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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧品用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20230615BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230615BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K8/27
A61K8/29
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571778
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 US2021033745
(87)【国際公開番号】W WO2021237145
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/029,039
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522454736
【氏名又は名称】エフイー:アイ・ビューティー・テック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FE I BEAUTY TECH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シィー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB322
4C083BB22
4C083BB44
4C083CC19
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE10
4C083EE17
(57)【要約】
使用者の皮膚に塗布するための日焼け止め組成物であって、酸化亜鉛、二酸化チタン、又はそれらの組合せの少なくとも1つを包含するミネラル;並びに前記日焼け止め組成物と接触する外部酸性供給源と反応して、前記酸化亜鉛からの亜鉛イオンの放出を阻害、及び/又は前記二酸化チタンからのチタンイオンの放出を阻害するように構成された高緩衝能剤を含む、日焼け止め組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の皮膚に塗布するための日焼け止め組成物であって、酸化亜鉛、二酸化チタン、又はそれらの組合せの少なくとも1つを包含するミネラル;並びに前記日焼け止め組成物と接触する外部酸性供給源と反応して、前記酸化亜鉛からの亜鉛イオンの放出を阻害、及び/又は前記二酸化チタンからのチタンイオンの放出を阻害するように構成された高緩衝能剤を含む、日焼け止め組成物。
【請求項2】
前記高緩衝能剤が、パールパウダー、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、シュウ酸バリウム、モリブデン酸バリウム、マンガン酸バリウム、セレン酸バリウム、炭酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、セレン酸ストロンチウム、又はそれらの組合せの少なくとも1つを包含する、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項3】
前記高緩衝能剤が、約0.05μm~約30μmの範囲のサイズを有するパールパウダーを包含する、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項4】
前記高緩衝能剤が、前記日焼け止め組成物中に約0.01%(w/w)~約10%(w/w)の範囲の量で包含される、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項5】
前記高緩衝能剤が、前記日焼け止め組成物中に約1%(w/w)~約2%(w/w)の範囲の量で包含される、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項6】
前記高緩衝能剤が、前記日焼け止め化粧品のpHレベルを6.0より上に保持するために外部酸性供給源と反応するように構成された、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項7】
クリーム、ローション、スプレー、ジェル、フォーム、又はスティック用の組成物の少なくとも1つを更に含む、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項8】
外部酸性供給源が、使用者の皮膚、使用者の汗、酸性雨、又は酸性美容製品の少なくとも1つを含む、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項9】
高緩衝能剤が水相中で調製されている、請求項1記載の日焼け止め組成物。
