(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】発酵タマネギ組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20230616BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20230616BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20230616BHJP
A23L 3/3472 20060101ALI20230616BHJP
A23B 4/20 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23B7/00
A23L2/02 E
A23L3/3472
A23B4/20 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022562107
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 US2020027569
(87)【国際公開番号】W WO2021206724
(87)【国際公開日】2021-10-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シャレスト, ディヴィッド, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イアンク, カタリン
(72)【発明者】
【氏名】クマール, サウラブ
(72)【発明者】
【氏名】ポストマス, ジャルヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルーゼン, ランベルトゥス ヘンリキュス, エリザベス
【テーマコード(参考)】
4B016
4B021
4B117
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LC07
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4B016LK18
4B016LP13
4B021LW04
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4B169HA08
4B169KA01
4B169KC22
(57)【要約】
本発明は、少なくとも8重量%の乾物含有量を有する発酵タマネギ組成物であって、乾物1グラム当たり、a)フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される、0~150mgの糖類、b)酸当量の没食子酸、酸当量のフェルラ酸、ケルセチン、ケンペロール及びそれらの組み合わせから選択される、5~250mgのフェノール類、c)プロピオン酸、乳酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、75~500mg酸当量の有機酸を含む、発酵タマネギ組成物に関する。本発明の発酵タマネギ組成物は、食品の全体的な品質を向上させるための、効果的で、ラベルフレンドリーな食品原材料として有利に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8重量%の乾物含量を有する発酵タマネギ組成物であって、乾物1グラム当たり、
a)フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される、0~150mgの糖類、
b)酸当量の没食子酸、酸当量のフェルラ酸、ケルセチン、ケンペロール及びそれらの組み合わせから選択される、5~250mgのフェノール類、
c)プロピオン酸、乳酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、75~500mg酸当量の有機酸
を含む、発酵タマネギ組成物。
【請求項2】
0~50重量%の水分含量を有する、請求項1に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項3】
クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、ピルビン酸、コハク酸及びそれらの組み合わせから選択される、3~120mg酸当量のタマネギの酸の形態である成分d)を追加で含む、請求項1又は2に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項4】
成分a)からd)の組み合わせが、組成物中に含有される乾物の少なくとも50重量%を構成する、請求項3に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項5】
乾物1グラム当たり200~800mgの乳酸当量を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項6】
乾物1グラム当たり75~450mgのプロピオン酸当量を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項7】
乾物1グラム当たり1.5~35mgの総窒素含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項8】
乾物1グラム当たり0.2~30mgのケルセチンを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項9】
乾物1グラム当たり、
0.05~30mg酸当量のクエン酸、
0.2~30mg酸当量のリンゴ酸、
1~150mg酸当量の没食子酸
