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特表2023-526904カップリングテルペンコンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】カップリングテルペンコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20230619BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230619BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230619BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230619BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230619BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230619BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230619BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230619BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q19/00
A61K8/49
A61K47/54
A61P17/00
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566069
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 FR2021050905
(87)【国際公開番号】W WO2021240099
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】2005150
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】522421783
【氏名又は名称】ラボラトワール エリジェ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュシー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ,エミリ
(72)【発明者】
【氏名】シュルパ,イゴール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC41
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD46
4C076EE09
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC842
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD41
4C083EE01
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、自己組織化特性を有するコンジュゲートの製造のための、最大でも1つのC=C不飽和を有する直鎖状、又は任意選択で分岐したテルペンの使用、及び式(I)の自己組織化剤に関し、X(-スペーサー-Y-テルペン)p(I)式中、「テルペン」が、直鎖状、又は任意選択で分岐しており、最大でも1つのC=C不飽和を有し;「Y」が、結合又は生分解性結合を有する分子断片であり;「スペーサー」が、少なくとも1つの炭素原子を含む結合又は断片であり;「X」が、少なくとも1つの生分解性結合を含む分子断片であり;「p」が、0.1~4であり;「-スペーサー-Y-」基が、任意選択で結合であり得;また、式(I)の自己組織化剤を活性分子MAと組み合わせることによって得られるコンジュゲートでもあってもよい。


【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化特性を有するコンジュゲートの製造のための、最大でも1つのC=C不飽和を有する任意選択で分岐した直鎖状テルペンの使用。
【請求項2】
前記テルペンが15~25個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記テルペンが生物由来であり得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記テルペンがフィトール又はイソフィトールなどのフィトール誘導体であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
式(I)の自己組織化剤であって、
X(-スペーサー-Y-テルペン)
(I)
式中、
-「テルペン」が、請求項1~4のいずれか一項に定義されるとおりであり、
-「Y」が、結合又は生分解性結合を有する分子断片であり、
-「スペーサー」が、少なくとも1つの炭素原子を含む結合又は断片であり、
-「X」が、少なくとも1つの生分解性結合を含む分子断片であり、
-「p」が、0.1~4であり、
-「-スペーサー-Y-」基が、任意選択で結合であり得る、自己組織化剤。
【請求項6】
前記スペーサーが以下の断片のうちいずれかを含むことを特徴とし、
式中、「n」が、独立して、0~6、好ましくは1~4の整数である、請求項5に記載の自己組織化剤。
【請求項7】
「Y」及び/又は「X」が、以下の断片のうちのいずれか1つを含むことを特徴とし、
【化1】
式中、
-「u」が、独立して、0~6、好ましくは0~1の整数であり、
-「R」が、水素原子、C1-C6アルキル基、C4-C8芳香族基、又は単環式若しくは多環式(C1-C6)-アルキル-(C4-C8)アリール基であり、例えば、Rが、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、又はベンジル基を表すことができる、請求項5又は6に記載の自己組織化剤。
【請求項8】
「X」の前記少なくとも1つの生分解性結合がイオン結合を含み、かつ/又は「Y」の前記生分解性結合が共有結合であることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の自己組織化剤。
【請求項9】
式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲートであって、
MA(-AA)
(II)
式中、
「AA」が、請求項5~8のいずれか一項に定義される自己組織化剤であり、
「MA」が、生物学的に活性な分子であり、
「k」が、0.1~6である、コンジュゲート、
並びに、これらの薬学的又は化粧品的に許容される塩及び/又は溶媒和物。
【請求項10】
MAが、イブプロフェン、パラセタモール、4-nBu-レゾルシノール、6-nHex-レゾルシノール、アゼライン酸、カフェイン酸、フェルラ酸、グリチルリチン酸、ヒアルロン酸、コウジ酸、リノール酸、リポ酸、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸、アデノシン三リン酸、エスシン、アルブチン、バクチオール、ビス(Et)-ヘキシル-ジヒドロキシメトキシベンジル-マロネート、ビサボロール、ボルジン、カフェイン、カナビジオール(canabidiole)、カロテノイド、コエンザイムA、コエンザイムQ10、ジヒドロキシアセトン ジヒドロキシメチルクロモニルパルミン酸、D-パンテノール、エクトイン、グラブリジン、イデベノン、L-カミチン(L-camitine)、リコカルコンA(licochalchone A)、メントール、N-アセチル-テトラペプチド-2、N-アセチルテトラペプチド-9、ナイアシンアミド、オレウロペイン、フィコシアニン、プロキシラン、レゾルシノール、レスベラトロール、スーパーオキシドディスムターゼ、トリペプチド-29、チアミンピロリン酸、バニリン、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンB8、ビタミンC、及びビタミンEから選択されることを特徴とする、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
MAが、抗しわ剤、皮膚色調改質剤、皮膚の発毛を制御するための薬剤、表面抗座瘡剤、皮膚引き締め剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗しわ剤、抗脂漏剤、鎮静剤、収斂剤、微小循環活性化剤、保湿剤、創傷治癒剤、皮膚色調改質剤、芳香剤、発毛制御剤、引き締め剤、再生剤、又はふっくら剤などの化粧活性を有する薬剤であることを特徴とする、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
以下の連続するステップ:
(a1)請求項9に記載のコンジュゲートを水混和性溶媒S1に溶解させるステップ、
(b1)水中のナノ沈殿ステップ、次いで、
(c1)少なくとも前記溶媒S1を減圧下で蒸発させるステップを含むことを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のコンジュゲートの水性媒体中のナノ粒子又はマイクロ粒子自己組織化のための方法。
【請求項13】
以下の連続するステップ:
(a2)水中油エマルションを調製するステップ
(b2)高圧ホモジナイザーを使用して油滴のサイズを縮小するステップを含むことを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のコンジュゲートの水性媒体中のナノ粒子又はマイクロ粒子自己組織化のための方法。
【請求項14】
水中油エマルションを調製するステップ(a2)が、水、水素化レシチン、及び任意選択でプロパンジオールなどのC~Cアルキルジオールを用いて水溶液を調製することを含む、請求項13に記載の自己組織化方法。
【請求項15】
水中油エマルションを調製するステップ(a2)が、可溶化剤、レチニルフィトレート、及びブチルヒドロキシトルエン(BHT)からなる油相を調製することを含む、請求項13又は14に記載の自己組織化方法。
【請求項16】
水中油エマルションを調製するステップ(a2)が、油相を水性相に、例えば、40~60℃の温度及び/又は1000~3000rpm、例えば2000rpmの速度で、5~10分間、回転子/固定子型攪拌下で導入することを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の自己組織化方法。
【請求項17】
ステップ(a2)で得られた前記エマルションを高圧ホモジナイザーに導入するステップ(b2)が、例えば、20~30℃の温度条件下、及び1500~2500barの圧力、例えば2000barの圧力で行われる、請求項13~16のいずれか一項に記載の自己組織化方法。
【請求項18】
ステップ(b2)が少なくとも1回繰り返される、請求項13~17のいずれか一項に記載の自己組織化方法。
【請求項19】
請求項12~18のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、ナノ粒子又はマイクロ粒子。
【請求項20】
請求項9~11のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む、ナノ粒子又はマイクロ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、活性分子の投与のためのナノ粒子を得るために、特定のテルペンと目的の分子との間の生分解性結合を介して結合されるコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
化学でよく知られているテルペンのクラスは、ナノ粒子の形成に関して既知であり、薬学的目的のための分子などの目的の分子と結合して、それらの生物学的利用能を向上させるか、又はそれを可能にすることができる。
【0003】
例えば、WO2015/173367は、ナノ粒子に自己組織化することができる、本明細書に記載の式(I)のオキサザホスホリン-ゲラニルのコンジュゲートを開示する。
【0004】
WO2014/091436は、スクアレン性の少なくとも1つの炭化水素陽イオン分子に非共有結合された少なくとも1つのグリコサミノグリカン巨大分子(フォンダパリヌクス又は誘導体など)を含むナノ粒子を開示する。
【0005】
FR2988092は、本明細書に記載の式(A)の5-(1,2-ジヒドロキシ-エチル)-3,4-ジヒドロキシ-5H-フラン-2-オン(ビタミンC)複合体又は誘導体を、少なくとも1つの炭化水素ラジカル、例えばスクアレン、ファメソール、ゲラニオールなどに共有結合して開示する。特に、生成物が水相中でナノ粒子に自己組織化することがFR2988092に開示されている。
【0006】
WO2010/049899は、18個の炭素原子を含み、少なくとも1つの2-メチル-ブタ-2-エン単位(より具体的にはスクアレン性)を含む、少なくとも1つの炭化水素ラジカルに共有結合した少なくとも1つのベータ-ラクタム分子から形成される複合体、これらの複合体のナノ粒子、及びそれらの調製プロセスに関する。複合体が少なくとも1つのスタチンを含むことが分かる(例えば、本文献の請求項1において)。
【0007】
WO2010/049900は、18個の炭素原子を含み、少なくとも1つの2-メチル-ブタ-2-エン単位(より具体的にはスクアレン性)を含む、少なくとも1つの炭化水素ラジカルに共有結合した少なくとも1つのスタチン分子から形成される複合体、これらの複合体のナノ粒子、及びそれらの調製プロセスに関する。複合体が少なくとも3つの二重結合を含むことが分かる(例えば、本文献の請求項1において)。
【0008】
WO2009/150344は、スクアレン構造又はそれに類似する構造を有する少なくとも1つのC18炭化水素化合物である少なくとも1つの炭化水素化合物に共有結合した、10~40ヌクレオチドを含む少なくとも1つの核酸分子から形成される複合体に関する。
【0009】
WO2009/071850は、スクアレン又は同様の構造を有する炭化水素誘導体の少なくとも1つの分子に共有結合された、当該薬剤の少なくとも1つの分子を含む、低い水溶性を有する治療剤の水分散性誘導体に関する。
【0010】
FR2874016は、ゲムシタビン誘導体、より具体的には、本明細書に記載する式(I)の2,2’-ジフルオロ-2’-デオキシシチジン誘導体のナノ粒子に関する。この式Iの置換基は、C18炭化水素アシルラジカル、より具体的には、スクアレノイルラジカルであり得る。スクアレノイルの機能は、極性溶媒の存在下に置いたときに、表面張力の著しい低下若しくは表面張力の急速な低下を締固めるか、又は引き起こす能力を維持することであることが、本文献によって与えられる。
【0011】
FR2608988及びFR2608942は、ナノ粒子の形態の物質の分散性コロイド系の調製に関する。
【0012】
したがって、当技術分野の全体の状態は、いくつかの二重結合を有するテルペンを含み、極性溶媒の存在下に置いたときに表面張力の著しい低下若しくは表面張力の急速な低下を締固めるか、又は引き起こす能力をテルペンに与える、ナノ粒子に関する。不飽和(例えば、分極性)結合の濃縮は、この効果を可能にする。しかしながら、驚くべきことに、出願人は、はるかに低い不飽和レベルを有するテルペンも使用することができることを発見した。これは、特に生物由来であり得る生成物を提供する、という面で興味深い視点を開いている。
【0013】
したがって、より正確には、本発明は、数十ナノメートルから数百ナノメートルの範囲のサイズを有するナノオブジェクトに水中で自発的に自己組織化することができる形成された抱合体であって、早期の生分解から目的の医薬、獣医、植物検疫又は化粧品分子を保護することを可能にするコンジュゲートに関する。フィトール(又は他のテルペン)間の結合の生物学的培地での分解は、目的の分子を放出することを可能にする。したがって、本発明は、目的の分子の生物学的利用能及び/又は薬物動態特性の改善を可能にする。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明は、自己組織化特性を有するコンジュゲートの製造のための、最大でも1つのC=C不飽和を有する直鎖状の、任意選択で分岐したテルペンの使用に関する。
【0015】
また、本発明は、式(I)の自己組織化剤であって、X(-スペーサー-Y-テルペン)
(I)
式中、
-「テルペン」が、本明細書で定義されるとおりであり、すなわち、最大でも1つのC=C不飽和を有する直鎖状の、任意選択で分岐したテルペンであり得、
-「Y」が、結合又は生分解性結合を有する分子断片であり、
-「スペーサー」が、少なくとも1つの炭素原子を含む結合又は断片であり、
-「X」が、少なくとも1つの生分解性結合を含む分子断片であり、
