(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】質量分析のための試薬
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20230620BHJP
C07D 249/12 20060101ALI20230620BHJP
C07D 213/20 20060101ALI20230620BHJP
C07C 243/34 20060101ALI20230620BHJP
C07C 309/81 20060101ALI20230620BHJP
C07C 211/63 20060101ALI20230620BHJP
C07F 9/54 20060101ALI20230620BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20230620BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G01N27/62 V
C07D249/12 508
C07D213/20 ZNA
C07C243/34
C07C309/81
C07C211/63
C07F9/54
G01N30/06 E
G01N30/72 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570528
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021063295
(87)【国際公開番号】W WO2021234002
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ハインドル,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】コボルト,ウーベ
(72)【発明者】
【氏名】クーヘルマイスター,ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】メルツ,ヘリベルト
(72)【発明者】
【氏名】プレンシプ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】レンプト,マルティン
【テーマコード(参考)】
2G041
4C055
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041FA13
2G041GA09
2G041JA04
2G041JA13
2G041JA20
4C055AA04
4C055AA09
4C055AA11
4C055AA13
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA01
4C055FA01
4C055FA15
4C055FA31
4C055FA32
4C055GA01
4H006AA01
4H006AB80
4H050AA01
4H050AB80
(57)【要約】
本発明は、質量分析で使用するのに適した化合物、ならびに該化合物を用いる分析物分子の質量分析測定の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物の質量分析測定のための、式I
【化1】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、前記分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムである場合、B1またはB5は、前記カップリング基Qであり、Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まず、前記カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、前記カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
の化合物。
【請求項2】
前記カップリング基Qが、以下の式II:
【化2】
(式中、Kは、前記分析物と共有結合を形成し得る反応性ユニットであり、
nは、0、1、2、3、4または5であり、
Xは式Iのフェニル基の炭素原子である)
によるXに結合している、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Kが、前記分析物のカルボニル基、フェノール基、アミン、ヒドロキシル基またはジエン基と反応し得る、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Kが、ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、Br、F-芳香族、4-置換1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(TAD)、活性エステル、塩化スルホニルおよび反応性カルボニルからなる群から選択される、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
Qが、メチルヒドラジド、メチルヒドラジン、メチルヒドロキシルアミン、オキシアミン、4-メチル-オキシ-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(CH
2-O-TAD)、2,4-ジニトロ-5-フルオロアニリン誘導体、クロルスルホニルおよびメタンスルホニルクロリドからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
A3が、ピリジニウム、トリメチルアンモニウム、ホスホニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、メチルジエチルアンモニウムおよびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
A3がNR1R2R3またはPR4R5R6であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6が、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、置換フェニル、非置換フェニル、アルキル、修飾アルキル、短鎖アルキルから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が永久的に正に帯電しており、好ましくは前記化合物が以下の式:
【化3】
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に化合物、または請求項9に記載の組成物を含む、キット。
【請求項11】
互いに共有結合した結合分析物および結合化合物を含む、質量分析測定を使用して分析物を検出するための複合体であって、特に、前記結合化合物が式III
【化4】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成するカップリング基Q
*であり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
前記カップリング基Q
*が式IVを含む:
【化5】
(式中、n
*は0、1、2、3、4、または5であり;
前記結合分析物は、K
*を介して共有結合しており、
X
*は式IIIのフェニル基の炭素原子であり、
A3がアンモニウムであり、かつB1またはB5が前記カップリング基Q
*である場合、前記カップリング基Q
*は、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、前記カップリング基Q
*は、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む))
を含む、複合体。
【請求項12】
前記分析物の質量分析測定のための請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、特に前記質量分析測定が、タンデム質量分析測定、特にトリプル四重極質量分析測定を含む、使用。
【請求項13】
分析物の質量分析測定のための方法であって、
(a)前記分析物を、請求項1~9のいずれか一項に記載の式Iの化合物と反応させ、それによって請求項11に記載の複合体を形成する工程、および
(b)工程(a)からの前記複合体を、質量分光分析に供する工程
を含み、特に該質量分光分析工程(b)は、
(i)前記複合体のイオンを質量分光分析の第1段階に供し、それによって前記複合体の前記イオンをその質量/荷電(m/z)比に従って特徴付ける工程、
(ii)前記複合体の前記イオンのフラグメンテーションを引き起こし、それによって第1の要素、特に第1の中性要素、特に低分子の中性要素が放出され、前記複合体の娘イオンが生成される工程であって、前記複合体の前記娘イオンはそのm/z比が前記複合体の前記イオンと異なる、前記複合体の娘イオンが生成される工程、および
(iii)前記複合体の前記娘イオンを質量分光分析の第2段階に供し、それによって前記複合体の前記娘イオンをそのm/z比に従って特徴付ける工程
を含み、ならびに/または
(ii)は、前記複合体の前記イオンの代替的なフラグメンテーションを更に含み得、それによって、第2の要素、特に前記第1の中性要素とは異なる第2の中性要素が放出され、かつ前記複合体の第2の娘イオンが生成され、
(iii)は、前記複合体の前記第1の娘イオンおよび前記第2の娘イオンを質量分光分析の第2段階に供することを更に含み得、それによって、前記複合体の前記第1の娘イオンおよび前記第2の娘イオンをそれらのm/z比に従って特徴付ける、
方法。
【請求項14】
式V:
【化6】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、前記分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムである場合、B1またはB5は、前記カップリング基Qであり、Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まず、前記カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、前記カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、質量分析に使用するのに適した化合物、該化合物を含む組成物、該組成物および/または化合物および複合体を含むキットに関する。さらに、本発明は、前記化合物を使用する分析物の質量分析定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
質量分析(MS)は、小分子から高分子にわたる化学物質の定性および定量分析に広く使用されている技術である。概してこれは非常に高感度で特異的な方法であり、複雑な生物学的サンプル、例えば環境または臨床サンプルの分析さえ可能である。しかしながら、いくつかの分析物、特に血清のような複雑な生物学的マトリックスから分析した場合、測定の感度は依然として問題である。
【0003】
多くの場合、MSは、クロマトグラフィー技術、特にガスおよび液体クロマトグラフィー、例えばHPLCと組み合わされる。ここで、分析された目的の分子(分析物)は、クロマトグラフィーで分離され、個別に質量分析(Higashiら(2016)J.of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 130 p.181-190)に供される。
【0004】
しかし、MS分析法、特に存在量が少ないかまたは利用可能な材料が少ない(生検組織など)場合の分析物の分析の感度を高める必要性は、依然として存在する。
【0005】
当技術分野では、これらの分析物の測定の感度を改善することを目的とするいくつかの誘導体化試薬(化合物)が知られている。中でも、荷電ユニットおよび中性損失ユニットが1つの機能単位に結合した試薬である(例えば、国際公開第2011/091436号)。別個のユニットを含む他の試薬は構造的に比較的大きく、サンプル調製およびMS測定の一般的なワークフローに影響を及ぼす(Rahimoffら(2017)J.Am.Chem.Soc.139(30),p.10359-10364)。既知の誘導体化試薬は、例えば、ダンシルクロリド、RapiFluor-MS(RFMS)、Cookson型試薬、Amplifex Diene、Amplifex Keto、Girard T、Girard P、ピリジルアミンである(HongおよびWang,Anal Chem.,2007,79(1):322-326;Freyら,Steroids,2016 Dec,116:60-66;Francisら,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2005,39(3-4),411-417;Alley William,28th International Carbohydrate Symposium,New Orleans,LA,United States,July 17-21(2016),ICS-209)。これらには、全て、しばしば、ラベル効率が不十分であること、カップリング化学に起因する構造異性体の生成、最適でないイオン化効率、カップリング後のクロマトグラフ分離に対する不利益、多くのフラグメンテーション経路に起因する最適でないフラグメンテーション挙動、および高い衝突エネルギーの必要性に起因するに起因する不利益がある。感度および選択性は、非常に少量の分析物には十分ではない。
【0006】
したがって、MS測定ワークフローに悪影響を及ぼさない化学構造を示すだけでなく、複雑な生物学的マトリックスからの分析物の高感度検出を可能にする誘導体化試薬が当該技術分野で早急に必要とされている。これは、異なる化学的特性を呈するいくつかの異なる分析物を短時間で測定しなければならない、ランダムアクセス、ハイスループットMSセットアップにおいて特に重要である。
【0007】
本発明は、生物学的サンプル中のステロイド、タンパク質、および他の種類の分析物などの分析物分子の高感度の検出を可能にする新規な試薬(化合物)に関する。試薬は、特定の分析物の測定で生じる特定の必要性のため、または特定のワークフロー適応のために個々の適応を可能にするようなモジュール方式で設計される。
【0008】
本発明の目的は、質量分析決定による分析物の効率的な検出のための式Iの化合物、これらの各々が前記化合物を含むキットおよび組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、分析物の質量分析決定のための複合体および方法を提供することである。
【0009】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項において言及される。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
以下では、本発明は以下の項目に関する。
【0011】
第1の態様では、本発明は、分析物の質量分析決定のための、式I
【化1】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、好ましくはA3はアンモニウムであり、B1またはB5はQであり、Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない)
の化合物に関する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1項目の化合物を含む組成物に関する。
【0013】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1項目の化合物または本発明の第2項目の組成物を含むキットに関する。
【0014】
第4の態様では、本発明は、互いに共有結合した結合分析物および結合化合物を含む、質量分析決定を用いて分析物を検出するための複合体に関し、特に、複合体は、分析物と本発明の第2項目の化合物との化学反応によって形成される。
【0015】
第5の態様では、本発明は、分析物の質量分析決定のための本発明の第1項目の化合物の使用に関する。
【0016】
第6の態様では、本発明は、分析物の質量分析決定のための方法であって、
(a)分析物を、態様1~32のいずれか一項で定義された式Iの化合物と反応させ、それによって、態様35~38のいずれか一項で定義された複合体を形成させる工程、
(b)工程(a)からの複合体を質量分析に供する工程
を含む、方法に関する。
【0017】
第7の態様では、本発明は、式V:
【化2】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
の化合物に関する。好ましくは、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はカップリング基Qであり、QはO、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。
【0018】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ピーク 「分裂」 の概略図を示す。分析物分子の誘導体化反応から生じる種々の異性体を互いに分離するクロマトグラフィシステムの能力を説明する。
【
図2】
図2は、エンハンスメントファクターを決定するワークフローの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態および例に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、その範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0021】
いくつかの文献が本明細書中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参照の定義または教示と、本明細書に引用された定義または教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0022】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態と共に列挙されているが、これらは任意の方法および任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成することができることを理解されたい。種々の説明された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示および/または好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、かつ包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列および組み合わせは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
【0023】
定義
「を含む(comprise)」という語、ならびに「を含む(comprises)」および「を含んでいる(comprising)」などの変化形は、明記した整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群を含むことを意味するが、他のいかなる整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群を除外することを意味するものではないことが理解されよう。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
比率、濃度、量、および他の数値データは、「範囲」の形式で本明細書に表すまたは提示することができる。このような範囲の形式は、便宜上および簡潔にするために単に使用されているに過ぎないこと、したがって、その範囲を限定するものとして明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値および部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとくその範囲に包含される個々の数値の全てまたは部分範囲を含むことを柔軟に解釈するべきであると理解される。例示として、「4%~20%」の数値範囲は、4%~20%という明示的に列挙されている値を含むだけではなく、表示されている範囲内の個々の値および部分範囲を含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、4、5、6、7、8、9、10、...18、19、20%等の個々の値と、4~10%、5~15%、10~20%等のサブレンジとが含まれる。この同じ原則は、最小値または最大値を列挙する範囲に適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅または記載されている特性に関わらず、当てはまるはずである。
【0025】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、かつ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0026】
本発明の文脈において、「化合物」という用語は、特定の化学構造を有する化学物質を指す。前記化合物は、1つ以上の反応性基を含み得る。各反応性基は種々の機能を果たし得、または2つ以上の反応性基は同じ機能を果たし得る。反応性基としては、反応性ユニット、荷電ユニットおよび中性損失ユニットが挙げられるが、これらに限定されない。化合物はラベルとして命名し得る。本発明の文脈において、「結合化合物」という用語は、分析物に結合している前記化合物を指す。原則として、化合物および結合化合物は同一であり得る。化合物および結合化合物は、実質的に同一であり得る。実質的に同一とは、反応性ユニットKの構造および/またはカップリング基Qの構造が互いに異なることを除いて、両方の化合物が同一の化学構造を有することを意味し得る。好ましくは、化合物は、分析物への結合を形成し得るが、分析物にまだ結合していない。結合化合物は、分析物に結合する。
【0027】
「CA1A2A3置換基のC原子」という用語は、置換基A1、A2およびA3が結合しているC原子を表す。換言すれば、「CA1A2A3置換基」という用語における「C」は、A1、A2およびA3が結合しているC原子を表す。
【0028】
「A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む」という用語は、A3がアンモニウムであり、B1がカップリング基Qである場合、カップリング基Qが、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離された第1のC原子を含むことを意味し得る。カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離された第2のC原子を含む。
【0029】
「A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む」という用語は、A3がアンモニウムであり、B5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qが、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離された第1のC原子を含むことを意味し得る。カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離された第2のC原子を含む。「第1」または「第2」という用語は、本明細書では2つのC原子を互いに区別するのに役立つ。
【0030】
「A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む」という用語は、A3がアンモニウムである場合、B1またはB5がカップリング基Qを必須とすることを意味し得る。カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離された第1のC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む。好ましくは、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はQであり、Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。
【0031】
「A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Q*である場合、カップリング基Q*は、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Q*は、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む」という用語は、A3がアンモニウムであり、B1がカップリング基Q*である場合、カップリング基Q*が、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離された第1のC原子を含むことを意味し得る。カップリング基Q*は、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離された第2のC原子を含む。「A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Q*である場合、カップリング基Q*は、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Q*は、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む」という用語は、A3がアンモニウムであり、B5がカップリング基Q*である場合、カップリング基Q*が、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離された第1のC原子を含むことを意味し得る。カップリング基Q*は、CA1A2A3置換基のC原子である別のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離された第2のC原子を含む。「第1」または「第2」という用語は、本明細書では2つのC原子を互いに区別するのに役立つ。
