IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナントケーウエスト,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-527261COVID-19の治療及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】COVID-19の治療及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/50 20060101AFI20230621BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230621BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230621BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230621BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 15/81 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230621BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C12N15/50
A61P31/14 ZNA
A61P37/04
A61P11/00
A61K39/39
A61K39/215
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K36/064
A61K9/127
A61K47/02
A61K9/51
C12N15/861 Z
C12N15/81 Z
C12N7/01
C12N1/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554944
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 US2021021737
(87)【国際公開番号】W WO2021183665
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/988,328
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/009,960
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/010,010
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/883,263
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/059,975
(32)【優先日】2020-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/064,157
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/117,460
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/117,922
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/118,697
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/135,380
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/117,847
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/198,164
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】520393015
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ImmunityBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、スン-シオン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、シーリング
(72)【発明者】
【氏名】アニー、シン
(72)【発明者】
【氏名】レナード、センダー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー、サフリット
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン、ライス
(72)【発明者】
【氏名】シャールーズ、ラビザド
(72)【発明者】
【氏名】カイバン、ニアジ
(72)【発明者】
【氏名】リーゼ、ガイサート
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス、ガビッチ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA72X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA45
4C076AA19
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC06
4C076CC15
4C076DD25
4C076DD25A
4C076DD67
4C076DD67H
4C076FF01
4C076FF11