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項10】
乳酸菌及び/又はプロピオニバクテリウム属由来の細胞物質を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の発酵組成物。
【請求項11】
発酵タマネギ組成物を調製する方法であって、
10~50重量%の乾物及び50~90重量%の水を含有するタマネギ基材を用意するステップであり、乾物の少なくとも40重量%がタマネギ由来である、ステップと、
乳酸菌、プロピオニバクテリウム属及びそれらの組み合わせから選択される微生物を前記基材に接種するステップと、
接種された前記基材を25~60℃の範囲内の温度で少なくとも12時間インキュベートしてタマネギ発酵物を生成させるステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記タマネギ基材の前記乾物が、タマネギ汁及び/又はタマネギの果肉から供給される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物を生産する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
食品製品又は飲料を調製する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物を、1つ又は複数の他の原材料と合わせるステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物の、食品防腐剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、少なくとも8重量%の乾物含有量を有する発酵タマネギ組成物であって、乾物1グラム当たり、
a)フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせ
から選択される、0~150mgの糖類、
b)酸当量の没食子酸、酸当量のフェルラ酸、ケルセチン、ケンペロール及びそれらの組み合わせから選択される、5~250mgのフェノール類、
c)プロピオン酸、乳酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、75~500mg酸当量の有機酸
を含む、発酵タマネギ組成物に関する。
【0002】
本発明の発酵タマネギ組成物は、食品の全体的な品質を向上させるための、効果的で、ラベルフレンドリーな食品原材料として有利に使用することができる。
【0003】
本発明は、発酵タマネギ組成物を調製する方法であって、
8~50重量%の乾物及び50~90重量%の水を含有するタマネギ基材を用意するステップであり、乾物の少なくとも40重量%がタマネギ由来である、ステップと、
乳酸菌、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属及びそれらの組み合わせから選択される微生物を基材に接種するステップと、
接種された基材を25~60℃の範囲内の温度で少なくとも12時間インキュベートしてタマネギ発酵物を生成させるステップと
を含む、方法をさらに提供する。
【0004】
[発明の背景]
食品保存は、食品を所望の特性又は自然体で、できる限り長期間維持するために取られる措置を含む。機械的、物理的、化学的、及び微生物学的影響は、食品の劣化及び腐敗の主因となる。措置の方式に基づき、主要な食品保存方法は、このように分類できる。(1)化学劣化及び微生物の増殖を減速、又は阻害する(2)細菌、酵母、麹、又は酵素を直接的に不活性化する、及び(3)加工前及び加工後の再感染を防止する。
【0005】
食品にける化学品の使用は、よく知られた食品保存方法である。多種多様な化学品は、抗微生物性及び酸化防止剤のようにpHを制御するため、及び食品機能性、並びに保存措置を提供するための添加物として食品保存料に使用されている。法的に認可されている多くの食品の防腐剤は亜硫酸塩、亜硝酸塩、酢酸、クエン酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、二酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及びプロピオン酸ナトリウムを含む有機酸及びエステル類である。これらの添加物のいくつかは、例えば「化学的」、「人工的」又は「健康的でない」と捉えられているため、消費者によって望まれない、又は魅力が少ないものと捉えられる可能性がある。消費者は、天然物であり、添加物ではなく食品製品として表示され得る、生体材料由来又は再生可能な添加物を好むであろう。食品会社はそれらの消費者の需要を満たす製品開発を順調に進めており、食品を保存するために、例えば、野菜、果物、ハーブ及びスパイス又は細菌、酵母及び麹で発酵した製品を活用している。
【0006】
多くの防腐剤製品は、少なくとも酢酸、乳酸及びプロピオン酸等の有機酸を部分的にベースとしている。弱酸が水に溶解する際、非解離の酸分子と電荷を帯びたアニオンとの間で平衡が成立し、非解離の酸の割合が増加するにつれてpHは減少する。現在受け入れられている微生物に対抗する防腐措置の定石では、内部細胞のpHの低下による阻害が提示されている。非解離の酸分子は親油性であり、拡散により容易に原形質膜を通り抜ける。細胞質内は、pHが約7.0であり、酸分子は電荷を帯びたアニオン及びプロトンに解離する。これらは脂質二重層を横断的に通り抜けることができずに細胞質内に堆積し、このようにしてpHを低下させ、代謝を阻害する。食品中の微生物阻害剤としての有機酸の性質にはいくつかの制限がある。
微生物の初期レベルが高い場合、それらは大抵効果がない。
