(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】第一の領域と第二の領域の間に単一層の殺病原体バリアを提供するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230615BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20230615BHJP
【FI】
A41D13/11 M
B32B7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571800
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021033635
(87)【国際公開番号】W WO2021237078
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522454839
【氏名又は名称】エックス セル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】パンチャル スニル
(72)【発明者】
【氏名】ソレル ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン アーロ
(72)【発明者】
【氏名】パミック ダミール
【テーマコード(参考)】
3B211
4F100
【Fターム(参考)】
3B211CA02
4F100AA01B
4F100AA01C
4F100AH02B
4F100AH02C
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
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4F100BA10D
4F100CB00D
4F100EH46
4F100EH61
4F100EJ86
4F100GB56
4F100GB66
4F100JC00B
4F100JC00C
4F100JD01
(57)【要約】
第一の領域と第二の領域の間に配置され、第一の領域と第二の領域の間の病原体の通り抜けを防止するバリアが提供される。バリアは、殺病原体成分によって処理された単一層を含む。単一層は、第一の領域に向けられた第一の面と、第一の領域内の病原体が第一の面の外表面に侵入するように、殺病原体成分によりコーティングされた外表面を含む。単一層は、第二の領域に向けられた第二の面と、第二の領域内の病原体が第二の面の外表面に侵入するように、殺病原体成分によりコーティングされた外表面も含む。第一及び第二の面の外表面にコーティングされた殺病原体成分は、第一及び第二の面それぞれの外表面に侵入する病原体を不活性化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の領域と第二の領域との間に配置され、前記第一の領域と前記第二の領域との間の病原体の通り抜けを防止するように構成されたバリアであって、
前記バリアは、殺病原体成分によって処理された単一層を備え、
前記単一層は、前記第一の領域に向けられた第一の面と、前記第二の領域に向けられた第二の面とを含み、
前記第一の面は、前記殺病原体成分によりコーティングされた外表面であって、前記第一の領域内の病原体が当該外表面に侵入するようにコーティングされた外表面を含み、
前記第二の面は、前記殺病原体成分によりコーティングされた外表面であって、前記第二の領域内の病原体が当該外表面に侵入するようにコーティングされた外表面を含み、
前記第一の面及び第二の面の外表面にコーティングされた前記殺病原体成分は、前記第一の面及び第二の面それぞれの外表面に侵入する前記病原体を不活性化させるように構成されている、
ことを特徴とするバリア。
【請求項2】
前記バリアは、単一層のみを含み、前記第一の領域と前記第二の領域との間に配置された追加の層を含まない、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項3】
前記殺病原体成分は、一又は複数の塩、酸及びエステルを備える、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項4】
前記殺病原体成分は、前記第一の面の外表面から前記第二の面の外表面までの単一層の厚みにわたって、ある結晶化度の塩を備える殺ウイルス成分である、
ことを特徴とする請求項3記載のバリア。
【請求項5】
前記単一層は、一定の流量で前記単一層を通り抜ける空気の流れに基づいた前記第一の面と前記第二の面との空気圧の差が約0.2mmH
2O/cm
2未満となるような通気性を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項6】
前記空気圧の差は、約0.1mmH
2O/cm
2未満である、
ことを特徴とする請求項5記載のバリア。
【請求項7】
前記バリアは、前記第一の領域と前記第二の領域との間で少なくとも95%のウイルスろ過効率を有している、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項8】
前記バリアは、前記第一の領域がユーザーの外部環境となり、前記第二の領域が前記ユーザーの顔となるかたちで、前記ユーザーの顔に着用されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項9】
前記第二の面の外表面上に粘着剤を更に備え、
前記第二の面は、前記粘着剤を用いて前記ユーザーの顔に直接取り付けられるように構成されている、
ことを特徴とする請求項8記載のバリア。
【請求項10】
前記粘着剤は、前記第二の面が前記ユーザーの顔に直接取り付けられる際、前記バリアと前記ユーザーとの間に密閉状態を確保するように、前記第二の面の外表面の外周に沿って設けられている、
ことを特徴とする請求項9記載のバリア。
【請求項11】
ユーザーによって着用されるフェイスカバーであって、
請求項8による第一のバリアと、
前記単一層の第二の面と前記ユーザーの顔との間に配置された、殺病原体成分によって処理されていない二次的な層とを備え、
前記第一のバリアは、前記ユーザーの外部環境から侵入する病原体を不活性化させ、前記二次的な層の汚染を防止するように構成されている、
ことを特徴とするフェイスカバー。
【請求項12】
前記二次的な層と前記ユーザーの顔との間に配置された、請求項8による第二のバリアを更に備え、
前記第二のバリアは、前記ユーザーの顔から侵入する病原体を不活性化させ、前記二次的な層の汚染を防止するように構成されている、
ことを特徴とする請求項11記載のフェイスカバー。
【請求項13】
前記第一のバリア及び前記二次的なバリアは、前記二次的な層を封入するように構成された一体型の単一層を含む一体型のバリアであり、
前記一体型のバリアは、前記第一の領域又は前記第二の領域から侵入する病原体を不活性化させ、前記二次的な層の汚染を防止する、
ことを特徴とする請求項12記載のフェイスカバー。
【請求項14】
前記第一のバリア及び前記第二のバリアは、別個の単一層を有する別個のバリアである、
ことを特徴とする請求項12記載のフェイスカバー。
【請求項15】
前記バリアは、空調システムの管路に配置されるように構成された空気フィルターであり、
前記第一の領域は、空気の流れを向かわせるように構成された管路であり、
前記第二の領域は、前記空気フィルターを通り抜けた後の前記空気の流れを受けるエリアである、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項16】
前記バリアは、患者に使用される人工呼吸器の導管に配置されるように構成された空気フィルターであり、
前記第一の領域は、前記患者が吐き出した空気の流れを向かわせるように構成された導管であり、
前記第二の領域は、医療施設における前記人工呼吸器の外部環境である、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項17】
前記バリアは、医療従事者に着用されるように構成された衣服であり、
前記第一の領域は、医療施設における前記医療従事者の外部環境であり、前記第二の領域は、前記医療従事者の身体である、
ことを特徴とする請求項1記載のバリア。
【請求項18】
請求項1による前記バリアを形成する方法であって、
a)材料をある値の濃度を有する殺病原体成分を備える溶液で第一の時間濡らすこと、
b)前記第一の時間が経過した後に前記材料を第二の時間乾燥させること、
c)前記第二の時間が経過した後に前記乾燥させた材料の通気性を計測すること、
d)前記計測された通気性の値を通気性の閾値と比較すること、
e)前記計測された通気性の値が前記閾値より大きいことに基づいて、工程b)における前記乾燥させた材料を用いて、請求項1による前記単一層を形成することを備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
工程c)における前記計測された通気性の値が前記閾値より大きいとき、前記方法は、前記殺病原体成分の濃度の値を上昇させ、前記上昇させた濃度の値で工程a)~d)を繰り返すことを備え、
工程e)における前記乾燥させた材料は、前記計測された通気性の値が前記閾値より大きい前記殺病原体成分の濃度の値のうち最も高い値に基づいている、
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記濡らす工程は、前記材料を前記溶液が入った槽に前記第一の時間、前記材料が完全に浸るように浸すことを備える、