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA24
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085EE01
4C085EE05
4C085EE06
4C085FF13
4C085FF14
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC11
4C087BC12
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA05
4C087MA24
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZB09
4C087ZB33
(57)【要約】
対象におけるコロナウイルスに対する免疫を誘導するためのワクチン組成物は、N-ETSD、エンドソーム標的配列を含む修飾ヌクレオカプシドタンパク質をコードする、及び/又はS-融合物、改善された表面発現を有する修飾スパイクタンパク質をコードする組換え核酸を含む。ワクチンは、組換え核酸、組換え酵母、及び/又はアデノウイルスなどの組換えウイルスとして製剤化されてもよく、注射及び/又は粘膜送達を介して投与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.エンドソーム標的配列に融合された重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質(N)(N-ETSD)をコードする第1の部分であって、N-ETSD発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合されている、第1の部分と、
b.SARSウイルススパイクタンパク質(S)をコードする第2の部分であって、S発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合されている、第2の部分と、
を含む組換え核酸。
【請求項2】
前記SARSウイルスがSARS-CoV-2である、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項3】
前記N-ETSDの前記エンドソーム標的配列が、前記第1の部分の5’末端にコードされる、請求項2に記載の組換え核酸。
【請求項4】
前記N-ETSDの前記エンドソーム標的配列が、前記第1の部分の3’末端にコードされる、請求項2に記載の組換え核酸。
【請求項5】
前記第1及び第2の部分が、バイシストロン性配列で配列される、請求項2に記載の組換え核酸。
【請求項6】
前記N-ETSDが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の組換え核酸。
【請求項7】
前記N-ETSDが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の組換え核酸。
【請求項8】
前記第1の部分が、配列番号2のヌクレオチド配列を有する、請求項7に記載の組換え核酸。
【請求項9】
前記Sタンパク質が、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の組換え核酸。
【請求項10】
前記Sタンパク質が配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の組換え核酸。
【請求項11】
前記Sタンパク質が配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の組換え核酸。
【請求項12】
前記第2の部分が配列番号5のヌクレオチド配列を有する、請求項9に記載の組換え核酸。
【請求項13】
前記第2の部分が配列番号6のヌクレオチド配列を有する、請求項9に記載の組換え核酸。
【請求項14】
同時刺激性分子又は免疫刺激性サイトカインをコードする第3の部分をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項15】
ウイルス又は酵母発現ベクターに組み込まれている、請求項1~14のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項16】
前記ウイルス発現ベクターが、E1遺伝子領域欠失及びE2b遺伝子領域欠失を有するアデノウイルス発現ベクターである、請求項15に記載の組換え核酸。
【請求項17】
前記酵母発現ベクターが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の発現ベクターである、請求項15に記載の組換え核酸。
【請求項18】
前記核酸がデオキシリボ核酸(DNA)である、請求項1~17のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項19】
E1遺伝子欠失、E2b遺伝子欠失、及び
a.SARSコロナウイルスN-ETSDをコードする第1の部分であって、N-ETSD発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合されている、第1の部分と、
b.SARS Sタンパク質をコードする第2の部分であって、S発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに各々機能的に結合されている、第2の部分と、
を含む組換え核酸を含む組換え複製欠損アデノウイルス。
【請求項20】
前記SARSウイルスがSARS-CoV-2である、請求項19に記載のアデノウイルス。
【請求項21】
前記N-ETSDのエンドソーム標的配列が、前記第1の部分の5’末端にコードされる、請求項20に記載のアデノウイルス。
【請求項22】
