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特表2023-526846分析物を含む物質への励起放射の結合が改良された分析物測定のための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】分析物を含む物質への励起放射の結合が改良された分析物測定のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20230616BHJP
   G01N 21/3577 20140101ALI20230616BHJP
【FI】
A61B5/1455
G01N21/3577
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570598
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021064080
(87)【国際公開番号】W WO2021239828
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/064730
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/071711
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516378529
【氏名又は名称】ディアモンテク、アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DiaMonTech AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー、メンテル
(72)【発明者】
【氏名】トルステン、ルビンスキ
(72)【発明者】
【氏名】セルギウス、ジャニク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、カルーザ
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB08
2G059BB12
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE09
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG09
2G059HH01
2G059HH06
2G059JJ11
2G059JJ17
2G059KK08
2G059KK09
2G059LL01
2G059MM05
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX01
4C038KY01
(57)【要約】
少なくとも1つの分析物を含む物質(12)を分析するための装置(10)であって、上記物質(12)と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面(14)を有する測定体(16)と、物質(12)に吸収されるように励起放射(18)を物質(12)に照射するように構成された励起放射源(26)と、上記励起放射(18)の吸収時に上記物質(12)から受け取られる熱または圧力波に対する測定体の物理的応答を検出するため、および励起放射の吸収の程度を示す応答信号を発生するための検出デバイスと、を備え、突出部(80)が提供され、上記突出部は、上記物質(12)に面し、物質が接触面と接触されたときに物質と接触する前面(82)を有し、上記励起放射(18)が、上記突出部(80)の上記前面(82)を通して物質(12)に照射され、上記突出部(80)が、上記測定体(16)の上記接触面(14)に形成され、または上記測定体(16)が、上記突出部もしくは上記突出部の一部を形成し、上記測定体(16)の上記接触面(14)が、上記突出部の上記前面の少なくとも一部を形成し、周囲構造に対して高くなっている、装置(10)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分析物を含む物質(12)を分析するための装置(10)であって、
前記物質(12)と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面(14)を有する測定体(16)であって、前記熱的または圧力伝達接触は、前記物質での励起放射(18)の吸収によって発生される熱または圧力波が前記測定体に移送されることを可能にする、測定体(16)と、
前記物質(12)に吸収されるように励起放射(18)を前記物質(12)に照射するように構成された励起放射源(26)と、
前記励起放射(18)の吸収時に前記物質(12)から受け取られる熱または圧力波に対する前記測定体または前記測定体(16)に含まれる構成要素の物理的応答を検出するため、および前記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するための検出デバイスであって、前記応答信号が励起放射の吸収の程度を示す、検出デバイスと、を備え、
突出部(80)が提供され、前記突出部は、前記物質(12)に面し、前記物質が前記接触面と接触されたときに前記物質と接触する前面(82)を有し、前記励起放射(18)が、前記突出部(80)の前記前面(82)を通して前記物質(12)に照射され、
前記突出部(80)が、前記測定体(16)の前記接触面(14)に形成され、または
前記測定体(16)が、前記突出部もしくは前記突出部の一部を形成し、前記測定体(16)の前記接触面(14)が、前記突出部の前記前面の少なくとも一部を形成し、周囲構造に対して高くなっている
ことを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
前記前面(82)が平坦である、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記突出部(80)が、0.3cm未満、好ましくは0.2cm未満、より好ましくは0.1cm未満、さらにより好ましくは0.05cm未満、最も好ましくは0.02cm未満のフットプリント面積を有する、請求項1または2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記突出部(80)が、前記前面(82)に向かって先細りしている1つまたは複数の側壁(84)を有する先細り形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記突出部(80)が、円形、楕円形、または正方形のフットプリントを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記突出部(80)が隆起形状であり、第1の方向でのより長い延在部と、前記第1の方向に直交する第2の方向でのより短い延在部とを有し、前記より長い延在部が、前記より短い延在部の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍、より好ましくは少なくとも2.5倍、最も好ましくは少なくとも3.0倍を超える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記突出部(80)または前記突出部(80)の前記一部を形成する前記測定体(16)が、フレームまたはレセプタクルに受け取られ、前記測定体(16)の前記接触面(14)が前記フレームまたはレセプタクルから突出する、または前記フレームまたはレセプタクルが周囲構造から突出する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記物質(12)と前記測定体との接触圧力を測定するために圧力センサ(86)が提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項9】
前記装置(10)が、前記物質(12)と前記測定体(16)との前記接触圧力を示す前記圧力センサ(86)からの信号を受信するように構成された制御システムをさらに備え、前記制御システムは、前記接触圧力が所定の閾値未満であるかどうかをチェックするように構成され、前記接触圧力が前記閾値未満であることが判明された場合、
ユーザに接触圧力の欠如を示すこと、
分析物測定プロセスが開始されないようにすること、および
現在の分析物測定プロセスを中断すること、
のうちの1つまたは複数を行うように構成される、請求項8に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記装置がクランプ・デバイス(106)をさらに備え、前記クランプ・デバイス(106)は、クランプ部材(108)が前記測定体(16)の前記接触面(14)から離れるように動かされた開位置と、クランプ部材(108)が前記接触面(14)に近い閉位置との間で移動可能なクランプ部材(108)を備え、前記クランプ部材(108)が、前記閉位置に向かって付勢され、前記物質(12)は、前記クランプ部材が前記開位置にあるときに前記接触面(14)に配置されてよく、前記クランプ部材(108)は、前記閉位置に向かう前記付勢力により前記物質(12)を前記接触面(14)に押し付けるのに適している、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項11】
前記圧力センサ(86)が前記クランプ・デバイス(106)に配置される、請求項10、および請求項8または9のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項12】
前記測定体(16)の前記接触面(14)に対して前記物質(12)を固定するためのストラップをさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記測定体(16)が前記励起放射(18)に対して透明であり、
前記励起放射源(26)が、前記励起放射(18)を励起ビームとして提供するように構成され、
前記励起放射源(26)は、前記励起ビームが前記測定体(16)にその入射面(70)で照射され、前記測定体(16)の一部を通って伝播し、前記接触面(14)で前記測定体(16)から出るように配置され、
前記励起ビーム(18)が、89.0°以下、好ましくは88.0°以下、最も好ましくは87.5°以下、および82.0°以上、好ましくは84.0°以上、最も好ましくは85.0°以上の角度で入射面(70)に衝突する、
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記励起ビーム(18)が、90°±1.5°の角度で前記測定体の前記接触面(14)に衝突する、請求項13に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記励起ビームがそれぞれ前記測定体に入るおよび前記測定体から出るそれぞれの部分での前記入射面(70)と前記接触面(14)とが、1.0°以上、好ましくは2.0°以上、最も好ましくは2.5°以上、および8.0°以下、好ましくは6.0°以下、最も好ましくは5.0°以下の角度で互いに対して傾けられている、請求項13または14に記載の装置(10)。
【請求項16】
前記検出デバイスが、前記測定体(16)または前記測定体(16)に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビーム(22)を発生するための光源(28)を備え、
前記励起放射(18)の吸収時に前記物質(12)から受け取られた熱または圧力波に対する前記測定体(16)の前記物理的応答が、前記測定体(16)または前記構成要素の屈折率の局所的変化であり、
前記検出デバイスが、屈折率の前記変化による検出ビームの前記光路の変化または前記位相の変化のうちの一方を検出するように構成される、
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項17】
前記検出デバイスは、前記検出光ビーム(22)が入射面(72)で前記測定体(16)に照射されるように構成され、前記検出光ビーム(22)が、前記入射面に対して、89°以下、好ましくは88°以下、最も好ましくは87.5°以下、および80°以上、好ましくは82°以上、より好ましく84°以上、最も好ましくは85°以上の入射角で前記入射面(72)に衝突する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記測定体(16)が、前記測定体(16)の前記入射面(72)に衝突するときに前記検出光ビームの前記入射角を調整するように、前記測定体(16)を回転させることを可能にするフレームまたはレセプタクルに受け取られ、特に、前記フレームまたはレセプタクルは、前記測定体(16)を、前記励起光ビームと平行な軸の周りで回転させる、または平行から10°未満、好ましくは5°未満ずらすことを可能にし、最も好ましくは、前記測定体(16)の前記回転軸が前記励起光ビーム(18)と一致する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記測定体(16)が前記検出光ビーム(22)に対して透明であり、前記検出光ビーム(22)が、前記物質(12)と熱的または圧力伝達接触している前記測定体(16)の表面(14)で全反射または部分反射されるように向けられ、前記検出デバイスが、屈折率の前記局所的変化による、前記接触面(14)での反射後の前記検出光ビーム(22)の偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器(30)を備え、前記検出デバイスが、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器(30)を備える、請求項16から18のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項20】
前記検出光ビーム(22)が、前記物質(12)と熱的または圧力伝達接触している前記突出部(80)の前記前面(82)で全反射または部分反射されるように向けられる、請求項19に記載の装置(10)。
【請求項21】
前記突出部(80)の前記前面(82)が、少なくとも1つの主方向に湾曲されている、請求項20に記載の装置(10)。
【請求項22】
前記少なくとも1つの主方向での前記湾曲が、5~30mm、好ましくは10~20mmの範囲内の曲率半径に対応する、請求項21に記載の装置(10)。
【請求項23】
前記少なくとも1つの主方向での前記湾曲が、凹状または凸状のうちの一方である、請求項21または22に記載の装置(10)。
【請求項24】
前記前面(82)での反射前後の前記検出光ビーム(22)が検出光平面を定め、前記少なくとも1つの主方向が前記検出光平面内にある、または前記検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す、請求項21から23のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項25】
前記前面(82)での反射前後の前記検出光ビーム(22)が検出光平面を定め、前記第1の方向が前記検出光平面と平行である、または前記検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す、請求項6、および請求項19から23のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項26】
前記検出光源(28)は、前記検出光ビーム(22)が入射面(72)で前記測定体(16)に照射され、前記測定体の一部を通って伝播し、出射面(74)で前記測定体から出るように配置され、
前記検出光ビーム(22)は、屈折率の前記局所的変化による任意の偏向がない場合に、前記出射面(74)への法線に対して5°以上、好ましくは10°以上、最も好ましくは15°以上の角度で前記出射面(74)に衝突し、前記検出ビーム(22)が、前記測定体(16)の前記出射面(74)からの出射時に屈折され、前記検出光ビーム(22)に対する前記出射面(74)の向きは、前記測定体(16)に移送される前記熱または圧力波に応答する前記検出光ビーム(22)の前記偏向が、前記検出光ビームと前記出射面への法線との間の前記角度を増加させるようなものである、
請求項19から25のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項27】
前記検出光源(28)は、前記検出光ビーム(22)が入射面(72)で前記測定体(16)に照射され、前記測定体(16)の一部を通って伝播し、出射面(74)で前記測定体(16)から出るように配置され、集束レンズ(76)が、前記入射面(72)と一体に形成されて、前記測定体(16)に入る前記検出光ビーム(22)を少なくとも1つの次元で集束し、および/またはコリメート・レンズ(78)が、前記出射面(74)と一体に形成されて、前記検出光ビーム(22)を少なくとも1つの次元でコリメートする、
請求項19から26のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項28】
前記集束レンズ(76)および前記コリメート・レンズ(78)のうちの少なくとも一方が、前記検出光ビーム(22)を少なくとも主に1次元でそれぞれ集束およびコリメートする円柱レンズである、請求項27に記載の装置(10)。
【請求項29】
前記検出器(30)は、前記検出光ビーム(22)が衝突する位置感知検出器を備え、前記位置感知検出器(30)が、少なくとも1つの感知方向で前記位置感知検出器(30)に衝突する前記検出光ビーム(22)の位置のシフトを検出するのに高感度であり、
前記位置感知検出器(30)は、前記検出光ビーム(22)の前記偏向が、前記少なくとも1つの感知方向で前記位置感知検出器(30)に衝突する前記検出光ビームの前記位置のシフトをもたらすように配置され、
前記検出光ビーム(22)のプロファイルを成形するために前記検出光ビーム(22)の前記光路に円柱レンズが提供され、および/または前記位置感知検出器(30)が、前記検出光ビーム(22)に対して90°からずれたある角度で配置され、前記感知方向で前記位置感知検出器(30)に衝突する前記検出光ビーム(22)の直径が、前記感知方向に直交する方向での前記検出光ビーム(22)の直径の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍である、
請求項19から28のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項30】
前記円柱レンズが、前記接触面(14)での反射と前記位置感知検出器(30、62)との間の前記検出光ビーム(22)の前記光路に配置されたコリメート・レンズ(78)であり、前記円柱レンズが、前記検出光ビーム(22)を、少なくとも主に前記位置感知検出器(30)の前記感知方向に直交する次元でコリメートするように配置され、前記円柱コリメート・レンズは、好ましくは、前記検出光(22)ビームが前記測定体(16)から出る前記測定体(16)の出射面(74)と一体に形成される、請求項29に記載の装置(10)。
【請求項31】
