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特表2023-526890COVID-19を包含するコロナウイルスの負の効果を処置および低減をするための抗CD6抗体組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】COVID-19を包含するコロナウイルスの負の効果を処置および低減をするための抗CD6抗体組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230619BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230619BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/22
A61P31/20
A61P31/04
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560455
(86)(22)【出願日】2021-04-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2021052793
(87)【国際公開番号】W WO2021199006
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202041014994
(32)【優先日】2020-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】CU-2020-0027
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292941
【氏名又は名称】バイオコン・リミテッド
【住所又は居所原語表記】20th KM,Hosur Road,Electronic City,Karnataka Bangalore 560 100,India
(71)【出願人】
【識別番号】522389601
【氏名又は名称】セントロ ド インムノロジア モレキュラー
【氏名又は名称原語表記】CENTRO DE INMUNOLOGIA MOLECULAR
【住所又は居所原語表記】Calle 216,Esquina 15,Atabey,Playa La Habana,Cuba
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ナイール,プラディップ
(72)【発明者】
【氏名】カシミロ,ホセ エンリケ モンテロ
(72)【発明者】
【氏名】マズムダル ショー,キラン
(72)【発明者】
【氏名】ブガーニ,ウシャ
(72)【発明者】
【氏名】アサリー,サンディープ ニルカンス
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン,メラルコード スバラマン
(72)【発明者】
【氏名】クロンベット ラモス,タニア
(72)【発明者】
【氏名】レオン モンソーン,カレット
(72)【発明者】
【氏名】ラモス スザルテ,マイラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB33
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルスまたは細菌性病原体、具体的にはCOVID-19およびその変異体の効果を処置するための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する抗CD6抗体の使用を提供する。本発明の抗CD6抗体は、高発現レベルのサイトカインなどの過剰な免疫応答を低減することによって、治療活性を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群へ繋がる感染性疾患の処置のための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する非枯渇性抗CD6抗体の使用であって、ここで前記非枯渇性抗CD6抗体が、配列番号1および2のアミノ酸を含むか、またはCD6のドメイン1へ特異的に結合する非枯渇性抗CD6抗体が、配列番号1および2と98%の同一性を有する、前記使用。
【請求項2】
感染性疾患が、以下を含む群: - サイトメガロウイルス、コロナウイルス、エプスタイン・バーウイルス、A群連鎖球菌、鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、天然痘ウイルス、デングウイルス、肺炎球菌から選択される病原体によって引き起こされる、請求項1に記載の非枯渇性抗CD6モノクローナル抗体の使用。
【請求項3】
サイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群へ繋がるコロナウイルスによって引き起こされる感染性疾患の処置のための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する請求項1に記載の非枯渇性抗CD6抗体の使用。
【請求項4】
コロナウイルスが、SARS、MERS-CoV、またはCOVID-19のコロナウイルス、およびそれらの変異体である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
A群連鎖球菌および肺炎球菌から選択される細菌性要因によって引き起こされる感染性疾患の処置のための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する請求項1に記載の非枯渇性抗CD6抗体の使用。
【請求項6】
CD6のドメイン1へ特異的に結合し、かつ配列番号1および2と98%の同一性を有する非枯渇性抗CD6抗体が、配列番号1および配列番号3を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
COVID-19およびその変異体の処置のための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する抗CD6抗体の使用であって、ここで前記抗CD6抗体が、サイトカインの発現を低減し、かつ配列番号4および5のアミノ酸を含むか、またはCD6のドメイン1へ特異的に結合する抗CD6抗体が、配列番号4および5と98%の同一性を有する、前記使用。
【請求項8】
CD6のドメイン1へ特異的に結合し、かつ配列番号4および5と98%の同一性を有する抗CD6抗体が、配列番号4および配列番号6を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
抗CD6抗体が、0.5mg/kg体重と10mg/kg体重との間の有効量にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
配列番号4および5で表されるとおりのアミノ酸配列か、またはこれらと少なくとも98%の同一性を有し、配列番号4および6を含むアミノ酸配列を含む、治療的に有効な量の抗CD6抗体での処置を含む、コロナウイルスに感染した対象を処置する方法であって、ここで抗CD6抗体が、サイトカインストームの最中に形成される高発現レベルのサイトカインを低減する、前記方法。
【請求項11】
コロナウイルスが、SARS、MERS-CoV、またはCOVID-19のコロナウイルスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
配列番号4および5で表されるとおりのアミノ酸配列か、またはこれらと少なくとも98%の同一性を有し、配列番号4および6を含むアミノ酸配列を含む、治療的に有効な量の抗CD6抗体での処置を含む、細菌に感染した対象を処置する方法であって、ここで抗CD6抗体が、サイトカインストームの最中に形成される高発現レベルのサイトカインを低減する、前記方法。
【請求項13】
感染性疾患が、以下を含む群:A群連鎖球菌および肺炎球菌から選択される病原体によって引き起こされる、請求項12に記載の細菌感染症を処置する方法。
【請求項14】
治療的に有効な量の抗CD6抗体が、0.5mg/kg体重と10mg/kg体重との間にある、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗CD6抗体が、対象へ少なくとも2度投与され、連続する2投与間の経過時間が、24時間と96時間との間にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
配列番号4と配列番号5または配列番号6とを含む治療的に有効な量の抗CD6抗体を含み、逆転写酵素(RT)インヒビター、プロテアーゼインヒビター、融合インヒビター、Cytosorp、IL6受容体アンタゴニスト、またはJAKインヒビターから選択される1以上のある活性剤をさらに含む、ヒト患者におけるCOVID-19感染症の細胞壊死性の壊滅的な効果を緩和するための組成物。
【請求項17】
治療的に有効な量の抗CD6抗体が、0.5mg/kg体重と10mg/kg体重との間にある、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
抗CD6抗体が、対象へ少なくとも2度投与され、連続する2投与間の経過時間が、24時間と96時間との間にある、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
COVID-19およびその変異体に対して対象を処置するためのキットであって、キットが、配列番号4および5のアミノ酸配列からなるか、またはこれらと98%の同一性を有し、配列番号4および6からなるアミノ酸配列からなる、治療的に有効な量の抗CD6抗体を含む、前記キット。
【請求項20】
哺乳動物におけるコロナウイルスもしくはA群連鎖球菌および肺炎球菌などの細菌性病原体の感染によって呈されるサイトカインストームの処置または予防のための医薬の製造における、抗CD6抗体の使用であって、抗CD6抗体が、配列番号4と配列番号5または6とのアミノ酸配列を含む、前記使用。
【請求項21】
コロナウイルスが、SARS、MERS-CoV、またはCOVID-19のコロナウイルスである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
配列番号4および6で表されるとおりのアミノ酸配列を含む治療的に有効な量の抗CD6抗体での処置を含む、コロナウイルスに感染した対象を処置する方法であって、ここでC反応性タンパク質およびフェリチンの濃度が、最初の処置後48時間以内に低減される、前記方法。
【請求項23】
抗CD6抗体が、ヒト化されたIgG1モノクローナル抗体である、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項24】
抗CD6抗体が、イトリズマブである、請求項23に記載の使用または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年4月4日に出願されたインド国仮出願第202041014994号;および2020年4月17日に出願されたキューバ国仮出願第2020-0027号の優先権を主張するものであり、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、非枯渇性(non-depleting)抗CD6抗体を包含する抗CD6抗体、感染要因(infection agents)、たとえば、細菌性のものおよびウイルス、具体的にはコロナウイルスによって引き起こされる負の効果(negative effects)を処置および低減するための使用の方法ならびに組成物に向けられており、ここで負の効果は、サイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群の発動を包含する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
最後のパンデミック(1918)から100年を超えて今日、世界はRNAウイルスによって引き起こされた別のパンデミックの真っただ中にあり、そのウイルスを国際ウイルス分類委員会(ICTV)が「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」と名付け、その引き起こされた疾患はCOVID-19と呼ばれる。ウイルスは、コロナウイルスのファミリーに属し、今日現在ですべての大陸に蔓延しており、したがって長期にわたって留まることが予想されている。
【0004】
今日、世界的に1億1千5百万人を超える人々が、ウイルスに感染している。多くが回復しているものの、確認された事例のうち約15%は重症のフェーズへ進行し、65歳を超える患者は重症のフェーズへ進行する可能性がより高い。致死率は、世界中のデータからほぼ3%である。
【0005】
ウイルスは主に、感染した患者からの呼吸器飛沫によって、別の人の鼻、口を通ってまたは目から入り伝達される。感染した患者が症状を発症するのにほぼ2~14日間、平均で5日間掛かる。3つのコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、およびSARS-CoV-2)は、呼吸器飛沫を介して伝達され、下気道において複製して肺炎を引き起こし得る。
【0006】
世界保健機関(WHO)は、ほとんど80%の事例が、軽症~中等症の感染症を有し(咳および発熱として分類されるが、入院は要しない)、13.8%は重症の疾患を有し、6.1%は重篤な疾患を有することを報告した。感染潜伏期間の中央値は、症状が発病する前の約4~5日間であり、症状を発症した症候患者の97.5%は11.5日以内である。入院したCOVID-19患者は、発熱、空咳、およびときに呼吸困難を呈する。症状発病の5~6日以内にSARS-CoV-2ウイルス負荷は、そのピークに達し、重症の事例において感染症は、症状発病からほぼ8~9日後に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)へ進行する。
【0007】
近年のデータは、ヒト病原性コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス[SARS-CoV]およびSARSCoV-2(COVID-19)が、それらの標的細胞へアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を通して結合することを示唆しており、前記酵素は、肺(II型、肺胞細胞)、腸、腎臓、および血管の上皮細胞によって発現されている。ACE2の発現は、1型または2型糖尿病および高血圧症の患者において実質的に増加しており、前記患者はACEインヒビターおよびアンジオテンシンIIのI型受容体遮断薬(ARB)で処置される。このことは恐らく、大抵これら共存症に関連する、65歳を上回る患者がなぜ、この疾患に、より感受性があるかについて説明している。これらの患者は、2002~2003年のSARS(重症急性呼吸症状)大流行と同様、軽症の風邪様症状などの症状(発熱、咳、疲労、息切れ、筋肉痛、ならびに味覚および/または臭覚の喪失を包含する)を呈する。SARS-CoV-2感染は、高レベルのサイトカイン(IL-6、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子、および血管内皮成長因子を包含する)を包含するある患者において炎症促進性(pro-inflammatory)応答を発動させる。IL-6レベルは、増大した死亡率と直接相関し、かつリンパ球数とは逆相関することが見出されており、このことはサイトカイン放出症候群が適応免疫応答を妨げ得ることを示唆する(Li, et al.“Coronavirus infections and immune responses”J 322 Med Virol. 2020 Apr;92(4):424-32).
