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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】抗原の効力を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/542 20060101AFI20230620BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230620BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20230620BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G01N33/542
A61K39/12 ZNA
A61P37/04
C07K16/10
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571085
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021023216
(87)【国際公開番号】W WO2021236223
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,553
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514313764
【氏名又は名称】タケダ ワクチン,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAKEDA VACCINES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ライヴングッド、ジル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ギフォード、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ニード、タウニャ
(72)【発明者】
【氏名】ライオンズ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】マークス、ジャッキー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085BB11
4C085DD03
4C085DD07
4C085DD10
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、ワクチン抗原試料などの抗原試料の効力を決定するための方法に関する。本開示はまた、前記ワクチン抗原の精製、不活性化及び製剤化を含む製造工程中に前記ワクチン抗原の効力を監視する方法、ならびにウイルスワクチンを製造する方法に関する。更に、本開示は、開示された前記方法によって得ることができるワクチンに関する。本発明の特定の実施形態において、前記抗原試料はジカウイルス抗原試料である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン抗原試料などの抗原試料の効力を示すシグナルを検出するための方法であって、前記抗原試料中の抗原は少なくとも2つのエピトープを提供し、前記方法は、
ステップ1:アクセプターキット及びドナーキットを含むキットを提供するステップであって、前記アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、前記ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
前記アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、前記アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、前記ドナー抗体と結合することができず、
前記アクセプター抗体は、前記抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、前記アクセプター抗体は前記ドナーマイクロスフェアに結合することができず、
前記ドナーマイクロスフェアは、前記アクセプターマイクロスフェアによるシグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを供与することができ、前記ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、前記アクセプター抗体と結合することができず、
前記ドナー抗体は、前記抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、前記ドナー抗体は前記アクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記ステップと、
ステップ2:ステップ1の前記量の前記ドナーマイクロスフェア、前記量の前記アクセプターマイクロスフェア、前記量の前記ドナー抗体及び前記量の前記アクセプター抗体と前記試料を接触させ、前記試料中の抗原と、前記ドナーマイクロスフェアに結合した前記ドナー抗体及び前記アクセプターマイクロスフェアに結合した前記アクセプター抗体ならびに前記抗原の前記少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合した前記アクセプター抗体及び前記抗原の前記少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合した前記ドナー抗体と、の複合体の形成を可能にするステップと、
ステップ3:前記抗原試料の効力を示すシグナルを生成するための近接反応を行わせるステップと、
ステップ4:前記抗原試料の効力を示す前記シグナルを検出するステップと、を含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1に従って前記シグナルを検出することにより、前記抗原試料の効力を示す前記抗原試料中の前記抗原の量を決定するための方法であって、前記方法は更に、
ステップ5:前記検出されたシグナルに基づき前記抗原試料の効力を示す前記抗原試料中の前記抗原の量を決定するステップを含む、前記方法。
【請求項3】
請求項2に従って前記抗原の量を検出することにより、ワクチン抗原試料などの前記抗原試料の効力を決定するための方法であって、前記方法は更に、
ステップ6:ステップ5で決定された前記試料中の前記抗原の量に基づき前記抗原試料の効力を決定するステップを含む、前記方法。
【請求項4】
請求項3に従って前記抗原試料の効力を決定するための方法であって、ステップ6は、
ステップ6.1:ヒトまたは非ヒト対象に生成される関連する平均中和抗体力価を測定することにより、前記ヒトまたは前記非ヒト対象の抗原の標準化試料の効力を決定するステップと、
ステップ6.2:前記標準化試料中の少なくとも2つのエピトープを有する前記抗原の量を請求項2の方法に従って決定するステップと、
ステップ6.3:ステップ6.1の前記平均中和抗体力価とステップ6.2の前記抗原の量から標準曲線を確立するステップと、
ステップ6.4:ステップ5で決定された前記抗原試料中の抗原の量と前記標準曲線を比較することにより抗原試料の効力を決定するステップと、を含む、前記方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つのエピトープは同じエピトープであり、前記アクセプター抗体及び前記ドナー抗体は同じ可変領域を有し、及び/または前記同じエピトープに結合することが可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つのエピトープは異なるエピトープであり、前記アクセプター抗体及び前記ドナー抗体は異なる可変領域を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ1において、前記アクセプターマイクロスフェアは前記アクセプター抗体の定常領域に結合しており、及び/または前記ドナーマイクロスフェアは前記ドナー抗体の定常領域に結合している、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原試料は、ワクチン抗原試料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ワクチン抗原試料のワクチン抗原はウイルス抗原である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗原試料はウイルス抗原試料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ドナー抗体及び前記アクセプター抗体は、請求項9及び10に記載のウイルス抗原以外の他のウイルス抗原と交差反応しない、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ドナー抗体及び前記アクセプター抗体のうちの少なくとも1つまたは両方は、プラーク減少中和試験またはレポーターウイルス粒子試験またはマイクロ中和試験またはフォーカス形成アッセイで試験した場合、それらが結合する前記ウイルス抗原を中和する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルス抗原は、ジカウイルス抗原、デングウイルス抗原、ノロウイルス抗原及びポリオウイルス抗原からなる群から選択される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルス抗原は、生ウイルス、不活性化ウイルス、弱毒化生ウイルス及びウイルス様粒子からなる群から選択される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルス抗原は不活性化ウイルスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルス抗原は不活性化ジカウイルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗原は、ミョウバンに吸着した不活性化ジカウイルスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ6.1の標準化試料は、強制分解試験または抗原の異なる用量によって提供される、請求項4~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ6.1の対象はマウスである、請求項4~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法に従って前記ワクチン抗原の効力を測定することにより、前記ワクチン抗原の精製、不活性化及び製剤化を含む製造工程中の前記ワクチン抗原の効力を監視して最終ワクチンを形成する方法。
【請求項21】
ウイルスワクチンを製造するための方法であって、前記方法は、
ステップA:様々なバッチのワクチン抗原を調製するステップと、
ステップB:請求項1~20に記載の方法に従ってステップAで作成した前記様々なワクチン抗原バッチの前記ワクチン抗原の効力を決定し、所定の効力要件に適合する前記ワクチン抗原バッチを選択するステップと、
ステップC:ステップBで選択した前記ワクチン抗原バッチを様々なバッチのウイルスワクチンに配合することによりワクチンバッチを調製するステップと、
ステップD:請求項1~20に記載の方法に従ってステップCで作成した前記様々なバッチのワクチンバッチの前記ワクチン抗原の効力を決定し、前記所定の効力要件に適合する前記ワクチンバッチを選択するステップと、を含む、前記方法。
【請求項22】
ステップAは様々なサブステップを含み、ステップBは各サブステップ後に実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サブステップは、生ウイルスを不活性化ウイルスに不活性化することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記生ウイルスはジカウイルスであり、前記不活性化は、ホルムアルデヒドまたは紫外線照射またはガンマ線照射またはβ-プロピオラクトンにより達成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項21~24に記載の方法により得られるワクチン。
【請求項26】
アクセプターキット及びドナーキットを含むキットであって、前記アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、前記ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
前記アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、前記アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、前記ドナー抗体と結合することができず、
前記アクセプター抗体は、ジカウイルス抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、前記アクセプター抗体は前記ドナーマイクロスフェアに結合することができず、
前記ドナーマイクロスフェアは、前記アクセプタービーズによるシグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを供与することができ、前記ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、前記アクセプター抗体と結合することができず、
前記ドナー抗体は、前記ジカウイルス抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、前記ドナー抗体は前記アクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記キット。
【請求項27】
前記ドナー抗体及び前記アクセプター抗体は、デング抗原と交差反応しない、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記ドナー抗体及び前記アクセプター抗体のうちの少なくとも1つまたは両方は、ジカウイルス中和抗体である、請求項26~27のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
前記ドナー抗体及び前記アクセプター抗体は、100ng/mL未満または80ng/mL未満または60ng/mL未満または40ng/mL未満または30ng/mL未満の前記ジカウイルス抗原に対するEC50値を提供する、請求項26~28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記ドナー抗体及び前記アクセプター抗体は、配列番号1によってコードされるエンベロープ糖タンパク質のジカウイルスエンベロープ糖タンパク質ドメインIIIのエピトープに結合する、請求項26~29のいずれか一項に記載のキット。
【請求項31】
前記エピトープは2つの異なるエピトープであり、前記アクセプター抗体及び前記ドナー抗体は異なる可変領域を有し、それらの一方が抗体1であり、他方が抗体2である、請求項26~29のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
抗体1は配列番号1のアミノ酸E370に結合し、抗体2は配列番号1のアミノ酸T397及びH398に結合する、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
抗体1及び抗体2は、それぞれ重鎖及び軽鎖相補性決定領域によって特徴付けられ、
前記抗体1は、配列番号4の重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)アミノ酸配列、配列番号5の重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号6の重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号9の軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)アミノ酸配列、配列番号10の軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号11の軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、によって特徴付けられ、
前記抗体2は、配列番号18の重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)アミノ酸配列、配列番号19の重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号20の重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号23の軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)アミノ酸配列、配列番号24の軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号25の軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、によって特徴付けられる、請求項31に記載のキット。
【請求項34】
抗体1及び抗体2は、重鎖及び軽鎖相補性決定領域によって特徴付けられ、
前記抗体1は、配列番号32の重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)アミノ酸配列、配列番号33の重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号34の重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、によって特徴付けられ、
前記抗体2は、配列番号18の重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)アミノ酸配列、配列番号19の重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号20の重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号23の軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)アミノ酸配列、配列番号24の軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)アミノ酸配列及び配列番号25の軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、によって特徴付けられる、請求項31に記載のキット。
【請求項35】
抗体1及び抗体2は、重鎖及び軽鎖可変領域によって特徴付けられ、
前記抗体1は、配列番号3の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、及び配列番号8の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列によって特徴付けられ、
前記抗体2は、配列番号17の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、及び配列番号22の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項31に記載のキット。
【請求項36】
抗体1及び抗体2は、重鎖及び軽鎖可変領域によって特徴付けられ、
前記抗体1は、配列番号31の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、及び配列番号36の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列によって特徴付けられ、
前記抗体2は、配列番号17の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、及び配列番号22の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項31に記載のキット。
【請求項37】
抗体1及び抗体2は、重鎖及び軽鎖によって特徴付けられ、
前記抗体1は、配列番号2の重鎖(H)アミノ酸配列、及び配列番号7の軽鎖(L)アミノ酸配列によって特徴付けられ、
前記抗体2は、配列番号16の重鎖(H)アミノ酸配列、及び配列番号21の軽鎖(L)アミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項31に記載のキット。
【請求項38】
抗体1及び抗体2は、重鎖及び軽鎖によって特徴付けられ、
前記抗体1は、配列番号30の重鎖(H)アミノ酸配列、及び配列番号35の軽鎖(L)アミノ酸配列によって特徴付けられ、
前記抗体2は、配列番号16の重鎖(H)アミノ酸配列、及び配列番号21の軽鎖(L)アミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項31に記載のキット。
【請求項39】
抗体1はドナー抗体であり、抗体2はアクセプター抗体であり、前記ドナー抗体はビオチン化され、前記ドナーマイクロスフェアはストレプトアビジンでコーティングされ、前記アクセプター抗体は前記アクセプターマイクロスフェアに共有結合している、請求項31~38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
前記抗原はジカ抗原であり、前記キットは請求項26~39のいずれか一項によって定義される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法により得られる抗原。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際PCT出願は、2020年5月20日に出願された米国特許仮出願第63/027,553号に対する優先権及び利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
2021年3月16日午後4時18分に作成かつ本出願と共に電子的に提出された、52KBの「T08498WO_PCTSequenceListing.txt」という名称の配列表の全体が、参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
