(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】不可逆的電気穿孔法によるアブレーションのためのユーザインタフェースへの動的空間データのオーバレイ
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20230620BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20230620BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20230620BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B34/20
A61B18/12
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572497
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021032501
(87)【国際公開番号】W WO2021242541
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グトブロト、サラ アール.
(72)【発明者】
【氏名】クープ、ブレンダン イー.
(72)【発明者】
【氏名】デ コック、アンドリュー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュロス、アラン シー.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK17
4C160KK24
4C160KK63
4C160MM33
(57)【要約】
電極を有するカテーテルと、ディスプレイと、コントローラと、を含む電気穿孔法によるアブレーションのためのシステム。コントローラは、電界モデルに基づいて、電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成し、エネルギを送達する前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援するために、ディスプレイ上において電界のグラフィック表示と患者の解剖学的マップとをオーバレイするためのものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気穿孔法によるアブレーションのためのシステムであって、
電極を有するカテーテルと、
ディスプレイと、
コントローラと、を備え、前記コントローラは、
電界モデルに基づいて、前記電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成し、
エネルギを送達する前に電気穿孔法による前記アブレーションの計画を支援するために、前記ディスプレイ上において前記電界の前記グラフィック表示と患者の解剖学的マップとをオーバレイする
ように構成される、システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記カテーテルの特性に基づいて前記電界の前記グラフィカル表示を生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記解剖学的マップ上の前記電界の前記グラフィック表示内に少なくとも1つの電界線を含め、かつ、前記解剖学的マップ上の前記電界の前記グラフィック表示内に少なくとも1つの電界強度閾値線を含めるように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、1センチメートルあたり200~250ボルトの範囲内の可逆的電界強度閾値線、不可逆的電気穿孔法のための1センチメートルあたり400ボルトの臨界電界強度閾値線、及び1センチメートルあたり1000ボルトの極大電界強度閾値線のうちの少なくとも1つを含めるように構成される、請求項1~3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電界の前記グラフィック表示内に電界強度閾値線が周辺組織と交差した箇所のマーキングを含めるように構成される、請求項1~4の何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記電界の前記グラフィック表示内に可逆的電気穿孔法の予想ゾーン及び不可逆的電気穿孔法の予想ゾーンの少なくとも一方を含めるように構成される、請求項1~5の何れか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記電界の前記グラフィック表示内において前記電界が過去に作られた創傷と交差する箇所と前記電界の前記グラフィック表示内において前記電界が予想される創傷とに少なくとも1つのマーキングを含めるように構成される、請求項1~6の何れか1項に記載のシステム。
【請求項8】
電気穿孔法によるアブレーションのためのシステムであって、
電極を有するカテーテルと、
コントローラと、を備え、前記コントローラは、
前記カテーテルの特性に基づいて電界のモデルを生成し、
前記電界の前記モデルを使って前記電界のグラフィック表示を生成し、
患者の解剖学的マップ上に前記電界の前記グラフィック表示を表示して、エネルギを送達する前に電気穿孔法による前記アブレーションの計画を支援する
ように構成される、システム。
【請求項9】
前記コントローラは、周辺組織に関する組織複素インピーダンス情報を受信して、前記周辺組織を特徴付け、前記電界の前記グラフィック表示の生成を支援するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記電界の前記グラフィック表示を、
周辺組織に関する前記カテーテルの位置の変化、
前記カテーテルの変化、
前記カテーテルの前記電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び
前記周辺組織のインピーダンス測定値の変化
の1つ以上に基づいて動的に変更するように構成される、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記周辺組織のインピーダンス測定値と前記カテーテルの変化のうちの少なくとも一方に応答して、ある位置における臨界電界強度を保持するために、パルスパラメータに対する変更案及び前記パルスパラメータの自動動的変更の1つ以上を提供するように構成される、請求項8~10の何れか1項に記載のシステム。
【請求項12】
電気穿孔法によるアブレーションの計画方法であって、
コントローラによって、かつ、電界モデルに基づいて、カテーテルの電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成するステップと、
ディスプレイ上に前記電界の前記グラフィック表示と患者の解剖学的マップとを表示して、エネルギを送達する前に電気穿孔法による前記アブレーションの計画を支援するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
前記解剖学的マップ上の前記電界の前記グラフィック表示内に少なくとも1つの電界線を表示するステップと、前記解剖学的マップ上の前記電界の前記グラフィック表示内に少なくとも1つの電界強度閾値線を表示するステップとを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電界強度閾値線が周辺組織と交差する箇所のマーキングを表示するステップ、可逆的電気穿孔の予想ゾーンを表示するステップ、不可逆的電気穿孔の予想ゾーンを表示するステップ、前記電界が過去に作られた創傷と交差する箇所のマーキングを表示するステップ、前記解剖学的マップ上に予想される創傷を表示するステップのうちの1つ以上を備える、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記コントローラにより、
周辺組織に関する前記カテーテルの位置の変化、
前記カテーテルの変化、
前記カテーテルの前記電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び
前記周辺組織のインピーダンス測定値の変化
