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特表2023-527034アルミノゲルマノケイ酸塩分子ふるいSSZ-121、その合成及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】アルミノゲルマノケイ酸塩分子ふるいSSZ-121、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20230619BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20230619BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J20/18 A
B01J20/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572659
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 IB2021053286
(87)【国際公開番号】W WO2021240261
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/030,982
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G066AA21A
4G066AA61B
4G066AB10D
4G066BA26
4G066CA56
4G066FA21
4G066FA22
4G066FA34
4G066FA37
4G073BA02
4G073BA64
4G073BA69
4G073BA75
4G073BA80
4G073BB14
4G073BB44
4G073BB48
4G073BD21
4G073CZ05
4G073CZ41
4G073CZ56
4G073FB30
4G073FD05
4G073FD21
4G073GA01
4G073GA03
4G073UA03
(57)【要約】
SSZ-121と称する新規の合成結晶性アルミノゲルマノケイ酸塩分子ふるい材料を提供する。SSZ-121は、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを構造指向剤として使用して合成することができる。SSZ-121は、有機化合物変換反応及び/または収着プロセスにおいて使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その焼成形態において、少なくとも次の2θ散乱角:6.5±0.2、9.5±0.2、13.0±0.2、18.5±0.2、19.8±0.2、21.2±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.5±0.2、28.5±0.2、及び30.0±0.2度の2θの粉末X線回折パターンを有する分子ふるい。
【請求項2】
モル関係:
Al:(n)(SiO+GeO
(式中、n≧30)
を含む組成を有する請求項1に記載の分子ふるい。
【請求項3】
モル関係:
Al:(n)(SiO+GeO
(式中、n≧50)
を含む組成を有する請求項1に記載の分子ふるい。
【請求項4】
その合成されたままの形態において、少なくとも次の2θ散乱角:6.3±0.2、7.0±0.2、9.5±0.2、13.0±0.2、16.0±0.2、18.5±0.2、19.8±0.2、21.2±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.5±0.2、28.5±0.2、及び30.0±0.2度2θの粉末X線回折パターンを有する分子ふるい。
【請求項5】
以下のモル関係:
【表2A】

(表中、Qは、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンである)
を含む化学組成を有する請求項4に記載の分子ふるい。
【請求項6】
以下のモル関係:
【表2B】

(表中、Qは、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンである)
を含む化学組成を有する請求項4に記載の分子ふるい。
【請求項7】
請求項4に記載の分子ふるいを合成する方法であって、
(1)
(a)FAU骨格型ゼオライト、
(b)ゲルマニウムの供給源、
(c)1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤、
(d)フッ化物イオンの供給源、及び
(e)水、を含む反応混合物を提供すること、ならびに
(2)前記反応混合物を、前記分子ふるいの結晶を形成する上で十分な結晶化条件に供すること、を含む前記方法。
【請求項8】
前記反応混合物が、モル比換算で、以下の組成:
【表1A】

を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、モル比換算で、以下の組成:
【表1B】

