(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】線維性疾患の処置または予防におけるテルペノイドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/365 20060101AFI20230615BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20230615BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230615BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230615BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230615BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230615BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K31/365
A61K36/53
A61P29/00
A61P1/16
A61P9/10
A61P11/00
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571361
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021033225
(87)【国際公開番号】W WO2021236811
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521007665
【氏名又は名称】アージル・バイオテック・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Arjil Biotech Holding Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イェー-ビー
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ジャー-メン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホイ-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ペイ-シン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086GA16
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB11
4C088AB38
4C088AC01
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA23
4C088BA32
4C088BA33
4C088CA06
4C088CA14
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZA45
4C088ZA59
4C088ZA75
4C088ZA81
4C088ZB11
(57)【要約】
本発明は、線維性状態を予防または処置する方法であって、アニソメレス・インディカからから抽出されるトリテルペンを含む組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性状態を予防または処置する方法であって、アニソメレス・インディカから抽出されるトリテルペンを含む組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
トリテルペンが、アニソメレス・インディカのエタノール抽出物を順相クロマトグラフィーカラムに導入し、そのカラムをヘキサン/酢酸エチル/メタノールで溶出させることに基づく有機溶出液から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機溶出液が、以下の式:
【化1】
で示される少なくとも1つの化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
線維性状態を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に、以下の式:
【化2】
で示される化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物の有効量を、投与することを含む方法。
【請求項5】
線維性状態が、肝線維症、腎線維症、血管線維症、肺線維症、良性前立腺肥大症を含む、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
組成物がさらに、腎機能不全および腎損傷を軽減する、請求項1または4に記載の方法。
【請求項7】
組成物がさらに、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)ならびに肝臓の炎症、空胞化および壊死を軽減する、請求項1または4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)およびアニソメレス・インディカ(Anisomeles indica)抽出物由来の薬草テルペノイド、特に、線維性疾患を効果的に緩和するための薬用および食用処方に関する。
【背景技術】
【0002】
線維増殖性障害は、増加する個人にとって厄介な問題であり、肺線維症、進行性腎臓疾患、肝硬変、アテローム性動脈硬化症および良性前立腺肥大症などの多くの持続性炎症性疾患に共通する病理学的結果である。
【0003】
急性腎損傷後の腎修復の障害は線維症を誘発し、最終的に慢性腎疾患の発症につながる可能性がある。腎損傷は、多能性前駆細胞を活性化して組織を修復する。しかし、損傷が腎線維症の発症を支えるため、これら多能性前駆細胞は機能不全になり、線維形成性の修復が誘導される。腎線維症の発病は、最終的に、透析または腎移植を必要とする壊滅的な障害である終末期腎不全につながる進行性の過程である。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、大きなアンメットニーズがある慢性肝疾患の主要な形態である。NAFLDの進行性バリアントである非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、線維症、硬変症、および肝細胞癌につながり得る。NAFLDおよびNASHは、特に世界人口における糖尿病と肥満の有病率の増加のため、医学界全般で注目の的となっている。アミノトランスフェラーゼレベルに異常のある患者について臨床評価する際は須らく、特にその対象が肥満または糖尿病である場合、非アルコール性脂肪肝およびそのスペクトラムを考慮するべきである。単純なNAFLDの予後は一般的に良性であるが、線維症、肝細胞の肥大化、炎症、マロリー小体を認める場合は、硬変症に進行する危険性がある。
【0005】
自己免疫性肝炎(AIH)は、明確な病因を有しないが、肝細胞の炎症を特徴とする慢性肝疾患である。重度のAIHは、肝硬変、肝細胞癌、または死亡に至るまで進行することがある。硬変症は、観察期間にもよるが、自己免疫性肝炎の、処置を受けた患者の40%程度に発生する。抗線維化療法は、現在のレジメンの抗炎症作用と免疫抑制性作用を補うことができ、これらのレジメンは、自己免疫性肝炎の治療目的を肝線維症の予防、安定化および回復に方向転換させることが期待される治療法として登場している。
【0006】
