(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】管腔内送達カニューレ、アセンブリ、及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20230616BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61M5/158 500D
A61M5/158 500H
A61M25/06 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563442
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 SE2021050443
(87)【国際公開番号】W WO2021235993
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522408441
【氏名又は名称】スマートワイズ スウェーデン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルミン,スタファン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ランドバーク,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ムンター,ジョニー
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF04
4C066KK02
4C066KK03
4C066KK05
4C066KK11
4C066QQ79
4C267AA17
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB08
4C267BB12
4C267BB38
4C267BB63
4C267CC08
4C267CC19
4C267GG34
(57)【要約】
【課題】 血管系を介した体内のより遠隔の血管外の部位への確実なアクセスを可能にすることである。
【解決手段】 本発明は、ヒト又は動物の身体の血管系を介して血管外の標的部位に物質を送達するための管腔内送達カニューレであって、近位カニューレハブ、細長い近位、及び先端部を備えるカニューレに関する。先端は、組織を貫通するために尖鋭な先端が設けられることの好ましい遠位先端に向かってテーパ状を有する。尖鋭な先端は、少なくとも1つの一次ファセットと2つの二次ファセットとを備えてもよく、2つの二次ファセットは、上述の一次ファセットの近位に配置される。管腔内送達アセンブリは、上述のカニューレと、ヒト又は動物の身体の血管系内に挿入されるように適合された保護カテーテルと、カテーテルの近位端に設けられ、血管系を通じてカテーテルを案内するように係合された近位カテーテルハブと、を備える。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の身体の血管系を介して、血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するための管腔内送達カニューレ(1)であって、
前記カニューレ(1)は、前記身体の外側に残るように構成された近位端(2)と、前記血管系を介して前記身体内に挿入され、前記血管外又は心筋内の標的部位にアクセスするように構成された遠位端(3)と、を有し、前記カニューレ(1)は、前記近位端(2)から前記遠位端(3)まで縦方向全長(L
1)を有し、前記カニューレ(1)は、
前記カニューレ(1)の前記近位端(2)に設けられたカニューレハブ(8)と、
縦方向長さ(L
2)及び外径(D
1)を有する細長い近位部(4)であって、前記外径(D
1)は、前記カニューレが本質的に真っ直ぐであるときに測定すると、前記近位部(4)の本質的に全長に沿って一定である近位部(4)と、
前記近位部(4)の先端に配置され、前記近位部(4)から前記カニューレ(1)の遠位先端(6)まで延設される先端部(5)と、
前記近位部(4)及び前記先端部(5)を通じて前記カニューレの近位端(2)から前記遠位先端(6)まで延設され、前記カニューレ(1)の全長に沿って内径(D
2)を有する連続管腔(7)と、を備え、
前記先端部(5)は、前記遠位先端(6)に一次開口(9)を有し、前記管腔(7)と前記カニューレ(1)の外部との間に連通を生じ、
前記先端部(5)は、任意で、外径(D
3)が前記細長い近位部(4)の前記外径(D
1)と本質的に同一となり、前記遠位先端(6)における外径(D
4)が前記先端部(5)の近位端における前記外径(D
3)より小さい状態で、前記先端部(5)の前記近位端に設けられることにより、前記遠位先端(6)に向かってテーパ状を有する、管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項2】
前記近位端(2)から前記遠位端(3)までの前記縦方向全長(L
1)は、約300mm~2500mmの範囲内である、請求項1に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項3】
前記先端部(5)は、外径(D
3)が前記細長い近位部(4)の前記外径(D
1)と本質的に同一であり、前記遠位先端(6)における外径(D
4)が前記先端部(5)の前記近位端における前記外径(D
3)より小さい状態で、前記先端部(5)の前記近位端に設けられることにより、前記遠位先端(6)に向かって前記先端部全体に沿ってテーパ状を有する、請求項1又は2に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項4】
前記テーパ状先端部(5)は、5mm~300mmの範囲内の縦方向長さ(L
3)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項5】
前記テーパ状先端部(5)は、少なくとも100mm、好ましくは100mm~300mmの間、より好ましくは200mm~280mmの間の縦方向長さ(L
3)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項6】
前記遠位先端(6)における前記外径D
4は、0.10mm~0.25mmの範囲内、好ましくは0.15mm~0.22mmの間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項7】
前記先端部(5)及び/又は近位部(4)には、前記遠位先端(6)から事前に規定された距離に1つ又はいくつかの放射線不透過性マーカバンド(11)が設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項8】
前記先端部(5)には、1つ又はいくつかの突出深さ限定要素(12)が設けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項9】
前記先端部(5)には、前記先端部(5)の少なくとも一部に沿って、1つ又はいくつかの側方開口(9’)が更に設けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項10】
前記カニューレハブ(8)には、内側縦方向チャネル(10)と、その近位端に雌コネクタ(13)とが設けられ、前記内側縦方向チャネル(10)は、前記カニューレの前記連続管腔(7)と前記雌コネクタ(10)との間に連通を生じるように構成され、前記内側縦方向チャネル(10)及び前記雌コネクタ(13)はともに、対応する雄コネクタが前記雌コネクタ(13)の取り付けられるとき、0.45ml未満の合計内容積を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項11】
