(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】強化された合成T細胞受容体及び抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20230619BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230619BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230619BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230619BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230619BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230619BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/12 ZNA
C07K14/725
C07K16/00
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572623
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2021095733
(87)【国際公開番号】W WO2021238903
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202011549176.4
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010449454.2
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522260986
【氏名又は名称】ブリスター イムノテック リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513244281
【氏名又は名称】チンファ ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルイ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジアシェン
(72)【発明者】
【氏名】レイ, レイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー, リ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, シュエチアン
(72)【発明者】
【氏名】リン, シン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
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4C087NA05
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
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4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、バイオ医薬品の分野、特にCD19及びCD20を標的とする強化された合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)、合成T細胞受容体抗原受容体を含むT細胞、並びにそれらの使用に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)T細胞受容体(TCR) α鎖とTCR β鎖とを含むαβ TCRであって、少なくとも1つの機能的ドメインが、前記αβ TCRの前記TCR α鎖及び/又は前記TCR β鎖のC末端に連結しており、
前記TCR α鎖が第1の定常領域と第1の抗原結合領域とを含み、且つ前記TCR β鎖が第2の定常領域と第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域が第1の抗原と特異的に結合し、且つ前記第2の抗原結合領域が第2の抗原と特異的に結合するか、又は前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、前記第1の抗原及び前記第2の抗原に特異的に結合する、αβ TCR、
或いは、
ii)TCR γ鎖とTCRδ鎖とを含むγδ TCRであって、少なくとも1つの機能的ドメインが、前記γδ TCRの前記TCR γ鎖及び/又は前記TCR δ鎖のC末端と連結しており、
前記TCR γ鎖が第1の定常領域と第1の抗原結合領域とを含み、且つ前記TCR δ鎖が第2の定常領域と第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域が第1の抗原と特異的に結合し、且つ前記第2の抗原結合領域が第2の抗原と特異的に結合するか、又は前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、前記第1の抗原及び前記第2の抗原に特異的に結合し、
好ましくは、前記第1の抗原がCD19であり且つ前記第2の抗原がCD20であるか、又は前記第1の抗原がCD20であり且つ前記第2の抗原がCD19である、γδ TCR
である、改変されたT細胞受容体。
【請求項2】
前記抗原結合領域が抗体に由来する、請求項1に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項3】
i)の前記αβ TCRの前記TCR α鎖及び/又はTCR β鎖の天然エンドドメインが欠損しているか、或いはii)の前記γδ TCRの前記TCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖の天然エンドドメインが欠損している、請求項1又は2に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項4】
i)の前記αβ TCRにおいて、前記機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損している前記TCR α鎖及び/又は前記TCR β鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結しているか、或いはii)の前記γδ TCRにおいて、前記機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損している前記TCR γ鎖及び/又は前記TCR δ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している、請求項3に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項5】
前記リンカーが(G
4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは3である、請求項4に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項6】
少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子のエンドドメイン等が、i)の前記αβ TCRのTCRα鎖及びTCRβ鎖の一方のみのC末端に連結しているか、又は
少なくとも1つの機能的ドメインが、ii)の前記γδ TCRのTCR γ鎖及びTCR δ鎖の一方のみのC末端に連結している、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項7】
少なくとも1つの機能的ドメインが、i)の前記αβ TCRのTCR α鎖のC末端に連結している、請求項6に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項8】
前記TCR α鎖の天然エンドドメインが欠損している、請求項7に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項9】
前記機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損している前記TCR α鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している、請求項8に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項10】
前記リンカーが例えば(G
4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは3である、請求項9に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項11】
少なくとも1つの機能的ドメインが、i)の前記αβ TCRのTCR β鎖のC末端に連結している、請求項6に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項12】
前記TCR β鎖の天然エンドドメインが欠損している、請求項11に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項13】
前記機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損している前記TCR β鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している、請求項12に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項14】
前記リンカーが例えば(G
4S)nであり、式中、nは、1~10の整数を表し、好ましくは、nは3である、請求項13に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項15】
少なくとも1つの機能的ドメインが、ii)の前記γ δ TCRのTCR γ鎖のC末端に連結している、請求項6に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項16】
前記TCR γ鎖の天然エンドドメインが欠損している、請求項15に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項17】
前記機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損している前記TCR γ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している、請求項16に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項18】
前記リンカーが、例えば(G
4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは3である、請求項17に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項19】
少なくとも1つの機能的ドメインが、ii)の前記γδ TCRのTCR δ鎖のC末端に連結している、請求項6に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項20】
前記TCR δ鎖の天然エンドドメインが欠損している、請求項19に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項21】
前記機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損している前記TCR δ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している、請求項20に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項22】
前記リンカーが、例えば(G
4S)nであり、式中、n、1~10の整数を表し、好ましくは、nは3である、請求項21に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項23】
少なくとも1つの機能的ドメインが、i)の前記αβ TCRのTCR α鎖及びTCR β鎖の各C末端に連結している、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項24】
前記TCR α鎖及び前記TCR β鎖の両方の天然エンドドメインが欠損している、請求項23に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項25】
前記機能的ドメインが、天然エンドドメインがそれぞれ欠損している前記TCR α鎖及び前記TCRβ鎖のC末端に直接又はリンカーを介してそれぞれ連結している、請求項24に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項26】
前記リンカーが、例えば(G
4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは3である、請求項25に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項27】
少なくとも1つの機能的ドメインが、ii)の前記γδ TCRのTCR γ鎖及びTCR δ鎖の各C末端に連結している、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項28】
前記TCR γ鎖及び前記TCR δ鎖の両方の天然エンドドメインが欠損している、請求項27に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項29】
前記機能的ドメインが、天然エンドドメインがそれぞれ欠損している前記TCR γ鎖及び前記TCR δ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している、請求項28に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項30】
前記リンカーが、例えば(G
4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは3である、請求項29に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項31】
i)の前記αβ TCRの前記TCR α鎖及びTCR β鎖が、同一の若しくは異なる機能的ドメインと連結しているか、又はii)の前記γδ TCRの前記TCR γ鎖及びTCR δ鎖が、同一の若しくは異なる機能的ドメインと連結している、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項32】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれを上回る機能的ドメインが、i)の前記αβ TCRの前記TCR α鎖及び/又はTCR β鎖のC末端に連結しているか、或いは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれを上回る機能的ドメインが、ii)の前記γδ TCRのTCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖のC末端に連結している、請求項1~31のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項33】
前記少なくとも1つの機能的ドメインが、共刺激分子、例えばCD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB、CD27、及びCD137等のエンドドメイン、又は共阻害分子、例えばTIM3、PD1、CTLA4、及びLAG3等のエンドドメイン、又はサイトカイン受容体、例えばインターロイキン受容体(例えばIL-2受容体等)、インターフェロン受容体、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体、コロニー刺激因子受容体、ケモカイン受容体、増殖因子受容体等、若しくはその他の膜タンパク質のエンドドメイン、又は細胞内タンパク質、例えばNIK等のドメインから選択される、請求項1~32のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項34】
前記共刺激分子のエンドドメインが、OX40又はICOS、好ましくはOX40である、請求項1~33のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項35】
前記第1の定常領域が、天然TCR α鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR α鎖定常領域若しくは天然マウスTCR α鎖定常領域であるか、又は前記第1の定常領域が、天然TCR γ鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR γ鎖定常領域若しくは天然マウスTCR γ鎖定常領域である、請求項1~34のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項36】
前記第1の定常領域が、改変されたTCR α鎖定常領域又は改変されたTCR γ鎖定常領域である、請求項1~34のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項37】
前記改変されたTCR α鎖定常領域が、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、48位のアミノ酸、例えばトレオニン(T)等がシステイン(C)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する、請求項36に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項38】
前記改変されたTCR α鎖定常領域が、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、112位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸、例えばメチオニン(M)等がイソロイシンIに変異しており、及び115位のアミノ酸、例えばグリシン(G)等がバリン(V)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する、請求項36に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項39】
前記改変されたTCR α鎖定常領域が、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、アミノ酸、例えば6位のE等がDに置換しており、13位のKがRに置換しており、及び15~18位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する、請求項36に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項40】
前記改変されたTCR α鎖定常領域が、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、48位のアミノ酸、例えばトレオニン(T)等がシステイン(C)に変異しており、112位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸、例えばメチオニン(M)等がイソロイシン(I)に変異しており、及び115位のアミノ酸、例えばグリシン(G)等がバリン(V)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する、請求項36に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項41】
前記改変されたTCR α鎖定常領域が、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、アミノ酸、例えば6位のE等がDに置換しており、13位のKがRに置換しており、15~18位のアミノ酸が欠損しており、48位のアミノ酸、例えばトレオニン(T)等がシステイン(C)に変異しており、112位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸、例えばメチオニン(M)等がイソロイシン(I)に変異しており、及び115位のアミノ酸、例えばグリシン(G)等がバリン(V)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する、請求項36に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項42】
前記第1の定常領域が、配列番号1、3、5、7、8、26、41、42、及び48のうちの1つで表されたヌクレオチド配列を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項43】
前記第2の定常領域が、天然TCR β鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR β鎖定常領域若しくは天然マウスTCR β鎖定常領域であるか、又は前記第2の定常領域が、天然TCR δ鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR δ鎖定常領域若しくは天然マウスTCR δ鎖定常領域である、請求項1~42のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項44】
前記第2の定常領域が、改変されたTCR β鎖定常領域又は改変されたTCR δ鎖定常領域である、請求項1~42のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項45】
前記改変されたTCR β鎖定常領域が、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、56位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がシステイン(C)に変異しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する、請求項44に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項46】
前記改変されたTCR β鎖定常領域が、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、3位のアミノ酸、例えばR等がKに置換しており、6位のアミノ酸、例えばT等がFに置換しており、9位のKがEに置換しており、11位のSがAに置換しており、12位のLがVに置換しており、並びに17位及び21~25位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する、請求項45に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項47】
前記改変されたTCR β鎖定常領域が、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、56位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がシステイン(C)に変異しており、3位のアミノ酸、例えばR等がKに置換しており、6位のアミノ酸、例えばT等がFに置換しており、9位のKがEに置換しており、11位のSがAに置換しており、12位のLがVに置換しており、並びに17位及び21~25位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する、請求項44に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項48】
配列番号2、4、6、9、27、43、及び49のうちの1つで表されたヌクレオチド配列を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項49】
前記抗原結合領域が、抗体に由来する、請求項1~48のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項50】
前記抗原結合領域が単鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含み、
例えば、前記単鎖抗体が、nが1~10の整数を表し、好ましくは、nは1又は3である(G
4S)n等のリンカーによりリンクした重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項51】
CD19に特異的に結合する前記抗原結合領域が、配列番号44で表された重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号45で表された軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項52】
CD19に特異的に結合する前記抗原結合領域が、配列番号46で表された重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号47で表された軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項53】
CD19に特異的に結合する前記抗原結合領域が、配列番号39で表されたscFvアミノ酸配列を含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項54】
CD20に特異的に結合する前記抗原結合領域が、配列番号54で表された重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号55で表された軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項55】
CD20に特異的に結合する前記抗原結合領域が、配列番号56で表された重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号57で表された軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項56】
CD20に特異的に結合する前記抗原結合領域が、配列番号38で表されたscFvアミノ酸配列を含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項57】
前記TCR α鎖が、配列番号59で表されたアミノ酸配列を含み、前記TCR β鎖が、配列番号60で表されたアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項58】
i)前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、第1の抗原及び第2の抗原の両方に特異的に結合するように、前記第1の抗原結合領域が、前記第1の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域と前記第2の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域とを含む一方、前記第2の抗原結合領域が、前記第1の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域と前記第2の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域とを含むか、又は
