(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ソーラーセル及びソーラーセル・モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20230619BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20230619BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573239
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 IT2021050167
(87)【国際公開番号】W WO2021240569
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】102020000012613
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522461516
【氏名又は名称】3サン ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】マルチェッロ シュト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーア カニーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ コンドレッリ
(72)【発明者】
【氏名】コジモ ジェラルディ
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ テッラシ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモ トッリシ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ バッターリャ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA05
5F251DA07
5F251EA19
5F251FA02
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA16
5F251FA18
5F251GA04
5F251HA03
(57)【要約】
本発明は、ソーラーセル(1)であって、光放射からの光子を吸収し電荷キャリアを放出するための半導体材料から形成された第1層(3,4’,4”,5,6)と、前記光放射が前記ソーラーセル(1)内へ前記第1層(3,4’,4”,5,6)に向かって入射するのを可能にするように、そして前記第1層(3,4’,4”,5,6)によって放出された電荷キャリアを収集するように構成された、前記第1層(3,4’,4”,5,6)とに重なる少なくとも1つの導電層(2)と、を少なくとも含み、前記ソーラーセル(1)は、前記導電層(2)が少なくとも3つのオーバーラップ層(21,22,23)、具体的には-金属から形成された透明中間金属層(23)、及び-導電性酸化物から形成された2つの透明酸化物層(21,22)を含み、前記2つの酸化物層(21,22)がそれぞれ、電荷のための低抵抗経路を提供するように、そして前記ソーラーセル(1)へ入射する光放射量を最大化するように、前記透明中間金属層(23)を取り囲む内側酸化物層(21)及び外側酸化物層(22)である、ことを特徴とする、ソーラーセル(1)に関する。本発明はまた、前記ソーラーセル(1)を含むソーラーセル・モジュールに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーセル(1)であって、
光放射から光子を吸収し電荷キャリアを放出するための半導体材料から形成された第1層(3,4’,4”,5,6)と、前記光放射が前記ソーラーセル(1)内へ前記第1層(3,4’,4”,5,6)に向かって入射するのを可能にするように、且つ、前記第1層(3,4’,4”,5,6)によって放出された電荷キャリアを収集するように構成された、前記第1層(3,4’,4”,5,6)に重なる少なくとも1つの導電層(2)と、を少なくとも含み、前記導電層(2)が少なくとも3つのオーバーラップ層(21,22,23)を含み、前記オーバーラップ層が、
- 金属から形成された透明中間金属層(23)、及び
- 透明導電性酸化物から形成された2つの酸化物層(21,22)
であり、
前記2つの酸化物層(21,22)がそれぞれ、電荷のための低抵抗経路を提供するように、そして前記ソーラーセル(1)へ入射する光放射量を最大化するように、且つ、前記透明中間金属層(23)を取り囲む内側酸化物層(21)及び外側酸化物層(22)であるものにおいて、
