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特表2023-527158公開可能なクラウドベースのレジストリを使用してCOVID-19を処置するためのインテリジェントなワークフロー分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】公開可能なクラウドベースのレジストリを使用してCOVID-19を処置するためのインテリジェントなワークフロー分析
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20230620BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570601
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2021028647
(87)【国際公開番号】W WO2021236288
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175835.6
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100227927
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】モレロ レオン,シルビア エレナ
(72)【発明者】
【氏名】サーリ,エレーヌ ジャンヌ
(72)【発明者】
【氏名】タショール,トゥラップ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)関連の診断、処置の選択、および接触追跡のインテリジェントな特定を容易にするためのデータプラットフォームを構築し、使用するためのシステム、方法、および技術が本明細書において開示される。本開示は、被験者のCOVID-19診断および/またはCOVID-19処置についての適合性を予測する出力を生成するクラウドベースのアプリケーションに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装方法であって、
被験者に関連付けられた被験者レコードの識別子の選択に対応する入力を受信することであって、前記被験者レコードの前記識別子が、インターフェースを使用して選択される、入力を受信することと、
データストアから前記被験者レコードを取得することであって、前記被験者レコードが被験者属性のセットを含む、前記被験者レコードを取得することと、
前記被験者についての配列表現を生成することであって、前記配列表現が、前記被験者属性のセットをドメイン空間内で表現される前記配列表現に変換することによって生成される、配列表現を生成することと、
前記被験者についての前記配列表現を訓練された機械学習モデルに入力して、サイズ削減された出力を生成することであって、前記訓練された機械学習モデルが、
データレジストリに記憶された他の被験者レコードのセットを使用して学習されたパラメータのセットであって、前記他の被験者レコードのセットのうちの各他の被験者レコードが、COVID-19に感染し、その後に処置を使用して処置された別の被験者に関連付けられている、パラメータのセットと、
前記パラメータのセットを使用して配列表現入力をサイズ削減された出力に変換するように構成された1つ以上の関数と
を含む、サイズ削減された出力を生成することと、
前記出力に基づいて、前記被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応すると決定することと、
前記被験者レコードがCOVID-19診断の前記基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応するという指示を出力することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記被験者レコードがCOVID-19診断の前記基準に対応すると決定することに応答して、
前記被験者と人との1つ以上の接触可能性の識別を検出するように構成された接触追跡プロトコルを実行することであって、前記接触追跡プロトコルの前記実行が、
前記被験者についての前記配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することであって、前記他の訓練された機械学習モデルが、被験者の接触可能性位置を示す別の出力を生成するように訓練されている、前記配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することと、
前記他の訓練された機械学習モデルの他の出力に基づいて、前記被験者に関連付けられた接触可能性位置のセットを決定することであって、前記接触可能性位置のセットのうちの各接触可能性位置が、前記被験者が移動した可能性のある位置または位置タイプの予測を示す、接触可能性位置のセットを決定することと、
前記被験者が症候を呈し始めてからの日数を決定することであって、前記被験者が症候を呈し始めてからの前記日数が、前記被験者によって放出されたウイルス量のサイズを示す、症候を呈し始めてからの日数を決定することと、
前記接触可能性位置のセットの不完全なサブセットを選択することであって、前記接触可能性位置のセットから選択された前記不完全なサブセットのサイズが、前記被験者が症候を呈し始めてからの前記日数に基づいて決定される、不完全なサブセットを選択することと、
前記接触可能性位置のセットの前記不完全なサブセットの各接触可能性位置に関連付けられた1人以上の個人に通知する通信を送信させるための通信ワークフローを生成することであって、前記通信が、前記被験者から許可を受信すると送信される、通信ワークフローを生成することと
を含む、接触追跡プロトコルを実行することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記通信に対する1つ以上の応答を受信することと、
前記通信に対する前記1つ以上の応答を使用して、前記人との1つ以上の接触可能性を識別することと、
前記人との1つ以上の接触可能性のうちの各人との接触可能性について、前記人との接触可能性にCOVID-19検査を割り当てるための検査要求ワークフローを生成することと
をさらに含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記被験者レコードがCOVID-19診断の前記基準に対応すると決定することに応答して、
前記他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することであって、前記ランダムフォレストモデルが、前記他の被験者レコードのセットに関連付けられた木構造を定義し、前記木構造が、1つ以上のノードを含み、前記1つ以上のノードのうちの各ノードが、前記他の被験者レコードのセットのサブセットを表す、前記他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することと、
前記ランダムフォレストモデルを使用して前記他の被験者レコードのセットを処理することであって、前記処理が、前記他の被験者レコードのセットを被験者レコードの1つ以上のサブセットにセグメント化するための1つ以上のセグメント化閾値を決定することであって、被験者レコードのうちの各サブセットが前記木構造の葉ノードに対応し、前記葉ノードが被験者転帰を表し、前記1つ以上のセグメント化閾値のうちの各セグメント化閾値が、前記木構造を1つ以上の子ノードに分岐させる、1つ以上のセグメント化閾値を決定することを含む、前記他の被験者レコードのセットを処理することと、
前記被験者レコードの1つ以上のサブセットのうちのサブセットを選択することであって、選択された前記サブセットが、COVID-19から回復した後に退院した被験者に対応する、サブセットを選択することと、
前記選択されたサブセットに関連付けられた処置のセットを決定することであって、前記処置のセットのうちの各処置が、COVID-19から回復した後に退院した前記被験者のうちの少なくとも1人に処方されている、処置のセットを決定することと、
前記被験者を処置するための提案処置として前記処置のセットを前記インターフェース上に提示することと
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記他の被験者レコードのセットを処理することが、
前記選択されたサブセットに関連付けられた1つ以上の特性を決定することであって、前記1つ以上の特性のうちの各特性が、前記1つ以上のセグメント化閾値のうちのセグメント化閾値に基づいて決定され、各特性が、前記他の被験者レコードのセットを前記選択されたサブセットにフィルタリングするのに寄与する、1つ以上の特性を決定することと、
前記被験者レコードと前記選択されたサブセットの前記1つ以上の特性との間の類似性メトリックを決定することと、
前記処置のセットのうちの各提案処置についての信頼スコアを決定することであって、前記信頼スコアが前記類似性メトリックに基づいて決定される、信頼スコアを決定することと
をさらに含む、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記COVID-19診断に関連付けられた処置ワークフローを規定することであって、前記処置ワークフローが前記処置のセットのうちの処置を含み、前記処置が医師または医療専門家によって実行可能である、処置ワークフローを規定することをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記被験者を特徴付ける前記被験者属性のセットが、1つ以上の併存症、前記被験者の喫煙状態、ウイルス性疾患の疑われる診断、ウイルス性疾患の確定診断、診断を確定するために使用される検査技術、または疾患もしくは症状の処置を含む群からの任意の1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
システムであって、
1つ以上のプロセッサと、
命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、前記1つ以上のプロセッサ上で実行されると、前記1つ以上のプロセッサに、
被験者に関連付けられた被験者レコードの識別子の選択に対応する入力を受信することであって、前記被験者レコードの前記識別子が、インターフェースを使用して選択される、入力を受信することと、
データストアから前記被験者レコードを取得することであって、前記被験者レコードが被験者属性のセットを含む、前記被験者レコードを取得することと、
前記被験者についての配列表現を生成することであって、前記配列表現が、前記被験者属性のセットをドメイン空間内で表現される前記配列表現に変換することによって生成される、配列表現を生成することと、
前記被験者についての前記配列表現を訓練された機械学習モデルに入力して、サイズ削減された出力を生成することであって、前記訓練された機械学習モデルが、
データレジストリに記憶された他の被験者レコードのセットを使用して学習されたパラメータのセットであって、前記他の被験者レコードのセットのうちの各他の被験者レコードが、COVID-19に感染し、その後に処置を使用して処置された別の被験者に関連付けられている、パラメータのセットと、
前記パラメータのセットを使用して配列表現入力をサイズ削減された出力に変換するように構成された1つ以上の関数と
を含む、サイズ削減された出力を生成することと、
前記出力に基づいて、前記被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応すると決定することと、
前記被験者レコードがCOVID-19診断の前記基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応するという指示を出力することと
を含む動作を実行させる非一時的コンピュータ可読記憶媒体と
を備える、システム。
【請求項9】
前記動作が、
前記被験者レコードがCOVID-19診断の前記基準に対応すると決定することに応答して、
前記被験者と人との1つ以上の接触可能性の識別を検出するように構成された接触追跡プロトコルを実行することであって、前記接触追跡プロトコルの前記実行が、
前記被験者についての前記配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することであって、前記他の訓練された機械学習モデルが、被験者の接触可能性位置を示す別の出力を生成するように訓練されている、前記配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することと、
前記他の訓練された機械学習モデルの他の出力に基づいて、前記被験者に関連付けられた接触可能性位置のセットを決定することであって、前記接触可能性位置のセットのうちの各接触可能性位置が、前記被験者が移動した可能性のある位置または位置タイプの予測を示す、接触可能性位置のセットを決定することと、
前記被験者が症候を呈し始めてからの日数を決定することであって、前記被験者が症候を呈し始めてからの前記日数が、前記被験者によって放出されたウイルス量のサイズを示す、症候を呈し始めてからの日数を決定することと、
前記接触可能性位置のセットの不完全なサブセットを選択することであって、前記接触可能性位置のセットから選択された前記不完全なサブセットのサイズが、前記被験者が症候を呈し始めてからの前記日数に基づいて決定される、不完全なサブセットを選択することと、
前記接触可能性位置のセットの前記不完全なサブセットの各接触可能性位置に関連付けられた1人以上の個人に通知する通信を送信させるための通信ワークフローを生成することであって、前記通信が、前記被験者から許可を受信すると送信される、通信ワークフローを生成することと
を含む、接触追跡プロトコルを実行すること
をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記動作が、
前記通信に対する1つ以上の応答を受信することと、
前記通信に対する前記1つ以上の応答を使用して、前記人との1つ以上の接触可能性を識別することと、
前記人との1つ以上の接触可能性のうちの各人との接触可能性について、前記人との接触可能性にCOVID-19検査を割り当てるための検査要求ワークフローを生成することと
をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記動作が、
前記被験者レコードがCOVID-19診断の前記基準に対応すると決定することに応答して、
前記他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することであって、前記ランダムフォレストモデルが、前記他の被験者レコードのセットに関連付けられた木構造を定義し、前記木構造が、1つ以上のノードを含み、前記1つ以上のノードのうちの各ノードが、前記他の被験者レコードのセットのサブセットを表す、前記他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することと、
前記ランダムフォレストモデルを使用して前記他の被験者レコードのセットを処理することであって、前記処理が、前記他の被験者レコードのセットを被験者レコードの1つ以上のサブセットにセグメント化するための1つ以上のセグメント化閾値を決定することであって、被験者レコードのうちの各サブセットが前記木構造の葉ノードに対応し、前記葉ノードが被験者転帰を表し、前記1つ以上のセグメント化閾値のうちの各セグメント化閾値が、前記木構造を1つ以上の子ノードに分岐させる、1つ以上のセグメント化閾値を決定することを含む、前記他の被験者レコードのセットを処理することと、
前記被験者レコードの1つ以上のサブセットのうちのサブセットを選択することであって、選択された前記サブセットが、COVID-19から回復した後に退院した被験者に対応する、サブセットを選択することと、
前記選択されたサブセットに関連付けられた処置のセットを決定することであって、前記処置のセットのうちの各処置が、COVID-19から回復した後に退院した前記被験者のうちの少なくとも1人に処方されている、処置のセットを決定することと、
前記被験者を処置するための提案処置として前記処置のセットを前記インターフェース上に提示することと
をさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記他の被験者レコードのセットを処理することが、
前記選択されたサブセットに関連付けられた1つ以上の特性を決定することであって、前記1つ以上の特性のうちの各特性が、前記1つ以上のセグメント化閾値のうちのセグメント化閾値に基づいて決定され、各特性が、前記他の被験者レコードのセットを前記選択されたサブセットにフィルタリングするのに寄与する、1つ以上の特性を決定することと、
前記被験者レコードと前記選択されたサブセットの前記1つ以上の特性との間の類似性メトリックを決定することと、
前記処置のセットのうちの各提案処置についての信頼スコアを決定することであって、前記信頼スコアが前記類似性メトリックに基づいて決定される、信頼スコアを決定することと
をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記動作が、
前記COVID-19診断に関連付けられた処置ワークフローを規定することであって、前記処置ワークフローが前記処置のセットのうちの処置を含み、前記処置が医師または医療専門家によって実行可能である、処置ワークフローを規定することをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記被験者を特徴付ける前記被験者属性のセットが、1つ以上の併存症、前記被験者の喫煙状態、ウイルス性疾患の疑われる診断、ウイルス性疾患の確定診断、診断を確定するために使用される検査技術、または疾患もしくは症状の処置を含む群からの任意の1つ以上を含む、請求項8~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記被験者が、COVID-19の疑いのある症例として医療施設に入院した、請求項8~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月20日に出願された欧州特許出願第20175835.6号の出願日の利益を主張し、その開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本明細書中に開示される方法およびシステムは、一般に、COVID-19に関連する診断および処置のインテリジェントな識別を容易にするためのシステムおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、被験者のCOVID-19診断および/またはCOVID-19処置についての適合性を予測する出力を生成するクラウドベースのアプリケーションに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
伝染性感染症は、人間の健康にとって生命を脅かす害を引き起こす可能性がある。感染性疾患は、細胞病原体(細菌、寄生虫および真菌)または無細胞病原体(ウイルス、ウイロイドおよびプリオン)であり得る病原体によって引き起こされる。ウイルス性疾患の場合、急性または慢性の呼吸障害が一般的である。例えば、インフルエンザウイルス(「流感」)は、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)において十分に文書化されたRNAウイルスである。インフルエンザウイルスが進化し続ける間、典型的には、進化は、ウイルスの系統樹の既知の系統で起こる。インフルエンザウイルスのウイルス系統が知られているという事実は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患の診断および処置に役立つ。したがって、インフルエンザおよびインフルエンザワクチンなどの処置の効果は、十分に研究されており、研究され続けている。
【0004】
最近、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」(SARS-CoV-2)として知られる新規なウイルスが発見された。SARS-CoV-2ウイルスは、コロナウイルス疾患19(COVID-19)として知られる疾患を引き起こす。SARS-CoV-2は、鳥類および哺乳動物を含む広範囲の宿主種に見られる遺伝的に多様なウイルスのクラスに属する。コロナウイルス(CoV)は、動物および人間において腸および呼吸器感染症を引き起こす。SARS-CoV-2は、人間に感染することが知られているコロナウイルス科の第7のメンバーである。蝙蝠は、多くのSARS様CoVの天然担体であると考えられている。
【0005】
科学界は、SARS-CoV-2ウイルス感染メカニズムの詳細を理解しようと競争している。SARS-CoV-2ウイルスは、一般に、ヒト細胞の表面上の血管増感酵素2(ACE2)受容体に結合することによって細胞に感染する。ウイルスが細胞に入った後、ウイルスは、小胞と融合し、ウイルスRNAを放出する。ウイルスRNAは、新たなウイルス粒子を組み立てるために使用されるタンパク質に翻訳され、次いで感染細胞によって体内に放出される。
【0006】
査読を迂回した後に現在頻繁に発表されている研究の急速な発表を考えると、COVID-19の診断および処置は、重要な課題である。COVID-19に関する情報のランドスケープは、新たな情報がほぼ毎日明らかになるにつれて急速に発展する。さらに、COVID-19を診断することは、正確なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を提供するために、他のコロナウイルスとは異なるSARS-CoV-2ウイルスの特定の遺伝子の知識を必要とする。そうでなければ、検査は、関連するコロナウイルスから遺伝子を増幅し、偽陽性結果を生じることがある。血清学検査の開発は、ウイルスに感染した被験者から抗体を単離することを必要とし、これは、以前に感染した被験者から試料を得て、SARS-CoV-2ウイルス抗原に特異的に結合する抗体を識別することを必要とする。
【0007】
さらに、コロナウイルスは、RNAウイルスであるため、COVID-19の有効な処置法を決定することは困難である。RNAウイルスが宿主外にある場合、それらは休眠状態であるが、数時間から数日間感染性のままである。ウイルスが細胞に感染した後、それは数時間でそれ自体の10,000コピーを作ることができ、血液の小さじあたり数億個のウイルス粒子をもたらす。RNAウイルスは、宿主自身のタンパク質を使用して複製するため、ウイルスを攻撃する多くの薬物も宿主細胞に害を及ぼす。したがって、抗ウイルス薬は、典型的には非常に特異的であり、独特のウイルスタンパク質のみを標的としなければならない。したがって、活性薬物は、各ウイルスに特異的であり、一般に他のウイルスでは効果的ではない。
【0008】
ウイルスはまた、比較的迅速に変異して宿主免疫系による検出を回避し、宿主の新たな種に感染することができる。しかしながら、ウイルスは、遺伝物質をコピーするときにいくつかの誤りを訂正することを可能にする校正タンパク質を有する。宿主中で複製しながら変異する能力は、いくつかのウイルスが抗ウイルス薬に対して耐性になり得ることを意味する。これは、活性薬物の有効寿命を短くし、HIVと同様に、ウイルスがカクテル中の全ての薬物に対して耐性でないことを確実にするために複数の薬物「カクテル」を必要とし得る。