ii)前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、第1の抗原及び第2の抗原の両方に特異的に結合するように、前記第1の抗原結合領域が、前記第1の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域と前記第2の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域とを含む一方、前記第2の抗原結合領域が、前記第1の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域と前記第2の抗原と特異的とに結合する抗体重鎖可変領域を含むか、又は
iii)前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、第1の抗原及び第2の抗原の両方に特異的に結合するように、前記第1の抗原結合領域が、前記第1の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域と前記第2の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域とを含む一方、前記第2の抗原結合領域が、前記第1の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域と前記第2の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域とを含み、
好ましくは、前記第1の抗原がCD19であり且つ前記第2の抗原がCD20であるか、又は前記第1の抗原がCD20であり且つ前記第2の抗原がCD19である、
請求項1~49のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体。
【請求項59】
請求項1~58のいずれか一項に記載の改変されたT細胞受容体を含む、単離された治療用免疫細胞。
【請求項60】
T細胞又はNK細胞である、請求項59に記載の治療用免疫細胞。
【請求項61】
請求項59又は60に記載の治療用免疫細胞及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項62】
対象における疾患、例えばがん等を処置するための薬物を調製する際の、請求項59若しくは60に記載の治療用免疫細胞、又は請求項61に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野、特にCD19及びCD20を標的とする強化された合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)、合成T細胞受容体抗原受容体を含むT細胞、並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞療法、特にT細胞関連療法が今年になって急速に発展したが、T細胞関連療法の中でも、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法及びTCR-T療法が多くの注目を浴びた。
【0003】
CAR-T療法は、T細胞内でのCAR分子の発現に基づく。CAR分子は、3つの部分:エクトドメイン(抗体に由来する抗原認識ドメインであり、また標的抗原の認識に関与する);膜貫通ドメイン;及びエンドドメイン(T細胞受容体に由来するシグナル分子及び共刺激シグナル分子であり、また刺激を受け取った後のT細胞活性化シグナルの伝達に関与する)から構成される。CAR分子が対応するその抗原と結合すると凝集し、T細胞のエフェクター機能が開始し、そして標的腫瘍細胞を殺滅する。
【0004】
TCR-T療法はT細胞受容体(TCR)に基づく。TCRはT細胞の主体であり、TCRの種類に基づき、αβ T細胞及びγ δ T細胞に分けることができる。発生過程において、T前駆体細胞は、TCR γ鎖及びTCR δ鎖においてVDJ再構成を受け、再構成が成功すればγδ T細胞へと発生し、又は再構成が不成功に終わればTCR α鎖及びTCR β鎖においてVDJ組み換えを受け、そしてαβ T細胞へと発生する。αβ T細胞は末梢血液T細胞の90%~95%を占める一方、γ δ T細胞は末梢血液T細胞の5%~10%を占める。2種類のT細胞が、MHC拘束性及びMHC非拘束性の様式でそれぞれ抗原を認識し、病原体及び腫瘍に対する免疫性において重要な役割を演ずる。
【0005】
T細胞受容体(TCR)複合体分子は複数の鎖を含有し、複数の鎖のうちTCR α鎖及びTCR β鎖(又はTCR γ鎖及びTCR δ鎖)が、MHCポリペプチド分子の認識に関与し、そしてその他6つのCD3サブユニットがTCR α/β鎖(又はTCR γ/δ鎖)と結合してシグナル伝達の役割を演ずる。天然のTCR複合体は、10個のITAMシグナル配列を含有し、理論的には、CARよりも強いシグナルを伝達することができる。天然TCRのシグナル伝達機能を利用することにより、T細胞の障害を緩和するための新たな受容体を構築することが可能であり、これは、抗固形腫瘍の役割においてより良好にふるまうことができる。TCRのエクトドメインは、抗体のFabドメインと非常に類似しており、従って抗体特異性を有するだけでなく、T細胞の活性化を媒介する際の天然TCRの優れたシグナル伝達機能も有する合成TCR及び抗原受容体(STAR)を取得するために、TCRの可変領域配列を抗体の可変領域配列と置き換えることが可能である。
【0006】
しかしながら、天然TCRに由来するSTAR-TはT細胞の活性化において共刺激シグナルを欠いており、またその増殖及び活性化能力が多くの場合毀損している。従って、改善されたTCR及び対応するTCR-T療法が、この分野においてなおも必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】定常領域システイン改変、膜貫通ドメイン及びエンドドメイン改変によるSTARの最適化の概略図。
【
図2】共刺激分子受容体エンドドメインをα及び/又はβ鎖に付加することによるSTARの最適化の概略図。
【
図3】α及び/又はβ鎖エンドドメインの欠損後に共刺激分子受容体エンドドメインを直接又はリンカーを介して付加することによるSTARの最適化の概略図。
【
図4】共刺激分子受容体エンドドメインをCD3サブユニットに付加することによるSTARの最適化の概略図。
【
図5】サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインをα及び/又はβ鎖に付加することによるSTARの最適化の概略図。
【
図6】WT-STAR T細胞とmut-STAR T細胞の間での腫瘍標的細胞殺滅能力の比較。
【
図7】異なるエフェクター対標的(E:T)比における、STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する各種共刺激受容体エンドドメインの効果。
【
図8】異なる共培養時間における、STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する各種共刺激受容体エンドドメインの効果。
【
図9】異なるE:T比における、STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、α鎖、β鎖、並びにα鎖及びβ鎖に付加されたOX40エンドドメインの効果。
【
図10】異なる共培養時間における、STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、α鎖、β鎖、並びにα鎖及びβ鎖に付加されたOX40エンドドメインの効果。
【
図11】STAR-T細胞のサイトカイン分泌に対する各種共刺激受容体エンドドメインの効果。
【
図12】STAR-T細胞の増殖に対する各種共刺激受容体エンドドメインの効果。
【
図13】STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、α鎖、β鎖、並びにα鎖及びβ鎖に付加されたOX40エンドドメインの効果。
【
図14】TCRα鎖に連結された異なる共刺激受容体エンドドメインを有するmut-STARの腫瘍殺滅能力。
【
図15】STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、異なるCD3サブユニットに付加された各種共刺激受容体エンドドメインの効果。
【
図16】STAR-T細胞の増殖に対する、異なるCD3サブユニットに付加された各種共刺激受容体エンドドメインの効果。
【
図17】STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠損α鎖にリンクしたOX40エンドドメインの効果。
【
図18】STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠損β鎖にリンクしたOX40エンドドメインの効果。
【
図19】STAR-T細胞のIL-2分泌に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠損α及び/又はβ鎖にリンクしたOX40エンドドメインの効果。
【
図20】STAR-T細胞のIFN-γ分泌に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠損α及び/又はβ鎖にリンクしたOX40エンドドメインの効果。
【
図21】セントラルメモリーT細胞分化に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠損α鎖にリンクしたOX40エンドドメインの効果。
【
図22】T細胞分化に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠損α鎖にリンクしたOX40エンドドメインの効果。
【
図23】STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリシン改変の効果。
【
図24】STAR-T細胞のIFN-γ分泌に対する、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリシン改変の効果。
【
図25】STAR-T細胞のIL-2分泌に対する、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリシン改変の効果。
【
図26】セントラルメモリーT細胞分化に対する、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリシン改変の効果。
【
図27】T細胞分化に対する、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリシン改変の効果。
【
図28】STAR-T細胞の標的殺滅能力に対する、α及び/又はβ鎖にリンクした各種サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインの効果。
【
図29】異なるサイトカイン受容体刺激ドメインが連結した変異STARとα-del-(G4S)3-OX40-STARの間における、殺滅効果の比較。
【
図30】STAR-T細胞のIL-2分泌に対する、α及び/又はβ鎖にリンクした各種サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインの効果。
【
図31】STAR-T細胞のIFN-γ分泌に対する、α及び/又はβ鎖にリンクした各種サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインの効果。
【
図32】セントラルメモリーT細胞分化に対する、α及び/又はβ鎖にリンクした各種サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインの効果。
【
図33】T細胞分化に対する、α及び/又はβ鎖にリンクした各種サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインの効果。
【
図34】in vivoでの、マウス腫瘍モデルにおける、αβOX40-STAR T、mut-STAR T及びCAR-Tの抗腫瘍in vivo効果。
【
図35】αβOX40-STAR T、mut-STAR T及びCAR-Tを投与されたマウスの生残曲線。
【
図36】マウスにおける、αβOX40-STAR T、mut-STAR T及びCAR-Tのin vivoでの増殖。
【
図37】マウス腫瘍モデルにおける、各種STAR構造及びCAR-Tの抗腫瘍in vivo効果。
【
図38】定常領域システイン改変、膜貫通ドメイン及びN末端再配置によるSTARの最適化の概略図。
【
図39】共刺激分子ドメインとSTAR構造の間の連結位置の例。α鎖への連結のみを示す。
【
図40】共刺激分子ドメインを含むSTAR構造の例。
【
図41】STAR及び共刺激因子を含むSTARの殺滅能力。
【
図42】STAR及び共刺激因子を含むSTARの増殖シグナルと関連する、核RELBレベル。
【
図44】共刺激因子がα及びβ鎖に付加された、抗CD19及び抗CD20である各種STARの結果。
【
図45】共刺激因子がα鎖に付加された、抗CD19及び抗CD20STARの結果。
【発明を実施するための形態】
【0008】
別途、表示又は定義されない限り、使用されるすべての用語は、当業者によって理解される、当分野における一般的な意味を有する。例えば、標準マニュアル、例えばSambrookらの「Molecular cloning:a laboratory manual」、Lewinの「Genes VIII」、及びRoittらの「Immunology」(第8版)等、並びに本明細書で引用される一般的な先行技術を参照;それに加えて、別途記載がなければ、すべての方法、ステップ、技術、及び操作は、具体的に詳記されなくても当業者により理解されるはずであり、それ自体公知の方式で実施することができ、またすでに実施されている。例えば、標準マニュアル、上記一般的先行技術、及びその中で引用されたその他の参考資料も参照されたい。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、該用語により結びつけられた項目のすべての組合せを包含し、また本明細書において個別にリスト化されたものと認識されなければならない。例えば、「A及び/又はB」は、「A」、「A及びB」、及び「B」を網羅する。例えば、「A、B、及び/又はC」は、「A」、「B」、「C」、「A及びB」、「A及びC」、「B及びC」、及び「A及びB及びC」を網羅する。
【0010】
用語「~を含むこと(comprising)」は、タンパク質又は核酸の配列を記載するのに本明細書において使用され、該タンパク質又は核酸は前記配列から構成される場合もあれば、また前記タンパク質又は核酸の一方又は両方の端部において追加のアミノ酸又はヌクレオチドを有し得るが、しかし本明細書に記載される活性をなおも有する場合もある。それに加えて、当業者は、ポリペプチドのN末端において開始コドンによりコードされるメチオニンがある特定の実用的状況において保持されるが(例えば、特定の発現系内で発現されるとき)、しかしポリペプチドの機能に実質的に影響を及ぼさないことを理解する。従って、特定のポリペプチドアミノ酸配列を記載する際には、開始コドンによりコードされるメチオニンを特定のポリペプチドアミノ酸配列のN末端に含有しない場合もあるが、しかしあるときまでメチオニンを含む配列もなおも網羅し、同様に特定のポリペプチドアミノ酸配列のコーディングヌクレオチド配列も開始コドンを含有し得るが、但しその逆も成り立つ。
【0011】
本明細書で使用される場合、「配列番号xに紐づけられるアミノ酸番号」(配列番号xは、本明細書においてリスト化されている具体的な配列である)とは、記載される特定のアミノ酸の位置番号が、配列番号x上の当該アミノ酸に対応するアミノ酸の位置番号であることを意味する。異なるアミノ酸配列間のアミノ酸の対応性は、当技術分野において公知の配列アラインメント法により決定可能である。例えば、アミノ酸の対応性は、2つの配列がNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用しながらデフォルトパラメーターを用いてアライメントされ得るEMBL-EBIオンラインアライメントツール(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/)により決定可能である。例えば、ポリペプチドのN末端から開始して、46位のアラニンが、配列番号xの48位のアミノ酸と、配列アライメントにおいてアライメントされる場合、該ポリペプチド内のアミノ酸は、「ポリペプチドの48位のアラニン、但し配列番号xに紐付けられるアミノ酸位置」としても本明細書においてやはり記載され得る。本発明では、α鎖定常領域と関連するアミノ酸位置について、配列番号3が紐付けられる。本発明では、β鎖定常領域と関連するアミノ酸位置について、配列番号4が紐付けられる。
【0012】
1つの態様では、改変されたT細胞受容体(TCR)複合体が本明細書において提供され、その場合、
i)TCRはαβ TCRであり得、αβ TCR複合体は、TCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζを含み、少なくとも1つの機能的ドメインが、TCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に連結しており、
前記TCR α鎖は、第1の定常領域と第1の抗原結合領域とを含み、且つ前記TCR β鎖は、第2の定常領域と第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域は第1の抗原と特異的に結合し、且つ前記第2の抗原結合領域は第2の抗原と特異的に結合するか、又は前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域は相互に組み合わされて、前記第1の抗原及び前記第2の抗原に特異的に結合し、好ましくは、前記第1の抗原はCD19であり且つ前記第2の抗原はCD20であるか又は前記第1の抗原はCD20であり且つ前記第2の抗原はCD19であり、
或いは、
ii)TCRはγ δ TCRであり得、γ δ TCR複合体は、TCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζを含み;少なくとも1つの機能的ドメインが、TCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に連結しており、
前記TCR γ鎖は、第1の定常領域と第1の抗原結合領域とを含み、且つ前記TCR δ鎖は、第2の定常領域と第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域は第1の抗原と特異的に結合し、且つ前記第2の抗原結合領域は第2の抗原と特異的に結合するか、又は前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域は相互に組み合わされて、前記第1の抗原及び前記第2の抗原に特異的に結合し、好ましくは、前記第1の抗原はCD19であり且つ前記第2の抗原はCD20であるか又は前記第1の抗原はCD20であり且つ前記第2の抗原はCD19である。
【0013】
一般的に、TCRにおいて、抗原結合領域は定常領域のN末端に位置し、その両方は直接又はリンカーを介して連結され得る。
【0014】
1つの態様では、改変されたT細胞受容体(TCR)が提供され、その場合、TCRは、
i)TCR α鎖とTCR β鎖とを含むαβ TCRであって、少なくとも1つの機能的ドメインが、前記αβ TCRのTCR α鎖及び/又はTCR β鎖のC末端に連結しており、
前記TCR α鎖が第1の定常領域と第1の抗原結合領域とを含み、且つ前記TCR β鎖が第2の定常領域と第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域が第1の抗原と特異的に結合し、且つ前記第2の抗原結合領域が第2の抗原と特異的に結合するか、又は前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、前記第1の抗原及び前記第2の抗原に特異的に結合し、好ましくは、前記第1の抗原はCD19であり且つ前記第2の抗原はCD20であるか又は前記第1の抗原はCD20であり且つ前記第2の抗原はCD19である、αβ TCR、
或いは、
ii)TCR γ鎖とTCRδ鎖とを含むγδ TCRであって、少なくとも1つの機能的ドメインが、前記γδ TCRの前記TCR γ鎖及び/又は前記TCR δ鎖のC末端と連結しており、
前記TCR γ鎖が第1の定常領域と第1の抗原結合領域とを含み、且つ前記TCR δ鎖が第2の定常領域と第2の抗原結合領域とを含み、
前記第1の抗原結合領域が第1の抗原と特異的に結合し、且つ前記第2の抗原結合領域が第2の抗原と特異的に結合するか、又は前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、相互に組み合わされて、前記第1の抗原及び前記第2の抗原に特異的に結合し、好ましくは、前記第1の抗原がCD19であり且つ前記第2の抗原がCD20であるか又は前記第1の抗原がCD20であり且つ前記第2の抗原がCD19である、γδ TCR
であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、αβ TCR複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つの天然エンドドメインが欠損しているか、又はγδ TCR複合体内のTCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つの天然エンドドメインが欠損している。
【0016】
いくつかの実施形態では、αβ TCR内のTCR α鎖及び/又はTCR β鎖の天然エンドドメインが欠損しているか、或いはγδ TCR内のTCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖の天然エンドドメインが欠損している。
【0017】
いくつかの実施形態では、αβ TCR複合体において、機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損しているTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に直接又はリンカーを介して連結している。
【0018】
いくつかの実施形態では、αβ TCR複合体において、機能的ドメインが、欠損した天然エンドドメインを有するTCR α鎖及びTCR β鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している。
【0019】
いくつかの実施形態では、γδ TCR複合体において、機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損しているTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に直接又はリンカーを介して連結している。
【0020】
いくつかの実施形態では、γδ TCR複合体において、機能的ドメインが、天然エンドドメインが欠損しているTCR γ鎖、TCR δ鎖の少なくとも1つのC末端に直接又はリンカーを介して連結している。
【0021】
いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表す。好ましくは、nは1~6の整数であり、より好ましくは、nは2~5の整数であり、及び最も好ましくは、nは3である。
【0022】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの1つのC末端に連結している。
【0023】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR内のTCR α鎖及び/又はTCR β鎖のC末端に連結している。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR複合体内のTCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの1つのC末端に連結している。
【0025】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR内のTCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖のC末端に連結している。
【0026】
いくつかの実施形態では、TCR複合体内のCD3 δ、CD3 γ、CD3 ε、及びCD3 ζは、それらのC末端にさらに連結した少なくとも1つの機能的ドメインを含まない。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR複合体内のTCR α鎖のC末端に連結している。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR内のTCR α鎖のC末端に連結している。
【0029】
いくつかの実施形態では、TCR α鎖の天然エンドドメインが欠損している。
【0030】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、天然エンドドメインが欠損しているTCR α鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、及び最も好ましくは、nは3である。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR複合体内のTCR β鎖のC末端に連結している。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR内のTCR β鎖のC末端に連結している。
【0033】
いくつかの実施形態では、TCR β鎖の天然エンドドメインは欠損している。
【0034】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、天然エンドドメインが欠損しているTCR β鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、及び最も好ましくは、nは3である。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR複合体内のTCR γ鎖のC末端に連結している。
【0036】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR内のTCRγ鎖のC末端に連結している。
【0037】
いくつかの実施形態では、TCR γ鎖の天然エンドドメインが欠損している。
【0038】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、天然エンドドメインが欠損しているTCR γ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、及び最も好ましくは、nは3である。
【0039】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR複合体内のTCR δ鎖のC末端に連結している。
【0040】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR内のTCR δ鎖のC末端に連結している。
【0041】