のうちの1つ以上に基づいて、前記電界の前記グラフィック表示を動的に変更するステップを備える、請求項12~14の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は患者の体内組織のアブレーションを行うための医療システム及び方法に関する。より詳しくは、本開示は電気穿孔法による組織のアブレーションのための医療システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーション術は、患者の様々な状態を治療するために使用される。アブレーションは、不整脈、良性腫瘍、がん性腫瘍の治療及び手術中の出血管理に使用できる。通常、アブレーションは高周波(RF)アブレーション及び冷凍アブレーションを含む熱アブレーション方式を通じて行われる。RFアブレーションでは、プローブが患者の体内に挿入され、高周波がプローブを通じて周辺組織に送られる。高周波は熱を発生し、それが周辺組織を破壊して、血管を壊死させる。冷凍アブレーションでは、中空の針、すなわちクライオプローブが患者の体内に挿入され、低温の熱伝導性流体がプローブを通じて循環させられて、周辺組織を冷凍壊死させる。RFアブレーションも冷凍アブレーション方式も、細胞死を通じて組織を無差別に壊死させ、それが本来は健康な組織、例えば食道の組織、横隔神経細胞、及び冠動脈の組織に損傷を与え、又は壊死させ得る。
【0003】
他のアブレーション技術は、電気穿孔法を用いる。電気穿孔法又は電気透過処理では、電界を細胞に印加して、細胞膜の浸透性を増大させる。電気穿孔法は、電界の強度に応じて可逆的とすることも、又は不可逆的とすることもできる。電気穿孔法が可逆的である場合、細胞膜の増大した浸透性を利用して、細胞の治癒と回復の前に細胞に化学物質、薬剤、及び/又はデオキシリボ核酸(DNA)を導入しやすくすることができる。電気穿孔法が不可逆的である場合、影響を受ける細胞はアポトーシスを通じて壊死させられる。
【0004】
不可逆的電気穿孔法は非熱アブレーション方式として使用できる。不可逆的電気穿孔法では、高電圧の短パルストレインを使って、アポトーシスを通じて細胞を壊死させるのに十分な強度の電界を発生させる。心臓組織のアブレーションの場合、不可逆的電気穿孔法がRFアブレーション及び冷凍アブレーション等の熱アブレーション方式による無差別な壊死に代わる安全且つ有効な手段となり得る。不可逆的電気穿孔法は、標的とされる組織、例えば心筋組織を壊死させるために使用でき、これは、標的組織は壊死させるが、標的以外の心筋組織、赤血球、血管平滑筋組織、血管内皮組織、及び神経細胞等の他の細胞又は組織に永久的な損傷を与えないような電界の強度及び持続時間を使用することによる。不可逆的電気穿孔アブレーション術の計画は、可逆的電気穿孔法と異なり、組織が不可逆的に電気穿孔されたことを示す可視化やデータ取得を迅速に行えないため、難しい可能性がある。組織がアブレーション完了後、数分、数時間、又は数日で回復する可能性がある場合。
【発明の概要】
【0005】
実施形態に記載されているように、実施態様1は電気穿孔法によるアブレーションのためのシステムである。システムは、電極を有するカテーテルと、ディスプレイと、コントローラと、を含む。コントローラは、電界モデルに基づいて、電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成し、エネルギを送達する前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援するために、ディスプレイ上において電界のグラフィック表示と患者の解剖学的マップとをオーバレイする。
【0006】
実施態様2は実施態様1のシステムであり、コントローラはカテーテルの特性に基づいて電界のグラフィカル表示を生成するように構成される。
実施態様3は実施態様1及び2の何れか1つのシステムであり、コントローラは、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界線を含め、かつ、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界強度閾値線を含めるように構成される。
【0007】
実施態様4は実施態様1~3の何れか1つのシステムであり、コントローラは、1センチメートルあたり200~250ボルトの範囲内の可逆的電界強度閾値線、不可逆的電気穿孔法のための1センチメートルあたり400ボルトの臨界電界強度閾値線、及び1センチメートルあたり1000ボルトの極大電界強度閾値線のうちの少なくとも1つを含めるように構成される。
【0008】
実施態様5は実施態様1~4の何れか1つのシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示内に電界強度閾値線が周辺組織と交差する箇所のマーキングを含めるように構成される。
【0009】
実施態様6は実施態様1~5の何れか1つのシステムであり、コントローラは電界のグラフィック表示内に可逆的電気穿孔法の予想ゾーン及び不可逆的電気穿孔法の予想ゾーンの少なくとも一方を含めるように構成される。
【0010】
実施態様7は実施態様1~6の何れか1つのシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示内において電界が過去に作られた創傷と交差する箇所と電界のグラフィック表示内において電界が予想される創傷とに少なくとも1つのマーキングを含めるように構成される。
【0011】
実施態様8は電気穿孔法によるアブレーションのためのシステムである。システムは電極を有するカテーテルとコントローラとを含む。コントローラは、カテーテルの特性に基づいて電界のモデルを発生させ、電界モデルを使って電界のグラフィック表示を生成し、患者の解剖学的マップ上に電界のグラフィック表示を表示して、エネルギを送達する前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援する。
【0012】
実施態様9は実施態様8のシステムであり、コントローラは、周辺組織に関する組織の複素インピーダンス情報を受信して、周辺組織を特徴付け、電界のグラフィック表示の生成を支援するように構成される。
【0013】
実施態様10は、実施態様8及び9の何れか1つのシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示を、周辺組織に関するカテーテルの位置の変化、カテーテルの変化、カテーテルの電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び周辺組織のインピーダンス測定値の変化の1つ以上に基づいて動的に変更するように構成される。
【0014】
実施態様11は、実施態様8~10の何れか1つのシステムであり、コントローラは、周辺組織のインピーダンス測定値とカテーテルの変化のうちの少なくとも一方に応答して、ある位置における臨界電界強度を保持するために、パルスパラメータに対する変更案及びパルスパラメータの自動動的変更の1つ以上を提供するように構成される。
【0015】
実施態様12は、電気穿孔法によるアブレーションの計画方法である。コントローラにより、電界モデルに基づいて、カテーテルの電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成するステップと、ディスプレイ上に電界のグラフィック表示と患者の解剖学的マップとを表示して、エネルギを送達する前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援するステップと、を含む方法である。
【0016】
実施態様13は実施態様12の方法であり、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界線を表示するステップと、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界強度閾値線を表示するステップとを含む。
【0017】
実施態様14は実施態様12及び13の何れか1つの方法であり、電界強度閾値線が周辺組織と交差する箇所のマーキングを表示するステップ、可逆的電気穿孔の予想ゾーンを表示するステップ、不可逆的電気穿孔の予想ゾーンを表示するステップ、電界が過去に作られた創傷と交差する箇所のマーキングを表示するステップ、解剖学的マップ上に予想される創傷を表示するステップのうちの1つ以上を含む。
【0018】
