(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ディープラーニングに基づいてアブレーション領域を決定する方法
(51)【国際特許分類】
G16H 30/40 20180101AFI20230619BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20230619BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20230619BHJP
【FI】
G16H30/40
G16H10/40
G16H50/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567121
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2021050907
(87)【国際公開番号】W WO2021234305
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オウベル,エスタニスラオ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ジラルド,ミシェル
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA04
5L099AA26
(57)【要約】
個体(110)の対象解剖学的構造(130)の一部のアブレーションを治療後に評価する方法(200)であって、対象解剖学的構造は、少なくとも1つの病変(165)を含む。
本評価方法は、特に、個体の対象解剖学的構造の治療後画像を解析する、ニューラルネットワークタイプの自動学習法によってアブレーション領域の輪郭を自動的に決定するステップを含み、前記自動学習法は、一組の患者の対象の同一の対象解剖学的構造の複数の術後医用画像を含むデータベースを用いて、いわゆるトレーニング段階中に予めトレーニングされ、データベースの各医用画像は前記患者の対象解剖学的構造のアブレーション領域と関連付けられる。
本発明はまた、プロセッサと、このような評価方法の命令を格納するコンピュータメモリとを備える電子デバイス(150)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体(110)の対象解剖学的構造(130)の一部のアブレーションの治療後評価方法(200)であって、前記対象解剖学的構造が少なくとも1つの病変(165、510、600)を含み、前記対象解剖学的構造の前記一部の前記アブレーションが、アブレーション領域(160)によって範囲が定められる、方法であり、
・前記アブレーション領域のすべて又は一部を含む、前記個体の前記対象解剖学的構造の術後医用画像を取得するステップ(210)と、
・前記個体の前記対象解剖学的構造の前記術後画像を解析する、ニューラルネットワークタイプの機械学習法を介して、前記アブレーション領域の輪郭を自動的に決定するステップであって、前記機械学習法が、一組の患者の同一の対象解剖学的構造の複数の術後医用画像を含むデータベースを用いて、トレーニング段階(290)と称するものにおいて予めトレーニングされ、前記データベース内の各医用画像が、前記患者の前記対象解剖学的構造に対するアブレーション領域と関連付けられる、ステップと、
を含むことを特徴とする、治療後評価方法。
【請求項2】
前記トレーニング段階が、アブレーションされていない病変を含む同一の対象解剖学的構造の医用画像を用いてトレーニングする先行ステップを含む、請求項1に記載の治療後評価方法。
【請求項3】
前記術後画像と、術前医用画像と称する、外科的治療の前に取得された前記個体の前記対象解剖学的構造の医用画像(170、500)とをレジストレーションするステップ(220)をさらに含む、請求項1又は2に記載の治療後評価方法。
【請求項4】
前記アブレーション領域と前記病変との間、前記アブレーション領域と前記対象解剖学的構造との間、又は前記病変と前記対象解剖学的構造との間の相対的特性に従って、再発リスクを評価するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項5】
前記再発リスクが実証された場合、前記アブレーション領域と前記病変との間、前記アブレーション領域と前記対象解剖学的構造との間、又は前記病変と前記対象解剖学的構造との間の相対的特性に従って、前記再発の位置を決定するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項6】
相対的特性が、前記アブレーション領域と前記病変との間のアブレーションマージンである、請求項4又は5に記載の治療後評価方法。
【請求項7】
相対的特性が、前記病変の質量中心及び前記アブレーション領域の質量中心である、請求項4~6のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項8】
相対的特性が、周囲の正常組織に対する前記アブレーション領域のエッジの均一性及び鮮鋭度である、請求項4~7のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項9】
相対的特性が、前記病変の体積と前記アブレーション領域の体積との比である、請求項4~8のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項10】
相対的特性が、前記対象解剖学的構造の中心に対する前記病変の位置である、請求項4~9のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項11】
前記個体の前記対象解剖学的構造の前記術前医用画像内の前記病変をセグメンテーションするステップをさらに含む、請求項3~10のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項12】
前記個体の前記対象解剖学的構造の前記術前医用画像内の前記病変を検出するステップをさらに含む、請求項3~11のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項13】