【0009】
どの患者が陽性COVID-19診断を受ける可能性が高いか、または入院もしくは集中的な症例を必要とする可能性が高いかを推定する臨床予測モデルは、SCHWABら.:「predCOVID-19:A Systematic Study of Clinical Predictive Models for Coronavirus Disease 2019」、ARXIV.ORG、2020年5月17日、XP081675049によって記載されている。これらのモデルは、日常的に収集される臨床データに基づく機械学習を使用する。様々な処置が特定の被験者に適しているかどうかの評価は記載されていないようである。
【0010】
COVID-19を迅速に診断するために胸部CT所見を臨床症候、曝露履歴、および実験室検査と統合するための人工知能アルゴリズムの使用は、MEIら:「Artificial intelligence-enabled rapid diagnosis of patients with COVID-19」、NATURE MEDICINE、vol.26、no.8、2020年5月19日、ページ1224-1228に記載されている。様々な処置が特定の被験者に適しているかどうかの評価は記載されていないようである。
【0011】
機械学習は、接触追跡のコンテキストにも適用されている。ALSDURFら:「COVI White Paper」、ARXIV.ORG、2020年5月8日、XP081671734は、機械学習を利用して人が感染している可能性に関する手がかりの統合を最適化および自動化し、結果として得られた段階的なリスクレベルを使用して、適切な推奨およびユーザが独自のリスク評価を更新することができるようにユーザに送信される信号を推進する、COVID-19パブリックピアツーピア接触追跡およびリスク認識モバイルアプリケーションを記載している。しかしながら、そのようなモバイルアプリケーションは、ユーザがSARS-CoV-2ウイルスに曝露した可能性があるかどうかを評価することのみを可能にし、COVID-19の特定の診断または処置を提供しない。
【0012】
より一般的には、デジタル個人向け医療システムも知られている。例えば、国際公開第2017/106770号パンフレットは、個別化された治療的介入を更新するために考慮される処置に対する患者の反応からのフィードバックを用いて、デジタルデータを使用して患者の症候を評価または診断するシステムを提供する。認知、発達、神経変性、および行動障害への具体的な適用が記載されているが、COVID-19のようなウイルス性疾患または呼吸器症状の議論は開示されていない。
【0013】
COVID-19を診断および処置することの課題に照らして、またデジタルデータを使用して診断またはウイルス曝露を個人化しようとする試みにもかかわらず、COVID-19関連の診断および処置の知的識別を容易にするためにCOVID-19被験者からデータを収集し、収集したデータを処理するための改善された方法およびシステムが望まれる。特に、COVID-19に関連するビッグデータの迅速な収集および処理をサポートするシステムは、医療専門家が、疾患が様々な人々にどのように影響を及ぼすか、および特定の状況においてどの処置が有効である可能性が高いかをより迅速に理解することを可能にすることができる。
【発明の概要】
【0014】
概要
いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法が提供される。コンピュータ実装方法は、被験者に関連付けられた被験者レコードの識別子の選択に対応する入力を受信することを含むことができる。被験者レコードの識別子は、インターフェースを使用して選択されることができる。コンピュータ実装方法はまた、データストアから被験者レコードを取得することを含むことができる。被験者レコードは、被験者象属性のセットを含むことができる。コンピュータ実装方法はまた、被験者についての配列表現を生成することと、被験者についての配列表現を訓練された機械学習モデルに入力して、サイズ削減された出力などの出力を生成することと、を含むことができる。例えば、配列表現は、被験者属性のセットをドメイン空間内で表現される配列表現に変換することによって生成されることができる。訓練された機械学習モデルは、データレジストリに記憶された他の被験者レコードのセットを使用して学習されたパラメータのセットを含むことができる。他の被験者レコードのセットのうちの他の各被験者レコードは、COVID-19に感染し、その後処置を使用して処置された別の被験者に関連付けられることができる。コンピュータ実装方法はまた、パラメータのセットを使用して配列表現入力をサイズ削減された出力に変換するように構成された1つ以上の機能を含むことができる。コンピュータ実装方法はまた、出力に基づいて、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応すると決定することを含むことができる。コンピュータ実装方法は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応するという指示を出力することを含むことができる。
【0015】
実装は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。コンピュータ実装方法は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して、被験者と人との1つ以上の接触可能性の識別を検出するように構成された接触追跡プロトコルを実行することをさらに含むことができる。接触追跡プロトコルの実行は、被験者についての配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することを含むことができる。他の訓練された機械学習モデルは、被験者の接触可能性位置を示す別の出力を生成するように訓練されていてもよい。コンピュータ実装方法はまた、他の訓練された機械学習モデルの他の出力に基づいて、被験者に関連付けられた接触可能性位置のセットを決定することを含むことができる。接触可能性位置のセットのうちの各接触可能性位置は、被験者が移動した可能性のある位置または位置タイプの予測を示す。コンピュータ実装方法はまた、被験者が症候を呈し始めてからの日数を決定することを含むことができる。被験者が症候を呈し始めてからの日数は、被験者によって放出されたウイルス量のサイズを示すことができる。
【0016】
コンピュータ実装方法はまた、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットを選択することを含むことができる。接触可能性位置のセットから選択された不完全なサブセットのサイズは、被験者が症候を呈し始めてからの日数に基づいて決定されることができる。コンピュータ実装方法はまた、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットの各接触可能性位置に関連付けられた1人以上の個人に通知する通信を送信させるための通信ワークフローを生成することを含むことができる。通信は、被験者から許可を受信したときに送信されることができる。通信に対する1つ以上の応答が受信されることができる。コンピュータ実装方法はまた、通信に対する1つ以上の応答を使用して人との1つ以上の接触可能性を識別することを含むことができる。コンピュータ実装方法はまた、人との1つ以上の接触可能性のうちの各人との接触可能性について、人との接触可能性にCOVID-19検査を割り当てるための検査要求ワークフローを生成することを含むことができる。コンピュータ実装方法は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して、他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することをさらに含むことができる。ランダムフォレストモデルは、他の被験者レコードのセットに関連付けられた木構造を定義することができる。木構造は、1つ以上のノードを含むことができ、1つ以上のノードの各ノードは、他の被験者レコードのセットのサブセットを表すことができる。
【0017】
コンピュータ実装方法はまた、ランダムフォレストモデルを使用して他の被験者レコードのセットを処理することを含むことができる。処理は、他の被験者レコードのセットを被験者レコードの1つ以上のサブセットにセグメント化するための1つ以上のセグメント化閾値を決定することを含むことができる。被験者レコードの各サブセットは、木構造の葉ノードに対応することができる。葉ノードは、被験者転帰を表す。1つ以上のセグメント化閾値のうちの各セグメント化閾値は、木構造を1つ以上の子ノードに分岐させることができる。コンピュータ実装方法はまた、被験者レコードの1つ以上のサブセットのうちのサブセットを選択することを含むことができる。選択されたサブセットは、COVID-19から回復した後に退院した被験者に対応することができる。コンピュータ実装方法はまた、選択されたサブセットに関連付けられた処置のセットを決定することを含むことができる。処置のセットのうちの各処置は、COVID-19から回復した後に退院した被験者のうちの少なくとも1人に処方されていてもよい。コンピュータ実装方法はまた、被験者を処置するための提案処置として処置のセットをインターフェース上に提示することを含むことができる。他の被験者レコードのセットを処理することは、選択されたサブセットに関連付けられた1つ以上の特性を決定することをさらに含むことができる。1つ以上の特性のうちの各特性は、1つ以上のセグメント化閾値のセグメント化閾値に基づいて決定されることができる。各特性は、他の被験者レコードのセットを選択されたサブセットにフィルタリングすることに寄与することができる。コンピュータ実装方法はまた、被験者レコードと選択されたサブセットの1つ以上の特性との間の類似性メトリックを決定することを含むことができる。コンピュータ実装方法はまた、処置のセットのうちの各提案処置についての信頼スコアを決定することを含むことができる。信頼スコアは、類似性メトリックに基づいて決定されることができる。被験者を特徴付ける被験者属性のセットは、1つ以上の併存症、被験者の喫煙状態、ウイルス性疾患の疑われる診断、ウイルス性疾患の確定診断、診断を確定するために使用される検査技術、または疾患もしくは症状の処置を含む群からの任意の1つ以上を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つ以上のデータプロセッサと、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、1つ以上のデータプロセッサ上で実行されると、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、を含む、システムが提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、非一時的機械可読記憶媒体に有形に具現化され、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、1つ以上のプロセッサ上で実行されると、1つ以上のプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部および/または1つ以上のプロセスの一部または全部を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部および/または1つ以上のプロセスの一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的機械可読記憶媒体において有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0021】
採用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示され、説明された特徴またはその一部の任意の均等物を除外する意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更および変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示は、以下の添付の図面と併せて説明される:
【0023】
図1】本開示のいくつかの態様にかかる、クラウドベースのアプリケーションがホストされるネットワーク環境を示している。
【0024】
図2】本開示のいくつかの態様にかかる、要約された被験者レコードを、被験者の処置に関する支援を要求する相談ブロードキャストに関連してユーザデバイスに配信するためにクラウドベースのアプリケーションによって実行されるプロセスの例を示すフローチャートである。
【0025】
図3】本開示のいくつかの態様にかかる、処置計画定義のユーザ統合(例えば、決定木または処置ワークフロー)を監視し、監視の結果に基づいて処置計画定義を自動的に更新するプロセスの例を示すフローチャートである。
【0026】
図4】本開示のいくつかの態様にかかる、被験者についての処置を推奨するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【0027】
図5】本開示のいくつかの態様にかかる、データプライバシー規則に従うようにクエリ結果を難読化するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【0028】
図6】本開示のいくつかの態様にかかる、チャットボットなどのボットスクリプトを使用してユーザと通信するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【0029】
図7】本開示のいくつかの態様にかかる、COVID-19を有する被験者を診断するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【0030】
図8】本開示のいくつかの態様にかかる、COVID-19と診断された被験者との接触を追跡するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【0031】
図9】本開示のいくつかの態様にかかる、COVID-19を処置するための提案処置のセットおよび被験者を処置するための対応する信頼スコアを決定するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【0032】
添付の図面において、同様の構成要素および/または特徴は、同じ参照ラベルを有することができる。さらに、同じタイプの様々な構成要素は、参照ラベルの後に同様の構成要素を区別するダッシュおよび第2のラベルを続けることによって区別されることができる。本明細書において第1の参照ラベルのみが使用される場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する同様の構成要素のいずれかに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
I.概要
COVID-19は、不確実性を特徴とする。専門家は、COVID-19を引き起こす病原体を検出しているが(すなわち、SARS-CoV-2)、SARS-CoV-2の他の多くの特徴は不明であり、依然として研究されている。例えば、可能性のあるCOVID-19処置のリストは頻繁に変化しており、所与の被験者についての「最適な」処置を選択することは困難である。COVID-19の処置をさらに複雑にするSARS-CoV-2は、速いペースで劇的に進化することができる。SARS-CoV-2の系統樹は、少なくとも3つ(さらなる研究が行われるにつれて潜在的により多く)のゲノムを有するようである。特定のウイルス変異の進化的選択は、系統樹を複雑にする2つの異なるヒト宿主において僅かに異なるように起こることができる。複雑な系統樹は、COVID-19についての検査、COVID-19の症候の検出、およびCOVID-19の処置の複雑さを増大させる。さらに、SARS-CoV-2は、宿主細胞のタンパク質を使用して複製する。SARS-CoV-2を攻撃するために抗ウイルス薬物療法が提供される場合、抗ウイルス薬はまた、宿主細胞にも害を及ぼす。したがって、COVID-19の固有のウイルスタンパク質のみを標的とする特定の標的化された方法でSARS-CoV-2被験者に適切な処置を処方することは、困難で危険な作業である。
【0034】
さらに、COVID-19の発現は、変動性を特徴とする。多くの場合、SARS-CoV-2は、被験者の肺および気道に害を及ぼす。場合によっては、SARS-CoV-2は、神経系や心臓などの他の器官にも害を及ぼす。したがって、COVID-19症候の知識ベースは、新たな研究が発表されるにつれて急速に変化することができる。例えば、専門家は、子供はCOVID-19の症候が軽い傾向があると最初に判断した。しかしながら、新たな研究が発表されたため、専門家は、ごく最近になって、SARS-CoV-2が川崎病として知られる免疫系の過剰反応を引き起こす可能性があると判断した。
【0035】
SARS-CoV-2の伝達性も不明なままである。RNAウイルスとして、SARS-CoV-2は、宿主細胞外で休眠しているが、数時間から数日間感染性のままであることがある。宿主細胞内に入ると、SARS-CoV-2は、数時間でそれ自体の10,000コピーを作成することができ、その結果、血液の小さじあたり数億のウイルス詳細をもたらすことができる。SARS-CoV-2はまた、感染した被験者が吐き出した液滴の吸入によって他の被験者に感染することができる。例えば、呼吸および発話は、被験者に液滴を吐き出させる可能性があるが、吐き出された液滴においてSARS-CoV-2が感染性である程度が依然として評価されている。
【0036】
研究機関または医療機関によって公表された研究も、不確実性を引き起こす可能性がある。例えば、最初に、フランスからの研究は、ヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)がCOVID-19を効果的に処置することができることを示した。しかしながら、少し後で、専門家は、研究に欠陥があると判断した。さらに、研究機関が研究を発表する速度は、多くの研究機関が研究の査読を回避することを奨励している。したがって、研究からの知見に基づいて決定されるCOVID-19の特定の処置は、COVID-19被験者への処方に適していない可能性がある。
【0037】
COVID-19被験者を診断および処置する複雑さに照らして、本明細書に記載の技術は、介護提供者(例えば、医師)が、COVID-19の疑いのある診断または確定診断を有する被験者に関する情報を収集し、訓練された機械学習モデルまたは人工知能モデルを使用してCOVID-19処置の知的選択を容易にすることを可能にするクラウドベースのアプリケーションに関する。訓練された機械学習モデルまたは人工知能モデルは、(例えば)COVID-19データと一致する(例えば、したがってCOVID-19診断を示唆する)、および/または特定の処置が他の利用可能な処置(例えば、予測される生存、予測される無増悪生存および/または一部もしくは全部の症候からの安定した回復までの予測される時間に基づいて評価される場合)と比較して被験者の処置においてより効果的とすることができる予測に対応する、被験者のレコード(例えば、電子健康レコード)内の情報および/またはパターンを検出することができる。予測されたまたは推奨された処置は、医療提供者がCOVID-19被験者を処置するのを支援するのに役立つ。
【0038】
訓練された人工知能(AI)モデルを実行して新たなデータを頻繁に処理する動的クラウドベースのプラットフォームを構築することは、COVID-19に対処する上で非常に価値があり得る。頻繁におよび/または繰り返し最近のデータを監視して、絶えず変化するCOVID-19のランドスケープから新たな診断および処置情報を検出することができるAIモデルを訓練することは、医薬品を実質的に進歩させることができる。例えば、AIモデルは、COVID-19診断、被験者の特徴と特定の処置の処方との間の新たな関連付け、および/またはCOVID-19被験者が1つ以上の特定の処置にどのように反応するかに関する新たな予測子に関連する新たな症候プロファイルを検出することができる。クラウドベースのプラットフォームは、適用可能なデータプライバシー規則および基準に準拠する方法で、多くの場所(例えば、異なる国)における多くの機関からのデータをさらに集約することができる。この集約は、AIモデルを訓練するために使用されることができるデータセットのサイズおよび変動性を増加させることができ、モデルの精度を高めることができる。したがって、訓練されたAIモデルを使用するクラウドベースのアプリケーションを使用して、特定の被験者に対応するデータを処理し、(例えば)被験者がCOVID-19を有しているかどうか、被験者の予後、および/または被験者が1つ以上の異なる処置のそれぞれにどのように反応するかを予測することができる。処置に対する反応性を予測することは、例えば、COVID-19研究の複雑でペースの速い環境において重要な技術的利点となり得る。
【0039】
例示的な例として、発熱および息切れなどのCOVID-19関連症候を最近経験し始めた被験者は、医療施設に入院することができる。被験者を処置する医師は、被験者がCOVID-19を有していると疑い、したがって医師は、被験者の症候および人口統計情報をクラウドベースのアプリケーションに入力することができる。症候および人口統計情報は、データレジストリに記憶される被験者のレコードに被験者の属性として記憶されることができる。被験者レコードは、自動的に検出されたデータ点(例えば、データエントリに関連付けられた日付および物理的位置であって、その後、被験者が症候を経験していた日付および位置に対応すると推定されることができる日付および物理的位置)を含むようにさらに更新されることができる。したがって、利点として、クラウドベースのアプリケーションは、医師が被験者から組織的に情報を収集することを可能にする。
【0040】
例示的な例を続けると、クラウドベースのアプリケーションはまた、訓練された機械学習または人工知能モデルに被験者のレコードを入力して、COVID-19を有する被験者を診断するか否か、および診断された場合、被験者の適切な処置計画を処置医が決定するのを支援する出力を生成することができる。例えば、クラウドベースのアプリケーションは、症候、人口統計情報、および被験者に関連付けられた位置に基づいて、被験者がCOVID-19を有する確率が94%であると予測する結果を返すことができる。
【0041】
人工知能モデルがさらに使用されて、特定の被験者の処置を識別し、および/または1つ以上の処置のそれぞれが特定の被験者の処置においてどの程度有効であるかを予測することができる。例えば、クラウドベースのアプリケーションは、症候に関連付けられた被験者についての最も高い予測無増悪生存期間(処置開始後4週間)に関連付けられた処置としてActemra(登録商標)(トシリズマブ)を識別する結果を返すことができる。
