IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティの特許一覧

特表2023-526666高密度ポリエチレンの効率的および選択的な価値ある炭化水素への変換
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】高密度ポリエチレンの効率的および選択的な価値ある炭化水素への変換
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/44 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
B01J29/44 M ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571367
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021033478
(87)【国際公開番号】W WO2021236971
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,439
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】カオ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ペンフェイ シィエ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA12
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC50A
4G169BC54A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC64A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169BC75A
4G169CB02
4G169CB35
4G169CB38
4G169CB62
4G169CB66
4G169CC40
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC27
4G169EC30
4G169ED05
4G169ED06
4G169ED08
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC08
4G169ZA06A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA14A
4G169ZA15A
4G169ZC04
4G169ZD01
4G169ZD06
4G169ZE09
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
高密度ポリエチレンなどのプラスチックをアップサイクルして、価値あるより低分子量の炭化水素生成物を得るための、ゼオライト、例えばZSM-5に固定された安定な単原子イリジウム(Ir)を含む高活性かつ選択的な固体触媒を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウムとHZSM-5ゼオライトとを含む触媒であって、前記HZSM-5ゼオライトに閉じ込められた1つまたは複数の単原子イリジウム部位を含む、触媒。
【請求項2】
約0.05wt%イリジウム~約0.25wt%イリジウムのイリジウム担持量を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
0.05wt%および0.25wt%からなる群から選択されるイリジウム担持量を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
イリジウムクラスタまたはイリジウムアンサンブルを実質的に含まない、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
イリジウム-イリジウム金属結合を実質的に含まない、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記イリジウムが、前記HZSM-5ゼオライトを構成する格子中の1つまたは複数の酸素原子と結合している、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
イリジウムに対する酸素原子の平均配位数が約4.21±0.47である、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記HZSM-5ゼオライトは約11.5のSi/Al比を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
プラスチックを1つまたは複数のより低分子量の炭化水素に変換するプロセスであって、
(a)金属交換されたゼオライト触媒を提供することと;
(b)前記プラスチックおよび触媒を、固定床流通反応器内で水素/窒素ガスの流れの中で接触させることであって、前記プラスチックおよび触媒は、(i)混合構成;または(ii)層ごとの構成のうちの一方で充填されている、ことと;
(c)前記1つまたは複数のより低分子量の炭化水素を回収することとを含む、プロセス。
【請求項10】
前記プラスチックが熱可塑性物質を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記熱可塑性物質が、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記金属交換されたゼオライトが遷移金属を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
前記遷移金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pt、Pd、Ir、Au、Ag、Ru、Rh、Re、Os、Mo、およびWからなる群から選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ゼオライトがクリノプチロライト、チャバザイト、フィリップサイト、モルデナイト、アナルサイム、ヒューランダイト、ナトロライト、およびスティルバイトからなる群から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ゼオライトが、ZSM-5、SSZ-13、およびモルデナイトからなる群から選択される、請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
前記混合構成が、前記プラスチックおよび触媒と混合された石英砂をさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項17】
前記層ごとの構成がプラスチックの層と触媒の層とを含み、前記プラスチックの層と触媒の層が石英砂の層で分離されている、請求項9に記載のプロセス。
【請求項18】
前記層ごとの構成が、別々の前記プラスチックの熱分解と前記プラスチックの触媒的水素化分解とを含むタンデム反応をもたらす、請求項9に記載のプロセス。
【請求項19】
前記プロセスが約250℃~約450℃の温度で実施される、請求項9に記載の工程。
【請求項20】
前記温度が約350℃~約400℃である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項21】
約0.5時間~約3時間の期間で実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項22】
大気圧で実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項23】
前記プラスチックおよび触媒が混合構成で充填され、前記1つまたは複数の炭化水素が1つまたは複数のC-C炭化水素を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項24】
前記1つまたは複数のC-C炭化水素が、約45%~約55%のC炭化水素を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記HDPEおよび触媒が層ごとの構成で充填され、前記1つまたは複数の炭化水素が1つまたは複数のC-C10炭化水素を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項26】
前記1つまたは複数のC-C10炭化水素が、約55%~約65%のC炭化水素を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記C炭化水素が約96%のキシレンとその構造異性体とを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記水素/窒素ガスが約5%の水素/95%の窒素の混合物を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項29】
前記1つまたは複数のより低分子量の炭化水素をガス/液体分離ユニットにおいて回収することをさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項30】
前記ガス/液体分離ユニットが、熱交換器ネットワークをさらに含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
ガス/液体分離ユニットから放出される熱を前記熱交換器ネットワークで捕らえ、入口の水素ガス流を加熱するために使用する、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
残留する水素/窒素ガスを捕らえ、それをプロセスに戻すことをさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラスチックは、現代生活のあらゆる面で必要不可欠な役割を果たす。しかし、大量のプラスチックが広く使用されるようになったことで、深刻な環境問題が発生し、プラスチック廃棄物の寿命末期の適切な管理が求められている。毎年、米国ではプラスチックが自治体固形廃棄物(MSW)のうち約3,000万トンを占めており、2017年にはそのうちのわずか8.4%のみがリサイクルされた(Rahimi and Garcia, 2017; EPA, Advancing Sustainable Materials Management: 2017 Fact Sheet, 2019)。これらのデータは、プラスチック廃棄物のリサイクルには大きな改善の余地があることを示しており、プラスチックリサイクル産業が環境と世界経済に大きく貢献する可能性を浮き彫りにしている。
【0002】
多大な努力にもかかわらず、2017年には75.8%のリサイクル可能なプラスチックがなお埋立地行きとなっている。埋め立てられると、物質は土と混ざり合い、分解に数百年かかる。Aguado et al., 2008; Kunwar et al., 2016。廃プラスチックの処理で最も一般的な代替アプローチは、エネルギー回収を伴う焼却である。Serrano et al., 2012。しかし、この選択肢は、ダイオキシンおよびフランなどの有害化合物が排出されるリスクがあるため、社会的にしばしば否定される。Zhang et al, 2015。現在では、理想的には価値ある液体燃料または化学原料への変換を伴う、エネルギー回収付きの化学的リサイクルが、より持続可能で適切なルートと考えられている。しかし、利用可能なプロセス(典型には熱分解)は、エネルギー効率が低く(>500℃)、生成物の制御ができないという問題を抱えている。Kunwar et al., 2016; Jia et al., 2016。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの態様において、本開示の主題は、イリジウムとHZSM-5ゼオライトとを含む触媒を提供し、該触媒は、HZSM-5ゼオライトに閉じ込められた1つまたは複数の単原子イリジウム部位を含む。特定の態様において、前記触媒は、約0.05wt%イリジウム~約0.25wt%イリジウムのイリジウム担持量を含む。
【0004】
特定の態様において、触媒は、イリジウムクラスタもイリジウムアンサンブルも実質的に含まない。より特定の態様では、触媒は、イリジウム-イリジウム金属結合を実質的に含まない。特定の態様では、イリジウムは、HZSM-5ゼオライトを構成する格子中の1つまたは複数の酸素原子と結合する。より特定の態様では、触媒のイリジウムに対する酸素原子の平均配位数は、約4.21±0.47である。特定の態様において、HZSM-5ゼオライトは、約11.5のSi/Al比を含む。
【0005】
他の態様において、本開示の主題は、プラスチックを1つまたは複数のより低分子量の炭化水素に変換するプロセスを提供し、該プロセスは、(a)金属交換されたゼオライト触媒を提供することと;(b)前記プラスチックおよび触媒を、固定床流通反応器内で水素/窒素ガスの流れの中で接触させることであって、前記プラスチックおよび触媒は、(i)混合構成;または(ii)層ごとの構成のうちの一方で充填されている、ことと;(c)1つまたは複数のより低分子量の炭化水素を回収することとを含む。
【0006】
特定の態様において、プラスチックは熱可塑性物質を含む。特定の態様において、該熱可塑性物質は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0007】
特定の態様において、金属交換されたゼオライトは遷移金属を含む。特定の態様において、遷移金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pt、Pd、Ir、Au、Ag、Ru、Rh、Re、Os、Mo、およびWからなる群から選択される。
【0008】
特定の態様において、ゼオライトは、クリノプチロライト、チャバザイト、フィリップサイト、モルデナイト、アナルサイム、ヒューランダイト、ナトロライト、およびスティルバイトからなる群より選択される。特定の態様において、ゼオライトは、ZSM-5、SSZ-13、およびモルデナイトからなる群より選択される。
