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  • 特表-改良された非粘着性コーティング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】改良された非粘着性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230619BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230619BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20230619BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20230619BHJP
   C09D 127/20 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D127/12
C09D127/18
C09D127/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571097
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 FR2021050880
(87)【国際公開番号】W WO2021234286
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2005092
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル トゥルギ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル ジョウタン
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ル ブリ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CD101
4J038CD121
4J038CD131
4J038HA166
4J038KA04
4J038PA07
4J038PB02
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、家庭用物品のための非粘着性コーティングにおける(Bi1-xx)(V1-yy)O4の使用であって、その製造プロセス中の前記コーティングから生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼすための使用又は前記家庭用物品の前記使用に関し、xは0か又はxは0.001~0.999であり、yは0か又はyは0.001~0.999であり、A及びMは窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又はランタノイドからなる群から選ばれ、A及びMは互いに異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭用物品のための非粘着性コーティングにおける(Bi1-xx)(V1-yy)O4の使用であって、その製造プロセス中に前記コーティングから生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす使用、又は前記家庭用物品の前記使用において、
xは0に等しいか又はxは0.001~0.999であり、
yは0に等しいか又はyは0.001~0.999であり、
A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又はランタノイドからなる群から選ばれ、
AとMは互いに異なることを特徴とする、使用。
【請求項2】
x及びyが0である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(Bi1-xx)(V1-yy)O4の量が、それが添加される被膜の各々の中において、乾燥状態の前記被膜の重量に対して0.1~100重量%、好ましくは0.2~80重量%で構成されている、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
A及び/又はMが、Li、Na、K、Rb及びCsから選ばれるアルカリ金属であり、A及びMが互いに異なる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
A及び/又はMが、Be、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれるアルカリ土類金属であり、A及びMが互いに異なる、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
A及び/又はMが、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W及び、Irから選ばれる遷移金属であり、A及びMが互いに異なる、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