【0042】
人工知能モデルは、複数の結果および/またはエンドポイントのうちの1つ以上を評価して、反応性被験者が所与の処置に対してどの程度反応性であったかを評価するように、および/または所与の処置の有効性を評価するように構成されることができ、または学習することができる。評価されることができる結果は、(例えば)被験者が退院したかどうかおよび/または退院したとき、被験者が死亡したかどうか(例えば、COVID-19に起因して、または何らかの理由で)、COVID-19症候が悪化したかどうかおよび/または程度、被験者のCOVID-19症候重症度分類が進行したかどうかおよび/または程度、ならびに/あるいは被験者のウイルス量が変化したかどうかおよび/または程度を含むことができる。結果は、1つ以上の特定の時点(例えば、処置開始の2週間後または4週間後)に関しておよび/またはそれほど厳密でなく(例えば、単に各結果を対応する時点と関連付ける)追跡されることができる。有効な処置は、(例えば)その後の退院、生存、症候の減少もしくは軽減、症候の重症度分類の改善および/またはウイルス量の減少もしくは除去に関連付けられた処置であると定義または学習されることができる。これらのエンドポイントは、過去の処置反応性を特徴付けるため、および/または他の被験者の処置反応性を予測するために使用されることができる結果のタイプを例示するものであるが、人工知能モデルは、他の有益な結果がこの点に関して有益であることを学習することができる。
【0043】
場合によっては、人工知能モデルは、被験者レコードデータを処置の効果に関する予測に変換するために使用されることができるパラメータを学習するように(例えば、管理された方法で)訓練される。人工知能モデルは、ニューラルネットワーク(例えば、フィードフォワードネットワーク、リカレントネットワークおよび/またはディープネットワーク)、回帰モデル、またはサポートベクターマシンなどの、処置効果を予測するように訓練された教師ありモデルを含むことができる。人工知能モデルは、クラスタリングモデル(例えば、主成分分析モデル)または最近傍モデルなどの、入力データセットの類似性を識別するように訓練された教師なしモデルを含むことができる。
【0044】
例えば、診断および/または処置予測は、被験者に対する1人以上の類似の被験者を識別し、類似の被験者に関連付けられた処置処方および処置有効性データを評価することによって生成されることができる。類似の被験者は、最近傍技術を使用して被験者の集団に関連付けられたレコードデータを処理することによって識別されることができる。クラウドベースのアプリケーションは、類似の被験者のレコードを評価して、(例えば)類似の被験者に提供された一連のCOVID-19処置または処置のクラスを識別することができ、潜在的には処置後に監視された被験者の健康属性を追跡することによって識別することができる。
【0045】
いくつかの例では、クラウドベースのアプリケーションは、特定の処置に対する被験者の反応性を予測する出力を生成することができる。インターフェースは、予測された反応性を提示することができ、ユーザが類似の被験者の属性を関心のある被験者と比較し、および/または処置歴および/または反応を示すより完全なデータを閲覧することができるように、(例えば、削減されてもよく、および/または部分的に不明瞭であってもよい)類似の被験者のレコードの一部または全部を潜在的に提示することができる。したがって、インターフェースは、(例えば、被験者が提案処置に反応すると予測される程度を表すスコアに基づいて)介護提供者がCOVID-19診断および/またはCOVID-19処置に関する情報に基づいた決定を行うのを容易にすることができる。クラウドベースのアプリケーションはまた、介護提供者が接触追跡を支援するアクションを実行するように構成されることもできる。例えば、クラウドベースのアプリケーションが、特定の属性に基づいて被験者を分類またはセグメント化する場合、被験者が訪問した可能性が高い領域の予測を生成することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、医療センターまたは研究施設などのエンティティは、データを記憶するオンプレミスまたはリモートネットワークを動作させることができる。データは、医師のメモの電子コピーおよび/またはオープンエンドの質問に対する応答などの非構造化データを含むことができる。非構造化データは、非構造化データの一部を構造化データレコードの固定部分(例えば、データフィールド)にマッピングすることによって、データレジストリに取り込まれることができる。構造化データレコードの構造は、(例えば)特定のユースケース(例えば、特定の疾患、特定の試験など)に対応するモジュールからの仕様を使用して定義されることができる。例えば、非構造化メモデータは、変換および要約されて、メモデータが、被験者が示す症候の特定のセットのうちのどれ(もしあれば)を示すかどうかを識別することができる。メモデータのいくつかの部分は、構造化データ内のフィールドに関して無関係であってもよく、および/またはフィールドデータよりも多かれ少なかれ特異的であってもよい。したがって、様々なマッピング(例えば、「平衡障害」症候を「神経学的」症候にマッピングする)、自然言語処理、またはインターフェースベースの手法(例えば、ユーザに新たな情報を要求する)を使用して、構造化データレコードの取得を容易にすることができる。インターフェースはまた、新規または既存の被験者に関する新たな情報を識別する入力を受信するために使用されてもよく、インターフェースは、データレコードの構造にマッピングする入力コンポーネントおよび選択オプションを含んでもよい。
【0047】
さらに、技術は、データレジストリに記憶された構造化データレコードを処理するためのインテリジェント分析機能を実行するようにクラウドベースのアプリケーションを構成することに関する。インテリジェントな分析機能は、データレコードを使用して訓練された機械学習モデルまたは人工知能モデルを実行することによって実行されることができる。モデル出力は、データレコードから抽出された特定の分析を示すために使用されることができる。
【0048】
さらに、技術は、様々な管轄区域にわたってデータプライバシー規則によって課される制約を満たしながら、エンティティが外部エンティティとの1つ以上のデータレコードまたは被験者を特徴付ける(例えば、医学的症候を経験すること、および/または医学的症候の可能な診断もしくは確定診断を有する)他の情報を送信および/または受信することを可能にするデータプライバシープロトコルを実行するようにクラウドベースのアプリケーションを構成することに関する。クラウドベースのアプリケーションは、データプライバシー違反をアルゴリズム的に評価し、データプライバシー規則に従うようにデータレコードを自動的に省略、難読化、または変更するように構成されることができる。
【0049】
場合によっては、個々の被験者の処置計画の作成を容易にするために、データレコードからのデータの送信が提供されることができる。例えば、データレコード情報(例えば、データの省略および/または不明瞭化を選択することによってデータのプライバシー制限に準拠する)は、選択されたユーザグループにブロードキャストされ、および/または選択されたユーザグループによって利用されることができる。例えば、ブロードキャストは、類似のデータレコードに関連付けられたユーザに、類似の被験者に関連付けられたユーザとの相談を開始する要求に対応するユーザからの入力に応答して送信されてもよい。ブロードキャストを受信するユーザが(対応する入力の提供を介して)相談要求を受け入れる場合、ユーザ間でセキュアなデータチャネルが確立されることができ、(例えば、2人のユーザに適用可能なデータプライバシー制限に準拠しながら)潜在的により多くのデータレコードが共有されることができる。別の例として、処理済みデータレコードは、特定の制約に一致するレコードのクエリに応答して返されてもよい。場合によっては、第1のユーザは、第1のデータレコードを識別し、類似のデータレコードが識別されることを要求するクエリを送信することができる。次に、コンピューティングシステムは、類似のレコードを識別するためにデータ処理技術(例えば、最近傍技術)を実行することができる。この検索では、様々なデータフィールドが差動的に重み付けされることができる(例えば、事前定義されたフィールド重み付け、様々なフィールドを一致させることの重要性、および/またはレコードセットにわたる特定のフィールド値の広がりを示すユーザ入力に従って)。可能性のある一致についてレコードのセットを検索するとき、いくつかのレコードは、様々なフィールドの値を欠いている場合がある。これらの場合、(例えば)フィールド値が一致しないと決定されてもよく、および/または可能性のある一致を評価するときにフィールドが重み付けされなくてもよい。欠落値の処理は、レコードのセットにわたるフィールドの値および/またはクエリ内のフィールドの値の分布に依存することができる。
【0050】
さらに、いくつかの技術は、構造化データにおいて識別された症候のセットを考慮して、被験者の可能性のある処置レジメンを識別するために使用される一連の規則を定義および使用することに関する。規則のセットは、特定の基準および関連する特定の医療処置の仕様、および/または(基準および処置を指定する)1つ以上の以前に定義された規則の選択を含むことができるユーザインターフェースとのユーザ相互作用に基づいて定義されることができる。例えば、1つ以上の既存の規則がインターフェースを介して提示されることができ、ユーザは、ユーザに関連付けられたアカウントに関連付けられた規則ベースに組み込むように規則を選択することができる。1つ以上の規則は、複数のユーザ(例えば、1つ以上の機関に関連する)によって定義された規則のセットの中から選択されてもよく、および/または複数のユーザによって生成された規則に基づいて生成されてもよい。例えば、コンピューティングシステムは、1つ以上の特定のタイプの症候および/または検査結果を所与の処置に関連付ける規則がユーザによって比較的頻繁に定義および/または選択されることを検出することができ、次いでコンピューティングシステムは、特定のタイプの症候および/または検査結果ならびに処置に関する一般規則を生成することができる。一般規則は、(例えば)最も限定的な、最も包括的な、または中央値の基準を有するように定義されてもよい。場合によっては、ユーザの規則ベースが処理されて、規則間の任意の基準の重複を検出することができる。重複を識別すると、重複を識別する警告が提示されることができる。規則ベースの規則を使用して、被験者レコードを評価し、被験者レコードに関連付けられた集団を定義するように分類することができる。規則を使用して被験者レコードを評価することは、例えば、規則の第1の基準が被験者レコードに含まれる属性と比較されるという点で、決定木として実行されてもよい。第1の基準が満たされる場合、次の基準が被験者レコードに含まれる属性と比較される。次の基準が満たされる場合、比較は、規則に含まれる各基準について継続する。比較は、次の基準が満たされない場合であっても継続することができる。この場合、基準(および規則に含まれる任意の他のもの)が満たされなかったことが記憶され、満たされた基準とともにユーザデバイスに提示される。
【0051】
したがって、本開示の実施形態は、データプライバシー規則に違反することなく被験者情報を外部エンティティと交換するように構成されたクラウドベースのアプリケーションを提供することによって、従来のシステムを超える技術的利点を提供する。クラウドベースのアプリケーションは、様々な管轄区域にわたって被験者情報を共有することに関与するデータプライバシー規則を自動的に評価するように構成される。クラウドベースのアプリケーションは、被験者情報を難読化または他の様態で修正するプロトコルを実行するように構成され、それによってデータプライバシー規則への準拠をアルゴリズム的に保証する。
【0052】
上記の開示は、COVID-19の診断および処置を容易にすることに関してインテリジェントな機能を実行するように構成されたクラウドベースのアプリケーションを説明しているが、クラウドベースのアプリケーションは、肺、乳房、結腸直腸、前立腺、胃、肝臓、子宮頸部(子宮頸部)、食道、膀胱、腎臓、膵臓、子宮内膜、口腔、甲状腺、脳、卵巣、皮膚、および胆嚢の癌;固形腫瘍、例えば肉腫および癌腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫など)を含む免疫系の癌、ならびに血液(血液学的癌)および骨髄の癌、例えば白血病(急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)など)、リンパ腫および骨髄腫を含むがこれらに限定されない腫瘍学を含む、任意の疾患、症状、研究領域、または障害の可能性のある診断または可能性のある処置を識別するように構成されることができる。さらなる障害は、貧血などの血液障害、血友病、血餅などの出血障害、糖尿病性網膜症、緑内障、および黄斑変性を含む眼科障害、多発性硬化症、パーキンソン病、疾患、脊髄性筋萎縮症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病を含む神経障害、多発性硬化症、糖尿病、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、湿疹、血管炎、アレルギー、および喘息を含む自己免疫障害を含む。
【0053】
他の疾患および障害は、腎臓疾患、肝疾患、心疾患、脳卒中、胃腸障害、例えばセリアック病、クローン病、憩室疾患、過敏性腸症候群(IBS)、胃食道逆流症(GERD)および消化性潰瘍、関節炎、性感染症、高血圧、細菌およびウイルス感染症、寄生虫感染症、結合組織病、セリアック病、骨粗鬆症、糖尿病、狼瘡、中枢神経系および末梢神経系の疾患、例えば注意欠陥/多動性障害(ADHD)、カタレプシー、脳炎、てんかんおよび発作、末梢神経障害、髄膜炎、片頭痛、ミエロパシー、自閉症、双極性障害およびうつ病を含むが、これらに限定されない。
【0054】
II.COVID-19のウイルス学、疫学、臨床症候、診断および処置の概要
COVID-19は、SARS-CoV-2と呼ばれる新規コロナウイルスによって引き起こされる疾患である。SARS-CoV-2は、鳥類および哺乳動物を含む広範囲の宿主種に見られる遺伝的に多様なウイルスのクラスに属する。コロナウイルス(CoV)は、動物および人間において腸および呼吸器感染症を引き起こす。SARS-CoV-2は、人間に感染することが知られているコロナウイルス科の第7のメンバー、およびコロナウイルス(CoV)である。蝙蝠は、多くのSARS様CoV、特に、アルファコロナウイルスおよびベータコロナウイルスのCoV種の天然担体であると考えられている。
【0055】
SARS-CoV-2ウイルスは、ヒト細胞の表面上のACE2受容体に結合することによって細胞に感染する。ウイルスが細胞に入った後、ウイルスは、小胞と融合し、ウイルスRNAを放出する。ウイルスRNAは、新たなウイルス粒子を組み立てるために使用されるタンパク質に翻訳され、次いで感染細胞によって体内に放出される。
【0056】
COVID-19の疫学は、初期の被験者の一部が、蝙蝠を含む野生生物種を販売する市場で曝露された中国湖北省の武漢市での局所的なアウトブレイクから始まったと考えられる。疫学的分析は、初期段階では、人から人への伝達が密接な接触によって起こったことを示唆している。第2の段階は、病院内および家族内での伝染を特徴としていた。第3の段階は、特定の場所または大家族などの特定の人々のグループに集中するいわゆる「クラスタ症例」の急増を特徴とする。
【0057】
COVID-19の症候は、発熱、咳、息切れ(呼吸困難)、筋肉痛、悪寒、喉の痛み、および新たな味覚または嗅覚の喪失を含む。あまり一般的でない症候は、悪心、嘔吐または下痢などの胃腸症候を含む。さらに、高齢者および心臓もしくは肺疾患または糖尿病などの重度の基礎疾患を有する人々は、COVID-19病からのより重篤な合併症を発症するリスクが高いようである。例えば、米国で報告された10人の死亡者のうち8人が65歳以上の成人であった。
【0058】
II.A.SARS-CoV-2を検査するための診断検査
クラウドベースのアプリケーションは、COVID-19診断決定を知らせるために使用されるCOVID-19検査の結果を含む被験者固有データを処理することができ、および/または被験者にCOVID-19検査を処方する推奨に対応する(被験者固有入力データセットの処理に基づいて生成された)出力を生成することができる。COVID-19検査は、(例えば)このセクションで特定された1つ以上の検査を含むことができる。
【0059】
アメリカ疾病管理予防センターによれば、現在、COVID-19病の診断に利用可能な検査には以下の2種類がある:現在の感染の検査(ウイルス検査)および過去の感染の検査(抗体検査)。ウイルス検査は、一般に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)または等温核酸増幅などの技術を用いてSARS-CoV-2特異的遺伝子を増幅することによって、コロナウイルス遺伝物質中の分子を検出する。例えば、F.Hoffman-La Roche AGは、被験者からの鼻咽頭および中咽頭スワブ試料におけるSARS-CoV-2の定性的検出のために設計されたリアルタイムRT-PCR検査であるcobas(登録商標)SARS-CoV-2検査を提供している。他の市販のCOVID-19 PCR検査は、これらに限定されないが、Diagnostic Solutions Laboratory(登録商標)によって提供されるCOVID-19アッセイPCR検査、Mayo Clinic Laboratoriesによって提供されるPCR検査であるSARS-CoV-2分子検出アッセイ、Seimens Healthineers/Fast Track Diagnosticsによって提供されるPCR検査であるFast Track Diagnostics(FTD)SARS-CoV-2アッセイ、Stanford Health Care Clinical Virology Laboratoryによって提供されるSARS-CoV-2 PCRアッセイ、Abbott(登録商標)によって提供されるPCR検査であるリアルタイムSARS-CoV-2 EUA検査、および任意の他の適切な市販のCOVID-19診断検査を含む。
【0060】
他の検査は、(例えば、抗原を特異的に認識する抗体に結合することによって)表面スパイクタンパク質などのコロナウイルス上に存在する抗原を検出することを含む。例えば、Quidel(登録商標)は、Sofia 2 SARS抗原FIA検査を提供する。ウイルス検査は、典型的には、コロナウイルスによる現在の活動性感染症を診断するのに有用であり、被験者が以前に感染しており、回復しているかどうかを決定することはできない。
【0061】
血清学的検査または抗体検査は、ウイルスに感染し、回復した被験者の体内で産生される抗体を検出する。血清学的検査は、症候が軽度または無症候性であった個体を検出するのに有用である。SARS-CoV-2による感染は、免疫グロブリンM(IgM)および免疫グロブリンG(IgG)抗体の産生を含む、ウイルス抗原に対する免疫応答を誘因する。これらの抗体は、感染の数日後に検出可能であるが、長年にわたって血液中に存続することができ、過去の感染の検出を可能にする。例えば、F.Hoffman-La Roche AGは、SARS-CoV-2に対する被験者の免疫応答を検出するために設計された血清学的検査であるElecsys(登録商標)抗SARS-CoV-2検査を提供している。Elecsys(登録商標)抗SARS-CoV-2検査は、ヒト血清および血漿中のSARS-CoV-2に対する抗体の定性的検出を意図したイムノアッセイである(K2-EDTA、K-EDTA、Li-ヘパリンなど)。他の市販のCOVID-19血清学的検査は、これらに限定されないが、Abbott(登録商標)によって提供されるSARS-CoV-2 IgG検査、Core Technology(登録商標)によって提供されるCoreTest COVID-19 IgM/IgG Ab検査、SureScreen Diagnostics(登録商標)によって提供されるSureScreen COVID-19 IgM/IgG急速検査カセット、および任意の他の適切な市販の血清学的検査を含む。
【0062】
診断検査は、COVID-19を有する被験者を以下の疾患カテゴリに分類する:
・無症候性または前駆症候性感染:SARS-CoV-2についての検査で陽性であるが症候がない個体;
・軽度の病気:息切れ、呼吸困難、または異常なイメージングを伴わずに、様々な徴候および症候(例えば、発熱、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛)のいずれかを有する個体;
・中程度の病気:臨床評価またはイメージングによる下呼吸器疾患の証拠、および海水面で室内空気中の酸素飽和度(SpO2)>93%を有する個体;
・重度の病気:呼吸数が毎分30回を超え、海面で室内空気中のSpO2が≦93%、吸気酸素に対する酸素の動脈分圧の比(PaO2/FiO2)が<300、または肺浸潤物が>50%である個体;および
・重症疾患:呼吸不全、敗血症性ショックおよび/または多臓器機能不全を有する個体。
【0063】
不十分なデータのために、米国国立衛生研究所(NIH)は、軽度から重度のCOVID-19を有する被験者において抗ウイルス療法または免疫調節療法について推奨することも、反対することもない。
【0064】
II.B.COVID-19の既知の処置
上述したように、本明細書に記載のクラウドベースのアプリケーションおよび/または人工知能モデルを使用して、特定の被験者に対する推奨される処置を識別し、および/または被験者が所与の処置にどのように反応するかを予測することができる。例えば、クラウドベースのアプリケーションは、このセクションに記載されている1つ以上の処置のそれぞれ(および/またはCOVID-19処置に続いて使用される1つ以上の他の処置)について、処置が3週間以内に完全な症候回復をもたらす確率を予測することができる。次いで、クラウドベースのアプリケーションは、被験者による使用が可能のための最高の回復確率に関連する単一の処置を識別することができる。
【0065】
COVID-19についての現在の処置選択肢は、抗ウイルス薬、免疫療法、中和抗体、および呼吸不全を有する被験者のための人工呼吸器を含む。例えば、COVID-19の現在の処置選択肢は、追加の酸素、機械的換気、または体外膜酸素化を必要とする、周囲空気(海面)でSpO2≦94%として定義される重度の疾患を有する入院した被験者についてのレムデシビルなどの抗ウイルス薬を含む。米国では、レムデシビルは、現在、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されていないが、COVID-19を有する入院した成人および小児の処置のためのFDAの緊急使用承認を通じて入手可能である。レムデシビルはまた、臨床試験において研究されており、小児および妊娠中の被験者のための緊急アクセスプログラムを通じて入手可能である。
【0066】
