(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】三量体を形成する新型コロナウイルス(COVID-19、コロナウイルス感染症2019)の組換えスパイクタンパク質および植物における上記組換えスパイクタンパク質の大量生産方法と、これを基盤とするワクチン組成物の製造方法(植物における新型コロナウイルスの三量体スパイクタンパク質の生産方法およびワクチン接種のための使用)
(51)【国際特許分類】
C12N 15/82 20060101AFI20230616BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230616BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20230616BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230616BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230616BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230616BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230616BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230616BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20230616BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20230616BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230616BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230616BHJP
A01H 6/82 20180101ALN20230616BHJP
【FI】
C12N15/82 120Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/50
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
A01H5/12
A01H5/00 A
A61K39/215
A61P31/14
A01H6/82
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564531
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021005124
(87)【国際公開番号】W WO2021215857
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0048980
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520355529
【氏名又は名称】ポステック・リサーチ・アンド・ビジネス・ディヴェロップメント・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】POSTECH RESEARCH AND BUSINESS DEVELOPMENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】(JIGOK‐DONG), 77, CHEONGAM‐RO,NAM‐GU, POHANG‐SI, GYEONGSANBUK‐DO 37673,REPUBLIC OF KOREA
(71)【出願人】
【識別番号】522413146
【氏名又は名称】コリア ナショナル インスティテュート オブ ヘルス
(71)【出願人】
【識別番号】519142114
【氏名又は名称】バイオアプリケーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAPPLICATIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン,イン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,シジェン
(72)【発明者】
【氏名】エムディー,リザウル イスラム カーン
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ,ハイピン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ウン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ボ ファ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チャン フン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウ ニョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヨン ジェ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD09
2B030CA17
2B030CB02
4B065AA01X
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4C085BA71
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4C085CC01
(57)【要約】
本発明は、三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質および植物における上記組換えスパイクタンパク質を大量生産する方法に関するもので、詳しくは免疫原性の増進および効果的な抗原伝達のための目的で三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を発現する組換え遺伝子をデザインする方法および植物における上記組換えスパイク組換えタンパク質を大量生産する方法に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端までのアミノ酸配列が欠如したタンパク質;
コロナウイルススパイクタンパク質のN末端からサブドメイン2(SD2)までのアミノ酸配列を含むタンパク質;またはコロナウイルススパイクタンパク質のサブユニット2における膜貫通ドメインからC末端までのアミノ酸配列が欠如したタンパク質;をコードする遺伝子;および
(ii)コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子;を含む、三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項2】
前記コロナウイルスが、SARS(SARS-コロナウイルス)、MERS(MERS-コロナウイルス)および新型コロナウイルス(SARS-コロナウイルス-2)からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項3】
前記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端までのアミノ酸配列が欠如したタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項4】
前記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端までのアミノ酸配列が欠如したタンパク質をコードする遺伝子は配列番号1の塩基配列を含む、請求項2に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項5】
前記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のN末端からサブドメイン2(SD2)までを含むタンパク質は配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項6】
前記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のN末端からサブドメイン2(SD2)までを含むタンパク質をコードする遺伝子は配列番号3の塩基配列を含む、請求項3に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項7】
前記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質は配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項8】
