、又は後で開発されるレンズ技術であればどのようなものであっても、本発明に利用できる。例えば、デジタルエネルギー場、静水圧エネルギー場、イオンエネルギー場、電子エネルギー場、磁気エネルギー場を利用した任意のレンズ、部品、複合材、プラズマ、適応又は補償レンズ、又は他の関連技術を使用することができる。加うるに、可動又は調整可能なレンズを使用することができる。当業者であれば理解されるように、スコープ10が、例えば、銃、ライフル又は兵器38に取り付けられると、対物レンズ(すなわち、射手の目から最も遠くに位置するレンズ)12は、標的に向き、接眼レンズ(すなわち、射手の目の最も近くに位置するレンズ)14は、射手の目に向く。
【0028】
ハウジング36内に入れることができる他の光学部品は、可変パワースコープ用の可変パワー光学部品16を含む。かかる部品16は、典型的には、拡大レンズ及び正立レンズを含む。かかる可変パワースコープによりユーザは、所定のパワー範囲内の所望のパワーを選択することができる。例えば、3‐12×50スコープでは、ユーザは、低パワー(例えば、3×50)、もしくは高パワー(例えば、12×50)、又は連続スペクトルに沿う任意のパワーを選択することができる。
【0029】
最後に、レティクルは、射手が標的を撃つのを助ける。レティクルは、代表的には、光学材料、例えば光学ガラスもしくはプラスチック、又は類似の透明な材料を用いて構成され(しかしながら、必ずしもそうである必要はない)、実質的に互いに平行な面を持つディスク又はウエハの形態をしている。レティクルは、例えば、ワイヤ、スパイダーウェブ、ナノワイヤ、エッチングで構成されても良く、アナログ又はデジタル印刷されても良く、あるいは、例えば、鏡、ビデオ、ホログラフィック投影、又は他の適当な手段によって材料の1つ以上のウエハ上に投影されても良い(例えば表面上に投影されても良い)。1つの実施形態では、照明付きレティクルは、エッチングされ、例えば、電池、化学物質又は太陽光電源によって供給される光又はダイオードが、漸増(+)又は漸減(-)する光強度を補償して可変抵抗的にスイッチオンされたときに光を放つ反射材料、例えば酸化チタンで満たされる。別の実施形態では、照明型レティクルは、各々が異なる像、例えば、昼間観察のための1つの像(すなわち、プライマリーレティクル)、及び夜間観察のための1つの像(すなわち、セコンダリーレティクル)を備えた2つ以上のウエハで構成される。さらに別の実施形態では、射手が、レティクル全体を照明するのが望ましくないと考えた場合、と言うのは、このように照明することが光学的暗視を損なう恐れがあるので、セコンダリーレティクルは、レティクルが光るドット又は線の数を少なくする。さらに別の実施形態では、照明されるプライマリー及びセコンダリーレティクルは、任意の色で提供される。好ましい実施形態では、射手のエイミング装置の照明型レティクルは、1つ以上の観的手(スポッター)標的捕捉装置と同一であり、その結果、スポッティング(観測)装置は、レティクルのうちの一方又は両方を別個独立に照明するようになっている。
【0030】
特に好ましい実施形態では、照明型レティクルは、例えば、レオスタット装備の立体視適応型双眼鏡を用いて、光が少ない又は光のない環境において用いられる。射手は、一方の目で、本発明のエイミングレティクルを備えた標的捕捉装置越しに見る。射手は、反対側の目で、暗視装置、例えばPVS14装置を用いて標的を観察する。双眼鏡のレティクルと暗視装置が可変抵抗的に照明されるとともに、双眼鏡の画像が適切に整列すると、標的捕捉装置のレティクルは、射手の標的像上に射手の視界内で重ね合わされ、その結果、正確なショット配置を光が少ない又は光のない環境内で任意の射程に生じさせることができるようになっている。
【0031】
固定パワー型スコープでは、レティクルは、
