(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20230619BHJP
【FI】
G01N27/62 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573228
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2021063820
(87)【国際公開番号】W WO2021239692
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】インテルマン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041GA03
2G041GA09
2G041HA01
(57)【要約】
定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器(118)を較正するためのコンピュータ実装方法が提案される。本方法は、以下のステップ、すなわち、
a)少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップであって、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットが、複数の質量分析機器(114)で複数の複製で測定され、各測定が、分析物および内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた複数の反応監視を含み、少なくとも3つの調整係数が、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から決定され、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、第2の調整係数βが、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、第3の調整係数γが、被験者の試料と内部標準定量器-確認器比についての較正器試料との間の差に依存する、少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップと、
b)少なくとも1つの転送ステップであって、調整係数が顧客質量分析機器(118)に電子的に転送される、少なくとも1つの転送ステップと、
c)少なくとも1つの顧客サイト較正ステップであって、顧客サイト較正が少なくとも1つの較正測定値を含み、顧客質量分析機器(118)で較正器試料のセットが測定され、そこから定量器-確認器比が決定され、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値が設定される、少なくとも1つの顧客サイト較正ステップと、
を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器(118)を較正するためのコンピュータ実装方法であって、
a)少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップであって、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットが、複数の質量分析機器(114)で複数の複製で測定され、各測定が、分析物および内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた複数の反応監視を含み、少なくとも3つの調整係数が、前記被験者の試料のセットおよび前記較正器試料のセットの測定値から決定され、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、前記第1の調整係数αが、
【数1】
によって決定され、
【数2】
が、ステップa)の前記複数の測定値の前記分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数3】
がステップa)の前記複数の測定値の内部標準定量器-確認器比の平均であり、第2の調整係数βが、前記分析物定量器-確認器比についての前記被験者の試料と前記較正器試料との差に依存し、前記第2の調整係数βが、
【数4】
によって決定され、
【数5】
が、ステップa)の被験者の前記試料の前記複数の測定値の前記分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数6】
が、ステップa)の前記較正器試料の前記複数の測定値の分析物定量器-確認器比の平均であり、第3の調整係数γが、前記内部標準定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、前記第3の調整係数γが、
【数7】
によって決定され、
【数8】
が、ステップa)の前記被験者の試料の前記複数の測定値の内部標準定量器-確認器比の平均であり、
【数9】
が、ステップa)の前記較正器試料の前記複数の測定値の内部標準定量器-確認器比の平均である、少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップと、
b)少なくとも1つの転送ステップであって、前記調整係数が顧客質量分析機器(118)に電子的に転送される、少なくとも1つの転送ステップと、
c)少なくとも1つの顧客サイト較正ステップであって、前記顧客サイト較正が少なくとも1つの較正測定値を含み、前記顧客質量分析機器(118)で較正器試料のセットが測定され、そこから定量器-確認器比が決定され、前記決定された定量器-確認器比に前記調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値が設定され、分析物定量器AQNおよび分析物確認器AQLの定量器-確認器比の目標値
【数10】
が、
【数11】
によって設定され、
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、IQNは、内部標準定量器であり、IQLは、内部標準確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数であり、内部標準定量器IQNおよび内部標準確認器IQLについての定量器-確認器比の目標値
【数12】
が、
【数13】
によって設定され、
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、AQNは、分析物定量器であり、AQLは、分析物確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である、少なくとも1つの顧客サイト較正ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップc)において、前記較正測定中に決定された全ての定量器-確認器比が前記目標値を設定するために使用され、分析物および内部標準についての全ての較正器レベルおよび全ての較正器複製が前記目標値を設定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)が、前記複数の質量分析機器のそれぞれについて、較正器試料および被験者の試料に対する分析物および内部標準の定量器-確認器比の中央値を決定することを含み、前記調整係数が、機器間手段を使用することによって決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
顧客質量分析機器(118)での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法であって、前記方法が、請求項1から3のいずれか一項に記載の定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法にしたがって前記顧客質量分析機器(118)の較正を実行することを含み、前記方法が、前記顧客質量分析機器(118)を使用して少なくとも1つの試料測定を含み、前記方法が、少なくとも1つの試料分析ステップをさらに含み、全ての試料測定の試料分析中に、分析物および/または内部標準の定量器-確認器比が決定され、少なくとも1つの許容基準を考慮して目標値と比較される、方法。
【請求項5】
前記方法が、前記許容基準を満たさない試料測定値のそれぞれにフラグを立てることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、フラグが立てられた試料測定値のレビューをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、顧客質量分析機器(118)を較正するための方法を参照する、請求項1から3のいずれか一項に記載の定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器(118)を較正するためのコンピュータ実装方法、および/または定量器-確認器比チェックのための方法を参照する、請求項4から6のいずれか一項に記載の顧客質量分析機器(118)での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶されることができるかまたは記憶される、コンピュータプログラム製品。
【請求項8】
試料中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するための質量分析システム(110)であって、
-複数の複製で被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットを測定するように構成された複数の質量分析機器(114)を備える製造業者サイト較正システム(112)であって、前記質量分析機器(114)のそれぞれが、分析物および内部標準の定量器および確認器の遷移を用いた複数の反応監視のために構成され、前記製造業者サイト較正システム(112)が、前記被験者の試料のセットおよび前記較正器試料のセットの測定値から少なくとも3つの調整係数を決定するように構成された少なくとも1つの処理ユニット(116)を備え、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、前記第1の調整係数αが、
【数14】
によって決定され、
【数15】
が、ステップa)の前記複数の測定値の前記分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数16】
が、ステップa)の前記複数の測定値の前記内部標準定量器-確認器比の平均であり、第2の調整係数βが、分析物定量器-確認器比の被験者の試料と較正器試料との差に依存し、前記第2の調整係数βが、
【数17】
によって決定され、
【数18】
が、ステップa)の前記被験者の試料の前記複数の測定値の前記分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数19】
が、ステップa)の前記較正器試料の前記複数の測定値の分析物定量器-確認器比の平均であり、第3の調整係数γが、内部標準定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、前記第3の調整係数γが、
【数20】
によって決定され、
【数21】
が、ステップa)の被験者の前記試料の前記複数の測定値の前記内部標準定量器-確認器比の平均であり、
【数22】
が、ステップa)の前記較正器試料の前記複数の測定値の内部標準定量器-確認器比の平均である、製造業者サイト較正システムと、
-前記製造業者サイト較正システム(112)から少なくとも1つの顧客質量分析機器(118)に前記調整係数を電子的に転送するように構成された少なくとも1つの通信インターフェース(120)と、
-少なくとも1つの顧客質量分析機器(118)であって、前記顧客質量分析機器(118)が、少なくとも1つの較正測定を行うように構成されており、前記較正測定では、較正器試料のセットが前記顧客質量分析機器(118)で測定され、前記顧客質量分析機器が、前記較正測定から定量器-確認器比を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置(124)を備え、前記評価装置(124)が、前記決定された定量器-確認器比に前記調整係数を適用することにより、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値を設定するように構成されており、分析物定量器AQNおよび分析物確認器AQLについての前記定量器-確認器比の前記目標値
