(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】弱化ポストメタロセン触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/651 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
C08F4/651
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567738
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021034139
(87)【国際公開番号】W WO2021242800
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ニールソン、ベサニー エム.
(72)【発明者】
【氏名】クールマン、ロジャー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、レット エー.
(72)【発明者】
【氏名】スズール、ジョン エフ.
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC27
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC25A
4J128BC25B
4J128CA28A
4J128CA28B
4J128CB03A
4J128CB04A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA04
4J128FA09
4J128GB01
4J128GB07
(57)【要約】
弱化ライトオフポストメタロセン触媒(「弱化ポストメタロセン触媒」又は「弱化P-M触媒」)を作製する方法であって、高速ライトオフ触媒を本明細書に記載されるような有効量の式(A1)、(B1)、又は(C1):R5-C≡C-R6(A1)、(R5)2C=C=C(R6)2(B1)、又は(R5)(R7)C=C(R6)(R7)(C1)の動力学改質剤化合物と有効な反応条件下で化合させて、(高速ライトオフ触媒のものと比較して)弱化されたライトオフ動力学プロファイルを示す弱化ポストメタロセン触媒を得ることを含み、高速ライトオフ触媒は、構造式(I):(D)dM(T)t(Q)q(X)x(I)のポストメタロセンプレ触媒(すなわち、活性化されていない「配位エンティティ」又は「配位子-金属錯体」)を活性化することによって作製されている、方法、並びに関連する方法、組成物、及び使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱化ポストメタロセン触媒を作製する方法であって、高速ライトオフ触媒を有効量の式(A
1)、(B
1)、又は(C
1):R
5-C≡C-R
6(A
1)、(R
5)
2C=C=C(R
6)
2(B
1)、又は(R
5)(R
7)C=C(R
6)(R
7)(C
1)の動力学改質剤化合物と有効な反応条件下で化合させて、弱化されたライトオフ動力学プロファイルを示す弱化ライトオフポストメタロセン触媒を得ることを含み、前記高速ライトオフ触媒は、構造式(I):(D)
dM(T)
t(Q)
q(X)
x(I)のポストメタロセンプレ触媒を活性化することによって作製されており、式(A
1)、(B
1)、又は(C
1)中、R
5及びR
6の各々は独立して、H又はR
7であり、各R
7は独立して、(C
1~C
20)ヒドロカルビル、-C(=O)-O-(非置換C
1~C
12)ヒドロカルビル)、(C
1~C
17)ヘテロヒドロカルビル、若しくはトリ((C
1~C
20)ヒドロカルビル)シリルであるか、又は2つのR
7が一緒になって、(C
3~C
6)アルキレンを形成し、但し、各R
7は、炭素-炭素二重結合を欠いており、各(C
1~C
20)ヒドロカルビルは独立して、非置換であるか、又は1~4個の置換基R
Sで置換されており、各置換基R
Sは独立して、ハロゲン、非置換(C
1~C
5)アルキル、-C≡CH、-OH、-NH
2、-N(H)(非置換(C
1~C
5)アルキル)、-N(非置換(C
1~C
5)アルキル)
2、-COOH、及び-COO(非置換(C
1~C
5)アルキル)から選択され、式(I)中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、下付き文字dは、0、1、又は2であり、下付き文字tは、0又は1であり、下付き文字qは、0又は1であり、下付き文字xは、1、2、又は3であり、各配位子Dは独立して、二座オルガノヘテリル又は二座オルガノヘテリレンであり、配位子Tは、三座オルガノヘテリレンであり、配位子Qは、四座オルガノヘテリレンであり、各Xは、ハロゲン原子、((C
1~C
20)アルキル)
3-g-(フェニル)
gSi-(式中、下付き文字gは0、1、2、又は3)、CH
3、(C
2~C
20)アルキル-CH
2、(C
6~C
12)アリール-((C
0~C
10)アルキレン)-CH
2、(C
1~C
6)アルキル-置換(C
6~C
12)アリール、(C
1~C
6)アルコキシ-置換(C
6~C
12)アリール、(C
1~C
6)アルコキシ-置換ベンジル、及び(C
1~C
6)アルキル-置換ベンジルから独立して選択される単座基であるか、又は1つのXが、4-(C
1~C
20)アルキル-置換1,3-ブタジエン分子であり、残りのXの各々が、もしあれば、独立して、単座基Xである、方法。
【請求項2】
前記高速ライトオフ触媒が、式(II):(D)
d[M
+](T)
t(Q)
q(X)
x-1 A
-(II)の高速ライトオフ触媒であり、前記弱化ポストメタロセン触媒が、式(III):(D)
d[M
+](T)
t(Q)
q(X)
x-2(R)A
-(III)の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、下付き文字d、t、q、及びx、金属M、並びに配位子D、T、Q、及びXは、式(I)について定義されるとおりであり、式中、A
-はアニオンであり、式中、Rは、式(A)、(B)、又は(C):それぞれ、-C(R
5)=C(X)R
6(A)、-C(R
5)
2-C(X)=C(R
6)
2(B)、又は-C(R
5)(R
7)-C(X)(R
6)(R
7)(C)の配位子であり、式中、R
5~R
7は、それぞれ式(A
1)、(B
1)、又は(C
1)について以前に定義されたとおりである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポストメタロセンプレ触媒が、式(Ia):(D)
dM(X)
x(Ia)のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、下付き文字dは、1又は2であり、下付き文字xは、2又は3であり、各配位子Dは独立して、二座オルガノヘテリル又は二座オルガノヘテリレンであり、各Xは、式(I)について定義されるとおりである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の前記ポストメタロセンプレ触媒が、式(Ib):MT(X)
2(Ib)のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、配位子Tは、三座オルガノヘテリレンであり、各Xは、式(I)について定義されるとおりである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の前記ポストメタロセンプレ触媒が、式(Ic):MQ(X)
2(Ic)のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、配位子Qは、四座オルガノヘテリレンであり、各Xは、式(I)について定義されるとおりである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記動力学改質剤化合物が、式(A
1):R
5-C≡C-R
6(A
1)の動力学改質剤化合物であって、フェニルアセチレン、(置換-フェニル)アセチレン、ジフェニルアセチレン、置換ジフェニルアセチレン、シクロアルキルアセチレン、式HC≡CSi(フェニル)
h((C
1~C
20)アルキル)
3-h(式中、下付き文字hは、0~3の整数)のアセチレン、及び式HC≡C-(CH
2)
mCH
3(式中、下付き文字mは、1~15の整数)のアセチレンから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記動力学改質剤化合物が、式(B
1)(R
5)
2C=C=C(R
6)
2(B
1)の動力学改質剤化合物であり、シクロアルキルアレン、アルキルアレン、ジアルキルアレン、トリアルキルアレン、トリアルキルシリルアレン、ビニリデンシクロアルカン、及びアレンカルボン酸のアルキルエステルから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記動力学改質剤化合物が、式(C
1)(R
5)(R
7)C=C(R
6)(R
7)(C
1)の動力学改質剤化合物であり、式(C
1)の前記動力学改質剤化合物が、内部アルケンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記弱化ポストメタロセン触媒、支持材料、及び不活性炭化水素溶媒の混合物を作製することと、前記混合物から前記不活性炭化水素溶媒を除去し、前記支持材料上に配置された前記弱化ポストメタロセン触媒を得ることと、を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の前記ポストメタロセンプレ触媒が、
式(Ia)-1
【化1】
(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒であって、式中、各Ar
1及びAr
2は独立して、フェニル、置換フェニル、ビフェニル、置換ビフェニル、アントラセン、置換アントラセン、カルバゾリル、及び置換カルバゾリルから選択される非置換又は置換芳香族基であり、前記置換芳香族基の各置換基は独立して、アルキルであり、各基R
a1及びR
a2は独立して、H又は(C
1~C
20)アルキルであり、各下付き文字0-3は独立して、0、1、2、又は3であり、M及びXは、式(I)について定義されるとおりである、ポストメタロセンプレ触媒、及び
式(Ia)-2:
【化2】
(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒であって、式中、M及びXは、式(I)について定義されるとおりであり、各下付き文字1-5は独立して、1、2、3、4、又は5であり、R
a3及びR
a7の各々は独立して、(C
1~C
20)アルキル又は(C
6~C
12)アリールであり、R
a4~R
a6の各々は独立して、(C
1~C
20)アルキルであるか、又はR
a4~R
a6が一緒になって式=C(H)-CH
2CH
2CH
2-の3価の基を形成する、ポストメタロセンプレ触媒、からなる群から選択される、請求項1~3及び6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の前記ポストメタロセンプレ触媒が、
式(Ib)-1
【化3】
(Ib)-1のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、Mは、Ti、Hf、又はZrであり、各下付き文字0-3は独立して、0、1、2、又は3であり、基R
b1~R
b6の各々は独立して、H又は(C
1~C
20)アルキルであり、Xは、式(I)について定義されるとおりである、請求項1、2、4、及び6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって作製された弱化ポストメタロセン触媒。
【請求項13】
ポストメタロセン触媒を、オレフィンモノマーと、ポリオレフィンポリマーの移動床とを含むスラリー相又は気相重合反応器に供給する方法であって、前記弱化ポストメタロセン触媒を前記反応器の外側で請求項1~11のいずれか一項に記載の方法に従って作製することと、前記弱化ポストメタロセン触媒をそのままの形態で、又は不活性炭化水素液中のその溶液若しくはスラリーとして、オレフィンモノマーを含まない供給ラインを介して前記スラリー相又は気相重合反応器内に供給することと、を含む、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の弱化ポストメタロセン触媒と、本明細書に記載の弱化されていないポストメタロセン触媒、異なる弱化ポストメタロセン触媒、及びメタロセン触媒からなる群から選択される少なくとも1つの第2の触媒と、を含む、多峰性触媒系。
【請求項15】
ポリオレフィンポリマーを作製する方法であって、少なくとも1つの1-アルケンモノマーを、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって作製された弱化ポストメタロセン触媒、又は請求項14に記載の多峰性触媒系と、ポリオレフィン樹脂の移動床を含むスラリー相又は気相重合反応器内のスラリー相又は気相重合条件下で接触させ、それにより前記ポリオレフィンポリマーを作製すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オレフィン重合触媒、方法、及びそれにより作製されたポリオレフィン。
【0002】
序論
当分野における刊行物及び特許としては、欧州特許出願公開第0188914(A2)号、同第0748823(A1)号、同第1778738(A1)号、同第2121776(A1)号、同第2609123(A1)号、米国特許第5,624,878号、同第5,965,677号、同第6,083,339(B2)号、同第6,967,184(B2)号、同第7,705,157(B2)号、同第8,455,601(B2)号、同第8,609,794(B2)号、同第8,835,577(B2)号、同第9,000,108(B2)号、同第9,029,487(B2)号、同第9,234,060(B2)号、同第9,718,900(B2)号、米国特許出願公開第2009/0306323(A1)号、同第2017/0081444(A1)号、同第2017/0101494(A1)号、同第2017/0137550(A1)号、同第2018/0002464(A1)号、同第2018/0282452(A1)号、同第2018/0298128(A1)号、国際公開第2006/066126(A2)号、同第2009/064404(A2)号、同第2009/064452(A2)号、同第2009/064482(A1)号、同第2011/087520(A1)号、同第2012/027448号、同第2013/070601(A2)号、同第2014/105411(A1)号、同第2016/172097(A1)号、同第2017/058858号、同第2017/058981(A1)号、同第2018/022975(A1)号、同第2020/055893(A1)号、及び同第2018/183026(A1)号が挙げられる。
【0003】
とりわけ、米国特許第8,609,794(B2)号、同第9,000,108(B2)号、同第9,029,487(B2)号、米国特許出願公開第2017/0081444(A1)号、同第2017/0101494(A1)号、同第2017/0137550(A1)号、同第2018/0002464(A1)号、同第2018/0282452(A1)号、国際公開第2017/058858号、及び同第2018/022975(A1)号は、The Dow Chemical Companyの子会社であるDow Global Technologies LLCに譲渡されており、ビフェニルフェノキシ型(BPP型)プレ触媒及び触媒、それらの合成、並びにオレフィン重合反応におけるそれらの使用を説明する。
【0004】
米国特許第6,967,184(B2)号はTimothy T.Wenzel(「Wenzel」)に発行され、米国特許第9,718,900(B2)号はGarth R.Giesbrecht(「Giesbrecht」)に発行されており、どちらも、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)の完全子会社であるUnivation Technologies,LLCに譲渡されている。Wenzel及びGiesbrechtは、HN5型プレ触媒及び触媒、それらの合成、並びに気相オレフィン重合反応におけるそれらの使用を説明する。
【0005】
米国特許第6,803,339(B2)号は、Richard A.Hallら(「Hall」)に発行されており、BP Corporation North America Inc.に譲渡されているものとして記載されている。Hallは、メタロセン触媒がオレフィンモノマー流で重合反応器に供給される場合にメタロセン触媒が有する問題に言及している。「メタロセン触媒は、従来の重合プロセスにおいて、特に触媒系が炭化水素中に又はモノマー中に分散され、供給ラインを介して反応器に計量供給される気相プロセスにおいて、直接用いることが困難である。支持されたメタロセン触媒は、予め活性化されると、すなわち、反応器に導入される前に助触媒構成成分と化合されると、最適に活性である。反応器系への直接供給のためにそのような触媒をオレフィンモノマー流中に分散させることは、ポリマー形成をもたらし、供給ラインの重度の詰まりを引き起こす。更に、重合は、触媒系が反応器内のポリマー床を通して十分かつ均一に分散される前に進行し、その結果、塊の形成及びプレートアウトを促進する高活性のホットスポットをもたらす。反応器は急速に汚れていき、触媒収率が低下し、反応器を洗浄するための頻繁なシャットダウンが必要となる。」(カラム2、ライン50~65、強調を追加した。)
【0006】
Hallは、他者が以前に試した解決策について更に詳しく述べている。「メタロセン触媒の活性を一時的に低下させることが、当該技術分野において記載されてきた。例えば、重合中にジアルキボラン(dialkyborane)又はジアルキルアルミニウムを反応器に添加して、メタロセン触媒の活性を一時的に遅延させることが、プロセス制御のための方法として開示されている。しかしながら、触媒活性は、このような処理によって部分的に遅延されるだけである。ジアルキボラン又はジアルキルアルミニウムで直接処理された触媒は、モノマー供給流中に分散されると、重合を開始するのに十分な活性を保持する。更に、この回復期間は非常に短いものであり、触媒が回復し、重合が進行する前に、撹拌反応器の気相反応器床内で触媒系が適切に分散することを可能にするには短すぎる。」(カラム3、ライン14~26、強調を追加した。)
【0007】
Hallは、メタロセン触媒を一時的かつ可逆的に不動態化し、それにより、触媒をオレフィンモノマーと接触させて反応器に供給し、再活性化前に触媒を反応器のポリマー床に適切に分散させることを可能にするレベルに、触媒活性が低下した状態になるための方法を求めた(カラム3、ライン49~55)。すなわち、Hallは、オレフィンモノマー流中の一時的に実質的に不活性化されたメタロセン触媒を重合反応器に供給することを可能にする方法を求めた。
【0008】
Hallの解決策は、有効量の不飽和炭化水素不動態化化合物との接触によって一時的かつ可逆的に不動態化され得るメタロセン触媒に関する(要約書(Abstract)欄)。Hallの解決策はまた、十分に活性なメタロセン触媒が、有効量の不動態化化合物と接触することによって一時的かつ可逆的に不動態化され得る、メタロセン触媒を一時的かつ可逆的に不動態化する方法に関する(カラム3、ライン58~62)。一時的かつ可逆的に不動態化されたメタロセン触媒は、潜在性オレフィン重合触媒として更に特徴付けられ、オレフィンの重合に対して実質的に低減された活性を有する(カラム3、ライン63~66)。
【0009】
したがって、Hallは、結果として生じる一時的に実質的に不活性化されたメタロセン触媒をオレフィンモノマー流で反応器に供給することができ、しかも、一時的に実質的に不活性化されたメタロセン触媒が、供給流中のオレフィンモノマーを重合させることも、供給ラインを詰まらせることもないように、メタロセン触媒を一時的に実質的に不活性化(毒)しようとした。これは、一時的に実質的に不活性化されたメタロセン触媒を反応器内のポリマー床に分散させるための時間をHallに与え、その中で、一時的に実質的に不活性化されたメタロセン触媒が可逆的に再活性化される。したがって、Hallのメタロセン触媒は、十分に活性であるか、又は実質的に不活性化されており、実質的に不活性化されたメタロセン触媒は、オレフィンモノマー供給流中のオレフィンモノマーの存在下で反応器に供給される。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、ポストメタロセン触媒(すなわち、シクロペンタジエニル含有配位子を有しない触媒)を気相オレフィン重合反応器に別個に(すなわち、モノマー及びポリオレフィンポリマー粒子から離れて)供給することの問題を発見した。オレフィン重合は、液相、スラリー相、又は気相で実行され得る発熱反応である。気相重合反応の性質は、反応発熱物の熱を吸収するための最も少ない質量を有するようなものである。本発明者らは、活性ポストメタロセン触媒が不活性炭化水素溶媒(例えば、アルカン又はキシレン)中の溶液又はスラリーとして反応器内に供給されるときなど、活性ポストメタロセン触媒が、オレフィンモノマーと、ポリオレフィンポリマーの移動床とを含む気相重合反応器にオレフィンモノマー供給とは別個に(及び、その点において、活性ポリオレフィンポリマー粒子とは別個に)供給される場合でさえも、それが反応器内にあり、重合条件(例えば、高温及び高圧)を経験すると、活性ポストメタロセン触媒は、気相重合反応器内であまりにも速くライトオフする可能性があることを発見した。すなわち、ポストメタロセン触媒の供給(例えば、注入)時に、及び「高速ライトオフ」触媒が移動樹脂床内に十分に分散することができる前に、触媒は、反応器内で触媒注入部位の近くにポリマー粒子を作製し始める。これは、熱を吸収可能な速度よりも速く局所的に発生させ、それにより、ポリマー粒子が融合し、凝集体を形成する。これらの凝集体は、反応器構成要素を汚し、及び/又はポリオレフィン生成物の特性を損なう。
【0011】
また、高速ライトオフポストメタロセン触媒は、ライトオフが遅いメタロセン触媒と対にされると、反応性不一致の多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系を反応器内に作成し得る。これは、粒子サイズに従って流動指数及び/又は密度が不必要に変化するポリオレフィンポリマー粒子を作製する。
【0012】
これらの問題は、2つのシクロペンタジエニル基(独立して非置換又は置換)を含有する触媒である、メタロセン触媒では、表面化しなかった。メタロセン触媒は、上記の状況においてライトオフが比較的ゆっくりである。
【0013】
「高速ライトオフ」ポストメタロセン触媒から生じる問題に対する本発明者らの技術的解決策は、結果として得られる構造的に修飾されたポストメタロセン触媒が、オレフィンモノマー供給とは別個に気相重合反応器に供給されると、新たな分子構造を有し、かつ活性なままであるが、特徴的な弱化されたライトオフ動力学プロファイルを示すように(「弱化ライトオフポストメタロセン触媒」、又はより単純には「弱化ポストメタロセン触媒」)、ポストメタロセン触媒の分子構造を変更する有効量の動力学改質剤化合物を用いる。例えば、弱化された動力学プロファイルは、弱化ポストメタロセン触媒の作製に使用された高速ライトオフ触媒のものと比較して、より長い、弱化ポストメタロセン触媒のピーク反応温度(Temppeak)までの時間の長さ、及び/又はより低いTemppeakの値を含み得る。遅延の長さは、凝集体形成を減少させ又は防止するのに十分な長さであり、ひいては、反応器構成要素の汚損を遅延させ若しくは防止し、かつ/又はそれによって作製されるポリオレフィン生成物の特性の破壊を最小限に抑える。開始を遅延させるにもかかわらず、他の全ての条件が同じであれば、弱化ポストメタロセン触媒の多くの実施形態は、高速ライトオフ非メタロセン触媒と比較して、有意に小さくなく、いくつかの実施形態では、より大きくなり得る、触媒活性/重合生産性を示し、これは、反応器に添加された触媒1グラム当たりに作製される乾燥ポリオレフィン生成物の1時間当たりのグラム数(gPE/gcat-hr)として表される。この結果は、当該技術分野から予測不可能である。