図1の接眼レンズ14と対物レンズ12との間のどこかに設けられる。可変パワー型スコープでは、レティクルは、対物レンズ12と光学部品16との間に設けられる。この位置では、接眼レンズを通して見たときのレティクルの見かけのサイズは、パワーにつれて変化することになる。本発明のレティクルは、可変パワー標的捕捉装置、例えば可変パワー観察光学機器内に設けられる。可変パワー型スコープ、例えば、3‐12×50、4‐16×50、1.8‐10×40、3.2‐17×44、4‐22×58観察光学機器などは、任意適当な射程にわたってかつ対物レンズ直径について拡大することができる。
【0032】
レティクル18が図示の実施形態のように、対物レンズと可変パワー型光学部品16との間に設けられた場合、倍率が増大するにつれてレティクル上のマークがサイズを変える。かくして、測定単位は、倍率がどうであろうと一貫している。
【0033】
図示のように、レティクル18は、実質的に透明な光学ガラス又は光学レンズの製造に適した他の材料で作られている実質的に扁平なディスク又はウエハ19で作られている。ディスク19は、2つの実質的に互いに平行な面を有する。マークは、本明細書においてさらに詳細に説明されるが、従来方法、例えば、エッチング、印刷、機械による彫刻、又はレーザによる焼付け、ホログラフィ技術、又は既知の直径のヘア又はワイヤを付ける方法を用いてディスク19の一方の面上に設けられる。特定の実施形態では、エッチングが用いられる。
【0034】
図3A及び
図3Bを参照すると、レティクル18は、6つの主要な特徴、すなわち、(i)第1の射程推定特徴20、(ii)レティクル18の光学中心に位置する中心ドット30、(iii)ドロップ着弾点推定特徴40、(iv)風速点推定特徴50、(v)移動標的着弾点推定特徴60、及び(vi)クロスヘア特徴70を有する。別の実施形態では、レティクル18は、特徴(i)~(vi)のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つだけを有しても良い。特定の実施形態では、レティクル18は、少なくとも中心ドット30、クロスヘア特徴70、及び第1の射程推定特徴20、ドロップ着弾点推定特徴40、風着弾点推定特徴50、及び移動標的着弾点推定特徴60のうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
図3A及び3Bに示されているように、例示の実施形態として、識別マーク20は、射程推定特徴を意味し、物体は、幅が18インチ(45.7cm)でありかつ/あるいは高さが40インチ(101.6cm)であるのが良い。識別マーク30は、至近距離及び中間距離のところでの迅速な標的捕捉を可能にするよう照明された中心ドット及び途切れた円を意味している。識別マーク40は、55‐77グレイン5.56mm弾を毎秒2700~3000フィート(1フィートは、0.3048mである)で移動させた場合の弾道ソリューション着弾点基準である。識別マーク50は、それぞれの距離のところでの毎時5~10マイル(1マイルは、1.61kmである)の横風着弾点基準点を意味している。識別マーク60は、射手に対して横に動いている標的に関する着弾点基準点を意味している。識別マーク70は、ユーザの目を照準点中心に引き付けるよう肉太の左/右/下/外側クロスヘアを意味している。
【0036】
クロスヘア特徴70は、他のマークよりも太く、ユーザの目をレティクル18の光学中心に向けるようになっている。すなわち、クロスヘア特徴は、レティクルの光学中心に向かって半径方向に延びるが、レティクルの光学中心とは交差しない少なくとも3つのクロスヘアを含む。クロスヘア特徴はまた、レティクルを四分円弧(quadrant)に分割している。クロスヘア特徴70の作用効果が
図9~
図11にさらに示されており、
図9及び
図10は、レティクル18を1×倍率で示し、
図11は、レティクル18を8×倍率で示している。
【0037】
図示の実施形態では、右の水平クロスヘア70a、左の水平クロスヘア70b、及び下の垂直クロスヘア70cが提供されている。0゜である上を基準として、右水平クロスヘア70aは、ほぼ90°のところに設けられ、左クロスヘア70bは、ほぼ270°のところに設けられ、下クロスヘア70cは、ほぼ180°のところに設けられている。しかしながら、別の実施形態では、これとは異なる数のクロスヘアが設けられるとともに/あるいはレティクル18周りの異なる位置に配置されても良い。