【請求項10】
ミネラル;及び
弱酸を含む緩衝剤
を含む、日焼け止め組成物であって、外部酸性供給源にさらされたとき、実質的に安定に維持されたpHレベルを有する組成物。
【請求項11】
ミネラルが、酸化亜鉛、二酸化チタン、又はそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項12】
前記緩衝剤が、パールパウダー、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、シュウ酸バリウム、モリブデン酸バリウム、マンガン酸バリウム、セレン酸バリウム、炭酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、セレン酸ストロンチウム、又はそれらの組合せの少なくとも1つを包含する、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項13】
前記緩衝剤が、約0.05μm~約30μmの範囲のサイズを有するパールパウダーを包含する、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項14】
前記緩衝剤が、前記日焼け止め組成物中に約0.01%(w/w)~約10%(w/w)の範囲の量で包含される、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項15】
前記緩衝剤が、前記日焼け止め組成物中に約1%(w/w)~約2%(w/w)の範囲の量で包含される、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項16】
前記緩衝剤が、前記局所用日焼け止め化粧品のpHレベルを6.0より上に保持するために外部酸性供給源と反応するように構成された、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項17】
クリーム、ローション、スプレー、ジェル、フォーム、又はスティック用の組成物の少なくとも1つを更に含む、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項18】
外部酸性供給源が、使用者の皮膚、使用者の汗、酸性雨、又は酸性美容製品の少なくとも1つを含む、請求項10記載の日焼け止め組成物。
【請求項19】
緩衝剤が水相中で調製されている、請求項10記載の日焼け止め組成み物。
【請求項20】
日焼け止め組成物を使用者の皮膚に塗布することを含む、ミネラルを含有する日焼け止め組成物によって使用者の皮膚に引き起こされる毒性作用を阻害するための方法であって、
日焼け止め組成物が、酸化亜鉛、二酸化チタン、又はそれらの組合せの少なくとも1つを包含するミネラル、及び緩衝剤を含み、緩衝剤は、日焼け止め組成物と接触する外部酸性供給源と反応して、酸化亜鉛からの亜鉛イオンの放出を阻害、及び/又は二酸化チタンからのチタンイオンの放出を阻害する、方法。
【請求項21】
外部酸性供給源にさらされても、日焼け止め化粧品のpHレベルが実質的に安定に維持されるように、緩衝剤が、外部酸性供給源と反応する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記緩衝剤が、パールパウダー、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、シュウ酸バリウム、モリブデン酸バリウム、マンガン酸バリウム、セレン酸バリウム、炭酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、セレン酸ストロンチウム、又はそれらの組合せの少なくとも1つを包含する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記緩衝剤が、水相中で調製されている、請求項20記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月22日に出願された米国仮出願第63/029,039号について優先権を主張し、その開示は参照によりその全体を本明細書の記載の一部とする。
【0002】
本発明は、日焼け止め化粧品、日焼け止め化粧品の製造方法及び使用方法、並びにミネラルを含有する日焼け止め化粧品の毒性作用を防止する方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
