(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】向上した湿潤接着強度を有するホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
C09J153/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571273
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021061660
(87)【国際公開番号】W WO2021239404
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 元太
(72)【発明者】
【氏名】イェ, シン
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DM011
4J040JB01
4J040MA10
4J040NA02
(57)【要約】
本発明は、ポリマー成分を含むホットメルト接着剤組成物に関し、ポリマー成分は、35~50重量%のスチレン含有量、50~80重量%のスチレン-ブタジエンジブロック含有量、及び25℃で20~40mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度を有する少なくとも1つのスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pと、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体とを含み、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pは、ポリマー成分の全重量に対して10~40重量%の含有量である。本発明はまた、2つの基材を接着するための接着剤としての組成物の使用、及び組成物でコーティングされた少なくとも1つの内面又は外面を含む物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分を含むホットメルト接着剤組成物であって、ポリマー成分が、
・35~50重量%のスチレン含有量、
・50~80重量%のスチレン-ブタジエンジブロック含有量、及び
・25℃で20~40mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度
を有する少なくとも1つのスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pと、
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体と
を含み、
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pが、ポリマー成分の全重量に対して10~40重量%の含有量である、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pが、ポリマー成分の全重量に対して、10~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~28重量%、より好ましくは10~25重量%の含有量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体が、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、スチレン-エチレンプロピレン、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
スチレン-ブタジエン-スチレン以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体が、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
スチレン-ブタジエン-スチレン以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体が、ポリマー成分の全重量に対して、0.1~60重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%、さらにより好ましくは5~15重量%の含有量である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー成分が、
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pとは異なる、40~85重量%、好ましくは50~80重量%の少なくとも1つのスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体と、
・1~20重量%、好ましくは5~15重量%のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステルで変性された樹脂、ワックス又は油を含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
120℃の温度で、1000~30000mPa・s、好ましくは5000~20000mPa・sの粘度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマー成分の全量が、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、10重量%~80重量%、より好ましくは15重量%~45重量%、さらにより好ましくは15重量%~35重量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の全重量に対して、45~75%の粘着付与樹脂、及び/又は組成物の全重量に対して5~25%の可塑剤、及び/又は組成物の全重量に対して0.1~5%の安定剤、及び/又は組成物の全重量に対して0~30%のワックスをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
2つの基材を互いに接着するための接着剤として、又は基材の表面上のコーティングとしての、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物でコーティングされた少なくとも1つの内面又は外面を含む物品。
【請求項13】
内面又は外面が不織布である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