心血管系疾患の進展の主要な原因の一つであるアテローム性動脈硬化症は、血管線維化を伴うものである。血管線維症は、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、特に血管中膜におけるコラーゲンおよびフィブロネクチンの蓄積を伴い、構造リモデリングおよび瘢痕形成に寄与する。血管壁におけるエラスチンの不足またはコラーゲンの過剰は、血管の線維症や硬さの増加をもたらす。
【0007】
良性前立腺肥大症において、コラーゲン繊維の前立腺への沈着は、壊れた筋繊維を補うためのものであるが、筋肉組織の硬さおよび弱さ、ならびに腺管への前立腺液の沈着をもたらす。前立腺線維症は、加齢男性における膀胱出口閉塞の発生に中心的な役割を果たす。
【0008】
薬用真菌類であるベニクスノキタケ(Antrodia camphorata, AC)は、多数の生物学的活性、特にインビトロ癌細胞およびインビボ動物モデルにおいて抗腫瘍作用を有することが知られている、周知の中国民間薬である。これは、その多様な生物活性化合物が考慮され、効率的な代替植物治療物質、または癌処置や免疫関連疾患に対するアジュバントであると見做されている。現在までに、巨大分子(核酸、タンパク質、および多糖類)、小分子(ベンゼノイド、リグナン、ベンゾキノン、およびマレイン/コハク酸誘導体)、テルペノイド(ラノスタントリテルペン、エルゴスタントリテルペン、ジテルペン、モノテルペン、およびステロイド)、ヌクレオチド(核酸塩基およびヌクレオシド)、脂肪酸、および脂肪酸エステルを含む合計225種の化合物が分離、同定され、構造的に解明されている。
【0009】
累積的なインビトロおよびインビボの研究により、その抗糖尿病および抗高脂血症、抗高血圧、抗炎症、抗酸化、抗菌、心血管疾患予防、免疫調節、肝保護および神経保護作用が明らかにされてきた。しかし、線維症の処置におけるベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)およびその成分の有効性は評価されていない。
【0010】
一般的に「インディアン・キャットミント(Indian Catmint)」として知られているアニソメレス・インディカ(anisomeles indica)は、医薬活性化合物の供給源であり、様々な薬理学的作用を有している。この植物は、伝統的に、鎮痛物質、抗炎症物質、および皮膚問題において使用されている。医薬的には、抗酸化活性、抗菌活性、抗HIV活性、抗ヘリコバクターピロリ活性および抗癌活性など様々な薬理学的活性があることが証明されている。また、慢性的なリウマチにも使用されている。さらなる研究により、主にトリテルペン、β-シトステロール、スチグマステロール、フラボン、アピゲニン、オバトジオリド(ovatodiolides)などの様々な植物化学成分の存在が明らかになっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物からのアントシンK、デヒドロスルフュレン酸/スルフュレン酸、ベルシスポン酸Dおよびデヒドロエブリコ酸の分離を示す。
【0012】
【
図2】
図2:AKIマウスにおけるシスプラチン誘発腎損傷に対するベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物の保護作用。ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物の作用を分析するために、マウスにシスプラチン初回投与後3週間から7日間毎日投与し、4週間目に犠牲とした。腎臓の形態的変化(A)。血中尿素窒素(BUN)レベル(B)。血清クレアチニン(CRE)レベル(C)。データは平均±S.E.M.で示した(n=5)。###は、対象群の試料と比較して、p < 0.001を示す。シスプラチン群と比較して、** p < 0.01、*** p < 0.001。
【0013】
【
図3】
図3 AKIマウスにおけるシスプラチン誘発腎損傷に対するベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物の保護作用。ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物の作用を分析するために、マウスにシスプラチン初回投与後3週間から7日間毎日投与し、4週間目に犠牲とする。腎臓はH&Eで染色した。シスプラチン負荷後、各群の腎臓を準備して組織学的評価に使用した。腎臓の代表的な組織学的切片をH&E染色、倍率(400×)により染色する。データは、平均±S.E.M(n=5)として示す。###は対照群の試料と比較してp < 0.001を示す。シスプラチン群と比較して、** p < 0.01 、*** p < 0.001。管状細胞の壊死は矢印で示し、バーは50μmを示す。
【0014】
【
図4】
図4:ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物で調節された、血清中の(A)TNF-α、(B)IL-1β、(C)IL-6(D) TGF-βおよび(E)アルブミン。TNF-α、IL-1β、IL-6、TGF-βおよびアルブミンの血清中レベルは、市販のELISAキットで測定。データは平均±S.E.M.(n=5)で示す。###は、対照群の試料と比較してp < 0.01を示す。シスプラチン単独群と比較して、** p < 0.01、*** p < 0.001。
【0015】
【
図5】
図5:腎臓におけるシスプラチン誘発TWEAK、α-SMA、P53およびP21シグナル伝達発現に対するARH005-EA(A)およびARH(B)の作用。腎臓ホモジネートにおけるTWEAK、α-SMA、P53およびP21タンパク質発現のタンパク質のレベルは、シスプラチンチャレンジ後のウェスタンブロット分析によって評価される。
【0016】
【
図6】
図6は、CCl
4誘発線維症モデルの過程を示す。
【0017】
【
図7】
図7はそれぞれ、(A)δ重量、(B)肝臓重量、および(C)肝臓/体重比を示す。
【0018】
【
図8】
図8は、CCl
4誘発肝臓損傷後のラットにおける(A)AST、(B)ALT、および(C)AST/ALTのそれぞれの血清レベルを示す。
【0019】
【
図9】
図9は、肝臓の(A)炎症、(B)空胞化、(C)壊死、(D)線維化、(E)総組織学的スコアを示す図である。
【0020】
【
図10】
図10:肝臓の代表的な組織切片をH&E染色で染色。
【0021】
【
図11】
図11は、Con A(コンカナバリンA)誘発急性肝炎モデルの経過を示す。
【0022】
【
図12】
図12は、GOT、GPTおよび体重に対するオバトジオリド(AR100-DS1)の経過を示す。15mg/kgのCon Aチャレンジの24時間後の(A)血清GOTおよび(B)血清GPT。(C)15mg/kgのCon Aチャレンジ前とチャレンジ後の体重。データは平均値±SEMで(n=9)で示す。t検定により、Vehに対して* p<0.05。Veh、ビヒクル;Dex、デキサメタゾン。
【0023】
【
図13】
図13:肝臓損傷に対するオバトディオリド(AR100-DS1)の作用。A)Naive、(B)15mg/kgのCon A(Veh)、(C)2019-0321-1および(D)デキサメタゾンの肝組織学、ならびに(E)壊死の組織病理学的スコア。データは平均±SEM(n=9)で示す。スチューデントのt検定によりVeh対して*** p < 0.001。Veh、ビヒクル;Dex、デキサメタゾン。
【0024】
【
図14】
図14は、ウサギのアテローム性動脈硬化症モデルの過程を示す。
【0025】
【
図15】
