(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】水産養殖施設のための水の循環および曝気システム、関連する施設、方法、および使用
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
A01K63/04 C
A01K63/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571784
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 FI2021050375
(87)【国際公開番号】W WO2021240061
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521488886
【氏名又は名称】ルオノンヴァラケスクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キウル,タピオ
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA16
2B104CA01
2B104EA01
2B104EB05
2B104EB19
2B104EB27
(57)【要約】
水生種を養殖するための細長いリザーバ20を備える水産養殖施設100のための、循環および曝気システム10が提供される。システム10は、相互接続配管11Bを通してリザーバの長さに沿って分配され、排出口12を介して前述のリザーバに曝気水を注入することによっていくつかの隣接する回転液体流パターンを発生させるように配置された、いくつかの垂直マニホールド11Aを備え、各前述のパターンは個々の回転流セル20A、20B、20Cを形成し、システムは、曝気水をマニホールド11Aに供給するように構成された少なくとも1つのエアリフトポンプ13をさらに備える。関連する施設100、方法、および使用がさらに提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生種を養殖するための細長いリザーバ(20)を備える水産養殖施設のための、水の循環および曝気システム(10)であって、そのシステム(10)は、相互接続配管(11B)を通して前記リザーバの長さに沿って分配され、排出口(12)を介して前記リザーバに曝気水を注入することによっていくつかの隣接する回転液体流パターンを発生させるように配置された、いくつかの垂直マニホールド(11A)を備え、各前記パターンは個々の回転流セル(20A、20B、20C)を形成し、前記システムは、水を曝気し、曝気水を前記マニホールド(11A)に供給するように構成された少なくとも1つのエアリフトポンプ(13)をさらに備える、システム(10)。
【請求項2】
前記マニホールド(11A)は、個々のフローセルごとに独立して回転流パターンを発生させるように配置される、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記流れパターンは、前記セル間に物理的な境界のない状態でセルごとに確立される、請求項1または2のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記隣接セルは、向流パターンによって確立される、いずれかの先行する請求項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記エアリフトポンプ導管に接続された気泡収集装置(15)をさらに備える、いずれかの先行する請求項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
液体を受け取って水生種を収容し、養殖領域(21)を確立するように構成された細長いリザーバ(20)と、いずれかの先行する請求項1~5に記載の水の循環および曝気システム(10)とを備える、水産養殖施設(100)。
【請求項7】
前記リザーバ(20)は、陸上の閉鎖環境によって形成される、請求項6に記載の施設(100)。
【請求項8】
前記リザーバ(20)は、ISO規格輸送用タンクなどの細長いコンテナである、請求項6に記載の施設(100)。
【請求項9】
仕切り(18)によって前記養殖領域(21)から分離された水処理領域(31)をさらに備え、前記仕切りは、前記養殖領域(21)と前記水処理領域(31)との間の水交換を可能とする、いずれかの先行する請求項6~8に記載の施設(100)。
【請求項10】
前記仕切り(18)は、前記リザーバ(20)の長さに沿って移動可能に構成され、前記仕切りを動かすことによって、前記水処理領域(31)の容積および前記養殖領域(21)の容積が調節される、いずれかの先行する請求項6~9に記載の施設(100)。
【請求項11】
前記水処理領域(31)は、前記養殖領域(21)からそこに到達する液体の浄化および/または処理のために構成された床材料で充填された区画である、いずれかの先行する請求項6~10に記載の施設(100)。
【請求項12】
前記水処理領域は、硝化反応のために構成される、いずれかの先行する請求項6~11に記載の施設(100)。
【請求項13】
いくつかの垂直マニホールド(41A)を備える廃水排水システム(40)をさらに備え、各前記マニホールドは、実質的に、対応する回転流セル(20A、20B、20C)の中央に配置され、前記マニホールドは、それらの上端で、廃水を前記施設の外部に取り出すように構成された相互接続配管(41B)を通して接続される、先行する請求項6~12のいずれかに記載の施設(100)。
【請求項14】
前記リザーバ(20)に過酸化水素を供給するための手段をさらに備える、いずれかの先行する請求項6~13に記載の施設(100)。
【請求項15】
循環式水産養殖システム(RAS)または部分的再利用水産養殖システム(PRAS)などの再循環水産養殖施設として構成される、いずれかの先行する請求項6~14に記載の施設(100)。
【請求項16】
いくつかのモジュールを備える、水生種を養殖するためのモジュール式プラントであって、各モジュールは、請求項6~15のいずれか1項に定義されている発明に係る水産養殖施設(100)として構成され、前記モジュールは、個々にまたは集合的に、掛け流しモード、循環式水産養殖システム(RAS)モード、または部分的再利用水産養殖システムモードのいずれか1つで動作し、必要に応じて前記モードを切り替えるように構成される、プラント。
【請求項17】
