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特表2023-526710固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス
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  • 特表-固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス 図1
  • 特表-固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20230616BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20230616BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20230616BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20230616BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230616BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20230616BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230616BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20230616BHJP
【FI】
C09K11/08 J
C09K11/61
C09K11/66
C09K11/02 Z
C08L101/00
C08K5/29
G02B5/20
G02B1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539703
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2021064377
(87)【国際公開番号】W WO2021239962
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20177385.0
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン アルベルト リュヒンガー
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4H001
4J002
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA05
2H148AA07
2H148AA19
2H148AA25
2K009CC21
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA01
4H001XA03
4H001XA06
4H001XA07
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA16
4H001XA19
4H001XA21
4H001XA22
4H001XA31
4H001XA32
4H001XA35
4H001XA37
4H001XA39
4H001XA40
4H001XA41
4H001XA49
4H001XA50
4H001XA55
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA73
4H001XA82
4H001XA83
4H001XB11
4H001XB70
4H001YA25
4J002AA011
4J002AA021
4J002BC031
4J002BE001
4J002BG021
4J002BK001
4J002CC171
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF001
4J002CG001
4J002CK021
4J002CM041
4J002CN031
4J002CP031
4J002ER006
4J002GP00
4J002GQ00
4J002GR00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、第1の態様において、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶1と、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子2と、ポリマー3とを含む固体ポリマー組成物100に関する。ポリマー3は、炭素に対する(酸素+窒素)の合計のモル比zを有し、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である。本発明の第2の態様は、第1の態様の固体ポリマー組成物(100)を含む自立フィルムに関する。本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の固体ポリマー組成物(100)又は本発明の第2の態様の自立フィルムを含む発光デバイスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ポリマー組成物(100)であって、
- 緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶(1)と、
- 非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)と、
- ポリマー(3)と、
を含み、前記緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶(1)が、式(I):
[M (I)
(式中、
は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウムを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
は、M以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する。)
の化合物から選ばれ、
前記非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)が、式(II):
[A][MF]:Mn4+ (II)