前記透明中間金属層(23)の厚さが5nm~10nmであり、
前記内側酸化物層(21)の厚さがほぼ50nmであり、そして
前記外側酸化物層(22)の厚さが50nm~60nmである、
ことを特徴とする、ソーラーセル(1)。
【請求項2】
前記透明中間金属層(23)の厚さが5nm~7nmであり、前記内側酸化物層(21)の厚さがほぼ50nmであり、そして前記外側酸化物層(22)の厚さが50nm~60nmである、請求項1に記載のソーラーセル(1)。
【請求項3】
前記透明中間金属層(23)の厚さが5nmであり、前記内側酸化物層(21)の厚さがほぼ50nmであり、そして前記外側酸化物層(22)の厚さがほぼ50nmである、請求項1に記載のソーラーセル(1)。
【請求項4】
前記酸化物層(21,22)の少なくとも一方が、酸化第二スズSnO
2ドープ型三酸化インジウムIn
2O
3から形成されており、又はアルミニウムドープ型酸化亜鉛から形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のソーラーセル(1)。
【請求項5】
前記透明中間金属層(23)が連続層の形状を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のソーラーセル(1)。
【請求項6】
前記透明中間金属層(23)が網状ネットワークとして配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のソーラーセル(1)。
【請求項7】
前記ソーラーセル(1)が、前側(11)と後側(10)とを含むヘテロ接合両面受光型ソーラーセル(1)であり、前記少なくとも1つの第1層(3,4’,4”,5,6)が、結晶シリコン、好ましくはn型結晶シリコンから形成された第1層(3)と、第2層(4’)と、第3層(4’’)とを含み、前記第2及び第3層(4’,4’’)が水素化非晶質シリコンから形成され、前記第1層(3)に重なり且つ前記第1層を取り囲んでおり、前記第2層(4’)が前記前側(11)に対応して配置され、前記第3層(4’’)が前記後側(10)に対応して配置されており、前記ソーラーセル(1)が、更に、n型ドープ型水素化非晶質シリコンから形成され且つ前記第2層(4’)に重なる第4層(5)と、p型ドープ型水素化非晶質シリコンから形成され且つ前記第3層(4’’)に重なる第5層(6)と、前記第4層(5)及び前記第5層(6)のそれぞれに重なる前記少なくとも1つの導電層(2)の2つの導電層(2)と、を含む、
ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のソーラーセル(1)。
【請求項8】
前記ソーラーセルが金属グリッドを含まないこと、又は前記ソーラーセルが、並列又はほぼ並列の導体によってのみ形成された金属グリッドを含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のソーラーセル(1)。
【請求項9】
ソーラーセル・モジュールであって、前記ソーラーセル・モジュールは、請求項1から8までのいずれか1項に記載の第1ソーラーセル(1)及び第2ソーラーセル(1)と、前記第1ソーラーセル(1)の導電層(2)を前記第2ソーラーセル(1)の導電層(2)に電気的に接続するためのコネクタ(100)と、を含み、前記コネクタ(100)は、前記第1ソーラーセル(1)の前記導電層(2)の前記外側酸化物層(22)、及び前記第2ソーラーセル(1)の前記導電層(2)の前記外側酸化物層(22)に直接的に取り付けられ、あるいは、
前記第1ソーラーセル(1)の前記導電層(2)上、及び/又は前記第2ソーラーセル(1)の前記導電層(2)上において、並列又はほぼ並列の導体に直接に取り付けられていることを特徴とする、ソーラーセル・モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソーラーセル及びソーラーセル・モジュールに関する。
【0002】
具体的には、本発明は、新規の導電層を有するソーラーセル、特にヘテロ接合型(HJT)ソーラーセルに関する。このようなHJT型ソーラーセルの一例は、結晶シリコン(c-Si)ウエハー表面上に堆積された不動態化層として水素化イントリンシックアモルファスシリコン層(a-Si:H)を有するHJT型ソーラーセルである。しかしながら、前記新規の導電層は他のソーラーセルに適用されてもよい。
【背景技術】
【0003】
高効率a-Si:H/c-Si HJTの製造は、化学的プロセス及び物理的プロセスの最適化を必要とすることがよく知られており、これには、その後、いくつかの消耗エレメント、例えば銀ペースト及び薄い透明導電性酸化物(TCO)の使用に関連する高いコストが多くの場合に伴う。
【0004】