本発明は、ウイルス抗原を含むワクチン中に存在するような抗原の効力を決定するための方法、すなわちイムノアッセイに関する。更に、本発明は、ワクチン製造工程中に適用するためのそのような方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ウイルスは人体の健康にとって絶え間ない脅威である。高い突然変異率が可能にする環境及び宿主の変化への迅速な対応は、様々なウイルス感染症の診断ならびに予防及び治療法を複雑にしている。更に、数種類のウイルスによって引き起こされる病気の予防のために承認されたワクチンは、まだ不足している。
【0005】
ジカウイルス(ZIKV)は、西ナイルウイルス(WNV)、デングウイルス(DENV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)及び黄熱ウイルス(YFV)も含む、フラビウイルス属(Flaviviridae科)の節足動物媒介ウイルス(アルボウイルス)である。ヒトへの感染は、主にAedes属、すなわちAedes aegypti蚊が媒介すると考えられている。ZIKVは系統発生解析により、アフリカ系とアジア系の遺伝子型に分類される。
【0006】
フラビウイルスは、二十面体や球状の形状をしたエンベロープ型である。その直径は約50nmである。ゲノム(10~11kb塩基)は直鎖状のポジティブセンスRNAからなり、非分節型である。RNAは、複数コピーのカプシドタンパク質(C)と複合体を形成し、その周りをそれぞれ180コピーのエンベロープ糖タンパク質(Eタンパク質、約500アミノ酸)、及び膜タンパク質(Mタンパク質、約75アミノ酸)または前駆膜タンパク質(prMタンパク質、約165アミノ酸)からなる二十面体のシェルで囲まれ、すべてが脂質膜に固定されている。また、ゲノムは7つの非構造タンパク質をコードしている(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B及びNS5;WO2018010789)。
【0007】
Eタンパク質は、宿主細胞受容体への付着及びウイルスの脂質二重膜の融合に関与する主要な表面タンパク質であるため、ウイルス感染に対する宿主中和抗体(Ab)の主要な標的である。Eタンパク質は、アミノ末端外部ドメイン、2つの両親媒性αヘリックス及び2つのカルボキシ末端膜貫通αヘリックスからなる。表面が露出した外部ドメインは、βバレルドメインI(EDI)、フィンガー様ドメインII(EDII)及びC末端ドメインIII(EDIII)というβシートに富んだ3つの構造上異なるドメインからなる。
【0008】
フラビウイルス中にはいくつかのエピトープが保存されているため、フラビウイルス感染症に対する抗体(Ab)反応は交差反応性であり、例えばフラビウイルス特異的免疫応答の決定による、特定のフラビウイルス感染症の診断に支障をきたす。ZIKVと他のフラビウイルスAbとの間の交差反応性が報告されており、特にDENV血清複合体とは、Eタンパク質の高い相同性(54~59%)により、交差反応性を示すことが報告されている。ZIKVの流行地域の多くでは、DENV血清型1(DENV1)、2(DENV2)、3(DENV3)及び4(DENV4)を含むDENVならびに他のフラビウイルスも存在し、多重感染のリスクにより、交差反応性Abの産生のリスクが高まるため、これは更に問題となる。更に、異なるフラビウイルス感染症による類似の臨床症状の発現が、特に懸念される。
【0009】
2007年と2013年に東南アジアでの孤立した大流行により、公衆衛生上の脅威としてのZIKVの潜在的影響が高まった(Duffy et al.,N Engl J Med.2009,360,2536-2543;Hancock et al.,Emerg.Infect.Dis.2014,20(11):1960)。近年、ZIKVの流行はブラジルをはじめアメリカ大陸に拡大し、最大規模となった(Metsky et al.,Nature 2017,546(7658):411-415)。ZIKVは、神経学的後遺症、幅広い臨床症状、先天性ZIKV症候群(CZS)として知られる新生児異常を伴う(CZS;Costello et al.,Bull World Health Organ.2016,94(69):406-406A;Cao-Lormeau et al.,Lancet 2016,Apr9;387(10027):1531-9)。
【0010】
現在適用されているワクチンデリバリープラットフォームには、弱毒化及び不活性化生全ウイルスワクチン、例えばアデノ随伴ウイルスを利用したウイルスベクター化ワクチン、DNA及びmRNAワクチン、ウイルス様粒子(VLP)ならびにペプチド及びタンパク質サブユニットワクチンがある(Maslow,Trop.Med.Infect.Dis.2019,4,104)。現在、複数のワクチン候補が臨床試験で評価されているが、ZIKVに対する治療薬はまだ承認されていない(Poland et al.,Mayo Clinic Proceedings 2019,94,2572-2586)。有望な候補は、アメリカで発生したアジア系遺伝子型株PRVABC59由来のTakeda製の精製不活性化ジカワクチン(PIZV)である。開発された精製不活性化ワクチンは、JEV及びTBEVを含む他のフラビウイルスによる疾病の予防に成功しかつ安全に利用されている(Ishikawa et al.,Vaccine 2014,32,1326-1337)。
【0011】
しかしながら、ワクチン中に存在するような抗原の抗原性、免疫原性及び効力は抗原表面上の特定のエピトープの有効性に依存するため、迅速、堅牢かつ信頼性の高い抗原特性評価を行うための方法が早急に必要とされている。更に、このような方法は、製造のパイプラインの中で対応する抗原をモニターすることができるため、ワクチン製造プロセスの監視にも有益である。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的の1つは、ワクチン抗原試料またはウイルス抗原試料などの抗原試料の効力を決定するための方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記アッセイは良好な特異性を提供する。
【0014】
本発明の更なる目的は、不活性化ウイルスまたは生ウイルスなどのウイルス抗原試料の効力を決定するための方法を提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記アッセイは他のウイルス抗原などの他の抗原との交差反応性を示さない。
【0016】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は良好な感度を提供し、それにより例えば少量の試料でも分析可能である。
【0017】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は簡単な操作及び迅速な検出を提供する(例えば、手順中に洗浄する工程は不要である)。
【0018】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は均質なアッセイフォーマット、安定した性能及び低いバックグラウンドシグナルを提供する。
【0019】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は試料量が少ないため、低検出コストを提供する。
【0020】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は低い検出限界及び広いダイナミックレンジを提供する。
【0021】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は低い偽陽性率及び低い偽陰性率を提供する。
【0022】
本発明の更なる目的は、抗原試料の効力を決定するための方法を提供することであり、前記方法は例えばワクチンの製造工程中のハイスループットな適用の可能性を提供する。
【0023】
本発明の更なる目的は、ワクチン抗原の効力を決定するために抗原試料の効力を決定するための方法を適用し、それによってワクチンの製造工程のステップを監視することを含む、ウイルスワクチンを製造する方法を提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、ワクチン中に存在するような抗原試料の効力を決定するための方法によって得られるワクチンを提供することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、ジカウイルス抗原の効力を決定する方法への適用に適した、アクセプター抗体及びドナー抗体、ならびにアクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアを含む、キットを提供することである。
【0026】
したがって、本発明は、ワクチン抗原試料などの抗原試料の効力を示すシグナルを検出するための方法に関し、抗原試料中の抗原は少なくとも2つのエピトープを提供し、前記方法は、以下のステップ:
ステップ1:アクセプターキット及びドナーキットを含むキットを提供するステップであって、アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、ドナー抗体と結合することができず、
アクセプター抗体は、抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、アクセプター抗体はドナーマイクロスフェアに結合することができず、
ドナーマイクロスフェアは、アクセプターマイクロスフェアによるシグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを供与することができ、ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、アクセプター抗体と結合することができず、
ドナー抗体は、抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、ドナー抗体はアクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記ステップと、
ステップ2:ステップ1の前記量の前記ドナーマイクロスフェア、前記量の前記アクセプターマイクロスフェア、前記量の前記ドナー抗体及び前記量の前記アクセプター抗体と試料を接触させ、試料中の抗原と、ドナーマイクロスフェアに結合したドナー抗体及びアクセプターマイクロスフェアに結合したアクセプター抗体ならびに抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合したアクセプター抗体及び抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合したドナー抗体との複合体の形成を可能にするステップと、
ステップ3:抗原試料の効力を示すシグナルを生成するための近接反応を行わせるステップと、
ステップ4:抗原試料の効力を示すシグナルを検出するステップと、を含む。
【0027】
本発明は更に、上記のような方法に従ってシグナルを検出することにより、抗原試料の効力を示す抗原試料中の抗原の量を決定するための方法に関し、前記方法は更に、
ステップ5:検出されたシグナルに基づき抗原試料の効力を示す抗原試料中の抗原の量を決定するステップを含む。
【0028】
本発明は更に、上記のような方法に従って抗原の量を検出することにより、ワクチン抗原試料などの抗原試料の効力を決定するための方法に関し、前記方法は更に、
ステップ6:ステップ5で決定された試料中の抗原の量に基づき抗原試料の効力を決定するステップを含む。
【0029】
本発明は更に、
ステップA:様々なバッチのワクチン抗原を調製するステップと、
ステップB:上記のような方法に従ってステップAで作成した様々なワクチン抗原バッチのワクチン抗原の効力を決定し、所定の効力要件に適合するワクチン抗原バッチを選択するステップと、
ステップC:ステップBで選択したワクチン抗原バッチを様々なバッチのウイルスワクチンに配合することによりワクチンバッチを調製するステップと、
ステップD:上記のような方法に従ってステップCで作成した様々なバッチのワクチンバッチ中のワクチン抗原の効力を決定し、所定の効力要件に適合するワクチンバッチを選択するステップと、を含む、ウイルスワクチンを生成する方法に関する。
【0030】
本発明は更に、上記のような方法によって得られるワクチンに関する。
【0031】
本発明は更に、アクセプターキット及びドナーキットを含むキットであって、アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、ドナー抗体と結合することができず、
アクセプター抗体は、ジカウイルス抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、アクセプター抗体はドナーマイクロスフェアに結合することができず、
ドナーマイクロスフェアは、アクセプタービーズによるシグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを供与することができ、ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、アクセプター抗体と結合することができず、
ドナー抗体は、ジカウイルス抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、ドナー抗体はアクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記キットに関する。
【0032】
本発明は更に、上記のような抗原試料の効力を決定するための方法に関し、抗原はジカ抗原であり、キットは上記のように定義される。
【0033】
本発明は更に、上記のような方法によって得られるジカ抗原に関する。
【0034】
略語及び定義
略語
「ZIKV」とは、ジカまたはジカウイルスのことを指す。「DENV」とは、デング熱またはデングウイルスのことを指す。「DENV1」とは、デングウイルス血清型1のことを指す。「DENV2」とは、デングウイルス血清型2のことを指す。「DENV3」とは、デングウイルス血清型3のことを指す。「DENV4」とは、デングウイルス血清型4のことを指す。「VLP」とは、ウイルス様粒子のことを指す。「Eタンパク質」とは、エンベロープ糖タンパク質のことを指す。「EDI」、「EDII」、「EDIII」とは、Eタンパク質のドメインI、II及びIIIのことを指す。「Mタンパク質」とは、膜タンパク質のことを指す。「prM」とは、前駆体膜タンパク質のことを指す。「RFU」とは、相対蛍光単位のことを指す。「Ab」(複数可)とは、抗体(複数可)の略である。「Ig」とは、免疫グロブリンの略である。「mAb」とは、モノクローナル抗体の略である。「抗ZIKV Ab」とは、ZIKV抗原に結合するAbのことを指す。「CDR」とは、相補性決定領域の略である。「RVP」とは、レポーターウイルス粒子のことを指す。「TCID50」とは、50%組織培養感染量のことを指す。「ZAPA」とは、ジカ抗原効力アッセイのことを指す。「PIZV」とは、精製不活性化ジカワクチンのことを指す。「PRNT」とは、プラーク減少中和試験のことを指す。「MNT」とは、マイクロ中和試験のことを指す。「FFA」とは、フォーカス形成アッセイのことを指す。「PFU」とは、プラーク形成単位のことを指す。「FFU」とは、フォーカス形成単位のことを指す。「AU」とは、抗原単位のことを指す。
【0035】
定義
本開示及び本特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでない場合を除き、単数形及び複数形の両方を含むように解釈されるものとする。
【0036】
本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用する「及び/または」という用語は、「A」、「B」及び「A及びB」を含むことを意図とする。
【0037】
「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(contain)」、「含む(containing)」などのオープンタームは、「含む(comprising)」を意味する。これらのオープンエンドな移行句は、追加の記載していない要素または方法ステップを除外しない、要素や方法ステップなどのオープンエンドのリストを導入するために使用される。
【0038】
本明細書で使用する場合、「抗体(Ab)」(複数可)という用語は、一般に、ジスルフィド結合に相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン(Ig)分子(完全長Ab)を指し、抗原と特異的に結合してAb/抗原複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に得られる、合成されたまたは遺伝子操作された任意のポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。Abは、標準的な組換えDNA技術により得ることができる。完全長Abにおいて、各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)から構成されている。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成されている。軽鎖定常領域は、1つのドメインから構成されている。VH及びVL領域は更に、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域に細分され得、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域と共に分散され得る。各VH及びVLは3つのCDR及び4つのFRから構成され、以下の順序FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置される。本発明の特定の実施形態において、AbのFRは、ヒト生殖系配列と同一であり得るか、または自然もしくは人為的に改変され得る。Abという用語はまた、その任意の機能的断片、変異体、バリアントまたは誘導体を指し得る。このような機能的断片、変異体、バリアントまたは誘導体抗体の形式は、当技術分野で既知である。FabまたはF(ab’)2断片などのAb断片は、それぞれ完全長Abのパパイン消化またはペプシン消化などの従来技術を使用して、完全長Abから調製することができる。機能的断片は特に、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域中ジスルフィド架橋で結合した2つのFab断片を含む2価の断片である、F(ab’)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一可変ドメインを含むdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546、Winter et al.,PCT公開WO90/05144A1号)、及び(vi)単離CDRである。更に、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え法を用いて、それらを単一のタンパク質鎖として作製できる合成リンカーにより結合でき、この鎖中でVL及びVH領域が対となって1価の分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として既知。例えば、Bird et al.(1988)Science242:423-426、及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)。特定の実施形態において、scFv分子は、融合タンパク質内に組み込まれ得る。他の形態の単鎖抗体、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディとは、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現しているが、同じ鎖上の2つのドメインの間が対になるには短すぎるリンカーを用いているため、別の鎖の相補的なドメインと対にならざるを得ず、2つの抗原結合部位が形成される、2価の二重特異的抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure2:1121-1123を参照のこと)。このような機能的断片は、当技術分野において既知である(Kontermann and Dubel eds.,Antibody Engineering(2001)Springer-Verlag.New York.790 pp.(ISBN3-540-41354-5))。Abは、どの抗原に結合できるかを表現するために、「抗抗原Ab」という用語で記載され得る。例えば、「抗ZIKV Ab」とは、ZIKV抗原に結合するAbのことを指す。Abは、単一特異性、二重特異性または多重特異性であり得る。多重特異性Abは、1つの抗原の異なるエピトープに特異的に結合し得るか、または2つ以上の無関係な抗原に特異的に結合し得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照のこと。本発明の多重特異性抗原結合分子のいずれか、またはそのバリアントを含むAbは、当業者、例えば細胞内発現系であれば既知のように、標準的な分子生物学的技術(例えば、組換えDNA及びタンパク質発現技術)を用いて構築することができる。Abは、2つ以上の抗原結合部位を含む多価Abであり得る。1つ以上のCDR残基の置換、または1つ以上のCDRの欠損も、可能である。科学文献には、1つまたは2つのCDRが欠損しても、結合にほとんど影響を与えないAbが記載されている。公開されている結晶構造をもとにAbとその抗原の間の接触領域を解析したところ、実際に抗原に接触しているのはCDR残基の約5分の1から3分の1だけであることが判明した。そのうえ、多くのAbは、抗原と接触しているアミノ酸がないCDRを1つまたは2つ有している(Padlan et al.FASEB J.1995,9:133-139,Vajdos et al.,J Mol Biol2002,320:415-428)。抗原と接触していないCDR残基は、過去の研究に基づいて、Chothia CDRの外にあるKabat CDRの領域から、分子モデリングによって及び/または経験的に同定することができる(例えば、重鎖のCDR2のH60~H65残基は必要ないことが多い)。CDRまたはその残基(複数可)が欠損する場合、通常、別のヒトAb配列またはそのようなコンセンサス配列で対応する位置を占めるアミノ酸で置換される。CDR内の置換位置及び置換するアミノ酸はまた、経験的に選択することができる。経験的置換は、保存的または非保存的置換であり得る。Abという用語は、例えばウサギ、マウス、ヒト、サルまたはラットを含む特定の種起源に由来するAbを指し得る(ウサギAb、マウスAb、ヒトAb、サルAb、またはラットAb)。例えば、ウサギ由来とは、ウサギ生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有するAbを含むことを意図し得る。Abは、対応する生殖系配列と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/または欠失を含み得る。