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特表2023-526941温度インジケータを備えたゾル-ゲルコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】温度インジケータを備えたゾル-ゲルコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230619BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20230619BHJP
   C09D 5/26 20060101ALI20230619BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230619BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20230619BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/40
C09D5/26
C09D7/61
C09D183/04
A47J36/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571096
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 FR2021050879
(87)【国際公開番号】W WO2021234285
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2005089
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル トゥルギ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル ジョウタン
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ル ブリ
(72)【発明者】
【氏名】アン テシエ
【テーマコード(参考)】
4B055
4J038
【Fターム(参考)】
4B055AA01
4B055BA80
4B055CA02
4B055FA04
4B055FC16
4B055FD05
4J038DL031
4J038HA066
4J038HA116
4J038HA211
4J038HA316
4J038HA386
4J038HA446
4J038JA17
4J038KA02
4J038KA06
4J038KA07
4J038KA08
4J038KA11
4J038MA08
4J038NA16
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB02
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、その層間又はその層中に配置された、少なくとも2つの装飾(a)及び(b)を備える家庭用製品の表面のゾル-ゲルコーティングに関し、(a)は、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と、任意選択的に添加剤から成る粒子の形態中に、少なくとも一つの熱変色性顔料組成物を含む装飾であり、ここで、xは0であるか又は0.001~0.999であり、yは0であるか又は0.001~0.999であり、A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又は、ランタニドから成る群から選択され、A及びMは相互に異なり、(b)は温度指示顔料組成物を含む装飾である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その層間又はその層中に配置された、少なくとも2つの装飾(a)及び(b)を備える家庭用製品の表面のゾル-ゲルコーティング:
(a)(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料から成る粒子の形態中に、少なくとも熱変色性顔料組成物を含む装飾、
-xは0であるか又は0.001~0.999であり、
-yは0であるか又は0.001~0.999であり、
-A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又は、ランタニドから成る群から選択され、
-A及びMは、相互に異なる、
(b)温度参照顔料組成物を含む装飾。
【請求項2】
2つの装飾(a)及び(b)のそれぞれが、重なり合っていない隣接パターンの形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
2つの装飾(a)及び(b)が、部分的に重なり合っていることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
2つの装飾(a)及び(b)が、2つの部分的に重なり合っているパターンの形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング。
【請求項5】
前記コーティング中の(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料のΔE*は、室温と150℃の間で、11以上であり、ΔE*は、CIELAB色空間中で組成CIE1976により規定され、
【数1】
1 *、a1 *、及びb1 *値は、前記化合物の室温におけるL***値を特徴付け、
2 *、a2 *、及びb2 *値は、前記化合物の150℃におけるL***値を特徴付ける、
請求項1~4の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
前記コーティング中の前記(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料のΔE*は、室温と200℃の間で、15以上であり、ΔE*は、CIELAB色空間の組成CIE1976により規定され、
【数2】
1 *、a1 *、及びb1 *値は、前記化合物の室温におけるL***値を特徴付け、
2 *、a2 *、及びb2 *値は、前記化合物の200℃におけるL***値を特徴付ける、
請求項1~5の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
装飾層(a)中の(Bi1-xx)(V1―yy)O4の量は、乾燥状態で、前記層の重量に対して、0.1~100重量%、好ましくは0.2~80重量%から構成される、請求項1~6の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項8】
一つ以上の仕上塗層、好ましくはゾル-ゲルを含む、請求項1~7の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記装飾は、スクリーン印刷又はパッド印刷により適用されている、請求項1~8の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
(Bi1-xx)(V1―yy)O4顔料が、室温で、単斜晶灰重石結晶の形態を示す、請求項1~9の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項11】
x及びyは0である、請求項1~10の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項12】
A及び/又はMは、Li、Na、K、Rb及びCsから選択されるアルカリ金属であり、A及び/又はMは相互に異なる、請求項1~10の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項13】
A及び/又はMは、Be、Mg、Ca、Sr及びBaから選択されるアルカリ土類金属であり、A及び/又はMは相互に異なる、請求項1~10及び12の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項14】