多くの微生物は代謝可能な炭素源として有機酸を使用する。
個々の菌株の抵抗性には固有のばらつきがある。
【0007】
国際出願第2018/106109号には、緩衝化した食品酸成分と培養した野菜抽出物の形態である亜硝酸塩源との組み合わせを含む天然の抗微生物性組成物について記載されている。
【0008】
Santasらは(Onion. A natural alternative to artificial food preservatives, AgroFood industry hi-tech-September/October (2010) - vol 21 n 5)タマネギが食品原材料として広く使用され、また、健康に有益な効果、酸化防止剤及び抗微生物性性能を有するとしてよく知られている含硫化合物及びフラボノイド類等の生物活性化合物の良好な源として知られていると述べている。著者らは、生体外実験においていくつかの研究で有機硫黄化合物の効果を試験したと報告しており、それらがバチルス(Bacillus)属、マイクロコッカス(Microcroccus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属のグラム陽性菌、並びにサルモネラ・エンテリディス(Salmonella enteridis)又は大腸菌(Escherichia coli)の一部の菌株等のグラム陰性菌に対して著しい阻害を発現することを示した。加えて、タマネギの抗酵母活性及び抗真菌活性は、酵母及び真菌の増殖を阻害する有機硫黄化合物の存在に主に起因する。著者らは、フラボノールのケルセチン及びケンペロールは、通常タマネギの中に相当量存在し、それらの抗微生物性特性の要因となる主な不揮発性化合物であるとさらに説明している。生体外実験は、タマネギのフラボノイド類がバチルスセレウス(Bacillus cereus)、枯草菌(B. subtilis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、マイクロコッカス・ルテウス(Microcroccus luteus)及びリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)等の食品の腐敗に繋がるグラム陽性菌の増殖を効果的に阻害できることを報告している。
【0009】
Dubladoら(FERMENTED ONION (Allium cepa) JUICE SUPPLEMENTATION TO BROILERS, Journal of Science, Engineering and Technology(2013),71-77)は、発酵したタマネギ汁の若鶏の成長能に対する効果を調査した研究について記載している。1kgのぶつ切りにしたタマネギ球をバケツ入りの0.5kgの黒砂糖と混合し、プラスチックの袋でバケツを覆い、そこに重石を乗せることで発酵したタマネギ汁が調製された。12時間後、重石が取り除かれ、バケツはマニラ紙で覆われ、ゴムバンドでバケツに括り付けられた。7日目に汁はボトルに回収され、冷所で保存された。
【0010】
[発明の概要]
本発明者らは、その固有の抗微生物活性にも関わらず、プロピオニバクテリウム属又は乳酸菌を使用してタマネギ汁又はタマネギの果肉(pulp)を発酵させることで、その食品原材料としての機能的な特性をさらに向上させられることを発見した。タマネギは、プロピオニバクテリウム属によりプロピオン酸(及び酢酸)に、又は乳酸菌により乳酸に代謝され得る発酵性の糖を高含量で有する。そのようにして得られた発酵したタマネギ生成物はタマネギに自然に存在する抗微生物性フェノール類の存在、並びに発酵中に生成したプロピオン酸、乳酸及び/又は酢酸の存在のため、抗微生物活性を有する。さらに、発酵したタマネギ生成物は酸化防止活性を有し、食品製品の質感的な、官能的な、及び他の機能的な特性を向上することができる。
【0011】
従って、本発明は、少なくとも8重量%の乾物含有量を有する発酵タマネギ組成物であって、乾物1グラム当たり、
a)フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される、0~150mgの糖類、
b)酸当量の没食子酸、酸当量のフェルラ酸、ケルセチン、ケンペロール及びそれらの組み合わせから選択される、5~250mgのフェノール類、
c)プロピオン酸、乳酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、75~500mg酸当量の有機酸
を含む、発酵タマネギ組成物を提供する。
【0012】
発酵タマネギ組成物の糖類の含有量は、これらの糖類の有機酸への発酵性変換のため、タマネギの糖類の含有量よりも実質的に低い。発酵タマネギ組成物の有機酸の濃度レベルは、タマネギ又はタマネギ汁に天然で見出される有機酸の濃度レベルよりもはるかに高い。
【0013】
本発明の発酵タマネギ組成物は、食品の全体的な品質を向上させるための、効果的で、ラベルフレンドリーな食品原材料として有利に使用することができる。
【0014】
本発明は、発酵タマネギ組成物を調製する方法であって、
10~50重量%の乾物及び50~90重量%の水を含有するタマネギ基材を用意するステップであり、乾物の少なくとも40重量%がタマネギ由来である、ステップと、
乳酸菌、プロピオニバクテリウム属及びそれらの組み合わせから選択される微生物を基材に接種するステップと、
接種された基材を25~60℃の範囲内の温度で少なくとも12時間インキュベートしてタマネギ発酵物を生成させるステップと
を含む、方法も提供する。
【0015】
[発明の詳細の説明]
本発明の第一の態様は、少なくとも8重量%の乾物含有量を有する発酵タマネギ組成物であって、乾物1グラム当たり、