【数23】
が、
【数24】
によって設定され、
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、IQNは、内部標準定量器であり、IQLは、内部標準確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数であり、内部標準定量器IQNおよび内部標準確認器IQLについての定量器-確認器比の目標値
【数25】
が、
【数26】
によって設定され、
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、AQNは、分析物定量器であり、AQLは、分析物確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である、少なくとも1つの顧客質量分析機器(118)と、
を備える、質量分析システム。
【請求項9】
前記質量分析システム(110)が、顧客質量分析機器(118)を較正するための方法を参照する、請求項1から3のいずれか一項に記載の顧客質量分析機器(118)を較正するためのコンピュータ実装方法、および/または定量器-確認器比チェックのための方法を参照する、請求項4から6のいずれか一項に記載の顧客質量分析機器(118)での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するように構成されている、請求項8に記載の質量分析システム(110)。
【請求項10】
前記質量分析機器(114、118)が液体クロマトグラフィ質量分析計(LC-MS)装置である、システムを参照する請求項8または9に記載の質量分析システム(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法、定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラムおよび質量分析システムに関する。この方法は、インビトロ診断アッセイに使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
QQ比と呼ばれる定量器-確認器ピーク面積比は、測定された全ての患者試料内のピーク同一性および干渉をチェックするための重要な品質管理尺度であることが知られている。QQ比の使用は、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)アッセイのための確立されたアプローチであり、いくつかのガイドライン、例えば、the Clinical&Laboratory Standards Institute(CLSI)C62-A,「Guideline fwor kuality control in forensic-toxicological analyses」 by the 「Society of Toxicological and Forensic Chemistry」(GTFCh)からのガイドラインによって考慮される。ピークの同一性および干渉をチェックするためのQQ比の目標値は、アッセイの開発、検証、またはアッセイの較正のいずれかの間に設定されることができる。目標値の設定は、特定の機器で行われる。それぞれの許容基準は、アッセイ開発中に定義されることができるか、またはガイドラインの推奨にしたがって設定されるだけである。
【0003】
例えば、ピークの同一性および干渉をチェックするための品質尺度としてQQ比を使用することは、米国特許出願公開第2017/0108478号明細書、国際公開第2018/207228号パンフレット、国際公開第2018/136825号パンフレットおよび米国特許出願公開第20120318970号明細書に記載されている。
【0004】
この比は分析物に特有であるが、特に分析物と内部標準との間のピーク面積比と比較して、ロバスト性の欠陥が観察されることができる。さらに、異なる機器と時間的なドリフトおよびシフトとの間に明確な相違が存在することができる。実験室装置の場合、この比の目標値は、通常、開発後または特定の機器の検証もしくは検証中に定義される。ロバスト性の不足を克服するために、広い許容範囲を適用することができ、またはバッチごとの較正ごとに目標を調整する必要がある。複数の機器で実行される完全に自動化されたインビトロ診断では、この手法は、実行可能且つ適切ではない可能性がある。
【0005】
質量分析機器の通常の調整および較正ルーチンの概要は、Fabio Garofoloによって与えられる:「LC-MS Instrument Calibration:Chan/Analytical Validation」 In:「Analytical Method Validation and Instrument Performance Verification」、John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,USA,ISBN:978-0-471-25953-4,ページ197-220,DOI:10.1002/0471463728.ch13。機器の認定および検証の概要は、Ludwig Huberら:「Equipment Qualification and Computer System Validation:Chan/Analytical Validation」 In:「Analytical Method Validation and Instrument Performance Verification」、2004年1月15日、John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,USA,ISBN:978-0-471-25953-4,ページ255-276,DOI:10.1002/0471463728.ch17によって与えられる。
解決すべき課題
【0006】
したがって、本発明の目的は、既知の方法および装置の上述した欠点を回避する、定量器-確認器比チェックのための方法および装置を提供することである。特に、方法および装置は、質量分析装置を用いた試料の信頼できる完全に自動の分析を可能にするものとする。
【発明の概要】
【0007】
この課題は、独立請求項の特徴を有するコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、および質量分析システムによって対処される。単独で、または任意の組み合わせで実現されることができる有利な実施形態は、従属請求項ならびに明細書全体に記載されている。
【0008】
以下において使用される場合、用語「有する」、「備える」もしくは「含む」またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0009】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在することができることを示す「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または1回を超えて存在することができるという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現は繰り返されない。
【0010】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を、いかなる方法によっても制約することを意図されていない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関するいかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関するいかなる制限も伴わず、そのようなやり方で導入される特徴を本発明の他の任意または非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限も伴わない任意の特徴であるように意図される。
【0011】
本発明の第1の態様では、定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法が開示される。
【0012】
本明細書で使用される「コンピュータ実装方法」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/または少なくとも1つのコンピュータネットワークを含む方法を指すことができる。コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークは、本発明にかかる方法の方法ステップのうちの少なくとも1つを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備えることができる。好ましくは、方法ステップのいくつかは、コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークによって実行されてもよい。本方法は、部分的または完全に自動的に、具体的にはユーザとの相互作用なしに実行されてもよい。本明細書で使用される「自動的に」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、とりわけ手動の動作および/またはユーザとの相互作用を必要とせずに、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって完全に実行されるプロセスを指すことができるが、それらに限られるわけではない。
【0013】
「較正」および「較正する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。これらの用語は、具体的には、限定されないが、装置によって供給される測定値と較正標準の測定値との関係、具体的には較正関数を決定する動作または動作プロセスを指すことができる。特に、較正は、測定値と目標値との間の関係であってもよい。較正は、顧客質量分析機器を用いて決定された測定値からの定量器-確認器比の目標値と、特に製造業者サイトで決定された、較正標準の定量器-確認器比の目標値との間の関係とすることができる。
【0014】
本明細書で使用される「質量分析(MS)機器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量電荷比に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された質量分析機器を指すことができる。質量分析機器は、少なくとも1つの四重極質量分析装置とすることができ、またはそれを備えることができる。MS機器は、タンデム質量分析(MS/MS)機器またはトリプル四重極MS/MSとすることができる。具体的には、質量分析機器は、多重反応監視(MRM)用に構成されることができる。
【0015】
質量分析機器は、具体的には、液体クロマトグラフィ質量分析装置であってもよく、液体クロマトグラフィ質量分析装置を含んでもよい。本明細書で使用される「液体クロマトグラフィ質量分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、液体クロマトグラフィと質量分析との組み合わせを指すことができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置であってよく、あるいはこれらを備えることができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、液体クロマトグラフィ(LC)装置および質量分析(MS)装置を備えることができ、LC装置およびMSは、少なくとも1つのインタフェースを介して結合される。液体クロマトグラフィ装置とMSとを連結するインタフェースは、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を含むことができる。本明細書で使用される「液体クロマトグラフィ(LC)装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析機器によって1つ以上の分析物を検出するために、試料の目的の1つ以上の分析物を試料の他の成分から分離するように構成された分析モジュールを指すことができる。LC装置は、当業者によって適切と考えられる任意の分離原理に基づいてもよい。実施形態では、LC装置は、逆相クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、またはキラルクロマトグラフィであってもよい。さらなる実施形態では、LC装置は、逆相クロマトグラフィである。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよいし、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、固定相を有することができ、目的の被分析物の分離および/または溶出および/または移送のために、移動相が固定相を通って圧送される。