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記濡らす工程は、前記材料に前記溶液を均一に噴霧することを備える、
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記濡らす工程は、注入可能なプラットフォームから前記材料に前記溶液を注入することを備える、
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥工程は、オーブン又は密封容器の一方の中で行われ、
前記密封容器での乾燥工程のための前記第二の時間は、前記オーブンでの乾燥工程のための前記第二の時間より短い、
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)のもと、2021年5月21日に出願された米国特許仮出願第63/101,894号の利益を主張し、その開示内容が、本明細書に完全に記載されるような形で、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウイルスや細菌等の病原体は、直接接触及び間接接触を通じて人から人へ容易に伝染することが知られている。直接伝染の一例として、息を吐く、咳をする、又はくしゃみをしている時に病原体のエアロゾル化が起こり、それが別の個人に伝染することが挙げられる。間接伝染は、病原体がドアノブ、調理台、テーブルの天板などの介在面又は個人の手に接触して存在しているときに起こる。
【発明の概要】
【0003】
第一の領域と第二の領域の間に配置され、病原体(例えば、ウイルス粒子)を殺すか、又は不活性化させることによって第一の領域と第二の領域の間の病原体の伝染を防ぐ、殺病原体成分によって処理されたバリアを提供するための技術が提供される。
【0004】
本発明者は、様々な従来のマスクが二つの領域の間の病原体の伝染防止を試みるのに使用可能であることを認識した。一つの実施形態では、殺病原体成分によって処理されていない二つの外層に挟まれた殺病原体成分(例えば、殺ウイルス成分)によって処理された内層を提供する従来のマスクが使用可能である。こうした従来のマスクの内層は病原体を殺すか、又は不活性化させることに使用されるが、処理が施されていない外層は、病原体が接触すると汚染される。結果として、ユーザーがマスクに触れる又は外すと、手が汚染され、続けて自分自身を汚染する(例えば、顔に触れる)又は他の表面を汚染する(例えば、そうした表面に触れることによって)ことがある。更に本発明者は、汚染されたマスクを廃棄することにより、廃棄の途中で外層と接触した他の表面への更なる汚染が引き起こされることがあることを認識した。こうした従来のマスクの欠点を克服するために、本発明者は、フェイスカバーとして顔に着用できる、殺病原体成分によって処理された単一層バリアを開発した。この改善された単一層バリアは、侵入する病原体を効果的に殺すか、又は不活性化させ、バリア汚染のリスクを最小限に抑える。従って、改善された単一層バリアは、ユーザーの汚染リスク(例えば、バリアに触れる又は廃棄する際)および他の表面の汚染リスク(例えば、バリアが処分される際)を最小限に抑える。
【0005】
本発明者は、従来のマスクの欠点を認識した。例えば、従来のマスクは複数の層を含むため、通気性及び呼吸のしやすさが著しく制限される。このことは、呼吸器疾患(例えば、喘息)を患っている個人に健康上の影響を与え得る。更には、スポーツ活動中にこうした従来のマスクの着用を要求されることがある(例えば、ウイルスのパンデミックを抑制するための法律及び/又は規則によって)スポーツ選手の呼吸を著しく制限し得る。従来のマスクのこの重大な欠点を克服するため、本発明者は、顔に着用できる、殺病原体成分によって処理された単一層バリアを開発した。改善された単一層バリアは、単一層のみを含み、これにより従来のマスクに比べ非常に高い通気性及び呼吸のしやすさを有していると同時に、少なくとも病原体を殺すか、又は不活性化させる効果を有している。
【0006】
本発明者は、従来のマスクの別の欠点も認識した。例えば、ウイルスのパンデミック下においては、医療従事者が使用する特定のマスク(例えば、N95)が不足することがよく知られている。この不足は、マスクが特定の回数使用された後に処分される頻度が高いために起こりやすい。マスクを複数回使用した後に殺菌するために使用できる特定の方法も存在するが、そうした殺菌方法はマスクの素材を傷つけ、再使用時のマスクの性能に影響を及ぼす。特定のマスクの不足についてのこのよく知られた欠点を克服するため、本発明者は従来のマスク(例えば、N95)を封入してマスク汚染を最小限に抑えるために使用できる、殺病原体成分によって処理された単一層バリアを開発した。これにより、従来のマスクの耐用期間が効果的に伸び、従来のマスクが不足する事態が減る。更に、単一層バリアによれば、再使用時の従来のマスクの性能に影響を及ぼし得る他の方法(例えば、殺菌)についても改善がなされる。
【0007】
本発明者は、伝染を軽減する試みには先行するマスクの発明も含まれることに着目した。しかしながら、そもそも外表面(ユーザーと逆に向いている及び内表面(ユーザーに向いている)は環境又はユーザーのいずれかからによって汚染されてしまうものであり、個人が正しくマスクを外して廃棄しなければ感染のリスクを有するという点でマスクには限界がある。このことは、ユーザーにリスクを生じさせ、同様に間接伝染によって他者にもリスクを生じさせる。また、パンデミックの状況においては、個人防護装備が不足し、その結果多くの個人が防護マスクを再使用せざるを得ず、また、再使用する目的でマスクを殺菌するための信頼性のある手段を持たないということがしばしばある。更に、いくつかの殺菌方法はマスクの繊維の破壊を生じ、それによって病原体ろ過効果を低下させてしまう。マスクが不足すると、多くの個人は簡易な布製フェイスカバーを使用せざるを得なくなるが、これらは空気伝染防止の信頼性が低く、それでいてなお外した際の間接伝染のリスクを生じさせる。
【0008】
一つの実施形態では、本発明は、マスクカバーを提供し、マスクカバーは、殺病原体成分(例えば、殺ウイルス成分及び/又は殺菌成分)が組み込まれ、マスクの外表面及び内表面双方の防護を提供し、マスクの汚染を防止/低減し、それにより再使用が必要になった場合の安全性を向上させ、そして病原体を不活性化させる又は破壊することによって、カバーが外され廃棄される際の間接伝染のリスクを低減する。マスクが使用できない場合は、個人は本発明をフェイスカバーとして使用し、組み込まれた殺病原体成分及び殺菌成分による一定の安全性を与えることを選択してもよい。
【0009】
第一の一連の実施形態では、第一の領域と第二の領域の間に配置され、第一の領域と第二の領域の間の病原体の通り抜けを防止するバリアが提供される。バリアは、殺病原体成分によって処理された単一層を含む。単一層は、第一の領域に向けられた第一の面を含み、第一の面は、第一の領域内の病原体が侵入するように殺病原体成分によりコーティングされた外表面を含む。単一層は、第二の領域に向けられた第二の面を更に含み、第二の面は、第二の領域内の病原体が侵入するように殺病原体成分によりコーティングされた外表面を含む。第一の面及び第二の面の外表面にコーティングされた殺病原体成分は、第一の面及び第二の面それぞれの外表面に侵入する病原体を不活性化させるように構成される。
【0010】
第二の一連の実施形態では、ユーザーによって着用されるフェイスカバーが提供される。フェイスカバーは、第一の一連の実施形態によるバリアと、単一層の第二の面とユーザーの顔との間に配置された殺病原体成分によって処理されていない二次的な層を含む。バリアは、ユーザーの外部の環境から侵入する病原体を不活性化させ、二次的な層の汚染を防止するように構成される。
【0011】
第三の一連の実施形態では、第一の一連の実施形態によるバリアを形成する方法が提供される。方法は、材料をある値の濃度を有する殺病原体成分を含む溶液で第一の時間濡らすことを含む。方法は、第一の時間が経過した後に材料を第二の時間乾燥させることを更に含む。方法は、第二の時間が経過した後に乾燥させた材料の通気性の値を計測することを更に含む。方法は、計測された通気性の値を通気性の閾値と比較することを更に含む。方法は、計測された通気性の値が通気性の閾値より大きいことに基づいて、工程b)における前記乾燥させた材料を用いて、単一層を形成することを更に含む。
【0012】
他の態様、特徴、および利点は、本発明の実施を意図した最良の形態を含む、複数の特定の実施形態および実装形態を単に例示することによって、以下の詳細な説明から容易に明らかになる。また、他の実施形態は他の異なる特徴および利点を持ち、その詳細は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な自明な点において変更可能である。したがって、かかる図面および説明は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面では、実施形態が限定としてではなく一例として記載されており、本図面においては同様の構成要素が同様の参照番号により示されている。
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態による、第一の領域と第二の領域の間の殺病原体成分を有する単一バリア層の一例を示す模式図である。
【0015】
【
図2A】
図2Aは、一実施形態による、フェイスカバーとして着用された状態の
図1記載の単一バリア層の斜視図の一例を示す画像である。
【0016】
【
図2B】
図2Bは、一実施形態による、フェイスカバーとして着用された状態の
図1記載の単一バリア層の斜視図の一例を示す画像である。
【0017】
【