水生種を養殖するための細長いリザーバ(20)を備える水産養殖施設における水の循環および曝気のための方法であって、その方法では、曝気水は、相互接続配管(11B)を通して前記リザーバの長さに沿って分配されたいくつかの垂直マニホールド(11A)を介して、前記リザーバに注入され、それにより、いくつかの隣接する回転液体流パターンが発生し、その結果、各前記パターンは個々の回転流セル(20A、20B、20C)を形成し、前記方法では、曝気水は、少なくとも1つのエアリフトポンプ(13)を介して前記マニホールド(11A)に供給される、方法。
【請求項18】
請求項6~15のいずれか1項に定義されている発明に係る水産養殖施設において水を処理するための方法であって、その施設は、水生種を養殖するための養殖領域(21)、および仕切り(18)によって前記養殖領域(21)から分離された水処理領域(31)を含む、細長いリザーバ(20)を備え、前記方法では、前記仕切り(18)を通って前記養殖領域(21)から前記水処理領域(31)に到達する液体は、浄化および/または処理を受け、前記方法では、前記水処理領域(31)の容積および前記養殖領域(21)の容積は、前記仕切り(18)を前記リザーバ(20)の長さに沿って動かすことによって調節される、方法。
【請求項19】
魚類および/または甲殻類などの水生種の養殖における、請求項6~15のいずれか1項に記載の水産養殖施設(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明は、水生種の飼育に活用される水処理システムおよび方法に関する。具体的には、本発明は、レースウェイ水産養殖施設のための水の循環および曝気システムに関し、そのシステムでは、循環する流れパターンがエアリフトポンプ(単数または複数)によって発生する。本発明はさらに、水産養殖施設、関連する方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水産養殖は、一般に、制御された条件下での魚類および貝類などの水生生物の飼育と見なされ、食用および飼料用の海産物の収穫を可能とする、急成長している農業部門である。水産養殖により、様々な水生種を、天候および/または個体群変動などの外的条件に関係なく、費用効果の高い方法および予測可能な生産量で生産することができる。
【0003】
ここ数十年で、完全または部分的な水の再循環を備えた水産養殖施設での魚の収穫は、開放池での魚の伝統的な飼育よりも人気および収益性を得ている。循環式水産養殖システム(RAS)は、生産目標および地理的な場所に応じて設計が異なる。一般的な方法は、バッフルを備えた長方形のタンクもしくは一連のタンクとして構成されたレースウェイシステムの使用、または循環水流が中央排水溝の周りに確立される一連の円形の池またはタンクを備える飼育施設の使用を含む。
【0004】
2000年代に提唱された混合セルレースウェイ(MCR)システム(Wattenら)は、既存の長方形レースウェイまたは池システムにおいて回転水流の確立を可能とする。従来のMCRシステムでは、いくつかのいわゆるセルが、各セル内および隣接セル間での液体の混合を可能とする隣接した循環水流を作り出すことによって、長方形容器の中で確立される。セル間の固体境界なしで実装されるため、MCRシステムは、各セルの活性容積の混合を可能とする。
【0005】
従来のMCRシステムは、依然として改善が必要な固定式の恒久的施設として構築される。具体的な制限要素としては、養殖施設を季節的な降雨または乾燥の条件に適合させる際の効率の悪さ、生産能力をスケールアップ(またはスケールダウン)する際の構造的硬直性、ならびにその結果として、産業製造業者および個人養殖業者の両方のニーズに対応することができないことが挙げられる。
【0006】
さらに、既存のMCRユニットでは、循環水流は、従来の送水ポンプによってセルごとに発生する。曝気ならびに水からの二酸化炭素除去の問題に取り組むために、施設は、散水塔および/または拡散エアレータ、酸素発生器(単数または複数)、ならびに酸素を水に溶解させるための酸素コーンのような装置などの、さらなる曝気および酸素添加設備を含まなければならない。バイオリアクタのような他の水処理ユニットも、典型的には外部ユニットとしてMCRシステムに含まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来の技術の限界および欠点から生じる問題の各々を少なくとも軽減することにある。この目的は、水産養殖施設のための水の循環および曝気システム、関連する施設、方法、および使用の様々な実施形態によって達成される。
【0008】
一態様では、独立請求項1に定義されている発明に係る、水産養殖施設のための水の循環および曝気システムが提供される。
【0009】
実施形態では、水生種を養殖するための細長いリザーバを備える水産養殖施設のための、水の循環および曝気システムが提供され、前述のシステムは、相互接続配管を通してリザーバの長さに沿って分配され、排出口を介して前述のリザーバに曝気水を注入することによっていくつかの隣接する回転液体流パターンを発生させるように配置された、いくつかの垂直マニホールドを備え、各前述のパターンは個々の回転流セルを形成し、システムは、水を曝気し、曝気水をマニホールドに供給するように構成された少なくとも1つのエアリフトポンプをさらに備える。
【0010】
実施形態では、マニホールドは、個々のフローセルごとに独立して回転流パターンを発生させるようにシステム内に配置される。
【0011】
実施形態では、システムは、セル間に物理的な境界のない状態でセルごとに流れパターンを確立するように構成される。
【0012】
実施形態では、隣接セルは、向流パターンによって確立される。
【0013】
実施形態では、システムは、エアリフトポンプ導管に接続された気泡収集装置をさらに備える。
【0014】
別の態様では、独立請求項6に定義されている発明に係る水産養殖施設が提供される。
【0015】
施設は、液体を受け取って水生種を収容し、養殖領域を確立するように構成された細長いリザーバと、先の実施形態に係る水の循環および曝気システムとを備える。
【0016】
実施形態では、施設は、陸上の閉鎖環境によって形成されるリザーバを備える。実施形態では、施設は、ISO規格輸送用タンクなどの細長いコンテナとして提供されたリザーバを備える。
【0017】
実施形態では、施設は、仕切りによって養殖領域から分離された水処理領域をさらに備える。前述の仕切りは、養殖領域と水処理領域との間の水交換を可能とする。
【0018】
実施形態では、仕切りは、リザーバの長さに沿って移動可能に構成され、前述の仕切りを動かすことによって、水処理領域の容積および養殖領域の容積が調節される。
【0019】