Abはまた、種起源の生殖系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroもしくはin vivoでのランダムまたは部位特異的変異誘発によって導入された突然変異)を、例えばCDRに含み得る。本明細書で使用する場合、特定の種起源(例えば、ウサギ)に由来するAbは、他の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系に由来するCDRまたは他の配列が、種起源(例えば、ウサギ)のフレームワーク領域(FR)配列に移植されたAbを指し得る。Abは、キメラAbであり得る。キメラAbは、異なる種の生殖系列に由来する配列を包含し、更にアミノ酸置換や挿入を含み得る。Abは、最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列を含むヒト免疫グロブリンであるヒト化Abであり得る。一般的に、ヒト化抗体では、ヒトのCDRの残基は、非ヒト種のCDRの残基で置換されている(例えば、マウス、ラット、ウサギ及びハムスターなど;Jones et al.,Nature 1986;321:522-525;Riechmann et al.,Nature 1988,332:323-327;Verhoeyen et al.,Science1988,239:1534-153)。ヒト化抗体を作製するために使用する方法の非限定例は、米国特許第5,225,539号、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.1994,USA 91:969-973及びRoguska et al.,Protein Eng.1996;9:895-904に記載されている。Abは、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、及びサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgG1アイソタイプである。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgG2アイソタイプである。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なる及び周知のサブユニット構造及び3次元形状を有する。Abは、複数のクラスまたはサブクラスからの配列を含み得る。Abは、異なる抗原特異性を有する他のAbを含まない場合がある(例えば、ZIKVに結合するAbは、ZIKV以外の抗原に結合するAbを実質的に含まない)。Abは、他の細胞材料及び/または化学薬品を実質的に含まなくてもよい。Abという用語は、中和または非中和Abを指し得る。Abという用語は、モノクローナルAbを指し得る。Abという用語は、組換えAbを指し得る。Abという用語は、ドナーAbを指し得る。Abという用語は、アクセプターAbを指し得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、Abの「定常領域」という用語は、重鎖定常領域(CH)及び/または軽鎖定常領域(CL)を指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、Abの「可変領域」という用語は、重鎖可変領域(VH)及び/または軽鎖可変領域(VL)を指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、「に結合する」、「に結合している」または「に結合できる」という用語は、特定の抗原に結合する、または結合している、または結合できるAbとの関連内で、特定の分子、例えば、マイクロスフェアまたは抗原に結合できるAbを指す。特定の抗原に対する結合能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはバイオレイヤー干渉法(BLI)を含む当技術分野で既知の方法によって調べることができる。それによって、Abは、抗原との結合を試験したときに、方法のバックグラウンドまたはノイズを上回るシグナルを提供する。特定の実施形態において、Abは、抗原への結合について試験したときにシグナルを提供し、それは、比較可能な抗原への結合について試験したときにAbが提供するシグナルよりも少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%高い。具体的な実施形態において、抗原はZIKV抗原(すなわち、ZIKVワクチン)であり、比較可能な抗原はDENV抗原である。Abは、Ab定常領域または可変領域で前記分子に結合する可能性があり得る。分子が抗原の場合、Abは抗体可変領域で抗原と結合することができる。分子がマイクロスフェアの場合、AbはAb定常領域でマイクロスフェアと結合することができる。
【0042】
本明細書で使用する場合、「に結合している」という用語は、結合しているAbとの関連内で、分子、例えばマイクロスフェアまたは抗原に結合しているAbを指す。Abは、抗体定常領域または可変領域で前記分子に結合し得る。分子が抗原の場合、Abは抗体可変領域で抗原と結合する。分子がマイクロスフェアの場合、Abは抗体定常領域でマイクロスフェアと結合する。したがって、本明細書で使用する場合、「に結合している」という用語は、結合しているマイクロスフェアとの関連内で、Abの定常領域に結合しているマイクロスフェアを指す。Abは、マイクロスフェアに共有結合することも、その逆も可能である(「に共有結合している」)。
【0043】
本明細書で使用する場合、「複合体を形成することが可能になる」という用語は、ドナーAb、ドナーマイクロスフェア、アクセプターAb、アクセプターマイクロスフェア及び試料との関連内で、ある量の前記ドナーマイクロスフェア、ある量の前記アクセプターマイクロスフェア、ある量の前記ドナー抗体及びある量の前記アクセプター抗体と試料を十分な時間接触させ、試料中の抗原と、ドナーマイクロスフェアに結合したドナー抗体及びアクセプターマイクロスフェアに結合したアクセプター抗体ならびに抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合したアクセプター抗体及び抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合したドナー抗体との複合体の形成が可能になる状況を指す。ドナーAbとアクセプターAbが結合していない及び/または試料中の抗原と結合していない場合、複合体は形成されない。
【0044】
本明細書で使用する場合、「相補性決定領域(CDR)」という用語は、Ab可変配列内のCDRのことを指す。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域のそれぞれには3つのCDRが存在し、可変領域のそれぞれについてCDR1、CDR2、CDR3(または、具体的にはVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3)と称される。CDRという用語は、抗原を結合することができる単一の可変領域に生じる3つのCDRの群を指し得る。このCDRの正確な境界は、異なる系に従って異なるように定義され得る。Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)and(1991)))によって記述される系は、抗体の任意の可変領域に適用できる明確な残基系を指すが、3つのCDRを定義する正確な残基境界を提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと称され得る。VH領域について、超可変領域は、VH-CDR1ではアミノ酸位置31~35、VH-CDR2ではアミノ酸位置50~65、VH-CDR3ではアミノ酸位置95~102の範囲である。VL領域について、超可変領域は、VL-CDR1ではアミノ酸位置24~34、VL-CDR2ではアミノ酸位置50~56、VL-CDR3ではアミノ酸位置89~97の範囲である。Chothiaと共同研究者(Chothia&Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)及びChothia et al.,Nature 342:877-883(1989))は、Kabat CDR内の特定のサブ部分が、アミノ酸配列レベルでは大きな多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド主鎖構造を取り入れることを見いだした。これらのサブ部分はL1、L2及びL3、またはH1、H2及びH3と称され、「L」及び「H」はそれぞれ軽鎖領域及び重鎖領域を称する。これらの領域は、Kabat CDRと重複する境界を有するChothia CDRとして称され得る。Kabat CDRと重なるCDRを定義する他の境界は、Padlan(FASEB J.9:133-139(1995))及びMacCallum(J Mol Biol 262(5):732-45(1996))によって説明されている。また、他のCDR境界の定義は、上記の系のいずれかに厳密に従っていない場合もあるが、Kabat CDRと重なるであろうが、特定の残基もしくは残基群、もしくはCDR全体が抗原結合に大きな影響を及ぼさないという予測または実験結果に照らして、それらは短くされ得るか、または長くされ得る。本明細書で使用する方法は、これらの系のいずれかに従って定義されたCDRを利用することができるが、好ましい実施形態では、KabatまたはChothia定義CDRを使用する。
【0045】
本明細書で使用する場合、「フレームワーク」、「フレームワーク領域(FR)」または「フレームワーク配列」という用語は、可変領域の配列からCDRを除いた残りの配列を指す。CDR配列の正確な定義が異系統により決定され得るため、フレームワーク配列の意味は、それに相応して異なる解釈がなされる。6つのCDR(VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3、ならびにVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3)はまた、軽鎖(L)及び重鎖(H)上のフレームワーク領域を、各鎖上において4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分割する。そこで、CDR1はFR1とFR2との間に位置し、CDR2はFR2とFR3との間に位置し、CDR3はFR3とFR4との間に位置する。特定のサブ領域をFR1、FR2、FR3またはFR4として特定することなく、他のものにより言及されるフレームワーク領域は、単鎖の天然由来の免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わせられたFRを表す。本明細書で使用する場合、FRは4つのサブ領域のうちの1つを表し、FRsはフレームワーク領域を構成する4つのサブ領域のうちの2つ以上を表す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「組換えAb」とは、例えば、DNAスプライシング及びトランスジェニック発現を含む組換えDNA技術のような当技術分野で既知の技術または方法によって作成、発現、単離または取得されたAbを指す。前記用語は、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えばトランスジェニックマウスを含む)、または細胞(例えば、CHO細胞)発現系で発現したAb、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離したAbを指し得る。
【0047】
本明細書で使用する場合、「中和Ab」とは、マイクロ中和試験(MNT)、プラーク減少中和試験(PRNT)、フォーカス形成アッセイ(FFA)及び/またはレポーターウイルス粒子(RVP)試験において検出下限及び/またはバックグラウンドを超える力価を提供するAbを指すことが意図される。中和Abは、単独で、または他の抗ウイルス剤と適切な配合により予防剤もしくは治療薬として組み合わせて、または有効なワクチン接種に関連して、または診断ツールとして使用することができる。中和Abという用語は、病原体、例えばZIKVが宿主の感染を開始及び/または永続させる能力を阻止、阻害、低減、阻害または妨害するAbを指し得る。中和Abが結合するエピトープは、「中和エピトープ」と称され得る。
【0048】
本明細書で使用する場合、「抗体力価」という用語は、試料中の一定量のAbのことを指す。試料は、血漿、尿、血液または血清試料であり得る。抗体力価は、それでも陽性試験結果となる最高希釈率(連続希釈作業で)の逆数で表すことができる。したがって、「中和抗体力価」という用語は、試料中の一定量の中和Abのことを指す。Ab力価または中和Ab力価は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、マイクロスフェアイムノアッセイ、RVPアッセイ、MNT、FFAまたはPRNTを含む当技術分野で既知の種々の方法によって決定することができる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「イムノアッセイ」という用語は、Abまたは抗原の使用により分子の存在及び/または濃度を検出、決定、同定、特性評価、定量化、またはそれ以外に測定するアッセイを意味する。イムノアッセイによって検出される分子は、生体試料(例えば、血清または血漿)中に存在し得る。イムノアッセイで検出される分子は、それ自体がAbまたは抗原であり得る。
【0050】
本明細書で使用する場合、「マイクロスフェアイムノアッセイ」という用語は、Abが結合することができる抗原に結合したマイクロスフェアを使用して、Abの存在及び/または濃度を検出、決定、同定、特性評価、定量化または測定するアッセイを意味する。マイクロスフェアイムノアッセイで検出されるAbは、生体試料(例えば、血清または血漿)中に存在し得る。
【0051】
本明細書で使用する場合、「レポーターウイルス粒子(RVP)」という用語は、野生型ウイルスの抗原決定基を保持する粒子を指し、カプシド(C)、エンベロープ(E)、前膜(prM)、膜(M)タンパク質が含まれる。細胞にRVPを感染させると、例えばRenilla属ルシフェラーゼまたはホタルルシフェラーゼのレポーター遺伝子が発現する。RVPにより、ウイルス感染を経時的に追跡し、ウイルスの細胞侵入及び複製などの事象を定量化することが可能になる。
【0052】
本明細書で使用する場合、「レポーターウイルス粒子アッセイ(RVPアッセイ)」または「レポーターウイルス粒子試験(RVP試験)」という用語は、試料中の中和Ab力価を決定するためのアッセイを指す。したがって、例えばベロ細胞などの細胞を試料と一緒にインキュベートし、その後RVPを添加する。中和Abの半数効果濃度(EC50)力価は、検出可能なシグナルを生成するためにRVP感染時に発現するレポーター遺伝子によって変換される適切な基質を添加することによって決定される。例えば、基質であるセレンテラジンを変換すると、ルシフェラーゼは、検出され得る発光シグナルを生成する。試料を含まない対照と比較した発光シグナルの減少は、試料中の中和Abの存在及び/または量の指標となる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「細胞変性効果(CPE)」という用語は、例えばベロ細胞などの単層培養細胞へのウイルス感染の際に誘導される目に見える変化を意味する。CPEには、細胞が丸くなること及び培養プレートから剥がれたりすることが含まれる。CPEは、光学顕微鏡で、または分光測定による読み取りによって観察することができる。分光測定による読み取りは、ウイルス感染による細胞死で細胞培地のpHが変化するという事実に基づく。このpH変化は、細胞培地内に指示薬(例えばフェノールレッド)を入れることによって可視化され、約560nm及び約420nmの吸光度を測定し、これら2つの値を比較することで検出することができる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「マイクロ中和試験(MNT)」という用語は、試料中の中和Ab力価を決定するための方法を指す。ウイルスを試料の連続希釈液と混合することで、CPEの減少を観察し、それにより試料中の中和Abの量を決定できる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「エンドポイント希釈アッセイ」という用語は、試料中の感染性ウイルス力価を測定するための方法を指す。この方法は、例えばベロ細胞のような単層細胞を試料の連続希釈液でインキュベートした際にCPEが発生することを利用している。インキュベーション後、CPEは各試料希釈について決定され、その結果を使用して50%組織培養感染量(TCID50)の結果を数学的に算出する。TCID50とは、この文脈の中で接種された組織培養細胞の50%に細胞変性作用を生成するのに必要なウイルス量を指す。一般的に使用されるTCID50の算出の方法としては、Reed and Muench法及びSpearman and Karber法を含む。
【0056】
本明細書で使用する場合、「プラーク減少中和試験(PRNT)」という用語は、ウイルスに対する中和Ab力価を測定するための試験を指す。そのため、試料(例えば、血清)を希釈し、一定量のウイルスと混合する。その後、混合物を、コンフルエントな単層細胞(例えば、ベロ細胞)上に塗布する。続いて、細胞層の表面を、例えば寒天などの半固体重層培地の層で覆い、ウイルスが無差別に拡散するのを防止する。プラーク形成単位(PFU)の濃度は、数日後に形成されるプラークの数(溶解した細胞の領域)によって推定することができる。ウイルスによっては、顕微鏡観察及び/または感染細胞と反応するか、または生細胞のみを染色する特異的な色素(例えば、クリスタルバイオレットなど)により、プラーク形成単位を測定する。細胞にウイルスのみを感染させた(試料の追加を含まない)対照と比較して、プラーク数を50%減少させる試料の濃度を、「PRNT50」の値で表す。
【0057】
本明細書で使用する場合、「フォーカス形成アッセイ(FFA)」という用語は、PRNTアッセイの変形を指し、感染した細胞の領域(フォーカス)をウイルス抗原に特異的な蛍光抗体で検出し、感染宿主細胞及び感染性ウイルス粒子を検出する。FFAは、細胞膜を溶解しないウイルスのクラスの定量に特に有用である。これらのウイルスは、PRNTに適さないからである。FFAの結果は、フォーカス形成単位(FFU)として報告される。
【0058】
本明細書で使用する場合、「プラーク形成単位(PFU)」という用語は、単位体積あたりのプラーク(溶解した細胞の領域)を形成することができるウイルス粒子の数のことを指す。
【0059】
本明細書で使用する場合、「フォーカス形成単位(FFU)」という用語は、単位体積あたりのフォーカス(感染細胞の領域)を形成することができるウイルス粒子の数のことを指す。
【0060】
本明細書で使用する場合、「酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)」という用語は、特定のセットアップに応じたAb及び抗原の測定のためのイムノアッセイのことを指す。すべてのELISAセットアップの主な特徴は、Abまたは抗原を固定化したプレートを使用することである。例えば、試料中のAbを決定するために、Abが結合する対応する抗原をプレート上に固定化する。別のセットアップでは、Abをプレートに固定化し、試料中の抗原を検出する。ELISAのシグナルは酵素反応によって生成され、例えば分光光度法で検出可能なシグナルを生成する。利用した酵素の一般的な例として、ホースラディッシュペルオキシダーゼがある。一般的なELISAセットアップには、直接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA及び逆ELISAがある。
【0061】
本明細書で使用する場合、「モノクローナルAb」(「mAb」)という用語は、同じ抗原決定基(エピトープ)に結合する実質的に均質なAbの集団から得られたAbのことを指す。「実質的に均質」とは、微量に存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除き、個々のAbが同一であることを意味する。これは、様々な異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含む、ポリクローナル抗体とは対照的である。モノクローナルAbは、当技術分野で既知の方法(Koehler and Milstein,Nature 1975,256:495-497)、ファージ選択、組換え発現及び遺伝子導入動物に従ってハイブリドーマ技術により生成し得る。
【0062】
本明細書で使用する場合、「交差反応しない」という用語は、特定の抗原、例えばフラビウイルスまたはDENVに結合しないAbのことを指す。そうした文脈の中で「結合しない」とは、特定の抗原、例えばフラビウイルスまたはDENVへの結合について試験したときに、Abが別の抗原、例えばZIKVへの結合について試験したときの結合シグナルの30%以下、20%以下、より好ましくは10%以下、更により好ましくは5%以下の結合シグナルを示すことを意味する。特定の実施形態において、そうした文脈の中で「結合しない」とは、抗原、例えばフラビウイルスまたはDENVへの結合について試験したときに、Abがバックグラウンドシグナル及び/または検出下限を超える結合シグナルを示さないことを意味する。例えば、結合シグナルを検出するための好適な方法としては、対応する抗原を用いた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはマイクロスフェアイムノアッセイが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「検出系」という用語は、近接反応によって生成されるシグナルを決定するのに適した任意の系のことを指す。検出系という用語は、更に、ドナーマイクロスフェア内の分子を励起し、それにより近接反応を開始させ、この近接反応によって生成されるシグナルを決定するのに適した系を指し得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「組換えタンパク質」とは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAスプライシング及びトランスジェニック発現を含む組換えDNA技術など当技術分野で既知の技術または方法によって作成、発現、単離または取得されたタンパク質を指す。前記用語は、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、トランスジェニックマウスを含む)、または細胞(例えば、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはEscherichia coliなどの細菌細胞)発現系で発現するタンパク質を指し得る。組換えタンパク質は、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC、例えばHis-精製)及びサイズ排除クロマトグラフィーなどの当技術分野で既知のタンパク質精製方法によって精製することができる。タンパク質は、例えばタンパク質濃度の決定のためのブラッドフォードもしくはビシンコニン酸(BCA)アッセイ、またはタンパク質の結合特性の決定のためのバイオレイヤー干渉法(BLI)などの当技術分野で既知の方法によって特徴付けることができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「マイクロスフェア」(複数可)は、本発明の方法での使用のために抗体(Ab)のような分子に結合し得る小粒子のことを指す。マイクロスフェア、粒子、マイクロ粒子、ビーズまたはマイクロビーズという用語は互換的に使用でき、同等の意味を有する。マイクロスフェアは、近接反応で移動するエネルギーを供与するかまたは受けとることができる。
