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特表2023-527157レビー小体認知症を処置するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】レビー小体認知症を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20230620BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230620BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230620BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230620BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230620BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230620BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20230620BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P25/28
C07K14/00 ZNA
C07K19/00
C07K14/47
C12P21/02 C
C12N15/56
C12N9/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570564
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021032778
(87)【国際公開番号】W WO2021236526
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/026,187
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/320,386
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522450657
【氏名又は名称】バイオアシス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラスジェン, デボラ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン, メイ メイ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD13
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA89
(57)【要約】
血液脳関門(BBB)を越えた治療剤または診断剤の送達を促進するための、BBB輸送活性を有する活性剤にカップリングされたp97断片を含む、治療用ペイロードが、そのバリアントおよび組合せを含め、開示される。治療用ペイロードはレビー小体認知症の処置に有効であり得る。レビー小体認知症を処置する方法および医薬組成物もまた、開示される。本発明によると、被験体におけるレビー小体認知症(レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症)を、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤と、それにカップリングされた、活性剤がBBBを越えることを可能にするある特定のp97断片とを含む治療用ペイロードを投与することによって処置する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レビー小体認知症を処置する方法であって、p97ポリペプチドまたはその断片にカップリングされた、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤を含む治療用ペイロード(すなわち、組成物)を、レビー小体認知症を処置することを必要とする被験体に投与するステップを含み、前記投与により、前記被験体の血液脳関門を越える前記治療用ペイロードの輸送が促進される、方法。
【請求項2】
前記被験体が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記p97ポリペプチドが、長さが最大約300個のアミノ酸を含み、前記ポリペプチドが、DSSHAFTLDELR(配列番号13)または配列番号2~19のうちのいずれか1つもしくは複数と少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記p97ポリペプチドが、配列番号1により定義されるような隣接するC末端および/またはN末端配列を必要に応じて含む、DSSHAFTLDELR(配列番号13)または配列番号2~19のうちのいずれか1つもしくは複数を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記p97ポリペプチドが、配列番号1により定義されるような任意の介在配列を必要に応じて含む、DSSHAFTLDELR(配列番号13)または配列番号2~19の2、3、4または5個のアミノ酸を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記p97ポリペプチドが、配列番号1により定義されるような介在配列を必要に応じて含む、配列番号13および/または14の一方または両方を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記p97ポリペプチドが、長さが最大約250、200、150、100、50、20、または10個のアミノ酸を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記活性剤が、リンカーを用いて前記p97ポリペプチドまたはその断片にカップリングされている、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドまたはその断片が、配列番号13[DSSHAFTLDELR]に対応するペプチド、あるいはそれに対して少なくとも約70%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約75%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約80%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約85%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約90%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約95%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約99%もしくはそれより高い相同性を有する配列を含む、請求項1から3または9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記活性剤が、リソソーム酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記活性剤が、グルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記活性剤が、前記被験体の脳組織におけるグルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記活性剤が、グルコシルセラミダーゼ活性を有する、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記活性剤が、ベータ-グルコセレブロシダーゼ(β-グルコセレブロシダーゼ;GCase)またはその誘導体もしくはアナログである、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記活性剤が、ヒトベータ-グルコセレブロシダーゼまたはその誘導体もしくはアナログである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記活性剤が、組換えベータ-グルコセレブロシダーゼ(その活性形態)またはその誘導体もしくはアナログである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってヒト線維芽細胞系において産生される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系において産生される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)、またはタリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記活性剤が、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記活性剤が、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記活性剤が、タリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記活性剤が、低分子薬物(すなわち、約1000グラム/モル未満、または約750グラム/モル未満、または約500グラム/モル未満の分子量を一般に有する薬物分子)である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記レビー小体認知症が、レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記レビー小体認知症が、レビー小体型認知症である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記レビー小体認知症が、パーキンソン病型認知症である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記レビー小体認知症が、ベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損または非存在に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記レビー小体認知症が、リソソーム中のベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損または非存在に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記レビー小体認知症が、脳内のリソソーム中のベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損または非存在に関連している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記脳内のレビー小体を分解するための、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記脳内のレビー小体の数を減少させるための、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記脳内のレビー小体の形成または蓄積を防止するまたは緩徐化するための、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記脳内の異常なタンパク質沈着物を分解する、減少させる、それらの形成または蓄積を防止するまたは緩徐化するための、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記レビー小体またはタンパク質沈着物が、アルファ-シヌクレインから構成される、請求項32から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記レビー小体またはタンパク質沈着物が、スフィンゴ糖脂質をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記スフィンゴ糖脂質が、グルコセレブロシドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記治療用ペイロード(すなわち、組成物)が、1日に少なくとも約1回、または少なくとも約1日おき、または1週間に少なくとも約2回、または1週間に少なくとも約1回、または2週間毎に少なくとも約1回、または1カ月に少なくとも約1回(または30日毎に約1回)からなる群から選択されるレジメンに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記被験体が、レビー小体認知症についての少なくとも1つの臨床マーカー、評価または評定の改善を呈し、必要に応じて、前記改善が、前記方法の適用前のベースラインと比較して、少なくとも約5%である、または少なくとも約10%である、または少なくとも約15%である、または少なくとも約20%である、または少なくとも約25%である、請求項1から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記臨床マーカー、評価、または評定が、レビー小体複合リスクスコア(LBCRS)(レビー小体認知症を有する被験体に存在するが他の形態の認知症には一般にほとんど見られない6つの非運動特徴についての、組み立てられた、はい/いいえで答える質問を用いる1ページの調査としてさらに定義され得る)を使用して行われる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
p97ポリペプチドまたはその断片にカップリングされた、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤を含む治療用ペイロードを、レビー小体認知症を処置することを必要とする被験体に投与することを含む、レビー小体認知症を処置するための医薬の製造における使用のための組成物であって、前記投与により、前記被験体の血液脳関門を越える前記治療用ペイロードの輸送が促進される、組成物。
【請求項43】
アコンジュゲートp97-活性剤コンジュゲートを形成するように、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤にコンジュゲートされたp97またはその断片を含むコンジュゲートであって、前記p97断片が、DSSHAFTLDELR(配列番号13)、あるいはそれに対して少なくとも約70%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約75%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約80%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約85%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約90%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約95%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約99%もしくはそれより高い相同性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、コンジュゲート。
【請求項44】
前記p97断片が、1つまたは複数の末端システインおよび/またはチロシンを有する、請求項43に記載のコンジュゲート。
【請求項45】
前記p97断片が、C末端チロシンを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項43または44に記載のコンジュゲート。
【請求項46】
前記p97断片が、C末端システインを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項43または44に記載のコンジュゲート。
【請求項47】
前記p97断片が、N末端チロシンを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項43または44に記載のコンジュゲート。
【請求項48】
前記p97断片が、N末端システインを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項43または44に記載のコンジュゲート。
【請求項49】
前記p97断片が、C末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項43または44に記載のコンジュゲート。
【請求項50】
前記p97断片が、N末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項43または44に記載のコンジュゲート。
【請求項51】
アコンジュゲートp97-活性剤コンジュゲートを形成するように、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤にコンジュゲートされたp97またはその断片を含むコンジュゲートであって、前記p97断片が、DSSYSFTLDELR(配列番号19)、あるいはそれに対して少なくとも約70%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約75%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約80%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約85%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約90%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約95%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約99%もしくはそれより高い相同性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、コンジュゲート。
【請求項52】
前記p97断片が、1つまたは複数の末端システインおよび/またはチロシンを有する、請求項51に記載のコンジュゲート。
【請求項53】
前記p97断片が、C末端チロシンを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項51または52に記載のコンジュゲート。
【請求項54】
前記p97断片が、C末端システインを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項51または52に記載のコンジュゲート。
【請求項55】
前記p97断片が、N末端チロシンを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項51または52に記載のコンジュゲート。
【請求項56】
前記p97断片が、N末端システインを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項51または52に記載のコンジュゲート。
【請求項57】
前記p97断片が、C末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項51または52に記載のコンジュゲート。
【請求項58】
前記p97断片が、N末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、請求項51または52に記載のコンジュゲート。
【請求項59】
前記活性剤が、リソソーム酵素である、請求項43から58のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項60】
前記活性剤が、グルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、請求項59に記載のコンジュゲート。
【請求項61】
前記活性剤が、前記被験体の脳組織におけるグルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、請求項59に記載のコンジュゲート。
【請求項62】
前記活性剤が、グルコシルセラミダーゼ活性を有する、請求項59から61のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項63】
前記活性剤が、ベータ-グルコセレブロシダーゼ(β-グルコセレブロシダーゼ;GCase)またはその誘導体もしくはアナログである、請求項59から62のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項64】
前記活性剤が、ヒトベータ-グルコセレブロシダーゼまたはその誘導体もしくはアナログである、請求項63に記載のコンジュゲート。
【請求項65】
前記活性剤が、組換えベータ-グルコセレブロシダーゼ(その活性形態)またはその誘導体もしくはアナログである、請求項63に記載のコンジュゲート。
【請求項66】
前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってヒト線維芽細胞系において産生される、請求項64または65に記載のコンジュゲート。
【請求項67】
前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系において産生される、請求項64または65に記載のコンジュゲート。
【請求項68】
前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)、またはタリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項62から66のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項69】
前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)である、請求項68に記載のコンジュゲート。
【請求項70】
前記活性剤が、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)である、請求項68に記載のコンジュゲート。
【請求項71】
前記活性剤が、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)である、請求項68に記載のコンジュゲート。
【請求項72】
前記活性剤が、タリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)である、請求項68に記載のコンジュゲート。
【請求項73】
前記活性剤が、低分子薬物(すなわち、約1000グラム/モル未満、または約750グラム/モル未満、または約500グラム/モル未満の分子量を一般に有する薬物分子)である、請求項43から58のいずれかに記載のコンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月14日に出願した米国非仮特許出願第17/320,386号および2020年5月18日に出願した米国仮特許出願第63/026,187号の優先権の利益を主張するものであり、それらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に付随する配列表は、書面の代わりにテキスト形式で提出され、これにより参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、27942-313-20063-PRO-104457-100-051520.txtである。このテキストファイルは、約12KBであり、2021年5月13日に作成され、EFS-Webを通じて電子的に提出されている。
【0003】
発明の技術分野
本発明は、血液脳関門を浸透する化合物を含む、疾患を処置するための化合物に関する。本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物および前記組成物をレビー小体認知症(LBD)の処置に使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
レビー小体障害としても公知のレビー小体認知症は、認知症の2つの型、すなわち、レビー小体型認知症(DLB)およびパーキンソン病型認知症(PDD)を説明するために使用される総称である。これらの両方の認知症は、レビー小体として公知である、脳内の異常なタンパク質沈着物を特徴とする。これらの沈着物は、ドイツの神経学者であるDr.Friederich Lewyにちなんで名付けられ、彼は、1912年に、異常なタンパク質沈着物がパーキンソン病を有する人々において脳の正常な機能を混乱させることを発見した。レビー小体は、タンパク質アルファ-シヌクレイン(α-シヌクレイン)で構成されている。健康な脳の場合、アルファ-シヌクレインは、ニューロン、すなわち神経細胞、の正常な機能に関与する。しかし、異常なレビー小体沈着物は、ニューロン機能に干渉し、ニューロンを死滅させ、その結果、パーキンソン病型認知症およびレビー小体型認知症に関連する神経症状および他の症状をもたらす。加えて、異常なニューロン突出物であるレビー神経突起が発達し得る。
【0005】
レビー小体認知症は、アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性認知症であると示されており、すべての神経変性認知症の約15~30%を占める。Velayudhan L, Ffytche D, Ballard C, Aarsland D (September 2017). "New Therapeutic Strategies for Lewy Body Dementias". Curr Neurol Neurosci Rep(Review). 17 (9): 68. doi:10.1007/s11910-017-0778-2. PMID 28741230、およびMcKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. (July 2017). "Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium". Neurology (Review). 89 (1): 88-100を参照されたい。McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: fourth consensus report of the DLB consortium. Neurology. 2017;89(1): 88-100、およびWalker Z, Possin KL, Boeve BF, Aarsland D. Lewy body dementias, Lancet. 2015;386(10004):1683-1697も、参照されたい。タンパク質アルファ-シヌクレインは、レビー小体およびレビー神経突起の主成分であるため、レビー小体認知症は、アルファシヌクレイノパチーとして分類される。レビー病態の重症度ではなく、解剖学的に見たレビー小体の分布が、レビー小体認知症の臨床表現型の決定因子であり得る。Jellinger KA. Is Braak staging valid for all types of Parkinson's disease? J Neural Transm 2019; 126: 423-431を参照されたい。
【0006】
レビー小体認知症は、認知、運動、行動および睡眠に関連する数々の症状を概して含む進行性の多系統疾患である。レビー小体認知症に対して現在利用可能な処置は、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの、他の疾患における症状を処置するために、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)により既に承認されている薬剤を含む。しかし、レビー小体認知症の進行を緩徐化するまたは停止させる利用可能な薬剤はない。
【0007】
レビー小体に特徴的であるアルファ-シヌクレインの異常な蓄積は、酵素グルコセレブロシダーゼの減少、およびスフィンゴ脂質グルコセレブロシドの異常な脳内レベルとも相関する。グルコセレブロシダーゼ(ベータ-グルコシルセレブロシダーゼ、β-グルコシルセレブロシダーゼとしても、または略称GCaseでも、公知である)は、グルコセレブロシド(グルコシルセラミドとしても公知)の分解に関与するリソソーム酵素である。グルコセレブロシドは、正常なニューロン機能に必要とされる。しかし、この脂質は、グルコセレブロシダーゼ酵素が非存在であるかまたは非機能性である場合、ニューロン組織に異常に蓄積し得る。Franco R, Sanchez-Arias JA, Navarro G, Lanciego JL. Glucocerebrosidase Mutations and Synucleinopathies. Potential Role of Sterylglucosides and Relevance of Studying Both GBA1 and GBA2 Genes. Front Neuroanat. 2018;12:52. 2018年6月28日発行. doi:10.3389/fnana.2018.00052を参照されたい。
【0008】
パーキンソン病、およびまたリソソーム蓄積症、ゴーシェ病を有する患者からの脳組織の死後分析によって、黒質中のグルコセレブロシダーゼの減少とアルファ-シヌクレインレベルの上昇との相関関係が示されている。さらに、Mazzulliらは、培養されたニューロンにおけるグルコシルセレブロシダーゼ活性の低下が、クリアランスの低減、およびその後、アルファ-シヌクレインレベルの上昇をもたらすことを示した。Gunder AL, Duran-Pacheco G, Zimmermann S, Ruf I, Moors T, Bauman K, et al. Path mediation analysis reveals GBA impacts Lewy body disease status by increasing alpha-synuclein levels. Neurobiol Dis. 2019;121:205-13;およびMazulli JR, Xu Y-H, Sun Y, Knight AL, McClean PJ, Caldwell GA, et al. Gaucher disease glucocerebrosidase and alpha-synuclein form a bidirectional pathogeneic loop in synucleinopathies. Cell. 2011;146(1):37-52を参照されたい。リソソーム条件下で、グルコセレブロシダーゼは、アルファ-シヌクレインの凝集を防止することができ、それによってパーキンソン病とのその関連性についての分子的解釈が得られることが示唆されている。
