(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】カバジタキセル弱塩基性誘導体およびその製剤
(51)【国際特許分類】
C07D 305/14 20060101AFI20230616BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230616BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230616BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230616BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230616BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230616BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
C07D305/14 CSP
A61K31/337
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/34
A61K47/28
A61P35/00
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532113
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132491
(87)【国際公開番号】W WO2021109944
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】201911218994.3
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515119158
【氏名又は名称】沈陽薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 永軍
(72)【発明者】
【氏名】楊 子蒙
(72)【発明者】
【氏名】何 仲貴
(72)【発明者】
【氏名】劉 洪卓
(72)【発明者】
【氏名】遅 東旭
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H039
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC27
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086NA13
4C086ZB26
4H039CA66
4H039CD10
4H039CD20
(57)【要約】
本発明は、カバジタキセル弱塩基性誘導体およびその製剤に関し、具体的にはカバジタキセル弱塩基性誘導体の合成、該誘導体を含むリポソーム製剤、および薬物送達システムにおける用途に関し、医薬技術の分野に属する。前記カバジタキセル弱塩基性誘導体は、カバジタキセルと弱塩基性中間体をエステル結合で結合させることにより形成され、インビボでエステラーゼの作用によりエステル結合を切断し、活性薬物を放出することができる。その構造の一般式は以下のとおりであり、連結基はC
1-C
4アルキル、C
3-C
6シクロアルキルまたはフェニルであり、[N]はN-メチルピペラジニル、ピペリジニル、4-(1-ピペリジニル)ピペリジニル、モルホリニル、テトラヒドロピロリルまたは他の第三級アミン構造である。本発明のカバジタキセル弱塩基性誘導体は、リポソーム製剤を調製することができる。該リポソーム製剤は、高い薬物負荷容量、高いカプセル化率、良好な安定性などの特徴を有する。注射投与後、インビボの薬物の循環時間を大幅に増加させ、腫瘍部位での薬物の蓄積を増加させ、抗腫瘍効果と耐容量を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式を有するカバジタキセル弱塩基性誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
ただし、
連結基はC
1-C
4アルキル、C
3-C
6シクロアルキルまたはフェニルであり、
[N]はN-メチルピペラジニル、ピペリジニル、4-(1-ピペリジニル)ピペリジニル、モルホリニル、テトラヒドロピロリルまたは他の第三級アミン構造である。
【請求項2】
以下の構造式を有する請求項1に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【化2】
【請求項3】
前記薬学的に許容される塩は、カバジタキセル弱塩基性誘導体と薬学的に許容される無機酸または有機酸によって形成される塩である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項2に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体の合成方法であって、具体的に、DMAPの触媒作用下で、4-(4-メチルピペラジニルメチル)ベンゾイルクロリドとカバジタキセルのエステル化反応を実施し、次いで分離および精製を実施することで得られ、反応プロセス全体はN
