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特表2023-526776シロシビン、リゼルグ酸ジエチルアミド又は3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンでコーティングされた微小突起を有する経皮薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】シロシビン、リゼルグ酸ジエチルアミド又は3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンでコーティングされた微小突起を有する経皮薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/675 20060101AFI20230616BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61K31/675
A61K31/4745
A61K31/36
A61K9/00
A61K47/12
A61P25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565597
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021030437
(87)【国際公開番号】W WO2021222885
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/018,759
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522408256
【氏名又は名称】エマージェクス ユーエスエー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】マフモウド アメリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイレイ ルイス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA99
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD41H
4C076DD43H
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA12
4C086CB05
4C086DA38
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA12
(57)【要約】
うつ病、不安、心的外傷後ストレス障害、片頭痛及び群発性頭痛を含む特定の健康状態の治療のために治療濃度のシロシビン、LSD又はMDMAを使用する組成物、デバイス及び方法が本明細書に開示される。マイクロニードル投与による皮内投与によってシロシビン、LSD又はMDMAを送達する方法及び装置も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数の微小突起を含む皮内送達システムであって、前記微小突起は、先端から基部まで測定された各微小突起の長さの約10%~80%を覆う固体製剤コーティングをその上に有し、前記コーティングは、治療有効量のシロシビン、LSD又はMDMAを含み、前記シロシビン、LSD又はMDMAの少なくとも95%が、前記システムを前記ヒト患者の前記角質層に適用した後約20分以内に前記システムから放出される、皮内送達システム。
【請求項2】
前記シロシビン、LSD又はMDMAの少なくとも95%が約10分以内に放出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シロシビン、LSD又はMDMAの少なくとも95%が約5分以内に放出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記製剤が賦形剤をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記治療有効量が約1mg~約10mgである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記治療有効量が約2mg~約5mgである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記製剤コーティングが酸をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記酸が酒石酸である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
室温で少なくとも6ヶ月間安定である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
室温で少なくとも12ヶ月間安定である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
それを必要とするヒト患者におけるうつ病を治療する方法であって、
a.皮内送達システムであって、
i.約3cm~約6cmのアレイに配置された複数の微小突起を有する使い捨てパッチアセンブリであって、前記アレイは、約200~約2000個の微小突起/cmの密度を有し、前記微小突起は、ヒト患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合されている、使い捨てパッチアセンブリ、
ii.その上に固体製剤コーティングが配置されており、前記コーティングは治療有効量のシロシビン、LSD又はMDMAを含む、前記微小突起、
iii.約10μm~約500μmの幅及び約30~約70度の先端角を有する、前記微小突起、
を含む皮内送達システムを提供する工程、及び
b.前記微小突起を前記患者の皮膚の選択された領域に適用する工程を含み、
前記シロシビン、LSD又はMDMAの少なくとも95%が、前記角質層への適用後約20分以内に前記システムから放出される、方法。
【請求項12】
前記シロシビン、LSD又はMDMAの少なくとも95%が約10分以内に放出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シロシビン、LSD又はMDMAの少なくとも95%が約5分以内に放出される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量が約1mg~約10mgである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量が約2mg~約5mgである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記システムが自己投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記システムが患者の集団に投与されると、統計的に有意な数の患者が、ベックうつ病質問票(BDI)、疫学研究用うつ病尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale:CES-D)、EQ-5D、HRSD、MADRS、及びそれらの組合せからなる群より選択される方法又は尺度によって測定される場合に、うつ病に対して首尾よく治療される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
装着時間が約5~30分である、請求項12に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月1日に出願された米国仮特許出願第63/018,759号の利益を主張するものであり、その全体が、法律によって許容される最大限まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬品の経皮又は皮内送達の分野に関し、より詳細には、シロシビン、リゼルグ酸ジエチルアミド(「LSD」)又は3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(「MDMA」)の送達に関する。
【背景技術】
【0003】
シロシビン(3-[2-(デメチルアミノ)エチル-1H-インドール-4-イル]二水素ホスファート)は、多数の種類のシビレタケ属(Psilocybe)キノコによって産生される天然産物である。シロシビンはトリプタミン誘導体であり、ヒトではリン酸基が体内で迅速に酵素的に切断されて、様々なセロトニン受容体のアゴニストであるシロシンが産生され、その最も重要なものはこの状況では5-HT2A受容体である(Carhart-Harris et al.,2014;Nichols,2004)。シロシビンは、C1217Pの化学式を有し、284.252g・mol-1のモル質量を有する。シロシビンは、水に可溶である。シロシビンの化学構造は、
【化1】
である。
【0004】
シロシビンは、主に肝臓で代謝される。シロシビンは、肝臓でシロシンに変換されると、初回通過効果を受け、それにより、その濃度は、全身循環に到達する前に大幅に低下する。次いで、活性シロシンは、グルクロン酸抱合されて尿中に排泄されるか、又は様々なシロシン代謝産物にさらに変換される。例えば、シロシンは、酵素モノアミンオキシダーゼによって分解され、4-ヒドロキシインドール-3-アセトアルデヒド、4-ヒドロキシトリプトフォール及び4-ヒドロキシインドール-3-酢酸を含む血漿中を循環することができるいくつかの代謝産物を産生する。(Passie T.,et al.,(2002)’’The pharmacology of psilocybin,’’Addiction Biology,7(4):357-64)。酵素によって分解されないシロシンは、代わりに、グルクロン酸との結合を介してグルクロニドを形成し、その後、尿中に排泄され得る。(Grieshaber AF,et al.,(2001)’’The detection of psilocin in human urine,’’Journal of Forensic Sciences,46(3):627-30)。
【0005】
経口投与した場合、163±64分の半減期としてのシロシビンは、静脈内投与した場合と比較して、その半減期は74.1±19.6分である。経口摂取されたシロシビンは約50%のバイオアベイラビリティを有し、シロシンは親化合物の投与の20分以内に血漿中で検出可能である
。動物における試験に基づいて、摂取されたシロシビンの約50%が胃及び腸を通じて吸収され、24時間以内に、吸収されたシロシビンの約65%が尿中に排泄され、さらに15~20%が胆汁及び糞便中に排泄される。このようにして8時間以内にほとんどの薬物が排出されるが、摂取から7日後の尿中にシロシビンが検出されている。(Matsushima Y.,et al.,(2009)’’Historical overview of psychoactive mushrooms’’,Inflammation and Regeneration,29(1):47-58)。
【0006】
シロシビンは、知覚、気分、意志、認知及び自己体験を含むすべての精神機能の著しい変化を特徴とする、感覚知覚、感情、思考及び自己感覚の著しい変化を容易に誘発する(Geyer&Vollenweider,2008;Studerus,Kometer,Hasler&Vollenweider,2011)。これらの著しい変化は、しばしば、神秘型体験と呼ばれる。シロシビン治療中に起こる神秘型体験の測定は、うつ症状及び不安症状の減少を含む、行動及び感情への後の影響を予測するために繰り返し観察されている(Griffiths et al.,2016;MacLean,Johnson,&Griffiths,2011;Ross et al.,2016)。
【0007】
非臨床試験は、ヒトと同様に、シロシビンをラットに経口投与すると、アルカリホスファターゼ及び非特異的エステラーゼによって腸粘膜でシロシンに迅速に脱リン酸化され、シロシンの総体積のおよそ50%が消化管から吸収されることを実証している(Kalberer et al.,1962)。最大血漿中レベルは、およそ90分後に達成される(Chen et al.,2011)。全身投与された場合(すなわち、腸を迂回)、初期のシロシビン代謝は組織ホスファターゼによって行われ、インビトロ試験は、腎臓が最も活性な代謝器官の1つであることを示している(Horita&Weber,1961)。
【0008】
最近の証拠は、サイケデリックアゴニストが、非サイケデリック5HT2Aアゴニストにはみられない異なる生物学的効果を有することを示唆している。サイケデリックであるが非サイケデリックではない5HT2Aアゴニストは、受容体-受容体相互作用を介して腹側線条体におけるドーパミンD2受容体を介したシグナル伝達を増強することが示されており、このことは、この領域におけるドーパミン活性の増加が、シロシビンに応答した多幸感と相関することを考慮すると(Vollenweider,Vontobel,Hell,&Leenders,1999)、また、D2受容体における異常が、大うつ病を有する患者において同じ脳領域において報告されていることを考慮すると(Pei et al.,2010)、重要な関心事である。最近の試験は、サイケデリック及び非サイケデリック5HT2Aアゴニストも錐体ニューロンにおける細胞内シグナル伝達経路を差次的に調節し、その結果、β-アレスチン2及び初期増殖応答タンパク質1(EGR1)などの下流シグナル伝達経路の発現が異なることを示している(Gonzalez-Maeso et al.,2007;Schmid,Raehal,&Bohn,2008)。5HT2Aアゴニズムは古典的なサイケデリック薬の主要な作用として広く認識されているが、シロシビンは、広範囲の他のシナプス前及びシナプス後セロトニン及びドーパミン受容体、並びにセロトニン再取込みトランスポーターに対する親和性がより低い(Tyls,Palenicek,&Horacek,2014)。シロシビンは5HT1A受容体を活性化し、これは抗うつ/抗不安効果に寄与する可能性がある。
【0009】