前記データベース内の前記トレーニング用の術後医用画像のすべて又は一部が、少なくとも1つの病変を含む前記アブレーション領域の周囲で切り取られ、前記画像の前記切取りが、所定のサイズの共通フレームを用いて実行され、前記切り取られた術後医用画像における前記アブレーション領域の中心のセットが、前記共通フレーム内部の別個の点の一群を形成する、請求項3~12のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項14】
前記データベース内の術後医用画像のセットに対して、前記画像に含まれる前記個体の身体の部分が、単一のサイズの複数の基本単位に分割され、前記基本単位の数が、前記アブレーション領域によって範囲が定められた人体の部分と前記画像に含まれる前記個体の身体の前記部分の残りの部分との間で略2等分される、請求項3~13のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項15】
前記術後医用画像データベースが、少なくとも1つのアブレーションされていない病変を含む少なくとも1つの術前医用画像を含む、請求項3~14のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項16】
前記再発リスクが実証された場合に、補足的アブレーションマスクを決定するステップをさらに含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項17】
前記補足的アブレーションマスクの標的点まで医療器具が辿るべき経路を提案するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項18】
前記医用画像が3次元画像である、請求項1~17のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項19】
各術後画像が、同じ画像取得技法を用いて取得される、請求項3~18のいずれか一項に記載の治療後評価方法。
【請求項20】
プロセッサと、請求項1~19のいずれか一項に記載の治療後評価方法のための命令を格納するコンピュータメモリとを備える電子デバイス(150)。
【請求項21】
制御デバイス、ナビゲーションシステム、ロボット装置又は拡張現実デバイスであり得る、請求項20に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明の分野は、医学的介入の評価の分野である。
【0002】
より正確には、病変のアブレーションの領域の治療後評価及び関連する再発リスクの予測の方法に関する。
【0003】
本発明は、特に、腫瘍又は転移等の病変の再発リスクの予測を伴う低侵襲な医学的介入の評価に適用可能である。こうした低侵襲な医学的介入は、病変、例えば、肝臓、肺、腎臓、又は他の任意の臓器における腫瘍の経皮的アブレーションに対応する。経皮的アブレーションは、通常、皮膚を通して1本又は複数本の針を挿入して病変に到達し病変を破壊するのを画像誘導することを含む。
【背景技術】
【0004】
先行技術
介入の有効性を評価し、病変の再発リスクを予測する技法は、先行技術から既知である。
【0005】
こうした技術は、例えば、病変をアブレーションした後、アブレーション領域が病変をどの程度覆っているかを判断することにある。アブレーション領域の体積を病変の体積と比較することにより、アブレーションマージンを決定することができる。実際には、一般に、少なくとも5ミリメートルのアブレーションマージンがあることが推奨されている。
【0006】
これらのマージンを決定するために、通常、介入を計画するときに病変の体積が決定され、少なくとも1つの術後画像上でオペレータによってセグメンテーションされるアブレーション領域の体積と比較される。
【0007】
主な欠点は、アブレーション領域の体積が、一般に、多くの場合セグメンテーションを行ったオペレータに依存する方法で、非常に低い精度で決定されるということである。加えて、術後画像の品質が不十分であることが多く、セグメンテーションに不確実性をもたらす一因となる。したがって、アブレーションマージンと病変の再発リスクとの相関を明らかにすることは困難である。
【0008】
先行技術の技法を改善するために、アブレーション領域を自動的にセグメンテーションする方法の使用を実施することは既知である。
【0009】
こうした技法は、例えば、2019年9月に発行された「Detection and Monitoring of Thermal Lesions Induced by Microwave Ablation Using Ultrasound Imaging and Convolutional Neural Networks」と題するZhangらによる科学出版物に記載されている。この出版物に記載されているセグメンテーション方法により、術前超音波画像と術後超音波画像とをセグメンテーションすることによって、アブレーション領域のマージンを計算することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この出版物に記載されたセグメンテーション法では、アブレーション領域の自動セグメンテーションの精度が低いため、再発リスクを予測することはできない。まず、セグメンテーション方法は、アブレーション領域の画像のサブサンプリングマトリックスに限定され、そのサイズは、一定であり、一般に4mm2に等しく、したがって、この方法の使用がサイズの小さい領域に限定される。加えて、サブサンプリングマトリックスの位置を固定するために、アブレーション領域の位置を知ることが必要であり、術前画像及び術後画像においてサブサンプリングマトリックスの内部に一定の基準点がない場合、この方法を使用することが困難になる。最後に、2次元超音波画像の性質及び品質に起因して、対象解剖学的構造を識別することが困難な場合があり、領域のセグメンテーションが不正確になり、特に、セグメンテーションされるアブレーション領域がアブレーションすべき病変を包囲しない誤った観察がもたらされる。
