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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(54)【発明の名称】システインプロテアーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/57 20060101AFI20230616BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230616BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 9/52 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230616BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C12Q1/37
C12N9/52
A61P43/00 111
A61K38/48
A61K48/00
A61P37/06
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570741
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-29
(86)【国際出願番号】 EP2021063131
(87)【国際公開番号】W WO2021233911
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2007431.6
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517280580
【氏名又は名称】ハンサ バイオファーマ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ノルダル、エマ アンデション
(72)【発明者】
【氏名】シェルマン、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カルフマー、カイサ
(72)【発明者】
【氏名】ルーペ、カール マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ボッケルマン、ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】イャルヌム、ソフィア
【テーマコード(参考)】
2G045
4B050
4B063
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
2G045CA26
2G045DA20
2G045DA36
4B050CC04
4B050DD02
4B050EE10
4B050LL01
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ36
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR72
4B063QS16
4B063QS33
4B063QX01
4B063QX02
4B065AA26X
4B065AA49Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA33
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084DC02
4C084NA14
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC412
(57)【要約】
本発明は、IgGシステインプロテアーゼ活性を示す新規ポリペプチド、並びにインビボ及びエクスビボにおけるその使用に関する。ポリペプチドの用途は、IgGによって媒介される疾患及び病態を予防又は治療する方法、並びにIgGの分析及びインビトロにおけるF(ab’)2断片の作製の方法を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgGシステインプロテアーゼ活性を有し、
(i)配列番号1;又は
(ii)配列番号2;又は
(iii)それぞれ配列番号1若しくは配列番号2に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個のアミノ酸改変(複数可)を有する配列番号1若しくは配列番号2のバリアント
であるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチド、但し、前記配列が、(a)配列番号5の95位に対応する位置のアスパラギン(N)、(b)配列番号5の99位に対応する位置のアスパラギン酸(D)、及び(c)配列番号5の226位に対応する位置のアスパラギン(N)を保持しており、かつ同じアッセイで測定したときに、前記ポリペプチドが、それぞれ配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと少なくとも同程度ヒトIgGの切断に有効である、ポリペプチド。
【請求項2】
(iii)における改変のうちの少なくとも1つによって、配列番号3のポリペプチド配列の対応する位置に存在するのと同じアミノ酸は生じず、好ましくは、(iii)におけるいずれの改変によっても、配列番号3のポリペプチド配列の対応する位置に存在するのと同じアミノ酸は生じない、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
N末端に追加のメチオニン及び/又はC末端に追加のヒスチジンタグを更に含む、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
同じアッセイで測定したときに、IdeZポリペプチドよりもヒトIgGの切断に有効である、及び/又はIdeSポリペプチドと少なくとも同程度ヒトIgGの切断に有効である、前記請求項のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
同じアッセイで測定したときに、IdeSポリペプチドよりもヒトIgGの切断に有効であり、任意で、有効性が、ヒト被験体から採取した血液又は血清のサンプルにおいてインビトロで測定される、前記請求項のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
同じアッセイで測定したときに、IdeSポリペプチドよりも少なくとも1.2倍、好ましくは1.3倍、最も好ましくは1.4倍ヒトIgGに切断に有効である、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
同じアッセイで測定したときに、IdeSポリペプチドよりも免疫原性が低い及び/又はIdeZポリペプチドの免疫原性を超えない、前記請求項のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
同じアッセイで測定したときに、IdeSポリペプチドよりも免疫原性が低く、好ましくは、免疫原性がIdeSポリペプチドの免疫原性の85%以下である、前記請求項のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記請求項のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載のポリヌクレオチド又は請求項10に記載の発現ベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは細菌細胞であり、最も好ましくは大腸菌(E.coli)の細胞である、宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体又は希釈剤とを含む組成物。
【請求項13】
ヒト又は動物の身体の治療において使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
被験体における疾患又は病態を予防又は治療する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項12に記載の組成物を、予防上又は治療上有効な量で被験体に投与することを含む方法。
【請求項15】
前記疾患又は病態が、病原性IgG抗体によって全体的又は部分的に媒介される疾患又は病態であり、好ましくは、前記疾患又は状態が表Dに列挙されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
IgGを切断するためのエクスビボにおける方法であって、IgGシステインプロテアーゼ活性を生じさせる条件下で、IgGを含有するサンプルを請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドと接触させることを含む方法。
【請求項17】
Fc、Fab、及び/又はF(ab’)の断片を作製するために実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが、請求項15において定義された疾患又は病態に罹患している被験体から採取された血液サンプルである、請求項15又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgGシステインプロテアーゼ活性を示す新規ポリペプチド、並びにインビボ及びエクスビボにおけるその使用に関する。ポリペプチドの用途は、IgGによって媒介される疾患及び病態を予防又は治療する方法、並びにIgGの分析及びインビトロにおけるF(ab’)断片の作製の方法を含む。
【背景技術】
【0002】
IdeS(mmunoglobulin G-egrading nzyme of .pyogenes、化膿性連鎖球菌の免疫グロブリンG分解酵素、イムリフィダーゼとしても知られている)は、ヒト病原体化膿性連鎖球菌によって産生される細胞外システインプロテアーゼである。IdeSは元々A群連鎖球菌株の血清型M1から単離されたが、現在では試験した全てのA群連鎖球菌株においてides遺伝子が同定されている。IdeSは、並外れて高い程度の基質特異性を有しており、その唯一同定されている基質がIgGである。IdeSは、ヒトIgGの全てのサブクラスの重鎖の下部ヒンジ領域において、単一のタンパク質分解切断を触媒する。IdeSはまた、様々な動物におけるIgGの幾つかのサブクラスの重鎖の対応する切断も触媒する。IdeSは、2段階機序を介してIgGをFc及びF(ab’)の断片に効率的に切断する。第1段階では、IgGの1本(第1の)重鎖が切断されて、単一の非共有結合的に結合したFc鎖を有する単一の切断されたIgG(scIgG)分子が作製される。scIgG分子は、事実上、元のIgG分子の残りの(第2の)重鎖を保持する中間生成物である。機序の第2段階では、この第2の重鎖がIdeSによって切断されて、F(ab’)断片及びホモ二量体Fc断片が遊離する。これらは、生理学的条件下で一般的に観察される生成物である。ホモ二量体Fcは、その構成モノマーに解離する場合がある。還元条件下では、F(ab’)断片が2つのFab断片に解離する場合がある。IdeSのIgGを切断する能力は、例えばFab、F(ab’)、及びFcの断片を生成する方法においてエクスビボで有用であることが示されており、例えばIgGの分析及びインビトロにおけるF(ab’)断片の生成のために使用することができる。例えば、国際公開第2003051914号及び同第2009033670号を参照。IdeSはまた、疾患を媒介するか又はその他の理由で望ましくないIgG分子をインビボで切断することができるので、治療剤としてインビボで有用であることも示されている。例えば、国際公開第2006131347号及び同第2013110946号を参照。IdeSは、IgGによって全体的又は部分的に媒介される任意の疾患又は病態の療法として使用することができる。IgGは、多くの自己免疫病態の病状に加えて、移植された臓器の急性拒絶反応の一因となる。
【0003】
しかし、IdeSは、免疫原性のタンパク質である。すなわち、IdeSを治療剤として使用する場合、IdeSを投与された被験者の免疫系がそれに対して応答することが多い。IdeSに対する免疫系の反応は、通常、IdeSに特異的な抗体の産生を伴う。これら抗体は、本明細書において、IdeSに特異的な抗薬物抗体(ADA)又は「IdeS特異的ADA」と称されることもある。一般にはIdeSに対する免疫応答、具体的にはIdeS特異的ADAの産生は、関連する2種類の問題を引き起こす可能性がある。第一に、例えばADAの結合に起因してIdeSの有効性が低下する恐れがあるので、同じ効果を得るためにより高用量又は反復投与が必要になる可能性がある。この効果を有するADAは、「中和ADA」と称されることがある。第二に、ADAとIdeSとの免疫複合体によって誘発される過剰な炎症応答等の望ましくない又は更には有害な合併症が生じる恐れがある。所与の被験体におけるIdeSに特異的なADAの量が多いほど、これら問題が生じる可能性が高くなる。患者におけるIdeS特異的ADA分子の存在及び量は、剤特異的CAP FEIA(ImmunoCAP)試験又は患者からの血清サンプルに対して行われるタイターアッセイ等の任意の好適な方法によって求めることができる。臨床医が定めた閾値を超えると、患者におけるIdeS特異的ADA分子の量は、IdeSの投与を不可能にしたり、より高用量のIdeSが必要であることを示したりし得る。このようなより高用量の結果、次に、患者におけるIdeS特異的ADA分子の量が増加し、それにより、IdeSの更なる投与が不可能になる可能性がある。
【0004】
IdeSは、扁桃炎及び連鎖球菌性咽頭炎のような一般的な感染症の原因となる化膿性連鎖球菌の病原因子である。従って、ほとんどのヒト被験体は、この状況でIdeSに遭遇しており、血中に抗IdeS抗体を有している可能性が高い。通常、ヒト被験体からの血清サンプル(連鎖球菌感染歴があるためである可能性が高い)に加えて、数千人のドナーのプール血清から抽出されたIgGの調製物であるIVIg(ntraenous mmunolobulin、静注用免疫グロブリン)調製物では、様々なレベルのIdeS特異的ADAを検出することができる。IdeS特異的ADAを検出する技術は、当技術分野において公知である。被験体がIdeSの初回投与前にIdeS特異的ADAを保有していないとしても、その後、そのような分子が産生される可能性が高い。従って、任意の所与の被験体にとって、IdeSの免疫原性に関連する問題は、治療としてIdeSを使用する際の障壁となる可能性が高い。これら問題により、特に反復投与が必要な場合、IdeSの用量を増やすことが必要になる及び/又はIdeSによる治療が完全に不可能になる可能性がある。この種の問題に対する既存のアプローチは、例えば、免疫原性を低下させるために治療剤をPEG化したり、治療剤を免疫抑制剤と共投与したりすることを伴う。
【0005】
IdeZは、主にウマでみられる細菌であるストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)の亜種ズーエピデミカス(zooepidemicus)によって産生されるIgGシステインプロテアーゼである。IdeZは、IdeSと約66%の同一性を有する。ストレプトコッカス・エクイの亜種ズーエピデミカスはヒトの病原体ではないため、ヒトはIdeZに対する抗体(抗薬物抗体、ADA)をより僅かしか又は全く有していない可能性があるので、IdeZはIdeSベースの療法の代替になると考えられた。しかし、特にIgG2を切断する場合、IdeZのヒトIgGに対するIgGシステインプロテアーゼ活性のレベルはIdeSよりもかなり低い。