-「p」が、0.1~4であり、好ましくは、pは、1又は2に等しい整数であり、
-「-スペーサー-Y-」基が、任意選択で結合であり得る、自己組織化剤に関する。
【0016】
更に、本発明は、式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲートであって、
MA(-AA)
(II)
式中、
「AA」が、本明細書で定義される自己組織化剤であり、
「MA」が、生物学的に活性な分子であり、
「k」が、0.1~6であり、好ましくは、kが、1又は2に等しい整数である、コンジュゲート、
並びに、これらの薬学的又は化粧品的に許容される塩及び/又は溶媒和物に関する。
【0017】
本発明はまた、MAが、抗しわ剤、皮膚色調改質剤、皮膚の発毛を制御するための薬剤、表面抗座瘡剤、皮膚引き締め剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗しわ剤、抗脂漏剤、鎮静剤、収斂剤、微小循環活性化剤、保湿剤、創傷治癒剤、皮膚色調改質剤、芳香剤、発毛制御剤、引き締め剤、再生剤、又はふっくら剤(plumping agent)などの化粧活性を有する薬剤であることを特徴とする、本明細書に記載のコンジュゲートに関する。
【0018】
本発明は、上記式(II)によるコンジュゲートを、(1)水混和性溶媒S1中の溶液中で提供し、(2)水中でナノ沈殿させ、(3)少なくとも溶媒S1を減圧下で蒸発させる、水性媒体中の自己組織化方法にも関する。
【0019】
より具体的には、本発明は、以下の連続するステップ:
(a1)本明細書に記載のコンジュゲートを水-混和性溶媒S1に溶解させるステップ、
(b1)水中のナノ-沈殿ステップ、次いで、
(c1)少なくとも溶媒S1を減圧下で蒸発させるステップを含むことを特徴とする、本明細書に記載のコンジュゲートの水性媒体中のナノ粒子又はマイクロ粒子自己組織化の方法にも関する。
【0020】
本発明の目的は更に、以下の連続するステップ:
(a2)水中油エマルションを調製するステップ、次いで、
(b2)高圧ホモジナイザーを使用して油滴のサイズを縮小するステップを含むことを特徴とする、本明細書に記載のコンジュゲートの水性媒体中のナノ粒子又はマイクロ粒子自己組織化の方法にも関する。
【0021】
本発明は、ステップ(b2)を少なくとも1回繰り返す、本明細書に記載の自己組織化方法にも関する。
【0022】
本発明は、本明細書に記載の方法によって得られるナノ粒子又はマイクロ粒子にも関する。
【0023】
本発明は、本明細書に記載のコンジュゲートを含むナノ粒子又はマイクロ粒子にも関する。
【0024】
本発明は、上述の式(I)の自己組織化剤を含む、医薬、獣医及び/又は化粧品製剤に関する。
【0025】
本発明は、上述の式(II)の自己組織化コンジュゲートを含む、医薬、獣医及び/又は化粧品製剤にも関する。
【0026】
本発明は、特に、MAが、抗しわ剤、皮膚色調改質剤、皮膚の毛髪成長制御剤、表面抗座瘡剤、皮膚引き締め剤、表面抗座瘡剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗しわ剤、抗脂漏剤、鎮静剤、収斂剤、微小循環活性化剤、保湿剤、創傷治癒剤、皮膚色調改質剤、芳香剤、発毛制御剤、引き締め剤、再生剤、又はふっくら剤などの化粧活性を有する薬剤であることを特徴とする、上記式(II)の自己組織化コンジュゲートを含む、本明細書に記載の化粧品製剤に関する。
【0027】
定義
本発明の文脈において、「直鎖状の、任意選択で分岐したテルペン」という表現は、炭素数が5の倍数であり、任意選択でC1-C4アルキル基によって分岐した炭素の直鎖を含む炭化水素を意味すると理解される。C1-C4アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基、好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。
【0028】
本発明の文脈において、「不飽和」という用語は、例えば、アルケンの場合、2つの炭素原子などの2つの原子間の二重結合を意味すると理解される。
【0029】
本発明の文脈において、「自己組織化」という用語は、(例えば、水の存在下で)粒子が刺激されるか又はそのような状態に置かれるときに、分子が当該粒子に自発的に組み立てられることを意味すると理解される。こうして形成された粒子のサイズに応じて、ナノ粒子(サイズは1ナノメートル~200ナノメートル程度)、又はマイクロ粒子(サイズはマイクロメートル~約500マイクロメートル程度)の問題となるであろう。
【0030】
本発明の文脈において、「自己組織化剤」という用語は、薬剤、すなわち、上記で定義される自己組織化を可能にする分子断片を意味すると理解される。
【0031】
本発明の文脈において、「生分解性結合」という用語は、生物学的手段、すなわち、生物学的システム、例えば、酵素又は酸から破壊することができる化学結合(共有結合又は静電結合、例えば、イオン結合、又は親和性結合)を意味すると理解される。したがって、結合の破壊は、少なくとも1つの水分子を伴うことができ、次いで加水分解の問題である。
【0032】
本発明の文脈において、「生物学的に活性な分子」という用語は、考慮される生物学的実体に対してより一般的な生理学的効果を有し得る、生物学的効果を有する任意の分子を意味すると理解される。「生物学的効果」は、少なくとも1つの処置された生物学的実体と、処置なしの少なくとも1つの同一又は類似の生物学的実体との比較によって識別され得る。
【0033】
本発明の文脈において、「ナノ沈殿」という用語は、ナノメートルサイズの粒子の形態で溶解した液体の形成及び分離を引き起こす、上記で定義された分子の自己組織化を意味すると理解される。
【0034】
本発明の文脈において、「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断において、被験者の組織との接触に好適であるか、又は妥当な利益/リスク比に見合った過度の毒性又は他の合併症なしで被験者に投与することができる組成物、化合物、塩などを指す。したがって、「薬学的に許容される塩」という用語は、一般に、本発明の化合物を好適な有機又は無機酸と接触させることによって調製することができる非毒性塩を指すことができる。例えば、医薬塩としては、アセテート、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゾエート、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、臭化物、酪酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二リン酸塩、フマル酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラウレート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、及び同様の化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の文脈において、「溶媒和物」という用語又は「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、本発明の化合物の1つ以上の分子と溶媒の1つ以上の分子との組み合わせから形成される溶媒和物を指す。溶媒和物という用語には、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物などの水和物が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
使用
したがって、本発明は、自己組織化特性を有するコンジュゲートの製造のための、最大でも1つのC=C不飽和を有する直鎖状の、任意選択で分岐したテルペンの使用に関する。
【0037】
本発明は、テルペンが15~25個の炭素原子を含むことを特徴とする、本明細書に記載される使用に関する。
【0038】
本発明は、より具体的には、本明細書に記載される使用に関し、テルペンが生物由来であり得ることを特徴とする。
【0039】
「生物由来であり得る」という表現は、本発明の文脈において、数段階で提供され得る化合物(抽出、酸による処理、塩基による処理、沈殿物など)が、バイオマスに由来することを意味すると理解される。対照的に、有機合成生成物は、化学及び/又は石油化学生成物から生成される。
【0040】
好ましくは、本発明は、テルペンがフィトール又はイソフィトールなどのフィトール誘導体であることを特徴とする、本明細書に記載の使用に関する。
【0041】
フィトールには、以下の式がある。
【化1】
【化2】
【0042】
「誘導体」という用語は、本発明の文脈において、関連生成物の異性体を指し得る。例えば、フィトールの誘導体は、イソフィトール、又はフィタントリオールであってもよい。誘導体はまた、ハロゲン、-OH、-NH、-CH、-C(O)OH、又は-C(O)ORから選択されるグラフト化置換基を伴う生成物を指してもよく、式中、Rは独立してC1-C4アルキルである。
【0043】
自己-組織化剤
本発明は、上記式(I)の自己組織化剤に関する。
【0044】
一実施形態では、スペーサーは、任意選択で、-OH、C1-C4アルキル、及びC1-C4アルキルオキシから選択される1つ以上の置換基で置換されたC1-C10炭化水素鎖であってもよく、任意選択で、
-S、N、及びOなどの1つ以上のヘテロ原子;
--NHC(O)-、-OC(O)-、OC(O)O、-NH-、-NHC(O)-NH-、-SS-、-CR=N-NH-C(O)-、-ONH-、-ONR-、-O-C(=S)-S-、-C(=S)-S-などの1つ以上の化学基(式中、Rは、独立して、H、アリール基、又はC1-C6アルキル基、好ましくはC1-C3アルキル基などのアルキル基であり);
-1つ以上のヘテロアリール基若しくはアリール基;並びに/又は
-好ましくは4~6個の原子を含み、かつ任意選択で-OH、C1-C4アルキル及びC1-C4アルキルオキシ基から選択される1つ以上の置換基によって置換されている、1つ以上の脂肪族環又は複素環を含んでいる。
【0045】
本発明の文脈において、「アリール」基は、非置換又は置換芳香族環を指す。好ましくは、アリール基は、任意選択で、C1-C4アルキル、C1-C4アルキルオキシ、OH又はハロゲン原子などの1つ以上の基で置換されたフェニル基である。
【0046】
本発明の文脈において、「ヘテロアリール」は、1つ以上の芳香族原子が、N、O、又はSなどのヘテロ原子である芳香族環系を指す。ヘテロアリール基は、置換されるか、又は置換されなくてもよく、好ましくは、4~6個の環原子を含む。ヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジルトリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、又はオキサゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の文脈において、「脂肪族複素環」は、1つ以上の芳香族原子がN、O、又はSなどのヘテロ原子である非芳香族環系を指す。ヘテロアリール基は、置換されるか、又は置換されなくてもよく、好ましくは4~6個の環原子を含む。脂肪族複素環の例としては、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、ジオキサン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、及び類似の断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
一実施形態では、スペーサーは、好ましくは2~6個のモノマーを含む、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのポリエーテル基を含み得る。
【0049】
一実施形態では、スペーサーは、
-アミノ酸及びそれらの誘導体;
-2~10個、好ましくは2~5個のアミノ酸及びそれらの誘導体を含むペプチド;
-S、N、及び/若しくはOなどの1つ以上のヘテロ原子、並びに/又は-NHC(O)-、-OC(O)-、-NH-、-NH-C(O)-NH-、-SS-、及び-CH=N-NH-C(O)-などの1つ以上の化学基、及び/若しくは1つ以上のヘテロアリール若しくはアリール基に任意選択で連結されたC1-C10炭化水素鎖であって、-OH、C1-C4アルキル、及びC1-C4アルコキシ基から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換される、炭化水素鎖、並びに、
-それらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0050】
一実施形態では、スペーサーは、アミノ酸、ジペプチド、及びそれらの誘導体から選択される。例えば、スペーサーは、そのシトルリン、リジン、オルニチン、アラニン、フェニルアラニン、システイン、グリシン、バリン、ロイシン及びそのジペプチドに基づいてもよい。
【0051】
別の実施形態では、スペーサーは以下の断片:-NH-、-O-、-S-、-NR-、-ONH-、-ONR-、-OC(O)O-、-OC(S)S-、-N(R)C(S)S-、及びそれらの組み合わせから選択され得、式中、Rは、独立して、アルキル、好ましくはC1-C3アルキルであり、任意選択で、ポリエーテル基、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであり、好ましくは、当該断片の両側に2~6個のモノマーを含む。
【0052】
別の実施形態では、スペーサーは、mが1~8の整数であるY1-(CH2)m-Y2、又はqが1~5の整数であるY1-(CH2-CH2-O)q-CH2-CH2-Y2あってもよく、Y1及びY2は、独立して、-O-、-NH-、-S-、-OC(O)-、-C(O)NR-、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-O-C(S)-S-、-NR-、-ONH-、-ONR-、-OC(O)-O-、NRC(S)S-、及び-C(O)O-から選択され、式中、Rは、独立して、アルキル、好ましくはC1-C3アルキルである。特定の実施形態では、スペーサーは、Y1-(CH2)m-Y2であってよく、式中、mは、1~6、好ましくは1~4の整数であり、Y1及びY2は、独立して、-O-、-NH-、-S-、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-OC(O)-、
及び-C(O)O-から選択される。
【0053】
更に、上述の式(I)の自己組織化剤において、pは、有利に、0.5~3.5、0.7~3、又は0.9~2.5であり得る。好ましくは、pは、1、2、3及び4から選択される実質的に整数である。ここで、「実質的に」という用語は、プラス又はマイナス0.1の変動を意味する。
【0054】
一実施形態では、本発明は、上記の式(I)の自己組織化剤であって、スペーサーが、以下の断片のうちのいずれかを含むか、又はそれからなることを特徴とし、
【化3】
式中、「n」が、独立して、0~6、好ましくは1~4の整数である、自己組織化剤に関する。
【0055】
一実施形態では、本発明は、上記の式(I)の自己組織化剤であって、「X」の当該生分解性結合が少なくとも1つのイオン結合を含み、かつ/又は「Y」の生分解性結合が共有結合であることを特徴とする、自己組織化剤に関する。
【0056】
一実施形態では、本発明は、「Y」及び/又は「X」が以下の断片のいずれか1つを含むか、又はそれらからなることを特徴とする、上記の式(I)の自己組織化剤に関する:
-S、N、及びOなどの1つ以上のヘテロ原子、並びに/又は-NH-、-O-、-S-、-NR-、-ONH-、-ONR-、
-NHC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)-、-NH-C(O)-NH-、-OC(S)S-、-N(R)C(S)S-、-SS-、
-CH=N-NH-C(O)-などの1つ以上の化学基を含む断片、及びそれらの組み合わせ(Rが、独立して、アルキル(好ましくはC1-C3アルキル)、若しくはヘテロアリール若しくはアリール基である);
-S、N及び/若しくはOなどの1つ以上のヘテロ原子、並びに/又は-NHC(O)-、-OC(O)-、-NH-、-NH-C(O)-NH-、-SS-、-CH=N-NH-C(O)-、ヘテロアリール若しくはアリールなどの1つ以上の化学基に連結されたC1-C10炭化水素鎖であって、任意選択で、-OH、C1-C4アルキル及びC1-C4アルコキシ基から選択される1つ以上の置換基で置換された、炭化水素鎖、並びに、
-それらの組み合わせ。
【0057】