(式中、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs又はそれらの組み合わせ、特にKを表し、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はそれらの組み合わせ、特にSiを表し、
xは、[MF]イオンの電荷の絶対値、特に2を表し、
yは、5、6又は7、特に6を表す。)
により表されるMn4+がドープされた蛍光体粒子であり、
前記ポリマー(3)は、炭素に対する(酸素+窒素)の合計のモル比zを有し、ここで、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25であり、
前記非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)が、s≦10μm、特にs≦5μmの体積加重平均粒子サイズsを有する、
固体ポリマー組成物(100)。
【請求項2】
前記緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶及び前記非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、封入なしに前記ポリマー中に埋め込まれている、請求項1に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項3】
前記緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶(1)は、式(I’):
FAPbBr (I’)
により表されるものである、請求項1又は2に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項4】
前記非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)が、式(II’):
SiF:Mn4+ (II’)
により表されるMn4+がドープされた蛍光体粒子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項5】
各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)の中心と各赤色蛍光体粒子の表面の100nm下の領域との間のMnの濃度差ΔcMnが、ΔcMn≦50%、特にΔcMn≦20%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項6】
各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)のMnの濃度cMnが、各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子の体積にわたって実質的に均一である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項7】
前記非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)が、無機表面コーティングを有しない、特に、各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)のコアの組成と異なる組成を有する無機表面コーティングを有しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項8】
前記非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)が、cMn≧6mol%、特にcMn≧9mol%、特にcMn≧11mol%のMn濃度cMnを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項9】
前記ポリマー(3)はアクリレートを含み、非常に特に、前記ポリマーは環状脂肪族アクリレートを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項10】
前記固体ポリマー組成物(100)は、T≦120℃、特にT≦100℃、特にT≦80℃、特にT≦70℃のガラス転移温度Tを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項11】
前記固体ポリマー組成物(100)は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子、好ましくはTiO、ZrO、Al及びオルガノポリシロキサンからなる群から選ばれた散乱粒子を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)を含む自立フィルム。
【請求項13】
前記固体ポリマー組成物(100)が2つのバリア層(4)の間に挟まれている、請求項12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)を含むか、あるいは、
請求項12又は13に記載の自立フィルムを含む、
発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)。
【請求項15】
1つよりも多くの青色LED(6)のアレイを含み、
LED(6)の前記アレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域(5)をカバーし、
1つよりも多くの青色LED(6)の前記アレイと前記自立フィルムとの間に拡散板が配置されている、
請求項14に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、固体ポリマー組成物に関し、第2の態様において、自立フィルムに関し、第3の態様において、発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の液晶ディスプレイ(LCD)又はディスプレイコンポーネントは、ルミネッセント結晶(luminescent crystal)(量子ドット)に基づくコンポーネントを含む。特に、かかるLCDのバックライトコンポーネントは、赤色光、青色光及び緑色光からなるRGBバックライトを含むことがある。今日、かかるバックライトコンポーネントのバックライト色を生成させるために、典型的には、ルミネッセント結晶(量子ドット)が使用されている。
【0003】