いくつかの実施形態では、TCR δ鎖の天然エンドドメインが欠損している。
【0042】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、天然エンドドメインが欠損しているTCR δ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、及び最も好ましくは、nは3である。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの2つのC末端に連結している。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR複合体内のTCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの2つのC末端に連結している。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR複合体内のTCR α鎖及びTCR β鎖の各C末端に連結している。
【0046】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβ TCR内のTCR α鎖及びTCR β鎖の各C末端に連結している。
【0047】
いくつかの実施形態では、TCRα鎖及びTCR β鎖のそれぞれの天然エンドドメインが欠損している。
【0048】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、天然エンドドメインが欠損しているTCR α鎖及びTCR β鎖のそれぞれのC末端に直接又はリンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、及び最も好ましくは、nは3である。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR複合体内のTCR γ鎖及びTCR δ鎖の各C末端に連結している。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδ TCR内のTCR γ鎖及びTCR δ鎖の各C末端に連結している。
【0051】
いくつかの実施形態では、TCR γ鎖及びTCR δ鎖のそれぞれの天然エンドドメインが欠損している。
【0052】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、天然エンドドメインが欠損しているTCR γ鎖及びTCR δ鎖のそれぞれのC末端に直接又はリンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、及び最も好ましくは、nは3である。
【0053】
いくつかの実施形態では、αβ TCR複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの2つ以上が、同一の又は異なる機能的ドメインと連結している。
【0054】
いくつかの実施形態では、αβ TCR内のTCR α鎖及び/又はTCR β鎖は、同一の又は異なる機能的ドメインと連結している。
【0055】
いくつかの実施形態では、γδ TCR複合体内のTCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの2つ以上が、同一の又は異なる機能的ドメインと連結している。
【0056】
いくつかの実施形態では、γδ TCR内のTCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖は、同一の又は異なる機能的ドメインと連結している。
【0057】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれを上回る機能的ドメインが、αβ TCR複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に連結している。
【0058】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれを上回る機能的ドメインが、αβ TCR内のTCR α鎖及び/又はTCR β鎖のC末端に連結している。
【0059】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれを上回る機能的ドメインが、γδ TCR複合体内のTCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に連結している。
【0060】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれを上回る機能的ドメインが、γδ TCR内のTCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖のC末端に連結している。
【0061】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等が、複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの1、2、3、4、5、又は6個のC末端に連結している。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等が、複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの1つのC末端に連結している。
【0063】
例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等が、複合体内のTCR α鎖のC末端に連結している。いくつかの好ましい実施形態では、共刺激分子エンドドメインは、OX40又はICOSである。いくつかの実施形態では、TCR β鎖、CD3 δ、CD3 γ、CD3 ε、及びCD3 ζは、それらのC末端にさらに連結した少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等を含有しない可能性がある。
【0064】
或いは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等が、複合体内のCD3δのC末端に連結している。いくつかの実施形態では、TCR α、TCR β、CD3 γ、CD3 ε、及びCD3 ζは、それらのC末端に連結した少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等を含有しない可能性がある。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等が、複合体内のTCR α鎖、TCR β鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの2つのC末端に連結している。
【0066】
例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等が、複合体内のTCR α鎖及びTCR β鎖のC末端に連結している。いくつかの好ましい実施形態では、共刺激分子エンドドメインは、OX40又はICOSである。いくつかの実施形態では、CD3 δ、CD3 γ、CD3 ε、及びCD3 ζは、それらのC末端にさらに連結した少なくとも1つの機能的ドメイン、例えば共刺激分子エンドドメイン等を含有しない。
【0067】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは外因性の機能的ドメインである。いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、外因性エンドドメイン、例えば細胞内伝達機能に関与するドメイン等である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「外因性」とは、外来種に由来するタンパク質又は核酸配列を意味し、或いは同一種に由来する場合には、計画的な人的介入により、タンパク質又は核酸配列の天然の形態から組成及び/又は位置において有意な変化を被ったタンパク質又は核酸配列を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「機能的ドメイン」は、共刺激分子、例えばCD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB、CD27、及びCD137等のエンドドメイン、又は共阻害分子、例えばTIM3、PD1、CTLA4、及びLAG3等のエンドドメイン、又はサイトカイン受容体、例えばインターロイキン受容体(例えば、IL-2受容体、IL-7α受容体、又はIL-21受容体等)、インターフェロン受容体、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体、コロニー刺激因子受容体、ケモカイン受容体、増殖因子受容体等、若しくはその他の膜タンパク質のエンドドメイン、又は細胞内タンパク質、例えばNIK等のドメインから選択される。機能的ドメインは、サイトカイン受容体エンドドメインとヒトSTAT5活性化部分(配列番号35で表されるアミノ酸配列)との、直接又はリンカーを介した(例えば(G4S)n、式中、nは1~10の整数を表す)融合体でもあり得る。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態では、機能的ドメインは、共刺激分子エンドドメイン、好ましくはOX40エンドドメイン又はICOSエンドドメイン、及びより好ましくはOX40エンドドメインである。
【0071】
例示的CD40エンドドメインは、配列番号10で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的OX40エンドドメインは、配列番号11で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的ICOSエンドドメインは、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的CD28エンドドメインは、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的4-1BBエンドドメインは、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的CD27エンドドメインは、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的IL-2β受容体エンドドメインは、配列番号32で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的IL-17α受容体エンドドメインは、配列番号33で表されるアミノ酸配列を含有する。例示的IL-21受容体エンドドメインは、配列番号34で表されるアミノ酸配列を含有する。IL-2β受容体エンドドメインとヒトSTAT5活性化部分との例示的な融合体アミノ酸配列は、配列番号36で表される。IL-17α受容体エンドドメインとヒトSTAT5活性化部分との例示的な融合体アミノ酸配列は、配列番号37で表される。
【0072】
いくつかの実施形態では、第1の定常領域は、天然TCR α鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR α鎖定常領域(例示的ヒトTCR α鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号1で表される)若しくは天然マウスTCR α鎖定常領域(例示的マウスTCR α鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号3で表される)であるか、又は第1の定常領域は、天然TCR γ鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR γ鎖定常領域(例示的ヒトTCR γ鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号50で表される)若しくは天然マウスTCR γ鎖定常領域(例示的マウスTCR γ鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号51で表される)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1の定常領域は、改変されたTCR α鎖定常領域又は改変されたTCR γ鎖定常領域である。
【0074】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR α鎖定常領域は、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、48位のアミノ酸、例えばトレオニン(T)等がシステイン(C)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する。
【0075】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR α鎖定常領域は、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、112位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸、例えばメチオニン(M)等がイソロイシン(I)に変異しており、及び115位のアミノ酸、例えばグリシン(G)等が、バリン(V)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する。
【0076】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR α鎖定常領域は、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、6位のアミノ酸(例えばE)がDに置換し、13位のKがRに置換し、及び15~18位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する。
【0077】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR α鎖定常領域は、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、48位のアミノ酸、例えばトレオニン(T)等がシステイン(C)に変異しており、112位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸、例えばメチオニン(M)等がイソロイシン(I)に変異しており、及び115位のアミノ酸、例えばグリシン(G)等がバリン(V)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する。
【0078】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR α鎖定常領域は、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、6位のアミノ酸(例えばE)がDに置換しており、13位のKがRに置換しており、15~18位のアミノ酸が欠損しており、48位のアミノ酸、例えばトレオニン(T)等がシステイン(C)に変異しており、112位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸、例えばメチオニン(M)等がイソロイシン(I)に変異しており、及び115位のアミノ酸、例えばグリシン(G)等がバリン(V)に変異しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する。
【0079】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR α鎖定常領域は、野生型マウスTCR α鎖定常領域と比較して、定常領域エンドドメインが欠損し、例えば136~137位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR α鎖定常領域に由来する。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1の定常領域は、配列番号1、3、5、7、8、26、41、42、及び56のうちの1つで表されるアミノ酸配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、第2の定常領域は、天然TCR β鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR β鎖定常領域(例示的ヒトTCR β鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号2で表される)若しくは天然マウスTCR β鎖定常領域(例示的マウスTCR β鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号4で表される)、又は第2の定常領域は、天然TCR δ鎖定常領域、例えば天然ヒトTCR δ鎖定常領域(例示的ヒトTCR δ鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号52で表される)若しくは天然マウスTCR δ鎖定常領域(例示的マウスTCR δ鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号53で表される)である。
【0082】
いくつかの実施形態では、第2の定常領域は、改変されたTCR β鎖定常領域又は改変されたTCR δ鎖定常領域である。
【0083】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR β鎖定常領域は、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、56位のアミノ酸、例えばトレオニン(S)等がシステイン(C)に変異しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する。
【0084】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR β鎖定常領域は、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、3位のアミノ酸(例えばR)がKに置換しており、6位のアミノ酸(例えばT)がFに置換しており、9位のKがEに置換しており、11位のSがAに置換しており、12位のLがVに置換しており、並びに17位及び21~25位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する。
【0085】
いくつかの実施形態では、改変されたTCRβ鎖定常領域は、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、56位のアミノ酸、例えばセリン(S)等がシステイン(C)に変異しており、3位のアミノ酸(例えばR)がKに置換しており、6位のアミノ酸(例えばT)がFに置換しており、9位のKがEに置換しており、11位のSがAに置換しており、12位のLがVに置換しており、並びに17位及び21~25位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する。
【0086】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR β鎖定常領域は、野生型マウスTCR β鎖定常領域と比較して、定常領域エンドドメインが欠損し、例えば167~172位のアミノ酸が欠損しているマウスTCR β鎖定常領域に由来する。
【0087】
いくつかの実施形態では、改変されたTCR β鎖定常領域は、配列番号2、4、6、9、27、43、及び49のうちの1つで表されるアミノ酸配列を含む。
【0088】
「抗原結合領域」とは、単独で又は別の抗原結合領域と組み合わせて標的抗原に特異的に結合することができるドメインを指す。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、標的抗原と特異的に結合する抗体に由来する。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域又は第2の抗原結合領域は、それぞれ同一の又は異なる標的抗原に対して独立的に、特異的に結合する能力を有し、例えば第1の抗原結合領域は第1の抗原と特異的に結合し、且つ第2の抗原結合領域は第2の抗原と特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、単鎖抗体(例えば、scFv)又は単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ抗体)であり、好ましくは、抗原結合領域は単鎖抗体、例えばscFv等である。ある特定の実施形態では、単鎖抗体は、リンカーを介して連結した重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは1又は3である。
【0091】
いくつかの実施形態では、CD19に特異的に結合する抗原結合領域は、配列番号44で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号45で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列番号44で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号45で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは1又は3である。
【0092】
いくつかの実施形態では、CD19に特異的に結合する抗原結合領域は、配列番号46で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号47で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号46で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号47で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは1又は3である。
【0093】
いくつかの実施形態では、CD19に特異的に結合する抗原結合領域は、配列番号39で表されるscFvアミノ酸配列を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、CD20に特異的に結合する抗原結合領域は、配列番号54で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号55で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号54で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号55で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは1又は3である。
【0095】
いくつかの実施形態では、CD20に特異的に結合する抗原結合領域は、配列番号56で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号57で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列番号56で表される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号57で表される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくは、nは1又は3である。
【0096】
いくつかの実施形態では、CD20に特異的に結合する抗原結合領域は、配列番号38で表されるscFvアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、相互に組み合わされて標的抗原に特異的に結合する。例えば、第1の抗原結合領域は抗体の重鎖を含む一方、第2の抗原結合領域は抗体の軽鎖を含み、その逆も成り立つ。
【0098】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域と第2の抗原結合領域とが相互に組み合わされて、第1の抗原及び第2の抗原の両方に特異的に結合するように、第1の抗原結合領域が、第1の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域と第2の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域とを含む一方、第2の抗原結合領域が、第1の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域と第2の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域とを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域と第2の抗原結合領域とが相互に組み合わされて、第1の抗原及び第2の抗原の両方に特異的に結合するように、第1の抗原結合領域が、第1の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域と第2の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域とを含む一方、第2の抗原結合領域が、第1の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域と第2の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域とを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域が相互に組み合わされて、第1の抗原及び第2の抗原の両方に特異的に結合するように、第1の抗原結合領域が、第1の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域と第2の抗原と特異的に結合する抗体軽鎖可変領域を含む一方、第2の抗原結合領域が、第1の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域と第2の抗原と特異的に結合する抗体重鎖可変領域とを含む。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態では、第1の抗原はCD19であり且つ第2の抗原はCD20である。或いは、いくつかの好ましい実施形態では、第1の抗原はCD20であり且つ第2の抗原はCD19である。
【0102】
ある特定の実施形態では、CD19と特異的に結合する抗体重鎖可変領域は、配列番号44で表されるアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号45で表されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、CD19と特異的に結合する抗体重鎖可変領域は、配列番号46で表されるアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号47で表されるアミノ酸配列を含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、CD20と特異的に結合する抗体重鎖可変領域は、配列番号54で表されるアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号55で表されるアミノ酸配列を含む。