使い捨ておむつ、使い捨てトレーニングパンツ、女性用生理用ナプキン、吸着パッド、手術用マスク、及び手術用コートから選択される、請求項12又は13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレンブロック共重合体系ホットメルト接着剤組成物及び不織布と接着するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤(HM接着剤)は、室温で固体であり、多くの場合、水も溶媒も含まない物質である。それらは、一般に100℃~250℃、最も多くの場合130℃~180℃の温度に加熱した後に溶融状態で塗布され、冷却中に固化し、したがって、組み立てられるべき2つの基材の取り付けを確実にするシール(又は接着接合部)を形成する。ホットメルト接着剤は、一般に、熱可塑性ポリマーと、任意で粘着付与樹脂と、可塑剤とを含む組成物の形態で提供される。
【0003】
ホットメルト接着剤は、良好な安定性を有し、溶媒の使用を必要としないため、包装、製本及び木工などの様々な用途に広く使用されている。このような接着剤は、不織布用途にも使用することができる。例えば、使い捨て不織布吸収性物品は、乳児、幼児、失禁症の成人及び女性のケア用途に広く使用されている。
【0004】
典型的な使い捨て不織吸収性物品は、使い捨ておむつ、トレーニングパンツ、大人用失禁パッド及びブリーフ、女性用生理用ナプキン又はパッド、手術用マスクを含む。これらの物品は、体液の受け取り及び収容を目的とし、通常、皮膚に対して又は皮膚に近接して着用される。
【0005】
使い捨て不織布吸収性物品を製造するために、ホットメルト接着剤組成物は、一般に、水又は溶媒の乾燥工程を必要とする水系又は溶媒系の接着剤組成物などの他の接着剤と比較して、迅速な接着を提供するため、物品の様々な基材を互いに接着するために使用される。
【0006】
この目的に適したホットメルト接着剤組成物は、関与する基材を接着するための適切な接着強度を有するべきである。より具体的には、このようなホットメルト接着剤は、高い湿潤接着性を示すべきである。「湿潤接着」とは、湿潤環境条件の存在下で、基材材料に強く付着する能力を意味する。ホットメルト組成物の湿潤接着性を高めるために、酸変性の樹脂又はワックスを添加することができる。しかしながら、そのような化合物は、接着剤の不快な臭気及びより濃い色を生成する傾向があり、その結果、より低い品質の製品をもたらす可能性がある。
【0007】
文献のUS第2018/0100091号は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(A1)、及び少なくとも1つのスチレン系ブロック共重合体(A4)、粘着付与剤(B)、及び可塑剤(C)を含有するスチレン系ブロック共重合体(A)を含むホットメルト接着剤に関し、ホットメルト接着剤の溶融粘度は6000mPa・s以下である。
【0008】
文献のJP第4436599号は、ブロック共重合体と、感圧接着付与剤と、可塑剤とを含むホットメルト接着剤に関する。ブロック共重合体は、35~50重量%のスチレン含有量、50~80重量%のスチレン-ブタジエンジブロック含有量を有し、かつ25℃における15重量%トルエン溶液の粘度が20~40mPa・sである少なくとも30重量%のスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を含有する。
【0009】
文献のJP第2008239931号は、0~30重量%のスチレン-ブタジエンジブロック含有量及び20~40重量%のスチレン含有量を有する5~50重量%のスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体を含有するホットメルト接着剤に関する。
【0010】
文献のJP第4848184号は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性されたワックスとを含むホットメルト接着剤に関する。
【0011】
文献のJP第2015091917号は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の少なくとも1つ、及びその水素化物を含む熱可塑性ブロック共重合体と、不飽和カルボン酸又はその無水物による酸変性で製造された酸変性石油樹脂とを含むホットメルト接着剤に関する。
【0012】
文献のWO第2015/002308号は、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及びスチレン-ブタジエン/ブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む熱可塑性ブロック共重合体(A)、分子内にカルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を有する液状ゴム(B)、並びに接着性付与樹脂(C)を含むホットメルト接着剤組成物に関する。
【0013】
文献のWO第2015/125546号は、熱可塑性ポリマー及び粘着付与剤を含むホットメルト接着剤組成物に関し、粘着付与剤は酸変性粘着付与剤を含む。
【0014】
文献のWO第2018/074070号は、熱可塑性ポリマー、粘着付与剤、及び軟化剤を含むホットメルト接着剤組成物に関し、軟化剤は、カルボン酸及びカルボン酸無水物の少なくとも1つによって変性された酸変性油を含む。
【0015】
良好な接着性、特に具体的には、不織材料系製品において高い湿潤接着強度を提供するホットメルト接着剤組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
本発明の第1の目的は、ポリマー成分を含むホットメルト接着剤組成物を提供することであり、ポリマー成分は、
・35~50重量%のスチレン含有量、
・50~80重量%のスチレン-ブタジエンジブロック含有量、及び
・25℃で20~40mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度
を有する少なくとも1つのスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pと、
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体と
を含み、