【0009】
特定の態様では、プラスチックおよび触媒は混合構成で充填され、1つまたは複数の炭化水素は1つまたは複数のC-C炭化水素を含む。特定の態様において、1つまたは複数のC-C炭化水素は、約45%~約55%のC炭化水素を含む。
【0010】
他の態様では、プラスチックおよび触媒は層ごとの構成で充填され、1つまたは複数の炭化水素は1つまたは複数のC-C10炭化水素を含む。特定の態様において、1つまたは複数のC-C10炭化水素は、約55%~約65%のC炭化水素を含む。特定の態様において、C炭化水素は、約96%のキシレンとその構造異性体とを含む。
【0011】
本開示の主題によって全体的または部分的に対処される、本開示の主題の特定の態様について述べてきたが、他の態様は、本明細書において以下に最もよく説明するように添付の実施例および図面と関連して捉えると、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【0012】
特許または出願ファイルには少なくとも1つのカラー図面が含まれている。このカラー図面付きの特許または特許出願公開の写しは、請求と必要な手数料の支払によって、官庁から提供されよう。
【0013】
本開示の主題を一般用語でこのように説明してきたが、次に、添付の図を参照することとする。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】Ir@ZSM-5上での高密度ポリエチレン(HDPE)の炭化水素生成物への触媒分解の代表的スキームであり、Cの選択性が55%超であることを示す図である。
図2図2の(a)は、合成されたままのIr@ZSM-5の特徴を示す図である。異なるIr担持量のIr@ZSM-5における、CO化学吸着による拡散反射赤外フーリエ変換分光測定(DRIFTS)を示す。図2の(b)は、合成されたままのIr@ZSM-5の特徴を示す図である。0.05wt.%のIr@ZSM-5触媒の代表的な高解像度HAADF-STEM画像である。挿入図:1と記された領域に対するスキャンの強度プロファイル。図2の(c)は、合成されたままのIr@ZSM-5の特徴を示す図である。0.05%Ir@ZSM-5のIr L端EXAFSスペクトルのフーリエ変換(FT)k2-重み付けχ(k)-関数を示す。図2の(d)は、合成されたままのIr@ZSM-5の特徴を示す図である。0.05%Ir@ZSM-5のIr L端XANESスペクトルのフーリエ変換(FT)k2-重み付けχ(k)-関数を示す。Ir箔およびIrOを参照として使用した。
図3図3の(a)は、HDPEと触媒を混合する充填構成で、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。Ir担持量の関数として、350℃における全ての生成物の選択性およびHDPEの変換性を示す。図3の(b)は、HDPEと触媒を混合する充填構成で、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。Ir担持量の関数として、350℃での反応後の堆積コークスおよびプラスチック残渣の収率を示す。図3の(c)は、HDPEと触媒を混合する充填構成で、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。異なる温度で測定された0.25%Ir@ZSM-5上でのHDPEの水素化分解についてもとめられた時間依存性変換プロファイルを示す。図3の(d)は、HDPEと触媒を混合する充填構成で、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。異なる温度で測定した0.25%Ir@ZSM-5上でのHDPEの水素化分解に関して測定した生成物分布を示す。
図4図4の(a)は、HDPEおよび触媒を層ごとに充填して、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。2つの異なる構成のHDPEおよび触媒の充填によって測定した0.25%Ir@ZSM-5の触媒性能の比較を示す。図4の(b)は、HDPEおよび触媒を層ごとに充填し、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。400℃で測定した全ての触媒上でのHDPEの水素化分解についてもとめられた時間依存性変換プロファイルを示す。図4の(c)は、HDPEおよび触媒を層ごとに充填し、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。Ir担持量の関数としての400℃における全ての生成物の選択性およびHDPE変換性を示す。図4の(d)は、HDPEおよび触媒を層ごとに充填し、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。400℃におけるHDPEの触媒的水素化分解の5サイクルの実行による0.05%Ir@ZSM-5の耐久性を示す。
図5図5の(a)は、機構学的および動態学的研究を示す図である。Ir@ZSM-5上でのHDPEの触媒的水素化分解について提案された機構を示す。図5の(b)は、機構学的および動態学的研究を示す図である。様々なIr担持量を有するHZSM-5およびIr@ZSM-5のNH-TPDプロファイルを示す。図5の(c)は、機構学的および動態学的研究を示す図である。様々なIr担持量を有するHZSM-5およびIr@ZSM-5のH-TPRプロファイルを示す。図5の(d)は、機構学的および動態学的研究を示す図である。Ir@ZSM-5のHDPEの触媒的水素化分解を示した図である。45分で測定したHDPE変換性と酸密度(NH-TPDからの脱離NH量の定量化から導出される)とIr担持量(H-TPRからのH消費量の定量化から求められる)の相関性を示す。図5の(e)は、機構学的および動態学的研究を示す図である。400℃における0.05%Ir@ZSM-5および0.05%Ir/アルミノシリケートについてのすべての生成物の選択性およびHDPEの変換性を示す。
図6図6の(a)は、技術経済性評価を示す図である。400℃の流動化反応器で実施される0.05%Ir@ZSM-5によって触媒されるHDPE水素化分解の本開示システムの模式図である。図6の(b)は、技術経済性評価を示す図である。熱負荷およびエネルギー効率のHDPE供給容量に対する依存性を示す。図6の(c)は、技術経済性評価を示す図である。HDPE容量が一年あたり8500メートルトンである場合の、各年の原料、総効用、総運転のコストを示す。初期に投資した資本コストも存在する。図6の(d)は、技術経済性評価を示す図である。2つのH供給源のうち、メタンの水蒸気改質によって生成されたものを用いた、0.05%Ir@ZSM-5によって触媒されたHDPE水素化分解について推定される正味現在価値を示す。図6の(e)は、技術経済性評価を示す図である。2つのH供給源のうち、水の電気分解によって生成されたものを用いた、0.05%Ir@ZSM-5によって触媒されたHDPE水素化分解について推定される正味現在価値を示す。図6の(f)は、技術経済性評価を示す図である。各年のエネルギー効率および生成物売上高を文献と比較している。
図7図7の(a)は、本開示の0.05Ir@ZSM-5触媒の高分解能HAADF-STEM画像である。図7の(b)は、本開示の0.05Ir@ZSM-5触媒の高分解能HAADF-STEM画像である。
図8図8の(a)は、HZSM-5のSEM画像である。図8の(b)は、0.05Ir@ZSM-5のSEM画像である。
図9】Ir担持量が0.05%、0.25%、0.50%、および1.00%のHZSM-5とIr@ZSM-5のXRDパターンを示す図である。
図10】Hの存在下でのHDPEの触媒的水素化分解についての本開示のプロセスの概略図であり、様々な反応条件下でのプロセスの性能特徴を解明するための分析測定も含む。
図11図11の(a)は、HDPEおよび触媒の2つの異なる充填構成のうち混合構成によって測定された保持時間1時間のGC結果の代表的なプロファイルを示す図である。図11の(b)は、HDPEおよび触媒の2つの異なる充填構成のうち層ごとの構成によって測定された保持時間1時間のGC結果の代表的なプロファイルを示す図である。
図12】混合構成で測定した400℃でのHDPEの触媒的水素化分解の5サイクルの実行による0.25%Ir@ZSM-5の耐久性を示す図である。
図13】5%Hの存在下での2つの対照実験について400℃で測定した生成物の選択性およびHDPE変換性を示す図であり:HDPEの触媒的水素化分解について、(3)0.05%Ir@ZSM-5の触媒性能と比較した、(1)HDPE、(2)HDPEおよび酸洗浄した砂の水素化分解を示す。
図14図14の(a)は、HDPEと触媒を層ごとに充填して、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。0.05%Ir@ZSM-5の2つの担持量における400℃での全ての生成物の選択性とHDPEの変換性を示す。図14の(b)は、HDPEと触媒を層ごとに充填して、36,000mLg-1-1で評価したHDPEの触媒的水素化分解を示す図である。400℃における0.05%Ir@ZSM-5の2つの異なる担持量について測定したHDPEの水素化分解について決定した時間依存性変換プロファイルを示す。
図15】混合構成で測定した400℃でのHDPEの触媒的水素化分解後の堆積コークスの収率を、Ir担持量の関数として示す図である。
図16】層ごとの構成で測定した400℃でのHDPEの触媒的水素化分解を5サイクル実行することにより、HZSM-5の耐久性を実証する図である。
図17】残部がNの5%Hの存在下でのn-ペンタンおよびn-ペンタン+ベンゼンの水素化分解について、0.05%Ir@ZSM-5上でのC炭化水素の選択性とn-ペンタン変換性を示す図である。
図18図18の(a)は、HZSM-5およびアルミノシリケートを対照試料とする400℃における全ての炭化水素生成物の選択性およびHDPE変換性を示す図である。図18の(b)は、HZSM-5とアルミノシリケートのNH-TPDプロファイルを示す図であり、脱離NHの量も定量化した。
図19】0.05%Ir@ZSM-5と0.05%Ir/アルミノシリケートのNH-TPDプロファイルを示す図であり、脱離NHの量も定量化した。
図20】Aspen HYSYS収率シフト反応器でシミュレーションした0.05%Ir@ZSM-5上でのHDPE水素化分解の生成物分布を示す図である。
図21】0.05%Ir@ZSM-5によって触媒される、年間8,500メートルトンの供給速度を有するHDPE水素化分解の質量およびエネルギー収支のまとめを示す図である。
図22図22の(a)は、原料、総効用、および総運転の一年あたりのコストの比較を示す図である。初期に投資された資本コストは、HDPEの供給能力が年間7000メートルトンの場合にも存在する。図22の(b)は、原料、総効用、および総運転の一年あたりのコストの比較を示す図である。初期に投資された資本コストは、HDPEの供給能力が年間10000メートルトンの場合にも存在する。図22の(c)は、原料、総効用、および総運転の一年あたりのコストの比較を示す図である。初期に投資された資本コストは、HDPEの供給能力が年間11500メートルトンの場合にも存在する。図22の(d)は、原料、総効用、および総運転の一年あたりのコストの比較を示す図である。初期に投資された資本コストは、HDPEの供給能力が年間13000メートルトンの場合にも存在する。
図23図23の(a)は、メタンの水蒸気改質に由来するHを用いた、HDPE供給能力および製造時間に依存する投資家収益率(IRR)を示す図である。図23の(b)は、水の電気分解に由来するHを用いた、HDPE供給能力および製造時間に依存する投資家収益率(IRR)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の主題を、本発明のすべてではないが、いくつかの実施形態を示す添付図を参照しながら、より完全に説明する。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用される法的要件を満たすように提供されるものである。実際、本明細書に記載された本開示の主題の多くの変更および他の実施形態が、前述の説明および関連する図に示された教示の利益を有する本開示の主題が関連する分野における知識を有する者に思い浮かぶであろう。したがって、本開示の主題は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態も添付の請求項の範囲内に含まれると意図されることが理解されるべきである。
【0016】
I.高密度ポリエチレンの効率的および選択的な価値ある炭化水素への変換
本開示の主題は、高密度ポリエチレンなどのプラスチックをアップサイクルして価値あるより低分子量の炭化水素生成物を得るための、ゼオライト、例えば、ZSM-5に固定された安定な単原子イリジウム(Ir)を含む高活性で選択的な固体触媒を提供し、より低分子量の炭化水素生成物は、いくつかの実施形態では、C炭化水素を主体とする。
【0017】
より詳細には、本開示の主題は、イリジウムとHZSM-5ゼオライトとを含む触媒を提供し、該触媒は、HZSM-5ゼオライトに閉じ込められた1つまたは複数の単原子イリジウム部位を含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、「ゼオライト」は、アルミナ(AlO)とシリカ(SiO)の相互に結合した四面体により作られる水和アルミノケイ酸塩鉱物である。ゼオライトは、[SiO4-と[AlO5-の配位多面体が角で結合した骨格から生じる結晶性アルミノケイ酸塩の三次元構造を持っていることが特徴である。ゼオライトは、非常に規則正しい配列で小さな分子とほぼ同じ大きさのポア(キャビティまたはチャネルと呼ばれることもある)を持つ、多くの異なる結晶構造を形成することができる。ゼオライトは一般に、さまざまな化学反応の触媒として有用である。
