(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(54)【発明の名称】妊婦の子宮頸部剥離細胞から胎盤栄養膜細胞を分離する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20230620BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230620BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230620BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230620BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/543 597
G01N33/53 D
C12N5/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573784
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2022081234
(87)【国際公開番号】W WO2022242285
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110549947.8
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520349665
【氏名又は名称】広州凱普医薬科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522465477
【氏名又は名称】広東凱普生物科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG HYBRIBIO BIOTECH CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】鄭▲ヤン▼
(72)【発明者】
【氏名】馬佳艶
(72)【発明者】
【氏名】豊暁威
(72)【発明者】
【氏名】劉梦羽
(72)【発明者】
【氏名】陳珮▲シュァン▼
(72)【発明者】
【氏名】管秩生
(72)【発明者】
【氏名】謝龍旭
(72)【発明者】
【氏名】葛毅媛
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR56
4B063QS03
4B063QS33
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD14
4B065BD50
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、妊婦の子宮頸部剥離細胞から胎盤栄養膜細胞を分離する方法を開示する。この方法は、特定の栄養膜細胞表面又は細胞内に発現する特異的抗原及び組み合わせに基づいて、設計されたマイクロ流体選別チップ又はフローサイトメーターを使用して、胎盤栄養膜サンプルの細胞懸濁液に対して細胞選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得る。従来の方法と比較して、本発明の方法は、非侵襲的に検体を取得し、特異性が高いという利点を有し、また、早期に採取するため、感染や流産のリスクが低く、複数の抗原の同時標識並びに特徴的な蛍光シグナルの識別及び選別を同時に実現することができ、精度が大幅に向上し、検出結果の信頼性が高く、検出範囲も広い。更に、この方法は、細胞の数及び質を両立できるという利点を有し、得られた細胞の数が多く、特異性及び感度が高く、様々な検出目的及び応用シナリオに適用することができ、利用価値が非常に高い。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養膜細胞を分離する方法であって、
(1)子宮頸部剥離細胞液サンプルをサンプル細胞懸濁液に調製するステップと、
(2)サンプル細胞懸濁液に特異的抗体を加えてインキュベートするステップであって、前記特異的抗体は、栄養膜細胞表面又は細胞内に発現する特異的抗原に対応する抗体の組み合わせであり、即ち、該組み合わせはHLA-G+CK7、HLA-G+CK18、HLA-G+β-HCG、CD31+HPL、MMP9+CD31、HLA-G+HPL、HLA-G+MMP9、HLA-G+CD31、HLA-G+P、CD31+P、HLA-G+CDH5、CD31+CDH5、CD31+CK7+HLA-G、HLA-G+CK18+CD31、HLA-G+β-HCG+CD31、CD31+HPL+HLA-G、MMP9+CD31+HLA-G、CD31+P+HLA-G又はHLA-G+CDH5+CD31の特異的抗体である、ステップと、
(3)フローサイトメーターを使用して、ステップ(2)でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識して選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得るか、又は
マイクロ流体選別チップを使用して、ステップ(2)でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識してマイクロ流体細胞選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得るステップとを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記マイクロ流体選別チップは、基板及びそれと貼り合わされたカバーシートを含み、
前記基板の一方の面には、主流路、側流路A及び側流路Bが設けられており、2つの側流路はそれぞれ、主流路の左端及び右端に近接しており、