【0011】
加えて、自動セグメンテーション法は、均質な領域に対して、すなわち、例えば、骨、血管若しくは病変に対して、又は、画像が既知の数の領域を含む場合に、一貫した結果を与える。アブレーション領域の場合、アブレーション領域は、一般に、ガス、壊死細胞、正常細胞、残留造影剤、石灰化等、種々の物質で構成される非常に複雑な領域であるため、得られるセグメンテーション結果は、それほど一貫していない。加えて、セグメンテーションは、一般に、一般に不鮮明でコントラストの低い医用画像に対して行われ、画像の自動セグメンテーションが困難となる。
【0012】
現行のシステムのいずれによっても、要求される必要のすべてを同時に満たすこと、すなわち、特に不鮮明な及び/又は低コントラストの医用画像に基づき、アブレーション領域、特に、不均質なアブレーション領域を、より高精度でセグメンテーションすることにより、アブレーション治療を精密に評価するのを可能にする技法を提供することは可能でない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、上述した先行技術の欠点のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【0014】
その目的で、本発明の1つの主題は、個体の対象解剖学的構造の一部のアブレーションの治療後評価方法であり、対象解剖学的構造は少なくとも1つの病変を含む。
【0015】
アブレーションは、経皮的又は低侵襲的なアブレーションであり、概して、皮膚を通して少なくとも1本の針を挿入して病変に到達して病変を破壊することを含む。高周波、マイクロ波、電気穿孔法、レーザ、凍結療法、超音波等、多くのアブレーション技法が可能である。
【0016】
対象となる解剖学的構造は、肝臓、肺、腎臓、又は病変が生じやすい他の任意の臓器であり得る。
【0017】
本発明によれば、治療後評価方法は、
-個体の対象解剖学的構造の術後医用画像を取得するステップと、
-個体の対象解剖学的構造の治療後画像を解析する、ニューラルネットワークタイプの機械学習法を介して、アブレーション領域の輪郭を自動的に決定するステップであって、前記機械学習法が、一組の患者の同一の対象解剖学的構造の複数の医用画像を含むデータベースを用いて、トレーニング段階と称するものにおいて予めトレーニングされ、データベース内の各医用画像が、前記患者の対象解剖学的構造に対するアブレーション領域と関連付けられる、ステップと、
を含む。
【0018】
したがって、少なくとも1人のオペレータ、好ましくは複数のオペレータによってセグメンテーションされた複数の医用画像からの事前学習に基づき、術後医用画像においてアブレーション領域が自動的にセグメンテーションされる。このニューラルネットワークによる自動セグメンテーションにより、医用画像の解析に経験豊富なオペレータの存在を不要にすることができる。加えて、ニューラルネットワークによって得られるセグメンテーションは、概して、特に3次元画像を解析する場合、より正確である。最後に、低いコントラスト及び/又は鮮鋭度を示す画像の場合でも、こうした方法を用いる自動セグメンテーションはより高品質である。
【0019】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、トレーニング段階は、アブレーションされていない病変を含む同一の対象解剖学的構造の医用画像を用いてトレーニングする先行ステップを含む。
【0020】
したがって、ニューラルネットワークは、個体の術後医用画像において、アブレーション領域をより適切にセグメンテーションする。この意外な効果は、病変とアブレーション領域との形状及び位置に関する類似性によって説明することができる。加えて、所与の対象解剖学的構造上のアブレーションされていない病変を示すアクセス可能な医用画像の数は、概して、病変のアブレーション後に取得されたアクセス可能な医用画像の数よりも多いことが留意されるべきである。
【0021】
本発明の他の特定の実施態様では、治療後評価方法は、術後画像と、術前医用画像と称する、外科的治療の前に取得された個体の対象解剖学的構造の医用画像とをレジストレーションするステップをさらに含み、レジストレーションされた術後医用画像と術前医用画像とは、個体の対象解剖学的構造の一対の医用画像を形成する。
【0022】
したがって、病変に対するアブレーション領域の位置の解析を行うことができる。
【0023】
「術前医用画像」が意味するものは、アブレーション治療前に取得された医用画像であり、「術後医用画像」が意味するものは、アブレーション治療後に撮影された医用画像である。
【0024】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、治療後評価方法は、アブレーション領域と病変との間、アブレーション領域と対象解剖学的構造との間、又は病変と対象解剖学的構造との間の相対的特性に従って、再発リスクを評価するステップをさらに含む。
【0025】
したがって、本発明による治療後評価方法は、再発リスクが実証された場合に医療スタッフが追加の治療の必要性を評価することができるようにすることによって、医療スタッフが、個体に適用されたアブレーション治療をより適切に考察することができるようにする。
【0026】
再発リスクは、概して2値の形式をとり、例えば、0又は1に等しい場合がある。正の値は、再発リスクが実証されるものと理解され、負の値は、再発リスクが低いものと理解されよう。
【0027】
しかしながら、再発リスクは0~1の確率の形式をとってもよい。その場合、リスクの値が、例えば0.5に等しい閾値よりも高い場合、再発リスクは、実証されていると理解されよう。
【0028】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、再発リスクが実証された場合、治療後評価方法は、アブレーション領域と病変との間、アブレーション領域と対象解剖学的構造との間、又は病変と対象解剖学的構造との間の相対的特性に従って、再発の位置を決定するステップをさらに含む。