かかるコンポーネントの製造は様々な課題に直面している。1つの課題は、コンポーネント中へのルミネッセント結晶の埋め込みである。ルミネッセント結晶の異なる化学的性質のために、ルミネッセント結晶を含む様々な埋め込まれた材料間で、あるいは同一材料中に埋め込まれたルミネッセント結晶間でさえも、不適合性(incompatibilities)が生じるおそれがある。かかる不適合性は、ディスプレイコンポーネント中の材料の劣化を招き、そのため、かかるディスプレイの寿命が影響を受けるおそれがある。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0153382 A1号明細書には、量子ドット複合材料、その製造方法及び用途が開示されている。この量子ドット複合材料は、全無機ペロブスカイト量子ドット、及び全無機ペロブスカイト量子ドットの表面上の修飾保護(modification protection)を含む。
【0005】
文献Tongtong Xuanらの“Super-Hydrophobic Cesium Lead Halide Perovskite Quantum Dot-Polymer Composites with High Stability and Luminescent Efficiency for Wide Color Gamut White Light-Emitting Diodes”, Chemistry of Materials, 第31巻, 2019年2月12日, 第1042-1047頁。この文献は、超疎水性多孔質有機ポリマー骨格にQDを埋め込むことによって、水に敏感なCsPbBr量子ドットの安定性を高める複雑な方策を開示している。
【0006】
文献Sijbom H. F.らの“Luminescent Behavior of the K2SiF6:Mn4+ Red Phosphor at High Fluxes and at the Microscopic Level”, ECS Journal of Solid State Science and Technology, 5(1), R3040-R3048 (2016).この文献は、赤色非ペロブスカイト蛍光体粒子の製造を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、先行技術の欠点を克服する材料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を以下で詳細に説明する。特に断らない限り、本明細書において以下の定義を適用する:
【0009】
本発明の文脈で使用される語句「a」、「an」、「the」及び類似の用語は、本開示で特に断らない限り、あるいは、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると理解されるべきである。さらに、用語「含む」(containing)は、「含む」(comprising)、「実質的に・・・からなる」(essentially consisting of)及び「からなる」(consisting of)の全てを包含する。百分率は、本開示で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、質量%として示されている。「独立に」は、1つの置換基/イオンが、名称を挙げた置換基/イオンのうちの1つから選択できること、あるいは、上記のものの1つより多くのものの組み合わせであることができることを意味する。
【0010】
用語「蛍光体(phosphor)」は、当該技術分野で知られており、ルミネッセンス(luminescence)現象を示す材料、特に蛍光性材料(fluorescent materials)に関する。したがって、赤色蛍光体は、610~650nmの範囲内、例えばおよそ630nmを中心とした範囲内でルミネッセンスを示す材料である。したがって、緑色蛍光体は、500~550nmの範囲内、例えばおよそ530nmを中心とした範囲内でルミネッセンスを示す材料である。典型的には、蛍光体は無機粒子である。用語「蛍光体粒子」は、上記のような蛍光体の粒子を意味する。粒子は単結晶性又は多結晶性であることができる。本発明の文脈において、粒子という用語は、二次粒子(例えば、一次粒子の凝集体又は集合体)ではなく一次粒子を指す。
【0011】
用語「ルミネッセント結晶」(LC)は、当該技術分野で知られており、半導体材料製の3~100nmの結晶に関する。この用語は、量子ドット、典型的には2~15nmの範囲内の量子ドット、及び、ナノ結晶、典型的には15nm超から最大100nmまで(好ましくは最大50nmまで)の範囲内のナノ結晶を包含する。好ましくは、ルミネッセント結晶は、ほぼ等方的(例えば球状又は立方体など)である。すべての3つの直交する寸法のアスペクト比(最長方向:最短方向)が1~2である場合に、粒子はほぼ等方的であるとみなされる。したがって、LCの集まりは、好ましくは、50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、かなり好ましくは75~100%(n/n)の等方的ナノ結晶を含む。
【0012】
LCは、その用語が示すように、ルミネッセンス(発光)を示す。本発明の文脈において、用語「ルミネッセント結晶」は、単結晶と多結晶性粒子の両方を包含する。後者の場合、1つの粒子は、結晶性又はアモルファス相境界により接続された幾つかの結晶ドメイン(グレイン(grains))からなっていてもよい。ルミネッセント結晶は、直接バンドギャップ(典型的には1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、よりいっそう典型的には1.7~3.2eVの範囲内)を示す半導体材料である。このバンドギャップ以上の電磁放射線を照射することによって、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて電子正孔(electron hole)が価電子帯に残る。形成された励起子(電子-電子正孔対)は、次に、LCバンドギャップ値を中心とした最大強度でフォトルミネッセンスの形で放射再結合し、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネッセンスを示すことができる。
【0013】
用語「ペロブスカイト結晶」は知られており、特に、ペロブスカイト構造の結晶性化合物を包含する。かかるペロブスカイト構造はそれ自体知られており、一般式M1M2X3の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶結晶として記述される。ここで、M1は配位数12(立方八面体(cuboctaeder))のカチオンであり、M2は配位数6(八面体(octaeder))のカチオンであり、Xは、格子の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶位置のアニオンである。これらの構造において、選ばれたカチオン又はアニオンは、他のイオンにより置き換えられていてもよく(確率的又は正規に最大30原子数%まで)、それによって、まだその元の結晶構造を維持している、ドープされたペロブスカイト又は非化学量論的ペロブスカイトがもたらされることがある。かかるルミネッセントペロブスカイト結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号から知られている。