分子3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)は、2つのエナンチオマー、S(+)-MDMA及びR(-)-MDMAを有するキラル分子であり、S(+)-MDMAは、R(-)-MDMAよりも強力である(Shulgin,A.T.,The background and chemistry of MDMA.J Psychoactive Drugs,1986.18(4):p.291-304:Lyon,R.A.,R.A.Glennon,and M.Titeler,3,4-Methylenedioxymethamphetamine(MDMA):stereoselective interactions at brain 5-HT1 and 5-HT2 receptors.Psychopharmacology(Berl),1986.88(4):p.525-6)。これまでのヒトにおける研究及び非臨床試験の大部分は、ラセミMDMA、又は等量の両方のエナンチオマーを含有する混合物を使用している。げっ歯類における薬物弁別の試験及び霊長類における自己投与されたMDMAエナンチオマーの試験は、MDMAエナンチオマーが異なる生理学的効果及び報酬効果をもたらす可能性があり、ラセミ体として投与された場合に両者の間にいくらかの相乗効果がある可能性があることを示唆している(Fantegrossi,W.E.,et al.,Discriminative stimulus effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine and its enantiomers in mice:pharmacokinetic considerations.J Pharmacol Exp Ther,2009.329(3):p.1006-15;Yarosh,H.L.,et al.,MDMA-like behavioral effects of N-substituted piperazines in the mouse.Pharmacol Biochem Behav,2007.88(1):p.18-27]Murnane,K.S.,et al.,Endocrine and neurochemical effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine and its stereoisomers in rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther,2010.334(2):p.642-50;Fantegrossi,W.E.,et al.,3,4-Methylenedioxymethamphetamine(MDMA,’’ecstasy’’)and its stereoisomers as reinforcers in rhesus monkeys:serotonergic involvement.Psychopharmacology(Berl),2002.161(4):p.356-64;Fantegrossi,W.E.,et al.,Role of dopamine transporters in the behavioral effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)in nonhuman primates.Psychopharmacology(Berl),2009;McClung,J.,W.Fantegrossi,and L.L.Howell,Reinstatement of extinguished amphetamine self-administration by 3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)and its enantiomers in rhesus monkeys.Psychopharmacology(Berl),2010.210(1):p.75-83;Murnane,K.S.,et al.,The neuropharmacology of prolactin secretion elicited by 3,4-methylenedioxymethamphetamine(’’ecstasy’’):a concurrent microdialysis and plasma analysis study.Horm Behav,2012.61(2):p.181-90.)。
【0010】
LSDは、セロトニン、ドーパミン及びノルエピネフリン受容体の直接活性化を含む複雑な薬理学的プロファイルを有する。さらに、その主要な作用部位の1つは、5HT2A及び5HT2C受容体活性化並びに遺伝子発現の変化に関連する二次メッセンジャーにおける化合物特異的(「アロステリック」)変化の作用部位である。LSDの幻覚誘発作用は、5HT2A及び5HT2C受容体におけるアゴニズムに起因する可能性があり(Aghajanian and Marek 1999;Nichols 2004)、ラットにおける少なくとも1つの薬物弁別試験では、LSD刺激キューの排除において5HT2A受容体アンタゴニスト(リタンセリン)が5HT2Cアンタゴニスト(SB 46349B)よりも成功したことが見出された(Appel,West et al.2004)。しかしながら、LSDはまた、5HT1A、5HT1B、5HT1D、5HT5A、5HT6及び5HT7受容体を含む、既知のセロトニン受容体の大部分におけるアゴニストである(Boess and Martin 1994;Eglen,Jasper et al.1997;Hirst,Abrahamsen et al.2003;Nichols and Sanders-Bush 2002)。LSDが有意な親和性を示さない唯一のセロトニン受容体は5HT3受容体であり、Gタンパク質共役受容体ではなくリガンド開口型イオンチャネルである唯一のセロトニン受容体である。
【0011】
LSDはまた、ドーパミンD1及びD2受容体に対する親和性を有する(Creese et al.1975;Nichols et al.2002)。げっ歯類における薬物弁別試験は、ドーパミン受容体が、5HT2A活性化に関連する変化の後及びそれに加えて現れる効果をもたらす役割を果たす可能性があることを示唆しており(Marona-Lewicka and Nichols 2007;Marona-Lewicka et al.2005)、行動観察は、LSDがドーパミン系を介して何らかの効果をもたらす可能性があることを示唆している(Burt,Creese et al.1976;Chiu and Mishra 1980;Watts,Lawler et al.1995)。LSDがαアドレナリン作動性受容体に対して親和性を有するといういくつかの証拠がある(Marona-Lewicka and Nichols 1995;U’Prichard et al.1977)。クロニジンは、LSDを認識するように訓練されたラットにおいてLSD刺激を増強し、この効果は、これらの受容体に対する少なくとも間接的な作用を示唆する(Marona-Lewicka and Nichols 1995)。対照的に、LSDは、ヒスタミン受容体に対する親和性がほとんど又は全くないようであり(Green,Weinstein et al.1978;Nichols,Frescas et al.2002)、アセチルコリン部位での作用の唯一の証拠は間接的である。インビトロ試験はまた、LSDが微量アミン受容体(TAR)におけるアゴニストであることを示唆している(Bunzow,Sonders et al.2001)。刺激剤及びエンタクトゲン(MDMA様薬物)もこれらの受容体を活性化することを考えると、微量アミン受容体における活性の機能的意義は不明のままである(Bunzow,Sonders et al.2001;Miller,Verrico et al.2005)。
【0012】
シロシビン、MDMA及びLSDを含む臨床試験は、大うつ病性障害を含むうつ病、不安、悲嘆、心的外傷後ストレス障害、アルツハイマー病、軽度認知障害、強迫性障害、神経性食欲不振、片頭痛、群発性頭痛、外傷後頭痛、アルコール依存症、ニコチン依存症、オピオイド使用障害、コカイン関連障害、ステージIVメラノーマ、癌、パーキンソン病、精神病、青年期の行動、青年期の発達、及び意識の覚醒状態の変化を含む様々な健康状態に対する有効な治療としての可能性を評価するために、完了しているか、進行中であるか、又は検討中である。
【0013】
医薬製剤での使用に好適な経口投与用のシロシビンの合成バージョンが、以前に開発されている。米国特許第10,519,175号明細書は、結晶性シロシビン、又は多形A、多形A’、多形B、及び水和物などの他の形態などの同型構造変異体を含む異なる多形形態のシロシビンを含む剤形を経口投与することを記載している。
【0014】
シロシビン、LSD及びMDMAを投与する現在利用可能な方法は、経口投与を含み、これにはいくつかの欠点がある。例えば、上記の標的健康状態を有する一部の患者は、経口投与に一貫して反応することができず、経口治療は、標的健康状態に関連し得る悪心、嘔吐、又は胃腸の問題に苦しんでいる患者にとって無効及び/又は不快である場合がある。経口製品はまた、特にエピソードの初期に、不十分な緩和を引き起こす吸収の遅延及び作用の比較的遅い発現を特徴とする。この遅延は、特に群発性頭痛のエピソードがしばしば30分以下続く片頭痛及び群発性頭痛などの健康状態における重大な障害であり、経口投与治療を無効にする。
【0015】
さらに、上記のように、シロシビンが経口投与される場合、投与されたシロシビンの約50%のみが胃及び腸によって実際に吸収され、治療有効濃度を達成するためにはより大きな用量を必要とする。吸収されたシロシビンは、肝臓で初回通過代謝を受け、血液中を循環することができるいくつかの代謝産物を産生する。シロシビンの経口投与は高用量を必要とし、いくつかの望ましくない代謝産物を産生するだけでなく、経口投与されたシロシビンの半減期は163±64分であるため、シロシビンは静脈内投与された場合よりも長く体内に留まる。
【0016】
現在、シロシビン、LSD及びMDMAの治療的使用に適用されていないが、いくつかの伝統的な非経口薬物投与経路もまた、その使用を不利にする欠点を有する。例えば、経皮イオン導入、パッチ及び液体注入器は、皮膚刺激及び瘢痕化、疼痛並びに治療有効用量を送達することができないという欠点を有する。皮下注射も同様に、調製が困難である、針恐怖症、鋭利物廃棄、偶発的な穿刺、切断、及び針による送達に関連する交差汚染など、その使用に関連するマイナス面を有する。
【0017】
したがって、(a)経口投与よりも速い作用の発現を有するが、針に関連する問題がない、(b)片頭痛に関連する胃鬱血、悪心及び嘔吐などの意図される健康状態のいくつかの胃への影響によって引き起こされる吸収を制限する可能性がある経口経路を回避する、(c)食物相互作用の可能性を軽減し、初回通過代謝を回避し、薬物相互作用の可能性を低下させる、(d)患者に好ましい(急速な発現であるが注射ではない、又は不快な味/臭いを伴わない)、(e)副作用を軽減する低い吸収性を有する、(f)標的健康状態に関連するエピソードの最初の徴候での使用のために患者が簡便に携帯することができる、(g)迅速に、簡便に、かつ安全に自己投与することができる、シロシビン、LSD及びMDMAの経口投与に代わる治療的代替物によって利点が達成され得る。
【0018】
したがって、経口投与の副作用、又は他の非経口投与経路に関連する副作用なしに、シロシビン、LSD又はMDMAの用量を効果的に送達することができる投与経路が当技術分野で必要とされている。本開示は、とりわけ、これらの課題及びニーズを満たす。例えば、出願人は、シロシビン、LSD又はMDMAの経皮送達が、皮膚の不透過性が困難であるにもかかわらず、経口投与後にみられる範囲又はそれより高い血漿中濃度で治療有効量のシロシビン、LSD又はMDMAを迅速に送達することができると考える。
【0019】
さらに、注射に匹敵する吸収速度のために改善された有効性を有し、携帯可能であり、針恐怖症、鋭利物廃棄、及び偶発的な穿刺、切断、及び針による送達に関連する交差汚染の問題を回避しながら調製するのが容易なシロシビン、LSD又はMDMA投与の経路が必要とされている。
【0020】
さらに、当技術分野では、アレイ上の残留薬物の問題、又はパッチ上の製剤コーティングの不均一性若しくはパッチへの製剤の付着の困難性などの製造上の不一致の問題を引き起こすことなく、パッチを正確かつ均一にコーティングすることができる経皮送達によるシロシビン、LSD又はMDMA投与の効果的な方法が必要とされている。有効な薬物送達のために経皮マイクロニードルパッチを使用する多くの試みがなされてきた。しかしながら、マイクロニードルシステムからの薬物の迅速な放出及びマイクロニードルシステムによる迅速な治療を達成し、有効なマイクロニードルの形状及びサイズを最適化及び開発しながら、十分な用量の薬物も含有することは、困難であることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第10,519,175号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Carhart-Harris et al.,2014
【非特許文献2】Nichols,2004
【非特許文献3】Passie T.,et al.,(2002)“The pharmacology of psilocybin,”Addiction Biology,7(4):357-64
【非特許文献4】Grieshaber AF,et al.,(2001)“The detection of psilocin in human urine,”Journal of Forensic Sciences,46(3):627-30
【非特許文献5】Brown et al.,2017
【非特許文献6】Hasler,Bourquin,Brenneisen,Bar,&Vollenweider,1997
【非特許文献7】Matsushima Y.,et al.,(2009)“Historical overview of psychoactive mushrooms”,Inflammation and Regeneration,29(1):47-58
【非特許文献8】Geyer&Vollenweider,2008
【非特許文献9】Studerus,Kometer,Hasler&Vollenweider,2011
【非特許文献10】Griffiths et al.,2016
【非特許文献11】MacLean,Johnson,&Griffiths,2011
【非特許文献12】Ross et al.,2016
【非特許文献13】Kalberer et al.,1962
【非特許文献14】Chen et al.,2011
【非特許文献15】Horita&Weber,1961
【非特許文献16】Vollenweider,Vontobel,Hell,&Leenders,1999
【非特許文献17】Pei et al.,2010
【非特許文献18】Gonzalez-Maeso et al.,2007
【非特許文献19】Schmid,Raehal,&Bohn,2008
【非特許文献20】Tyls,Palenicek,&Horacek,2014
【非特許文献21】Shulgin,A.T.,The background and chemistry of MDMA.J Psychoactive Drugs,1986.18(4):p.291-304
【非特許文献22】Lyon,R.A.,R.A.Glennon,and M.Titeler,3,4-Methylenedioxymethamphetamine(MDMA):stereoselective interactions at brain 5-HT1 and 5-HT2 receptors.Psychopharmacology(Berl),1986.88(4):p.525-6
【非特許文献23】Fantegrossi,W.E.,et al.,Discriminative stimulus effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine and its enantiomers in mice:pharmacokinetic considerations.J Pharmacol Exp Ther,2009.329(3):p.1006-15
【非特許文献24】Yarosh,H.L.,et al.,MDMA-like behavioral effects of N-substituted piperazines in the mouse.Pharmacol Biochem Behav,2007.88(1):p.18-27
【非特許文献25】Murnane,K.S.,et al.,Endocrine and neurochemical effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine and its stereoisomers in rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther,2010.334(2):p.642-50
【非特許文献26】Fantegrossi,W.E.,et al.,3,4-Methylenedioxymethamphetamine(MDMA,“ecstasy”)and its stereoisomers as reinforcers in rhesus monkeys:serotonergic involvement.Psychopharmacology(Berl),2002.161(4):p.356-64