【0105】
ある特定の実施形態では、CD20と特異的に結合する抗体重鎖可変領域は、配列番号56で表されるアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、CD3γ、CD3δ、CD3ε、及び/又はCD3ζは、ヒトCD3γ、CD3δ、CD3ε、及び/又はCD3ζである。いくつかの実施形態では、ヒトCD3γは配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD3γは配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD3γは配列番号30で表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトCD3γは配列番号31で表されるアミノ酸配列を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の改変されたT細胞受容体(TCR)又はTCR複合体は、配列番号59で表されるようなTCR α鎖、及び配列番号60で表されるようなTCR β鎖を含む。
【0108】
別の態様では、本発明の改変されたT細胞受容体(TCR)又はTCR複合体を含む、単離された治療用免疫細胞が本明細書に提示される。
【0109】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。その他の実施形態では、免疫細胞はNK細胞である。
【0110】
別の態様では、本発明は、上記で定義したような、TCR α鎖、TCR β鎖、TCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、少なくとも1つの外因性の機能的エンドドメインが、TCR α鎖、TCR β鎖、TCR γ鎖、TCR δ鎖、CD3 ε、CD3 γ、CD3 δ、及びCD3 ζのうちの少なくとも1つのC末端に連結している、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0111】
別の態様では、本発明は、上記で定義したようなTCRをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0112】
いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、少なくとも1つの共刺激分子エンドドメインとそのC末端において連結しているTCR α鎖及び/又はTCR β鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、i)α鎖をコードするヌクレオチド配列、ii)β鎖をコードするヌクレオチド配列、及びiii)同一のリーディングフレーム内の、i)とii)の間に位置する自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。α鎖をコードするヌクレオチド配列は、β鎖をコードするヌクレオチド配列の5’末端又は3’末端に位置し得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、少なくとも1つの共刺激分子エンドドメインとそのC末端において連結しているTCR γ鎖及び/又はTCR δ鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、i)γ鎖をコードするヌクレオチド配列、ii)δ鎖をコードするヌクレオチド配列、及びiii)同一のリーディングフレーム内の、i)とii)の間に位置する自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。γ鎖をコードするヌクレオチド配列は、δ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’末端又は3’末端に位置し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「自己切断ペプチド」とは、細胞内で自己切断を実行することができるペプチドを意味する。例えば、自己切断ペプチドは、細胞内でプロテアーゼにより認識され、特異的に切断されるように、プロテアーゼ認識部位を含有し得る。
【0117】
或いは、自己切断ペプチドは2Aポリペプチドであり得る。2Aポリペプチドはウイルスからの短鎖ペプチドの種類であり、そして2Aポリペプチドの自己切断は翻訳期間中に生ずる。2つの異なる標的タンパク質が2Aポリペプチドによってリンクしており、且つ同一リーディングフレーム内で発現しているとき、2つの標的タンパク質はほぼ1:1の比で生成される。一般的な2Aポリペプチドは、ブタテコウイルス(techovirus)-1からのP2A、トセアアシグナ(Thosea asigna)ウイルスからのT2A、ウマ鼻炎AウイルスからのE2A、及び口蹄疫ウイルスからのF2Aであり得る。とりわけ、P2Aが最高切断効率を有し、従って好ましい。これら2Aポリペプチドの様々な機能的バリアントも当技術分野において公知であり、本発明においても使用可能である。
【0118】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号58で表されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0119】
別の態様では、本発明は、制御配列と作動可能にリンクした、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0120】
本発明の「発現ベクター」は、直鎖状核酸断片、環状プラスミド、ウイルスベクター、又は翻訳可能なRNA(例えば、mRNA)であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター等である。
【0121】
用語「制御配列」及び「制御エレメント」は交換可能に使用され、コーディング配列の上流(5’ノンコーディング配列)、中間、又は下流(3’ノンコーディング配列)に位置し、そして転写、RNA処理、又は安定性、又は関連するコーディング配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。発現制御エレメントとは、転写、RNA処理、又は安定性、又は目的のヌクレオチド配列の翻訳をコントロールすることができるヌクレオチド配列を指す。制御配列として、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、エンハンサー、及びポリアデニル化認識配列を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能にリンクした」とは、ヌクレオチド配列の転写がコントロールされ、そして転写制御エレメントにより制御されるように、制御エレメント(例えば、プロモーター配列、転写終結配列等、但しこれらに限定されない)が、核酸配列(例えば、コーディング配列又はオープンリーディングフレーム)にリンクしていることを意味する。制御エレメント領域を核酸分子に作動可能にリンクさせる技術は当技術分野において公知である。
【0123】
別の態様では、本発明は、本発明の治療用免疫細胞を調製するための方法であって、本発明のポリヌクレオチド又は発現ベクターを免疫細胞中に導入するステップを含む方法を提供する。
【0124】
本発明の免疫細胞、例えばT細胞又はNK細胞等は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多くの非限定的な供給源から、様々な非限定的な方法により取得され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、健常ドナー又はがんと診断された患者に由来し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる表現型プロファイルを示す複数種の細胞からなる混合集団の一部分であり得る。例えば、T細胞は、末梢血単核球(PBMC)を単離し、次にそれを活性化させ、そして特異抗体を用いて増幅することにより取得可能である。
【0125】
本発明の態様のいくつかの実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞等は対象の自己細胞に由来する。本明細書で使用される場合、「自己」とは、対象を処置するのに使用される細胞、細胞株、又は細胞集団が対象に由来することを意味する。いくつかの実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞等は、同種異系細胞、例えば対象のヒト白血球抗原(HLA)と適合性があるドナー等に由来する。ドナーからの細胞は、標準プロトコールを使用して非アロ反応性細胞に変換され得、そして1人又は複数の患者に投与可能である細胞を生成するために、必要に応じて複製され得る。
【0126】
別の態様では、本発明は、本発明の治療用免疫細胞及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0127】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる担体」には、あらゆるすべての生理学的に適合する溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、並びに吸収抑制剤等が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、又は表皮への投与に適する(例えば、注射又は輸液による)。
【0128】
別の態様では、本発明は、対象における疾患を処置するための薬を調製する際の、本発明の治療用免疫細胞の使用を提供する。
【0129】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、本発明の細胞、方法、又は医薬組成物により処置可能である疾患(例えば、がん)に罹患しているか、又は罹患しやすい生物を指す。非限定的な例として、ヒト、畜牛、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及びその他の非哺乳動物が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0130】
別の態様では、本発明は、対象における疾患、例えばがん等を処置するための方法を提供し、該方法は、対象に有効量の本発明の治療用免疫細胞又は医薬組成物を投与するステップを含む。
【0131】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「治療上有効な用量」又は「有効量」とは、対象に投与した後に、少なくとも治療効果を生成するのに十分である物質、化合物、材料、又は細胞の量を指す。従って、そのような量は、疾患又は障害の症状を防止、是正、改善、ブロックし、又は部分的にブロックするのに必要な量である。例えば、「有効量」の本発明の細胞又は医薬組成物は、好ましくは、障害の症状の重症度の減少、障害の無症候期間の頻度及び期間の増加、又は障害に罹患した結果としての傷害若しくは能力障害の防止を引き起こす可能性がある。例えば、腫瘍を処置する場合、「有効量」の本発明の細胞又は医薬組成物は、好ましくは、未処置対象と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、及びより好ましくは少なくとも約80%、腫瘍細胞増殖又は腫瘍増殖を阻害する可能性がある。腫瘍増殖を阻害する能力が、ヒト腫瘍における有効性を予測し得る動物モデル系において評価可能である。或いは、当業者にとって公知のテストによりin vitroで決定され得る、腫瘍細胞の増殖に対する阻害能力を検査することにより、評価を実施することが可能である。
【0132】
実際には、特定の患者に対して所望の治療応答を効果的に実現可能である有効成分の量、患者に対して毒性を有さない組成物及び投与経路が得られるように、本発明の医薬組成物内の細胞の用量レベルは変化させ得る。選択される用量レベルは、適用される本発明の具体的な組成物の活性、投与経路、投与時間、適用される具体的化合物の排泄速度、処置期間、適用される具体的な組成物と組み合わせて適用されるその他の薬物、化合物、及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身的健康、及び病歴、並びに当医学分野において公知の類似した因子を含む、様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0133】
本発明に基づく治療用免疫細胞又は医薬組成物又は薬物の投与は、任意の好都合な方式で、例えば注射、輸液、埋込み、又は移植等を通じて実行され得る。本明細書に記載される細胞又は組成物の投与は、静脈内、リンパ内、皮内、腫瘍内、髄内、筋肉内、又は腹腔内投与であり得る。1つの実施形態では、本発明の細胞又は組成物は、好ましくは静脈内注射により投与される。
【0134】
本発明の様々な態様の複数の実施形態では、疾患は、CD19及び/又はCD20に関連する疾患、例えばCD19及び/又はCD20の異常発現に関連する疾患等、例えばCD19及び/又はCD20に関連するがん等である。がんは、B細胞悪性腫瘍、例えば慢性又は急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病を含む)、リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫等、及びそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、がんは、CD19及び/又はCD20陽性のがんである。
【実施例】
【0135】
実施例1:STARの改善
1.野生型T細胞受容体及びその定常領域が変異したSTAR分子の設計
1.1 STARのプロトタイプ設計
B細胞によって産生される分泌抗体(抗体、Ab)又はB細胞受容体(BCR)は、遺伝子構造、タンパク質構造及び空間的コンフォメーションの点で、T細胞受容体(TCR)と大きな類似性を有する。抗体とTCRのいずれもが、可変領域及び定常領域からなり、可変領域は抗原認識及び結合の役割を果たし、一方、定常領域ドメインは構造的相互作用及びシグナル伝達の役割を果たす。TCRα及びβ鎖(又はTCRγ及びδ鎖)の可変領域を抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)で置き換えることにより、合成T細胞受容体及び抗体受容体(STAR/WT-STAR)と呼ばれる人工的な合成キメラ分子を構築することができ、その構造を
図1(左)に示す。
【0136】
STAR分子は2本の鎖を有しており、第1の鎖は、抗原認識配列(例えば、抗体重鎖可変領域)をT細胞受容体α鎖(TCRα)の定常領域(Cα)と融合することによって得られ、第2の鎖は、抗原認識配列(例えば、抗体軽鎖可変領域)をT細胞受容体β鎖(TCRβ)の定常領域(Cβ)と融合することによって得られる。構築物中の抗原認識ドメイン(例えば、VH、VL又はscFv)及び定常ドメイン(TCRα、β、γ及びδの定常ドメイン)を配置し組み合わせることで、異なる立体配置を有しつつも類似の機能を有する、様々な構築物を形成することができる。
【0137】
STAR分子の第1及び第2の鎖は、T細胞中での発現後、小胞体中の内因性CD3εδ、CD3γε及びCD3ζ鎖と組み合わされて、複合体の形態で細胞膜の表面上に存在する8サブユニット複合体を形成する。免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)は、YxxL/Vの保存された配列を有する、TCR分子中のシグナル伝達モチーフである。CD3ε、δ、γ及びε鎖のエンドドメインは1つのITAM配列を含み、CD3ζ鎖のエンドドメインは3つのITAM配列を含み、したがって、完全なSTAR複合体は合計10個のITAM配列を有する。STAR受容体の抗原認識配列がその特異的抗原に結合すると、細胞内ITAM配列は逐次的にリン酸化され、次いで今度は下流のシグナル伝達経路を活性化し、転写因子、例えば、NF-κβ、NFAT、及びAP-1等を活性化して、T細胞の活性化を開始し、エフェクター機能を生み出す。本発明者による過去の研究において、STARは従来のキメラ抗原受容体であるCARより良好にT細胞を活性化することができ、抗原刺激の非存在下においてバックグラウンド活性化が有意に低下し、よって、STARは顕著な利点を有することが示されている(中国特許出願第201810898720.2号を参照)。しかし、STARに対するさらなる改善がなお望まれる。
【0138】
1.2.変異体STAR(mut-STAR)並びに膜貫通ドメイン及びエンドドメインが改変されたSTAR(ub-STAR)
STARプロトタイプ設計では、ヒト化TCRα/β鎖(又はTCRγ及びδ鎖)定常領域配列(野生型ヒトTCRα定常領域、配列番号1;野生型ヒトTCRβ定常領域、配列番号2)を使用する。ヒト、霊長類及びマウスTCRα/β鎖(マウスTCRaC-WT、配列番号3;マウスTCRbC-WT、配列番号4)の定常領域配列が高度に保存されており、また、同じ重要なアミノ酸配列を有しているため、これらのTCRα/β鎖を互いに置き換えることができる。
【0139】
STAR分子は、T細胞中に移行された後、定常領域を通じてT細胞の内因性TCRとミスマッチすることになる。一方では、このミスマッチ問題がSTAR分子の正しい対形成の効率を低下させる可能性があり、STAR分子の機能を低下させるが、このことは、他方では、ミスマッチに起因する未知の特異性の可能性を増加させる可能性があり、安全性リスクを増加させる。この問題を解決するため、本発明者らは、ヒトT細胞中へ移行された後でSTAR分子の機能を増強させるように、STAR分子の定常領域をマウス配列で置き換えた。STAR分子の設計をさらに最適化するため、本発明者らは、システイン変異をSTAR分子に対して行って分子間ジスルフィド結合を導入し、これにより、STAR分子の2本の鎖間の相互対形成を増強させ、内因性TCRとのミスマッチを低減させた。具体的には、TCRα鎖定常領域における48位のトレオニン(T)をシステイン(C)に変異させ(マウスTCRaC-Cys、配列番号5)、TCRβ鎖定常領域における56位のセリン(S)をシステイン(C)に変異させた(マウスTCRbC-Cys、配列番号6)。2つの新たに付加されたシステインは、STARの2本の鎖間でジスルフィド結合を形成することになり、これにより、STARの2本の鎖と内因性TCR鎖の間のミスマッチを低減し、STAR分子がより安定な複合体を形成するのを補助し、よって、より良好な機能が得られる。加えて、STAR分子の設計をさらに最適化するため、本発明者らは、疎水性アミノ酸置換をSTAR分子の膜貫通ドメインに対して実施して、STAR分子の安定性を増加させ、STAR分子がより持続的な機能を果たす補助をした。具体的には、TCRα鎖定常領域の膜貫通ドメイン中のアミノ酸111~119位において3つのアミノ酸変異を行った。具体的には、112位のセリン(S)をロイシン(L)に変異させ、114位のメチオニン(M)をイソロイシン(I)に変異させ、115位のグリシン(G)をセリン(V)に変異させた。この領域の全体のアミノ酸配列をLSVMGLRILからLLVIVLRILに変化させたが、この改変をマウスTCRaC-TM9と呼び、これにより、配列番号7の定常領域配列が生成された。この設計は膜貫通ドメインの疎水性を増加させ、TCR膜貫通ドメインが保有する正電荷によって引き起こされる不安定性を相殺し、細胞膜上でSTAR分子をより安定にし、よって、より良好な機能が得られる。この設計の構造を
図1(中段)に示す。
【0140】
TCRを抗原に結合させ、活性化が完了した後、TCR分子のエンドドメイン及び膜貫通ドメインにおけるリシンを、ユビキチン活性化酵素、ユビキチン結合酵素及びユビキチンリガーゼによる一連のユビキチン化反応によるユビキチン改変に供してユビキチン化し、これによりT細胞エンドサイトーシスを生じさせ、リソソームによるさらなる分解に向けたTCR分子の細胞中へのエンドサイトーシスをもたらし、これによりT細胞膜の表面上のTCR分子の濃度を減少させ、結果としてT細胞活性化の効果の連続的な落ち込みを生じさせる。本発明者らは、mut-STAR分子におけるα及びβ鎖の膜貫通ドメイン又はエンドドメイン中のアミノ酸を改変させたが、この改変は、STAR分子のα鎖定常領域のエンドドメイン及びβ鎖定常領域の膜貫通ドメイン中のリシンをアルギニンに変異させ、マウスTCRα C-Arg mutの定常領域配列(配列番号8)及びマウスTCRβ C-Arg mutの定常領域配列(配列番号9)をそれぞれ生成して、リシンのユビキチン化によって引き起こされるSTAR分子のエンドサイトーシスを低減させることを含んでいた。この設計は、STAR分子の膜貫通ドメイン及びエンドドメインのユビキチン化の可能性を低下させ、よってSTAR分子のエンドサイトーシスを低減し、STAR分子が細胞膜上でより安定になること及びより良好な機能を得ることを可能にする。この設計の構造を
図1(右)に示す。
【0141】
2.野生型STAR分子及び共刺激受容体エンドドメインを含む変異体STAR分子の設計
mut-STAR細胞のin vivoにおける増殖能力、生残時間に対する効果及び腫瘍微小環境中に浸潤して標的細胞を効率的に殺滅する能力を改善するため、本発明者らはmut-STAR複合体を改変して新たな構造を設計したが、増強されたmut-STAR細胞は、TCR-Tの臨床応答を改善し、持続的な治癒効果を実現できるように、必要に応じてテーラーメイドすることができる。
【0142】
2.1.共刺激分子受容体エンドドメインを含むmut-STAR分子(co-STAR)の設計
TCRは、すべてのT細胞の表面上における特別なマーカーであり、αβTCR及びγδTCRに分けることができ、それらの対応するT細胞は、それぞれαβT細胞及びγδT細胞である。本発明者らは、αβT細胞及びγδT細胞それぞれの性能を改善するため、αβ-STAR及びtγδ-STARをそれぞれ共刺激シグナルで改変した。
【0143】
αβT細胞のTCRは、TCRα鎖とTCRβ鎖とからなり、全T細胞の90%~95%を占める。αβTCRは可変領域と定常領域とからなり、可変領域は大きな多様性を有し、抗原認識及び結合の役割を果たす一方、定常領域ドメインは、構造的相互作用及びシグナル伝達の役割を果たす。T細胞の毒性及び増殖持続性を増強するため、本発明に従い、ヒト化共刺激受容体のエンドドメイン配列をαβ-STAR定常領域のC末端に導入して(
図2)、STAR T細胞機能に対する影響を研究する。本発明のSTAR定常領域は、未改変のWT-STAR定常領域と、さらなる分子内ジスルフィド結合を含むcys-STAR定常領域と、マウス化hm-STAR定常領域と、小節1で記載された3つの改変の組合せを有するmut-STARとを含む。共刺激シグナル伝達構造は、それぞれ配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15の配列を有する、CD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB又はCD27の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。共刺激エンドドメインを、TCRα鎖若しくはTCRβ鎖又はTCRα鎖とβ鎖の両方のC末端に連結することができる(co-STAR)。さらに、共刺激エンドドメインを、直接又はリンカーG4S/(G4S)n(G4Sリンカー配列は、それぞれ、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25である)を介して、TCR定常領域のC末端、又はTCR分子のエンドドメイン配列が欠損したTCR定常領域(システイン置換と疎水性領域改変の両方を含むエンドドメイン欠損TCRα鎖定常領域(マウスTCRaC-del mut、配列番号26)、システイン置換を含むエンドドメイン欠損TCRβ鎖定常領域(マウスTCRβC-del mut、配列番号27))のC末端に連結することができる(co-リンカー-STAR、
図3)。
【0144】
γδT細胞のTCRは、TCRγ鎖とTCRδ鎖とからなり、γδT細胞は、TCRδ鎖の種類に基づいて、γδ1、γδ2及びγδ3の3つのサブグループに分けることができ、ヒト身体中において、異なるサブグループは異なる分布を有する。γδT細胞はMHC拘束性に抗原を認識し、このことが、病原体及び腫瘍の監視において重要な役割を果たす。実験により、CD28又は4-1BB、及び類似の共刺激シグナルがγδT細胞の活性化及び増殖において重要な役割を果たすことが示された。本発明者らは、γδT細胞の性能を改善するため、ヒト共刺激分子受容体のエンドドメイン配列を、TCRγ及びTCRδそれぞれのC末端に導入した(
図2、右)。
【0145】
2.2.共刺激分子受容体エンドドメインを含むCD3分子(co-CD3-STAR)の設計
CD3サブユニットは、γ鎖、δ鎖、ε鎖及びζ鎖を含み、TCR分子と共にT細胞受容体複合体を形成し、T細胞受容体複合体は、細胞の状態を制御し刺激に応答できるようにエクトドメインからエンドドメインへとシグナルを伝達する。増強されたTCR T細胞を設計し、T細胞のin vivoにおける腫瘍殺滅能力、増殖能力及び生残時間を改善するため、本発明者らは、ヒト共刺激分子受容体エンドドメインをCD3γ鎖(配列番号28)、δ鎖(配列番号29)、ε鎖(配列番号30)及びζ鎖(配列番号31)のC末端に導入することにより、CD3分子を改変した(
図4)。改変されたCD3分子を、その機能を改善するため、mut-STAR T細胞中で発現させた。
【0146】
2.3.サイトカイン受容体の刺激領域を含むCD3分子(サイトカイン-STAR、CK-STAR)の設計
サイトカインは、T細胞の増殖、抗腫瘍及び分化において重要な役割を果たす。異なるサイトカインがそれらのそれぞれの受容体と組み合わされて、細胞の状態を制御し刺激に応答できるように、エクトドメインからエンドドメインへとシグナルを伝達する。さらに、研究により、下流の分子であるSTAT5(配列番号35)がIL-2受容体エンドドメインにおけるカスケード反応によって活性化され、これにより、T細胞増殖関連分子の転写を増強し、CAR-T細胞の増殖能力を増強することが示された。増強されたSTAR-T細胞を設計し、T細胞のin vivoでの腫瘍殺滅能力、増殖能力及び生残時間を改善するため、本発明者らは、ヒトサイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、IL-2β受容体エンドドメインIL2Rb、配列番号32;IL-7α受容体エンドドメイン、配列番号33;IL-21受容体エンドドメイン、配列番号34等))をTCRα鎖若しくはβ鎖若しくはα鎖とβ鎖の両方のC末端にリンクすることにより、又はG4S(IL-2RbQ、配列番号36;IL-7RbQ、配列番号37)を介してIL-2β若しくはIL-7Rα受容体エンドドメインにSTAT5活性化部分をさらにリンクすることにより、STAR分子を改変した(
図5)。
【0147】
3.野生型STAR分子及び共刺激分子受容体エンドドメインを含む変異体STAR分子のベクターの構築
3.1 ベクターの供給源
本発明において使用したベクターはウイルスベクター、プラスミドベクター等を含むが、営利企業から購入又は営利企業によって合成されたものであり、これらのベクターの全長配列が得られており、特定の切断部位が既知である。
【0148】
3.2.断片の供給源
本発明で言及されるTCRは、本発明において使用されるWT-STAR、mut-STAR、ub-STAR、co-STAR、co-リンカー-STAR、CK-STAR、co-CD3-STARなどを含む、任意の機能的TCRとすることができる。遺伝子断片、例えば、本発明において使用されるTCRの可変領域、TCRの定常領域、共刺激分子受容体のエンドドメイン、サイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達領域、タグ配列、リンカーなどは、すべて営利企業によって合成された。これらの遺伝子断片をPCRによってリンクした。