実施形態では、前述の水処理領域は、養殖領域からそこに到達する液体の浄化および/または処理のために構成された床材料で充填された区画である。実施形態では、水処理領域は、硝化反応のために構成される。
【0020】
実施形態では、施設は、いくつかの垂直マニホールドを備える廃水排水システムをさらに備え、各前述のマニホールドは、実質的に、対応する回転流セルの中央に配置され、前述のマニホールドは、それらの上端で、廃水を施設の外部に取り出すように構成された相互接続配管を通して接続される。
【0021】
いくつかの構成では、施設は、(半)連続的に、または単回注入(単数または複数)で、養殖リザーバに過酸化水素を供給するための手段をさらに備える。
【0022】
実施形態では、施設は、循環式水産養殖システム(RAS)または部分的再利用水産養殖システム(PRAS)などの再循環水産養殖施設として構成される。
【0023】
一態様では、独立請求項16に定義されている発明に係る、水生種を養殖するためのモジュール式プラントが提供される。プラントは、いくつかのモジュールを備え、各前述のモジュールは、記載された実施形態に係る水産養殖施設として構成され、前述のモジュールは、個々にまたは集合的に、掛け流しモード、循環式水産養殖システム(RAS)モード、または部分的再利用水産養殖システムモードのいずれか1つで動作し、必要に応じて前述のモードを切り替えるように構成される。
【0024】
さらなる態様では、独立請求項17に定義されている発明に係る、水産養殖施設における水の循環および曝気のための方法が提供される。
【0025】
さらなる態様では、独立請求項18に定義されている発明に係る、水産養殖施設において水を処理するための方法が提供される。
【0026】
さらなる態様では、独立請求項19に定義されている発明に係る、魚類および/または甲殻類などの水生種の養殖における、いくつかの先の実施形態に係る水産養殖施設の使用が提供される。
【0027】
本発明の有用性は、その各特定の実施形態に応じた様々な理由から生じる。
【0028】
本明細書に開示される革新的な解決策は、改善された曝気および養殖リザーバからの二酸化炭素の除去のために、エアリフトポンプを活用する。したがって、従来の送水ポンプの代わりにエアリフトを使用することの主な利点の1つは、効率的なガス交換を可能とすることである。
【0029】
水生種の養殖では、前述の種、例えば魚によって産生される二酸化炭素は、池から放出されなければならない。同時に、水への酸素の移行/添加プロセスとして定義される曝気は、水生種の養殖の成功において重要なプロセスである。酸素は、水中では比較的希少な成分である(10ppmは高濃度と見なされ、典型的な循環式水産養殖システムは、5~8ppmの酸素レベルで動作する)。酸素は、養殖されている種および養殖施設内で自然に発生する細菌の両方によって消費される。したがって、高負荷下で、例示的RAS施設は、システム内の全酸素を20~60分ごとに入れ替えることができなければならない。連続的な曝気がない場合、養殖されている全集団が失われ得る。
【0030】
水産養殖施設での水の移動に典型的に使用される標準的な遠心ポンプまたは軸流ポンプは、曝気および/または望ましくないガス(例えばCO2)の除去に関してさらなる機能性を有さない。従来の施設は、典型的には、養殖タンクとは別の曝気タンクを備える。あるいは、水がかなり高いレベルに圧送されてよく、そこから、水が多孔性構造を通してしたたってよく、すると曝気が生じる。
【0031】
したがって、従来の水産養殖施設では、圧送および曝気プロセスは、別個の機器の利用を必要とし、大量のエネルギーを消費する。反対に、エアリフトポンプでは、ガス交換プロセスは、水の移動/圧送プロセスと、エネルギーおよび機器を共有する。エアリフトによって、流れの取り込み、酸素の添加および二酸化炭素の除去などの、水産養殖プロセスにおいて最も重要なものを、個々の養殖施設内に統合することができる。
【0032】
さらに、解決策は、底部排水溝を通した沈降性固体の除去、ならびに浮上分離、泡沫分離、および/またはプロテインスキミングによる養殖液体からの微細固体の除去を同時に可能とする。
【0033】
解決策は、内蔵型の(バイオ)リアクタをさらに含み、その容積は、養殖および収穫に使用される施設のその他の部分の容積に対して柔軟に変更され得る。
【0034】
本明細書に開示される発明の概念は、水産養殖施設のための、モジュール式のプラグアンドプレイ解決策をさらに提供する。
【0035】
「いくつかの」という表現は、本明細書では、1から開始する任意の正の整数、例えば1、2、または3を指す。「複数の」という表現は、本明細書では、2から開始する任意の正の整数、例えば2、3、または4を指す。
【0036】
本発明の異なる実施形態は、詳細な説明および添付の図面を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】一実施形態に係る、水産養殖施設100内のエアリフト駆動の循環および曝気システム10の基本概念を概略的に例解する。
【
図2】仮想的なフローセルにおける回転流パターンの形成を概略的に例解する。
【
図3】一実施形態に係る、水処理領域を備える水産養殖施設100を概略的に例解する。
【
図4】一実施形態に係る、垂直排水システムを備える水産養殖施設100を概略的に例解する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の詳細な実施形態が、添付の図面を参照しながら本明細書に開示される。同じ符号が、同じ部材を指すために図面全体を通して使用される。以下の列挙が、部材について使用される:
10-水の循環および曝気システム;
11A、11B-分配配管;
12-排出口;
13-エアリフトポンプ;
13A、13B-空気注入ラインおよびそれに応じた空気解放装置;
14-排水溝(単数または複数);
15、15A-気泡収集装置およびそれに応じた排出管;
16、16A-給水ライン(単数または複数)および関連する弁(単数または複数);
17-エアリフトポンプへの流入;
18-仕切り;
20-リザーバ;
20A、20B、20C-回転流セル;
21-養殖領域;
31-水処理領域;
40-廃水排水システム;
41A、41B-廃水排水システム用分配配管;
42、43-廃水排水配管:入口(単数または複数)およびそれに応じた排出端;
51-送風機/空気圧縮機;
52-操作および制御区域;
53-区域52とリザーバ20のその他の部分との間の壁;
100-水産養殖施設。
【0039】
水の循環および曝気システム10ならびに前述のシステム10を備える水産養殖施設100が、
