(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】多体相互作用及び全対全接続を有するスーパー・イジング・エミュレータ
(51)【国際特許分類】
G06E 3/00 20060101AFI20230620BHJP
G02F 3/00 20060101ALI20230620BHJP
G06N 99/00 20190101ALI20230620BHJP
G06N 10/80 20220101ALI20230620BHJP
【FI】
G06E3/00
G02F3/00
G06N99/00 180
G06N10/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569453
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021032338
(87)【国際公開番号】W WO2021231794
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505166627
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ スティーブンズ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】サントシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ホー チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユイピン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ティン プー
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA06
2K102AA08
2K102BA13
2K102BA18
2K102BA31
2K102BB02
2K102BB04
2K102BC01
2K102DA01
2K102DA02
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2K102DB10
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2K102DD05
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2K102DD10
2K102EA25
2K102EB02
2K102EB06
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB26
(57)【要約】
光計算システムは、ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、変調マスクに基づいてポンプ・ビームを変調し、変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、SHビーム及びポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、非線形媒質の出力を受信し、SHビーム及びポンプ・ビームの未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、ポンプ・ビームの未変換部分の第1光パワーを検出し、SHビームの第2光パワーを検出するように構成される検出器と、光変調装置へ送信するために、第1及び第2の光パワーに基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光計算システムであって、
ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、
変調マスクを受け取り、前記変調マスクに基づいて前記ポンプ・ビームを変調し、変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、
前記変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、前記SHビーム及び前記ポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、
前記非線形媒質の前記出力を受信し、前記SHビームと前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分の第1光パワーを検出し、前記SHビームの第2光パワーを検出するように構成される検出器と、
前記光変調装置へ送信するために、前記第1及び第2の光パワーに基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラと、
を備える光計算システム。
【請求項2】
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して前記変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を備える、請求項1に記載の光計算システム。
【請求項3】
前記変調マスクは、ランダムな2値位相パターンである、請求項2に記載の光計算システム。
【請求項4】
前記空間光変調装置は、前記ウェーブレットの各々の1つの位相を前記変調マスクに基づいて第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、
前記第1及び第2の位相は、180度離れている、請求項2に記載の光計算システム。
【請求項5】
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調して前記変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを備える、請求項1に記載の光計算システム。
【請求項6】
前記非線形媒質の内部で前記変調されたビームを集束させるように構成される第1レンズと、
前記非線形媒質の前記出力を前記ダイクロイック・ミラーに平行にするように構成される第2レンズとをさらに備える、請求項1に記載の光計算システム。
【請求項7】
前記検出器は、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分の前記第1光パワーを検出するように構成される第1光検出器と、
前記SHビームの前記第2光パワーを検出するように構成される第2光検出器とを備え、
前記非線形媒質は、周期分極ニオブ酸リチウム結晶を含む、請求項1に記載の光計算システム。
【請求項8】
前記変調マスクは、複数の画素を含み、
前記コントローラは、前記第1及び第2の光パワーに基づいて前記画素のクラスターを識別し、前記画素の前記クラスターの画素を反転させることにより、前記更新された変調マスクを生成するように構成される、請求項1に記載の光計算システム。
【請求項9】
システム・エネルギーの近似的基底状態を決定するために光計算システムを制御する方法であって、
ポンプ・ビームを生成するために光源を駆動すること、
位相マスクを生成すること、
前記位相マスクを空間光変調装置に適用して、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して、前記位相マスクに基づいて変調されたビームを生成すること、及び
前記ポンプ・ビームの第1光パワー及び前記ポンプ・ビームに基づいて生成される第2高調波(SH)ビームの第2光パワーを検出器から受信することを含み、
前記位相マスクを前記生成することは、
前記位相マスクのクラスターを識別すること、
前記第1光パワーに基づいて現在のシステム・エネルギーを決定すること、
少なくとも前記システム・エネルギー及び以前の最小システム・エネルギーに基づいて、前記位相マスクを更新するかどうかを決定すること、及び
前記位相マスクを更新することを決定することに応答して、前記位相マスクの前記クラスターに基づいて前記位相マスクを更新することを含む、方法。
【請求項10】
前記位相マスクを前記生成することは、
前記位相マスクを更新しないことを決定することに応答して、前記現在のシステム・エネルギーと前記以前の最小システム・エネルギーのうち小さい方を、前記近似的基底状態として識別することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記位相マスクを前記生成することは、
熱エネルギーを識別すること、
前記現在のシステム・エネルギー及び前記以前の最小システム・エネルギーに基づいて、システム・エネルギーの変化を計算すること、及び
前記システム・エネルギーの変化及び前記熱エネルギーに基づいてボルツマン確率を決定することをさらに含み、
前記位相マスクを更新するかどうかを前記決定することは、前記ボルツマン確率にさらに基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記位相マスクを更新するかどうかを前記決定することは、
フィードバック反復回数が閾値未満であることを決定すること、及び
前記位相マスクを更新することを決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
光計算システムであって、
ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、
変調マスクを受け取り、前記変調マスクに基づいて前記ポンプ・ビームを変調して変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、
前記変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、前記SHビーム及び前記ポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、
前記非線形媒質の前記出力を受信し、前記SHビームと前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を捕捉し、第1強度行列を生成するように構成される第1カメラと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を捕捉し、第2強度行列を生成するように構成される第2カメラと、
前記光変調装置に送信するために、前記第1及び第2の強度行列の少なくとも一方に基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラとを備える、光計算システム。
【請求項14】
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して前記変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を備え、
前記変調マスクは、2値位相パターンである、請求項13に記載の光計算システム。
【請求項15】
前記空間光変調装置は、前記変調マスクに基づいて、前記ウェーブレットの各々の1つの位相を第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、
前記第1及び第2の位相は、180度離れている、請求項14に記載の光計算システム。
【請求項16】
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調して前記変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを備える、請求項13に記載の光計算システム。
【請求項17】
前記コントローラは、
カメラ状態を、前記第1強度行列、前記第2強度行列、又は前記第1及び第2の強度行列の加重和として決定すること、及び
前記変調マスク及び前記カメラ状態に基づいて、前記更新された変調マスクを決定することにより、
前記更新された変調マスクを生成するように構成される、請求項13に記載の光計算システム。
【請求項18】
前記変調マスク及び前記カメラ状態に基づいて前記更新された変調マスクを前記決定することは、前記更新された変調マスクを、前記変調マスクと、前記カメラ状態及びフィードバック・ステップ・サイズの乗算との間の差として決定することを含む、請求項17に記載の光計算システム。
【請求項19】
前記ポンプ・ビームは、前記光源によって生成されるガウシアン・パルス列のガウシアン・パルスを含み、
前記フィードバック・ステップ・サイズは、前記ガウシアン・パルス列の周期性に対応する、請求項18に記載の光計算システム。
【請求項20】
前記コントローラは、前記更新された変調マスクを生成する前に、前記フィードバック・ステップ・サイズを適応的に調整するように構成される、請求項18に記載の光計算システム。
【請求項21】
光コンピューティング・システムであって、
平坦な位相フロントを有するポンプ・ビームを生成するように構成される光増幅器と、
前記ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、
前記信号から前記ポンプ・ビームをフィルタリングするように構成される光学フィルタと、
前記信号の一部を読み出すように構成される光ビーム・スプリッタと、
前記信号に基づいて第2高調波光を生成するように構成される非線形光学結晶と、
前記信号と前記第2高調波光を分離するように構成される第1デュアルバンド・リフレクタと、
前記第2高調波光を前記光増幅器に結合するように構成される光受信器と、
前記縮退光パラメトリック増幅器へ前記信号と第2高調波光を結合するように構成される第2デュアルバンド・リフレクタとを備える、光コンピューティング・システム。
【請求項22】
第2高調波光を生成するために前記信号を前記非線形光学結晶に集束するように構成される第1フーリエ・レンズと、
前記第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの間にあって、前記信号の焦点をぼかすように構成される第2フーリエ・レンズとをさらに備える、請求項21に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項23】
前記第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの各々は、ダイクロイック・ミラー又は光学フィルタを備える、請求項21に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項24】
前記信号が前記光コンピューティング・システムを連続的に横切るとき、光パラメトリック発振が起こるまで前記光増幅器の光学利得を増加させる、請求項21に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項25】
前記縮退光パラメトリック増幅器と前記非線形光学結晶との間で、前記信号が前記非線形光学結晶に到達する前に前記信号を変調して前記光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第1光変調装置をさらに備える、請求項21に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項26】