を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記FAU骨格型ゼオライトが、ゼオライトYである請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶化条件が、100℃~200℃の温度を含む請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物が、0.8~1.2の範囲のQ/Fのモル比を有する請求項7に記載の方法。
【請求項13】
有機化合物を含む原料を変換産物に変換するプロセスであって、前記原料を、有機化合物変換条件下で、請求項1に記載の分子ふるいを含む触媒と接触させることを含む、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月27日出願の米国仮出願第63/030,982号に対する優先権とその利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、SSZ-121と称する新規の合成結晶性アルミノゲルマノケイ酸塩分子ふるい、その合成、ならびに、有機化合物変換反応及び収着プロセスでのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
分子ふるいは、商業的に重要な部類の材料であり、明確なX線回折パターンを示し、かつ特定の化学組成を有する明確な細孔構造を持った独特の結晶構造を有する。この結晶構造は、特定のタイプの分子ふるいに特徴的な空洞と細孔を定める。
【0004】
本開示では、SSZ-121と称する新規の結晶性アルミノゲルマノケイ酸塩分子ふるいを、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを構造指向剤として使用して合成する。
【発明の概要】
【0005】
概要
第1の態様では、その合成されたままの形態において、少なくとも次の2θ散乱角:6.3±0.2、7.0±0.2、9.5±0.2、13.0±0.2、16.0±0.2、18.5±0.2、19.8±0.2、21.2±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.5±0.2、28.5±0.2、及び30.0±0.2度2θ、の粉末X線回折パターンを有する分子ふるいを提供する。
【0006】
その合成されたままの形態で、かつ無水形態において、分子ふるいは、以下のモル関係:
【表2】

を含む化学組成を有することができ、表中、Qは、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを含む。
【0007】
第2の態様では、その焼成形態において、少なくとも次の2θ散乱角:6.5±0.2、9.5±0.2、13.0±0.2、18.5±0.2、19.8±0.2、21.2±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.5±0.2、28.5±0.2、及び30.0±0.2度2θの粉末X線回折パターンを有する分子ふるいを提供する。
【0008】
その焼成形態において、分子ふるいは、以下のモル関係:
Al:(n)(SiO+GeO
を含む化学組成を有することができ、式中、n≧30である。
【0009】
第3の態様では、本明細書に記載した分子ふるいを合成する方法を提供しており、当該方法は、(1)(a)FAU骨格型ゼオライト、(b)ゲルマニウムの供給源、(c)1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤、(d)フッ化物イオンの供給源、及び(e)水を含む反応混合物を提供すること、ならびに(2)当該反応混合物を、当該分子ふるいの結晶を形成する上で十分な結晶化条件に供することを含む。
【0010】
第4の態様では、有機化合物を含む原料を変換産物に変換するプロセスを提供しており、当該プロセスは、当該原料を、有機化合物変換条件下で、本明細書に記載した分子ふるいを含む触媒と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記述
図1】例1の合成されたままの分子ふるいの粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0012】
図2】例1の合成されたままの分子ふるいの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0013】
図3】例5のオゾン処理分子ふるいの粉末XRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
定義
「骨格型」という用語は、“Atlas of Zeolite Framework Types”by Ch. Baerlocher, L.B. McCusker and D.H. Olsen (Elsevier, Sixth Revised Edition, 2007)に記載されている意味を有する。
【0015】
「ゼオライト」という用語は、アルミナ及びシリカから構成した骨格(すなわち、AlO及びSiO四面体単位の繰り返し)を有する合成アルミノシリケート分子ふるいのことを指す。
【0016】
「アルミノゲルマノケイ酸塩」という用語は、AlO、GeO、及びSiO四面体単位から構成した骨格を有する分子ふるいのことを指す。アルミノゲルマノケイ酸塩は、指定した酸化物だけを含み得る、その場合は、「純粋なアルミノゲルマノケイ酸塩」と記載する、または、その他のさらなる酸化物も含み得る。