多種多様な日焼け止め化粧品組成物が過去に開発されてきた。本明細書に記載の日焼け止め化粧品組成物は、ミネラルを含有する日焼け止め化粧品の毒性作用を阻害する。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施態様において、高緩衝能(「HBC」)剤が、酸化物系ミネラルを有する日焼け止め化粧品に配合される。1つの実施態様において、日焼け止め化粧品は、遷移金属酸化物系ミネラルを包含する。1つの実施態様において、日焼け止め化粧品は、酸化亜鉛(ZnO)及び/又は二酸化チタン(TiO)を包含する。1つの実施態様において、日焼け止め化粧品は、クリーム、ローション、スプレー、ジェル、フォーム、スティック用の組成物、又は皮膚に吸収され得る他の局所用組成物を包含する。1つの実施態様において、HBC剤は、パールパウダー及びその類似体(例えば、弱酸(例えば、3~6の範囲のpKa)以外の、周期表の第2族からの高アルカリカチオン(例えば、アルカリ土類金属)を伴うもの)の少なくとも1つを包含する。別の一実施態様において、HBC剤は、パールパウダー、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、シュウ酸バリウム、モリブデン酸バリウム、マンガン酸バリウム、セレン酸バリウム、炭酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、セレン酸ストロンチウム、及びそれらの組合せの少なくとも1つを包含する。
【0005】
1つの実施態様において、日焼け止め化粧品組成物は、酸化物系ミネラル及び高緩衝能(「HBC」)剤を包含する。1つの実施態様において、日焼け止め化粧品組成物は、遷移金属酸化物系ミネラル及びHBC剤を包含する。1つの実施態様において、日焼け止め化粧品組成物は、酸化亜鉛及び/又は二酸化チタン並びにHBC剤を包含する。1つの実施態様において、HBC剤は、パールパウダー及びその類似体(例えば、弱酸(例えば、3~6の範囲のpKa)以外の、周期表の第2族からの高アルカリカチオン(例えば、アルカリ土類金属)を伴うもの)の少なくとも1つを包含する。別の一実施態様において、高緩衝能剤は、パールパウダー、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、シュウ酸バリウム、モリブデン酸バリウム、マンガン酸バリウム、セレン酸バリウム、炭酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、セレン酸ストロンチウム、及びそれらの組合せの少なくとも1つを包含する。
【0006】
本発明者は、驚くべきことにかつ予期しないことに、酸性条件下で、化粧品中の酸化亜鉛及び二酸化チタンが可溶化され得、「遊離」亜鉛イオン及びチタンイオンが放出され得ることを発見したが、これらは皮膚に吸収され得、毒性作用(例えば、酸化又は発癌性)を有し得る。1つの実施態様において、皮膚に塗布される日焼け止め化粧品に外部酸性物質が導入されると、HBC剤が、日焼け止め化粧品のpHを中性又はその付近(例えば、pH7)に保持するように構成され、それによって日焼け止め化粧品に含有される酸化亜鉛及び二酸化チタンの可溶化を阻害し、そこからの「遊離」亜鉛及びチタンイオンの放出を阻害する。1つの実施態様において、外部酸性物質は、皮膚及び/又はそこから排出される汗などの内因性供給源、及び/又は酸性雨などの外因性供給源であり得る。したがってHBC剤は、日焼け止め化粧品を使用者が安全に使用できるように保つものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明をよりよく理解するために、添付の図面(図1~5)と併せて考慮される、以下の種々の例示的な実施態様の詳細な説明が参照される。
図1図1は、市販のミネラル日焼け止め中の水溶性亜鉛イオン及びチタンイオンの放出を説明する例の結果を示す。
図2図2は、市販のミネラル日焼け止め中の亜鉛イオン及びチタンイオンの放出に対する酸性条件の作用を説明する例の結果を示す。
図3図3は、酸性条件における酸化亜鉛の可溶化に対する種々の量のカルサイトの効果を説明する例の結果を示す。
図4図4A及び4Bは、最初に酸を消費し、次に低濃度酸性条件でカルシウムイオンを放出することによる、酸化亜鉛可溶化の阻害に対する種々の量のカルサイトの効果を説明する例の結果を示す。
図5図5は、ミネラル日焼け止めの緩衝能に対する種々の量のカルサイトの作用を説明する例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示的な実施態様の詳細な説明
本出願に添付する図面を参照して、ここで実施態様をより詳細に論じる。開示された実施態様は、種々の形態で具現化できる開示の単なる説明であると理解されるべきである。更に、種々の実施態様に関連して挙げられる例のそれぞれは、説明を目的としており、制限を意図するものではない。更には、図は必ずしも縮尺どおりではなく、一部の特徴は特定の構成成分の詳細を示すために誇張される場合がある(図に示されるサイズ、材料及び同様の細部は、説明を目的としており、制限を意図するものではない)。したがって、本明細書に開示される具体的な構造及び機能の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、開示された実施態様を種々に利用することを当業者に教示するための単に代表的な基準として解釈されるべきである。
【0009】