光源光ビーム(80)を前記検出光ビーム(22)と参照光ビーム(92)とに分割するためのビームスプリッタ(90)をさらに備え、前記参照光ビーム(92)も同様に、前記物質(12)と熱的または圧力伝達接触している前記測定体(16)の表面(14)で全反射または部分反射されるように向けられるが、励起放射(18)の吸収時に前記物質(12)から受け取られる熱または圧力波の影響が無視できる領域内に向けられ、前記検出デバイスが、前記接触面(14)での反射後の前記参照光ビーム(92)の偏向の程度、特に偏向角度を検出するための追加の検出デバイス(96)を備え、前記追加の検出デバイスが、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器(96)を備える、請求項19から30のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項32】
前記検出デバイスが、前記検出ビームの前記位相変化を評価し、前記位相変化を示す応答信号を発生することを可能にする干渉計デバイス(60)を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項33】
前記測定体(16)または前記測定体(16)内の構成要素が、温度の局所的変化またはそれに関連付けられる圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有し、前記検出デバイスが、前記電気的特性を表す電気信号を捕捉するための電極(6a~6d)を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項34】
前記装置(10)が、前記測定体に埋め込まれた光ファイバと、検出光を前記光ファイバ(98)に結合するために前記ファイバ(98)の一端に提供された検出光源と、前記ファイバ(98)の他端に提供されたモード検出器(100)とを備え、前記モード検出器(100)は、前記物質(12)から前記測定体(16)によって受け取られる前記熱または圧力波に応答して前記検出光の光学モードの変化を検出するのに適しており、光学モードの前記変化が、好ましくは、前記モード検出器(100)での光学モードの干渉パターンのシフトまたは回転を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項35】
前記物質(12)が、ヒト組織、特にヒト皮膚であり、前記分析物が、前記皮膚、特に前記皮膚の間質液中に存在するグルコースである、請求項1から34のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項36】
前記励起放射(18)が、それぞれ専用の波長を有するレーザ、特に量子カスケード・レーザのアレイを使用して発生される、請求項1から35のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項37】
前記励起放射(18)が、少なくとも1つの波長可変レーザ、特に少なくとも1つの波長可変量子カスケード・レーザを使用して発生される、請求項1から36のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項38】
前記励起波長のいくつかまたはすべてが、5μm~13μm、好ましくは8μm~11μmの範囲内にある、請求項1から37のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項39】
少なくとも1つの分析物を含む物質(12)を分析する方法であって、
接触面(14)を有する測定体(16)を、前記物質(12)と熱的接触または圧力伝達接触させるステップであって、前記熱的または圧力伝達接触は、前記物質での励起放射(18)の吸収によって発生される熱または圧力波が前記測定体に移送されることを可能にするステップと、
前記物質(12)に吸収されるように励起放射(18)を前記物質(12)に照射するステップと、
前記励起放射(18)の吸収時に前記物質(12)から受け取られる熱または圧力波に対する前記測定体(16)または前記測定体(16)に含まれる構成要素の物理的応答を検出し、前記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するステップであって、前記応答信号が励起放射の吸収の程度を示す、ステップと、
を含み、
突出部(80)が提供され、前記突出部は、前記物質(12)に面し、前記物質が前記接触面と接触されたときに前記物質と接触する前面(82)を有し、前記励起放射(18)が、前記突出部(80)の前記前面(82)を通して前記物質(12)に照射され、
前記突出部(80)が、前記測定体(16)の前記接触面(14)に形成され、または
前記測定体(16)が、前記突出部もしくは前記突出部の一部を形成し、前記測定体(16)の前記接触面(14)が、前記突出部の前記前面の少なくとも一部を形成し、周囲構造に対して高くなっている、
ことを特徴とする方法。
【請求項40】
前記前面(82)が平坦である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記突出部(80)が、0.3cm未満、好ましくは0.2cm未満、より好ましくは0.1cm未満、さらにより好ましくは0.05cm未満、最も好ましくは0.02cm未満のフットプリント面積を有する、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記突出部(80)が、前記前面(82)に向かって先細りしている1つまたは複数の側壁(84)を有する先細り形状を有する、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記突出部(80)が、円形、楕円形、または正方形のフットプリントを有する、請求項39から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記突出部(80)が隆起形状であり、第1の方向でのより長い延在部と、前記第1の方向に直交する第2の方向でのより短い延在部とを有し、前記より長い延在部が、前記より短い延在部の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍、より好ましくは少なくとも2.5倍、最も好ましくは少なくとも3.0倍を超える、請求項39から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記物質(12)と前記測定体との接触圧力が測定される、請求項39から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記接触圧力が所定の閾値未満であるかどうかをチェックするステップをさらに含み、前記接触圧力が前記閾値未満であることが判明された場合、
ユーザに接触圧力の欠如を示すステップ、
分析物測定プロセスが開始されないようにするステップ、および
現在の分析物測定プロセスを中断するステップ
のうちの1つまたは複数を実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
クランプ・デバイス(106)を使用して前記物質(12)を前記接触面(14)に固定するステップをさらに含み、前記クランプ・デバイス(106)は、クランプ部材(108)が前記測定体(16)の前記接触面(14)から離れるように動かされた開位置と、クランプ部材(108)が前記接触面(14)に近い閉位置との間で移動可能なクランプ部材(108)を備え、前記クランプ部材(108)が、前記閉位置に向かって付勢され、前記物質(12)は、前記クランプ部材が前記開位置にあるときに前記接触面(14)に配置され、前記クランプ部材(108)は、前記閉位置に向かう前記付勢力により前記物質(12)を前記接触面(14)に押し付ける、請求項39から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記圧力センサ(86)が前記クランプ・デバイス(106)に配置される、請求項47、および請求項45または46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
ストラップを使用して前記物質(12)を前記接触面(14)に固定するステップをさらに含む、請求項39から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記測定体(16)が前記励起放射(18)に対して透明であり、
前記励起放射源(26)が、前記励起放射(18)を励起ビームとして提供し、
前記励起ビームが、前記測定体(16)にその入射面(70)で照射され、前記測定体(16)の一部を通って伝播し、前記接触面(14)で前記測定体(16)から出て、
前記励起ビーム(18)が、89.0°以下、好ましくは88.0°以下、最も好ましくは87.5°以下、および82.0°以上、好ましくは84.0°以上、最も好ましくは85.0°以上の角度で入射面(70)に衝突する、
請求項39から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記励起ビーム(18)が、90°±1.5°の角度で前記測定体の前記接触面(14)に衝突する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記励起ビームがそれぞれ前記測定体に入るおよび前記測定体から出るそれぞれの部分での前記入射面(70)と前記接触面(14)とが、1.0°以上、好ましくは2.0°以上、最も好ましくは2.5°以上、および8.0°以下、好ましくは6.0°以下、最も好ましくは5.0°以下の角度で互いに対して傾けられている、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
前記検出が、前記測定体(16)または前記測定体(16)に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビーム(22)を発生することを含み、
前記励起放射(18)の吸収時に前記物質(12)から受け取られた熱または圧力波に対する前記測定体(16)の前記物理的応答が、前記測定体(16)または前記構成要素の屈折率の局所的変化であり、
前記検出が、屈折率の前記変化による検出ビームの前記光路の変化または前記位相の変化のうちの一方を検出することを含む、
請求項39から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記検出光ビーム(22)が入射面(72)で前記測定体(16)に照射され、前記検出光ビーム(22)が、前記入射面に対して、89°以下、好ましくは88°以下、最も好ましくは87.5°以下、および80°以上、好ましくは82°以上、より好ましく84°以上、最も好ましくは85°以上の入射角で前記入射面(72)に衝突する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記測定体(16)が、前記測定体(16)の前記入射面(72)に衝突するときに前記検出光ビームの前記入射角を調整するように、前記測定体(16)を回転させることを可能にするフレームまたはレセプタクルに受け取られ、特に、前記フレームまたはレセプタクルは、前記測定体(16)を、前記励起光ビームと平行な軸の周りで回転させる、または平行から10°未満、好ましくは5°未満ずらすことを可能にし、最も好ましくは、前記測定体(16)の前記回転軸が前記励起光ビーム(18)と一致する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記測定体(16)が前記検出光ビーム(22)に対して透明であり、前記検出光ビーム(22)が、前記物質(12)と熱的または圧力伝達接触している前記測定体(16)の表面(14)で全反射または部分反射されるように向けられ、前記検出が、屈折率の前記局所的変化による、前記接触面(14)での反射後の前記検出光ビーム(20)の偏向の程度、特に偏向角度を検出することを含み、前記検出が、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器(30)を使用して実施される、請求項53から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記検出光ビーム(22)が、前記物質(12)と熱的または圧力伝達接触している前記突出部(80)の前記前面(82)で全反射または部分反射されるように向けられる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記突出部(80)の前記前面(82)が、少なくとも1つの主方向に湾曲されている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの主方向での前記湾曲が、5~30mm、好ましくは10~20mmの範囲内の曲率半径に対応する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの主方向での前記湾曲が、凹状または凸状のうちの一方である、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記前面(82)での反射前後の前記検出光ビーム(22)が検出光平面を定め、前記少なくとも1つの主方向が前記検出光平面内にある、または前記検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す、請求項58から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記前面(82)での反射前後の前記検出光ビーム(22)が検出光平面を定め、前記第1の方向が前記検出光平面と平行である、または前記検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す、請求項44、および請求項46から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記検出光源(28)は、前記検出光ビーム(22)が入射面(72)で前記測定体(16)に照射され、前記測定体の一部を通って伝播し、出射面(74)で前記測定体から出るように配置され、
前記検出光ビーム(22)は、屈折率の前記局所的変化による任意の偏向がない場合に、前記出射面(74)への法線に対して5°以上、好ましくは10°以上、最も好ましくは15°以上の角度で前記出射面(74)に衝突し、前記検出ビーム(22)が、前記測定体(16)の前記出射面(74)からの出射時に屈折され、前記検出光ビーム(22)に対する前記出射面(74)の向きは、前記測定体(16)に移送される前記熱または圧力波に応答する前記検出光ビーム(22)の前記偏向が、前記検出光ビームと前記出射面への法線との間の前記角度を増加させるようなものである、
請求項43から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記検出光ビーム(22)が入射面(72)で前記測定体(16)に照射され、前記測定体(16)の一部を通って伝播し、出射面(74)で前記測定体(16)から出て、集束レンズ(76)が、前記入射面(72)と一体に形成されて、前記測定体(16)に入る前記検出光ビーム(22)を少なくとも1つの次元で集束し、および/またはコリメート・レンズ(78)が、前記出射面(74)と一体に形成されて、前記検出光ビーム(22)を少なくとも1つの次元でコリメートする、
請求項43から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記集束レンズ(76)および前記コリメート・レンズ(78)のうちの少なくとも一方が、前記検出光ビーム(22)を少なくとも主に1次元でそれぞれ集束およびコリメートする円柱レンズである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記検出器(30)は、前記検出光ビーム(22)が衝突する位置感知検出器を備え、前記位置感知検出器(30)が、少なくとも1つの感知方向で衝突する前記検出光ビーム(22)の位置のシフトを検出し、
前記位置感知検出器(30)は、前記検出光ビーム(22)の前記偏向が、前記少なくとも1つの感知方向で前記位置感知検出器(30)に衝突する前記検出光ビームの前記位置のシフトをもたらすように配置され、
前記検出光ビーム(22)のプロファイルを成形するために前記検出光ビーム(22)の前記光路に円柱レンズが提供され、および/または前記位置感知検出器(30)が、前記検出光ビーム(22)に対して90°からずれたある角度で配置され、前記感知方向で前記位置感知検出器(30)に衝突する前記検出光ビーム(22)の直径が、前記感知方向に直交する方向での前記検出光ビーム(22)の直径の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍である、
請求項43から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記円柱レンズが、前記接触面(14)での反射と前記位置感知検出器(30、62)との間の前記検出光ビーム(22)の前記光路に配置されたコリメート・レンズ(78)であり、前記円柱レンズが、前記検出光ビーム(22)を、少なくとも主に前記位置感知検出器(30)の前記感知方向に直交する次元でコリメートし、前記円柱コリメート・レンズは、好ましくは、前記検出光(22)ビームが前記測定体(16)から出る前記測定体(16)の出射面(74)と一体に形成される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
光源光ビーム(80)が、前記検出光ビーム(22)と参照光ビーム(92)とに分割され、前記参照光ビーム(92)も同様に、前記物質(12)と熱的または圧力伝達接触している前記測定体(16)の表面(14)で全反射または部分反射されるように向けられるが、励起放射(18)の吸収時に前記物質(12)から受け取られる熱または圧力波の影響が無視できる領域内に向けられ、前記接触面(14)での反射後の前記参照光ビーム(92)の偏向の程度、特に偏向角度が、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器(96)を使用して検出される、請求項43から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記検出が、前記検出ビームの前記位相変化を評価し、前記位相変化を示す応答信号を発生することを可能にする干渉計デバイス(60)を使用することを含む、請求項39から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記測定体(16)または前記測定体内の構成要素が、温度の局所的変化またはそれに関連付けられる圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有し、前記検出デバイスが、前記電気的特性を表す電気信号を捕捉するための電極(6a~6d)を備える、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
光ファイバが前記測定体に埋め込まれ、検出光源が、検出光を前記光ファイバ(98)に結合するために前記ファイバ(98)の一端に提供され、モード検出器(100)が、前記ファイバ(98)の他端に提供され、前記モード検出器(100)を使用して、前記物質(12)から前記測定体(16)によって受け取られる前記熱または圧力波に応答する前記検出光の光学モードの変化が検出され、光学モードの前記変化が、好ましくは、前記モード検出器(100)での光学モードの干渉パターンのシフトまたは回転を含む、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記物質(12)が、ヒト組織、特にヒト皮膚であり、前記分析物が、前記皮膚、特に前記皮膚の間質液中に存在するグルコースである、請求項39から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