A及び/又はMは、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W及びIrから選択される遷移金属であり、A及び/又はMは相互に異なる、請求項1~10及び12~13の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項15】
A及び/又はMは、Al、Zn、Ga、In及びSnから選択される貧金属であり、A及び/又はMは相互に異なる、請求項1~10及び12~14の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項16】
A及び/又はMは、B、Si、Ge及びSbから選択される半金属であり、A及び/又はMは相互に異なる、請求項1~10及び12~15の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項17】
A及び/又はMは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択されるランタニドあり、A及び/又はMは相互に異なる、請求項1~10及び12~16の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項18】
前記コーティングは、基材上に適用された一つ以上の下塗層を備える、請求項1~17の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項19】
以下の順序で、調理器具の基材の表面から:一つの下塗層、2つの装飾層及び、仕上塗層を備える、請求項18に記載のコーティング。
【請求項20】
装飾が基材上に直接適用されている、請求項1~17の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項21】
ゾル-ゲル層が、少なくとも一つの金属酸化物、好ましくは、コロイドシリカ及び/又は、コロイドアルミナから選択されるコロイド金属酸化物、並びに、少なくとも一つの金属アルコキシド型前駆体、好ましくは、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ジメトキシジメチルシラン、およびそれらの混合物から選択されるアルコキシシラン、を含む、ゾル-ゲル(SG)組成物から得られる、請求項1~20の何れか一項に記載のコーティング。
【請求項22】
請求項1~21の何れか一項に記載のコーティングで、完全に又は部分的にカバーされた基材、好ましくは金属を備える家庭用製品。
【請求項23】
前記家庭用製品は調理器具であり、且つ、請求項1~21の何れか一項に記載のコーティングが、食品を受容する表面を完全に又は部分的にカバーしていることを特徴とする、請求項22に記載の家庭用製品。
【請求項24】
前記支持体は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金、陽極酸化された若しくは陽極酸化されていない、又は、磨かれ、ブラシをかけ若しくはビーズ-ブラストされた、サンドブラストされ、化学的処理をされたアルミニウム若しくはアルミニウム合金、又は、磨かれたステンレススチール、又は、鋳鉄又はアルミニウム、又はチタン、又は、ハンマーで打たれた若しくは磨かれた銅である、請求項23に記載の調理器具。
【請求項25】
前記調理器具は、ソースポット、フライパン、シチューポット、中華鍋、マルチパン、クレープメーカー、グリル、プラチャーグリル、ラクレットグリル、マーマイトポット又は、カセロール皿からなる群から選択され、前記コーティングは食品と接触することになる、請求項23又は24に記載の調理器具。
【請求項26】
家庭用製品は衣服アイロンであり、且つ、請求項1~21の何れか一項に記載のコーティングが、前記衣服アイロンのソールプレートを完全に又は部分的にカバーすることを特徴とする、請求項22に記載の家庭用製品。
【請求項27】
家庭用製品は髪をストレートにするドライヤーであり、且つ、請求項1~21の何れか一項に記載のコーティングが、前記髪をストレートにするドライヤーのプレートを完全に又は部分的にカバーすることを特徴とする、請求項22に記載の家庭用製品。
【請求項28】
以下の工程により特徴付けられる、請求項22~27に記載の家庭用製品を使用する方法:
-前記家庭用製品を加熱するか又は、外部熱源の存在中にそれを置く、
-(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料及び、温度参照顔料組成物の色の変化を観察する、
-以下のときに、前記家庭用製品を使用する:
・(Bi1-xx)(V1―yy)O4顔料と温度参照顔料組成物の色が同一であるとき、又は、
・(Bi1-xx)(V1―yy)O4顔料の色と、温度参照顔料組成物の色のそれぞれ、前記家庭用製品の使用の指示に規定されている温度に到達したとき。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された視認性を有する機能性温度インジケータを備えた家庭用製品、好ましくは、調理器具のための表面のゾル-ゲルコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の色は、実際の物理的なものではなく、実際には、3つのファクター:光束又は(光)源、観察者(目->視覚)及び、対象物の同時作用の結果である(図1)。
【0003】
光は、真空中及び、透明な媒体中を伝播するという特別な特徴がある波である。2つのタイプの光源があり、プライマリー源は、それらの独自の光(例えば、太陽、火、ランプ、TV、レーザー)を作り出す源である。一方、セカンダリ―源は、周囲の光:プライマリー源からの光を散乱させる対象物である。
【0004】
織物、紙、食料品、コーティングのような光を受容する材料は、異なるやり方でふるまい、それらが透明な場合、それらは光を横切らせ、又は、光が通過することを防止することが出来、そして、したがって、それらは不透明である。
【0005】
もし、対象物が不透明であるとき、それは白であるかもしれず、そして、その場合、それは、発光エネルギーを完全に反射する。これに対して、もしそれが黒であるとき、それは発光エネルギーを完全に吸収する。それが(暗い又は明るい)グレイとき、それは放射線の一部を反射し、そして、残りを吸収する。
【0006】
それは、材料の色を特徴付ける可視光スペクトルのある波長における放射線のこの選択的吸収である。したがって、この材料により吸収されなかった放射線の残りは反射され、そして、それにより、観察者に見える。
【0007】
したがって、対象物の視覚的認識は、この対象物により修正され、そして、伝達され、目により認識され、そして、最終的に脳により解釈される光に関係する。目は、およそ350,000の異なる色を判別することが出来る。
【0008】
目では、角膜が網膜上にイメージを作り、レンズは焦点を調節し、そして、虹彩は、瞳孔を拡張させ又は収縮させることによりフィルターとして働く。レセプタ構成要素は、網膜:錐状体及び、杆状体中にある。杆状体は夜の視覚を与え、一方、錐状体(青、緑及び赤)は昼の視覚を与え、そして、光シグナルを神経シグナルに変換する。
【0009】
家庭用製品の分野では、製品が熱源にさらされる、又は加熱されるとき、そのような製品の使用者が、使用中の製品の温度変化を見ることは不可欠である。
【0010】
調理器具の場合、食品の調理中、良好な温度制御が、健康及び、味覚的理由(例えば、グリル上又はフライパン中でステーキの表面を焼くために)、同時に、調理器具コーティングの損傷から、時として起きる過剰加熱を制限する必要がある。過剰加熱が少ない材料はより長い耐用年数を有することになる。低温で調理された食品は、より健康的な感覚刺激特性を有することになる。更に、正しい温度で行われた調理により、エネルギー入力、したがって、環境的インパクトを限定することが可能となる。
【0011】