【非特許文献27】Fantegrossi,W.E.,et al.,Role of dopamine transporters in the behavioral effects of 3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)in nonhuman primates.Psychopharmacology(Berl),2009
【非特許文献28】McClung,J.,W.Fantegrossi,and L.L.Howell,Reinstatement of extinguished amphetamine self-administration by 3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA)and its enantiomers in rhesus monkeys.Psychopharmacology(Berl),2010.210(1):p.75-83
【非特許文献29】Murnane,K.S.,et al.,The neuropharmacology of prolactin secretion elicited by 3,4-methylenedioxymethamphetamine(“ecstasy”):a concurrent microdialysis and plasma analysis study.Horm Behav,2012.61(2):p.181-90
【非特許文献30】Aghajanian and Marek 1999
【非特許文献31】Appel,West et al.2004
【非特許文献32】Boess and Martin1994
【非特許文献33】Eglen,Jasper et al.1997
【非特許文献34】Hirst,Abrahamsen et al.2003
【非特許文献35】Nichols and Sanders-Bush 2002
【非特許文献36】Creese et al.1975
【非特許文献37】Nichols et al.2002
【非特許文献38】Marona-Lewicka and Nichols 2007
【非特許文献39】Marona-Lewicka et al.2005
【非特許文献40】Burt,Creese et al.1976
【非特許文献41】Chiu and Mishra 1980
【非特許文献42】Watts,Lawler et al.1995
【非特許文献43】Marona-Lewicka and Nichols 1995
【非特許文献44】U’Prichard et al.1977
【非特許文献45】Green,Weinstein et al.1978
【非特許文献46】Nichols,Frescas et al.2002
【非特許文献47】Bunzow,Sonders et al.2001
【非特許文献48】Miller,Verrico et al.2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本開示は、片頭痛、群発性頭痛、うつ病、大うつ病性障害、不安、悲嘆、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、アルツハイマー病、軽度認知障害、強迫性障害、神経性食欲不振、群発性頭痛、外傷後頭痛、アルコール依存症、ニコチン依存症、オピオイド使用障害、コカイン関連障害、ステージIVメラノーマ、癌、パーキンソン病、精神病、青年期の行動、青年期の発達、及び意識の覚醒状態の変化を含む様々な健康状態の治療に有用な医薬製品の組成物、デバイス、治療方法、キット及び製造方法に関する。より具体的には、本開示は、活性医薬成分としてのシロシビン、LSD又はMDMAの、それを必要とする対象への投与、すなわち、経皮投与若しくは皮内投与、又はそうでなければ皮膚を介した投与であって、経口投与と比較して用量を節約する治療有効用量のシロシビン、LSD又はMDMAを、迅速な投与のために使いやすく携帯可能な形式で投与することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
特に、本開示は、マイクロニードル投与を介してシロシビン、LSD又はMDMAを皮内送達する方法を提供する。一実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAの経皮送達は、一般に、薬物でコーティングされているか、薬物のリザーバと流体接触しているか、又はその他の方法でワクチンを含む複数の微小突起(又は「針」又は「マイクロニードル」又は「アレイ」)を含む微小突起部材を有するパッチアセンブリを含む。パッチアセンブリは、接着性成分をさらに含み、好ましい実施形態では、微小突起部材及び接着性成分は、リテーナリングに取り付けられる。微小突起は、薬物を血流に送達するために皮膚に適用されるか、又はより詳細には、治療有効量を血流に提供するのに十分な深さで角質層を貫通又は穿孔するように適合される。一実施形態では、薬物でコーティングされたマイクロニードルの皮膚への挿入は、約10ミリ秒未満で十分な衝撃エネルギー密度を付与する手持ち式アプリケータによって制御される。
【0025】
好ましくは、微小突起部材は、治療効果を提供するのに十分な用量で、シロシビン、LSD又はMDMAなどの薬物を含む生体適合性コーティング製剤を含む。コーティングは、皮膚を横切る薬物の投与を容易にするための1つ以上の賦形剤又は担体をさらに含んでもよい。例えば、生体適合性コーティング製剤は、シロシビン、LSD又はMDMAと、最初に液体形態で微小突起に適用され、次いで乾燥されて固体生体適合性コーティングを形成する水溶性担体とを含む。
【0026】
好ましい実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMA、賦形剤、コーティング及び乾燥プロセスは、驚くほど急速な溶解速度を有する非結晶性(非晶質)である薬物コーティングをもたらす。この実施形態では、コーティングは、マイクロニードルを介して皮膚に適用されると、表皮及び血流への薬物の迅速な取込みに十分な速度で溶解する。一実施形態では、そのような速度は、20分未満、又は15分未満、又は10分未満、又は5分未満、又は2.5分未満、又は1分未満である。この速度は、急速な片頭痛及び群発性頭痛の緩和、並びにうつ病、不安又はPTSDの緩和をもたらす。
【0027】
好ましくは、この迅速な取込みは、投与後1時間で患者の約10%超が疼痛又は症状を伴わず、より好ましくは患者の約20%超、最も好ましくは患者の約25%以上が疼痛又は症状を伴わない。別の実施形態では、この迅速な取込みは、患者の40%超が投与後1時間で疼痛若しくは症状の緩和を達成すること、又は患者の50%超、又は患者の約65%以上が投与後1時間で疼痛若しくは症状の緩和を達成することにつながる。好ましくは、薬物コーティングは貯蔵安定であり、ガンマ線又は電子ビーム照射後1年間、より好ましくは2年間非晶質のままである。
【0028】
そのような皮内送達システムは、患者が直接容易に使用するように適合されたデバイスの形態であってもよい。例えば、システムは、(a)薬物製品製剤でコーティングされ、乾燥されたチタンマイクロニードルを有する使い捨て微小突起部材であって、微小突起部材は、接着性バッキングの中心に位置し、それによりパッチを形成する、微小突起部材、及び(b)マイクロニードルを角質層に押し込むのに十分な定められた適用エネルギーでパッチが皮膚に適用され、それにより薬物吸収をもたらすことを確実にする再使用可能な手持ち式アプリケータを含む薬物-デバイス組合せ製品であってもよい。一実施形態では、送達システムは、約0.2mg~約10mgのシロシビン、LSD若しくはMDMA、又は約1mg~約4mg、又は約1mg、又は約1.9mg、又は約2mg、又は約3mg、又は約3.8mg、又は約4mg、又は約5mg、又は約6mg、又は約7mg、又は約8mg、又は約9mgのシロシビン、LSD若しくはMDMAを含むパッチを含む。一実施形態では、送達システムは、約0.2mg~約10mgのシロシビン、LSD若しくはMDMA、又は約1mg~約4mg、又は約1mg、又は約1.9mg、又は約2mg、又は約3mg、又は約3.8mg、又は約4mg、又は約5mg、又は約6mg、又は約7mg、又は約8mg、又は約9mg、又は約1mg超、又は約1.9mg超、又は約2mg超、又は約3mg超、又は約3.8mg超、又は約4mg超、又は約5mg超、又は約6mg超、又は約7mg超、又は約8mg超、又は約9mg超のシロシビン、LSD若しくはMDMAを皮内送達するように設計される。他の実施形態では、用量は、3cm当たり最大約2mgである。
【0029】
別の実施形態では、本開示は、シロシビン、LSD又はMDMAをそれを必要とする患者に経皮又は皮内投与する方法であって、(a)患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数の微小突起を有する微小突起部材を含む、シロシビン、LSD又はMDMAを皮内送達するように適合された経皮パッチを提供する工程であって、微小突起は、微小突起上に部分的又は完全に配置された生体適合性コーティングを含み、コーティングは、治療有効量のシロシビン、LSD又はMDMAを含む、工程、及び(b)デバイスの微小突起部材を患者の皮膚に適用する工程であって、それにより、複数の微小突起が角質層を貫通又は穿孔し、シロシビン、LSD又はMDMAを患者の血流に送達する、工程を含む、方法に関する。一実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAは、およそ0.2~10mgの総量で微小突起上にコーティングされ、そのうち、そのような用量のおよそ50%、又は60%、又は65%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%、又は100%が投与後に患者の血流に達し、好ましくは、そのような用量のおよそ50%、又は60%、又は65%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%超が投与後に患者の血流に達する。
【0030】
本開示は、それを必要とするヒト患者におけるうつ病、不安、PTSD、片頭痛又は群発性頭痛を治療又は軽減する方法であって、経口、鼻腔内、舌下又はイオン導入で投与される治療有効用量よりも速く血流中に治療濃度のシロシン(シロシビンの活性代謝産物)、LSD又はMDMAを産生する治療有効量のシロシビン、LSD又はMDMAの経皮又は皮内投与を含む、方法を包含する。一態様では、患者におけるうつ病、不安、PTSD、片頭痛又は群発性頭痛を治療又は軽減する方法は、大部分の対象において約2分もの速さであるが約30~40分より遅くない血漿中Tmaxをもたらす。別の態様では、本方法は、13ng/mL未満のシロシン、LSD又はMDMAの最大血漿中濃度(Cmax)をもたらす。
【0031】
本発明のデバイス、組成物、方法などのさらなる実施形態は、以下の説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。前述及び以下の説明から理解されるように、本明細書に記載の各及びすべての特徴、並びにそのような特徴の2つ以上の各及びすべての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。さらに、任意の特徴又は特徴の組合せは、任意の実施形態又は態様から特に除外される場合がある。さらなる態様及び実施形態は、特に添付の実施例及び図面と併せて考慮される場合、以下の説明及び特許請求の範囲に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
様々な態様及び実施形態を本明細書で説明する。しかしながら、これらの態様及び実施形態は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、本明細書に記載の組成物、デバイス、治療方法、キット及び医薬製品の製造方法をどのように作製及び使用するかを当業者に知らせるために徹底的かつ完全であるように提供される。本明細書で使用される用語は、本明細書に記載の組成物、デバイス、治療方法、キット及び製造方法を説明するためのものであり、本発明の範囲は、本出願に付随する特許請求の範囲並びにそれに由来する継続出願及び分割出願に付随する特許請求の範囲によってのみ限定されるので、明示的に述べられない限り、限定することを意図するものではない。本明細書で引用されるすべての書籍、出版物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
前述及び以下の説明から理解されるように、本明細書に記載の各及びすべての特徴、並びにそのような特徴の2つ以上の各及びすべての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。例えば、その使用が任意の他の実施形態と一致する任意の実施形態が企図され、したがってこの説明に含まれる。他の態様及び実施形態は、添付の実施例及び図面と併せて考慮される場合にも、以下の説明及び特許請求の範囲に記載される。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載の及び/又は本開示を読めば当業者には明らかになるであろう種類の1つ以上の方法及び/又は工程を含む。
【0035】
A.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語及び語句は、反対のことが明確に示されていない限り、又は用語若しくは語句が使用される文脈から明らかでない限り、用語及び語句が当技術分野で獲得した意味を含む。本明細書に記載の特定の方法及び材料を含む、本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができる。
【0036】
特に明記しない限り、個々の数値の使用は、値の前に「約」又は「およそ」という語が先行しているかのような近似として記載される。同様に、本出願で指定された様々な範囲の数値は、特に明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値及び最大値の両方の前に「約」又は「およそ」という語が先行しているかのような近似として記載される。このようにして、記載された範囲の上下の変動を使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。本明細書で使用される場合、数値に言及するときの「約」及び「およそ」という用語は、開示された主題が最も密接に関連している当業者、又は問題の範囲若しくは要素に関連する当業者にとっての平易で通常の意味を有するものとする。厳密な数値境界からの広がりの量は、当業者に知られている要因に依存する。例えば、考慮される可能性がある要因のいくつかは、要素の重要性及び/又は所与の量の変動が特許請求される主題の性能に及ぼす影響、並びに当業者に知られている他の考慮事項を含む。本明細書で使用される場合、異なる数値に対して異なる量の有効数字を使用することは、「約」又は「およそ」という語の使用が特定の数値又は範囲を広げる又は狭めるのにどのように役立つかを限定することを意味するものではない。一般的なこととして、「約」又は「およそ」は数値を広げる。範囲の開示は、最小値と最大値との間のすべての値と、「約」又は「およそ」という用語の使用によって与えられる範囲の広がりとを含む連続的な範囲として意図されている。したがって、本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを意図しており、各別個の値は、あたかもそれが本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0037】