【0149】
この実施例では、配列番号38に示されるScFv(CD20を標的とする抗体であるOFAに由来)及び/又は配列番号39に示されるScFv(CD19を標的とする抗体であるFMC63に由来)を含むSTARを使用して、TCR複合体の最適化を検証し、配列番号40に示されるRFPタンパク質(赤色蛍光タンパク質、RFP)のみを発現しているブランク対照群であるMockと比較した。
【0150】
3.3.ベクター構築
本明細書で使用したレンチウイルスベクターはpHAGE-EF1 α-IRES-RFPであり、制限酵素Not I/Nhe Iによって直鎖状ベクターを得、合成及びPCRによって遺伝子断片を得、相同組換えによって完全ベクターを得た。
【0151】
4.細胞株の構築
4.1 プラスミドpHAGE-ルシフェラーゼ-GFPの構築
レンチウイルスベクターとして、pHAGEは標的遺伝子を標的細胞のゲノム中へ安定的に挿入することができ、これは安定な細胞株を構築するための重要な方法である。ルシフェラーゼは酵素の一種であり、基質の化学的自己発光を触媒することができる触媒活性を有し、標的細胞にルシフェラーゼを安定的に発現させ、基質の添加後に標的細胞の数を指示することができ、このため、標的細胞に対する機能的細胞の効果を反映する。制限エンドヌクレアーゼNotI/ClaI切断部位を保有するpHAGE-EF1Aベクターを2つの酵素によって切断し、NCBIによってルシフェラーゼ及びGFP配列を得、営利企業であるRuiboxingkeにより、オーバーラップPCRを使用してルシフェラーゼ遺伝子をGFP遺伝子と組み合わせることで断片を合成し、次いで、相同組換えによってルシフェラーゼ-GFP断片をpHAGEベクターに連結した。
【0152】
4.2 ルシフェラーゼを保有する標的細胞株の構築
ルシフェラーゼ及びGFPを有するレンチウイルスベクターを首尾良く構築した後、レンチウイルスをLenti-X-293Tによってパッキングし、レンチウイルス溶液をPEG8000によって濃縮し、勾配希釈法によってウイルス力価を測定し、次いで、リンパ腫細胞株Rajiを感染させ、感染から72時間後、GFP陽性細胞が存在するかどうかを蛍光顕微鏡によって観察し、次いで、GFP陽性細胞をフローソーターによって選別し、モノクローナル細胞をライブラリ作製及び保存のために選択した。同時に、ルシフェラーゼ基質を使用して標的細胞と共にインキュベートし、ルシフェラーゼの発現及び検出レベルを検出して、発現レベルを決定した。
【0153】
4.3 TCRα-βノックアウトJurkat細胞株の構築
TCRα-β-Jurkat細胞株を構築するために、TCRの構造及び配列の特徴に基づいて、α及びβ鎖の定常領域においてガイド配列を設計した。NCBIにおいてTCRα及びβ鎖の定常領域のエクソン配列を得、ガイド配列を設計するため、TCRα及びβ鎖の定常領域のエクソン1配列をウェブサイトtools.genome-engineering.orgに提出し、その結果に基づいてオリゴ配列を合成し、次いで、sgRNA-LentiCRISPRレンチウイルスベクター(Aidi geneから購入)を構築した。α鎖のガイド配列をLentiCRISPR-puroにリンクし、β鎖のガイド配列をLentiCRISPR-BSDにリンクした。
【0154】
sgRNA-LentiCRISPRレンチウイルスのパッケージング:HEK-293Tを予め10cmディッシュに播種し、細胞が80%~90%に成長したとき、トランスフェクション系をHEK-293Tに添加し、培養のために細胞を37℃のインキュベーター中に戻した。この時間を0時間とし、トランスフェクションから12時間後、新鮮な10%FBS-DMEMを添加した。トランスフェクションから48時間後及び72時間後にウイルスを採取した。ウイルスを含有する培養培地を遠心分離及び濾過し、PEG8000と混合し、4℃で12時間超の間置き、次いで、3500rpmで30分間遠心分離し、上清を捨てた後、適当な体積の培地を用いて再懸濁及び沈殿させた。得られたものを-80℃で凍結するか、又は直接使用した。
【0155】
Jurkat T細胞の感染及びスクリーニング並びにモノクローナル細胞株の特定:Jurkat T細胞を12又は24ウェルプレート中に接種し、その後、ポリブレン(総体積基準で1:1000の比で添加)と共にα鎖及びβ鎖のsgRNA-LentiCRISPRウイルスを同時に適当な体積で添加し、十分に混合した。1000rpm、32℃で90分間、遠心感染を実施した。得られたものを37℃のインキュベーター内に置き、これを0時間とした。10~12時間後に液体を交換した。48時間後、ピューロマイシン及びBSDを適当な最終濃度まで添加し、さらに48時間処理した後、示されるように、未感染の対照群の細胞はすべて殺滅した。生残細胞を吸い出し、遠心分離し、完全培地中で培養して、TCRα-β-Jurkat細胞バンクを得た。2週間の培養後、フローソーターAriaによってTCRα-β-Jurkat細胞バンクから単一細胞を96ウェルプレート中に選別し、増幅培養のために成長したモノクローンを吸い出した。TCRα鎖及びβ鎖抗体をそれぞれ用いてモノクローナル細胞株を特定し、両鎖を欠く細胞株を増幅して、内因性TCRノックアウトJurkat-T細胞株を得た。
【0156】
5.T細胞を形質転換するためのウイルスパッケージング系の構築
5.1 レンチウイルス系及びパッケージング方法(異なる世代)
Lentix-293T細胞を10cm培養ディッシュに5×105/mLで接種し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で培養し、細胞密度が約80%に達したときに(顕微鏡下で観察)トランスフェクションを行った。3つのプラスミドを、1:2:3のPMD2.G:PSPAX:トランスファープラスミド比にて、500μLの無血清DMEMと混合した。54μLのPEI-Max及び500uLの無血清DMEMを一様に混合し、室温で5分間放置した(プラスミドに対するPEI-Maxの体積-質量比で3:1)。PEI-max混合物をプラスミド混合物にゆっくりと添加し、優しく送風し、均一に混合し、次いで、室温で15分間放置した。最終的な混合物を培養培地にゆっくりと添加し、均一に混合し、次いで、インキュベーター中に戻してさらに12時間~16時間培養し、次いで、6% FBS DMEM培地に交換してさらに培養し、48時間及び72時間の時点でウイルス溶液を採取した。
【0157】
5.2 ウイルス力価測定
Jurkat-C5細胞を平底96ウェルプレート中に1.5×105細胞/mLで接種し、10% FBSを含有する100uLの1640培地及び0.2μLの1000×ポリブレンを各ウェルに添加した。1640完全培地を用いて10倍希釈でウイルス希釈を行い、第1のウェルにおけるウイルス量は、ウイルス原液として決定した場合は100μLとし、濃縮溶液として決定した場合は1μLとした。希釈された細胞をウイルスウェルに100μL/ウェルで添加し、32℃で混合し、1500rpmで90分間遠心分離し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で72時間培養した。平底96ウェルプレートから丸底96ウェルプレート中へと細胞を吸い出し、4℃及び1800rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てた。200μLの1×PBSを添加した後、4℃及び1800rpmで5分間遠心分離を行い、上清を捨てた。200uLの4%組織固定溶液を添加し、得られた溶液を光から遠ざけ、フローアイトメトリーを用いて測定した。感染効率をフローサイトメトリーによって測定し、式:力価(TU/mL)=1.5×104×陽性率/ウイルス体積(μL)×1000に従って力価を計算した際、2~30%の感染率を有するウェルを選択した。以下のプラスミドのウイルスを上記の方法によってパッケージングした:pHAGE-EF1A-IRES-RFP、WT-STAR、mut-STAR、co-WT-STAR(αβ-4-1BB-WT、αβ-CD27-WT、αβ-CD28-WT、αβ-ICOS-WT、αβ-OX40-WT、αβ-OX40-WT)、co-STAR(αβ-4-1BB、αβ-CD27、αβ-CD28、αβ-ICOS、αβ-OX40、αβ-OX40)、co-CD3-STAR(CD3δ-4-1BB、CD3δ-CD28、CD3δ-ICOS、CD3δ-OX40、CD3ε-4-1BB、CD3ε-CD28、CD3ε-ICOS、CD3ε-OX40、CD3γ-OX40、CD3γ-ICOS、CD3γ-OX40、CD3ζ-41BB、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、CD3ζ-OX40)、co-リンカー-STAR(TCRβ-del-OX40、TCRα-del-G4S-OX40、TCRα-del-G4S-OX40、TCRβ-del-(G4S)3-OX40、TCRβ-del-(G4S)7-OX40)、C K-STAR(β-IL-2Rb STAR、β-IL-2RbQ STAR、α-IL-2RbQ STAR、α-IL-7RA STAR、α-IL-7RAQ STAR、α-IL-21R STAR)など。
【0158】
6.T細胞培養及び感染方法の確立
6.1 Jurkat T細胞株の培養
Jurkat T細胞株を、10% FBSを含有するRPMI1640培地中で3×105/mlから最大で3×106/mlの培養密度で培養し、1~2日毎に継代した。細胞計数後、必要な数の細胞を取り、培養培地を補充して上記密度に調整し、培養のためにCO2インキュベーター内に置いた。
【0159】
6.2 Jurkat T細胞株の感染
細胞を計数し、1×106/mlの細胞を取り、遠心分離し、液体を用いて交換し、10% FBSを含有する1mLのRPMI1640培地を用いて再懸濁し、24ウェルプレートに添加し、適量のウイルス溶液も同様に添加し、1500rpmで90分間遠心分離し、培養のためにCO2インキュベーター内に置いた。感染から12時間後、液体を10% FBSを含有する新鮮なRPMI1640培地と完全に交換し、72時間後に陽性率を検出した。
【0160】
6.3 ヒト初代T細胞の培養
Ficoil法によって初代T細胞を単離し、10% FBS及び100 IU/mL IL-2を含有するX-VIVO培地中で、初期培養密度を1×106/mLとして培養し、次いで、CD3-及びレトロネクチンr-フィブロネクチン(各々、5ug/mlの最終濃度)で予備被覆されたウェルプレートに添加した。分裂後期培養の密度は5×105/mLから最大で3×106/mLであり、1~2日毎に継代を行った。
【0161】
6.4 ヒト初代T細胞の感染
48時間の培養後、初代T細胞をMOI=20でウイルス溶液と共に添加し、1500rpmで90分間遠心分離し、次いで、培養のためにCO2インキュベーター内に置いた。24時間の感染後、10% FBS及び100 IU/mL IL-2を含有するX-VIVO培地を補充し、ウェルを回転させ、72時間後、タグタンパク質又は抗体によって感染効率を検出した。
【0162】
6.5.感染効率の検出方法
72時間の感染後、細胞に均一に送気し、計数し、5×105/mlを取り、遠心分離し、次いで、上清を捨てた。使用した染色溶液はPBS+2% FBS+2mM EDTAであり、対応する抗体を添加して30分間インキュベーションを行い、次いで、PBSを添加して2回洗浄し、コンピュータ上で検出を行った。
【0163】
7.WT-STAR受容体及びその変異体mut-STAR T細胞に対するin vitro機能アッセイ
7.1.T細胞及び標的細胞に対するin vitro共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ、RajiCD19KO-ルシフェラーゼ、RajiCD20KO-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は懸濁細胞であり、共インキュベーションのために対応する数の細胞を取り、標的細胞培地と混合し、遠心分離して培養した。具体的なステップは以下の通りであった:初代T細胞をパッケージングされ精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、1:1の比で通常使用し、T細胞の総数を感染効率に従って計算し、標的細胞の通常の使用量を1×105/ウェル(96ウェルプレート)とした。
【0164】
7.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的抗原は概して細胞表面タンパク質であるが、これはT細胞の機能を検出するためのT細胞活性化に直接使用することができる。陽性T細胞を通常1×105/ウェルで添加し、遠心分離し、24時間活性化させ、次いで、T細胞機能を検出するためにT細胞又は標的細胞を採取した。
【0165】
7.3.T細胞殺滅機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と24時間共培養し、次いで、細胞懸濁液に優しく均一に送気し、1ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を取り、白色96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を取り、細胞溶解液と共に添加して室温で15分間溶解し、次いで、4℃、4000rpm/分で15分間遠心分離し、次いで、各ウェルについて2つの並列するウェルを選んで上清を取り、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)と共に添加し、次いで、多機能マイクロプレートリーダーにより、ゲイン値を100に固定して検出して、化学発光値を得た。細胞殺滅の計算:殺滅効率=100%-(1ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/1ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0166】
7.4.ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺滅機能試験の検出結果によれば、
図6及び表1に示されるように、変異体mut-STAR T細胞はより強力なT細胞腫瘍殺滅能力を呈し、CD19及びCD20を標的とするmut-STAR T細胞標的がRaji-ルシフェラーゼ、Raji
CD19KO-ルシフェラーゼ及びRaji
CD20KO-ルシフェラーゼを殺滅させた後、残留腫瘍の生残率は、それぞれ2.41%、13.94%及び24.40%であったが、これらは、WT-STARの生残率より45.73%、77.00%及び76.16%有意に良好であり、変異体mut-STARがより有意な腫瘍殺滅効果を有していたことを示す。
【0167】
【0168】
8.STAR-T細胞の機能に対する、TCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端、又はTCRα鎖若しくはTCRβ鎖のC末端に連結した共刺激エンドドメインの効果
8.1.T細胞及び標的細胞に対するin vitro共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は懸濁細胞であり、共インキュベーションのために対応する数の細胞を取り、標的細胞培地と混合し、遠心分離して培養した。具体的なステップは以下の通りであった:初代T細胞をパッケージングされ精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、共インキュベーションを、通常は8:1、4:1、2:1、1:1、1:2、1:4及び1:8の比で行い、通常は6時間、12時間、24時間、36時間、及び48時間の時点において、経時的な共インキュベーションの差異も検出した。co-STAR T細胞の増殖を検出するため、標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼを初代T細胞と共に7日間インキュベートして細胞増殖数及びIL-2分泌の変化を観察し、次いで、陽性T細胞をフローサイトメトリーによって選別し、抗原刺激のない静止培養に2日間供し、次いで、これを再び標的細胞と24時間共培養して、T細胞による殺滅を検出し、標的細胞の通常の使用量を、1×105/ウェル(96ウェルプレート)とした。
【0169】
8.2.標的抗原によるT細胞を刺激する方法
本発明の標的抗原は概して細胞表面タンパク質であったが、これはT細胞の機能を検出するためのT細胞の活性化に直接使用することができ、具体的には、標的抗原を通常は1×105/ウェルの陽性T細胞と共に添加し、遠心分離し、24時間活性化させて細胞懸濁液若しくは培養上清を採取してT細胞機能を検出するか、又は6時間、12時間、24時間、36時間、48時間若しくは7日間活性化させて、T細胞の殺滅機能を検出した。
【0170】
8.3.T細胞殺滅機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
異なる時間でT細胞を標的細胞と共培養し、次いで、細胞懸濁液に優しく均一に送気し、1ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を取り、白色96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を取り、細胞溶解液と共に添加して室温で15分間溶解し、次いで、4℃、4000rpm/分で15分間遠心分離し、次いで、各ウェルについて2つの並列するウェルを選んで上清を取り、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)と共に添加し、次いで、多機能マイクロプレートリーダーにより、ゲイン値を100に固定して検出して、化学発光値を得た。細胞殺滅の計算:殺滅効率=100%-(1ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/1ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0171】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺滅機能試験の検出結果によれば、
図7及び表2に示されるように、共刺激エンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端に連結したmut-STARは、T細胞及び標的細胞の異なるE:T比において類似した腫瘍殺滅効果を呈し、異なるE:T比において残留腫瘍生残率に有意差はなかった。しかし、異なる時間における腫瘍殺滅の検出結果の点では、
図8及び表3に示されるように、Raji-ルシフェラーゼと共に48時間インキュベーションした、OX40エンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端に連結したmut-STAR(αβ-OX40)とmut-STARとは、それぞれ約24%及び19%という類似した腫瘍殺滅効果を示し、これらは、他の共刺激エンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端に連結したmut-STAR(αβ-41BB、αβ-CD27、αβ-CD28、αβ-ICOS)を有意に上回っていた。上記の結果より、TCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端に共刺激分子OX40のエンドドメインをリンクさせることは、mut-STARの殺滅効果に影響を与えなかったことが見出された。さらに、上記の結果より、OX40エンドドメインがTCRα鎖(α-OX40)又はβ鎖(β-OX40)単独のC末端にリンクしたmut-STARが、T細胞殺滅機能についてルシフェラーゼアッセイにより検出され、検出結果によれば、
図9及び10並びに表4及び5に示されるように、共インキュベーションされた腫瘍細胞に対するT細胞の異なるE:T比又は24時間の共インキュベーションにおいて、α-OX40及びβ-OX40はα-β-OX40と有意差を示さなかった。上記の殺滅結果より、共刺激分子OX40のエンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端にリンクしたmut-STAR(αβ-OX40)と、共刺激分子OX40のエンドドメインがTCRα鎖(α-OX40)又はβ鎖(β-OX40)単独のC末端にリンクしたmut-STARの間に有意差はなかったが、これらの腫瘍殺滅能力はmut-STARの腫瘍殺滅能力より有意に良好であった。
【0172】
8.4.T細胞によるサイトカイン分泌の分析:ELISA
T細胞活性化中、多数のサイトカイン、例えば、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等が放出されて、T細胞が標的細胞を殺滅することを助けるか、又はT細胞それ自体の増大を促進した。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を採取し、遠心分離し、上清を取った。使用したTNF-α、IFN-γ、及びIL-2 ELISAキットは、Human IL-2 Uncoated ELISA、Human TNF-α Uncoated ELISA、及びHuman IFN-γ Uncoated ELISA(それぞれ、物品番号88-7025、88-7346、88-7316)であった。具体的なステップは以下の通りであった:10Xコーティング緩衝剤をddH2Oで1Xに希釈し、コーティングされた抗体(250X)を添加し、十分に混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加する。プラスチックラップで密閉し4℃で終夜静置した後、1X PBST(0.05% Tween 20を添加した1X PBS)を使用して、各回260μL/ウェルにて3回洗浄し、5X ELISA/ELISPOT希釈剤をddH2Oで1Xに希釈し、次いで、96ウェルプレートに200μL/ウェルで添加し、その後室温で1時間放置した。PBSTを使用して1回洗浄し、標準曲線(それぞれ、2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈を実施し、1x希釈剤を用いて試料を20~50倍に希釈した。標準曲線に従って希釈された試料を1ウェル当たり100マイクロリットルで添加し、2つの並列するウェルを選び、室温で2時間インキュベートし、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈された検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈されたHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、TMBを添加して15分未満の発色時間で発色を行い、2N H2SO4を添加して停止させ、450nmにおける吸光を検出した。
【0173】
ELISAの結果によれば、
図11及び表6に示されるように、T細胞を標的細胞と24時間共インキュベートした後、OX40エンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端にリンクしたmut-STAR(αβ-OX40)のIL-2分泌は約10000pg/mlであり、これは他の構造を有するSTARのIL-2分泌より有意に多く、mut-STAR、αβ-41BB、αβ-CD27、αβ-CD28及びαβ-ICOSのIL-2分泌は、それぞれ約7700pg/ml、6450pg/ml、6690pg/ml、6000pg/ml、及び6050pg/mlであったが、TNFα及びIFN-γ分泌については、αβ-OX40は同様にmut-STARと類似の結果を示した一方、他の構造は異なる減少を示した。ELISAの結果より、共刺激分子OX40のエンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端にリンクしたmut-STAR(αβ-OX40)のIL-2分泌が、mut-STARによるIL-2分泌より有意に多いことが示された。
【0174】
8.5.T細胞増殖の変化の検出:フローサイトメトリーによる計数
T細胞活性化中、多数のサイトカインが放出されて、T細胞が標的細胞を殺滅することを助けるか、又はT細胞それ自体の増大を促進し、T細胞増殖において最も明白に出現したのは、T細胞の数の顕著な変化であった。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、次いで遠心分離し、PBSを用いて再懸濁して200uLとし、陽性T細胞の数をフローサイトメトリーによって計数した。T細胞増殖の変化:増殖倍率=7日後の陽性T細胞の数/添加された陽性T細胞の初期数。
【0175】
選別後、様々な構造を有するmut-STAR-T細胞をRaji-ルシフェラーゼ細胞と1:3のE:T比で共培養し、この日を0日目とし、その後、それぞれ1日目及び7日目に細胞を採取して、フロー解析を行った。それらのうち、使用した培地はIL-2を含まない1640完全培地であり、TCR T細胞の初期数は1×10
5細胞であって、各時点において試料を独立にインキュベートし、翌日、液体を用いて残留する共インキュベートされた試料を半量交換し、標的細胞を補充した。フロー解析に使用した細胞は事前に抗ヒトCD3抗体で染色しておき、規定の体積の細胞を採取し、機械上で分析を実施した際に記録し、系におけるT細胞の数及び割合は変換により知ることができた。
図12及び表7に示されるように、mut-STAR細胞の絶対数の増殖倍率曲線から、OX40エンドドメインがTCRα鎖とTCRβ鎖の両方のC末端に連結したmut-STAR(αβ-OX40)が、標的細胞エピトープを認識後により良好な活性化及び増殖を示したことがわかるが、これはmut-STARによる活性化及び増殖より有意に高度であった。OX40エンドドメインがTCRα鎖(α-OX40)又はβ鎖(β-OX40)単独のC末端に連結したmut-STARの増殖を
図13及び表8に示したが、OX40エンドドメインがTCRα鎖単独のC末端に連結したmut-STAR(α-OX40)の7日後におけるT細胞増殖は11.75倍であった一方、mut-STAR、β-OX40及びαβ-OX40のような他の構造のT細胞増殖は、ぞれぞれ、2.755倍、4.128倍及び6.744倍であり、よって、α-OX40の増殖効果は他の構造の増殖効果より有意に高かった。上記の腫瘍殺滅の結果、ELISAの結果及びT細胞増殖の結果を合わせると、OX40エンドドメインがTCRα鎖単独のC末端に連結したmut-STAR(α-OX40)は、他の構造より増強された増殖及び腫瘍殺滅能力を示した。
【0176】
上記の結果により、共刺激分子OX40をTCR-α鎖にリンクすることにより、T細胞の殺滅効果に影響を与えることもなく最良の増殖効果が得られたことが見出された。したがって、異なる共刺激分子のエンドドメインがTCRα鎖にリンクしたmu-STARによる、標的細胞に対するT細胞の異なるE:T比における殺滅効果に対する結果によれば、共刺激分子OX40のエンドドメインがリンクしたmut-STARの殺滅効果は、他の共刺激ドメインがリンクしたSTARの殺滅効果より良好であった。1:2及び1:4のE:T比において、共刺激分子OX40のエンドドメインが連結したmut-STAR T細胞(α-OX40)の効果はαβ-OX40の効果と類似しており、他の共刺激分子が連結したmut-STAR T細胞の効果より良好であった。結果を
図14及び表9に示した。上記の殺滅の結果より、OX40エンドドメインがTCRα鎖にリンクしたmut-STAR(α-OX40)によって得られた腫瘍殺滅及び増殖能力は、mut-STARの腫瘍殺滅及び増殖能力を有意に上回っていた。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