A及び/又はMが、Al、Zn、Ga、In及びSnから選ばれる貧金属であり、A及びMが互いに異なる、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
A及び/又はMが、B、Si、Ge及びSbから選ばれる半金属であり、A及びMが互いに異なる、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
A及び/又はMが、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれるランタノイドであり、A及びMが互いに異なる、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記コーティングは、それが適用される家庭用物品の基材の面から、次の順序で、1つ以上のプライマー被膜、任意に、1つ以上の連続又は不連続の装飾被膜、及び1つ以上の仕上げ被膜を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
それがフッ素樹脂ベースのコーティングであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
フルオロポリマー(複数可)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペン(FEP)のコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンとポリメチルビニルエーテル(MVA)のコポリマー、テトラフルオロエチレン、ポリメチルビニルエーテル及びフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PMVE/FAVE)のターポリマー及びエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
(Bi1-xx)(V1-yy)O4が、前記コーティングの被膜の中に添加されてこの被膜又は前記プライマー被膜から生じる前記副生産物の前記分解に触媒作用を及ぼす、前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記コーティングが1つ以上の装飾を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
(Bi1-xx)(V1-yy)O4が、装飾中に添加されて、この装飾に接触することになるこの装飾及び前記プライマー被膜から生じる副生産物の前記分解に触媒作用を及ぼす、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
(Bi1-xx)(V1-yy)O4が、前記コーティングの1以上の仕上げ被膜中に添加されて、前記仕上げ被膜又はプライマー被膜又は食品副生産物から生じて、前記家庭用物品の前記使用から生じるこれらの仕上げ被膜内に移行した前記副生産物の前記分解に触媒作用を及ぼす、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記コーティングから生じる前記副生産物の前記分解に、その製造プロセスの焼結ステップの間に、触媒作用を及ぼす、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用物品、好ましくは調理器具のための非粘着性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーベースのコーティングを有する非粘着性家庭用物品は、現在、特にPTFEタイプのフルオロポリマーからなるが、PAI、PES、PAEK(ポリアリルエーテルケトン)などの1つ以上の結合樹脂、タンニン、及び/又はアクリル誘導体などの有機添加物を組み込むことも可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの樹脂及びこれらの添加剤の欠点は、PTFEが焼結される際にそれらが部分的に分解し、分解副生産物を発生させやすいことである。このようにして生成されたこれらの副生産物は、しばしば着色され、特に頂部被膜からプライマー被膜まで、特にこれらが淡色である場合には、被膜の色を分解させ得る。この色変化は、プライマー被膜と仕上げ被膜との間に淡い色の装飾が適用されると、より一層目立つようになる。
【0004】
フルオロポリマーに基づく、又はゾル-ゲル化学から生じる非粘着性コーティングを有する家庭用物品は使用、特に油の吸収、調理器具の場合にはそれらの熱分解から生じるこれらの油の副生産物又は食品の汚れ、又は衣類用アイロン(布繊維)又はストレートアイロン(髪繊維)の場合には分解した繊維、により汚れる傾向をも有する。この汚れは、装飾が見えなくなることにつながり得る実質的な黒ずみにつながる。
【0005】
化合物BiVO4が、現在、有機化合物を分解し、それゆえ大気中の汚染を除去することを可能にする光触媒として知られている。しかし、活性化するためには、この触媒は光を必要とする。また、分解速度がしばしば非常に長い(数時間)。
【0006】
最近では、BiVO4が、温度反応と光照射下とを組み合わせることにより、メチルベンゼンを完全に分解するために使用され得ることが示されている。それにもかかわらず、BiVO4がメチルベンゼンの熱分解のみを可能にすることは言及されていない(中国特許出願公開第102008892号明細書)。