【0066】
本明細書で使用する場合、「抗原」という用語は、Abにより結合され得るあらゆる物質を指す。抗原は、対象内の免疫応答を誘導し得る。抗原は、1つ以上のエピトープを有し得る。したがって、異なるAbは、抗原上の異なる領域に結合し得る。抗原は、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質またはこれらの組み合わせであり得る。抗原は、例えばZIKV抗原、DENV抗原、ポリオウイルス抗原またはノロウイルス抗原などのウイルス抗原であり得る。ウイルス抗原はまた、生ウイルス、不活性化ウイルス、弱毒化生ウイルスまたはウイルス様粒子であり得る。抗原は、それ自体がウイルス抗原であり得る、ワクチン抗原(ワクチン中に存在する抗原)であり得る。ワクチン抗原は不活性化され得(例えば、ホルムアルデヒド処理により)、ワクチンに配合され得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、「ZIKV抗原」という用語は、ZIKVである、その一部である、またはそれに由来する任意の抗原のことを指す。例としては、天然ZIKV、不活性化ZIKV(例えば、熱不活性化、ホルムアルデヒド不活性化)、弱毒化ZIKV、ZIKVウイルス様粒子(VLP)、ZIKV構造または非構造タンパク質、ZIKV NS1タンパク質、ZIKV Eタンパク質、ZIKV Eタンパク質ドメインIII(EDIII)、ZIKV免疫原性組成物(例えば、ZIKVワクチン)、ZIKV免疫原性組成物の任意の前駆体またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ZIKVワクチンは、精製不活性化ZIKVワクチン(PIZV)であり得る。PIZVは、ミョウバンに吸着され得る。
【0068】
本明細書で使用する場合、「対象」(複数可)という用語は、任意の個体を含み得る。対象は、マウス、霊長類、非ヒト霊長類(NHP)、ヒト、ウサギ、ネコ、ラット、ウマ、ヒツジであり得るが、これらに限定されない。特定の実施形態において、対象は、妊娠中の哺乳動物であり得、特定の実施形態において、妊娠中のヒト女性であり得る。いくつかの実施形態において、対象は、予防または治療が望まれる患者である。
【0069】
本明細書で使用する場合、「非ヒト対象」という用語は、ヒトではない任意の個体を含むことができる。非ヒト対象は、マウス、霊長類、非ヒト霊長類(NHP)、ウサギ、ネコ、ラット、ウマ、ヒツジであり得るが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用する場合、「試料」という用語は、任意の起源のものであり得る試料のことを指す。試料は、対象に由来するものであり得る。試料は、体液(血清、血液、尿、脳脊髄液、リンパ液など)、免疫原性組成物(ワクチンまたはその任意の前駆体など)及び細胞培養成分(細胞培養上清、細胞溶解物など)を含むが、これらに限定されない。試料は、抗原試料(例えば、ワクチン抗原試料、ウイルス抗原試料)であり得る。試料が体液の場合、試料は、人体または動物の体外の試料であることが必要である。試料は、ワクチン抗原またはウイルス抗原など任意の種類の分析物を含むことができる(ワクチン抗原試料、ウイルス抗原試料)。試料という用語はまた、ワクチンの製造工程の異なる段階からの試料を指し得る。試料という用語はまた、異なるワクチンバッチを指し得る。試料という用語はまた、異なる品質でZIKV抗原としての抗原を含む異なるワクチンバッチを指し得る。前記用語はまた、ZIKV抗原としての抗原及びミョウバンなどの追加成分を含む異なるワクチンバッチを指し得る。前記試料は、血液からの血漿の調製、液体の希釈など、使用前に前処理を行うことができる。前処理のための方法は、精製、濾過、蒸留、濃縮、妨害化合物の不活性化、及び試薬の添加を含むことができる。いくつかの実施形態において、試料は、熱不活性化及び/またはホルムアルデヒドにより不活性化される。
【0071】
本明細書で使用する場合、「抗原試料」という用語は、特定の量の抗原を含有する任意の試料のことを指す。したがって、「ウイルス抗原試料」という用語は、ウイルス抗原を含有する任意の試料のことを指す。したがって、「ワクチン抗原試料」という用語は、ウイルス抗原などのワクチン抗原を含有する任意の試料のことを指す。
【0072】
本明細書で使用する場合、「バッチ」という用語は、特定の試料(例えば抗原試料)またはワクチンの特定のバッチのことを指す。異なるバッチは、例えばその品質が異なり得る。例えば、1つのワクチンバッチは、別のワクチンバッチよりも高い効力を示し得る。
【0073】
本明細書で使用する場合、「標準化試料」または「標準化抗原試料」という用語は、特徴付けられた試料のことを指す。標準化試料は、任意の対象の標準化試料の効力を決定することにより、及び試験試料中の抗原量を決定するのと同様の方法で標準化試料中の抗原量を決定し、決定した対応する効力に対して標準化試料中の抗原量をプロットすることにより、試験試料の効力を決定するための標準曲線を確立するために適用することができる。標準化試料の効力は、平均中和抗体力価として表すことができる。標準化試料は、強制分解試験または抗原の異なる用量の適用(例えば、ストック標準化試料の連続希釈)により提供され得る。
【0074】
本発明の文脈内で、「強制分解試験」という用語は、抗原を含む試料を提供及び/または使用する任意の試験のことを指し、抗原は制御された方法で異なる程度に分解される。例えば、分解は、pH変化(例えば、試料の酸性化)または熱分解(例えば、約56℃で約30~約60分間の試料のインキュベーション)によって実施することができる。例えば、試料を熱分解し、この熱分解試料の特定の量を非分解試料と混合し、25%、50%、75%及び100%の熱分解試料とすることができる。
【0075】
本明細書で使用する場合、抗原の「用量」という用語は、例えば絶対量(mg、μg及びngなど)または濃度(mg/mL、μg/mL及びng/μLなど)として表される抗原の特定の量のことを指す。
【0076】
本明細書で使用する場合、「抗原性」という用語は、抗原がAbに結合する能力、したがって、特定のエピトープの利用可能性のことを指す。抗原性は、例えば本発明に開示される方法のようなin vitroの立体構造法によって測定される。
【0077】
本明細書で使用する場合、「効力」及び「免疫原性」という用語は、抗原(例えば、ワクチン抗原試料などの抗原試料に存在するもの)及び/またはワクチンが対象(例えば、ヒトまたはマウスなどのモデル動物)において免疫応答を誘導する能力のことを指す。免疫応答は、体液性及び/または細胞媒介性であり得る。抗原性と比較して、効力及び免疫原性は、抗原またはワクチンを対象に投与し、誘導された免疫応答を監視する、in vivo試験により測定される。
【0078】
本明細書で使用する場合、「ウイルス様粒子(VLP)」(複数可)という用語は、ウイルスに酷似しているが、ウイルス遺伝物質を含まないため非感染性である分子を意味する。VLPは、ウイルス構造タンパク質を発現させることで組換えに調製され得、その後、VLPに自己構築化することができる。したがって、ZIKV VLPとは、ZIKV構造タンパク質を含むVLPのことを指す。VLPは、対象において免疫応答を誘導するためのワクチンとして使用することができる。
【0079】
本明細書で使用する場合、「Eタンパク質」という用語は、エンベロープ糖タンパク質(E)を意味する。したがって、「ZIKV Eタンパク質」は、ZIKVエンベロープ糖タンパク質(E)のことを指す。Eタンパク質は組換えタンパク質であり得る。ZIKV Eタンパク質のアミノ酸配列は、ZIKV株によってコードされるウイルスポリタンパク質の一部である。特に、ZIKV Eタンパク質(配列番号1)のアミノ酸配列は、ZIKV株PRVABC59(GenBank受入番号MH158237.1)によってコードされるウイルスポリタンパク質(Eタンパク質はアミノ酸291-794に相当、GenBank受入番号AWH65849.1)の一部である。
【0080】
本明細書で使用する場合、「EDIII」という用語は、Eタンパク質外部ドメインのZIKVカルボキシル(C)末端ドメインIIIのことを指す。EDIIIタンパク質のアミノ酸配列は、ZIKV株によってコードされるウイルスポリタンパク質の一部であるEタンパク質の一部である。例えば、EDIIIのアミノ酸配列は、ZIKV株PRVABC59(GenBank受入番号MH158237.1.)の配列番号1内にコードされている。
【0081】
本明細書で使用する場合、「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、パラトープとして知られるAb分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原の部分のことを指す。逆に、「エピトープ」はまた、宿主上の特異的細胞受容体または結合部位と相互作用し得る。1つの抗原は、複数のエピトープを有し得る。したがって、異なるAbは抗原上の異なる領域に結合し、異なる生物学的効果を有し得る。例えば、「エピトープ」という用語はまた、B細胞及び/またはT細胞が反応する抗原上の部位を指す。エピトープは、構造的なものまたは機能的なものとに分類され得る。機能的エピトープは、一般に構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。抗体が結合するエピトープは、抗原内に位置する2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)のアミノ酸の単一の連続配列、すなわち、例えばZIKV Eタンパク質のドメイン内の線形エピトープからなり得る。エピトープはまた、立体構造的であり得る、すなわち、複数の非連続的アミノ酸、すなわち、非線形アミノ酸配列から構成され得る。立体構造的エピトープは通常、特有の空間配置中に少なくとも3つのアミノ酸、より一般的には少なくとも5つのアミノ酸、例えば7~10個のアミノ酸を含む。特定の実施形態において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、リン酸基またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基である決定基を含み得、特定の実施形態において、特定の電荷特性を有し得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは通常、変性溶媒に曝露されても保持されるが、三次折り畳みによって形成されるエピトープは通常、変性溶媒で処理すると失われる。抗体がポリペプチドまたはタンパク質内の1つ以上のアミノ酸と相互作用するかどうかを決定するために、当業者に既知の様々な技術を使用することができる。例示的な技術としては、例えば、部位特異的変異誘発(例えば、アラニンスキャニング変異解析)が挙げられる。他の方法としては、日常的なクロスブロッキングアッセイ(Antibodies,Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYに記載されているものなど)、ペプチドブロット解析(Reineke(2004)Methods Mol.Biol.248:443-63)、ペプチド切断分析結晶学的試験、及びNMR分析が挙げられる。更に、エピトープ切除、エピトープ抽出、抗原の化学修飾などの方法を採用することができる(Tomer(2000)Prot.Sci.9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するのに使用できる別の方法は、質量分析で検出された水素/重水素交換である。一般に、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素で標識した後、重水素で標識されたタンパク質に抗体を結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体複合体によって保護されているアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンに比べて遅い速度で重水素から水素への逆交換を行う。その結果、タンパク質/抗体界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持し得、界面に含まれないアミノ酸と比較して、相対的に高い質量を示し得る。抗体が解離した後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断させ、質量分析することで、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにすることができる。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267:252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照のこと。修飾補助プロファイリング(MAP)は、抗体構造ベース抗体プロファイリング(ASAP)とも呼ばれ、同じ抗原に結合するAbを、異なるエピトープに結合するAb群に分類するために使用され得る。MAPは、化学的または酵素的に修飾された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性に従って、同じ抗原に対する大量のAbを分類する方法である(米国特許第2004/0101920号を参照)。各カテゴリは、別のカテゴリで表されるエピトープと明確に異なるまたは部分的に重複する、独自のエピトープを反映し得る。この技術により、遺伝的に同一の抗体を迅速にフィルタリングし、遺伝的に異なる抗体に焦点を当てた特性評価を行うことができる。ハイブリドーマスクリーニングに適用した場合、MAPは、所望の特性を有するmAbを産生する希少なハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。
【0082】
本明細書で使用する場合、「フラビウイルス」という用語は、Flaviviridae科フラビウイルス属に属するウイルスのことを指す。ウイルス分類学によれば、ZIKV、DENV、YFV、JEV、WNV及び関連するフラビウイルスなど約50のウイルスがこの属に属している。本明細書では、フラビウイルス属に属するウイルスをフラビウイルスと呼ぶ。現在、これらのウイルスは、主に東アジア、東南アジア及び南アジアならびにアフリカに存在しているが、世界中の他の地域でも発見され得る。
【0083】
本明細書で使用する場合、「ジカウイルス(ZIKV)」という用語は、フラビウイルスと称され、ウイルスに曝露した妊婦の胎児における小頭症及び他の発達異常(Schuler-Faccini et al.,MMWR Morb. Mortal.Wkly.Rep.2016,65:59-62)、ならびに成人におけるギリアン・バレー症候群(Cao-Lormeau et al.,Lancet 2016,387(10027):1531-9)と関連があるとされている。ZIKVは、アフリカ系及びアジア系遺伝子型に由来し得る。ZIKVは、構造的及び非構造的ポリペプチドをコードするポジティブセンス一本鎖RNAゲノムを保有する。ゲノムはまた、ウイルス複製に関与している、5’末端及び3’末端領域の両方の非コード配列を含む。これらのウイルスによってコードされる構造的ポリペプチドは、キャプシド(C)、前駆体膜(prM)、膜(M)、及びエンベロープ(E)タンパク質を含むが、これらに限定されない。これらのウイルスによってコードされる非構造的(NS)ポリペプチドは、NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B及びNS5を含むが、これらに限定されない。「ZIKV」という用語は、ZikaSPH(Brazil 2015、GenBank受入番号KU321639.1)、Brazil-ZKV(Brazil 2015、GenBank受入番号KU497555.1)、PRVABC59(Puerto Rico 2015、GenBank受入番号KU501215.1)、Haiti1225(Haiti 2014、GenBank受入番号KU509998.1)、Natal RGN(Brazil、GenBank受入番号KU527068.1)、SV0127-14(Thailand 2014、GenBank受入番号KU681081.3)、SPH2015(GenBank受入番号KU321639.1)、CPC-0740(Philippine 2012、GenBank受入番号KU681082.3)、SSABR1(Brazil、GenBank受入番号KU707826.1)、VE_Ganxian(China、GenBank受入番号KU744693.1)、MR766-NIID(Uganda、GenBank受入番号LC002520.1)、MR766(Uganda 1947、GenBank受入番号AY632535.2)、及びH/PF(French Polynesia 2013、GenBank受入番号KJ776791.1)を含む、異なるZIKV分離株から分離したZIKV株を含む(WO2017/109225)。更に、ZIKV株には、Cambodia 2010(GenBank受入番号JN860885)またはMicronesia 2007(GenBank受入番号EU545988)が含まれている(Mlakar et al.,N Engl J Med.2016 Mar10;374(10):951-8)。更に、ZIKV株には、FLR(Colombia 2015)株(WO2018/017497)、Surinameで分離したZ1106031(アジア系遺伝子型、GenBank受入番号KU312314)、Surinameで分離したZ1106027(アジア系遺伝子型、GenBank受入番号KU312315)、Surinameで分離したZ1106032(アジア系遺伝子型、GenBank受入番号KU312313)、及びSurinameで分離したZ1106033(アジア系遺伝子型、Enfissi et al.,Lancet 2016,387(10015):227-228、GenBank受入番号KU312312.1)が含まれている。
【0084】
本明細書において、「デングウイルス(DENV)」という用語は、構造的及び非構造的ポリペプチドをコードするポジティブセンス一本鎖RNAゲノムを保有する、フラビウイルスのことを指す。ゲノムはまた、ウイルス複製に関与している、5’末端及び3’末端領域の両方の非コード配列を含む。これらのウイルスによってコードされる構造的ポリペプチドは、キャプシド(C)、前駆体膜(prM)、膜(M)、及びエンベロープ(E)タンパク質を含むが、これらに限定されない。これらのウイルスによってコードされる非構造的(NS)ポリペプチドは、NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B及びNS5を含むが、これらに限定されない。DENVは、異なるデング血清型に分類され得る。「DENV」という用語は、すべてのデング血清型を含むDENVのことを指し得る。
【0085】
本明細書で使用する場合、「デング血清型」という用語は、その細胞表面抗原によって定義され、したがって当技術分野で既知の血清学的方法によって区別することができる、デングウイルスの種のことを指す。デングウイルスの血清型は、すなわち、デング血清型1(DENV1)、デング血清型2(DENV2)、デング血清型3(DENV3)、デング血清型4(DENV4)の4つが知られている。「デング血清型」という用語は、異なるDENV単離株、例えば、DENV1株Puerto Rico/US/BID-V853/1998(GenBank受入番号EU482592.1)、DENV2株Thailand/16681/84(EMBL-EBI受入番号U87411.1)、DENV3株Sri Lanka D3/H/IMTSSA-SRI/2000/1266(GenBank受入番号AY099336.1)、及びDENV4株Dominica/814669/1981(EMBL-EBI受入番号AF326825.1)から分離されたDENVの株を含む。
【0086】
本明細書で使用する場合、「構造タンパク質」という用語は、成熟したウイルスの構造的な構成要素であるウイルスタンパク質のことを指す。構造タンパク質には、フラビウイルスのCタンパク質、Eタンパク質、prMタンパク質、及びMタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。「構造タンパク質」という用語は、フラビウイルスのCタンパク質、Eタンパク質、prMタンパク質及びMタンパク質を限定することなく含む、タンパク質の少なくとも1つを指し得る。「構造タンパク質」という用語はまた、フラビウイルスのCタンパク質、Eタンパク質、prMタンパク質及びMタンパク質を限定することなく含む、タンパク質のすべてを指し得る。フラビウイルスは、DENVまたはZIKVであり得る。
【0087】
本明細書で使用する場合、「ノロウイルス」という用語は、一本鎖ポジティブセンスRNAを含む非エンベロープ型ウイルスのことを指す。前記ウイルスは、Caliciviridae科ノロウイルス属に属する。ノロウイルスは、宿主から宿主へ直接伝染し、汚染された水及び食物によって間接的に伝染する。ノロウイルス感染症は、吐き気、嘔吐、水様性下痢、腹痛、場合によっては味覚障害によって特徴付けられる。ヒトは通常、ノロウイルスに曝露されてからから12~48時間後に胃腸炎の症状を発症する。
【0088】
本明細書で使用する場合、「ポリオウイルス」という用語は、一本鎖ポジティブセンスRNAを含む非エンベロープ型ウイルスのことを指す。前記ウイルスは、Picornaviridae科エンテロウイルス属に属する。感染は糞口経路で生じ、筋力低下により動けなくなる可能性がある灰白髄炎を引き起こし得る。灰白髄炎はまた、発熱及び喉の痛み、頭痛、首のこりならびに手足の痛みなどの軽度の症状を伴い得る。
【0089】
本発明で使用する場合、「生ウイルス」という用語は、感染性ウイルスのことを指す。
【0090】