【0019】
合成ゼオライトは、石油触媒など特定の目的のために設計されている。そのような例の1つが、モルデナイト骨格反転(MFI)型ゼオライトであるZSM-5である。さらに、ZSM-5は、化学式がNaAlSi96-n192-16HO(0<n<27)である、ゼオライトのペンタシル族に属するアルミノケイ酸塩ゼオライトである。触媒として使用するのに適した代表的なゼオライトとしては、限定するわけではないが、チャバザイト、エリオナイト、フォージャ部位、フェリエライト、モルデナイト、オフレタイト、TEA-モルデナイト、ゼオライトA、ゼオライトβ、ゼオライトボロンβ、ゼオライトL、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトZK-5、Breck-6,HZSM-5、ITQ-1、ITQ-21、MCM-22、MCM-36、MCM-39、MCM-41、MCM-48、PSH-3、SUZ-4、EU-1、SAPO-5、SAPO-11、SAPO-34、(S)AIPO-31、SSZ-23、SSZ-32、TUD-1、VPI-5、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-8、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-34、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-50、およびZSM-57が挙げられる。本開示の主題の特定の実施形態では、ゼオライトはZSM-5である。
【0020】
ZSM-5触媒は、一般に、1つまたは複数の酸性部位を含む。そのような触媒は、1つまたは複数の酸性部位を含み得る。一般に、ZSM-5は、調製されたままのゼオライト中に存在するアルカリ金属を置換するために所望のカチオンでイオン交換することができ、したがって、より多くの酸性部位を得ることができる。好ましいプロトン源は、塩酸、硫酸および硝酸などの酸ではなく、塩化アンモニウム/硝酸塩である。イオン交換は、適切には、ゼオライトをプロトン源の水溶液と従来通り接触させることによって達成される。
【0021】
ゼオライト触媒はまた、基本的な分解反応に加えて、脱水素/水素化または水素化分解などの二次機能を促進するために、第VIII族金属を担持またはドープすることができる。代表的な第VIII族金属には、白金、パラジウム、銀、金、ロジウム、ルテニウム、およびイリジウムが含まれる。本開示の主題の特定の実施形態では、貴金属はイリジウムである。
【0022】
第VIII族金属は、インシピエントウェットネス含浸;ウェット含浸;物理的、化学的、蒸気および原子蒸着手段を含む蒸着法;イオン交換ならびに当該技術分野で周知の他の合成手段を含む当該技術分野で既知の方法によってゼオライトに添加することができる。第VIII族金属は、硝酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、硫酸塩、窒化物、および硫化物などの対アニオンとの金属塩などの容易に入手できる化合物の形態であってよい。
【0023】
したがって、ある実施形態では、触媒は、0.05、0.1、0.15、0.20、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1wt%のイリジウムを含む、約0.05wt%イリジウム~約1.0wt%イリジウムのイリジウム担持量を含む。特定の実施形態では、触媒は、約0.05、0.1、0.15、0.20、および0.25wt%のイリジウムを含む、約0.05wt%~約0.25wt%のイリジウム担持量を含む。特定の実施形態では、触媒は、0.05wt%および0.25wt%からなる群から選択されるイリジウム担持量を含む。
【0024】
ある実施形態では、触媒は、イリジウムクラスタまたはイリジウムアンサンブルを実質的に含まない。特定の実施形態において、触媒は、イリジウム-イリジウム金属結合を実質的に有さない。特定の実施形態では、イリジウムは、HZSM-5ゼオライトを構成する格子中の1つまたは複数の酸素原子と結合する。より特定の実施形態では、触媒のイリジウムに対する酸素原子の平均配位数は、約4.21±0.47である。特定の実施形態において、HZSM-5ゼオライトは、約11.5のSi/Al比を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示の触媒は、水素化分解プロセスにおいて使用することができる。本明細書で使用する場合、用語「水素化分解」は、一般に、触媒分解、例えば、長鎖炭化水素の短鎖への分解、および水素化を組み合わせた2段階プロセスと呼ばれる。重質な原料を水素の存在下で分解して、ガソリン(ガソリン)、ジェット燃料、ディーゼル燃料、ナフサ、および液化石油ガス(LPG)など、より望ましい製品を生産する。このプロセスは、通常、高圧、高温、触媒、および水素を利用する。
【0026】
したがって、他の実施形態において、本開示の主題は、プラスチックを1つまたは複数のより低分子量炭化水素に変換するプロセスを提供し、該プロセスは:(a)金属交換されたゼオライト触媒を提供することと;(b)プラスチックおよび触媒を、固定床流通反応器内で水素/窒素ガスの流れの中で接触させることであって、プラスチックおよび触媒は、(i)混合構成;または(ii)層ごとの構成のうちの一方で充填されている、ことと;(c)1つまたは複数のより低分子量の炭化水素を回収することとを含んでいる。
【0027】
特定の態様において、プラスチックは熱可塑性物質を含む。特定の態様において、熱可塑性物質は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
本書で使用する場合、用語「高密度ポリエチレン(HDPE)」は、モノマーエチレンから製造される熱可塑性ポリマーである。HDPEは高い強度対密度比を持ち、プラスチックボトル、耐腐食性配管、ジオメンブレン、およびプラスチック製材の製造に使用される。HDPEは通常、約930kg/m~970kg/mの範囲の密度を有する。
【0029】
特定の実施形態では、プラスチックは反応器に導入される前に細断され得るか、さもなければ粒子状にされ得る。シュレッダー、チョッパー、粉砕装置またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない様々なサイズ縮小プロセスが当技術分野で知られており、これらは順次、並列、またはタンデム方式で採用することが可能である。いくつかの実施形態において、プラスチックは、最初に、粗い細断、切断、または粉砕操作に供され得る。粗く細断または切断されたプラスチックをその後粉砕、微粉砕、またはさらに破砕して、水素化分解プロセスに必要な微粒子を得ることができる。いくつかの実施形態では、プラスチックはペレットに加工される。
【0030】
所望により、浮遊、洗浄、乾燥、または分離など、追加の前処理ステップをリサイクルプロセスに組み込むことができる。金属、ガラス、木材、紙、および布などの非重合体材料が、この分離プロセスより除去され得る。分離プロセスは、従来の手段、例えば、磁気分離装置、または、振動台もしくは浮揚タンクなどの密度に応じて分離する分級装置等を用いて達成することができる。分離プロセスは、サイズダウンステップの前または後に行うことができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、混合構成は、プラスチックおよび触媒と混合された珪砂をさらに含む。他の実施形態では、層ごとの構成はプラスチックの層と触媒の層とを含み、プラスチックの層と触媒の層は珪砂の層によって分離されている。特定の実施形態において、層ごとの構成は、別々のプラスチックの熱分解とプラスチックの触媒的水素化分解とを含むタンデム反応をもたらす。
【0032】
特定の実施形態において、金属交換されたゼオライトは、遷移金属を含んでいる。特定の態様において、遷移金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pt、Pd、Ir、Au、Ag、Ru、Rh、Re、Os、Mo、およびWからなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、本明細書に記載されている通りである。特定の実施形態では、ゼオライトは、クリノプチロライト、チャバザイト、フィリップサイト、モルデナイト、アナルサイム、ヒューランダイト、ナトロライト、およびスティルバイトからなる群から選択される。特定の実施形態では、ゼオライトは、ZSM-5、SSZ-13、およびモルデナイトからなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、プロセスは、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、および450℃を含む約250℃~約450℃の温度で実施される。特定の実施形態では、温度は約350℃~約400℃であり、約350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、および400℃を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、プロセスは、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、および3時間を含む約0.5時間~約3時間の期間で実行される。特定の実施形態において、プロセスは、大気圧、例えば、1気圧または760mmHgで実行される。
【0036】
いくつかの実施形態では、プラスチックおよび触媒は混合構成で充填され、1つまたは複数の炭化水素は1つまたは複数のC-C炭化水素を含む。特定の実施形態では、1つまたは複数のC-C炭化水素は、約45%~約55%のC炭化水素を含む。
【0037】
他の実施形態では、プラスチックおよび触媒は層ごとの構成で充填され、1つまたは複数の炭化水素は、1つまたは複数のC-C10炭化水素を含む。特定の実施形態において、1つまたは複数のC-C10炭化水素は、約55%~約65%のC炭化水素を含む。さらに特定の実施形態では、C炭化水素は、約96%のキシレンとその構造異性体、例えば、オルト、メタ、およびパラキシレンを含む。
【0038】
本明細書で使用する場合、炭化水素という用語は、水素と炭素を含む任意の化学基を指す。炭化水素は、置換されていても非置換であってもよい。当業者に知られているように、任意の置換を行う際に、全ての価数が満足されなければならない。炭化水素は、不飽和、飽和、分枝、非分枝、脂肪族、芳香族、環状、多環式、または複素環式であってもよい。
【0039】
例示的な脂肪族炭化水素には、C、C、C、C、C、C、C、C、C、およびC10の脂肪族炭化水素を含むC-C10脂肪族炭化水素が含まれ、これには、エタン、エテン(エチレン)、およびエチレン(アセチレン)含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;プロパン、プロペン、プロピレン、およびシクロプロパンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;ブタン、イソブタン、ブテン、ブチン、1,2-ブタジエン、シクロブテン、シクロブテン、およびシクロブテンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ペンテン、およびシクロペンテンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;ヘプタン、シクロヘプタン、およびシクロヘプテンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;オクタン、シクロオクタン、およびシクロオクテンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;ノナンを含む(ただし、これらに限定されない)C炭化水素;ならびにデカンを含む(ただし、これに限定されない)C10炭化水素と、これらの同族体および異性体が含まれる。
【0040】
脂肪族炭化水素は、例えば、1つまたは複数の飽和炭化水素、例えば、限定するわけではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、ドデシル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルならびにこれらの同族体および異性体を含むアルキル基で置換されていてもよい。
【0041】
「分岐」とは、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖アルカン鎖に結合しているアルカンを指す。特定の実施形態において、「アルカン」は、特に、C2-10直鎖アルカンを指す。他の実施形態では、「アルカン」は、特に、C2-10分枝鎖アルカンを指す。
【0042】
「シクロアルカン」または「シクロアルケン」は、約3~約10個の炭素原子、例えば、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子の非芳香族単環式または多環式環系を指す。シクロアルカンは、任意に部分的に不飽和であり得る。シクロアルカンまたはシクロアルケン基はまた、本明細書に定義されるようなアルキル基置換基で任意に置換され得る。環状アルキル鎖に沿って1つまたは複数の酸素、硫黄または置換もしくは非置換の窒素原子を任意に挿入することができ、ここで窒素置換基は水素、非置換アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、したがって複素環基を提供することができる。代表的な単環式シクロアルカンは、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、およびシクロデカンを環状にする。
【0043】