HJTソーラーセルは実際には、極めて薄い(10nm~20nm)水素化非晶質シリコン層(a-Si:H層)を、Siウエハーとも呼ばれる単結晶シリコン(Si)バルク基板上に不動態化層として堆積することにより実現されるのが典型的である。典型的に採用されるSiバルク基板は0.1Ωcm~10Ωcmの抵抗率と、100μm~250μmの厚さとを有している。HJT両面受光型ソーラーセルの場合、不動態化層は、単結晶Siウエハーの両側に堆積される。また、単結晶Siウエハーは、参照記号c-Siウエハーで示される。
【0005】
a-Si:Hの堆積前に、Siバルク基板には、いくつかの種々異なる化学エッチング工程から成るテクスチャ加工が施されてよい。
【0006】
a-Si:H層、又は最終的には任意の他の不動態化層、例えば亜酸化ケイ素又は炭化ケイ素、又は最終的にはこの範囲に適した任意の他の材料を、c-Siウエハーの両側に通常堆積することにより、c-Si表面をそのシリコンダングリングボンドの低減によって不動態化する。
【0007】
したがって、最初のエッチングが表面欠陥を減らし得るので、この工程は、界面におけるバンドギャップ内部の局在準位欠陥の低減を可能にする。これらの欠陥は少数キャリアのための再結合中心であり、そして開回路電圧(VOC)の低下を招き得る。
【0008】
不動態化後、不動態化された表面上にコンタクト層を堆積することができる。このようなコンタクト層は、ソーラーセルの一方の側にPN接合を形成するために使用されるpドープ型水素化非晶質シリコン層(p-a-Si:H)、又はp+層と、セルの反対側ではnドープ型水素化非晶質シリコン層(n-a-Si:H)、又はn+層によって形成される。
【0009】
結晶シリコンウエハーがn型結晶シリコンウエハー(n型c-Si)である場合には、セルのp側、すなわちセルの、p+層を有する側はエミッタである。
【0010】
さらに、n型結晶シリコンウエハーが採用される場合には、前記n型c-Siの少数キャリアはホールであり、そして高い効率を達成することができる。
【0011】
セルは最後にTCOから成る層でカバーされる。この層はウエハーの両側に堆積される。これは電荷を収集するための導電性酸化物である。
【0012】
HJTセルを製造するためのTCOは典型的には、酸化第二スズSnO2ドープ型三酸化インジウムIn2O3(ITOとしても知られる)であり、In2O3とSnO2との重量比は90%のIn2O3、10%のSnO2乃至97%のIn2O3、3%のSnO2である。このことはTCOを高度にドープし得ることを意味する。ITOの代わりに、AZOとしても知られるアルミニウムドープ型酸化亜鉛AlZnOから成るTCOがある。AZOの主要な欠点は、ITOに対して導電率が著しく低いことであるが、しかしAZOは、高価且つ毒性の元素、例えばインジウムの使用を回避するという重要な利点を有する。
【0013】
すべての事例において、TCOは通常はn型ドープ型半導体である。n型ドープ型半導体は真性半導体と比較すると、輸送特性が制限された金属として電子的に挙動する。
【0014】
したがって、TCOと水素化非晶質シリコン層との接合のTCO/a-Si:Hの電荷キャリアの移動度及び電子挙動は、金属-半導体接合と同様であると通常は推定される。
【0015】
さらに、TCO作業機能は、セル構造(TCO/a-Si:H/c-Si)内のバンド配列に著しく関与することができ、ヘテロ接合を横切る電荷キャリアの輸送を調整する。
【0016】
要約すると、TCOの役割は、シリコンコンタクトから来た電荷を収集し、そしてこれらを最小限の損失で金属グリッドへ移動させることである。これについては後述する。
【0017】
理想的には、TCOは下記特性、すなわち
- 低い抵抗率
- 高いキャリア移動度
- 高いキャリア濃度
- 高い光透過性
を有することが望ましい。
【0018】
しかしながら、これらすべての特性の達成は平凡になしえることではなく、いくつかの妥協が通常受け入れられる。
【0019】
実際には、キャリア濃度を低下させることにより、キャリア移動度を高めることができる。キャリア濃度の低下はTCOの抵抗率を高める。
【0020】
他方において、キャリア濃度を増大させると、TCOのキャリア移動度及び光透過率(すなわち透明度)が同時に、そしてセルの結果として低下する。
【0021】
すでに述べたように、金属グリッドがTCO層上に通常堆積される。
【0022】
具体的には、このような金属グリッドは、TCOから電荷を効率的に収集する機能を有している。
【0023】
金属グリッドは通常は銀電極から形成されている。銀電極は種々異なる製造プロセスを通して実現することができる。
【0024】
HJTソーラーセル上に金属グリッドを製造する1つの好ましいプロセスは、銀ペースト、つまり銀粒子を含有するペーストのスクリーン印刷(SP)を通して行われる。