【0017】
「合成されたままの」という用語は、構造指向剤を除去する前に、結晶化した後のその形態の分子ふるいを指すために使用する。
【0018】
「無水」という用語は、物理的に吸着した水と、化学的に吸着した水の両方を実質的に欠く分子ふるいを指すために使用する。
【0019】
分子ふるいの合成
分子ふるいSSZ-121は、(1)(a)FAU骨格型ゼオライト;(b)ゲルマニウムの供給源;(c)1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造指向剤;(d)フッ化物イオンの供給源;及び(e)水、を含む反応混合物を提供する、及び(2)当該反応混合物を、当該分子ふるいの結晶を形成する上で十分な結晶化条件に供する、ことで合成することができる。
【0020】
反応混合物は、モル比換算で、表1に記載の範囲内の組成:
【表1】

を有することができ、表中、Qは、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを含む。
【0021】
FAU骨格型ゼオライトは、アンモニウム型ゼオライトまたは水素型ゼオライトとすることができる。FAU骨格型ゼオライトとして、例えば、ゼオライトY(例えば、CBV720、CBV760、CBV780、HSZ-HUA385、及びHSZ-HUA390)がある。ゼオライトYは、30~500の範囲のSiO/Alモル比を有する。FAU骨格型ゼオライトは、2種以上のゼオライトを含むことができる。2つ以上のゼオライトは、異なるシリカ対アルミナのモル比を有するYゼオライトとすることができる。FAU骨格型ゼオライトは、アルミノゲルマノケイ酸塩分子ふるいを形成する唯一の、または主要なシリカ及びアルミニウム供給源になることができる。一部の態様では、他のケイ素の供給源を加え得る。他のケイ素の供給源として、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩、及びテトラアルキルオルトケイ酸塩がある。
【0022】
ゲルマニウムの好適な供給源として、酸化ゲルマニウム、及びゲルマニウムアルコキシド(例えば、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムイソプロポキシド)がある。
【0023】
ケイ素及びゲルマニウムは、4~12(例えば、6~10)のSiO/GeOモル比で反応混合物中に存在し得る。
【0024】
フッ化物イオンの好適な供給源として、フッ化水素、フッ化アンモニウム、及び二フッ化アンモニウムがある。
【0025】
構造指向剤は、以下の構造(1):
【化1】

で表される、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオン(Q)を含む。
【0026】
Qの適切な供給源は、第四級アンモニウム化合物の水酸化物、塩化物、臭化物、及び/またはその他の塩である。
【0027】
反応混合物は、0.80~1.20の範囲(例えば、0.85~1.15、0.90~1.10、0.95~1.05、または1対1)のQ/Fモル比を有することができる。
【0028】
反応混合物は、反応混合物の0.01~10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で、SSZ-121など、前の合成からの分子ふるい材料のシードを含むことができる。シーディングは、完全な結晶化を起こすために必要な時間を短縮する上で有利である。加えて、シーディングは、望ましくないあらゆる相全体にSSZ-121の核生成及び/または形成を促して得られる生成物の純度を高めることができる。
【0029】
反応混合物成分は、複数の供給源から供給できることに留意されたい。また、2つ以上の反応成分を、1つの供給源から提供することができる。反応混合物は、バッチ式または連続式のいずれかで調製することができる。
【0030】
結晶化と合成後の処理
上記の反応混合物からの分子ふるいの結晶化は、適切な反応器容器内(例えば、ポリプロピレンジャーまたはTeflonライニングしたオートクレーブまたはステンレス鋼製オートクレーブ)において、100℃~200℃(例えば、150℃~175℃)の温度で、使用した温度で結晶化を起こす上で十分な時間(例えば、1日間~14日間、または、2日間~10日間)にわたって、静的、タンブル、または撹拌条件下のいずれかで実施することができる。水熱結晶化プロセスは、通常、オートクレーブ内などの圧力下で、好ましくは自生加圧下で行われる。
【0031】
分子ふるい結晶が形成すると、遠心分離または濾過などの標準的な機械的分離技術によって、固形生成物が反応混合物から回収される。次に、回収した結晶を水洗した後に、乾燥して、合成されたままの分子ふるい結晶を得る。乾燥工程は、高温(例えば、75℃~150℃)で、数時間(例えば、約4~24時間)行うことができる。乾燥工程は、真空下または大気圧下で行うことができる。
【0032】
結晶化プロセスの結果として、回収した結晶性分子ふるい生成物は、合成に用いた構造指向剤の少なくとも一部を、その細孔構造内に含む。
【0033】