9.STAR-T細胞の機能に対する異なるCD3鎖に連結した共刺激構造(co-CD3-STAR)の効果
9.1.T細胞及び標的細胞に対するin vitro共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は懸濁細胞であり、共インキュベーションのために対応する数の細胞を取り、標的細胞培地と混合し、遠心分離して培養した。具体的なステップは以下の通りであった:初代T細胞をパッケージングされ精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、通常は1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、さらに、標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして、細胞増殖数の変化を観察した。T細胞の総数を感染効率に基づいて計算し、標的細胞の全般的な使用量を、1×105/ウェル(96ウェルプレート)とした。
【0186】
9.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的抗原は概して細胞表面タンパク質であるが、これはT細胞の機能を検出するためのT細胞活性化に直接使用することができる。陽性T細胞を通常1×105/ウェルで添加し、遠心分離し、24時間活性化させ、細胞懸濁液又は培養上清を採取して、T細胞機能を検出した。
【0187】
9.3.T細胞殺滅機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
異なる時間でT細胞を標的細胞と共培養し、次いで、細胞懸濁液に優しく均一に送気し、1ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を白色96ウェルプレートに取り、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を取り、細胞溶解液と共に添加して室温で15分間溶解し、次いで、4℃、4000rpm/分で15分間遠心分離し、次いで、各ウェルについて2つの並列するウェルを選んで上清を取り、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)と共に添加し、次いで、多機能マイクロプレートリーダーにより、ゲイン値を100に固定して検出して、化学発光値を得た。細胞殺滅の計算:殺滅効率=100%-(1ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/1ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0188】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺滅機能試験の検出結果によれば、
図15及び表10に示されるように、共刺激エンドドメインをCD3δ又はCD3γ又はCD3ε又はCD3ζ鎖のC末端に連結し、mut-STAR Tで共発現させた場合、標的細胞に対する各種T細胞のE:T比が1:1における結果が示すところでは、いずれのco-CD3-STARもαβ-OX40より良好な標的細胞殺滅効果を呈さなかったが、CD3δ-OX40、CD3ζ-41BB、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、CD3ζ-OX40が、mut-STARと比較して類似の殺滅効果を呈し、その残留腫瘍生残率は、1:1のE:T比では有意差がなかった。上記の結果より、共刺激エンドドメインを種々のCD3鎖のC末端にリンクすることによってmut-STARの腫瘍殺滅効果は有意には改善されなかったが、共刺激エンドドメインがCD3ζ鎖のC末端にリンクしたmut-STARの効果は有意には低下しなかった。
【0189】
9.4.T細胞増殖の変化の検出:フローサイトメトリーによる計数
T細胞活性化中、多数のサイトカインが放出されて、T細胞が標的細胞を殺滅することを助けるか、又はT細胞それ自体の増大を促進し、T細胞増殖において最も明白に出現したのは、T細胞の数の顕著な変化であった。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、次いで遠心分離し、PBSを用いて再懸濁して200uLとし、陽性T細胞の数をフローサイトメトリーによって計数した。T細胞増殖の変化:増殖倍率=7日後の陽性T細胞の数/添加された陽性T細胞の初期数。
【0190】
選別後、様々な構造を有するmut-STAR-T細胞をRaji-ルシフェラーゼ細胞と1:3のE:T比で共培養し、この日を0日目とし、その後、それぞれ1日目及び7日目に細胞を採取して、フロー解析を行った。それらのうち、使用した培地はIL-2を含まない1640完全培地であり、TCR T細胞の初期数は1×10
5細胞であって、各時点において試料を独立にインキュベートし、翌日、液体を用いて残留する共インキュベートされた試料を半量交換し、標的細胞を補充した。フロー解析に使用した細胞は事前に抗ヒトCD3抗体で染色しておき、規定の体積の細胞を採取し、機械上で分析を実施した際に記録し、系におけるT細胞の数及び割合は変換により知ることができた。
図16及び表11に示されるように、mut-STAR細胞の絶対数の増殖倍率曲線から、いずれのco-CD3-STARもαβ-OX40-mut-STARと比較してより良好な標的細胞殺滅効果を呈さなかったが、CD3ε-CD28、CD3δ-OX40、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、CD3ζ-OX40などは類似の増殖効果を呈したことがわかる。ルシフェラーゼアッセイによる殺滅の検出結果及びT細胞増殖の結果を合わせると、共刺激エンドドメインがCD3δ又はCD3γ又はCD3ε又はCD3ζ鎖のC末端に連結しmut-STAR Tで共発現されている構造は、αβ-OX40-mut-STAR T細胞と比較して、腫瘍殺滅及び増殖のより良好な効果を示さなかった。
【0191】
【0192】
【0193】
10.STAR-T細胞の機能に対するエンドドメイン欠損α又はβ定常領域に連結したリンカーG4Sを含む共刺激エンドドメインの効果
10.1.T細胞及び標的細胞に対するin vitro共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は懸濁細胞であり、共インキュベーションのために対応する数の細胞を取り、標的細胞培地と混合し、遠心分離して培養した。具体的なステップは以下の通りであった:初代T細胞をパッケージングされ精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、通常は1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、さらに、標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして、細胞増殖数の変化を観察した。T細胞の総数を感染効率に基づいて計算し、標的細胞の全般的な使用量は、1×105/ウェル(96ウェルプレート)とした。
【0194】
10.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的抗原は概して細胞表面タンパク質であったが、これはT細胞の機能を検出するためのT細胞の活性化に直接使用することができ、具体的には、標的抗原を通常は1×105/ウェルの陽性T細胞と共に添加し、遠心分離し、24時間活性化させて細胞懸濁液又は培養上清を採取して、T細胞機能を検出した。
【0195】
10.3.T細胞殺滅機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
異なる時間でT細胞を標的細胞と共培養し、次いで、細胞懸濁液に優しく均一に送気し、1ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を白色96ウェルプレートに取り、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を取り、細胞溶解液と共に添加して室温で15分間溶解し、次いで、4℃、4000rpm/分で15分間遠心分離し、次いで、各ウェルについて2つの並列するウェルを選んで上清を取り、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)と共に添加し、次いで、多機能マイクロプレートリーダーにより、ゲイン値を100に固定して検出して、化学発光値を得た。細胞殺滅の計算:殺滅効率=100%-(1ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/1ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0196】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺滅機能試験の検出結果によれば、異なる長さのG4Sリンカーを有する共刺激エンドドメインがエンドドメイン欠損α又はβ定常領域に連結されたが、標的細胞に対するT細胞のE:T比が1:1における結果が示すところでは、リンカーがα定常領域エンドドメインに連結された場合、α-del-OX40、α-OX40、α-del-G4S-OX40、α-del-(G4S)3-OX40及びα-β-ox40は類似の殺滅効果を示し、これはα-del-(G4S)7-OX40及びα-del-(G4S)10-OX40の殺滅効果を上回っており、リンカーが長い程T細胞殺滅効果は弱く、リンカーがβ定常領域エンドドメインに連結された場合、β-del-OX40、β-ox40、β-del-(G4S)3-OX40及びα-β-ox40は類似の殺滅効果を示し、こちらも、リンカーが長い程T細胞殺滅効果は弱かった。定常領域エンドドメインの除去後におけるOX40(α-del-OX40又はβ-del-OX40)への連結は、そのような除去を行わない連結と比較して効果にほとんど差を示さなかったが、リンカーの付加後(リンカーの数は3以下であった)、α-del-(G4S)1-3-OX40又はβ-del-(G4S)1-3-OX40の効果は、α-del-OX40又はβ-del-OX40の効果より良好であった。リンカーをα定常領域エンドドメインに連結した場合の効果とリンカーをβ定常領域エンドドメインに連結した場合の効果の間の比較したところ、リンカーをα定常領域エンドドメインに連結した場合の効果は、リンカーをβ定常領域エンドドメインに連結した場合の効果より良好であった。しかし、
図17及び18、並びに表12及び13に示されるように、2:1のE:T比における残留腫瘍生残率に有意差はなかった。上記の結果より、G4Sリンカーを含む共刺激エンドドメインがエンドドメイン欠損α又はβ定常領域にリンクしたmut-STARは、mut-STARの腫瘍殺滅効果に影響を与えず、α定常領域エンドドメインにリンクした場合の効果は、β定常領域エンドドメインにリンクした場合の効果より良好であったが、リンカー長が大きいほど腫瘍殺滅効果は逆に弱かった。
【0197】
10.4.T細胞によるサイトカイン分泌の分析:ELISA
T細胞活性化中、多数のサイトカイン、例えば、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等が放出されて、T細胞が標的細胞を殺滅することを助けるか、又はT細胞それ自体の増大を促進した。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を採取し、遠心分離し、上清を取った。使用したTNF-α、IFN-γ、及びIL-2 ELISAキットは、Human IL-2 Uncoated ELISA、Human TNF-α Uncoated ELISA、及びHuman IFN-γ Uncoated ELISA(それぞれ、物品番号88-7025、88-7346、88-7316)であった。具体的なステップは以下の通りであった:10Xコーティング緩衝剤をddH2Oで1Xに希釈し、コーティングされた抗体(250X)を添加し、十分に混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加する。プラスチックラップで密閉し4℃で終夜静置した後、1X PBST(洗浄緩衝剤とも呼ばれる、0.05% Tween 20を添加した1X PBS)を使用して、各回260μL/ウェルにて3回洗浄し、5X ELISA/ELISPOT希釈剤をddH2Oで1Xに希釈し、次いで、96ウェルプレートに200μL/ウェルで添加し、その後室温で1時間放置した。PBSTを使用して1回洗浄し、標準曲線(それぞれ、2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈を実施し、1x希釈剤を用いて試料を20~50倍に希釈した。標準曲線に従う試料を1ウェル当たり100マイクロリットルで添加し、2つの並列するウェルを選び、室温で2時間インキュベートし、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈された検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈されたHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、TMBを添加して15分未満の発色時間で発色を行い、2N H2SO4を添加して停止させ、450nmにおける吸光を検出した。
【0198】
ELISAの結果によれば、
図19及び20、並びに表14及び15に示されるように、T細胞を標的細胞と24時間共インキュベートした後、α-del-(G4S)7-OX40OX40の構造を有するmut-STARのIL-2及びIFN-γの分泌は、mut-STARのIL-2及びIFN-γの分泌より有意に少なかったが、一方、他の構造β-del-OX40、α-del-OX40、α-del-G4S-OX40及びα-del-(G4S)3-OX40の各々の構造のIL-2分泌は、mut-STARのIL-2分泌と類似しており、β-del-OX40のみがmut-STARのIFN-γ分泌と類似のIFN-γ分泌を呈した一方、他の構造のIFN-γ分泌は異なる減少を呈した。ELISAの結果によれば、α又はβ定常領域のエンドドメインが欠損した構造において、α鎖のエンドドメインの欠損は、IFN-γ分泌に影響を与えたがIL-2分泌には影響を与えず、一方、β鎖のエンドドメインの欠損は、IL-2の分泌にもIFN-γの分泌にも影響を与えなかった。同時に、α鎖のエンドドメインを欠損させた後、リンカーを使用してOX40エンドドメインにリンクしたが、7未満の長さを有するリンカーの場合、これはIL-2分泌に影響を与えなかったがIFN-γ分泌を減少させた。
【0199】
10.5.T細胞分化の変化の検出:フローサイトメトリーによる分析
T細胞の活性化中、多数のサイトカイン及び他のケモカインが放出され、T細胞の分化を制御するようにシグナルがサイトカイン又はケモカイン受容体を通じて核内へと伝達された。T細胞は原始T細胞(ナイーブ)からセントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)、最後にはエフェクターT細胞(Teff)へと分化する。しかし、in vivoにおけるT細胞の増殖及び持続は、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)へと分化したT細胞の数よって影響を受ける。メモリーT細胞は、幹細胞T細胞、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞に分類することができる。セントラルメモリーT細胞の分化比は、in vivoにおけるT細胞の持続的殺滅効果に影響を与える。エフェクターT細胞に対する原始T細胞の比は、in vivoにおけるT細胞の腫瘍殺滅効果及び持続に影響を与える。T細胞の表面上におけるCD45RA及びCCR7の発現をフローサイトメトリーによって検出したが、これにより、T細胞の分化を知ることができる。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、遠心分離し、抗ヒト-CD45RA-Percp-cy5.5及び抗ヒト-CCR7-APCフロー抗体で30分間染色し、再び遠心分離し、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、T細胞の分化をフローサイトメトリーによって検出した。
【0200】
フローサイトメトリーの結果によれば、
図21及び表16に示されるように、G4Sリンカーを含む共刺激エンドドメインをα又はβ定常領域のエンドドメインが欠損した構造にリンクした場合、得られたα-del-(G4S)3-OX40はセントラルメモリーT細胞の顕著な分化を示したが、一方、OX40がα(α-del-OX40)又はβ(β-del-OX40)定常領域のエンドドメインに直接連結した構造もまた、セントラルメモリーT細胞の分化を促進した。同時に、
図22及び表17に示されるように、様々な改変された構造を有するmut-STAR T細胞のエフェクターT細胞の数はmut-STARのエフェクターT細胞の数より有意に少なかったが、各々のナイーブT細胞の割合は、mut-STARのナイーブT細胞の割合(28.3%)より有意に高かった。腫瘍殺滅の結果、ELISAの結果及び細胞分化のフローサイトメトリー検出の結果を合わせると、α又はβ定常領域のエンドドメインが欠損し、(G4S)
3リンカーを介してOX40エンドドメインに連結したmut-STARは、腫瘍殺滅効果及びIL-2分泌に影響を与えることなくT細胞のメモリー細胞集団の分化を顕著に改善することができる。
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
11.変異体STAR-T細胞の機能に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるアルギニンへのTCRエンドサイトーシス関連リシン改変の効果
11.1.T細胞及び標的細胞に対するin vitro共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は懸濁細胞であり、共インキュベーションのために対応する数の細胞を取り、標的細胞培地と混合し、遠心分離して培養した。具体的なステップは以下の通りであった:初代T細胞をパッケージングされ精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、通常は1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、さらに、標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして、細胞増殖数の変化を観察した。T細胞の総数を感染効率に基づいて計算し、標的細胞の全般的な使用量は、1×105/ウェル(96ウェルプレート)とした。
【0208】
11.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的は概して細胞表面タンパク質であったが、これはT細胞の機能を検出するためのT細胞の活性化に直接使用することができ、具体的には、標的抗原を通常は1×105/ウェルの陽性T細胞と共に添加し、遠心分離し、24時間活性化させて細胞懸濁液又は培養上清を採取して、T細胞機能を検出した。
【0209】
11.3.T細胞殺滅機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
異なる時間でT細胞を標的細胞と共培養し、次いで、細胞懸濁液に優しく均一に送気し、1ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を白色96ウェルプレートに取り、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を取り、細胞溶解液と共に添加して室温で15分間溶解し、次いで、4℃、4000rpm/分で15分間遠心分離し、次いで、各ウェルについて2つの並列するウェルを選んで上清を取り、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)と共に添加し、次いで、多機能マイクロプレートリーダーにより、ゲイン値を100に固定して検出して、化学発光値を得た。細胞殺滅の計算:殺滅効率=100%-(1ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/1ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0210】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺滅機能試験の検出結果によれば、
図23及び表18に示されるように、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるTCRエンドサイトーシス関連リシンがアルギニンに改変されたmut-STARであるub-STARの腫瘍細胞殺滅効果は、標的細胞に対するT細胞のE:T比が2:1又は1:1において、mut-STAR T細胞の腫瘍細胞殺滅効果より有意に低かった。
【0211】
11.4.T細胞によって分泌されたサイトカインの分析:ELISA
T細胞活性化中、多数のサイトカイン、例えば、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等が放出されて、T細胞が標的細胞を殺滅することを助けるか、又はT細胞それ自体の増大を促進した。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を採取し、遠心分離し、上清を取った。使用したIFN-γ、及びIL-2 ELISAキットは、Human IL-2 Uncoated ELISA、Human IFN-γ Uncoated ELISA(それぞれ、物品番号88-7025、88-7346、88-7316)であった。具体的なステップは以下の通りであった:10Xコーティング緩衝剤をddH2Oで1Xに希釈し、コーティングされた抗体(250X)を添加し、十分に混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加する。プラスチックラップで密閉し4℃で終夜静置した後、1X PBST(洗浄緩衝剤とも呼ばれる、0.05% Tween 20を添加した1X PBS)を使用して、各回260μL/ウェルにて3回洗浄し、5X ELISA/ELISPOT希釈剤をddH2Oで1Xに希釈し、次いで、96ウェルプレートに200μL/ウェルで添加し、その後室温で1時間放置した。PBSTを使用して1回洗浄し、標準曲線(それぞれ、2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈を実施し、1x希釈剤を用いて試料を20~50倍に希釈した。標準曲線に従って希釈された試料を1ウェル当たり100マイクロリットルで添加し、2つの並列するウェルを選び、室温で2時間インキュベートし、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈された検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈されたHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、TMBを添加して15分未満の発色時間で発色を行い、2N H2SO4を添加して停止させ、450nmにおける吸光を検出した。
【0212】
ELISAの結果によれば、
図24、25、及び表19、20に示されるように、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおいてTCRエンドサイトーシス関連リシンがアルギニンに改変されたmut-STARであるub-STARを、2:1又は1:1又は1:2の標的細胞に対するT細胞のE:T比において標的細胞と24時間共インキュベートしたが、ub-STARによるIL-2及びIFN-γ分泌は、mut-STAR T細胞のIL-2及びIFN-γ分泌より有意に低かった。
【0213】
11.5.T細胞分化の変化の検出:フローサイトメトリーによる分析
T細胞活性化中、多数のサイトカイン及び他のケモカインが放出され、T細胞の分化を制御するようにシグナルがサイトカイン又はケモカイン受容体を通じて核内へと伝達された。in vivoにおけるT細胞の増殖及び持続は、メモリーT細胞へと分化したT細胞の数によって影響を受けた。メモリーT細胞は、幹細胞T細胞、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞に分類することができる。T細胞の表面上におけるCD45RA及びCCR7の発現をフローサイトメトリーによって検出したが、これにより、T細胞の分化を知ることができる。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、遠心分離し、抗ヒト-CD45RA-Percp-cy5.5及び抗ヒト-CCR7-APCフロー抗体で30分間染色し、再び遠心分離し、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、T細胞の分化をフローサイトメトリーによって検出した。
【0214】
フローサイトメトリーの結果によれば、
図26及び27並びに表21及び22に示されるように、mut-STARと、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるTCRエンドサイトーシス関連リシンがアルギニンに改変されたmut-STARであるub-STARの間に、セントラルメモリーT細胞の分化においても、エフェクターT細胞に対するナイーブT細胞の比においても、有意差は見出されなかったが、このことは、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるアルギニンへのTCRエンドサイトーシス関連リシン改変が、mut-STAR T細胞の分化に有意な効果を有していなかったことを示す。腫瘍殺滅の結果、ELISAの結果及び細胞分化のフローサイトメトリー試験を組み合わせると、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるTCRエンドサイトーシス関連リシンがアルギニンに改変されたmut-STARであるub-STARは、mut-STAR改変に対する効果的な促進効果を有していなかった。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
12.STAR-T細胞の機能に対するα又はβ定常領域エンドドメインに連結した異なるサイトカイン受容体刺激領域を有する変異体STARの効果
12.1.T細胞及び標的細胞に対するin vitro共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は懸濁細胞であり、共インキュベーションのために対応する数の細胞を取り、標的細胞培地と混合し、次いで遠心分離して培養した。具体的なステップは以下の通りであった:初代T細胞をパッケージングされ精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、通常は1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、さらに、標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして、細胞増殖数の変化を観察した。T細胞の総数を感染効率に基づいて計算し、標的細胞の全般的な使用量は、1×105/ウェル(96ウェルプレート)とした。
【0221】