本明細書で使用する場合、「不活性化ウイルス」または「不活性化生ウイルス」という用語は、不活性化された、つまり病気を引き起こす能力を失うように処理された生ウイルスのことを指す。不活性化は、熱不活性化、界面活性剤による不活性化、紫外線(UV)照射、ガンマ線照射、β-プロピオラクトン不活性化、またはホルムアルデヒドによる不活性化など、当技術分野で既知の様々な方法によって実施することができる。不活性化ウイルスは、更に、濾過またはクロマトグラフィーなどの当技術分野で既知の方法によって精製することができる。不活性化ウイルスは、不活性化ジカウイルスであり得る。したがって、ワクチン抗原が不活性化ウイルス抗原である場合、そのワクチンを「不活性化ワクチン」または「不活性化生ワクチン」と称することができる。したがって、ワクチン抗原が精製不活性化ウイルス抗原である場合、そのワクチンを「精製不活性化ワクチン」または「精製不活性化生ワクチン」と称することができる。したがって、ワクチン抗原が精製不活性化ジカウイルス抗原である場合、そのワクチンを「精製不活性化ジカワクチン」と称することができる。不活性化ワクチンは生ワクチンと比較して弱い免疫応答を誘導するため、免疫学的アジュバント及び複数回の「ブースター」注射が必要となり得る。
【0091】
本明細書で使用する場合、「免疫学的アジュバント」または「アジュバント」という用語は、ワクチン接種時にこの応答を改善するために抗原に対する免疫応答を増強及び/または調節する物質のことを指す。免疫学的アジュバントには、ミョウバンなどの無機アジュバントまたはフロイントアジュバントなどの有機アジュバントが含まれる。
【0092】
本明細書で使用する場合、「ミョウバン」という用語は、リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウムを含む無機アジュバントのことを指す。
【0093】
本明細書で使用する場合、「弱毒化生ウイルス」または「弱毒化ウイルス」という用語は、宿主に病気を引き起こす病原菌から弱毒化(または弱体化)した生ウイルスのことを指す。弱毒化ウイルスを調製するための方法として、生ウイルスを外来宿主に定植させることがある。定植の際、ウイルスは、新しい宿主でウイルスを良好に増殖させることができる変異を蓄積する。その結果、最初のウイルス集団とは大きく異なるウイルス集団ができる。そうして、元の宿主(ヒトの場合もある)に対してもはや有害でない、つまり「弱毒化」した得られたウイルス集団を選択することが目標となる。したがって、ワクチン抗原が弱毒化生ウイルスである場合、そのワクチンを「弱毒化生ワクチン」「生ワクチン」または「弱毒化ワクチン」と称することができる。
【0094】
本明細書で使用する場合、「ワクチン」という用語は、対象に免疫応答を導入することができる少なくとも1つのワクチン抗原を提供する予防的材料のことを指す。ワクチン抗原は、ワクチン接種に適した任意の材料に由来し得る。ワクチン抗原を製剤化することにより、ワクチンを調製することができる。例えば、ワクチン抗原は、ノロウイルス抗原、ジカウイルス抗原、デングウイルス抗原またはポリオウイルス抗原などのウイルス抗原であってもよく、対応するワクチンをそれぞれノロワクチン、ジカワクチン、デングワクチンまたはポリオワクチンと称することができる。ワクチン抗原が精製不活性化ウイルスまたは弱毒化生ウイルスである場合、ワクチンは精製不活性化ワクチンまたは弱毒化生ワクチンであり得る。ワクチン抗原がVLPである場合、ワクチンはまたVLPワクチンであり得る。
【0095】
本明細書で使用する場合、「精製不活性化ジカワクチン(PIZV)」という用語は、培養で増幅された後、不活性化されて疾患産生能を失ったZIKV粒子を含むZIKVワクチンのことを指す。不活性化ステップに加えて、ZIKVワクチンは精製される。ZIKVワクチンは、ZIKV株PRVABC59に由来し得る。
【0096】
本明細書で使用する場合、「ワクチンの用量」という用語は、ワクチンの特定の量のことを指す。「ワクチンの用量」という用語は、対象への1回の投与によって与えられるワクチンの量、または対象へのすべての投与によって与えられるワクチンの量、すなわちブースター投与を含む量を指し得る。ワクチンは、ZIKVワクチン、ノロウイルスワクチン、デングウイルスワクチンまたはポリオウイルスワクチンであり得る。
【0097】
本明細書で使用する場合、「アクセプターマイクロスフェア」という用語は、アクセプターAbの定常領域に結合することができるかまたは結合していて、ドナー抗体と結合することができないマイクロスフェアのことを指す。更に、アクセプターマイクロスフェアは、近接反応で移動するエネルギーを受けとることができる。更に、アクセプターマイクロスフェアは、近接反応で移動するエネルギーを受けとり、それによって検出可能なシグナルを生成することができる1つ以上の分子を含む。
【0098】
本明細書で使用する場合、「ドナーマイクロスフェア」という用語は、ドナーAbの定常領域に結合することができるかまたは結合していて、アクセプターAbと結合することができないマイクロスフェアのことを指す。更に、ドナーマイクロスフェアは、近接反応で移動するエネルギーを供与することができる。更に、ドナーは、近接反応で移動するエネルギーを供与することができる1つ以上の分子を含む。このような分子は、光増感剤であり得る。
【0099】
本明細書で使用する場合、「近接反応」という用語は、検出可能なシグナルを生成することができる反応のことを指す。近接反応は、2つの反応パートナーの一方(「ドナー」、例えばドナーマイクロスフェア)が移動するエネルギーを供与する供与ステップと、2つの反応パートナーの他方(「アクセプター」、例えばアクセプターマイクロスフェア)が移動するエネルギーを受けとり、それによって検出可能なシグナルを生成する受けとりステップによって特徴付けられる。このように近接反応は、2つの反応パートナーの近さに依存したシグナルを提供し、そのため、特定の距離内に反応パートナーが存在することを読み出すことである。シグナルの強度は、反応パートナーの距離が長くなるにつれて減少する。シグナルが検出できない場合、反応パートナーが十分な距離にあり、近接反応が起きていない。近接反応及び前記近接反応により検出される対応する反応パートナーの距離は、同一の抗原分子または粒子と結合しているドナー及びアクセプターと、前記抗原分子または粒子と結合していないもの、すなわち、いずれの抗原分子もしくは粒子とも結合していないものまたは他の抗原分子もしくは粒子と結合していないものと、を区別するために選択される。
【0100】
本明細書で使用する場合、「複合体」という用語は、ドナーAbがドナーAb可変領域によって抗原の1つのエピトープに、ドナーAb定常領域によってドナーマイクロスフェアに結合し、アクセプターAbがアクセプターAb可変領域によって抗原の別のエピトープに、アクセプターAb定常領域によってアクセプターマイクロスフェアに結合している複合体のことを指す。複合体の形成は、ドナー及びアクセプターマイクロスフェアを特定の距離以内(例えば200nm以内)に近づけることができる。この点について、文脈上、Ab/抗原複合体、タンパク質/抗体複合体、抗体複合体などの表現は、この段落で「複合体」という用語について述べたのとは別の意味を有し得ることに注意しなければならない。
【0101】
本明細書で使用する場合、「シグナル」という用語は、測定可能な事象のことを指す。測定可能な事象としては、発光、光ルミネセンス、蛍光、化学発光及びリン光が挙げられ得るが、これらに限定されない。シグナルは、任意の適切な検出機器によって測定され得る。シグナルは、近接反応で生成され得る。
【0102】
本明細書で使用する場合、「検出系」という用語は、近接反応の存在及び/または量、したがって抗原試料の効力を示すシグナルを検出するのに適した任意の系のことを指す。適切な検出装置の例としては、Perkin Elmer製のEnVision(登録商標)、EnSpire(商標)、EnSight(登録商標)またはVICTOR(登録商標)Nivo(商標)マルチラベルプレートリーダーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書で使用する場合、「アクセプター抗体」という用語は、アクセプターマイクロスフェアに結合することができるかまたは結合しているAbのことを指す。更に、アクセプターAbは、ドナーマイクロスフェアに結合することができない。一実施形態において、アクセプターAbはモノクローナルAbである。
【0104】
本明細書で使用する場合、「ドナー抗体」という用語は、ドナーマイクロスフェアに結合することができるかまたは結合しているAbのことを指す。更に、ドナーAbは、アクセプターマイクロスフェアに結合することができない。一実施形態において、ドナーAbは、ドナーAbの定常領域でビオチン化される。一実施形態において、ドナーAbはモノクローナルAbである。
【0105】
本明細書で使用する場合、「EC50値」という用語は、ドナーAbとアクセプターAbの特定のペアと飽和状態で50%の最大複合体形成を達成するのに必要な抗原の量のことを指す。前記量は、濃度または力価(例えばng/μLまたはTCID50)として表すことができる。
【0106】
本明細書で使用する場合、「製剤化」という用語は、例えばワクチン抗原に更なる物質を添加することによる最終的なワクチンの調製のことを指す。製剤化ステップには、アジュバントの添加が含まれ得る。例えば、最終的なワクチンを製剤化する際に、ワクチン抗原をミョウバンに吸着させる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】ZAPAによるPIZVの解析。PIZVを連続希釈し、異なるmAbペアを使用してZAPAで解析した。mAbペア#1:アクセプターAbは抗ZIKV#2及びドナーAbは抗ZIKV#1、mAbペア#2:アクセプターAbは抗ZIKV#2及びドナーAbは抗ZIKV#3、mAbペア#3:アクセプターAbは抗ZIKV#2及びドナーAbは抗ZIKV#4である。ZAPAシグナル数を、各mAbペアのPIZV濃度[ng/mL]に応じた相対蛍光単位(RFU)で表示する。
図2】ZAPAによるZIKV株PRVABC59の解析。ZIKVを連続希釈し、異なるmAbペアを使用してZAPAで解析した。mAbペア#1:アクセプターAbは抗ZIKV#2及びドナーAbは抗ZIKV#1、mAbペア#2:アクセプターAbは抗ZIKV#2及びドナーAbは抗ZIKV#3、mAbペア#3:アクセプターAbは抗ZIKV#2及びドナーAbは抗ZIKV#4である。ZAPAシグナル数を、各mAbペアのZIKV TCID50力価に応じた相対蛍光単位(RFU)で表示する。
図3】原薬(DS)の強制分解試験。異なる量の熱処理したDSを未処理のDSと混合し、mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いてZAPAで解析した。ZAPAシグナル数を参照物質に内挿して、抗原単位/mL(AU/mL)のZAPA値を算出した。未処理DSの割合に応じたZAPA値(AU/mL)を表示する。
図4】PIZV中のミョウバンに吸着した原薬(DS)の強制分解試験。異なる量の熱処理したDSを未処理のDSと混合し、PIZVの調製のためにミョウバンに吸着させ、mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いてZAPAで解析した。ZAPAシグナル数を参照物質に内挿して、抗原単位/mL(AU/mL)のZAPA値を算出した。PIZV試料内の未処理DSの割合に応じたZAPA値(AU/mL)を表示する。
図5】mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いたZAPAによる異なる原薬(DS)バッチの解析。DSバッチ#1は0.001、0.005、0.01、0.05、0.1μgの抗原量になるように希釈され、ZAPAで分析する前にミョウバンに吸着させた。ZAPAシグナル数を参照物質に内挿して、抗原単位/100μL(AU/100μL)のZAPA値を算出した。DSバッチ#1の用量に応じたZAPA値(AU/100μL)を表示する。
図6】mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いたZAPAによる異なる原薬(DS)バッチの解析。DSバッチ#2は0.001、0.005、0.01、0.05、0.1μgの抗原量になるように希釈され、ZAPAで分析する前にミョウバンに吸着させた。ZAPAシグナル数を参照物質に内挿して、抗原単位/100μL(AU/100μL)のZAPA値を算出した。DSバッチ#2の用量に応じたZAPA値(AU/100μL)を表示する。
図7】mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いたZAPAによる異なる原薬(DS)バッチの解析。DSバッチ#3は0.001、0.005、0.01、0.05、0.1μgの抗原量になるように希釈され、ZAPAで分析する前にミョウバンに吸着させた。ZAPAシグナル数を参照物質に内挿して、抗原単位/100μL(AU/100μL)のZAPA値を算出した。DSバッチ#3の用量に応じたZAPA値(AU/100μL)を表示する。
図8】mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いたZAPAによる異なる原薬(DS)バッチの解析。DSバッチ#4は0.001、0.005、0.01、0.05、0.1μgの抗原量になるように希釈され、ZAPAで分析する前にミョウバンに吸着させた。ZAPAシグナル数を参照物質に内挿して、抗原単位/100μL(AU/100μL)のZAPA値を算出した。DSバッチ#4の用量に応じたZAPA値(AU/100μL)を表示する。
図9】ミョウバンへの吸着によりPIZVに配合された異なる原薬(DS)バッチ#1~4の0.01μg用量で免疫化したマウスに誘導された中和Ab力価。DSバッチに依存したレポーターウイルス粒子(RVP)アッセイにより決定した平均対数化EC50値を表示する。
図10】PIZVに配合された原薬(DS)バッチ#1~4の異なる用量で免疫化したマウスに誘導された中和Ab力価とZAPA値との相関性。異なるDSバッチの0.001、0.005、0.01、0.05、0.1μgの異なる抗原量をミョウバンに吸着させ、PIZVを調製した。mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いたZAPAシグナル数の参照物質への内挿により、抗原単位/100μL(AU/100μL)のZAPA値を算出した。レポーターウイルス粒子(RVP)アッセイによって決定された平均対数化EC50値に依存する、すべてのDSバッチ#1~4の各用量のZAPA値(AU/100μL)を表示する。
図11】PIZV試験試料#1及び2ならびに参照物質をZAPAで解析。試料及び参照を連続希釈し、mAbペア#1(アクセプターAbは抗ZIKV#2であり、ドナーAbは抗ZIKV#1である)を用いてZAPAで解析した。ZAPAシグナル数を、PIZV試験試料及び参照希釈液(1/希釈液として表示)に応じた相対蛍光単位(RFU)で表示する。
【発明を実施するための形態】
【0108】
アクセプター抗体、ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット
本発明は、アクセプターキット及びドナーキットを含むキットであって、アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、ドナー抗体と結合することができず、
アクセプター抗体は、抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、アクセプター抗体はドナーマイクロスフェアに結合することができず、
ドナーマイクロスフェアは、アクセプターマイクロスフェアによるシグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを供与することができ、ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、アクセプター抗体と結合することができず、
ドナー抗体は、抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、ドナー抗体はアクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記キットに関する。
【0109】
抗原の2つのエピトープに結合する2つのAbを適用する他の設定には、例えばサンドイッチELISA設定が含まれる。これにより、1つのAbがプレート上に固定化され、抗原がそのプレートに適用され、固定化されたAbによって結合されることができる。その後、第2のAbを添加し、酵素を用いた検出が行われる。ELISAは当技術分野で適用される一般的な方法であるが、いくつかの欠点がある。これらの欠点には、遮断不足による間違った結果のリスク、検出のために使用する酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)の活性が試料成分によって阻害されるリスク、及び作業に時間がかかること(洗浄工程を含む複数のステップが必要)が挙げられる。更に、酵素増幅を必要とするため、ELISAによる比色測定は感度に欠けることが多く、したがって増幅量のばらつきや誤差が生じやすい。
【0110】
本発明に有用なマイクロスフェアは、直径が約10~約500nm、より好ましくは約50~約400nm、更により好ましくは約200~約300nmのサイズの範囲であり、最も好ましくはマイクロスフェアは約200~約250nmの直径を有する。マイクロスフェアは磁性であり得る。
【0111】
マイクロスフェアは、Abのような分子を付着させ得る任意の材料で構築することができる。例えば、マイクロスフェアを構築するための許容可能な材料としては、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリビニルベンジルクロリド、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、ポリメタクリル酸メチルまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
マイクロスフェアは、本発明のAbなどの分子の付着に有用な官能基を含み得る。前記官能基は、カルボン酸塩、エステル、アルコール、カルバミド、アルデヒド、アミン、硫黄酸化物、窒素酸化物またはハロゲン化物であり得るが、これらに限定されない。分子は、本明細書に記載のまたは従来技術の化学的技術を使用して、マイクロスフェアに共有結合させることができる(例えば、Bruckner,Springer Verlag 2010,Organic Mechanismsを参照のこと)。例えば、Abは還元的アミノ化によってマイクロスフェアに結合させることができる。したがって、マイクロスフェア表面のアルデヒドは分子内のアミン基と反応して不安定なイミンとなり、それはシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)または水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などの適切な還元剤を用いて更に還元されて安定なアミンとなる。
【0113】
マイクロスフェアに結合すべきAbが提供する以外のアミン含有化合物が還元的アミノ化を妨害する可能性があるため、アミン含有化合物は、適切な緩衝液交換法でAb溶液から除去する必要がある。例えば、アミン(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、グリシン、ビシン、トリシン)を含む緩衝液は避けるべきである。例えば、好適な緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、炭酸緩衝液またはリン酸ナトリウム緩衝液を含む。還元的アミノ化のpHは、約8であり得る。カップリング効率が低下する可能性があるので、Abはウシ血清アルブミン(BSA)もしくはゼラチンなどのタンパク質またはペプチド系安定剤を含まず、緩衝液はグリセロールを含まないものでなければならない。
【0114】
マイクロスフェアは、本発明のAbなどの分子を付着させる親和性基を含み得る。前記親和性基は、Ni2+(Hisタグ化AbのようなHisタグ化分子の固定化用)、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質L、抗ヒトIgG Ab、抗ウサギIgG Ab、抗マウスIgG Ab、抗マウスIgM Ab、抗ラットIgG Ab、抗ヒツジIgG Ab、抗ニワトリIgY Ab、抗ヤギIgG Ab、抗FLAG Ab、ストレプトアビジン、アビジン及びグルタチオンであり得るが、これらに限定されない。
【0115】
マイクロスフェアは、Perkin Elmer(Waltham,US)製のAlphaLISA(登録商標)アクセプターマイクロスフェア、AlphaScreen(登録商標)アクセプターマイクロスフェア、AlphaDonorマイクロスフェアからなるリストのうちの1つであり得る。特定の実施形態において、アクセプターマイクロスフェアは、AlphaLISA(登録商標)アクセプターマイクロスフェアである。
【0116】
アクセプターマイクロスフェアは、近接反応で移動するエネルギーを受けとることが可能であり、近接反応で移動されるエネルギーを受けとることが可能な1つ以上の分子を含む。特定の実施形態において、1つ以上の分子はフルオロフォアである。フルオロフォアには、チオキセン、アントラセン、ルブレン及びユーロピウム、ユーロピウムキレートなどのランタニドまたはこれらの任意の誘導体が含まれるが、これらに限定されない。フルオロフォアは、励起時に検出可能なシグナルを生成することができ、励起は、近接反応で移動するエネルギーを受けとることによって引き起こされる。
【0117】
ドナーマイクロスフェアは、近接反応で移動するエネルギーを供与することが可能であり、近接反応で移動するエネルギーを供与することが可能な1つ以上の分子を含む。特定の実施形態において、1つ以上の分子は光増感剤である。光増感剤は、光化学的プロセスで別の分子に化学変化を生じさせる分子である。特定の実施形態において、光増感剤はフタロシアニンである。移動するエネルギーの供与は、近接反応の一部として光増感剤に特定の波長を照射することによって誘発され得る。
【0118】
一実施形態において、ドナーマイクロスフェアはアクセプターマイクロスフェアと直接相互作用することができず、アクセプターマイクロスフェアはドナーマイクロスフェアと直接相互作用することができない。この文脈内の「直接」とは、アクセプター及びドナーマイクロスフェアが、近接反応中に生じるのとは別の方法で互いに反応することを意味する。例えば、ドナー及びアクセプターマイクロスフェアの官能基が互いに化学反応するか、またはドナー及びアクセプターマイクロスフェアの親和性基が互いに非共有結合的に相互作用する。例えば、タンパク質Aをコーティングしたドナーマイクロスフェアは、抗ヒトIgG Abをコーティングしたアクセプターマイクロスフェアと直接相互作用することが可能である。この相互作用は偽陽性シグナルをもたらすので、避けるべきである。