図2C】
図2Cは、
図2A記載の単一バリア層の2C-2C線における断面図の一例を示す画像である。
【0018】
【
図2D】
図2Dは、一実施形態による、
図2A記載の楕円形状のフェイスカバーの正面図の一例を示す画像である。
【0019】
【
図2E】
図2Eは、一実施形態による、伸縮素材のファスナーが取り付けられた状態の
図2A記載のフェイスカバーの正面図の一例を示す画像である。
【0020】
【
図2F】
図2Fは、一実施形態による、弓形形状の
図2A記載のフェイスカバーの正面図の一例を示す画像である。
【0021】
【
図2G】
図2Gは、一実施形態による、
図2F記載のフェイスカバーを顔に固定するための伸縮素材のファスナーの正面図の一例を示す画像である。
【0022】
【
図2H】
図2Hは、一実施形態による、顔に取り付けるための伸縮素材を有する
図2F記載のフェイスカバーの背面図の一例を示す画像である。
【0023】
【
図3A】
図3Aは、一実施形態による、マスクを覆った状態の
図1記載の単一バリア層を含むフェイスカバーの斜視図の一例を示す画像である。
【0024】
【
図3B】
図3Bは、
図3A記載のフェイスカバーの3B-3B線における断面図の一例を示す画像である。
【0025】
【
図3C】
図3Cは、一実施形態による、マスクを封入した状態の
図1記載の単一バリア層を含むフェイスカバーの斜視図の一例を示す画像である。
【0026】
【
図3D】
図3Dは、
図3C記載のフェイスカバーの3D-3D線における断面図の一例を示す画像である。
【0027】
【
図3E】
図3Eは、一実施形態による、マスクを封入する前の
図3C記載の単一層の正面図の一例を示す画像である。
【0028】
【
図3F】
図3Fは、一実施形態による、マスクを封入する前の
図3A記載の単一層の背面図の一例を示す画像である。
【0029】
【
図4A】
図4Aは、一実施形態による、空調システムにおいて空気フィルターとして使用されている
図1記載の単一バリア層の模式図の一例を示す画像である。
【0030】
【
図4B】
図4Bは、一実施形態による、
図4A記載の空調システムの空気フィルターの模式図の一例を示す画像である。
【0031】
【
図5】
図5は、一実施形態による、医療従事者によって着用される衣服を形成するのに使用されている
図1記載の単一バリア層の模式図の一例を示す画像である。
【0032】
【
図6】
図6は、一実施形態による、人工呼吸器におけるフィルターとして使用されている
図1記載の単一バリア層の模式図の一例を示す画像である。
【0033】
【
図7】
図7は、一実施形態による、
図1記載の単一バリア層を形成する方法の一例を示すフローチャートである。
【0034】
【
図8A】
図8Aは、一実施形態による、
図1記載の単一バリア層のX線回折(XRD)強度を示すグラフの一例を示す画像である。
【0035】
【
図8B】
図8Bは、
図8Aのグラフにおいて示されるXRDに使用される様々なミラー指数の一例を示す画像である。
【0036】
【
図9A】
図9Aは、一実施形態による、従来のマスクの下流における粒子の光散乱の一例を示す画像である。
【0037】
【
図9B】
図9Bは、一実施形態による、従来のサージカルマスクの下流における粒子の光散乱の一例を示す画像である。
【0038】
【
図9C】
図9Cは、一実施形態による、
図2A記載のフェイスカバーの単一バリア層の下流における粒子の光散乱の一例を示す画像である。
【0039】
【
図10】
図10は、一実施形態による、
図1記載の単一バリア層のウイルスろ過効率(VFE)を示すグラフの一例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
第一の領域と第二の領域の間にあり、第一の領域と第二の領域の間の病原体の通り抜けを防止する、殺病原体成分によって処理された単一層を含むバリアを提供する方法および装置について説明する。以下の説明では、本発明の十分な理解を得られるよう、具体的な細部が、例示の目的で数多く示されている。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの特定の細部を用いずとも実施され得ることは明らかであろう。それ以外の点については、周知の構造および装置をブロック図の形で示すことで、本発明が不必要に不明瞭なものとならないようにしている。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、第一の領域と第二の領域の間に配置され、第一の領域と第二の領域の間の病原体の通り抜け又は伝染を防止するバリアに関連して、以下に記載される。しかしながら、本発明はこれに関連するものに限定されず、第一の領域と第二の領域の間に配置され、第一の領域と第二の領域の間のウイルス粒子の通り抜け又は伝染を防止する、殺病原体成分を有する単一層を含むバリアを含む。
【0042】
説明の便宜上、「バリア」とは、殺病原体物質(例えば、殺ウイルス成分又は殺菌成分)によって処理され、第一の領域と第二の領域の間に配置され、第一の領域と第二の領域の間の病原体の伝染という事態を防止又は低減させる単一層の材料を意味する。説明の便宜上、「単一層」とは、単一の層の材料を意味し、複数の層の材料又は別の材料による追加の層は含めない。説明の便宜上、「殺病原体成分」とは、病原体を破壊する又は不活性化させる能力又は傾向を有する任意の化学物質又は分子を意味し、殺ウイルス成分及び殺菌成分を含む(ただし、これらに限定されない)。説明の便宜上、「殺ウイルス成分」とは、ウイルスを破壊する又は不活性化させる能力又は傾向を有する任意の化学物質又は分子を意味する。説明の便宜上、「殺菌成分」とは、細菌を破壊する又は不活性化させる能力又は傾向を有する任意の化学物質又は分子を意味する。説明の便宜上、「マスク」とは、病原体が伝染する事態を低減させるために着用される従来のフェイスマスク(例えば、N95マスク)であり、複数の層の材料を含むものを意味する。説明の便宜上、「フェイスカバー」とは、顔を覆って着用されるカバーであり、本明細書において開示されるバリアを含むものを意味する。
【0043】
一つの実施形態では、本発明は、着用に適し、ウイルス及び細菌の通り抜けを防止し、ウイルス及び細菌を破壊するように設計された化合物によって処理されたマスク用のカバー、又は顔用のカバーを提供する。このカバーによりマスクの汚染が低減されることで、ユーザーは、サージカルマスクであれ、N95マスクであれ、KN95マスクであれ、P100マスクであれ、又は個人が使用し得る他のマスクであれ、マスクを再使用できる。本発明は、ウイルス及び細菌を殺すように設計された化合物によって処理されていることにより、廃棄に際してのユーザーの環境の汚染も低減する。
【0044】
図1は、第一の領域102と第二の領域104の間に配置されたバリア100の一例を示す模式図である。一実施形態では、病原体110(例えば、エアロゾル液滴中のウイルス粒子)は、第一の領域102からバリア100へ侵入する。別の実施形態では、病原体111(例えば、エアロゾル液滴中のウイルス粒子)は、第二の領域104からバリア100へ侵入する。
図1では、双方の領域102、104から単一層101へ侵入する病原体110、111を示しているが、いくつかの実施形態では、領域102又は104のうちの一つから病原体110又は111のうちの一つだけが単一層101へ侵入する。
【0045】
一実施形態では、バリア100は第一の領域102と第二の領域104の間に配置された単一層101を含む。
図1に示すように、一つの実施形態では、単一層101は第一及び第二の領域102、104の間の境界面に沿って、第一及び第二の領域102、104の間の病原体110、111の通り抜けを防止するのに十分な距離だけ延在する。単一層101が第一及び第二の領域102、104の間の境界面に沿って延在するこの距離は、第一及び第二の領域102、104の特定の配置及び状況による。一つの実施形態では、単一層101は単一の層の材料のみを含み、第一の領域102と第二の領域104の間に配置された追加の層を含まない。一例示的実施形態では、単一層101はミクロフィブリル布、堅く織られた綿布、吸収性セルロース繊維層、織布、布地、ポリマーレイドファブリック(例えば、不織布及びメルトブローン)、ドライレイドの不織物及びウェットレイドの不織物等のうち
の一又は複数を含む、織物又は不織物の材料の層を含む。一例示的実施形態では、ポリプロピレンが単一層101の材料として好ましい。一例示的実施形態では、単一層101は特定の範囲の寸法(例えば、約4ミクロン、及び/又は約3ミクロンから約5ミクロンの範囲内、及び/又は約2ミクロンから約6ミクロンの範囲内)を有する細孔を含む。
【0046】
一実施形態では、単一層101は層の中に殺病原体成分112を含む。一つの実施形態では、単一層101には後述する方法を用いた殺病原体成分112によって処理されている。一つの実施形態では、単一層101には単一の殺ウイルス性及び/又は殺菌性を有する成分又はその組み合わせによって処理されている。一例示的実施形態では、成分は一又は複数の酸、塩、又はエステルを含む。一つの例示的実施形態では、成分はクエン酸、カルボン酸、又は任意の鉱酸を含む。別の例示的実施形態では、成分は一又は複数のクエン酸エステル、ビタミンCエステル、ピルビン酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、ケトグルタル酸、コハク酸エステル、フマル酸エステル、リンゴ酸塩、オキサロ酢酸又は塩基性成分(例えば、石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩、陽イオン、陰イオン及び非イオン界面活性剤、又は獣脂アミン)を含む。一例示的実施形態では、酸性成分の濃度は酸、塩、又はエステルの約11%~約100%の範囲であってもよく、塩基性成分の濃度は界面活性剤、塩又はエステルの約0.1%~約10%の範囲であってもよい。更に別の例示的実施形態では、他に使用されてもよい殺病原体成分(例えば、殺ウイルス成分及び/又は殺菌成分)は、NaCl、EDTA二ナトリウム亜鉛、銅、ニッケル、ヨウ素、マンガン、スズ、ホウ素、又は銀、それらの塩、それらのキレート、それらのキラクタント、それらの界面活性剤連結成分、又はそれらのイオンを含む。一例示的実施形態では、金属の殺ウイルス成分は1%~100%の溶液であってよく、コロイド及びフィココロイドが使用されてもよい。