前記非線形光学結晶と前記光受信器との間で、前記第2高調波光を変調して前記光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第2光変調装置をさらに備える、請求項24に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項27】
光コンピューティング・システムであって、
平坦な位相フロントを有する増幅された信号を生成するように構成される光増幅器と、
前記増幅された信号を受信し、前記増幅された信号に基づいて第2高調波生成によりポンプ・ビームを生成するように構成される非線形光学デバイスと、
前記ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、
前記ポンプ・ビームを前記信号からフィルタリングするように構成される光学フィルタと、
前記信号の一部を読み出すように構成される第1光ビーム・スプリッタと、
前記信号の前記一部を変調するために前記信号の第1部分を光変調装置に向け、前記信号の第2部分をダイクロイック・ミラーに向けるように構成される第2光ビーム・スプリッタと、
前記信号の前記変調された第1部分を前記光増幅器に結合して前記増幅された信号を生成するように構成される光受信器とを備え、
前記ダイクロイック・ミラーは、前記縮退光パラメトリック増幅器へ前記信号の前記第2部分を前記ポンプ・ビームと結合するように構成される、光コンピューティング・システム。
【請求項28】
前記光変調装置は、空間光変調装置又はデジタル・マイクロミラー・デバイスを備え、
前記非線形光学デバイスは、非線形光学結晶又は光導波路を備える、請求項27に記載の光計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本出願は、2020年5月13日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第63/024,257号に対する優先権及び利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示の実施形態の態様は、概して、組合せ最適化問題を解くための処理システム及びそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フォトニック・システムは現在、スピン数が制限されているか、又はスピン-スピン相互作用をエミュレートするための光検出及び電子フィードバックに依存しているにもかかわらず、一時的に多重化されたパルスを備えたファイバ・ループ光パラメトリック発振器キャビティ内の高速でコヒーレントなイジング・マシンなどの複雑なシステムの近似的基底状態を求めるために使用されている。また、空間光変調に基づく線形光学イジング・マシンは、空間光変調装置(SLM)上の画素の2値位相としてスピンをコード化することにより、約80,000スピンを対象とすることが示された。しかしながら、このマシンは2体相互作用のみに制限される。今のところは、2体相互作用によってダイナミクスを完全に捕捉することができない物理システム及び数値モデルがあり、k-SAT(k-satisfiability)問題など、多体相互作用の適切な説明が必要である。これは計算上の大きな課題を提示しており、その複雑さ及び量は、中程度の数のスピンであっても、2体相互作用のみのイジング問題の計算上の課題をはるかに超えている。
【0004】
この背景技術のセクションで開示された上記の情報は、本開示の理解を深めるためのものであり、したがって、当業者に既知の先行技術を形成しない情報を含む場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態の態様は、イジング・マシンをエミュレートし、高い接続性、多体相互作用、及び多数のスピンを同時にサポートすることができるシステム及び方法に関する。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、変調マスクを受け取り、変調マスクに基づいてポンプ・ビームを変調し、変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、SHビーム及びポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、非線形媒質の出力を受信し、SHビーム及びポンプ・ビームの未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、ポンプ・ビームの未変換部分の第1光パワーを検出し、SHビームの第2光パワーを検出するように構成される検出器と、光変調装置に送信するために、第1及び第2の光パワーに基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラとを含む光計算システムが提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、光変調装置は、ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して、変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、変調マスクは、ランダムな2値位相パターンである。
【0009】
いくつかの実施形態では、空間光変調装置は、ウェーブレットの各々の1つの位相を変調マスクに基づいて第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、第1及び第2の位相は、180度離れている。
【0010】
いくつかの実施形態では、光変調装置は、ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調し、変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、光計算システムは、非線形媒質の内部で変調されたビームを集束させるように構成される第1レンズと、非線形媒質の出力をダイクロイック・ミラーに平行にするように構成される第2レンズとをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、検出器は、ポンプ・ビームの未変換部分の第1光パワーを検出するように構成される第1光検出器と、SHビームの第2光パワーを検出するように構成される第2光検出器とを含み、非線形媒質は、周期分極ニオブ酸リチウム結晶を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、変調マスクは、複数の画素を含み、コントローラは、第1及び第2の光パワーに基づいて画素のクラスターを識別し、画素のクラスターの画素を反転させることにより、更新された変調マスクを生成するように構成される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、システム・エネルギーの近似的基底状態を決定するために光計算システムを制御する方法であって、ポンプ・ビームを生成するために光源を駆動すること、位相マスクを生成すること、位相マスクを空間光変調装置に適用して、ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調し、位相マスクに基づいて変調されたビームを生成すること、及びポンプ・ビームの第1光パワー及びポンプ・ビームに基づいて生成される第2高調波(SH)ビームの第2光パワーを検出器から受信することを含み、位相マスクを生成することは、位相マスクのクラスターを識別すること、第1光パワーに基づいて現在のシステム・エネルギーを決定すること、少なくともシステム・エネルギー及び以前の最小システム・エネルギーとに基づいて、位相マスクを更新するかどうかを決定すること、及び位相マスクを更新することを決定することに応答して、位相マスクのクラスターに基づいて位相マスクを更新することを含む、方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、位相マスクを生成することは、位相マスクを更新しないことを決定することに応答して、現在のシステム・エネルギーと以前の最小システム・エネルギーとのうち小さい方を、近似的基底状態として識別することをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、位相マスクを生成することは、熱エネルギーを識別すること、現在のシステム・エネルギー及び以前の最小システム・エネルギーに基づいて、システム・エネルギーの変化を計算すること、及びシステム・エネルギーの変化及び熱エネルギーに基づいてボルツマン確率を決定することをさらに含み、位相マスクを更新するかどうかを決定することは、ボルツマン確率にさらに基づく。
【0017】
いくつかの実施形態において、位相マスクを更新するかどうかを決定することは、フィードバック反復回数が閾値未満であることを決定すること、及び位相マスクを更新することを決定することを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、変調マスクを受け取り、変調マスクに基づいてポンプ・ビームを変調して変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、SHビーム及びポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、非線形媒質の出力を受信し、SHビームとポンプ・ビームの未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、ポンプ・ビームの未変換部分を捕捉し、第1強度行列を生成するように構成される第1カメラと、ポンプ・ビームの未変換部分を捕捉し、第2強度行列を生成するように構成される第2カメラと、光変調装置に送信するために、第1及び第2の強度行列の少なくとも一方に基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラとを含む光計算システムが提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、光変調装置は、ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して、変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を含み、変調マスクは、2値位相パターンである。
【0020】
いくつかの実施形態では、空間光変調装置は、変調マスクに基づいて、ウェーブレットの各々の1つの位相を第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、第1及び第2の位相は、180度離れている。
【0021】
いくつかの実施形態では、光変調装置は、ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調して変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、コントローラは、カメラ状態を、第1強度行列、第2強度行列、又は第1及び第2の強度行列の加重和として決定すること、及び変調マスク及びカメラ状態に基づいて、更新された変調マスクを決定することにより、更新された変調マスクを生成するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、変調マスク及びカメラ状態に基づいて更新された変調マスクを決定することは、更新された変調マスクを、変調マスクと、カメラ状態及びフィードバック・ステップ・サイズの乗算との間の差として決定することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ポンプ・ビームは、光源によって生成されるガウシアン・パルス列のガウシアン・パルスを含み、フィードバック・ステップ・サイズは、ガウシアン・パルス列の周期性に対応する。
【0025】
いくつかの実施形態では、コントローラは、更新された変調マスクを生成する前に、フィードバック・ステップ・サイズを適応的に調整するように構成される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、平坦な位相フロントを有するポンプ・ビームを生成するように構成される光増幅器と、ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、信号からポンプ・ビームをフィルタリングするように構成される光学フィルタと、信号の一部を読み出すように構成される光ビーム・スプリッタと、信号に基づいて第2高調波光を生成するように構成される非線形光学結晶と、信号と第2高調波光を分離するように構成される第1デュアルバンド・リフレクタと、第2高調波光を光増幅器に結合するように構成される光受信器と、縮退光パラメトリック増幅器へ信号と第2高調波光を結合するように構成される第2デュアルバンド・リフレクタとを含む光コンピューティング・システムが提供される。
【0027】
いくつかの実施形態では、光コンピューティング・システムは、第2高調波光を生成するために信号を非線形光学結晶に集束するように構成される第1フーリエ・レンズと、第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの間にあって、信号の焦点をぼかすように構成される第2フーリエ・レンズとをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの各々は、ダイクロイック・ミラー又は光学フィルタを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、信号が光コンピューティング・システムを連続的に横切るとき、光パラメトリック発振が起こるまで光増幅器の光学利得を増加させる。
【0030】
いくつかの実施形態では、光コンピューティング・システムは、縮退光パラメトリック増幅器と非線形光学結晶との間で、信号が非線形光学結晶に到達する前に信号を変調して光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第1光変調装置をさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、光コンピューティング・システムは、非線形光学結晶と光受信器との間で、第2高調波光を変調して光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第2光変調装置をさらに含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、平坦な位相フロントを有する増幅された信号を生成するように構成される光増幅器と、増幅された信号を受信し、増幅された信号に基づいて第2高調波生成によりポンプ・ビームを生成するように構成される非線形光学デバイスと、ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、信号からポンプ・ビームをフィルタリングするように構成される光学フィルタと、信号の一部を読み出すように構成される第1光ビーム・スプリッタと、信号の一部を変調するために信号の第1部分を光変調装置に向け、信号の第2部分をダイクロイック・ミラーに向けるように構成される第2光ビーム・スプリッタと、信号の変調された第1部分を光増幅器に結合して増幅された信号を生成するように構成される光受信器とを含み、ダイクロイック・ミラーは、縮退光パラメトリック増幅器へ信号の第2部分をポンプ・ビームと結合するように構成される、光コンピューティング・システムが提供される。