a)フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される、0~150mgの糖類、
b)酸当量の没食子酸、酸当量のフェルラ酸、ケルセチン、ケンペロール及びそれらの組み合わせから選択される、5~250mgのフェノール類、
c)プロピオン酸、乳酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、75~500mg酸当量の有機酸
を含む、発酵タマネギ組成物に関する。
【0016】
本開示で使用される用語「酸」は、別段の指示がない限り、酸のプロトン化した形態、酸の解離した形態及び酸塩を包含する。このように、用語「クエン酸」は、例えば、C3H5O(COOH)3、C3H5O(COOH)2(COO)-、C3H5O(COO)3-
3、C3H5O(COONa)3及びC3H5O(COOH)(COONa)(COO)-を包含する。
【0017】
本開示で使用されている専門用語「mg酸当量」は、酸が完全にプロトン化した形態でのみ存在した場合の特定の酸の合計量を意味する。このように、200mgのプロピオン酸ナトリウムは200x74.08/96.06=154.24mg酸当量に相当する。
【0018】
本開示で使用される用語「ケルセチン」は、別段の指示がない限り、アグリコン並びにケルセチンの配糖体の両方を包含する。
【0019】
本発明の発酵タマネギ組成物は、液体、ペースト又は固体(例えば粉末)の形態で提供されてもよい。通常、発酵タマネギ組成物は、水分含量が0~50重量%であり、より好ましくは0~40重量%であり、より好ましくは0~35重量%であり、最も好ましくは0~18重量%である。
【0020】
特に好ましい実施形態によれば、発酵タマネギ組成物は粒状の組成物、好ましくは、平均径D[4,3]が100~900μmの範囲内であり、より好ましくは200~800μmの範囲内であり、最も好ましくは300~700μmの範囲内である粒状の組成物である。ここで、「平均径D[4,3]」はDe Brouckere平均径又は体積平均径を意味し、同体積の球状の粒子を実際の粒子と仮定した体積加重平均として定義できる。この平均径は下記方程式により算出され、
D[4,3]=(ΣniDi
4)/(ΣniDi
3)
式中、
Di=粒径分類iにおける平均粒子径、
ni=粒径分類iにおける粒子数
である。
【0021】
さらに好ましい実施形態において、粒状の組成物の少なくとも80重量%は粒子径が40~1500μmの範囲内であり、より好ましくは100~1200μmの範囲内であり、最も好ましくは200~1、000μmの範囲内である。質量加重平均粒子径はレーザー回折(Malvern Mastersizer 3000)を用いて適切に測定することができる。
【0022】
成分a)からc)の組み合わせ(糖類、フェノール類及び有機酸)は通常、組成物中に含有される乾物の少なくとも40重量%を構成する。より好ましくは、成分a)からc)の組み合わせは、組成物中に含有される乾物の45~94重量%を構成する。最も好ましくは、成分a)からc)の組み合わせは、組成物中に含有される乾物の50~89重量%を構成する。
【0023】
発酵タマネギ組成物は通常、乾物1グラム当たり、0~120mg、より好ましくは0~100mg、最も好ましくは0~90mgのフルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される糖類を含有する。
【0024】
特に好ましい実施形態によれば、発酵タマネギ組成物は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、ピルビン酸、コハク酸及びそれらの組み合わせから選択されるタマネギの酸の形態である成分d)を追加で含む。発酵タマネギ組成物のタマネギの酸の濃度レベルは、タマネギ及びタマネギ汁に天然で見出されるレベルと同等である。乾物1グラム当たり、タマネギの酸は、発酵タマネギ組成物中に好ましくは3~120mg酸当量、より好ましくは5~110mg酸当量、さらにより好ましくは10~100mg酸当量、最も好ましくは15~90mg酸当量の濃度で存在する。
【0025】
成分a)からd)の組み合わせ(糖類、フェノール類、有機酸及びタマネギの酸)は通常、組成物中に含有される乾物の少なくとも50重量%を構成する。より好ましくは、成分a)からd)の組み合わせは、組成物中に含有される乾物の52~95重量%を構成する。最も好ましくは、成分a)からd)の組み合わせは、組成物中に含有される乾物の55~90重量%を構成する。
【0026】
本発明の一実施形態において、組成物は乾物1グラム当たり200~800mgの乳酸当量を含有する。より好ましくは、組成物は乾物1グラム当たり300~700mgの乳酸当量を含有する。最も好ましくは、組成物は乾物1グラム当たり400~600mgの乳酸当量を含有する。
【0027】
本発明の別の実施形態において、組成物は乾物1グラム当たり75~450mgのプロピオン酸当量を含有する。より好ましくは、組成物は乾物1グラム当たり125~400mgのプロピオン酸当量を含有する。最も好ましくは、組成物は乾物1グラム当たり175~350mgのプロピオン酸当量を含有する。
【0028】
プロピオン酸に加え、組成物は通常、乾物1グラム当たり10~150mgの酢酸当量、より好ましくは20~130mgの酢酸当量、最も好ましくは30~110mgの酢酸当量を含有する。
【0029】
