(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】単回使用ディスポーザブル参照センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20230619BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G01N27/30 311Z
G01N27/30 311C
G01N27/416 386G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571283
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021019524
(87)【国際公開番号】W WO2021236189
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501464761
【氏名又は名称】ノヴァ バイオメディカル コーポレイション
【住所又は居所原語表記】200 Prospect Street Waltham MA 02454(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オー ボン
(57)【要約】
単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサは、絶縁ベース基体と、絶縁ベース基体上に配置され、銀-塩化銀電極である参照電極と、参照電極上に配置された内部層であって、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを含む非晶質塩層である、内部層と、内部層を覆うように配置され、水蒸気及びイオン透過性を有する半透性カバー膜と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサであって、
絶縁ベース基体と、
前記絶縁ベース基体上に配置され、銀-塩化銀電極である参照電極と、
前記参照電極上に配置された内部層であって、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを含む非晶質塩層である、内部層と、
前記内部層を覆うように配置された半透性カバー膜であって、水蒸気透過性及びイオン透過性を有する半透性カバー膜と、を備えている
単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサ。
【請求項2】
前記非晶質多糖は、前記塩と過飽和されると、前記内部層が形成されたときに前記非晶質多糖と前記塩とが分離しないような非晶質特性を有する
請求項1に記載の単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサ。
【請求項3】
前記非晶質多糖は、プルラン、デキストラン、及び、アミロースからなる群から選択される
請求項1に記載の単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサ。
【請求項4】
前記塩は塩化カリウムである
請求項1に記載の単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサ。
【請求項5】
前記半透性カバー膜は、クロロスルホン化ポリエチレン及びセルロースアセテートブチレートのうちの1つから作られる
請求項1に記載の単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサ。
【請求項6】
ディスポーザブルな単回使用の電気化学センサであって、
センサ面を有する絶縁ベース基体と、
前記センサ面上に形成された電位差測定作用電極であって、その上に配置された種特異的試薬マトリックスを有し、前記種特異的試薬マトリックスが液体試料中の特定種を測定するために選択された1以上の層を有する、電位差測定作用電極と、
前記センサ面上に形成された電位差測定参照電極であって、その上に配置された多層参照コーティングを有する銀-塩化銀電極である電位差測定参照電極と、を備え、
前記多層参照コーティングは、
内部層であって、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを備えている非晶質塩層である内部層と、
前記内部層を覆うように配置された半透性カバー膜であって、水蒸気透過性及びイオン透過性を有する半透性カバー膜と、を含む
ディスポーザブルな単回使用の電気化学センサ。
【請求項7】
前記非晶質多糖は、前記塩と過飽和されると、前記内部層が形成されたときに前記非晶質多糖と前記塩とが分離しないような非晶質特性を有する
請求項6に記載のディスポーザブルな単回使用の電気化学センサ。
【請求項8】
前記非晶質多糖は、プルラン、デキストラン、及び、アミロースからなる群から選択される
請求項6に記載のディスポーザブルな単回使用の電気化学センサ。
【請求項9】
前記塩は塩化カリウムである
請求項6に記載のディスポーザブルな単回使用の電気化学センサ。
【請求項10】
前記半透性カバー膜は、クロロスルホン化ポリエチレン及びセルロースアセテートブチレートのうちの1つから作られる
請求項6に記載のディスポーザブルな単回使用の電気化学センサ。
【請求項11】
単回使用ディスポーザブル電気化学電位差測定参照センサを形成する方法であって、
少なくとも1つの導電経路を備えた絶縁ベース基体と、前記絶縁ベース基体上に配置された絶縁試薬保持層とを有するセンサ体であって、前記絶縁試薬保持層は少なくとも1つの試薬保持開口部を有し、前記少なくとも1つの試薬保持開口部が前記少なくとも1つの導電経路の一部を露出させる、センサ体を設けることと、