【0006】
従って、ヒトIgGに対して高い活性(好ましくは、野生型IdeZよりも高く、更により好ましくはIdeSよりも高い)を有するIdeZ由来のシステインプロテアーゼが依然として必要とされている。具体的には、ヒトのIgG1及びIgG2に対して高い活性(好ましくは野生型IdeZよりも高く、更に好ましくはIdeSよりも高い)を有するIdeZ由来のシステインプロテアーゼが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
IdeSの全配列は、NCBI参照配列番号WP_010922160.1として公的に入手可能であり、本明細書では配列番号6として提供される。この配列は、N末端のメチオニンに続いて、28アミノ酸の分泌シグナル配列を含む。N末端のメチオニン及びシグナル配列(N末端の合計29アミノ酸)は、典型的には、成熟IdeSタンパク質を形成するために除去され、該タンパク質の配列は、Genbankアクセッション番号ADF13949.1として公的に入手可能であり、本明細書では配列番号4として提供される。
【0008】
IdeZの全配列は、NCBI参照配列番号WP_014622780.1として公的に入手可能であり、本明細書では配列番号5として提供される。この配列は、N末端のメチオニンに続いて、33アミノ酸の分泌シグナル配列を含む。N末端のメチオニン及びシグナル配列(N末端の合計34アミノ酸)は、典型的には、成熟IdeZタンパク質を形成するために除去され、該タンパク質の配列は、本明細書では配列番号3として提供される。
【0009】
本発明者らは、本明細書に記載の通り改変したときにIdeZと比べてヒトIgGに対するIgGシステインプロテアーゼ活性が増加した新規ポリペプチドをもたらす、IdeZの配列内の特定の位置を同定することができた。本発明のポリペプチドの(例えば、ヒトIgGの切断における)ヒトIgGに対するIgGシステインプロテアーゼ活性は、好ましくは、IdeSのヒトIgGに対するIgGシステインプロテアーゼ活性と少なくとも同程度高い。本発明のポリペプチドは、特にIgGがIgG1又はIgG2のアイソタイプである場合、IdeSのIgGシステインプロテアーゼよりもヒトIgGの切断により有効であり得る。本発明のポリペプチドは、特にIgG1の第2の鎖の切断で測定したとき、IgGシステインプロテアーゼIdeSよりもヒトIgGの切断により有効であり得る。本発明のポリペプチドは、IgG2よりもIgG1の切断により有効であり得る。本発明のポリペプチドは、典型的には、IdeSよりも免疫原性が低く、好ましくは、免疫原性がIdeZ程度であってよい。
【0010】
特に断らない限り、本明細書に開示されるポリペプチドにおけるアミノ酸位置の付番に対する全ての言及は、N末端から始まる配列番号5における対応する位置の付番に基づく。従って、配列番号1は、配列番号5のN末端のメチオニン及び33アミノ酸のシグナル配列を欠いているので、配列番号1のN末端のアスパラギン酸(D)残基は35位と称されるが、その理由は、これが配列番号5における対応位置であるためである。この付番スキームを適用すると、IdeSのIgGシステインプロテアーゼ活性に最も重要な残基は、配列番号5に対応する102位のシステイン(C)である。IgGシステインプロテアーゼ活性に重要である可能性が高い他の残基は、配列番号5に対応する92位のリジン(K)、272位のヒスチジン(H)、並びに294位及び296位の2つのアスパラギン酸(D)である。また、配列番号1のN末端の最初の20残基を欠失させると、この変化が組み込まれたポリペプチドの効力を増強することができる及び/又は効力に悪影響を及ぼすことなく免疫原性を低下させることができることも見出されている。配列番号1のN末端の最初の20残基は、連続配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITからなる。従って、本発明に係るポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列(連続配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITを含まない)を含み得る。配列番号1の最初の20残基は、配列番号5の35~54位に対応する。この特定の改変は、本明細書では「D35_T54del」という用語によって特定することができる。従って、配列番号2は、配列番号5のN末端のメチオニン、33アミノ酸シグナル配列を欠いており、更に配列番号5の35~54位に対応する配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITが欠失しているので、配列番号2のN末端のセリン(S)残基は55位と称されるが、その理由は、これが配列番号5における対応位置であるためである。
【0011】
従って、一態様では、本発明は、IgGシステインプロテアーゼ活性を有し、
(i)配列番号1;又は
(ii)配列番号2;又は
(iii)それぞれ配列番号1若しくは配列番号2に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個のアミノ酸改変(複数可)を有する配列番号1若しくは配列番号2のバリアント
であるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチド、但し、該配列が、(a)配列番号5の95位に対応する位置のアスパラギン(N)、(b)配列番号5の99位に対応する位置のアスパラギン酸(D)、及び(c)配列番号5の226位に対応する位置のアスパラギン(N)を保持しており、かつ同じアッセイで測定したときに、前記ポリペプチドが、それぞれ配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと少なくとも同程度ヒトIgGの切断に有効である、ポリペプチドを提供する。
【0012】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードしているか又は発現しているポリヌクレオチド、発現ベクター、又は宿主細胞を提供する。
【0013】
本発明はまた、被験体におけるIgG抗体によって媒介される疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、治療的又は予防的に有効な量の本発明のポリペプチドを被験体に投与することを含む方法を提供する。方法は、典型的には、該ポリペプチドを被験体に複数回投与することを含んでいてよい。
【0014】
本発明はまた、患者、典型的には、IgG抗体によって媒介される疾患又は病態に罹患している患者から採取した血液をエクスビボで処理する方法であって、該血液を本発明のポリペプチドと接触させることを含む方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、被験体に対する療法又は治療剤の利益を改善する方法であって、(a)本発明のポリペプチドを被験体に投与すること;及び(b)その後、該療法又は該治療剤を被験体に投与することを含み;
- 該療法が、臓器移植であるか、あるいは該治療剤が、抗体、ウイルスベクター等の遺伝子療法、酵素等の欠陥のある内因性因子の代替物、成長若しくは凝固因子、又は細胞療法であり;
- 投与される該ポリペプチドの量が、被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子を切断するのに十分であり;かつ
- 工程(a)及び(b)が、被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子を切断するのに十分な時間間隔で隔てられている、方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、IgGを本発明のポリペプチドと、好ましくはエクスビボで接触させることを含む、IgGのFc、Fab、又はF(ab’)の断片を作製する方法を提供する。
【0017】
また、本発明に係る方法を実施するためのキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、pCART239(N末端Met及びC末端Hisタグを有する配列番号1)の発現及び精製のSDS-PAGE分析を示す。(A)pCART239の過剰発現-レーン1及び2は、IPTGによる誘導の1時間後に収集した細胞から得られた溶解物を示す;レーン3はプールされた溶解物を示す。(B)pCART239の精製-レーン1は、溶解物中にみられた不純物の除去を示す、NiNTA精製プロセスからのフロースルーを示し、レーン2及び3は、精製pCART239(それぞれ約0.5μg及び約3.0μgのタンパク質をロード)を表す。
図2図2は、図示する通りIgG1(ヒュミラ)をIdeS及び被験IdeZバリアントと共にインキュベートすることによって生成された切断産物を可視化するために使用した代表的なSDS-PAGEゲルの結果を示す。レーンの上方の濃度は、試験したIdeS/IdeZバリアントの濃度を示す。パネルA及びBは、2つの別々の実験を表す。
図3図3は、図示する通りIgG2(XGEVA)をIdeS及び被験IdeZバリアントと共にインキュベートすることによって生成された切断産物を可視化するために使用した代表的なSDS-PAGEゲルの結果を示す。レーンの上方の濃度は、試験したIdeS/IdeZバリアントの濃度を示す。パネルA及びBは、2つの別々の実験を表す。
図4図4は、図示する通り、(A)IgG1(ヒュミラ)、(B)IgG2(XGEVA)、(C)IgG3、(D)IgG4をIdeS及びN240と共にインキュベートすることによって生成された切断産物を可視化するために使用した代表的なSDS-PAGEゲルの結果を示す。レーンの上方の濃度は、試験したIdeS/IdeZバリアントの濃度を示す。
図5図5は、IdeSと比較したときのN240の効力(IgG1切断の有効性)を求めるためのアッセイにおける、トリプリケートサンプルからの平均電気化学発光(ECL)値の近似タイトレーション曲線を示す。エラーバーは、SDを表す。
図6図6は、デコイ(pCART239の不活性バージョン)の有り無し両方での、pCART239による血清IgGの消化を示す。デコイを使用することで、血清中に存在するADAの阻害作用を低減することができる。レーンの上方の濃度は、試験したIdeZバリアントの濃度を示す。
図7図7は、血清中のN240及びIdeSの効力(IgG切断の有効性)を求めるためのアッセイにおける、トリプリケートサンプル及び2つの別々の希釈系列からの平均電気化学発光(ECL)値の近似タイトレーション曲線を示す。エラーバーは、SDを表す。
図8図8は、40人の健常個体からの血清及び1つの正常血清プール(n=100)における既存のN240及びIdeS ADAのレベルに対応する平均ECL値を示す。
図9図9は、本発明のポリペプチドによるIgGの段階的切断を示す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
配列の簡単な説明
配列番号1は、本発明のポリペプチドの塩基配列である。
【0020】
配列番号2は、配列番号1に関連し、連続配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITに対応する配列番号1のN末端の最初の20アミノ酸が欠失していることを除いて配列番号1と同一である、本発明の更なるポリペプチドの配列である。
【0021】
配列番号3は、N末端メチオニン及びシグナル配列を欠く、IdeZの成熟配列である。
【0022】
配列番号4は、N末端メチオニン及びシグナル配列を欠く、IdeSの成熟配列である。Genbankアクセッション番号ADF13949.1としても開示されている。
【0023】
配列番号5は、N末端メチオニン及びシグナル配列を含む、IdeZの全配列である。NCBI参照配列番号WP_014622780.1としても開示されている。
【0024】
配列番号6は、N末端メチオニン及びシグナル配列を含む、IdeSの全配列である。NCBI参照配列番号WP_010922160.1としても開示されている。
【0025】
配列番号7は、バリアントIdeZポリペプチドであるpCART207の配列である。
【0026】
配列番号8は、バリアントIdeZポリペプチドであるpCART229の配列である。
【0027】
配列番号9は、(グリシンリンカーと共に)追加のN末端メチオニン及び追加のC末端ヒスチジンタグの存在によって配列番号1に関連する本発明のバリアントIdeZポリペプチドである、pCART239の配列である。
【0028】
配列番号10は、追加のN末端メチオニンの存在によって配列番号1と関連する本発明のバリアントIdeZポリペプチドである、N240の配列である。
【0029】
配列番号11は、(グリシンリンカーと共に)追加のN末端メチオニン及び追加のC末端ヒスチジンタグの存在によって配列番号2に関連する本発明のバリアントIdeZポリペプチドである、pCART242の配列である。
【0030】
配列番号12は、不活性バリアントIdeZポリペプチドであるpCART243の配列である。
【0031】
配列番号13は、対照IdeSポリペプチドの配列である。(グリシンリンカーと共に)追加のN末端メチオニン及びヒスチジンタグを有する配列番号4の配列を含む(内部参照pCART124)。
【0032】
配列番号14は、対照IdeZポリペプチドの配列である。(グリシンリンカーと共に)追加のN末端メチオニン及びヒスチジンタグを有する配列番号3の配列を含む(内部参照pCART144)。
【0033】
配列番号15は、配列番号5の35~54位に対応する連続配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITである。
【0034】
配列番号16~23は、本明細書に開示される特定のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列である。
【0035】
発明を実施するための形態
開示される生成物及び方法の様々な用途は、当技術分野における具体的なニーズに応じて調整できることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0036】
更に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」に対する言及は、「複数のポリペプチド(polypeptides)」等を含む。
【0037】
「ポリペプチド」は、本明細書では、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログ、又は他のペプチドミメティックの化合物を指すために、その最も広い意味で使用される。従って、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列を含み、より長いポリペプチド及びタンパク質も含む。本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸」とは、D型又はL型の光学異性体の両方を含む天然及び/又は非天然、すなわち合成のアミノ酸、並びにアミノ酸アナログ及びペプチドミメティックを指す。
【0038】
「患者」及び「被験体」という用語は、互換的に使用され、典型的には、ヒトを指す。IgGに対する言及は、特に断りのない限り、典型的にはヒトIgGを指す。
【0039】