【0009】
脳組織代謝に関与する機構経路は、さらになおいっそう複雑である。グルコセレブロシドの生合成は、酵素グルコシルセラミド合成酵素により媒介される。それ故、グルコシルセラミド合成酵素の阻害は、脳組織内のグルコセレブロシドの異常レベルを制御するためのさらなる手段を提供し得る。
【0010】
脳組織の健康の維持に関与する生化学的機構経路に加えて、遺伝学的考慮事項もある。GBA-1遺伝子は、グルコセレブロシダーゼをコードする。この遺伝子の変異は、最も一般的な常染色体劣性リソソーム蓄積症である、ゴーシェ病を引き起こすことが公知であり、この遺伝子のホモ接合変異は、基質グルコセレブロシドのリソソーム内蓄積およびクリアランスの低減により引き起こされる様々な重症度の全身のおよび神経所見の原因となる。これまでのところ、300より多くの変異が、軽度から重度の生物学的帰結および臨床所見(発症年齢または進行速度)とともに同定されている。Schneider SA, Alcalay RN. Precision medicine in Parkinson's disease: emerging treatments for genetic Parkinson's disease. J Neurol. 2020;267(3):860-869. doi:10.1007/s00415-020-09705-7を参照されたい。GBA-1変異がシヌクレイノパチーと強いつながりがあることも示されている。GBA-1変異は、パーキンソン病の発症の最も一般的な遺伝的リスク因子であることが判明しており、一部の変異は、潜在的にリスクの20倍~30倍増加の原因となると推定されている。Sidransky, E., Nalls, M. A., Aasly, J. O., Aharon-Peretz, J., Annesi, G., Barbosa, E. R., et al. (2009). Multicenter analysis of glucocerebrosidase mutations in Parkinson's disease. N. Engl. J. Med. 361, 1651-1661.doi: 10.1056/NEJMoa0901281;Standaert, D. G. (2017). What would Dr. James Parkinson think today? Mutations in β-glucocerebrosidase and risk of Parkinson's disease. Mov. Disord. 32,1341-1342. doi: 10.1002/mds.27206;O'Regan, G., deSouza, R. M., Balestrino, R., and Schapira, A. H. (2017).Glucocerebrosidase mutations in Parkinson disease. J. Parkinsons Dis. 7,411-422. doi: 10.3233/JPD-171092;Migdalska-Richards, A., and Schapira, A. H. V. (2016). The relationship between glucocerebrosidase mutations and Parkinson disease. J. Neurochem. 139, 77-90. doi: 10.1111/jnc.13385;およびFranco R, Sanchez-Arias JA, Navarro G, Lanciego JL. Glucocerebrosidase Mutations and Synucleinopathies. Potential Role of Sterylglucosides and Relevance of Studying Both GBA1 and GBA2 Genes. Front Neuroanat. 2018;12:52. 2018年6月28日発行. doi:10.3389/fnana.2018.00052を参照されたい。
【0011】
加えて、遺伝子変異は、レビー小体認知症に関連付けられている。Mata, I. F., Samii, A., Schneer, S. H., Roberts, J. W., Griffith, A., Leis, B. C., et al. (2008). Glucocerebrosidase gene mutations. Arch. Neurol. 65, 379-382、およびNalls, M. A., Duran, R., Lopez, G., Kurzawa-Akanbi, M., McKeith, I. G.,Chinnery, P. F., et al. (2013). A multicenter study of glucocerebrosidase mutations in dementia with Lewy bodies. JAMA Neurol. 70, 727-735.doi: 10.1001/jamaneurol.2013.1925. doi:を参照されたい。
【0012】
上記のことから分かるように、生化学的経路および遺伝機構の複雑な群が、脳組織の健康および機能ならび病状の発生に関与する。
【0013】
治療剤を脳の特異的な領域に送達することに関する課題を克服することは、レビー小体認知症およびパーキンソン病などの脳のものを含め、多くの中枢神経系(CNS)障害の処置または診断に対する主要な課題を表す。その神経保護的役割において、血液脳関門(BBB)は、可能性として重要な多くの治療剤の脳への有益な送達を妨害するように機能する。
【0014】
そうでなければ診断および治療において有効であるかもしれない治療剤は、適切な量で血液脳関門を越えられない。すべての治療用分子のうちの95%を上回るものが、血液脳関門を越えられないことが報告されている。したがって、疾患を処置するために血液脳関門を越えて治療剤を送達することが所望されている。
【0015】
酵素補充療法(ERT)は、ゴーシェ病の群などの神経障害の患者に利用可能である。この酵素療法は、グルコセレブロシダーゼ活性の回復に焦点を当てている。酵素補充療法は、典型的には、患者が約2週間毎にインフュージョンセンターまたは自宅のいずれかにおいて静脈内(IV)注入を受けることを伴う。
【0016】
米国食品医薬品局(FDA)により、以下の酵素補充療法薬を含むゴーシェ病に対する酵素補充療法処置が承認されている:Cerezyme(商標)(イミグルセラーゼ)、Genzyme Corporation、Cambridge、MAから入手可能;VPRIV(商標)(ベラグルセラーゼアルファ)、Shire Human Genetic Therapies,Inc.、Lexington、MAから入手可能;およびElelyso(商標)(タリグルセラーゼアルファ)、Pfizer Laboratories、New York、NYから入手可能。しかし、酵素は、合成または単離することが難しい、高分子量材料である。例えば、グルコセレブロシダーゼは、497個のアミノ酸を有するタンパク質である。
【0017】
処置のための別のアプローチは、低分子薬物、すなわち、約1000またはそれ未満の分子量を有する化合物を用いるアプローチである。基質合成抑制療法(SRT)では、体内で作られるグルコセレブロシドの量を減少させ、それにより過剰な蓄積を低減させる、経口薬剤を利用する。基質合成抑制療法は、ゴーシェ病を有する患者の体内に蓄積する脂肪性化学物質であるグルコセレブロシドの体内での産生を、グルコセレブロシドの生合成に関与するグルコシルセラミド合成酵素を阻害することにより遮断する。現在、ゴーシェ病を有する患者を処置するための経口基質合成抑制療法薬は、2種がFDAに承認されている:Cerdelga(商標)(エリグルスタット)、Genzyme Corporation、Cambridge、MAから入手可能;およびZavesca(商標)(ミグルスタット)、Actelion Pharmaceuticals US Inc.、South San Francisco、CAから入手可能。これらは、低分子量の材料であるにもかかわらず、それらの送達は、依然として課題である。
【0018】
酵素補充療法と基質合成抑制療法の両方の基本的な問題点は、これらの手段がいずれも、酵素であるか、低分子であるかを問わず、薬物を血液脳関門を越えて送達するのに有効でない点である。したがって、脳に直接介入して、ゴーシェ病に存在する神経症状に影響を与えることは、困難である。それ以上に、レビー小体認知症の処置のほうが、さらにもっと遅れている。
レビー小体認知症に関して、レビー小体の形成を低下または防止するために、ならびに望ましくない脳内レベルのグルコセレブロシドおよびアルファ-シヌクレインの形成を低下または防止するために、血液脳関門を越えて治療剤および診断剤を脳内へ送達すること、およびそれによって、結果として生じる認知症を処置または予防することに対する必要性は、これまでのところ満たされていない。正常な脳の代謝および機能に関与する異なる生化学的経路を標的とするための技術の開発に対する必要性がある。これらの技術は、グルコセレブロシダーゼなどの酵素剤の送達、およびグルコシルセラミド合成酵素阻害剤などの阻害剤を送達するためのものを含み得る。本発明は、レビー小体認知症を処置する、予防する、またはその進行を緩徐化するために、血液脳関門を越えて活性剤を送達するための新規組成物および方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Velayudhan L, Ffytche D, Ballard C, Aarsland D (September 2017). "New Therapeutic Strategies for Lewy Body Dementias". Curr Neurol Neurosci Rep(Review). 17 (9): 68. doi:10.1007/s11910-017-0778-2. PMID 28741230
【非特許文献2】McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. (July 2017). "Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium". Neurology (Review). 89 (1): 88-100
【非特許文献3】Walker Z, Possin KL, Boeve BF, Aarsland D. Lewy body dementias, Lancet. 2015;386(10004):1683-1697
【非特許文献4】Jellinger KA. Is Braak staging valid for all types of Parkinson's disease? J Neural Transm 2019; 126: 423-431
【非特許文献5】Franco R, Sanchez-Arias JA, Navarro G, Lanciego JL. Glucocerebrosidase Mutations and Synucleinopathies. Potential Role of Sterylglucosides and Relevance of Studying Both GBA1 and GBA2 Genes. Front Neuroanat. 2018;12:52. 2018年6月28日発行. doi:10.3389/fnana.2018.00052
【非特許文献6】Gunder AL, Duran-Pacheco G, Zimmermann S, Ruf I, Moors T, Bauman K, et al. Path mediation analysis reveals GBA impacts Lewy body disease status by increasing alpha-synuclein levels. Neurobiol Dis. 2019;121:205-13
【非特許文献7】Mazulli JR, Xu Y-H, Sun Y, Knight AL, McClean PJ, Caldwell GA, et al. Gaucher disease glucocerebrosidase and alpha-synuclein form a bidirectional pathogeneic loop in synucleinopathies. Cell. 2011;146(1):37-52
【非特許文献8】Schneider SA, Alcalay RN. Precision medicine in Parkinson's disease: emerging treatments for genetic Parkinson's disease. J Neurol. 2020;267(3):860-869. doi:10.1007/s00415-020-09705-7
【非特許文献9】Sidransky, E., Nalls, M. A., Aasly, J. O., Aharon-Peretz, J., Annesi, G., Barbosa, E. R., et al. (2009). Multicenter analysis of glucocerebrosidase mutations in Parkinson's disease. N. Engl. J. Med. 361, 1651-1661.doi: 10.1056/NEJMoa0901281
【非特許文献10】Standaert, D. G. (2017). What would Dr. James Parkinson think today? Mutations in β-glucocerebrosidase and risk of Parkinson's disease. Mov. Disord. 32,1341-1342. doi: 10.1002/mds.27206;O'Regan, G., deSouza, R. M., Balestrino, R., and Schapira, A. H. (2017).Glucocerebrosidase mutations in Parkinson disease. J. Parkinsons Dis. 7,411-422. doi: 10.3233/JPD-171092
【非特許文献11】Migdalska-Richards, A., and Schapira, A. H. V. (2016). The relationship between glucocerebrosidase mutations and Parkinson disease. J. Neurochem. 139, 77-90. doi: 10.1111/jnc.13385
【非特許文献12】Mata, I. F., Samii, A., Schneer, S. H., Roberts, J. W., Griffith, A., Leis, B. C., et al. (2008). Glucocerebrosidase gene mutations. Arch. Neurol. 65, 379-382
【非特許文献13】Nalls, M. A., Duran, R., Lopez, G., Kurzawa-Akanbi, M., McKeith, I. G.,Chinnery, P. F., et al. (2013). A multicenter study of glucocerebrosidase mutations in dementia with Lewy bodies. JAMA Neurol. 70, 727-735.doi: 10.1001/jamaneurol.2013.1925. doi:
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によると、被験体におけるレビー小体認知症(レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症)を、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤と、それにカップリングされた、活性剤がBBBを越えることを可能にするある特定のp97断片とを含む治療用ペイロードを投与することによって処置する方法が提供される。本発明によると、治療用ペイロードは、p97断片にカップリングされていない形態の活性剤に類似の薬物動態特性を有する。
【0021】
本発明により、被験体の血液脳関門を越える活性剤の輸送を促進することによってレビー小体認知症を処置することが可能になり得る。
【0022】
本発明の別の態様では、以下の実施形態を提供する。
実施形態1。 レビー小体認知症を処置する方法であって、p97ポリペプチドまたはその断片にカップリングされた、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤を含む治療用ペイロード(すなわち、組成物)を、レビー小体認知症を処置することを必要とする被験体に投与するステップを含み、前記投与により、前記被験体の血液脳関門を越える前記治療用ペイロードの輸送が促進される、方法。
【0023】
実施形態2。 前記被験体が、哺乳動物である、実施形態1に記載の方法。
【0024】
実施形態3。 前記哺乳動物が、ヒトである、実施形態2に記載の方法。
【0025】
実施形態4。 前記p97ポリペプチドが、長さが最大約300個のアミノ酸を含み、前記ポリペプチドが、DSSHAFTLDELR(配列番号13)または配列番号2~19のうちのいずれか1つもしくは複数と少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0026】
実施形態5。 前記p97ポリペプチドが、配列番号1により定義されるような隣接するC末端および/またはN末端配列を必要に応じて含む、DSSHAFTLDELR(配列番号13)または配列番号2~19のうちのいずれか1つもしくは複数を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0027】
実施形態6。 前記p97ポリペプチドが、配列番号1により定義されるような任意の介在配列を必要に応じて含む、DSSHAFTLDELR(配列番号13)または配列番号2~19の2、3、4または5個のアミノ酸を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0028】
実施形態7。 前記p97ポリペプチドが、配列番号1により定義されるような介在配列を必要に応じて含む、配列番号13および/または14の一方または両方を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0029】
実施形態8。 前記p97ポリペプチドが、長さが最大約250、200、150、100、50、20、または10個のアミノ酸を含む、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0030】
実施形態9。 前記活性剤が、リンカーを用いて前記p97ポリペプチドまたはその断片にカップリングされている、実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
【0031】
実施形態10。 前記ポリペプチドまたはその断片が、配列番号13[DSSHAFTLDELR]に対応するペプチド、あるいはそれに対して少なくとも約70%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約75%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約80%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約85%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約90%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約95%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約99%もしくはそれより高い相同性を有する配列を含む、実施形態1から3または9のいずれかに記載の方法。
【0032】
実施形態11。 前記活性剤が、リソソーム酵素である、実施形態1に記載の方法。
【0033】
実施形態12。 前記活性剤が、グルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、実施形態1に記載の方法。
【0034】
実施形態13。 前記活性剤が、前記被験体の脳組織におけるグルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、実施形態11に記載の方法。
【0035】
実施形態14。 前記活性剤が、グルコシルセラミダーゼ活性を有する、実施形態11から13のいずれかに記載の方法。
【0036】
実施形態15。 前記活性剤が、ベータ-グルコセレブロシダーゼ(β-グルコセレブロシダーゼ;GCase)またはその誘導体もしくはアナログである、実施形態11から14のいずれかに記載の方法。
【0037】
実施形態16。 前記活性剤が、ヒトベータ-グルコセレブロシダーゼまたはその誘導体もしくはアナログである、実施形態15に記載の方法。
【0038】
実施形態17。 前記活性剤が、組換えベータ-グルコセレブロシダーゼ(その活性形態)またはその誘導体もしくはアナログである、実施形態15に記載の方法。
【0039】
実施形態18。 前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってヒト線維芽細胞系において産生される、実施形態16または17に記載の方法。
【0040】
実施形態19。 前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系において産生される、実施形態16または17に記載の方法。
【0041】
実施形態20。 前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)、またはタリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態15から19のいずれかに記載の方法。
【0042】
実施形態21。 前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)である、実施形態20に記載の方法。
【0043】
実施形態22。 前記活性剤が、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)である、実施形態20に記載の方法。
【0044】
実施形態23。 前記活性剤が、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)である、実施形態20に記載の方法。
【0045】
実施形態24。 前記活性剤が、タリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)である、実施形態20に記載の方法。
【0046】
実施形態25。 前記活性剤が、低分子薬物(すなわち、約1000グラム/モル未満、または約750グラム/モル未満、または約500グラム/モル未満の分子量を一般に有する薬物分子)である、実施形態1に記載の方法。
【0047】
実施形態26。 前記レビー小体認知症が、レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0048】
実施形態27。 前記レビー小体認知症が、レビー小体型認知症である、実施形態26に記載の方法。
【0049】
実施形態28。 前記レビー小体認知症が、パーキンソン病型認知症である、実施形態26に記載の方法。
【0050】
実施形態29。 前記レビー小体認知症が、ベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損または非存在に関連している、実施形態1に記載の方法。
【0051】
実施形態30。 前記レビー小体認知症が、リソソーム中のベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損または非存在に関連している、実施形態1に記載の方法。
【0052】
実施形態31。 前記レビー小体認知症が、脳内のリソソーム中のベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損または非存在に関連している、実施形態30に記載の方法。
【0053】
実施形態32。 前記脳内のレビー小体を分解するための、実施形態1に記載の方法。
【0054】
実施形態33。 前記脳内のレビー小体の数を減少させるための、実施形態1に記載の方法。
【0055】
実施形態34。 前記脳内のレビー小体の形成または蓄積を防止するまたは緩徐化するための、実施形態1に記載の方法。
【0056】
実施形態35。 前記脳内の異常なタンパク質沈着物を分解する、減少させる、それらの形成または蓄積を防止するまたは緩徐化するための、実施形態1に記載の方法。
【0057】
実施形態36。 前記レビー小体またはタンパク質沈着物が、アルファ-シヌクレインから構成される、実施形態32から35のいずれかに記載の方法。
【0058】
実施形態37。 前記レビー小体またはタンパク質沈着物が、スフィンゴ糖脂質をさらに含む、実施形態36に記載の方法。
【0059】
実施形態38。 前記スフィンゴ糖脂質が、グルコセレブロシドである、実施形態37に記載の方法。
【0060】
実施形態39。 前記治療用ペイロード(すなわち、組成物)が、1日に少なくとも約1回、または少なくとも約1日おき、または1週間に少なくとも約2回、または1週間に少なくとも約1回、または2週間毎に少なくとも約1回、または1カ月に少なくとも約1回(または30日毎に約1回)からなる群から選択されるレジメンに投与される、実施形態1に記載の方法。
【0061】
実施形態40。 前記被験体が、レビー小体認知症についての少なくとも1つの臨床マーカー、評価または評定の改善を呈し、必要に応じて、前記改善が、前記方法の適用前のベースラインと比較して、少なくとも約5%である、または少なくとも約10%である、または少なくとも約15%である、または少なくとも約20%である、または少なくとも約25%である、実施形態1から39のいずれかに記載の方法。
【0062】
実施形態41。 前記臨床マーカー、評価、または評定が、レビー小体複合リスクスコア(LBCRS)(レビー小体認知症を有する被験体に存在するが他の形態の認知症には一般にほとんど見られない6つの非運動特徴についての、組み立てられた、はい/いいえで答える質問を用いる1ページの調査としてさらに定義され得る)を使用して行われる、実施形態40に記載の方法。
【0063】
実施形態42。 p97ポリペプチドまたはその断片にカップリングされた、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤を含む治療用ペイロードを、レビー小体認知症を処置することを必要とする被験体に投与することを含む、レビー小体認知症を処置するための医薬の製造における使用のための組成物であって、前記投与により、前記被験体の血液脳関門を越える前記治療用ペイロードの輸送が促進される、組成物。
【0064】
実施形態43。 アコンジュゲートp97-活性剤コンジュゲートを形成するように、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤にコンジュゲートされたp97またはその断片を含むコンジュゲートであって、前記p97断片が、DSSHAFTLDELR(配列番号13)、あるいはそれに対して少なくとも約70%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約75%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約80%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約85%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約90%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約95%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約99%もしくはそれより高い相同性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、コンジュゲート。
【0065】
実施形態44。 前記p97断片が、1つまたは複数の末端システインおよび/またはチロシンを有する、実施形態43に記載のコンジュゲート。
【0066】
実施形態45。 前記p97断片が、C末端チロシンを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態43または44に記載のコンジュゲート。
【0067】
実施形態46。 前記p97断片が、C末端システインを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態43または44に記載のコンジュゲート。
【0068】
実施形態47。 前記p97断片が、N末端チロシンを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態43または44に記載のコンジュゲート。
【0069】
実施形態48。 前記p97断片が、N末端システインを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態43または44に記載のコンジュゲート。
【0070】
実施形態49。 前記p97断片が、C末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態43または44に記載のコンジュゲート。
【0071】