図1に概略的に例解される。施設100は、水生種を養殖するための細長いリザーバ20、ならびにリザーバ中の液体の循環および曝気を可能とするシステム10を備える。
【0040】
施設100を、循環式水産養殖システム(RAS)または部分的再利用水産養殖システム(PRAS)などの再循環水産養殖施設として構成することができる。施設100は、混合セルレースウェイと一般に称され得る。
【0041】
リザーバ20は、ISO規格カーゴタンクなどの細長いコンテナまたはタンクとして提供され得る。例として、規格基準コンテナ(20’DC、40’DC;ここでDCはドライカーゴを表す)またはハイキューブ(ドライカーゴ)コンテナ(40’HC、45’HC)を利用することができる。サイズおよび寸法に関して、標準20’DCコンテナは約33m3の容積および6m×2.34m×2.4m(長さ、幅、高さ)の内法寸法を有し、標準40’DCコンテナは66.4m3の容積および12m×2.34m×2.4mの内法寸法を有し、標準40’HCコンテナは73.5m3の容積および12m×2.34m×2.7mの内法寸法を有し、標準45’HCコンテナは86m3の容積および13.5m×2.41m×2.7mの内法寸法を有する。任意の他の好適なISO規格コンテナを利用することができる。コンテナは、密閉または無蓋コンテナであり得る。
【0042】
例えばアルミニウム、COR-TEN(登録商標)鋼もしくはステンレス鋼などの鋼、または合板で作られたコンテナによって形成されたリザーバハウジングは、「ワッフル」構造を作り出す、補強材および/または絶縁材(例えば、絶縁フォーム)を有する金属フレームワークとして実装される支持構造をさらに設けることができる。コンテナは、任意選択で可撓性のコーティングまたはライナーでさらに裏打ちされてもよい。
【0043】
ISO輸送用コンテナを利用することによって、施設100は移動式になり、したがって、従来の手段(トラック、船舶など)によるその輸送が可能になるか、または少なくとも容易になる。
【0044】
リザーバ20を、任意の他の細長い、任意選択で本質的に長方形の、コンテナまたはタンクによって形成することができる。あるいは、リザーバ20を、池、ため池、水路、堀などの陸上の閉鎖環境によって形成することができる。閉鎖環境は、天然または人造(人工)のものであってよい。リザーバ20が陸上の閉鎖環境として構築される場合、リザーバ20を施設100として使用するのに適したものにするための、例えば排水設備などの必要な設備をリザーバ20が含有することを、当業者は難なく理解すると思われる。垂直および水平(長手方向)断面における本質的に長方形の形状は、好ましくは維持される。
【0045】
施設100は、水の循環および曝気システム10を備えた単一のリザーバ20として構成され得る。いくつかのそのようなリザーバ20を共通の水源および/または排水システムに接続することによって、水産養殖プラントと呼ばれるより大きな施設が構築され得る。プラントは、例えば2~20個のリザーバを備え得る。プラント内の全てまたはいくつかのリザーバは、相互接続され得る。例として、対での接続は、共通の水処理区域で実装され得る(後者はさらに以下で説明される)。接続は、モジュール式水産養殖プラントの「プラグアンドプレイ」構築を容易にするために、永続的または一時的なものであってよい。一旦接続されたら、リザーバは、必要な時にいつでも切り離され、分離され得る。モジュール式構築は、プラントがISO輸送用コンテナで実装される場合に特に好ましい。
【0046】
施設100内で、システム10は、管11Aの長さに沿って配置された噴射口または噴射ノズルなどの複数の排出口12を有する垂直管として構成された、いくつかの垂直マニホールド11Aを備える。各マニホールド11Aは、1つの方向または異なる方向を指すポートを備え得る。垂直マニホールド11Aは、リザーバの端から、任意選択で水面より上から、本質的にリザーバの底部まで伸びる。それらの上端で、マニホールド11Aは、リザーバ20の内壁(単数または複数)に沿って伸びる本質的に水平な管として提供された相互接続配管11Bによって相互接続される。管11Bは、水面より上に位置する。
【0047】
図2は、垂直マニホールド11Aに関するリザーバ20内の水平分配管11Bの例示的レイアウトを示す。
【0048】
使用時、リザーバ20は、水で所定の水位線まで充填される。マニホールド11Aに配置された排出口12を通して、水、任意選択で水および空気の混合物が、リザーバ中に導かれ、それにより、いくつかの隣接する回転液体流パターンが発生する。実際には、リザーバの対向壁に本質的に互いに向かって位置する垂直マニホールド11Aの対が、いくつかの仮想的な「セル」20A、20B、20Cを作り出し、4つのマニホールドは各セルの角に位置する。セルは、したがって、その角のマニホールド11Aおよび中央の中央排水溝14を有する長方形領域として画定される。リザーバ20は、セル20A、20B、20Cの間に障壁またはバッフルを含有せず、したがって、セルは、「仮想的な」セルと呼ばれる。回転流パターンは、セル間に物理的な境界のない状態でセルごとに確立される。
【0049】
あるいは、前述のセルを、セル間に仕切り壁などの障壁を加えることによって互いから物理的に分離することができる。これは、水生種の2つ以上の群がリザーバ中に存在する場合のシナリオであり得る。セル間に物理的な障壁を提供することによって、例えば、同じリザーバ中で飼う場合に、稚魚を成魚から容易に分離することができる。
【0050】
施設100は、2~10個の隣接セルのために構成され得る。いくつかの固定式の実装は、1列に配置された10個を超える隣接セルを含み得る。いくつかの代替または追加の構成では、セル列は、アレイ状に配置され得る。
【0051】
隣接セルは、共通のマニホールド11Aまたはマニホールド対を有し得る。排出口12を通して、水がリザーバに注入されて、リザーバ20の底部に配置された排水溝14の周りの回転を確立する。隣接する循環水流は、したがって、セルごとに排水溝14の周りに、リザーバ20の長さに沿って発生する。排水溝14は、好ましくは網で覆われる。
【0052】
例えばノズルとして構成されたポート12は、最も適した流れプロファイルを達成するように、管11Aの長さ(高さ)に沿って配向される。場合によっては、注入ストリームの方向は、回転パターンの円周に対して本質的に接線方向であり得る。マニホールド11A上のポート12は、したがって、注入ストリームが、回転パターンの円周に半径方向の接線で沿うように配置される(後者は、円の中心点とその外周/円周上の任意の点との間のベクトルによって定義される)。流れプロファイルは、ポート12を各垂直マニホールド11A内で、各前述のマニホールドの上部に設けられたポートは、本質的に接線方向の流体流を発生させるように配向されるが、マニホールドの下部に設けられたポートは、本質的にセルの中央に向かって配向される所定の方法で配置および配向することによって、さらに最適化され得る。