【0008】
いったん肺が感染すると、ウイルスは、RNAポリメラーゼを使用して肺胞細胞中で複製し、細胞機構を使用してRNAをタンパク質へ翻訳する。最終的に、複数のウイルス粒子が産生されて放出される。これによって再感染が引き起こされ、ウイルスは他の人々へ伝達され得る。
【0009】
この新しいウイルスによって引き起こされるCOVID19感染症には、標準的な処置選択肢がない。しかしながら、複数の薬物が、ウイルス感染経路に基づき、組み合わされて試されている。開発中であるかまたは目下試験されている他の薬物の中には、ワクチンおよびモノクローナル抗体治療に重点を置く複数の企業が顔を連ねる。Rocheからのアクテムラ(Actemra)(抗IL6)は、COVIDへの臨床試験にあり、この薬物は、自己免疫疾患からこの適応症へ再利用されている。Sanofiからのケブザラ(Kevzara)もまた、IL6を遮断する抗体であって、臨床試験にある。Regeneronは、ウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体を開発中であり、そのACE2受容体との相互作用を防止することが期待される。Takedaは、受動免疫のため、応答した患者からの高免疫グロブリンを開発中である。CytoSorb治療は、重篤の病気患者において過度のレベルの炎症性メディエーターを有効に低減し得る体外血液精製手順に基づく。
【0010】
COVID19の負の効果を処置するための、新しいかつより有効な治療法、具体的には新興および再新興の感染性疾患ならびに病原体を標的にする治療法へのニーズは、高まり続けている。そのため、COVID-19およびその変異体(variants)の負の効果を低減する新しいかつ有効な処置を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の概要
本発明は、コロナウイルス、具体的には新規コロナウイルス(COVID-19)およびその変異体の効果を処置ならびに低減するための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する非枯渇性抗CD6抗体を包含する抗CD6抗体の使用を提供する。具体的に、本発明の抗CD6抗体は、高発現レベルのサイトカインなどの過剰な(overactive)免疫応答を低減することによって、治療活性を呈する。
【0012】
本発明は、細菌性感染要因(bacterial infection agent)、具体的にはA群連鎖球菌および肺炎球菌の効果を処置ならびに低減するための、CD6のドメイン1へ特異的に結合する非枯渇性抗CD6抗体を包含する抗CD6抗体の使用を提供する。具体的に、本発明の抗CD6抗体は、高発現レベルのサイトカインなどの過剰な免疫応答を低減することによって、治療活性を呈する。
【0013】
蓄積する証拠によって、COVID-19が重症の患者の中には、サイトカインストーム症候群を経験することも示唆されている。サイトカインは、免疫学に関する炎症性のタンパク質であって、これは感染を撃退したり、がんを回避したりするが、多く存在し過ぎると、免疫系の暴走をもたらし得る。身体独自のキラー免疫細胞は、かかる増加量にあると、臓器不全および死へ繋がり得る。目下、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からの呼吸不全は、COVID-19患者の死亡率の主因である。よって、本発明は、インターロイキンIL-1、IL-6、およびIL-2、ならびにインターフェロン-ガンマを包含し得る炎症性サイトカインタンパク質を低減し、かつCOVID-19およびその変異体に起因する過剰炎症(hyper-inflammation)との合併症の病気個体を処置する新規アプローチを提供する。
【0014】
一側面において、本発明はまた、本発明に従う配列番号1(重鎖の可変領域)および2(軽鎖の可変領域)で表されるとおりのアミノ酸配列か、またはこれと少なくとも98%の同一性を有し配列番号1(重鎖の可変領域)および3(軽鎖の可変領域)を含むアミノ酸配列を含む、重鎖ならびに軽鎖の可変領域を含む、治療的に有効な量の抗CD6抗体での処置を含む、コロナウイルスに感染した細胞または生物を処置する方法も提供する。
【0015】
別の側面において、本発明はまた、本発明に従う配列番号4(重鎖)および5(軽鎖)で表されるとおりのアミノ酸配列か、もしくはこれと少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、重鎖ならびに軽鎖の領域を有する、治療的に有効な量の抗CD6抗体での処置を含む、コロナウイルスに感染した細胞あるいは生物を処置する方法も提供する。配列番号4および6を含むかまたはこれからなる抗CD6抗体は、本発明に包含される。
【0016】
抗体は、患者へ静脈内に、約0.5mg/kg体重と約8mg/Kg体重との間の用量範囲で投与される。1mg/kgと6mg/kgとの間の用量が好ましい。抗体は、好ましくは、患者へ最大限5用量まで少なくとも2度投与される。連続する2投与間の経過時間は、24時間と96時間との間にあるであろう。好ましい投与スケジュールは、72時間の間隔を空けた2~3用量である。
【0017】
別の側面において、本発明は、ヒト患者におけるCOVID-19感染およびその変異体の細胞壊死性の(cytopathic)壊滅的な(destructive)効果を緩和するための方法を提供するが、前記方法は、本発明に従う配列番号1(重鎖の可変領域)および配列番号2(軽鎖の可変領域)または3(軽鎖の可変領域)を含む治療的な量の抗CD6抗体を該患者へ投与することを含む。
【0018】
もう1つの側面において、本発明は、薬学的に許容し得る担体中に、本発明に従う配列番号4(重鎖)および5または6(軽鎖)のアミノ酸配列を含む治療的な量の抗CD6抗体を含む、治療組成物を提供する。
【0019】
加えて、1より多くの活性剤の使用が、より良好な治療組成物を提供することもあり、このことは特に、種々の剤が種々の機序によって作用するときに当てはまるところ、本発明はまた、逆転写酵素(RT)インヒビター - ウイルス生活環中の不可欠なステップに干渉して、ウイルスに、コピーをひとりでに作製することをさせない;ヌクレオシド類似体 - 致死的な変異誘発に起因してコロナウイルス複製を阻害するヌクレオシド類似体;プロテアーゼインヒビター - 感染性のウイルス粒子を作製するのに使用するタンパク質に干渉する;融合インヒビター - ウイルスが身体の細胞に入るのを遮断する;インテグラーゼインヒビター - コピーをひとりでに作製するのに必要とされる酵素を遮断し得る;多剤の組み合わせ - 2以上の異なるタイプの薬物を組み合わせて1つにする、および/または薬物動態のエンハンサーなどの1以上の他の抗ウイルス剤と一緒に、本発明に従う配列番号4(重鎖)および配列番号5または6(軽鎖)のアミノ酸配列を含む抗CD6抗体と、生物学的応答修飾因子(例えば、インターフェロン(α、β、またはγ)、インターロイキン2、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)等を包含する)との両方を包含する治療組成物も包含する。
【0020】
本発明の組み合わせ組成物は、より低用量の活性抗ウイルス剤を、より高用量に特徴的な抗ウイルス活性のレベルを維持しつつ含んでいてもよい。結果として、抗ウイルス剤の投与に典型的に関連する細胞毒性は、本発明の組み合わせ組成物の投与によって最小化される。よって、組み合わせ組成物は、低減された投薬量の抗ウイルス剤を、本発明の抗CD6抗体と組み合わせて含むことで、細胞毒性の許容し得るレベルを維持しつつ、通常要されるより高い抗ウイルス活性レベルが獲得されてもよい。
【0021】
もう1つの側面において、本発明は、インターロイキンの発現増加によって引き起こされる免疫応答をモジュレートすることによって、対象(例として、ヒトなどの脊椎動物)を処置する治療方法を提供するが、前記方法は、本発明に従う配列番号4および5を含むかまたはこれと98%の同一性を有する配列を含む治療的に有効な量の抗CD6抗体(配列番号4および6を含む抗体を包含する)の対象への投与を含む。
【0022】
なおもさらなる側面において、本発明は、COVID-19およびその変異体に対して対象を処置するためのキットを提供するが、ここでキットは、本発明に従う配列番号4(重鎖)および5(軽鎖)のアミノ酸配列、またはこれと98%の同一性を有し配列番号4(重鎖)および6(軽鎖)を含むかもしくはこれからなるアミノ酸配列を含むかあるいはこれからなる治療的に有効な量の抗CD6抗体を含む。
【0023】
さらなる側面において、本発明は、抗CD6抗体を含む医薬の製造を提供するが、ここで重鎖および軽鎖の可変領域は、本発明に従う配列番号1および2のアミノ酸配列、またはこれと98%の同一性を有し配列番号1および3を含む可変領域のアミノ酸配列を含む。
【0024】
別の側面において、本発明は、コロナウイルス、SARS、およびMERS-CoVの処置のための、より具体的に言うと、対象である哺乳動物またはヒトにおけるCOVID-19コロナウイルスの感染症の処置のための、本発明に従う配列番号4(重鎖)および配列番号5もしくは配列番号6(軽鎖)の配列を含むかまたはこれからなる抗CD6抗体の使用を提供する。
【0025】
もう1つの側面は、処置方法を提供するが、これを必要とする対象において使用されるべきものであって、前記処置方法は、約0.5mg/Kg体重から8mg/Kg体重までの用量範囲での抗CD6モノクローナル抗体の、24~96時間の間隔を空ける少なくとも2度の、2つ個々の用量での最大限5用量までの静脈内投与を含む。
【0026】
本発明の、これらのおよび他の利点ならびに特色は、以下のとおりの好ましい態様の詳細な記載において、さらに十分に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面の簡単な記載
図1図1は、COVID-19疾患(SARS-CoV-2)の種々のステージを示し、検出可能なウイルスの有無にかかわらない最初の無症候ステージ、ステージ2:ウイルスが存在する非重症の無症候期間、および最終にステージ3:これは、ウイルス負荷が大きい重症の症候ステージであって肺水腫である。
【0028】
図2-1】図2(a)レムデシビル;(b)ガリデシビル;(c)カモスタット;(d)フィンゴリモド;(e)ファビピラビル;(f)ダウナビル/コビシスタット、および図2の続き(g)クロロキン;(h)バリシチニブ;(i)サリドマイド;(j)ヒドロキシクロロキン;(k)ルキソリチニブ;(l)ウミフェノビルは、様々な臨床試験における先行技術の薬物を、それらの予測される作用機序とともに示す。