合成されたままの分子ふるいは、その合成に使用した構造指向剤の一部または全部を除去するための処理にも供し得る。これは、合成されたままの材料を、少なくとも約370℃の温度で、少なくとも1分間、一般的には、20時間以内で加熱する熱処理(すなわち、焼成)によって実施することができて利便性が良い。熱処理には大気圧未満で使用することもできるが、利便性の理由で大気圧が望ましい。熱処理は、最大約925℃までの温度で実施することができる。熱処理は、空気、窒素、またはこれらの混合物から選択した雰囲気下で行い得る。例えば、熱処理は、空気中で、400℃~600℃の温度で、約3~8時間かけて実施し得る。あるいは、構造指向剤Qを、オゾン処理で除去することができる。オゾン処理は、オゾンの存在下で、合成されたままの分子ふるいを加熱することを含み得る、そして、そのような加熱は、50℃~350℃(例えば、100℃~300℃、または125℃~250℃)の温度とし得る。
【0034】
分子ふるい内の骨格外にある金属カチオンは、当該技術分野で周知の技術に従って(例えば、イオン交換によって)、その他のカチオンで置換することができる。置換カチオンは、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えば、アンモニウム)イオン、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0035】
分子ふるいの特徴決定
合成されたままの無水形態では、分子ふるいSSZ-121は、表2に記載する、以下のモル関係を含む化学組成:
【表2】

を有することができ、表中、Qは、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを含む。一部の態様では、分子ふるいは、4~12(例えば、6~10)の範囲のSiO/GeOモル比を有することができる。
【0036】
その焼成形態では、分子ふるいSSZ-121は、以下のモル関係:
Al:(n)(SiO+GeO
を含む化学組成を有することができ、式中、n≧30(例えば、30~500、30~250、30~150、≧50、50~250、または50~150)である。
【0037】
合成されたままの形態において、分子ふるいSSZ-121は、少なくとも次の2θ散乱角:6.3±0.2、7.0±0.2、9.5±0.2、13.0±0.2、16.0±0.2、18.5±0.2、19.8±0.2、21.2±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.5±0.2、28.5±0.2、及び30.0±0.2度2θを有する粉末X線回折パターンを示す。その焼成形態において、分子ふるいSSZ-121は、少なくとも次の2θ散乱角:6.5±0.2、9.5±0.2、13.0±0.2、18.5±0.2、19.8±0.2、21.2±0.2、24.0±0.2、25.0±0.2、26.5±0.2、28.5±0.2、及び30.0±0.2度の2θを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0038】
本明細書で提供する粉末X線回折パターンは、標準的な技術で収集した。放射線は、CuKα放射線であった。ピークの高さと位置は、θがBragg角である2θの関数として、複数のピークの相対強度(バックグラウンドに関して調整したもの)から読み取りを行い、記録した線に対応する面間隔であるdを計算することができる。
【0039】
回折パターンのわずかな変動は、格子定数の変化に起因する試料の骨格種のモル比の変動から生じる。加えて、無秩序な材料、及び/または十分に小さな結晶は、ピークの形状と強度に影響を与え、ピークを顕著に広げ得る。回折パターンのわずかな変動は、調製に使用した有機化合物の変動からも生じる。また、焼成は、XRDパターンにわずかなシフトを引き起こすことがある。これらの小さな攪乱があっても、基本的な結晶格子構造は焼成後も変化しない。
【0040】
産業上の利用可能性
分子ふるいSSZ-121(構造指向剤の一部または全部は除去されている)は、現在の商業的/産業的重要性の多くを含む多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒するための収着剤または触媒として使用し得る。単独で、またはその他の結晶性触媒を含む1種以上のその他の触媒活性物質と組み合わせてSSZ-121が効果的に触媒する化学変換プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするものがある。SSZ-121が触媒し得る有機変換プロセスの例には、芳香族化、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化がある。
【0041】