【0038】
図9及び
図10におそらくは最も良く示されているように、クロスヘア70a,70b,70cは、レティクル18の周囲からレティクル18の光学中心に向かって半径方向にかつ直線的に延びている。クロスヘア70a,70b,70cは、互いに又は光学中心とは交差せず、それにより標的及びレティクルの他の特徴の視認性を向上させる。その結果として、レティクル18は、上側部分と下側部分に分割されたものとして見え、下側部分は、さらに、左及び右四分円弧に分割され、光学中心30が中心(すなわち、クロスヘアが交差するであろうところ)のところに位置している。互いに異なる四分円弧は、クロスヘアの位置及び数に応じて設けられることになる。
【0039】
図示の実施形態では、また、
図4にさらに詳細に示されているように、第1の射程推定特徴20は、プライマリー垂直軸線21、複数の水平クロスマーク22(各水平クロスマーク22は数値標印に対応する)及び水平クロスマーク22と平行なベースライン24を含む。クロスマーク22は、プライマリー垂直軸線21に垂直であり、かつこれと指定された計算された距離のところ交差している。プライマリー垂直軸線21の長さ、水平クロスマーク22の長さ及び位置、ならびにベースライン24の位置は、規定された幅及び/又は高さを有する標的の射程推定を行うよう具体的に計算される。例えば、図示の特定の実施形態では、プライマリー垂直軸線21の長さ、ならびに水平クロスマーク22の長さ及び位置は、ユーザがほぼ18インチ(45.7cm)の胴幅を有する平均的な人間の標的の射程を推定することができるよう、具体的に計算される。すなわち、クロスマーク22相互間の距離及びクロスマーク22の長さは、平均幅が18インチ(45.7cm)の標的の識別に特化されている。しかしながら、別の実施形態では、垂直軸線21及びマーク22は、異なる比率に合わせて特別に設計可能である。
【0040】
ベースライン24は、最も下に位置するクロスマーク22より計算された距離のところに設定され、しかも既知の高さの標的の射程を推定する際の開始点として用いられる。例えば、図示の実施形態では、ベースライン24とクロスマーク22との間の距離は、40インチ(101.6cm)の胴高さ(例えば、腰から肩までの高さ)を有する標的の射程を推定するために特別に設計されている。しかしながら、別の実施形態では、クロスマーク22及びベースライン24は、異なる比率に合わせて特別に設計可能である。
【0041】
図4に示されているように、水平クロスマーク22と関連した数値標印23は、3から6までの範囲にある。これらの数値は、標的が第1の射程推定特徴20内に適切に位置合わせされているときの標的の射程に対応しており、この一桁の数字である数値標印23に100ユニット、例えば図示の実施形態では100ヤード(1ヤードは、0.914mである)を乗算した値を表わしている。しかしながら、理解されるように、水平クロスマークの間隔及び/又は標的の予想サイズを調節することによって、異なるスケール、単位、及び距離を計算に入れることができ、標印は、必要に応じて変わる。
【0042】
数値標印23は、相応する水平クロスマーク22の隣に設けられ、数値標印23は、フォントサイズを大きくしても混雑を減らすことができるよう水平クロスマーク22の両側に交互に記載されている。例えば、第1のクロスマークは、図示の実施形態では、3で表示され、3は、クロスマークの右側に位置し、第2のクロスマークの表示(4)は、クロスマークの左側に設けられている。他の実施形態では、標印は、水平クロスマークの同一の側に設けられても良い。さらに別の実施形態では、偶数の標印だけ又は奇数の標印だけが設けられても良く、あるいは、標印は、そうでなければ、1つ置きのクロスマークと関連して(又は、全てではないクロスマークと関連して)設けられても良い。
【0043】
第1の射程推定特徴20は、全体として、レティクル18の残りの要素から距離を置いたところに設けられ、その目的は、エイミングとは別個の射程推定を考慮に入れて、例えば