【0047】
別の実施形態では、単一層101は単一層101の厚み全体にわたって殺病原体成分112によって処理されている(なお厚みとは、領域102、104の間の境界面と垂直であり、第一の領域102から第二の領域104へ延びる寸法である)。
図1に示すように、一つの実施形態では、単一層101は単一層101の第一の面106の外表面108から単一層101の第二の面116の外表面118まで、単一層101の厚み全体にわたって殺病原体成分112によって処理されている。一例示的実施形態では、殺病原体成分112は一又は複数の塩、酸及びエステルを含む。
図1は縮尺通りに描かれておらず、そのため単一層101の一部は殺病原体成分112を含んでいないが、これは単に図を簡略化するためであり、一つの実施形態では、殺病原体成分112は領域102、104の間の境界面にわたる単一層101の長さに沿って設けられている(例えば、全長に沿って均一に配置されている)。
【0048】
一例示的実施形態では、ウイルス粒子は通常、水滴(例えば、エアロゾル)に入って単一層101に侵入するため、塩はウイルス粒子を殺し、及び/又は不活性化させる殺ウイルス成分として効果的である。ウイルス粒子を含む水滴が単一層101に接触すると、単一層101内の塩結晶が水滴に溶ける。時間の経過とともに水滴が蒸発することにより、ウイルス粒子を含む水の体積が減少し、その結果相対的な塩濃度が上昇する。塩濃度が十分なレベルに達すると、塩はウイルス粒子を不活性化させ、及び/又は殺す。
【0049】
一実施形態では、単一層101の第一の面106は第一の領域102に向けられている。一例示的実施形態では、第一の面106の外表面108は殺病原体成分112によるコーティングを施され、第一の領域102内の病原体110が第一の面106の外表面108に侵入するように第一の領域102に向けられる。別の例示的実施形態では、第一の面106の外表面108は単一層101に侵入する病原体110に接触する最初の面である(例えば、バリア100の他のいずれの層又は表面又は成分も、外表面108より先に病原体110に接触しない)。
【0050】
一実施形態では、単一層101の第二の面116は第二の領域104に向けられている。一例示的実施形態では、第二の面108の外表面118は殺病原体成分112によるコーティングが施され、第二の領域104内の病原体111が第二の面116の外表面118に侵入するように第二の領域102に向けられる。別の例示的実施形態では、第二の面116の外表面118は第二の面116に侵入する病原体111に接触する最初の面である(例えば、バリア100の他のいずれの層又は表面又は成分も、外表面118より先に病原体111に接触しない)。一例示的実施形態では、第一の面106及び第二の面116の外表面108、118にコーティングされた殺病原体成分112は、第一の面106及び第二の面116それぞれの外表面108、118に侵入する病原体110、111(例えば、エアロゾル内のウイルス粒子)を不活性化させるように構成される。
【0051】
一実施形態では、殺病原体成分112は第一の面106の外表面108から第二の面116の外表面118までの単一層101の厚みにわたってある結晶化度の塩を含む。一実施形態では、塩の結晶化度は
図8A及び8Bに関して後述するX線回折(XRD)分析に基づいて計測される。
【0052】
一実施形態では、単一層101は通気性の閾値より大きい通気性を有する。一つの実施形態では、通気性は、一定の流量(例えば、約8L/分又は約4L/分~約12L/分の範囲内)で単一層101を通り抜けた空気流に基づいた、単一層101の前後の(例えば、第一の面106と第二の面116との)空気圧の値の差に基づく。一例示的実施形態では、単一層101の通気性は空気圧の差が約0.2mmH2O/cm2未満であるようなものとなっている。別の例示的実施形態では、通気性は空気圧の差が約0.1mmH2O/cm2未満であるようなものとなっている。
【0053】
一実施形態では、単一層101は第一及び第二の領域102、104の間でろ過効率閾値(例えば、85%)を上回るウイルスろ過効率を有する。一つの実施形態では、単一層101のウイルスろ過効率は第一の領域102と第二の領域104の間で少なくとも95%である。
【0054】
一つの実施形態では、単一層101はフェイスカバーとして使用される。
図2Aは、一実施形態による、フェイスカバー200として着用された状態の
図1記載の単一バリア層101の斜視図の一例を示す画像である。一例示的実施形態では、フェイスカバー200はユーザー203の顔(例えば、口と鼻)を覆うのに十分な寸法を有する単一層101を含む。一例示的実施形態では、単一層101の高さは約10cm及び/又は約5cm~約20cmの範囲内であり、及び/又は単一層101の幅は約21cm及び/又は約15cm~約25cmの範囲内であり、及び/又は単一層101の厚みは約3mm及び/又は約2mm~約4mm及び/又は約0.5mm~約5mmの範囲内である。単一層101のこれらの数値寸法の範囲は、数値寸法の範囲の一例に過ぎず、数値寸法はこれらの範囲外から選択されてもよい。
【0055】
本実施形態では、第一の領域はフェイスカバー200のユーザー203の外部環境202である。従って、本実施形態では、第一の面106の外表面108は外部環境202に向けられている(
図2Aを参照)。また、本実施形態では、第二の領域204はユーザー203の顔である(例えば、ユーザー203の顔とフェイスカバー200の間の領域)。本実施形態では、フェイスカバー200は、病原体110が外部環境202からユーザー203へ通り抜けるのを防止し(例えば、外部環境202によってユーザー203が汚染されるのを防止し)、及び/又は病原体111がユーザー203から外部環境202への通り抜けるのを防止する(例えば、ユーザー203によって外部環境202が汚染されるのを防止する)バリア100として機能する単一層101を含む。
【0056】
一つの実施形態では、フェイスカバー200は耳ひも206を用いてユーザー203の顔に固定される。しかしながら、本発明の実施形態はこの設計に限定されない。
図2Bは、一実施形態による、フェイスカバー202’として着用された状態の
図1記載の単一バリア層101の斜視図の一例を示す画像である。一実施形態では、耳ひも206を用いてユーザー203の顔に取り付けられる
図2A記載のフェイスカバー200と異なり、
図2B記載のフェイスカバー200’はフェイスカバー200’をユーザー203の顔に直接貼り付ける又は接着させる(例えば、耳ひも206を用いずに)ことによってユーザー203の顔に取り付けられる。一つの例示的実施形態では、粘着剤208は、第二の面116が粘着剤208を用いてユーザー203の顔に直接取り付けられるように構成されるかたちで、第二の面116の外表面118上に設けられる。一例示的実施形態では、粘着剤208はイソプロパノールと部分水添ロジンの混合物であり、例えばそれぞれ80重量パーセントと20重量パーセントである。一例示的実施形態では、
図2Bに示すように、粘着剤208は第二の面116がユーザー203の顔に直接取り付けられる際、粘着剤208が単一層101とユーザー203の間に密閉状態を確保するように構成されるかたちで、第二の面116の外表面118の外周に沿って設けられている。一例示的実施形態では、粘着剤208は外周に沿った幅約1.5cm及び/又は約0.5cm~約2cmの範囲内の細長片である。本発明者は、フェイスカバー200’が耳ひも206を用いたフェイスカバー200に対して明らかに優れていることを認識した。例えば、単一層101の端部周辺からの空気漏れを防ぐことによって感染リスクを低減させ、ユーザー203が息を吸ったり(ユーザーの感染低減)吐いたり(外部環境の感染低減)する際のリスクを低減させる。更に、他にフェイスカバー200’が明らかに優れていることとして、快適性が向上していること、及び特定の状況(例えば、髪を切ってもらう際)で耳ひも206を外す必要がないことが含まれ、また他にも利点がある(例えば、眼鏡の曇りが低減する等)。
【0057】
図2Cは、
図2A記載の単一バリア層101の2C-2C線における断面図の一例を示す画像である。一実施形態では、
図2Cには
図2B記載の単一層101の断面図も示されている。
図2Cの断面図は、フェイスカバー200の高さのうちの一箇所におけるものに過ぎない(例えば、ユーザー203と接触しているフェイスカバー200の上端部と下端部の間)。
図2Cに示すように、一つの実施形態では、第二の領域204はユーザー203の顔と第二の面116の外表面118の間に位置する。一実施形態では、
図2Cに示すように、病原体210が外部環境202からフェイスカバー200の外表面108に侵入するため、外表面108にコーティングされた殺病原体成分112は侵入する病原体210を殺し、及び/又は不活性化させるように構成される。一実施形態では、
