(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C10B 57/04 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
C10B57/04 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573641
(86)(22)【出願日】2020-07-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 IB2020056779
(87)【国際公開番号】W WO2021240223
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202021022401
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522464148
【氏名又は名称】イプシロン アドバンスト マテリアルズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ナタラジャン, シーインナサミー
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012NA01
4H012NA05
4H012NA08
(57)【要約】
本発明は、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム(1000)を提供する。本システムは、周囲圧力下で250℃~350℃の温度で動作することによって等方性ピッチの前処理を実行するための第1の加熱ゾーン(102)を有する反応器を含む。反応器は、メソ相ピッチを得るために、周囲圧力下で350℃~500℃の温度を維持することによって前処理された等方性ピッチの加熱を実行するための第2の加熱ゾーン(103)をさらに含む。反応器は、メソ相コークスを得るために、周囲圧力下で500℃~800℃の温度を維持することによって前記メソ相ピッチの加熱を実行するための第3の加熱ゾーン(104)を含む。本システムは、メソ相コークスを得るために、容器(50)を入口ゾーン(101)から出口ゾーン(106)に物理的に移動させるように適合されたプッシャユニット(300)をさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム(1000)であって、
反応器(100)であって、
容器(50)を有する入口ゾーン(101)であって、前記容器(50)が前記等方性ピッチを受け入れるように適合されている、入口ゾーン(101)、
第1の加熱ゾーン(102)を周囲圧力下で250℃~350℃の温度で動作させることによって前記等方性ピッチの前処理を実行するように適合された第1の加熱ゾーン(102)、
周囲圧力下で350℃~500℃の温度を維持することによって前記前処理された等方性ピッチの加熱を実行して、前記等方性ピッチを変換してメソ相ピッチを得るように適合された第2の加熱ゾーン(103)、
周囲圧力下で500℃~800℃の温度を維持することによって前記メソ相ピッチの加熱を実行してメソ相コークスを得るように適合された第3の加熱ゾーン(104)、及び
前記メソ相コークスを反応器(100)から排出するように適合された出口ゾーン(106)
を備える反応器(100)と、
前記出口ゾーン(106)でメソ相コークスを得るために、前記入口ゾーン(101)から前記第1の加熱ゾーン(102)、前記第2の加熱ゾーン(103)、前記第3の加熱ゾーン(104)へ、出口ゾーン(106)まで前記容器(50)を物理的に移動させるように適合されたプッシャユニット(300)と
を備える、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム(1000)。
【請求項2】
前記等方性ピッチが、コールタール又は石油タールの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記等方性ピッチが、80℃~120℃の範囲内の軟化点(SP)温度を有し、2%以下のキノリン不溶性物質(QI)含有量を有する、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項4】
前記等方性ピッチを貯蔵、及び
前記等方性ピッチを容器(50)内に供給
するように適合されたリザーバ(200)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項5】
前記反応器(100)が、第3の加熱ゾーン(104)から得られた前記メソ相コークスを冷却するように適合された冷却ゾーン(105)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項6】
前記プッシャユニット(300)が、可変の押し込み速度を達成するために前記油圧流体の流れを調節するための油圧バルブ(303)を有する油圧プッシャシステムを備える、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項7】
前記メソ相コークスをコークス顆粒に粉砕するように適合された粉砕ユニット(600)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項8】
前記コークス顆粒を受け入れて貯蔵するように適合されたホッパ(800)をさらに備える、請求項7に記載のシステム(1000)。
【請求項9】
前記コークス顆粒を前記粉砕ユニットから前記ホッパ(800)に輸送するための空気圧搬送システムをさらに備える、請求項8に記載のシステム(1000)。
【請求項10】
システムから蒸発したピッチを凝縮して凝縮油を得るように適合された凝縮ユニット(400)をさらに備える、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項11】