非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを含有する非晶質塩層混合物を、前記少なくとも1つの試薬保持開口部の1つの内部に配置することと、
非晶質構造層である内部層を形成する前記非晶質塩層混合物を乾燥させることと、
前記内部層を覆うように、疎水性ポリマーを含有するカバー膜溶液を配置することと、
半透性カバー膜を形成する前記カバー膜溶液を乾燥させることであって、前記半透性カバー膜が水蒸気透過性及びイオン透過性を有する、乾燥させることと、を備える
単回使用ディスポーザブル電気化学電位差測定参照センサを作成する方法。
【請求項12】
前記非晶質塩層混合物を形成することをさらに備え、
前記非晶質塩層混合物を形成することは、
所定量の前記非晶質多糖と、所定量の3M塩溶液とを含む複数の成分を共に添加することと、
前記非晶質塩層混合物を形成する前記複数の成分を混合することと、を備える
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
750ミリグラムの前記非晶質多糖を測定することと、
3ミリリットルの前記3M塩溶液を測定することと、をさらに備える
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カバー膜溶液を作ることをさらに備え、
前記カバー膜溶液を作ることは、
クロロスルホン化ポリエチレンポリマー及びセルロースアセテートブチレートポリマーのうちの1つである所定量の前記疎水性ポリマーを測定することと、
前記カバー膜溶液を形成する所定量のTHF/シクロヘキサノン中に前記疎水性ポリマーを混合することと、を備える
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
8-10重量%の前記クロロスルホン化ポリエチレン又は前記セルロースアセテートブチレートを測定すること、をさらに備える
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
参照センサ内に参照電極を作製する多層試薬マトリックスであって、
非晶質多糖及び塩を含有する非晶質塩層混合物から形成された内部層であって、前記内部層は前記電位差測定参照電極上に重なり、前記非晶質多糖は、塩と過飽和されると、前記内部層が形成されたときに前記非晶質多糖と前記塩とが分離しないような非晶質特性を有する、内部層と、
前記内部層を覆うように配置されたカバー膜溶液から形成された半透性カバー膜であって、前記カバー膜溶液が水蒸気及びイオン透過性の疎水性ポリマーを含有する、半透性カバー膜と、を備えている
多層試薬マトリックス。
【請求項17】
前記内部層は、塩化カリウムと、プルラン、デキストラン、及び、アミロースのうちの少なくとも1つとの混合物である
請求項16に記載の試薬マトリックス。
【請求項18】
前記半透性膜は、クロロスルホン化ポリエチレン及びセルロースアセテートブチレートのうちの1つから作られる
請求項16に記載の試薬マトリックス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
1.発明の分野
本発明は、概して電気化学センサに関する。特に、本発明は、電気化学電位差測定参照センサに関する。より具体的には、本発明は、膜コーティングを備えている平面状の電気化学電位差測定参照センサに関する。
【0002】
2.先行技術の説明
基本的な従来技術の電気化学センサは、典型的には、2つの電極を有する電気化学セルからなる。第1電極は、液体試料中の化学種に反応し、一般的には、指示電極と呼ばれる。第2電極は、液体試料の組成の変化に反応しない参照電極であり、一定の電位を提供し、この電位に対して液体試料から指示電極により生じた電位が測定される。
【0003】
従来、血液を含む液体試料中の化学種を定量的に測定するための化学分析器は、典型的には、複数回使用のセンサの洗浄や校正のため非常に複雑な流体構造を備えていた。このため、そのような化学分析器の製造業者は、比較的安価なセンサの製造を試みてきた結果、分析器は単回使用デバイスとして使用されている。そうしたセンサデバイスに適した技術は、プレーナ技術である。プレーナ技術により製造されたセンサには、厚膜及び薄膜技術の両方が含まれてきた。
【0004】
従来技術の平面状の電気化学センサの構造の典型的なコンポーネントは、平面状の絶縁基体上の複数の金属導体素子を備えるデバイスである。従来技術の平面状の電気化学センサは、複数の金属導体素子を覆う複数の層から成り、複数の金属導体素子の一端は、外部の測定回路との接続のために露出され、複数の金属導体素子の他端は、一体型電解質層を形成する複数のコーティングを受けるために露出される。この一体型電解質層は、水性の電解質として作用するゲル材料等の親水性層と、液体試料中の特定の種を測定するために選択された他の試薬とを含む。液体試料からの化学種は、電流又は電圧を発生する電極表面上で電気化学反応を受ける。発生された電流又は電圧は、典型的には、提供された液体試料中の化学種の濃度に比例するが、参照電極は測定工程に亘って安定したままである。
【0005】
例えば、病院や血液化学実験室等における血液分析作業のためのような多数のプロセスに有用な電極を提供するために、小型であって、長期保管が可能であり、経済的に安価なディスポーザブルな電極を提供することが望ましい。従来技術の電極の大部分が親水性又は水性の参照電極を採用していることから、長期保管を実現することは困難である。親水性の電解質は、イオン輸送が可能な水和ゲル等である。「湿式」電解質の輸送及び保管には、比較的複雑なパッケージが必要である。