図15は、ウサギの初期および最終の平均体重を示す。†および*はそれぞれ対照群とHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0026】
【
図16】
図16は、ウサギの各群におけるW0群間のAST、ALT、BUNの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP<0.05であることを示す。
【0027】
【
図17】
図17は、ウサギの各群におけるW0群間のTG、TC、HDL-C、LDL-Cの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0028】
【
図18】
図18は、ウサギの各群におけるW4群間のAST、ALT、BUNの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0029】
【
図19】
図19は、ウサギの各群におけるW4群間のTG、TC、HDL-C、LDL-Cの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0030】
【
図20】
図20は、ウサギの各群におけるW8群間のAST、ALT、BUNの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0031】
【
図21】
図21は、ウサギの各群におけるW8群間のTG、TC、HDL-C、LDL-Cの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0032】
【
図22】
図22は、ウサギの各群におけるW12群間のAST、ALT、BUNの変化を示すものであり、†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0033】
【
図23】
図23は、ウサギの各群におけるW12群間のTG、TC、HDL-C、LDL-Cの変化を示すものである。†および*はそれぞれ対照群およびHF群と比較してP < 0.05であることを示す。
【0034】
【
図24】
図24は、12週間試験後の高コレステロール血症ウサギモデルにおける大動脈脂肪縞病変の病理組織化学的検査を示す。
【0035】
【
図25】
図25は、ウサギの各群における犠牲後の冠動脈切片のHE染色を示す。
【0036】
【
図26】
図26は、ウサギの各群における犠牲後の冠動脈のHE染色を示す図である。N、新内膜層(neointima layer);M、中膜層(media layer)。
【0037】
【
図27】
図27は、血管再狭窄の発現を新内膜対中膜面積の比(N/M比)N、新内膜層;M、中膜層として示したものを示す。HFD群と比較してそれぞれ*p < 0.05、** p < 0.01、*** p < 0.001。
【0038】
【
図28】
図28は、12週間試験後の高コレステロール血症ウサギモデルにおける心臓組織の病理組織化学的検査を示す。
【0039】
【
図29】
図29は、12週間試験後の高コレステロール血症ウサギモデルにおける肝臓の外観の写真を示す。
【0040】
【
図30】
図30は、12週間試験後の高コレステロール血症ウサギモデルの肝臓組織の病理組織化学的検査を示す。
【0041】
【0042】
【
図32】
図32は、ブレオマイシン誘発肺線維症マウスにおける肺の病理組織学的変化を示す。
【0043】
【
図33】
図33は、ブレオマイシン誘発肺線維症マウスにおける肺のMassonトリクローム染色を示す。
【0044】
【
図34】
図34は、ブレオマイシンにより誘発されたマウスの肺損傷におけるヒドロキシプロリン含有量に対するベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物の作用を示す。
【0045】
【
図35】
図35は、ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物がBALFにおける(A)TNF-α、(B)IL-1β、(C)IL-6(D)およびTGF-β(E)を調節したことを示す。
【0046】
【
図36】
図36は、BLMにより誘発されたマウスにおける肺MPO活性に対するベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物の調節作用を示す。
【0047】
本発明の詳細な説明
本発明の説明の便宜上、上記の本発明の概要で表されている中心的な考えを、具体例によって表現することにする。実施態様における様々な項目は、説明に適した比率、寸法、変形量、または変位で示されており、上記のように実際の要素の比率に示されているわけではない。
【0048】
用語「テルペン」とは、有機化合物の大規模かつ多様なクラスを示し、その基本構造は一般原則に従っている:2-メチルブタン残基、正確ではないが通常はイソプレン単位、(C
5)
nとも呼ばれ、テルペンの炭素骨格を構築している。現在、文献上では約3万種のテルペンが知られている。2-メチルブタン(イソプレン)サブ単位の数に応じて、ヘミ-(C
5)、モノ-(C
10)、セスキ-(C
15)、ジ-(C
20)、セステル-(C
25)、トリ-(C
30)およびテトラテルペン(C
40)に区別される。
【化1】
【0049】
用語「対象」、「個体」、「宿主」および「患者」は、ヒトおよび非ヒト動物を含む生きている動物を指すために本明細書で互換的に使用される。対象は、例えば、抗原刺激に応答することができる免疫細胞、及び細胞表面受容体結合による刺激性および阻害性のシグナル伝達を有する生物であり得る。対象は、哺乳動物であってもよい。例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウスなどのヒトまたは非ヒト哺乳動物など。用語「対象」とは、疾患に関して完全に正常である個体、またはすべての点で正常である個体を除外するものではない。
【0050】
用語「処置」とは、治療的または予防的手段を意味する。処置は、医学的障害を有する対象、または究極的には障害を獲得する可能性のある対象に、障害または再発する障害の1つまたはそれ以上の症状の予防、治癒、遅延、重症度の軽減、または改善、あるいはそのような処置がない場合に予想されるよりも対象の生存を延長するために適用され得る。
【0051】
用語「治療有効量」とは、例えば、研究者、獣医師、医学博士、または他の臨床医が求める組織、システム、動物、またはヒトの所望の応答、例えば、生物学的または医学的応答を誘導し得る対象化合物の量を意味する。
【0052】
生化学的パラメーターの測定:血清クレアチニンおよび血清尿素は、製造者の使用説明書に従い、比色キットを用いて評価される。前者のマーカーのキットは、(HUMAN Diagnostics Worldwide, Magdeburg, Germany)、化学分析器(Roche Diagnostics, Cobas Mira Plus, Rotkreuz, Switzerland)より購入される。
【0053】
腎臓の組織病理学:各マウスの左側肝葉の前方部分は10%ホルムアルデヒドリン酸緩衝液中で固定し、パラフィンに包埋して5μmの切片にし、次に、ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色で処理して光学顕微鏡検査(Nikon, ECLIPSE, TS100, Tokyo, Japan)で組織学試験を行う。画像はデジタルカメラ(NIS-Elements D 2.30, SP4, Build 387)を用い、原倍率400倍で撮影する。
【0054】