「非晶質」という用語は、非結晶性固体、すなわち結晶に特徴的な長距離秩序を欠く固体を意味する。
【0038】
「曲線下面積」又は「AUC」という用語は、血漿中の薬物濃度の時間に対するプロットにおける曲線下面積(定積分として数学的に知られている)を意味する。典型的には、面積は、薬物が投与された時点で開始し、血漿中の濃度が無視できる場合に終了するように計算される。実際には、薬物濃度を特定の離散時点で測定し、台形法則を使用してAUCを推定する。
【0039】
本明細書で使用される「生体適合性コーティング」という用語は、十分な接着特性を有し、生物学的活性剤(a/k/a活性医薬成分、又は治療剤、又は薬物)との有害な相互作用がない(又は最小の)「コーティング製剤」から形成されたコーティングを意味し、含む。
【0040】
本明細書で使用される「生物学的同等」という用語は、同じ活性成分を含有する2つ以上の医薬製品、組成物又は方法が互いに比較される科学的根拠を示す。「生物学的同等性」とは、適切にデザインされた試験で投与した場合に、医薬同等物又は医薬代替物中の活性剤が作用部位で利用可能になる速度及び程度に有意差がないことを意味する。生物学的同等性は、2つの組成物の薬物動態パラメータを比較するインビボ試験によって決定することができる。生物学的同等性試験でよく使用されるパラメータは、Tmax、Cmax、AUC0-inf、AUC0-tである。本文脈において、2つの組成物又は製品の実質的な生物学的同等性は、AUC及びCmaxについて0.80~1.25の間の90%信頼区間(CI)によって確立される。
【0041】
本明細書で使用される「群発性頭痛」という用語は、通常は毎日(発作は1日に最大8回再発する場合があるが)、1週間以上の期間再発する激しい頭痛の疼痛を特徴とする状態を指す。群発性頭痛の疼痛は、通常、頭部の片側に局在し(「片側性」)、通常は同じ側であるが、一部の患者では側方が異なり得る。疼痛は、通常、10分未満で最大強度に達し、15分~3時間(通常、30~60分)続く。症状の急速な発現及び短い持続時間のために、薬物が迅速に吸収される経路による治療が必要とされる。
【0042】
本明細書で使用される「コーティング製剤」という用語は、1つ以上の微小突起及び/又はそのアレイを含む送達表面をコーティングするために使用される、自由に流動する組成物又は混合物を意味し、含む。
【0043】
本明細書で使用される「乾燥剤」という用語は、水を吸収する剤、通常は化学剤を意味する。
【0044】
本明細書で使用される「電気輸送」という用語は、一般に、有益な剤、例えば薬物又は薬物前駆体が、皮膚、粘膜、爪などの体表面を通過することを指す。剤の輸送は、電位の印加によって誘導又は増強され、その結果、電流が印加され、剤を送達する若しくは剤の送達を増強するか、又は「逆」電気輸送の場合、剤をサンプリングする若しくは剤のサンプリングを増強する。人体への又は人体からの剤の電気輸送は、様々な方法で達成される可能性がある。
【0045】
「賦形剤」という用語は、薬物の希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、安定化剤などとして一般に使用される不活性物質を指し、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシンなど)、脂肪酸及びリン脂質(例えば、アルキルスルホネート、カプリレートなど)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)並びにポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を含むが、これらに限定されない。さらなる医薬賦形剤については、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第21版、LWW Publisher(2005)も参照されたい。
【0046】
本明細書で使用される「頭痛疼痛尺度」という用語は、患者が疼痛のレベルを定量化することを可能にするために使用される尺度を意味する。好ましくは、0~3の尺度が使用され、重度の疼痛は3の疼痛スコアを有し、中等度の疼痛は2のスコアを有し、軽度の疼痛は1のスコアを有し、疼痛なし(「疼痛がないこと(pain freedom)」とも呼ばれる)は0のスコアを有する。
【0047】
本明細書で使用される「皮内」又は「経皮」という語は、外科用ナイフでの切断又は皮下注射針での皮膚の穿孔など、皮膚を実質的に切断又は貫通することなく、活性剤(例えば、治療剤、例えば、薬物、医薬、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質)を皮膚を通して局所組織又は全身循環系に送達することを指す総称である。皮内剤送達には、受動拡散による送達、並びに電気(例えば、イオン導入)及び超音波(例えば、フォノフォレーシス)などの外部エネルギー源に基づく送達が含まれる。
【0048】
本明細書で使用される「皮内流動」という用語は、薬物の皮内送達速度を意味する。
【0049】
本明細書で使用される「微小突起部材」又は「マイクロニードルアレイ」などの用語は、一般に、角質層を貫通又は穿孔するための、好ましくはアレイに配置された複数の微小突起を含む微小突起群を意味する。微小突起部材は、金属又は他の剛性材料の薄いシートから複数の微小突起をエッチング又は打ち抜きし、構成を形成するためにシートの平面から微小突起を折り畳む又は曲げることによって形成することができる。あるいは、微小突起部材は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのプラスチック又はポリマーを含む他の材料で製造できる可能性がある。微小突起部材は、射出成形若しくは微小成形、微小電気機械システム(MEMS)などの他の既知の技術で、又は米国特許第6,083,196号明細書、同第6,091,975号明細書、同第6,050,988号明細書、同第6,855,131号明細書、同第8,753,318号明細書、同第9,387,315号明細書、同第9,192,749号明細書、同第7,963,935号明細書、同第7,556,821号明細書、同第9,295,714号明細書、同第8,361,022号明細書、同第8,633,159号明細書、同第7,419,481号明細書、同第7,131,960号明細書、同第7,798,987号明細書、同第7,097,631号明細書、同第9,421,351号明細書、同第6,953,589号明細書、同第6,322,808号明細書、同第6,083,196号明細書、同第6,855,372号明細書、同第7,435,299号明細書、同第7,087,035号明細書、同第7,184,826号明細書、同第7,537,795号明細書、同第8,663,155号明細書、並びに米国特許出願公開第20080039775号明細書、同第20150038897号明細書、同第20160074644号明細書及び同第20020016562号明細書に開示されているように、ストリップの各々の縁部に沿って微小突起を有する1つ以上のストリップを形成することによって、形成することができる。当業者には理解されるように、微小突起アレイが使用される場合、送達される治療剤の用量は、微小突起アレイのサイズ、密度などを変更することによって変更又は操作することもできる。
【0050】
本明細書で互換的に使用される「微小突起」及び「マイクロニードル」という用語は、生きている動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトの皮膚の下層の表皮層、又は表皮層及び真皮層へと、角質層の中に及び/又は角質層を通して貫通、穿孔又は切断するように適合された穿孔要素を指す。本発明の一実施形態では、穿孔要素は、1000ミクロン未満の突起長さを有する。さらなる実施形態では、穿孔要素は、500ミクロン未満、より好ましくは400ミクロン未満の突起長さを有する。微小突起は、およそ25~500ミクロンの範囲の幅及びおよそ10~100ミクロンの範囲の厚さをさらに有する。微小突起は、針、ブレード、ピン、パンチ、及びそれらの組合せなどの異なる形状に形成されてもよい。
【0051】
「最も厄介な他の症状」とは、疼痛に加えて、患者にとって最も厄介な症状、通常は片頭痛の症状を意味する。好ましくは、最も厄介な他の症状は、臨床試験の開始時に患者によって特定される。通常、最も厄介な他の症状は、悪心、羞明及び音恐怖症から選択される。
【0052】
「最も厄介な他の症状がないこと」とは、患者が薬物投与後の1つ以上の予め指定された時間に最も厄介な他の症状がないことを報告することを意味する。片頭痛患者にとって好ましい時間は、1時間、2時間及び4時間である。群発性頭痛患者にとって好ましい時間は、15分及び30分である。
【0053】
「悪心がないこと」とは、患者が薬物投与後の予め指定された期間に悪心がないことを報告することを意味する。
【0054】
「パッケージ」又は「包装」という用語は、「保存」又は「保管」への言及も含むと理解される。
【0055】
「疼痛がないこと」とは、患者が薬物投与後の1つ以上の予め指定された時間に頭痛の疼痛がないこと(頭痛疼痛スコア=0)を報告することを意味する。片頭痛患者にとって好ましい時間は、1時間、2時間及び4時間である。群発性頭痛患者にとって好ましい時間は、15分及び30分である。
【0056】
「疼痛緩和」は、患者が、薬物投与後の1つ以上の予め指定された期間に、頭痛の疼痛の軽減、中等度又は重度の疼痛(頭痛疼痛スコア=3又は2)から軽度の疼痛又は疼痛なし(頭痛疼痛スコア=1又は0)への軽減を報告することを意味する。片頭痛患者にとって好ましい時間は、1時間、2時間及び4時間である。群発性頭痛患者にとって好ましい時間は、15分及び30分である。
【0057】
「患者」及び「対象」という用語は、本明細書で互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物には、ヒトが含まれるが、これに限定されない。
【0058】
「シロシビン」という用語は、塩、エナンチオマー、ラセミ混合物、多形、類似体、プロドラッグ、誘導体、ホモログ及びそれらの非晶質形態を含むが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で使用される薬物「放出速度」は、単位時間当たりに剤形又は医薬組成物から放出される薬物の量、例えば、1時間当たりに放出される薬物のミリグラム(mg/hr)を指す。薬物剤形の薬物放出速度は、典型的には、インビトロ溶解速度、すなわち、適切な条件下及び好適な流体中で測定された単位時間当たりの剤形又は医薬組成物から放出された薬物の量として測定される。
【0060】
本明細書で使用される「安定な」又は「貯蔵安定な」という用語は、薬剤製剤を指し、薬剤製剤が、分解、破壊又は不活化を含む過度の化学的又は物理的変化を受けないことを意味する。本明細書で使用される「安定な」とは、コーティングを指し、機械的に安定であること、すなわちコーティングが堆積される表面からの過度の変位又は損失を受けないことも意味する。
【0061】
本明細書で使用される「治療的に有効な」又は「治療有効量」という用語は、所望の有益な結果を刺激又は開始するのに必要な生物学的活性剤の量を指す。本発明のコーティングに使用される生物学的活性剤の量は、所望の結果を達成するのに必要な量の生物学的活性剤を送達するのに必要な量であろう。実際には、これは、送達される特定の生物学的活性剤、送達部位、並びに生物学的活性剤の皮膚組織への送達のための溶解及び放出動態に応じて大きく変化するであろう。
【0062】
「Tmax」という用語は、送達開始から生物学的活性剤の最大血漿中濃度までの時間を指す。
【0063】
「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン」又は「MDMA」という用語は、塩、エナンチオマー、ラセミ混合物、多形、類似体、プロドラッグ、誘導体、ホモログ及びそれらの非晶質形態を含むが、これらに限定されない。
【0064】
「リゼルグ酸ジエチルアミド」又は「LSD」という用語は、塩、エナンチオマー、ラセミ混合物、多形、類似体、プロドラッグ、誘導体、ホモログ及びそれらの非晶質形態を含むが、これらに限定されない。
【0065】
B.皮内送達システム
本発明によるシロシビン、LSD又はMDMAを皮内送達するための装置及び方法は、角質層を通して下層の表皮層、又は表皮層及び真皮層へと穿孔するように適合された複数のマイクロニードル(又はそのアレイ)を有するマイクロニードル部材(又はシステム)を有する皮内送達システムを含む。
【0066】
一実施形態では、皮内送達システムは、接着性バッキングの中心に位置する微小突起部材からなる使い捨てパッチを含む経皮又は皮内薬物送達技術である。微小突起部材は、乾燥薬物製品製剤でコーティングされたチタン(又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のようなプラスチック若しくはポリマー材料を含む他の剛性材料)マイクロニードルを含む。パッチは、パッチアセンブリを形成するためにリテーナリングに取り付けられる。パッチアセンブリは、皮内送達システムを形成するために手持ち式アプリケータ内に取り外し可能に取り付けられる。アプリケータは、パッチが定められた適用速度及びエネルギーで皮内投与部位に適用されることを保証する。アプリケータは、単回使用のために設計されてもよく、再使用可能であってもよい。
【0067】
より詳細には、パッチは、関連する薬物の親水性製剤でコーティングされ、接着性バッキングに取り付けられた、およそ200~350ミクロン長のチタンマイクロニードルの約3~6cmのアレイを含み得る。パッチのマイクロニードルアレイ上にコーティングすることができる活性薬物の最大量は、薬物製剤の活性部分、薬物製剤中の賦形剤の重量、及びマイクロニードルアレイのコーティング可能な表面積に依存する。例えば、約1cm、2cm、3cm、4cm、5cm及び6cmのマイクロニードルアレイを有するパッチを使用してもよい。パッチは、各適用においてマイクロニードルを実質的に均一な深さまで皮膚内に押し込む手持ち式アプリケータで適用され、毛細血管床に近く、薬物コーティングの溶解及び吸収を可能にするが、皮膚内の神経終末は短い。典型的なパッチ装着時間は約15~45分以下であり、皮膚刺激の可能性を低下させる。約0.20~0.60ジュールの公称アプリケータエネルギーは、一般に、衝撃に対する感覚とアレイ貫通との間の良好なバランスを達成することができる。衝撃の瞬間の実際の運動エネルギーは、アプリケータのばねの不完全な伸長、パッチをそのリテーナリングから分離することによるエネルギー損失、及びその他の損失のために、これらの公称値よりも小さくなる可能性があり、これらは公称値のおよそ合計25%を占める可能性がある。出願人の技術のさらなる説明は、米国特許出願公開第20190070103号明細書に記載されている。
【0068】
1.アレイ設計
いくつかの変数は、特定の活性剤に利用されるアレイの種類において役割を果たす。例えば、異なる形状(例えば、米国特許出願公開第20190070103号明細書の図31に示されているような矢じり、フック、円錐形、又はワシントン記念塔、図1(A)~図1(B)に類似した形状)は、より高い薬物充填能力を可能にする場合があるが、微小突起の長さは、貫通のためのより大きな駆動力を提供するために増加させてもよい。角質層は約10~40μmの厚さを有し、微小突起は、角質層を貫通して薬物の送達を行うのに適切なサイズ、厚さ及び形状を有しなければならない。縮尺通りに描かれていない米国特許出願公開第20190070103号明細書の図31は、微小突起が角質層を貫通し、基材が皮膚の表面と接触するように、アレイがどのように皮膚と相互作用するかを示している。角質層を貫通しない基材又はアレイの基部(「ストリート」)へのコーティングの適用を回避しながら、角質層を貫通する微小突起上により厚いコーティングを達成することが有利である。より大きな表面積は、アレイの基部又はストリートに延びることなく、より厚いコーティングを可能にする。コーティングは微小突起にのみ適用される。さらに、コーティングを有するよりかさ高い突起に必要なより高い貫通力は、1cm当たりの突起のより長い長さ及びより低い密度によって補償される場合がある。