実施態様15は実施態様12~14の何れか1つの方法であり、コントローラにより、周辺組織に関するカテーテルの位置の変化、カテーテルの変化、カテーテルの電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び周辺組織のインピーダンス測定値の変化のうちの1つ以上に基づいて、電界のグラフィック表示を動的に変更するステップを含む。
【0019】
実施態様16は、電気穿孔法によるアブレーションのためのシステムである。システムは、電極を有するカテーテルと、ディスプレイと、コントローラと、を含む。コントローラは、電界モデルに基づいて、電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成し、ディスプレイ上で、電界のグラフィック表示と患者の解剖学的マップをオーバレイして、エネルギを送達する前に電気穿孔によるアブレーションの計画を支援するように成される。
【0020】
実施態様17は実施態様16のシステムであり、コントローラは、カテーテルの特性及び周辺組織に関するカテーテルの位置に基づいて電界のグラフィック表示を生成するように構成される。
【0021】
実施態様18は実施態様16のシステムであり、コントローラは、カテーテルの電極に提供されることになる電気パルスの電気パルスパラメータに基づいて電界強度を表示するように構成される。
【0022】
実施態様19は実施態様16のシステムであり、コントローラは、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界線を含め、かつ、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界強度閾値線を含めるように構成される。
【0023】
実施態様20は実施態様16のシステムであり、コントローラは、1センチメートルあたり200~250ボルトの範囲内の可逆的電界強度閾値線、不可逆的電気穿孔法のための1センチメートルあたり400ボルトの臨界電界強度閾値線、及び1センチメートルあたり1000ボルトの極大電界強度閾値線のうちの少なくとも1つを含めるように構成される。
【0024】
実施態様21は実施態様16のシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示内に電界強度閾値線が周辺組織と交差した箇所のマーキングを含めるように構成される。
【0025】
実施態様22は実施態様16のシステムであり、コントローラは電界のグラフィック表示内に可逆的電気穿孔法の予想ゾーン及び不可逆的電気穿孔法の予想ゾーンの少なくとも一方を含めるように構成される。
【0026】
実施態様23は実施態様16のシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示内で、電界が過去に作られた創傷と交差する箇所のマーキングを含めるように構成される。
【0027】
実施態様24は実施態様16のシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示内に予想される創傷を含めるように構成される。
実施態様25は電気穿孔法によるアブレーションのためのシステムである。システムは、電極を有するカテーテルとコントローラを含む。コントローラは、カテーテルの特性に基づいて電界のモデルを発生させ、電界のモデルを使って電界のグラフィック表示を生成し、患者の解剖学的マップ上に電界のグラフィック表示を表示して、エネルギを送達する前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援するように構成される。
【0028】
実施態様26は実施態様25のシステムであり、コントローラは、周辺組織に関する組織の複素インピーダンス情報を受信して、周辺組織を特徴付け、電界のグラフィック表示の生成を支援するように構成される。
【0029】
実施態様27は実施態様25のシステムであり、コントローラは、電界のグラフィック表示を、周辺組織に関するカテーテルの位置の変化、カテーテルの変化、カテーテルの電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び周辺組織のインピーダンス測定値の変化の1つ以上に基づいて動的に変更するように構成される。
【0030】
実施態様28は実施態様25のシステムであり、コントローラは、周辺組織のインピーダンス測定値とカテーテルの変化のうちの少なくとも一方に応答して、ある位置における臨界電界強度を保持するために、パルスパラメータに対する変更案及びパルスパラメータの自動動的変更の1つ以上を提供するように構成される。
【0031】
実施態様29は実施態様25のシステムであり、カテーテル上の検出電極を含み、コントローラは、検出電極からのリアルタイムの情報と電界のグラフィック表示を患者の解剖学的マップ上に表示して、エネルギの送達前にユーザがカテーテルの展開を最適化することを支援するするように構成される。
【0032】
実施態様30は電気穿孔法によるアブレーションの計画方法である。方法は、コントローラにより、電界のモデルに基づいて、カテーテル上の電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成するステップと、ディスプレイ上に、電界のグラフィック表示と患者の解剖学的マップとを表示して、エネルギの送達の前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援するステップを含む。
【0033】
実施態様31は実施態様30の方法であり、電界のグラフィック表示を生成するステップは、カテーテルの特性及び周辺組織に関する患者の体内のカテーテルの位置に基づいて電界のグラフィック表示を生成するステップを含む。
【0034】
実施態様32は実施態様30の方法であり、カテーテルの電極に提供されることになる電気パルスの電気パルスパラメータに基づいて電界の強度を表示するステップを含む。
実施態様33は実施態様30の方法であり、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界線を表示するステップと、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に少なくとも1つの電界強度閾値線を表示するステップとを含む。
【0035】
実施態様34は実施態様30の方法であり、電界強度閾値線が周辺組織と交差する箇所のマーキングを表示するステップ、可逆的電気穿孔の予想ゾーンを表示するステップ、不可逆的電気穿孔の予想ゾーンを表示するステップ、電界が過去に作られた創傷と交差する箇所のマーキングを表示するステップ、解剖学的マップ上に予想される創傷を表示するステップのうちの1つ以上を含む。
【0036】
実施態様35は実施態様30の方法であり、コントローラによって、周辺組織に関するカテーテルの位置の変化、カテーテルの変化、カテーテルの電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び周辺組織のインピーダンス測定値の変化の1つ以上に基づいて電界のグラフィック表示を動的に変更するステップを含む。
【0037】
幾つもの実施形態が開示されているが、当業者にとっては、本開示の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から本開示のさらに別の実施形態が明らかとなるであろう。従って、図面及び詳細な説明は例示的な性格のものであり、限定的ではないとみなされるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本開示の主題の実施形態による、電気生理学的システムを用いて、患者を治療するため、及び患者の心臓を治療するための例示的な臨床セッティングを示す概略図。
【
図2A】本開示の主題の実施形態によるカテーテルを示す概略図。
【
図2B】本開示の主題の実施形態によるカテーテルを示す概略図。
【
図3】本開示の主題の実施形態による、患者の心臓内の心臓組織に隣接する電気穿孔カテーテルを示す概略図。
【
図4A】本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示のオーバレイにおける電界線及び電界強度閾値線を示す概略図。
【
図4B】本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示のオーバレイにおけるある電界強度、例えば400V/cmでの電界と心臓組織との交差を示す概略図。
【