【0006】
塩橋電位差測定参照電極は、銀/塩化銀(Ag/AgCl)ベース電極で構成され、高濃度の塩水溶液、好ましくは塩化カリウムなどの等移動度塩と接触している。高濃度の塩化物イオンがAg/AgCl電位を飽和させ、等移動度のカリウム及び塩化物は、参照センサと試料との界面の液間電位の発生を防止する。安定した参照電位を長期間保持するには、アレイリザーバ内の塩の量が重要である。平面状のセンサアレイでは、塩リザーバのサイズは非常に限られたものであり、水溶液と接触すると直ちに(即ち、1秒未満で)洗い流されてしまう可能性がある。この問題を解決するため多大な努力がなされ、様々なカバー膜が試行されてきたが、あまり成功することはなかった。これまでの試みが失敗してきたのは、主として、疎水性カバー膜ポリマーの水蒸気の拡散性が低く、その膜に対する塩の透過が非常に遅すぎる(或いは、速すぎる)ためである。
【0007】
現在、単回使用の電位差測定参照センサの幾つかの異なる技術が報告されている。米国特許第4,933,048号(Lauks、1990年)は、開放接点型の参照電極アッセンブリを開示している。参照電極アッセンブリは、イオンXに可逆的な電極材料でコーティングされた金属製の部材と、電極上に形成されたイオンXを含有する電解質の層とを含む。電解質は電極の外周を越えて延在する。電極の外周を越えて延在する電解質の部分は、H2O分子を透過可能であるがイオンXを透過不可能な膜により覆われる。電解質の一部は、透過膜を通して延在しているか、そうでなければ電極から比較的遠い位置において試料溶液との液界を形成し得る。従って、イオンは液界と電極との間の電解質を通して比較的長い経路に沿って拡散し、イオン拡散のための長い時定数を与えなければならない一方で、電解質は比較的迅速に「湿潤する」ことができる。その結果、電解質が湿潤してからイオンの拡散が電極付近のイオン濃度に影響を及ぼすまでに一定期間があり、その間、電極の電位は実質的に一定である。電解質は、内部層としての親水性ポリマー膜を含有した高濃度の塩からなり、疎水性膜で部分的に覆われており、該疎水性膜は、内部層の小部分を試料溶液に対して直接露出可能である。このタイプの構成を実現するため、センサ製造のプロセスは複雑であり、これによりセンサ不具合率が増加する可能性がある。
【0008】
米国特許第7,767,068号(Lauksら、2010年)は、混成膜電極を開示している。混成膜は、油及び水溶性コンパートメントの混合物からなる。水性部分は、架橋性親水性ポリマーを含有する塩類と酸化還元対とから作られる。油性部分は、架橋性疎水性ポリマーから構成される。この混合物は、分注又は印刷のいずれかを用いた製造プロセスをサポートするために乳化される。次のステップでは、堆積層の沈降、脱気、最後にUV硬化して、全コンパートメントを固定する必要がある。この手順は、センサ間のばらつきを誘発する可能性のある混成膜の相分離特性のため、複雑な時間依存プロセスとなっている。
【0009】
[発明の概要]
電位差測定参照電極は、安定した電位を提供することによって信頼性があり、環境的な要因の影響を受け難いものでなければならないことは広く知られている。全ての電位差測定参照電極には、液間電位がある。これらは、参照電極と試料との間に生じる境界/界面電位である。全ての電位差測定参照電極は液間電位があったとしても、液間電位が比較的一定であり、且つ、参照電極の周囲の温度や局所的な化学組成の影響を受けないことが必須である。
【0010】
平面状のセンサアレイ内の電気化学電位差測定参照電極を一体化することは、単回使用平面状センサにおいて重要な課題である。
【0011】
血液試料における様々な電解質の濃度が血液試料を採取した動物の健康に応じて変動する可能性が高い場合、平面状のセンサアレイに組み込まれたどのような単回使用の電位差測定参照電極も、比較的一定で再現性のある液間電位を有することが重要である。上述したように、平面状のセンサアレイは、非常に限られたサイズの塩リザーバを設けた電位差測定参照電極を備えている。限られたサイズの塩リザーバが血液試料に晒されたとき急速に洗い流されるのを防ぐため、疎水性成分を電位差測定参照電極に組み込んで、洗浄されることを防止するか、血液試料の測定が行われている間、参照電位又は参照電極の液間電位において何らかの変化の時間だけ、遅延させることが必要である。
【0012】
本発明の目的は、ディスポーザブルな単回使用の電気化学電位差測定参照電極/センサを提供することである。本発明の別の目的は、比較的長期保管可能である、ディスポーザブルな単回使用の電位差測定参照電極/センサを提供することである。本発明のさらに別の目的は、使用時点での水蒸気の吸収後に活性状態となる乾燥試薬を有する塩橋の電気化学電位差測定参照電極/センサを提供することである。
【0013】
本発明は、半透性カバー膜を組み合わせた非晶質多糖/塩層を備えている単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサを提供することにより、これらの目的及び他の目的を達成する。
【0014】
一実施形態では、単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサは、絶縁ベース基体と、絶縁ベース基体上に配置され、銀-塩化銀電極である参照電極と、参照電極上に配置された内部層であって、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを含む非晶質塩層である、内部層と、内部層を覆うように配置され、水蒸気及びイオン透過性を有する半透性カバー膜と、を備えている。