実施形態50。 前記p97断片が、N末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSHAFTLDELR(配列番号13)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態43または44に記載のコンジュゲート。
【0072】
実施形態51。 アコンジュゲートp97-活性剤コンジュゲートを形成するように、レビー小体認知症の処置に好適な活性剤にコンジュゲートされたp97またはその断片を含むコンジュゲートであって、前記p97断片が、DSSYSFTLDELR(配列番号19)、あるいはそれに対して少なくとも約70%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約75%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約80%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約85%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約90%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約95%もしくはそれより高い相同性を有する、またはそれに対して少なくとも約99%もしくはそれより高い相同性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、コンジュゲート。
【0073】
実施形態52。 前記p97断片が、1つまたは複数の末端システインおよび/またはチロシンを有する、実施形態51に記載のコンジュゲート。
【0074】
実施形態53。 前記p97断片が、C末端チロシンを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態51または52に記載のコンジュゲート。
【0075】
実施形態54。 前記p97断片が、C末端システインを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態51または52に記載のコンジュゲート。
【0076】
実施形態55。 前記p97断片が、N末端チロシンを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態51または52に記載のコンジュゲート。
【0077】
実施形態56。 前記p97断片が、N末端システインを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態51または52に記載のコンジュゲート。
【0078】
実施形態57。 前記p97断片が、C末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態51または52に記載のコンジュゲート。
【0079】
実施形態58。 前記p97断片が、N末端チロシンシステインジペプチドを有するDSSYSFTLDELR(配列番号19)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、前記p97断片および前記活性剤が、長さが約1~20個のアミノ酸であるペプチドリンカーによって分離されている、実施形態51または52に記載のコンジュゲート。
【0080】
実施形態59。 前記活性剤が、リソソーム酵素である、実施形態43から58のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0081】
実施形態60。 前記活性剤が、グルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、実施形態59に記載のコンジュゲート。
【0082】
実施形態61。 前記活性剤が、前記被験体の脳組織におけるグルコセレブロシドを分解すること、切断すること、加水分解すること、その形成を阻害することまたは防止することができる、実施形態59に記載のコンジュゲート。
【0083】
実施形態62。 前記活性剤が、グルコシルセラミダーゼ活性を有する、実施形態59から61のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0084】
実施形態63。 前記活性剤が、ベータ-グルコセレブロシダーゼ(β-グルコセレブロシダーゼ;GCase)またはその誘導体もしくはアナログである、実施形態59から62のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0085】
実施形態64。 前記活性剤が、ヒトベータ-グルコセレブロシダーゼまたはその誘導体もしくはアナログである、実施形態63に記載のコンジュゲート。
【0086】
実施形態65。 前記活性剤が、組換えベータ-グルコセレブロシダーゼ(その活性形態)またはその誘導体もしくはアナログである、実施形態63に記載のコンジュゲート。
【0087】
実施形態66。 前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってヒト線維芽細胞系において産生される、実施形態64または65に記載のコンジュゲート。
【0088】
実施形態67。 前記活性剤が、遺伝子活性化技術によってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系において産生される、実施形態64または65に記載のコンジュゲート。
【0089】
実施形態68。 前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)、またはタリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態62から66のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0090】
実施形態69。 前記活性剤が、アルグルセラーゼ(ヒト胎盤組織由来であり、以前からCeredaseという商品名でも公知)である、実施形態68に記載のコンジュゲート。
【0091】
実施形態70。 前記活性剤が、イミグルセラーゼ(Cerezymeという商品名でも公知)である、実施形態68に記載のコンジュゲート。
【0092】
実施形態71。 前記活性剤が、ベラグルセラーゼ(またはベラグルセラーゼアルファ)(Vprivという商品名でも公知)である、実施形態68に記載のコンジュゲート。
【0093】
実施形態72。 前記活性剤が、タリグルセラーゼ(またはタリグルセラーゼアルファ)(Elelysoという商品名でも公知)である、実施形態68に記載のコンジュゲート。
【0094】
実施形態73。 前記活性剤が、低分子薬物(すなわち、約1000グラム/モル未満、または約750グラム/モル未満、または約500グラム/モル未満の分子量を一般に有する薬物分子)である、実施形態43から58のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0095】
本発明のこれらおよび他の態様は、本明細書における開示から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0096】
特定の実施形態の詳細な説明
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを補助するために提供される。当業者であれば、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に修正および変更を行うことができる。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。説明に使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、制限することを意図するものではない。
【0097】
本出願に使用される場合、別途本明細書に明示的に提供される場合を除き、以下の用語のそれぞれは、以下に記載される意味を有するものとする。さらなる定義は、本出願全体を通じて記載されている。用語が、本明細書に具体的に定義されていない場合、その用語には、その用語を本発明の説明においてその使用の文脈に適用する当業者により当該技術分野において認識されている意味が与えられる。
【0098】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文脈により別途明確に示されない限り、1つまたは1つより多くの(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法上の目的物を指す。例として、「1つの要素」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0099】
「約」という用語は、当業者によって決定される、特定の値または組成に対する許容可能な誤差の範囲内である値または組成を意味し、これは、部分的に、その値または組成が、どのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制限に依存することになる。例えば、「約」は、当該技術分野における慣例に従い、1または1より大きい標準偏差の範囲内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、最大10%または20%の範囲(すなわち、±10%または±20%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mg(10%の場合)または2.4mg~3.6mg(20%の場合)の任意の数を含み得る。さらに、特に生物システムまたはプロセスに関して、この用語は、最大1桁または最大5倍の値を意味し得る。特定の値または組成が、本出願および特許請求の範囲において提供される場合、別途示されない限り、「約」の意味は、その特定の値または組成の許容可能な誤差の範囲内であると想定するものとする。
【0100】
「投与すること」は、当業者に公知の様々な方法および送達システムのいずれかを使用した、治療剤を含む組成物の被験体への物理的導入を指す。例えば、投与の経路としては、頬内、鼻内、眼、経口、浸透圧、非経口、直腸、舌下、局所、経皮、膣、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、または他の非経口投与経路、例えば、注射または注入によるものを挙げることができる。本明細書で使用される場合、「非経口投与」という語句は、経腸および局所投与以外の投与様式、通常、注射によるものを意味し、これには、限定することなく、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入、ならびにin vivo電気穿孔が含まれる。投与することはまた、例えば、1回、複数回、および/または1回もしくは複数回の長期間にわたって、実施されてもよく、治療有効用量または治療量以下の用量であり得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方、ならびにアミノ酸アナログおよび模倣体を意味することが意図される。天然に存在するアミノ酸としては、タンパク質生合成中に用いられる20個の(L)-アミノ酸、ならびに例えば4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン、およびオルニチンなどのその他のものが挙げられる。天然に存在しないアミノ酸としては、例えば、(D)-アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p-フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどが挙げられ、これらは、当業者に公知である。アミノ酸アナログには、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸の改変形態が含まれる。そのような改変としては、例えば、アミノ酸上の化学基および部分の置換もしくは置換え、またはアミノ酸の誘導体化によるものを挙げることができる。アミノ酸模倣体は、例えば、参照アミノ酸に特徴的な電荷および電荷間隔など、機能的に類似する特性を呈する有機構造体を含む。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造体は、天然に存在するArgアミノ酸に類似の分子空間に位置し、その側鎖のアミノ基と同じ程度の可撓性を有する、正電荷部分を有するであろう。模倣体には、アミノ酸またはアミノ酸官能基の最適な間隔および電荷の相互作用を維持するように拘束された構造体も含まれる。当業者であれば、どの構造体が、機能的に同等なアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を構成するのかを認識しているかまた
は決定することができる。
【0102】
本明細書全体を通じて、文脈によりそうでないことが求められない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと(comprising)」という言葉は、示されたステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群の包含を意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。「からなる」とは、「からなる」という語句が続くものがすべて含まれ、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が、必要とされるかまたは必須であること、および存在し得る他の要素がないことを示す。「から本質的になる」とは、この語句の前に列挙されるすべての要素を含み、列挙された要素に対し、本開示で指定された活性または作用に干渉も妨害もしない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が、必要とされるかまたは必須であるが、他の要素は、必要に応じたものであり、それらが列挙された要素の活性または作用に物質的に影響を及ぼすかどうかに応じて、存在し得る場合も存在し得ない場合もあることを示す。
【0103】
「コンジュゲート」という用語は、薬剤または他の分子、例えば、生物学的に活性な分子の、p97ポリペプチドへの共有結合的または非共有結合的な結合または連結の結果として形成される実体を指すことが意図される。コンジュゲートポリペプチドの1つの例は、「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」であり、これは、もともとは別個のポリペプチドをコードしていた2つまたはそれより多くのコード配列の接続によって作られるポリペプチドであり、結合されたコード配列の翻訳により、典型的に別個のポリペプチドのそれぞれに由来する機能的特性を有する単一の融合ポリペプチドが生じる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「機能」および「機能的」などの用語は、生物学的、酵素的、または治療的機能を指す。
【0105】
「相同性」は、同一であるか、または保存的置換を構成する、アミノ酸のパーセンテージ数を指す。相同性は、配列比較プログラム、例えば、GAP(Deveraux et al., Nucleic Acids Research. 12, 387-395, 1984)を使用して決定することができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。このようにして、本明細書に記載されるものに類似または実質的に異なる長さの配列を、アライメントへのギャップの挿入によって比較することができ、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0106】
「単離された」とは、通常はその天然の状態で付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用される場合、ペプチドまたはポリペプチド分子のその天然の細胞環境から、および細胞の他の成分との関係からのin vitroでの単離および/または精製を含み、すなわち、それは、in vivoの物質とは有意に関係していない。
【0107】
「連結」、「リンカー」、「リンカー部分」、または「L」という用語は、p97ポリペプチド断片を、目的の薬剤から分離するため、または例えば、ここで、2つもしくはそれより多くの薬剤が連結されてp97コンジュゲートを形成している場合に、第1の薬剤を別の薬剤から分離するために使用することができる、リンカーを指す。リンカーは、生理学的に安定であり得るか、または放出可能なリンカー、例えば、酵素的に分解可能なリンカー(例えば、タンパク質分解により切断可能なリンカー)を含み得る。ある特定の態様では、リンカーは、ペプチドリンカーであり得、例えば、p97融合タンパク質の一部であり得る。一部の態様では、リンカーは、非ペプチドリンカーまたは非タンパク質性リンカーであり得る。一部の態様では、リンカーは、粒子、例えば、ナノ粒子であり得る。
【0108】
「モジュレートする」および「変更する」という用語は、典型的に、対照と比べて統計学的に有意または生理学的に有意な量または程度で、「増加させる」、「増強する」、または「刺激する」、ならびに「減少させる」または「低減させる」ことを含む。「増加した」、「刺激される」、または「増強される」量は、典型的に、「統計学的に有意な」量であり、これには、組成物なしで(例えば、本発明のコンジュゲートのポリペプチドの不在)または対照組成物、試料、もしくは試験被験体によって産生される量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、またはそれより大きい(例えば、500倍、1000倍)(それらの間にあるすべての整数および1を上回るすべての小数値、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)増加が含まれ得る。「減少した」または「低減された」量は、典型的に、「統計学的に有意な」量であり、これには、組成物なしでまたは対照組成物によって産生される量の、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少が、それらの間のすべての整数を含めて、含まれ得る。1つの非限定的な例として、対照は、活性、例えば、薬剤単独と比べた、p97-薬剤コンジュゲートの血液脳関門を越える輸送/送達の量または速度、中枢神経系組織への分布の速度および/またはレベル、ならびに/あるいは血漿、中枢神経系組織、または任意の他の全身もしくは末梢非中枢神経系組織のCmaxを比較することができる。比較および「統計学的に有意な」量の他の例は、本明細書に記載される。
【0109】
ある特定の実施形態では、組成物中の任意の所与の薬剤(例えば、p97コンジュゲート、例えば、融合タンパク質)の「純度」は、具体的に定義され得る。例えば、ある特定の組成物は、例えば、決して限定することなく、化合物を分離、特定、および定量するために生物化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの周知の形態である高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した場合に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(間にあるすべての小数値を含む)純粋である薬剤を含み得る。
【0110】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマー、ならびにそのバリアントおよび合成アナログを指して互換可能に使用される。したがって、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、天然に存在しない合成のアミノ酸、例えば、天然に存在する対応するアミノ酸の化学的アナログである、アミノ酸ポリマー、および天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書に記載されるポリペプチドは、具体的な長さの産物に限定されず、したがって、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質が、ポリペプチドの定義内に含まれ、そのような用語は、別途具体的に示されない限り、本明細書において互換可能に使用され得る。本明細書に記載されるポリペプチドはまた、発現後の改変、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに当該技術分野において公知の他の改変、天然に存在するものおよび天然に存在しないものの両方を、含み得る。ポリペプチドは、タンパク質全体、またはその部分配列、断片、バリアント、もしくは誘導体であり得る。
【0111】
「生理学的に切断可能」または「加水分解可能」または「分解可能」な結合は、生理学的条件下において、水と反応する(すなわち、加水分解される)結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子を接続している連結の一般的な種類だけでなく、これらの中心原子に結合している置換基にも依存するであろう。適切な加水分解的に不安定または弱い連結としては、これらに限定されないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、チオエステル、チオールエステル、カーボネート、およびヒドラゾン、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0112】
「放出可能なリンカー」としては、これらに限定されないが、生理学的に切断可能なリンカーおよび酵素的に分解可能なリンカーが挙げられる。したがって、「放出可能なリンカー」は、生理学的条件下において、自発的加水分解または何らかの他の機序による切断(例えば、酵素に触媒される、酸に触媒される、塩基に触媒されるなど)のいずれかを受け得るリンカーである。例えば、「放出可能なリンカー」は、駆動力として、プロトン(例えば、イオン化可能な水素原子、Ha)の塩基の引き抜き(base abstraction)を有する脱離反応を含み得る。本明細書の目的で、「放出可能なリンカー」は、「分解可能なリンカー」と同義である。「酵素的に分解可能な連結」は、連結、例えば、1つまたは複数の酵素、例えば、ペプチダーゼまたはプロテアーゼによる分解の対象となるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、放出可能なリンカーは、pH7.4、25℃、例えば、生理学的pH、ヒトの体温(例えば、in vivo)において、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、または約96時間、またはそれよりも短い半減期を有する。
【0113】
「参照配列」という用語は、一般に、核酸コード配列、またはアミノ酸配列を指し、それに対して、別の配列が比較される。本明細書に記載されるすべてのポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、名称で記載されるものならびに表および配列表に記載されるものを含め、参照配列として含まれる。
【0114】
「配列同一性」または例えば「50%同一な配列」を含む用語は、本明細書で使用される場合、配列が、比較ウインドウにわたって、ヌクレオチドごとの基準またはアミノ酸ごとの基準で、同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアライメントされた配列を、比較ウインドウにわたって比較し、同一な核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一なアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、lie、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gin、Cys、およびMet)が両方の配列に生じる位置の数を決定して、一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で除し、この結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算することができる。本明細書に記載される参照配列(例えば、配列表を参照されたい)のうちのいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれ、典型的には、ポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を維持する。
【0115】
2つまたはそれより多くのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列関係を説明するために使用される用語としては、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的な同一性」が挙げられる。「参照配列」は、長さが、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含め、少なくとも12個であるが、高頻度で15~18個であり、多くの場合に少なくとも25個のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドは、それぞれが、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似である配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部分のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含むため、2つ(またはそれより多くの)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的に、2つのポリヌクレオチドの配列を、「比較ウインドウ」にわたって比較して、局所的な配列類似性領域を特定し、比較することによって行われる。「比較ウインドウ」は、少なくとも6つ、通例的には約50~約100個、より通例的には約100~約150個の連続した位置の概念的セグメントを指し、このセグメントにおいて、ある配列が、同じ連続する位置数の参照配列に対して、2つの配列を最適にアライメントした後に比較される。比較ウインドウは、2つの配列の最適なアライメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%またはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウインドウをアライメントするのに最適な配列アライメントは、コンピューターによるアルゴリズムの実装(Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージリリース7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAにおける、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または選択された様々な方法のいずれかによって生成される探索および最良のアライメント(すなわち、比較ウインドウにわたってもっとも高いパーセンテージの相同性をもたらすもの)によって行うことができる。例えば、Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389, 1997によって開示されるように、BLASTファミリーのプログラムへの参照もなされ得る。配列分析の詳細な考察は、Ausubel et al., ”Current Protocols in Molecular Biology,” John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のユニット19.3に見出すことができる。
【0116】
「統計学的に有意な」とは、結果が、偶然によって生じる可能性が低かったことを意味する。統計学的有意性は、当該技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。一般的に使用される有意性の尺度としては、p値が挙げられ、これは、帰無仮説が正しい場合に観察された事象が生じる頻度または確率である。得られたp値が、有意性レベルよりも小さい場合、帰無仮説は拒絶される。単純な事例では、有意性レベルは、0.05またはそれ未満のp値で定義される。
【0117】
「溶解度」という用語は、p97ポリペプチド断片またはコンジュゲートが、液体溶媒中に溶解され、均質な溶液を形成する特性を指す。溶解度は、典型的に、濃度として、溶媒の単位体積当たりの溶質の質量(溶媒1kg当たりの溶質のg数、1dL(100ml)当たりのg数、mg/mlなど)、容積モル濃度、重量モル濃度、モル分率、または他の類似の濃度に関する記述のいずれかによって、表される。溶媒の量当たりの溶解し得る溶質の最大平衡量は、溶媒の温度、圧力、pH、および性質を含む、指定された条件下における、その溶媒中へのその溶質の溶解度である。ある特定の実施形態では、溶解度は、生理学的pHにおいて、または他のpH、例えば、pH5.0、pH6.0、pH7.0、もしくはpH7.4において測定される。ある特定の実施形態では、溶解度は、水中または生理緩衝液、例えば、PBSまたはNaCl(NaPありまたはなし)において測定される。具体的な実施形態では、溶解度は、比較的低いpH(例えば、pH6.0)および比較的高い塩(例えば、500mM NaClおよび10mM NaP)において測定される。ある特定の実施形態では、溶解度は、生物学的流体(溶媒)、例えば、血液または血清において測定される。ある特定の実施形態では、温度は、およそ室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)またはおよそ体温(約37℃)であり得る。ある特定の実施形態では、p97ポリペプチドまたはコンジュゲートは、室温または約37℃において、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、または30mg/mlの溶解度を有する。
【0118】
「被験体」には、本明細書で使用される場合、本発明のp97コンジュゲートで処置または診断することができる症状を呈するか、または症状を呈するリスクがある、動物が含まれる。好適な被験体(患者)には、研究室動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)、家畜動物、および飼育動物または愛玩動物(例えば、ネコもしくはイヌ)が含まれる。非ヒト霊長類および、好ましくはヒト患者が、含まれる。