衣服アイロン又は髪をストレートにするドライヤーの場合、温度制御により、例えば、髪をもろくする又は、織物繊維の質を低下させる影響のような、そのような製品の使用に関する不利な影響を避け、同時に、やけどのような家庭内事故を回避することが可能になる。
【0012】
仏国特許第1388029号明細書(特許文献1)は、温度の関数として可逆的に色が変化する温度感受性成分からなる温度インジケータを備えた調理器具を記載しており、この温度インジケータは焦げ付き防止コーティング、特にポリテトラフルオロエチレンから構成された焦げ付き防止コーティングに配合されている。熱安定性顔料(即ち、与えられた温度範囲で、温度上昇にさらされたとき、色変化を示さない又は、非常に少ない色変化を示す、無機又は有機化合物)が、熱感受性インジケータの相対的な色の変化、したがって温度変化を評価することを可能にするための参照物として、調理器具に組み込むこともできる。しかし、この発明では、熱安定性参照物は焦げ付き防止コーティングと一体化されていないため、したがって、相対的変化を明確な可視性を提供することはできない。
【0013】
これらの問題を解決するために、出願人は熱変色性顔料に基づく温度インジケータを開発し、これは欧州特許第1121576号明細書(特許文献2)に記載されている。この温度インジケータは、少なくとも2つのパターンを含む装飾であり、一方は温度が上がると暗くなる熱変色性酸化鉄顔料をベースとし、他方は温度が上がると非常にゆっくり明るくなる熱変色性顔料をベースとしており、ペリレンレッドとブラックスピネルとのブレンドを含む。予め確立された温度(160℃~220℃にセットされ得る)では、両者のパターンに由来する色が混同し、これが、使用者がこの予め確立された温度を特定する手段であることになる。
【0014】
装飾の隣接する領域でこれら2つの熱変色性顔料を同時に使用することにより、調理器具の調理表面の温度変化の視覚認識を改善することが可能である。しかし、この種の温度インジケータは、どちらの領域も赤で、室温においても似たクロマチックバリューを有するため、使用者が把握するのは、始めは依然として困難である。さらに、パターンの色は、少なくとも50℃の温度範囲内で混ざる。これにより、特に訓練を受けていない人にとって、温度変化を読み取って評価することは容易ではない。結果として、使用者はこの温度インジケータによって提供される情報を無視する傾向ある。
【0015】
したがって、例えば、色ベースの温度インジケータの場合に明らかに異なる色を示すことにより、温度変化がある間、色および/または光学特性を明確に変化させる温度インジケータを提供できることに関心がある。
【0016】
本発明の利点は、消費者に、改善された可読性、理解及び、認知を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】仏国特許第1388029号明細書
【特許文献2】欧州特許第1121576号明細書
【発明の概要】
【0018】
本発明の第一の主題は、コーティングの層間又はコーティングの層中に配置された、少なくとも2つの装飾(a)及び(b)を備える家庭用製品の表面のゾル-ゲルコーティングに関する。
【0019】
(a)(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料から成る粒子形態で、少なくとも一つの熱変色性顔料組成物を含む装飾、
【0020】
-xは、0であるか又は、0.001~0.999であり、
-yは、0であるか又は、0.001~0.999であり、
-A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又は、ランタニドから成る群から選択され、
-A及びMは、相互に異なる、
【0021】
(b)温度参照顔料組成物を含む装飾。
【0022】
本発明の別の主題は、本発明に従ったコーティングで完全に又は部分的にカバーされた基材を備える家庭用製品に関する。
【0023】
本発明の別の主題は、以下の工程により特徴付けられる、本発明に従った家庭用製品の使用方法に関する:
【0024】
-前記家庭用製品を加熱するか又は、外部熱源の存在中にそれを置く、
-(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料及び、温度参照顔料組成物の色の変化を観察する、
-以下のときに、前記家庭用製品を使用する:
【0025】
・(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と、温度参照顔料組成物の色が同一であるとき、又は、
・(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と、温度参照顔料組成物の色がそれぞれ、前記家庭用製品の使用に対する指示で規定されている温度に達したとき。
【0026】
(定義)
「室温」は、18~30℃の間の温度を意味すると理解される。
【0027】
本発明の意味において、「層」は、連続層又は不連続層を意味すると理解されるべきである。連続層(モノリシック層とも呼ばれる)は、それが下に置かれる表面を完全にカバーする全体で固体状の色を形成する一つのまとまりである。不連続の層(又は非モノリシック層)は、複数の部分から構成され、全体として一つではない。
【0028】
「下塗層(プライマーコート)」、「接着層」又は、「接着下塗」は、基材とも呼ばれる、支持体に直接適用される最初の層(この層が支持体と良く接着し、そして、コーティングに全てのその機械的特性:硬度、耐スクラッチ性を提供することが好ましい)から、最初の装飾層の前の最後の層までの全ての層を意味すると理解すべきてである。
【0029】
「仕上塗層」又は「仕上塗」は、それを機械的な損傷から保護し、そして、コーティングに、その非接着性特性を与えている間、装飾層を完全に可視化させたままにさせる連続的で且つ透明な表面層を意味すると理解されるべきである。
【0030】
「装飾」又は「装飾層」は、顔料組成物を含む、複数の連続層又は不連続層を意味すると理解すべきである。装飾は、一つ以上のパターンと一つ以上の色の形態である。装飾は、裸眼で、そして、家庭用製品の使用の標準的な距離で使用者に直接見える。
【0031】
「重ね塗層」は、部分的に又は完全に重ねられた層を意味すると理解されるべきである。これらの層は、例えば、同心円板のように部分的に重なったパターンを持つ装飾の形態であり得る。
【0032】
「隣接塗層」は、重なっていない層を意味すると理解すべきである。これらの層は、同一又は異なる、好ましくは均一に分布された、重なっていないパターンを持つ装飾の形態で存在し得る。
【0033】
「温度参照顔料組成物」は、与えられた温度で、好適な温度に達したことを使用者に示すことが出来る、顔料を含む組成物を意味すると理解されるべきである。この指示は、例えば、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と、温度参照顔料組成物との色を比較することにより、作成され得る。色が同じになったときに、好適な使用温度に達するか、又は、色が可視的に非常に異なるときに、好適な使用温度に達するかの何れかである。
【0034】
「温度参照顔料組成物」は、以下を有する顔料を含み得る:
【0035】
-好適な使用温度において、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と同じ色であり、
【0036】
・なぜなら、この顔料は、好適な使用温度において(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と同じ色を室温において有し、そして、温度により色が変わらないからであるか、
【0037】
・又は、なぜなら、この顔料は、好適な使用温度において(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と同じ色に変わる(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料の色とは、異なる色を室温において有するからである。
