(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】船舶の推進力要件を軽減する構成
(51)【国際特許分類】
B63H 1/28 20060101AFI20230619BHJP
B63H 5/15 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B63H1/28 Z
B63H5/15 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572611
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2021064380
(87)【国際公開番号】W WO2021239963
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518190020
【氏名又は名称】ベッカー マリン システムズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】becker marine systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング キュールマン
(57)【要約】
少なくとも1つのラダー(21)と、プロペラ(30)のための少なくとも1つの収容空間(22)であってラダー(21)の前方で船舶(100)の進行方向(F)に形成されてこの構成(20)を有する船舶(100)の推進力要件の軽減を可能とする収容空間(22)と、を有する構成(20)を提供するために、プロペラ(30)の収容空間(22)の前方の進行方向(F)において、少なくとも1つのガイド面(24)及び少なくとも1つのサイドフィン(25)を備える少なくとも1つの前段ノズル(23)がラダー(21)上に配置されることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(100)、特に船の、推進力要件を軽減するための構成(20)であって、少なくとも1つのラダー(21)と、プロペラ(30)のための少なくとも1つの収容空間(22)と、を備え、該収容空間(22)は前記ラダー(21)の前方で前記船舶(100)の進行方向(F)に形成され、
前記プロペラ(30)の前記収容空間(22)の前方の前記進行方向(F)において、少なくとも1つのガイド面(24)を備える少なくとも1つの前段ノズル(23)が配置され、少なくとも1つのサイドフィン(25)が前記ラダー(21)に配置された、構成。
【請求項2】
前記前段ノズル(23)はリングノズルとして又は少なくとも1つのリングノズルの一部分として形成され、前記前段ノズル(23)は少なくとも部分的に周方向に流路(40)を制限する、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記前段ノズル(23)の前記少なくとも1つのガイド面(24)が、前記リングノズル又は前記少なくとも1つのリングノズルの一部分に配置されたフィンの形態で設計された、請求項2に記載の構成。
【請求項4】
フィンとして設計された前記少なくとも1つのガイド面(24)は、リングノズルとして又はリングノズルの一部分として設計された前記前段ノズル(23)の外側シェル面から突出する、請求項3に記載の構成。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガイド面(24)が、前記前段ノズル(23)の支持ストラット(50)として設計された、請求項1から4のいずれか一項に記載の構成。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガイド面(24)が、前記前段ノズル(23)の前記流路(40)に設計された、請求項1から5のいずれか一項に記載の構成。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガイド面(24)が、前記リングノズル又は前記リングノズルの一部分を越えて前記前段ノズル(23)の回転軸(RA)から径方向に延在する、請求項2から6のいずれか一項に記載の構成。
【請求項8】