2の保護下で行われ、DMAPはトリエチルアミンに置き換えられ得る合成方法。
【請求項5】
請求項2に記載のカバジタキセル誘導体をリポソームに調製し、前記リポソームはカバジタキセル弱塩基性誘導体、リン脂質、コレステロール、PEG化リン脂質を含み、以下のステップによって調製され、
(1)勾配を有するブランクリポソームを調製し、
(2)カバジタキセル誘導体のエタノール溶液を調製し、
(3)カバジタキセル誘導体のエタノール溶液とブランクリポソームをインキュベートする、カバジタキセル弱塩基性誘導体リポソーム。
【請求項6】
(1)リポソームの調製に必要な膜材料を秤量し有機溶媒に溶解し、減圧下で蒸発させて乾燥脂質膜を形成し、
(2)ステップ(1)で得られた乾燥脂質膜に内部水溶液を加え、相転移温度よりも高い温度で水和を行い、得られた生成物を異なる孔径のポリカーボネート膜を通して順次圧搾してナノサイズの小さな単層リポソームを形成し、
(3)ステップ(2)で得られた小さな単層リポソームの外部水相を置き換えて、リポソーム内部水相と外部水相間に勾配を有するブランクリポソームを取得し、
(4)ステップ(3)で得られた勾配を有するブランクリポソームにカバジタキセル誘導体の有機溶液を加え、インキュベートしてカバジタキセル誘導体リポソーム製剤を取得し、有機タンジェンシャル限外濾過、透析などで溶媒を除去することができる、ことを特徴とする請求項5に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体リポソーム。
【請求項7】
ステップ(2)では、前記内部水溶液は、クエン酸溶液、硫酸アンモニウム溶液、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリントリエチルアンモニウム塩溶液、ショ糖オクタ硫酸トリエチルアンモニウム塩溶液などである、請求項6に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体リポソーム。
【請求項8】
前記カバジタキセル誘導体と総脂質の重量比が1:4~12であり、前記総脂質はリン脂質、コレステロールおよびPEG化リン脂質の合計である、請求項5に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体リポソーム。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体またはその薬学的に許容される塩または請求項5~8のいずれか1項に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体リポソームの、薬物送達システムの調製における用途。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体またはその薬学的に許容される塩または請求項5~8のいずれか1項に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体リポソームの、抗腫瘍薬物の調製における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバジタキセル弱塩基性誘導体およびその製剤に関し、具体的にはカバジタキセル弱塩基性誘導体の合成、該誘導体を含むリポソーム製剤および薬物送達システムにおける用途に関し、医薬技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
カバジタキセル(Cabazitaxel、CTX)はタキサンの新世代のチューブリン結合剤である。パクリタキセルおよびドセタキセルと比較して、7-および10-ヒドロキシル基のメチル化により、カバジタキセルは腫瘍の薬物耐性と密接に関連するP糖タンパク質に対する親和性が低く、薬物の流出を減らすため、多剤耐性の欠陥をよりよく克服することができる。2010年6月、米国食品医薬品局(FDA)は、ホルモン耐性前立腺癌の治療のために、フランスのサノフィアベンティスが製造したカバジタキセル注射液(商品名:Jevtana(登録商標))をプレドニゾンと組み合わせて使用することを承認した。しかしながら、製剤中のTween80は、賦形剤に関連する毒性と副作用を引き起こし、薬物の臨床応用を大幅に制限する。カバジタキセル注射の欠点を克服するために、そのコア分子を再設計し、臨床応用の可能性を高めるために適切な製剤を選択する必要がある。
【0003】