図4C】本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示のオーバレイにおける可逆的電気穿孔の予想ゾーンと不可逆的電気穿孔の予想ゾーンを示す概略図。
【
図4D】本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示のオーバレイにおける、電界線と交差する心臓組織内に過去に作られた創傷を示す概略図。
【
図5】本開示の主題の実施形態による、不可逆的電気穿孔法によるアブレーションの計画方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示は様々な改良及び代替的形態をとり得るが、具体的な実施形態が例として図面に示され、以下に詳細に説明されている。しかしながら、意図するのは、説明されている特定の実施形態に本開示を限定することではない。逆に、本開示は添付の特許請求の範囲により定義される本開示の範囲に含まれるすべての改良、均等物、及び代替案をカバーするものとする。
【0040】
図1は、本開示の主題の実施形態による、電気生理学的システム50を用いて、患者20を治療するため、及び患者20の心臓30を治療するための例示的な臨床セッティング10を示す概略図である。電気生理学的システム50は、電気穿孔カテーテルシステム60と、電気解剖学的マッピング(EAM)システム70を含み、これには局所化電界発生器80、マッピング及びナビゲーションコントローラ90、並びにディスプレイ92が含まれる。また、臨床セッティング10はその他の機器、例えばイメージング機器94(C-アームにより表されている)及び、オペレータが電気生理学的システム50の様々な局面を制御できるように構成された各種のコントローラ要素、例えばフットコントローラ96も含む。当業者であればわかるように、臨床セッティング10は、
図1に示されたもの以外のコンポーネントやコンポーネントの配置も含み得る。
【0041】
電気穿孔カテーテルシステム60は、電気穿孔カテーテル105、イントロデューサシース110、及び電気穿孔コンソール130を含む。それに加えて、電気穿孔カテーテルシステム60は、電気穿孔カテーテルシステム60のコンポーネントを相互に、及びEAMシステム70のコンポーネントに機能的に接続するように動作する各種の接続要素、例えばケーブル、アンビリカルケーブル、その他を含む。接続要素のこの配置は本開示にとってさほど重要ではなく、当業者であれば、本明細書に記載の各種のコンポーネントを様々な方法で相互接続できることがわかるであろう。
【0042】
実施形態において、電気穿孔カテーテルシステム60は、電界エネルギを患者の心臓30内の標的組織に送達して、組織アポトーシスを起こすように構成され、それによって組織は電気信号を伝導することができなくなる。また、後でより詳しく説明するように、電気穿孔カテーテルシステム60は、電界のモデルに基づいて、電気穿孔カテーテル105を使って生成できる電界のグラフィック表示を生成し、ディスプレイ92上で患者の心臓の解剖学的マップの上に電界のグラフィック表示をオーバレイし、エネルギを送達する前にユーザが電気穿孔カテーテル105を使って不可逆的電気穿孔法によるアブレーションを計画することを支援するように構成される。実施形態において、電気穿孔カテーテルシステム60は、電気穿孔カテーテル105の特性及び患者20の体内、例えば患者20の心臓30内での電気穿孔カテーテル105の位置に基づいて電界のグラフィック表示を生成するように構成される。実施形態において、電気穿孔カテーテルシステム60は、電気穿孔カテーテル105の特性及び患者20の体内、例えば患者20の心臓30内での電気穿孔カテーテル105の位置、並びにカテーテル105の周辺の組織の特性、例えば組織のインピーダンス測定値に基づいて電界のグラフィック表示を生成するように構成される。
【0043】
電気穿孔コンソール130は、電気穿孔カテーテルシステム60の機能的局面を制御するように構成される。実施形態において、電気穿孔コンソール130は、以下のうちの1つ以上を提供するように構成される。すなわち、電気穿孔カテーテル105により発生させることのできる電界をモデリングすることであり、これには多くの場合、電極を含む電気穿孔カテーテル105の物理的特性及び電気穿孔カテーテル105上の電極の空間的関係を考慮することが含まれ、また、電界のグラフィック表示を生成することであり、これには多くの場合、患者20の体内での電気穿孔カテーテル105の位置及び周辺組織の特性を考慮することが含まれ、また、ディスプレイ92上で、生成されたグラフィック表示を解剖学的マップにオーバレイすること、である。幾つかの実施形態において、電気穿孔制御コンソール130は解剖学的マップを生成するように構成される。幾つかの実施形態において、EAMシステム70は、ディスプレイ92上で表示するための解剖学的マップを生成するように構成される。
【0044】
実施形態において、電気穿孔コンソール130は、メモリから読み出されたコードを実行して電気穿孔カテーテルシステム60の機能的局面を制御及び/又は実行する1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、及び/又はコンピュータを含む。実施形態において、メモリは1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、及び/若しくはコンピュータの一部並びに/又はworld wide web等のネットワークを通じてアクセス可能なメモリ容量の一部とすることができる。
【0045】
実施形態において、イントロデューサシース110は送達コンジットを提供するように動作でき、それを通じて電気穿孔カテーテル105を患者の心臓30内の特定の標的部位に展開することができる。
【0046】
EAMシステム70は、電気穿孔カテーテルシステム60の各種の機能的コンポーネントの位置を追跡し、関心対象の心室腔の高忠実度の3次元解剖学的及び電気解剖学的マップを生成するように動作可能である。実施形態において、EAMシステム70は、ボストン・サイエンティフィックコーポレーション(Boston Scientific Corporation)が販売するリズミア(RHYTHMIA)(商標)HDxマッピングシステムとすることができる。また、実施形態において、EAMシステム70のマッピング及びナビゲーションコントローラ90は、メモリから読み出したコードを実行して、EAMシステム70の機能的局面を制御及び/又は実行する1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、及び/又はコンピュータを含み、この場合、実施形態において、メモリは1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、及び/若しくはコンピュータの一部並びに/又はworld wide web等のネットワークを通じてアクセス可能なメモリ容量の一部とすることができる。
【0047】
当業者であればわかるように、
図1に示される電気生理学的システム50は、システム50の各種のコンポーネントの概観を提供するためのものであり、本開示が何れかのコンポーネントセット又はコンポーネントの配置に限定されることを示唆することは一切意図されていない。例えば、当業者であれば、他のハードウェアコンポーネント、例えばブレイクアウトボックス、ワークステーション、その他が電気生理学的システム50に含められる可能性があることが容易にわかるであろう。
【0048】
EAMシステム70は、電界発生器80を介して局所化電界を発生させて、心臓30の周囲の局所化ボリュームを画定し、追跡される機器、例えば電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の位置センサ若しくは検出素子は出力を生成し、それがマッピング及びナビゲーションコントローラ90によって処理されて、センサの、従って対応する機器の局所化ボリューム内の位置を追跡することが可能となる。図の実施形態において、機器の追跡は磁気追跡技術を用いて実現され、その場合、電界発生器80は、局所化ボリュームを画定する磁界を発生させる磁界発生器であり、追跡される機器の位置センサは磁気センサである。
【0049】
他の実施形態において、インピーダンス追跡方法を用いて各種の機器の位置を追跡し得る。このような実施形態において、局所化電界とは例えば、外部電界発生器装置、例えば表面電極によって、体内又は心臓内機器、例えば心臓内カテーテルによって、又はそれらの両方によって生成される電界である。これらの実施形態において、位置検出素子は、追跡される機器上の電極を構成でき、これは出力を生成し、それをマッピング及びナビゲーションコントローラ90が受信して処理し、局所化ボリューム内の各種の位置検出電極の位置を追跡する。