前記凝縮油を貯蔵するように適合された油タンク(500)をさらに備える、請求項10に記載のシステム(1000)。
【請求項12】
等方性ピッチからメソ相コークスを製造するための方法(900)であって、
反応器(100)の入口ゾーン(101)に配置された容器(50)内に等方性ピッチを供給することと、
プッシャユニット(300)を介して前記容器(50)を第1の加熱ゾーン(102)に物理的に移動させることであって、前記容器(50)が前記反応器(100)内で線形運動で移動される、移動させることと、
前記反応器(100)の前記第1の加熱ゾーン(102)内の前記等方性ピッチを前処理することであって、前記第1の加熱ゾーン(102)が周囲圧力下で250℃~350℃の温度で動作する、前処理することと、
前記容器(50)を前記第1の加熱ゾーン(102)からプッシャユニット(300)を介して第2の加熱ゾーン(103)へ物理的に移動させることと、
メソ相ピッチを得るために、周囲圧力下で350℃~500℃の温度を維持することによって前記反応器(100)の前記第2の加熱ゾーン(103)内の前処理された等方性ピッチを加熱することと、
前記容器(50)を、第2の加熱ゾーン(103)から前記プッシャユニット(300)を介して第3の加熱ゾーン(103)へ、プッシャユニット(300)を介して物理的に移動させることと、
メソ相コークスを得るために、周囲圧力下で500℃~800℃の温度を維持することによって前記反応器(100)の前記第3の加熱ゾーン(104)内の前記メソ相ピッチを加熱することと、
前記容器(50)を前記第3の加熱ゾーン(104)から前記プッシャユニット(300)を介して冷却ゾーン(105)へ物理的に移動させることと、
前記メソ相コークスを前記反応器(100)の出口ゾーン(106)から排出することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記等方性ピッチが、コールタール又は石油タールの少なくとも1つから選択され、前記等方性ピッチが、100℃以下の軟化点(SP)温度及び2%以下のキノリン不溶性物質(QI)含有量を有する、請求項12に記載の方法(900)。
【請求項14】
リザーバ(200)から前記等方性ピッチを供給することを含む、請求項12に記載の方法(900)。
【請求項15】
前記冷却ゾーン(105)内で前記メソ相コークスを冷却することを含む、請求項12に記載の方法(900)。
【請求項16】
前記容器(50)を前記冷却ゾーン(105)からプッシャユニット(300)を介して出口ゾーン(106)へ物理的に移動させることを含む、請求項15に記載の方法(900)。
【請求項17】
前記メソ相コークスを粉砕ユニット(600)内でコークス粉末に粉砕することを含む、請求項12に記載の方法(900)。
【請求項18】
前記コークス顆粒を前記粉砕ユニット(600)から空気圧搬送システム(700)を介してホッパ(800)に輸送する、請求項17に記載の方法(900)。
【請求項19】
未使用ピッチを回収することを含み、前記回収する工程が、
前記反応器(100)から未使用ピッチを蒸発させることと、
前記蒸発したピッチを凝縮ユニット(400)内で凝縮させて凝縮油を得ることと
を含む、請求項12に記載の方法(900)。
【請求項20】
前記凝縮油を油タンク(500)に圧送することを含む、請求項19に記載の方法(900)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月28日に出願された完全な出願番号202021022401の利益を主張する。
【0002】
本発明は、コークスを製造するためのシステム及び方法に関し、より具体的には、本発明は、二次電池用の炭素/黒鉛電極を作製するための供給材料として使用されるコールタール/石油タールピッチからメソ相ピッチ及びメソ相コークスを製造するためのシステム及び連続方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
新しい材料の必要性は絶えず探索されており、非常に特殊な特性を有する材料は、特定の製造装置及び容易なプロセス制御を必要とする。炭素材料は、多くの特性(機械的強度及び高弾性率、低密度、高い熱伝導率及び電気伝導率、イオンのインタカレーション/吸収特性など)を有するために、新しい材料の分野で重要なニッチを見出しており、いくつかの用途では交換不可能である。そのような用途の1つは、ピッチ又はコークスを炭素前駆体として使用して炭素/黒鉛アノードを作製するLiイオン電池である。
【0004】
しかしながら、ピッチ及びコークスは、本質的に異方性で、高いメソ相含有量を含むべきである。したがって、この問題を克服するために、メソ相ピッチを製造するための方法が存在するようになった。そのような方法の1つが、米国特許第4904371号に開示されている。
【0005】
上記特許は、約50~100%の範囲の制御されたメソ相含有量を有する炭素質ピッチ生成物を製造するための改善された方法及び単純な方法を開示している。上記方法は、メソ相ピッチを実質的に含まない炭素質供給材料を350℃超の温度で周囲圧力で約6時間加熱することを含む。
【0006】
上記方法は、炭素質供給材料を、スパージングガスの非存在下で、250℃~350℃の温度範囲でさらに10時間まで熱浸漬に供することをさらに含む。さらに、この方法は、続いて、前処理した炭素質供給材料を、非酸化スパージングガスの存在下で、350℃~500℃の温度範囲で10時間まで加熱し、それによってメソ相ピッチを形成する。
【0007】
しかしながら、上記の方法における熱処理時間は20時間~30時間までであることが観察されている。さらに、不活性ガスが、上記で開示された方法においてブランケッティングのために使用される。不活性ガスはブランケッティングにのみ使用されるので、上記方法は、ガス消費量が約0.25立方フィート/時(SCFH)/ポンド少なくなり、低エネルギー消費量をもたらす。
【0008】