【0016】
本明細書で使用される場合、多重遷移監視とも呼ばれる「多重反応監視」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常および通例の意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析、具体的にはタンデム質量分析に使用される方法であって、1つ以上の前駆イオンからの複数のプロダクトイオンが監視される方法を指すことができる。本明細書で使用される場合、「監視される」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、複数のプロダクトイオンの判定および/または検出を指すことができる。
【0017】
本明細書で使用される「顧客」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、販売者、ベンダ、または供給者のうちの1つ以上から得られる、質量分析機器の所有者または操作者を指すことができる。本明細書で使用される「顧客質量分析機器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、顧客の質量分析機器を指すことができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、定量器イオンとも呼ばれる「定量器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、目的の化合物を特徴付けるイオンを指すことができる。一般に、最も豊富なおよび/または最も確実に検出された遷移またはフラグメントは、化合物を定量するために使用される。具体的には、定量器イオンは、化合物の質量スペクトル上に最大信号強度のピークを有することができる。本明細書で使用される場合、確認器イオンとしても示される「確認器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、定量器イオンと比較して異なる質量電荷比を有する目的の化合物を特徴付ける別のイオンを指すことができる。確認器は、化合物の同一性の確認に使用されることができる。一般に、第2の遷移またはフラグメントが確認器として使用される。本明細書で使用される場合、定量器-確認器ピーク面積比とも呼ばれる「定量器-確認器比」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、確認器イオンのピークの信号強度と定量器イオンのピークの信号強度との比および/または定量器イオンのピークのピーク面積と確認器イオンのピークのピーク面積との比を指すことができる。
【0019】
本明細書で使用される「定量器-確認器比チェック」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料内のピークの同一性および干渉をチェックするための品質管理尺度を指すことができる。定量器-確認器比の使用は、液体クロマトグラフィ-質量分析アッセイのための確立されたアプローチであり、いくつかのガイドライン、例えば、the Clinical&Laboratory Standards Institute(CLSI)C62-A,「Guideline fwor kuality control in forensic-toxicological analyses」 by the 「Society of Toxicological and Forensic Chemistry」(GTFCh)からのガイドラインによって考慮される。定量器-確認器比チェックの場合、決定された定量器-確認器比は、定量器-確認器比の目標値と比較され、少なくとも1つの許容基準を考慮して検証される。
【0020】
本明細書で使用される「品質管理」という用語は、当業者に知られている。実施形態では、品質管理は、エンティティによって実行されたプロセスおよび/または生産された商品が所定の品質基準に適合することを保証するプロセスである。さらなる実施形態では、試料測定、特に患者試料などの医療試料の測定、例えば臨床診断および/または臨床化学における品質管理は、特定の測定方法で得られた分析結果がゴールドスタンダード法で得られる結果に対応すること、したがって、実施形態では、所定の範囲内で理論的に得られる結果に対応することを確実にすることを含む。
【0021】
本方法は、例として、所与の順序で実行されてよい以下のステップを含む。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを同時にまたは適時に重複して実行することが可能である。本方法は、挙げられていないさらなる方法ステップを含んでもよい。本明細書で使用される「ステップ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、作業ステップ、プロセスステップ、または動作もしくは手順の段階を指すことができる。
【0022】
本方法は、以下のステップ、すなわち、
a)少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップであって、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットが、複数の質量分析機器で複数の複製で測定され、各測定が、分析物および内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた複数の反応監視を含み、少なくとも3つの調整係数が、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から決定され、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、第2の調整係数βが、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、第3の調整係数γが、被験者の試料と内部標準定量器-確認器比についての較正器試料との間の差に依存する、少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップと、
b)少なくとも1つの転送ステップであって、調整係数が顧客質量分析機器に電子的に転送される、少なくとも1つの転送ステップと、
c)少なくとも1つの顧客サイト較正ステップであって、顧客サイト較正が少なくとも1つの較正測定値を含み、顧客質量分析機器で較正器試料のセットが測定され、そこから定量器-確認器比が決定され、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値が設定される、少なくとも1つの顧客サイト較正ステップと、
を含む。
【0023】
定量器-確認器比に基づいて品質チェックを実行するために、測定された定量器-確認器比が比較される少なくとも1つの目標値が使用される。しかしながら、目標値は、質量分析機器ごとに変化または変化することができる。したがって、特定の顧客質量分析機器の品質チェック目標値に使用することが有利であり得る。時間の変化さえも可能である。したがって、顧客サイトで時間内に繰り返し調整または適合されることができる品質チェック目標値に使用することが有利であり得る。さらに、較正のために、通常、少数の較正試料が測定され、これらの較正試料の組成は、被験者の試料と比較して異なる場合がある。したがって、定量器-確認器比に基づく品質チェックは、測定不正確さによって強く影響され、較正器と被験者の試料との間のマトリックス差によってバイアスされる。これらの問題を克服するために、本発明は、データ転送手法を提案する。製造業者の現場では、被験者の試料のセットおよび較正器試料は、ステップa)の間に複数の機器で複数の複製で測定されることができる。ステップa)において3つの調整係数が決定され、ステップb)において顧客質量分析機器に電子的に転送されることができる。顧客サイトでは、ステップc)において、較正器試料に対して較正測定が実施されることができ、分析物および内部標準の定量器-確認器比の初期目標値が決定されることができる。調整係数が初期目標値に適用されて、分析物の調整された目標値および内部標準定量器-確認器比を計算することができる。調整された目標値は機器固有であり、被験者の試料を追跡することができ、使用される複数のデータ点のためにより良好な精度を有する。アッセイに特異的な較正頻度に起因して、時間的なドリフトおよびシフトが周期的に補正されることができる。その後の試料分析のために、少なくとも1つの許容基準が使用されて、測定された定量器-確認器比を検証することができる。許容基準または複数の許容基準は、アッセイ開発中に決定されることができる。少なくとも1つの許容基準は、機器固有でなくてもよく、経時的に変化してもよい。少なくとも1つの許容基準は、アプリケーションパラメータファイルによって顧客機器に電子的に転送されてもよい。
【0024】
本明細書で使用される「製造業者」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析機器の少なくとも1つの製造業者を指すことができる。「製造業者」という用語は、質量分析機器の全ての部品を製造する単一の製造業者、および/または質量分析機器の特定の構成要素の供給業者などの複数の製造業者をさらに指すことができる。製造業者は、顧客による使用のために最終製品を提供する最終製造業者であってもよい。本明細書で使用される「製造業者サイト」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析機器を顧客に提供する前に製造業者によって実行された全てのプロセスを指すことができる。全ての試薬、カラム、較正器、システム試薬、使い捨て品は、製造業者によってまたは製造業者のために製造することができる。逆に、顧客の現場では、顧客は、被験者の試料および対照試料を非製造業者の構成要素として機器に配置することができる。
【0025】
本明細書で使用される「標準化」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、測定された定量器-確認器比の不正確さおよび較正器と被験者の試料との間のマトリックス差によるバイアスの推定を決定し、そのための補正を提供するプロセスを指すことができる。標準化は、試料の各測定についてクロマトグラムを決定することを含むことができる。「クロマトグラム」という用語は、当業者に知られている。実施形態では、この用語は、試料から得られてMS機器によって決定された信号の定量的尺度とクロマトグラフィ分離の進行との相関プロットに関し、一実施形態では経時的な相関プロット、例えば保持時間および/または溶出体積に関する。実施形態では、前記信号の定量的尺度は、試料成分の少なくとも一部の濃度、特に分析物と相関する。したがって、信号の定量的尺度は、特に信号強度とすることができる。クロマトグラムは、MSクロマトグラム、さらなる実施形態ではMS/MSクロマトグラムであってもよい。当業者によって理解されるように、前述の表現は、必ずしもそうである必要はないが、グラフィカル表現であってもよい。しかしながら、表現は、例えば、値対のリスト、例えば、溶出時間/定量器値対および/または溶出時間/定性器値対として、または数学的モデルとして提供されてもよい。信号の定量的尺度は、分析物信号強度および/または内部標準信号強度を含むことができる。信号の定量的尺度は、分析物定量器、内部標準定量器、分析物確認器および/または内部標準確認器を含むことができる。したがって、実施形態では、特にMSがタンデムMSである場合、少なくとも1つのクロマトグラムを決定することは、上記のように、分析物定量器、内部標準定量器、分析物定性器および/または内部標準定性器のうちの少なくとも1つを経時的および/または溶出時間にわたって測定することを含む。当業者が理解するように、溶出時間は、特に溶出体積または保持時間によって、当業者によって適切と考えられるLCの進行の任意の他の尺度によって置き換えられることができる。