【0025】
別の周知の金属グリッド製造プロセスは、セル表面上の電気化学金属メッキに基づく。
【0026】
金属グリッドレイアウトは通常、セルに沿って延びる、フィンガと呼ばれる細長い並列接触と、フィンガと交差する、バスバーと呼ばれるより大きいコンタクトとを含む。
【0027】
光起電力ソーラーモジュール内部では、セルが金属リボンを介して直列接続され、金属リボンは通常ははんだ付け又は接着によって、バスバーに取り付けられている。
【0028】
典型的なHJT両面受光型ソーラーセルの構成が
図1に示されている。
【0029】
すでに述べたように、HJTソーラーセルの金属グリッドを製造するための銀ペーストの使用は高価である。
【0030】
さらに、銀ペーストは、低温で硬化させなければならず、コンタクト間の良好な抵抗、そしてまた良好なフィンガ抵抗率を確保するために注意深く調製されることが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
したがって、本発明の目的は、別の電荷収集体を有するソーラーセルを提供することである。
【0032】
さらに、本発明の目的は、ソーラーセル上の総入射光放射量を最大化することである。
【0033】
本発明のさらなる目的は、電荷収集体のこのような代替物が、使用される材料に関するコスト、及び製造プロセスに関連するコストの両方に関して、一般に使用されている金属グリッドよりも低廉であることである。
【0034】
結果として、本発明の目的は、ソーラーセルの製造のために用いられるプロセスにおける銀ペースト消費量を最小化又は排除することである。
【0035】
最後に、本発明の別の目的は、ソーラーセル間の単純化された相互接続スキームを有するソーラーセル・モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
このような目的は、金属化層を、電気特性が改善されたTCOから成る層と置換することによって達成された。
【0037】
具体的には、典型的なセル・レイアウトは、金属グリッドを、電気特性が改善された多層TCO-金属-TCO(酸化物-金属-酸化物又はOMOとも呼ばれる)と置換することにより、そしてモジュールレベルでは新規の相互接続スキームを用いることにより変更されている。新規の相互接続スキームは、周知のソーラーセル・モジュールと比較した場合にモジュール自体の材料の費用を軽減する。
【0038】
したがって、本発明の具体的な対象は、ソーラーセルであって、光放射からの光子を吸収し電荷キャリアを放出するための半導体材料から形成された第1層と、前記光放射が前記ソーラーセル内へ前記第1層に向かって入射するのを可能にするように、そして前記第1層によって放出された電荷キャリアを収集するように構成された、前記第1層に重なる少なくとも1つの導電層と、を少なくとも含む、ソーラーセルである。具体的には、前記導電層は少なくとも3つのオーバーラップ層を含み、前記オーバーラップ層が、
- 金属から形成された透明中間金属層、及び
- 透明導電性酸化物から形成された2つの酸化物層
である。
【0039】
前記2つの酸化物層はそれぞれ、電荷のための低抵抗経路を提供するように、そして前記ソーラーセルへ入射する光放射量を最大化するように、前記透明中間金属層を取り囲む内側酸化物層及び外側酸化物層である。
【0040】
前記透明中間金属層の厚さは5nm~10nmである。
【0041】
さらに、前記内側酸化物層の厚さはほぼ50nmである。具体的には、50nm以上の厚さに関する「ほぼ(substantially)」という用語は、±5nm間で生じ得る変動を示す。換言すれば、内側酸化物層の厚さは45nm~55nmであり、好ましくは50nmに等しい。
【0042】
最後に、前記外側酸化物層の厚さは50nm~60nmである。
【0043】
具体的には、本発明によれば、前記透明中間金属層の厚さは5nm~7nmであってよく、前記内側酸化物層の厚さはほぼ50nmであってよく、そして前記外側酸化物層の厚さは50nm~60nmであってよい。好ましくは、本発明によれば、前記透明中間金属層の厚さは5nmであってよく、前記内側酸化物層の厚さはほぼ50nmであってよく、そして前記外側酸化物層の厚さはほぼ50nmであってよい。
【0044】
また、本発明によれば、前記酸化物層の少なくとも一方が、酸化第二スズSnO2ドープ型三酸化インジウムIn2O3から形成されていてよく、又はアルミニウムドープ型酸化亜鉛から形成されていてよい。
【0045】
加えて、本発明によれば、前記透明中間金属層は連続層の形状を有することができる。
【0046】
さらに、本発明によれば、前記透明中間金属層は網状ネットワークとして配置されていてよい。
【0047】