不飽和炭化水素は、1つまたは複数の二重結合または三重結合を有する。より詳細には、本明細書で使用する場合の用語「アルケン」は、単一の水素分子の除去によって少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するC2-10包含直鎖または分岐炭化水素から得られる一価の基を指す。アルケンの例としては、限定するわけではないが、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプタン、オクテン、ノネン、およびデセンの高等同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用する場合の用語「シクロアルケン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む環状炭化水素を指す。シクロアルケンの例としては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロノネンおよびシクロデセンが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用する場合の用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む設計された数の炭素原子の直鎖または分岐C2-10炭化水素に由来する一価基を指す。「アルキン」の例としては、エチン、プロピン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノイン、およびデシン等が挙げられる。
【0046】
用語「芳香族炭化水素」には、ベンゼン(C)、トルエン(C)、エチルベンゼン(C)、o-、m-、およびp-キシレン(C)、メシチレン(C)、ならびにデュレン(C10)等が含まれる。芳香族炭化水素は、例えば、本明細書で定義される1つまたは複数のアルキル基で置換され得る。
【0047】
さらに、一般に以下の式:
【化1】

で表される構造は、本明細書で使用される場合、置換基R基を含む、例えば、限定するわけではないが、3炭素、4炭素、5炭素、6炭素、および7炭素などの脂肪族および/または芳香族環状化合物(飽和環状構造、部分飽和環状構造および不飽和環状構造を含む)の環状構造を指し、ここでR基は存在してもしなくてもよく、存在する場合、1つまたは複数のR基はそれぞれ環状構造の1つまたは複数の利用可能な炭素原子において置換されることが可能である。R基の存在または不在およびR基の数は、変数「n」の値によって決定され、これは一般に0から置換に利用できる環上の炭素原子の数までの範囲の値を有する整数である。各R基は、2つ以上の場合、別のR基ではなく、環状構造の利用可能な炭素において置換される。例えば、nが0~2である上記の構造は、以下の:
【化2】
などを含む化合物基を含むであろうが、これらに限定されるものではない。
【0048】
環式環状構造中の結合を表す破線は、その結合が環内に存在してもしなくてもよいことを示す。すなわち、環式環状構造中の結合を表す破線は、その環状構造が飽和環状構造、部分飽和環状構造、および不飽和環状構造からなる群から選択されることを示す。
【0049】
特定の実施形態では、水素/窒素ガスは、約5%の水素/95%の窒素の混合物を含む。
【0050】
他の実施形態では、プロセスは、ガス/液体分離ユニットにおいて1つまたは複数のより低分子量の炭化水素を回収することをさらに含む。特定の実施形態では、ガス/液体分離ユニットは、熱交換器ネットワークをさらに含む。特定の実施形態において、ガス/液体分離ユニットから放出される熱は、熱交換器ネットワークによって捕らえられ、入口の水素ガス流を加熱するために使用される。さらに他の実施形態では、プロセスは、残留水素/窒素ガスを捕らえ、それをプロセスの入口に戻すことをさらに含む。
【0051】
II.定義
本明細書では特定の用語が用いられているが、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的としていない。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、この現在説明されている主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0052】
長年の特許法の慣例に従い、用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「前記(the)」は、特許請求の範囲を含む本願で使用する場合、「1つまたは複数の」を指す。したがって、例えば、「ある主題」への言及は、文脈が明らかに反対のこと(例えば、複数の主題)などを示さない限り、複数の主題を含む。
【0053】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含み(comprising)」は、文脈上他のことが必要とされる場合を除き、非排他的な意味で使用されている。同様に、用語「含む(include)」およびその文法的変形は、リスト内の項目の記載が、リストされた項目を置換またはそれに追加され得る他の同様の項目を排除するものではないように、非限定的であることが意図されている。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲のために、他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、サイズ、寸法、比率、形、配合、パラメータ、パーセント、数量、特徴および他の数値を表すすべての数値は、たとえ用語「約」がその値、量または範囲とともに明示的に現れないとしても、すべての場合において用語「約」によって修正されていると理解されたい。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、正確ではなく、正確である必要もないが、許容範囲、変換係数、丸めおよび測定誤差等と、当業者に知られている他の要因を反映し、本開示の主題によって得ようとする所望の特性に応じて所望により近似的であり得、および/または、大きくても小さくても良い。例えば、値に言及する際の用語「約」は、開示された方法を実行するためまたは開示された組成物を採用するために適切であるような、指定量からの、ある実施形態では±100%、ある実施形態では±50%、ある実施形態では±20%、ある実施形態では±10%、ある実施形態では±5%、ある実施形態では±1%、ある実施形態では±0.5%、ある実施形態では±0.1%の変動を包含することを意図し得る。
【0055】
さらに、1つもしくは複数の数または数値範囲に関連して使用される場合、用語「約」は、すべての斯かる数を指し、範囲内のすべての数を含むと理解されるべきであり、記載された数値の上下に境界を拡張することによってその範囲を変更する。端点による数値範囲の記載には、その範囲内に包含されるすべての数値、例えば、端数を含む全整数(例えば、1~5の記載は、1、2、3、4、および5とその端数、例えば、1.5、2.25、3.75、および4.1などを含む)と、その範囲内の任意の範囲が含まれる。
【実施例
【0056】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するための指針を当業者に提供するために含まれている。本開示および当業者の一般的なレベルに照らして、当業者は、以下の実施例が例示的であることのみを意図しており、多数の変更、修正、および改変が、本開示の主題の範囲から逸脱することなく採用できることを理解し得る。以下に続く合成的な説明および具体例は、例示を目的とするのみであり、他の方法によって本開示の化合物を製造するいずれの方法においても限定するものとして解釈されるべきではない。
【0057】
(実施例1)
熱触媒的水素化分解による高密度ポリエチレンのアップサイクル
1.1概要
大量のプラスチックが広く使用されることにより、深刻な環境問題が発生し、プラスチック廃棄物の寿命末期の適切な管理が求められている。本開示の主題は、HZSM-5に閉じ込められた単一のIr部位を用いた水素化分解によって、高エネルギーで高密度のポリエチレン(HDPE)の、キシレンを主体とする高付加価値生成物への触媒変換を提供する。水素化分解プロセスは、HDPEおよび触媒を充填する2つの構成:よく混合された構成および層状(本明細書では「層ごとの」ともいう)の構成を介して実施される。
【0058】
約52%がC炭化水素であるC-C炭化水素がよく混合された構成で得られる一方、約58%がC炭化水素である(キシレンが約96%を占める)C-C10炭化水素はタンデム反応を利用することによって層ごとの構成で得られる。動態研究により、HDPEの水素化分解には、酸部位と単一Ir部位の両方が活性部位であることが明らかになった。酸部位は速度制限ステップであるC-C切断を担うが、これは単一Ir部位で起こる脱水素/水素化により加速される可能性がある。Ir@ZSM-5とナノ粒子化した対応物の比較研究により、ZSM-5チャンネルの内在的な形状選択的特徴がC炭化水素(キシレン)に対する高い選択性を説明することが実証された。また、Ir@ZSM-5の良好な耐久性は、実用的な実装への大きな可能性を示唆する。技術経済性評価では、本開示のHDPE水素化分解システムは、短い投資回収期間、高IRRという点で高い経済性を示し、クリーンなエネルギー源による持続可能性を達成できることが明らかになった。
【0059】
1.2背景
ポリエチレン(PE)は、世界で最も量の多いプラスチックである。ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリスチレンからの原料回収が成功しているのとは対照的に、PEは非常に不活性で、特別な処理をしなければ分解が困難である。Kaminsky etal., 2009。現在までに、価値ある生成物の選択性が高いPEの触媒的水素化分解について、いくつかの報告がある。特に、Jia et al.,2016は、PEを液体生成物に分解するためのタンデム触媒クロスアルカンメタセシス法を提案した。余分なアルカンを添加するため、製造コストの増加と、ワックスの品質の低さ(選択性>30%)は不可避であった。Celik et a., 2019は、Pt/SrTiOと完全に変換されたPEを用いることにより潤滑油およびワックスへの水素化分解の成功例を発表した。しかし、このプロセスは、過酷な反応条件(170psiH、4日間)を必要とした。
【0060】
ゼオライト/分子篩は、プラスチックの熱分解において広く使用されている触媒であるが、熱分解プロセス中の幅広い生成物分布とコークス析出という課題を抱えている。Serrano et al., 2012; Achilias et al., 2007; Wong et al., 2016; Zhang et al., 2019。最近、Al-SBA-15を変換された低密度ポリエチレン(LDPE)に適用して、Cを主体とする飽和C~C10生成物が得られたが、反応経路の実行を担う触媒特徴は明確ではなかった。Zhang et al., 2019。
【0061】
本開示の主題は、部分的には、熱触媒水素化分解を使用することによって、プラスチックのエネルギー効率の良いアップサイクルを提供する。高密度ポリエチレン(HDPE)は、イリジウム交換ゼオライト(Ir@ZSM-5)を触媒として使用することにより、CまたはC液体炭化水素に選択的に変換される。Ir@ZSM-5触媒は、HAADF-STEM、X線吸着分光法、およびCOを分子プローブとして用いたDRIFTS分析により特徴評価され、Irアンサンブルの非存在が確認された。次に、様々な担持量(0.05-1.0wt%のIr)のIr@ZSM-5触媒をHDPEの触媒的水素化分解について評価したところ、C、C、C、C、C、C、C、C、およびC10炭化水素を含むC-C10炭化水素が形成され、C炭化水素に対する選択性は55%超であった(図1)。このプロセスはSi/Al比に依存し、ZSM-5ゼオライト格子構造上にIrカチオンの単原子が分散している結果、析出したコークスは非常に少なかった。
【0062】
1.3結果と考察
1.3.1ZSM-5における単一Ir触媒部位の合成と特徴。真空排気、湿式イオン交換、および熱水洗浄を統合した方法により、イリジウム触媒を合成した。Ir@ZSM-5触媒を、4つのIr担持量(0.05%、0.25%、0.5%、1wt%)で合成した。以下の議論ではX Ir@ZSM-5と表記し、XはIr担持量を表す。合成したままの触媒中のIrカチオン濃度を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で測定したところ、0.048、0.23、0.51、および0.78wt%であった。
【0063】
Irの原子分散を広範囲に評価するために、拡散反射赤外フーリエ変換分光法(DRIFTS)によるIr@ZSM-5触媒へのCO吸着解析を行った。この方法は、以前、他の基材中の単一Ir原子の同定に有効であることが実証されている。図2の(a)は、様々なIr担持量(0.05、0.25、0.5、および1.0wt%)のIr@ZSM-5触媒で記録した吸収スペクトルを比較したもので、COを事前に吸着させ、その後ヘリウムでパージしたものである。0.05%と0.25%のIr@ZSM-5触媒では、2049cm-1に1つのピークが観測され(図1の(a))、これはIrδ+上の線形結合CO(COL)に割り当てられ得る。0.5と1.0%のIr@ZSM-5では1933cm-1に追加の幅広いピークが現れ(図2の(a))、これはIr上の架橋結合CO(COB)に帰すると考えることができ、連続した表面を持つPtアンサンブルの典型的な特徴である。COBピークがないことから、Ir1@ZSM-5触媒のIr担持率が比較的低い場合(例えば<0.25%)にはIr部位が孤立していることが確認されたが、高い担持率の場合にはIrクラスタが形成されていることが確認された。
【0064】
図2の(b)は、約0.25wt%のIrを有する合成されたままのIr1@ZSM-5触媒の収差補正高角暗視野走査透過電子顕微鏡(ac-HAADF/STEM)画像を示す。この画像において、および図7にさらに詳細に示されるように、個々のIr部位は、周囲のゼオライト格子よりも高いコントラストを有する明るいドットとして示される。
【0065】