前記N-ETSDのエンドソーム標的配列が、前記第1の部分の3’末端にコードされる、請求項20に記載のアデノウイルス。
【請求項23】
前記第1及び第2の部分が、バイシストロン性配列で配列される、請求項22に記載のアデノウイルス。
【請求項24】
前記N-ETSDが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項22に記載のアデノウイルス。
【請求項25】
前記N-ETSDが、配列番号1のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を有する、請求項24に記載のアデノウイルス。
【請求項26】
前記第1の部分が配列番号2のヌクレオチド配列を有する、請求項24に記載のアデノウイルス。
【請求項27】
前記Sタンパク質が、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項24に記載のアデノウイルス。
【請求項28】
前記Sタンパク質が配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載のアデノウイルス。
【請求項29】
前記Sタンパク質が配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載のアデノウイルス。
【請求項30】
前記第2の部分が配列番号5のヌクレオチド配列を有する、請求項27に記載のアデノウイルス。
【請求項31】
前記第2の部分が配列番号6のヌクレオチド配列を有する、請求項27に記載のアデノウイルス。
【請求項32】
同時刺激性分子又は免疫刺激性サイトカインをコードする第3の部分をさらに含む、請求項19~31のいずれか1項に記載のアデノウイルス。
【請求項33】
前記組換えアデノウイルスがE3遺伝子領域欠失を有する、請求項19~32のいずれか1項に記載のアデノウイルス。
【請求項34】
a.SARSコロナウイルスN-ETSDをコードする第1の部分であって、N-ETSD発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合されている、第1の部分と、
b.SARS Sタンパク質をコードする第2の部分であって、S発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに各々機能的に結合されている、第2の部分と、
を含む組換え核酸を含む組換え酵母。
【請求項35】
前記SARSウイルスがSARS-CoV-2である、請求項34に記載の組換え酵母。
【請求項36】
前記N-ETSDのエンドソーム標的配列が、ヌクレオカプシドタンパク質の5’末端にコードされる、請求項35に記載の組換え酵母。
【請求項37】
前記N-ETSDのエンドソーム標的配列が、ヌクレオカプシドタンパク質の3’末端にコードされる、請求項35に記載の組換え酵母。
【請求項38】
前記第1及び第2の部分が、バイシストロン性配列で配列される、請求項37に記載の組換え酵母。
【請求項39】
前記N-ETSDが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項37に記載の組換え酵母。
【請求項40】
前記N-ETSDが配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項49に記載の組換え酵母。
【請求項41】
前記第1の部分が配列番号2のヌクレオチド配列を有する、請求項40に記載の組換え酵母。
【請求項42】
前記Sタンパク質が、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項39に記載の組換え酵母。
【請求項43】
前記Sタンパク質が配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項42に記載の組換え酵母。
【請求項44】
前記Sタンパク質が配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項42に記載の組換え酵母。
【請求項45】
前記第1の部分が、配列番号5のヌクレオチド配列を有する、請求項42に記載の組換え酵母。
【請求項46】
前記第1の部分が、配列番号6のヌクレオチド配列を有する、請求項42に記載の組換え酵母。
【請求項47】
同時刺激性分子又は免疫刺激性サイトカインをコードする第3の部分をさらに含む、請求項35~46のいずれか1項に記載の組換え酵母。
【請求項48】
前記酵母がサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)である、請求項35~47のいずれか1項に記載の組換え酵母。
【請求項49】
前記酵母が溶解酵母である、請求項48に記載の組換え酵母。
【請求項50】
請求項1~18のいずれか1項に記載の組換え核酸を含むワクチン組成物。
【請求項51】
前記組換え核酸が、脂質ナノ粒子中にカプセル化される、請求項50に記載のワクチン組成物。
【請求項52】
請求項19~33のいずれか1項に記載の組換え複製欠損アデノウイルスと混合されたアラゴナイト粒子を含むワクチン組成物であって、前記組換え複製欠損アデノウイルスが凍結乾燥される、ワクチン組成物。
【請求項53】
前記アラゴナイト粒子が、100nm~1mmの平均粒径を有する、請求項52に記載のワクチン組成物。
【請求項54】
SARSウイルスに対するワクチンの生成に使用するための、請求項1~18のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項55】
SARSウイルスに対する免疫の誘導に使用するための、請求項1~18のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項56】
