(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】患者のための放射線治療計画を生成する方法、コンピュータプログラム製品およびコンピュータシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230616BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230616BHJP
G06N 3/04 20230101ALI20230616BHJP
【FI】
A61N5/10 P
G06N20/00
G06N3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554400
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021058867
(87)【国際公開番号】W WO2021204764
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】トリンカヴェリ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ロフマン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】グルセリウス,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ルファ,ジョルジオ
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AJ08
4C082AJ14
4C082AN02
4C082AP07
(57)【要約】
線量予測および線量模倣を含む患者のための放射線治療計画を生成する機械学習ベースの方法であって、線量予測工程は、治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準を考慮するように訓練されている機械学習システムを使用することを含む方法。従って、線量模倣工程において通常考慮に入れられる因子の少なくとも1つを線量予測工程に取り入れる。本発明は、放射線治療計画に使用するためにそのような機械学習システムを訓練する方法、コンピュータプログラム製品およびコンピュータシステムにも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のために放射線治療計画(S16)を生成するコンピュータベースの方法であって、前記計画は放射線を放射線源から患者に与えることを含み、前記方法は、
・機械学習システム(21、23)を使用して、医用画像および前記患者の少なくとも1つの描写された構造を含む構造データに基づく患者の幾何学的形状に応じた予測線量分布(S14)または前記患者のための線量予測を生成するために使用することができる照射パラメータのセットを生成することによる線量予測工程(S13)と、
・前記予測された線量分布および/または照射パラメータのセットを使用して送達可能治療計画を生成することによる線量模倣工程(S15)と、
を含み、
・前記線量予測工程は、前記治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準を考慮するように訓練されている機械学習システムを使用することを含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記機械学習システム(21、23)は、前記患者の幾何学的形状と前記放射線源の特性との相互作用を含む前記送達プロセスの物理的性質を前記少なくとも1つの最適性基準として考慮するように訓練されており、前記線量予測工程からの出力は線量分布または照射パラメータのセットあるいはその両方として表されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械学習システム(21、23)は、送達システムの機械制約などの、前記放射線治療を送達するために使用されるシステムの制約を考慮するように訓練されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記機械学習システムは、前記患者のための線量関数に基づいて訓練不可能な層(237)を含み、かつ放射線療法の種類に応じた各ビームのためのフルエンス分布、各ビームおよびエネルギーのためのスポット位置および重みまたは小線源位置および滞留時間のセットおよび/または線量分布を出力するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記最適化問題は、前記少なくとも1つの最適性基準に関する少なくとも1つの制約を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記機械学習システムは、前記治療を送達するときに前記最適性基準として使用される送達システムの少なくとも1つの技術的制約を考慮するように設計されたニューラルネットワークである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
放射線治療計画における使用のために機械学習システムを訓練する方法であって、
・患者の医用画像に関する入力データのセット、前記患者の少なくとも1つの描写された構造を含む構造データ、および前記医用画像に基づいて決定された患者の幾何学的形状に応じた所望の線量分布を機械学習システムに提供する工程(S31)と、
・前記機械学習システムからの出力を前記所望の線量分布と比較する工程(S33)および前記比較の結果を前記機械学習システムに与える工程(S34)と、