発明の主題をここで、本明細書の一部を形成し、図示により具体的な例示的実施態様を示す、添付の図面を参照しつつ、以下に更に完全に説明する。しかしながら、発明の主題は多種多様な形態で具現化され得、したがって、保護対象とする又は特許請求する発明の主題は、本明細書に記載されたいかなる例示的な実施態様にも限定されないと解釈されるよう意図されている;例示的な実施態様は、単に説明のために提供される。とりわけ、例えば、発明の主題は、方法、装置、構成成分、又はシステムとして具現化され得る。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるよう意図されていない。
【0010】
明細書及び/又は特許請求の範囲を通じて、用語は、明示的に述べられた意味を超えて、文脈において示唆又は暗示される微妙な意味合いを有する場合がある。同様に、本明細書に使用される「1つの実施態様において」という語句は、必ずしも同じ実施態様を指すとは限らず、本明細書に使用される「別の一実施態様において」及び「他の一実施態様において」という語句は、必ずしも異なる実施態様を指すとは限らない。例えば、保護対象とする又は特許請求する発明の主題は、全体又は一部として例示的実施態様の組合せを包含することが意図されている。
【0011】
一般に、用語法は、少なくとも部分的に文脈中での用法から理解され得る。例えば、本明細書に使用されるとき「及び」、「又は」、又は「及び/又は」などの用語は、そのような用語が使用される文脈に少なくとも部分的には依存し得る種々の意味を包含し得る。典型的には、A、B、又はCなどのリストに関連して使用される場合、「又は」は、包括的に使用されてA、B、及びCを意味することが意図されるだけでなく、排他的に使用されてA、B、又はCを意味することが意図される。更に、本明細書に使用されるとき「1つ以上」という用語は、少なくとも部分的には文脈に応じて、任意の特徴、構造、又は特性を単数の意味において説明するために使用することがあり、あるいは特徴、構造、又は特性の組合せを複数の意味において説明するために使用することもある。同様に、「a」、「an」、又は「the」などの用語は、少なくとも部分的には文脈に応じて、単数での用法を伝えるか、又は複数での用法を伝えると理解され得る。更に、「に基づく」という用語は、排他的な一連の要因を伝えることを必ずしも意図するものではないと理解することができ、代わりにまた、少なくとも部分的には文脈に応じて、必ずしも明示的に説明されていない追加の要因の存在を許容することもできる。
【0012】
1つの実施態様において、高緩衝能(「HBC」)剤は、酸化亜鉛(ZnO)又は二酸化チタン(TiO)を含有する日焼け止め化粧品又は日焼け止め組成物に配合される。更に別の一実施態様において、日焼け止め化粧品は、クリーム、ローション、スプレー、ジェル、フォーム、スティック用の組成物、又は皮膚に吸収され得る他の局所用組成物を包含する。別の一実施態様において、本発明は、酸化亜鉛又は二酸化チタンを含有する任意の化粧品又は日焼け止めに有用である。
【0013】
本明細書に使用されるとき、「高緩衝能剤」、「HBC剤」、及び「緩衝剤」という用語は、それらを含む日焼け止め化粧品中で、外部酸性供給源又は物質と優先的に反応して、酸化亜鉛からの亜鉛イオンの放出又は二酸化チタンからのチタンイオンの放出を阻害する(即ち、緩衝剤を含む組成物から放出される亜鉛又はチタンイオンの量が、緩衝剤を包含しない組成物から放出される亜鉛又はチタンイオンの量よりも少なくなるように、亜鉛又はチタンイオンの放出を減少させる)ように構成された、作用薬、化合物又は物質を意味する。1つの実施態様において、HBC剤は、亜鉛又はチタンイオンの放出を約0.2%以上減少させ得る。別の一実施態様において、HBC剤は、亜鉛又はチタンイオンの放出を約0.2%以下減少させ得る。1つの実施態様において、HBC剤は、亜鉛又はチタンイオンの放出を約28%以上減少させ得る。別の一実施態様において、HBC剤は、亜鉛又はチタンイオンの放出を約94%以下減少させ得る。これには、ミネラルの酸化亜鉛及び二酸化チタンの日焼け止め剤において既に放出されて、HBC剤の表面上に不溶性亜鉛及びチタン複合体(例えば、ZnCa(COx+1又はTiCa(CO2x+1)を生成し、こうして亜鉛及びチタンイオンの生体利用性を減少させる、亜鉛イオン及びチタンイオンの吸収も包含される。外部酸性供給源又は物質は、化粧品自体の一部ではないが、日焼け止め化粧品が使用者の皮膚に塗布されると化粧品と混合するか、さもなければ接触するに至る、生物学的及び/又は環境的供給源又は物質である。外部酸性物質の例には、使用者の皮膚、汗、酸性雨、酸性美容製品などが包含される。
【0014】
日焼け止め化粧品において、ミネラル、例えば、酸化亜鉛又は二酸化チタンを無機物理的日焼け止め剤として使用することができる。更には、酸化亜鉛又は二酸化チタンを包含するミネラル系日焼け止め化粧品は、皮膚への浸透が限定されており、皮膚への刺激や感作が少なく、そして広域スペクトルのUVB保護を有し得るので、有機日焼け止め化粧品よりも好ましいであろう。加えて、酸化亜鉛や二酸化チタンなどのミネラルは比較的不活性であると考えられてきた。
【0015】