【0038】
-この顔料が温度変化により、色変化してもしなくても、好適な使用温度において、この(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料とは、非常に異なる色である。
【0039】
温度参照顔料組成物の色が、本発明のコーティングを備える家庭用製品の使用者ガイドに示される色又は、前記製品で使用者に提供されている色スケール上に示された色のとき、好適な使用温度が得られる。
【0040】
温度参照顔料組成物は、熱変色性又は熱安定性である。
【0041】
髪をストレートにするドライヤー又は衣服アイロンのような調理用品ではない家庭用製品に対して、温度参照顔料組成物は、例えば、通常の使用温度又は、やけどの危険を示す参照顔料組成物であり得る。
【0042】
調理器具に対して、温度参照顔料組成物は、例えば、調理温度の又は過剰加熱の危険を示す参照顔料組成物であり得る。
【0043】
本発明は、少なくとも以下の利点の一つを有する:
【0044】
-本発明に従ったコーティングは、目的とする、正確で、そして、所望の温度範囲、例えば調理器具に対する食品調理温度の周辺の範囲の色変化を対比する、目立った可視性を有する熱変色性機能性を有する。
【0045】
-本発明に従ったコーティングは、例えば、食品を調理するとき、それは健康上及び、味覚上の理由で、調理器具のコーティング損傷から時として過剰な加熱を制限するために必要となる、良好な温度制御を提供し得る。
【0046】
-(Bi1-xx)(V1―yy)O4型化合物は、その熱変色性特性の可逆性を有し、即ち、加熱の効果で色が変化した後、温度が下がると、化合物が最初の状態に、そして、最初の色に戻り、この色変化サイクル(可逆性)は、その特性を失うことなく、無限に繰り返される。
【0047】
-本発明に従ったコーティングは、温度上昇の間、実質的に熱安定性を有し、およそ450℃まで安定である。
【0048】
本発明の意味において、「熱変色性半導体」は、温度の上昇の間、可逆的に色変化を示す、無機又は有機化合物を意味すると理解すべきである。これらの半導体化合物の段階的で、そして、可逆的な熱変色性特性は、材料の膨張による半導体の禁制帯の幅の減少に関係している。確かに、陰イオンと陽イオンのネットワークの周期性は、エネルギーレベルの集合をエネルギーバンドに導く。高エネルギーで満たされたエネルギーバンドは、価電子帯と呼ばれ、そして、より低いエネルギーを持つ空のエネルギーバンドは、伝導帯と呼ばれる。これらの2つの帯の間に、ギャップと呼ばれる禁制帯が存在する。半導体材料の色は、同じ原子で価電子帯から伝導帯へ、又は、一般的に、陰イオンの軌道から陽イオンの軌道へ(原子間光子吸収)の電子の伝達に対応する、電荷移転の存在から生じ得る。
【0049】
本発明の適用が考えられる分野において、衣服アイロン又は髪をストレートにするドライヤーの家庭用器具は、典型的に100℃~300℃、好ましくは、100~250℃、特に好ましいやり方で、100~200℃の範囲の温度で使用される。
【0050】
本発明の適用が考えられる分野において、調理器具の場合、好適な条件は、コーティングが、食品を調理するために適した温度、好ましくは、100~250℃を含む温度に達するときに得られる。
【0051】
本発明の意味において、「熱変色性顔料、熱変色性顔料化合物、熱変色性顔料組成物」は、所望の温度範囲で、温度の機能として色が変化し、その変化が可逆的である顔料、顔料化合物、顔料組成物を意味すると理解されるべきである。この色変化は裸眼で、そして、使用の標準距離で、使用者に可視できる。
【0052】
「熱安定性顔料、熱安定性顔料化合物、熱安定性顔料組成物」は、所望の温度範囲への温度上昇にさらされるときに、色変化を示さない、又は、所望の温度範囲への温度上昇にさらされるときに、色調変化を示すが、色調変化は裸眼で、そして、使用される標準距離で、使用者に可視できない程小さい、顔料、顔料化合物又は顔料組成物を意味すると理解される。
【0053】
好ましくは、熱安定性顔料は、10以下の25~200℃間の色差ΔE*を有する。
【0054】
「(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料から成る粒子の形態」は、熱変色性顔料組成物の粒子が、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料から純粋に構成されていることを意味する。したがって、それらは、コーティングされていない。有利には、それらは、粗い。
【0055】
「色が同一」とは、色変化を裸眼で、そして、使用の標準距離で、使用者が区別できないことを意味する。
【0056】
「家庭用製品」という表現は、調理器具及び家電製品を意味すると理解されるべきである。
【0057】
本明細書において、対象となる家電製品は、熱を生じさせようとするものである。
【0058】
本発明の意味において、「調理器具」は、調理しようとするための対象を意味すると理解すべきである。この目的のために、それは熱処理を受けようとするものである。
【0059】
本発明の意味において、「熱処理を受けようとする対象」は、フライパン、ソースポット、マルチパン、中華鍋、又は、バーベキューグリルのような外部加熱システムにより加熱され、この外部加熱システムにより提供される熱エネルギーを前記対象物と接触する材料又は食品に伝達できる、対象を意味すると理解されるべきである。
【0060】
本発明の意味において、「熱を生じさせようとする対象」は、衣服アイロン、髪をストレートにするドライヤー、スチーム発生機、やかん又は調理するための電気家電のようなそれ自体の加熱システムを有する対象物を意味すると理解されるべきである。
【0061】
本発明の意味において、「ゾル-ゲルコーティング」は、液相中の前駆体に基づく溶液からのゾル-ゲルルートにより合成される、1セットの化学反応(加水分解及び縮合)により固体に変換される、コーティングを意味すると理解されるべきである。このようにして得られたコーティングは、有機-無機又は、完全に無機の何れかである。
【0062】
本発明の意味において、「有機-無機コーティング」は、そのネットワークは本質的に無機であるが、特に使用される粒子及びコーティングの硬化温度により有機基を含む、コーティングを意味すると理解されるべきである。
【0063】
本発明の意味において、「完全な無機コーティング」は、いかなる有機基も含まない、完全な無機材料から作られたコーティングを意味することを意図している。そのようなコーティングは、少なくとも400℃の硬化温度でゾル-ゲルルートにより、又は、400℃以下の温度でも良い硬化温度でテトラエトキシシラン(TEOS)の前駆体からも得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、色に影響を与えるファクターを示す。
図2図2は、CIELAB空間を表す集束球体である。
図3図3は、エネルギーバンド理論を示すダイヤグラムである。
図4図4は、禁制帯(又はギャップ)と観察された色の間の関係を示すダイヤグラムである。
図5図5は、コンピュータ視覚方法の一般的なダイヤグラムである。
図6図6は、温度インジケータと融合しているコーティングの製造である。
図7図7は、異なる種類のサンプルと、ライトブース装置+カメラを表すダイヤグラムである。
図8図8は、粉末形態の顔料の比較である。
図9図9は、パターン分布のダイヤグラムである。9Aは、重なり合っていない隣接パターンである。9Bは、部分的に重なり合っているパターンである。9Cは、重なり合っているパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の第一主題は、その層間又はその層中に配置された、少なくとも2つの装飾(a)及び(b)を備える家庭用製品の表面のゾル-ゲルコーティングに関する:
【0066】
(a)(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料から成る粒子形態中に少なくとも熱変色性顔料組成物を含む装飾、
【0067】