上記であろうと下記であろうと、本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
ポリペプチドの機能的特徴
本発明は、IgGシステインプロテアーゼ活性を有する新規ポリペプチドであって、IdeZよりもヒトIgGの切断により有効であるポリペプチドに関する。本発明のポリペプチドのヒトIgGに対するIgGシステインプロテアーゼ活性は、好ましくは、IdeSのヒトIgGに対するIgGシステインプロテアーゼ活性と少なくとも同程度高い。更に、本発明のポリペプチドは、典型的には、IdeSよりも免疫原性が低く、好ましくは、免疫原性がIdeZ程度であってよい。本発明のポリペプチドに対する対照又は比較の文脈において、「IdeS」及び「IdeZ」は、それぞれ配列番号4及び3のアミノ酸配列からなるポリペプチドを指す。あるいは又は更に、対照又は比較として使用するとき、「IdeS」及び「IdeZ」は、それぞれ配列番号4及び3のアミノ酸配列を含み、標準的な細菌発現系での発現及びそれからの単離を支援するためにN末端に追加のメチオニン(M)残基及び/又はC末端にタグを有するポリペプチドを指し得る。好適なタグとしては、ポリペプチドのC末端に直接連結されてもよく、任意の好適なリンカー配列、例えば、3つ、4つ、又は5つのグリシン残基によって間接的に連結されてもよいヒスチジンタグが挙げられる。ヒスチジンタグは、典型的には6つのヒスチジン残基からなるが、これよりも典型的には最大7アミノ酸、最大8アミノ酸、最大9アミノ酸、最大10アミノ酸、又は最大20アミノ酸長くてもよく、例えば5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、又は1アミノ酸短くてもよい。本明細書で対照として使用される例示的なIdeSポリペプチドの配列を、配列番号13として提供する。このポリペプチドは、追加のN末端メチオニン及びヒスチジンタグを有する配列番号4の配列を含み、本明細書ではpCART124と称されることもある。本明細書で対照として使用される例示的なIdeZポリペプチドの配列を、配列番号14として提供する。このポリペプチドは、追加のN末端メチオニン及びヒスチジンタグを有する配列番号3の配列を含み、本明細書ではpCART144と称されることもある。
【0041】
IgGシステインプロテアーゼ活性は、任意の好適な方法によって、例えば、IgGを含有するサンプルと共にポリペプチドをインキュベートし、IgG切断産物の存在を判定することによって評価することができる。有効性は、中和抗体等の阻害剤の存在下又は非存在下で評価することができる。ただし、本明細書における有効性は、典型的には、特に断らない限り、そのような阻害剤の非存在下で評価したときの有効性を意味する。好適な方法については、実施例に記載する。IgGの切断におけるポリペプチドの有効性は、本明細書ではポリペプチドの「効力」と称されることもある。本発明のポリペプチドの効力は、好ましくは、同じアッセイで測定したIdeZの効力よりも少なくとも2.0倍高い。本発明のポリペプチドの効力は、同じアッセイで測定したIdeZの効力よりも少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.0倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも6.0倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、又は少なくとも8.0倍高くてよい。あるいは又は更に、本発明のポリペプチドの効力は、好ましくは、同じアッセイで測定したIdeSの効力と少なくとも等価である。あるいは又は更に、本発明のポリペプチドの効力は、好ましくは、同じアッセイで測定したIdeSの効力よりも高い。本発明のポリペプチドの効力は、同じアッセイで測定したIdeSの効力よりも少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.0倍、少なくとも4.0倍高くてよい。本発明のポリペプチドの効力は、好ましくは、同じアッセイで測定したIdeSの効力よりも少なくとも2.0倍、より好ましくは少なくとも3.0倍、又は少なくとも4.0倍高い。
【0042】
本発明のポリペプチドは、典型的には、IdeSよりも免疫原性が低く、従って、IdeZと比べて増大した効力及び/又はIdeSと等価な効力が、ヒトIgGに対するシステインプロテアーゼ活性の許容可能な最低水準である。しかし、IdeSと比べた効力の増大が望ましい改善である。このような効力の増大により、典型的には、より高用量のIdeSと同じ治療効果のために、より低用量の本発明のポリペプチドを使用することが可能になるであろう。また、より低用量であることにより、IdeSと比べて、本発明のポリペプチドの反復投与回数をより多くすることも可能になる。これは、より低濃度で存在する剤に対しては免疫系が応答する可能性が低いか又は応答が鈍いので、より低用量の使用により、治療剤の免疫原性に関連する問題が低減されるからである。
【0043】
IgGの切断におけるポリペプチドの効力を評価するためのアッセイ、すなわち、ポリペプチドの効力を評価するためのアッセイは、当技術分野で周知であり、任意の好適なアッセイを使用してよい。好適なアッセイとしては、実施例に記載されるもの等のELISAベースのアッセイが挙げられる。このようなアッセイでは、典型的には、ウシ血清アルブミン(BSA)等の抗体標的でアッセイプレートのウェルをコーティングする。次いで、試験するポリペプチドのサンプルをウェルに添加し、続いて、この例ではBSAに特異的な抗体である(そして、IdeSによる切断に対して感受性である)標的特異的抗体のサンプルを添加する。ポリペプチド及び抗体を、IgGシステインプロテアーゼ活性に好適な条件下で相互作用させる。好適な間隔後にアッセイプレートを洗浄し、標的特異的抗体のFc領域に特異的に結合する検出抗体を、標的特異的抗体への結合に好適な条件下で添加する。検出抗体は、各ウェル中の標的に結合している任意のインタクトな標的特異的抗体のFc領域に結合する。洗浄後、ウェル中に存在する検出抗体の量は、そのウェルに結合した標的特異的抗体の量に比例する。検出抗体は、標識又は別のレポーター系(酵素等)に直接又は間接的にコンジュゲートすることができ、その結果、各ウェルに残存する検出抗体の量を求めることができる。ウェル中に存在していた被験ポリペプチドの効力が高いほど、残存するインタクトな標的特異的抗体が少なく、従って、存在する検出抗体も少ない。典型的には、所与のアッセイプレートの少なくとも1つのウェルには、被験ポリペプチドの代わりにIdeSが含まれており、その結果、被験ポリペプチドの効力をIdeSの効力と直接比較することができる。また、比較のためにIdeZ又はIdeZの公知のバリアントが含まれていてもよい。
【0044】
他のアッセイでは、被験ポリペプチドによるIgGの切断によって生じるIgGの断片を直接可視化及び/又は定量化することにより、被験ポリペプチドの効力を求めることができる。この種のアッセイについては実施例にも記載する。このようなアッセイでは、典型的には、タイトレーション系列における異なる濃度の試験ポリペプチド(又は対照としてのIdeS、IdeZ、及びIdeZの公知のバリアントのうちの1つ以上)と共にIgGのサンプルをインキュベートする。次いで、各濃度でインキュベートの結果生じた生成物を、例えばSDS-PAGEによってゲル電気泳動を用いて分離する。次いで、IgG全体及びIgGの切断によって生じた断片をサイズによって識別し、好適な色素による染色の強度によって定量することができる。切断断片の量が多いほど、所与の濃度における被験ポリペプチドの効力が高い。本発明のポリペプチドは、典型的には、IdeZ及び/又はIdeSよりも低い濃度(タイトレーション系列におけるより低い点)で検出可能な量の切断断片を生成する。この種のアッセイは、各切断事象から生じた異なる断片の量を求めることもできるので、IgG分子の第1又は第2の重鎖の切断により有効である被験ポリペプチドの同定も可能にし得る。本明細書に記載される効力アッセイに好適なIgGのサンプルは、様々な供給源からのものであってよい。例えば、市販の抗体調製物を使用してよい。市販の抗体調製物は、一般に純粋であり、アイソタイプ及びサブクラス特異的である。あるいは、ヒト血清等のIgGの混合集団を含むサンプルを用いてもよい。血清を含むIgGのサンプルは、IdeS及び/又はIdeZに対するADAを含んでいてもよい。このように、本明細書に記載の効力アッセイに好適なIgGのサンプルは、ADAを含んでいてもよい。本発明のポリペプチドは、特にIgGがIgG2アイソタイプである場合、IgG分子の第2の鎖よりも第1の鎖の切断に(IdeS及び/又はIdeZと比較したとき)より有効であり得る(図9の概略図を参照)。あるいは、本発明のポリペプチドは、特にIgGがIgG1アイソタイプである場合、IgG分子の第2の鎖よりも第2の鎖の切断に(IdeS及び/又はIdeZと比較したとき)より有効であり得る(図9の概略図を参照)。本発明のポリペプチドは、(IdeS及び/又はIdeZと比較したとき)IgG2よりもIgG1の切断により有効であり得る。
【0045】
この種のアッセイは、IdeS特異的ADAの存在が本発明のポリペプチドの効力を低下させ得る程度を求めるするために適応させることもできる。適応したアッセイでは、IgGのサンプルを試験ポリペプチド(又は対照としてのIdeS)と共にインキュベートするとき、IdeS特異的ADAを含有する血清又はIVIg調製物を反応媒体に含める。好ましくは、本発明のポリペプチドの効力は、ADAの存在によって影響を受けないか、又は同じアッセイにおけるIdeSの効力よりもADAの存在による低下が少ない。すなわち、好ましくは、本発明のポリペプチドに対するIdeS特異的ADAの中和効果は、同じアッセイで測定したIdeSに対するIdeS特異的ADAの中和効果と同等であるか又はそれよりも低い。
【0046】
上に示したように、本発明のポリペプチドは、典型的には、IdeSよりも免疫原性が低い。すなわち、本発明のポリペプチドは、等価な用量又は濃度で存在しかつ同じアッセイで測定したとき、生じ得る免疫応答がIdeSと同等であるか又は好ましくはより少ない。本発明のポリペプチドの免疫原性は、典型的には、同じアッセイで測定したIdeSの免疫原性の50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、又は25%以下である。好ましくは、本発明のポリペプチドの免疫原性は、同じアッセイで測定したIdeSの免疫原性の25%以下である。
【0047】
ポリペプチドの免疫原性を評価するためのアッセイも当技術分野で周知であり、任意の好適なアッセイを使用してよい。IdeSの免疫原性と比べてポリペプチドの免疫原性を評価するための好ましいアッセイは、IdeSに特異的なADAが、本発明のポリペプチドにも結合する程度を評価することを含む。この種のアッセイについては、実施例に記載する。患者におけるIdeS特異的ADA分子の存在及び量は、剤特異的CAP FEIA(ImmunoCAP)試験又は患者からの血清サンプルに対して行われるタイターアッセイ等の任意の好適な方法によって求めることができる。
【0048】
そのようなアッセイの1つは、IdeSと試験ポリペプチドとの間のIdeS特異的ADAに対する結合についての競合を試験することを含む。典型的には、アッセイプレートのウェルにIdeSをコーティングし、続いて、IdeS特異的ADAを含有する溶液、例えばIVIg調製物と試験ポリペプチド(又は対照としてのIdeS)とのプレインキュベーションされた混合物を投与する。プレインキュベーションは、タンパク質とADAとの間の高親和性結合のみが許容されるように、IgGシステインプロテアーゼ活性の阻害剤、例えばヨード酢酸(IHAc)の存在下かつ高塩濃度で行われる。プレインキュベーションされた混合物を、IdeSでコーティングされたウェルと相互作用させる。試験ポリペプチドに結合していない任意のIdeS特異的ADAは、ウェル上のIdeSに結合する。好適な間隔後にアッセイプレートを洗浄し、IgGに特異的に結合する検出抗体を、結合に好適な条件下で添加する。検出抗体は、各ウェル中のIdeSに結合している任意のADAに結合する。洗浄後、ウェル中に存在する検出抗体の量は、試験ポリペプチドに結合したADAの量に反比例する。検出抗体は、標識又は別のレポーター系(酵素等)に直接又は間接的にコンジュゲートすることができ、その結果、各ウェルに残存する検出抗体の量を求めることができる。典型的には、所与のアッセイプレートの少なくとも1つのウェルを、被験ポリペプチドの代わりにIVIg及びIdeSのプレインキュベーションされた混合物を用いて試験し、その結果、ADAの被験ポリペプチドへの結合をIdeSへの結合と直接比較することができる。また、更なる対照としてIdeZを含めてもよい。
【0049】
別の好適なアッセイは、対照としてのIdeS及び/又はIdeZと比較したときの、異なる濃度のIdeS特異的ADA、例えばIVIg調製物のタイトレーション系列が試験ポリペプチドに結合する程度を試験することを含む。好ましくは、本発明のポリペプチドは、IdeSへの結合が検出可能になるADAの濃度に比べて、結合が検出可能になるにはより高濃度のADAを必要とする。このようなアッセイについては、実施例に記載する。このようなアッセイは、典型的には、アッセイプレートのウェルに試験ポリペプチド又は対照をコーティングし、続いて、各ウェルをタイトレーション系列からの異なる濃度のIdeS特異的ADAと共にインキュベートすることを含む。インキュベーションは、タンパク質とADAとの間の高親和性結合のみが許容されるように、IgGシステインプロテアーゼ活性の阻害剤、例えばヨード酢酸(IHAc)の存在下かつ高塩濃度で実施される。好適な間隔後にアッセイプレートを洗浄し、IgG F(ab’)に特異的に結合する検出抗体を、結合に好適な条件下で添加する。検出抗体は、各ウェルにコーティングされた試験ポリペプチド又はIdeSに結合している任意のADAに結合する。洗浄後、ウェル中に存在する検出抗体の量は、試験ポリペプチド又は対照に結合したADAの量に正比例する。検出抗体は、標識又は別のレポーター系(酵素等)に直接又は間接的にコンジュゲートすることができ、その結果、各ウェルに残存する検出抗体の量を求めることができる。試験ウェルにおける結合の検出についての閾値レベルを確立するために、所与のアッセイプレート上の少なくとも1つのウェルを、ブランクとしてADAを含まないバッファと共にインキュベートする。
【0050】
ポリペプチドの構造的特徴
この章は、本発明のポリペプチドの構造的特徴について記載し、これは、上の章に概説した機能的特徴に加えて適用される。
【0051】
本発明のポリペプチドは、典型的には、少なくとも100アミノ酸長、少なくとも150アミノ酸長、少なくとも200アミノ酸長、少なくとも250アミノ酸長、少なくとも260アミノ酸長、少なくとも270アミノ酸長、少なくとも280アミノ酸長、少なくとも290アミノ酸長、少なくとも300アミノ酸長、又は少なくとも310アミノ酸長である。本発明のポリペプチドは、典型的には、400アミノ酸長以下、350アミノ酸長以下、340アミノ酸長以下、330アミノ酸長以下、320アミノ酸長以下、又は315アミノ酸長以下である。上記下限のいずれかを上記上限のいずれかと組み合わせて、本発明のポリペプチドの長さについての範囲を提供できることが理解されるであろう。例えば、ポリペプチドは、100~400アミノ酸長又は250~350アミノ酸長であってよい。ポリペプチドは、好ましくは、290~320アミノ酸長、最も好ましくは300~315アミノ酸長である。