高用量は低用量よりも毒性のリスクが高いため、NIHは、COVID-19の処置に高用量クロロキン(600mgを1日2回、10日間)の使用を推奨していない。他の抗ウイルス薬は、アジスロマイシンおよびHIVプロテアーゼ阻害剤ロピナビル/リトナビルを含む。しかしながら、臨床試験の状況を除いて、NIHは、COVID-19の処置のための以下の薬物の使用を推奨していない:
・毒性の可能性があるため、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン(AIII)との組み合わせ;および
・ロピナビル/リトナビル(AI)または他のHIVプロテアーゼ阻害剤(AIII)は、薬力学が好ましくなく、臨床試験データが陰性であるためである。
【0067】
他の抗ウイルス薬は、いくつかの国でインフルエンザを処置することが承認されているファビピラビル、およびCOVID-19の処置薬として薬物ロピナビル/リトナビルと組み合わせて検査されたアルビドールを含む。
【0068】
別の処置選択肢は、回復期血漿およびSARS-CoV-2特異的免疫グロブリンなどの免疫ベースの治療を含む。NIHは、現在、COVID-19の処置のためのSARS-CoV-2回復期血漿またはCOVID-19免疫グロブリンの使用を推奨するまたは使用しないことを推奨するデータが不十分であると考えている。しかしながら、NIHは、臨床試験の状況を除いて、COVID-19の処置のための非SARS-CoV-2特異的IVIGの使用を推奨していない。これは、COVID-19の経過中に生じる合併症の処置のために別の方法で指示される場合のIVIGの使用を排除するものではない。
【0069】
別の処置選択肢は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症する被験者におけるCOVID-19感染に関連するいわゆる「サイトカインストーム」を処置するための免疫抑制薬を含む。バリシチニブ(関節リウマチの薬物)、CM4620-IE(膵癌治療薬)、およびインターロイキン阻害剤(IL-6阻害剤)を含むいくつかの免疫抑制剤が臨床試験において検査されている。NIHは、現在、COVID-19を処置するためのインターロイキン-1阻害剤(例えば、アナキンラ)およびインターロイキン-6阻害剤(例えば、サリルマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ)の使用を推奨するまたは使用しないことを推奨するデータが不十分であると考えている。
【0070】
米国FDAはまた、呼吸不全が確認されたまたは切迫している集中治療室(ICU)に入院した被験者の血液からサイトカインをフィルタリングするデバイスを承認した。FDAは、それらのSpectra OptiaアフェレーシスシステムおよびDepuro D2000吸着カートリッジデバイスについて、Terumo BCT Inc.およびMarker Therapeutics AGに緊急使用許可を付与した。
【0071】
別の処置選択肢は、免疫調節薬(アルファおよびベータインターフェロンならびにキナーゼ阻害剤など)を含む。NIHはまた、臨床試験との関連を除いて、重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)および毒性の処置における有効性の欠如のためにインターフェロンなどの他の免疫調節剤、ならびにそれらの広範な免疫抑制効果のためにヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、バリシチニブ)(AIII)の使用を推奨している。
【0072】
人工呼吸器の支持を必要とするCOVID-19を有する重症成人被験者について、NIHは、従来の酸素療法にもかかわらず急性低酸素血症性呼吸不全を有する被験者について非侵襲的陽圧換気(NIPPV)よりも高流量鼻カニューレ(HFNC)酸素を推奨している。人工呼吸器を必要とし、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)も呈する被験者について、NIHは、より高い1回換気量(Vt)(Vt>8mL/kg)に対して低い1回換気量換気(Vt4~8mL/kgの予測体重)を使用することを推奨している。最適化された換気にもかかわらず、COVID-19および難治性低酸素血症を有する機械的に換気された成人の場合、NIHは、傾向換気なしで1日当たり12から16時間の傾向換気を推奨している。最適化された換気および他の救済戦略にもかかわらず、COVID-19、重度のARDS、および低酸素血症を有する機械的に換気された成人のために、NIHは、救済療法としての吸入肺血管拡張薬の試験を推奨している。酸素化の急速な改善が観察されない場合、被験者を処置から漸減させることが推奨される。
【0073】
別の処置選択肢は、コルチコステロイドを被験者に投与することを含む。しかしながら、NIHはまた、ARDSのないCOVID-19を有する機械的に換気された被験者の処置のための全身コルチコステロイドの日常的な使用を推奨していない。COVID-19およびARDSを有する機械的に換気された成人において、NIHは、別の適応症がない場合にコルチコステロイド療法を推奨するかまたは推奨しないかのデータが不十分であると考えている。しかしながら、難治性ショックを有するCOVID-19被験者では、NIHは、低用量コルチコステロイド療法がコルチコステロイド療法なしよりも好ましいと述べている。
【0074】
別の処置選択肢は、抗凝固剤および抗血小板療法を使用する抗血栓療法である。NIHは、COVID-19を有する入院成人が他の入院成人のための標準治療に従って静脈血栓塞栓症(VTE)予防を受けるべきであることを推奨している。NIHは、血栓塞栓事象の発生を経験している、またはイメージングが不可能な時点で血栓塞栓性疾患を有すると強く疑われるCOVID-19を有する被験者は、COVID-19を有しない被験者の標準治療に従って治療用量の抗凝固療法で管理されるべきであること、体外膜酸素化または連続腎置換療法を必要とする、またはカテーテルもしくは体外フィルタの血栓症を有するCOVID-19を有する被験者は、COVID-19を有しない被験者の標準的な施設プロトコルに従って抗血栓療法によって処置されるべきであることを推奨している。
【0075】
最後に、COVID-19用の承認済みワクチンは現在存在しない。現在のワクチン候補は、mRNAおよびDNAベースのワクチン、ウイルスベクターベースのワクチン、不活化(非感染性)または弱化コロナウイルス(ウイルスベクターで投与されることもある)、ならびにウイルスのタンパク質サブユニットまたはウイルス様粒子による免疫化を含むタンパク質ベースのワクチンを含む。
【0076】
III.インテリジェント機能によって構成されたクラウドベースのアプリケーションをホストするためのネットワーク環境
図1は、クラウドベースのアプリケーションの実施形態がホストされるネットワーク環境100を示している。ネットワーク環境100は、クラウドサーバ135およびデータレジストリ140を含むクラウドネットワーク130を含むことができる。クラウドサーバ135は、クラウドベースのアプリケーションの基礎となるソースコードを実行することができる。データレジストリ140は、コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115などの、1つ以上のユーザデバイスから取り込まれたまたはそれを使用して識別されたデータレコードを記憶することができる。
【0077】
データレジストリ140に記憶されるデータレコードは、固定部分(例えば、データフィールド)のスケルトン構造に従って構造化されることができる。コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115は、それぞれ、様々なユーザによって操作されることができる。例えば、コンピュータ105は、医師によって操作されてもよく、ラップトップ110は、エンティティの管理者によって操作されてもよく、モバイルデバイス115は、被験者によって操作されてもよい。モバイルデバイス115は、ゲートウェイ120およびネットワーク125を使用してクラウドネットワーク130に接続することができる。いくつかの例では、コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115のそれぞれは、同じエンティティ(例えば、同じ病院)に関連付けられる。他の例では、コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイスは、異なるエンティティ(例えば、異なる病院)に関連付けられる。コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115のユーザデバイスは、例示の目的のための例であり、したがって、本開示は、これに限定されない。ネットワーク環境100は、任意のデバイスタイプの任意の数または構成のユーザデバイスを含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、コンピュータ105、ラップトップ110、またはモバイルデバイス115のいずれかと相互作用することによって、データレジストリ140に記憶するためのデータ(例えば、被験者レコード)を取得することができる。例えば、コンピュータ105は、インターフェースを使用することによってクラウドサーバ135と相互作用して、被験者レコードまたはデータレジストリ140に取り込むためにローカルに(例えば、コンピュータ105に対してローカルなネットワークに記憶される)記憶された他のデータレコードを選択する。別の例として、コンピュータ105は、インターフェースと相互作用して、被験者レコードまたは他のデータレコードを記憶するデータベースのアドレス(例えば、ネットワーク位置)をクラウドサーバ135に提供する。次いで、クラウドサーバ135は、データベースからデータレコードを取得し、データレコードをデータレジストリ140に取り込む。
【0079】
いくつかの実施形態では、コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115は、異なるエンティティ(例えば、医療センター)に関連付けられる。クラウドサーバ135がコンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115から取得するデータレコードは、異なるデータレジストリに記憶されてもよい。コンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115のそれぞれからのデータレコードは、クラウドネットワーク130内に記憶されてもよいが、データレコードは混在しなくてもよい。例えば、コンピュータ105は、データプライバシー規則によって課される制約のために、ラップトップ110から取得されたデータレコードにアクセスすることができない。しかしながら、クラウドサーバ135は、データレコードが異なるエンティティによってクエリされるときに、データレコードの一部を自動的に難読化、不明瞭化、またはマスクするように構成されてもよい。したがって、エンティティから取り込まれたデータレコードは、データプライバシー規則に準拠するために、難読化、不明瞭化、またはマスクされた形式で異なるエンティティに公開されることができる。例示的な例として、医師または他の医療専門家は、潜在的にCOVID-19に関連する被験者の症候を入力することができる。症候は、被験者に関連付けられた被験者レコードの一部としてクラウドネットワーク130内に記憶されてもよい。
【0080】
データレコードがコンピュータ105、ラップトップ110、およびモバイルデバイス115から収集されると、データレコードは、本明細書に記載のインテリジェント分析機能を提供するために機械学習モデルまたは人工知能モデルを訓練するための訓練データとして使用されることができる。エンティティに関連付けられたユーザデバイスがデータレジストリ140にクエリを行い、クエリ結果が異なるエンティティに由来するデータレコードを含む場合、これらのデータレコードは、データプライバシー規則に準拠する難読化された形式でユーザデバイスに提供または公開されることができることを考えると、データレコードは、任意のエンティティによるクエリに利用可能であってもよい。
【0081】
クラウドサーバ135は、データレジストリ140に記憶されたデータレコードを処理するためのインテリジェント機能を実行するように構成されてもよい。例えば、インテリジェント機能を実行することは、さらなる分析のための出力を生成するために、データレジストリ140に記憶されたデータレコードの少なくとも一部を訓練された機械学習モデルまたは人工知能モデルに入力することを含むことができる。いくつかの実施形態では、出力は、データレコード内のパターンを抽出するために、またはデータレコードのデータフィールドに関連付けられた値または結果を予測するために使用されることができる。クラウドサーバ135によって実行されるインテリジェント機能の様々な実施形態を以下に説明する。
【0082】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、ユーザデバイス(例えば、医師によって操作される)がクラウドベースのアプリケーションにアクセスして、送信先デバイスのセットに相談ブロードキャストを送信することを可能にするように構成される。相談ブロードキャストは、被験者レコードに関連付けられた被験者の処置に関するサポートまたは支援の要求とすることができる。宛先デバイスは、別のエンティティ(例えば、別の医療センターの医師)に関連付けられた別のユーザによって操作されるユーザデバイスとすることができる。宛先デバイスが相談ブロードキャストに関連付けられた支援の要求を受け入れる場合、クラウドベースのアプリケーションは、被験者レコードの特定のデータフィールドを省略または隠す被験者レコードの要約表現を生成することができる。要約表現は、データプライバシー規則に準拠することができ、したがって、被験者レコードの要約表現は、被験者レコードによって関連付けられた被験者を一意に識別するために使用されることができない。クラウドベースのアプリケーションは、被験者レコードの要約表現を、支援の要求を受け入れた宛先デバイスに送信することができる。宛先デバイスを操作するユーザは、要約表現を評価し、通信チャネルを使用してユーザデバイスと通信して、被験者を処置するための選択肢を論じることができる。例示的な例として、医師は、COVID-19の確定診断を有する被験者を処置している場合がある。医師は、COVID-19被験者を処置する方法についてさらなる進展を求めるかまたは相談することができる。医師は、異なる病院で働く医師にブロードキャスト相談を送信させることができる。被験者レコードの様々な被験者属性は、難読化され、次いで他の医師に送信されることができる。次いで、2人の医師は、チャット部屋などの通信セッション中に難読化されたCOVID-19レコードに関して通信することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、処置計画定義インターフェースをユーザデバイスに提供するように構成される。処置計画定義インターフェースは、ユーザデバイスが症状についての処置計画を定義することを可能にする。例えば、処置計画は、その症状によって被験者を処置するためのワークフローとすることができる。ワークフローは、症状を有するものとして被験者の集団を定義するための1つ以上の基準を含むことができる。ワークフローはまた、症状についての特定のタイプの処置を含むことができる。クラウドサーバ135は、ユーザデバイスの集合の各ユーザデバイスから特定の条件についての処置計画定義を受信して記憶する。クラウドベースのアプリケーションは、所与の症状についての処置計画をユーザデバイスのセットに配信することができる。ユーザデバイスのセットのうちの2つ以上のユーザデバイスは、異なるエンティティに関連付けられてもよい。2つ以上のユーザデバイスのそれぞれは、処置計画の任意の部分または全体を顧客規則セットに統合する選択肢を提供することができる。クラウドサーバ135は、ユーザデバイスが共有処置計画全体を統合するか、または処置計画の一部を統合するかを監視することができる。ユーザデバイスと共有処置計画との間の相互作用を使用して、処置計画または処置計画に基づいて作成された規則を更新するかどうかを決定することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、ユーザデバイスを操作するユーザがクラウドベースのアプリケーションにアクセスして、ある症状を有する被験者に対する提案処置を決定することを可能にする。ユーザデバイスは、クラウドベースのアプリケーションに関連付けられたインターフェースをロードする。インターフェースは、ユーザデバイスを操作するユーザが、ユーザによって処置されている被験者に関連付けられた被験者レコードを選択することを可能にする。クラウドベースのアプリケーションは、ユーザによって処置されている被験者に類似する以前に処置された被験者を識別するために他の被験者レコードを評価することができる。被験者間の類似性は、例えば、被験者レコードの配列表現を使用して決定されることができる。配列表現は、被験者レコードのデータフィールドの値の任意の数値および/またはカテゴリ表現とすることができる。例えば、被験者レコードの配列表現は、ユークリッド空間内などのドメイン空間内の被験者レコードのベクトル表現であってもよい。場合によっては、配列内の複数の値は、単一のフィールドに対応する。例えば、フィールド値は、ワンホットエンコードによって生成された複数のバイナリ値によって表されてもよい。クラウドベースのアプリケーションは、被験者レコードのグループの各被験者レコードについての配列表現を生成することができる。2つの被験者レコード間の類似性は、2つの被験者レコードの配列表現間の距離によって表されることができる。さらに、クラウドベースのアプリケーションは、インターフェースを使用してユーザデバイスによって選択された被験者レコードに最近傍である被験者を識別するように構成されることができる。クラウドベースのアプリケーションは、最近傍である被験者に対して以前に行われた処置を識別することができる。クラウドベースのアプリケーションは、ユーザデバイスを操作するユーザによる評価のために、最近傍に対して以前に実行された処置をインターフェース上で利用することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、以前に処置された被験者のデータベースを検索するクエリを作成するように構成される。クラウドサーバ135は、クエリを実行し、クエリの制約を満たす被験者レコードを取得することができる。しかしながら、クエリ結果を提示する際に、クラウドベースのアプリケーションは、クエリを作成したユーザによって処置されたことがある被験者または処置されている被験者についてのみ被験者レコードを完全に提示することができる。クラウドベースのアプリケーションは、クエリを作成するユーザによって処置されていない被験者の被験者レコードの部分をマスクするか、そうでなければ難読化する。クエリ結果に含まれる被験者レコードの部分のマスキングまたは難読化は、ユーザがデータプライバシー規則にたがうことを可能にする。いくつかの実施形態では、(クエリ結果が難読化されているか否かにかかわらず)クエリ結果は、被験者レコード内のパターンまたは共通属性について自動的に評価されることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、クラウドベースのアプリケーションにチャットボットを埋め込む。チャットボットは、ユーザデバイスと自動的に通信するように構成される。チャットボットは、ユーザデバイスとチャットボットとの間でメッセージが交換される通信セッションにおいて、ユーザデバイスと通信することができる。チャットボットは、ユーザデバイスから受信した質問に対する回答を選択するように構成されてもよい。チャットボットは、クラウドベースのアプリケーションにアクセス可能な知識ベースから回答を選択することができる。ユーザデバイスがチャットボットに質問を送信し、そのチャットボットが知識ベースに記憶された既存の回答を有していない場合、既存の回答がある質問の異なる表現は、知識ベースに記憶されている。チャットボットと通信するユーザは、チャットボットによって提供された回答が正確であるかまたは有用であるかを促すことができる。
【0087】
III.A.クラウドベースのアプリケーションは、ユーザデバイスが他のユーザデバイスに相談要求をブロードキャストすることを可能にし、データプライバシー規則に準拠するように被験者レコードを自動的に要約する。
図2は、被験者の処置に関する支援を要求する相談ブロードキャストに関連して、要約された被験者レコードをユーザデバイスに配信するためにクラウドベースのアプリケーションによって実行されるプロセス200を示すフローチャートである。プロセス200は、データプライバシー規則に準拠しながら、異なるエンティティ(例えば、病院)に関連付けられたユーザデバイスが被験者についての処置に関して協働または相談することを可能にするためにクラウドサーバ135によって実行されることができる。
【0088】
プロセス200は、ブロック210において開始し、クラウドサーバ135は、ユーザデバイスから属性のセットを受信する。属性のセットのうちの各属性は、被験者(例えば、患者)の任意の特性を表すことができる。属性のセットは、クラウドサーバ135によって提供されるインターフェースを使用してユーザによって識別されることができる。例えば、属性のセットは、被験者の人口統計情報および被験者によって経験された最近の症候を識別する。人口統計情報の非限定的な例は、年齢、性別、民族、居住州または都市、所得範囲、教育レベル、または任意の他の適切な情報を含む。最近の症候の非限定的な例は、特定の症候(例えば、呼吸困難、閾値温度を超える発熱、閾値血圧を超える血圧など)を現在または最近(例えば、最後の来院時、摂取時、24時間以内、1週間以内)経験した被験者を含む。
【0089】
ブロック220において、クラウドサーバ135は、被験者についてのレコードを生成する。レコードは、1つ以上のデータフィールドを含むデータ要素とすることができる。レコードは、被験者に関連付けられた属性のセットのそれぞれを示す。レコードは、データレジストリ140または任意の他のクラウドベースのデータベースなどの中央データストアに記憶されることができる。ブロック230において、クラウドサーバ135は、インターフェースを使用してユーザによって提出された要求を受信する。要求は、相談ブロードキャストを開始することとすることができる。例えば、エンティティに関連付けられたユーザは、被験者を処置する医療センターの医師である。ユーザは、ユーザデバイスを操作してクラウドベースのアプリケーションにアクセスし、被験者の処置を支援する要求をブロードキャストすることができる。ブロードキャストは、異なるエンティティに関連付けられた他のユーザデバイスのセットに送信されてもよい。
【0090】