-xは0であるか又は、0.001~0.999であり、
【0068】
-yは0であるか又は、0.001~0.999であり、
【0069】
-A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又は、ランタニドから成る群から選択され、
【0070】
-A及びMは相互に異なり、
【0071】
(b)温度参照顔料組成物を含む装飾。
【0072】
好ましくは、装飾(a)中の(Bi1-xx)(V1―yy)O4の量は、乾燥状態で前記層の重量に対して、0.1~100重量%、好ましくは0.2~80重量%、より好ましくは、0.5~70重量%で構成される。
【0073】
好ましくは、装飾(b)中の温度参照顔料組成物の量は、乾燥状態で前記層の重量に対して、0.1~100重量%、好ましくは0.2~80重量%、より好ましくは、0.5~70重量%で構成される。
【0074】
本発明のコーティングは、有機-無機又は、全体が無機ゾル-ゲルコーティングである。金属ポリアルコキシレート型の前駆体からゾル-ゲル経路により合成された、これらのコーティングは、一般的に、アルキル基でグラフトされたシリカのハイブリッドネットワークを有する。ゾル-ゲル(SG)組成物は、少なくとも一つのコロイド金属酸化物及び、少なくとも一つの金属アルコキシド型前駆体を含む。
【0075】
金属酸化物は、好ましくは、コロイドシリカ及び/又は、コロイドアルミナから選択されるコロイド金属酸化物である。
【0076】
金属アルコキシドは、好ましくは、以下の群から選択される前駆体として使用する:
【0077】
-一般式M1(OR1nに対応する前駆体、
【0078】
-一般式M2(OR2(n-1)2’に対応する前駆体、及び、
【0079】
-一般式M3(OR3(n-2)3’2に対応する前駆体、と:
【0080】
1、R2、R3、又はR3’はアルキル基を示し、
【0081】
2’はアルキル基又は、フェニル基を示し、
【0082】
nは、金属M1、M2又はM3の最大原子価に対応する全ての数であり、
【0083】
1、M2、又はM3は、Si、Zr、Ti、Sn、Al、Ce、V、Nb、Hf、Mg、又はLnから選択される金属を示す。
【0084】
有利には、ゾル-ゲル溶液の金属アルコキシドは、アルコキシシランである。
【0085】
本発明の方法のゾル-ゲル溶液中で使用することが出来るアルコキシシランは、特に、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ジメトキシジメチルシラン、およびそれらの混合物を含むことが出来る。
【0086】
好ましくは、アルコキシシランMTES及びTEOSが使われることになるが、これらはメトキシ基を含まないという利点を有するからである。確かに、メトキシ加水分解は、ゾル-ゲル組成中でメタノールの形成を起こさせ、所定の毒性クラスであり、適用中に追加の前駆体が必要となる。対照的に、エトキシ基の加水分解は、エタノールのみを生じさせ、より好適なクラスであり、そして、したがって、ゾル-ゲルコーティングのための必要要件はより制限が少ない。
【0087】
ゾル-ゲルコーティングの形成は、コロイド金属酸化物を含む水性組成物Aと、金属アルコキシドを含む溶液Bを混合することから成る。混合は、ゾル-ゲル組成物(A+B)の重量に対して、水性組成物の比率が40-75重量%で、有利には行われ、コロイド金属酸化物の量は、乾燥状態で、ゾル-ゲル組成物(A+B)の5~30重量%を示すようにされる。
【0088】
水性組成物Aは、溶媒、特に、少なくとも一つのアルコールを含む溶媒も含み得る。
【0089】
水性組成物Aは、少なくとも一つのシリコーンオイルも含み得る。
【0090】
水性組成物Aは、顔料も含み得る。
【0091】
水性組成物Aは、無機充填材も含み得る。
【0092】
水性組成物Aは、ヒュームドシリカも含み得、その機能はゾル-ゲル組成物の粘度及び/又は、ドライコーティングの光沢を調整することである。
【0093】
水性組成物Aは、典型的には、下塗に対して以下のものを含む:
【0094】
i)水性組成物Aの全重量に対して5~30重量%の少なくとも一つのコロイド金属酸化物;
【0095】
ii)組成物Aの重量に対して0~20重量%の少なくとも一つのアルコールを含む溶媒;
【0096】
iii)任意選択的に、前記水性組成物Aの全重量に対して0.05~3重量%の少なくとも一つのシリコーンオイル、
【0097】
iv)5~30%の顔料、
【0098】
v)2~30%の無機充填材。
【0099】
水性組成物Aは、典型的には、仕上塗層に対して以下のものを含む:
【0100】
i)水性組成物Aの全重量に対して5~30重量%の少なくとも一つのコロイド金属酸化物;
【0101】
ii)組成物Aの重量に対して0~20重量%の少なくとも一つのアルコールを含む溶媒;
【0102】
iii)任意選択的に、前記水性組成物Aの全重量に対して0.05~3重量%の少なくとも一つのシリコーンオイル、
【0103】
iv)0.1~1%のメタリックグリッター。
【0104】
溶液Bは、ブレンステッド又はルイス酸を含んでも良い。有利には、溶液Bの金属アルコキシド前駆体は、溶液Bの全重量の0.01~10重量%を示す、有機又は無機ルイス酸と混合されている。
【0105】
金属アルコキシド前駆体との混合物に対して使用出来る酸の特定の具体例は、酢酸、クエン酸、アセト酢酸エチル、塩酸又はギ酸である。
【0106】
溶液Bは、溶媒、特に少なくとも一つのアルコールを含む溶媒を含むことも出来る。
【0107】
溶液Bは、少なくとも一つのシリコーンオイルを含むことも出来る。
【0108】
溶液Bは、メタリックグリッターを含むことも出来る。
【0109】
本発明の方法の有利な実施形態に従って、溶液Bは、上記に規定したようなアルコキシシランの一つ及び、アルミニウムアルコラートの混合物を含み得る。
【0110】
以下のとき、A及びMは相互に異なることになる:
【0111】
-Aはアルカリ金属であり、それは、Li、Na、K、Rb及びCsから選択できる。
【0112】
-Mはアルカリ金属であり、それは、Li、Na、K、Rb及びCsから選択できる。
【0113】
-Aはアルカリ土類金属であり、それはBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選択できる。
【0114】
-Mはアルカリ土類金属であり、それはBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選択できる。
【0115】
-Aは遷移金属であり、それは、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W及びIrから選択できる。
【0116】
-Mは遷移金属であり、それは、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W及びIrから選択できる。
【0117】
-Aは貧金属であり、それは、Al、Zn、Ga、In及びSnから選択できる。
【0118】
-Mは貧金属であり、それは、Al、Zn、Ga、In及びSnから選択できる。
【0119】
-Aは半金属であり、それは、B、Si、Ge及びSbから選択できる。
【0120】
-Mは半金属であり、それは、B、Si、Ge及びSbから選択できる。
【0121】
-Aはランタニドであり、それは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択できる。
【0122】
-Mはランタニドであり、それは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択できる。
【0123】
好ましくは、A及びMは、相互に異なり、B及び/又はMgである。
【0124】
一つの実施形態に従うと、装飾(a)及び(b)のそれぞれは、重なり合っていない隣接したパターンの形態で存在する。例えば、各装飾は、その表面全体にわたり均一に分布し、そして、相互に交代する異なる幾何学的パターンにより表される(図9A参照)。