前記基板の他方の面には、C入口、S入口、N出口及びT出口が設けられており、4つの口はすべて、前記基板の一方の面に貫通して流路と連通しており、且つC入口の位置が主流路の左端に対応し、S入口の位置が側流路Aの端部に対応し、N出口の位置が主流路の右端に対応し、T出口の位置が側流路Bの端部に対応しており、
前記主流路内には、N出口とT出口の合流点に偏向電極装置も設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
主流路、側流路A及び側流路Bの流路幅がいずれも1000μm以下であり、深さがいずれも500μm以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、一次抗体のインキュベーション条件は、4℃で30~90分間反応させることであり、二次抗体‐蛍光標識複合体のインキュベーション条件は、2℃~8℃で20分間反応させることである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(2)の具体的な方法は、インキュベーションによって一次抗体、二次抗体‐蛍光標識複合体を前後して段階的に標的抗原に特異的に結合させ、途中で洗浄及び遠心分離技術を用いて交叉汚染を回避することである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(3)の具体的な方法は、インキュベートした細胞再懸濁液をマイクロ流体選別チップのC入口に通し、S入口に緩衝液を通し、次に、マイクロ流体選別チップをセルソーターに置いて選別プログラムを実行し、プログラム終了後、T出口から検体を収集して選別された栄養膜細胞を得ることである、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(3)における細胞選別の液相系が0.2%~0.4%のTriton‐X‐100である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)における細胞懸濁液の最適な系が、0.2%~0.4%のFBSを含む1×PBSである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヒトSTR同定、ヒト染色体倍数性検出、サラセミア遺伝子検出、難聴遺伝子検出、全エクソーム遺伝子配列決定、染色体微小欠失/重複検出、又は染色体構造変異検出の製品の構築における請求項1~8のいずれか一項に記載の方法の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分離の技術分野に属する。より具体的には、妊婦の子宮頸部剥離細胞から栄養膜細胞を分離及び選別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国では、妊娠前、出生前、及び新生児という3段階予防及び管理システムは、先天性欠損症を減らし、人口の質を向上させる重要な手段の1つであり、そのうち、出生前検査及び診断は、最も複雑で難易度が最も高い一環である。
【0003】
現在、臨床で出生前診断に使用される羊水穿刺又は臍静脈穿刺、及び胎児遊離核酸配列決定などの非侵襲的出生前診断技術にはいずれも様々な欠点がある。羊水穿刺又は臍静脈穿刺による採取方法は、感染や流産のリスクが高く、分析時間が長く、検出項目及び範囲が限られており、更に診断時間が妊娠中期及び後期に限られており、妊婦にあまり受け入れられず、臨床処置に不利である。胎児遊離核酸配列決定技術は、検出範囲が非常に限られており、また、3~5本の指定された染色体倍数性しか検出できず、偽陽性や偽陰性が避けられず、一般的な変異に対する検出能力が不十分であり、母体血中の胎児遊離核酸の含有量にも個人差があるなどの問題が存在する。
【0004】
本出願人の特許出願CN111304153Aは、栄養膜細胞を分離する方法を開示しており、この方法は、栄養膜細胞表面に発現する特異的抗原を特定することにより、対応する特異的抗体を有する免疫磁気ビーズ技術を使用して、胎盤栄養膜サンプル細胞懸濁液から胎盤栄養膜細胞を分離及び精製する。この技術は、従来の羊水穿刺及び絨毛生検と比較して、非侵襲性という利点を有し、また、早期に採取するため、感染や流産のリスクが低く、検査結果の信頼性も同等である。一方で、この技術にはまだ改善の余地があり、開示された適用可能な抗体の組み合わせは限られており、精度及び特異性を更に改善する必要がある。出願人チームは、このプロジェクトに対して継続的に研究開発を行っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、フローサイトメトリー又はマイクロ流体技術に基づいて、妊婦の子宮頸部剥離細胞から栄養膜細胞を分離及び選別する方法を提供することであり、この方法は、従来の方法の問題及び欠点を克服するだけでなく、より多くの抗原の同時標識並びに特徴的な蛍光シグナルの識別及び選別を同時に実現することもでき、精度が大幅に向上し、特異性も以前の免疫磁気ビーズ法よりも優れており、更に細胞の数及び質を両立できるという利点を有し、得られた細胞の数が多く、特異性及び感度が高い。
【0006】
本発明の上記の目的は、以下の技術的解決手段によって達成される。
【0007】
栄養膜細胞を分離する方法であって、この方法は、
(1)子宮頸部剥離細胞液サンプルをサンプル細胞懸濁液に調製するステップと、
(2)サンプル細胞懸濁液に特異的抗体を加えてインキュベートするステップであって、この特異的抗体は、栄養膜細胞表面又は細胞内に発現する特異的抗原に対応する抗体の組み合わせであり、好ましくは、特異的抗体の組み合わせは、HLA-G+CK7、HLA-G+CK18、HLA-G+β-HCG、CD31+HPL、MMP9+CD31、HLA-G+HPL、HLA-G+MMP9、HLA-G+CD31、HLA-G+P、CD31+P、HLA-G+CDH5、CD31+CDH5、CD31+CK7+HLA-G、HLA-G+CK18+CD31、HLA-G+β-HCG+CD31、CD31+HPL+HLA-G、MMP9+CD31+HLA-G、CD31+P+HLA-G又はHLA-G+CDH5+CD31である、ステップと、