一実施形態では、本発明は、「Y」及び/又は「X」が以下の断片のうちのいずれか1つを含むか、又はそれらからなることを特徴とする、上記の式(I)の自己組織化剤に関する:-NH-、-O-、-S-、-NR-、-ONH-、
-ONR-、-OC(O)O-、-OC(S)S-、-N(R)C(S)S-、-C(O)O-、-C(O)NH-、-NHC(O)NH-、-N=C-、-S-S-及びそれらの組み合わせであって、Rが、独立して、アルキル、好ましくはC1-C3アルキルであり、任意選択で、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのポリエーテル基を有し、好ましくは、当該断片の両側に2~6個のモノマーを含む。
【0058】
一実施形態では、本発明は、「Y」及び/又は「X」が少なくとも1つのイオン断片、例えば、-NH 、-CO 、-PO 、-SO 、-SO 2-及び/又は-NR を含むことを特徴とする、上述の式(I)の自己組織化剤に関する。式中、Rは独立して、C1-C4アルキルである。
【0059】
一実施形態では、本発明は、「Y」及び/又は「X」が、-C(-O-)2、-B(-O-)2、及び/又は-O-PO(-O-)2などの少なくとも1つの三価断片を含むことを特徴とする、上記の式(I)の自己組織化剤に関する。
【0060】
「三価」という用語は、本発明の文脈において、断片が3つの他の機能に結合する能力を有することを意味すると理解される。活性分子は、1つ以上の結合機能を含み得る。したがって、「Y」及び/又は「X」が、-C(-O-)2、-B(-O-)2、及び/又は-O-PO(-O-)2などの少なくとも1つの三価断片を含む場合、「Y」(及び/又は「X」)断片とMAとの比は、1:1及び/又は1:2であってもよい。例えば、2つの「MA」活性分子断片及び1つの「-スペーサー-Y-テルペン」断片、又は2つの「-スペーサー-Y-テルペン」断片及び1つの「MA」活性分子断片。好ましくは、2結合断片は、アセタール及びホウ素アセタールを表し、これらの機能は、同じ分子に対する結合、すなわち、テルペン(すなわち、Y及び/又はXを含む式(I)の断片)とMAとの1:1の複合体を表す。
【0061】
一実施形態では、本発明は、上記の式(I)の自己組織化剤であって、「Y」及び/又は「X」が、以下の断片のうちのいずれかを含むか、又はそれからなることを特徴とし、
【化4】
式中、
-「u」が、独立して、0~6、好ましくは0~1の整数であり、
-「R」が、水素原子、C1-C6アルキル基、C4-C8芳香族基、又は単環式若しくは多環式(C1-C6)-アルキル-(C4-C8)-アリール基であり、例えば、Rが、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、又はベンジル基を表すことができる、自己組織化剤に関する。
【0062】
式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲート
本発明は、上記式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲートに関する。
【0063】
式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲート中のMAとAAとの結合は、共有結合(本明細書では「共有結合型」と称する)であってもイオン結合(本明細書では「イオン結合型」と称する)であり得る。
【0064】
したがって、本発明の目的は、パクリタキセルなどの低い生物学的利用能を有することが知られている医薬品などの活性成分MAを含む式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲートに関するものであってもよい。
【0065】
活性医薬成分(MA)の例としては、抗菌剤、抗座瘡剤、抗炎症剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、消毒剤、免疫抑制剤、抗出血剤、血管拡張剤、創傷治癒剤、抗バイオフィルム剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
更に、本発明の目的は、化粧品成分などの活性成分MAを含む式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲートに関するものであってもよい。
【0067】
化粧品成分(MA)の例としては、4-nBu-レゾルシノール、6-nHex-レゾルシノール、カフェイン酸、フェルラ酸、コウジ酸、ビオチン、アデノシン一リン酸、アデノシン三リン酸、エスシン、アルブチン、レチノール、バクチオール、ビサボロール、ボルジン、カフェイン、カンナビジオール、コエンザイムA、コエンザイムQ10、ジヒドロキシアセトン、D-パンテノール、グラブリジン、イデベノン、L-カミチン、リコカルコンA、N-アセチル-テトラペプチド-2、N-アセチル-テトラペプチド-9、ナイアシンアミド、オレウロペイン、レゾルシノール、レスベラトロール、トリペプチド-29、バニリン、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンB8、ビタミンC、ケイ皮酸、ヘキシルレゾルシノール、及びビタミンEが挙げられる。
【0068】
更に、本発明は、植物検疫成分などの活性成分MAを含む式(II)の自己組織化特性を有するコンジュゲートに関するものであってもよい。
【0069】
植物検疫成分(MA)の例としては、安息香酸、ベナラキシル、ブロモキシニル、キャプタン、カルベンダジム、カルフェントラゾン、カルボン、ダミノジド、ディカンバ、ジフェノコナゾール、エポキシコナゾール、フェンヘキサミド、フラザスルフロン、フルジオキソニル、グリホサート、イソプロトゥロン、イプロジオン、イミダクロプリド、イマザリル、MCPA、メコプロップ、エトコナゾール、プロピコナゾール、スルホスルフロン、ワルファリン、及び構造YDPAPPPPPP、TDVDHVFLRFアミド、SDVDHVFLRFアミドのペプチドが挙げられ、
【0070】
活性分子MAの例としては、アムロジピン、ガロパミル、ベラパミル、バミジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、ベラパミル、キニジン、アミオダロン、リバーシン、マタイレシノール、シホレノール、及びシクロスポリン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、又はジルチアゼムが挙げられる。
【0071】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、イブプロフェン、パラセタモール、4-nBu-レゾルシノール、6-nHex-レゾルシノール、アゼライン酸、カフェ酸、フェルラ酸、グリチルリチン酸、ヒアルロン酸、コウジ酸、リノール酸、リポ酸、ビオチン、二リン酸 アデノシン一リン酸、アデノシン三リン酸、エスシン、アルブチン、バクチオール、ビス-(Et)-ヘキシル-ジヒドロキシメトキシベンジルマロネート、ビサボロール、ボルジン、カフェイン、カナビジオール、コエンザイムA、コエンザイムQ10、ジヒドロキシアセトン、ジヒドロキシメチルクロモニルパルミン酸、D-パンテノール、エクトイン、グラブリジン、イデベノン、L-カルニチン、リコカルコンA、メントール、N-アセチル-テトラペプチド-2、N-アセチルテトラペプチド-9;ナイアシンアミド、オレウロペイン、フィコシアニン、プロキシラン、レゾルシノール、レスベラトロール、トリペプチド-29、チアミンピロリン酸、バニリン、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンB8、ビタミンC、ケイ皮酸、ヘキシルレゾルシノール、ビタミンEから選択されることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、コルチゾン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ビタミンC、カモ酸、アスタキサンチン、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、β-カロテン誘導体、ルテイン、アラントイン、ビタミンA、葉酸、バンコマイシン、リファンピシン、四級アンモニウム塩及びクロルヘキシジンから選択されることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、MAが、20kDa未満、好ましくは15kDa未満、より好ましくは10kDa未満、更により好ましくは5kDa未満、例えば3kDa未満又は2kDa未満のサイズであることを特徴とする、上述の式(II)のコンジュゲートに関する。
【0074】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:ペニシリン及び関連医薬品、カルバペネム、セファロスポリンアミノグリコシド及び関連医薬品、エリスロマイシン、バシトラシン、ムピロシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、フシダートナトリウム、リンコマイシン、クリンダマイシン、マクロライド、ノボビオシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ストレプトグラミン、抗葉酸剤、例えば、スルホンアミド、トリメトプリム及びその組み合わせ、並びにピリメタミン、合成抗菌剤、例えば、ニトロフラン、メタゾールアミドマンデル酸及び馬尿酸、ニトロイミダゾール、キノロン、フルオロキノロン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミド、パラアミノサリチル酸(PAS)、シクロセリン、カプレオマイシン、プロチオナミド、チアセタゾン、バイオマイシン、スプラマイシン、糖ペプチド、グリシルシクリン、ケトライド、オキサゾリジノン、イミペネン、アミカシン、ネチルマイミシン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、セフトリアキソン、アズトレオナム及びメトロニダゾール、エピロプリム、サンフェトリネムナトリウム、ビアペネム、ダイネミシン、セフルプレナム、セフォセリフィン、スロペネム、シクロチアリジン、カルモナム、セフォゾプラン、セフェタメト・ピボキシルから選択される抗菌剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0075】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:アダパレン、アゼライン酸、クリンダマイシン(例えば、リン酸クリンダマイシン)、ドキシサイクリン(例えば、ドキシサイクリン一水和物)、エリスロマイシン、サリチル酸及びレチノイン酸(「レチン-A」)などの角質溶解剤、ノルゲスチマート、有機過酸化物、イソトレチノイン及びトレチノインなどのレチノイド、スルファセタミドナトリウム、タザロテン及びアセトアミノフェンから選択される局所抗座瘡剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0076】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、クロルフェニラミンイソチペンジル塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、メトジラジン塩酸塩などから選択される抗ヒスタミン剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。上記式(II)のコンジュゲートにおける「MA」基として使用され得る局所麻酔剤としては、例えば、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカインp-ブチルアミノ安息香酸2-(ジ-エチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、塩酸プロカム、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、塩酸ピペロカイン、ジクロニン及びジクロニン塩酸塩が挙げられる。
【0077】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:アルコール、四級アンモニウム化合物、ホウ酸、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン誘導体、フェノール、テルペン、殺菌剤、消毒剤(チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、塩化セチルピリドリウム、及び臭化トリメチルアンモニウムを含む)から選択される消毒剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0078】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs);イブプロフェン及びナプロキセンなどのプロピオン酸誘導体;インドメタシンなどの酢酸誘導体;メロキシカムなどのエノール酸誘導体、アセトアミノフェン;サリチル酸メチル;サリチル酸モノグリコール;アスピリン;メフェナム酸;フルフェナム酸;ジクロフェナック;アルクロフェナック;ジクロフェナクナトリウム;イブプロフェン;ケトプロフェン;ナプロキセン;プラノプロフェン;フェノプロフェン;スリンダク;フェンクロフェナク;クリダナク;フルルビプロフェン;フェンティアザック;ブフェキサマック;ピロキシカム;オキシフェンブタゾン;ペンタゾシン;チアラミド塩酸塩;プロピオン酸クロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プロピオン酸ハルベタゾール、ジフロラゾンジアセテート、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、デオキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フロ酸モメタゾン、フルチカゾンベタメタゾンジプロピオネート、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、デソニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾンベラレート、プレドニカーベート、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン及び当業者に知られている他のもの、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、フッ化ベタメタゾン、フルオロメタゾンなどのステロイドから選択される抗炎症剤であり、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-21-モノエステル(例えば、ヒドロコルチゾン-21-アセテート、ヒドロコルチゾン-21-ブチレート、ヒドロコルチゾン-21-プロピオネ-ト、ヒドロコルチゾン-21-バレレート)、ヒドロコルチゾン-17,21-ジエステル(例えば、ヒドロコルチゾン-17,21-ジアセテート、ヒドロコルチゾン-17-アセテート-21-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17,21-ジブチレートなど)、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、フルメタゾン、プレドニゾロン、若しくはメチルプレドニゾロンなどの効力がより弱いコルチコステロイドのうちの1つであり得、又はプロピオン酸クロベタゾール、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニドなどの効力がより強いコルチコステロイドであってもよいことを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0079】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:アルフェンタニル、ベンゾカイン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ブタンベン、カプサイシン、クロニジン、コデイン、ジブカイン、エンケファリン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、インドメタシン、リドカイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキソモルフィン、ニコモルフィン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プラモキシン、プロパラカイン、プロポキシフェン、プロキシメタカイン、スフェンタニル、テトラカイン、及びトラマドールから選択される鎮痛剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0080】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:フェノール;クロロキシレノール;ジクロニン;ケタミン;メントール;プラモキシン;レゾルシノール;プロカム医薬品、例えば、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン;シンチョカイン;コカイン;デキシバカイン;ジアモカイン;ジブカイン;エチドカイン;ヘキシルカイン;レボブピバカイン;リドカイン;メピバカイン;オキセサゼイン;プリロカイン;プロカイン;プロパラカイン;プロポキシカイン;ピロカイン;リソカイン;ロドカイン ロピバカイン;テトラカイン;及び誘導体、例えば、ブピバカインHCl、クロロプロカインHCl、ジアモカインシクラメート、ジブカインHCl、ジクロニンHCl、エチドカインHCl、レボブピバカインHCl、リドカインHCl、メピバカインHCl、プラモキシンHCl、プリロカインHCl、プロカインHCl、プロカインHCl プロポキシカインHCl、ロピバカインHCl、及びテトラカインHClなどの薬学的に許容できる塩及びエステルから選択される麻酔剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0081】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、以下の活性成分:プロタミン硫酸、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、スルファン酸ナトリウム、ラチン、及びヘスペリジンから選択される抗出血剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0082】