SARSウイルスに対する免疫の誘導に使用するための、請求項19~33のいずれか1項に記載の組換え複製欠損アデノウイルス。
【請求項57】
SARSウイルスに対する免疫の誘導に使用するための、請求項34~49のいずれか1項に記載の組換え酵母。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本発明者らの同時継続中の2020年3月11日出願の米国仮特許出願第62/988,328号、2020年4月14に出願の第63/009,960号、2020年4月14日出願の第63/010,010号、2020年8月1日出願の第63/059,975、2020年8月11日出願の第63/064,157号、2020年11月24日出願の第63/117,460号、2020年11月24日出願の第63/117,847号、2020年11月24日出願の第63/117,922号、2020年11月26日出願の第63/118,697号、2021年1月8日出願の第63/135,380号、及び2020年5月26日出願の米国仮特許出願第16/883,263号、及び本明細書と同時に出願され、参照番号102538.0080US3を有する米国非仮特許出願、表題「Anti COVID-19 Therapies targeting nucleocapsid and spike proteins」に対する優先権を主張し、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
172KBのサイズを有する102690-0041PCT_REV003_ST25.txtと命名された配列表のASCIIテキストファイルの内容は、2021年3月4日に作成され、本願と共にEFS-Webを介して電子的に提出され、その全体が参照により組み込まれる。
【0003】
本開示の分野は、コロナウイルスに対する免疫を生成するためのワクチン組成物及び方法であり、特にSARS-CoV-2に関連する。
【背景技術】
【0004】
背景技術の説明は、本開示を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれも、先行技術であるか、又は現在特許請求されている発明に関連すること、又は具体的に若しくは暗示的に参照されるいずれの刊行物も、先行技術であることを認めるものではない。
【0005】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、個々の各刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個々に示されているのと同程度に、参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書で提供されるその用語の定義と一致しないか又は反対である場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【0006】
SARS-CoV2診断試験は比較的短時間で利用可能となったが、疾患を治療するための多数の試みはこれまで、矛盾した又は決定的でない結果を示している。最も典型的には、重症症状を有する患者は、呼吸/血液酸素化を維持するために治療される。COVID19死亡率は、特に高齢者、免疫不全者、及び心疾患、肺疾患、又は糖尿病を有する個人において顕著である。急性期のケアの改善にもかかわらず、社会的距離及び他の公衆衛生緩和措置が中程度の緩和しか提供できないため、疾患の封じ込めが極めて重要であることが明らかになっている。
【0007】
そのために、多数の候補抗SARS-CoV2ワクチン組成物がウイルスの1つ以上のタンパク質を標的とする(例えば、FIMMU 2020、11:602256を参照されたい)。例えば、Sinovac及びSinopharmは、現在、不活化ウイルスワクチン調製物を試験している。Cansino Biologics、Janssen Pharma、Oxford University、及びGarnaleyaは、1つ以上のウイルスタンパク質をコードする非複製アデノウイルスベクターに基づくワクチンを開発した。Novamaxは、タンパク質サブユニットベースのワクチンを生産した。より最近では、Moderna及びPfizerからのRNAベースのワクチンがいくつかの管轄区域において承認されている。これらのワクチンのほとんどは、疾患をもたらす感染に対して少なくともいくらかの(典型的には非無菌の)免疫を誘導するが、防御が数ヶ月にわたって有効であるかどうか、及び/又は十分な免疫記憶が長期間にわたって接種された個体を保護するかどうかは不明である。さらに、そのようなワクチンが臨床的に意味のあるT細胞ベースの応答を生じるかどうかは不明である。
【0008】
特定のワクチンが使用可能になったが、迅速且つ世界的な規模でのワクチンの流通及び投与は、かなりの困難に直面し、世界的な流通を遅らせている。さらに、ロジスティック要件及び医療専門家の必要性は、特定のワクチン接種基盤への管理を制限する。
【0009】
このような困難を克服するために、ワクチンの固体剤形が望まれる。しかしながら、そのような剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤)は、生理学的に関連する位置での活性成分の崩壊及び放出を必要とする。活性成分を負荷した剤形は、製造時から投与までの輸送及び保存中に安定でなければならない。ワクチンの粘膜又は経口送達は、そのような投与が粘膜又は腸感染に対する免疫に重要であるIgA、IgE、及びIgMクラス抗体の生成を補助するので、非常に望ましいであろう。残念ながら、そのようなワクチンは入手できない。
【0010】