【0119】
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全体的または完全にを意味し、例えば、なんらかの所与の数量の95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも上を意味する。
【0120】
「実質的に含まない」とは、所与の数量のほぼ完全な不在または完全な不在を指し、例えば、なんらかの所与の数量の約10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、またはそれを下回ることを指す。例えば、ある特定の組成物は、細胞タンパク質、膜、核酸、内毒素、または他の夾雑物を「実質的に含まない」場合がある。
【0121】
「処置」または「処置すること」は、本明細書で使用される場合、疾患または状態の症状または病理に対する任意の望ましい効果を含み、処置されている疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける最小限の変化または改善すらも含み得る。「処置」または「処置すること」は、必ずしも、疾患もしくは状態またはその関連症状の完全な根絶または治癒を示すわけではない。この処置を受けている被験体は、それを必要とする任意の被験体である。臨床上の改善の例示的なマーカーは、当業者には明らかであろう。
【0122】
「野生型」という用語は、天然に存在する供給源から単離された場合の遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子または遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)は、集団においてもっとも高頻度に観察されるものであり、したがって、遺伝子の「通常」または「野生型」形態と任意に設計される。
【0123】
レビー小体およびレビー小体認知症
上記のように、レビー小体障害としても公知のレビー小体認知症は、認知症の2つの型、すなわち、レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症を説明するために使用される総称である。これらの障害は、レビー小体として公知の脳内の異常なタンパク質凝集物または沈着物を特徴とする。レビー小体は、タンパク質アルファ-シヌクレインで構成されている。この状態は、低いレベルまたは活性のグルコセレブロシダーゼおよびグルコセレブロシド(glucoderebroside)の異常な増加にも関連付けられている。アルファ-シヌクレイン(alph-synuclein)およびグルコセレブロシド(glucocerbroside)は両方とも、脳のニューロンの正常な機能に必要とされる。しかし、異常なレビー小体沈着物は、ニューロン機能に干渉し、ニューロンを死滅させ、その結果、パーキンソン病(PD)およびレビー小体認知症に関連する神経症状および他の症状をもたらす。
【0124】
レビー小体は、剖検の時点で組織学的検査が脳に対して行われた際に顕微鏡によって同定され、それによって、疾患への罹患が疑われる患者の診断が確定される。脳幹において、例えば、黒質内または皮質内で、レビー小体を見出すことができ、レビー小体は、形が一般に球形であり、他の細胞成分に取って代わる。レビー小体は、高密度コアを有する好酸球性細胞質封入体である。このコアは、暈輪(halo)(幅がおよそ10nm)に囲まれており、この暈輪は、放射状原線維を有する。
【0125】
疾患が進行するにつれて、レビー小体は、ニューロン内に沈着物を形成し、典型的には、記憶(memor)および運動を制御する脳の領域に現れる。また、脳内化学物質の生化学的機能が影響を受け得る。したがって、レビー小体は、ニューロン機能への干渉のため、および細胞死を引き起こすことにより、脳に損傷を与える。
【0126】
p97ポリペプチド配列およびそのコンジュゲート
本発明の組成物および方法は、p97またはその断片のコンジュゲートを含む。本明細書において有用なp97タンパク質および断片は、2003年7月3日に公開されたStarrらへのPCT特許出願公開第WO2003/057179号、2010年3月23日に発行されたStarrらへの米国特許第8,546,319号、2014年10月2日に公開されたVitalisらへのPCT特許出願公開第WO2014/160438号、2016年6月14日に発行されたVitalisらへの米国特許第9,364,567号、2016年5月12日に発行されたVitalisらへの米国特許第9,993,530号、および2019年12月5日に公開されたTianらへのPCT特許出願公開第WO2019/231725号に記載されており、これらは、すべて、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
本発明の実施形態は、概して、p97のポリペプチド断片、特にヒトp97(メラノトランスフェリン、MTf、配列番号1)のポリペプチド断片、そのような断片を含む組成物、およびそのコンジュゲートに関する。ある特定の事例では、本明細書に記載されるp97ポリペプチド断片は、輸送活性を有する、すなわち、それらは、血液脳関門(BBB)を越えて輸送することができる。特定の実施形態では、p97断片は、目的の薬剤、例えば、治療剤、診断剤、または検出可能な薬剤に共有結合的に、非共有結合的に、または作動可能にカップリングされて、p97-薬剤コンジュゲートを形成する。薬剤の具体的な例としては、本明細書に記載され当該技術分野において公知である他の薬剤の中でもとりわけ、小分子およびポリペプチド、例えば、抗体が挙げられる。例示的なp97ポリペプチド配列および薬剤は、以下に記載されている。また、p97ポリペプチドを目的の薬剤にカップリングさせるための例示的な方法および成分、例えば、リンカー基も記載されている。
【0128】
p97配列。一部の実施形態では、p97ポリペプチドは、配列番号13(DSSHAFTLDELR)において特定されるヒトp97断片を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0129】
以下により詳細に記載される他の具体的な実施形態では、p97ポリペプチド配列は、その長さにわたって、配列番号13に記載されるヒトp97配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性または相同性を有する配列を含む。
【0130】
特定の実施形態では、p97断片またはそのバリアントは、BBBを越え、必要に応じて、BBBを越えて中枢神経系へ目的の薬剤を輸送する能力を有する。ある特定の実施形態では、p97断片またはそのバリアントは、p97受容体、LRPl受容体、および/またはLRPlB受容体に特異的に結合することができる。
【0131】
一部の実施形態では、p97断片は、1つまたは複数の末端(例えば、N末端、C末端)システインおよび/またはチロシンを有し、これらは、それぞれ、コンジュゲーションおよびヨウ素化のために付加され得る。一部の実施形態では、チロシンシステインジペプチドを使用することができる。
【0132】
例えば本明細書に記載の態様の一部または全部を含めた本発明のある特定の態様では、p97断片DSSHAFTLDELR(配列番号13)をp97断片DSSYSFTLDELR(配列番号19)で置き換えることができる。
【0133】
表1は、本発明において有用な全長ヒトp97(配列番号1)およびその断片(配列番号2~18)ならびに例示的なラット/マウス断片(配列番号19)についての配列番号1~19を提供する。
【0134】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0135】
p97カップリング。上述のように、ある特定の実施形態は、融合またはコンジュゲーションによって、目的の薬剤、例えば、小分子、ポリペプチド(例えば、ペプチド、抗体)、ペプチド模倣体、ペプトイド、アプタマー、検出可能な実体、またはこれらの任意の組合せにカップリングされたp97ポリペプチドを含む。また、1つより多くの目的の薬剤を含むコンジュゲート、例えば、抗体および小分子にコンジュゲートされたp97断片も含まれる。
【0136】
共有結合的連結が好ましいが、しかしながら、比較的強力な非共有結合的タンパク質-リガンド相互作用、例えば、ビオチンとアビジンとの間の相互作用を用いるものを含め、非共有結合的連結もまた、利用することができる。p97断片の薬剤との融合が、特に好ましい。必ずしもp97断片と目的の薬剤との間の直接的な共有結合的または非共有結合的相互作用を必要としない、作動可能な連結も含まれ、そのような連結の例としては、p97ポリペプチドおよび目的の薬剤を含むリポソーム混合物が挙げられる。タンパク質コンジュゲートを生成する例示的な方法は、本明細書に記載されており、他の方法は、当該技術分野において周知である。
【0137】
小分子。特定の実施形態では、p97断片は、小分子にコンジュゲートされる。「小分子」は、合成起源または生物学的起源(生体分子)であるが、典型的にはポリマーでない、有機化合物を指す。有機化合物は、分子が炭素を含む、大きなクラスの化学的化合物を指し、典型的に、カーボネートのみを含むもの、炭素の単純な酸化物、またはシアン化物は除外される。「生体分子」は、一般に、生きた生物によって産生される有機分子を指し、大きなポリマー分子(バイオポリマー)、例えば、ペプチド、多糖類、および核酸、ならびに小分子、例えば、一次二次代謝産物、脂質、リン脂質、糖脂質、ステロール、グリセロ脂質、ビタミン、およびホルモンが含まれる。「ポリマー」は、一般に、典型的には共有結合的化学結合によって接続される反復的構造単位から構成される大きな分子または巨大分子を指す。
【0138】
ある特定の実施形態では、小分子は、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、500、650、600、750、700、850、800、950、1000、または2000ダルトンを含め、約1000~2000ダルトン未満の、典型的には、約300~700ダルトンの分子量を有する。
【0139】
ある特定の小分子は、抗体に関して記載される(後述)「特異的結合」の特徴を有し得る。例えば、小分子は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(Kd)で、本明細書に記載される標的に特異的に結合し得る。ある特定の実施形態では、小分子は、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。
【0140】
ポリペプチド剤。特定の実施形態では、目的の薬剤は、ペプチドもしくはポリペプチド、またはそれらの断片である。「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書において互換可能に使用されるが、しかしながら、ある特定の事例では、「ペプチド」という用語は、より短いポリペプチド、例えば、間のすべての整数および範囲(例えば、5~10個、8~12個、10~15個)を含め、約2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、または50個のアミノ酸からなるポリペプチドを指し得る。ポリペプチドおよびペプチドは、本明細書に記載されるように、天然に存在するアミノ酸および/または天然に存在しないアミノ酸から構成され得る。抗体もまた、ポリペプチドとして含まれる。これらのペプチド、ポリペプチドまたは抗原の断片または一部分は、本発明の範囲内として企図される。
【0141】
例示的なポリペプチド剤としては、リソソーム蓄積障害に関連するポリペプチドが挙げられる。そのようなポリペプチドの例としては、アスパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイン輸送体、Lamp-2、α-ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、α-L-フコシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼA、GM2-ガングリオシドアクチベーター(GM2A)、α-D-マンノシダーゼ、β-D-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシンB、ノイラミニダーゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ ホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγサブユニット、L-イズロニダーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、ヘパラン-N-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース6-スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン4-スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、スルファターゼ、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、カテプシンA、カテプシンK、α-ガラクトシダーゼB、NPC1、NPC2、シアリン、およびシアル酸輸送体が、それらの断片、バリアントおよび誘導体を含めて、挙げられる。ある特定の実施形態は、GBA1変異に起因するゴーシェ病の処置のために、多くの場合、使用されるポリペプチド、例えば、イミグルセラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、ベラグルセラーゼアルファ、タリグルセラーゼアルファ、エリグルスタット、ミグルスタットを含む。
【0142】
ある特定の実施形態は、多発性硬化症(MS)の処置のために、多くの場合、使用されるポリペプチド、例えば、インターフェロン-βポリペプチド、例えば、インターフェロン-β1a(例えば、AVONEX、REBIF)およびインターフェロン-β1b(例えば、Betaseron)を含む。
【0143】
一部の実施形態では、上述のように、ポリペプチド剤は、抗体またはその抗原結合性断片である。本発明のコンジュゲートまたは組成物において使用される抗体または抗原結合性断片は、本質的に任意の種類のものであり得る。特定の例としては、治療用抗体および診断用抗体が挙げられる。当該技術分野において周知のように、抗体は、標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つのエピトープ認識部位を通じて特異的に結合することができる、免疫グロブリン分子である。
【0144】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、その断片(例えば、dAb、Fab、Fab’、F(ab’h、Fv)、一本鎖(ScFv)、その合成バリアント、天然に存在するバリアント、必要とされる特異性の抗原結合性断片を有する抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要とされる特異性の抗原結合性部位または断片(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリンの任意の他の改変された構成も包含する。
【0145】
一部の実施形態では、抗体もしくは抗原結合性断片または他のポリペプチドは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体もしくは抗原結合性断片または他のポリペプチドは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質のリガンドに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体もしくは抗原結合性断片または他のポリペプチドは、細胞内タンパク質に特異的に結合する。
【0146】
抗体またはポリペプチドは、当業者に公知の様々な技法のうちのいずれかによって調製することができる。例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。目的のポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. lmmunol. 6:511-519, 1976の技法、およびそれに対する改良形を使用して、調製することができる。トランスジェニック動物、例えば、マウスを用いて、ヒト抗体を発現させる方法もまた、含まれる。例えば、Neuberger et al., Nature Biotechnology 14:826, 1996、Lonberg et al., Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101, 1994、およびLonberg et al., Internal Review of Immunology 13:65-93, 1995を参照されたい。
【0147】
抗体またはポリペプチドはまた、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイライブラリーの使用によって生成または特定することもできる(例えば、米国特許第7,244,592号、Chao et al., Nature Protocols. 1:755-768, 2006を参照されたい)。利用可能なライブラリーの非限定的な例としては、クローニングまたは合成ライブラリー、例えば、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCAL)が挙げられ、ここでは、ヒト抗体レパートリーの構造的な多様性が、7つの重鎖可変領域遺伝子および7つの軽鎖可変領域遺伝子によって表される。これらの遺伝子の組合せにより、マスターライブラリーに49個のフレームワークが生じる。高度に可変性の遺伝子カセット(CDR=相補性決定領域)を、これらのフレームワークに重ねることにより、巨大なヒト抗体レパートリーが再生され得る。軽鎖可変領域、重鎖CDR-3、重鎖CDR-1における多様性をコードする合成DNA、および重鎖CDR-2における多様性をコードする合成DNAをコードするヒトドナーを起源とする断片を用いて設計されたヒトライブラリーもまた、含まれる。
【0148】
使用に好適な他のライブラリーは、当業者には明らかであろう。本明細書に記載され当該技術分野において公知であるp97ポリペプチドは、精製プロセス、例えば、親和性クロマトグラフィーステップにおいて使用することができる。
【0149】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはポリペプチドは、ナノボディの形態をとり得る。ミニボディは、単一の遺伝子によってコードされ、ほぼすべての原核生物および真核生物宿主、例えば、E.coli(米国特許第6,765,087号を参照されたい)、カビ(例えば、AspergillusまたはTrichoderma)、および酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyvermyces、Hansenula、またはPichia(米国特許第6,838,254号を参照されたい)において効率的に産生される。産生プロセスは、拡張可能であり、複数キログラム量のナノボディが産生されている。ナノボディは、長期保管寿命を有するすぐに使用可能な溶液として製剤化することができる。ナノクローン方法(第WO06/079372号を参照されたい)は、B細胞の自動化高スループット選択に基づく、所望される標的に対するナノボディを生成するための特許方法である。
【0150】
ある特定の実施形態では、抗体もしくはその抗原結合性断片またはポリペプチドは、ヒト化されている。これらの実施形態は、一般に組換え技法を使用して調製される、非ヒト種由来の免疫グロブリンに由来する抗原結合性部位を有し、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく、キメラ分子を指す。
【0151】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、キメラ抗体であり得る。この点に関して、キメラ抗体は、異なる抗体の異種Fe部分に作動可能に連結されたかまたはそれ以外では融合された、抗体の抗原結合性断片から構成される。ある特定の実施形態では、異種Feドメインは、ヒト起源のものである。他の実施形態では、異種Feドメインは、IgA(サブクラスIgAlおよびIgA2)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4)、ならびにIgMを含む、親抗体とは異なるIgクラスに由来し得る。さらなる実施形態では、異種Feドメインは、異なるIgクラスの1つまたは複数に由来するCH2およびCH3ドメインから構成され得る。ヒト化抗体に関して上述のように、キメラ抗体の抗原結合性断片は、本明細書に記載される抗体のCDRのうちの1つのみもしくは複数(例えば、本明細書に記載される抗体の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDR)を含み得るか、または可変ドメイン全体(VL、VH、もしくは両方)を含み得る。
【0152】
ペプチド模倣体。ある特定の実施形態は、「ペプチド模倣体」を利用する。ペプチドアナログは、鋳型ペプチドのものに類似の特性を有する非ペプチド薬として、医薬品業界において広く使用されている。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体(peptide mimetics)」または「ペプチド模倣体(peptidomimetics)」と称される(Luthman et al., A Textbook of Drug Design and Development, 14:386-406, 2nd Ed., Harwood Academic Publishers, 1996、Joachim Grante, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 33:1699-1720, 1994、Fauchere, Adv. Drug Res., 15:29, 1986、Veber and Freidinger TINS, p.392 (1985)、およびEvans et al., J. Med. Chem. 30:229, 1987)。ペプチド模倣体は、ペプチドの生物活性を模倣するが、化学的な性質はもはやペプチド的ではない、分子である。ペプチド模倣体化合物は、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第6,245,886号に記載されている。
【0153】
ペプチド模倣体は、抗体に関して記載されている(上記)「特異的結合」の特徴を有し得る。例えば、ペプチド模倣体は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(Kd)で、本明細書に記載される標的に特異的に結合し得る。一部の実施形態では、ペプチド模倣体は、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、ペプチド模倣体は、本明細書に記載される少なくとも1つのがん関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、ペプチド模倣体は、本明細書に記載される少なくとも1つの神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0154】
ペプトイド。本発明のコンジュゲートには、「ペプトイド」も含まれる。ペプチドのペプトイド誘導体は、生物活性の重要な構造上の決定基を保持するが、ペプチド結合を排除し、それによって、タンパク質分解に対する耐性を付与する、改変されたペプチドの別の形態を表す(Simon, et al., PNAS USA. 89:9367-9371, 1992)。ペプトイドは、N-置換型グリシンのオリゴマーである。それぞれが天然のアミノ酸の側鎖に対応する、いくつかのN-アルキル基が、説明されている。本発明のペプチド模倣体は、少なくとも1つのアミノ酸、少数のアミノ酸、またはすべてのアミノ酸残基が、対応するN-置換型グリシンによって置換えられた化合物を含む。ペプトイドライブラリーは、例えば、米国特許第5,811,387号に記載されている。
【0155】
ペプトイドは、抗体に関して記載されている(上記)「特異的結合」の特徴を有し得る。例えば、ペプトイドは、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(Kd)で、本明細書に記載される標的に特異的に結合し得る。ある特定の実施形態では、ペプトイドは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、ペプトイドは、本明細書に記載される少なくとも1つのがん関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、ペプトイドは、本明細書に記載される少なくとも1つの神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0156】
アプタマー。本発明のp97コンジュゲートは、アプタマーも含む(例えば、Ellington et al., Nature. 346, 818-22, 1990およびTuerk et al., Science. 249, 505-10, 1990を参照されたい)。アプタマーの例としては、核酸アプタマー(例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー)、およびペプチドアプタマーが挙げられる。核酸アプタマーは、概して、in vitro選択または同等の方法、例えば、SELEX(指数的濃縮によるリガンドの体系的進化、systematic evolution of ligands by exponential enrichment)を複数回反復することによって、様々な分子標的、例えば、小分子、タンパク質、核酸、ならびにさらには細胞、組織、および生物に結合するように操作されている、核酸種を指す。例えば、米国特許第6,376,190号および同第6,387,620号を参照されたい。
【0157】
典型的に、ペプチドアプタマーは、両方の末端で、典型的にペプチドアプタマーの結合親和性を抗体のものに匹敵するレベルまで(例えば、ナノモル範囲で)増加させる二重の構造上の制約であるタンパク質足場に結合された、可変ペプチドループを含む。ある特定の実施形態では、可変ループの長さは、約10~20個のアミノ酸(間のすべての整数を含む)から構成され得、足場は、良好な溶解度および小型化特性を有する任意のタンパク質を含み得る。ある特定の例示的な実施形態は、細菌タンパク質チオレドキシン-Aを足場タンパク質として利用し得、可変ループが、還元性活性部位(野生型タンパク質における-Cys-Gly-Pro-Cys-ループ)内に挿入されており、2つのシステイン側鎖がジスルフィド架橋を形成することができる。ペプチドアプタマーを特定する方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0108532号に記載されている。
【0158】
アプタマーは、抗体に関して記載されている(上記)「特異的結合」の特徴を有し得る。例えば、アプタマーは、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(Kd)で、本明細書に記載される標的に特異的に結合し得る。特定の実施形態では、アプタマーは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。一部の実施形態では、アプタマーは、本明細書に記載される少なくとも1つのがん関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、アプタマーは、本明細書に記載される少なくとも1つの神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0159】
レビー小体認知症の処置に好適な特定の活性剤は、GBA1変異によって引き起こされるゴーシェ病を処置するために現在使用されているものなどの小分子、ポリペプチド剤、ペプチド模倣体、ペプトイド、アプタマー、ならびに酵素を含めた任意の薬剤であり得る。ゴーシェ病を処置するために現在利用可能な活性剤のいくつかの例を以下に記載するが、本明細書において具体的に識別されていない他の活性剤も本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0160】
グルコセレブロシダーゼ
レビー小体に特徴的であるアルファ-シヌクレインの異常な蓄積もまた、酵素グルコセレブロシダーゼの減少、およびスフィンゴ脂質グルコセレブロシドの異常な脳内レベルと相関する。グルコセレブロシダーゼ(ベータ-グルコシルセレブロシダーゼ、β-グルコシルセレブロシダーゼとしても、または略称GCaseでも公知である)は、グルコセレブロシド(グルコシルセラミドとしても公知)の分解に関与するリソソーム酵素である。グルコセレブロシドは、正常なニューロン機能に必要とされる。
【0161】
本発明は、酵素グルコセレブロシダーゼを送達するための方法および組成物を提供する。
【0162】
Cerezyme(イミグルセラーゼ)は、組換えDNA技術によって産生されるヒト酵素β-グルコセレブロシダーゼのアナログである。β-グルコセレブロシダーゼ(β-D-グルコシル-N-アシルスフィンゴシングルコヒドロラーゼ、E.C.3.2.1.45)は、グルコースおよびセラミドへの加水分解を触媒するリソソーム糖タンパク質酵素である。Cerezymeは、哺乳動物細胞培養物(チャイニーズハムスター卵巣)を使用して組換えDNA技術によって産生される。精製されたイミグルセラーゼは、N結合グリコシル化部位を4つ含有する497アミノ酸の単量体糖タンパク質である(Mr=60,430)。イミグルセラーゼは、胎盤グルコセレブロシダーゼとは495位の1アミノ酸により異なり、そこではヒスチジンでアルギニンが置換されている。グリコシル化部位のオリゴ糖鎖は、マンノース糖で終結するように改変されている。イミグルセラーゼ上の改変された炭水化物構造は、胎盤グルコセレブロシダーゼのものとはいくらか異なる。イミグルセラーゼのこれらのマンノースで終結したオリゴ糖鎖は、ゴーシェ病において脂質が蓄積する細胞であるマクロファージ上のエンドサイトーシス炭水化物受容体によって特異的に認識される。