前記前段ノズル(23)は、均一又は不均一に分布された複数のガイド面(24、50)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の構成。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガイド面(24)を有する前記前段ノズル(23)及び前記少なくとも1つのサイドフィン(25)は、非偏向ラダー位置において、前記少なくとも1つのサイドフィン(25)が前記ラダー(21)の一方側に配置され、前記少なくとも1つのガイド面(24)を有する前記前段ノズル(23)が少なくとも部分的に、好ましくは、支配的な割合で、特に好適には完全に、前記ラダー(21)の他方側に配置されるように、前記ラダー(21)と反対に非対称に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の構成。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガイド面(24)を有する前記前段ノズル(23)及び前記少なくとも1つのサイドフィン(25)は、前記前段ノズル(23)及び/又は前記少なくとも1つのガイド面(24)が前記ラダーの一方側及び前記ラダーの他方側の双方に配置されるように、前記ラダー(21)と反対に対称に配置され、少なくとも1つのサイドフィン(25)が前記ラダー(21)の第1の外側面(26)及び第2の外側面(27)に配置された、請求項1から9のいずれか一項に記載の構成。
【請求項11】
前記少なくとも1つのサイドフィン(25)は、前記ラダー(21)の第1の外側面(26)及び/又は第2の外側面(27)に対して実質的に直角に配列される、請求項1から9のいずれか一項に記載の構成。
【請求項12】
前記少なくとも1つのサイドフィン(25)は、前記ラダー(21)の第1の外側面(26)及び/又は第2の外側面(27)に対して90度未満、好ましくは75度未満、特に好適には60度未満の角度で配列された、請求項1から11のいずれか一項に記載の構成。
【請求項13】
前記少なくとも1つのサイドフィン(25)は、テーパー状スイープを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の構成。
【請求項14】
前記ラダー(21)に取り付けられた前記少なくとも1つのサイドフィン(25)は、その面側に配置されたキャップ又はその面側に配置されたウイングレット(29)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の構成。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の構成(20)を備える、特に船である、船舶(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのラダー(舵)と、プロペラのための、ラダーの前方で船舶の進行方向に形成される少なくとも1つの収容空間とを備える船舶、特に、船の推進力要件を軽減するための構成に関する。またさらに、本発明は、その構成を有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進力要件を軽減するための様々な装置が既に知られている。例えば、船舶の進行方向においてプロペラの上流側にあるリングノズルは、プロペラへの流入を最適化することで、船舶のエネルギー消費に好影響を与えることができる。また、特許文献1によると、内部ガイド面を有するプロペラの上流側にあるリングノズルが知られており、これも船舶のエネルギー消費を低減することに寄与する。
【0003】
またさらに、水と船体の間の摩擦損失を低減する能動装置が知られている。この装置は、船体に沿って分布されて船体の摩擦を軽減するノズルを介して気泡を生成することができ、更なるエネルギーの節約を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、船舶の推進力要件を軽減するための又は船舶の消費を軽減するための改良された構成を提供することである。
【0006】
本発明の一態様によると、この課題は、船舶、特に、船の推進力要件を軽減するための構成によって達成される。本構成は、好ましくは、エネルギー節約構成として設計され、船体の船尾に配置され得る。
【0007】
