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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】陰圧創傷治療(NPWT)被覆材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20230616BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61F13/00 301M
A61F13/02 310A
A61F13/02 345
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570298
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063756
(87)【国際公開番号】W WO2021239661
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20176287.9
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】マーリン スベンソン
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリア シェップステット
(72)【発明者】
【氏名】マーリン ホルメン
(72)【発明者】
【氏名】エリノール ボリオス
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267JJ06
(57)【要約】
本開示は概して、裏打ち層(101)、接着性皮膚接触層(102)を含む陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)において;接着性皮膚接触層(102)が、前記被覆材(100)を皮膚表面に対し離脱可能な形で接着させるように構成されており、裏打ち層(101)が、結合用部材(104)を含み;該結合用部材(104)が、被覆材(100)を陰圧源及び遠隔の流体収集手段に連結するように構成された管類(105)を含んでいる陰圧創傷治療(NPWT)被覆材に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち層(101)と、接着性皮膚接触層(102)と、前記裏打ち層(101)及び前記接着性皮膚接触層(102)の間に配置された吸収性構造(103)と、を含む陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)において;前記接着性皮膚接触層(102)が、前記被覆材(100)を皮膚表面に対し離脱可能な形で接着させるように構成され、前記裏打ち層(101)が、前記被覆材(100)を陰圧源及び遠隔の流体収集手段に連結するように構成された管類(105)を含む結合用部材(104)を含んでいる陰圧創傷治療(NPWT)被覆材であって、前記被覆材が、前記吸収性構造(103)と前記裏打ち層(101)の間に配置された液体展延層(106)を含むことを特徴とする、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項2】
前記吸収性構造(103)の少なくとも一部分及び前記裏打ち層(101)が開口部(107)を含み;前記開口部(107)は前記結合用部材(104)の下に配置されており;前記液体展延層(106)には開口部が設けられていない、請求項1に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項3】
前記液体展延層(106)が、前記吸収性構造(103)の表面積の少なくとも90%に亘って延在するように構成されている、請求項1又は2に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項4】
前記液体展延層(106)が親水性で多孔質の層である、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項5】
前記液体展延層(106)が不織布を含む、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項6】
前記吸収性構造(103)が、10~20mg/cm2、好ましくは13~17mg/cm2の量で超吸収性粒子を含む、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項7】
前記吸収性構造(103)が、第1の液体展延層(103b)と、超吸収性層(103a)と、第2の液体展延層(103c)と、を含み、前記超吸収性層(103a)が前記第1及び前記第2の液体展延層(103b、103c)の間に配置されている、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項8】
前記吸収性構造(103)がエンボス加工されている、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項9】
前記裏打ち層(101)及び前記接着性皮膚接触層(102)が前記吸収性構造(103)の周辺部を超えて延在して前記吸収性構造(103)の輪郭に沿って縁部分(108)を形成するように構成されており、前記接着性皮膚接触層(102)が前記吸収性構造(103)の下部にある部域内に複数のアパーチャ(109)を含むものの、前記縁部分(108)を形成する部域内にはアパーチャが設けられていない、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項10】
前記被覆材(100)がさらに、前記接着性皮膚接触層(102)と前記吸収性構造(103)の間に配置された透過層(110)を含み、前記透過層(110)がスペーサファブリックを含む、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項11】
前記被覆材(100)が、前記吸収性構造(103)と前記透過層(110)の間に複数の接着性ストリップ(111)を含む、請求項10に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項12】
前記裏打ち層(101)が、NWSP070.4R0(15)により測定された場合に500~3500g/m2/24hの範囲内、好ましくは600~2700g/m2/24hの範囲内の水蒸気透過率(MVTR)を有する、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項13】
前記管類(105)が、前記被覆材から由来の流体を除去するように構成された流体導管(112)と、前記流体導管(112)及び/又は前記被覆材(100)に対して空気を供給するように構成された空気導管(113)とを含む、請求項1~12のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項14】
- 請求項1~13のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)と、
- 陰圧源と、
- 前記陰圧源及び前記被覆材(100)に対して流体連結された遠隔の流体収集手段(117)と、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システム(200)。
【請求項15】
前記遠隔の流体収集手段(117)がキャニスタであり、前記キャニスタ及び前記陰圧源が同じ装置(118)の内部に配置されており;前記装置(118)が、ハウジング(116)を含み、このハウジング内に前記陰圧源が配置され、前記キャニスタ(117)が、前記ハウジング(116)に対して離脱可能な形で連結されている、請求項14に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(200)。
【請求項16】
動作中、2~7ml/minの流量で前記被覆材に空気を供給するための手段を含む、請求項14又は15に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(300)。
【請求項17】
請求項1~13のうちいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)と、陰圧源、キャニスタ(117)、バッテリ(124)及び/又は接着ストリップ(125)の中から選択された少なくとも1つの追加の構成要素とを含むキット(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(dressing)に関する。本発明は同様に、このような被覆材を含むシステム及びキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
陰圧創傷治療(NPWT)は、陰圧ポンプを用いて創傷に対して準大気圧を適用することにより、例えば外科、急性及び慢性創傷などの治癒を促進する技術である。創傷の治癒は、創傷上に適用された被覆材又はカバーを通して真空などの陰圧を適用することによって達成される。これにより、余剰な創傷滲出液が引抜かれ、こうしてその部域に対する血流量が増大し、肉芽組織の形成が促進される。NPWT技術は同様に、創傷の外部障害の低減も可能にし、余剰の流体を創傷部位から離れるように輸送する。