さらに、同様の方法が米国特許第4551225号に開示されている。上記特許は、少なくとも2.5標準立方フィート/時(SCFH)/ポンドのピッチ供給材料の速度で不活性ガスを通過させながら、約350℃~450℃の範囲内の温度でピッチ供給材料を加熱し、次いで、約500~600rpmの撹拌機速度で上記ピッチ供給材料を撹拌して、炭素製造に適した本質的に100%のメソ相ピッチ生成物を得ることを含む、光学異方性ピッチを調製するための改善された方法を開示している。
【0009】
しかしながら、上記方法では、異方性ピッチを製造する処理時間及び不活性ガス流量が高いことが分かっている。さらに、この方法は高RPM撹拌機設備を必要とし、この方法はメソ相ピッチのみを生じる。
【0010】
さらに、メソ相ピッチを製造する別の同様の方法が米国特許第4631181号に開示されている。上記方法は、重ビチューメンにアルコール及びフェノールのうちの少なくとも1つを添加することによるメソ相ピッチの製造を含む。さらに、この方法は、混合物を少なくとも250℃の温度で前処理し、次いで前処理された混合物を熱処理に供することを含む。
【0011】
しかしながら、上記の方法は、メソ相ピッチを製造するために添加剤及び高圧を必要とし、さらに完全な異方性ピッチをもたらさないことに留意されたい。
【0012】
メソ相ピッチを製造する別の方法が、米国特許第4704333号に開示されている。上記方法は、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、ニッケル及びコバルトから選択される金属の触媒有効量の酸化物、ジケトン、カルボキシレート及びカルボニルの存在下で、ピッチをメソ相ピッチに変換することを含む。
【0013】
メソ相ピッチを製造する別の方法が、米国特許第5182010号に開示されている。上記方法は、ナフタレン誘導体1モル当たり約0.1~20モルのフッ化水素(HF)及び約0.05~1.0モルの三フッ化ホウ素(BF3)の存在下、約5~100気圧の圧力下、約180℃~400℃の温度で約5~300分間、少なくとも1つのメチル基を有するナフタレン誘導体を重合することを含む。
【0014】
しかしながら、上記の方法では触媒が使用され、それに起因して、製造されたメソ相ピッチ中に金属触媒の一部が残存し、それによって純度が損なわれ得ることに留意されたい。さらに、この方法は高圧槽を必要とし、これは設備投資を増加させ、処理コストも増加させる。
【0015】
メソ相を製造するための別の方法が、米国特許第4512874号に開示されている。上記方法は、石油ピッチを360℃~450℃の温度で熱処理に供することを含む。上記方法は、続いて、熱処理したピッチをメソ相成長及び融着工程に移送する。
【0016】
上記方法は、メソ相成長及び融着工程において移送された熱処理ピッチを加熱し、280℃より高く350℃より低い温度でエージングすることによって、メソ相のみを成長及び融着させることをさらに含む。上記方法は、最後に、成長及び融着工程において、Q.I.成分及びQ.S.成分で構成されるメソ相を下層から除去することを含む。
【0017】
しかしながら、上記の方法は、2つの槽、すなわちメソ相を形成するための1つと、メソ相成長及び融着のための他の1つを必要とする。さらに、等方性材料は、分離後に第1の槽に戻る。したがって、1つの槽から別の槽に非常に粘性の高い材料を輸送することが困難になる。
【0018】
さらに、米国特許第2775549号は、ニードル様コークスを製造するための方法を開示している。上記方法は、350℃~550℃で加熱した際に、高沸点石油残油から成分を除去し、続いて、残りの残油を静止プール中でコーキングすることを含む。
【0019】
米国特許第9777221号はまた、低熱膨張率(CTE)黒鉛電極用のニードルコークスを製造する半連続方法を開示している。上記方法は、ニードルコークス前駆体を加圧下で加熱し、それによってコールタール蒸留物の60%~90%を生コークスに変換することを含む。この方法は、続いて、生コークスをか焼して低熱膨張率のニードルコークスを生成する。
【0020】
しかしながら、上記の方法は、約2kg/cm2~7kg/cm2の高圧を必要とする。このため、システムは高価なコーキングドラムを必要とする。さらに、ドラム内に形成されたニードルコークスは、高圧水ジェットを使用してデコーキングされ、製造されたコークスから水を除去するためにその後の処理が必要である。
【0021】
もう1つのそのような方法が米国特許第4219405号に開示されている。上記特許は、コークスの連続製造を開示している。上記方法は、混合物のメソ相含有量を30%~60%まで増加させる速度で予熱された炭化水素及び再循環凝縮物を加熱することを含む。この方法は、70%~100%のメソ相含有量を有する生コークスを形成する速度で、コーキングゾーン内で予熱された混合物を加熱することをさらに含む。この方法は、次いで、コーキングゾーンから生コークスを連続的に除去し、除去されたコークスをか焼炉内で加熱する。
【0022】
しかしながら、供給ピッチは、コーキングゾーンに入る前に30~60%のメソ相含有量を有する必要があり、供給ピッチを作製するための追加の設備を必要とすることに留意されたい。
【0023】
したがって、粘性ピッチを移送するための高温ポンプを排除し、高圧プロセスを排除して設備のコストを削減し、動作を容易にすることができる、制御されたメソ相コークスを製造するためのシステム及び単純な方法が必要とされている。
【0024】
さらに、有機溶媒、添加剤又は触媒の使用を排除することができる、メソ相コークスを製造するためのシステム及び方法が必要とされている。
【0025】
さらに、メソ相コークスを製造するための処理時間を短縮することができるシステム及び方法が必要とされている。
【0026】
要するに、上記の欠点を克服し、動作が容易で費用効果の高い方法を提供することができるメソ相コークスを製造するためのシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0027】