【0032】
「質量分析」(「Mass Spec」または「MS」)または「質量分析決定」という用語は、化合物をその質量によって同定するために使用される分析技術に関する。MSは、その質量電荷比または「m/z」に基づいてイオンをフィルタにかける、検出する、および測定する方法である。MS技術は、概して、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成すること;および、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算することを含む。化合物は、任意の好適な手段によってイオン化されて、検出され得る。「質量分析計」は、一般に、イオン化装置およびイオン検出器を含む。一般に、1つ以上の目的の分子がイオン化されて、続いて、このイオンは、質量分析機器に導入されて、この機器において、磁場および電場の組み合わせにより、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存して空間の経路をたどる。「イオン化」または「イオン化する」という用語は、1つ以上の電子単位に等しい正味の電荷を有する分析物のイオンを発生させるプロセスを指す。陰イオンは、1つ以上の電子単位の正味の負電荷を有するものである一方、陽イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味の正電荷を有するものである。MS法は、ネガティブイオンを発生させ検出する「ネガティブ・イオン・モード」、またはポジティブイオンを発生させ検出する「ポジティブ・イオン・モード」のいずれかで実施し得る。
【0033】
「タンデム質量分析」または「MS/MS」は、分析物のフラグメンテーションが段階間で生じる、質量分析の選択の複数工程を含む。タンデム質量分析計では、イオンをイオン源で生成し、質量分析の第1段階(MS1)で質量電荷比により分離する。特定の質量電荷比(前駆イオンまたは親イオン)のイオンが選択され、フラグメントイオン(娘イオン)が、衝突誘起解離、イオン分子反応、または光解離によって生成される。次いで、得られたイオンを分離し、質量分析の第2段階(MS2)で検出する。
【0034】
質量分析計は、わずかに異なる質量のイオンを分離して検出するので、所与の元素からなる異なる同位体を容易に区別する。したがって、質量分析は、以下に限定されないが、低分子量の分析物、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含めた、分析物の正確な質量測定および特徴付けのための重要な方法である。その用途は、タンパク質およびその翻訳後修飾の同定、タンパク質複合体、そのサブユニットおよび機能的相互作用の解明、ならびにプロテオミクスにおけるタンパク質の全測定を含む。質量分析によるペプチドまたはタンパク質のデノボ配列決定は、通常、アミノ酸配列のこれまでの知識なしに行い得る。
【0035】
MSにおけるほとんどのサンプルワークフローは、さらに、サンプル調製および/または濃縮プロセスを含む。ここで、例えば目的の分析物は、ガスまたは液体クロマトグラフィーを用いてマトリクスから分離する。典型的には、質量分析決定のために、以下の3つの工程が実行される。
【0036】
1.目的の分析物を含むサンプルを、通常は陽イオンとの複合体形成、多くの場合は陽イオンへのプロトン化によってイオン化する。イオン化源は、エレクトロスプレイイオン化(electrospray ionization:ESI)および大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionization:APCI)を含むが、これらに限定されない。
【0037】
2.該イオンをその質量および電荷に従って分類し、分離する。イオンフィルターとして、高磁場非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)を用いてもよい。
【0038】
3.分離されたイオンを、例えば多重反応モード(multiple reaction mode:MRM)で検出し、その結果をチャートに表示する。
【0039】
「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」という用語は、溶液を長さの短いキャピラリー管に沿って通過させて、キャピラリー管の端部に高い正電位または負電位を印加する、方法を指す。チューブの端に到達した溶液は、溶媒蒸気中の非常に小さな液滴のジェットまたはスプレイへと気化(噴霧)される。液滴のこの霧は、エバポレーションチャンバーを通り、このチャンバーは、わずかに加熱されて、縮合を予防して溶媒をエバポレートする。液滴が小さくなるほど、同じ電荷間の自然な反発によってイオンと中性分子が放出されるまで、電気的な表面電荷密度が向上する。
【0040】
「大気圧化学イオン化」または「APCI」という用語は、ESIに類似した質量分析法を指す。しかしながら、APCIは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン分子反応によってイオンを生成する。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極との間の電気放電により維持される。次いで、イオンは、典型的には、一連の差動励起スキマー段を使用することによって質量分析器に抽出される。溶媒の除去を改善するために、乾燥窒素ガスおよび予熱した窒素ガスの向流を使用し得る。APCIにおける気相イオン化は、低極性要素を分析するためにESIよりも効果的であり得る。
【0041】
「高磁場非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)」は、気相イオンを強電界および弱電界での挙動によって分離する大気圧イオン移動度技術である。
【0042】
「多重反応モード」または「MRM」は、前駆体イオンおよび1つ以上のフラグメントイオンが選択的に検出される、MS機器用の検出モードである。
【0043】
質量分析決定は、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、特にHPLC、および/またはイオン移動度に基づく分離技法等のクロマトグラフィー法を含めた追加の分析法と組み合わされてもよい。
【0044】
本開示の文脈において、「分析物」、「分析物分子」、または「目的の分析物」という用語は、質量分析によって分析される化学種を指すために互換的に使用される。質量分析によって分析されるのに適した化学種(chemical specis)、すなわち分析物は、核酸(例えば、DNA、mRNA、miRNA、rRNA等)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、細胞質タンパク質等)、代謝産物またはホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール等)、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド(例えば、ビタミンD)、別の分子のある特定の修飾に特徴的な分子(例えば、タンパク質上の糖部分またはホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、もしくは生物によって内在化されている物質(例えば、治療薬、依存性薬物、毒素等)、またはそのような物質の代謝産物を含むが、これらに限定されない、生存生物内に存在する任意の種類の分子であり得る。このような被分析物は、バイオマーカーとして役立つことがある。本発明の文脈において、用語「バイオマーカー」とは、前記システムの生物学的状態の指標として使用される、生物学的システム内の物質を指す。本発明の文脈において、「結合分析物」という用語は、複合体を形成するための化合物に結合している前記分析物を指す。原則として、分析物および結合分析物は同一であり得る。分析物および結合分析物は、実質的に同一であり得る。実質的に同一とは、官能基の構造によって互いに異なることを除き、両分析物が同一の化学構造を有することを意味し得る。好ましくは、分析物は、化合物への結合を形成し得るが、化合物にまた結合していない。結合分析物は、化合物に結合される。
【0045】
「永久的に正に帯電した」という用語は、ピリジニウムまたはアンモニウムまたはホスホニウム単位の正電荷が、例えば洗浄、希釈、濾過などによって容易に可逆的ではないという本開示の文脈で使用されている。永久的な正電荷は、例えば、共有結合の結果であり得る。永久的な正電荷は、例えば静電相互作用の結果であり得る可逆正電荷(非永続的正電荷)とは対照的である。
【0046】
「検出限界」または「LOD」という用語は、生物学分析法が分析物をバックグラウンドノイズから確実に区別することができる、分析物の最低濃度である。
【0047】
分析物は、目的のサンプル中、例えば、生体サンプルまたは臨床サンプル中に存在することがある。「サンプル」または「対象サンプル」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官、または個体の部分または一部を指し、典型的には、組織、器官または個体の全体を表すことを意図したそのような組織、器官、または個体よりも小さい。分析に際して、サンプルは、組織状態、あるいは器官もしくは個体の健康状態または疾患状態に関する情報を提供する。サンプルの例としては、以下に限定されないが、血液、血清、血漿、滑液、髄液、尿、唾液およびリンパ液等の液体サンプル、または乾燥血液スポットおよび組織抽出物等の固体サンプルが挙げられる。サンプルの更なる例は、細胞培養物または組織培養物である。
【0048】
本開示の文脈において、サンプルは、「個体」または「対象」に由来し得る。典型的には、対象は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
質量分析による分析前に、サンプルは、サンプルおよび/または分析物に特有の方法で前処理されてもよい。本開示の文脈において、「前処理」という用語は、質量分析による所望の分析物の後の分析を可能にするために必要な任意の手段を指す。前処理手段としては、典型的には、固体サンプルの溶出(例えば、乾燥血液スポットの溶出)、全血サンプルへの溶血試薬(hemolizing reagent:HR)の添加、および尿サンプルへの酵素試薬の添加が挙げられるが、これらに限定されない。また、サンプルの前処理として内部標準(internal standard:ISTD)の添加が考えられる。
【0050】
「溶血試薬(hemolysis reagent:HR)」という用語は、サンプル中に存在する細胞を溶解する試薬を指し、本発明の文脈においては、溶血試薬とは特に、全血サンプル中に存在する赤血球を含むがこれに限定されない、血液サンプル中に存在する細胞を溶解する試薬を指す。よく知られた溶血試薬は水(H2O)である。溶血試薬の更なる例としては、脱イオン水、高浸透圧の液体(例えば、8M尿素)、イオン性液体、および異なる界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
通常、「内標準」(ISTD)は、質量スペクトル検出のワークフローに施すと、目的の分析物と類似の特性を示す、既知量の物質である(すなわち、任意の前処理、濃縮および実際の検出工程を含む)。ISTDは目的の分析物と同様の特性を呈するが、目的の分析物とは明確に区別できる。例示すると、ガスまたは液体クロマトグラフィーのようなクロマトグラフ分離の間、ISTDは、サンプルからの目的分析物とほぼ同じ保持時間を有する。したがって、分析物およびISTDの両方が同時に質量分析計に入る。ISTDは、しかしながら、サンプルからの目的分析物とは異なる分子量を呈する。これにより、異なる質量/電荷(m/z)比を用いて、ISTDからのイオンと分析物からのイオンとを質量分析で区別することができる。両方をフラグメンテーションに供し、娘イオンを得る。これらの娘イオンは、互いのm/z比およびそれぞれの親イオンによって区別することができる。結果として、ISTDおよび分析物からのシグナルの別個の決定および定量化を行うことができる。ISTDは既知量で添加されているので、サンプルからの分析物のシグナル強度は、特定の定量的量の分析物に帰属し得る。かくして、ISTDの添加は、検出された分析物の量の相対的比較を可能にし、分析物(複数可)が質量分析計に到達した際、サンプル中に存在する目的の分析物の明白な同定および定量化を可能にする。典型的には、必ずしもそうではないが、ISTDは目的の分析物の同位体ラベルされたバリアントである(例えば、2H、13C、または15N等のラベルを含む)。
【0052】
前処理に加えて、サンプルをまた、1つ以上の濃縮プロセスに供してもよい。本開示の文脈において、用語「第1の濃縮プロセス」または「第1の濃縮ワークフロー」とは、サンプルの前処理に続いて発生し、初回サンプルと比べて濃縮された分析物を含むサンプルを提供する、濃縮プロセスを指す。第1の濃縮ワークフローは、化学沈殿(例えば、アセトニトリルを用いる)または固相の使用を含むことができる。好適な固相は、固相抽出(Solid Phase Extraction:SPE)カートリッジおよびビーズを含むが、これらに限定されない。ビーズは、非磁性、磁性、または常磁性であり得る。ビーズは、対象の分析物に特異的であるように、異なってコーティングされてもよい。コーティングは、意図された用途、すなわち意図された捕捉分子によって異なることがある。どのコーティングがどの分析物に適しているかは当業者によく知られている。ビーズは種々の異なる材料で作ることができる。ビーズは様々なサイズを有し得、細孔のあるまたは細孔のない表面を含み得る。いう用語
【0053】
本開示の文脈において、「第2の濃縮プロセス」または「第2の濃縮ワークフロー」という用語は、サンプルの前処理および第1の濃縮プロセスに続いて発生し、初回サンプルおよび第1の濃縮プロセス後のサンプルと比べて濃縮された分析物を含むサンプルを提供する、濃縮プロセスを指す。
【0054】
「クロマトグラフィー」という用語は、液体またはガスによって運ばれる化学混合物が、静止した液相または固相の周りまたは上を流れる際に化学要素の異なる分布の結果として成分中に分離される、プロセスを指す。
【0055】
「液体クロマトグラフィー」または「LC」という用語は、細かく分かれた物質のカラムまたは毛管路を通って流体が均一に浸透する際に、流体溶液の1つ以上の成分を選択的に遅延させるプロセスを指す。遅延は、この流体が固定相(複数可)に対して移動する際の、1つ以上の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物成分の分布に起因する。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は順相液体クロマトグラフィー(normal phase liquid chromatography:NPLC)と呼ばれ、固定相が移動相よりも低い極性である(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は逆相液体クロマトグラフィー(reversed phase liquid chromatography:RPLC)と呼ばれる。
【0056】
「高速液体クロマトグラフィー」または「HPLC」とは、圧力下において固定相、典型的には高密度に充填されたカラムに移動相を通すことによって分離の程度が増加する、液体クロマトグラフィーの方法を指す。典型的に、カラムには、不規則または球形の粒子、多孔質モノリシック層、または多孔質膜で構成される固定相が充填されている。HPLCは、歴史的に、移動相および固定相の極性に基づいて2つの異なるサブクラスに分けられる。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は順相液体クロマトグラフィ(NPLC)と呼ばれ、反対の(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)と呼ばれる。マイクロLCとは、典型的には1mm未満、例えば約0.5mmの狭い(norrow)内径を有するカラムを用いるHPLC法を指す。「超高速液体クロマトグラフィー」または「UHPLC」とは、120MPa(17,405lbf/in2)または約1200気圧の圧力を用いるHPLC法を指す。ラピッドLCとは、上記のような内径であり、長さが2cm未満、例えば1cmの短いカラムを用いて、上記のような流量および上記のような圧力を加えるLC法を指す(マイクロLC、UHPLC)。短いラピッドLCプロトコルは、単一の分析カラムを用いるトラッピング/洗浄/溶出工程を含み、1分未満の非常に短い時間でLCを実現する。
【0057】
さらに、親水性相互作用クロマトグラフィー(hydrophilic interaction chromatography:HILIC)、サイズ排除型LC、イオン交換型LC、およびアフィニティ型LCがよく知られている。
【0058】
LC分離は、並列に配置された複数のLCチャネルを含むシングルチャネルLCまたはマルチチャネルLCであってもよい。LCにおいて、分析物は、当業者に一般的に知られているように、それらの極性またはログP値、サイズ、または親和性に従って分離され得る。
【0059】
「フラグメンテーション」という用語は、単一の分子が2つ以上の別個の分子へと解離することを指す。本明細書で使用される場合、フラグメンテーションという用語は、フラグメンテーションイベントが発生する親分子の破壊点が明確に定義され、フラグメンテーションイベントから生じる複数の娘分子が充分に特徴付けられる、特定のフラグメンテーションイベントを指す。親分子および得られる複数の娘分子の破壊点を決定する方法は当業者に周知である。得られる娘分子は安定であり得るか、または後続のフラグメンテーションイベントの際に解離し得る。例えば、フラグメンテーションを受ける親分子がN-ベンジルピリジニウム単位を含む場合、当業者は、ピリジニウム単位がフラグメンテーションしてベンジル要素を放出するか、または親分子から完全に放出されるかを分子の全体構造に基づいて決定し得る。すなわち、得られた娘分子はベンジル分子およびベンジルを欠く親分子のいずれかである。フラグメンテーションは、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(electron-capture dissociation:ECD)、電子移動解離(electron-transfer dissociation:ETD)、負電子移動解離(negative electron-transfer dissociation:NETD)、電子脱離解離(electron-detachment dissociation:EDD)、光解離、特に赤外多光子解離(infrared multiphoton dissociation:IRMPD)および黒体赤外放射解離(blackbody infrared radiative dissociation:BIRD)、表面誘起解離(surface-induced dissociation:SID)、高エネルギーCトラップ解離(Higher-energy C-trap dissociation:HCD)、チャージ・リモート・フラグメンテーションを介して生じ得る。
【0060】
「反応性ユニット」という用語は、別の分子と反応し得る、すなわち、対象分析物などの別の分子と共有結合を形成し得るユニットを指す。典型的には、このような共有結合は、他の分子中に存在する化学基で形成される。したがって、化学反応の際、化合物の反応性ユニットは、分析物分子中に存在する好適な化学基と共有結合を形成する。分析物分子に存在するこの化学基は化合物の反応性ユニットと反応する機能を果たすため、分析物分子中に存在する化学基は、分析物の「官能基」とも呼ばれる。共有結合の形成は、反応性基の原子と分析物の官能基との間に新たな共有結合が形成される化学反応の各場合に生じる。反応性基と分析物の官能基との間に共有結合を形成する際に、この化学反応中に原子が失われることは当業者に周知である。
【0061】
本開示の文脈において、「複合体」という用語は、化合物と分析物分子との反応によって生成される生成物を指す。この反応により、化合物と分析物との間に共有結合が形成される。したがって、複合体という用語は、化合物と分析物分子との反応によって形成される共有結合反応生成物を指す。
【0062】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば障害の処置のための薬品、または本発明のバイオマーカー遺伝子もしくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、奨励、流通、または販売される。典型的には、キットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器手段を密接に閉じ込めて受け入れるように区画化されたキャリア手段を更に含み得る。特に、容器手段の各々は、第1の態様の方法で使用される別個の要素のうちの1つを備える。キットは、反応触媒を含むがこれに限定されない1種以上の他の試薬を更に含み得る。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、注射器、および使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、更なる材料を含む1つ以上の他の容器を更に含んでもよい。ラベルは、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得、インビボ使用またはインビトロ使用のいずれかに関する指示も示し得る。コンピュータ・プログラム・コードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)等のデータ記憶媒体もしくは装置上に、またはコンピュータもしくはデータ処理装置に直接提供されてもよい。その上キットは、較正目的のために、本明細書の別の箇所に記載されるようなバイオマーカーの標準量を含み得る。
【0063】
実施形態
第1の態様では、本発明は、式I:
【化3】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
を含む、化合物、または少なくとも1つの化合物に関する。好ましくは、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はQであり、Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。
【0064】
本発明による化合物は、低い衝突エネルギー(例えば、10eV~50eVの範囲、境界は含まれる)で質量フラグメンテーション事象を示す部分を含む。これらの化合物は、全体的にコンパクトな構造を特徴とする。これにより、標識化試薬の単純なモジュール設計が可能になり、電荷含有部分(例えば、ピリジニウム、第四級アンモニウム、イミダゾリウム、トリフェニルホスホニウム、安定な金属錯体、スルホン酸、ボレート、アリールトリフルオロボレート、サルフェート、ホスフェート、...)を修飾することによって様々な問題を解決し得るが、永久荷電が好ましい。これにより、試薬の疎水性を微調整して、精製プロセスにおけるサンプルマトリックスの分離を改善し得る。さらに、質量フラグメンテーションは、一次フラグメンテーション経路を優先するために低エネルギーレベルで起こり得る。これにより、MS/MSモードの感度を高め得る。上記にかかわらず、さらなるフラグメンテーション経路を得るために、さらなるMS実験をより高いエネルギーで実施し得る。
【0065】
本発明の第1の態様の実施形態では、ハロゲンは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される。
【0066】
本発明の第1の態様の実施形態では、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルからなる群から選択される。アルキルは、修飾アルキルを含み得る。修飾アルキルは、構造単位アルキル-O-アルキル、例えば-CH2-O-CH3、-CH2-O-CH2-CH3を含む。
【0067】
本発明の第1の態様の実施形態では、N-アシルアミノは、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノおよびベンゾイルアミノからなる群から選択される。
【0068】
本発明の第1の態様の実施形態では、N,N-ジアルキルアミノは、N,N-ジメチルアミノ、N,N-エチルメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N,N-メチルプロピルアミノ、N,N-エチルプロピルアミノ、N,N-ジプロピルアミノ、N,N-ブチルメチルアミノ、N,N-ブチルエチルアミノ、N,N-ブチルプロピルアミノ、N,N-ジブチルアミノ、N-アゼチジニル、N-ピロリジニル、N-ピペリジニルおよびN-ピペラジニルからなる群から選択される。