発酵タマネギ組成物の抗微生物活性は、発酵を利用することにより、有機酸だけでなく、バクテリオシンを生成させるためにさらに高めることができる。バクテリオシンは、ナイシン、サブチリン、サイトライシン、バリアシン、サカシン、ペディオシン、クルバティシン、エンテロシン、及びラクタシンの群より選択される1つ又は複数のバクテリオシンであってもよい。より好ましくは、バクテリオシンはナイシン、サカシン、ペディオシン及びラクタシンの群より選択される1つ又は複数であってもよい。最も好ましくは、バクテリオシンはナイシンである。好ましい実施形態によれば、組成物は乾物1グラム当たり5、000~500、000IUのナイシン当量活性を含有する。より好ましくは、組成物は乾物1グラム当たり10、000~400、000IUのナイシン当量活性を含有する。最も好ましくは、組成物は乾物1グラム当たり50、000~300、000IUのナイシン当量活性を含有する。
【0030】
乳酸及びバクテリオシンは両方とも乳酸菌により生成可能であるため、好ましい実施形態では、発酵タマネギ組成物は乳酸及びバクテリオシンの両方を含有する。さらにより好ましい実施形態では、発酵タマネギ組成物は乳酸及びナイシンを含有する。
【0031】
発酵タマネギ組成物は通常、乾物1グラム当たりの総窒素含有量が1.5~35mgであり、より好ましくは乾物1グラム当たりの総タンパク質含有量が2~30mgであり、最も好ましくは乾物1グラム当たりの総タンパク質含有量が3~25mgである。総タンパク質含有量はケルダール法を使用して適切に測定する。
【0032】
好ましくは、発酵タマネギ組成物に含有されるタンパク質のうち、少なくとも90重量%、より好ましくは、少なくとも95重量%はタマネギのタンパク質である。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、発酵タマネギ組成物に含有される乾物の少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%はタマネギ由来である。
【0034】
本発明の発酵タマネギ組成物は通常、タマネギの酸、フェノール類(フラボノールを含む)、含硫化合物、アルデヒド、ケトン等のタマネギに自然に存在する成分を相当量含有する。
【0035】
発酵タマネギ組成物は好ましくは乾物1グラム当たり、0.05~30mg酸当量のクエン酸、より好ましくは0.15~25mg酸当量のクエン酸、最も好ましくは0.25~20mg酸当量のクエン酸を含有する。
【0036】
発酵タマネギ組成物は好ましくは乾物1グラム当たり、0.2~30mg酸当量のリンゴ酸、より好ましくは0.5~25mg酸当量のリンゴ酸、最も好ましくは1~20mg酸当量のリンゴ酸を含有する。
【0037】
発酵タマネギ組成物は好ましくは乾物1グラム当たり、1~150mg酸当量の没食子酸、より好ましくは3~125mg酸当量の没食子酸、最も好ましくは5~100mg酸当量の没食子酸を含有する。
【0038】
発酵タマネギ組成物は好ましくは乾物1グラム当たり0.05~8mg酸当量のフェルラ酸、より好ましくは0.15~7mg酸当量のフェルラ酸、最も好ましくは0.25~6mg酸当量のフェルラ酸を含有する。
【0039】
好ましくは、発酵タマネギ組成物は乾物1グラム当たり0.2~30mgのケルセチンを含有する。より好ましくは、発酵タマネギ組成物は乾物1グラム当たり0.5~25mgのケルセチンを含有する。最も好ましくは、発酵タマネギ組成物は乾物1グラム当たり1~20mgのケルセチンを含有する。ここでケルセチンの量はアグリコンの形態であるケルセチンを意味する。
【0040】
好ましくは、発酵タマネギ組成物は乾物1グラム当たり0.05~8mgのケンペロールを含有する。より好ましくは、発酵タマネギ組成物は乾物1グラム当たり0.15~7mgのケンペロールを含有する。最も好ましくは、発酵タマネギ組成物は乾物1グラム当たり0.25~6mgのケンペロールを含有する。
【0041】
発酵タマネギ組成物の調製で使用される微生物由来の細胞物質は通常、上記組成物に存在する。従って、好ましい実施形態では、上記組成物は、乳酸菌及び/又はプロピオニバクテリウム属由来の細胞物質を含有する。
【0042】
別の好ましい実施形態によれば、発酵タマネギ組成物に含有される乾物の大部分は水溶性である。好ましくは、組成物を蒸留水で希釈した際に、組成物の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%が20℃の温度で溶解して乾物含有量が5重量%となる。
【0043】
本発明の発酵タマネギ組成物は、好ましくは以下の調製方法により得られ、さらにより好ましくは以下の調製方法により得られる。
【0044】
本発明の別の態様は、発酵タマネギ組成物を調製する方法であって、
10~50重量%の乾物及び50~90重量%の水を含有するタマネギ基材を用意するステップであり、乾物の少なくとも40重量%がタマネギ由来である、ステップと、
乳酸菌、プロピオニバクテリウム属及びそれらの組み合わせから選択される微生物を基材に接種するステップと、
接種された基材を25~60℃の範囲内の温度で少なくとも12時間インキュベートしてタマネギ発酵物を生成させるステップと
を含む、方法に関する。
【0045】
特に好ましい実施形態によれば、前述の調製方法は既に本開示で定義したような発酵タマネギ組成物を生じる。
【0046】
上記調製方法で用いられるタマネギ基材は、好ましくはタマネギ汁、タマネギの果肉又はそれらの組み合わせを含む。タマネギ汁は、タマネギ汁粉末の濃縮タマネギ汁の形態で得られるものであってもよい。タマネギの果肉は、タマネギ粉末の形態で適切に得られるものであってもよい。粉末又は濃縮物は、発酵のための出発材料として10~50%の乾物を有するタマネギ基材を得るために水で希釈してもよい。
【0047】
好ましい実施形態では、タマネギ基材の乾物の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%はタマネギ由来である。