ZSM-5に固定されたIrカチオンの配位環境を特定するために、IrのK端広域X線吸収微細構造(EXAFS)実験を行った。IrのK端のR空間スペクトルから、Irカチオンは酸素原子と結合し、Irカチオンに対する酸素原子の平均配位数は4.21±0.47のCN(Ir-O)であることがわかった(図2の(c))。この観察は、図2の(d)に示すIrの酸化状態(+4)と一致する。Ir箔および10wt%IrO/Alと比較すると、明白に、IrのK端のr空間スペクトルに適合するためにIr-Ir金属結合の寄与は必要なく、Ir-Ir金属結合の形成の証拠がないことが示唆された。
【0066】
Ir@ZSM-5触媒について収集されたX線回折(XRD)パターンは、ZSM-5の典型的なMFI構造のみを示し(図9)、Ir相のピークがないことは、FTIR、STEMおよびXAFSの特徴評価で観察したIrの原子分散と一致する。
【0067】
1.3.2Ir@ZSM-5を用いた混合構成を介したHDPEの触媒的水素化分解。Ir@ZSM-5触媒とHZSM-5を、HDPEの触媒的水素化分解によって評価した。反応プロセス設計を図10に模式的に示す。HDPEの触媒的水素化分解は、固定床流通反応器において大気圧で実施した。物質移動の制限を最小にするために、40-60メッシュの石英砂およびIr@ZSM-5をHDPEペレットと均一に充填し、これを混合またはよく混合された構成と定義した。反応器とガスクロマトグラフ(GC)の間にクールトラップを設置して、高沸点(B.P.)の生成物を凝縮した。反応後、固体残渣を160℃で30分間、トルエンで処理した後、直ちに高温で濾過した。トルエンに溶解したものを「プラスチック残渣」と表記した。トルエン抽出後の残渣固体は、一晩十分に真空乾燥した後、空気中でか焼し、流出液を燃焼させて触媒中の析出コークス量を求めた。一方、ろ過後の混合液については、室温まで冷やすとプラスチック残渣が徐々に析出するので、溶媒を除去した後、貴重な質量はかりで秤量した。その結果、各触媒において、生成物はC-C炭化水素(図11は、混合構成を介して測定した保持時間1時間のGC結果の代表的なプロファイルを示し、C-C炭化水素のみからなることを示す)とコークスからなり、プラスチック残差と定義される、変換されていないHDPEもあることが示された。各生成物を慎重に定量化した後、物質収支を閉じた。
【0068】
図3の(a)は、350℃におけるHDPE変換性およびC-C炭化水素の選択性を、Ir担持量の関数としてまとめたものである。HDPE変換性は、Ir担持量に依存した火山型の傾向を示した。H-ZSM-5の場合、HDPE変換性は19.2%であった。H-ZSM-5に閉じ込められたイリジウムの添加により変換性は徐々に上昇し、0.25%Ir@ZSM-5で最大値88.4%を達成し、その後、1%Ir@ZSM-5で44.1%まで減少した。イリジウム部位は脱水素/水素化について触媒活性があることが報告されており、Yang et al., 2015、水素化分解とカップリングするとHDPEの分解を改善できる。Weitkamp, 2012。
【0069】
図3の(a)では、すべての試料について、C-C生成物の選択性を比較している。HZSM-5では、C、C、およびC生成物のみが検出され、CとCの選択性は80%に近く、HDPEが軽質パラフィンに分解されたことが示された。これは、高い酸性度はより多くのHDPEを捕獲し、小さな鎖の炭化水素にさらに分解することを報告している文献、Wong et al, 2016; Miskolczi et al, 2009と同様である。しかし、Ir@ZSM-5触媒ではC生成物が主体であり、その選択性は約52%であり、生成物の分布はIr担持量に依存しなかった。また、ガソリンタイプの生成物(C-C)の選択性は80%超であり、HDPEの解重合とガソリンへのアップサイクルが可能であることが示された。
【0070】
図3の(b)は、350℃におけるIr担持量に依存したコークス析出量とプラスチック残渣の傾向を示しており、コークス析出量が多いほどプラスチック残渣が多く残ることを示し、これはコークス析出による触媒活性の減衰を示唆している。以前、Castano et al., 2011; Elordi et al., 2011で報告されているように、Si/Al比が低いHZSM-5ではコークスが生成しやすい。同様に、今回使用したHZSM-5のSi/Al比は11.5であり、コークスの形成が容易に起こる。単一Ir原子の装飾は、ZSM-5の酸性度を部分的に低下させることができるだけでなく、C-Cの形成を防ぐことができ、さらにコークス析出を回避することができる。Guo et al., 2014; Xie et al., 2018。したがって、Ir担持量が少ない(単原子分散の)Ir@ZSM-5では、より少ないコークスが生成された。しかしながら、Ir担持量の増加は、DRIFTS(図2の(a))によって示されるように、Irの凝集を引き起こし、Irクラスタの形成を引き起こす可能性がある。そのため、0.5%および1%のIr@ZSM-5ではIr部位上により多くのコークスが析出し(図3の(b))、コークス量が再び増加し、最終的に触媒の失活を加速させることが示された。
【0071】
0.25%Ir@ZSM-5でのHDPE分解の温度依存性についても図3の(c)で検討した。HDPEの触媒的水素化分解を、250℃から400℃まで、各温度で2.75時間行った。図3の(c)によって反映されるように、HDPE変換性は、温度とともに増加した。250℃では、ごく少量のHDPEしか分解されず、400℃ではHDPE変換性は94.3%に達した。注目すべきは、HDPEの水素化分解の速度が温度とともに増加することである。HDPEは最初の1時間で急速に分解することができ、このプロセスは250℃超で速度論的制御プロセスであることが示された。図3の(d)は、各温度における生成物の分布を比較したものである。調査した温度を通して、生成物はすべてC-C炭化水素からなり、C種を主体とし、その選択性は約53%であった。一方、温度の上昇に伴い、C-Cの選択性の合計は20.9%から24.5%に増加したが、C-Cの選択性の合計は26.3%から21.3%に減少し、重い炭化水素が高温で軽い分子に分解されたことが示唆された。
【0072】
0.25%Ir@ZSM-5の安定性について、400℃で5サイクルの測定で調べた。触媒は再生せずに使用し、各サイクル後にHDPEを供給した。図12に示すように最初の2サイクルでは触媒は安定的であり、HDPE変換性は92.0%から87.9%へとわずかに減少した。しかし、3回目からはHDPE変換性が急激に低下した。5回目の測定でHDPE変換性は35.8%まで低下したが、これはコークス析出が激しいためである(触媒1gあたり3.52mgコークス)。また、触媒活性の低下に関わらず、C炭化水素の収率は他の生成物よりも常に高いことがわかった。
【0073】
1.3.3.層構成を介したIr@ZSM-5を用いたHDPEの触媒的水素化分解。HDPEとIr@ZSM-5をよく混合することにより、HDPEはC-C炭化水素に変換されるが、軽質炭化水素(C-C)が主要生成物を占め、その選択性は80%より高いことがわかった(Cの選択性は約53%であった)。生成物の経済的評価を考慮すると、より価値の高い生成物(例えば、C種)がより望ましかった。さらに、HDPEと触媒が密着しているためか、コークスの析出により触媒が不活性化した(3回の測定後)。他の多くの文献で検討されているように、HDPEの触媒変換は、溶融、拡散、および外部表面での分解を経て、高温(>300℃)での熱分解も伴う。Aguado et al., 2008; Kunwar et al., 2016; Kumara et al., 2011。雑多なプロセスは、ゼオライトのチャネルをブロックするか、Castano et al., 2011; Ibanez et al., 2014、または低Si/Al比(<15)で重度のコークス析出を引き起こす可能性がある。Elordi et al., 2011。
【0074】
このプロセスを精密に制御するために、HDPEと触媒を層ごとに充填する構成(本明細書では層構成とも定義する)により、溶融、拡散、HDPEの熱分解、および触媒分解反応を2段階に分けた。HDPEと触媒の間に微量(200mg)の酸洗浄した石英砂を設置して、拡散プロセスを均一にした。上側では、HDPEが短鎖の炭化水素(未変換のポリエチレン分子も含む)に変換され、砂層を通って拡散して触媒に到達し、次に触媒(Ir@ZSM-5)表面で分解され得る。図4の(a)は、0.25%のIr@ZSM-5を使用することによって、異なる反応器設計の触媒性能を比較したものである。層構成でHDPEの水素化分解を実施することにより、生成物はC-C10炭化水素からなり(層構成を介して測定した図11の(b)の保持時間1時間のGC結果の代表的なプロファイルを参照)、Cの選択性は約55%であり、ここではC-Cの選択性は40%未満であった。混合構成による評価で得られた生成物は、Cの選択性が約52%前後で集合したのに対し、C-Cの選択性は80%超であり、Cは形成されなかった。また、前者の測定ではHDPE変換性は100%であり、後者の場合よりもわずかに高かった(約92%、図4の(a))。
【0075】
また、対照実験として、酸洗浄した砂を用いた場合と用いない場合のHDPEの熱分解を行った(触媒は担持せず)。図13から明らかなように、砂の有無にかかわらず、HDPEは解重合され、主にCおよびC炭化水素に変換され、生成物の総量において約80%を占めたが、反応温度が比較的低いため、HDPE変換性は約2%に過ぎなかった。HDPEの大部分は、温度の低い下流で拡散および凝縮された。しかし、0.25%のIr@ZSM-5を添加すると、生成物の分布が劇的に変化した。HDPEは、上に示したように、C-C10炭化水素に完全に変換された。任意の特定の理論に縛られることは望まないが、触媒的水素化分解と熱分解の分離およびカップリングは、分解、異性化、および芳香族化などを巻き込んで、反応を右側に押し出し、C炭化水素の形成とともに、反応を動態学的に加速することによって、プロセスを精密に制御し操作できたと考えられる。その機構および動態学については本明細書の次の項で説明する。
【0076】
HDPEは、混合構成では最初の1時間でほとんど変換することができるが、層構成の測定によって得られたHDPE変換性はゆっくりと上昇し、100%の変換性に達するのに2時間かかった。これは、HDPE層と触媒層の分離により、HDPEまたはHDPEから熱分解された生成物の拡散経路が増加し、HDPE水素化分解の反応速度が遅くなったと理解される。
【0077】
HDPEの水素化分解に対するIr担持量の効果を、図4の(c)において調べた。400℃ではHDPE変換性およびすべての生成物の選択性が存在した。HZSM-5の触媒性能も比較し、そのHDPEの変換性は91.5%であり、C炭化水素の選択性は49.4%であり、一方、C~C炭化水素の合計選択性は43.6%であった。基本的に、イリジウムの添加によりHDPE変換性は91.5%から約100%に増加したが、生成物の分布はZSM-5に固定されたIrの量に依存した。0.05%Ir@ZSM-5の場合、C炭化水素の選択性は58.1%に増加したが、C~C炭化水素の合計選択性は32.9%に減少し、これはさらに24%に減少させることができ、Cの選択性は触媒の装填を倍にすることで62.4%に増加させることができる(図14)。しかし、Ir担持量の増加に伴い、C炭化水素の選択性は徐々に低下し、C~C炭化水素の合計選択性は徐々に増加し、特にCの選択性が明らかに増加した。1%のIr@ZSM-5では、C炭化水素の選択性は30.5%に減少したが、一方、C~C炭化水素の合計選択性は58.3%に増加し、ここでCの選択性は38.9%であった。さらに、Cの生成物もそれぞれ定量したところ、キシレンが約96%を占めた。
【0078】
図15に、触媒のコークス析出情報をプロットした。層構成を介した触媒的水素化分解では、混合構成と比較して、形成されるコークスが少なかった。前者で得られたコークスの収率は0.065%~0.25%であったのに対し、後者では0.51%~1.45%のコークスが求められた。コークス析出の反応速度が速いのは、混合構成では拡散経路が最小であるためと予想された。層構成では、HZSM-5上でより多くのコークス(コークスの収率:0.25%)が形成されたが、これは酸性量がより高いことに起因する(以下の考察で示す)。0.05%Ir@ZSM-5では、コークスの収率は0.065%に激減した。また、Ir担持量の増加に伴いコークスの収率が増加したが、これはIr部位の凝集によるものと思われる。例えば、0.1%Ir@ZSM-5ではコークスの収率は0.11%であった。単一Ir部位がC-Cカップリングを阻害することでコークス析出を抑制できることが報告されている。Guo et al., 2014; Xie et al., 2018。
【0079】
図4の(b)は、400℃におけるIr@ZSM-5触媒とHZSM-5触媒の時間依存性のHDPE変換性を示している。HZSM-5は、Ir@ZSM-5と比較して、最も低いHDPE変換性を示した。Ir@ZSM-5は、イリジウム上での脱水素/水素化を介して反応速度を加速できることが報告されている。Weitkamp, 2012。Ir@ZSM-5では、0.05%Ir@ZSM-5が他の触媒よりも高いHDPE変換性をもたらしたが、Ir担持量の増加に伴いHDPE変換性は低下した。45分反応後のHDPE変換性は、0.05%、0.25%、0.5%、1%Ir@ZSM-5でそれぞれ52.0%、46.6%、40.8%、34.8%に到達した。HDPE変換性に対する高いIr担持量のマイナス効果は、反応中にIr部位がオリゴマー化し(図2の詳細参照)、IrとHの間の相互作用が弱くなったことが原因と考えられるが、これは次のセクションで説明する。
【0080】
最終的に、本開示の主題は、0.05%Ir@ZSM-5触媒の高い触媒活性と収率の両方が安定しており、400℃での反応を5回測定した後の低下は識別できないほどだったことを示しており(図4の(d)、触媒は2回の測定間で何も処理せずに再利用した)、またこれは、3回の測定後に低下する傾向があったHZSM-5の活性と比較することによっても強調される(図16)。この高い耐久性から、今回報告した0.05%Ir@ZSM-5触媒は、実用化に向けて大きな可能性を持っていることが確認された。