本発明によれば、前記ソーラーセルは、前側と後側とを含むヘテロ接合両面受光型ソーラーセルであってよく、前記少なくとも1つの第1層は、結晶シリコン、好ましくはn型結晶シリコンから形成された第1層と、第2層と、第3層とを含むことができる。具体的には、前記第2及び第3層は水素化非晶質シリコンから形成されていてよく、そして前記第1層に重なり、前記第1層を取り囲むように配置することができる。実際には、前記第2層は前記前側に対応して配置されていてよく、前記第3層は前記後側に対応して配置されていてよい。さらに、前記ソーラーセルは、前記第2層に重なるn型ドープ型水素化非晶質シリコンから形成された第4層を含むことができる。前記ソーラーセルは、前記第3層に重なるp型ドープ型水素化非晶質シリコンから形成された第5層を含むこともできる。最後に、前記ソーラーセルは、前記第4層及び前記第5層にそれぞれ重なる前記少なくとも1つの導電層の2つの導電層を含むことができる。
【0048】
本発明によれば、前記ソーラーセルが金属グリッドを含まなくてもよく、又は前記ソーラーセルが、並列又はほぼ並列の導体によってのみ形成された金属グリッドを含んでよい。
【0049】
本発明のさらなる対象は、ソーラーセル・モジュールであって、前記ソーラーセル・モジュールが、本発明による第1ソーラーセル及び第2ソーラーセルと、前記第1ソーラーセルの導電層を前記第2ソーラーセルの導電層に電気的に接続するためのコネクタとを含み、前記コネクタが、前記第1ソーラーセルの前記導電層の前記外側酸化物層と、前記第2ソーラーセルの前記導電層の前記外側酸化物層とに直接に取り付けられ、あるいは、
前記第1ソーラーセルの前記導電層上、及び/又は前記第2ソーラーセルの前記導電層上の前記並列又はほぼ並列の導体に直接に取り付けられている、ソーラーセル・モジュールである。
【0050】
添付の図面を具体的に参照しながら好ましい実施態様に基づいて、例示を目的として、しかし限定を目的とはせずに、本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、バックエミッタの形態を成す周知のHJTセルの多層構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に基づくソーラーセルの多層構造を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、金属グリッドを有する周知のソーラーセルを示す正面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明に基づくソーラーセルを示す正面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1ソーラーセル・モジュール内部の
図3Aのソーラーセルを示す正面図である。
【
図4B】
図4Bは、第2ソーラーセル・モジュール内部の
図3Bのソーラーセルを示す正面図である。
【
図4C】
図4Cは、第3ソーラーセル・モジュール内部の
図3Bのソーラーセルを示す正面図である。
【
図5】
図5は、厚さが20nmに等しいアルミニウムドープ型酸化亜鉛のモノリシック層の反射率のパーセンテージを、入射放射波長の関数として示す図である。
【
図6】
図6は、本発明に基づかないソーラーセルの3つの異なる導電層の反射率及び吸光度のパーセンテージを、入射放射波長の関数として示す図である。
【
図7】
図7は、本発明に基づかないソーラーセルの第1例の反射率のパーセンテージを示す図である。
【
図8】
図8は、本発明に基づかないソーラーセルの第2例及び第3例の反射率のパーセンテージを示す図である。
【
図9】
図9は、本発明に基づかないソーラーセルの第4例の反射率のパーセンテージを示す図である。
【
図10】
図10は、本発明に基づくソーラーセルの第5例及び第6例の反射率のパーセンテージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図2,3B,4B及び4Cを参照すると、本発明によるソーラーセル1は、前側11に、そして好ましくは後側10にも導電層2を有している。
【0053】
具体的には、
図2に示されたソーラーセル1は両面型n型HJTソーラーセル1であるものの、導電層2は他の種類のソーラーセル、例えばp型ウエハーベースHJTセル上、又はいかなる他の種類のソーラーセル上にも適用されてもよい。
【0054】
ソーラーセル1は、c-Si、好ましくはc-Si(n)から成る中心層3、又は第1層3と、前記中心層3を取り囲む、a-Si:Hから成る2つの中間層4’,4”とを含む。これらの中間層はそれぞれ、セル1の前側11に対応して配置された第2層4’、及びセル1の後側10に対応して配置された第3層4”である。
【0055】