それぞれ専用の波長を有するレーザ、特に量子カスケード・レーザのアレイを使用して前記励起放射(18)を発生するステップをさらに含む、請求項39から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
少なくとも1つの波長可変レーザ、特に少なくとも1つの波長可変量子カスケード・レーザを使用して前記励起放射(18)を発生するステップをさらに含む、請求項39から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記励起波長のいくつかまたはすべてが、5μm~13μm、好ましくは8μm~11μmの範囲内にある、請求項39から74のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、少なくとも1つの分析物を含む、例えば流体としての物質を分析するための装置および方法に関する。特に、本発明は、ヒト皮膚、特にヒト皮膚の間質液中のグルコース濃度など、体液中の分析物の非侵襲的測定のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、少なくとも1つの分析物を含む物質を分析する装置および方法に関する。本装置は、上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、上記物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体を備える。
【0003】
本装置は、物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体または測定体に含まれる構成要素の物理的応答を検出するため、および上記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するための検出デバイスとをさらに備える。ここで、応答信号は、励起放射の吸収の程度を示す。
【0004】
本発明は、励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する任意の特定の物理的応答に限定されず、また、励起放射の吸収の程度を示す応答信号を発生することを可能にするようにこの物理的応答を検出する任意の特定の方法にも限定されない。本出願人によって、これらのタイプの分析物測定手順に関して様々な物理的応答および対応する検出方法が以前に提案されており、以下に簡単に要約され、それらのそれぞれが本発明に適用されてよい。
【0005】
例えば、検出デバイスは、上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための光源を備えることがあり、上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体の上記物理的応答は、上記測定体または上記構成要素の屈折率の局所的変化であり得る。この場合、検出デバイスは、測定体または測定体に含まれる構成要素の物質の屈折率の上記変化による光路の変化または検出光ビームの位相の変化のうちの一方を検出するように構成されてもよい。
【0006】
例えば、どちらも参照により本明細書に含まれる国際公開第2015/193310号および国際公開第2017/097824号として公開されている本出願人の2つの先行出願に詳細に記載されている様々な方法およびデバイスでは、測定体は、上記検出光ビームに対して透明であり、検出光ビームは、上記物質と熱的接触している上記測定体の表面で全反射または部分反射されるように向けられる。この場合、検出デバイスは、屈折率の上記局所的変化による上記検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出することが可能な光検出器、特に位置感知光検出器を備えることがある。したがって、この場合、測定体によって受け取られる熱または圧力波に対する物理的応答は、屈折率の局所的変化であり、応答信号は、検出された偏向の程度であり、これは、実際に励起放射の吸収の程度を示すことが判明されている。
【0007】
本出願人によって提案される代替変形形態では、例えば参照により本明細書に含まれる国際出願PCT/EP2019/064356号に開示されているように、上記検出デバイスは、検出ビームの上記位相変化を評価し、上記位相変化を示す応答信号を発生することを可能にする干渉計デバイスを備えることがある。この場合、上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られた熱または圧力波に対する測定体(または測定体に含まれる構成要素)の物理的応答は、ここでも屈折率の局所的変化であり、応答信号は、この場合、屈折率の局所的変化による検出ビームの位相の変化を反映する干渉信号である。
【0008】
さらなる代替実施形態では、測定体または上記測定体の構成要素が、温度の局所的変化またはそれに関連付けられる圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有することがあり、上記検出デバイスが、上記電気的特性を表す電気信号を捕捉するための電極を備える。参照により本明細書に含まれる国際公開第2019/110597号には、様々な可能なセットアップが開示されている。例えば、測定体は、圧電特性を有するセクションを備えることがあり、受け取られた熱に関連付けられる圧力変化は、電極で記録され得る電気信号をもたらす。この場合、圧力の変化は、励起放射の吸収時に物質から受け取られる熱に対する測定体または測定体に含まれる構成要素の物理的応答に類似し、測定体および電極の圧電特性を使用して検出され、励起放射の吸収の程度を示す前述の応答信号を表す電気信号をもたらす。さらなる変形形態では、非常に高感度の温度センサを使用して、受け取られた熱による温度変化が直接測定されてよい。
【0009】
以下の説明では、物質から受け取られる熱に対する測定体の物理的応答が詳細に述べられることに留意されたい。しかし、本発明の方法および装置の様々な実施形態において、物質は測定体と圧力伝達接触しており、測定体の物理的応答は、物質から受け取られる圧力波に対する応答であることを理解されたい。本明細書では、「圧力伝達接触」という表現は、物質から測定体への圧力波の移送を可能にするすべての関係、特に音響的に結合された関係を含むものとし、結合は、気体、液体、または固体によって確立されてよい。物質から測定体によって受け取られる熱的接触および熱への物理的応答に関連して与えられるすべての詳細な説明は、適用可能である場合、明示的な言及なしに、圧力伝達接触および圧力波への物理的応答を含むシナリオと共に理解されるものとする。
【0010】
装置は、分析ステップを行うようにさらに構成されてよく、上記分析は、少なくとも部分的に上記応答信号に基づいて実施される。この目的のために、本装置は、分析を実施するようにプログラムされた1つまたは複数のプロセッサを備える制御システムを備えることができる。例えば、物質中の分析物の濃度を決定することに関心がある場合、励起放射は、例えば分析物の吸収ピークに関連付けられる分析物の吸収スペクトルに特徴的な波長を有するように選択されてよい。応答信号は励起放射の吸収の程度を示すので、この場合、応答信号は、物質中の分析物の濃度に直接関係付けられる。したがって、分析ステップは、物質中の分析物の濃度の尺度に少なくとも部分的に基づいていてよく、いくつかの非限定的な用途では、実際にこの濃度を決定することになり得る。
【0011】
例えば、上で概説したタイプの装置は、本出願人によって、ユーザのグルコース(glucose)・レベルの非侵襲的測定のために採用されている。この特定の用途では、「分析物」はグルコースによって形成され、「物質」はユーザの皮膚である。この手法は、人の皮膚内の間質液中のグルコース濃度の非常に高精度の測定を可能にすることが以前に実証されており、これは、患者の血液のグルコース含有量と直接関係付けられ、したがってグルコース含有量を表すことが判明されている。本出願の図4には、国際公開第2017/097824号から取られたクラーク・エラー・グリッド分析の結果が示されており、上述の装置および分析方法が人の実際のグルコース濃度を非常に高精度で予測することを可能にすることを実証している。
【0012】
それにもかかわらず、分析結果の正確性および信頼性をさらに向上させることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の根底にある目的は、分析結果の正確性または信頼性を向上させることを可能にする、上述された物質を分析するための装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、この問題は、突出部が提供され、上記突出部は、上記物質に面し、物質が接触面と接触されたときに物質と接触する前面を有し、上記励起放射が、上記突出部の上記前面を通して物質に照射されることによって解決される。ここで、測定体の接触面に突出部が形成されてもよい。
【0015】
代替実施形態では、測定体自体が突出部を形成する、または上記突出部の一部を形成することがある。この場合、測定体の接触面は、同時に、上記突出部の上記前面、または上記突出部の上記前面の少なくとも一部を形成し、周囲構造に対して高くなっている。周囲構造は、例えば装置のハウジングの壁部分などでよい。
【0016】
本発明者らは、装置によって実施される測定手順の1つの重要な側面は、物質への励起放射の確実であり一貫した伝達であることに気付いた。上で引用された先行出願において本出願人によって述べられた装置のいくつかでは、励起放射は、測定体の接触面と物質との界面で物質に入るように測定体を通して案内され、この界面では、実際に励起放射は概して非常に良く物質に結合され得ることが見られた。これは、物質がユーザの指先によって形成され、装置が皮膚中のグルコース含有量を測定するために使用される用途において特に当てはまることが判明されている。この場合、指先は、測定体の接触面にしっかりと置かれ、それにより、励起放射が測定体の接触面を通って物質に入ることを可能にするのに十分な光学的結合を確立した。
【0017】
しかし、不完全であり特に不安定な光学的結合が測定の不正確さの原因となり得ることを広範な研究が示している。特に、本発明者らは、単一の測定の過程中に、すなわち指先を意図的に接触面で動かすまたはさらには接触面から離すことがなくても、光学的結合が変化し得ることに気付いた。測定の過程中に光学的結合が変化する場合、これは、分析物によって実際に吸収される励起放射の強度の変化、したがって応答信号の変化をもたらし、この変化は、励起放射波長での分析物の吸収率または分析物濃度に無関係である。換言すると、測定の一部中の光学的結合の損失は、所与の励起波長でのより低い吸収率と誤解され得る。分析物スペクトルの評価は、典型的には、複数の特徴的な波長、例えば分析物吸収スペクトルのピークまたは吸収極小値に対応する波長での吸収を測定することを含み、さらに、異なる波長に関連付けられる応答信号の数学的組合せを含み、例えば、吸収スペクトルの極小値で得られた応答信号を吸収ピークの応答信号から差し引く。したがって、光学的結合、したがって物質内での励起放射の実効強度が、異なる波長での測定間で、またはさらには特定の波長での測定中にさえ変化し、測定結果においてアーチファクトおよび不正確さが生じ得ることは理解可能である。
【0018】
本発明者らにとって、不安定な光学的結合が重大なエラーの原因になることは明らかでなかったことであり、また、測定中に指先が意図的に動かされないので、接触面と物質との光学的結合が測定中に大幅に変化する理由も厳密には明らかではなかった。1つの考えられる原因は、ユーザが意図しないうちに指と接触面との接触圧力が一定でなくなり得ることであり得る。もう1つの考えられる原因は、ユーザが意図せずに指先を接触面でわずかに動かすこと、および非常に小さな動きが予想外に大きな影響を及ぼす可能性があることであり得る。これは、例えば、励起放射が指先の表皮隆起部で皮膚に入る位置と、励起放射が2つの表皮隆起部間の位置で皮膚に入る位置との間で指先が動く場合であり得て、光学的結合の減少が発生し得る。
【0019】
厳密な根本理由に関係なく、本発明者らは、接触面に突出部が形成され、上記突出部が、物質に面し、物質が接触面と接触されるときに物質と接触する前面を有する場合、および励起放射が上記突出部の上記前面を通して物質に照射される場合、光学的接触およびその一貫性が向上され得ることに気付いた。すなわち、突出部の前面では、同じ合計の力が指によって接触面に加えられた場合、局所的な接触圧力は、平坦な接触面よりも大幅に高いことが判明された。この接触圧力の局所的な増加は、より良い光学的結合、特に測定の過程中のより一貫性のある光学的結合を可能にする。
【0020】
突出部は、光学的結合の改良だけでなく、熱的または圧力伝達結合の改良も可能にすることに留意されたい。したがって、突出部はまた、多くの場合、測定体に移送されるべき、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波の移送の改良も促す。本願で特許請求される発明の実施形態ではないが、励起放射が物質の前面を通して物質に照射されない場合でさえ、そのような突出部を使用することもここで考慮される。
【0021】
好ましい実施形態では、前面は平坦である。しかし、本発明はこれに限定されず、後述されるように特に反射された検出ビームに検出が依拠する場合には、湾曲された前面も有利であり得る。
【0022】
好ましい実施形態では、上記突出部は、0.3cm未満、好ましくは0.2cm未満、より好ましくは0.1cm未満、さらにより好ましくは0.05cm未満、最も好ましくは0.02cm未満のフットプリント面積を有する。
【0023】
好ましい実施形態では、上記突出部は、上記前面に向かって先細りする1つまたは複数の側壁を有する先細り形状を有する。この先細り形状は、前面がフットプリント面積よりも小さいことがあり得て、したがってさらに高い局所的な接触圧力をもたらすことを示唆する。また、先細りの側壁は、突出部の安定性を高める。さらに、検出が反射された検出ビームに依拠するいくつかの実施形態では、以下の詳細な実施形態の説明から明らかなように、先細りの側壁は、接触面を小さく保ちながら、検出光ビームが突出部に入るのを容易にする。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記突出部は、円形、楕円形、または正方形のフットプリントを有する。
【0025】
特に好ましい実施形態では、突出部が隆起形状であり、第1の方向でのより長い延在部と、第1の方向に直交する第2の方向でのより短い延在部とを有し、より長い延在部が、より短い延在部の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍、より好ましくは少なくとも2.5倍、最も好ましくは少なくとも3.0倍を超える。ここで、「より長い延在部がより短い延在部の少なくとも1.5倍を超える」という表現は、より短い延在部が2mmであった場合、より長い延在部が少なくとも3mmであることを意味する。
【0026】
好ましい実施形態では、上記突出部または上記突出部の上記一部を形成する上記測定体が、フレームまたはレセプタクルに受け取られ、上記測定体の上記接触面が上記フレームまたはレセプタクルから突出する、または上記フレームまたはレセプタクルが周囲構造から突出する。
【0027】
好ましい実施形態では、物質と測定体との接触圧力を測定するために圧力センサが提供される。ここで、本装置は、好ましくは、物質と測定体との接触圧力を示す上記圧力センサからの信号を受信するように構成された制御システムをさらに備え、上記制御システムは、上記接触圧力が所定の閾値未満であるかどうかをチェックするように構成される。接触圧力が上記閾値未満であることが判明された場合、制御システムは、
ユーザに接触圧力の欠如を示すこと、
分析物測定プロセスが開始されないようにすること、および
現在の分析物測定プロセスを中断すること
のうちの1つまたは複数を行うように構成される。
【0028】
換言すると、突出部は、厳密に必要とされる場所で、すなわち励起放射が物質に結合される前面で高い接触圧力を確立するのに役立つが、接触圧力が監視される場合、および不十分な接触圧力がユーザに示されて修正され得る場合、信頼性がさらに向上され得る。さらに、分析物測定プロセスが開始されないようにする、または既に進行中の分析物測定プロセスを中断することによって、不十分な接触圧力の場合に不正確な測定結果が得られることが回避されてもよい。
【0029】
好ましい実施形態では、上記装置がクランプ・デバイスをさらに備え、上記クランプ・デバイスは、クランプ部材が測定体の接触面から離れるように動かされた開位置と、クランプ部材が上記接触面に近い閉位置との間で移動可能なクランプ部材を備え、上記クランプ部材が、閉位置に向かって付勢される。物質は、クランプ部材が開位置にあるときに接触面に配置されてよく、上記クランプ部材は、閉位置に向かう付勢力により上記物質を接触面に押し付けるのに適している。このようにして、所定の接触圧力が保証され得る。
【0030】
好ましい実施形態では、前述の圧力センサは、上記クランプ・デバイスに配置される。好ましい実施形態では、クランプ・デバイスは、接触面にある/上記測定体によって少なくとも部分的に形成される突出部と組み合わされるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0031】
さらなる実施形態では、本装置は、測定体の接触面に対して物質を固定するためのストラップをさらに備える。
【0032】
好ましい実施形態では、上記測定体は、上記励起放射に対して透明であり、上記励起放射源は、上記励起放射を励起ビームとして提供するように構成される。さらに、励起放射源は、上記励起ビームが上記測定体にその入射面で照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、上記接触面で測定体から出るように配置される。以前の装置では、本出願人は、入射面での励起放射ビームの屈折および過剰な反射を避けるように、励起放射ビームが90°の角度で入射面に衝突することを保証した。しかし、実際に物質に到達する励起放射の意図しない変動のさらなる原因は、励起放射源から放出された励起放射と、測定体の入射面から反射されて戻される励起放射との起こり得る干渉であることを広範な研究が明らかにした。この干渉は実際に、物質内の励起放射の強度の変動をもたらし、したがって分析物濃度に関係のない応答信号の変化を即座にもたらすことが判明された。さらに、本発明者らは、励起ビームの入射角をわずかに傾けることによって、この影響が抑制され得て、測定の正確性および信頼性が向上され得ることを見出した。したがって、この実施形態では、励起ビームは、89.0°以下、好ましくは88.0°以下、最も好ましくは87.5°以下の角度で入射面に衝突するように向けられる。このようにして、意図していない干渉が確実に防止され得る。これによるさらなる有利な効果は、励起放射が励起放射源に反射されて戻され、励起放射によって励起放射源が場合により損壊され得ることが防止され得ることである。他方で、過度の反射による損失を避けるために、入射角は90°から大きくずれるべきでない。したがって、この実施形態では、入射角は82.0°以上、好ましくは84.0°以上、最も好ましくは85.0°以上であるべきである。この実施形態は、有利には、接触面の突出部と共に使用される/上記測定体によって少なくとも部分的に形成されるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0033】