図2Cに示すように、病原体211がユーザー203の顔からフェイスカバー200の外表面118に侵入するため、外表面118にコーティングされた殺病原体成分112は侵入する病原体211を殺し、及び/又は不活性化させるように構成される。
【0058】
更に別の実施形態では、フェイスカバー200はユーザー203の頭の周辺で固定するファスナー(例えば、伸縮素材)を用いてユーザー203に取り付けることができる。
図2D及び2Eは、ファスナー(例えば、伸縮素材230)を用いてユーザー203の顔に固定されるように構成されたフェイスカバー200’’の一例を示す画像である。一実施形態では、
図2Dに示すように、フェイスカバー200’’は長半径222が約38センチメートル(cm)又は約30cm~約40cmの範囲内の値を有し、短半径224が約20cm及び/又は約15cm~約25cmの範囲内の値を有する楕円形状である。
【0059】
別の実施形態では、
図2Eに示すように、フェイスカバー200’’は円形状である。一実施形態では、伸縮素材230はフェイスカバー200’’の2つのアンカーポイント232a、232bに取り付けられる。一例示的実施形態では、アンカーポイント232a、232bはユーザー203に向いている外表面118の外周に沿っている。一例示的実施形態では、伸縮素材230の長さは、フェイスカバー200’’が様々なユーザー203にフィットするように調節可能である。別の実施形態では、フェイスカバー200’’は、まず外表面118をユーザー203の顔に近づけ、次に伸縮素材230をユーザー203の頭の後ろへ伸ばしてフェイスカバー200’’をユーザー203の顔で保持することよってユーザー203に固定される。
図2F~2Hは、フェイスカバー200’’を作成するために用いられる単一層101(
図2F)、フェイスカバー200’’をユーザー203に固定するために用いられる伸縮素材230(
図2G)、及び伸縮素材230が取り付けられた状態のフェイスカバー200’’(
図2H)の一例を示すその他の画像を示している。
【0060】
図2A~2Hに関して説明した実施形態では、単一層101(例えば、追加の層がない状態)をフェイスカバーとして用いることが開示されているが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。他の実施形態では、単一層101を従来のマスク(例えば、N95)と併せて用いることを含むフェイスカバーが提供される。本実施形態では、単一層101は従来のマスクの汚染を低減し(例えば、マスクに侵入する病原体を殺すか、又は不活性化させることによって)、従来のマスクの耐用期間を効果的に延長させるために用いられる。
【0061】
一つの実施形態では、単一層101は従来のマスクの外側(例えば、ユーザーの外部環境に向いているマスクの面)を覆うために用いられる。一例示的実施形態では、従来のマスク310は一又は複数の処理が施されていない層(例えば、殺病原体成分によって処理されていないもの)を含み、病原体によって表面が汚染されやすい。
図3Aは、一実施形態による、マスク310を覆った状態の
図1記載の単一バリア層101を含むフェイスカバー300の斜視図の一例を示す画像である。
図3Bは、
図3A記載のフェイスカバー301の3B-3B線における断面図の一例を示す画像である。
図3Aに示すように、耳ひも306は従来のマスク310をユーザー203の顔に固定するために用いられる。単一層101は、従来のマスク310の外側(例えば、従来のマスク310と外部環境202の間)に配置され、従来のマスク310に侵入する病原体210による従来のマスク310の汚染を防止する(例えば、エアロゾル液滴内のウイルス粒子を殺すか、又は不活性化させることによって)。本実施形態では、単一層101の第一の面106の外表面108は外部環境202に向けられている。
図3Bに示すように、従来のマスク310は第二の領域304内(例えば、ユーザー203と単一層101の間)に配置される。
【0062】
別の実施形態では、単一層101は従来のマスクを封入する(例えば、顔に着用された際、外部環境202に向いている面とユーザー203に向いている面の両方を覆う)ために用いられる。
図3Cは、一実施形態による、マスク310を封入した状態の
図1記載の単一バリア層を含むフェイスカバー300’の斜視図の一例を示す画像である。
図3Dは、
図3C記載のフェイスカバー300’の3D-3D線における断面図の一例を示す画像である。
図3A及び3B記載のフェイスカバー300と異なり、
図3C及び3D記載のフェイスカバー300’は、従来のマスク310の両面(例えば、従来のマスク310の外部環境202に向いている面と従来のマスクのユーザー203に向いている面)を覆う単一層101を含む。
【0063】
更に他の実施形態では、単一層101には従来のマスク310が封入される(例えば、従来のマスク310の全ての表面が単一層101に覆われるかたちで)。
図3Dに示すように、単一層101’には従来のマスク310が封入されるが、ここで、第一の面106の外表面108’は、外部環境202から従来のマスク310に侵入する病原体210を殺すか、又は不活性化させるように配置され、第二の面116の外表面118’は、ユーザー203から従来のマスク310に侵入する病原体211(例えば、口から吐き出されたもの及び/又はくしゃみによるエアロゾル液滴等)を殺すか、又は不活性化させるように配置される。従って、
図3D記載の単一層101’は、領域202、304’の両方から従来のマスク310に侵入する病原体210、211を効果的に殺し、及び/又は不活性化させ、従来のマスク310の汚染リスクを最小限に抑え、従来のマスク310の耐用期間を延長させる。
【0064】
一つの実施形態では、単一層101’は、外表面108’と外表面118’が同じ一片の材料の一部であるような一体型のバリアである。他の実施形態では、外表面108’と外表面118’は単一層101’の別々の片によるものであり、一体型ではない。一例示的実施形態では、外表面108’と外表面118’は別々の材料の片であり、外表面108’、118’はそれぞれ従来のマスク310に接着される(例えば、粘着剤を用いて)。
【0065】
図3C及び3Dに関して説明したように、一つの実施形態では、単一層101’は従来のマスク310が封入される一片の一体型の材料である。
図3E及び3Fは、マスク310を封入する前の単一層101’の正面図及び背面図それぞれの一例を示す画像である。一実施形態では、
図3E及び
図3Fは従来のマスク310を封入する前の
図3D記載の単一層101’を示している。一つの実施形態では、単一層101’は従来のマスク310の端(例えば、上端)周辺で折られ、ファスナーを用いて反対側の端(例えば、下端)周辺に固定される。
【0066】
図3Eは、従来のマスク310を封入するために単一層101’が折られる折り線324で隔てられた単一層101’の外表面108’及び外表面118’を示している。更に、一実施形態では、単一層101’のそれぞれの辺が従来のマスク310の辺の外側で接着するように、間隔を開けられた粘着ストリップ330が外表面108’、118’それぞれの辺に沿って設けられている。更に、一実施形態では、従来のマスク310の耳ひも306が通り抜けてからユーザー203の耳の後ろで固定されるような、複数のスリット又は開口部326a~326dが外表面118’の四つの角に隣接して設けられている。更に別の実施形態では、複数の折り目320、322が外表面108’、108’に沿って設けられ、図示するように折り目320、322の間には様々な間隔が開けられている(例えば、約1.5cm~約4cmの範囲内)。一実施形態では、外表面108’、118’の幅は約20cm又は約15cm~約25cmの範囲内である。別の実施形態では、単一層101’の高さは約33cm又は約25cm~約40cmの範囲内である。
【0067】
図3Fは、単一層101’の内表面107’及び内表面117’を示しており、単一層101’が折られて従来のマスク310が封入される際には、それぞれ封入された従来のマスク310の前面と背面に向けられる。一実施形態では、耳ひも306が通って延びるように構成された四つの開口部326a~326dも
図3Fに示されている。単一層101’が折られて従来のマスク310が封入される際に内表面107’、117’の辺が接着するように、粘着剤340が内表面107’、117’の外周に沿って設けられている。
【0068】
上述の実施形態によれば、単一層101’は感染性のある病原体に対するユーザーの露出を低減することができる。一実施形態では、単一層101’はプリーツ式マスクカバーであり、サージカルマスクと同様の柔軟性を有し、ユーザーのマスク310を包み、粘着剤330、340により密封環境を提供してマスクの汚染を防止し、またユーザーの顔にフィットする柔軟性を有し、N95や類似のマスク/呼吸器を使用する際に求められるぴったりとしたフィットを可能にする。マスクカバーはスリット326a~326dを有し、サージカルマスクに類する同一の規格のマスクを使用する際にひもを通すことができる。別の実施形態では、マスクカバーは、耳ひも306を有するマスク310を使用する際の密封による保護、又はユーザーの頭に留める/固定するために用いられる方法も提供する。一例示的実施形態では、粘着シールのフラップは剥がせるように設計されており、カバーを開けて外表面も内表面も汚染することなくマスク310を取り出せるようになっている。
【0069】
図2A~2H及び
図3A~3Dではフェイスカバーに関連して使用される単一層101について説明したが、本発明の実施形態は単一層101のこの使用方法に限定されない。別の実施形態では、単一層101は空調システムの空気フィルターに関連して使用される。単一層101は、空調システムによって循環している空気の中に存在する病原体を殺すか、又は不活性化させるために効果的に使用できる。