したがって、本発明の態様は、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム及び方法に関する。上記システム及び方法は両方とも費用効果が高く、高品質のメソ相コークスを提供することによって既存の問題を克服する。
【0028】
本発明の一態様では、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム。本システムは、反応器を含み、該反応器は、容器を有する入口ゾーンを含み、該容器は、上記等方性ピッチを受け入れるように適合されている。
【0029】
反応器は、周囲圧力下で250℃~350℃の温度で上記第1の加熱ゾーンを動作させることによって上記等方性ピッチの前処理を実行するように適合された第1の加熱ゾーンをさらに含む。さらに、反応器は、周囲圧力下で350℃~500℃の温度を維持することによって上記前処理された等方性ピッチの加熱を実行して、上記等方性ピッチを変換してメソ相ピッチを得るように適合された第2の加熱ゾーンを含む。
【0030】
上記反応器は、メソ相コークスを得るために、周囲圧力下で500℃~800℃の温度を維持することによって上記メソ相ピッチの加熱を実行するように適合された第3の加熱ゾーンをさらに含む。さらに、上記反応器は、生成物を高温から低温に冷却するための冷却ゾーンを含む。さらに、上記反応器は、上記メソ相コークスを反応器から排出するように適合された出口ゾーンを含む。
【0031】
上記システムは、上記出口ゾーンでメソ相コークスを得るために、上記入口ゾーンから上記第1の加熱ゾーン、上記第2の加熱ゾーン、上記第3の加熱ゾーンへ、出口ゾーンまで、制御された速度で上記容器を物理的に移動させるように適合された速度制御プッシャユニットをさらに含む。これにより、1つの反応器から別の反応器に高温で高粘性ピッチを圧送するために高価な圧送システムを設置する必要がなくなる。
【0032】
本発明の一実施形態では、上記等方性ピッチは、コールタール又は石油タールの少なくとも1つから選択される。上記等方性ピッチは、80℃~120℃の範囲の軟化点(SP)温度を有し、2%以下のキノリン不溶性物質(QI)含有量を有する。
【0033】
本発明の別の実施形態では、本システムは、上記等方性ピッチを収容し、上記等方性ピッチを容器内に供給するように適合されたリザーバをさらに含む。
【0034】
本発明の一実施形態では、反応器は、第3の加熱ゾーンから得られた上記メソ相コークスを冷却するように適合された冷却ゾーンをさらに含む。
【0035】
本発明の別の実施形態では、本システムは、上記メソ相コークスをコークス顆粒に粉砕するように適合された粉砕ユニットをさらに含む。
【0036】
本発明の一実施形態では、本システムは、上記コークス顆粒を貯蔵するように適合されたホッパをさらに含む。
【0037】
さらに、本システムは、上記コークス顆粒を上記粉砕ユニットから上記ホッパに輸送するための空気圧搬送システムを含む。
【0038】
本システムは、システムから蒸発したピッチを凝縮して凝縮油を得るように適合された蒸気凝縮ユニット及び油貯蔵ユニットをさらに含む。
【0039】
本発明の態様では、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するための方法が開示される。この方法は、反応器の入口ゾーンに配置された容器に等方性ピッチを供給することを含む。上記方法は、続いて、プッシャユニットを介して上記容器を第1の加熱ゾーンに物理的に移動させ、上記容器は、上記反応器内を線形運動で移動している。
【0040】
上記方法は、上記容器を上記第1の加熱ゾーンからプッシャユニットを介して第2の加熱ゾーンへ物理的に移動させることをさらに含む。上記方法は、続いて、メソ相ピッチを得るために、周囲圧力下で350℃~500℃の温度を維持することによって、上記反応器の上記第2の加熱ゾーン内で、前処理された等方性ピッチを加熱する。
【0041】
さらに、上記方法は、上記容器を第2の加熱ゾーンから上記プッシャユニットを介して第3の加熱ゾーンへ、プッシャユニットを介して物理的に移動させることを含む。上記方法は、続いて、メソ相コークスを得るために、周囲圧力下で500℃~800℃の温度を維持することによって、上記反応器の上記第3の加熱ゾーン内で、上記メソ相ピッチを加熱する。
【0042】
さらに、上記方法は、上記容器を上記第3の加熱ゾーンから上記プッシャユニットを介して冷却ゾーンへ物理的に移動させることと、上記メソ相コークスを上記反応器の出口ゾーンから排出することとを含む。
【0043】
本発明の一実施形態では、本方法は、上記等方性ピッチをリザーバから容器内に供給することをさらに含む。
【0044】
本発明の別の実施形態では、本方法は、上記冷却ゾーン内で上記メソ相コークスを冷却することを含む。
【0045】
本発明の一実施形態では、本方法は、上記容器を上記冷却ゾーンからプッシャユニットを介して出口ゾーンに物理的に移動させることをさらに含む。
【0046】
本発明の別の実施形態では、本方法は、上記メソ相コークスを粉砕ユニット内でコークス顆粒に粉砕することを含む。
【0047】
さらに、本発明の別の実施形態では、本方法は、空気圧搬送システムを使用して上記コークス顆粒を上記粉砕ユニットからホッパに輸送することを含む。
【0048】
本発明の別の実施形態では、本方法は、未使用ピッチを回収及び貯蔵することをさらに含む。上記回収工程は、上記反応器から未使用ピッチを蒸発させ、凝縮ユニット内で上記蒸発したピッチを凝縮して凝縮油を得ることを含み、これは、貯蔵タンクに貯蔵される。
【0049】
これは、本開示の特徴を明らかにする新規性の様々な特徴と共に本発明の他の態様と共に、添付の特許請求において具体的に指摘され、本発明の一部を形成する。本開示、その動作上の利点、及びその使用によって達成される特定の目的をよりよく理解するために、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の説明事項を参照するべきである。
【0050】