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、一般に非粘着性コーティングによる高温製造プロセス又は脂質の吸収に続く黒ずみの最後に起こる、これらの色変化の現象が、コーティングの1つの被膜中にBiVO4を添加することによって解決され得ることを観察した。本発明者らは、プライマー被膜と上に置かれた淡色装飾との間にBiVO4を含む被膜が、プライマー被膜から生じる分解副生産物のこの淡色装飾への蓄積を防ぐことを実際に観察した。したがって、BiVO4はプライマー被膜から生じて上部被膜に移行する副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明の第1の主題は、家庭用物品用の非粘着性コーティングにおける(Bi1-xx)(V1-yy)O4の使用であって、その製造プロセス中に前記コーティングから生じる副生産物の分解(degradation)に触媒作用を及ぼす使用、又は前記家庭用物品の前記使用に関し、
xは0に等しいか又はxは0.001~0.999であり、
yは0に等しいか又はyは0.001~0.999であり、
A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又はランタノイドからなる群から選ばれ、
AとMは互いに異なることを特徴とする、使用である。
【0009】
定義
「室温」とは、18~30℃の温度を意味すると理解される。
【0010】
本発明の意味において、「被膜(coat)」は、連続又は不連続被膜を意味すると理解されるべきである。連続被膜(モノリシック被膜とも呼ばれる)は、それが置かれる表面を完全に覆う全固形色を形成する単一の全体である。不連続被膜(又は非モノリシック被膜)は、いくつかの部分を備えることができ、それゆえ単一の全体ではない。
【0011】
「プライマー被膜」、「結合被膜」、「結合プライマー」は、基材とも呼ばれる支持体に直接塗布される第1の被膜(この被膜は支持体によく接着し、その機械特性:硬度、耐傷性をすべてコーティングに与えることが望ましい)から第1の装飾被膜の前の最終被膜までの全ての被膜を意味すると理解される。
【0012】
「仕上げ(Finish)被膜」又は「仕上げ」は、装飾被膜を、それを機械的な損傷から保護してその非粘着性をコーティングに付与しながら、完全に見えるようにした連続的で透明な表面被膜を意味すると理解される。
【0013】
「装飾」又は「装飾被膜」は、顔料組成物を含む1つ以上の連続又は不連続の被膜を意味すると理解される。装飾は、1つ以上のパターン及び1つ以上の色の形態であり得る。装飾は、肉眼で、家庭用物品の標準的な使用距離で、使用者にはっきりと見えるものである。
【0014】
「家庭用物品」という表現は、調理器具や家庭用電化製品を意味すると理解すべきである。
【0015】
ここで問題になっている家庭用電化製品は、熱を発生させることを目的としている。
【0016】
本発明の意味において、「調理器具」は、調理を目的とした物体を意味すると理解されるべきである。この目的のために、それは熱処理を受けることが意図されている。
【0017】
本発明の意味において、「熱処理を受けることが意図された物体」とは、フライパン、ソースパン、ソテーパン、中華鍋又はバーベキューグリルなどの、外部加熱システムによって加熱される物体であり、この外部加熱システムによって与えられる熱量を前記物体と接触する材料又は食品に伝達できるものであると理解されるべきである。
【0018】
本発明の意味において、「熱を発生させることが意図された物体」とは、衣類用アイロン、縮毛矯正器、蒸気発生器、電気ケトル又は調理用電気器具などの独自の加熱システムを有する加熱物体を意味すると理解されるべきである。
【0019】
「フルオロポリマーベースのコーティング(coating)」は、その被膜の1つ以上に1つ以上のフルオロポリマーを含んでいるコーティングを意味すると理解される。
【0020】
本発明の意味において、「ゾル-ゲルコーティング」とは、液相の前駆体に基づく溶液からゾル-ゲル経路によって合成されるコーティングを意味すると理解され、これは低温での一連の化学反応(加水分解及び縮合)によって固体に変化する。このようにして得られたコーティングは、有機鉱物であっても、全て鉱物であってもよい。
【0021】
本発明の意味において、「有機鉱物コーティング」は、そのネットワークが本質的に無機であるが、特に使用される前駆体及びコーティングの硬化温度のために、有機基を含んでいるコーティングを意味すると理解される。
【0022】
本発明の意味において、「全て鉱物のコーティング」は、有機基のない、全て無機材料からできたコーティングを意味することが意図される。このようなコーティングは、少なくとも400℃の硬化温度を有するゾル-ゲル経路によって、又は400℃未満であってよい硬化温度を有するテトラエトキシシラン(TEOS)タイプの前駆体から得ることも可能である。
【0023】
「前記コーティングからその製造プロセス中に生じる副生産物」は、コーティング化合物の製造プロセス中の分解、特に加熱によるこれらの化合物の分解から生じる化学種を意味すると理解される。これらの化学種は、コーティング被膜の1つ、特に淡色被膜に望ましくない色を与える着色された化学種であることが最も多い。