【0033】
いくつかの実施形態では、光変調装置は、空間光変調装置又はデジタル・マイクロミラー・デバイスを含み、非線形光学デバイスは、非線形光学結晶又は光導波路を含む。
【0034】
添付の図面は、明細書とともに、本開示の例示的な実施形態を示し、明細書本文とともに、本開示の原理を説明するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による光計算システムを示す。
【0036】
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による光計算システムを制御してシステム・エネルギーの近似的基底状態を識別するプロセスを示す。
【0037】
【
図3A】
図3Aは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図4A】
図4Aは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図4B】
図4Bは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図5C】
図5Cは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図5D】
図5Dは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図6B】
図6Bは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図6C】
図6Cは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【
図6D】
図6Dは、本開示のいくつかの例示的な実施形態による光計算システムが出力をエネルギー基底状態の近傍に展開する能力を示すグラフである。
【0038】
【
図7】
図7は、本開示のいくつかの実施形態による自己緩和型フィードバック機構を利用する光計算システムを示す。
【0039】
【
図8】
図8は、本開示のいくつかの実施形態によるコントローラによる状態更新の一例を示す。
【0040】
【
図9A】
図9Aは、本開示のいくつかの実施形態による光フィードバックを利用する光計算システムを示す。
【
図9B】
図9Bは、本開示のいくつかの実施形態による光フィードバックを利用する光計算システムを示す。
【
図10】
図10は、本開示のいくつかの実施形態による光フィードバックを利用する光計算システムを示す。
【0041】
【
図11A】
図11Aは、本開示のいくつかの実施形態によるグラフがイジング・モデルにおいて分割されることを示す。
【
図11B】
図11Bは、本開示のいくつかの実施形態によるグラフがイジング・モデルにおいて分割されることを示す。
【
図11C】
図11Cは、本開示のいくつかの実施形態によるグラフがイジング・モデルにおいて分割されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に示す詳細な説明は、本開示に従って提供される、組み合わせ最適化問題を解決することが不可能又は困難な場合に解くためのイジング・マシンをエミュレートするためのシステム及び方法の例示的な実施形態の説明として意図されており、本開示が構築又は利用され得る唯一の形態を示すことを意図していない。本明細書は、図示された実施形態に関連して本開示の特徴を示すものである。しかしながら、同一又は同等の機能及び構造が、本開示の範囲内に包含されることも意図される異なる実施形態によって達成され得ることが理解されよう。本明細書の他の場所で示されるように、同様の要素番号は、同様の要素又は特徴を示すことを意図している。
【0043】
明細書全体を通して、用語は、明示的に述べられた意味を超えて、文脈において示唆又は暗示されるニュアンスのある意味を有する場合がある。
【0044】
本発明は、既存の現代のコンピュータを用いて解くことが不可能又は困難な多くの組合せ最適化問題を解くことができる光計算システム/イジング・マシンに関するものである。より詳細には、本発明は、タンパク質の折り畳み及び創薬のための生命科学、ソーシャル・ネットワーキングの影響を研究するための社会学、最大数のエッジを有するカット(MAX-CUT)を求めるためのグレイピー理論、及びブール満足度(k-SAT)を決定するためのコンピュータ・サイエンスなどの分野で組み合わせ最適化問題を解くことができるマシンに関連するものである。さらに、概ね本発明は、上記のような、多体相互作用に根ざした非決定論的、多項式、時間的に困難な問題に関するものである。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、本開示のシステム及び方法は、イジング・マシンをホストするために、多数のスピンにわたる全対全接続で、調整可能な2体相互作用、4体相互作用が可能な光計算システム(本明細書では、イジング・マシン/エミュレータとも呼称する)を対象とする。空間光変調装置(SLM)を用いて、各スピンのエネルギー(例えば、化学ポテンシャル)及び総エネルギーへの集団寄与を柔軟に制御することができる。ポンプ・パワーとその第2高調波(SH)パワーを光学的に測定することで、2体及び4体の相互作用をそれぞれエミュレートすることができる。モンテカルロ・ベースの適応型フィードバック・コントローラを利用して、有効スピン・システムを展開し、与えられたイジング問題の近似的基底状態の解を求める。本開示のシステムによってエミュレートされる高次の多体相互作用は、光機械学習のための強力な活性化関数として機能することもできる。行列の乗算、フーリエ変換、及び4体相互作用などの主な計算タスクは、非線形光学システムを介して実行されるか、又は非線形光学システムによってエミュレートされる。本イジング・エミュレータは、ビッグ・データ分析及び量子シミュレーションという他の方法ではアクセスできない領域への道を開く可能性がある。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、光計算システムは、非常に多数のスピン、例えば、100万スピン又はそれ以上を含むイジング・マシンをエミュレートすることができる非線形光学システムを含む。光計算システムは、全対全接続で2体及び4体の相互作用を操作することが可能である。光計算システムは空間光変調装置を利用して、コヒーレントなレーザ・ビーム中のウェーブレットの2値位相値の形でスピンを符号化し、かつ制御し、フーリエ面における非線形結晶中の周波数変換による高次相互作用をエミュレートする。適応的なフィードバック制御により、システムは、全対全接続の多体相互作用を有するイジング・ハミルトニアンの基底状態によく近似した有効スピン構成に展開させることができる。
【0047】
実質的には、光計算システムは、レーザ及び空間光変調装置を用いて与えられた多体問題を符号化し、光学素子及びそれらによって行われる非線形プロセスにより、フーリエ変換、行列乗算、及び非線形相互作用などの計算演算を行う。光計算システムは、光パワーメータ又はカメラに接続されるシングルモード光ファイバを使用して測定を行い、検出された信号を使用して、システムを展開させるための適応できるフィードバック(例えば、モンテカルロ・スピン反転を介して)を提供する。光計算システムは、レーザ、空間光変調装置、光学素子、非線形結晶、シングルモード・ファイバ、及び1つ又は複数のカメラ及び/又はパワーメータを含む。
【0048】
図1は、本開示のいくつかの実施形態によれば、光計算システム100を示す。
【0049】
光計算システム100(光ベースの計算システムとも呼称される)は、多数のスピンにわたる化学ポテンシャル、2体相互作用、及び4体相互作用をエミュレートできる非線形光イジング・マシンであってもよい。このように、光計算システムは、計算の実行において光ビームが操作されるものである。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、光計算システム(例えば、イジング・エミュレータ)100は、光源(例えば、レーザ)102、空間光変調装置(SLM)104、非線形媒質(例えば、周期分極ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶)106、ダイクロイック・ミラー108、検出器110、及びコントローラ112を含む。
【0051】
光源102は、SLM104に入力されるガウシアン・ポンプ・ビームを生成するように構成される。いくつかの例では、光源102は、光パルス列を生成する。SLM104に入射するポンプ・ビームの横方向FWHMは、SLM104のサイズに応じて、約2.6mm又は別の値であってよい。
【0052】
SLM104は、変調マスク(例えば、位相マスク)を受け取り、ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調し、位相マスクに基づいて変調された(例えば、空間的に変調された)ウェーブレットを生成するように構成される。いくつかの例では、SLM104は、100万画素/スピンを超える位相マスクをガウシアン・ビームに符号化するために充分高い解像度(例えば、1440×1050画素)を有してもよい。いくつかの実施形態では、位相マスクは、各画素が0又はπの位相値に対応する2値位相マスクである。いくつかの実施形態では、光計算システム100は、非線形媒質106の内側(例えば、中心付近)に変調されたビームを集束するように構成される第1レンズ105(例えば、約200mmの焦点距離を有する集束レンズ)をさらに含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、温度安定化PPLN結晶であってもよい非線形媒質106は、非線形プロセスを実行し、変調されたポンプ・ビームに基づいて2次高調波(SH)ビームを生成するように構成される。SH生成は、スピン間の有効な相互作用を実現する。いくつかの例では、PPLN結晶は、約19.36μmの分極周期及びSH生成のための約1cmの長さを有してもよい。結晶内のポンプ・ビームのウエストは約45μmであってもよい。
【0054】
光計算システムは、第2レンズ(例えば、コリメーション・レンズ)107を利用して、非線形媒質106が出力するSHビーム及び残存ポンプ・ビーム(すなわち、未変換ポンプ・ビーム)をダイクロイック・ミラー108に平行にさせる(例えば、整列させる)。いくつかの実施形態では、ダイクロイック・ミラー108(又は二波長リフレクタ)は、非線形媒質106の平行出力をフィルタリングしてSHビーム及び残存/未変換ポンプ・ビームとを切り離す(例えば、空間的に分離する)ように構成され、これらは、ファイバ・カプラ/コリメータ(例えば、非球面レンズ)111a及び111bを用いてシングルモード・ファイバ(SMF)109a及び109bに結合することができる。いくつかの実施形態では、検出器110は、SMF109a及び109bにそれぞれ結合される2つの光パワーメータ(例えば、フォトダイオード)110a及び110bを含み、これらはSHビーム及び残存ポンプ・ビームの光パワーを別々に測定する。
【0055】
いくつかの実施形態では、光計算システムは、測定されたポンプ・パワーを使用して、2体(すなわち、スピン-スピン)相互作用に関連するエネルギーをエミュレートし、測定されたSHパワーを使用して、スピン間の4体相互作用を捕捉する。総ポテンシャル・エネルギー(例えば、総化学ポテンシャル・エネルギー)は、SLM104で符号化される全てのスピンの加重和である。次に、コントローラ112は、測定ポンプ及びSHパワーに基づいてSLM104における位相マスクを更新し、イジング問題が光計算システム100によってエミュレートされる最適基底状態の解又はその近似を反復して求める。
【0056】
ある実施形態によれば、検出器110は、多くの画素を有する2つのCCDカメラを使用して、ポンプ・ビーム及びSHビームの空間光パワーを測定する。次に、コントローラ112は、CCDカメラの結果をSLM104の次の反復ステップへの入力として使用する。
【0057】
他の実施形態では、フィードバック制御は光ループを使用して実施され、空間光変調装置は非線形光学デバイスによって置き換えられる。
【0058】
光計算システムの有効ハミルトニアンは、以下のように表される。
【0059】
H=αH1+βH2+γH4 式(1)
【0060】
ここで、α、β、及びγは、ハミルトニアンの調整可能なパラメータであって、H1、H2、及びH4は、それぞれ、化学ポテンシャル、2体相互作用、及び4体相互作用を表す。これらは次のように表すことができる。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
ここで、光源102は、ピーク振幅E0及びビーム・ウエストwpを有する波長λpのガウシアン・ポンプ・ビームを生成する。ポンプ・ビームは、位相マスクが(x′m,y′m)を中心とするm×n個の画素(m,n)からなるSLM104に入射する。SLM104の直後の横電界は、
【0065】
【0066】
ここで、
【数5】
は画素(m,n)における振幅であり、IIは幅aの矩形関数であり、及びσ
mn=±1(2値位相変調)である。
【0067】
焦点距離Fのフーリエ・レンズは、長さLの周期分極ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶の中心での電界を変換することができ、次のようになる。
【0068】
【0069】
式(6)
【0070】
ここで、
【数7】
κp=2πnp/λp、及びn
pはPPLN結晶におけるポンプの屈折率である。SMF109a及び109bには近軸光のみが結合されるので、それは、
【数8】
となり、上式は次のように簡略化される。
【0071】
【0072】
縮約表記を用いることにより、
【0073】
【数10】
及び
【数11】
を導入して上式の二重和を簡略化し、ここで、i=1,2,...NとしてN=N
1×N
1スピンを用いると、式7は次のように表される。
【0074】
【0075】
非線形媒質106の内部におけるポンプ・ビーム及びSHビームのダイナミクスは、以下の式で評価することができる。
【0076】
【0077】
【0078】
ここで、
【数15】
は、屈折率n
SHを有する結晶中のSH光の波数であり、ω
SHはSH光の周波数であり、△κ=2κ
p-κ
SH-2π/Λは分極周期Λを有する位相不整合である。ポンプが枯渇しておらず、回折が無視できるほど小さい位相整合条件を仮定すると、
【0079】
【0080】
ここで、
【数17】
である。非線形媒質106の出力では、ポンプ波及びSH波は、各々、シングルモード・ファイバに結合され、光パワーメータ(例えば、フォトダイオード)110a及び110bで検出される。ポンプ波及びSH波の光パワーは、それぞれ、
【0081】
【0082】
、及び
【0083】
【0084】
ここで、
【数20】
は、それぞれ、ビーム・ウエスト
【数21】
及び
【数22】
の正規化された逆伝播ファイバ・モードである.