本発明者は、驚くべきことにかつ予期しないことに、酸性条件に付されると、日焼け止め化粧品中の酸化亜鉛及び二酸化チタンが可溶化され、「遊離」亜鉛及びチタンイオンを放出し得ることを発見した。結果として、酸化亜鉛又は二酸化チタンを含有する、従来の日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、及びその他の日焼け止め化粧品は、毒性作用を有する可能性があった。本発明者は、驚くべきことにかつ予期しないことに、高い緩衝能を有する緩衝剤を添加すると、日焼け止め化粧品における亜鉛及びチタンの可溶化、並びにオキシダント生成を阻害できることを発見した。
【0016】
1つの実施態様において、日焼け止め化粧品が外部の酸性物質又は供給源にさらされるとき(例えば、ヒトの皮膚に塗布される場合、又は汗若しくは酸性雨と接触する場合)、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と反応し、日焼け止め化粧品中の酸化亜鉛からの亜鉛イオンの放出及び二酸化チタンからのチタンイオンの放出を阻害するように構成される。1つの実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と相互作用し、それを中和するように構成される。1つの実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源が、日焼け止め化粧品の元のpH(即ち、外部の酸性物質若しくは供給源にさらされる前の、又はヒトの皮膚に塗布される前の日焼け止め化粧品のpH)に著しい影響を及ぼす(例えば、pHを0.1超低下させる)ことを阻害するように構成される。1つの実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源を阻害するように構成され、日焼け止め化粧品が実質的に安定に維持されたpHを有することを可能にする(例えば、外部の酸性物質若しくは供給源にさらされる前の、又はヒトの皮膚に塗布される前の日焼け止め化粧品のpHが、外部の酸性物質又は供給源にさらされたとき、1pH以内に保たれる)。1つの実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と反応し、日焼け止め化粧品の元のpHを実質的に一定に保持する(例えば、元のpHの1pH以内)ように構成される。1つの実施態様において、HBC剤は、外部酸性供給源又は物質と反応し、日焼け止め化粧品のpHを実質的に中性(例えば、約6.5~約7.5のpH範囲)に保持するように構成される。1つの実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と反応し、日焼け止め化粧品のpHを実質的に中性(例えば、約6.5~約7.5のpH範囲)又はほぼ中性(例えば、pH7の2pH以内)に保持するように構成される。1つの実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と反応し、日焼け止め化粧品のpHを約6.8と約7.2の間に保持するように構成される。別の一実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と反応し、日焼け止め化粧品のpHを約6.5と約8の間に保持するように構成される。他の一実施態様において、HBC剤は、外部の酸性物質又は供給源と反応し、日焼け止め化粧品のpHを約6と約10の間又は6.0超に保持するように構成される。
【0017】
1つの実施態様において、HBC剤は、パールパウダー及び/又はカルサイト粉末を包含する。パール及びカルサイトは、高レベルの炭酸カルシウム(CaCO)を含有する。1つの実施態様において、パールパウダーは、少なくとも90%の炭酸カルシウムを含有し、残りの割合のパールパウダーは、タンパク質、アミノ酸、及びペプチドを包含してもよい。別の一実施態様において、HBC剤は、パール又はカルサイト粉末の類似体(例えば、弱酸(例えば、3~6の範囲のpKa)以外の、周期表の第2族からの高アルカリカチオン(例えば、アルカリ土類金属)を伴うもの)のいずれかであってよい。このような類似体の非限定的な例は、パールパウダー、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、ケイ酸バリウム、シュウ酸バリウム、モリブデン酸バリウム、マンガン酸バリウム、セレン酸バリウム、炭酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、炭酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、セレン酸ストロンチウム、及びそれらの組合せを包含する。炭酸カルシウムと、アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質との組合せを伴うパールパウダーは、カルサイトや他のHBC剤よりも皮膚に優しいであろう。カルシウム系HBC剤は、パールパウダーやカルサイトよりも精密に調整されており、皮膚は高レベルのカルシウムイオンを含有するため、特に適している。加えて、炭酸カルシウムが溶解すると、カルシウムイオンと二酸化炭素(CO)が放出されることになるが、その皮膚への作用は限定的である。