【0052】
本発明のポリペプチドの一次構造(アミノ酸配列)は、野生型成熟IdeZ配列(配列番号3)に基づく特定のバリアントである配列番号1である。言い換えれば、配列番号1は、ヒトIgGに対する効力の増大に関与する(配列番号3と比較したとき)一次ポリペプチド配列における特定の点変異のセットを通じて配列番号3と関連している。
【0053】
本発明の別のポリペプチドは、配列番号1に関連する配列番号2である。配列番号2は、連続配列DDYQRNATEAYAKEVPHQITに対応する配列番号1のN末端の最初の20アミノ酸が欠失していることを除いて配列番号1と同一である。言い換えれば、配列番号2は、野生型IdeZ配列(配列番号3)に対する一次ポリペプチド配列の点変異に関しても配列番号1と同一である。
【0054】
本発明はまた、それぞれ配列番号1又は配列番号2に比べて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸改変を有するが、但し、配列が、(a)配列番号5の95位に対応する位置のアスパラギン(N)、(b)配列番号5の99位に対応する位置のアスパラギン酸(D)、及び(c)配列番号5の226位に対応する位置のアスパラギン(N)を保持しており、かつ同じアッセイで測定したときに、ポリペプチドが、それぞれ配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと少なくとも同程度ヒトIgGの切断に有効である、配列番号1若しくは配列番号2のバリアントにも関する。任意で、配列番号1又は配列番号2のバリアントにおける1つ以上のアミノ酸改変によって、配列番号3のポリペプチド配列の対応する位置に存在するのと同じアミノ酸は生じず、好ましくは、いずれの改変によっても、配列番号3のポリペプチド配列の対応する位置に存在するのと同じアミノ酸は生じない。
【0055】
本発明のポリペプチドの配列が、配列番号1又は配列番号2の配列と比べて1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸改変、例えば、アミノ酸の付加、欠失、又は置換が行われた配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列のバリアントを含む場合、該配列は、(a)配列番号5の95位に対応する位置のアスパラギン(N)、(b)配列番号5の99位に対応する位置のアスパラギン酸(D)、及び(c)配列番号5の226位に対応する位置のアスパラギン(N)を保持していなければならない。そうでなければ、改変は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列のバリアントは、配列番号3のポリペプチド配列の対応する位置に存在するのと同じアミノ酸を生じさせない1つ以上の改変(それぞれ配列番号1又は配列番号2に対してなされる)を含んでいてよい。好ましくは、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列のバリアントでは、(それぞれ配列番号1又は配列番号2に対してなされた)改変は全て、配列番号3のポリペプチド配列の対応する位置に存在するのと同じアミノ酸を生じさせない。
【0056】
保存的置換は、アミノ酸を類似の化学的構造、類似の化学的特性、及び/又は類似の側鎖体積の他のアミノ酸に置き換える。導入されるアミノ酸は、置き換えられるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、又は電荷を有していてよい。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族又は脂肪族のアミノ酸の代わりに芳香族又は脂肪族の別のアミノ酸を導入してもよい。保存的アミノ酸変化は当技術分野において周知であり、以下の表A1に定義する20種の主なアミノ酸の特性に従って選択してよい。アミノ酸が類似の極性を有する場合、これは、表A2中のアミノ酸側鎖のヒドロパシースケールを参照することによって決定することができる。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列における特定の残基(配列番号5に対応する95位、99位、及び226位以外)は、好ましくは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸改変を含むバリアント配列内に保持される。例えば、該バリアント配列は、典型的には、IgGシステインプロテアーゼ活性に必要であることが知られている特定の残基を保持する。従って、配列番号5の102位に対応するシステインは、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列において保持されていなければならない。任意で、配列番号5の92位に対応するリジン(K)、配列番号5の272位に対応するヒスチジン(H)、並びに配列番号5の294位及び296位の各々に対応するアスパラギン酸(D)も保持される。従って、本発明に係る配列番号1又は配列番号2のポリペプチドバリアントは、典型的には、配列番号5の102位に対応する位置にシステイン(C)を有し;任意で、それぞれ配列番号5の92位、272位、294位、及び296位に対応する位置に、リジン(K)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、及びアスパラギン酸(D)を有する。
【0060】
本発明者らはまた、配列番号1又は配列番号2の配列に対する特定の他の改変が、本発明のポリペプチドの効力を増大させ得る及び/又はIdeS特異的ADAによる本発明のポリペプチドの認識を低下させ得ることを見出した。従って、本発明に係る配列番号1又は配列番号2のポリペプチドバリアントは、配列番号5の84位、93位、97位、137位、139位、140位、147位、150位、162位、165位、166位、171位、174位、205位、226位、237位、239位、243位、250位、251位、254位、255位、282位、288位、312位、315位、347位、349位に対応する位置のうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個でなされるアミノ酸置換を含んでいてよい。
【0061】
置換は、典型的には、既存のアミノ酸を、異なる性質を有する別のアミノ酸に置き換える。例えば、非荷電アミノ酸を荷電アミノ酸に置き換えてもよく、逆もまた同様である。これら位置における好ましい置換基を、1文字コードを用いて以下の表Bに示す。
【0062】
【表3】
【0063】
各置換は、本明細書では、左から右へ各行の1列目、2列目、及び3列目の記入事項を組み合わせることによって得られる用語を用いて参照することができる。例えば、本明細書では、表Bの1行目の置換を「H84N」と称する場合があり、2行目の置換を「A93T」と称する場合があり、以下同様である。7
【0064】
以下の表Cに、本明細書に記載される特定のポリペプチドのアミノ酸配列を生成するために、野生型IdeZ配列(配列番号3)に対してなされた変更をまとめる。
【0065】
【表4】
【0066】
本明細書で言及する特定のポリペプチドのアミノ酸配列を以下に完全に再現する。
【0067】
配列番号1
DDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFNGKDDLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0068】
配列番号2
SVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFNGKDDLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0069】
配列番号3(IdeZ成熟配列)
DDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPLTPEQFRYNNEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFDGKDNLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFNNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGDQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0070】
配列番号4(IdeS成熟配列)
DSFSANQEIRYSEVTPYHVTSVWTKGVTPPANFTQGEDVFHAPYVANQGWYDITKTFNGKDDLLCGAATA
GNMLHWWFDQNKDQIKRYLEEHPEKQKINFNGEQMFDVKEAIDTKNHQLDSKLFEYFKEKAFPYLSTKHL
GVFPDHVIDMFINGYRLSLTNHGPTPVKEGSKDPRGGIFDAVFTRGDQSKLLTSRHDFKEKNLKEISDLI
KKELTEGKALGLSHTYANVRINHVINLWGADFDSNGNLKAIYVTDSDSNASIGMKKYFVGVNSAGKVAIS
AKEIKEDNIGAQVLGLFTLSTGQDSWNQTN
【0071】
配列番号5(IdeZ全配列)
MKTIAYPNKPHSLSAGLLTAIAIFSLASSNITYADDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPLTPEQFRYNNEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFDGKDNLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFNNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGDQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0072】
配列番号6(IdeS全配列)
MRKRCYSTSAAVLAAVTLFVLSVDRGVIADSFSANQEIRYSEVTPYHVTSVWTKGVTPPANFTQGEDVFHAPYVANQGWYDITKTFNGKDDLLCGAATAGNMLHWWFDQNKDQIKRYLEEHPEKQKINFNGEQMFDVKEAIDTKNHQLDSKLFEYFKEKAFPYLSTKHLGVFPDHVIDMFINGYRLSLTNHGPTPVKEGSKDPRGGIFDAVFTRGDQSKLLTSRHDFKEKNLKEISDLIKKELTEGKALGLSHTYANVRINHVINLWGADFDSNGNLKAIYVTDSDSNASIGMKKYFVGV
NSAGKVAISAKEIKEDNIGAQVLGLFTLSTGQDSWNQTN
【0073】
配列番号7(pCART207)
MDDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFDGKDNLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGDQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0074】
配列番号8(pCART229)
MDDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFDGKDNLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0075】
配列番号9(pCART239)
MDDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFNGKDDLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLSGGGHHHHHH
【0076】
配列番号10(N240)
MDDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFNGKDDLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLS
【0077】
配列番号11(pCART242)
MSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFNGKDDLLCGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLSGGGHHHHHH
【0078】
配列番号12(pCART243-不活性IdeZバリアント)
MDDYQRNATEAYAKEVPHQITSVWTKGVTPPEQFTQGEDVIHAPYLAHQGWYDITKAFNGKDDLLGGAATAGNMLHWWFDQNKTEIEAYLSKHPEKQKIIFRNQELFDLKAAIDTKDSQTNSQLFNYFRDKAFPNLSARQLGVMPDLVLDMFINGYYLNVFKTQSTDVNRPYQDKDKRGGIFDAVFTRGNQTTLLTARHDLKNKGLNDISTIIKQELTEGRALALSHTYANVSISHVINLWGADFNAEGNLEAIYVTDSDANASIGMKKYFVGINAHGHVAISAKKIEGENIGAQVLGLFTLSSGKDIWQKLSGGGHHHHHH
【0079】
本発明のポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2の配列を含んでいてもよく、から本質的になっていてもよく、からなっていてもよい。配列番号1又は配列番号2はそれぞれ、任意で、N末端における追加のメチオニン及び/又はC末端におけるヒスチジンタグを含んでいてもよい。ヒスチジンタグは、好ましくは、6個のヒスチジン残基からなる。ヒスチジンタグは、好ましくは、3×グリシン残基又は5×グリシン残基のリンカーによってC末端に連結される。
【0080】