【0026】
本明細書で使用される「試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、生物学的試料などの任意の試料を指すことができる。実施形態では、試料は、液体試料であり、さらなる実施形態では水性試料である。実施形態では、試料は、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、涙液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、および羊水を含む生理液、洗浄液、組織、細胞などからなる群から選択される。しかしながら、試料は、天然または工業用液体、特に地上水または地下水、下水、工業廃水、処理液、土壌溶出液などであってもよい。実施形態では、試料は、少なくとも1つの対象の化合物、すなわち「分析物」と呼ばれる決定される化学物質を含むか、または含むと疑われる。試料は、1つ以上のさらなる化学化合物を含んでいてもよく、これらは決定されるものではなく、一般に「マトリックス」と呼ばれる。試料は、それぞれの供給源から得られたものとして直接使用されてもよく、または1つ以上の前処理および/または試料調製ステップに供されてもよい。したがって、試料は、物理的および/または化学的方法、一実施形態では、遠心分離、濾過、混合、均質化、クロマトグラフィ、沈殿、希釈、濃縮、結合および/または検出試薬との接触、および/または死亡した人によって適切と考えられる任意の他の方法によって前処理されることができる。試料調製ステップにおいて、すなわち、試料調製ステップの前、最中、および/または後に、1つ以上の内部標準が試料に添加されることができる。試料には、内部標準が添加されてもよい。例えば、内部標準が所定の濃度で試料に添加されてもよい。内部標準は、質量分析機器の通常の動作条件下で容易に識別することができるように選択されることができる。内部標準の濃度は、予め決定され、分析物の濃度よりも有意に高くてもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「内部標準」という用語は、一実施形態では、試料中に定義された濃度で存在する分析物に関する。したがって、実施形態では、内部標準の濃度は既知である。しかしながら、標準の濃度は未知であるが、少なくとも被験者の試料および少なくとも1つの較正試料については同じであることも想定される。そのような場合、実施形態では、内部標準の濃度は、分析される全ての試料について同じである。内部標準は、実施形態では、分析物と構造的に類似しており、さらなる実施形態では、分析物と構造的に同一である。特に後者の場合、実施形態では、内部標準は、同位体標識分子、特に分析物の同位体標識バージョン、例えば2H(重水素化)、15Nおよび/または13C標識誘導体である。内部標準試料は、既知の、例えば所定の濃度を有する少なくとも1つの内部標準物質を含む試料とすることができる。標準試料に関するさらなる詳細については、例えば欧州特許出願公開第3 425 369号明細書を参照されたい。
【0028】
本明細書で使用される「被験者」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、哺乳動物を指すことができる。本発明の実施形態では、前記被験者はヒトである。具体的には、被験者は、患者とすることができる。本発明にかかる患者は、典型的には、疾患に罹患している可能性であるか、または疾患に罹患している疑いがある、すなわち、前記疾患に関連する陰性症状の一部または全部を既に示している可能性がある。本明細書で使用される「被験者の試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試験対象の被験者の生物学的試料を指すことができる。患者試料のセットは、少なくとも1人の被験者の複数の異なる試料を含むことができる。患者試料のセットは、代表試料のセットとすることができる。典型的には、患者試料のセットは、5から30個の試料を含むことができる。しかしながら、患者試料のセットは、30個を超える試料を含むことができる。
【0029】
「較正器試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、較正器試料の物質の既知の濃度を有する任意の試料を指すことができる。例えば、較正器試料の濃度値は、基準実験室によって決定されることができる。例えば、較正器試料は、少なくとも1つの市販の較正器であってもよい。較正器試料のセットは、複数の異なる較正器試料を含んでもよい。較正器試料は、割り当てられた目標値を有する試料であってもよく、またはそれを含んでもよい。例えば、較正器試料のセットは、2から3個の較正器試料を含むことができる。較正器試料のセットは、少なくとも1つの較正器試料を含むことができる。較正器試料のセットは、4から10個の較正器試料を含むことができる。
【0030】
「調整係数」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、較正器と被験者の試料との間のマトリックスの相違に起因する測定不正確さおよびバイアスのために顧客質量分析機器上で決定された分析物および/または内部標準の定量器-確認器比の初期目標値を補正するための係数を指すことができる。
【0031】
本方法は、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から少なくとも3つの調整係数を決定することを含む。本方法は、決定されたクロマトグラムを評価することと、そこから定量器-確認器比を決定することとを含むことができる。評価することは、クロマトグラムの定量器ピークのピーク面積を決定すること、およびクロマトグラムの確認器ピークのピーク面積を決定することを含むことができる。評価することは、定量器ピークのピーク面積と確認器ピークのピーク面積との比を決定することを含むことができる。ステップa)は、複数の質量分析機器のそれぞれについて、分析物の定量器-確認器比の中央値、および較正器試料および被験者の試料の内部標準を決定することを含むことができる。調整係数は、機器間手段を使用することによって決定されることができる。第1の調整係数αは、分析物と内部標準との間の差、特に関係に依存する。ステップa)において、第1の調整係数αは、
【数1】
によって決定されることができ、ここで、
【数2】
は、ステップa)の複数の測定値の分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数3】
は、ステップa)の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均である。第2の調整係数βは、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と、較正器試料との間の差に依存する。ステップa)において、第2の調整係数βは、
【数4】
によって決定されてもよく、ここで、
【数5】
は、ステップa)の被験者の試料の複数の測定値の分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数6】
は、ステップa)の較正器試料の複数の測定値の分析物定量器-確認器比の平均である。第3の調整係数γは、内部標準定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存する。ステップa)において、第3の調整係数γは、
【数7】
によって決定されてもよく、ここで、
【数8】
は、ステップa)の被験者の試料の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均であり、
【数9】
は、ステップa)の較正器試料の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均である。
【0032】
「転送」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、一方向または双方向の情報交換、特にデータ交換を意味することができる。転送は、例えば別の装置に情報を送信または出力するために、例えばコンピュータなどの計算装置から情報を転送することを含むことができる。転送は、少なくとも1つの通信インターフェースを介して実行されてもよい。本明細書で使用される「通信インターフェース」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、情報を転送するように構成された境界を形成するアイテムまたは要素を指すことができる。特に、通信インターフェースは、例えば別の装置に情報を送信または出力するなどのために、例えばコンピュータなどの計算装置から情報を転送するように構成されることができる。追加的または代替的に、通信インターフェースは、情報を受信するなどのために、計算装置、例えばコンピュータに情報を転送するように構成されてもよい。通信インターフェースは、具体的には、情報を転送または交換するための手段を提供することができる。特に、通信インターフェースは、例えば、ブルートゥース(登録商標)、NFC、誘導結合などのデータ転送接続を提供することができる。例として、通信インターフェースは、ネットワークまたはインターネットポート、USBポート、およびディスクドライブのうちの1つ以上を含む、少なくとも1つのポートとすることができるか、またはそれらを含むことができる。通信インターフェースは、少なくとも1つのウェブインターフェースとすることができる。「電子的に転送する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの電子データ転送技術を使用する、特に少なくとも1つの伝送プロトコルを使用する転送を指すことができる。具体的には、電子転送は、専用データベースからの少なくとも1つのパラメータファイルの少なくとも1つのダウンロードを含むことができる。転送は、顧客質量分析が製造業者から情報を取得することを含んでもよい。本明細書で使用される「取得する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、データを受信すること、および/またはデータサーバなどからデータをダウンロードすることを指すことができる。
【0033】
「顧客サイト」較正という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、顧客によって行われる較正を指すことができる。したがって、較正は、製造業者なしで行われてもよい。しかしながら、製造業者は、必要に応じて顧客にサポートを提供してもよい。
【0034】
本発明は、較正を2つの部分に分割することを提案する。第1の部分では、製造業者サイトで標準化が実行されてもよく、第2の部分では、顧客質量分析機器で較正が実行される。標準化は、顧客サイトの較正が行われる前に行われてもよい。顧客サイト較正は、少なくとも1つの較正測定を含み、較正器試料のセットが顧客質量分析機器で測定される。顧客サイトの較正に使用される較正器試料のセットは、製造業者サイトの標準化に使用される較正器試料のセットと同一であってもよい。較正器試料のセットは、製造業者によって提供されてもよい。較正測定は、較正器試料のセットの複数の較正器試料および複数の複製などに対する複数の測定値を含むことができる。較正測定は、分析物および/または内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた多重反応監視を含むことができる。較正測定は、試料の各測定について少なくとも1つのクロマトグラムを決定することを含むことができる。較正測定は、分析物および内部標準の定量器-確認器比の初期目標値を決定することを含むことができる。初期目標値は、クロマトグラムを評価し、そこから定量器-確認器比を決定することによって決定されることができる。
【0035】