本構成は、少なくとも1つのラダー(舵)と、船舶の進行方向から見てラダーの前方にあるプロペラのための少なくとも1つの収容空間と、を備える。また、船舶の進行方向から見て、少なくとも1つのガイド面を備える少なくとも1つの前段ノズルはプロペラの収容空間の前方に配置され、少なくとも1つサイドフィンがラダーに配置される。この対策によって、複数のエネルギー節約装置が相互に組み合わされることになり、これにより、驚くことにさらに向上した推進力及びそれによる燃料の節約につながる。
【0008】
船尾に設けられたプロペラの数に応じて、ガイド面を有する複数の前段ノズル、及びサイドフィンを有する複数のラダーが使用され得る。好ましくは、1つのラダー及び1つの前段ノズルが、各プロペラに割り当てられる。
【0009】
本構成は、燃料節約及びそれによる船の運用コストの低減を達成するために、特に、中型及び大型船、例えば、コンテナ船、一般貨物船、バルクキャリア、フェリー又はタンカーに使用され得る。特に、船は、少なくとも15ノット、好ましくは少なくとも20ノット、特に好ましくは少なくとも24ノットの最大速度を有し得る。
【0010】
この構成の少なくとも1つのラダーは、上側領域のみにおいて船体に対して旋回可能に搭載される、いわゆるフルスペードラダー(full-spade rudder)として設計されてもよい。少なくとも1つのラダーは、ラダーストックによって船体に取付け可能である。さらに、ラダーは、任意選択的なラダーバルブを備えていてもよい。
【0011】
また、好ましくは、ラダー、特にフルスペードラダーは、いわゆる「ツイステッドラダー(twisted rudder)」として構成され得る。この場合、上側ラダーブレードの一部分は、プロペラフロー又はプロペラフロー方向に関してラダーの先端縁部の領域及び/又は後端縁部の領域において、下側ラダーブレードの一部分に対して異なる迎角を有し得る。上側及び下側ラダーブレードの一部分の迎角は、一定であってもよいし、又はそれぞれのラダーブレードの一部分の高さを越えて見た場合に連続的に若しくは不連続に異なっていてもよい。
【0012】
ラダーの前方の船舶の進行方向において、少なくとも1つのプロペラを収容するための収容空間が設けられる。前段ノズルは、進行方向においてプロペラの収容空間の直前に位置する。したがって、ラダー及び前段ノズルは、プロペラ(収容空間)を設けるためにその2つの間に充分な空間があるように、相互から離間されている。プロペラは、好ましくは、本構成の構成要素であり得る。少なくとも1つのガイド面を備える前段ノズルは、プロペラへの流入を最適化し得る。特に、これによって、特に、プロペラ流入の特定領域において、プロペラ流入及び/又は渦、特に、プロペラの渦に対向旋回する渦の高速化が生成可能となり、これはプロペラによって生成される推力に好影響を与える。
【0013】
ラダーは、プロペラの後流(プロペラのジェット気流跡)に配置される。ラダーは、後流のエネルギーの一部を浮力に変換し、その推進成分は船の推進を補助する。上述の最適化されたプロペラフローによって、プロペラは、推力を増加させ、その結果としてよりエネルギーの大きな後流を生成する。ただし、このように生成された後流の一部の領域では、驚くことに乱流の増加が起こる。少なくとも1つのサイドフィンを、特に、乱流の増加が起こる後流の領域においてラダーに設けることによって、プロペラの後流は、さらに最適化可能となる。サイドフィンは、後流において逆巻きの渦を生成し、それにより、プロペラの推力を向上する。また、サイドフィンは、追加の揚力、及びそれによる追加の推進力を生成する。結果として、既に最適化された流動するプロペラの推力はさらに向上可能となり、燃料消費がさらに低減可能となり、又は推進力がさらに向上可能となる。
【0014】
プロペラの収容空間は、前段ノズルと少なくとも1つのサイドフィンを有するラダーとの間の進行方向又はフロー方向に位置する。サイドフィンは、好ましくはラダーに対して横方向に取り付けられる。特に、ラダーがラダーバルブを備えることを条件として、サイドフィンは、ラダーのラダーバルブに対して取り付けられ又はラダーバルブにおいて取り付けられ得る。
【0015】
前段ノズル、前段ノズルのサイドフィン及び/又はガイド面は、好ましくは、プロファイル化され、すなわち、ウイングプロファイルを備え、それにより水流に対して作用し得る。
【0016】