【0085】
したがって、ポンプ波及びSH波の検出された光パワーは、
【0086】
【0087】
、及び
【0088】
【0089】
【0090】
このように
【0091】
【0092】
及び
【0093】
【0094】
ここで、
【数29】
及び
【数30】
は、それぞれ、2体及び4体の相互作用の項を表す。
【0095】
ここで、全てのスピン並びにその2体及び4体の相互作用を含むシステムの総エネルギーは、次のように定義される単一のパラメータによって特徴づけることができる。
【0096】
E=αC+βPp+γPh′ 式(18)
【0097】
ここで、α、β、及びγは、それぞれ、化学ポテンシャル、2体、及び4体の相互作用エネルギーの寄与を定義する自由パラメータである。自由パラメータを適切に設定することで、光計算システム100は、イジング問題をモデル化することができる。
【数31】
は、化学エネルギーを表すスピンの加重和であり、局所化学ポテンシャルは、
【数32】
である。式(18)は、基底状態の解を求めるためのシステムの式(1)で定義される有効ハミルトニアンと等価である。システムの磁化は、
【数33】
と定義することができる。システムの総エネルギーの最小値又は最小値の近似値を求めるために、コントローラ112は、適応フィードバックを通じて、SLM104における位相マスクを反復的に更新(例えば、最適化)する。
【0098】
図2は、本開示のいくつかの実施形態によれば、光計算システム100を制御してシステム・エネルギーの近似的基底状態を識別するプロセス200を示している。プロセスのステップの順序は固定されておらず、当業者によって認識されるように、修正、順序の変更、異なる実行、順次に一斉にもしくは同時に実行、又は任意の所望の順序に変更することができることを理解されたい。
【0099】
ブロック202では、コントローラ112は、光源102を駆動して1次ポンプ・ビームを生成し、ランダムな2値位相マスクであってもよい初期位相マスクを生成する。さらに、コントローラ112は、初期位相マスクをSLM104に適用してポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して初期位相マスクに基づいて変調されたビームを生成する。
【0100】
ブロック204では、コントローラ112は、システムのエネルギーが式18を介して、光計算システム100によってエミュレートされることを定義する。そうすることで、コントローラ112は、イジング問題が光計算システム100によってエミュレートされることをモデル化するために、自由パラメータα、β、及びγを決定して化学ポテンシャル、2体、及び4体の相互作用エネルギーの寄与をそれぞれ定義する。
【0101】
ブロック206では、コントローラ112は、システムのサイズs及び熱エネルギーτを有する位相マスク内の画素のクラスターを定義する(例えば、ランダムに選択する)。いくつかの実施形態では、位相マスクは、s個の画素を有する正方形又は長方形の形状を有してもよい。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されず、クラスターは任意の適切な形状を有してもよい。ここで、熱エネルギーτは、単にこの最適化アルゴリズムのパラメータであってもよいし、物理量でなくてもよい。
【0102】
ブロック208では、コントローラ112は、検出器110から、1次ポンプ・ビームの第1光パワー及びSHビームの第2光パワーを受信する。
【0103】
ブロック210では、コントローラ112は、第1及び第2の光パワー並びにブロック204で決定された自由パラメータα、β、及びγに基づいて、式18を用いて現在のシステム・エネルギーEnewを決定する。コントローラ112は、システム・エネルギーの変化Uを、現在のシステム・エネルギーと以前の最小システム・エネルギーEoldとの間の差(U=Enew-Eold)として計算する。コントローラ112は、ボルツマンの確率P=exp(-U/τ)をさらに決定する。
【0104】
ブロック212及び214では、コントローラ112は、SLMにおける位相マスクを更新するか否かを決定する。その際、ブロック212では、コントローラは、現在のシステム・エネルギー及びボルツマン確率に基づく最適化基準が満たされるかどうかをチェックする。システム・エネルギーの変化Uが負である場合(すなわち、現在のシステム・エネルギーEnewがこれまでに計算された最も低いシステム・エネルギーである)、又はボルツマン確率Pが0と1の間の実数値であるランダムな変数Fより大きい場合、この基準は満たされる。これらの条件のいずれも満たされない場合、コントローラ112は、ブロック216で、新しい位相マスクを更新することを決定する。そうすることで、コントローラ112は、以前の位相マスクのサイズs(ブロック206)のランダムに選択されたクラスター内のスピンを反転させることにより、新しい位相マスクを生成する。最適化基準が満たされる場合、コントローラはまた、反復回数(例えば、フィードバック反復回数)が閾値(例えば、1200)未満であるかどうかを判断する。そうである場合、コントローラ112は、ブロック216で位相マスクを更新するように進む。
【0105】
コントローラ112が位相マスクをさらに更新しないことを決定する場合、ブロック218において、コントローラ112は、結果を収集して現在のシステム・エネルギーと以前の最小システム・エネルギーとのうち小さい方を近似的基底状態として識別する。
【0106】
このようにして、総エネルギー量を低減する(例えば、最小化する)ために、コントローラ112は、モンテ・カルロ法に従って、サイズsのランダムに選択されたクラスター内の全てのスピンを適応的に反転させる。各反復において、反転したスピンは、エネルギー変化関数U及びボルツマン確率P=exp(-U/τ)に従って受け入れ又は拒絶され、ここでU=Enew-Eoldはスピン反転によるエネルギーの変化であり、τは熱エネルギーである。極小でのトラッピングを避けるため、反復の間のクラスター・サイズsと熱エネルギーの両方を変化させる。
【0107】
図3~
図6は、本開示のいくつかの例示的な実施形態によれば、光計算システム100がその出力をそのエネルギー基底状態の近傍に展開させる能力を示すグラフである。
【0108】
図3は、純粋な4体相互作用及び800×800スピンの全対全接続、すなわちα=0及びβ=0(参照、式18)に対する結果を示している。
図3Aは、γ=―1に対するSHビーム・パワーの展開をプロットしたもので、この場合、システムの基底状態が最大のSHパワーに相当する。この場合、システムは強磁性同様な振る舞いを示す。反対に、
図3Bは、SHパワーを最小にして基底状態を求めるために、γ=1の場合のSHパワーの展開をプロットしたものである。検出可能なSHパワーの最小値は、光センサーの限界値(~5nW)に近い。この例では、システムは常磁性同様な状態に展開する。
図3Aと
図3Bの両方において、図に表示されるデータが異なる初期位相マスク(異なるランダムなスピン構成に対応する)から開始されているにもかかわらず、システムは基底状態の解を求めるように展開する。このことは、本発明の実施形態に従って作製された機械が、その基底状態の近傍に確実かつ効率的に展開できることを示している。
【0109】
図4は、800×800スピン、すなわち、α=0、β=-1、及びγ=0での2体相互作用及び全対全接続を示している。
図4Aは、ポンプ光パワーの展開を示している。ポンプ・パワーが増加すると、それは総エネルギーEを最小化するようにシステムを展開させる。
図4Bは、磁化Μの展開を示している。α=0のとき、全てのスピンが反転してもシステム・エネルギーは変化しないため、自発的な対称性の破れが生じる。したがって、フィードバック制御により、スピンは等確率で正又は負の磁化状態のどちらかに最適化される。これは、
図4Bにおいて明らかで、磁化は両方に傾いている。
【0110】
図5は、800×800スピンの最適化に対して、α=-1、β=-1、及びγ=-1とした場合の測定結果を示している。結果は、パワーの対数スケール対反復回数で示されている。
図5A及び5Bは、4つの異なる初期位相マスクに対するSHパワー及びポンプ・パワーの展開をプロットしている。
図5Cは、システムの対応する磁化をプロットしている。
図5Dは、初期及び最終の位相マスクを示し、黒及び白の画素は、それぞれ、正及び負の配向スピンを示す。
図5D(1)~(4)は、異なる入力2値スピン構成でのSHパワー及びポンプ・パワーの評価を表している。全ての場合において、これらの結果は、ポンプ及びそのSHの光パワーは、与えられたイジング問題の基底状態の解に属する最適値に収束していることを示している。
【0111】
図6は、α=1、β=-0.5、及びγ=-1の場合の結果を示している。
図6A及び6Bは、それぞれ、ポンプ・パワー及びSHパワーの展開を示し、
図6Cは、システムの対応する磁化をプロットしたものである。ポンプ・パワーとSHパワーの両方が反復回数とともに増加するにつれて、磁化は負方向に最適化された値を獲得する。
図6Dは、初期及び最終の位相マスク・パターンを示し、位相マスク・パターンの黒色及び白色の領域は、それぞれ、正及び負の配向スピンを示す。
図6Dの(1)~(3)は、異なる入力2値位相マスクを用いたSHパワー及びポンプ・パワーの評価を表している。これらの結果は、光イジング・マシンが与えられたイジング問題の近似的基底状態の解を求めることができることを示している。
【0112】
図7は、本開示のいくつかの実施形態によれば、自己緩和型フィードバック機構を利用する光計算システム700を示している。
図7のシステム700は、変調装置704、カメラ710a及び710b、並びにコントローラ712を除いて、
図1のシステム100と実質的に類似している。したがって、説明を容易にするために、システム100と700の両方に共通する構成要素は、本明細書では再び説明されない場合がある。
【0113】
図7を参照すると、いくつかの実施形態によれば、ガウシアン・ポンプ・レーザ・ビーム(例えば、波長1551.5nmにおいて)は、変調装置704に入射し、変調装置704は入射ポンプ・ビームの位相を変調するためのSLM104であってもよいし、入射ポンプ・ビームの強度を変調するためのデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)であってもよい。ダイクロイック・ミラー108は、未変換/残存ポンプ・ビーム(赤外線ビームであってもよい)からSH光(例えば、波長775.75nmにおいて)を分割するように設置される。いくつかの実施形態では、第1カメラ710a(例えば、赤外線カメラ)は、ダイクロイック・ミラー108から未変換/残存ポンプ・ビームの強度を捕捉し、第2カメラ710b(例えば、可視光カメラ)は、ダイクロイック・ミラー108からSHビームの強度を捕捉する。第2カメラ710bによって捕捉されるSH光は、様々な4体相互作用ハミルトニアンを模倣することができる。第2カメラ710bにおける画素の行列によって捕捉されるような強度行列/パターンは、以下のように書くことができる。
【0114】
