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特表2023-526678架橋された芳香族ポリマー組成物および絶縁コーティングを作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】架橋された芳香族ポリマー組成物および絶縁コーティングを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230615BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20230615BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230615BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20230615BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230615BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20230615BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20230615BHJP
   C09D 181/04 20060101ALI20230615BHJP
   B32B 37/24 20060101ALI20230615BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20230615BHJP
   H01B 7/28 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
C08L101/02
C08K5/053
C08K3/00
C08J5/04
C09D201/02
C09D171/00
C09D181/04
B32B37/24
H01B7/18 H
H01B7/28 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571789
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021033839
(87)【国際公開番号】W WO2021242672
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/029,524
(32)【優先日】2020-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514179458
【氏名又は名称】グリーン, ツイード テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク, ケリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ソン, リー
(72)【発明者】
【氏名】ギャブリック, リチャード
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J038
5G313
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB04
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AD11
4F072AD42
4F072AD43
4F072AD44
4F072AD45
4F072AD46
4F072AE01
4F072AF04
4F072AF14
4F072AF25
4F072AF26
4F072AH04
4F072AH23
4F072AL14
4F100AA07B
4F100AA07H
4F100AA08B
4F100AA08H
4F100AA16B
4F100AA16H
4F100AA19B
4F100AA19H
4F100AA20B
4F100AA20H
4F100AA37B
4F100AA37H
4F100AD00B
4F100AD00H
4F100AD11B
4F100AG00B
4F100AK01B
4F100AK18B
4F100AK46B
4F100AK47B
4F100AK49B
4F100AK50B
4F100AK51B
4F100AK54B
4F100AK55B
4F100AK56B
4F100AK57B
4F100AL01B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA02B
4F100CA23B
4F100DE01B
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4F100DE03B
4F100DE03H
4F100DE04B
4F100DE04H
4F100DG03B
4F100DG04B
4F100DG13B
4F100EH172
4F100EH17B
4F100EH462
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4F100EJ052
4F100EJ05B
4F100EJ422
4F100JA07B
4F100JB02
4F100JG04
4F100JJ03
4F100JK09
4J002AA031
4J002CH071
4J002CK011
4J002CK021
4J002CL002
4J002CL061
4J002CM021
4J002CM041
4J002CN011
4J002CN031
4J002DA017
4J002DA027
4J002DA037
4J002DD026
4J002DE147
4J002DE237
4J002DG047
4J002DG057
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ027
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002DL007
4J002EC046
4J002EG026
4J002FA042
4J002FA047
4J002FD012
4J002FD017
4J002FD146
4J002FD206
4J002GN00
4J002GQ00
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4J038MA13
4J038NA03
4J038NA11
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB09
5G313AA01
5G313AB10
5G313AC07
5G313AD03
5G313AE01
5G313AE05
5G313FA04
5G313FB04
5G313FC10
5G313FD01
5G313FD08
5G313FD10
5G313FD11
5G313FD13
(57)【要約】
架橋された芳香族ポリマーコーティングを形成するための方法が提供される。このようなコーティングは、絶縁部品上で使用され得るか、または絶縁部品を被包するために使用され得る。コーティングは、高温、高電圧および/または腐食性環境で使用するために形成される。方法は、少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーを含む組成物を提供するステップと、組成物を熱加工するステップと、組成物のコーティングを、絶縁部品の外表面に付与するステップと、組成物中の芳香族ポリマーを架橋して、コーティングされた絶縁部品を提供するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温、高電圧および/または腐食性環境で使用するために、絶縁部品を、架橋された芳香族ポリマーでコーティングする方法であって、
少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーを含む組成物を提供するステップと、
前記組成物を熱加工するステップと、
前記組成物のコーティングを、絶縁部品の外表面に付与するステップと、
前記組成物中の前記芳香族ポリマーを架橋して、コーティングされた絶縁部品を提供するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
架橋が、熱の適用によって開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーが、自己架橋性芳香族ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
架橋が、前記絶縁部品のコーティング後に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋可能な芳香族ポリマーが、前記絶縁部品の前記コーティング中に少なくとも部分的に架橋される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋が、前記絶縁部品の前記コーティングとほぼ同時に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーが、ポリアリーレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリベンズアミド、ポリアミド-イミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記芳香族ポリマーが、架橋のための1個または複数の官能化された基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記芳香族ポリマーが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択されるポリアリーレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の架橋可能なポリマーが、その骨格に沿って、式(I):
【化22】
[式中、Ar、Ar、ArおよびArは、同一のまたは異なるアリールラジカルであり、m=0~1であり、n=1-mである]
の構造に従う繰り返し単位を有するポリアリーレンエーテルである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーが、その骨格に沿って、式(II):
【化23】
の構造を有する繰り返し単位を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーが、他方とは異なる少なくとも1つの反応動力学特性をそれぞれ有する、少なくとも2種の異なるポリマーのブレンドを含み、前記少なくとも1つの反応動力学特性が、架橋反応、架橋反応速度、および熱特性から選択される1つまたは複数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの反応動力学特性が、前記架橋反応速度である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブレンドが、ポリフェニレンスルフィドとポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドとポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテルイミドとポリフェニレンスルフィドの群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ブレンドが、少なくとも1種の第2の架橋可能な芳香族ポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有する少なくとも1種の第1の架橋可能な芳香族ポリマーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーを、前記第1および前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーの総重量に基づいて約1~約50重量パーセントの量で、前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーに組み込むことによって、前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーの前記架橋反応速度を緩徐して、前記ブレンドの溶融加工および後硬化を促進する前記ブレンドの架橋度をもたらすステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーを、前記第1および前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーの総重量に基づいて約1~約50重量パーセントの量で、前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーに組み込むことによって、前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーの前記架橋反応速度を加速して、前記ブレンドの溶融加工および後硬化を促進する前記ブレンドの架橋度をもたらすステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種の第1の架橋可能なポリマーが、ポリフェニレンスルフィドであり、前記少なくとも1種の第2の架橋可能なポリマーが、(i)ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される1種または複数のポリアリーレン、(ii)ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、それらのコポリマーおよびアロイの1つまたは複数、ならびに(iii)ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、次式:
【化24】
[式中、Aは、結合、アルキル、アリール、または約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分であり、R、R、およびRは、同じであるか異なっており、独立に、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択され、mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは、0に等しいまたはそれよりも大きく、2に等しいまたはそれ未満であり、Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝または直鎖の飽和または不飽和アルキル基の群から選択され、xは約1~約6である]
の1つに従う構造を有する少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(IV)に従う構造を有し、
【化25】
【化26】
からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(V)に従う構造を有し、
【化27】
からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(VI)に従う構造を有し、
【化28】
からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
Aが、約1,000g/mol~約9,000g/molの分子量を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
Aが、約2,000g/mol~約7,000g/molの分子量を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、未充填重量の前記組成物の約1重量%~約50重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物中の前記芳香族ポリマーの前記架橋性化合物に対する重量比が、約1:1~約100:1である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、硬化抑制剤または硬化促進剤から選択される架橋反応制御添加剤をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記架橋反応制御添加剤が、前記架橋性化合物の約0.01重量%~約15重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記架橋反応制御添加剤が、酢酸リチウムを含む硬化抑制剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記架橋反応制御添加剤が、塩化マグネシウムを含む硬化促進剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス繊維織物、炭素繊維織物、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維から選択される連続的もしくは非連続的な長いもしくは短い強化繊維から選択される1種もしくは複数の添加剤、ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、ガラスビーズ、ガラス球、ミルドガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ砂(ホウ砂ナトリウム)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、雲母、炭化ケイ素ウィスカーもしくはプレートレット、ナノフィラー、二硫化モリブデン、フルオロポリマーフィラー、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1種もしくは複数のフィラーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、約0.5重量%~約65重量%の前記1種もしくは複数の添加剤および/または1種もしくは複数のフィラーを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、架橋性化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物を前記熱加工するステップが、前記絶縁部品をコーティングするために前記組成物を押し出すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、クロスヘッドダイを通して押し出される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