【0014】
弱化ライトオフポストメタロセン触媒(「弱化ポストメタロセン触媒」又は「弱化P-M触媒」)を作製する方法であって、高速ライトオフ触媒を本明細書に記載されるような有効量の式(A1)、(B1)、又は(C1):R5-C≡C-R6(A1)、(R5)2C=C=C(R6)2(B1)、又は(R5)(R7)C=C(R6)(R7)(C1)の動力学改質剤化合物と有効な反応条件下で化合させて、(高速ライトオフ触媒のものと比較して)弱化されたライトオフ動力学プロファイルを示す弱化ポストメタロセン触媒を得ることを含み、高速ライトオフ触媒は、構造式(I):(D)dM(T)t(Q)q(X)x(I)のポストメタロセンプレ触媒(すなわち、活性化されていない「配位エンティティ」又は「配位子-金属錯体」)を活性化することによって作製されている、方法。
【0015】
上記の作製する方法によって作製された弱化ポストメタロセン触媒。
【0016】
ポストメタロセン触媒を、オレフィンモノマーと、ポリオレフィンポリマーの移動床とを含む気相重合反応器に供給する方法であって、弱化ポストメタロセン触媒を上記の方法に従って作製することと、弱化ポストメタロセン触媒をそのままの形態(例えば、乾燥粉末)で、又は不活性炭化水素液中のその溶液若しくはスラリーとして、オレフィンモノマーを含まない供給ラインを介して気相重合反応器内に供給することと、を含む、方法。
【0017】
弱化ポストメタロセン触媒及び1つ以上の異なるオレフィン重合触媒を含む多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系。
【0018】
多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系を、オレフィンモノマーと、ポリオレフィンポリマーの移動床とを含む気相重合反応器に供給する方法であって、弱化ポストメタロセン触媒を上記の方法に従って作製することと、同じ支持材料に共支持され、不活性炭化水素溶媒中に懸濁された弱化ポストメタロセン触媒及び活性化されたメタロセン触媒から本質的になる多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系のスラリーを作製するために、不活性炭化水素溶媒中の弱化ポストメタロセン触媒及び活性化されたメタロセン触媒の溶液を支持材料(例えば、ヒュームドシリカ)と接触させることと、任意選択的に、不活性炭化水素溶媒をスラリーから除去して、そのまま(乾燥粉末)の形態の多峰性触媒系を作製することと、多峰性触媒系のスラリー又はそのままの形態の多峰性触媒系を、オレフィンモノマーを含まない供給ラインを介して気相重合反応器内に供給することと、を含む、方法。
【0019】
ポリオレフィンポリマーを作製する方法であって、少なくとも1つの1-アルケンモノマーを、ポリオレフィン樹脂の移動床を含む気相重合反応器内の気相重合条件下で、弱化ポストメタロセン触媒又は多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系と接触させ、それによりポリオレフィンポリマーを作製すること、を含む、方法。
【0020】
同じ作製方法で作製されたポリオレフィンポリマー。
【0021】
ポリオレフィンポリマーから作製された製造物品。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「発明の概要」の内容全体は、参照によりここに組み込まれる。追加の実施形態が以下に続き、いくつかは、参照を容易にするために番号付けされている。
【0023】
態様1.弱化ポストメタロセン触媒(「弱化ライトオフポストメタロセン触媒」)を作製する方法であって、高速ライトオフ触媒を有効量の式(A1)、(B1)、又は(C1):R5-C≡C-R6(A1)、(R5)2C=C=C(R6)2(B1)、又は(R5)(R7)C=C(R6)(R7)(C1)の動力学改質剤化合物(「KMC」)と有効な反応条件下で化合させて、(高速ライトオフ触媒のものと比較して)弱化されたライトオフ動力学プロファイルを示す弱化ライトオフポストメタロセン触媒を得ることを含み、高速ライトオフ触媒は、構造式(I):(D)dM(T)t(Q)q(X)x(I)のポストメタロセンプレ触媒を活性化することによって作製されており、式(A1)、(B1)、又は(C1)中、R5及びR6の各々は独立して、H又はR7であり、各R7は独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル、-C(=O)-O-(非置換C1~C20)ヒドロカルビル)、(C1~C19)ヘテロヒドロカルビル、若しくはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)シリルであるか、又は2つのR7が一緒になって、(C3~C6)アルキレンを形成し、但し、各R7は、炭素-炭素二重結合を欠いており、各(C1~C20)ヒドロカルビルは独立して、非置換であるか、又は1~4個の置換基RSで置換されており、各置換基RSは独立して、ハロゲン(例えば、F)、非置換(C1~C5)アルキル(例えば、CH3)、-C≡CH、-OH、(C1~C5)アルコキシ、-C(=O)-(非置換(C1~C5)アルキル)、-NH2、-N(H)(非置換(C1~C5)アルキル)、-N(非置換(C1~C5)アルキル)2、-COOH、-C(=O)-NH2、-C(=O)-N(H)(非置換(C1~C5)アルキル)、-C(=O)-N(非置換(C1~C5)アルキル)2、-S-(非置換(C1~C5)アルキル)、-S(=O)2-(非置換(C1~C5)アルキル)、-S(=O)2-NH2、-S(=O)2-N(H)(非置換(C1~C5)アルキル)、-S(=O)2-N(非置換(C1~C5)アルキル)2、-C(=)S-(非置換(C1~C5)アルキル)及び-COO(非置換(C1~C5)アルキル)から選択され、式(I)中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、下付き文字dは、0、1、又は2であり、下付き文字tは、0又は1であり、下付き文字qは、0又は1であり、下付き文字xは、1、2、又は3であり、各配位子Dは独立して、二座オルガノヘテリル又は二座オルガノヘテリレンであり、配位子Tは、三座オルガノヘテリレンであり、配位子Qは、四座オルガノヘテリレンであり、各Xは、ハロゲン原子、((C1~C20)アルキル)3-g-(フェニル)gSi-(式中、下付き文字gは0、1、2、又は3)、CH3、(C2~C20)アルキル-CH2、(C6~C12)アリール-((C0~C10)アルキレン)-CH2(例えば、(C6~C12)アリールがフェニルであり、かつ(C0~C10)アルキレンが(C0)アルキレンであるときはベンジル)、(C1~C6)アルキル-置換(C6~C12)アリール、(C1~C6)アルコキシ-置換(C6~C12)アリール、(C1~C6)アルコキシ-置換ベンジル、及び(C1~C6)アルキル-置換 ベンジルから独立して選択される単座基であるか、又は1つのXが、4-(C1~C20)アルキル-置換1,3-ブタジエン分子であり、残りのXの各々が、もしあれば、独立して、単座基Xである、方法。各単座基Xは、1の座数κをMに提供し得、少なくとも1つの基Xは、活性化工程中に脱離基として機能し、任意選択的に、少なくとも1つの基Xは、化合工程中に脱離基として機能する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXは、脱離しないが、Mに配位されたままである)。Xは、2又は4のハプト数η(eta2(「η2」)又はeta4(「η4」))をMに提供し得る4-(C1~C20)アルキル-置換1,3-ブタジエン分子であり、残りのXの各々は、もしあれば、独立して、単座基Xである。下付き文字d、t、q、及びxは、配位子D、T、Q、及び単座基Xが5又は6の総座数κtot(「κtot
5」又は「κtot
6」)をMに提供し、その結果、Mが5又は6の総配位数ntotを有するように選択される。いくつかの態様では、各R7は独立して、(C1~C20)ヒドロカルビルであり、これは独立して、非置換であるか、又はハロゲン(例えば、F)及びアルキル(例えば、CH3)から選択される1~3個の置換基で置換され得、但し、各R7は、炭素-炭素二重結合を欠いている。全ての疑いを取り除くために、単座基Xは、炭素-炭素二重結合も炭素-炭素三重結合も含まない、すなわち、単座基Xは、アルケニル基でもアルキニル基でもない。
【0024】
態様2.高速ライトオフ触媒が、式(II):(D)d[M+](T)t(Q)q(X)x-1 A-(II)の高速ライトオフ触媒であり、式中、下付き文字d、t、q、及びx、金属M、並びに配位子D、T、Q、及びXは、式(I)について定義されるとおりであり、弱化ポストメタロセン触媒が、式(III):(D)d[M+](T)t(Q)q(X)x-2(R)A-(III)の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、下付き文字d、t、q、及びx、金属M、並びに配位子D、T、及びQは、式(I)について定義されるとおりであり、各Xは、式(I)について定義されるような単座基であり、式中、A-はアニオンであり(金属Mの正電荷を形式的に平衡させるために使用される)、式中、Rは、式(A)、(B)、又は(C):それぞれ、-C(R5)=C(X)R6(A)、-C(R5)2-C(X)=C(R6)2(B)、又は-C(R5)(R7)-C(X)(R6)(R7)(C)の配位子であり、式中、R5~R7は、それぞれ式(A1)、(B1)、又は(C1)について以前に定義されたとおりである、態様1に記載の方法。全ての疑いを取り除くために、式(A)、(B)、又は(C)の配位子Rは、それぞれ、式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物から得られるか、又は誘導される。全ての疑いを取り除くために、式(A)及び(B)の各配位子Rは、炭素-炭素二重結合(すなわち、アルケニル基)を含む。全ての疑いを取り除くために、配位子Rは、その脱離基Xと同じ構造ではなく、すなわち、配位子Rの定義は、脱離基Xの定義と重なり合わない。
【0025】
態様3.ポストメタロセンプレ触媒が、式(Ia):(D)dM(X)x(Ia)のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、下付き文字dは、1又は2であり、下付き文字xは、2又は3であり、各配位子Dは独立して、二座オルガノヘテリル又は二座オルガノヘテリレンであり、各Xは、式(I)について定義されるとおりである、態様1又は2に記載の方法。下付き文字d及びxは、配位子D及び単座基Xが5又は6の総座数κtot(「κtot
5」又は「κtot
6」)をMに提供し、その結果、Mが5又は6の総配位数ntotを有するように選択される。理論に束縛されるものではないが、式(Ia)のポストメタロセンプレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒の構造は、式(IIa):(D)d[M+](X)x-1 A-(IIa)の構造であり、弱化ポストメタロセン触媒は、式(IIIa):(D)d[M+](X)x-2(R)(IIIa)の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、下付き文字d及びx、金属M、並びに配位子Dは、式(Ia)について定義されるとおりであり、Xは、式(I)について定義されるとおりであり、式中、A-は、式(II)について定義されるとおりであり、式中、Rは、式(III)について定義されるとおりである、と考えられる。
【0026】
態様4.式(I)のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ia)-1
【0027】
【化1】
(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、各Ar
1及びAr
2は独立して、フェニル、置換フェニル、ビフェニル、置換ビフェニル、アントラセン、置換アントラセン、カルバゾリル、及び置換カルバゾリルから選択される非置換又は置換芳香族基であり、置換芳香族基の各置換基は独立して、アルキルであり、各基R
a1及びR
a2は独立して、H又は(C
1~C
20)アルキルであり(例えば、(C
1~C
4)アルキル、例えば、各々が1,1-ジメチルエチルである)、各下付き文字0-3は独立して、0、1、2、又は3であり、M及びXは、式(I)について定義されるとおりである、態様3に記載の方法。いくつかの実施形態では、ポストメタロセンプレ触媒は、式(Ia)-1a:
【0028】
【化2】
(Ia)-1aのポストメタロセンプレ触媒であり、式中、各基R
a1及びR
a2は独立して、(C
1~C
20)アルキルであり、M、X、Ar
1及びAr
2は、上に定義されるとおりである。いくつかの実施形態では、Mは、Zr又はHfである。理論に束縛されるものではないが、式(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒の構造は、式(IIa)-1:
【0029】
【化3】
A
-(IIa)-1の構造であり、弱化ポストメタロセン触媒は、式(IIIa)-1:
【0030】
【化4】
A
-(IIIa)-1の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、金属M、及び各下付き文字0-3並びに基R
a1~R
b2、Ar
1、及びAr
2は、式(Ia)-1又は(Ia)-1aについて定義されるとおりであり、Xは、式(I)について定義されるとおりであり、式中、A
-は、式(II)について定義されるとおりであり、式中、Rは、式(III)について定義されるとおりである、と考えられる。式(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒は、米国特許第7,705,157(B2)号に記載されているポストメタロセンプレ触媒のいずれか1つであり得る。
【0031】
態様5.式(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒において、基Ra1及びRa2の各々が1,1-ジメチルエチルであり、各Ar2が4-フルオロフェニルであり、MがZrであり、各Xがベンジルであり、式(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒が、プレ触媒(1)
【0032】
【化5】
(1)(「プレ触媒1」)であり、式中、各Ar
1は、2,6-ジクロロベンジルである、態様4に記載の方法。米国特許第7,705,157(B2)号(国際公開第2006/066126(A2)号)の一般的な手順に従ってプレ触媒(1)を合成する。別の本発明の実施形態は、それ自体がプレ触媒(1)である。
【0033】
態様6.式(I)のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ia)-2
【0034】
【化6】
(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、M及びXは、式(I)について定義されるとおりであり、各下付き文字1-5は独立して、1、2、3、4、又は5であり、R
a3及びR
a7の各々は独立して、(CC
1~C
20)アルキル(例えば、(C
1~C
8)アルキル)又は(C
6~C
12)アリールであり、R
a4~R
a6の各々は独立して、(C
1~C
20)アルキルであるか、又はR
a4~R
a6が一緒になって式=C(H)-CH
2CH
2CH
2-の3価の基を形成する、態様3に記載の方法。いくつかの実施形態では、ポストメタロセンプレ触媒は、式(Ia)-2a:
【0035】
【化7】
(Ia)-2aのポストメタロセンプレ触媒であり、式中、M、X、及びR
a3~R
a7は、上に定義されるとおりである。理論に束縛されるものではないが、式(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒の構造は、式(IIa)-2:
【0036】
【化8】
A
-(IIa)-2の構造であり、弱化ポストメタロセン触媒は、式(IIIa)-2:
【0037】
【化9】
A
-(IIIa)-2の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、各下付き文字1-5及び基R
a3~R
b7は、式(Ia)-2又は(Ia)-2aについて定義されるとおりであり、M及びXは、式(I)について定義されるとおりであり、式中、A
-は、式(II)について定義されるとおりであり、式中、Rは、式(III)について定義されるとおりである、と考えられる。
【0038】
態様7.式(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒において、MがHfであり、各Xがメチルであり、式(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒が、プレ触媒(2)又は(3):
【0039】
【0040】
【化11】
(3)(「プレ触媒3」)であり、式中、n-Octはノルマル-オクチルであり、iPrはイソプロピル(1-メチルエチル)であり、nBuはノルマル-ブチルである、態様6に記載の方法。Kuhlman,et al.,Macromolecules 2010,vol.43,page 7903の手順に従ってプレ触媒(2)を合成する。Kuhlman,et al.,Macromolecules 2010,vol.43,page 7903及び後述の本発明の実施例Aの一般的な手順に従ってプレ触媒(3)を合成する。別の本発明の実施形態は、それ自体がプレ触媒(3)である。
【0041】
態様8.式(I)のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ib):MT(X)2(Ib)のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、配位子Tは、三座オルガノヘテリレンであり、各Xは、式(I)について定義されるとおりである、態様1又は2に記載の方法。配位子T及び単座基Xは、Mが5の総配位数ntotを有するように、5の総座数κtot(「κtot
5」)をMに提供し得る。
【0042】
態様9.式(I)のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ib)-1
【0043】
【化12】
(Ib)-1のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、Mは、Hf又はZrであり、各下付き文字0-3は独立して、0、1、2、又は3であり、基R
b1~R
b6の各々は独立して、H又は(C
1~C
0)アルキル(例えば、(C
1~C
4)アルキル)であり、Xは、式(I)について定義されるとおりである、態様8に記載の方法。いくつかの実施形態では、ポストメタロセンプレ触媒は、式(Ib)-1a:
【0044】
【化13】
(Ib)-1aのポストメタロセンプレ触媒であり、式中、各々又はR
b1及びR
b3~R
b5は独立して、(C
1~C
20)アルキルであり、M及びXは、上に定義されるとおりである。理論に束縛されるものではないが、式(Ib)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒の構造は、式(IIb)-1:
【0045】
【化14】
A
-(IIb)-1の構造であり、弱化ポストメタロセン触媒は、式(IIIb)-1:
【0046】
【化15】
A
-(IIIb)-1の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、各下付き文字0-3及び基R
b1~R
b7は、式(Ib)-1について定義されるとおりであり、M及びXは、式(I)について定義されるとおりであり、式中、A
-は、式(II)について定義されるとおりであり、式中、Rは、式(III)について定義されるとおりである、と考えられる。
【0047】
態様10.式(Ib)-1のポストメタロセンプレ触媒において、Rb1がエチルであり、Rb2、Rb3、Rb4、及びRb5がメチルであり、Rb6及びRb7が1-メチルエチル(すなわち、イソプロピル)であり、MがHfであり、各Xがメチルであり、その結果、式(Ib)-1のポストメタロセンプレ触媒が、プレ触媒(4):
【0048】
【化16】
(4)(「プレ触媒4」)であり、式中、Meはメチルである、態様9に記載の方法。後述の本発明の実施例Bの手順に従ってプレ触媒(4)を合成する。別の本発明の実施形態は、それ自体がプレ触媒(4)である。
【0049】
態様11.式(I)のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ib)-2
【0050】
【化17】
(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、Mは、Zr又はHfであり、R
1~R
4の各々は独立して、H又はCH
3であり、各R
Hは独立して、(C
1~C
20)アルキル(例えば、(C
1~C
4)アルキル、例えば、CH
3)であり、Xは、式(I)について定義されるとおりであり、但し、少なくとも1つのXは、(C
7~C
20)アラルキル(例えば、ベンジル)である、態様8に記載の方法。いくつかの態様では、MはZrであり、あるいはMはHfである。理論に束縛されるものではないが、式(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒の構造は、式(IIb)-2:
【0051】
【化18】
A
-(IIb)-2の構造であり、弱化ポストメタロセン触媒は、式(IIIb)-2:
【0052】
【化19】
A
-(IIIb)-2の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、金属M、並びに基R
1~R
4、及びXは、式(Ib)-2について定義されるとおりであり、式中、A
-は、式(II)について定義されるとおりであり、式中、Rは、式(III)について定義されるとおりである、と考えられる。式(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒は、米国特許第6,967,184(B2)号に記載されているポストメタロセンプレ触媒のいずれか1つであり得る。
【0053】
態様12.式(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒において、R1~R4の各々がHであり、各Xがベンジルであり、式(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒がプレ触媒(5):
【0054】
【化20】
(5)(「プレ触媒5」)であり、式中、MはHf又はZrである、態様11に記載の方法。米国特許第6967184(B2)号、カラム33、ライン53~カラム34、ライン9の手順2を再現することによってプレ触媒(5)を合成する。
【0055】
態様13.式(I)のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ic):MQ(X)2(Ic)のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、配位子Qは、四座オルガノヘテリレンであり、各Xは、式(I)について定義されるとおりである、態様1又は2に記載の方法。配位子Q及び単座基Xは、Mが6の総配位数ntotを有するように、6の総座数κtot(「κtot
6」)をMに提供し得る。
【0056】
態様14.式(Ic)のポストメタロセンプレ触媒が、式(1c)-1
【0057】
【化21】
(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、Lは、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2CH
2、CH
2C(R
L)
2CH
2、CH
2CH(R
L)CH(R
L)CH
2、CH
2Ge(R
L)
2CH
2、又はCH
2Si(R
L)
2CH
2であり、式中、各R
Lは独立して、非置換(C
1~C
20)アルキルであり、Mは、Zr又はHfであり、R
1a及びR
1bの各々は独立して、F、(C