図9~
図11に示されているような狙い撃ちをする際にユーザの視界を様々なものが入らないようにすることにある。図示の実施形態では、第1の射程推定特徴20は、レティクルの残りの要素の上に設けられていて、プライマリー垂直軸線21の中心が中心ドット30の上に位置するようになっているが、第1の射程推定特徴は、オフセット状態であっても良く、又はこれとは異なるところに位置決めされても良いことは理解されよう。
【0044】
中心ドット30は、レティクル18の光学中心のところに配置されていて、この中心ドットは、
図3Aに示されているように、また例えば
図4にさらに詳細に示されているように、途切れた円32によって部分的に包囲された小さな中心部分31を含む。具体的には、中心部分31は、レティクル18の光学中心のところに配置され、途切れた円32は、光学中心から軸方向外方に位置決めされている。中心ドット30のこの2つの部分から成る設計は、ユーザの目を中心に素早く向けて照準を合わせるよう作用し、小さな中心部分31は、特に高い倍率で正確に狙い撃ちをするのに足る程小さい。中心部分31のサイズが小さいと、レティクルが照明されてもそれだけでは正確な狙い撃ちをするには不十分である。しかしながら、中央部分31が大きいと、高い倍率では視界を遮る部分が多すぎる。したがって、途切れた円32は、視覚的基準として働いて、必要以上に視界を遮ることなくレティクルを照明したときに光を反射してユーザの目に戻すように設けられている。光を反射するための表面積の増加は、低い倍率でも有益であり、と言うのは、これは、「赤色ドット」状の光学部品を真似ているからである。
【0045】
例えば、
図9は、レティクル18を1×倍率で示している。中心ドット30は、低い倍率での正確なエイミングに足る程小さく、
図10に示されているように、この中心ドットは、光を反射させて低倍率で戻すのに十分な表面積を提供している。
図10に示された特定の実施形態では、中心ドット30と主要軸線41のドロップ着弾点推定特徴40の両方が照明される。しかしながら、別の実施形態では、中心ドット30だけを照明しても良く、あるいは、風着弾点推定特徴50、移動標的着弾点推定特徴60、及びクロスヘア特徴70(又はドロップ着弾点推定特徴40の追加の特徴)のうちの1つ以上の部分を照明しても良い。
【0046】
図示の実施形態では、途切れた円32は、3つの破線で示された部分で作られ、これら破線で示された部分は、ひとまとめにかつ不連続的に中心部分31をほぼ150°、160°、170°、180°、又は190°から、200°、210°、220°、又は240°まで包囲している。中心部分31をどの程度包囲するか、及び途切れた円32の部分の数を含む途切れた円32の最終寸法を変化させることができ、その目的は、異なる技術及び照明手段に対応することにある。
【0047】
ドロップ着弾点推定特徴40は、中心ドット30のすぐ下に配置されている。ドロップ着弾点推定特徴40は、
図4にさらに詳細に示されているように、中心ドット30の中心部分31の下の計算された点から下方に直線的に延びるプライマリー垂直軸線41を有する。複数の直線クロスマーク42は、プライマリー垂直軸線41に垂直であり、かつこのプライマリー垂直軸線と計算された距離のところで交差している。すなわち、各クロスマーク42の配置場所は、この関係で示されているような射程にわたって所定の弾道によって経験するドロップに対応するよう具体的に計算されている。クロスマーク42の各々は、具体的に計算された長さを有し、各クロスマーク42は、異なる計算された長さを有する。各クロスマーク42はまた、一対の関連標印43を有する。クロスマーク42の各々の長さは、標印によって指示される射程のところでの標的の所定の幅に対応している。
【0048】