【0050】
実施形態において、EAMシステム70は、磁気及びインピーダンス追跡能力の両方のために装備される。このような実施形態では、インピーダンス追跡精度は、幾つかの例において、まず磁気位置センサを備えるプローブを使って関心対象の心室腔内の電界発生器により誘導される電界のマップを作成することによって向上させることができ、これは前述のRHYTHMIA HDx(商標)マッピングシステムを使って実現できる。1つの例示的なプローブは、ボストン・サイエンティフィックコーポレーション(Boston Scientific Corporation)が販売するINTELLAMAP ORION(商標)マッピングカテーテルである。
【0051】
採用される追跡方法に関係なく、EAMシステム70は追跡される各種の機器の位置情報を、例えば電気穿孔カテーテル105又は検出電極を備えるその他のカテーテル若しくはプローブにより取得される心臓電気活動と共に利用して、心室腔の詳細な3次元解剖学的幾何マップ又は表示のほか、関心対象の心臓電気活動が解剖学的幾何マップ上に重ねられた電気解剖学的マップを生成し、ディスプレイ92に表示する。さらに、EAMシステム70は、解剖学的幾何マップ及び/又は電気解剖学的マップ内で追跡される各種の機器のグラフィック表示を生成できる。
【0052】
本開示の実施形態では、電気穿孔カテーテルシステム60をEAMシステム70と統合して、電気穿孔カテーテル105により発生させることのできる電界のグラフィック表示を患者の解剖学的マップの上で、幾つかの実施形態においては患者の心臓の電気解剖学的マップの上で可視化できる。本開示の統合システムはそれゆえ、臨床ワークフローの効率を向上させる能力を有し、これには不可逆的電気穿孔法による患者の心臓の一部のアブレーションの計画の改良が含まれる。本開示の実施形態は、電気穿孔カテーテル105により発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成すること、解剖学的マップを生成すること、電気解剖学的マップを生成すること、及び電気穿孔カテーテル105により発生させることのできる電界の位置及び電界強度に関する情報を表示することを含む。
【0053】
図2A及び
図2Bは、本開示の主題の実施形態による、不可逆的電気穿孔法によるアブレーションを含む電気穿孔法に使用できるカテーテル200及び250を示す概略図である。カテーテル200及び250は、後述のように、相互に離間され、電気を伝導するように構成される電極を含む。カテーテルの特性は、カテーテルにより発生させることのできる電界をモデル化するために使用される。実施形態において、電界をモデル化するために使用される特性には、カテーテルの種類、例えば展開された後に一定の形状を有するバスケットカテーテル及び徐々に開閉できる可変的形状を有するスプラインカテーテル、カテーテルのフォームファクタ、例えばバルーンカテーテル、バスケットカテーテル、及びスプラインカテーテル、電極の数、カテーテル上の電極間間隔、電極の、特に同じカテーテル上の他の電極に関する空間的関係及び向き、電極材料の種類、並びに電極形状を含めることができる。実施形態において、カテーテルの種類及び/又はカテーテルのフォームファクタは、線状アブレーションカテーテル及び点状アブレーションカテーテル等のカテーテルを含む。この場合、カテーテルの種類及び/又はカテーテルのフォームファクタはここで言及されたものに限定されない。
【0054】
図2Aは、本開示の主題の実施形態によるカテーテル200を示す概略図である。カテーテル200は、カテーテルシャフト202と、カテーテルバスケット204とを含み、カテーテルバスケット204は、カテーテルシャフト202の先端部206に接続される。カテーテルバスケット204は、カテーテルバスケット204の円周に沿って配置された第一の電極群208と、カテーテルバスケット204の先端部212の付近に配置された第二の電極群210を含む。第一の電極群208の各々と第二の電極群210の各々は、電気を伝導し、電気穿孔コンソール130に動作的に接続されるように構成される。実施形態において、第一の電極群208及び第二の電極群210内の電極のうちの1つ以上は金属を含む。
【0055】
第一の電極群208内の電極は第二の電極群210内の電極から離間される。第一の電極群208は電極208a~208fを含み、第二の電極群210は電極210a~210fを含む。また、第一の電極群208内の電極、例えば電極208a~208fは相互に離間され、第二の電極群210内の電極、例えば電極210a~210fは相互に離間される。
【0056】
同じカテーテル200上の他の電極に関する第一の電極群208の電極の空間的関係と向き及び第二の電極群210内の電極の空間的関係と向きは既知であるか、又は判定できる。実施形態において、カテーテルがいったん展開されると、同じカテーテル200上の他の電極に関する第一の電極群208内の電極の空間的関係と向き及び第二の電極群210内の電極の空間的関係と向きは一定である。
【0057】
電界に関して、実施形態においては、第一の電極群208内の電極の各々と第二の電極群210内の電極の各々は、電界が第一及び第二の電極群208及び210内の何れの2つ以上の電極間でも設定できるようにアノード又はカソードとなるように選択できる。また、実施形態において、第一の電極群208の電極の各々と第二の電極群210内の電極の各々は、電極がアノード及びカソードとして交互に構成されるように二相極として選択できる。また、実施形態において、第一の電極群208内の電極群と第二の電極群210内の電極群は、電界が、第一及び第二の電極群208及び210内の電極の何れの2つ以上の電極群間でも設定できるように、アノード若しくはカソード又は二相極となるように選択できる。それに加えて、実施形態において、第一の電極群208及び第二の電極群210内の電極は、二相パルストレインを含むパルストレイン中、選択された電極がアノード及びカソードとして構成されるように交互に動作し、電極が、一方が常にアノードとして構成され、他方が常にカソードとして構成される単相送達に降格されないように、二相極電極(biphasic pole electrodes)となるように選択できる。
【0058】
さらに、本明細書に記載されているように、電極はアノード及びカソードの一方となるように選択されるが、言うまでもなく、本開示全体を通じて、電極は二相極となるように選択でき、それによってこれらはアノード及びカソードとして構成されるように切り替わり、又は交互に動作すると理解されたい。
【0059】
図2Aに示されるように、第一の電極群208内の電極のうちの1つ以上はカソードとなるように選択され、第二の電極群210内の電極のうちの1つ以上はアノードとなるように構成される。また、実施形態において、第一の電極群208内の電極のうちの1つ以上はカソードとして選択でき、第一の電極群208内の電極のうち他の1つ以上はアノードとして選択できる。それに加えて、実施形態において、第二の電極群210の電極のうちの1つ以上はカソードとして選択でき、第二の電極群210の電極のうちの他の1つ以上はアノードとして選択できる。カテーテル200の特性を利用して、電気穿孔コンソール130はカテーテル200により発生させることのできる各種の電界のモデルを判定できる。
【0060】
図2Bは、本開示の主題の実施形態によるカテーテル250を示す概略図である。カテーテル250はカテーテルシャフト252と、カテーテルシャフト252にカテーテルシャフト252の先端部256に接続されるカテーテルスプライン254を含む。カテーテルスプライン254はカテーテルスプライン254の最大円周の近位側に配置された第一の電極群258とカテーテルスプライン254の最大円周の遠位側に配置された第二の電極群260を含む。第一の電極群258内の電極の各々と第二の電極群260内の電極の各々は、電気を伝導し、電気穿孔コンソール130に動作的に接続されるように構成される。実施形態において、第一の電極群258及び第二の電極群260内の電極のうちの1つ以上は金属を含む。
【0061】
第一の電極群258内の電極は第二の電極群260内の電極から離間される。第一の電極群258は電極258a~258fを含み、第二の電極群260は電極260a~260fを含む。また、第一の電極群258内の電極、例えば電極258a~258fは相互に離間され、第二の電極群260内の電極、例えば電極260a~260fは相互に離間される。