収容空間に配置されたプロペラでは、前段ノズルがリングノズルとして又は少なくともリングノズルの一部分として形成される場合に、特に最適に流れ得る。前段ノズルは、流路を少なくとも部分的に周方向に制限する。リングノズルは周方向に閉じられているが、リングノズルの一部分は周方向に開放されている。リングノズル及びリングノズルの一部分は、回転対称であってもよいし、回転非対称であってもよい。それにより、流路又は流路後方におけるフローの流速は増加する。前段ノズルに存在する少なくとも1つのガイド面の付加によって、追加のツイスト、特に、逆巻きの渦がプロペラ流入に生成される。これらの対策は、プロペラの効率を増加させ得る。
【0017】
リングノズルの一部分として形成された前段ノズルは、例えば、180度、90度又は45度以上又は以下の全リングノズルとして設計された前段ノズルの周範囲に対応するサイズを有し得る。リングノズルの一部分は、任意の角度範囲を覆い又は締めることができる。リングノズルの一部分として形成された前段ノズルを通じて、フローは、目標を定めて局所的に集中した態様で影響され得る。
【0018】
更なる例示的実施形態によると、前段ノズルの少なくとも1つのガイド面は、フィンの形態で設計され、リングノズル又は少なくとも1つのリングノズルの一部分において配置される。この場合、フィンは、好ましくは、リングノズル又はリングノズルの一部分、特に、リングノズル又はリングノズルの一部分のシェル面に略垂直に配列され得る。実施形態に応じて、少なくとも1つのガイド面は、迎角の有無にかかわらず船舶の進行方向に関して配置され得る。
【0019】
少なくとも1つのガイド面は、前段ノズルによって形成された流路の内部及び/又は外部に配置され得る。特に、前段ノズルが複数のガイド面を備える場合、ガイド面は流路の内部及び外部に設けられてもよい。また、ガイド面は、ノズルシェルを連続的に通じて、それにより流路の内部及び外部に配置され得る。ガイド面は、前段ノズルの回転軸に関して略径方向に配置され得る。前段ノズルの回転軸は、プロペラ軸と一致し得る。ただし、好ましくは、回転軸は、プロペラ軸に対して上方にずらされてもよく、すなわち、プロペラ軸より上方に配置されてもよい。前段ノズルの回転軸は、プロペラ軸に対して平行であってもよいし、傾斜していてもよい。
【0020】
少なくとも1つのフィンは、リングノズル又はリングノズルの一部分の外側シェル面から突出する場合に、流路の外側のフローに対して作用し得る。この対策によって、リングノズル又はリングノズルの一部分によって加速されない流路外部のフローが、渦又は逆巻きの渦に誘発され得る。より小さなノズル径も使用可能であり、これにより前段ノズルの抗力全体が減少する。
【0021】
より好適な、複数のガイド面を備える前段ノズルの実施形態では、これらは、前段ノズルの内部及び/又は外部に非対称に分布して配置可能である。
【0022】
更なる実施形態によると、少なくとも1つのガイド面は、前段ノズルの支持ストラットとして設計される。結果として、フローへの影響に加えて少なくとも1つのガイド面は、前段ノズルを船体に取り付ける作業を遂行することができる。そのように形成されたガイド面は、好ましくは、前段ノズルの流路内に配置され、特に船尾管の領域において船体に対して、リングノズル又はリングノズルの一部分の一端に及びその他端によって取り付けられる。
【0023】
流路におけるフローの更なる最適化は、少なくとも1つのガイド面が前段ノズルの流路に完全に又は部分的に配置されることで実現され得る。この対策は、プロペラが少ない乱流で回転軸付近の領域に流されるような態様で流路において水流に影響を与え得る。
【0024】
更なる例示的実施形態によると、少なくとも1つのガイド面が、リングノズル又はリングノズルの一部分を越えて前段ノズルの回転軸から径方向に延在する。この対策によって、ガイド面を有する略対称の前段ノズルが実現可能となる。同時に、ガイド面は、前段ノズルの締結要素として作用し、収容空間におけるプロペラのフロー全体に対する好影響を可能とする。特に、ガイド面は、前段ノズルの流路の内部及び外部の双方に配置される。より好ましくは、この実施形態におけるガイド面の長さは、少なくとも1つのサイドフィンの長さよりも大きい。
【0025】