を含み、
・前記入力データのセットは前記治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準をさらに含み、かつ前記訓練は、前記治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準を考慮するように前記機械学習システムを訓練することを含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの最適性基準は、前記放射線源の特性および前記患者の幾何学的形状の複合効果に関する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機械学習システムは、前記患者のための線量関数に基づいて訓練不可能な層(237)を含み、かつ前記機械学習システムは、前記線量模倣段階(S15)への入力データとして使用される予測線量分布(S14)または前記患者のための線量予測を生成するために使用することができる照射パラメータのセットを出力するように構成されている、請求項7~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記訓練は最適化プロセスを改善することを含み、ここでは前記最適化手順は前記少なくとも1つの最適性基準に関する最適化関数を含む最適化問題に基づいている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの最適性基準は、前記治療を送達するときに使用される送達システムの技術的制約に関する、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータ(31)内で走らされるときに前記コンピュータに先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
プロセッサ(33)、プログラムメモリ(35)およびデータメモリ(34)を備えるコンピュータシステム(31)であって、前記プログラムメモリ(35)は請求項11に記載のコンピュータプログラム製品を含む、コンピュータシステム(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療計画を生成する方法および機械学習システムを訓練する方法、ならびにコンピュータプログラム製品およびコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
治療計画は放射線治療を準備する重要な部分であり、増加する程に機械学習の使用を必要としている。そのような場合、それは2つの主要な段階、すなわち所望の線量分布を生成するための線量予測と、所望の線量に基づいて送達可能かつ物理的に実行可能な治療計画を生成するための線量模倣とからなる。これらの2つの段階は完全に互いに独立して行われる。
【0003】
線量予測は機械学習をベースとするものであってもよく、送達される線量のデータセットから学習されているモデルに従って患者の幾何学的形状に適合させた所望の空間線量分布を生成する。線量模倣は、最適化プロセスへの入力として所望の線量分布を使用する。この段階は典型的には計算的に重く、時間がかかる。最適化問題は、送達システムの機械制約および放射線送達プロセスの物理的性質ならびに典型的には患者への最適な送達可能な線量が得られる治療計画を決定するためのいくつかの他の最適性基準を含む最適性基準を考慮に入れるように設計される。
【0004】
米国特許公開第2019/192880号および欧州公開第3628372号は、機械学習をベースとする線量予測方法であって、ここでは機械学習システムは画像データおよび所望の結果を含む訓練セットを用いて訓練されており、かつ画像データに基づく出力と既知の所望の結果との差を最小化するように訓練されている方法を開示している。
【0005】
最適化から得られる線量は通常、物理的かつ技術的に可能なものに調整されて線量模倣段階で適用される様々な最適性因子が原因で、予測された線量分布から逸脱している。その得られる送達可能な線量が有用でない場合、線量予測段階または線量模倣段階で誤差が生じたか否かを決定することは難しくなり得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、機械学習システムを用いてより速くかつより信頼できる治療計画を可能にすることである。
【0007】
本発明は、患者のための放射線治療計画を生成するコンピュータベースの方法であって、前記計画は放射線を放射線源から患者に与えることを含み、その方法は、
・機械学習システムを使用して、医用画像および患者の少なくとも1つの描写された構造を含む構造データに基づく患者の幾何学的形状に応じた、予測された線量分布または患者のための線量予測を生成するために使用することができる照射パラメータのセットを生成することによる線量予測工程と、
・予測された線量分布および/または照射パラメータのセットを使用して送達可能治療計画を生成することによる線量模倣工程と、
を含み、
・線量予測工程は、治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準を考慮するように訓練されている機械学習システムを使用することを含む
ことを特徴とする方法に関する。
【0008】
本発明は、放射線治療計画における使用のためにそのような機械学習システムを訓練する方法であって、
・患者の医用画像、患者の少なくとも1つの描写された構造を含む構造データ、および医用画像に基づいて決定された患者の幾何学的形状に応じた所望の線量分布に関する入力データのセットを機械学習システムに提供する工程と、