リポソームは、生体細胞膜と同様のリン脂質二重層構造を持っており、薬物を包んで周囲の組織から隔離し、薬物の放出を制御することで薬物の刺激を軽減する。他の製剤と比較して、リポソーム製剤は優れた生体適合性を持って、リン脂質をPEG修飾することにより、リポソームに長い循環機能を与えることができ、これによりインビボでの薬物の循環時間を大幅に延長し、それによってナノサイズのリポソームを腫瘍の透過性および保持効果(EPR効果)により腫瘍血管を通過させて腫瘍部位に到達させることができ、腫瘍の標的化特性を間接的に改善し、腫瘍部位での薬物の取り込みを増加し、正常組織での薬物の放出を減少し、それによって「毒性の低減および有効性の増大」の効果を達成する。
【0004】
現在、臨床的に使用されているほとんどのリポソーム製剤では、薬物は有効成分ローディング法によってカプセル化されている。受動的薬物負荷法と比較して、能動的薬物負荷法は、高い薬物負荷容量、高いカプセル化率、および製剤の良好な安定性の特徴を有する同時に、薬物はリポソームの内部水相にカプセル化されているため、体循環プロセス中に薬物が漏れるのを防ぐ。能動的薬物負荷法では、通常、薬物とトラップ剤のより安定した組み合わせが内部水相に必要であるため、外部水相に存在する薬物分子は、膜貫通駆動力によって一定の条件下でリポソームの内部水相に入って安定して存在する。電気的に中性の化合物であるカバジタキセルは、弱酸性または塩基性を持たないため、活性薬物負荷法によってリポソームの内部水相に安定してカプセル化できるように、弱塩基化する必要がある。EPR効果により、ナノサイズのリポソーム製剤は腫瘍部位を標的とし、カプセル化されたカバジタキセル誘導体を放出し、該誘導体はインビボでエステラーゼによって加水分解された後に再び活性薬物を放出する可能性がある。
【0005】
発明の概要
従来のカバジタキセル注射剤の欠点を克服するために、本発明は、カバジタキセル弱塩基性誘導体を設計し、該誘導体をカバジタキセル誘導体リポソームに調製し、薬物をカップセル化して、高い薬物負荷、高いカップセル化率、良好な安定性を有するナノリポソーム製剤を取得する。
【0006】
本発明の目的は、カバジタキセルを弱塩基性修飾してリポソームのナノ薬物送達システムに調製し、抗腫瘍研究のために血液中の長期循環特性を付与することである。
【0007】
本発明の目的は、以下の技術的解決策を通じて達成される。
【0008】
本発明に記載のカバジタキセル弱塩基性誘導体は、カバジタキセルと弱塩基性中間体をエステル結合を介して結合し、インビボでエステラーゼの作用によりエステル結合を切断し、活性薬物を放出する。その構造の一般式は以下のとおりである。
【0009】
【化1】
ただし、
連結基はC
1-C
4アルキル、C
3-C
6シクロアルキルまたはフェニルであり、
[N]はN-メチルピペラジニル、ピペリジニル、4-(1-ピペリジニル)ピペリジニル、モルホリニル、テトラヒドロピロリルまたは他の第三級アミン構造である。
【0010】
さらに、本発明は以下の構造を有するカバジタキセル弱塩基性誘導体であることが好ましい。
【0011】
【0012】
本発明によって提供されるカバジタキセル弱塩基性誘導体の合成方法は以下のとおりである。
【0013】
DMAPの触媒作用下で、4-(4-メチルピペラジニルメチル)ベンゾイルクロリドとカバジタキセルのエステル化反応を実施し、次いで分離および精製を実施することで得られ、反応プロセス全体はN2の保護下で行われ、DMAPはトリエチルアミンに置き換えられ得る。
【0014】
さらに、本発明は、カバジタキセル弱塩基性誘導体を含むリポソームを提供し、前記のリポソームはカバジタキセル弱塩基性誘導体、リン脂質、コレステロール、PEG化リン脂質などを含む。前記カバジタキセル誘導体と総脂質の重量比は1:4~12であり、前記の総脂質はリン脂質、コレステロールおよびPEG化リン脂質の合計である。リン脂質、コレステロール、PEG化リン脂質は本分野で従来の量で使用される。
【0015】
本発明は、以下のステップを含むカバジタキセル誘導体リポソームの調製方法をさらに提供する。
(1)リポソームの調製に必要な膜材料を秤量し有機溶媒に溶解し、減圧下で蒸発させて乾燥脂質膜を形成し、
(2)ステップ(1)で得られた乾燥脂質膜に内部水溶液を加え、相転移温度よりも高い温度で水和を行い、得られた生成物を異なる孔径のポリカーボネート膜を通して順次圧搾してナノサイズの小さな単層リポソームを形成し、
(3)ステップ(2)で得られた小さな単層リポソームの外部水相を置き換えて、リポソーム内部水相と外部水相間に勾配を有するブランクリポソームを取得し、
(4)ステップ(3)で得られた勾配を有するブランクリポソームにカバジタキセル誘導体の有機溶液を加え、インキュベートしてカバジタキセル誘導体リポソーム製剤を取得する。
【0016】
好ましくは、ステップ(2)では、前記内部水溶液は、クエン酸溶液、硫酸アンモニウム溶液、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリントリエチルアンモニウム塩溶液、ショ糖オクタ硫酸トリエチルアンモニウム塩溶液である。
【0017】
より好ましくは、前記内部水溶液は硫酸アンモニウム溶液である。
【0018】