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pは、ポリマー成分の全重量に対して10~40重量%の含有量である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pは、ポリマー成分の全重量に対して、10~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~28重量%、より好ましくは10~25重量%の含有量である。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体は、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、スチレン-エチレンプロピレン、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、及びこれらの混合物から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、スチレン-ブタジエン-スチレン以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体は、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体である。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、スチレン-ブタジエン-スチレン以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体は、ポリマー成分の全重量に対して、0.1~60重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%、さらにより好ましくは5~15重量%の含有量である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、ポリマー成分は、
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体Pとは異なる、40~85重量%、好ましくは50~80重量%の少なくとも1つのスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体と、
・1~20重量%、好ましくは5~15重量%のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と
を含む。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステルによって変性された樹脂、ワックス又は油を含まない。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、120℃の温度で、1000~30000mPa・s、好ましくは5000~20000mPa・sの粘度を有する。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、ポリマー成分の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、10重量%~80重量%、より好ましくは15重量%~45重量%、さらにより好ましくは15重量%~35重量%である。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、組成物の全重量に対して、45~75%の粘着付与樹脂、及び/又は組成物の全重量に対して5~25%の可塑剤、及び/又は組成物の全重量に対して0.1~5%の安定剤、及び/又は組成物の全重量に対して0~30%のワックスをさらに含む。
【0026】
本発明はまた、2つの基材を互いに接着するための接着剤としての、又は基材の表面上のコーティングとしての、上記組成物の使用に関する。
【0027】
本発明はまた、上記のホットメルト接着剤組成物でコーティングされた少なくとも1つの内面又は外面を含む物品に関する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、内面又は外面は不織布である。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、物品は、使い捨ておむつ、使い捨てトレーニングパンツ、女性用生理用ナプキン、吸着パッド、手術用マスク、及び手術用コートから選択される。
【0030】
本発明は、上述の必要性に対処することを可能にする。具体的には、本発明はホットメルト接着剤組成物を提供し、これは、良好な接着性、特に具体的には、不織材料系製品において高い湿潤接着強度を提供する。
【0031】
これは、本発明のホットメルト接着剤組成物によって可能となる。実際、この組成物は、良好な品質の不織布系物品を提供することを可能にする高い湿潤接着性及び高い乾燥接着性も提供する。
【0032】
有利には、本発明の組成物は、酸で変性された樹脂、ワックス又は油を含まない場合がある。したがって、接着剤の不快な臭気及び/又はより濃い色に関する問題を制限することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明で、本発明を限定することなくより詳細に説明する。
【0034】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、ポリマー成分を含み、他の追加成分を含んでもよい。
【0035】
「ホットメルト」という用語は、本明細書では、基材上に塗布されるために接着剤組成物が少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃に加熱される必要があることを説明するために使用される。したがって、ホットメルト接着剤組成物は23℃で固体である。
【0036】
ポリマー成分
ホットメルト接着剤組成物のポリマー成分は、以下の特性を有する少なくとも1つのスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロック共重合体Pを含む。35~50重量%のスチレン含有量、50~80重量%のスチレン-ブタジエンジブロック含有量、及び25℃で20~40mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度。
【0037】
「スチレン含有量」とは、SBSブロック共重合体に含まれるスチレンブロックの割合をいう。スチレン含有量は、35~50重量%であり、より好ましくは35~45重量%であり、特に好ましくは40~45重量%である。スチレン含有率が35重量%未満である場合、ホットメルト接着剤自体の保持力(凝集力)が低下し、スチレン含有率が50重量%を超える場合、ホットメルト接着剤自体の粘着性が低下し得る。
