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▶ ヴァレオ、コンフォート、アンド、ドライビング、アシスタンスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20230620BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
G09F9/00 336F
G09F9/00 362
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568981
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021061191
(87)【国際公開番号】W WO2021228557
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】2004693
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516000549
【氏名又は名称】ヴァレオ、コンフォート、アンド、ドライビング、アシスタンス
【氏名又は名称原語表記】VALEO COMFORT AND DRIVING ASSISTANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、メルミヨ
(72)【発明者】
【氏名】トマ、アビス
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-アラン、トレンブラン
【テーマコード(参考)】
3D344
5G435
【Fターム(参考)】
3D344AA08
3D344AA19
3D344AA24
3D344AA26
3D344AA27
3D344AD01
3D344AD05
5G435BB12
5G435DD09
5G435EE26
5G435FF01
5G435FF06
5G435FF11
5G435LL17
(57)【要約】
本発明は:所定の波長範囲にわたる光源光線(S)を発生させるように設計された光源(20);動作範囲が前記波長範囲に適合され、前記光源光線(S)を受けて画像光線(I)を透過するように配置された回折光学素子(40);および前記画像光線の経路内に置かれ、前記画像光線を少なくとも部分的に透過するように、その通過帯域が前記波長範囲を少なくとも部分的に包含するダイクロイックフィルタ(50)を備える表示デバイス(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示デバイス(1)であって:
所定の波長範囲にわたる光源光線(S)を発生させるように設計された光源(20);
動作範囲が前記波長範囲に適合され、前記光源光線(S)を受けて画像光線(I)を透過するように配置された回折光学素子(40);および
前記画像光線(I)の経路内に置かれ、前記画像光線(I)を少なくとも部分的に透過するように、その通過帯域が前記波長範囲を少なくとも部分的に包含するダイクロイックフィルタ(50)
を備える表示デバイス(1)。
【請求項2】
前記画像光線(I)の前記経路内に配設されたディフューザ(60)をさらに備える、請求項1に記載の表示デバイス(1)。
【請求項3】
前記回折光学素子(40)は、前記光源(20)に対して可動である、請求項1または2に記載の表示デバイス(1)。
【請求項4】
前記回折光学素子(40)は、前記画像光線(I)が前記回折光学素子(40)の前記光源(20)に対する相対位置に依存するように設計される、請求項1から3のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項5】
前記光源光線(S)を空間変調するように構成された光学系(30)をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項6】
光ガイドをさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項7】
前記光源(20)は少なくとも1つの発光ダイオードを備える、請求項1から6のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項8】
前記光源(20)はレーザ光源を備える、請求項1から6のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項9】
前記ダイクロイックフィルタ(50)は、バンドパスフィルタ、高域通過フィルタ、または低域通過フィルタである、請求項1から8のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項10】