図4に示されているように、水平クロスマーク42と関連した標印43は、4から6までの範囲にある数値標印である。これらの数値は、標的の射程に対応しており、この一桁の数字である数値標印23に100ユニット、例えば図示の実施形態では100ヤードを乗算した値を表わしている。しかしながら、理解されるように、水平クロスマークの間隔及び/又は標的の予想サイズを調節することによって、異なるスケール、単位、及び距離を計算に入れることができ、標印は、必要に応じて変わる。
【0049】
図示の特定の実施形態では、レティクル18は、レティクル中心ドット30が200ヤードのところで当該ライフルから、すなわち、200ヤードのところに零点調整されたライフルからの飛翔体の平均着弾点と同時整列した状態でライフルに確実に固定されるスコープ用に設計されている。それゆえ、ドロップ着弾点推定特徴40の第1のクロスマーク43は、見やすくするために標印を省いているが、300ヤードのところのドロップに対応している。図示の実施形態におけるドロップ推定は、2700~3000フィート/秒(fps)で移動する55‐77グレイン5.56mm飛翔体に基づいているが、理解されるように、レティクル18を任意のバリスティックス向きに設計するとともに容易に再構成することができる。図示の実施形態では、ドロップは、MOAで近似されるが、他の測定単位を使用できることは理解されよう。
【0050】
図示の実施形態では、ドロップ推定は、200~600ヤードの範囲について行われるが、理解されるように、これよりも狭い又は広い範囲について利用できる。しかしながら、当該技術分野においては、600ヤードを超える距離でのドロップ推定は、この実施形態における推定のために用いられる特定のバリスティックスにとっての信頼性がますます低下することになることが知られている。種々のバリスティックスは、ドロップ推定の異なる範囲について可能である(又は、必要とする)。さらにまた、射程を100ヤード以外の間隔でマーク付けすることができる。
【0051】
図示の実施形態では、ドロップ着弾点推定特徴40は、第2の射程推定特徴として働く。クロスマーク41は各々、幅12インチの標的に対応した長さを有する。換言すると、幅12インチの標的がクロスマーク41に沿って標印4で観察され、しかも標的の幅がクロスマークの長さにほぼ等しい場合、標的は、400ヤードのところに位置すると推定される。クロスマーク41の長さを調節すると、異なる幅の標的を考慮に入れるとともに/あるいは異なる射程を推定することができることが理解できよう。別の実施形態では、追加のマークがドロップ着弾点推定特徴40の上に位置した状態で設けられるのが良く、それにより、ドロップ着弾点推定特徴40とオーバーラップしている別個の第2の射程推定特徴を提供することができる。
【0052】
図3A及び
図3Bに戻ってこれらを参照すると、風着弾点推定特徴50は、ドロップ着弾点推定特徴40のクロスマーク42から設定されるとともに具体的に計算された距離のところに複数のマーク51を有する。その結果、クロスマーク42の不連続延長部が生じる。本発明の実施形態では、マークは、これらマークによってカバーされるレティクルの量を減少させるためにドットである。しかしながら、別の実施形態では、ドットは、目盛り、ハッシュマーク、線、山形、又は任意の他の形状であって良い。さらに別の実施形態では、マーク51は、連続又は不連続クロスマーク42によって互いに連結されるのが良い。
【0053】
図示の特定の実施形態において、
図4をさらに参照すると、クロスマーク42の各々は、第1のクロスマーク42を除き、4つの関連のドット51(クロスマーク42の各側に2つ)を有しており、ただし、任意個数のマークが所与のクロスマーク42と関連して良い。あらゆる対のそれぞれのクロスマーク42の最も近くに位置するマーク51は、飛翔体が1時間当たり5マイル(mph)の横風に起因して横方向に移動する距離を表し、各対に属する別のマーク51は、10mphの風を表している。ドロップ着弾点推定特徴40の第1のクロスマーク42は、300ヤードの射程に該当しているので、10mphのマーク51だけが提供される。5mphの横風は、300ヤードのところでは目立つほどの影響を及ぼすことはない。
【0054】