図4Aは、一実施形態による、空調システム400において空気フィルター404として使用されている
図1記載の単一バリア層の模式図の一例を示す画像である。
図4Bは、一実施形態による、
図4A記載の空調システム400の空気フィルター404の模式図の一例を示す画像である。
【0070】
一つの実施形態では、空気フィルター404は、空調システム400において使用される従来の空気フィルター403を封入する(従来のマスク310を封入するのではなく)サイズ及び構成となっているという点以外は
図3D~3Fに関連して説明した単一層101’と同様の単一層101’を含む。一つの例示的実施形態では、単一層101’は空調システムの空気処理ユニット402内に配置された空気フィルター403を封入するために使用され、排気ダクト406を通って入ってきた空気の中の病原体を効果的に殺すか、又は不活性化させる。本例示的実施形態では、第一の領域102はリビング空間であり、第二の領域104は空気処理ユニット402である。別の例示的実施形態では、単一層101’は給気ダクト408の出口(部屋に向かっている)に配置された空気フィルター403を封入する(又は通気口あるいは格子に取り付けられる)ために使用され、リビング空間に放出される前の空気の中の病原体を効果的に殺すか、又は不活性化させる。本例示的実施形態では、第一の領域102は給気ダクト408であり、第二の領域104はリビング空間(例えば、ダクト408からの空気が向けられている部屋)である。
【0071】
一実施形態では、
図4A及び4Bは、空調システム400の空気処理ユニット402内及び給気ダクト408の出口において使用される空気フィルター404(単一層101’を有する)を示しているが、いくつかの実施形態では、空気フィルター404は空気処理ユニット402又は給気ダクト408のうちの一つにおいて使用される。更に他の実施形態では、
図4Bは、空気フィルター404は空気フィルター403を封入した状態の単一層101’を含んでいることを示しているが、他の実施形態では、空気フィルター404は単一層101、101’のみである(例えば、空気処理ユニット402内の従来のフィルタースロットとほぼ同じ寸法、又は出口における給気ダクト408の寸法で、外部フレームに固定されている)。
【0072】
更に別の実施形態では、
図4A及び4Bは、住宅又はオフィス向けに使用される空調システムに空気フィルターと併せて使用される単一層101、101’を示しているが、更に他の実施形態では、単一層101、101’は乗り物(例えば、飛行機、電車及び自動車を含むがこれらに限定されない客室付きの乗り物)の空調システムに使用できる。本実施形態では、単一層101、101’は、こうした乗り物の空調システム内の既存の空気フィルターを封入するために使用されるか、又は乗り物の空調システムの出口(又は入口)に隣接して配置され(従来の空気フィルターを伴わずに)、空調システム内で循環している空気の中の病原体を殺すか、又は不活性化させることができる。
【0073】
一つの実施形態では、単一層101を関連させて用いることができる別の事柄として、衣服又は衣類、特に病原体が存在するエリア(例えば、医療施設)において使用される衣服又は衣類を形成することがある。一例示的実施形態では、単一層101は、医療従事者(例えば、手術室にいる外科医)に着用される衣服を形成するために用いることができる。本例示的実施形態では、第一の領域102は医療施設の外部環境であり、第二の領域104は医療従事者の身体(例えば、衣服によって覆われている)である。
図5は、一実施形態による、医療従事者(例えば、外科医)に着用される衣服500を形成するために用いられる
図1記載の単一バリア層101a~101dの模式図の一例を示す画像である。一例示的実施形態では、単一層101aが医療従事者に着用されるヘッドカバーを形成するために用いられ、及び/又は単一層101bが医療従事者に着用されるフェイスカバーを形成するために用いられ、及び/又は単一層101cが医療従事者に着用されるガウンを形成するために用いられ、及び/又は単一層101dが医療従事者に着用される靴カバーを形成するために用いられる。本発明者は、単一層を医療従事者に着用される一又は複数の衣服を形成するために用いることにより、単一層の通気性によって医療従事者の快適性の度合いに影響を及ぼすことなく、外部環境による医療従事者の(及び医療従事者による外部環境の)感染又は汚染のリスクを最小限に抑えることに効果が発揮されることを認識した。一実施形態では、衣服500は特定の衣服(例えば、手術用衣服)に限定されず、アイソレーションガウン(例えば、一般的に集中治療室(ICU)で使用され、単一層かつ比較的薄いものであり得る)を含む。いくつかの実施形態では、手術用衣服は、特定の性能パラメータを確保する(例えば、液状汚染物質の通り抜けを防止する)ために単一層101による複数の層を採用している。
【0074】
一つの実施形態では、単一層101を関連させて用いることができる別の事柄として、人工呼吸器において使用される空気フィルターがある。
図6は、一実施形態による、人工呼吸器600においてフィルター601として用いられる
図1記載の単一バリア層の模式図の一例を示す画像である。本例示的実施形態では、第一の領域102は空気を患者に向かわせる給気ダクト602であり、第二の領域104は患者である。更に別の例示的実施形態では、第一の領域102は患者であり、第二の領域104は患者からの空気を人工呼吸器600に向かわせる給気ダクト604である。
【0075】
単一層101を形成する方法が示される。
図7は、一実施形態による、
図1記載の単一バリア層101を形成する方法700の一例を示すフローチャートである。
図7においては、説明のために一連の工程を特定の順序で示しているが、他の実施形態では、一又は複数の工程や、その一部は、異なる順番で行われたり、時間的に重複して行われたり、連続して又は並行して行われたり、省略されたりする。または、一又は複数の工程が追加されたり、前記方法がいくつかの組み合わせで変更されたりする。
【0076】
一実施形態では、方法700は、単一層101の一又は複数の設計パラメータを最適化するために、単一層101の材料を形成するように構成される。一つの実施形態では、設計パラメータのうちの一つは、殺病原体成分112の病原体を殺すか、又は不活性化させる効率である。本発明者は、効率が単一層101の形成に用いられる殺病原体成分112の濃度に基づくことを認識した。一例示的実施形態では、塩が殺ウイルス成分112として採用されているが、効率は塩の結晶化度(LOC)に基づく。別の設計パラメータは、単一層101の通気性であり、これは単一層101を含むフェイスカバーを着用しているユーザーの快適性(例えば、呼吸のしやすさ)に影響する。従って、一実施形態では、方法700は単一層101のこれら二つの設計パラメータ(例えば、殺病原体効率又は病原体不活性化効率、及び呼吸のしやすさ)を最適化するように構成される。本発明者は、一方のパラメータを変更するともう一方のパラメータに影響が及び得ることを理解した。一例示的実施形態では、本発明者は、殺病原体成分112の濃度(又は塩の結晶化度)を上昇させると、単一層101を採用しているフェイスカバーの通気性(すなわち、呼吸のしやすさ)が低下し得ることを理解した。従って、一例示的実施形態では、方法700は、これらのパラメータの値を最適化し、適切な通気性(すなわち、呼吸のしやすさ)を確保しつつ、病原体を効率的に殺すか、又は不活性化させるのに十分な濃度の殺病原体成分112を有する単一層101を設計するために採用される。
【0077】
一実施形態では、単一層101を形成するために一枚の材料が用いられる(例えば、幅と長さが約40cm×40cmであるもの、及び/又は幅と長さがそれぞれ約10cm~約50cmの範囲内であるもの)。一つの例示的実施形態では、一枚の材料は熱可塑性材料(例えば、ポリプロピレン)及び/又は綿混紡(例えば、絹、ウール、綿等)である。
【0078】
一実施形態では、工程701は、特定の値の濃度を有する殺病原体成分を含む溶液で材料を濡らすことを含む。一つの実施形態では、工程701の濡らしは第一の時間(例えば、約20時間)をかけて行われる。一例示的実施形態では、溶液はある塩濃度(例えば、約0.02ml/cm2~約0.06ml/cm2の範囲内、及び/又は約0.01ml/cm2~約0.1ml/cm2の範囲内の塩)を有する。
【0079】
別の実施形態では、工程701は、材料に殺病原体成分(例えば、殺ウイルス成分及び/又は殺菌成分)を塗布することを含み、そのうちには、霧吹き、噴霧、スパッタリング、塗付ける又は浸漬させること/浸すこと(例えば、液体成分については)、及びペレット状にすること又は粉末状にすること(例えば、固体成分については)のうちの一又は複数が含まれ、塗布は、ドライコート、ローラー、空中散布、ドライスパッタ、蒸着、圧着及び真空封入によって行われる。一例示的実施形態では、乾燥粉末を粉砕してナノ粒子にするか、又は液体に懸濁させて乳化させ、マスクカバーにコーティングしてもよい。ゲル及び油が液体コーティングで塗布されてもよい。
【0080】