SARS-CoV-2に対する免疫を誘導するための様々なワクチン組成物及び方法が当技術分野において公知であるが、全てがいくつかの欠点に悩まされている。したがって、改善されたワクチン組成物及び方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々なワクチン組成物及びそのための方法が本明細書に開示され、ここでコロナウイルスの組換え修飾ヌクレオカプシドタンパク質及び/又は修飾スパイクタンパク質が対象におけるコロナウイルスに対する免疫を誘導する。最も好ましくは、組換えタンパク質は、組換えウイルスの一部として、及び/又は組換え酵母若しくは酵母溶解物の一部として、脂質製剤中で送達することができる組換え核酸にコードされる。
【0012】
エンドソーム標的配列に融合した重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質(N)(N-ETSD)をコードする第1の部分であって、N-ETSD発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合されている、第1の部分と、SARSウイルススパイクタンパク質(S)をコードする第2の部分であって、S発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに各々機能的に結合されている、第2の部分とを含む組換え核酸も本明細書に開示される。
【0013】
いくつかの実施形態では、SARSウイルスはSARS-CoV-2であり、及び/又はN-ETSDのエンドソーム標的配列は、第1の部分の5’末端及び/又は3’末端にコードされている。さらなる実施形態では、第2の部分は、表面発現に最適化されたSをコードする。第1及び第2の部分は、バイシストロン性配列に配列され得る。例えば、N-ETSDは、アミノ酸配列配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。第1の部分は、特定の実施形態では、ヌクレオチド配列配列番号2を有し得る。別の例では、Sタンパク質又はS-融合タンパク質は、アミノ酸配列配列番号3(例えば、配列番号3)に対して少なくとも90%の同一性、又は配列番号4(例えば、配列番号4)に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。第2の部分は、特定の実施形態では、ヌクレオチド配列配列番号5又は配列番号6を有し得る。
【0014】
尚さらなる実施形態では、組換え核酸はさらに、同時刺激性分子又は免疫刺激性サイトカインをコードする第3の部分を含むことができる。組換え核酸はまた、ウイルス又は酵母発現ベクター(例えば、E1遺伝子領域欠失及びE2b遺伝子領域欠失を有するアデノウイルス発現ベクター、及び/又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の酵母発現ベクター)に組み込まれ得る。最も典型的には、必ずしもそうではないが、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)である。
【0015】
E1遺伝子欠失、E2b遺伝子欠失、及びSARSコロナウイルスN-ETSDをコードする第1の部分を含む組換え核酸を含む組換え複製欠損アデノウイルスが本明細書に記載される。第1の部分は、N-ETSD発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合される。アデノウイルスはまた、SARS Sタンパク質をコードする第2の部分を含む。第2の部分は、各々、S発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合される。
【0016】
さらなる実施形態では、アデノウイルスはさらに、同時刺激性分子若しくは免疫刺激性サイトカインをコードする第3の部分を含むことができ、及び/又は組換えアデノウイルスは、E3及び/若しくはE4遺伝子領域欠失を有することができる。
【0017】
代替的又は追加的に、SARSコロナウイルスN-ETSDをコードする第1の部分(第1の部分は、N-ETSD発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合する)と、SARS Sタンパク質をコードする第2の部分(第2の部分は、各々、S発現を可能にする1つ以上の調節エレメントに機能的に結合する)とを含む組換え核酸を含む組換え酵母が本明細書に開示される。酵母は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)であり得る。特定の実施形態では、酵母は溶解され得る。
【0018】
またさらなる実施形態では、本明細書に提示した組換え核酸を含むワクチン組成物が本明細書に開示され、組換え核酸は、脂質ナノ粒子中にカプセル化され得る。
【0019】
さらに他の実施形態では、本明細書に提示した組換え複製欠損アデノウイルスと混合されたアラゴナイト粒子を含むワクチン組成物が本明細書に開示され、組換え複製欠損アデノウイルスは、凍結乾燥される。最も典型的には、アラゴナイト粒子は、100nm~1mmの平均粒径を有する。
【0020】
SARSウイルスに対するワクチンを生成するための、及び/又はSARSウイルスに対する免疫を誘導するための組換え核酸が本明細書に提示される。同様に、SARSウイルスに対する免疫を誘導するための組換え複製欠損アデノウイルス又は組換え酵母が本明細書に開示される。
【0021】
本明細書に開示される主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、同様の番号が同様の構成要素を表す添付の図面と共に、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、炭酸カルシウムの様々な結晶形態を概略的に示す。