【0014】
用語「ポリマー」は知られており、反復単位(「モノマー」)を含む有機合成物質を包含する。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーを包含する。さらに、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーも包含される。文脈に応じて、用語「ポリマー」は、そのモノマー及びオリゴマーを包含する。例として、ポリマーは、ケイ素系及び非ケイ素系ポリマー(silicon based and non-silicon based polymers)、例えば、シリコーンポリマーなどのケイ素系ポリマー、並びに、例えば、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー及び環式オレフィンコポリマーなどの非ケイ素系ポリマーを包含する。ポリマーは、当該技術分野における従前のとおり、例えば重合開始剤、安定剤、溶媒、散乱粒子などの他の材料を含んでもよい。
【0015】
ポリマーは、例えば、極性、ガラス転移温度Tg、ヤング率及び光透過率などの物理的パラメータによってさらに特徴付けることができる。
【0016】
極性(z):炭素に対するヘテロ原子(すなわち、炭素と水素以外の原子)の比(n/n)は、ポリマーの極性を示す指標である。本発明の文脈では、0.4<z<0.9であるポリマーが極性であると見なし、z≦0.4であるポリマーは無極性であると見なす。
【0017】
ガラス転移温度:(Tg)は、ポリマーの分野で確立したパラメータであり、ガラス転移温度は、アモルファス又は半結晶質ポリマーがガラス(硬い)状態から、より柔軟な、コンプライアントな、又はゴム状の状態に変化する温度を指す。高いTgを有するポリマーは、「硬質(hard)」と見なされるのに対し、低いTgを有するポリマーは「軟質(soft)」と見なされる。分子レベルでは、Tgは不連続な熱力学的転移でなく、その前後にわたってポリマー鎖の可動性が著しく増加する温度範囲である。しかしながら、慣例では、DSC測定の熱流曲線の2つのフラットな領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される単一の温度として報告される。Tgは、DSCを使用して、DIN EN ISO 11357-2又はASTM E1356に従って決定することができる。ポリマーがバルク材料の形態で存在する場合、この方法は特に適する。あるいは、ISO 14577-1又はASTM E2546-15に従って、ミクロ又はナノインデンテーションにより温度依存ミクロ又はナノ硬度を測定することによって、Tgを決定することもできる。この方法は、ここに開示されるとおりの発光コンポーネント及び照明デバイスに適する。好適な分析装置は、MHT(Anton Paar)、Hysitron TI Premier(Bruker)又はNano Indenter G200(Keysight Technologies)として入手可能である。温度制御ミクロ及びナノインデンテーションにより得られたデータをTgに変換することができる。典型的には、塑性変形仕事もしくはヤング率又は硬さは温度の関数として測定され、Tgはこれらのパラメータが著しく変化する温度である。
【0018】
ヤング率(Young’modulusもしくはYoung modulus)又は弾性率は、固体材料の剛性を評価する機械的特性である。ヤング率又は弾性率は、一軸変形の線形弾性状態で材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)との間の関係を規定する。
【0019】
透過率:典型的には、本発明の文脈において使用されるポリマーは、可視光に対して光透過性である。すなわち、本発明の文脈において使用されるポリマーは、ルミネッセント結晶により光が放出されることが可能であり、また、ルミネッセント結晶を励起させるために使用される光源の可能な光が透過するように不透明でない。光透過率は、白色光干渉分析法又は紫外-可視(UV-Vis)分光分析法により決定することができる。
【0020】
本発明によれば、上記の課題は、本発明の第1の態様、すなわち、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶から選ばれた第1の部類のルミネッセント材料と、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子から選ばれた第2の部類のルミネッセント材料と、ポリマーとを含む固体ポリマー組成物により解決される。好適な緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶は、式(I)の化合物から選ばれる:
[M (I)
(式中、
は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
は、M以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する。)
【0021】
特に、式(I)は、Xがハロゲン化物又は擬ハロゲン化物、例えばBr、Cl、CN、特にBrを表すルミネッセント結晶を表す。
【0022】
特に、式(I)は、MがPbを表すルミネッセント結晶を表す。
【0023】
特に、式(I)は、AがFA(ホルムアミジニウム)を表し、Mが存在しない、ルミネッセント結晶を表す。
【0024】
好適な非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、式(II)の化合物から選ばれた、Mn4+がドープされた蛍光体粒子である:
[A][MF]:Mn4+ (II)
(式中、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs又はそれらの組み合わせ、特にKを表し、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はそれらの組み合わせ、特にSiを表し、
xは、[MF]イオンの電荷の絶対値、特に2を表し、
yは、5、6又は7、特に6を表す。)