プロペラの流入の更なる制御が、均一に又は不均一に分布された複数のガイド面を備える前段ノズルによって達成可能となる。特に、プロペラに向けられるフローの所定の局所領域は、特異的に影響を受け、特に逆巻きの渦によって誘発され得る。
【0026】
更なる実施形態によると、少なくとも1つのガイド面を有する前段ノズル及び少なくとも1つのサイドフィンが、以下の態様で、ラダーに対向して非対称に配置される。その態様では、非偏向ラダー位置の場合、少なくとも1つのサイドフィンがラダーの一方側に配置され、少なくとも1つのガイド面を有する前段ノズルが少なくとも部分的に、好ましくは、支配的な割合で、特に好適には完全にラダーの他方側に配置される。好ましくは、少なくとも1つのガイド面を有する前段ノズルはラダーの第1の外側面にわたって延在し、少なくとも1つのサイドフィンはラダーの第2の外側面上に延在する。非偏向ラダー位置は、(例えば、船舶が直進している場合)ラダーの角度がゼロとなるゼロ位置である。特に、本構成又は船舶の後方視から見た場合、非対称構成は、サイドフィンがラダーの一方側に配置され、少なくとも1つのガイド面を有する前段ノズルが少なくとも部分的に、好ましくは、支配的な割合で、特に好適には完全にラダーの他方側に配置されることになる。好ましくは、本構成のこの実施形態では、1つのみの前段ノズル及び1又は複数のサイドフィンが存在し、1又は複数のサイドフィンは、好ましくは全て、ラダーの同じ側に配置される。特に、前段ノズルが大部分に又は完全に配置されるラダーの側には、サイドフィンは設けられない。特に、前段ノズルのガイド面の大部分、好ましくは、全ガイド面は、ラダーのサイドフィンの反対側に、すなわち、ラダーの他方側に配置される。
【0027】
さらに、2以上のラダーを有する構成では、特に、前段ノズル及びサイドフィンが2つのラダーの対向する側に配置されるように、前段ノズルは一方のラダーの一方側に少なくとも部分的に、好ましくは支配的な割合で、特に好適には完全に配置され、サイドフィンは他方のラダーの一方側に配置され得る。
【0028】
前段ノズル及びサイドフィンの非対称構成は、特に大きな水力学的効果を有し、船舶の推進力要件をさらに軽減する。したがって、乱流が、同じ領域で、右回りのプロペラの場合では、プロペラの後方視において特に約8時から12時の範囲においてプロペラへのフローに発生することが多い。その少なくとも1つのガイド面とともに前段ノズルをこの領域に、すなわち、少なくとも部分的に、大部分で又は完全にラダーの一方の側に配置することによって、逆巻きの渦が適切な地点での流入において生成される。これにより、プロペラでの衝撃に対して流入における乱流が減少し、プロペラの効率が上昇する。ここで、驚くことに、以下の態様で前段ノズルをプロペラの後流に設けると、乱流の増加がラダーの反対(他方)側に発生することが多いことが、出願人によって実施されたテスト及びシミュレーションにおいて示された。その態様では、サイドフィンはそれらの最も強い乱流の領域において後流に好影響を与え、特に、逆巻きの渦を生成することによって乱流が減少するので、少なくとも1つのサイドフィンをこの側に設けることが特に好適となる。右に回転するプロペラにおいて、これらの乱流はプロペラの後方視において約2時から4時の範囲における後流において発生することが多いので、この領域に少なくとも1つのサイドフィンを設けることが特に好適となり得る。
【0029】
更なる実施形態によると、少なくとも1つのガイド面を有する前段ノズル及び少なくとも1つのサイドフィンは、前段ノズル及び/又は少なくとも1つのガイド面がラダーの一方側及びラダーの他方側の双方に配置されるように、ラダーに対して対称に配置される。したがって、前段ノズル及び/又は少なくとも1つのガイド面は、好ましくはラダーの第1の外側面及び第2の外側面を越えて延在する。またさらに、少なくとも1つのサイドフィンが第1の外側面に配置され、少なくとも1つのサイドフィンがラダーの第2の外側面に配置される。このような構成では、プロペラの流入量及びプロペラの流出量の合計が、前段ノズル及びサイドフィンを用いて最適化され得る。
【0030】
少なくとも1つのサイドフィンは、好ましくは、ラダー及び/又はラダーバルブの一方の面の側、特に外側面においてラダーに取り付けられる。少なくとも1つのサイドフィンの他端は、好ましくは自由端として形成される。
【0031】