【0053】
流体流の最適化は、したがって、垂直管11Aに設けられた全ポート/ノズル12の約4分の1(1/4)~約2分の1(1/2)、好ましくは約3分の1(1/3)を、セルの中央(排水溝14によって定義される)に向かって配向することによって達成され得る。好ましくは、中央向きのノズル12は、垂直マニホールド11Aの下部に配置されて、排水溝14に向かって流体流を導く。そのような配置は、タンク20からのスラッジの除去において特に効率的であり、それにより、自己洗浄に近い機能性が達成されて、タンクの(手作業での)洗浄を最小限にすることができる。
【0054】
個々の回転流セル20A、20B、20Cは、したがって、マニホールド11Aを介したリザーバへの水の注入時に発生する本質的に循環する流れパターンまたは渦によって形成される。
【0055】
セル20A、20B、20C内の回転流パターンは、独立して発生する。したがって、隣接セル内の流れパターンは、流れの速度および方向、注入される空気の量、ならびに他のパラメータに関して異なり得る。隣接セル内の独立した液体流は、流量調整弁、流量および/または圧力センサ、回転ノズルなどの、様々な調節設備によって確立され得る。
【0056】
システム10は、向流パターンによって確立された隣接セルで構成され得る(
図2)。そのような配置は、逆方向に循環する液流を有する交互セルを含む。あるいは、システム10は、全セルが同じ方向(例えば、時計回りまたは反時計回り)に回転する流れパターンを有するように構成され得る。
【0057】
曝気され、酸素富化された、本質的に二酸化炭素のない水をリザーバ20に(分配配管11A、11Bを介して)供給するために、システム10は、少なくとも1つの、「エアリフト」とも呼ばれるエアリフトポンプ13を備える。エアリフトポンプは、概して、(リザーバ20中の)液体に浸漬され、その上端で、任意選択で水面より上で、相互接続配管11Bに接続される、垂直導管として提供される。(本質的に互いに向かい合う同じ端部において)本質的にリザーバ20の角に配置された2つのエアリフトポンプ13を備える実装が、
図2に例解される。
【0058】
圧縮空気は、送風機または空気圧縮機51によって導管13の底部に注入される。空気注入ラインは、符号13Aで表される。(単相の水で表される)液体のその他の部分より低密度であることによって、空気-液体混合物は、導管13を通って上方に伝播する。結果として生じる気泡の浮力は、ポンプ作用を引き起こす。導管13から、空気駆動された水(すなわち、浮力によって上方に駆動された水)が、相互接続配管11Bに供給され、したがってマニホールド11Aに供給される。導管13は、リザーバ20からの水を再循環させるために、その下端が開放されていてもよい。追加または代替として、導管13は、外部供給源(図示せず)からの水を利用するように構築されてもよい。
【0059】
システム10は、任意選択でエアリフトポンプ13とともに本質的に水平な管11Bに設置された、少なくとも1つの空気解放装置13Bをさらに備える。システム10内の各エアリフトは、少なくとも1つの別個の空気解放装置13Bを提供され得る(
図2)。装置13Bは、導管13に統合されてエアリフトポンプの一部を形成し得る。
【0060】
空気解放装置13Bを、導管13に沿って上昇する空気-液体混合物中に捕捉された空気の大部分を排出するための弁、任意選択で自動弁として構成することができる。そのような弁は、液体中に同伴された空気が放出される通気口を有する。空気解放装置13Bを、管内に蓄積する空気の放出を支援する通気開口またはT字形部品として構成することができる。したがって、空気は、垂直エアリフト13内を上方に上昇する(曝気された)液体を通して均等に分配される一方で、水平配管11Bでは、空気は、(液体がマニホールド11Aに向かって伝播する)管の上側に蓄積する傾向がある。空気解放装置(単数または複数)によって、流量および圧力の効率的な制御が可能となり得る。
【0061】
液体、典型的には水は、エアリフト導管13内を上方に流れる間に曝気され、酸素富化される。曝気は、二酸化炭素の除去を伴う。その後、曝気水は、任意選択で空気解放弁13Bを通って、垂直マニホールド11Aに伝播し、排出口12を介してリザーバ20に伝播する。(エアリフト13によって)空気を送り込まれた曝気水は、通常、例えば開放表面を介して取り込むことができる量より多量の溶存酸素を含有する。曝気水は、空気駆動注入によってリザーバ20に供給される。
【0062】
導管13内を伝播する水および空気の混合物は、
図1および
図3に符号17(網掛け矢印)で示される一方で、曝気水は、空の矢印で示される。空気解放弁(単数または複数)13Bは、液体が導管13内を伝播する間に液体中に同伴された空気の大部分を除去するが、前述の弁(単数または複数)を通って伝播する液体/水は、その中に溶解した追加の酸素を(追加の曝気手段のない条件に関する量より多い量で)依然として含有している。したがって、リザーバ20中に導かれる、空気駆動の、エアリフトに媒介された流れのストリームは、曝気流ストリームと呼ばれる。リザーバ中への曝気水の空気駆動注入は、排出口12を介して生じる。同伴空気の放出は、二酸化炭素の放出を伴い、したがって、空気解放弁(単数または複数)は、CO
2除去の効率的な手段をさらに提供する。
【0063】
送風機/空気圧縮機51が、施設100内で、不透水性壁53によってリザーバ20のその他の部分から分離された操作および制御区域52に設けられる。区域52は、好ましくは、エアリフトポンプ13に隣接して施設100の端に配置される。システム10および施設100の制御は、完全にまたは部分的に自動化され得る。
【0064】
リザーバ20がISO規格輸送用コンテナに設けられる場合、上記のように、操作および制御区域52が、メンテナンス作業を容易にするために、コンテナのドアの隣に配置されることが有利であり得る。
【0065】
場合によっては、施設は、リザーバ20の両端に設けられたいくつかのエアリフトポンプ13を組み込み得る(図示せず)。これは、10個を超える隣接セルを含む固定式の施設でのシナリオであり得る。そのような場合、操作区域52は、施設の両端に設けられ得る。エアリフト13は、各セル20A、20B、20Cなどに(セル1つ当たり1つもしくは2つ)、または各垂直マニホールド11Aに、さらに組み込まれ得る。後者の構成では、システム10/施設100内の全ての垂直マニホールド11Aは、エアリフト導管13に置き換えられ得る。