このレティクル18の他の特徴に関して説明したように、図示の風着弾点特徴50は、2700~3000fpsで移動する55‐77グレイン5.56mm弾道体に対する5mph及び10mphの横風の影響を示すよう特別に設計されている。しかしながら、レティクル18は、任意のバリスティックス向きに設計されるとともに容易に再構成でき、風速の任意の単位を用いることができ、そしてそれぞれの射程のところで多くの又は少ない風着弾点標識(例えば、マーク51)を提供することができるということが理解されよう。
【0055】
図3Aによって示された実施形態では、移動標的着弾点推定特徴60は、右クロスヘア70aと左クロスヘア70bとの間に直線的に延びる複数のマーク61を含む。光学的結果として、右クロスヘア70aと左クロスヘア70bを結びかつ中心ドット30を通る不連続線が生じる。
図3Aに示された実施形態では、三角形のマークが、マークによってカバーされたレティクルの量を減少させながら標的移動方向を指示するために用いられている。しかしながら、別の実施形態では、マークは、ドット、目盛り、ハッシュマーク、線、山形、又は任意の他の形状であって良い。
図3Bに示された別の実施形態では、移動標的着弾点推定特徴60は、標的移動方向を指示する頂点63のところで終端するよう半径方向内方に延びる右クロスヘア70a及び左クロスヘア70bを有する。さらに別の実施形態では、マーク61は、連続又は不連続の標識(例えば、線)によって互いに連結されるのが良く、マーク61は、標識に沿って厚くなった部分として見える。
【0056】
図3Aに示された実施形態では、中心ドット30の各側には3つのマーク61が設けられ、各組に属する中間のマークは、標印62と関連している。これら標印は、最も内側のマークから始まって射手に対して5mph、10mph及び15mphで横に動いている標的に対して弾道体の着弾点を表している。各組に属する中間のマークは、参照のために10(10mphに関して)と表示されている。
図3Bに示された実施形態では、右クロスヘア70a及び左クロスヘア70bは、射手に対して10mphで横に動いている標的に対して弾道体の着弾点を表す長さの等しい2つの辺の頂点63で終端するよう半径方向内方に延びている。
【0057】
このレティクル18の他の特徴に関して上述したように、
図3Aに示された実施形態において用いられている移動標的着弾点推定特徴60は、55‐77グレイン5.56mm弾道体が2700~3000fpsで移動していると仮定して、5mph、10mph及び15mphでの標的の移動の影響を示すよう特別に設計されている。
図3Bに示された実施形態において用いられている移動標的着弾点推定特徴60は、55‐77グレイン5.56mm弾道体が2700~3000fpsで移動していると仮定して10mphでの標的の運動の影響を示すために特別に設計されている。しかしながら、レティクル18は、任意のバリスティックス向きに設計されるとともに容易に再構成でき、任意の標的移動単位を用いることができ、それぞれの速度での多くの又は少ない着弾点標識(例えば、マーク61)を提供することができ、しかも追加のマークを互いに異なる射程のところに提供することができるということが理解されよう。
【0058】
図4を参照すると、第1の射程推定特徴20を用いる射程推定プロセスが図示されている。大きめの標的90の標的部分の中心をプライマリー垂直軸線21に沿って合わせてこの軸線に沿って垂直に位置決めし、その結果、標的部分の幅がクロスマーク22のうちの1つの長さにほぼ一致するようにする。図示の実施形態では、標的部分は、標印3、すなわち300ヤードを示す第1のクロスマークの幅にほぼ等しい幅を有する。
【0059】
狙い撃ちをするために、ユーザはこの場合、レティクルビューをずらして標的90が中心ドット30のビュー中に位置するようにする。標的90の標的部分の中心が中心ドット30の下にいったん合わされると、ユーザは、自分の照準を調節して標的部分がドロップ着弾点推定特徴40の垂直軸線41に沿って第1のクロスマーク42の中心に位置するようにする。これは、標的までの距離に関する弾道学的ドロップを考慮に入れることになる。結果的に生じる銃弾は、図示のように標的部分に当たる。