【0018】
1つの実施態様において、日焼け止め化粧品に包含されるHBC剤の量は、化粧品の総重量に対して約0.01%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。別の一実施態様において、HBC剤量は、約2.0%(w/w)~約10%(w/w)の範囲である。更に別の一実施態様において、HBC剤量は、約0.5%(w/w)~約5%(w/w)の範囲である。更なる実施態様において、HBC剤量は、約1%(w/w)~約2%(w/w)の範囲である。
【0019】
1つの実施態様において、日焼け止め化粧品は、日焼け止め化粧製品に包含される慣用の成分を包含することができる。そのような成分は、当業者には容易に理解される。そのような成分の例は、2010年7月22日に公開された米国特許出願公開第2010/0183528 A1号;及び2012年10月25日に公開された米国特許出願公開第2012/0269753 A1号に開示されており、これらの全ての開示は、参照によりその全体を本明細書の記載の一部とする。
【0020】
1つの実施態様において、HBC剤は粉末形態である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、皮膚に侵入し、高い効力を有するために十分に小さくなければならない。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.05μm~約30μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.1μm~約30μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.3μm~約20μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.3μm~約15μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.3μm~約10μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、0.3μm~約5μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.3μm~約2μmの範囲である。1つの実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.03μm~約1μmの範囲である。他の一実施態様において、HBC剤の粒径は、約0.05μmより大、約0.1μmより大、若しくは約0.3μmより大であり、かつ/又は約30μmより小、約20μmより小、約15μmより小、約10μmより小、若しくは約5μmより小である。
【0021】
1つの実施態様において、HBC剤は、粉末を調製するための当該技術分野で公知の任意の方法で調製することができる。例えば、パールは、慣用のブレンダー、グラインダー、ミルなどを使用して破砕、粉砕又は製粉して微粉末にすることができる。1つの実施態様において、HBC剤を、酸化亜鉛及び/又は二酸化チタンを包含する日焼け止め化粧品組成物に加えて、クリーム、ローション、スプレー、ジェル、フォーム、スティック、又は皮膚に吸収され得る他の局所組成物などの所望の日焼け止め化粧品を形成する。1つの実施態様において、日焼け止め化粧品組成物は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して製造することができる。例えば、酸化亜鉛又は二酸化チタンを含有する日焼け止め化粧剤(例えば、乳剤)は、慣用の方法で調製することができ、次いでHBC剤を日焼け止め組成物に加え、組成物とホモジナイズした後に、オプションの乾燥工程などの仕上げ工程を行うことができる。1つの実施態様において、HBC剤は、水相中で、又は乳剤として調製することができる。例えば、HBC剤を有機溶媒中に予備分散させ、次いでペンチレングリコールなどの油相に加え、その後、水相と混合することによって、HBC剤を水相中で調製することができる。1つの実施態様において、HBC剤を水相中に予備分散させ、次いで油相に加えることにより、HBC剤を乳剤として調製することができる。1つの実施態様において、水相中の、又は乳剤としてのHBC剤を、酸化亜鉛又は二酸化チタンを含有する化粧品組成物に加えて、クリーム、ローション、スプレー、ジェル、フォーム、スティック、又は皮膚に吸収され得る他の局所組成物などの所望の日焼け止め化粧品を形成する。
【0022】
以下に提供されるのは、本発明者によってされた発見のより詳細な考察、及びそれに関連する種々の例である。
【0023】