【0066】
エアリフトポンプ(単数または複数)13は、リザーバ20中の水を曝気し、そこからの二酸化炭素の除去の原因となる。エアリフトポンプは、リザーバ20中に栄養素を懸濁させるのにさらに使用され得る。
【0067】
エアリフトポンプ導管13は、前述の導管の上端に設けられた気泡/フロス収集装置15をさらに備え得る。エアリフトポンプ13および装置15は、浮上分離、泡沫分離、および/またはプロテインスキミングによってリザーバ20から微細固体を収集し、(排出管15Aを介して)除去する。
【0068】
水は、給水管(単数または複数)16を通してリザーバ20に供給される。給水は、ボール弁(例えば、15~75mmのボール弁)などの適切な弁16A、または任意の他の好適な設備によって調節される。
【0069】
養殖領域21および水処理領域31を備える水産養殖施設100を例解する
図1および
図3に参照がなされている。養殖領域21は、液体を受け取って飼育用水生種を収容するように構成された、リザーバ20全体またはその一部によって確立される。
【0070】
水処理領域31は、養殖領域21からそこに到達する液体の浄化および処理のために構成された床材料で充填された区画である。前述の床材料は、例えば流入する液体の濾過による機械的浄化、ならびに追加もしくは代替として、前述の液体の(生)化学的および/もしくは生物学的処理に適した、顆粒、ペレット、または微粒子として提供され得る。床材料は、例えば硝化(バイオ)リアクタとして構成され得る。
【0071】
水処理領域31は、仕切り18によって養殖領域21から分離される。仕切り18は、養殖領域21と水処理領域31との間の液体/水交換を可能とし、床材料が養殖領域21に侵入するのを防ぐ材料で作られた網、格子、織物、またはメッシュとして提供され得る。
【0072】
いくつかの構成では、仕切り18は、リザーバ20の長さに沿って移動可能である。仕切り18をリザーバ20に沿って移動可能な要素として提供することによって、水処理領域31の容積および養殖領域21の容積を調節することができる。
図3に示されるように、リザーバの中間点に向かって仕切り18を摺動させることによって、以前に水が占めていた空間(別名、養殖領域21)を減少させることができ、したがって、水処理用に構成された床材料が占める空間を増加させることができる。仕切りを摺動させて戻すことによって、バイオリアクタ(領域31)が占める空間を減少させ、養殖領域21が占める空間を増加させる。床材料を、水処理領域に、その容積の調整の前後に、容易に追加/除去することができる。
【0073】
(その中の固体粒子の体積の変更を含む)水処理領域31の容積の調整時に、施設への水および空気の供給が停止されることが好ましい場合がある。場合によっては、施設内での水処理領域31の提供ならびに/または床材料が占める容積の調節は、分配配管11A、11Bを通る水の流れの調整、ならびに/または水の循環および曝気システム10内の要素11A、11B、13の再分配を必要とし得る。
【0074】
あるいは、仕切り18は、固定要素として提供され得る。
【0075】
仕切り18を移動させることによって、施設100全体を、養殖タンク21または水処理ユニット31にすることができる。
【0076】
図4は、さらに別の実施形態に係る水産養殖施設100を示す。水の循環および曝気システム10に加えて、またはそれの代替として、
図4に例解される施設100は、廃水排水システム40を備える。廃水排水システム40は、したがって、水の循環および曝気システム10に加えて、リザーバ20に設置され得る。水循環システム10と同様に、廃水排水システムは、各垂直管が(リザーバ20の底部の)その下端に(廃)水入口42を有する垂直管として構成されたいくつかの垂直マニホールド41Aを備える、相互接続配管として実現される。それらの上端で、垂直排水マニホールド41Aは、リザーバ20の長さに沿って伸びる本質的に水平な管として提供された、対応する相互接続管路41Bによって相互接続される。排水システム40は、例えば、廃水をリザーバ20(および施設100)の外部に導くように配置された廃水排出管として構成された、少なくとも1つの出口43を備える。
【0077】
明確にするために、循環および曝気システム10は、
図4において単一の回転流セル20Aが破線の輪郭線で示される。本開示を全体的に見ると、リザーバ20のその他の部分にシステム10が提供されていることを、当業者は難なく推定すると思われる。
【0078】
廃水排水システム41は、各垂直排水マニホールド41Aを実質的に各セル20A、20B、20Cの中央に、すなわち、中央排水溝14(
図1~3)の位置に位置付けるように、リザーバ20において設計および配置される。廃水排水システム40がタンク20に設置される場合、中央排水溝14の提供を省略することができる。垂直排水マニホールド41Aは、したがって、リザーバの底部に位置する排水開口14(および坑井、配管などの前述の排水開口の下にある地下インフラ)を置き換える。
【0079】
示された構成では、垂直排水マニホールド41Aは、タンク20の底部よりわずかに(5~50mm)上に下端(42)を有する。水平管路41Bは、水位線より上または下に配置され得る。水平管路41Bが水中に沈んでいるかどうかにかかわらず、圧力差は、管路内に水の流れを引き起こす。水平管路41Bが水面より高い場合、垂直マニホールド41Aは、エアリフトポンプの役割を果たし得る。追加または代替として、構成に応じて、廃水の流れを従来の送水ポンプによって支援することができる。
【0080】
廃水は、典型的には、各回転流セルの中央に配置された排水溝を通してMCR施設から取り出される。この水は、食べ残し、魚の糞、細菌バイオマスなどの沈降する固体を運ぶ。一部の水は、浮上時に形成された気泡とともにさらに除去される。
【0081】
新鮮な水は、RASの原理に従って動作する水産養殖施設に、消費される餌1kg当たり約250~2500リットルの量で導入されるべきである。PRASの原理に従って動作する施設では、水の必要量は、消費される餌1kg当たり約5000~15000リットルである。必然的に、実質的に同じ量の水が、廃水として飼育タンクから除去される(魚の飼育中に消費され、魚類バイオマスに結合される水、および蒸発した水を除く)。伝統的な掛け流し式水産養殖では、水の要求量は、消費される餌1kg当たり50000リットル超である。
【0082】