前記先端部(5)は、組織を貫通するための遠位尖鋭先端セクション(100)が設けられ、前記尖鋭先端セクション(100)は、少なくとも1つの一次ファセット(F
1)と2つの二次ファセット(F
2、F
3)とを備え、前記2つの二次ファセット(F
2、F
3)は、前記一次ファセット(F
1)の近位に配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項12】
前記遠位先端セクション(100)は、
中心縦軸(A)に沿って配置される第1の面(P
1)と、前記縦軸(A)に沿って配置される第2の面(P
2)と、であって、互いに直交する前記第1及び第2の面(P
1、P
2)と、
前記第1の面(P
1)に対して角度シータ(θ)に位置決めされる第3の面(P
3)であって、前記第2の面(P
2)との関係で対称に配置される前記第3の面(P
3)と、
2つの対称角度の組で配置される第4の面(P
4)及び第5の面(P
5)であって、前記角度は、前記第1及び第2の面(P
1、P
2)の各々との関係で対称である前記第4の面(P
4)及び前記第5の面(P
5)と、を有し、
前記対称角度は、前記第1の面(P
1)における第2の面(P
2)から測定した第1の角度ファイ(φ)、及び縦軸(A)周りの回転角度である第2の角度オメガ(ω)を備える組み合わせ角度であり、
前記遠位先端セクション(100)の前記一次ファセット(F
1)は、前記第3の面(P
3)に設けられ、
前記2つの二次ファセット(F
2、F
3)は、各々、前記第4及び第5の面(P
4、P
5)に設けられる、請求項11に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項13】
前記2つの二次ファセット(F
2、F
3)は、前記先端セクション(100)の外側マントル表面とともに遠位先端(6)を形成する、請求項12に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項14】
前記角度ファイ(φ)は、前記角度シータ(θ)より大きい、請求項12又は13のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)。
【請求項15】
前記1つの一次ファセット(F1)及び2つの二次ファセット(F2、F3)には、10.0~20.0度の間の一次ファセット角度シータ(θ)と、15.0~20.0度の間の±ファイ(φ)の角度及び25.0~90.0度の間の±オメガ(ω)の角度で設けられる二次ファセットと、で設けられる、請求項12から14のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ。
【請求項16】
ヒト又は動物の身体の血管系を介して、血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するための管腔内送達アセンブリ(400)であって、
請求項1から15のいずれか一項に記載の管腔内送達カニューレ(1)と、
ヒト又は動物の身体の前記血管系内に挿入するように適合された保護カテーテル(150)と、
前記アセンブリの遠位端は、意図された前記血管外又は心筋内の標的部位へのアクセスに好適な前記血管系内の位置へ案内されるように構成され、
前記保護カテーテル(150)の前記近位端に設けられ、前記血管系を通じて前記保護カテーテル(150)を案内するように適合された近位カテーテルハブ(160)と、を備え、
前記近位カテーテルハブ(160)は、前記管腔内送達カニューレ(1)がそれを通じて前記保護カテーテル(150)内に挿入されるように適合される、管腔内送達アセンブリ(400)。
【請求項17】
前記カテーテルハブ(160)は、ロック状態とロック解除状態との間で可逆的に変更されるように適合されたロック手段(162)を更に備え、前記ロック手段(162)は、ロック状態において、前記保護カテーテル(150)と前記管腔内送達カニューレ(1)との間の軸方向の移動を防ぐように構成される、請求項16に記載の管腔内送達アセンブリ(400)。
【請求項18】
前記ロック手段(162)は、前記カテーテルハブハウジングの外側ねじ(165b)と協働する内側ねじ(165a)を備えたロックホイール(164)を備え、前記ロック手段は、前記ロック手段が駆動されたとき、内側ロックガスケット(166)が前記管腔内送達カニューレの近位端を把持するように圧縮されるように適合される、請求項17に記載の管腔内送達アセンブリ(400)。
【請求項19】
ヒト又は動物の身体の血管系を介して、血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するための方法であって、
a)請求項16から18のいずれか一項に記載のアセンブリを提供するステップと、
b)前記血管外又は心筋内の標的部位付近の位置に前記保護カテーテルの遠位端をナビゲートするステップと、
c)前記血管外又は心筋内の標的部位の一般的方向に沿って、血管壁に向かって前記保護カテーテルの前記遠位端を方向付けるステップと、
d)前記管腔内送達カニューレの先端が心筋又は血管壁を貫通し、前記血管外又は心筋内の標的部位に到達するように、前記管腔内送達カニューレの遠位先端を前進させるステップと、
e)前記血管外又は心筋内の標的部位内に前記物質を注入するステップと、
f)前記管腔内送達カニューレの前記遠位先端を前記保護カテーテル内に後退させるステップと、を備える方法。
【請求項20】
少なくともステップb)及びc)の間に、ロック手段を可逆的にロックして、前記ガイドカテーテルと前記管腔内送達カニューレとによる軸方向変位が、互いとの関係において可逆的に防止されるようにするステップを更に備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ロック手段は、カテーテルハウジングの外側ねじと協働する内側ねじが設けられたロックホイールを備え、前記ロック手段の駆動時、ガスケットが前記管腔内送達カニューレの近位端を把持するように圧縮される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記管腔内送達カニューレは、1つ又はいくつかの外側突出深さ限定要素を備え、前記深さ限定要素は、血管又は心筋壁に達したとき、ユーザが感じる抵抗を提供する、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ステップb)~f)の全部又は一部を反復するステップを更に備える、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内送達デバイスに関し、特に、独立請求項のプリアンブルに記載の血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するための管腔内送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、体内の特定部位へのアクセス時、又はその治療時の低侵襲技術への傾向が高まっている。このような技術は、身体への外傷が少なく、結果として、合併症が減り、施術後の回復時間が短縮されるため、開腹手術よりも多くの利点がある。低侵襲技術は、多くの場合、カテーテル及び/又はガイダンスワイヤアセンブリを経皮的に、例えば、大腿動脈又は橈骨動脈を通じて挿入し、次いで血管造影画像のガイダンスの下で血管系を介して特定部位にステアリングすることで、身体の特定部位又は領域へのアクセスを行うのに血管系を使用する。しかしながら、体内の部位によっては、血管系の複雑さとサイジングのために、既知の技術を使用してアクセスすることが不能であるか又は困難である。
【0003】