図2-2】図2(a)レムデシビル;(b)ガリデシビル;(c)カモスタット;(d)フィンゴリモド;(e)ファビピラビル;(f)ダウナビル/コビシスタット、および図2の続き(g)クロロキン;(h)バリシチニブ;(i)サリドマイド;(j)ヒドロキシクロロキン;(k)ルキソリチニブ;(l)ウミフェノビルは、様々な臨床試験における先行技術の薬物を、それらの予測される作用機序とともに示す。
【0029】
図3図3は、両アームにおいて比較可能なIL-6の平均ベースライン値を示し、図3AはAアームを示し、図3BはBアームを示す。初回注入の後、平均IL-6レベルにおける有意な低下がアームAに見られた。
【0030】
図4図4は、両アームにおいて比較可能なTNFαの平均ベースライン値を示し、図4AはAアームを示し、図4BはBアームを示す。初回注入の後、平均IL-6レベルにおける有意な低下がアームAに見られた。
【0031】
図5図5は、イトリズマブでの処置前のCOVID-19患者の血清におけるIL-6の濃度を指す。
【0032】
図6図6は、細菌感染に起因する肺炎患者の放射線画像を指す。図6A) イトリズマブでの処置前、および図6B) 処置後。
【0033】
図7図7は、初回用量のイトリズマブ後のC反応性タンパク質(CRP)濃度の中央値における減少を指す。COVID患者の高CRPレベルは、より重症の疾患に関連している(例として、Liu et al. J Clin Virol.2020 Jun;127:104370を見よ)。
【0034】
図8図8は、初回用量のイトリズマブ後のフェリチン濃度の中央値における減少を指す。フェリチンは、免疫調節異常の肝要なメディエーターである;これは、サイトカインストームに寄与し、COVID-19の重症度に影響を及ぼす潜在因子を表す(例として、Vargas-Vargas M and Cortes-Rojo C.Ferritin levels and COVID-19.Rev Panam Salud Publica.2020;44:e72を見よ)。
【0035】
図9図9は、イトリズマブで処置された患者の回復パーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な記載
COVID-19およびその変異体は、IL-2、IL-6、IL-7、GSCF、IP10、MCP1、MIP1A、およびTNFαの増加などの肺におけるサイトカインストームを刺激し、死へ繋がることもある浮腫、空気交換の機能障害、急性呼吸窮迫症候群、急性の心外傷、および二次感染がそれに続き得ることが知られている。
【0037】
サイトカインストームおよびサイトカイン放出症候群との用語は、炎症促進性サイトカインが過度にかつ非制御に放出される増悪した免疫反応を指すのに使用される。サイトカインは、リンパ球様細胞、炎症細胞、および造血細胞の間の複雑な相互作用を媒介することによって作用する、一群の低分子量タンパク質である。これらは、高度に多様化された機能を有するが、しかしながら、その機能は別個の数カテゴリーに分類され得る:免疫系細胞の分化および成熟、免疫系の細胞間伝達、ならびに直接的なエフェクター機能。サイトカインは、自然免疫応答または獲得免疫応答の最中に産生される。これらは、それらの機能を発揮する細胞膜上の特定の受容体へ結合し、特定の生物学的応答を産生する標的細胞をもたらすように遺伝子発現パターンを変更させる細胞内シグナル伝達カスケードを開始させる。
【0038】
サイトカインは、複数の細胞型によって、主に免疫系細胞によって産生される。自然免疫系において最もサイトカインを産生する細胞の1つが、マクロファージであるのに対し、ヘルパーT細胞またはT CD4+細胞は、主に獲得免疫系または特定の免疫系においてサイトカインを産生する細胞である。サイトカイン産生は一般に、一過的であって、刺激(つまり、免疫応答を誘導する外来の要因)の持続時間に限定される。
【0039】
患者の免疫系は、ウイルスに取り組む(tackle)ために過活動状態になる。Th1細胞は活性化されると、図1に示されるとおりIL6およびGM-CSFサイトカインを放出し、次いで肺胞中へマクロファージおよび好中球を呼び込む。これらマクロファージは、他の炎症促進性のサイトカインの中でも、IL6、TNFアルファ、およびIL1をより多く放出する。これらのサイトカインは、視床下部を標的にすることによって発熱を、また肺を一杯にする肺胞水腫も引き起こす。患者は、このステージにて呼吸困難を経験する。肺胞周囲の血管は漏れやすくなり、増大した血管透過性が観察される。体液の喪失は、循環ストレス(circulatory stress)および低血圧を引き起こし、次いで腎不全へ、最終的に多臓器不全へ繋がる。
【0040】
これが極めて新しいウイルスであるところ、現時点ではCOVID感染への標準的な処置選択肢はない。しかしながら、複数の薬物が、上に言及されたウイルス感染経路に基づき、組み合わされて試されている。図2は、様々な臨床試験における薬物を、それらの予測される作用機序とともに示す。
【0041】
本発明は、SARS-CoV-2に感染した患者の罹患率を低減する方法に関し、前記方法は、治療的な量の抗CD6抗体を該患者へ投与することを含む。具体的な態様において、抗CD6抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗CD6抗体は、ヒト化モノクローナル抗体イトリズマブである。いくつかの態様において、抗CD6抗体は、Fabまたはフラグメントである。いくつかの態様において、患者は、細菌感染症を有する。いくつかの態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、共存症を有する。他の態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、1より多くの共存症を有する。いくつかの態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、2より多くの共存症を有する。いくつかの態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、症状を呈さないか、軽症の症状または中等症未満の症状を呈する。いくつかの態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、中等症の症状を呈する。いくつかの態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、重症の症状を有する。いくつかの態様において、SARS-CoV-2に感染した患者は、サイトカイン放出症候群(CRS)の1以上の症状を呈する。本発明のいくつかの場合において、イトリズマブは、COVID-19の試験で陽性であったが1以上の病的状態(morbidities)を呈する前の患者へ投与される。本発明のいくつかの態様において、イトリズマブは、1以上の他の治療剤に加えて患者へ投与される。
【0042】
本発明の抗体は白血球分化抗原CD6へ結合するが、CD6は、糖タンパク質であって、主として成熟末梢血リンパ球において発現され、比較的程度は低いが成熟B細胞においても発現される。これは、リンパ球の細胞接着、活性化、分化、および生存において決定的な役割を果たす(Alonso, R et al.(2008)Hybridoma 27(4):291-301)。CD6分子は、その細胞外部に3つのドメインを含有し(Sarrias MR et al.(2004)Crit Rev Immunol.24:1-37)、そのリガンドであるALCAM(活性化白血球-細胞接着分子)分子への結合部位は、ドメイン3上に位置付けられる(Bodian DL et al.(1997)Biochemistry 36:2637-2641)。
【0043】
本発明のヒト化されたmAbイトリズマブは、CD6のスカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメイン1(D1)を認識しこれへ結合し、CD6のそのリガンドであるALCAMへの結合には干渉せず、したがって、これは、同じ標的に対して使用される他のモノクローナル抗体で報告された免疫抑制効果を生じない。
【0044】
本発明において記載されるとおりの非枯渇性抗CD6抗体を包含する抗CD6抗体の使用は、処置される患者におけるサイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群に関する症状および兆候を迅速に緩和する。これらの症状の低減は、重症の病気患者の、実質的な臨床治療の改善をもたらし、集中治療室(ICU)チームにより患者のより良好な管理を可能にさせる。提案される処置の具体的な利点は、ステロイドまたは他の免疫抑制薬に基づく他の従来の治療とは違って、患者に免疫不全を誘導しない点である。処置される患者における、ある程度の免疫能力の温存は、集中治療において極めて一般的な他の日和見感染に起因する急病の可能性を低減する。
【0045】
用語「非枯渇性(non-depleting)」抗CD6抗体は、本明細書に使用されるとき、結合の際、抗体依存性の細胞の細胞毒性(ADCC)、補体依存性の細胞の細胞毒性(CDC)の誘導もせず、別様にリシス(lysis)およびCD6発現細胞の死の促進もしない、CD6へ特異的に向けられたモノクローナル抗体を意味する。
【0046】
今日まで、CD6に対するmAbの使用についての、具体的にはこれらの抗体の、免疫不全を引き起こさずに免疫系の活性化とサイトカインの非制御産生とを阻害する能力についての報告はこれまでにない。イトリズマブの使用は、サイトカインストームに由来する毒性と闘うのに大きな価値があり、身体がコロナウイルスに起因するウイルス感染症に抵抗し続けることを可能にさせる。
【0047】
別様に定義されていない限り、記載、図、およびクレームにおいて使用されるすべての他の科学用語および専門用語は、それらの通常の意味を、本発明に関連する当業者によって一般的に理解されるとおりに有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または等価ないずれの方法および材料も、本発明を試験するための実践において使用され得るが、好ましい材料および方法が本明細書に記載されている。本発明を記載しクレームするのに際し、以下の専門用語が使用される。