【0115】
ここで、
【数35】
は、4体相互作用の強度である。一方、第1カメラ710aによって捕捉される未変換光は、第1カメラにおける強度行列/パターンが次式となる2体相互作用をエミュレートすることができる。
【0116】
【0117】
2つのカメラは個別に動作することができるし、又は、それらの加重和であるαI2(x,y)+βI4(x,y)を算出して自己緩和型フィードバックを実施することもできる。カメラ710a及び710bの各画素における強度の読み取り値は、量子化されたグレイスケール値である。コントローラ712は、カメラ710a及び710bからの画像(又は強度行列)を処理し、変調装置(例えば、SLM又はDMD)704を制御して、変調装置704における位相又は強度マスクを新しい位相又は強度情報により更新する。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、光計算システム700は、4体相互作用を光ループに組み込んで、望ましいスピン構成に自動的に展開できる自己緩和型イジング・マシンを形成する。そうすることで、光計算システム700は、量子システムの虚時間発展を利用して、自己緩和型フィードバックを実現する。このことを説明するために、時刻t=0における変調装置704での位相/強度情報/状態を|ψ(0)>及びシステム700全体のハミルトニアンをH(位相/強度変調、光学系でのビーム伝播、第2高調波生成、カメラでの強度測定、及び画素値の任意の数値処理を含む)と仮定すると、時刻tでの状態は次のようになる。
【0119】
【0120】
数学的な観点から、実数値の時間tは虚数値-itに置き換えることができる。すると、状態は、
【数38】
となる。初期状態|ψ(0)>は、異なる固有状態、
【数39】
の1次結合であるランダムな状態である。したがって、時刻tにおける状態は次のように表すことができる。
【0121】
【0122】
低固有状態はより低い固有値を有する、すなわち、E0<E1<E2<・・・であることが知られている。したがって、時間が経つにつれて、基底状態|0>は、その崩壊定数E0が最も遅い崩壊速度に寄与することから、他の状態に比べて際立つことになる。いくつかの実施形態では、量子状態は展開の各ステップの後で再正規化される。
【0123】
図8は、本開示のいくつかの実施形態によれば、コントローラ712により状態更新の一例を示している。
【0124】
図8の例では、時刻tにおける変調装置状態は|ψ(t)>で、フィードバック・ループ間の時間ステップはdtである。したがって、カメラ状態I
4(x,y,t)は、H|ψ(t)>と書き表すことができる。時刻t+dtでの新しい状態は、
【数41】
で、時間ステップdtは充分に小さいので、そのため指数関数的拡大の高次を無視することができる。
【0125】
【0126】
すると、次のようになる。
【0127】
【0128】
したがって、新しい変調装置の状態(|ψ(t+dt)>)は、以前の変調装置の状態|ψ(t)>とdt倍のカメラ状態(H|ψ(t)>)の間の差として表すことができる。
【0129】
起動時に、コントローラ712は、ランダムな状態|ψ0>を初期変調装置の位相状態として選択する。非線形結晶を通過した後、アップコンバートされた光(すなわち、SHビーム)及び未変換光(すなわち、残存ポンプ・ビーム)は、カメラ710a及び710bによって検出される。問題が光計算システム700によってエミュレートされることに応じて、コントローラ712は、全カメラ状態|φ0>を、第1カメラ710a及び第2カメラ710bの一方からの強度行列(すなわち、I2(x,y)又はI4(x,y))、又は、強度行列の加重和(すなわち、αI2(x,y)+βI4(x,y))として計算する。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、コントローラ712は、新しい状態を|ψ
1>=|ψ
0>-Δt|ψ
0>として計算し、それを初期状態、
【数44】
によって正規化することにより変調装置の位相状態を更新することを決定する。したがって、コントローラ712は、次のループ反復の新しい変調装置の状態位相を次のように決定する。
【0131】
【0132】
ここで、フィードバック・ループの時間ステップΔtは、数値誤差を低減又は最小化するのに充分な小ささである。いくつかの例では、フィードバック・ステップ・サイズΔtは、光源102のパルス列の周期性を表す。いくつかの実施形態では、コントローラ712は、光計算システム700のダイナミクスが加速され又はより遅くされる場合があるので、Δtを適応的に調整して自己緩和を可能にする。ステップ・サイズは、式(22)でなされる近似が有効であるように選択することができる。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、光計算システムは、そのスピンを自動的に整列させてその相互作用エネルギーを最大化又は最小化することができる。
【0134】
図9Aは、本開示のいくつかの実施形態によれば、光フィードバックを利用する光計算システム900を示している。
【0135】
図9の例では、光ループを使用して、最も高い4体相互作用エネルギーを有するスピン構成のみが光発振条件を満たし、ビルドアップするフィードバックを提供する。光ループは、光増幅器(OA)902から始めて、平坦な位相フロントを有する第2高調波波長で弱いポンプ・ビームを生成して、縮退光パラメトリック増幅器(DOPA)904を駆動する。DOPA904は、β硼酸バリウム(BBO)結晶、チタニルリン酸カリウム(KTP)結晶、又は周期分極ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶などの2次非線形性の位相整合又は擬似位相整合光媒質であってもよい。DOPA904では、ポンプ・ビームは、その波長の2倍の信号波を生成し、かつ増幅する。ポンプ・ビームは幅広であり、それゆえ、DOPA904内部での回折が少ない、さらにポンプ・ビームの横方向断面にわたって、各々がスピンを表す多数の信号ウェーブレットが独立して生成/増幅される。
【0136】
DOPA904の後、ポンプ光は、バンドパス・フィルタ、エッジ・フィルタ、ダイクロイック・ミラー、又は同種のものであり得るフィルタ906を用いてフィルタリング/除去され、信号は、第1フーリエ・レンズ908を用いて第2高調波生成(SHG)デバイス910に集束される。SHGデバイス910は、BBO結晶、KTP結晶、又はPPLN結晶などの2次非線形性の位相整合又は準位相整合光媒質であり得る。SH生成の間、スピン間の有効な相互作用が実現され、第2高調波光が創出される。出力において、残存するポンプ信号及び生成されたSH光は、その趣意で第1デュアルバンド・リフレクタ(例えば、第1ダイクロイック・ミラー(DM)又は光学フィルタ)912又は他の任意の光学デバイスで分離される。次に、残存ポンプ信号は、集束を元に戻すために第2フーリエ・レンズ914に通される。次に、残存ポンプ信号は、第2デュアルバンド・リフレクタ(例えば、第2ダイクロイック・ミラー又は光学フィルタ)916を介してDOPA904に向けられる。他方、SH光は、光ファイバ又は自由空間光学系による平行ビームであってもよい光受信器(OR)918によって収光される。次に、SH光は、OA902によって増幅され、残存ポンプ信号と組み合わされ、新しいポンプとしてDOPA904に向けられる。このループは、安定した結果が創出されるまで何度も実行され、その際、信号は、ビーム・スプリッタ(BS)920を介して読み取られ、横方向プロファイルにわたってそのスピンが測定される。ここで、信号が光コンピューティング・システムを連続的に横切るとき、光パラメトリック発振が起こるまで光増幅器の光学利得が増加される。
【0137】
この光学構成では、DOPA904は、縮退光パラメトリック増幅によって、ポンプ・ビームの断面にわたって信号ウェーブレットを生成し、かつ増幅する。ポンプ・ビームは平坦な位相フロントを有するので、各空間グリッド(すなわち、画素)において生成された信号ウェーブレットは、ポンプ光と同じ位相を有することができ、逆もまた同様である。この機構により、信号ウェーブレットの離散的な位相が定義され、その結果、各々がスピン・アップ(ポンプに対して0位相)又はスピン・ダウン(ポンプに対してπ位相)を表すことができる。当初は信号がなく、DOPA904は真空ノイズが増幅される量子プロセスとして理解することができる。真空ノイズは、全ての可能なスピン構成を含んでいる。増幅された真空ノイズはフィルタリングされ、その後、ポンプが捨てられる。その後、それらはSH生成のため2次非線形結晶に集束される。SH生成時に創出され得る第2高調波の光量は、スピン構成に依存する。実際、その強度は、スピンの4体相互作用のエネルギーとして書くことができる。次に、得られた第2高調波信号は、OA902によって増幅され、DOPA904のためのポンプを創出し、次のラウンドの間に信号を増幅する。このループは連続的に実行される。
【0138】
このようにして、光計算システム900は、光パラメトリック発振器(OPO)を効果的に実現するが、ここでは、光学利得がSH生成及び光増幅の中間ステップを通して実現されることが区別される。動作時、OA902の光学利得は、最初の光パラメトリック発振信号が現れるまで、すなわち、強く安定した信号を読み出すことができるまで、ゆっくりと増加させてもよい。このような場合、4体相互作用を最大化するために、信号を望ましいスピン構成で準備することになる。他の構成では第2高調波光の生成が少なくなるため、それ故、実効的なOPO利得が小さくなるからである。OPOでは、各光ループの間の光学利得が純損失よりも大きいことが要求されるので、OA利得をゆっくりと増加させることにより、望ましいスピン構成の光学利得が純損失をちょうど超えたときに最初のOPO信号だけが現れることになる。他の全てのスピン構成では、利得よりも損失が大きくなるため、これらの他のスピン構成では光発振は不可能である。ここで、OPOが起こる前にDOPAプロセスは、全ての可能なスピン構成において、真空ノイズの増幅として理解することができる。
【0139】
1つのスピン構成のみが存在することをさらに確実にするために、光パワー飽和限界の下で動作するようにOAを設定することができ、すなわち、出力パワーが限界に達した場合、OAは増幅を停止する。このようにして、望ましいスピン構成に対してOPOが確立された後、信号とポンプ・パワーの両方が増加してOAを飽和させ、その結果、他のスピン構成に対する有効利得が減少する。
【0140】
いくつかの実施形態では、信号のスピン構成は、最初に信号を平坦な位相フロントを有する局所発振器と干渉させ、次にCCDカメラを用いて信号を測定することによって、読み出すことができる。いくつかの実施形態では、信号は、フーリエ・レンズなどの線形光学素子を通過させることができ、その結果、そのスピン構成は異なるモード・ベースで測定することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、光ループは、任意の熱的、機械的、又は他のドリフトに対して安定化される。安定化は、フィードバック制御機構を通じて実現することができる。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、有効相互作用ハミルトニアンは、関心のある実際的な問題をモデル化するために修正される。これは、SHGの前に信号に光変調を適用すること、及び/又は、光変調がORによって収光される前に、生成された第2高調波光に変調を適用することによって実現することができる。この選択は、