前記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子は配列番号5の塩基配列を含む、請求項1に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項9】
前記ベクターは、バイナリーベクターである、請求項1に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項10】
前記組換えベクターは、カリフラワーモザイクウイルスから由来した35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルスから由来した19S RNAプロモーター、Macプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーターおよびユビキチンタンパク質プロモーターからなる群から選択されるいずれかのプロモーターを追加して含む、請求項1に記載の三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクター。
【請求項11】
請求項1に記載の組換えベクターに形質転換された、形質転換生物。
【請求項12】
請求項11において、前記形質転換された形質転換生物が、原核生物または真核生物である、形質転換体。
【請求項13】
(a)請求項1に記載の組換えベクターを製造する段階;
(b)前記組換えベクターを生物に導入して形質転換生物を製造する段階;
(c)前記形質転換生物を培養する段階;
(d)前記培養物を植物に浸潤する段階;および
(e)前記植物を粉砕して三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を得る段階を含む、
植物から三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の植物から三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産する方法により製造された、組換えタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質および植物における上記組換えスパイクタンパク質を大量生産する方法に関するもので、詳しくは免疫原性の増進および効果的な抗原伝達を目的として三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を発現する組換え遺伝子をデザインする方法および植物における上記組換えスパイクタンパク質を大量生産する方法に関するものである。そして、植物から生産された三量体スパイクタンパク質(三量体スパイクタンパク質)を用いて新型コロナウイルスに対して効果的なワクチン物質を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、植物から組換えタンパク質を低コストで生産できる可能性が提案され、様々な試みが進められている(Schillbergほか研究陣、2003;Holtzほか研究陣、2015;Marusicほか研究陣、2016)。特に、多様な医療用タンパク質の生産の可能性などを確認する研究が進められている。植物から組替えタンパク質を生産する場合、様々なメリットがあるが、その一つは大腸菌など微生物に存在する内毒素のように毒素がほとんど存在しないということと人体に感染しうる病原体がないということである。またプリオンのような有害なタンパク質もないことが知られており、動物細胞や微生物に比べて安全な組換えタンパク質を生産できるということである。また、製造単価においても動物細胞よりは非常に安価であり、植物の栽培方法によって大規模な生産においては大腸菌などの微生物よりも経済的である。このような可能性を実現するためには、いくつかの必須技術の開発が必要である。その中で最も重要な技術は、植物における遺伝子の高発現を誘導するための発現ベクターの開発である(Staubほか研究陣、2000;Regnardほか研究陣、2010)。植物では、様々な方法を通じて遺伝子の発現を誘導することができる。組換え遺伝子を植物体のゲノムに導入させる方法、葉緑体ゲノムに導入させる方法、アグロバクテリウムを用いて一過性のある遺伝子を発現させる方法など様々な方法が可能である(Arzolaほか研究陣、2011;Wernerほか研究陣、2011)。核ゲノムや葉緑体ゲノムに組換え遺伝子を導入させる方法は、基本的に形質転換体を確保する過程を通じて植物からタンパク質を生産することになる。一方、アグロバクテリウムを植物組織に浸透させ、遺伝子の一過性発現を誘導してタンパク質を生産する場合、形質転換体の製造過程が含まれないためタンパク質の生産期間が短く、概ね形質転換体によるタンパク質の生産に比べてタンパク質の生産水準が著しく高いメリットがある(Arzolaほか研究陣、2011)。また、植物の持つ異なる遺伝子の発現抑制機構を、遺伝子沈黙抑制因子を共同-湿潤させて抑制することができるため、タンパク質の発現水準をさらに高く誘導することができる(Garabagiほか研究陣、2011)。しかし、一過性発現をしようとするたびに目的遺伝子を含むバイナリーベクターを導入したアグロバクテリウムの培養と、p38遺伝子沈黙抑制因子を発現するバイナリーベクターを導入したアグロバクテリウムの培養を別々に作り、これを適切な割合で混ぜて共同-湿潤させる過程を遂行しなければならない短所がある。特に、二種類のアグロバクテリウムを培養する場合、時間や経済的な面で限界がある。
【0003】
コロナウイルスは、アデノウイルス、ライノウイルスとともに人に風邪を引き起こす三大ウイルスの一つで、人と様々な感染がありうる遺伝子サイズ27~32kbのRNAウイルスである。電子顕微鏡で見ると、ウイルス粒子の表面が突起のように飛び出ているが、この形がまるで王冠のようだとして、ラテン語で王冠を意味する「コロナ」から派生して名づけられた。主に寒い冬に発生する成人の風邪の10~30を占め、頭痛や咽喉痛、咳を伴う鼻風邪を主な症状とする。コロナウイルスは、1930年代に鶏から初めて発見されて以来、犬、豚、鳥類などの動物から発見され、1960年代には人からも発見された。コロナウイルスは、動物と人の両方から発見され、人の活動領域が広範囲になるにつれて、動物の間だけで流行していたウイルスが生存のために遺伝子変異を起こして人に移ることもある。例えば、SARS(コウモリとジャコウネコ)、MERS(コウモリとラクダ)、新型コロナウイルス(コウモリと推定)がこれに該当する。これまでに発見されたコロナウイルスは、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4属に分類される。ここでアルファは、再び1a型と1b型に分かれ、ベータは2a、2b、2c、2d型に分かれる。このうちアルファとベータは、人と動物に感染し、ガンマとデルタは動物に感染する。現在までに確認された人体伝染コロナウイルスは7種であり、HCoV 229E、HCoV NL63、HCoV OC43、HCoV HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2がこれに該当する。このうち4種(229E、OC43、NL63、HKU1)は、風邪に似た軽い症状だけを起こす。しかし、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群)、新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は、重症肺炎など深刻な呼吸器疾患を引き起こす可能性があり、多くの死者を発生させる。
【0004】
新型コロナウイルス(COVID-19)は、2019年12月に中国武漢で初めて発生して以来、中国全域と世界中に広まった、新しいタイプのコロナウイルス(SARS-CoV-2)である。新型コロナウイルスは、非常に高い伝播率を示し、特に伝染性が高い。新型コロナウイルスに感染すると、約2~14日(推定)の潜伏期を経た後、発熱(37.5度)、咳、呼吸困難などの呼吸器症状、肺炎が主な症状として現れるが、無症状感染事例も珍しくない。新型コロナウイルス(COVID-19)のスパイク(S)タンパク質は、非常に大きなエクトドメイン領域、単一膜貫通(膜貫通ドメイン;TMD)および短い細胞質の尾を含むタイプ1の膜糖タンパク質である。上記スパイクタンパク質は、他のコロナウイルスのスパイク(スパイク;S)タンパク質と同様にウイルスの表面に三量体として存在し、ウイルスの宿主細胞への侵入に必要な受容体結合領域と、細胞への侵入時にウイルス膜と細胞小器官膜の間の融合を誘導する融合ペプチドを持っており、自然宿主において、上記スパイクタンパク質に対する中和された抗体を誘導するなどの役割をするとされている。上記コロナスパイクタンパク質は、ウイルス膜の表面に三量体として存在する。したがって、三量体型のスパイクタンパク質が抗原として作用すると考えられ、中和抗体の誘導にも三量体が重要であると考えられる。同様にインフルエンザウイルスの場合も、HAタンパク質がウイルスの表面に三量体として存在し、この三量体の形成は抗原性が高いとされている。