多くの触媒の場合のように、有機変換プロセスで使用する温度及びその他の条件に耐性のある別の材料とともにSSZ-121を組み込むことが望ましくなり得る。そのような材料には、活性及び不活性材料、ならびに合成または天然に存在するゼオライト、ならびに粘土、シリカ及び/またはアルミナなどの金属酸化物のような無機材料が含まれる。後者は、天然に存在するか、または、シリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン状沈殿物またはゲルの形態かのいずれかであり得る。活性であるSSZ-121と組み合わせた(すなわち、それと組み合わせて、または新規の材料の合成中に存在する)材料の使用は、特定の有機変換プロセスにおける触媒の変換及び/または選択性を変える傾向がある。不活性材料は、所与のプロセスにおける変換量を制御するための希釈剤として適切に機能し、反応速度を制御するためのその他の手段を使用することなく、経済的かつ秩序立った様式で生成物を得ることができるようになっている。これらの材料は、天然の粘土(例えば、ベントナイト及びカオリン)に組み込まれ、商業的操作条件下での触媒の破砕強度を改善することができる。これらの材料(すなわち、粘土、酸化物など)は、触媒の結合剤として機能する。商業的使用においては、触媒が粉末状の材料に分解するのを防ぐことが望ましいことから、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土及び/または酸化物の結合剤は、通常、触媒の破砕強度を改善する目的でのみ使用する。
【0042】
SSZ-121と複合することができる天然粘土として、モンモリロナイト及びカオリンファミリーがあり、これらのファミリーは、サブベントナイト、それに、通称、Dixie、McNamee、Georgia、及びFlorida粘土と称するものなど、主な鉱物成分が、ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナキサイトであるカオリンファミリーがある。このような粘土は、元々の採掘したままの状態で、または最初に焼成、酸処理、または化学修飾に供したままの状態で使用することができる。また、SSZ-121との複合に有用な結合剤として、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの混合物などの無機酸化物がある。
【0043】
上記の材料に加えて、SSZ-121は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔質マトリックス材料、ならびに、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、及びシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物と、複合化することができる。
【0044】
SSZ-121及び無機酸化物マトリックスの相対的な割合は、複合体の1~90重量%(例えば、2~80重量%)の範囲のSSZ-121含有量で、大きく変化し得る。
【0045】

以下の例示的な例は、非限定的であることを意図している。
【0046】
例1
SSZ-121の合成
風袋重量を差し引いた23mL Parr反応器に、0.27gのTosoh HSZ-390HUA Y-ゼオライト(SiO/Alモル比=500)、0.05gのGeO、及び2.5mmolの水性1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムヒドロキシド溶液を添加した。次いで、反応器を、通気フードに入れ、そして、水を蒸発させて、HO/(SiO+GeO)モル比を、7にした(懸濁液の全質量によって決定した)。そうした後に、2.5mmolのHFを加え、反応器を43rpmで、約7日間、タンブルさせながら、160℃に加熱した。固形生成物を遠心分離で回収し、イオン交換水で洗浄し、そして、95℃で乾燥させた。
【0047】
生成物の粉末XRDは、図1に示すパターンを示し、そして、生成物が、純粋形態の新規の相、SSZ-121であることを示した。小さな結晶サイズは、粉末XRDパターンでのピーク広がりから推察される。
【0048】
図2は、生成物のSEM画像を示しており、生成物が、均一の小さな棒状物を含むことが認められる。
【0049】
例2
SSZ-121の焼成
例1の合成されたままの分子ふるいを、マッフル炉内で、550℃に加熱した空気流下で、1℃/分の速度で焼成し、そして、550℃で、5時間保持し、冷却した後に、粉末XRDで分析した。
【0050】
窒素物理吸着のt-プロット法による焼成物の分析は、この試料のミクロ細孔容積が、0.144cm/gであることを示した。
【0051】
例3
アゾジカルボン酸ジイソプロピルの取り込み
SSZ-121のミクロ細孔の特徴決定を、発色団アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)の取り込みを、L-T. Yuen et al. (Micropor. Mater. 1997, 12, 229-249)に記載された方法に従って、分光光度で評価した。分子ふるいは、それらの水素形態で使用した。
【0052】
それぞれの分子ふるいを、染料中で2000psiまでの圧力を負荷し、次に、ペレットを破砕し、そして、メッシュ(24~40)で分けてから、使用直前に、575°Fの炉で2~4時間かけて乾燥させた。試料を取り出し、デシケーターに入れ、そして、放冷した。メッシュで分けた材料(60mg)を直ちに計量し、そして、事前に調整した分光システムに入れた。
【0053】