【0024】
例えば、製造プロセス中にPAI樹脂は部分的に強く着色するアミンモノマーに分解、PES又はPEEK樹脂は部分的にフェノールモノマーに分解し、及び特定の添加剤は強く着色するアクリルモノマーに分解することを想起することができる。
【0025】
「使用中のコーティングから生じる副生産物」は、使用中の例えば脂肪のような食品の分解、特に加熱による分解から生じる化学種を意味すると理解される。
【0026】
例えば、家庭用物品の使用中に、脂肪は、強く着色するアクリルアミド、芳香族アミン、ニトロソアミンなどに分解し得ることが想起され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、2装飾構成におけるパターン分布図である。1Aは隣接し、重ならないパターンである。1Bは部分的に重なり合うパターンである。1Cは重なり合うパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明の第1の主題は、家庭用物品用の非粘着性コーティングにおける(Bi1-xx)(V1-yy)O4の使用であって、その製造プロセス中の前記コーティングから生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす使用、又は前記家庭用物品の前記使用に関し、
xは0に等しいか又はxは0.001~0.999であり、
yは0に等しいか又はyが0.001~0.999であり、
A及びMは、窒素、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、貧金属、半金属又はランタノイドからなる群から選ばれ、
AとMは互いに異なることを特徴とする。
【0029】
(Bi1-xx)(V1-yy)O4は、非粘着性コーティングの1以上の被膜に添加される。
【0030】
好ましくは、(Bi1-xx)(V1-yy)O4のそれが添加される被膜中の又はそれぞれの中の量は、乾燥状態の前記被膜の重量に対して0.1~100重量%、好ましくは0.2~80重量%、より好ましくは0.5~70重量%で構成されている。(Bi1-xx)(V1-yy)O4は、純粋かつ連続的又は不連続的に塗布され得る。
【0031】
有利には、(Bi1-xx)(V1-yy)O4化合物は、(Bi1-xx)(V1-yy)O4化合物からなる粒子の形態で存在する。「(Bi1-xx)(V1-yy)O4化合物からなる粒子の形態」とは、粒子が純粋に(Bi1-xx)(V1-yy)O4化合物でできていることを意味する。したがってそれらは被膜されていない。有利なのには、それらは粗い。
【0032】
その製造プロセスの間に、コーティングは例えば150~450℃の高温にさらされ得る。
【0033】
その使用プロセスの間に、コーティングは、例えば100~300℃、好ましくは150~250℃から構成される高温にさらされ得る。
【0034】
このような高温は、前記コーティングから生じる副生産物だけでなく、食品から生じてコーティングに移行する副生産物の原因となり得る。
【0035】
好ましくは、上記で定義された(Bi1-xx)(V1-yy)O4化合物は、室温でモノシリックなシェライト結晶形態を示す。
【0036】
好ましくは、x及びyは0であり、すなわち本発明は、バナジン酸ビスマス(BiVO4)の使用に関するものである。有利には、室温でモノシリックなシェライト結晶形のBiVO4が使用される。
【0037】
バナジン酸ビスマスは、組成BiVO4で表される黄色の無機化合物であり、その色の特性と毒性がないことから広く使用されている。カラー・インデックス・インターナショナルのデータベースにQ.I.ピグメントイエロー184として登録されており、特にHeubach(Vanadur(登録商標))、BASF(Sicopal(登録商標))、FERRO(Lysopac)、Bruchsaler Farbenfabrik(Brufasol(登録商標))の会社から販売されている。
【0038】
この化合物は、その強い色とそのサーモクロミズムのために、多くの研究の対象となっている。多くの合成経路がBiVO4ナノ粒子の製造のために考えられ、ゾル-ゲル合成、前駆体の熱分解、水熱合成、ソルボサーマル合成、気相堆積などである。水熱合成は、加圧されたオートクレーブ内での急速な加熱により、安定相と不安定相が同時に形成されるため、機構学的に複雑なものとなり得る。水熱合成で得られる生産物の相が豊富であり相図が複雑であることは、結晶学的にどちらか一方の相を形成し安定化させることを困難にする。
【0039】
2つ目の、より一般的な合成経路は、固相焼結法である。これは、結晶性の高い大規模な粉末を低コストで容易に得ることができるという利点がある。BiVO4粒子はビスマス塩とバナジウム塩の混合物を高温焼結法でアニールすることにより、得ることができる。得られた微細構造(粒子径、形態、結晶性)及び任意のドーピング元素は、BiVO4のバンドギャップに影響を与え、その結果、初期の色及び/又はサーモクロミズムが変更となるかもしれない。
【0040】
AとMが互いに異なるとすると、
Aがアルカリ金属であるとき、それはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれることができ、