【0048】
好ましくは、タマネギ基材の乾物の少なくとも80重量%は、タマネギ汁及び/又はタマネギの果肉から供給される。より好ましくは、タマネギ基材の乾物の少なくとも80重量%はタマネギ汁から、最も好ましくは水分含量が40重量%未満である濃縮タマネギ汁から供給される。
【0049】
タマネギ基材は通常、フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される糖類を、乾物の重量によって算出して少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%含有する。
【0050】
本発明の有利な実施形態では、タマネギ基材は、接種前にインベルターゼで処理されたものである。インベルターゼ処理は、スクロースを、乳酸菌及び/又はプロピオニバクテリウム属である特定の菌株によってより効果的に代謝されるグルコース及びフルクトースに変換する。
【0051】
タマネギ基材の総窒素含有量は、乾物の重量によって算出して好ましくは0.15~3.5重量%の範囲内、より好ましくは0.2~3.0重量%の範囲内、最も好ましくは0.3~2.5重量%の範囲内である。タマネギ基材の総タンパク質含有量はケルダール法を使用して適切に測定する。
【0052】
クエン酸、リンゴ酸、没食子酸及びそれらの組み合わせから選択されるタマネギの酸は、好ましくはタマネギ基材に乾物1グラム当たり、3~120g酸当量、より好ましくは5~110mg酸当量、さらにより好ましくは10~100mg酸当量、最も好ましくは15~90mg酸当量の濃度で存在する。
【0053】
好ましくは、タマネギ基材は、乾物の重量によって算出して0.02~3重量%のケルセチン、より好ましくは0.05~2.5重量%のケルセチン、最も好ましくは0.1~2重量%のケルセチンを含有する。ここでケルセチンの量はアグリコンの形態であるケルセチンを意味する。
【0054】
タマネギ基材は、好ましくは11~45重量%の乾物及び89~55重量%の水を含有する。より好ましくは、タマネギ基材は12~40重量%の乾物及び88~60重量%の水を含有する。
【0055】
タマネギ基材は、好ましくは接種前に低温加熱殺菌又は殺菌されたものである。最も好ましくは、タマネギ基材は、乳酸菌及び/又はプロピオニバクテリウム属を接種する際に無菌である。
【0056】
通常、タマネギ基材に少なくとも0.1%w/wの微生物の前培養物を接種する。より好ましくはタマネギ基材に0.5~40%w/wの前培養物を接種し、最も好ましくは1.0~30%w/wの微生物の前培養物を接種する。
【0057】
接種された基材は、好ましくは20~70℃の範囲内の温度で、より好ましくは25~65℃の温度で少なくとも12時間インキュベートしてタマネギ発酵物を生成させる。
【0058】
別の好ましい実施形態によれば、接種された基材は嫌気性条件下でインキュベートする。
【0059】
通常、インキュベートした基材が、プロピオン酸、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される有機酸を、乾物によって算出して10~50重量%酸当量含有するまで、インキュベートを継続する。
【0060】
本発明の一実施形態において、インキュベート中に形成される有機酸の少なくとも一部を中和するように、インキュベート中及び/又はインキュベート後に塩基を加える。タマネギ発酵物のpHを5.0以上に上昇させるため、より好ましくはタマネギ発酵物のpHを5.5~7.5に上昇させるために十分な塩基を加えることが好ましい。
【0061】
インキュベート後、タマネギ発酵物は例えばUHT殺菌により好ましく殺菌する。
【0062】
タマネギ発酵物は、インキュベート後、好ましくは乾物含有量を少なくとも50重量%に、より好ましくは少なくとも60重量%に濃縮する。
【0063】
特に好ましい実施形態によれば、タマネギ発酵物は水分含量が18重量%以下、好ましくは15重量%以下である乾燥粉末を生成させるために乾燥させる。好適に用いることができる乾燥方法は、噴霧乾燥、ドラム乾燥及び凍結乾燥である。乾燥後、乾燥したタマネギ発酵物は、製粉、篩い分け、造粒等の追加の加工ステップを適切に経るものであってもよい。最も好ましくは、タマネギ発酵物は、噴霧乾燥により乾燥させる。
【0064】
本発明のさらなる態様は、食品製品又は飲料を調製する方法であって、本発明による発酵タマネギ組成物を、1つ又は複数の他の原材料と合わせるステップを含む、方法に関する。本発明の発酵タマネギ組成物は、食肉製品等の食品製品、スープ及びソース等の香味製品、サラダ及び(野菜)飲料を保存するのに特に好適である。
【0065】
好ましくは、食品製品又は飲料を調製する方法は、発酵タマネギ組成物を最終食品製品又は最終飲料の0.1~10%の濃度で、より好ましくは0.2~5重量%の濃度で導入するステップを含む。
【0066】
さらに別の本発明の態様は、本発明の発酵タマネギ組成物の、食品防腐剤としての使用に関する。この使用は通常、発酵タマネギ組成物を、保存を要する製品の1つ又は複数の他の原材料と混合する使用を含む。
【0067】
さらに別の本発明の態様は、食品製品の微生物腐敗を防ぐことを目的とした発酵タマネギ組成物の使用に関する。さらに別の本発明の態様は、食肉製品の官能特性を改善することを目的とした発酵タマネギ組成物の使用に関する。
【0068】
以下の非限定的実施例により本発明をさらに説明する。
【0069】
[実施例]
実施例1