【0048】
また、本明細書に使用される専門用語が、具体的な態様のみを記載する目的のためであって限定することを意図しないことも理解されるべきである。本明細書および添付のクレームにおいて使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が別様に明確に指示しない限り、複数形の指示対象も包含する。よって、例えば、「a cell」への言及は、2以上の細胞の組み合わせ等を包含する。
【0049】
語「約」は、本明細書に使用されるとき、当業者によって決定されるとおりの具体的な値(これは、その値がいかにして測定または決定されたか、すなわち測定系の限界に一部依存するであろう)に係る許容し得る誤差範囲内にある値を指す。例えば、「約」は、当該技術分野における実践につき1つの標準偏差内または1より多くの標準偏差内を意味し得る。用語「約」はまた、問題になっている量または値が、指定された値かまたはおよそ同じであるいくつかの他の値であってもよいことを指し示すためにも使用される。句は、同様の値が、本明細書に開示のとおりの等価な結果または効果を促進すること伝えることも意図する。これに関連して「約」は、最大10%までを上回るかおよび/または下回る範囲を指してもよい。語「約」は、いくつかの態様において、ある値の上下最大5%まで(その値の上下最大2%まで、最大1%まで、または最大0.5%まで、など)の範囲を指す。
【0050】
用語「活性」、「生物活性」、「治療活性」、または「機能活性」は、本明細書に使用されるとき、標準的な技法に従ってin vivoまたはin vitroで決定されるとおりのイトリズマブによって発揮される活性を指す。
【0051】
用語「抗ウイルス的に有効な量」は、ここで使用されるとき、COVID-19を包含するコロナウイルスの蔓延またはコロナウイルスの徴候の処置、予防法、遅延、その他の感染症の予防、および/または患者状態における改善をもたらす、本発明に従うイトリズマブ化合物の量を意味する。
【0052】
用語「サイトカイン」は、本明細書に使用されるときTおよびB-リンパ球によって産生されるホルモン様メディエーターの群のいずれか1つを包含することが意図される。代表的なサイトカインは、これらに限定されないが、インターロイキン-1(IL-1)、IL2、IL3、IL4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、インターフェロンガンマ(IFN-.ガンマ.)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-.アルファ.)、および形質転換成長因子-ベータ(TGF-.ベータ.)を包含する。
【0053】
用語「リンパ球」は、本明細書に使用されるとき、当該技術分野における正常な意味を有し、血液、リンパ液、およびリンパ系組織に見出される、単核の非食細胞白血球、例として、BおよびTリンパ球のいずれも指す。
【0054】
COVID-19ウイルスの変異体は、ウイルスのスパイクタンパク質において、またORFタンパク質領域においても見出されるアミノ酸の変化を包含していてもよい。例えば、B.1.1.7変異体は、注目に値すべき突然変異N501Yを有する。A222V、E484K、S477N、およびK417N/Tを包含する他の突然変異も、より感染性であることが見出されている。ウイルスが蔓延し、より多くの人々が感染すると、さらなる変異体は免れない。
【0055】
用語「患者」および「対象」は、本明細書に使用されるとき、互換的に使用され、ヒト患者を指す。
【0056】
用語「処置する(こと)」または「処置」は、本明細書に使用されるとき、疾患の症状、合併症、もしくは生化学的兆候の発病を予防または遅延する本発明の抗体組成物、化合物、あるいは剤の投与を包含し、それによって症状が緩和されるか、あるいは疾患、疾病、もしくは障害(例として、がん、転移性のがん、もしくは転移性乳がん)のさらなる発症が停止または阻害される。処置は、予防的である(疾患の発病を予防もしくは遅延する、またはその臨床症状もしくは不顕性症状の徴候を予防する)か、あるいは疾患の徴候後の、症状の治療的な抑制または緩和であり得る。
【0057】
用語「耐容性良好である(well tolerated)」は、本明細書に使用されるとき、健康状態の逆転(これは、処置のせいで生じ、処置の決断に影響を及ぼすであろう)がないことを指す。
【0058】
句「免疫応答をモジュレートする(こと)」または「免疫応答のモジュレーション」は、本明細書に使用されるとき、本明細書に定義されるとおりの免疫応答の下方調節、阻害、または減少を包含する。
【0059】
用語「抗CD6抗体」は、本明細書に使用されるとき、ヒトCD6(hCD6)のSRCRドメイン1(D1)へ特異的に結合し、かつCD6へ結合する活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)と干渉しない抗体である。
【0060】
本発明において使用されるCD6 mAbs(モノクローナル抗体)は、mAbを活性剤としておよび好適な賦形剤として生理学的な緩衝剤(静脈内ルートによって投与されるmAbを製剤化するのに使用されるものと同様のもの)を含有する医薬組成物の一部として投与され得る。具体的に、イトリズマブの配列は、合衆国特許第6,572,857号および第8,524,233号に記載されており、それらの内容はここで参照されることにより、下の表1に組み込まれる。
【0061】
表1:イトリズマブのタンパク質配列
【表1-1】
【表1-2】
【0062】
注目すべきことに、CD6は、主にエフェクターT細胞(Teff細胞)上に構成的に発現され、制御性T細胞(Treg)上に希に発現されている。CD6は免疫応答を刺激し、リンパ球活性化後に過剰発現される。CD6は炎症細胞を病変へ送り、そのリガンドであるALCAMは活性化後、炎症を起こした組織において上方調節される。
【0063】
CD6およびウイルス:CD6は、慢性SIV感染症の最中にT細胞上に過剰発現され、抗ウイルス応答を損なわせ、SIV疾患の進行に関与している。HTLV-1は、感染したリンパ球の血液脳関門を通る輸送(trafficking)を容易にさせるALCAMの過剰発現を誘導する。ALCAMは、HIV+ 単球上で増加しており、抗ALCAM抗体およびCCR2/CCR5二重インヒビターは、それらの移行(transmigration)を低減させる。
【0064】
イトリズマブは、抗CD6ヒト化されたIgG1 mAbである。イトリズマブは、標的細胞の枯渇(depletion)のない(血球減少なし)、免疫モジュラトリ(modulatory)分子である。イトリズマブは、炎症を起こした病変に集まる。イトリズマブは、炎症促進性のサイトカインIL-6、TNF、IFNγ、IL-17、およびIL-1の産生を低減させる強力な抗炎症効果を有する。
【0065】
イトリズマブは、COVID-19患者において、Tエフェクター機能(Th1/Th2/Th17細胞)の免疫モジュレーションによって炎症促進性のサイトカインストーム症候群を制御して、リンパ球の炎症部位への輸送を防止し(ALCAM-CD6相互作用を妨げ)、Tregを温存して抗ウイルス応答を持続させる能力を有することが本明細書に示される。これは、サイトカイン放出症候群に関連するCOVID-19陽性患者の罹患率および死亡率を低減させることが期待される。
【0066】
注目すべきことに、CD14+CD16+ 炎症性の単球がより高いパーセンテージで、COVID-19患者の末梢血に存在する。CD14+CD16+ 単球のパーセンテージは、ARDSを呈する患者において、はるかに高い。その上、有意により高い発現のIL-6が、とくにARDS患者において、これら炎症性の単球から分泌される。IL-6+ 単球のこの増加は、肺エリアへ移動し得る単球によって引き起こされるサイトカインストームに関することが理論化される。よってCOVID-19患者におけるこれらの活性化免疫細胞は、ARDSにおいて、肺循環に大量に入って免疫を損傷させる役割を呈することもある。よって、本発明は、炎症性サイトカインタンパク質(これは、インターロイキンIL-1、IL-6、およびIL-2、ならびにインターフェロン-ガンマを包含し得る)を低減し、COVID-19およびその変異体に起因する高炎症を合併した、病んだ個体を処置するための新規アプローチを提供する。
【0067】
ある態様において、本発明の方法は、COVID-19患者における急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を予防することを包含するが、ここで方法は、治療的な量の抗CD6抗体での患者の処置からなる。いくつかの態様において、本発明の方法は、COVID-19患者のARDS死亡率を減少させる。ある態様において、本発明は、SARS-CoV-2に感染した患者の入院を減少させる方法を提供し、該方法は、治療的な量の抗CD6抗体を患者へ投与することを含む。いくつかの態様において、本発明の方法は、COVID-19患者における心筋炎を予防する。いくつかの態様において、本発明の方法は、COVID-19患者のICU死亡率オッズ比を低下させるのに使用される。
【0068】
ある態様において、本発明の方法は、細菌性要因(bacterial agent)によって引き起こされる、患者における感染性疾患を予防することを包含するが、ここで方法は、治療的な量の抗CD6抗体での患者の処置を含む。これら細菌性要因は、これらに限定されないが、A群連鎖球菌および肺炎球菌を包含する。
【0069】