【0069】
本発明の第1の態様の実施形態では、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、フェノキシおよびベンジルオキシからなる群から選択される。
【0070】
本発明の第1の態様の実施形態では、チオアルコキシは、チオメチル、チオエチル、チオプロピル、チオブチル、チオペンチルおよびチオヘキシルからなる群から選択される。
【0071】
本発明の第1の態様の実施形態では、アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニルからなる群から選択される。
【0072】
本発明の第1の態様の実施形態では、アルコキシチオカルボニルは、メトキシチオカルボニル、エトキシチオカルボニル、プロポキシチオカルボニル、ブトキシチオカルボニル、フェノキシチオカルボニルおよびベンジルオキシチオカルボニルからなる群から選択される。
【0073】
本発明の第1の態様の実施形態では、アシルは、ホルミル、アセチルおよびプロピオニルからなる群から選択される。
【0074】
本発明の第1の態様の実施形態では、チオアシルは、チオホルミル、チオアセチル、チオプロピオニルおよびチオベンゾイルからなる群から選択される。
【0075】
本発明の第1の態様の実施形態では、アリーロルイルは、ベンゾイル、ナフトイルおよびアントラセノイルからなる群から選択される。
【0076】
本発明の第1の態様の実施形態では、アシルオキシは、ホルミルオキシ、アセチルオキシおよびプロピオニルオキシからなる群から選択される。
【0077】
本発明の第1の態様の実施形態では、アリーロイルオキシは、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシおよびアントラセノイルオキシからなる群から選択される。
【0078】
本発明の第1の態様の実施形態では、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルからなる群から選択される。
【0079】
本発明の第1の態様の実施形態では、アリールは、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナスレニルからなる群から選択される。
【0080】
本発明の第1の態様の実施形態では、ヘテロアリールは、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チオフェン、フラン、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、ベンゾトリアゾール、ベンゾフランおよびベンゾイミダゾールからなる群から選択される。
【0081】
本発明の第1の態様の実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、N-アゼチジニル、N-ピロリジニル、N-ピペリジニルおよびN-ピペラジニルからなる群から選択される。
【0082】
本発明の第1の態様の実施形態では、置換芳香族は、メトキシフェニル、シアノフェニルおよびエチルナフチルからなる群から選択される。
【0083】
本発明の第1の態様の実施形態では、アンモニウムまたはその誘導体は-NR1R2R3であり、式中、R1、R2、R3は独立してアルキルまたはアリールであり得る。アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルからなる群から選択し得る。アルキルは、修飾アルキルを含み得る。修飾アルキルは、構造単位アルキル-O-アルキル、例えば-CH2-O-CH3、-CH2-O-CH2-CH3を含む。アリールは、フェニルまたは修飾フェニル、特にメトキシ置換フェニルである。
【0084】
本発明の第1の態様の実施形態では、ピリジニウムまたはその誘導体は、ブロモピリジン、クロロピリジンおよびメチルピリジンからなる群から選択される。
【0085】
本発明の第1の態様の実施形態では、ホスホニウムまたはその誘導体は-PR1R2R3であり、式中、R1、R2、R3は独立してアルキルまたはアリールであり得る。アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルからなる群から選択し得る。アルキルは、修飾アルキルを含み得る。修飾アルキルは、構造単位アルキル-O-アルキル、例えば-CH2-O-CH3、-CH2-O-CH2-CH3を含む。アリールは、フェニルまたは修飾フェニル、特にメトキシ置換フェニルである。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態では、式Iの化合物は、A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、以下の構造を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子と、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子とを含む:
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、R1、R2、R3は、アルキルまたはアリールから独立して選択される)。アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルからなる群から選択し得る。アルキルは、修飾アルキルを含み得る。修飾アルキルは、構造単位アルキル-O-アルキル、例えば-CH
2-O-CH
3、-CH
2-O-CH
2-CH
3を含む。アリールは、フェニルまたは修飾フェニル、特にメトキシ置換フェニルである。R4は、n=0、1または2である(CH
2)n-Kであり、Kは、ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、Br、F芳香族、4-置換1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(TAD)、活性エステル、塩化スルホニルおよび反応性カルボニルからなる群から選択される。B1、B2、B3、B4は、上記もしくは下記および/または請求項1に記載のものと同じ意味を有する。
【0087】
本発明の第1の態様の実施形態では、式Iの化合物はカップリング基Qを含む。式Iの置換基B1、B2、B3、B4またはB5の少なくとも1つはカップリング基Qである。好ましくは、B2またはB3またはB4はQである。
【0088】
本発明の第1の態様の実施形態では、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はQであり、Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。「Qは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない」という用語は、本明細書において、本開示の文脈において、QがOもしくはNもしくはSもしくはBrまたはそれらの組み合わせを含まないことを意味する。特に、Qは、O、N、SおよびBrを含まない。特に、A3がアンモニウムであり、B1がQである場合、QはO、N、SおよびBrを含まない。あるいは、A3がアンモニウムであり、B5がQである場合、QはO、N、SおよびBrを含まない。
【0089】
本発明の第1の態様の実施形態では、カップリング基Qは、以下の式II:
【化7】
(式中、Kは、分析物と共有結合を形成し得る反応性ユニットであり、
nは、0、1、2、3、4または5であり、
Xは式Iのフェニル基の炭素原子である)
によるXに結合している。
【0090】
本発明の第1の態様の実施形態では、Qは、質量フラグメンテーションを引き起こすものよりも低いエネルギーレベルでフラグメンテーションを示さない。
【0091】
本発明の第1の態様の実施形態では、Qは共有結合を介してXに結合する。
【0092】
本発明の第1の態様の実施形態では、Qは、メチルヒドラジド、メチルヒドラジン、メチルヒドロキシルアミン、オキシアミン、4-メチル-オキシ-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(CH2-O-TAD)、2,4-ジニトロ-5-フルオロアニリン誘導体、クロルスルホニルおよびメタンスルホニルクロリドからなる群から選択される。
【0093】
本発明の第1の態様の実施形態では、式Iのフェニル基の炭素原子Xは、B1、B2、B3、B4またはB5の結合パートナーである。
【0094】
本発明の第1の態様の実施形態では、前記化合物は、以下の群I-1、I-2、I-3、I-4およびI-5から選択される。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、A1、A2、A3、B1、B2、B3、B4、B5、QおよびXは上記の意味を有する)。好ましくは、化合物は、式I-2、I-3またはI-4を含む。
【0095】
本発明の第1の態様の実施形態では、本発明による式Iの化合物は、分析物または分析物分子と反応し得る反応性ユニットKを含む。反応性ユニットKは、式Iの化合物と分析物分子との間に共有結合が形成されるように、分析物分子と反応し得る。好ましくは、共有結合は単結合または二重結合である。
【0096】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、式Iの化合物と共有結合を形成する。特に、共有結合は、式Iの化合物の反応性ユニットKと分析物分子中に存在する官能基との間に形成される。
【0097】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kは、分析物のカルボニル基、フェノール基、アミン、ヒドロキシル基またはジエン基と反応し得る。
【0098】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kは、ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、Br、F芳香族、4-置換-1,2,4トリアゾリン-3,5-ジオン(TAD)、活性エステル、塩化スルホニルおよび反応性カルボニルからなる群から選択される。
【0099】
本発明の第1の態様の実施形態では、KはXに直接結合している(n=0)。
【0100】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kはメチレン基を介してXに結合している(n=1)。
【0101】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kはエチレン基を介してXに結合している(n=2)。
【0102】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kはプロピレン基を介してXに結合している(n=3)。
【0103】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kはブチレン基を介してXに結合している(n=4)。
【0104】
本発明の第1の態様の実施形態では、Kはペンチレン基を介してXに結合している(n=5)。
【0105】
測定される分析物分子中に存在する官能基に応じて、当業者は、式Iの化合物に適切な反応性ユニットKを選択するであろう。どの反応性ユニットKが目的の分析物の官能基への結合に適格であるかを決定することは、一般的な知識の範囲内である。
【0106】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、カルボニル基、ジエン基、ヒドロキシル基、アミン基、イミン基、ケトン基、アルデヒド基、チオール基、ジオール基、フェノール基、エポキシ基、ジスルフィド基、核酸塩基基、カルボン酸基、末端システイン基、末端セリン基およびアジド基からなる群から選択される官能基を含み、それぞれが式Iの化合物の反応性ユニットKと共有結合を形成し得る。さらに、分析物分子上に存在する官能基が最初に式Iの化合物の反応性ユニットKとの反応により容易に利用可能な別の基に変換されることも本発明の範囲内で考えられる。
【0107】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、小分子代謝物および補因子、ならびに治療薬、依存性薬物、毒素、またはそれらの代謝産物を含む、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂肪酸、脂質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、および他の生体分子からなる群から選択される。
【0108】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、カルボン酸基、アルデヒド基、ケト基、マスクされたアルデヒド、マスクされたケト基、エステル基、アミド基、および無水基からなる群より選択される官能基としてのカルボニル基を含む。アルドース(アルデヒドおよびケト)は、親アルデヒド/ケトの一種のマスクされた形態であるアセタールおよびヘミアセタールとして存在する。
【0109】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基はアミド基であり、当業者は、アミド基自体が安定な基であるが、アミド基を加水分解してカルボン酸基およびアミノ基に変換し得ることをよく知っている。アミド基の加水分解は、酸/塩基触媒反応を介して、またはいずれかが当業者によく知られている酵素プロセスによって達成し得る。カルボニル基がマスクされたアルデヒド基またはマスクされたケト基である本発明の第1の態様の実施形態では、それぞれの基は、ヘミアセタール基またはアセタール基、特に環状ヘミアセタール基またはアセタール基のいずれかである。本発明の第1の態様の実施形態では、アセタール基は、式Aの化合物との反応の前に、アルデヒド基またはケト基へと変換される。
【0110】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、ケト基である。本発明の第1の態様の実施形態では、ケト基は、式Iの化合物の反応性ユニットと反応する前に中間体イミン基に転移されてもよい。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のケト基を含む分析物分子は、ケトステロイドである。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ケトステロイドは、テストステロン、エピテストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デスオキシメチルテストステロン(DMT)、テトラヒドロゲストリノン(THG)、アルドステロン、エストロン、4-ヒドロキシエストロン、2-メトキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン、16ケトエストラジオール、16-アルファ-ヒドロキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレグネノロン、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、17-ヒドロキシプレグネノロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステロン、エピアンドロステロン、Δ4-アンドロステンジオン、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、11-デオキシコルチコステロン、アロプレグナノロンおよびアルドステロンからなる群から選択される。
【0111】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、カルボキシ基である。本発明の第1の態様の実施形態では、カルボキシル基は、式Iの化合物と直接反応するか、または式Iの化合物と反応する前に活性化エステル基に変換される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のカルボキシル基を含む分析物分子は、Δ8-テトラヒドロカンナビノール酸、ベンゾイルエクゴニン、サリチル酸、2-ヒドロキシ安息香酸、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸、バンコマイシン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、モンテルカスト、レパグリニド、フロセミド、テルミサルタン、ゲムフィブロジル、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ゾメピラク、イソキセパックおよびペニシリンからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のカルボキシル基を含む分析物分子は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、およびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0112】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、アルデヒド基である。本発明の第1の態様の実施形態では、式Iの化合物の反応性ユニットと反応する前に、アルデヒド基を中間体イミン基に転移させ得る。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアルデヒド基を含む分析物分子は、ピリドキサール、N-アセチル-D-グルコサミン、アルカフタジン、ストレプトマイシンおよびジョサマイシンからなる群から選択される。
【0113】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、カルボニルエステル基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のエステル基を含む分析物分子は、コカイン、ヘロイン、リタリン、アセクロフェナク、アセチルコリン、アムシノニド、アミロキサート、アミロカイン、アニレリジン、アルニジピンアルテスネートおよびペチジンからなる群から選択される。
【0114】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、無水基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上の無水基を含む分析物分子は、カンタリジン、無水コハク酸、無水トリメリット酸、および無水マレイン酸からなる群から選択される。
【0115】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のジエン基、特にコンジュゲートしたジエン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジエン基を含む分析物分子は、セコステロイドである。実施形態では、セコステロイドは、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、カルシフェジオール、カルシトリオール、タキステロール、ルミステロールおよびタカルシトールからなる群から選択される。特に、セコステロイドは、ビタミンD、特にビタミンD2もしくはD3、またはそれらの誘導体である。特定の実施形態では、セコステロイドは、ビタミンD2、ビタミンD3、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェジオール)、3-epi-25-ヒドロキシビタミンD2、3-epi-25-ヒドロキシビタミンD3、1,25ジヒドロキシビタミンD2、1,25ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)、24,25ジヒドロキシビタミンD2、24,25ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジエン基を含む分析物分子は、ビタミンA、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、ナタマイシン、シロリムス、アムホテリシンB、ナイスタチン、エベロリムス、テムシロリムスおよびフィダキソミシンからなる群から選択される。
【0116】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のヒドロキシル基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単一のヒドロキシル基または2つのヒドロキシル基を含む。複数のヒドロキシル基が存在する実施形態では、2つのヒドロキシル基(1,2ジオール)は、互いに隣接して位置していてもよく、または1、2、もしくは3個のC原子(それぞれ、1,3-ジオール、1,4-ジオール、1,5-ジオール)によって分離されていてもよい。第1の態様の特定の実施形態では、分析物分子は1,2-ジオール基を含む。1つのヒドロキシル基のみが存在する実施形態では、該分析物は、第一級アルコール、第二級アルコール、および第三級アルコールからなる群から選択される。分析物分子が1つ以上のヒドロキシル基を含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ベンジルアルコール、メントール、L-カルニチン、ピリドキシン、メトロニダゾール、一硝酸イソソルビド、グアイフェネシン、クラブラン酸、ミグリトール、ザルシタビン、イソプレナリン、アシクロビル、メトカルバモール、トラマドール、ベンラファキシン、アトロピン、クロフェダノール、アルファ-ヒドロキシアルプラゾラム、アルファ-ヒドロキシトリアゾラム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、エチルグルクロニド、エチルモルヒネ、モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニド、ブプレノルフィン、コデイン、ジヒドロコデイン、p-ヒドロキシプロポキシフェン、O-デスメチルトラマドール、デスメタドール、ジヒドロキニジンおよびキニジンからなる群から選択される。分析物分子が1つを超えるヒドロキシル基を含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ビタミンC、グルコサミン、マンニトール、テトラヒドロビプテリン、シタラビン、アザシチジン、リバビリン、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ストレプトゾトシン、アデノシン、ビダラビン、クラドリビン、エストリオール、トリフルリジン、クロファラビン、ナドロール、ザナミビル、ラクツロース、アデノシンモノホスフェート、イドクスウリジン、レガドノソン、リンコマイシン、クリンダマイシン、カナグリフロジン、トブラマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、チカグレロル、エピルビシン、ドキソルビシン、アルベカシン、ストレプトマイシン、ウアバイン、アミカシン、ネオマイシン、フラミセチン、パロモマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ビンデシン、ジギトキシン、ジゴキシン、メトリザミド、アセチルジギトキシン、デスラノシド、フルダラビン、クロファラビン、ゲムシタビン、シタラビン、カペシタビン、ビダラビン、およびプリカマイシンからなる群から選択される。
【0117】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のチオール基(アルキルチオールおよびアリールチオール基を含むがこれらに限定されない)を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のチオール基を含む分析物分子は、チオマンデル酸、DL-カプトプリル、DL-チオルファン、N-アセチルシステイン、D-ペニシラミン、グルタチオン、L-システイン、ゾフェノプリラート、チオプロニン、ジメルカプロール、スクシマーからなる群から選択される。
【0118】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のジスルフィド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジスルフィド基を含む分析物分子は、グルタチオンジスルフィド、ジピリチオン、硫化セレン、ジスルフィラム、リポ酸、L-シスチン、フルスルチアミン、オクトレオチド、デスモプレシン、バプレオチド、テルリプレシン、リナクロチドおよびペジネサチドからなる群から選択される。硫化セレンは、二硫化セレン、SeS2、または六硫化セレン、Se2S6であり得る。
【0119】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のエポキシド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のエポキシド基を含む分析物分子は、カルバマゼピン-10,11-エポキシド、カルフィルゾミブ、フロセミドエポキシド、ホスホマイシン、塩酸セベラマー、セルレニン、スコポラミン、チオトロピウム、チオトロピウムブロミド、メチルスコポラミンブロミド、エプレレノン、ムピロシン、ナタマイシン、およびトロレアンドマイシンからなる群から選択される。