1~C
20)アルキル、又はSi(CH
3)
2(CH
2)
qCH
3であり、式中、下付き文字qは、0~20の整数であり、各下付き文字rは独立して、0~3の整数であり、R
2a及びR
2bの各々は独立して、H、F、Cl、又はCH
3であり、各下付き文字sは独立して、0~3の整数であり、R
3a及びR
3bの各々は独立して、非置換(C
1~C
20)アルキル又は(C
1~C
20)アルコキシであり、各Ar
1a及びAr
1bは独立して、フェニル、置換フェニル、ビフェニル、置換ビフェニル、アントラセン、置換アントラセン、カルバゾリル、及び置換カルバゾリルから選択される非置換又は置換芳香族基であり、置換芳香族基の各置換基は独立して、アルキルであり、各Xは独立して、式(I)について定義されるとおりである、態様13に記載の方法。いくつかの態様では、少なくとも1つのXは、(C
6~C
12)アリール-((C
0~C
10)アルキレン)-CH
2(例えば、ベンジル)である。いくつかの態様では、各Xは独立して、(C
6~C
12)アリール-((C
0~C
10)アルキレン)-CH
2であり、あるいは1つのXが(C
6~C
12)アリール-((C
0~C
10)アルキレン)-CH
2(例えば、ベンジル)であり、他のXがF、Cl、又はメチルであり、あるいは各Xはベンジルである。理論に束縛されるものではないが、式(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒の構造は、式(IIc)-1:
【0058】
【化22】
A
-(IIc)-1の構造であり、弱化ポストメタロセン触媒は、式(IIIc)-1:
【0059】
【化23】
A
-(IIIc)-1の弱化ポストメタロセン触媒であり、式中、L、下付き文字r及びs、並びに基R
1a~R
3bは、式(Ic)-1について定義されるとおりであり、金属M及び基Xは、式(I)について定義されるとおりであり、式中、A
-は、式(II)について定義されるとおりであり、式中、Rは、式(III)について定義されるとおりである、と考えられる。式(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒は、国際公開第2012/027448(A1)号、国際公開第2014/105411(A1)号、国際公開第2017/058981(A1)号、国際公開第2018/022975(A1)号、又は国際公開第2018/183026(A1)号に記載されているポストメタロセンプレ触媒のいずれか1つであり得る。
【0060】
態様15.式(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒が、式(Ic)-1a:
【0061】
【化24】
(Ic)-1a:のポストメタロセンプレ触媒であり、式中、Lは、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2CH
2、CH
2C(R
L)
2CH
2、CH
2CH(R
L)CH(R
L)CH
2、又はCH
2Si(R
L)
2CH
2であり、式中、各R
Lは独立して、非置換(C
1~C
20)アルキルであり、Mは、Zr又はHfであり、R
1a及びR
1bの各々は独立して、F、(C
1~C
20)アルキル、又はSi(CH
3)
2(CH
2)
qCH
3であり、式中、下付き文字qは、0~9の整数であり、R
2a及びR
2bの各々は独立して、H又はCH
3であり、R
3a及びR
3bの各々は独立して、非置換1,1-ジメチル-(C
2~C
8)アルキルであり、R
4a、R
4b、R
5a、R
5bの各々は独立して、H又は非置換1,1-ジメチル-(C
2~C
4)アルキルであり、各Xは独立して、式(I)について定義されるとおりである、態様14に記載の方法。
【0062】
態様16.(Ic)-1aのポストメタロセンプレ触媒が、ポストメタロセンプレ触媒(6)~(10):
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【化29】
(10)(「プレ触媒10」)のいずれか1つである、態様15に記載の方法。国際公開第2014105411(A1)号の手順に従ってプレ触媒(6)を合成する。国際公開第2017058981(A1)号の手順に従ってプレ触媒(7)を合成する。国際公開第2012027448(A1)号の手順に従ってプレ触媒(8)を合成する。国際公開第2018/022975(A1)号の手順に従ってプレ触媒(9)を合成する(例えば、実施例E-19)。国際公開第2018/183026(A1)号の手順に従ってプレ触媒(10)を合成する(例えば、実施例26)。
【0068】
態様17.動力学改質剤化合物が、制限(i)~(vi):式(A1)若しくは(B1)の(i)、式(A1)若しくは(C1)の(ii)、式(B1)若しくは(C1)の(iii)、式(A1)の(iv)、式(B1)の(v)、又は式(C1)の(vi)のいずれか1つによって記述される、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。理論に束縛されるものではないが、式(A1)及び(B1)の動力学改質剤化合物は、それぞれ、R配位子(A)及び(B)をもたらし、この(A)及び(B)の各々は、それらの間に共通する構造的特徴として炭素-炭素二重結合を有すると考えられ、結果として得られた。いくつかの態様では、動力学改質剤化合物は、炭素原子及び水素原子からなる。他の態様では、動力学改質剤化合物は、炭素原子、水素原子、並びにハロゲン原子、O、N、及びSiから選択される少なくとも1つの原子からなり、あるいは、動力学改質剤化合物は、炭素原子、水素原子、及び少なくとも1つのハロゲン原子からなり、あるいは、動力学改質剤化合物は、炭素原子、水素原子、並びにO、N、及びSi、あるいはO及びN、あるいはO及びSi、あるいはN及びSi、あるいはO、あるいはN、あるいはSiから選択される少なくとも1つの原子からなる。
【0069】
態様18.動力学改質剤化合物が、式(A1):R5-C≡C-R6(A1)の動力学改質剤化合物であって、フェニルアセチレン、(置換-フェニル)アセチレン、ジフェニルアセチレン、置換ジフェニルアセチレン、シクロアルキルアセチレン、式HC≡CSi(フェニル)h((C1~C20)アルキル)3-h(式中、下付き文字hは、0~3の整数)のアセチレン、及び式HC≡C-(CH2)mCH3(式中、下付き文字mは、1~15、あるいは1~10、あるいは2~15の整数)のアセチレンから選択される、動力学改質剤化合物である、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。態様2の式(III)では、それぞれの配位子Rは、-C(H)=C(X)-フェニル、-C(H)=C(X)-(置換-フェニル)、-CH2-C(X)=C(H)-シクロアルキル、-CH2-C(X)=C(H)-Si(フェニル)h((C1~C20)アルキル)3-h(式中、下付き文字hは上に定義されるとおり)、-C(H)=C(X)-(CH2)mCH3(式中、下付き文字mは上に定義されるとおり、又は-CH2-C(X)=C(アルキル)2)から選択され得る。下付き文字mは、8~15、あるいは1~7、あるいは2~6、あるいは2~4、あるいは1~3の整数であり得る。
【0070】
態様19.動力学改質剤化合物が、式(A1):R5-C≡C-R6(A1)の動力学改質剤化合物である、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。(置換-フェニル)アセチレンは、(フルオロ-置換-フェニル)アセチレン又は(メチル-置換-フェニル)アセチレン、あるいは3,4-ジフルオロフェニルアセチレン、3,5-ジフルオロフェニルアセチレン、3-フルオロフェニルアセチレン、4-フルオロフェニルアセチレン、又は2,4,5-トリメチルフェニルアセチレンであり得る。
【0071】
態様20.動力学改質剤化合物が、式(A1):R5-C≡C-R6(A1)の動力学改質剤化合物であり、式(A1)の動力学改質剤化合物が、KMC1~KMC14:動力学改質剤化合物(1)(「KMC1」):フェニルアセチレン(すなわち、(C6H5)C≡CH)、動力学改質剤化合物(2)(「KMC2」):4-メチルフェニル-アセチレン(すなわち、(4-CH3-C6H4)C≡CH)、動力学改質剤化合物(3)(「KMC3」):2,4,5-トリメチルフェニル-アセチレン(すなわち、(2,4,5-(CH3)3-C6H2)C≡CH)、動力学改質剤化合物(4)(「KMC4」):1,3,5-トリエチニルベンゼン(すなわち、1,3,5-トリ(HC≡C)3(C6H3)、動力学改質剤化合物(5)(「KMC5」):ジフェニルアセチレン(すなわち、(C6H5)C≡C(C6H5))、動力学改質剤化合物(6)(「KMC6」):3-フルオロフェニル-アセチレン(すなわち、(3-F-C6H4)C≡CH)、動力学改質剤化合物(7)(「KMC7」):4-フルオロフェニル-アセチレン(すなわち、(4-F-C6H4)C≡CH)、動力学改質剤化合物(8)(「KMC8」):3,4-ジフルオロフェニル-アセチレン(すなわち、(3,4-F2-C6H3)C≡CH)、動力学改質剤化合物(9)(「KMC9」):3,5-ジフルオロフェニル-アセチレン(すなわち、(3,5-F2-C6H3)C≡CH)、動力学改質剤化合物(10)(「KMC10」):シクロヘキシルアセチレン(すなわち、C6H11C≡CH)、動力学改質剤化合物(11)(「KMC11」):フェニルジメチルシリルアセチレン(すなわち、(C6H5)(CH3)2SiC≡CH)、動力学改質剤化合物(12)(「KMC12」):1-ペンチン(すなわち、CH3(CH2)2C≡CH)、動力学改質剤化合物(13)(:「KMC13」):1-オクチン(すなわち、CH3(CH2)5C≡CH)、及び動力学改質剤化合物(14)(「KMC14」):1,7-オクタジイン(すなわち、HC≡C(CH2)4C≡CH)のいずれか1つからなる群から選択される、態様1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
態様21.動力学改質剤化合物が、式(B1):(R5)2C=C=C(R6)2(B1)の動力学改質剤化合物であり、シクロアルキルアレン、アルキルアレン、ジアルキルアレン、トリアルキルアレン、トリアルキルシリルアレン、ビニリデンシクロアルカン、及びアレンカルボン酸のアルキルエステルから選択される、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。シクロアルキルアレンは、((C3~C8)シクロアルキル)アレン、あるいはシクロヘキシルアレンであり得る。アルキルアレンは、メチルアレン、エチルアレン、プロピルアレン、又は(1,1-ジメチルエチル)アレンであり得る。ジアルキルアレンは、1,1-ジアルキルアレン又は1,3-ジアルキルアレン、あるいは1,1-ジメチルアレンであり得る。トリアルキルアレンは、1,1,3-トリメチルアレンであり得る。トリアルキルシリルアレンは、トリメチルシリルアレン、トリエチルシリルアレン、又はジメチル,(1,1-ジメチルエチル)シリルアレン(すなわち、tert-ブチル-ジメチル-シリルアレン)であり得る。ビニリデンシクロアルカンは、式
【0073】
【化30】
の、ビニリデンシクロヘキサンであり得る。
【0074】
態様22.動力学改質剤化合物が、式(B1):(R5)2C=C=C(R6)2(B1)の動力学改質剤化合物であり、式(B1)の動力学改質剤化合物が、KMC15~KMC17:動力学改質剤化合物(15)(「KMC15」):シクロヘキシルアレン(すなわち、(C6H11)C(H)=C=CH2)、動力学改質剤化合物(16)(「KMC16」):エチル2,3-ブタジエノアート(すなわち、H2C=C=CH-C(=O)-O-CH2CH3)、及び動力学改質剤化合物(17)(「KMC17」):1,1-ジメチルアレン(すなわち、(CH3)2C=C=CH2)のいずれか1つからなる群から選択される、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
態様23.動力学改質剤化合物が、式(C1):(R5)(R7)C=C(R6)(R7)(C1)の動力学改質剤化合物であり、式(C1)の動力学改質剤化合物が、内部アルケンである、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。したがって、内部アルケンは、末端炭素-炭素二重結合又は末端炭素-炭素三重結合を有しない。内部アルケンは、KMC18~KMC20:動力学改質剤化合物(18)(「KMC18」):2-ブテン、動力学改質剤化合物(19)(「KMC19」):2-ペンテン、及び動力学改質剤化合物(20)(「KMC20」):1,2-ジフェニルエテンから選択され得る。態様2の式(III)では、それぞれの配位子Rは、それから誘導され得、それぞれ、式-C(H)(CH3)-C(X)CH3、-C(H)(CH3)-C(X)CH2CH3、又は-C(H)(フェニル)-C(X)フェニルの配位子であり得る。
【0076】
態様24.化合工程の前に、有効な活性化条件下で式(I)のプレ触媒を活性化剤で活性化し、それにより、高速ライトオフ触媒を作製することによって、高速ライトオフ触媒を作製する工程を更に含む、態様1~23のいずれか1つに記載の方法。いくつかの実施形態では、活性化剤は、アルキルアルミノキサン、オルガノボラン化合物、又は有機ホウ酸塩である。
【0077】
態様25.方法が、弱化ポストメタロセン触媒、支持材料、及び不活性炭化水素溶媒の混合物を作製することと、混合物から不活性炭化水素溶媒を除去し、支持材料上に配置された弱化ポストメタロセン触媒を得ることと、を更に含む、態様1~24のいずれか1つに記載の方法。ポストメタロセンプレ触媒を活性化するために、典型的には活性化剤が過剰に使用されるため、混合物は、過剰な活性化剤を更に含み得る。除去工程は、従来の混合物からの不活性炭化水素溶媒の蒸発(すなわち、従来の濃縮方法)によって達成され得、これは、蒸発/支持された、弱化ポストメタロセン触媒をもたらす。あるいは、除去工程は、混合物を噴霧乾燥することによって達成され得る。噴霧乾燥する実施形態は、噴霧乾燥/支持された、弱化ポストメタロセン触媒を与え、これは、蒸発/支持された、弱化ポストメタロセン触媒と比較して改善された性能を有し得る。支持材料の例は、アルミナ及び疎水化ヒュームドシリカ、あるいは疎水化ヒュームドシリカである。疎水化ヒュームドシリカは、未処理の無水ヒュームドシリカを有効量の疎水化剤で表面処理することによって作製され得る。疎水化剤は、ジメチルジクロロシラン、ポリジメチルシロキサン流体、又はヘキサメチルジシラザン、あるいはジメチルジクロロシランであり得る。未処理の無水ヒュームドシリカをジメチルジクロロシランで表面処理することによって作製される疎水化ヒュームドシリカは、CABOSIL TS-610であり得る。
【0078】
態様26.態様1~25のいずれか1つに記載の方法によって作製された弱化ポストメタロセン触媒。弱化ポストメタロセン触媒は、前述の式(III)の弱化ポストメタロセン触媒であり得るか、又はその式に基づき得る。いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ia)-1、(Ia)-2、(Ib)-1、(Ib)-2、又は(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ia)-1、(Ia)-2、(Ib)-1、(Ib)-2、及び(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒のいずれか4つからなる群(すなわち、式(Ia)-1、(Ia)-2、(Ib)-1、(Ib)-2、及び(Ic)-1のいずれか1つが省略されている群)から選択されるポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ia)-1又は(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ib)-1又は(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ia)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ia)-2のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ib)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ib)-2のポストメタロセンプレ触媒から作製され、あるいは弱化ポストメタロセン触媒は、式(Ic)-1のポストメタロセンプレ触媒から作製される。
【0079】
態様27.ポストメタロセン触媒を、オレフィンモノマーと、ポリオレフィンポリマーの移動床とを含むスラリー相又は気相重合反応器に供給する方法であって、弱化ポストメタロセン触媒を反応器の外側で態様1~25のいずれか1つに記載の方法に従って作製することと、弱化ポストメタロセン触媒をそのままの形態(例えば、乾燥粉末)で、又は不活性炭化水素液中のその溶液若しくはスラリーとして、オレフィンモノマーを含まない供給ラインを介してスラリー相又は気相重合反応器内に供給することと、を含む、方法。実施形態では、方法は、弱化ポストメタロセン触媒、又は反応器内でそれからその場に作製された十分に活性であるポストメタロセン触媒を、(第2の)気相重合反応器に移送することを更に含み、移送した触媒は、第2のオレフィン重合反応を触媒する。
【0080】
態様28.態様26に記載の弱化ポストメタロセン触媒と、本明細書に記載の弱化されていないポストメタロセン触媒、異なる弱化ポストメタロセン触媒、及びメタロセン触媒からなる群から選択される少なくとも1つの第2の触媒と、を含む、多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系。いくつかの実施形態では、多峰性触媒系は、態様26に記載の弱化ポストメタロセン触媒と、1つのみの第2の触媒、あるいは2つのみの異なる第2の触媒とを含む。多峰性触媒系は、支持材料を更に含み得、弱化ポストメタロセン触媒及びメタロセン触媒は、支持材料上に配置(例えば、噴霧乾燥)され得る。多峰性触媒系の弱化ポストメタロセン触媒及びメタロセン触媒は、(後述の)ライトオフバイアル試験方法によって測定されるようなライトオフプロファイルを有し得、それぞれのピーク重合温度の時間Temppeakは、互いから60分以内、あるいは45分以内、あるいは30分以内である。第2の触媒がメタロセン触媒である場合、多峰性触媒系の触媒のライトオフ性能は、多峰性触媒系により、弱化ポストメタロセン触媒から作製される高分子量(HMW)構成成分と、低分子量(LMW)構成成分とを含む多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)ポリオレフィンポリマーを作製する重合が、LMW成分に対してHMW成分を過剰生成せず、したがって、規格外の多峰性ポリオレフィンポリマーをほとんど又はまったく作製しないように、有益に両立可能であり得る。
【0081】
態様29.多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系を、オレフィンモノマーと、ポリオレフィンポリマーの移動床とを含むスラリー相又は気相重合反応器に供給する方法であって、弱化ポストメタロセン触媒を反応器の外側で態様1~25のいずれか1つに記載の方法に従って作製することと、同じ支持材料に共支持され、不活性炭化水素溶媒中に懸濁された弱化ポストメタロセン触媒及び活性化されたメタロセン触媒から本質的になる多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系のスラリーを作製するために、不活性炭化水素溶媒中の弱化ポストメタロセン触媒及び活性化されたメタロセン触媒の溶液を反応器の外側で支持材料(例えば、ヒュームドシリカ)と接触させることと、任意選択的に、不活性炭化水素溶媒をスラリーから除去して、そのまま(乾燥粉末)の形態の多峰性触媒系を作製することと、多峰性触媒系のスラリー又はそのままの形態の多峰性触媒系を、オレフィンモノマーを含まない供給ラインを介してスラリー相又は気相重合反応器内に供給することと、を含む、方法。
【0082】
態様30.ポリオレフィンポリマーを作製する方法であって、少なくとも1つの1-アルケンモノマーを、態様1~25のいずれか1つに記載の方法によって作製された弱化ポストメタロセン触媒、又は態様29に記載の多峰性触媒系と、ポリオレフィン樹脂の移動床をそれぞれに含むスラリー相又は気相重合反応器内のスラリー相又は気相重合条件下で接触させ、それによりポリオレフィンポリマーを作製すること、を含む、方法。方法は、弱化ポストメタロセン触媒の弱化されたライトオフ及び少なくとも1つの1-アルケンモノマーの後続の重合を可能にし、それによりポリオレフィンポリマーを作製するために、接触工程の前に、ポリオレフィン樹脂の移動床と、少なくとも1つの1-アルケンモノマーとを含むスラリー相又は気相重合反応器内に、それぞれ、スラリー相又は気相重合条件下で、態様1~25のいずれか1つに記載の方法によって作製された弱化ポストメタロセン触媒を供給すること、又は態様29に記載の多峰性触媒系を供給することを含む工程を含み得る。移動床は、撹拌床又は流動床であり得る。少なくとも1つの1-アルケンモノマーは、エチレン、又はエチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンから選択されるコモノマーとの組み合わせであり得る。実施形態では、反応器は、第1の気相重合反応器であり、第1の気相重合条件下にある。あるいは、反応器はスラリー相重合反応器であり得、重合条件はスラリー相重合条件であり得る。いくつかのかかる実施形態では、方法は、第1の気相重合条件下の第1の気相重合反応器内で作製された又はスラリー相重合条件下のスラリー相重合反応器内で作製された、どちらの場合にも活性ポストメタロセン触媒を(顆粒内に)含む、活性ポリマー顆粒を、場合によって、第1の気相重合反応器で使用された第1の気相重合条件又はスラリー相重合反応器で使用されたスラリー相重合条件とは異なる、(第2の)気相重合条件下の(第2の)気相重合反応器内に移送し、それにより、多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)ポリオレフィンポリマー(すなわち、多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)分子量分布Mw/Mnを有するポリオレフィンポリマー)を(第2の)気相重合反応器内に作製することを更に含み得る。
【0083】
態様31.態様30に記載の作製方法で作製されたポリオレフィンポリマー。スラリー相又は気相重合反応器からバージン形態で得られた、ポリオレフィンポリマーは、弱化ポストメタロセン触媒が高速ライトオフ触媒と置き換えられていることを除いて同一の重合条件下で実行された、スラリー相又は気相重合反応器からそれぞれバージン形態で得られた比較ポリオレフィンポリマーよりも低い量の凝集物(融合顆粒)を有する顆粒の形態であり得る。
【0084】
態様32.態様31に記載のポリオレフィンポリマーから作製された製造物品(例えば、インフレーションフィルム又はキャストフィルム)。製造物品は、比較ポリオレフィンポリマーから作製された比較製造物品よりも低いゲルカウントを有し得る。
【0085】
態様33.弱化ポストメタロセン触媒が、支持材料を含まない、態様1~24のいずれか1つに記載の本発明の実施形態。例えば、ヒュームドシリカ又はアルミナを含まない。
【0086】
態様34.式(1)~(10)の前述のポストメタロセンプレ触媒からなる群から選択されるポストメタロセンプレ触媒。いくつかの実施形態では、ポストメタロセンプレ触媒は、式(1)、(3)、及び(4)のポストメタロセンプレ触媒からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ポストメタロセンプレ触媒は、式(10)のポストメタロセンプレ触媒である。
【0087】
態様35.態様34に記載のポストメタロセンプレ触媒を活性化剤と接触させることによって作製されたポストメタロセン触媒。
【0088】