図2図2は、0.1M塩酸(HCL)中の非被覆アラゴナイトカプセル(サンプル#6)中の二価ヒトアデノウイルス血清型5 COVID-スパイク及びヌクレオカプシド抗原ワクチン(hAD5-COVID-S/N)の3つの写真(右から左:1、2、3)を示し、示されるように、カプセル中で観察されたしわ、膨潤、又は穴を有する:1):HCL酸曝露の2分後;2):HCL酸曝露の2時間後;及び3)HCL酸曝露の2時間後、及び乾燥。
図3図3は、0.1M HCL中の非被覆アラゴナイトカプセル(サンプル#7又は#8)中のhAD5-COVID-S/Nの3つの写真(右から左:1、2、3)を示し、示されるように、カプセル中で観察された膨潤、ねじれ、又は穴を有する:1):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#7;2):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#8;3)HCL酸曝露の2時間後、及び乾燥。
図4図4は、0.1M HCL中の非被覆ラクトースカプセル(サンプル#3又は#4)中のhAD5-COVID-S/Nの2つの写真(右から左:1、2)を示し、示されるように、観察されたカプセルの膨潤を有する:1):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#3;2):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#4。
図5図5は、0.1M HCL中の被覆アラゴナイトカプセル(サンプル#1又は#5)中のhAD5-COVID-S/Nの2つの写真(右から左:1、2)を示し、示されるように、観察されたカプセルの膨潤を有する:1):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#1;2):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#5。
図6図6は、示されるように、示されるhAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについてのグラム当たりの感染単位(IFU/g)(y軸)を示す。
図7図7は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについてのウイルス回収率のパーセンテージ(%)(y軸)を示す。
図8図8は、示されるように、各hAD5-COVID-S/NカプセルタイプについてのIFU/g及び対応するpHを示す。
図9図9は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについてのウイルス回収率のパーセンテージ(%)を示す。
図10図10は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについての回収されたウイルスのパーセントを示し、酸処理は陰影を有するものについて示される。
図11図11は、示されるように、各hAD5-COVID-S/NカプセルタイプについてのIFU/gを示し、酸処理は陰影を有するものについて示される。
図12図12は、複数の経路にわたって耐久性があり且つ有効な免疫を誘発する理想的なワクチンの概念図を示す。
図13図13は、SARS-CoV2 NがS.セレビシエ(S.cerevisiae)において過剰発現される例示的な発現実験の結果を示す。
図14図14は、免疫化アカゲザルから採取した血清サンプル中のSARS-CoV-2スパイクに対するIgG血清反応性を検出するELISA結果を示す。
図15図15は、SARS-CoV-2感染性を阻害する血清を示す。パネルAは、インビトロでSARS-CoV-2感染性を阻害するワクチン接種した1群アカゲザル由来の血清を示す。パネルBは、ワクチン接種した2群アカゲザル由来の血清を示す。点線は、20%阻害を示す。
図16図16は、非ヒト霊長類(NHP)鼻咽頭ウイルス負荷を経時的に示す。パネルAは、SC+SC+経口ワクチン接種後のアカゲザルからの鼻腔スワブ中のウイルス負荷(qPCR)を示す。パネルBは、SC+経口+経口ワクチン接種後の鼻腔スワブ中のウイルス負荷(qPCR)を示す。
図17図17は、肺におけるNHP中の経時的なウイルス負荷を示す。パネルAは、SC+SC+経口ワクチン接種後の群1アカゲザル由来のBALにおけるウイルス負荷(qPCR)を示し、パネルBは、SC+経口+経口ワクチン接種後の群1アカゲザル由来のBALにおけるウイルス負荷(qPCR)を示す。
図18図18は、様々な実験的抗SARS-CoV-2ワクチンで免疫したヒト患者由来の血清サンプルにおけるSARS-CoV-2スパイクに対するIgG及びIgM血清反応性を示す。
図19図19は、Th1 N応答性患者からのELISpot結果を示す。
図20図20は、患者4(N-非応答性)及び患者10(弱いTh1 N-応答性)からのELISpot結果を示す。
図21図21は、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種NHP由来の血清の液性応答及び中和能力についての例示的な結果を示す。抗スパイクIgGレベル(ELISA;OD 450nm)は、(B)幾何平均及び(C)代用アッセイにおける阻害と共に、(A)個別SC経口-経口NHPについて示される。これらのデータは、SC-SC-抗NHPについても示されている:(D)個々の抗S IgG、(E)幾何平均、及び(F)代理アッセイにおける阻害。1:30の血清希釈での20%を超える阻害(破線)は、SARS-CoV-2感染の中和と相関する。NHPは、0日目、14日目、及び28日目にワクチン接種を受けた(黒矢印)。