一実施形態では、本発明は、上記の式(II)のコンジュゲートであって、MAが、抗しわ剤、皮膚色調改質剤、皮膚の発毛を制御するための薬剤、表面抗座瘡剤、皮膚引き締め剤、抗微生物剤、抗酸化剤、抗しわ剤、抗脂漏剤、鎮静剤、収縮剤、微小循環活性化剤、保湿剤、創傷治癒剤、皮膚色調改質剤、芳香剤、発毛制御剤、引き締め剤、再生剤、又はふっくら剤などの化粧活性を有する薬剤であることを特徴とする、コンジュゲートに関する。
【0083】
具体的には、MAは、例えば、アラニン、アルギニン、システイン、グリシン、セリシン又はチロシン、カフェイン酸、ケイ皮酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒアルロン酸、ニコチン酸、サリチル酸、アデノシン、アラントイン、バクチオール、β-カロテン、カフェイン、カンナビジオール、セラミド、コレステロール、グラブリジン、ナイアシンアミド、パンテノール、プラステロン、アセチルヘキサペプチド-8、トリペプチド-3、パルミチン酸ヘタペプチド-15、プロキセラチン、レスベラトロール、レチノール、ユビキノン、バニリン、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンC、ビタミンEから選択される化粧活性を有する薬剤であり得る。
【0084】
ナノ粒子
本発明の別の目的は、本発明の化合物を含むナノ粒子である。より具体的には、本発明の化合物は、構成要素として、より好ましくは、ナノ粒子の主成分として存在し、これは、本発明の化合物(すなわち、式(I)又は(II)のコンジュゲート)が、ナノ粒子の総重量の50重量%超、例えば、60重量%超、70重量%超、80重量%超、90重量%超、95重量%超、98重量%超、99重量%超、又は99.5重量%超を占め得ることを意味する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、本発明の化合物によって形成される。言い換えると、ナノ粒子は、本発明の化合物の分子の自己組織化から生じる。
【0085】
本発明の一実施形態は、共有結合を必要としない、本発明の式(I)による荷電(正又は負)直鎖状テルペン分子(フィトール又は誘導体など)と荷電(それぞれ、負又は正)活性分子MAとの間のイオン対の形成に基づくナノ粒子系に関する。したがって、本発明に従う式(I)に従う荷電(正又は負)直鎖状テルペン分子の量を、本発明に従う活性分子に調整して、ナノ粒子を得ることが可能である。本発明の式(I)による荷電(正又は負)直鎖状テルペン分子と活性分子MAとの比(すなわち、式IIの指標「k」)は、0.1~6で変動し得る。好ましくは、kは、0.5~5.5、0.7~5、1~4、1.5~3、又は2~3である。好ましくは、kは、1、2、3、4、5及び6から選択される実質的に整数である。「実質的に」という用語は、プラス又はマイナス0.1の変動を意味する。
【0086】
更に、共役活性成分分子は、直接又はスペーサーを介して、本発明に従う直鎖状テルペン(フィトール又はフィトール誘導体など)に単に共有結合してもよい。
【0087】
検討されている活性成分と、本発明に従う直鎖状テルペン(フィトールなど)との共有結合は、当業者には何ら困難をもたらさない。このようにして、本発明は、本発明による直鎖状テルペンの予期しない性質を利用して、上記で定義した式(II)に記載の活性成分を有するナノ粒子を形成することを可能にする。
【0088】
好ましくは、当該ナノ粒子の平均直径(塩の形態であっても、共有結合のみを含む分子の形態であっても)は、10nm~800nm、より好ましくは50nm~400nm、最も好ましくは100nm~200nmの範囲である。したがって、本発明のナノ粒子の平均流体力学的直径は、典型的には、10~800nm、好ましくは30~500nm、特に50~400nmである。例えば、ナノ粒子は、70nm~200nm、例えば、100nm~250nmの平均流体力学的直径を有し得る。平均流体力学的直径は、20℃、より好ましくは25℃での動的光散乱によって決定されることが好ましい。換言すれば、平均直径が10~800nm、特に75~500nm、より好ましくは100nm~200nmの粒子の単分散コロイド懸濁液は、本発明の範囲内で製造される。
【0089】
粒径は、経口投与後のナノ粒子のインビボ形質転換を決定する重要なパラメータであり、一般的なルールとして、例えば、500nm未満のサイズは、上皮との相互作用を容易にすると考えられる。
【0090】
好ましくは、式(I)又は(II)の化合物の調製方法は周知である。当業者は、標準的な手順を参照し得る。本出願の実施例において、本発明の化合物の調製のための一般的なプロトコールが提供される。
【0091】
例えば、特許出願WO2012/076824は、かかるナノ粒子を合成するための方法を開示する。本発明による化合物は、ナノ粒子に自己組織化することができる。例えば、ナノ沈殿は、他の製造方法と比較して毒性の低い溶媒のワンステップ調製、容易なスケーリング、及び使用の利点を組み合わせた一般的な技術である。したがって、ナノ粒子の形成は、化合物の生物学的活性を増加させ、これらの活性分子の細胞への送達を改善することができる。更に、ナノ粒子形態の本発明の化合物は、その遊離形態と比較して、改善された保存安定性を有し得る。式(I)及び(II)による本発明の化合物は、ナノ粒子の形態、又はナノ粒子を生成することを意図した、すなわち、水溶液に入れることを意図した製剤であり得る。
【0092】
例えば、式(I)及び/又は(II)の化合物のナノ粒子は、化合物をアセトン又はエタノールなどの有機溶媒に溶解させた後、攪拌下でこの混合物を水相に添加することにより得られ、界面活性剤の有無にかかわらず、ナノ粒子の形成をもたらすことができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、リン脂質誘導体及び親油性ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。本発明は、好ましくは水性媒体中に、本発明の粒子を含有するコロイド系にも関する。
【0093】
一実施形態では、可溶化剤と呼ばれる、可溶化補助剤などの式(I)及び/又は(II)アジュバントの化合物に添加することも可能である。かかる可溶化剤の例は、ポリグリセロール(例えば、10-ポリグリセリルラウレート)、リン脂質誘導体(例えば、水素化レシチン)、糖エステル(例えば、スクロースステアレート)、糖アルコール(例えば、デシルグルコシドなどのグルコシド)アミノ酸誘導体(例えば、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム)、セチルリン酸カリウム、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ラウリルカルバミン酸イヌリン、C12~C15アルキル安息香酸塩、ココカプリレート、ココカプレート、イソアミルラウレート、炭酸ジカプリリル、マレイン酸ジカプリリル、又はクエン酸トリエチルである。
【0094】
より具体的には、本発明に従うナノ粒子は、少なくとも以下のステップを含む方法によって得ることができる:
-水溶性有機溶媒中の上記で定義した式(II)の化合物の溶液を提供するステップ、
-当該有機溶液を、攪拌下で、当該水相中の懸濁液中で予想されるナノ粒子を瞬時に形成する水相に注ぎ込むステップと、
-必要に応じて、当該ナノ粒子の単離するステップ。
【0095】
上で見たように、本発明の目的は、以下の連続するステップ:
(a2)水中油エマルションを調製するステップ、
(b2)高圧ホモジナイザーを使用して油滴のサイズを縮小するステップを含むことを特徴とする、本明細書に記載のコンジュゲートの水性媒体中のナノ粒子又はマイクロ粒子への自己組織化のための方法にも関する。
【0096】
本発明は、水中油エマルションを調製するステップ(a2)が、水、水素化レシチン、及び任意選択でC2~、プロパンジオールなどのアルキルジオールを用いて水溶液を調製することを含む、本明細書に記載の自己組織化方法にも関する。
【0097】
本発明は、水中油エマルションを調製するステップ(a2)が、可溶化剤、レチニル-フィトレート、及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)からなる油相を調製することを含む、本明細書に記載の自己組織化方法にも関する。
【0098】
本発明はまた、本明細書に記載の自己組織化方法に関し、水中油エマルションを調製するステップ(a2)は、油相を水相に導入すること、例えば、40~60℃の温度及び/又は1000~3000rpm、例えば2000rpmの速度で、5~10分間、回転子/固定子型攪拌下で導入することを含む。
【0099】
本発明は、ステップ(a2)で得られたエマルションを高圧ホモジナイザーに導入するステップ(b2)が、例えば、20~30℃の温度条件下、及び1500~2500bar、例えば2000barの圧力で行われる、本明細書に記載の自己組織化方法にも関する。
【0100】
治療的応用
式(I)又は(II)の化合物、本発明に従うナノ粒子、及び本明細書に記載される任意の特定の化合物は、薬剤として使用され得る。
【0101】
本発明は更に、癌、アレルギー、特に皮膚アレルギー、炎症反応、特に皮膚炎、例えば、湿疹、乾癬、白斑、紅斑、炎症性脱毛症、ウイルス感染症、細菌感染症、喘息などの呼吸器疾患、座瘡などの皮膚症状、自己免疫疾患、疼痛、神経変性疾患、ミオパチー、変形症、肝炎、腎不全、泌尿器疾患、眼疾患、消化管疾患、COVID19、及び/又は血液疾患を治療するための医薬として使用するための、本発明に従う式(I)若しくは(II)に記載の化合物、又は本発明に従う医薬組成物に関する。
【0102】
本発明は、前述の疾患及び/又は状態の治療及び/又は予防のための医薬として使用するための当該組成物も対象とする。
【0103】
したがって、別の態様において、本発明は、式(I)の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物、本発明のナノ粒子、並びに本明細書に記載の任意の特定の化合物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物に関する。本発明の化合物又はナノ粒子は、当該医薬組成物中に活性成分として存在する。
【0104】
本発明の医薬組成物は、以下を含んでよい。
-0.01~90重量%の本発明の化合物又はナノ粒子、及び10重量%~99.99重量%の薬学的に許容される賦形剤から、組成物の総重量に対して表される割合。好ましくは、医薬組成物は、以下を含んでよい。
-0.1重量%~50重量%の本発明の化合物又はナノ粒子、及び50重量%~99.9重量%の薬学的に許容される賦形剤。
【0105】
本発明はまた、被験者における疾患を治療又は予防するための方法に関し、当該方法は、被験者に、治療上有効な量の式(I)の化合物又は上記に定義されるナノ粒子を投与することを含む。
【0106】
「治療上有効な量又は用量」という表現は、本発明の文脈において、被験者、好ましくはヒトにおいて、検討されている疾患を予防する、排除する、遅らせる、又は当該疾患によって引き起こされる、又はそれに関連する1つ以上の症状若しくは障害を軽減若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味すると理解される。本発明の化合物及びその医薬組成物の有効量、及びより一般的には、投与スケジュールは、当業者によって決定され、適合され得る。有効用量は、従来の技術を使用して、及び同様の状況で得られた結果を観察することによって決定することができる。本発明の化合物の治療有効量は、治療又は予防される疾患、その重症度、投与経路、関連する任意の共療法、患者の年齢、体重、全身の健康、病歴などに応じて変動するであろう。典型的には、患者に投与される化合物の量は、約0.01mg/kg~500mg/kg体重、好ましくは0.1mg/kg~300mg/kg体重、例えば25~300mg/kgの範囲であり得る。
【0107】
本発明の化合物又はナノ粒子は、被験者に、連続した数日間、例えば、2~10日間、好ましくは3~6日間、毎日投与されてもよい。この治療は、2週間又は3週間ごと、又は1、2、又は3ヶ月ごとに繰り返され得る。あるいは、本発明の化合物又はナノ粒子は、週1回、2週間に1回、又は月1回、単回用量として投与され得る。治療は、年に1回以上繰り返され得る。
【0108】
有利には、本発明のイオン形態、又は親和性(親油性/親水性によって)によって想定されるアプローチは、以下を回避することが可能である:i)煩雑な合成、ii)化学修飾による医薬の活性の喪失のリスク、及びiii)活性化合物を放出するために、活性化合物と自己組織化剤との間の共有結合を破壊する必要性。
【0109】
あるいは、本発明の共有結合形態に従って想定されるアプローチは、分解/除去に対して感受性の低い分子を得ることを潜在的に可能にする。
【0110】
本発明に従う化合物を含む医薬組成物は、全身的に(例えば、経口的に)又は局所的に(例えば、局所的に)投与され得る。
【0111】
本発明の化合物(例えば、医薬組成物、皮膚科組成物、又は化粧品組成物の形態で)は、経口、口腔内、舌下、直腸、静脈内、筋肉内、皮下、骨内、皮膚、経皮、粘膜、経粘膜、関節内、心臓内、脳内、腹腔内、鼻腔内、肺、眼内、膣内、又は経皮を含むがこれらに限定されない任意の従来の経路によって投与され得る。実際、本発明の化合物の投与経路は、治療される疾患及び疾患に罹患している患者の臓器又は組織に応じて変動し得る。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の化合物は、静脈内又は経口投与される。上述のように、被験者又は患者は、好ましくは、ヒトである。
【0112】
例えば、本発明は、固有の皮膚の老化に対抗するための化粧剤としての本発明に従うコンジュゲートの使用にも関するものであってもよい。
【0113】
本発明はまた、本発明に従う少なくとも1つのコンジュゲートを含むことを特徴とする局所投与用組成物に関するものであってもよい。
【0114】
本発明はまた、例えば、レチノール又はその誘導体の1つとの抗しわ作用などの、本発明によるコンジュゲート、又はこのコンジュゲートを含む組成物のその化粧作用のための化粧用途に関するものであってもよい。
【0115】
それらの小さいサイズを考慮すると、本発明のナノ粒子は、水性懸濁液として静脈内投与され得るため、血管微小循環と適合性がある。
【0116】
好ましくは、本発明は、特に、口腔咽頭粘膜、口腔粘膜、肺粘膜、膣粘膜、鼻粘膜、及び消化管粘膜などの粘膜に適用可能な医薬組成物の調製のための、任意選択で凍結乾燥物の形態で、上記に定義されるナノ粒子を対象とする。いくつかの特定の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥物又は凍結乾燥粉末であり得る。当該粉末は、患者への静脈内又は経口投与などの投与の直前に、好適なビヒクルに溶解又は懸濁され得る。