【0038】
「ジブロック含有量」とは、SBSブロック共重合体におけるスチレン-ブタジエンジブロック共重合体の割合をいう。ジブロック含有量は、50~80重量%であり、より好ましくは55~75重量%であり、特に好ましくは60~70重量%である。ジブロック含有量が50重量%未満であると、粘着性が不十分な場合がある。特に、高温下でせん断方向に荷重が加えられた場合には、不十分な粘着性のため、ホットメルト接着剤はその界面で基材から剥離しやすい。ジブロック含有量が80重量%を超えると、ホットメルト接着剤の保持力(凝集力)及び高温での接着性が低下し得る。「25℃での15重量%トルエン溶液の粘度」とは、トルエンを溶媒として使用する濃度15重量%溶液の25℃での粘度をいう。粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される。SBSブロック共重合体の15重量%トルエン溶液の25℃での粘度は、20~40mPa・s、より好ましくは20~35mPa・sである。この粘度が20mPa・s未満であると、SBSブロック共重合体の分子量が低くなる。そのため、SBSブロック共重合体を製造する際にポリマーが固化しにくく、すなわちホットメルト接着剤に形成される場合に軟化点が低く、製造ラインでのブロッキング又は成形後のコールドフローによるブロッキングが生じ得る。この粘度が40mPa・sを超えると、ホットメルト接着剤自体の粘度が高くなり、ほとんど塗布できない。特に、低温では非接触での塗布が困難な場合がある。
【0039】
SBSブロック共重合体Pは、水素化されてもよく、水素化されなくてもよい。好ましい実施形態によれば、SBSブロック共重合体は水素化されない。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、SBSブロック共重合体Pは、150グラム/10分未満、より好ましくは100グラム/10分未満、より好ましくは60グラム/10未満のメルトインデックス(MFI)を有する。
【0041】
MFIは、ASTMD1238又はISO1133により、190℃又は200℃(好ましくは190℃)、5kg荷重で測定することができる。SBSブロック共重合体Pは、ポリマー成分の全重量に対して10~40重量%の量で存在する。好ましくは、SBSブロック共重合体は、ポリマー成分の全重量に対して10~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~28重量%、より好ましくは10~25重量%の量で存在し得る。
【0042】
例えば、SBSブロック共重合体Pは、ポリマー成分の全重量に対して10~15重量%、又は15~20重量%、又は20~25重量%、又は25~30重量%、又は30~35重量%、又は35~40重量%の量で存在し得る。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物、より詳細にはポリマー成分は、上記の1つのSBSブロック共重合体Pを含む。
【0044】
他の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物、より詳細にはポリマー成分は、上記の2つ以上のSBSブロック共重合体P、例えば上記の2つ、又は3つ、又は4つ、又は5つ、又は5超のSBSブロック共重合体Pを含む。
【0045】
上記の少なくとも1つのSBSブロック共重合体Pに加えて、ポリマー成分はまた、上記の定義によらず、別のSBSブロック共重合体を含んでもよい。換言すれば、ポリマー成分は、35~50重量%以外のスチレン含有量、及び/又は50~80重量%以外のスチレン-ブタジエンジブロック含有量、及び/又は25℃で20~40mPa・s以外の15重量%トルエン溶液の粘度を有するSBSブロック共重合体を含んでもよい。
【0046】
ホットメルト接着剤組成物にこのようなポリマーを添加することにより、組成物の凝集力を高めることができる。この共重合体Pとは異なるSBSブロック共重合体は、好ましくは、ポリマー成分の全重量に対して40~85重量%、より好ましくは50~80重量%の量でポリマー成分に存在し得る。
【0047】
他の実施形態では、ホットメルト接着剤組成物のポリマー成分は、上記で定義及び記載されたSBSブロック共重合体P以外のSBSブロック共重合体を含まない。
【0048】
ポリマー成分はまた、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体以外の少なくとも1つのスチレンブロック共重合体を含む。それらは、いくつかの異なる化学型及び構造型で利用可能である。本発明のホットメルト接着剤組成物に用いることができるスチレンブロック共重合体(SBC)(SBSブロック共重合体P以外)の例としては、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレンプロピレン(SEP)及び、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS又は水素化SIBS)が挙げられる。
【0049】
本発明による組成物にこのようなポリマーを添加することにより、ホットメルト接着剤組成物の柔軟性、及び特に低温でのその接着性を改善することが可能になる。
【0050】
好ましい実施形態によれば、SBSブロック共重合体以外のスチレンブロック共重合体は、SISブロック共重合体を含む。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、SBSブロック共重合体以外の1つのスチレンブロック共重合体のみが、本発明のホットメルト接着剤組成物のポリマー成分中に存在する。好ましくはSISブロック共重合体である。
【0052】
他の実施形態によれば、SBSブロック共重合体以外の2つ以上の(例えば、2、又は3、又は4、又は5、又は5超)スチレンブロック共重合体が、本発明のホットメルト接着剤組成物のポリマー成分中に存在する。
【0053】