【0003】
NPWT技術は、これまでのところ、主として病院環境内にいる間の患者に対して適用されてきた。しかしながら、最近の製品開発により、家庭環境内で患者がこの技術を使用できるようになっている。
【0004】
病院の環境内において、治療すべき創傷は、一般的に、まずガーゼやフォームなどの創傷充填材が充填される開放性の空洞型創傷である。創傷はその後、接着フィルムで密封され、ドレン又はポートを介して真空ポンプに連結され得る。フォーム、ガーゼ及び/又は接着フィルム被覆材のサイズは、創傷のサイズ、形状又はタイプに応じて適応されカットされ得る。適用手順は一般的に介護者によって実施される。このようなシステムにおいて使用される陰圧ポンプは、一般的に大型のものであり、概して、大量の創傷滲出液を処理するため大きな容量を有する。このタイプのシステムには、被覆材から遠隔に配置されたキャニスタなどの流体収集手段が一般的に含まれている。創傷から排出される創傷滲出液は、流体収集のためキャニスタまで管類によって移送される。
【0005】
家庭環境内では、患者が持ち歩くことのできる携帯型NPWT装置が概して好まれる。携帯型NPWT装置は一般的に、管類を用いて陰圧源に連結されるように構成された吸収性被覆材を含む。このような装置内で使用されるポンプは、一般的に、比較的小型であり、より限定的な容量を有する。
【0006】
大部分の携帯型NPWTシステムにおいて、被覆材は創傷滲出液を収集する唯一の手段として役立つ。大量の創傷滲出液に対処する場合、被覆材は、急速に飽和状態となり得る。これは、被覆材の皮膚上残留能力にマイナスの影響を与える可能性がある。すなわち、被覆材の着用時間は短縮される。その結果、被覆材は、廃棄され新しい被覆材と交換される必要がある。
【0007】
したがって、陰圧創傷治療における使用のための被覆材に関して、詳細には、被覆材の着用時間を改善できるように創傷滲出液に対処する被覆材の能力に関して改善の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2759310号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3023083号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の問題を考慮して、本開示の目的は、NPWTの利用分野向けの被覆材に関して改善すること、詳細にはNPWTシステム全体及び適用される治療が効率よく機能するように、被覆材の着用時間及びその創傷滲出液を対処する能力を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様によると、裏打ち層と、接着性皮膚接触層と、裏打ち層及び接着性皮膚接触層の間に配置された吸収性構造を含む陰圧創傷治療(NPWT)被覆材において;接着性皮膚接触層が、被覆材を皮膚表面に対し離脱可能な形で接着させるように構成され、裏打ち層が、被覆材を陰圧源及び遠隔の流体収集手段に連結するように構成された結合用部材を含んでいる陰圧創傷治療(NPWT)被覆材であって、吸収性構造と裏打ち層の間に配置された液体展延層を含む、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材が提供されている。
【0011】
本開示は、吸収性構造と裏打ち層の間に液体展延層を設けることで、液体の対処及び液体の分配の観点から見たいくつかの利点が得られるという認識に基づくものである。液体展延層は、被覆材内部の創傷滲出液の展延及び分配を改善し、これにより、(裏打ち層を通して)被覆材から滲出液を蒸発させることのできるより大きい表面積が形成されることになる。こうして、液体展延層のより大きな表面積は、余剰の滲出液をより効率良く排除し創傷部位を比較的乾燥した状態に保つように作用することができる。
【0012】
さらに、液体展延層は、潜在的な「逆流」滲出液、すなわち反対方向(管類から被覆材へ)流れる滲出液の分配を改善する。例えば、これは、被覆材が陰圧源及び/又は遠隔の流体収集手段から連結解除される場合に発生し得る。液体展延層は、滲出液のこのような逆流が、一箇所で創傷部位に向かって戻るように流れるのではなくむしろ大きな表面上に展延させられることを確実にする。
【0013】
本開示は、同様に、被覆材により貯蔵される創傷滲出液と被覆材から(遠隔の流体収集手段まで)除去される創傷滲出液の間の適切なバランスが、液体の展延と共に吸収性構造を用いて達成可能であるという認識にも基づくものである。その結果、被覆材の着用時間は改善される。本開示の被覆材は、被覆材を遠隔に配置された流体収集手段に連結するように構成された管類を含む。換言すると、創傷滲出液は、被覆材により貯蔵されると同時に被覆材から除去される。被覆材は、被覆材内部の液体の効率の良い分配を保証するだけでなく、管類を用いて被覆材から離れるような実質的な量の液体の移送をも確実にするように設計されている。
【0014】
実施形態において、吸収性構造の少なくとも一部分及び裏打ち層は、結合用部材の下に配置された開口部を含み、ここで液体展延層には開口部が設けられていない。
【0015】
開口部は、創傷部位と被覆材の管類の間の流体連通、ひいては創傷部位と遠位に配置された流体収集手段との間の流体連通をも保証するのに役立つ。
【0016】
液体展延層には、潜在的ゲル化粒子及び滲出液の望まれない比較的大きな微粒子が被覆材の管類に入るのを防止するため、このような開口部が設けられていない。被覆材の結合用部材の下部にある部域内で、液体展延層は、被覆材内部から管類を通って遠隔の流体収集手段まで液体を移送するように構成されている。
【0017】
実施形態において、液体展延層は、吸収性構造の表面積の少なくとも90%に亘って延在するように構成されている。
【0018】
したがって、液体展延層は、実質的に吸収性構造全体を亘って延在する連続層である。これは、大きな表面に亘って液体の効率のよい展延を保証し、被覆材からの液体の蒸発を改善することを目的とする。
【0019】
実施形態において、液体展延層は、親水性で多孔質である。
【0020】
したがって、被覆材内部から被覆材の管類に向かって層を通って液体を移送し、ひいてはキャニスタなどの遠隔の流体収集手段まで効率的に移送することができる。
【0021】
実施形態において、液体展延層は、不織布を含む。
【0022】
不織布は、層及び被覆材に対して、層及び被覆材として、適切にバランスのとれた剛性を付与する。不織布の液体展延層は、材料の大部分にわたって流体を分配し、遠隔に配置された流体収集手段と被覆材を連結する管類に滲出液を制御された形で移送する能力を有する。
【0023】
実施形態において、吸収性構造は、10~20mg/cm2、好ましくは13~17mg/cm2という量で超吸収性粒子を含む。
【0024】
発明者らは、この範囲が被覆材に保持されている液体と管類を用いて被覆材から除去される液体の間の適切なバランスの達成という観点から見て有益であることを発見した。このような超吸収性層103aは、「妥当な」レベルで滲出液を吸収する。過度に多くのSAPが含まれている場合、SAP層は膨潤し、過度に多く過度に急速に吸収する可能性がある。これは、被覆材が流体収集のための唯一の又は少なくとも優勢な手段の役割を担うという効果を有し得る。本開示との関連において、遠隔に配置された流体収集手段、例えばキャニスタと(同様に流体収集手段とみなされる)被覆材との間のバランスは、好ましくは50:50、例えば少なくとも40:60又は60:40である。前述のように、このバランスは、被覆材の着用時間を改善するために重要である。
【0025】
実施形態において、吸収性構造は、第1の液体展延層、超吸収性層及び第2の液体展延層を含み、超吸収性層は、第1及び第2の液体展延層の間に配置されている。
【0026】
第1の液体展延層は、創傷部位から流動する液体を吸収し分配するように構成されている。第1の液体展延層は、創傷滲出液を均等に大きな表面積全体にわたって分配し展延させて、それが超吸収性層により吸収され得るようにすることができる。第2の液体分配層は、滲出液が裏打ち層から蒸発させられる前に大きな面積全体にわたり展延させられるか又は管類によって遠隔の流体収集手段まで輸送されるような形で超吸収性層からの滲出液を分配する。
【0027】
吸収性構造は、吸収性構造の上にある液体展延層と共に、被覆材の内部での創傷滲出液の分配を最適化し、被覆材を遠隔に配置された流体収集手段と連結するように構成された管類を用いて実質的な量の滲出液の除去を保証するように構成されている。吸収性構造は、両方共に液体を保持し貯蔵するための流体「区画」として役立つ被覆材と遠隔の流体収集手段の間の適切な液体分配バランスを達成するように設計されている。
【0028】
実施形態において、吸収性構造はエンボス加工されている。
【0029】
エンボス加工された吸収性構造は、被覆材の流体取扱特性を改善し、被覆材内部からキャニスタへの創傷滲出液のバランスのとれた且つより制御された展延に貢献する。さらに、エンボス加工された吸収性構造は、被覆材が柔軟性も有しながらその形状及び薄さを保持することを可能にする。
【0030】
一般的には、裏打ち層及び接着性皮膚接触層は、吸収性構造の周辺部を超えて延在して、吸収性構造の輪郭に沿って縁部分を形成するように構成されている。好ましい実施形態において、接着性皮膚接触層は、吸収性構造の下部にある部域内に複数のアパーチャを含むものの、縁部分を形成する部域にはアパーチャが含まれない。