【0029】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、再発リスクは、アブレーション領域と病変との間のアブレーションマージンを考慮することによって評価される。
【0030】
例えば、アブレーションマージンは、再発リスクの値が負となる場合、5mm以上である。
【0031】
アブレーションマージンは、概して、アブレーション領域と病変との間の最短距離として定義する。
【0032】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、再発リスクは、病変の質量中心とアブレーション領域の質量中心との間の距離を考慮することによって評価される。
【0033】
質量中心の基準値はアブレーションマージンによって決まる。アブレーションマージンが10mmであり、アブレーションマージンの基準値が5mmである場合、病変の質量中心とアブレーション領域の質量中心との間の距離は、5mm以下であるべきである。
【0034】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、再発リスクは、周囲の正常組織に対するアブレーション領域のエッジの均一性及び鮮鋭度を考慮することによって評価される。
【0035】
「周囲の正常組織」が意味するものは、切り取られた医用画像のフレーム内部に位置する対象解剖学的構造の正常組織である。
【0036】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、再発リスクは、病変の体積とアブレーション領域の体積の比を考慮することによって評価される。
【0037】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、再発リスクは、対象解剖学的構造の中心に対する病変の位置を考慮することによって評価される。
【0038】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、治療後評価方法は、個体の対象解剖学的構造の術前医用画像内の病変をセグメンテーションするステップをさらに含む。
【0039】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、治療後評価方法は、個体の対象解剖学的構造の術前医用画像内の病変を検出するステップをさらに含む。
【0040】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、データベース内の医用画像のすべて又は一部は、少なくとも1つの病変を含むアブレーション領域の周囲で切り取られ、画像の切取りは、所定のサイズの共通フレームを用いて実行され、データベース内の切り取られた医用画像におけるアブレーション領域の中心のセットは、共通フレーム内部の別個の点の一群を形成する。
【0041】
したがって、共通フレームにおけるアブレーション領域の位置を分散させることにより、機械学習法における予測誤差を低減させることができる。アブレーション領域のすべてが共通フレーム内の同じ位置にある場合、機械学習法は、その特定の位置にアブレーション領域を有する術後画像を主に考慮し、それにより、アブレーション領域が別の位置にある場合の予測誤差を招く。
【0042】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、データベース内の医用画像のセットに対して、前記画像に含まれる個体の身体の部分は、単一のサイズの複数の基本単位に分割され、基本単位の数は、アブレーション領域によって範囲が定められた人体の部分と画像に含まれる個体の身体の部分の残りの部分との間で略2等分される。
【0043】
アブレーション領域に対応する基本単位と非アブレーション領域に対応する基本単位との間の均等分布は、画像レベルで分析してもよく、又はすべての画像にわたって全体的に分析してもよいことが留意されるべきである。
【0044】
基本単位は、一般に、2次元画像に関してはピクセル、又は3次元画像に関してはボクセルと称される。
【0045】
「略等分」として理解されるものは、基本単位の2つセットが同じ数の基本単位からなる場合、又は、2つのセットの各々における基本単位の数の差が、例えば、2つのセットにおける基本単位の数の5%未満である場合である。
【0046】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、術後医用画像データベースは、少なくとも1つのアブレーションされていない病変を含む少なくとも1つの術前医用画像を含む。
【0047】
したがって、機械学習の手法がより適切にトレーニングされる。
【0048】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、治療後評価方法は、再発リスクが実証された場合に、補足的アブレーションマスクを決定するステップをさらに含む。
【0049】
したがって、治療後評価方法によって、再発リスクを排除することを目指して、治療案が推定される。この治療案は強制的なものではなく、医療従事者が従っても従わなくてもよいことが留意されるべきである。
【0050】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、治療後評価方法は、補足的アブレーションマスクによって画定されたアブレーション領域の標的点までの医療器具の経路を計画するステップをさらに含む。
【0051】
この計画ステップは、補足的治療の前に実行されることが留意されるべきである。
【0052】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、治療後評価方法は、医療器具のオペレータが計画された経路を辿るのを支援するステップをさらに含む。
【0053】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、計画された経路及び/又は誘導インジケータは、拡張現実デバイスのスクリーン上にリアルタイムで表示される。
【0054】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、医用画像は3次元画像である。