SBSブロック共重合体以外のスチレンブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5~50重量%、より好ましくは10~40重量%、特に好ましくは10~30重量%であり得る。SBSブロック共重合体以外のスチレンブロック共重合体の15重量%トルエン溶液の25℃における粘度は、50~2000mPa・s、より好ましくは50~1000mPa・sである。粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される。SBSブロック共重合体以外のスチレンブロック共重合体は、好ましくは、ポリマー成分の全重量に対して、0、1~60重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%、さらにより好ましくは5~15重量%の量で存在し得る。
【0054】
本発明に従って使用されるポリマー成分の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、好ましくは10%~80重量%、より好ましくは15%~45重量%、さらにより好ましくは15%~35重量%の範囲である。
【0055】
ホットメルト接着剤組成物
ポリマー成分とは別に、ホットメルト接着剤組成物は、1つ以上の追加成分を含んでもよい。そのような追加成分は、粘着付与樹脂、可塑剤、ワックス、安定剤及び他の添加剤から選択することができる。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、好ましくは粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、45~75重量%、好ましくは50~70重量%の含有量でホットメルト接着剤組成物に存在し得る。
【0057】
本発明のホットメルト接着剤に使用される粘着付与樹脂又は粘着付与剤は、ポリマーと適合性であり、接着特性を伸ばし、固有接着性を改善するものである。本明細書で使用される場合、「粘着付与樹脂」又は「粘着付与剤」という用語は、以下を含む:
(a)ASTM法E28-58Tによって決定される95℃~160℃の環球軟化点を有する脂肪族及び脂環式の石油炭化水素樹脂(後者の樹脂は、主として脂肪族及び/又は脂環式のオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーの重合から得られ、水素化脂肪族及び脂環式の石油炭化水素樹脂も含まれ、この種のC5オレフィン画分に基づくそのような市販の樹脂の例は、Hercules Corp.によって販売されているPiccotac95粘着付与樹脂及びExxonMobil Chemical Companyによって販売されているEscorez1310LCである);
(b)芳香族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;
(c)脂肪族/芳香族石油由来の炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;
(d)芳香族変性された脂環式樹脂及びその水素化誘導体;
(e)95℃~140℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂(後者のポリテルペン樹脂は、一般に、中程度に低い温度でのフリーデル-クラフツ触媒の存在下で、ピネンとして知られるモノ-テルペンなどのテルペン炭化水素の重合から得られ、水素化ポリテルペン樹脂も含まれる);
(f)天然テルペン、例えばスチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン及びビニルトルエン/テルペンの共重合体及びターポリマー;
(g)天然ロジン及び変性ロジン、例えば、ガンロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン及び重合ロジン;
(h)天然ロジン及び変性ロジンのグリセロールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例えば、白木ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、白木ロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、ロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステル;
(i)フェノール変性テルペン樹脂、例えば、テルペン及びフェノールの酸性媒体における縮合から得られる樹脂生成物。
【0058】
好ましい実施形態では、樹脂は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステル(言い換えれば、組成物は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステルによって変性された樹脂を含まない)によって変性されない。
【0059】
上述の粘着付与樹脂の2つ以上の混合物も使用することができる。
【0060】
本発明に有用な粘着付与樹脂は、極性粘着付与樹脂を含むことができる。しかしながら、利用可能な極性粘着付与樹脂の選択は、極性樹脂の多くがポリオレフィンポリマーと部分的にのみ適合性であるように見えるという事実を考慮して制限される。
【0061】
あるいは、粘着付与樹脂は、市販されている無極性型のいずれかから選択することができる。好ましい樹脂の1つのクラスは脂肪族石油炭化水素樹脂であり、その例はC5オレフィンに基づく。最も好ましいのは、95℃を超える軟化点を有する水素化ジシクロペンタジエン(DCPD)系又はその芳香族変性誘導体である非極性生成物である。そのような樹脂の例は、ExxonMobil Chemical社によって販売されているEscorez5340、Escorez5400及びEscorez5600である。
【0062】
好ましくは、粘着付与樹脂は、少なくとも95℃、好ましくは95℃~140℃の環球軟化点(ASTM E28によって測定)を有するべきである。一般に、粘着付与樹脂は、樹脂とポリオレフィンポリマーとの間の相溶性を保証するために実質的に脂肪族であるべきである。
【0063】
また、ホットメルト接着剤組成物には、可塑剤が存在することが好ましい。より詳細には、固体又は液体の可塑剤が本発明の組成物中に存在し得る。
【0064】
好ましい実施形態では、可塑剤は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステル(言い換えれば、組成物は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステルによって変性された可塑剤を含まない)によって変性されない。
【0065】
可塑剤は、組成物の重量に対して、5~25重量%、好ましくは10~23重量%の含有量でホットメルト接着剤組成物に存在してもよい。