【0031】
アパーチャは、被覆材内への創傷滲出液の吸収を改善するのに役立ち、したがって、吸収が発生する部域内に配置される。被覆材の縁部分を形成する吸収層の部域には、好ましくはアパーチャが含まれない。このようにして、皮膚に対する接着が増強され、被覆材の残留能力はこれにより延長される。
【0032】
被覆材はさらに、接着性皮膚接触層と吸収性構造の間に配置された透過層を含み、透過層はスペーサファブリックを含む。
【0033】
透過層は、陰圧源から創傷部位への陰圧の伝送を促す。
【0034】
実施形態において、被覆材は、吸収性構造と透過層の間に複数の接着性ストリップを含む。
【0035】
接着性ストリップは、結合用部材及び管類に向かう滲出液の流れを停止させるように構成されている。以上で言及した通り、本開示の被覆材は好ましくは、被覆材と遠隔に配置された流体収集手段との間の適正かつ実質的に等しいバランスを可能にする構造を有する。
【0036】
接着性ストリップは、滲出液が遠隔に配置された流体収集手段に向かって過度に速く流れるのを防止し、こうして被覆材の全吸収能力が利用できるようにする。したがって、接着性ストリップは、被覆材と例えば遠隔に配置されたキャニスタとの間の創傷滲出液の望ましい分配に貢献することができる。
【0037】
実施形態において、裏打ち層は、NWSP070,4RO(15)により測定された場合に500~3500g/m2/24hの範囲内、好ましくは600~2700g/m2/24hの範囲内の水蒸気透過率(MVTR)を有する。
【0038】
水蒸気透過率(MVTR)とは、裏打ち層が(ひいては被覆材も同様に)水分を蒸発させる速度である。滲出性創傷には、極めて高い水蒸気透過率(MVTR)を有する裏打ち層を伴う吸収性被覆材が必要とされるということは、概して公知である。当該技術分野において知られていることとは対照的に、該発明者らは、低いMVTRを有する裏打ち層には意外にも、このような被覆材を陰圧創傷治療において適用した場合にプラスの効果が付随する、ということを認識した。500~3500g/m2/24hの範囲内のMVTRを有する裏打ち層が陰圧創傷治療及びシステムの安定性を改善し、陰圧源すなわちポンプに対するプラスの効果を有し、陰圧源は治療中においてさほど強力に機能する必要がない。以上で規定されたMVTR範囲はなお、余剰の水分が効率的に被覆材から除去されて創傷の治癒が促進されることも保証することができる。さらに裏打ち層の下方に液体展延層を設けることで、裏打ち層の低い水蒸気透過率(MVTR)を「補償」することが可能である。
【0039】
実施形態において、管類は、被覆材に由来の流体を除去するように構成された流体導管と、流体導管及び/又は被覆材に対して空気を供給するように構成された空気導管とを含む。
【0040】
少量かつ制御された空気の流入は、創傷部位から流体をより効率良く引抜きかつ流体を遠隔に配置された流体収集手段、例えばキャニスタまで輸送するのに有益であり得る。空気の導入は、管類内に形成される潜在的な滲出液の閉塞又は液柱を消散させ得る。
【0041】
第2の態様によると、
- 以上で説明された陰圧創傷治療(NPWT)被覆材と、
- 陰圧源と、
- 陰圧源及び被覆材に対して流体連結された遠隔の流体収集手段と、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システムが提供されている。
【0042】
実施形態において、遠隔の流体収集手段はキャニスタであり、キャニスタ及び陰圧源は同じ装置の内部に配置されており;装置はハウジングを含み、このハウジング内に陰圧源が配置され、キャニスタは、ハウジングに対して離脱可能な形で連結されている。
【0043】
離脱可能な構成は、ユーザ又は介護者がキャニスタを取外し収集された液体を空けて、その後キャニスタを再び陰圧源に取付けることを可能にする。
【0044】
実施形態において、NPWTシステムは、動作中、2~7ml/minの流量で被覆材に空気を供給するための手段を含む。
【0045】
前述の通り、少量でかつ制御された空気の流入は、創傷部位からより効率的に流体を引抜き、例えばキャニスタなどの遠隔に配置された流体収集手段に流体を輸送するために有益であり得る。管類の液柱及び詰まりに関係する問題が防止されるような形で、制御された比較的低い率で管類(例えば空気導管)を用いて被覆材に対し空気を供給することができる。このようにして、所望の圧力レベルが創傷部位に伝送される。陰圧創傷治療システムにおいては、一般的にキャニスタ内部の圧力と創傷部位の圧力の間に重力により導入される静圧差が存在する。これは、キャニスタと創傷部位の間の高さの差に起因する。静圧の変化は、創傷部位において適正な陰圧レベルを提供する能力に影響を及ぼし得る。少ない空気の流量の供給又は空気の漏出(leakage)により、これらの問題を解決する場合がある。さらに、過度に多い空気が導入された場合、これは、システムの安定性にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、一般的に、ポンプはより高い頻度で作動される。
【0046】
第3の態様によると、以上で説明された通りの陰圧創傷治療(NPWT)被覆材を含むキットが提供される。
【0047】
本開示のさらなる特徴及びそれに伴う利点は、添付のクレーム及び以下の説明を検討した時点で明らかになるものである。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の異なる特徴を組み合わせて、以下で説明するもの以外の実施形態を創出することができるということを認識する。
【0048】
本開示のさまざまな態様は、その特定の特徴及び利点を含め、以下の詳細な説明及び添付図面から容易に理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1a図1aは、本開示の例示的実施形態に係る被覆材を示す。
図1b図1bは、結合用部材及び管類が除去されている、図1aの被覆材の部分的断面図を示す。
図1c図1cは、本開示の例示的実施形態に係る被覆材の分割図を示す。
図2図2は、本開示の例示的実施形態に係る陰圧創傷治療(NPWT)システムを概念的に示す。
図3図3は、本開示の例示的実施形態に係る陰圧創傷治療(NPWT)キットを示す。
図4図4は、キャニスタと3つの異なる吸収性被覆材(それぞれ被覆材D、被覆材C及び被覆材A)との間の液体分配を示す。
図5a図5aは、7日間の試験期間中に試験液体に曝露した後の第1の被覆材(被覆材D)の写真である。
図5b図5bは、7日間の試験期間中に試験液体に曝露した後の第2の被覆材(被覆材C)の写真である。
図5c図5cは、9日間の試験期間中に試験液体に曝露した後の第3の被覆材(被覆材A)の写真である。
図6a図6aは、液体への曝露後の、基準被覆材(被覆材E)と比較した本開示の例示的実施形態に係る被覆材(被覆材A)の、被覆材の裏打ち層から見た写真を示す。
図6b図6bは、液体への曝露後の、基準被覆材(被覆材E)と比較した本開示の例示的実施形態に係る被覆材(被覆材A)の、接着性皮膚接触層が除去された場合の、透過層から見た写真を示す。
図7図7は、それぞれ2530g/m2/24h及び3940g/m2/24hのMVTRを有する裏打ち層を伴う2つの被覆材(被覆材A及び被覆材B)を比較する、ポンプ作動の間の平均時間Toffを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ここで本開示について、本開示の現在好まれている実施形態が示されている添付図面を参照しながら、以下でより完全に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化可能であり、本明細書中に記載されている実施形態に限定されるものとみなされるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、完璧さ及び網羅性のために提供され、当業者に対して本開示の範囲を完全に伝達するものである。全体を通して、同じ参照文字は、同じ要素を意味する。
【0051】
図1a及び1bは、本開示の例示的実施形態に係る陰圧創傷治療(NPWT)被覆材100を示す。NPWT被覆材100は、裏打ち層101、接着性皮膚接触層(図1b中の102参照)及び裏打ち層101と接着性皮膚接触層の間に配置された吸収性構造103を含み;接着性皮膚接触層は、被覆材100を皮膚表面に対し接着させるように構成されており、裏打ち層101は、被覆材100を陰圧源及び遠隔の流体収集手段に連結するように構成された管類105を含む結合用部材104を含んでおり、被覆材100は、吸収性構造103と裏打ち層101の間に配置された液体展延層106を含む。
【0052】
本明細書中で使用されている「陰圧創傷治療被覆材」なる用語は、陰圧創傷治療において使用するための被覆材を意味する。本開示に関連して、「陰圧創傷治療」は、創傷から余剰の流体を除去するために陰圧源(例えば真空ポンプ)を利用する治療を意味する。創傷は、開放性の創傷であり得、あるいは閉鎖創傷、すなわち外科的閉鎖切開でもあり得、したがって、この用語は、閉鎖切開に関連して用いられることの多い用語である「局所陰圧(TNP)治療」の利用分野をも包含する。
【0053】
本開示のNPWT被覆材100は、「創傷パッド」とも呼ぶことのできる吸収性構造を含む。NPWT被覆材は、一般的には、「縁付き被覆材」と呼ばれる。裏打ち層101及び接着性皮膚接触層は、吸収性構造103の輪郭を超えて延在して縁部分108を形成するように配置されている。