【0062】
同じカテーテル250上の他の電極に関する第一の電極群258内の電極の空間的関係と向き及び第二の電極群260内の電極の空間的関係と向きは既知であるか、又は判定できる。実施形態において、同じカテーテル250上の他の電極に関する第一の電極群258内の電極の空間的関係と向き及び第二の電極群260内の電極の空間的関係と向きは可変的であり、この場合、カテーテル250の先端部262は伸縮可能で、それによって電極258及び260の空間的関係と向きが変化する。幾つかの実施形態において、同じカテーテル250上の第一の電極群258内の電極の空間的関係と向き及び第二の電極群260内の電極の空間的関係と向きは、カテーテル250がいったん展開されると一定である。
【0063】
電界に関して、実施形態において、第一の電極群258内の電極の各々と第二の電極群260内の電極の各々は、アノード又はカソードとして選択でき、それによって電界は第一及び第二の電極群258及び260内の何れの2つ以上の電極間でも設定できる。また、実施形態において、第一の電極群258内の電極群と第二の電極群260内の電極群はアノード又はカソードとして選択でき、それによって電界は第一及び第二の電極群258及び260内の電極の何れの2つ以上の電極群間でも設定できる。
【0064】
図2Bに示されるように、第一の電極群258内の電極のうちの1つ以上はカソードとなるように選択され、第二の電極群260内の電極のうちの1つ以上はアノードとなるように選択される。また、実施形態において、第一の電極群258内の電極のうちの1つ以上はカソードとなるように選択でき、第一の電極群258内の電極のうちの他の1つ以上はアノードとして選択できる。それに加えて、実施形態において、第二の電極群260内の電極のうちの1つ以上はカソードとして選択でき、第二の電極群260内の電極のうち他の1つ以上はアノードとして選択できる。カテーテル250及び周辺組織の特性を利用して、電気穿孔コンソール130は、カテーテル250により発生させることのできる各種の電界のモデルを判定できる。
【0065】
図3は、本開示の主題の実施形態による、患者の心臓内の心臓組織302に隣接する電気穿孔カテーテル300を示す概略図である。心臓組織302は心内膜組織304及び心筋組織306を含み、心内膜組織304及び心筋組織306の少なくとも一部を、例えば不可逆的電気穿孔法によりアブレーションする必要があり得る。実施形態において、心臓組織302は患者20の心臓30の一部である。
【0066】
電気穿孔カテーテル300は、心臓組織302の不可逆的電気穿孔を行うのに適している。電気穿孔カテーテル300は、カテーテルシャフト308と、カテーテルシャフト308の先端部312に接続されるバスケット又はスプライン310を含む。カテーテルバスケット310はカテーテルバスケット310の円周に沿って配置された第一の電極群314とカテーテルバスケット310の先端部318の付近に配置された第二の電極群316を含む。第一の電極群314内の電極の各々及び第二の電極群316内の電極の各々は、電気を伝導し、電気穿孔コンソール130に動作的に接続されるように構成される。実施形態において、第一の電極群314及び第二の電極群316内の電極のうち1つ以上は金属を含む。実施形態において、電気穿孔カテーテル300と電極314及び316は、本明細書中で前述したカテーテル200と電極208及び210と同様であり、実施形態において、電気穿孔カテーテル300と電極314及び316は本明細書中で前述したカテーテル250と電極258及び260と同様である。
【0067】
電気穿孔カテーテル300と電極314及び316は電気穿孔コンソール130に動作的に接続されているか、又は接続することができ、コンソール130は、電極314及び316に電気パルスを提供して、不可逆的電気穿孔法により心臓組織302のアブレーションを行うことのできる電界を発生させるように構成される。カテーテル300により心臓組織302に提供される電界の付与条件は、電界強度と心臓組織302に印加される時間の長さを含め、心臓組織302のアブレーションが行われるか否かを決定する。
【0068】
例えば、1センチメートルあたり約400ボルト(V/cm)の電界強度は、不可逆的電気穿孔法による心臓内の、心筋組織306を含む心臓組織302のアブレーションに十分な大きさと考えられている。赤血球、血管平滑筋、血管内皮組織、及び神経組織等の組織の不可逆的電気穿孔法によるアブレーション又は壊死には、1600V/cm又はそれより大きい電界強度が必要である。また、心臓内の心臓組織302の可逆的電気穿孔は、200~250V/cmの電界強度で実現できる。
【0069】
コンソール130は、アブレーション又は可逆的電気穿孔のために標的組織302に電界を付与するように構成される。コンソール130は、カテーテル300上の電極314及び316に異なる長さ及び大きさの電気パルスを提供する。電気パルスはパルスの連続ストリームで、又は複数の別々のパルストレインで提供できる。関心対象のパルスパラメータには、パルスの数、パルスのデューティサイクル、パルストレインの間隔、ピーク電圧を含むパルスの電圧又は大きさ、及び電圧の持続時間が含まれる。標的組織302に対し、コンソール130は、電極314及び316の2つ以上の電極を選択し、選択された電極にパルスを提供して選択された電極間に電界を発生させ、これは
図3において矢印で示されている。
【0070】
不可逆的電気穿孔法によるアブレーションを計画するために、心臓内の電気穿孔カテーテル300の位置は、心臓組織302に関する電極314及び316の位置を含め、刺激のための電極314及び316の中の電極を選択する前に既知であるか、又は判定される必要がある。カテーテル300上の、標的表面組織、例えば心内膜組織304及び、標的のより深層組織、例えば心筋組織306のアブレーションを含む電気穿孔法による心臓組織302のアブレーションに最も適した電極を電界提供のために選択できる。電気パルスは、選択された電極間に電界を発生させて、不可逆的電気穿孔法により組織302のアブレーションを行うように判定される。電界の印加条件パラメータには、電界強度と電界が組織302に印加される時間の長さが含まれる。
【0071】
電気穿孔法によるアブレーションのための計画を支援し、計画手順を改善するために、コンソール130は、カテーテル300が患者の体内に挿入された後に心臓組織302に関する患者の体内の電極314及び316の位置を判定し、カテーテル300上の電極314及び316の異なる組合せにより発生させることのできる電界をモデル化し、患者の体内のカテーテル300の付近の、又はそれを取り囲む心臓組織302の特性を判定し、心臓組織302の異なる部分における電界の強度を判定することを含め、電界により影響を受けるであろう、又は受けたであろう心臓組織302の表面積及び深さを判定し、関心対象の電界のグラフィック表示を生成し、電界のグラフィック表示を心臓の解剖学的マップの上にオーバレイするように構成される。実施形態において、表示された電界は、アブレーションに使用するためにどの電極及びベクトルが選択されたかに基づいて、動的に更新できる。また、実施形態において、表示された電界は、選択可能なパラメータ、例えば電圧振幅の変化に基づいて動的に更新できる。
【0072】
実施形態において、コンソール130は、EAMシステム70から情報を受け取り、心臓の解剖学的マップを表示し、心臓組織302に関する患者の体内の電極314及び316の位置を判定する。実施形態において、EAMシステム70は心臓の解剖学的マップを生成し、カテーテル300に関する位置情報を利用して、心臓組織302に関する電極314及び316の位置を含む心臓の心室腔及びカテーテル300の詳細な3次元解剖学的幾何マップ又は表示を生成し、ディスプレイ92に表示する。幾つかの実施形態において、EAMシステム70は心臓の解剖学的マップを生成し、カテーテル300の位置情報を、例えば電気穿孔カテーテル105又は別のマッピングカテーテル(図示せず)により取得された心臓電気活動と共に利用して、心室腔の詳細な3次元解剖学的幾何マップのほか、関心対象の心臓電気活動が解剖学的幾何マップの上に重ねられる電気解剖学的マップを生成し、ディスプレイ92に表示する。
【0073】