【0025】
ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここで、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である。
【0026】
特定の緑色ルミネッセント結晶と、特定の非ペロブスカイトの赤色Mn4+ドープ蛍光体と、特定のポリマーマトリックスとを含む固体ポリマー組成物は、発光デバイス、特にLCDディスプレイに使用された場合に、ルミネッセント結晶及び非ペロブスカイトの赤色蛍光体の高い安定性を可能にする。
【0027】
特に、式(I)は、青色光の吸収によって、500nm~550nmの緑色光スペクトルの波長、特に527nmを中心とした波長の光を放出するペロブスカイトルミネッセント結晶を表す。
【0028】
有利な一実施形態において、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶は、特に、式(I’):
FAPbBr (I’)
により表される緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶である。
【0029】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、式(II’):
SiF:Mn4+ (II’)
により表される、Mn4+がドープされた非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子である。
【0030】
固体ポリマー組成物の有利な一実施形態において、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶及び非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子がポリマー中に埋め込まれる。
【0031】
固体ポリマー組成物のさらなる有利な一実施形態において、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶及び非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、封入(encapsulation)なしにポリマー中に埋め込まれる。
【0032】
これは、特に、上記ペロブスカイト結晶及び非ペロブスカイト赤色蛍光体粒子が、ポリマー中に埋め込まれるのに封入(例えば粒子表面の保護又はシェリング(shelling))を必要としないことを意味する。
【0033】
特に、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶及び非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、両方ともポリマー中に分配され、特に、それらがポリマーの表面にはみ出ないように実質的にポリマー中に分配される。
【0034】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素+硫黄+リン+フッ素+塩素+臭素+ヨウ素)の合計のモル比zが<0.9であり、好ましくはz<0.4、好ましくはz<0.3、最も好ましくはz<0.25である。
【0035】
固体ポリマー組成物のさらなる有利な一実施形態において、各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(2)の中心とその粒子表面の100nm下の領域との間のMnの濃度差ΔcMnは、ΔcMn≦50%、特にΔcMn≦20%である。
【0036】
特に、かかる濃度差ΔcMnは、単一蛍光体粒子の断面について、エネルギー分散型X線分光分析装置(EDX)を備えた走査電子顕微鏡(SEM)を使用することにより決定することができる。単一蛍光体粒子のかかる断面は、集束イオンビーム(FIB)により作製することができる。
【0037】
特に、上記の濃度差ΔcMnを有する非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、保護層又はシェルを呈さず、特に、安定化のために表面に無機の保護層又はシェルを必要としない。
【0038】
特に、保護層又はシェルを必要としないため、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子の製造のための加工工程を減らすことができる。
【0039】
粒子の中心とは、特に、粒子の中心領域、特に粒子のコア又はコア領域を指す。
【0040】
既知の赤色蛍光体粒子とは対照的に、本発明で導入される非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、有利には、表面に無機の保護層を含まない。特に、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は金属酸化物又はKSiF保護層を含まない。
【0041】
有利な一実施形態の場合、無機保護層をなくすことは以下のように行うことができ、ここで提案される実施形態は、互いに独立していても、あるいは、組み合わされてもよい:
- 有利には、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、無機表面コーティングを有しない。特に、当該粒子は、各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子のコアの組成と異なる組成を有する無機表面コーティングを有しない。無機表面コーティングを有しないとは、特に、各表面上にかかるコーティングが実質的に存在しないことを意味する。
- 有利には、各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、粒子中心から粒子表面までMn4+の均一な分布を示す。したがって、特に、各非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、各粒子の全体積にわたって実質的に均一なMn濃度cMnを有する。
- 有利には、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、cMn≧6mol%、特にcMn≧9mol%、特にcMn≧11mol%のマンガン(Mn)濃度cMnを有する。
【0042】
理論にとらわれずに、安定化のために無機層を必要とする既知の非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子とは対照的に、本開示におけるポリマーマトリックスは安定性を提供すると考えられる。