血清中のTNF-α、IL-6、およびIL-1βサイトカイン:血清中の炎症促進性サイトカイン(すなわち、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、およびIL-1β)の濃度は、製造者の使用説明書に基づき、関連の酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キット(Biosource International Inc., Sunnyvale, CA, USA)を用いて評価される。
【0055】
腎臓組織のウェスタンブロット分析:0.6%NP-40、150mM NaCl、10mM HEPES(pH 7.9)、1mM EDTA、および0.5mM PMSFからなる溶解緩衝液を4℃で肝臓組織の均質化に使用する。その後、均質化した試料を4℃で1分あたり3000回転(rpm)で10分間で遠心分離して、上清を得る。上清の等しい全細胞タンパク質量は、ウシ血清アルブミン(BSA)のタンパク質標準によって測定する。タンパク質試料(50μg)を標準的な方法を用いて変性10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分解し、次にPVDF膜(Immobilon, Millipore, Bedford, MA, USA)に移し、エレクトロブロッティングおよび10%スキムミルクによるブロッキングを行う。膜を、適切な希釈の特異的一次抗体とともに4℃でインキュベートし、TBS/ツイーン(TBST)緩衝液で3回洗浄し、続いてセイヨウワサビペルオキシダーゼ共役二次抗体とともに37℃で1時間インキュベートする(一晩)。膜を3回洗浄し、強化ケミルミネッセンス(ECL)試薬(Thermo Scientific, Hudson, NH, USA)による免疫反応性タンパク質試験を行う。スキャンしたフィルム上のバンド強度は、Image Jソフトウェア(NIH, Bethesda, MD, USA) を用いて対象群と比較して定量化し、相対強度として示す。
【0056】
統計分析:動物実験から得られたデータは、平均および平均値の標準誤差(±S.E.M.)として示される。スチューデントのt検定は、複数の群間または2つの群間の差異を調べるために使用される。統計的有意性は、* p < 0.05、** p < 0.01および*** p < 0.001で示される。
【0057】
実施例1. ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物の調製
【0058】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)の子実体100gをメタノールで6時間還流し、抽出液を集めて乾燥させることにより、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)のメタノール抽出物合計15gを得る。
【0059】
実施例2.有効成分の調製:アントシンK、デヒドロスルフュレン酸/スルフュレン酸、ベルシスポン酸Dおよびデヒドロエブリコ酸
【0060】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)のメタノール抽出物をさらにn-ヘキサン/酢酸エチル/メタノールを溶出液とするシリカカラムクロマトグラフィーにより分離して、画分を得る(
図1に示す)。
ARH101-DS1(RS-アントシンK)、
ARH101-DS2(デヒドロスルフュレン酸/スルフュレン酸)、
ARH101-DS3(ベルシスポン酸D)および
ARH101-DS4(デヒドロエブリコ酸)
【化2】
【0061】
実施例3. AR003抽出物の調製
【0062】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)(ペトリディッシュ培養物)100gをメタノールで6時間還流し、抽出液を集めて減圧下で乾燥させ、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorate)のARH003抽出物15gを得る。
【0063】
実施例4. AR003-E抽出物の調製
【0064】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)(ペトリディッシュ培養物)200gをエタノールで6時間還流し、抽出液を集めて乾燥させることにより、AR003-Eベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物合計18gを得る。
【0065】
実施例5. AR004抽出物の調製
【0066】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)(木培養物)100gをメタノールで6時間還流し、抽出液を集めて減圧下で乾燥させて、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorate)ARH004抽出物を得る。
【0067】
実施例6. AR005-EA抽出物の調製
【0068】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)(固体培養物)100gを酢酸エチルで6時間還流し、抽出液を集めて乾燥させることにより、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)のEA抽出物合計12gを得る。
【0069】
実施例7. アニソメレス・インディカ(anisomeles indica)抽出物の調製
【0070】
アニソメレス・インディカ(anisomeles indica)抽出物は、以下のプロセスによって調製する:(1)アニソメレス・インディカ(anisomeles indica)のエタノール抽出物を採取し、シリカを充填したクロマトグラフカラムに添加し、溶離剤「n-ヘキサン/酢酸エチル」、「ヘキサン/酢酸エチル/メタノール」および「メタノール」による勾配溶出を行ってアニソメレス・インディカ(anisomeles indica)分離液を得て;(2)アニソメレス・インディカ(anisomeles indica)分離液を、シリカ充填クロマトグラフカラムを用いて分離し、溶出液「ジクロロメタン」、「ジクロロメタン/メタノール」および「メタノール」による勾配溶出を行って、分離濃縮物を得て;(3)分離濃縮物を溶媒「n-ヘキサン/酢酸エチル」で再結晶して、アニソメレス・インディカ微結晶を得る。
【0071】
実施例8. 活性成分の調製:オバトジオリド(AR100-DS1)
【0072】
アニソメレス・インディカ(anisomeles indica)のエタノール抽出物200gを取り、シリカ充填クロマトグラフカラム(10x15cm)に入れ、「n-ヘキサン/酢酸エチル(比率10/1、5/1、3/1、1/1)」、「ヘキサン/酢酸エチル/メタノール(比率6/4/1、3/2/1)」および「メタノール」の各溶離剤1200mlで勾配溶出を行って、初期分離液140gを得る。
【0073】
初期分離液140gを、シリカ充填クロマトグラフカラム(10x15cm)を用いて分離し、「ジクロロメタン」、「ジクロロメタン/メタノール(10/1、5/1、7/3の比率)」および「メタノール」の各溶出液1000mlで勾配溶出を行って、分離濃縮物質を得る。分離濃縮物質をさらに溶媒:「n-ヘキサン/酢酸エチル」で再結晶させて結晶を得る。この結晶を核磁気共鳴スペクトロスコピー(H1-NMR)により、化学構造がオバトジオリドであるジテルペノイド化合物であることを確認する。この結晶を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によりオバトジオリドの標準品と比較し、オバトジオリド化合物を有することを認識する。