押出機が二軸押出機を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
硬化が、オーブン内で少なくとも部分的に生じる、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記オーブンが、赤外線または対流式オーブンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記オーブン内でのコーティング後に、前記架橋可能な芳香族ポリマーを硬化および/または後硬化させるステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記オーブン内の滞留時間および/または前記架橋速度が制御される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記絶縁部品の前記外表面を調製して、結合を増強するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記外表面が、前記表面の洗浄、粗面加工および/または化学的修飾の少なくとも1つによって調製される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記外表面が、プライマーおよび/またはカップリング剤を使用して前記外表面を化学的に修飾することによって調製される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
コーティングを前記絶縁部品の前記外表面に付与するステップが、前記絶縁部品の前記外表面に、前記組成物を直接付与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記外表面が、前記表面の洗浄、前記表面の粗面加工および/または前記表面の化学的修飾の少なくとも1つによって調製される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物の前記コーティングを付与する前に、前記絶縁製品の前記外表面に少なくとも1つの中間層を付与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの中間層が、前記絶縁部品の前記外表面との結合を増強する能力を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物の前記コーティングが、前記絶縁部品を被包する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記コーティングを別の表面と接触させる前に、前記コーティングに離型剤を付与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記絶縁部品が、ワイヤー、金属製および/または光ファイバーケーブル、ハイブリッドケーブル、遠隔測定ケーブル、センサー、RFIDチップ、圧電センサー、掘削中検層のためのケーブルまたはワイヤー、モーター巻線、モーター回転子、モーター固定子、ケミカルポンプ、航空機のための電子アクチュエータ、ならびに5G伝送ケーブルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
請求項1に記載の方法から形成された、コーティングされた絶縁部品。
【請求項52】
前記コーティングされた絶縁部品上の、前記架橋ポリマーを有する前記組成物から形成された前記コーティングが、同じポリマー骨格構造の未架橋芳香族ポリマーを有する組成物でコーティングされたコーティング絶縁部品と比べて改善された耐摩耗性をもたらす、請求項51に記載のコーティングされた絶縁部品。
【請求項53】
前記コーティング絶縁部品が、同じポリマー骨格構造の未架橋芳香族ポリマーを有する組成物でコーティングされたコーティング絶縁部品と比べて、ある範囲の電圧にわたって高い使用温度で改善された絶縁抵抗を有する、請求項51に記載のコーティングされた絶縁部品。
【請求項54】
前記コーティング絶縁部品が、同じポリマー骨格構造の未架橋芳香族ポリマーを有する組成物でコーティングされたコーティング絶縁部品と比べて、高い使用温度で改善された絶縁破壊抵抗を有する、請求項51に記載のコーティングされた絶縁部品。
【請求項55】
絶縁部品をコーティングするための組成物であって、第1の架橋可能な芳香族ポリマーおよび第2の架橋可能な芳香族ポリマーを含み、前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーが、前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーにおける同じ反応動力学特性とは異なる少なくとも1つの反応動力学特性を有し、前記少なくとも1つの反応動力学特性が、架橋反応、架橋反応速度、および熱特性から選択される1つまたは複数を含む、組成物。
【請求項56】
前記第1の架橋可能なポリマーおよび前記第2の架橋可能なポリマーが、ポリアリーレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリベンズアミド、ポリアミド-イミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記芳香族ポリマーが、架橋のための1個または複数の官能化された基を含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される少なくとも1種のポリアリーレンである、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
前記少なくとも1つの反応動力学特性が、前記架橋反応速度である、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーが、前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記ブレンドが、約1重量パーセント~約50重量パーセントの前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーおよび約50重量パーセント~約1重量パーセントの前記第2の架橋可能なポリマーを含み、前記第1の架橋可能な芳香族ポリマーの前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーに対する重量パーセンテージ比の範囲が、前記ブレンドの溶融加工および後硬化を促進する前記ブレンドの架橋度をもたらすために、約1:50~約50:1である、請求項59に記載の組成物。
【請求項62】
前記少なくとも1種の第1の架橋可能なポリマーが、ポリフェニレンスルフィドであり、前記少なくとも1種の第2の架橋可能なポリマーが、(i)ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される1種または複数のポリアリーレン、(ii)ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、それらのコポリマーおよびアロイの1つまたは複数、ならびに(iii)ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項60に記載の組成物。
【請求項63】
前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、およびポリエーテルイミドの群から選択される、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記第1および前記第2の架橋可能な芳香族ポリマーとは異なる、1種または複数の追加の架橋可能な芳香族ポリマーをさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項65】
次式:
【化29】
【化30】
[式中、Aは、結合、アルキル、アリール、または約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分であり、R、R、およびRは、同じであるか異なっており、独立に、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択され、mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは、0に等しいまたはそれよりも大きく、2に等しいまたはそれ未満であり、Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝または直鎖の飽和または不飽和アルキル基の群から選択され、xは約1~約6である]
の1つに従う構造を有する少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項66】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、未充填重量の前記組成物の約1重量%~約50重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記組成物中の前記架橋可能な芳香族ポリマーの前記架橋性化合物に対する総重量の重量比が、約1:1~約100:1である、請求項65に記載の組成物。
【請求項68】
前記組成物が、硬化抑制剤または硬化促進剤から選択される架橋反応制御添加剤をさらに含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項69】
前記第1の架橋可能な芳香族ポリマー、前記第2の架橋可能な芳香族ポリマー、または前記第1および前記第2の架橋可能なポリマーの両方が、自己架橋可能であるか、熱的に架橋可能であるか、化学的に架橋可能であるか、または熱的および化学的に架橋可能である、請求項55に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で、2020年5月24日出願の表題「高温、腐食性および/または高電圧の最終用途に供される部品上に使用するための絶縁コーティングを作製する、架橋された芳香族ポリマー組成物および方法(Crosslinked Aromatic Polymer Compositions and Methods of Making Insulation Coatings for Use on Components Subject to High Temperature, Corrosive and/or High Voltage End Applications)」の米国仮特許出願第63/029,524号の利益を主張するものであり、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明の分野は、刺激の強いもしくは腐食性の化学物質、高温および/または高電圧の最終用途に供される部品、例えば、油井穴油および類似の環境に遭遇する部品に付与するための架橋された芳香族ポリマーコーティングに関する。特に、本分野は、絶縁性、耐化学性および高温耐性の改善を実証する、このような使用のためのワイヤーおよび他の部品のためのコーティングを含む。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
航空宇宙およびエネルギー産業では、とりわけ、掘削中の検層および測定のための油井穴用工具、モーター、磁石、水中ポンプ、遠隔測定ケーブル、ならびに油井穴または他の遠隔地の状態を測定するためにセンサーが使用される他の操作において遭遇すると思われる、高温、高電圧および/または刺激の強いもしくは腐食性の化学物質に供されることになるケーブル、ワイヤー、光ファイバーケーブル、ハイブリッドケーブル、個々の繊維または他のデバイスおよび部品などの製品を絶縁し、保護するためのポリマーコーティングに対する需要が高い。さらに、デバイスがワイヤー(複数可)および/またはケーブルを介して接続され、そのワイヤーまたはケーブルにより作業環境のセンサーから測定または検層装置にシグナルを伝送しなければならない場合、精度および性能が重要である。このようなワイヤーおよびケーブルは、航空宇宙部品および流体取扱い部品でも使用され得る。
【0005】
典型的に、このような産業では、ポリアリーレンまたはポリアリーレンエーテルポリマー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)およびポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)、ならびにポリエーテルイミド(PEI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリイミドを含めた、このような環境のための高性能工学ポリマーから形成されたコーティングが用いられてきた。これらのコーティングは許容されるものの、このような材料が使用され得る温度に関して限度がある。さらに、非晶質ポリマー、例えばPEIおよびPPSU、ならびに一部の等級のPEEKは、壊滅的な軟化(90~99%の特性低下を引き起こす場合がある)、および粘着性の増大に起因して、それらのガラス転移温度(T)を超えて使用することができない。半結晶性ポリマーは、それらのTを超える温度で用いることができるが、ポリマーが受けるより高い分子運動性に起因して、それらのTを超えるこのような高温では、機械的および電気的特性が大きく低下することがある。
【0006】
高性能ポリマーは、激しい条件に曝露される部品のワイヤーコーティングおよび絶縁コーティングのための絶縁材料として使用されることが多い。ポリマー材料の絶縁特性は、温度、電流または高電圧および曝露される媒体によって著しく影響を受けることがある。非晶質ポリマーは、Tがより高いが、曝露される媒体に対してより敏感である。半結晶性ポリマーは、より良好な耐化学性を有するが、Tが相対的に低く、それによって有用な適用温度が制限される。ポリマーのブレンド、共重合および架橋は、ポリマーの耐熱性および/または耐化学性などの標準ポリマー特性を改善するために使用されてきた手法である。ポリマーのブレンドは、一部の特性を改善することができるが、他の特性にマイナスの影響を及ぼすことが多い。共重合には、新しい分子設計および合成の広範囲な開発が必要である。
【0007】
誘電部品において使用するための、グラフト化および熱架橋を使用する薄膜を含めた材料を作り出すために、架橋された芳香族を単独でまたはブレンドに使用しようとする初期の試みは、公知である。例えば、米国特許第6,061,170号、同第6,187,248号、同第6,716,955号、同第7179,878号、同第7,919,825号および同第8,502,401号を参照されたい。このような材料は、小型膜では許容されたが、他の最終用途で使用するための材料の調製には困難があった。
【0008】
ここで、芳香族ポリマーおよび架橋性化合物を含めた組成物の従来技術の適用が、出願人によって開発され、それを用いて、米国特許第9,006,353B2号に記載される通り、非架橋ポリマーと比較して高いガラス転移温度を有する材料が達成された。このような組成物はまた、米国特許第9,109,080号において、押出しまたは射出成型などによるパーツの溶融加工を可能にするように架橋速度を制御するための架橋性添加剤との組合せにより、押出し耐性のシーリング部品において使用するための、高温で改善された機械特性を達成したことが、出願人により記載されている。米国特許第9,475,938号および同第9,127,938号を参照されたい。
このような達成が成し遂げられたものの、当技術分野では、芳香族材料を、特性に関してそれらの利益を活用するように使用し、適合させ、刺激の強い腐食性環境、高温および/または高電圧の最終用途における部品のためのコーティングを形成するように容易に加工することができる方式で、それらの材料を加工することができると同時に、それらの材料の機械的、耐熱性および絶縁特性を保持し、このような最終用途におけるそれらの材料の機械的および電気的特性を最大限にする方式で、特性の低下を回避し、架橋された芳香族材料を活用する能力が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,061,170号明細書
【特許文献2】米国特許第6,187,248号明細書
【特許文献3】米国特許第6,716,955号明細書
【特許文献4】米国特許第7,179,878号明細書
【特許文献5】米国特許第7,919,825号明細書
【特許文献6】米国特許第8,502,401号明細書
【特許文献7】米国特許第9,006,353号明細書