分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値は、初期目標値とも呼ばれる、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって設定される。ステップc)において、較正測定中に決定された全ての定量器-確認器比を、目標値を設定するために使用されることができる。特に、分析物および内部標準の全ての較正器レベルおよび全ての較正器複製が目標値の設定に使用されることができる。分析物定量器AQNおよび分析物確認器AQLの定量器-確認器比の目標値
【数10】
は、以下によって設定されることができる。
【数11】
【0036】
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、IQNは、内部標準定量器であり、IQLは、内部標準確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である。内部標準定量器IQNおよび内部標準確認器IQLの定量器-確認器比の目標値
【数12】
は、
【数13】
によって設定される。
【0037】
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、AQNは、分析物定量器であり、AQLは、分析物確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である。これらの目標値は、ネイティブ患者試料に基づいて機器固有とすることができ、使用される複数のデータポイントに起因してより良好な精度を有することができる。アッセイに起因して、特定の較正頻度の時間的変化が定期的に補正されることができる。
【0038】
さらなる態様では、顧客質量分析機器での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法が開示される。本方法は、本発明にかかる定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法にしたがって、顧客質量分析機器の較正を実行することを含む。したがって、定量器-確認器比チェックのための方法の定義および実施形態については、上記または以下により詳細に説明するように、本発明にかかる定量器-確認器比チェックのための顧客質量分析機器を較正するための方法の定義および実施形態を参照する。
【0039】
本方法は、顧客質量分析機器を使用した少なくとも1回の試料測定を含む。本方法は、少なくとも1つの試料分析ステップをさらに含み、各試料測定の試料分析中に、少なくとも1つの許容基準を考慮して、分析物および/または内部標準の定量器-確認器比が決定され、目標値と比較される。
【0040】
本明細書で使用される「試料測定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析機器を使用して試験中の試料を測定するプロセスを指すことができる。本明細書で使用される「試料分析」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析機器の信号を評価するプロセスを指すことができる。試料分析は、少なくとも1つのクロマトグラムを決定することを含むことができる。試料分析は、クロマトグラムを評価することと、少なくとも1つの定量器-確認器比を決定することとを含むことができる。
【0041】
本明細書で使用される「許容基準」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、定量器-確認器比を許容可能または拒絶されるものとして特徴付ける任意の基準を指すことができる。許容基準または複数の許容基準は、アッセイ開発中に決定されることができる。少なくとも1つの許容基準は、機器固有でなくてもよく、経時的に変化してもよい。少なくとも1つの許容基準は、アプリケーションパラメータファイルによって顧客機器に電子的に転送されてもよい。許容基準は、少なくとも1つの許容限界または許容範囲を含むことができる。許容基準は、ピーク同一性チェックに使用されることができる。許容基準は、定量器イオンと干渉とを区別するために使用されることができる。許容基準は、顧客質量分析機器によって測定された定量器-確認器比が適切であるか否かを特徴付けることができる。許容限界未満または許容範囲内の定量器-確認器比が検証されることができる。本方法は、許容基準を満たさない試料測定値のそれぞれにフラグを立てることをさらに含むことができる。許容限界を上回るかまたは許容範囲内にない定量器-確認器比にはフラグが立てられ、顧客質量分析機器のオペレータまたはユーザによるさらなるレビューが必要であり得る。
【0042】
本明細書でさらに開示および提案されるものは、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本発明にかかる定量器-確認器比チェックのための顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法および/または本発明にかかる顧客質量分析機器上の定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するために、プログラムコード手段を記憶媒体に記憶されることができるかまたは記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラム製品である。
【0043】
本明細書でさらに開示および提案されるものは、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本発明にかかる定量器-確認器比チェックのための顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法および/または本発明にかかる顧客質量分析機器上の定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するために、プログラムコード手段を記憶媒体に記憶されることができるかまたは記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラム製品である。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶されることができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読データキャリア」および「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令が記憶されたハードウェア記憶媒体などの非一時的データ記憶手段を指すことができる。コンピュータ可読データキャリアまたは記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)などの記憶媒体とすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0045】
したがって、具体的には、上述したような方法ステップa)からc)の1つ、1つよりも多い、または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行されることができる。
【0046】
本明細書でさらに開示および提案されるものは、データ構造が記憶されたデータキャリアであり、これは、コンピュータまたはコンピュータネットワーク内、例えば、ワーキングメモリまたはコンピュータもしくはコンピュータネットワークのメインメモリ内にロードした後に、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上にかかる方法の1つまたは双方を実行することができる。
【0047】
本明細書でさらに開示および提案されるものは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に開示の実施形態のうちの1つ以上にかかる方法の1つまたは双方を実行するために、プログラムコード手段を機械可読担体上に記憶したコンピュータプログラム製品である。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体上に存在する。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0048】
最後に、本明細書にさらに開示および提案されるものは、本明細書に開示される1つ以上の実施形態にかかる方法の1つまたは双方を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0049】
本発明のコンピュータにより実装される態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上にかかる方法の1つまたは双方の方法ステップのうちの1つ以上、あるいは方法ステップの全てでさえ、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して実施されることができる。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されることができる。一般に、これらの方法ステップは、試料の提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含むことができる。
【0050】
本発明のさらなる態様では、試料中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するための質量分析システムが開示される。質量分析システムは、
-複数の複製において被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットを測定するように構成された複数の質量分析機器を備える製造業者サイト較正システムであって、前記質量分析機器のそれぞれが、分析物および内部標準についての定量器および確認器遷移を用いた複数の反応監視のために構成されており、製造業者サイト較正システムが、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から少なくとも3つの調整係数を決定するように構成された少なくとも1つの処理ユニットを備え、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、第2の調整係数βが、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、第3の調整係数γが、内部標準定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存する、製造業者サイト較正システムと、
-製造業者サイト較正システムから少なくとも1つの顧客質量分析機器に調整係数を電子的に転送するように構成された少なくとも1つの通信インターフェースと、
-少なくとも1つの顧客質量分析機器であって、顧客質量分析機器が、少なくとも1つの較正測定を実行するように構成され、較正測定では、顧客質量分析機器上で較正試料のセットが測定され、顧客質量分析機器が、較正測定から定量器-確認器比を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を備え、評価装置が、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値を設定するように構成されている、少なくとも1つの顧客質量分析機器と、
を備える。
【0051】
質量分析機器は、液体クロマトグラフィ質量分析計(LC-MS)装置とすることができる。
【0052】
顧客質量分析機器は、少なくとも1つの試料測定を実行するように構成されることができる。評価装置は、少なくとも1つの試料分析を実行するように構成されることができ、全ての試料測定の試料分析中に、分析物および/または内部標準の定量器-確認器比が決定され、少なくとも1つの許容基準を考慮して目標値と比較される。
【0053】