【0015】
一実施形態では、非晶質多糖は、塩と過飽和されると、内部層が形成されたときに非晶質多糖と塩とが分離しないような非晶質特性を有する。
【0016】
一実施形態では、非晶質多糖は、プルラン、デキストラン、及び、アミロースを含むが、これらに限定されない、様々な組成物から選択される。
【0017】
一実施形態では、塩は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、酢酸リチウムなどのうちの1つであり、これらにおいて、カチオン及びアニオンは、略等移動度を有する。
【0018】
一実施形態では、半透性カバー膜は、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー又はセルロースアセテートブチレートポリマーから作られる。
【0019】
別の実施形態では、単回使用ディスポーザブル電気化学センサは、センサ面を有する絶縁ベース基体と、センサ面上に形成された電位差測定作用電極であって、その上に配置された種特異試薬マトリックスを有し、種特異試薬マトリックスが液体試料中の特定種を測定するために選択された1以上の層を有する、電位差測定作用電極と、センサ面上に形成された電位差測定参照電極であって、その上に多層参照コーティングを有する銀-塩化銀電極である電位差測定参照電極と、を備えている。多層参照コーティングは、Ag/AgCl参照電極上に配置された内部層であって、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを備えている、内部層と、内部層を覆うように配置される半透性カバー膜であって、半透性カバー膜は半透性疎水性ポリマーであり、水蒸気透過性及びイオン透過性を有する半透性カバー膜と、を備えている。
【0020】
一実施形態では、単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサを形成する方法は、少なくとも1つの導電経路を備えた絶縁ベース基体と、絶縁ベース基体上に配置される絶縁試薬保持層とを有するセンサ体であって、絶縁ベース基体上の絶縁試薬保持層は少なくとも1つの試薬保持開口部を有し、少なくとも1つの試薬保持開口部が少なくとも1つの導電経路の一部を露出させる、センサ体を設けることと、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを含有する非晶質塩層混合物を、少なくとも1つの試薬保持開口部の1つの内部に配置することと、内部層を形成する非晶質塩層混合物を乾燥させることと、内部親水層を覆うように、疎水性ポリマーを含有するカバー膜溶液を配置することと、半透性カバー膜を形成するカバー膜溶液を乾燥させることであって、該半透性カバー膜が水蒸気透過性及びイオン透過性を有する、乾燥させることと、を備える。
【0021】
一実施形態では、非晶質塩層混合物は、所定量の非晶質多糖と、所定量の3mol/L塩溶液とを含む複数の成分を共に添加することと、非晶質塩層混合物を形成する複数の成分を混合することとにより形成される。
【0022】
一実施形態では、非晶質塩層混合物は、750ミリグラムの非晶質多糖を測定することと、3ミリリットルの3mol/L塩溶液を測定することと、非晶質塩層混合物を形成する複数の成分を混合することと、により形成される。
【0023】
一実施形態では、カバー膜溶液は、クロロスルホン化ポリエチレン及びセルロースアセテートブチレートのうちの1つである所定量の疎水性ポリマーを測定することと、カバー膜溶液を形成する所定量のTHF/シクロヘキサノン中に疎水性ポリマーを混合することとにより形成される。
【0024】
一実施形態では、カバー膜溶液は、8-10重量%のクロロスルホン化ポリエチレン又はセルロースアセテートブチレートを測定することと、カバー膜溶液を形成する所定量のTHF/シクロヘキサノン中に疎水性ポリマーを混合することとにより形成される。
【0025】
さらに別の実施形態では、単回使用ディスポーザブル電位差測定参照センサを形成する方法は、少なくとも1つの導電経路を備えた絶縁ベース基体と、絶縁ベース基体上に配置される絶縁試薬保持層とを有するセンサ体であって、絶縁試薬保持層は少なくとも1つの試薬保持開口部を有し、少なくとも1つの試薬保持開口部が少なくとも1つの導電経路の一部を露出させる、センサ体を設けることと、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを含有する非晶質塩層混合物を、少なくとも1つの試薬保持開口部の1つの内部に配置することと、内部層を形成する非晶質塩層混合物を乾燥させることと、親水性内部層を覆うように、疎水性ポリマーを含有するカバー膜溶液を配置することと、半透性カバー膜を形成するカバー膜溶液を乾燥させることであって、該半透性カバー膜が水蒸気透過性及びイオン透過性を有する、乾燥させることと、を備える。
【0026】
一実施形態では、電位差測定参照電極を単回使用ディスポーザブル参照センサ中に形成するための多層試薬マトリックスが開示されている。多層マトリックスは、非晶質多糖及び塩を含有する非晶質塩層混合物から形成される内部層を備え、内部層はAg/AgCl参照電極の上に重なっている。非晶質多糖は、塩と過飽和されると、内部層が形成されたときに非晶質多糖と塩とが分離しないような非晶質特性を有する。カバー膜溶液から作られた疎水性カバー膜は、内部層を覆うように配置され、カバー膜溶液は疎水性のポリマーを含み、疎水性半透性膜ポリマーは、水蒸気及びイオン透過性を有する。
【0027】