関連している場合、任意の好適なアルゴリズムを使用してアミノ酸の同一性を計算することができる。例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300;Altschul,S,F et al(1990)J Mol Biol 215:403-10に記載の通り、PILEUP及びBLASTのアルゴリズムを使用して、同一性を計算したり、配列を並べたりすることができる(典型的には、そのデフォルト設定で)等価な又は対応する配列を同定する等)。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列における同じ長さのワードとアラインメントしたときに幾つかの正の値の閾値スコアTに一致するか又は満たす、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値(neighbourhood word score threshold)と称される(Altschulら、上掲)。これら初期近傍ワードヒットは、それを含有するHSPを見つけるための検索を始めるためのシードとして作用する。累積アラインメントスコアが増加し得る限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に拡張する。各方向におけるワードヒットの拡張は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少したとき;1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの累積に起因して累積スコアがゼロ以下になったとき;又はいずれかの配列の末端に達したときに停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXが、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)11、BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0081】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計的解析を実施する;例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小和確率(the smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸の配列間の一致が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、第1の配列の第2の配列に対する比較における最小和確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列が別の配列と類似しているとみなされる。あるいは、UWGCGパッケージは、同一性を計算するために使用することができる(例えば、そのデフォルト設定で使用される)BESTFITプログラムを提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12,387-395)。
【0082】
ポリペプチドの生成
本明細書に開示されるポリペプチドは、任意の好適な手段によって生成することができる。例えば、ポリペプチドは、Fmoc固相化学、Boc固相化学、又は液相ペプチド合成等の当技術分野において公知の標準的な方法を使用して直接合成することができる。あるいは、ポリペプチドは、細胞、典型的には細菌細胞を、該ポリペプチドをコードしている核酸分子又はベクターで形質転換することによって生成することもできる。細菌宿主細胞における発現によるポリペプチドの生成については、以下に記載し、実施例に例示する。本発明は、本発明のポリペプチドをコードしている核酸分子及びベクターを提供する。本発明はまた、このような核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明のポリペプチド及び本明細書に開示されるその他をコードしている例示的なポリヌクレオチド分子を配列番号16~23として提供する。これら配列はそれぞれ、5’末端にN末端メチオニン(ATG)のコドンを、そして、3’末端の終止コドン(TAA)の前に3×Glyリンカー及び6×Hisヒスチジンタグのコドンを含むが、これらは任意で除外されてもよい。
【0083】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書では互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか又はこれらのアナログである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーを含む。本発明のポリヌクレオチドは、単離又は実質的に単離された形態で提供され得る。実質的に単離されたとは、任意の周囲媒体からポリペプチドが完全にではないがかなり単離され得ることを意味する。ポリヌクレオチドは、その意図する用途に干渉しない担体又は希釈剤と混合されてもよく、それでもなお実質的に単離されたとみなされ得る。選択されたポリペプチドを「コードしている」核酸配列は、例えば発現ベクターにおいて適切な調節配列の制御下におかれたときにインビボでポリペプチドに転写(DNAの場合)及び翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端における開始コドン及び3’(カルボキシ)末端における翻訳終止コドンによって決定される。本発明の目的のために、このような核酸配列は、ウイルス由来のcDNA、原核生物又は真核生物のmRNA、ウイルス又は原核生物のDNA又はRNA由来のゲノム配列、及び更には合成DNA配列を含み得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列の3’側に位置していてよい。
【0084】
ポリヌクレオチドは、一例としてSambrook et al(1989,Molecular Cloning-a laboratory manual;Cold Spring Harbor Press)に記載されている通り、当技術分野において周知の方法に従って合成することができる。本発明の核酸分子は、挿入された配列に動作可能に連結された制御配列を含む発現カセットの形態で提供され得、従って、インビボで本発明のポリペプチドを発現させることができる。次に、これら発現カセットは、典型的には、ベクター(例えば、プラスミド又は組み換えウイルスベクター)内に提供される。このような発現カセットを宿主被験体に直接投与してもよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを宿主被験体に投与してもよい。好ましくは、遺伝子ベクターを使用してポリヌクレオチドを調製及び/又は投与する。好適なベクターは、十分な量の遺伝情報を保有し、本発明のポリペプチドを発現させることができる任意のベクターであってよい。
【0085】
従って、本発明は、このようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。このような発現ベクターは、分子生物学の分野においてルーチン的に構築され、例えば、本発明のペプチドを発現させるために、プラスミドDNA、並びに適切なイニシエータ、プロモータ、エンハンサ、及び他のエレメント、例えば、必要になる場合がありかつ正確な配向で配置されたポリアデニル化シグナルの使用を伴っていてよい。他の好適なベクターは、当業者には明らかであろう。これに関する更なる例として、Sambrookらを参照する。
【0086】
また、本発明は、本発明のポリペプチドを発現するように改変された細胞を含む。このような細胞は、典型的には、原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)等の細菌細胞を含む。このような細胞は、本発明のポリペプチドを生成するための常法を使用して培養してよい。
【0087】
ポリペプチドの生成、単離、又は精製を支援するために、該ポリペプチドを誘導体化又は改変してもよい。例えば、本発明のポリペプチドが細菌宿主細胞における組み換え発現によって生成される場合、ポリペプチドの配列は、発現を改善するためにN末端に追加のメチオニン(M)残基を含んでいてよい。別の例として、分離手段に直接かつ特異的に結合することができるリガンドを付加することによって、本発明のポリペプチドを誘導体化又は改変してもよい。あるいは、結合対の一方のメンバーを付加することによってポリペプチドを誘導体化又は改変してもよく、分離手段は、結合対の他方のメンバーを付加することによって誘導体化又は改変された試薬を含む。任意の好適な結合対を使用してよい。本発明において使用するためのポリペプチドが結合対の一方のメンバーの付加によって誘導体化又は改変される好ましい実施形態では、ポリペプチドは、好ましくは、ヒスチジンでタグ付けされるか又はビオチンでタグ付けされる。典型的には、ヒスチジン又はビオチンのタグのアミノ酸コード配列は遺伝子レベルで含まれ、ポリペプチドは大腸菌において組み換え的に発現する。ヒスチジン又はビオチンのタグは、典型的には、ポリペプチドのいずれかの末端、好ましくはC末端に存在する。該タグは、ポリペプチドに直接連結されてもよく、任意の好適なリンカー配列、例えば、3つ、4つ、又は5つのグリシン残基によって間接的に連結されてもよい。ヒスチジンタグは、典型的には6つのヒスチジン残基からなるが、これよりも典型的には最大7アミノ酸、最大8アミノ酸、最大9アミノ酸、最大10アミノ酸、又は最大20アミノ酸長くてもよく、例えば5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、又は1アミノ酸短くてもよい。
【0088】
ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば安定性を高めるために、天然には存在しないアミノ酸を含むように修飾してもよい。ポリペプチドが合成手段によって生成される場合、そのようなアミノ酸を生成中に導入してもよい。また、合成又は組換えの生成のいずれかの後にポリペプチドを修飾してもよい。また、D-アミノ酸を使用してポリペプチドを生成してもよい。そのような場合、アミノ酸は、C→Nの配向で逆順に連結されるであろう。これは、このようなポリペプチドを生成するために当技術分野では従来から行われている。
【0089】
多くの側鎖修飾が当技術分野において公知であり、本明細書で指定し得る通り、任意の更なる必要な活性又は特徴をポリペプチドが保持していることを条件として、ポリペプチドの側鎖に対してなされ得る。また、ポリペプチドは化学的に修飾されてもよく、例えば翻訳後修飾されてもよいことが理解されるであろう。例えば、グリコシル化されてもよく、リン酸化されてもよく、又は修飾されたアミノ酸残基を含んでもよい。
【0090】
ポリペプチドは、PEG化されてもよい。本発明のポリペプチドは、実質的に単離された形態であってよい。該ポリヌクレオチドは、(以下で論じる通り)その意図する用途に干渉しない担体又は希釈剤と混合されてもよく、それでもなお実質的に単離されたとみなされ得る。また、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、一般に、調製物中に少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のタンパク質が含まれる。
【0091】
ポリペプチドを含む組成物及び製剤
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを含む組成物を提供する。例えば、本発明は、1つ以上の本発明のポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体又は希釈剤とを含む組成物を提供する。担体(複数可)は、組成物の他の成分と適合し、かつ投与される被験体にとって有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。典型的には、担体及び最終組成物は、無菌かつパイロジェンフリーである。
【0092】
好適な組成物の製剤化は、標準的な医薬製剤化の化学及び方法論を用いて実施することができ、それらは全て、適当な技能を有する当業者が容易に利用可能なものである。例えば、剤を1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤又はビヒクルと合わせてよい。湿潤又は乳化剤、pH緩衝物質、還元剤等の補助物質が、賦形剤又はビヒクル中に存在していてもよい。好適な還元剤としては、システイン、チオグリセロール、チオレドキシン、グルタチオン等が挙げられる。賦形剤、ビヒクル、及び補助物質は、一般に、組成物を受け取る個体において免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与することができる医薬品である。薬学的に許容し得る賦形剤としては、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、チオグリセロール、及びエタノール等の液体が挙げられるが、これらに限定されない。その中に薬学的に許容し得る塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;並びに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩を含めてもよい。薬学的に許容し得る賦形剤、ビヒクル、及び補助物質に関する綿密な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,N.J.1991)において入手可能である。
【0093】
このような組成物は、ボーラス投与又は連続投与に好適な形態で調製、包装、又は販売され得る。注射可能な組成物は、アンプル又は保存剤を含む多回投与用容器等の単位剤形で調製、包装、又は販売され得る。組成物は、懸濁剤、液剤、油性又は水性のビヒクル中乳剤、ペースト剤、及び移植可能な持続放出性又は生分解性の製剤を含むが、これらに限定されない。このような組成物は、懸濁化剤、安定剤、又は分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加成分を更に含んでいてもよい。非経口投与用の組成物の一実施態様では、好適なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で再構成するための(例えば、散剤又は顆粒剤用の)乾燥形態で活性成分が提供された後、再構成された組成物が非経口投与される。組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁剤又は液剤の形態で調製、包装、又は販売され得る。この懸濁剤又は液剤は、公知の分野に従って製剤化され得、そして、活性成分に加えて、本明細書に記載される分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤等の追加成分を含んでいてもよい。このような無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒、例えば水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容し得る希釈剤及び溶媒としては、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油、例えば合成のモノグリセリド又はジグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
有用である他の非経口的に投与可能な組成物は、微結晶性形態で、リポソーム調製品で、又は生分解性ポリマー系の成分として活性成分を含むものを含む。制御放出又は移植のための組成物は、薬学的に許容し得る高分子又は疎水性の材料、例えば、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、又は難溶性塩を含んでいてよい。組成物は、例えば、皮内、皮下、経皮、筋肉内、動脈内、腹腔内、関節内、骨内、髄腔内、又は他の適切な投与経路を含む任意の好適な経路による投与に好適であり得る。好ましい組成物は、静脈内注入による投与に好適である。
【0095】
ポリペプチドの使用方法
本発明は、様々な方法における本発明のポリペプチドの使用を提供する。例えば、本ポリペプチドは、バイオテクノロジーに有用なツールを提供することができる。ポリペプチドは、IgG、特にヒトIgGの特異的なエクスビボ切断に使用することができる。このような方法では、特異的システインプロテアーゼ活性を生じさせる条件下で、IgGを含有するサンプルと共にポリペプチドをインキュベートしてよい。特異的な切断は、国際公開第2003051914号及び同第2009033670号に記載されているもの等の任意の好適な方法を用いて確認し、切断生成物を単離することができる。従って、この方法は、特にFc及びF(ab’)の断片を作製するために使用することができる。次いで、本発明のポリペプチドでIgGを切断することによって生じるF(ab’)断片に対して(例えば、2-メルカプトエタノールアミン又はシステアミン中で)還元工程を実施することにより、Fab断片を生成することができる。