【0119】
近接反応とは、検出可能なシグナルを生成することができる反応である。近接反応は、2つの反応パートナーの一方(「ドナー」、例えばドナーマイクロスフェア)が移動するエネルギーを供与する供与ステップと、2つの反応パートナーの他方(「アクセプター」、例えばアクセプターマイクロスフェア)が移動するエネルギーを受けとり、それによって検出可能なシグナルを生成する受けとりステップによって特徴付けられる。
【0120】
一実施形態において、近接反応は、ドナーマイクロスフェアが移動するエネルギーを供与する供与ステップと、アクセプターマイクロスフェアが移動するエネルギーを受けとり、それによって検出可能なシグナルを生成する受けとりステップとによって特徴付けられる。一実施形態において、近接反応の第1ステップは、ドナーマイクロスフェアに特定の波長を照射し、それによって光増感剤によって別の分子に化学変化を誘発させることを含む。一実施形態において、ドナーマイクロスフェアはフタロシアニンを含み、約680nmの波長で照射される。励起されたフタロシアニンは、ドナーマイクロスフェアの近傍及び/または表面で周囲酸素から一重項酸素の生成を誘発する。更に、近接反応は、一重項酸素がアクセプターマイクロスフェアに拡散することによって特徴付けられる。近接反応の次のステップでは、一重項酸素からアクセプターマイクロスフェア内のフルオロフォア(例えばルブレン、アントラセン、ユーロピウムキレートまたはチオキセンなど)にエネルギーを移動させる。エネルギーを光を発する(シグナル)最終的なフルオロフォアに移動させるまで、エネルギーは更に、フルオロフォアから1つ以上の他のフルオロフォアへと移動する。特定の実施形態において、約520~680nmの波長の光が放出され、約520~630nmの間で検出され得る。
【0121】
本発明の一実施形態において、アクセプターマイクロスフェア内のフルオロフォアは、チオキセン、アントラセン及びルブレンを含む。チオキセンは、一重項酸素との反応後にジケトン誘導体に変換される。エネルギーは、約340~約350nmの波長の光を発光することにより、チオキセンのジケトン誘導体からアントラセンに移動し、アントラセンが励起される。励起されたアントラセンは、約450~約500nmの波長の光を発光することにより、最終的なフルオロフォアであるルブレンにエネルギーを移動する。励起されたルブレンは、約540~約680nmの波長の光(シグナル)を発光するという形でシグナルを生成し、それは約520~約620nmの間で検出することができる。チオキセン、アントラセン及びルブレンを含むアクセプターマイクロスフェアの例として、Perkin Elmer(Waltham,US)製のAlphaScreen(登録商標)アクセプターマイクロスフェアがある。
【0122】
本発明の別の実施形態において、アクセプターマイクロスフェア内のフルオロフォアは、チオキセン及びユーロピウムキレートを含む。チオキセンは、一重項酸素との反応後にジケトン誘導体に変換される。エネルギーは、約340~約350nmの波長の光を発光することによりチオキセンのジケトン誘導体から最終的なフルオロフォアであるユーロピウムに移動する。励起されたユーロピウムは、約605~約625nmの波長の光(シグナル)を発光するという形でシグナルを生成し、それは約607~約623nmの間で検出することができる。チオキセン及びユーロピウムキレートを含むアクセプターマイクロスフェアの例として、Perkin Elmer(Waltham,US)製のAlphaLISA(登録商標)アクセプターマイクロスフェアが挙げられる。
【0123】
約680nmの長い励起波長と約520~約620nmの短い発光波長を組み合わせたものは、生体成分または他のアッセイ成分からの干渉を低減させ、それにより低バックグラウンドシグナルを確実にする。
【0124】
近接反応は、2つの反応パートナーの近さに依存し、それにより2つの反応パートナーの近さを示すものである。
【0125】
一実施形態において、十分な近接性の要件は、ドナーからアクセプターマイクロスフェアへの一重項酸素の拡散の要件によって実現され得る。一重項酸素は、基底状態に戻るまで約4μ秒の寿命を有する。その間に一重項酸素は、溶液中で約200nm拡散することができる。近接反応の基礎としての一重項酸素の拡散は、ドナーとアクセプターマイクロスフェアの距離が200nm以下の複合体を形成する抗原、例えば、直径約50nmのジカウイルス粒子など直径が150nmを超えないウイルス粒子の分析に良好に適している。
【0126】
本発明の一実施形態において、抗原の少なくとも2つのエピトープは同じエピトープであり、アクセプターAb及びドナーAbは同じエピトープに結合することができる及び/または同じ可変領域を有する。少なくとも2つの同じエピトープを持つ抗原は、その表面に構造タンパク質の複数のコピーを持つウイルスまたは二量体ウイルス抗原(例えば、ZIKVの二量体Eタンパク質)であり得る。
【0127】
本発明の別の実施形態において、少なくとも2つのエピトープは異なるエピトープであり、アクセプター抗体及びドナー抗体は異なる可変領域を有する。
【0128】
別の実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbは、他の抗原と交差反応しない。例えば、抗原がZIKV抗原である場合、ドナーAb及びアクセプターAbは、DENV抗原と交差反応しない。
【0129】
本発明の一実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbの少なくとも一方は、プラーク減少中和試験またはレポーターウイルス粒子試験またはマイクロ中和試験またはフォーカス形成アッセイで試験した場合、それが結合するウイルス抗原を中和する。
【0130】
本発明の一実施形態において、ドナー抗体及びアクセプター抗体はそれぞれ、プラーク減少中和試験またはレポーターウイルス粒子試験またはマイクロ中和試験またはフォーカス形成アッセイで試験した場合に、それらが結合しているウイルス抗原を中和する。
【0131】
本発明の1つの具体的な実施形態において、抗原は、ジカウイルス抗原、デングウイルス抗原、ノロウイルス抗原及びポリオウイルス抗原からなる群から選択されるウイルス抗原を含むウイルス抗原である。ウイルス抗原は、ウイルスの構造タンパク質の1つ以上また非構造タンパク質の1つ以上であり得る。ウイルス抗原はまた、ウイルス全体であり得る。
【0132】
別の具体的な実施形態において、抗原はウイルス抗原であり、ウイルス抗原は生ウイルス、不活性化ウイルス、弱毒化生ウイルス及びウイルス様粒子からなる群から選択される。特定の実施形態において、抗原は、生ジカウイルス、不活性化ジカウイルス、弱毒化生ジカウイルス及びジカウイルス様粒子の群から選択される。特定の実施形態において、抗原は、生デングウイルス、不活性化デングウイルス、弱毒化生デングウイルス及びデングウイルス様粒子の群から選択される。別の実施形態において、抗原は、生ポリオウイルス、不活性化ポリオウイルス、弱毒化生ポリオウイルス及びポリオウイルス様粒子の群から選択される。別の実施形態において、抗原は、生ノロウイルス、不活性化ノロウイルス、弱毒化生ノロウイルス及びノロウイルス様粒子の群から選択される。
【0133】
一実施形態において、抗原はワクチン抗原である。具体的な実施形態において、ワクチン抗原はウイルス抗原であり、ウイルス抗原は生ウイルス、不活性化ウイルス、弱毒化生ウイルス及びウイルス様粒子からなる群から選択される。特定の実施形態において、抗原は、生ジカウイルス、不活性化ジカウイルス、弱毒化生ジカウイルス及びジカウイルス様粒子の群から選択される。一実施形態において、抗原は、生デングウイルス、不活性化デングウイルス、弱毒化生デングウイルス及びデングウイルス様粒子の群から選択される。別の実施形態において、抗原は、生ポリオウイルス、不活性化ポリオウイルス、弱毒化生ポリオウイルス及びポリオウイルス様粒子の群から選択される。別の実施形態において、抗原は、生ノロウイルス、不活性化ノロウイルス、弱毒化生ノロウイルス及びノロウイルス様粒子の群から選択される。この文脈内で、ウイルス抗原は更に、ジカウイルス抗原、デングウイルス抗原、ノロウイルス抗原及びポリオウイルス抗原からなる群から選択されるウイルス抗原を含む。ウイルス抗原は、ウイルスの構造タンパク質の1つ以上また非構造タンパク質の1つ以上であり得る。ウイルス抗原はまた、ウイルス全体であり得る。
【0134】
一実施形態において、ウイルス抗原はアジュバントに吸着される。特定の実施形態において、アジュバントはミョウバンである。この文脈内のミョウバンは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムのことを指し得る。
【0135】
具体的な実施形態において、ウイルス抗原は不活性化ウイルスである。
【0136】
一実施形態において、ウイルス抗原は、アジュバントに吸着される不活性化ウイルスである。特定の実施形態において、アジュバントはミョウバンである。この文脈内のミョウバンは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムのことを指し得る。
【0137】
1つの具体的な実施形態において、ウイルス抗原は不活性化ジカウイルスである。
【0138】
より具体的な実施形態において、ウイルス抗原はアジュバントに吸着される不活性化ジカウイルスである。特定の実施形態において、アジュバントはミョウバンである。この文脈内のミョウバンは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムのことを指し得る。
【0139】
一実施形態によれば、アクセプター抗体、ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのそれぞれは、非結合状態である。
【0140】
一実施形態によれば、アクセプターマイクロスフェアはアクセプター抗体の定常領域に結合しており、及び/またはドナーマイクロスフェアはドナー抗体の定常領域に結合している。
【0141】
本発明の一実施形態によれば、ドナー抗体はビオチン化され、ドナーマイクロスフェアはストレプトアビジンでコーティングされている。
【0142】
本発明の一実施形態によれば、アクセプター抗体は、アクセプターマイクロスフェアに共有結合している。具体的な実施形態において、アクセプターAbは、還元的アミノ化によってアクセプターマイクロスフェアに共有結合される。
【0143】
1つの具体的な実施形態によれば、ドナー抗体はビオチン化され、ドナーマイクロスフェアはストレプトアビジンでコーティングされ、アクセプター抗体はアクセプターマイクロスフェアに共有結合される。
【0144】
ジカ結合アクセプター抗体、ジカ結合ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット
本発明は、アクセプターキット及びドナーキットを含むキットであって、アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、ドナー抗体と結合することができず、
アクセプター抗体は、ジカウイルス抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、アクセプター抗体はドナーマイクロスフェアに結合することができず、
ドナーマイクロスフェアは、アクセプタービーズによるシグナルを生成する近接反応で移動されるエネルギーを供与することができ、ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、アクセプター抗体と結合することができず、
ドナー抗体は、ジカウイルス抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、ドナー抗体はアクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記キットに関する。
【0145】
前記キットに関しては、「アクセプター抗体、ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット」という名称の上述の章を参照されたい。
【0146】
一実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbは、デング抗原と交差反応しない。
【0147】
別の実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbの少なくとも一方は、例えばプラーク減少中和試験またはレポーターウイルス粒子試験またはマイクロ中和試験またはフォーカス形成アッセイで決定されるようなZIKV中和Abである。
【0148】
別の一実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbは両方とも、例えばプラーク減少中和試験またはレポーターウイルス粒子試験またはマイクロ中和試験またはフォーカス形成アッセイで決定されるようなZIKV中和Abである。
【0149】
一実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbは、100ng/mL未満または80ng/mL未満または60ng/mL未満または40ng/mL未満または30ng/mL未満のジカウイルス抗原に対するEC50値を提供する。この文脈内の具体的な実施形態において、ジカウイルス抗原はPIZVである。
【0150】
本発明の別の実施形態において、ドナーAb及びアクセプターAbは、5e7 TCID50力価未満または4e7 TCID50力価未満または3e7 TCID50力価未満のジカウイルス抗原に対するEC50値を提供する。この文脈内の具体的な実施形態において、ジカウイルス抗原はジカ生ウイルスである。
【0151】
EC50値は、ZIKV抗原の連続希釈液について、後の章の方法(「抗原試料の効力を決定するための方法」)で説明するようにZIKV抗原の効力を示すシグナルを検出することにより決定することができる。検出されたシグナルをZIKV抗原量(例えばng/mLの濃度または力価のいずれかであり得る)に対してプロットし、用量反応曲線に従って非線形回帰でデータを適合させることにより、EC50値を計算することができる。
【0152】
本発明の一実施形態によれば、ドナーAb及びアクセプターAbは、配列番号1によってコードされるEタンパク質のZIKV EDIII上のエピトープに結合する。
【0153】
一実施形態によれば、アクセプター抗体及びドナー抗体は抗体1及び抗体2であり、異なる可変領域を有する。抗体1及び抗体2は、抗ZIKV#1及び抗ZIKV#2であり得る。更に、抗体1及び抗体2は、抗ZIKV#2及び抗ZIKV#3であり得る。Abの詳細及び特性評価については、実施例1を参照されたい。抗体1及び抗体2はそれぞれ、VH-CDR1及び/またはVH-CDR2及び/またはVH-CDR3及び/またはVL-CDR1及び/またはVL-CDR2及び/またはVL-CDR3の配列によって特徴付けられ得る。抗体1及び抗体2はそれぞれ、あるいはまたは更に、VH及び/またはVL及び/またはH及び/またはLの配列によって特徴付けられ得る。参照される配列は、アミノ酸配列であり得るかまたはアミノ酸配列をコードする核酸配列であり得る。配列及び結合に重要なアミノ酸残基は、それぞれ表1及び表2に示す。重要残基とは、その側鎖がAb-エピトープ相互作用に最も大きくエネルギー的に寄与し、その変異がアラニンスキャニング変異導入法で最も低い結合反応性(野生型の10%未満)を付与するアミノ酸である(Bogan and Thorn,J.Mol.Biol.1998,280,1-9;Lo Conte et al.,J.Mol.Biol.1999,285,2177-2198)。
【0154】
【表1-1】
【0155】
【表1-2】
【0156】
【表2】
【0157】
本発明の一実施形態によれば、抗体1はドナー抗体であり、抗体2はアクセプター抗体である。
【0158】
本発明の別の実施形態によれば、ドナー抗体はビオチン化され、ドナーマイクロスフェアはストレプトアビジンでコーティングされている。
【0159】
本発明の別の実施形態によれば、アクセプター抗体は、アクセプターマイクロスフェアに共有結合している。
【0160】
本発明の具体的な実施形態によれば、抗体1はドナー抗体であり、抗体2はアクセプター抗体であり、ドナー抗体はビオチン化され、ドナーマイクロスフェアはストレプトアビジンでコーティングされ、アクセプター抗体はアクセプターマイクロスフェアに共有結合している。
【0161】
抗原試料の効力を決定するための方法
本発明は、ワクチン抗原試料などの抗原試料の効力を示すシグナルを検出するための方法であって、抗原試料中の抗原は少なくとも2つのエピトープを提供し、前記方法は、
ステップ1:アクセプターキット及びドナーキットを含むキットを提供するステップであって、アクセプターキットはある量のアクセプターマイクロスフェア及びある量のアクセプター抗体を含み、ドナーキットはある量のドナーマイクロスフェア及びある量のドナー抗体を含み、
アクセプターマイクロスフェアは、シグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを受けとることができ、アクセプター抗体の定常領域に結合できるかまたは結合しており、ドナー抗体と結合することができず、
アクセプター抗体は、抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合できる可変領域と、前記アクセプターマイクロスフェアに結合できるかまたは結合している定常領域とを有し、アクセプター抗体はドナーマイクロスフェアに結合することができず、
ドナーマイクロスフェアは、アクセプターマイクロスフェアによるシグナルを生成する近接反応で移動するエネルギーを供与することができ、ドナー抗体の定常領域と結合できるかまたは結合しており、アクセプター抗体と結合することができず、
ドナー抗体は、抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合できる可変領域と、前記ドナーマイクロスフェアに結合できる定常領域とを有し、ドナー抗体はアクセプターマイクロスフェアに結合することができない、前記ステップと、
ステップ2:ステップ1の前記量の前記ドナーマイクロスフェア、前記量の前記アクセプターマイクロスフェア、前記量の前記ドナー抗体及び前記量の前記アクセプター抗体と試料を接触させ、試料中の抗原と、ドナーマイクロスフェアに結合したドナー抗体及びアクセプターマイクロスフェアに結合したアクセプター抗体ならびに抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合したアクセプター抗体及び抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合したドナー抗体と、の複合体の形成を可能にするステップと、
ステップ3:抗原試料の効力を示すシグナルを生成するための近接反応を行わせるステップと、
ステップ4:抗原試料の効力を示すシグナルを検出するステップと、を含む、前記方法に関する。
【0162】
本発明は更に、上記のような方法に従ってシグナルを検出することにより、抗原試料の効力を示す抗原試料中の抗原の量を決定するための方法に関し、前記方法は更に、
ステップ5:検出されたシグナルに基づき抗原試料の効力を示す抗原試料中の抗原の量を決定するステップを含む。
【0163】
本発明は更に、上記のような方法に従って抗原の量を検出することにより、ワクチン抗原試料などの抗原試料の効力を決定するための方法に関し、前記方法は更に、
ステップ6:ステップ5で決定された試料中の抗原の量に基づき抗原試料の効力を決定するステップを含む。
【0164】
前記キットに関しては、「アクセプター抗体、ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット」及び「ジカ結合アクセプター抗体、ジカ結合ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット」という名称の前の章を参照されたい。
【0165】
一実施形態によれば、抗原試料はワクチン抗原試料である。
【0166】
一実施形態によれば、ワクチン抗原試料中のワクチン抗原は、ウイルス抗原である。
【0167】
一実施形態によれば、抗原試料はウイルス抗原試料である。
【0168】
ウイルス抗原に関しては、「アクセプター抗体、ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット」及び「ジカ結合アクセプター抗体、ジカ結合ドナー抗体、アクセプターマイクロスフェア及びドナーマイクロスフェアのキット」という名称の前の章を参照されたい。
【0169】
一実施形態において、ステップ1の前記量の前記ドナーマイクロスフェア、前記量の前記アクセプターマイクロスフェア、前記量の前記ドナー抗体及び前記量の前記アクセプター抗体と試料を接触させ、ステップ2の試料中の抗原と、ドナーマイクロスフェアに結合したドナー抗体及びアクセプターマイクロスフェアに結合したアクセプター抗体ならびに抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合したアクセプター抗体及び抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合したドナー抗体と、の複合体を形成させることは、約14~28時間実施される。
【0170】
ステップ1の前記量の前記ドナーマイクロスフェア、前記量の前記アクセプターマイクロスフェア、前記量の前記ドナー抗体及び前記量の前記アクセプター抗体と試料を接触させ、ステップ2の試料中の抗原と、ドナーマイクロスフェアに結合したドナー抗体及びアクセプターマイクロスフェアに結合したアクセプター抗体ならびに抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの1つに結合したアクセプター抗体及び抗原の少なくとも2つのエピトープのうちの残りの1つに結合したドナー抗体と、の複合体を形成させる順番は異なり得る。
【0171】
一実施形態において、第1のステップで前記量のドナーAb及び前記量のアクセプターAbと試料を特定の接触時間の間、接触させ、その後、第2のステップで前記量のドナーマイクロスフェア及び前記量のアクセプターマイクロスフェアと前記量のドナーAb、前記量のアクセプターAb及び試料を特定の接触時間の間、接触させる。
【0172】
別の実施形態において、アクセプターマイクロスフェアはアクセプターAbの定常領域に結合し、ドナーマイクロスフェアはドナーAbの定常領域に結合し、アクセプターAbの定常領域に結合した前記量のアクセプターマイクロスフェアとドナーAbの定常領域に結合した前記量のドナーマイクロスフェアは、特定の接触時間の間、試料に同時接触させる。
【0173】