態様36.ポストメタロセンプレ触媒を作製する方法であって、有効な反応条件下の非プロトン溶媒中で、式(I)(D)dM(T)t(Q)q(X)x(I)のポストメタロセンプレ触媒を、式X1MgR又はM1Rn又は、例えば、LiCuR2のxモル当量の有機金属化合物と接触させ、それにより、式(IV):(D)dM(T)t(Q)q(R)x(IV)のポストメタロセンプレ触媒を作製することを含み、式中、X1は、Cl、Br、又はIであり、M1は、Li、Na、K、Zn、Sn、Tl、Hg、及びCuから選択され、下付き文字nは、1~4の整数であり、M1の形式酸化状態に等しく、Rは、式(A)、(B)、又は(C):-C(R5)=C(X)R6(A)、-C(R5)2-C(X)=C(R6)2(B)、又は-C(R5)(R7)-C(X)(R6)(R7)(C)の配位子であり、R5及びR6の各々は独立して、H又はR7であり、各R7は独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル、-C(=O)-O-(非置換C1~C20)ヒドロカルビル)、(C1~C17)ヘテロヒドロカルビル、若しくはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)シリルであるか、又は2つのR7が一緒になって、(C3~C6)アルキレンを形成し、各(C1~C20)ヒドロカルビルは独立して、非置換であるか、又は1~4個の置換基RSで置換されており、但し、各R7は、炭素-炭素二重結合を欠いており、各置換基RSは独立して、ハロゲン、非置換(C1~C5)アルキル、-C≡CH、-OH、-NH2、-N(H)(非置換(C1~C5)アルキル)、-N(非置換(C1~C5)アルキル)2、-COOH、及び-COO(非置換(C1~C5)アルキル)から選択され、金属Mは、Ti、Hf、又はZrであり、下付き文字dは、0、1、又は2であり、下付き文字tは、0又は1であり、下付き文字qは、0又は1であり、下付き文字xは、1、2、又は3であり、各配位子Dは独立して、二座オルガノヘテリル又は二座オルガノヘテリレンであり、配位子Tは、三座オルガノヘテリレンであり、配位子Qは、四座オルガノヘテリレンであり、Xは、式(I)に定義されるような単座基Xである、方法。下付き文字d、t、q、及びxは、配位子D、T、Q、及びRが5又は6の総座数κtot(「κtot
5」又は「κtot
6」)をMに提供し、その結果、Mが5又は6の総配位数ntotを有するように選択される。いくつかの態様では、各R7は独立して、(C1~C20)ヒドロカルビルであり、これは独立して、非置換であるか、又はハロゲン(例えば、F)及びアルキル(例えば、CH3)から選択される1~3個の置換基で置換され得る。いくつかの実施形態では、下付き文字xは、1又は2、あるいは1又は3、あるいは2又は3、あるいは1、あるいは2、あるいは3である。いくつかの実施形態では、方法で使用される式(I)のポストメタロセンプレ触媒は、式(Ia)-1、(Ia)-2、(Ib)-1、(Ib)-2、及び(Ic)-1のいずれか1つ、あるいは式(Ia)-1、(Ia)-2、(Ib)-1、及び(Ic)-1のいずれか1つ、あるいはプレ触媒1~プレ触媒4及びプレ触媒6~プレ触媒10のいずれか1つである。
【0089】
態様37.弱化ポストメタロセン触媒を作製する方法であって、態様36に記載の式(IV)のポストメタロセンプレ触媒を有効な活性化条件下で活性化剤と接触させ、それにより、式(V)(D)d[M+](T)t(Q)q(R)x-1A-(V)の弱化ポストメタロセン触媒を作製することを含み、式中、下付き文字d、t、q、及びx、金属M、並びに配位子D、T、Q、及びRは、式(IV)について定義されるとおりであり、式中、A-はアニオンである(金属Mの正電荷を形式的に平衡させるために使用される)、方法。いくつかの実施形態では、下付き文字xは、1又は2、あるいは1又は3、あるいは2又は3、あるいは1、あるいは2、あるいは3である。式(V)の弱化ポストメタロセン触媒は、少なくとも1つの特性において式(III)の弱化ポストメタロセン触媒とは異なり得る。例えば、式(II)の高速ライトオフポストメタロセン触媒から式(III)の弱化ポストメタロセン触媒を作製するために使用される時間又は温度は、式(IV)のポストメタロセンプレ触媒から式(V)の弱化ポストメタロセン触媒を作製するために使用される時間又は温度よりも、それぞれ、短い又は低いものであり得る。式(III)及び(V)の弱化ポストメタロセン触媒間の他の違いは、異なる動力学プロファイル(例えば、両方とも後述のライトオフバイアル試験方法によって測定される、時間ゼロ(Time0)からピーク温度(Temppeak)までの時間の長さ及び/又は達したピーク温度、異なる触媒活性、異なるポリマー生産性、気相重合における床温度、エチレン分圧、分子水素対エチレン(H2/C2)のモル比、及び/若しくはコモノマー対エチレン(Cx/C2)のモル比の変化に対する異なる応答、並びに/又は同じ気相重合条件下のポリオレフィンポリマー生成物の異なる特性を含み得る。式(III)及び(V)の弱化ポストメタロセン触媒間の他の違いとしては、特に、少なくとも1つのXが存在し、かつ式(III)中のハロゲン化物であるときに、不活性炭化水素化合物(例えば、n-ヘキサン)中の式(V)の弱化ポストメタロセン触媒の溶解度が、その不活性炭化水素化合物中の式(III)の弱化ポストメタロセン触媒の溶解度よりも大きいことが挙げられ得る。したがって、式(V)の弱化ポストメタロセン触媒は、不活性炭化水素溶媒中のその溶液として重合反応器に供給するのに、式(III)よりもよく適し得る。
【0090】
弱化ポストメタロセン触媒を作製する方法。この方法は、弱化ポストメタロセン触媒を作製するために、高速ライトオフ触媒を有効な反応条件下で有効量の式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物と化合させることを含む。高速ライトオフ触媒は、式(II)の高速ライトオフ触媒であり得、弱化ポストメタロセン触媒は、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒であり得る。化合工程は、式(I)のプレ触媒の非存在下で実施され得る。活性化工程で活性化剤が過剰に使用されると、化合工程は、未反応の活性化剤の存在下で実施され得る。高速ライトオフ触媒は、金属原子Mに結合した脱離基Xを含有する。化合工程において、動力学改質剤化合物は、脱離基Xを高速ライトオフ触媒から変位させ、それを動力学改質剤化合物から誘導された配位子Rと置き換えるように、高速ライトオフ触媒と反応する。配位子は、得られた弱化ポストメタロセン触媒中の金属原子Mに結合している。いくつかの態様では、弱化ポストメタロセン触媒は、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒であり、高速ライトオフ触媒は、式(II)の高速ライトオフ触媒であり、プレ触媒は、式(I)のプレ触媒であり、全ての式中、MはZrであり、各Xはベンジルである。
【0091】
いくつかの実施形態では、金属MはZr又はHfである、あるいはMはZr又はTiである、あるいはMはTi又はHfである、あるいはMはZrである、あるいはMはHfである、あるいはMはTiである。
【0092】
作製方法の実施形態は、合成スキーム1~11のいずれか1つを含み得る。
【0093】
合成スキーム1:工程(a)ポストメタロセンプレ触媒+過剰な活性化剤→活性化されたポストメタロセン触媒+残存活性化剤の中間混合物。工程(b)中間混合物+有効量の動力学改質剤化合物→弱化ポストメタロセン触媒。
【0094】
合成スキーム2:工程(a)ポストメタロセンプレ触媒+有効量の動力学改質剤化合物→中間ポストメタロセンプレ触媒(ポストメタロセンプレ触媒+動力学改質剤化合物の未反応混合物又は反応生成物)。工程(b)中間ポストメタロセンプレ触媒+活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)→弱化ポストメタロセン触媒。
【0095】
合成スキーム3:工程(a)ポストメタロセンプレ触媒+活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)→活性化されたポストメタロセン触媒(高速ライトオフ触媒)。工程(b)活性化されたポストメタロセン触媒+有効量の動力学改質剤化合物→弱化ポストメタロセン触媒。
【0096】
合成スキーム4:工程(a)活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)+有効量の動力学改質剤化合物→中間溶液。工程(b)中間溶液+ポストメタロセンプレ触媒→ 弱化ライトオフポストメタロセン触媒。
【0097】
合成スキーム5:工程(a)活性化剤→ポストメタロセンプレ触媒←有効量の動力学改質剤化合物(ポストメタロセンプレ触媒への活性化剤及び動力学改質剤の同時であるが別個の添加)→弱化ポストメタロセン触媒。工程(b):なし。
【0098】
合成スキーム6:工程(a)ポストメタロセンプレ触媒+支持材料→支持されたポストメタロセンプレ触媒。(b)支持されたポストメタロセンプレ触媒+ある量の活性化剤→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された活性化されたポストメタロセン触媒+残存活性化剤の中間混合物。工程(c)中間混合物+有効量の動力学改質剤化合物→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された弱化ポストメタロセン触媒。いくつかの態様では、工程(a)は、不活性炭化水素溶媒を更に含み、支持材料上への堆積は、溶媒を蒸発させることによって、あるいは噴霧乾燥によって実施される。活性化剤の量は、ポストメタロセン触媒の金属Mに対する化学量論量(例えば、1.0対1.0のモル比)、あるいはそれに対する化学量論量未満(例えば、0.1~0.94のモル比)、あるいはそれに対する過剰な量(例えば、1.1~10,000のモル比)であり得る。
【0099】
合成スキーム7:工程(a)ポストメタロセンプレ触媒+有効量の動力学改質剤化合物+支持材料→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置されたポストメタロセンプレ触媒及び動力学改質剤化合物の中間混合物。工程(b)中間混合物+活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された弱化ポストメタロセン触媒。いくつかの態様では、工程(a)は、不活性炭化水素溶媒を更に含み、支持材料上への堆積は、溶媒を蒸発させることによって、あるいは噴霧乾燥によって実施される。
【0100】
合成スキーム8:工程(a)ポストメタロセンプレ触媒+支持材料+活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された活性化されたポストメタロセン触媒(高速ライトオフ触媒)。工程(b)支持された活性化されたポストメタロセン触媒+有効量の動力学改質剤化合物→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された弱化ポストメタロセン触媒。いくつかの態様では、工程(a)は、不活性炭化水素溶媒を更に含み、支持材料上への堆積は、溶媒を蒸発させることによって、あるいは噴霧乾燥によって実施される。
【0101】
合成スキーム9:工程(a)活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)+有効量の動力学改質剤化合物→中間溶液。工程(b)中間溶液+ポストメタロセンプレ触媒+支持材料→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された弱化ライトオフポストメタロセン触媒。いくつかの態様では、工程(b)は、不活性炭化水素溶媒を更に含み、支持材料上への堆積は、溶媒を蒸発させることによって、あるいは噴霧乾燥によって実施される。
【0102】
合成スキーム10:工程(a)活性化剤→ポストメタロセンプレ触媒+支持材料←有効量の動力学改質剤化合物(ポストメタロセンプレ触媒+支持材料の混合物への活性化剤及び動力学改質剤化合物の同時であるが別個の添加)→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された弱化ポストメタロセン触媒。工程(b):なし。いくつかの態様では、工程(a)は、不活性炭化水素溶媒を更に含み、支持材料上への堆積は、溶媒を蒸発させることによって、あるいは噴霧乾燥によって実施される。
【0103】
スキーム11:工程(a):活性化剤(例えば、メチルアルミノキサン(「MAO」)などのアルキルアルミノキサン)+支持材料(例えば、疎水性ヒュームドシリカ)+不活性炭化水素溶媒→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された支持された活性化剤のスラリー。工程(b):工程(a)のスラリーを噴霧乾燥する→乾燥粉末の形態で支持材料上に配置された、噴霧乾燥された支持された活性化剤(例えば、乾燥粉末として疎水性ヒュームドシリカ上に噴霧乾燥されたMAO(「SDMAO」又は「sdMAO」)。工程(c):ポストメタロセンプレ触媒+工程(b)の噴霧乾燥された支持された活性化剤+不活性炭化水素溶媒を混合する→支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された支持された高速ライトオフポストメタロセン触媒の懸濁液。工程(d):工程(c)からの懸濁液を有効量の動力学改質剤化合物と混合する→不活性炭化水素溶媒中の支持材料上に(又は支持材料と平衡に)配置された、支持された弱化ポストメタロセン触媒の懸濁液。任意選択的な工程(e):支持された弱化ポストメタロセン触媒の懸濁液から不活性炭化水素溶媒を除去する→乾燥粉末の形態で支持材料上に配置された、支持された弱化ポストメタロセン触媒。工程(e)は、工程(d)からの懸濁液からの不活性炭化水素溶媒の従来の蒸発によって、又は工程(d)から懸濁液を噴霧乾燥することによって実施され得る。
【0104】
多峰性触媒系は、気相重合反応器に供給され得る。所望される場合、追加量の弱化ポストメタロセン触媒又は追加量の第2の触媒(例えば、メタロセン触媒)が、不活性炭化水素溶媒中のその溶液として反応器内に別個に供給され得、反応器内で多峰性触媒系に接触する。そのような別個の触媒溶液は、トリム触媒と呼ばれることがある。あるいは、多峰性触媒系は、反応器内に向かって進む供給ライン内でトリム触媒の供給物と接触させられ得る。他の実施形態では、多峰性触媒系は、弱化ポストメタロセン触媒及び少なくとも1つの第2の触媒を反応器内に別個に添加することによって、気相重合反応器内にその場で作製され得、反応器内では、互いに接触し、それによって多峰性触媒系を反応器内にその場で作製する。
【0105】
上記態様のいずれか1つに記載の方法は、気相又はスラリー相重合反応器内に作製され、かつ十分に活性であるポストメタロセン触媒を顆粒中に含有する、ポリマー顆粒を、(第2の)気相重合反応器内に移送する工程を更に含み得る。
【0106】
動力学改質剤化合物(「KMC」)。式(A1)の動力学改質剤化合物は、R5-C≡C-R6(A1)である。式(B1)の動力学改質剤化合物は、(R5)2C=C=C(R6)2(B1)である。式(C1)の動力学改質剤化合物は、(R5)(R7)C=C(R6)(R7)(C1)である。式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物は有益には、ポストメタロセン触媒への毒として機能しないか、又はそのようなものとして最大でも穏やかに機能し得る。式(A1)の化合物はアルキンであり、式(B1)の化合物はアレンであり、式(C1)の化合物は内部アルケンである。動力学改質剤化合物は、ビニル官能基を含まない(すなわち、式-C(H)=CH2の基を欠いている)。
【0107】
いくつかの実施形態では、動力学改質剤化合物は、上記の番号付き態様のいずれか1つで定義されるとおりである。
【0108】
式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物のいくつかの実施形態では、(C1~C20)ヒドロカルビルは、(C2~C6)アルキル、(C3~C8)シクロアルキル、又はフェニルである。いくつかの実施形態では、-C(=O)-O-(非置換C1~C20)ヒドロカルビル)は、-C(=O)-O-(非置換C1~C5)アルキル)、あるいは-C(=O)-O-エチルである。
【0109】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのXは、((C1~C20)アルキル)3-g-(フェニル)gSi-であり、式中、下付き文字gは、0、1、2、又は3であり、あるいは式中、下付き文字gは、0又は1、あるいは0、あるいは1である。いくつかの態様では、少なくとも1つのXは、(C6~C12)アリール-((C0~C10)アルキレン)-CH2(例えば、ベンジル)である。いくつかの態様では、各Xは独立して、(C6~C12)アリール-((C0~C10)アルキレン)-CH2であり、あるいは1つのXが(C6~C12)アリール-((C0~C10)アルキレン)-CH2(例えば、ベンジル)であり、他のXがF、Cl、又はメチルであり、あるいは各Xはベンジルである。いくつかの態様では、各Xはベンジルであり、あるいは1つのXがベンジルであり、他のXがF、Cl、又はメチルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのX、あるいは各Xは、(C1~C6)アルコキシ-置換(C6~C12)アリール又は(C1~C6)アルコキシ-置換ベンジルである。理論に束縛されるものではないが、弱化ポストメタロセン触媒の構造は、高速ライトオフ触媒の脱離基Xのうちの1つが、弱化ポストメタロセン触媒中の弱化された脱離基Rによって置き換えられていることを除いて、高速ライトオフ触媒の構造と同様であると考えられ、Rは、後で定義され、動力学改質剤化合物から誘導される。弱化ポストメタロセン触媒の弱化された脱離基Rは、高速ライトオフ触媒の脱離基Xとは構造的に異なり、脱離するのにより時間がかかる。
【0110】
動力学改質剤化合物から誘導された配位子R。動力学改質剤化合物から誘導される、弱化ポストメタロセン触媒中の配位子は、基R(「配位子R」)であり得る。理論に束縛されるものではないが、配位子Rは、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒)の動力学プロファイルが、弱化ポストメタロセン触媒の作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)の高速ライトオフ触媒)の動力学プロファイルと比較して改善されることの主な要因であると考えられる。配位子は、式(A)、(B)、又は(C):-C(R5)=C(X)R6(A)、-C(R5)2-C(X)=C(R6)2(B)、又は-C(R5)(R7)-C(X)(R6)(R7)(C)の配位子であり得、式中、X及びR5~R7の各々は、前述のとおりである。いくつかの実施形態では、Rは式(A)又は(B)の配位子であり、あるいはRは式(A)又は(C)の配位子であり、あるいはRは式(B)又は(C)の配位子であり、あるいはRは式(A)の配位子であり、あるいはRは式(B)の配位子であり、あるいはRは式(C)の配位子である。式(A)及び(B)の配位子は両方とも炭素-炭素二重結合を含有しており、これは、気相重合条件下で重合するのに非常に時間がかかると考えられる。
【0111】
理論に束縛されることを望むものではないが、アルケンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなど)と弱化ライトオフ触媒との反応は、M金属中心と弱化された脱離基Rとの間の結合部へのアルケンモノマーの挿入によるものであると考えられる。この挿入は、M金属中心と高速ライトオフ触媒の脱離基Xとの間の結合部へのアルケンモノマーの対応する挿入反応よりもはるかに時間がかかり得る。本発明のより遅い反応は、重合の開始を遅延させ得る。最初の1回(又は数回)のアルケンモノマー挿入反応の後、弱化された脱離基Rはもはや金属中心に結合していないので、全ての後続の挿入は、高速ライトオフ触媒の速度と同様の速度で起こる。触媒が行う数千回又は数百万回の挿入反応の最初の1回(又は数回)のみが遅くなるため、全体的な触媒生産性は有意に低減され得ない。実際、弱化ライトオフ触媒は、その発熱が高速ライトオフ触媒の発熱と比較して減少するため、生産性を増加させていることがある。これは、触媒が受ける温度を増加させる発熱反応が触媒のより速い失活をもたらし得、この失活が、いくつかのポストメタロセン触媒など、いくつかの触媒の生産性を低下させる可能性があるためである。
【0112】
式(A)、(B)、又は(C)の配位子Rでは、R5及びR6の各々は独立して、H又はR7であり、式中、各R7は独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル又は(C1~C17)ヘテロヒドロカルビルであり、但し、各R7は、炭素-炭素二重結合を欠いている。(C1~C20)ヒドロカルビルは、置換されてなく、炭素原子及び水素原子からなり得るか、又は(C1~C20)ヒドロカルビルは、置換されており、炭素原子、水素原子、及び1つ以上のハロゲン原子からなり得る。各ハロゲン原子は独立して、F、Cl、Br、及びIから、あるいはF、Cl、及びBrから、あるいはF及びClから、あるいはFから、あるいはClから選択される。非置換(C1~C20)ヒドロカルビルは、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C6~C12)アリール、非置換((C1~C4)アルキル)1-3-フェニル、又は非置換(C6~C12)アリール-(C1~C6)アルキルであり得る。置換(C1~C20)ヒドロカルビルは、(式(A)の)2-(3,4-ジフルオロフェニル)-エテン-1-イルなど、前述の非置換(C1~C20)ヒドロカルビルのモノフルオロ又はジフルオロ誘導体であり得る。
【0113】
各(C1~C19)ヘテロヒドロカルビル(それを含有するR5~R7の実施形態のもの)が、置換されてなく、炭素原子、水素原子、並びにN及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり得るか、又は(C1~C17)ヘテロヒドロカルビルが、置換されており、炭素原子、水素原子、N及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、並びに1つ以上のハロゲン原子からなり得る。非置換(C1-C17)ヘテロヒドロカルビルは、(C1~C19)ヘテロアルキル、(C3~C19)ヘテロシクロアルキル、(C6~C12)ヘテロアリール、((C1~C4)アルコキシ)1-3-フェニル、又は(C6~C12)ヘテロアリール-(C1~C6)アルキルであり得る。置換(C1~C17)ヘテロヒドロカルビルは、(式(A)の)2-(3,4-ジメトキシフェニル)-エテン-1-イルなど、前述の非置換(C1~C17)ヘテロヒドロカルビルのモノフルオロ又はジフルオロ誘導体であり得る。
【0114】
配位子Rの構造は、配位子Xの構造とは異なり、その点において、アニオンA-の構造とは異なる。
【0115】
弱化ポストメタロセン触媒。弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、本方法に従って高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)から作製される。弱化ポストメタロセン触媒は、その金属原子M(例えば、Ti、Zr、又はHf)に結合している、動力学改質剤化合物から誘導された配位子(例えば、R)を含有するポストメタロセン触媒である。弱化ポストメタロセン触媒は、新しいポストメタロセン触媒である。いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒は、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒である。
【0116】