【0125】
別の実施形態に従うと、2つの装飾(a)及び(b)は、部分的に重なっている。例えば、各装飾は、表面全体と部分的に重なり合っているところに均一に分布する異なる幾何学的パターンにより表される(図9B参照)。
【0126】
好ましくは、2つの装飾(a)及び(b)は重なり合っており、2つの装飾の一つは連続層であり、そして、他方の装飾はパターンの形態でそれをカバーするか、又は、2つの装飾(a)及び(b)は重なり合っているパターンで存在するかの何れかであるからである(図9C参照)。
【0127】
好ましくは、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料は、室温で、単斜晶灰重石結晶の形態を示す。
【0128】
前記装飾は、任意選択的に添加剤を含む。
【0129】
前記添加剤は、溶媒、増粘剤、抗発泡剤、pH調整剤、湿潤剤及び分散剤から成る群から選択される。
【0130】
前記溶媒は、水、アルコール、ジオール、グリコール及び、エステルから成る群から好適には選択される。
【0131】
前記増粘剤は、アクリル酸ベースコポリマー又は、ポリウレタンベースコポリマー、セルロース、ヒュームドシリカ及び、シリコーン樹脂から成る群から好適には選択される。
【0132】
前記抗発泡剤は、ポリシロキサン、修飾ポリシロキサン、ポリエーテルシロキサンコーポリマー、両親媒性ポリマー、シリコーン、脂肪族無機オイルから成る群から好適には選択される。
【0133】
前記pH調整剤は、ブレンステッド塩基:アンモニア、アミン(トリエチルアミン、トリエタノールアミンなど)、水酸化物(水酸化ナトリウム、カリなど)及び、炭酸塩から成る群から好適には選択される。
【0134】
前記湿潤剤及び分散剤は、高分子脂肪酸誘導体、修飾ポリエーテル、界面活性剤及び、修飾ポリアクリレートから成る群から好適には選択される。
【0135】
好ましくは、本発明に従ったコーティングは、装飾の上に有利に適用される一つ以上の仕上塗層を備える。好ましくは、これらの仕上塗層は、上記に規定したように、ゾル-ゲル層である。
【0136】
第一の実施形態に従うと、本発明に従ったコーティングは、基材上に適用される一つ以上の下塗層を備える。その後、装飾が最後の下塗層に適用される。
【0137】
好ましくは、本発明に従ったコーティングは、調理器具の基材の表面の一方からの以下の順で:下塗層、2つの装飾層(a)及び(b)及び、仕上塗層を備える。
【0138】
第二の実施形態に従うと、装飾は、基材上に直接適用される。これは、装飾が基材と接触していることを意味する。
【0139】
装飾は、当業者に周知の方法、例えば、スクリーン印刷、パッド印刷により、適用され得る。
【0140】
好ましくは、x及びyは0、即ち、本発明は、ビスマスバナジウム(BiVO4)の使用に関する。有利には、室温で、単斜晶灰重石結晶の形態のBiVO4顔料が使用される。
【0141】
ビスマスバナジウムは、その色特性及び、その毒性がないために広く使用されている、組成BiVO4の黄色の無機化合物である。Q.I.顔料黄184として、カラーインデックス国際データベースに記録されていることから、それは、特に、Heubach 社(Vanadur(登録商標)) 、BASF 社(Sicopal(登録商標))、FERRO 社(Lysopac)又は、Bruchsaler Farbenfabrik 社(Brufasol(登録商標))から販売されている。
【0142】
この化合物は、その強烈な色及び、そのサーモクロミズムにより多くの研究の主題となってきている。ゾル-ゲル合成、前駆体の熱分解、水熱及びソルボサーマル合成、気層蒸着のように、多くの合成経路は、BiVO4ナノ粒子を製造するために考えられ得る。しかし、水熱合成は、加圧オートクレーブ中で、迅速な加熱の場合は、安定及び不安定な相の同時形成のために、機械的な視点から複雑であり得る。水熱合成により得られた製品の多数の相と、相図の複雑性から、結晶学的な相の一方又は他方の相を形成し、そして、安定化させることを困難である。
【0143】
第二の、より一般的に使用される合成経路は、固相焼結方法である。これは、高度の結晶性を有する粉体を多量に低コストで、容易に得ることが出来るという利点を有する。したがって、BiVO4粒子は、ビスマス及び、バナジウム塩の混合物を、高温焼結プロセスを介して、焼きなましすることにより得ることが出来る。得られた微細構造(粒子径、形態、結晶性)及び、任意の不純物元素は、結果として、その当初の色及び/又はサーモクロミズムに、BiVO4のバンドギャップに影響を与えるかもしれない。
【0144】
温度参照顔料組成物は、以下の群から選択される:
【0145】
-チタンルチル黄顔料、
-例えば、ビスマスバナジウム酸塩(Py184)から選択される、ビスマス由来の黄顔料、
-例えば、ペリレン赤又は酸化鉄から選択される、赤顔料、
-ビスマスオキシハライドオレンジ顔料(PO85)、
-ビスマスバナジウム酸塩オレンジ顔料(PO86)、
-チタン亜鉛オレンジ顔料(PO82)、
-硫化セリウムオレンジ顔料(PO75;PO78)、
-クロムアンチモンチタン黄-オレンジルチル顔料(PBr24)、
-スズ及び亜鉛黄-オレンジルチル顔料(Py216)、
-硫化亜鉛スズ酸化ニオブ黄-オレンジ顔料(Py227)、
-スズ及びニオブの複合酸化物黄-オレンジ顔料、
-及び、これらの混合物。
【0146】
有利には、本発明に従ったコーティングは、前記コーティング中の(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料のΔE*が、室温と150℃の間で、11以上であり、ΔE*は、CIELAB色空間の組成CIE1976により規定される、ことにより特徴付けられる。
【0147】
【数1】
【0148】
1 *、a1 *、及びb1 *は、前記化合物の室温におけるL***値を特徴付ける。
【0149】
2 *、a2 *、及びb2 *は、前記化合物の150℃におけるL***値を特徴付ける。
【0150】
好ましくは、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料は、室温と150℃の間で、前記コーティング中で、13以上、特別に好ましいやり方で、15以上のΔE*を有する。
【0151】
有利には、本発明に従ったコーティングは、前記コーティング中の(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料のΔE*は、室温と200℃の間で、15以上であり、ΔE*は、CIELAB色空間中で組成CIE1976により規定される、ことにより特徴付けられる。
【0152】
【数2】
【0153】
1 *、a1 *、及びb1 *は、前記化合物の室温におけるL***値を特徴付ける。
【0154】
2 *、a2 *、及びb2 *は、前記化合物の200℃におけるL***値を特徴付ける。
【0155】
好ましくは、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料は、室温と200℃の間で、前記コーティング中で、17以上、特別に好ましいやり方で、20以上のΔE*を有する。
【0156】
有利には、温度関数としての色変化ΔE*の進化は直線的である。好ましくは、この直線解法は、0.05~0.1、好ましくは、0.1以上で構成される傾斜を有する。
【0157】
色が測定され、そして、色分類を使用して特徴付けられる。この分類は、色が数字により規定され、そして、この換算が色空間により行える場合のみ可能である。
【0158】
「色空間は、ヒト又は装置により認知が出来、使用可能又は再現可能な色のセットを表す3次元の数学モデルである」。多数の空間が、精密な座標を有する色のそれら独自の分布で存在する(例えば、テレビシステムにより広く使用されているRGB空間又は、目の対数的な応答を考慮したCIELAB空間)。
【0159】
CIELAB色空間は、異なる表面の色を特徴付けるように働く。この空間は、L***値(図2)を表す幾何モデル軸3方向直交軸に従って表すことが出来る。したがって、各色は、明確に特定されて、そして、独自のL***座標を有する:
【0160】
-L*は、パーセントで表される軸に沿った明度又は、黒:0から白:100までを表す。
-a*は、緑:-120から赤:+120までの範囲の軸
-b*は、青:-120から黄:+120までの範囲の軸
【0161】
各色に独特のこれらの座標により、明度差ΔL*、色調差ΔH*、又は色差ΔE*のような幾つかのパラメータを計算することが可能となる。
【0162】
本発明で我々が関心を持つパラメータは、CIELAB空間に配置された2つの異なる色の間の距離の測定を表す色差ΔE*である。色差ΔE*は単位を有しない。
【0163】
【表1】
【0164】
(色調及び色における偏差と差異の組成)
【0165】
サーモクロミズム現象は、対象とされる温度の関数として、色が変化する化合物の能力として規定される。
【0166】
BiVO4化合物は、室温で黄色であり、そして、温度が上昇すると色が連続的に変化して、オレンジ色から赤色を超える。
【0167】
BiVO4化合物は、半導体酸化物としてのファミリーの一部である:このカテゴリーは、それらのサーモクロミズム特性のもととなる色メカニズムも有する。
【0168】
確かに、半導体材料は、原子の相互作用を表すエネルギーバンド理論により特徴づけられる。それは、コア電子が属する原子上に局在化されていると仮定し、そして、したがって、離散原子軌道中に存在し、そして、そのために、モデルのエネルギーバンド上には表れない、というモデルである。一方、価電子は、固体の結晶ネットワークを通して、非局在化されることが出来、それらは価電子帯を構成する。伝導帯は、自由電子により占有され得る第一の空のエネルギー帯である。価電子帯と伝導帯は、その幅(「ギャップ」とも呼ばれ)が、価電子帯と伝導帯とが関係するエネルギーレベル間に存在するエネルギー差に等しい、禁止帯により分けられる(図3)。
【0169】
半導体材料の色は、問題となっている材料の価電子帯と伝導帯を分ける禁止帯の幅に関係する。それは、材料の色のもととなる禁止帯の幅と同じか、より大きいエネルギーの電子遷移である。1.7eV~3eVの範囲の禁止帯の幅は、黒から白の範囲に及ぶ色を作り、カラーパレットは淡黄色から赤色の範囲の色へ及び、それにより、オレンジ色を超える(赤色は低エネルギーに対応し、そして、淡黄色は高エネルギーに対応する)(図4)。
【0170】
温度の影響下、原子間アニオン-カチオン結合は膨張して、軌道重複を低減させる。これは、バンドの共有原子価を下げ、そして、したがって、ギャップを減少させる結果となり、その後、電子の移動は、価電子帯と2つの原子間の伝導帯との間で促進される。
【0171】
したがって、半導体材料は、温度上昇の影響下、それらの結晶構造のサイズ変化により、熱変色性である。もし、結晶構造が変化すると、ネットワーク内の相互作用は同じではなく、その後、禁止帯の幅は変化し、結果として色が変化する。
【0172】
半導体材料の多くは、それらが温度上昇にさらされたとき、禁止帯の幅を減少させる。これは、室温での黄色から加熱されたときは赤色へのBiVO4の色の変化を説明する。
【0173】
本発明の別の主題は、本発明に従ったコーティングにより完全に又は部分的にカバーされた基材、好ましくは金属を備えた家庭用製品に関する。
【0174】
(Bi1-xx)(V1―yy)O4顔料の色の変化は、使用者に気づかせられる一方で、製品は高温であり、そして、したがって、やけどの危険が存在し、他方で、製品の表面は、その使用をするために好適な温度に達している。
【0175】
有利には、製品支持体は、プラスチック、金属、ガラス、セラミック又はテラコッタであり得る。本発明の文脈において使用できる金属支持体は、有利には、アルミニウム若しくはアルミニウム合金、陽極酸化された若しくは陽極酸化されていない、又は磨かれ、サンドブラストされ、化学的処理をされたアルミニウム若しくはアルミニウム合金、又は磨かれ、ブラシをかけられ若しくはビーズ-ブラストされたステンレススチール、又は、鋳鉄、アルミニウム、又はチタン、又はハンマーで打たれた若しくは磨かれた銅の支持体を含む。
【0176】
本発明の文脈において使用できる家庭用製品の具体例は、特に、揚げ鍋ボウル、フォンデュ若しくはラクレットパン又はポット、揚げ鍋若しくは製パン機のボウル、ミキサーのジャー、ストレートにするアイロンのプレート、及びアイロンソールプレートを含むことが出来る。
【0177】
コーティングのより良い接着のために、支持体の表面は、例えば、サンドブラスティング、ブラッシング又は化学的処理により、その特定の表面を増加させるように処理することが出来、アルミニウムに対しては、この処理は陽極酸化(管状のアルミナ構造の作成)すること、化学的エッチングすること、サンドブラストすることなどにより行える。別の金属基材も磨かれ、サンドブラストされ、ブラシをかけられ又はビーズ-ブラストされ得る。
【0178】
有利には、本発明に従った製品は、調理器具であり、そして、本発明に従ったコーティングは、食品を受容する表面上の基材を完全に又は部分的にカバーする。
【0179】
有利には、本発明に従った製品は、髪をストレートにするドライヤーであり、そして、本発明に従ったコーティングは、そのプレートを完全に又は部分的にカバーする。
【0180】
有利には、本発明に従った製品は、衣服アイロンであり、そして、本発明に従ったコーティングは、そのソールプレートを完全に又は部分的にカバーする。
【0181】
有利には、製品は、支持体の表面の一つが調理器具の内側に置かれた食品と接触することになる凹面の内側表面であり、そして、調理器具の他方の支持体の表面は、熱源と接触することになる凸状の外側表面である、調理器具である。
【0182】
好ましくは、前記家電製品は、調理器具の製品であり、好ましくは、ソースパン、フライパン、シチューポット、中華鍋、マルチパン、クレープメーカー、グリル、プラチャーグリル、ラクレットグリル、マーマイトポット又は、カセロール皿からから成る群から選択され、前記コーティングは、食品と接触することになる。
【0183】
本発明に対して考えられる適用分野において、調理器具型の加熱される製品又は、アイロン型の加熱製品は、典型的に10℃~300℃から構成される温度の範囲で使用される。
【0184】
本発明の別の主題は、以下の工程により特徴付けられる、本発明に従った家庭用製品の使用方法に関する:
【0185】
-前記家庭用製品を加熱するか又は、外部熱源の存在中にそれを置く、
-(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料及び、温度参照顔料組成物の色の変化を観察する、
-以下のときに、前記家庭用製品を使用する、
【0186】
・(Bi1-xx)(V1―yy)O4顔料と温度参照顔料組成物の色が同一であるとき、又は、
・(Bi1-xx)(V1―yy)O4顔料の色と、温度参照顔料組成物の色がそれぞれ、前記家庭用製品の使用の指示に記載されている温度に到達したとき。
【0187】
本発明に従ったコーティングは、(Bi1-xx)(V1―yy)O4型顔料と温度参照顔料組成物を含む少なくとも2つの顔料を含む。
【0188】
本発明に従った製品の使用に対する標準的な距離で、それらの色が使用者の裸眼に視覚的に同一であるときに、使用の最適な条件に達することが出来る。もし、我々が一つの例を挙げるとすれば、本発明に従ったコーティングは、室温と最適な使用温度の間で、黄色からオレンジ色に変化するBiVO4及び、オレンジの熱安定性ビスマスオキシハライドを含むことが出来る。
【0189】
使用指示は、最適な条件下で、本発明に従った家庭用製品を使用し始めても良い色を使用者に示しても良い。この指示は、例えば、特別の色又は、グラジエントカラーバー(例えば、図4中のものを参照)で満たされた幾何学的パターンの形態で存在することになる。このパターン又はこのバーは、本発明に従った製品のコーティングされた表面に近づくことができる使用者に対して比較参照として働く。
【0190】