【0005】
組換えタンパク質は、安全性では優れているが、生ウイルスに比べると免疫原性が低く、生産単価が高い点が短所である。したがって、この安全性に優れた組換えタンパク質を用いて効率的に予防するためには、様々な免疫反応を誘導することができ、高い免疫反応を誘導できる高免疫原性の組換えタンパク質ワクチンを製造することが必須であり、また、効果的な伝達ができるように製造された組換えタンパク質が必要である。
【0006】
新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を用いてワクチンを開発しようとした。スパイクタンパク質は、新型コロナウイルスが感染する間、S1とS2の二つのサブユニットで過程が起こり、感染に必要な受容体に結合する領域はS1に存在し、S2は融合ペプチドを持つことになる。したがって、抗原としてS1、S2、または全長を使用した場合、防御的な免疫効果においてどのような効果を与えるか予測することは容易ではない。S1は、RBDを持っているので、RBDに結合する抗体を誘導することができ、このような抗体の結合を通じて受容体の結合を妨害してウイルスの感染を防ぐことができるだろう。一方、S1は最も多くの突然変異が導入される部分を含んでいるため、多様な変種をカバーできない可能性も存在する。また、S2の場合には、誘導される抗体がウイルスが受容体に結合するのを防ぐことはできないが、融合段階を妨害する抗体を生成することもできると予測できる。全長の場合、二つの部分をすべて含むので、受容体にウイルスの結合を妨害する抗体と融合過程を妨害する抗体を誘導することもできるだろう。しかし、抗原として使用されるタンパク質の生産において、S1とS2に比べてより難しいこともある。
【0007】
このような様々な考慮を基に、スパイクタンパク質を植物から抗原として生産するために、組換え遺伝子を構築しようとした。組換えタンパク質の大量生産のために、TMDと細胞質ドメインを除いた全長エクトドメインを用いて組換えタンパク質を作ろうとした。特に、スパイクタンパク質がウイルスの表面に存在する形態であるエクトドメインのみを用いて三量体を作り、抗原性を高めようとした。このために、新型コロナウイルスのスパイク(スパイク;(s))において16番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計1198個の残基を含む切片(SfΔ(TMD-CT)と命名)を用いた。また、コロナウイルスのスパイクタンパク質において、リーダー配列のないN末端(16番目のアミノ酸)からサブドメイン2(SD2)(681番目のアミノ酸)までを含むS1サブユニット(S1sと命名);スパイクタンパク質の中で突然変異が起こりにくいとされるS2サブユニットのC末端領域に存在するTMDと細胞質テール領域のない切片(682番目のアミノ酸からまで1213番目のアミノ酸までを含む部位で、計532個の残基、[S2sΔ(TMD-CT)]と命名)を用いて植物から発現システムを構築しようとした。植物から生産されたこれら2種類の組換えタンパク質を作り、これらを抗原物質として活用してワクチンとして開発しようとした。スパイクタンパク質の全長は、ウイルスの表面に存在するときに三量体を形成するが、スパイクタンパク質をコードする遺伝子のうちTMDおよび細胞質領域のないエクトドメインやTMDと細胞質ドメインのないS2をコードする部分を用いて組換えタンパク質を作れば、上記組換えタンパク質は三量体を形成しにくいと推定した。ワクチンの目的で使用するために、これら二種類の組換えタンパク質を植物から三量体の形態で生産する技術を開発しようとした。このように製造された組換えスパイクタンパク質を発現できるベクターを植物から高発現させるバイナリーベクターを構築した。
【0008】
また、本発明は、植物細胞に作られたこれらタンパク質を純粋分離精製し、ワクチンの組成を提供することを目的とする。植物細胞に作られたタンパク質の収率を高めるためには、適切なバッファーの組成が重要である。これらタンパク質は、大きさが大きく高度に糖化されたタンパク質であるため、可溶化のために様々なバッファー組成を比較分析して最適なバッファー組成を確保しなければならない。そして、タンパク質の分離精製は、C末端に存在するHisタグを用いてNi2+-NTA親和性カラムクロマトグラフィーおよびサイズ排除ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより純粋分離精製しようとした。
【0009】
そして、このように生産されたスパイクタンパク質の三量体形態の様々なタンパク質を利用してマウスとハムスターに免疫注射を通じて抗体誘導の程度を確認することができ、このように誘導された抗体がどの程度の防御能力(PRNT50)を持つか確認することができる。また、ハムスターの場合、新型コロナウイルスに対してある程度感受性を持っているため、実際に新型コロナウイルスの攻撃接種を通じてウイルスの増殖に対する抑制の程度を確認することができる。このような過程を通じて最適なワクチン候補物質を選抜することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためのもので、本発明の目的は(i)コロナウイルスの全長スパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したタンパク質(SfΔ(TMD-CT);またはコロナウイルスのスパイクタンパク質においてリーダー配列を除いたN末端からサブドメイン2(SD2)までを含むS1サブユニットタンパク質(S1s);またはコロナウイルスのスパイクタンパク質のS2サブユニットにおいて膜貫通ドメインからC末端までが欠如したタンパク質S2sΔ(TMD-CT);をコードする遺伝子および(ii)マウスコロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコートする遺伝子;分離精製のために5つのヒスチジン残基をコードする遺伝子;そして植物の小胞体に蓄積されるようにするER保留モチーフであるHDELをコードする遺伝子;を含む、三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質SfΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL(Sfull-tと命名)、S1:mCor1:Hisx5:HDEL(S1s-tと命名)またはS2Δ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL(S2s-tと命名)タンパク質を生産するための組換えベクターを提供することである。そして、対照群としてmCorを持たないSfΔ(TMD-CT):Hisx5:HDEL(Sfull-mと命名)、S1:Hisx5:HDEL(S1s-mと命名)またはS2Δ(TMD-CT):Hisx5:HDEL(S2s-mと命名)タンパク質を生産するための組換えベクターを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、下記の段階を含む植物から三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産する方法を提供することである:
(a)上記組換えベクターを製造する段階;
(b)上記組換えベクターを生物に導入して形質転換生物を製造する段階;
(c)上記形質転換生物を培養する段階;
(d)上記培養物を植物に浸潤する段階;および
【0012】
(e)上記植物を粉砕して三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を得る段階。
【0013】
本発明の他の目的の一つは、スパイクタンパク質由来の組換えタンパク質であるSfΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL(Sfull-tと命名)、S1s:mCor1:Hisx5:HDEL(S1s-tと命名)またはS2sΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL(S2s-tと命名)を植物細胞から発現した後、植物抽出物から高効率で分離精製するための条件を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、これら複数のspike由来の組換えタンパク質のうち2種類のSfΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDELとS2sΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDELを用いて新型コロナウイルスを効果的に防御するワクチン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(i)コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したタンパク質SfΔ(TMD-CT);またはコロナウイルスのスパイクタンパク質のS1サブユニットを含むタンパク質(S1s);またはコロナウイルスのスパイクタンパク質のS2サブユニットにおいてTMDからC末端まで欠如したタンパク質S2sΔ(TMD-CT);をコードする遺伝子、および(ii)コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子;分離精製のために5つのヒスチジン残基をコードする遺伝子;そして植物の小胞体に蓄積されるようにするER保留モチーフであるHDELをコードする遺伝子;を含む三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質Sfull-tまたはS2s-tを生産するための組換えベクターを提供する。