本発明の利点及び特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の様々な実施形態による、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステムを表す例示的なブロック図を示す。
【
図2】本発明の様々な実施形態によるプッシャユニットの例示的なブロック図を示す。
【
図3】本発明の様々な実施形態による、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するための例示的な方法を示すフローチャートを示す。
【
図4】本発明の様々な実施形態によるメソ相コークスの外観光学顕微鏡写真を示す。
【
図5】本発明の様々な実施形態による方法パラメータを実行することによる黒鉛の充電容量、放電容量及び第1のサイクル効率を表すグラフを示す。
【
図6】本発明の様々な実施形態による、丸い縁の黒鉛粒子を示す。
【
図7】本発明の様々な実施形態による、黒鉛粒子のサイズを表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図面全体を通して、同様の符号は同様の要素を示す。
【0053】
例示を目的として本明細書に詳細に記載された例示的な実施形態は、多くの変形形態に供される。しかしながら、本発明は、開示されたメソ相コークスを製造するためのシステム及び方法に限定されないことが強調されるべきである。状況が好都合であると示唆又は表し得る場合、等価物の様々な省略及び置換が企図されるが、これらは、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく適用又は実施されることを網羅することを意図していることが理解される。
【0054】
別段の指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、コークスを製造するためのシステム及びそれに関する方法の分野で一般的に使用される意味を有する。具体的には、以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0055】
本明細書における「1つの(a)」及び「1つの(an)」という用語は、量の限定を示すものではなく、むしろ参照される項目の少なくとも1つの存在を示す。
【0056】
「有する(having)」、「備える(comprising)」、「含む(including)」という用語、及びそれらの変形は、構成要素の存在を表す。
【0057】
本明細書における「メソ相」という用語は、容易に黒鉛化可能であり、高性能及び多機能の異方性黒鉛材料を調製するための有望な供給材料として使用することができるネマチック液晶構造を指す。
【0058】
図1は、等方性ピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム(1000)の例示的なブロック図を示す。上記システム(1000)は、上記等方性ピッチを収容するリザーバ(200)を含む。本発明の一実施形態では、上記等方性ピッチは、コールタール又は石油タールの少なくとも1つから選択される。
【0059】
さらに、上記等方性ピッチは通常、多量の芳香族含有量及び2%以下のキノリン不溶分(QI)含有量を有することが当業者には理解されよう。さらに、選択された等方性ピッチは、80℃~120℃の範囲の軟化点(SP)温度を有する。使用される上記等方性ピッチは、液体又は固体状態であり得る。
【0060】
本発明の上記実施形態では、上記のパラメータを有する上記等方性ピッチは、得られたメソ相コークスである最終生成物の種類及びその電気化学的特性に影響を及ぼし得る。
【0061】
さらに、
図1に示すように、上記システム(1000)は、上記等方性ピッチから上記メソ相コークスの製造を実行するための反応器(100)を含む。
【0062】
反応器(100)は、複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)を含む。本発明の一実施形態では、上記複数のゾーンは、容器(50)を有する入口ゾーン(101)を含む。
【0063】
上記容器(50)は、上記リザーバ(200)から上記等方性ピッチを受け入れるように適合されている。
【0064】
上記実施形態では、上記等方性ピッチは、所定量で上記容器(50)に圧送される。
【0065】
図1に示すように、上記複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)は、上記反応器(100)内に第1の加熱ゾーン(102)をさらに含む。上記第1の加熱ゾーン(102)は、上記等方性ピッチの前処理を実行するように適合されている。
【0066】
より具体的には、本発明の上記実施形態では、上記等方性ピッチの揮発分放出の多くを低減又は排除するために、周囲圧力下、250℃~350℃の温度で、上記等方性ピッチの前調整が行われる。
【0067】
さらに、上記複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)は、上記反応器(100)内に第2の加熱ゾーン(103)を含む。上記第2の加熱ゾーン(103)は、前処理された等方性ピッチの加熱を実行するように適合されている。
【0068】
より具体的には、上記前処理された等方性ピッチの熱分解が、上記等方性ピッチをメソ相ピッチに変換するために、周囲圧力下、350℃~500℃の温度で、上記第2の加熱ゾーン(103)内で行われる。
【0069】
本発明の上記実施形態では、上記温度範囲で、上記等方性ピッチの物理的外観及び化学組成の変化が起こる。より具体的には、メソ相の形成は、上記等方性ピッチで起こる。その後、これは、上記等方性ピッチの異方性相への変換をもたらし得る。
【0070】
さらに、上記実施形態では、メソ相ピッチは球として現れ、上記メソ相の形成速度は、前駆体、すなわち上記等方性ピッチの化学組成に依存する。
【0071】
より好ましくは、上記メソ相の形成は、反応器(100)内の等方性ピッチの滞留時間及び上記メソ相コークスを製造するための温度条件に依存する。
【0072】