本明細書で使用される「処理ユニット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、実施形態では、少なくとも1つのデータ処理装置を使用することによって、さらなる実施形態では、少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、上述した方法ステップを実行するように適合された任意の装置を指すことができる。したがって、例として、少なくとも1つの処理ユニットは、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理ユニットを備えることができる。処理ユニットは、示された動作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または方法ステップのうちの1つ以上を実行するために実行されるソフトウェアを1つ以上のプロセッサに提供することができる。
【0054】
本明細書で使用される「評価装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、実施形態では、少なくとも1つのデータ処理デバイスを使用することによって、さらなる実施形態では、少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、上述した方法ステップを実行するように適合された任意の装置を指すことができる。したがって、例として、少なくとも1つの評価装置は、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理ユニットを備えることができる。評価装置は、示された動作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または方法ステップのうちの1つ以上を実行するために実行されるソフトウェアを1つ以上のプロセッサに提供することができる。
【0055】
本システムは、本発明にかかる定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法および/または本発明にかかる顧客質量分析機器に対する定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するように構成されることができる。したがって、システムの定義および実施形態については、上記のように、および以下により詳細に説明するように、本発明にかかる方法の実施形態および定義を参照する。
【0056】
要約すると、さらなる可能な実施形態を排除することなく、以下の実施形態を想定することができる。
【0057】
実施形態1:定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法であって、
a)少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップであって、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットが、複数の質量分析機器で複数の複製で測定され、各測定が、分析物および内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた複数の反応監視を含み、少なくとも3つの調整係数が、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から決定され、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、第2の調整係数βが、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、第3の調整係数γが、被験者の試料と内部標準定量器-確認器比についての較正器試料との間の差に依存する、少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップと、
b)少なくとも1つの転送ステップであって、調整係数が顧客質量分析機器に電子的に転送される、少なくとも1つの転送ステップと、
c)少なくとも1つの顧客サイト較正ステップであって、顧客サイト較正が少なくとも1つの較正測定値を含み、顧客質量分析機器で較正器試料のセットが測定され、そこから定量器-確認器比が決定され、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値が設定される、少なくとも1つの顧客サイト較正ステップと、
を含む、方法。
【0058】
実施形態2:ステップc)において、較正測定中に決定された全ての定量器-確認器比が目標値を設定するために使用され、全ての較正器レベルおよび分析物および内部標準の全ての較正器複製が目標値を設定するために使用される、先行する実施形態に記載の方法。
【0059】
実施形態3:分析物定量器AQNおよび分析物確認器AQLの定量器-確認器比の目標値
【数14】
が、
【数15】
によって設定され、
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、IQNは、内部標準定量器であり、IQLは、内部標準確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
実施形態4:内部標準定量器IQNおよび内部標準確認器IQLについての定量器-確認器比の目標値
【数16】
が、
【数17】
によって設定され、
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、AQNは、分析物定量器であり、AQLは、分析物確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
実施形態5:ステップa)において、第1の調整係数αが、
【数18】
によって決定され、ここで、
【数19】
が、ステップa)の複数の測定値の分析物定量器-確認器比の平均であり、
【数20】
が、ステップa)の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
実施形態6:ステップa)において、第2の調整係数βが、
【数21】
によって決定され、ここで、
【数22】
が、ステップa)の被験者の試料の複数の測定値の分析物の定量器-確認器比の平均であり、
【数23】
が、ステップa)の較正器試料の複数の測定値の分析物の定量器-確認器比の平均である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
実施形態7:ステップa)において、第2の調整係数γが、
【数24】
によって決定され、ここで、
【数25】
が、ステップa)の被験者の試料の複数の測定値の内部標準定量器-確認器比の平均であり、
【数26】
が、ステップa)の較正器試料の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
実施形態8:ステップa)が、複数の質量分析機器のそれぞれについて、分析物の定量器-確認器比の中央値、および較正器試料および被験者の試料の内部標準を決定することを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
実施形態9:調整係数が、機器間手段を使用することによって決定される、先行する実施形態に記載の方法。
【0066】
実施形態10:ステップa)およびc)において使用される質量分析機器が液体クロマトグラフィ質量分析計(LC-MS)装置である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
実施形態11:顧客質量分析機器での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法であって、方法が、先行する実施形態のいずれか一項に記載の定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法にしたがって顧客質量分析機器の較正を実行することを含み、方法が、顧客質量分析機器を使用して少なくとも1つの試料測定を含み、方法が、少なくとも1つの試料分析ステップをさらに含み、全ての試料測定の試料分析中に、分析物および/または内部標準の定量器-確認器比が決定され、少なくとも1つの許容基準を考慮して目標値と比較される、方法。
【0068】
実施形態12:方法が、許容基準を満たさない試料測定値のそれぞれにフラグを立てることをさらに含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0069】
実施形態13:方法が、フラグが立てられた試料測定値のレビューをさらに含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0070】
実施形態14:プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、顧客質量分析機器を較正するための方法を参照する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法、および/または定量器-確認器比チェックのための方法を参照する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の顧客質量分析機器での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶されることができるかまたは記憶される、コンピュータプログラム製品。
【0071】
実施形態15:プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、顧客質量分析機器を較正するための方法を参照する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法、および/または定量器-確認器比チェックのための方法を参照する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の顧客質量分析機器での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶されることができるかまたは記憶される、コンピュータプログラム製品。
【0072】
実施形態16:試料中の少なくとも1つの分析物の濃度を決定するための質量分析システムであって、
-複数の複製において被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットを測定するように構成された複数の質量分析機器を備える製造業者サイト較正システムであって、前記質量分析機器のそれぞれが、分析物および内部標準についての定量器および確認器遷移を用いた複数の反応監視のために構成されており、製造業者サイト較正システムが、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から少なくとも3つの調整係数を決定するように構成された少なくとも1つの処理ユニットを備え、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、第2の調整係数βが、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、第3の調整係数γが、内部標準定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存する、製造業者サイト較正システムと、
-製造業者サイト較正システムから少なくとも1つの顧客質量分析機器に調整係数を電子的に転送するように構成された少なくとも1つの通信インターフェースと、
-少なくとも1つの顧客質量分析機器であって、顧客質量分析機器が、少なくとも1つの較正測定を実行するように構成され、較正測定では、顧客質量分析機器上で較正試料のセットが測定され、顧客質量分析機器が、較正測定から定量器-確認器比を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を備え、評価装置が、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値を設定するように構成されている、少なくとも1つの顧客質量分析機器と、
を備える。
【0073】
実施形態17:システムが、顧客質量分析機器を較正するための方法を参照する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の定量器-確認器比チェックのための顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法、および/または、定量器-確認器比チェックのための方法を参照する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の顧客質量分析機器での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法を実行するように構成される、先行する実施形態に記載のシステム。