一実施形態では、内部層は、塩化カリウムと、プルラン、デキストラン、及び、アミロースのうちの少なくとも1つとの混合物である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】電位差測定参照センサを示す本発明の一実施形態の斜視図である。
【
図2】電位差測定参照センサの2つの構成層を示す
図1の実施形態の分解図である。
【
図3】電位差測定参照センサの電気絶縁基層の上面図である。
【
図5】
図1の線5-5に沿った電位差測定参照センサの拡大断面図である。
【
図6】電位差測定参照電極の多層試薬マトリックスの拡大図であり、内部層と疎水性カバー膜層とを示す。
【
図7】参照センサの液間電位の安定性及び再現性をテストするためにフローセルに接続された電位差測定参照センサの例示的な上面図である。
【
図8】様々なイオン強度溶液中のダブルジャンクション参照電極に対する本発明の電位差測定参照センサの液間電位読み取り値の安定性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、
図1~8に示される。一実施形態では、本発明のディスポーザブルな単回使用の電位差測定参照センサ10は、2層構成を用いて作られたディスポーザブルな単回使用の電気化学センサ5の一部である(
図1~4参照)。2層構成は、電極端部14と、電気接点端部16と、作用電極17と、電極端部14における参照電極18と、電気接点端部16における電気接点パッド16a及び16bとを備えている積層体12を有する。また、積層体12は、電気絶縁基層20と、電気絶縁電極画定層30とを備えている。積層体12の全ての層は誘電材料、好ましくはプラスチックから作られる。好ましい誘電材料の例は、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、ポリウレタン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどである。
【0030】
絶縁基層20は、導電層21を有し、その上に少なくとも2つの導電経路22及び24が画成される。導電経路22及び24は、導電層21をスクライビング若しくは罫書きするか、又は絶縁基層20上に導電経路22及び24をシルクスクリーン印刷することにより、形成され得る。導電層21のスクライビング又は罫書きは、導電層21を機械的にスクライビングすることにより行ってもよく、少なくとも2つの独立した導電経路22及び24を生成するのに十分な非導電罫書き線28を生成し得る。本発明の好ましいスクライビング又は罫書き方法は、二酸化炭素レーザ、YAGレーザ、又は、エキシマレーザを使用して行われる。導電層21は、任意の導電材料、例えば、銅、金、酸化スズ/金、パラジウム、その他の貴金属またはそれらの酸化物、または炭素膜組成物等から作られ得る。この実施形態で使用される導電材料はパラジウムである。基層20の許容可能な厚みは、0.002インチ(0.05mm)から0.010インチ(0.25mm)の範囲である。そのような基層20に使用可能な材料の1つは、インディアナ州インディアナポリスのMarian社から販売されている0.005インチ(0.125mm)パラジウムポリエステル膜(品番Melinex 329)である。
【0031】
絶縁電極画定層30は、少なくとも2つの開口部32及び34を備えている。開口部32は導電経路22の一部を露出させ、開口部34は導電経路24の一部を露出させて、試薬保持ウェルを生成する。この実施形態では、絶縁電極画定層30は、イリノイ州フランクリンパークのTranscendia社から入手可能な医療用グレードの片面接着テープ/膜である。本発明において使用されるテープの許容可能な厚みは、約0.001インチ(0.025mm)から約0.005インチ(0.13mm)の範囲である。かかるテープ/膜の1つである品番PE31280(約0.002インチ(0.045mm))は、十分な量の化学試薬を保持可能な能力という点における取り扱い易さと良好な性能とにより使用されている。テープの使用は必須でないことを理解されたい。絶縁電極画定層30は、プラスチックシートから作られてもよく、感圧接着剤やフォトポリマーでコーティングするか、基層20に超音波で接着するか、基層20上にシルクスクリーン印刷するか、基層20上に3D印刷しても、前述のポリエステルテープを使用した場合と同じ結果を得ることが可能である。
【0032】
少なくとも2つの開口部32及び34は、電極領域W及びRを夫々画成し、作用電極W及び参照電極Rを形成する。一般的に、作用電極Wは、電極領域Wに露出された導電層21の一部に直接堆積された試薬マトリックスを担持している。電極領域Wでは、試薬マトリックスが液体試料中の特定種を測定するために調合されている。第2の、第3の、又はそれ以上の作用電極は、1つの参照センサ10と組み合わせた電気化学センサに搭載してもよいことも考えられる。また、参照センサは、試料液体を測定するための1以上の作用電極のいずれか1つとは別体の独立したセンサであってもよく、作用電極及び参照センサ10が同じ液体試料に接触する前提で、なお適切に機能し得ることも考えられる。
【0033】
組み合わせセンサでは、作用電極及び参照電極は、別個の導電経路22及び24とそれぞれ電気的に接触している。別個の導電経路は、積層体12の電極端部14とは反対の端部における、読み取り装置との電気的接続のために、終端して露出されている。
【0034】