前記ダイクロイックフィルタ(50)はバンドパスフィルタであり、前記ダイクロイックフィルタの前記通過帯域は、前記波長範囲の中心に決められる、請求項1から9のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項11】
前記ダイクロイックフィルタ(50)と前記ディフューザ(60)は、光学接着剤によって接着される、請求項2と組み合わせた、請求項1、または3から10のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項12】
前記光源ビーム(S)を少なくとも2つの分割光線(D1、D2)に空間的に分割するように適合されたスプリッタ(70);
別の回折光学素子(45)であって、回折光学素子(40;45)のそれぞれの動作範囲が前記波長範囲に適合され、回折光学素子(40;45)のそれぞれが前記分割光線(D1;D2)の一方を受けて画像光線(I1;l2)を透過するように配置された回折光学素子(45);
別のダイクロイックフィルタ(55)であって、2つのダイクロイックフィルタ(50;55)のそれぞれが画像ビーム(I1;l2)の一方の経路内に置かれ、前記画像ビーム(I1;l2)を波長によって選別するように、2つのダイクロイックフィルタ(50;55)のそれぞれの通過帯域が前記波長範囲の一部のみを包含するダイクロイックフィルタ(55)
を備える、請求項1から11のいずれかに記載の表示デバイス(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の表示デバイス(1)を備える制御ボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、表示デバイスの分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、車両用の表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、一部の自動車には、例えば照明またはインジケータ型の、透明または部分的に透明な面に画像を形成する回折デバイスを照明する光源を含む表示システムが備え付けられている。こうした表示システムは特に、例えば客室の温度を制御するための制御ボタンに備え付けることができる。
【0004】
こうした表示システムは、照明装置が消されたときでも文字または記号が見えるようにするマスクを不要にする。こうした表示システムによって、文字または記号が透明な面に「浮いている」ように、すなわち支えがないように見え、それがきわめて審美的な外観を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした表示システムは、外光、特に表示デバイスに入る太陽放射に敏感である。実際に、そうした太陽放射は、一方において、文字または記号の表示を乱す干渉、反射、または迷光を引き起こす可能性があり、他方において、光源の温度を上げ、それが不可逆的な損傷を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この文脈において、本発明は:
-所定の波長範囲にわたる光源光線を発生させるように設計された光源;
-動作範囲が前記波長範囲に適合され、前記光源光線を受けて画像光線を透過するように配置された回折光学素子;および
-前記画像光線の経路内に置かれ、前記画像光線を少なくとも部分的に透過するように、その通過帯域が前記波長範囲を少なくとも部分的に包含するダイクロイックフィルタ
を備える表示デバイスを提案する。
【0007】
したがって、ダイクロイックフィルタにより、きわめて少量の外部放射しか表示デバイスに入ることができなくなる。外部放射のダイクロイックフィルタの通過帯域に対応する量しか、表示デバイスに入ることができなくなる。これは、光源の温度上昇のリスクを低減し、迷光を弱める。
【0008】
有利には、表示デバイスは:
-前記光源ビームを少なくとも2つの分割光線に空間的に分割するように適合されたスプリッタ;
-別の回折光学素子であって、回折光学素子のそれぞれの動作範囲が前記波長範囲に適合され、回折光学素子のそれぞれが前記分割光線の一方を受けて画像光線を透過するように配置された回折光学素子;および
-別のダイクロイックフィルタであって、2つのダイクロイックフィルタのそれぞれが画像ビームの一方の経路内に置かれ、前記画像ビームを波長によって選別するように、2つのダイクロイックフィルタのそれぞれの通過帯域が前記波長範囲の一部のみを包含するダイクロイックフィルタ
を備える。
【0009】