(3)フローサイトメーターを使用して、ステップ(2)でインキュベートした細胞再懸濁液に選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得るか、又は、
マイクロ流体選別チップを使用して、ステップ(2)でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識してマイクロ流体細胞選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得るステップとを含む。
【0008】
好ましくは、ステップ(3)で使用されるマイクロ流体選別チップは、基板及びそれと貼り合わされたカバーシートを含み、アクリルを含むがこれに限定されないものを基本材料として射出成形技術によって製造され、
上記基板の一方の面には、主流路、側流路A及び側流路Bが設けられており、2つの側流路はそれぞれ、主流路の左端及び右端に近接しており、
上記基板の他方の面には、C入口、S入口、N出口及びT出口が設けられており、4つの口はすべて、上記基板の一方の面に貫通して流路と連通しており、且つC入口の位置が主流路の左端に対応し、S入口の位置が側流路Aの端部に対応し、N出口の位置が主流路の右端に対応し、T出口の位置が側流路Bの端部に対応しており、
上記主流路内には、N出口とT出口の合流点に偏向電極装置も設けられている。
【0009】
好ましくは、主流路、側流路A及び側流路Bの流路幅はいずれも1000μm以下であり、深さはいずれも500μm以下である。
【0010】
より好ましくは、主流路、側流路A及び側流路Bの流路幅はいずれも500~1000μmである。
【0011】
より好ましくは、主流路、側流路A及び側流路Bの流路幅はいずれも1000μmである。
【0012】
マイクロ流体選別チップでは、C入口には選別対象の混合細胞サンプルを通すことができ、S入口には緩衝液を通すことができ、T出口は標的細胞の収集用であり、N出口は非標的細胞の収集用である。
【0013】
選別工程において、標的細胞を含む混合サンプルはC入口からチップの主流路に流れ込み、緩衝液はS入口からチップの側流路に入り、両者は流路の交差点で混合してから、主流路に沿って同じ方向に流れ続ける。混合細胞が偏向電極装置を通って流れるとき、電極の開閉を制御することにより細胞が流入するパイプが選択され、標的細胞は選別されてT出口に到達し、非標的細胞は引き続き主流路に沿ってN出口に到達し、選別が完了する。
【0014】
また、好ましくは、ステップ(2)において、一次抗体のインキュベーション条件は、4℃で30~90分間、好ましくは、4℃で60分間、反応させることであり、二次抗体‐蛍光標識複合体のインキュベーション条件は、2℃~8℃で20分間反応させることである。
【0015】
好ましくは、ステップ(2)の具体的な方法は、インキュベーションによって一次抗体、二次抗体‐蛍光標識複合体を前後して段階的に標的抗原に特異的に結合させ、途中で洗浄及び遠心分離技術を用いて交叉汚染を回避することである。
【0016】
好ましくは、ステップ(3)の具体的な方法は、インキュベートした細胞再懸濁液をマイクロ流体選別チップのC入口に通し、S入口に緩衝液を通し、次に、マイクロ流体選別チップをセルソーターに置いて選別プログラムを実行し、プログラム終了後、T出口から検体を収集して選別された栄養膜細胞を得ることである。
【0017】
好ましくは、ステップ(3)における細胞選別の液相系は0.2%~0.4%のTriton‐X‐100、好ましくは0.3%のTriton‐X‐100である。より好ましくは、PBSを使用して調製する。
【0018】
好ましくは、ステップ(3)におけるフローサイトメーターによる選別の条件は、サンプルローディング速度を1000~2000イベント/秒に調整し、収集速度を5.0に調整することである。
【0019】
好ましくは、ステップ(1)における細胞懸濁液の最適な系は、0.2%~0.4%のFBSを含む1×PBS、好ましくは0.3%のFBSを含む1×PBSである。
【0020】
更に、ヒトSTR同定、ヒト染色体倍数性検出、サラセミア遺伝子検出、難聴遺伝子検出、全エクソーム遺伝子配列決定、染色体微小欠失/重複検出(ハイスループット配列決定法)、又は染色体構造変異検出(高密度チップ法)の製品の構築における上記方法の応用も、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0021】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0022】
本発明が提供するフローサイトメトリー又はマイクロ流体技術に基づいて胎盤栄養膜細胞を分離する方法は、従来の羊水穿刺及び絨毛生検と比較して、非侵襲的に検体を取得するという利点を有し、また、早期に採取するため、感染や流産のリスクが低く、検出結果の信頼性が高く、検出範囲も広い。この種の検体から胎児の完全なゲノム核酸サンプルを得ることができ、すべての遺伝性疾患の検出及び分析が可能になり、基本的に遺伝性疾患の検出(染色体倍数性、染色体構造変異CNV、ミトコンドリア、微小欠失/重複、単一遺伝子変異、SNP/STR遺伝特性検査など)を網羅することができる。
【0023】
本発明の方法は、かなりの数の細胞(数千、品質管理の設計された最低基準は2000を超える陽性細胞)を得ることができ、特別な操作なしで従来の分子検査技術を使用して検体を検出することができ、技術者及び実験装置に対する要件が高くなく、技術的難易度を下げ、使用コストを削減し、より多くの医療機関で実施でき、広く普及させることができる。
【0024】