別の実施形態において、第1のステップで、ドナーAbはビオチン化され、ドナーマイクロスフェアはストレプトアビジンでコーティングされ、アクセプターマイクロスフェアはアクセプターAbの定常領域に結合され、前記量のドナーAbとアクセプターAbの定常領域に結合した前記量のアクセプターマイクロスフェアとを特定の接触時間の間、試料と接触させ、続いて第2のステップで、試料、前記量のドナーAb及びアクセプターAbに結合した前記量のアクセプターマイクロスフェアと前記量のドナーマイクロスフェアとを第2の接触時間の間、接触させる。第1のステップの接触は約16~約24時間行われ得、第2のステップの接触は約2時間行われ得る。
【0174】
ステップ2で形成させた複合体により、ドナーマイクロスフェア及びアクセプターマイクロスフェアは近接反応が起こり得るのに十分な近さまで接近している。その結果、複合体が形成されない場合は、ドナーマイクロスフェア及びアクセプターマイクロスフェアは近接反応で反応しない。したがって、ステップ3の近接反応で生成されるシグナルは、形成された複合体の量に比例し、したがって、抗原試料中の抗原量に比例する。
【0175】
本発明の一実施形態において、ステップ3の近接反応で生成されるシグナルは、アクセプターマイクロスフェア内の最終的なフルオロフォアによって作製される。この文脈で、最終的なフルオロフォアは、ユーロピウムキレートまたはルブレンであり得る。シグナルは、約520~約680nm、特に約615nmの範囲の波長を有する光の発光である。前記シグナルは、任意の適切な検出機器によって検出することができる。
【0176】
一実施形態において、検出装置は、約680nmで励起し、約520~約630nm、特に約615nmでの発光を読み出すことが可能である。励起源としては、レーザーまたは発光ダイオード(LED)を用いることができる。好適な検出装置としては、Perkin Elmer製のEnVision(登録商標)、EnSpire(商標)、EnSight(商標)またはVICTOR(登録商標)Nivo(商標)マルチラベルプレートリーダーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0177】
ステップ3の近接反応で生成されるシグナルは、形成された複合体の量に比例し、したがって、抗原試料中の抗原量に比例する。したがって、ステップ5の抗原試料中の抗原量を決定することは、抗原試料の効力を示すシグナルを標準曲線と比較することにより行うことができる。標準曲線は、S字形用量反応曲線である得るか、または試料内の分析されるべき抗原の種類の異なる量を対応するシグナルに対してプロットした線状曲線であり得る。抗原の量は、例えば濃度または力価として表すことができる。
【0178】
抗原の効力、すなわち対象の免疫応答を誘導する抗原の能力は、抗原試料中の抗原量に依存するので、抗原の量は抗原試料の効力を示し、したがって、抗原の量を示すシグナルは抗原試料の効力も示す。
【0179】
本発明は更に、上記のような方法に従って抗原試料の効力を決定するためのそのような方法であって、ステップ6は、
ステップ6.1:ヒトまたは非ヒト対象に生成される関連する平均中和抗体力価を測定することにより、前記ヒトまたは前記非ヒト対象の抗原の標準化試料の効力を決定するステップと、
ステップ6.2:前記標準化試料中の少なくとも2つのエピトープを有する抗原の量を上記のような方法に従って決定するステップと、
ステップ6.3:ステップ6.1の平均中和抗体力価とステップ6.2の抗原の量から標準曲線を確立するステップと、
ステップ6.4:ステップ5で決定された抗原試料中の抗原の量と標準曲線を比較することにより抗原試料の効力を決定するステップと、を含む、前記方法に関する。
【0180】
一実施形態によれば、標準化抗原試料は、強制分解試験または抗原の異なる用量によって提供される。
【0181】
一実施形態によれば、ステップ6.1の非ヒト対象は、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、霊長類及び非ヒト霊長類を含む。
【0182】
一実施形態によれば、工程6.1の対象はマウスである。
【0183】
平均中和Ab力価は、MNT、PRNT、RVPアッセイまたはFFAを含む当技術分野で周知の方法によって決定することができる。本発明の一実施形態によれば、平均中和Ab力価は、RVPアッセイによって決定される。
【0184】
一実施形態によれば、標準曲線は、平均中和Ab力価として表される標準化抗原試料の効力を、標準化試料中の抗原の決定量に対してプロットすることにより作製される。
【0185】
本発明は更に、抗原試料がジカ抗原試料である、上記のような方法に関する。ジカ抗原は、不活性化ウイルスであり得る。本発明の特定の実施形態において、ZIKV抗原試料の効力を監視するための方法は、ジカ抗原効力アッセイ(Zika Antigen Potency Assay)(ZAPA)と称される。
【0186】
製造工程中のワクチン抗原の効力を監視するための方法
本発明は更に、上記のような方法に従ってワクチン抗原の効力を測定することにより、前記ワクチン抗原の精製、不活性化及び製剤化を含む製造工程中のワクチン抗原の効力を監視して最終ワクチンを形成する方法に関する。
【0187】
一実施形態において、ワクチン抗原はZIKV抗原であり、ZIKV抗原の効力は、上記のようなZAPA法に従ってZIKV抗原の効力を測定することによって、最終的なZIKVワクチンを形成するための前記ZIKV抗原の精製、不活性化及び製剤化を含む製造工程中に監視される。
【0188】
精製は、濾過及び/またはクロマトグラフィーによって行うことができる。
【0189】
ウイルスワクチンの製造方法
本発明は、ウイルスワクチンの製造方法であって、
ステップA:様々なバッチのワクチン抗原を調製するステップと、
ステップB:上記のような方法に従ってステップAで作成した様々なワクチン抗原バッチのワクチン抗原の効力を決定し、所定の効力要件に適合するワクチン抗原バッチを選択するステップと、
ステップC:ステップBで選択したワクチン抗原バッチを様々なバッチのウイルスワクチンに配合することによりワクチンバッチを調製するステップと、
ステップD:上記のような方法に従ってステップCで作成した様々なバッチのワクチンバッチのワクチン抗原の効力を決定し、所定の効力要件に適合するワクチンバッチを選択するステップと、を含む、前記方法に関する。
【0190】
ワクチン抗原の効力を決定するための方法に関しては、「抗原試料の効力を決定するための方法」及び「製造工程中のワクチン抗原の効力の監視」という名称の前の章を参照されたい。
【0191】
本発明の一実施形態において、ステップAは様々なサブステップを含み、ステップBは各サブステップ後に実施される。
【0192】
本発明の特定の実施形態において、サブステップは、精製(例えばクロマトグラフィーまたは濾過による)及び不活性化(例えばホルムアルデヒドまたは紫外線照射またはガンマ線照射またはβ-プロピオラクトンによる)を含む。
【0193】
具体的な実施形態において、サブステップは、生ウイルスを不活性化ウイルスに不活性化することを含む。
【0194】
本発明の具体的な実施形態において、生ウイルスはジカウイルスであり、不活性化は、ホルムアルデヒドまたは紫外線照射またはガンマ線照射またはβ-プロピオラクトンにより達成される。
【0195】
本発明は更に、ワクチン抗原がジカ抗原である、上記のような方法に関する。
【0196】
ウイルスワクチンを生成するための方法によって得られるワクチン
本発明は更に、上記の方法によって得られるワクチンに関する。
【0197】
本発明は更に、上記の方法によって得られるジカ抗原に関する。
【0198】
代替的なドナー構造及びアクセプター構造
近接反応が可能なアクセプターとドナーの好適な構造の1つとして、マイクロスフェアを説明してきた。しかしながら、本発明は、代替的なドナー構造及びアクセプター構造が適用される他の実施形態も包含する。
【0199】
代替的なアクセプター構造及びドナー構造の一例は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により反応することができるペアである。例えば、1つの具体的な実施形態において、2つの感光性分子(発色団)のペアは、ドナー及びアクセプターとして近接反応において反応する。ドナー発色団は励起され、非放射性双極子-双極子カップリングによって、励起からのエネルギーをアクセプター発色団に移動させることができる。励起されたアクセプター発色団は、検出可能なシグナルを生成することができる(例えば、光の発光によって)。エネルギー移動の効率は、ドナーとアクセプター間の距離の6乗に反比例する。例えば、発色団の一般的なFRETペアの1つはシアン蛍光タンパク質(CFP)及び黄色蛍光タンパク質(YFP)であり、その両方は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の色変異である。
【0200】
また、代替的なアクセプター構造及びドナー構造の別の例として、生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence Resonance Energy Transfer)(BRET)での反応が可能なペアがある。この技術は、ドナーとして生物発光酵素(例えば、Renilla属ルシフェラーゼ)を用い、アクセプターとしてYFPなどのフルオロフォアに適合する初期光子放出を生成する。BRETは、エネルギー移動を開始するために外部照明を必要とせず、バックグラウンドノイズの可能性を低減する。
【0201】
これらの実施形態において、ドナー抗体はドナー構造(ドナー発色団または生物発光酵素など)に共有結合し得、アクセプター抗体はアクセプター構造(アクセプター発色団など)に共有結合し得、両方の構造が互いに十分に接近している場合に、ドナー構造は、エネルギー(ドナー発色団の場合の励起エネルギーなど)をアクセプター構造へ移動させることができる。
【0202】
したがって、本発明は更に、マイクロスフェアが代替的なドナー構造及びアクセプター構造によって交換される、上記のようなキット及び方法に関する。
【実施例
【0203】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の特定の態様及び実施形態を示すために含まれる。しかしながら、以下の説明は例示にすぎず、本発明を制限するものとして何ら考慮されるべきではないことは、当業者には理解されるべきである。
【0204】
実施例1:ドナーAbのビオチン化及びアクセプターAbのアクセプターマイクロスフェアへのカップリング
ジカ抗原効力アッセイ(ZAPA)セットアップに適用したmAbを表1及び表3に示す。
【0205】
【表3】
【0206】
抗ZIKV#1及び2 mAbは、同時係属出願PCT/US2019/052189号(Takeda Ig出願)に記載されているように作製され、特徴付けられた。簡単に説明すると、ウサギを、精製不活性化ジカワクチン(PIZV)及びZIKVウイルス様粒子(VLP)で免疫化した。その後、ハイブリドーマ細胞を作製するために脾臓を分離した。ハイブリドーマ上清は、ZIKV VLP及びEタンパク質に対する反応性、ならびに不活性化DENV1~4に対する交差反応性について酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により試験した。したがって、ハイブリドーマ上清は、不活性化DENV1(West Pacific74、Microbix)、DENV2(16681、Microbix)、DENV3(CH53489、Microbix)、DENV4(TVP-360、Microbix)、ZIKV Eタンパク質(Native Antigen)及びZIKV VLP(Native Antigen)に対してスクリーニングされた。製造工程の一部として製造元により、DENV1、DENV3及びDENV4はガンマ線照射で、DENV2はホルマリンで不活性化した。ZIKV Eタンパク質及びZIKV VLPの両方を、陽性対照抗原として使用した。簡単に言えば、抗原は、使用前に4℃で一晩、炭酸コーティング緩衝液(pH9.4)中で1μg/mLでNunc Polysorp ELISAプレート上にコーティングされた。その後、0.05%のTween-20を含むPBS(PBS-T)でプレートを洗浄した。非特異的結合を低減させるため、室温で最低1時間5%脱脂乾燥ミルクブロッキング溶液をプレートに加えた。プレートを洗浄し、ハイブリドーマ上清をプレートに加えた。次いでプレートを、37℃で1~2時間インキュベートした。プレートを再度PBS-Tで洗浄した。ヤギ由来抗ウサギIgG(H+L)ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート二次Ab(Jackson ImmunoResearch、ロット番号L2416-X326F)を5%のミルクブロッキング溶液で1:5000に希釈し、プレートに添加した。プレートを37℃で1.5時間インキュベートし、PBS-Tで再度洗浄した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質を加え、室温で10分間インキュベートした。反応は1N HClで停止し、プレートはEnSpireリーダー(Perkin Elmer)を用いて450nm及び630nmで吸光度をスキャンした。陽性結合のカットオフは、0.5光学密度の読み出しで設定された。抗ZIKV#1及び2は両方とも、DENV1~4のいずれにも結合を示さず、両方のAbがZIKV選択的であることが確認された(表4)。更に、ハイブリドーマ上清は、マイクロ中和試験(MNT)及びレポーターウイルス粒子(RVP)アッセイで中和活性についてスクリーニングした。抗ZIKV#1は強い中和活性を示したが、抗ZIKV#2は弱い中和活性を示した。ハイブリドーマ上清のZIKV VLPに対する親和性は、バイオレイヤー干渉(BLI)アッセイによって決定された。更に、エピトープビニングは、競合BLIアッセイを用いて一次mAbをVLPに結合させ、その後、二次mAbを交差結合させて試験した。ビニング実験により、抗ZIKV#1及び2は、抗原内の異なる領域に結合することが示された。更に、mAbは配列決定された(表1で比較)。最後に、mAbの結合に重要な抗原内のアミノ酸残基を、アラニンスキャニング変異ライブラリーを用いて評価した。重要残基とは、その側鎖がAb-エピトープ相互作用に最も大きくエネルギー的に寄与し、その変異が最も低い結合反応性を付与するアミノ酸である(野生型の10%未満、Bogan and Thorn,J.Mol.Biol.1998,280,1-9;Lo Conte et al.,J.Mol.Biol.1999,285,2177-2198)。両方のmAbは、ZIKV EDIIIに結合することが示された(表2で比較)。抗ZIKV#1及び2は、pH7.4、最終濃度1.3~1.4mg/mLの範囲のPBS中で保存した。
【0207】
【表4】
【0208】
マウスの免疫化のために、DENV-2全ウイルスを使用して、抗ZIKV#3を前述したように独自に作製した(Gentry et al.,Am J Trop Med Hyg 1982,31(3):548-555)。mAbはEDIIの融合ループに結合し、ZIKVなど他のフラビウイルスと交差反応性を示す(Aubry et al.,Transfusion 2016,56:33-40)。免疫化のために、DENV-2全タンパク質を使用して、抗ZIKV#4を前述したように独自に作製した。mAbはEタンパク質二量体エピトープに結合し、ZIKVと交差反応性を示す(Barba-Spaeth et al.,Nature 2016;536:48-53)。
【0209】
抗ZIKV#3及び#4は、Wuxi AppTecから市販されている。抗ZIKV#3は、Absolute Antigenから追加で入手可能である(精製したタンパク質A、1mg/mLの0.02%Proclin-300を加えてPBS中にてpH7.4で供給、カタログ番号Ab00230.2.0)。Wuxiは、両方のAbをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させた。トランスフェクトした細胞の上清を、タンパク質G sepharoseカラム(GE Healthcare)を用いてアフィニティ精製し、SDS-PAGEで解析した。抗ZIKV#3の重鎖(H)配列(配列番号30及び40)は、受入コードAHX42424.1(アミノ酸配列)及びKJ438785.1(コーディング配列及びアミノ酸配列)下でGenBankに寄託され、抗ZIKV#3の軽鎖(L)配列(配列番号35及び41)は、受入コードAHX42423.1(アミノ酸配列)及びKJ438784.1(コーディング配列及びアミノ酸配列)下でGenBankに寄託されている。抗ZIKV#4は、DENV2 Eタンパク質(PDB:4UT9、Rouvinski et al.,Nature 2015,520(7545):109-113)及びZIKV(PDB:5H37、Zhang et al.,Nat Commun2016,7,13679)と複合化され結晶化されている。
【0210】
アクセプターAbとして機能するmAbは、以下に記載するようにアクセプターマイクロスフェアに結合させた。コンジュゲーションのために、25mgのアクセプターマイクロスフェア(0.25mLの100mg/mLストック非コンジュゲーションAlphaLISA(登録商標)アクセプターマイクロスフェア、Perkin Elmer、カタログ番号6772001-3)を、0.5mgのアクセプターAbと混合し、カップリング比を1:50(mgタンパク質:mgマイクロスフェア)とした。次に、160倍に希釈した10%Tween-20の対応する体積、20倍に希釈した25mg/mLのNaBHCN溶液(水中で新たに調製、Sigma Aldrich、カタログ番号152159)の対応する体積、及び0.13Mリン酸緩衝液pH8.0の対応する体積を加え、最終反応体積1mLを得た。例えば、100mg/mLのマイクロスフェアストック0.25mLに、1.34mg/mLに濃縮したmAb0.374mLを添加した。その後、0.13Mリン酸緩衝液pH8.0を0.445mL加え、続いて、10%Tween-20を6μL及び25mg/mLのNaBHCN溶液を50μL添加した。混合物を、穏やかな撹拌(6~10rpm)下で37℃にて18~19時間インキュベートした。ブロッキングのために、0.8M NaOH中で新たに調製したカルボキシメトキシルアミン(CMO、Sigma Aldrich、カタログ番号C13408)65mg/mL溶液50μLを反応物に加え、最終濃度3.25mg/mL CMOを得て、37℃で1時間インキュベーションした。精製のために、管を16,000×g、4℃で40分間遠心分離し、上清を除去し、マイクロスフェアペレットを5mLの0.1M トリス-HCl、pH8.0に再懸濁させた。16,000×g及び4℃にて40分間遠心分離した後、上清を除去した。洗浄ステップは1回繰り返した。16,000×g及び4℃にて40分間遠心分離した後、上清を除去し、マイクロスフェアを保存用緩衝液(PBS、pH7.4、0.05%Proclin-300を有する)に5mg/mLまで再懸濁させた。コンジュゲートアクセプターマイクロスフェアは、更に使用するまで4℃で保存した。
【0211】
ドナーAbとして機能するmAbは、以下に記載するようにビオチン化した。N-ヒドロキシスクシンイミド-ChromaLink(商標)ビオチン(NHS-ChromaLink(商標)ビオチン354S、ジメチルホルムアミド(DMF)中のストック濃度10mg/mL、SoluLink Inc.、カタログ番号B1001-105、ロット番号WOTL26127)をPBS中2mg/mL pH7.4で新たに調製した。NHS-ChromaLink(商標)ビオチン354Sは、ビオチンにトリエチレングリコール(PEG3)リンカーにより結合させた354nmで最大吸光度を持つ発色団(アリールヒドラジン)を含有する。スクシンイミジルエステル官能基により、水性緩衝液中のリジンの修飾が可能である。希釈したNHS-ChromaLink(商標)ビオチンをドナーAbと混合し、Abに対してビオチンが30倍モル過剰となるようにし、Abの反応濃度は0.5mg/mLに保たれた。NHS-ChromaLink(商標)ビオチンを添加する前に、反応体積をPBS、pH7.4で調整した。例えば、1.26mg/mLのmAb937μLを、1333.3μLのPBS、pH7.4と混合した。次に、2mg/mL NHS-ChromaLink(商標)ビオチンを89.7μL添加し、総体積2360μLとし、反応物中に1.18mgのmAb(7.375ナノモル)及び0.179mgのNHS-ChromaLink(商標)ビオチン(221.250ナノモル)を得た。インキュベーションを21~23℃で2時間行った。その後、PBS、pH7.4で平衡化した脱塩カラム(Zeba脱塩カラム、5mL、Pierce(Thermo Fisher Scientific)、カタログ番号89882)を用いて、遊離ビオチンを除去した。このステップを第2の脱塩カラムで1回繰り返した。特性評価のために、280nmの吸光度(A280nm、タンパク質量を指す)及び354nmの吸光度(A354nm、ビオチン量を指す)を測定し、280nmの値は、0.23×A354nmとして求めた280nmのラベルの吸光度に対して補正している。280nmの消光係数(214,400M-1)及びmAbの分子量(160,000g/モル)により、タンパク質濃度をA280nm値から決定した。同様に、29,000M-1の354nmのビオチンの消光係数及び810.92g/モルの分子量を使用して、A354nm値からビオチンの濃度を決定した。次いで、ビオチン濃度をAb濃度で割ることで、Abあたりのビオチン比率を決定した。0.5μM(80μg/mL)の最終ビオチン化Ab濃度は、安定化緩衝液(PBS、pH7.4、0.1%Tween-20、0.05%アジ化ナトリウム)で希釈することにより調整した。ビオチン化mAbは、更に使用するまで4℃で保存した。
【0212】
実施例2:ZAPAのためのmAbペアの評価
次に、異なる組み合わせのmAbを、ZAPAにおける性能について評価した(表5、mAbペア#1~#3)。ドナーAbはビオチン化され、アクセプターAbは実施例1に従ってアクセプターマイクロスフェアに結合させた。
【0213】
【表5】
【0214】
mAbペアの試験のために、精製不活性化ジカワクチン(PIZV)及びZIKV株PRVABC59をZAPAで評価した。PIZVは、ブラッドフォードアッセイで決定した10μg/mLの原薬(DS、精製、液体、ホルマリン不活性化ZIKV)のストック濃度で提供された。PIZVは、水酸化アルミニウム(Al(OH)、ミョウバン、Alhydrogel(登録商標)2%、Brenntag、ロット番号5414)上でDSの吸光度により調製した。
【0215】