これは、所定の色が選択されることを可能にするダイクロイックフィルタを用いて、異なる色の付いた記号が同じ光源から生成されることを可能にする。例えば、単一の光源を使用すると、大幅な空間の節約になる。
【0010】
別個に、またはすべての技術的に可能な組み合わせに従って採用される、本発明によるデバイスの他の非限定的かつ有利な特徴は、以下の通りである:
-前記表示デバイスは、前記画像光線の経路内に配設されたディフューザをさらに備える;
-前記回折光学素子は、前記光源に対して可動である;
-前記回折光学素子は、前記画像光線が前記回折光学素子の前記光源に対する相対位置に依存するように設計される;
-前記表示デバイスは、前記光源光線を空間変調するように構成された光学系をさらに備える;
-前記表示デバイスは光ガイドをさらに備える;
-前記光源は少なくとも1つの発光ダイオードを備える;
-前記光源はレーザ光源を備える;
-前記ダイクロイックフィルタは、バンドパスフィルタ、高域通過フィルタ、または低域通過フィルタである;
-前記ダイクロイックフィルタはバンドパスフィルタであり、前記ダイクロイックフィルタの前記通過帯域は、前記波長範囲の中心に決められる;
-前記ダイクロイックフィルタの吸光度はゼロではない;
-前記ダイクロイックフィルタと前記ディフューザは、光学接着剤によって接着される。
【0011】
本発明はまた、そうした表示デバイスを備える制御ボタンに関する。
【0012】
添付図面を参照する以下の説明は、非限定的な例として示され、本発明の内容およびその製造方法を明確に説明するものである。
【0013】
もとろん、本発明の様々な特徴、代替の実施形態、および実施形態は、それらが相互に不整合または相互排他的ではない限り、様々な組合せとして互いに組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態による表示デバイスを模式的に表す図である。
図2図1の表示デバイスのダイクロイックフィルタの特性を表すグラフである。
図3】本発明の第2の実施形態による表示デバイスを模式的に表す図である。
図4図1のデバイスの第1の記号を表示する部分を模式的に表す図である。
図5図1のデバイスの第2の記号を表示する部分を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この文書において、表示デバイス1は、例えば、別個の設定温度値またはライトの状態などの車両の動作に関する情報をユーザが見ることができるように、自動車内で記号または文字、例えば数字を表示するために用いられる場合について説明される。表示デバイス1は、例えば車両のダッシュボードに組み込まれてもよい。表示デバイス1は、例えば制御ボタンの表面に備え付けることができる。しかしながら、表示デバイス1は、オンオフされる光の記号または文字について考えられる任意の他の用途に適用されてもよい。
【0016】
図1および図3は、表示デバイス1の2つの実施形態を示している。
【0017】
これらの2つの実施形態において、表示デバイス1は:
-光源20;
-回折光学素子40;および
-ダイクロイックフィルタ50
を備えている。
【0018】
まず、図1に示される第1の実施形態が詳しく説明される。
【0019】
図1に示されるように、この第1の実施形態において、表示デバイス1は:
-光学系30;
-ディフューザ60
も備えている。
【0020】
光源20は、所定の波長範囲にわたる光源光線Sを発生させるように設計される。波長範囲とは、光源20が生成可能な波長の間隔である。波長範囲の幅は、例えば、光源20が放出できる最短波長と最長波長の差によって定められる。
【0021】
ここで、「波長範囲にわたる」とは、光源光線Sが、可変であり得る強度でその波長範囲のすべての波長を含むことを意味すると理解される。
【0022】
光源光線Sは、ユーザが見ることができる文字または記号を生成することが意図され、したがって、波長範囲は可視領域に含まれる波長を含むことが好ましい。
【0023】
光源20は、例えばリンの層を備えた、LEDと呼ばれる青色発光ダイオードを含むことができる。そうした光源20の発光スペクトルは、可視領域全体を通して比較的連続的である。その場合、波長範囲は可視領域全体を含むことができ、通常は400nm~700nmである。
【0024】
光源20は、例えば可視領域内の中心波長を伴うレーザを含むことができる。その場合、波長範囲は、中心波長付近の狭いスペクトル帯域によって定められてもよい。
【0025】
光源20は、一般にLCDスクリーンと呼ばれるバックライト式の液晶スクリーンとすることもできる。
【0026】
この場合、光源光線Sは光学系30に向かって放射される。
【0027】
光学系30は、光源光線Sを空間変調するように、すなわち、その周波数成分を変えずに、その向きおよび/またはそのサイズを変更するように構成される。