【0096】
また、方法は、サンプル中のIgGを検出又は分析したり、サンプルからIgGを除去したりするために使用することもできる。サンプル中のIgGを検出する方法は、典型的には、IgG特異的な結合及び切断を可能にする条件下でポリペプチドをサンプルと共にインキュベートすることを含む。IgGの存在は、特異的IgG切断産物の検出により確認することができ、その後、これを分析することができる。
【0097】
また、本発明に係るポリペプチドは、治療又は予防に用いることもできる。治療用途では、既に障害又は病態に罹患している被験体に、病態又はその症状のうちの1つ以上を治癒、緩和、又は部分的に停止させるのに十分な量のポリペプチド又は組成物を投与する。このような治療的処置の結果、疾患の症状の重症度が低下し得る又は無症状期間の頻度若しくは持続時間が増加し得る。これを達成するのに適切な量を「治療上有効な量」と定義する。予防用途では、未だ障害又は病態の症状を呈していない被験体に、症状の発生を防止又は遅延させるのに十分な量のポリペプチド又は組成物を投与する。このような量を「予防上有効な量」と定義する。被験体は、任意の好適な手段により、疾患又は病態を発症するリスクがあると同定されたことがある場合がある。従って、本発明はまた、ヒト又は動物の身体の治療に使用するための本発明のポリペプチドを提供する。また、被験体における疾患又は病態を予防又は治療する方法であって、予防上又は治療上有効な量の本発明のポリペプチドを被験体に投与することを含む方法が、本明細書に提供される。ポリペプチドは、免疫抑制剤と共投与してもよい。ポリペプチドは、好ましくは静脈内注入により投与されるが、例えば、皮内、皮下、経皮、筋肉内、動脈内、腹腔内、関節内、骨内、髄腔内、又は他の適切な投与経路を含む任意の好適な経路によって投与されてもよい。投与されるポリペプチドの量は、0.01mg/kg BW~2mg/kg BW、0.05~1.5mg/kg BW、0.1mg/kg BW~1mg/kg BW、好ましくは、0.15mg/kg~0.7mg/kg BW、最も好ましくは、0.2mg/kg~0.3mg/kg BW、特に0.25mg/kg BWであってよい。ポリペプチドを同一の被験体に複数回投与してもよいが、但し、ポリペプチドと結合することができる被験体の血清中のADAの量は、臨床医によって決定された閾値を超えない。ポリペプチドに結合することができる被験体の血清中のADAの量は、剤特異的CAP FEIA(ImmunoCAP)試験又はタイターアッセイ等の任意の好適な方法によって求めることができる。
【0098】
本発明のポリペプチドは、病原性IgG抗体によって媒介される疾患又は病態の治療又は予防において特に有用であり得る。従って、本発明は、病原性IgG抗体によって媒介される疾患又は病態の治療又は予防において使用するための本発明ポリペプチドを提供する。本発明はまた、病原IgG抗体によって媒介される疾患又は病態を治療又は予防する方法であって、本発明のポリペプチドを個体に投与することを含む方法を提供する。方法は、該ポリペプチドの反復投与を含んでいてもよい。本発明はまた、病原性IgG抗体によって媒介される疾患又は病態、特に病原性IgG抗体によって全体的又は部分的に媒介される自己免疫疾患を治療又は予防するための医薬の製造に使用するための本発明のポリペプチドを提供する。
【0099】
病原性抗体は、典型的には、抗体によって全体的又は部分的に媒介される自己免疫疾患又は他の病態において標的とされる抗原に特異的であり得る。表Dは、そのような疾患及び関連する抗原のリストを示す。本発明のポリペプチドは、これら疾患又は病態のいずれかを治療するために使用することができる。ポリペプチドは、病原性IgG抗体によって全体的又は部分的に媒介される自己免疫疾患の治療又は予防に特に有効である。
【0100】
【表5-1】
【0101】
【表5-2】
【0102】
【表5-3】
【0103】
別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、療法又は治療剤が被験体に与える利益を改善する方法に使用され得る。方法は、本明細書では工程(a)及び(b)と称される2つの工程を含む。
【0104】
工程(a)は、被験体に本発明のポリペプチドを投与することを含む。投与される該ポリペプチドの量は、好ましくは、被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子を切断するのに十分である。工程(b)は、その後、被験体に該療法又は治療剤を投与することを含む。工程(a)及び(b)は、好ましくは被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子が切断されるのに十分な時間間隔で隔てられている。該間隔は、典型的には、少なくとも30分間、最長21日間であってよい。
【0105】
その利益が改善される治療剤は、典型的には、がん又は別の疾患の治療のために投与される抗体である。治療剤は、IVIgであってよい。この実施形態の状況では、本発明は、代替的に、被験体におけるがん又は別の疾患を治療する方法であって、(a)該被験体に本発明のポリペプチドを投与すること;及び(b)その後、該がん又は該別の疾患の治療である治療上有効な量の抗体を該被験体に投与することを含み、
- 投与される該ポリペプチドの量が、該被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子を切断するのに十分であり;かつ
- 工程(a)及び(b)が、少なくとも30分間、最長21日間の時間間隔で隔てられている方法を提供すると説明することもできる。
【0106】
言い換えれば、本発明はまた、がん又は別の疾患を治療するためのそのような方法において使用するためのポリペプチドも提供する。本発明はまた、そのような方法によるがん又は別の疾患を治療のための医薬の製造における剤の使用も提供する。がんは、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん腫、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、小児小脳又は大脳、基底細胞がん腫、胆管がん、肝外、膀胱がん、骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳がん、脳腫瘍、小脳星状細胞腫、脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、脳腫瘍、上衣腫、脳腫瘍、髄芽腫、脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、脳腫瘍、視覚路及び視床下部神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、カルチノイド腫瘍、消化器系、原発不明がん腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍におけるユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、小児、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼球がん、眼内黒色腫、眼球がん、網膜芽腫、胆嚢がん、胃(胃)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍:頭蓋外、性腺外、又は卵巣、妊娠性絨毛性腫瘍、脳幹の神経膠腫、神経膠腫、小児大脳星状細胞腫、神経膠腫、小児視覚路及び視床下部、胃カルチノイド、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部及び視覚路神経膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞がん腫(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞がん)、喉頭がん、白血病、白血病、急性リンパ芽球性(急性リンパ性白血病とも呼ばれる)、白血病、急性骨髄(急性骨髄性白血病とも呼ばれる)、白血病、慢性リンパ性(慢性リンパ性白血病とも呼ばれる)、白血病、慢性骨髄性(慢性骨髄白血病とも呼ばれる)、白血病、ヘアリーセル、唇及び口腔がん、脂肪肉腫、肝がん(原発)、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞、リンパ腫、リンパ腫、AIDS関連、リンパ腫、バーキット、リンパ腫、皮膚T細胞、リンパ腫、ホジキン、リンパ腫、非ホジキン(ホジキンを除く全てのリンパ腫の古い分類)、リンパ腫、原発性中枢神経系、マクログロブリン血症、ワルデンストーム、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽腫、黒色腫、黒色腫、眼内(眼)、メルケル細胞がん腫、中皮腫、成人悪性、中皮腫、潜在性原発性転移性扁平上皮頚部がん、口腔がん、多発性内分泌新生物症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性、骨髄白血病、成人急性、骨髄白血病、小児急性、骨髄腫、多発性(骨髄のがん)、骨髄増殖性障害、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣がん、卵巣上皮がん(表面上皮-間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、膵がん、膵島細胞、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽球腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん腫(腎臓がん)、腎盂及び尿管、移行細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、ユーイングファミリー腫瘍、カポジ肉腫、肉腫、軟部組織、肉腫、子宮、セザリー症候群、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、皮膚がん腫、メルケル細胞、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん腫、潜在性原発性扁平上皮頚部がん、転移性、胃がん、テント上原始神経外胚葉腫瘍、T細胞リンパ腫、皮膚-菌状息肉症及びセザリー症候群を参照、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺がん腫、甲状腺がん、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行細胞がん、絨毛腫瘍、尿管及び腎盂、移行細胞がん尿道がん、子宮体がん、子宮内膜、子宮肉腫、膣がん、視覚路及び視床下部神経膠腫、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症及びウィルムス腫瘍(腎がん)であってよい。
【0107】
がんは、好ましくは、前立腺がん、乳がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、卵巣がん、肺がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、腎臓(腎細胞)がん、食道がん、甲状腺がん、皮膚がん、リンパ腫、メラノーマ、又は白血病である。
【0108】
工程(b)で投与される抗体は、好ましくは、上記がんの種類のうちの1つ以上に関連する腫瘍抗原に特異的である。方法で使用するための抗体の関心対象の標的としては、CD2、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD32、CD33、CD40、CD52、CD54、CD56、CD64、CD70、CD74、CD79、CD80、CD86、CD105、CD138、CD174、CD205、CD227、CD326、CD340、MUC16、GPNMB、PSMA、Cripto、ED-B、TMEFF2、EphA2、EphB2、FAP、αvインテグリン、メソテリン、EGFR、TAG-72、GD2、CA1X、5T4、α4β7インテグリン、Her2が挙げられる。他の標的は、インターロイキンIL-1~IL-13、腫瘍壊死因子α及びβ、インターフェロンα、β、及びγ、腫瘍増殖因子β(TGF-β)、コロニー刺激因子(CSF)、並びに顆粒球単球コロニー刺激因子(GMCSF)等のサイトカインである。Human Cytokines:Handbook for Basic & Clinical Research(Aggrawal et al.eds.,Blackwell Scientific,Boston,MA 1991)を参照。他の標的は、ホルモン、酵素、並びに細胞内及び細胞間メッセンジャー、例えば、アデニリルシクラーゼ、グアニルシクラーゼ、及びホスホリパーゼCである。関心対象の他の標的は、白血球抗原、例えば、CD20及びCD33である。また、薬物が関心対象の標的であってもよい。標的分子は、ヒト、哺乳類、又は細菌であってよい。他の標的は、抗原、例えば、ウイルス及び細菌の両方の微生物病原体のタンパク質、糖タンパク質、及び炭化水素、並びに腫瘍である。更に他の標的は、米国特許第4,366,241号に記載されている。
【0109】
抗体は、細胞傷害性部分又は検出可能な標識に直接又は間接的に結合し得る。抗体は、当技術分野において公知の様々な方法のうちの1つ以上を用い、1つ以上の投与経路を介して投与してよい。投与の経路及び/又はモードは、所望の結果に応じて変化する。抗体の好ましい投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は他の非経口的な投与経路、例えば、注射又は注入が挙げられる。「非経口投与」という表現は、本明細書で使用するとき、経腸投与及び局所投与以外の投与モードを意味し、通常注射による。あるいは、抗体は、非経口的な経路、例えば、局所、表皮、又は粘膜の投与経路を介して投与してもよい。また、腫瘍周囲、腫瘍近傍、腫瘍内、病変内、病変周囲、腔内注入、膀胱内投与、及び吸入を含む、局所投与も好ましい。
【0110】
本発明の抗体の好適な投与量は、熟練の医師によって決定され得る。抗体の実際の投与レベルは、患者にとって毒性であることなく、特定の患者、組成物、及び投与モードについて所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように変化させてよい。選択される投与量レベルは、使用される具体的な抗体の活性、投与経路、投与時間、抗体の排泄速度、治療の持続時間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康、及び前病歴、並びに医学分野で周知である同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存する。
【0111】
抗体の好適な用量は、例えば、約0.1μg/kg(治療される患者の体重)~約100mg/kgの範囲であり得る。例えば、好適な投与量は、1日あたり約1μg/kg(体重)~約10mg/kg又は1日あたり約10μg/kg(体重)~約5mg/kg体重であってよい。