好ましい実施形態では、上記励起ビームは、90°±1.5°の角度で測定体の接触面に衝突し、それにより接触面での反射による損失を最小限に抑える。
【0034】
好ましい実施形態では、励起ビームがそれぞれ測定体に入るおよび測定体から出るそれぞれの部分での入射面と接触面とが、1.0°以上、好ましくは2.0°以上、最も好ましくは2.5°以上、および8.0°以下、好ましくは6.0°以下、最も好ましくは5.0°以下の角度で互いに対して傾けられている。図式的に言うと、この実施形態による測定体は、わずかに「楔形」の形状を有することがあり、これは、入射面での励起ビームのわずかな傾きと、接触面での励起ビームの直交向きとの両方を確立することを可能にする。
【0035】
好ましい実施形態では、上記検出デバイスは、上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための光源を備える。ここで、上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体の上記物理的応答は、上記測定体または上記構成要素の屈折率の局所的変化であり、上記検出デバイスは、屈折率の上記変化による検出ビームの光路の変化または位相の変化のうちの一方を検出するように構成される。
【0036】
好ましい実施形態では、上記検出デバイスは、上記検出光ビームが入射面で測定体に照射されるように構成され、上記検出光ビームは、上記入射面に対して、89°以下、好ましくは88°以下、最も好ましくは87.5°以下、および80°以上、好ましくは82°以上、より好ましく84°以上、最も好ましくは85°以上の入射角で入射面に衝突する。このようにして、検出光ビームがそれ自体に反射されて戻され、干渉および望ましくない干渉現象をもたらし得ることが回避され得る。これによるさらなる有利な効果は、が検出光源に反射されて戻され、検出光ビームによって検出光源が場合により損壊され得ることが防止され得ることである。
【0037】
好ましい実施形態では、上記測定体は、上記測定体の上記入射面に衝突するときに上記検出光ビームの上記入射角を調整するように、上記測定体を回転させることを可能にするフレームまたはレセプタクルに受け取られる。このようにして、例えば、検出光源、または検出光ビームの光路内のミラーなどの任意の光学要素を調整することに比べて、測定体への検出光ビームの適切な入射角を調整することが非常に容易にされる。好ましくは、上記フレームまたはレセプタクルは、上記測定体を、励起光ビームと平行な軸の周りで回転させる、または平行から10°未満、好ましくは5°未満ずらすことを可能にする。最も好ましい実施形態では、上記測定体の上記回転軸は、上記励起光ビームと一致する。
【0038】
関連の実施形態では、上記測定体が上記検出光ビームに対して透明であり、上記検出光ビームが、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記測定体の表面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出デバイスが、屈折率の上記局所的変化による、上記接触面での反射後の検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器を備える。ここで、上記検出デバイスは、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器を備える。
【0039】
この実施形態では、上記検出光ビームは、好ましくは、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記突出部の上記前面で全反射または部分反射されるように向けられる。換言すると、この実施形態では、検出光ビームは、励起放射が測定体を出て物質に入るのと同じ表面で反射される。これは、励起放射の吸収時に物質から受け取られる熱または圧力波による屈折率の比較的大きな局所的変化が予想され得る領域で検出光ビームが反射されることを示唆し、これはさらに、屈折率の上記局所的変化による検出光ビームの偏向が比較的大きいと予想されることを示唆する。
【0040】
「偏向」されている検出光ビームの概念は、角度の全体的な変化または検出器での衝突位置の変化に関係し、または換言すると、検出光ビームの検出位置が物質の励起および物質による吸収のないその位置とどのように異なっているかに関係することに留意されたい。したがって、この「偏向」は、屈折率の局所的変化が光路に沿って検出光ビームに及ぼす累積効果である。多くの場合、ここでは突出部の前面によって形成される、物質と熱的または圧力伝達接触している測定体の表面で検出光ビームが反射される前に、屈折率の局所的変化による光ビームの偏向の一部が発生することを、より詳細な研究が表している。したがって、屈折率の局所的変化はまた、典型的には、検出光ビームが反射される表面上の正確な位置のシフトをもたらす。
【0041】
この理解に鑑みて、好ましい実施形態では、突出部の前面は、少なくとも1つの主方向で湾曲される。この湾曲は、検出光ビームが反射される位置の上記変化がまた、入射角の変化によって伴われ、したがって反射角の対応する変化ももたらすことを示唆する。したがって、湾曲された反射面を使用すると、位置感知検出器によって検出される位置のシフトなど、検出デバイスによって評価される合計の偏向が増加され得る。
【0042】
好ましい実施形態では、上記少なくとも1つの主方向での上記湾曲が、5~30mm、好ましくは10~20mmの範囲内の曲率半径に対応する。
【0043】
好ましい実施形態では、上記少なくとも1つの主方向での上記湾曲は、凹状または凸状のうちの一方である。
【0044】
好ましい実施形態では、上記前面での反射前後の検出光ビームが検出光平面を定め、上記少なくとも1つの主方向が上記検出光平面内にある、または検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す。このようにして、偏向に対する湾曲の主要な効果が検出光平面内にあることが保証される。
【0045】
検出光ビームが突出部の前面で反射される場合、一般に、突出部の幾何形状が、接触面に対する検出光ビームの取り得る傾斜角を制限することに留意されたい。例えば、突出部が、高さhと、半径rの円形フットプリントとを有する場合、接触面に対する検出光ビームの傾斜角αは、突出部に「フィット」するように、条件tan(α)>h/rに従わなければならない。別の視点から見ると、突出部の所望の高さhおよび所望の角度αを仮定して、半径rの下限、または換言するとフットプリントサイズの下限を考慮しなければならない。上で説明されたように、1つまたは複数の先細りの側壁を使用することによって、突出部の前面のサイズがフットプリントのサイズよりも減少されてよく、それにより、より大きいフットプリント面積に関してさえ、より小さい前面、したがってより高い接触圧力を可能にする。
【0046】
好ましい実施形態では、突出部が隆起形状であり、第1の方向でのより長い延在部と、第1の方向に直交する第2の方向でのより短い延在部とを有し、より長い延在部が、より短い延在部の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍、より好ましくは少なくとも2.5倍、最も好ましくは少なくとも3.0倍を超え、上記第1の方向が上記検出光平面と平行である、または検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成すというさらなる改良が行われ得る。換言すると、この実施形態によれば、検出光平面は、隆起形状の突出部の長手方向に少なくともほぼ対応し、これは、突出部の所与の高さで、突出部の前面に対する検出光ビームの傾斜角度がより小さくなることがあることを意味する。同時に、検出光平面のこの向きでは、隆起形状の突出部の第2の短い方向での延在部は、一般に傾斜角とは無関係であり、したがって比較的小さく選択されてよく、それにより前面のサイズを減少させ、前面でより高い接触圧力を可能にする。
【0047】
好ましい実施形態では、検出光源は、上記検出光ビームが入射面で上記測定体に照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、出射面で測定体から出るように配置され、検出ビームは、屈折率の上記局所的変化による任意の偏向がない場合に、出射面への法線に対して5°以上、好ましくは10°以上、最も好ましくは15°以上の角度で出射面に衝突し、検出ビームが、測定体の出射面からの出射時に屈折され、検出光ビームに対する出射面の向きは、上記測定体に移送される上記熱または圧力波に応答する検出光ビームの上記偏向が、出射面への法線に対する上記検出光ビームの上記角度を増加させるようなものである。
【0048】
本出願人の以前の設計では、測定体の形状は、反射による損失を回避するためおよび屈折を回避するために、検出ビームが入射および出射面に垂直になるように概して選択され、これは、光学セットアップをより複雑にすることが容易に理解される。しかし、この実施形態によれば、検出光源は、上で定義された様式で検出光ビームが少なくとも出射面で意図的に屈折されるように配置される。通常、測定体の屈折率は周囲の屈折率よりも高いので、出射面の法線に対する検出光ビームの角度の増加は、屈折される光ビームの角度のさらに大きい増加をもたらし、したがって検出デバイスで検出される光ビームの偏向がさらに増加され、それにより、より大きい応答信号をもたらす。このようにして、信号対雑音比が増加され得る。一般に、検出ビームの入射角が出射面の法線からずれるほど、影響は大きくなる。しかし、当然、全反射の「臨界」角度が到達されることは避けられなければならない。さらに、この臨界角度に近い角度に関して、上記出射面で反射される検出光ビームの光の割合が増加し、それにより、光検出器などの検出デバイスに実際に到達する屈折検出光ビームの強度を減衰する。したがって、入射角に関する最良の選択は、より大きな屈折の程度と、屈折検出光ビームの十分な強度との折衷であり得る。いずれにせよ、軸面への法線からの入射角のずれは少なくとも5°にすべきであり、好ましくは少なくとも10°、最も好ましくは少なくとも15°である。この実施形態は、有利には、接触面の突出部と共に使用される/上記測定体によって少なくとも部分的に形成されるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0049】
好ましい実施形態では、検出光源は、上記検出光ビームが入射面で上記測定体に照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、出射面で測定体から出るように配置され、集束レンズが入射面に取り付けられて、または入射面と一体に形成されて、上記測定体に入る上記検出光ビームを少なくとも1つの次元で集束し、および/またはコリメート・レンズが出射面に取り付けられて、または出射面と一体に形成されて、上記検出光ビームを少なくとも1つの次元でコリメートする。
【0050】
本発明者らは、検出光ビームが、測定体に生成された熱レンズとビームが相互作用する領域でもある接触面で反射されたときに集束される場合に、測定の品質が向上されることに気付いた。明瞭な特徴的な偏向のために、この領域での検出ビームの直径が比較的小さい場合に有利であり、これは上記集束レンズによって実現され得る。換言すると、集束レンズの目的は、検出光ビームをある焦点に正確に集束させることでは必ずしもなく、少なくとも熱レンズと相互作用する領域で検出光ビームの直径を小さくすることである。しかし、この集束は、検出光ビームが検出デバイスに向かう途中で広がっていることを示唆する。これは通常、位置感知検出器などの検出デバイスが検出ビームの出射面に直接隣接して配置される、または少なくとも出射面の近くに配置される場合には、通常はあまり問題にならない。しかし、本発明者らは、出射面と検出器との間の距離が増加される場合、これは、例えば検出光ビームが位置感知検出器に衝突する位置のより大きなシフトによって表されるより大きな偏向の程度をもたらすので、測定の信号対雑音比がさらに増加され得ることを見出した。本明細書では、「より大きい偏向の程度」は、「偏向の程度」の1つの取り得る意味であるより大きい偏向角度に関係するのではなく、検出デバイスによって検出されるより大きい偏向の影響に関係することに留意されたい。例えば、測定体の接触面での反射と検出デバイスでの検出との間の距離は、少なくとも4cm、いくつかの実施形態では9cm以上でよく、それにより、検出デバイスによって検出される偏向に対する一種のレバレッジを導入する。しかし、検出デバイスが出射面からかなり離れた距離に位置するとき、検出ビームの直径を一定に保つために、測定体を出た後に検出光ビームがコリメートされると有利である。それにも関わらず、集束とコリメーションとが両方の次元で行われる必要は必ずしもなく、多くの実際の用途では、以下で説明されるように、方向のうちの一方におけるある程度の広がりがさらに望まれ得ることが強調される。したがって、集束レンズおよび/または他のコリメート・レンズは、少なくとも1次元でのみ効果的でなければならない。実際、好ましい実施形態では、上記集束レンズおよび上記コリメート・レンズのうちの少なくとも一方が、検出光ビームを少なくとも主に1次元でそれぞれ集束およびコリメートする円柱レンズである。
【0051】
さらに、集光レンズおよび/またはコリメート・レンズを測定体に取り付けることによって、またはさらに好ましくはそれらを測定体と一体に形成することによって、装置の組立て中またはさらには装置の使用中にこれらのレンズの個別の調整は必要ない。この実施形態は、有利には、接触面の突出部と共に使用される/上記測定体によって少なくとも部分的に形成されるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0052】
好ましい実施形態では、上記検出器は、上記検出光ビームが衝突する位置感知検出器を備え、上記位置感知検出器が、少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトを検出するのに高感度である。さらに、上記位置感知検出器は、上記検出光ビームの上記偏向が、上記少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトをもたらすように配置される。最後に、検出光ビームのプロファイルを成形するために検出光ビームの光路に円柱レンズが提供され、上記感知方向で上記位置感知検出器に衝突する検出光ビームの直径が、上記感知方向に直交する方向での検出光ビームの直径の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍である。本発明者らは、少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトを検出するのに高感度である位置感知検出器を使用するとき、位置感知検出器に形成されるビームプロファイルの光スポットが上で定義されたように感知方向で細長い場合、信号対雑音比およびいくつかの実施形態ではセンサ出力の線形性が増加され得ることに気付いた。これは、それぞれの端部での電流差を測定する位置感知検出器に特に当てはまる。本発明のこの態様による光スポットの細長い形状は、そのような円柱レンズを使用して確立される。この実施形態は、有利には、接触面の突出部と共に使用される/上記測定体によって少なくとも部分的に形成されるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0053】
好ましい実施形態では、上記円柱レンズが、上記接触面での反射と上記位置感知検出器との間の検出光ビームの上記光路に配置されたコリメート・レンズであり、上記円柱レンズが、上記検出光ビームを、少なくとも主に(しかし場合により排他的に)上記位置感知検出器の上記感知方向に直交する次元でコリメートするように配置され、上記円柱コリメート・レンズは、好ましくは、検出光ビームが測定体から出る上記測定体の出射面と一体に形成される。
【0054】
追加または代替として、位置感知検出器は、検出光ビームから90°ずれた角度で配置されてもよく、この角度により、感知方向でより大きい延在部を有する位置感知検出器に細長い光スポットが形成される。
【0055】
好ましい実施形態では、本装置は、光源光ビームを上記検出光ビームと参照光ビームとに分割するためのビームスプリッタをさらに備え、上記参照光ビームも同様に、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記測定体の表面で全反射または部分反射されるように向けられるが、励起放射の吸収時に物質から受け取られる熱または圧力波の影響が無視できる領域内に向けられる。さらに、上記装置は、上記接触面での反射後の参照光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するためのさらなる検出デバイスを備え、上記検出デバイスが、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器を備える。
【0056】
この参照光ビームは、励起放射の吸収による熱または圧力波を除いて、検出光ビームと同じタイプの外的影響にさらされる。したがって、参照光ビームの取り得る偏向を測定することによって、これらの外的影響が考慮に入れられ、検出光ビームによって得られた測定結果から除去され得る。好ましい実施形態では、追加の参照ビームは、接触面にある/上記測定体によって少なくとも部分的に形成される突出部と組み合わされるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0057】
代替の好ましい実施形態では、上記検出デバイスは、検出ビームの上記位相変化を評価し、上記位相変化を示す応答信号を発生することを可能にする干渉計デバイスを備える。
【0058】
さらなる代替実施形態では、上記測定体または上記測定体の構成要素が、温度の局所的変化またはそれに関連付けられる圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有し、上記検出デバイスが、上記電気的特性を表す電気信号を捕捉するための電極を備える。
【0059】