【0028】
この場合、光学系30は、例えば1つまたは複数のミラーを用いて、光源光線Sが方向付けられることを可能にする。表示デバイス1は、光ガイドを備えることもできる。この光ガイドは、光源光線Sが方向付けられることを可能にするために、光学系30に含まれる。
【0029】
この場合、光学系30は、例えば光源光線Sを広げるまたは狭めるなど、光源光線Sのサイズが変更されることも可能にする。光源光線Sは、例えば、所望の幅に達するためにレンズによって平行にされてもよい。
【0030】
この場合の光学系30は、光源光線Sが所定の入射角で回折光学素子40の所定の領域に達するように構成される。
【0031】
動作範囲が波長範囲に適合された回折光学素子40は、光源光線Sを受けて画像光線Iを透過するように配置される。
【0032】
回折光学素子40は、例えばプレス成形または射出によって得られてもよい。
【0033】
この場合の回折光学素子40は、画像光線Iの決められた照度分布を得るように光源光線Sの波面を変更するように設計された、位相または振幅マスク(DOE(Diffractive Optical Element)としてよく知られている)である。この照度分布が、画像光線Iに関連付けられた記号または文字を決める。
【0034】
回折光学素子40の動作は、利用波長に依存する。回折光学素子40の効率は、所与の波長または狭帯域の波長に最適である。回折光学素子40の動作範囲は、それに対する効率が、最適な効率のある比率以上、例えば最適な効率の80%になる波長として定められてもよい。回折光学素子40の利用波長に対する依存度は、比較的高い場合がある。したがって、回折光学素子40がその動作範囲外にある波長によって照明される場合、透過される画像光線Iは非干渉性であり、所望の記号または文字を、生成しないか、または変形した形もしくは最適ではない形で生成する。さらに、動作範囲外では、透過される画像光線Iのサイズは、最適効率で透過される画像光線Iのサイズよりも小さい。
【0035】
この場合、回折光学素子40の動作範囲は、光源光線Sの波長範囲の少なくとも一部を包含する。好ましくは、回折光学素子40の動作範囲は、光源光線Sの波長範囲よりも広く、光源光線Sの波長範囲を含む。
【0036】
画像光線Iは、光源光線Sの回折光学素子40への入射角にも依存する。この入射角は、光学系30による表示デバイスの較正中に、所望の記号または文字を得るように調節される。
【0037】
さらにこの場合、回折光学素子40は、画像光線Iが回折光学素子40の光源20に対する相対位置に依存するように設計される。これは、画像光線Iが回折光学素子40の光源光線Sによって照明される領域に依存することを意味する。したがって、回折光学素子40の表面は、均一ではなく、空間的な変化または空間的な周期性を有する。
【0038】
したがって、回折光学素子40は、別個の記号または文字に関連付けられた複数の領域を含むことができる。これは、特定の領域が光源光線Sによって照明されたときに、選択された文字または記号が生成されることを可能にする。
【0039】
この場合、回折光学素子40の光源光線Sによって照明される領域を選択するために、回折光学素子40に対して、光源20に対して可動であるような対応が取られる。したがって、この場合、回折光学素子40は光源光線Sに対しても可動である。これは、画像光線Iの位置および向きを維持しながら、画像光線I、したがって選択される文字または記号を変更することが可能であるという利点を有する。これは、例えば、文字または記号が常にダッシュボードまたは制御ボタンの同じ場所に表示されることを可能にする。
【0040】
回折光学素子40は一般に、例えば様々な領域がその上で周方向に分散されたディスクの形とすることができる。光源光線Sがディスクの周縁部を照明する場合、回折光学素子40の領域は、前記素子を回転させることによって選択されてもよい。漸増する温度値が、例えばディスクの周縁部の連続する領域に関連付けられてもよい。そうした表示デバイス1は、ダッシュボード用の回転ノブに特に適している。
【0041】
代替の実施形態として、複数の別個の回折光学素子に対して、支持ディスクの周縁部に配置されるような対応が取られてもよい。別個の回折光学素子のそれぞれが特定の記号または文字が生成されることを可能にし、その大きさは単一の回折光学素子のものよりも小さくなる。
【0042】
代替の実施形態として、光源光線で照明される領域に対して、例えば可動ミラーを使用する光学系によって光源光線を方向付けることにより選択されるような対応が取られてもよい。
【0043】
図1に示されるように、ダイクロイックフィルタ50は、画像光線Iの経路内に置かれる。画像光線Iの経路は、回折光学素子40からの画像光線Iの伝播の方向および進路によって決められる。