【0043】
本発明のさらなる有利な実施形態において、緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶は3nm~100nmのサイズを有する。特に、ペロブスカイト結晶のサイズは透過電子顕微鏡法により決定することができる。
【0044】
本発明のさらなる有利な実施形態において、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、6≦c≦15mol%、好ましくは10≦c≦14mol%、最も好ましくは11≦c≦13mol%のMn濃度を有する。
【0045】
有利には、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、s≦10μm、有利にはs≦5μm、有利にはs≦2μm、有利にはs≦1μm、有利にはs≧50nm、有利にはs≧100nm、有利にはs≧200nmの粒子サイズ(体積加重平均)sを有する。
【0046】
さらに有利には、非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子は、200nm≦s≦10μm、非常に特に200nm≦s≦5μmの粒子サイズ(体積加重平均)を有する。
【0047】
粒子サイズは、標準的な特性評価方法、例えば走査型電子顕微鏡法(SEM)により測定される。
【0048】
特に、3nm~100nmの緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶と、s≦10μm、有利にはs≦5μmの非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子との特定のサイズの組み合わせは、有利な実施形態をもたらす。これらの各サイズの粒子がポリマー中に埋め込まれた場合には、このサイズ範囲での有利な光-粒子相互作用のために、ポリマー中の粒子の量を最適化することができる。
【0049】
有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物はアクリレートを含み、非常に有利には、ポリマーは環状脂肪族アクリレートを含む。
【0050】
別の有利な一実施形態において、固体ポリマーは多官能性アクリレートを含む。
【0051】
別の有利な一実施形態において、固体ポリマーは架橋されたものである。架橋は、当該技術分野で知られているように、例えば架橋剤又は多価モノマーを添加することによって、達成することができる。
【0052】
有利な固体ポリマー組成物は、T≦120℃、有利にはT≦100℃、有利にはT≦80℃、有利にはT≦70℃のガラス転移温度Tを有する。各Tは、第2の加熱サイクルの間に、-90℃から開始して最高250℃まで、20K/分の加熱速度を適用して、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って測定される。
【0053】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子を含む。有利には、粒子は、好ましくはTiO、ZrO、Al及びオルガノポリシロキサンからなる群から選ばれた金属酸化物粒子を含む。
【0054】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは半結晶性である。
【0055】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、T<140℃、好ましくはT<120℃、最も好ましくはT<100℃の溶融温度Tを有する。
【0056】
本発明の固体ポリマー組成物は、式(I)の出発材料、式(II)の出発材料、及び各ポリマーのモノマー/オリゴマーである出発材料を使用して、公知の方法と同様に得ることができる。本発明は、したがって、
(a)式(I)の化合物と、式(II)の化合物と、上記ポリマーのモノマー及び/又はオリゴマーと、必要に応じて希釈剤と、必要に応じて散乱粒子と、必要に応じて触媒又は他の添加剤とを組み合わせて、第1の分散体を得ること;
(b)必要に応じて希釈剤を除去して、インクを得ること;
(d)前記インクを硬化させて、本発明の固体ポリマー組成物を得ること;
を含む、固体ポリマー組成物の製造方法を提供する。
【0057】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による固体ポリマー組成物を含む自立フィルムに関する。
【0058】
有利には、自立フィルムは、放出される緑色光より短波長の光による励起に応じて緑及び赤色光を放出する。
【0059】
有利には、固体ポリマー組成物は、2つのバリア層の間に挟まれる。
【0060】
さらなる有利な一実施形態において、かかる自立フィルムは、0.001≦tssf≦10mm、好ましくは0.01≦tssf≦0.5mmの厚さtssfを有することができる。
【0061】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、2つのバリア層の間に挟まれる。特に、かかるサンドイッチ配置は、水平方向にバリア層とポリマーともう1つのバリア層とを有する配置を指す。このサンドイッチ構造の2つのバリア層は、同じバリア層材料で製造されたものであることができ、又は異なるバリア層材料で製造されたものであることができる。
【0062】
バリア層の技術的効果は、ルミネッセントペロブスカイト結晶の安定性、特に酸素や湿気に対する安定性を向上させることである。
【0063】
特に、かかるバリア層は当該技術分野で知られており、典型的には、低い水蒸気透過率(WVTR)及び/又は低い酸素透過率(OTR)を有する材料/材料の組み合わせを含む。かかる材料を選択することによって、水蒸気及び/又は酸素に曝されたことに応じたコンポーネント内のLCの劣化を低減し、あるいは回避することも可能であり。バリア層又はフィルムは、好ましくは、温度40℃/相対湿度(r.h.)90%及び大気圧におけるWVTRが、<10(g)/(m・day)、より好ましくは1(g)/(m・day)未満、最も好ましくは0.1(g)/(m・day)未満である。
【0064】
有利な一実施形態において、バリアフィルムは、酸素に対して透過性であることができる。別の有利な一実施形態において、温度23℃/相対湿度90%及び大気圧におけるOTR(酸素透過率)が、<10(mL)/(m・day)、より好ましくは<1(mL)/(m・day)、最も好ましくは<0.1(mL)/(m・day)である。
【0065】