体内の特定の局所的な標的部位に血管系を介して物質を投与するために、様々な技術及びデバイスが知られている。このような技術を使用した施術の例として、化学療法、様々な免疫学的症状の治療、及び幹細胞治療が挙げられる。
【0004】
例えば、米国特許第8,152,758号には、複数のチャネル及び拡張可能な遠位部を備えた送達カニューレを含むカテーテルアセンブリであって、2つのニードルがチャネルに通され、血管壁への物質の注入に使用されるカテーテルアセンブリが開示されている。
【0005】
米国特許第5,464,395号は、周囲組織内へのニードル注入の側方ポートを備えた注入バルーンカテーテルを示している。
【0006】
米国特許出願公開第2008/0319314号には、ニードルがアセンブリを通されて、遠位先端から突出可能となるようにした、内側チャネル及び先端電極を備えた注入カテーテルが開示されている。注入ニードルを備えた他のカテーテルシステムが、例えば、米国特許第6,613,017B1号及び米国特許第6,796,963B1号に示されている。
【0007】
これらのシステム及び他の既知のシステムは、そのサイズ及び複雑さのために、遠隔の微小血管系へのアクセスに適合していない、又は相応しくない。
【0008】
したがって、本発明の発明者らは、特に、微小血管系を介した体内の遠隔の位置へのアクセスを向上し、血管外又は心筋内の標的部位への物質の送達の施術効率を向上する、改良管腔内送達デバイスのニーズを特定してきた。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、血管系を介した体内のより遠隔の血管外の部位への確実なアクセスを可能にする管腔内送達デバイスを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、血管外又は心筋内の標的部位への貫通及び送達の途中及び後に血管壁の穿刺部位での出血の問題を軽減する管腔内送達デバイスを提供することである。
【0011】
以上の目的は、独立請求項に係る本発明により達成される。好適な実施形態が従属請求項に記載されている。
【0012】
第1の態様によると、ヒト又は動物の血管系を介して血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するための管腔内送達カニューレが開示される。管腔内送達カニューレは、カニューレの近位端に設けられたカニューレハブと、外径を有する細長い近位部と、を備え、外径は、カニューレが本質的に真っ直ぐであるときに測定すると、近位部の本質的に全長に沿って一定である。更に、カニューレは、近位部の遠位に配置され、近位部からカニューレの遠位先端まで延設される先端部と、カニューレの近位端から近位部及び先端部を通じて遠位先端まで延設された連続管腔と、を備える。先端部は、遠位先端に開口を有し、管腔とカニューレの外部との間に連通を生じる。先端部は、外径が細長い近位部の外径と本質的に同一となり、遠位先端における外径が先端部の近位端における外径より小さい状態で、先端部の近位端に設けられることにより、遠位先端に向かってテーパ状を有することが好ましい。
【0013】
いくつかの態様において、管腔内送達カニューレは、組織を貫通するために尖鋭先端セクションを備えた遠位先端を有し、尖鋭先端セクションは、少なくとも1つの一次ファセット及び2つの二次ファセットを備え、2つの二次ファセットは、上述の一次ファセットの近位に配置される。
【0014】
更なる態様によると、ヒト又は動物の身体の血管系を介して血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するための管腔内送達アセンブリが開示される。このアセンブリは、管腔内送達カニューレと、ヒト又は動物の身体の血管系に挿入されるように適合された保護カテーテルと、を備え、アセンブリの遠位端は、意図された血管外又は心筋内の標的部位にアクセスするのに好適な血管系内の位置に案内されるように構成される。このアセンブリは更に、保護カテーテルの近位端に設けられ、血管系を通じてカテーテルを案内するように適合された近位カテーテルハブを備え、近位カテーテルハブは、管腔内送達カニューレがそれを通じて上述の保護カテーテル内に挿入されるように適合される。
【0015】
更に別の態様によると、ヒト又は動物の身体の血管系を介して血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達する方法が開示される。この方法は、
a)本明細書に開示のアセンブリを提供するステップと、
b)血管外又は心筋内の標的部位付近の位置に保護カテーテルの遠位端をナビゲートするステップと、
c)血管外又は心筋内の標的部位の一般的方向に沿って、血管壁に向かって保護カテーテルの遠位端を方向付けるステップと、
d)管腔内送達カニューレの先端が心筋又は血管壁を貫通し、血管外又は心筋内の標的部位に到達するように、管腔内送達カニューレの遠位先端を前進させるステップと、
e)血管外又は心筋内の標的部位に物質を注入するステップと、
f)管腔内送達カニューレの遠位先端を保護カテーテル内に後退させるステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本明細書に開示の管腔内送達アセンブリの使用の概要を示している。
【
図2A】管腔内送達カニューレの第1の態様を示している。
【
図2B】管腔内送達カニューレの第1の態様を示している。
【
図3A】管腔内送達カニューレの更なる態様を示している。
【
図3B】管腔内送達カニューレの更なる態様を示している。
【
図5A】管腔内送達カニューレを備えたアセンブリの斜視図である。
【
図5B】管腔内送達カニューレを備えたアセンブリの側面図である。
【
図6A】管腔内送達カニューレを備えたアセンブリの特定の部品の横断面図を示している。
【
図6B】管腔内送達カニューレを備えたアセンブリの特定の部品の横断面図を示している。
【
図7A】カニューレ先端セクションの参照面及びニードル研削角度を示している。
【
図7B】カニューレ先端セクションの参照面及びニードル研削角度を示している。
【
図7C】カニューレ先端セクションの参照面及びニードル研削角度を示している。
【
図7D】カニューレ先端セクションの参照面及びニードル研削角度を示している。
【
図7E】カニューレ先端セクションの参照面及びニードル研削角度を示している。
【
図8】カニューレ先端セクションの好適なニードル研削を判定するための実験中、結果として得られた様々なカニューレ先端の斜視図を示している。
【
図9】カニューレ先端セクションの好適なニードル研削を判定するための実験中、結果として得られた様々なカニューレ先端の斜視図を示している。
【
図10】カニューレ先端セクションの好適なニードル研削を判定するための実験中、結果として得られた様々なカニューレ先端の斜視図を示している。
【
図11】好適なカニューレ先端セクションの斜視図、上面図、及び側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の特定の実施形態について説明する。しかしながら、当業者には個々の特徴が異なるように組み合わせられてもよいこと、以下の開示は限定を意図するものでないことが明らかであろう。
【0018】
本明細書において使用される「近位」及び「遠位」という用語は、当技術分野において慣用のように使用され、すなわち、ユーザとの関係において、デバイス又はアセンブリの近位端は、ユーザに向かって方向付けられた端部であり、遠位端は、ユーザから離れるように方向付けられている。
【0019】
更に、「カニューレ」及び「ニードル」という用語は、本明細書中、相互に交換可能に使用され、ともに、好ましくは金属製の細長いチューブをいい、組織等を貫通するように適合された尖った先端を有し得る。
【0020】