【0117】
したがって、本発明はまた、少なくとも上記のナノ粒子を含む凍結乾燥物に関する。好ましい実施形態によれば、この凍結乾燥物は、トレハロース、グリセロール及びグルコース、より好ましくはトレハロースを含む少なくとも1つの凍結保護剤を更に含む。
【0118】
したがって、本発明は、少なくとも本発明に従うナノ粒子を含有する経口投与を意図する固体形態、任意選択で、凍結乾燥物の形態での用量、又はナノ粒子を再構成することを意図する調製物を対象とする。この固体形態の用量は、有利には、例えば、腸溶性コーティングされた錠剤又はカプセルなどの遅延放出を伴う固体形態の投薬量であり得、その表面コーティングは、遅延放出を確実にする。
【0119】
特許請求されたナノ粒子は、経口以外の投与、例えば局所的又は皮下投与にも好適であり得る。最後に、本発明によるナノ粒子は、ナノ粒子(炭化水素鎖)のサイズ及び性質ゆえに、式(I)又は(II)の本発明による製品の高度に改善された皮膚浸透に関して特に興味深い。
【0120】
薬学的組成物は、任意の種類のものであり得る。より具体的には、例として、本発明によるナノ粒子と適合する医薬製剤は、静脈内注射又は注射;生理食塩水又は精製水溶液;吸入用組成物;クリーム、軟膏、ローション、ゲル;特にビヒクルとして、水、リン酸カルシウム、糖、例えば、ラクトース、デキストロース又はマンニトール、滑石粉末、ステアリン酸、デンプン、炭酸水素ナトリウム、及び/又はゼラチンを組み込んだカプセル、糖被覆錠剤、丸剤、及びシロップであり得る。
【0121】
特定の実施形態では、医薬組成物は、固体経口ガレヌス形態、液体ガレヌス形態、例えば静脈内使用のための懸濁液、クリーム、軟膏、ゲルなどの局所塗布用ガレヌス形態、経皮パッチ、粘膜接着パッチ又は錠剤であってもよく、これには、包帯又は接着剤包帯、坐薬、鼻腔内投与又は肺投与用のエアロゾルが含まれる。
【0122】
上述のように、本発明に従って検討される、本発明によるナノ粒子の形態の活性治療化合物の製剤は、いくつかの態様において、既に存在する製剤の有利な代替物である。
【0123】
したがって、本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体と関連して、少なくとも1つのナノ粒子を含み、任意選択で、上述の凍結乾燥剤の形態である、薬学的又は皮膚学的組成物、特に薬剤に関する。
【0124】
使用され得る薬学的に許容される賦形剤は、特に、”Handbook of Pharmaceuticals Excipients,American Pharmaceutical Association,”Pharmaceutical Press,6th revised edition(2009)に記載されている。典型的には、本発明の薬学的組成物は、上述の式(I)の化合物又はそのナノ粒子を少なくとも1つの薬学的賦形剤と混合することによって得ることができる。
【0125】
ナノ粒子が水溶液中の分散液で使用される場合、それらは、隔離剤又はキレート剤、抗酸化剤、pH調節剤及び/又は緩衝剤などの賦形剤と組み合わせることができる。
【0126】
特に、pH耐性固体用量形態は、胃の酸性pHに関して、本発明のナノ粒子の絶対生物学的利用能を改善するために特に有用である。
【0127】
好適な賦形剤の例としては、水又は水/エタノール混合物、充填剤、担体、希釈剤、結合剤、凍結防止剤、可塑剤、崩壊剤、潤滑剤、香料、緩衝剤、安定剤、着色剤、抗酸化剤、剥離剤、軟化剤、防腐剤、界面活性剤、ワックス、乳化剤、湿潤剤、及びスリップ剤などの溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。希釈剤の例としては、微結晶セルロース、デンプン、修飾デンプン、リン酸二塩基性カルシウム二水和物、硫酸カルシウム三水和物、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、単糖類又は二糖類、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ガラクトース、及びソルビトール、キシリトール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
結合剤の例としては、デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、アカシアゴム、及びゼラチンなどのガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
潤滑剤の例としては、脂肪酸及びその誘導体、例えば、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、アクリレート、パルミトステアリン酸グリセリル ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛若しくはステアリン酸、又はPEGなどのポリアルキレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤は、コロイドシリカ、二酸化ケイ素、タルクなどから選択され得る。崩壊剤の例としては、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムなどのクロスカルメロース塩、デンプン、及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
界面活性剤の例としては、シメチコン、トリエタノールアミン、ポリソルベート、及びそれらの誘導体、例えば、tween(登録商標)20又はtween(登録商標)40、ポロキサマー、ラウリルアルコール、セチルアルコールなどの脂肪アルコール、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのアルキル硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤の例としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0131】
活性化合物に加えて、液体ガレヌス形態は、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤、及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、ポリエチレングリコール、キサンタンガム及びソルビタン脂肪酸エステル、又はそれらの混合物を含有してもよい。所望であれば、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、抗酸化剤、緩衝剤、pH調節剤などのようなアジュバントを含んでもよい。
【0132】
懸濁液は、本発明の化合物又はナノ粒子に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及び同様のものなどの懸濁剤を含有し得る。膣又は直腸坐剤は、本発明の化合物を、好適な非刺激性賦形剤又は担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、又は通常の温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸又は膣腔で溶解し、活性成分を放出する坐剤ワックスと混合することによって調製することができる。軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、本発明の活性化合物に加えて、動物及び植物性脂肪、油、ワックス、ケロシン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はそれらの混合物などの賦形剤を含有し得る。
【0133】
本発明の活性化合物と組み合わせられる賦形剤は、(i)当該活性化合物の安定性を含む物理化学的特性、(ii)当該活性成分の所望の薬物動態プロファイル、(iii)用量形態、及び(iv)投与経路に応じて変動し得ることは言うまでもない。
【0134】
経口固体用量の形態としては、錠剤、カプセル、丸薬、及び顆粒が挙げられるが、これらに限定されない。任意選択で、当該経口固体用量形態は、腸溶性コーティン又は他の好適なコーティング又はシェルなどのコーティング及びシェルで調製されてもよい。かかるコーティング及び/又はシェルのいくつかは当業者に周知である。使用され得るコーティング組成物の例は、高分子物質及びワックスである。液体用量形態としては、薬学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
図1】コンジュゲート3(破線)及びコンジュゲート4(実線)のナノ粒子懸濁液の経時的安定性を示すグラフである。
図2】コンジュゲート7(大きな間隔の破線)、コンジュゲート8(実線)及びコンジュゲート9(小さな間隔の破線)のナノ粒子懸濁液の経時的安定性を示すグラフである。
図3】0日、1日及び2日における、コンジュゲート9(黒列)及びレチノール(灰色列)の時間の関数としての面積の変化を示す棒グラフである。
図4】暗所におけるレチノール及びレチニルフィトレート含有量の進行を示す棒グラフである。
図5】光におけるレチノール及びレチニルフィトレート含有量の進行を示す棒グラフである。
図6】4℃でのレチノール及びレチニルフィトレート含有量の進行を示す棒グラフである。
図7】45℃におけるレチノール及びレチニルフィトレート含有量の進行を示す棒グラフである。
図8】PhytoVecを有する皮膚層におけるレチニルフィトレートの累積量(μg/cm)を示す棒グラフである。
図9】ゲルC、D、Eから得た皮膚層中のレチノール及びレチニルフィトレートの累積量(μg/cm)を示す棒グラフである。
【実施例
【0136】
以下の略語は、以下の実施例のためのものである。
【0137】
CAS:英語での国際的な参照文献”Chemical Abstracts Service”。
【0138】
Dm:真皮
【0139】
【数1】
【0140】
Ep:表皮
【0141】
e:厚み
【0142】
FZ:フランツ型拡散セル
【0143】
h:time(時間単位)
【0144】
INCI:化粧品成分の国際命名法
【0145】
LOD:検出限界
【0146】
LOQ:定量限界
【0147】
LR:レシーバー液体
【0148】
OECD:Organization for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)
【0149】
PBS:リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)
【0150】
IWL:不感水分損失
【0151】
SC:角質層
【0152】
sem:平均の標準誤差
【0153】
SD:標準偏差
【0154】
V:体積
【0155】
rpm:毎分回転数
【0156】
NMRスペクトルH及び13Cを、テトラメチルシラン(TMS)を基準として、CDCl中のBrucker Advance 300MHz分光計で測定した。化学シフトは、ppmで表される。
【0157】
平均粒径は、検出角173°、波長633nmを有する25℃のMalvern-Panalytical Nano-Sizer ZS(登録商標)上の動的光散乱(DLS)法によって測定した。報告されたサイズは、3つの測定値の平均によって決定される。測定は、ポリスチレンキュベットで実施した。
【0158】
HPLC分析は、C18 Vintage series KR C18-5μm-150×4.6mmカラム(Interchim(登録商標))上で、Ultimate 3000 Systemチェーン、Dionex(登録商標),Franceを使用して実施した。試料を、λ=325nmでの紫外線吸収によって検出した。
【0159】
実施例1:合成生成物
フィチルモノコハク酸塩の調製:
【化5】
【0160】
EtN(5.40mL、38.85mmol、1.05当量)、次いでDMAP(204mg、1.69mmol、0.05当量)を、PhMe(135mL)中のフィトール(10.00g、33.78mmol、1.0当量)及びコハク酸無水物(3.54g、35.47mmol、1.05当量)の溶液に添加し、反応物を7時間攪拌下で50℃に加熱する。
【0161】
TLC分析(EtOAC/CyH-60:40、CAMで表示)は、出発材料の完全な変換を示す。所望の化合物の形成は、真正な試料との比較によって確認される。
【0162】
反応媒体を飽和NHCl水溶液で加水分解した後、分液漏斗に移し、有機相を分離する。水相をEtOAc(3×50mL)で抽出する。有機抽出物をプールし、HCl水溶液(0.1N)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
【0163】
次いで、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-30:70~50:50)により精製し、予想される化合物(12.84g、32.42mmol、96%)を黄色の油として得る。
【0164】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 5.33(td,J=7.1,1.3Hz,1H)、4.62(d,J=7.1Hz,2H)、2.91-2.47(m,4H)、1.97(t,J=7.6Hz,2H)、1.72(brs,3H)、1.55-1.00(m,19H)、0.92-0.73(m,12H)ppm。
【0165】
NMR 13C(75MHz,CDCl)δ 178.3、172.2、142.8、117.9、61.7、39.8、39.4、37.4、37.4、37.3、36.6、32.8、32.7、29.0、28.9、27.8、25.0、24.8、24.5、22.7、22.6、19.7、19.7、16.3ppm。
【0166】
フィチルモノ-ジチオグリコレートの調製:
【化6】
【0167】
ジチオグリコール酸(0.5g、2.74mmol、2.95当量)及び無水酢酸(2mL)を、不活性雰囲気下、21℃で2時間攪拌する。次いで、混合物を、浴温度(<30℃)を制御しながら、PhMe(3×20mL)で減圧下、共沸留去する。次いで、更に精製することなく、得られた残渣を次のステップに使用する。得られた無水物をCHCl(20mL)に溶解し、次いでフィトール(275mg、0.928mmol、1.0当量)及びDMAP(11mg、0.092mmol、0.1当量)を添加する。反応物を21℃で1時間攪拌し、反応の終了をTLCにより監視する(EtOAc/CyH=1:1)。次いで、粗化合物を濾過により単離し、減圧下(T<30℃)で乾燥させて、黄色の半固体(0.627g)を得る。次いで、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH=20:80+1%AcOH)により精製し、黄色の固体として予想される化合物(338mg、0.734mmol、79%)を得る。
【0168】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 10.84(s,1H)、5.37(t,J=7.2Hz,1H)、4.69(dd,J=7.0,3.7Hz,2H)、3.63(dd,J=11.6,3.9Hz,5H)、2.18-1.90(m,2H)、1.72(d,J=3.6Hz,4H)、1.62-0.98(m,20H)、0.87(td,J=6.3,4.0Hz,12H)ppm。
【0169】
カルボン酸を含有する分子のための一般手順A:
EDC・HCl(1.1当量)をCHCl(0.2M)中のカルボン酸(1.05当量)の溶液に添加し、反応媒体を10分間攪拌する。フィトール(1.0当量)、続いてDMAP(0.1当量)を添加し、反応媒体を21℃で12時間攪拌する。
【0170】
反応媒体を飽和NHCl水溶液で加水分解した後、分液漏斗に移し、有機相を分離する。水相をEtOAc(3×30mL)で抽出する。有機抽出物を回収し、飽和NaCl水溶液(2×30mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
【0171】
ニコチン酸フィチル:
【化7】
【0172】
ニコチン酸(200mg、1.625mmol)から調製した。
【0173】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-0:100~20:80)により精製し、予想される化合物(474mg、1.182mmol、73%)を黄色の油として得る。