・機械学習システムからの出力を所望の線量分布と比較し、かつその比較の結果を機械学習システムに与える工程と、
を含み、
・入力データのセットは、治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準をさらに含み、かつ当該訓練は、治療の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準を考慮するように機械学習システムを訓練することを含む
ことを特徴とする方法にも関する。
【0009】
本発明によれば、線量模倣工程において通常考慮に入れられる因子の少なくとも1つを線量予測工程に取り入れる。これは線量予測工程が患者の幾何学的形状にのみ基づき、かつ送達プロセスに関連づけられた物理的および技術的制約は線量模倣工程になってから考慮される先行技術の方法とは対照的である。線量予測工程において既にこれらの制約の少なくともいくつかを考慮することにより、計画方法は所望の結果を生成するために患者に実際に送達することができる線量により近い予測線量、またはそのような予測線量を決定するために使用することができる照射パラメータのセットを返す。好ましくは照射パラメータのセットは予測線量を決定するのに十分な情報を含む。結果として予測線量により良好に一致する線量を返しながらも、線量模倣工程をより速くすることができる。
【0010】
好ましい実施形態では、機械学習システムは、患者のための線量関数に基づいて訓練不可能な層を含み、かつ放射線療法の種類および/または線量分布に応じて各ビームのためのフルエンス分布、各ビームおよびエネルギーのためのスポット位置および重みまたは小線源位置および滞留時間のセットを出力するように構成されている。
【0011】
好ましい実施形態では、機械学習システムは、治療を送達するときに最適性基準として使用される送達システムの少なくとも1つの技術的制約を考慮するように設計されたニューラルネットワークである。
【0012】
機械学習モデルの訓練は、好ましくは最適化プロセスを改善することを含み、ここでは最適化手順は少なくとも1つの最適性基準に関する最適化関数を含む最適化問題に基づいている。
【0013】
本発明の方法は、線量模倣に影響を与える因子のいくつかを線量予測工程でも考慮することを保証することにより、送達可能な線量を予測線量分布から逸脱させる因子の数も減少させ、それにより機械学習モデルのより容易な評価を可能にする。また、学習プロセスは物理的に実行可能な解の空間のみを検索すればよいため制約することができ、これにより従来のシステムよりも少ない患者に基づく良好な一般化を行うことが可能になる。
【0014】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの最適性基準は、患者の幾何学的形状と放射線源の特性との相互作用を含む送達プロセスの物理的性質に関するパラメータを含み、線量予測工程からの出力は線量分布または照射パラメータのセットあるいはその両方として表されている。これは、放射線の種類および患者の体に対する放射線の効果を含む放射線源の特性を線量予測工程において考慮することを意味する。少なくとも1つの最適性基準はこの代わりまたはこれへの追加として、送達システムの機械制約などの、放射線治療を送達するために使用される本システムの技術的制約の1つ以上を含んでいてもよい。これは、予測線量が送達システムによって実際に送達することができるものにより近くなることを意味する。好ましい実施形態では、1つ以上の最適性基準を最適性基準に関する少なくとも1つの制約の形態で最適化問題に含める。
【0015】
本方法は、外部ビームを用いる従来の放射線治療計画に適用可能であり、小線源療法にも適用可能である。それはプロトン、中性子または炭素もしくはヘリウムイオンなどの帯電したイオンを用いる計画を含むフォトンベースの治療計画および粒子ベースの治療計画のために使用してもよい。
【0016】
第1の好ましい実施形態では、線量模倣工程において考慮に入れられる因子は、経路損失などの因子に影響を与える送達プロセスの物理的性質である。これは照射パラメータから線量分布へのマッピング関数を考慮することにより行い、このためのフォトン放射線治療は線量行列によって記述されていてもよい。
【0017】
この実施形態は、ビーム生成フォトンまたはイオン化粒子のセットあるいは小線源療法の場合には体内の放射性物質源のいずれかである線量を生成するプロセスを考慮に入れる。従って線量は、放射線の物質内への拡散を左右する物理学の法則に従って分散される。これはかなりの程度で、放射線に影響を与える患者の体の部分の特性によって決まる。周知であるように、当該照射は水、空気、骨、脂肪または他の種類の組織を通り抜けることにより異なって影響を受ける。
【0018】
第2の好ましい実施形態では、線量模倣工程において考慮に入れられる因子は線量の送達性である。これは、送達システムの特性を考慮することにより行われる。このようにして、予測線量が機械制約に関して送達可能なものであることを保証することができる。
【0019】
両方の因子すなわち幾何学的形状および送達性を一緒に考慮してもよい。好ましくは、それらを従来の方法での線量模倣工程において再び考慮して、考え得る限りで最良の計画を保証する。これは、入力データを線量模倣に形成する送達可能な線量が物理的性質および/または機械制約を考慮に入れて生成されるため、先行技術システムよりも速くなる。
【0020】