【0016】
上記コロナウイルスは、SARS(SARS-コロナウイルス)、MERS(MERS-コロナウイルス)および新型コロナウイルス(SARS-コロナウイルス-2)からなる群から選択されるいずれかである。
【0017】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含めることができる。
【0018】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1の塩基配列を含めることができる。
【0019】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてS1サブユニット、「16番目のアミノ酸から681番目のアミノ酸までを含むタンパク質」(S1s)は、配列番号4のアミノ酸配列を含めることができる。
【0020】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてS1サブユニット、「16番目のアミノ酸から681番目のアミノ酸までを含むタンパク質」をコードする遺伝子は、配列番号3の塩基配列を含めることができる。
【0021】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてS2サブユニットの682番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸までを含むタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含めることができる。
【0022】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてS2サブユニットの682番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸までを含むタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号5の塩基配列を含めることができる。
【0023】
上記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列を含めることができる。
【0024】
上記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号7の塩基配列を含めることができる。
【0025】
上記5’-UTRのコードする遺伝子は、配列番号14の塩基配列を含めることができる。
【0026】
また、本発明は、上記組換えベクターにHisx5タグのタンパク質をコードする遺伝子を追加で含む三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクターを提供することができる。
【0027】
また、本発明は、上記組換えベクターにHDELモチーフのタンパク質をコードする遺伝子を追加で含む三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクターを提供することができる。
【0028】
上記HDELモチーフのタンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列を含めることができる。
【0029】
上記HDELモチーフドメインのタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号12の塩基配列を含めることができる。
【0030】
上記組換えベクターは、カリフラワーモザイクウイルスに由来する35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルスに由来する19S RNAプロモーター、Macプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーターおよびユビキチンタンパク質プロモーターからなる群から選択されるいずれかのプロモーターを追加して含めることができる。
【0031】
また、本発明は、上記組換えベクターに形質転換された形質転換生物を提供することができる。
【0032】
上記形質転換された形質転換生物は、原核生物または真核生物であり得る。
【0033】
本発明は、下記の段階を含む植物から三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産する方法を提供することができる:
(a)上記組換えベクターを製造する段階;
(b)上記組換えベクターを生物に導入して形質転換生物を製造する段階;
(c)上記形質転換生物を培養する段階;
(d)上記培養物を植物に浸潤する段階;および
(e)上記植物を粉砕して三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を得る段階。
【0034】
本発明は、植物抽出物からSfull-tとS2s-tタンパク質などをNi2+-NTA親和性カラムクロマトグラフィーとサイズ排除カラムクロマトグラフィーを用いて分離精製する過程を通じてワクチン候補物質の生産方法を提供することができる。
【0035】
本発明の他の目的は、これら2種類のスパイクタンパク質であるSfull-tとS2s-tを用いて新型コロナウイルスを効果的に防御するワクチン組成物を提供することである。これらタンパク質を補助剤と一緒に、または補助剤なしで単独でワクチン組成物を提供することができ、タンパク質の量は1マイクログラムから30マイクログラムに至る。
【発明の効果】
【0036】
本発明の三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の膜貫通ドメインからC末端まで欠如したスパイクタンパク質のエクトドメイン(エクトドメイン;16番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計1198個の残基)で構成されたSeタンパク質、またはコロナウイルスのスパイクタンパク質においてS1サブユニットの「16番目のアミノ酸から681番目のアミノ酸までを含むタンパク質」(計666個の残基)、またはコロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したS2サブユニットの682番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸までを含むタンパク質(計532個の残基);をコードする遺伝子、マウスのコロニン1の三量体モチーフで三量体を形成して免疫性が増加し、C末端にHDELを含めて植物の小胞体でタンパク質が蓄積されるようになっており、植物から多量に製造することができ、HisタグドメインをC末端部位に含めてタンパク質の分離精製を容易にするようになっている組換えタンパク質を構成する。
【0037】
このように植物から生産された新型コロナウイルスのSタンパク質のSfull-t、またはS2s-t組換えタンパク質で構成されたワクチン組成物を含む。このワクチン組成物は、植物生産タンパク質だけでも構成することができ、アラム(alum)などの補助剤(adjuvant)を含めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明で使用した複数の組換えベクターの構成を示した図面である。
【
図2】Hisタグ、HDELを持つSfΔ(TMD-CT)、S1sとS2sΔ(TMD-CT)タンパク質とこれら3種類のタンパク質が追加的にmCor1を含むタンパク質を発現するニコチアナベンタミアナの総抽出物をSDS/PAGEで分離した後、抗His抗体を用いてウェスタンブロット分析およびクマシーブリリアントブルーに染色した結果を示したものである。
【
図3】ニコチアナベンタミアナ抽出物からNi2+-NTA親和カラムクロマトグラフィーを用いてSfull-tとS2s-tを純水分離精製し、これをSDS/PAGEで展開した後、抗His抗体を用いてウェスタンブロットで分析した後、膜を再びクマシーブリリアントブルーに染色した結果を示したものである。
【