さらに、ソーラーセル1は、前記第2層4’と接触する、a-Si:H(n+)から成る第4層5と、前記第3層4”と接触する、a-Si:H(p+)から成る第5層6とを含む。したがって、前記第4層5はソーラーセル1の前側11に対応して配置され、前記第5層6はソーラーセル1の後側10に対応して配置されている。
【0056】
シリコンから成る前述のすべての層は、光放射からの光子を吸収し、電荷キャリアを放出する機能を有している。他の実施態様では、このような層は、異なる構造を有し、そして異なるタイプの半導体によって形成されていてよい。
【0057】
前記第4層及び第5層5,6の両方の上に導電層2が堆積されている。
【0058】
このような導電層2は、光放射が前記ソーラーセル(1)内へ前記層5,4’,3、又は6,4”,3に向かって入射するのを可能にし、そして前記層5,4’,3、又は6,4”,3によって電流中に放出された電荷キャリアを収集する機能を有している。
【0059】
具体的には、それぞれの導電層2は、ITO又はAZOであってよいTCO、又は他の適宜の酸化物から成る2つの酸化物層21,22と、前記2つの酸化物層21,22の間に配置された透明中間金属層23とを含む。
【0060】
中間金属層23の透明度は、その総厚を最小化することにより達成される。総厚は5nm~20nm(ナノメートル)、より好ましくは5nm~10nmであってよい。このような厚さは、最終デバイスの所要の光学特性及び電気特性に適合させることができる。1実施態様では、中間金属層の厚さは5nm~7nmであってよく、好ましくは5nmに等しくてよい。
【0061】
実際には、透明中間金属層23は、構造の抵抗率に主に関与し、厚さが5nm未満であると、連続的な相互接続された金属膜の成長を必ずしも保証しなくなる。
【0062】
さらに、このような厚さによって、透明中間金属層23は、膜が連続膜である場合に、10-6Ωcmオーダーの抵抗率値を達成し得るので有利である。例えば、厚さ約10nmの銀から成る中間金属層23を用いると、10-5Ωcm未満の抵抗率が測定された。
【0063】
加えて、このような透明中間金属層23を構造化することもでき、例えば格子又は網状ネットワークの形又は相互接続されたナノ粒子の集合体の形で組織化することができる。網状ネットワークを有する中間金属層23の事例では、同じ厚さの均質な中間金属層を有するソーラーセル1と比較した場合に、メッシュ内のアパーチャの存在それ自体が、セル1のより高い透明度を可能にする。さらに、網状ネットワークの形で組織化された中間金属層23は、極めて低い抵抗率値を可能にする。
【0064】
最後に、中間金属層23が金属相互接続ナノ粒子又はナノ構造(例えば寸法2~5nmのナノ粒子)を堆積することによって得られる場合、極めて良好な導電性を得ることができるとともに、多孔質膜のより低い密度、及びナノ構造のプラズモン効果の両方に起因して、光透明性が高められる。
【0065】
透明中間金属層23は銀Ag、銅Cu、金Au、アルミニウムAl、又は他の適宜の金属から形成することができる。
【0066】
すでに述べたように、導電層2は、第4層5上及び/又は第5層6上に内側酸化物層21を堆積することによって形成することができる。
【0067】
続いて、前記透明中間金属層23を前記内側酸化物層21上に堆積した後、前記透明中間金属層23上に外側酸化物層22を堆積することができる。
【0068】
各導電層2の2つの酸化物層21,22は異なるTCOで形成することができる。
【0069】
具体的には、ソーラーセル・モジュール内部のソーラーセル1の電気特性及び光学特性を最適化するために、ソーラーセル1の後側10に配置される導電層2のために使用される酸化物及び/又は金属は、同じソーラーセル1の前側11に使用されるものとは異なっていてよい。
【0070】
導電層2の特性は、ソーラーセル1の最適な電気特性及び光学特性を見出すために、層の厚さを修正することにより調整することもできる。
【0071】
したがって、得られる導電層2は、純粋なTCO超薄型膜にも純粋な金属超薄型膜にも達しないように電気特性と光学特性との組み合わせを想定するように設計することができる。
【0072】
実際には純粋な金属の超薄型膜及び純粋なTCOの超薄型膜の両方は排除されることが望ましい。それというのも両方の超薄型膜において、ソーラーセル1は所望のようには挙動しないからである。
【0073】
具体的には、内側酸化物層21及び外側酸化物層22として堆積されるTCOの厚さは1nm~200nm、好ましくは1nm~80nmであってよい。
【0074】