【0120】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のフェノール基を含む。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、1つ以上のフェノール基を含む分析物分子は、ステロイドまたはステロイド様の化合物である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のフェノール基を含む分析物分子は、sp2ハイブリダイズされたA環と、A環の3位におけるOH基とを有するステロイドまたはステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド様分析物分子は、エストロゲン、エストロゲン様化合物、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、17a-エストラジオール、17b-エストラジオール、エストリオール(E3)、16-エピエストリオール、17-エピエストリオール、および16,17-エピエストリオールおよび/またはそれらの代謝産物からなる群から選択される。実施形態では、代謝産物は、エストリオール、16-エピエストリオール(16-epiE3)、17-エピエストリオール(17-epiE3)、16,17-エピエストリオール(16,17-epiE3)、16-ケトエストラジオール(16-ケトE2)、16a-ヒドロキシエストロン(16a-OHEl)、2-メトキシエストロン(2-MeOEl)、4-メトキシエストロン(4-MeOE1)、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル(3-MeOEl)、2-メトキシエストラジオール(2-MeOE2)、4-メトキシエストラジオール(4-MeOE2)、2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)、4-ヒドロキシエストロン(4-OHE1)、2-ヒドロキシエストラジオール(2-OHE2)、エストロン(E1)、硫酸エストロン(El)、17a-エストラジオール(E2a)、17b-エストラジオール(E2B)、硫酸エストラジオール(E2S)、エキリン(EQ)、17a-ジヒドロエキリン(EQa)、17b-ジヒドロエキリン(EQb)、エキレニン(EN)、17-ジヒドロエキレニン(ENa)、17α-ジヒドロエキレニン、17β-ジヒドロエキレニン(ENb)、Δ8,9-デヒドロエストロン(dEl)、Δ8,9-デヒドロエストロン硫酸(dEl)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール、ミコフェノール酸からなる群から選択される。βまたはbは交換可能に使用し得αおよびaは交換可能に使用し得る。
【0121】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基としてアミン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基は、アルキルアミン基またはアリールアミン基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアミン基を含む分析物分子は、タンパク質およびペプチドからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基を含む分析物分子は、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、メタンフェタミン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、7-アミノクロナゼパム、7-アミノフルニトラゼパム、3,4-ジメチルメトカチノン、3-フルオロメトカチノン、4-メトキシメトカチノン、4-メチルエトタカチノン、4-メチルメチルメトカチノン、アンフェプラモン、ブチロン、エトカチノン、エレフェヘドロン、メトカチノン、メチロン、メチレンジオキシピロバレロン、ベンゾイルエクゴニン、デヒドロノルケタミンン、ケタミン、ノルケタミン、メサドン、ノルメサドン、6-アセチルモルヒネ、ジアセチルモルヒネ、モルヒネ、ノルヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルホン、フェンシクリジン、ノルプロポキシフェン、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、トリミプラミン、フェンタニル、グリシルキシリジド、リドカイン、モノエチルグリシルキシリジド、N-アセチルプロカインアミド、プロカインアミド、プレガバリン、2-メチルアミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、2-アミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、ノルメペリジン、O-デストラマドール、デスメタマドール、トラマドール、ラモトリギン、テオフィリン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、メトトレキサート、ガバペンチンシソマイシンおよび5-メチルシトシンからなる群から選択される。
【0122】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、炭水化物、または例えば糖タンパク質またはヌクレオシドなど炭水化物部分を有する物質である。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は単糖類、特に、リボース、デソキシリボース、アラビノース、リブロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、フルクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、N-アセチルノイラミン酸等からなる群から選択される。実施形態では、分析物分子は、オリゴ糖、特に、二糖、三糖、四糖、多糖からなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、二糖類は、スクロース、マルトース、およびラクトースからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、上述の単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖類部分を含む物質である。
【0123】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、アルキルまたはアリールアジドからなる基から選択される官能基としてアジド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアジド基を含む分析物分子は、ジドブジンおよびアジドシリンからなる群から選択される。
【0124】
そのような分析物分子は、体液、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液など、組織または細胞抽出物などの生物学的または臨床サンプル中に存在し得る。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液、および乾燥血液スポットからなる群から選択される生物学的または臨床サンプル中に存在する。本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、分析物分子は、精製されたまたは部分的に精製されたサンプル、例えば、精製されたまたは部分的に精製されたタンパク質混合物または抽出物であるサンプル中に存在し得る。
【0125】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、カルボニル反応性ユニット、ジエン反応性ユニット、ヒドロキシル反応性ユニット、アミノ反応性ユニット、イミン反応性ユニット、チオール反応性ユニット、ジオール反応性ユニット、フェノール反応性ユニット、エポキシド反応性ユニット、ジスルフィド反応性ユニット、およびアジド反応性ユニットからなる群から選択される。
【0126】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKはカルボニル反応性ユニットであり、カルボニル基を有する任意の種類の分子と反応し得る。本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル反応性ユニットは、カルボキシル反応性ユニット、ケト反応性ユニット、アルデヒド反応性ユニット、無水物反応性ユニット、カルボニルエステル反応性ユニット、およびイミド反応性ユニットからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル反応性ユニットは、隣接するOもしくはN原子NH2-N/O、またはジチオール分子を介したα効果によって強化された超求核性N原子のいずれかを有し得る。
【0127】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル反応性ユニットは、以下の群:
(i)ヒドラジンユニット、例えばH2N-NH-またはH2N-NR1-ユニット(式中、R1は、アリール、1つ以上のヘテロ原子を含むアリール、またはC1-4アルキル、特にC1またはC2アルキルであり、場合により例えば、ハロ、ヒドロキシル、および/またはC1~3アルコキシで置換されている)、
(ii)ヒドラジドユニット、特にカルボヒドラジドまたはスルホヒドラジドユニット、特にH2N-NH-C(O)-またはH2N-NR2-C(O)-ユニット(式中、R2は、アリール、1つ以上のヘテロ原子を含むアリール、またはC1-4アルキル、特にC1またはC2アルキルであり、場合により例えば、ハロ、ヒドロキシル、および/またはC1-3アルコキシで置換されている)、
(iii)ヒドロキシルアミノユニット、例えばH2N-O-ユニット、
(iv)ジチオールユニット、特に1,2-ジチオールまたは1,3-ジチオールユニット
から選択される。
【0128】
カルボニル反応性ユニットがカルボキシル反応性ユニットである本発明の第1の態様の実施形態では、カルボキシル反応性ユニットは、分析物分子上のカルボキシル基と反応する。本発明の第1の態様の実施形態では、カルボキシル反応性ユニットは、ジアゾユニット、ハロゲン化アルキル、アミン、およびヒドラジンユニットからなる群から選択される。
【0129】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子はケトンまたはアルデヒド基を含み、Kはカルボニル反応性ユニットであり、以下の群:
(i)ヒドラジンユニット、
(ii)ヒドラジドユニット、
(iii)ヒドロキシルアミノユニット、および
(iv)ジチオールユニット
から選択される。
【0130】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、ジエン基を含む分析物と反応し得るジエン反応性ユニットである。
【0131】
本発明の第1の態様の実施形態では、ジエン反応性ユニットは、ジエノフィルとして作用し得コックソン型試薬、例えば1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンからなる群から選択される。
【0132】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、ヒドロキシル基を含む分析物と反応し得るヒドロキシル反応性ユニットである。本発明の第1の態様の実施形態では、ヒドロキシル反応性ユニットは、塩化スルホニル、活性化カルボン酸エステル(NHSまたはイミダゾリド)、およびフッ素の求核置換が可能なフルオロ芳香族/ヘテロ芳香族からなる群より選択される(T.Higashi、「J Steroid Biochem Mol Biol.」(2016年9月)第162巻第57~69頁)。本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、分析物分子上のジオール基と反応するジオール反応性ユニットである。反応性ユニットが1,2ジオール反応性ユニットである本発明の第1の態様の実施形態では、1,2ジオール反応性ユニットは、ボロン酸を含む。更なる実施形態では、ジオールは、それぞれのケトンまたはアルデヒドに酸化され得、次いで、ケトン/アルデヒド反応性ユニットKと反応され得る。
【0133】
本発明の第1の態様の実施形態では、アミノ反応性ユニットは、分析物分子上のアミノ基と反応する。本発明の第1の態様の実施形態では、アミノ反応性ユニットは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルまたはスルホ-NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、カボニルイミダゾールエステル、スクアリン酸エステル、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステル、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)エステル、および塩化スルホニルユニットなどの活性エステル基からなる群から選択される。
【0134】
本発明の第1の態様の実施形態では、チオール反応性ユニットは、分析物分子上のチオール基と反応する。本発明の第1の態様の実施形態では、チオール反応性ユニットは、特にBr/I-CH2-C(=O)-ユニット、アクリルアミド/エステルユニット、マレイミド、メチルスルホニルフェニルオキサジアゾール、および塩化スルホニルユニットなどの不飽和イミドユニットからなる群から選択される、ハロアセチル基からなる群から選択される。
【0135】
本発明の第1の態様の実施形態では、フェノール反応性ユニットは、分析物分子上のフェノール基と反応する。本発明の第1の態様の実施形態では、フェノール反応性ユニットは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルまたはスルホ-NHSエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、カボニルイミダゾールエステル、スクアリン酸エステル、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステル、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)エステル、および塩化スルホニルユニットなどの活性エステルユニットからなる群から選択される。分析物分子上に存在するフェノール基は、反応(H.Banら、J.Am.Chem.Soc.,2010,132(5),pp 1523-1525)を介して、またはジアゾ化によって、またはオルトニトロ化とそれに続くアミンへの還元によってトリアゾリンジオン(TADなど)のような高反応性求電子剤と反応させ得、次いでアミン反応性試薬と反応させ得る。本発明の第1の態様の実施形態では、フェノール反応性ユニットはフルオロ-1-ピリジニウムである。
【0136】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、エポキシド基を含む分析物と反応し得るエポキシド反応性ユニットである。本発明の第1の態様の実施形態では、エポキシド反応性ユニットは、隣接するOもしくはN原子NH2-N/O分子を介したα効果によって強化された、アミノ、チオール、超求核性N原子からなる群から選択される。
【0137】
本発明の第1の態様の実施形態では、エポキシド反応性ユニットは、以下の群:
(i)ヒドラジンユニット、例えばH2N-NH-またはH2N-NR1-ユニット(式中、R1は、アリール、1つ以上のヘテロ原子を含むアリール、またはC1-4アルキル、特にC1またはC2アルキルであり、場合により例えば、ハロ、ヒドロキシル、および/またはC1~3アルコキシで置換されている)、
(ii)ヒドラジドユニット、特にカルボヒドラジドまたはスルホヒドラジドユニット、特にH2N-NH-C(O)-またはH2N-NR2-C(O)-ユニット(式中、R2は、アリール、1つ以上のヘテロ原子を含むアリール、またはC1-4アルキル、特にC1またはC2アルキルであり、場合により例えば、ハロ、ヒドロキシル、および/またはC1-3アルコキシで置換されている)、
(iii)ヒドロキシルアミノユニット、例えばH2N-O-ユニット
から選択される。
【0138】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、ジスルフィド基を含む分析物と反応し得るジスルフィド反応性ユニットである。本発明の第1の態様の実施形態では、ジスルフィド反応性ユニットは、チオールからなる群から選択される。更なる実施形態では、ジスルフィド基は、それぞれのチオール基に還元され、次いで、チオール反応性ユニットKと反応し得る。
【0139】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、分析物分子上のアジド基と反応するアジド反応性ユニットである。本発明の第1の態様の実施形態では、アジド反応性ユニットは、アジド-アルキン環化付加によりアジド基と反応する。本発明の第1の態様の実施形態では、アジド反応性ユニットは、アルキン(アルキルまたはアリール)、線形アルキン、または環状アルキンからなる群から選択される。アジドとアルキンとの間の反応は、触媒の使用の有無にかかわらず進行することができる。本発明の第1の態様の更なる実施形態では、アジド基はそれぞれのアミノ基に還元され得、次いで、アミノ反応性ユニットKと反応し得る。
【0140】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物の官能基は、表1の左の列に記載されている選択肢から選択される。分析物の対応する官能基のKの反応性基は、表1の右の列に記載の基から選択される。
【表1】
【0141】
本発明の第1の態様の実施形態では、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はKであり、nは3、4または5である。
【0142】
本発明の第1の態様の実施形態では、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はKであり、Kは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。「Kは、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない」という用語は、本開示の文脈において、KがOまたはNまたはSまたはBrまたはそれらの組み合わせを含まないことを意味する。特に、Kは、O、N、SおよびBrを含まない。
【0143】
本発明の第1の態様の実施形態では、A3は、ピリジニウム、トリメチルアンモニウム、ホスホニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、メチルジエチルアンモニウムおよびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される。
【0144】
本発明の第1の態様の実施形態では、A3はNR1R2R3またはPR4R5R6であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、置換フェニル、非置換フェニル、アルキル、修飾アルキル、短鎖アルキルから選択される。
【0145】
特に、短鎖アルキルは、アルキル鎖中に1、2、3、4、5または6個のC原子を含む。
【0146】
本発明の第1の態様の実施形態では、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、OR7、NR8R9、H、脂肪族から選択され、式中、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、置換フェニル、非置換フェニル、アルキル、修飾アルキル、短鎖アルキルから選択される。
【0147】
本発明の第1の態様の実施形態では、A1、A2は、それぞれ独立して、H、脂肪族基、芳香族基から選択される。
【0148】
本発明の第1の態様の実施形態では、A1はHまたはCH3である。
【0149】
本発明の第1の態様の実施形態では、A2はHまたはCH3である。
【0150】
本発明の第1の態様の実施形態では、A1はHであり、A2はHであり、A3はピリジニウムである。
【0151】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。
【0152】
本発明の第1の態様の実施形態では、B2はQである。
【0153】
本発明の第1の態様の実施形態では、B4はQである。
【0154】
本発明の第1の態様の実施形態では、B1はHまたはメトキシである。
【0155】
本発明の第1の態様の実施形態では、B2はHまたはメトキシである
【0156】
本発明の第1の態様の実施形態では、B4はHまたはメトキシである。
【0157】
本発明の第1の態様の実施形態では、B5はHまたはメトキシである。
【0158】
本発明の第1の態様の実施形態では、QはFを含む。
【0159】
本発明の第1の態様の実施形態では、nは0である。
【0160】
本発明の第1の態様の実施形態では、nは1である。
【0161】
本発明の第1の態様の実施形態では、nは0または1であり、Kはヒドラジドである。
【0162】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウム、B1=H、B2=H、B4=HおよびB5=Hである。
【0163】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウム、B1=H、B2=H、B4=HおよびB5=メトキシである。
【0164】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウム、B1=メトキシ、B2=H、B4=HおよびB5=Hである。
【0165】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウム、B1=H、B2=メトキシ、B4=HおよびB5=Hである。
【0166】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウム、B1=メトキシ、B2=H、B4=HおよびB5=メトキシである。
【0167】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウム、B1=メトキシ、B2=H、B4=メトキシおよびB5=メトキシである。
【0168】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=アンモニウム、B1=H、B2=H、B4=HおよびB5=Hである。
【0169】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=アンモニウム、B1=H、B2=H、B4=HおよびB5=メトキシである。
【0170】
本発明の第1の態様の実施形態では、B4はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=アンモニウム、B1=メトキシ、B2=H、B3=HおよびB5=Hである。
【0171】
本発明の第1の態様の実施形態では、B4はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=アンモニウム、B1=H、B2=メトキシ、B3=HおよびB5=Hである。
【0172】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、以下の群:ヒドラジン単位、メチルヒドラジン単位、エチルヒドラジン単位、ヒドラジド単位、メチルヒドラジド単位、エチルヒドラジド単位、ヒドロキシルアミノ単位から選択される。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=アンモニウム、B1=メトキシ、B2=H、B4=HおよびB5=メトキシである。
【0173】
本発明の第1の態様の実施形態では、B3はQである。Qは、CH2-Br、TADまたはSO2Clである。Qではない他の置換基は、A1=H、A2=H、A3=メチルピリジニウムまたはアンモニウム、B1=H、B2=H、B4=HおよびB5=Hである。
【0174】
本発明の第1の態様の実施形態では、カップリング基Qを形成していない他の置換基B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、N,Nジメチルアミン、エトキシまたはメトキシから選択される。
【0175】
本発明の第1の態様の実施形態では、化合物は永久に正に帯電している。
【0176】
本発明の第1の態様の実施形態では、化合物は単純に永久的に正に帯電している。
【0177】
本発明の第1の態様の実施形態では、化合物は、二重または三重に永久に正に帯電している。
【0178】
本発明の第1の態様の実施形態では、化合物は、塩を形成するための対イオンを含み、対イオンは、好ましくは以下の群から選択される。Cl-、Br-、F-、ギ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、PF6
-、スルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩。