図4】ニコチアナベンタミアナ抽出物からNi2+-NTA親和カラムクロマトグラフィーを用いて分離したSfull-tをサイズ排除カラムクロマトグラフィーで切片化し、これら分画をSDS/PAGEで展開した後、クマシーブリリアントブルーに染色した結果を示したものである。
【
図5】ニコチアナベンタミアナ抽出物からNi2+-NTA親和カラムクロマトグラフィーを用いて分離したSfull-tとSfull-mを純水分離精製し、これらをサイズ排除カラムクロマトグラフィーで切片化した後、これら切片を、抗His抗体を用いてウェスタンブロット分析した結果と分離精製したSfull-tを陰性染色した後、このタンパク質を、電子顕微鏡を用いてタンパク質の形態を確認した結果、三量体を形成することを確認した結果である。
【
図6】ニコチアナベンタミアナ抽出物からNi2+-NTA親和カラムクロマトグラフィーを用いて分離したS2s-tをサイズ排除カラムクロマトグラフィーで切片化し、これら分画をSDS/PAGEで展開した後、クマシーブリリアントブルーに染色した結果を示したものである。
【
図7】新型コロナウイルス植物ワクチン候補物質の実験動物(マウス、Balb/c)における免疫原性評価の結果を示したものである。このために、体液性免疫反応分析(
図7B)、中和抗体誘導分析(
図7C、D)および細胞媒介免疫反応分析(
図7E)を行った後、その結果を示した。
【
図8】新型コロナウイルス植物ワクチン候補物質の実験動物(TGマウス)における保護効能評価を行った実験で、各免疫抗原は筋肉内の経路に2週間おきに計2回免疫し、免疫抗原に対する抗体の生成を確認するために、免疫前、1次免疫、2次免疫の2週間後に採血を行い、血清における抗体(IgGs)の生成および中和抗体の生成などの免疫原性評価を実施した結果を示し(
図8A)、植物ワクチン免疫による抗体誘導分析(
図8B)、植物ワクチン免疫によるハムスターの攻撃接種による生存率および組織の力価を分析(
図8C、D、E)した結果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0040】
新型コロナウイルスの膜タンパク質として、細胞への浸透に重要とされるスパイクタンパク質は、新型コロナウイルスの感染を予防できるワクチン候補群と考えられる。本発明では、このスパイクタンパク質に基づいて多様な組換えタンパク質を作り、これらを活用してワクチンとして開発しようとした。スパイクタンパク質の全長は、ウイルスの表面に存在するとき、三量体を形成するが、スパイク遺伝子のうち全体または一部のエクトドメインのみをコードする部分を用いて組換えタンパク質を作れば、上記組換えタンパク質は三量体を形成しないと推定した。したがって、これら組換えタンパク質を用いてワクチンとして活用するためには、このタンパク質がウイルスの表面に存在するときのように三量体を形成することが重要であると考え、これらが可溶性形態で存在するときも、三量体を維持する技術を開発しようとした。本発明では、スパイクタンパク質のエクトドメインの全体[SfΔ(TMD-CT)]、S1s、またはTMDとC末端がないS2部位[S2sΔ(TMD-CT)]の組換えタンパク質を植物から発現および生産するとき、三量体を形成するよう誘導する技術を開発しようとした。このため、大量生産できる新型コロナウイルのスパイク膜貫通ドメインからC末端まで欠如したスパイクタンパク質のエクトドメイン(Se;16番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計1198個の残基)、N末端からSD2ドメインまでを含む部位(S1s;16番目のアミノ酸から681番目のアミノ酸まで、計666個の残基)、またはS2サブユニットでTMDとC末端がない部位(S2sΔ(TMD-CT);682番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計532個の残基)を三量体構造を形成するマウスコロニン1の三量体モチーフに融合し、追加的にHisx5とHDELをコードする部位に連結する構造体を構築した。これら組換えタンパク質に対する対照群としてmCor1がない構造体を構築した。上記の多様なスパイクタンパク質を含む組換え遺伝子を植物から高発現できるバイナリーベクターを構築した。
【0041】
本発明は、(i)コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端までのアミノ酸配列が欠如したタンパク質(SfΔ(TMD-CT));またはコロナウイルスのスパイクタンパク質においてN末端からサブドメイン2(SD2)までを含むS1サブユニットタンパク質(S1s);またはコロナウイルススパイクタンパク質のS2サブユニットにおいて膜貫通ドメインとC末端までのアミノ酸配列が欠如したタンパク質、(S2sΔ(TMD-CT));をコードする遺伝子;および(ii)コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子;を含む三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産するための組換えベクターを提供することができる。
【0042】
新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を用いてワクチンを開発するために、膜貫通ドメインからC末端までをなくしたスパイクタンパク質のエクトドメイン(Sの全長エクトドメイン;16番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計1198個の残基)、またはN末端からサブドメイン2(SD2)までを含む部位(16番目のアミノ酸から681番目のアミノ酸まで、計666個の残基)、またはS2のエクトドメイン(682番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計532個の残基)を用いて組換えタンパク質を作り、これを用いてワクチンとして開発しようとした。スパイクタンパク質の全長は、ウイルス表面に存在するときに三量体を形成するが、スパイクタンパク質をコードする遺伝子のうち、全体または一部のエクトドメイン部分を用いて発現させて組換えタンパク質を発現すれば、三量体を形成しにくいと予想し、上記三量体の未形成により免疫原性が低いと予想した。したがって、本発明では、本来スパイク全長タンパク質がウイルスの表面に存在するものと同じ三量体形態のスパイクタンパク質の全体、またはN末端からSD2ドメインまでのS1cエクトドメイン、またはS2のエクトドメインの組換えタンパク質を作ろうとした。このために、本発明では、新型コロナウイルス(COVID-19)を選択し、マウスコロニン1(mCor1)の122番目のアミノ酸から153番目のアミノ酸までの32個の残基を、12個のアミノ酸残基を持つリンカーを用いて融合させ、構造体を構築した。
【0043】
続いて、組換えタンパク質の分離精製のために5つのHis残基を持つHisタグを融合させ、最後にERに蓄積するためにHDELモチーフを融合させて構造体を完成した(SfΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL、S1s:mCor1:Hisx5:HDEL、S2sΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL、
図1)。そして、上記3種類のスパイク組換えタンパク質においてmCor1がない構造体を構築して対照群として使用した。
【0044】
上記コロナウイルスは、SARS(SARS-コロナウイルス)、MERS(MERS-コロナウイルス)および新型コロナウイルス(SARS-コロナウイルス-2)からなる群から選択されるいずれかである。
【0045】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含めることができる。
【0046】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質において膜貫通ドメインからC末端まで欠如したタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は、配列番号1の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【0047】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてN末端からサブドメイン2(SD2)までを含むS1sタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を含めることができる。