また、本発明が提供する方法は、多重マーカーに基づく並行選別手段であり、より多くの抗原の同時標識並びに特徴的な蛍光シグナルの識別及び選別を同時に実現することができ、精度が大幅に向上し、従来の磁気ビーズ法などの技術と比較して、細胞の数及び質を両立できるという利点を有し、得られた細胞の数が多いだけでなく、細胞への損傷も少なく、更に得られた細胞の品質が良く、検出の特異性が高く、感度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】マイクロ流体選別チップの基板構造の概略図であり、図(a)及び図(b)はそれぞれ基板の2つの表面である。
【
図2】フローサイトメトリーによる選別で選択された単一蛍光標識陽性細胞集団である。
【
図3】フローサイトメトリーによる選別で選択された二重蛍光標識陽性細胞集団である。
【
図4】FAMで標識したチャネル1であり、「822-」は選別後の残りの検体であり、「822+」は選別された検体であり、「822」は選別前の検体である。
【
図8】選別後の合胞体性栄養膜細胞中のY染色体を含む検体のY-STR検出の結果を示す概略図である。
【
図9】選別された検体の難聴遺伝子検出の結果である。
【
図10】選別された検体のサラセミア遺伝子検出の結果である。
【
図11】検出された家族性病原性変異を持つ家系図である。
【
図14】本発明の方法によって選別された陽性細胞の写真である。
【
図15】本発明の方法による選別前後の陽性細胞及び陰性細胞の比較写真である。
【
図16】対照磁気ビーズ法によって選別された陽性細胞の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的な実施例と併せて本発明を更に説明するが、実施例は、いかなる形態においても本発明を限定するものではない。特に明記しない限り、本発明で使用される試薬、方法及び装置は、本技術分野における一般的な試薬、方法及び装置である。
【0027】
特に明記しない限り、以下の実施例で使用される試薬及び材料はいずれも市販されているものである。
【0028】
実施例1 マイクロ流体選別チップの設計
【0029】
妊婦の子宮頸部剥離細胞から栄養膜細胞を分離及び選別するために使用されるマイクロ流体選別チップの概略図を
図1に示す。
【0030】
マイクロ流体選別チップの構造設計は以下のとおりである。アクリルを含むがこれに限定されないものを基本材料として選択してチップを製造する。射出成形技術によって1つの基材に
図1に示すパイプ形状を形成し、パイプの幅を1000μm以下とし、深さを500μm以下とし、そして、もう1つの基材を貼り合わせて完全なチップを形成する。
【0031】
具体的には、マイクロ流体選別チップは、基板及びそれと貼り合わされたカバーシートを含み、
図1に示すように、上記基板の一方の面には、主流路、側流路A及び側流路Bが設けられており、2つの側流路はそれぞれ、主流路の左端及び右端に近接しており、すべての流路の幅はいずれも1000μmであり、
上記基板の他方の面には、C入口(細胞サンプル注入口)、S入口(緩衝液注入口)、N出口(非標的細胞貯蔵口)及びT出口(標的細胞貯蔵口)が設けられており、4つの口はすべて、上記基板の一方の面に貫通して流路と連通しており、且つC入口の位置が主流路の左端に対応し、S入口の位置が側流路Aの端部に対応し、N出口の位置が主流路の右端に対応し、T出口の位置が側流路Bの端部に対応しており、
C入口には選別対象の混合細胞サンプルを通すことができ、S入口には緩衝液を通すことができ、T出口は標的細胞の収集用であり、N出口は非標的細胞の収集用である。
【0032】
また、上記主流路には、細胞選別用の偏向電極装置も設けられており、偏向電極装置は具体的には、N出口とT出口の合流点に位置する。流動細胞シグナルの有無に応じて電極をオン/オフすることができる。負に帯電した細胞は、電極によって生成された電磁場において偏向され、N出口又はT出口のいずれかに通じる指定されたパイプに入る。
【0033】
選別工程において、標的細胞を含む混合サンプルはC入口からチップの主流路に流れ込み、緩衝液はS入口からチップの側流路に入り、両者は流路の交差点で混合してから、主流路に沿って同じ方向に流れ続ける。混合細胞が偏向電極装置を通って流れるとき、電極の開閉を制御することにより細胞が流入するパイプが選択され、標的細胞は選別されてT出口に到達し、非標的細胞は引き続き主流路に沿ってN出口に到達し、選別が完了する。
【0034】
選別が完了すると、チップを直ちに廃棄する。選別環境が清潔で、制御可能で、交叉汚染がないように、チップは、毎回選別する前に交換する必要がある。
【0035】
実施例2 マイクロ流体選別チップに基づいて妊婦の子宮頸部剥離細胞から栄養膜細胞を分離及び選別する
【0036】
一、栄養膜細胞を選別する方法は、以下のステップを含む。
1、子宮頸部剥離細胞液サンプルをサンプル細胞懸濁液に調製する。具体的な方法は以下の(1)~(5)に示すとおりである。
2、サンプル細胞懸濁液に特異的抗体を加えてインキュベートする。具体的な方法は以下の(6)~(14)に示すとおりである。
3、実施例1のマイクロ流体選別チップを使用して、ステップ2でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識してマイクロ流体細胞選別を行う。具体的な方法は以下の(15)~(18)に示すとおりである。
【0037】
ここで、特異的抗体の組み合わせを表1に示す。
【表1】
【0038】
二、具体的には、栄養膜細胞を選別する方法は以下のステップを含む。
(1)細胞保存液(子宮頸部剥離細胞)をシェーカーで5分間均一に混合する。
(2)保存液を取り出して15mlの遠心管に入れ、保存液の瓶に3mlの1×PBSを更に加え、振とうして均一に混合した後、取り出して15mlの遠心管に入れる。
(3)3000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを捨てる。
(4)1mlの1×PBSTを加え、均一に混合した後に1.5mlのEP管に移し、3000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを捨てる。