好ましくは、ステップ(3)では、前記外部水相溶液はショ糖溶液、HEPES緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液であり得る。
【0019】
さらに好ましくは、前記外部水相溶液はショ糖溶液である。
【0020】
好ましくは、ステップ(4)では、前記有機溶液の溶媒はメタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、DMSOであり得る。
【0021】
より好ましくは、前記有機溶液の溶媒はエタノールである。
【0022】
本発明は、カバジタキセルを弱塩基性誘導体に調製し、リポソームを調製することにより、カバジタキセル注射剤中のTween80によって引き起こされる副作用を回避できる同時に、薬物の最大耐量を増加させ、その抗腫瘍効果を向上させ、大きな臨床応用展望がある。
【0023】
本発明のリポソームナノ薬物送達システムは以下の利点を有する。(1)粒子径が小さく均一(100nm未満)であり、EPR効果を介して腫瘍部位に集中できる。(2)薬物負荷容量が高く、賦形剤や生体物質によって引き起こされる副作用の低減に有益である。(3)完全な薬物カプセル化が得られ、良好な安定性と容易な工業化が達成される。(4)細網内皮系による取り込みを効果的に回避し、血液中で長い循環効果を達成し、薬物を腫瘍部位に到達させる可能性を高める。(5)市販の製剤と比較して、本発明は抗腫瘍効果を向上させ、毒性および副作用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1による4-(4-メチルピペラジニルメチル)フェニルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN1)の構造図である。
【
図2】本発明の実施例1による4-(4-メチルピペラジニルメチル)フェニルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN1)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図3】本発明の実施例2による4-(1-ピペリジニル)ピペリジニルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN2)の構造図である。
【
図4】本発明の実施例2による4-(1-ピペリジニル)ピペリジニルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN2)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図5】本発明の実施例3による4-メチルピペラジン-1-メチルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN3)の構造図である。
【
図6】本発明の実施例3による4-メチルピペラジン-1-メチルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN3)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図7】本発明の実施例5によるカバジタキセル誘導体リポソーム(CN1-リポソーム)の粒子径、カップセル化率-貯蔵時間を示す図である。
【
図8】本発明の実施例7によるカバジタキセル誘導体リポソームのインビボ抗腫瘍実験における腫瘍体積の変化図である。
【
図9】本発明の実施例7によるカバジタキセル誘導体リポソームのインビボ抗腫瘍実験におけるマウス体重の変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施例は、いかなる方法でも本発明を制限することなく、本発明をさらに説明することのみを意図している。
【0026】
実施例1:4-(4-メチルピペラジニルメチル)フェニルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN1)の合成
カバジタキセル(200mg、0.24mmol)と4-(4-メチルピペラジニルメチル)ベンゾイルクロリド(156mg、0.48mmol)を秤量してジクロロメタンに溶解し、0.25mLのトリエチルアミンを加え、氷浴下で、DMAP(5.9mg、0.048mmol)のジクロロメタン溶液をゆっくりと滴下し、N
2保護下で室温で一晩攪拌した。反応終了後、カラムクロマトグラフィーにより分離・精製を行い、白色粉末状のカバジタキセル誘導体(収率95.01%)を得た。核磁気共鳴水素スペクトルにより実施例1の化合物の構造を決定し、結果が
図2に示され、スペクトル分析の結果は次のとおりである。
【0027】