【特許文献8】米国特許第9,109,080号明細書
【特許文献9】米国特許第9,475,938号明細書
【特許文献10】米国特許第9,127,938号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、高温、高電圧および/または腐食性環境で使用するために、絶縁部品を、架橋された芳香族ポリマーでコーティングする方法であって、少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマー、および硬化が必要な場合には必要に応じて架橋性化合物を含む組成物を提供するステップと、組成物を熱加工するステップと、組成物のコーティングを、絶縁部品の外表面に付与するステップと、組成物中の芳香族ポリマーを架橋して、コーティングされた絶縁部品を提供するステップとを含む、方法を含む。
【0011】
架橋は、熱の適用によって開始され得る。少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーは、自己架橋性芳香族ポリマーを含むことができ、または例えば架橋性化合物および/もしくは他の添加剤の使用により硬化可能な、1種もしくは複数の架橋可能な芳香族ポリマーを含むことができる。架橋は、絶縁部品のコーティング後に開始され得る。別の実施形態では、架橋可能な芳香族ポリマーは、絶縁部品のコーティング中に少なくとも部分的に架橋され得る。さらに別の実施形態では、架橋は、絶縁部品のコーティングとほぼ同時に生じ得る。
【0012】
少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーは、ポリアリーレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミドおよび熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリベンズアミド、ポリアミド-イミド、芳香族ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフェニレンオキシド、ポリフタルアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択され得る。芳香族ポリマーは、架橋のための1個または複数の官能化された基も含み得る。
【0013】
芳香族ポリマーは、好ましい実施形態では、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択されるポリアリーレンである。一実施形態では、少なくとも1種の架橋可能なポリマーは、その骨格に沿って、式(I):
【化1】
[式中、Ar、Ar、ArおよびArは、同一のまたは異なるアリールラジカルであり、m=0~1であり、n=1-mである]
の構造に従う繰り返し単位を有するポリアリーレンエーテルである。
【0014】
方法の一実施形態では、上記式(I)の少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーは、その骨格に沿って、式(II):
【化2】
の構造を有する繰り返し単位を有することができる。
【0015】
方法では、少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーは、他方とは異なる少なくとも1つの反応動力学特性をそれぞれ有する、少なくとも2種の異なるポリマーのブレンドを含むことができ、少なくとも1つの反応動力学特性は、架橋反応、架橋反応速度、および熱特性から選択される1つまたは複数を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの反応動力学特性は、架橋反応速度である。このようなブレンドは、ポリフェニレンスルフィドとポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドとポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテルイミドとポリフェニレンスルフィドの群から選択され得る。好ましい一実施形態では、ブレンドは、少なくとも1種の第2の架橋可能な芳香族ポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有する少なくとも1種の第1の架橋可能な芳香族ポリマーを含む。このようなブレンドでは、少なくとも1種の第1の架橋可能なポリマーは、ポリフェニレンスルフィドであり、少なくとも1種の第2の架橋可能なポリマーは、(i)ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテル(polyetherdiephenylether)ケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される1種または複数のポリアリーレン、(ii)ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、それらのコポリマーおよびアロイ(allows)の1つまたは複数、ならびに(iii)ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイの1つまたは複数からなる群から選択される。
【0016】
このようなブレンドは、さらに好ましくは、ポリマーの1種がブレンドにおける他の1種または複数のポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有する場合の好ましいブレンドを含めて、架橋反応制御添加剤を添加することなく架橋反応速度を制御する助けになる、異なる反応動力学(例えば、異なる反応、反応速度、熱特性、反応性など)を有する少なくとも2種のポリマーを含み得る。方法の一実施形態では、ブレンドは、少なくとも1種の第2の架橋可能な芳香族ポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有する少なくとも1種の第1の架橋可能な芳香族ポリマーを含む。このような実施形態では、方法は、第1の架橋可能な芳香族ポリマーを、第1および第2の架橋可能な芳香族ポリマーの総重量に基づいて約1~約50重量パーセントの量で、第2の架橋可能な芳香族ポリマーに組み込むことによって、第2の架橋可能な芳香族ポリマーの架橋反応速度を緩徐して、ブレンドの溶融加工および後硬化を促進するブレンドの架橋度をもたらすステップをさらに含み得る。代替として、方法は、第2の架橋可能な芳香族ポリマーを、第1および第2の架橋可能な芳香族ポリマーの総重量に基づいて約1~約50重量パーセントの量で、第1の架橋可能な芳香族ポリマーに組み込むことによって、第1の架橋可能な芳香族ポリマーの架橋反応速度を加速して、ブレンドの溶融加工および後硬化を促進するブレンドの架橋度をもたらすステップをさらに含み得る。
【0017】
方法において使用される組成物は、次式:
【化3】
[式中、Aは、結合、アルキル、アリール、または約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分であり得、R、R、およびRは、同じであっても異なっていてもよく、独立に、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択することができ、mは、好ましくは0~2であり、nは、好ましくは0~2であり、m+nは、好ましくは0に等しいまたはそれよりも大きく、2に等しいまたはそれ未満であり、Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝または直鎖の飽和または不飽和アルキル基の群から選択することができ、xは、好ましくは約1~約6である]
の1つに従う構造を有する少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含み得る。
【0018】
少なくとも1種の架橋性化合物はさらに、式(IV)に従う構造を有し、
【化4】
【化5】
からなる群から選択することができる。
【0019】
少なくとも1種の架橋性化合物はさらに、式(V)に従う構造を有することができ、
【化6】
からなる群から選択することができる。
【0020】
少なくとも1種の架橋性化合物は、式(VI)に従う構造を有することができ、
【化7】
からなる群から選択することができる。
【0021】
一実施形態では、Aは、約1,000g/mol~約9,000g/molの分子量を有することができ、好ましくはAは、約2,000g/mol~約7,000g/molの分子量を有することができる。
【0022】
少なくとも1種の架橋性化合物は、未充填重量の組成物の約1重量%~約50重量%の量で、方法において使用される組成物中に存在することができる。組成物中の芳香族ポリマーの架橋性化合物に対する重量比は、約1:1~約100:1であり得る。
【0023】
方法において使用される組成物は、硬化抑制剤または硬化促進剤から選択される架橋反応制御添加剤をさらに含み得る。このような架橋反応制御添加剤は、架橋性化合物の約0.01重量%~約15重量%の量で組成物中に存在し得る。架橋反応制御添加剤は、アルカリ性添加剤およびフィラー、例えば酢酸リチウムを含む硬化抑制剤であり得る。架橋反応制御添加剤はまた、酸性添加剤およびフィラー、例えば塩化マグネシウムを含む硬化促進剤であり得る。
【0024】
方法の組成物はまた、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス繊維織物、炭素繊維織物、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維から選択される連続的もしくは非連続的な長いもしくは短い強化繊維から選択される1種もしくは複数の添加剤、ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、ガラスビーズ、ガラス球、ミルドガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ砂(ホウ砂ナトリウム)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、雲母、炭化ケイ素ウィスカーもしくはプレートレット、ナノフィラー、二硫化モリブデン、フルオロポリマーフィラー、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1種もしくは複数のフィラーを含み得る。組成物は、約0.5重量%~約65重量%の1種もしくは複数の添加剤および/または1種もしくは複数のフィラーを含み得る。方法では、組成物は、架橋性化合物をさらに含み得る。
【0025】
組成物を熱加工するステップは、絶縁部品をコーティングするために組成物を押し出すことをさらに含み得る。組成物は、クロスヘッドダイを通して押し出され得る。押出機は、二軸押出機または一軸押出機であり得る。方法では、硬化は、オーブン内で少なくとも部分的に生じ得る。オーブンは、赤外線または対流式オーブンであり得る。
【0026】
方法は、オーブン内でのコーティング後に、架橋可能な芳香族ポリマーを硬化および/または後硬化させるステップをさらに含み得る。オーブン内の滞留時間および/または架橋速度、ならびに本明細書の好ましい実施形態では、ワイヤーおよび/またはケーブルなどをコーティングするための引抜き速度は、コーティング形成中に制御することができる。
【0027】
方法は、絶縁部品の外表面を調製して、結合を増強するステップをさらに含み得る。外表面は、表面の洗浄、粗面加工および/または化学的修飾の少なくとも1つによって調製され得る。外表面は、プライマーおよび/またはカップリング剤を使用して外表面を化学的に修飾することによって調製され得る。
【0028】
コーティングを絶縁部品の外表面に付与するステップは、絶縁部品の外表面に、組成物を直接付与することを含み得る。このような実施形態では、外表面は、表面の洗浄、表面の粗面加工および/または表面の化学的修飾の少なくとも1つによって調製され得る。
【0029】
方法は、組成物のコーティングを付与する前に、絶縁製品の外表面に少なくとも1つの中間層、例えば、未架橋芳香族化合物を付与するステップをさらに含み得る。方法では、少なくとも1つの中間層は、絶縁部品の外表面との結合を増強する能力を提供し得る。
【0030】
組成物のコーティングは、絶縁部品をさらに被包し得る。
【0031】
方法は、コーティングを別の表面と接触させる前に、コーティングに離型剤を付与するステップをさらに含み得る。
【0032】
コーティングのための絶縁部品は、例えば、とりわけワイヤー、金属製および/または光ファイバーケーブル、ハイブリッドケーブル、遠隔測定ケーブル、センサー、RFIDチップ、圧電センサー、掘削中検層のためのケーブルまたはワイヤー、モーター巻線、モーター回転子、モーター固定子、ケミカルポンプ、航空機のための電子アクチュエータ、ならびに5G伝送ケーブルであり得る。
【0033】
方法は、本明細書に記載される方法から形成された、コーティングされた絶縁部品をさらに含む。本明細書の一実施形態では、本明細書の方法から形成された、コーティングされた絶縁部品は、そのコーティングされた絶縁部品上に、同じポリマー骨格構造の未架橋芳香族ポリマーを有する組成物でコーティングされたコーティング絶縁部品と比べて改善された耐摩耗性をもたらす、架橋ポリマーを含む本明細書に記載される組成物から形成されたコーティングを有することができる。
【0034】
別の実施形態では、コーティングされた絶縁部品は、同じポリマー骨格構造の未架橋芳香族ポリマーを有する組成物でコーティングされたコーティング絶縁部品と比べて、ある範囲の電圧にわたって高い使用温度で改善された絶縁抵抗を有することができる。
【0035】
別の実施形態では、コーティングされた絶縁部品は、同じポリマー骨格構造の未架橋芳香族ポリマーを有する組成物でコーティングされたコーティング絶縁部品と比べて、高い使用温度で改善された絶縁破壊抵抗を有する。
【0036】
本発明はさらに、絶縁部品をコーティングするための組成物であって、第1の架橋可能な芳香族ポリマーおよび第2の架橋可能な芳香族ポリマーを含み、第1の架橋可能な芳香族ポリマーが、第2の架橋可能な芳香族ポリマーにおける同じ反応動力学特性とは異なる少なくとも1つの反応動力学特性を有し、少なくとも1つの反応動力学特性が、架橋反応、架橋反応速度、および熱特性から選択される1つまたは複数を含む、組成物を含む。組成物中、第1の架橋可能なポリマーおよび第2の架橋可能なポリマーは、ポリアリーレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリベンズアミド、ポリアミド-イミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択され得る。第1および第2の架橋可能な芳香族ポリマーのいずれかまたは架橋可能な芳香族ポリマーのすべては、架橋のための1個または複数の官能化された基を含み得る。
【0037】
第2の架橋可能な芳香族ポリマーは、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択されるものを含むが、それらに限定されないポリアリーレンの1種または複数であり得る。少なくとも1つの反応動力学特性は、好ましくは架橋反応速度である。第1の架橋可能な芳香族ポリマーは、好ましくは、第2の架橋可能な芳香族ポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有する。
【0038】
一実施形態では、ブレンドは、約1重量パーセント~約50重量パーセントの第1の架橋可能な芳香族ポリマーおよび約50重量パーセント~約1重量パーセントの第2の架橋可能なポリマーを含み、第1の架橋可能な芳香族ポリマーの第2の架橋可能な芳香族ポリマーに対する重量パーセンテージ比の範囲は、ブレンドの溶融加工および後硬化を促進するブレンドの架橋度をもたらすために、約1:50~約50:1である。
【0039】
少なくとも1種の第1の架橋可能なポリマーは、好ましい一実施形態では、ポリフェニレンスルフィドであり、このような実施形態における少なくとも1種の第2の架橋可能なポリマーは、(i)ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される1種または複数のポリアリーレン、(ii)ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、それらのコポリマーおよびアロイの1つまたは複数、ならびに(iii)ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイの1つまたは複数から選択され得る。さらに好ましい実施形態では、第2の架橋可能な芳香族ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、およびポリエーテルイミドの群から選択され得る。
【0040】
組成物は、第1および第2の架橋可能な芳香族ポリマーとは異なる、1種または複数の追加の架橋可能な芳香族ポリマーをさらに含み得る。
【0041】
組成物は、次式:
【化8】
【化9】
[式中、Aは、結合、アルキル、アリール、または約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分であり、R1、R2、およびR3は、同じであるか異なっており、独立に、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択され、mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは、0に等しいまたはそれよりも大きく、2に等しいまたはそれ未満であり、Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝または直鎖の飽和または不飽和アルキル基の群から選択され、xは約1~約6である]