【0074】
実施形態18:質量分析装置が液体クロマトグラフィ質量分析計(LC-MS)装置である、システムを参照する先行する実施形態のいずれか一項に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0075】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。ここで、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方式で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。ここで、これらの図の同一の参照符号は、同一または機能的に匹敵する要素を指す。
図では以下のとおりである。
【0076】
【
図1】本発明にかかる質量分析システムの実施形態を示している。
【
図2】本発明にかかる定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器を較正するためのコンピュータ実装方法および本発明にかかる顧客質量分析機器上での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、本発明にかかる質量分析システム110の実施形態を示している。質量分析システム110は、複数の複製で被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットを測定するように構成された複数の質量分析機器114を備える製造業者サイト較正システム112を備える。質量分析機器114のそれぞれは、分析物および内部標準の定量器および確認器遷移を用いた多重反応監視用に構成されている。質量分析(MS)機器114は、質量電荷比に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された質量分析器とすることができる。質量分析機器114のそれぞれは、少なくとも1つの四重極質量分析装置であってもよいし、少なくとも1つの四重極質量分析装置を含んでもよい。MS機器114は、タンデム質量分析(MS/MS)機器またはトリプル四重極MS/MSとすることができる。具体的には、質量分析機器114は、多重反応監視(MRM)用に構成されることができる。
【0078】
質量分析機器114は、具体的には、液体クロマトグラフィ質量分析装置であってもよく、液体クロマトグラフィ質量分析装置を含んでもよい。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置であってよく、あるいはこれらを備えることができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、液体クロマトグラフィ(LC)装置および質量分析(MS)装置を備えることができ、LC装置およびMSは、少なくとも1つのインタフェースを介して結合される。液体クロマトグラフィ装置とMSとを連結するインタフェースは、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を含むことができる。液体クロマトグラフィ(LC)装置は、質量分析機器114を用いて1つ以上の分析物を検出するために、試料の目的の1つ以上の分析物を試料の他の成分から分離するように構成されてもよい。LC装置は、当業者によって適切と考えられる任意の分離原理に基づいてもよい。実施形態では、LC装置は、逆相クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、またはキラルクロマトグラフィであってもよい。さらなる実施形態では、LC装置は、逆相クロマトグラフィである。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよいし、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、固定相を有することができ、目的の被分析物の分離および/または溶出および/または移送のために、移動相が固定相を通って圧送される。
【0079】
製造業者は、質量分析機器114の少なくとも1つの製造業者であってもよい。製造業者は、質量分析機器114の全ての部品を製造する単一の製造業者、および/または質量分析機器114の特定の構成要素の供給業者などの複数の製造業者であってもよい。製造業者は、顧客による使用のために最終製品を提供する最終製造業者であってもよい。本明細書で使用される「製造業者サイト」は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析機器を顧客に提供する前に製造業者によって実行された全てのプロセスを指すことができる。全ての試薬、カラム、較正器、システム試薬、使い捨て品は、製造業者によってまたは製造業者のために製造することができる。逆に、顧客の現場では、顧客は、被験者の試料および対照試料を非製造業者の構成要素として機器に配置することができる。
【0080】
製造業者サイト較正システム112は、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から少なくとも3つの調整係数を決定するように構成された少なくとも1つの処理ユニット116を備える。処理ユニット116は、少なくとも1つのデータ処理装置を使用することによって、およびさらなる実施形態では、少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、3つの調整係数を決定するように適合されることができる。したがって、例として、少なくとも1つの処理ユニット116は、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理ユニットを備えることができる。処理ユニット116は、示された動作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または調整係数の決定を実行するために実行されるソフトウェアを1つ以上のプロセッサに提供することができる。
【0081】
調整係数は、製造業者サイトの標準化中に決定されることができる。標準化は、測定された定量器-確認器比の不正確さおよび較正器と被験者の試料との間のマトリックス差によるバイアスの推定を決定し、そのための補正を提供するプロセスとすることができるか、またはそれを含むことができる。標準化は、試料の各測定についてクロマトグラムを決定することを含むことができる。クロマトグラムは、試料から得られ、クロマトグラフィ分離の進行に伴ってMS機器114によって決定された信号の定量的尺度の相関プロットであってもよく、実施形態では経時的に、例えば保持時間および/または溶出体積であってもよい。実施形態では、前記信号の定量的尺度は、試料成分の少なくとも一部の濃度、特に分析物と相関する。したがって、信号の定量的尺度は、特に信号強度とすることができる。クロマトグラムは、MSクロマトグラム、さらなる実施形態ではMS/MSクロマトグラムであってもよい。当業者によって理解されるように、前述の表現は、必ずしもそうである必要はないが、グラフィカル表現であってもよい。しかしながら、表現は、例えば、値対のリスト、例えば、溶出時間/定量器値対および/または溶出時間/定性器値対として、または数学的モデルとして提供されてもよい。信号の定量的尺度は、分析物信号強度および/または内部標準信号強度を含むことができる。信号の定量的尺度は、分析物定量器、内部標準定量器、分析物確認器および/または内部標準確認器を含むことができる。したがって、実施形態では、特にMSがタンデムMSである場合、少なくとも1つのクロマトグラムを決定することは、上記のように、分析物定量器、内部標準定量器、分析物定性器および/または内部標準定性器のうちの少なくとも1つを経時的および/または溶出時間にわたって測定することを含む。当業者が理解するように、溶出時間は、特に溶出体積または保持時間によって、当業者によって適切と考えられるLCの進行の任意の他の尺度によって置き換えられることができる。
【0082】
調整係数は、較正器と被験者の試料との間のマトリックス差に起因する測定不正確さおよびバイアスのために顧客質量分析機器118で決定された分析物および/または内部標準の定量器-確認器比の初期目標値を補正するための係数とすることができるか、またはそれを含むことができる。処理ユニット116は、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から少なくとも3つの調整係数を決定するように構成されてもよい。処理ユニットは、決定されたクロマトグラムを評価し、そこから定量器-確認器比を決定するように構成されてもよい。処理ユニット116は、少なくとも1つの評価装置であってもよく、または少なくとも1つの評価装置を備えてもよい。評価することは、クロマトグラムの定量器ピークのピーク面積を決定すること、およびクロマトグラムの確認器ピークのピーク面積を決定することを含むことができる。評価することは、定量器ピークのピーク面積と確認器ピークのピーク面積との比を決定することを含むことができる。処理ユニット116は、複数の質量分析機器のそれぞれについて、被験者の分析物および較正器試料および試料の内部標準の定量器-確認器比の中央値を決定するように構成されてもよい。調整係数は、機器間手段を使用することによって決定されることができる。第1の調整係数αは、分析物と内部標準との間の差に依存する。第1の調整係数αは、
【数27】
によって決定されることができ、ここで、
【数28】
は、複数の測定値の分析物の定量器-確認器比の平均であり、
【数29】
は、複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均である。第2の調整係数βは、分析物定量器-確認器比についての被験者の試料と、較正器試料との間の差に依存する。第2の調整係数βは、
【数30】
によって決定されることができ、ここで、
【数31】
は、被験者の試料の複数の測定値の分析物の定量器-確認器比の平均であり、
【数32】
は、較正器試料の複数の測定値の分析物の定量器-確認器比の平均である。第3の調整係数γは、内部標準定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存する。第3の調整係数γは、
【数33】
によって決定されることができ、ここで、
【数34】
は、被験者の試料の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均であり、
【数35】
は、較正器試料の複数の測定値の内部標準の定量器-確認器比の平均である。
【0083】
質量分析システム110は、製造業者サイト較正システム112から顧客質量分析機器118に調整係数を電子的に転送するように構成された少なくとも1つの通信インターフェース120を備える。
図1では、通信インターフェース120は、2つの破線で示されている。転送は、一方向または双方向の情報交換、特にデータ交換であってもよい。転送は、例えば別の装置に情報を送信または出力するために、例えばコンピュータなどの計算装置から情報を転送することを含むことができる。通信インターフェース120は、情報を転送するように構成された境界を形成することができる。特に、通信インターフェース120は、例えば別の装置に情報を送信または出力するなどのために、例えばコンピュータなどの計算装置から情報を転送するように構成されることができる。追加的または代替的に、通信インターフェース120は、情報を受信するなどのために、計算装置、例えばコンピュータに情報を転送するように構成されてもよい。通信インターフェース120は、具体的には、情報を転送または交換するための手段を提供することができる。特に、通信インターフェース120は、例えば、ブルートゥース、NFC、誘導結合などのデータ転送接続を提供することができる。例として、通信インターフェース120は、ネットワークまたはインターネットポート、USBポート、およびディスクドライブのうちの1つまたは複数を含む、少なくとも1つのポートとすることができるか、またはそれらを含むことができる。通信インターフェース120は、少なくとも1つのウェブインターフェースとすることができる。電子転送は、少なくとも1つの電子データ転送技術を使用して、特に少なくとも1つの伝送プロトコルを使用して実行されることができる。具体的には、電子転送は、専用データベースからの少なくとも1つのパラメータファイルの少なくとも1つのダウンロードを含むことができる。転送は、顧客質量分析118が、データを受信することおよび/またはデータサーバなどからデータをダウンロードすることなどによって製造業者から情報を取得することを含むことができる。