他の全ての条件が同じであれば、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、その作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)と比較して全体的な触媒活性を有意に減少させることなく機能し得ると考えられる。すなわち、開始を遅延させるにもかかわらず、反応器に添加された触媒1グラム当たりに作製される乾燥ポリオレフィン生成物の1時間当たりのグラム数(gPE/gcat-hr)として表される、この触媒の活性/重合生産性は、高速ライトオフポストメタロセン触媒の活性/重合生産性よりも有意に小さくなり得ず、いくつかの実施形態では、より大きくなり得る。例えば、弱化ポストメタロセン触媒は、その作製に使用される高速ライトオフ触媒の200%超、あるいは70.0%~180.0%、あるいは70.0%~150.0%、あるいは70.0%~120%、あるいは80.0%~120%、あるいは90.0%~120%、あるいは100.0%~120%、あるいは110%~120%、あるいは70.0%~110%、あるいは80.0%~110%、あるいは90.0%~110%、あるいは100.0%~110%、あるいは70.0%~≦100%、あるいは80.0%~≦100%,あるいは90.0%~≦100%の生産性を有し得る。
【0117】
式(III)の弱化ポストメタロセン触媒は、触媒ライトオフを阻害し得、またその作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)と比較して汚損速度を低下させ、反応器シャットダウン間の時間を増加させることによって気相反応器の運転可能性を有益に改善し得ると考えられる。
【0118】
弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、その作製に使用された式(II)の高速ライトオフ触媒と比較して改善された重合動力学プロファイルを示し得ると考えられる。この改善された重合動力学プロファイルは、いくつかのメタロセン触媒など、より遅いライトオフのオレフィン重合触媒との弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)の両立性を有益に増加させ、弱化ポストメタロセン触媒の作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)のものと比較して、結果として得られるライトオフ両立可能な多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系の性能を改善する。
【0119】
更に、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、それが化学プロセス中に使用可能になるまで、その作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)に望ましい低温貯蔵及び低温輸送にあるのではなく、常温で貯蔵及び輸送され得ると考えられる。弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、任意の2つ以上のそのような利益のいずれか1つ又は組み合わせを達成し得ると考えられる。
【0120】
いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)、及びオレフィンモノマーを重合する方法は、過剰な量の式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物を含まない。他の実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒及び方法は、過剰な量の動力学改質剤化合物を有する。弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)のそのような実施形態は、高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)を0超~1.0、あるいは、1.1~50、あるいは0.5~40、あるいは0.5~30、あるいは0.5~20、あるいは0.5~10、あるいは0.5~2、あるいは0.8~1.2、あるいは0.9~1.1(例えば、1.0)の動力学改質剤化合物のモル対式(II)の金属Mのモルのモル比で化合することによって作製され得る。そのような実施形態では、式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物は、化学量論量(モル比1.0)又は化学量論量未満(モル比0超~0.99)で使用される。動力学改質剤化合物が化学量論量未満で使用される場合、結果として生じる弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、その作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)のライトオフ活性と比較して部分的に弱化されたライトオフ活性を有する。部分的に弱化されたライトオフ活性は、高速ライトオフ触媒(例えば、式(III)のもの)が軽度にしか過剰活性でない場合に有用であり得る。一般に、動力学改質剤化合物のモル対金属M(例えば、式(II)のもの)のモルのモル比が高いほど、高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)の過剰活性の弱化は大きい。
【0121】
いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)、及びオレフィンモノマーを重合する方法は、過剰な量の式(A1)、(B1)、又は(C1)の動力学改質剤化合物を含む。弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)のそのような実施形態は、高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)を1.0超、例えば、1.1~50、あるいは1.1~40、あるいは1.1~30、あるいは1.1~20、あるいは1.1~10のKMC/Mモル比、あるいは2~20、あるいは20超の動力学改質剤化合物のモル対式(II)の金属Mのモルのモル比で化合することによって作製され得る。注目すべきことに、いくつかの実施形態では、動力学改質剤化合物が前述の範囲内の過剰量で使用される場合でも(最大約50のKMC/Mモル比)、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)の触媒活性及び/又はそれを使用する気相重合反応の生産性は、その作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)のものと比較して、有意に減少し得ず、増加し得る。他の実施形態では、動力学改質剤化合物が過剰量で使用される場合、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)の触媒活性及び/又はそれを使用する気相重合反応の生産性は、その作製に使用された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)のものと比較して、有意に減少し得る。この減少の理由は理解されていないが、過剰な動力学改質剤化合物は、式(III)の弱化された脱離基Rを平衡様式で変位させるためのアルケンモノマーと競合し得ることが考えられ得る。過剰な量の動力学改質剤化合物を使用することは、高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)の金属Mの正確なモル量が、正確には知られていないか、又はそのロットごとに変化し得る場合に役立ち得る。
【0122】
弱化されたライトオフ動力学プロファイル。弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は、弱化されたライトオフ動力学プロファイルを示す。例えば、弱化された動力学プロファイルは、弱化ポストメタロセン触媒の作製に使用された高速ライトオフ触媒のものと比較して、より長い、弱化ポストメタロセン触媒のピーク反応温度Temppeakまでの時間の長さ、及び/又はより低いTmaxの値を含み得る。オレフィンモノマーが入っているが触媒のない反応器内への触媒の注入(時間ゼロ(Time0))からピーク重合反応温度(Temppeak)に達する時間までの少なくとも0.65分のより長い時間。Temppeakの値が大きいほど、触媒ライトオフの遅延は大きくなる。
【0123】
異なる触媒のライトオフ時間を比較するために、同じオレフィンモノマー(例えば、1-オクテン)及び同じ反応器を使用する。迅速な触媒スクリーニングのために、40mLのガラスバイアルを反応器として使用し、後述のライトオフバイアル試験方法を試験方法として使用する。
【0124】
有効量の動力学改質剤化合物(KMC)。触媒のライトオフを弱化させるのに十分な動力学改質剤化合物(KMC)の量。有効量のKMCは、(プレ)触媒金属Mの量と比較された絶対項で、又は弱化されたライトオフ性能と比較された相対項で、又はそれらの組み合わせとして表され得る。
【0125】
いくつかの実施形態における絶対項では、有効量の動力学改質剤化合物は、動力学改質剤化合物のモル対金属Mのモルのモル比(「KMCmol/Mmol」)として表され得、式中、Mは、構造式(I)のポストメタロセンプレ触媒のMであり、例えば、Mは4族の金属である。いくつかの実施形態では、有効量のKMCは、≧0.50/1.0、あるいは≧0.9/1.0、あるいは≧1.0/1.0、あるいは≧1.5/1.0、あるいは≧1.9/1.0、あるいは≧3/1.0、あるいは≧5/1.0、あるいは≧6/1.0、あるいは≧9/1.0、あるいは≧10.0/1.0、あるいは≦10.0/1.0、あるいは≦20.0/1.0、あるいは≦30.0/1.0、あるいは≦40.0/1.0、あるいは≦50.0/1.0のKMCmol/Mmolとして表される。言い換えれば、直前の実施形態は、以下のように有効量のKMCを金属Mのモル対動力学改質剤化合物のモルの逆モル比(「Mmol/KMCmol」)として表すことによって記載され得る:それぞれ、≦1.0/0.5、あるいは≦1.0/0.9、あるいは≦1.0/1.0、あるいは≦1.0/1.5、あるいは≦1.0/1.9、あるいは≦1.0/3.0、あるいは≦1.0/5.0、あるいは≦1.0/6.0、あるいは≦1.0/9.0、あるいは≦1.0/10.0、あるいは≦1.0/20.0、あるいは≦1.0/30.0、あるいは≦1.0/40.0、あるいは≦1.0/50.0。一般に、約50/1.0よりも高いKMCmol/Mmolは、それを含有するポストメタロセン触媒のライトオフ又は機能を不必要に妨げ得る。しかしながら、実用的な理由から(例えば、KMCのコスト及び/又は重合後の処理動作/コスト(例えば、ポリオレフィン樹脂からの過剰なKMCのストリッピング))、いくつかの実施形態では、KMCmol/Mmolは、最大40/1、あるいは最大30/1、あるいは最大20/1、あるいは最大10.0、あるいは最大6.0、あるいは最大5.0に限定される。
【0126】
弱化されたライトオフ性能の相対項では、有効量の動力学改質剤化合物(KMC)は、後述のライトオフバイアル試験方法によって測定された結果によって表され得る。例えば、弱化ポストメタロセン触媒、及びその作製に動力学改質剤化合物と共に使用された高速ライトオフポストメタロセン触媒で、後述のライトオフバイアル試験方法によって別個に測定されるとき、有効量の動力学改質剤化合物(KMC)は、触媒注入後に観察される特徴(i)~(xii)のいずれか1つを有し得る:(i)発熱、すなわち、反応温度上昇の開始の時間遅延(すなわち、添加時間ゼロ(Time0)から温度発熱開始時間(Timeexo)までの時間の長さ(分)の増加)、(ii)反応温度の摂氏度毎分(℃/分)の最大増加率の低下(例えば、x軸上の触媒注入後の時間に対するy軸上の反応温度のプロットにおける最大勾配の減少)、(iii)到達ピーク反応温度(Temppeak)(℃)の低下、(iv)Time0の添加時間からピーク温度時間(TimepeakT)までの少なくとも0.65分のより長い時間、(v)(iii)でも(iv)でもなく、(i)及び(ii)の両方、(vi)(ii)でも(iv)でもなく、(i)及び(iii)の両方、(vii)(i)でも(iv)でもなく、(ii)及び(iii)の両方、(viii)(ii)でも(iii)でもなく、(i)及び(iv)の両方、(ix)(i)でも(iii)でもなく、(ii)及び(iv)の両方、(x)(i)でも(ii)でもなく、(iii)及び(iv)の両方、(xi)(i)~(iv)のいずれか3つ、並びに、(xii)(i)~(iv)の各々。いくつかの実施形態では、弱化されたライトオフ及び有効量のKMCは、少なくとも特徴(iv)によって、あるいは特徴(iv)のみによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、特徴(iv)のより長い時間は、Time0の添加時間から、後述のライトオフバイアル試験方法に従って全て測定される、少なくとも0.65分、あるいは少なくとも1.0分、あるいは少なくとも1.5分、あるいは1.5分~55分、あるいは1.6~100分、あるいは1.6~55分、あるいは1.6~10.0分、あるいは10.1~20.0分、あるいは20.1~30.0分、あるいは30.1~40.0分、あるいは40.1~50.0分、あるいは50.1~55分、あるいは2.0~29分、あるいは30.1~50.4分のピーク温度時間(TimepeakT)までの、少なくとも0.65分(39秒以上)の時間である。いくつかの実施形態では、弱化されたライトオフ及び有効量のKMCは、特徴(viii)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、弱化されたライトオフは、特徴(ix)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、弱化されたライトオフ及び有効量のKMCは、特徴(x)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、弱化されたライトオフは、特徴(xi)によって特徴付けられる。
【0127】
高速ライトオフ触媒によってTempmaxに達するための時間に対する弱化ポストメタロセン触媒によってTempmaxに達するための時間の遅延は、0.70分~500分(例えば、一例は293分)、あるいは0.70分~120分、あるいは1.0~120分、あるいは5~90分、あるいは10~70分であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒の動力学プロファイルは、後述のライトオフバッチ反応器試験方法に従って同じ重合条件下で実行すると、弱化ポストメタロセン触媒の作製に使用された高速ライトオフ触媒のTempmaxに対するピーク温度(Temppeak)(℃)の減少として特徴付けられ得る。ライトオフバッチ反応器試験方法では、弱化ポストメタロセン触媒のTempmaxは、弱化ポストメタロセン触媒の作製に使用された高速ライトオフ触媒のTmaxよりも低い1℃~16℃、あるいは2℃~15℃、あるいは3℃~14℃であり得る。いくつかの実施形態では、高速ライトオフポストメタロセン触媒は、前述のポストメタロセンプレ触媒(1)~(10)のうちのいずれか1つから作製されたものである。
【0129】
いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒の動力学プロファイルは、1時間(h)後のエチレン(C2)取り込み対0.1時間後のC2取り込みの絶対重量/重量比(C2(1h)/C2(0.1h))として特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒は、2.1~11、あるいは2.2~10.4、あるいは2.4~10.0、あるいは3~9.9のC2(1h)/C2(0.1h)比を有し得る。いくつかの実施形態では、高速ライトオフポストメタロセン触媒は、前述のポストメタロセンプレ触媒(1)~(10)のうちのいずれか1つから作製されたものである。
【0130】
いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒の動力学プロファイルは、後述のライトオフバッチ反応器試験方法に従って同じ重合条件下で実行すると、弱化ポストメタロセン触媒のC2(1h)/C2(0.1h)比対弱化ポストメタロセン触媒作製に使用された高速ライトオフ触媒のC2(1h)/C2(0.1h)比の相対C2(1h)/C2(0.1h)比として特徴付けられ得る。相対C2(1h)/C2(0.1h)比は、1.05~6、あるいは1.1~6、あるいは1.2~5.4、あるいは1.5~5.0であり得る。
【0131】
後述のライトオフバイアル試験方法によって測定されるとき、有効量の動力学改質剤化合物(KMC)を弱化されたライトオフ性能の相対項で表す代替又は追加の方法は、弱化ポストメタロセン触媒及びそれを作製するのに使用される高速ライトオフ触媒が、(後述の)ライトオフバイアル試験方法によって測定されるようなライトオフプロファイルを有し得るほど十分な量のKMCであり得、それぞれのピーク重合温度Temppeakの時間は、互いから少なくとも0.7分、あるいは1.0分超、あるいは5分超、あるいは10.0分超、あるいは20.0分超、あるいは30.0分超、あるいは40.0分超、あるいは50.0分超である。弱化ポストメタロセン触媒及びそれを作製するのに使用される高速ライトオフ触媒は、(後述の)ライトオフバイアル試験方法によって測定されるようなライトオフプロファイルを有し得、それぞれのピーク重合温度の時間Temppeakは、互いから60分以内、あるいは45分以内、あるいは30分以内である。弱化ポストメタロセン触媒のピーク重合温度Temppeakの時間を、弱化ポストメタロセン触媒を作製するのに使用される高速ライトオフポストメタロセン触媒のTemppeakの時間に対して遅延させることへの動力学改質剤化合物の効果は、(a)弱化ポストメタロセン触媒の構造クラス(例えば、式(Ia)、(Ib)、(Ic))若しくは構造サブクラス(例えば、式(Ia)-1対(Ia)-2、又は式(Ib)-1対(Ib)-2、又は式(Ic)-1)及び/又は(b)動力学改質剤化合物の構造クラス(例えば、アセチレン類、アレン類、又は内部アルケン類)若しくは構造サブクラス(例えば、アリールアセチレン類対アルキルアセチレン類、又はモノアセチレン類対ジアセチレン類若しくはトリアセチレン類、又は非環式アレン類対シクロアルキルアレン類対ビニリデンアレン類、又はアリール型内部アルケン類対アルキル型内部アルケン類)に応じて異なり得る。いくつかの態様では、弱化ポストメタロセン触媒のTemppeakと弱化ポストメタロセン触媒を作製するのに使用される高速ライトオフポストメタロセン触媒のTemppeakとの間の時間差の範囲の端点のいずれか1つは、後に実施例で与えられるデータに基づき得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒の動力学プロファイルは、前述の実施形態の任意の2つの組み合わせ、あるいはいずれか1つを除いた全て、あるいは各々として特徴付けられ得る。
【0133】
比較例又は本発明以外の実施例は、いかなる動力学改質剤化合物も含有しないか、又は有効量未満の動力学改質剤化合物を含有する。
【0134】
触媒活性。摂氏度(℃)で達するピーク重合反応温度(Temppeak)が、ライトオフバイアル試験方法によって測定されるとき、高速ライトオフ触媒のTpから±5℃、あるいは±4℃、あるいは±3℃、あるいは±2℃、あるいは±1℃以内にある場合、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)の触媒活性は、高速ライトオフ触媒の触媒活性と実質的に同じであると決定される。そうでなければ、触媒活性は、反応器に添加された触媒1グラム当たりに作製される乾燥ポリオレフィン生成物の1時間当たりのグラム数(gPE/gcat-hr)として表される、触媒の活性/重合生産性であると決定され、他の全ての条件が同じであれば、高速ライトオフポストメタロセン触媒の活性/重合生産性よりも有意に小さくなり得ず、いくつかの実施形態では、より大きくなり得る。
【0135】
高速ライトオフ触媒。上記の理由から、高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)の実施形態は、1-アルケンモノマー)のスラリー相及び/又は気相重合についてのライトオフ動力学の弱化を必要とし得る。高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)の同じ又は他の実施形態は、アルカン溶媒中の触媒の溶解度を変更するため、又はポストメタロセン触媒構造のNMR研究及び触媒構造設計を改善するためなどの異なる理由から、配位子Rを必要とし得る。
【0136】
アニオンA-。高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)及び弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は各々、式(I)のポストメタロセンプレ触媒から高速ライトオフポストメタロセン触媒を作製するために使用される活性化剤から誘導されるか、又は脱離基Xから誘導されるアニオンA-を含有し得る。活性化剤は、式(I)のポストメタロセンプレ触媒を、それの脱離基Xを除去することによって活性化して、高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)及びアニオンA-が得られるように機能する。結果として生じる活性化されたポストメタロセン触媒、すなわち、式(II)の高速ライトオフポストメタロセン触媒は、従来、正電荷を有する金属原子Mを示すように描かれる。この正電荷は、重合反応中にオレフィンモノマーが結合し得る触媒部位を示す。アニオンA-は、正電荷を形式的に平衡化し、その結果、高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)及びそれから作製された弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)は全体的に中性である。
【0137】
高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)及び弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)中のアニオンA-の性質は、重要であるとは考えられない。前述のように、それは、Xのアニオン性誘導体(すなわち、X-)又は活性化剤のアニオン誘導体であり得る。活性化剤がアルキルアルミノキサンであり、アニオンA-がそのアニオン誘導体である場合、アニオンA-は、アルキルアルミノキサンアニオンであり得、あるいは、活性化剤がオルガノボラン化合物であり、アニオンA-がそのアニオン誘導体である場合、アニオンA-は、オルガノボランアニオンであり得、あるいは、活性化剤が有機ホウ素化合物であり、アニオンA-がそのアニオン誘導体である場合、アニオンA-は、有機ホウ素アニオンであり得る。アニオンA-は、態様1に記載の活性化工程中に形成される。高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)中のアニオンA-は、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)中のアニオンA-が高速ライトオフ触媒中のアニオンA-と同じであり得るように、化合工程を通して運ばれると考えられる。それにもかかわらず、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)中のアニオンA-は、高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II))中のアニオンA-と同じ又は異なり得る。例えば、高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)中のアニオンA-は、活性化剤のアニオン性誘導体であり得、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)中のアニオンA-はX-であり得る。
【0138】