図9Bに描かれている。光計算システム900-1において、ポンプ(MP)用の光変調装置922及び信号(MS)用の光変調装置924の変調は、位相変調、振幅変調、又はその両方の形態であり得る。変調は、空間光変調装置、デジタル・マイクロミラー・デバイス、又はそれら2つの組み合わせを用いて実現することができる。ポンプ光に対しては、変調をシングルモード・ファイバに結合するなど、変調を他の手段で効果的に実現することができる。
【0143】
図9A及び9Bは、スピン構成を最適化することにより4体相互作用を最大化する方法を具体的に説明している。DOPAのポンプ・パワーを第2高調波光の検出パワーに反比例させることにより、同様のスキームは4体相互作用を最小化するように開発することができる。
【0144】
4体相互作用を最大化又は最小化することに加えて、同じ原理を使用して2体相互作用を最大化又は最小化するスピン構成を求めることができる。
【0145】
図10は、
図9Aの基本構造に従うが、SHG910を通過することなく信号が部分的に分割され、直接検出される、そのような例を提示するものである。有効2体相互作用ハミルトニアンを変調するために、信号は、検出される前に、光変調装置(MS)924によって変調される。いくつかの実施形態では、この変調は必要ではなく、回避してもよい。検出された信号は、DOPA904を駆動するために、平坦な位相フロントを有するポンプを創出する。いくつかの実施形態では、これは、
図9Bに示すように、最初に信号パワーを増幅し、次にそれの周波数を2倍にすることによって実現される。いくつかの実施形態では、信号は光検出され、得られた電子信号を使用して、調整可能な利得レーザ光源又は固定利得レーザ光源のいずれかを使用するが、調整可能なビーム・スプリッタ又は可変パワー減衰器を使用して、DOPAを駆動するためにポンプ・パワーを制御する。
【0146】
図10に示されるように、いくつかの実施形態によれば、光計算システム1000は、平坦な位相フロントを有する増幅された信号を生成するように構成される光増幅器(OA)902と、増幅信号を受信し、増幅信号に基づいて第2高調波の生成を通じてポンプ・ビームを生成するように構成される非線形光学デバイス(SHG)910と、ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器(DOPA)904と、信号からポンプ・ビームをフィルタリングするように構成される光学フィルタ(FT)906と、信号の一部を読み出すように構成される第1光ビーム・スプリッタ(BS)920と、信号の一部を変調するために信号の第1部分を光変調装置(MS)924に向け、信号の第2部分をダイクロイック・ミラー(DM)916に向けるように構成される第2光ビーム・スプリッタ921と、増幅された信号を生成するために光増幅器902に信号の変調された第1部分を結合するように構成される光受信器(OR)918を含む。ここで、ダイクロイック・ミラー916は、縮退光パラメトリック増幅器へ、信号の第2部分とポンプ・ビームを結合するように構成される。いくつかの実施例によれば、光変調装置924は、空間光変調装置又はデジタル・マイクロミラー・デバイスであってもよいし、非線形光学デバイス910は、非線形光学結晶又は光導波路であってもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、2体及び4体の相互作用のスキームを組み合わせて、一方の相互作用を最大化又は最小化するスピン構成を求めることができ、一方、また他方の相互作用を最大化又は最小化、あるいは2つの加重和を最大化又は最小化するスピン構成を求めることができる。
【0148】
本明細書に開示された光計算システムは、2体及び4体の相互作用のみをサポートするが、和周波、4波混合、及び高次高調波生成などの非線形光学の他のプロセスを採用して、さらに高次の相互作用を実現することができ、その計算複雑さ及び強度は、既存の計算プラットフォームの能力を超えて急速に成長する可能性がある。
【0149】
NP困難な問題をイジング・モデルにマップする例:
【0150】
多くのNPの困難な問題は、グラフにスケッチすることができ、これらのグラフはイジング・モデルにマップすることができる。以下は、分割グラフ問題をイジング問題にマップする例である。
【0151】
V個の頂点及びE個のエッジを持つN個のノードを有する単純な無向グラフG=(V,E)を考えると、問題は、そのノードの集合を分割することによりグラフを“m”個の部分グラフに分割することができる。グラフをN個のノードを持つ部分グラフに分割する方法はm(N-1)-1通りある。頂点V=V0UV1UV2...UVm-1の分割を最適に計算するためには、以下の条件を満たす必要がある。
【0152】
1){Vi}は共通の要素を持たない→Vi∩Vj=Φ
【0153】
2)全ての{Vi}はほぼバランスしている→|Vi|~|Vj|。
【0154】
3)カット・エッジの数は最小/最大であること、すなわち、|Ecut|Min/Max={(u,v)|uεVi,vεVj,i≠j}とする。
【0155】
ノード数が多い場合のグラフ分割の厳密解を求めることは、NP組合せ最適化問題である。簡単のために、5個のノードは6個のエッジが重みw
ijを運んで接続されるグラフを考えることができ、ここで、
図11Aに示すように、i≠jはノードであり、w
ij=w
ji>0である。このグラフを2つの部分グラフに切り分け、最大数のエッジが通るカットを求める方法がいくつかある。それらのうちの2つを
図11B及び
図11Cに示す。グラフが分割されると、値S
i={+,-}を分離された部分グラフのノードに割り当ててもよい。カットのコスト関数は、
【数46】
と表すことができ、ここで、
【数47】
の値は、i,jが同じ部分グラフにあれば0、それ以外は1である。コスト関数は、次のように書き換えることができる。
【0156】
【0157】
マックス・カットの解は、コスト関数の第2項を最小化することによって求めることができる。これは、コスト関数の最小化が、イジング・ハミルトニアンのエネルギーの最小化と等価であることを示す。
【0158】
ペアワイズ及び高次の相互作用を有するイジング・モデルは、統計物理学及び機械学習における活発な研究領域である。本開示のいくつかの実施形態によれば、多数のノード及び全対全接続を有する非線形光学システムは、これらの問題をとても速く解決するための実行可能な解決策である。
【0159】
コントローラなどの本開示の光計算システムの構成要素によって実行される動作は、データ又はデジタル信号を処理するために採用される、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアの任意の組み合わせを含むことができる“処理回路”又は“プロセッサ”によって実行されてもよい。処理回路ハードウェアは、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、汎用又は特殊用途向け中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、グラフィック処理装置(GPU)、及びフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのプログラマブル・ロジック・デバイスを含んでもよい。本明細書で使用されるように処理回路では、各機能は、その機能を実行するように構成された、すなわちハード・ワイヤードされたハードウェアによって、又は非一時的記憶媒体に格納された命令を実行するように構成されるCPUなどのより汎用的なハードウェアによって、実行される。処理回路は、単一のプリント配線板(PWB)上に作製されてもよいし、相互接続されたいくつかのPWB上に分散されてもよい。処理回路は、他の処理回路を含んでもよく、例えば、処理回路は、PWB上で相互接続される2つの処理回路、FPGA及びCPUを含んでもよい。
【0160】
本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分を説明するために“第1”、“第2”、“第3”等の用語を用いることができるが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分がこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語を使用して、ある要素、構成要素、領域、層、又は部分を別の要素、構成要素、領域、層、又は部分と区別する。したがって、後述する第1要素、構成要素、領域、層、又は部分は、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、第2要素、構成要素、領域、層、又は部分と称することが可能である。
【0161】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、発明概念を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形“a”及び“an”は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、用語“include”、”including”、“comprises”、及び/又は“comprising”は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を規定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書で使用されるように、用語“及び/又は”は、関連する列挙された項目の1つ又は複数の任意の及び全ての組み合わせを含む。さらに、本発明概念の実施形態を説明する際の“may”の使用は、“本発明概念の1つ又は複数の実施形態”を指す。また、“例示的な”という用語は、例又は図解を指すことを意図している。
【0162】
本明細書で使用されるように、用語“use”、“using”、及び“used”は、それぞれ、用語“utilize”、“utilizing”、及び“utilized”と同義であると考えてもよい。
【0163】
さらに、本発明概念の実施形態を説明する際の“may”の使用は、“本発明概念の1つ又は複数の実施形態”を指すものである。また、用語“exemplary”は、例又は図解を指すことを意図している。
【0164】
本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の請求項の精神及び範囲内に含まれる様々な変更及び同等の配置、並びにその同等物を網羅することを意図していることが理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0164