【0048】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてN末端からサブドメイン2(SD2)までを含むS1sタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号3の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号3の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【0049】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてS2タンパク質は、配列番号xのアミノ酸配列を含めることができる。
【0050】
上記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含めることができる。
【0051】
上記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号5の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号5の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【0052】
上記組換え遺伝子を、植物体発現ベクターであるpTEX1に導入して植物発現ベクターを作った。新型コロナウイルスのスパイク遺伝子から6種類のエクトドメインの組換えタンパク質遺伝子を構築し(
図1)、これらを植物(ニコチアナベンタミアナ)に導入して組換えタンパク質の発現を誘導した。これらの遺伝子を導入したニコチアナベンタミアナの葉抽出物におけるタンパク質の発現を確認するために、抗His抗体を用いてウェスタンブロット分析を行った。
図2のとおりSfullが約180kDの位置で確認された。スパイクタンパク質のN-糖化を形成するため、計算上のタンパク質の位置より大きいと判断した。S1とS2は、それぞれ100kDと75kDの位置から出ており、これら二つのタンパク質も計算上の大きさよりも大きいので、これもN-糖化すると判断された(
図2)。
【0053】
そして、これら2種類のタンパク質を純粋分離するために、ニコチアナベンタミアナの総抽出物を作り、これからNi2+-NTA親和カラムクロマトグラフィーを用いて純粋分離精製した後、これをSDS/PAGEにより分離精製し、クマシーブリリアントブルーに染色した。これにより、2種類のスパイクタンパク質の組換えタンパク質を純粋分離精製できることを確認した(
図3)。
【0054】
上記組換えベクターは、カリフラワーモザイクウイルスから由来した35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルスから由来した19S RNAプロモーター、Macプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーターおよびユビキチンタンパク質プロモーターからなる群から選択されるいずれかのプロモーターを追加して含めることができ、望ましくはMacプロモーターであり得、より望ましくはMacTプロモーターであり得る。
【0055】
上記MacTプロモーターは、Macプロモーター塩基配列の3’末端塩基であるAをTに置き換えたプロモーターであり得、上記MacTプロモーターは配列番号17の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号17の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましい場合は80%以上、さらに望ましい場合は90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【0056】
上記組換えベクターは、RD29B-tの終結部位を追加して含めることができ、上記RD29B-tの終結部位は配列番号18の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号18の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【0057】
組換えタンパク質の遺伝子のN末端とC末端にそれぞれBiPのシグナル配列とER保留シグナルであるHDELを含むことで、ER(小胞体)に高濃度に蓄積を誘導する効果を得ることができる。上記組換えベクターは、BiP(シャペロン結合タンパク質)およびHDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドからなる群から選択されるいずれかを追加して含めることができ、上記BiP(シャペロン結合タンパク質)は配列番号12の塩基配列を含めることができ、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)は配列番号10の塩基配列を含めることができる。
【0058】
上記組換えは、細胞が異種の核酸を複製したり、上記核酸を発現したり、またはペプチド、異種のペプチドまたは異種の核酸によって暗号化されたタンパク質を発現する細胞を指すものである。組換え細胞は、上記細胞の天然形態では発見されない遺伝子または遺伝子の切片をセンスまたはアンチセンス形態で発現することができる。また、組換え細胞は、天然状態の細胞から発見される遺伝子を発現することができ、しかし、上記遺伝子は変形したものであり、人為的な手段によって細胞内に再導入されたものである。
【0059】
用語「組換え発現ベクター」は、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳動物細胞ウイルスまたは異なるベクターを意味する。概ね、任意のプラスミドおよびベクターは、宿主内で複製および安定化すれば使用できる。上記発現ベクターの重要な特性は、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子および翻訳制御要素を有することである。上記組換え発現ベクターおよび適当な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターは、当業者に周知された方法により構築することができる。上記の方法は、試験管内組換えDNA技術、DNA合成技術および生体内組換え技術などを含む。
【0060】
本発明の組換えベクターの望ましい例は、適当な宿主に存在するとき、それ自体の一部、いわゆるT-領域を植物細胞に転移させることができるTiプラスミドベクターである。異なるタイプのTiプラスミドベクターは、現在、植物細胞、または雑種DNAを植物のゲノム内に適当に挿入させる新しい植物が生産される原形質体で雑種DNA配列を転移させるのに利用されている。Tiプラスミドベクターの特に望ましい形態は、EP0120516B1号および米国特許第4,940,838号に請求されたような、いわゆるバイナリーベクターである。本発明に伴うDNAを植物宿主に導入するのに利用され得る他の適合するベクターは、二本鎖植物ウイルス(例えば、CaMV)および一本鎖ウイルス、ジェミニウイルスなどに由来し得るようなウイルスベクター、例えば不完全性植物ウイルスベクターから選択することができる。そのようなベクターの使用は、特に植物宿主を適当に形質転換することが困難なときに有利である。
【0061】
また、本発明は、上記組換えベクターに形質転換された形質転換生物を提供することができる。
【0062】
上記の形質転換された形質転換生物は、原核生物または真核生物であり得、その例として、酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)、大腸菌などの菌類、昆虫細胞、ヒト細胞(例えば、CHO細胞株(チャイニーズハムスターの卵巣)、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RINおよびMDCK細胞株)および植物細胞などが利用され、望ましくはアグロバクテリウムになり得る。昆虫細胞、ヒト細胞などの場合、三量体を形成する組換えスパイクタンパク質をコードする遺伝子を、これら各種動物細胞の発現に必要な発現ベクターを用いて発現することができる。
【0063】
本発明のベクターを宿主細胞内に運ぶ方法は、宿主細胞が原核細胞である場合、CaCl2法、ハナハン法(Hanahan,D.,J.Mol.Biol.,166:557-580(1983))および電気穿孔法などにより実施することができる。また、宿主細胞が真核細胞である場合、微細注入法、リン酸カルシウム共沈殿法、電気穿孔法、リポソーム媒介形質感染法、DEAE-デキストラン法、および遺伝子バームバードメントなどによりベクターを宿主細胞内に注入することができる。
【0064】
本発明は、下記の段階を含む植物から三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を生産する方法を提供することができる:
(a)上記組換えベクターを製造する段階;
(b)上記組換えベクターを生物に導入して形質転換生物を製造する段階;
(c)上記形質転換生物を培養する段階;
(d)上記培養物を植物に浸潤する段階;および
(e)上記植物を粉砕して三量体を形成するコロナウイルスの組換えスパイクタンパク質を得る段階。
【0065】