【0112】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整してよい。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、又は方法の工程(b)が経時的に投与される幾つかの分割用量を含んでいてもよく、又は工程(a)と(b)の間の必要な間隔が超えない限り、治療状況の緊急性により適応があれば用量を比例的に減少又は増加させてもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形に製剤化することが特に有利である。単位剤形とは、本明細書で使用するとき、治療される被験体のための単位投薬量として適している物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と共同して所望の治療効果を生じさせるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。
【0113】
工程(b)の抗体は、化学療法又は放射線療法と併用して投与してもよい。方法は、追加の抗がん抗体又は他の治療剤の投与を更に含んでいてもよく、これは、工程(b)の抗体と共に単一の組成物で又は併用療法の一部として別々の組成物で投与してよい。例えば、工程(b)の抗体を、他の剤の前に、後に、又は同時に投与してよい。
【0114】
抗体は、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴール、ALD518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテト酸、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アチヌマブ、アツリズマブ(=トシリズマブ)、アトロリムマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、CC49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、Ch.14.18、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、CR6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、デュシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴール、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エキスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、GS6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラムパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブCD-3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、クイリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、TGN1412、チシリムマブ(=トレメリムマブ)、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ(=アツリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、又はゾリモマブアリトクスであってよい。
【0115】
好ましい抗体としては、ナタリズマブ、ベドリズマブ、ベリムマブ、アタシセプト、アレファセプト、オテリキシズマブ、テプリズマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、エプラツズマブ、アレムツズマブ、アバタセプト、エクリズマブ、オマリズマブ、カナキヌマブ、メプリズマブ、レスリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ、チウキセタン、トスチツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、デノスマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブ、及びベドチンが挙げられる。
【0116】
その利益が改善される療法は、典型的には、臓器移植である。臓器は、腎臓、肝臓、心臓、膵臓、肺、又は小腸から選択してよい。治療される被験体は、好ましくは、感作されていてもよく、高度に感作されていてもよい。「感作」とは、被験体でヒト主要組織適合性(MHC)抗原(ヒト白血球抗原(HLA)とも称される)に対する抗体を発生していることを意味する。抗HLA抗体は、同種感作されたB細胞を起源とし、通常、輸血、過去の移植、又は妊娠によって既に感作されている患者に存在する(Jordan et al.,2003)。
【0117】
有望な移植レシピエントが感作されているかどうかは、任意の好適な方法によって判定することができる。例えば、パネル反応性抗体(PRA)試験を使用して、レシピエントが感作されているかどうかを判定することができる。PRAスコアが>30%であれば、典型的には、患者が「免疫学的リスクが高い」又は「感作されている」ことを意味すると解釈される。あるいは、有望な移植ドナーの血液サンプルと意図されるレシピエントの血液サンプルとを混合する交差適合試験を実施してもよい。交差適合が陽性であるとは、レシピエントがドナーのサンプルと反応する抗体を有していることを意味し、これは、レシピエントが感作されており、移植を行うべきでないことを示す。交差適合試験は、典型的には、移植直前の最終チェックとして実施される。
【0118】
有望なドナーのMHC抗原に対する高力価抗体(すなわち、ドナー特異的抗体(DSA))の存在は、急性抗体媒介性拒絶反応のリスクがあるため、移植の直接の禁忌となる。つまり、ドナーのMHC抗原に対する感作は、好適なドナーの同定の妨げとなる。交差適合試験が陽性であることは、移植の明白な障害となる。腎移植待機患者の約3分の1が感作されており、高度に感作されているのは15%にものぼるため、これは移植待機患者の蓄積につながる。米国では、2001~2002年における腎移植の待機者リストの中央時間は、パネル反応性抗体(PRA)スコアが0~9%の人で1329日、PRAが10~79%の人で1920日、PRAが80%以上の人では3649日であった(OPTN-データベース、2011年)。
【0119】
DSAの障壁を克服するための1つの許容されている戦略は、移植を考慮することができるレベルまでDSAのレベルを下げるために、血漿交換又は免疫吸着を、多くの場合、例えば静注ガンマグロブリン(IVIg)又はリツキシマブと組み合わせて適用することである(Jordan et al.,2004;Montgomery et al.,2000;Vo et al.,2008a;Vo et al.,2008b)。しかし、血漿交換、免疫吸着、及びIVIg処理は、長期間にわたって繰り返し処理することを含むので、非効率であり、綿密な計画が必要になるという問題点がある。死亡したドナーからの臓器が利用可能になった場合、数時間以内に移植しなければならないが、その理由は、長時間にわたる冷阻血時間が腎移植における臓器移植後臓器機能障害及び同種移植片機能損失の最も重大なリスク要因のうちの1つであるためである(Ojo et al.,(1997)Transplantation 63:968-74)。
【0120】
対照的に、本発明の方法では、有望な移植レシピエントにおけるDSAを迅速、一時的、かつ安全に除去することができる。本発明のポリペプチドを移植直前に投与することは、高度に感作された患者を有効に脱感作する能力を有し、それにより、移植が可能になり、急性抗体媒介性拒絶反応が回避される。移植前にポリペプチドを単回投与することで、ドナー特異的IgG抗体を有する数千人の患者への移植が可能になる。
【0121】
この実施形態の状況では、方法は、代替的に、被験体における臓器不全を治療する方法であって、(a)被験体に本発明のポリペプチドを投与すること;及び(b)その後、移植用臓器を該被験体に移植することを含み、
- 投与される該ポリペプチドの量が、該被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子を切断するのに十分であり;かつ
- 工程(a)及び(b)が、少なくとも30分間、最長21日間の時間間隔で隔てられている方法であると説明することもできる。
【0122】
すなわち、この実施形態は、被験体における移植臓器の拒絶反応、特に、急性抗体媒介性移植拒絶反応を予防する方法であって、該臓器の移植の少なくとも30分、最長21日前に、本発明のポリペプチドを被験体に投与することを含み、投与される該ポリペプチドの量が、該被験体の血漿中に存在する実質的に全てのIgG分子を切断するのに十分である方法として説明することができる。本発明はまた、臓器不全を治療するか又は移植拒絶反応、特に急性抗体媒介性移植拒絶反応を予防するこのような方法における本発明のポリペプチドの使用も提供する。本発明はまた、そのような方法による臓器不全の治療又は移植拒絶反応の予防のための医薬の製造における、本発明のポリペプチドの使用も提供する。この実施形態では、本発明の方法は、移植時又は移植直前に実施される工程を更に含んでいてもよく、該工程は、患者におけるT細胞及び/又はB細胞の誘導抑制を含む。該誘導抑制は、典型的には、有効量の、T細胞を殺傷又は阻害する剤の投与、及び/又は有効量の、B細胞を殺傷又は阻害する剤の投与を含み得る。T細胞を殺傷又は阻害する剤としては、ムロモナブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)抗体、及びリンパ球免疫グロブリン、抗胸腺細胞グロブリン調製物(ATGAM)が挙げられる。リツキシマブは、B細胞を殺傷又は阻害することが知られている。
【0123】
本発明のポリペプチド等のIgGシステインプロテアーゼ活性を有するポリペプチドは、例えば造血幹/前駆細胞(HSPC)の被験体への移植の状況において、被験体における造血キメラ化を誘導する方法においても有用であり得る。このように本発明のポリペプチドは、被験体における造血キメラ化を誘導する方法であって、本発明のコンディショニングレジメンを実施し、その後、該被験体における造血キメラ化を誘導するのに十分な量及び好適な条件下でHSPCを該被験体に投与することを含む方法に使用することができる。あるいは、方法は、HSPCを安定的に移植する方法として説明することもできる。HSPCは、自己(被験体/患者自身の細胞が使用される)又は同系(細胞が遺伝的に同一の双子由来である)であってもよく、同種(細胞が別個の同一ではないドナーに由来する)であってもよい。レシピエントにおけるHSPCの生着が成功する可能性を低下させる免疫合併症は、同種細胞において最も顕著であり、従って、造血キメラ化を誘導する方法は、このような細胞において利益が最も大きい。しかし、自己細胞であっても、レシピエントが過去に曝露されたことのない生成物が発現している場合には、免疫合併症が起こる可能性がある。自己細胞が遺伝子療法を発現するように遺伝的に改変されている場合、その細胞は免疫応答を惹起するのに十分な程度変化している可能性がある。例えば、発現した遺伝子療法産物に対する免疫応答が存在する可能性がある。レシピエントのHLAと適合しない異なるHLA型を発現するようにHSPCが遺伝的に改変されている場合も同様である。
【0124】
また、本発明のポリペプチド等のIgGシステインプロテアーゼ活性を有するポリペプチドは、養子細胞移入免疫療法と併用することもできる。CAR-T細胞等の移植された細胞の生存期間が限定されること及び活性の持続性が限定されることにより、養子細胞移入免疫療法の有効性が低下する可能性がある。IgGシステインプロテアーゼを有するタンパク質は、移入された細胞を保護することができる。具体的には、既存の抗体及び移入された細胞を投与した後に作製された抗体は、移入された細胞の潜在力を短くする可能性があり、移入された細胞の治療効果は、レシピエントのコンディショニングを通して抗体のエフェクター機能を除去することから利益を得られる。従って、IgGシステインプロテアーゼ活性を有するタンパク質を投与することにより、移入された細胞の生存率及び活性を高めることができ、その結果、養子細胞移入免疫療法の患者への利益が改善され、例えばがん治療等の状況において療法及び予後が改善される。この状況では、がんを治療する方法は、1用量以上の養子細胞移入免疫療法を投与する前及び/又は後に、IgGシステインプロテアーゼ活性を有する本発明のポリペプチドを投与することを含んでいてもよい。また、本発明のポリペプチド等のIgGシステインプロテアーゼ活性を有するポリペプチドは、自己免疫病態、感染症、及び有害な抗体によって媒介される病態を治療する方法の状況において、養子細胞移入免疫療法と併用することもできる。このような方法によって、既存の抗薬物抗体(ADA)及び養子細胞移入免疫療法によって惹起された抗体の両方を不活性化することが可能になる。
【実施例
【0125】
特に断りのない限り、使用した方法は、標準的な生化学的及び分子生物学的技術である。好適な方法論の教科書の例としては、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1989)及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1995),John Wiley and Sons,Inc.が挙げられる。
【0126】
実施例1-pCART239の発現及び精製
成熟IdeZ分子及び配列を分析し、変異に好適な領域を同定した。場合によっては、変異によってもたらされる可能性の高い結果を評価するために、インシリコ評価を使用した。pCART239の配列を決定し、導入される変異の数に応じて出発配列の部位特異的変異又は合成によって、各ポリペプチドをコードしているcDNAをGeneCust(Luxembourg)において作製した。cDNAの配列を決定し、短いグリシンリンカー(3×Gly)によってC末端に連結されたC末端の6×HisタグとインフレームになるようにpET9a発現ベクター(Novagen)に移入した。細菌発現のために、N末端にメチオニンを付加した。従って、pCART239ポリペプチドは、追加の(1)N末端メチオニン及び(2)短いグリシンリンカー(3×Gly)によってC末端に連結されたC末端6×Hisタグを有する配列番号1と等価である。
【0127】