【0069】
本開示で使用されてもよい例示的な皮内送達システムには、米国特許第6,083,196号明細書、同第6,091,975号明細書、同第6,050,988号明細書、同第6,855,131号明細書、同第8,753,318号明細書、同第9,387,315号明細書、同第9,192,749号明細書、同第7,963,935号明細書、同第7,556,821号明細書、同第9,295,714号明細書、同第8,361,022号明細書、同第8,633,159号明細書、同第7,419,481号明細書、同第7,131,960号明細書、同第7,798,987号明細書、同第7,097,631号明細書、同第9,421,351号明細書、同第6,953,589号明細書、同第6,322,808号明細書、同第6,083,196号明細書、同第6,855,372号明細書、同第7,435,299号明細書、同第7,087,035号明細書、同第7,184,826号明細書、同第7,537,795号明細書、同第8,663,155号明細書、並びに米国特許出願公開第20080039775号明細書、同第20150038897号明細書、同第20160074644号明細書及び同第20020016562号明細書に記載されている薬物送達技術が含まれる。開示されるシステム及び装置は、皮膚の最外層(すなわち、角質層)を穿孔し、したがって剤流動を増強するために、様々な形状及びサイズの穿孔要素を使用する。穿孔要素は、一般に、パッド又はシートなどの薄い平坦な基材部材から垂直に延在する。穿孔要素は、典型的には小さく、いくつかはわずか約25~400ミクロンの微小突起長さ及び約5~50ミクロンの微小突起厚さを有する。これらの小さな穿孔/切断要素は、経皮/皮内剤送達を増強するために、角質層に対応して小さなマイクロスリット/マイクロカットを形成する。送達される活性剤は、好ましくは、固体の乾燥コーティングを形成するためにシロシビン、LSD又はMDMAベースの製剤で微小突起をコーティングすることによって、又は任意選択で、マイクロスリットが形成された後に角質層と連通するリザーバの使用によって、又は適用後に溶解する固体シロシビン、LSD又はMDMAベースの製剤から微小突起を形成することによって、微小突起の1つ以上に関連する。微小突起は、中実又は中空であり得、開口、溝、表面凹凸又は類似の変形など、コーティングの体積を受容及び/又は増強するように適合されたデバイス特徴をさらに含むことができ、特徴は、より多くの量のコーティングを堆積させることができる増加した表面積を提供する。マイクロニードルは、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又はポリマー材料などの同様の生体適合性材料から構成されてもよい。
【0070】
したがって、本開示は、以下の特徴を有するパッチ及びマイクロニードルアレイを包含する。
パッチサイズ:約1~20cm、又は約2~15cm、又は約4~11cm、又は約5cm、又は約10cm
基材サイズ:約0.5~10cm、又は約2~8cm、又は約3~6cm、又は約3cm、又は約3.13cm、又は約6cm
アレイサイズ:約0.5~10cm、又は約2~8cm、又は約2.5~6cm、又は約2.7cm、又は約5.5cm、又は約2.74cm、又は約5.48cm
密度(微小突起/cm):少なくとも約10個の微小突起/cm、又は約200~2000個の微小突起/cm、又は約500~1000個の微小突起/cm、又は約650~800個の微小突起/cm、又はおよそ725個の微小突起/cmの範囲。
微小突起/アレイの数:約100~4000、又は約1000~3000、又は約1500~2500、又は約1900~2100、又は約2000、又は約1987、又は約200~8000、又は約3000~5000、又は約3500~4500、又は約4900~4100、又は約4000、又は約3974。
微小突起長さ:約25~600ミクロン、又は約100~500ミクロン、又は約300~450ミクロン、又は約320~410ミクロン、又は約340ミクロン、又は約390ミクロン、又は約387ミクロン。他の実施形態では、長さは、1000ミクロン未満、又は700ミクロン未満、又は500ミクロン未満である。したがって、マイクロニードルは、皮膚を約25~1000ミクロンまで貫通する。
先端長さ:約100~250ミクロン、又は約130~約200ミクロン、又は約150~180ミクロン、又は約160~170ミクロン、又は約165ミクロン。
微小突起幅:約10~500ミクロン、又は約50~300ミクロン、又は約75~200ミクロン、又は約90~160ミクロン、又は約250~400ミクロン、又は約300ミクロン、又は約100ミクロン、又は約110ミクロン、又は約120ミクロン、又は約130ミクロン、又は約140ミクロン、又は約150ミクロン。
微小突起厚さ:約1ミクロン~約500ミクロン、又は約5ミクロン~300ミクロン、又は約10ミクロン~100ミクロン、又は約10ミクロン~50ミクロン、又は約20ミクロン~30ミクロン、又は約25ミクロン。
先端角:約10~70度、又は約20~60度又は約30~50度、又は約35~45度、又は約40度。
アレイ当たりの総活性剤:3cm当たり約0.1mg~10mg、又は約0.5mg~5mg、又は約1mg~4mg、又は約1mg、又は約1.9mg、又は約3.8mg、又は約2mg。
アレイ当たりの不活性成分の量:約0.1~10mg、又は約0.2~4mg、又は約0.3mg~2mg、又は約0.6mg、又は約0.63mg、又は約1.3mg、又は約1.26mg。あるいは、不活性成分の量は、活性剤よりも1~3倍少ないか、又は約0.033mg~約3.33mgである。
コーティング厚さ:約100μm~約500μm、又は約200μm~約350μm、又は約250μm~約290μm、又は約270μm。
微小突起当たりの活性剤:約0.01~約100μg、又は約0.1~10μg、又は約0.5~2μg、又は約1μg、又は約0.96μg。
【0071】
本発明の一実施形態では、マイクロニードル部材は、少なくともおよそ10個の微小突起/cm、より好ましくは少なくともおよそ200~750個の微小突起/cmの範囲のマイクロニードル密度を有する。
【0072】
本発明の一実施形態では、穿孔要素(すなわち、微小突起又はマイクロニードル)は、1000ミクロン未満の突起長さを有する。さらなる実施形態では、穿孔要素は、700ミクロン未満の突起長さを有する。他の実施形態では、穿孔要素は、500ミクロン未満の突起長さを有する。好ましくは、マイクロニードル長さは、300~400ミクロンの間の長さである。微小突起は、約100~約150ミクロンの範囲の幅及び約10~約40ミクロンの範囲の厚さをさらに有する。
【0073】
一実施形態では、微小突起部材は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又はポリマー材料などの同様の生体適合性材料から構成される。微小突起部材は、マイクロニードル上に配置された生体適合性コーティングを含む。
【0074】
特に好ましい実施形態は、約3.1cmの面積及び約25μmの厚さを有するチタン基材に接着された約5cmのパッチ面積を有する。基材は、約725個の微小突起/cmの密度で約1987個の微小突起を含む約2.74cmの面積を有する微小突起アレイからなる。各微小突起上に含まれる乾燥製剤は、最大約270μmから漸減し、パッチ当たり約0.96μgのシロシビン及び約0.32の酒石酸から約1.9mgのシロシビン及び約0.63mgの酒石酸を含む厚さを有するアメリカンフットボールの近似形状を有してもよい。あるいは、乾燥製剤は、パッチ当たり約0.96μgの量のMDMA又はLSD及び約0.32の酒石酸から約1.9mgのMDMA又はLSD及び約0.63mgの酒石酸を含んでもよい。
【0075】
米国特許出願公開第20190070103号明細書の図32は、曲げ(形成)の前の、好ましい実施形態における、微小突起の形状を示す。アレイ形成は、個々の微小突起を基材の平面に対して直角に曲げるプロセスである。微小突起と位置合わせされたキャビティを含む形成ツール上にアレイが配置される。エラストマー形成ディスクがアレイの上部に配置され、形成ツールのキャビティ内に圧力下で押し込まれる。エラストマーはキャビティに流入し、微小突起を所望の角度に曲げる。エラストマーの使用は、効果的なアレイ形成を有するために、形成ディスクを微小突起及びキャビティに慎重に位置合わせする必要がないという利点を有する。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図32に示されるように、微小突起は、約120±13μmの幅及び約25.4±2.5μmの厚さを有する実質的に長方形であってもよい。微小突起は、貫通を容易にするために三角形の先端を有する。先端は、40±5度の角度を有し、約165±25ミクロンの長さである。基材から曲げ出す(形成する)前に、微小突起は約387±13μmの長さを有し、曲げた後、それらは基材に対して垂直に約340μm突出する。
【0076】
別の好ましい実施形態は、約6cm及び約25μmの厚さのチタン基材に接着された約5cmのパッチ面積を有する。基材は、約725個の微小突起/cmの密度で約4000個の微小突起を含む約5.5cmの面積を有するアレイからなる。各微小突起上に含まれる乾燥製剤は、最大約270から漸減し、パッチ当たり約0.96μのシロシビン及び約0.32の酒石酸、又は約3.8mgのシロシビン及び約1.3mgの酒石酸を含む厚さを有するアメリカンフットボールの近似形状である。微小突起は、約387±13μmの長さ、約120±13μmの幅、及び約25.4±2.5μmの厚さを有する。微小突起は長方形であり、貫通を容易にするために三角形の先端を有する。先端は、40±5度の角度を有し、約165±25ミクロンの長さである。
【0077】
あるいは、各微小突起上に含まれる乾燥製剤は、最大約270から漸減し、パッチ当たり約0.96μのLSD若しくはMDMA及び約0.32の酒石酸、又は約3.8mgのLSD若しくはMDMA及び約1.3mgの酒石酸を含む厚さを有するアメリカンフットボールの近似形状である。
【0078】
所望の貫通をもたらすかさ、長さ及び密度の正確な組合せは様々であり、薬物、その用量、治療される疾患又は状態、及び投与頻度に依存する場合がある。したがって、特定のアレイの薬物送達効率(すなわち、血流に送達される薬物の量)は、約40%~100%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約100%の間で変動するであろう。
【0079】
2.インパクトアプリケータ
米国特許出願公開第20190070103号明細書の図4(A)~図4(B)、図5(A)~図5(E)に示されているように、本開示の皮内薬物送達システムは、本体と、本体内で移動可能なピストンとを有するインパクトアプリケータをさらに含んでもよく、ピストンの表面は皮膚に対してパッチに衝突し、微小突起が角質層を穿孔する。アプリケータは、10ミリ秒以下で少なくとも0.05ジュール/cm、又は10ミリ秒以下で約0.26ジュール/cm、又は10ミリ秒以下で約0.52ジュール/cmの衝撃エネルギー密度でマイクロニードルアレイを角質層に適用するように適合される。
【0080】
米国特許出願公開第20190070103号明細書の図2(A)及び図2(B)に示されているように、皮内送達システムは、薬物でコーティングされたマイクロニードルのアレイからなる、一方の表面に接着性バッキングを有し、他方の側に光沢のある金属表面を有するパッチを含む。パッチは、光沢のある金属表面を手動で、又は好ましくはアプリケータによって皮膚に押し付けることによって皮膚に適用されてもよい。好ましくは、アプリケータは、10ミリ秒以下で0.26ジュール/cmの衝撃エネルギー密度でパッチを皮膚に適用する。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図2A図2B図3A及び図3Bに示されるように、パッチは、パッチアセンブリを形成するリテーナリング構造に接続され、それによって支持されてもよい。リテーナリングは、インパクトアダプタに嵌合し、パッチをアプリケータに取り外し可能に取り付けるように適合される。リテーナリング構造は、接着性パッチ及びマイクロニードルアレイを受容するように設計された内側リング及び外側リングを含んでもよい。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図5(A)~図5(E)は、ユーザが、パッチ及びマイクロニードルアレイが既にロードされているリテーナリングへのインパクトアプリケータの接続を容易にする、特許請求される発明の一実施形態を示している。図示のように、リテーナリングとインパクトアプリケータとが接続されると、ユーザは、アプリケータキャップをねじることによってインパクトアプリケータをロック解除することができる。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図5(C)は、次いで、ユーザがアプリケータを皮膚上で下方に押し付けてパッチを分配し、それを皮膚に適用してもよいことを示している。パッチは、患者の皮膚に取り外し可能に取り付けられ、リテーナリングは、アプリケータに取り付けられたままである。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図4(A)及び図4(B)に示されるように、リテーナリングは、インパクトアプリケータが、さらなるパッチアセンブリを用いて、潜在的に他の活性成分及び疾患状態のために後続の投与事象中に再使用することができるように、インパクトアプリケータに可逆的に取り付けられる。
【0081】
別の実施形態では、パッチ及びアプリケータは、製剤の安定性及び無菌性を保証する包装と共に、単一の一体化されたユニットとして供給される。ユーザは、システムを包装から取り出し、上記と同じようにパッチを適用する。次いで、使用済みアプリケータは廃棄される。この実施形態は、用量当たりのコストが幾分高いが、より複雑でなく、より小さく、より軽く、より使いやすいシステムを提供する。
【0082】
本開示はまた、本開示がこれに関して決して限定されないので、多種多様な能動的経皮システム(本明細書に記載の受動的手動皮内送達デバイスとは対照的な)と共に使用することができる。
【0083】
いくつかの能動的経皮システムは、電気輸送を利用する。例示的な電気輸送薬物送達システムは、米国特許第5,147,296号明細書、同第5,080,646号明細書、同第5,169,382号明細書及び同第5,169,383号明細書に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。広く使用されている電気輸送プロセスの1つであるイオン導入は、荷電イオンの電気的に誘導された輸送を含む。電気浸透は、非荷電分子又は中性荷電分子の経皮輸送(例えば、グルコースの経皮サンプリング)に関与する別の種類の電気輸送プロセスであり、電界の影響下で膜を通る剤を含む溶媒の移動を含む。エレクトロポレーションは、さらに別の種類の電気輸送であり、電気パルス、高電圧パルスを膜に印加することによって形成された細孔を通る剤の通過を含む。多くの場合、記載されたプロセスのうちの2つ以上が、異なる範囲で同時に発生する可能性がある。したがって、「電気輸送」という用語は、本明細書では、剤が実際に輸送されている特定の機構にかかわらず、少なくとも1つの荷電した若しくは荷電していない剤、又はそれらの混合物の電気的に誘導又は増強された輸送を含むように、その最も広い合理的な解釈が与えられる。
【0084】