実施形態において、コンソール130は、カテーテル300上の電極314及び316の異なる組合せにより発生させることのできる電界を、カテーテル300の特性に基づいてモデル化する。これらの特性には、カテーテルの種類、例えば展開された後に一定の形状を有するバスケットカテーテル及び、スプラインの伸縮に応じて可変的な形状を有するスプラインカテーテル、カテーテルのフォームファクタ、例えばバルーンカテーテル、バスケットカテーテル、及びスプラインカテーテル、電極の数及びカテーテル上の電極の電極間間隔、カテーテルの他の電極に関するカテーテル上の電極の空間的関係と向き、電極材料の種類、並びに電極の形状を含めることができる。
【0074】
実施形態において、スプラインカテーテル上の電極、例えばスプラインカテーテル250上の電極258及び260により発生させることのできる電界は、カテーテル250の伸縮に応じて動的に変化する。それゆえ、実施形態において、コンソール130は、カテーテル250の伸縮に関するスプラインカテーテル250の電界と動的に変化する電極258及び260の位置をモデル化する。実施形態において、電極314及び316の異なる組合せからの電界を判定することは、リアルタイムベースで実現でき、カテーテル300の位置と電極314及び316の位置はEAMシステム70等のシステムによりモニタされる。
【0075】
実施形態において、コンソール130は、カテーテル300を取り囲む心臓組織302の特性を、カテーテル300上の電極314及び316に、及び/又はカテーテル300若しくはその他のカテーテル上の他の電極を通じて電気信号を提供し、周辺心臓組織302のコンダクタンス/インピーダンス及び/又はその他の特性を測定することによって判定する。実施形態において、コンソール130は、カテーテル300の付近の、又はそれを取り囲む心臓組織302の特性に関する情報をEAMシステム70から、又はその他の情報源から受け取ることができる。実施形態において、コンソール130は、カテーテル300の付近の、又はそれを取り囲む心臓組織302の特性に関する情報を、その他の情報源、例えば心臓コンピュータトモグラフィ(CT)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、及び/又は超音波スキャンから受け取ることができる。これは、コンソール130に、組織の厚さ及び、組織の厚さのどれだけが関心対象の電界により影響を受けるかを示す情報を提供する。実施形態において、コンソール130は心臓CTスキャン、MRI、及び/又は超音波からの情報をEAMデータに追加して利用し、表示を作ることができる。
【0076】
コンソール130は、電極314及び316の異なる組合せにより発生させることのできる異なる電界の関心対象の電界により影響を受けるであろう、又は受けたであろう心臓組織302の表面積と深さを判定する。これには、異なるパルスを使って心臓組織302の異なる部分の電界の強度を判定することが含まれる。影響を受ける心臓組織302の表面積と深さを判定する際、コンソール130は、異なる長さ及び大きさの電気パルスを考慮に入れることができ、パルスはパルスの連続ストリームでも、又は複数の別々のパルストレインとすることも、又はそれ以外の構成とすることもできる。関心対象のパルスパラメータには、パルスの数、パルスのデューティサイクル、パルストレイン間の間隔、ピーク電圧を含むパルスの電圧又は大きさ、及び電圧の持続時間が含まれる。
【0077】
この情報から、コンソール130は、関心対象の電界のグラフィック表示を生成し、電界のグラフィック表示を心臓の解剖学的マップの上にオーバレイし、それがディスプレイ92等のディスプレイ上に表示される。表示されることになる関心対象の電界は、コンソール130により、アブレーションが行われる心臓組織302のパラメータに基づいて自動的に選択でき、及び/又はユーザにより、アブレーションが行われる心臓組織302の量に基づいて手動で選択できる。実施形態において、グラフィック表示及び解剖学的マップは3次元表現である。実施形態において、コンソール130及び/又はEAMシステム70は、解剖学的マップ上に表示される心電図情報を更新して、ユーザ及び/又はコンソール130が電気穿孔法で使用すべき電界を、電界強度を含めて選択することをガイドすることができる。
【0078】
実施形態において、コンソール130は、電界が心臓組織302と交差する箇所を解剖学的マップ上にグラフィクスにより示すように構成される。実施形態において、コンソール130は解剖学的マップに電界強度情報でタグ付けするように構成される。実施形態において、コンソール130は電界のグラフィック描写と解剖学的マップに、電圧閾値、例えば可逆的電気穿孔法の場合は200~250V/cm、不可逆的電気穿孔法の場合は400V/cm、極大又は最大閾値の場合は1000V/cmとマークするように構成される。
【0079】
図4A~
図4Dは、本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイに表示できるグラフィック表示を示す概略図である。実施形態において、コンソール130は、ディスプレイ92上で解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイに、これら及びその他のグラフィック表示を表示するように構成される。幾つかの実施形態において、コンソール130は、解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイに、厚さを持たない3次元表面のみを表示するように構成される。
【0080】
図4A~
図4Dの各々は、患者の心臓の中の心臓組織302に隣接する電気穿孔カテーテル300を示しており、心臓組織302は心内膜組織304と心筋組織306を含む。電気穿孔カテーテル300は、カテーテルシャフト308と、カテーテルシャフト308に接続されたバスケット310を含む。また、前述のように、カテーテル310はカテーテルバスケット310の円周に沿って配置された第一の電極群314とカテーテルバスケット310の先端部318の付近に配置された第二の電極群316を含む。
【0081】
図4Aは、本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイにおける電界線400及び電界強度閾値線402及び404を示す概略図である。ディスプレイ92上に表示される電界線400は、第一の電極群314と第二の電極群316との間に延びる。電界線400は電極314及び316に近いほどより密度が高く、すなわち相互に近く、電界がより強いことを示し、電界線400が電極314及び316から遠いほどより間隔が広く、電界がより弱いことを示す。実施形態において、電界線400の分解能はユーザにより選択可能とすることができる。また、実施形態において、電界は異なる色及び最小/最大電界強度値を使って表示できる。
【0082】
電界強度閾値線402及び404は、電極314及び316からの様々な距離における電界強度の指標をユーザに提供する。この情報を使って、ユーザは不可逆的電気穿孔法によるアブレーションのための心臓組織302の標的を定めることができ、及び/又は、実施形態において、ユーザは可逆的電気穿孔術のための心臓組織302の標的を定めることができる。図のように、実施形態において、電界強度閾値線402及び404は太線又はより幅広の線とすることができる。実施形態において、電界強度閾値線402及び404は、予想される電界強度の不確実性に関する太線又はより幅広の線とすることができる。実施形態において、電界強度閾値線402及び404は、電圧閾値、例えば可逆的電気穿孔法の場合は200~250V/cm、不可逆的電気穿孔法の場合は400V/cm、極大又は最大閾値の場合は1000V/cmを示すために使用できる。
【0083】
実施形態において、電界強度閾値線402は電界強度400V/cmを示しており、これは不可逆的電気穿孔法による、心筋組織306を含む心臓組織302のアブレーションのために十分に高いと考えられる。心臓の解剖学的マップ上の電界強度閾値線402と電極314及び316により近い電界線400のより高い密度を見ることにより、ユーザは、電界閾値線402と電極314及び316との間の心臓組織302が不可逆的電気穿孔法によりアブレーションされる、又はそれが可能であると判断できる。また、実施形態において、電界強度閾値線404は電界強度200V/cmを示しており、これはユーザに心臓組織302の可逆的電気穿孔法のための限界の指標を提供する。
【0084】