【0044】
ダイクロイックフィルタ50は、画像光線Iを少なくとも部分的に透過するように、波長範囲を部分的に包含する通過帯域を有する。
【0045】
一般的には、干渉フィルタとも呼ばれるダイクロイックフィルタの特性は、入射光線の波長に大きく依存する。したがって、ダイクロイックフィルタは、ある特定の波長では完全に透過性であり、別の波長では完全に反射性である。
【0046】
ダイクロイックフィルタ50は、所与の間隔の波長のみが透過される帯域通過型、所与の閾値よりも高いすべての波長が透過される高域通過型、または所与の閾値よりも高いすべての波長が透過される低域通過型のフィルタとすることができる。この場合、透過される波長は必ずしも効率が100%になるわけではなく、この波長の光線の少なくとも一部が透過されることを意味する。ダイクロイックフィルタ50によって透過される波長が、通過帯域を決める。
【0047】
通過帯域は、例えば、透過ピークの半値幅などの透過極大に対する-3dB通過帯域として、または透過効率が例えば10%などの閾値以上であるすべての波長として定められてもよい。
【0048】
帯域通過ダイクロイックフィルタ50の透過曲線51および反射曲線52の一例が、図2に示されている。透過曲線は600nmで最大効率を有する。これは、このダイクロイックフィルタ50が主に橙色の光を通すことを意味する。反対に、反射曲線は600nmで最小値を有する。これは、このダイクロイックフィルタ50が橙色の光をきわめてわずかしか反射しないことを意味する。
【0049】
この例において、ダイクロイックフィルタ50は、ほぼ500nm~800nmにわたる通過帯域を有する。この場合、通過帯域は、透過効率が約5%より高い波長によって定められる。ダイクロイックフィルタ50によって透過される画像光線Iの全光束を増やすために、通過帯域の幅が拡張されてもよく、逆も同様である。
【0050】
この例において、透過効率と反射効率の合計は100%に等しくならない。これは、ダイクロイックフィルタ50の吸光度がゼロではない場合に対応する。その場合、ダイクロイックフィルタ50は、それを通過する光の一部を吸収し、それによって表示デバイス1の内部、例えば光源20をユーザから隠す。換言すれば、その場合、ダイクロイックフィルタ50は隠蔽効果を有する。
【0051】
見てきたように、ダイクロイックフィルタ50の通過帯域は、光源光線Sの波長範囲を少なくとも部分的に包含する。したがって、ダイクロイックフィルタ50の通過帯域は、画像光線Iを形成する波長も包含する。これは、画像光線Iが少なくとも部分的に透過されることを可能にする。画像光線Iは、部分的に反射または吸収されてもよい。
【0052】
「包含する(cover)」とは、長さ範囲とダイクロイックフィルタ50の通過帯域が共通の波長を有することを意味すると理解される。これは、例えば、波長範囲の波長がダイクロイックフィルタ50の通過帯域に含まれることを意味する。例えば、これらの2つの波長の間隔、すなわち通過帯域および波長範囲は、一部のみを包含し、わずかにオフセットされてもよい。ダイクロイックフィルタ50の通過帯域は、波長範囲より狭くてもよく、逆も同様である。ダイクロイックフィルタ50の通過帯域は、回折光学素子40の動作範囲よりも広いことが好ましい。これは、例えば光学素子の設計が簡易化されることを可能にするか、または光源20の温度変化によって引き起こされる可能性がある波長の変動が許容されることも可能にする。
【0053】
ダイクロイックフィルタ50がバンドパスフィルタであるときには、ダイクロイックフィルタ50の通過帯域に対して、波長範囲の中心に決められるような対応が取られてもよく、すなわち、ダイクロイックフィルタ50の透過極大は、波長範囲の中心波長に対応する。したがって、ダイクロイックフィルタの所与の通過帯域に対して、画像光線Iの透過は最大になる。これは、記号または文字について最大の可視性を可能にする。
【0054】
したがって、ダイクロイックフィルタ50の通過帯域は、画像光線Iをその経路に沿ってできるだけ乱さないようにするための波長範囲に実質的に対応する。
【0055】
有利には、ダイクロイックフィルタ50は、表示デバイス1に入る外部放射の部分的な遮断、すなわちこの場合には、反射およびより少ない程度での吸収を可能にする。例えば、ダイクロイックフィルタ50は、画像光線Iの経路と反対の方向に伝わる太陽光線が部分的に遮断されることを可能にする。
【0056】