【化3】
【0074】
オバトジオリド(AR100-DS1)からの代謝物:
+O, +システイン: m/z:466, M2, M3, M4
+グルタチオン: m/z:636, M6, M7
+O: m/z:345, M8, M9
【0075】
【0076】
実施例9. シスプラチン誘発腎損傷のマウスモデル
【0077】
7~8週齢の雄のC57BL/6マウスは、BioLASCO Taiwan Co., Ltd. (Taipei, Taiwan)から入手した。動物を、実験前の少なくとも2週間、12時間の暗-明サイクルで22±1℃の一定温度および55±5%の相対湿度でプレキシグラスケージに収容する。動物に餌と水を自由摂取させる。すべての実験手順は、施設動物倫理委員会(Institutional Animal Ethics Committee)のガイドラインに従って実施し、プロトコールは動物実験管理監督目的委員会(Committee for the Purpose of Control and Supervision of Experiments on Animals)の承認を得ている。
【0078】
低用量シスプラチンの複数回の注射を介して腎線維症を誘発する。シスプラチン(5mg/kg/注射;P4394、Sigma-Aldrich, St Louis, MO)の腹腔内注射は、0週間、1週間、および3週間で、合計3回の注射を実施する。マウスは、シスプラチンの最初の投与後6週間で犠牲にする(n=6)。試料の作用を分析するため、シスプラチン初回投与後4週間から7日間、毎日マウスに腹腔内注射を行い、4週間で犠牲とする(n=6)。
【0079】
実施例10. ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物は、マウスにおけるシスプラチン誘発腎機能不全および組織病理学的変化を減少させた。
【0080】
腎臓の形態的変化を
図2Aに示す。CREおよびBUNは腎臓機能の特徴である。
図2Bおよび2Cは、対照群と比較して、3つの10mg/kgのCP用量でのシスプラチン注射(第0週、第1週、第3週時)は、血清CREおよびBUNレベルを高度に増加させ(p < 0.001)、これは、シスプラチン処置マウスにおける腎毒性の発生を示している。ARH005-EAおよびARH003-Eの1000mg/kgでの処置と化合物(AR101-DS4およびAR100-DS1)の処置により、シスプラチン刺激群と比較してCREおよびBUNの正常化(p < 0.001)により示されるように、用量依存的に著しい腎臓保護作用を及ぼした。
【0081】
実施例11.ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物は、シスプラチンの複数回投与により誘発される腎機能不全および腎損傷を軽減する。
【0082】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物がシスプラチン刺激マウスの腎不全に影響を与えるかどうかを決定するために、組織病理学的変化を分析する。対照群の腎臓組織は完全に正常であり、透明な管状および糸球体構造を特徴とし、透明で正常な核を有する。シスプラチン刺激マウスでは腎臓は重度の腎損傷を呈し、尿細管上皮損傷、炎症細胞浸潤、尿細管細胞腫脹、尿細管内鋳型の形成、および尿細管拡張が誘導された。しかし、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物(AR005-EA)(1000mg/kgの用量で)、化合物(AR100-DS1)での処置により、腎臓組織における壊死および炎症性浸潤細胞が有意に改善された(
図3参照)。
【0083】
実施例12.ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物は、シスプラチン誘発炎症性サイトカインおよびアルブミンの変化を警戒した。
【0084】
血清中の炎症促進性サイトカインTNF-α、IL-1β、IL-6およびTGF-βレベルの評価は、ELISAにより実施する。シスプラチン処置腎損傷マウスは、対照群と比較して、血清中のNO、TNF-α、IL-1β、IL-6レベルが有意に上昇した(それぞれ、
図4A~4E)ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物(AR005-EA)(1000mg/kgの用量で)、化合物(AR100-DS1)の処置により、腎臓組織処置における壊死および炎症性浸潤細胞を有意に改善し、シスプラチンチャレンジ後のNO、TNF-α、IL-1β、およびIL-6の産生を改善した。
【0085】
実施例13.シスプラチン誘発腎損傷TWEAK、α-SMA、P53およびP21タンパク質発現の阻害。
【0086】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物(ARH005-EA)および化合物(AR100-DS1)による前処理がシスプラチン誘発TWEAK、α-SMA、P53およびP21タンパク質発現を阻害するかどうかを検討した。その結果、ARH005-EAおよびARHで処置することにより、シスプラチンチャレンジ後の腎臓組織におけるTWEAK、α-SMA、P53およびP21のタンパク質発現が阻害されることが明らかになった(
図5Aおよび
図5B)。
【0087】
実施例14.ラットにおけるCCl4誘発慢性肝線維症
【0088】
図6に示すように、8週齢の雄性SDラットに、CCl4を0.4mg/kgで週2回、8週間投与する。血液試料は第0週目、第2週目、第4週目、第6週目、および第8週目に採取する。8週間の終了時に動物を犠牲にし、組織病理学的検査を行う。
図7A、7B、7Cはそれぞれ、δ重量、肝臓重量、および肝臓/体重比を示す。Naive群の肝臓重量はビヒクル群と有意差はないが、Naive群の肝臓/体重比はビヒクル群と比較して有意に小さくなっている。50mg/kgのAR100-DS1投与群は、ビヒクル群およびNaive群と比較して、肝重量及び肝臓/体重比が有意に大きい。
【0089】
実施例15.血清中肝臓酵素プロファイル
【0090】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)などの臨床生化学のレベルを評価して、対照群および実験群の肝臓の酵素活性を決定する(
図8A~8Cに示される)。Naive群のAST、ALTおよびAST/ALT比のレベルは、実験中に有意な変化を示さなかった。各実験群の動物の血清中のASTレベルおよびALTレベルは、実験の進行とともに有意に増加したが、ビヒクル群と比較して、W6およびW8において、50mg/kgのAR100-DS1群ではASTおよびALTの増加が少なく観察されることができる。
【0091】
実施例16.肝臓組織学的評価
【0092】
CCl
4誘導8週間後、ビヒクル群はASTおよびALTの増加、AST/ALT比の減少、炎症、線維症、空胞化および壊死などの肝臓傷害を有意に起こした。
図9A~9Eおよび10に示すように、50mg/kgのAR100-DS1群の肝臓は、萎縮や硬化のない滑らかな表面を有し、肝臓重量および肝臓/体重比はビヒクル群およびNaive群より有意に大きい。AR100-DS1は、CCl
4誘発肝臓傷害を部分的に修復する可能性があることが示された。
【0093】
実施例17.BALB/cマウスにおけるCon A(コンカナバリンA)誘発急性肝炎に対するオバトジオリド(AR100-DS1)の作用
【0094】