本発明のいくつかの態様において、イトリズマブは、1以上の他の治療剤に加えて、患者へ投与される。ある態様において、追加の治療剤は、ワクチン、抗ウイルス薬、抗体、免疫治療薬、免疫モジュレーター、サイトカインインヒビター、抗凝固薬、補体インヒビター、マイクロバイオーム調節因子、および抗マラリア薬からなる群から選出される。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、ワクチンである。いくつかの態様において、ワクチンは、BNT-162b2、ChAdOx1 nCoV-19、またはmRNA-1273からなるリストから選出される。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、抗ウイルス薬である。ある態様において、抗ウイルス薬は、ウイルスのノイラミニダーゼインヒビター(例えば、オセルタミビルもしくはザナミビル)、ウイルスのポリメラーゼインヒビター(例えば、リバビリン)、またはM2イオンチャネル遮断薬(例えば、アマンタジンもしくはリマンタジン)、レムデシビル、ビオメジビル(biomedivir)、ファビピラビル、またはナノメジビル(nanomedivir)からなるリストから選択される。本発明のいくつかの態様において、追加の治療剤は、フェーズIIインヒビター、たとえば、T-705 Toyama Chemical Co.(経口ポリメラーゼインヒビター)、ペラミビル(商標)、BioCryst(IV/IMノイラミニダーゼインヒビター)、またはフェーズIインヒビター、たとえば、CS-8958、Biota/Daiichi Sankyo(吸入式のノイラミニダーゼインヒビター)である。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、抗体である。ある態様において、追加の剤は、中和抗体である。いくつかの態様において、中和抗体は、LY-CoV555またはREGN-COV2である。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、免疫治療剤である。本発明のある態様において、回復期血漿は、追加の剤である。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、免疫モジュレーターである。ある態様において、免疫モジュレーターは、グルココルチコイドである。いくつかの態様において、免疫モジュレーターは、キナーゼインヒビターである。いくつかの態様において、追加の剤は、シクレソニドである。ある態様において、追加の剤は、バリシチニブである。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、ルキソリチニブである。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、サイトカインインヒビターである。いくつかの態様において、サイトカインインヒビターは、トシリズマブ、サリルマブ、カナキヌマブ、レンジルマブからなるリストから選出される。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、幹細胞治療薬である。いくつかの態様において、幹細胞治療薬は、レメステムセル(remestemcel)-Lまたはエミプラセル(emiplacel)である。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、抗凝固薬である。ある態様において、追加の剤は、抗血栓薬である。いくつかの態様において、本発明の方法は、リバーロキサバン、スロデキシド、アピキサバン、ヘパリン、およびアスピリンを含むリストから選択される追加の剤とともに使用される。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、補体インヒビターである。いくつかの態様において、補体インヒビターは、エクリズマブまたはラブリズマブから選択される。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、マイクロバイオーム調節因子である。ある態様において、追加の剤は、EDP-1815である。本発明のいくつかの態様において、追加の剤は、抗マラリア薬である。ある態様において、抗マラリア薬は、クロロキンおよびヒドロキシクロロキンから選択される。いくつかの態様において、本発明はまた、逆転写酵素(RT)インヒビター、ヌクレオシド類似体、融合インヒビター、および/またはインテグラーゼインヒビターなどの1以上の他の抗ウイルス剤とともに投与される、本発明に従う抗CD6抗体を含む抗ウイルス組成物も包含する。本発明のある態様において、逆転写酵素 インヒビターは、これらに限定されないが、クレブジン、テルビブジン、テノホビル、ジピボキシル、ガンシクロビル、ロブカビル、ファムシクロビル、およびペンシクロビルを包含する。いくつかの態様において、ヌクレオシド類似体は、これらに限定されないが、アバカビル(ABC)、アデホビル(ビス-POM PMEA)、アムドキソビル、アプリシダビン(AVX754)、センサブジン、ジダノシン(DDI)、エルブシタビン、エムトリシタビン(FTC)、エンテカビル(ETV)、ラミブジン(3TC)、ラシビル(racivir)、スタンピジン、スタブジン(d4T)、テノホビルジソプロキシル(TDF)、テノホビル アラフェナミド(GS-7340)、ザルシタビン(ddC)、ジドブジン(ZDV)/アジドチミジン(AZT)、それらの誘導体、任意にそれらのアルキル化誘導体、さらに任意に、トリ-メトキシ-3TC、それらの薬学的に許容し得る塩、およびそれらの組み合わせを包含する。本発明のある態様において、融合インヒビターは、これらに限定されないが、エンフビルチド(「フゼオン」)、T-20、PRO 140、ビクリビロック、およびマラビロクを包含する。本発明の他の態様において、インテグラーゼインヒビターは、これらに限定されないが、グロボイドナンA、L-000870812、S/GSK1349572、S/GSK1265744、ラルテグラビル、およびエルビテグラビルを包含する。
【0070】
症候性または無症候性のCOVID-19感染症の対象を包含するCOVID-19に感染した患者へのイトリズマブでの治療的選択肢は、表2に言及される。
【0071】
表2:すべての選択肢はまた、アジスロマイシンおよび抗レトロウイルス複製薬(抗RNAポリメラーゼ)も包含していてもよい
【表2-1】
【表2-2】
【0072】
本発明の範囲内には、イトリズマブの予防的投与がある。本発明のイトリズマブの投与は、COVID-19ウイルスの進行が防止または代替的には遅延されるように、ウイルス症状の徴候に先立ち行われ得る。本発明の予防的な方法は、投薬量および処置計画が異なってもよいが、本明細書に記載の治療方法と同様のやり方で実行され得る。よって、予防方法としてイトリズマブをウイルスの証拠を示さない対象へ予防的に投与することは、有益であると考えられる。
【0073】
本発明は、症候性または無症候性のCOVID-19感染症の対象を包含するCOVID-19に感染した患者の処置または治療を包含する。
【0074】
本発明のイトリズマブmAbは、投薬製剤に適合するやり方で、かつ治療的に有効な量になる量で、投与される。投与されるべき分量は、処置されるべき対象、細胞性免疫応答を生成する対象の免疫系の能力、および所望される防御の程度に依存する。正確な量の活性成分の投与は、実践者の判断に依存し、各個体に特有である。しかしながら、イトリズマブは、静脈内(IV)投与によって送達される約0.1~25mg/Kg体重/週、より好ましくは約0.5mg/kg~約10mg/kg体重、最も好ましくは約1mg/kg体重/週から3mg/kg体重/週までの有効量にて送達され得る。
【0075】
本発明の一態様において、患者は、共存症についてスクリーニングされ、単回用量のイトリズマブで処置される。一態様において、共存症のCOVID-19患者は、3.2mg/kgの投薬量によって200mgイトリズマブで処置される。一態様において、処置は、1日後と14日後との間に反復される。
【0076】
本発明の組み合わせ組成物は、より高い用量を特徴とする抗ウイルス活性レベルを維持しつつ、より低用量の活性抗ウイルス薬を含んでいてもよい。結果として、抗ウイルス剤の投与に典型的に関連する細胞毒性は、本発明の組み合わせ組成物の投与によって最小化される。組み合わせ組成物は、許容し得るレベルの細胞毒性を維持しつつ、要求される通常のレベルより高い抗ウイルス活性レベルを獲得するのに、本発明のイトリズマブと組み合わせられて、低減された投薬量の抗ウイルス剤を含むことができる。
【0077】
本発明のいくつかの方法は、最初にCOVID-19について患者を試験すること、および患者がCOVID-19陽性である場合に治療的な用量の抗CD6抗体を投与することを包含する。本発明のいくつかの方法は、どのCOVID-19患者が治療的な用量のイトリズマブで処置されるべきかを決定するための選択基準を提供する。本発明のいくつかの方法は、COVID-19試験を施して患者を悪化しつつある肺病変について査定すること、およびCOVID-19の試験で陽性となりかつ悪化しつつある肺病変を有する患者へ抗CD6抗体を投与することを包含する。本発明のいくつかの方法において、決定することは、肺病変が悪化しつつある場合、患者を査定して、以下のうち少なくとも1つ:a)悪化しつつある酸素飽和度;b)PaO2の減少;c)FiO2を増加させるニーズ;d)不安定なSO2;e)換気補助に対する増大したニーズ;f)換気補助に対する新しいニーズ;f)硬化肺エリアの数および/または程度の増加を見出すことを包含する。いくつかの方法において、酸素飽和度は、1パーセント点より大きい差で悪化する。本発明のいくつかの方法において、患者の酸素飽和度は、>3パーセント点の差で悪化する。いくつかの態様において、PaO2の減少は、>10%である。
【0078】
本発明のいくつかの態様において、方法は、COVID-19であってマクロファージ活性化症候群が疑われる患者を選択すること、および治療的な用量のイトリズマブを投与することを包含する。いくつかの態様において、COVID-19の試験で陽性でありかつ酸素治療を必要とする患者は、治療的な用量のイトリズマブが投与される。いくつかの態様において、本発明は、多巣性の(multifocal)間質性肺炎が確認されたCOVID-19患者へ治療的な用量のイトリズマブを投与することからなる。いくつかの態様において、COVID-19陽性であって、またO2の飽和度>93%を維持するために酸素治療も必要とする患者は、治療的な用量の抗CD6抗体が投与される。いくつかの態様において、本発明の方法は、COVID-19の試験で陽性であって、かつ以下のうち1以上: a)喘鳴または不規律な発話(irregular speech); b)22呼吸/分より多い呼吸頻度; c)PO2:動脈酸素分圧<65mmHg; d)悪化しつつある放射線画像; e)発熱>=38℃; f)ヘモグロビン、血小板、または好中球の初期値の低減; g)Hb<90g/L; h)血小板<100×109/L; i)好中球<1×109/L; j)白血球<4×109/L; k)PCRとミスマッチした、減少した赤血球沈降(低い赤血球沈降、かつPCRが増加または変化なし); l)3mmol/Lより高いトリグリセリドまたはトリグリセリドの増加した初期値; m)500ng/mlから増加した初期フェリチン値、または絶対フェリチン値>=2000ng/ml; n)アスパラギン酸トランスアミナーゼ-アミノトランスフェラーゼ>=30IU/L; o)二量体Dの増加; p)フィブリノゲン<2.5g/L; q)神経学的な徴候の発病を有する患者を処置するのに使用される。いくつかの態様において、本発明の方法は、抗CD6抗体での処置について患者を選択するための排除基準を使用することを包含する。いくつかの態様において、排除基準は、以下の1以上を包含する:妊娠期間、授乳期間、および1以上の有害事象。