少なくとも1つのサイドフィンは、ラダーの第1の外側面及び/又は第2の外側面に実質的に直角に配列される場合、特に簡素な技術的態様で設計され、ラダーに取り付けられ得る。
【0032】
更なる実施形態では、少なくとも1つのサイドフィンが、ラダーの第1の外側面及び/又は第2の外側面に対して、90度未満、好ましくは75度未満の角度、特に好適には60度未満で配列される。
【0033】
特に、サイドフィンとラダーの外側面との間の角度を減少させることによって、ラダーの幅が減少し得る。結果として、船舶の運用においてサイドフィンへの損傷のリスクが軽減され及び/又は本構成の抵抗が低減され得る。同様の効果が、サイドフィンの長さを調整することによって実現され得る。
【0034】
2以上のサイドフィンがある場合、それらはラダーの一方の外側面に又はラダーの双方の外側面に排他的に配置され得る。
【0035】
少なくとも1つのサイドフィンがテーパー状スイープを備える場合、プロペラによって生成されるフローの更なる最適化が達成され得る。さらに、サイドフィンのテーパー状スイープは、漂流物の滑りを向上させ、損傷の可能性を低減する。
【0036】
更なる実施形態によると、ラダーに取り付けられた少なくとも1つのサイドフィンは、その面側に配置されたキャップ、又はその面側に配置されたウイングレットを備える。特に、キャップ又はウイングレットは、サイドフィンの自由端又は縁部に形成され又は取り付けられてもよい。この対策は、サイドフィンの一方の縁部からのフローの分離を簡素化し、サイドフィンの水力学的な抵抗を減少させ得る。
【0037】
本発明の更なる態様によると、上述した構成を備える船舶が提供される。本構成は、いずれの規定される実施形態も備え得る。船舶は、好ましくは、船尾に配置された少なくとも1つのラダーを有する船体を備える船であり得る。
【0038】
少なくとも1つのラダーは、例えば、フルスペードラダーとして設計されてもよく、それにより、旋回可能にラダー軸に沿って船体に接続され得る。
【0039】
ラダーの前方の船舶の進行方向において、収容空間及び収容空間内に位置するプロペラが設けられる。収容空間は、平行に配置された複数のラダーにわたって進行方向を横断して延在していてもよく、1又は複数のプロペラを収容してもよい。
【0040】
船舶を本構成で装備することによって、プロペラ及び船舶の効率を増加させるのに、プロペラの前方及びプロペラの背後で進行方向において、組み合わせて作用するエネルギー節約装置が使用される。好ましくは、少なくとも1つのガイド面を備える前段ノズルは、プロペラの流入を促進するように、プロペラ及び収容空間の前方に位置決めされ得る。
【0041】
複数のプロペラが収容空間内に位置決めされる場合、ガイド面を有する複数の前段ノズルも任意選択的に使用され得る。
【0042】
プロペラ及び収容空間の背後の船舶の進行方向において、プロペラの後流が、ラダーに取り付けられた少なくとも1つのサイドフィンによって最適化され得る。
【0043】
ラダー毎に及びラダーの外側面毎に1又は複数のサイドフィンが使用され得る。サイドフィンを通じて、例えば、プロペラによって生成される推力が進行方向に配列され、それにより増幅され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】第1の実施形態に係る構成を有する船舶の船尾領域の側方図である。
【
図2】第2の実施形態に係る構成を有する船舶の船尾領域の上面図である。
【
図3】第3の実施形態に係る構成を有する船舶の船尾領域の斜視図である。
【
図4】第3の実施形態に係る構成を有する船舶の船尾領域の更なる斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明の複数の例示的実施形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0046】
図面において、同一の構成要素の各々は、同一の符号を有する。
【0047】
図1は、第1の実施形態に係る構成20を有する船舶100の船尾領域10の側面図を示す。特に、船舶100の船体110の船尾領域10が示される。
【0048】
構成20は、船舶100の推進力要件を軽減するのに使用される。図示する例示的実施形態では、船舶100は、船として設計される。一例として、構成20は、ラダー軸Rに沿って旋回可能な1つのみのラダー21を備える。