(5)ステップ4を2回繰り返して細胞懸濁液を調製する。
(6)200μlの0.3%のTriton X-100を加え、均一に混合した後に室温で20分間透過処理する。
(7)ステップ4を3回繰り返す。
(8)一次抗体を加える。一定割合で希釈したマウス抗ヒトCK7モノクローナル抗体、マウス抗ヒトCK18モノクローナル抗体、マウス抗ヒトβ‐HCGモノクローナル抗体、マウス抗ヒトMMP9モノクローナル抗体、マウス抗ヒトCDH5モノクローナル抗体、マウス抗ヒトPモノクローナル抗体、マウス抗ヒトhPLモノクローナル抗体、ウサギ抗ヒトHLA‐Gモノクローナル抗体、ウサギ抗ヒトCD31モノクローナル抗体 (abcam社)をそれぞれ200μl加え、均一に混合した後、4℃で60分間インキュベートする。
(9)ステップ4を3回繰り返す。
(10)二次抗体‐蛍光標識複合体を加える。一定割合で希釈したヤギ抗ウサギ抗体及びヤギ抗マウス抗体を200μl加え、均一に混合した後、37℃で60分間インキュベートする。
(11)ステップ4を3回繰り返した後、200μlの緩衝液(DPBS+0.1%BSA+2mM EDTA)で再懸濁する。
(12)2℃~8℃で20分間反応させる。
(13)1mlの1×PBSTを加え、均一に混合した後に1.5mlのEP管に移し、3000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを捨てる。
(14)ステップ(13)を2~3回繰り返し、200μlの1×PBSTを加えて再懸濁し、細胞再懸濁液を得る。
(15)得られた細胞再懸濁液を実施例1のマイクロ流体選別チップのC入口に通し、S入口に1×PBSTを通す。
(16)マイクロ流体選別チップをセルソーターのステージに載せて固定し、電源を入れて指定されたプログラムを設定して実行する。
(17)プログラム終了後、T出口から検体を収集して選別された栄養膜細胞を得る。
(18)N出口から検体を収集し、この検体は、栄養膜細胞が除去された子宮頸部剥離細胞の残りの細胞である。
【0039】
実施例3 フローサイトメーターに基づいて妊婦の子宮頸部剥離細胞から栄養膜細胞を分離及び選別する方法
【0040】
栄養膜細胞を選別する方法は以下のステップを含む。
1、子宮頸部剥離細胞液サンプルをサンプル細胞懸濁液に調製した。具体的な方法は実施例2の(1)~(5)に示すとおりである。
2、サンプル細胞懸濁液に特異的抗体を加えてインキュベートした。具体的な方法は実施例2の(6)~(14)に示すとおりである。ここで、特異的抗体の組み合わせは上記の表1に示す通りである。
3、フローセルソーター(BDFACSAria II型、米国)を使用して、ステップ2でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識して選別した。以下のステップを含む。
1)フローサイトメーターの電源を入れ、操作説明に従って日常の起動操作をした。
2)液体の流れのブレイクオフポイントが窓の中上部にあるように、機器の液体の流れを調整した。
3)選別経路を調整し、ドロップディレイを確認し、サンプルローディング速度を1000~2000イベント/秒に調整した。
4)収集装置として5mlのフローサイトメトリー用チューブを選択し、選別細胞数を3000とし、方向を左とし、選別する細胞集団を追加し、順番にゲーティングを行い、収集チューブに入れた。
5)インキュベートした細胞懸濁液をサンプル注入チャンバに入れ、収集速度を5.0に設定し、サンプルをロードした。
6)電圧を300~ 500Vの範囲で調整して、蛍光色素間の補償をできるだけ小さくし、陽性細胞が中央になるようにゲート位置を調整し、ゲート内の細胞を収集した。収集チューブ内の細胞は選択された標的細胞であった。
【0041】
図2及び
図3に示すように、特定の標識の組み合わせに従って、標的細胞集団を得た。ここで、
図2は単一蛍光標識の選別結果であり、
図3は二重蛍光標識の選別結果である。
【0042】
実施例4 方法の応用例―ヒトSTR同定
【0043】
1、上記実施例2の方法に従って、サンプル(子宮頸部剥離細胞)から栄養膜細胞を選別及び分離した。
【0044】
2、分離した栄養膜細胞及び妊婦の子宮頸部剥離細胞からDNAを抽出した。
1)選別した栄養膜細胞(実施例2の方法による細胞選別のステップ17で得られた栄養膜細胞)、及び実施例2の方法による細胞選別のステップ18で得られた細胞(栄養膜細胞が除去された子宮頸部剥離細胞の残りの細胞)をそれぞれ、12000rpmで3分間遠心分離した。
2)上澄みを捨て、200μlの溶液Pを加えてペレットを再懸濁した。
3)20μlのプロテアーゼK及び200μlの溶液Lを加えて、均一に混合した。
4)56℃で20分間インキュベートし、転倒して均一に混合した。
5)200μlの無水エタノールを加えてよく混合し、吸着カラムに移し、10000rpm で1分間遠心分離し、収集チューブ内の廃液を捨てた。
6)500μlのW1を加え、10000rpmで1分間遠心分離し、収集チューブ内の廃液を捨てた。
7)500μlのW2を加え、10000rpmで1分間遠心分離し、収集チューブ内の廃液を捨てた。
8)500μlのW2を加え、10000rpmで1分間遠心分離し、収集チューブ内の廃液を捨てた。
9)空のチューブを12000rpmで3分間遠心分離し、収集チューブを捨てた。
10)吸着カラムを新しい1.5mlの遠心管に入れ、キャップを開けて2分間静置し、50μlのTEを加え、5分間静置した後、12000rpmで2分間遠心分離し、カラムを捨てた。
11)抽出したDNAの濃度及び純度を測定した。
【0045】
3、分離した栄養膜細胞及び妊婦の子宮頸部剥離細胞からDNAを抽出した後、Microread D‐21ヒトSTR同定キットを使用してPCR増幅を行い、3500xLシーケンサーを使用してPCR産物のキャピラリー電気泳動分析を行い、G5-Matrix Standardを使用して機器の蛍光キャリブレーションを行うと同時に、対応するPanels、binsファイルを作成し、ソフトウェアGeneMapper ID version 3.0で結果を分析した。