【0174】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 9.24(s,1H)、8.78(d,J=3.8Hz,1H)、8.36(dt,J=7.8,1.9Hz,1H)、7.44(dd,J=7.8,5.0Hz,1H)、5.46(tq,J=7.2,1.2Hz,1H)、4.88(d,J=7.2Hz,2H)、2.04(t,J=7.6Hz,2H)、1.76(d,J=1.2Hz,3H)、1.57-1.00(m,19H)、0.88-0.80(m,12H)ppm。
【0175】
NMR 13C(75MHz,CDCl)δ 165.0、153.1、150.9、143.2、136.8、126.3、123.0、117.7、62.1、39.8、39.3、37.3、37.3、37.2、36.5、32.7、32.6、27.9、24.9、24.7、24.4、22.6、22.5、19.7、19.6、16.4ppm。
【0176】
フィチルシナピネート:
【化8】
【0177】
シナピン酸(113mg、0.530mmol)から調製した。
【0178】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-0:100~30:70)により精製し、予想される化合物(205mg、0.341mmol、67%)をワックス状の白色固体として得る。
【0179】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 7.75(d,J=15.9Hz,1H)、6.78(s,2H)、6.39(d,J=15.9Hz,1H)、5.34(tq,J=7.2,1.2Hz,1H)、4.64(d,J=7.2Hz,2H)、3.85(s,6H)、2.98(t,J=7.2Hz,2H)、2.77(t,J=7.2Hz,2H)、2.00(t,J=7.5Hz,2H)、1.69(s,3H)、1.58-0.98(m,19H)、0.89-0.82(m,12H)ppm。
【0180】
NMR 13C(75MHz,CDCl)δ 172.1、172.0、170.0、152.5、146.7、142.9、132.4、130.8、118.0、117.7、105.0、61.8、56.2(2C)、39.9、39.4、37.5、37.4、37.3、36.7、32.8、32.7、29.8、29.4、28.9、28.0、25.1、24.8、24.5、22.8、22.7、19.8、19.8、16.4ppm。
【0181】
フィチルイブプロフェン酸塩:
【化9】
【0182】
イブプロフェン(206mg、1.00mmol)から調製した。
【0183】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-30:70)により精製し、予想される化合物(426mg、0.880mmol、88%)を淡黄色油として得る。
【0184】
NMR H(300MHz,CDCl):δ 7.49-7.35(d,2H)、7.28-7.13(d,2H)、5.49(t,1H)、4.79-4.66(d,2H)、3.46(q,1H)、2.62-2.45(d,2H)、2.25(t,2H)、2.04-2.00(s,3H)、1.77-1.73(m,1H)、1.66(m,1H)、1.59(d,3H)、1.57-1.22(m,14H)、1.07-1.06(2d,6H)、1.11(s,25H)、1.02-0.93(m,12H)ppm。
【0185】
NMR 13C(75MHz,CDCl):δ 177.1、142.0、140.1、140.0、131.1、131.0、126.5、126.5、121.2、61.5、45.7、45.3、39.4、39.3、36.81(3C)、35.8、34.82(2C)、28.3、27.6、25.1、23.9、23.7、22.73(2C)、22.2(2C)、20.40(2C)、20.3、16.5ppm。
【0186】
フィチルジクロフェネート:
【化10】
【0187】
ジクロフェナク(296mg、1.00mmol)から調製した。
【0188】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-15:85)により精製し、予想される化合物(473mg、0.83mmol、83%)を淡黄色油として得る。
【0189】
NMR H(300MHz,CDCl):δ 7.36(d,J=7.5Hz,1H)、7.23(t,J=7.5Hz,1H)、7.13(d,J=7.5Hz,2H)、7.03(d,J=7.5Hz,1H)、6.93(t,J=7.5Hz,1H)、6.80(t,J=7.5Hz,1H)、5.48(t,J=6.2Hz,1H)、4.80(s,1H)、4.73(d,J=6.2Hz,2H)、3.61(s,2H)、2.08(t,J=5.5Hz,2H)、1.66(t,J=2.9Hz,4H)、1.65-1.60(m,2H)、1.54(dq,J=14.6,7.2Hz,1H)、1.43-1.15(m,16H)、1.01(d,J=6.4Hz,12H)ppm。
【0190】
NMR 13C(75MHz,CDCl):δ 172.4、145.7、140.1、137.9、132.4、130.62、130.6、130.3、129.8(2C)、123.5、122.2、121.2、120.5、118.7、60.8、39.3、36.8(3C)、36.3、35.8、34.8(2C)、28.3、25.1、23.9、23.7、22.7(2C)、20.4、20.4、16.5ppm。
【0191】
アルコールを含有する分子のための一般手順B:
EDC・HCl(1.1当量)を、CHCl(0.2M)中のフィチルモノコハク酸塩(1.05当量)の溶液に添加し、反応媒体を10分間攪拌する。対応するアルコール(1.0当量)、続いてDMAP(0.1当量)を添加し、反応媒体を21℃で12時間攪拌する。
【0192】
反応媒体をNHCl水溶液で加水分解した後、分液漏斗に移し、有機相を分離する。水相をEtOAc(3×30mL)で抽出する。有機抽出物をプールし、飽和NaCl水溶液(2×30mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
【0193】
コハク酸フィチル(4-tert-ブチルシクロヘキシル):
【化11】
【0194】
4-tert-ブチルシクロヘキサノール(シス及びトランス異性体の80:20混合物中の79mg、0.530mmol)から調製した。
【0195】
得られた残渣をシリカゲル濾過(10cm)により精製し、EtOAc/CyH(10:90)で溶出し、予想される化合物(260mg、0.488mmol、97%、シス及びトランス異性体の80:20混合物として単離した)を無色の油として得る。
【0196】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 5.33(m,1H)、4.66(m,3H)、2.60(m,4H)、1.98(t,J=7.5Hz,4H)、1.80(m,2H)、1.66(brs,3H)、1.59-0.98(m,28H)、0.93-0.75(m,21H)ppm。
【0197】
NMR 13C(75MHz,CDCl)δ 172.3、171.8、142.7、118.1、47.2、39.9、39.5、37.5、37.5、37.4、36.7、32.88、32.8、32.3、32.1、29.8、29.6、29.4、28.1、27.7、27.5、25.5、25.1、24.9、24.6、22.8、22.7、19.8、19.8、16.4ppm。
【0198】
(バニリル)コハク酸フィチル:
【化12】
【0199】
バニリン(200mg、1.316mmol)から調製した。
【0200】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-5:95~15:85)により精製し、予想される化合物(521mg、0.489mmol、57%)を淡黄色油として得る。
【0201】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 9.94(s,1H)、7.49(s,1H)、7.46(dd,J=7.8,1.8Hz,1H)、7.23(d,J=7.8Hz,1H)、5.34(td,J=7.1,1.1Hz,1H)、4.64(d,J=7.1Hz,2H)、3.89(s,3H)、2.95(t,J=6.8Hz,2H)、2.76(t,J=6.9Hz,2H)、2.08-1.92(m,2H)、1.69(s,3H)、1.56-1.01(m,19H)、0.84(dd,J=9.3,3.7Hz,12H)ppm。
【0202】
NMR 13C(75MHz,CDCl)δ 190.9、171.9、169.9、151.9、144.9、142.9、135.3、124.6、123.4、117.9、110.9、61.8、56.0、39.9、39.4、37.4、37.4、37.3、36.6、32.8、32.7、29.2、29.0、28.0、25.0、24.8、24.5、22.7、22.6、19.8、19.7、16.4ppm。
【0203】
コハク酸レチニルフィチル:
【化13】
【0204】
レチノール(200mg、0.699mmol)から調製した。
【0205】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(MTBE/CyH-10:90)により精製し、予想される化合物(115mg、0.173mmol、25%)を黄色の油として得る。
【0206】
NMR H(300MHz,CDCl)8 6.64(dd,J=15.0,11.3Hz,1H)、6.27(d,J=15.1Hz,1H)、6.18(d,J=16.2Hz,1H)、6.13(d,J=14.5Hz,1H)、6.10(d,J=16.5Hz,1H)、5.60(t,J=7.1Hz,1H)、5.32(t,J=7.0Hz,1H)、4.75(d,J=7.2Hz,2H)、4.61(d,J=7.1Hz,2H)、2.64(s,4H)、2.05-1.98(m,4H)、1.95(s,3H)、1.88(s,3H)、1.71(s,3H)、1.68(s,3H)、1.63-1.05(m,23H)、1.02(s,6H)、0.85(t,J=6.3Hz,12H)。
【0207】
NMR 13C(75MHz,CDCl)δ 172.4、172.3、143.0、139.3、137.9、137.7、136.7、135.9、130.1、129.4、127.1、125.9、124.4、118.0、61.8、61.6、40.0、39.7、39.5、37.5、37.5、37.4、36.8、34.4、33.2、32.9、32.8、29.3(2C)、29.1(2C)、28.1、27.1、25.2、24.9、24.6、22.8、22.7、21.8、19.9、19.8、19.4、16.5、12.9ppm。
【0208】
(1.3-ジメチルアセトニジル)ペンテノイル-(フィチル)-ジチオジグリコレート:
【化14】
【0209】
パンテノールアセトニド(338mg、0.734mmol)から調製した。
【0210】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-20:80)により精製し、予想される化合物(369mg、0.536mmol、73%)を無色の油として得る。
【0211】
NMR H(300MHz,CDCl)δ 6.74(s,1H)、5.34(t,J=6.6Hz,1H)、4.66(d,J=7.2Hz,2H)、4.20(t,J=6.2Hz,2H)、4.08(s,1H)、3.68(d,J=11.8Hz,1H)、3.51-3.16(m,3H)、3.32-3.17(m,1H)、1.99(t,J=7.6Hz,2H)、1.95-1.84(m,2H)、1.69(s,2H)、1.46(s,3H)、1.42(s,2H)、1.58-0.92(m,29H)、1.04(s,3H)、0.98(s,3H)、0.84(d,J=6.5Hz,8H)ppm。
【0212】
一般手順C:
THF(0.2M)中のカルボン酸(1.0当量)及び2-ヒドロキシエチルジスルフィド(5.0当量)の溶液に、DCC(1.3当量)、DMAP(0.1当量)、次いでEtN(2当量)を連続して添加し、次いで反応媒体を21℃で12時間攪拌する。次いで、反応媒体を濾過し、減圧下で濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。
【0213】
化合物「11」:
【化15】
【0214】
イブプロフェン(206mg、1mmol)から調製した
【0215】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-30:70~50:50)により精製し、予想される化合物(250mg、0.762mmol、76%)を無色の油として得る。
【0216】
NMR H(300MHz,CDCl):δ 7.22(d,J=8.1Hz,2H)、7.11(d,J=8.1Hz,2H)、4.44-4.22(m,2H)、3.83(t,J=5.9Hz,2H)、3.73(q,J=7.2Hz,1H)、2.88(t,J=6.7Hz,2H)、2.83(t,J=5.9Hz,2H)、2.47(d,J=7.2Hz,2H)、1.97-1.75(m,1H)、1.51(d,J=7.2Hz,3H)、0.92(d,J=6.6Hz,6H)ppm。
【0217】
NMR 13C(75MHz,CDCl):δ 172.05、143.14、133.71、130.29、130.29、130.06、130.06、62.69、61.13、45.74、40.95、40.81、38.51、27.63、22.18、22.18ppm。
【0218】
化合物「12」:
【化16】
【0219】
ジクロフェナク(296mg、1mmol)から調製した
【0220】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-40:60)により精製し、予想される化合物(203mg、0.469mmol、47%)を黄色固体として得る。
【0221】
NMR H(300MHz,CDCl):δ 7.35(d,J=7.5Hz,1H)、7.22(t,J=7.5Hz,1H)、7.16(d,J=7.5Hz,2H)、7.01(d,J=7.5Hz,1H)、6.90(t,J=7.5Hz,1H)、6.84(q,J=7.4Hz,1H)、4.47(s,1H)、4.44(t,J=5.0Hz,2H)、3.79(t,J=7.7Hz,2H)、3.42(s,2H)、2.81(t,J=5.0Hz,2H)、2.74(t,J=7.7Hz,2H)ppm
【0222】
NMR 13C(75MHz、CDCl):δ 172.13、145.82、143.69、132.41、130.31、130.18、130.18、129.80、129.80、123.51、122.23、120.13、118.69、62.69、61.13、40.81、38.51、37.01ppm
【0223】
一般手順D:
CHCl(5mL)中の対応するアルコール(1.0当量)及びDIPEA(5.0当量)の溶液を、CHCl(5mL)中のジホスゲン(2.5当量)の冷却(0℃)溶液に添加する。0℃で攪拌して45分後、反応媒体を濃縮する。次いで、残渣をCHCl(5mL)に再溶解し、CHCl(5mL)中のフィトール(1.2当量)、EtN(1.2当量)及びDMAP(0.1当量)からなる溶液を0℃添加する。攪拌1.5時間後、反応媒体をHCl水溶液(1N,10mL)で加水分解し、次いで、CHCl(3x20mL)で抽出する。有機相を収集し、飽和NaC1水溶液(2×20mL)で洗浄し、次いでNaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
【0224】
化合物「13」:
【化17】
【0225】
イブプロフェン誘導体「11」(420mg、1.28mmol)から調製した。
【0226】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-3:97)により精製し、予想される化合物(570mg、0.857mmol、67%)を無色の油として得る。
【0227】
M=665.05g/mol
【0228】
SM:665.6[M+H]
【0229】
化合物「14」:
【化18】
【0230】
ジクロフェナク誘導体「12」(127mg、0.295mmol)から調製した。
【0231】
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/CyH-3:97)により精製し、予想される化合物(138mg、0.182mmol、62%)を黄色の油として得る。
【0232】
M=754.91g/mol
【0233】
SM:754.5[M+H]
【0234】
表1:合成生成物の例
【表1-1】
【表1-2】
【0235】
化合物11及び12を除いて、これらの構造は全て、フィトール断片を含む。
【0236】
例2:自己組織化の例
これら全てのバイオコンジュゲートについて、自己組織化特性を確認した。実際、ナノ物体は、ナノ沈殿/溶媒蒸発法を使用して形成され得る。
【0237】
形成ステップは次のとおりである。
(1)水-混和性有機溶媒中のフィトール化コンジュゲートの溶解