回折光学素子40および光源20に向かって伝わる外部放射は、一方において、文字または記号の表示を乱す光の干渉または迷光を引き起こす可能性があり、他方において、光源20の温度を上げ、それが不可逆的な損傷を引き起こす可能性がある。ダイクロイックフィルタ50は、この外部放射が選別されることを可能にする。例えば、図2に示されるダイクロイックフィルタ50では、太陽放射の場合、放射の赤外部分がダイクロイックフィルタ50によって反射され、したがって、光源10に達してその温度を上げることはない。
【0057】
実際に、ダイクロイックフィルタ50の通過帯域に対応する外部放射の一部しか表示デバイス1に入らない。したがって、ダイクロイックフィルタ50は、表示デバイス1に対する保護手段となる。
【0058】
これまでに説明されたように、ダイクロイックフィルタ50は、表示デバイス1の内部が隠されることも可能にし、それが表示デバイス1をユーザに対してより審美的なものにする。
【0059】
実際には、例えば、表示デバイス1に対して、ダイクロイックフィルタ50が、表示デバイス1の、例えば車両の客室など外部を向いたただ1つの開口部を占めるように構成されるような対応が取られてもよい。したがって、この場合の外部放射は、表示デバイス1に入るために必ずダイクロイックフィルタを通過しなければならない。
【0060】
図4および図5に示されるように、そうした構成は、例えばその円形面の1つに開口部を含む中空円筒内に表示デバイス1を配置することによって実現されてもよい。この場合、例えば、円形のダイクロイックフィルタ50について、この開口部に置かれ、この開口部を塞ぐような対応が取られてもよい。
【0061】
保護を強化するために、例えば100nm未満などの狭い通過帯域を有する帯域通過ダイクロイックフィルタ50が使用されてもよく、したがって、任意の外部放射の大部分が外部へ反射される。しかしながら、狭い通過帯域は、画像光線Iの強度を低下させる可能性がある。その場合には、画像光線Iが十分な強度を維持するために、通過帯域に対応する発光帯を有するレーザを含む光源20を、帯域通過ダイクロイックフィルタ50と組み合わせて使用するという対応が取られてもよい。例えば、ダイクロイックフィルタと組み合わせる約600nmを放射するレーザが、図2に示されている。
【0062】
図1に示されるように、この場合の表示デバイス1は、ディフューザ60を備えている。
【0063】
この場合、ディフューザ60は、画像光線Iの経路内でダイクロイックフィルタ50の後に配置される。代替の実施形態として、ディフューザに対して、画像光線の経路内でダイクロイックフィルタの前に置かれるという対応が取られてもよい。
【0064】
ディフューザ60の役割は、画像光線Iに関連付けられた記号または文字をユーザが見ることができるようにすることである。実際に、画像光線Iは、厳密にユーザの目に向かって方向付けられるわけではない。したがって、記号または文字を見ることができるようにするために、画像光線Iに関連付けられた記号または文字をディフューザに「投影」することは価値がある。
【0065】
ディフューザ60は、その場合にはユーザの頭部が位置する領域に向かって方向付けられた、好ましい拡散方向を有することができる。ディフューザ60は、ユーザの位置に関係なく見ることができるようにするために、均一に拡散することも可能である。
【0066】
ディフューザ60は、例えばポリカーボネートなどのプラスチックで製造されてもよい。
【0067】
ディフューザ60は、ダイクロイックフィルタ50に接着されるか、またはダイクロイックフィルタ50と光学的に接触してもよい。ディフューザ60とダイクロイックフィルタ50は、例えば光学接着剤によって接着される。
【0068】
図4および図5において、表示デバイス1は、中空円筒内に配置されている。この場合の回折光学素子40はディスクであり、その上にはディスクの周縁部全体に様々な領域(図示せず)が分散されている。図4および図5に示されるように、光源光線Sの回折光学素子40上での位置を選択すること、すなわち照射される領域を選択することは、特定の文字または記号が選択されることを可能にする。
【0069】
図4の構成から図5の構成に移ると、回折光学素子40を、この場合は中空円筒の軸と一致するその軸のまわりで回転させることによって、回折光学素子40の光源光線Sによって照明される領域の変化が起こり得る。この場合、そうした回折光学素子40の回転は、光源光線Sの移動によって模式的に表されている。
【0070】
図4および図5において、ディフューザ60とダイクロイックフィルタ50は、光学接着剤によって接着されている。ディフューザ60およびダイクロイックフィルタ50は、中空円筒の円形面上に配設されている。その場合、記号または文字はこの円形面に表示される。
【0071】
図3に示される第2の実施形態において、表示デバイス1は:
-スプリッタ70;
-第1の回折光学素子40と呼ばれる回折光学素子40;
-第2の回折光学素子45;