さらに、限定されないが、化学的浸透増強、レーザーアブレーション、熱、超音波、又は圧電デバイスを含む任意の他の輸送増強方法を、本明細書の開示と併せて使用することができる。
【0085】
3.活性剤及び生体適合性コーティング
固体コーティングを形成するために上記の微小突起部材に適用されるコーティング製剤は、生体適合性担体内に溶解され得るか又は担体内に懸濁され得る少なくとも1つの生物学的活性剤を有する液体、好ましくは水性製剤からなる。生物学的活性剤は、シロシビン若しくはMDMA、又はその薬学的に許容される塩、類似体、エナンチオマー、ラセミ混合物、誘導体、プロドラッグ、若しくは多形、例えば米国特許第10,519,175号に記載されているものであってもよい。
【0086】
薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物、臭化物、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルコロン酸塩(glucoronate)、3-ヒドロキシイソブチラート、トリカルバリラート、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピオナート、チグリン酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、13-ヒドロキシブチラート、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリラート、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2-ヒドロキシ-イソブチラート、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩が挙げられる。
【0087】
生物学的活性成分及び賦形剤の濃度は、許容されるコーティング厚さで所望の量の活性成分を達成し、マイクロニードルアレイの基部上へのコーティング製剤の吸上げを回避し、コーティングの均一性を維持し、安定性を確保するように慎重に制御されなければならない。一実施形態では、活性剤は、コーティング製剤中に約1%w/w~約60%w/w、好ましくは約15%~60%、又はより好ましくは約35%~45%の濃度で存在する。製剤は、約0.1%w/w~約20%w/wの濃度で酸をさらに含んでもよい。そのような酸は、酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、乳酸、塩酸から個別に又は組み合わせて選択されてもよい。別の実施形態では、コーティング製剤において、活性剤対酸の比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1又は約5:1である。
【0088】
本開示はさらに、約33%w/wのシロシビン、LSD又はMDMA基剤及び約11%w/wの酒石酸を含むコーティング製剤を包含する。いくつかの実施形態では、酸は、酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸又はマレイン酸のうちの1つであり、約0.33%~10%w/w、又は約8.33%~約16.67%w/w、又は約13.33%w/w、又は約15%w/w、又は約6.67%w/wの量で存在する。いくつかの実施形態では、コーティング製剤は、45%w/wの活性剤、15%w/wの酸及び40%w/wの水を含む。
【0089】
好ましくは、シロシビン、LSD又はMDMAは、20%w/w~50%w/wの間に含まれる濃度でコーティング製剤中に存在してもよく、弱酸(酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸)は、6.67%w/w~16.67%w/wの間でコーティング製剤中に存在する。
【0090】
界面活性剤がコーティング製剤に含まれてもよい。コーティング製剤に含めるのに好適な界面活性剤としては、ポリソルベート20及びポリソルベート80が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、浸透促進剤として薬物送達を改善するために一般的に使用される。しかしながら、出願人は、界面活性剤がコーティング製剤においてうねりをもたらし、これは不均一な膜を示し、非常に不利であることを見出した。出願人は、界面活性剤及び他の浸透促進剤の必要性が、特許請求される発明の使用によって、具体的には、特許請求されるシロシビン、LSD又はMDMAの経皮送達パッチによって回避され得ることを見出した。さらに、出願人は、驚くべきことに、界面活性剤の欠如にもかかわらず、マイクロニードルコーティングが吸上げを回避し、マイクロニードルアレイの製造プロセス中にコーティングが微小突起に十分に接着することを見出した。
【0091】
酸化防止剤がコーティング製剤に含まれてもよい。コーティング製剤に含めるのに好適な酸化防止剤としては、メチオニン、アスコルビン酸及びEDTAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
コーティング製剤は、マイクロニードル上で乾燥させる前に製剤を100%にするのに十分な量(適量)の液体、好ましくは水をさらに含む。液体コーティング製剤のpHは、約pH8未満であってもよい。他の場合では、pHは、約pH3~7.4、又は約又は約pH3~6.5、又は約pH3.5~4.5である。好ましくは、コーティング製剤のpHは、約pH8未満である。より好ましくは、コーティング製剤のpHは、3~7.4である。さらにより好ましくは、コーティング製剤のpHは、3.5~5.5である。
【0093】
本開示による液体コーティング製剤は、一般に、マイクロニードルを適切な含有量及び形態で一貫してコーティングする能力を示し、5%未満、好ましくは3%未満の水を含有する安定な固体(乾燥)製剤をもたらす。液体製剤は、液体膜に浸漬する微小突起先端の深さの正確な制御を可能にする操作されたコータを使用して、マイクロニードルアレイ及びその微小突起先端に適用される。好適なコーティング技術の例は、米国特許第6,855,372号明細書に記載されており、参照によりその全体が本明細書に含まれる。したがって、液体の粘度は、上述したように、微小突起部材のコーティングプロセスにおいて役割を果たす。Ameri,M.;Fan,S C.;Maa,Y F(2010);’’Parathyroid hormone PTH(1-34)formulation that enables uniform coating on a novel transdermal microprojection delivery system;’’Pharmaceutical Research,27,pp.303-313を参照。Ameri M,Wang X,Maa Y F(2010);’’Effect of irradiation on parathyroid hormone PTH(1-34)coated on a novel transdermal microprojection delivery system to produce a sterile product adhesive compatibility;’’Journal of Pharmaceutical Sciences,99,2123-34も参照されたい。
【0094】
シロシビン、LSD又はMDMAを含むコーティング製剤は、およそ500センチポアズ(cP)未満及び3cP超、又はおよそ400cP未満及び10cP超、又はおよそ300cP未満及び50cP超、又は250cP未満及びおよそ100cP超の粘度を有する。いくつかの実施形態では、コーティング前の液体製剤の粘度は、少なくとも20cPである。他の実施形態では、粘度は、約25cP、又は約30cP、又は約35cP、又は約40cP、又は約45cP、又は約50cP、又は約55cP、又は約60cP、又は約65cP、又は約70cP、又は約75cP、又は約80cP、又は約85cP、又は約90cP、又は約95cP、又は約100cP、又は約150cP、又は約200cP、又は約300cP、又は約400cP、又は約500cPである。他の実施形態では、粘度は、約25cP超、又は約30cP超、又は約35cP超、又は約40cP超、又は約45cP超、又は約50cP超、又は約55cP超、又は約60cP超、又は約65cP超、又は約70cP超、又は約75cP超、又は約80cP超、又は約85cP超、又は約90cP超、又は約95cP超、又は約100cP超、又は約150cP超、又は約200cP超、又は約300cP超、又は約400cP超、又は約500cP未満である。好ましい実施形態では、コーティング製剤の粘度は、約80cP超及び約350cP未満である。別の好ましい実施形態では、粘度は、約100cP超及び約350cP未満である。別の好ましい実施形態では、粘度は、約100cP超及び約250cP未満である。
【0095】
微小突起に適用されると、コーティング製剤は、微小突起表面から測定して、約10~約400ミクロン、又は約30~約300ミクロン、又は約100ミクロン~約175ミクロン、又は約115~約150ミクロン、又は約135ミクロンの平均厚さを有してもよい。コーティング製剤は、微小突起を覆う均一な厚さを有することが好ましいが、製剤は、製造プロセスの結果としてわずかに変化する場合がある。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図31に示されるように、微小突起は、角質層を貫通するため、一般に均一にコーティングされる。いくつかの実施形態では、微小突起は、先端から基部までの距離全体にわたってコーティングされていない。代わりに、コーティングは、先端から基部まで測定して、微小突起の長さの少なくとも約10%~約80%、又は20%~約70%、又は約30%~約60%、又は約40%~約50%の微小突起の長さの部分を覆う。
【0096】
液体コーティング製剤は、アレイ当たり約0.1mg~10mgの量の活性剤の用量を送達するように、微小突起のアレイに適用される。シロシビン、LSD又はMDMAの場合、用量は、(パッチ又は他の形態を介して)アレイ当たり約0.25mg~約10mg、又は約1mg以上、又は約1.9mg以上、又は約2mg以上、又は約3mg以上、又は約3.8mg以上、又は約4mg以上、又は約5mg以上、角質層に送達される。一実施形態では、コーティング製剤中に含まれるシロシビン、LSD又はMDMAの量は、1~1000μg又は10~100μgである。一実施形態では、アレイサイズは、約3.8mgの用量のシロシビン、LSD若しくはMDMAを含む約5.5cmであるか、又はアレイサイズは、約3.8mgの用量を含む約3cmであるか、又はアレイサイズは、約1.9mgの用量を含む約3cmである。微小突起当たりのシロシビン、LSD若しくはMDMA又は同様の活性剤の量は、約0.001~約1000μg、又は約0.01~約100μg、又は約0.1~約10μg、又は約0.5~約2μgの範囲であり得る。一実施形態では、微小突起当たりのシロシビン、LSD若しくはMDMA又は同様の活性剤の量は、約1μgである。微小突起の形状及びサイズは、薬物充填能力及び薬物送達の有効性に大きく影響する。
【0097】
重要なことに、本開示の製剤は、血流への活性剤の吸収を促進する浸透促進剤に主には依存しない。浸透促進剤、例えばAzone(登録商標)及び脂肪酸は、しばしば皮膚刺激を引き起こし、他の欠点を有する。したがって、本開示のシステムは、浸透促進剤を完全に含まないか、又は実質的に含まない。他の実施形態では、15%w/w未満の浸透促進剤が存在するか、又は10%w/w未満、若しくは5%w/w未満、若しくは2.5%w/w未満、若しくは1%w/w未満が乾燥製剤中に存在する。
【0098】
生物学的活性剤製剤は、一般に、米国特許出願公開第2002/0128599号明細書に記載されているように、微小突起上のコーティング製剤を乾燥させることによって、固体コーティングとして調製される。コーティング製剤は、通常、水性製剤である。乾燥プロセス中、水を含むすべての揮発性物質は、ほとんど除去される。しかしながら、最終的な固体コーティングは、依然として約1%w/wの水、又は約2%w/wの水、又は約3%w/wの水、又は約4%w/wの水、又は約5%w/wの水を含有する場合がある。製剤中に存在する酸素及び/又は水の含有量は、乾燥不活性雰囲気及び/又は部分真空の使用によって減少する。微小突起アレイ上の固体コーティングにおいて、薬物は、単位用量当たり約10mg未満、又は約4mg未満、又は約3mg未満、又は約2mg未満、又は約1mg未満の量で存在してもよい。賦形剤の添加により、固体コーティングの総質量は、単位用量当たり約15mg未満であってもよい。
【0099】
微小突起部材は、通常、使い捨てポリマーリテーナリングに取り付けられた接着性バッキング上に存在する。このアセンブリは、パウチ又はポリマーハウジング内に個別に包装される。アセンブリに加えて、このパッケージは、少なくとも3mLの体積に相当するデッドボリュームを含む。この大きな体積(コーティングの体積と比較して)は、水の部分的なシンクとして作用する。例えば、20℃では、蒸気圧の結果として3mLの雰囲気中に存在する水の量は飽和時に約0.05mgであると思われ、これは典型的には乾燥後に固体コーティング中に存在する残留水の量である。したがって、乾燥不活性雰囲気及び/又は部分真空中での保存は、コーティングの含水量をさらに減少させ、安定性の改善をもたらすであろう。
【0100】
本開示によれば、コーティングは、様々な既知の方法によって微小突起に適用することができる。例えば、コーティングは、皮膚を穿孔する微小突起部材又は微小突起の部分(例えば、先端)にのみ適用されてもよい。次いで、コーティングを乾燥させて固体コーティングを形成する。1つのそのようなコーティング方法は、浸漬コーティングを含む。浸漬コーティングは、微小突起をコーティング溶液に部分的又は全体的に浸漬することによって微小突起をコーティングする方法として説明することができる。部分浸漬技術を使用することにより、コーティングを微小突起の先端のみに限定することが可能である。
【0101】
さらなるコーティング方法は、コーティングを微小突起の先端に同様に限定するローラコーティング機構を使用するローラコーティングを含む。ローラコーティング方法は、米国特許出願公開第2002/0132054号明細書に記載されている。その明細書で詳細に説明されているように、開示されたローラコーティング方法は、皮膚穿孔中に微小突起から容易に除去されない滑らかなコーティングを提供する。
【0102】
本発明の範囲内で使用することができるさらなるコーティング方法は、スプレーコーティングを含む。スプレーコーティングは、コーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を包含し得る。一実施形態では、約10~200ピコリットルの液滴サイズを有するエアロゾル懸濁液を微小突起上に噴霧し、次いで乾燥させる。
【0103】
パターンコーティングを使用して、微小突起をコーティングすることもできる。パターンコーティングは、堆積された液体を微小突起表面上に位置決めするための分配システムを使用して適用することができる。堆積された液体の量は、好ましくは0.1~20ナノリットル/微小突起の範囲内である。好適な精密計量液体ディスペンサの例は、米国特許第5,916,524号明細書、同第5,743,960号明細書、同第5,741,554号明細書及び同第5,738,728号明細書に開示されており、これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0104】
微小突起コーティング製剤又は溶液は、既知のソレノイド・バルブ・ディスペンサ、任意選択の流体動力手段、及び一般に電界の使用によって制御される位置決め手段を使用するインクジェット技術を使用して適用することもできる。印刷業界からの他の液体分配技術又は当技術分野で公知の同様の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを適用するために使用することができる。