ブロック240において、クラウドサーバ135は、被験者に関連付けられた属性のセットに含まれる1つ以上の最近の症候を使用して中央データストアにクエリする。クエリ結果は、他のレコードのセットを含む。他のレコードのセットのうちの各レコードは、別の被験者に関連付けられている。ブロック250において、クラウドサーバ135は、宛先アドレス(例えば、異なるエンティティに関連付けられた他のユーザデバイス)のセットを識別する。宛先アドレスのセットのうちの各宛先アドレスは、ブロック240において識別された他のレコードのセットのうちの1つ以上の他のレコードに関連付けられた別の被検者の介護提供者に関連付けられる。ブロック260において、クラウドサーバ135は、被験者についてのレコードの要約表現を生成する。レコードの要約表現は、レコードの少なくとも一部を省略、不明瞭化、または難読化する。レコードの要約表現は、レコードに関連付けられた被験者を一意に識別するために使用されることができないため、データプライバシー規則に違反することなく外部システム間で交換されることができる。クラウドサーバ135は、任意のマスキングまたは難読化技術を実行して、レコードの要約表現を生成することができる。
【0091】
ブロック270において、クラウドサーバ135は、接続入力コンポーネントを有するレコードの要約表現を、宛先アドレスのセットのうちの各宛先アドレスに利用する。接続入力コンポーネントは、各宛先アドレスに提示される選択可能な要素であってもよい。接続入力コンポーネントの非限定的な例は、ボタン、リンク、入力要素、および他の適切な選択可能な要素を含む。ブロック280において、クラウドサーバ135は、宛先アドレスに関連付けられた宛先デバイスからの通信を受信する。通信は、宛先デバイスを操作するユーザがレコードの要約表現に関連付けられた接続入力コンポーネントを選択したという指示を含む。ブロック290において、クラウドサーバ135は、ユーザデバイスと、接続入力コンポーネントが選択された宛先デバイスとの間の通信チャネルの確立を容易にする。通信チャネルは、ユーザデバイスを操作するユーザ(例えば、被験者を処置する医師)が、接続入力コンポーネントが選択された宛先アドレスに関連付けられた宛先デバイス(例えば、被験者の処置を支援することに同意した別の病院の医師)とメッセージまたは他のデータ(例えば、ビデオフィード)を交換することを可能にする。
【0092】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、ユーザデバイスの位置および接続入力コンポーネントが選択された宛先デバイスの位置を自動的に決定するように構成される。クラウドサーバ135はまた、位置を比較して、レコードの要約表現を生成するかどうかを決定することができる。例えば、ブロック260において、クラウドサーバ135は、宛先アドレスのセットのうちの各宛先アドレスが、相談ブロードキャストを開始したユーザデバイスとコロケートされていないとクラウドサーバ135が決定するため、レコードの要約表現を生成することができる。この場合、クラウドサーバ135は、データプライバシー規則に従うためにレコードの要約表現を生成することを自動的に決定することができる。別の例として、宛先アドレスのセットが、相談ブロードキャストを開始したユーザデバイスと同じエンティティに関連付けられている場合、クラウドサーバ135は、データプライバシー規則に準拠しながら、宛先アドレスに関連付けられた宛先デバイスにレコードを完全に(例えば、レコードの一部を難読化することなく)送信することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、複数の他の要約されたレコード表現を生成する。複数の他の要約されたレコード表現のそれぞれは、別の被験者に関連付けられている。クラウドサーバ135は、複数の他の要約されたレコード表現をユーザデバイスに送信し、ユーザデバイスから、複数の他の要約されたレコード表現のサブセットの選択を識別する通信を受信する。宛先アドレスのセットのそれぞれは、要約されたレコード表現のうちの1つによって表される。例えば、要約されたレコード表現を生成することは、要約されたレコード表現に関連付けられた別の被験者の管轄区域を決定することと、管轄区域内の被験者レコードの交換を管理するデータプライバシー規則を決定することと、データプライバシー規則に準拠するように要約されたレコード表現を生成することと、を含む。複数の他の要約されたレコード表現のうちの第1の他の要約されたレコード表現は、特定のタイプのデータを含むことができる。複数の他の要約されたレコード表現のうちの第2の他の要約されたレコード表現は、特定のタイプのデータを省略または不明瞭にすることができる。例えば、特定のタイプのデータは、連絡先情報、氏名、社会保障番号などの識別情報、および他の被験者を一意に識別するために使用されることができる他の適切な情報でとすることができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、1つ以上の最近の症候を使用して中央データストアにクエリすることは、複数の他のレコードのうちの各他のレコードについてのスコアを決定することを含む。スコアは、他のレコードの少なくとも一部と被験者のレコードの少なくとも一部との間の類似性を特徴付けることができる。クエリすることは、スコアが閾値を上回るに関連付けられた複数の他のレコードのサブセットであるように他のレコードのセットを定義することをさらに含むことができる。中央データストアのクエリは、人口統計情報の少なくとも一部を使用して他のレコードのセットを識別することを含むことができる。例えば、他のレコードのうちの1つは、年齢、性別、民族性などの人口統計情報の項目を含むデータフィールドを含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザデバイスおよび他のデバイス(例えば、宛先アドレスに関連付けられた宛先デバイス)は、異なる医療機関に関連付けられる。
【0095】
III.B.集約されたユーザ統合に基づく共有可能な処置計画定義の更新
図3は、ユーザによる処置計画定義の統合(例えば、決定木または処置ワークフロー)を監視し、監視結果に基づいて処置計画定義を自動更新するプロセス300を示すフローチャートである。プロセス300は、クラウドサーバ135によって実行されて、ユーザデバイスが症状を有する被験者の集団を処置するための処置計画を定義することを可能にすることができる。ユーザデバイスは、内部または外部のネットワークに接続されたユーザデバイスに処置計画定義を配信してもよい。処置計画定義を受信したユーザデバイスは、処置計画定義をカスタム規則ベースに統合するかどうかを決定することができる。カスタム規則ベースへの統合が監視され、処置計画定義を自動的に修正するために使用されることができる。
【0096】
ブロック310において、クラウドサーバ135は、ユーザデバイスがインターフェースデータをロードしたときに処置計画定義インターフェースを表示させるインターフェースデータを記憶する。処置計画定義インターフェースは、ユーザデバイスが処置計画定義インターフェースにナビゲートするためにクラウドサーバ135にアクセスするときに、ユーザデバイスのセットのうちの各ユーザデバイスに提供される。いくつかの実施形態では、処置計画定義インターフェースは、症状(例えば、リンパ腫)を有する被験者の集団を処置するための処置計画をユーザが定義することを可能にする。
【0097】
ブロック320において、クラウドサーバ135は、通信のセットを受信する。通信のセットのうちの各通信は、ユーザデバイスのセットのうちのユーザデバイスから受信され、ユーザデバイスと処置計画定義インターフェースとの間の相互作用に応答して生成された。いくつかの実施形態では、通信は、例えば、被験者レコードの集団を定義するための1つ以上の基準を含む。各基準は、変数型によって表されてもよい。基準は、被験者レコードのプールをフィルタリングするためのフィルタ条件とすることができる。例えば、リンパ腫を発症し得る被験者に関連付けられた被験者レコードの集団を定義するための基準は、「未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)における異常」および「60歳以上」というフィルタ状態を含むことができる。通信はまた、症状についての特定のタイプの処置を含むことができる。特定のタイプの処置は、被験者レコードの集団によって表される被験者に関連付けられた症状を処置するために提案される行動(例えば、手術を受ける)または非行動(例えば、塩分摂取を減らす)に関連付けられることができる。
【0098】
ブロック330において、クラウドサーバ135は、データレジストリ140またはクラウドネットワーク130内の任意の他の集中サーバなどの中央データストアに規則のセットを記憶する。規則のセットのうちの各規則は、ユーザデバイスからの通信に含まれる1つ以上の基準および特定の処置タイプを含む。例示的な例として、規則は、被験者のリンパ腫を処置するための処置ワークフローを表す。規則は、以下の基準(例えば、「IF」文に続く条件)および次のアクション(例えば、「THEN」文に続く、ユーザによって定義または選択された特定の処置タイプ)を含む。「IF「リンパ節の生検はリンパ腫細胞が存在することを示す」且つ「血液検査はリンパ腫細胞が存在することを示す」場合、THEN「化学療法で処置する」且つ「積極的監視」である。」さらに、規則のセットのうちの各規則は、受信された通信の送信元としてのユーザデバイスに対応する識別子と関連付けて記憶される。
【0099】
ブロック340において、クラウドサーバ135は、処置計画定義インターフェースを介してエンティティ間で利用可能な規則のセットのサブセットを識別する。規則のサブセットは、症状に関連付けられ、評価のために他の医療センターなどの外部システムに配信される規則のセットのサブセットを含むことができる。例えば、規則の特性または規則に関連付けられた識別子を評価することによって、規則のサブセットに含めるために規則が選択されることができる。規則の特性は、記憶された規則に記憶または付加されたコードまたはフラグを含むことができる。コードまたはフラグは、規則が外部システムによって一般に利用可能である(例えば、エンティティによって利用される)ことを示す。
【0100】
ブロック350において、ブロック340において識別された規則のサブセットのうちの各規則について、クラウドサーバ135は、規則との相互作用を監視する。相互作用は、規則をカスタム規則ベースに統合する外部エンティティ(例えば、規則に関連付けられた処置計画を定義したユーザに関連付けられたエンティティの外部)を含むことができる。例えば、外部エンティティ(例えば、別の病院)に関連付けられたユーザデバイスは、外部エンティティによって利用可能な規則を評価する。評価は、規則が外部エンティティによって定義された規則セットに統合するのに適しているかどうかを決定することを含む。規則は、外部エンティティに関連付けられたユーザデバイスが、規則を使用して定義された処置ワークフローが規則に対応する条件を処置するのに適していることを示す場合に適することができる。上記の例示的な例を続けると、リンパ腫を処置するための規則は、外部の医療センターによって利用可能とすることができる。外部の医療センターに関連付けられたユーザは、リンパ腫を処置するための規則が外部の医療センターによって定義された規則セットに統合するのに適していると決定する。したがって、規則が外部医療センターによって定義されたカスタム規則ベースに統合された後、外部医療センターに関連付けられた他のユーザは、カスタム規則ベースから統合規則を選択することによって統合規則を実行することができる。さらに、クラウドサーバ135は、処置計画定義インターフェースが、外部エンティティに関連付けられたユーザデバイスからカスタム規則ベースへの規則の統合に対応する入力を受信した場合に生成または生成させる信号を検出することにより、利用可能な規則の統合を監視する。
【0101】
別の例示的な例として、外部エンティティに関連付けられたユーザデバイスは、処置計画定義を使用して、相互作用によって指定された規則の修正バージョンをカスタム規則ベースに統合する。相互作用によって指定された規則の修正バージョンは、カスタム規則ベースへの統合のために選択された規則の一部である。統合のための規則の一部を選択することは、カスタム規則ベースへの統合のための規則に含まれる全ての基準よりも少ない基準を選択することを含む。上記の例示的な例を続けると、外部エンティティに関連付けられたユーザデバイスは、カスタム規則ベースへの統合のために「IF「リンパ節の生検がリンパ腫細胞の存在を示す」」という基準を選択するが、ユーザデバイスは、カスタム規則ベースへの統合のために「血液検査がリンパ腫細胞の存在を明らかにする」という基準を選択しない。したがって、カスタム規則ベースに統合された規則の相互作用固有の修正バージョンは、「IF「リンパ節の生検はリンパ腫細胞が存在することを示す」場合、THEN「化学療法による処置」且つ「積極的監視」」である。「血液検査がリンパ腫細胞の存在を明らかにする」という基準は、相互作用によって指定された規則の修正バージョンを作成するために規則から削除され、カスタム規則ベースに組み込まれる。
【0102】
ブロック360において、クラウドサーバ135は、相互作用によって指定された規則の修正バージョンが外部エンティティによって定義されたカスタム規則ベースに統合されたことを検出することができる。検出されると、クラウドサーバ135は、クラウドネットワーク130の中央データストアに記憶された規則を更新することができる。規則は、監視された相互作用に基づいて更新されてもよい。この例における「ベース」という用語は、監視された相互作用を「評価した後」または「評価の結果を使用した」ことに対応する。例えば、クラウドサーバ135は、外部エンティティに関連付けられたユーザデバイスが、相互作用によって指定された規則の修正バージョンを統合したことを検出する。相互作用によって指定された規則の修正バージョンの検出に応答して、クラウドサーバ135は、中央データストアに記憶された規則を既存の規則から相互作用によって指定された規則の修正バージョンに更新することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、外部エンティティにわたって利用される更新バージョンを生成することによって規則を更新する。別の元のバージョンは、更新されないままとすることができ、基準および特定のタイプの処置を識別した、受信された1つ以上の通信の送信元としてのユーザデバイスに関連付けられたユーザによって利用可能である。例えば、クラウドサーバ135は、中央データストアに記憶された規則を更新するが、クラウドサーバ135は、中央データストアに記憶された規則のセットのうちの別の規則を更新しない。
【0104】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、更新条件が満たされたときに規則を更新することができる。更新条件は、閾値であってもよい。例えば、閾値は、規則の修正バージョンをそれらのカスタム規則ベースに統合した外部エンティティの数または割合とすることができる。別の例として、更新条件は、訓練された機械学習モデルの出力を使用して決定されてもよい。例示すると、クラウドサーバ135は、外部エンティティから受信した検出信号を、規則を利用するかどうかおよびいつ利用するか、および/または規則の更新バージョンを利用するかどうかおよびいつ利用するかを自動的に決定するマルチアームバンディットモデルに入力することができる。検出された信号は、外部エンティティがそのカスタム規則ベースに規則を統合したかどうか、または外部エンティティが相互作用によって指定された規則の修正バージョンを統合したかどうかを示す。
【0105】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、同じ変数型に対応する基準を含み、同じまたは類似のタイプの処置を識別する規則のセットのうちの複数の規則を識別する。変数型は、基準の条件として用いられる値や変数であってもよい。規則の基準の変数型はまた、被験者の集団をサブグループに制約する条件の任意の値であってもよい。例えば、妊婦の集団を規定する規則の変数型は、「IF「被験者は妊娠している」」である。クラウドサーバ135は、新たな規則が一般にエンティティ間で利用可能である場合、複数の規則の要約表現である新たな規則を決定する。
【0106】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、被験者の属性のセットを受信するように構成された別のインターフェースを提供する。例えば、ユーザデバイスを操作するユーザは、他のインターフェースにアクセスし、他のインターフェースを使用して属性のセットを含む被験者レコードを選択する。被験者レコードの選択は、クラウドサーバ135に被験者の属性のセットを受信させることができる。クラウドサーバ135は、基準が満たされる特定の規則を、被験者の属性のセットに基づいて識別する(例えば、決定する)。例えば、中央データストアに記憶された規則の基準に対して被験者レコードの属性のセットを評価する。例示すると、属性のセットが「妊娠している」という値を含むデータフィールドを含む場合、および規則が「IF「被験者が妊娠している」」という単一の基準を含む場合、クラウドサーバ135は、この規則を識別する。クラウドサーバ135は、特定の規則および特定の規則に関連付けられた各特定のタイプの処理を提示するために他のインターフェースを更新する。
【0107】
いくつかの実施形態では、規則の基準は、特定の人口統計変数および/または特定の症候型変数に関連する変数型である。人口統計学的変数の非限定的な例は、年齢、性別、民族性、人種、収入レベル、教育レベル、場所、および人口統計学的情報の他の適切な項目などの、被験者の人口統計学を特徴付ける任意の項目の情報を含む。症候型変数の非限定的な例は、被験者が現在または最近(例えば、最後の来院時、摂取時、24時間以内、1週間以内)特定の症候(例えば、呼吸困難、意識消失、閾値温度を超える発熱、閾値血圧を超える血圧など)を経験したかどうかを示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、データレジストリ140に記憶された被験者レコードなどの被験者レコードのレジストリ内のデータを監視する。クラウドサーバ135は、(ブロック340において識別された)規則のサブセットのうちの各規則について、被験者レコードのレジストリ内のデータを監視する。クラウドサーバ135は、規則の基準が満たされ、特定の処置が被験者に以前に規定された被験者のセットを識別する。クラウドサーバ135は、被験者セットのそれぞれについて、評価もしくは検査から、または評価もしくは検査を使用して示されるような被験者の報告された状態を識別する。例えば、報告された状態は、被験者が退院したかどうか、被験者が生存しているかどうか、被験者の血圧の測定値、被験者が睡眠段階中に目覚めた回数、および他の適切な状態などの態様における被験者の状態を特徴付ける任意の情報である。クラウドサーバ135は、報告された状態に基づいて、特定の処置に対する被験者のセットの推定反応性メトリックを決定する。例えば、規則の特定の処置が投薬を処方することである場合、推定反応性メトリックは、投薬が被験者によって経験された症候または症状に対処した程度の表現である。非限定的な例として、被験者のセットの推定反応性メトリックは、被験者のセットのうちの各被験者に割り当てられたスコアの平均、加重平均、または任意の合計とすることができる。スコアは、処置に対する被験者の反応性の有効性を表すかまたは測定することができる。クラウドサーバ135は、規則のセットのうちのサブセットおよび被験者のセットの推定反応性メトリックを処置計画定義インターフェースに表示または提示させることができる。
【0109】
III.C.類似の被験者に処方された処置を使用した関連する有効性を伴う処置推奨の提示
図4は、被験者の処置を推奨するためのプロセス400を示すフローチャートである。プロセス400は、被験者についての推奨処置および各推奨処置の有効性を医療エンティティに関連付けられたユーザデバイスに表示するために、クラウドサーバ135によって実行されることができる。推奨される処置は、類似の被験者に以前に処方された処置の有効性を評価した結果を使用して識別されることができる。
【0110】
ブロック410において、クラウドサーバ135は、被験者の態様を特徴付ける被験者レコードに対応する入力を受信する。入力は、エンティティに関連付けられたユーザデバイスから受信される。さらに、入力は、被験者レコードのレジストリを管理するように構成されたプラットフォームのインスタンスに関連付けられたインターフェースを使用して被験者レコードを選択または識別するユーザデバイスに応答して受信される。ユーザデバイスは、クラウドネットワーク130内に接続されたウェブサーバ(図示せず)に記憶されたインターフェースデータをロードすることによってインターフェースにアクセスすることができる。ウェブサーバは、クラウドサーバ135に含まれてもよく、またはクラウドサーバ上で実行されてもよい。
【0111】
ブロック420において、クラウドサーバ135は、ブロック410において受信された被験者レコードから被験者属性のセットを抽出する。被験者属性は、被験者の態様を特徴付ける。被験者属性の非限定的な例は、電子健康レコードに見られる任意の情報、任意の人口統計情報、年齢、性別、民族、最近または過去の症候、症状、症状の重症度、および被験者を特徴付ける任意の他の適切な情報を含む。
【0112】
ブロック430において、クラウドサーバ135は、被験者属性のセットを使用して被験者レコードの配列表現を生成する。例えば、配列表現は、被験者レコードに含まれる値のベクトル表現である。ベクトル表現は、ユークリッド空間などのドメイン空間内のベクトルとすることができる。しかしながら、配列表現は、被験者レコードのデータフィールドの値の任意の数値表現とすることができる。いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、被験者レコードの配列表現の被験者属性のセットを表す値を生成するために、特異値分解(SVD)などの特徴分解技術を実行することができる。
【0113】
ブロック440において、クラウドサーバ135は、複数の他の被験者を特徴付ける他の配列表現のセットにアクセスする。他の配列表現のセットに含まれる配列表現は、別の被験者(例えば、複数の他の被験者のうちの1人)を特徴付ける被験者レコードのベクトル表現とすることができる。
【0114】
ブロック450において、クラウドサーバ135は、被験者を表す配列表現と他の被験者のそれぞれの配列表現との間の類似性を表す類似性スコアを決定する。例えば、類似性スコアは、被験者を表す配列表現と他の被験者を表す配列表現との間の(ドメイン空間における)距離の関数を用いて計算される。例示および非限定的な例として、「0」から「1」の範囲を使用して類似性スコアが計算されることができ、「0」は定義された閾値を超える距離を表し、「1」は配列表現がそれらの間に距離を有しないことを表す。
【0115】
ブロック460において、クラウドサーバ135は、複数の他の被験者の第1のサブセットを識別する。被験者に関連付けられた類似性スコアが所定の絶対閾値または相対閾値を上回る場合、被験者は、第1のサブセットに含められてもよい。同様に、ブロック470において、クラウドサーバは、複数の他の被験者の第2のサブセットを識別する。しかしながら、被験者の類似性スコアが所定の範囲内にある場合、被験者は、第2のサブセットに含まれてもよい。