【0163】
Cerezyme(イミグルセラーゼ)に関するさらなる情報は、以下のものを含む:化学名:495-L-ヒスチジングルコシルセラミダーゼ(ヒト胎盤アイソエンザイムタンパク質部分)。化学式:C2532384367171116。CAS番号:154248-97-2。
【0164】
VPRIV(ベラグルセラーゼアルファ)、VPRIVは、1型ゴーシェ病の患者に対する長期間の酵素補充療法(ERT)に適応する。VPRIVの活性成分はベラグルセラーゼアルファであり、これは、遺伝子活性化技術によってヒト線維芽細胞系において産生される。ベラグルセラーゼアルファは、497アミノ酸の糖タンパク質であり、分子量はおよそ63kDaである。ベラグルセラーゼアルファは、天然に存在するヒト酵素であるグルコセレブロシダーゼと同じアミノ酸配列を有する。ベラグルセラーゼアルファは、潜在的なN結合グリコシル化部位を5つ含有し、これらの部位のうち4つをグリカン鎖が占めている。ベラグルセラーゼアルファは、主に高マンノース型N結合グリカン鎖を含有する。高マンノース型N結合グリカン鎖は、ゴーシェ病においてグルコセレブロシドが蓄積する細胞であるマクロファージの表面に存在するマンノース受容体に特異的に認識され、それを介して内部移行する。ベラグルセラーゼアルファは、リソソームにおける糖脂質グルコセレブロシドのグルコースおよびセラミドへの加水分解を触媒する。
【0165】
VPRIV(ベラグルセラーゼアルファ)に関するさらなる情報は、以下のものを含む:化学式C2532385067271116。CAS番号884604-91-5。
【0166】
ELELYSO(タリグルセラーゼアルファ)は、1型ゴーシェ病の確定診断を有する患者の処置に適応する加水分解性リソソームグルコセレブロシド特異的酵素である。静脈内注入用の加水分解性リソソームグルコセレブロシド特異的酵素であるタリグルセラーゼアルファは、リソソーム酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼの組換え活性形態であり、使い捨てバイオリアクター系(ProCellEx(登録商標))で培養された遺伝子改変ニンジン植物体根細胞において発現される。β-グルコセレブロシダーゼ(β-D-グルコシル-N-アシルスフィンゴシングルコヒドロラーゼ、E.C.3.2.1.45)は、糖脂質グルコセレブロシドのグルコースおよびセラミドへの加水分解を触媒するリソソーム糖タンパク質酵素である。ELELYSOは、植物細胞培養物(ニンジン)を使用して組換えDNA技術によって産生される。精製されたタリグルセラーゼアルファは、N結合グリコシル化部位を4つ含有する単量体糖タンパク質である(Mr=60,800)。タリグルセラーゼアルファは、ネイティブなヒトグルコセレブロシダーゼとはN末端の2アミノ酸およびC末端の最大7アミノ酸が異なる。タリグルセラーゼアルファは、末端マンノース糖を有する、グリコシル化部位にオリゴ糖鎖を有するグリコシル化タンパク質である。タリグルセラーゼアルファのこれらのマンノースで終結したオリゴ糖鎖は、ゴーシェ病において脂質が蓄積する細胞であるマクロファージ上のエンドサイトーシス炭水化物受容体によって特異的に認識される。
【0167】
Elelyso(タリグルセラーゼアルファ)に関するさらなる情報は、以下のものを含む:化学式C2580391868072717。CAS番号37228-64-1。
【0168】
以前から市販されている薬物CEREDASE(アルグルセラーゼ)も本明細書において有用である。CAS ID:37228-64-1。Ceredaseは、ヒト胎盤組織からGenzyme Corporationにより製造されたアルグルセラーゼのクエン酸緩衝溶液の商品名である。しかし、ベータ-グルコセレブロシダーゼの他の形態が、一般に、アルグルセラーゼの使用に取って代わっている。
【0169】
薬物動態(pharmakokinetic)および薬力学上の考慮事項:静脈内手段により直接投与した場合、標的ベータ-グルコセレブロシダーゼは、一般に、約500~約25,000ngh/ml、または好ましくは、約1000~約10,000ngh/ml、または約1500~約7500ngh/mlのAUC(曲線下面積)(ゼロから無限大まで、AUC(0~∞))を有することになる。しかし、本発明の方法および組成物を用いた場合には、ベータ-グルコセレブロシダーゼは、血液脳関門を越えるより効率的かつ選択的な輸送のために投与され、従って、全身曝露がより低く、有害反応および他の望ましい副作用または毒性の可能性が低くなる機会が得られる。
【0170】
グルコシルセラミド合成酵素阻害剤
CERDELGA(商標)(エリグルスタット)は、FDAの認可を受けた検査によって検出されるCYP2D6中間代謝群(IM)または低代謝群(PM)である1型ゴーシェ病の成人患者の長期間の処置に適応するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤である。CERDELGA(エリグルスタット)カプセルは、化学名N-((1R,2R)-1-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-1-ヒドロキシ-3-(ピロリジン-1-イル)プロパン-2-イル)オクタンアミド(2R,3R)-2,3-ジヒドロキシスクシネートを有する、グルコシルセラミド合成酵素のセラミド基質に類似した当該酵素の小分子阻害剤であるエリグルスタット酒石酸塩を含有する。
【0171】
ZAVESCA(ミグルスタット)は、酵素補充療法が治療選択肢にならない軽度/中等度1型ゴーシェ病を処置するための単剤療法に適応するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤である。ミグルスタットは、大半のスフィンゴ糖脂質の合成の第1のステップに関与するグルコシルトランスフェラーゼ酵素である酵素グルコシルセラミド合成酵素の阻害剤である。Zavescaは、D-グルコースの合成アナログであるN-アルキル化イミノ糖である。ミグルスタットの化学名は、1,5-(ブチルイミノ)-1,5-ジデオキシ-D-グルシトールである。
【0172】
検出可能な実体。一部の実施形態では、p97断片は、「検出可能な実体」にコンジュゲートされる。例示的な検出可能な実体としては、限定することなく、ヨウ素に基づく標識、放射性同位体、フルオロフォア/蛍光色素、およびナノ粒子が挙げられる。検出可能な実体は活性剤上に存在し得る。
【0173】
例示的なヨウ素に基づく標識としては、ジアトリゾ酸(Hypaque(登録商標)、GE Healthcare)およびそのアニオン形態、ジアトリゾエートが挙げられる。ジアトリゾ酸は、高度X線技法、例えば、CTスキャンにおいて使用される放射線造影剤である。以下に記載されるヨウ素放射性同位体もまた、含まれる。
【0174】
検出可能な実体として使用することができる例示的な放射性同位体としては、32P、33P、35S、H、18F、11C、13N、15O、111N、169Yb、99mTC、55Fe、およびヨウ素の同位体、例えば、123I、124I、125I、および131Iが挙げられる。これらの放射性同位体は、異なる半減期、減衰の種類、およびエネルギーのレベルを有し、これらを、特定のプロトコールの必要性に一致するように適合することができる。これらの放射性同位体のうちのある特定のものは、p97ポリペプチドへのコンジュゲーションによって、CNS組織に選択的に標的化するかまたはより良好に標的化して、例えば、CNS組織の医療イメージングを改善することができる。
【0175】
直接的に検出可能な実体として使用することができるフルオロフォアまたは蛍光色素の例としては、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、Oregon Green(登録商標)、およびその他多数が挙げられる(例えば、Haugland, Handbook of Fluorescent Probes - 9th Ed., 2002, Malec. Probes, Inc., Eugene OR、Haugland, The Handbook: A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies-10th Ed., 2005, lnvitrogen, Carlsbad, CA)。発光またはその他の方法で検出可能な色素もまた、含まれる。色素によって放出される光は、可視光または非可視光、例えば、紫外線光もしくは赤外線光であってもよい。例示的な実施形態では、色素は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)色素、キサンテン色素、例えば、フルオレセインおよびローダミン、アルファ位もしくはベータ位にアミノ基を有する色素(例えば、ナフチルアミン色素、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンデスルホネート(naphthalende sulfonate)、および2-p-トウイジニル(touidinyl)-6-ナフタレンスルホネート)、3-フェニル-7-イソシアナトクマリンを有する色素、アクリジン、例えば、9-イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ、ピレン、ベンソキサジアゾール(bensoxadiazole)、およびスチルベン、3-(s-カルボキシペンチル)-3’-エチル-5,5’-ジメチルオキサカルボシアニン(CYA)を有する色素、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5&6-カルボキシローダミン-110(R110)、6-カルボキシローダミン-6G(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、ALEXA FLUOR(商標)、Cy2、テキサスレッドおよびローダミンレッド、6-カルボキシ-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン(ZOE)、NAN、NED、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、およびCy7.5、IR800CW、ICG、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 680、またはAlexa Fluor 750であり得る。ある特定の実施形態は、検出可能な実体、例えば、フルオロフォア(例えば、Oregon Green(登録商標)、Alexa Fluor 488)で標識した化学療法剤(例えば、パクリタキセル、アドリアマイシン)へのコンジュゲーションを含む。
【0176】
ナノ粒子は、通常、サイズが約1~1000nmの範囲に及び、多様な化学構造体、例えば、金および銀粒子、ならびに量子ドットを含む。角度のついた入射白色光で照射されると、約40~120nmの範囲の銀または金ナノ粒子は、高い強度で単色光を散乱する。散乱される光の波長は、粒子のサイズに依存する。近接している4~5つの異なる粒子は、それぞれ、単色光を散乱し、これが重なると、特異的な固有の色が得られる。誘導体化されたナノ粒子、例えば、銀または金粒子は、タンパク質、抗体、小分子、受容体リガンド、および核酸を含む、広範なアレイの分子に結合し得る。ナノ粒子の具体的な例としては、金属ナノ粒子および金属ナノシェル、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、カドミウム粒子、複合粒子、金中空球、金コーティングシリカナノシェル、およびシリカコーティング金シェルが挙げられる。シリカ、ラテックス、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、PVDFナノ粒子、およびこれらの材料のうちのいずれかの着色された粒子もまた、含まれる。
【0177】
量子ドットは、広範な波長にわたる光により励起可能な直径が約1~5nmの蛍光を発する結晶である。適切な波長を有する光によって励起されると、これらの結晶は、それらの化学組成およびサイズに応じた波長で、光、例えば、単色光を放出する。量子ドット、例えば、CdSe、ZnSe、lnP、またはlnAsは、固有の光学特性を有し、これらおよび類似の量子ドットは、いくつかの市販供給源から入手可能である(例えば、NN-Labs、Fayetteville、AR;Ocean Nanotech、Fayetteville、AR;Nanoco Technologies、Manchester、UK;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)。
【0178】
ポリペプチドバリアントおよび断片。ある特定の実施形態は、名称で記載されるかまたは配列識別子を参照して記載されるかにかかわらず、p97ポリペプチドおよびポリペプチドに基づく薬剤、例えば、抗体を含む、本明細書に記載される参照ポリペプチドのバリアントおよび/または断片を含む。これらのポリペプチドの野生型またはもっとも一般的な配列は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されるバリアントおよび断片の比較物として使用することができる。
【0179】
ポリペプチド「バリアント」は、この用語が本明細書に使用される場合、典型的に1つまたは複数の置換、欠失、付加、および/または挿入が、本明細書に具体的に開示されるポリペプチドとは異なる、ポリペプチドである。バリアントポリペプチドは、生物学的に活性である、すなわち、それらは、参照ポリペプチドの酵素活性または結合活性を有し続ける。そのようなバリアントは、例えば、遺伝子多型および/またはヒト操作により、生じ得る。
【0180】
多数の事例では、生物学的に活性なバリアントは、1つまたは複数の保存的置換を含むことになる。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸と置換されるものであり、ペプチド化学の当業者であれば、実質的に変更されないであろうポリペプチドの二次構造および疎水性親水性質(hydropathic nature)を予測するであろう。上述のように、改変が、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に行われてもよく、依然として、望ましい特徴を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子を得ることができる。本発明のポリペプチドの同等またはさらには改善されたバリアントまたは部分を作るようにポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが所望される場合、当業者であれば、典型的に、以下の表Aに従ってコードDNA配列のコドンのうちの1つまたは複数を変更するであろう。
【0181】
ある特定の実施形態は、名称で記載されるかまたは配列識別子を参照して記載されるかにかかわらず、p97ポリペプチドおよびGBA1関連タンパク質を含む、本明細書に記載される参照ポリペプチドのバリアントおよび/または断片を含む。これらのポリペプチドの野生型または最も一般的な配列は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されるバリアントおよび断片についての比較として使用することができる。
【0182】
ポリペプチド「バリアント」は、この用語が本明細書に使用される場合、1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入が、本明細書に具体的に開示されるポリペプチドとは典型的に異なる、ポリペプチドである。バリアントポリペプチドは、生物学的に活性である、すなわち、それらは、参照ポリペプチドの酵素活性または結合活性を有し続ける。そのようなバリアントは、例えば、遺伝子多型および/またはヒト操作により、生じ得る。
【0183】
多数の事例では、生物学的に活性なバリアントは、1つまたは複数の保存的置換を含む。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸に置き換えられるものであり、ペプチド化学の当業者であれば、実質的に変更されないポリペプチドの二次構造およびハイドロパシーの性質(hydropathic nature)を予測するであろう。上記のように、改変が、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に行われてもよく、依然として、望ましい特徴を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子を得ることができる。本発明のポリペプチドの同等のまたはさらには改善されたバリアントまたは部分を作るためにポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが所望される場合、当業者であれば、典型的に、下の表Aに従ってコードDNA配列のコドンのうちの1つまたは複数を変更する。
【0184】
【表A】
【0185】
例えば、ある特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原結合性領域または基質分子上の結合部位などの構造体と相互作用する結合能力の明らかな消失を伴わずに、タンパク質構造体における他のアミノ酸を置換し得る。タンパク質の生物学的な機能的活性を定義するのは、タンパク質の相互作用能力および性質であるため、ある特定のアミノ酸配列置換を、タンパク質配列、および当然ながらその根底にあるDNAコード配列に行うことができ、いずれにせよ、同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。したがって、様々な変更が、開示される組成物のペプチド配列、または前記ペプチドをコードする対応するDNA配列に、それらの有用性の明らかな消失を伴わずに、行われ得ることが企図される。
【0186】
そのような変更を行う場合、アミノ酸の疎水性親水性指数が、考慮され得る。タンパク質に相互作用性生物学的機能を付与することにおける疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、一般に、当該技術分野において理解されている(Kyte & Doolittle, 1982、参照により本明細書に組み込まれる)。アミノ酸の相対的な疎水性親水性特徴は、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、これが、他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとのタンパク質の相互作用を定義することが、許容されている。それぞれのアミノ酸には、その疎水性および荷電特徴に基づいて、疎水性親水性指数が割り当てられている(Kyte & Doolittle, 1982)。これらの値は、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、スレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(praline)(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リシン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)である。ある特定のアミノ酸は、類似の疎水性親水性指数またはスコアを有する他のアミノ酸と置換することができ、依然として、類似の生物活性を有するタンパク質が得られること、すなわち、依然として生物学的機能が同等のタンパク質が得られることが、当該技術分野において公知である。そのような変更を行う場合、疎水性親水性指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが、特に好ましく、±0.5以内のものが、さらにより特に好ましい。
【0187】
同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行うことができることもまた、当該技術分野において理解されている。米国特許第4,554,101号(参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる)は、タンパク質のもっとも高い局所平均親水性が、その隣接するアミノ酸の親水性によって左右され、タンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)。アミノ酸は、類似の親水性値を有する別のものの代わりに使用することができ、依然として、生物学的に同等な、特に、免疫学的に同等なタンパク質を得ることができることが、理解されている。そのような変更の場合、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが、特に好ましく、±0.5以内のものが、さらにより特に好ましい。
【0188】
上記に概説されるように、アミノ酸置換は、したがって、概して、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。様々な前述の特徴を考慮した例示的な置換は、当業者に周知であり、これには、アルギニンおよびリシン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびスレオニン、グルタミンおよびアスパラギン、ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシンが挙げられる。
【0189】
アミノ酸置換は、さらに、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性質に基づいて行われてもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としては、リシンおよびアルギニンが挙げられ、類似の親水性値を有する荷電していない極性頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、およびバリン、グリシンおよびアラニン、アスパラギンおよびグルタミン、ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが挙げられる。保存的変更を表し得る他のアミノ酸群としては、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gin、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、および(5)phe、tyr、trp、hisが挙げられる。
【0190】
バリアントは、さらに、または代替として、非保存的変更を含有し得る。好ましい実施形態では、バリアントポリペプチドは、約10個よりも少ない、9個よりも少ない、8個よりも少ない、7個よりも少ない、6個よりも少ない、5個よりも少ない、4個よりも少ない、3個よりも少ない、2個よりも少ないアミノ酸、またはさらには1個のアミノ酸の置換、欠失、または付加が、天然の配列とは異なる。バリアントは、さらに(または代替として)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造、酵素活性、および/または疎水性親水性質に対して最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって、改変され得る。
【0191】
ある特定の実施形態では、DSSHAFTLDELR(配列番号2)のバリアントは、2016年6月14日に発行された米国特許第9364567号の表Bに示されるように、他の生物に由来するp97配列の配列に基づき得、このような特許の全内容は、その全体が提示されるかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
一般に、バリアントは、参照ポリペプチド配列に対して、少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性または配列同一性もしくは配列相同性を呈する。さらに、約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、またはそれより多くのアミノ酸の付加(例えば、C末端付加、N末端付加、それらの両方)、欠失、短縮、挿入、または置換が、天然または親配列とは異なるが、親または参照ポリペプチド配列の特性または活性を保持する、配列が、企図される。
【0193】
一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも1個であるが、50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、15個未満、10個未満、8個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、または2個未満のアミノ酸残基が、参照配列とは異なる。他の実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも1%であるが、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満の残基が、参照配列とは異なる。(この比較が、アライメントを必要とする場合、配列は、最大の類似性に関してアライメントされるものとする。欠失もしくは挿入、またはミスマッチからの「ループ」アウト配列は、差異と考える。)
【0194】
配列間の配列類似性または配列同一性(これらの用語は、本明細書において互換可能に使用される)の計算は、以下のように行われる。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列を、最適な比較の目的でアライメントする(例えば、最適なアライメントのために、ギャップが、第1および第2のアミノ酸または核酸配列のうちの一方または両方に導入されてもよく、非相同配列は、比較目的で、無視してもよい)。ある特定の実施形態では、比較目的でアライメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが、次いで、比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占有されている場合、分子は、その位置において同一である。
【0195】
2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列が共有している同一な位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮する。
【0196】
2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに組み込まれている、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. 48:444-453, 1970)のアルゴリズムを使用して、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を使用して、決定される。さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または80のギャップ加重および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を使用して、決定される。特に好ましいパラメーターセット(および別途示されない限り使用すべきもの)は、Blossum62スコアリングマトリックスで、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5である。
【0197】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller(Cabios. 4:11-17, 1989)のアルゴリズムを使用し、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用して、決定することができる。
【0198】
本明細書に記載される核酸およびタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連する配列を特定するために公開データベースに対する検索を実施するための「クエリー配列」として使用することができる。そのような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。本発明の核酸分子と相同であるヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行うことができる。本発明のタンパク質分子と相同であるアミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行うことができる。比較目的でギャップ付きアラインメント得るために、Altschul et al., (Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997)に記載されるようなギャップ付きBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合には、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。
【0199】
一実施形態では、上述のように、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドは、BLASTアライメントツールを使用して、評価することができる。局所アライメントは、単純に、配列セグメントの対からなり、それぞれの配列から1つずつが比較される。Smith-WatermanまたはSellersのアルゴリズムの改変形は、スコアを伸長またはトリミングによって改善することができない、高スコアセグメント対(HSP)と称されるすべてのセグメント対を見出すであろう。BLASTアライメントの結果には、BLASTスコアが偶然のみにより予測され得る尤度を示す、統計学的尺度が含まれる。
【0200】
未加工スコアSは、それぞれのアライメントした配列と関連するギャップおよび置換の数から計算され、ここで、類似性スコアが高いことは、より有意なアライメントを示す。置換スコアは、検索テーブルによって得られる(PAM、BLOSUMを参照されたい)。
【0201】
ギャップスコアは、典型的に、ギャップ開始ペナルティGおよびギャップ伸長ペナルティLの合計として計算される。長さnのギャップについては、ギャップコストは、G+Lnとなるであろう。ギャップコストGおよびLの選択は、経験によるものであるが、Gには高い値(10~15)、例えば、11、Lには低い値(1~2)、例えば、1を選択することが慣例的である。