の1つに従う構造を有する少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含み得る。
【0042】
組成物のこのような実施形態では、少なくとも1種の架橋性化合物は、未充填重量の組成物の約1重量%~約50重量%の量で組成物中に存在し得る。さらに、組成物中の架橋可能な芳香族ポリマーの架橋性化合物に対する総重量の重量比は、約1:1~約100:1である。組成物は、必要に応じて、硬化抑制剤または硬化促進剤から選択される架橋反応添加剤、例えば、反応制御添加剤をさらに含み得る。
【0043】
第1の架橋可能な芳香族ポリマー、第2の架橋可能な芳香族ポリマー、または第1および第2の架橋可能なポリマーの両方は、自己架橋可能であるか、熱的に架橋可能であるか、化学的に架橋可能であるか、または熱的および化学的に架橋可能である。
【0044】
図面のいくつかの図の簡単な説明
前述の概要、および本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図と併せて読まれる場合、より良く理解されよう。本発明を例示する目的で、現在好ましい実施形態を図に示す。しかし本発明は、示されるまさにその配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、プロセスのコーティング装置の変形形態を含む、本発明による方法の好ましい実施形態の概略図である。
【0046】
図2図2は、PEEKおよび本明細書の実施例1の架橋されたPEEKについての、貯蔵誘電率対温度の関係のグラフ表示である。
【0047】
図3図3は、PEEKおよび本明細書の実施例1の架橋されたPEEKについての、誘電損失正接対温度の関係のグラフ表示である。
【0048】
図4図4は、本明細書の実施例6のブレンドにおけるPPSの重量パーセンテージに対してクロスオーバータイムをプロットすることによって表される、PPS/PEEKブレンドに組み込まれた場合のPPSの含量の効果のグラフ表示である。
【0049】
図5図5は、貯蔵弾性率G’(Paで測定)のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の詳細な説明
本発明は、絶縁部品を、架橋された芳香族ポリマーを含む組成物でコーティングする方法を含む。方法は、高温、高電圧、刺激の強いおよび/または腐食性環境で使用するための、このような組成物を使用するコーティングを提供する。方法に従ってコーティングを形成するための組成物、およびその最終使用を、本明細書にさらに記載する。
【0051】
本明細書における本発明では、少なくとも1種の架橋可能な芳香族ポリマーを含む組成物が用いられる。組成物は、方法において使用するために提供され、絶縁部品の外表面に付与される組成物のコーティングを形成するために熱加工される。組成物および組成物を使用して形成されたコーティング、ならびに本明細書の方法は、架橋可能でない材料と同等の延性を維持しながら、機械特性、絶縁特性および摩耗特性に関して、絶縁部品において絶縁材料として使用するための架橋可能でない芳香族ポリマーを上回る利点をもたらす。
【0052】
方法では、組成物のコーティングは、絶縁部品の外表面に付与される。組成物中の芳香族ポリマーは、コーティングされた絶縁部品を提供するために架橋される。コーティングは、外層もしくは管状コーティング(例えば、ワイヤーまたはケーブル上のコーティング)であってもよく、またはコーティングされていないもしくは中間層(複数可)で既にコーティングされていてもよい絶縁部品の、部分的もしくは完全な被包であってもよい。方法によって付与された組成物のコーティングは、金属、合金、ガラス、セラミック、ポリマー材料および複合材料を含む表面などの様々な基材表面に提供することができる。
【0053】
本発明はまた、架橋反応、架橋反応速度、および熱特性などの少なくとも1つの反応動力学特性に関しても異なる2種の異なる架橋可能な芳香族ポリマーのブレンドを含む、絶縁部品をコーティングするための方法および組成物に従って形成された絶縁部品を含む。ブレンドにおける架橋可能な芳香族ポリマーの量を使用して架橋反応速度を調整して、溶融加工、後硬化および他の加工処理のための特性をもたらすことができる。
【0054】
以下にさらに論じる通り、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)の架橋は、使用される装置および用いられる加工条件に応じて、絶縁部品のコーティングの前、その間および/またはその後に開始および/または完了され得る。一実施形態では、架橋は、絶縁部品のコーティングとほぼ同時に生じる。架橋は、熱の適用により一部のポリマーで生じ得る。自己架橋性芳香族ポリマーを使用してもよく、または下記の通り化学的および/もしくは熱的に架橋可能な芳香族ポリマーを使用してもよい。本明細書の実施形態では、好ましくは、コーティングプロセス中に少なくとも一部の架橋が生じ、架橋は、コーティングを付与した後もさらなる加熱、照射などにより継続し得る。後硬化も、本明細書において意図される。
【0055】
本明細書の組成物は、1種または複数の架橋可能な芳香族ポリマーを含む。本明細書の架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、多種多様な架橋された芳香族ポリマーのいずれであってもよい。好ましい実施形態では、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、ポリアリーレンポリマー、例えば、ポリアリーレンエーテル(PAE)、ポリアリーレンケトン(PAK)またはポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)および当技術分野で公知であるかもしくは開発されることになるその様々なコポリマーである。芳香族ポリマー組成物は、架橋することができる芳香族ポリマーを含み、必要に応じて少なくとも1種の架橋性化合物を含み得る。
【0056】
本明細書の架橋可能な芳香族ポリマーの架橋は、好ましくは、グラフト架橋のためにポリマーを修飾し、次に芳香族ポリマーを十分な高温に曝露して、ポリマーの自己架橋を誘導すること、および/または架橋可能な芳香族ポリマーを1種もしくは複数の別個の架橋性化合物と一緒に使用することのいずれかによって達成される。
【0057】
芳香族ポリマーは、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,060,170号にさらに記載されている通り、例えば、ポリマー骨格上に官能基をグラフトすることによって架橋されてもよく、それによって、ポリマーを架橋するように熱的に誘導することができる。代替として、架橋可能な芳香族ポリマーは、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,658,994号に開示されている通り、約350℃超またはそれを超える温度での熱作用によって架橋されてもよい。熱架橋で使用するための好ましい材料の例は、以下に示される1,2,4,5テトラ(フェニルエチニル)ベンゼンである。
【化10】
【0058】
本願の好ましい実施形態では、本発明の架橋可能なポリマー組成物は、芳香族ポリマー、およびポリマーマトリックス内で鎖にわたってまたはそれ自体で芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物を含む。このようなポリマーには、重合を介するもの、または自己架橋を可能にする官能基を介するものが含まれ得る。形成されたポリマーが、溶媒キャスト法または溶融加工などによりコーティング形態において加工可能であるという条件で、グラフト架橋を使用することもできる。
【0059】
方法において使用される組成物の架橋可能な芳香族ポリマーは、ポリアリーレンエーテルおよび/またはポリアリーレンケトン、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)など;ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリフェニルスルホン(PPSU);ポリイミド(PI);ポリエーテルイミド(PEI)および熱可塑性ポリイミド(TPI);ポリベンズアミド(PBA);ポリアミド-イミド(PAI);芳香族ポリ尿素;ポリウレタン(PU);ポリフタルアミド(PPA);ポリベンゾイミダゾール(PBI);ポリアラミド、あるいは多種多様なコポリマーを含めた当技術分野で公知であるかもしくは開発されることになる類似の芳香族ポリマー、ならびにこのようなポリマーを官能化もしくは誘導体化したものを含めた、様々なポリアリーレンホモポリマーまたはコポリマーのいずれであってもよい。本明細書に記載される方法に従う様々なポリケトンおよびポリスルホンホモポリマーおよびコポリマーの例は、McGrail, "Polyaromatics," Polymer International 41 (1996), pp. 103-120に概説されている。
【0060】
架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、所望の通りに特定の特性を達成するためにまたは特定の用途の必要に応じて、官能化されていても官能化されていなくてもよく、例えば官能基、例えばヒドロキシル、メルカプト、アミン、アミド、エーテル、エステル、ハロゲン、スルホニル、アリールおよび官能性アリール基または他の官能基を、企図された終端効果および特性に応じて提供することができる。芳香族ポリマーはまた、一方が架橋可能であるという条件で、ポリマーブレンド、アロイ、またはこのような芳香族ポリマーの2種もしくはそれよりも多くのコポリマーもしくは他の複数モノマー重合であってもよい。好ましくは、芳香族ポリマーがブレンドまたはアロイである場合、芳香族ポリマーは、適合性のある加工温度範囲内で加工可能であるように選択される。
【0061】
方法の実施形態では、方法においてコーティングのために使用される組成物において、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、その骨格に沿って、式(I):
【化11】
[式中、Ar、Ar、ArおよびArは、同一のまたは異なるアリールラジカルであってもよく、m=0~1であり、n=1-mであり、このようなポリマーは、関連する芳香族ポリマー分野で公知の企図される最終使用に応じて、多種多様な分子量および鎖長であってもよい]
に従う構造を有するポリマー繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)であり得る。式(I)のArラジカルには、ビフェニル、テルフェニル、アントラセン(Lanthracene)、ナフチル、および他の多環芳香族部分が含まれるが、これらに限定されない。当技術分野では、ポリマーが、最終用途の使用温度に応じてポリマーまたはコポリマー構造としてより適したものになるように選択または修飾され得るように、Tgを上昇させるための大型アリール構造が公知である。前述のMcGrailを参照されたい。
【0062】
さらなる実施形態では、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、式(I)(式中、mは1であり、nは0である)のようなポリ(アリーレンエーテル)であってもよく、芳香族ポリマーは、その骨格に沿って、以下の式(II):
【化12】
に示される構造を有する繰り返し単位を有する。
【0063】
このようなポリマーは、例えば、ペンシルベニア州クルスビルのGreene,Tweed製のUltura(商標)として商業的に得ることができる。
【0064】
好ましい実施形態では、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン(PEDEK)およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)を含めた、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の1種または複数である。架橋可能な芳香族ポリマーは、前述の通り商業的に入手可能な架橋可能な芳香族ポリマーであってもよい。本発明において使用するためのPAEKは、例えばVictrex,plcから入手可能な名称Victrex(商標)PEEKのPEEK、Solvay製のKetaSpire(登録商標)PEEK、およびEvonik製のVestakeep(登録商標)として商業的に入手可能である。ケトンおよび/またはスルホンならびに他のビフェニル、ジフェニルおよびトリフェニル誘導体を含めた、このような材料の適切なコポリマーを使用することもできる。
【0065】
必要に応じた架橋性化合物(複数可)が使用される本明細書の実施形態では、このような架橋性化合物は、芳香族ポリマーの化学的架橋を開始することができるこのようないずれの化合物であってもよい。架橋可能な芳香族ポリマーとの使用に好ましい架橋性化合物は、出願人らの米国特許第9,006,353号に記載されており、これは関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。このような架橋性化合物は、一般構造
【化13】
を有する
[式中、Rは、OH、NH、ハライド、エステル、アミン、エーテルまたはアミドであり、xは1~6であり、Aは、約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分である]。このような架橋性化合物は、芳香族ポリマー、例えばポリアリーレンケトンと反応すると、熱的に安定な架橋されたオリゴマーまたはポリマーを形成する。
【0066】
このような架橋技術により、そのように修飾されたポリマー、すなわち、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトンおよび他のポリアリーレンケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、アラミド、ならびにポリベンゾイミダゾールに応じて、260℃超、さらには400℃超もしくはそれを超える温度まで熱的に安定になるように、当技術分野で架橋が困難であると考えられていた芳香族ポリマーを、架橋可能な形態で形成することが可能になった。
【0067】
芳香族ポリマーを架橋するための追加の架橋性化合物には、以下の構造のいずれかによる架橋性化合物の1種または複数が含まれる
【化14】
[式中、Qは結合であり、Aは、Q、アルキル、アリール、または約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分であり得る。R、R、およびRのそれぞれは、同じであっても異なっていてもよく、独立に、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(-NH)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または好ましくは1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択することができる]。式(IIIa)は、式(III)の部分AがQ(結合を表す)によって置き換えられており、式(IIIa)のRが、式(III)のRとは異なる定義を有することを除いて、上記式(III)と実質的に同じである。
【0068】
式(V)中、mは、好ましくは0~2であり、nは、好ましくは0~2であり、m+nは、0に等しいまたはそれよりも大きく、2に等しいまたはそれ未満である。さらに式(V)中、Zは、好ましくは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝または直鎖の飽和または不飽和アルキル基の群から選択される。式(III)と同様に、式(IIIa)、(V)および(VI)のいずれにおいても、xは、やはり約1~約6である。
【0069】
本発明の方法において使用される組成物は、1種または複数の架橋性化合物のブレンドを含み得る。別の実施形態では、組成物は、架橋可能なポリマー組成物の芳香族ポリマーに基づいて選択することができる単一の架橋性化合物を含み得る。
【0070】
さらなる実施形態では、本発明の架橋可能なポリマー組成物の架橋性化合物は、次式:
【化15】
の1つに従う構造を有する。
【0071】
式(IV)~(VI)のそれぞれにおいて、Aは、結合、アルキル、アリール、または好ましくは約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分であり得る。約10,000g/mol未満の分子量により、構造全体が芳香族ポリマーとより混和するようになり、芳香族ポリマーおよび架橋性化合物を含む組成物中に分域がほとんどまたは全くない、均一な分布が得られる。より好ましくは、Aは、約1,000g/mol~約9,000g/molの分子量を有する。最も好ましくは、Aは、約2,000g/mol~約7,000g/molの分子量を有する。
【0072】
部分Aは、以下
【化16】
【化17】
を含むがこれらに限定されない、様々な構造を有するように変更することができる。
【0073】
さらに部分Aは、所望に応じて、例えば限定されるものではないが、サルフェート、ホスフェート、ヒドロキシル、カルボニル、エステル、ハライドもしくはメルカプト、または上記のその他の官能基などの1種または複数の官能基を使用して官能化することができる。