Mがアルカリ金属であるとき、それはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれることができ、
Aがアルカリ土類金属であるとき、それはBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれることができ、
Mがアルカリ土類金属であるとき、それはBe、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれることができ、
Aが遷移金属であるとき、それはSc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W及びIrから選ばれることができ、
Mが遷移金属であるとき、それはSc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W及びIrから選ばれることができ、
Aが貧金属であるとき、それはAl、Zn、Ga、In、Snから選ばれることができ、
Mが貧金属であるとき、それはAl、Zn、Ga、In、Snから選ばれることができ、
Aが半金属であるとき、それはB、Si、Ge、Sbから選ばれることができ、
Mが半金属であるとき、それはB、Si、Ge、Sbから選ばれることができ、
Aがランタノイドであるとき、それはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれることができ、
Mがランタノイドであるとき、それはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれることができる。
【0041】
好ましくは、互いに異なるA及びMは、B及び/又はMgである。
【0042】
好ましくは、前記コーティングは、それが適用される家庭用物品の基材の面から以下の順序で:1つ以上のプライマー被膜、任意に、1つ以上の連続又は不連続の装飾被膜、及び1つ以上の仕上げ被膜、を備える。
【0043】
好ましくは、前記コーティングは、家庭用物品の基材の面から次の順序で:1又は2のプライマー被膜、任意で装飾被膜及び仕上げ被膜を備える。
【0044】
装飾なしの構成の場合、(Bi1-xx)(V1-yy)O4が少なくとも1つのプライマー被膜及び/又は少なくとも1つの仕上げ被膜に添加される。それは例えばプライマー被膜に添加されて、前記被膜の製造プロセス中にこの被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼし、したがって、分解副生産物のこれらの被膜内への移行による色変化から仕上げ被膜を保護する。それは例えば、1以上の仕上げ被膜に添加され、前記家庭用物品の使用から生じる、前記仕上げ被膜又はプライマー被膜から生じる副生産物或いはこれらの仕上げ被膜内に移行した食品分解の副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。
【0045】
別の実施形態によれば、本発明によるコーティングは、有機鉱物又は全て鉱物のゾル-ゲル(SG)コーティングである。金属ポリアルコキシレートタイプの前駆体からゾル-ゲル経路によって合成されたこれらのコーティングは、一般にグラフト化アルキル基を有するシリカの、ハイブリッドネットワークを有する。ゾル-ゲル(SG)組成物は、少なくとも1つのコロイド状金属酸化物と少なくとも1つの金属アルコキシドタイプの前駆体を含む。
【0046】
金属アルコキシドは、コロイダルシリカ及び/又はコロイダルアルミナから選ばれるコロイダル金属酸化物であることが好ましい。
【0047】
金属アルコキシドは、以下からなる群から選ばれる前駆体として好ましくは用いられる:
一般組成Mに相当する前駆体M1(OR1)n、
一般組成M2(OR2(n-1)2’に相当する前駆体、及び
一般組成M3(OR3(n-2)32に相当する前駆体、であり、
1、R2、R3又はR3’はアルキル基を示し
2’はアルキル又はフェニル基を示し、
nは金属M1、M2又はM3の最大価数に相当する整数であり、
1、M2又はM3はSi、Zr、Ti、Sn、Al、Ce、V、Nb、Hf、Mg又はLnから選ばれる金属を示す。
【0048】
有利には、ゾル-ゲル溶液の金属アルコキシドは、アルコキシシランである。
【0049】
本発明の方法のゾル-ゲル溶液に使用できるアルコキシシランは、特にメチルトリメトキシシラン(MTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ジメチルジメトキシシラン及びこれらの混合物を含むことができる。
【0050】
好ましくは、アルコキシシランMTES及びTEOSが使用されるが、なぜならそれらがメトキシ基を含まないという利点を有するからである。実際、メトキシ基の加水分解は、ゾルゲル製剤中にメタノールの形成をもたらし、これはその毒性クラスを考慮すると、適用中にさらなる予防措置を必要とする。対照的に、エトキシ基の加水分解はエタノールを生成するだけであり、より好ましいクラスを有するため、ゾル-ゲルコーティングの使用条件はより限定的である。
【0051】