図1は、血管300内に配置されたときの、使用中における本明細書に開示の管腔内送達カニューレ1の概観を示している。カニューレ1は、保護カテーテル150とともにキット又はアセンブリ400内に設けられ、ガイドカテーテルを介してヒト又は動物の身体の血管系に挿入されるように適合されることが好ましく、以下で更に詳細に説明する。
【0021】
送達処置を開始するために、ガイドカテーテル200は、通常、血管系を介して規定の標的部位500付近の位置に達するように使用される。このようなガイドカテーテル200は、通常、血管アクセスのための標準介入カテーテルであり、本開示のカニューレ1及び保護カテーテル150とともに設けられてもよく、又は別のユニットとして設けられてもよい。
図1の右側には、面Bに沿った横断面図が概略的に示されており、保護カテーテル150がカニューレ1の周囲に好ましくは同軸に配置され、ガイドカテーテル200が血管300内の保護カテーテル150の周囲に配置されるのが見て取れる。
【0022】
ガイドカテーテル200は、例えば、大腿動脈又は橈骨動脈を介して血管系にアクセスするために、既知の技術により、例えば、セルディンガー手順又はその他の既知の技術を使用して、血管300内に経皮的に挿入され得る。本明細書に記載のデバイス及びアセンブリは、身体内の遠隔の標的部位へのアクセスのため、すなわち、微小血管系内及び微小血管系を介したアクセスのために特別に適合されており、したがって、直径1mm以下程の非常に小さな血管をナビゲートして、これまで標準の技術ではアクセスすることのできなかった体内の部位に到達するように適合される。しかしながら、これらは、より大きなガイドカテーテルとのより大きな血管を介した使用にも対応している。本明細書に記載のデバイス、アセンブリ、及び方法は、血管外の標的部位への到達に関して説明するが、これらは心筋内送達のためにも同様に使用され得る。したがって、標的部位は、血管系を通じたナビゲーションを介してアクセスされ、血管壁の貫通(血管外部位の場合)又は例えば心臓の内部等からの心筋の貫通(心筋内標的部位の場合)のいずれかを介して到達され得る。
【0023】
本開示のデバイス及びアセンブリは、細胞、RNA、組換えタンパク質、抗体、大量化学療法、放射線療法、又は腫瘍特異的療法のうちの1つ又は組み合わせの標的局所送達のために使用され得る。特定の標的部位500は、腫瘍、臓器、体腔、又は特定組織又は身体部分の局所領域であり得る。更なる例として、本開示のデバイス及びアセンブリは、例えば、心臓、肝臓、及び腎臓を含む心臓代謝再生療法、及び直接腫瘍内注入のための、例えば、細胞又はRNA療法の送達のために使用され得る。
【0024】
ガイドカテーテル200は、操作性及び操縦性を有するのが好ましいが、ガイドカテーテル200の遠位先端201が所望の標的部位500の付近となるように、血管系を介して挿入されたとき、カニューレ1及び保護カテーテル150がガイドカテーテル200を介して挿入される。代替として、カニューレ1は、アセンブリを血管系に挿入するのに先立って、ガイドカテーテル内に挿入され得る。いずれの場合であっても、カニューレ1及び保護カテーテル150は、ガイドカテーテル200を介して、患者の血管系を通じて標的部位500付近の位置までナビゲートされるように適合される。カニューレ1及び保護カテーテル150は、
図1に示される通り、血管壁301に向かって方向付けられる。いくつかの態様において、
図1中には示されていないが、事前成形可能且つ事前屈曲された先端201を備えるガイドカテーテル200が使用され、先端が標的部位の付近にあるとき、屈曲先端が血管壁301に向かってアセンブリを案内するのを更に補助してもよい。代替又は組み合わせとして、操縦可能な先端201も、注入方向の微調整を補助するように想定されている。
【0025】
ガイドカテーテル200を通じて血管壁301に向かって挿入する間、保護カテーテル150及びカニューレ1は、近位端におけるロック機能により、互いとの関係で軸方向に変位することが防止されるが、以下で更に詳細に説明する。これは、カニューレ1の潜在的に尖った先端が、所望の位置へ達するのに先立ってガイドカテーテル又は血管を穿刺又は損傷するのを防ぐためである。
【0026】
図1に示される通り、カニューレ1の先端は、血管壁301の所望の部位に達すると、保護カテーテル150を出て、血管壁及び血管外組織を貫通し標的部位500に達するように、血管壁及び更に遠位に前進される。いくつかの態様において、カニューレ1の先端には、以下で更に詳細に説明する通り、深さ限定要素が設けられ得る。先端の前進は、先端付近又は先端に1つ又はいくつかの放射線不透過性マーカを提供することによって観察されることが好ましく、先端が血管造影又はその他の撮像技術を使用した施術中に位置付けられるようにしてもよい。
【0027】
標的部位500において、標的部位に注入される物質がシリンジにより、近位カニューレハブを介してカニューレ内に付与され、カニューレからカニューレ先端の遠位開口を介して排出される。いくつかの態様において、注入された物質は、遠位開口と、カニューレの遠位先端付近の側方開口との双方を介して排出され得る。物質の投与は、必要に応じて複数回反復され得る。更に、必要であれば、カニューレの先端は後退及び再配置され得る。投与が終了すると、カニューレの先端は血管壁から保護カテーテル内に後退して戻される。
【0028】
物質投与の代替又は追加として、アセンブリは、試料を標的部位からカニューレの先端を介して抽出するのに使用され得る。
【0029】
カニューレ及びその先端の特定の設計により、本質的には血管壁からの出血は見られない。先端の詳細について、以下で更に説明する。
【0030】
図2Aは、本開示の管腔内送達カニューレ1の縦軸に沿った横断面図を概略的に示している。上述の通り、カニューレ1は、ヒト又は動物の身体の血管系を介して血管外又は心筋内の標的部位に物質を送達するように適合される。カニューレ1は、身体の外側に留まるように構成された近位端2と、血管外の標的部位にアクセスするために、血管系を介して体内に挿入されるように構成された遠位端3と、を有する。カニューレハブ8は、カニューレ1の近位端2に設けられることが好ましい。カニューレの縦方向長さL
1の大部分は、細長い近位部4からなり、これは、近位部4の本質的に全長に沿って一定の外径D
1を有する。特に、本明細書中の「一定の直径」とは、屈曲が直径に捩じれを生じ得るため、直径は、カニューレが細長い、又は本質的に真っ直ぐの構成であるときに測定されて一定であるという意味である。
【0031】
カニューレ1は、近位部4の遠位に配置され、近位部4からカニューレ1の遠位先端6まで延設された先端部5を更に有する。連続管腔7は、カニューレの近位端2におけるカニューレハブの内側縦方向チャネル10から、近位部4及び先端部5を通じて遠位先端6まで延設される。先端部5は、遠位先端6に開口9を有し、管腔7とカニューレ1の外観との間に連通を生じる。
【0032】
図2Aにおいて円で囲まれた先端部5は、拡大して示されており、
図2Bにより詳細に図示されている。先端部5は、遠位先端6に向かってテーパ状を有するため、先端部5の近位端に外径D
3と、遠位先端6に他のより小さな外径D
4とを有する。外径D
3は、細長い近位部4の外径D
1と本質的に同一であり、外径D
4は、外径D
3よりも小さい。換言すると、漸進的テーパ状は、近位部4が遠位先端部5に移行する点から遠位端6まで遠位方向に設けられる。
【0033】
いくつかの態様において、先端部5及び/又は近位部4には、遠位端6から事前に規定された距離に1つ又はいくつかの放射線不透過性マーカバンド11が設けられることが好ましい。そのような例の1つが
図3Aに概略的に示されており、いくつかの放射線不透過性マーカバンド11が示されている。このようなマーカバンドは、手順中、血管造影画像を使用して鮮明に視認できるため、先端の正確な位置と標的部位への貫通深さを判定するのに使用される。