コンカナバリンA(Con A)の静脈内注射は、T細胞媒介性肝炎を研究するために広く使用されている戦略である。Con Aは、CD4+T細胞を活性化し、サイトカインを産生し、肝臓細胞の損傷をもたらすことができるレクチンである。デキサメサゾン(Dex)は長時間作用型の合成コルチコステロイドであり、抗炎症薬および免疫抑制薬として使用されてきた。BALB/cマウスにおいて、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GPT)に対するオバトジオリド(AR100-DS1)の作用、Con A-誘導急性肝炎に対する循環サイトカインおよび肝臓組織病理学の作用を評価する。
【0095】
Con AおよびDexはSigma Aldrich(USA)から購入した。ProcartaPlexTMイムノアッセイキットはCorning Inc.(USA)から購入した。GOPおよびGPT Fuji Dri-Chemスライドは、Winning Medical Inc.(Taiwan)から購入した。
【0096】
雄のBALB/cマウス(7~9週齢)は、BioLASCO Taiwan Co., LtdまたはNational Laboratory Animal Center(NLAC, Taiwan)から購入した。動物を、ケージあたり5匹収容し、実験を通じて、餌と水を自由摂取させた。室温は23±2℃、12時間の明暗サイクルで維持する。動物は実験前に1週間馴化させ、ストレスの影響を最小にした。動物を含むすべての実験プロトコールおよびそのケアは、ITRIのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)(ITRI-IACUC-2018-041およびITRI-IACUC-2018-050;AAALACより承認)によって承認されており、Council of Agriculture, Taiwanの規則に従って実施する。
【0097】
Con Aをパイロジェンフリー食塩水に3mg/mLの濃度で溶解し、15mg/kg体重または20mg/kg体重で静脈内注射して肝炎を誘発させる。Con A処置30分前、次に4時間後、および8時間後にオバトジオリド(AR100-DS1)およびDexを経口投与する。Con A処置の24時間後に血液および肝臓組織を採取する(
図11)。血清は分析まで80℃で保存する。
【0098】
Con A処置後の肝細胞損傷のレベルを評価するために、血清中のGPTおよびGOTレベルをFuji Dri-Chem スライドs(Fuji, Japan)により測定する。同じ群の血清をプールしてサイトカインアッセイに使用した。サイトカインレベルは、ProcartaPlex
TMイムノアッセイキットにより、メーカーの使用説明書に従い測定する。データは平均±SEMで示す。薬物処置群とビヒクル処置群の差の分析にはT testを使用した。p値が0.05未満である場合、その差は統計的に有意であるとみなされる。50mg/kgのオバトジオリド(AR100-DS1)は、Con Aによって上昇するGPTレベルを有意に低下させ(109±25vs368±107U/L、p < 0.05)、GOTの上昇をわずかに改善した(261±45vs410±56U/L)(
図12)。
【0099】
肝臓組織は、10%リン酸緩衝ホルムアルデヒド中に固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)で染色して、組織病変を確認する。組織病変は、BioLASCO Taiwan Co., Ltd.の獣医病理学者が顕微鏡で検査する。すべての顕微鏡的病変の重症度評価システムの基準は、以下のように0~4で評価する:0=なし;1=個々の細胞壊死;2=≦30%の小葉壊死;3=≦60%の小葉壊死;4=>60%の小葉壊死。組織病理学的分析では、オバトジオリド(AR100-DS1)が肝臓壊死を改善した(スコア0.2±0.2vs1.4±0.2, p < 0.05)が示された(
図13)。この結果は、オバトジオリド(AR100-DS1)が、血清GOPおよびGPTを低下させ、Con A誘発肝臓壊死を減弱させることを示している。
【0100】
実施例18.アテローム性動脈硬化症および肝線維症の予防におけるベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物およびAR101-DS2の効能の評価
【0101】
実験モデル
【0102】
2~3kgの雄、ニュージーランド白ウサギを個別にケージに入れ、温度と湿度が調整された部屋に収容する。明暗サイクルはそれぞれ12時間とする。数日間の馴化後、動物を6つの給餌群に順次割り当てる:標準ウサギ固形飼料、0.5%コレステロールを含有する標準ウサギ固形飼料、0.5%コレステロールおよび10mg/kgのロバスタチンの両方を含有する標準ウサギ固形飼料、0.5%コレステロールおよび1%ARH003の両方を含有する標準ウサギ固形飼料、0.5%コレステロールおよび1%ARH004の両方を含有する標準ウサギ固形飼料、0.5%コレステロールおよび10mg/kgのAR101-DS2の両方を含有する標準ウサギ固形飼料。標準ウサギ固形飼料群を除く他の群には0.5%コレステロールを含有する標準ウサギ固形飼料を4週間与える(
図14~15参照)。各ウサギの1日あたりの給餌量は50g/kg体重とする。飼料は、動物が新しい環境に適応した後、8週間与える。12週間の試験の最初と最後に、ウサギをZoletil 50(1mL/kg)(Virbac Ltd., France)の筋肉内注射によって麻酔し、血液試料を採取する。最後に、ウサギを犠牲にした後に大動脈(大動脈弓から腸骨動脈の分岐部まで)および全肝を採取して、さらなる組織病理学的分析を使用する。
【0103】
2~3kgの雄、ニュージーランド白ウサギ(n=30)を以下の群に分ける:
(ND)標準ウサギ固形飼料、n=5;
(HF)0.5%コレステロールを含有する標準ウサギ固形飼料、n=6;
(L)0.5%コレステロールおよび10mg/kgのロバスタチンの両方を含有する標準ウサギ固形飼料、n=4;
(AR003)0.5%コレステロールおよび1%ARH003の両方を含有する標準ウサギ固形飼料、n=5;
(AR004) 0.5%コレステロールおよび1%ARH004の両方を含有する標準ウサギ固形飼料、n=5;
(AR101-DS2) 0.5%コレステロールおよび10mg/kgのAR101-DS2の両方を含有する標準ウサギ固形飼料、n=5;
各ウサギの1日あたりの給餌量は50g/kg体重とする。
【0104】
血液化学分析
【0105】
動物を、採血前に一晩絶食させる。ウサギの耳縁(marginal ear)静脈からBD Vacutainer EDTA Blood Collection Tubesに血液を採取する。血漿は、3,000rpm、4℃で10分間遠心分離することにより分離する。
図16~23は、低密度リポタンパク質(LDL)、コレステロール(Chol)、トリグリセリド(TG)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、およびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)の血清中レベルを含む血液化学パラメーターの変化に関する測定結果を示す。
【0106】
大動脈脂肪ストリーク染色
【0107】
大動脈を縦方向に開いて内膜表面を露出させ、通常の食塩水で穏やかにすすぐ(
図24~26参照)。大動脈を2%(w/v)スダンIV中でインキュベートし、いくつかの濃度(100%、90%、80%、70%、60%)のエタノールで1分間洗い流し、次に純水で洗い流す。