酸化物層21及び22の厚さの組み合わせは、OMO層の反射率を制御するための重要なパラメータである。実際には、OMO構造が多層構造であるので、太陽光のスペクトル領域内のこの材料の反射防止効果がこれらのパラメータによって直接に決定される。いくつかの厚さを1nm~200nmの範囲内、具体的には1nm~80nmの範囲内で用いることができるものの、好ましい値は内側酸化物層21に関しては1nm~30nm又は50nmであり、そして外側酸化物層22に関しては30nm~80nmであることが判っている。
【0075】
好ましい実施態様では、前記内側酸化物層21の厚さはほぼ50nmであり、そして前記外側酸化物層22の厚さは30nm~60nm、より好ましくは50nm~60nm、さらにより好ましくは50nmにほぼ等しい。
【0076】
以後、30nm以上の厚さに関する「ほぼ(substantially)」という用語は、±5nmの変動を意味する。
【0077】
このような値は、
図10に示し下記に詳述するように、波長500nm~700nmの入射放射線に対して最適な反射率条件を定義する反射率の典型挙動に関して、著しく拡張された幅広い極小の出現を保証する。
【0078】
これらの値はまた、半導体から成る層3,4’,4”,5,6とソーラーセル1の外面との間に介在する層の厚さを最小化するために選択されている。同時に、このような厚さは、ソーラーセル1がソーラーセル・モジュール内部にあるときに、通常は最終ガラス保護部材と接触するその外側領域に対応してソーラーセル1が最大限に保護されることを保証する。
【0079】
さらに、OMO層2の選択された厚さは、可視光及び近赤外線のスペクトル領域においてソーラーセル1の透明度を増大させるのを可能にするのに有利である。
【0080】
具体的には、ソーラーセル1は、両面受光型ソーラーセルの後側10において太陽スペクトルの赤部分の透過率を高めるように設計されている。後側10は、地面上の反射後の光のアルベド(albedo)を受ける(青波長に乏しく、赤波長に富む)。
【0081】
さらに、有利には、外側酸化物層22はソーラーセル・モジュール内部のソーラーセル1の接続を容易にし、
図4B及び4Cに示されているように、相互接続リボン100によって接続することができる。
【0082】
実際には、最外層がTCOから成る外側酸化物層22であるため、ソーラーセル1とリボン100との接着が改善されるので有利である。他方において、透明中間金属層23とリボン100との直接の接続は、可能であるとしても、前記透明中間金属層上の不連続性が存在する可能性があり、またその厚さが低減されることに起因して、接着状態を悪化させる。
【0083】
加えて、前記導電層2の形態は、ソーラーセル1の表面上に金属グリッドを使用するのを回避可能にする。したがって、このような形態は、ソーラーセル1内へ入射する光の量を有利に最大化する一方、所要の導電率を達成することにより、さらなる外部の金属グリッドなしに、電荷を収集してリボン100まで輸送するのを可能にする。しかしながら後述するように、少数のバスバーを使用して電荷キャリアの収集を改善してもよい。
【0084】
前記導電層2の特定の形態は、実際には結果として、セル1の外面全体にわたって分散した電荷収集をもたらし、ソーラーセル1自体をより良好に金属化する。
【0085】
これらの態様の組み合わせは、銀ペーストの消費量を低減するのを可能にし、ソーラーセル1の製造に関連するコストを下げるので有利である。
【0086】
さらに、前記ソーラーセル1を製造するために、高価な工具、例えばスクリーン印刷機も必要とされず、ソーラーセルの製造コストをさらに低減する。
【0087】
さらに、上述のように、提案された導電層2は、いかなるさらなる中間コンタクトも用いずに、リボン100を外側酸化物層22上に直接に取り付けることを可能にする。
【0088】
具体的には、いかなる電気的損失も生じさせることなしに、前記外側酸化物層22上に前記相互接続リボン100を直接に接着し得るので有利である。実際に、リボン100と外側酸化物層22との接触の機械強度は、リボン100と銀ペーストから成るバスバーとの間の機械強度よりも高い。
【0089】
図4B及び4Cを参照すると、ソーラーセル・モジュール内で前記ソーラーセル1を接続するために、2つの異なる金属化アプローチを採用することができる。
【0090】
具体的には、
図4Bに示されている標準アプローチは、4つのバスバーと、前記バスバーの上部の4つのリボン100とを備えた古典的なストリンガーを使用する。他方において、マルチワイヤ・アプローチを用いたより高度分散型のスキームが
図4Cに示されている。マルチワイヤ・アプローチは、本発明によるソーラーセル1上に適用することができる。
【0091】
両事例では、リボンとバスバーとの間の整合は必要ない。それというのも、ソーラーセル1上には金属グリッドがないからである。
【0092】
最後に、導電層2及び相対相互接続スキームはまた、セルの配向からは独立しているので有利であり、セル・モジュールにおけるいかなる種類の金属化スキームをも可能にする。