【0202】
ビットスコアS’は、使用されるスコア付けシステムの統計学的特性が考慮されている、未加工アライメントスコアSから得られる。ビットスコアは、スコア付けシステムに対して正規化され、したがって、それらは、異なる検索から得られたアライメントスコアを比較するために使用することができる。「ビットスコア」および「類似性スコア」という用語は、互換可能に使用される。ビットスコアは、アライメントがどれほど良好であるかの指標を提供し、スコアが高いほど、アライメントが良好である。
【0203】
E値または期待値は、類似のスコアを有する配列が、データベース内に偶然生じる尤度を示す。これは、データベース検索に偶然生じると予測される、Sと同等またはSよりも良好なスコアを有する異なるアライメントの数の予測である。E値が小さいほど、アライメントの有意性が高い。例えば、e-117のE値を有するアライメントは、類似のスコアを有する配列が、単純に偶然に生じる可能性が非常に低いことを意味する。加えて、ランダムなアミノ酸対のアライメントの予測スコアは、負となることが必要とされるが、そうでなければ、長いアライメントは、アライメントされるセグメントが関連していたかどうかとは独立して高いスコアを有する傾向となるであろう。加えて、BLASTアルゴリズムは、適切な置換マトリックス、ヌクレオチド、またはアミノ酸を使用し、ギャップ付きアライメントについては、ギャップ作りおよび伸長ペナルティを使用する。例えば、ポリペプチド配列のBLASTアライメントおよび比較は、典型的に、BLOSUM62マトリックス、ギャップ存在ペナルティ11、およびギャップ伸長ペナルティ1を使用して、行われる。
【0204】
一実施形態では、配列類似性スコアは、BLOSUM62マトリックス、ギャップ存在ペナルティ11、およびギャップ伸長ペナルティ1を使用して行われるBLAST分析から報告される。
【0205】
特定の実施形態では、本明細書に提供される配列同一性/類似性スコアは、GAPバージョン10(GCG、Accelrys、San Diego、Calif.)を以下のパラメーターで使用して得られた値を指す:GAP加重50および長さ加重3、ならびにnwsgapdna.cmpスコア付けマトリックスを使用したヌクレオチド配列の同一性%および類似性%;GAP加重8および長さ加重2、ならびにBLOSUM62スコア付けマトリックス(Henikoff and Henikoff, PNAS USA. 89:10915-10919, 1992)を使用したアミノ酸配列の同一性%および類似性%。GAPは、NeedlemanおよびWunsch(J Mol Biol. 48:443- 453, 1970)のアルゴリズムを使用して、一致の数を最大にし、ギャップの数を最小限に抑える、2つの完全な配列のアライメントを見出す。
【0206】
上述のように、参照ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、短縮、付加、および挿入を含む、様々な手段で変更され得る。そのような操作のための方法は、概して、当該技術分野において公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAにおける変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Kunkel (PNAS USA. 82: 488-492, 1985)、Kunkel et al., (Methods in Enzymol. 154:367-382, 1987)、米国特許第4,873,192号、Watson, J. D. et al., (”Molecular Biology of the Gene,” Fourth Edition, Benjamin/Cummings, Menlo Park, Calif., 1987)、ならびにそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する指針は、Dayhoff et al., (1978) Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)のモデルにおいて見出すことができる。
【0207】
そのような改変によって作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための方法は、当該技術分野において公知である。そのような方法は、参照ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリーの高速スクリーニングに適応可能である。一例として、ライブラリー内の機能性変異体の頻度を増強する技法である再帰的アンサンブル変異誘発(REM)は、ポリペプチドバリアントを特定するためにスクリーニングアッセイと組み合わせて使用することができる(Arkin and Yourvan, PNAS USA 89:7811-7815, 1992、Delgrave et al., Protein Engineering. 6:327-331, 1993)。
【0208】
コンジュゲーションの例示的な方法。目的の薬剤へのp97ポリペプチド配列のコンジュゲーションまたはカップリングは、標準的な化学的技法、生物化学的技法、および/または分子技法を使用して、行うことができる。実際に、本開示を踏まえて、利用可能な当該技術分野において認識されている手法を使用して、p97コンジュゲートを作製する方法は、明らかであろう。当然ながら、一般に、本発明のp97コンジュゲートの主要な成分をカップリングさせる場合に、用いられる技法および結果として生じる架橋化学は、コンジュゲートの個々の成分の所望される機能性または活性を実質的に妨害するものではないことが、好ましい。
【0209】
用いられる特定のカップリング化学は、生物学的に活性な薬剤(例えば、小分子、ポリペプチド)の構造、生物学的に活性な薬剤内の複数の官能基の潜在的な存在、保護/脱保護ステップの必要性、薬剤の化学的安定性などに依存することになり、当業者によって容易に決定されるであろう。本発明のp97コンジュゲートを調製するのに有用な例示的なカップリング化学は、例えば、Wong (1991), ”Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking”, CRC Press, Boca Raton, FlaおよびBrinkley ”A Brief Survey of Methods for Preparing Protein Conjugates with Dyes, Haptens, and Crosslinking Reagents,” in Bioconjug. Chem., 3:2013, 1992において見出すことができる。好ましくは、コンジュゲートの結合能力および/または活性は、用いられるコンジュゲーション技法の結果として、例えば、コンジュゲートされていない薬剤またはコンジュゲートされていないp97ポリペプチドと比べて、実質的に低減されるものではない。
【0210】
ある特定の実施形態では、p97ポリペプチド配列は、直接的または間接的のいずれかで、目的の薬剤にカップリングされ得る。p97ポリペプチド配列と目的の薬剤との間の直接的な反応は、それぞれが、互いに反応することができる置換基を有する場合に、可能である。例えば、一方における求核基、例えば、アミノ基またはスルフヒドリル基は、他方におけるカルボニル含有基、例えば、無水物もしくは酸ハロゲン化物、または良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することが可能であり得る。
【0211】
あるいは、p97ポリペプチド配列および目的の薬剤を、非ペプチドリンカーおよびペプチドリンカーを含むリンカー基を介して間接的にカップリングさせることが、望ましい場合がある。リンカー基は、結合能力、標的化能力、または他の機能性の妨害を回避するために、目的の薬剤をp97ポリペプチド配列から分離するためのスペーサーとしても機能し得る。リンカー基はまた、薬剤における置換基の化学的反応性を増加させ、したがって、カップリング効率を増加させるようにも機能し得る。化学的反応性の増加はまた、そうでなければ可能ではないであろう薬剤または薬剤における官能基の使用を促進することもできる。放出可能なリンカーまたは安定なリンカーの選択はまた、p97コンジュゲートおよび結合される目的の薬剤の薬物動態を変更するためにも用いることができる。例示的な連結基としては、例えば、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基、およびエステラーゼ不安定性基が挙げられる。他の例示的な実施形態では、コンジュゲートは、米国特許第5,208,020号または欧州特許第0 425 235号B1、およびChari et al., Cancer Research. 52:127-131, 1992に開示されるものなどの連結基を含む。さらなる例示的なリンカーは、以下に記載されている。
【0212】
一部の実施形態では、1つより多くのp97ポリペプチド配列を、薬剤にカップリングさせること、またはその逆が、望ましい場合がある。例えば、ある特定の実施形態では、複数のp97ポリペプチド配列が、1つの薬剤にカップリングされるか、または代替として、1つもしくは複数のp97ポリペプチドが、複数の薬剤にコンジュゲートされる。p97ポリペプチド配列は、同じであっても異なってもよい。特定の実施形態にかかわらず、複数のp97ポリペプチド配列を含むコンジュゲートは、様々な手段で調製することができる。例えば、1つより多くのポリペプチドは、薬剤に直接的にカップリングされてもよく、または結合のための複数の部位を提供するリンカーを使用してもよい。様々な公知のヘテロ二官能性架橋戦略のうちのいずれかを、本発明のコンジュゲートを作製するために利用することができる。これらの実施形態の多くは、コンジュゲーション/架橋手順中に使用される材料の化学量論を制御することによって達成することができる。
【0213】
ある特定の例示的な実施形態では、スクシンイミジルエステル官能基を含む薬剤とアミノ基を含むp97ポリペプチドとの間の反応により、アミド結合が形成され、オキシカルボニルイミジザオール(oxycarbonylimidizaole)官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、カルバメート結合が形成され、p-ニトロフェニルカーボネート官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、カルバメート結合が形成され、トリクロロフェニルカーボネート官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、カルバメート結合が形成され、チオエステル官能基を含む薬剤とn末端アミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、アミド結合が形成され、プロプリオンアルデヒド(proprionaldehyde)官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成される。
【0214】
一部の例示的な実施形態では、ブチルアルデヒド官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、アセタール官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、ピペリドン官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、メチルケトン官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、トレシレート(tresylate)官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、マレイミド官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、アルデヒド官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成され、ヒドラジン官能基を含む薬剤とカルボン酸基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、第2級アミン結合が形成される。
【0215】
特定の例示的な実施形態では、マレイミド官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、チオエーテル結合が形成され、ビニルスルホン官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、チオエーテル結合が形成され、チオール官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、ジスルフィド結合が形成され、オルトピリジルジスルフィド官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、ジスルフィド結合が形成され、ヨードアセトアミド官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により、チオエーテル結合が形成される。
【0216】
具体的な実施形態では、アミンとスルフヒドリルとの架橋剤が、コンジュゲートを調製するのに使用される。
【0217】
1つの好ましい実施形態では、例えば、架橋剤は、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)(Thermo Scientific)であり、これは、中等度の長さのシクロヘキサン安定化スペーサーアーム(8.3オングストローム)の両端に、NHS-エステルおよびマレイミド反応基を含有する、スルフヒドリル架橋剤である。SMCCは、後続のp97ポリペプチド配列との反応のためのスルフヒドリル反応性、マレイミドで活性化された薬剤(例えば、ポリペプチド、抗体)を作るために使用することができる、切断不能な膜透過性架橋剤である。NHSエステルは、pH7~9で第1級アミンと反応して、安定なアミド結合を形成する。マレイミドは、pH6.5~7.5でスルフヒドリル基と反応して、安定なチオエーテル結合を形成する。したがって、SMCCのアミン反応性NHSエステルは、薬剤の第1級アミンと急速に架橋し、結果として得られるスルフヒドリル反応性マレイミド基は、p97のシステイン残基との反応に利用可能であり、目的の特異的なコンジュゲートが得られる。
【0218】
ある特定の具体的な実施形態では、p97ポリペプチド配列は、架橋を促進するため、例えば、マレイミドで活性化された薬剤への架橋を促進するために、露出したスルフヒドリル基を含有するように改変される。より具体的な実施形態では、p97ポリペプチド配列は、保護チオールスルフヒドリル基を付加するように、第1級アミンを改変する試薬により、改変される。さらにより具体的な実施形態では、試薬N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)(Thermo Scientific)を使用して、チオール化p97ポリペプチドを得る。
【0219】
他の具体的な実施形態では、マレイミドで活性化された薬剤は、好適な条件下において、チオール化p97ポリペプチドと反応して、本発明のコンジュゲートを産生する。この反応におけるSMCC、SATA、薬剤、およびp97ポリペプチドの比を操作することによって、異なる化学量論、分子量、および特性を有するコンジュゲートを産生することが可能であることが、理解される。
【0220】
なおも他の例示的な実施形態では、コンジュゲートは、二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルデヒド(glutareldehyde))、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。特定のカップリング剤としては、ジスルフィド結合を提供するN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlsson et al., Biochem. J. 173:723-737 [1978])およびN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)が挙げられる。
【0221】
本明細書に考察される具体的な架橋戦略は、本発明のコンジュゲートを産生する場合に用いることができる好適なコンジュゲーション戦略の多くの例のうちの数例でしかない。ホモ官能性およびヘテロ官能性を含む、様々な他の二官能性または多官能性試薬(例えば、Pierce Chemical Co.、Rockford、ILのカタログに記載のもの)を、リンカー基として用いることができることは、当業者には明らかであろう。カップリングは、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化炭水化物残基を通じて実行することができる。そのような手法について記載している多数の参考文献、例えば、Rodwellらへの米国特許第4,671,958号がある。
【0222】
特定の実施形態は、p97ポリペプチドと薬剤との間のコンジュゲーションを促進するために、1つまたは複数のアルデヒドタグを利用し得る(参照により組み込まれる米国特許第8,097,701号および同第7,985,783号を参照されたい)。ここで、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用によるアルデヒドタグのスルファターゼモチーフにおける酵素改変により、ホルミルグリシン(FGly)残基が生じる。FGly残基のアルデヒド部分は、次いで、目的の部分のポリペプチドへの部位特異的結合のための化学的ハンドルとして利用することができる。一部の態様では、目的の部分は、小分子、ペプトイド、アプタマー、またはペプチド模倣体である。一部の態様では、目的の部分は、別のポリペプチド、例えば、抗体である。
【0223】
上述のモチーフを有するポリペプチドは、FGly残基を有するモチーフを生成するようにFGE酵素によって改変され得、この残基は、上述のように、薬剤、例えば、第2のポリペプチドの、例えば、リンカー部分を介した部位特異的結合に使用され得る。そのような改変は、例えば、FGE酵素を発現する哺乳動物、酵母、もしくは細菌細胞において、スルファターゼモチーフを含有するポリペプチド(例えば、p97、抗体)を発現させること、または単離されたFGE酵素による単離されたポリペプチドのin vitro改変によって、行うことができる(Wu et al., PNAS. 106:3000-3005, 2009、Rush and Bertozzi, J. Am Chem Soc. 130:12240-1, 2008、およびCarlson et al., J Biol Chem. 283:20117-25, 2008を参照されたい)。
【0224】
薬剤または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド(例えば、抗体、p97ポリペプチド)は、1つまたは複数のアルデヒド反応基、例えば、アミノオキシ、ヒドラジド、およびチオセミカルバジドで官能化され、次いで、少なくとも1つのFGly残基を介してアルデヒドタグ含有ポリペプチドに共有結合で連結されて、アルデヒド反応性結合が形成され得る。アミノオキシで官能化された薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)の結合により、FGly残基と官能化された薬剤(例えば、非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)との間にオキシム結合が作られ、ヒドラジドで官能化された薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)の結合により、FGly残基と官能化された薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)との間にヒドラジン結合が作られ、チオセミカルバジドで官能化された薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)の結合により、FGly残基と官能化された薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)との間にヒドラジンカルボチアミド結合が作られる。したがって、これらおよび関連する実施形態では、R1は、シッフ塩基を含む結合、例えば、オキシム結合、ヒドラジン結合、またはヒドラジンカルボチアミド結合であり得る。
【0225】
ある特定の実施形態は、(i)スルファターゼモチーフ(またはアルデヒドタグ)含有p97ポリペプチド、および(ii)スルファターゼモチーフ(またはアルデヒドタグ)含有ポリペプチド剤(A)のコンジュゲートを含み、ここで、(i)および(ii)は、それぞれのFGly残基を介して、必要に応じて二官能化リンカー部分または基を介して、共有結合的に連結される。
【0226】
一部の実施形態では、アルデヒドタグ含有p97ポリペプチドおよびアルデヒドタグ含有薬剤は、多官能化リンカー(例えば、二官能化リンカー)を介して連結され(例えば、共有結合的に連結され)、後者は、同じかまたは異なるアルデヒド反応基で官能化されている。これらおよび関連する実施形態では、アルデヒド反応基は、リンカーが、p97ポリペプチドと薬剤との間でそれらのそれぞれのFGly残基を介して共有結合的架橋を形成することを可能にする。リンカー部分としては、1つまたは複数のアルデヒド反応性基で官能化することができ、好ましくは、二官能化または多官能化することができる、任意の部分または化学物質が挙げられる。特定の例としては、ペプチド、水溶性ポリマー、検出可能な実体、他の治療用化合物(例えば、細胞傷害性化合物)、ビオチン/ストレプトアビジン部分、およびグリカンが挙げられる(Hudak et al., J Am Chem Soc. 133:16127-35, 2011を参照されたい)。
【0227】
グリカン(またはグリコシド)の具体的な例としては、アミノオキシグリカン、例えば、グリコシルN-ペンテノイルヒドロキサメート中間体から構成される高次グリカンが挙げられる(上記)。例示的なリンカーは、本明細書に記載されており、当該技術分野において日常的な技法により、アルデヒド反応性基で官能化することができる(例えば、Carrico et al., Nat Chem Biol. 3:321-322, 2007、ならびに米国特許第8,097,701号および同第7,985,783号を参照されたい)。
【0228】
p97コンジュゲートはまた、様々な「クリック化学」技法によって調製することができ、これには、モジュール式であり、範囲が広く、非常に高い収率が得られ、非クロマトグラフィー方法によって除去することができる主として害にならない副産物を生成し、立体特異的であり得るが必ずしもエナンチオ選択的でない、反応が挙げられる(Kolb et al., Angew Chem Int Ed Engl. 40:2004-2021, 2001を参照されたい)。特定の例としては、「アジド-アルキン付加環化」反応とも称されるアジドおよびアルキンのヒュスゲン1,3-双極性付加環化を用いるコンジュゲーション技法が挙げられる(Hein et al., Pharm Res. 25:2216-2230, 2008を参照されたい)。アジド-アルキン付加環化反応の非限定的な例としては、銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC)反応およびルテニウム触媒アジド-アルキン付加環化(RuAAC)反応が挙げられる。
【0229】
CuAACは、広い温度範囲にわたって機能し、水性条件および4~12にわたるpH範囲で非感受性であり、広範な官能基を許容する(Himo et al, J Am Chem Soc. 127:210-216, 2005を参照されたい)。活性なCu(I)触媒は、例えば、還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを使用して、Cu(I)塩またはCu(II)塩から生成することができる。この反応は、1,4置換産物を形成するため、領域特異的となっている(Hein et al.(上記)を参照されたい)。
【0230】
RuAACは、アジドの末端アルキンへの付加環化を触媒することができるペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウム塩化物[Cp*RuCl]錯体を用い、位置選択的に、1,5-二置換1,2,3-トリアゾールをもたらす(Rasmussen et al., Org. Lett. 9:5337-5339, 2007を参照されたい)。さらに、CuAACとは対照的に、RuAACはまた、内部アルキンとともに使用して、完全置換1,2,3-トリアゾールをもたらすこともできる。
【0231】
ある特定の実施形態は、したがって、内部および末端の非天然のアミノ酸(例えば、N末端、C末端)を含め、アジド側鎖またはアルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。これらのp97ポリペプチドのうちのある特定のものは、アジド側鎖またはアルキン側鎖を含有する非天然のアミノ酸のin vivoまたはin vitro(例えば、無細胞系)での組込みによって形成することができる。例示的なin vivo技法としては、細胞培養技法、例えば、改変されたE.coliを使用するものが挙げられ(Travis and Schultz, The Journal of Biological Chemistry. 285:11039-44, 2010およびDeiters and Schultz, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 15:1521-1524, 2005を参照されたい)、例示的なin vitro技法としては、無細胞系が挙げられる(Bundy, Bioconjug Chem. 21:255-63, 2010を参照されたい)。
【0232】
一部の実施形態では、アジド側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドは、アジド-アルキン付加環化によって、少なくとも1つのアルキン基を含む薬剤(またはリンカー)、例えば、アルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤に、コンジュゲートされる。他の実施形態では、アルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドは、アジド-アルキン付加環化によって、少なくとも1つのアジド基を含む薬剤(またはリンカー)、例えば、アジド側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤に、コンジュゲートされる。したがって、ある特定の実施形態は、1,2,3-トリアゾール結合を介して薬剤に共有結合的に連結されたp97ポリペプチドを含むコンジュゲートを含む。
【0233】
ある特定の実施形態では、アジド側鎖を有する非天然のアミノ酸および/またはアルキン側鎖を有する非天然のアミノ酸は、末端アミノ酸(N末端、C末端)である。ある特定の実施形態では、非天然のアミノ酸のうちの1つまたは複数は、内部である。
【0234】
例えば、ある特定の実施形態は、アルキン基を含む薬剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。一部の実施形態は、アルキン基を含む薬剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。特定の実施形態は、アジド側鎖基を含む薬剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アジド側鎖基を含む薬剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。一部の実施形態は、アルキン基を含む薬剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有する少なくとも1つの内部の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アジド側鎖基を含む薬剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有する少なくとも1つの内部の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。
【0235】
特定の実施形態は、アルキン側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。他の実施形態は、アルキン側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。なおも他の実施形態は、アルキン側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アルキン側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アジド側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。
【0236】
他の実施形態は、アジド側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。なおもさらなる実施形態は、アジド側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アジド側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。なおもさらなる実施形態は、アジド側鎖を有するN末端の非天然のアミノ酸を含むポリペプチド剤にコンジュゲートされた、アルキン側鎖を有するC末端の非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。
【0237】