【0066】
可塑剤の目的は、所望の粘度制御を提供し、柔軟性を付与することである。適切な可塑剤は、鉱油などの通常の可塑化油だけでなく、オレフィンオリゴマー及び低分子量ポリマー、並びに植物油及び動物油並びにそのような油の誘導体も含む群から選択され得る。使用され得る石油由来の油は、少量の芳香族炭化水素のみを含有する比較的高沸点の物質である。オリゴマーは、350~10,000の平均分子量を有するポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエンなどであってもよい。適切な植物油及び動物油には、通常の脂肪酸のグリセロールエステル及びその重合生成物が含まれる。本発明で有用な可塑剤は、任意の数の異なる可塑剤であり得るが、5,000未満の平均分子量を有する鉱油及び液体ポリブテンが特に有利である。
【0067】
典型的には、可塑剤は、接着剤組成物の接着強度及び/又は使用温度を実質的に低下させることなく、ホットメルト接着剤組成物全体の粘度を低下させるために、並びに開放時間を延長し、組成物の可撓性を改善するために使用される。
【0068】
本発明による組成物はまた、好ましくは少なくとも1つの安定剤を含む。安定剤は、組成物の重量に対して、0.1~5%、好ましくは0.5~3重量%の含有量でホットメルト接着剤組成物に存在してもよい。本発明のホットメルト接着剤組成物に有用な安定剤は、上記のポリマーを保護するのを助けるために組み込まれ、それにより、接着剤の製造及び塗布中、並びに最終製品の周囲環境への通常の曝露中に通常生じる熱分解及び酸化的分解の影響から全接着剤系を保護する。
【0069】
適用可能な安定剤の中には、高分子量ヒンダードフェノール及び多官能フェノール、例えば硫黄及びリン含有フェノールがある。ヒンダードフェノールは当業者に周知であり、そのフェノール性ヒドロキシル基に近接して立体的にかさ高いラジカルも含有するフェノール化合物として特徴付けることができる。特に、三級ブチル基は、一般に、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも1つでベンゼン環上に置換される。ヒドロキシル基の近傍にこれらの立体的にかさ高い置換基が存在することにより、その延伸頻度及びそれに対応してその反応性を遅延させるのに役立つため、この立体障害により、フェノール化合物にその安定化特性がもたらされる。代表的なヒンダードフェノールとしては、
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4.4’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン、2,3,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン、ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2-(n-オクチル-チオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及びソルビトールヘキサ-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0070】
安定剤として特に好ましいのは、ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネートである。
【0071】
これらの安定剤の性能は、(1)共力剤、例えば、チオジプロピオネートエステル及び亜リン酸エステルなど(これらの例として、ジアルリルチオジプロピオネート(DLTDP)及びトリス(ノニルフェニル)ホスファイト(TNPP)がそれぞれ挙げられる)、並びに(2)キレート剤及び金属不活性化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、その塩及びジサリチルアルプロピレンジイミンと併用することによってさらに強化され得る。
【0072】
本発明による組成物は、少なくとも1つのワックスをさらに含んでもよい。ワックスは、組成物の重量に対して、0~30%、好ましくは0.5~3重量%の含有量でホットメルト接着剤組成物に存在してもよい。
【0073】
ワックスの存在は、ホットメルト接着剤の接着結合特性を著しく低下させることなく、ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させることを可能にする。これらのワックスはまた、温度性能に影響を与えることなく、組成物の開放時間又はセットアップ時間を短縮するために使用される。
【0074】
有用なワックス材料の中には、以下のものがある。
(1)低分子量、すなわち、100~6000g/molの数平均分子量(Mn)、ASTM法D-1321によって決定される0.1~120の硬度値及び65℃~140℃のASTM軟化点を有するポリエチレンワックス、
(2)50℃~80℃の融点を有するパラフィンワックス及び55℃~100℃の融点を有する微結晶ワックスなどの石油ワックス(後者の融点はASTM法D127-60によって決定される)、
(3)「Licocene」という名称でClariantによって市販されているもの等のメタロセン触媒プロピレン系ワックス、
(4)例えば米国第4,914,253号、米国第6,319,979号、国際公開第97/33921号又は国際公開第98/03603号に記載されているもの等のメタロセン触媒ワックス又はシングルサイト触媒ワックス、
(5)フィッシャ-トロプシュワックス等の一酸化炭素と水素とを重合してなる合成ワックス、並びに
(6)ポリオレフィンワックス。本明細書で使用される場合、「ポリオレフィンワックス」という用語は、オレフィン性モノマー単位で構成されるポリマー又は長鎖実体を指す。これらの材料は、Westlake Chemical Co.から商品名「Epolene」で市販されている。
【0075】
好ましい実施形態では、ワックスは、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステル(言い換えれば、組成物は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステルによって変性されたワックスを含まない)によって変性されない。
【0076】