【0093】
以下の段落では、いくつかの測定及び試験について記載する。これらは、ソーラーセル1のための最適な導電層2を識別するのを可能にした。
【0094】
図5には、モノリシックAZO層の反射率が入射放射波長の関数として示されている。モノリシックAZO層の厚さは20nmに等しい。反射率の極大値が、ほぼ375nmの波長に対して得られる一方、より大きい波長に対しては横ばい又は増大する単調な挙動がある。
【0095】
図6には、3つの異なる導電層2の挙動が、反射率及び吸光度に関して、入射放射波長の関数として示されており、3つの導電層2のそれぞれは、Agから成る透明中間金属層23と、AZOから成る2つの酸化物層21,22とを含む。具体的には、第1AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ10nm/5nm/10nmに等しく、第2AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ10nm/10m/10nmに等しく、そして第3AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ10nm/15nm/10nmに等しい。
【0096】
それぞれの導電層2に関して、
図6に示されたモノリシックAZOの挙動と同様に、375nmにおいて反射率の極大値(ひいては吸光度の極小値)があり、そしてより大きい波長では、増大する単調な挙動があることが明らかである。
【0097】
ソーラーセルにおけるこのような挙動は概ね性能の貧弱さと関連する。実際に、反射率がより高いことは、導電層2を通りシリコン層3に達する放射線がより少ないことを意味し、このことは光電気効果による電荷キャリアの放出を低下させる。
【0098】
したがって、500nm~700nmの波長に対して低い反射率を有することが望ましい。さらに、800nmを上回る波長に関連する反射率パーセンテージは30%~40%であること、そしてこれが比較的小さな勾配で増大することが望ましい。
【0099】
図7~10は、シリコンから成る第1層3と、前記第1層3に重なる導電層2とを含むいくつかのソーラーセル1に対する入射放射波長の関数としての反射率パーセンテージを示している。それぞれの導電層2は、種々異なる厚さを有する、Agから成る透明中間金属層23と、AZOから成る2つの酸化物層21,22とを含む。
【0100】
具体的には、
第1ソーラーセル1において、その反射率が
図7に示されており、AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ30nm、20nm、及び30nmであり、
第2ソーラーセル1において、その反射率が
図8に示されており、AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ50nm、15nm、及び70nmであり、
第3ソーラーセル1において、その反射率も
図8に示されており、AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ50nm、20nm、及び70nmであり、
第4ソーラーセル1において、その反射率が
図9に示されており、AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ30nm、20nm、及び50nmであり、
第5ソーラーセル1において、その反射率が
図10に示されており、AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ50nm、5nm、及び50nmであり、そして
第6ソーラーセル1において、その反射率も
図10に示されており、AZO/Ag/AZO導電層2の層21,23,22の厚さはそれぞれ50nm、10nm、及び50nmである。
【0101】
AZO/Ag/AZO導電層2のそれぞれの厚さに依存する
図7~9に示されたソーラーセル1の反射率が、望ましくない、そして特に効率的な挙動を有することは明らかである。
【0102】
驚くべきことに、
図10に示されたソーラーセル1の反射率は、波長500nm~700nmの入射放射線に対して極小値を有する。すなわち、これらのソーラーセル1において、反射性に関して望ましい挙動が、ひいてはより高い効率が得られた。このようにすると、シリコン第1層3における入射放射線を著しく増大させることができる。
【0103】
本発明をその好ましい実施態様に基づいて、限定のためではなく例示を目的として説明してきたが、言うまでもなく添付の請求項によって定義される特許請求の範囲を逸脱することなしに、変更及び/又は改変を当業者によって加えることができる。
【国際調査報告】