【0074】
式(IV)および(VI)中、Rは、好ましくは、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または好ましくは1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択される。
【0075】
式(V)中、R、R、およびRは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または好ましくは1~約6個の炭素原子の分枝もしくは直鎖の飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立に選択される。したがって、R、R、およびRは、それぞれ異なっていてもよく、R、R、およびRのうちの2つが同じで、3つ目が異なっていてもよく、またはR、R、およびRのそれぞれが同じであってもよい。さらに、式(V)中、mは、好ましくは0~2であり、nは、好ましくは0~2であり、m+nは、好ましくは0に等しいまたはそれよりも大きく、2に等しいまたはそれ未満である。したがって、式(V)中、1個または2個のR基が存在してもよく、1個または2個のR基が存在してもよく、1個のR基および1個のR基が存在してもよく、またはRおよびRの両方が存在していなくてもよい。式(V)中、Zは、好ましくは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝または直鎖の飽和または不飽和アルキル基の群から選択される。式(IV)~(VI)のいずれにおいても、xは、好ましくは約1~約6である。
【0076】
式(IV)に従う架橋性化合物を有する実施形態では、架橋性化合物は、以下の1つまたは複数に従う構造を有することができる。
【化18】
【化19】
【0077】
先に列挙した架橋性化合物は、限定的であることを企図されず、単に、式(IV)による架橋性化合物の例として提供される。上述の式(IV)の架橋性化合物において、Rは、ヒドロキシル基であるとして示される。部分Aは、様々なアリール基のいずれかであるとして示されており、xは、2または4のいずれかであるとして示される。
【0078】
式(V)の架橋性化合物を有する実施形態では、架橋性化合物は、以下の1つまたは複数に従う構造を有することができる。
【化20】
【0079】
先に列挙した架橋性化合物は、限定的であることを企図されず、単に、式(V)による架橋性化合物の例として提供される。式(V)の上述の架橋性化合物において、Zは、1個の炭素原子またはOを有するアルキル基であるとして示される。Rは、ヒドロキシ基であるとして示される。RおよびRは、同じであるか、異なっているかまたは存在しないものとして示される。部分Aは、結合またはアリール基であるとして示される。さらに、xは、1または2であるとして示される。
【0080】
架橋性化合物が式(VI)に従う構造を有する実施形態では、架橋性化合物は、以下の構造の1つまたは複数を有することができる。
【化21】
【0081】
先に列挙した架橋性化合物は、限定的であることを企図されず、単に、式(VI)による架橋性化合物の例として提供される。式(VI)の先の化合物において、Rは、ヒドロキシ基として示される。部分Aは、結合またはアリール基であるとして示される。さらに、xは、2であるとして示される。
【0082】
本明細書の方法において使用される組成物中の架橋可能な芳香族ポリマーと使用するための架橋性化合物(複数可)の量は、架橋可能な芳香族ポリマーおよび架橋性化合物の未充填組成物の総重量に基づいて、(合計で)好ましくは約1重量%~約50重量%、5重量%~約30重量%または約10%~約35%、または約8重量%~約24重量%である。
【0083】
本発明の方法において使用される組成物は、架橋可能な芳香族ポリマーの架橋性化合物に対する重量比が、好ましくは約1:1~約100:1であり得る。より好ましくは、組成物中の架橋可能な芳香族ポリマーの架橋性化合物に対する重量比は、約3:1~約10:1である。
【0084】
組成物は、必要に応じて、溶融加工および後処理中の硬化反応速度を制御するための架橋反応添加剤をさらに含み得る。このような添加剤は、コーティングされた絶縁部品を達成するのに望ましい架橋スピードおよび密度に応じて、方法の様々な段階で混合することができ、連続法についてはコーティングプロセスのスピードに依存して混合することができる。硬化反応速度、すなわち架橋の速度および程度を制御するための架橋反応制御添加剤の使用は、使用される特定の芳香族ポリマーおよび架橋性化合物の硬化反応動力学に応じても決まる。したがって、含まれる架橋反応制御添加剤は、硬化抑制剤(ルイス塩基作用剤)、例えば高反応速度の反応のための酢酸リチウムであり得、または架橋反応添加剤は、硬化反応速度が緩慢過ぎる場合には、硬化促進剤(ルイス酸作用剤)、例えば塩化マグネシウムもしくは他の希土類金属ハロゲン化物であり得る。組成物が架橋反応制御添加剤を含む場合、組成物中の架橋反応制御添加剤の量は、架橋性化合物の重量に基づいて、好ましくは約0.01重量%~約5重量%であるが、所与のシステムにおいて達成される反応速度に応じて調整され得る。
【0085】
先の組成物は、組成物中の架橋可能な芳香族ポリマーのブレンドを有するように形成され得る。このようなブレンドは、2種またはそれよりも多いこのようなポリマーを含む。しかしブレンドは、方法およびコーティングプロセス中、組成物の架橋性制御に至る代替経路として使用され得る。反応を制御することにより、架橋がプロセスの初期にも後期にも生じることができ、コーティングを提供する製造者には、強度および他の所望の特性、コーティングの厚さ、ならびに特性の一貫性に関して多種多様な選択肢が与えられる。
【0086】
方法では、2種またはそれよりも多い架橋可能な芳香族ポリマー、例えば上記のものは、ブレンドを形成することができる。2種のポリマー(第1および第2のポリマー)は、このような場合、好ましくは2種の異なるポリマーであり、それぞれその反応動力学の一部の態様に関して他方とは異なっており、すなわちそれぞれ、好ましくは他方とは異なる少なくとも1つの反応動力学特性を有する。ブレンドにおいて2種より多くのこのような架橋可能な芳香族ポリマーが存在する場合には、それらの少なくとも2種は、この態様(複数可)が異なっているべきである。少なくとも1つの反応動力学特性は、例えば、架橋反応の性質、架橋反応速度、および/または熱特性、ならびに反応自体のスピードまたは進行速度を変更する、架橋と関連する任意の他の特性であり得る。好ましい実施形態では、最も典型的には、ブレンドにおける架橋可能な芳香族ポリマーを変更するのに有用な反応動力学特性は、架橋反応速度である。
【0087】
このようなブレンドは、本明細書に記載される上記のポリマーのいずれかから形成することができる。適切なブレンドの例として、ポリフェニレンスルフィドとポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドとポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテルイミドとポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
【0088】
ブレンドにおける第1の架橋可能な芳香族ポリマーが、ブレンドにおける第2のまたは異なる架橋可能な芳香族ポリマーよりも緩慢な架橋反応速度を有するポリマーである場合には、好ましい一実施形態では、第1の架橋可能なポリマーは、より緩慢な架橋速度を有する種類のポリマー、例えばポリフェニレンスルフィド、または架橋速度がやはり緩慢な他の類似のポリマーであり得る。このような実施形態では、より急速架橋性のポリマーは、異なるまたは第2の架橋可能な芳香族ポリマー、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイから選択される1種または複数のポリアリーレン、1種または複数のポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ならびにそれらのコポリマーおよびアロイ、ならびにポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ならびにそれらのブレンド、コポリマーおよびアロイの1つまたは複数であり得る。これらの材料のコポリマーおよびブレンドを使用し、所望に応じて当技術分野で公知の技術を使用してポリマーに官能基を提供して、架橋を促進することもできる。
【0089】
ブレンドは、さらに好ましくは、上述のものなどの架橋反応添加剤を添加することなく、架橋反応速度の制御を助けるための様々な反応動力学(例えば、様々な反応、反応速度、熱特性、反応性など)を有する少なくとも2種のポリマーをさらに含み得る。ブレンドにおけるポリマーの1つが、より緩慢な架橋反応速度を有している場合、そのポリマーを、より急速な架橋速度を有する他の1種または複数のポリマーに添加して、ブレンドにおける全体的架橋速度を低減することができる。したがって、より急速架橋性のポリマーを用いて作業する場合、組成物は、より緩慢な架橋反応速度の第1の架橋可能な芳香族ポリマーを、第2の架橋可能な芳香族ポリマーに組み込むようにブレンドされ得る。より緩慢な架橋可能な芳香族ポリマーは、好ましくは、第1および第2の架橋可能な芳香族ポリマーの総重量に基づいて約1~約50重量パーセントの量で添加される。これにより、ブレンドの溶融加工および後硬化を最適化し、促進する、ブレンドの架橋度がもたらされる。
【0090】
方法において代替として、第1の架橋可能な芳香族ポリマーの架橋反応速度を、異なる架橋反応速度を有する第2の架橋可能な芳香族ポリマーのブレンドへの添加を使用して加速させるために、より緩慢に硬化する架橋可能な芳香族ポリマーに基づく組成物を、より急速架橋性の架橋可能な芳香族ポリマーを用いて修飾することによって、逆のことを行うこともできる。より急速に架橋可能な芳香族ポリマーは、第1および第2の架橋可能な芳香族ポリマーの総重量に基づいて約1~約50重量パーセントの量で、より緩慢に架橋可能な芳香族ポリマーに添加され得る。この方式で、ブレンドの溶融加工および後硬化を促進する架橋度をブレンドにもたらすようにブレンディングすることによって、同じ組成物を修飾することもできる。
【0091】
この実施形態では、様々な硬化反応動力学を有する2種の架橋可能な芳香族ポリマーが使用される、このようなブレンドを必要に応じて使用することによって、上記のものなどの硬化制御添加剤を組み込む必要なしに、ブレンド自体が、溶融加工および後処理中の架橋または硬化反応速度を制御するように作用することができる。ブレンドは、コーティングされた絶縁部品を達成するのに望ましい架橋スピードおよび密度に応じて、方法の様々な段階で混合され得る。連続法では、これは、コーティングプロセスのスピードにも依存し得る。架橋反応速度および提供されることになる架橋の程度を制御するためのこのようなブレンドの使用は、特定の芳香族ポリマー成分の硬化反応動力学、ならびに架橋可能な芳香族ポリマーが選択されるかどうか、およびどのような種類の架橋可能な芳香族ポリマーが選択されるかに応じて決まる。より緩慢反応性のポリマーの硬化反応を加速するために、より急速反応性のポリマーを、より緩慢反応性のポリマーに添加することもできる。例えば、PAEKを、PPSに組み込むことができる。前述と同じく、逆のことを行うこともできる。
【0092】
ブレンドを使用する場合、ブレンドにおける芳香族ポリマーが自己架橋可能であり、および/または熱的に架橋され得る場合、架橋性化合物は必要ない。しかし、その好ましい実施形態では、本明細書に記載されるものなどの架橋性化合物を、組成物中に用いることができる。ブレンドは、架橋反応スピードを加速または緩徐することができるので、架橋性化合物が用いられる場合でも、前述の追加の反応制御添加剤は、それ以上必要ない。しかし所望に応じて、当業者は、速度を微調整するためにこのような制御添加剤を用いてもよい。
【0093】
本明細書の方法の組成物は、本明細書の方法における組成物を使用して形成された絶縁部品および他の物品の弾性率、衝撃強度、摩耗またはトライボロジー特性、結合強度、寸法安定性、耐熱性および電気的特性を改善するための1種または複数の添加剤で、さらに充填または強化されてもよい。好ましくは、添加剤は、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス繊維織物、炭素繊維織物、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維の1つもしくは複数から選択される連続的もしくは不連続の長いまたは短い強化繊維の1種もしくは複数、ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、ガラスビーズ、ガラス球、ミルドガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、ホウ砂(ホウ砂ナトリウム)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、雲母、炭化ケイ素ウィスカーまたはプレートレット、ナノフィラー、二硫化モリブデン、フルオロポリマーフィラー、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1種もしくは複数のフィラーから選択される。
【0094】
熱膨張係数(CTE)を改変する助けにするために、添加剤を選択することもできる。好ましい絶縁部品は、低CTEを有する傾向がある金属製材料を含むことができ、本明細書のコーティングは、より高いCTEを有する架橋可能なまたは架橋された芳香族ポリマーを含み得るので、CTEのこのような差は、特に直接コーティングにおいて、コーティングと絶縁部品表面の間の結合接着に対して影響を及ぼすことがある。したがって、この影響は、本明細書の方法において使用される組成物中のポリマーのCTEを低減することができるフィラー、例えば、ガラス繊維、ミルドガラス、ガラスビーズ、雲母、酸化アルミニウムおよび/またはタルクを含むことによって軽減され得る。
【0095】
添加剤は、加えてまたは代替として、ナノダイヤモンドおよび他の炭素同素体、かご型オリゴマーシルセスキオキサン(「POSS」)およびその変異型、酸化ケイ素、窒化ホウ素、ならびに酸化アルミニウムを含むがこれらに限定されない他の熱管理フィラーを含み得る。添加剤は、加えてまたは代替として、流動性改変剤、例えばイオン性または非イオン性化学物質を含み得る。
【0096】
添加剤は、好ましくは、前述の必要に応じたCTE低下添加剤、ならびに/または連続的もしくは不連続な長いもしくは短い繊維である必要に応じた強化繊維、すなわち炭素繊維、PTFE繊維、および/もしくはガラス繊維を含む。最も好ましくは、添加剤は、連続的な長い繊維である強化繊維である。架橋可能なポリマー組成物は、組成物中に約0.5重量%~約65重量%の添加剤を含み、より好ましくは、組成物中に約5重量%~約40重量%の添加剤を含む。架橋可能なポリマー組成物は、安定剤、トライボロジーもしくはレオロジー調整添加剤、難燃剤、顔料、着色剤、可塑剤、界面活性剤、または分散剤の1種または複数をさらに含み得る。
【0097】
組成物は、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)および必要に応じて芳香族ポリマー(複数可)を架橋することができる架橋性化合物を提供し、芳香族ポリマーおよび架橋性化合物を合わせることによって調製され得る。自己架橋可能なポリマーまたはグラフト化ポリマーが使用される場合、架橋性化合物は除外してもよい。組成物中に架橋性化合物が使用される場合、架橋性化合物を、好ましくは芳香族ポリマーと合わせて、好ましくは実質的に均質な組成物を形成する。
【0098】
架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)への架橋性化合物(複数可)の組込みは、溶媒沈殿、機械的ブレンディングまたは溶融ブレンディングなどによる様々な方法によって実施することができる。好ましくは、架橋可能なポリマー組成物は、例えば二軸配合を含めた従来の非架橋ポリマー配合プロセスなどによって、架橋性化合物および芳香族ポリマーの乾燥粉末をブレンディングすることによって形成される。得られる組成物は、本明細書の方法において使用するために、フィラメントに押し出すことができ、または粉末もしくはペレットとして使用することができる。
【0099】
ブレンディング(1種より多くの架橋可能な芳香族ポリマーをブレンディングすることを含む)は、二軸押出機、ボールミル、またはcryogrinderなどの押出機をさらに使用することによって達成され得る。架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)および架橋性化合物(複数可)のブレンディングは、好ましくはブレンディングプロセス中の早計の硬化を回避するために、好ましくは、ブレンディング中に約250℃を超えない温度で実施される。溶融プロセスが使用される場合、熱履歴および温度曝露を最小限に抑えるために注意を払うべきであり、すなわち、短い滞留時間および/または材料流を達成するために可能な限り低温を使用することが好ましい。代替として、上記の律速添加剤の使用および/または様々な反応動力学の架橋可能な芳香族ポリマーのブレンディングを使用して、硬化を抑制し、および/または硬化速度を制御して、ペレットまたは繊維形態への配合および変換に起因する任意の架橋を最小限に抑えることができる。材料は、組成物中の選択されたポリマーおよび成分に応じて、粉末、繊維、ペレットまたはある事例では液体として、押出機に導入され得る。適切な架橋性添加剤は、当技術分野で公知であり、本発明の出願人の米国特許第9,109,080号に記載されており、これは架橋制御添加剤に関して関連部分が本明細書に組み込まれる。