【0081】
1.3.4機構および動態学的研究。機構の議論では、図5の(a)は、層構成で測定されたIr@ZSM-5上における、C炭化水素を主体とする生成物を生成するHDPEの触媒的水素化分解の機構を予備的に解明したものである。層構成の設計は、HDPEの熱分解と触媒的水素化分解を分離することによりタンデム反応の概念を利用するためであった。まず、HDPEは熱分解されて短鎖炭化水素(未変換ポリエチレン分子も含む)となり、Ir@ZSM-5の外表面に拡散する。これらの炭化水素は、ZSM-5の外部表面および細孔口でのC-C切断により、酸性部位で水素化分解されることがよく研究されている。Serrano et al., 2012; Songip et al., 1993。この分解プロセスは、水素の存在下、Ir部位での脱水素/水素化を伴っていた。Weitkamp, 2012; Mills et al., 1953; Weisz and Swegler, 1957。
【0082】
この段階で、より多くのC炭化水素を有する生成物が生成され、その選択性は約52%であった。順次、これらの生成物は、反応中間体(例えば、エネルギー的に不利なカルベニウムイオン)とともに、それゆえに骨格転位、異性化、および芳香族化プロセスなどの多くの変換プロセスを経て、Serrano et al,2012; Weitkamp, et al., 2012; Mills et al., 1953; Weisz and Swegler, 1957、形状選択性特徴の補助を得て、ZSM-5のチャネル内の酸部位およびIr部位上にC炭化水素を主体とする生成物を形成した。Rahimi and Karimzadeh, 2011; Verheyen et al, 2013; Yu et al, 2012。HDPEの触媒的水素化分解を速度論的かつ定量的に理解するために、NH-TPDおよびH-TPR特徴評価により、酸性およびイリジウム比を定量化した。
【0083】
NHは酸部位に吸着し得ることが報告されている。該して、アンモニアは主に2つの異なる様式で表面に結合する。(1)アンモニアが表面のブレンステッド酸部位からのプロトンによってプロトン化する。(2)窒素原子の孤立電子対が金属カチオンに供与され、ルイス酸として作用する。Al-Dughaither and de Lasa, 2014; Lonyi and Valyon, 2001; Yin et al., 1999。
【0084】
NH-TPDではブレンステッド酸部位とルイス酸部位を区別することはできなかったことは明確にしておく必要があるが、触媒の全酸密度はNH-TPD技術によってもとめることができ、その結果は図5の(b)に示した。典型的には、すべての試料について2つの脱離ピークが存在する。ピークの1つは210-240℃を中心としたもので、これはアンモニアが酸部位と弱く相互作用しているためと考えられる。もう一つのピークは450-480℃にあり、これはより強い酸の部位に関連している。Al-Dughaither and de Lasa, 2014; Lonyi and Valyon (2001)。
【0085】
イリジウムの担持に伴い、HZSM-5上の強酸部位と弱酸部位の強度は明らかに減少し、後者の変化は前者に比べてより明らかだった。イリジウムカチオンは、ZSM-5の構造中のアルミニウム位置に関連する酸部位に属するプロトンと交換することが報告されており、その多くは強酸性部位に関連している。一方、弱酸性シラノール基も合成中、特に焼成プロセスで還元される可能性がある。Al-Dughaither and de Lasa, 2014; Lonyi and Valyon (2001)。全体的な効果により、元の状態のHZSM-5、特に強酸性部位の酸性度が大幅に低下することになる。各試料の酸密度量は、脱離ピークを積分し、検量線に適用することで得ることができる。
【0086】
-TPR実験を行って、アクセス可能なIr担持量を定量化し、Ir種の酸化還元特性を実証した。図5の(c)は、イリジウムを担持した場合、約200℃を中心としたピークが観察されることを示しており、これはIrOの金属Irへの還元に起因していると考えられる。Lin et al., 2011; Wang et al., 2017。また、HZSM-5はH-TPR測定において不活性であることが証明された。異なるイリジウム担持量のIr@ZSM-5触媒では、還元ピークの面積はIr量の増加とともに増加するが、これは検量線へのフィッティングによって測定することが可能である。一方、Ir担持量が増加するにつれて、還元ピークは徐々に高温側にシフトした。これは、Ir担持量が増加すると、Ir@ZSM-5の酸化還元能力(すなわち、イリジウムとHとの相互作用)が弱まったことを示し、これは、Ir部位の凝集によって引き起こされると思われ、文献とも一致し、Lin et al., 2011; Wang et al., 2017、したがってIr@ZSM-5の水素化および脱水素化の速度をさらに減速させると考えられる。
【0087】
図5の(d)は、すべての触媒について、比反応速度(45分後のHDPE変換性で定義、HDPE初期変換性と表記)と、酸性度(脱離アンモニア量)およびIr担持量(H前提)の相関を示したものである。純粋なHZSM-5と比較して、Ir@ZSM-5触媒は反応速度の速いHDPE分解を示す。CoonradtとGarwoodのモデル(Coonradt and Garwood, 1964)によると、文献では、反応中間体(例えば、カルベニウムイオン)の脱離は、競合吸着/脱離を通じてカルベニウムイオンを酸部位から急速に置換することにより、高活性脱水素/水素化成分によって本質的に加速され(いわゆる理想的水素化分解機構、Weitkamp, 2012)、HZSM-5に比べ貴金属イオン修飾ZSM-5の反応速度が速くなることが強調されている。したがって、HDPEの水素化分解では、酸部位とIr部位の両方が活性部位であったとまとめることができる。Ir@ZSM-5触媒については、図5の(d)に示す傾向のように、HDPE分解の比反応速度は、触媒上の酸密度に正比例し、一方、イリジウム担持量の傾向には反比例した。また、酸部位はC-C結合の開裂に関与し、Ir部位は脱水素/水素化反応に対し活性であることが報告された。したがって、C-C切断がHDPEの水素化分解の律速段階であったと結論付けることができる。また、Ir担持量の添加に伴いHDPE変換の比速度が低下する現象は、Ir部位の凝集に伴いIr部位とHとの相互作用が弱まったという事実により説明でき、これも文献、Lin et al, 2011; Wang et al, 2017と一致し、単原子触媒がHDPE分解反応において重要な役割を果たすことをさらに示している。Xiong et al., 2017。
【0088】
生成物の選択性に対するZMS-5のMFI細孔の効果(すなわち、ZSM-5の形状選択性特徴)を説明するために、0.05%Ir@ZSM-5および0.05%Ir@アルミノシリケート上でのHDPEの触媒的水素化分解を試験した(図5の(e))。明らかに、イリジウム担持量が同じ場合はHZSM-5の細孔構造はC生成物の生成に有利であり、生成物の58.1%を占めた一方、細孔構造を持たない同じSi/Al比のIr@アルミノシリケートでは、生成物中64.4%のCが得られた。MFIチャネルの形状選択性効果を考慮すると、これは主に、外部表面でのC-C結合切断により生成したC中間体/生成物がZSM-5のチャネルに入り、骨格転位、異性化、芳香族化プロセスなどいくつかの変換を経て、C炭化水素を主体とする生成物を形成したことに起因している。ここで、芳香族化がこのプロセスで支配的な効果をもち、C炭化水素中のキシレンの高い選択性につながると考えられる。0.05%Ir@ZSM-5上でのn-ペンタン変換およびn-ペンタン+ベンゼン変換の対照実験ではキシレンが生成され(図17)、特に後者の反応では99.4%のキシレンが見られ、芳香族化の意義が検証された。
【0089】
同様の比較は、図18の(a)の純粋なZSM-5およびアルミノシリケート上でも見られ、全体の反応に対するCの高い選択性に対するMFIチャネルの本質的な効果がさらに確証された。さらに、ZSM-5、アルミノシリケート、0.05%Ir@ZSM-5および0.05%Ir@アルミノシリケートのNH-TPD結果を図18の(b)および図19に示した。その結果、Ir担持の有無にかかわらず、アルミノシリケートの酸密度はゼオライト試料より低いことがわかった。細孔構造を持たないアルミノシリケート試料の表面積は、ゼオライト試料の表面積よりも小さいことが容易に理解される。いずれにせよ、アクセスできないアルミニウム部位が存在したことになる。
【0090】
1.3.5技術経済性評価。提案したHDPE処理システムの工業的適用性と経済的実現性を調査するために、ASPEN PlusとASPEN HYSYSを使用して、0.05%Ir@ZSM-5を触媒とするHDPEの水素化分解をシミュレーションしたが、スケールアップを考慮して7,000~13,000トン年-1のHDPE容量で流動反応器で行い、各HDPE供給量の収益性を評価する技術経済評価(TEA)を開発した。HDPE水素化分解の特異な反応動態学パラメータと化学量論が不明であるため、固定床反応器から得られる生成物の収率のみを必要とする流動床反応器をシミュレーションするために、Aspen HYSYS流動プロセス付き収率シフト反応器が提案された。Fivga and Dimitriou, 2018。図20は、収率シフト反応器からシミュレーションされた生産分布を精緻化し、固定床反応器で得られた結果との整合性を確認し、固定床反応器から流動床反応器へのアップグレードを合理化したものである。
【0091】
シミュレーションプロセス(図6の(a))において、HDPE水素化分解システムは、水素化分解反応器ユニット、熱交換器ネットワーク、およびガス/液体分離と生成物回収システムからなった。水素化分解ユニットは400℃で運転した。反応後、残った水素はキャリアガスであるNと共にリサイクルされ、供給されるH/N流と混合され水素化分解反応器に戻された。熱交換器ユニットが組み込まれ、分離システムから放出されるエネルギーを回収し、H/N流をさらに加熱した。HDPE供給量年間8,500メートルトンを例として、プロセス全体の質量収支とエネルギーバランスを図21に示した。図6の(b)は、熱負荷およびエネルギー効率のHDPE供給能力への依存性を示したものである。HDPE供給量が高いほど、より多くのエネルギーを要求することが明らかである。例えば、年間8500メートルトンでの熱負荷は324kWであった。しかし、総合エネルギー効率の変動は不明瞭であり、HDPE供給能力が異なっても約97.5%に留まった。
【0092】
また、経済性については、ASPEN Process Economic Analyzerでも評価した。表1および図6の(c)(HDPE供給能力=年間8500トン)および図22は、各年の運転、用益、および各原料の費用をまとめ、比較したものである。また、総資本コストも提供した。ここで、総資本コストおよび用益費は、HDPE供給量に伴ってあまり変化しなかった。人件費とメンテナンスが運転に含まれるため、HDPEの供給量と共にコストが増加する。他の原料についてコストを比較すると、Hのコストがより高額であることがわかる。そこで、Hの供給源として、メタンの水蒸気改質(SMR)と水の電気分解(電解)の2つが提案される。後者のコストは前者の4倍近くであり、電解でHを生成する場合、必然的に正味現在価値(NPV)が下がり、回収期間が長くなる。ここで、図23において、各HDPE供給能力の正味現在価値(NPV)を同じ割引率10%で計算し(図6の(d)、図6の(e))、それに応じて投資家利益率(IRR)を計算した。例えば、SMRおよびHDPEから生成されたHが年間8500メートルトンの割合で供給される場合、2年後のシステムのNPVは$5.5MMと予測され(図12の(d))、これは125%のIRRに相当する(図23)。あるいは、水の電気分解から得られるHでは、HDPEが年間8,500メートルトンの割合で供給される場合、2年後のシステムのNPVは$4.4MM(図12の(e))と予想され、これは102.7%のIRR(図23)に相当する。SMRと電解の経済性を比較すると、電解で生成されたHの場合、原料コストが高いため回収期間が長くなり、IRRは低くなる。しかし、短期的には、HがSMRから生成されるプロセスの経済利益が高くなるものの、水素化分解向けHを生成する水の電気分解は、環境的に穏やかな利益を示し、CO排出がゼロであるため環境の持続性が促進される。さらに、図6の(f)の比較は、本開示の研究は、C-C10炭化水素を主体とする生成物の発熱量がより高く(>80%)、より価値あるC製品(>58%)を含み、エネルギー効率(約97.4%)および収益性(HDPE廃棄物1kgあたりのアップサイクルによる、~1K USD)が、文献に報告されている熱分解(Fivga and Dimitriou, 2018; Gracida-Alvarez et al,2019a)および水素化分解(Al-Salem, et al., 2014)より優れていることを実証した。
【0093】
さらに、我々のシステムの実際の実現可能性を検討する上で、カーボンフットプリントが必要である。クリーンで再生可能なエネルギー源を適用して、COの排出を減らし、カーボンフットプリントを削減することができる。例えば、太陽光発電、風力発電、および水力発電が、水の電気分解によるHの供給など、我々のシステムへのエネルギー供給に利用可能である。Gracida-Alvarez et al., 2019b。クリーンで再生可能なエネルギー源を取り入れることで、CO排出量がマイナスであるうえ環境への悪影響も大幅に軽減することができ、これは、我々の産業と社会の持続可能な発展における確かな成果である。
【0094】
1.4まとめ