このゾル-ゲルコーティングの形成は、コロイド状金属酸化物を含む水性組成物Aと、金属アルコキシドを含む溶液Bとを混合することからなる。この混合は、有利には、ゾル-ゲル組成物(A+B)の重量に対して水性組成物の40~75重量%の割合で行われ、コロイド状金属酸化物の量が乾燥状態でゾル-ゲル組成物(A+B)の5~30重量%を表すようになっている。
【0052】
水性組成物Aはまた、溶媒、特に少なくとも1つのアルコールを含む溶媒を含むことができる。
【0053】
水性組成物Aは、少なくとも1つのシリコーンオイルを含むこともできる。
【0054】
水性組成物Aは、顔料を含むこともできる。
【0055】
水性組成物Aは、鉱物充填剤を含むこともできる。
【0056】
水性組成物Aは、ヒュームドシリカを含むこともでき、その機能は、ゾル-ゲル組成物の粘度及び/又は乾燥コーティングの光沢を調整することである。
【0057】
水性組成物Aは、典型的には、プライマー被膜のために:
i)水性組成物Aの総重量に対して5~30重量%の、少なくとも1つのコロイド状金属酸化物、
ii)組成物Aの重量に対して0~20重量%の、少なくとも1つのアルコールを含む溶媒、
iii)任意に、前記水性組成物Aの総重量に対して0.05~3重量%の、少なくとも1つのシリコーン油、
iv)5~30%の顔料、
v)2~30%鉱物充填剤、を含む。
【0058】
水性組成物Aは、典型的には、仕上げ被膜のために、
i)水性組成物Aの総重量に対して5~30重量%の、少なくとも1つのコロイド状金属酸化物、
ii)組成物Aの重量に対して0~20重量%の、少なくとも1つのアルコールを含む溶媒、
iii)任意に、前記水性組成物Aの総重量に対して0.05~3重量%の、少なくとも1つのシリコーン油、
iv)0.1~1%の金属光沢材、を含む。
【0059】
溶液Bはまた、ブレンステッド又はルイス酸を含むことができる。有利には、溶液Bの金属アルコキシド前駆体は、溶液Bの全重量に対して0.01から10重量%を表す有機又は鉱物ルイス酸と混合される。
【0060】
金属アルコキシド前駆体との混合に使用可能な酸の具体例としては、酢酸、クエン酸、アセト酢酸エチル、塩酸又は蟻酸が挙げられる。
【0061】
溶液Bはまた、溶媒、特に少なくとも1つのアルコールを含む溶媒を含むことができる。
【0062】
溶液Bはまた、少なくとも1つのシリコーンオイルを含むことができる。
【0063】
溶液Bはまた、金属光沢材を含むことができる。
【0064】
本発明のプロセスの有利な実施形態によれば、溶液Bは、上記で定義されたようなアルコキシシランの1つとアルミニウムアルコラートの混合物を含むことができる。
【0065】
このゾル-ゲルの実施形態によれば、本発明によるコーティングは、基材の面からこの順序で、
1以上のSGプライマー被膜、
上記で定義したようなBiVO4顔料化合物を含む最終プライマー被膜の少なくとも一部の上の装飾、を含む。
【0066】
別の実施形態によれば、本発明によるコーティングは、フルオロポリマーベースのコーティングである。
【0067】
フルオロポリマー(複数可)は、粉末又は水性分散液又はそれらの混合物の形態で存在することができる。
【0068】
有利には、フルオロポリマー(複数可)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)とのコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペン(FEP)とのコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンとポリメチルビニルエーテルのコポリマー(MVA)、テトラフルオロエチレン、ポリメチルビニルエーテル及びフルオロアルキルビニルエーテルのターポリマー(TFE/PMVE/FAVE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)及びこれらの混合物を含む群で選ばれ得る。
【0069】
有利には、フルオロポリマー(複数可)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)とのコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペン(FEP)とのコポリマー、PTFE及びPFAの混合物(PTFE/PFA)並びにPTFE及びFEPの混合物(PTFE/FEP)から選ばれ得る。
【0070】
好ましくは、フルオロポリマー(複数可)は、非粘着性コーティング組成物の全乾燥質量に対して、10~99質量%、好ましくは50~98質量%を表すことができる。
【0071】
好ましくは、前記コーティングは、1以上の装飾を含んでいる。
【0072】
好ましくは、(Bi1-xx)(V1-yy)O4は、次に、装飾の少なくとも1つ又はプライマー被膜に、特に好ましい態様では、装飾の少なくとも1つ又は装飾(複数可)が上に塗られる最後のプライマー被膜に、添加される。
【0073】