日焼け止め化粧品は、使用者の皮膚へのUVB及びUVA放射の両方を包含する太陽光紫外線(UV)放射の作用に対する保護を提供するために使用されてきた。例えば、UVA及びUVB放射は、コラーゲンや他のマトリックスタンパク質に損傷を与える、様々なマトリックスメタロプロテイナーゼを活性化する活性酸素種(ROS)を産生し得る。この損傷は、皮膚の弾力性を失わせ得る。UVA及びUVBによって引き起こされる損傷は、まとめて光老化と呼ばれる(即ち、皮膚のしわの形成)。過去10年間、UVBフィルター及びUVAフィルターの両方を含有する日焼け止め化粧品ばかりが製造されてきた。酸化亜鉛や二酸化チタンなどのミネラルは、無機物理的日焼け止めとして使用できる。それらは、皮膚への浸透が限定的であり、皮膚への刺激や感作がなく、そして広域スペクトルのUV保護があるため、有機日焼け止めよりも好ましいであろう。加えて、酸化亜鉛及び二酸化チタンは比較的不活性であると考えられてきた。
【0024】
前述の従来の考えにもかかわらず、本発明者は、驚くべきことにかつ予期しないことに、ミネラル系日焼け止め化粧品が内因性及び外因性環境との化学的相互作用を受けることを発見した。例えば、熱を受けた皮膚や汗の酸性pH、及び環境汚染による酸性雨は、日焼け止め化粧品中の酸化亜鉛を可溶化し、以下のとおり亜鉛イオンを放出させて皮膚に吸収させ得る:
【化1】
【0025】
より程度は低いが、酸性条件は、日焼け止め化粧品中の二酸化チタンを、以下のとおりチタンイオンを放出させて皮膚に吸収させる可能性がある:
【化2】
【0026】
更に、本発明者は、驚くべきことにかつ予期しないことに、ミネラル系日焼け止め化粧品中に放出されてしまった亜鉛イオン及びチタンイオンが、HBC剤によって吸収されて、水不溶性の亜鉛及びチタン錯体(例えば、ZnCa(COx+1 又は TiCa(CO2x+1)を生成し得ることを発見した。この吸収は更に、ミネラル系日焼け止め化粧品中の亜鉛及びチタンイオンの生体利用性を減少させる。亜鉛イオンの吸収の化学反応は、以下のとおり書くことができる:
【化3】
【0027】
チタンイオンの吸収の化学反応は、以下のとおり書くことができる:
【化4】
【0028】
ナノサイズの酸化亜鉛及び二酸化チタン粒子を利用することにより、これらのマイクロサイズのミネラル日焼け止め固有の不透明感は、UV遮断効果を低下させることなく除くことができるため、日焼け止め業界はミネラル日焼け止めのナノ粒子を使用する傾向にある。サイズが小さいため、表面積が大きくなって酸性環境にさらされやすくなり、そのため酸化亜鉛及び二酸化チタンのナノ粒子が酸性可溶化の影響を受けやすくなることもある。このように、溶解した亜鉛及びチタンイオンが、酸化亜鉛及び二酸化チタン粒子の毒性作用において重要な役割を果たすおそれがある。例えば、動物吸入試験からの実験的証拠に基づいて、二酸化チタンナノ粒子は、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)によって「ヒトに対する発癌性の可能性」として分類され、国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health)によって職業発癌物質として分類されている。したがって、欧州連合では、スプレー式日焼け止めに二酸化チタンを使用することは禁止されている。
【0029】
しかも、酸化亜鉛及び二酸化チタンの溶解は、これらの金属イオンの細胞取り込みに対する生体利用性、ひいては細胞毒性を高め得る。別の一例として、亜鉛イオンは、フェントン反応として知られる鉄触媒酸化を促進し、より一層完結させ、より一層有害となし得る。
【実施例
【0030】
例1
市販のミネラル日焼け止め中の亜鉛イオン(Zn2+)及びチタンイオン(Ti4+)の水溶性、ひいては生体利用性を検討した。図1は、CeraVe製の保湿日焼け止めを水中に75mg/mlで懸濁した結果を示す。CeraVe日焼け止めは、スペクトルSPF50を有し、二酸化チタン(TiO)9%と酸化亜鉛(ZnO)7%を含有する。CerVe日焼け止めは、懸濁後、Zn2+イオン2.7mMとTi4+イオン3.7mMを放出した。ZnOとTiOが全部可溶化されたと仮定すると、これらの結果は、濃度が、可溶化された粒子ZnO 0.28%とTiO0.39%に等しいことを示す。これは、Zn2+及びTi4+の総濃度、それぞれ921mM及び931mMを与える。興味深いことに、ミネラルZnO(IWAS、日本)だけでは水中にZn2+が放出されなかったことがわかる(図1、最初の棒グラフ)。これらの結果は、CeraVeなどのミネラル日焼け止めが、皮膚への又は吸入後の毒性作用に対して容易に生物学的に利用可能な水溶性のZn2+及びTi4+イオンを含有することを示唆している。
【0031】
例2