上記植物に湿潤する方法は、化学セル法、真空または注射器浸潤法があり、最も望ましいのは注射器浸潤法であるが、これに限られるわけではない。
【0066】
上記植物は、稲、小麦、麦、トウモロコシ、豆、ジャガイモ、小麦、小豆、エンバク、モロコシを含む食糧作物類;シロイヌナズナ、白菜、大根、唐辛子、イチゴ、トマト、スイカ、キュウリ、キャベツ、マクワウリ、カボチャ、ネギ、タマネギ、ニンジンを含む野菜作物類;高麗人参、タバコ、綿、ゴマ、サトウキビ、テンサイ、エゴマ、ピーナッツ、アブラナを含む特用作物類;リンゴ、ナシ、ナツメ、桃、ブドウ、みかん、柿、スモモ、アンズ、バナナを含む果樹類;バラ、カーネーション、菊、ユリ、チューリップを含む花卉類から選択され得る。
【0067】
このように植物から生産した新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をC末端のHisタグを用いてNi2+-NTA親和性カラムクロマトグラフィーで分離精製することができる。そして、このように分離されたタンパク質は、純度を高めるために、再びサイズ排除ゲルクロマトグラフィーを用いて追加的に分離することができる。
【0068】
本発明のもう一つの目的は、これら植物生産コロナ-19のスパイクタンパク質を用いてワクチン組成物を提供することである。スパイクタンパク質の三量体のSfull-tやS2s-tをアラムと一緒にまたはアラムなしでワクチン組成物を構成することができる。
【0069】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を示す。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記の実施例により本発明の内容が限られるわけではない。
(実施例1)
三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質をコードする遺伝子の設計
新型コロナウイルス表面タンパク質由来spike(S)をERルーメンに可溶性形態で発現するよう誘導するために、膜貫通ドメイン(TMD)からC末端までをなくしたスパイクタンパク質のエクトドメイン(エクトドメイン;16番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計1198個の残基、SfΔ(TMD-CT))、N末端からSD2ドメインまでを含むS1サブユニット部位(16番目のアミノ酸から681番目のアミノ酸まで、計666個の残基)、またはS2のエクトドメイン部位(682番目のアミノ酸から1213番目のアミノ酸まで、計562個の残基)を確保した。上記新型コロナウイルスのスパイク遺伝子の5’末端にシロイヌナズナのタンパク質であるBiPから確保したER標的化シグナルを融合させてERターゲティングできるようにした。そして、このように作られた組換えスパイクタンパク質の三量体の形成を誘導するために、マウスのmコロニン1というタンパク質から同種の三量体の形成を誘導するモチーフをリンカーによってこれらスパイクタンパク質のC末端に融合し、Hisx5タグおよびER保留モチーフであるHDELをスパイクタンパク質の精製およびERにおける高蓄積のために、mCor1のC末端に順次融合させて構造体を構築した。発現のためにmacTを使用し、Rd29bの末端を転写終結因子として使用した。上記の転写終結因子は、以前の研究の結果、高い転写効率を示すことが確認された。実験に使用される塩基配列は、下記表1のとおりである(
図1)。
【0070】
そして、これらの構造体をpTEXに導入し、最終的な植物発現vector9種を構築した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
(実施例2)
三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質をコードする遺伝子の発現および確認
【0071】
図1に表示された6種類の構造体[SfΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL(Sfull-t)、SfΔ(TMD-CT):Hisx5:HDEL(Sfull-m)、S1s:mCor1:Hisx5:HDEL(S1s-t)、S1s:Hisx5:HDEL(S1s-m)、S2sΔ(TMD-CT):mCor1:Hisx5:HDEL(S2s-t)、S2sΔ(TMD-CT):Hisx5:HEDL(S2s-m)]を真空湿潤法を用いて4-5週齢のニコチアナベンタミアナ植物の葉から一過性発現を通じて発現を誘導した。浸潤した葉を5日後(dpi)に収穫し,液体窒素で完全に粉砕し、3容積の緩衝液に溶解させた。浸潤した葉抽出物からの総可溶性タンパク質をSDS-PAGEで展開した後、これをウェスタンブロット分析を行った。スパイク(S)組換えタンパク質は、抗His抗体によってSfull-tとSfull-mが約180kDの位置で確認され、S1s-tとS1s-mは100kDの位置で確認された。そして、S2s-tとS2s-mは、75kDの位置で確認された。mCorを持たない構造体とmCor1を持つタンパク質の位置を比較すると、mCor1を持たないものよりも、やや小さく出ていることから、これらの違いはmCor1によるものと考えられる。また、これら6種の組換えタンパク質は、すべて計算上の大きさよりも大きいので、これはN-糖化のためと判断された(
図2)。そして、同じメンブレンをクマシーブリリアントブルーに染色してバンドを確認したとき、ここでも観察された。これら組換えタンパク質の発現水準をバンドの強度から判断すると、浸潤した葉で20-50μg/g生重量程度と推定された。
(実施例3)
三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質の分離精製
【0072】
2種類の新型コロナウイルスSタンパク質の組換えタンパク質であるSfull-tとS2s-tをニコチアナベンタミアナで発現させ、これらをNi2+-NTA親和性カラムで分離精製し、これらをSDS/PAGEにより展開した後、抗His抗体を用いてウェスタンブロットを行い分離精製を確認した。そして、続いて膜をクマシーブリリアントブルーに染色した。これを通じて、2種類のスパイクタンパク質由来の組換えタンパク質を純粋分離精製できることを確認した(
図3)。
(実施例4)
三量体を形成するSfull-tの組換えタンパク質のサイズ排除カラムクロマトグラフィーによる分離精製
【0073】
Ni2+-NTA親和性カラムで分離精製したSfull-tの組換えタンパク質を濃縮し、これらを再びサイズ排除カラムクロマトグラフィーを用いて分離精製した。カラムで確保した切片を7番から20番までをSDS/PAGEにより展開し、これを抗His抗体を用いてウェスタンブロットを行い、Seの組換えタンパク質の位置と溶出した量を確認した。そして、その後、膜をクマシーブリリアントブルーに染色して他のタンパク質バンドの汚染を確認した(
図4)。
(実施例5)
新型コロナウイルスのSfΔ(TMD-CT)のmCor1があるものと、ないものの組換えタンパク質のサイズ排除カラムによる切片化における差の確認およびmCor1によるSfull-t組換えタンパク質の三量体の形成
【0074】
Sfull-tとSfull-mそれぞれを発現するニコチアナベンタミアナ葉抽出物からNi2+-NTA親和性カラムでタンパク質を分離精製した後(
図5A、B)、これらタンパク質をサイズ排除カラムクロマトグラフィーを用いて切片化した後(
図6C)、これら切片をSDS/PAGEを用いて精製した後、これら抗His抗体を用いてウェスタンブロットtingして分析した(
図5D)。分離したSfull-tタンパク質を陰性染色した後、電子顕微鏡でタンパク質の形態を観察して三量体の形成を確認した(
図5E)。
(実施例6)
三量体を形成するS2eの組換えタンパク質のサイズ排除カラムクロマトグラフィーによる分離精製
【0075】
Ni2+-NTA親和性カラムで分離精製したS2s-tの組換えタンパク質を濃縮し、これらを再びサイズ排除カラムクロマトグラフィーを用いて分離精製した。カラムで確保した切片を7番から20番までをSDS/PAGEにより展開し、これを抗His抗体を用いてウェスタンブロットを行い、S2s-tの組換えタンパク質の位置と溶出した量を確認した(
図6)。
(実施例7)
新型コロナウイルス植物ワクチン候補物質の実験動物における免疫原性評価
【0076】
(1)新型コロナウイルス植物ワクチン候補物質の実験動物(マウス、Balb/c)における免疫原性評価
製造された植物ワクチンの免疫原性を評価するための動物実験は、6週齢の雌マウス(Balb/c)を使用し、実験群当たり5匹ずつ、免疫は4種類の用量(1、5、15、30μg)で実施した。各免疫抗原(Sfull-t)は、筋肉内の経路に2週間おきに計3回免疫し、免疫抗原に対する抗体の生成を確認するために、免疫前、1次免疫、2次免疫、3次免疫の2週間後に採血を実施して血清における抗体(IgGs)の生成および中和抗体の生成などの免疫原性評価を実施した。このとき、陰性対照群はPBSを免疫した。