図3Aは、放射線不透過性マーカバンド11を提供する概略的な例を1つのみ示している。実際には、バンドは、任意の事前に規定された構成において提供されてもよく、これらは先端の局在化、特に、ユーザを案内し、血管壁から標的部位までの貫通深さを判定するために使用され得る。
【0034】
更に、いくつかの態様において、
図3Aにも示される通り、先端部5には、例えば、周辺フランジ又は同様の構造の形態において、1つ又はいくつかの外側に突出した深さ限定要素12が設けられてもよく、深さ限定要素12が貫通時に血管壁に達するときにユーザが抵抗を感じられるようにする。一態様において、深さ限定要素は、先端部5及び近位部4からの移行に合致してもよい。カニューレ1は、放射線不透過性マーカ11又は深さ限定要素12のいずれか又は双方を有してもよい。
【0035】
図面及び本開示から理解される通り、遠位先端6の開口9は、管腔7とカニューレ1の外観との間の連通を生じることで、送達対象の物質がカニューレを出て標的部位に入るとき、その物質がこの遠位開口9を通じてカニューレを出るようにする。したがって、物質の送達が制御され、カニューレが方向付けられる方向に容易に方向付けられる。
【0036】
いくつかの態様において、
図3Bに示される通り、カニューレには、遠位開口9付近と、ひいては放射線不透過性マーカ11及び/又は深さ限定要素12への遠位に、1つ又はいくつかの二次側方開口9’が設けられてもよい。このような側方開口により、物質が、遠位開口9及び1つ以上の側方開口9’を通じてカニューレを出られるようにし、
図3Bにおいて破線矢印で示される通り、標的部位におけるより広範及び/又はより迅速な物質の分配ができるようにする。側方開口9’により、遠位開口9により提供される遠位方向の排出に加え、放射方向におけるカニューレの排出を可能にする。分配の意図に応じて、側方開口9’が特定パターン及び/又は開口サイズに応じて適合され得る。一態様において、1つ又はいくつかの側方開口9’が、先端部5の周辺に沿って設けられる。側方開口9’は、ランダムなパターン又は事前に規定されたパターンで設けられてもよい。いくつかの態様において、側方開口9’は、遠位開口9付近に配置される。したがって、
図3A及び
図3Bとの相互関連において説明した態様は、組み合わせられてもよい。
【0037】
図2Aに詳述され、本開示のすべてのカニューレに適用可能となるように、カニューレ1は、近位端2から遠位端3までの縦方向全長L1が約300mm~2500mmの範囲内であってもよい。いくつかの態様において、主に成人患者への使用の場合、縦方向全長L
1は、1200mm~1900mmの間であることが好ましく、1650mm~1750mmであることがより好ましい。しかしながら、例えば、小児用であれば、約300mm~800mmの縦方向全長L
1が好適である。
【0038】
近位部4の縦方向長さL2は、約1000mm~2000mmの範囲内であり、好ましくは1200mm~1700の間であり、より好ましくは1400mm~1500mmであってもよい。
【0039】
いくつかの態様において、テーパ状先端部5は、少なくとも5mm、好ましくは100mm~300mmの範囲内、より好ましくは200mm~280mmの縦方向長さL3を有する。いくつかの態様において、テーパ状先端部5の縦方向長さL3は、5mm~50mmの範囲内であってもよく、他の態様において、縦方向長さL3は、50mm~300mmの範囲内であってもよい。
【0040】
一態様において、カニューレ1の全長L1は、約1700mmであり、近位部4は、約1450mmの縦方向長さL2を有し、先端部5は、約250mmの縦方向長さL3を有する。
【0041】
他の態様において、カニューレ1の全長L1は、約1700mmであり、近位部4は、約1695mmの縦方向長さL2を有し、先端部5は、約5mmの縦方向長さL3を有する。したがって、このようなカニューレには、本質的に、テーパ部分がないか、又は最小限のテーパ部分を有する。
【0042】
更に他の態様において、カニューレ1の全長L1は、約500mmであり、近位部4は、約425mmの縦方向長さL2を有し、先端部5は、約75mmの縦方向長さL3を有する。このようなサイズは小児用に有用である。
【0043】
カニューレ1の近位部4は、0.15mm~0.50mmの範囲内、好ましくは0.20mm~0.35mmの間、より好ましくは0.25mm~0.28mmの間の一定な外径D1を有することが好ましい。
【0044】
内部管腔7は、カニューレ1の本質的に全長に沿って、すなわち、近位部4及び先端部5を通じて、一定の内径D2を有することが好ましい。当然のことながら、内径D2は、カニューレの好適な外径D1に適合されていなければならない。管腔の内径D2は、約0.08mm~0.40mmの範囲内、好ましくは0.10mm~0.25mmの間、より好ましくは0.12mm~0.16mmの間であることが好ましい。
【0045】
既述の通り、近位部4の外径D1は、近位部4の本質的に全長に沿って本質的に一定であることが好ましい。更に、近位部4が先端部5に隣接するカニューレの部分は、細長い近位部4の外径D1と本質的には同一の外径D3を有する。換言すると、カニューレは、近位部4から先端部5までの外形が滑らかに移行することが好ましい。その後、先端は、遠位端6に向かって漸進的にテーパ状を有する先端を形成し、遠位端6における外径D4が外径D3及びD1よりも小さくなるようにする。このテーパは、遠位先端6における外径D4が好ましくは0.10mm~0.25mmの間、より好ましくは0.15mm~0.22mmの間となるように設けられることが好ましい。
【0046】
一態様において、近位部4の外径D1は約0.25mmであってもよく、管腔7の内径D2は約0.134mm、遠位端6における外径D4は0.190mmである。
【0047】
漸進的テーパ状先端部5は、操作性と、追従性と、カニューレ先端の主に押し込み性とを向上し、より小さなサイズの遠位先端への漸進的な移行を提供する。先端のサイズが小さいほど、貫通の際、血管壁に与える外傷が小さくなり、先端の直径が小さいことにより、先端を取り出した後に血管壁がそれ自身で閉じて、送達後の出血を減らすようにする。したがって、先端部の構成により、血管壁の貫通部位の任意の別個の閉鎖ステップの必要性を軽減する。
【0048】
カニューレの細長い近位部4及び先端部5は、ステンレス鋼、ニチノールFe-Co-Ni-Ti合金等、超弾性を備えた任意の合金で作成されることが好ましい。一態様において、細長い近位部4及び先端部5は、全体的にニチノール又はその他のニッケル-チタン合金で作成される。他の態様において、先端部5は、ニチノールで作成され、近位部4は、ステンレス鋼で作成されてもよい。更なる態様において、先端部は、ニチノールで作成され、先端を好適なセラミック材料で作成されてもよい。ニチノールの超弾性は、結果として優れた可撓性を生じるが、小さく曲がりくねった血管を通じたナビゲーションを向上する。超弾性先端部にセラミック先端等、より剛性の高い遠位先端を有することにより、遠位先端の貫通を更に容易にする。
【0049】
図2A及び
図3に示される通り、カニューレ1には、近位カニューレハブ8が設けられる。このようなカニューレハブ8は、カニューレ1の遠位端における標的部位へと更に送達するために、シリンジから、又は他のアダプタ又はコネクタを介して、カニューレの内側管腔7に物質を送達するように適合される。本明細書に記載のデバイス及びアセンブリは、特に、非常に少量の様々な物質の送達に合わせて適合されている。以上で既に述べた通り、物質には、化学療法、幹細胞、RNA、希少疾病用医薬品等が含まれてもよく、このような物質は通常、非常に高価である。したがって、送達中の分量損失を最小限にするように適合された送達システムを達成することには大きな価値がある。システム内でのデッドボリュームを最小限にする送達システムを提供する更なる利点として、気泡を標的部位に放出してしまうリスクを最少化し、身体内の場所によっては脳卒中や心停止を生じ得る、空気塞栓を低減する。