【0060】
図5は、第1の射程推定特徴20を用いた第2の射程推定プロセスを示している。
図4に示されているプロセスでは標的の幅を用いたが、
図5に示されているプロセスは、標的の高さを用いる。大きめの標的90の標的部分の中心をプライマリー垂直軸線21に沿って合わせそして標的部分の最も下の部分(例えば、質量中心)がベースライン24に沿って位置した状態で垂直に位置決めされる。第1の射程推定特徴20における標的90の高さは、標的の射程を表している。すなわち、図示の実施形態では、標的90は、標印5、すなわち500ヤードと関連した水平クロスマーク22まで延びている。
【0061】
狙い撃ちをするために、ユーザは、標的90の標的部分を中心ドット30のところに位置決めし、そして
図4を参照して説明したように、弾道学的ドロップに適した何らかの調整を行う。
【0062】
図6は、射程を推定するためにドロップ着弾点推定特徴40を用いる第3の射程推定プロセスを示している。既知の幅(すなわち、図示の実施形態では12インチ(30.5cm))の標的90の中心を垂直軸線41に沿って横方向に合わせる。このビューを動かして、ついには、標的の幅がクロスマーク42のうちの1つの長さにほぼ一致するようにする。
図6に示された実施形態では、標的90の幅は、標印4、すなわち400ヤードと関連したクロスマーク42の長さに一致する。ドロップを計算に入れるためのそれ以上の調整は不要である。
【0063】
図7は、風着弾点推定特徴50を用いて横風着弾点推定するプロセスを示している。最初に、標的90の射程を決定し、そしてドロップ着弾点推定特徴40の垂直軸線41に沿って適切に位置決めする。図示の実施形態では、標的は400ヤードのところに位置すると推定される。次にユーザの照準を風速に応じてマーク51に沿って左又は右に調節する。例えば
図7では、風は、10mphであると推定される。したがって、ユーザは、自分の照準を調節し、その結果、標的90をクロスマーク42の右に位置する2つのマーク51のうちの右側のマークのところに合わせる。
【0064】
図8A及び
図8Bは、移動標的着弾点推定特徴60を用いるプロセスを示している。標的の中心を垂直軸線41のところに合わせるのではなく、標的90を右クロスヘア70a又は左クロスヘア70bのマーク61又は頂点63のうちの1つのところに位置決めする。
図8Aに示された実施形態では、標的90は、10mph左から右に動いているものと推定される。したがって、標的90の中心を中心ドット30の左側に位置する標識10(10mph)と関連するマーク61のところに合わせる。
図8Bに示された実施形態では、標的90は、10mphで左から右に動いていると推定される。したがって、標的90の中心を左クロスヘア70bの頂点63のところに合わせる。
【0065】
本明細書において言及した全ての非特許文献及び特許文献を参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。本発明の説明した構成及び方法の種々の改造及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。当業者であれば直ちに認識されるように、本発明を様々な材料から及び多種多様な仕方で構成することが可能である。本発明を特定の好ましい実施形態と関連して説明したが、理解されるべきこととして、本発明は、かかる特定の実施形態には不当に限定されるべきではない。好ましい実施形態を詳細に説明するとともに添付の図面に示したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、種々のそれ以上の改造が可能であることは明らかであろう。確かなこととして、射撃技術、コンピュータ又は関連分野における当業者に明らかな本発明を実施する説明した実施態様の種々の改造は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるものである。
【国際調査報告】