廃水除去は、典型的には、地下の坑井および/または共通排水システムに接続された飼育タンクの底部に開口として設けられた排水溝(14、
図1~3)によって実行される。場合によっては、インフラ(坑井、排水システム、および関連する配管)の提供は、手間がかかり、高価であることがわかる。いくつかのさらなる例では、飼育タンクとして使用される(輸送用)コンテナの完全性を保つことが望ましい場合があり、したがって、前述のコンテナの底部に穴をあけることは避けられるべきである。
【0083】
垂直排水システム40は、上述の場合の単純かつ費用効果の高い解決策を提供する。マニホールド41A、41Bを、現場で組み立て、リザーバ20に設置することができる。廃水は、例えば、吸引によって(開口42を介して)垂直排水管41Aを通って上方に引かれ、そこから廃水は、水平管41Bに沿って排出端43に向かって導かれる。いくつかのタンク20に設けられた排水システム40は、それらの排出端43によって共通排水システム(図示せず)にさらに接続され得る。
【0084】
垂直廃水排水システム40は、その底部に穿孔せずに実装される、飼育タンクベースの水産養殖施設の解決策を可能とする。したがって、地下の坑井および/または排水配管の提供を、省略することができる。全体構造は、したがって、より単純で、移動式の、費用効果の高いものになる。
【0085】
垂直排水システム40を、本明細書に記載されたものに限定されない任意の種類の適切な水産養殖施設において、(システム10を含まない)独立した排水設備として使用することができる。
【0086】
いくつかの構成では、施設100は、リザーバ20に過酸化水素(H2O2)を供給するための手段(図示せず)をさらに備える。前述の手段は、ホース、管、または類似の設備を通して適切な貯蔵タンクからリザーバ20に過酸化水素を供給するように構成されたマニホールド配管11A、11Bおよび/またはエアリフトポンプ(単数または複数)13と相互接続された、いくつかの弁として構成され得る。前述の弁は、任意選択で自動または半自動であり得る。追加または代替として、過酸化水素は、任意選択で新しい(流入する)水と混合されて、養殖タンク20に直接注入されてよい。
【0087】
過酸化水素を水中に連続的に、半連続的に、または単回(バッチ)投与/注入で導くことによって、浸漬表面上の細菌バイオフィルムの増殖および/または養殖タンク内の水相中の微生物の増殖を、有効に防ぐことができる。したがって、過酸化水素の注入は、洗浄および殺菌の目的を果たし、(例えば流入水を殺菌することによって)病気が広がるのを防ぎ、かつ/または感染の場合にタンク20で養殖されている魚もしくは他の水生種を処理するために使用され得る。
【0088】
水産養殖施設の曝気および(液体)流れ循環システムをバイオフィルム形成のない状態に保つことは、施設の完璧な動作の確保に重要である。(浸漬表面および液相における)微生物増殖を防ぐことに成功すると、配管は閉塞せず、これは、液体流れ/循環およびガス交換を要求されるレベルに維持することを、タンク/循環システム(単数または複数)の手作業での洗浄なしで可能とする(後者は、必然的に、養殖タンクを空にすること、および任意選択で施設全体を停止させることを必要とする)。表面および水相に細菌増殖がない場合、水産養殖システムの生物学的酸素要求量(BOD)(別名、細菌および他の微生物によって消費される酸素の量)も低いままである。
【0089】
養殖タンク20への過酸化水素の連続供給が、浸漬表面上のバイオフィルムの形成を防ぎ、かつ液相中の微生物増殖を防ぐことは、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)の飼育に関する実験で確認されている。
【0090】
過酸化水素が養殖タンク20に連続的に供給される場合、前述のタンク中のH2O2の濃度を約1mg/L以下のレベルに調整することで、一般には十分である。(連続供給条件下での)タンク中の過酸化水素の濃度は、少なくとも以下の要素:タンクに導かれる新しい(流入する)水の量(希釈の程度)、タンク中に存在する飼料物質などの栄養物の量(前述の飼料物質は、過酸化水素の分解を促進する有機物を表す)、および養殖されている種(過酸化水素に対する毒性閾値が異なる)の影響を受ける。実験は、流入水1リットル当たり3mgの量でタンク20に過酸化水素を供給することが、1mg/Lよりわずかに低い、前述のタンク中の遊離過酸化水素濃度をもたらすことを実証した。全体として、タンク20中の安全なH2O2濃度は、その中に3~5mg/Lの範囲内の連続的な割合で過酸化水素を導くことによって達成され得る。
【0091】
さらに、単回の、十分に高い用量(100mg/Lまでの水中のH2O2濃度)でのタンク20への過酸化水素の供給は、タンクで養殖されている水生種の健康を危険にさらすことなく、水中の酸素含有量を増加させるために使用され得るが、これは、過酸化水素が、有機物の存在下で比較的速く分解するためである。したがって、H2O2を、(例えば、停電の場合に)緊急の酸化剤として利用することができる。
【0092】
単回投与でH2O2を供給する場合も、その(最高)濃度は、水質および養殖されている種の両方に依存する。実験は、20mg/Lの単回投与で供給された過酸化水素が、他の曝気なしで約1時間、養殖されている魚(例えばニジマスなど)のための酸素を生成するのに十分であることを実証した(過酸化水素の半減期は、約15分であった)。魚病の治療においても、高濃度(約100mg/L)のH2O2への約60分の長さの曝露が一般的である。
【0093】
場合によっては、過酸化水素は、養殖タンク20に半連続的に加えられる。そのような場合、H2O2は、例えば給餌時間中などの、所定の期間中にのみ、連続的に供給される。酸化剤(H2O2)の半連続供給は、したがって、酸素消費が最も多い期間中に酸素をシステムに導入することになる。
【0094】
さらに、過酸化水素を水産養殖システムに加えることによって、様々な細菌によって産生され、水性養殖媒体に味および匂いの問題を引き起こす異臭代謝産物、具体的にはゲオスミンおよび2-メチルイソボルネオール(MIB)の形成を、防ぐかまたは著しく減少させることができる。近年の研究規模の実験(図示せず)は、水の循環および曝気システム10を備えた水産養殖施設(100)でのゲオスミンおよびMIBの濃度の低減におけるH2O2の有効性を実証している。水中の異臭代謝産物の含有量の調節を考慮すると、過酸化水素は、オゾンおよびオゾンと過酸化水素との組み合わせなどの、より攻撃的な酸化体より有効であるか、または同程度に有効であると判明した。
【0095】