【0116】
ブロック480において、クラウドサーバ135は、複数の他の被験者の第1のサブセットおよび第2のサブセットにおける各被験者についてのレコードデータを取得する。レコードデータは、被験者を特徴付けるレコードに含まれる属性を含む。例えば、レコードデータは、被験者が受けた処置および処置に対する被験者の反応性を識別する。処置に対する反応性は、テキスト(例えば、「被験者は処置に肯定的に反応した」)または被験者が処置に対して肯定的または否定的に反応した程度を示すスコア(例えば、「0」が否定的な反応性を示し、「1」が肯定的な反応性を示す、「0」から「1」までのスコア)によって表されることができる。
【0117】
ブロック490において、クラウドサーバ135は、ユーザデバイス上のインターフェースに提示される出力を生成する。出力は、例えば、第1および第2のサブセットにおいて他の被験者によって受けられた処置、第1および第2のサブセットにおける被験者の処置反応性、ならびに第2のサブセットにおける被験者の被験者属性と被験者の被験者属性との間の差異を示すことができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、被験者および第1または第2のサブセットからの被験者のうちの1人が同じ医療エンティティによって処置されているかまたは処置されたと決定する。クラウドサーバ135は、第1または第2のサブセットの被験者および別の被験者が、異なる医療エンティティによって処置されているかまたは処置されたと決定する。クラウドサーバ135は、インターフェースを介して被験者のレコードの異なる難読化バージョンを利用することができる。技術的利点として、クラウドベースのアプリケーションは、異なる管轄区域のデータプライバシー規則によってデータ共有に課される様々な制約に基づいて、エンティティにレコードの異なる難読化バージョンを自動的に提供することができる。いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、最近傍学習技術を使用して第1のサブセットおよび第2のサブセットを識別する。
【0119】
III.D.外部エンティティからのクエリ結果を自動的に難読化する
図5は、データプライバシー規則に従うようにクエリ結果を難読化するためのプロセス500を示すフローチャートである。プロセス500は、外部エンティティとの被験者レコードのデータ共有がデータプライバシー規則に準拠していることを保証する実行規則としてクラウドサーバ135によって実行されてもよい。クラウドベースのアプリケーションは、ユーザデバイスがクエリ制約を満たす被験者レコードについてデータレジストリ140にクエリすることを可能にすることができる。しかしながら、クエリ結果は、外部エンティティから生じるデータレコードを含むことができる。したがって、プロセス500は、クラウドサーバ135が、データプライバシー規則に準拠しながら、外部エンティティからの処置に関する追加情報をユーザデバイスに提供することを可能にする。
【0120】
ブロック510において、クラウドサーバ135は、第1のエンティティに関連付けられたユーザデバイスからクエリを受信する。例えば、第1のエンティティは、被験者レコードの第1のセットに関連付けられた医療センターである。クエリは、病状に関連する症候のセット、またはデータレジストリ140のクエリ検索を制約する任意の他の情報を含むことができる。
【0121】
ブロック520において、クラウドサーバ135は、ユーザデバイスから受信したクエリを使用してデータベースにクエリする。ブロック530において、クラウドサーバ135は、症候のセットに対応し、病状に関連付けられたクエリ結果のデータセットを生成する。例えば、ユーザデバイスは、リンパ腫と診断された被験者の被験者レコードに対するクエリを送信する。クエリ結果は、(第1のエンティティに由来するか、または第1のエンティティにおいて作成された)第1の被験者レコードのセットからの少なくとも1つの被験者レコードと、第2のエンティティに関連付けられた被験者レコードの第2のセットからの少なくとも1つの被験者レコード(例えば、第1のエンティティとは異なる医療センター)とを含む。第1の被験者レコードのセットからの被験者レコードおよび第2の被験者レコードのセットからの被験者レコードのそれぞれは、被験者属性のセットを含むことができる。被験者属性は、被験者の任意の態様を特徴付けることができる。
【0122】
ブロック540において、クラウドサーバ135は、第1の被験者レコードセットに含まれる被験者レコードについて、これらのレコードが第1のエンティティに由来するため、被験者属性セット全体をユーザデバイスに提示する(例えば、利用するか、そうでなければ利用可能とする)。被験者レコードを完全に提示することは、被験者レコードに含まれる属性のセットを、インターフェースを使用した評価または相互作用のためにユーザデバイスによって利用可能にすることを含む。ブロック550において、クラウドサーバ135はまた、または代替として、第2の被験者レコードセットに含まれる各被験者レコードについての被験者属性セットの不完全なサブセットをユーザデバイスに利用する。被験者属性のセットの不完全なサブセットを提供することは、被験者属性の不完全なサブセットを使用して被験者を一意に識別することができないため、被験者に匿名性を提供する。例えば、不完全なサブセットを提供することは、10個の被験者属性に関連付けられた被験者を匿名化するために10個の被験者属性のうちの利用可能な4つを含むことができる。いくつかの実施形態では、ブロック550において、クラウドサーバ135は、第2の被験者に含まれる各被験者レコードについて難読化された被験者属性のセットを利用する。属性のセットを難読化することは、提供される情報の粒度を低減することを含む。例えば、被験者の住所の被験者属性を利用する代わりに、難読化属性は、郵便番号または被験者が生きている州であってもよい。不完全な被験者または難読化サブセットが利用可能であるかどうかにかかわらず、クラウドサーバ135は、被験者レコードに関連付けられた被験者を匿名化する。
【0123】
III.E.自己学習知識ベースとのチャットボット統合
図6は、チャットボットなどのボットスクリプトを使用してユーザと通信するためのプロセス600を示すフローチャートである。プロセス600は、ユーザによって提供された新たな質問を知識ベース内の既存の質問に自動的にリンクして、新たな質問に対する応答を提供するためにクラウドサーバ135によって実行されることができる。チャットボットは、症状に関連付けられた質問に回答を提供するように構成されることができる。
【0124】
ブロック605において、クラウドサーバ135は、回答のセットを含む知識ベースを定義する。知識ベースは、メモリに記憶されたデータ構造であってもよい。データ構造は、定義された質問に対する回答のセットを表すテキストを記憶する。各回答は、通信セッション中にユーザデバイスから受信した質問に応答して、チャットボットによって選択可能とすることができる。知識ベースは、自動的に定義されてもよく(例えば、データソースからテキストを取得し、自然言語処理技術を使用してテキストをパースすることによって)、またはユーザ定義されてもよい(例えば、研究者または医師によって)。
【0125】
ブロック610において、クラウドサーバ135は、特定のユーザデバイスから通信を受信する。通信は、特定のチャットボットとの通信セッションを開始する要求に対応する。例えば、医師または被験者は、チャットセッションにおいてチャットボットと通信するためにユーザデバイスを操作することができる。クラウドサーバ135(またはクラウドサーバ135内に記憶されたモジュール)は、ユーザデバイスとチャットボットとの間の通信セッションの確立を管理するかまたは容易にすることができる。ブロック615において、クラウドサーバ135は、通信セッション中に特定のユーザデバイスから特定の質問を受信する。質問は、自然言語処理技術を使用して処理される文字列とすることができる。
【0126】
ブロック620において、クラウドサーバ135は、特定の質問から抽出された少なくともいくつかの単語を使用して知識ベースにクエリする。単語は、自然言語処理技術を使用して、特定の質問を表す文字列から抽出されてもよい。ブロック625において、クラウドサーバ135は、知識ベースが特定の質問の表現を含まないと決定する。この場合、受信された質問は、チャットボットに新たに投稿されてもよい。ブロック630において、クラウドサーバ135は、知識ベースから別の質問表現を識別する。クラウドサーバ135は、ユーザデバイスから受信した質問を知識ベースに記憶された他の質問表現と比較することによって、別の質問表現を識別することができる。例えば、自然言語処理技術を使用した質問表現の分析に基づいて類似性が決定された場合、クラウドサーバ135は、他の質問表現を識別する。
【0127】
ブロック635において、クラウドサーバ135は、他の質問表現と知識ベースにおいて関連付けられた回答のセットのうちの回答を取得する。ブロック640において、ブロック635において取得された回答は、たとえ知識ベースが受信された質問の表現を含まなかったとしても、受信された質問に対する回答として特定のユーザデバイスに送信される。ブロック645において、クラウドサーバ135は、特定のユーザデバイスから指示を受信する。例えば、指示は、チャットボットによって提供された回答が特定の質問に応答したことを示すユーザデバイスに応答して受信されてもよい。
【0128】
ブロック650において、クラウドサーバ135は、特定の質問の表現または特定の質問の異なる表現を含むように知識ベースを更新する。例えば、質問の表現を記憶することは、質問に含まれるキーワードをデータ構造に記憶することを含む。クラウドサーバ135はまた、特定の質問の同じまたは異なる表現を、特定のユーザデバイスに送信されたより多くの回答と関連付けることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、特定のユーザデバイスに関連付けられた被験者レコードにアクセスする。クラウドサーバ135は、特定の質問に対する複数の回答を決定する。次いで、クラウドサーバ135は、回答のセットから回答を選択する。しかしながら、回答の選択は、特定のユーザデバイスに関連付けられた被験者レコードに含まれる1つ以上の値に少なくとも部分的に基づく。例えば、被験者のレコードに含まれる値は、被験者が最近経験した症候を表すことができる。チャットボットは、被験者が最近経験した症候に応じた回答を選択することができる。
【0130】
III.F.COVID-19を有する被験者を診断するためのモジュール
図7は、特定の実施形態にかかる、クラウドベースのアプリケーションを使用して、COVID-19を有する被験者を診断するため、および/または被験者を処置するための提案処置のセットを決定するためのプロセス700の例を示すフローチャートである。プロセス700は、クラウドサーバ135によって実行されることができる。例えば、クラウドサーバ135は、インターフェースデータを記憶することができ、インターフェースデータは、ユーザデバイスにロードされると、インターフェースをユーザデバイスに表示させる。インターフェースは、処置されている被験者に関連するユーザ(例えば、医師)から入力データを受信するように構成されることができる。入力データは、インターフェースを使用してクラウドサーバ135に送信することができる。例えば、入力データは、被験者の併存症、発熱、咳、息切れ(呼吸困難)、筋痛、悪寒、喉の痛み、および新たな味覚または嗅覚の喪失など、被験者が経験している任意のCOVID-19関連症候を含むことができる。あまり一般的でない症候は、悪心、嘔吐または下痢などの胃腸症候を含む。
【0131】
クラウドサーバ135は、入力データを処理し、被験者がCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応することを示す出力を生成することができる。さらに、被験者内のCOVID-19を診断および処置するためのモジュールは、クラウドベースのアプリケーションに統合されることができる。例えば、モジュールは、クラウドサーバ135に記憶された実行可能コードを含むことができる。モジュールは、ユーザに提供されるクラウドベースのアプリケーションの一部としてクラウドサーバ135によって実行されることができるCOVID-19を診断または処置するための1つ以上の規則またはプロセスを含むことができる。
【0132】
プロセス700は、ブロック710において開始し、クラウドサーバ135は、被験者レコードの識別子に対応する入力を受信する。例えば、入力は、ユーザデバイスがさらなる評価のために被験者レコードを選択することを可能にするインターフェースから受信される。ユーザデバイスを操作する医師は、インターフェースをロードし、次いでインターフェースを使用して被験者レコードの識別子を選択することができる。識別子は、被験者レコードを一意に識別するコードまたは任意の情報とすることができる。識別子の非限定的な例は、被験者の氏名、連絡先情報、被験者に関連付けられた識別子(例えば、ランダム化、擬似ランダム化または逐次プロセスを使用して最初に割り当てられる)、および他の適切な識別情報を含む。ユーザデバイスは、被験者レコードの識別子を選択して、クラウドサーバ135に、被験者レコード内の情報がCOVID-19の特性および/またはCOVID-19であるとの診断と一致するかどうかの予測を生成させることができる。
【0133】
ブロック720において、クラウドサーバ135は、被験者レコードの識別子を受信し、データストアから被験者レコードを取得する。被験者レコードは、被験者を特徴付ける被験者属性のセットを含む。被験者属性は、被験者を記述する健康情報などの任意の情報を含む被験者レコード内の特定のデータフィールドの値とすることができる。被験者属性の非限定的な例は、氏名、年齢、性別、身長、体重、ボディマス指数(BMI)、血圧および他の生命に関する統計、住所、既往歴、以前の診断または症状、診断の重症度(例えば、COVID-19または別の症状)、既存の病状(例えば、COVID-19または別の症状)の重症度、被験者が喫煙者であるかどうか、被験者がCOVID-19または任意のウイルス性疾患の疑いのある診断(例えば、未確定)または確定診断によって医療施設に入院しているかどうか、ウイルス性疾患が、F.Hoffman-La Roche AGによって提供されるcobas(登録商標)SARS-CoV-2 RT-PCR検査などのRT-PCR-ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイと組み合わせた逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応)または他の診断ツール(例えば、上記のセクションII.Aに記載されている任意の診断ツール)によって確定されるかどうか、被験者が経験した症候(例えば、咳、発熱、筋肉痛、息切れ、喉の痛み、嗅覚の喪失、結膜炎、胃腸症候、頭痛、頭痛など)、ならびに被験者を特徴付ける他の適切な属性を含む。被験者属性(例えば、年齢、既存の病状、以前の手術または以前の病状)は、COVID-19の併存症とすることができる。例示的な例として、被験者レコードの被験者属性のうちの1つは、F.Hoffman-La Roche AGによって提供されるcobas(登録商標)SARS-CoV-2検査を含むことができ、これは、被験者からの鼻咽頭および中咽頭スワブ試料におけるSARS-CoV-2の定性的検出のために設計されたリアルタイムRT-PCR検査である。他の市販のCOVID-19 PCR検査は、これらに限定されないが、Diagnostic Solutions Laboratory(登録商標)によって提供されるCOVID-19アッセイPCR検査、Mayo Clinic Laboratoriesによって提供されるPCR検査であるSARS-CoV-2分子検出アッセイ、Seimens Healthineers/Fast Track Diagnosticsによって提供されるPCR検査であるFast Track Diagnostics(FTD)SARS-CoV-2アッセイ、Stanford Health Care Clinical Virology Laboratoryによって提供されるSARS-CoV-2 PCRアッセイ、Abbott(登録商標)によって提供されるPCR検査であるリアルタイムSARS-CoV-2 EUA検査、および任意の他の適切な市販のCOVID-19診断検査を含む。
【0134】
ブロック730において、クラウドサーバ135は、被験者についての配列表現を生成する。クラウドサーバ135は、被験者レコードに含まれる被験者属性のセットを、ユークリッド空間などのドメイン空間内で表現されるベクトルに変換することができる。例えば、クラウドサーバ135は、各属性についての1つ以上の数値表現を生成するために被験者属性のセットに対してSVDを実行し、次いで数値表現をベクトル表現に連結または他の様態で組み合わせることができる。
【0135】
ブロック740において、クラウドサーバ135は、出力を生成するために、訓練された機械学習モデルに被験者についての配列表現を入力することができる。訓練された機械学習モデルは、データレジストリに記憶された他の被験者レコードのセットを使用して学習されたパラメータのセットを含むことができる。パラメータのセットのそれぞれは、学習された重み(例えば、ニューラルネットワーク内の一対のノード間)または学習された係数など、訓練中に学習された値を含むことができる。訓練された機械学習モデルは、1つ以上のハイパーパラメータを使用してさらに構成されてもよく、および/または1つ以上のハイパーパラメータを使用して訓練されていてもよい。各ハイパーパラメータは、訓練とは無関係に値セットを含むことができる。例えば、ハイパーパラメータは、ニューラルネットワークの層の数、ニューラルネットワークの1つ以上の層のそれぞれのノードの数、学習率などを含むことができる。他の被験者レコードのセットのうちの他の各被験者レコードは、COVID-19に感染し、潜在的にその後処置を使用して処置された別の被験者に関連付けられることができる。他の被験者レコードのセットのうちの他の各被験者レコードは、他の被験者を特徴付ける他の被験者属性のセットを含むことができる。場合によっては、他の被験者レコードのセットのうちの他の各被験者レコードは、被験者の処置および/またはその後もしくは最近の状態(例えば、回復した、人工呼吸器に入れられた、集中治療室に入れられた、死亡した、死因など)を識別する。他の被験者レコードのセットは、機械学習モデルの訓練データとして使用されることができる。
【0136】
訓練された機械学習モデルは、パラメータのセットを使用して配列表現入力を出力に変換するように構成された1つ以上の関数を含むことができる。場合によっては、出力は、サイズ削減された出力であってもよく、これは、訓練された機械学習モデルによって生成された入力または初期出力の値の量よりも少ない値を有する出力である。例えば、訓練された機械学習モデルに供給される入力の次元は、[1,n]であってもよく、nは、複数の被験者属性の長さおよび/または複数の被験者属性の集約表現である。サイズ削減された出力は、可能な分類のリストからの単一の分類または最高ランクの分類(例えば、機械学習結果に基づいて生成されたランキングに基づく)を含むことができる。場合によっては、入力は、複数の被験者属性を表す値のセットを含み、次元削減出力は、入力よりも少ない値(例えば、1、2、3、または4つの値)を含む。場合によっては、出力のサイズおよび/または次元は、入力のサイズおよび/または次元よりも同じまたは大きい。例えば、出力は、累積出力(例えば、予測された診断または可能性のある処置を表す)とともに各入力値に起因する有意性を識別することができる。
【0137】
サイズ削減された出力は、訓練された機械学習モデルの初期出力から削減または集約されてもよい。例えば、関数は、訓練された機械学習モデルの入力の数値を訓練された機械学習モデルの出力の数値に変換することができる。関数は、訓練された機械学習モデルの出力を生成するために、配列表現と乗算されるパラメータ(例えば、重み)のセットの組み合わせ(例えば、重み付けされた組み合わせ)を表すことができる。
【0138】
ブロック750において、クラウドサーバ135は、訓練された機械学習モデルの出力に基づいて、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応すると決定する。例えば、COVID-19またはCOVID-19の疑いのある診断を有する被験者を診断するための基準は、症候の以下の例のいずれか1つ以上の存在を含む:咳、発熱、筋肉痛または疼痛、息切れ、喉の痛み、味覚または嗅覚の喪失、結膜炎、胃腸症候、頭の冷え、頭痛、頻呼吸、悪寒、悪寒を伴う振戦、炎症、嘔吐、下痢、発疹、唇のひび割れ、充血、手または足の腫れ、関節痛、めまい、顔色、疲労、胸痛、COVID-19検査の陽性または疑われる陽性結果、被験者が喫煙者であるかどうか、および他の適切な症候。いくつかの実施形態では、基準は、政府機関の医療施設に関連付けられた医師または他の医療専門家によって開発される。他の実施形態では、基準は、訓練された機械学習モデルを使用して自動的に学習される。例えば、基準は、機械学習モデルを訓練して、COVID-19と診断された被験者(例えば、COVID-19試験の確認された陽性結果)にわたる被験者属性または症候のパターンを検出することによって学習される。
【0139】
クラウドサーバ135は、訓練された機械学習モデルの出力に基づいて、特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因を決定することができる。クラウドサーバ135は、COVID-19を有する以前に診断された他の被験者(例えば、他の被験者レコードセットに関連付けられた他の被験者)にわたって処方された処置のセットを決定することができ、および/または可能性のあるCOVID-19処置のセットを取得することができる。COVID-19処置の非限定的な例は、上記のセクションII.Bに記載されているCOVID-19のための任意の処置、安静、水和の増加、および/または研究されている任意の治療処置(レムデシビル、トシリズマブ、ベータインターフェロン、ファビピラビル、酸素、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、回復期血漿、コルヒチン、イベルメクチン、および任意の他の適切な治療処置を含むが、これらに限定されない)を含む。他の被験者にわたって提供される処置のセットのうちの各処置は、1つ以上の因子に関連付けられることができる。COVID-19のために処置された他の被験者のグループのうち、特定の処置を処方された被験者のサブグループは、要因のセットに関連付けられることができる。例えば、20~25歳であり、そうでなければ併存症または健康状態を有しない被験者のサブグループの大部分または全ては、安静、水和および発熱のための薬物療法を伴う自宅からの回復の処置が処方されていてもよい。さらに、被験者のサブグループは、抗ウイルス薬を用いない在宅での回復の処置に対して完全にまたは主に肯定的に反応することができる。別の例として、60~70歳であり、心疾患の併存症を有する被験者のサブグループの少なくとも一部は、(少なくとも最初に)在宅での回復の処置を処方されていてもよい。20~25歳の被験者のサブグループとは異なり、このサブグループの被験者の少なくとも一部は、例えば、サブグループの被験者において進行するウイルス性疾患によって決定されるように、処置に対して陽性に反応しなかった可能性がある。この例では、60~70歳の間の因子および心疾患の併存症は、家庭回復の処置に対する否定的な反応性に対応する。さらに別の例として、60~70歳の被験者の同じサブグループおよび心疾患の併存症について、レムデシビルの処置は、症候の全体的な減少、軽減、または停止によって決定されるように、サブグループの被験者の陽性反応性に対応することがある。これらのタイプのデータは、異なる被験者属性に基づいて異なるタイプの処置推奨を予測するように訓練された機械学習モデルをもたらすことができる。