触媒構造。理論に束縛されるものではないが、式(II)の高速ライトオフポストメタロセン触媒の分子構造及び式(III)の弱化ポストメタロセン触媒の分子構造は、核磁気共鳴(NMR)分光法又はガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)などの従来の分析方法によって決定され得ると考えられる。式(III)中の配位子Rの構造は、イソプロパノール、CH3OH若しくはH2Oなどのプロトン性溶媒、イソプロピル-OD、CH3OD若しくはHDOなどの部分重水素化プロトン性溶媒、又は過重水素化イソプロパノール(CD3)2C(D)OD)過重水素化メタノール(CD3OD)若しくはD2Oなどの過重水素化プロトン性溶媒で式(III)の弱化ポストメタロセン触媒のNMR試料をクエンチして、式H-R又はD-Rの副生成物を得、プロトンNMR(1H-NMR)などのNMR又はガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)によって副生成物の構造を分析することによって決定され得る。
【0139】
活性化工程。いくつかの実施形態では、弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)を作製する方法は、予備工程として活性化工程を更に含み、この工程は、化合工程の開始前に完了され得る。活性化工程は、高速ライトオフポストメタロセン触媒を作製する有効な活性化条件下で式(I)のプレ触媒を活性化剤と接触させることを含む。活性化工程は、動力学改質剤化合物の非存在下で実施され得る。
【0140】
活性化剤。式(I)のポストメタロセンプレ触媒を活性化するための活性化剤は、アルキルアルミノキサン、オルガノボラン化合物、有機ホウ素化合物、又はトリアルキルアルミニウム化合物であり得る。活性化剤はまた、それらの任意の2つ以上の組み合わせであり得る。例えば、活性化剤は、CAS名のアミン類、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(アミン類、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-))を有するメチルアルミノキサン及び有機ボレートなどのアルキルアルミノキサン及び有機ホウ素化合物を含み得る。シクロペンタジエニル含有配位子-金属(Ti、Zr、又はHf)錯体を活性化してメタロセン触媒を得るための活性化剤は、トリアルキルアルミニウム化合物であり得る。
【0141】
アルキルアルミノキサン:アルキルアルモキサンとも称される。トリアルキルアルミニウム化合物の部分加水分解生成物。実施形態は、(C1~C10)アルキルアルミノキサン、あるいは(C1~C6)アルキルアルミノキサン、あるいは(C1~C4)アルキルアルミノキサン、あるいは(C1~C3)アルキルアルミノキサン、あるいは(C1~C2)アルキルアルミノキサン、あるいはメチルアルミノキサン(MAO)、あるいは変性メチルアルミノキサン(MMAO)であり得る。いくつかの態様では、アルキルアルミノキサンはMAOである。いくつかの実施形態では、アルキルアルミノキサンは、ヒュームドシリカなどの未処理シリカ上に支持されている。アルキルアルミノキサンは、商業的供給業者から入手され得るか、又は任意の好適な方法によって調製され得る。アルキルアルミノキサンの好適な調製方法は周知である。そのような調製方法の例は、米国特許第4,665,208号、同第4,952,540号、同第5,091,352号、同第5,206,199号、同第5,204,419号、同第4,874,734号、同第4,924,018号、同第4,908,463号、同第4,968,827号、同第5,308,815号、同第5,329,032号、同第5,248,801号、同第5,235,081号、同第5,157,137号、同第5,103,031号、同第5,391,793号、同第5,391,529号、及び同第5,693,838号に、並びに欧州特許出願公開第0561476(A)号、欧州特許第0279586(B1)号、及び欧州特許出願公開第0594218(A)号に、並びに国際公開94/10180号に記載されている。
【0142】
最大量のアルキルアルモキサンは、アルミノキサン中のAl金属原子のモル対プレ触媒中の金属原子M(例えば、Ti、Zr、又はHf)のモルのモル比に基づいて、プレ触媒の5,000倍モル過剰になるように選択され得る。最小量の活性化剤対プレ触媒は、1:1のモル比(Al/M)であり得る。最大は、150、あるいは124のAl/Mのモル比であり得る。
【0143】
オルガノボラン化合物。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン((C6F5)3B)、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラン((3,5-(CF3)2-C6H3)3B)、又はそれらの任意の2つ以上の混合物などのトリ(フルオロ官能性オルガノ)ボラン化合物((フルオロ-オルガノ)3B)。
【0144】
有機ホウ素化合物。N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、若しくはトリフェニルカルベニウム テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、又はそれらの任意の2つ以上の混合物など、テトラ(フルオロ官能性オルガノ)ボレート化合物((フルオロ-オルガノ)4B)。有機ホウ素化合物は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ((C14~C18)アルキル)アンモニウム塩であり得、これは、Boulder Scientificから得られ得るか、長鎖トリアルキルアミン(Akzo-Nobel,Inc.から入手可能なArmeen(商標)M2HT)と、HCl及びLi[B(C6F5)4]との反応によって調製され得る。そのような調製は、米国特許第5,919,983号の実施例2に開示されている。有機ホウ素化合物は、(更なる)精製なしで本明細書中で使用され得る。同様に、アミン類、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートも使用され得る。
【0145】
トリアルキルアルミニウム化合物は、プレ触媒(メタロセンプレ触媒)の活性化剤として、又は重合反応器からその始動前に残留水を除去するための捕捉剤として利用され得る。好適なアルキルアルミニウム化合物の例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-オクチルアルミニウムである。
【0146】
助触媒としても知られる活性化剤は、ポリオレフィンポリマーの分子量、分岐、コモノマー含有量、又は他の特性に影響を及ぼし得る。活性化剤は、配位重合又はカチオン重合を可能にし得る。
【0147】
理論に束縛されるものではないが、高速ライトオフポストメタロセン触媒を活性化するために使用される活性化剤の選択は、高速ライトオフポストメタロセン触媒から作製された弱化ポストメタロセン触媒の構造に影響を及ぼさないと考えられる。すなわち、式(III)のカチオン部分のみを考慮する(すなわち、アニオンA-を無視する)と、異なる活性化剤を使用して作製された弱化ポストメタロセン触媒の構造は、同一であると予想される。支持されていない弱化ポストメタロセン触媒の構造は、支持された弱化ポストメタロセン触媒の構造よりも平易であると、後者の不均一な性質に起因してMMRによって決定され得る(典型的な支持材料はNMR溶媒に溶解しない)。
【0148】
いくつかの実施形態では、A-の選択は、弱化ポストメタロセン触媒の動力学プロファイルに追加の効果を与え得る。しかしながら、A-のそのような効果が、弱化ポストメタロセン触媒の動力学プロファイルに対する動力学改質剤化合物の有益な効果を完全に排除することはない。
【0149】
有効条件。本明細書に記載の反応(例えば、化合工程、活性化工程、重合)は独立して、反応が進行することを可能にする状況下で行われる。有効条件の例は、反応温度、雰囲気の種類(例えば、不活性雰囲気)、反応物の純度、反応物の化学量論、反応物の撹拌/混合、及び反応時間である。活性化工程及び重合工程のために有効な条件は、当該技術分野において記載され、当業者に周知のものであり得る。例えば、活性化有効条件は、インラインミキサー、触媒調製反応器、及び重合反応器など、触媒を操作するための技術を含み得る。活性化温度は、20℃~800℃、あるいは300℃~650℃であり得る。活性化時間は、10秒~2時間であり得る。気相重合条件の例は、本明細書に後で記載される。弱化ポストメタロセン触媒を作製するために使用される化合工程の有効条件は、-50℃~30℃の反応温度、不活性雰囲気(例えば、水及びO2を含まない窒素、ヘリウム、又はアルゴンガス)、水及びO2を含まず、かつ90%~100%の純度を有する反応物、廃棄物を最小限に抑える/生成物の収率を最大化するための反応物の量、反応物の撹拌又は混合、並びに1分~24時間の反応時間を含み得る。
【0150】
式(IV)のポストメタロセンプレ触媒を作製するための有効な反応条件。そのような条件は、シュレンクライン技術及び不活性ガス雰囲気(例えば、窒素、ヘリウム、又はアルゴン)など、空気感受性及び/又は水分感受性の試薬及び反応物を操作するための技術を含み得る。有効な反応条件はまた、十分な反応時間、十分な反応温度、及び十分な反応圧力を含み得る。各反応温度は独立して、-78℃~120℃、あるいは-30℃~30℃であり得る。各反応圧力は独立して、95~105kPa、あるいは99~103kPaであり得る。特定の反応工程の進行は、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法などの分析方法によって監視され得、目的の生成物の収量を最大化するのに有効な反応時間を決定することができる。代替的に、各反応時間は、独立して、30分~48時間であり得る。
【0151】
式(I)のポストメタロセンプレ触媒。式(I)のプレ触媒は、上記で参照された方法を含む、当該技術分野において既知の方法に従って合成され得る。あるいは、ポストメタロセンプレ触媒は、Boulder Scientificなどのプレ触媒供給業者から得られ得る。
【0152】
合成方法によって作製されたポリオレフィンポリマー。1-アルケンモノマーがエチレンとプロピレンの組み合わせである場合、それから作製されるポリオレフィンポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマーである。1-アルケンモノマーがエチレン単独である場合、それから作製されるポリオレフィンポリマーは、ポリエチレンホモポリマーである。1-アルケンモノマーが、エチレンと1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテンとの組み合わせである場合、それから作製されるポリオレフィンポリマーは、ポリ(エチレン-co-1-ブテン)コポリマー、ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)コポリマー、又はポリ(エチレン-co-1-オクテン)コポリマーである。いくつかの実施形態では、1-アルケンモノマーから作製されるポリオレフィンポリマーは、エチレンから誘導された50~100重量パーセント(重量%)の繰り返し単位と、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせから選択される1-アルケンモノマーから誘導された50~0重量%の繰り返し単位とを有するエチレン系ポリマーである。
【0153】
いくつかの実施形態では、重合方法は、1-アルケンモノマーと、ジエンモノマー(例えば、1,3-ブタジエン)であるコモノマーとを使用する。1-アルケンモノマーがエチレンとプロピレンとの組み合わせであり、重合がまたジエンモノマーを使用する場合、ポリオレフィンポリマーは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマーである。EPDMコポリマーは、エチレン/プロピレン/1,3-ブタジエンコポリマーであり得る。
【0154】
多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系。二峰性触媒系は、弱化ポストメタロセン触媒と、異なる弱化ポストメタロセン触媒、ポストメタロセン触媒、及びメタロセン触媒から選択される少なくとも1つの他のオレフィン重合触媒と、を含む。多峰性触媒系は、単一の反応器内で、HMWポリエチレン構成成分及びLMWポリエチレン構成成分を含む、多峰性ポリエチレン組成物を作製する。問題のうちのいくつかは、反応器後の溶融ブレンドされた多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)ポリエチレン組成物中の望ましくないゲルに関連している。他の問題は、移行の複雑さ及び多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)触媒系の安定性に関連している。ゲルの非存在下であっても、異なるサイズの触媒粒子の沈降の変動性による問題があり得る。いくつかの態様では、ゲル測定を使用する代わりに、メルトインデックス(I2)の変動性が粒子サイズの関数として測定され得る。
【0155】
弱化ポストメタロセン触媒を作製する方法は、メタロセン触媒又はメタロセンプレ触媒の存在下で実施され得る。メタロセンプレ触媒の存在下で実施される場合、式(I)のプレ触媒を活性化剤で活性化する方法は、同じ又は異なる活性化剤でメタロセンプレ触媒を活性化することを更に含む。典型的には、弱化ポストメタロセン触媒を作製する方法は、メタロセン(プレ)触媒の非存在下で実施される。
【0156】
メタロセン触媒。メタロセン触媒は、米国特許第7873112(B2)号、カラム11、ライン17~カラム22、ライン21に記載のメタロセンプレ触媒構成成分のうちのいずれか1つから作製され得る。いくつかの態様では、メタロセン触媒は、米国特許第7873112(B2)号、カラム18、ライン51~カラム22、ライン5で名称が挙げられたメタロセンプレ触媒種から作製される。いくつかの態様では、メタロセンプレ触媒は、ビス(η5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(η5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(η5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(η5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、(1,3-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)(1-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n-プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(n-プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(1,5-ジメチルインデニル)ジルコニウムジメチル、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5-ジメチルインデニル)ジルコニウムジメチル、(シクロペンタジエニル)(1,4-ジメチルインデニル)ジルコニウムジメチル、(メチルシクロペンタジエニル)(1,4-ジメチルインデニル)ジルコニウムジメチル、及びビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルから選択される。いくつかの態様では、メタロセン触媒は、活性化剤と、前述のメタロセンプレ触媒のいずれか1つとの活性化反応の生成物である。
【0157】
支持されていない又は支持された触媒。式(I)のポストメタロセンプレ触媒、式(II)の高速ライトオフ触媒などの高速ライトオフポストメタロセン触媒、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒などの弱化ポストメタロセン触媒、及び多峰性触媒系は独立して、固体粒子状支持材料上に支持されていないか、又は配置され得る。支持材料が存在しない場合、式(I)のポストメタロセンプレ触媒、式(II)の高速ライトオフ触媒などの高速ライトオフポストメタロセン触媒、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒などの弱化ポストメタロセン触媒、及び/又は多峰性触媒系は、炭化水素溶媒中の溶液としてスラリー相又は気相重合反応器内に注入され得る。式(I)のポストメタロセンプレ触媒、式(II)の高速ライトオフ触媒などの高速ライトオフポストメタロセン触媒、式(III)の弱化ポストメタロセン触媒などの弱化ポストメタロセン触媒、及び/又は多峰性触媒系が、支持材料上に配置されている場合、それらは、炭化水素溶媒中に懸濁されたスラリーとして、又は乾燥粉末(すなわち、乾燥粒子状固体)として、スラリー相又は気相重合反応器内に注入され得る。
【0158】
高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)及び/又は弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III))は、支持材料の非存在下で事前に作製され、後で支持材料上に配置され得る。あるいは、式(I)のポストメタロセンプレ触媒又は高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、(II)のもの)が支持材料上に配置され得、次いで、高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)のもの)及び/又は弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)がその場で支持材料上に作製され得る。
【0159】
式(I)の支持されたポストメタロセンプレ触媒、支持された高速ライトオフポストメタロセン触媒(例えば、式(II)の支持された触媒)及び/又は支持された弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)の支持された触媒)は、炭化水素溶媒中の式(I)のプレ触媒、高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)のもの)及び/又は弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のもの)の溶液中で、支持材料の懸濁液又は溶液から炭化水素溶媒を蒸発させることによる濃縮方法によって作製され得る。あるいは、式(I)の支持されたプレ触媒、支持された高速ライトオフ触媒(例えば、式(II)の支持された触媒)及び/又は支持された弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)の支持された触媒)は、懸濁液又は溶液を噴霧乾燥することによる噴霧乾燥方法によって作製され得る。いくつかの実施形態では、噴霧乾燥方法が使用される。
【0160】
支持材料。支持材料は、非多孔性、半多孔性、又は多孔性であり得る粒子状固体である。担体材料は、多孔質の支持材料である。支持材料の例は、タルク、無機酸化物、無機塩化物、ゼオライト、粘土、樹脂、及びそれらのいずれか2つ以上の混合物である。好適な樹脂の例は、ポリスチレンジビニルベンゼンポリオレフィンなど、ポリスチレン、官能化又は架橋有機支持体である。支持材料は、独立して、未処理のシリカ、あるいはか焼された未処理のシリカ、あるいは疎水化剤で処理されたシリカ、あるいはか焼され、疎水化剤で処理されたシリカであり得る。疎水化剤は、ジクロロジメチルシランであり得る。
【0161】
無機酸化物支持材料としては、2、3、4、5、13、又は14族の金属の酸化物が挙げられる。好ましい支持体としては、脱水されてもされなくてもよいシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ(例えば、国際公開第99/60033号を参照)、シリカ-アルミナ、及びそれらの混合物が挙げられる。他の有用な支持体としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、塩化マグネシウム(米国特許第5,965,477号)、モンモリロナイト(欧州特許第0511665号)、フィロケイ酸塩、ゼオライト、タルク、粘土(米国特許第6,034,187号)などが挙げられる。また、これらの支持材料の組み合わせ、例えば、シリカ-クロム、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニアなどを使用してもよい。追加の支持材料としては、参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第0767184に記載のそれらの多孔性アクリルポリマーを挙げることができる。他の支持材料としては、国際公開第99/47598号に開示されているようなナノコンポジット、国際公開第99/48605号に開示されているようなエアロゲル、米国特許第5,972,510号に開示されているような球晶、及び国際公開第99/50311号に開示されているようなポリマービーズが挙げられる。
【0162】
支持材料は、約10m2/g~約700m2/gの範囲の表面積、約0.1cm3/g~約4.0cm3/gの範囲の細孔容積、及び約5ミクロン~約500ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有し得る。支持材料は、シリカ(例えば、ヒュームドシリカ)、アルミナ、粘土、又はタルクであり得る。ヒュームドシリカは、親水性(未処理)、あるいは疎水性(処理済み)であり得る。いくつかの態様では、支持体は、疎水性ヒュームドシリカであり、これは、未処理のヒュームドシリカを、ジメチルジクロロシラン、ポリジメチルシロキサン流体、又はヘキサメチルジシラザンなどの疎水化剤で処理することによって調製され得る。いくつかの態様では、処理剤は、ジメチルジクロロシランである。一実施形態では、支持体は、Cabosil(商標)TS-610である。
【0163】
1つ以上のプレ触媒及び/又は1つ以上の活性化剤は、1つ以上の支持体又は担体材料に堆積、接触、気化、結合、又は組み込み、吸着、又は吸収され得る。
【0164】
メタロセンプレ触媒は、US5648310に記載の一般的な方法に従って噴霧乾燥させてもよい。ポストメタロセンプレ触媒と共に使用される支持体は、欧州特許第0802203号に概して記載のように官能化され得るか、又は米国特許第5688880号に記載のように少なくとも1つの置換基若しくは脱離基が選択される。
【0165】
オレフィンモノマーの液相重合及び/又はスラリー相重合は周知である。例えば、US8291115B2を参照されたい。
【0166】
不活性炭化水素溶媒。アルカン、アレーン、又はアルキルアレーン(すなわち、アリールアルカン)。不活性炭化水素溶媒の例は、鉱油、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどのアルカン、並びにトルエン、及びキシレンである。一実施形態では、不活性炭化水素溶媒は、アルカン、又はアルカンの混合物であり、各アルカンは独立して、5~20個の炭素原子、あるいは5~12個の炭素原子、あるいは5~10個の炭素原子を有する。各アルカンは、独立して、非環式又は環式であり得る。各非環式アルカンは独立して、直鎖又は分岐鎖であり得る。非環式アルカンは、ペンタン、1-メチルブタン(イソペンタン)、ヘキサン、1-メチルペンタン(イソヘキサン)、ヘプタン、1-メチルヘキサン(イソヘプタン)、オクタン、ノナン、デカン、又はそれらの任意の2つ以上の混合物であり得る。環状アルカンは、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロペンタン、又はそれらの任意の2つ以上の混合物であり得る。好適なアルカンの追加の例は、Isopar-C、Isopar-E、及び白色鉱油などの鉱油を含む。いくつかの態様では、不活性炭化水素溶媒は、鉱油を含まない。不活性炭化水素溶媒は、1つ以上の(C5~C12)アルカンからなり得る。
【0167】