0.05-1%の担持量の一連のIr@ZSM-5触媒を合成し、高密度ポリエチレン(HDPE)の触媒的水素化分解により評価した。HDPEと触媒を充填する構成は、よく混合されたものと層の2つを実施した。前者では約52%のC炭化水素を主体とするC-C炭化水素が得られ、後者ではタンデム反応を利用して、約58%のC炭化水素を主体とするC-C10炭化水素が得られ、ここでC種は主にキシレンで、その選択性は約96%であった。動態学研究により、HDPEの水素化分解には、酸部位と単一のIr部位の両方が関与していることが明らかになった。酸部位は速度制限ステップであるC-C切断に関与し、これは単一Ir部位によって触媒される脱水素/水素化によって促進されると考えられる。C炭化水素からのCのアップグレードは、ZSM-5の固有チャネルを介して起きた。また、Ir@ZSM-5の良好な耐久性も実証され、実用化への大きな可能性が示された。技術-経済性評価によれば、我々のHDPE水素化分解システムは、短い回収期間と高いIRRという経済的利点を示し、このシステムはクリーンエネルギー源による持続可能性を主張することが可能である。
【0095】
(実施例2)
高密度ポリエチレンを価値ある炭化水素への効率的かつ選択的に変換
2.1材料と方法
2.1.1化学物質。塩化イリジウム(III)水和物(>99.99%)、砂、白石英(≧99.995%痕跡量金属ベース)、硝酸アルミニウム非水和物(99.997%痕跡量金属ベース)、メタケイ酸ナトリウム五水和物(≧95.0%)、アンモニア溶液(28-30%)、塩化水素溶液(HO中32wt.)をSigma Aldrichから購入し、石英砂は5molL-1の塩化水素で洗浄し、空気中で500℃で2時間か焼して表面の不純物を燃やし、さらに40-60メッシュで粒子を篩い分けした。Si:Al比が11.5であるNH-ZSM-5をZeolyst International社から購入した。HDPEペレットをEastchem社から購入した。脱イオン水(18.2MΩ)は、ELGA PURELABフレックス装置から収集した。
【0096】
2.1.2.触媒の調製。室温で一定量の塩化イリジウム(III)水和物を含む水溶液を真空ポンプと湿式含浸を統合した方法にかけ、公称Ir担持量の異なる4つのIr@ZSM-5触媒(0.05wt%、0.25wt%、0.5wt%、1wt%)を合成した。Ir3+の導入前に、Si/Al比が11.5のNHZSM-5を空気中450℃で5時間か焼して、前駆体としてHZSM-5を得た。典型的に、1gのH-ZSM-5を50mLの3口フラスコに入れた。3つのポートを、2つのゴム栓で密閉した。1つのポートは真空ポンプに接続した。IrCl溶液の注入前に、1gのH-ZSM-5を含むフラスコ内の空気を真空ポンプで3-5時間パージし、このプロセスの間H-ZSM-5粉末を高温(約200℃)で撹拌して、HZSM-5のチャネルから不純物(例えば、HO)を除去した。その後、フラスコを室温まで冷却し、3~5時間ポンピングしたHZSM-5にIr3+濃度の異なるIrCl水溶液を加えた。注入針を速やかに粉末に到達させ、H-ZSM-5粉末の中央部に埋め、瞬時に注入した。注入中、H-ZSM-5は連続的に攪拌する必要がある。
【0097】
Ir3+の導入後、さらに室温の真空下で3~5時間撹拌した。その後、上記スラリー中のHOを凍結乾燥(HOの昇華)により除去し、その間Irの凝集を回避した。イオン交換されず、次のか焼プロセス中に凝集する可能性のあるイリジウム種をさらに洗浄するために、追加の洗浄および濾過ステップを適用した。このステップでは、ゼオライトを高温の脱イオン水で洗浄し、ろ過した後、真空オーブン内で室温で一晩乾燥させた。最後に、試料を空気中において550℃で3時間か焼した。
【0098】
2.1.3.特徴評価。誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)分析を、PerkinElmer Elan DRC II Quadrupoleシステムを用いて実施し、そのための溶液は、触媒を王水と水性HFで消化し、その後2%の塩酸(HCl)で希釈することにより調製した。H-ZSM-5およびIr@ZSM-5試料の微細構造と形態を、走査型電子顕微鏡(SEM、10kVのHitachi SU-70 FEG-SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM、200kVで操作したJEOL 2100F FEG TEM/STEM)のイメージングによって特徴づけした。Ir L3端でのX線吸収分光測定を、偏向電磁石ビームライン9-BM-BにおけるAdvanced Photon Source(APS)で、電子エネルギー7GeV、平均電流100mAで行った。放射線はSi(111)二結晶モノクロメーターで単色化した。高調波除去は高調波除去ミラーで行った。すべてのスペクトルは、Vortex Silicon Drift Detectorによって蛍光モードで収集した。XASデータの縮小と解析はAthenaとArtemisソフトウェアで処理した。EXAFSの配位パラメータは、フーリエ変換データのk空間において,k=3.0-12.0Å-1でフィッティングすることによって得た。
【0099】
CO吸着のFTIRスペクトルを、液体Nで冷却したテルル化カドミウム水銀(MCT)検出器を備えたNicolet6700スペクトロメーターで記録した。in situセルにはZnS窓と加熱カートリッジが取り付けられている。CO吸着前に、試料を200℃で2時間真空排気し、その後CO吸着のために25℃に冷却した。5%のCO/Heを30ml/minの流速でDRIFTSセルに導入した。この後、流速30ml分-1でHeパージを行ってDRIFTS測定前にセルから気相COを除去し、試料表面の物理的COを除去した。スペクトルは25℃で収集し、分解能は4cm-1で、各試料について100スキャンの蓄積を行った。
【0100】
表面酸性度は、Micromeritics AutoChem II2920化学吸着分析装置でNHの温度プログラム脱離(NH-TPD)により測定した。通常、200mgのIr@ZSM-5触媒(40-60メッシュ)を500℃で2時間予熱したU型試料管に装填し、次にNH吸着用に流動ヘリウム中で120℃に冷却した。この温度で、吸着飽和が起こるまで十分なパルスのアンモニアを注入し、その後ヘリウムで2時間パージした。その後、10℃分-1の速度で120℃から600℃まで昇温し、脱離したNHをTCDでモニターし、TCDシグナルは標準NHガスタンク(バランスガスとしてHe)により校正を行った。
【0101】
温度プログラム還元(TPR)プロファイルは、Micromeritics AutoChem II 2920装置で取得した。通常、200mgのIr@ZSM-5触媒をU型試料管に装填した。試料(40-60メッシュ)は、表面の不純物を除去するために500℃で2時間He中で前処理した後、He中で40℃まで冷却した。次に、H/Ar混合液(10vol.%H)を30mL分-1で流し、最終温度400℃まで10℃/分のランプレートで加熱し、試料を還元した。消費されたHはTCDによってモニターし、TCDシグナルは標準Hガスタンク(バランスガスとしてAr)によって校正した。
【0102】
2.1.4.触媒研究。高密度ポリエチレン(HDPE)の触媒的水素化分解を、固定床流通反応器において大気圧で実施した。HDPEペレット160-180mg+酸洗浄済み石英砂200mg(40-60メッシュ)+触媒50mg(40-60メッシュ)の混合物を、(1)HDPE、砂および触媒をよく混合する、(2)HDPE(上)、砂(中央)および触媒(下)を層ごとに装填する、2つの異なる構成のマイクロフロー石英反応器に充填した。その後、He(30mL/分)下で5℃/分の速度で異なる反応温度(250℃、300℃、350℃、400℃)に加熱し、SH-Rt-Q-BONDカラムとBID検出器を備えたガスクロマトグラフ(GC-2010 plus、Shimadzu)により、オンライン検出できる生成物がなくなるまで各温度で2.5~4時間保持した。反応器とGCの間にクールトラップを設置して、NMRで定量可能な高沸点(BP)の生成物を凝縮させ、低沸点の生成物はGCで検出した。反応後、残留物を30分間トルエンで処理した後、160℃でろ過した。固形物を一晩真空乾燥した後、空気中でか焼し、排出物をマルチガス分析装置(MultiGas 2030、MKS)で測定して、触媒中の堆積コークス量をもとめた。一方、ろ過後のトルエン溶液については、トルエンの温度が室温まで下がると徐々にワックスが析出するので、これをトルエンを乾燥させた後に貴重な質量はかりで秤量した。
【0103】
2.2技術経済性評価
2.2.1プロセスの説明。HDPE処理システムは、水素化分解反応ユニット、熱交換器ネットワーク、およびガス/液体生成物の分離、回収システムからなる。HDPE水素化分解反応のフルストリームテーブルを開発するために、ASPEN HYSYSソフトウェアのイールドシフト反応器をシミュレーションモデルとして使用し、物質収支、熱負荷、用益費も取得した。炭化水素と軽ガスの正確な結果を得るために、ユニット操作にPENG-ROB特性法を選択した。
【0104】
HDPEプラスチック廃棄物原料は、無乾燥灰ベースで炭素85wt%、水素15wt%の元素組成で調整した。原料の発熱量(HV)は、以下の式で算出される:
【0105】
【数1】

式中、C、H、S、O、N、Aは、原料中の炭素、水素、硫黄、酸素、窒素、灰分の乾燥基準での質量パーセントである。各ケースの燃料エネルギー効率(FEE)は、以下の式で算出される:
【数2】

式中、水素化分解生成物のエネルギーは、HDPE原料のエネルギー含有量で割られる。各ケースの総合エネルギー効率(TEE)は、以下によって求めることができる:
【数3】
【0106】
水素化分解ユニットは400℃で運転され、入口HDPE供給量は年間7000メートルトンから13000メートルトンの範囲である。水素化分解反応器への入口ガス流は5%H/Nガスで、供給量は年間2523メートルトンから5045メートルトンの範囲である。出口流は400℃で年間9271メートルトンから年間17541メートルトンの質量流量で水素化分解反応器から排出される。出口流は次に、相分離と生成物回収のためにガス/液体分離システムに送られる。ガス/液体分離システムには、熱交換器ネットワークが組み込まれている。ガス/液体分離プロセスから放出される熱は、熱交換器ネットワークによって、ガス貯蔵所から流入する5%H/Nガスを400℃に加熱するために利用される。さらに、ガス/液体分離の後、最終生成物流に残ったH/Nガスは回収され、熱交換器ネットワーク中でガス貯蔵所から流入する5%H/Nガスと一緒にされる。このように、生成物流において回収された未反応の5%H/Nガスは、水素化分解反応器にリサイクルして戻すことができ、それによってガス貯蔵所からの5%H/Nガス供給に対する需要を減少させることができる。さらに、最終生成物流は、C生成物(年間221メートルトン~年間378メートルトン)、C生成物(年間158メートルトン~年間315メートルトン)、C生成物(年間126メートルトン~年間221メートルトン)、C生成物(年間725メートルトン~年間1356メートルトン)、C生成物(年間95メートルトン~年間189メートルトン)、C生成物(年間221メートルトン~年間410メートルトン)、C生成物(年間4857メートルトン~年間9019メートルトン)、C生成物(年間315メートルトン~年間599メートルトン)、C10生成物(年間252メートルトン~年間505メートルトン)からなる。エネルギーの観点からは、HDPE原料の発熱量(HV)はHDPE供給量の違いにより、9783.2kW~18168.8kWで変化する。それに応じて、全生成物のHVは9846.54kWから18286.42kWまで変化する。
【0107】
2.2.2.コスト試算の方法論。TEAモデルの総資本コスト、総運転コスト、用益費をASPEN Process Economic Analyzerから取得した。原材料費と生成物売上高は現在の市場価格に基づいて検索した(表S1)。総資本コスト、総運転コスト、用益費の見積もりはASPEN Process Economic Analyzerから取得した。水素化分解プロセスに関与する種の現在の市場価格は、ビジネスレポートと政府機関のデータから取得した。初期投資は、運転前の総資本コストと総運転コストの合計であり、年間キャッシュフローの計算では、初期投資はカウントしない。
【0108】
【表1】
【0109】
年間のキャッシュフロー計算は、次のように表すことができる:
【数4】
【0110】
正味現在価値(NPV)は、割引率を10%として、以下の式により算出される:
【数5】

式中、iは割引率、tは期間数である。内部収益率(IRR)は、Hernandez et al., 2018で提供されているように、次のように計算することができる:
【数6】

式中、ソリューションIRRとtはそれぞれ投資家の収益率と回収期間である。今回のTEAモデルでは、インフレ率、税率、人件費、メンテナンス費用を含むその他のオーバーヘッド運転コスト、およびサルベージ価額を考慮していないことを認識する必要がある。これらの考慮しないパラメータを組み込んだ場合、潜在的なコストが増加する可能性があり、さらに詳細な経済分析が必要である。
【0111】
(参考文献)
本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示の主題が関係する技術分野の当業者のレベルを示すものである。すべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、個々の刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書では、いくつかの特許出願、特許および他の参考文献が参照されているが、このような参照は、これらの文書のいずれかが当該技術分野における一般常識の一部を形成することを認めるものではないことが理解されるであろう。
【0112】
Hernandez, P., Oregi, X., Longo, S. and Cellura, M. Handbook of Energy Efficiency in Buildings: A Life Cycle Approach. 223-227 (Elsevier Inc., 2018).