【0140】
ブロック760において、クラウドサーバ135は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応するという指示、および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因をインターフェース上に出力することができる。例示的な例として、インターフェースは、被験者の特定の被験者属性(例えば、被験者が経験する症候)がCOVID-19診断に対応するという指示を表示する。インターフェースは、COVID-19診断に対応する被験者の被験者属性(例えば、年齢閾値よりも高い、および/または喫煙歴を有する)を含むリストを表示する。別の例示的な例として、インターフェースは、COVID-19についての可能な処置のリストを表示する。リスト内の各可能な処置の隣に、インターフェースは、処置に対する被験者の可能性のある反応性を表すスコアまたは視覚インジケータを表示する。可能性のある反応性は、処置と、処置を処方された被験者の被験者属性と、それらの被験者の反応性との間のパターンを学習するように訓練された訓練済み機械学習モデルの出力とに基づいて決定される。被験者のCOVID-19処置を探索している医師は、可能な処置のリストおよび各処置に対する被験者の可能性のある反応性を見ることができる。
【0141】
図8は、COVID-19と診断された被験者との接触を追跡するためのプロセス800を示すフローチャートである。プロセス800は、図7に関して説明したように、クラウドベースのアプリケーションに統合されたCOVID-19モジュールの機能としてクラウドサーバ135によって実行されることができる。例えば、クラウドサーバ135は、インターフェースデータを記憶することができ、インターフェースデータは、ユーザデバイスにロードされると、インターフェースをユーザデバイスに表示させる。インターフェースは、被験者がCOVID-19と診断された後、医師および接触追跡中の被験者を支援するために被験者の可能性のある移動位置を表示するように構成されることができる。クラウドサーバ135は、医師および/または被験者が接触追跡を容易にして、被験者によって感染した可能性がある他の個人を決定する接触追跡プロトコル810を実行することができる。多くの場合、被験者または医師は、被験者が記憶することができないことに起因して、または被験者がアクセスできないことに起因して(例えば、被験者がICUにいる場合)、堅牢な接触追跡を実行することが困難であり、したがって、接触追跡プロトコル810を使用して接触追跡プロセスを支援することができる。接触追跡プロトコル810は、クラウドベースのアプリケーションに統合されることができるCOVID-19モジュールに含まれる実行可能コードとすることができる。
【0142】
接触追跡プロトコル810は、被験者がCOVID-19と診断された後(例えば、図7のブロック760の後)、自動的にまたは手動で実行されることができる。例えば、接触追跡プロトコル810は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して実行される。被験者は、被験者の症候に基づいてCOVID-19の疑いのある診断を確定するために、COVID-19についてさらに検査されることができる。疑わしい診断または確定診断の後、クラウドサーバ135は、接触追跡プロトコル810を実行して、被験者が移動した可能性のある場所または被験者の可能性のある人との接触リストを識別し、処置する医師および/または接触追跡中の被験者を支援する。
【0143】
ブロック801において、クラウドサーバ135は、被験者についての配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力する。他の訓練された機械学習モデルは、図7を参照して説明した機械学習モデルとは異なるモデルであってもよい。図8に関して説明した訓練された機械学習モデルは、被験者の接触可能性位置を示す出力を生成するように訓練されていてもよい。機械学習モデルは、ロジスティック回帰モデル、アンサンブル学習モデル、最近傍もしくは協調フィルタリングモデル、または任意の他の適切なタイプの機械学習モデルとして構成されることができる。例えば、クラウドサーバ135は、被験者の被験者レコードに含まれる1つ以上の被験者属性に基づいて、被験者が大学生であることを検出してもよい。図8に関して説明した訓練された機械学習モデルは、被験者がそこを移動した可能性に基づいて調査するための推奨位置を出力するように訓練されることができる。学生である被験者について、訓練された機械学習モデルは、接触追跡が、被験者の学校、被験者の宿舎、学生がよく勉強する学生のキャンパスの近くの1つ以上のコーヒーショップなどにおける他の学生との可能性のある接触を評価することを含むことを推奨することができる。別の例として、ヘルスケア専門家(HCP)である被験者について、訓練された機械学習モデルは、接触追跡が、HCPの医療施設またはHCPの集合住宅または家庭における個人との可能性のある接触を評価することを含むことを推奨することができる。
【0144】
他の訓練された機械学習モデル(図8に関して説明したモデル)は、他の被験者レコードのセットおよび/または第三者データセットなどの任意の他のデータセットを使用して訓練されることができる。いくつかの実施形態では、他の訓練された機械学習モデルは、医療エンティティまたは政府エンティティに対して実行された以前の接触追跡に基づいて訓練されてもよい。例えば、訓練データセットは、COVID-19と診断された他の被験者についての接触追跡の他の例を含むことができる。訓練データセットは、別の被験者、その被験者の属性のセット、およびその被験者によって識別された接触可能性位置のリストを含むことができる。訓練データはまた、人との接触可能性が発見されたか否か、および/またはそれらの人との接触可能性が被験者に感染した可能性があるか否かの表示を含むことができる。他の訓練された機械学習モデルは、訓練データ内のパターンまたは他の相関を検出するように訓練されることができる。
【0145】
ブロック802において、クラウドサーバ135は、他の訓練された機械学習モデルの他の出力に基づいて、被験者に関連付けられた接触可能性位置のセットを決定する。接触可能性位置は、被験者が確率的に移動した可能性があるか、または別の方法で訪問された可能性が高い位置である。接触可能性位置のセットのうちの各接触可能性位置は、被験者が移動した可能性のある位置(例えば、特定の大学キャンパス)または位置タイプ(例えば、郵便番号におけるコーヒーショップ)を示す。
【0146】
ブロック803において、クラウドサーバ135は、被験者が症候を呈し始めてからの日数を決定する。被験者が症候を呈し始めてからの日数は、被験者によって放出されているウイルス量のサイズを示す。一般に、ウイルスに感染した被験者によって放出されるウイルス量のサイズは、症候が始まった後の期間にわたって増加する。例えば、所与の日に、2日前に症候を呈し始めた被験者は、10日前に症候を呈し始めた別の被験者よりも少ない量の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルスを放出している可能性がある。
【0147】
ブロック804において、クラウドサーバ135は、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットを選択する。接触可能性位置のセットから選択された不完全なサブセットのサイズは、被験者が症候を呈し始めてからの日数に基づいて決定されることができる。例えば、不完全なサブセットのサイズは、被験者が症候を呈している時間が長いほど、被験者によって放出されたウイルス量のサイズが大きいため、症候が始まってからの日数に比例する(被験者がまだ回復していないと仮定する)。接触可能性位置のセットの不完全なサブセットのサイズは、接触追跡の一部として調査する接触可能性位置の数に対応することができる。例示的な例として、被験者が医療施設に入院した日に、被験者が1日だけ症候を呈している場合、接触可能性位置のサブセットは、被験者の自宅のみを含むことができる。しかしながら、被験者が医療施設に入院した日に、被験者が12日間症候を呈している場合、接触可能性位置のサブセットは、他の個体に感染するリスクが高いため、調査する可能性のあるより多くの位置を含むことができる。したがって、接触可能性場所のサブセットは、被験者のアパート、近隣のアパート、アパートの建物の郵便仕分け室、被験者のジム、症候を呈してから被験者が参加した任意の社会的集まりなどを含むことができる。
【0148】
ブロック805において、クラウドサーバ135は、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットの各接触可能性位置に関連付けられた1人以上の個人に通知する通信を送信させるための通信ワークフローを生成する。例えば、通信ワークフローは、医療従事者(例えば、看護師)が接触可能性場所に関連付けられた個人と通信するための情報を取得または連絡するステップを含むことができる。接触可能性位置のサブセットが近隣のアパートを含む場合、通信ワークフローは、医療従事者がそのアパートに住んでいる近隣者に連絡するための命令を含む。通信ワークフローは、被験者が不完全なサブセットに含まれる各接触可能性位置に関連付けられた個人に通知することを承認または認可した後に生成されることができる。送信される通信の非限定的な例は、電話、電子メール(リンクを含む)、テレビ会議、電子メール、直接訪問、および他の適切な形態の通信を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、クラウドサーバ135は、通信に対する1つ以上の応答を受信する(例えば、COVID-19と診断された被験者の隣接者などの個人から)。クラウドサーバ135は、通信に対する1つ以上の応答を使用して、人との1つ以上の接触可能性を識別する。クラウドサーバ135は、人との1つ以上の接触可能性のうちの各人との接触可能性について、人との接触可能性にCOVID-19検査を割り当てるための検査要求ワークフローを生成することができる。検査要求ワークフローは、利用可能なCOVID-19検査の数を決定することと、人との接触可能性についてのCOVID-19検査を選択または予約することとを含むことができる。例えば、試験要求ワークフローは、F.Hoffman-La Roche AGによって提供されるcobas(登録商標)SARS-CoV-2 RT-PCR検査を選択することができる。
【0150】
図9は、被験者を処置するための提案処置および対応する信頼スコアのセットを決定するためのプロセス900を示すフローチャートである。プロセス900は、図7に関して説明したように、クラウドベースのアプリケーションに統合されたCOVID-19モジュールの機能としてクラウドサーバ135によって実行されることができる。例えば、クラウドサーバ135は、インターフェースデータを記憶することができ、インターフェースデータは、ユーザデバイスにロードされると、インターフェースをユーザデバイスに表示させる。インターフェースは、COVID-19を有する被験者を処置するための提案処置のセットと、各提案処置について、提案処置の被験者の予測された反応性を表す視覚的インジケータとを表示するように構成されることができる。クラウドサーバ135は、実行可能コードを実行してプロセス900を実行することができ、これは医師がCOVID-19と診断された被験者の処置を選択するのを支援する。プロセス900は、クラウドベースのアプリケーションに統合されることができるCOVID-19モジュールに含まれる実行可能コードとすることができる。プロセス900は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して実行されることができる。
【0151】
ブロック910において、クラウドサーバ135は、他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力する。他の被験者レコードのセットは、COVID-19と診断され、続いてCOVID-19の処置を受けた他の被験者および他の被験者の処置の転帰を表す。ランダムフォレストモデルは、被験者レコード(または他の入力データ)を反復して、入力された被験者レコードに関連付けられた転帰を区別する最適なセグメント化属性およびセグメント化閾値を決定するように訓練されることができる。例えば、ランダムフォレストモデルを使用して、被験者属性123が以下の3つの関連する被験者属性に分割されることができることを自動的に決定することができる:被験者属性234、家族属性345および投薬属性456。入力データの分割は、ランダムフォレストまたは勾配ブースティング技術などの1つ以上のアルゴリズムを実行することによって決定されることができる。さらに、決定木の分割は、どの被験者属性が被験者の様々な転帰(例えば、被験者が回復したかどうか、死亡したかどうか、人工呼吸器に入れたかどうかなど)の区別に寄与したかを示すことができる。
【0152】
ブロック920において、クラウドサーバ135は、ランダムフォレストモデルを使用して他の被験者レコードのセットを処理する。他の被験者レコードのセットを処理することは、他の被験者レコードのセットを1つ以上の被験者グループ(例えば、他の被験者レコードのセットのサブセット)にセグメント化するための1つ以上のセグメント化閾値を決定することを含むことができる。1つ以上の被験者グループのうちの各被験者グループは、被験者転帰(例えば、COVID-19から回復した被験者、COVID-19から死亡した被験者、COVID-19のために人工呼吸器を装着した被験者など)に対応することができる。
【0153】
ブロック930において、クラウドサーバ135は、1つ以上の被験者グループのうちの被験者グループを選択する。被験者グループは、特定の転帰に対応する。COVID-19からの完全回復などの好ましい結果に関連付けられた属性について、クラウドサーバ135は、COVID-19から回復した後に医療施設から退院した被験者を含む被験者グループを選択する。
【0154】
ブロック940において、クラウドサーバ135は、選択された被験者グループに関連付けられた処置のセットを決定する。処置のセットのうちの各処置は、COVID-19から回復した後に退院した被験者の少なくとも1人に処方されている。処置のセットは、COVID-19から回復した被験者のグループにわたって処方された処置を含むことができる。ブロック950において、クラウドサーバ135は、COVID-19から回復し退院した(例えば、肯定的な結果)被験者のグループにわたって処方された処置のセットをユーザデバイスのインターフェースに表示させてもよい。処置のセットは、被験者に対する提案処置としてユーザ(例えば、医師)に表示されてもよい。
【0155】
ブロック960において、クラウドサーバ135は、選択された被験者グループに関連付けられた1つ以上の特性を決定する。1つ以上の特性のうちの各特性は、ランダムフォレストモデルによって決定された1つ以上のセグメント化閾値のうちのセグメント化閾値に基づいて決定されることができる。木が1つ以上の枝に分割される点は、ランダムフォレストまたは勾配ブースティングモデルによって決定されたセグメント化閾値とすることができる。例示的な例として、ランダムフォレストモデルは、他の被験者レコードのセットを繰り返して、他の被験者レコードのセットを表すための木構造を定義することができる。木構造の葉ノードは、処理の結果に基づいて決定されることができる。例えば、1つの葉ノードが回復した被験者を表すことができ、別の葉ノードが死亡した被験者を表すことができ、別の葉ノードが人工呼吸器に入れられた被験者を表すことができ、以下同様である。COVID-19から回復した被験者を表す葉ノードについて、ランダムフォレストモデルは、回復した被験者のグループに寄与した特性を決定することができる。特性は、例えば、ランダムフォレストまたは勾配ブースティング技術を実行することによって決定されることができる。さらに、特性は、「症候が始まってから7日以内」という第1の特性、「レムデシビルによって処置された被験者」という第2の特性、および「被験者は併存症を有しない」という第3の特性を含むことができる。各特性は、選択された被験者グループのサブグループまたは被験者レコードに含まれる被験者属性に関連付けられることができる。
【0156】
ブロック970において、クラウドサーバ135は、被験者レコードと、選択された被験者グループの作成に寄与したと決定された1つ以上の特性の各特性との間の類似性メトリックを決定する。特性は、葉ノードによって表される被験者グループのサブグループを表すことができる。サブグループは、処置のセットの不完全なサブセットとして規定されていてもよい。いくつかの実施形態では、類似性メトリックは、葉ノードによって表される被験者グループの決定された特性に関連付けられたサブグループの平均配列表現に対する被験者の配列表現間のドメイン空間(例えば、ユークリッド空間)内の距離を決定することによって決定される。類似性メトリックは、COVID-19と診断された被験者の被験者レコードが、選択された被験者グループの特性と類似または一致する程度を表すスコアとすることができる。いくつかの実施形態では、類似性メトリックは、被験者レコードに含まれるいくつかの特性に基づいて計算されることができる。上記の例を続けると、COVID-19と診断された被験者の被験者レコードは、類似性メトリックを生成するために、上述した第1、第2、および第3の特性と比較されることができる。被験者レコードが「症候が始まってから7日以内」の属性および「被験者に併存症がなかった」という別の属性を含む場合、類似性メトリックは「2」とすることができる。類似性メトリックを計算するために、任意の適切な技術が実行されることができる。
【0157】
ブロック980において、クラウドサーバ135は、処置のセットの提案された各処置について信頼スコアを決定する。信頼スコアは、類似性メトリックに基づいて決定されることができる。さらに、信頼スコアは、提案処置の被験者の予測された反応性を表すために計算されることができる。予測された反応性は、COVID-19と診断された被験者の被験者属性が、ランダムフォレストモデルにおいて定義された各被験者グループの特性と類似または一致する程度に基づいてもよい。
【0158】
SARS-CoV-2についてまだ多くのことを学ばなければならないことを考えると、COVID-19は、診断および/または処置する複雑なウイルス性疾患である。新たな研究は、速いペースで新たな結果を導入する。研究の所見は、しばしば更新されるか、または後に誤っていることが判明する。COVID-19の症候プロファイルは、SARS-CoV-2に関する新たな情報に基づいてクラウドベースのアプリケーションによって補足、修正、または削除されることができる。例示的な例として、子供は、COVID-19から大部分または部分的に免疫があると考えられた。しかしながら、その後の研究は、SARS-CoVが子供(例えば、5歳未満の子供)における川崎病に関連する免疫系過剰反応を誘因し得ることを見出した。この場合、COVID-19症候プロファイルは、発疹、手または口の腫れ、腹痛または他の消化器系の症候、心臓の症状など、子供の症状または川崎病の他の症候を含むように更新されることができる。したがって、機関および介護提供者の分散ネットワークからデータを収集し、訓練された人工知能(AI)モデルを実行して新たなデータを頻繁にまたは繰り返し処理する動的クラウドベースのプラットフォームを構築することは、非常に価値がある可能性がある。さらに、診断、処置、および/または処置結果パターンの絶えず変化するランドスケープを頻繁にまたは繰り返し追跡することができる訓練されたAIモデルを有することは、医学を実質的に進歩させることができる。例示的な例として、主治医は、COVID-19が地域に入ったか否かを知っていれば、呼吸困難症候を呈する被験者を異なる方法で処置することができる。別の例示的な例として、特定の処置は、おそらく地理的地域で流行している特定のSARS-CoV-2の株に対する処置の有効性を考慮すると、特定の場所においてより効果的であり得る。したがって、訓練されたAIモデルの出力を使用して処置に対する反応性を予測するクラウドベースのアプリケーションは、例えば、COVID-19研究の複雑でペースの速い環境において重要な技術的利点となり得る。
【0159】
本明細書に記載の訓練された機械学習モデルのいずれかを生成するために、任意の機械学習または人工知能アルゴリズムを実行することができることが理解されよう。人工知能ベースの機械学習モデルの様々な異なるタイプおよび技術が訓練され、次いで実行されて、プロトコルまたは機能を実行するためのユーザ結果を予測する1つ以上の出力を生成することができる。モデルの非限定的な例は、ナイーブベイズモデル、ランダムフォレストまたは勾配ブースティングモデル、ロジスティック回帰モデル、ディープラーニングニューラルネットワーク、アンサンブルモデル、教師あり学習モデル、教師なし学習モデル、協調フィルタリングモデル、および任意の他の適切な機械学習モデルまたは人工知能モデルを含む。
【0160】
本開示がCOVID-19の診断および処置に限定されないことも理解されよう。COVID-19モジュールは、肺、乳房、結腸直腸、前立腺、胃、肝臓、子宮頸部(子宮頸部)、食道、膀胱、腎臓、膵臓、子宮内膜、口腔、甲状腺、脳、卵巣、皮膚、および胆嚢の癌;固形腫瘍、例えば肉腫および癌腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫など)を含む免疫系の癌、ならびに血液(血液学的癌)および骨髄の癌、例えば白血病(急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)など)、リンパ腫および骨髄腫を含むがこれらに限定されない腫瘍学を含む、任意の疾患、症状、研究領域、または障害の可能性のある診断または可能性のある処置を識別するように構成されることができる。さらなる障害は、貧血などの血液障害、血友病、血餅などの出血障害、糖尿病性網膜症、緑内障、および黄斑変性を含む眼科障害、多発性硬化症、パーキンソン病、疾患、脊髄性筋萎縮症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病を含む神経障害、多発性硬化症、糖尿病、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、湿疹、血管炎、アレルギー、および喘息を含む自己免疫障害を含む。