【0079】
本発明のいくつかの態様は、以下からなるリスト:肺機能の低減または劣化、SO2安定させ続けるためにFiO2を増加するニーズがなくかつ挿管のニーズがない患者率;呼気の終わりの陽圧値が減少している患者率(PPFE)から選択される1以上の主要転帰測定値(primary outcome measurements)を測定することによって、患者をどの用量にてどれほど長く処置するかを決定することを包含する。いくつかの態様において、これらの転帰測定時間は、1日間と7日間との間にある。本発明のいくつかの態様は、以下からなるリスト: 1)気管内挿管へのニーズ; 2)呼吸不全が生じたときの非侵襲性または侵襲性の機械的換気率の増加; 3)非侵襲性の機械的換気不全; 4)機械的換気の持続時間または機械的換気終了までの時間; 5)患者の死亡率; 6)IL1、IL6、およびTNFアルファの患者血清濃度; 7)HSHスコアパラメータ(温度、内臓巨大、血球減少、トリグリセリド、フィブリノゲン、フェリチン、AAT(GOT)); 8)C反応性タンパク質、およびリンパ球の絶対数(陽性または陰性)から選択される1以上の二次転帰測定値を測定することによって、患者をどの用量にてどれほど長く処置するかを決定することを包含する。
【0080】
本発明のいくつかの方法は、中等症のCOVID-19病気患者へ治療的な用量の抗CD6抗体を投与することを包含する。本発明のいくつかの方法は、高齢のCOVID-19患者へ治療的な用量の抗CD6抗体を投与することを包含する。いくつかの態様において、患者は、64歳以上である。いくつかの態様において、抗CD6抗体は、イトリズマブである。本発明のいくつかの態様において、入院しているCOVID-19陽性患者は、抗ウイルス治療と組み合わされてイトリズマブで処置され、抗ウイルスケアの標準治療を受けているがイトリズマブは受けていない対照群と比較される。本発明のいくつかの態様において、患者は、リアルタイム転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってCOVID-19について査定される。
【0081】
処置の統計的有意性は、平均値および標準偏差または中央値および四分位範囲(各変数の分布に依存して)を通して決定される。ウィルコクソン順位和検定が連続変数へ適用され、カイ二乗またはフィッシャーの直接確率検定はカテゴリー変数に使用される。いくつかの態様において、本発明は、免疫モジュラトリ治療を受けていないCOVID-19患者の同じ入院患者群から対照群を選択することを提供する。対照は、ロピナビル/リトナビル、クロロキン、インターフェロンα2B、およびLMWHで処置される。対照対象は、年齢、共存症、および疾患の重症度に関して十分にマッチしている。疾患の進行および死亡率のオッズ比は、イトリズマブ vs 対照について推計される。共存症は、高血圧症、認知症、栄養失調、心疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患を包含する。
【0082】
各5mLバイアルは、iv注入用の溶液であって無色かつ透き通った溶液を有するイトリズマブ25mg(r-DNA起源)を含有する。イトリズマブは、6R透明ガラス製バイアル(USPタイプ1)中に詰められ、クロロブチルゴムストッパーで閉められて、フリップオフシール(flip-off seals)で密閉される。イトリズマブ注射液は、保存料のない溶液であって、IV注入用の単回使用バイアルに供給された。使用に先立ち、バイアル中の溶液は、微粒子状物質および変色について視覚的に検査された。目に見える不透明な粒子、変色、または他の外来の微粒子が観察された場合、バイアルは廃棄されるべきであって、溶液は患者へ投与されなかった。適切な体積のイトリズマブ注射液を250mL正常な生理食塩水へ加えて、穏やかに混合した。この希釈された注入バッグは、光から保護されて室温にてまたは2℃~8℃にて冷蔵して保管され得、最大10時間まで室温にて安定的である。注入溶液を、患者への投与に先立ち室温まで達するようにした。イトリズマブ注入液を、直列形の(in-line)滅菌され非パイロジェンの低タンパク質結合フィルター(1.2μm以下の孔サイズ)との注入セットを使用して、120分以上の期間にわたり投与した。およそ50mLの注入溶液を最初の1時間の最中に投与し、これに続き残存溶液(およそ200mL)を次の1時間までに投与した。注入期間は、医療上の理由から最大8時間まで延長され得る。イトリズマブは、いずれの他の剤とも同じIVラインでは同時注入され得ない。使用されなかった一部の注入溶液のいずれも、再使用のために保管しないこととした。
【0083】
投薬レジメンは、所望される最適な応答(例として、治療応答)を提供するために調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、数個に分けられた用量が経時的に投与されてもよく、または用量は、治療状況の緊急の要件によって指し示されたとおりに比例して低減または増加させられてもよい。本発明に使用される抗CD6モノクローナル抗体にとって効率的な投薬量および投薬レジメンは、COVID-19疾患およびその変異体の重症度に依存し、医師によって決定されてもよい。一態様において、抗CD6モノクローナル抗体は、週1回の投薬量で注入によって投与される。かかる投与は、2~4回または3~5回など、例として1~8回、反復されてもよい。代替手段において、投与は、2時間から12時間までなど2時間から24時間までの期間にわたる連続的注入によって実施されてもよい。
【0084】
本発明に使用される治療的に有効な量の抗CD6モノクローナル抗体に係る、例示の非限定的範囲は、約0.01~100mg/kg/対象体重(約0.01~50mg/kgなど)、例えば、約0.01~25mg/kgである。いくつかの態様において、患者の身長に対し理想的な体重が、用量を決定するのに使用される。いくつかの態様において、1用量より多く対象へ与えられる。いくつかの態様において、より多くの初回用量が患者へ与えられる。いくつかの態様において、第2の用量は、1週間後に投与される。いくつかの態様において、第2の用量は、2週間後に投与される。いくつかの態様において、第2の用量は、初回用量と同じ強度である。いくつかの態様において、第2の用量は、初回用量の4分の3以下である。いくつかの態様において、第2の用量は、初回用量の半分である。いくつかの態様において、第3の処置が施される。いくつかの態様において、治療的に有効な量の抗CD6モノクローナル抗体は、患者が回復したかまたは病院から退院されたことが決定されるまで、2週毎に投与される。いくつかの態様において、用量は、0.8mg/kgまたは1.6mg/kgのいずれかである。いくつかの態様において、投与される用量は、1.6mg/kgおよび0.8mg/kgである。本発明に使用される治療的に有効な量の抗CD6モノクローナル抗体に係る、例示の非限定的用量は、0.8mg/kgおよび1.6mg/kgである。当該技術分野において通常の技能を有する医療従事者は、要求される医薬組成物の有効量を容易に決定し処方してもよい。例えば、医者は、所望される治療効果を獲得するのに要求されるレベルより低いレベルでの抗CD6モノクローナル抗体の用量から始められ、所望される効果が獲得されるまで投薬量を徐々に増加させられる。
【0085】
一態様において、抗CD6モノクローナル抗体は、0.1~50mg/kg/対象体重、たとえば0.5~3mg/kgの週1回の投薬量で注入によって投与される。かかる投与は、2~4回または3~5回など、例として1~8回、反復されてもよい。代替手段において、投与は、2時間から12時間までなど2時間から24時間までの期間にわたる連続的注入によって実施されてもよい。一態様において、抗CD6モノクローナル抗体は、週1回の投薬量で投与される。これらの態様のいくつかにおいて、50mgから350mgまでの投薬量のイトリズマブは、最大7回まで、たとえば、2回から4回まで投与される。いくつかの態様において、抗CD6抗体は、隔週に投与される。投与は、2時間から12時間までなど、2時間から24時間までの期間にわたり、連続的注入によって実施されてもよい。かかるレジメンは、必要次第で1回以上、例えば、1週後または2週後に反復させられてもよい。
【0086】
ほとんどの査定および研究手順は、参加した研究センターおよびICMRからのCOVID-19疾患管理指針によって確立された標準的な処置プロトコルのとおりであった。治療下で発現した有害事象(Treatment Emergent Adverse Events)(TEAEs)を、処置の最中および初回処置用量後最大30日まで、有害事象共通用語基準(common terminology criteria for Adverse Events)(CTCAE)基準(v5.0)に従って格付けした。
【0087】
以下の例は、本発明を理解するのに役立つことを記述するが、いずれにしてもその範囲を限定することを意図しておらず、そう解釈されるべきではない。例は、アッセイ手順に採用された従来の方法に係る詳細な記載は包含していない。かかる方法は当業者に周知であり、例示を包含する無数の刊行物に記載されている。
【0088】
例1
【0089】
SARS-CoV2感染のウイルス学的な診断(RT-PCR)に係る試験をして陽性であった患者を、インド国内の様々なセンターからの登録者についてランダム抽出した。
【0090】
患者に対する主要な試験対象患者基準(Major Inclusion Criteria)は以下のとおりであった:
SARS-CoV2感染のウイルス学的な診断(RT-PCR)を確認した
COVID-19感染の臨床的悪化に起因して入院した
大気中安静時の酸素飽和度≦94%
<200のPaO2/Fio2(酸素分圧/吸入酸素濃度)比または直前の値から25%超の悪化によって定義されるとおりの中等症~重症のARDSの患者。