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0164】
本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の請求項の精神及び範囲内に含まれる様々な変更及び同等の配置、並びにその同等物を網羅することを意図していることが理解されよう。
上述の実施形態は下記の例のように記載され得るが、下記の例に限定されない。
[例1]
光計算システムであって、
ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、
変調マスクを受け取り、前記変調マスクに基づいて前記ポンプ・ビームを変調し、変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、
前記変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、前記SHビーム及び前記ポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、
前記非線形媒質の前記出力を受信し、前記SHビームと前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分の第1光パワーを検出し、前記SHビームの第2光パワーを検出するように構成される検出器と、
前記光変調装置へ送信するために、前記第1及び第2の光パワーに基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラと、
を備える光計算システム。
[例2]
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して前記変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を備える、例1に記載の光計算システム。
[例3]
前記変調マスクは、ランダムな2値位相パターンである、例2に記載の光計算システム。
[例4]
前記空間光変調装置は、前記ウェーブレットの各々の1つの位相を前記変調マスクに基づいて第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、
前記第1及び第2の位相は、180度離れている、例2に記載の光計算システム。
[例5]
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調して前記変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを備える、例1に記載の光計算システム。
[例6]
前記非線形媒質の内部で前記変調されたビームを集束させるように構成される第1レンズと、
前記非線形媒質の前記出力を前記ダイクロイック・ミラーに平行にするように構成される第2レンズとをさらに備える、例1に記載の光計算システム。
[例7]
前記検出器は、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分の前記第1光パワーを検出するように構成される第1光検出器と、
前記SHビームの前記第2光パワーを検出するように構成される第2光検出器とを備え、
前記非線形媒質は、周期分極ニオブ酸リチウム結晶を含む、例1に記載の光計算システム。
[例8]
前記変調マスクは、複数の画素を含み、
前記コントローラは、前記第1及び第2の光パワーに基づいて前記画素のクラスターを識別し、前記画素の前記クラスターの画素を反転させることにより、前記更新された変調マスクを生成するように構成される、例1に記載の光計算システム。
[例9]
システム・エネルギーの近似的基底状態を決定するために光計算システムを制御する方法であって、
ポンプ・ビームを生成するために光源を駆動すること、
位相マスクを生成すること、
前記位相マスクを空間光変調装置に適用して、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して、前記位相マスクに基づいて変調されたビームを生成すること、及び
前記ポンプ・ビームの第1光パワー及び前記ポンプ・ビームに基づいて生成される第2高調波(SH)ビームの第2光パワーを検出器から受信することを含み、
前記位相マスクを前記生成することは、
前記位相マスクのクラスターを識別すること、
前記第1光パワーに基づいて現在のシステム・エネルギーを決定すること、
少なくとも前記システム・エネルギー及び以前の最小システム・エネルギーに基づいて、前記位相マスクを更新するかどうかを決定すること、及び
前記位相マスクを更新することを決定することに応答して、前記位相マスクの前記クラスターに基づいて前記位相マスクを更新することを含む、方法。
[例10]
前記位相マスクを前記生成することは、
前記位相マスクを更新しないことを決定することに応答して、前記現在のシステム・エネルギーと前記以前の最小システム・エネルギーのうち小さい方を、前記近似的基底状態として識別することをさらに含む、例9に記載の方法。
[例11]
前記位相マスクを前記生成することは、
熱エネルギーを識別すること、
前記現在のシステム・エネルギー及び前記以前の最小システム・エネルギーに基づいて、システム・エネルギーの変化を計算すること、及び
前記システム・エネルギーの変化及び前記熱エネルギーに基づいてボルツマン確率を決定することをさらに含み、
前記位相マスクを更新するかどうかを前記決定することは、前記ボルツマン確率にさらに基づく、例9に記載の方法。
[例12]
前記位相マスクを更新するかどうかを前記決定することは、
フィードバック反復回数が閾値未満であることを決定すること、及び
前記位相マスクを更新することを決定することを含む、例9に記載の方法。
[例13]
光計算システムであって、
ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、
変調マスクを受け取り、前記変調マスクに基づいて前記ポンプ・ビームを変調して変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、
前記変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、前記SHビーム及び前記ポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、
前記非線形媒質の前記出力を受信し、前記SHビームと前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を捕捉し、第1強度行列を生成するように構成される第1カメラと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を捕捉し、第2強度行列を生成するように構成される第2カメラと、
前記光変調装置に送信するために、前記第1及び第2の強度行列の少なくとも一方に基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラとを備える、光計算システム。
[例14]
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して前記変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を備え、
前記変調マスクは、2値位相パターンである、例13に記載の光計算システム。
[例15]
前記空間光変調装置は、前記変調マスクに基づいて、前記ウェーブレットの各々の1つの位相を第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、
前記第1及び第2の位相は、180度離れている、例14に記載の光計算システム。
[例16]
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調して前記変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを備える、例13に記載の光計算システム。
[例17]
前記コントローラは、
カメラ状態を、前記第1強度行列、前記第2強度行列、又は前記第1及び第2の強度行列の加重和として決定すること、及び
前記変調マスク及び前記カメラ状態に基づいて、前記更新された変調マスクを決定することにより、
前記更新された変調マスクを生成するように構成される、例13に記載の光計算システム。
[例18]
前記変調マスク及び前記カメラ状態に基づいて前記更新された変調マスクを前記決定することは、前記更新された変調マスクを、前記変調マスクと、前記カメラ状態及びフィードバック・ステップ・サイズの乗算との間の差として決定することを含む、例17に記載の光計算システム。
[例19]
前記ポンプ・ビームは、前記光源によって生成されるガウシアン・パルス列のガウシアン・パルスを含み、
前記フィードバック・ステップ・サイズは、前記ガウシアン・パルス列の周期性に対応する、例18に記載の光計算システム。
[例20]
前記コントローラは、前記更新された変調マスクを生成する前に、前記フィードバック・ステップ・サイズを適応的に調整するように構成される、例18に記載の光計算システム。
[例21]
光コンピューティング・システムであって、
平坦な位相フロントを有するポンプ・ビームを生成するように構成される光増幅器と、
前記ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、
前記信号から前記ポンプ・ビームをフィルタリングするように構成される光学フィルタと、
前記信号の一部を読み出すように構成される光ビーム・スプリッタと、
前記信号に基づいて第2高調波光を生成するように構成される非線形光学結晶と、
前記信号と前記第2高調波光を分離するように構成される第1デュアルバンド・リフレクタと、
前記第2高調波光を前記光増幅器に結合するように構成される光受信器と、
前記縮退光パラメトリック増幅器へ前記信号と第2高調波光を結合するように構成される第2デュアルバンド・リフレクタとを備える、光コンピューティング・システム。
[例22]
第2高調波光を生成するために前記信号を前記非線形光学結晶に集束するように構成される第1フーリエ・レンズと、
前記第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの間にあって、前記信号の焦点をぼかすように構成される第2フーリエ・レンズとをさらに備える、例21に記載の光コンピューティング・システム。
[例23]
前記第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの各々は、ダイクロイック・ミラー又は光学フィルタを備える、例21に記載の光コンピューティング・システム。
[例24]
前記信号が前記光コンピューティング・システムを連続的に横切るとき、光パラメトリック発振が起こるまで前記光増幅器の光学利得を増加させる、例21に記載の光コンピューティング・システム。