本発明による発酵タマネギ組成物を、タマネギ汁をインベルターゼで処理することによりスクロースをグルコース及びフルクトースに変換し、続いてB.コアグランス(B.coagulans)(2020年3月20日、CorbionNV社によりDSMZ寄託機関(German collection of microorganisms and cell cultures社)で寄託され、寄託番号はDSM33469である)を使用した発酵により処理したタマネギ汁に含まれる発酵性の糖類を乳酸に変換して生成させた。以下に示される結果はこの実験を6回繰り返して得られたものである。
【0070】
タマネギ汁の濃縮物の詳細を表1に示す。
【0071】
【0072】
3300グラムのタマネギ汁の濃縮物を6700グラムの脱塩水で希釈し、タマネギ汁の原液を調製した。次に、希釈したタマネギ汁にUHT殺菌を施した。殺菌したタマネギ汁の希釈液を周囲温度まで冷却した後、タマネギ汁媒体を調製するために使用した。これに関し、2500gのタマネギ汁の原液を2245gの脱塩水と混合した。得られた媒体のpHは約4.6であった。次に、全てのスクロースがグルコース及びフルクトースに変換された後、5mlのインベルターゼ溶液を加え、54℃で30分間インキュベートした。
【0073】
インベルターゼ処理後の代表的なタマネギ汁媒体の糖類組成を表2に示す。
【0074】
【0075】
次に、インベルターゼで処理したタマネギ汁媒体のpHを、Ca(OH)2及びNaOH(50/50w/w比)の40%苛性溶液を加えることにより6.4に調整し、続いてB.コアグランス(OD5006~7)を含有する250mlの接種菌液を接種した。
【0076】
発酵は撹拌型発酵槽中で54℃の温度で嫌気性条件下で実施した。発酵中の発酵ブロスの温度は50~56℃の範囲内で維持した。前述の苛性溶液は、pHが6~6.8の範囲内で維持されるように使用した。
【0077】
30時間の発酵後、サンプルを発酵ブロスから取り出し、分析した。分析の結果を表3に示す。
【0078】
【0079】
実施例2
本発明による発酵タマネギ組成物を、タマネギ汁をインベルターゼで処理することによりスクロースをグルコース及びフルクトースに変換し、続いてP.アシディプロピオニキ(P.acidipropionici)(2020年3月20日、CorbionNV社によりDSMZ寄託機関(German collection of microorganisms and cell cultures社)で寄託され、寄託番号はDSM33468である)を使用した発酵により処理したタマネギ汁に含まれる発酵性の糖類をプロピオン酸及び酢酸に変換して生成させた。以下に示される結果はこの実験を7回繰り返して得られたものである。
【0080】
3300グラムの実施例1と同じタマネギ汁を6700グラムの脱塩水で希釈した。次に、希釈したタマネギ汁にUHT殺菌を施した。
【0081】
殺菌したタマネギ汁の希釈液を周囲温度まで冷却した後、タマネギ汁の発酵媒体を調製し、インベルターゼ溶液を加えた。発酵媒体の組成を表4に示す。
【0082】
【0083】
タマネギ汁媒体のpHは約4.6であった。35℃で2時間のインキュベート後、全てのスクロースがグルコース及びフルクトースに変換された。
【0084】
次に、インベルターゼで処理したタマネギ汁の希釈液のpHを、Ca(OH)2とNaOH(50/50w/w比)の40%苛性溶液を加えることにより7に調整し、続いてP.アシディプロピオニキ(OD50030~40)を含有する250mlの接種菌液を接種した。
【0085】
発酵は撹拌型発酵槽中で嫌気性条件下で実施した。発酵中の発酵ブロスの温度は30~38℃で維持し、pHが6~6.8の範囲内で維持されるように苛性溶液(20%Ca(OH)2)を加えた。
【0086】
40時間の発酵後、サンプルを発酵ブロスから取り出し、分析した。タマネギ汁媒体の代表的な発酵の分析の結果を表5に示す。
【0087】
【0088】
実施例3
七面鳥の食肉組成中のパージ損失、調理済みの食肉のpH及び色に対する、発酵タマネギ組成物の使用効果を調査した。ラボスケール試験は、20%w/wのブライン溶液を加えた七面鳥の胸の切り身13mmを使用して実施した。
【0089】
食塩、きび砂糖、カラギーナンを含有する5つの異なるブライン溶液を使用した。試験したブライン溶液のうち4つは実施例1の発酵タマネギ組成物又はVerdad powder N20(販売元:Corbion、オランダ)を追加で含有するものであった。最終食肉製品の重量から算出される食塩、きび砂糖及びカラギーナンの濃度はそれぞれ1.6%、0.5%及び0.4%であった。発酵タマネギ組成物及びVerdad powderの濃度も、最終食肉製品の重量から算出されており、表6に示されている。乳酸の最終濃度は、タマネギ1及びN20-1(低添加量)とタマネギ2及びN20-2(高添加量)とで同様であった。
【0090】
【0091】
ブライン原材料を水に加え、続いて5分間混合することでブライン液を調製した。次に、ブライン溶液を食肉片に加え、2時間真空回転撹拌させた。回転撹拌後、食肉バッターを60mmプラスチックの高バリア容器内に真空で詰め、表7に表された調理計画に従って内部温度が72℃になるまで熱加工した。そのようにして得られた食肉製品を内部温度が2℃になるまで終夜で冷却させた。
【0092】
【0093】
生の食肉、ブライン、食肉バッター及び調理済みの食肉製品のpHを測定した。また、各食肉製品に対してパージ損失及び色も測定した。パージ損失は、調理前と調理後の七面鳥食肉製品(遊離液を含まない)の間の重量差を、調理前の食肉製品の重量で割ったものと同値である。色はCIELAB標準に従って測定した。結果を表8に提示し、発酵したタマネギはVerdad powder N20よりも良好に作用することを示している。
【0094】
【0095】
実施例4
発酵タマネギ組成物の抗微生物効果を、食肉の腐敗に繋がる乳酸菌(LAB)混合物を接種した調理済みのチキンロールで調査した。
【0096】