分かっている場合、ベースラインの血清フェリチンレベル≧400ng/mL、またはIL-6レベルがULNの4倍より大きい
【0091】
患者に対する主要な排除基準は以下のとおりであった:
モノクローナル抗体に対して重症のアレルギー反応が知られている
活動性結核(TB)感染;不適切に処置された結核または潜伏結核の病歴
侵襲性の機械的換気補助にある患者。
経口の拒絶反応抑制薬または免疫抑制薬を過去6カ月以内に受けた
トシリズマブといった抗IL-6治療薬を使用するといった他の薬物臨床試験に参加している(COVID-19抗ウイルス臨床試験への参加は、スポンサーによって承認された場合、許容されることもある)
対症療法の一環としての抗IL-6の処置または血漿治療にある患者
妊娠もしくは授乳、または投薬前検査において妊娠試験が陽性である
B型肝炎、C型肝炎、またはHIVの病歴が知られている患者
好中球絶対数(ANC)<1000/mm3;血小板数<50,000/mm3;リンパ球絶対数(ALC):<500/mm3
【0092】
6週間にわたる処置の研究を、およそ36名の患者において2つのアームで行った。
【0093】
処置アームA:最善の対症療法+イトリズマブ(配列番号4および5);ここで;施設(institution)のプロトコルとおりに与えることになっている最善の対症療法(たとえば、抗ウイルス薬/抗生物質/ヒドロキシクロロキン;酸素治療等々)を、イトリズマブと共に投与した。ヒドロコルチゾン100mg i.v.(または等価な短期作用型グルココルチコイド)およびi.v.によるフェニラミン30mgでの約30±10分間の前投薬を、注入に先立ちアームA患者において施した。
【0094】
処置アームB:最善の対症療法;ここで;施設のプロトコルとおりに与えることになっている最善の対症療法(たとえば、抗ウイルス薬/抗生物質/ヒドロキシクロロキン;酸素治療等々)を、イトリズマブなしで施した。
【0095】
研究に参加したすべての適格な患者を、処置A(最善の対症療法+イトリズマブ)または処置B(最善の対症療法)の夫々を受けられるよう、2:1の比率でランダム抽出した。コンピュータから出力されたランダム化スケジュールを、適切な系、例として、患者を処置群へ割り当てるためのSASを使用して生成した。ランダム化は中央で行われ(central)、遠隔地への電話(remote telephone)およびコンピュータベースのeメール系を使用してランダム化スケジュールを現場へ分配した。患者がアームAへランダム抽出されたが、イトリズマブを始めてもなく、1本の注入液全量を投与されてもないなら、この場合の患者はランダム抽出されていないと見なした。同じランダム化コードを、その特定の現場にいる後続の患者に対して使用した。
【0096】
酸素治療、ヘパリン、抗ウイルス薬、抗生物質、短期間のステロイド、およびビタミンを包含する対症療法は認められた。経口の拒絶反応抑制薬または免疫抑制薬での前処置および同時処置(直近6カ月までに絶えず/規則的に)、トシリズマブといったIL-6治療薬、回復期血漿は許容されなかった。
【0097】
イトリズマブ注射液は、保存料のない溶液であって、IV注入用の単回使用バイアルに供給された。使用に先立ち、バイアル中の溶液は、微粒子状物質および変色について視覚的に検査された。目に見える不透明な粒子、変色、または他の外来の微粒子が観察された場合、バイアルは廃棄され、溶液は患者へ投与されなかった。適切な体積のイトリズマブ注射液を250mL正常な生理食塩水へ加えて、穏やかに混合した。この希釈された注入バッグは、光から保護されて室温にてまたは2℃~8℃にて冷蔵して保管され得、最大10時間まで室温にて安定的である。注入溶液を、患者への投与に先立ち室温まで達するようにした。
【0098】
イトリズマブ注入液を、直列形の滅菌された非パイロジェンの低タンパク質結合フィルター(1.2μm以下の孔サイズ)との注入セットを使用して、120分以上の期間にわたり投与した。およそ50mLの注入溶液を最初の1時間の最中に投与し、これに続き残存溶液(およそ200mL)を次の1時間までに投与した。注入期間は、医療上の理由から最大8時間まで延長され得る。イトリズマブは、いずれの他の剤とも同じIVラインでは同時注入され得ない。使用されなかった一部の注入溶液のいずれも、再使用のために保管しなかった。
【0099】
ほとんどの査定および研究手順は、参加した研究センターおよびICMRからのCOVID-19疾患管理指針によって確立された標準的な処置プロトコルのとおりであった。治療下で発現した有害事象(TEAEs)を、処置の最中および初回処置用量後最大30日まで、有害事象共通用語基準(CTCAE)基準(v5.0)に従って格付けした。
【0100】
上に規定されたとおり、総勢36名の患者をスクリーニングしたが、そのうち4名の患者はスクリーニング不成功と見なした。試験対象患者基準を満たしかまたは排除基準を満たさなかった32名の患者のうち、イトリズマブ処置向けの2名の患者を、初回投薬の完了に先立ち中断させ、プロトコルどおりに置き換えた。アームAにおける患者年齢の中央値は50.5年であり、アームBにおいては49.5年であった。両処置アームにおいて彼らの大多数が男性であり、すべての患者がアジア人であった。アームAにおけるすべての患者およびアームBにおける大多数の患者(すべての患者が生存していた)の研究を完了した;これは、アームAおよびB夫々において16名(80%)および6名(60%)の患者を包含しており、彼らは早期に退院した。アームBにおいて研究を中断した最も一般的な理由は死亡(n=3)であった。アームAにおいて死者はいなかった。アームAの患者は、イトリズマブ1.6mg/kgの2週ごとの投薬と共に最善の対症療法を受けた;ここでアームBの患者は最善の対症療法を受けた。
【0101】
イトリズマブ処置は、1カ月の死亡率低減を通して患者の生存に対し顕著な改善を有した。1カ月の死亡率における統計的な有意差(p=0.0098)が処置アームAとBとの間で観察された。一貫してイトリズマブを投薬されたすべての患者が、肺機能パラメータの改善を実証した:
●FiO2の増加がない、有意に安定した/改善された酸素飽和度(SpO2)およびPaO2
●投薬後に低減されたO2要求。
●すべての患者において一貫して改善されたPaO2/FiO2比。
●概して、アームAにおけるより高い割合の患者が、FiO2の増加がない、安定した/改善されたSpO2を有した。概して、アームAにおけるより高い割合の患者が、ベースライン査定訪問後のすべてにおいて、FiO2の増加がない安定したSpO2を有した。第21日以降、統計的な有意差が、両処置アーム間で両パラメータについて観察された。
●PFR(PaO2/FiO2比)が徐々にアームAおよびBにおいて経時的に増加した。21日間にわたる平均PFRはアームAにおいては350.25であり、アームBにおいては398.33であった。
●IL-6、IL-17A、およびTNF-αなどのバイオマーカーは、イトリズマブ処置後の減少を実証した。患者は、対照アームと比較したベースラインレベルからの変化の平均値が大きく低減したことを実証した。
IL-6は、炎症促進性のサイトカインである。図3に見られるとおり、IL-6の平均ベースライン値は、両アームにおいて同等であった;アームAにおいて159.1pg/mLおよびアームBにおいて162.2pg/mL。初回注入後の平均IL-6レベルにおいて有意な低下(p=0.0269)が、アームB(212pg/mL)と比較して、アームA(43pg/mL)において見られた。p値は、ウィルコクソンのマッチドペア(matched-pairs)符号順位検定を使用して推計した。
TNF-αは、炎症促進性のサイトカインである。図4に見られるとおり、TNFαの平均ベースライン値は、アームB(11pg/mL)よりアームA(44pg/mL)の方が高かった。初回注入後の平均TNF-αレベルにおいて有意な低下(p=0.0253)が、アームB(39pg/mL)の増加と比較して、アームA(9pg/mL)において見られた。第2投薬前のTNF-αレベルは、アームAおよびB夫々において68pg/mLおよび108pg/mLであった。第2投薬後、TNF-αレベルの減少もまたアームA(50pg/mL)において見られ、対してアームB(185pg/mL)では増加した。p値は、ウィルコクソンのマッチドペア符号順位検定を使用して推計した。
IL-17Aは、炎症促進性のサイトカインである。IL-17Aの平均ベースライン値は、両アームにおいて同等であった;アームAにおいて10.36pg/mLおよびアームBにおいて9.83pg/mL。初回注入後の平均IL-17Aレベルにおいて、増加したアームB(14.75pg/mL)とは違って、著しい低下がアームA(6.75pg/mL)に見られた。IL-17Aレベルにおけるわずかな減少もまたアームBにおいて第2投薬後に見られ、対してアームBでは増加した。
●LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)およびD-二量体といった、臓器機能障害および凝固障害の他の重要なマーカーもまた、アームAにおいて、対照アームと比較してより大きな平均値の低減を実証した。
【0102】
主要エンドポイントである死亡率は、イトリズマブアームにおいて統計的に有意に高かった;p値=0.0098。イトリズマブは一貫して、肺機能パラメータにおける改善および炎症性のバイオマーカーのレベルの減少を実証した。イトリズマブは、COVID-19患者において安全であった。注入による反応は、注入速度を遅くすることで管理できた。イトリズマブは、COVID-19ウイルスに応答した免疫系の高活性化を有効に制御し、サイトカインストームに関する罹患率および死亡率を低減した。
【0103】
概して、イトリズマブ処置は、BSC(最善の対症療法)と共にCOVID-19患者へ施したとき、耐容性良好であり、その治療に起因して浮上した安全性への新しい懸念もなかった。
【0104】
例2.イトリズマブ(配列番号4および6)の使用は、重症および重篤の病気患者の死亡率を低減した。
【0105】