一実施形態では、工程701は、材料を溶液が入った槽に第一の時間、材料が完全に浸るように浸すこと、及び/又は材料に溶液を均一に噴霧すること、及び/又は注入可能なプラットフォームから材料に溶液を注入することを含む。一例示的実施形態では、工程701は、材料をある量(例えば、約34mL)の溶液が入った槽に第一の時間(例えば、約12時間)浸し、疎水性を変化させ、浸潤性/吸水性を向上させることを含むが、これはプリウェット処理とされる。本例示的実施形態では、残った量(例えば、68mL)が乾燥工程703の前に同様に塗布される。別の例示的実施形態では、材料は濡らし工程701の間溶液の槽に完全に浸される。上述した浸しのパラメータの特定の値(例えば、工程701の時間、材料のサイズ、溶液の量等)は材料の用途(例えば、フェイスカバー、空気フィルター等)に基づいて調整可能であることに留意されたい。
【0081】
一実施形態では、工程701は、ペトリ皿又は必要とされるサイズ(例えば、約40cm×40cm)の皿に配置された材料に噴霧することを含む。本実施形態では、事実上)、噴霧工程はジェットスプレー又は霧スプレーを用いて行われ、溶液が材料に均一に広げられる。一例示的実施形態では、第一の時間は浸し工程とおよそ同じ(例えば、約12時間)である。一例示的実施形態では、噴霧工程で使用される噴霧溶液の量は約0.90mLである。別の例示的実施形態では、噴霧工程で用いられる噴霧径は、材料から20cm離れた位置のとき約15.5cmである。上述した噴霧工程のパラメータの特定の値(例えば、工程701の時間、材料のサイズ、溶液の量、スプレーの量等)は、材料の用途(例えば、フェイスカバー、空気フィルター等)に基づいて調整可能であることに留意されたい。上述した噴霧工程のパラメータの特定の値(例えば、工程701の時間、材料のサイズ、噴霧量、噴霧径等)は、材料の用途(例えば、フェイスカバー、空気フィルター等)に基づいて調整可能であることに留意されたい。
【0082】
一実施形態では、工程701は材料に溶液を注入することを含む。本実施形態では、注入は、注入可能なプラットフォーム及び特定の範囲内のゲージの注射針(例えば、内径が約0.18mm~約0.11mmの範囲の、約28ゲージ~約32ゲージ)を用いて行われる。一例示的実施形態では、対象となるウェッティング領域は約2.7mmである。別の実施形態では、針は一枚の材料と同じ幅(例えば、約40cm)を有するプラットフォーム上に並べられる。一例示的実施形態では、溶液は均等に分配され、プレウェッティングの時間なしに直ちに材料に挿入、注入、及び含浸される。一例示的実施形態では、工程701は約22,500本の注射器を用いて、一回の工程で1本につき約0.004mLを注入するため、プリウェット工程が不要である。一例示的実施形態では、量は同サイズの針のデッドボリュームを大きく上回っており、各注射器の下準備を最適に行うことができる。
【0083】
一実施形態では、工程703は、第一の時間が経過した後に、工程701で濡らした材料を第二の時間(例えば、約10時間、又は約8時間~約15時間の範囲内)乾燥させることを含む。一つの実施形態では、工程703はオーブン又は密封容器の一方の中で行われ、密封容器での乾燥工程のための第二の時間は、オーブンでの乾燥工程のための第二の時間より短い。一例示的実施形態では、工程703において、乾燥は約20℃~約100℃の範囲内の温度で行われてもよく、殺菌は熱(例えば、約20℃~約100℃)又はガス殺菌のいずれかで行われてもよい。
【0084】
一実施形態では、乾燥工程703は、後部のファンによって全体が均一の温度にされた従来のオーブンの中に材料を入れるという、従来の乾燥を含む。本実施形態では、乾燥工程703は約24時間行われる。別の実施形態では、乾燥工程703は密封容器での真空乾燥を含み、相対的な湿度及び圧力を大きく減少させる。本例示的実施形態では、気圧を下げると、材料をより早く乾燥させることができる。一例示的実施形態では、水の沸点が著しく下がり(例えば、約100℃から約35℃まで)、その結果蒸発の速度が上昇し、大気圧で24時間かかる乾燥を特定の条件下に置くことで数時間のうちに行うことができる。
【0085】
一実施形態では、工程705は、工程703の後で材料の通気性を計測することを含む。一つの実施形態では、通気性の計測は、工程703の後で、材料を通る一定の流量に基づいて材料の前後の空気圧の差を計測することを含む。
【0086】
一実施形態では、工程707は、工程705で計測された通気性の値を通気性の閾値(例えば、0.2mmH2O/cm2以下の空気圧の差に相当する)と比較することを含む。工程705で計測された通気性が閾値より大きい場合、方法700はブロック709に移行する。工程705で計測された通気性が閾値より大きくない場合、方法700はブロック711に移行する。
【0087】
一実施形態では、工程709は溶液内の殺病原体成分112の濃度を上昇させ(例えば、溶液内の塩の濃度を上昇させ)、上昇させた溶液の濃度の値で工程701~707を繰り返すことを含む。
【0088】
一実施形態では、工程711は、前回繰り返した工程703による材料を単一層101として使用することを含む。一つの実施形態では、計測された通気性が通気性の閾値より大きい場合、工程701~707が繰り返される。工程707で通気性の値が通気性の閾値より小さいことが示された場合、それは殺病原体成分112の濃度が高すぎて通気性に悪影響を及ぼしていることを示している。従って、工程711では、前回繰り返した工程701~707での形成殺病原体成分112の濃度が単一層101を形成するのに利用される。一例示的実施形態では、工程701~707の4回目の繰り返しで計測された通気性の値が閾値より小さいことが示された場合、工程711では、工程701~707の3回目の繰り返しで使用された濃度の値が単一層101を形成するのに採用される。この殺病原体成分112の濃度は、許容できる程度の通気性を確保しつつ殺病原体成分112の濃度を高くする(例えば、病原体を最大限に殺すか、又は不活性化させるために)ことの効果的なバランスを提供するのに効果を発揮する。
本発明者は、工程701~707を4回繰り返して溶液の塩濃度が4回連続で上昇しているにもかかわらず、各繰り返しでの工程707で計測された通気性が閾値を上回っている、という驚くべき結果を発見した。本発明者は、溶液の塩濃度が上昇することで通気性が減少すると予想していたため(例えば、塩結晶の濃度が上昇すると細孔のうちのいくつかは部分的に覆われると予想されていたため)、これは驚くべき結果といえる。従って、一つの実施形態では、本発明者は方法700を行い、4回連続で上昇した(工程701~709を4回繰り返した)うち最も高い濃度値を使用した。一つの例示的実施形態では、工程701~709を4回繰り返す中で上昇していく塩濃度の値が使用された。一例示的実施形態では、工程701~709の各繰り返しで上昇していく濃度の値は、0.02122ml/cm2、0.03182ml/cm2、0.04244ml/cm2、及び0.06367ml/cm2を含む。しかしながら、これらの塩濃度の値は値の一例に過ぎず、本明細書の方法に採用される塩濃度の値は、これらの特定の値又はこれらの特定の範囲の値に限定されない。
【0089】
殺ウイルス成分によって処理された材料(工程701及び703による)は、特定の性質及び特徴を有する。一実施形態では、ポリプロピレンのシートに溶液を塗布する(工程701)ため、材料は、現行の従来のマスク310(例えば、従来のサージカルマスク)に採用されている素のシートと大きく異なる特定の性質及び特徴を表す。接触角(ΘC)は、液体が固体の表面を濡らす能力を計測する指標として定義される。材料(例えば、ポリプロピレン繊維)上の材料中の塩結晶(例えば、NaCL結晶)の形成に加え、界面活性剤の存在により、表面の性質が疎水性(例えば、ΘCが約134±5°)から親水性(ΘCが約0°)に変わった。結果として、ウイルスエアロゾルの繊維への吸着が大きく改善された。
【0090】
一つの実施形態では、方法700によって形成された単一層101を使用している間に、外表面108、118がウイルスエアロゾルに晒されると、接触点の塩結晶が溶け、ウイルス細胞内の浸透圧を少しずつ上昇させる。本実施形態では、蒸発が発生し、塩濃度が単一層101の高濃度からウイルスへと移り、最終的に細胞の過飽和に至る。溶解度が限界に達すると、塩の再結晶化が始まる。乾燥中、ウイルス及び細菌性細胞は更に上昇した浸透圧に晒され、最終的に高浸透圧ストレスに達する(例えば、約541mOsmより大きい)。結晶化と細胞間ストレスの組み合わせにより、ウイルスのエンベロープが不可逆的に変形し、全体的な構造的ダメージのためにウイルスの感染力が失われる。
【0091】
一つの実施形態では、材料に使用される塩殺ウイルス成分の結晶化度(LOC)はX線回折で計測される。X線回折分析は、微細構造分析、特に材料の結晶学的構造の特定に一般的に用いられる方法である。分析結果はミラー指数によって数値化され、一連の3つの特定の数値の組み合わせによって結晶内の原子の平面の向きが示される。
図8Bは、様々なミラー指数850及びそれぞれのミラー指数に関連付けられた結晶内の原子の平面の向きの一例を示す画像である。
【0092】
X線回折(XRD)は、結晶の原子構造及び分子構造を特定する実験科学であり、結晶構造によって入射するX線ビームが多数の特定方向に回析する。結晶学者は、こうした回折光の角度及び強度を計測することで、結晶内の電子の密度の三次元画像を生成することができる。この電子の密度から、結晶内の原子の平均位置、また化学結合、結晶の乱れ、及び他の様々な情報を測定することができる。
【0093】
塩、金属、鉱物、半導体、また様々な無機分子、有機分子、及び生体分子等、多くの物質が結晶を形成できるため、X線回折は多くの科学分野の発展の基礎となってきた。単結晶X線回析計測においては、試料(例えば、本明細書の方法によって形成された単一層101、101’、又はその小片)がゴニオメーターにセットされる。ゴニオメーターは、試料(例えば、層101、101’)を選択された方向に位置決めするために用いられる。試料(例えば、単一層101、101’)に微細集束された単色のX線ビームが照射され、反射として知られている、規則的な間隔のスポットの回折パターンが生成される。異なる方向で撮影された二次元画像は、フーリエ変換という数学的手法を用いて、試料(単一層101、101’)についての既知の化学データと組み合わせて、試料内の電子の密度の三次元モデルに変換される。