【0050】
カニューレハブ8の好適な態様に係る縦軸に沿った横断面図が
図4Aに示されている。特に、
図4A及び
図4Bは、本質的に円筒形又は円錐形のカニューレハブの縦軸に沿った横断面図である。換言すると、カニューレハブ8は、
図5A及び
図5Bにも示される通り、斜視図から、すべての放射方向において対称な円形状を有することが好ましい。
図4Aに見られる通り、カニューレハブ8の内側縦方向チャネル10は、カニューレの近位部4の管腔7を、カニューレハブ8の近位端における雌コネクタ13に接続する。雌コネクタ13は、標準のルアー雌コネクタ又はその他の好適なコネクタであってもよい。物質の送達に使用するのに先立って、カニューレハブ8には、キャップ又はストッパ14が設けられ、内側領域を清浄且つ汚染物質のない状態に保ってもよい。
【0051】
カニューレハブ8の内側空洞15は、
図4Bに示される通り、標準ルアーコネクタ16の使用時には、送達中のデッドボリュームを最少化するように適合されることが好ましい。「デッドボリューム」とは、例えば、送達中にデバイスを出ない物質の分量、例えば、シリンジが雌コネクタ13に押し込まれて物質17がシリンジを介してカニューレに注入された後にカニューレハブ(又はシステム全体)に留まる分量を意味する用語として、本明細書中では使用される。換言すると、カニューレハブ8の内側空洞15は、標準雄ルアーコネクタ16がカニューレハブに接続されるとき、それが空洞15の内壁に沿ってしっかりと嵌合し、雄コネクタ16の遠位に存在する内容積が最小となるように構成される。内容積の形状は、
図4A及び
図4Bに示される通りとすることが好ましい。したがって、カニューレハブ8の内容積は、雄コネクタ16の遠位に向かう薄い円筒形ディスク、内側縦方向チャネル10の円錐形状容積、及び狭い円筒形容積から形成され得る。カニューレハブ8の内容積によって形成されるデッドボリュームは、好ましくは0.45ml未満であり、好ましくは0.25ml~0.45mlの範囲内であり、より好ましくは0.30ml~0.40mmの間である。
【0052】
全体としての送達システムのデッドボリュームには、上述の通り、カニューレハブ8の内容積とともに、カニューレ1の残りの箇所の内容積とが含まれる。雄ルアーコネクタが取り付けられたときに見られる通り、送達システムのデッドボリュームが小さければ、送達中の物質の損失が最少化されるが、これは高価及び/又は希少な物質の送達時に特に重要であり、空気塞栓を生じるリスクを低減する。したがって、好ましくは、カニューレハブ8とカニューレ1との合計内側デッドスペースは、0.50ml未満であり、より好ましくは0.40ml未満である。
【0053】
図4A及び
図4bに示される通り、カニューレハブの空洞の特定の内側容積形状の更なる効果として、すなわち、薄い円筒形ディスクが短い円錐形状を介して滑らかに内側縦方向チャネル10に移行することにより、物質の注入時、溶液内に見られる乱流が少なくなる。これは、生細胞、例えば、幹細胞又はその他の不安定な細胞又は分子等を含有した溶液等、デリケートな物質を使用するときに特に重要である。
【0054】
カニューレ1及びカニューレハブ8は、保護カテーテル150及びカテーテルハブ160とともに使用されることが好ましい。そのようなアセンブリ400の1つが
図5Aに斜視図として示されており、
図5Bに側面図として示されている。保護カテーテル150は、カテーテルハブ160の遠位端にて、カテーテルハブ160と一体化されるか又はこれに取り付けられている。
図5A及び
図5Bにおいて、保護カテーテル150は切断図で示されているものの、これはカニューレの遠位端までカニューレ1全体を被覆するように延設される。
図6Aは、カテーテルハブ160の縦軸に沿った横断面図を示している。
図6Bは、カニューレ1の挿入された
図6Aに示されるカテーテルハブ160を示している。
【0055】
カニューレ1は、カテーテルハブ160の近位端から開口161を通じて挿入されるように適合される。ロック手段162は、保護カテーテル150へのカニューレの挿入後、且つ、送達手順の異なる段階中に、カニューレ1を定位置にロックするのに使用されるよう適合される。ロック手段162がロック状態にあるとき、保護カテーテル150とカニューレ1との間、ひいてはカニューレハブ8とカテーテルハブ160との間のあらゆる軸方向の移動が防止される。送達手順に先立って、カニューレ1は、ユーザによるか、又はアセンブリの製造中に、カテーテルハブ160を介してカテーテル150に挿入され、カニューレ1の遠位先端6が保護カテーテル150の遠位端に保護されるようにする(図示せず)。特に、
図5A及び
図5Bにおいては、カニューレがカテーテル内部に配置されていることを示すため、保護カテーテルの遠位端は、図示されていない。更に、カニューレと保護カテーテル150との双方の短い近位部のみが
図5A及び
図5bには示されている。
【0056】
図5A及び
図5Bに見られる通り、カテーテルハブ160は、側方ポート170を備えてもよく、これは、送達手順前、送達手順中、又は送達手順後に生理食塩水又はその他の好適な溶液でシステムを洗い流すために使用され得る。
【0057】
図6Aの横断面図に示される通り、カテーテルハブ160は、近位開口161から縦軸に沿って、カテーテルハブ160の遠位端における保護カテーテル150内へと延設された内側チャネル163を備える。
図6Bに見られる通り、内側チャネル163は、カニューレ1の挿入に合わせて適合される。
【0058】
ロック手段162は、カテーテルハブへの挿入時、カニューレを定位置にロックすることのできる任意の好適な機構を備えてもよい。好ましくは、ロック手段162は、ロック状態とロック解除状態とを可逆的に変更するように適合される。非限定的な例には、ねじロック、スナップロック、摩擦ロック、及びレバーベースロックが含まれる。
図5A及び
図5Bと、
図6A及び
図6Bとは、ロック手段162の一例を示している。カテーテルハブ160の近位端において、内側チャネル163の伸長を備えたロックホイール164が提供される。ロックホイール164には、内側ねじ165aが設けられ、これがカテーテルハウジングの外側ねじ165bと協働するように適合される。ロックホイール164が遠位方向にねじ込まれるとき、内側ロックガスケット166が圧縮され、内側チャネル163がガスケット166内で圧縮される。したがって、
図6Bに見られる通り、カニューレ1が内側チャネル163内に存在するとき、ガスケット166が圧縮されると、ガスケット166によって把持される。したがって、カニューレ1がガスケット166によって定位置に保持されることによって、カテーテルハブ160とカニューレ1との間の任意の相対的な軸方向の移動を妨げ、このようにすることで、カテーテル150とカニューレ1との間の任意の軸方向の移動も妨げる。ロックホイール164のねじを緩めることにより、カニューレ1が解放された後、再配置され、任意で再びロックされ得る。したがって、ロック手段162を使用することにより、カテーテル150との関係におけるカニューレ1の相対的な軸方向位置が調整され得る。更に、互いとの関係においてロックされるとき、アセンブリ全体が単一のユニットとして操縦及び操作され得る。
【0059】
以上で述べた通り、カテーテルハブ160の取り付けられた保護カテーテル150のアセンブリ400と、カニューレハブ8の取り付けられたカニューレ1を採用することにより、ガイドカテーテルの遠位端が標的部位に可能な限り近付くように、ガイドカテーテルが大抵は血管内に配置される。