気相重合(GPP)。重合には、撹拌床気相重合反応器(SB-GPP反応器)又は流動床気相重合反応器(FB-GPP反応器)などのGPP反応器を使用する。そのような反応器及び方法は、一般に周知である。例えば、FB-GPP反応器/方法は、米国特許第3,709,853号、同第4,003,712号、同第4,011,382号、同第4,302,566号、同第4,543,399号、同第4,882,400号、同第5,352,749号、同第5,541,270号、米国特許出願公開第2018/0079836(A1)号、欧州特許出願公開第0802202(A)号、及びベルギー特許第839,380号のいずれか1つに記載のとおりであり得る。これらのSB-GPP及びFB-GPPの重合反応器及びプロセスは、それぞれ、ガス状モノマー及び希釈剤の連続流によって反応器内部の重合媒体を機械的に撹拌するか、又は流動化させるかのいずれかを行う。企図される他の有用な反応器/プロセスとしては、米国特許第5,627,242号、同第5,665,818号、同第5,677,375号、欧州特許出願公開第0794200(A)号、欧州特許第0649992(B1)号、欧州特許出願公開第0802202(A)号、及び欧州特許第634421(B)号に記載のものなどの直列又は多段重合プロセスが挙げられる。
【0168】
気相重合操作条件は、GPP反応器における重合反応、又はそれによって作製されるポリオレフィンコポリマー組成物生成物の組成若しくは特性に影響を及ぼし得る任意の変数又は変数の組み合わせである。変数としては、反応器の設計及びサイズ、プレ触媒の組成及び量、反応物の組成及び量、2つの異なる反応物のモル比、H2などの供給ガスの有無、反応物質に対する供給ガスのモル比、干渉物質(例えば、H2O及び/又はO2)の不在又は濃度、誘導凝集剤(induced condensing agent、ICA)の有無、反応器内でのポリマー平均滞留時間、成分の分圧、モノマーの供給速度、反応器床温度(例えば、流動床温度)、プロセスステップの性質又は順序、ステップ間の移行期間、を挙げることができる。記載されている、又は方法若しくは使用によって変化させたそれ/それら以外の変数は、一定に維持してもよい。
【0169】
GPP方法では、エチレン(「C2」)、水素(「H2」)、及び1-ヘキセン(「C6」又はxが6である「Cx」)の個々の流量を制御して、記載の値(例えば、0.00560又は0.00703)と等しいコモノマー対エチレンモノマーガスの固定のモル比又は供給質量比(Cx/C2、例えばC6/C2)、記載の値(例えば、0.00229又は0.00280)に等しい水素対エチレンガスの一定のモル比又は供給質量比(「H2/C2」)、及び記載の値(例えば、1000kPa)に等しいエチレン(「C2」)の一定の分圧に維持する。インラインガスクロマトグラフによってガスの濃度を測定して、リサイクルガス流の組成を理解し維持する。補給原料を連続的に流すことにより、流動状態で成長するポリマー粒子の反応床を維持し、反応ゾーンを通してガスをリサイクルする。0.49~0.79メートル/秒(m/秒)(1.6~2.6フィート/秒(ft/秒))の表面ガス速度を使用する。約2068~約2758キロパスカル(kPa)(約300~約400ポンド/平方インチゲージ(psig))の全圧、及び記載の第1の反応器床温度RBTで、FB-GPP反応器を操作する。ポリオレフィンポリマー組成物の粒子状形態の生成速度に等しい速度で床の一部分を引き出すことにより、流動床を一定の高さに維持し、生成速度は、5,000~150,000キログラム/時間(kg/時間)であり得る。生成物ポリオレフィンポリマー組成物を、一連のバルブを介して半連続的に固定容積チャンバに取り出し、この取り出した多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)エチレン-co-1-ヘキセンコポリマー組成物をパージして、含まれる炭化水素を除去し、加湿窒素(N2)ガス流で処理して、微量の残留触媒を失活させる。
【0170】
触媒系は、「乾式モード」又は「湿式モード」、あるいは乾式モード、あるいは湿式モードで重合反応器に供給され得る。乾式モードは、乾燥粉末又は顆粒である。湿式モードは、鉱油などの不活性液体中の懸濁液である。
【0171】
誘導凝集剤(ICA)。GPP反応器(複数可)内の材料を冷却するのに有用な不活性液体。その使用は任意選択的である。ICAは、(C3~C20)アルカン、あるいは(C5~C20)アルカン、例えば、2-メチルブタン(すなわち、イソペンタン)であり得る。米国特許第4,453,399号、同第4,588,790号、同第4,994,534号、同第5,352,749号、同第5,462,999号、及び同第6,489,408号を参照されたい。反応器内のICA濃度は、0.1~25mol%、あるいは1~16mol%、あるいは1~10mol%であり得る。
【0172】
GPP条件は、連鎖移動剤又は促進剤などの1つ以上の添加剤を更に含み得る。連鎖移動剤は、周知であり、ジエチル亜鉛などのアルキル金属であり得る。促進剤は、米国特許第4,988,783号などで既知であり、クロロホルム、CFCl3、トリクロロエタン、及びジフルオロテトラクロロエタンを含み得る。反応器の始動前に、捕捉剤を使用して水分と反応させてもよく、反応器の移行中に、捕捉剤を使用して過剰な活性化剤と反応させてもよい。捕捉剤はトリアルキルアルミニウムであり得る。(意図的に添加されずに)捕捉剤を含まずに、GPPを操作してもよい。GPP反応器/方法は、一定量の(例えば、反応器への全ての供給物に基づいて0.5~200ppm)の1つ以上の静電荷制御剤及び/又はステアリン酸アルミニウム若しくはポリエチレンイミンなどの1つ以上の連続性添加剤を更に含み得る。静電荷制御剤をFB-GPP反応器に加えて、FB-GPP反応器内の静電荷の形成又は蓄積を阻害してもよい。
【0173】
GPP反応器は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)の子会社であるUnivation Technologies,LLCから市販の、UNIPOL(商標)反応器又はUNIPOL(商標)II反応器などの商業規模のFB-GPP反応器であり得る。
【0174】
1-アルケンモノマー。1-アルケンモノマーは、式H2C=C(H)(CH2)nR8の化合物であり、式中、下付き文字nは0~19の整数であり、基R8はH又はCH3である。例は、エチレン(下付き文字nは0であり、R8はHである)、プロピレン(下付き文字nは0であり、R8はCH3である)、及び(C4~C20)アルファ-オレフィン(下付き文字nは1~19の整数であり、R8はH又はCH3である。いくつかの実施形態では、1-アルケンモノマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。いくつかの実施形態では、1-アルケンモノマーは、エチレンとプロピレンとの組み合わせである。他の実施形態では、1-アルケンモノマーは、エチレン単独であるか、又はエチレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、若しくは1-オクテンとの組み合わせである。
【0175】
ポリオレフィンポリマー。少なくとも1つの1-アルケンモノマーを弱化ポストメタロセン触媒又は多峰性触媒系で重合する生成物。少なくとも1つの1-アルケンモノマーから誘導された構成単位を有する、高分子、又は高分子の集合体である。例えば、少なくとも1つの1-アルケンモノマーがエチレンからなる場合、ポリオレフィンポリマーは、ポリエチレンホモポリマーからなる。少なくとも1つの1-アルケンモノマーがエチレン及びプロピレンからなる場合、ポリオレフィンポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマーからなる。少なくとも1つの1-アルケンモノマーが、エチレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンから選択されるコモノマーとからなる場合、ポリオレフィンポリマーは、それぞれ、ポリ(エチレン-co-1-ブテン)コポリマー、ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)コポリマー、及びポリ(エチレン-co-1-オクテン)コポリマーから選択される。
【0176】
ポリオレフィンポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。ポリオレフィンポリマーは、単峰性分子量分布又は多峰性分子量分布を有し得る。多峰性触媒系から作製されたポリオレフィンポリマーは、多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)分子量分布を有し、高分子量(HMW)ポリオレフィンポリマー構成成分及び低分子量(LMW)ポリオレフィンポリマー構成成分を含む。HMWポリオレフィンポリマー構成成分は、その弱化ポストメタロセン触媒(例えば、式(III)のものによって作製され得、LMWポリオレフィンポリマー構成成分は、そのメタロセン触媒によって作製され得る。
【0177】
本明細書の任意の化合物、組成物、配合物、材料、混合物、又は反応生成物は、H、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、ランタノイド、及びアクチノイドからなる群から選択される化学元素のうちのいずれか1つを含まないものであり得るが、但し、化合物、組成物、配合物、材料、混合物、又は反応生成物に必要な化学元素(例えば、ジルコニウム化合物に必要なZr、又はポリエチレンに必要なC及びH、又はアルコールに必要なC、H、及びO)はカウントされない。
【0178】
あるいは、異なる実施形態に先行する。ASTMは、標準化組織ASTM International(West Conshohocken、Pennsylvania、USA)である。いずれの比較例も、例示目的のためにのみ使用され、先行技術ではない。「~を含まない」又は「~を欠いている」とは、完全な不在、あるいは検出不可能を意味している。IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)は、国際純正応用化学連合(IUPAC Secretariat(Research Triangle Park,North Carolina,USA))である。元素の周期表は、2018年5月1日のIUPAC版である。「May」は、必須ではなく、許可された選択肢を与える。「動作可能な(operative)」は、機能的に可能又は有効であることを意味する。「任意選択的な(任意選択的に)」とは、存在しない(又は除外される)か、あるいは存在する(又は含まれる)ことを意味する。特性は、標準の試験方法及び条件を使用して測定することができる。範囲は、端点、サブ範囲、及びその中に含まれる全体及び/又は小数の値を含む、但し、整数の範囲は、小数を含まない。室温:23℃±1℃。
【0179】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語の定義は、2014年2月24日付のIUPAC Compendium of Chemical Technology(「Gold Book」)2.3.3版から得られる。便宜上、以下にいくつかの定義を挙げる。
【0180】
アルカン(溶媒)。式CnH2n+2の1つ以上の非環式の直鎖若しくは分岐鎖化合物及び/又は式CmH2mの1つ以上の環式化合物、式中、下付き文字n及びmは独立して、5~50の整数(例えば、6)である。炭素-炭素二重結合(C=C)及び末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まない。
【0181】
アルキル(非置換)。水素原子及び少なくとも1つの炭素原子からなり、アルカンから水素原子を除去することによって形式的に作製される一価基。炭素-炭素二重結合(C=C)及び末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まない。
【0182】
アルキル(置換)。非置換アルキルの少なくとも1つの水素原子を置換基(例えば、Rs)で置き換えることよって形式的に作製される一価基。
【0183】
アルカリル(非置換)又はアルキル置換アリール。水素原子及び少なくとも7個の炭素原子からなり、アルキル-アレーンのアレーニル(arenyl)部分から水素原子を除去することによって形式的に作製される一価基。例えば、4-メチルフェニル。
【0184】
アルカリル(置換)又はアルキル置換アリール。非置換アルカリルの少なくとも1つの水素原子を置換基(例えば、Rs)で置き換えることよって形式的に作製される一価基。
【0185】
アラルキル(非置換)。水素原子及び少なくとも7個の炭素原子からなり、アレーニル-アルカンのアルカン部分から水素原子を除去することによって形式的に作製される一価基。例えば、ベンジル。炭素-炭素二重結合(C=C)及び末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まない。
【0186】
アラルキル(置換)。非置換アラルキルの少なくとも1つの水素原子を置換基(例えば、Rs)で置き換えることよって形式的に作製される一価基。
【0187】
アリール(非置換)。水素原子及び少なくとも6個の炭素原子からなり、アレーンから水素原子を除去することによって形式的に作製される一価基。例えば、フェニル、ナフチル。炭素-炭素二重結合(C=C)及び末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まない。
【0188】
アリール(置換)。非置換アリールの少なくとも1つの水素原子を置換基(例えば、Rs)で置き換えることよって形式的に作製される一価基。
【0189】
4-(C1~C20)アルキル置換1,3-ブタジエン分子。式H2C=C(H)-C(H)=C(H)-(C1~C20)アルキルの化合物。
【0190】
(C#~C#)(官能基を修飾するものとして)。#又は番号記号は、官能基の非置換バージョンでの炭素原子の範囲を示す。例えば、(C1~C6)は1~6個の炭素原子を有し、(C7~C20)は7~20個の炭素原子を有し、(C6~C12)は6~12個の炭素原子を有し、(C1~C20)は1~20個の炭素原子を有する。
【0191】
-C(=O)-O-(非置換C1~C20)ヒドロカルビル)。水素原子、2つの酸素原子、及び2~21個の炭素原子からなり、蟻酸エステルのカルボニル炭素原子から水素原子を除去することによって形式的に作製される一価基。例えば、-C(=O)-O-フェニル又は-C(=O)-O-エチル。炭素-炭素二重結合(C=C)及び末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まない。
【0192】
配位エンティティ。原子の他の基の周囲アレイ(配位子)に取り付けられる(結合される)中心原子(金属原子)からなるアセンブリ。
【0193】
配位数。化学種中の特定の原子(例えば、M)について、その化学種中のその特定の原子に直接連結又は結合される他の原子の量。例えば、TiCl4では、チタン原子の配位数は4である。
【0194】
座数。配位エンティティにおいて、同じ中心原子に取り付けられた(例えば、Mに取り付けられた)同じ配位子からの供与基の数、カッパ(κ)。
【0195】
二座オルガノヘテリル。金属Mへの配位子として機能し、炭素原子、水素原子、並びにN、O、S、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる一価基であって、炭素原子と1つのそのようなヘテロ原子とを介して、又は2つのそのようなヘテロ原子を介して、一価基が金属Mに二重に配位されるように選択され得る一価基。この一価配位子は、2の座数κをMに提供し得る。二座オルガノヘテリルは、末端炭素-炭素二重結合(>C=CH2)及び末端炭素-炭素三重結合(-C≡CH)を含まないもの、あるいは任意の炭素-炭素二重結合(C=C)及び任意の末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まないものであり得る。
【0196】
二座オルガノヘテリレン。金属原子Mへの配位子として機能し、炭素原子、水素原子、並びにN、O、S、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる二価基であって、炭素原子と1つのそのようなヘテロ原子とを介して、又は2つのそのようなヘテロ原子を介して、二価基が金属Mに二重に配位されるように選択され得る二価基。この二価基は、2の座数κをMに提供し得る。二座オルガノヘテリレンは、末端炭素-炭素二重結合(>C=CH2)及び末端炭素-炭素三重結合(-C≡CH)を含まないもの、あるいは任意の炭素-炭素二重結合(C=C)及び任意の末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まないものであり得る。
【0197】
乾燥。一般に、総重量部に基づいて、0~5百万分率未満の水分含有量。重合反応中に反応器(複数可)に供給される材料は乾燥している。
【0198】
有効量。結果を達成するのに十分な量。
【0199】
ハロゲン原子。F、Cl、Br、及びIから、あるいはF、Cl、及びBrから、あるいはF及びClから、あるいはF及びBrから、あるいはCl及びBrから、あるいはFから、あるいはClから選択される原子。
【0200】
ハプト数。配位エンティティにおいて、中心原子(例えば、M)に取り付けられた同じ配位子からの連続的な又は中断されていない一連の2つ以上の原子中の原子の数、イータ(η)。例えば、シクロペンタジエニル基は、Mに配位された5つの連続的な又は中断されていない炭素原子を有し、したがって、5のハプト数η(eta5(「η5」))を有する。4-(C1~C20)アルキル置換1,3-ブタジエン分子は、その2つの炭素-炭素二重結合のうちの1つ(2のハプト数η(eta2(「η2」)をMに提供する)を介して、又はその炭素-炭素二重結合の両方(4のハプト数η(eta4(「η4」)をMに提供する)を介してMに配位することができる。
【0201】
ヘテロヒドロカルビル。炭素原子、水素原子、並びにN、O、S、Si、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり、したがって有機であるが、その自由原子価を炭素原子に有する一価基。ヘテロヒドロカルビルは、末端炭素-炭素二重結合(>C=CH2)及び末端炭素-炭素三重結合(-C≡CH)を含まないもの、あるいは任意の炭素-炭素二重結合(C=C)及び任意の末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まないものであり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヘテロ原子は、N、O、及びSi、あるいはN及びO、あるいはN及びSi、あるいはO及びSi、あるいはN、あるいはO、あるいはSi、あるいはS、あるいはPからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R型基は、ヘテロヒドロカルビル基ではない。
【0202】
高分子量(HMW)構成成分。x軸上のLog(MW)に対するy軸上のdW/dLog(MW)のGPCプロットにピークを有する巨大分子のサブグループであって、高分子量であるサブグループ。
【0203】
HN5。「HN5」という用語は、ペンタゾールを意味しない、すなわち、式HN5の複素環を意味しない。本明細書では、HN5は、一般に、式(Ib)-1の配位子-金属錯体を指す。
【0204】
ヒドロカルビル。C原子及びH原子からなる炭化水素化合物の炭素原子からH原子を除去することによって形式的に誘導される一価基。いくつかの実施形態では、各ヒドロカルビルは独立して、アルキル、アルカリル、アリール、又はアラルキルである。
【0205】
ヒドロカルビレン。C原子及びH原子からなる炭化水素化合物の異なる炭素原子から2つのH原子を除去することによって形式的に誘導されるニ価基。
【0206】
不活性。一般に、本発明の重合反応において、(感知できるほど)反応性がないか、又はそれに(感知できるほど)干渉しない。パージガス又はエチレン供給物に適用される「不活性」という用語は、パージガス又はエチレン供給物の総重量部に基づいて、百万分率で0~5未満の分子状酸素(O2)含有量を意味する。
【0207】
不活性炭化水素溶媒。炭素原子及び水素原子、並びに任意選択的に1つ以上のハロゲン原子からなる、25℃の液体材料であって、炭素-炭素二重結合及び炭素-炭素三重結合を含まない、液体材料。
【0208】
脱離基。プレ触媒(M-X)中で金属Mに配位されている基Xであって、プレ触媒が活性化剤と接触すると、1つのそのような基がプレ触媒から除去されて、プレ触媒を活性触媒(M+)及び副生成物アニオンX-に変換する、基X。いくつかの態様では、高速ライトオフ触媒及び弱化ライトオフ触媒中の前述のA-は、X-であり得る。各単座Xは、1の座数κをMに提供し得る脱離基である。
【0209】
配位子。4族の金属原子Ti、Hf、又はZrなどの遷移金属原子Mに配位することができる分子、又は水素原子の除去によってそれから誘導されるラジカル。
【0210】
配位子D、T、及びQは、脱離基Xとは異なるものであり、プレ触媒中に存在する少なくとも1つの脱離基Xが高速ライトオフ触媒中に存在せず、高速ライトオフ触媒中に存在する少なくとも1つの脱離基Xが弱化ポストメタロセン触媒中の弱化された脱離基Rによって置き換えられているのに、配位子D、配位子T、又は配位子Qは、場合によっては、プレ触媒中の、プレ触媒から作製された高速ライトオフ触媒中の、及び高速ライトオフ触媒から作製された弱化ポストメタロセン触媒中の金属原子Mに配位されたままであるという点において異なるものである。
【0211】
低分子量(LMW)構成成分。x軸上のLog(MW)に対するy軸上のdW/dLog(MW)のGPCプロットにピークを有する巨大分子のサブグループであって、低分子量であるサブグループ。
【0212】
メタロセン触媒。オレフィン重合反応速度を増強し、2つの(置換又は非置換)-シクロペンタジエニル基(非架橋又は架橋)を有する配位子-金属錯体を含有する均質又は不均一材料。実質的にシングルサイト又はデュアルサイト。各金属は、遷移金属Ti、Zr、又はHfである。
【0213】
分(1)。60.0秒に等しい時間の単位。0.1分は6.0秒に等しい。
【0214】
オルガノヘテリル。炭素原子、水素原子、並びにN、O、S、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり、したがって有機であるが、その自由原子価をヘテロ原子のうちの1つに有する一価基。オルガノヘテリルは、末端炭素-炭素二重結合(>C=CH2)及び末端炭素-炭素三重結合(-C≡CH)を含まないもの、あるいは任意の炭素-炭素二重結合(C=C)及び任意の末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まないものであり得る。
【0215】
オルガノヘテリレン。炭素原子、水素原子、並びにN、O、S、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり、したがって有機であるが、1つのその2つの自由原子価をヘテロ原子のうちの1つに有し、他の自由原子価を炭素原子又は異なるヘテロ原子に有する二価基。オルガノヘテリレンは、末端炭素-炭素二重結合(>C=CH2)及び末端炭素-炭素三重結合(-C≡CH)を含まないもの、あるいは任意の炭素-炭素二重結合(C=C)及び任意の末端炭素-炭素三重結合(C≡C)を含まないものであり得る。
【0216】
ポストメタロセン触媒。メタロセン触媒ではない均質又は不均一な配位子-金属錯体。非メタロセン分子触媒。ポストメタロセン触媒は、(置換又は非置換)-シクロペンタジエニル基含有配位子を欠いており、オレフィン重合反応速度を増強する。実質的にシングルサイト又はデュアルサイト触媒。ポストメタロセンプレ触媒を活性化することによって作製され、これもまた、(置換又は非置換)-シクロペンタジエニル配位子を欠いている。各金属は、遷移金属Ti、Zr、又はHfである。
【0217】
プレ触媒(ポストメタロセンプレ触媒を参照)。(置換若しくは非置換)-シクロペンタジエニル基含有配位子を欠いている活性化されていない配位エンティティ又は配位子-金属錯体。
【0218】
R型基。「R」又は「Rsuperscript」として記述された、構造式中の基であり、「superscript」は、数、文字、又はその両方である。「Rsuperscript」基の例は、それぞれ、R1、Ra1、Rb1、R1a、R2、RHなどである。
【0219】