【0094】
図8Aは、単一層101のX線回折(XRD)スペクトル(曲線806)を従来のマスク310のX線回折スペクトル(曲線808)と比較して示したグラフ800の一例を示す画像である。横軸802は、XRDに使用されるX線ビームに対する試料(例えば、単一層101、101’)の方向である。縦軸804は、試料(例えば、単一層101、101’)内の電子密度を示す強度(任意単位)である。
図8Aの曲線808が示すように、曲線808内には複数のピーク806a~806iが発生しており、その試料(例えば、単一層101、101’)における、その方向において結晶構造が存在していることを示している。同様に、
図8Aに示すように、ピーク806a~806iのそれぞれにおいてミラー指数が示されており、それぞれのピークのミラー指数を示している。一例示的実施形態では、ピーク806a~806iは単一層101、101’内のそれぞれの平面について単一層101、101’の結晶化度をまとめて示している(
図8Aのミラー指数又はピーク)。
【0095】
一実施形態では、XRDは塩結晶内の原子構造を理解する手がかりとなる回折パターンを生成し、それに関連付けられた強度によって結晶格子平面内の電子密度が数値化される(任意単位による。縦軸804を参照)。本発明者は、低濃度値の塩が使用される際、使用される塩がより少ないために、XRD回折パターンの強度が低下することを認識した。一例示的実施形態では、全ての結晶が特定のミラー指数を有するため、ピーク806a~806iはNaCLのそれと相関がある。一例示的実施形態では、本明細書において使用された塩濃度値で記録された平均強度は約3au(任意単位)であり、結晶の特定のピークはより高い値であった。
【0096】
一つの実施形態では、単一層101のろ過効率は、単一層101の作成において計測及び使用される別のパラメータである。粒子ろ過効率(PFE)の目的は、一定の流量での単分散粒子の適切なろ過作用を示すことにある(例えば、ASTM F2299による方法を用いて)。一実施形態では、単一層101のPFEを計測するために、所定の量のポリスチレンラテックス粒子(例えば、粒子の平均直径が0.216±0.0009μmのAgar Scientific社製のもの)が一定の流量(例えば、10cm/秒)で材料を通り抜けた。下流における粒子数を数値化するために、光散乱が用いられる。効率の値は
【数1】
を用いて求められる。上記において、EはPFEの値であり、M
dは単一層101の下流における粒子数であり、M
uは単一層101の上流における粒子数である。一つの実施形態では、約1.80×10
11n/mLというメーカーの粒子濃度を使用することによりM
dは一定に保たれた。
【0097】
下記表1は、従来のフリースマスク、従来の3層サージカルマスク、及び単一層101(表1においては「増幅シールド」)のPFEの値を示している。表1のPFEの値に示されるように、単一層101のろ過効率は約98.7%であり、二つの従来のマスクのろ過効率よりも高い。
【表1】
図9Aは、一実施形態による、従来のマスク(例えば、フリースマスク)の下流における粒子の光散乱の一例を示す画像900である。
図9Bは、一実施形態による、従来のサージカルマスク(例えば、3層サージカルマスク)の下流における粒子の光散乱の一例を示す画像910である。
図9Cは、一実施形態による、
図2A記載のフェイスカバー200の単一バリア層101(例えば、表1の増幅シールド)の下流における粒子の光散乱の一例を示す画像920である。
【0098】
一つの実施形態では、単一層101のウイルスろ過効率/細菌ろ過効率(VFE/BFE)は、単一層101の作成において計測及び使用される別のパラメータである。VFE/BFEの目的は、細菌及びウイルスのろ過における単一層101の性能を数値化することにある(例えば、ASTM F2101による方法を用いて)。一つの実施形態では、ASTM F2101によるBFEを計測する方法は、六段のアンダーセンサンプラー内で、1ft3/分という一定の流量で標的材料を通り抜けた、黄色ブドウ球菌のエアロゾル化液体懸濁液(例えば、粒子の平均直径が3.5±0.6pmのSigma Aldrich社製のもの)に基づく。各層は、材料を通り抜ける細菌を増殖させるための培地となる寒天プレートを含む。
【0099】
一つの実施形態では、ASTM F2101によるVFEを計測する方法は、大腸菌のみに影響し、その後試料に投射された、エアロゾル化したバクテリオファージΦΧ174(例えば、ウイルスを含む水滴の平均サイズは3.2±0.4μmであるが、これは個々のウイルスのものではない)に基づく。寒天プレートは素のままではなく、大腸菌が植菌されている。
【0100】
BFE試験及びVFE試験の両方について、結果は単一層101を用いない対照試験と比較される。BFE及びVFEは、
【数2】
【数3】
を用いて求められる。上記において、CおよびFは対照結果およびフィルター結果である。下記表2及び3は、単一層101(AMP)及び対照のBFE(表2)及びVFE(表3)の値である。表2のBFEの値及び表3のVFEの値によって示されるように、単一層101のBFEの値及びVFEの値は約99.4~99.5%である。
【表2】
【表3】
【0101】
図10は、一実施形態による、
図1記載の単一バリア層101のVFEを示すグラフ1000の一例を示す画像である。横軸1002は、単位を分とした露出時間であり、縦軸1004は、単位をpfu/μg)としたウイルスティアーである。一実施形態では、各時間の値における左側の棒は従来のマスク310のウイルスティアーを示しており、各時間の値における右側の棒は単一層101、101’のウイルスティアーを示している。
図10に示すように、露出開始時においては、従来のマスク310及び単一層101、101’のウイルスティアーの値(約1000)はいずれも同じである。更に、
図10に示すように、5分間露出した後、従来のマスク310のウイルスティアーの値は露出開始時と同じ(約1000)であるのに対し、単一層101、101’のウイルスティアーの値は露出開始時から大きく減少している(約10)。これにより、単一層101、101’は、わずか5分で露出開始時のウイルスティアーの少なくとも95%を不活性化させたか、又は殺したことが確認された。
図10は、より後の露出時間(例えば、20分、60分)において、従来のマスク310のウイルスティアーの値は比較的高いまま(約700)であるのに対し、単一層101、101’のウイルスティアーの値は約0にまで減少していることも示している。別の実施形態では、ヘマグルチニン(HA)活性がほぼ完全に失われていることが示された。具体的には、ウイルスの表面に感染に不可欠な糖タンパク質が発見された。顕微鏡観察によって、エアロゾルの乾燥時間が3分程度であることが確認された。これは、ウイルスの破壊と乾燥による塩の結晶化には相関があるということを示している。
【0102】
一つの実施形態では、単一層101の耐液性は、単一層101の作成において計測及び使用される別のパラメータである。耐液性の目的は、飛沫や噴霧によって液体が外層から内層へ移動することに対する十分な抵抗を与えることにある。一例示的実施形態では、耐液性を計測する特定の方法が採用される(例えば、ASTM F1862による方法)。一例示的実施形態では、2mLの合成血液が、レベル1、静脈血圧の80mmHg、レベル2、動脈血圧の120mmHg、及びレベル3、外傷時の高い血圧の160mmHgという血圧に相当する様々な速度で単一層101に投射される。一つの実施形態では、単一層101は現行のマスクの補助用品であり、潜在的な媒介物の数を減少させることに加え、現行のマスクの耐用期間を延長させており、結果として二次汚染を減少させる。設定によっては、単一層101は、層を更に一枚追加することでバリア効率を向上させ、3つのレベル全てに対応する。ASTMでは、32枚のマスクのうち少なくとも29枚で反対側に液体が表れていないことで合格とされる。下記表4は、各レベルにおいて合格及び不合格であった単一層101の数を示している。
【表4】
【0103】
一つの実施形態では、単一層101の空気交換量(すなわち通気性)は、単一層101の作成において計測及び使用される別のパラメータである。空気交換量のパラメータは、一般にΔPで表され、フェイスカバー(単一層101で作られたもの)を着用しているユーザーにとって十分な呼吸のしやすさを示す。それはすなわち、単一層101がそれを通り抜ける空気の流れを制限する能力である(例えば、EN 14683による方法を用いて)。一実施形態では、空気交換量(又は通気性)を計測する方法は方法700の手順705において採用され、一定の流量で空気を供給しながら、圧力計を用いて単一層101の両面の空気圧の差を計測する。下記表5は空気交換量(すなわち通気性)の値を示し、それぞれFDAの承認を受ける条件となる値(表5上段)、従来のマスク310の値(表5中段)、及び従来のマスク310と単一層101を含むフェイスカバー300の値(表5下段)である。従って、一つの実施形態では、空気交換量(すなわち通気性)は、表5の中段と下段の差(例えば、約0.05~約0.07mmH
20/cm
2)に基づく。
【表5】
また、下記表6は、各レベルで計測された単一層101の性能パラメータ(表6最右列)をまとめたものを示している。
【表6】
【国際調査報告】