【0179】
本発明の第1の態様の実施形態では、化合物は、
以下の式:
【化13】
を含む。
【0180】
本発明の第1の態様の実施形態では、式Iの化合物は、以下の群から選択される(表2参照)。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0181】
上記ラベル1~25のそれぞれは、単独でまたは対イオンと組み合わせて化合物を形成し得る。
【0182】
ベンジル位での中性損失フラグメンテーション後のカルボカチオンの安定化は、低エネルギーでの中性損失を可能にし、高いシグナル増強を可能にする非常に優勢なフラグメンテーション経路を与える。いくつかの実施形態では、特にメタ置換パターン(B2またはB4はQである)を用いて、好ましいLC溶出特性を観察し得る。ヒドラジドまたはオキシム(例えば、テストステロン標識化)で形成し得る2種のE/Z立体異性体のいずれか1つが主に生成されるか、または両方の異性体が共溶出する。これにより、信号対雑音比S/Nが向上するため、感度が向上する。電子供与性置換基B1~B5(例えば、OMe)は、より低いエネルギーでのフラグメンテーションを可能にする。特に高い信号増強は、A1、A2=H、B1~B5=H、n=1およびK=ヒドラジド(1)で達成され得る。中性損失フラグメンテーション後に正電荷を有する炭素原子における脂肪族(例えば、メチル)および芳香族(例えば、フェニルまたは置換類似体)修飾A1およびA2は、低エネルギー(例えば、1または2:R1、R2=Me、Ph)でのフラグメンテーションを可能にする。
【0183】
本発明の第1の態様の実施形態では、A1、A2のそれぞれは、互いに独立して、H、脂肪族(例えば、Me)または芳香族(例えばフェニル)であり、A3は、NR’3(R’、例えばMe)、ピリジンまたはPR’’3(R’’、例えばMe、Ph)であり、B1、B2、B3、B4、B5のそれぞれは、互いに独立して、OR’、NR’2、Hまたは脂肪族(例えば、Me)である。Kは、抱合可能な基、例えば、ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ブロモ、PTADまたはTADである。
【0184】
本発明の第1の態様の実施形態では、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つ超がカップリング基Qであり、例えば、置換基B1、B2、B3、B4、B5の2、3または4つがカップリング基Qである。言い換えれば、式Iの化合物は、1つを超えるQ、例えば第1のQ、第2のQまたは第3のQを含み、Qは互いに構造的に異なっていてもよく、または互いに構造的に等しくてもよい。第1、第2、第3、第4または第5のQは、Qについて上述した実施形態から互いに独立して選択し得る。
【0185】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に関して前記に詳細に開示された式Iの化合物を含む組成物に関する。本発明の第1の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第2の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0186】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に関して本明細書で前記に詳細に開示される式Iの化合物、または本明細書で前記に詳細に開示される本発明の第2の態様の組成物を含むキットに関する。本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第3の態様に適用され、その逆も同様である。
【0187】
第4の態様では、本発明は、互いに共有結合した結合性分析物および結合性化合物を含む質量分析を用いて分析物を検出するための複合体に関し、特に、複合体は、分析物と本発明の第1の態様の化合物との化学反応によって形成される。特に、分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝産物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子、生物によって内在化された物質、そのような物質の代謝産物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0188】
本発明の第4の態様の実施形態では、式IIIの結合複合体は、式Iの化合物と分析物分子中に存在する官能基との間の共有結合の形成に起因する。式Iの化合物の反応性ユニットKおよび分析物分子の官能基に応じて、当業者は、2つの間に形成される共有結合を十分に決定し得る。
【0189】
本発明の第4の態様の実施形態では、結合化合物は、式III
【化14】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成するカップリング基Q
*であり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
カップリング基Q
*が式IVを含む:
【化15】
(式中、n
*は0、1、2、3、4、または5であり;
結合分析物は、K
*を介して共有結合しており、
X
*は式IIIのフェニル基の炭素原子であり、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Q
*である場合、カップリング基Q
*は、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Q
*は、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む))
を含む。
【0190】
本発明の第4の態様の実施形態では、A3がアンモニウムであり、B1またはB5がQ*であり、Q*がO、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。「Q*が、O、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない」という用語は、本明細書において、本開示の文脈において、Q*がOもしくはNもしくはSもしくはBrまたはそれらの組み合わせを含まないことを意味する。
【0191】
本発明の第4の態様の実施形態では、式IIIのA1、A2、A3、B1、B2、B3、B4、B5のそれぞれは、本発明の第1の態様について上述した(式IのA1、A2、A3、B1、B2、B3、B4、B5)のと同じ意味を有する。
【0192】
本発明の第4の態様の実施形態では、X*は、本発明の第1の態様について上述したXと同じ意味を有する。
【0193】
本発明の第4の態様の実施形態では、K*は、式Iの化合物の反応性ユニットKと分析物分子中に存在する官能基との間の共有結合の形成に起因する。式Iの化合物の反応性ユニットKおよび分析物分子の官能基に応じて、当業者は、2つの間に形成される共有結合を十分に決定し得る。共有結合を充十分に決定し得る。
【0194】
さらに、分析物分子上に存在する官能基が最初に式Iの化合物の反応性ユニットKとの反応により容易に利用可能な別の基に変換されることも本発明の範囲内で考えられる
【0195】
本発明の第4の態様の実施形態では、分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝産物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子、生物によって内在化された物質、そのような物質の代謝産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0196】
発明の第4の態様の実施形態では、分析物分子は、カルボニル基、ジエン基、ヒドロキシル基、アミン基、イミン基、チオール基、ジオール基、フェノール基、エキポキシド基、ジスルフィド基、およびアジド基からなる群から選択される官能基を含み、これらの各々は、式Iの化合物の反応性ユニットKと共有結合を形成し得る。
【0197】
本発明の第4の態様の実施形態では、分析物分子は、小分子代謝物および補因子、ならびに治療薬、依存性薬物、毒素、またはそれらの代謝産物を含む、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂肪酸、脂質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、および他の生体分子からなる群から選択される。
【0198】
本発明の第1の態様について述べた分析物の全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0199】
本発明の第4の態様の実施形態では、結合化合物は、分析物のカルボニル基、ヒドロキシル基またはジエン基を介して共有結合して、前記複合体を形成する。
【0200】
第5の態様では、本発明は、分析物の質量分析決定のための式Iの化合物の使用に関する。好ましくは、質量分析決定は、タンデム質量分析決定、特にトリプル四重極質量分析決定を含む。本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様および/または本発明の第4の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第5の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0201】
本発明の第5の態様の実施形態では、質量分析決定は、タンデム質量分析決定、特にトリプル四重極質量分析決定を含む。
【0202】
本発明の第5の態様の実施形態では、式Iの化合物の使用は、誘導体化試薬としての使用を含む。本発明の第5の態様の実施形態では、式Iの化合物を使用してMS測定の感度を高める。実施形態では、式Iの化合物を使用して、より低い検出レベル、特により低い定量レベルで目的の分析物を検出する。
【0203】
本発明の第5の態様の実施形態では、本発明による式Iの化合物は、分析物分子と反応し得る反応性ユニットKを含む。反応性ユニットKは、式Iの化合物と分析物分子との間に共有結合が形成されるように、分析物分子と反応し得る。本発明の第5の態様の実施形態では、反応性ユニットKは、式Iの化合物と共有結合を形成する。特に、共有結合は、式Iの化合物の反応性ユニットKと分析物分子中に存在する官能基との間に形成される。
【0204】
測定される分析物分子中に存在する官能基に応じて、当業者は、式Iの化合物に適切な反応性ユニットKを選択するであろう。どの反応性ユニットKが目的の分析物の官能基への結合に適格であるかを決定することは、一般的な知識の範囲内である。
【0205】
分析物について上述したことは、本発明の第5の態様の文脈において分析物に適用される。
【0206】
分析物分子は、体液、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液など、組織または細胞抽出物などの生物学的サンプルまたは臨床サンプル中に存在し得る。本発明の第5の態様の実施形態では、分析物分子は、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液、および乾燥血液スポットからなる群から選択される生物学的サンプルまたは臨床サンプル中に存在する。本発明の第5の態様のいくつかの実施形態では、分析物分子は、精製されたまたは部分的に精製されたサンプル、例えば、精製されたまたは部分的に精製されたタンパク質混合物または抽出物であるサンプル中に存在し得る。
【0207】
第6の態様では、本発明は、分析物の質量分析決定のための方法であって、
分析物を本発明の第1の態様に関して本明細書で前記に開示される式Iの化合物と反応させ、それによって本発明の第4の態様に関して本明細書で前記に開示される複合体を形成する工程、
(b)工程(a)からの複合体を質量分析に供する工程
を含む方法に関する。
【0208】
本発明の第5の態様の実施形態では、質量分析工程(b)は、
(i)複合体のイオンを質量分析の第1段階に供し、それによって複合体のイオンをその質量/電荷(m/z)比に従って特徴付ける工程、
(ii)複合体イオンのフラグメンテーションを引き起こし、それによって第1の要素、特に第1の中性要素、特に低分子量の中性要素が放出され、かつ複合体の娘イオンが生成される工程であって、複合体の娘イオンは複合体イオンとそのm/z比が異なる、複合体の娘イオンが生成される工程、
(iii)複合体の娘イオンを質量分析の第2段階に供し、それによって複合体の娘イオンをそのm/z比に従って特徴付ける工程
を含み、ならびに/または、
(ii)は、複合体イオンの代替的なフラグメンテーションを更に含み得、それによって、第2の要素、特に第1の要素とは異なる第2の中性要素が放出され、かつ複合体の第2の娘イオンが生成され、および、
(iii)は、複合体の第1の娘イオンおよび第2の娘イオンを質量分析の第2段階に供することを更に含み得、それによって、複合体の第1および第2の娘イオンをそれらのm/z比に従って特徴付ける。
【0209】
本発明の第6の態様の実施形態では、第1の要素および/または第2の要素は、トリメチルアミン、ピリジン、ホスフィン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミンおよびトリアルキルアミンからなる群から選択される。
【0210】
工程(a)は、質量分析決定に先立って、サンプル調製ワークフロー内の異なる段階で生じ得る。分析物分子を含むサンプルは、種々の方法によって前処理および/または濃縮することができる。前処理法は、血液(新鮮または乾燥)、血漿、血清、尿、または唾液といったサンプルの種類に依存し、一方で濃縮法は、目的の分析物に依存する。前処理方法がどのサンプルタイプに適しているかは、当業者によく知られている。どの濃縮法が目的のどの分析物に適しているかもまた、当業者によく知られている。
【0211】
本発明の第6の態様の実施形態では、分析物分子の質量分析決定のための本方法の工程(a)は、i)サンプルの前処理工程に続いて、ii)サンプルの第1の濃縮に続いて、またはiii)サンプルの第2の濃縮に続いて行われる。
【0212】
サンプルが全血サンプルである本発明の第6の態様の実施形態では、該サンプルは2つの所定のサンプル前処理(PT)ワークフローのうちの1つに割り当てられ、これら両方は内部標準(ISTD)および溶血試薬(HR)の添加に続いて所定のインキュベーション期間(Inc)を含み、ここで、2つのワークフローの差は、内部標準(ISTD)および溶血試薬(HR)が添加される順序である。実施形態では、水は溶血試薬として、特に0.5:1~20:1mLの水/mLサンプルの量、特に1:1~10:1mLの水/mLサンプルの量、特に2:1~5:1mLの水/mLサンプルの量で添加される。
【0213】
本発明の第6の態様の実施形態では、サンプルは尿サンプルであり、サンプルは、いずれも内部標準および酵素試薬の添加とそれに続く所定のインキュベーション期間とを含む他の2つの所定のサンプルPTワークフローのうちの1つに割り当てられ、2つのワークフローの違いは、内部標準および酵素試薬が添加される順序である。酵素試薬は、典型的には、グルクロニド開裂もしくはタンパク質開裂、または分析物もしくはマトリクスの任意の前処理に使用される試薬である。追加の工程では、本明細書の上記または下記で開示されるような本発明の化合物などの誘導体化試薬を加え、その後、インキュベーション期間が続く。
【0214】
本発明の第6の態様の実施形態では、酵素試薬は、グルクロニダーゼ、(部分的)エキソもしくはエンド脱グリコシル化酵素、またはエキソもしくはエンドプレオテアーゼ(preoteases)からなる群から選択される。実施形態では、グルクロニダーゼを、0.5~10mg/mLの量で、特に1~8mg/mLの量で、特に2~5mg/mLの量で加える。
【0215】
本発明の第6の態様の実施形態では、該サンプルは血漿または血清であり、所定のインキュベーション時間に先立つ内部標準(ISTD)の添加のみを含む、別の所定のPTワークフローに割り当てられる。
【0216】
本明細書の前記または以下に記載されているように、考慮されるサンプルの処理、化学反応、または方法のために選択するインキュベーション時間および温度は、当業者に良く知られている。特に、当業者には、インキュベーション時間および温度が互いに依存し、例えば、高温は典型的にはより短いインキュベーション期間をもたらすが、逆もまた同様であることが既知である。本発明の第6の態様の実施形態では、インキュベーション温度は、4~45℃の範囲、特に10~40℃の範囲、特に20~37℃である。実施形態では、インキュベーション時間は、30秒~120分、特に30秒~1分、30秒~5分、30秒~10分、1分~10分、または1分~20分、10分~30分、30分~60分、または60分~120分の範囲である。特定の実施形態では、インキュベーション時間は、36秒の倍数である。
【0217】
したがって、本方法の実施形態である工程a)は、上で開示されたサンプルの前処理プロセスのいずれかに続いて実施する。
【0218】
本発明の第6の態様の実施形態では、式Iの化合物と工程a)の分析物分子との反応は、任意の濃縮プロセスの前に行い、式Iの化合物を対象の前処理されたサンプルに加える。したがって、分析物分子の複合体および式Iの化合物は、前処理の後かつ第1の濃縮プロセスの前に形成される。したがって、複合体は、工程b)の質量分析に供される前に、第1の濃縮プロセスおよび第2の濃縮プロセスに供される。
【0219】
前処理したサンプルは、分析物濃縮ワークフローへ更に供し得る。分析物濃縮ワークフローは、1つ以上の濃縮方法を含み得る。濃縮方法は当該技術分野においてよく知られており、化学的沈殿を含むがこれに限定されない化学的濃縮方法、ならびに固相抽出方法、ビーズワークフロー、およびクロマトグラフ法(例えば、ガスまたは液体クロマトグラフィ)を含むがこれらに限定されない固相を用いる濃縮方法を含むが、これらに限定されるものではない。
【0220】
本発明の第6の態様の実施形態では、第1の濃縮ワークフローは、前処理したサンプルに分析物選択基を運ぶ固相、特に固体ビーズを加えることを含む。本発明の第6の態様の実施形態では、第1の濃縮ワークフローは、前処理したサンプルに分析物選択基を運ぶ、磁性または常磁性ビーズを加えること含む。本発明の第6の態様の実施形態では、磁性ビーズの添加は、撹拌または混合を含む。ビーズ上の対象分析物(複数可)を捕捉するための、所定のインキュベーション期間がこれに続く。本発明の第6の態様の実施形態では、ワークフローは、磁性ビーズとのインキュベーション後に洗浄工程(W1)を含む。分析物(複数可)に応じて、1つ以上の追加の洗浄工程(W2)を実施する。1つの洗浄工程(W1、W2)は、磁石または電磁石を含む磁気ビーズ操作ユニットによる磁気ビーズ分離、液体の吸引、洗浄緩衝液の添加、磁気ビーズの再懸濁、別の磁気ビーズ分離工程、および液体の別の吸引を含む、一連の工程からなる。その上、洗浄工程は、洗浄サイクルの容量および数または組み合わせとは別に、溶媒の種類(水/有機/塩/pH)の点で異なってもよい。各パラメータの選択方法は、当業者にはよく知られている。最後の洗浄工程(W1、W2)には、溶出試薬の添加、次いで磁気ビーズの再懸濁、および磁気ビーズから目的の分析物(複数可)を放出するための所定のインキュベーション期間が続く。その後、結合のない磁気ビーズを分離し、目的の誘導体化分析物(複数可)を含有する上清を捕捉する。
【0221】
本発明の第6の態様の実施形態では、第1の濃縮ワークフローは、前処理したサンプルにマトリックス選択基を運ぶ、磁性ビーズを加えること含む。本発明の第6の態様の実施形態では、磁性ビーズの添加は、撹拌または混合を含む。ビーズ上のマトリクスを捕捉するための、所定のインキュベーション期間がこれに続く。ここで、目的の分析物は磁気ビーズに結合せず、上清中に残る。その後、磁気ビーズを分離し、目的の濃縮分析物(複数可)を含有する上清を収集する。
【0222】
本発明の第6の態様の実施形態では、上清を、第2の濃縮ワークフローに供する。ここで、上清はLCステーションへ移送されるか、または希釈液の添加による希釈工程の後にLCステーションへ移送される。異なる溶出手順/試薬、例えば溶媒の種類(水/有機/塩/pH)および容量を変える等も使用することができる。様々なパラメータが当業者によく知られており、容易に選択される。
【0223】
本発明の第6の態様の実施形態では、本方法の工程(a)は、前処理方法の直後に行われなかった。該工程a)は、本明細書中の上に記載されるように、磁性ビーズを用いた第1の濃縮ワークフローの後に行われてもよい。
【0224】
本発明の第6の態様の実施形態では、分析物特異的磁性ビーズが使用され、本明細書中で前記または以下に開示される式Iの化合物は、洗浄工程(W1、W2)が、溶出試薬の前、溶出試薬と共に、または溶出試薬に続くかのいずれかで終わった後に、対象のサンプルに添加され、その後、インキュベーション期間(定義された時間および温度)が続く。
【0225】
本発明の第6の態様の実施形態では、次いで、結合していない磁気ビーズを分離し、工程a)の複合体を含む上清を回収する。本発明の第6の態様の実施形態では、工程a)の複合体を含有する上清を、第2の濃縮ワークフローに、特に直接LCステーションに移すか、または希釈液の添加による希釈工程の後に移す。
【0226】
本発明の第6の態様の実施形態では、マトリックス特異的磁性ビーズが使用され、本明細書中の前記または下記に開示される式Iの化合物は、磁気ビーズが分離される前または後に、対象サンプルへと添加される。本発明の第6の態様の実施形態では、工程a)の複合体を含有する上清を、特にLCステーションに直接、または希釈液の添加による希釈工程の後に、第2の濃縮ワークフローに移す。
【0227】
したがって、工程a)における式Iの化合物と分析物分子との反応が第1の濃縮プロセスの後に行われる本発明の第6の態様の実施形態では、式Iの化合物は、第1の濃縮プロセス、特に磁気ビーズを使用する第1の濃縮プロセスが終了した後に目的のサンプルに添加される。したがって、サンプルは、まず本明細書で前記に記載されるように前処理され、次いで特に、本明細書で前記に記載されるように分析物選択基を運ぶ磁性ビーズを用いる第1の濃縮プロセスに供され、ビーズからの溶出の前に、ビーズからの溶出と同時に、またはビーズからの溶出後に、式Iの化合物が添加される。したがって、分析物分子と式Iの化合物との複合体は、第1の濃縮プロセスの後、第2の濃縮プロセスの前に形成される。したがって、複合体は、工程b)の質量分析に供される前に第2の濃縮プロセスに供される。
【0228】
本発明の第6の態様の別の実施形態では、本方法の工程(a)は、第2の分析物濃縮ワークフローの後に行われる。第2の濃縮ワークフローでは、サンプル中の対象分析物を更に濃縮するために、クロマトグラフ分離を使用する。本発明の第6の態様の実施形態では、クロマトグラフ分離は、ガスまたは液体クロマトグラフィーである。どちらの方法も当業者にはよく知られている。本発明の第6の態様の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、HPLC、高速LC、マイクロLC、フローインジェクション、ならびにトラップおよび溶出からなる群から選択される。
【0229】
本発明の第6の態様の実施形態では、本方法の工程(a)は、クロマトグラフ分離と同時にまたはその後に行われる。本発明の第6の態様の実施形態では、式Iの化合物は、溶出緩衝液と共にカラムに添加される。別の実施形態では、式Iの化合物を、ポストカラムに添加する。
【0230】
本発明の第6の態様の実施形態では、第1の濃縮プロセスは、分析物選択的磁性ビーズの使用を含む。本発明の第6の態様の実施形態では、第2の濃縮プロセスは、特に液体クロマトグラフィーを用いるクロマトグラフ分離の使用を含む。
【0231】
したがって、工程a)における式Iの化合物と分析物分子との反応が第2の濃縮プロセスの後に行われる本発明の第6の態様の実施形態では、式Iの化合物は、クロマトグラフィー、特に液体クロマトグラフィーを使用する第2の濃縮プロセスが終了した後に目的のサンプルに添加される。したがって、この場合、該サンプルは、まず本明細書中で前記に記載されるように前処理され、次いで特に、本明細書中で前記に記載されるように磁性ビーズを用いて第1の濃縮プロセスに供され、その後、特に液体クロマトグラフィーを用いてクロマトグラフ分離に供され、続いて式Iの化合物が添加される。したがって、結合分析物分子と式Iの結合化合物との複合体は、第2の濃縮プロセスの後に形成される。したがって、複合体は、工程b)の質量分析に供される前に濃縮プロセスに供されない。
【0232】
第7の態様では、本発明は、式V:
【化16】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
の化合物に関する。好ましくは、A3はアンモニウムであり、B1またはB5はカップリング基Qであり、QはO、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まない。
【0233】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様および/または本発明の第4の態様および/または本発明の第5の態様および/または本発明の第6の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第7の態様に適用され、逆もまた同様である。特に、本発明の第1の態様、例えばA1、A2、A3、B1、B2、B3、B4およびB5について言及される全ての実施形態は、式Vの化合物に適用される。特に、式Vの化合物は、質量分析決定に使用し得る。あるいは、またはさらに、式Vの化合物は、他の技術分野、例えば化学標識および薬物送達に使用し得る。