12.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的は概して細胞表面タンパク質であったが、これはT細胞の機能を検出するためのT細胞の活性化に直接使用することができ、具体的には、標的抗原を通常は1×105/ウェルの陽性T細胞と共に添加し、遠心分離し、24時間活性化させて細胞懸濁液又は培養上清を採取して、T細胞機能を検出した。
【0222】
12.3.T細胞殺滅機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
異なる時間でT細胞を標的細胞と共培養し、次いで、細胞懸濁液に優しく均一に送気し、1ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を取り、白色96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を取り、細胞溶解液と共に添加して室温で15分間溶解し、次いで、4℃、4000rpm/分で15分間遠心分離し、次いで、各ウェルについて2つの並列するウェルを選んで上清を取り、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)と共に添加し、次いで、多機能マイクロプレートリーダーにより、ゲイン値を100に固定して検出して、化学発光値を得た。細胞殺滅の計算:殺滅効率=100%-(1ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/1ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0223】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺滅機能試験の検出結果によれば、
図28及び表23に示されるように、2:1の標的細胞に対するT細胞のE:T比において異なるサイトカイン受容体刺激領域を変異体STARのα又はβ領域エンドドメインに連結した場合、β-IL-2Rb、α-IL-2Rb、α-IL-7RA、α-IL21Rは、いずれもmut-STARの殺滅効果と類似した殺滅効果を呈した一方、β-IL2RbQ、α-IL2RbQ及びα-IL7RAQは、mut-STARの腫瘍殺滅効果より有意に低い腫瘍殺滅効果を呈した。さらに、
図29及び表24に示されるように、2:1及び1:1のE:T比において異なるサイトカイン受容体刺激領域がリンクした変異体STARの殺滅効果を検出し、α-del-(G4S)3-OX40-STARの殺滅効果と比較したところ、α-IL7RAの殺滅効果はα-del-(G4S)3-OX40-STARの殺滅効果よりわずかに低く、一方、他のサイトカイン受容体構造がリンクしたSTARの殺滅効果はα-del-(G4S)3-OX40-STARの殺滅効果より有意に低かった。
【0224】
12.4.T細胞によって分泌されたサイトカインの分析:ELISA
T細胞活性化中、多数のサイトカイン、例えば、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等が放出されて、T細胞が標的細胞を殺滅することを助けるか、又はT細胞それ自体の増大を促進した。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を採取し、遠心分離し、上清を取った。IFN-γ、及びIL-2 ELISAキットは、Human IL-2 Uncoated ELISA、Human IFN-γ Uncoated ELISA(それぞれ、物品番号88-7025、88-7346、88-7316)であった。具体的なステップは以下の通りであった:10Xコーティング緩衝剤をddH2Oで1Xに希釈し、コーティングされた抗体(250X)を添加し、十分に混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加する。プラスチックラップで密閉し4℃で終夜静置した後、1X PBST(洗浄緩衝剤とも呼ばれる、0.05% Tween 20を添加した1X PBS)を使用して、各回260μL/ウェルにて3回洗浄し、5X ELISA/ELISPOT希釈剤をddH2Oで1Xに希釈し、次いで、96ウェルプレートに200μL/ウェルで添加し、その後室温で1時間放置した。PBSTを使用して1回洗浄し、標準曲線(それぞれ、2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈を実施し、1x希釈剤を用いて試料を20~50倍に希釈した。標準曲線に従って希釈された試料を1ウェル当たり100マイクロリットルで添加し、2つの並列するウェルを選び、室温で2時間インキュベートし、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈された検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、1x希釈剤で希釈されたHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、TMBを添加して15分未満の発色時間で発色を行い、2N H2SO4を添加して停止させ、450nmにおける吸光を検出した。
【0225】
ELISAの結果によれば、
図30及び表25に示されるように、1:1又は1:2のE:T比においてT細胞を標的細胞と共に24時間インキュベートした場合、β-IL-2RbのIL-2分泌はmut-STARのIL-2分泌より有意に高かった一方、α-IL-2Rb、β-IL-2RbQ及びα-IL-7RAQは類似のIL-2分泌を呈したが、α-IL-2RbQのIL-2分泌はmut-STARのIL-2分泌より有意に低かった。
図31及び表26に示されるように、β-IL-2RbのIFN-γ分泌はmut-STARのIFN-γ分泌より有意に高かった一方、他の構造のIFN-γ分泌はmut-STARのIFN-γ分泌より有意に低かった。
【0226】
12.5.T細胞分化の変化の検出:フローサイトメトリーによる分析
T細胞活性化中、多数のサイトカイン及び他のケモカインが放出され、T細胞の分化の変化を制御するようにシグナルがサイトカイン又はケモカイン受容体を通じて核内へと伝達された。in vivoにおけるT細胞の増殖及び持続は、メモリーT細胞へと分化したT細胞の数によって影響を受けた。メモリーT細胞は、幹細胞T細胞、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞に分類することができる。T細胞の表面上におけるCD45RA及びCCR7の発現をフローサイトメトリーによって検出したが、これにより、T細胞の分化の状況が得られた。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、次いで遠心分離し、抗ヒト-CD45RA-Percp-cy5.5及び抗ヒト-CCR7-APCフロー抗体で30分間染色し、再び遠心分離し、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、T細胞の分化をフローサイトメトリーによって検出した。
【0227】
図32及び33、並びに表27及び28に示されるように、異なるサイトカイン受容体刺激領域がα又はβ定常領域エンドドメインにリンクした変異体STARは、セントラルメモリーT細胞の分化及びエフェクターT細胞に対するナイーブT細胞の比において様々な変化を示し、α-IL-2Rb、β-IL-2Rb、α-IL-2RbQ、β-IL-2RbQは、mut-STARと比較して有意差を示さなかったが、一方、α-IL-7RA、α-IL-7RAQ及びα-IL-21Rは、mut-STARと比較して有意差を示さなかった。上記の結果より、異なるサイトカイン受容体刺激領域を変異体STARのα又はβ定常領域エンドドメインに連結した場合、mut STAR T細胞の分化は有意に影響を受けた。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
13.様々なSTAR様T細胞のin vivoにおける増殖及び抗腫瘍能力の評価
1)実験動物モデル
この実験では、NSG免疫不全マウスをモデルとして使用した。マウス遺伝子型はNOD-Prkdcem26Il2rgem26/Njuであり、T細胞、B細胞及びNK細胞を欠き、該マウスのマクロファージ及び樹状細胞も欠失していた。NSGマウスは現行では最も完全な免疫不全マウス株であったが、これは移植された腫瘍及びT細胞を拒絶しないため、T細胞療法の前臨床研究において広く使用することができる。この実験では6~8週齢の雌NSGマウスを使用し、各バッチのマウスの体重差を2g以内に制御した。マウスを特定病原体除去(SPF)障壁内の独立した換気されたケージ中に置き、通常食と、病原体の混入を防ぐためわずかに酸性のpHを有する飲用水とを与えた。
【0235】
2)腫瘍モデルの構築
血液腫瘍モデルを構築する際、ヒトバーキットリンパ腫細胞株であるRaji細胞を異種移植のために使用した。Raji細胞は、レンチウイルスベクターによってルシフェラーゼ遺伝子を発現している細胞株であり、マウスにおいて、Raji腫瘍の発達及び変化を、フルオレセイン化学発光及びin vivoイメージングによってリアルタイムでモニタリングした。このモデルにおいて、異なる用量(概ね約1~3×106細胞)のRaji-ルシフェラーゼ細胞をマトリックスゲルと混合し、腹腔内注射によって6~8週齢の雌NSGマウスに接種した。3日後、マウスにフルオレセインカリウム塩溶液を腹腔内注射し、in vivoにおける腫瘍細胞の蛍光シグナルをin vivoイメージングによって検出した。Raji細胞はマウスにおいて急速に成長し、腹腔内で固形腫瘍を生成し、マウスにおいて、症状、例えば、体重減少等を引き起こした。治療的処置の非存在下では、Raji腫瘍負荷は約40日でマウスを死に至らしめた。
【0236】
3)動物実験操作
すべての動物操作は動物プロトコールの認可後に行われた。
【0237】
4)腫瘍成長をモニタリングするための手段
この実験では、基本的に、ルシフェラーゼ遺伝子を有する腫瘍細胞を動物中に注射して定着させることによる、in vivo蛍光イメージングを使用した。マウスにフルオレセインカリウム塩溶液を腹腔内注射したが、酵素の存在下で、フルオレセインカリウム塩溶液は基質として特定の波長を有する光を発し、in vivoにおける腫瘍細胞の蛍光シグナルをin vivoイメージングによって検出した。蛍光シグナルの定量分析を実施し、ヒートマップを描くことで腫瘍成長を定量的に反映させた。
【0238】
5)動物におけるT細胞活性及び増幅を検出するための方法
in vivoにおけるT細胞の生残及び増大を、T細胞の最終的な抗腫瘍効果に直接関連づける。動物におけるT細胞の活性及び増殖を検出するため、マウスから定期的に血液試料を採取し、末梢血中のSTAR-T細胞の割合、細胞状態及び細胞分類を分析した。具体的な操作は以下の通りであった:3~4日毎にマウスをイソフルランで麻酔し、約100uLの血液をマウスの眼窩から採取した。血液試料に抗凝固、血漿採取及び赤血球切断を施し、次いで、残留細胞をフロー染色に供して、CD8に対するCD4の比並びに分子、例えば、CCR7、CD45RA、PD-1、LAG-3及びTIM-3等を検出し、これらをT細胞サブセット分析及び細胞状態分析のために使用した。同時に、マウスの末梢血中のSTAR-T細胞の絶対数を、フローサイトメトリー又はデジタルPCRによって得た。さらに、実験の終了時に、マウスの他の免疫器官におけるT細胞の割合を検出するためにマウスを解剖することができる。
【0239】
6)動物におけるT細胞安全性を評価するための方法
STAR-T細胞の毒性及び安全性を評価するため、STAR-T細胞によって実験動物に副作用が引き起こされたかどうかを検討した。マウスの行動状態の観察、マウスの病理の分析、及びマウスの重要な器官から取った切片の分析により、再注入されたT細胞が顕著な毒性を有しているかどうかを評価することができた。同時に、マウスの非腫瘍組織におけるT細胞の浸潤を分析することにより、T細胞がマウスの非腫瘍組織に対してオフターゲットの殺滅効果を有するかどうかを決定することができる。さらに、マウス血におけるサイトカイン、例えば、IL-2、IFN-γ、TNFα又はIL-6等のレベルを検出することにより、T細胞が全身性サイトカインストームを引き起こし得るかどうかを決定することができる。
【0240】
7)T細胞腫瘍浸潤能力を評価するための方法
T細胞の腫瘍に浸潤する能力は、固形腫瘍を攻撃するための核となる能力である。T細胞の浸潤能力を検出するため、まずは腫瘍組織を分離し、その後消化及び粉砕することで単一細胞を得ることができ、腫瘍組織におけるT細胞の割合を検出するために単一細胞をフロー染色に供した。同時に、精製された腫瘍浸潤T細胞が得られるように、密度勾配遠心分離(例えば、パーコール勾配、フィコール勾配等)により、腫瘍懸濁液中の腫瘍細胞、腫瘍間質細胞及び免疫細胞をさらに分離することができ、これらの特徴、例えば、ケモカイン受容体発現、T細胞枯渇及びその他等を、配列決定及び他の方法によって詳細に分析することができる。
【0241】
8)結果
上記in vitro機能の結果に従い、5×10
5 個のRaji-ルシフェラーゼ腫瘍細胞を6~8週齢のNCG雌マウス中に尾静脈を介して接種してマウス腫瘍モデルを構築し(
図34)、αβOX40-STAR又はmut-STAR T細胞を発現するin vivo機能をさらに評価した。6日目に、腫瘍担持マウスを、A:PBS注射群(等体積のPBSを注射)、B:mut-STAR T細胞注射群、C:αβOX40-STAR T細胞注射群、D:BBz-CAR-T細胞注射群の4つの群に分けた。B/C/D群のマウスに尾静脈経由で5×10
5個のTCR T細胞を注射し、A群のマウスに200μLの等体積のPBSを注射した。その後の数週間で、腫瘍細胞成長、in vivoにおけるTCR T細胞増殖及びマウスの生残をモニタリングした。
図34及び35に示されるように、対照群と比較して、この実施例で構築されたαβOX40-STAR T及びmut-STAR T細胞は腫瘍担持マウスの生残時間を顕著に延長させることができるが、腫瘍が消失し異なる時点で腫瘍細胞をマウス中に再注入した後、αβOX40-STAR T及びmut-STAR Tは適切に腫瘍細胞を排除することができ、αβOX40-STAR Tの効果はmut-STAR Tの効果より良好であり、αβOX40-STAR T群におけるマウスの生残時間は、STAR-T群及びCAR-T群における生残時間より長かった。さらに、
図36に示されるように、STAR-T群と比較して、αβOX40-STAR T細胞のin vivo増殖効果はSTAR-T細胞のin vivo増殖効果より良好であり、腫瘍再注入の場合、αβOX40-STAR T細胞においてわずかな増殖が生じたが、これはSTAR-T細胞では生じなかった。
【0242】
上記の動物実験の結果により、αβOX40-STAR構造のin vitro及びin vivo効果は、mut-STARのin vitro及びin vivo効果より良好であったと見出すことができる。
【0243】
上記in vitro機能の結果に従い、2×10
6個のRaji-ルシフェラーゼ腫瘍細胞を6~8週齢のNCG雌マウス中に腹腔内接種してマウス腫瘍モデルを構築し(
図37)、異なる効果を発現しているmut-STAR T細胞のin vivo機能をさらに評価した。8日目に、腫瘍担持マウスを、A:PBS注射群(等体積のPBSを注射)、B:二重car、C:二重STAR-T細胞注射群、D:αβOX40-STAR T細胞注射群、E:α-del-OX40-STAR-T細胞注射群、F:α-del-(G4S)3-OX40-STAR-T細胞注射群、及びG:α-IL7R-STAR-T細胞注射群の7つの群に分けた。B/C/D/E/F/G群のマウスに尾静脈経由で2×10
6個のTCR T細胞を注射し、A群のマウスに200μLの等体積のPBSを注射した。その後の数週間で、腫瘍細胞成長、in vivoにおけるSTAR-T細胞増殖及びマウスの生残をモニタリングした。
図37に示されるように、対照群と比較して、この実施例で構築されたα-del-(G4S)3-OX40-STAR-T細胞は腫瘍担持マウスの腫瘍細胞を顕著に殺滅することができ、その効果は他の群より優れていた。動物実験の結果により、α-del-(G4S)3-OX40-STAR構造のin vitro及びin vivo効果は、mut-STARのin vitro及びin vivo効果より良好であったと見出すことができる。
【0244】
実施例2 STARに対する定常領域N末端改変の効果
1.STAR受容体定常領域ドメインの設計
この実施例では、hSTARは、ヒトTCR定常領域を含むSTARを指す。hmct STARは、実施例1で示されるように、システイン置換及び膜貫通ドメイン改変を有する定常領域を含むSTARを指す。マウスTCRα鎖定常領域はhmct STAR TCRα(配列番号41)であり、マウスTCRβ鎖定常領域はhmct STAR TCRb(配列番号6)であった。具体的な構造を
図38に示す。
【0245】
STAR分子の設計をさらに最適化するため、定常領域マウス化、α鎖定常領域におけるシステイン変異及び疎水性アミノ酸変異に基づいて、良好な結果が得られるようにSTAR分子の定常領域のN末端を特異的に再配置した。再配置とは、一部の配列を欠損させた一方、一部の配列のヒト化変異を実施したことを意味していた。ヒト化変異の重要性は、臨床適用時にSTAR-T細胞が受容体によって拒絶されるおそれを最大限に回避することができるように、STAR分子の機能を確保しつつも可能な限りSTAR分子中の非ヒト配列を減少させる点にある。
【0246】
アミノ酸分析に基づいて、TCRα鎖定常領域のN末端における18アミノ酸再配置(マウス配列はDIQNPEPAVYQLKDPRSQ)のスケジュールを実施し、マウス及びヒト化配列におけるE6D、K13R、R16K及びQ18Sが相同性アミノ酸置換に属し、P15S置換が非極性アミノ酸から極性アミノ酸への置換に属することが見出されたが、このため、このタンパク質は、この部位の近傍においてはまったく保存的ではなく、タンパク質の機能に影響を与えることなく改変することができたと考えることができる。まとめると、1~14位のアミノ酸配列を保持及びヒト化し、15~18位のアミノ酸を欠損させた。
【0247】
アミノ酸分析に基づいて、TCRβ鎖定常領域のN末端における25アミノ酸再配置(マウス配列はDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQK)のスケジュールを実施し、マウス及びヒト化配列におけるR3K及びL12Vのみが相同性アミノ酸置換であって、T6F、K9E、S11A、K17E、A21S、N22H及びK23Tが異種性アミノ酸置換であることが見出された。このため、タンパク質の特性は、これらの部位の近傍においてはまったく保存的ではなく、タンパク質の機能に影響を与えることなく改変することができたと考えることができる。まとめると、1~16位のアミノ酸配列を保持及びヒト化し、17及び21~25位のアミノ酸を欠損させた。
【0248】
N末端再配置後では、TCRα鎖定常領域はNrec STAR TCRa(配列番号42)であり、TCRβ鎖定常領域はNrec STAR TCRb(配列番号43)であった。具体的な構造を
図38に示す。
【0249】
2.STAR共刺激因子の設計
1)STARの異なる最適化方法の組合せ
各種STAR機能に対する共刺激因子の効果を検証するため、元の最適化されていないSTAR構造(ヒトTCRα/β STAR、hSTAR)と、C領域マウス化、システイン改変及び膜貫通改変を有するhSTARに基づくhmct STARと、N末端改変を有するhmct STARに基づくNrec STARとを選択した。
【0250】
2 共刺激因子を含むSTAR構造の設計
STAR-T細胞の毒性及びT細胞増殖持続性を増強するため、本発明に従い、ヒト化共刺激受容体のエンドドメイン配列をSTAR定常領域のC末端に導入して(
図39)、STAR-T細胞機能に対する影響を研究した。元の最適化されていないSTAR構造(ヒトTCRα/βSTAR、hSTAR)と、hSTARに基づくhmct STARと、N末端改変を有するhmct STARに基づくNrec STARとを、本発明のSTAR定常領域構造として選択した。共刺激シグナル伝達構造は、CD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB及びCD27の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでいた。本発明において、TCRα鎖、β鎖及びαβ鎖において改変が生じ得る。本発明において、
図40に示されるように、共刺激分子改変がTCRαβ鎖において生じた。
【0251】
3.CD19標的化FMC63-STAR-T機能
1)CD19標的化抗体配列の決定
公開されているscFv配列であるFMC63を、CD19標的化抗体重鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VH、配列番号44)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VL、配列番号45)のために選択した。
【0252】
2)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むベクターの構築
STARは2本のポリペプチド鎖、具体的には、抗CD19 FMC63-VLをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARそれぞれのTCRbC鎖と融合することによって形成された第1のポリペプチド鎖と、抗CD19 FMC63 VHをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARそれぞれのTCRaC鎖と融合することによって形成された第2のポリペプチド鎖とを含んでいた。GM-CSFRシグナルペプチドを両鎖において使用した。hSTAR/hmct STAR/Nrec STARの2本の鎖の配列を、フューリン-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片を介して連結し、転写し、タンパク質へと一体に翻訳し、次いで、フューリン及びp2Aの対応するプロテアーゼによって切断し、最終的に2本の独立したタンパク質鎖を生成した。制限エンドヌクレアーゼ部位であるNheI及びNotIを介して、遺伝子全体をレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF1αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子を用いて担持された。遺伝子断片のクローニング、アセンブル、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって、以下のプラスミドを得た:FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR、FMC63-Nrec STAR。
【0253】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:3つのCD19標的化STARベクターである、FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR及びFMC63-Nrec STARを元にして、これらにCD40、OX40、ICOS、CD28、41BB及びCD27を構築し、遺伝子合成によって上記配列を得た。PCR及び相同組換えによって同じ共刺激因子をTCRα及びβ鎖に同時に付加することにより、FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR及びFMC63-Nrec STARベクターに共刺激因子を付加した。最終的に、FMC63-hSTAR-CD40、FMC63-hSTAR-OX40、FMC63-hSTAR-ICOS、FMC63-hSTAR-CD28、FMC63-hSTAR-41BB、FMC63-hSTAR-CD27、FMC63-hmct STAR-CD40、FMC63-hmct STAR-OX40、FMC63-hmct STAR-ICOS、FMC63-hmct STAR-CD28、FMC63-hmct STAR-41BB、FMC63-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27を構築した。
【0254】
3)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むSTARの殺滅能力の検出
24ウェルプレート中で、未感染T細胞(NC群)、FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR、FMC63-Nrec STAR、FMC63-hSTAR-CD40、FMC63-hSTAR-OX40、FMC63-hSTAR-ICOS、FMC63-hSTAR-CD28、FMC63-hSTAR-41BB、FMC63-hSTAR-CD27、FMC63-hmct STAR-CD40、FMC63-hmct STAR-OX40、FMC63-hmct STAR-ICOS、FMC63-hmct STAR-CD28、FMC63-hmct STAR-41BB、FMC63-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27を、RAJI-luc細胞と24時間共培養した。合計1mLの共培養系で、RFP陽性率に従ってT細胞の陽性細胞数をそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数を4E5とした。24時間の共培養後、共培養した細胞を均一に混合し、150μLの懸濁液を吸い出し、70μLのルシフェラーゼ基質と共に添加し、暗所にて低速で10分間振盪した後、蛍光値を多機能マイクロプレートリーダーによって検出し、各群の標的細胞殺滅効果を計算した。その結果によれば、hSTARの殺滅効率はhmct STAR及びNrec STARの殺滅効率より有意に低く、それらのうち、Nrec STARが最も高かった。共刺激因子を含む同じSTARの結果によれば、OX40及びICOSがSTARの殺滅効果を有意に上昇させることができる一方、他の共刺激因子はSTARの殺滅能力に対して有意な効果を有さず、41BBはSTARの殺滅機能を低下させたが、有意差はなかった(
図41)。
【0255】
図4.CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むSTARの核RelBレベルの検出
以下のウイルスFMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR、FMC63-Nrec STAR、FMC63-hSTAR-CD40、FMC63-hSTAR-OX40、FMC63-hSTAR-ICOS、FMC63-hSTAR-CD28、FMC63-hSTAR-41BB、FMC63-hSTAR-CD27、FMC63-hmct STAR-CD40、FMC63-hmct STAR-OX40、FMC63-hmct STAR-ICOS、FMC63-hmct STAR-CD28、FMC63-hmct STAR-41BB、FMC63-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27を、MOI=1の力価でJurkat細胞に感染させ、感染の4日後、T細胞株及びCD19タンパク質を12ウェルプレート(2μg/mL、500μLを12ウェルプレート上に被覆し、4℃の冷蔵庫中に終夜放置した)中で共培養し、ここで、STAR-T細胞は4E6であり、標的細胞は2E5であった(1日前に標的細胞を12ウェルプレートに接種しておいた)。細胞を6時間培養し、次いで、採取して核タンパク質の抽出を行い、核RelBレベルについてのウエスタンブロッティングによって核タンパク質を検出した。その結果によれば、