試薬保持開口部のサイズは、センサが適正に機能するのに十分な化学試薬を保持可能でありながら、できる限り小さくすることが好ましい。試薬保持開口部の形状は、この実施形態では、円形であり、直径は約0.03インチ(約0.76mm)である。2つの試薬保持開口部32、34は、互いに整列し、約0.0256インチ(0.65mm)だけ互いに離隔している。試薬保持開口部が円形であることは、説明のためのみである。試薬保持開口部の形状は重要ではなく、開口部のサイズは、試薬マトリックス混合物を開口部に分注するという技術的な実現可能性や他の製造上の制限にさらに依存することを理解されたい。
【0035】
参照センサがフローセルと結合されている場合の可能な電極配置は、W-Rである必要がある。2つ以上の作用電極センサを備える場合、その配置はW-W-Rであるべきで、この配置は、作用電極センサWを最初に横切り、参照電極センサRを最後に横切る試料流れ方向に基づいて現れるように並べた配置である。換言すると、流体試料がフローセル70に入り、流体試料が最初に作用電極センサWを覆い、次に参照電極センサRを覆う。この場合、位置的配置は重要である。なぜならば、作用電極センサが参照センサの下流に位置する場合、参照センサからのKClイオンの放出が作用電極センサを汚染する可能性があるためである。
【0036】
好ましくは、電位差測定参照電極18(電極ウェル34)は、Ag/AgCl層(例えば、Ag/AgClインクを塗布すること、又は、(a)Ag層をスパッタコーティングした後Agを塩素化するか(b)Ag/AgCl層をスパッタコーティングすることによる)を担持する、又は、適切に機能するために酸化還元メディエータを必要としない他の参照電極材料を担持してもよい。Ag/AgCl層上に配置/堆積されるのは、親水性の内部層である。内部層は、非晶質塩層である非晶質構造層である。非晶質塩層は、非晶質多糖と、等移動度カチオン及びアニオンを有する塩とを備えている。
【0037】
ここで
図3及び4を参照すると、基層20及び絶縁試薬保持層30の上面図が示されている。
図3に示すように、導電経路の対称性は、基層20のいずれかの長手方向端部が、基層20と、アッセンブリプロセスに対する絶縁試薬保持層30の向きに応じて、電極端部14又は電気接点端部16のいずれかとして指定され得るものである。この実施形態では、基層20は、2つの別個の導電経路を区画する導電層21内にスクライブマークを有する。絶縁基層は、1つの、2つの、又はそれ以上の導電経路を有してもよく、追加的な導電経路に対し同様の又は他の検体センサ試薬が指定されることで、電気化学センサを多検体センサとしてもよいことを理解されたい。
【0038】
図4は、絶縁試薬保持層30の上面図である。絶縁試薬保持層30は2つ以上の開口部を有し、該開口部は互いに離隔され、各々が基層20上に区画された導電経路の1つと一致する。参照電極のみが作製された場合、絶縁試薬保持層は、基層20上に導電経路を1つのみ含むであろうことが明確に理解される。本明細書に開示される導電経路(1つ又は複数)は、任意の非腐食性金属から作られ得ることを理解されたい。例えば炭素ペースト又は炭素インクのような炭素堆積物を導電経路として使用してもよく、これらの全ては、当業者によく知られている。
【0039】
ここで
図5を参照すると、
図1の線5-5に沿った参照センサ10の拡大断面図が示されている。層20、30、金属コーティング21、電極ウェル34、電位差測定参照電極試薬マトリックス60の相対的なサイズは、実際のサイズでなく、参照センサ10の様々な構成部分を単に示しているだけであることを理解されたい。
図5に見られるように、絶縁基層20は、その上に配置された導電層21と、導電層21上に形成されたAg/AgCl層70とを有する。絶縁試薬保持層30は、電位差測定参照電極試薬マトリックス60を含有する試薬保持開口部34を有する。
【0040】
図6は、電位差測定参照電極試薬マトリックス60の拡大図である。多層試薬マトリックス60は、親水性ポリマー層50及び疎水性ポリマー層40を含む。内部層50は、非晶質多糖52及び塩54を含む。疎水性カバー膜層40は、その名前のとおり、水溶性ではないが、水蒸気及びイオンに対して透過性がある。
【0041】
内部層50として使用されるポリマーは、水に十分可溶であるべきであり、また、電極領域中の導電表面層21に対して試薬中の全ての他の化学物質を安定化させる能力を有しているべきである。適したポリマーには、非晶質多糖類が含まれるがこれに限定されず、非晶質多糖類はプルラン、デキストラン、アミロースなどを含むがこれらに限定されない。内部層50は、単一のポリマー又はポリマーの組み合わせであってもよく、好ましくは、濃度範囲が約0.02%(重量比)から約7.0%(重量比)である。本発明の内部層における好ましい親水部はプルランである。
【0042】
また、内部層は、塩化カリウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、酢酸リチウムなどの等移動度塩を含有する。
【0043】
半透性膜層において使用される許容可能なポリマーには、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー及びセルロースアセテートブチレートポリマーが含まれる。実施例にて使用されたポリマーは、クロロスルホン化ポリエチレンである。これは、米国、ニューヨーク州オンタリオ、Scientific Polymer Products社から入手可能である。
【0044】
図7は、参照センサ10の液間電位を判定するためフローセル70に接続された電位差測定参照センサ10を示す上面図である。フローセル70は、内部に試験チャンバ74を有し、1つ以上の参照電極18が配置される。試験チャンバ74は六方弁100に接続された試験チャンバ入口72を有し、異なるイオン強度を夫々有する5つの試験サンプルを提供する。5つの試験サンプルの各所定量は、試験チャンバ74に順次供給され、5つの試験サンプルの各々における(単数又は複数の)参照センサ10の液間電位を判定する。参照センサ10は、標準のダブルジャンクション参照電極200に電気的に接続され、双方が適した電子機器に接続されて液間電位測定を行うことを理解されたい。