【0234】
本発明の実施形態では、臨床診断システムは、本発明の第1の態様の化合物および/または本発明の第2の態様の組成物および/または本発明の第3の態様のキットおよび/または本発明の第4の態様の複合体を含む。さらに、または任意に、本発明の第1の態様の化合物は、分析物の質量分析決定に使用され、臨床診断システムは質量分析決定を含む。さらに、または任意に、本発明の第6の態様の分析物の質量分析決定のための方法は、臨床診断システムによって実施される。
【0235】
「臨床診断システム」は、インビトロ診断のためのサンプルの分析専用の実験室自動化装置である。臨床診断システムは、必要性に応じておよび/または所望の実験室ワークフローに応じて、異なる構成を有することができる。さらなる構成を、複数の装置および/またはモジュールを互いに結合させることによって得ることができる。「モジュール(module)」は、専用機能を有する、臨床診断システム全体よりサイズが典型的には小さい作業セルである。この機能は、分析機能であってよいが、分析前または分析後の機能であってもよく、あるいは分析前の機能、分析機能、または分析後の機能のいずれかに対する補助機能であってよい。特に、モジュールを、例えば1つ以上の分析前および/または分析および/または分析後ステップを実行することによって、サンプル処理ワークフローのうちの専用のタスクを実行するための1つ以上の他のモジュールと協働するように構成し得る。特に、臨床診断システムは、例えば、臨床化学、免疫化学、凝固、血液学、液体クロマトグラフィー分離、質量分析などの特定の種類の分析のために最適化されたそれぞれのワークフローを実行するように設計された、1つ以上の分析装置を備え得る。したがって、臨床診断システムは、1つの分析装置、またはそれぞれのワークフローを有するそのような分析装置のいずれかの組み合わせを備え得、前分析および/または後分析モジュールは、個々の分析装置に結合されるか、または複数の分析装置によって共有され得る。あるいは、分析前および/または分析後機能を分析装置に統合されたユニットによって実行してもよい。臨床診断システムは、サンプルおよび/または試薬および/またはシステム流体のピペッティングおよび/または圧送および/または混合のための液体ハンドリングユニット等の機能ユニット、および同様に、ソートする、格納する、輸送する、識別する、分離する、検出するための機能ユニットを備えることができる。臨床診断システムは、目的の分析物を含むサンプルを自動調製するためのサンプル調製ステーション、複数のLCチャネルを含む液体クロマトグラフィー(LC)分離ステーション、および/または調製されたサンプルをLCチャネルのいずれかに入力するためのサンプル調製/LCインターフェースを備え得る。臨床診断システムは、それぞれがサンプル調製ステップの予め定義された順序を含み、目的の分析物に応じて完了のために予め定義された時間を必要とする予め定義されたサンプル調製ワークフローにサンプルを割り当てるようにプログラムされたコントローラを更に備え得る。臨床診断システムは、質量分析計(MS)およびLC分離ステーションを質量分析計に接続するためのLC/MSインターフェースとを更に備え得る。本明細書で使用される場合、「自動的に」または「自動化された」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常かつ慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、特に手動の動作および/またはユーザとの相互作用を必要とせずに、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって完全に実行されるプロセスを指すことができるが、それらに限られるわけではない。
【0236】
「サンプル準備ステーション」は、1つ以上の分析装置または分析装置内のユニットに結合した分析前モジュールであり、サンプル中の妨げとなるマトリクス成分を除去または少なくとも低減し、および/またはサンプル中の関心の分析対象物を濃縮することを目的とした一連のサンプル処理工程を実行するように設計される。このような処理工程は、サンプルまたは複数のサンプルについて順次、並列、または時差をつけた様相で実行される以下の処理作業、すなわち流体のピペット操作(吸引および/または送出)、流体の圧送、試薬との混合、特定の温度での培養、加熱または冷却、遠心分離、分離、フィルタ処理、ふるい分け、乾燥、洗浄、再懸濁、分取、移送、保管、のうちの1つ以上を含み得る。
【0237】
「液体クロマトグラフィー(LC)分離ステーション」は、目的の分析物を、例えば、マトリックス成分、例えば、その後の検出、例えば質量分析検出を依然として妨げ得るサンプル調製後の残りのマトリックス成分から分離するために、および/またはそれらの個々の検出を可能にするために目的の分析物を互いに分離するために、調製されたサンプルをクロマトグラフィー分離するように設計された分析装置またはモジュールまたは分析装置内のユニットである。一実施形態では、LC分離ステーションは、質量分析のためのサンプルを調製するように、および/または調製されたサンプルを質量分析計に移送するように設計された分析装置内の中間分析装置またはモジュールまたはユニットである。特に、LC分離ステーションは、複数のLCチャネルを含むマルチチャネルLCステーションである。
【0238】
臨床診断システム、例えばサンプル調製ステーションはまた、新しいサンプル調製開始シーケンスが開始される前に複数のサンプルを受け取るためのバッファユニットを備えてもよく、サンプルは個別にランダムにアクセス可能であってもよく、その個別の調製はサンプル調製開始順序に従って開始されてもよい。
【0239】
臨床診断システムは、質量分析に結合されたLCをより便利で、より信頼性のあるものとし、したがって臨床診断に適している。特に、質量分析へのオンライン結合を可能にしながら、ランダムアクセスによるサンプル調製およびLC分離によりハイスループット、例えば最大100サンプル/時間またはそれ以上を得ることが可能である。さらに、プロセスを完全に自動化して、歩留まりを向上させ、必要な技能のレベルを下げることが可能である。
【0240】
さらなる実施形態では、本発明は、以下の態様に関する。
【0241】
1.分析物の質量分析決定のための、式I
【化17】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
の化合物。
【0242】
2.カップリング基Qが、以下の式II:
【化18】
(式中、Kは、分析物と共有結合を形成し得る反応性ユニットであり、
nは、0、1、2、3、4または5であり、
Xは式Iのフェニル基の炭素原子である)
によるXに結合している、態様1に記載の化合物。
【0243】
3.Kが、分析物のカルボニル基、フェノール基、アミン、ヒドロキシル基またはジエン基と反応し得る、態様2に記載の化合物。
【0244】
4.Kが、ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、Br、F芳香族、4-置換1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(TAD)、活性エステル、塩化スルホニルおよび反応性カルボニルからなる群から選択される、態様2または3に記載の化合物。
【0245】
5.A3がアンモニウムであり、B1またはB5がQであり、QがO、N、S、およびBrから選択される少なくとも1つの原子を含まず、特にQがO、N、SおよびBrを含まない、態様1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【0246】
6.A3がアンモニウムであり、B1またはB5がKであり、nが3、4または5である、態様1~5のいずれか1一項に記載の化合物。
【0247】
7.A3がアンモニウムであり、B1またはB5がKであり、KがO、N、S、Brから選択される少なくとも1つの原子を含まず、特にKがO、N、SおよびBrを含まない、態様1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【0248】
8.Qが、メチルヒドラジド、メチルヒドラジン、メチルヒドロキシルアミン、オキシアミン、4-メチル-オキシ-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(CH2-O-TAD)、2,4-ジニトロ-5-フルオロアニリン誘導体、クロルスルホニルおよびメタンスルホニルクロリドからなる群から選択される、態様1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【0249】
9.A3が、ピリジニウム、トリメチルアンモニウム、ホスホニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、メチルジエチルアンモニウムおよびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される、態様1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【0250】
10.A3がNR1R2R3またはPR4R5R6であり
R1、R2、R3、R4、R5、R6がそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、置換フェニル、非置換フェニル、アルキル、修飾アルキル、短鎖アルキルから選択される、態様1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【0251】
11.B1、B2、B3、B4、B5が、それぞれ独立して、OR7、NR8R9、H、脂肪族から選択され、
R7、R8、R9が、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、置換フェニル、非置換フェニル、アルキル、修飾アルキル、短鎖アルキルから選択される、態様1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【0252】
12.A1、A2が、それぞれ独立して、H、脂肪族基、芳香族基から選択される、態様1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【0253】
13.A1がHまたはCH3である、態様1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【0254】
14.A2がHまたはCH3である、態様1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【0255】
15.A1がHであり、A2がHであり、A3がピリジニウムである、態様1~14のいずれか一項に記載の化合物。
【0256】
16.B3がQである、態様1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【0257】
17.B2がQである、態様1~16のいずれか一項に記載の化合物。
【0258】
18.B4がQである、態様1~17のいずれか一項に記載の化合物。
【0259】
19.B1がHまたはメトキシである、態様1~18のいずれか一項に記載の化合物。
【0260】
20.B2がHまたはメトキシである、態様1~19のいずれか一項に記載の化合物。
【0261】
21.B4がHまたはメトキシである、態様1~20のいずれか一項に記載の化合物。
【0262】
22.B5がHまたはメトキシである、態様1~21のいずれか一項に記載の化合物。
【0263】
23.QがFを含む、態様1~22のいずれか一項に記載の化合物。
【0264】
24.nが0である、態様1~23のいずれか一項に記載の化合物。
【0265】
25.nが1である、態様1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【0266】
26.nが0または1であり、Kがヒドラジドである、態様1~25のいずれか一項に記載の化合物。
【0267】
27.カップリング基Qを形成していない他の置換基B1、B2、B3、B4、B5が、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、N,Nジメチルアミン、エトキシまたはメトキシから選択される、態様1~26のいずれか一項に記載の化合物。
【0268】
28.化合物が永久に正に帯電している、態様1~27のいずれか一項に記載の化合物。
【0269】
29.化合物が単純に永久的に正に帯電している、態様1~28のいずれか一項に記載の化合物。
【0270】
30.化合物が、二重または三重に永久に正に帯電している、態様1~29のいずれか一項に記載の化合物。
【0271】
31.化合物が、塩を形成するための対イオンを含み、対イオンが、好ましくは以下の群から選択される、態様1~30のいずれか一項に記載の化合物。Cl-、Br-、F-、ギ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、PF6
-、スルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩。
【0272】
32.以下の式
【化19】
を含む、態様1~31のいずれか一項に記載の化合物。
【0273】
33.態様1~32のいずれか一項に記載の化合物を含む、組成物。
【0274】
34.態様1~32のいずれか一項に化記載の合物、または態様33に記載の組成物を含む、キット。
【0275】
35.互いに共有結合した結合分析物および結合化合物を含む、質量分析決定を使用して分析物を検出するための複合体であって、特に、複合体が、分析物と態様1~32のいずれか一項に記載の化合物との化学反応によって形成される、複合体。
【0276】
36.結合化合物が、式III
【化20】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成するカップリング基Q
*であり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
カップリング基Q
*が式IVを含む:
【化21】
(式中、n
*は0、1、2、3、4、または5であり;
結合分析物は、K
*を介して共有結合しており、
X
*は式IIIのフェニル基の炭素原子であり、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Q
*である場合、カップリング基Q
*は、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Q
*は、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む))
を含む、態様35に記載の複合体。
【0277】
37.分析物が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝産物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子、生物によって内在化された物質、そのような物質の代謝産物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様35または36に記載の複合体。
【0278】
38.結合化合物が、分析物のカルボニル基、ヒドロキシル基またはジエン基を介して共有結合して、前記複合体を形成する、態様35~37のいずれか一項に記載の複合体。
【0279】
39.分析物の質量分析決定のための、態様1~32のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【0280】
40.質量分析決定が、タンデム質量分析決定、特にトリプル四重極質量分析決定を含む、態様39に記載の化合物の使用。
【0281】
41.分析物の質量分析決定のための方法であって、
(a)分析物を、態様1~32のいずれか一項で定義された式Iの化合物と反応させ、それによって、態様35~38のいずれか一項で定義された複合体を形成させる工程、
(b)工程(a)からの複合体を質量分析に供する工程
を含む、方法。
【0282】
42.質量分析工程(b)が、
(i)複合体のイオンを質量分析の第1段階に供し、それによって複合体のイオンをその質量/電荷(m/z)比に従って特徴付ける工程、
(ii)複合体イオンのフラグメンテーションを引き起こし、それによって第1の要素、特に第1の中性要素、特に低分子量の中性要素が放出され、かつ複合体の娘イオンが生成される工程であって、複合体の娘イオンは複合体イオンとそのm/z比が異なる、複合体の娘イオンが生成される工程、
(iii)複合体の娘イオンを質量分析の第2段階に供し、それによって複合体の娘イオンをそのm/z比に従って特徴付ける工程
を含み、ならびに/または、
(ii)は、複合体イオンの代替的なフラグメンテーションを更に含み得、それによって、第2要素、特に第1の中性要素とは異なる第2の中性要素が放出され、かつ複合体の第2の娘イオンが生成され、および、
(iii)は、複合体の第1の娘イオンおよび第2の娘イオンを質量分析の第2段階に供することを更に含み得、それによって、複合体の第1および第2の娘イオンをそれらのm/z比に従って特徴付ける、態様41に記載の方法。
【0283】
43.第1の要素および/または第2の要素が、トリメチルアミン、ピリジン、ホスフィン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミンおよびトリアルキルアミンからなる群から選択される、態様41または42に記載の方法。
【0284】
44.式Vの化合物:
【化22】
(式中、置換基B1、B2、B3、B4、B5のうちの1つは、分析物と共有結合を形成し得るカップリング基Qであり、
他の置換基A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、修飾アルキル、N-アシルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アシル、ニトロ、チオアシル、アリーロルイル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、シアノエチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、ニトロエチル、アシルオキシ、アリーロイルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、硫黄、同位元素またはそれらの誘導体から選択され、
A3は、アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはそれらの誘導体を含み、
A3がアンモニウムであり、B1またはB5がカップリング基Qである場合、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から4つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含み、カップリング基Qは、CA1A2A3置換基のC原子から5つの単結合または二重結合によって分離されたC原子を含む)
の化合物。
【0285】
実施例
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるものであって、限定するものではない。
【0286】
実施例1:ラベル1~5の合成
ラベル1:
工程1:ピリジニウム基を有するヒドラジド誘導体の合成
【化23】
587mg(2mmol)のメチル4-(ブロモメチル)フェニルアセテート、10mlのエタノールおよび324ml(4mmol)のピリジンを混合し、3時間還流した。混合物を減圧濃縮して油状物を得た。
【0287】
工程2:
【化24】
工程1からの油状物を8mlの水に溶解し、0.9mlのヒドラジン水和物(H
2O中80%)を添加し、反応物を70分間還流した。反応混合物を減圧濃縮し、分取RP HPLC(水からアセトニトリル)によって精製した。LC-ESI+m/zの計算値は242.3である。ラベル1について実験的に決定されたm/zの値は242.2である。RP HPLC(逆相HPLC)は当業者に公知であり、したがって詳細には説明しない。
【0288】
ラベル2~5は、ラベル1について記載したようにそれに応じて合成される。ラベル2~5についてのLC-ESI+m/zの計算値および実験的に決定されたm/zの値を表3に示す。
【表3】
【0289】
実施例2:ラベル6~13の合成
ラベル6:
工程1:トリメチルアンモニウム基を有するヒドラジド誘導体の合成
【化25】
587mg(2mmol)のメチル4-(ブロモメチル)フェニルアセテート、10mlのエタノールおよび0.95mLのトリメチルアミン(H2O中25%)を混合し、3時間還流した。混合物を減圧濃縮して油状物を得た。
【0290】
工程2:
【化26】
工程1からの油状物を8mlの水に溶解し、0.9mlのヒドラジン水和物(H
2O中80%)を添加し、反応物を70分間還流した。反応混合物を減圧濃縮し、分取RPHPLC(水からアセトニトリル)によって精製した。LC-ESI+m/zの計算値は222.3である。ラベル6について実験的に決定されたm/zの値は222.3である。
【0291】
ラベル7~13は、ラベル6について記載したようにそれに応じて合成される。ラベル7~13についてのLC-ESI+m/zの計算値および実験的に決定されたm/zの値を表4に示す。
【表4】
【0292】
実施例3:ラベル14の合成:トリメチルアンモニウム基を有するヒドロキシルアミン誘導体の合成
工程1:
【化27】
1gの4-ブロモベンジルブロミド(4mmol)を50mlのTHFに溶解し、1.5当量の25%トリメチルアミン水溶液を添加した。混合物を16時間撹拌し、得られた沈殿物を濾過によって回収し、乾燥させた。LC-ESI+m/zの計算値は229.1である。m/zの実験的に決定された値は230.2である。
【0293】
工程2:
【化28】
7.5mg(11mg)のアリルパラジウム(II)クロリド二量体(20μmol)、40mgのtBuBrettPhos(2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’、4’、6’-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル、80μmol)、490mgの炭酸セシウム(1.5mmol)、工程1からの310mgの固体(1mmol)を、乾燥マイクロ波バイアル中、アルゴン下で2mlの無水トルエンに溶解した。125μlのエチルアセトヒドロキサメート(l.25mmol)を添加し、反応混合物を密閉バイアル内で65℃で撹拌した。次いで、反応混合物をメタノール25mlに注ぎ入れ、フィルタにかけ、減圧濃縮した。得られた固体を水/メタノールに溶解し、RP HPLC(水からアセトニトリル、逆相HPLC)により精製した。LC-ESI+m/zの計算値は251,3である。実験的に決定されたm/zの値は251.3である。
【0294】
工程3:
【化29】
工程2からの109mg(329μmol)の固体を2mlのジオキサンに溶解し、水中6MのHCl、400μl(2.35mmol)を添加し、混合物を室温で80分間撹拌した。9mlの水を添加し、混合物をRP HPLC(水からアセトニトリル)によって精製した。LC-ESI+m/zの計算値は181.3である。実験的に決定されたm/zの値は181.3である。
【0295】
実施例4:ラベル15の合成
工程1:[4-(3,5-ジオキソ-1,2,4トリアゾリジン-4-イル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムトリフルオロアセテートの合成
【化30】
4-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオン(0.39mmol)J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1990,191,1416-1417に既に報告されたようにして合成)を無水DMFに溶解し、次いで、PPh
3(0.54mmol)およびCBr
4(0.58mmol)を添加した。室温(r.t.)で2時間攪拌した後、TMA(THF中1M溶液、0.46mmol)を添加し、溶液を室温で2時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を水に懸濁し、CH
2Cl
2で抽出した。水相を乾燥させ、未精製の生成物を分取HPLCによって精製した。純粋な生成物を、白色固体(75mg、収率54%)として得た。
【0296】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~40分:80% H2O 0.1% TFA、20% CH3CN 0.1% TFA;
40~60分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
60~74分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
74~79分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
79~90分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 3.12(s,9 H)4.56(s,2 H)7.65-7.72(m,4 H).