【0046】
4、STR検出を行った。
1)PCR増幅を行った。PCR増幅系は表2に示すとおりである。
【表2】
PCR反応プログラム:50℃、10分間;96℃、4分間;(94℃、5秒;60℃、1 分10秒)×27サイクル;60℃、30分間;15℃、保存。
2)STR検出結果
説明書に従って8.7μlのHidiと0.3μlのインターナルコントロールを均一に混合し、1mlの増幅産物を加え、3500xLシーケンサーを使用してPCR産物のキャピラリー電気泳動分析を行い、G5-Matrix Standardを使用して機器の蛍光キャリブレーションを行うと同時に、対応するPanels、binsファイルを作成し、ソフトウェアGeneMapper ID version 3.0で結果を分析した。結果を
図4~
図7に示す。この結果は、妊婦自身のDNAに加えて、検体には実際に別の独立した個人のDNA情報が存在し、且つそれが妊婦自身と強い血縁関係を持っていることを示す。
3)Y‐STR検出
Microread40Yキットを使用して、STRで検出したY染色体の検体にY‐STR検出を行った。結果を
図8に示す。この結果は、この検体に男性のDNAが存在することを示す。
【0047】
実施例5 方法の応用例―難聴感受性遺伝子の検出
【0048】
実施例2に記載の方法及び市販キット(難聴感受性遺伝子検出キット(PCR+フロースルーハイブリダイゼーション法)、潮州凱普生物化学有限公司、国械注準20153401698)を使用して妊婦の子宮頸部剥離細胞(サンプル源:広州凱普医学検験所)に対して難聴感受性遺伝子の検出を行い、具体的には、難聴関連遺伝子(GJB2、GJB3、SLC26A4及びmtDNA)の9つの変異部位(mtDNA1494、mtDNA1555、SLC26A4-IVS7(-2)、SLC26A4-2168、GJB2-35、GJB2-176、GJB2-235、GJB2-299、GJB3-538)を検出した。
【0049】
実施例4に記載の妊婦の子宮頸部剥離細胞からDNAを抽出する方法で抽出し、次に市販キット(難聴感受性遺伝子検出キット(PCR+フロースルーハイブリダイゼーション法)、潮州凱普生物化学有限公司、国械注準20153401698)を使用して後続の検出を行った。具体的な操作については説明書を参照されたい。元の結果を
図9に示し、結果分析を表3に示す。
【表3】
【0050】
この結果は、この試験の検出結果が臨床検出結果と一致することを示す。
【0051】
実施例6 方法の応用例―サラセミア関連遺伝子の検出
【0052】
実施例2に記載の方法及び市販キット(α‐及びβ‐ラセミア遺伝子検出キット(PCR+膜ハイブリダイゼーション法)、潮州凱普生物化学有限公司、国食薬監械(準)字2012第3400399 号)を使用して妊婦の子宮頸部剥離細胞(サンプル源:凱普医学検験所によって検出されたヒト由来検体の残りの核酸サンプル)に対して難聴感受性遺伝子の検出を行い、具体的には、一般的な3種のα‐サラセミア欠失型(--SEA、-α3.7、-α4.2)、2種のα‐サラセミア変異型(CS、QS)及び11種のβ‐サラセミア変異型(CD14-15、CD17、CD27-28、CD41-42、CD43、CD71-72、-28、-29、IVS-I-1、IVS-II-654、β EN)を検出した。
【0053】
実施例4に記載の妊婦の子宮頸部剥離細胞からDNAを抽出する方法で抽出し、次に市販キット(α‐及びβ‐ラセミア遺伝子検出キット(PCR+膜ハイブリダイゼーション法)、潮州凱普生物化学有限公司、国食薬監械(準)字2012第3400399 号)を使用して後続の検出を行った。具体的な操作については説明書を参照されたい。元の結果を
図10に示し、結果分析を表4に示す。
【表4】
【0054】
この結果は、この試験の検出結果が臨床検出結果と一致することを示す。
【0055】
実施例7 方法の応用例―全エクソーム遺伝子配列決定
【0056】
1、実施例2に記載の方法に従って、既知の難聴家系(父、母(妊娠16週)、長男(ろう児)、末っ子(ろう児))から、妊婦の子宮頸部剥離細胞検体及び羊水検体を得て、そして妊婦自身及び他の家族メンバーから全血検体を採取し、DNAを抽出し(妊婦の子宮頸部剥離細胞を選別した後、実施例4に記載の抽出方法に従って検体を取得し、羊水及び全血検体をヒト全血ゲノムDNA抽出キット(凱普生物、中国)で抽出した(サンプル源:凱普医学検験所によって検出されたヒト由来検体))、得られたヒトゲノムDNAに対してヒト全エクソーム検出キット(艾吉泰康生物科技(北京)有限公司、製品番号T086V4)を使用して全エクソーム遺伝子配列決定(WES)を行った。
【0057】
ゲノムDNAをトランスポザーゼTn5で処理して300bp断片を生成し、DNAライブラリを構築した。両端にアダプターP5、P7、index1、2を付加した。適切な長さのDNA断片を選択し、増幅及び精製した。ビオチンを含むエクソンプローブライブラリとハイブリダイズした。ビオチンbiotinとストレプトアビジンの強い結合能力を利用して、ストレプトアビジンを含む磁気ビーズを標的ライブラリに結合したプローブと結合させた。磁気ビーズを吸着し、上澄みを取り除いた。磁気ビーズ上のDNAを溶出し、ライブラリをPCRで増幅した。ライブラリの品質を確認した。機器で配列決定した。
【0058】
2、全エクソーム配列決定結果
ハイスループット配列決定技術を使用して全エクソーム検出を行い、検出した病原性遺伝子座又は疑似病原性遺伝子座をSanger配列決定を使用して検証した。検査に送るサンプルは、妊娠16週の羊水検体であり、兄2人は聾唖で、両親は正常であった。サンプルからCDH23遺伝子c.8363T>C(p.Leu2788Pro)ヘテロ接合変異、及びGJB2遺伝子c.109G>A(p.Val27Ile)ヘテロ接合変異を検出した。家系図を