【0045】
内部及び半透性膜層組成物の調製
内部層を生成するために使用される親水性混合物用の試薬層組成物は、好ましくは、2つのステップにて調製されるが、1つのステップで調製してもよい。
【0046】
ステップ1:750mgのプルラン(非晶質多糖)及び3mlの3mol/L KCl溶液を共に添加する。
【0047】
ステップ2:非晶質多糖がKCl溶液に完全に溶解するまで、上記ステップ1の成分を混合する。
【0048】
半透性膜を作成するために使用されるカバー膜溶液用試薬層組成物も、好ましくは、2つのステップにて調製されるが、1つのステップで調製してもよい。
【0049】
ステップ1:THF/シクロヘキサノン中にクロロスルホン化ポリエチレンポリマー及びセルロースアセテートブチレートのうちの1つを8~10重量%添加する。
【0050】
ステップ2:ステップ1の成分を共に混合して、カバー膜溶液を作る。
【0051】
センサ構造
本発明の様々な実施形態のアッセンブリは、比較的シンプルである。一般的に、絶縁基層20及び絶縁試薬保持層30が互いに積層された後、適した試薬混合物が試薬保持開口部に分注される。
【0052】
より具体的には、
図1に示す2層構成において、パラジウムでコーティングされたポリエステル膜(片面のみがコーティングされている)の一片が、
図2に示すような形状に切断され、センサ10の基層20を形成する。機械的スクライビングは任意であるが、好ましくは、レーザを用いて導電性パラジウムポリエステル膜を罫書きする。
図2に示すように、当該膜はレーザによって罫書きされ、試料流体端部14に少なくとも2つの電極領域と、電気接点端部16に少なくとも2つの接触ポイント22及び24とが形成される。電位差測定参照センサ10のみが作製される場合には、試料流体端部14に1つの電極領域と、電気接点端部16に1つの接触ポイントのみが形成される。罫書き線は、非常に細いが、2つの別個の異なる導電経路を生成するには充分である。電位差測定参照センサ10のみが作製される場合、任意の罫書き線が、参照センサ10の外周に沿って作製され、それにより参照センサ10に対する静電電位の影響の可能性を低減させてもよい。片面接着テープの一片を、次に、所定のサイズ及び形状に切断し、それにより、参照符号16によって
図1に示す小さな電気接点領域を露出することを除き基層20の導電層21の大部分を覆う絶縁電極画定層30を形成する。
【0053】
組み合わせセンサにおいて絶縁電極画定層30を基層20に取り付ける前に、略同一サイズである少なくとも2つの開口部32及び34を、レーザまたはダイパンチアセンブリー等の機械的手段によって穿孔し、絶縁電極画定層30の電極開口部32及び34を形成する。電極開口部はどのような形状であってもよい。図示の実施形態では、開口部は円形である。開口部32及び34にとっての好ましい孔サイズは、典型的には約0.030インチ(0.76mm)の直径を有するが、任意のサイズであってよい。
図2に示すように、電極開口部32及び34は互いに整列し、隣接する開口部間において約0.020インチ(0.508mm)から約0.050インチ(1.27mm)の間隔を有する。開口部が円形であることは、説明のためのみである。開口部の形状及びサイズや、開口部間の距離は重要ではないことを理解されたい。円形状の開口部は、表面積の比率が略一定である限り、寸法が略同一である必要はない。電極の配置は任意の組み合わせであってもよいが、開口部32及び34に形成される電極の好ましい配置は、試験チャンバ入口72から位置決めされるW(作用電極)及びR(電位差測定参照電極)である。絶縁電極画定層30は、次に、作用電極W及び参照電極Rを生成するための電極ウェルを画成するように基層20に取り付けられる。参照センサ10のみが作製される場合、試料チャンバ70内の参照センサ10の位置は、前述したような位置的配置と同様に配置されることも考えられるであろう。
【0054】
電位差測定参照センサを生成するため、所定量の親水性混合物が電位差測定参照電極ウェル34内に分注され、Ag/AgCl電極を完全に覆い、乾燥させられる。例えば、室温で数分間空気乾燥させるか、37oCでそれより短時間乾燥させ、内部層を形成してもよい。室温よりも高い温度での短時間の乾燥により、より効率的な製造プロセスが可能である。内部層混合物及びその組成は、上述したものである。この乾燥プロセスの間、非晶質多糖(類)及び塩化カリウムは、3mol/LのKCl溶液から水分が蒸発するにつれて、金属層の上に堆積する。多糖(類)の非晶質特性とは、多糖(類)/塩溶液が乾燥して均一な内部層膜になるときに、多糖(類)と塩とが分離することなく、多糖(類)が高濃度の塩と混合可能(即ち、過飽和状態)であるというものである。このように形成された内部層は、カバー膜を通って拡散する水蒸気と接触すると、塩の溶解を加速し、イオンを迅速に発生させ、半透性膜の界面の液間電位を補償し始めるとともに、平面アレイ上のAg/AgClの電位を安定させる。
【0055】
次に、カバー膜溶液が内部層上に分注され、これにより溶液が完全に内部層を覆うようにする。カバー膜溶液は、室温で一晩空気乾燥されるか、37