pCART239発現プラスミドを大腸菌(E.coli)T7E2(SOURCE)に形質転換し、50μg/mLカナマイシンを含有するLBアガロースプレートに播種した。シングルコロニーをピッキングし、37℃、250rpmで一晩培養(10mL LB培地)を開始した。翌日、125mLのLB培地+50μg/mLカナマイシン+1:100,000希釈した消泡剤の入ったフラスコ2本に、一晩培養物5mLを接種した。培養フラスコは接種時に既に37℃であり、ODが0.6~0.7になるまで培養物を成長させた(37℃、300rpm)。この時点で、IPTG(最終濃度1mM)を添加して発現を誘導し、培養物を少なくとも2時間更にインキュベートした。インキュベートした後、遠心分離(10分、4000×g、4℃)によって細菌懸濁液を収集し、上清を廃棄した。ペレットをPBS(30mL)で1回洗浄し、再度遠心分離して上清を廃棄し、最終ペレットを-20℃で凍結させ、一晩冷凍庫で保存した。細菌の溶解には、製造業者の指示書に従ってPanda Plus 2000ホモジナイザー(GEA)を使用したか、又は凍結融解プロトコルを使用した(10mL PBS中凍結/融解を3サイクル、滅菌ガラスビーズを使用)。凍結融解サイクルの後、チューブを遠心分離(20分、25000×g、4℃)して細菌溶解物(上清)を単離し、次いで、氷上で保存した。最終的な細菌溶解物をプールし、0.2μmのナイロンフィルター(HPF Millex(登録商標)-Nylon)で滅菌濾過し、Ni-NTAプレパックスピンカラム(ThermoFisher)を用いてタンパク質を精製した。精製後、DTT(最終濃度5mM)及びEDTA(最終濃度5mM)を溶出液に添加した後、バッファ交換した(Amicon Ultra-4 10K)。NanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific)を用いて、タンパク質濃度を測定した。ステンレスの12% Mini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)プレキャストゲル(Biorad)を用いたドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で、発現精製プロセス中の精製タンパク質の純度及び安定性を評価した(図1)。図1Aは、IPTG誘導とその後のpCART239の過剰発現が成功したことを示す。図1Bは、精製プロセスも成功し、高い純度及び安定性のpCART239サンプルが得られたことを示す。
【0128】
実施例2-ヒュミラ(IgG1)及びXGEVA(IgG2)に対するpCART207、pCART229、N240、pCART242の有効性
この実施例では、ヒトIgG1はHumira(Abbvie)によって、IgG2はXGEVA(Amgen)によって表される。これらは、モノクローナルヒトIgGの切断におけるIdeZバリアント及びIdeSポジティブコントロールの活性を比較するために使用される。IdeZバリアント酵素(及びIdeS)を、3.3μg/mLの出発濃度から1:3希釈段階でPBS中0.05%BSAにおいてタイトレーションし、切断産物をSDS-PAGE(4→20%勾配ゲル)によって分析した。試験したpCART242ポリペプチドは、追加の(1)N末端メチオニン及び(2)短いグリシンリンカー(3×Gly)によってC末端に連結されたC末端6×His-tagを有する配列番号2と等価である。
【0129】
方法:
1.酵素及び対照(バッファ)の希釈液25μLをマルチタイタープレートに移した。
2.各ウェルにヒュミラ又はXGEVAの2mg/mL溶液を25μL添加することによって反応を開始させた。この結果、反応中の各抗体は1mg/mLとなった。連続希釈を考慮すると、試験したIdeZ(又はIdeS)の最高濃度は3.3μg/mLであり、最低0.057ng/mLまで低下した。
3.プレートをゆっくり回転させながら37℃で2時間インキュベートする。
4.インキュベーション後、マイクロタイタープレートにおいて各サンプル10μLを2×SDSローディングバッファー30μLと混合した。一晩保存(4~8℃)した後、これを1.5mLのチューブに移し、92℃で5分間インキュベートし、サンプル10μLを15ウェル4→20% Mini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)プレキャストゲルにロードし、サンプルを非還元条件下でSDS-PAGEにおいて分析した。
【0130】
IdeZバリアントによるIgG1(ヒュミラ)及びIgG2(XGEVA)の消化を示すゲルを、それぞれ図2図3に示す。異なるパネルは、異なる実験セットを表す(ただし、プロトコルはいずれの場合も同一であった)。
【0131】
IgG1/IgG2の第1及び第2の重鎖を切断するためのおおよその濃度を、ゲルに示された切断パターンから以下の通り推定した。
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
【表8】
【0135】
【表9】
【0136】
概要:
IgG1(ヒュミラ)切断に関するIdeS、pCART207、pCART229の有効性は非常に類似している。pCART239及びN240では、IdeS及び非常に類似するバリアントであるpCART229の両方と比較して高い有効性がみられる。N240及びpCART242は、第2のIgG1重鎖の切断においてIdeSよりも強力であると考えられる。N240及びpCART242は、主にIgG2(Xgeva)の第2の切断に対してpCART229及びpCART207よりも高い効力を有するだけでなく、IgG2の第1の重鎖の切断においてもより効力が高い。
【0137】
実施例3-ヒトIgGサブクラスに対するN240の有効性
この報告では、様々なIgGサブクラスの消化によるインビトロにおけるN240活性の特性評価について説明する。IgGサブクラスの場合、2種の異なる自社製N240バッチを比較し、使用した参照物質はIdeSである。
【0138】
方法:
1.N240又はIdeSの酵素及び対照(バッファ)の希釈液25μLをマルチタイタープレートに移した。連続する各ウェル間で、酵素をPBS中0.05% BSAで1:3連続希釈した。
2.各ウェルにヒトIgGの2mg/mL溶液を25μL添加することによって反応を開始させた。この結果、反応中の各抗体は1mg/mLとなった。使用したIgG1はヒュミラ(Abbvie)であり、使用したIgG2はXGEVA(Amgen)であり、使用したIgG3はSigma製(I5654 ロット番号SLBW0899)であり、使用したIgG4はAbcam製(ab90286 ロット番号GR3180469)であった。
3.プレートをゆっくり回転させながら37℃で2時間インキュベートする。
4.インキュベーション後、マイクロタイタープレートにおいて各サンプル10μLを2×SDSローディングバッファー30μLと混合した。一晩保存後(4~8℃)、これを1.5mLチューブに移し、92℃で5分間インキュベートし、サンプル10μLを15ウェル4→20% Mini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)プレキャストゲルにロードした。
【0139】
N240及びIdeSによるIgGサブクラスの消化を示すゲルを図4に示す。
【0140】
ゲルの目視から得られた推定EC50値を以下の表3に列挙する。
【0141】
【表10】
【0142】
概要:
1.4つのヒトのサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4を全てN240によって切断する。
2.N240、特に第2の鎖の切断について、(IdeSに対して)より高い活性が明らかにみられる。IgG1についてのEC50 F(ab’)は、N240と比較してIdeSではおよそ5倍高かった。
3.IgG2、IgG3、及びIgG4の場合、N240は、IdeSと同等であるか又はわずかに低い効力を有していた。
【0143】
実施例4-N240とIdeSとのMSD効力アッセイの比較
方法:
MSD力価アッセイの背後にある原理のより詳細な概要については、実施例5で後述する。
【0144】
簡潔に述べると、ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)断片特異的を、96ウェルMSDプレートにコーティングした。ブロッキング後、プレートを洗浄し、一連の濃度で希釈したN240参照物質及びIdeS試験サンプルをプレートに添加した。一定濃度のヒトIgGを添加し、プレートを37℃でインキュベートした。インキュベート及び洗浄した後、ビオチン化マウス抗ヒトIgG(Fc特異的)及びSULFO-TAG標識ストレプトアビジンを含有する検出ミックスをプレートに添加した。最後のインキュベート及び洗浄の後、Read Bufferを添加した。MSD機器を用いて、SULFO-TAGからの発光強度を測定して、サンプル中の非切断型及び単一切断型のIgGの定量的測定値を提供した。N240参照物質及びIdeS試験サンプルをデュープリケートのウェル及びトリプリケートのプレートで分析した。結果を5パラメータ曲線に当てはめることによって、各参照サンプル及び試験サンプルのEC50を得た。EC50参照/EC50試験を除して100%を乗じることにより、各試験サンプルの相対効力(%)を求めた。報告する値は、3枚の異なるプレートからの平均である。
【0145】
IdeS及びN240についてのIgG切断を表す、得られた希釈曲線を図5に示す。
【0146】
N240の平均相対効力は、IdeS比較しておよそ300%であると算出された。
【0147】
実施例5-ヒト血清中のIgGに対するpCART239の有効性
IdeZバリアントpCART239を、血清中での活性を測定することによって更に特性評価した。
【0148】
IgG基質として、100人の個体からのヒト血清プールを使用した。
【0149】
SDS-PAGE
pCART239に使用した希釈系列は、以下の通りであった:30、15、7.5、3.75、1.9、0.9、0.2、0.2、0.1、0.06、及び0.03μg/mL、実施例2及び3に概説した活性アッセイ及びSDS-PAGE分析プロトコルに従った。
【0150】
pCART239による血清IgGの消化を示すゲルを、図6に示す。この図は、pCART239が血清プールにおいてIgG切断活性を有し、およそ0.9μg/mLの酵素でIgGからscIgGに切断されるとゲルから推定されることを示す(図6、上パネル)。scIgGは、およそ1.9μg/mLの酵素でF(ab’)及びFcの断片に更に消化される。
【0151】
血清中で得られた活性値は、バッファ中で得られたものよりも低く、これは血清中には阻害性抗薬物抗体(ADA)が存在するためであり、以前の研究から公知の現象である。血清中に阻害性ADA以外の特異的阻害因子が存在しないことを確認するために、pCART239の不活性型バリアント(pCART243)を0.1mg/mLで添加した実験も行った。この添加は高モル過剰であり、血清中のpCART239の活性が回復する程度に不活化ADAと結合するはずである。その通りであることが示され(図6、下パネル)、pCART243の存在により、はるかに低いpCART239濃度でIgGの切断が生じた。インタクトなIgGは0.03μg/mLですでに消化され始め、0.5μg/mLで全てのIgGがscIgGに変換された。
【0152】
電気化学発光メソスケールディスカバリー(MSD)プラットフォーム
血清中のN240活性について更に調べるために、血清マトリックスでMSD効力アッセイを行った。
【0153】
このアッセイの原理は、Fab領域に対して特異性を有するヒトIgG抗体に対するF(ab)-断片でマルチタイタープレートのウェルをコーティングすることであった。次いで、タイトレーションされた濃度のIgGシステインプロテアーゼポリペプチド(試験又は対照)を、ウェル中のヒト血清と共にインキュベートした。ウェルに結合したインタクトな又は単一切断型のヒトIgGの量を、抗体のFc部分に対して特異性を有するヒトIgGに対する検出抗体を用いて測定した。ウェル中の所与のIgGシステインプロテアーゼポリペプチドの濃度が高いほど、ウェルに結合するインタクトなヒトIgG抗体が少なくなるので、シグナルがより少なくなる。同様に、より強力なIgGシステインプロテアーゼポリペプチドは、同じ濃度で存在する場合、それほど強力ではないIgGシステインプロテアーゼポリペプチドよりも与えるシグナルが少なくなるであろう。IdeS対照(pCART124)及びN240についてタイトレーション用量応答曲線を作成した。試験したシステインプロテアーゼのEC50値を算出することによって、効力を推定した。EC50値が低いほど、より強力なIgGシステインプロテアーゼであることを表す。このアッセイでは、IgGのFc部分が未だ存在し、Fc特異的検出抗体によって検出することができるため、第1のIgG重鎖のIgGからscIgGへの切断はみられない。
【0154】
実験室プロトコルの簡単な概要:マルチタイタープレートのウェルにヤギ抗ヒトFab特異的F(ab)-断片(0.5μg/mL)(Jackson #109-006-097)を一晩コーティングし(+2~8℃)、次いで、PBS+0.05% Tween 20(PBS-T)で洗浄し、PBS-T中0.45%フィッシュゼラチン(ブロッキングバッファ)において室温で45~120分ブロッキングした。対照IdeS(pCART124)及び被験IgGシステインプロテアーゼポリペプチドは、出発濃度80μg/mLで、ブロッキングバッファによる1:4希釈段階のタイトレーション系列として調製した。等体積(25μL)のヒト血清及びタイトレーションした量のIgGシステインプロテアーゼポリペプチドをウェルに添加し、37℃の制御された温度環境で振盪しながら2時間インキュベートし、次いで、PBS-Tで洗浄した。ビオチン化マウス抗ヒトIgG Fc特異的(m-a-hIgG Bio II、ロット:C0013-ZC43C、Southern Biotech)(600ng/mL)抗体をStrep-sulfo(200ng/mL)と混合し、マルチタイタープレートに添加した。プレートをアルミテープで密封し、+25℃で1時間振盪しながらインキュベートした。次いで、プレートをPBS-Tで洗浄し、2倍希釈したRead buffer T(MSD read buffer T、カタログ番号R92TC-2)150μLを各ウェルに添加した。プレートを直ちにプレートリーダー、MSD(Meso Scale Discovery)QuickPlex SQ 120 Model 1300で読み取った。
【0155】
IdeS及びN240についてのIgG切断を表す、得られた標準曲線を図7に示す。以下の表は、用量応答曲線から求めたEC50値に基づく相対効力の推定値を示す。
【0156】
【表11】
【0157】
概要
N240は、血清中で活性がある。緩衝溶液中でのN240の効力はイムリフィダーゼの効力よりもおよそ4倍高いことが前の実施例で示されているが、この差は、2つの酵素を血清中で比較したときにはより小さい。MSD効力分析では、N240は、更に、IdeSと比較したとき、血清中でヒトIgGに対して活性の実質的な増加を示した(約142%)。
【0158】
実施例6-健常個体におけるN240及びIdeSのADAレベル
以下を除いて、実施例5に記載した一般的なMSDプロトコルに従った。
【0159】
マルチアレイMSDプレートに20μg/mLのN240又はIdeSをコーティングした。健常個体(n=40)からの血清(1:100希釈)及び1つのヒト血清プール(n=100)と共にインキュベートする前に、プレートをフィッシュゼラチンでブロッキングした。検出試薬は、抗ヒトF(ab’)特異的F(ab’)-bio抗体(JAX、109-066-097)をストレプトアビジン-スルホ(MSD #R32AD-1)と共に使用した。Read Buffer(MSD #R92TC-2)を添加した後、MSD QuickPlex SQ 120を使用してプレートを読み取った。
【0160】
結果を図8に提示する。この結果は、N240に対するADAのレベルがIdeSに対するADAよりも低いことを示す。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023526849000001.app
【国際調査報告】