さらに、より具体的には、上記ピッチの積層された平坦な分子が、メソ相球を形成する。したがって、上記メソ相球は、第2の加熱ゾーン(103)の終わりにバルクメソ相ピッチを形成するように拡大及び融合する。
【0073】
さらに、上記複数の加熱ゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)は、上記反応器(100)内に第3の加熱ゾーン(104)をさらに含む。上記第3の加熱ゾーン(104)は、上記第2の加熱ゾーン(103)の終わりに得られた上記メソ相ピッチの加熱を実行するように適合されている。
【0074】
より具体的には、上記メソ相ピッチの熱分解が、上記第3の加熱ゾーン(104)内で、周囲圧力下、500℃~800℃の温度で、所定時間行われる。より好ましくは、上記メソ相ピッチは、第3の加熱ゾーン(104)において、500℃~600℃の温度範囲でメソ相コークスに変換される。
【0075】
第3の加熱ゾーン(104)の後に得られた上記メソ相コークスは、本質的に異方性であり、80%~100%パーセントのメソ相含有量を有する。
【0076】
本発明の別の実施形態では、上記第1の加熱ゾーン(102)、上記第2の加熱ゾーン(103)、及び上記第3の加熱ゾーン(104)は、加熱ゾーン(102)、(103)、(104)内の温度を精密に制御するために、その中に複数の加熱ゾーンをさらに含む。より好ましくは、上記複数の加熱ゾーンは、上記メソ相コークスが高品質である温度で動作する。
【0077】
本発明の一実施形態では、複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)は、冷却ゾーン(105)をさらに含む。上記冷却ゾーン(105)は、上記第3の加熱ゾーン(104)(
図1を参照)の終わりに得られた上記メソ相コークスを冷却するように適合されている。
【0078】
さらに、上記複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)は、上記反応器(100)内に出口ゾーン(106)を含む。上記出口ゾーン(106)は、上記冷却ゾーン(106)(
図1を参照)から得られた上記メソ相コークスを貯蔵するように適合されている。
【0079】
本発明の一実施形態では、システム(1000)は、プッシャユニット(300)(
図1及び
図2を参照)を含む。上記プッシャユニット(300)は、上記出口ゾーン(106)でメソ相コークスを得るために、上記から上記入口ゾーン(101)から上記第1の加熱ゾーン(102)、上記第2の加熱ゾーン(103)、及び上記第3の加熱ゾーン(104)へ、上記出口ゾーン(106)まで、上記容器を物理的に移動させるように適合されている。
【0080】
実施形態では、上記プッシャユニット(300)は、油圧プッシャシステムを含む。上記油圧プッシャシステムは、油圧ポンプ(302)を含み、基部(301)から上記流体油圧プッシャシステムを通る上記油圧流体の流れを可能にして、油圧動力を生成する。さらに、上記油圧プッシャシステムは、可変の押し込み速度を達成するために上記油圧流体の流れを調節するための油圧バルブ(303)を含む。これにより、上記複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)における滞留時間を変化させて制御されたメソ相材料(
図2を参照)を製造するための動作上の柔軟性が与えられる。
【0081】
上記油圧プッシャシステムは、上記油圧エネルギーを機械的エネルギーに変換して、上記容器(50)を上記複数のゾーン(101)、(102)、(103)、(104)、(105)、(106)を通して押すための油圧シリンダ(304)をさらに含む(
図2を参照)。
【0082】
本発明の別の実施形態では、システム(1000)は、粉砕機ユニット(600)をさらに含む。上記粉砕機ユニット(600)は、上記出口ゾーン(106)から排出された上記メソ相コークスをコークス顆粒(
図1を参照)に粉砕するように適合されている。粉砕されたコークスから非常に小さいサイズをふるいわけ、約20mm未満の許容可能なサイズを残さなくてはならない。
【0083】
本発明の別の実施形態では、システム(1000)は、空気圧搬送システム(700)をさらに含む。上記空気圧搬送システム(700)は、上記メソ相コークス(
図1を参照)から抽出された上記コークス顆粒をホッパ(800)に輸送するように適合されており、ここで、上記顆粒は貯蔵される。
【0084】
より好ましくは、上記コークス顆粒は、集合的な力の圧力及び空気を使用することによって密閉されたパイプラインを通って上記ホッパ(800)に移送される。
【0085】
上記実施形態では、上記コークス顆粒を上記粉砕機ユニット(600)から上記ホッパ(800)に搬送するために、空気の圧力及び流れが必要である。
【0086】
本発明の別の実施形態では、上記反応器(100)は、上記ピッチの一部を蒸発させるようにさらに適合されている。
【0087】
本発明のこの実施形態では、システム(1000)は、凝縮ユニット(400)を含む。上記凝縮ユニット(400)は、上記蒸発した未使用ピッチを凝縮油に凝縮するように適合されている。
【0088】
本発明の別の実施形態では、上記システム(1000)は、油タンク(500)をさらに含むことができる。上記油タンク(500)は、上記軽質分解生成物を含む凝縮油を貯蔵するように適合されている。
【0089】
次に、システム(1000)に関して説明したメソ相コークスの調製のための基礎となる方法を、フローチャート(
図3を参照)を参照して説明する。
【0090】
工程(10)において、上記方法(900)は、容器(50)内にリザーバ(200)から等方性ピッチを供給することを含む。次いで、この容器(50)を反応器(100)に装填する。
【0091】
一実施形態では、上記容器(50)は、所定量で反応器(100)の入口ゾーン(101)に配置される。
【0092】