【0161】
他の疾患および障害は、腎臓疾患、肝疾患、心疾患、脳卒中、胃腸障害、例えばセリアック病、クローン病、憩室疾患、過敏性腸症候群(IBS)、胃食道逆流症(GERD)および消化性潰瘍、関節炎、性感染症、高血圧、細菌およびウイルス感染症、寄生虫感染症、結合組織病、セリアック病、骨粗鬆症、糖尿病、狼瘡、中枢神経系および末梢神経系の疾患、例えば注意欠陥/多動性障害(ADHD)、カタレプシー、脳炎、てんかんおよび発作、末梢神経障害、髄膜炎、片頭痛、ミエロパシー、自閉症、双極性障害およびうつ病を含むが、これらに限定されない。
【0162】
IV.実施例
25歳の5’9’’の男性が、米国カンザス州のトピーカの病院に到着する。彼は、3日間呼吸困難になったと報告している。彼の体温は、103°Fである。彼は、特定の食料品店での彼の雇用に留意し、彼が喫煙しないことに留意する摂取フォームを完成させる。看護師は、ピークフローメーターを使用し、被験者のピーク流量が555L/分であると決定する。
【0163】
摂取時に、看護師は、上記の情報をオンラインインターフェースに入力し、被験者がCOVID-19を有する可能性が96%であると予測した結果を返す。インターフェースは、診断と一致する要因は、報告された呼吸困難、発熱、職業、ピーク流量、および近隣の都市(ミズーリ州カンザスシティ)の症例における最近の加速度を含むことに留意する。
【0164】
cobas(登録商標)SARS-CoV-2検査が行われ、陽性結果が得られる。検査技師は、インターフェースと相互作用して、この追加の検査結果を被験者のレコードに提供する。インターフェースに提示された被験者の状態は、「陽性の可能性がある」から「陽性」に変化する。
【0165】
次いで、医師は、インターフェースと相互作用し、処置推奨情報を要求する。リモートサーバは、最近傍アルゴリズムを使用して、被験者のレコードデータに類似するレコードデータを有する100の被験者を識別する。全ての類似する被験者のピーク流量は、被験者のピーク流量から50L/分以内であった。全ての類似する被験者の年齢は、被験者の年齢から3年以内であった。全ての類似する被験者の体温は、被験者の体温の3°F以内であった。同様の被験者のうち、25%は、病院の場所から100マイル以内にあった。レコードデータが被験者のレコードのものと一致する程度に基づいて類似性メトリックが類似の被験者のそれぞれに割り当てられ、フィールドが異なるように重み付けされた(例えば、症候の重複が占有の重複よりも大きく重み付けされるように)。
【0166】
類似する各被験者について、リモートサーバは、初期COVID-19処置、および被験者が生存しており、処置投与から2週間以内に退院したかどうかを識別する。被験者セットにわたって、6つの異なる第1の選択COVID-19薬が識別された。これらの処置のうちの2つは、同様の被験者セット(<5人の被験者)の閾値以下の割合で受けられた。残りの4つの処置(トシリズマブ、レムデシビル、ロピナビル-リトナビルおよびファビピラビル)のそれぞれについて、処置を受けた被験者の所定割合が生存しており、処置投与から2週間以内に退院したことが決定される。
【0167】
インターフェースは、4つの処置を識別する結果と、4つの処置のそれぞれについて、以下を返す:処置を受けた類似の被験者にわたる類似性メトリックの平均、処置を受けた100名の類似する被験者の割合、および処置を受けた類似する被験者のうち、生存しており、処置から2週間以内に退院した被験者の割合。インターフェースは、さらに、ユーザが処置名のうちの1つをクリックすることを可能にし、インターフェースに、処置に関連付けられた類似の被験者のレコードのバージョンへのリンクを提示させる。バージョンは、適用可能なデータプライバシー制限に準拠するように編集および/または一般化される。医師は、トシリズマブ処置に関連付けられた被験者のグループが被験者に最も類似しており、処置に対するグループの反応が好ましいと決定する。したがって、医師は、被験者にトシリズマブを処方し、看護師が被験者のレコードを更新してインターフェース相互作用を介して処置処方を反映するように調整する。
【0168】
V.さらなる考察
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、1つ以上のデータプロセッサ上で実行されると、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部および/または1つ以上のプロセスの一部または全部を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部または全部および/または1つ以上のプロセスの一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的機械可読記憶媒体において有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0169】
使用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用において、示されて説明された特徴の均等物またはその一部を除外する意図はないが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変更および変形は、当業者によってあてにされてもよく、そのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0170】
その後の説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適用可能性または構成を限定することを意図しない。むしろ、好ましい例示的な実施形態のその後の説明は、様々な実施形態を実装するための可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置に様々な変更を加えることができることが理解される。
【0171】
実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明において具体的な詳細が与えられる。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施形態が実施されることができることが理解されよう。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、および他の構成要素は、実施形態を不必要に詳細に不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示されてもよい。他の例では、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術は、不必要な詳細なしに示されてもよい。
【0172】
VI.特許請求の範囲バンク
以下において使用されるように、一連の例への任意の言及は、それらの例のそれぞれへの言及として選言的に理解されるべきである(例えば、「実施例1~4」は、「実施例1、2、3または4」と理解されるべきである)。
【0173】
例1は、コンピュータ実装方法であって、被験者に関連付けられた被験者レコードの識別子の選択に対応する入力を受信することであって、被験者レコードの識別子が、インターフェースを使用して選択される、入力を受信することと、データストアから被験者レコードを取得することであって、被験者レコードが被験者属性のセットを含む、被験者レコードを取得することと、被験者についての配列表現を生成することであって、配列表現が、被験者属性のセットをドメイン空間内で表現される配列表現に変換することによって生成される、配列表現を生成することと、被験者についての配列表現を訓練された機械学習モデルに入力して、サイズ削減された出力を生成することであって、訓練された機械学習モデルが、データレジストリに記憶された他の被験者レコードのセットを使用して学習されたパラメータのセットであって、他の被験者レコードのセットのうちの各他の被験者レコードが、COVID-19に感染し、その後に処置を使用して処置された別の被験者に関連付けられている、パラメータのセットと、パラメータのセットを使用して配列表現入力をサイズ削減された出力に変換するように構成された1つ以上の関数とを含む、サイズ削減された出力を生成することと、出力に基づいて、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応すると決定することと、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応するという指示を出力することと、を含む、コンピュータ実装方法である。
【0174】
例2は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して、被験者と人との1つ以上の接触可能性の識別を検出するように構成された接触追跡プロトコルを実行することであって、接触追跡プロトコルの実行が、被験者についての配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することであって、他の訓練された機械学習モデルが、被験者の接触可能性位置を示す別の出力を生成するように訓練されている、配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することと、他の訓練された機械学習モデルの他の出力に基づいて、被験者に関連付けられた接触可能性位置のセットを決定することであって、接触可能性位置のセットのうちの各接触可能性位置が、被験者が移動した可能性のある位置または位置タイプの予測を示す、接触可能性位置のセットを決定することと、被験者が症候を呈し始めてからの日数を決定することであって、被験者が症候を呈し始めてからの日数が、被験者によって放出されたウイルス量のサイズを示す、症候を呈し始めてからの日数を決定することと、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットを選択することであって、接触可能性位置のセットから選択された不完全なサブセットのサイズが、被験者が症候を呈し始めてからの日数に基づいて決定される、不完全なサブセットを選択することと、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットの各接触可能性位置に関連付けられた1人以上の個人に通知する通信を送信させるための通信ワークフローを生成することであって、通信が、被験者から許可を受信すると送信される、通信ワークフローを生成することと、を含む、接触追跡プロトコルを実行することをさらに含む、例1のコンピュータ実装方法である。
【0175】
例3は、通信に対する1つ以上の応答を受信することと、通信に対する1つ以上の応答を使用して、人との1つ以上の接触可能性を識別することと、人との1つ以上の接触可能性のうちの各人との接触可能性について、人との接触可能性にCOVID-19検査を割り当てるための検査要求ワークフローを生成することと、をさらに含む、例1または2のコンピュータ実装方法である。
【0176】
例4は、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して、他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することであって、ランダムフォレストモデルが、他の被験者レコードのセットに関連付けられた木構造を定義し、木構造が、1つ以上のノードを含み、1つ以上のノードのうちの各ノードが、他の被験者レコードのセットのサブセットを表す、他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することと、ランダムフォレストモデルを使用して他の被験者レコードのセットを処理することであって、処理が、他の被験者レコードのセットを被験者レコードの1つ以上のサブセットにセグメント化するための1つ以上のセグメント化閾値を決定することであって、被験者レコードのうちの各サブセットが木構造の葉ノードに対応し、葉ノードが被験者転帰を表し、1つ以上のセグメント化閾値のうちの各セグメント化閾値が、木構造を1つ以上の子ノードに分岐させる、1つ以上のセグメント化閾値を決定することを含む、他の被験者レコードのセットを処理することと、被験者レコードの1つ以上のサブセットのうちのサブセットを選択することであって、選択されたサブセットが、COVID-19から回復した後に退院した被験者に対応する、サブセットを選択することと、選択されたサブセットに関連付けられた処置のセットを決定することであって、処置のセットのうちの各処置が、COVID-19から回復した後に退院した被験者のうちの少なくとも1人に処方されている、処置のセットを決定することと、被験者を処置するための提案処置として処置のセットをインターフェース上に提示することと、をさらに含む、例1~3のいずれかのコンピュータ実装方法である。
【0177】
例5は、他の被験者レコードのセットを処理することが、選択されたサブセットに関連付けられた1つ以上の特性を決定することであって、1つ以上の特性のうちの各特性が、1つ以上のセグメント化閾値のうちのセグメント化閾値に基づいて決定され、各特性が、他の被験者レコードのセットを選択されたサブセットにフィルタリングするのに寄与する、1つ以上の特性を決定することと、被験者レコードと選択されたサブセットの1つ以上の特性との間の類似性メトリックを決定することと、処置のセットのうちの各提案処置についての信頼スコアを決定することであって、信頼スコアが類似性メトリックに基づいて決定される、信頼スコアを決定することと、をさらに含む、例1~4のコンピュータ実装方法である。
【0178】
例6は、COVID-19診断に関連付けられた処置ワークフローを規定することであって、処置ワークフローが処置のセットのうちの処置を含み、処置が医師または医療専門家によって実行可能である、処置ワークフローを規定することをさらに含む、例1~5のコンピュータ実装方法である。
【0179】
例7は、被験者を特徴付ける被験者属性のセットが、1つ以上の併存症、被験者の喫煙状態、ウイルス性疾患の疑いのある診断、ウイルス性疾患の確定診断、診断を確定するために使用される検査技術、または疾患もしくは症状の処置を含む群からの任意の1つ以上を含む、例1~6のいずれかのコンピュータ実装方法である。
【0180】
例8は、被験者が、COVID-19の疑いのあるケースとして医療施設に入院した、例1~7のいずれかのコンピュータ実装方法である。
【0181】
例9は、被験者に対してCOVID-19 RT-PCR検査が実施されて、被験者がCOVID-19を有することを確認した、例1~8のいずれかのコンピュータ実装方法である。
【0182】
例10は、処置のセットが、抗ウイルス薬、補充酸素、機械的換気、体外膜酸素化、回復期血漿、COVID-19を処置するためのSARS-CoV-2免疫グロブリン、免疫調節薬、コルチコステロイド、または抗血栓療法を含む群のいずれか1つ以上を含む、例1~9のいずれかのシステムである。
【0183】
例11は、システムであって、1つ以上のプロセッサと、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、1つ以上のプロセッサ上で実行されると、1つ以上のプロセッサに、被験者に関連付けられた被験者レコードの識別子の選択に対応する入力を受信することであって、被験者レコードの識別子が、インターフェースを使用して選択される、入力を受信することと、データストアから被験者レコードを取得することであって、被験者レコードが被験者属性のセットを含む、被験者レコードを取得することと、被験者についての配列表現を生成することであって、配列表現が、被験者属性のセットをドメイン空間内で表現される配列表現に変換することによって生成される、配列表現を生成することと、被験者についての配列表現を訓練された機械学習モデルに入力して、サイズ削減された出力を生成することであって、訓練された機械学習モデルが、データレジストリに記憶された他の被験者レコードのセットを使用して学習されたパラメータのセットであって、他の被験者レコードのセットのうちの各他の被験者レコードが、COVID-19に感染し、その後に処置を使用して処置された別の被験者に関連付けられている、パラメータのセットと、パラメータのセットを使用して配列表現入力をサイズ削減された出力に変換するように構成された1つ以上の関数とを含む、サイズ削減された出力を生成することと、出力に基づいて、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応すると決定することと、被験者レコードがCOVID-19診断の基準および/または特定のCOVID-19処置の適合性を示す要因に対応するという指示を出力することと、を含む動作を実行させる非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、を備える、システムである。
【0184】
例12は、動作が、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して、被験者と人との1つ以上の接触可能性の識別を検出するように構成された接触追跡プロトコルを実行することであって、接触追跡プロトコルの実行が、被験者についての配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することであって、他の訓練された機械学習モデルが、被験者の接触可能性位置を示す別の出力を生成するように訓練されている、配列表現を別の訓練された機械学習モデルに入力することと、他の訓練された機械学習モデルの他の出力に基づいて、被験者に関連付けられた接触可能性位置のセットを決定することであって、接触可能性位置のセットのうちの各接触可能性位置が、被験者が移動した可能性のある位置または位置タイプの予測を示す、接触可能性位置のセットを決定することと、被験者が症候を呈し始めてからの日数を決定することであって、被験者が症候を呈し始めてからの日数が、被験者によって放出されたウイルス量のサイズを示す、症候を呈し始めてからの日数を決定することと、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットを選択することであって、接触可能性位置のセットから選択された不完全なサブセットのサイズが、被験者が症候を呈し始めてからの日数に基づいて決定される、不完全なサブセットを選択することと、接触可能性位置のセットの不完全なサブセットの各接触可能性位置に関連付けられた1人以上の個人に通知する通信を送信させるための通信ワークフローを生成することであって、通信が、被験者から許可を受信すると送信される、通信ワークフローを生成することと、を含む、接触追跡プロトコルを実行することをさらに含む、例11のシステムである。
【0185】
例13は、動作が、通信に対する1つ以上の応答を受信することと、通信に対する1つ以上の応答を使用して、人との1つ以上の接触可能性を識別することと、人との1つ以上の接触可能性のうちの各人との接触可能性について、人との接触可能性にCOVID-19検査を割り当てるための検査要求ワークフローを生成することと、をさらに含む、例11または12のシステムである。
【0186】
例14は、動作が、被験者レコードがCOVID-19診断の基準に対応すると決定することに応答して、他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することであって、ランダムフォレストモデルが、他の被験者レコードのセットに関連付けられた木構造を定義し、木構造が、1つ以上のノードを含み、1つ以上のノードのうちの各ノードが、他の被験者レコードのセットのサブセットを表す、他の被験者レコードのセットをランダムフォレストモデルに入力することと、ランダムフォレストモデルを使用して他の被験者レコードのセットを処理することであって、処理が、他の被験者レコードのセットを被験者レコードの1つ以上のサブセットにセグメント化するための1つ以上のセグメント化閾値を決定することであって、被験者レコードのうちの各サブセットが木構造の葉ノードに対応し、葉ノードが被験者転帰を表し、1つ以上のセグメント化閾値のうちの各セグメント化閾値が、木構造を1つ以上の子ノードに分岐させる、1つ以上のセグメント化閾値を決定することを含む、他の被験者レコードのセットを処理することと、被験者レコードの1つ以上のサブセットのうちのサブセットを選択することであって、選択されたサブセットが、COVID-19から回復した後に退院した被験者に対応する、サブセットを選択することと、選択されたサブセットに関連付けられた処置のセットを決定することであって、処置のセットのうちの各処置が、COVID-19から回復した後に退院した被験者のうちの少なくとも1人に処方されている、処置のセットを決定することと、被験者を処置するための提案処置として処置のセットをインターフェース上に提示することと、をさらに含む、例11~13のいずれかのシステムである。
【0187】
例15は、他の被験者レコードのセットを処理することが、選択されたサブセットに関連付けられた1つ以上の特性を決定することであって、1つ以上の特性のうちの各特性が、1つ以上のセグメント化閾値のうちのセグメント化閾値に基づいて決定され、各特性が、他の被験者レコードのセットを選択されたサブセットにフィルタリングするのに寄与する、1つ以上の特性を決定することと、被験者レコードと選択されたサブセットの1つ以上の特性との間の類似性メトリックを決定することと、提案処置のセットのうちの各提案処置についての信頼スコアを決定することであって、信頼スコアが類似性メトリックに基づいて決定される、信頼スコアを決定することと、をさらに含む、例11~14のシステムである。
【0188】
例16は、動作が、COVID-19診断に関連付けられた処置ワークフローを規定することであって、処置ワークフローが処置のセットのうちの処置を含み、処置が医師または医療専門家によって実行可能である、処置ワークフローを規定することをさらに含む、例11~15のシステムである。
【0189】
例17は、被験者を特徴付ける被験者属性のセットが、1つ以上の併存症、被験者の喫煙状態、ウイルス性疾患の疑いのある診断、ウイルス性疾患の確定診断、診断を確定するために使用される検査技術、または疾患もしくは症状の処置を含む群からの任意の1つ以上を含む、例11~16のいずれかのシステムである。
【0190】
例18は、被験者が、COVID-19の疑いのあるケースとして医療施設に入院した、例11~17のいずれかのシステムである。
【0191】
例19は、被験者に対してCOVID-19 RT-PCR検査が実施されて、被験者がCOVID-19を有することを確認した、例11~18のいずれかのシステムである。
【0192】
例20は、処置のセットが、抗ウイルス薬、補充酸素、機械的換気、体外膜酸素化、回復期血漿、COVID-19を処置するためのSARS-CoV-2免疫グロブリン、免疫調節薬、コルチコステロイド、または抗血栓療法を含む群のいずれか1つ以上を含む、例11~19のいずれかのシステムである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】