-第1のダイクロイックフィルタ50と呼ばれるダイクロイックフィルタ50;および
-第2のダイクロイックフィルタ55
を備えている。
【0072】
この場合、表示デバイス1は、第1のディフューザ60と呼ばれるディフューザ60、および第2のディフューザ65も備えている。
【0073】
スプリッタ70は、光源ビームを少なくとも2つの分割光線D1、D2、この場合には、第1の分割光線D1と第2の分割光線D2に空間的に分割するように適合される。このために、スプリッタ70は、例えば半透明のミラーを含むことができ、したがって、光源光線Sは、それぞれが光源光線Sの強度の2分の1の強度を有する2つの分割光線D1、D2に分割される。
【0074】
この場合、スプリッタ70は、第1の実施形態では光学系30によって行われる光源光線Sの空間変調の機能も提供する。スプリッタ70は、それぞれの分割光線D1、D2を別個に変調することができる。
【0075】
次いで、分割光線D1、D2はそれぞれ、2つの回折光学素子40、45の一方を照明する。それぞれの回折光学素子40、45は、2つの分割光線D1、D2の一方を受けて、それぞれが画像光線I1、I2を透過するように配置される。この場合、第1の回折光学素子40が第1の分割光線D1を受けて第1の画像光線I1を透過し、第2の回折光学素子45が第2の分割光線D2を受けて第2の画像光線I2を透過する。
【0076】
回折光学素子40、45のそれぞれの動作範囲は、光源光線Sの波長範囲に適合される。したがって、それぞれの回折光学素子40、45の動作範囲は、分割光線D1、D2に含まれる波長に適合される。
【0077】
第2の回折光学素子45は、前述の第1の回折光学素子40の特性と同様の特性を有することができる。しかしながら、画像光線I1およびI2が別個の記号または文字と関連付けられるように、2つの回折光学素子40、45の設計が異なってもよい。
【0078】
2つのダイクロイックフィルタ50、55のそれぞれは、2つの画像光線I1およびI2の一方の経路内に配設される。この場合、図3に示されるように、第1のダイクロイックフィルタ50が第1の画像光線I1の経路内に配設され、第2のダイクロイックフィルタ55が第2の画像光線I2の経路内に配設される。
【0079】
それぞれのダイクロイックフィルタ50、55の通過帯域は、光源光線Sの波長範囲を少なくとも部分的に包含する。これは、第1の実施形態で説明されたように、表示システムが保護されることを可能にする。
【0080】
選別後、次いでそれぞれの画像光線I1、I2は、ユーザが見ることができるようにディフューザ60、65に「投影」される。この場合、図3に示されるように、第1のディフューザ60が第1の画像光線I1の経路内に配設され、第2のディフューザ65が第2の画像光線I2の経路内に配設される。それらの特性は、第1の実施形態で説明された特性と同様である。これまでに説明されたように、ディフューザ60、65は、ダイクロイックフィルタ50、55と組み合わされてもよい。
【0081】
この第2の実施形態において、それぞれのダイクロイックフィルタ50、55の通過帯域は、より具体的には、光線I1、I2を波長によって選別するように波長範囲の一部のみを包含する。それぞれのダイクロイックフィルタ50、55の通過帯域は、それぞれの画像光線I1、I2と関連付けられた記号または文字に対する所望の色に応じてあらかじめ決められる。
【0082】
好ましくは、2つのダイクロイックフィルタ50、55の通過帯域は異なり、光源光線Sの波長範囲に含まれる。したがって、同じ光源20から、異なる色の2つの記号または文字が表示され得る。
【0083】
例えば、光源20は、リンの層を備えた青色LEDであり;したがって、長さ範囲は少なくとも可視領域を包含する。その場合、約600nmの通過帯域を有する第1のダイクロイックフィルタ50は、橙色の記号が生成されることを可能にすることができる。一方、約450nmの通過帯域を有する第2のダイクロイックフィルタ55は、青色の記号が生成されることを可能にすることができる。その部分に対する記号または文字の形状は、回折光学素子に依存する。
【0084】
単一の光源20を用いて複数の記号または文字を照明すると、費用、空間、および設計の簡潔さの点で節約になる。空間が限られている車両のダッシュボードでは、空間の節約が特に求められる。
【0085】
この第2の実施形態に示される表示デバイス1では、スプリッタが光源光線Sを2つの分割光線D1、D2に分割する。もちろん、光源Sと、異なる色を有することが可能な表示される文字または記号の数との比を最適化するように、光源光線Sを2つよりも多い分割光線に分割することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】