第1の実施形態によれば、(Bi1-xx)(V1-yy)O4が被膜に添加されて、この被膜又はプライマー被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。例えば、(Bi1-xx)(V1-yy)O4が装飾に添加されて、この装飾及びこの装飾に接触することになるプライマー被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。副次的実施形態によれば、(Bi1-xx)(V1-yy)O4化合物は、被服を着色する顔料としても、前記被膜に添加されて、この被膜及びプライマー被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。
【0074】
黄色装飾は、例えば、(Bi1-xx)(V1-yy)O4を含むと考えることができ、(Bi1-xx)(V1-yy)O4は、装飾に黄色を与えるだけでなく、この装飾から及びプライマー被膜から生じる及びこの装飾に接触することになる副生産物の分解に触媒作用を及ぼすために使用される。この黄色装飾は、(Bi1-xx)(V1-yy)O4で作られ得る。
【0075】
第2の実施形態によれば、(Bi1-xx)(V1-yy)O4は、被膜に添加されて、それが上に置かれたコーティング被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。例えば、(Bi1-xx)(V1-yy)O4は、装飾の下に塗布される被膜、例えばプライマー被膜内に添加され、これらのプライマー被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼし、こうして装飾を保護する。
【0076】
(Bi1-xx)(V1-yy)O4装飾が、パターン、及び(Bi1-xx)(V1-yy)O4を含む装飾に重なった異なるパターンの形態の白色装飾で考えられ(図1C参照)、(Bi1-xx)(V1-yy)O4がプライマー被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼすために使用され、白色装飾を保護する。「重なった被膜」とは、部分的又は完全に上に置かれた被膜を意味するものと理解される。これらの被膜は、部分的に重なったパターン、例えば同心円状のディスクを持つ装飾の形態とすることができる。
【0077】
装飾は、例えばスクリーン印刷やパッド印刷など、当業者によく知られた任意の方法で適用され得る。
【0078】
有利には、物品支持体は、プラスチック、金属、ガラス、セラミック又はテラコッタであることができる。本発明の文脈で使用可能な金属支持体は、有利には、陽極酸化されているか否かを問わず、アルミニウム又はアルミニウム合金、或いは研磨、ブラッシング、ビーズブラスト、サンドブラスト、化学処理されたアルミニウム又はアルミニウム合金、或いは研磨ステンレス鋼、或いは鋳鉄又はアルミニウム、或いはチタン或いは打ち出し又は研磨した銅、の支持体が含まれる。
【0079】
プライマー被膜(複数可)は、特に基材が機械的に処理される場合には、結合樹脂で構成することができる。
【0080】
好ましくは、結合樹脂(複数可)は、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、タンニンからなる群で選ばれる。
【0081】
本発明の文脈で使用可能な家庭用物品の例は、特に、揚げ物器のボウル、フォンデュ又はラクレットの鍋又はポット、揚げ物器又はパン焼き器のボウル、ブレンダーのジャー、ヘアアイロンのプレート(前記コーティングは、前記ヘアアイロンのプレートを覆うことを意図している)及びアイロンソールプレート(前記コーティングは、前記アイロンのソールプレートを覆うことを意図している)を含むことが可能である。
【0082】
好ましくは、前記家庭用物品は、調理器具の物品であり、好ましくは、ソースパン、フライパン、シチュー鍋、中華鍋、ソテーパン、クレープメーカー、グリル、プランチャ焼き、ラクレット焼き、マーマイト鍋又はキャセロール皿からなる群から選ばれ、前記コーティングは食品と接触することが意図されている。
【0083】
本発明で考慮される応用分野では、調理器具タイプの被加熱物品や鉄タイプの加熱物品は、通常、10℃~300℃で構成される温度範囲で使用される。
【0084】
本発明による使用は、その製造プロセスの焼結ステップの間、前記コーティングから生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼすことを可能にし得る。
【実施例
【0085】
実施例
実施例1:本発明により使用されたBiVO 4 化合物を合成するプロセス
プロセス1.1
1M硝酸中の硝酸ビスマス(0.1M)の溶液に、1M硝酸中のバナジン酸アンモニウム(0.1M)の溶液が化学量論的に添加される。混合物は一晩撹拌され、濾過され、水で洗浄され、乾燥される。粉末は次に450℃で3時間アニールされる。
【0086】
バナジン酸ビスマスは、次にX線回折分析により単斜晶系と特徴づけられた輝黄色粉末の形態で得られる。
【0087】
このプロセスは、アルカリ剤を添加することなく、pH<1で行われる。
【0088】
プロセス1.2
1M硝酸中の硝酸ビスマス(0.4M)の溶液に、化学量論的量のメタバナジン酸ナトリウムが粉末状で添加される。混合物は80℃で2時間攪拌される。沈殿物は次に濾過され、水で洗浄されて、単斜晶系シェライトの形態の黄色のBiVO4の粉末を得る。粉末は次に500℃で3時間アニールされる。
【0089】
このプロセスは、アルカリ剤を添加せず、pH<1で行われる。