いくつかの施設100をともに、かつ/または共通の水源および/もしくは排水システムに接続することによって、各施設100/リザーバ20が個々のモジュールを構成する、水生種を養殖するためのモジュール式プラントを構築することができる。様々な構成では、そのようなプラントは、養殖領域21および水処理領域31の両方を備えるいくつかのモジュール100を、養殖タンク21としてのみ構成されたモジュールならびに/または水処理ユニット31としてのみ構成されたモジュールと組み合わせてよい。追加または代替として、養殖タンク21として構成されたいくつかのモジュールを、水処理ユニット31として構成された少なくとも1つのモジュールと組み合わせる構成を考えることができる。
【0096】
モジュール100を、個々にまたは集合的に、掛け流しモード、循環式水産養殖システム(RAS)モード、または部分的再利用水産養殖システム(PRAS)モードのいずれか1つで動作するように構成することができる。
【0097】
掛け流しモードまたはPRASモード(したがって、水は再循環されることも少なくとも部分的に再循環されることもなく、モジュール(単数または複数)を通って流れる)は、新しく到着した魚を隔離する(モジュールは、隔離タンクの役割を果たす)か、または販売用の魚を「きれいにする」のに有益であり得る。PRASモードで動作するモジュールは、各養殖モジュールが例えば1世代の魚に限定される、いわゆる「オールイン、オールアウト」の養殖戦略を可能とする。その後、ユニットは洗浄/殺菌される。RASモードで動作するモジュールは、新鮮な水の供給が限られる条件、および/または費用効果の高い水温制御が要求される場合に有益である。
【0098】
モジュール100/リザーバ20間の相互接続、ならびに/または水源(単数または複数)および排水システムへの前述のモジュールの接続を変えることによって、個々のモジュールまたはいくつかのモジュールを、これらのモードのいずれか1つで動作し、必要に応じて前述のモードを切り替えるように構成することができる。
【0099】
例として、モジュール100は、独立したPRASユニットとして機能することができる。そのような場合、モジュールは、養殖領域21および水処理領域31を備え得る。任意選択で水処理領域31を含まない、いくつかのそのようなモジュール(例えば4~6つのモジュール)は、水処理ユニット(31)として提供されたモジュールにさらに接続されてRASプラントをもたらし得る。PRASは、掛け流し式システムの約10分の1の水を利用する一方で、少なくとも1つの水処理ユニットを設けたRASプラントは、掛け流し式プラントの動作に典型的に必要とされる水の総量の約1~2%を利用する。
【0100】
本発明はさらに、上記の実施形態に従って実装される水産養殖施設100における水の循環および曝気のための方法に関する。方法は、水生種を養殖するために構成されたリザーバ20に、本質的に水平な相互接続配管11Bを通してリザーバ20の長さに沿って分配されたいくつかの垂直マニホールド11Aに配置された排出口12を介して、曝気水を注入することを含み、それにより、いくつかの隣接する回転液体流パターンが発生し、その結果、各前述のパターンは個々の回転流セル20A、20B、20Cを形成する。方法では、曝気水は、少なくとも1つのエアリフトポンプ13を介してマニホールド11Aに供給される。タンクへの曝気水の注入は、したがって、空気駆動、すなわち前述のエアリフトポンプ(単数または複数)によって媒介される。
【0101】
さらに、本発明は、上記の実施形態に従って実装される水産養殖施設100において水を処理するための方法に関する。方法では、水産養殖施設100は、水生種を養殖するための養殖領域21、および透水性仕切り18によって養殖領域21から分離された水処理領域31を含む、細長いリザーバ20を備える。水処理領域31は、上記のような機械的、(生)化学的、または生物学的処理のいずれか1つのために構成された床材料を含有する。方法では、仕切り18を通って養殖領域21から水処理領域31に到達する液体は、浄化および/または処理を受け、浄化された液体は、養殖領域21に透過して戻り得る。追加または代替として、浄化された液体は、施設から取り出されてよい。方法では、水処理領域31の容積および養殖領域21の容積は、仕切り18をリザーバ20の長さに沿って動かすことによって調節される。
【0102】
いくつかの構成では、方法は、バイオフィルムの増殖を防ぎ、流入水および/または養殖領域内の水の洗浄および殺菌を確実にするために、過酸化水素をリザーバ20に連続的に、半連続的に、または単回投与で供給することをさらに含む。追加または代替として、養殖タンク(20)に過酸化水素を供給することによって、水への追加または緊急の酸素添加を実装することができる。
【0103】
施設100は、水生種の養殖に有利に利用される。施設を、魚類および/または甲殻類(例えば、エビ、カニ、ロブスターなど)の収穫に利用することができる。
【0104】
収穫に適した魚種としては、タイセイヨウサケ(Salmo salar)、ティラピア種、コイ(コイ科)、ナマズなどの淡水種および汽水種;ならびにニジマス(Oncorhynchus mykiss)、ヨーロピアンホワイトフィッシュ(Coregonus lavaretus)、スズキ(Perca spp.)、パイクパーチ(Sander lucioperca)、チョウザメ(Acipenser spp.)、ホッキョクイワナ(Salvelinus alpinus)などの冷水種が挙げられるが、これらに限定されない。再循環水産養殖施設100を、比較的少量の高価な/収穫が難しい魚種の飼育から、大衆市場用および/または自然環境への移植用の大量の魚の収穫まで、様々な魚種の収穫に適合させることができることは、当業者には明らかである。
【0105】
補足または代替の実施形態では、水産養殖施設100を、軟体動物(例えば、カキ、ムール貝)、両生類、または水生爬虫類などの、魚類および甲殻類以外の水生種の養殖に使用することができる。
【0106】
したがって、当業者は、本開示および一般的な知識に基づいて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を、各特定の使用事例に、必要な変更、削除、および追加とともに実装するために、提供された教示を応用することができる。
【0107】
参考文献
1. Wattenら、Hydraulic characteristics of a rectangular mixed-cell rearing unit. Aquacultural Engineering 24 (2000) 59-73.
【国際調査報告】