工程(12)において、上記方法(900)は、上記等方性ピッチを充填された上記容器(50)を第1の加熱ゾーン(102)に物理的に移動させることを含む。ここで、上記容器(50)は、線形運動で定速で移動される。
【0093】
本発明の実施形態では、入口ゾーンから第1の加熱ゾーン(101)への容器(50)の物理的な移動は、プッシャユニット(300)を介して行われる。
【0094】
工程(14)において、上記方法(900)は、上記反応器(100)の上記第1の加熱ゾーン(102)内で上記等方性ピッチを前処理することを含む。ここで、上記加熱ゾーンは、周囲圧力下、250℃~350℃の温度で所定時間動作する(
図3を参照)。
【0095】
本発明の実施形態では、上記で説明したように、上記等方性ピッチの上記前処理又は前調整は、上記等方性ピッチの揮発分放出の多くを低減又は排除するために必要である。
【0096】
さらに、工程(16)において、上記方法は、上記容器(50)を上記第1の加熱ゾーン(102)から上記プッシャユニット(300)を介して第2の加熱ゾーン(103)へ物理的に移動させることを含む。ここでも、材料が移動されるのではなく、容器(50)が反応器(100)内で移動されることを理解されたい。
【0097】
本発明の実施形態では、上記等方性ピッチの前処理後、前処理されたピッチを充填された上記容器(50)は、次のセクション、すなわち第2の加熱ゾーン(103)に移動する。
【0098】
工程(18)において、上記方法(900)は、周囲圧力下で350℃~500℃の温度を維持することによって、上記反応器(100)の上記第2の加熱ゾーン(103)内で、前処理された等方性ピッチを加熱することを含む。
【0099】
実施形態では、上記温度範囲で、物理的外観及び化学組成の変化が起こる。より具体的には、上記実施形態では、メソ相の形成は、上記前処理された等方性ピッチで起こる。その後、これは、上記等方性ピッチの異方性相への変換をもたらし得る。
【0100】
さらに、上記実施形態では、メソ相ピッチは球として現れ、上記メソ相の形成速度は、前駆体、すなわち上記等方性ピッチの化学組成に依存する。
【0101】
さらに、工程(20)において、上記方法(900)は、上記容器(50)を上記プッシャユニット(300)を介して第2の加熱ゾーン(103)から第3の加熱ゾーン(104)に物理的に移動させることを含む。
【0102】
工程(22)において、方法(900)は、450℃~800℃の温度を維持することによって、上記反応器(100)の上記第3の加熱ゾーン(104)内で上記メソ相ピッチを加熱することを継続する。より好ましくは、メソ相コークスを得るために、周囲圧力下、480℃~600℃の温度である(
図3を参照)。ここでも、材料が移動されるのではなく、容器(50)が反応器(100)内で移動されることを理解されたい。
【0103】
工程(24)において、方法(900)は、上記容器(50)を上記第3の加熱ゾーン(104)から上記プッシャユニット(300)を介して冷却ゾーン(105)に物理的に移動させることを含む。
【0104】
工程(26)において、方法(900)は、上記メソ相コークスの冷却をさらに含む。
【0105】
さらに、工程(28)において、方法(900)は、上記容器(50)を上記冷却ゾーン(105)からプッシャユニット(300)を介して出口ゾーン(106)に物理的に移動させることを含む。
【0106】
さらに、工程(30)において、方法(900)は、上記メソ相コークスを上記出口ゾーン(106)から排出することを含む(
図3を参照)。
【0107】
工程(32)において、方法(900)は、続いて、粉砕ユニット(600)内で上記メソ相コークスを粉砕する。ここで、上記粉砕は、上記メソ相コークスをコークス顆粒に変換するために必要である。
【0108】
さらに、工程(34)において、上記方法(900)は、上記コークス顆粒を上記粉砕ユニット(600)から空気圧搬送システム(700)を介してホッパ(800)に輸送することを含む。
【0109】
本発明の別の実施形態では、未使用ピッチの回収が行われる。より好ましくは、等方性ピッチの一部は、上記反応器(100)内のメソ相コークスの製造中に蒸発する(
図3を参照)。
【0110】
本発明の上記実施形態では、工程(36)において、上記方法(900)は、上記未使用ピッチを上記反応器(100)から凝縮ユニット(400)に蒸発させることを含む(
図3を参照)。
【0111】
工程(38)において、上記方法(900)は、凝縮ユニット(400)内で上記蒸発したピッチを凝縮させて凝縮油を得ることをさらに含む(
図3参照)。
【0112】
さらに、工程(40)において、上記方法(900)は、油タンク(500)内に上記凝縮油を圧送することを含む(
図3を参照)。
【0113】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、既存のシステム及び方法と比較して、実現可能、持続可能、効果的及び効率的である。さらに、本発明は、調製されたメソ相コークスの均一性を保証する。
【0114】
また、従来、メソ相コークスは一般に、メソ相含有量が50%を超え、軟化点が200℃を超えるメソ相ピッチからなるものであったが、メソ相ピッチが高コストであるために、工業規模で行われたものはほとんどなかった。
【0115】
したがって、本発明は、200℃未満の軟化点を有するピッチからメソ相コークスを製造するためのシステム及び方法を提供する。
【0116】
既存のバッチ方法では、前駆体は、一定量のメソ相が調製されるまで高圧で熱分解される。次いで、メソ相ピッチは、機械的又は化学的方法による分離過程に供されるが、これは、複雑な設備及び溶媒を必要とする。
【0117】
さらに、メソ相コークスを製造する方法は、単一の反応器の複数の加熱ゾーンで行われるため、本発明は、ピッチを移送するために高温ポンプ及び高圧を必要としない。既存のシステム及び方法では、メソ相ピッチを1つの反応器から別の反応器に移送してメソ相コークスの製造を完了するために、高温ポンプ及び高圧が必要である。これまで、別の反応器/プラントでメソ相ピッチを、また別の反応器/プラントでメソコークスを製造することが行われてきた。本システムでは、それは単一の反応器内のドームである。