【0054】
本明細書中で使用される「皮膚表面」なる用語は、着用者の皮膚を意味する。皮膚は、開放創又は閉鎖創などの処置すべき創傷を含み得る。
【0055】
本開示のNPWT被覆材100は、遠隔の流体収集手段を含むNPWTシステム内での使用のために適応されている。本明細書中で使用される「遠隔の流体収集手段」なる用語は、流体収集手段が、例えば被覆材と陰圧源の間など、被覆材から一定の距離のところに配置されているか、又は陰圧源に連結されていることを意味している。実施形態において、陰圧源及び流体収集手段は、同じNPWT装置内に配置されている。
【0056】
図1b及び1cに最も良くに示されているように、吸収性構造103の少なくとも一部分及び裏打ち層101は、結合用部材104の下に配置されている開口部107を含み、液体展延層106には、開口部が欠如している。
【0057】
開口部107は、創傷部位と遠隔に配置された流体収集手段との間の流体連通を保証する。それは同様に、創傷部位に対する陰圧の伝送も可能にする。結合用部材104は、(図1c中に最も良く示されているように)裏打ち層内の開口部107の上にある。図1cにおいて、吸収性構造103は3つの層を含み、その各々が1つの開口部を含んでいる。しかしながら、吸収性構造103の1層のみ、又は2層の中に開口部を具備することも同様に構想可能である。
【0058】
液体展延層106が開口部を全く含まないことから、ゲル化粒子及び望まれない比較的大きな微粒子が被覆材100の管類105内に入ることが防止される。
【0059】
液体展延層106は、吸収性構造103の前記表面積の少なくとも90%に亘って延在するように構成されている。
【0060】
好ましくは、液体展延層106は、吸収性構造103の表面積全体に亘って延在するように構成されている。したがって、液体展延層106及び吸収性構造103は、同じ外側寸法及び断面積を有する。
【0061】
液体展延層106は、創傷滲出液の展延を改善し、裏打ち層101を通って水分が蒸発できるより大きな表面積を創出するように構成されている。
【0062】
液体展延層106は、好ましくは親水性で多孔質の層である。このようにして、滲出液は創傷部位から液体展延層106を通って管類105まで、効率的に移送され得る。
【0063】
液体展延層106は、繊維性材料であり得る。実施形態において、液体展延層106は不織布を含む。
【0064】
不織布の液体展延層106は、材料の大部分にわたって流体を分配し、遠隔に配置された流体収集手段と被覆材を連結する管類105に対して制御された形で滲出液を移送する能力を有する。
【0065】
液体展延層106は、創傷部位からそして吸収性構造103から離れるように流体を移動させるのを助けると同時に、吸収性被覆材の最大の吸収量が利用されることを保証する。
【0066】
液体展延層106は同様に、管類105から被覆材に向かって流れる潜在的滲出液、すなわち「誤った」方向に流れる滲出液を展延させるためにも有益である。滲出液の逆流は、被覆材を着用する人が陰圧源及び流体収集手段から被覆材を連結解除する場合に発生し得る。例えば、患者は、シャワーを浴びるか又は着替えをする場合にNPWT被覆材を連結解除する可能性がある。液体展延層106は、このような滲出液の逆流が、一箇所で創傷部位に向かって逆流するのではなくむしろ展延させられることを保証する。このようにして、創傷部位を比較的乾燥した状態に保つことができる。
【0067】
液体展延層106は、メルトブロー、スパンボンド又はスパンレース不織布を含み得る。不織布内で使用するための好適なポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン及び他のポリオレフィンホモポリマ及びコポリマがある。例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン繊維又はそれらの混合物の熱可塑性繊維を含む不織ウェブを使用してよい。ウェブは、高い熱可塑性繊維含有量を有し、少なくとも50%、例えば少なくとも70%の熱可塑性繊維を含有し得る。不織布は、例えば70:30の比率のポリエステルとビスコースの混合物であり得る。不織布の基本重量は、10~80g/m2、例えば20~50g/m2の範囲内であってよい。液体展延層は同様に、スパンボンド-メルトブロー又はスパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)ウェブでもあり得る。
【0068】
液体展延層106は好ましくは、吸収性構造から流れる創傷滲出液を吸収する能力を有する。実施形態において、液体展延層106は、標準的な試験方法NWSP10.1によって測定された場合に、少なくとも10g/gの吸収能力を有する。
【0069】
実施形態において、吸収性被覆材は、実施例2で記述される試験方法により測定された場合に、300~700mg/cm2、好ましくは400~600mg/cm2の保持能力を有する。
【0070】
発明者らは、2つの流体収集手段(被覆材と例えばキャニスタ)の間のバランスのとれた液体分配が達成されることを保証するために、被覆材の保持能力が重要であることを発見した。2つの流体収集手段の間における液体のバランスのとれた分配は、被覆材の着用時間を最適化するためと同様に、被覆材の最大限の吸収量の利用を保証するためにも極めて重要である。
【0071】
吸収性構造103は、創傷滲出液を吸収し、このような創傷滲出液を効率的に分配するように構成されている。吸収性構造103は、滲出液を保持し分配するための一時的なリザーバとしても機能する一方で、管類105(そして被覆材から遠隔に配置された流体収集手段)に向って液体輸送の制御された輸送も保証し得る。
【0072】
吸収性構造103は、1つ又は複数の層を含んでいてよく、ここでこれらの層のうち少なくとも1つは、超吸収性ポリマー(SAP)を含む超吸収性層を含んでいる。
【0073】
「超吸収性ポリマー」つまり「SAP」は、水性流体中でそれ自体の重量の最高300倍を吸収することのできるポリマーである。超吸収性ポリマーは、ヒドロゲルの形成時点で大量の流体を吸収する能力を有する水膨潤性で不水溶性のポリマーで構成されている。本開示にしたがって使用するための超吸収性ポリマーは、無機又は有機架橋親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、架橋ポリアクリレートなどであり得る。一般的には、超吸収性ポリマー(SAP)には、アクリル酸ナトリウムが含まれる。SAP材料は、粒子、繊維、フレーク又はそれに類するものの形をしている。好ましくは、SAP材料は超吸収性ポリマー(SAP)粒子の形をとる。超吸収性粒子のサイズは、45~850μm、好ましくは150~600μmの範囲内であり得る。
【0074】
吸収性構造は、10~20mg/cm2、好ましくは13~17mg/cm2の量で超吸収性粒子を含み得る。
【0075】
この範囲は、吸収性構造が「妥当な」レベルで滲出液を吸収できるようにすることから、有益である。過度に多いSAPが含まれている場合、SAP層は膨潤し、過度に多くかつ過度に速く吸収する可能性がある。このことは、被覆材が唯一の又は少なくとも優勢な流体収集用手段としての役割を果たすという効果をもたらし得る。本開示に関連して、被覆材と、遠隔に配置された流体収集手段、例えばキャニスタとの間のバランスは、好ましくは、40:60~60:40である。発明者らは、このような分配が、被覆材の交換を必要とせずに、最長9日間の治療にわたって維持され得ることを発見した(実施例1を参照のこと)。
【0076】
好ましくは、吸収性構造は少なくとも1つの超吸収性層103a及び少なくとも1つの液体展延層を含む。
【0077】
図1cに示されているように、吸収性構造103は3つの層103a~cを含む。
【0078】
これらの層のうち少なくとも1つは液体展延層である。実施形態において、吸収性構造103の最下層は、液体展延層103bである。創傷部位から液体展延層103bに入る滲出液は、吸収性構造103の他の層に入る前に均等に分配され、こうして、存在する場合に、超吸収性層103a及び吸収性構造103の他の層に向かってより大きい表面積を創出する。
【0079】
吸収性構造は、第1の液体展延層103b、超吸収性層103a及び第2の液体展延層103cを含み、超吸収性層103aは、第1及び第2の液体展延層(103b、103c)の間に配置されている。
【0080】
第1及び/又は第2の液体展延層は、滲出液を効率的に分配する能力を有する任意の材料を含むことができる。例えば、第1及び/又は第2の液体展延層は不織材料を含む。
【0081】
好ましくは、第1の液体展延層103bは、超吸収性層103aの下方に配置され、第2の液体展延層103cよりも大きい液体展延能力を有する。こうして、液体展延勾配を伴う吸収性構造が達成され、これが、被覆材から及び被覆材内部で液体をそれぞれ保持及び除去する吸収性構造103の能力に影響を及ぼす。
【0082】
例えば、第1の液体展延層103bは不織布を含み得る。不織布は、20~50g/m2(gsm)、例えば30~40g/m2(gsm)の範囲内の坪量を有していてよい。液体展延層103bの厚みは、0.2~1.2mm、例えば0.2~0.6mmであり得る。厚みは乾燥条件下で測定される。
【0083】
第2の液体展延層103cは、薄織物又は不織布層であり得る。一般的には、上側の層103cの展延能力は、下側の液体展延層103bの展延能力よりも低い。