一実施形態において、バリアフィルムは、光に対して透過性であり、すなわち、可視光透過率は、>80%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%である。
【0066】
好適なバリアフィルムは、単一層の形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは、当該技術分野で知られており、ガラス、セラミック、金属酸化物、及びポリマーを含む。好適なポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択することができ、好適な無機材料は、金属酸化物、SiO、Si、AlOからなる群から選択することができる。最も好ましくは、ポリマー湿気バリア材料は、PVdC及びCOCからなる群から選ばれた材料を含む。
【0067】
有利には、ポリマー酸素バリア材料は、EVOHポリマーから選ばれた材料を含む。
【0068】
好適なバリアフィルムは、多層フィルムの形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは当該技術分野で知られており、一般的に、基材、例えば10~200μmの範囲内の厚さを有するPETなどと、SiO及びAlOからなる群からの材料を含む薄い無機層、もしくはポリマーマトリックス中に埋め込まれた液晶に基づく有機層、又は所望のバリア特性を有するポリマーを有する有機層を含む。かかる有機層用の可能なポリマーは、例えばPVdC、COC、EVOHを含む。
【0069】
本発明の自立フィルムは、式(I)の出発材料、式(II)の出発材料、及び各ポリマーのモノマー/オリゴマーである出発材料を使用して、公知の方法と同様に得ることができる。本発明は、したがって、
(a)式(I)の化合物と、式(II)の化合物と、上記ポリマーのモノマー及び/又はオリゴマーと、必要に応じて希釈剤と、必要に応じて散乱粒子と、必要に応じて触媒又は他の添加剤とを組み合わせて、第1の分散体を得ること;
(b)必要に応じて希釈剤を除去して、インクを得ること;
(c)前記インクをバリアフィルム上にコーティングして、被覆されたバリアフィルムを得ること;
(d)前記被覆されたバリアフィルムに第2のバリアフィルムを積層すること;
(e)前記積層した両バリアフィルムを硬化させて、本発明の自立フィルムを得ること;
を含む、自立フィルムの製造方法を提供する。
【0070】
本発明による製造は単純であり、現存の製造ラインに容易に適用することができる。
【0071】
本発明の第3の態様は、好ましくは液晶ディスプレイである発光デバイスに関する。発光デバイスは、本発明の第1の態様による固体ポリマー組成物又は本発明の第2の態様による自立フィルムを含む。
【0072】
発光デバイスの有利な一実施形態は、1つよりも多くの青色LEDのアレイを含み、LEDのアレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域をカバーする。さらに、拡散板は、1つよりも多くの青色LEDのアレイと自立フィルムとの間に配置される。
【0073】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、アレイの1又は2つ以上の青色LEDは、f≧150Hz、好ましくはf≧300Hz、非常に好ましくはf≧600Hzの周波数fでオンとオフを切り替えるようにそれぞれ適合される。
【0074】
本発明は、以下の詳細な説明により、より良く理解され、上記以外の目的も明らかとなるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1図1は、本発明の一実施形態による固体ポリマー組成物の概略図を示す。
図2図2は、本発明に一実施形態によるシート状材料の概略図を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態による発光デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明の実施形態や、実施例や、本発明の実施形態、態様及び利点を示す又は導く実験は、以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【0077】
図1は、第1の態様の一実施形態による固体ポリマー組成物100の概略図を示し、ここで、固体ポリマー組成物は、式(I)の緑色ルミネッセントペロブスカイト結晶1、式(II)の非ペロブスカイトの赤色蛍光体結晶2、及びポリマー3を含む。ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここで、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である。
【0078】
図1の固体ポリマー組成物のさらなる実施形態は、本発明の第1の態様によるさらなる特徴を含んでもよい。
【0079】
図2は、本発明の第2の態様による自立フィルムの一実施形態の概略図を示す。図示されているような有利な一実施形態において、自立フィルムは、固体ポリマー組成物100を挟むバリア層4を含んでもよい。
【0080】
図3は、本発明の第3の態様による発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)の一実施形態の概略図を示す。有利には、発光デバイスは、図1に示されているような固体ポリマー組成物100、又は、図2に示されているような自立フィルムを含む。有利には、発光デバイスは、1つより多くの青色LED6を含み、LEDは、実質的に全液晶ディスプレイ領域5をカバーする。特に、1つより多くの青色LEDのアレイと自立フィルムとの間に拡散板が配置される(拡散板は図に示されていない)。
【実施例
【0081】
実験セクション
実施例1:本開示に記載したような固体ポリマー組成物を含む自立フィルムの作製:
緑色ペロブスカイトQD(FAPbBr):
PbBrとFABrをミリングすることによって、ホルムアミジニウム鉛トリブロミド(FAPbBr)を合成した。すなわち、16mmolのPbBr(5.87g,98% ABCR,カールスルーエ(ドイツ))及び16mmolのFABr(2.00g,Greatcell Solar Materials,クイーンビーアン(オーストラリア))をイットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)を使用して6時間ミリングして、純粋な立方晶FAPbBrを得た(XRDにより確認)。このオレンジ色のFAPbBr粉末をオレイルアミン(80-90,Acros Organics,ヘール(ベルギー))及びトルエン(>99.5%,puriss,Sigma Aldrich)に加えた(FAPbBr:オレイルアミン質量比=100:15)。FAPbBrの最終濃度は1質量%であった。次に、周囲条件(特に定義しない場合、周囲条件は全ての実験について35℃、1atm、空気中である)で直径200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用するボールミリングによって、混合物を1時間分散させ、緑色ルミネッセントのインクを得た。