【0055】
3次元画像は、事前に定義された軸に沿って概して規則的な間隔で撮影された2次元画像の集まりに対応する場合もあることが留意されるべきである。
【0056】
本発明のいくつかの特定の実施態様では、各術後画像は、同じ画像取得技法を用いて取得される。
【0057】
言い換えれば、術後医用画像を取得するために用いられる技法は、機械学習法のトレーニングデータベース内の術後医用画像を取得するために用いられる技法と同一である。
【0058】
本発明はさらに、プロセッサと、先行する実施態様のうちの任意のものによる方法のための命令を格納するコンピュータメモリとを備える電子デバイスに関する。
【0059】
こうした電子デバイスは、例えば、制御デバイス、ナビゲーションシステム、ロボット装置又は拡張現実デバイスであり得る。制御デバイスは、特に、手術室に存在するコンピュータ、又は、遠隔サーバであってもよい。
【0060】
図面の簡単な説明
本発明の他の利点、目的及び特定の特徴は、添付図面を参照して、本発明の主題であるデバイス及び方法の少なくとも1つの特定の実施形態の以下の非限定的な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図2】
図1の医学的介入の治療後評価方法のブロック図である。
【
図3】
図2に示す方法で使用される、アブレーション領域が強調表示されている3次元医用画像の一例である。
【
図4】4つの医用画像の一例であり、各々が、オペレータによって手動で範囲が定められたアブレーションマスクと、
図2に示す方法のニューラルネットワークによって予測されたアブレーションマスクとを含む。
【
図5】病変及びアブレーション領域の自動セグメンテーションが
図2に示す方法の一ステップで実行されている、医用画像の一例である。
【
図6】
図2に示す方法によって任意選択的に提案される補足的アブレーションの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
本説明は、限定なしに提供され、1つの実施形態の各特徴は、他の任意の実施形態の他の任意の特徴と有利な方法で組み合わせることができる。
【0063】
以降、図は正確な縮尺ではないことが留意されるべきである。
【0064】
1つの特定の実施態様の例
図1は、テーブル115上に横たわっている個体110が医療器具120を用いて治療される医学的介入の概略図である。本発明のこの非限定的な例では、医学的介入は、この場合は半剛性針である医療器具120によって、この場合は個体110の肝臓である、対象解剖学的構造130における病変165をアブレーションすることに対応する。医学的介入は、この場合、個体110の身体を開腹しない経皮的処置である。
【0065】
オペレータ140による医療器具120の操作は、有利には、本発明のこの非限定的な例では、オペレータ140が装着するヘッドセット150等の拡張現実デバイスである、誘導デバイスによって誘導することができる。医療器具120は、医療ロボット装置125と関連付けることもできる。
【0066】
ヘッドセット150は、オペレータが普通に見ることができるように半透明のスクリーン155を含む。スクリーン155上に、マーカを表示するために画像が重ね合わされ、このマーカにより、対象解剖学的構造130において特定された病変165の周囲の、アブレーション領域と称する領域160をアブレーション治療する目的で、医療器具120の操作においてオペレータ140を誘導することができる。マーカは、特に、手術前に取得された対象解剖学的構造130の医用画像170上で予め推定されたアブレーションマスクを含むことができる。以下、この医用画像170を術前医用画像170と呼ぶことにする。
【0067】
手術が終了すると、
図2にブロック図の形態で示すようなアブレーションの治療後評価方法200と、方法200のためにケーブルにより又は無線技術によりヘッドセット155に接続された電子制御デバイス181のコンピュータメモリ180に格納されている命令とによって、手術治療の評価が行われる。治療後評価方法200のための命令は、電子制御デバイス181のコンピュータプロセッサ182によって処理され、この方法200により、特に、手術で行われた外科的治療が十分であるか、又は、例えば、補足的アブレーションを実行することによって治療を続けることが好ましいか否かを確認するために、アブレーション領域及び関連する再発リスクを決定することができる。
【0068】
有利には、電子デバイス181をヘッドセット150に統合することができることが留意されるべきである。
【0069】
治療後評価方法200は、対象解剖学的構造130の術後医用画像を取得する第1ステップ210を含む。
【0070】
術前医用画像及び術後医用画像は、好ましくはコンピュータ断層撮影によって取得されることが留意されるべきである。別法として、磁気共鳴画像装置を用いて取得してもよい。
【0071】
好ましくは、術前医用画像及び術後医用画像を取得するために使用される技法は、同様であるか、又はさらには同じである。
【0072】
しかしながら、術後医用画像を取得するために使用される技法は、術前医用画像を取得するために使用される技法とは別個であってもよい。
【0073】
術前医用画像及び術後医用画像は、有利には、本発明のこの非限定的な例では、3次元で取得された画像である。実際には、3次元で取得された各医用画像は、概して、2次元の医用画像の集まりに対応し、この医用画像の各々が、所定の軸に沿って規則的な間隔で撮影された、対象解剖学的構造130を通る断面に対応する。対象解剖学的構造の3次元表現は、この2次元の医用画像の集まりから再構成することができる。したがって、「3次元画像」という用語は、医用画像の集まりと3次元表現との両方を意味すると理解されよう。「ボクセル」という用語は、3次元画像の解像度に関連する基本単位を意味すると理解されよう。
【0074】
別法として、術前医用画像及び術後医用画像は、各々、2次元で取得される。そして、2次元画像の解像度に関連する基本単位は、一般にピクセルと称される。
【0075】