【0084】
層103cは同様に、超吸収性層103aからのSAP粒子の漏出を防止するのにも役立つ。超吸収性層103aのSAP粒子は、超吸収性層103aに入る滲出液と化学的に結合し、これにより水性ゲルを形成する。層103cは、ゲル化粒子が裏打ち層101に向かって及び管類105を含む結合用部材104に向かって移動するのを防ぐ。こうして、管類105内部でのゲル粒子による望ましくない閉塞が防止される。好ましくは、層103cは、液体展延層であり、被覆材100の裏打ち層101に向かって、分配された液体のより大きな間接的表面を創出するのに役立つ。層103c又は103bは、同様に、「支持層」としても役立ち、製造プロセス中、担体として役立つ。
【0085】
吸収性構造のさまざまな層は、複合的液体吸収及び保持構造を創出し、改善された液体分配が観察される。詳細には、それぞれ保持及び除去されている滲出液の制御された分配が観察された。
【0086】
吸収性構造103は好ましくは、エンボス加工される。換言すると、吸収性構造103の表面は構造化されており、複数の陥凹と隆起(図示せず)を含み得る。このことは、基本重量の増大に伴って複数の層を含む吸収性構造103は堅く厚くなり得ることから、有益である。エンボス加工は、吸収性構造が、柔軟でありながらその形状及び厚みを保持することを可能にする。
【0087】
超吸収性層103aは、エアレイド(airlaid)超吸収性層であり得る。実施形態において、エアレイド超吸収性層103aは、超吸収性粒子、セルロース系繊維及び二成分繊維を含む。
【0088】
例えば、エアレイド超吸収性層は、以下のものを含むことができる:
- 30~50重量%、好ましくは35~50重量%の超吸収性粒子、
- 30~50重量%、好ましくは40~50重量%のセルロース系繊維、
- 3~10重量%、好ましくは5~8重量%の二成分繊維、
- 3~8重量%のポリエチレン。
【0089】
このような超吸収性層は、改善された液体対処特性及び適正な液体分配を可能にする。さらに、それは、ゲル閉塞を防止し、大量の流体に対処する場合に吸収性構造が圧壊するのを防ぐ。
【0090】
二成分繊維は、ボンディング剤として作用し、特に湿潤状態でSAP層の形状を維持する。二成分繊維は、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレート(PE/PET)でできていてよい。
【0091】
超吸収性層103aの厚みは、0.8~2.5mm、例えば1.4~2.2mm、例えば1.8~2.0mmであり得る。厚みは、乾燥条件下で測定される。
【0092】
実施形態において、吸収性構造103は追加の層を含む。
【0093】
裏打ち層101及び接着性皮膚接触層102は、吸収性構造103の周辺部を超えて延在して、吸収性構造103の輪郭に沿って縁部分108を形成するように構成されている。換言すると、被覆材は、パッド部分と縁部分108を含む。パッド部分は、吸収性構造103と液体展延層106を含む。したがって、縁部分108は、同様に液体展延層106の周辺部を超えて延在するように構成されている。実施形態において、パッド部分は追加の層を含む。
【0094】
好ましい実施形態において、接着性皮膚接触層102は、吸収性構造103の下部にある部域内に複数のアパーチャ109を含むが、縁部分108を形成する部域内にはアパーチャは設けられていない。
【0095】
被覆材の縁部分内にアパーチャが設けられないことは、被覆材の縁部分108における接着を改善し、こうして被覆材の残留能力を改善するために有益である。
【0096】
接着性皮膚接触層102は、被覆材の最下層である。接着性皮膚接触層102は、皮膚表面に被覆材を離脱可能な形で接着させるように構成されている。換言すると、接着性皮膚接触層102は、着用者の皮膚又は創傷と接触するように構成されている。この層は、「創傷接触層」又は「皮膚接触層」と呼ぶこともできる。
【0097】
接着性皮膚接触層102は好ましくは、シリコーン系接着剤、すなわちシリコーンゲルを含む。シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層は、皮膚に優しく、外傷をひき起こすことなく容易に除去できる。この接着性皮膚接触層は、被覆材が所定の場所にとどまるような形で皮膚に対する充分な接着力を有しており、しかも除去及び再貼付を反復した場合でもその接着力を維持するように構成されている。
【0098】
図1bで示されているように、接着性皮膚接触層102は、2つの層を含むことができる。例えば、接着性皮膚接触層102は、ポリマー系フィルム102aとシリコーンゲル層102bを含むことができ、シリコーンゲル層102bは、着用者の皮膚と接触するように構成されている。
【0099】
ポリマー系フィルム102aは、好ましくは通気性フィルムであり、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル又はポリウレタンを含み得る。好ましくは、ポリマー系フィルムは、ポリウレタンを含む。ポリウレタンフィルムの厚みは、15~100μm、例えば20~80μm、好ましくは20~60μmであり得る。
【0100】
接着性皮膚接触層102内及び/又はシリコーンゲル層102b内で使用するのに好適なシリコーンゲルの例としては、本明細書中に記載の二成分RTV系、例えばQ72218(Dow Corning)及びSilGel612(Wacker Chemie AG)、ならびにNuSilシリコーンエラストマがある。本発明の実施形態において、接着剤は、ASTM D 937及びDIN51580に基づく方法によって測定された場合に、8~22mm、例えば12~17mmの柔らかさ(針入度)を有する軟質シリコーンゲルを含むことができ、該当方法については特許文献2(欧州特許出願第14194054.4号中)に記載されている。接着性皮膚接触層の厚みは一般的には少なくとも20μmである。接着性皮膚接触層の厚みは100~200μmであってもよい。
【0101】
接着性皮膚接触層102は、複数のアパーチャ109を含む。アパーチャ109は、ポリマーフィルム102a(存在する場合)及びシリコーンゲル層102bを貫通して延在する。
【0102】
被覆材100は、接着性皮膚接触層102と吸収性構造103の間に配置された透過層110をさらに含むことができる。
【0103】
透過層110は、フォーム、ニードルパンチ不織布、スルーエアーボンド不織布又はスペーサファブリックを含み得る。透過層110は、特定の材料に限定されず、湿潤条件及び乾燥条件の両方において、創傷部域に対し陰圧を確実に伝送できるように構成された任意の材料を使用できる。透過層110は、皮膚が比較的乾燥した状態にとどまることができるように、流体を創傷部位から離れるように吸収性構造内に輸送できることを保証する。
【0104】
好ましくは、透過層110は、スペーサファブリックを含む。スペーサファブリックは、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材内で利用されることの多い3次元材料である。
【0105】
実施形態において、スペーサファブリック層は、1.5~4mm、例えば2~3mmの厚みを有する。厚みは乾燥条件下で測定される。スペーサファブリックの基本重量は150~500g/m2(gsm)、例えば200~350g/m2(gsm)、であり得る。
【0106】
スペーサファブリック層110は、一般的には、頂部層と底部層、そして頂部層と底部層の間のパイルフィラメントの相互連結層を含む。パイルフィラメントの相互連結層は、200~500デニール、例えば250~350デニールの繊度を有し得る。
【0107】
スペーサファブリック層110は、圧縮強度が高く、使用中に被覆材に加わる圧力に耐えるように構成されている。圧縮力が被覆材に加えられた後、透過層110は、力が除去された直後にその原初の形状に復帰するように構成されている。
【0108】
実施形態において、被覆材は、透過層110と吸収性構造103の間に複数の接着性ストリップ111を含む。
【0109】
接着性ストリップ111は、結合用部材104及び管類105に向かう滲出液の流れを停止させるように構成されている。前述のように、本開示の被覆材100は、好ましくは、被覆材と遠隔に配置された流体収集手段との間の適正かつ実質的に等しいバランスを可能にする構造を有する。
【0110】
創傷滲出液が創傷部位から流れている場合、それはまず透過層110によって対処され、透過層110から退出した時点で、接着性ストリップ111が、直接的に管類105に向かって流れることなくむしろ上にある吸収性構造103内へと滲出液を誘導する役割を果たす。したがって、接着性ストリップ111を具備することは、遠隔に配置されたキャニスタと被覆材との間の創傷滲出液の所望された分配に貢献し得る。開口部107の下の部域は、いかなる接着性ストリップも含まないことが好ましい。これは、管類105及び結合用部材104の詰まり及び妨害を防止するためである。
【0111】
「複数のストリップ」とは、被覆材が少なくとも2つの接着性ストリップを含むことを意味する。例えば、被覆材は、被覆材のサイズに応じて、2~10本、例えば2~6本の接着性ストリップを含むことができる。
【0112】