(2)水中のナノ沈殿
(3)減圧下での溶媒の蒸発。
【0238】
全てのコンジュゲートについて、調製されたナノオブジェクトは、特徴付けられており、一般に、以下の特徴を有する:
【0239】
サイズは150~170nmであることが判明
【0240】
0.070~0.270の多分散性指数(PDI)
【0241】
-19.0~-35mVのゼータ電位
【0242】
これらの懸濁液の安定性は、時間の経過とともに研究されており、懸濁液が安定していることが示されている。いくつかの境界線の場合では、ナノオブジェクトは凝集し、媒体のコンジュゲートの沈殿をもたらす傾向がある。にもかかわらず、これらのコンジュゲートの懸濁液の安定性は、プルロニックF68などの界面活性剤の添加によって改善することができることが示されている。したがって、凝集傾向のあるいくつかのコンジュゲートは、0.5~5%(m/m)のプルロニックF68を添加することによって、最大10日間安定した懸濁液を生成することができた。ココアミドプロピルベタイン、ラウレス硫酸ナトリウム、パルミチン酸ソルビタン、ラウリルグルコシド、脂肪アルコール、酸、及びそれらの混合物、リン脂質、コリンホスファチジル、ポリグリセリル、スクロエステルなどの他の界面活性剤も使用され、コンジュゲートの懸濁液に対するそれらの安定化効果について現在研究されている。
【0243】
実施例3:物理学-化学的研究
ナノ沈殿:
EtOH中のコンジュゲートの溶液(0.5mL当たり2mg)を、激しく攪拌したMiliQ水(1mL)に滴下する。ナノ粒子の形成は、溶液が部分的に濁ることで観察される。得られた懸濁液をフラスコに移し、EtOHを回転式蒸発器(200mbar、5分間、次いで130mbar、40℃及び50rpmで1分間)上で蒸発させる。
【0244】
残留懸濁液をバイアルに移し、23℃で保存する。
【0245】
試料は、以下のように調製される。40μLの残留懸濁液を500μLのMiliQ HOに溶解させる。
【0246】
1.ナノ粒子懸濁液の安定性
懸濁液の安定性を経時的に測定し、結果を表2及び3、並びに図1のグラフ及び図2のグラフに要約する。
【0247】
表2:経時的なナノ粒子懸濁液の安定性(コンジュゲート3及び4)
【表2】
【0248】
表3:経時的なナノ粒子懸濁液の安定性(コンジュゲート7、8、及び9、及び4)。
【表3】
【0249】
2.レチノールの安定性に対する植物化プロセスの影響:
ビタミンA(レチノール)は、酸素及び紫外線に敏感であることが知られている。植物化プロセスは、レチノールの安定化を可能にする。この保護は、同じ条件下でのレチノール溶液と比較して、20℃でのコンジュゲート9のナノ粒子懸濁液のHPLCモニタリングによって実証された。
【0250】
ナノ粒子形態のレチノール及びコンジュゲート9の溶液(1:1HO/iPrOH混合物中6mg/L)を周囲光中21℃で保存し、HPLCにより経時的に分析した(24及び48時間)。
【0251】
表4:HPLC条件
【表4】
【0252】
経時的な化合物の面積における変化は、経時的にプロットされる(2つの測定値の平均)。表5及び図3のグラフを参照されたい。
【0253】
表5:時間の関数としての面積の変化。
【表5】
【0254】
CCL:レチノールは、遊離形態では2倍速く分解する。
【0255】
3.化粧品製剤中のコンジュゲートの包含:
1%コンジュゲート9溶液の調製
800mgのコンジュゲート9をEtOH(40mL)に溶解し、次いで、激しく攪拌しながら、HO(80mL)に滴下する(添加物1mL/min)。次いで、懸濁液を回転蒸気中に濃縮する(T=40℃、200未満で50rpm、次いで130mbar)。次いで、HOを添加することにより、体積を80mLに調節する。
【0256】
フェイスクリーム:
フェイスクリームを以下のように調製した。
手順:相Aを均質化し(表6を参照)、次いでB相を導入し(表6を参照)、激しい攪拌(1500rpm)下で10分間均質化する。混合物に相C(表6を参照)を注ぐことにより、エマルションを作製し、10分間激しく攪拌しながら均質化する。最後に、相Dを導入する(表6を参照)。
【0257】
表7:フェイスクリームの組成。
【表6】
【0258】
こうして滑らかな淡黄色のクリームが得られる。
【0259】
水性ゲル:
化粧用ゲル中のコンジュゲート9の含有は、以下のように実施した。
手順:激しく攪拌(1500rpm)しながら、相A(表7を参照)を20分間均質化する。次いで、相Bを導入し(表7を参照)、粉末が完全に溶解するまで均質化する。相Cの予備混合物(表7を参照)を作製し、次いで混合物に導入し、15分間激しく攪拌しながら均質化する。相Dを導入し(表7を参照)、粉末が完全に溶解するまで均質化する。最後に、相EでpH5.0-5.5に調整する。
【0260】
表6:水性ゲルの組成。
【表7】
【0261】
このようにして、鮮やかな黄色のゲルが得られる。
【0262】
実施例4:生物学的用途
1.目的
本研究の目的は、ヒト皮膚移植片に対するエクスビボでの、本発明による革新的な皮膚送達システムの経皮通過の促進効果を評価することである。2つの製剤を比較するために使用されるトレーサーは、レチノールである。
【0263】
各製剤は、単一のドナーからの3つの外植片に適用される。接触期間(24時間)の終了時に、異なる皮膚層(角膜層、表皮及び真皮)におけるレチノールの総濃度を測定し、4点における拡散動態を行う。
【0264】
植物化概念の促進効果を検討するために、以下の2つの式を比較した。
・F1:ナノ粒子形態のフィトールでベクター化したレチノール(0.9%レチノール当量)
・F2:遊離形態のレチノール(0.9%レチノール当量)であって、ガレヌス形態に含まれるプロペネート剤(5%トランスクトール)を含有している
【0265】
注意:トランスクトールの使用は規制されており、未洗浄の身体への適用は2.6%に制限されている。
【0266】
2.材料及び方法
2.1試験品及びアッセイされた分子
2.1.1化粧品製剤へのレチノールの含有:
1%コンジュゲート9溶液の調製
800mgのコンジュゲート9をEtOH(40mL)に溶解し、次いで、激しく攪拌しながら、HO(80mL)に滴下する(添加物1mL/min)。次いで、懸濁液を回転蒸気中に濃縮する(T=40℃、200未満で50rpm、次いで130mbar)。次いで、HOを添加することによって体積を80mLに調節する。
【0267】
式F1:
3%コンジュゲート9溶液の調製
EtOH(35mL)中に2.1gのコンジュゲート9を溶解し、次いで、HO(70mL)中に、激しく攪拌しながら滴下する(添加物1mL/min)。次いで、懸濁液を回転蒸気中に濃縮する(T=40℃、200未満で50rpm、次いで130mbar)。次いで、HOを添加することにより、体積を70mLに調節する。
【0268】
式F1は以下のように作成された。
【0269】
表8:式F1。
【表8】
【0270】
手順:次いで、相Aを均質化し、相Bを導入し、激しい攪拌(1500rpm)で10分間均質化する。混合物に相Cを注ぐことにより、エマルションを作製し、10分間激しく攪拌しながら均質化する。最後にD相を導入する。
【0271】
こうして滑らかな淡黄色のクリームが得られる。
【0272】
式F2:
7.14% 2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol)を含有する1.29%レチノール溶液の調製
レチノール0.9gをEtOH(35mL)中に溶解し、次いで、激しく攪拌しながら、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol)(70mL中5g)の水溶液中に滴下する(添加物1mL/min)。次いで、懸濁液を回転蒸気中に濃縮する(T=40℃、200未満で50rpm、次いで130mbar)。次いで、HOを添加することにより、体積を70mLに調節する。
【0273】
式F2は以下のように調製された。
【0274】
表9:式F2。
【表9】
【0275】
手順:次いで、相Aを均質化し、相Bを導入し、激しい攪拌(1500rpm)で10分間均質化する。混合物に相Cを注ぐことにより、エマルションを作製し、10分間激しく攪拌しながら均質化する。最後に、相Dを導入する。
【0276】
こうして滑らかな淡黄色のクリームが得られる。
【0277】
2.2材料及び設備
2.2.1.生物材料
ヒトの皮膚試料は、腹部形成術の後、フランスのトゥールのクリニックの形成外科から得た。手術後、4℃の温度のチャンバーに皮膚を入れ、当院に移した。
【0278】
受け取ると、皮下脂肪を穏やかに除去し、皮膚試料を暗号化された識別番号で記録し、-20℃で保管する。OECDのガイドライン(テストNo.428)によると、皮膚は透過性を変化させることなく、この温度で最大1年間保管することができる。
【0279】
この治験では、単一のドナーからの10個の皮膚移植片が使用される。
【0280】
2.3.治験の実施
2.3.1.外植片の特性評価
ヒトの皮膚試料は、3×3cmのサイズで10個の皮膚移植片に分けられる。外植片を室温で10分間解凍し、次いでPBSで洗浄する。
【0281】
各外植片の皮膚バリアの完全性は、不感水分損失(IWL)を測定することにより監視される。10個の皮膚移植片について測定したIWL値は5.2~7.6g.m-2.h-1の範囲であったため、皮膚移植片は実験に適していると考えられる。各外植片の厚さは、5つの異なる場所で測定される。
【0282】
これら2つのパラメータ(IWL及び厚さ)について式により得られた平均値を表10に示す。
【0283】
表10:条件別の皮膚移植片の平均厚さ及びIWL(n=3;*n=1;平均±sem)。
【表10】
【0284】
2.3.2.経皮通過試験
全ての皮膚移植片は、角質層がドナーコンパートメントに面するフランツ型拡散セル内に配置される。クランプは、シールを確実にするために2つのコンパートメントを一緒に保持するために使用される。
【0285】
受容コンパートメントは、受容液で満たされている。皮膚移植片の下に気泡が形成されないように特別な注意が払われる。
【0286】
1時間、拡散セルを磁気トレイ上に配置して受容液を攪拌し続け、全体をオーブン内に配置して、32℃の皮膚表面温度及び50%の湿度を得る。実験中の受容液の攪拌速度は、400rpmとする。
【0287】
1時間後、各拡散セルにおいて熱平衡に達した状態で、製剤を、表11に記載される分布に従って、皮膚移植片の表面に穏やかに塗布する。
【0288】
製剤はエマルション形態であるため、正変位ピペットで塗布される。
【0289】
皮膚表面に沈着した量は500mgである。
【0290】
拡散セルをオーブン内に24時間戻す。
【0291】
表11:条件別の外植片の分布。
【表11】
【0292】
24時間の拡散の間、以下の時点で3点における拡散動態を行う:1時間、4時間、8時間。この目的のために、各セルから300μLの容量の受容液を採取し、次いで「新しい」受容液に置き換える。各試料を凍結保存する。
【0293】
拡散時間(24時間)の終了時に、以下の手順を全ての拡散セルに対して実行する。
【0294】
皮膚表面の洗浄:
・未吸収分画の吸収
・ミセル水を含浸させた2本の綿棒で皮膚表面を洗浄する
・脱塩水を含浸させた2本の綿棒で皮膚表面をすすぐ
・綿棒1本で皮膚表面を乾燥
・皮膚に残った残留物を除去するためのD-Squam接着剤の塗布
【0295】
受容液の回収:
・受容液は全て15mLのファルコンチューブに入れ、凍結させる。
【0296】
角質層の回復:
・治療部位への2つのD-Squam接着剤の連続塗布。2つの接着剤は、15mLのFalconチューブに一緒に入れて凍結させ、各接着剤はそれ自体に折りたたまれる。
【0297】
表皮及び真皮の回収:
・表皮及び真皮は、表面を軽く削るか、必要に応じて65℃まで15秒間加熱することによって分離される。
・表皮及び真皮を15mLのファルコンチューブに個別に入れ、重量を量り、最後に凍結させる。
【0298】
2.4試料の分析とアッセイ
全ての試料を回収した。
【0299】
試料中のレチノールの抽出及び分析アッセイは、以下の手順に従って実施した。
【0300】
2.4.1.レチノールのアッセイ方法:HPLC
HPLC分析手順:
・受容液:直接注入
・SC、Ep、Dm:エタノール抽出(攪拌下)は、注入前に行う。
o試験抽出時間=12時間及び24時間
oエタノール体積=SCは10mL、Epは1mL、Dmは2mL
oSC、Ep、及びDmの3倍量は、抽出前に「プール」される
o抽出後、チューブを3000gで5分間遠心分離する。
oHPLC分析のために300μL採取する。
【0301】
HPCL分析条件:
・カラム:(Cl8 Vintage series KR C18~5μm~150×4.6mm)
・移動相:イソプロパノール-水(85/15)
・カラム温度:25℃
・注入量:20μL
・ポンプの流量:1mL/min
・検出:紫外線-325nm
・レチノールの保持時間:11.8min
・1回の注入にかかる合計時間:15min
【0302】
3.2つの製剤からのレチノールの経皮通過
異なる皮膚層及び受容液中でのレチノールアッセイの結果を以下のセクションに示す。
【0303】
3.1.皮膚層におけるレチノールの分布
皮膚層で得られたレチノールの平均量を表12及び表13に示す。
【0304】
表12:皮膚層におけるレチノールの平均量(μg/cm)(12時間抽出)
【表12】
【0305】
表13:皮膚層におけるレチノールの平均量(μg/cm)(24時間抽出)。
【表13】
【0306】
皮膚層からのレチノールの2回の抽出時間:12時間及び24時間を適用した。皮膚層におけるレチノールの経皮通過試験の結果は、12時間抽出後に得られた値(表12)と24時間抽出後に得られた値(表13)との差異を示さない。この結果は抽出方法を検証する。
【0307】
以下では、12時間の抽出で得られた結果のみを保持し、考察する。
【0308】
対照条件のレチノールアッセイ結果は、3層全てで非常に低い値(0.30μg/cm未満)を示す。この結果は、本研究で使用されたヒト皮膚移植片に内因性レチノールが含まれていないことを確認したものである。
【0309】
3つの製剤全てについて、真皮で測定したレチノールの量は、対照と同じオーダーである(約0.2μg/cm)。3つの製剤は、レチノールの真皮への拡散を許容しないようである。
【0310】
レチノールの最も低い経皮拡散結果は、製剤F2で得られる。実際、この製剤では、角質層及び表皮で得られた値は、10μg/cm未満である。
【0311】
F1で得られたレチノールの経皮拡散の結果は、製剤F2で得られた結果よりも全体的に優れている。角質層中のレチノールの量は、F2では9.34μg/cmであるのに対し、F1では10.76μg/cmとごくわずかに高い。表皮中のレチノールの量は、F2では6.28μg/cmであるのに対し、F1では12.13μg/cmと2倍高く、この皮膚層中のレチノールを輸送するためのこの製剤の効率性を示している。
【0312】
3.2受容液中のレチノールの拡散結果
受容液中に目的の分子の検出は観察されなかった。この結果は、レチノールが状態に関係なく真皮内で非常に少量であったという以前の結果と一致する。
【0313】
4.結論
結論として、本研究は以下の点を強調している。
レチノールの経皮吸収は、皮膚に適用される製剤によって異なる。
使用された製剤にかかわらず、レチノールは受容液又は真皮に見られなかった。
検討した2つの製剤のうち、製剤F2は、レチノールの経皮拡散を可能にするのに最も効果が低い。
【0314】
製剤F1は、状態に関係なく、角質層及び表皮に輸送されるレチノールの量の観点から最も興味深い結果を示す。
【0315】
実施例5:追加の例
PhytoVecは、自己組織化特性を有する化合物から調製されるエマルションである。レチノールの場合、PhytoVecレチノールと名付けられたこれらのエマルションは、以下の方法でレチニルフィトレートから作られる:
【0316】
5.1.オペレーティングモード:
(A)以下のステップを用いた水中油エマルションの調製:
-脱塩水からなる水相の調製であって、界面活性剤及びプロパンジオールを含んでもよい。
-可溶化剤、レチニルフィトレート及びBHT(ブチルヒドロキシトルエン)からなる油相の調製
-40~60℃の温度、1000~3000rpmの速度で5~10分間、回転子/固定子型攪拌下での油相の水相への導入
【0317】
(B)以下のステップによる油滴サイズの縮小:
-(A)で得られたエマルションを高圧ホモジナイザーに導入
-20~30℃の温度条件下、1500~2500barの圧力で、高圧ホモジナイザー内でエマルションを少なくとも2回通過させる。
【0318】
5.2リポソームとの比較
次いで、リポソームと比較した活性成分の安定化に対するPhytoVec技術の貢献を研究した。レチノールは感受性化合物(紫外線、熱、酸素など)であるため、本研究の比較の基礎として選ばれた。したがって、PhytoVecレチノールエマルションとリポソームレチノール溶液との間のレチノール含有量の進行を経時的に測定して、リポソームと比較した当社のPhytoVec技術の効果を定量化した。