術前医用画像及び術後医用画像は、対象解剖学的構造の全体を含む画像であるか、又は、事前に定義されたフレームを用いてアブレーション領域の周囲で切り取られる。3次元画像では、アブレーション領域を包囲するフレームは立方体に対応し、2次元画像では、このフレームは正方形に対応する。
【0076】
「バウンディングボックス」としても知られる、アブレーション領域を包囲するフレームは、オペレータによる動作に続いてアブレーション領域の周囲に自動的に生成することができる。こうした動作は、例えば、術後医用画像中のアブレーション領域に属する点をオペレータが指示することに対応してもよく、この点の周囲にフレームが生成される。例えば、小さい病変、すなわち、例えば最大径が5cm±10%の程度の病変、又はさらには好ましくは最大径が3cm±10%程度の病変に対する低侵襲的アブレーション治療に関連して、立方体の各辺又は正方形の各辺は、5~10cmの寸法である。
【0077】
図3は、アブレーション領域310がフレーム320によって包囲されている3次元医用画像300の図である。フレーム320は、立方体であり、それぞれ矢状断面図、軸方向断面図及び冠状断面図である断面
図340、350及び360において正方形330に対応する。
【0078】
次いで、対象解剖学的構造130の術後医用画像は、第2ステップ220において、個体110の対象解剖学的構造130の術後医用画像におけるアブレーション領域を自動的にセグメンテーションするために、機械学習法であるニューラルネットワークによって解析される。
【0079】
その目的で、ニューラルネットワークは、予備的なトレーニング段階290において、一組の患者の同一の対象解剖学的構造、したがってこの場合は肝臓の医用画像のデータベースにおいて、事前にトレーニングされている。データベース内の各医用画像は、対象解剖学的構造130の機能と同一の機能を有する対象解剖学的構造を含む。
【0080】
有利には、個体110の対象解剖学的構造130の術後医用画像は、ニューラルネットワークのためのトレーニングデータベース内の医用画像の場合と同様の方法で取得される。
【0081】
個体110の対象解剖学的構造130の術後医用画像が切り取られる場合、この術後医用画像の立方体又は正方形の寸法は、有利には、ニューラルネットワークをトレーニングするために使用された立方体又は正方形の寸法と同一である。言い換えれば、データベース内の医用画像は、切り取られた術後医用画像と同じ寸法を有する。
【0082】
ニューラルネットワークをトレーニングするために、データベース内の各術後画像の、病変がアブレーションされたアブレーション領域は、ニューラルネットワークによって得られる学習、したがって解析結果の関連性を高めるために、少なくとも2人のオペレータによって以前にセグメンテーションされている。具体的には、例えば、
図4の4枚の以前にセグメンテーションされた術後医用画像400に見ることができるように、特に画像のコントラストが低い場合、オペレータがアブレーション領域の範囲を定めることが困難である場合がある。したがって、複数のオペレータに、医用画像にアノテーションさせることにより、アブレーション領域の識別を向上させることができる。したがって、レジストレーションされた術後画像に関連付けられたアブレーション領域は、本発明のこの非限定的な例では、オペレータによって提案されたアブレーション領域の組合せに対応する。代替例として、レジストレーションされた術後医用画像に関連付けられたアブレーション領域は、オペレータによって提案されたアブレーション領域の共通部分、コンセンサス、又は判定に対応してもよい。ニューラルネットワークは、さらに、医用画像のボクセルを、アブレーションありの領域又はアブレーションなしの領域に分類するようにトレーニングされる。
【0083】
別法として、医用画像にアブレーション領域を描く1人の専門のアノテータに学習を行わせてもよい。そのため、ニューラルネットワークが明確に定義されたアブレーション領域に達することができるように、オペレータの経験が重要である。
【0084】
データベース内の画像のセットが、アブレーションなしの領域に属するボクセルと同程度の数のアブレーションありの領域に属するボクセルを含むことが好ましいこともまた留意されるべきである。この割合は、オペレータによって手動で決定されたボクセル分類に基づいて計算される。
【0085】
言い換えれば、データベース内の各画像に含まれる個体の身体の部分は、単一のサイズの複数の基本単位に分割され、基本単位の数は、アブレーション領域によって範囲が定められた人体の部分と画像に含まれる個体の身体のその部分の残りの部分との間で略2等分されている。
【0086】
さらに、トレーニングデータベース内のすべての医用画像において、アブレーション領域が常にフレームの中心にあるとは限らないことも好ましい。アブレーション領域が主にフレームの中心にある場合、アブレーション領域が主にフレームの中心にある領域であると学習するニューラルネットワークにおいて、特にオペレータによるフレームの位置決めに誤りがあった場合、これが当てはまらず、偏りが導入されることになる。したがって、フレームの中心における病変の位置決めに関するこの偏りを制限するために、フレームの位置に有界確率変数が有利に加えられる。
【0087】
このように、データベース内の切り取られた医用画像におけるアブレーション領域の中心のセットは、共通フレーム内部の別個の点の一群を形成する。
【0088】
ニューラルネットワークによる偽陽性の発生を制限するために、データベースは、少なくとも1つのアブレーションされていない病変を含む医用画像を含むことがさらに好ましい。
【0089】
ニューラルネットワークをトレーニングする段階290は、概して、いくつかのステップ、すなわち
-トレーニングステップ291、
-検証ステップ292、
-テストステップ293
で実行される。
【0090】