【0082】
フィルム形成:
0.1gの上記緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)及び2質量%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン,ShinEtsu,KMP-590)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7gのFA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)と、10質量%の固体形態の市販の非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(「KSF」,KSiF:Mn4+)とを、スピードミキサーで混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。
【0083】
非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子KSiF:Mn4+は、従来技術により製造した。かかる粒子は、典型的には、直径2~50μmのサイズを有することが知られている。
【0084】
粒子は、例えば、Sijbom H.F.らに開示された方法によって製造される。ICP-MSは、得られた粒子が1.5mol%のMn濃度を有することを示した。さらに、MnのEDXマッピングを用いるSEM分析は、KSF粒子が無機シェル又は他の被包(encapsulation)を有しない限り、Mnが、粒子コアから粒子表面までKSF粒子内に均一に分配されていることを示した。
【0085】
体積加重平均KSF粒子サイズは、SEMにより決定した場合に3μmであった。
【0086】
次に、得られた混合物を、100ミクロンのバリアフィルム(供給元:I-components(韓国);製品:TBF-1007)上に50ミクロンの層厚でコートし、次に、同じタイプの第2のバリアフィルムを積層した。その後、積層構造体を60秒間UV硬化させて(水銀灯及び石英フィルターを備えたUVAcube100,Hoenle,ドイツ)、2つのバリア層の間に本発明の固体ポリマー組成物が挟まれた自立フィルムを得た。もたらされたフィルム面積当たりのKSF量はおよそ6g/mであった。
【0087】
性能試験:得られたままのフィルムの初期性能は、FWHMが22nmである526nmの緑色発光波長と、KSiF:Mn4+に特徴的な赤色発光波長を示した。このフィルムの色座標(CIE1931)は、QDフィルム(Konica Minolta CS-2000により光学的特性を測定)の上に2枚の交差するプリズムシート(X-BEF)と1枚の輝度向上フィルム(DBEF)を備えた状態で青色LED光源(発光波長450nm)上に配置した場合に、x=0.23及びy=0.20であった。
【0088】
UV硬化した固体ポリマー組成物のガラス転移温度Tgは、窒素雰囲気(20ml/分)中で、-90℃の開始温度及び250℃の終了温度と20K/分の加熱速度で、DIN EN ISO 11357-2:2014-07にしたがってDSCにより決定した。パージガスは、20ml/分で窒素(5.0)であった。DSCシステムDSC 204 F1 Phoenix(Netzsch)を使用した。Tは、第2加熱サイクルで決定した(-90℃~250℃までの第1加熱はガラス転移温度のほかに重なり効果(overlaying effects)を示した)。DSC測定の場合、バリアフィルムを剥がすことによって固体ポリマー組成物をフィルムから除去した。UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは75℃であった。
【0089】
フィルム温度50℃で、フィルム上の青色光束410mW/cmとして高青色強度のライトボックス(供給元:Hoenle;モデル:LED CUBE 100 IC)にフィルムを入れることによって、青色LED光照射下で150時間かけてフィルムの安定性を試験した。さらに、60℃及び相対湿度90%の人工気候室内でもフィルムを150時間試験した。初期性能の測定(上に記載)と同じ手順で、フィルムの安定性試験後の光学的パラメーターの変化を測定した。光学的パラメーターの変化は、以下のとおりであった:
【0090】
【表1】
【0091】
実施例2:大きなKSF粒子サイズを有する固体ポリマー組成物を含む自立フィルムの作製
20μmの体積加重平均粒子サイズ(SEMにより測定)を有するKSF粒子を実験1における手順と同様に合成した。ICP-MSは、得られたKSF粒子が1.6mol%のMn濃度を有することを示した。さらに、MnのEDXマッピングを用いるSEM分析は、Mnが、粒子コアから粒子表面までKSF粒子内に均一に分配されていることを示した。このことは、KSF粒子が無機シェル又は他の被包を有しないことを示している。これらのKSF粒子を使用して実施例1と同じ材料(ペロブスカイト結晶、モノマー/架橋剤混合物、光開始剤、散乱粒子)及び色座標のフィルムを作製した。実施例1と同じフィルム色座標を達成するために、KSF濃度を10質量%(実施例1の場合)から25質量%に増加させなければならなかった。これによって、およそ15g/mのフィルム面積当たりのKSF量がもたらされた。これは、フィルム面積当たりのKSF量が2.5分の1であり、したがって、例えば当該フィルムを含むディスプレイの場合、フィルム面積当たりより少ないKSF量を必要とし、そして究極的にはより少ない量のKSF粒子を必要とするため、3μmのKSF粒子サイズが20μmと比べて好ましいことを示している。
【0092】
結論:これらの結果は、高青色光束及び高温度/湿度の下で試験した場合に、緑色ペロブスカイト結晶及び非ペロブスカイトの赤色蛍光体粒子(KSiF:Mn4+)が両方とも良好な化学的適合性(chemical compatibility)及び高い安定性を示す自立ルミネッセントフィルムを得ることができることを示している。さらに、これらの結果は、小さなKSF粒子サイズが好ましいことも示している。
図1
図2
図3
【国際調査報告】