図28に示す写真は、デジタルカメラ(Nikon D80, Japan)を用いて取得し、Alpha Imager 2200ドキュメンテーションシステム(Alpha Innotech, USA)で定量化したものである。脂肪ストリーク病変の進行は、総面積に対する染色面積の割合で示す(
図27)。
【0108】
方法
1. 細胞または組織を水和させる:
i. アルコールまたはアルデヒド系固定剤で固定した凍結切片または再水和した組織切片(Cutting Sections of Paraffin Embedded Tissuesの工程12参照)(Fischer et al.2008)を有する顕微鏡用スライドを使用する。
ii. スライドをH2O中で手で攪拌しながら30秒間浸漬する。
H2Oでの洗い流しは重要であり;ヘマトキシリンは塩類や緩衝液と一緒に沈殿する。染色は、免疫組織化学反応またはハイブリダイゼーション反応の後に非蛍光検出システムを用いて行うことができる。
2. Mayerのヘマトキシリンを含有するCoplinジャーにスライドを浸し、30秒間撹拌する。
3. スライドをH2O中で1分間洗い流す。
この時点で染色強度を推定し、必要に応じて工程2および工程3を繰り返す。
4. 1%エオシンY溶液で10~30秒間攪拌しながら染色する。
5. 切片を95%アルコールで2回、100%アルコールで2回、それぞれ30秒間脱水させた。
6. キシレンで2回アルコールを抽出する。
プラスチック製スライドを使用するか、プラスチック製培養皿で染色する場合、キシレンまたはキシレン系の封入剤はプラスチックを溶かすので使用しないこと。
7. 封入剤を1~2滴添加し、カバースリップで覆う。
アルコール類が使用できない場合は、カバースリップをグリセロールまたはその他の水性封入剤で封入する。
【0109】
試薬
顕微鏡スライド上の目的の細胞または組織(工程1.iを参照)
エオシンY(1%水溶液;EM診断システム)
エタノール(95%、100%)
エタノールの代わりにメタノールまたはフレックスアルコール(Flex alcohols)(Richard-Allan Scientific)を使用することができる(工程5を参照)。
ヘマトキシリン、Mayerのもの(Sigma)
Mayerのヘマトキシリンは最も使いやすく、ほとんどの比色基質と相性が良い。
封入剤(Canada Balsam, Sigma C1795)
アルコール類が使用できない場合は、グリセロールまたは他の水性封入剤を使用する(工程7を参照)。
キシレン
【0110】
肝臓組織の凍結切片化
【0111】
ウサギの肝臓組織(
図29に示す)を通常生理食塩水で灌流し、10%(v/v)ホルマリン中和液(J.T. Baker, Inc., USA)中で24時間固定する。その後、組織をTissue Tek OCT Compound (#4583; Sakura Finetek Inc., USA)に包埋する。包埋した組織を10μm厚のスライスに切り出し、スダンIVおよびヘマトキシリン(Merck, USA)で染色した。簡単に説明すると、切片を純水で1分間洗浄して、OCT化合物を除去し、50%(v/v)エタノールで30秒間洗浄し、次に2%(w/v)スダンIVで1時間染色した。さらに50%(v/v)エタノールおよび純水で2分間洗浄後、ヘマトキシリンで対比染色した。
図30に示す写真は、10倍の倍率の対物レンズを備えた顕微鏡を用いて取得し、Alpha Imager 2200文書化システム(Alpha Innotech, USA)で定量化したものである。脂肪肝進行の徴候は、全肝臓組織(細胞)に対する油滴の面積の割合として示す。
【0112】
【0113】
実施例19. マウスにおいてブレオマイシン誘発肺線維症に対するベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物の保護作用。
【0114】
動物および処置
【0115】
特定病原体を含まないICRマウス(雄)(体重18~22g)は、BioLASCO Taiwan Co,Ltd.(Taipei, Taiwan)から購入した。動物は、実験前に少なくとも2週間、12時間の暗-明サイクルで22±1℃の一定温度と55±5%の相対湿度でプレキシガラス製のケージに収容した。動物に餌と水を自由摂取させた。すべての実験手順は、施設動物倫理委員会のガイドラインに従って行い、プロトコールはCommittee for the Purpose of Control and Supervision of Experiments on Animalsによって承認された。
【0116】
マウスにおけるBLM誘発PF
【0117】
マウスを体重により1群あたり5匹で5群に分けた:対照群、BLM群、BLM+DEX群(7.5mg/kg)、BLM+ACH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+ACM投与量群(25mg/kg)、BLM+ACH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+ACM投与量群(25mg/kg)BLM+AH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+AM投与量群(25mg/kg)BLM+BH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+BM投与量群(25mg/kg)BLM+CH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+CM投与量群(25mg/kg) BLM+DH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+DM投与量群(25mg/kg) BLM+EH投与量群(50mg/kg)、およびBLM+EM投与量群(25mg/kg)BLM。マウスにBLMを7.5mg/kg mg/kg体重での単回気管内投与により肺線維症(PF)を確立した。BLM損傷後21日間、様々な用量の試料を毎日胃内投与し、陽性対照としてDEXを使用した。対照群およびモデル群に、同じスケジュールおよび投与経路を用いて等容量のビヒクル(0.9%NaCl)を投与した。
【0118】
マウスの体重を毎日記録した。マウスは、過剰の抱水クロラール塩酸塩麻酔(chloral hydrate hydrochloride anesthesia)を用いて21日目に犠牲とした。血液を採取してELISA分析を行い、全肺を除去し、秤量した。右肺を10%ホルマリン中で固定し、脱水し、パラフィンに包埋した。左肺はヒドロキシプロリンの測定に使用した。肺の係数は、肺の重量/体重×100%で算出した。
【0119】
実験設計
【0120】
雄C57BL/6マウスを以下の8群(n=6)に無作為に分けた:
1. I群:対照;
2. II群:マウスにBLM(7.5mg/kg BW)を単回腹腔内注射した。
3. III群:単回用量(ACH, 0.5g/kg)
4. IV群:単回用量(ACM, 1.0g/kg)
5. V群:精製化AR101-DS1(50mg/kg)
6. VI群:精製化AR101-DS1(25mg/kg)
7. VII群:精製化AR101-DS2(50mg/kg)
8. VIII群:精製化AR101-DS2(25mg/kg)
7. 群 VII:精製化AR101-DS4(50mg/kg)
8. VIII群:精製化AR101-DS4(25mg/kg)
7. VII群:精製化AR100-DS1(50mg/kg)
8. VIII群:精製化AR100-DS1(25mg/kg)
7. VII群:精製化ARH013-RA1(50mg/kg)
8. VIII群:精製化ARH013-RA1(25mg/kg)
【0121】