好ましくは、使用されるワックス材料は、93℃~177℃の環球軟化点を有する。理解されるように、これらのワックスの各々は室温で固体である。他の有用な物質には、水素化された獣脂、ラード、大豆油、綿実油、ヒマシ油、ニシン油(menhadin oil)、タラ肝油などの水素化された動物、魚及び植物の油脂が含まれ、それらは水素化されているために常温で固体であり、ワックス材料均等物として機能することに関して有用であることも分かっている。これらの水素化材料は、接着剤産業において「動物性ワックス又は植物性ワックス」と呼ばれることが多い。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、組成物の1つ以上の物理的特性を変更するために、他の任意の補助添加剤をホットメルト接着剤組成物に組み込むことができる。これらの補助添加剤は、組成物の重量に対して0.01~3重量%の全量でホットメルト接着剤組成物中に存在してもよい。
【0078】
そのような添加剤としては、例えば、二酸化チタンなどの不活性着色剤並びに充填剤、界面活性剤、他の種類のポリマー、架橋剤、核形成剤、反応性化合物、難燃性鉱物又は有機剤、紫外線(UV)又は赤外線(IR)光吸収剤、及びUVもしくはIR蛍光剤が挙げられ得る。典型的な充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、マイカ、ワラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラスミクロスフェア、セラミックミクロスフェア、熱可塑性ミクロスフェア、バライト及び木粉が挙げられる。これらの任意の補助添加剤は、当技術分野で周知である。
【0079】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、酸変性成分を含まない。そのような化合物は、例えば、ワックス、樹脂(例えば、石油又は粘着付与樹脂)、軟化剤、油、可塑剤又はゴムを含み得る。言い換えれば、本発明の組成物は、不飽和ポリカルボン酸、無水物又はエステル(したがって、1つ以上の酸性基を含む)によって変性された成分を含まない。ポリカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ポリカルボン酸が挙げられる。
【0080】
そのような化合物が存在しないことにより、接着剤の不快な臭気及び/又はより濃い色に関連する問題を制限又は回避することが可能になる。実際、本発明は、このような化合物を含まず、高い湿潤接着性及び良好な乾燥接着性も維持する組成物を得ることを可能にする。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、ポリマー成分の全重量に対して10~40重量%のSBSブロック共重合体Pと、ポリマー成分の全重量に対して0、1~30重量%のSBSブロック共重合体P以外のスチレンブロック共重合体(例えば、SISブロック共重合体)と、ポリマー成分の全重量に対して40~85重量%の共重合体Pとは異なるSBSブロック共重合体とを含んでもよい。
【0082】
本発明の組成物は、120℃の温度で、1000~30000mPa・s、好ましくは5000~20000mPa・sの粘度を有し得る。粘度は、ASTM D3236規格に従ってブルックフィールドRVT粘度計(スピンドル#27)で測定され得る。本発明の組成物は、65~100℃、好ましくは70~85℃の軟化点を有し得る。軟化点は、ASTM E-28規格に従って測定され得る。
【0083】
本発明の組成物は、0.4N以上、好ましくは0.6N以上、好ましくは0.8N以上の平均湿潤剥離強度を達成することを可能にする。湿潤剥離強度は以下に示すように測定される。
【0084】
組成物は、最初に140~160℃の温度で加熱され、次いで、ニップロールにおいて0.3秒の開放時間及び0.01MPaの圧縮を伴うオメガ塗布によって3g/m2のコーティング重量で親水性スパンボンド不織布である一次基材に塗布される。ホットメルト接着剤組成物のパターンの幅は15mmである。次いで、二次基材(親水性スパンボンド不織布)を、組成物を含む一次基材と積層する。
【0085】
次いで、相対湿度50%の雰囲気下、23℃で24時間保管し、ホットメルト接着剤を冷却固化させる。次に、幅40mm、長さ75mmの試験片を得るために、積層体を切断する。試験片を23℃の水に5秒間浸漬し、水を拭き取ることによって湿潤試験片を得る。その後、湿潤試験片を23℃で300mm/分の速度で引き離すことによりT剥離試験を行い、湿潤剥離強度を測定する。
【0086】
本発明の組成物は、0.2N以上、好ましくは0.4N以上、好ましくは0.6N以上の平均乾燥剥離強度を達成することを可能にする。乾燥剥離強度は以下に示すように測定される。
【0087】
組成物は、最初に140~160℃の温度で加熱され、次いで、ニップロールにおいて0.3秒の開放時間及び0.01MPaの圧縮を伴うオメガ塗布によって3g/m2のコーティング重量で親水性スパンボンド不織布である一次基材に塗布される。ホットメルト接着剤組成物のパターンの幅は15mmである。次いで、二次基材(親水性スパンボンド不織布)を、組成物を含む一次基材と積層する。
【0088】
次いで、相対湿度50%の雰囲気下、23℃で24時間保管し、ホットメルト接着剤を冷却固化させる。次に、幅40mm、長さ75mmの試験片を得るために、積層体を切断する。試験片を23℃で300mm/分の速度で引き離すことによりT剥離試験を行い、乾燥剥離強度を測定する。
【0089】
使用
本発明はまた、基材をコーティングするための、又は2つの基材を互いに接合するための、上記のホットメルト接着剤組成物の使用に関する。
【0090】
コーティング又は接合される各基材は、フィルム、不織布材料又は織布材料を含んでもよい。これは、吸収性綿毛、高吸収性ポリマー(SAP)、複合材料、エラストマー又は非エラストマーであり得るプラスチック、例えばスチレンブロック共重合体(SBC)、ポリウレタン及びポリオレフィン、並びにそれらの任意の混合物を含み得る。好ましくは、基材は不織布である。
【0091】
この場合、組立製品(又は積層体)を製造する方法は、
・例えば、120℃~180℃の範囲の温度で、少なくともホットメルト接着剤組成物を基材上に塗布するのに十分な液体にできる程度の長い時間(例えば、少なくとも2時間)、本発明によるホットメルト接着剤組成物を加熱する工程(i)、次いで
・組成物を第1の基材上にコーティングする工程(ii)、次いで
・第1の基材のコーティングされた表面を第2の基材の表面と接触させて、2つの基材を接合する接着接合部を形成する工程(iii)
を含み得る。
【0092】
本発明はまた、2つの基材を接合するための、上記のホットメルト接着剤組成物の使用に関する。