【0118】
さらに、本発明における滞留時間は、プッシャユニットの速度によって非常によく制御される。したがって、熱分解プロセス中のメソ相球の形成を制御して、再現可能な品質のメソ相コークスを調製する。さらに、上記調製されたメソ相コークスの特性は、リチウムイオン電池用黒鉛アノードの製造などの用途で特に関心を集める。
【0119】
さらに、上記本発明のより良い理解のために、及び上記システム及び方法がどのように実施され得るかを示すために、ここで様々な参照を行う。上記システム及び方法を使用して、異なるパラメータを使用して4つの実験を行った。
【実施例】
【0120】
実施例1
第1の実施例は、100の軟化点(SP)及び2%のQIを有するコールタールピッチを用いた本発明の動作を示す。第1の加熱ゾーン(102)の温度は250℃~350℃であり、実験は周囲圧力で行った。第2の加熱ゾーン(103)及び第3の加熱ゾーン(104)の温度は、それぞれ350℃~500℃及び500℃~800℃に設定され、滞留時間は10時間であった。反応器(100)から得られたバルクメソ相コークスは、75%を超える異方性を有する。上記コークスの外観光学顕微鏡写真(
図4を参照)。
【0121】
上記コークスから調製された黒鉛アノードは、92%の第1のサイクル効率で335mAh/gを与える。上記黒鉛アノードは、2Cでその容量の48%まで充電し、3Cレートで99%を放電する。
【0122】
実施例2
この実施例2は、SPが100でQIが0.2%未満のコールタールピッチを用いた本発明の動作を示す。第1の加熱ゾーン(102)の温度は250℃~350℃であり、実験は周囲圧力で行った。第2の加熱ゾーン(103)及び第3の加熱ゾーン(104)の温度は、それぞれ350℃~450℃及び450℃~800℃に設定され、滞留時間は10時間であった。反応器(100)から得られたバルクメソ相コークスは、90%を超える異方性を有する。
【0123】
上記コークスから調製された黒鉛アノードは、93%の第1のサイクル効率で355mAh/gを与える。上記黒鉛アノードは、2Cでその容量の30%まで充電し、3Cレートで92%を放電する。この黒鉛の充放電曲線を
図5に示す。
【0124】
実施例3
この実施例は、SPが100でQIが0.2%未満のコールタールピッチを用いた本発明の動作を示す。ゾーン1の温度は250℃~350℃であり、実験は周囲圧力で行った。第2の加熱ゾーン(103)及び第3の加熱ゾーン(104)の温度は、それぞれ350℃~430℃及び450℃~800℃に設定され、滞留時間は20時間であった。反応器(100)から得られたバルクメソ相コークスは、90%を超える異方性を有する。
【0125】
上記コークスから調製された黒鉛アノードは、93%の第1のサイクル効率で362mAh/gを与える。上記黒鉛アノードは、2Cでその容量の30%まで充電し、3Cレートで91%を放電する。
【0126】
実施例4
この実施例は、SPが100でQIが0.2%未満のコールタールピッチを用いた本発明の動作を示す。第1の加熱ゾーン(102)の温度は250℃~350℃であり、実験は周囲圧力で行った。第2の加熱ゾーン(103)及び第3の加熱ゾーン(104)の温度は、それぞれ350℃~450℃及び450℃~550℃に設定され、滞留時間は10時間であった。反応器(100)から得られたバルクメソ相コークスは、90%を超える異方性を有する。
【0127】
上記コークスから調製された黒鉛アノードは、94%の第1のサイクル効率で356mAh/gを与える。2Cレートでその容量の32%まで充電する。3Cレートで93%を放電する。この電極は、1.8g/ccまでの密度に達し得る。
【0128】
さらに、上記方法によって製造された黒鉛粒子は、丸い縁を有する(
図6参照)。丸い縁の黒鉛粒子は、電極コーティング方法を容易にする。したがって、得られる高密度電極は、良好な多孔度及び粒子配向を有し得る。
【0129】
さらに、上記方法によって製造された電極は、より良好な濡れ性及び高い充放電速度を有し得る。
【0130】
図7に示すグラフから、黒鉛粒子のサイズは、要件に従って制御することができる。さらに、グラフは、黒鉛粒子の百分位とサイズとの間でプロットされている。
【0131】
【0132】
上記の実施例の供給材料及び方法パラメータを以下の表2に示す。
【0133】
上記の実施例に関して、黒鉛アノードがメソ相コークスから作製されている電池の特性を以下の表3に示す。
【0134】
上記方法対従来技術による調製されたメソ相コークス組成物を使用して形成された電極の性能の比較データを以下の表4に示す。
【0135】
したがって、本発明は、高密度の電極を達成することができる方法を記載する。したがって、これは、高エネルギー密度電池を作製するのに役立つ。さらに、作製された電極は、より良好な充放電速度を有し、これにより、高出力電池を作製することが可能になる。
【0136】
したがって、本発明は、既存の方法と比較して実現可能、持続可能、効果的及び効率的な、コークスを製造するためのシステム及び方法である。
【0137】
本発明の特定の実施形態の前述の説明は、説明の目的で提示されている。それらは網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして明らかに多くの修正及び変形が可能である。
【0138】
さらに、実施形態は、本発明の原理及びその実際の適用を最もよく説明するために選択及び説明され、それによって、当業者が本発明及び企図される特定の使用に適した様々な修正を伴う様々な実施形態を最もよく利用することを可能にする。状況が好都合であると示唆又は表し得る場合、等価物の様々な省略及び置換が企図されるが、そのような省略及び置換は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく適用又は実施されることを網羅することを意図していることが理解される。
【国際調査報告】