13C NMR(101 MHz,メタノール-d4)δ ppm 51.68(3 C)68.41(1 C)126.24(2 C)127.23(1 C)133.25(2 C)134.14(1 C)153.66(2 C).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値249.13460、実測値249.39.
【0297】
工程2:[4-(3,5-ジオキソ-1,2,4トリアゾール-4-イル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムトリフルオロアセテートの合成
【化31】
4-(3,5-ジオキソ-1,2,4トリアゾリジン-4-イル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムトリフルオロアセテート(0.041mmol)を無水CH
3CN(500μL)にアルゴン下で溶解した。DBH(0.041mmol)を添加し、赤色の溶液を、室温で暗所において10分間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、残渣を無水CH
2Cl
2に懸濁した。赤色の固体をCH
2Cl
2で再度洗浄し、乾燥させた。固体をさらに精製することなく使用し、-20℃で暗所で保存した。
【0298】
実施例5:ラベル16の合成:N-[4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル]-5-フルオロ-2,4-ジニトロアニリンの合成
【化32】
4-[(ジメチルアミノ)メチル]アニリン(0.58mmol)を、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(0.35mmol)のCH
3CN(1mL)中溶液に添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、未精製の生成物をクロマトグラフィー(溶離液:CH
2Cl
2/MeOH100:0→95:5)によって精製した。生成物を黄色油状物として得た(97mg、収率83%)。
1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ ppm 2.50(s,6 H)3.77(s,2 H)6.85(d,J=13.30 Hz,1 H)7.26-7.31(m,2 H)7.52(d,J=8.03 Hz,2 H)9.17(br d,J=7.65 Hz,1 H)9.94(br s,1 H).
HPLC-MS(m/z)[M+H]+計算値335.11501、実測値335.36
【0299】
生成された生成物のジメチルアミノ残基はメチル化され、標識16を形成し得る。メチル化は、分析物との複合体形成の前または後に起こり得る。
【0300】
実施例6:ラベル17の合成:[4-(ブロモメチル)フェニル]メタンスルホニルクロリドの合成
【化33】
4-メチルベンジルスルホニルクロリド(2.59mmol)、DBH(1.81mmol)およびAIBN(0.26mmol)をCH
3CNに溶解した。溶液を60℃で18時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、未精製の化合物をクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/EtOAc100:0→90:10)によって精製した。生成物を白色固体(50mg)として得た。
1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ ppm 4.49(s,2 H)4.85(s,2 H)7.38-7.55(m,4 H).
13C NMR(101 MHz,クロロホルム-d)δ ppm 32.11(1 C)70.36(1 C)126.15(1 C)129.82(2 C)131.76(2 C)140.09(1 C).
【0301】
実施例7:ラベル18の合成:ピリジニウム基を有するブロモ誘導体の合成
【化34】
1.6gのアルファ,アルファ’-ジブロモ-p-キシロールをエタノールに溶解し、ピリジンを還流中に2時間にわたって添加した。次いで、混合物を30分間撹拌し、溶媒を真空中で除去した。未精製の物質をエーテルで2回消化し、残りの固体を水に溶解し、RP HPLC(水からアセトニトリル)によって精製した。LC-ESI+m/zの計算値は263.2である。実験的に決定されたm/zの値は263.1である。
【0302】
実施例8:ラベル19の合成:トリメチルアンモニウム基を有するブロモ誘導体の合成
【化35】
1.6gのアルファ,アルファ’-ジブロモ-p-キシロールを100mLのTHFに溶解し、トリメチルアミンを添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、得られた沈殿物をフィルタにかけ、エーテルで洗浄する。未精製の物質をRP HPLC(水からアセトニトリル)によって精製した。LC-ESI+m/zの計算値は243.1である。実験的に決定されたm/zの値は244.1である。
【0303】
実施例9:ラベル20の合成:
工程1:
【化36】
アルゴン雰囲気下、N-ヒドロキシフタルイミド(2.06mmol)の無水THF10mL中溶液に、α、α’-ジブロモ-p-キシレン(2.27mmol)を添加した。次いで、DIPEA(4.54mmol)を滴下し、次いで、反応混合物を24時間還流した。室温まで冷却した後、反応混合物を水で希釈し、CH
2Cl
2で抽出した。有機相を回収し、真空下で乾燥させた。未精製の生成物をクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/EtOAc100:0→80:20)によって精製した。生成物を白色固体(264mg、収率37%)として得た。
1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ ppm 4.47(s,2 H)5.19(s,2 H)7.40(d,J=8.03 Hz,2 H)7.51(d,J=8.16 Hz,2 H)7.70-7.77(m,2 H)7.77-7.84(m,2 H).
13C NMR(101 MHz,クロロホルム-d)δ ppm 32.85(1 C)77.19(1 C)79.30(2 C)123.53(2 C)128.82(1 C)129.22(2 C)130.17(2 C)133.92(2 C)134.47(2 C)138.86(2 C)163.45(2 C).
HPLC-MS(m/z)[M+H]+計算値346.00733、実測値346.19
【0304】
工程2:[4-[(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシメチル]フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムブロミド(ラベル16)の合成
【化37】
N-[[4-(ブロモメチル)フェニル]メトキシ]フタルイミド(0.37mmol)を無水CH
2Cl
2(2.5mL)に溶解し、TMA溶液(THF中1M、0.45mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。白色固体を濾過によって回収し、CH
2Cl
2で洗浄した。生成物を白色固体(130mg、収率85%)として得た。
1H NMR(400 MHz,アセトニトリル-d
3)δ ppm 3.08(s,9 H)4.59(s,2 H)5.24(s,2 H)7.56-7.65(m,2 H)7.68(br d,J=8.03 Hz,2 H)7.83(s,4 H).
1
3C NMR(101 MHz,アセトニトリル-d
3)δ ppm 52.29(3 C)68.33(2 C)78.83(2 C)123.15(2 C)128.71(2 C)128.95(2 C)130.28(2 C)133.12(2 C)134.76(2 C)136.96(2 C)163.45(2 C).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値325.15467、実測値325.35.
【0305】
工程3:[4-(アミノオキシメチル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムクロリド(ラベル20)の合成
【化38】
[4-[(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシメチル]フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムブロミド(0.30mmol)をCH
3CN(2mL)に溶解した。KOH水溶液(0.33mmol、1mL)を添加し、溶液を4時間還流した。次いで、濃HCl(200μL)を添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、未精製の化合物を分取HPLCによって精製した。化合物を白色固体(陰イオン交換後の塩化物塩、23mg、収率34%)として得た。
【0306】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~20分:100% H2O 0.1% TFA;0% CH3CN 0.1% TFA.
20~24分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
24~34分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
34~40分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
40~50分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 3.11(s,9 H)4.55(s,2 H)5.09(s,2 H)7.57-7.66(m,4 H).
13C NMR(101 MHz,メタノール-d4)δ ppm 53.27(3 C)69.95(1 C)77.29(1 C)130.42(1 C)131.07(2 C)134.62(2 C)137.33(1 C).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値195.14919、実測値195.35.
【0307】
実施例10:ラベル21の合成:
【化39】
ジブロモ-p-キシロール(1mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.5mmol)をアルゴン雰囲気下、無水トルエン中で混合し、80℃で90分間撹拌した。室温に冷却した後、生成物をフィルタにかけ、トルエンで洗浄し、RP HPLC(アセトニトリル、水、RP=逆相)によって精製する。
LC-ESI+m/z(計算値)=445.1;m/z(実測値)=445.2
【0308】
実施例11:ラベル22の合成
【化40】
ジブロモ-p-キシロール(1mmol)およびTHF中の500μLの0.1Mトリメチルホスフィンをトルエン3mLに溶解し、80℃で60分間撹拌した。室温に冷却した後、生成物をフィルタにかけ、トルエンで洗浄し、RP HPLC(アセトニトリル、水)によって精製する。
LC-ESI+m/z(計算値)=259.0;m/z(実測値)=259.1
【0309】
実施例12:ラベル25の合成
【化41】
ジブロモ-p-キシロール(1mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.5mmol)を、Ar雰囲気下、無水トルエン中で混合し、80℃で90分間撹拌した。室温に冷却した後、生成物をフィルタにかけ、トルエンで洗浄し、RP(アセトニトリル、水)によって精製する。
LC-ESI+m/z(計算値)=535.1;m/z(実測値)=535.1
【0310】
ラベル-分析物誘導体(複合体)の調製およびMSによるその分析
本開示において本明細書で言及されるラベルは、分析物、例えばテストステロン、ビタミンD、エストラジオールまたはそれらの誘導体と結合し得る。これは、以下のように例示される。本発明は、以下の実施例に限定されない:
【0311】
実施例13:ラベル-テストステロン誘導体(複合体)の調製およびMSによるその分析
実施例13.1:ラベル7-テストステロン誘導体の調整
【化42】
315mgのラベル7を13mLの酢酸エチルおよび5mLの氷酢酸に溶解し、テストステロンを添加し、反応物を40℃で30分間撹拌し、次いで、40℃で減圧濃縮した。未精製の混合物をRP HPLC(水からアセトニトリル)によって精製した。LC-ESI+m/zの計算値は478.7である。実験的に決定されたm/zの値は278.4である。
【0312】
それに応じて、他の複合錯体を調製し得る。例えば:
【0313】
実施例13.2:ラベル3-テストステロン誘導体:
【化43】
LC-ESI+m/z(計算値)=498.7;m/z(実測値=実験的に決定)=498.3
【0314】
実施例13.3:ラベル10-テストステロン誘導体
【化44】
LC-ESI+m/z(計算値)=508.7;m/z(実測値)=508.3
【0315】
実施例13.4:ラベル1~14を使用したテストステロン誘導体の分析的誘導体化
テストステロンの500ng/mlのメタノール中溶液(S1)を調製した。誘導体化試薬ラベル1~14および20のいずれかを過剰に含む溶液(S1)と比較し、メタノールで希釈した溶液(S2)を加え(モル比>1000)、氷酢酸(20%v/v)で酸性化した。溶液S1およびS2を混合して溶液S3を得て、65℃で2時間保持し、続いて室温で12時間保持した。12時間後、溶液S3をメタノールで希釈して、1当量のテストステロンの分子量に基づいて5つの独立した濃度レベル:1/20当量のテストステロン;1/40当量のテストステロン;1/100当量のテストステロンおよび1/200当量のテストステロンを得た。1当量は依然として検出器の線形範囲内にあるように、1/200当量のテストステロンは使用される機器の検出限界未満であるように選択される。より高感度の機器では、濃度を適切なシステム検出限界に適合するように調整した。例として、以下の濃度をWaters Quattro Microシステム(100ng/ml;5ng/ml;2、5ng/ml;1ng/ml;500pg/ml)に使用した。溶液S2を使用することにより、0ng/mlのブランク溶液を調製した。
【0316】
分析物分子の誘導体化後、異性体が誘導され、これにより、しばしば複数のピークがもたらされ得る。これらの異性体のクロマトグラフィー挙動は、それらの特性を相対的に定量する方法で対処する必要がある。例示的な
図1は、絶対ピーク高さの5%において特定のクロマトグラフィー法を適用した経時的なシグナル分布(%)を示す。「分割」のパラメータは、分析物分子の誘導体化反応から生じる異性体を分離するクロマトグラフシステムの能力を記述する。異性体ピークの重心で測定された保持時間は、逆相クロマトグラフィー材料を分離に使用する場合、得られた誘導体の極性を表し得る。面積A1およびA2は、シグナル数
*分で測定され、それぞれ得られた誘導異性体の比として報告される。ピークA1とA2との比が50/50である場合、得られる異性体は等量で生成される。ラベルがこの比率に影響を及ぼして50/50に等しくない場合、主に2種の異性体が生成される。シグナル強度はしたがって不均一に分布し、影響を受けないバックグラウンドノイズに対してシグナル高さを増大させる。
【0317】
各標識化物質について、それぞれのテストステロン誘導体を液体クロマトグラフィー分離後にエレクトロスプレイイオン化質量分析によって測定し、15V、20V、25V、30V、35V、および40Vの衝突エネルギーを持つ種々のフラグメンテーション走査を行った。
【0318】
分子イオンピークおよび最も豊富なフラグメントイオンピーク(中性損失または特定の主フラグメント)の質量シグナルは、フラグメンテーションの最適化に使用されている。フラグメンテーションエネルギーは、中性損失を有する荷電分子の信号利得、および/またはフラグメンテーション方法単位に関する場合、最も重要な調整パラメータの1つである。フラグメンテーションのエネルギーは、分子がソースおよび更なるイオン経路条件中に開裂されない必要があるために、重要である。中性損失断片を切断すること、または切断は、目的の特定の断片を形成するために、コリジョンセル(および/または関連デバイス)でのみ行うべきである。中性損失フラグメントの開裂のために衝突エネルギーを非常に高くする必要がある場合にもまた、中性損失フラグメンテーション経路に対するシグナル強度の損失をもたらす他の望ましくないフラグメンテーション経路も生じ得る。衝突エネルギーは小さくなく、かつ最適なフラグメンテーション挙動を得るのに大き過ぎないものと仮定する。それぞれの衝突エネルギーによる面積計数の最大値を、更なる検出限界定量化アプローチに使用した。
【0319】
あらゆる標識物質について、それぞれのテストステロン誘導体を、液体クロマトグラフィーを介して質量分析計に注入することによって、トリプル四重極質量分析計で調整した。調整パラメータは、5つの独立した衝突エネルギー実験において、それぞれのクロマトグラフィーピークの最も高いシグナルをもたらした衝突エネルギーであった。最適化されたMSパラメータは、ポイント(C)の一般的なLCおよびMSパラメータによって適用されている。
【0320】
クロマトグラフィーおよびMSパラメータ
● 極性 ES+
● 較正 静的2
● キャピラリー(kV)3.00 3.00
● コーン(V)50.00 53.36
● 抽出器(V)3.00 3.54
● RFレンズ(V)0.2 0.2
● ソース温度(℃)140 138
● 脱溶媒和温度(℃)350 348
● コーンガス流量(L/時)50 49
● 脱溶媒和ガス流量(L/時)650 646
● LM1解像度 5.0
● HM1解像度 15.0
● イオンエネルギー1 1.0
● 入口 50-65
● 衝突 2-15
● 出口 50-65
● LM2解像度 5.0
● HM2解像度 15.0
● イオンエネルギー2 1.0
● 乗算器(V)650-647
● シリンジポンプ流量(uL/分)40.0
● ガス・セル・ピラニ圧(mbar)1.87e-4
● 機器パラメータ-機能2:
● 極性 ES+
● 較正 静的2
● キャピラリー(kV)3.00 3.00
● コーン(V)50.00 53.36
● 抽出器(V)3.00 3.54
● RFレンズ(V)0.2 0.2
● ソース温度(℃)140 138
● 脱溶媒和温度(℃)350 348
● コーンガス流量(L/時)50 49
● 脱溶媒和ガス流量(L/時)650 646
● LM1解像度 5.0
● HM1解像度 15.0
● イオンエネルギー1 1.0
● 入口 50-65
● 衝突 2-15
● 出口 50-65
● LM2解像度 5.0
● HM2解像度 15.0
● イオンエネルギー2 1.0
● 乗算器(V)650-647
● シリンジポンプ流量(uL/分)40.0
● ガス・セル・ピラニ圧(mbar)1.87e-4
● 機器パラメータ-機能3:
● 極性 ES+
● 較正 静的2
● キャピラリー(kV)3.00 3.00
● コーン(V)50.00 53.36
● 抽出器(V)3.00 3.54
● RFレンズ(V)0.2 0.2
● ソース温度(℃)140 138
● 脱溶媒和温度(℃)350 348
● コーンガス流量(L/時)50 49
● 脱溶媒和ガス流量(L/時)650 646
● LM1解像度 5.0
● HM1解像度 15.0
● イオンエネルギー1 1.0
● 入口 50-65
● 衝突 2-15
● 出口 50-65
● LM2解像度 5.0
● HM2解像度 15.0
● イオンエネルギー2 1.0
● 乗算器(V)650-647
● シリンジポンプ流量(uL/分)40.0
● ガス・セル・ピラニ圧(mbar)1.87e-4
● ACE実験記録
●----------------メソッドパラメータ実行-----------
● Waters Acquity SDS
● 運転時間:10.00分
● コメント:
● 溶媒選択A:A1=水中0.1%ギ酸
● 溶媒選択B:B1=メタノール中0.1%ギ酸
● 低圧限界:0.000バール
● 高圧限界:1034.200バール
● 溶媒名A:水
● 溶媒名B:アセトニトリル
● スイッチ1:変更せず
● スイッチ2:オン
● スイッチ3:変更せず
● シールウォッシュ:5.0分
● チャートアウト1:システム圧力
● チャートアウト2:%B
● システム圧力データチャネル:あり
● 流量データチャネル:なし
● %Aデータチャネル:なし
● %Bデータチャネル:なし
● プライマリA圧力データチャネル:なし
● アキュムレータA圧力データチャネル:なし
● プライマリB圧力データチャネル:なし
● アキュムレータB圧力データチャネル:なし
● デガッサ圧力データチャネル:なし
● [勾配テーブル]
● 時間(分)流量 %A %B 曲線
● 1.初期0.400 98.0 2.0
● 2.7.000.40020.080.06
● 3.7.100.4000.0100.06
● 4.8.000.4000.0100.06
● 5.8.100.40098.02.06
● 6.10.000.40098.02.06
● イベント実行:あり
● [イベントテーブル]
● 実行時間(分)イベント操作 パラメータ
● 1.0.10 スイッチ2オン 0.00
● 2.3.50 スイッチ2オフ 0.00
● 3.9.00 スイッチ2オン 0.00
● Waters996 PDA