BALFの試料採取
【0122】
麻酔下で、0.7mLの生理食塩水を用いて気管カニューレを介してBALFを4回行った。検査した各マウスにおいて、約2.5mL(90%)のBALF液(BALF)を回収した。BALFの上清は、使用するまで-80℃で保存した。
【0123】
肺組織病理学
【0124】
各マウスの右肺の前方部分を10%ホルムアルデヒドリン酸緩衝液中で固定し、パラフィンに包埋して5μmの切片にし、次にヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色を行い、光学顕微鏡(Nikon, ECLIPSE, TS100, Tokyo, Japan)で組織学的検査を行った。画像はデジタルカメラ(NIS-Elements D 2.30, SP4, Build 387)を用いて、原倍率400倍で撮影した。
【0125】
ヒドロキシプロリンのアッセイ
【0126】
ヒドロキシプロリンアッセイキット(Biosource International Inc., Sunnyvale, CA, USA)の使用説明書に従い、肺組織中のヒドロキシプロリンの含有量を分析した。マウスの肺組織を粉砕し、6mol/Lの塩化カリウム溶液1mlで均質化し、95℃で5時間加水分解し、pH値を6.0~6.8に調整した。使用説明書に従い、対応する試薬を反応系に添加し、十分に混合し、次に60℃で15分間インキュベートした。冷却後、3500rpmで10分間遠心分離した後、上清を集めた。試料の上清を分光光度計により550nmで吸光度値を測定し、各群のヒドロキシプロリンの含有量を算出した。
【0127】
血清中TNF-α、IL-6、およびIL-1βサイトカイン
【0128】
血清中の炎症促進性サイトカイン(すなわち、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、およびIL-1β)の血清濃度は、製造業者の使用説明書に基づき、関連の酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キット(Biosource International Inc., Sunnyvale, CA, USA)を用いて評価した。
【0129】
骨髄ペルオキシダーゼ(MPO)アッセイ
【0130】
肺MPO活性は、肺における炎症性細胞の浸潤を推定するための信頼性の高い指標であった。肺組織を均質化し、製造業者の使用説明書に従い、キットを用いてMPO値を検出した。
【0131】
組織病理学的分析
【0132】
右肺をパラフィンワックスに包埋し、10%ホルマリン中で固定し、切片にした。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色するか、Massonの三色染色を行った。
【0133】
統計分析
【0134】
動物実験から得られたデータは、平均および平均の標準誤差(±S.E.M.)として示した。複数の群間または2つの群間の差を調べるのにスチューデントのt検定を使用した。統計的有意性は、* p < 0.05、** p < 0.01および*** p < 0.001で示す。
【0135】
全実験の終点で、動物の体重および肺の重量を記録した。対照動物と比較して、ブレオマイシン(BLM)投与動物の体重変化は、有意に減少した。他の実験群と比較して、肺の指数[(肺の重量/体重)×100]は、ブレオマイシン投与動物で有意な増加を示した(表1および
図31)。ACH、BHおよびDHの肺の指数は有意に低下した。
【0136】
【0137】
実施例20.ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物は、BLM誘発マウスにおける肺機能不全および組織病理学的変化を減少させた。
【0138】
ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物の治療効果を探索するために、マウスの組織病理学的肺の変化を評価した。炎症性浸潤および組織構造の完全性をH&E染色で観察し(
図32);肺組織の線維症の程度をMasson染色で行った(
図33)。対照群では、肺胞壁が薄く、肺胞構造が完全で、肺胞隔壁が正常で、肺間充織への炎症細胞の浸潤が少ないなどの組織学的所見が得られた。BLM投与21日後、肺胞浮腫、隔膜の幅の有意な増大、および炎症細胞浸潤の増大が観察された。ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物の投与により、BLM群と比較して、肺組織の炎症浸潤および損傷構造を改善した。
【0139】
BLM投与21日後、肺組織および隔膜はMasson染色により広範囲に青く染まり、これは、BLM群では正常群と比べて肺線維症の重度の程度が高いことを示唆している。ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物処置後、青色面積は減少し、線維症の程度は軽減した。BLM造形後21日目において、肺胞炎および線維化のスコアは、ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物療法後に有意に減少した。以上の結果より、ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物は、肺線維症マウスの肺の炎症および線維症の程度を軽減することが示唆された。
【0140】
実施例21 肺線維化マーカー
【0141】
ヒドロキシプロリン含有量は、肺組織におけるコラーゲン沈着の重要な指標である。肺線維症の程度を定量化するために、各群で肺組織中のヒドロキシプロリン含有量を測定し、
図34に示した。BLMは対照群と比較して明らかにHP含量を増加させた(p<0.001)。ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物(1.0g/kg)ならびにAH、BHおよびDHは肺のHPを有意に回復させた(p<0.001)。
【0142】
実施例22.ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物および化合物は、ブレオマイシンにより誘発される炎症促進性サイトカインの変化を覚醒させた。
【0143】
血清中の炎症性サイトカインTNF-α、IL-1β、IL-6およびTGF-βレベルの評価はELISAにより行った。BLM処置した腎損傷マウスは、対照群と比較して、血清中のNO、TNF-α、IL-1βおよびIL-6レベルが有意に増加した(それぞれ
図35A~34E)。1.0g/kgの用量のベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物(BHおよびDH)による処置により、肺組織の壊死および炎症浸潤細胞を有意に改善し、BLM挑戦後のTNF-α、IL-1β、IL-6およびTGF-βの産生を改善する(p<0.001)。
【0144】
実施例23 肺MPO活性に対するベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物の作用
【0145】
図36に示すように、BLMチャレンジに応答して、対照群と比較してMPOレベルの顕著な向上が見られた(p<0.01)。これに対し、ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物、AH、BH、DHおよびDexの両方を投与すると、BLM群と比較してMPO活性が明らかに抑制され(p<0.001)、ベニクスノキタケ(A. camphorata)抽出物および化合物群よりも強い作用を発揮した(p<0.05)(
図36)。
【国際調査報告】