好ましくは、調理器具の場合、最適な条件は、コーティングが、食品を調理するために適した温度、好ましくは、100~250℃から成る温度に達したときに得られる。
【実施例
【0191】
(実施例1):顔料の選択
【0192】
使用された顔料は、無機化合物粉末である:
【0193】
熱変色性顔料:
【0194】
・BiVO4、実施例2に記載の方法、バッチ2b及び2d、
・Bi2VO3、バリスタFineグレード、5N Plus社により販売、
【0195】
・Sicopal(登録商標)黄K1120FG顔料、BASF社より販売、
・Bayferrox(登録商標)130顔料、Bayferrox社より販売、
【0196】
熱安定性顔料(温度参照顔料):
【0197】
・黄10C242顔料、Shepherd Color 社より販売、
・黄6716B顔料、FERRO社より販売。
【0198】
これらの化合物は単独で又は組合せて使用しても良い。
【0199】
(実施例2):本発明に従ったBiVO4顔料を合成する方法
【0200】
(プロセス2.1)
1M硝酸中の硝酸ビスマスの溶液(0.1M)に、1M硝酸中のバナジン酸アンモニウムの溶液(0.1M)を化学量論的に加える。混合物は一晩攪拌し、ろ過され、水で洗浄され、そして、その後乾燥させる。その後、粉末は450℃で3時間、焼き戻しされる。
その後、硝酸ビスマスが、X線回析分析により特徴付けられる、単斜晶灰重石構造の明るい黄色粉末の形態で得られる。
【0201】
(プロセス2.2)
1M硝酸中の硝酸ビスマスの溶液(0.4M)に、粉末形態で、化学量論的量のメタバナジン酸ナトリウムを加える。混合物は、80℃で2時間攪拌される。その後、沈殿物はろ過され、そして、水で洗浄され、単斜晶灰重石形態で、黄色のBiVO4が得られる。その後、粉末は、500℃で3時間、焼き戻しされる。
方法は、pH<1で、アルカリ化剤の添加なしに行なわれる。したがって、単斜晶灰重石BiVO4は、室温と200℃の間でΔE=40を有する。
【0202】
(実施例3):ゾル-ゲルコーティング中への化合物への融合
【0203】
消費者に、装飾ガイド付で、その調理中、内側に焦げ付かないコーティングを有する調理器具を提供するために、改良された熱変色性を備えた化合物が、数個の層を有する焦げ付かないコーティング中に導入されている。
【0204】
・ゾル-ゲル下塗層
・装飾中へ融合化された熱変色性化合物
・第二の装飾中へ融合化された熱安定性化合物
・ゾル-ゲル仕上塗層
【0205】
(i.下塗層及び仕上塗層の調製)
【0206】
(シリコーンオイル有の下塗層の組成:Cl1)
【0207】
【表2】
【0208】
(シリコーンオイル有の仕上塗層の組成:F1)
【0209】
【表3】
【0210】
(シリコーンオイル無しの下塗層の組成:Cl2)
【0211】
【表4】
【0212】
(シリコーンオイル無しの仕上塗層の組成:F2)
【0213】
【表5】
【0214】
(ii.熱変色性装飾の調製)
実施例1に記載のように熱変色性顔料を含むパッド印刷ペーストを、下記に記載の組成に従って調製する。
【0215】
(熱変色性装飾の組成:DT1)
【0216】
【表6】
【0217】
(熱変色性装飾の組成:DT2)
【0218】
【表7】
【0219】
(iii.熱安定性参照装飾の調製)
【0220】
実施例1に記載のように熱安定性顔料を含むパッド印刷ペーストを、下記に記載の組成に従って調製する。
【0221】
(参照装飾の組成:DR1)
【0222】
【表8】
【0223】
(参照装飾の組成:DR2)
【0224】
【表9】
【0225】
(iv.温度インジケータ融合調理器具の製造)
【0226】
予め成形されたアルミニウムキャップは、前もって油を取り、そして、ほこりを除かれている。コーティングのより良好な接着性のために、支持体表面は、特定の表面を増加させるために、サンドブラスティングによる処理をされている。その後、下塗層が、スプレイによりキャップの表面上に塗布される。この層は、任意選択的に乾燥され得る。その後、上記に記載の組成から得られる熱変色性装飾が、パッド印刷、そして、乾燥により、下塗層上に適用される。参照装飾が、パッド印刷により熱変色性装飾上にパターン形態で適用される。乾燥後、仕上塗層は、3つの前の層上に、スプレイにより適用される。その後、製品全体は、250℃、30分間、硬化させる。
【0227】
(実施例4:シンプルな色を特徴付ける方法)
【0228】
制御照明が装備された閉鎖筐体から成るライトブースが使用される。カメラは、ブース上に直接に設置され、そして、分析されたサンプルの色-関連の特徴が得られるように、写真処理ソフトウエアに接続されている。ライトブースは、D50光源(日光に対応する)で照らされている。
【0229】
この特性評価の原理は、ブース中で分析される材料を位置付け、その写真を撮り、そして、好適なソフトウエアを使用して、写真から色データを抽出する。
【0230】
得られたL1 *1 *1 *値によって、色差(又は色変化)ΔE*が、得られたサンプルに対する参照温度(RT=25℃)に対して各温度で得られ、ΔE*は、CIELAB色空間の組成CIE1976により規定される。
【0231】
【数3】
【0232】
1 *、a1 *、b1 *:標準温度(25℃又はRT)における顔料の色の座標又は、参照顔料の座標。
【0233】
2 *、a2 *、b2 *:選択された温度(25℃/100℃/150℃/180℃/200℃/250℃)における顔料の色の座標又は、選択された顔料の座標。
【0234】
以下に記載のプロトコルが開発されて来ており、そして、最善の状態で下記の要素を制御することを可能にさせる:(雰囲気及び、カメラを邪魔しないように)ブース中で直接加熱することは出来ないが、しかし、移相の時間を使用して、対象温度で写真を撮る。
【0235】
(i.装置)
-接触センサ付き温度計
-ストップウォッチ
-写真ライトブース
-CANON EOS 13000D カメラ(CANON 28mm広角レンズ)
-スライドグラス
-データ収集ソフトウエア:Capture One and Photoshop
【0236】
(ii.粉末形態中のサンプルに対するプロトコル(図7))
【0237】
-フライパン中で、3つの異なる粉末の山(略ティースプーン)を作る。
-同じ厚さ、平で均一な表面を持つようにガラスプレートで粉末の山を平らにする。
-その後、前のように同じプロトコルを実行する、
【0238】
(実施例5:結果の利用)
(i.数個の温度におけるサンプルのΔE*の計算)
【0239】
例えば、粉末形態中の顔料Fe23を取り上げる。
【0240】
1 *1 *1 *座標及び、以下に示す各温度に対するFe23のΔE*の結果。
【0241】
【表10】
【0242】
100℃における具体例:
【0243】
【数4】
【0244】
【数5】
【0245】
【表11】
【0246】
(ii.グラフの解釈)
異なる温度で各サンプルに対して計算されたΔE*値は、グラフ(ΔE*=f(温度℃))によって、室温における色に対する色差の進化を可視化することが出来る。
【0247】
グラフ(図8)は、粉末形態で各顔料の色の変化を示す。
【0248】
このケースで研究された顔料は全て、温度の関数としてかなり直線的な色変化を有する。
【0249】
「非常に良好」な熱変色性顔料は、25℃と200℃の間で40以上の色差ΔE*を有し、且つ、0.2以上の傾きを持つ温度関数としての色差ΔE*が直線的変化を有する。
【0250】
「良好」な熱変色性顔料は、25℃と200℃の間で30~40で構成される色差ΔE*を有し、且つ、0.2以上の傾きを持つ温度関数としての色差ΔE*が直線的変化を有する。
【0251】
「平均」の熱変色性顔料は、25℃と200℃の間で10~30で構成される色差ΔE*を有し、且つ、0.05~0.2から成る傾きを持つ温度関数としての色差ΔE*が直線的変化を有する。
【0252】
「熱安定性」顔料は、25℃と200℃の間で10以下の色差ΔE*を有し、且つ、0.05以下の傾き持つ温度関数としての色差ΔE*が直線的変化を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】