【0093】
基材は、様々な形態(層又はフィルム、ストランド、綿毛状)で異なっていてもよく、又は同じ性質であってもよい。
【0094】
好ましくは、基材の少なくとも一方、より好ましくは両方の基材が不織布である。
【0095】
別の態様によれば、本発明は、上記のホットメルト接着剤組成物でコーティングされた少なくとも1つの内面又は外面を含む物品に関する。特定の実施形態では、本発明は、本発明による少なくとも1つのホットメルト接着剤組成物によって結合された少なくとも2つの基材を含む組立製品に関する。
【0096】
コーティングされた表面及び結合された基材は、上述の通りであってもよい。
【0097】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、例えばトイレット・ペーパー、ペーパータオル、ワイプ及び他の消費財、特に使い捨て衛生製品などの吸収性物品、より具体的には使い捨ておむつを製造するために、複数の基材層を結合するための積層用接着剤として使用され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、本発明による組立製品は、本発明による少なくとも1つのホットメルト接着剤組成物によって接合された少なくとも2層の基材を含む多層製品であってもよい。
【0099】
本発明による組立製品では、基材の少なくとも2つの層は、基材の2つの層間に挟まれた本発明によるホットメルト接着剤組成物の層によって接着接合されてもよい。
【0100】
代替的又は累積的に、基材の少なくとも2つの層は、本発明によるホットメルト接着剤組成物のスポットによって接着接合されてもよい。
【0101】
好ましくは、物品/組立製品は、使い捨ての不織布吸収性物品である。使い捨ておむつ、使い捨てトレーニングパンツ、使い捨て成人用失禁パッド又はブリーフ及び使い捨て女性用生理用ナプキン又はパッド、手術用マスク及び手術用コートが挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【0103】
湿潤剥離強度及び乾燥剥離強度を研究するために、14個の組成物を調製した。組成物A~Hは本発明によるものであり、組成物I~Nは比較組成物である。組成物A~Nは、以下の化合物のいくつかを含む。
-SBS1:LCYから入手可能なLCY Globalprene(商標)3545。45%のスチレン含有量、65%のジブロック含有量及び25℃で30mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度を有する直鎖SBS(ブロック共重合体Pに相当する)。
-SBS2:TSRCから入手可能なTaipol(登録商標)4270。37%のスチレン含有量、70%のジブロック含有量及び20.5g/10分のMFI(190℃x5kg)を有する直鎖SBS(P以外のブロック共重合体に相当する)。このポリマーは、25℃で43.5mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度を有する。粘度測定はスピンドルNo.21を用いて行った。
-SBS3:Asahiから入手可能なAsaprene(商標)T-439。45%のスチレン含有量、65%のジブロック含有量及び25℃で25mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度を有する直鎖SBS(ブロック共重合体Pに相当する)。
-SBS4:Asahiから入手可能なAsaprene(商標)T-438。35%のスチレン含有量、70%のジブロック含有量及び25℃で47.5mPa・sの15重量%トルエン溶液の粘度を有する直鎖SBS(P以外のブロック共重合体に相当する)。
-SIS:Sinopecから入手可能なSIS1126。16%のスチレン含有量、50%のジブロック含有量及び25℃で900mPa・sの25重量%トルエン溶液の粘度を有する直鎖SIS。
R1:Zeonから入手可能なQuintone(登録商標)D295。酸変性された非水素化石油樹脂この樹脂はマレイン酸で変性されており、軟化点は94℃、酸価は8.0mgKOH/gである。
-R2:非酸変性の水素化樹脂、Arkon M-100:Arakawa Chemicalから入手可能な100℃の軟化点を有する部分水素化C9石油樹脂;
-R3:非酸変性の水素化樹脂、I marv P-100:Idemitsu Kosanから入手可能な100℃の軟化点を有する完全水素化DCPD/C9石油樹脂;
-R4:非酸変性の水素化樹脂、FD100:FUCCから入手可能な100℃の軟化点を有する部分水素化C9石油樹脂;
-R5:非酸変性の水素化樹脂、HD1100:Luhuaから入手可能な100℃の軟化点を有する完全水素化DCPD石油樹脂;
-R6:非酸変性の水素化樹脂、FM100:FUCCから入手可能な100℃の軟化点を有する部分水素化C9石油樹脂;
-R7:非酸変性の水素化樹脂、HB103:JXTGから入手可能な100℃の軟化点を有する水素化DCPD/C9石油樹脂;
-R8:非酸変性の水素化樹脂、Escorez(商標)5600:ExxonMobil Chemicalから入手可能な100℃の軟化点を有する水素化DCPD/C9石油樹脂;
-P1:パラフィン系オイル可塑剤、Idemistuから入手可能なDiana Fresia S32
-P2パラフィン系オイル可塑剤、Aparから入手可能なApar Poweroil H350。
-P3:ナフテン系オイル可塑剤。Karamayから入手可能なN4010。
-A1:Everspringから入手可能な抗酸化剤Evernox(登録商標)10。
【0104】
ヒータ及び撹拌機を備えたジャケット付き混合ケトルに上記の表に列挙した成分を入れ、次いで減圧下で170℃で120分間加熱しながら混合して、混入した空気を除去することによって、組成物A~Nを調製した。
【0105】
組成物A~Nの粘度は、ASTM D3236規格に従ってブルックフィールドRVT粘度計で測定した。
【0106】
組成物A~Nの軟化点は、ASTM E-28規格に従って測定した。
【0107】
【0108】
平均乾燥剥離強度及び湿潤剥離強度は、上記の説明で詳述したように測定された。
【0109】
上記の表から分かるように、本発明による組成物(A~H)は、高い湿潤剥離強度及び良好な乾燥剥離強度を同時に達成することを可能にする。さらに、酸変性化合物(A、B、E、G、H)を含まない組成物であっても、高い湿潤剥離強度及び乾燥剥離強度を達成することができる。
【国際調査報告】