【0105】
本開示の一実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAを含む乾燥コーティング製剤の厚さは、微小突起表面から測定して約10~100ミクロン、又は約20~80ミクロン、又は約30~60ミクロン、又は約40~50ミクロンの範囲である。所望のコーティング厚さは、必要な用量、したがって用量を送達するのに必要なコーティング厚さ、シートの単位面積当たりの微小突起の密度、コーティング組成物の粘度、溶解度及び濃度、並びに選択されるコーティング方法を含むいくつかの要因に依存する。微小突起に適用されるコーティングの厚さは、シロシビン、LSD又はMDMAの安定性を最適化するように適合させることもできる。既知の製剤アジュバントもまた、それらがコーティング製剤の必要な溶解度及び粘度特性並びに乾燥コーティングの物理的完全性に悪影響を及ぼさない限り、コーティング製剤に添加することができる。
【0106】
コーティングは、マイクロニードルアレイの基部又はストリートから突出するマイクロニードルに適用される。コーティングは、マイクロニードルの先端に適用され、マイクロニードル及びマイクロニードルアレイの表面を覆うことを意図していない。これは、経皮パッチ当たりの薬物の量を減少させ、これは、経皮送達システム上の残留薬物の危険性に関するFDA Guidanceに照らして有利であり、これは、システム内の残留薬物の量を最小限に抑えるべきであることを示唆している。FDA Guidance for Industry,Residual Drug in Transdermal and Related Drug Delivery Systems(2011年8月)を参照のこと。出願人の戦略は、コーティングに過剰な薬物を使用することなく、単位面積当たりの薬物の皮膚への放出を最大化することであった。
【0107】
コーティングを適用した後、コーティング製剤を様々な手段によって微小突起上に乾燥させる。コーティングされた微小突起部材は、周囲の室内条件で乾燥させてもよい。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを使用して、コーティング製剤を微小突起上に乾燥させることができる。さらに、コーティングされた部材は、加熱、真空下若しくは乾燥剤での保存、凍結乾燥(lyophilize)、凍結乾燥(freeze dry)されることができ、又はコーティングから残留水を除去するために使用される同様の技術であり得る。
【0108】
50rpmで回転するローラドラムを利用して、薬物製剤リザーバ(容積2mL)中で周囲温度でコーティングを行い、厚さ約270μmの制御された厚さの膜を製造してもよい。コーティングプロセスに関するさらなる情報は、米国特許第6,855,372号明細書に見出すことができる。微小突起アレイを薬物膜に浸漬し、薬物膜を浸漬(通過)する回数によってコーティングの量を制御する。
【0109】
乾燥プロセス中、制御された一貫した厚さを有する微小突起の均一なコーティングの形成に関連する問題がある場合がある。「液だれ」又は「涙滴」形成と呼ばれる経皮パッチコーティングの1つの一般的な問題が、コーティングが乾燥しており、コーティングが「涙滴」形状の微小突起の端部に蓄積する場合に発生する。この涙滴形状は、マイクロニードルの鋭い端部を鈍らせ得、浸透の有効性及び均一性に影響を与える可能性がある。微小突起上の製剤の不均一な層は、不均一な、時には不十分な薬物送達をもたらす。さらに、乾燥プロセスにおける問題は、製剤コーティングにおける品質管理の問題を引き起こす。好ましい液体コーティング製剤は、液体担体、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水中に、30%w/w~約60%w/w、好ましくは約40%w/w~約50%w/w、より好ましくは約45%w/wの量のシロシビン、LSD又はMDMAと、約5%w/w~約25%w/w、好ましくは約10%w/w~約20%w/w、より好ましくは約15%w/wの量の酒石酸とを含む。これらの液体コーティング製剤では、出願人は、驚くべきことに、約150cP~約350cP、好ましくは約200cP~約300cP、より好ましくは約250センチポアズの粘度、及び約50mNm-1~約72mNm-1、好ましくは約55mNm-1~約65mNm-1、より好ましくは約62.5mNm-1の表面張力を維持することが、液だれを回避するために必要であることを見出した。液体コーティング製剤中への微小突起の各浸漬を同時に可能にして十分な体積の液体コーティング製剤をとり、それによって最小数の浸漬で所望の薬物用量を達成しながら、涙滴形成を回避することができた。コーティング溶液の粘度及び表面張力が十分に高ければ、コーティングされた液体が浸漬後及び乾燥前に急速に滴下して戻ったり、涙滴形状を形成したりすることはない。
【0110】
様々な健康状態の治療のために治療濃度のシロシビン、LSD又はMDMAを迅速に達成する方法におけるシロシビン、LSD又はMDMAの送達に関して本明細書に記載される製品及び方法は、その生物学的同等形態にも及ぶ。
【0111】
4.包装、滅菌
乾燥コーティングされた製剤の改善された物理的安定性は、治療剤自体の貯蔵寿命又は有効期間の増加の利益を提供するだけでなく、本発明の組成物並びに製剤化及び送達方法に従って安定化されると、治療剤は、より広範囲の可能な製剤において、より多様な治療剤送達手段と共に有用になるという点で有効性を高める。
【0112】
本開示は、酸素及び/又は水による劣化が、乾燥不活性雰囲気中での活性剤製剤の製造及び/又は包装によって最小化及び/又は制御される活性剤製剤を含む。製剤は、乾燥剤の存在下で乾燥不活性雰囲気中に、任意選択で箔層を含むチャンバ又はパッケージ中に含まれてもよい。
【0113】
乾燥剤は、当業者に既知の任意のものであり得る。いくつかの一般的な乾燥剤としては、モレキュラーシーブ、酸化カルシウム、粘土乾燥剤、硫酸カルシウム及びシリカゲルが挙げられるが、これらに限定されない。乾燥剤は、箔層を含むパッケージ中に不活性雰囲気の存在下で生物学的活性剤含有製剤と共に配置することができるものであってもよい。
【0114】
別の態様では、活性剤製剤は、製剤が微小突起アレイ送達デバイス上にコーティングされた後、箔層を含むチャンバ内に包装される。この実施形態では、乾燥剤がチャンバ内に収容され、好ましくは箔層を含むチャンバ蓋に取り付けられ、送達デバイスを含む箔チャンバが箔蓋によって密封される前に、チャンバは乾燥窒素若しくは貴ガスなどの他の不活性ガスでパージされる。乾燥不活性雰囲気を生成するために、任意の好適な不活性ガスが本明細書で使用され得る。
【0115】
一実施形態では、皮内送達に好適なシロシビン、LSD又はMDMAの組成物並びに製剤化及び送達方法は、パッチアセンブリを利用する。このパッチアセンブリは、乾燥不活性雰囲気中及び乾燥剤の存在下で製造及び/又は包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、乾燥不活性雰囲気中で製造され、かつ/又は箔層を含み、乾燥不活性雰囲気及び乾燥剤を有するチャンバ内に包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、部分真空中で製造及び/又は包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、乾燥不活性雰囲気及び部分真空中で製造及び/又は包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、部分真空下の乾燥不活性雰囲気中で製造され、かつ/又は箔層を含み、乾燥不活性雰囲気、部分真空及び乾燥剤を有するチャンバ内に包装される。
【0116】
一般に、本発明の記載された実施形態では、不活性雰囲気は、本質的にゼロの含水量を有するべきである。例えば、含水量が本質的にゼロの窒素ガス(乾燥窒素ガス)は、液体窒素の電気的に制御された沸騰によって調製してもよい。パージシステムを使用して、水分又は酸素含有量を低減することもできる。部分真空の範囲は、約0.01~約0.3気圧である。
【0117】
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なシロシビン、LSD又はMDMAの組成物並びに製剤化及び送達方法は、乾燥不活性雰囲気、好ましくは窒素又はアルゴン中で、乾燥剤又は酸素吸収剤の存在下で製造及び/又は包装される。
【0118】
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なシロシビン、LSD又はMDMAの組成物並びに製剤化及び送達方法は、乾燥不活性雰囲気、好ましくは窒素、及び乾燥剤又は酸素吸収剤を有する箔ライニングチャンバ内で製造及び/又は包装される。
【0119】
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なシロシビン、LSD又はMDMAの組成物並びに製剤化及び送達方法は、部分真空中で製造及び/又は包装される。
【0120】
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なシロシビン、LSD又はMDMAの組成物並びに製剤化及び送達方法は、乾燥不活性雰囲気、好ましくは窒素、部分真空、及び乾燥剤又は酸素吸収剤を有する箔ライニングチャンバ内で製造及び/又は包装される。
【0121】
この実施形態の一態様では、シロシビン、LSD又はMDMAは、生体適合性担体をさらに含む。別の実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAを送達するように適合された皮内送達システムであって、(a)患者の角質層を穿孔するように適合された複数の微小突起を含む微小突起部材、(b)シロシビン、LSD又はMDMAからなるヒドロゲル製剤であって、ヒドロゲル製剤は微小突起部材と連通している、ヒドロゲル製剤、及び(c)不活性ガスでパージされ、微小突起部材の周りに密封された環境条件を制御するように適合された包装であって、密封された包装は、微小突起部材を滅菌するために放射線に曝露されている、包装を含む、システムがある。
【0122】
別の実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAを送達するように適合された皮内送達システムであって、(a)患者の角質層を穿孔するように適合された複数の微小突起を含む微小突起部材、(b)微小突起部材に近接して配置された固体膜であって、固体膜は、シロシビン、LSD又はMDMA、ポリマー材料、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体製剤を流延することによって作製される、固体膜、並びに(c)不活性ガスでパージされ、微小突起部材の周りに密封された環境条件を制御するように適合された包装であって、密封された包装は、微小突起部材を滅菌するために放射線に曝露されている、包装を含む、システムがある。
【0123】
本開示はまた、シロシビン、LSD又はMDMAを送達するように適合されたパッチアセンブリを最終的に滅菌する方法であって、(a)微小突起部材上に配置されたシロシビン、LSD又はMDMAを含む生体適合性コーティングを有する患者の角質層を穿孔するように適合された複数の微小突起を有する微小突起部材を提供する工程、並びに(b)微小突起部材を、ガンマ線及び電子ビームからなる群から選択される放射線に曝露する工程であって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、工程を含む、方法である。そのような無菌性保証レベルは、10-6又は10-5であってもよい。本方法は、不活性ガスでパージされた包装内の乾燥剤で微小突起部材を密封すること、並びに包装された微小突起部材をガンマ線及び電子ビーム放射線からなる群から選択される放射線に曝露することであって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、曝露することをさらに含んでもよい。
【0124】
この実施形態の一態様では、本方法は、パッチアセンブリを形成するために、接着性バッキングに取り付けられた微小突起部材からなるパッチを予備乾燥リテーナリング上に取り付け、続いて、包装内に微小突起部材を密封する工程をさらに含む。この実施形態の一態様では、システムは、パッチアセンブリで包装内に密封された乾燥剤をさらに含み、かつ/又は包装は窒素でパージされ、かつ/又は包装は箔層からなるパウチを含む。好ましくは、箔層はアルミニウムを含む。
【0125】
微小突起部材を放射線に曝露する工程は、およそ-78.5~25℃で行われてもよく、又は部材は、周囲温度で放射線に曝露されてもよい。放射線は、およそ5~50kGy、又はおよそ10~30kGy、又はおよそ15~25kGy、又はおよそ21kGy、又はおよそ7kGyの範囲であってもよい。この実施形態の一態様では、放射線は、少なくともおよそ3.0kGy/hrの速度で微小突起部材に送達される。
【0126】
一実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルは、およそ7~30kGyの範囲の線量の放射線に曝露される。より好ましくは、10-5~10-6の無菌性保証レベルに対して15~30kGyの範囲である。
【0127】
本明細書に記載されるように、出願人は、本開示のマイクロニードル部材上にコーティングされた場合、上記のように放射線に曝露された後、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも9ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間安定であり、その非晶質特性を維持するシロシビン、LSD又はMDMA製剤を開発した。
【0128】
一実施形態では、マイクロニードル上の乾燥シロシビン、LSD又はMDMA製剤は、少なくとも6ヶ月間、初期純度のおよそ100%、又は初期純度のおよそ99%、又は初期純度のおよそ98%、又は初期純度のおよそ97%、又は初期純度のおよそ96%、又は初期純度のおよそ95%、又は初期純度のおよそ90%を保持する。他の態様では、そのような純度は、包装後少なくとも9ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保持される。さらなる実施形態では、マイクロニードル上のシロシビン、LSD又はMDMAコーティングは、この段落に記載されているようにその純度を保持し、また包装後少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも9ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間、その非晶質特性を実質的に維持する。
【0129】
一実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAを送達するように適合された皮内送達デバイス用のパッチアセンブリを製造する方法は、マイクロニードル部材上に配置された生体適合性コーティングを有する患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数のマイクロニードルを有するマイクロニードル部材を提供する工程であって、コーティングは、その上に配置されたシロシビン、LSD又はMDMA及び酒石酸、クエン酸、リンゴ酸又はマレイン酸を有するコーティング製剤から形成される、工程と、窒素でパージされ、マイクロニードルを取り囲む環境条件を制御するように適合された包装内の乾燥剤でマイクロニードル部材を密封し、マイクロニードル部材をガンマ線、電子ビーム及びX線からなる群から選択される放射線に曝露する工程であって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、工程とを含む。