図11に示す。
【0059】
この結果は、選別後の剥離細胞検体から病原性変異を効果的に検出することができることを示しており、これは、羊水検体と完全に一致している。検出結果により、この家系の病因及び病原性変異の保因者を突き止めることができる。
【0060】
実施例8 方法の応用例―全ゲノムDNAコピー数多型(CNV)検出
【0061】
1、Phalanx Biotech社のCytoOneArray染色体チップ及び付属の検出キットを使用して、比較ゲノムハイブリダイゼーション技術の原理(aCGH)に従って全ゲノムDNAコピー数多型を検出した。
実施例2の方法によって選別された栄養膜細胞を、実施例4に記載の妊婦の子宮頸部剥脱細胞からDNAを抽出する方法で抽出し、得られたヒトゲノムDNAを断片化し、予備増幅し、増幅し、PCR産物を精製した後、2種類の異なる蛍光色素で標識した(正常サンプルはCy3で標識されて緑色を呈し、患者サンプルはCy5で標識されて赤色を呈した)。
蛍光産物を精製してチップに注入し、チップを洗浄してスキャンして結果を得た。
【0062】
2、全ゲノムDNAコピー数多型(CNV)検出結果
【0063】
全染色体の概略図を
図12に示し、異常染色体の概略図を
図13に示す。
図13において、横軸は染色体バンドの概略図であり、縦軸はサンプルと標準サンプルとのシグナル比(log2比で表す)である。染色体のコピー数に有意な差がある場合、異なる色で示す。染色体が増幅される領域(Gain)を青色で、染色体が欠失する領域(Loss)を赤色で示す。図中の黒い線の長さと値は、それぞれ各セグメント(Segment)のサイズと信号の平均値を表す。
【0064】
このサンプルでは、1つの異常が検出され、この異常は22q11.21欠失であり、異常断片の始点‐終点[UCSC hg19]はarr22q11.21(19006943_21461068)x1であり、異常断片のサイズは2.454Mbである。関連疾患領域はPathogenic(病原性、ACMG分類)であり、この異常は、TBX1、CRKL、GP1BB、SLC25A1、DGCR10、TSSK1A、GSC2、CLTCL1などの106個のISCA遺伝子をカバーしている。この領域の異常は、22q11.2重複(DGS/VCFS)領域(TBX1を含む)にある。22q11.2近端(A~D)領域の欠失は、ディジョージ/口蓋心臓顔面(DGS/VCFS)症候群に関連しており、臨床症状は通常、先天性心疾患、心臓異常、特徴的な顔面特徴、DD/ID、行動上の問題、免疫不全、及び低カルシウム血症(PMID25217958)である。この領域の異常は、22q11.2重複領域(中央、B/C-D)(CRKLを含む)にあり、この領域の欠失から生じる可能性のある臨床表現型は、顔面異形症、発育不全/低身長、中枢神経系の異常/発作、発達遅延、知的障害、骨格異常、心血管障害、泌尿生殖器異常、及び免疫不全/反復性感染症(PMID25123976)を含む。
【0065】
この結果は、この選別された細胞検体から染色体構造変異を効果的に検出し、対応する突然変異を検出することができることを示す。
【0066】
実施例9 マイクロ流体選別チップに基づいて妊婦の子宮頸部剥離細胞から栄養膜細胞を分離及び選別する方法と磁気ビーズ法との比較
【0067】
(1)実験サンプル
凱普医学検験所によって検出されたヒト由来検体からの2つの子宮頸部剥離細胞液サンプル。
【0068】
(2)対照実験として磁気ビーズ法を使用して、2つの方法の効果の違いを比較した。本発明の方法は実施例2と同じである。
【0069】
磁気ビーズ法による栄養膜細胞の選別プロセスは、以下のとおりである。
(1)採取した妊婦の子宮頸部剥離細胞保存液検体を5分間振とうして均一に混合した。
(2)保存液を取り出して15mlの遠心管に入れ、保存液の瓶に3mlの細胞分離液を更に加え、振とうして均一に混合した後、取り出して15mlの遠心管に入れた。
(3)3000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
(4)1mlの1×PBSTを加え、均一に混合した後に1.5mlのEP管に移し、3000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
(5)ステップ4を2回繰り返した。
(6)200μlの0.5%のTriton X-100を加え、均一に混合した後に室温で20分間透過処理した。
(7)ステップ4を3回繰り返した。
(8)200μlの一次抗体を加えて均一に混合し、4℃で一晩保存した。
(9)ステップ4を3回繰り返した。
(10)200μlの二次抗体を加えて均一に混合し、37℃で1時間反応させた。
(11)ステップ4を3回繰り返した後、200μlの緩衝液(DPBS+0.1%BSA+2mM EDTA)で再懸濁した。
(12)25μlのビーズと50μlの緩衝液をよく混合し、600gで10分間遠心分離し、上澄みを捨て、25μlの緩衝液で再懸濁し、ステップ(11)の混合液に加えた。
(13)2℃~8℃で20分間反応させた。
(14)1mlの緩衝液を加えて均一に混合し、磁気スタンド上に2分間静置した後、上澄みを捨てた(比較用に200μl残した)。
(15)ステップ(14)を2~3回繰り返した。
(16)37℃で予熱した緩衝液200μlを加えて再懸濁し、4μlの放出緩衝液を加えて均一に混合した。
(17)室温で15分後、ピペットで5~10回ピペッティングし、磁気スタンド上に2分間静置した後、上澄みを収集した。
(18)200μlの緩衝液を加え、5~10回ピペッティングし、磁気スタンド上に2分間静置した後、上澄みを収集した。
(19)ステップ(18)を3回繰り返し、最終的に栄養膜細胞を得た。
【0070】
(三)結果
図14~
図16に示すように、選別によって得られた陽性細胞を舜宇RX50蛍光顕微鏡で撮影した。
図14は、本発明の方法によって選別された陽性細胞の写真であり、
図15は、本発明の方法による選別前後の陽性細胞及び陰性細胞の比較写真であり、