p97コンジュゲートを産生する方法であって、(a)(i)アジド側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドと少なくとも1つのアルキン基(例えば、アルキン側鎖を有する非天然のアミノ酸)を含む薬剤との間、または(ii)アルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含むp97ポリペプチドと少なくとも1つのアジド基(例えば、アジド側鎖を有する非天然のアミノ酸)を含む薬剤との間で、アジド-アルキン付加環化反応を行うステップと、(b)反応物からp97コンジュゲートを単離し、それによって、p97コンジュゲートを産生するステップとを含む、方法もまた、含まれる。
【0238】
p97コンジュゲートが融合ポリペプチドである場合には、融合ポリペプチドは、概して、標準的な技法を使用して調製することができる。しかしながら、好ましくは、融合ポリペプチドは、本明細書に記載され当該技術分野において公知である発現系において、組換えポリペプチドとして発現される。本発明の融合ポリペプチドは、p97ポリペプチド配列の1つまたは複数のコピーを含有し得、所望される配置で存在する、目的のポリペプチドに基づく薬剤(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)の1つまたは複数のコピーを含有し得る。
【0239】
融合タンパク質に関して、p97ポリペプチド、ポリペプチド剤(例えば、抗体)、および必要に応じてペプチドリンカー成分をコードするDNA配列は、別個にアセンブルされ、次いで、適切な発現ベクターにライゲーションされ得る。1つのポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端は、配列のリーディングフレームが同相となるように、ペプチドリンカーありまたはなしで、他のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端にライゲーションされる。ライゲーションされたDNA配列は、好適な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結される。DNAの発現を担う調節エレメントは、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5’にのみ位置する。同様に、翻訳を停止させるために必要とされる停止コドンおよび転写終結シグナルは、もっともC末端側のポリペプチドをコードするDNA配列の3’にのみ存在する。これにより、両方のポリペプチド成分の生物活性を保持する単一の融合ポリペプチドへの翻訳が可能となる。
【0240】
同様の技法、主として、調節エレメント、例えば、プロモーター、停止コドン、および転写終結シグナルの配置が、非融合コンジュゲートの産生のための非融合タンパク質、例えば、p97ポリペプチドおよびポリペプチド剤(例えば、抗体剤)の組換え産生に適用され得る。
【0241】
本発明のポリヌクレオチドおよび融合ポリヌクレオチドは、p97ポリペプチド配列をコードする核酸の1つもしくは複数のコピーを含有し得、および/またはポリペプチド剤をコードする核酸の1つもしくは複数のコピーを含有し得る。
【0242】
一部の実施形態では、対象となるp97ポリペプチド、ポリペプチド剤、および/またはp97-ポリペプチド融合体をコードする核酸が、宿主細胞に直接的に導入され、細胞が、コードされるポリペプチドの発現を誘導するのに十分な条件下においてインキュベートされる。本開示のポリペプチド配列は、本明細書に提供されるポリペプチドおよび核酸配列と組み合わせて、当業者に周知の標準的な技法を使用して調製され得る。
【0243】
したがって、ある特定の関連する実施形態によると、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは融合ポリヌクレオチドを含む、組換え宿主細胞が提供される。宿主細胞におけるp97ポリペプチド、ポリペプチド剤、またはp97-ポリペプチド剤融合体の発現は、便宜的に、適切な条件下において、ポリヌクレオチドを含有する組換え宿主細胞を培養することによって達成することができる。発現による産生に続いて、ポリペプチドは、任意の好適な技法を使用して単離および/または精製された後、所望されるように使用され得る。
【0244】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムが、周知である。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、酵母、およびバキュロウイルス系が挙げられる。
【0245】
異種ポリペプチドの発現のための当該技術分野において利用可能な哺乳動物細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Hela細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、HEK-293細胞、NSOマウス黒色腫細胞、およびその他多数が挙げられる。一般に好ましい細菌宿主は、f.coliである。原核細胞、例えば、f.coliにおけるポリペプチドの発現は、当該技術分野において十分に確立されている。考察については、例えば、Pluckthun, A. Bio/Technology. 9:545-551 (1991)を参照されたい。培養物中での真核細胞における発現もまた、ポリペプチドの組換え産生のための選択肢として、当業者に利用可能である(Ref, Curr. Opinion Biotech. 4:573-576, 1993およびTrill et al., Curr. Opinion Biotech. 6:553-560, 1995を参照されたい。
【0246】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および他の配列を適宜含む、適切な調節配列を含有する、好適なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドであり得る。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、シーケンシング、DNAの細胞への導入、および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析のための核酸の操作のための多数の公知の技法およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992、またはそれに対する後続のアップデートに詳細に記載されている。
【0247】
「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載されるポリペプチドのうちの1つまたは複数をコードする核酸配列が導入されているか、またはそれを導入することができ、さらに、選択された目的の遺伝子、例えば、本明細書に記載される任意のポリペプチドをコードする遺伝子を発現するか、またはそれを発現することができる、細胞を指して使用される。この用語は、親細胞の子孫を含み、選択された遺伝子が存在する限り、子孫がもともとの親と形態または遺伝子構成が同一であるかどうかは関係ない。宿主細胞は、ある特定の特徴、例えば、スルファターゼモチーフ内のシステインもしくはセリン残基をホルミルグリシン(FGly)残基に変換するためのホルミルグリシン生成酵素(FGE)の発現、またはコンジュゲーションを促進するためにアジド側鎖、アルキン側鎖、もしくは他の所望される側鎖を有する非天然のアミノ酸を含め、非天然のアミノ酸をポリペプチドに組み込むことができる、アミノアシルtRNAシンターゼの発現について、選択することができる。
【0248】
したがって、そのような核酸を宿主細胞に導入するステップを含む方法もまた、企図される。核酸の導入は、任意の利用可能な技法を用い得る。真核細胞については、好適な技法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気穿孔、リポソーム媒介性トランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えば、ワクシニア、もしくは昆虫細胞についてはバキュロウイルスを使用した形質導入を挙げることができる。細菌細胞については、好適な技法は、塩化カルシウム形質転換、電気穿孔、およびバクテリオファージを使用したトランスフェクションを挙げることができる。導入には、核酸からの発現を引き起こすかまたは可能にすること、例えば、遺伝子の発現のための条件下において宿主細胞を培養することが続き得る。一実施形態では、核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれる。組み込みは、標準的な技法に従って、ゲノムでの組換えを促進する配列の包含により促進され得る。
【0249】
本発明はまた、ある特定の実施形態では、特定のポリペプチド、例えば、本明細書に記載されるp97ポリペプチド、ポリペプチド剤、またはp97-ポリペプチド剤融合タンパク質を発現させるために、本明細書に記載される核酸構築物を発現系において使用するステップを含む、方法も提供する。
【0250】
上述のように、ある特定のp97コンジュゲート、例えば、融合タンパク質は、非ペプチドリンカー(例えば、非タンパク質性リンカー)およびペプチドリンカーを含む、1つまたは複数のリンカー基を利用し得る。そのようなリンカーは、安定なリンカーまたは放出可能なリンカーであり得る。
【0251】
例示的な非ペプチドの安定な連結としては、スクシンイミド、プロピオン酸、カルボキシメチレート結合、エーテル、カルバメート、アミド、アミン、カルバミド、イミド、脂肪族C-C結合、チオエーテル結合、チオカルバメート、チオカルバミドなどが挙げられる。一般に、加水分解的に安定な連結は、生理学的条件下において、1日当たり約1~2%未満から5%の加水分解速度を呈する。
【0252】
例示的な非ペプチドの放出可能なリンカーとしては、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、チオエステル、チオールエステル、カーボネート、およびヒドラジン結合が挙げられる。他の例示的な放出可能なリンカーの例は、ベンジル脱離に基づくリンカー、トリアルキルロックに基づくリンカー(またはトリアルキルロックラクトン化に基づく)、ビシンに基づくリンカー、および酸不安定性リンカーであり得る。酸不安定性リンカーの中でもとりわけ、ジスルフィド結合、ヒドラゾン含有リンカー、およびチオプロピオネート含有リンカーであり得る。細胞への内部移行中またはその後に放出可能または切断可能であるリンカーもまた、含まれる。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出の機序には、ジスルフィド結合の還元による切断(例えば、Spitlerへの米国特許第4,489,710号)、光不安定性結合の照射による切断(例えば、Senterらへの米国特許第4,625,014号)、誘導体化されたアミノ酸側鎖の加水分解による切断(例えば、Kohnらへの米国特許第4,638,045号)、血清補体に媒介される加水分解による切断(例えば、Rodwellらへの米国特許第4,671,958号)、および酸に触媒される加水分解(例えば、Blattlerらへの米国特許第4,569,789号)が含まれる。一実施形態では、酸不安定性リンカーが、使用され得る(Cancer Research 52:127-131, 1992および米国特許第5,208,020号)。さらなる詳細は、当業者に公知である。例えば、米国特許第9364567号を参照されたい。
【0253】
ある特定の実施形態では、「水溶性ポリマー」が、p97ポリペプチド配列を目的の薬剤にカップリングするためのリンカーにおいて使用される。「水溶性ポリマー」とは、水に可溶性であり、通常、実質的に非免疫原性であり、通常、約1,000ダルトンより大きい原子分子量(atomic molecular weight)を有する、ポリマーを指す。水溶性ポリマーを介した2つのポリペプチドの結合は、そのような改変が、血清半減期を増加させることによって、例えば、タンパク質分解安定性を増加させることおよび/または腎臓クリアランスを減少させることによって、治療指数を増加させ得るため、望ましい場合がある。加えて、1つまたは複数のポリマーを介した結合により、タンパク質医薬品の免疫原性が低減され得る。
【0254】
水溶性ポリマーの特定の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられる。
【0255】
一部の実施形態では、水溶性ポリマーは、約10,000Daより大きい、約20,000Daより大きく、500,000Daまで、約40,000Daより大きく300,000Daまで、約50,000Daより大きく70,000Daまで、通常は約60,000Daより大きい、有効流体力学分子量を有する。「有効流体力学分子量」とは、水性ベースのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される、ポリマー鎖の水に溶媒和される有効サイズを指す。水溶性ポリマーが、ポリアルキレンオキシド反復単位、例えば、酸化エチレン反復単位を有するポリマー鎖を含有する場合、それぞれの鎖は、約200Da~約80,000Da、または約1,500Da~約42,000Daの原子分子量を有し得、2,000~約20,000Daが、特に目的とされる。直鎖状、分岐状、および末端荷電した水溶性ポリマーもまた、含まれる。
【0256】
アルデヒドタグ付きポリペプチド間のリンカーとして有用なポリマーは、広範な分子量およびポリマーサブユニットを有し得る。これらのサブユニットは、生物学的ポリマー、合成ポリマー、またはこれらの組合せを含み得る。そのような水溶性ポリマーの例としては、硫酸デキストラン、P-アミノ架橋型デキストリン、およびカルボキシメチルデキストリンを含む、デキストランおよびデキストラン誘導体、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよびデキストリン、ならびにデンプンの誘導体およびヒドロイルアクト(hydroylacte)、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、エチレングリコールのプロピレングリコールとのコポリマーを含む、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体が挙げられ、ここで、前記ホモポリマーおよびコポリマーは、一方の末端において、アルキル基、ヘパリンおよびヘパリンの断片、ポリビニルアルコールおよびポリビニルエチルエーテル、ポリビニルピロリドン、アスパルトアミド、ならびにポリオキシエチル化ポリオール、デキストランおよびデキストラン誘導体、デキストリンおよびデキストリン誘導体で置換されているか、または非置換である。具体的に記載される水溶性ポリマーの様々な誘導体もまた含まれることが理解される。
【0257】
水溶性ポリマー、特に、ポリアルキレンオキシドに基づくポリマー、例えば、ポリエチレングリコール「PEG」が、当該技術分野において公知である(Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, J. M. Harris, Ed., Plenum Press, New York, N.Y. (1992)およびPoly(ethylene glycol) Chemistry and Biological Applications, J. M. Harris and S. Zalipsky, Eds., ACS (1997)、ならびに国際特許出願第WO90/13540号、同第WO92/00748号、同第WO92/16555号、同第WO94/04193号、同第WO94/14758号、同第WO94/17039号、同第WO94/18247号、同第WO94/28937号、同第WO95/11924号、同第WO96/00080号、同第WO96/23794号、同第WO98/07713号、同第WO98/41562号、同第WO98/48837号、同第WO99/30727号、同第WO99/32134号、同第WO99/33483号、同第WO99/53951号、同第WO01/26692号、同第WO95/13312号、同第WO96/21469号、同第WO97/03106号、同第WO99/45964号、および米国特許第4,179,337号、同第5,075,046号、同第5,089,261号、同第5,100,992号、同第5,134,192号、同第5,166,309号、同第5,171,264号、同第5,213,891号、同第5,219,564号、同第5,275,838号、同第5,281,698号、同第5,298,643号、同第5,312,808号、同第5,321,095号、同第5,324,844号、同第5,349,001号、同第5,352,756号、同第5,405,877号、同第5,455,027号、同第5,446,090号、同第5,470,829号、同第5,478,805号、同第5,567,422号、同第5,605,976号、同第5,612,460号、同第5,614,549号、同第5,618,528号、同第5,672,662号、同第5,637,749号、同第5,643,575号、同第5,650,388号、同第5,681,567号、同第5,686,110号、同第5,730,990号、同第5,739,208号、同第5,756,593号、同第5,808,096号、同第5,824,778号、同第5,824,784号、同第5,840,900号、同第5,874,500号、同第5,880,131号、同第5,900,461号、同第5,902,588号、同第5,919,442号、同第5,919,455号、同第5,932,462号、同第5,965,119号、同第5,965,566号、同第5,985,263号、同第5,990,237号、同第6,011,042号、同第6,013,283号、同第6,077,939号、同第6,113,906号、同第6,127,355号、同第6,177,087号、同第6,180,095号、同第6,194,580号、同第6,214,966号を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0258】
例示的な目的のポリマーとしては、エチレンオキシド反復単位を含むポリアルキレンオキシドおよびポリアミドアルキレンオキシドを含む、ポリアルキレンオキシド、ポリアミドアルキレンオキシド、またはこれらの誘導体を含むものが挙げられる。さらなる例示的な目的のポリマーとしては、約1,000ダルトンより大きい分子量を有するポリアミドが挙げられる。さらなる例示的な水溶性反復単位は、エチレンオキシドを含む。そのような水溶性反復単位の数は、有意に変動してもよく、そのような単位の通例的な数は、2~500、2~400、2~300、2~200、2~100、およびもっとも通例的には2~50である。
【0259】
ある特定の実施形態では、ペプチドリンカー配列は、p97コンジュゲートの成分を分離するかまたはカップリングさせるために用いることができる。例えば、ポリペプチド-ポリペプチドコンジュゲートに関して、ペプチドリンカーは、それぞれのポリペプチドが、その二次構造および三次構造に折りたたまれるのを確実にするのに十分な距離で、成分を分離することができる。そのようなペプチドリンカー配列は、本明細書に記載され当該技術分野において周知である標準的な技法を使用して、コンジュゲート(例えば、融合タンパク質)に組み込まれ得る。好適なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づいて選択され得る:(1)可撓性の伸長したコンフォメーションを採用することができること、(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造を採用することができないこと、ならびに(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応し得る疎水性残基も荷電残基もないこと。リンカーとして有益に用いることができるアミノ酸配列としては、Maratea et al., Gene 40:39-46, 1985、Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262, 1986、米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示されているものが挙げられる。
【0260】
ある特定の例示的な実施形態では、ペプチドリンカーは、約1~5個のアミノ酸、5~10個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、5~50個のアミノ酸、10~25個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、10~100個のアミノ酸、または任意の介在範囲のアミノ酸である。他の例示的な実施形態では、ペプチドリンカーは、長さが約1個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、またはそれより多くのアミノ酸を含む。特定のリンカーは、約1~200個のアミノ酸、1~150個のアミノ酸、1~100個のアミノ酸、1~90個のアミノ酸、1~80個のアミノ酸、1~70個のアミノ酸、1~60個のアミノ酸、1~50個のアミノ酸、1~40個のアミノ酸、1~30個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~5個のアミノ酸、1~4個のアミノ酸、1~3個のアミノ酸、または約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、またはそれより多くのアミノ酸の全アミノ酸長を有し得る。
【0261】
ペプチドリンカーは、本明細書の他の箇所に記載され当該技術分野において公知である、任意の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、アミノ酸アナログ、および/またはアミノ酸模倣体を利用し得る。リンカーとして有益に用いることができるある特定のアミノ酸配列としては、Maratea et al., Gene 40:39-46, 1985、Murphy et al., PNAS USA. 83:8258-8262, 1986、米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示されているものが挙げられる。特定のペプチドリンカー配列は、Gly、Ser、および/またはAsn残基を含有する。他のほぼ中性のアミノ酸、例えば、ThrおよびAlaもまた、所望される場合、ペプチドリンカー配列において用いることができる。これらおよび関連するアミノ酸の他の組合せは、当業者には明らかであろう。
【0262】
具体的な実施形態では、リンカー配列は、3つのグリシン残基を含む、Gly3リンカー配列を含む。特定の実施形態では、可撓性リンカーは、DNA結合性部位およびペプチド自体の両方をモデル化することができるコンピュータープログラムを使用して(Desjarlais & Berg, PNAS. 90:2256-2260, 1993およびPNAS. 91:11099-11103, 1994)、またはファージディスプレイ法によって、合理的に設計することができる。
【0263】
ペプチドリンカーは、生理学的に安定であり得るか、または放出可能なリンカー、例えば、生理学的に分解可能もしくは酵素的に分解可能なリンカー(例えば、タンパク質分解により切断可能なリンカー)を含み得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の放出可能なリンカーは、コンジュゲートのより短い半減期およびより急速なクリアランスをもたらし得る。これらおよび関連する実施形態を使用して、例えば、血流中におけるp97コンジュゲートの溶解度および血液循環期間を強化し、同時に、血流中に(またはBBBを越えて)薬剤を送達することができるが、リンカーの分解の後に、p97配列が実質的に含まれないようにすることができる。これらの態様は、ポリペプチドまたは他の薬剤が、p97配列に恒久的にコンジュゲートされた場合に、低減された活性を呈する事例において、特に有用である。本明細書に提供されるリンカーを使用することにより、そのような抗体は、コンジュゲートされた形態にある場合に、治療活性を維持することができる。これらおよび他の手段において、p97コンジュゲートの特性は、抗体の経時的な生体活性および循環半減期のバランスを取るように、より効果的に適合させることができる。
【0264】
本発明の特定の実施形態での使用に好適な酵素的に分解可能な連結としては、これらに限定されないが、トロンビン、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、またはサブチリジン(substilisin)など、セリンプロテアーゼによって切断されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0265】
本発明の特定の実施形態での使用に好適な酵素的に分解可能な連結としてはまた、コラゲナーゼ、ストロメリシン、およびゼラチナーゼなど、マトリックスメタロプロテイナーゼによって切断することができるアミノ酸配列が挙げられる。
【0266】
本発明の特定の実施形態での使用に好適な酵素的に分解可能な連結はまた、アンジオテンシン変換酵素によって切断することができるアミノ酸配列が挙げられる。
【0267】
本発明の特定の実施形態での使用に好適な酵素的に分解可能な連結はまた、カテプシンBによって分解することができるアミノ酸配列が挙げられる。
【0268】
ある特定の実施形態では、しかしながら、非ペプチドまたはペプチドリンカーのうちのいずれか1つまたは複数は、必要に応じたものである。例えば、リンカー配列は、第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体障害を防止するために使用することができる非必須N末端および/またはC末端のアミノ酸領域を有する場合、融合タンパク質において必要とされない場合がある。
【0269】
本明細書に記載されるp97ポリペプチドおよびp97ポリペプチドコンジュゲートの機能的特性は、例えば、親和性/結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴、競合的阻害アッセイ)、細胞傷害性アッセイ、細胞生存性アッセイ、細胞増殖もしくは分化アッセイ、in vitroもしくはin vivoモデルを使用したがん細胞および/もしくは腫瘍成長阻害を含む、当業者に公知の様々な方法を使用して、評価することができる。例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートは、血液脳関門を越えた輸送速度を含め、受容体内部移行、in vitroおよびin vivoでの有効性などに対する効果に関して試験され得る。そのようなアッセイは、当業者に公知の十分に確立されたプロトコール(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Greene Publ. Assoc. Inc. & John Wiley & Sons, Inc., NY, NY)、Current Protocols in Immunology (Edited by: John E. Coligan, Ada M. Kruisbeek, David H. Margulies, Ethan M. Shevach, Warren Strober 2001 John Wiley & Sons, NY, NYを参照されたい)、または市販入手可能なキットを使用して、行うことができる。
【0270】
使用方法および医薬組成物
本発明のある特定の実施形態は、本明細書に記載のp97ポリペプチドおよびp97コンジュゲートの組成物を使用する方法に関する。そのような方法の例としては、例えば、レビー小体認知症(レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症)を処置するためのp97コンジュゲートの使用を含む処置方法および診断方法が挙げられる。本発明のp97コンジュゲートを、レビー小体認知症を処置するための他の治療と共に投与することを含む併用療法を使用することができる。
【0271】
したがって、ある特定の実施形態は、本明細書に記載のp97コンジュゲートを含む組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体を処置する方法を含む。本明細書に記載のp97コンジュゲートを含む組成物を投与するステップを含む、被験体の神経系(例えば、中枢神経系組織)に薬剤を送達する方法も含まれる。これらのおよび関連実施形態のいくつかでは、方法は、中枢神経系組織に薬剤を送達する速度を、例えば、単独で薬剤を含む組成物による送達と比べて、上昇させる。
【0272】
一部の事例では、被験体は、CNSの疾患、障害または状態に罹患しており、末梢組織と比べてCNS組織への、治療剤の脳血液関門を越える送達の増加は、例えば、末梢組織への薬剤の曝露に関連する副作用を低減させることにより、処置を向上させることができる。CNSの例示的な疾患、障害および状態には、リソソーム蓄積症、例えばゴーシェ病が含まれる。
【0273】
一部の例では、被験体は、1つまたは複数のリソソーム蓄積症を有するか、または有するリスクがある。したがって、ある特定の方法は、それを必要とする被験体におけるリソソーム蓄積症、必要に応じて、中枢神経系に関連するそれらのリソソーム蓄積症、の処置に関する。例示的なリソソーム蓄積症としては、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、ウォルマン病、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー脂肪肉芽腫症、ファーバー病、フコース蓄積症、ガラクトシアリドーシス1/11型、ゴーシェ病1/11/111型、ゴーシェ病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、クラッベ病、糖原病II、ポンペ病、GM1-ガングリオシドーシス1/11/111型、GM2-ガングリオシドーシスI型、テイ・サックス病、GM2-ガングリオシドーシスII型、サンドホフ病、GM2-ガングリオシドーシス、a-マンノシドーシス1/11型、-マンノシドーシス、異染性白質ジストロフィー、ムコリピドーシスI型、シアリドーシス1/11型、ムコリピドーシス11/1111型-細胞疾患、ムコリピドーシスIIIC型偽性ハーラー・ポリジストロフィー、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型、ハンター症候群、ムコ多糖症IIIA型、サンフィリポ症候群、ムコ多糖症IIIB型、ムコ多糖症IIIC型、ムコ多糖症111D型、ムコ多糖症IVA型、モルキオ症候群、ムコ多糖症IVB型モルキオ症候群、ムコ多糖症VI型、ムコ多糖症VII型、スライ症候群、ムコ多糖症IX型、多発性スルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症、CLNlバッテン病、ニーマン・ピック病NB型、ニーマン・ピック病、ニーマン・ピック病C1型、ニーマン・ピック病C2型、濃化異骨症、シンドラー病1/11型、シンドラー病、およびシアル酸蓄積症が挙げられる。これらのおよび関連実施形態では、p97ポリペプチドを、本明細書に記載されるようなリソソーム蓄積症に関連する1つまたは複数のポリペプチドにコンジュゲートさせることができる。