さらに別の実施形態では、本装置は、上記測定体に埋め込まれたファイバと、検出光を上記ファイバに結合するために上記ファイバの一端に提供された検出光源と、上記ファイバの他端に提供されたモード検出器とを備える。モード検出器は、上記物質から測定体によって受け取られる熱または圧力波に応答して、上記検出光の光学モードの変化を検出するのに適している。例えば、モード検出器は、モード、典型的にはいくつかのモードの干渉パターンを視覚化するのに適したカメラ、およびカメラ画像の画像分析に基づいてモードの変化を検出するように構成されたプロセッサを備えることができる。プロセッサは、モード検出器に関連付けられた専用プロセッサでよく、または上述された装置の制御システムによって提供されてもよい。光学モードの検出可能な変化は、モード検出器での光学モードの干渉パターンのシフトまたは回転を含むことがある。したがって、シフトの距離または回転角度は、物質から受け取られる熱の量または圧力波の強度に関連付けられる定量的パラメータであり、したがって最終的には物質によって吸収される励起光の量を示す。モードの干渉パターンのそのような変化は、カメラまたはイメージ・センサを使用して容易に検出され得るが、他のデバイス、例えばある種のスペース解像強度値を測定することを可能にするセンサまたは検出器も同様に可能であり、必ずしも完全な画像を提供する必要はない。この実施形態では、「物理的応答」は、受け取られた熱または圧力波によるファイバの光学的特性の一時的な変化であり、「応答信号」は、いくつかのモードの干渉パターンの変化など、光学モードの検出可能な変化である。好ましい実施形態では、このタイプのモード検出は、接触面にある/上記測定体によって少なくとも部分的に形成される突出部と組み合わされるが、そのような突出部のない実施形態で採用することも可能である。
【0060】
好ましい実施形態では、上記物質は、ヒト組織、特にヒト皮膚であり、上記分析物は、皮膚、特に皮膚の間質液中に存在するグルコースである。
【0061】
好ましい実施形態では、上記励起放射は、それぞれ専用の波長を有するレーザ、特に量子カスケード・レーザのアレイを使用して発生される。
【0062】
代替の好ましい実施形態では、上記励起放射は、少なくとも1つの波長可変レーザ、特に少なくとも1つの波長可変量子カスケード・レーザを使用して発生される。
【0063】
好ましい実施形態では、上記励起波長のいくつかまたはすべてが、5μm~13μm、好ましくは8μm~11μmの範囲内にある。代替実施形態では、上記励起波長のいくつかまたはすべてが、3μm~5μmの範囲内にある。この波長範囲は、例えば、脂肪酸中のCHおよびCH振動の吸収を検出するのに有用である。
【0064】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための方法であって、
接触面を有する測定体を、上記物質と熱的接触または圧力伝達接触させるステップであって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、ステップと、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するステップと、
上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体または測定体に含まれる構成要素の物理的応答を検出し、上記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するステップであって、上記応答信号が励起放射の吸収の程度を示す、ステップと、を含み、
突出部が提供され、上記突出部は、上記物質に面し、物質が接触面と接触されたときに物質と接触する前面を有し、上記励起放射が、上記突出部の上記前面を通して物質に照射され、上記突出部が、上記測定体の上記接触面に形成され、または
上記測定体は、上記突出部もしくは上記突出部の一部を形成し、上記測定体の接触面は、上記突出部の上記前面を形成し、周囲構造に対して高くなっている、
ことを特徴とする方法に関する。
【0065】
本方法の好ましい実施形態では、上記前面は平坦である。
【0066】
本方法の好ましい実施形態では、上記突出部は、0.3cm未満、好ましくは0.2cm未満、より好ましくは0.1cm未満、さらにより好ましくは0.05cm未満、最も好ましくは0.02cm未満のフットプリント面積を有する。
【0067】
本方法の好ましい実施形態では、上記突出部は、上記前面に向かって先細りする1つまたは複数の側壁を有する先細り形状を有する。
【0068】
本方法の好ましい実施形態では、上記突出部は、円形、楕円形、または正方形のフットプリントを有する。
【0069】
本方法の好ましい実施形態では、突出部が隆起形状であり、第1の方向でのより長い延在部と、第1の方向に直交する第2の方向でのより短い延在部とを有し、より長い延在部が、より短い延在部の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍、より好ましくは少なくとも2.5倍、最も好ましくは少なくとも3.0倍を超える。
【0070】
本方法の好ましい実施形態では、物質と測定体との接触圧力が測定される。
【0071】
好ましくは、本方法は、上記接触圧力が所定の閾値未満であるかどうかをチェックするステップをさらに含み、接触圧力が上記閾値未満であることが判明された場合、
ユーザに接触圧力の欠如を示すステップ、
分析物測定プロセスが開始されないようにするステップ、および
現在の分析物測定プロセスを中断するステップ
のうちの1つまたは複数を実施する。
【0072】
好ましくは、本方法は、クランプ・デバイスを使用して上記物質を接触面に固定するステップをさらに含み、上記クランプ・デバイスは、クランプ部材が測定体の接触面から離れるように動かされた開位置と、クランプ部材が上記接触面に近い閉位置との間で移動可能なクランプ部材を備え、上記クランプ部材が、閉位置に向かって付勢され、上記物質は、クランプ部材が開位置にあるときに接触面に配置され、上記クランプ部材は、閉位置に向かう付勢力により上記物質を接触面に押し付ける。
【0073】
本方法の好ましい実施形態では、上記圧力センサは、上記クランプ・デバイスに配置される。
【0074】
好ましい実施形態では、本方法は、ストラップを使用して上記物質を接触面に固定するステップを含む。
【0075】
本方法の好ましい実施形態では、上記測定体は、上記励起放射に対して透明であり、
上記励起放射源が、上記励起放射を励起ビームとして提供し、
励起ビームが、上記測定体にその入射面で照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、上記接触面で測定体から出て、
励起ビームが、89.0°以下、好ましくは88.0°以下、最も好ましくは87.5°以下、および82.0°以上、好ましくは84.0°以上、最も好ましくは85.0°以上の角度で入射面に衝突する。
【0076】
本方法の好ましい実施形態では、上記励起ビームは、90°±1.5°の角度で測定体の接触面に衝突する。
【0077】
本方法の好ましい実施形態では、励起ビームがそれぞれ測定体に入るおよび測定体から出るそれぞれの部分での入射面と接触面とが、1.0°以上、好ましくは2.0°以上、最も好ましくは2.5°以上、および8.0°以下、好ましくは6.0°以下、最も好ましくは5.0°以下の角度で互いに対して傾けられている。
【0078】
本方法の好ましい実施形態では、上記検出は、上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生することを含み、
上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られた熱または圧力波に対する測定体の上記物理的応答が、上記測定体または上記構成要素の屈折率の局所的変化であり、
上記検出が、屈折率の上記変化による検出ビームの光路の変化または位相の変化のうちの一方を検出することを含む。
【0079】
本方法の好ましい実施形態では、上記検出光ビームが入射面で測定体に照射され、上記検出光ビームは、上記入射面に対して、89°以下、好ましくは88°以下、最も好ましくは87.5°以下、および80°以上、好ましくは82°以上、より好ましく84°以上、最も好ましくは85°以上の入射角で入射面に衝突する。
【0080】
上記方法の関連実施形態では、上記測定体が、上記測定体の上記入射面に衝突するときに上記検出光ビームの上記入射角を調整するように、上記測定体を回転させることを可能にするフレームまたはレセプタクルに受け取られ、特に、上記フレームまたはレセプタクルは、上記測定体を、励起光ビームと平行な軸の周りで回転させる、または平行から10°未満、好ましくは5°未満ずらすことを可能にし、最も好ましくは、上記測定体の上記回転軸が上記励起光ビームと一致する。
【0081】
本方法の好ましい実施形態では、上記測定体が上記検出光ビームに対して透明であり、上記検出光ビームが、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記測定体の表面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出が、屈折率の上記局所的変化による、上記接触面での反射後の検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出することを含み、上記検出が、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器を使用して実施される。
【0082】
本方法の好ましい実施形態では、上記検出光ビームは、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記突出部の上記前面で全反射または部分反射されるように向けられる。
【0083】
本方法の好ましい実施形態では、突出部の前面は、少なくとも1つの主方向で湾曲される。ここで、上記少なくとも1つの主方向での上記湾曲が、5~30mm、好ましくは10~20mmの範囲内の曲率半径に対応する。上記少なくとも1つの主方向での上記湾曲は、凹状または凸状のうちの一方である。
【0084】
本方法の好ましい実施形態では、上記前面での反射前後の検出光ビームが検出光平面を定め、上記少なくとも1つの主方向が上記検出光平面内にある、または検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す。
【0085】
本方法の好ましい実施形態では、上記前面での反射前後の検出光ビームが検出光平面を定め、上記第1の方向が上記検出光平面に平行である、または検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す。
【0086】
本方法の好ましい実施形態では、検出光源は、上記検出光ビームが入射面で上記測定体に照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、出射面で測定体から出るように配置され、検出ビームは、屈折率の上記局所的変化による任意の偏向がない場合に、出射面への法線に対して5°以上、好ましくは10°以上、最も好ましくは15°以上の角度で出射面に衝突し、検出ビームが、測定体の出射面からの出射時に屈折され、検出光ビームに対する出射面の向きは、上記測定体に移送される上記熱または圧力波に応答する検出光ビームの上記偏向が、出射面への法線に対する上記検出光ビームの上記角度を増加させるようなものである。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、上記検出光ビームが入射面で上記測定体に照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、出射面で測定体から出て、集束レンズが入射面と一体に形成されて、上記測定体に入る上記検出光ビームを少なくとも1つの次元で集束し、および/またはコリメート・レンズが出射面と一体に形成されて、上記検出光ビームを少なくとも1つの次元でコリメートする。ここで、上記集束レンズおよび上記コリメート・レンズのうちの少なくとも一方が、好ましくは、検出光ビームを少なくとも主に1次元でそれぞれ集束およびコリメートする円柱レンズである。
【0088】
本方法の好ましい実施形態では、上記検出器は、上記検出光ビームが衝突する位置感知検出器を備え、上記位置感知検出器が、少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトを検出し、
上記位置感知検出器は、上記検出光ビームの上記偏向が、上記少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトをもたらすように配置され、
検出光ビームのプロファイルを成形するために検出光ビームの光路に円柱レンズが提供され、および/または位置感知検出器が、検出光ビームに対して90°からずれたある角度で配置され、上記感知方向で上記位置感知検出器に衝突する検出光ビームの直径が、上記感知方向に直交する方向での検出光ビームの直径の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍である。
【0089】
本方法の好ましい実施形態では、上記円柱レンズが、上記接触面での反射と上記位置感知検出器との間の検出光ビームの上記光路に配置されたコリメート・レンズであり、上記円柱レンズが、上記検出光ビームを、少なくとも主に上記位置感知検出器の上記感知方向に直交する次元でコリメートし、上記円柱コリメート・レンズは、好ましくは、検出光ビームが測定体から出る上記測定体の出射面と一体に形成される。
【0090】
本方法の好ましい実施形態では、光源光ビームが、上記検出光ビームと参照光ビームとに分割され、上記参照光ビームも同様に、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記測定体の表面で全反射または部分反射されるように向けられるが、励起放射の吸収時に物質から受け取られる熱または圧力波の影響が無視できる領域内に向けられ、上記接触面での反射後の参照光ビームの偏向の程度、特に偏向角度が、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器を使用して検出される。
【0091】
本方法の好ましい実施形態では、上記検出は、検出ビームの上記位相変化を評価し、上記位相変化を示す応答信号を発生することを可能にする干渉計デバイスを使用することを含む。
【0092】
本方法の好ましい実施形態では、上記測定体または上記測定体の構成要素が、温度の局所的変化またはそれに関連付けられる圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有し、上記検出デバイスが、上記電気的特性を表す電気信号を捕捉するための電極を備える。
【0093】
本方法の好ましい実施形態では、光ファイバが上記測定体に埋め込まれ、検出光源が、検出光を上記光ファイバに結合するために上記ファイバの一端に提供され、モード検出器が、上記ファイバの他端に提供され、上記モード検出器を使用して、上記物質から測定体によって受け取られる熱または圧力波に応答する上記検出光の光学モードの変化が検出され、光学モードの上記変化が、好ましくは、モード検出器での光学モードの干渉パターンのシフトまたは回転を含む。
【0094】
本方法の好ましい実施形態では、上記物質は、ヒト組織、特にヒト皮膚であり、上記分析物は、皮膚、特に皮膚の間質液中に存在するグルコースである。
【0095】
好ましくは、本方法は、それぞれ専用の波長を有するレーザ、特に量子カスケード・レーザのアレイを使用して上記励起放射を発生するステップをさらに含む。
【0096】
好ましくは、本方法は、少なくとも1つの波長可変レーザ、特に少なくとも1つの波長可変量子カスケード・レーザを使用して上記励起放射を発生するステップをさらに含む。
【0097】
本方法の好ましい実施形態では、上記励起波長のいくつかまたはすべてが、5μm~13μm、好ましくは8μm~11μmの範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明のいくつかの実施形態の根底にある測定原理の概略図である。
図2】水バックグラウンドが差し引かれた、水中のグルコースの吸収スペクトルを示す図である。
図3】検出光ビームの偏向に基づく応答信号に依拠する、物質を分析するための装置の概略断面図である。
図4図3に示されるタイプの装置で得られたクラーク・エラー・グリッド分析の結果を示す図である。
図5】分析を施される物質によって受け取られる熱または圧力波に対する圧電応答に基づく応答信号に依拠する、物質を分析するための装置の概略図である。
図6】干渉法で検出された検出光ビームの位相変化に基づく応答信号に依拠する、物質を分析するための装置の概略図である。
図7】側断面図での、本発明の一実施形態による装置の概略図である。
図8】正面断面図での、図7の装置の概略図である。
図9】検出光ビームの偏向を示す装置の概略図である。
図10図9の装置と同様の装置であるが、測定体の出射面での検出光ビームの追加の屈折を伴う装置の概略図である。
図11】検出光ビームに関する、湾曲された反射面を使用して増大された偏向を示す概略図である。
図12】位置感知検出器が検出光ビームに対してある角度で配置されている、図7の装置と同様の装置の概略図である。
図13】検出光ビームに加えて参照光ビームが使用される、図7の装置と同様の装置の概略上面図である。
図14図13の装置の斜視図である。
図15】応答信号が、測定体に含まれるファイバで生成される光学モードの変化に対応する、さらなる装置の概略図である。
図16】測定体に温度勾配が生成されている状況での図15と同じ装置を示す図である。
図17】クランプ・デバイスを含む装置を示す図である。
図18】検出光ビームの2つの部分の干渉信号に基づいて分析物を測定するためのさらなる装置の上面図である。
図19図18の装置の斜視図である。
図20】突出部が測定体によって形成されている、側断面図での本発明の一実施形態による装置の概略図である。
図21】測定体がその一部となっている突出部を含む支持構造の斜視図である。
図22図21の支持構造の上面図である。
図23図21の支持構造の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
前述の全般的な説明および以下の説明は、例示および説明のためのものにすぎず、本明細書で述べられる方法およびデバイスを制限するものではないことを理解されたい。本出願において、単数形の使用は、特に別段の記載がない限り、複数形を含むことがある。また、「または」の使用は、適切であれば、または別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。以下の説明が例示にすぎず、なんら限定を意図されていないことを当業者は理解されよう。他の実施形態は、本開示の利益を受ける当業者に容易に想到されよう。以下、添付図面に示されている例示的実施形態の様々な実装形態への言及が詳細に成される。同一または同様の要素に言及するために、図面および以下の説明を通して、可能な限り同一の参照符号が使用される。
【0100】
図1は、上で要約され、以下でより詳細に述べられる分析物測定手順の根底にある測定原理の概略図である。本発明の方法および装置は、少なくとも1つの分析物を含む様々な物質を分析するのに適しているが、以下の説明は、物質が患者の皮膚であり、分析物が皮膚の間質液中のグルコースである特定の実施形態に焦点を当てる。グルコース測定への特定の言及により以下で与えられるすべての詳細および説明は、適切であれば、以下に明示的な言及がなくても、他の物質および分析物に関しても同様に考慮されることを理解されたい。
【0101】