【0090】
単斜晶系BiVO4はこうして室温~200℃でΔE=40を有する。
【0091】
実施例2:BiVO 4 化合物の試験
以下のBiVO4化合物は、添加された被膜や隣接する被膜の色変化からの保護の効果について試験され比較されている:
実施例1のBiVO4
Sicopal(登録商標) 黄色 K1120FG (BASF)で販売されたBiVO4
【0092】
実施例3:組成
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
実施例4:構成
a.構成1:BiVO 4 なしのプライマー被膜1、実施例1のBiVO 4 あり/なしのプライマー被膜2、及びBiVO 4 なしの白色装飾。
組成1aのプライマー被膜1が最初にアルミニウム基材上に形成される。乾燥後、組成2bのプライマー被膜2がプライマー被膜1上に被膜される。乾燥後、組成3aの白色装飾3がプライマー被膜2上に堆積される。乾燥後、組成4の仕上げ被膜がプライマー被膜2及び装飾の上に被膜される。物品はその後430℃で11分間焼結される。
【0102】
外観:装飾は白色のままで、L*a*b*値=83、0.4、12である。装飾は、装飾の下に塗布されるプライマー被膜2に含有されるBiVO4によって、コーティングを製造するプロセス中に色が変化しないように保護されている。BiVO4を含むプライマー被膜2は、着色された分解副生産物の分解に触媒作用を及ぼし、被膜に捕捉されるのを防止している。
【0103】
対照的に、プライマー被膜2が組成2a(BiVO4なし)であることだけが異なる同じ構成は、焼結後の装飾が白色ではなく、L*a*b*値=70.8;2.8;14.8の黄金色であるという結果を有する。着色された分解副生産物は、プライマー被膜から白色装飾及び仕上げ被膜に移行している。
【0104】
b.構成2:BiVO 4 なしで2つのプライマー被膜、BiVO 4 あり/なしの装飾
組成1aのプライマー被膜1が最初にアルミニウム基材上に堆積される。乾燥後、組成2aのプライマー被膜2がプライマー被膜1上に被膜される。乾燥後、組成3bの白色装飾がプライマー被膜2上に堆積される。乾燥後、組成4の仕上げ被膜がプライマー被膜2及び装飾の上に被膜される。物品はその後430℃で11分間焼結される。
【0105】
外観:装飾は白色のままで、L*a*b*値=83、0.4、12である。装飾は、この装飾に含まれるBiVO4によって、被膜を製造するプロセス中に色が変化しないように保護されている。装飾に含まれるBiVO4は、プライマー被膜から生じる副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。
【0106】
一方、装飾が白色の組成3aであることだけが異なる同じ構成(BiVO4なし)は、白色装飾が色を変化させることを示す(L*a*b*値=70.8;2.8;14.8)。
【0107】
装飾が黄色の組成3cであることだけが異なる同じ構成は、黄色装飾が色を変化させないことを示す(L*a*b*値=76.1;-5.9;72.0)。この装飾は、この装飾に含まれるBiVO4によって、コーティングを製造するプロセス中に色が変化しないように保護されている。
【0108】
装飾が黄色の組成3dであることだけが異なる同じ構成は、黄色装飾が色を変えることを示しており:それは茶色である(L*a*b*値=56.4;1;42.2)。組成3dのBiVO4顔料(Sicopal(登録商標)K1120FG)はカプセル化されており、すなわち、BiVO4粒子が覆われている。BiVO4は、カプセル化によって分解副生産物との接触が妨げられるため、その触媒的な役割を果たさない。
【0109】
c.構成3:BiVO 4 なしの2つのプライマー被膜、実施例1のBiVO 4 を含む黄色装飾、及び第1の上に置かれた第2の装飾。
組成1aのプライマー被膜1が最初にアルミニウム基材上に堆積される。乾燥後、組成2aのプライマー被膜2がプライマー被膜1上に被膜される。乾燥後、組成3cを含む黄色装飾がプライマー被膜2上に堆積される。乾燥後、組成3aの白色装飾が先の黄色装飾の上に堆積される。乾燥後、組成4の仕上げ被膜がプライマー被膜2及び装飾の上に被膜される。物品はその後430℃で11分間焼結される。
【0110】
外観:装飾は白色のままで、L*a*b*値=83.1、0.4、12.0である。白色装飾は、白色装飾の下に塗布された黄色装飾に含まれるBiVO4によって、コーティングを製造するプロセス中の色の変化から保護されている。BiVO4を含む黄色装飾は、プライマー被膜の着色された分解副生産物の分解に触媒作用を及ぼす。
【0111】
第2の装飾が組成3dの黄色であることだけが異なる同じ構成は、第2の黄色装飾が色を変化させないことを示す(L*a*b*値=75.5;1.5;72.5)。第2の黄色装飾は、第1の装飾に含まれるBiVO4によって、コーティングを製造するプロセス中の色変化から保護されている。
【0112】
第1の装飾が組成3dの黄色であることだけが異なる同じ構成は、(組成3aの)第2の白色装飾が色を変化させることを示す(L*a*b*値=53.9;9.4;27.1)。第2の白色装飾は、第1の装飾に含まれるBiVO4によって、コーティングを製造するプロセス中に色変化から保護されない。
図1
【国際調査報告】