【0274】
一部の事例では、被験体は、CNSの疾患、障害または状態に罹患しており、末梢組織と比べてCNS組織への治療剤の脳血液関門を越える送達の増加は、例えば、GCase活性を増加もしくは回復させることまたはα-シヌクレインの蓄積を減少させることにより、処置を向上させることができる。CNSの例示的な疾患、障害および状態としては、レビー小体認知症(レビー小体型認知症およびパーキンソン病型認知症およびパーキンソン病)およびシヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症および多系統萎縮症)が挙げられる。
【0275】
一部の事例では、被験体は、1つまたは複数のGBA1遺伝子変異関連疾患を有するか、または有するリスクがある。したがって、ある特定の方法は、GBA1遺伝子変異関連疾患の処置を必要とする被験体におけるGBA1遺伝子変異関連疾患の処置に関し、必要に応じて、それらのGBA1遺伝子変異関連疾患は、中枢神経系に影響を及ぼす。例示的なGBA1遺伝子変異関連疾患としては、ゴーシェ病、ゴーシェ病I/II/III型、パーキンソン病、パーキンソン病型認知症、レビー小体型認知症、レビー小体認知症(複数可)、多系統萎縮症、REM睡眠行動障害が挙げられる。
【0276】
レビー小体病は、アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性認知症であると示されており、すべての神経変性認知症の15~30%の間を構成する。McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: fourth consensus report of the DLB consortium. Neurology. 2017;89(1):88-100;およびWalker Z, Possin KL, Boeve BF, Aarsland D. Lewy body dementias, Lancet. 2015;386(10004):1683-1697を参照されたい。GBA1変異は、剖検時に多くの類似した遺伝的リスク因子、前駆の特性および神経病理学的特性を共有する、PDとレビー小体型認知症の患者の共通のリスク因子である。Mov Disord. 2020 Jan;35(1):5-19. doi: 10.1002/mds.27867. Epub 2019 Oct 29, Pathological Influences on Clinical Heterogeneity in Lewy Body Diseases, Coughlin DG1,2,3, Hurtig HI1, Irwin DJを参照されたい。臨床的には、GBA1遺伝子のヘテロ接合変異を有する患者は、特発性PD患者と区別できない可能性があるが、彼らのほうに、認知機能障害およびより早い発症年齢が多く見られる。Clark LN, Ross BM, Wang Y et al (2007) Mutations in the glucocerebrosidase gene are associated with early-onset Parkinson disease. Neurology 69:1270-1277;および16. Clark LN, Kartsaklis LA, Wolf Gilbert R et al (2009) Association of glucocerebrosidase mutations with dementia with lewy bodies, Arch Neurol 66:578-583を参照されたい。有意な減少が、黒質にヘテロ接合GBA変異があるPD脳の死後脳組織に見出され(58%GCase活性の減少)た一方(wile)、活性の33%減少が孤発性PD脳の黒質に見出された。Gegg ME, Burke D, Heales SJR, Cooper JM, Hardy J, Wood NW & Schapira AHV (2012) Glucocerebrosidase deficiency in substantia nigra of Parkinson disease brains. Ann Neurol 72, 455-463を参照されたい。発症年齢がより早く、疾患重症度がより高い、GBA1保有者については、DLBの発症リスクがPDの発症の約3倍である。Riboldi GM, Di Fonzo AB. GBA, Gaucher Disease, and Parkinson's Disease: From Genetic to Clinic to New Therapeutic Approaches. Cells. 2019;8(4):364. 2019年4月19日発行. doi:10.3390/cells8040364を参照されたい。神経病理学的データは、脳の両方の特異的領域において、ならびにDLBおよびPD患者の末梢血において、GBA1発現の低減を示した。Perez-Roca, L.; Adame-Castillo, C.; Campdelacreu, J.; Ispierto, L.; Vilas, D.; Rene, R.; Alvarez, R., Gascon-Bayarri, J.; Serrano-Munoz, M.A.; Ariza, A.; et al. Glucocerebrosidase mRNA is Diminished in Brain of Lewy Body Diseases and Changes with Disease Progression in Blood. Aging Dis. 2018, 9, 208-219を参照されたい。
【0277】
本明細書に記載の疾患または状態のうちの1つまたは複数に罹患している被験体を同定するための方法は、当技術分野で公知である。
【0278】
被験体の臓器または組織成分をイメージングするための方法であって、(a)p97ポリペプチドが検出可能な実体にコンジュゲートされている、ヒトp97(メラノトランスフェリン)ポリペプチドまたはそのバリアントを含む組成物を、被験体に投与するステップと、(b)被験体、臓器または組織中の検出可能な実体を可視化するステップとを含む方法も含まれる。
【0279】
特定の実施形態では、臓器または組織コンパートメントは、中枢神経系(例えば、脳、脳幹、脊髄)を含む。特定の実施形態では、臓器または組織コンパートメントは、脳またはその一部分、例えば、脳の実質を含む。
【0280】
様々な方法を利用して、被験体、臓器または組織中の検出可能な実体を可視化することができる。例示的な非侵襲的方法としては、X線撮影、例えば、透視および投影放射線写真;X線CTスキャンを利用するのか、陽電子放出断層撮影(PET)を利用するのか、または単一光子放射コンピューター断層撮影(SPECT)を利用するのかを問わず、CTスキャンまたはCATスキャン(コンピューター断層撮影(CT)またはコンピューター体軸断層撮影(CAT));ならびにある特定のタイプの磁気共鳴イメージング(MRI)、特に、造影剤を利用するものが、これらの組合せを含めて、挙げられる。単に例として、PETは、陽電子放出造影剤または放射性同位体、例えば18Fを用いて行うことができ、SPECTは、ガンマ線放射造影剤または放射性同位体を用いて行うことができ、MRIは、造影剤または放射性同位体を用いて行うことができる。これらの例示的な造影剤または放射性同位体のいずれか1つまたは複数を、p97ポリペプチドにコンジュゲートし、または別様に組み込み、イメージングのために被験体に投与することができる。
【0281】
例えば、p97ポリペプチドを、これらの放射性同位体のうちの1つまたは複数で直接標識することができ、あるいはこれらの放射性同位体造影剤のうちの1つもしくは複数を含む分子(例えば、小分子)、または本明細書に記載の任意の他のものに、コンジュゲートすることができる。
【0282】
in vivo使用のために、例えば、ヒト疾患の処置、医用イメージング、または試験のために、本明細書に記載のコンジュゲートは、一般に、投与前に医薬組成物に組み込まれる。医薬組成物は、本明細書に記載のp97ポリペプチドまたはコンジュゲートのうちの1つまたは複数を、生理的に許容される担体または賦形剤と組み合わせて含む。
【0283】
医薬組成物を調製するために、p97ポリペプチドまたはコンジュゲートのうちの1つまたは複数の有効量または所望される量が、特定の投与方法に好適になるように当業者に公知の任意の医薬担体または賦形剤と混合される。医薬担体は、液体、半液体または固体であることがある。非経口、皮内、皮下または局所的適用に使用される溶液または懸濁物は、例えば、滅菌希釈剤(例えば、水)、食塩溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水;PBS)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗微生物剤(例えば、ベンジルアルコールおよびメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム)およびキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝液(例えば、酢酸、クエン酸およびリン酸)を含み得る。静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS);ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物などの増粘および可溶化剤を含有する溶液が挙げられる。
【0284】
純粋な形態でのまたは適切な医薬組成物での、本明細書に記載のポリペプチドおよびコンジュゲートの投与は、同様の有用性に役立つ薬剤についての受け入れられている投与方法のいずれかによって行うことができる。医薬組成物を、ポリペプチドまたはコンジュゲートまたはコンジュゲート含有組成物を適切な生理的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と合わせることにより調製することができ、固体、半固体、液体または気体形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、注射剤、吸入剤、ゲル、マイクロスフェアおよびエアロゾルに製剤化することができる。加えて、他の薬学的に活性な成分(本明細書の他の箇所に記載の他の抗がん剤を含む)ならびに/または適切な賦形剤、例えば、塩、緩衝液および安定剤が、組成物中に存在することもあるが、存在しなくてもよい。
【0285】
投与は、経口、非経口、経鼻、静脈内、皮内、皮下または局所的経路を含む、様々な異なる経路により果たすことができる。好ましい投与方法は、処置または予防される状態の性質に依存する。
【0286】
担体は、例えば、利用される投薬量および濃度でそれに曝露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含み得る。多くの場合、生理的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理的に許容される担体の例としては、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;単糖類、二糖類および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースもしくはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート20(TWEEN(商標))、ポリエチレングリコール(PEG)およびポロクサマー(PLURONICS(商標))などが挙げられる。
【0287】
ある特定の態様では、p97ポリペプチド配列および薬剤は、各々、個別にまたは既存コンジュゲートとして、粒子、例えば、ナノ粒子、ビーズ、脂質製剤、脂質粒子、もしくはリポソーム、例えばイムノリポソームに結合されるか、またはこれらの中に封入される。例えば、特定の実施形態では、p97ポリペプチド配列は、粒子の表面に結合され、目的の薬剤は、粒子の表面に結合される、および/または粒子内に封入される。これらのおよび関連実施形態のうちの一部では、p97ポリペプチドおよび薬剤は、専ら粒子(例えば、ナノ粒子、リポソーム)自体を介して互いに共有結合で連結または動作可能に連結され、いずれの他の方法でも互いに共有結合で連結されない;すなわち、それらは、同じ粒子に個別に結合される。他の実施形態では、p97ポリペプチドおよび薬剤は、先ず、本明細書に記載されるように(例えば、リンカー分子を介して)互いに共有結合でまたは非共有結合でコンジュゲートされ、次いで、粒子(例えば、イムノリポソーム、ナノ粒子)に結合される、またはそのような粒子内に封入される。特定の実施形態では、粒子は、リポソームであり、組成物は、1つまたは複数のp97ポリペプチドと、目的の1つまたは複数の薬剤と、リポソームを形成するための脂質の混合物(例えば、リン脂質、界面活性剤特性を有する混合脂質鎖)とを含む。一部の態様では、p97ポリペプチドおよび薬剤は、脂質/リポソーム混合物と個別に混合され、したがって、リポソーム構造の形成により、共有結合性コンジュゲーションを必要とせずにp97ポリペプチドおよび薬剤が動作可能に連結される。他の態様では、p97ポリペプチドおよび薬剤は、先ず、本明細書に記載されるように互いに共有結合でまたは非共有結合でコンジュゲートされ、次いで、リポソームを形成するための脂質と混合される。p97ポリペプチド、薬剤、またはp97-薬剤コンジュゲートを、例えば、コアセルベーション技術によりもしくは界面重合により、調製されたマイクロカプセル(例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、それぞれ)内に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)内に、またはマクロエマルジョン内に捕捉することができる。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A., Ed., (1980)において開示されている。粒子またはリポソームは、他の治療または診断剤、例えば細胞傷害剤をさらに含み得る。
【0288】
正確な投薬量および処置期間は、処置される疾患の関数であり、正確な投薬量および処置期間を、公知の試験プロトコールを使用して実験により決定することができ、または当技術分野で公知のモデル系で組成物を試験し、そこから外挿することにより決定することができる。対照臨床試験を行うこともできる。投薬量は、緩和される状態の重症度によっても変わり得る。医薬組成物は、一般に、望ましくない副作用を最小限に抑えて治療有用効果を発揮するように、製剤化され、投与される。組成物は、1回で投与されることもあり、または多数のより小さい用量に分割されて時間の間隔を空けて投与されることもある。いずれの特定の被験体についても、具体的な投薬量レジメンは、個々の必要に応じて経時的に調整され得る。
【0289】
したがって、これらのおよび関連医薬組成物を投与する典型的な経路は、限定ではないが、経口、局所的、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣および鼻内経路を含む。本明細書で使用される場合の非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術を含む。本発明のある特定の実施形態による医薬組成物は、それらの中に含有される活性成分が患者への組成物の投与時に体内に吸収されて利用され得ることを可能にするように製剤化される。被験体または患者に投与されることになる組成物は、1つまたは複数の投薬単位の形態をとることができ、例えば、錠剤が単一投薬単位であることもあり、エアロゾル形態での本明細書に記載のコンジュゲートの容器が複数の投薬単位を保持することもある。そのような剤形の実際の調製方法は、当業者には公知である、または分かるであろう;例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)を参照されたい。いずれにせよ、投与される組成物は、目的の疾患または状態の処置のための、本明細書に記載のp97ポリペプチド、薬剤またはコンジュゲートの治療有効量を含有することになる。
【0290】
医薬組成物は、固体の形態であることもあり、または液体の形態であることもある。一実施形態では、組成物が例えば錠剤または粉末形態であるために、担体は粒状である。組成物が、例えば、経口油、注射可能な液体、または例えば吸入投与に有用であるエアロゾルであると、担体は液体であり得る。経口投与が意図される場合、医薬組成物は、好ましくは、固体形態または液体形態のどちらかであり、半固体、半液体、懸濁物およびゲル形態は、本明細書で固体または液体のどちらかと見なされる形態の中に含まれる。
【0291】
経口投与用の固体組成物として、医薬組成物を、粉末、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、チューインガム、オブラートなどに製剤化することができる。そのような固体組成物は、1つまたは複数の不活性希釈剤または可食担体を通常は含有することになる。加えて、次のうちの1つまたは複数が、存在することもある:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトースまたはデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、トウモロコシデンプンなど;滑沢剤、例えば、ステアリン鎖マグネシウムまたはステロテックス;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン;矯味矯臭剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料;および着色剤。医薬組成物が、カプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、その医薬組成物は、上記のタイプの材料に加えて、液体担体、例えば、ポリエチレングリコールまたは油を含有し得る。
【0292】
医薬組成物は、液体形態、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョンまたは懸濁物であり得る。液体は、2つの例として、経口投与用または注射による送達用であり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、保存薬、色素/着色剤および風味増強剤のうちの1つまたは複数を含有する。注射により投与することが意図される組成物の場合、界面活性剤、保存薬、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤および等張剤のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0293】
液体医薬組成物は、それらが溶液であるか、懸濁物であるか、他の同様の形態であるかを問わず、次のアジュバントのうちの1つまたは複数を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、固定油、例えば、溶媒または懸濁媒体として役立ち得る合成モノもしくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸またはリン酸;および張度を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数用量バイアルに封入することができる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0294】
非経口投与または経口投与のどちらかが意図される液体医薬組成物は、好適な投薬量が得られることになるように、本明細書で開示されるようなp97ポリペプチドまたはコンジュゲートの量を含有するべきである。通常は、この量は、組成物中に少なくとも0.01%の目的の薬剤である。経口投与が意図される場合、この量を、組成物の重量の0.1%~約70%の間になるように変動させることができる。ある特定の経口医薬組成物は、約4%~約75%の間の目的の薬剤を含有する。ある特定の実施形態では、本発明による医薬組成物および調製物は、非経口投薬単位が希釈前に0.01~10重量%の間の目的の薬剤を含有するように調製される。
【0295】
医薬組成物は、局所的投与が意図されることもあり、その場合、担体は、溶液、エマルジョン、軟膏またはゲル基剤を適切に含み得る。基剤は、例えば、次のうちの1つまたは複数を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤、例えば水およびアルコール、ならびに乳化剤および安定剤。増粘剤が、局所的投与用の医薬組成物中に存在することもある。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを含み得る。
【0296】
医薬組成物は、直腸内で融解されて薬物を放出することになる形態、例えば座薬の形態での、直腸投与が意図されることもある。直腸投与用の組成物は、好適な無刺激賦形剤として油性基剤を含有し得る。そのような基剤としては、限定ではないが、ラノリン、カカオ脂、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0297】
医薬組成物は、固体または液体投薬単位の物理的形態を改良するための様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は、通常は不活性であり、例えば、糖、セラック、および他の腸溶コーティング剤から選択され得る。あるいは、活性成分は、ゼラチンカプセルに封入されることもある。固体または液体形態の医薬組成物は、コンジュゲートまたは薬剤に結合し、それによって化合物の送達を補助する薬剤を含み得る。この能力で作用し得る好適な薬剤は、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、1つもしくは複数のタンパク質、またはリポソームを含む。
【0298】
医薬組成物は、エアロゾルとして投与することができる投薬単位から本質的になることもある。エアロゾルという用語は、コロイド的性質のものから、加圧パッケージからなる系までの幅がある、様々な系を示すために使用される。送達は、液化もしくは圧縮ガスによることもあり、または活性成分を分配する好適なポンプシステムによることもある。エアロゾルは、活性成分を送達するために単相、二相または三相系で送達されることがある。
【0299】
エアロゾルの送達は、必要な容器、活性化剤、弁、サブコンテナなどを含むことがあり、これらが一緒にキットを形成し得る。当業者は、過度の実験をしなくても、好ましいエアロゾルを決定することができる。
【0300】
本明細書に記載されるようなコンジュゲートを含む組成物を、時限放出製剤またはコーティングなどの、コンジュゲートを身体から急速に排出されないように保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体は、放出制御製剤、例えば、これらに限定されないが、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系、ならびに生体内分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、および当業者に公知の他のものを含む。
【0301】
医薬組成物を、製薬技術分野で周知の方法論により調製することができる。例えば、注射により投与されることが意図される医薬組成物は、本明細書に記載されるようなコンジュゲートと必要に応じて塩、緩衝液および/または安定剤のうちの1つまたは複数とを含む組成物を、溶液を形成するための滅菌蒸留水と合わせることにより、調製することができる。界面活性剤が、均一な溶液または懸濁物の形成を助長するために添加されることもある。界面活性剤は、コンジュゲートと非共有結合的に相互作用して水性送達系へのコンジュゲートの溶解または均一な懸濁を助長する化合物である。
【0302】
組成物を治療有効量で投与することができ、この治療有効量は、利用される具体的な化合物(例えば、コンジュゲート)の活性;化合物の代謝安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、全般的な健康、性別および食事;投与の方法および時間;排泄率;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに治療を受けている被験体を含む、様々な因子に依存して変わることになる。
【0303】
一般に、治療有効一日用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.001mg/kg(すなわち、約0.07mg)~約100mg/kg(すなわち、約7.0g)であり;好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.01mg/kg(すなわち、約0.7mg)~約50mg/kg(すなわち、約3.5g)であり;より好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物について)約1mg/kg(すなわち、約70mg)~約25mg/kg(すなわち、約1.75g)である。
【実施例
【0304】
例証するために以下の実施例を提供するが、以下の実施例は、後続の特許請求の範囲に記載の範囲を限定することを意図したものではない。
【0305】
(実施例1-融合)
p97断片、DSSHAFTLDELR(配列番号2)を、所望の成熟酵素のN末端の最初のアミノ酸と、リンカー配列、例えば(GS)、(GS)または(EAK)を通じて遺伝子融合する。次いで、p97断片-酵素配列を含有するDNAプラスミドを哺乳動物発現ベクターにクローニングし、次いでそれをタンパク質産生のために細胞にトランスフェクトする。次いで、トランスフェクション産生から条件培地を回収し、親和性クロマトグラフィーによって精製する。
【0306】
(実施例2-コンジュゲーション)
p97断片、DSSHAFTLDELR(配列番号2)と所望の酵素を、コンジュゲーション技法、例えば、SoluLink(商標)バイオコンジュゲーション法またはマレイミド-チオール相互作用法を利用してコンジュゲートする(Solulinkバイオコンジュゲーション製品の情報および利用可能性に関しては例えば、https://www.trilinkbiotech.com/solulink/を参照されたい)。SoluLinkバイオコンジュゲーションを、4FB架橋剤を用いたp97断片の改変およびHyNic架橋剤を用いた酵素の改変によって実施する。2つの改変された生体分子を混合することにより、HyNic改変酵素と4FB改変p97断片の反応によって形成される、安定な、UVにより追跡可能な結合の形成がもたらされる。マレイミド-チオールコンジュゲーションを、N-(β-マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)を用いて酵素を改変し、それによりマレイミド含有酵素を生じさせること、ならびにp97断片のC末端にシステインを付加し、その後、p97断片をチオール改変することによって実施する。次いで、マレイミド含有酵素とチオール含有p97断片を反応させ、反応をシステインによってクエンチする。
【0307】
参照による組込み
本明細書で言及する、特許文書(訂正証明書を含む)、特許出願文書、科学論文、政府報告書、ウェブサイトおよび他の参考文献の各々の全開示は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。専門用語に齟齬がある場合、本明細書が優先する。本明細書における参考文献の引用を、そのような参考文献が本発明の先行技術であるということの承認と見なすべきではない。
【0308】
等価物
本発明の趣旨またはその本質的特徴から逸脱することなく他の特定の形態で本発明を具現化することができる。上記の実施形態は、あらゆる点で、本明細書に記載の本発明を制限するものではなく説明するものと見なされたい。本発明の方法および組成物の様々な実施形態では、含むという用語が、方法の列挙されているステップまたは組成物の成分に関して使用されている場合、方法および組成物が、列挙されているステップもしくは成分から本質的になるか、またはそれからなることも企図される。さらに、ステップの順序、またはある特定の動作を行うための順序は、本発明が作動可能であり続ける限り重要ではないことを理解されたい。さらに、2つまたはそれより多くのステップまたは動作を同時に行うことができる。
【0309】
本明細書では、単数形は、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数形も含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。齟齬がある場合、本明細書が優先する。
【0310】
さらに、ある特定の事例では、混合によって、ある特定の成分がさらに反応することまたはさらなる材料に変換されることがあるため、組成物が、混合する前の成分で構成されていると記載されることがあることを認識されたい。
【0311】
当業者は、通例と同程度の実験を使用して、本明細書に記載の特定の手順の非常に多くの均等物を認識することまたは突き止めることができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、以下の特許請求の範囲に包含される。
【0312】
本明細書で使用されるすべてのパーセンテージおよび比率は、別段の指示がない限り、重量によるものである。物体の質量は、多くの場合、日常的な用法でおよび最も一般的な科学的目的のためにその重量として言及されるが、質量は、技術的には、物体の物質量を指し、これに対して重量は、重力に起因して物体が受ける力を指すことが認識される。また、一般的な用法では、物体の「重量」(質量)は、物体をはかり(scale)または天秤(balance)で「重量測定」(質量測定)して決定するものである。
【配列表】
2023527157000001.app
【国際調査報告】