接着性ストリップ111は、被覆材100の幅に亘って配置され得る。したがって、接着性ストリップは、透過層110及び/又は吸収性構造103の側縁部の間に延在するように配置されてよい。ストリップは、好ましくは管類105に向かう滲出液の流路に対し直角に配置される。したがって、接着性ストリップ111は、被覆材内に流入する滲出液が、管類105に向かって流れているとき接着性ストリップ111とつねに遭遇しなければならないような形で配置される。
【0113】
接着剤は好ましくは、ホットメルト型接着剤である。接着性ストリップの幅は、3~25mm、例えば5~15mm、例えば6~10mmの範囲内であってよい。
【0114】
接着性ストリップ111間の距離は、10~50mm、例えば15~30mmであり得る。接着性ストリップ111間の距離は、被覆材100のサイズ及び形状によって左右され得る。
【0115】
透過層110、吸収性構造103及び液体展延層106を、まとめて被覆材の創傷パッドと呼ぶことができる。
【0116】
実施形態において、裏打ち層101は、NWSP070.4R0(15)により測定された場合に500~3500g/m2/24hの範囲内、好ましくは600~2700g/m2/24hの範囲内、例えば1400~2600g/m2/24hの水蒸気透過率(MVTR)を有する。
【0117】
裏打ち層101は、被覆材の最外側層であり、着用者の皮膚から見て外方を向くように構成されている。
【0118】
「水蒸気透過率(MVTR)」とは、裏打ち層からの水分の浸透を裏打ち層が可能にする速度である。水蒸気透過率は、標準的な方法NWSP070.4R0(15)により測定される。MVTRは、38℃の温度で測定される。
【0119】
この範囲は、意外にも、被覆材を陰圧創傷治療で使用した場合にプラスの効果を生み出すことが示されてきた。陰圧源の作動の頻度が比較的少ない状態でより安定した治療が観察され、それでもなお、被覆材内部で収集された滲出液流体を首尾よく裏打ち層から周囲環境へと蒸発させることができる。全体として、このことは、バッテリの消耗、ノイズの削減及び長時間のかつより安定した創傷の治療の観点から見てプラスの効果をもたらす。
【0120】
本開示の被覆材100が、遠隔に配置された流体収集手段を含むNPWTシステム内で応用される場合、創傷部位から管類105を用いて流体収集手段へと、創傷滲出液が引抜かれる。
【0121】
管類を通した滲出液の連続的(又は間欠的)除去には、NPWT源すなわち真空ポンプを規則的間隔で作動させることが求められる。しかしながら、ポンプが過度に頻繁に、かつ「必要以上」の速度で作動される場合、それによりノイズならびにバッテリの消耗に関するマイナスの帰結がもたらされる。本開示の被覆材100では、以下の実施例4で実証されているように、ポンプの作動に少なくとも26%の削減が見られた。
【0122】
実施形態において、裏打ち層101は、ISO527-3/2/200により測定した場合に30~70MPa、好ましくは35~55MPaという機械方向(MD)及び/又は機械直交方向(CD)での引張強度を有する。引張強度は、15mm幅のストリップで測定される。
【0123】
好ましくは、裏打ち層101は、患者の運動中裏打ち層上に加わる力に耐え、しかも柔軟性と充分な伸縮性を可能にするのに充分な「強度」を有する。
【0124】
発明者らは、裏打ち層の引張り強度も同様に、安定した信頼性の高い治療を提供する上で影響を及ぼすということを発見した。裏打ち層は、患者の運動中の裏打ち層の引裂又は破断を防止するのに充分な剛性を有していなければならない。例えば、吸収性構造が厚くなればなるほど縁部において裏打ち層に擦れる可能性があることから、吸収性構造の縁部は特に破断し易い可能性がある。裏打ち層内に穿孔又はスリットが形成されている場合、これには、被覆材及びシステム内への望ましくない空気の漏出が付随し得る。その結果として、治療及びシステムの安定性は損なわれる。しかしながら、裏打ち層は、ユーザの運動又は膝などの関節の屈曲に被覆材を適応させることができるように、なおも充分な柔軟性を有していなければならない。
【0125】
裏打ち層101は、一般的には、熱可塑性エラストマを含む。熱可塑性エラストマは、適度の伸長まで伸縮させられかつ応力除去時点で元の形状に復帰する能力を有する。熱可塑性エラストマを含む好適な材料の例としては、ポリウレタン、ポリアミド及びポリエチレンが含まれる。
【0126】
裏打ち層は、同様に、ポリエステル系不織材料と少なくとも1つのポリウレタンフィルムの積層品であってもよい。
【0127】
好ましくは、裏打ち層は、熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0128】
裏打ち層の厚みは、10~40μm、好ましくは15~30μmの範囲内であってよい。
【0129】
裏打ち層101は、少なくとも1枚のフィルムを含むことができる。例えば、裏打ち層は2枚以上のフィルムを含み得る。実施形態において、裏打ち層は、2枚以上のフィルムによって形成された積層品である。ポリアクリレート接着剤などの接着剤の薄い層を裏打ち層に塗布して、裏打ち層を接着性皮膚接触層、あるいは存在する場合には吸収性構造又は被覆材の任意の他の層に対して取付けることができる。本開示の枠内で、裏打ち層101は、熱可塑性エラストマとその上に塗布された接着剤(例えばポリアクリレート)を含む少なくとも1枚のフィルムを含む。接着剤は、連続的又は非連続的パターンで塗布され得る。
【0130】
図1aに示されているように、管類105は、被覆材から流体を除去するように構成された流体導管112ならびに流体導管112及び/又は被覆材100に対して空気を供給するように構成された空気導管113を含む。さらに、管類105は、被覆材及び創傷部位に対して陰圧を伝送するように構成されている。
【0131】
管類105及び/又は結合用部材104は、エラストマ及び/又はポリマー材料で製造された任意の好適な可撓性管類であってよい。管類は、結合用部材104に取付けられている。実施形態において、管類105は、結合用部材104に対し堅く取付けられている。変形実施形態において、管類105は、結合用部材104に対して離脱可能な形で取付けられている。
【0132】
結合用部材104は一般的には、被覆材の裏打ち層に取付けられるように構成された取付け部分を含む。結合用部材は、裏打ち層に対して接着によって取付けられてよい。結合用部材は同様に、管類105すなわち空気導管113及び流体導管112にそれぞれ連結されるように構成された流体入口と流体出口も含むことができる。
【0133】
結合用部材は、特許文献1(EP出願第13152841.6号)で定義されているような構造を有していてよい。
【0134】
実施形態において、管類105の遠位端部は第1のコネクタ部分114に連結されている。第1のコネクタ部分114は、遠隔の流体収集手段、すなわちキャニスタと結び付けられた第2のコネクタ部分、そして実施形態においては陰圧源に対して連結されるように構成されている(例えば、キャニスタと結び付けられた第2のコネクタ部分123が例示されている図3を参照)。さらに、管類105は、被覆材及び創傷部位に対して陰圧を伝送するように構成されている。
【0135】
図2は、本開示に係る陰圧創傷治療(NPWT)システムを概念的に示す。
【0136】
陰圧創傷治療(NPWT)システム200は、本開示に係るNPWT被覆材100を含む。被覆材100は、患者115の膝に適用される。
【0137】
NPWTシステム200は、以下のものを含む:
- 本明細書中で上述した陰圧創傷治療(NPWT)被覆材100と、
- 陰圧源と、
- 陰圧源及び被覆材100に対して流体連結された遠隔の流体収集手段117。
【0138】
陰圧源は、ポンプが作動している状態にあるときに陰圧を確立するように適応された陰圧ポンプである。陰圧ポンプは、生体適合性があり、適切かつ治療効果のある真空レベルを維持するか又は引入れるあらゆるタイプのポンプであり得る。好ましくは、達成すべき陰圧レベルは、約-2666.4Pa(-20mmHg)~約-39996.7Pa(-300mHg)の範囲内である。本開示の実施形態においては、約-10665.8Pa(-80mmHg)~約-23998.0(-180)、好ましくは約-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1(-140mmHg)Paの陰圧範囲が使用される。実施形態において、陰圧ポンプは、ダイヤフラム型又は蠕動型のポンプである。
【0139】
本明細書中で使用されている「流体連結された」なる用語は、広義に解釈されるべきものであり、例えば、遠隔の流体収集手段117と陰圧源及び被覆材100の間の流体連結/連通を提供する任意の形態の管類、導管又はチャネルを含み得る。
【0140】
遠隔の流体収集手段117は、あらゆる種類の流体コンテナ、例えばキャニスタであり得る。代替的には、それは、NPWT被覆材又はNPWTシステムの管類の内部に存在する吸収性材料、又は被覆材又は本開示の被覆材とキャニスタの間に配置された吸収性構造であってもよい。一般的には、遠隔の流体収集手段117はキャニスタである。
【0141】
図2中、陰圧源は、携帯型陰圧創傷治療(NPWT)装置118のハウジング116の内部に含まれている。キャニスタは好ましくは、ハウジング116に対して離脱可能な形で連結されている。
【0142】
換言すると、キャニスタ117は、ハウジング116に対して解除可能な形で連結されている。離脱可能な連結は、摩擦嵌め、バイオネット結合、スナップ嵌め、係止爪付コネクタなどを含めた従来の手段によるものであってよい。離脱可能な構成は、ユーザ又は介護者がキャニスタ117を取り外し、収集された液体を空け、その後キャニスタ117を再びハウジング116に取付けることを可能にする。