● 開始波長(nm)210.00
● 終了波長(nm)400.00
● 解像度(nm)1.2
● サンプリングレート(スペクトル/秒)2.000
● フィルタ応答 1
● 露出時間(ミリ秒)自動
● Interpolate 656 あり
● 取得停止時間(分)10.00
● ディスクに保存:あり
● Waters 996 PDAアナログチャネル1
● 出力モード オフ
● Waters 996 PDAアナログチャネル2
● 出力モード オフ
●
● Waters Acquity AutoSampler
● 運転時間:10.00分
● コメント:
● 事前ロード:無効
● ループオプション:ニードルオーバーフィルを用いたパーシャルループ
● LoopOffline:無効
● 弱洗浄溶媒名:メタノール
● 弱洗浄量:600uL
● 強洗浄溶媒名:メタノール
● 強洗浄量:200uL
● 目標カラム温度:40.0℃
● カラム温度アラームバンド:20.0℃
● 目標サンプル温度:10.0℃
● サンプル温度アラームバンド:10℃
● フル・ループ・オーバーフィル要素:自動
● シリンジ引出速度:自動
● ニードル配置:自動
● 吸引前エアギャップ:自動
● 吸引後エアギャップ:自動
● カラム温度データチャネル:あり
● 周囲温度データチャネル:あり
● サンプル温度データチャネル:なし
● サンプルオーガナイザ温度データチャネル:なし
● サンプル圧力データチャネル:なし
● スイッチ1:変更せず
● スイッチ2:オン
● スイッチ3:変更せず
● スイッチ4:変更せず
● チャートアウト:サンプル圧力
● サンプル温度アラーム:有効
● カラム温度アラーム:有効
● イベント実行:あり
● [イベントテーブル]
● 実行時(分)イベント操作
● 1.0.10 スイッチ2オン
● 2.3.00 スイッチ2オフ
● 3.3.10 スイッチ2トグル
● 4.8.00 スイッチ2パルス
● 5.8.10 スイッチ2オフ
● 6.10.00 スイッチ2オン
● ニードルオーバーフィルフラッシュ:自動
● サンプル分析注入パラメータ
● 注入量(uL)-10.00
【0321】
直線較正曲線から、それぞれの検出限界をDIN EN ISO 32645に記述の手順を用いて得た。増強因子は、非誘導体化された分析物LOD、例えば非誘導体化テストステロンLODと比較して、標識された分析物の検出限界(LOD)、例えば標識されたテストステロン検出限界(LOD)に基づいて算出される。ワークフローを
図2に示す。結果を下記表5に示す。
【表5】
【0322】
表5から分かるように、提示された全ての誘導体または複合体は、非誘導体化分析物と比較してシグナル増強を示す。新しい構造のほぼ全ての誘導体(ラベル2を除く)は、最新技術の誘導体化剤、例えばSciexのGirardTおよびAmplifexよりも優れている。
【0323】
実施例14:ラベル-ビタミンD誘導体(複合体)の調製およびMSによるその分析
実施例14.1:TAD(トリアゾリンジオン)のビタミンDとの一般的反応
【化45】
25-ヒドロキシビタミンD一水和物(0.024mmol)およびTAD誘導体(0.036mmol)をCH
3CNに溶解した。溶液を室温(r.t.)で10分間攪拌した。ビタミンDの対応する生成物への完全な変換が観察された。溶媒を真空下で除去し、残渣を分取HPLCによって精製した。生成物を固体として得た。
【0324】
実施例14.2:TAD試薬(ラベル15)に対するウラゾールのインサイチュー活性化およびビタミンDとの反応
【化46】
25-ヒドロキシビタミンD一水和物(0.024mmol)および[4-(3,5-ジオキソ-1,2,4トリアゾリジン-4-イル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムトリフルオロアセテート(0.029mmol)をMeOH(500μL)に溶解した。MeOH中のヨードベンゼンジアセテート(0.033mmol)の溶液を第一の溶液に添加した。反応混合物を室温で15分間撹拌した。ビタミンDの対応する生成物への完全な変換が観察された。溶媒を真空下で除去し、残渣を分取HPLCによって精製した。純粋な生成物を白色固体として得た。
【0325】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~20分:5% H2O 0.1% TFA,95% CH3CN 0.1% TFA;
20~40分:5% H2O 0.1% TFA;95% CH3CN 0.1% TFA;
40~45分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
45~50分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
50~55分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
55~65分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.52(s,3 H)0.87-1.01(m,4 H)1.15(s,6 H)1.19-1.47(m,12 H)1.65-1.78(m,4 H)1.83-1.92(m,2 H)1.95-2.08(m,4 H)2.15-2.30(m,2 H)2.86-2.94(m,1 H)3.12(s,9 H)4.06-3.86(m,2 H)4.12-4.23(m,1 H)4.56(s,2 H)5.01-5.11(m,1 H)7.62-7.74(m,4 H).
LC-ESI+m/zの計算値は647.45308である。実験的に決定されたm/zの値は647.49である。
【0326】
実施例14.3:上記または下記の例示的なラベルを使用したビタミンDの分析的誘導体化
25-OHビタミンD3の500pg/mlのメタノール中溶液(S1)を調製した。ウマ血清はメタノール(-20℃)を用い、ウマ血清1mL+メタノール3mLの割合で枯渇化させた。ウマ血清/メタノール混合物を混合し、遠心分離し、上清を移して溶液を得た(S2)。溶液S1およびS2を1:5の比で混合して溶液S3を得た。溶液S3を濃縮乾固した。過剰量の誘導体化試薬標識を含む溶液(S3)と比較して、メタノール(モル比>1000)で希釈した溶液(S4)を添加し、得られた溶液を混合した。2mg/mLのメタノール中のヨードベンゼンジアセテートの溶液(S5)を添加し、得られた溶液(S6)を40℃で2分間撹拌した。溶液S6をメタノール/H2O+0.1%ギ酸で希釈して、定量化のための適切な濃度レベルを得た。
【0327】
直線較正曲線から、それぞれの検出限界をDIN EN ISO 32645に記述の手順を用いて得た。増強因子は、非誘導体化ビタミンDLODと比較して、標識ビタミンD検出限界(LOD)に基づいて算出する。複合体の結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0328】
ビタミンDまたはビタミンDとの複合体のための全ての誘導体は、有意なシグナル増強を示す。誘導体の異性体は検出されていない。したがって、保持時間および分裂ならびにピーク幅のパラメータは必要ではなく、それ故、本開示では提示されない。
【0329】
実施形態では、複合体は、以下の群から選択し得る。
【化47】
【化48】
【化49】
【0330】
実施例15:ラベル-エストラジオール誘導体(複合体)の調製およびMSによるその分析
実施例15.1:[4-(3,5-ジオキソ-1,2,4トリアゾリジン-4-イル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムトリフルオロアセテートのエストラジオール(ラベル15およびエストラジオールまたはその誘導体を含む複合体)との反応
【化50】
[4-(3,5-ジオキソ-1,2,4トリアゾリジン-4-イル)フェニル]メチル-トリメチル-アンモニウムトリフルオロアセテート(0.05mmol)をCH
3CN(200μL)に溶解し、DBH(0.05mmol)を添加した。急速に赤色に変化した溶液を室温で10分間撹拌した。次いで、この溶液をβ-エストラジオール(0.05mmol)のCH
3CN/リン酸緩衝液1:1(1.2mL)中溶液に滴下した。室温で30分間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。未精製の生成物を分取HPLCによって精製し、2つの異性体AおよびBを3:1の比で単離した。
【0331】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~60分:50% H2O 0.1% TFA,50% CH3CN 0.1% TFA;
60~65分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
65~75分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
75~80分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
80~90分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
【0332】
異性体A:
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.77(d,J=2.51 Hz,3 H)1.12-1.58(m,7 H)1.65-1.76(m,1 H)1.90-2.10(m,3 H)2.12-2.26(m,1 H)2.34(br d,J=12.92 Hz,1 H)2.71-2.84(m,1 H)2.86-2.96(m,1 H)3.13(s,9 H)3.61-3.70(m,1 H)4.57(s,2 H)6.78(d,J=8.53 Hz,1 H)7.31(d,J=8.66 Hz,1 H)7.67-7.73(m,2 H)7.73-7.79(m,2 H).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値 519.29658、実測値519.45.
【0333】
異性体B:
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.78(s,3 H)1.15-1.58(m,7 H)1.65-1.77(m,2 H)1.86-2.09(m,2 H)2.13-2.22(m,1 H)2.25-2.33(m,1 H)2.82(br dd,J=8.16,3.76 Hz,2 H)3.13(s,9 H)3.65(br t,J=8.66 Hz,1 H)4.54-4.61(m,2 H)6.68(s,1 H)7.34(s,1 H)7.66-7.73(m,2 H)7.73-7.79(m,2 H).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値519.29658、実測値519.33.
【0334】
実施例15.2:ラベル16-エストラジオール誘導体の調製
【化51】
β-エストラジオール(0.09mmol)、N-[4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル]-5-フルオロ-2,4-ジニトロ-アニリン(0.11mmol)およびK
2CO
3(0.18mmol)を無水DMF(1mL)に溶解した。室温で1時間撹拌した後、MeI(0.14mmol)を添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。溶液を1M HClで酸性化し、溶媒を真空下で除去した。未精製の化合物を分取HPLCによって精製し、黄色固体を得た。分取HPLCは当業者に公知であり、したがって詳細には説明しない。
【0335】
HPLC法C-18カラム:
0分:80% H2O 0.1% TFA,20% CH3CN 0.1% TFA;
0~60分:30% H2O 0.1% TFA,70% CH3CN 0.1% TFA;
60~64分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
64~74分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
74~80分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
80~90分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.78(s,3 H)1.17-1.45(m,6 H)1.47-1.58(m,1 H)1.63-1.78(m,1 H)1.84-1.94(m,1 H)1.94-2.11(m,2 H)2.11-2.18(m,1 H)2.23-2.38(m,1 H)2.82(br dd,J=8.41,4.14 Hz,2 H)3.05-3.12(m,9 H)3.67(t,J=8.60 Hz,1 H)4.47(s,2 H)6.56-6.64(m,1 H)6.82(d,J=2.64 Hz,1 H)6.86(dd,J=8.53,2.64 Hz,1 H)7.31(d,J=8.28 Hz,1 H)7.35-7.42(m,2 H)7.45-7.54(m,2 H)9.05(s,1 H).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値601.30206、実測値601.39.
【0336】
実施例15.3:ラベル17-エストラジオール誘導体の調製
【化52】
国際公開第2000009498号に報告されているように、N-(p-クロロスルホニルフェニルメチル)ピリジニウムブロミドを合成した。
【0337】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~60分:30% H2O 0.1% TFA,70% CH3CN 0.1% TFA;
60~64分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
64~74分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
74~80分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
80~90分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.75(s,3 H)1.11-1.56(m,7 H)1.62-1.75(m,1 H)1.80-1.89(m,1 H)1.90-2.08(m,2 H)2.10-2.20(m,1 H)2.23-2.32(m,1 H)2.67-2.75(m,2 H)3.64(t,J=8.60 Hz,1 H)5.97(s,2 H)6.61-6.75(m,2 H)7.19(d,J=8.41 Hz,1 H)7.66(d,J=8.16 Hz,2 H)7.90(m,J=8.28 Hz,2 H)8.17(t,J=7.09 Hz,2 H)8.59-8.72(m,1 H)9.09(d,J=5.77 Hz,2 H).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値504.22030、実測値504.28.
【0338】
実施例15.4:エストラジオールと塩化スルホニル誘導体化試薬との一般的な反応(例えば、ラベル23および24)
【化53】
β-エストラジオール(0.07mmol)および塩化スルホニル誘導体(0.07mmol)を、無水CH
3CN(2mL)に溶解した。次いで、塩基(TMAまたはTEA、0.21mmol)の溶液を添加し、溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、未精製の化合物を分取HPLCによって精製した。精製した生成物を固体として得た。
【0339】
実施例15.4.1:ラベル24-エストラジオール誘導体の調製
【化54】
【0340】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~60分:20% H2O 0.1% TFA,80% CH3CN 0.1% TFA;
60~64分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
64~74分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
74~80分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
80~90分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.75(s,3 H)1.11-1.55(m,7 H)1.59-1.77(m,1 H)1.81-1.90(m,1 H)1.90-2.07(m,2 H)2.11-2.22(m,1 H)2.28(dq,J=13.32,3.59 Hz,1 H)2.70-2.78(m,2 H)3.13(s,9 H)3.64(t,J=8.66 Hz,1 H)4.63(s,2 H)6.69-6.74(m,2 H)7.22(d,J=9.16 Hz,1 H)7.80(d,J=8.41 Hz,2 H)7.98(d,J=8.41 Hz,2 H).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値484.25160、実測値484.31.
【0341】
実施例15.4.2:ラベル23-エストラジオール誘導体の調製
【化55】
【0342】
HPLC法C-18カラム:
0分:100% H2O 0.1% TFA、0% CH3CN 0.1% TFA;
0~60分:30% H2O 0.1% TFA,70% CH3CN 0.1% TFA;
60~64分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
64~74分:2% H2O 0.1% TFA;98% CH3CN 0.1% TFA;
74~80分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA;
80~90分:60% H2O 0.1% TFA;40% CH3CN 0.1% TFA.
1H NMR(400 MHz,メタノール-d4)δ ppm 0.77(s,3 H)1.15-1.58(m,8 H)1.64-1.77(m,1 H)1.85-2.10(m,4 H)2.24(br d,J=11.42 Hz,1 H)2.34(br dd,J=13.49,3.45 Hz,1 H)2.85(br dd,J=8.47,3.95 Hz,2 H)3.11(s,9 H)3.66(t,J=8.53 Hz,1 H)4.54(s,2 H)4.77(s,2 H)6.92(d,J=2.64 Hz,1 H)6.97(dd,J=8.47,2.70 Hz,1 H)7.33(d,J=8.41 Hz,1 H)7.56-7.63(m,2 H)7.63-7.69(m,2 H).
HPLC-MS(m/z)[M]+計算値498.26725、実測値498.42.
【0343】
実施例15.5:ラベル15、17、23および24を使用したエストラジオールの分析的誘導体化
エストラジオールの500pg/mlのアセトニトリル中溶液(S1)を調製した。ウマ血清はアセトニトリル(-20℃)を用い、ウマ血清1mL+アセトニトリル3mLの割合で枯渇化させた。ウマ血清/アセトニトリル-混合物を混合し、遠心分離し、上清を移して溶液を得た(S2)。溶液S1およびS2を1:5の比で混合して溶液S3を得た。メタノールで希釈した過剰の誘導体化試薬ラベル10~12(モル比>1000)のいずれかを含む溶液(S3)と比較した溶液(S4)を添加した。アセトニトリル/H2O90/10+0,1%ギ酸中の5μg/mLのK2CO3(S5)の溶液を調製した。溶液S3、S4およびS5を混合して溶液S6を得て、50℃で1時間保持し、続いて室温で12時間保持した。溶液S6をアセトニトリル/H2O+0.1%ギ酸で希釈して、定量化のための適切な濃度レベルを得た。
【0344】
直線較正曲線から、それぞれの検出限界をDIN EN ISO 32645に記述の手順を用いて得た。増強係数は、非誘導体化エストラジオールLODと比較して、標識化エストラジオール限界検出(LOD)に基づいて算出される。結果を下記表7に示す。
【表7-1】
【表7-2】
【0345】
表7から分かるように、提示された全ての誘導体または複合体は、この場合エストラジオールの非誘導体化分析物と比較してシグナルの増強が示される。
【0346】
実施例16:ラベル20-分析物誘導体(複合体)の分析およびMSによる分析
複合体およびラベル20は、前述のように合成される。
【0347】
直線較正曲線から、それぞれの検出限界をDIN EN ISO 32645に記述の手順を用いて得た。増強因子は、非誘導体化分析物LODと比較して、標識された分析物の検出限界(LOD)に基づいて算出される。結果を下記表8に示す。
【表8】
【0348】
表8から分かるように、ラベル20は、非誘導体化分析物と比較して10倍のシグナル増強を示す。
【0349】
上記の化合物および例示的なラベルは、それぞれの適切な分析物と組み合わせ得る。例示的なラベルまたは例示的な分析物は、保護の範囲を限定すべきではない。当業者は、他の開示された分析物を開示された化合物と組み合わせて本発明の複合体を形成する方法を知っている。
【0350】
本特許出願は、欧州特許出願20175798.6の優先権を主張し、この欧州特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】