oCで30秒以上乾燥される。このプロセスの間、カバー膜の成分(即ち、クロロスルホン化ポリエチレン)は、水蒸気及びイオンに対する透過性がある疎水性層を形成する。この電位差測定参照センサの場合、水蒸気は電位差測定参照センサが露出される試料溶液から塩を溶解した内部層内に拡散し、これにより等移動度塩からのカチオン及びアニオンが半透性膜層を通って同試料溶液に輸送されることで、内部層が検量体又は試料により水和されたときの試料/カバー膜界面での液間電位の変動を防止する。前述したように、半透性膜層はカバー膜を通る水蒸気及びイオンの拡散が可能である一方、内部層は水溶性の親水性ポリマー及び塩を含み、それにより、試料中の特定の種を計測するときのセンサアレイにおける作用電極及び参照電極間の電気接続を成すか、又は、電位差測定参照センサ液間電位の安定性を判定する場合においては、
図7に示す標準のダブルジャンクション参照電極との電気接続を成す。
【0056】
試薬を乾燥させるのに必要な時間の長さは、乾燥プロセスが行われる温度に依存する。
【0057】
電位差測定参照センサの液間電位の安定性テスト
1つ又は複数の電位差測定参照センサ10は、標準のダブルジャンクション参照電極200と共に、
図7に示すようにフローセルに接続された。流体試料が
図1に示す本発明の電位差測定参照センサに供給されると、流体試料はフローセル70に入り、電極W及び電極Rを越えて流れ、ダブルジャンクション参照電極200を横切り、所定の時間停止される。
【0058】
電位差測定法で、ペンシルバニア州マルヴァーン、Lawson Labs社のEMF16ポテンショスタットのようなポテンショスタットを使用して、参照センサ10の液間電位を測定した。
図1に示し、且つ上述したものと同様に製造された電位差測定参照センサが用いられ、様々なイオン強度溶液のうちの1つにおいて最初の80数秒の水和後に様々なイオン強度溶液(80~200mmol/L)に露出したときの本発明の参照センサ10の液間電位をテストした。
【0059】
実施例1
様々なイオン強度溶液レベルでの電位差測定参照電極の液間電位の安定性及び再現性の実証
様々なイオン強度(IS1からIS5)の液体試料を用いて、本発明の単回使用ディスポーザブル参照センサの液間電位の安定性を判定した。液間電位は、標準のダブルジャンクション参照電極に対して、本発明の電位差測定参照センサを使用して測定した。ポテンショスタットを用いて、本発明のディスポーザブルな単回使用の参照センサ10と、標準のダブルジャンクション参照電極200との間の液間電位を測定した。ポテンショスタットは、ペンシルバニア州マルヴァーン、Lawson LabsのEMF16ポテンショスタットであった。
【0060】
この手順は、イオン強度が140mmol/Lの初期溶液を、フローセルに流し込み、テスト対象の各参照センサと共にダブルジャンクション参照電極に流して停止することを含み、これにより、試料溶液を80秒間フローセル内に滞留させ、電位差測定参照センサの内部層を水和した。80秒の水和時間の終了時に、液間電位が測定された。最初のイオン強度試料に続き、4つの追加的な連続した試料を約40秒間隔でフローセルに夫々流し込み、停止させて電位を測定した。各約40秒間隔での液間電位は以下の表1に示すように測定された。
【0061】
この実施例では、参照センサの液間電位がテストのため、パラジウム基体を用いた複数の電位差測定参照センサが作製された。結果は表1に示す。
【0062】
【表1】
各イオン強度溶液は、約80秒から約240秒までの間、5つのディスポーザブルな電位差測定参照センサ10を用いてテストされた。平均値は計算され、表1に示す。テストされた各参照センサの標準偏差値も提供している。
【0063】
図8は、様々なイオン強度の水溶液である140mmol/L(IS1)、80mmol/L(IS2)、100mmol/L(IS3)、160mmol/L(IS4)、200mmol/L(IS5)に対する、本発明の電位差測定参照電極/センサ(即ち、内部層/半透性カバー膜層電極)の液間電位応答を示す。
図8に示すように、単回使用の電位差測定参照センサにおけるミリボルト変化は、溶液のイオン強度に関連しているようには見えない。特定の参照センサで測定された全てのミリボルト変動は、+/-0.1mV未満であった。
【0064】
液間電位は、比較的安定しており、先述した5つのイオン強度溶液の範囲における測定に亘って変動していないように見える。このデータは、カバー膜が比較的迅速な内部層の水和と、十分なイオン放出速度(参照センサの液間電位の異常を防止するのに十分な速度)とを実現し、水溶液と接触しているときに比較的長時間(約4分)高イオン濃度を維持することを示している。データはさらに、1つの参照センサ10から他の同様の参照センサ10の液間電位は、参照センサ間で比較的一貫していることを示している。所与のイオン強度溶液に対する1つの参照センサ10から別の参照センサ10への液間電位差は、+/-0.33mV未満である。これは、本発明の電位差測定参照電極10が1つの参照センサ10から別の参照センサ10への液間電位において有意な変化無しで作製且つ使用可能であり、単回使用のディスポーザブルな電位差測定参照センサとして適していることを示している。
【0065】
従来技術の単回使用の電位差測定参照センサに対する、本発明の利点には、ゼロメンテナンス、入手し易さ、使用の簡便さ、汚染の低減、費用対効果、迅速な分析、手軽さ等が含まれる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態について、本明細書において説明してきたが、上述したものは単なる例示である。各技術分野における当業者は、本明細書に開示された発明のさらなる変更を当然想起し、そのような変更の全ては、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内にあるとみなされる。
【国際調査報告】