【0143】
キャニスタ117は、例えば成型プラスチックなどから形成され得る。キャニスタ117は好ましくは、キャニスタ117の残存容量を決定する上でユーザを支援するため、キャニスタ117の内部を検分できるように、少なくとも部分的に透明/半透明である。
【0144】
例えば、キャニスタ117の内容積は、30~300ml、例えば40~150mlである。キャニスタ103の内容積は、創傷のタイプに応じて変動し得る。実施形態において、キャニスタ117は液体吸収性材料を含む。考えられる実施形態において、キャニスタ103の内容積の少なくとも75%は、液体吸収性材料で占有されている。
【0145】
NPWT装置118は、管類105を用いて被覆材101に連結され得る。図2に示されている実施形態において、NPWTシステムは、被覆材100とNPWT装置118の間の位置にコネクタユニット119を含む。コネクタユニット119は、第1のコネクタ部分(図1中に114と表示)と第2のコネクタ部分(図3中の123参照)を含み得る。コネクタ部分114及び123は好ましくは、被覆材をNPWT装置118から容易に連結解除できるように、離脱可能な形で連結される。これは、ユーザが自らシャワーを浴びようとするとき又は他の何らかの理由で装置118から被覆材を連結解除する決定を下す可能性もあることから、携帯型NPWTシステムにおいて有益である。
【0146】
図2において、管類105は二重導管であり、一方、NPWT装置118とコネクタユニット119の間の管類120は単一導管である。NPWTシステムは、決してこのような構成に限定されるものではなく、NPWT装置118と被覆材100の間に単一導管又は二重導管を含んでいてよい。NPWTシステムは同様に、コネクタユニット119の使用に限定されない。管類105は、実施形態において、NPWT装置118に至るまでずっと延在するように構成され得る。
【0147】
NPWTシステム200は、好ましくは、動作中2~7ml/minの流量で被覆材に対して空気を供給するための手段を含む。
【0148】
好ましくは、被覆材に空気を供給するための手段は、-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1(-140mmHg)の陰圧で2~7ml、好ましくは3~5mlの率で空気を供給するように構成されている。
【0149】
図2に示されているNPWTシステム100においては、コネクタユニット119(矢印121によって示されている)を用いてシステム内に周囲空気が導入される。例えば、第1及び/又は第2のコネクタ部分(114及び123)は、被覆材100内及び/又は管類105内への空気の供給を制御するように構成されたエアフィルタ(図示せず)を含む。第1及び/又は第2のコネクタ部分(114及び123)は例えば、内部にエアフィルタが配置されている吸気ポートを含むことができる。
【0150】
エアフィルタは好ましくは疎水性で多孔質の材料を含み、ここで細孔のサイズは2~20μmの範囲内、好ましくは5~12μmの範囲内にある。フィルタの細孔経は、非圧縮状態で測定される。
【0151】
エアフィルタは、好ましくはポリエチレン、好ましくは焼結ポリエチレンを含む。
【0152】
焼結ポリエチレンフィルタは、反復直鎖分子構造-CH2-CH2を有する。この構造は、強い分子結合を伴って不活性であり、改善された化学的耐性、軽量性、熱可塑性及び優れた濾過特性を特徴とする。焼結ポリエチレンフィルタは同様に、有毒廃棄物を全く生成せず、洗い流し及び再利用が可能であることから、環境に優しいものである。
【0153】
エアフィルタは、動作中、例えば-10665.8Pa(-80mmHg)~-19998.4Pa(-150mmHg)、例えば-13332.2(-100mmHg)~-17331.9Pa(-130mmHg)の陰圧で空気の供給が2~7ml/分の範囲内であることを保証する。
【0154】
代替的な形でシステム内に空気を導入することができ、システム内の代替的な位置にエアフィルタを具備することができる、ということを指摘しておかなければならない。空気供給の調節は、実施形態において、NPWT装置118によって制御され得る。
【0155】
使用中、被覆材100はユーザ/患者の創傷部位に配置され、密閉空間を形成する。管類(105及び120)は、被覆材100をNPWT装置118、例えばNPWT装置118の入口ポートに対して流体連結するために提供される。このとき、NPWT装置118は、例えば開始/休止ボタン122を押すことによって、ユーザ/患者により作動される。これにより、陰圧ポンプが作動される。作動された時点で陰圧ポンプは、キャニスタ117、管類(120及び105)及び被覆材100により形成された密閉空間を通して、空気の排出を開始することになる。したがって密閉空間内部に陰圧が創出される。創傷部位において液体が形成された場合、創傷部位由来のこの液体は、少なくとも部分的に、創傷部位から管類(105及び120)を通ってキャニスタ117内へと「引入れられ」得る。創傷から引抜かれキャニスタ117内に収集される液体すなわち滲出液の量は、処置対象の創傷ならびに使用される創傷被覆材のタイプによって左右される。本開示の枠内では、液体分配間に実質的に等しいバランスが望まれる。キャニスタ117から陰圧ポンプに液体が一切通過できないことを保証する目的で、キャニスタ117と陰圧ポンプの間に好適なフィルタ部材(図示せず)を配置することができる。
【0156】
キャニスタ117は、管類120への連結を可能にするため入口ポートを含み得る。入口ポートと管類120の間の連結は好ましくは、密閉連結であり、こうしてNPWT装置118の正常な動作中、いかなる漏出も入口ポートにおいて形成されないことが保証されている。管類120は好ましくは、摩擦嵌め、バイヨネット結合、スナップ嵌め、係止爪付コネクタ等を含めた従来の手段を通して入口ポートに対して解除可能な形で連結される。キャニスタ117と陰圧ポンプの間にも類似の密閉連結が形成される。
【0157】
図3は、例示的実施形態に係るキット300を示している。キット300は、前述の通りのNPWT被覆材100を少なくとも1つ含む。
【0158】
被覆材は、管類105を含む。好ましくは、管類105は、例えば被覆材100の裏打ち層に取付けられた結合用部材104を用いて、被覆材に予め取付けられる。管類105が予め取付けられているという事実により、システム/キットの構成要素の迅速な組立てが可能になっている。
【0159】
管類105の遠位端部は、第1のコネクタ部分114に連結される。キットはさらに、ハウジング116の内部に配置された陰圧源を含むことができる。キットは同様にキャニスタ117を含むこともできる。キャニスタは第2の管類120を含み得る。第2の管類120の遠位端部は、第2のコネクタ部分123を含み得る。第2のコネクタ部分123は、被覆材100の管類105と結び付けられた第1のコネクタ部分114に連結されるように構成されている。キット300は、NPWT装置118に電力を供給するための追加のバッテリ124及び、被覆材の縁部分と着用者の皮膚の間の接着を改善するための接着ストリップ125などの追加の構成要素を含むことができる。
【0160】
図4に示されているキットは、在宅ケア向けに適応されているが、病院又は介護施設という環境においても同様に有利に使用される。NPWT装置は、ユーザが例えばポケット内、ベルト、ストラップ又はそれに類するもので携帯するように適応されている。被覆材100及びキット300の他の構成要素は、ユーザによって容易に組立て可能である。
【0161】
キット300の構成要素は様々であってよい。例えば、1つのキットは、上述の構成要素を全て含んでもよいのに対して、他のキットは、2つ又は3つの構成要素しか含まない。
【0162】
キット300は、以上で説明した通りの複数のNPWT被覆材を、任意には複数の接着性ストリップと共に包装された状態で含んでいてよい。
【0163】
したがって、キット300は、以上で説明された陰圧創傷治療被覆材及び少なくとも1つの追加の構成要素を含み、ここで追加の構成要素は、陰圧源、キャニスタ117、バッテリ124及び/又は接着ストリップ125の中から選択される。
【0164】
本開示のキット内(そしてNPWTシステム内)で使用されるNPWT装置118は、装置の動作を制御するのに必要な特徴部及び構成要素を含む。例えば、NPWT装置は、バッテリに電気的に接続された制御ユニットを含み得る。このような制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、又は別のプログラマブルデバイスを含み得る。さらに、NPWT装置118は、陰圧ポンプと流体連結状態で配置された少なくとも1つの圧力センサを含むことができる。
【実施例
【0165】
実施例1: 液体分配比較試験
被覆材とキャニスタの間の液体の分配を試験するために、3つの被覆材(それぞれ被覆材A、被覆材C及び被覆材D)を用いて比較試験を行なった。
【0166】
被覆材Aは、下から上へ、ポリウレタンフィルム及びシリコーンゲル層を含む接着性皮膚接触層、スペーサファブリック透過層、吸収性構造(不織布の液体展延層、上述のエアレイドSAP層及び薄織物層(tissue layer)を含む)、不織布の液体展延層及び裏打ち層をそれぞれ含んでいた。被覆材Cは、被覆材Aと同じ層構造を有していたが、吸収性構造の基本重量はより高いものであり、1cm2あたりの超吸収性粒子の量及び保持能力は異なっていた。