Rahimi, A. and Garcia, J. M. Chemical recycling of waste plastics for new materials production. Nat Rev Chem 1, 1-11 (2017).
EPA, Advancing Sustainable Materials Management: 2017 Fact Sheet, https://www.epa.gov/facts-and-figures-about-materials-waste-and-recycling/plastics-material-specific-data (2019).
Aguado, J., Serrano, D. P. and Escola, J. M. Fuels from Waste Plastics by Thermal and Catalytic Processes: A Review. Ind Eng Chem Res 47, 7982-7992 (2008).
Kunwar, B., Cheng, H. N., Chandrashekaran, S. R. and Sharma, B. K. Plastics to fuel: a review. Renew Sust Energ Rev 54, 421-428 (2016).
Serrano, D. P., Aguado, J. and Escola, J. M. Developing Advanced Catalysts for the Conversion of Polyolefinic Waste Plastics into Fuels and Chemicals. Acs Catal 2, 1924-1941 (2012).
Zhang, M. M., Buekens, A., Jiang, X. G. and Li, X. D. Dioxins and polyvinylchloride in combustion and fires. Waste Manage Res 33, 630-643 (2015).
Jia, X. Q., Qin, C., Friedberger, T., Guan, Z. B. and Huang, Z. Efficient and selective degradation of polyethylenes into liquid fuels and waxes under mild conditions. Sci Adv 2 (2016).
Kaminsky, W., Mennerich, C. and Zhang, Z. Feedstock recycling of synthetic and natural rubber by pyrolysis in a fluidized bed. J Anal Appl Pyrol 85, 334-337 (2009).
Celik, G. et al. Upcycling Single-Use Polyethylene into High-Quality Liquid Products. Acs Central Sci 5, 1795-1803 (2019).
Achilias, D. S., Roupakias, C., Megalokonomos, P., Lappas, A. A. and Antonakou, E. V. Chemical recycling of plastic wastes made from polyethylene (LDPE and HDPE) and polypropylene (PP). J Hazard Mater 149, 536-542 (2007).
Wong, S., Ngadi, N., Abdullah, T. A. T. and Inuwa, I. M. Catalytic Cracking of LDPE Dissolved in Benzene Using Nickel-Impregnated Zeolites. Ind Eng Chem Res 55, 2543-2555 (2016).
Zhang, Z. et al. Recovering waste plastics using shape-selective nano-scale reactors as catalysts. Nat Sustain 2, 39-42 (2019).
Yang, D. et al. Metal-Organic Framework Nodes as Nearly Ideal Supports for Molecular Catalysts: NU-1000-and UiO-66-Supported Iridium Complexes. J Am Chem Soc 137, 7391-7396 (2015).
Weitkamp, J. Catalytic Hydrocracking-Mechanisms and Versatility of the Process. Chemcatchem 4, 292-306 (2012).
Miskolczi, N., Angyal, A., Bartha, L. and Valkai, I. Fuels by pyrolysis of waste plastics from agricultural and packaging sectors in a pilot scale reactor. Fuel Process Technol 90, 1032-1040 (2009).
Castano, P. et al. Insights into the coke deposited on HZSM-5, H beta and HY zeolites during the cracking of polyethylene. Appl Catal B-Environ 104, 91-100 (2011).
Elordi, G., Olazar, M., Lopez, G., Castano, P. and Bilbao, J. Role of pore structure in the deactivation of zeolites (HZSM-5, H beta and HY) by coke in the pyrolysis of polyethylene in a conical spouted bed reactor. Appl Catal B-Environ 102, 224-231 (2011).
Guo, X. G. et al. Direct, Nonoxidative Conversion of Methane to Ethylene, Aromatics, and Hydrogen. Science 344, 616-619 (2014).
Xie, P. F. et al. Nanoceria-Supported Single-Atom Platinum Catalysts for Direct Methane Conversion. Acs Catal 8, 4044-4048 (2018).
Kumara, S., Panda, A. K. and Singha, R. K. A review on tertiary recycling of high-density polyethylene to fuel. Resour Conserv Recy 55, 893-910 (2011).
Ibanez, M. et al. Identification of the coke deposited on an HZSM-5 zeolite catalyst during the sequenced pyrolysis-cracking of HDPE. Appl Catal B-Environ 148, 436-445 (2014).
Songip, A. R., Masuda, T., Kuwahara, H. and Hashimoto, K. Test to Screen Catalysts for Reforming Heavy Oil from Waste Plastics. Appl Catal B-Environ 2, 153-164 (1993).
Mills, G. A., Heinemann, H., Milliken, T. H. and Oblad, A. G. Houdriforming Reactions - Catalytic Mechanism. Ind Eng Chem 45, 134-137 (1953).
Weisz, P. B. and Swegler, E. W. Stepwise Reaction on Separate Catalytic Centers - Isomerization of Saturated Hydrocarbons. Science 126, 31-32 (1957).
Rahimi, N. and Karimzadeh, R. Catalytic cracking of hydrocarbons over modified ZSM-5 zeolites to produce light olefins: A review. Appl Catal a-Gen 398, 1-17 (2011).
Verheyen, E. et al. Molecular shape-selectivity of MFI zeolite nanosheets in n-decane isomerization and hydrocracking. J Catal 300, 70-80 (2013).
Yu, Y. Q. et al. The role of shape selectivity in catalytic fast pyrolysis of lignin with zeolite catalysts. Appl Catal a-Gen 447, 115-123 (2012).
Al-Dughaither, A. S. and de Lasa, H. HZSM-5 Zeolites with Different SiO2/Al2O3Ratios. Characterization and NH3 Desorption Kinetics. Ind Eng Chem Res 53, 15303-15316 (2014).
Lonyi, F. and Valyon, J. On the interpretation of the NH3-TPD patterns of H-ZSM-5 and H-mordenite. Micropor Mesopor Mat 47, 293-301 (2001).
Yin, X. L. et al. NH3 adsorption on the Bronsted and Lewis acid sites of V2O5(010): A periodic density functional study. J Phys Chem B 103, 4701-4706 (1999).
Lin, J. et al. In Situ Calorimetric Study: Structural Effects on Adsorption and Catalytic Performances for CO Oxidation over Ir-in-CeO2 and Ir-on-CeO2Catalysts. J Phys Chem C 115, 16509-16517 (2011).
Wang, F. G. et al. Thermally stable Ir/Ce0.9La0.1O2 catalyst for high temperature methane dry reforming reaction. Nano Res 10, 364-380 (2017).
Coonradt, H. L. and Garwood, W. E. Mechanism of Hydrocracking - Reactions of Paraffins + Olefins. Ind Eng Chem Proc Dd 3, 38-& (1964).
Xiong, H. F. et al. Thermally Stable and Regenerable Platinum-Tin Clusters for Propane Dehydrogenation Prepared by Atom Trapping on Ceria. Angew Chem Int Edit 56, 8986-8991 (2017).
Fivga, A. and Dimitriou, I. Pyrolysis of plastic waste for production of heavy fuel substitute: A techno-economic assessment. Energy 149, 865-874 (2018).
Gracida-Alvarez, U. R., Winjobi, O., Sacramento-Rivera, J. C. and Shonnard, D. R. System Analyses of High-Value Chemicals and Fuels from a Waste High-Density Polyethylene Refinery. Part 1: Conceptual Design and Techno-Economic Assessment. Acs Sustain Chem Eng 7, 18254-18266 (2019).
Al-Salem, S. M., Papageorgiou, L. G. and Lettieri, P. Techno-economic assessment of thermo-chemical treatment (TCT) units in the Greater London area. Chem Eng J 248, 253-263 (2014).
Gracida-Alvarez, U. R., Winjobi, O., Sacramento-Rivero, J. C. and Shonnard, D. R. System Analyses of High-Value Chemicals and Fuels from a Waste High-Density Polyethylene Refinery. Part 2: Carbon Footprint Analysis and Regional Electricity Effects. Acs Sustain Chem Eng 7, 18267-18278 (2019).
U.S. Patent No. 10,239,049 to Gaffney for Alloyed Zeolite Catalyst Component, Method for Making and Catalytic Application Thereof, issued March 26, 2019.
U.S. Patent No. 9,404,045 to Gaffney for Alloyed Zeolite Catalyst Component, Method for Making and Catalytic Application Thereof, issued August 2, 2016.
U.S. Patent Application Publication No. 20200078767 to Jantharasuk et al. for
Hydrocarbon Conversion Catalyst, published March 12, 2020.
【0113】
前述の主題は、理解を明確にするために例示および実施例によってある程度詳細に説明されたが、特定の変更および修正が添付の請求項の範囲内で実践できることは、当業者には理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】