図1に示されるとおり、原料としての純粋なZnOミネラルは水中にZn2+を放出しなかった。これは、恐らく表面処理に起因する。この結果を更に調査するために、2種の純粋なZnOミネラル(#1:日本からのIWAS及び#2:韓国からのK.S.Pearl)を水中50%テトラエチルグリコール(TEG)40mlに懸濁した。図2は、純粋なZnO日焼け止め#1及び#2の両方が大量のZn2+イオン(それぞれ20.9mM及び18.3mM)を放出したことを示している。皮膚、汗、及び酸性雨の酸性pHに対して十分な保護作用があるかどうかを証明するために、100mM HCl 800μlを使用して懸濁液を滴定した。懸濁液のpHは、試料#1では6.46から6.39に、試料#2では6.63から6.59にわずかに変化したが、Zn2+イオン濃度は、それぞれ試料#1では20.9mMから24.2mMに、即ち15.8%、試料#2では、18.3mMから22.1mMに、即ち20.8%増加した。これらの結果は、ZnOやTiOなどのミネラル日焼け止めを水不溶性にする表面処理にもかかわらず、ZnO及びTiOは、50%TEGのような水と有機溶媒との混合物中の酸性pHで、なお相互作用し得ることを示している。これらの結果は重大である。なぜなら、水相と油相の混合物を含む乳剤は、どれもミネラル日焼け止めを酸性条件にさらされやすくするからである。これにより、ミネラル粒子が可溶化するおそれがあり、ミネラル日焼け止めの不安全な使用につながるおそれがあるのである。
【0032】
例3
ミネラル日焼け止めへのカルサイトの添加の効果、特にミネラル日焼け止めの緩衝能に対するカルサイトの効果を検討した。この例は、酸の存在下におけるZnOからのZn2+放出の阻害に対するカルサイトの効果を検討するものである。図3は、純粋なZnOが大量のZn2+を放出し、100mM HCl 800μlで懸濁液を滴定すると、放出Zn2+の量が更に10.6%増加したことを示している。興味深いことに、炭酸カルシウムの添加により、酸によるZn2+の放出が阻止され、この阻止は炭酸カルシウムの用量依存的である。
【0033】
HClによるZn2+放出の阻害が、ZnOよりもCaCOによる優先的な酸消費に起因することを更に証明するために、以下の配合物を検討した。すなわち、7%(W/W)のCeraVeミネラル日焼け止め中のZnOレベルと等しいZnOレベルと混合された0.7%、2.1%、及び4.9%のCaCO(W/W)である。これにより、CaCO対ZnOの重量比は10:1、10:3、及び10:7になった。加えて、滴定には50mMの比較的低濃度のHClを使用した。Zn2+の測定とは別に、懸濁液中のCa2+レベルも測定した。図4Aは、50mM HClでは、放出Zn2+の量を3%しか増加させ得なかったことを示している。図2、3、及び4で処理を行わない同じ純粋なZnOミネラル日焼け止めのZn2+濃度を比較すると、Zn2+イオンのバックグラウンドレベルに大きな変動があり、試料の不均一性が示唆された。しかしながら、傾向は同じである。興味深いことに、炭酸カルシウムは、酸によるZn2+放出を阻害した。図4Bは、図3で使用したHClの絶対量が図4での量と同じであるという事実にもかかわらず、低濃度のHClが、CaCOそれぞれ2.1%及び4.9%中よりもCaCO0.7%中でCa2+をより多く放出する能力が高かったことを示している。これらの結果は、弱酸性条件に長時間さらされる場合、より高レベルのCaCOが必要になり得ることを示している。その上、酸の量が限定されているのであるから(図4A)、カルサイトがその限定された酸と完全に反応するとすれば、図4Bでの放出Ca2+の量は同じはずであり、図4AのZn2+の量もまた同じはずであると予想されるだろう。これに対して、そして予期しないことには、放出Ca2+の量は高濃度のカルサイトで低かったが、生物学的に利用可能なZn2+は、高濃度のカルサイトで低かった。これらの結果は、酸の量が限定されている場合、カルサイトをミネラル日焼け止めに添加すると、カルサイトの表面にZn2+イオン及びTi4+イオンを吸収して、水不溶性の亜鉛と炭酸カルシウムとの複合体(例えば、ZnCa(COx+1)を生成させ、日焼け止め中の水溶性Zn2+及びTi4+の量を更に減少させることができることを強く示している。
【0034】
例4
CaCOは、ZnOからのZn2+放出を阻害できることが示された。市販の日焼け止めでこの阻害が起こり得るかどうかは不明である。そこで、ミネラル日焼け止めと混合したときに相溶性であるように、ベースのクリームと、同じクリームにCaCO3%を含有するものとを調製した。ベースのクリーム及び3%CaCO含有ベースクリームを、市販のミネラル日焼け止め(CeraVe、SPF50)と重量比50:50(w/w)で混合して、混合物を50%エタノールに50mg/mlで一晩懸濁した。図5は、先にTEG中で観察されたように、ミネラル日焼け止めがエタノール中にZn2+及びTi2+を放出したことを示している。ベースのクリームは、Zn2+及びTi4+放出に対して有意な効果を及ぼさなかった。興味深いことに、3%CaCOはZn2+及びTi4+のレベルを有意に低下させた。これらの結果は、CaCOとミネラル日焼け止めを前もって混合すると、Zn2+及びTi4+放出を阻害し、そのためその生体利用性及び毒性を減少させる能力があることを示している。
当該技術分野における通常の技術を有する者であって本開示に接した者には、本明細書に記載された実施態様が本質的に単なる例示であり、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変形及び修正をそれに加え得ることが理解されよう。そのような変形及び修正は全て、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】