図42に示されるように、共刺激因子のないFMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR及びFMC63-Nrec STAR群において核RelBレベルは非常に低く、未感染STAR-T群と一致し、共刺激因子を付加後、CD28を除く他の共刺激因子は核RelBレベルを有意に増加させ、その中でも、41BBは核RelBレベルを最も改善した。
【0256】
4.CD19標的化334-STAR-T機能
1)CD19標的化抗体配列の決定
本発明によって開発された334抗体配列を、CD19標的化抗体重鎖可変領域(抗CD19 334-VH、配列番号46)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD19 334-VL、配列番号47)のために選択した。
【0257】
2)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むベクターの構築
STARは2本のポリペプチド鎖、具体的には、抗CD19 334-VLをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARそれぞれのTCRbC鎖と融合することによって形成された第1のポリペプチド鎖と、抗CD19 334 VHをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARそれぞれのTCRaC鎖と融合することによって形成された第2のポリペプチド鎖とを含んでいた。GM-CSFRシグナルペプチドを両鎖において使用した。hmct STAR/Nrec STARの2本の鎖の配列を、フューリン-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片を介して連結し、転写し、タンパク質へと一体に翻訳し、次いで、フューリン及びp2Aの対応するプロテアーゼによって切断し、最終的に2本の独立したタンパク質鎖を生成した。制限エンドヌクレアーゼ部位であるNheI及びNotIを介して、遺伝子全体をレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF1αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子を用いて担持された。遺伝子断片のクローニング、アセンブル、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって、以下のプラスミドを得た:334-hmct STAR、334-Nrec STAR。
【0258】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:CD19標的化STARベクターである334-hmct STAR及び334-Nrec STARを元にして、これらに共刺激因子OX40を構築し、遺伝子合成によって上記配列を得た。PCR及び相同組換えによって同じ共刺激因子をTCRα及びβ鎖に同時に付加することにより、334-hmct STAR及び334-Nrec STARベクターに共刺激因子を付加した。最終的に、334-hmct STAR-OX40及び334-Nrec STAR-OX40を構築した。
【0259】
3)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むSTARの殺滅能力の検出
24ウェルプレート中で、未感染T細胞(NC群)、334-hmct STAR、334-Nrec STAR、334-hmct STAR-OX40及び334-Nrec STAR-OX40を、RAJI-luc細胞と24時間共培養した。合計1mLの共培養系で、RFP陽性率に従ってT細胞の陽性細胞数をそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数を4E5とした。24時間の共培養後、共培養した細胞を均一に混合し、150μLの懸濁液を吸い出し、70μLのルシフェラーゼ基質と共に添加し、暗所にて低速で10分間振盪した後、蛍光値を多機能マイクロプレートリーダーによって検出し、各群の標的細胞殺滅効果を計算した。その結果は、hmct STAR及びNrec STARと比較して、OX40は殺滅効率を顕著に増加させることができることを示した。さらに、OX40はSTAR-T細胞の増殖能力及び核RelBレベルを顕著に増加させることができる。
図43を参照されたい。
【0260】
5 CD19及びCD20標的化STAR-T機能
1)CD19及びCD 20標的化抗体配列の決定
CD19標的化抗体重鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VH、配列番号44)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VL、配列番号45);CD20標的化抗体重鎖可変領域(抗CD20 2C6-VH、配列番号54)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD20 2C6-VL、配列番号55)。
【0261】
2)CD19及びCD20標的化STAR並びに共刺激因子を含むベクターの構築
STARは2本のポリペプチド鎖、具体的には、抗CD20 2C6 VL-(G4S)3-VHをhmct STAR/Nrec STARそれぞれのTCRbC鎖と融合することによって形成された第1のポリペプチド鎖と、抗CD19 FMC63 VL-(G4S)3-VHをhmct STAR/Nrec STARそれぞれのTCRaC鎖と融合することによって形成された第2のポリペプチド鎖とを含んでいた。GM-CSFRシグナルペプチドを両鎖において使用した。hmct STAR/Nrec STARの2本の鎖の配列を、フューリン-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片を介して連結し、転写し、タンパク質へと一体に翻訳し、次いで、フューリン及びp2Aの対応するプロテアーゼによって切断し、最終的に2本の独立したタンパク質鎖を生成した。制限エンドヌクレアーゼ部位であるNheI及びNotIを介して、遺伝子全体をレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF1αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子を用いて担持された。遺伝子断片のクローニング、アセンブル、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって、以下のプラスミドを得た:FMC63-2C6-hmct STAR及びFMC63-2C6-Nrec STAR。
【0262】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:CD19及びCD20標的化STARベクターであるFMC63-2C6-hmct STAR及びFMC63-2C6-Nrec STARを元にして、これらに共刺激因子OX40を構築し、遺伝子合成によって上記配列を得た。PCR及び相同組換えによって同じ共刺激因子をTCRα及びβ鎖に同時に付加することにより、FMC63-2C6-hmct STAR及びFMC63-2C6-Nrec STARベクターに共刺激因子を付加した。最終的に、FMC63-2C6-hmct STAR-OX40及びFMC63-2C6-Nrec STAR-OX40を構築した。
【0263】
3)CD19及びCD20標的化STAR並びに共刺激因子を含むSTARの殺滅能力の検出
24ウェルプレート中で、未感染T細胞(NC群)、FMC63-2C6-hmct STAR、FMC63-2C6-Nrec STAR、FMC63-2C6-hmct STAR-OX40及びFMC63-2C6-Nrec STAR-OX40を、RAJI-luc細胞と24時間共培養した。合計1mLの共培養系で、RFP陽性率に従ってT細胞の陽性細胞数をそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数を4E5とした。24時間の共培養後、共培養した細胞を均一に混合し、150μLの懸濁液を吸い出し、70μLのルシフェラーゼ基質と共に添加し、暗所にて低速で10分間振盪した後、蛍光値を多機能マイクロプレートリーダーによって検出し、各群の標的細胞殺滅効果を計算した。その結果は、hmct STAR及びNrec STARと比較して、OX40は殺滅効率を顕著に増加させることができることを示した。さらに、OX40はSTAR-T細胞の増殖能力及び核RelBレベルを顕著に増加させることができる。
図44を参照されたい。
【0264】
4)共刺激因子をTCRα鎖のみに付加した場合におけるCD19及びCD20標的化STARの増殖能力の改善
抗CD20 2C6 VL-(G4S)3-VH をhmct STAR構造のTCRβC(配列番号6)と融合することによって第1のポリペプチド鎖を形成し、抗CD19 FMC63 VL-(G4S)3-Vを、天然のエンドドメインが欠損し、OX40共刺激ドメインが定常領域のC末端に付加したhmct STARのTCRαC定常領域(配列番号26)と融合することによって第2のポリペプチド鎖を形成した。GM-CSFRシグナルペプチドを両鎖において使用した。STARの2本の鎖の配列を、フューリン-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片を介して連結し、転写し、タンパク質(配列番号58)へと一体に翻訳し、次いで、フューリン及びp2Aの対応するプロテアーゼによって切断し、最終的に2本の独立したタンパク質鎖を生成した。このように、共刺激因子がTCRα鎖のみにリンクしたCD19及びCD20標的化STARを得た:a(G4S)
3OX40。このようなSTARと、共刺激因子がTCRα鎖とTCRβ鎖の両方にリンクしたCD19及びCD20標的化hmct STAR abOX40の間で、殺滅及び増殖能力の比較を行った。結果を
図45に示した。a(G4S)
3OX40はabOX40より優れている。
【0265】
[配列表]
配列番号1 野生型ヒトTCRα定常領域のアミノ酸配列
DIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS*
配列番号2 野生型ヒトTCRβ定常領域のアミノ酸配列
DLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVK RKDF*
配列番号3 野生型マウスTCRα定常領域のアミノ酸配列
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号4 野生型マウスTCRβ定常領域のアミノ酸配列
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号5 システイン置換を有するマウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRaC-Cys)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号6 システイン置換を有するマウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRβC-Cys)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号7 疎水性アミノ酸置換を有するマウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRaC-TM9)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号8 膜貫通ドメインにおいてシステイン置換を有するマウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRaC-Arg mut)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLRVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号9 膜貫通ドメイン及びエンドドメインにおいてシステイン置換を有するマウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウス TCRβC-Arg mut)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGRATLYAVLVSTLVVMAMVRRRNS
配列番号10 CD40エンドドメインのアミノ酸配列
KKVAKKPTNKAPHPKQEPQEINFPDDLPGSNTAAPVQETLHGCQPVTQEDGKESRISVQERO
【0266】
配列番号11 OX40エンドドメインのアミノ酸配列
RRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI
配列番号12 ICOSエンドドメインのアミノ酸配列
KKKYSSSVHDPNGEYMFMRAVNTAKKSRLTDVTL
配列番号13 CD28エンドドメインのアミノ酸配列
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
配列番号14 4-1BBエンドドメインのアミノ酸配列
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
配列番号15 CD27エンドドメインのアミノ酸配列
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCRYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
配列番号16 G4Sリンカーのアミノ酸配列
GGGGS
配列番号17 (G4S)2リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGS
配列番号18 (G4S)3リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGS
配列番号19 (G4S)4リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号20 (G4S)5リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
【0267】
配列番号21 (G4S)6リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号22 (G4S)7リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号23 (G4S)8リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号24 (G4S)9リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号25 (G4S)10リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号26 システイン置換及び疎水性改変を有するエンドドメイン欠損マウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRαC-del mut)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLW
配列番号27 システイン置換を有するエンドドメイン欠損マウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRβC-del mut)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAM
配列番号28 ヒトCD3γのアミノ酸配列
MEQGKGLAVLILAIILLQGTLAQSIKGNHLVKVYDYQEDGSVLLTCDAEAKNITWFKDGKMIGFLTEDKKKWNLGSNAKDPRGMYQCKGSQNKSKPLQVYYRMCQNCIELNAATISGFLFAEIVSIFVLAVGVYFIAGQDGVRQSRASDKQTLLPNDQLYQPLKDREDDQYSHLQGNQLRRN
配列番号29 ヒトCD3δのアミノ酸配列
MEHSTFLSGLVLATLLSQVSPFKIPIEELEDRVFVNCNTSITWVEGTVGTLLSDITRLDLGKRILDPRGIYRCNGTDIYKDKESTVQVHYRMCQSCVELDPATVAGIIVTDVIATLLLALGVFCFAGHETGRLSGAADTQALLRNDQVYQPLRDRDDAQYSHLGGNWARNK
配列番号30 ヒトCD3εのアミノ酸配列
MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI
【0268】
配列番号31 ヒトCD3ζのアミノ酸配列
MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号32 ヒトIL-2β受容体エンドドメインのアミノ酸配列
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
配列番号33 ヒトIL-7α受容体エンドドメインのアミノ酸配列
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
配列番号34 ヒトIL-21受容体エンドドメインのアミノ酸配列
SLKTHPLWRLWKKIWAVPSPERFFMPLYKGCSGDFKKWVGAPFTGSSLELGPWSPEVPSTLEVYSCHPPRSPAKRLQLTELQEPAELVESDGVPKPSFWPTAQNSGGSAYSEERDRPYGLVSIDTVTVLDAEGPCTWPCSCEDDGYPALDLDAGLEPSPGLEDPLLDAGTTVLSCGCVSAGSPGLGGPLGSLLDRLKPPLADGEDWAGGLPWGGRSPGGVSESEAGSPLAGLDMDTFDSGFVGSDCSSPVECDFTSPGDEGPPRSYLRQWVVIPPPLSSPGPQAS
配列番号35 ヒトSTAT5活性化部分のアミノ酸配列
YRHQ
配列番号36 ヒトIL-2β受容体エンドドメイン及びヒトSTAT5活性化部分のアミノ酸配列
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLVGGGGSYRHQ
配列番号37 ヒトIL-7α受容体エンドドメイン及びヒトSTAT5活性化部分のアミノ酸配列
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQGGGGSYRHQ
配列番号38 抗CD20 OFA ScFvのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTRLEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFNDYAMHWVRQAPGKGLEWVSTISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKKSLYLQMNSLRAEDTALYYCAKDIQYGNYYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号39 抗CD19 FMC63 ScFvのアミノ酸配列
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS
配列番号40 赤色蛍光タンパク質のアミノ酸配列
MASSEDVIKEFMRFKVRMEGSVNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFAWDILSPQFQYGSKAYVKHPADIPDYLKLSFPEGFKWERVMNFEDGGVVTVTQDSSLQDGEFIYKVKLRGTNFPSDGPVMQKKTMGWEASTERMYPEDGALKGEIKMRLKLKDGGHYDAEVKTTYMAKKPVQLPGAYKTDIKLDITSHNEDYTIVEQYERAEGRHSTGA*
【0269】
配列番号41 マウスTCRaC-Cys-TM9(hmct STAR TCRaC)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号42 マウスTCRaC-Cys-TM9-N.Rec(Nrec STAR TCRaC)
DIQNPDPAVYQLRDDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号43 N末端改変及びシステイン置換を有するマウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRbC-Cys-N.Rec、Nrec STAR TCRbC)
DLKNVFPPEVAVFEPSAEIATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号44 抗CD19 FMC63 VH
EVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS
配列番号45 抗CD19 FMC63 VL
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIT
配列番号46 抗CD19 334 VH
QVQLQQSGAELVRPGASVKLSCKALGFIFTDYEIHWVKQTPVHGLEWIGAFHPGSGGSAYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMELSSLTFEDSAVYHCTRQLGPDWGQGTLVTVS
配列番号47 抗CD19 334 VL
DVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLESDGKTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLRISRVEAEDLGVYYCWQGTQFPWTFGGGTKLEIK
配列番号48 膜貫通ドメインにおいてN末端改変、システイン置換及び疎水性改変を有するエンドドメイン欠損マウスT細胞受容体α鎖定常領域
DIQNPDPAVYQLRDDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLW
配列番号49 N末端改変及びシステイン置換を有するエンドドメイン欠損マウスT細胞受容体β鎖定常領域
DLKNVFPPEVAVFEPSAEIATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAM
配列番号50 野生型ヒトTCRγ鎖定常領域のアミノ酸配列:
DKQLDADVSPKPTIFLPSIAETKLQKAGTYLCLLEKFFPDVIKIHWQEKKSNTILGSQEGNTMKTNDTYMKFSWLTVPEKSLDKEHRCIVRHENNKNGVDQEIIFPPIKTDVITMDPKDNCSKDANDTLLLQLTNTSAYYMYLLLLLKSVVYFAIITCCLLRRTAFCCNGEKS
【0270】
配列番号51 野生型マウスTCRγ鎖定常領域のアミノ酸配列:
XKRLDADISPKPTIFLPSVAETNLHKTGTYLCLLEKFFPDVIRVYWKEKDGNTILDSQEGDTLKTNDTYMKFSWLTVPERAMGKEHRCIVKHENNKGGADQEIFFPSIKKVAVSTKPTTCWQDKNDVLQLQFTITSAYYTYLLLLLKSVIYLAIISFSLLRRTSVCGNEKKS
配列番号52 野生型ヒトTCRδ鎖定常領域のアミノ酸配列:
XSQPHTKPSVFVMKNGTNVACLVKEFYPKDIRINLVSSKKITEFDPAIVISPSGKYNAVKLGKYEDSNSVTCSVQHDNKTVHSTDFEVKTDSTDHVKPKETENTKQPSKSCHKPKAIVHTEKVNMMSLTVLGLRMLFAKTVAVNFLLTAKLFFL*
配列番号53 野生型マウスTCRδ鎖定常領域のアミノ酸配列
XSQPPAKPSVFIMKNGTNVACLVKDFYPKEVTISLRSSKKIVEFDPAIVISPSGKYSAVKLGQYGDSNSVTCSVQHNSETVHSTDFEPYANSFNNEKLPEPENDTQISEPCYGPRVTVHTEKVNMMSLTVLGLRLLFAKTIAINFLLTVKLFF*
配列番号54 抗CD20 2C6 VH
AVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFGDYTMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCTKDNQYGSGSTYGLGVWGQGTLVTVSS
配列番号55 抗CD20 2C6 VL
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGGGTKVEIK
配列番号56 抗CD20 OFA VH
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配列番号57 抗CD20 OFA VL
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTRLEIK
配列番号58 CD19及びCD20標的化a(G4S)3OX40
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGGGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSAVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFGDYTMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCTKDNQYGSGSTYGLGVWGQGTLVTVSSEDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNSRRKRSGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSDIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWGGGGSGGGGSGGGGSRRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI*
配列番号59 CD19及びCD20標的化a(G4S)3OX40のTCRα鎖
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSDIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWGGGGSGGGGSGGGGSRRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI
配列番号60 CD19及びCD20標的化a(G4S)3OX40のTCRβ鎖
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGGGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSAVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFGDYTMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCTKDNQYGSGSTYGLGVWGQGTLVTVSSEDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
【配列表】
【国際調査報告】