【0084】
質量分析システム110は、少なくとも1つの顧客質量分析機器118を備える。顧客質量分析機器118は、顧客サイト122に配置されている。顧客質量分析機器118は、少なくとも1つの較正測定を実行するように構成され、較正測定では、較正器試料のセットが顧客質量分析機器118において測定される。顧客質量分析機器118は、較正測定から定量器-確認器比を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置124を備える。評価装置124は、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値を設定するように構成される。
【0085】
分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値は、初期目標値とも呼ばれる、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって設定される。較正測定中に決定された全ての定量器-確認器比は、目標値を設定するために使用されることができる。特に、分析物および内部標準の全ての較正器レベルおよび全ての較正器複製が目標値の設定に使用されることができる。分析物定量器AQNおよび分析物確認器AQLの定量器-確認器比の目標値
【数36】
は、
【数37】
によって設定されることができる。
【0086】
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、IQNは、内部標準定量器であり、IQLは、内部標準確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である。内部標準定量器IQNおよび内部標準確認器IQLの定量器-確認器比の目標値
【数38】
は、
【数39】
によって設定される。
【0087】
ここで、Rは、単一の測定値の定量器-確認器ピーク面積比であり、AQNは、分析物定量器であり、AQLは、分析物確認器であり、Nは、計算に使用される定量器-確認器比の総数である。これらの目標値は、ネイティブ患者試料に基づいて機器固有とすることができ、使用される複数のデータポイントに起因してより良好な精度を有することができる。アッセイに起因して、特定の較正頻度の時間的変化が定期的に補正されることができる。
【0088】
顧客質量分析機器118は、少なくとも1つの試料測定を実行するように構成されることができる。評価装置124は、少なくとも1つの試料分析を実行するように構成されることができ、全ての試料測定の試料分析中に、分析物および/または内部標準の定量器-確認器比が決定され、少なくとも1つの許容基準を考慮して目標値と比較される。
【0089】
質量分析システム110は、定量器-確認器比に基づいて品質チェックを実行するように構成されてもよい。定量器-確認器比に基づく品質チェックのために、測定された定量器-確認器比が比較される少なくとも1つの目標値が使用される。しかしながら、目標値は、質量分析機器ごとに変化または変化することができる。したがって、特定の顧客質量分析機器の品質チェック目標値に使用することが有利であり得る。時間の変化さえも可能である。したがって、顧客サイトで時間内に繰り返し調整または適合されることができる品質チェック目標値に使用することが有利であり得る。さらに、較正のために、通常、少数の較正試料が測定され、これらの較正試料の組成は、被験者の試料と比較して異なる場合がある。したがって、定量器-確認器比に基づく品質チェックは、測定不正確さによって強く影響され、較正器と被験者の試料との間のマトリックス差によってバイアスされる。これらの問題を克服するために、本発明は、データ転送手法を提案する。製造業者サイト112では、被験者の試料のセットおよび較正器試料は、複数の機器で複数の複製で測定されることができる。3つの調整係数が決定されてもよく、顧客質量分析機器118に電子的に転送されてもよい。顧客サイト122では、較正器試料に対して較正測定が実行されることができ、分析物および内部標準の定量器-確認器比の初期目標値が決定されることができる。調整係数が初期目標値に適用されて、分析物の調整された目標値および内部標準定量器-確認器比を計算することができる。調整された目標値は機器固有であり、被験者の試料を追跡することができ、使用される複数のデータ点のためにより良好な精度を有する。アッセイに特異的な較正頻度に起因して、時間的なドリフトおよびシフトが周期的に補正されることができる。その後の試料分析のために、少なくとも1つの許容基準が使用されて、測定された定量器-確認器比を検証することができる。
【0090】
許容基準は、定量器-確認器比を許容可能または拒絶として特徴付けることができる。許容基準または複数の許容基準は、アッセイ開発中に決定されることができる。少なくとも1つの許容基準は、機器固有でなくてもよく、経時的に変化してもよい。少なくとも1つの許容基準は、アプリケーションパラメータファイルによって顧客機器に電子的に転送されてもよい。許容基準は、少なくとも1つの許容限界または許容範囲を含むことができる。許容基準は、ピーク同一性チェックに使用されることができる。許容基準は、定量器イオンと干渉とを区別するために使用されることができる。許容基準は、顧客質量分析機器118によって測定された定量器-確認器比が適切であるか否かを特徴付けることができる。許容限界未満または許容範囲内の定量器-確認器比が検証されることができる。本方法は、許容基準を満たさない試料測定値のそれぞれにフラグを立てることをさらに含むことができる。許容限界を上回るかまたは許容範囲内にない定量器-確認器比にはフラグが立てられ、顧客質量分析機器のオペレータまたはユーザによるさらなるレビューが必要であり得る。
【0091】
本発明は、較正を2つの部分に分割することを提案する。第1の部分では、製造業者サイト112で標準化が実行されてもよく、第2の部分では、顧客質量分析機器118で較正が実行される。標準化は、顧客サイトの較正が行われる前に行われてもよい。顧客サイト較正は、少なくとも1つの較正測定を含み、較正器試料のセットが顧客質量分析機器118で測定される。顧客サイトの較正に使用される較正器試料のセットは、製造業者サイトの標準化に使用される較正器試料のセットと同一であってもよい。較正器試料のセットは、製造業者によって提供されてもよい。較正測定は、較正器試料のセットの複数の較正器試料および複数の複製などに対する複数の測定値を含むことができる。較正測定は、分析物および/または内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた多重反応監視を含むことができる。較正測定は、試料の各測定について少なくとも1つのクロマトグラムを決定することを含むことができる。較正測定は、分析物および内部標準の定量器-確認器比の初期目標値を決定することを含むことができる。初期目標値は、クロマトグラムを評価し、そこから定量器-確認器比を決定することによって決定されることができる。
【0092】
図2は、本発明にかかる定量器-確認器比チェックのために顧客質量分析機器118を較正するためのコンピュータ実装方法、および本発明にかかる顧客質量分析機器118上での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法のフローチャートを示している。本方法は、以下のステップ、すなわち、
a)(参照符号126によって示される)少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップであって、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットが、複数の質量分析機器114で複数の複製で測定され、各測定が、分析物および内部標準についての定量器および確認器の遷移を用いた複数の反応監視を含み、少なくとも3つの調整係数が、被験者の試料のセットおよび較正器試料のセットの測定値から決定され、第1の調整係数αが、分析物と内部標準との間の差に依存し、第2の調整係数βが、分析物の定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存し、第3の調整係数γが、内部標準の定量器-確認器比についての被験者の試料と較正器試料との間の差に依存する、少なくとも1つの製造業者サイト標準化ステップと、
b)(参照符号128によって示される)少なくとも1つの転送ステップであって、調整係数が顧客質量分析機器118に電子的に転送される、少なくとも1つの転送ステップと、
c)(参照符号130によって示される)少なくとも1つの顧客サイト較正ステップであって、顧客サイト較正が少なくとも1つの較正測定値を含み、顧客質量分析機器118で較正器試料のセットが測定され、そこから定量器-確認器比が決定され、決定された定量器-確認器比に調整係数を適用することによって、分析物および内部標準の定量器-確認器比の目標値が設定される、少なくとも1つの顧客サイト較正ステップと、
を含む。
【0093】
顧客質量分析機器118での定量器-確認器比チェックのためのコンピュータ実装方法は、ステップa)からc)を含む。さらに、定量器-確認器比チェックのための方法は、(参照符号132によって示される)顧客質量分析機器118を使用する少なくとも1つの試料測定を含む。本方法は、少なくとも1つの試料分析ステップ(参照符号134によって示される)をさらに含み、各試料測定の試料分析中に、少なくとも1つの許容基準を考慮して、分析物および/または内部標準の定量器-確認器比が決定され、目標値と比較される。
【0094】
図3Aおよび
図3Bは、テストステロン試験症例、特にヒト血清または血漿中のテストステロン定量化のためのLCMSアッセイの実験結果を示している。自動化された試料調製をロボットワークステーションで行い、LC分離を市販のHPLCシステムで行い、質量分析検出を、それぞれ分析物および内部標準の定量器および確認器の遷移を用いた多重反応監視によって行った。2つの質量分析機器114での2日間の製造業者サイト標準化のために、2つの複製較正器および患者試料を測定した。双方の質量分析機器114上の較正器および患者試料についての定量器-確認器比の中央値を計算した。
【表1】
【0095】
機器間手段を使用することにより、調整係数α、β、γが決定された:
-α=1.001
-β=1.003
-γ=0.998。
【0096】
顧客サイト122において、顧客条件での試料測定を行った。顧客の質量分析機器118において、1日の間に、2つの較正器レベルの3つの複製を測定し、目標値の較正および設定に使用した。30人の患者試料を複数の複製で10日間にわたって測定し、定量化-確認器比チェックを適用した。
【表2】
【0097】
図3Aおよび
図3Bは、テストステロン試験の場合の実験結果を示している。
図3Aは、面積比の関数としての分析物QQ
anaの定量器-確認器比を示している。面積比は、分析物定量器と内部標準定量器とのピーク面積の比である。
図3Bは、面積比の関数としての内部標準QQ
ISTDについての定量器-確認器比を示している。実線は、分析物1.15および内部標準1.14の目標値を示す。さらに、±20%の許容範囲が示されている。製造業者サイト標準化からの調整係数で決定された分析物1.15および内部標準1.14の目標値は、顧客質量分析機器の全測定範囲に適していることが示されている。
【符号の説明】
【0098】
110 質量分析システム
112 製造業者サイト
114 質量分析機器
116 処理ユニット
118 質量分析機器
120 通信インターフェース
122 顧客サイト
124 評価装置
126 製造業者サイト標準化
128 転送ステップ
130 顧客サイト較正
132 試料測定
134 試料分析ステップ
【国際調査報告】