[例25]
前記縮退光パラメトリック増幅器と前記非線形光学結晶との間で、前記信号が前記非線形光学結晶に到達する前に前記信号を変調して前記光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第1光変調装置をさらに備える、例21に記載の光コンピューティング・システム。
[例26]
前記非線形光学結晶と前記光受信器との間で、前記第2高調波光を変調して前記光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第2光変調装置をさらに備える、例24に記載の光コンピューティング・システム。
[例27]
光コンピューティング・システムであって、
平坦な位相フロントを有する増幅された信号を生成するように構成される光増幅器と、
前記増幅された信号を受信し、前記増幅された信号に基づいて第2高調波生成によりポンプ・ビームを生成するように構成される非線形光学デバイスと、
前記ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、
前記ポンプ・ビームを前記信号からフィルタリングするように構成される光学フィルタと、
前記信号の一部を読み出すように構成される第1光ビーム・スプリッタと、
前記信号の前記一部を変調するために前記信号の第1部分を光変調装置に向け、前記信号の第2部分をダイクロイック・ミラーに向けるように構成される第2光ビーム・スプリッタと、
前記信号の前記変調された第1部分を前記光増幅器に結合して前記増幅された信号を生成するように構成される光受信器とを備え、
前記ダイクロイック・ミラーは、前記縮退光パラメトリック増幅器へ前記信号の前記第2部分を前記ポンプ・ビームと結合するように構成される、光コンピューティング・システム。
[例28]
前記光変調装置は、空間光変調装置又はデジタル・マイクロミラー・デバイスを備え、
前記非線形光学デバイスは、非線形光学結晶又は光導波路を備える、例27に記載の光計算システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コンピューティング・システムであって、
平坦な位相フロントを有するポンプ・ビームを生成するように構成される光増幅器と、
前記ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、
前記信号から前記ポンプ・ビームをフィルタリングするように構成される光学フィルタと、
前記信号の一部を読み出すように構成される光ビーム・スプリッタと、
前記信号に基づいて第2高調波光を生成するように構成される非線形光学結晶と、
前記信号と前記第2高調波光を分離するように構成される第1デュアルバンド・リフレクタと、
前記第2高調波光を前記光増幅器に結合するように構成される光受信器と、
前記縮退光パラメトリック増幅器へ前記信号と第2高調波光を結合するように構成される第2デュアルバンド・リフレクタとを備える、光コンピューティング・システム。
【請求項2】
第2高調波光を生成するために前記信号を前記非線形光学結晶に集束するように構成される第1フーリエ・レンズと、
前記第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの間にあって、前記信号の焦点をぼかすように構成される第2フーリエ・レンズとをさらに備える、請求項
1に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項3】
前記第1及び第2のデュアルバンド・リフレクタの各々は、ダイクロイック・ミラー又は光学フィルタを備える、請求項
1に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項4】
前記信号が前記光コンピューティング・システムを連続的に横切るとき、光パラメトリック発振が起こるまで前記光増幅器の光学利得を増加させる、請求項
1に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項5】
前記縮退光パラメトリック増幅器と前記非線形光学結晶との間で、前記信号が前記非線形光学結晶に到達する前に前記信号を変調して前記光コンピューティング・システムの有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第1光変調装置をさらに備え
、
前記非線形光学結晶と前記光受信器との間で、前記第2高調波光を変調して前記光コンピューティング・システムの前記有効4体相互作用ハミルトニアンを変更するように構成される第2光変調装置をさらに備える、請求項1に記載の光コンピューティング・システム。
【請求項6】
光コンピューティング・システムであって、
平坦な位相フロントを有する増幅された信号を生成するように構成される光増幅器と、
前記増幅された信号を受信し、前記増幅された信号に基づいて第2高調波生成によりポンプ・ビームを生成するように構成される非線形光学デバイスと、
前記ポンプ・ビームに基づいて小さなウェーブレットで2波長の信号を生成するように構成される縮退光パラメトリック増幅器と、
前記ポンプ・ビームを前記信号からフィルタリングするように構成される光学フィルタと、
前記信号の一部を読み出すように構成される第1光ビーム・スプリッタと、
前記信号の前記一部を変調するために前記信号の第1部分を光変調装置に向け、前記信号の第2部分をダイクロイック・ミラーに向けるように構成される第2光ビーム・スプリッタと、
前記信号の前記変調された第1部分を前記光増幅器に結合して前記増幅された信号を生成するように構成される光受信器とを備え、
前記ダイクロイック・ミラーは、前記縮退光パラメトリック増幅器へ前記信号の前記第2部分を前記ポンプ・ビームと結合するように構成される、光コンピューティング・システム。
【請求項7】
前記光変調装置は、空間光変調装置又はデジタル・マイクロミラー・デバイスを備え、
前記非線形光学デバイスは、非線形光学結晶又は光導波路を備える、請求項
6に記載の光計算システム。
【請求項8】
光計算システムであって、
ポンプ・ビームを生成するように構成される光源と、
変調マスクを受け取り、前記変調マスクに基づいて前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相又は強度を変調し、変調されたビームを生成するように構成される光変調装置と、
前記変調されたビームの一部を第2高調波(SH)ビームに変換し、前記SHビーム及び前記ポンプ・ビームの未変換部分を含む出力を生成するように構成される非線形媒質と、
前記非線形媒質の前記出力を受信し、前記SHビームと前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を分離するように構成されるダイクロイック・ミラーと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分の第1光パワーを検出し、前記SHビームの第2光パワーを検出するように構成される検出器と、
前記光変調装置へ送信するために、前記第1及び第2の光パワーに基づいて更新された変調マスクを生成するように構成されるコントローラと、
を備える光計算システム。
【請求項9】
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して前記変調されたビームを生成するように構成される空間光変調装置を備え、
前記変調マスクは、ランダムな2値位相パターンであり、
前記空間光変調装置は、前記ウェーブレットの各々の1つの位相を前記変調マスクに基づいて第1位相又は第2位相のいずれかとして符号化することにより、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調するように構成され、
前記第1及び第2の位相は、180度離れている、請求項8に記載の光計算システム。
【請求項10】
前記光変調装置は、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの強度を変調して前記変調されたビームを生成するように構成されるデジタル・マイクロミラー・デバイスを備える、請求項8に記載の光計算システム。
【請求項11】
前記非線形媒質の内部で前記変調されたビームを集束させるように構成される第1レンズと、
前記非線形媒質の前記出力を前記ダイクロイック・ミラーに平行にするように構成される第2レンズとをさらに備える、請求項8に記載の光計算システム。
【請求項12】
前記検出器は、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分の前記第1光パワーを検出するように構成される第1光検出器と、
前記SHビームの前記第2光パワーを検出するように構成される第2光検出器とを備え、
前記非線形媒質は、周期分極ニオブ酸リチウム結晶を含む、請求項8に記載の光計算システム。
【請求項13】
前記変調マスクは、複数の画素を含み、
前記コントローラは、前記第1及び第2の光パワーに基づいて前記画素のクラスターを識別し、前記画素の前記クラスターの画素を反転させることにより、前記更新された変調マスクを生成するように構成される、請求項8に記載の光計算システム。
【請求項14】
前記検出器は、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を捕捉し、第1強度行列を生成するように構成される第1カメラと、
前記ポンプ・ビームの前記未変換部分を捕捉し、第2強度行列を生成するように構成される第2カメラとを備え、
前記コントローラは、
カメラ状態を、前記第1強度行列、前記第2強度行列、又は前記第1及び第2の強度行列の加重和として決定すること、及び
前記光変調装置に送信するために、前記変調マスク及び前記カメラ状態に基づいて、前記更新された変調マスクを決定すること
により、前記第1及び第2の強度行列の少なくとも一方に基づいて更新された変調マスクを生成するように構成される、請求項8に記載の光計算システム。
【請求項15】
システム・エネルギーの近似的基底状態を決定するために、請求項8に記載の光計算システムを制御する方法であって、
前記ポンプ・ビームを生成するために前記光源を駆動するステップ、
位相マスクを生成するステップ、
前記位相マスクを空間光変調装置に適用して、前記ポンプ・ビームのウェーブレットの位相を変調して、前記位相マスクに基づいて変調されたビームを生成するステップ、及び
前記第1光パワー及び第2光パワーを前記検出器から受信するステップを含み、
前記生成するステップは、
前記位相マスクのクラスターを識別するステップ、
前記第1光パワー及び/又は前記第2光パワーに基づいて現在のシステム・エネルギーを決定するステップ、
少なくとも前記現在のシステム・エネルギー及び以前の最小システム・エネルギーに基づいて、前記位相マスクを更新するかどうかを決定するステップ、及び
前記位相マスクを更新するステップの決定に応答して、前記位相マスクの前記クラスターに基づいて前記位相マスクを更新するステップを含む、方法。
【国際調査報告】