【0100】
ブレンディングプロセスは発熱性の場合があるので、温度を制御し、それによって、使用のために選択される特定の架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)に応じて示される温度に、必要に応じて調整できることが必要である。芳香族ポリマーおよび架橋性化合物の機械的ブレンディングでは、得られる組成物は、均一な架橋を得るために、好ましくは実質的に均質である。
【0101】
組成物が調製される場合、組成物を、250℃超の温度、例えば約250℃~約500℃の温度に曝露することによって硬化させることができる。しかし、コーティングプロセス中に、組成物をいつおよびどの程度熱に曝すかは、達成されるべき最終的なコーティングの厚さおよび特性に応じて決まる。例えば、架橋が多いほど、機械的強度レベルが高くなり得るが、延性に影響を及ぼすことがある。
【0102】
コーティング特性に関して、架橋度(架橋密度)は、異なるコーティング特性を提供し、潜在的な欠陥を回避するために変更または調整することができる。架橋密度は、架橋性化合物を有する組成物を使用する場合、架橋性化合物の濃度を変更することによって、および/または架橋性化合物と合わせて使用される必要に応じた任意の架橋反応添加剤の量を制御することによって、制御され得る。硬化の程度、すなわち架橋反応の完了は、温度変化によって駆動される場合の反応の熱活性化と、硬化速度に伴う実際的な問題の両方に関係する。
【0103】
本明細書に記載される、異なる動力学の2種の架橋可能なポリマーのブレンドを使用する実施形態では、架橋速度は、使用される任意の架橋性化合物(cross-compound)の量を改変するだけでなく、ブレンドに使用されるより緩慢硬化性のポリマーの量を変更することによっても制御され得る。
【0104】
架橋反応速度および架橋度の制御は、最終製品に影響を及ぼすことがある。硬化(架橋)反応があまりにも急速に進行すると、得られるコーティングには、気泡または剥離などの欠陥が生じ得る。さらに、様々な架橋反応から水が生じることがあるので、このような任意の水は、水泡形成などの欠陥を回避するために、制御方式でポリマーコーティングに拡散させる必要がある。より厚いコーティングまたは成型品は、好ましくは、より長くより緩慢な架橋反応になるように反応速度を制御することによって作製され、したがって、好ましくはより低温で行われる。コーティングをより薄いものにすべき場合、このようなコーティングは拡散距離がより小さくなるはずであり、その結果、より高温で形成された薄いコーティングには、形成された任意のガスから生じる、コーティングの結合強度を超える膨張圧の潜在的な影響がなく、有害なまたは壊滅的な水泡形成が生じる可能性が低い。このような問題を回避するために、ガスが架橋中に生じる速度を最小限に抑え、および/または制御して、関連する欠陥を最小限に抑えるように、プロセスを行うことができる。
【0105】
また、所望の最終機械特性を達成するために、架橋レベルを調整することもできる。一般に、より高いレベルの架橋性化合物により、全硬化サイクルの後に、延性がより低く、より剛性の製品を得ることができる。スプールに巻き取る必要があるコーティングワイヤーまたはケーブルについては、延性が低いとコーティングに亀裂が生じることがある。この性質のコーティングを調製するために、延性を増強するように、架橋レベルを調整することができる。より薄く、より延性のコーティングは、より低レベルの架橋性化合物を使用することによって、および/または例えば、架橋性添加剤を架橋性化合物と一緒に使用して架橋反応速度を改変することによって、形成することができる。さらに、このようなレベルの架橋は、異なる反応動力学の架橋可能な芳香族ポリマーをブレンディングすることにより硬化速度を調整することによって、改変することができる。より厚く、より剛性のコーティングまたは被包については、架橋レベルを上昇させることができ、架橋性化合物および/または添加剤および/またはブレンドされた架橋可能な芳香族ポリマーの量を調整して、架橋の所望の増大を達成することができる。
【0106】
さらに組成物は、架橋可能な芳香族ポリマーおよび架橋性化合物の両方を共通溶媒に溶解させ、蒸発によりまたは非溶媒の添加により共通溶媒を除去して、溶媒からポリマーおよび架橋性化合物の両方を沈殿させることによって調製され得る。例えば、選択される芳香族ポリマーおよび架橋性化合物に応じて、共通溶媒はテトラヒドロフランであってもよく、非溶媒は水であってもよい。同じ溶媒に溶けるポリマーおよび架橋添加剤についてのさらなる選択肢は、基材の溶媒キャスト法または浸漬コーティング法の使用である。その場合、架橋可能なポリマー(複数可)および任意の架橋性化合物および/または添加剤を、適切な溶媒に溶解させ、次に、コーティングされるべきワイヤーまたは他の絶縁部品に付与することができる。溶媒は、制御方式で除去することができ、次に、未硬化コーティングを、熱もしくは放射線の適用などの様々な技術を使用して、および/または化学的に誘導される架橋によって硬化させることができる。
【0107】
組成物の調製においては、任意の必要に応じた添加剤を、共にまたは同時に組成物に添加し、架橋性化合物を架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)と合わせて、架橋可能なポリマー組成物を作製することが好ましい。しかし、強化繊維またはフィラーを提供する特定の方式は、このような材料を組み込むための様々な技術に従って行うことができ、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0108】
組成物が調製されると、コーティングおよび/または被包された絶縁部品を形成するために、組成物を熱処理し、絶縁部品の外表面上にコーティングとして付与する。絶縁部品が、多孔質構造または表面特色を有する構造などのように、その外表面の内側に面した部分のコーティングを可能にする構造を有する場合、外表面は、部品内に延びる場合でもこのような表面上のコーティング領域を含み得ることに留意すべきである。
【0109】
本明細書の絶縁部品は、ケーブル、ワイヤー、光ファイバーケーブル、ハイブリッドケーブル、個々の繊維および他の絶縁デバイスを含めた多種多様な種類の絶縁部品であってもよく、部品は特に、掘削中検層および測定のための油井穴用工具、およびモーター、磁石、水中ポンプ、遠隔測定ケーブル、ならびに油井穴または他の遠隔地の状態を測定するためにセンサーが使用される他の操作において遭遇すると思われるものを含めた、油井穴の掘削ならびに油およびガス産業、航空宇宙産業、ならびに化学処理における高温、高電圧、ならびに/または刺激の強いおよび/もしくは腐食性化学的環境に曝される最終用途において使用することができる。さらに、このような部品には、デバイスがワイヤー(複数可)および/またはケーブルによって接続され、そのワイヤーまたはケーブルにより作業環境のセンサーから測定または検層装置にシグナルを伝送しなければならず、精度および性能が重要となるデバイスにおいて使用される部品が含まれる。このようなワイヤーおよびケーブルは、航空宇宙部品および流体取扱い部品にも使用され得る。
【0110】
標準平面の表面については、層状押出しもしくは共押出し技術を行うことができ、または特定の形状については、射出成型を使用することができ、または長い絶縁部品、例えばワイヤーおよびケーブルをコーティングする場合には、出願人の国際特許公開WO2020/056052A1に記載されている通り、付加製造を使用することができるが、架橋可能な芳香族ポリマーを含む組成物は、好ましくは、細長い絶縁部品にわたって押し出される。Arlon(登録商標)3000XTとして商業的に入手可能な、架橋可能なポリアリールエーテルケトンである組成物を使用するこのようなコーティングのための好ましい方法を、以下に記載する。
【0111】
ワイヤーのような長い基材をコーティングするために、コーティングのための好ましい一方法では、非架橋材料のワイヤーコーティングのために現在使用されている技術を使用して組成物を押し出すが、架橋反応に適応するようにパラメータを調整することによって、コーティングを付与することを伴う。非架橋ポリアリーレンを含む非架橋ワイヤーコーティング材料のために使用される押出機は、一般に、クロスヘッドダイを用いる。加えて、本明細書の方法では、加熱トンネルおよび/または冷却浴などの下流の冷却装置が望ましい。使用され得る方法の代替例として、コーティングステップは、押出機とは別に、流動床を通過する基材をコーティングするために、粉末化ポリマー組成物を用いる流動床コーティングプロセスを使用して行うことができ、またはこのような粉末化ポリマー組成物を組み込む流動床を使用して、噴霧ブース内などで基材に組成物を付与するための噴霧コーティングデバイス、例えば溶射器もしくは静電噴霧器(例えば、プラズマアークまたはコロナ放電を使用する)に流動床の内容物を供給することによって、基材をコーティングすることもできる。
【0112】
ワイヤーは、プロセスを通して引っ張られるので、使用されるコーティング装置に関わらず、好ましくはプロセス構成全体に、ワイヤースプールおよび巻取り機が用いられる。このようなプロセスの例示として図1を参照すると、基材の絶縁部品、例えばワイヤーのコイル10は、入口ウインチ12などの供給装置を通してプロセスに供給され得る。熱可塑性および熱硬化性材料の両方を押し出すためのこのような部品は、関連分野で容易に入手可能であり、本発明の方法に適合させることができる。非架橋ポリアリーレンを付与するために押し出すか、またはそうでなければ流動床および/もしくは噴霧装置を使用してコーティングするために当技術分野で使用される方法に関する情報は、例えば、入手可能なVictrex(登録商標)ポリアリールエーテルケトン製品、ならびに強度および耐久性のための高温性能コーティングであるVicote(商標)コーティングに関する加工ガイドおよび押出し成型ガイドに見出すことができ、それらは共にwww.victrex.comで入手可能であり、それぞれ関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。このような従来技術には、ワイヤー上へのPEEKの押出し、ならびにワイヤーおよびケーブル上の押出物の冷却が含まれ得る。
【0113】
熱硬化性シリコーン材料は、医療用チューブおよび編上げホースを形成するために、放射加熱を用い、赤外光を使用する商業技術を使用して加工される。公知の通り、例えば未架橋PEEKを加工し、硬化性シリコーンを加工するためのこのような技術は、ワイヤー、ケーブルまたは他の引き伸ばされた長さの絶縁部品上に押し出す場合、架橋可能な芳香族化合物のために使用することができる。
【0114】
架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)の組成物を使用して絶縁部品をコーティングするために、このような装置を適合させる際、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)が、コーティングプロセスの前、その間、またはその後に硬化し得るように、設定および熱プロファイルを調整することができ、その条件は、所望の架橋反応、ならびに得られる機械特性およびコーティング特性を考慮に入れて調整する必要がある。
【0115】
図1を参照すると、コイルは、予熱ステップ16で、予熱機序(インラインオーブンまたは他の供給源)で予熱された後、コーティング装置18に、例えばダイ20、流動床18b、または噴霧ブース内の静電噴霧もしくは溶射コーティングデバイス18cと組み合わされた流動床と流動プロセスにより連結された押出機18aに入ることができる。これらのコーティング装置、または芳香族ポリマーと一緒に使用されることが当技術分野で公知であるかもしくは開発されることになる他のコーティング装置のいずれも、本明細書で使用することができる。
【0116】
コーティング装置18が押出機である場合、まず好ましくは、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)の硬化に選択される特定の化学プロセスに合わせて硬化反応を最適化するスループットおよび温度プロファイルが選択される。本明細書の一実施形態では、初期押出しコーティングが付与された後に、硬化の一部またはすべてがバッチで生じ得る。本明細書の別の実施形態では、必要に応じたインライン硬化ステップ22における連続インライン硬化を可能にし、および/または特定の架橋可能な芳香族ポリマーもしくはそのブレンドの硬化を促進したいという要望に応じて、材料のインライン後硬化を増大するオーブンの長さが選択され得る。ステップ22のインライン硬化の代替としてまたはそれに加えて、硬化のためのトンネルオーブン30が提供され得る。
【0117】
用いられることになる押出し方法または熱加工条件を評価するための、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)の硬化プロファイルは、公知であるはずである。したがって、硬化の開始は公知なので、硬化反応時間および動力学により、所与の熱プロセスについて温度曲線の計算をモデル化することができる。
【0118】
硬化プロセスの影響に起因して、一軸押出機を使用することができ、その場合、好ましい押出機のL/Dは、少なくとも約15:1~約25:1、より好ましくは約18:1~約25:1である。押出機のバレル温度は、前述の通り変更することができるが、好ましい一実施形態では、約650°F~約700°Fであり得る。より低いバレル温度により、一般に架橋反応が緩徐され、加工が改善される。また、特定の目的および硬化に合わせて適用される加熱以外の加工中の摩擦および熱の発生を回避するために、圧縮比は、好ましくは低い。圧縮比を下げることにより、望ましくない熱源の発生(例えば、摩擦熱)を抑止する助けになる。
【0119】
滞留時間は、加工される特定の架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)の硬化プロファイル(クロスオーバータイムおよび完全に硬化するまでの時間)に基づいて、長い形状の絶縁部品、例えばワイヤーまたはケーブルがプロセスを通して引っ張られるプロセススピードを考慮に入れて計算され得る。このような長い部品は、ロールまたはリールによって供給することができ、その部品は、ダイ20(クロスヘッドダイであってもよい)などの熱加工装置を通して引っ張られる。押し出された架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)も、同じクロスヘッドダイに供給されるが(従来技術で非架橋材料のために使用されている方式で)、所望に応じて、望ましくない摩擦熱を回避するスピードおよび温度で供給される。ラインスピードは、当技術分野で公知の通り、コーティングの厚さに合わせて、硬化滞留時間を考慮して調整することができる。好ましい実施形態では、押出機18は、図1の矢印42に関して示される通り、全般的なプロセスの方向に対して垂直に伸びるように位置付けられる。
【0120】
前述の通り、コーティング装置18は、先に論じた押出機18a、または流動床18bコーティングもしくは流動床と噴霧装置18cであり得る。このような技術は、www.victrex.comでも論じられている。上記のステップに関して、ワイヤーなどの絶縁部品の供給コイルは、例えば、出口ウインチでプロセスに張力をかけて入口ウインチ上に供給される。すべてのプロセスにおいて、巻き取られた基材上へのコーティングの接触および接着を改善するために、加工前にコイルをテクスチャ加工し、洗浄することが好ましい。コイルはまた、好ましくは、湿気を除去し、例えば粉末化架橋ポリエーテルエーテルケトン組成物の流動床18bでコーティングに合わせてコイルを調製するために、予熱される。粉末は溶融し、コイル上に堆積する。上記の押出機によるコーティングに関して、本明細書のその他の方法についても、放射熱もしくは赤外線加熱、誘導加熱コイルまたは熱風対流を使用して予熱を行うことができる。
【0121】
コーティング装置18が、噴霧コーティング装置18cであり、その装置が、架橋可能な粉末芳香族ポリマー組成物の流動床と合わせて使用され、その流動床によって供給され得る場合、コイルは、前述の入口ウインチ12上に入り、洗浄および/またはテクスチャ加工によって事前処理され、さらに、コーティング中に粉末がコイルに接着できるように、接着剤またはプライマーなどを用いて下塗りされてもよい。コイルは、適切な噴霧コーティングブースまたは他の類似の装置内でコーティングすることができ、ここで、架橋可能な粉末芳香族ポリマー組成物は、ワイヤーを噴霧コーティングするための噴霧デバイスに供給され得る。ある特定の用途では、より良好なコーティング被覆のために帯電が与えられ得る。
【0122】
粉末または固体形態の架橋可能な芳香族ポリマー組成物を溶射器内で溶融させることによって、溶射コーティングを使用することもでき、ここでポリマーは、噴霧ステップ中に溶融し得る。溶融エネルギーは、電気プラズマ、アークまたはガス燃焼によって提供することができる。
【0123】
コーティング装置18、例えば流動床18bを出た後、あるいは前述の通り噴霧ブース18c内の溶射器もしくは静電噴霧器または押出機18aおよびダイ20を使用した後、コーティングされた基材は、次に、適切なオーブン(例えばインラインまたはトンネルオーブン30であってもよい)を使用して、部分的にまたは完全に硬化させられる。これらのプロセスのコーティングステップの場合、最終硬化の前に、多孔性を除去し、および/またはコーティングされた基材の密度を上昇させるための第2のプロセスステップを使用することができる。