【0130】
本発明の別の実施形態によれば、安定な生物学的活性剤製剤を送達する方法は、(i)複数の微小突起を有する微小突起部材を提供する工程、(ii)生物学的活性剤の安定化された製剤を提供する工程、(iii)安定化された生物学的活性剤の製剤を含む生体適合性コーティング製剤を形成する工程、(iv)生体適合性コーティング製剤で微小突起部材をコーティングして生体適合性コーティングを形成する工程、(v)乾燥によって生体適合性コーティングを安定化する工程、及び(vi)コーティングされた微小突起部材を対象の皮膚に適用する工程を含む。
【0131】
さらに、剤の最適な安定性及び有効期間は、固体で実質的に乾燥した生体適合性コーティングによって達成される。しかしながら、コーティング溶解及び剤放出の動態は、いくつかの要因に応じてかなり変化し得る。保存安定性であることに加えて、生体適合性コーティングは、治療剤の所望の放出を可能にすべきであることが理解されよう。
【0132】
シロシビン、LSD又はMDMAを送達するように適合された経皮デバイスを最終的に滅菌する方法であって、微小突起部材上に配置された生体適合性コーティングを有する患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数の微小突起を有する微小突起部材を提供する工程であって、コーティングは、その上に配置された少なくともシロシビン、LSD又はMDMAを有するコーティング製剤から形成される、工程、並びに微小突起部材を、ガンマ線及び電子ビームからなる群から選択される放射線に曝露する工程であって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、工程を含む、方法が本明細書に包含される。本方法のさらなる態様は、微小突起部材を取り囲む環境条件を制御するように適合された包装内に微小突起部材を密封するさらなる工程を含む。一態様では、包装は箔パウチを含む。本方法のさらなる態様は、包装内に乾燥剤を密封するさらなる工程を含む。さらに、本方法は、包装内に微小突起部材を密封する前に、予備乾燥リテーナリング上に微小突起部材を取り付ける工程を含む。本方法のさらなる態様は、包装を密封する前に不活性ガスで包装をパージする工程を含む。一実施形態では、不活性ガスは窒素を含む。
【0133】
C.インビボ薬物動態(PK)
本開示のパッチは、約5~約13ng/mLのシロシン(シロシビンの活性代謝産物)のピーク血漿中濃度をもたらし、Tmaxは30分以下であり、AUCは約1000~約2000ng*分/mLである。
【0134】
本開示のパッチは、約0.5~約1μg/mLのMDMAのピーク血漿中濃度をもたらし、Tmaxは30分以下であり、AUCは約4000~約7000ng*h/mLの範囲である。
【0135】
本開示のパッチは、約0.4~約0.7μg/mLのLSDのピーク血漿中濃度をもたらし、Tmaxは45分以下であり、AUCは約150~約250ng*h/mLの範囲である。
【0136】
D.治療方法
本発明の薬物-デバイスの組合せは、大うつ病性障害を含むうつ病、不安、悲嘆、心的外傷後ストレス障害、アルツハイマー病、軽度認知障害、強迫性障害、神経性食欲不振、片頭痛、群発性頭痛、外傷後頭痛、アルコール依存症、ニコチン依存症、オピオイド使用障害、コカイン関連障害、ステージIVメラノーマ、癌、パーキンソン病、精神病、青年期の行動、青年期の発達、及び意識の覚醒状態の変化を含む様々な疾患及び状態を治療するために使用することができる。
【0137】
本発明の好ましい実施形態では、それを必要とする個人に対するうつ病、不安及び心的外傷後ストレス障害を治療又は軽減する方法であって、治療有効量のシロシビン、LSD又はMDMAベースの剤を投与することを含み、シロシビン、LSD又はMDMAベースの剤の吸収により、血漿中Cmaxがシロシンの場合13ng/mL未満、LSDの場合0.7μg/mL未満、又はMDMAの場合1μg/mL未満になる、方法がある。
【0138】
用量は、約0.2mg~約10mgのシロシビン、LSD又はMDMAを含む。用量はまた、0.48mg、0.96mg、1.9mg及び3.8mgのシロシビン、LSD又はMDMAであってもよい。用量はまた、1.0mg、1.9mg若しくは3.8mgのいずれかの単回パッチ投与、又は1.9mgの二回パッチ投与を含む。これらの用量は、本明細書に記載のパッチを利用して送達することができ、身体の任意の部分の皮膚に適用することができる。好ましい実施形態では、シロシビン、LSD又はMDMAの用量は、パッチを介して皮膚に送達される。
【0139】
A.うつ病
一実施形態では、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチは、以下の1つ以上によって測定されるように、うつ病を軽減又は予防する。
【0140】
1.うつ病についてスクリーニングし、うつ病の行動的徴候及び重症度を測定するためのベックうつ病質問票(BDI)。BDIは、13~80歳に使用することができる。この質問票は、個人が複数選択応答形式を使用して完了する21個の自己報告項目を含む。
【0141】
2.プライマリケア環境におけるうつ病のスクリーニング手段としての疫学研究用うつ病尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale:CES-D)。これは、過去1週間に経験したうつ病の主要な側面を測定する、4段階尺度でスコア化された20個の自己報告項目を含む。CES-Dは、6歳という若さの小児から高齢者まで使用することができる。
【0142】
3.健康関連の生活の質を記述及び評価するための標準化された非疾患特異的道具であるEQ-5D。この道具は、移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み/不快感及び不安/ふさぎ込みの5つの次元で生活の質を測定する。
【0143】
4.ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Rating Scale for Depression、略してHDRS、HRSD又はHAM-D)は、治療前、治療中及び治療後の個人の抑うつを測定する。この尺度は医療従事者によって管理され、21個の項目を含むが、5段階又は3段階尺度のいずれかで測定される最初の17個の項目に基づいてスコア化される。
【0144】
5.10項目Montgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)は、18歳以上の個人におけるうつ病の重症度を測定する。各項目は、7段階尺度で評価される。この尺度は、ハミルトンうつ病評価尺度を改変したものであり、経時的な変化に対してより高い感度を有する。社会的問題解決質問票改訂版(Social Problem-Solving Inventory-Revised:SPSI-RTM)は、13歳以上の個人における社会的問題解決の強さ及び弱さの自己報告尺度である。
【0145】
B.不安
一実施形態では、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチは、不安エピソード又はパニック発作中の適用後に迅速な血漿中濃度を達成する。そのようなパッチは、投与後少なくとも45分間、不安症状に対する緩和を提供する。パッチの適用に起因する不安の治療又は予防は、以下の1つ以上によって測定されてもよい。
1.全般性不安障害質問票IV-GADQ-IV
2.全般性不安障害7-GAD-7
3.ハミルトン不安評価尺度-HARS
4.リーボヴィッツ社交不安尺度-LSAS
5.不安の重症度と生活障害の全般尺度-OASIS
6.病院不安抑うつ尺度-HADS
7.抑うつ不安ストレス尺度-DASS-21
8.患者の健康に関する質問票4-PHQ-4
9.ペンシルベニア州立大学心配質問票(Penn State Worry Questionnaire)-PSWQ
10.社会不安調査票-SPIN
【0146】
C.PTSD
一実施形態では、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチは、PTSDのエピソード中の適用後に迅速な血漿中濃度を達成する。そのようなパッチは、投与後少なくとも45分間、PTSD症状に対する緩和を提供する。
【0147】
パッチの適用に起因するPTSDの治療又は予防は、以下の1つ以上によって測定されてもよい。
1.PTSD臨床診断面接尺度DSM-5準拠(CAPS-5)。
2.PTSD症状評価尺度(PSS-I及びPSS-I-5)。
3.構造化臨床面接、PTSDモジュール(SCID PTSDモジュール)。
4.PTSD用構造化面接(SIP又はSI-PTSD)。
5.治療成績心的外傷後ストレス障害尺度(Treatment-Outcome Posttraumatic Stress Disorder Scale)(TOP-8)。
6.ダビッドソン・トラウマ尺度(Davidson Trauma Scale:DTS)。
7.改訂出来事インパクト尺度(IES-R)。
8.戦闘関連PTSDのミシシッピ尺度(Mississippi Scale for Combat-related PTSD:MISS又はM-PTSD)。
9.修正PTSD症状尺度(Modified PTSD Symptom Scale:MPSS-SR)。
10.PTSDチェックリストDSM-5準拠(PTSD Checklist for DSM-5:PCL-5)。
11.PTSD症状尺度自己報告版(PTSD Symptom Scale Self-Report Version:PSS-SR)。
12.簡易版PTSD評価面接(Short PTSD Rating Interview:SPRINT)。
【0148】
D.片頭痛及び群発性頭痛
一実施形態では、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチは、片頭痛又は群発性頭痛発作中の適用後に迅速な血漿中濃度を達成する。そのようなパッチは、投与後少なくとも45分間、厄介な片頭痛又は群発性頭痛の症状による疼痛がないこと及びそれらの症状がないことを提供する。疼痛に加えて患者の最も厄介な片頭痛症状は、通常、光に対する感受性、特に明るい光に対する感受性(羞明)、音に対する感受性、特に大きな音に対する感受性(音恐怖症)、及び悪心から選択されるが、片頭痛は、嘔吐、臭いに対する感受性、前兆、視覚変化、しびれ、刺痛、脱力感、回転性めまい、頭部ふらふら感若しくはめまい感、眼瞼腫脹、集中困難、疲労、下痢、便秘、気分変化、食物渇望、蕁麻疹及び/又は発熱も伴い得る。群発性頭痛の一般的な症状には、しばしば頭部の片側にあり、一般に片眼の中若しくは周囲に位置するが、顔面、頭部、頸部及び肩の他の領域に放射状に広がる場合がある激痛、不穏状態、過度の涙産生及び罹患側の眼の発赤、鼻詰まり若しくは鼻水、額若しくは顔面の発汗、皮膚の色が薄い(蒼白)、顔面紅潮、罹患側の眼の周囲の腫脹、並びに/又は眼瞼下垂が含まれる。
【0149】
特定の実施形態では、本明細書に記載の片頭痛又は群発性頭痛の治療方法は、以下の治療エンドポイントに関して改善をもたらす。投与後1時間、2時間又は4時間での片頭痛がないこと、投与後15又は30分での群発性頭痛の疼痛がないこと、投与後1時間又は2時間での最も厄介な他の片頭痛の症状がないこと、投与後15又は30分での患者の以前に特定された最も厄介な他の群発性頭痛の症状がないこと、1時間、2時間又は4時間での片頭痛の緩和、投与後15又は30分での群発性頭痛の疼痛の緩和、30分での疼痛の緩和、2時間での羞明がないこと、2時間での音恐怖症がないこと、15分での疼痛の緩和、3時間での疼痛の緩和、4時間での疼痛の緩和、2時間での悪心がないこと、30分での疼痛がないこと、24時間での疼痛がないこと、及び48時間での疼痛がないこと。さらに、レスキュー薬を必要とする治療患者の点で改善がある。疼痛、最も厄介な他の症状、羞明、音恐怖症、悪心及び他の厄介な症状に関する改善は、固定逐次試験方法で連続的に評価される。
【0150】
さらに、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたパッチは、患者の集団に投与された場合、治療後最大4時間、又は治療後最大3時間、又は治療後最大2時間、統計的に有意な数の患者が疼痛がないことを経験する。他の場合では、統計的に有意な数のそのような患者が、頭痛疼痛尺度スコアの少なくとも1レベルの改善、又は頭痛疼痛尺度スコアの少なくとも2レベルの改善を経験する。
【実施例
【0151】
実施例1-うつ病の治療又は軽減
全固形分1.0mgのLSD及び酒石酸でコーティングされた長さ350um、幅70umのマイクロニードルを有する3cmマイクロニードルアレイを使用する。うつ病を有する患者は、本発明の適用から利益を得る可能性がある。
【0152】
うつ病を有する患者は、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチで治療され、うつ病の軽減又は予防をもたらす可能性がある。
【0153】
実施例2-不安の治療又は軽減
全固形分2.5mgのMDMA及び酒石酸でコーティングされた長さ350um、幅70umのマイクロニードルを有する3cmマイクロニードルアレイを使用する。MDMAは、モノアミン(セロトニン、ドーパミン及びノルエピネフリン)の放出を刺激し、神経ホルモンオキシトシンのレベルを上昇させ、否定的な感情刺激に応答して扁桃体及び右島活動を低下させ、上前頭皮質活動を増加させ、扁桃体と海馬との間の接続性を増加させる。MDMAの効果は、感情的に困難な思考又は記憶に直面する不安を軽減する可能性があり、自己共感を増加させることができる。不安を有する患者は、本発明の適用から利益を得る可能性がある。
【0154】
不安を有する患者は、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチで治療され、不安エピソード又はパニック発作中の適用後に迅速な血漿中濃度を達成する可能性がある。
【0155】
実施例3-心的外傷後ストレス障害の治療又は軽減
全固形分1.0mgのLSD及び酒石酸でコーティングされた長さ350um、幅70umのマイクロニードルを有する3cmマイクロニードルアレイを使用する。心的外傷後ストレス障害を有する患者は、本発明の適用から利益を得る可能性がある。
【0156】
PTSDを有する患者は、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチで治療され、PTSDのエピソード中の適用後に迅速な血漿中濃度を達成する可能性がある。
【0157】
実施例4-片頭痛又は群発性頭痛の治療又は軽減
全固形分2.5mgのMDMA及び酒石酸でコーティングされた長さ350um、幅70umのマイクロニードルを有する3cmマイクロニードルアレイを使用する。片頭痛又は群発性頭痛を有する患者は、本発明の適用から利益を得る可能性がある。
【0158】
片頭痛又は群発性頭痛を患っている患者は、本明細書に開示されるシロシビン、LSD又はMDMAでコーティングされたマイクロニードルパッチで治療され、片頭痛又は群発性頭痛発作中の適用後に迅速な血漿中濃度を達成する可能性がある。
【0159】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、前述の説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく例示することを意図していることを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点及び変形は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。

【国際調査報告】