図1の例示において、使用者の指先12が、測定体16の接触面14に熱的接触されている。図示されていない代替実施形態では、指先は、測定体への圧力波の移送を可能にする液体または気体で満たされた中空空間を含むことがある音響セルを介して測定体に音響的に結合されることがある。励起ビーム18は、空気を通ってまたは導波路(図示されていない)を通って測定体16に照射され、次いで測定体16を通って指先12の皮膚に照射される。皮膚、特に皮膚の間質液中のグルコースの濃度を決定するために、吸収測定のために励起放射18の様々な波長が順次にまたは少なくとも部分的に同時に選択され、測定された吸収値からグルコースの濃度が決定され得る。図2に、水中のグルコースの様々な濃度に関して吸収スペクトルが示されており、ここでは、水による吸収の寄与が差し引かれている。この図で見られるように、グルコース分子は、それぞれ10.07μm~8.32μmの範囲の波長に対応する993cm-1~1202cm-1の間の範囲の波数で、中赤外領域にいくつかの特徴的な吸収ピークを有する。隣接する吸収ピークの間に吸収極小値が見られ、これは、図2では、波数の表記がない垂直矢印によって示されている。図2から明らかなように、特に吸収ピークと吸収極小値とでの吸収の差が、グルコース濃度に特徴的である。したがって、グルコース濃度を決定できるようにするために、吸収ピークのいくつかまたはすべておよび吸収極小値のいくつかまたはすべてで、ならびに場合によっては最大値と最小値との間のある点でも吸収を測定することが好ましい。これらの波長は、本明細書では「分析物(グルコース)特性波長」と呼ばれる。吸収ピークまたは吸収極小値にちょうどある波長がグルコース特性波長に関する好ましい選択肢であるが、ピーク/極小値に近いがそれらから個別に定義された距離にある波長が使用されてもよい。したがって、本明細書で理解されるとき、「分析物特性波長」はまた、最も近い吸収ピークまたは最も近い吸収極小値での波長に対する吸収の差が、最も近い吸収ピークと最も近い吸収極小値との吸収の差の30%未満、好ましくは20%未満である波長である。
【0102】
励起ビーム18の強度は、励起放射、この場合には励起光が高強度と低強度またはさらには消失強度との交互の間隔を有するように、特定の周波数fで時間変調される。変調を任意の特定の波形に限定することは望まないが、以下では、高強度間隔は「励起光パルス」と呼ばれる。励起光パルス中、グルコース特性波長を有する励起光が吸収され、放射エネルギーが熱に変換される。グルコース分子は約10-12秒以内に励起状態から緩和するので、対応する熱パルスおよび/または圧力波の発生は、すべての実際上の目的で瞬時に生じるとみなされてよい。
【0103】
したがって、励起光パルスと共に、局所的な熱パルスが吸収部位で発生され、空間および時間の関数として変化する、熱的な波と呼ばれることもある温度場をもたらす。上で説明されたように、熱的な「波」という用語は、物質を通る熱の進行が波動方程式ではなく拡散方程式によって支配されるので、少し誤解を招く恐れがある。しかし、「熱波」の概念は、少なくとも、波の伝播から慣れているものと同様に、熱パルスが皮膚内から測定体16の表面14へ、および測定体16内へと伝播する限りにおいて適切である。そのような熱パルスによって引き起こされる熱勾配20が、図1に概略的に示されている。
【0104】
指12の皮膚から測定体16によって受け取られた熱は、物理的応答を引き起こし、物理的応答は、その物理的応答に基づいて応答信号を発生するために考案された様々な可能な検出デバイスの1つを用いて検出され得て、この応答信号は、励起光の吸収の程度を示す。物理的応答を検出し、適切な応答信号を発生する様々な方法が以下に述べられる。
【0105】
しかし、物理的応答を検出する厳密な方法に関係なく、測定体16に進む熱パルスによって吸収が検出され得る皮膚の表面下の最大深さは、皮膚の熱拡散長μtによる良好な近似に制限されることが判明されていることは注目に値し、熱拡散長μは、
【数1】
と定義され、物質の密度ρ、比熱容量C、および熱伝導率k、ならびに励起光の変調周波数fに依存する。換言すると、変調周波数fを選択することによって、測定体16で受け取られる熱パルスに励起光の任意の吸収が反映される深さを定義することができる。
【0106】
再び図1を参照すると、図示される実施形態では、皮膚から受け取られた吸収熱に対する物理的応答は、熱勾配20が一時的に生成される測定体16の表面14に近い領域での屈折率の変化である。屈折率のこの局所的変化は、検出光ビーム22によって検出され得る熱レンズとみなされ得るものを生成する。検出ビーム22は、熱レンズまたは熱勾配領域20を通過し、次いで測定体16と指12の皮膚との界面で反射される。熱パルスが皮膚から受け取られるときは常に、屈折率の局所的変化が生じ、これは、熱レンズの領域における測定体の物質との相互作用による検出ビーム22の偏向をもたらす。図1で、参照符号22bは、偏向されていない検出ビーム22に対応し、参照符号22aは、熱勾配領域20に生成された熱レンズにより偏向されたときの検出ビームに対応する。この偏向は測定され得て、前述の応答信号の一例を生成する。偏向の程度は、受け取られた熱の量、したがって指12の皮膚での励起光18の吸収の程度を示す。ここで、「偏向の程度」は、偏向角度を指すこともあるが、より一般に、対応する検出デバイスによって検出可能な検出光ビーム間の任意のずれに対応する。
【0107】
図3は、図1を参照して例示された測定原理に依拠する装置10のより詳細な断面図を示す。装置10は、指12が乗る上面(接触面)14を有する測定体16を含むハウジング24を備える。ハウジング24内には励起光源26が提供され、励起光源26は、励起光ビーム18を発生する。図示される実施形態では、励起光源26は、それぞれ専用の波長を有する量子カスケード・レーザのアレイを備える。例えば、量子カスケード・レーザのアレイは、図2に示される吸収ピークおよび極小値に対応する波長(すなわちグルコース特性波長)、および参照測定のため、またはグルコースの測定を妨害する可能性がある他の成分、例えばラクテート(lactate)やアルブミン(albumin)を検出するために使用され得る他の波長を有する個々の量子カスケード・レーザ素子を含むことができる。レーザ・アレイは、測定体16内におよび測定体16を通して励起ビームを直接照射してもよいが、光導波路(図示されていない)に照射してもよく、光導波路は、レーザ・アレイを測定体に結合し、励起ビームを、湾曲されたまたは湾曲されていない形で測定体16に導く。光導波路は、単一の波長可変レーザによる励起ビームの発生の場合にも使用されてよい。
【0108】
装置10は、検出ビーム22を放出するための光源28、例えばレーザと、検出ビーム22の偏向を検出することを可能にする位置感知検出器30とをさらに備える。本明細書で理解されるとき、「光ビーム」という用語は、可視範囲の光に限定されないが、好ましい実施形態では、検出光ビーム22は、実際に光スペクトルの可視範囲にあることに留意されたい。この場合の測定体16は、励起光ビーム18と検出光ビーム22との両方に対して透明である。さらに、光学媒体16の接触面14の画像を撮影することを可能にするカメラ32または別の撮像デバイスが提供され、それにより、接触面14に乗っている指12の指紋を記録する。この指紋は、ユーザの指紋によってユーザを識別するために制御ユニット34によって処理され得る。制御ユニット34はまた、それぞれ励起光および検出光のための光源26および28、ならびにセンサ30を制御するように機能する。制御ユニット34はまた、データを交換するために外部データ処理デバイス36と無線接続する。例えば、ワイヤレス接続を介して、指紋によって識別されたユーザについて、制御ユニット34によってユーザ固有の較正データが検索され得る。制御ユニット34と外部データ処理デバイス36とが共同で、本明細書で言及される「制御システム」の一例を形成する。制御システムは、1つまたは複数のプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ、ASIC、FPGAなどによって構成され得る。制御システムは、図3に示されるように、互いにデータ通信する様々な構成要素に分散されてもよく、または、本明細書で述べられている制御機能のすべてのために考案された制御ユニット34などの単一の制御ユニットによって形成されてもよい。制御システムは、一般に、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組合せで具現化され得る。
【0109】
図3でさらに見られるように、励起および検出光源26および28、ならびに位置感知検出器30はすべて、共通のキャリア構造38に取り付けられる。これは、これらの構成要素がこの構造38に厳密に事前に組み立てられ得ることを意味し、したがって、装置10を組み立てるときにこれらの構成要素を個別に調整または較正する必要がない。励起および/または検出光源26および28の1つまたは複数、ならびに位置感知検出器30も、追加の調整または較正を避けるために、測定体16に直接取り付けられてよい。
【0110】
さらに、装置10は、皮膚の含水量を測定することを可能にする角質測定デバイス40を備える。皮膚の上層での含水量を測定するための角質測定デバイスは、当技術分野でそれ自体知られており、ここで詳細に述べられる必要はない。例えば、既知の角質測定デバイスは、AC電圧が印加される2つの櫛型電極を使用して、皮膚のインピーダンス、特に容量性インピーダンスを測定する。図3の角質測定デバイス40は、指先12が測定体16の接触面14に乗るとき、指先12と接触する。
【0111】
本装置は、皮膚のpH値を測定するためのpHセンサ42も備える。皮膚の表面を含む表面のpH値を測定するためのpHセンサは、従来技術からそれ自体知られており、ここで詳細に述べられる必要はない。皮膚のpH値を測定するためのpHセンサは、医療用だけでなく美容目的でも市販されている。
【0112】
図4は、図3に示されるタイプの装置で得られたクラーク・エラー・グリッド分析の結果を示しており、図1~3を参照して述べられた測定手順を用いて、実際に非常に信頼性の高い血糖濃度が、純粋に非侵襲式に測定され得ることを示す。図4に示されるデータは、国際公開第2017/09782号から得られたものであり、本発明の改良をまだ反映していない。以下に述べられるように、本発明は、方法の信頼性をよりいっそう改良することを可能にする。
【0113】
図5は、図1および3の全般的な原理と同様の、物質12から測定体16によって受け取られる熱パルスの吸収を含む全般的な原理に依拠するが、利用される物理的応答および対応する応答信号が発生される様式が異なる装置10を概略的に示す。そのような装置10およびその多数の変形形態は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/11059782号に詳細に記載されており、したがって本明細書では詳細な説明は省略されてよい。前と同様に、本装置は、指12の皮膚と接触または結合される接触面14を有する測定体16を備える。また、変調される強度を有する励起光ビーム18のための光源26が提供され、励起光ビーム18は、皮膚12の表面下の領域44に照射され、そこで吸収される。この実施形態では、励起光ビーム18は、測定体16を通る破線によって示される測定体16の孔46を通過し、したがって測定体16自体の物質が励起光ビーム18に対して透明である必要はない。
【0114】
励起光ビーム18の強度を変調するための制御ユニット48が提供される。これは一般に、機械的チョッパ、または電子制御され得る透過率または反射率を有する要素を含めた様々な様式で行われ得る。しかし、好ましい実施形態では、強度は、励起光源26のオン/オフ時間、および励起光源26のオン時間中の動作電流を変調することによって変調される。
【0115】
皮膚12の領域44での強度変調された励起ビーム18の時間変化する吸収によって引き起こされる熱的な波は、矢印50によって記号で表され、測定体16に入り、圧電特性を有する検出領域52で検出され得る。受け取られた熱50または圧力波に関連付けられる圧力変化は、電極6a~6dで記録され得る電圧変化の形での電気信号をもたらし、電極6a~6dは、伝導リード54を介して、物質(指12の皮膚)を分析するための推定デバイス56と接続され、推定デバイス56は、デジタル処理デバイス、例えばマイクロコントローラもしくはプロセッサまたはコンピュータでよい。この場合、圧力の変化は、励起放射の吸収時に物質12から受け取られる熱に対する測定体16または測定体16に含まれる他の構成要素の物理的応答に類似しており、測定体16もしくはその一部、または測定体に埋め込まれた圧電要素、および電極6a~6dの圧電特性を使用して検出され、励起放射18の吸収の程度を示す応答信号を表す電気信号をもたらす。
【0116】
本出願人によって提案される代替変形形態では、例えば参照により本明細書に含まれる国際出願PCT/EP2019/064356号に開示されているように、検出デバイスは、測定体に埋め込まれてもよく、検出ビームの第2の部分に対する検出ビームの第1の部分の上記位相変化を評価することを可能にする干渉計デバイスを備えることがあり、測定アームを通過する検出ビームの部分の一方のみが、測定体での熱または圧力波の影響を及ぼされ、干渉計デバイスの出力側で、測定アームでの上記位相変化を示す応答信号を発生する。この場合、上記励起放射18の吸収時に上記物質12から受け取られた熱に対する測定体16(または測定体16に含まれる構成要素)の物理的応答は、ここでも屈折率の局所的変化であり、応答信号は、この場合、屈折率の局所的変化による検出ビームの一方の部分の位相の変化を反映する干渉信号である。これは図6に概略的に示されており、図6には、物質(指など、図6には示されていない)と接触されている測定体16が示されている。この場合、測定体16は、干渉計デバイス60を形成する導光構造58が提供されたシリコン基板でもよい。干渉計デバイス60は、測定アーム60aおよび参照アーム60bを有するマッハ・ツェンダ干渉計を形成する。検出光源28によって発生される検出光22は、導光構造58に供給され、スプリッタ60cによって、測定アーム60aに沿って進む検出ビームの一部分または一部と、参照アーム60bに沿って進む一部分または一部とに分割され、これらの部分は次いで結合器60dによって統合される。測定体16は、励起光の吸収時に皮膚から受け取られた熱に参照アーム60aがさらされ、しかし参照アーム60bはさらされない、または少なくともわずかしかさらされないように使用または配置される。受け取られた熱により、測定アーム60aでの屈折率が変化し、この変化は、測定アーム60aに沿って進む検出光22の位相シフトをもたらす。参照アーム60bに沿って進む光は、受け取られた熱による影響を受けないので、結合器60dによって結合される光の2つの部分の相対的な位相の変化があり、この変化は、検出器62を使用して検出され得る干渉パターンをもたらす。指紋を検出および分析するための図3に示されているカメラも、図5および6に示されている測定体16および装置と組み合わされてよいことに留意されたい。
【0117】
図7は、側断面図での、本発明の一実施形態による装置10の概略図を示す。図8は、同じ装置10を正面断面図で示す。図7および8に示される実施形態では、物質はここでもユーザの指12の皮膚であり、評価対象の分析物は、皮膚、特に皮膚の間質液中のグルコース含有量である。図7および8の実施形態は、指12の皮膚への励起放射18の確実であり一貫した伝達を保証することを可能にする。図7および8に示される測定体16は、励起放射18に対して透明であり、接触面14に加えて励起放射18用の入射面70を有し、入射面70は、図7および8の例示では底面である。
【0118】
測定体16は、図7の例示では左側の壁に対応する検出光ビーム22用の入射面72と、右側の壁に対応する出射面74とをさらに有する。入射面72および出射面74と一体に、それぞれ対応する集束レンズ76およびコリメート・レンズ78が形成される。図示される実施形態では、集束およびコリメート・レンズ76および78は、測定体16の残りの部分とモノリシックに形成される。他の実施形態では、集束およびコリメート・レンズ76および78は、測定体16とは別個に形成されてもよいが、それらの個々の調整が必要ないようにそれぞれ入射および出射面70、74に取り付けられてもよい。
【0119】
また、測定体16の接触面14には突出部80が形成される。突出部80は、指12の皮膚と接触する前面82を有し、前面82を通して、本実施形態では中赤外範囲内の励起光ビーム18によって形成される励起放射18が皮膚に放射される。突出部80は、4つの側壁84を有し、側壁84はそれぞれ前面82に向かって先細りしている。このようにすると、前面82の面積は、上記接触面14の突出部80のフットプリント面積よりも小さい。図7と8の比較から見られるように、突出部80は隆起形状であり、図7の紙面に延びるx方向である第1の方向でより長い延在部を有し、図8の紙面に延びるy方向である、第1の方向に直交する第2の方向で短い延在部を有する。
【0120】
最後に、接触面14には、指12と接触面14との接触圧力を測定する圧力センサ86が配設される。圧力センサ86は、図3の制御ユニット34などの制御システム(図示されていない)に接続される。
【0121】
次に、図7および8に示される様々な特徴の機能が説明される。図7に見られるように、励起放射18用の入射面70は、接触面14または突出部80の前面82に平行ではない。代わりに、測定体はわずかに楔形である。さらに、励起光源26は、励起ビーム18が90°からずれた角度で入射面に衝突するように配置される。
【0122】
これは、入射面での励起放射ビームの屈折および過剰な反射を避けるために励起ビームが意図的に90°の角度で入射面に衝突させられる例えば図3に示されている配置とは異なる。しかし、上で説明されたように、そのような構成では、励起放射18の一部が入射面70から反射され、励起放射源26から放出された励起放射18と干渉することがある。本発明者らは、この干渉が指12の皮膚での励起放射18の強度の変動をもたらし、それにより、分析物濃度とは全く関係のない応答信号の人為的変動をもたらす可能性があることを発見した。しかし、入射面70への励起ビーム18の垂直入射を避けると、図7に示される入射する放射18と反射される放射18’との干渉が抑制され得て、全体としての測定の正確性および信頼性が向上され得る。
【0123】
好ましい実施形態では、入射角は、90°からずれるにせよ数度だけずれるべきである。好ましい入射角は、89.0°以下、好ましくは88.0°以下、より好ましくは87.5°以下でよい。角度に関する最適な選択は、励起放射源26と入射面70との間の距離にも依存する。90°からのずれは、望ましくない干渉効果を確実に回避するために必要なずれよりも大きく選択されるべきではない。したがって、好ましい実施形態では、入射角は82.0°以上、好ましくは84.0°以上、最も好ましくは85.0°以上である。
【0124】
突出部80は、指12と測定体16との局所的な接触圧力が高められるという特別な技術的効果を有する。より厳密には、より高い接触圧力が突出部80の前面82で生じ、前面82は、励起光ビーム18が測定体16から指12の皮膚に結合される場所である。この高められた接触圧力は、測定体14と皮膚との良好で信頼性の高い光学的結合を保証することを可能にする。
【0125】
一般に、完全に平坦な接触面14を有する本出願人の以前の装置で十分な光学的結合が得られ、したがって突出部80を提供することに伴う追加の製造コストおよび増加される複雑さは、労力をかける価値のあるものであるか明らかでなかったので、この突出部80で実現され得る有意な改良は本発明者らにとって驚きであった。