1H NMR (Chloroform-d,400MHz) δ8.11 (2H,d,J=7.4Hz), 7.94 (2H,d,J=8.1Hz), 7.61 (1H,t,J=7.4Hz), 7.51 (1H,d,J=7.8Hz), 7.48 (1H,d,J=7.8Hz), 7.45-7.35 (6H,m), 7.32-7.27 (1H,m), 6.26 (1H,t,J=9.1Hz), 5.64 (1H,d,J=7.0Hz), 5.50 (1H,d,J=3.4Hz), 5.43 (1H,d,J=9.4Hz), 5.30 (1H,s), 5.00 (1H,d,J=8.8Hz), 4.83 (1H,s), 4.31 (1H,d,J=8.4Hz), 4.17 (1H,d,J=8.3Hz), 3.97-3.88 (1H,m), 3.86 (1H,d,J=7.0Hz), 3.56 (2H,s), 3.43 (3H,s), 3.31 (3H,s), 2.82-2.62 (2H,m), 2.54-2.38 (6H,m), 2.31 (3H,s), 2.25 (1H,m), 2.04 (3H,s), 1.82 (1H,m), 1.79 (1H,m), 1.71 (3H,s), 1.64 (2H,s), 1.36 (9H,s), 1.26 (3H,s), 1.21 (6H,s)。
【0028】
実施例2:4-(1-ピペリジニル)ピペリジニルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN2)の合成
カバジタキセル(200mg、0.24mmol)および4-ピペリジルピペリジンカルボニルクロリド(111mg、0.48mmol)を秤量しジクロロメタンに溶解し、0.25mLのトリエチルアミンを加え、氷浴下で、DMAP(5.9mg、0.048mmol)のジクロロメタン溶液をゆっくり滴下し、N
2保護下で室温で一晩攪拌した。反応終了後カラムクロマトグラフィーにより分離・精製を行い、白色粉末状のカバジタキセル誘導体(収率95%)を得た。核磁気共鳴水素スペクトルにより実施例2の化合物の構造を決定し、結果が
図4に示され、スペクトル分析の結果は次のとおりである。
【0029】
1H NMR (400MHz,Chloroform-d) δ8.07-8.00 (m,2H), 7.54 (t,J=7.4Hz,1H), 7.43 (t,J=7.6Hz,2H), 7.33 (t,J=7.6Hz,2H), 7.22 (m,3H), 6.32-5.95 (m,1H), 5.56 (d,J=7.0Hz,1H), 5.44-5.26 (m,2H), 5.23 (s,1H), 5.20 (d,J=3.8Hz,1H), 4.92 (d,J=9.4Hz,1H), 4.74 (s,1H), 4.23 (d,J=8.4Hz,1H), 4.09 (d,J=8.4Hz,2H), 3.83 (dd,J=10.7,6.4Hz,1H), 3.76 (d,J=7.0Hz,1H), 3.36 (s,3H), 3.22 (s,3H), 2.77-2.49 (m,4H), 2.36 (s,3H), 2.27-2.05 (m,1H), 1.92 (s,3H), 1.77-1.66 (m,1H), 1.64 (s,3H), 1.55 (s,1H), 1.52-1.39 (m,2H), 1.28 (s,9H), 1.19 (s,3H), 1.14 (s,3H), 1.12 (s,3H)。
【0030】
実施例3:4-メチルピペラジン-1-メチルのベース部分を有するカバジタキセル誘導体(CN3)の合成
カバジタキセル(200mg、0.24mmol)および4-メチルピペラジン-1-カルボニルクロリデル(78mg、0.48mmol)を秤量しジクロロメタンに溶解し、0.25mLのトリエチルアミンを加え、氷浴下で、DMAP(5.9mg、0.048mmol)のジクロロメタン溶液をゆっくり滴下し、N
2保護下で室温で一晩攪拌した。反応終了後カラムクロマトグラフィーにより分離・精製を行い、白色粉末状のカバジタキセル誘導体(収率93.8%)を得た。核磁気共鳴水素スペクトルにより実施例3の化合物の構造を決定し、結果が
図6に示され、スペクトル分析の結果は次のとおりである。
【0031】
1H NMR (400MHz,Chloroform-d) δ8.03 (d,J=7.5Hz,2H), 7.54 (t,J=7.4Hz,1H), 7.43 (t,J=7.6Hz,2H), 7.32 (t,J=7.6Hz,2H), 7.26-7.20 (m,3H), 6.17 (t,J= 9.3Hz,1H), 5.56 (d,J=7.0Hz,1H), 5.36 (s,1H), 5.25 (s,1H), 5.23 (s,1H), 4.92 (dd,J=9.5,2.0Hz,1H), 4.74 (s,1H), 4.23 (d,J=8.4Hz,1H), 4.09 (d,J=8.4Hz,1H), 3.83 (dd,J=10.7,6.3Hz,1H), 3.76 (d,J=7.0Hz,1H), 3.39 (s,2H), 3.36 (s,3H), 3.22 (s,3H), 2.62 (ddd,J=14.1,9.8,6.3Hz,1H), 2.36 (m,1H), 2.35 (s,3H), 2.22 (s,3H), 2.15 (t,J=7.6Hz,2H), 2.00 (m,1H), 1.92 (s,3H), 1.78-1.66 (m,2H), 1.64 (s,3H), 1.52 (s,1H), 1.28 (s,9H), 1.19 (s,3H), 1.14 (s,3H), 1.12 (s,3H)。