【0167】
被覆材Dは、同じ全体的層構造を有していたが吸収性構造に関して異なっていた。被覆材Dの吸収性構造は、40重量%の超吸収性繊維(SAF)と60重量%のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維を含む吸収性層ならびに不織展延層を含んでいた。被覆材Dの吸収性構造内にはいかなる超吸収性粒子も存在しなかった。
【0168】
全ての被覆材(A、C及びD)は、空気導管及び流体導管を含む予め取付けられた管類を含んでいた。
【0169】
さらに、全ての被覆材(A、C及びD)は、吸収性構造の上に配置された不織布の液体展延層を含んでいた。不織布の液体展延層は、50重量%のビスコース繊維と50重量%の二成分繊維を含んでいた。被覆材の吸収性構造のさらなる詳細については下表1を参照されたい。
【0170】
【表1】
【0171】
保持能力は、以下の実施例2に説明されている通りに測定した。
【0172】
予め秤量した被覆材を、被覆材面積よりも大きいサイズのプレキシガラスプレートに取付けた。プレキシガラスプレートは、液体流入用の孔を有していた。液体流入が被覆材の中央部分内に来るように、被覆材を位置付けした。各々の被覆材は、図2に示されているモバイル型の陰圧装置に連結された管類を含んでいた。使用されたポンプは、ダイヤフラムタイプのポンプであった。50mlの液体を貯蔵するように構成されたキャニスタを使用し、図2で開示されているハウジング内部に配置されたポンプに連結した。以上で説明した通り、被覆材とNPWT装置(キャニスタとポンプを含む)を、それぞれのコネクタ部分によって連結した。被覆材の管類に付随する第1のコネクタ部分の内部にエアフィルタを配置した。被覆材に対する空気の供給が2~7ml/分の範囲内になるように、コネクタ内及びシステム内に周囲空気を導入した。ポンプを作動し、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に適用した。
【0173】
7日間で300mlの流量(被覆材C及びD)そして9日間で386mlの流量(被覆材A)で、各被覆材の中央に試験液体(ウマ血清)を添加した。被覆材内の陰圧を、全試験期間中、-16665.3Pa(-125mmHg)に維持した。試験期間の後、被覆材及びキャニスタの湿潤重量を記録した。各々の被覆材とキャニスタの間の試験液体の分配を計算した。
【0174】
図4を見れば分かるように、被覆材Aとキャニスタの間の液体分配は61:39であり、一方被覆材Cについては、液体の大部分が被覆材内に保たれ(90%)、10%だけがキャニスタに移送された。被覆材Dは、34:66という被覆材:キャニスタの液体分配を有していた。
【0175】
試験期間(それぞれ7日間及び9日間)の後、被覆材の写真を撮影した。図5aを見れば分かるように、被覆材Dは、被覆材構造内部で比較的低い液体分配を有していた。換言すると、被覆材の吸収能力のごく一部しか使用されなかった。その代り、より多くの滲出液がキャニスタに移送された。
【0176】
図5bは、被覆材Cを示しており、ここでは、被覆材の大部分が使用されていた。この図からは明確に見えないものの、被覆材は、嵩高く「ふやけた」外観を有していた。
【0177】
図5cは、9日間の液体曝露後の被覆材Aを示す。被覆材の大部分が液体に対処するために使用され、それでもなお、少なくとも39%の滲出液をキャニスタに移送させることができた。流体収集手段(被覆材とキャニスタ)間の所望される液体分配がこうして達成された。
【0178】
実施例2:被覆材の保持能力
流体保持能力は、液体を保持する被覆材の能力として定義される。
【0179】
まず、被覆材試料について理論的最大吸収量を評価した。最大吸収能力は、余剰の試験液体に曝露されかつ適用される負荷が無い場合に被覆材が吸収できる液体の量である。
【0180】
被覆材試料A、C及びDを、(被覆材内に存在する全ての層が試験において使用されるように)被覆材の中央部分から所定のサイズ(5×5cm=25cm2)に打ち抜いた。
【0181】
乾燥状態にある被覆材試料(A、C及びD)の面積と重量を記録した。各々の被覆材試料を、ボウルの中で十分な試験液体(ウマ血清)に浸した。試料の上に細目金網を置いて、接着性皮膚接触層が細目金網の方を向いた状態で、液体表面の下方まで押し下げた。各試料を吸収時間全体にわたり試験液体で覆って、60分間吸収するよう放置した。吸収時間が完了した時点で、試料を被覆材の一隅において垂直に吊り下げて、120秒間流し出した。60分間、試料に液体を吸収させた。吸収時間が完了した時点で、一隅で垂直に保持して、供試体を120秒間自由に流し出した(以下の図を参照のこと)。試料各々について液体グラム数単位で最大吸収能力を記録した。
【0182】
最大吸収能力を計算した後、(上述した通りの)同じ試験を行なった。理論的最大吸収量の80%に対応する試験液体を、試料に吸収させた。10分の吸収時間の後、試料の創傷側が下向きになった状態で、試料に対して16665.3Pa(125mmHg)と等価の圧力を加えた。120秒間、静圧を存続させた。その後、静圧への曝露後に試料内に保持されたウマ血清の重量として、保持力を計算した。このように、保持能力は、規定量の圧力下で液体を保持する製品の能力である。被覆材A、C及びDに関する保持能力は、上述の表3中に示されている。
【0183】
実施例3:液体の逆流を防止する上での液体展延層の効果
被覆材がNPWT装置から連結解除された場合に問題になり得る滲出液の逆流に対処する被覆材の能力を試験する目的で、本開示の例示的実施形態に係る被覆材(以上で説明した被覆材A)及び基準被覆材(被覆材E)を用いて、比較試験を準備した。被覆材Eは被覆材Aと同じ構造を有していたが、裏打ち層と吸収性構造の間の不織布の液体展延層が欠如していた。各被覆材の管類を、実施例1で説明したものと同じ手順を用いて、モバイル型の陰圧装置に連結した。
【0184】
およそ52mlのウマ血清(余剰の液体)をキャニスタに充填した。-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧が安定した時点で、キャニスタをポンプから連結解除し、余剰の液体が被覆材に逆走された。図6a及び6bを見れば分かるように、滲出液の逆流は、図6a及び6bで100と表示された本開示の被覆材(被覆材A)ではさらに大きな表面に分配された。これとは対照的に、被覆材Eにおける滲出液の逆送(図6a及び6bで601と表示)は、有意な程度に展延しておらず、より大きな割合の滲出液が創傷部位に向かって直接逆送された。こうして、液体展延層は、両方向において滲出液の均等な展延及び分配に貢献する。
【0185】
実施例4:システム安定性比較試験
2つの被覆材(上述の被覆材A及び被覆材B)を用いて、着用試験を実施した。被覆材Aと被覆材Bは、構造が類似し、裏打ち層に関して異なっているだけであった。両方の被覆材共、空気導管と流体導管を含む予め取付けられた管類を含んでいた。裏打ち層の特性を下表2に列挙する。
【0186】
【表2】
【0187】
脚を120度曲げた状態(被覆材の管類は上を指している)で被験者の前膝に被覆材を貼付した。図2に示されているそれぞれのコネクタ部分を用いて、モバイル型の陰圧装置に管類を連結した。使用したポンプは、ダイヤフラム型ポンプであった。図1で開示されている通り、50mlの液体を貯蔵するように構成されたキャニスタをポンプに連結した。被覆材の管類の遠位端部に取付けられたコネクタ部分はエアフィルタを含み、(空気導管を用いた)被覆材に対する空気の供給が、動作中2~7ml/min以内となるように、コネクタ内に周囲空気を導入した。
【0188】
ポンプを作動させ、被覆材に対し、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を適用した。複数のポンプの作動の間の時間Toffを最初の5時間(それぞれ0~5時間及び3~5時間)に亘って記録したが、これは、システムの安定性の標示であり、所望されない空気がシステム内に導入されないよう保証するための手段である。
【0189】
5人の被験者に対し試験を行ない、0~5時間と3~5時間に亘って平均Toffを記録した。
【0190】
平均Toffは0~5時間の時間中、被覆材Bについて26秒であったのに対して、被覆材Aについては35秒であった。これは26%の改善である。改善は3~5時間の時間中さらに一層有意であり、ここでToffは本開示の被覆材について40%高いものであった。結果は、図7及び下表3中に示されている。これらの結果は、裏打ち層の特性が陰圧創傷治療の安定性に対して影響を及ぼすことを標示している。システムは安定し気密であり、ポンプはさほど強力に作動する必要がない。
【0191】
【表3】
【0192】
本開示の全ての態様の用語、定義及び実施形態は、本開示の他の態様にも必要な変更を加えて適用される。
【0193】
本開示は、その具体的な例示的実施形態に関連して説明されてきたが、当業者には、多くの異なる改変、修正などが明らかになるものである。
【0194】
図面、開示及び添付のクレームを検討することにより、本開示を実践するにあたり当業者であれば開示された実施形態に対する変形形態を理解し達成することができる。さらに、クレーム中、「comprising(~を含む)」なる用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7
【国際調査報告】