図16は、磁気ビーズ法によって選別された陽性細胞の写真である。比較から、2つの方法で選別された細胞数の桁数が大きく異なることが明らかに分かる。本発明の方法は、磁気ビーズ法よりも有意に優れており、統計によれば、本発明の方法によって選別された陽性細胞の数は、約3000~13000に達する可能性があることが示されている。
【0071】
上記の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示すものに過ぎず、その説明は具体的且つ詳細であるが、本発明の特許の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの修正及び改善を行うことができ、それらはすべて本発明の保護範囲に属することに留意されたい。したがって、本発明の特許の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従うものとする。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養膜細胞を分離する方法であって、
(1)子宮頸部剥離細胞液サンプルをサンプル細胞懸濁液に調製するステップ
であって、該細胞懸濁液の最適な系が、0.2%~0.4%のFBSを含む1×PBSであるステップと、
(2)サンプル細胞懸濁液に特異的抗体を加えてインキュベートするステップであって、
一次抗体のインキュベーション条件は、4℃で30~90分間反応させることであり、二次抗体‐蛍光標識複合体のインキュベーション条件は、2℃~8℃で20分間反応させることであり、前記特異的抗体は、栄養膜細胞表面又は細胞内に発現する特異的抗原に対応する抗体の組み合わせであり、即ち、該組み合わせはHLA-G+CK7、HLA-G+CK18、HLA-G+β-HCG、CD31+HPL、MMP9+CD31、HLA-G+HPL、HLA-G+MMP9、HLA-G+CD31、HLA-G+P、CD31+P、HLA-G+CDH5、CD31+CDH5、CD31+CK7+HLA-G、HLA-G+CK18+CD31、HLA-G+β-HCG+CD31、CD31+HPL+HLA-G、MMP9+CD31+HLA-G、CD31+P+HLA-G又はHLA-G+CDH5+CD31の特異的抗体である、ステップと、
(3)フローサイトメーターを使用して、ステップ(2)でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識して選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得るか、又は
マイクロ流体選別チップを使用して、ステップ(2)でインキュベートした細胞再懸濁液を蛍光標識してマイクロ流体細胞選別を行い、分離及び精製された胎盤栄養膜細胞を得るステップとを含
み、
細胞選別の液相系が0.2%~0.4%のTriton‐X‐100であり、
前記マイクロ流体選別チップは、基板及びそれと貼り合わされたカバーシートを含み、
前記基板の一方の面には、主流路、側流路A及び側流路Bが設けられており、2つの側流路はそれぞれ、主流路の左端及び右端に近接しており、
前記基板の他方の面には、C入口、S入口、N出口及びT出口が設けられており、2つの入口及び2つの出口はすべて、前記基板の一方の面に貫通して流路と連通しており、且つC入口の位置が主流路の左端に対応し、S入口の位置が側流路Aの端部に対応し、N出口の位置が主流路の右端に対応し、T出口の位置が側流路Bの端部に対応しており、
前記主流路内には、N出口とT出口の合流点に偏向電極装置も設けられており、
主流路、側流路A及び側流路Bの流路幅がいずれも1000μm以下であり、深さがいずれも500μm以下である、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(2)の具体的な方法は、インキュベーションによって
前記一次抗体、
前記二次抗体‐蛍光標識複合体を前後して段階的に標的抗原に特異的に結合させ、途中で洗浄及び遠心分離技術を用いて交叉汚染を回避することである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(3)の具体的な方法は、インキュベートした細胞再懸濁液をマイクロ流体選別チップのC入口に通し、S入口に緩衝液を通し、次に、マイクロ流体選別チップをセルソーターに置いて選別プログラムを実行し、プログラム終了後、T出口から検体を収集して選別された栄養膜細胞を得ることである、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
ヒトSTR同
定の製品の構築における請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【請求項5】
ヒト染色体倍数性検出の製品の構築における請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【請求項6】
サラセミア遺伝子検出の製品の構築における請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【請求項7】
難聴遺伝子検出の製品の構築における請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【請求項8】
全エクソーム遺伝子配列決定の製品の構築における請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【請求項9】
染色体微小欠失/重複検出の製品の構築における請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【請求項10】
染色体構造変異検出の製品の構築における請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の応用。
【国際調査報告】