幾つかの実施形態において、電界強度1600V/cm以上で赤血球、血管平滑筋、心内膜組織、及び神経組織等の組織が不可逆的電気穿孔法によりアブレーションされ、又は壊死するため、最大又は極大電界強度閾値線は、ユーザに対して電界強度が過剰になるのを警告するためにディスプレイ92上に提供される。
【0085】
図4Bは、本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイの中にある電界強度、例えば400V/cmの電界と心臓組織302との交差部分410を示す概略図である。解剖学的マップ上の電界と心臓組織302との交差部分410は、心臓組織302内に作られる、又は作られる可能性のある創傷の大きさの指標を提供する。また、実施形態において、グラフィック表示内の太線412は、電界により影響を受ける心内膜組織304の表面積をマーク又は指示する。
【0086】
実施形態において、交差部分410は、心臓の解剖学的構造の3次元画像、例えばCT、MRI、又は超音波画像と組み合わせて、臨界又はある電界強度での創傷深さの3次元画像を提供することができる。勿論、創傷の面積と深さを含む創傷の大きさは、カテーテル300の電極314及び316に印加される電気パルスのパルスパラメータの違いに基づいて変化する。
【0087】
図4Cは、本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイの中での可逆的電気穿孔の予想ゾーン420と不可逆的電気穿孔の予想ゾーン422を示す概略図である。実施形態において、予想ゾーン420及び422は、電極314及び316から選択された電極を使って発生させられる、又は発生させることのできる電界のモデルに基づいて、及び選択された電極に印加される各種の電気パルスのシミュレーションに基づいて判定される。この場合、予想ゾーン420及び422の面積と深さは、カテーテル300の電極314及び316に印加される電気パルスのパルスパラメータの違いに応じて変化する。
【0088】
電界強度閾値線424及び426は、可逆的電気穿孔法の予想ゾーン420を画定する。実施形態において、電界強度閾値線424は200V/cmを示し、電界強度閾値線426は250V/cmを示す。
【0089】
電界強度閾値線428と心内膜組織304の境界は不可逆的電気穿孔法の予想ゾーン422を画定する。実施形態において、電界強度閾値線428は400V/cmの電界強度を示す。
【0090】
図4Dは、本開示の主題の実施形態による、解剖学的マップへの電界のグラフィック表示のオーバレイの中での電界線432と交差する心臓組織302に過去に作られた創傷430を示す概略図である。
【0091】
幾つかの実施形態において、初期マッピングプロセス中及び/又はアブレーション後に、カテーテル300を取り囲む心臓組織302の局所的組織複素インピーダンス値が解剖学的マップに追加され得る。これらの局所的組織複素インピーダンス値は、生体及び病変心筋、線維症、静脈組織、炎症、及び過去にアブレーションが行われた心臓組織302を含む、下にある組織支持部を示すために使用できる。局所的組織複素インピーダンスは局所的な電界に影響を与えるため、これは可逆的及び不可逆的電気穿孔ゾーンを予想する上で有益であり得る。
【0092】
本開示の他の態様において、カテーテル300及び周辺心臓組織302の解剖学的構造に関する一定の臨界電界の大きさ及び/又は深さを提供するために、セットポイントを設けることができる。実施形態において、コンソール130は、周辺心臓組織302内の動的に測定されたインピーダンスの変化並びに/又はカテーテル300の形状と電極314及び316の位置の変化に応答して、一定の臨界電界の大きさ、深さ、及び/又は位置を提供するために電圧振幅及び/又はその他のパルスパラメータを動的に変更し、又は手動での変更を提案するように構成される。
【0093】
図5は、本開示の主題の実施形態による不可逆的電気穿孔法によるアブレーションを計画する方法である。この方法は、カテーテル300に関して説明されているが、方法では何れの適当な電気穿孔カテーテルでも使用できる。また、実施形態において、コンソール130及び/又はEAM 70は、方法の各種のステップの機能を提供するように構成され、又は構成することができる。
【0094】
ステップ500において、方法はカテーテル300を患者の体内に挿入した後に、心臓組織302に関する患者の体内の電極314及び316の位置を判定するステップを含み、ステップ502において、方法は患者の体内のカテーテル300の付近の、又はそれを取り囲む心臓組織302の特性を判定するステップを含む。
【0095】
ステップ504において、方法は、カテーテル300上の電極314及び316の異なる組合せにより発生させることのできる電界をモデル化するステップを含む。また、幾つかの実施形態において、方法は、標的の表面組織及びより深層の組織のアブレーションを含め、電気穿孔法による標的の心臓組織302のアブレーションに最も適していると思われる電極を電極314及び316から選択するステップを含む。実施形態において、これは電圧振幅等のユーザ入力を提供することを含む。
【0096】
ステップ506において、方法は電界により影響を受けるであろう、又は受けたであろう心臓組織302の表面積と深さを判定するステップを含み、これには心臓組織302の異なる部分の電界強度を判定することが含まれる。実施形態において、これには、不可逆的電気穿孔法による組織302のアブレーションのために、選択された電極間に電界を発生させるための電気パルスを判定することが含まれる。また、実施形態において、これには、電界に関する印加パラメータ、例えば電界強度及び電界が心臓組織302に印加される時間の長さを判定することが含まれる。
【0097】
ステップ508において、方法は、コンソール130等のコントローラにより、電界のモデルに基づいて、カテーテル300上の選択された電極を使って発生させることのできる電界のグラフィック表示を生成するステップを含む。実施形態において、方法は、カテーテル300の特性、患者の体内でのカテーテル300の位置又は場所、及び患者の体内のカテーテル300を取り囲む心臓組織302の特性に基づいて、電界のグラフィック表示を生成するステップを含む。
【0098】
ステップ510において、方法はディスプレイ92等のディスプレイ上に、電界のグラフィック表示と患者の解剖学的マップを表示するステップを含み、これはエネルギを送達する前に電気穿孔法によるアブレーションの計画を支援するために使用できる。実施形態において、これには関心対象の電界のグラフィック表示を心臓の解剖学的マップ上にオーバレイすることが含まる。実施形態において、グラフィック表示を表示するステップは、電極314及び316から選択された電極に提供されることになる電気パルスの電気パルスパラメータに基づく電界強度を表示するステップが含まれる。
【0099】
実施形態において、グラフィック表示は以下のうちの1つ以上を表示することを含むことができる。すなわち、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示における少なくとも1つの電界線を表示すること、解剖学的マップ上の電界のグラフィック表示内に電界強度閾値線を表示すること、電界強度閾値線が周辺組織と交差する箇所のマーキングを表示すること、可逆的電気穿孔法の予想ゾーンを表示すること、不可逆的電気穿孔法の予想ゾーンを表示すること、電界が過去に作られた創傷と交差する箇所のマーキングを表示すること、及び解剖学的マップ上に予想される創傷を表示すること。
【0100】
また、実施形態において、方法は、コントローラにより、周辺組織に関するカテーテルの位置の変化、カテーテルの変化、カテーテルの電極に提供されることになるパルスパラメータの変化、及び周辺組織のインピーダンス測定値の変化の1つ以上に基づいて電界のグラフィック表示を動的に変更するステップを含む。
【0101】
上述の例示的な実施形態には、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な改良及び追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態では特定の特徴に言及されているが、本開示の範囲にはまた、特徴の異なる組合せを有する実施形態及び記載されている特徴の全てを含んでいるわけではない実施形態も含まれる。従って、本開示の範囲は、特許請求項の範囲内に含まれるかかる全ての代替案、改良、及び変更をそれらの全ての均等物と共に包含することが意図されている。
【国際調査報告】