【0124】
さらに、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)は、コーティング装置18を出た後、コーティングの間に硬化させる代わりに、企図された硬化プロファイルおよび最終特性に応じて、インライン硬化ステップ22(赤外線または対流トンネルオーブン30を含み得る)で、必要に応じてインラインで硬化または完全に硬化させることができる。使用されるオーブンの長さは、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)の硬化パラメータならびに所望の滞留時間およびプロセスのスピードに応じて決まる。この目的では、対流と関連する熱損失を回避するために、放射または赤外熱トンネルを使用することも許容される。
【0125】
後硬化プロファイルは、一部分においては、付与されるコーティングの機械特性、接着および延性を調整することを含めて、企図された最終製品の使用用途に望まれる製品の特性を所望に応じて調和させるように決定し、選択することができる。例えば、材料は、長い硬化時間で生じ得るよりも短い硬化時間で、より高い引張強度およびより低い衝撃強度を示すように調製することができ、逆の場合も同じである。硬化プロファイルの決定および選択には、所望の破壊モードを考慮に入れることもでき、材料試験におけるより緩慢な硬化速度(スピード)およびより急速な硬化速度の破壊モードは、硬化速度に関する硬化プロファイルに応じて異なり得る。例えば、落錘衝撃試験では、より急速な硬化速度(スピード)で脆性破壊が観察され得る一方、引張試験では、より低い硬化速度で延性破壊が観察され得る。
【0126】
前述のコーティング装置のそれぞれについて、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)のコーティングステップおよび必要に応じたオーブン中での硬化の後、所望に応じてコーティング後プロセスステップを用いてもよい。当技術分野で公知であるかまたは開発されることになるこのような任意のプロセスステップは、コーティングされた材料をさらに加工するために使用することができる。本明細書の好ましい実施形態では、硬化反応を完了または調整するための空気および/または水の使用を、冷却ステップ24において用いることができる。これは、例えば生成物がin situで硬化させられる実施形態において適用することができ、材料は、部分的に硬化した製品をもたらすために成型または後硬化させられ、次に、油井穴環境などの高温での最終用途における使用に送られ、硬化は、実際の用途における使用温度に曝露されることにより完了することができる。
【0127】
架橋可能な(または少なくとも部分的に架橋された)芳香族ポリマーまたはそのブレンドが、巻取りリールまたは類似のデバイス上で加工されるときにそれ自体に張り付くのを防止する助けにするために、必要に応じた離型剤を、ダイから出た後の押し出されたコーティングに付与することもできる。このような離型剤は、噴霧、浸漬またははけ塗りによって付与することができる。
【0128】
コーティングされたワイヤーを、例えば、巻取り機32を使用してリールまたは類似のデバイスに巻き取った後、加熱チャンバ、例えばオーブンに入れ、最終バッチ硬化ステップ34に供することができ、そのステップの間に、ワイヤーはさらに硬化および/または後硬化(またはインライン後硬化)させられて、最終的なコーティングされたワイヤーまたは他の絶縁部品36が形成される。適切な後硬化温度は、一般に、架橋可能な芳香族ポリマーまたはそのブレンド、および適用できる架橋反応、ならびにコーティングの厚さおよびオーブンまたは他の加熱チャンバへのコーティングの曝露時間に応じて、約450°F~約900°Fの範囲になる。
【0129】
上記の例示的なプロセス中、プロセス部品は、プロセスを調整するために改変することができる。例えば、コーティング装置が、ダイ20を伴う押出機18aである場合、1つより多くの押出機を使用して、複数層を押し出すことができる。複数のワイヤーコイルを押し出し、次に、後に他のケーブルなどと合わせて多導体ケーブルを形成するための部品も提供され得る。後処理用部品、例えばプリンターまたはストリッピング装置も同様に提供され得る。
【0130】
さらに、本明細書で用いられる押出しコーティングにおけるクロスヘッドダイの使用に関して、クロスヘッドダイには、一般に、圧力ダイ(ダイが、ダイ内側のワイヤーに対してポリマーを加圧する)、およびチューブダイ(ワイヤーおよびポリマーがダイを出るまで、ポリマーは、ワイヤーに対して加圧されない)の異なる2つの種類がある。コーティング基材、例えばワイヤーのためのこれらのダイ、および当技術分野で公知であるかまたは開発されることになる他の種類のワイヤーコーティングダイのいずれかを用いることができる。
【0131】
両方の種類のクロスヘッドダイにおけるクロスヘッドダイのダイ設計は、押出物の寸法の一貫性に影響を及ぼす。例えば、より滑らかな仕上げを伴うより長いダイでは、溶融物が溶融相から冷却されるときにより長い時間をかけて溶融物を形成することによって、寸法の一貫性が改善される。理想的には、例えばNibore(登録商標)などとして商業的に入手可能な低摩擦係数コーティング、例えばニッケル-ホウ素コーティング(NiB)、および例えばNiflor(登録商標)などとして商業的に入手可能な無電解ニッケルPTFEコーティングを、ダイの内面に付与して、ポリマー溶融物とダイの間の摩擦係数を低減し、デッドゾーン(すなわち、流れを伴わない領域)を低減し、溶融物を押し出すのに必要な圧力を低減することによって寸法の一貫性をさらに助けることができ、より長いダイの使用が可能になる。
【0132】
図1の好ましい実施形態の最終硬化ステップは、最終バッチ硬化を示している。最終硬化(または後硬化)は、リール上のオーブン、熱トンネルオーブン、または最終用途(その場合、部分的に硬化させられたコーティングされたワイヤーが最終用途で用いられ、そこで使用の際に(例えば、加熱された油井穴環境における)、ワイヤーが後硬化させられる熱を受ける)を含めた、いくつかのやり方で行うことができる。下記のものなどの任意の適用できる検査ステップの後、コイルは、入口ウインチ12と連動して張力を制御する出口ウインチ14上を通過し、好ましくは適切な巻取り機32に巻き取られる。
【0133】
本明細書のコーティングプロセスのための他のコーティング後加工の選択肢には、例えば、直径ゲージ38および偏心ゲージ40を使用するコーティングされたワイヤーの測定および評価などによる検査および欠陥検出が含まれ得る。厚さゲージ、アーク検出器/衝撃検出器28および電圧制御26、厚さ検出器ならびに/または渦拡散検出器、ならびに当技術分野で公知であるかまたは開発されることになる他のコーティング検査および欠陥検出ツールを使用することができる。
【0134】
他の必要に応じた部品には、インライン配合部品、湿気を除去するためのペレット乾燥機、ワイヤーまたはケーブル部品を加熱または予熱する前に使用されるケーブル前処理浴が含まれる。コーティングされることになる絶縁部品上の任意のコーティングの除去または処理のための事前洗浄装置、あるいは空隙もしくは全体が被覆されていない領域を再加工もしくは修復するか、またはストランドを一緒につなぐためのスプライサーおよび/またはパッチング装置を用いることもできる。このような装置は、当技術分野で公知であり、当業者は、本開示に基づいて、このような選択肢が本開示の趣旨および範囲において用いられ得ることを理解されるはずである。
【0135】
架橋性化合物および/または架橋反応添加剤(複数可)、例えば反応制御添加剤を使用する本明細書の実施形態では、このような必要に応じた架橋性化合物および/または反応添加剤、例えば抑制剤の使用は変更してもよく、このような材料は、組成物がワイヤーまたは他の長い部品上をコーティングするために形成ダイ、例えばクロスヘッドダイに入るときに様々な架橋度を与えるために、組成物の押出しおよび溶融ブレンディング中に、様々な時間および位置で導入することができる。同様に、異なる反応動力学の2種またはそれよりも多い架橋可能な芳香族ポリマーのブレンドを使用する実施形態については、このような各ポリマー、例えば、異なる架橋速度を有する2種のこのようなポリマーの量を調整して、同じ段階で様々な架橋度をもたらすこともできる。
【0136】
選択された架橋可能な芳香族ポリマーは、耐摩滅性および耐摩耗性であるがその延性を保持しており、柔軟性を有することができる架橋されたコーティングに寄与し、室温で良好な曲げ能力を実証する。柔軟性は、架橋性化合物の量の調整によって、架橋性添加剤の改変によって、ならびに/または異なる架橋性動力学の2種もしくはそれよりも多いこのようなポリマーのブレンドにおける特定の架橋可能なポリマーの含量の改変によって、ならびに/または硬化および後硬化の温度および時間の改変によって、増強することができる。
【0137】
本明細書のコーティングの接着は、コーティングされたワイヤー上に直接付与された層であろうと、被包または外層であろうと、様々な必要に応じた方法ステップを使用して増強される。一実施形態では、組成物における官能性反応性架橋性化合物の使用は、コーティングと基材の間のカップリング剤として作用する架橋性化合物によって、接着を促進することができる。本明細書の一実施形態では、接着は、コーティングされることになる部品の外表面を、様々な調製ステップにより調製することによって、層間剥離を防止するようにさらに増強することができる。1つの方法は、部品の加工により(例えば、ワイヤーを引き抜くまたは切断することにより)残留する油または残る汚れの存在を低減するための、表面の徹底的な洗浄である。用いられるガラスまたはセラミックフィラーは、コーティングを付与する前に、オキシド、ペンダント型ヒドロキシ基、サイジングもしくはカップリング剤、または繊維の取扱いのためのプロセス油を除去するために洗浄することもできる。
【0138】
別の実施形態では、表面は、コーティングされることになる外表面の隙間および窪みにポリマーが流れるように粗面加工され得る。ポリマーが冷却されるときに、物理的連動が生じることがある。しかし、表面が洗浄されない場合、ワイヤーまたはケーブルの表面のより深くに油が入り込み、物理的連動に由来する問題をもたらすことがあるため、表面の粗面加工の前に、場合によっては粗面加工の後にも、洗浄が用いられることが好ましい。
【0139】
化学的引力または親和性は、コーティングされることになる部品の外表面の化学修飾により誘導される、ファンデルワールス力または化学結合によりもたらすことができる。これを行う1つの方法ステップとして、当技術分野で公知のコーティングとの結合を増強するように調製するための、例えば、金属表面上へのプライマーの使用を含むことができる。さらに、多官能性分子であるプライマーは、コーティングされることになる表面に、結合または接着のための反応性部分を提供することができる。このような部分は、コーティング上の化学的に類似の部分または反応性部分と反応することができる。ガラスおよびセラミック表面については、表面へのコーティングの親和性を増強することができるシランベースのカップリング剤を用いてもよい。例えば、ここでフェニルシランは、セラミック酸化物またはシリカのためのカップリング剤として、より化学的に処理された基材表面に対するポリマーのファンデルワールス引力を促進するために有用となるはずである。
【0140】
上述の通り、架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)のCTEを調整するための添加剤を含むこともでき、したがって、それらの添加剤は、コーティングされることになる部品の外表面の架橋可能な芳香族ポリマーに、より接近する。しかし、ある場合には、組成物中の架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)のCTEが低過ぎると、その延性または強度に影響を及ぼすことがあり、したがってこのようなフィラーは、CTE調整が望ましい場合には最適化されなければならない。
【0141】
さらなる実施形態では、まず、選択された架橋可能な芳香族ポリマーまたはそのブレンドよりも、コーティングされることになる部品の表面との適合性が好ましくはいくらか高い基層または中間層が、その部品に提供され得る。このようなコーティングは、前もって付与されるか、またはクロスヘッドダイにおける共押出しにより付与され得る。その例は、充填されていても充填されていなくてもよい未架橋芳香族ポリマーの基層または中間層の使用であり得る。次に、その層を、架橋可能な芳香族ポリマーまたはそのブレンドによってコーティングおよび/または被包して、コーティングされることになる部品上の中間層または基層上に、架橋された芳香族ポリマーのコーティングもしくはそのブレンドのコーティング、またはその被包を形成する。好ましい実施形態では、例えば、市販のPEEKには、ワイヤー上の中間層として押し出すことができるガラスビーズが充填されていることがあり、それと同時に、その中間層にわたって架橋可能な芳香族ポリマー(複数可)を含む組成物が共押し出しされ、その結果、架橋されたコーティングがその増強された特性をもたらして、より大きい接着力を提供することができる一方でその摩耗因子および耐摩耗性、ならびにその耐化学性、強度および耐摩滅性に関してはあまり優れていないコーティング特性を有する、未架橋の充填されたPEEKの内層を保護する。
【0142】
本明細書の方法によって形成されたこのような架橋された芳香族ポリマーコーティングは、高温、化学的腐食性のまたは刺激の強い化学的環境の条件のいずれかが単独でもしくは組合せで存在する場合を含めた、可能性がある多種多様な最終使用および環境において、ならびに靱性、耐摩滅性および/もしくは耐化学性が重要になる、ならびに/または電気絶縁性が非常に重要になる用途において、使用することができる。例えば、このような材料は、電気、航空宇宙、医療、自動車、および化学的流体の取扱いの最終用途において使用することができる。本明細書の方法から形成された架橋された芳香族ポリマーコーティングは、これらの分野において様々な絶縁部品に用いることができる。この事例に使用される場合、高温には、一般に、例えばPEEKにおいて使用される特定のポリマーのガラス転移またはそれを超える温度が含まれ、このような温度は、通常300°F~500°Fである。
【0143】
化学的腐食性のまたは刺激の強い化学的環境に関して、このような材料およびコーティングは、ISOおよびNORSOK認証に準拠する最終用途における使用に適している。ISO(国際標準化機構)は、世界規格組織の世界的連合である。ISO23936-1は、具体的には、石油、石油化学および天然ガス産業における産生に関する媒体との物理的または化学的接触によって引き起こされることがある特性の悪化に対する、熱可塑性物質の耐性に向けたものである。NORSOKは、ノルウェー石油産業によって開発された、国際的に認められた規格である。NORSOK M-710、改訂3規格は、2014年に発効され、海中の制御システムおよびバルブなどの用途に使用するための非金属製密封剤、シートおよびバックアップ材料について満たされるべき要件を提供した。改訂3規格の科目では、従来の基準よりも著しく刺激の強い条件に、試験材料を曝す。
【0144】
本明細書の架橋された芳香族ポリマーから形成された、押し出されたフィラメントは、典型的な条件下で硬化した場合に、押し出されたフィラメントを縛って結べるような十分な靱性を示す、1.7mmの曲げ半径/直径を有するように形成され得る。
【0145】
本明細書の絶縁部品コーティングのさらに特定の最終用途の例として、油およびガス掘削作業、掘削中検層中の遠隔測定移行のためのワイヤーライン、モーター巻線に使用されるワイヤー、輸送用途での電気モーター(電気自動車、重機モーター)に使用するためのモーター部品、例えば固定子および回転子、ケミカルポンプ、航空機のフラップ、補助翼、および着陸装置の制御のための電子アクチュエータ、航空機またはタービン発電所におけるエンジンセンサーの遠隔測定ケーブル、5G(および6G)伝送装置のためのケーブル、ならびにより高温で耐化学性があるポリマーコーティングによる漏れない被包を必要とする様々なセンサーまたはRFIDチップの被包が挙げられるが、これらに限定されない。方法はまた、光ファイバーケーブル、圧電センサーのコーティングを提供し、外部の化学物質(酸、塩基)または湿気による攻撃から、被包された部品を保護するのに有用である。
【0146】
ここで本発明を、以下の非限定的な例に関して記載する。
【実施例
【0147】
(実施例1)
本明細書の実施例では、例えば架橋性化合物を使用し、架橋可能な有機ポリマー組成物に組み込まれた架橋性化合物の量を調整することにより硬化度および架橋度を改変することによって、絶縁体が用いられることになる最終製品の使用における、絶縁体に望まれる製品特性に合わせるまたはそれを調整する能力を実施例により裏付ける。これに加えてまたは代替として、架橋可能な有機ポリマー組成物の硬化に適用される硬化条件(速度、時間および/または温度)を調整して、硬化度および架橋度を改変することができる。架橋度を制御するために架橋性化合物に対して行われる調整、条件、または他のやり方でも、企図された使用のための所与の最終製品に望ましい、非常に重要な材料特性の改変が可能である。さらに、このような特性は、特に、架橋されていない場合の同じ有機ポリマーよりも良好な性能を達成するように改善し、増強することができる。
【0148】