ZIKV TCID50(50%組織培養感染量)は、ベロ細胞にウイルスを接種した後の細胞変性作用(CPE)の観察を含むエンドポイント希釈アッセイによって決定された。したがって、ベロ細胞は,10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS、Sigma、カタログ番号12007C)、2%(v/v)L-グルタミン(200mMストックから、Hyclone、カタログ番号SH30034.01)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep、10倍ストックから、Hyclone、カタログ番号SV30010)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Corning、カタログ番号15-017-CV)で36±2℃、5%COにて培養した。細胞を、96ウェルプレート(Costar、カタログ番号3596)に100μLの培地に1ウェルあたり1.4x10細胞で播種し、2日間静置して増殖させ、ウイルス添加時の集密度が90%超になるようにした。次いで、細胞から上清をデカントし、対応するウイルス希釈液を1ウェルあたり100μLを添加することにより、細胞を、ZIKVの連続希釈液(希釈培地で調製、2%(v/v)FBS、2%(v/v)L-グルタミン、及び1%(v/v)Pen/Strepを補充したDMEM)で5日間±4時間、培養した。連続希釈は二重に試験した。2つの同等の希釈系列のそれぞれを、4つ一組で播種した。ZIKVを欠く100μLの希釈培地を添加することにより、陰性対照を設けた。インキュベーション時間の後、細胞が死滅した重感染ウェルでの色の変化を考慮して、プレートを室温で15分間インキュベートした後、560nmと420nmの吸光度を記録した。420nmの吸光度を560nmの吸光度から差し引いた。値>0はCPE陰性、値<0はCPE陽性として考慮された。希釈及び複製のCPE結果から、Reed and Muench法に従って、1mLあたりの平均TCID50力価を計算した。結果は、光学顕微鏡でプレートを目視でスコア化して確認し、必要に応じて補正した。
【0216】
PIZV及びZIKVをアッセイ緩衝液(25mM HEPES pH7.4、0.5%Triton X-100、0.1%カゼイン、1mg/mLデキストラン-500及び0.5%Proclin-300、Perkin Elmer製の10倍ストックから調製、カタログ番号AL000F)中で連続希釈し、各希釈において最終アッセイ濃度または力価のそれぞれ5倍量になるようにした(最終濃度または力価については、図1及び図2を参照のこと)。白色96ウェルプレート(1/2面積プレート-96、Perkin Elmer、カタログ番号6002299)に、1ウェルごとに希釈液あたり10μLを添加した。更に、バックグラウンドシグナルを考慮し、1ウェルあたり10μLのアッセイ緩衝液を加えることにより、空のウェルを設けた。各希釈液及び空の対照は、二重に評価した。
【0217】
ビオチン化抗ZIKV mAbは、80μg/mLのビオチン化mAbの最終濃度となるように、実施例1に記載されたように調製した。第1のステップでは、ストックを5~20秒間ボルテックスし、アッセイ緩衝液で1:600に希釈した(例えば、ビオチン化抗ZIKV mAb5μLをアッセイ緩衝液2985μLへ)。希釈液を再び5~20秒間ボルテックスした。抗ZIKV#2を、実施例1で記載されたようにアクセプターマイクロスフェアにコンジュゲートした。第2のステップでは、コンジュゲートアクセプターマイクロスフェアの5mg/mLストックをボルテックスし(5~20秒)、ビオチン化抗ZIKV mAbを希釈したのと同じ管内のアッセイ緩衝液で1:300に希釈した(例えば、コンジュゲートアクセプターマイクロスフェア10μLを前のステップの希釈ビオチン化mAb2990μLに添加した)。希釈液を再び5~20秒間ボルテックスした。ビオチン化抗ZIKV mAb及びコンジュゲートアクセプターマイクロスフェアの希釈液を、96ウェルプレートに1ウェルあたり30μLずつ添加した。プレートの側面を軽く叩いて、内容物をウェルの底に集めた。プレートをホイルシーラー(粘着性PCR密封化ホイルシート、Thermo Fischer、カタログ番号Ab-0626)で密閉して光を遮断し、37℃で16~24時間インキュベートした。
【0218】
ストック濃度5mg/mLのストレプトアビジンコーティングドナーマイクロスフェア(PerkinElmer、カタログ番号6760002)をボルテックスし(5~20秒)、アッセイ緩衝液で1:100に希釈した。1ウェルあたり10μLの希釈液を添加した。プレートの側面を軽く叩いて、内容物をウェルの底に集めた。プレートをホイルシーラーで密閉して光を遮断し、37℃で2時間±10分間インキュベートした。
【0219】
プレートをインキュベーターから取り出し、10分以内に読み取った。そのため、読み取り直前にホイルシーラーをプレートから剥がし、光曝露を最小限に抑えた。プレートはEnSpireマルチモードプレートリーダー(PerkinElmer)で「96ウェルAlphaLISAプロトコル」により分析した。PIZV及びZIKV希釈液からの相対蛍光単位(RFU)でのZAPAシグナル数を、空のウェルから得られる中程度のバックグラウンドシグナルに対して正規化し、対応するPIZV濃度及びZIKV力価それぞれに対してプロットした。データは、4パラメータロジスティック(4PL)回帰モデルを用いて、各mAbペアについて独立して適合された(図1及び図2)。
【0220】
mAbペア#1及び2は、ZIKV及びPIZVの両試料で高いシグナルとなった。一方、mAbペア#3を使用して、高PIZV濃度で弱いシグナルしか観察されず、最高ZIKV力価でもほとんどシグナルが観察されなかった。データから、mAbペア#1及び2を用いたZAPAセットアップでは、濃度依存的にPIZV及びZIKVを効率的に決定でき、良好なシグナル対ノイズ比が得られることが示される。
【0221】
要約すると、mAbペア#1及び2は、mAbペア#3と比較して高いシグナルになった。ZAPA分析は、ZIKV株PRVABC59及びPIZVの両方の分析に適していることが示された。結論として、ZAPA mAbペア#1及び2は、生ウイルスからの及びPIZVからのエピトープの有効性を効率的に測定することが可能である。
【0222】
実施例3:ZAPAによる安定性表示の評価
次のステップで、ZAPAを用いて、異なる量の熱不活性化DS及びDSをミョウバンに吸着させることにより熱不活性化DS試料を配合したPIZV試料を含む試料の分析を行った。この強制分解試験の目的は、ZAPAが、PIZV試料中に単独で存在するかまたはミョウバンに吸着したインタクトDSの量を確実に示すことができ、したがって抗原の安定性、すなわちインタクトエピトープの読み出しになるかを評価することであった。
【0223】
したがって、DSの一部を85℃で1時間熱処理し、材料の分解を行った。DS試料を、未処理DS及び熱処理DSを混合することにより調製し、試料中の熱処理DSの総量が0、25、50、75及び100%となった。PIZV試料の調製の前に、標準としてZIKV組換えEタンパク質(Meridian Life Sciences,Inc.、ロット番号1J29317)を使用して、DS試料をブラッドフォードアッセイで分析した。注目すべきは、検出された総タンパク質量が熱処理の後でも安定していたことである(表6)。
【0224】
【表6】
【0225】
次に、DS試料を、体積100μLあたり1μgのDS量(10μg/mL)となるように希釈した。PIZV試料の調製のために、DS試料1μgあたり40μgのミョウバン(Alhydrogel(登録商標)2%、Brenntag、ロット番号5414)を加え、試料を室温で2時間撹拌した。DS及びPIZV試料を、分析まで5±3℃で保存した。
【0226】
DS及びPIZV試料を、mAbペア#1を使用してZAPAで分析した(表5参照)。DS及びPIZV試料に加え、PIZV参照(ストック濃度:20μg/mL)が設けられた。参照を、アッセイ緩衝液(25mM HEPES pH7.4、0.5%Triton X-100、0.1%カゼイン、1mg/mLデキストラン-500及び0.5%Proclin-300、Perkin Elmer製の10倍ストックから調製、カタログ番号AL000F)で実施例2で記載したように連続希釈した。
【0227】
白色96ウェルプレート(1/2面積プレート-96、Perkin Elmer、カタログ番号6002299)に1ウェルあたり、参照希釈液またはDSもしくはPIZV試料につき10μLを添加した。更に、バックグラウンドシグナルを考慮し、1ウェルあたり10μLのアッセイ緩衝液を加えることにより、空のウェルを設けた。各参照希釈液ならびに試料及び空の対照は、二重に評価した。ZAPAは更に、実施例2での記載のように行った。
【0228】
参照希釈液ならびにDS及びPIZV試料からの相対蛍光単位(RFU)でのZAPAシグナル数は、空のウェルから生じる中程度のバックグラウンドシグナルに対して正規化した。参照物質のデータは、4パラメータロジスティック(4PL)回帰モデルにより独立して適合された。PIZV参照希釈液中の特定の量のインタクトDSに対応するZAPAシグナル数を、DS及びPIZV試料からのZAPAシグナルに補間し、それによって得られたZAPA値を、対応するDS及びPIZV試料のmLあたりの抗原単位(AU/mL)として報告した(図3及び図4)。
【0229】
熱処理したDSのみを含有するDS及びPIZV試料は、他の試料と比較してZAPA値が最低になり、未処理のDSを100%含有するDS及びPIZV試料は、ZAPA値が最高になった。すべての試験したDS及びPIZV試料の値は、R値0.986(DS試料、線形回帰:y=439.44x+1557.2)及び0.954(PIZV試料、線形回帰:y=122.14x+718.53)の線形応答に適合した。このことから、本方法は、ミョウバンなどの追加の成分の存在に依存せずに、熱分解後のDS及びPIZV試料内の抗原利用可能性の変化を正確かつ選択的に検出することが示された。
【0230】
データから、ZAPAで使用されているmAbの結合に関与するエピトープの一方または両方が、熱処理によって破壊されていることがわかり得る。データは、ZAPAは、熱不活性化した際に試料内のインタクトエピトープの存在を効率的に検出することを示している。結論として、本アッセイは試料の安定性の変化に対して感受性である。
【0231】
まとめると、熱分解に依存しないタンパク質の総量を提供するブラッドフォードアッセイ以外に、ZAPAはインタクト抗原の量に関する情報を提供する。ZAPAは、DS及びPIZV試料中のインタクトエピトープ量を堅牢な性能で確実に評価し、本方法が安定性を示し、ミョウバンなどの追加の成分の存在に影響されないことを検証していることを示す。
【0232】
実施例4:ZAPAによるPIZVに配合したDSバッチの特性評価
次のステップで、PIZVに配合された異なるDSバッチをZAPAを使用して分析し、CD-1マウスでPIZVによって誘導された免疫応答と比較して、ZAPAが効力を示すかどうかを評価した。
【0233】
したがって、4つの異なるDSバッチ(#1~4)を分析した。DSバッチの総タンパク質濃度は、実施例3に記載したようにブラッドフォードで決定した。DSバッチの連続希釈液をトリス緩衝液(150mM塩化ナトリウム(Fisher、カタログ番号S271-500)を含有する10mMヒドロキシメチルアミノメタン塩基(Fisher、カタログ番号T395-500)、pH7.6)で調製し、100μL試料中0.001、0.005、0.01、0.05、0.1μgの総抗原となった(同時係属出願US62/845,024号を参照)。PIZV試料の調製のために、抗原を、試料100μLあたり50μgのミョウバン(Alhydrogel(登録商標)2%、Brenntag、ロット番号5414)に吸着させた。希釈試料を、分析まで5±3℃で保存した。
【0234】
次に、異なるバッチからのPIZV試料を、mAbペア#1を使用してZAPAで分析した(表5を参照)。PIZV試料に加え、PIZV参照(ストック濃度:20μg/mL)が設けられた。参照を、アッセイ緩衝液(25mM HEPES pH7.4、0.5%Triton X-100、0.1%カゼイン、1mg/mLデキストラン-500及び0.5%Proclin-300、Perkin Elmer製の10倍ストックから調製、カタログ番号AL000F)で実施例2で記載したように連続希釈した。
【0235】
白色96ウェルプレート(1/2面積プレート-96、Perkin Elmer、カタログ番号6002299)に1ウェルあたり、参照希釈液またはPIZV試料あたり10μLを添加した。更に、バックグラウンドシグナルを考慮し、1ウェルあたり10μLのアッセイ緩衝液を加えることにより、空のウェルを設けた。各参照希釈液ならびに試料及び空の対照は、二重に評価した。ZAPAは更に、実施例2での記載のように行った。
【0236】
参照希釈液から及びPIZV試料からの相対蛍光単位(RFU)でのZAPAシグナル数は、2つの空のウェルから生じる中程度のバックグラウンドシグナルに対して正規化した。参照物質のデータは、4パラメータロジスティック(4PL)回帰モデルにより独立して適合された。PIZV参照希釈液中の特定の量のインタクトDSに対応するZAPAシグナル数を、PIZV試料からのZAPAシグナルに補間し、それによって得られたZAPA値を、対応するPIZV試料の100μLあたりの抗原単位(AU/100μL)として報告した(図5図8)。
【0237】
各DSバッチの希釈系列のZAPA値は線形応答に従い、ZAPA値がエピトープ量と共に線形に増加することから、本アッセイの堅牢な性能が示された(図5図8)。ブラッドフォード分析により算出された総タンパク質量は対応する希釈液で同じであった(100μLあたり0.001~0.1μg)が、ZAPA値はDSバッチ間で異なり、試料内のインタクトエピトープの量が異なることが示された。例えば、100μLあたり0.1μgの総抗原を含有する試料は、DSバッチ#1~4から得られた100μLの試料あたりのZAPA値がそれぞれ約170、37、35及び68AUとなった。このデータは、ブラッドフォードアッセイで測定された総タンパク質量は、実施例3と一致して試料内のインタクトエピトープと相関がないことを示している。
【0238】
抗原性を示すこれらのin vitroのZAPA結果を免疫原性及び効力に関連付けるため、異なるDSバッチから得られた対応するPIZV試料をCD-1マウスにワクチン接種した。したがって、PIZV試料のそれぞれについて、雄マウス4匹及び雌マウス4匹を含む8匹のマウスに、それぞれ1回量のPIZV試料(容量100μL)を筋肉内経路でワクチン接種した。免疫化の後の中和Ab力価は、レポーターウイルス粒子(RVP)アッセイで測定された。したがって、マウスからの血清試料、ならびに抗ZIKV Ab(Innovative Research、カタログ番号IGRS-SER)を欠く陰性対照及び陽性対照(Takeda)を、56±2℃の水浴で30±2分間の間、熱不活性化させた。その後、試料ならびに陰性対照及び陽性対照を、アッセイ培地(10%(v/v)FBS(Sigma、F4135)及び1%(v/v)Pen/Strep(100倍ストック、Gibco、15140-122を補充した1x Opti-MEM、Gibco、カタログ番号11058-021))で連続希釈した。白色384ウェルプレート(Corning、カタログ番号3570)の1ウェルに希釈液あたり7.5μLを添加した。ZIKV RVP粒子(C、E、prM及びMタンパク質を含む、Integral Molecular)をアッセイ培地で希釈し、384ウェルプレートに1ウェルごとに、希釈液7.5μLを添加した。インキュベーションは、37±2℃及び5%COで加湿インキュベーターで60±2分間行った。ベロ細胞は、実施例2でTCID50アッセイについて記載したように培養した。細胞はトリプシン処理し、回収し、計数前にアッセイ培地に再懸濁させた。15μLアッセイ培地の4625個の細胞を、1ウェルごとに添加した。インキュベーションは、37±2℃及び5%COで加湿インキュベーターで72±2時間行った。次に、Renilla-Glo基質(Promega、カタログ番号E2750)を、製造元のプロトコルに従って緩衝液で1:100に希釈した。基質希釈液30μLを1ウェルごとに添加し、暗所で15±2分間インキュベートした。最後に、プレートをEnspireリーダー(Perkin Elmer)で分析し、中和Abの半数効果濃度(EC50)力価は、異なる希釈液について記録した発光シグナルの回帰によって決定される。
【0239】
注目すべきは、すでにZAPA値の違いによって示されているように、同じ抗原量でもDSバッチによって中和Ab力価が異なっていたことである。例えば、ブラッドフォードアッセイによる0.01μgのDSの用量の場合、中和Ab力価は、DSバッチ#1ではlog10 RVP値が約3、DSバッチ#2~4ではlog10 RVP値が約2.1という違いが見られた(図9)。
【0240】
ZAPAデータとマウスモデルの免疫原性及び効力に関する結果が相関しているかどうかを調べるために、Prism(GraphPad、Version8.2.0)を用いてデータを解析した。投与量反応曲線(4パラメータロジスティック(4PL)回帰モデルによる)は、F検定を使用して比較し、2つのモデルを検討した。第1のモデル(モデル1)は、各アゴニスト(各PIZV希釈系列を意味する)が同じ用量反応曲線を引き出すと結論付けたのに対し、第2のモデル(モデル2)は、各アゴニストが異なる用量反応曲線を引き出すと結論付けている。F比は、モデル2からモデル1への二乗和の相対的な増加と自由度の相対的な増加の関係を定量化したものである。モデル1が正しければ、1.0に近いF比が測定されることが期待される。F比>>1.0の場合、次の2つの可能性がある。すなわち、モデル2が正しいか、またはモデル1が正しいが、ランダムな散布がモデル2を使用してより良い適合をもたらした。p値出力は、この「ランダムな散布」の偶然がどれくらい稀であるかを示している。F比>>1及びp値が低い(αより小さい)場合、モデル2はモデル1より有意に良い(正しい可能性が高い)と結論付けられる。p値が高い場合は、モデル2を支持する有力な証拠はないと結論付けられ、モデル1が採用される。
【0241】
ZAPAで得られたlog10変換したAU値(試料100μL用量あたり)と各希釈試料内のlog10変換した中央RVP値を比較すると、F検定によりモデル1が正しく(F比=1.024、p値0.4301)、つまり、各アゴニストに対して、同じ用量反応曲線を適用できる(各PIZV希釈系列、図10)。このモデルによると、ZAPAデータは、適用された異なるDSバッチのマウスの免疫応答と良好に相関していると結論付けることができる。
【0242】
まとめると、これらのデータは、異なるPIZVバッチの分析及び特性評価におけるZAPAの有用性を明確にする。アッセイ結果が分析試料の免疫原性と良好に相関するため、対応する効力をZAPAを使用して確実に予測することができる。これに対し、ブラッドフォード法で測定した総抗原量が同じでも、エピトープ及びしたがって試料の効力は異なり得る。エピトープが確実に決定され、ZAPAシグナルがPIZV試料の抗原性、in vivo免疫原性、したがって効力に関する直接的な指標となるため、ZAPAは、こうした変動を考慮する上で有用なツールである。
【0243】
実施例5:PIZVバッチの相対的な効力の決定
ZAPAは、実施例4でPIZV試料の抗原性、in vivo免疫原性、したがって効力と良好に相関することが示された。したがって、ZAPAは、例えば実施例4で説明したマウスのように、ZAPA値が誘導中和Ab力価(したがって効力)と相関しているPIZV参照と比較して、任意のPIZVバッチの相対的効力を検討するために適用することができる。
【0244】
このため、2つのPIZV試験試料(#1及び2)と1つのPIZV参照(ストック濃度:20μg/mL)を、mAbペア#1を使用してZAPAで試験した(表5を参照)。試料及び参照を、アッセイ緩衝液(25mM HEPES pH7.4、0.5%Triton X-100、0.1%カゼイン、1mg/mLデキストラン-500及び0.5%Proclin-300、Perkin Elmer製の10倍ストックから調製、カタログ番号AL000F)で実施例2で記載したように連続希釈した。
【0245】
白色96ウェルプレート(1/2面積プレート-96、Perkin Elmer、カタログ番号6002299)に1ウェルごとに、参照希釈液またはPIZV試験試料希釈液あたり10μLを添加した。更に、バックグラウンドシグナルを考慮し、1ウェルあたり10μLのアッセイ緩衝液を加えることにより、空のウェルを設けた。各希釈液または試料及び空は、二重に評価した。ZAPAは更に、実施例2での記載のように行った。
【0246】
ZAPAシグナルは、実施例2で述べたように、各希釈系列について独立して4パラメータロジスティック(4PL)回帰で解析した(図11)。2つのPIZV試験試料の相対的な効力を評価するために、平行線検定(PLA)によるグローバル4パラメータロジスティック(4PL)フィットが実行され、参照物質を参照プロットとして指定した。試験試料#1は、相対効力0.500、標準誤差0.018及びグローバルフィットに対するR値0.997を示し、試験試料#2は、相対効力0.408、標準誤差0.019及びグローバルフィットに対するR値0.995を示した。
【0247】
要約すると、ZAPAは、迅速、効率的かつ信頼性の高い方法で特徴付けられた参照と比較した相対効力を評価することにより、異なるPIZVバッチの監視に常に適用することができる。
【0248】
特に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている材料の量、分子量などの特性、反応条件などを表現する数字はすべて、すべての場合に用語「約」で修飾されていると理解するべきである。本明細書で使用する場合、「およそ」及び「約」という用語は、10~15%以内、好ましくは5~10%以内を意味する。したがって、特に異議を唱えない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変更可能な近似値である。最低限でも、及び特許請求の範囲へ均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数の数を考慮して、及び通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範囲で示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかし、いずれの数値も、本質的にそれらそれぞれの試験測定で見いだされる標準偏差から必然的に生じる、一定の誤差を含む。
【0249】
本明細書では、特許や印刷出版物を多数引用している。上述で引用した文献及び印刷出版物のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に独立して組み込まれる。
【0250】
特許出願におけるヌクレオチド及びアミノ酸の配列表の表示に関するWIPO標準ST.25内の要件に関して、配列表で使用されるフリーテキストは「合成ペプチド」「合成ヌクレオチド」で繰り返される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2023527169000001.app
【国際調査報告】