SARS-CoV-2と診断されたか、またはCOVID-19肺炎の臨床上高い疑いがあり、かつサイトカイン放出症候群の臨床治療的証拠、放射線学的証拠、もしくは実験室的証拠がある48名の患者の静脈内に、200mg用量のモノクローナル抗体イトリズマブを投与した。彼らのうち、22名の患者(14名は重篤の、8名は重症の病気)は、72時間後に第2用量の抗体を受け、3名の重篤の病気患者は、呼吸不全またはマクロファージ活性化症候群の持続する兆候を有していたので、第3用量を受けた。本産物の調査における使用の影響を評価するため、回復または死亡に関する情報が保健省(Ministry of Public Health)へ報告されており、COVID-19の重症転帰/致死的転帰のリスク因子と見なされる少なくとも1つの共存症(高血圧症、虚血性心疾患、糖尿病、がん、慢性腎臓疾患、肥満、栄養失調、もしくはCOPD)の病歴があるか、または国内のICUに収容されたことがあり、かつCOVID-19に係る進行中の臨床試験のいずれにも参加しなかったCOVID-19陽性患者ごとに、対照として選択した。データの統計学的な処理には、χ2検定を採用した。
【0106】
表3において観察され得るとおり、イトリズマブで処置された患者の死亡率は、対照群より15%低かった。さらにまた、イトリズマブで処置された重症の病気患者の死亡率は、対照群の重症の病気患者と比較して有意に低かった。
【0107】
表3:重症または重篤の病気患者の死亡率
【表3】
【0108】
例3.イトリズマブの使用は、重症または重篤の病気になるリスクが高い中等症の病気患者の死亡率を低減した。
【0109】
死亡が予測される2以上の共存症のある14名の中等症の病気患者という抽出標本(sample)へ、静脈内に200mg[3.2mg/kg体重の投薬量]のモノクローナル抗体イトリズマブ(配列番号4および6)を投与した。集中治療室にいながらも2以上の共存症を有するとは診断されなかった患者を、非処置対照として選択した。データの統計学的な処理には、χ2の検定を使用した。
【0110】
表4に見られ得るとおり、重症または重篤の病気患者になるハイリスクのある患者の死亡率が、27%減少した。
【0111】
表4:中等症の病気患者の死亡率。
【表4】
【0112】
例4.イトリズマブ処置は、重篤および重症のCOVID-19陽性の病気患者のIL-6血清濃度を低減し、中等症の病気患者のかかるレベルを安定化した。
【0113】
モノクローナル抗体イトリズマブ(配列番号4および6)で処置された21名のCOVID-19陽性患者において、IL-6血清濃度を、処置を始める前および投与から48時間後にELISA(Quantikine)によって決定した。患者を以下のとおり:中等症の病気:n=12; 重症の病気:n=4、および重篤の病気:n=5に分類した。
【0114】
図5に見られ得るとおり、イトリズマブでの処置を始める前、患者のIL-6レベルは、疾患進行とともに増加した。重篤の病気患者の血清濃度は、中等症の病気患者の血清濃度より有意に高かった(クラスカル・ワリス検定;p=0.0015)。ベースラインIL-6レベルは、ROC曲線を適用することによって疾患の重症度に関連付けられ、IL-6血清濃度のカットオフ(cut-off)値は27.4pg/mlを選択した。
【0115】
イトリズマブを受けた16名の患者の一群において、IL-6血清濃度を、初回投与前および48時間後に評価した。表5は、確定したカットオフ値に応じた48時間でのIL-6値の差異(variation)を示す。
【0116】
IL-6の血中(circulating)レベルが27.4pg/mlより高いすべての患者において、投与後24時間と48時間との間に測定されたそれらの値が1用量のイトリズマブで減少した。IL-6濃度がカットオフを上回る患者同士間のIL-6濃度変化の大きさは、50.9pg/mlという低減中央値を有した。しかしながら、ベースラインレベルが27.4pg/ml未満である患者同士間のIL-6濃度変化の中央値は、1.5pg/mlであった。
【0117】
表5:疾患の重症度を区別する閾値に応じた48時間でのIL-6値の差異
【表5】
【0118】
例5.サイトカインストームが細菌起源の呼吸器感染によって引き起こされて、イトリズマブで処置された、重症の病気患者の、臨床治療の改善。
【0119】
院外の(extra hospitalary)気管支肺炎(図6A)と診断されて予後も監視され、常習的喫煙者でありながら気管支喘息を患うという病歴がある女性患者が、静脈内に約200mgの用量のmAbイトリズマブ(配列番号4および6)を受けた。収容時の彼女の生命に関するパラメータは以下のとおりであった:温度 38.2℃、呼吸速度 120および心拍数 89、血圧 90/60、SatO2 98、PO2 116、PCO2 88.6、クレアチニン 50、ヘマトクリット値 0.32、白血球像(leukogram) 16.5×109、リンパ球 0.24および単球 0.02、血小板 350×109、パラメータは患者がサイトカインストームを経験したこと指し示した。mAbに加えて、彼女は、メロペネムおよびバンコマイシン、ゲンタマイシン、オセルタミビル、オメプラゾール、Flaxiheparin、モルヒネ、ミダゾラム、ビタミン治療薬、クロルヘキシジンの0.1%での口腔洗浄との同時処置を受けた。
【0120】
放射線学的な改善が48時間にて観察され、ならびに生命に関するパラメータの有意な改善も観察された(図6B)。コンピュータ断層撮影を抗体の投与から10日後に実施し、間質性肺炎の兆候は示されず、肺底に石灰化結節のみを示したが、これは一般的にこの患者などの常習的喫煙者に見出される。さらにまた、抗体の投与に関連する有害事象は報告されなかった。これに続く感染症もなかった。収容から14日後、医学的に判断して患者を退院させた。
【0121】
例6.イトリズマブ処置は、PCRによっては確認されていないCOVID-19が疑われる患者において高い回復率を示した。
【0122】
COVID-19肺炎(PCRによる確認はされていない)の臨床上の疑いに起因してRoberto Rodriguez Hospital(Moron,Ciego de Avila)にて収容された総勢22名の患者が、静脈内に200mg用量のイトリズマブ(配列番号4および6)を、およびこの事例のうち1名においては2用量のこの抗体を受けた。病院に収容されたとき患者は、重篤、重症、または中等症の状態にあり、重症化のリスクが高かった。炎症性のパラメータのうち濃度を抗体の投与前および48時間後に決定した。C反応性タンパク質濃度(図7)およびフェリチン濃度(図8)の中央値は、処置から48時間後に減少したが、このことはイトリズマブ治療が、重症のCOVID疾患および/またはサイトカインストームに関連するマーカーの低減を引き起こしたことを証明する。図9は、抗体の投与前に観察された高レベルの炎症にもかかわらず、すべての中等症および重症の患者が、および処置されたすべての患者のうち86%が回復したことを示す。
【0123】
例7.入院を要するCOVID-19患者の処置
【0124】
臨床試験は、RT-PCRでのSARS-CoV-2感染がウイルス学的な診断によって確認され、かつ大気中安静時の酸素飽和度が≦94%であるCOVID-19感染症の臨床上の悪化に起因して入院の要件を満たす18歳を上回る男性または女性の成人を包含した。<200のPaO2/FiO2比、または直前の値から25%超の劣化によって定義されるとおりの中等症~重症のARDSの患者、およびベースライン血清フェリチンレベルが≧400ng/mLであるか、またはIL-6レベルが正常上限(ULN)の4倍より高い患者を包含した。
【0125】
初回用量のイトリズマブ(配列番号4および6)を1.6mg/kgにて投与した。in-vitroでのCD6受容体占有率を評価し、1.6mg/kg用量は99%受容体占有率を示した。何名かの患者において、要すれば、追加の用量の0.8mg/kgを1週間後に投与した。それらの患者が宿主炎症反応を異なる度合いで経験したところ、これに続く週1回の用量はすべての患者において必要なかった。判断は、臨床状態および炎症マーカーに基づき治験責任医師の裁量に委ねた。本研究において最大4回まで週1回の用量が可能であった。
【0126】
例8.サイトカインストームの症状に先立つCOVID-19患者の処置
【0127】
初回用量のイトリズマブ(配列番号4および6)を1.6mg/kgにて投与した。1.6mg/kgというこの負荷用量は、慢性の尋常性乾癬の患者に承認された用量であって、最大1.6mg/kgまでの用量が、数種のフェーズ2および3の臨床試験においてi.v.注入として投与されており、用量制限毒性を示すいずれの証拠もないことから選んだ。イトリズマブは抗CD6抗体であるところin-vitroでのCD6受容体占有率を評価し、1.6mg/kg用量が99%受容体占有率を示したので、これを初回用量として選んだ。何名かの患者において、要すれば、追加の用量の0.8mg/kgを1週間後に投与した。それらの患者が宿主炎症反応を異なる度合いで経験したところ、これに続く週1回の用量はすべての患者において必要なかった。判断は、臨床状態および炎症マーカーに基づき治験責任医師の裁量に委ねた。本研究において最大4回まで週1回の用量が可能であった。
【0128】
例9.入院しているCOVID-19患者のイトリズマブでの処置
標準治療(standard of care therapy)を受けている20名のCOVID-19対象に、イトリズマブ(配列番号4および6)の初回1.6mg/kg静脈内注入を施す。初回用量からの有害症状がないかまたは軽症の対象であって、COVID-19の症状を経験し続ける対象において、彼らに追加の1.6mg/kgを2週毎投与する。6名の対象は、1用量を1.6mg/kgイトリズマブにて受けた;7名の対象は、2用量を1.6mg/kgにて、処置の間を2週間空けて受けた;3名の対象は、1.6mg/kgの1用量イトリズマブを受け、1週間後に彼らは0.8mg/kgを受けて、もう1週間後に彼らは0.8mg/kgイトリズマブの最後の処置を受けた;4名の対象は、1.6mg/kgの1用量イトリズマブを受け、その後、各用量の間に1週間の間隔をおいて3週間、彼らは追加の3用量を0.8mg/kgにて受けた(合計4処置)。
【0129】
例10.標準治療に加えてイトリズマブまたはプラシーボでのCOVID-19患者の処置
【0130】
COVID-19の患者は2つの群に分けられ、一方がプラシーボをプラスして標準治療を受け、もう一方が標準治療に加えてイトリズマブの静脈内注入初回1.6mg/kg(理想的な体重に基づく)を受ける。第8日に処置群の患者は、彼らが以下:- a)病院から退院していない場合; b)病院で回復していない場合; c)初回用量のアナフィラキシーを有さない場合; d)ALC 0.5を有さない場合;およびd)活動性結核と診断されていない場合、追加の0.8mg/kgを受ける。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】