【0049】
船舶100の進行方向Fにおいて、収容空間22は、ラダー21の前方に設けられる。収容空間22に、一例としてプロペラ30が位置決めされている。
【0050】
プロペラ30は、船舶100を駆動するのに使用され、プロペラ30の回転軸P(プロペラ軸)周りに回転可能であり、駆動され得る。
【0051】
プロペラ30の収容空間22の前方で船舶100の進行方向Fにおいて、複数のガイド面24を備える前段ノズル23が配置される。図示する例示的実施形態によると、前段ノズル23は、180度の角度範囲に及び、それにより略半円のリングノズルの一部分を形成する。
【0052】
さらに、構成20は、2つのサイドフィン25を有する(
図1の側面図により、1つのサイドフィンのみが示され、(不図示の)サイドフィンは(不図示の)ラダーの側に示すサイドフィンと同様に配置される)。サイドフィン25は、ラダー21の各外側面26、27に取り付けられる。したがって、構成20は、対称に設計される。
【0053】
サイドフィン25は、プロペラ30の回転軸Pの高さにおいてラダー21に接続される。図示する実施形態では、サイドフィンは、ラダーバルブ211の領域においてラダー21に取り付けられる。
【0054】
図2は、第2の実施形態に係る構成20を有する船舶100の船尾領域10の上面図を示す。第1の例示的実施形態とは逆に、構成20は、非対称に設計される。この場合、複数のガイド面24を有する前段ノズル23は、第2の外側面27上で側方に突出する。前段ノズル23は、特にその支配的部分が図示するラダー21の一方側(ラダーの左側(左舷))となるように配置される。小さな小領域のみが、ラダー21の他方側(右舷)を越えて突出する。前段ノズル23は、約120度の角度範囲に及ぶ。この場合、前段ノズル23は、プロファイル化されたリングノズルの一部分として形成される。
【0055】
前段ノズル23は、流路40を少なくとも部分的に周方向に制限する。ガイド面24はまた、プロファイルを構成し、流路40を通じてかつ前段ノズル23を通じて、図示する例示的実施形態ではプロペラ30の回転軸Pと一致する前段ノズルの回転軸から開始して径方向に突出する。一例として、相互に均一な角度においてプロペラ30の回転軸Pに沿って配置された3個のガイド面24が設けられる。
【0056】
サイドフィン25は、ラダー21の第1の外側面26に取り付けられる。したがって、サイドフィン25は、前段ノズル23の大部分に対してラダー21の他方側に配置される。第2の外側面27にはサイドフィンは設けられない。サイドフィン25の自由端28において、一例としてウイングレット29が配置される。ウイングレット29は、サイドフィン25と一体として設計されてもよいし、サイドフィン25に後から接続されてもよい。
【0057】
ウイングレット29は、船舶100の船体110の方向に離れて及び/又は船体110から離れて配向されてもよい。
【0058】
図3は、第3の実施形態に係る構成20を有する船舶100の船尾領域10の斜視図を示す。
図2に示す実施形態とは異なり、構成20は、進行方向Fに対してテーパー状スイープを備えてウイングレットは備えていないサイドフィン25を備える。その他については、第3の実施形態は、第2の実施形態と同一である。
【0059】
またさらに、
図3において、少なくとも1つのガイド面50は、船舶100の船体110において前段ノズル23の支持ストラットとして設計される。
【0060】
図4に、
図3による第3の実施形態に係る構成20を有する船舶100の船尾領域10の更なる斜視図を示す。構成20の非対称構造が示される。リングノズルの一部分として設計された前段ノズル23に対する代替として、それは、360度角度範囲を覆い、好ましくはプロペラ30に平行に位置決めされたリングノズルとして形成され得る。
【符号の説明】
【0061】
100 船舶
110 船体
10 船尾領域
20 構成/エネルギー節約構成
21 ラダー
211 ラダーバルブ
22 収容空間
23 前段ノズル
24 ガイド面
25 サイドフィン
26 ラダーの第1の外側面
27 ラダーの第2の外側面
28 サイドフィンの自由端/縁部
29 ウイングレット
30 プロペラ
40 流路
50 (支持ストラットとして設計された)ガイド面
F 進行方向
P プロペラの回転軸
R ラダー軸
【国際調査報告】