【0126】
しかし、本発明者らは、完全に平坦な接触面14との光学的結合が概して満足の行くものであるように見えるが、特に一貫性のないまたは不安定な光学的結合が測定の不正確さの原因となり得ることを発見した。上の概要で説明されたように、本発明者らは、単一の測定の過程中に、すなわち意図的に指先を接触面で動かすまたはさらには接触面から離すことがなくても、光学的結合が変化し得ることに気付いた。これは、いくつかの場合には、分析物によって実際に吸収される励起放射の強度の変化、したがって励起放射波長での分析物の吸収率または分析物濃度とは無関係の応答信号の変化を引き起こすことが判明された。換言すると、測定の一部中の光学的結合の損失は、所与の励起波長でのより低い吸収率と誤解され得る。これも上で説明されたように、分析物スペクトルの評価は、典型的には、複数の特徴的な波長、例えば分析物吸収スペクトルのピークまたは吸収極小値に対応する波長での吸収を測定することを含み、さらに、異なる波長に関連付けられる応答信号の数学的組合せを含む。例えば、吸収スペクトルの極小値で得られた応答信号が、吸収ピークの応答信号から差し引かれてよく、皮膚内のグルコースの濃度を表す値を与える。明らかに、異なる波長での測定間またはさらには特定の波長での測定中の、光学的結合、したがって物質内での励起放射の実効強度の任意の変化は、測定結果にアーチファクトまたは不正確さをもたらすことがある。
【0127】
発明の概要で説明されたように、接触面と物質との光学的結合が測定中に変化する厳密な理由は完全には明らかでなく、例えば、ユーザが指と接触面との接触圧力を一定に保つことができないからであるか、またはユーザが意図せずに接触面で指先を動かしたからであるかは明らかでない。厳密な根本理由に関係なく、本発明者らは、局所的な接触圧力の増加を伴って指12の皮膚と接触する前面82を有する、図7および8に示されるような突出部80などの突出部を使用して、光学的接触が大幅に安定化され得ることに気付いた。前面は、5mm未満、特に3mm未満のサイズを有することがあり、平坦であっても、凹状または凸状に湾曲されていてもよい。
【0128】
測定中の一定の接触圧力をさらに保証するために、圧力センサ86が提供される。圧力センサ86は、指12と測定体16の接触面14との接触圧力を示す信号を発生する。信号は、感知された接触圧力が所定の閾値未満であるかどうかをチェックするように構成された制御システム(図示されていない)に伝送される。閾値未満であることが判明された場合、これは、ディスプレイ、光信号、音響信号などの適切な出力デバイスによってユーザに示され、ユーザは、接触圧力を高めるように促され得る。さらに、制御システムは、接触圧力が閾値未満である間に分析物測定プロセスが始まらないように構成され、それにより、品質が疑わしく、場合によっては繰り返されなければならず、ユーザの我慢の限界や苛立ちをもたらし得る測定が実施されるのを回避する。さらに、測定中に接触圧力が閾値を下回ったことが判明された場合、分析物測定プロセスが中断され、元の接触圧力に戻す機会がユーザに与えられ、それにより測定が完了され得る。圧力センサは、測定体16の突出部80の下に位置され、励起ビームに対して透明であり得る圧電素子(図示されていない)として実装されてもよい。
【0129】
図7を参照してここまで説明された特徴および機能はそれぞれ、一貫した量の励起放射を指12の皮膚に確実に結合することに関連付けられ、したがって、指12の皮膚から受け取られた熱もしくは圧力波に対する測定体(または測定体に含まれる構成要素)の特定のタイプの物理的応答、または対応する応答信号を発生する検出デバイスとは無関係であることに留意されたい。したがって、これらの機能は、図1、3、5、および6に示される変形形態の任意のものと組み合わせて使用されてよい。
【0130】
図7の実施形態では、測定体16によって受け取られる熱または圧力波に対する物理的応答は、屈折率の局所的変化であり、この物理的応答は、突出部84の前面82で反射される検出光ビーム22の偏向によって検出される。図7で見られるように、検出光ビーム22は検出光源28によって発生され、検出光ビーム22の偏向は、位置感知デバイスとも呼ばれることがある位置感知検出器(PSD)30を使用して検出される。本明細書で理解されるとき、「検出光ビーム22の偏向」は、対応する検出デバイスにおける検出光ビームの合計のずれを示し、図7の実施形態を特に参照すると、これは、PSD30での検出光ビーム22の位置のシフトを示す。このずれは、屈折率の局所的変化によって引き起こされる、光路に沿った検出光ビーム22の伝播に対するすべての変化の複合効果である。
【0131】
図7および8に示される突出部80の特定の隆起された幾何形状は、この検出セットアップに適合されている。突出部80の前面82での反射前後の検出光ビーム22は、図7および8の実施形態ではx-z平面、すなわち図7の紙面に対応する検出光平面を定め、この検出光平面は、隆起形状の突出部80の第1のより長い方向と一致する。実際、図7から明らかなように、検出光平面内の突出部80のこのより大きな延在部は、入射するおよび反射される検出光ビーム22が突出部80にフィットするために必要である。逆に、図8から明らかなように、この検出光平面に垂直な方向、すなわち隆起形状の突出部80の「第2の方向」では、延在部がより小さくされてよく、それにより、前面82全体の表面積を小さく保ち、したがって局所的な接触圧力を高める。
【0132】
さらに、検出光ビーム22の入射面72にある集束レンズ76は、検出光ビーム22が突出部80の前面82で反射される領域において検出光ビーム直径22を狭く保つことを可能にし、この領域は、熱レンズ(図7には図示されていない)が生成される領域でもある。狭いビーム直径は、それ自体が比較的小さいサイズにすぎない熱レンズでの検出光ビーム22の明瞭で特徴的な偏向を促す。
【0133】
検出ビーム22の出射面74にあるコリメート・レンズ78は、出射面74とPSD30との間での進行時に検出ビーム22の直径を少なくともほぼ一定に保つことを可能にする。これは、PSD30と出射面74との間の距離を増加させることを可能にし、これは、検出ビーム20によって獲得される任意の偏向角度が、検出ビーム22がPSD30に衝突する位置のより大きいシフトをもたらし、それにより応答信号の信号対雑音比を高めることを意味する。例えば、突出部80の前面82での反射部位とPSD30との間の距離は、4cm以上、いくつかの実施形態では9cm以上でもよい。
【0134】
図7に示される実施形態では、集束レンズ76とコリメート・レンズ78との両方が、両方の主方向で集束およびコリメーション効果を有する球面レンズとして示されている。しかし、他の実施形態では、特にコリメート・レンズ78は、図7でのy方向でのみそのコリメーション効果を有する円柱レンズでよいが、図7に示されるものとは異なり、検出光ビーム20は、x-z平面、すなわち図7の紙面に広がっていてよい。これは、PSD30での検出光ビーム22の光スポットが楕円形であり、長径がPSD30の感知方向に平行であることを意味し、この方向は、検出光ビーム20の偏向時に光スポットが動く方向でもある。光スポットのこの細長い形状は、同様に、より良い信号対雑音比と、応答信号のより良い線形性とをもたらすことが判明している。
【0135】
本明細書で理解されるとき、検出光ビーム20の「偏向」は、PSD30などの検出デバイスによって測定される、検出光ビーム20の「乱されていない」光路、すなわち測定体16によって受け取られる熱または圧力波による屈折率の局所的変化を伴わない光路からの検出光ビーム20の合計のずれに関係する。したがって、この「偏向」は、屈折率の局所的変化が光路に沿って検出光ビーム20に及ぼす累積効果である。実際には、偏向は常に小さい傾向があり、より正確で信頼性の高い測定結果を得るには、応答信号の信号対雑音比を上げることが重要である。1つの可能な手法は、図7を参照して上で説明されており、すなわち、出射面74とPSD30との間の距離を増加させることによるものである。信号対雑音比を向上させるためのさらなる方法は、以下の図9~11を参照して論じられる。
【0136】
理論に束縛されることを望むものではないが、図9は、本発明者らによって現在理解されている偏向のメカニズムを示し、これは実際の測定と完全に一致している。図9で、摂動されていない検出光ビームは実線で示され、入射部分22および出射部分22bを有する。励起放射パルス18が図12の皮膚に吸収されるとき、上で説明されたように、皮膚を通って測定体16内に進行する熱パルスが発生され、測定体16内で、熱パルスが屈折率の局所的変化を引き起こし、これは本明細書では「熱レンズ」と呼ばれ、図9に参照符号20で概略的に示されている。熱レンズ20は、この実施形態では、より高い屈折率の領域であることが見出され、破線の屈折および反射された検出光ビーム20aによって示されるように屈折をもたらす。摂動されていない反射検出光ビーム22bからの反射検出光ビーム22aのずれは、本明細書では「偏向」と呼ばれる。
【0137】
図9で、測定体16の入射面72および出射面74は、入射および出射する検出光ビーム22と直角を成すように角度が付けられていることに留意されたい。光学的境界のこの直交配置は、反射を低減することを可能にし、回折を回避することも可能にするので当分野では自然な選択であるが、光学セットアップをより複雑にする。しかし、図10の実施形態では、少なくとも出射面74は、反射された検出光ビーム22bに対して垂直にならないように配置される。垂直ではなく、検出光ビーム22bは出射面74の法線に対して角度αを成し、測定体16の屈折率が、本実施形態では空気である周囲の屈折率よりも高いので、乱されていない検出光ビーム22bは、測定体16から出るときにαよりも大きい角度βで屈折される。
【0138】
偏向された光ビーム22aも同様に出射面74で屈折される。しかし、熱レンズ20との相互作用により、入射角αは、乱されていない検出ビーム22bよりも大きく、スネルの法則によれば、屈折角βはβよりもかなり大きい。換言すると、屈折角の差β-βは、入射角の差α-αよりも大きく、すなわち、β-β>α-αであり、したがって、PSD30(図10には図示されていない)によって測定される反射された検出光ビーム22aの偏向が増加される。これは、信号対雑音比をさらに高めることを可能にする。
【0139】
最後に、図11を参照すると、検出光ビーム22が反射される領域で測定体16の接触面14が湾曲されている実施形態が示されている。換言すると、この領域での測定体は、凹状に湾曲された凹部を有する。図11に概略的に示されるように、屈折率の局所的変化による光ビーム22の偏向の一部は、検出光ビーム22が指12と熱的または圧力伝達接触する測定体の表面で反射される前に発生する。これは、屈折率の局所的変化がまた、検出光ビーム22が反射される表面上の厳密な位置のシフトをもたらすことを意味する。
【0140】
この理解に鑑みて、図11に示される実施形態では、接触面14は湾曲部分88を有する。この湾曲により、検出光ビーム22が湾曲部分88で反射される厳密な位置の変化は、入射角の変化によって伴われ、したがって、図11で見られ得るように、対応する反射角の変化ももたらす。したがって、湾曲された反射面を使用すると、位置感知検出器30によって検出される衝突する検出光ビーム22の位置のシフトなど、検出デバイスによって評価される合計の偏向が増加され得て、それにより信号対雑音比を高めることをさらに可能にする。図11では、湾曲部分88が、それ以外の部分は平坦な接触面14に形成されるように示されているが、図7および図8に示される突出部80の前面82に湾曲部分が同様に形成されてもよいことに留意されたい。さらに、図11に示される実施形態では、湾曲部分88は凹状であったが、凸状湾曲部分(図示されていない)でも同様の効果が得られることがあり、これは、その場合にも、屈折率の局所的変化が、検出光ビームが湾曲部分に衝突する位置の変化、したがって入射角の変化によって伴われるからである。
【0141】
さらに、図11では、湾曲部分88は、球形を有する、すなわち2つの主方向で同じまたは同様の湾曲を有するように示されている。しかし、他の実施形態では、湾曲部分88は、例えば円柱形の断面(この断面平面は円柱軸に平行である)の形状を有する一方向で主に、さらには一方向でのみ排他的に湾曲されてもよい。これは、凹状湾曲部分88の場合に特に有利であり、この場合、指12は、凹状湾曲部分の長手方向軸に平行に配置されてよく、湾曲部分の湾曲面での特に良好な接触を可能にする。上述されたように、好ましい実施形態では、少なくとも1つの主方向での湾曲部分88の曲率半径は、5~30mm、より好ましくは10~20mmの範囲内である。好ましい実施形態では、主方向での湾曲領域88の幅は、少なくとも300μmであり、最大で曲率半径の2倍である。
【0142】
上述されたように、多くの実施形態において、PSD30での検出光ビーム22の光スポットが細長い形状、例えば長軸が検出方向に平行である楕円形状を有する場合に有利である。この細長い形状は、例えば、上で図7を参照して説明されたように、検出方向に直交する方向にのみ検出光ビーム22をコリメートすることによって得られてよい。しかし、追加または代替として、光スポットの細長い形状は、検出光ビーム22が90°からずれた角度でPSDに衝突するように、図12に示されるように、検出光ビーム22に対して検出光平面内でPSD30を傾けることによって得られてもよい。例えば、PSD30の検出面への入射角は、80°未満、好ましくは70°未満、最も好ましくは50°未満であり得る。
【0143】
図13および14は、図7のものと同様のさらなる装置10をそれぞれ上面図および斜視図で示す。図7の装置と同様に、図13および14の装置は、測定体16の接触面14で反射される検出光ビーム22と、PSD30などの検出デバイスとを備え、検出デバイスは、参照符号20で示される熱レンズとの相互作用による検出光ビーム22の偏向を検出することを可能にする。図13および14の実施形態では、検出光ビーム22は、スプリッタ90によって光源光ビーム88から導出される。スプリッタ90は、検出光ビーム22を形成する光源光ビーム88の一部を透過させ、参照光ビーム92を形成する別の部分を反射する。ミラー94を使用して、参照光ビーム92も同様に、検出光ビーム22の反射位置に近い位置で、特にまた動作中に指12(図示されていない)が接触面14に接触する領域内で、測定体16の表面14で全反射または部分反射されるように向けられる。しかし、接触面(またはより厳密には、接触面14と物質、すなわち指12との界面)での参照光ビーム92の反射点は、励起ビーム18が吸収される領域から十分に離れており、したがって、励起放射18の吸収時に指12から受け取られる熱または圧力波の影響は無視できる。これは図13および14に示され、熱レンズ20は、参照光ビーム92が測定体16の接触面14で反射される領域までは延びていないことが見られ得る。
【0144】
図14で、参照符号93は、検出光22および参照光ビーム92が測定体16に入る点および測定体16から出る点を示し、主に3次元構造のイメージを得ることを支援するために示されている。図14の概略図では、簡単にするために、入射面および出射面での検出および参照光ビーム22、92の屈折が示されていないことに留意されたい。参照光ビーム92の偏向の程度を検出するためにさらなる検出デバイス96が提供され、図示される実施形態では、検出デバイス96は、PSD30と同一タイプのPSDによって形成される。
【0145】
参照光ビーム92は、熱レンズ20の影響、換言すると励起光ビーム18の吸収により受け取られる熱または圧力波を除いて、検出光ビーム22と同じタイプのノイズ、振動、摂動、または外的影響のすべてまたはほぼすべてにさらされることが見られる。したがって、物質での吸収に起因する偏向以外の、検出光ビーム22の偏向をもたらし得るすべてまたは少なくともほとんどのタイプの外的効果は、参照光ビーム92にも影響を及ぼし、追加の検出器96によって測定され得る。次いで、参照光ビーム92に対する追加の検出器92の測定結果は、検出光ビーム22に対するPSD30の測定結果におけるこれらの影響を補正するために使用されてよく、それにより測定信号品質を向上させる。
【0146】
図15および16を参照すると、装置のさらなる実施形態が示されており、この装置は、測定体16に埋め込まれた光ファイバ98を備える。検出光を上記ファイバ98に結合するために、検出光源28が上記ファイバ98の一端に提供される。ファイバ98の他端にはモード検出器100が提供される。モード検出器100は、上記物質から測定体16によって受け取られる熱または圧力波に応答して、上記検出光の光学モードの変化を検出するのに適している。例えば、モード検出器100は、モード、より厳密には光学モードの干渉パターンを視覚化するのに適したカメラを備えることができる。図15の右側には、そのようなモードカメラによって生成された画像が概略的に示されており、光学モード104、より厳密には光学モードの干渉パターンが特定の回転向きで見られ得る。
【0147】
図16は、図15と同じ装置を示し、しかし、熱勾配20は、指12(図15および16には示されていない)などの物質から受け取られた熱または圧力波により生成される。これは、図16の拡大部分に示されている光ファイバ98の一時的な変形をもたらし、図16では例示の目的で変形が大きく誇張されている。光ファイバ98のそのような一時的な変形は、モードカメラ100によって検出される光学モードの変化をもたらす。図16に示される例示的実施形態では、モードの変化は、図15および図16に概略的に示されるモード画像の比較によって見られるように、モードの干渉パターンの回転に相当する。他の実施形態では、モードの変化は、例えばモードの干渉パターンのシフトに対応し得る。
【0148】
図示される実施形態では、モード検出器100は、カメラ画像の画像分析に基づいてモードの変化を検出するように構成されたプロセッサ(個別には図示されていない)を備える。上述されたように、光学モードの検出可能な変化は、ファイバ内およびまたモードカメラ100での光学モードの干渉パターンのシフトまたは回転を含むことがある。したがって、シフトの距離または回転角度は、物質から受け取られる熱の量または圧力波の強度に関連付けられる定量的パラメータであり、したがって最終的には物質によって吸収される励起光の量を示す。図15および16の装置は、非常に単純で頑強であり、光学構成要素の調整をほとんど必要としないという点で有利である。これは、ポータブル装置に特に有用である。
【0149】
図17は、さらなる実施形態による装置10の側面図および斜視図を示す。装置10は、小型のスマートフォンのサイズと同様のサイズを有するポータブルグルコース測定デバイスである。図17の上側の図には、接触面14を有する測定体16が示されており、接触面14は、この場合には図11のものと同様の湾曲部分を有する。接触面14に、図17に示されるように指12が配置されてよく、図17では、指12は円柱構造によって概略的にのみ表されている。装置のさらなる詳細は図16および図17には示されていないが、デバイスの測定原理は図11の測定原理と同様であり、湾曲面で反射される検出光ビーム(図示されていない)を使用する。図11を参照して説明されたように、これは、測定ビームの特に大きい偏向、したがって特に高い信号対雑音比をもたらす。
【0150】