例えば、1つの事例として、薄いコーティングの付与において延性および耐衝撃性が重要な場合、熱機械特性および断熱特性を改善し、環境老化耐性を改善しながら、延性および耐衝撃性を維持するように架橋プロファイルおよびシステムを決定し、選択することができる。別の事例では、コーティングの付与は、延性をいくらか低下させながらも、熱機械特性および断熱特性、ならびに環境老化耐性を改善することにさらに焦点を合わせることができる。この場合、様々な架橋系または手法を使用して、例えば、より多量の架橋性化合物を使用することによって架橋を増大して、所望の機械特性を増強することができる。ここで、最終特性に合わせるこの能力を、以下でさらに実証する。
【0149】
この実施例では、使用した材料組成物には、市販のPEEK(Vestakeep(登録商標)5000P、Evonik製)と混合されたジオール架橋性化合物が含まれていた。架橋性化合物を、必要に応じた架橋反応制御添加剤を含む混合物に添加した。具体的には、0.75%酢酸リチウムを含む様々な量の架橋性化合物、(9,9’-(ビスフェニル-4,4’-ジイル)ビス(9H-フルオレン-9-オール)を、PEEKと合わせた。ブレンドされた粉末混合物を、二軸押出機内でPEEKと配合して、ペレットを形成した。ペレットを、衝撃試験のためにASTMタイプVおよびASTMタイプIの引張棒およびディスク(3’’)に射出成型した。薄いコーティングについて重要な2つのコーティング特性である延性および耐衝撃性を評価した。延性を、ASTMタイプVの引張棒を使用して室温での破断点伸びに基づいて評価した。耐衝撃性は、ガードナー衝撃試験によって実証した。ASTM D5420に従うガードナー衝撃試験を、3’’ディスクを使用して行った。落錘を様々な高さから離し、負荷を受ける試験片に衝撃を与える打撃を与えた。表面を破断するのに必要なエネルギーを、実験データから重量ポンド(lb)で計算した。熱機械特性は、ASTMタイプIの棒の引張試験を260℃で使用して試験し、引張弾性率によって260℃で評価した。ガラス転移温度およびプラトーゴム弾性率を、ARES-G2によってねじれ形状を使用して測定した。
【0150】
試験結果を、以下の表1にまとめる。使用した対照は、架橋材料を調製するために使用したのと同じ種類の非架橋PEEKであった。調製した架橋PEEK材料を、最低(A)から最高(D)の4つの異なるレベルの架橋性化合物で作製した。架橋された試料のそれぞれは、硬化を完了するための同じ硬化プロファイルを含んでいた。前述の特性の改変は、硬化する材料における架橋の量を増加または低減するために使用される架橋性化合物の量を変化させることによって示される。
【表1】
【0151】
図5は、PEEK対照材料 対 架橋されたPEEK試料A~Dの動的機械分析(DMA)曲線を含む。架橋密度νに関して、この密度は、架橋間の分子量Mとして表される架橋間の質量の逆数に比例する。架橋間の質量が小さいほど、架橋密度が高いことを示す。Mは、以下の関係式を使用してDMAによって測定されたせん断貯蔵弾性率G’から計算され得る
【数1】
[式中、Mは、架橋間の分子量であり、Rは、一般ガス定数であり、Tは、絶対温度であり、dは、ポリマーの密度である]。
【0152】
この関係式から、せん断弾性率G’は、Mcに反比例することが見出され、このことは、νに正比例することを意味する。
【0153】
図から、添加剤を4%から17%に増加させると、G’が架橋性添加剤%の増加と共に上昇し、硬化状態に伴って変化することも分かる。このことは、架橋密度が上昇し、Mcが低下したことを意味する。
【0154】
図5に示される通り、架橋されたPEEK試料の形態および材料の特徴は、硬化後の架橋性化合物のレベルに依存していた。材料の特徴、例えば鎖運動性(T遷移の勾配によって証拠付けられる通り、勾配が小さいほど運動性が低い)、架橋密度(プラトーゴム弾性率によって評価される通り、プラトーゴム弾性率が高いほど架橋密度が高い)、ガラス転移温度(T)、結晶形態(すなわち、結晶化度のレベルおよび融点)は、すべて試料A~Dの架橋性化合物の増加と共に上昇した。
【0155】
熱機械特性、例えば強度および剛性、ならびに断熱特性、例えば高温での抵抗率および絶縁耐力、ならびに耐化学性も、架橋されたPEEK材料において、架橋レベルが上昇するにつれて増強する。しかし延性は、硬化後に架橋レベルが上昇するにつれて低下すると予測される。耐衝撃性は、ポリマー網目構造に関する応力がどのように伝達するかに依存する。一部の材料特性に対する架橋レベルの効果は、上記の表1にまとめられている。ワイヤーコーティング最終使用では、材料組成物を注意深く選択することによって、非架橋PEEKと同等の延性および耐衝撃性を有するが、より良好な熱機械特性、断熱性および耐化学性などの架橋材料のさらなる利点を有する組成物を、本明細書の本発明に従って調製することができる。さらに、いくらかの量でそれ自体が可塑剤として作用し、提供されたレベルおよび硬化条件に応じて硬化剤としても作用することができる架橋性化合物により、本明細書の組成物は、コーティング、例えばワイヤーコーティングを提供することができ、その特性は、企図された最終用途における所望の製品使用に合わせて調整される。
【0156】
増強された特性、例えば熱機械特性、断熱特性および耐化学特性を必要とする絶縁用途には、一般に、より高い架橋度(およびより多量の架橋性化合物)が好ましいが、延性はある程度まで低下し得る。より高い架橋度を有する組成物(試料D)の熱機械特性、Tおよび架橋密度のさらなる増強については、図5および表1に関して既に論じた。その組成物に関して、耐摩耗特性および断熱特性を、本明細書でさらに実証する。
【0157】
試料Dについて、スラストワッシャー試料を、ASTM D3702に従って非アブレシブ摩耗試験に合わせて形成し選択し、また外径1’’/厚さ0.188’’のボタン型試料を、化学機械平坦化(CMP)プロセスにおいてシリカスラリー摩滅試験のために射出成型した。試料Dの絶縁特性を、ボタン型試料(厚さ0.12インチおよび直径0.5インチの寸法を有する)を使用して、誘電熱分析(DETA)アクセサリー(TA Instruments)を有するRSA-G2固体分析器(TA Instruments)を使用して研究した。
【0158】
非アブレシブ摩耗試験を、ASTM D3702に従って、5,000psi-フィート/分のPVの下で実施した。絶縁コーティングにおける市販のPEEK(Victrix(商標)450G)について得られた摩耗因子(K)は、451.4×10-10インチ分/フィート-ポンド-時間であった。架橋されたPEEK試料Dについて得られた摩耗因子(K)は、わずか110.6×10-10インチ分/フィート-ポンド-時間であった。このPV条件において、Kは、架橋されたPEEKについてのKよりも、市販のPEEKの方が約3倍分高く、このことは、架橋されたPEEKの方が耐摩耗性が優れていることを示す。
【0159】
材料の耐摩滅性を、一般に化学機械平坦化(CMP)プロセスで試験される摩滅用シリカスラリーで評価し、1時間の試験中に総重量減少を記録した。架橋されたPEEKは、0.0057gの重量減少を示したが、これは、市販の非架橋PEEKの重量減少(0.0173g)の約2分の1の重量減少であった。
【0160】
絶縁特性を、市販のPEEKおよび架橋されたPEEKのそれぞれについて、温度T(℃)に対してpF/mで測定した貯蔵誘電率(ε’)のプロットを示す図2で実証した。図3は、それらの2種の材料についてT(℃)に対してtan(δDE)として測定した誘電損失正接のプロットを示す。これらの上記結果により、架橋されたPEEKが、より低い貯蔵誘電率および損失係数によって示される通り、高温で著しくより良好な絶縁特性をもたらすことが実証された。
【0161】
試料Dなどの組成物のさらなる評価では、例えば、温度および時間の変動などによる硬化条件によって、延性が調整され得ることが分かり得る。このことは、以下の表2に示されており、試料Dにおけるような組成物を、同じ時間にわたって5つの異なる温度で硬化させ、5つの異なる時間にわたって同じ温度で硬化させた。
【表2】
【0162】
上述の手法および実施例により、架橋された有機ポリマー、例えば本明細書の対象となる架橋されたPEEK試料の材料特性を調整して、架橋レベルおよび硬化条件を変更することによって、特定の用途への使用に適応した最終製品における所望の特性の必要に合わせることができることを実証する。架橋された有機ポリマー組成物、例えば架橋されたPEEK組成物および試料について例示された結果により、市販の未架橋の等価な有機ポリマー、この場合は市販の未架橋PEEKと同等の延性および耐衝撃性を有するだけでなく、コーティングの付与における使用について、特に絶縁部品のコーティング、例えばワイヤーコーティングについて有益な特性をそれぞれもたらす、優れた耐摩耗性および耐摩滅性、ならびに高温での絶縁特性をもたらすこともできることを実証する。
【0163】
当業者は、本明細書の様々な架橋可能な芳香族ポリマーを使用する(単独でまたはブレンドされた形態で)組成物から形成されたコーティングにおいて、本明細書の方法で使用される場合に類似の増強された特性が期待できることを、本開示に基づいて理解されよう。さらに、有機ポリマーの架橋に架橋性化合物(複数可)が使用されない場合、架橋度を変更し、本明細書に記載される様々な最終特性をもたらすために、上記の架橋レベルを調整するための他の方法を使用することもできる(様々な硬化動力学、様々な熱架橋度またはグラフト架橋度を有するブレンドされたポリマーの使用、反応速度添加剤の使用など)ことを理解されよう。
(実施例2)
【0164】
記載される通り17%の架橋性化合物および架橋反応添加剤を組み込んだ実施例1の組成物を使用して、ワイヤー外径0.102インチおよび押し出された架橋PEEKの所望の外径0.149インチを有する10ゲージの銅ワイヤーをコーティングした。ポリマーについての硬化プロファイルは、680°Fで27.6分および788°Fで4分のクロスオーバータイムを有していた。本明細書で使用される場合、クロスオーバータイムは、当技術分野で一般に公知の通り、貯蔵弾性率および損失弾性率がレオロジー実験において交差する時点である。クロスオーバータイムは、網目構造が確立され、ポリマーがそれ以上流れない、測定可能な時点である。クロスオーバータイムはまた、ゲル化点としても公知である。
【0165】
架橋されたPEEKを、20:1のL/Dを有する30mmの一軸押出機を使用し、1:1という低い圧縮比を有するスクリューを使用して押し出した。滞留時間は、スクリュー体積を3.6インチであることから、2.14ポンド/時間のスループットで4分と計算した。ワイヤーを、ラインスピード6.9フィート/分でクロスヘッドダイを通して引っ張った。
(実施例3)
【0166】
実施例3のコーティングされたワイヤーを、必要に応じたステップとして予熱して、ワイヤーとポリマーの間の接着を促進する。ワイヤーを、リール送りによってクロスヘッドダイを通して供給すると同時に、架橋されたPEEKをダイに供給して、ワイヤーの外表面にコーティングを付与する。
【0167】
420℃で1分間経過すると、架橋されたPEEKについて部分的硬化(G’弾性率およびG’’弾性率への収束)を達成することができ、したがって、6.9フィート(またはそれよりも長い)のオーブンを使用する。
【0168】
架橋されたPEEKは、オーブンを出た後、空気中でさらに硬化し、次に水で冷却される。離型剤を噴霧によってコーティングに付与する。コーティングされたワイヤーを、リール上に巻き取る。リールを、所望のコーティングの厚さに応じて、不活性ガスオーブン中で450°F~900°Fの温度で後硬化させる。
(実施例4)
【0169】
ワイヤーを、実施例2と同じ方式でコーティングするが、実施例2と比較して低減した量の架橋反応制御添加剤を用いて、ワイヤー上の架橋度(硬化レベル)を上昇させる。架橋性化合物を、硬化抑制剤の酢酸リチウムである架橋反応制御添加剤と共に、組成物に合わせる。硬化抑制剤の量を0.1%に低減して架橋性を加速させながら、押出機内のクロスヘッドダイに入るときの材料の特性をモニタリングする。
(実施例5)
【0170】
ワイヤーを、実施例2と同じ方式でコーティングし、実施例2~4の抑制剤に関して架橋反応添加剤をほとんどまたは全く使用せずに、ワイヤー上の架橋度を上昇させる。組成物は、最初、架橋可能なPEEKおよび架橋性化合物だけを含んでおり、硬化抑制剤は、PEEK溶融物に、溶融物の下流位置まではほとんどまたは全く導入されない。したがって、組成物は、押出機でインライン配合により混合される。この目的では二軸押出機を使用し、ワイヤーを二軸押出機の主オリフィスに通過させる。架橋は溶融状態で生じ、クロスヘッドダイを出るコーティングを、より高い硬化状態で付与する。一軸押出機も同じ組成物と一緒に使用し、供給装置機序を選択し、投入オリフィスを、ブレンディングするのに十分な時間で材料を導入するように位置させる。
(実施例6)
【0171】
ワイヤーを、実施例3~4と同じ方式でコーティングし、この実施例では、ブレンドにおけるポリマーの総重量に基づいて20重量%の市販のPPSおよび80重量%の市販のPEEKの量でPPSおよびPEEKを使用する2種のポリマーのブレンドの使用によって、ワイヤーの硬化レベルを制御する。組成物は、最初、架橋性化合物も架橋制御添加剤も含まず、PPS/PEEKブレンドだけを含んでいる。下流地点で、架橋性化合物を、PPS/PEEKのブレンドの溶融物に添加する。PPS(Solvay製のRyton(登録商標)160QN)およびPEEK(Vestakeep(商標)5000)のブレンドされた組成物の硬化反応動力学を、クロスオーバータイムによって研究し、レオメーター(Tain Instruments製のARES-G2)によって、歪み0.1%および振動1Hzで、N中360℃で測定し、図4に表示する。この目的では二軸押出機を使用し、ワイヤーを二軸押出機の主オリフィスに通過させる。架橋は溶融状態で生じ、クロスヘッドダイを出るコーティングを、より高い硬化状態で付与する。一軸押出機も同じ組成物と一緒に使用され、供給装置機序が選択される。投入オリフィスを、ブレンディングするのに十分な時間で材料を導入するように位置させる。
(実施例7)
【0172】
コーティングを、実施例1~実施例6による架橋可能な芳香族ポリマー組成物を使用して、図1を参照して銅ワイヤーのコイル10を入口ウインチ12上に供給することによって付与する。ウインチ12は、入口ウインチ12と出口ウインチ14の間に、コーティングの適切なコイル張力を確保するために、出口ウインチ14と連動するように構成されている。ワイヤーと実施例の架橋可能なポリマー(複数可)の間の接着を増強し、湿気を除去するためにオーブンを使用して、コイルを予熱ステップ16で予熱する。押出機18は、クロスヘッドダイ20に対して垂直に配置する。架橋可能なポリマーを押出機に供給し、そこで溶融させる。押出機のバレル温度は660°Fである。クロスヘッドダイ20を、押出機の端部に、加工方向42に対して平行に位置させる。ワイヤーを、コイルスピード69フィート/分で、680°Fでクロスヘッドダイ20に通過させる。クロスヘッドダイ20をプロセスラインに対して平行に90°回転させ、ワイヤー上に溶融物を形成する。実施例2~6に記載される通り、所望の特性および架橋反応動力学に応じてプロセスの様々な時点で、架橋性化合物および/または必要に応じた架橋性添加剤、例えば抑制剤を添加する。このプロセス中、インライン硬化ステップ22が生じる。さらに代替として、本明細書の一例では、インライン硬化のためにトンネルオーブン30を使用する。本明細書の例では、コーティングされたワイヤーを、クロスヘッドダイを出た後に水冷浴24に通過させる。
【0173】
ワイヤーを、出口ウインチ14および電圧制御26、ならびにスパーク検出器28の上に通過させる。次に、ワイヤーを巻取り機32に巻き取り、最終バッチ硬化ステップ34で最終バッチを硬化させて、コーティングされたワイヤー36を形成する。最終バッチ硬化ステップ(後硬化)は、組成物中の架橋可能なポリマーを確実に完全に硬化させるために、オーブン内で高温加熱により実施する。
【0174】
このプロセスのさらなる例では、ワイヤーを、クロスヘッドダイを出た後に部分的または完全に硬化させるために、トンネルオーブン30に入れる。オーブンの時間および温度および長さは、本開示に先に論じた通り、所望の硬化レベルおよびラインスピードに基づいて選択される。本明細書のこのプロセスのさらなる例では、インライントンネルオーブンの対流と関連する環境の熱損失が生じないことによるより効率的なインライン硬化部品として、放射/赤外線熱トンネルを使用する。
【0175】
本明細書のプロセスの別の例では、ワイヤーを、トンネルオーブン30を出た後に冷却ステーション24に通過させ、それによって、ワイヤーを水浴に通過させる。高電圧を使用することによるコーティングの絶縁特性の欠陥を検出するために、スパーク検出器28を使用する。本明細書のさらなる例では、いくつかのやり方の1つの例として、直径ゲージ38および偏心ゲージ40を用い、ここで、コーティングされたワイヤーのインライン点検を行うことができる。この例では、ワイヤーを、出口ウインチ14および電圧制御26上に通過させ、次に巻取り機32で巻き取って終わる。リールに、コーティングされたワイヤーコイルを充填し、次に最終バッチ硬化ステップ34に供して、コーティングされたワイヤー36を形成する。
【0176】
上記の実施形態には、本発明の広範な概念から逸脱することなく変更を加えることができることを、当業者は認識されよう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内の改変を網羅することが企図されると理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】