したがって、医用画像データベースは、別個の医用画像を含む3つのデータベースに分割される。これら3つのデータベースは、それぞれトレーニングデータベース、検証データベース、及びテストデータベースと称される。本発明のこの非限定的な例では、医用画像データベース内の医用画像の60~98%がトレーニングデータベースに、1~20%が検証データベースに、1~20%がテストデータベースにグループ化される。このパーセンテージは、概して、医用画像データベース内の画像の数によって決まるが、ここでは、標示として与える。
【0091】
ニューラルネットワークをトレーニングする段階290の最初の2つのステップ291及び292は、複数回繰り返すことができる主なステップである。3つめのテストステップは任意選択的である。
【0092】
トレーニング段階290の第1ステップ291において、トレーニングデータベース内の医用画像に基づいて、ニューラルネットワークの各ニューロンに対する重みW及びバイアスbが決定される。
【0093】
トレーニングデータベースは、有利には、少なくとも1つのアブレーションされていない病変を含む医用画像を含むことができることが留意されるべきである。
【0094】
トレーニング段階290における第2ステップ292により、検証データベース内の医用画像に基づいて、ニューラルネットワークの結果、特に予測誤差を検証するために、すなわち検証データベース内の医用画像ごとに、得られたアブレーション領域をトレーニングデータベースから抽出された医用画像内のセグメンテーションされたアブレーション領域と比較することにより、ニューラルネットワークの各ニューロンに対して予め決定された重みW及びバイアスbを検証することができる。
【0095】
この第2ステップの完了時に予測誤差が大きすぎる場合、各ニューロンに対する重みW及びバイアスbの値をさらに正確にするために、2つのトレーニングステップ291及び検証ステップ292が再度実施されて、同じ医用画像を再使用してニューラルネットワークが再トレーニングされる。
【0096】
別法として、ニューラルネットワークを再トレーニングする場合、第1ステップ291は、トレーニングに対してトレーニングデータベース内の医用画像と検証データベース内の医用画像の一部とを考慮して、医用画像の再サンプリングを使用する。次いで、検証データベース内の医用画像の残りが使用されて、第1再トレーニングステップの完了時に得られた重みW及びバイアスbが検証される。
【0097】
予測誤差が許容可能となる、すなわち所定の値よりも低くなるまで、ニューラルネットワークは必要な回数、再トレーニングすることができることが留意されるべきである。
【0098】
トレーニング段階290における2つのステップ291及び292が少なくとも1回実施されると、あり得る第3テストステップ293において、テストデータベース内の医用画像を用いて、ニューラルネットワークの最終性能をテストすることができる。トレーニングデータベース及び検証データベース内の医用画像とは別個のこれらの医用画像により、各ニューロンに対するパラメータW及びbを用いて構成されるようなニューラルネットワークにより、ニューラルネットワークが直面する可能性のあるすべての状況において、高い精度でアブレーション領域をセグメンテーションすることができることを、検証することができる。しかしながら、検証ステップ292とは異なり、この潜在的な第3テストステップ293は、ニューラルネットワークのための新しいトレーニングサイクルをもたらすことはない。
【0099】
テストステップ293で使用される画像は、概して、ニューラルネットワークの予測能力を最適にテストするために、対象解剖学的構造におけるアブレーション領域の種々の位置及びサイズをカバーするように慎重に選択されることが留意されるべきである。
【0100】
対象解剖学的構造130の術後医用画像に基づいて、ニューラルネットワークは、各ボクセルを、アブレーションありの領域又はアブレーションなしの領域として分類する。この予測は、対象解剖学的構造130の術後医用画像に重ね合わされたアブレーションマスクの形態をとることができる。アブレーションマスクは、概して、ニューラルネットワークによって予測されたアブレーション領域に属するボクセル上にレジストレーションされる。アブレーションマスクは、通常、2次元画像に関連して、面により又は輪郭により範囲が定められることが留意されるべきである。
【0101】
有利には、トレーニング段階290の前に、ニューラルネットは、事前トレーニング段階295と称するものにおいて、個体110のものと同じタイプの対象解剖学的構造の病変を示す医用画像を含む医用画像の第2データベースに対して予めトレーニングされているものとすることができる。この事前トレーニング段階295により、病変及びアブレーション領域の形状の、又はさらには対象解剖学的構造内の位置の類似性を巧妙に使用して、個体110の術後医用画像におけるアブレーション領域のより適切なセグメンテーションが可能になる。
【0102】
第2データベース内の医用画像は、有利には、少なくとも1人のオペレータによって予めセグメンテーションされているものとすることができることが留意されるべきである。段階295における学習は、段階290において実行されるものと同様である。
【0103】
術後医用画像は、
図2に示す方法200の第3ステップ230において、術前医用画像170とレジストレーションされる。2つの医用画像における解剖学的点間の対応関係を見出すことを可能にするレジストレーションは、当業者に既知の方法を用いて実行される。レジストレーションは、剛体的に実行してもよく、すなわち画像内のすべての点が同じ方法で変換され、又は、非剛体的に実行してもよく、すなわち画像内の各点が所定の変換を有してもよい。
【0104】
次いで、4つのサブステップ241、242、243、244を含む第4ステップ240において、再発リスクの評価が実行される。
【0105】
あり得るサブステップ241において、個体110の対象解剖学的構造130の術前医用画像において、病変165が検出される。この検出は、自動的に行ってもよく、又は、オペレータが手動で行ってもよい。
【0106】
サブステップ242において、病変165のセグメンテーションは、個体110の対象解剖学的構造130の術前医用画像上で自動的に行われる。別法として、セグメンテーションは、オペレータによって手動で行われる。
【0107】