四座オルガノヘテリレン。4つのヘテロ原子を介して、又は3つのヘテロ原子及び1つの炭素原子を介して金属Mに直接結合されている上記のようなオルガノヘテリレン。四座オルガノヘテリレンは、4の座数κをMに提供し得る。いくつかの実施形態では、オルガノヘテリレンは、4つのヘテロ原子を介して、あるいは3つのヘテロ原子及び1つの炭素原子を介してMに直接結合されている。いくつかの実施形態では、Mに直接結合されている各ヘテロ原子は独立して、N又はO、あるいはN、あるいはOである。いくつかの実施形態では、オルガノヘテリレンは、4つのO原子を介してMに直接結合されている。
【0220】
三座オルガノヘテリレン。3つのヘテロ原子を介して、又は2つのヘテロ原子及び1つの炭素原子を介して金属Mに直接結合されている上記のようなオルガノヘテリレン。三座オルガノヘテリレンは、3の座数κをMに提供し得る。いくつかの実施形態では、オルガノヘテリレンは、3つのヘテロ原子を介して、あるいは2つのヘテロ原子及び1つの炭素原子を介してMに直接結合されている。いくつかの実施形態では、Mに直接結合されている各ヘテロ原子は独立して、N又はO、あるいはN、あるいはOである。いくつかの実施形態では、オルガノヘテリレンは、3つのN原子を介してMに直接結合されている。
【0221】
トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)シリル。3つの独立して選択される(C1~C20)ヒドロカルビル基に結合されたケイ素原子からなり、その自由原子価をケイ素原子に有する一価基。
【0222】
非置換(C1~C5)アルキル。メチル、エチル、プロピル、ブチル、及びペンチルからなる群から選択されるアルキル基。プロピルは、n-プロピル又は1-メチルエチルであり得る。ブチルは、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、又は1,1-ジメチルエチルであり得る。ペンチルは、n-ペンチル、1,-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、又は2,3-ジメチルプロピルであり得る。
【0223】
チーグラナッタ触媒。オレフィンの重合反応速度を増強し、ハロゲン化マグネシウム支持体(例えば、塩化マグネシウム支持体)上に支持されているハロゲン化チタンなどの無機チタン化合物を活性化剤と接触させることによって調製される、不均一材料。
【実施例】
【0224】
活性化剤1(助触媒1とも呼ばれる):アミン類、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)。
【0225】
鉱物油:SonnebornからのHYDROBRITE 380 PO白色鉱物油。
【0226】
調製1A:ヘキサン/鉱油中の噴霧乾燥メチルアルミノキサン/処理済みヒュームドシリカ(SDMAO)を含む活性化剤配合物の調製。1.6kgの処理済みヒュームドシリカ(CABOSIL TS-610)を16.8kgのトルエン中でスラリー化し、次いでトルエン中10重量%のMAO溶液(11.6kg)を添加して、混合物を得る。160℃に設定した噴霧乾燥機を、70°~80℃の出口温度で使用し、混合物を噴霧乾燥機の噴霧デバイスに導入して混合物の液滴を生成し、次いでこれを高温窒素ガス流と接触させて、混合物から液体を蒸発させて粉末を得る。サイクロン分離器でガス混合物から粉末を分離し、分離した粉末を容器に排出して、微粉末としてSDMAOを得る。
【0227】
調製1B:調製物1Aの活性化剤配合物のスラリーの調製。調製1AのSDMAO粉末を10重量%のn-ヘキサン及び78重量%の鉱物油の混合物中でスラリー化して、ヘキサン/鉱油中12重量%のSDMAO/処理済みヒュームドシリカ固体を有する活性化剤配合物を得る。
【0228】
調製2:活性化剤配合物を用いた噴霧乾燥メタロセンの調製。1.5kgの処理済みヒュームドシリカ(CABOSIL TS-610)を16.8kgのトルエン中でスラリー化し、続いてトルエン中10重量%のMAOの溶液(11.1kg)及び(MeCp)(1,3-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ZrMe2(式中、Meが、メチルであり、Cpが、シクロペンタジエニルであり、MeCpが、メチルシクロペンタジエニルである)を、固体のグラム当たり40マイクロモルのZrの充填量を提供するのに十分な量で添加することによって活性化剤配合物を調製することを除いて、調製1A及び1Bを繰り返す。得られた粉末をスラリー化して、10重量%のイソパラフィン流体及び68重量%の鉱物油中の22重量%の固体の活性化剤配合物を得る。
【0229】
調製2A:後述するライトオフバッチ反応器試験方法で使用する支持された触媒を作製する。窒素パージされたグローブボックス内において、炉乾燥されたガラス瓶内で、62.5gのトルエン中に2.65gのCabosil TS-610ヒュームドシリカを、十分に分散するまでスラリー化する。次いで、トルエン中のメチルアルミノキサン(MAO)の10重量パーセント(重量%)溶液22グラム(g)を添加する。混合物を15分間撹拌し、次いで、ポストメタロセンプレ触媒(例えば、前述のプレ触媒1~プレ触媒10のいずれか1つ)及び前述の動力学改質剤化合物KMC1~KMC20のいずれか1つを添加する。得られた混合物を30~60分間撹拌する。以下のパラメータでBuchi Mini Spray Dryer B-290を使用して撹拌混合物を噴霧乾燥し、乾燥試料を得る:設定温度は185℃、出口温度は100℃、吸引器は95%、ポンプ速度は150回転/分(rpm)。
【0230】
本発明の実施例A:式(3)のプレ触媒3の合成:
【0231】
【化31】
(3)、iPrはイソプロピル(1-メチルエチル)及びnBuはノルマル-ブチル。Kuhlman,et al.,Macromolecules 2010,vol.43,page 7903の一般的な手順に従ってプレ触媒(3)を合成する。
【0232】
本発明の実施例B:式(4)のプレ触媒4の合成:
【0233】
【化32】
(4)。窒素充填グローブボックス内で、40mLのバイアルにN-[[4-(2-エチルベンゾフラン-3-イル)-1-メチルイミダゾール-2-イル]-(2,4,6-トリメチルフェニル)メチル]-2,6-ジイソプロピル-アニリン(0.4g、0.75ミリモル(mmol))を投入し、次いで、トルエン5mL中に溶解した。ヘキサン(0.33mL)中の2.4モル濃度(M)のブチルリチウムをこの溶液に添加し、混合物を1時間磁気撹拌した。固体テトラクロロハフニウム(0.24 g、0.75mmol)を添加し、バイアルに小さな凝縮器を取り付け、溶液を100℃に温めた。溶液を4時間撹拌しながらこの温度に維持し、次いで熱をオフにし、溶液を室温で一晩撹拌した。混合物を-30℃に冷却し、次いで3Mのブロモ(メチル)マグネシウム(0.8mL)を滴下した。小さな凝縮器を取り付けた後、溶液を100℃に温め、この温度に維持しながら7時間撹拌した。トルエンを減圧下で除去して暗色固体を得、これをトルエン(15mL)中でスラリー化し、室温で30分間撹拌した。溶液を、セライトで充填したフリット漏斗を通して濾過した。フィルターケーキを追加のトルエン(10mL)で抽出した。トルエンを減圧下で除去し、次いで2×5mL分のヘキサンを添加し、減圧下で除去して、残留トルエンを除去した。固体をトルエン(4mL)に取り込み、次いでペンタンを添加し(1mL)、混合物を-35℃の冷凍庫に入れた。得られた固体を濾過により収集し、減圧下で乾燥させた。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.23(t,J=3.9Hz,1H),7.40(dd,J=3.9,0.5Hz,2H),7.14(s,1H),7.13(t,J=0.7Hz,2H),6.99(dd,J=5.5,4.0Hz,1H),6.70(br s,1H),6.64(br s,1H),6.03(s,1H),3.54(p,J=6.8Hz,1H),3.14(s,4H),3.01(q,J=7.6Hz,2H),2.17(s,3H),1.86(s,3H),1.59(s,3H),1.43(t,J=7.6 Hz,3H),1.36(d,J=6.7Hz,3H),1.16(d,J=6.8Hz,3H),1.12(d,J=6.7Hz,3H),0.51(s,3H),0.26(s,3H),0.14(d,J=6.8Hz,3H)。
【0234】
調製3:高速ライトオフポストメタロセン触媒の合成:ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)でコーティングされた磁気撹拌棒を収容し、ゴムセプタムで蓋をした40ミリリットル(mL)のガラスバイアルを、200ミリグラム(mg)の噴霧乾燥されたメチルアルミノキサン(SDMAO、調製1Aに従って調製される)で充填することによって、グローブボックス内の不活性N2雰囲気下で作製した。次いで、0.2mLの鉱油中の10マイクロモル(μmol)のポストメタロセンプレ触媒(例えば、プレ触媒1~プレ触媒10のいずれか1つ)のスラリーを添加する。得られた混合物を5分間撹拌して、処理済みヒュームドシリカ上に支持された対応の高速ライトオフポストメタロセン触媒の鉱油スラリーを得る。この手順を繰り返して、各々が別個の処理済みヒュームドシリカ上に支持される、高速ライトオフポストメタロセン触媒の鉱油スラリーの複数のロットを作製する。高速ライトオフポストメタロセン触媒は、120のアルミニウム原子対金属原子(Al/M)のモル比を有するように作製され得る。前述の手順は、一般に、後述のライトオフバイアル試験方法で使用する触媒を作製するために使用される。
【0235】
調製4:弱化ポストメタロセン触媒の合成:処理済みヒュームドシリカ上に支持された調製3の10μmolの高速ライトオフ触媒を含有するために、ある量のスラリーに、0.20mLのトルエン中の10μmolの動力学改質剤化合物の溶液を添加する。得られた混合物を5分間撹拌して、処理済みヒュームドシリカ上に支持された弱化ポストメタロセン触媒の鉱油/トルエンスラリーを得る。
【0236】
本発明の実施例(A1)~(A20)(IE(A1)~IE(A20)):プレ触媒1、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0237】
本発明の実施例(B1)~(B20)(IE(B1)~IE(B20)):プレ触媒2、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0238】
本発明の実施例(C1)~(C20)(IE(C1)~IE(C20)):プレ触媒3、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0239】
本発明の実施例(D1)~(D20)(IE(D1)~IE(D20)):プレ触媒4、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0240】
本発明の実施例(E1)~(E20)(IE(E1)~IE(E20)):プレ触媒5、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0241】
本発明の実施例(F1)~(F20)(IE(F1)~IE(F20)):プレ触媒6、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0242】
本発明の実施例(G1)~(G20)(IE(G1)~IE(G20)):プレ触媒7、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用する、調製2A又は調製3及び4による、20個の弱化ポストメタロセン触媒。
【0243】
本発明の実施例(H1)~(H20)(IE(H1)~IE(H20)):プレ触媒8、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0244】
本発明の実施例(I1)~(I20)(IE(I1)~IE(I20)):プレ触媒9、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0245】
本発明の実施例(J1)~(J20)(IE(J1)~IE(J20)):プレ触媒10、及び動力学改質剤化合物(1)~(20)の異なる1つをそれぞれ使用して、調製2A又は調製3及び4に従って、20個の弱化ポストメタロセン触媒を別個に調製する。
【0246】
ライトオフバイアル試験方法:処理済みヒュームドシリカ上に支持された高速ライトオフ触媒の鉱油スラリー、又は処理済みヒュームドシリカ上に支持された弱化ポストメタロセン触媒の鉱油/トルエンスラリーを乾燥した40mLのガラスバイアル内に添加する。バイアルに5.5mL又は11mLの1-オクテンを添加し、バイアルをセプタムキャップで密封する。添加時間をT0(0.00分)として記録する。バイアルを手動で振盪して(撹拌しない)、凝集を防止する。次いで、振とうしたバイアルを、ホットプレート/撹拌機上にある発泡体ブロックの異なるウェル内に置く。直ちに熱電対を、セプタムキャップを通してバイアル内へ、その中の液体レベルより下に挿入し、T0からT0の300分後まで5秒間隔でバイアルの内容物の温度(℃)を記録する。温度及び時間のデータをスプレッドシートにダウンロードし、分析のために熱動力学プロファイルをプロットする。これらの実行の結果は、x軸上のTime0の添加から始まる時間に対する、y軸上のバッチ反応器内容物の反応温度のプロットとしてグラフで描写され得る。
【0247】
ライトオフバイアル試験法によって作製された本発明の実施例(「IE」)及び比較例(「CE」)。有効量の特定の動力学改質剤化合物(「KMC」)を特定の高速ライトオフポストメタロセン触媒と化合させて、弱化ポストメタロセン触媒の本発明の実施例を得た。比較例は、3つの基準(1)~(3)のうちの1つを満たす:(1)ハイブリッド触媒を含むが、動力学改質剤化合物を含まない、(2)ハイブリッド触媒を含むが、有効量未満の動力学改質剤化合物(例えば、CE1a)を含む、又は(3)メタロセン触媒及び動力学改質剤化合物を含む。それらの相対活性を比較するために、ライトオフバイアル試験方法の試験に従って、高速ライトオフポストメタロセン及び本発明の実施例のポリオクテンでライトオフ効果を試験した。別個のバイアルで、(a)1-オクテンを含まない鉱油、(b)ポストメタロセンプレ触媒の実施例、及び(c)噴霧乾燥メチルアルミノキサン(SDMAO)を動力学改質剤化合物なしで10分間予備混合して、1-オクテン及び動力学改質剤化合物を含まない高速ライトオフポストメタロセン触媒のスラリーを得る。他のバイアルで、(a)1-オクテンを含まない鉱油、(b)ポストメタロセンプレ触媒、(c)SDMAO、及び(d)動力学改質剤化合物を10分間予備混合して、1-オクテンを含まない弱化ポストメタロセン触媒のスラリーを得る。10分の予備混合の後((B)を除く全ての条件での時間*)、各バイアルに同じ量の1-オクテンを添加する。1-オクテンの添加の後、それぞれの触媒の活性化の証拠として混合物の温度の5℃~120℃の増加、あるいは10℃~110℃の増加、あるいはその任意の10℃単位の温度の増加(例えば、10℃~20℃、20℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃、100℃~110℃、110℃~120℃)を観察する。4セットの条件のうちの1つが使用される:条件(A)(表1~4で使用される):5.5mLのIsopar-E、8μmolのM、SDMAOの量はモル比Al/M=120が得られる量、0μmol(CE)又は2μmol(IE)の動力学改質剤化合物、11mLの1-オクテン、条件(B)(表5で使用される):5.5mLのIsopar-E、10μmolのM、SDMAOの量はモル比Al/M=120が得られる量、0μmol(CE)又は2μmol(IE)の動力学改質剤化合物、5.5mLの1-オクテン(予備混合は10分間ではなく5分間*)、条件(C)(表6で使用される):5.5mLのIsopar-E、20μmolのM、モル比Al/M=120が得られる量のSDMAO、動力学改質剤化合物の量は、0μmol(CE)、又は示されたモル比M/KMCが得られる量(IE)、5.5mLの1-オクテン、条件(D)(表7で使用される):5.5mLのIsopar-E、2μmolのM、モル比Al/M=120が得られる量のSDMAO、動力学改質剤化合物の量は、0μmol(CE)、又は示されたモル比M/KMCが得られる量(IE)、5.5mLの1-オクテン。
【0248】
表1:条件(A)及び式
【0249】
【化33】
のプレ触媒(1)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果、式中、Ar
1は2,6-ジクロロベンジルである。
【0250】
【0251】
表2:条件(A)及び式
【0252】
【化34】
のプレ触媒(2)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果。
【0253】
【0254】
表3:条件(A)及び式
【0255】
【化35】
のプレ触媒(3)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果。
【0256】
【0257】
表4:条件(A)及び式
【0258】
【化36】
のプレ触媒(4)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果。
【0259】
【0260】
表1~4に見られるように、使用されたポストメタロセンプレ触媒及び動力学改質剤化合物に応じて、活性化時間のより大きい又はより小さい遅延が達成された。
【0261】
表5:条件(B)及び式
【0262】
【化37】
のプレ触媒(5)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果、式中、MはZrである。
【0263】
【0264】
表5に見られるように、動力学改質剤化合物は、高速ライトオフ触媒の構造を改質して、開始からピーク反応温度までの時間が遅延した弱化ライトオフ触媒を作製している。
【0265】
表6:条件(C)及び式
【0266】
【化38】
のプレ触媒(6)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果。
【0267】
【0268】
表6に見られるように、使用されたポストメタロセンプレ触媒及び動力学改質剤化合物に応じて、活性化時間のより大きい又はより小さい遅延が達成され、ピーク反応温度のより大きい又はより小さい低下が達成された。
【0269】
表7:条件(D)及び式
【0270】
【化39】
のプレ触媒(7)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の結果。
【0271】
【0272】
表7に見られるように、使用されたポストメタロセンプレ触媒及び動力学改質剤化合物に応じて、活性化時間のより大きい又はより小さい遅延が達成され、ピーク反応温度のより大きい又はより小さい低下が達成された。
【0273】
ライトオフバッチ反応器試験方法。
概要。機械的撹拌機を備えた2リットル(L)のセミバッチオートクレーブ重合反応器内でそれぞれ行われる別個の重合実行において、高速ライトオフ触媒及び弱化ポストメタロセン触媒の相対的な動力学プロファイルを観察する。バッチ反応器内では、気相中の水素(H2)の存在下でエチレン及び1-ヘキセンを共重合する。質量分析法及びガスクロマトグラフィーによって気相中のエチレン(「C2」)、1-ヘキセン(「C6」)、及びH2の濃度を分析する。3時間の重合実行全体を通してC6及びH2構成成分を連続的に添加して、それらの濃度を定常状態に維持するが、追加のC2は添加しない。時間に対するエチレン取り込みを測定して、触媒動力学プロファイルの相対的な表現を得る。
【0274】
バッチ反応器の乾燥及び充填。各実行の前に、バッチ反応器を1時間乾燥させる。次いで、乾燥したバッチ反応器に200gのNaClを投入する。バッチ反応器及びその内容物を100℃のN2雰囲気下で30分間加熱することによって、バッチ反応器を更に乾燥させる。次いで、3gのシリカ支持メチルアルミノキサン(SMAO)を添加して残留物を除去し、バッチ反応器を密閉し、内容物を撹拌する。次いで、0.004の1-ヘキセン対エチレン(C6/C2)のモル比が得られるように、得られた乾燥したバッチ反応器に3.04リットル(L)のH2及び1-ヘキセンを投入する。バッチ反応器をエチレンで1.52メガパスカル(MPa)に加圧する。得られた系を定常状態に到達させる。
【0275】
次いで、バッチ反応器に触媒(高速ライトオフ触媒又は弱化ポストメタロセン触媒)を投入して重合を開始する。触媒の添加時間を時間ゼロ(Time0)として記録する。反応器の温度を93℃にし、反応器をその温度に1~5時間維持する。反応器を冷却し、ベントし、開放し、得られたポリオレフィン生成物を水、メタノールで洗浄し、乾燥させて、乾燥ポリオレフィン生成物を得る。
【0276】
各バッチ反応器実行に対して、触媒活性/重合生産性を、反応器に添加された触媒1グラム当たりに作製される乾燥ポリオレフィン生成物の1時間当たりのグラム数(gPE/gcat-hr)として計算する。gPE/gcat-hrの数が高いほど、触媒活性/重合生産性は高くなる。0.1時間(C2取り込み0.1h)(6分)後及び1.0時間(C2取り込み1h)(60分)後のエチレン取り込みの量を記録し、(C2取り込み1h)/(C2取り込み0.1h)の比として報告する。他の全ての条件が同じであれば、(C2取り込み1時間)/(C2取り込み0.1時間)の比が大きいほど、触媒ライトオフは、より弱化される。
【0277】
10mgの試料に対する毎分10℃の走査速度を使用し、第2の加熱サイクルを使用する、ASTM D3418-08による示差走査熱量測定(DSC)を使用して乾燥ポリオレフィン生成物の溶融温度を決定する。弱化ポストメタロセン触媒によって作製される本発明のポリオレフィン生成物のいくつかの実施形態は、その対応する高速ライトオフ触媒によって作製される比較ポリオレフィン生成物の融点よりも高い融点を有し得る。
【0278】
高速ライトオフ触媒を用いたライトオフバッチ反応器実行からは、エチレン取り込みの大部分が、重合実行の開始から最初の数分以内(例えば、Time0から10分以内)に起こり得る。弱化ポストメタロセン触媒とは対照的に、エチレン取り込みは、3時間の長い重合実行全体を通してより均一に広がる。これらの比較実行及び本発明の実行の結果は、x軸上のTime0の添加から始まる時間に対する、y軸上のバッチ反応器内容物の反応温度、又はy軸上のエチレンモノマー(「C2」)取り込みのプロットとしてグラフで描写され得る。
【0279】
メタロセンプレ触媒を使用する比較例。
表8:式
【0280】
【化40】
の比較メタロセンプレ触媒1(「MCN1」)と共に条件(A)を使用して実施されたライトオフバイアル試験方法の比較重合結果、式中、n-Buはノルマル-ブチルである。
【0281】
【0282】
表8に示すように、フェニルアセチレンは、MCN1から作製された比較メタロセン触媒の動力学に本質的に弱化効果を有しなかった。
【0283】
表9:式
【0284】
【化41】
の比較メタロセンプレ触媒1(「MCN1」)と共に条件(A)を使用して実施されたライトオフバッチ反応器試験方法の比較重合結果、式中、n-Buはノルマル-ブチルである。
【0285】
【0286】
表9に示すように、動力学改質剤化合物は、MCN1から作製された比較メタロセン触媒の動力学に本質的に弱化効果を有しなかった。
【0287】
表10:式
【0288】
【化42】
の比較メタロセンプレ触媒2(「MCN2」)と共に条件(A)を使用して実施されたライトオフバッチ反応器試験方法の比較重合結果、式中、n-Prはノルマル-プロピルである。
【0289】
【0290】
表10に示すように、動力学改質剤化合物は重合生産性を悪化させ、またMCN2から作製された比較メタロセン触媒の動力学に本質的に弱化効果を有しなかった。
【0291】
表11:式
【0292】
【化43】
の比較メタロセンプレ触媒3(「MCN3」)と共に条件(A)を使用して実施されたライトオフバッチ反応器試験方法の比較重合結果。
【0293】
【0294】
表11に示すように、動力学改質剤化合物は重合生産性を悪化させ、またMCN3から作製された比較メタロセン触媒の動力学に本質的に弱化効果を有しなかった。
【国際調査報告】