本発明は、コンピュータ内で走らされるときに、コンピュータに上で考察されているように放射線治療計画を生成する方法を実行させるコンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム製品にも関する。本発明は、コンピュータ内で走らされるときに、コンピュータに上で考察されているように機械学習モデルを訓練する方法を実行させるコンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム製品にも関する。コンピュータプログラム製品は、任意の種類の好適な担体、例えば非一時的担体に記憶されていてもよい。本発明は、プロセッサ、プログラムメモリおよびデータメモリを備えるコンピュータシステムであって、プログラムメモリはそのようなコンピュータプログラム製品の1つまたは両方を含むコンピュータシステムにも関する。
【0021】
本発明は、例としてかつ添付の図面を参照して、以下により詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】線量予測および線量模倣の手順の概略である。
【
図2】本発明の一実施形態に使用するのに適したU-Netニューラルネットワークの構造を例解する。
【
図3】本発明の一実施形態に係る方法のフローチャートである。
【
図4】本発明に従って使用することができるコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、線量予測および線量模倣の先行技術方法の概略である。この手順への入力データは、医用画像S11および構造データS12のうちの少なくとも1つを含む。医用画像S11は、CT画像またはMR画像などの、患者の一部の医用画像である。構造データは、1つ以上の関心領域(ROI)の患者の描写された構造を含む。これらの入力データは、患者の幾何学的形状に適合させた空間線量である予測線量を生成するために機械学習システムにおいて行われる線量予測工程S13で使用される。線量予測工程S13からの出力は予測線量S14または予測線量を生成するためにその後の工程(図示せず)で使用することができる照射パラメータのセットである。予測線量S14は線量模倣工程S15への入力データとして使用され、この工程は患者のために送達可能な治療計画S16を生成する。当該技術分野において一般的であるように、線量模倣工程は、治療計画が実際の生理的状態および技術的条件を考慮に入れて所望の線量分布の生成に可能な限り近くなることを保証するように設計されている。これは、線量模倣工程が典型的には以下の基準:
・患者の幾何学的形状および解剖学的構造を考慮に入れた、照射と患者組織との相互作用から得られる線量分布、
・放射線源の物理的性質、
・使用される送達システムの機械制約に関する計画の送達性、
・予測線量に関する最適性基準、
・放射線生物作用(RBE)などの他の最適性基準
を遵守させるように設計されていることを意味する。
【0024】
放射線源は、外部ビームを患者に与えるための装置を含む放射線療法のために使用される任意の公知の放射線源、または小線源療法のために患者の体内に入れた放射線源であってもよい。提供される放射線はフォトンまたはイオンベースであってもよい。
【0025】
本発明によれば、線量模倣工程S15において通常考慮に入れられる因子の少なくとも1つを線量予測工程S13に取り入れ、予測線量が実際に送達可能な線量に近くなる確率を上げる。
【0026】
第1の好ましい実施形態では、本発明は、放射線源の物理的性質と共に線量予測段階において物理記述子を考慮することを含む。すなわち、放射線源およびどのように患者組織と相互作用するかの組み合わせ特性を考慮する。物理記述子は、線量関数d=f(x)によって与えられる。
【0027】
式中、xは治療パラメータのセットであり、dは患者において得られる線量分布であり、fは治療パラメータから線量へのマッピング関数である。患者の物理記述子は任意の好適な提供源からのもの、典型的にはより早い時点で撮影されたか治療計画に関連する患者の医用画像からのものであってもよい。医用画像は例えば初期の治療計画のために取得された計画画像またはフラクションの送達前に撮影されたフラクション画像あるいは2つ以上のそのような画像の組み合わせであってもよい。
【0028】
第1の可能な実装形態として、線量マッピング関数f(x)の近似を機械学習システムに訓練不可能な層として取り入れることができる。この実施形態のために、機械学習システムは好ましくはニューラルネットワークであり、これはフォトン放射線治療計画の場合、従来から行われているように所望の線量の代わりに所望のフルエンスを出力するように構成されている。従ってこの場合、線量予測工程からの出力S14は予測線量分布の代わりに所望のフルエンスマップとなる。線量模倣工程はこの場合、線量分布またはフルエンスマップのいずれかあるいはその両方を生成するように構成することができる。
【0029】
第1の実施形態の第2の可能な実装形態は、機械学習システムのための損失関数のペナルティ項部分として線量関数の出力と線量との差、すなわち|f(x)-d|に関する測定基準を取り入れることである。この測定基準は、例えばその差の絶対値であってもよいが、任意の好適な測定基準を使用することができる。この第2の選択肢では、任意の最適化ベースの機械学習システムを使用することができる。あるいは機械学習と制約充足プログラミングとの組み合わせに基づく方法を使用することができる。この場合、その制約が訓練されたモデルの本質的な部分になるように、d=f(x)は訓練中に機械学習システムにおける絶対制約として課される。
【0030】