図1に示される通り、アセンブリ400がガイドカテーテル200に挿入され、カテーテル150の遠位端がガイドカテーテル200から突出するような位置へ押圧又は案内される。このステップ中、カニューレ1及び保護カテーテル150は、互いとの関係で軸方向の移動が防止されるようにロックされる。これは、カニューレ1の潜在的に鋭い先端が挿入中にガイドカテーテル200を穿刺又は損傷することを阻害するもので、且つ、所望の位置に達する前に血管を損傷しないようにするものである。好ましくは、アセンブリ400の遠位端は、カニューレ1の先端における縦軸が図示の通り、標的部位500に向かって方向付けられるように位置決めされる。いくつかの態様において、これは、当分野で既知の通り、事前成形された屈曲先端及び/又は操縦可能な先端201を備えたガイドカテーテル200を使用して達成され得る。
【0060】
遠位先端201が血管壁及び標的部位500に向かって方向付けられると、アセンブリ400は、ガイドカテーテル200の遠位外側に前進させられる。この段階において、カニューレ1の遠位先端6は依然として、血管に意図しない損傷を与えるのを回避するために、保護カテーテル150内に収められている。
【0061】
その後、カテーテルハブ160のロック手段162が解放され、カニューレ1の先端が保護カテーテル150を出て血管壁に向かい、更に遠位に向かって前進して、血管壁及び血管外組織を貫通し、標的部位に到達する。この移動は、近位カニューレハブ8をカテーテルハブ160の近位端に近付けて移動させることにより、例えば、カテーテルハブ160を静止させたまま、カニューレハブ8を遠位に移動させることにより、実施される。
【0062】
いくつかの態様において、停止要素が設けられ、所望の位置に到達するのに先立って遠位先端が時期尚早に前進することを防いでもよい。そのような停止要素は、カニューレハブ8とカテーテルハブ160との間のカニューレ1周辺に設けられる停止リング又は同様の配置とすることができ、血管壁の貫通に先立って手動で取り外され得る。停止要素の代替、又はこれとの組み合わせとして、カニューレの遠位先端6が保護カテーテル150の遠位先端によって保護されるとき、カニューレハブ8とカテーテルハブ160のロック手段162との間に見て取ることができるような箇所において、マーカをカニューレ1に設けてもよい。このようなマーカにより、鋭い先端が保護カテーテル内の後退保護位置にあるときの視覚的視差をユーザに提供するもので、先端の初期位置決め中、及び管腔内送達デバイスの再位置決め時の双方において有用である。
【0063】
カニューレの先端がカテーテル先端から突出するとき等、物質の送達中の任意の所望の時点において、カニューレ1及びカテーテル150は、例えば、係合ロック手段162により、相対的な軸方向配置においてロックされ得る。送達後、又はカニューレの先端が再配置される場合、この手順を逆にすることで、カニューレの先端がカテーテルの先端によってもう一度保護されるようにし、その後、他の送達容量があれば任意で反復されるようにする。
【0064】
上述の通り、いくつかの態様において、遠位先端部5は、遠位先端6に向かって漸進的なテーパ状を有することが好ましい。
【0065】
更に、いくつかの態様において、カニューレの遠位先端部5には、少なくとも1つの一次ファセットF1と2つの二次ファセットF2及びF3によって形成される組織の貫通のために、尖鋭先端セクション100が設けられることが好ましい。特に、本明細書中、このような先端セクションは、血管系を介して物質の送達を行うためのカニューレ1上に示されている。しかしながら、筋肉内又は皮内注入のためのマイクロニードル等、同様の用途のための他のデバイスの同様の尖鋭先端を使用することも考えられる。
【0066】
図7Aから
図7Eは、一次及び二次ファセットを形成するために使用される研削角度を示している。特に、
図7Aから
図7E及び後続の図は、先端セクション100の最後の約1~3ミリメートルのみを概略的に示しているため、同図中には、カニューレの遠位先端部5の漸進的なテーパ形状は見られない。更に、
図7A、
図7B、
図7C、及び
図8から
図11において、斜視図又は側面図を示すとき、図の左側がほぼ遠位方向を向き、図の右側がほぼカニューレの近位端を向いている。
図7Dにおいて、先端セクション100の上面図が示されているが、図中の上方は、先端の遠位方向に対応している。
図7Eにおいて、先端セクション100は、縦軸Aに沿って見たものである。
【0067】
ニードル研削、すなわち、中空の円筒形カニューレから鋭い先端を形成する状況において、カニューレの遠位端部は、研削されて、研削ホイール又はその他の研削媒体で砥がれる。通常、研削ホイールは静止しており、ニードル又はカニューレが研削面との関係において固定角度に付与される。結果として得られるファセット又はベベルは、従って、カニューレ自体のジオメトリとの関係において規定され得る1つ又はいくつかの面内に形成される。
【0068】
図7Aは、任意のファセットを研削するのに先立つ、先端セクション100の概略斜視図を示している。円筒形カニューレ先端セクション100は、縦軸Aに沿って配置された第1の面P
1と第2の面P
2として示された2つの参照面を有して示されており、第1及び第2の面P
1、P
2は、互いに直交している。これらの参照面P
1、P
2は、本明細書中、結果として生じる先端セクション100のファセットを規定する面の角度及び配置を規定するために使用される。理解を容易にするために、第1の面P1は水平面と見なされてもよく、第2の面P2は垂直平面と見なされてもよい。
【0069】
図7Bは、ファセットの研削後における、
図7Aに示された先端セクション100の側面図を示している。以下で詳細に説明する通り、先端セクション100の斜視図が
図7Cに示されており、参照面との関係でファセットを形成する面が示されている。第1の態様において、
図7Bに最もよく示される通り、先端の一次ファセットF
1は、第3の面P
3におけるニードル研削によって形成され、第3の面P
3は、第1の面P
1に対して角度シータθで配置される。好ましくは、第3の平面P
3は、第2の平面P
2との関係において対称に配置されて、第3の平面P
3が第2の平面P
2と直交する伸長において、第1の平面P
1と交差するようにする。換言すると、尖鋭先端6は遠位方向に形成される。第1の研削後に結果としてえられた先端の例が
図8に示されており、以下で更に説明する。
【0070】
一次ファセットF
1、2つの二次ファセットF
2及びF
3の形成後、
図7Cに示される通り、第4及び第5の面P
4及びP
5にそれぞれ遠位先端のニードル研削によって研削を行う。第4及び第5の面P4、P5の配置については、
図7D及び
図7Eによって更に説明する。
【0071】
図7Dは、上面図、すなわち、第3の面P3における第1の研削後、先端セクション100の面P1に直交する方向から見た図を示している。
図7Eは、縦軸Aに沿った遠位方向からの先端セクション100を示している。
【0072】
第4及び第5の面P
4、P
5は、2つの対称組み合わせ角度の組で配置されており、第4及び第5の面P
4、P
5は、縦軸と、更には第1及び第2の面P
1、P
2との関係において対称に配置される。したがって、第4及び第5の面P
4、P
5の対称角度は、異なる面又は視点から測定した2つの組み合わせ角度からなる。
図7Dに見られる通り、先端セクション100が上面図から、又は面P
2に沿って見られるとき、第1の角度ファイφは、第1の面P1における第2の面P
2のいずれの側で測定されてもよい。
【0073】
図7Eに示される通り、第4及び第5の面P4、P5の配置の第2の構成要素は、縦軸A周りの回転角度オメガωである。