タマネギ発酵物を加えた食肉サンプル(試験製品)の、市販の防腐剤製品を加えたサンプル(参照製品)及び防腐剤を加えていないサンプル(対照)と比較した乳酸菌の増殖を保存期間中に追跡した。
【0097】
食肉サンプル調製
30mmの鶏のヒレ肉を使用し、ブラインを18%注入して、チキンロールサンプル(表9)を調製した。食肉サンプルを、全ての原材料を混ぜ入れた後、1時間回転撹拌させた。ロールの中心が72℃に到達するまで一連の調理を実施した。
【0098】
【0099】
調理済みの食肉サンプルにLAB6菌株混合物を接種して、細菌の濃度を3LogCFU/gに到達させた。LAB混合物は腐敗した食肉から得られる乳酸菌を含有し、有機酸に対して比較的強いことが知られている。調理済みの食肉サンプルは7℃で保持された。約20gのサンプルから細菌細胞を採取し、増殖させることによりLABの増殖を時間で追跡した。各時点で複製サンプルを使用した。
【0100】
結果
異なるサンプルのpHと水分活性(Aw)を表10に示す。
【0101】
【0102】
参照製品及び試験製品のサンプルの水分活性は非常に近似しており、一方で対照の水分活性は若干高い。参照製品及び試験製品の添加は両方ともpHの減少を招いたが、試験製品のサンプルはほぼ0.2単位高かった。これは試験製品の高い緩衝能が原因である可能性がある。
【0103】
細菌の増殖測定より結果を表11に示す。
【0104】
【0105】
Verdad Opt.Powder N70及びタマネギ発酵物を含有する試験製品の両方ともが、対照と比べて、チキンロール中の抵抗性LABの増殖を阻害した。試験製品は、チキンロールのpH値が高いにも関わらず若干良好に作用した。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8重量%の乾物含量を有する発酵タマネギ組成物であって、乾物1グラム当たり、
a)フルクトース、グルコース、スクロース及びそれらの組み合わせから選択される、0~150mgの糖類、
b)プロピオン酸、乳酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、75~
800mg酸当量の有機酸
を含む、発酵タマネギ組成物。
【請求項2】
0~50重量%の水分含量を有する、請求項1に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項3】
クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、ピルビン酸、コハク酸及びそれらの組み合わせから選択される、3~120mg酸当量のタマネギの酸の形態である成分
c)を追加で含む、請求項1又は2に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項4】
乾物1グラム当たり200~800mgの乳酸当量を含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項5】
乾物1グラム当たり75~450mgのプロピオン酸当量を含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項6】
乾物1グラム当たり1.5~35mgの総窒素含有量を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項7】
乾物1グラム当たり、
0.05~30mg酸当量のクエン酸、
0.2~30mg酸当量のリンゴ酸、
1~150mg酸当量の没食子酸
を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項8】
乳酸菌及び/又はプロピオニバクテリウム属由来の細胞物質を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の発酵
タマネギ組成物。
【請求項9】
酸当量の没食子酸、酸当量のフェルラ酸、ケルセチン、ケンペロール及びそれらの組み合わせから選択される、5~250mgのフェノール類を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物。
【請求項10】
発酵タマネギ組成物を調製する方法であって、
10~50重量%の乾物及び50~90重量%の水を含有するタマネギ基材を用意するステップであり、乾物の少なくとも40重量%がタマネギ由来である、ステップと、
乳酸菌、プロピオニバクテリウム属及びそれらの組み合わせから選択される微生物を前記基材に接種するステップと、
接種された前記基材を25~60℃の範囲内の温度で少なくとも12時間インキュベートしてタマネギ発酵物を生成させるステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記タマネギ基材の前記乾物が、タマネギ汁及び/又はタマネギの果肉から供給される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物を生産する、請求項
10又は
11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の方法により得られる、発酵タマネギ組成物。
【請求項14】
食品製品又は飲料を調製する方法であって、請求項1~10
及び13のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物を、1つ又は複数の他の原材料と合わせるステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項1~10
及び13のいずれか一項に記載の発酵タマネギ組成物の、食品防腐剤としての使用。
【国際調査報告】