第2の好ましい実施形態では、本発明は、線量予測段階において送達システムの機械制約を考慮することを含む。機械制約は、ガントリーおよびコリメーターリーフなどの、送達システムの構成要素がどのくらいの量およびどのくらいの速さで動くことができるかなどの因子を含む。機械制約は目的関数として、あるいは好ましくは上で考察されている物理的制約と同様に処理される制約として、任意の最適化ベースの機械学習システムの最適化問題に追加することができる。
【0031】
第1および第2の好ましい実施形態は互いに独立して実施することができるが、予測線量が患者の身体的特徴および送達システムの技術的制約の両方を確実に考慮に入れるために一緒に使用することもできる。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に従って使用するのに適したU-Netとして知られているニューラルネットワークの単純化されたアーキテクチャを例解する。U-Netの基本的な関数は当業者に知られており、概括的な言葉のみで考察する。当該技術分野において一般的であるように、U-Netは複数の層を含み、
図2は4つの層を含むモデルを示す。当業者に知られているように、U-Netは、縮小パス21すなわちU字の左側の脚および拡張パス23すなわち
図2に示されているU字形状の右側の脚を有する。縮小パスは畳み込み211、213、215の繰り返しの適用からなり、それぞれの後に当業者に知られているような正規化線形ユニット(ReLU)および最大値プーリング操作が行われる。縮小中に空間情報を減少させ、特徴情報を増加させる。第4の層は完全に縮小された層220である。拡張パス23は、アップ畳み込み231、233、235の順序および連結による特徴および空間情報を縮小パスからの高解像度特徴と組み合わせる。拡張パスの最上側層235は当該技術分野において一般的であるような連結関数および畳み込み関数を含み、本発明の実施形態に係るこの出力は予測線量236である。予測線量は予測線量に基づいて照射パラメータ239を計算するように構成された訓練不可能な層237への入力である。照射パラメータを使用して線量送達を制御してもよい。
【0033】
上で説明したように、機械学習モデルへの入力データは患者に関する医用画像および構造データを含む。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る機械学習システムを訓練する方法のフローチャートである。この訓練は好ましくは最適化プロセスを改善することを含み、最適化手順は少なくとも1つの最適性基準に関する最適化関数を含む最適化問題に基づいている。第1の工程S31では、入力データのセットを訓練されるべき機械学習システムに提供する。入力データのセットは患者の医用画像、構造データセットおよび医用画像に基づいて決定された患者の幾何学的形状に応じた所望の線量分布に関する。本発明の実施形態によれば、入力データのセットは、治療計画の送達に影響を与える物理的もしくは技術的制約に関する少なくとも1つの最適性基準も含む。
【0035】
工程S32では、機械学習システムは入力データに基づく出力を生成する。工程S33では、工程S32からの出力を既に利用可能な所望の線量分布と比較し、工程S34ではその比較の結果をフィードバックとして機械学習システムに与える。
【0036】
少なくとも1つの最適性基準は、放射線源の特性および患者の幾何学的形状の複合効果に関するものであってもよい。代わりまたは追加として、少なくとも1つの最適性基準は、治療を送達するときに使用される送達システムの技術的制約に関するものであってもよい。好ましくは、
図2に示すように機械学習システムは、患者のための線量関数に基づいて訓練不可能な層を含み、機械学習システムは、線量模倣段階への入力データとして使用される、予測された線量分布または患者のための線量予測を生成するために使用することができる照射パラメータのセットを出力するように構成されている。
【0037】
図4は、本発明の方法を行うことができるコンピュータシステムの概略図である。コンピュータ31は、プロセッサ33、データメモリ34およびプログラムメモリ35を備える。好ましくは、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段または任意の他の入手可能なユーザ入力手段の形態のユーザ入力手段37、38も存在する。またユーザ入力手段は外部メモリユニットからデータを受信するように構成されていてもよい。当然のことながら
図4は、本発明に係る方法を実施するために使用することができ、かつ実際のコンピュータアーキテクチャを変えることができる異なる構成要素を例解するためにのみ提供されている。これらの構成要素の1つ以上または当該システム全体をクラウド環境で実施してもよい。
【0038】
データメモリ34は典型的には、必要な入力データおよび線量予測工程からの出力データならびに治療計画を含む。コンピュータ31において治療計画を生成してもよく、当該技術分野で知られている任意の方法で別の記憶手段から受信してもよい。当然のことながら、データメモリ34は概略的にのみ示されている。それぞれが1つ以上の異なる種類のデータを保持しているいくつかのデータメモリユニット、例えば、入力データのための1つのデータメモリ、線量分布または照射パラメータのための1つデータメモリなどが存在してもよい。
【0039】
プログラムメモリ35は、上で考察されている機械学習システムおよび線量模倣プログラムを保持している。当然のことながら、データメモリ34および/またはプログラムメモリ35は必ずしもプロセッサ33と同じコンピュータの一部とは限らず、クラウド環境内などの、プロセッサから到達可能な任意のコンピュータに位置していてもよい。
【国際調査報告】