図7Eは、縦軸Aに沿って見た先端セクション100を示している。第4及び第5の面P
4、P
5は、参照面との関係において2つの反対方向に回転することによって規定されている。したがって、これらの2つの角度ファイφ及びオメガωはともに、第4及び第5の面P
4、P
5の配置を示しており、ひいては2つの二次ファセットF
2及びF
3を規定する角度を示している。異なる研削ステップを行った後に結果として得られるいくつかの先端の例が
図9及び
図10に示されており、以下の実験セクションで更に説明する。
【0074】
以上から明らかであり図面から見て取れるように、2つの二次ファセットF2、F3が先端セクション100の外側マントル表面とともに遠位先端6を形成する。したがって、遠位先端の鋭さは、ファイφ及びオメガωの双方によって制御されてもよく、これにより、鋭さを最適化する能力を発揮し、例えば、組織の最も効果的な貫通を見出すことができる。
【0075】
本発明者らは、ファイφがシータθよりも大きい場合、より好適なジオメトリが得られることを発見した。しかしながら、ファイφが45度より大きい場合、この先端は鈍くなり過ぎる。
【0076】
更に、特に、上述の通り、角度シータθにおける1つの一次ファセットF1と、角度ファイφ及びオメガωにおける2つの二次ファセットF2及びF3を提供するとき、使用可能な先端を得るには、シータが低くなければならず、好ましくは30度未満でなければならないことは明らかである。しかしながら、以下の実験において説明する通り、シータθが10度未満である場合、先端の剛性は不十分となる。
【0077】
したがって、本発明者らは、結果として得られた先端の広範にわたる試験、計算、及び調査を通じて、外傷を最小に抑えて血管壁及び周辺組織を貫通し、ひいては取り除く際の出血を最少化するように改良された先端を多数の貫通手順に好適なニードル先端部とともに得るために、以下の指標が好適であるという結論に達している。1つの一次ファセットF1及び2つの二次ファセットF2及びF3を備えたニードル先端セクションは、10.0~20.0度の間の一次ファセット角度シータθと、15.0~20.0度の間の±ファイφ角度と25.0~90.0度の間の±オメガω角度とで設けられる二次ファセットで設けられることが好ましい。
【0078】
一例として、12.5度のシータθ角度と、±18.0度のファイφ角度と、±30.0度のオメガ角度を有するニードル先端セクションが
図11に示されている。
【0079】
好適な先端セクションの他の例として、15.0度のシータθ角度、±20.0度のファイφ角度、±30.0度のオメガ角度を有する先端である。
【0080】
このように、本発明者らは、本明細書に記載のファイφ及びオメガωの双方によってF2及びF3の間の交差を制御する複合効果で、結果として、最適な鋭さを備えた三角点を生じ、出血を最小にして、例えば、組織の効果的な貫通を生じる。
【0081】
先端セクション100の上述の寸法及び構成は、カニューレ1の全体的にテーパ状を有した先端部5との組み合わせで作用して、血管壁の外傷を抑えた貫通を達成するようにしてもよく、貫通先端で血管壁に作った穴を閉鎖又は停止させる等、任意の特定の封止手段を提供する必要性を軽減する。
【0082】
実験
最適な剛性のために、ニードル先端の好適な形状を判定するために実験を実施した。
【0083】
ニードル先端(
図8から
図11)を示す図は、カテーテルが、内径(ID)0.147mmと、遠位端に外径(OD)0.190mmとを有して、25cmの長さの研削によりテーパ状を有することに基づいている。カテーテルの寸法に基づき、最適な研削角度を数学的にモデル化して、ニードル先端の低い貫通力及び座屈、すなわち剛性を判定した。
【0084】
第1の研削角度シータ
第1の研削角度シータは、10°~35°の間の角度について評価を行った。
図8に示される通り、これらの研削角度は、ソフトな丸先を生じ、これは垂直方向の剛性が低かったものの、横方向の剛性が良好であった。
【0085】
第2及び第3の研削ファイ
先端の鋭さを改善し、垂直方向の剛性を改善するために、
図9に示される通り、カテーテル軸に対して角度ファイでの2つの対称研削を評価した。しかしながら、これらの研削中、先端には必然的に切断を行った。更に、特定角度においては、先端切断が0.3mmより大きいとき、先端切断が三角点でなく、垂直縁部を備えた先端を生じる。これにより、鋭さを低減する。
【0086】
0.1mmの先端切断に対するシータ及びファイの複合効果
図10に示される通り、最低限の先端切断を維持するために、0.1mmの固定先端切断を設定することにより、シータ及びファイの効果を調べた。このようなモデルから、シータの値が低いほど、より多くの先端切断が許容されること、好適なジオメトリのためにはファイがシータより大きくなければならないことが見て取れる。また、使用可能な先端を作成するためには、シータが低くなければならない。30°又は45°の値は推奨できない。
【0087】
先端切断を伴わない場合のシータ及びファイの複合効果
高精度の研削のオプションにより、先端切断を限定することができる。結果として、より好適なシータ及びファイの範囲のために理想的な状況について、シータ及びファイの効果を評価した。このモデル化において、すべてのニードルファセットが一点で合致するため、先端はすべて鋭くなる。ファイ≦シータであるとき、
図9に示される通り、内径(ID)面は、ファセット2及び3によって切断され、薄い舌状部を生じる。しかしながら、ファイがシータより僅かに大きいと、ファセット2及び3は、内面と交差しないため、先端剛性、すなわち、上下方向における曲げ強度を向上する。
【0088】
オメガチルトの効果
図7Dに示される通り、ファセット2及び3は、角度オメガ分、カテーテルを回転させることによってチルト可能である。結果として、カテーテルは、ファセット2及び3を各々研削するとき、±オメガ分、回転させた。
【0089】
図10に示される通り、ファセット1及び2と2及び3の間の隅部は、シータ及びファイが各々20°及び30°に設定されるとき、0,1mmの先端切断でチルト研削することによっては除去できない。
【0090】
良好な設計の領域
ファセットが合致する隅部を限定するのに有益なジオメトリを判定するため、オメガを30°に設定し、一連の異なるジオメトリを構築及び調査した後、良好な設計のドメインを特定することができた。シータ<10°では、ニードル先端が低剛性となった。ファイ>45°のとき、先端が鋭くならなかった。
【0091】
剛性の分析
次に、モデル化角度を研削されたニードル先端と比較すると、研削されたニードル先端の研削角度は、モデル化によって算出した意図された値に非常に近かった。E=80GPaの弾性定数と0.3の値をポアソン比(大部分の金属で共通)に設定することにより、先端を撓ませるのに必要な力を算出した。2及び3(ファイ角度)を研削することによる先端切断が先端剛性に大きな影響を及ぼすことが発見された。
【0092】
最適設計の発見
一連の計算を実施すると、カニューレの完全外径まで上方に最外先端を撓ませるのに必要な座屈力の輪郭線を構築するには、シータが10°~20°の間の範囲であり、ファイが15°~20°の間の範囲であり、オメガが30°に設定され、先端切断が0.0~0.1mmとなった。
【0093】
最適剛性のための角度を見つけるため、最良の設計の限界を構築し、シータ=12.5°、ファイ=18°、オメガ=30°、及び0.1mmの先端切断であることが分かった。以上で詳述した通り、提案した最適な設計は、
図11に示されている。
【0094】
本発明は、上述の好適な実施形態に限定されるものでない。様々な代替、変更、及び等価物も使用され得る。したがって、以上の実施形態は、本発明の範囲を限定するものとみなされてはならず、本発明の範囲は添付の請求項によって規定される。
【国際調査報告】