406nm(λmax)での0.45の吸光度に相当するスペクトルグレードを示すイソオクタンのDIADの溶液(0.127g DIAD/70mLイソオクタン)を、当該分光システムのゼオライトホールドバスケットに通して、23秒ごとに再循環させた。データを、継続的に得た。周囲温度で、18時間継続して試験を行ったところ、その時点で、ほとんどすべての実験が、取り込み平衡に達しており、吸光度にさらなる変化は認められなかった。
【0054】
UV-Visデータは、190~500nmからモニタリングするAgilent Technologies Cary 8454 UV-可視ダイオードアレイ分光光度計(UV-Visible Diode Array Spectrophotometer)を使用して記録した。吸光度測定は、路長が1cmのキュベットを使用して行った。イソオクタンは、190~500nmで吸光度を示さないので、まず、ブランクとして試験を行った。
【0055】
表3は、SSZ-121、及び既知の構造の幾つかのその他の分子ふるいでのDIADの取り込みをまとめたものである。
【表3】
【0056】
例4
制約インデックス
制約インデックスは、ゼオライトにおける形状選択的触媒挙動を決定するための試験である。競合条件下において、n-ヘキサン、及びその異性体3-メチルペンタンの分解について反応速度を比較する(例えば、V.J. Frillette et al., J. Catal. 1981, 67, 218-222を参照されたい)。
【0057】
例2の水素型の分子ふるいを、4 kpsiでペレット化し、破砕し、そして、20~40メッシュのものに造粒した。造粒物の0.6g試料を、空気中、540℃で、4時間焼成し、そして、乾燥状態を保つためにデシケーターで冷却した。次に、0.47gの材料を、分子ふるいベッドの両側にアランダムを備えている1/4インチのステンレス鋼チューブに詰めた。炉(Applied Test Systems,Inc.)を使用して、反応器チューブを加熱した。窒素を、9.4mL/分、かつ大気圧で、反応器チューブに導入した。反応器を、約800°F(427℃)に加熱し、そして、n-ヘキサンと3-メチルペンタンの50/50の供給体制で、8μL/分の速度で反応器に送り込んだ。供給物は、ISCOポンプで送達した。GCへの直接サンプリングは、供給物を送り込んだ15分後に開始した。流体(800°F)に関する136分後の試験データの結果を、表4に示す。
【表4】
【0058】
例5
FAU供給源としてZeolyst CBV780 Y-ゼオライト(SiO/Alモル比=80)を使用したことを除いて、例1を繰り返した。粉末XRDは、生成物がSSZ-121であることを示した。
【0059】
合成されたままの分子ふるいを、150℃で、6時間、オゾンに曝した。
【0060】
オゾン処理物の粉末XRDは、図3でのパターンを示した。
【0061】
例6
FAU供給源としてZeolyst CBV760 Y-ゼオライト(SiO/Alモル比=60)を使用したことを除いて、例1を繰り返した。回収した合成されたままの生成物を、例2に記載したようにして焼成した。粉末XRDは、焼成物がSSZ-121であることを示した。
【0062】
窒素物理吸着のt-プロット法による焼成物の分析は、この試料が、0.18cm/gのミクロ細孔容積と、300m/gを超える外表面積を有することを示した。外表面積が大きいことは、材料が非常に小さな結晶から構成されていることを示す。
【0063】
例7
FAU供給源としてZeolyst CBV720 Y-ゼオライト(SiO/Alモル比=30)を使用したことを除いて、例1を繰り返した。粉末XRDは、生成物がSSZ-121であることを示した。
【0064】
回収した合成されたままの生成物を、例2に記載したようにして焼成した。
【0065】
窒素物理吸着のt-プロット法による焼成物の分析は、この試料が、0.22cm/gのミクロ細孔容積を有することを示した。
【0066】
例8
ブレンステッド酸性度
例6の分子ふるいのブランステッド酸性度を、その焼成形態で、T.J. Gricus Kofke et al. (J. Catal. 1988, 114, 34-45);T.J. Gricus Kofke et al. (J. Catal. 1989, 115, 265-272);及び J.G. Tittensor et al. (J. Catal. 1992, 138, 714-720)で公表された記載を出典とするn-プロピルアミン温度プログラム脱離(TPD)によって決定した。試料を、流動乾燥Hで、400℃~500℃で、1時間前処理した。次に、脱水した試料を、流動乾燥ヘリウム中で120℃まで冷却し、そして、吸着のために、n-プロピルアミンで飽和させた流動ヘリウム中で、120℃で、30分間保持した。次に、n-プロピルアミン飽和試料を、乾燥ヘリウム流において、10℃/分の速度で500℃まで加熱した。ブレンステッド酸性度は、熱重量分析(TGA)による温度に対する重量減少、及び質量分析による流出NH及びプロペンに基づいて計算した。試料のブレンステッド酸性度は、295.63μmol/gであり、このことは、アルミニウムサイトが、分子ふるいの骨格に組み込まれていることを示していた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】