【0077】
1)体液性免疫反応分析
製造された植物ワクチンの免疫原性評価は、血清内で抗原の特異的な抗体が生成されるかをELISAを通じて確認した。計2回または3回マウス免疫後に、十分なIgG力価が現れるのを確認し、本ワクチンによってS抗原のサブドメインであるS1、そしてS2の特異抗体がすべて生成されることを確認し、特にS2に対する力価が高く生成されることを確認することができた。また、免疫補助剤(水酸化アルミニウム)を同時に免疫したグループが同時投与しなかったグループに比べてIgGの力価と中和抗体の力価が多少高いことが確認された。
【0078】
2)中和抗体誘導分析
製造された植物ワクチンで免疫されたマウスの血液から血清を分離した後、一般的にウイルス中和抗体を測定する方法のうち、「最適標準」として知られるプラーク減少中和抗体測定(PRNT)法を用いて、SARS-CoV-2に対する抗体の中和能を確認した。中和抗体の力価を分析するために、国家病原体資源銀行から分譲を受けたSARS-CoV-2ウイルス(BetaCoV/韓国/KCDC03/2020)を用いて、ウイルスにマウスの血清(抗体)を処理した後、感染率の変化を確認した。また、最近報告されたイギリス変異株(B.1.1.7)、南アフリカ変異株(B.1.351)に対する交差反応分析も実施した。
【0079】
中和抗体の誘導は、IgGの生成結果と同様に免疫抗原単独で注入した集団より、免疫補助剤を同時に免疫した集団においてより高い中和抗体の力価を示し、低い濃度で免疫した血清でより高い濃度で免疫した後、採取した血清でより高い中華抗体価を示すことを確認した。また、陰性対照群であるPBSグループでは、中和抗体が誘導されていないことが確認できた(
図7C)。また、最近問題となっているイギリス、そして南アフリカ変異株に対しても交差反応が見られることを確認した(
図7D)。
【0080】
3)細胞媒介免疫反応分析
植物ワクチン免疫による細胞媒介免疫反応は、ELISPOT試験法によって分析した。ELISPOST分析は、商用IFN-γ ELISPOTキットを使用した。細胞媒介免疫反応は、対照群(PBSグループ)に比べ、植物ワクチンで免疫したグループにおいてIFN-γを分泌する脾臓細胞の数が増加し、抗原量とは有意に比例しないことが確認できた。そして、免疫補助剤による増加効果は現れなかった。結論として、植物ワクチン免疫により体液性免疫と共に細胞性免疫反応が一緒に誘導されることが確認できた(
図7E)。
(実施例8)
新型コロナウイルス植物ワクチン候補物質の実験動物(TGマウス)における保護効能評価
【0081】
本発明により製造された植物ワクチンの保護効能を評価するための動物実験は、SARS-CoV-2ヒト受容体ACE2が発現する6週齢形質転換マウス(B6.Cg-Tg(K18-ACE2)2Primn/J)を使用し、実験群当たり14匹ずつ(対照群12匹)、免疫は2種類の用量(15、30μg)で実施した。各免疫抗原は、筋肉内の経路に2週間おきに計2回免疫し、免疫抗原に対する抗体の生成を確認するために、免疫前、1次免疫、2次免疫の2週間後に採血を行い、血清における抗体(Igs)の生成および中和抗体の生成などの免疫原性評価を実施した。このとき、陰性対照群はPBSを免疫した。ウイルス攻撃接種は、最初の免疫から28日後、2x104pfu/マウスの濃度で鼻腔感染を実施した後、生存率と組織の力価を測定した(
図8A)。
【0082】
1)植物ワクチン免疫による抗体誘導分析
製造された植物ワクチンで免疫されたマウスの血液から血清を分離した後、血清内で抗原の特異な抗体が生成されるかELISAによって確認した。計2回の免疫後に十分なIg力価が現れることを確認し、本ワクチンによってS抗原のサブドメインであるS1、そしてS2の特異抗体がすべて生成されることを確認し、免疫補助剤(水酸化アルミニウム)を同時に免疫したグループが同時投与しなかったグループに比べIg力価が高いことが確認された(
図8B)。
【0083】
2)植物ワクチン免疫によるハムスターの攻撃接種による生存率および組織力価分析
最初の免疫から28日後、免疫原性が確認された形質転換マウスにおけるSARS-CoV-2の感染に対する保護能を確認するために、ウイルスを鼻腔内に感染させ、感染後14日間、体重、体温測定および臨床症状を観察した(
図8C)。感染後、2週間、体重変化を測定した結果、植物ワクチンで免疫したハムスターにおいて陰性対照群であるPBSグループに比べ少ない体重減少を示した。植物ワクチン免疫グループの生存率分析の結果、15と30μg免疫グループは100%生存し、15と30μgと免疫補助剤の同時投与集団は80%の生存率を示した。そして、対照群(PBS)免疫集団の生存率は、3匹のうち1匹生存(33%)と確認された(
図8D)。ウイルス攻撃接種に伴う肺組織内のウイルスの増殖様相および組織病理の所見を確認するために、感染後3、5、7日に解剖を行い、解剖した肺組織内のウイルス力価を測定した。植物ワクチン免疫グループにおいて対照群に比べ投与用量に比例してウイルス増殖の抑制が確認され、7日目に30μgと免疫補助剤の同時投与集団からはウイルスが検出されなかった(
図8E)。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
上記新型コロナウイルスのスパイクタンパク質においてS2タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含めることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
上記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列を含めることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
上記コロニン1(mCor1)の三量体モチーフ部位のタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号7の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号7の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
上記MacTプロモーターは、Macプロモーター塩基配列の3’末端塩基であるAをTに置き換えたプロモーターであり得、上記MacTプロモーターは配列番号15の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号15の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましい場合は80%以上、さらに望ましい場合は90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
上記組換えベクターは、RD29B-tの終結部位を追加して含めることができ、上記RD29B-tの終結部位は配列番号16の塩基配列を含めることができ、具体的には、上記遺伝子は配列番号16の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上、最も望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含めることができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することで確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べ、追加または削除(すなわちギャップ)を含めることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
組換えタンパク質の遺伝子のN末端とC末端にそれぞれBiPのシグナル配列とER保留シグナルであるHDELを含むことで、ER(小胞体)に高濃度に蓄積を誘導する効果を得ることができる。上記組換えベクターは、BiP(シャペロン結合タンパク質)およびHDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドからなる群から選択されるいずれかを追加して含めることができ、上記BiP(シャペロン結合タンパク質)は配列番号11の塩基配列を含めることができ、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)は配列番号12の塩基配列を含めることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
そして、これらの構造体をpTEXに導入し、最終的な植物発現vector9種を構築した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
(実施例2)
三量体を形成する新型コロナウイルスの組換えスパイクタンパク質をコードする遺伝子の発現および確認
【国際調査報告】