【0319】
5.2.1.10%レチノールに相当するPhytoVecレチノールの調製
2つのPhytoVecレチノールエマルションを、上記の手順に従って、以下の組成物で調製した。
【表14】
【0320】
(A)以下のステップを用いた水中油エマルションの調製:
-脱塩水及び水素化レシチンからなり、プロパンジオールを含み得る、水相の調製
-10-ポリグリセリルラウレート、レチニルフィトレート、及びBHTからなる油相の調製
-40~60℃の温度、1000~3000rpmの速度で5~10分間、回転子/固定子型攪拌下での油相の水相への導入
【0321】
(B)以下のステップによる油滴サイズの縮小:
-(A)で得られたエマルションを高圧ホモジナイザーに導入
-20~30℃の温度条件下、1500~2500barの圧力で、高圧ホモジナイザー内でエマルションを少なくとも2回通過させる。
【0322】
したがって、10%レチノールに相当するPhytoVec-Retinol(登録商標)を異なる方法で得た(式VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_A)。
【0323】
次いで、これらの製剤を、安定性試験において、フィルム水和法によって調製したレチノールを含有するリポソーム溶液と比較した。
【0324】
5.2.2.レチノールリポソームの調製
1gのリン脂質(リポイドP75-3)は、CHCl/MeOH 2:1混合物(50mL)中の底部にあり、この溶液は、室温で15分間の磁気攪拌によって均質化される。次いで、この溶液を、CHCl(50mL)中のレチノール(15mg)及びBHT(0.5重量%)の溶液を含有する250mLのフラスコに注ぐ。次いで、フラスコを回転蒸気中に配置し、溶媒を減圧下(150rpm、500mbar)で10分間除去し、次いで(150rpm、5mbar)で1時間除去する。この操作中は、フラスコは4℃の温度で、暗所で保管される。
【0325】
こうして得られた残渣にPBS(100mL、10mM)を添加し、混合物を回転蒸気(150rpm)で3時間攪拌する。この操作中は、フラスコは4℃の温度で、暗所で保管される。
【0326】
リポソーム溶液のHPLC分析は、132mg/Lのレチノール含有量を示す。
【0327】
次いで、試料、VR_20ER_014_B、VR_20ER_026_A、及びリポソーム溶液の式を、4つの別個の試料
【数2】
に分割し、それぞれ保管する。
・暗所及び室温(20℃~OBS)で
・暗所及び室温(20℃~LUM)で
・冷蔵庫(4℃)内の暗所で
・オーブン(45℃)内の暗所で
【0328】
次いで、異なる温度条件下でのこれらの3つの式のレチノール含有量を、経時的にHPLCによって分析する。
【0329】
5.2.3.HPLCによるコハク酸レチニルフィチル及びレチノールのアッセイ
5.2.3.1HPLC法
コハク酸レチニルフィチル及びレチノール含有量を、較正曲線に対して、HPLC分析(RESTEK Ultra AQ C18 3μmカラム、150×4.6mm、カラム温度=40℃、溶出液:iPrOH/HO 85:15アイソクラチック、流速:1mL/min、注入:325nmでの20μLの紫外線検出)により測定した。(3つの独立した試料の値の平均。)
【0330】
5.2.3.2PhytoVecレチノールのHPLC試料調製
マイクロピペットを使用してPhytoVecレチノール試料100μLを除去し、100μLをエッペンドルフに注ぐ。マイクロピペットを使用してHPLCグレードのイソプロパノールを900μL添加する。Vortex(ボルテックス)でよく振る。
【0331】
マイクロピペットを使用して、調製した娘溶液1を100μL除去し、100μLをエッペンドルフに注ぐ。マイクロピペットを使用して、HPLCグレードのイソプロパノールを900μL添加する。Vortex(ボルテックス)でよく振る。この操作を更に2回連続して繰り返し、10の希釈を適用する。
【0332】
PhytoVecレチノールの娘溶液4である1mLシリンジを使用して溶液を除去する。0.22μmのPTFEフィルターを使用して、溶液を茶色のガラスバイアルに直接濾過する。
【0333】
5.2.3.3レチノールリポソームのHPLC試料調製
マイクロピペットを使用してリポソーム-レチノール試料100μLを除去し、100μLをエッペンドルフに注ぐ。マイクロピペットを使用して、HPLCグレードのイソプロパノールを900μL添加する。Vortex(ボルテックス)でよく振る。
【0334】
調製した娘溶液100μLをマイクロピペットで除去し、100μLをエッペンドルフに注ぐ。マイクロピペットを使用してHPLCグレードのイソプロパノールを900μL添加する。Vortex(ボルテックス)でよく振る。1mLシリンジを使用して、リポソーム-レチノール溶液を1mg/L除去する。0.22μmのPTFEフィルターを使用して、溶液を茶色のガラスバイアルに直接濾過する。
【0335】
5.2.4.得られた結果
以下の異なる温度及び光条件下で、PhytoVecレチノール(VR_20ER_014_B、VR_20ER_026_A)及びレチノールリポソーム溶液の2つの製剤について、活性成分含有量(レチニルフィトレート及びレチノール)の進行を経時的にHPLCにより測定した。
・暗所及び室温(20℃~OBS)で
・暗所及び室温(20℃~LUM)で
・冷蔵庫(4℃)内の暗所で
・オーブン(45℃)内の暗所で
【0336】
結果を図4~7のグラフで照合する。平均レチノール及びレチニルフィトレート含有量は、3つの独立した試料及び100%に正規化した値に基づいて計算した。
【0337】
図4のグラフは、暗所(20℃)での試験結果を示している。
【0338】
一般的に、活性成分の含有量は時間の経過とともに減少する。しかしながら、VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_Aの活性成分値は、レチノールリポソームのものと比較して急激に減少することはない。
【0339】
図5のグラフは、光試験の結果(20℃)を示している。
【0340】
ここで、レチノールリポソームの活性成分の含有量は、VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_Aのものと比較して非常に速く減少する。
【0341】
図6のグラフは、4℃での試験結果を示している。
【0342】
この実験では、レチノールリポソームの活性成分の含有量は、7日又は30日までゆっくりと減少し、その後、非常に有意に減少する。比較すると、VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_Aの活性成分値は、実験を通じて高いままである。
【0343】
図7のグラフは、45℃での試験結果を示している。
【0344】
ここで、リポソームの活性成分含有量はかなり急速に減少し、VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_Aは最初の7日間は高いままである。次いで(7~30日)、VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_Aの活性成分レベルは低下するが、リポソームのレベルよりも高いままであり、最後に、90日でレチノールリポソームのレベルにほぼ到達する。
【0345】
5.2.5.結論
この研究は、リポソームと比較して、レチノールの保存におけるPhytoVec技術の利点を明確に示している。実際、光中では7日間でレチノール含有量が>90%の減少が観察されたが、PhytoVec技術ではレチニルフィトレート含有量は約100%であった。更に、当社のPhytoVecの場合、5%のみに対して3ヶ月でレチノール含有量が70%減少するため、最適な保管条件下(光がない場合は4℃)でも同様の傾向が確認される。
【0346】
5.3.エクスビボ研究
本研究の目的は、ヒト由来の皮膚移植片に対する本発明によるPhytoVecシステムの経皮通過の促進効果を、エクスビボで評価することである。
【0347】
各製剤は、皮膚移植片に塗布される。接触期間(24時間)の終了時に、異なる皮膚層(角化層、表皮及び真皮)におけるレチニルフィトレートの総濃度を測定し、4点における拡散動態を行う。
【0348】
本試験で試験した異なる式は、10%レチノールに相当する2つのPhytoVec(VR_20ER_014_B,VR_20ER_026_A)であったが、PhytoVec技術及び5%レチノールを含有するゲルを含む5%レチノールに相当する2つの化粧用ゲルであった。
【0349】
5.3.1.10%レチノールに相当するPhytoVecレチノールの調製
【0350】
上記の手順に従って、以下の組成物を用いて、2つのPhytovecレチノールエマルションを調製した。
【表15】
【0351】
5.3.2.レチノール及びPhvtoVecレチノールを含むゲルの調製
本治験における3つのゲルを、以下の手順及び組成物を使用して調製した。
【0352】
5.3.2.1手順
脱塩水及び水酸化ナトリウムで中和したポリアクリレート(Carbopol ULTREZ 10)からなる室温での水相の調製
【0353】
油相の調製:
-ゲルCについては35~40℃の温度で
-ゲルD及びEについては室温で
【0354】
800~1500rpmの速度で5~10分間、解凝集装置型攪拌下での、油相の水相中への組み込み。
【0355】
水酸化ナトリウムによる室温での6.5~7.0のpHの調整。
【0356】
以下の表に従う組成物:
【表16】
【0357】
5.3.3.生物材料
ヒトの皮膚試料は、腹部形成術の後、フランスのトゥールのクリニックの形成外科から得た。
【0358】
この治験では、単一のドナーからの15個の皮膚移植片が使用される。
【表17】
【0359】
5.3.4.治験の実施
5.3.4.1.外植片の特徴
ヒト皮膚試料は、3×3cmのサイズで15個の皮膚移植片に分けられる。外植片を室温で10分間解凍し、次いでPBSで洗浄する。
【0360】
各外植片の皮膚バリアの完全性は、不感水分損失(IWL)を測定することにより監視される。15個の皮膚移植片について測定したIWL値は6.0~7.5g.m-2.h-1の範囲であったため、皮膚移植片は実験に適していると考えられる。
【0361】
各外植片の厚さは、5つの異なる場所で測定される。
【0362】
これら2つのパラメータ(IWL及び厚さ)について式により得られた平均値を以下に示す。
【表18】
【0363】
5.3.4.2.経皮通過試験
全ての皮膚移植片は、角質層がドナーコンパートメントに面するフランツ型拡散セル内に配置される(使用されるフランツ型拡散セルは、2cmの拡散表面及び平均14.5mLの容積を有する受容コンパートメントを有する)。クランプは、シールを確実にするために2つのコンパートメントを一緒に保持するために使用される。
【0364】
受容コンパートメントは、受容液で満たされている(皮膚移植片の下に気泡がない)。
【0365】
1時間、拡散セルを磁気トレイ上に配置して受容液を攪拌し続け、全体をオーブン内に配置して、32℃の皮膚表面温度及び50%の湿度を得る。実験中の受容液の攪拌速度は、400rpm-1とする。
【0366】
1時間後、各拡散セルにおいて熱平衡に達し、製剤を表7に記載される分布に従って、正変位ピペットで皮膚移植片の表面に塗布する。
【0367】
皮膚表面に沈着した量は500mgである。
【0368】
拡散セルをオーブン内に24時間戻す。
【0369】
次の表は、条件別の外植片の分布を示している。
【表19】
【0370】
24時間の拡散の間、以下の時点で3点における拡散動態を行う:2時間、4時間、8時間。この目的のために、各セルから300μLの容量の受容液を採取し、次いで「新しい」受容液に置き換える。各試料を凍結保存する。
【0371】
拡散時間(24時間)の終了時に、以下の手順を全ての拡散セルに対して実行する。
【0372】
皮膚表面の洗浄:
-未吸収分画の吸収
-ミセル水を含浸させた2本の綿棒で皮膚表面を洗浄する
-脱塩水を含浸させた2本の綿棒で皮膚表面をすすぐ
-綿棒1本で皮膚表面を乾燥
-皮膚に残った残留物を除去するためのD-Squam接着剤の塗布
【0373】
受容液の回収:
-受容液は全て15mLの「Falcon(登録商標)」チューブに入れて凍結させる。
【0374】
角質層の回復:
-治療部位への「D-Squam(登録商標)」と呼ばれる2つの接着剤の連続塗布。2つの接着剤は、15mLの「Falcon(登録商標)」チューブに一緒に入れて凍結させ、各接着剤はそれ自体に折りたたまれる。
【0375】
表皮及び真皮の回収:
-表皮及び真皮は、表面を軽く削るか、必要に応じて65℃まで15秒間加熱することによって分離される。
-表皮及び真皮を15mLの「Falcon(登録商標)」チューブに個別に入れ、重量を量り、最後に凍結させる。
【0376】
試料の分析及びアッセイ
全ての試料を回収した。
【0377】
試料中のレチノールの抽出及び分析アッセイは、以下の手順に従って実施した。
【0378】
5.3.5.異なる製剤からのレチノールの経皮通過
5.3.5.1.PhytoVecからのレチニルフィトレートの皮膚分布
皮膚層で得られたレチノールの平均量を以下の表及び図8に示す。
【表20】
【0379】
PhytoVec製剤(VR_20ER_014_B及びVR_20ER_014_B)から、同様の皮膚分布パターンが観察される:
-レチニルフィトレートの最も大きな割合(約75%)は、平均累積量8μg/cmの角質層に見られる。
-表皮は、皮膚で測定された総レチニルフィトレートの20%が見つかる皮膚層を表す。この層では、レチニルフィトレートの平均累積量は2μg/cmであり、VR_20ER_026_A製剤は最良の結果をもたらす。
-真皮では、レチニルフィトレートは以前の層と比較して2%の割合で見られ、これは0.2μg/cmの平均を表す。
【0380】
したがって、これらの結果は、製剤VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_Aが、真皮に定量可能なレチニルフィトレートの効果的な経皮浸透を提供するという証拠を提供する。
【0381】
5.3.5.2.レチノール及びレチニルフィトレートゲルからのレチニルフィトレートの皮膚分布
皮膚層で得られたレチノール及びレチニルフィトレートの平均量を以下の表及び図9に示す。
【表21】
【0382】
レチノールの経皮拡散の最も低い結果は、遊離形態のレチノールを含有するゲルCで得られる。実際、この製剤では、皮膚層に見出されるレチノールの平均累積量は、0.3μg/cm未満である。
【0383】
PhytoVec技術(ゲルD及びE)を介してレチニルフィトレートを含む製剤で得られたレチニルフィトレートの経皮拡散の結果は、これらが、レチノール単独に基づく製剤(ゲルC)よりもはるかに効果的であることを示しており、活性成分の皮膚への顕著な浸透を得る。これらの2つの製剤(ゲルD及びE)で得られたレチニルフィトレートの各皮膚層における分布の分析は、以下のとおりである:
-角質層において、測定されたレチニルフィトレートの平均累積量は、ゲルCの場合、レチノールに見られるものよりも200倍高い。この結果は、これらの製剤が角質層にレチノールを充填することを可能にすることを示す。
-表皮では、レチニルフィトレートは、ゲルCの場合、レチノールの測定値の2倍の割合で見つかる。
-対照的に、真皮では、ゲルD及びEで得られたレチニルフィトレートの累積量は、ゲルCで得られたレチノールの累積量と同等である。
【0384】
また、2つのゲルD及びEのうち、VR_20ER_026_Aを含むゲルEは、VR_20ER_014_Bを含むゲルDで得られたものよりも高いレチニルフィトレートの平均総投与を可能にすることにも留意されたい。
【0385】
5.3.6.エクスビボ研究の結論
結論として、レチノールの最適な経皮浸透を達成するための本発明による製剤の重要性が強調されている。
【0386】
結果は以下を強調した。
-PhytoVec VR_20ER_014_B及びVR_20ER_026_A製剤は、約11μg/cmの合計平均累積量を可能にする。
-ゲルD及びEに含まれるPhytoVecレチノールの製剤は、約2.5μg/cmの総平均累積量を通過させることが可能である。この量は、遊離レチノールを含有するゲルCで得られた量よりも有意に高い。
-純粋なPhytoVec製剤では、レチニルフィトレートの経皮分布は、ゲル形態の製剤よりも大きい。
【0387】
作用様式に関して、PhytoVec製剤は、主に、レチニルフィトレートによる角質層の負荷を可能にし、したがって、分子の下層への放出を提供するリザーバーを形成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】