病変は、当業者に既知の方法を用いて自動的にセグメンテーションされる。例えば、セグメンテーションは、例えば大津の方法等、画像のヒストグラムに基づく方法を用いて、又はディープラーニング法を用いて行われる。
【0108】
このセグメンテーションサブステップ242は、術前医用画像500を示す
図5によって説明されており、そこでは、病変510及びアブレーション領域520の3次元位置を決定するために、ディープラーニング法に基づく自動セグメンテーションが行われる。ステップ230で使用されたニューラルネットワークとは別個のニューラルネットワークを使用して、同等の結果を得ることができる。
【0109】
次いで、サブステップ243において、病変のセグメンテーションと以前に確立されたアブレーションマスクとの間で、アブレーションマージンが決定される。アブレーションマージンは、病変のセグメンテーションとアブレーションマスクとの間にとられる最小のマージン、すなわち最短距離に対応する。言い換えれば、アブレーションマージンは、病変の点とアブレーション領域の点との間で計算される最短距離に対応し、病変の点のすべてについて計算される。
【0110】
アブレーションマージンを決定することにより、アブレーション領域が病変を適切に覆うことを確実にすることができる。
【0111】
サブステップ243で決定されたアブレーションマージンの値に基づいて、サブステップ244において、計算されたアブレーションマージンを、データベースに格納されている、再発状況に関連付けられたアブレーションマージンの基準値と比較することによって、再発リスクの予測又は再発の位置の決定を評価することができ、再発状況は、場合により関連する再発日とともに、手術後に再発が観察されたか否かを示す。例えば、アブレーションマージンが5mm以上である場合、再発リスクはゼロであると考えることができる。
【0112】
病変の再発リスクの予測は、概して、例えば、0(ゼロ又は負のリスク)又は1(実証された又は正のリスク)に等しい、2値の形式をとることが留意されるべきである。
【0113】
加えて又は別法として、アブレーションマージン以外の再発リスクの予測因子を使用してもよい。再発リスク及び再発の位置は、これらの異なる予測因子のすべて又はいくつかに重み付けすることによって推定することができる。例えば、再発リスクの予測因子は、
-アブレーションマージン、
-病変の表面又は病変の表面の一部とアブレーション領域との間の距離、
-病変の質量中心とアブレーション領域の質量中心との間の距離、
-特に被膜下病変の場合、対象解剖学的構造に対する被膜の近接性を考慮する、病変の表面又は病変の表面の一部とアブレーション領域との間の距離、及び病変の質量中心とアブレーション領域の質量中心との間の距離、
-周囲の正常組織に対するアブレーション領域のエッジの均一性、
-周囲の正常組織に対するアブレーション領域のエッジの鮮鋭度、
-病変の体積とアブレーション領域の体積との比、
-対象解剖学的構造における病変の位置
であり得る、相対的特性に基づく。
【0114】
質量中心の基準値は、アブレーションマージンによって決まる。アブレーションマージンが10mmであり、アブレーションマージンの基準値が5mmである場合、病変の質量中心とアブレーション領域の質量中心との間の距離は、5mm以下であるべきである。
【0115】
複数のリスク予測因子を考慮するために、再発リスクの値は、有利には、2値ではなく、0~1の間で連続的であり得ることが留意されるべきである。したがって、0~1の値を得るために、異なるリスク予測因子の間で重み付けを行うことができる。そして、再発リスクは、閾値、例えば0.5に等しい値よりも高い場合に実証されていると理解されよう。
【0116】
リスクが実証された場合、治療後評価方法200の第5ステップ250において、補足的アブレーションマスクを推定するために、再発の位置を決定することができる。補足的アブレーションマスクは、例えば、アブレーションマージンが所与の値、例えば5ミリメートルよりも小さい領域で補足的アブレーションを行うものと考えられる。
【0117】
ステップ250において、アブレーションマージンが閾値よりも小さい領域、例えば5ミリメートルよりも小さい領域の自動識別を行うことができる。
【0118】
図6は、再発リスクのある病変600のアブレーション治療後の補足的アブレーションの一例を示す。評価方法200は、病変600とアブレーション領域610との間のアブレーションマージン605が不十分な領域を特定し、補足的アブレーションマスク620を生成している。補足的アブレーションマスク620は、アブレーション領域を可能な限り制限しようとしながら生成されることが留意されるべきである。加えて、マスク620において、その後、アブレーション針によって到達すべき標的点630を画定することができる。
【0119】
方法200は、アブレーションマスク又は補足的アブレーションマスクのいずれかと関連付けられた医療器具120が辿るべき経路を計画するステップ260も含むことができ、これは、計画された経路に沿って医療器具120を誘導するステップ270において、医療器具120の操作においてオペレータを誘導するために行う。
【0120】
計画方法の1つの例は、「Method for automatically planning a trajectory for a medical intervention」と題する仏国特許出願第1914780号に記載されている。
【0121】
本発明のこの非限定的例における誘導は、計画された経路及び/又は誘導インジケータをヘッドセット150のスクリーン155に表示することによって、視覚的であることが留意されるべきである。
【0122】
別法として、医療器具120は、医療器具120の位置及び向きに関する情報を提供するナビゲーションシステムによって誘導してもよい。これは、こうしたナビゲーションシステムに結合されたロボット装置を介して、機械的に誘導する場合であり得る。
【0123】
ステップ230~260は、再発リスクがゼロ若しくは略ゼロになるまで、又はアブレーションマージンが十分になるまで繰り返すことができることが留意されるべきである。
【国際調査報告】