図17には、クランプ部材108を備えるクランプ・デバイス106がさらに示されている。クランプ部材108は、第1の端部(図の左端)に枢動可能に取り付けられ、ねじりばね114によって、図17の上側の図に示される閉位置に付勢され、閉位置ではクランプ部材108が接触面14に近い。クランプ部材108の第2の端部にはハンドル部材110が提供され、クランプ部材108を把持し、ねじりばね114の付勢力に反してクランプ部材108を開位置に回転させることを可能にし、開位置では、クランプ部材108が測定体16の接触面14から離れるように動かされる。指12は、クランプ部材108が開位置にあるときに接触面14に置かれてよく、上記クランプ部材108は、閉位置に向かう付勢力により、上記指12を接触面14に押し付けるのに適している。このようにして、所定の接触圧力が保証され得る。クランプ部材108の第2の端部の近くにクッション112が形成され、クッション112は、図17に示されるように指12がクランプ部材108によって保持されるときに指12に位置する。図示される実施形態では、クッション112に圧力センサ(図示されていない)が提供され、図7に示される圧力センサ86と同様に接触圧力を監視する。クランプ機構は、ハンドヘルドデバイスでの使用に限定されず、例えば卓上デバイスまたは任意の他の変形形態でも提供されてよいことに留意されたい。さらに、クランプ部材108の付勢力は、ねじりばね114などのねじりばねによって発生される必要はなく、板ばねとして作用するクランプ部材108によって提供されてもよい。ねじりばね114の代わりに、クランプ部材108(板ばね)の静止位置、したがってクランプ部材108によって生成される付勢力を調整することを可能にする調整可能な取付部があってもよい。
【0151】
図18および19は、いくつかの点で図13および14の装置と構造的に類似するさらなる別の装置10を示す。図13および14の実施形態と同様に、ヒト組織などの物質での励起放射18(組織および励起放射18はどちらも図18および19に示されていない)の吸収に対する物理的応答は、屈折率の局所的変化であり、屈折率の局所的変化の領域は、ここでも参照符号20で示されている。しかし、この場合、応答信号は、図13および14の実施形態に関する場合のように測定ビームの偏向ではなく、図6の実施形態のものと同様の干渉信号である。
【0152】
図18および19の装置は、スプリッタ90によって透過部分100および反射部分102に分割される検出光ビーム98を備える。反射部分102は、透過部分100に平行に案内されるようにミラー104によって向きを変えられ、どちらの部分も、測定体16の接触面14に平行な平面内に位置する。したがって、図13および14の実施形態とは異なり、透過および反射部分100、102は、測定体16の接触面14で反射されない。
【0153】
検出光ビーム98の透過部分100は、屈折率の局所的変化が生じる領域20を通過し、一方、反射部分102はこの領域を避ける。追加のミラー104および結合器106を使用して、検出光ビーム98の2つの部分100、102が再結合され、再結合された部分100、102の干渉信号が光検出器108によって記録される。領域20での屈折率の変化は、透過部分100の位相のシフト、したがって検出器108での干渉信号の変化をもたらす。位相変化は、屈折率の局所的変化が大きいほど大きくなり、したがって、この位相変化は、励起放射ビーム18の吸収の程度を示す。
【0154】
図18および19の実施形態は例示にすぎず、2つの光ビームが干渉される任意の変形形態が本明細書で考慮され、それらの光ビームのうちの一方が、励起放射の吸収時に接触面14に配置された物質から受け取られる熱または圧力波にさらされる測定体16での領域20を通ることに留意されたい。
【0155】
図7の実施形態では、測定体16の接触面14に突出部80が形成されたが、これは、突出部を提供するための唯一の方法ではない。代わりに、測定体自体が突出部を形成する、または突出部の一部を形成することも可能である。この例が図20に示されており、これは図7と非常に類似しているが、この場合には、測定体16がはるかに小さく、それ自体が突出部80を形成する点が異なる。さらに、図7の実施形態では、集束レンズ76およびコリメート・レンズ78が測定体16と一体化されたが、図20の実施形態では、これらはそれぞれ、独立した集束レンズ112およびコリメート・レンズ114に置き換えられている。
【0156】
図20に見られるように、測定体16の接触面は、突出部80の前面82を形成する。さらに、突出部80の前面82は、この場合にはハウジング壁部分110によって形成される周囲構造に対して高くなっている。
【0157】
図示される実施形態では、測定体16によって形成される突出部80は、図7の実施形態での接触面14の突出部84と同じまたは同様のサイズである。測定体の接触面に形成された「突出部」に関して上で提供されたすべての記載および説明が、測定体16によって形成され、または測定体16によって少なくとも部分的に形成される突出部にも同様に適用されることに留意されたい。
【0158】
図21~23は、測定体16が突出部80の一部を形成するさらなる実施形態を示す。より厳密には、図21は、測定体16が取り付けられる取付けブロック112を示す。取付けブロック112は上面114を有し、この上面114にも突出部80が形成される。この場合、突出部80は、凹部118が形成されたレセプタクル116によって部分的に形成される。測定体16は、上記レセプタクル116の凹部118に受け取られるフレーム120に取り付けられる。この場合、レセプタクル116、フレーム120、および測定体16が組み合わさって突出部80を形成し、突出部80は、取付け構造112の上面114を越えて突出する。ここで、上記測定体16の接触面(図21での上面)は、突出部80の前面の一部を形成し、突出部80の前面は、この場合に前述の「周囲構造」を形成する上面114に対して高くなっている。
【0159】
図22は、突出部80および取付け構造112の上面114への上面図を示す。図23は、図23での線A-Aに沿った断面図を示す。特に図22から見られるように、フレーム120は、垂直軸を中心に数度回転されてよく、ねじ122によって所望の位置に固定されてよい。所望の回転位置の調整を容易にするために、フレーム120とレセプタクル116の上面との両方にスケール124が提供される。
【0160】
図23から見られるように、この実施形態では、励起光ビーム18が垂直上方向に向けられる。フレーム120が回転され得る回転軸は、励起光ビーム18の光ビーム伝播軸と一致する。励起光ビーム18は、物質が上面114および突出部80に配置されるときに、測定体16の接触面14を通して物質に照射されることが見られ、ここで、接触面14は同時に、突出部の前面の一部、特に励起光ビーム18が物質に照射される部分を形成する。さらに、図23でさらに見られるように、この前面は、周囲構造、すなわち取付け構造112の上面114に対して高くなっている。
【0161】
図21~23に示される実施形態では、突出部80は、図7または図20に示される突出部よりもかなり大きい。図21~23の実施形態では、突出部80は、人の手首の下側での測定のために考案されている。この突出部80は、腕を載せるための平坦な表面と比較して、組織への励起光18の接触、特に結合を改良することが見出された。
【0162】
図1~23に示される実施形態では、測定体16の接触面14は、突出部80の上面の一部のみを形成するが、励起放射18が物質に照射される部分を形成することに留意されたい。
【0163】
レセプタクル116の凹部118内でフレーム120を回転させることによって、測定体の入射面72への検出光ビーム22の入射角が調整されてよい。上で説明されたように、検出光ビーム22は、90°ではない、例えば89°以下、88°以下、および例えば87.5°以下の入射面に対する入射角度で入射面に衝突すべきである。これは、検出光ビーム22のそれ自体への逆反射を避け、逆反射は、負の干渉効果およびまた検出光源の損壊をもたらすことがある。同時に、90°からのずれは、この目的のために必要以上に大きくすべきではない。したがって、この角度は、好ましくは80°以上、より好ましくは80%以上、例えば84°または85°以上である。
【0164】
本明細書では、以下の実施例がさらに開示される。
【実施例1】
【0165】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体または測定体に含まれる構成要素の物理的応答を検出するため、および上記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するための検出デバイスであって、上記応答信号が励起放射の吸収の程度を示す、検出デバイスと、を備え、物質と測定体との接触圧力を測定するための圧力センサが提供される、装置。
【0166】
実施例1の好ましい実施形態では、上記装置が、物質と測定体との接触圧力を示す上記圧力センサからの信号を受信するように構成された制御システムをさらに備え、上記制御システムは、上記接触圧力が所定の閾値未満であるかどうかをチェックするように構成され、接触圧力が上記閾値未満であることが判明された場合、
ユーザに接触圧力の欠如を示すこと、
分析物測定プロセスが開始されないようにすること、および
現在の分析物測定プロセスを中断すること、
のうちの1つまたは複数を行うように構成される。
【実施例2】
【0167】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体または測定体に含まれる構成要素の物理的応答を検出するため、および上記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するための検出デバイスであって、上記応答信号が励起放射の吸収の程度を示す、検出デバイスと、を備え、
上記測定体が上記励起放射に対して透明であり、
上記励起放射源が、上記励起放射を励起ビームとして提供するように構成され、
励起放射源は、上記励起ビームが上記測定体に入射面で照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、上記接触面で測定体から出るように配置され、
励起ビームが、89.0°以下、好ましくは88.0°以下、最も好ましくは87.5°以下、および82.0°以上、好ましくは84.0°以上、最も好ましくは85.0°以上の角度で入射面に衝突する、装置。
【0168】
実施例2の好ましい実施形態では、上記励起ビームは、90°±1.5°の角度で測定体の接触面に衝突する。
【0169】
実施例2の好ましい実施形態では、励起ビームがそれぞれ測定体に入るおよび測定体から出るそれぞれの部分での入射面と接触面とが、1.0°以上、好ましくは2.0°以上、最も好ましくは2.5°以上、および8.0°以下、好ましくは6.0°以下、最も好ましくは5.0°以下の角度で互いに対して傾けられている。
【実施例3】
【0170】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための検出光源であって、上記検出光ビームが、上記接触面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出光ビームは、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されるときに偏向される、検出光源と、
上記接触面での反射後に検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器と、を備え、
測定体の上記接触面が、検出光ビームが反射される領域で少なくとも1つの主方向で湾曲されている、装置。
【0171】
実施例3の好ましい実施形態では、上記少なくとも1つの主方向での上記湾曲が、5~30mm、好ましくは10~20mmの範囲内の曲率半径に対応する。
【0172】
実施例3の好ましい実施形態では、上記主方向での上記湾曲は、凹状または凸状のうちの一方である。
【0173】
実施例3の好ましい実施形態では、上記前面での反射前後の検出光ビームが検出光平面を形成し、上記主方向が上記検出光平面内にある、または検出光平面と30°未満、好ましくは20°未満の角度を成す。
【実施例4】
【0174】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための検出光源であって、上記検出光ビームが、上記接触面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出光ビームは、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されるときに偏向される、検出光源と、
上記接触面での反射後に検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器と、を備え、
検出光源は、上記検出光ビームが入射面で上記測定体に照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、出射面で測定体から出るように配置され、
検出ビームは、出射面への法線に対して5°以上、好ましくは10°以上、最も好ましくは15°以上の角度で出射面に衝突し、検出ビームが、測定体の出射面からの出射時に屈折され、検出光ビームに対する出射面の向きは、上記測定体に移送される上記熱または圧力波に応答する検出光ビームの上記偏向が、出射面への法線に対する上記検出光ビームの上記角度を増加させるようなものである、装置。
【実施例5】
【0175】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための検出光源であって、上記検出光ビームが、上記接触面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出光ビームは、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されるのに応答して偏向される、検出光源と、
上記接触面での反射後に検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器と、を備え、
検出光源は、上記検出光ビームが入射面で上記測定体に照射され、上記測定体の一部を通って伝播し、出射面で測定体から出るように配置され、集束レンズが、入射面に取り付けられ、または一体に形成され、上記検出ビームを集束し、および/またはコリメート・レンズが、出射面に取り付けられ、または一体に形成される、装置。
【実施例6】
【0176】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための検出光源であって、上記検出光ビームが、上記接触面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出光ビームは、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されるのに応答して偏向される、検出光源と、
上記接触面での反射後に検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器と、を備え、
上記検出器は、検出光ビームが衝突する位置感知検出器を備え、上記位置感知検出器が、少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトを検出するのに高感度であり、
上記位置感知検出器は、上記検出光ビームの上記偏向が、上記少なくとも1つの感知方向で位置感知検出器に衝突する検出光ビームの位置のシフトをもたらすように配置され、検出光ビームのプロファイルを成形するために検出光ビームの光路に円柱レンズが提供され、および/または位置感知検出器が、検出光ビームに対して90°からずれたある角度で配置され、上記感知方向で上記位置感知検出器に衝突する検出光ビームの直径が、上記感知方向に直交する方向での検出光ビームの直径の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2.0倍である、装置。
【0177】
実施例6の好ましい実施形態では、円柱レンズが、上記接触面での反射と上記位置感知検出器との間の検出光ビームの上記光路に配置されたコリメート・レンズであり、上記円柱レンズが、上記検出光ビームを、主に上記位置感知検出器の上記感知方向に直交する次元でコリメートするように配置され、上記円柱コリメート・レンズは、好ましくは、検出光ビームが測定体から出る上記測定体の出射面と一体に形成される。
【実施例7】
【0178】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記測定体または上記測定体に含まれる構成要素の少なくとも一部を通って進行する検出光ビームを発生するための検出光源であって、上記検出光ビームが、上記接触面で全反射または部分反射されるように向けられ、上記検出光ビームは、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されるのに応答して偏向される、検出光源と、
上記接触面での反射後に検出光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための検出器と、を備え、
光源光ビームを上記検出光ビームと参照光ビームとに分割するためのビームスプリッタをさらに備え、上記参照光ビームも同様に、上記物質と熱的または圧力伝達接触している上記測定体の表面で全反射または部分反射されるように向けられるが、励起放射の吸収時に物質から受け取られる熱または圧力波の影響が無視できる領域内に向けられ、上記検出デバイスが、上記接触面での反射後の参照光ビームの偏向の程度、特に偏向角度を検出するための追加の検出デバイスを備え、上記追加の検出デバイスが、好ましくは光検出器、特に位置感知光検出器を備える、装置。
【実施例8】
【0179】
少なくとも1つの分析物を含む物質を分析するための装置であって、
上記物質と熱的接触または圧力伝達接触されるために適した接触面を有する測定体であって、上記熱的または圧力伝達接触は、物質での励起放射の吸収によって発生される熱または圧力波が上記測定体に移送されることを可能にする、測定体と、
物質に吸収されるように励起放射を物質に照射するように構成された励起放射源と、
上記励起放射の吸収時に上記物質から受け取られる熱または圧力波に対する測定体または測定体に含まれる構成要素の物理的応答を検出するため、および上記検出された物理的応答に基づいて応答信号を発生するための検出デバイスであって、上記応答信号が励起放射の吸収の程度を示す、検出デバイスと、を備え、上記装置が、上記測定体に埋め込まれた光ファイバと、検出光を上記ファイバに結合するために上記ファイバの一端に提供された検出光源と、上記ファイバの他端に提供されたモード検出器とを備え、上記モード検出器は、上記物質から測定体によって受け取られる熱または圧力波に応答して上記検出光の光学モードの変化を検出するのに適しており、光学モードの上記変化が、好ましくは、ファイバ内の光学モードのシフトまたは回転を含む、装置。
【0180】
本発明が特定の実施形態に関して述べられてきたが、当業者には変形および修正が想起され、それらはすべて本発明の態様として意図されることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲に現れる限定のみが本発明に課されるべきである。
図1
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【国際調査報告】