【0032】
実施例4:カバジタキセル誘導体リポソームの調製
本実施例のカバジタキセル誘導体リポソームの調製方法は以下のステップを含む。
(1)ブランクリポソームの調製:DSPC、コレステロール、DSPE-mPEG2000(質量比3:1:0.05)を秤量し、クロロホルムを加えて溶解させ、37℃で減圧下で蒸発により有機溶媒を除去して乾燥脂質膜を形成し、350mMの硫酸アンモニウム溶液を加え65℃下で30min水和させた後、ポリカーボネート膜により濾過して、内部水相と外部水相が両方とも硫酸アンモニウム溶液である小さな単層リポソームを形成する。
(2)勾配を有するブランクリポソームの調製:ステップ(1)で得られたブランクリポソームを300mMのショ糖で予め平衡化したアガロオリゴ糖CL-4Bのゲルコラムに通して、内水相が硫酸アンモニウム溶液、外部水相がショ糖溶液であるアンモニウムイオン勾配を有するブランクリポソームを取得する。
(3)薬物負荷プロセス:ステップ(2)で得られたアンモニウムイオン勾配を有するブランクリポソームにカバジタキセル誘導体のエタノール溶液を加え、60℃下で20minインキュベートし、最終的にカバジタキセル誘導体リポソーム(CN1-リポソーム、CN2-リポソーム、CN3-リポソーム)を取得する。
【0033】
実施例5:カバジタキセル誘導体リポソーム(CN1-リポソーム)のコロイド安定性試験
実施例4で調製されたリポソーム製剤を減菌濾過し、4℃条件下で60日間貯蔵した。この間、動的光散乱法により粒子径の変化を測定し、高速液体クロマトグラフィーによりカップセル化率の変化を測定した。結果が
図7に示され、カバジタキセル誘導体の活性薬物負荷リポソームの粒子径およびカップセル化率が60日以内に有意に変化しなかったため、良好な長期間貯蔵安定性を示した。
【0034】
実施例6:カバジタキセル誘導体リポソーム(CN1-リポソーム)の薬物動態試験
それぞれの体重が200~250gの10匹の健康な雄ラットをランダムに2つの組に分け、各組に5匹のラットを入れ、それぞれ市販の製剤、実施例4で調製されたCN1-リポソームを注射し、カバジタキセルの同等投与量が5mg/kgであった。所定の時間に眼窩から採血し、遠心分離して血漿を採取し、高速液体クロマトグラフィー-質量分析により血漿中の薬物濃度を測定した。
【0035】
結果が表1に示され、インビボでのリポソーム製剤の薬物循環時間が大幅に延長し、リポソーム製剤の濃度-時間曲線下面積(AUC)が大幅に改善された。実験の結果から分かるように、リポソーム製剤は血液での薬物の循環時間を大幅に延長し、EPR効果により薬物が腫瘍部位に蓄積する可能性を高めることができるのを示した。
【0036】
表1 カバジタキセル誘導体リポソーム(CN1-リポソーム)の薬物動態パラメータ
【表1】
【0037】
実施例7:カバジタキセル誘導体リポソームの動物薬力学実験
マウス前立腺癌細胞(RM-1、5×106cells/100μLPBS)を雄C57BL/6マウスの右腹側に皮下接種した。腫瘍体積が60~80mm3に成長した後、マウスをランダムに6組に分け、各組に5匹を入れ、ブランク対照組、CN1-溶液剤組、市販組、CN1-リポソーム組、CN2-リポソーム組、CN3-リポソーム組とする。薬物を3日ごとに合計5回投与し、カバジタキセルの同等投与量が6mg/kgであり、高投与量は低投与量の3倍のであった。投与後、マウスの状態を観察し、体重を量り、腫瘍体積を測定した。最後の投与周期の終わりにマウスを殺し、腫瘍および主要臓器を剥ぎ取って、分析および評価を行った。
【0038】
結果が
図8に示され、CN1-溶液剤組はほとんど抗腫瘍活性がなく、CN1-リポソーム組は市販製剤よりも優れた抗腫瘍活性を示した。比較すると、塩基性修飾されたCN2、CN3はリポソーム製剤として成功に調製したが、CN2-リポソーム組とCN3-リポソーム組の抗腫瘍活性がCN1-リポソーム組よりも低く、また市販製剤よりも低い。
【0039】
図9に示すように、市販組のマウス体重が有意に減少し、製剤がマウスに対して一定の毒性を有することを示し、リポソーム製剤組では有意な体重変化が観察されなかった。以上のように、CN1-リポソーム組はより良好な抗腫瘍活性、および「毒性低減、効果増加」の効果を同時に有し、安全かつ効果的な抗腫瘍薬物送達システムであり、良好な臨床応用展望がある。
【0040】
上記の説明は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者は、本発明の原理から逸脱することなく様々な改善や修正を加えることができ、これらの改善や修正はすべて本発明の保護範囲に含まれることに留意されたい。
【国際調査報告】