図22図22は、チャレンジ後のSC-経口-経口及びSC-SC-経口ワクチン接種NHPの鼻腔及び肺におけるウイルス負荷(gRNA)を示す。鼻腔スワブサンプルの(A)個々のウイルスgRNA(RT qPCR)及び(B)幾何平均;並びにSC-経口-経口 NHPからの気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルの(C)gRNA及び(D)幾何平均。鼻腔スワブサンプルの(E)個々のgRNA及び(F)幾何平均;並びにSC-SC-経口NHPからのBALサンプルの(G)gRNA及び(H)幾何平均。SARS-CoV-2チャレンジは、56日目に行った(黒矢印)。検出レベル(LOD;破線)は、gRNAについては54遺伝子コピー/mL(GC/mL)であり、sgRNAについては119GC/mLであった。LOD未満の値については、LOD値の半分(又はgRNAについては27GC/mL及びsgRNAについては59GC/mL)を、個々の値のグラフ化及び幾何平均の計算に使用した。
図23図23は、チャレンジ後のSC-経口-経口及びSC-SC-経口ワクチン接種NHPの鼻腔及び肺におけるウイルス複製(sgRNA)を示す。鼻腔スワブサンプルの(A)個々のウイルスsgRNA(RT qPCR)及び(B)幾何平均;並びにSC-経口-経口NHPからの気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルの(C)sgRNA及び(D)幾何平均。鼻腔スワブサンプルの(E)個々のsgRNA及び(F)幾何平均;並びにSC-SC-経口NHPからのBALサンプルの(G)sgRNA及び(H)幾何平均。SARS-CoV-2チャレンジは、56日目に行った(黒矢印)。LOD(破線)は、gRNAについては54GC/mLであり、sgRNAについては119GC/mLであった。LOD未満の値については、LOD値の半分を、個々の値のグラフ化及び幾何平均の計算に使用した。
図24図24は、SARS-CoV-2チャレンジ後の血清のワクチン接種に対するT細胞応答及び中和能力を示す。(A)ELISpotによって決定される、スパイク(S)及びヌクレオカプシド(N)ペプチドに応答したSC-経口-経口ワクチン接種NHPからのPBMC由来T細胞による(A)インターフェロンg(IFN-γ)及び(B)インターロイキン-4(IL-4)分泌、並びに(C)比IFN-γ/IL-4比を示す。検出不能なIL-4による「無限大」の比は、白丸として表される。PMA-イオノマイシンをパルスした細胞を陽性対照として使用した。平均及びSEMでグラフ化したデータ。(D)試験期間を通してMN50(ベロE6細胞のSARS-CoV-2感染が50%阻害される希釈係数)が示されており、対応のない両側スチューデントt検定を用いて、70日目にワクチン接種及びプラセボNHPのMN50を比較した。57、63、及び70日目の鼻腔のgRNA(E)及びsgRNA(F)、並びに57及び63日目の肺gRNA(G)及びsgRNAを提示する。T細胞応答(I~J)、MN50(L)、鼻腔gRNA(M)及びsgRNA(N)、並びに肺gRNA(O)及びsgRNA(P)を含む、SC-SC-経口NHPについての同じデータを示す。gRNAの検出レベルは54GC/mLであり、sgRNAの検出レベルは119GC/mLであった。LODの半分を、LOD未満のデータのグラフ化に使用した。
図25図25は、hAd5プラットフォーム及びhAd5 S-融合物 + N-ETSDコンストラクトを概略的に示す。パネルAは、E1、E2b、及びE3領域が欠失した()ヒトアデノウイルス血清型5ワクチンプラットフォームを示す。ワクチンコンストラクトをE1領域に挿入する(矢印)。パネルBは、二重抗原ワクチンが、hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォームによって供給される、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下のS-融合物及びN-ETSDの両方、並びにC末端SV40ポリA配列を含むことを示す。
図26図26は、アデノウイルスにクローニングするための例示的なコンストラクトを示す。
図27図27は、インビトロコンストラクトの発現並びにS及びNの検出を示すウェスタンブロットである。
図28図28は、アデノウイルスにクローニングするためのさらなる例示的なコンストラクトを示す。
図29図29は、Th1表現型を有するNに対する抗体応答を示す。液性免疫応答T1対T2関連アイソタイプ分析を示す。
図30図30は、Nフォーカス表現型に対する細胞媒介免疫(CMI)応答 - IFN-γ及びIL-2 ELISpotを示す。
図31図31は、S-WTと比較した、S融合物及びS融合物+N組み合わせコンストラクトを用いたRBDの増強された細胞表面発現を示す。
図32図32は、回復したCOVID-19患者血漿による抗原認識を示す。抗原は、RBD-ETSD及び融合S/N-ETSDコンストラクトを含む。
図33図33は、SARS-CoV-2ウイルス、スパイク、hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクター及びワクチン候補コンストラクトを示す。(a)三量体Sタンパク質はウイルス表面に表示され、Nタンパク質はウイルスRNAと会合している。(b)RBDはS1領域内にあり、続いて、他の機能領域、膜貫通ドメイン(TM)及びC末端(CT)があり、これは、ウイルス内にある。(c)使用される第2世代ヒトアデノウイルス血清型5(hAd5)ベクターは、E1、E2b、及びE3領域が欠失している。(d)S野生型(S-WT)、(e)増強T細胞刺激ドメインを有するS-RBD(S RBD-ETSD)、(f)S-融合物、(g)N-ETSD、及び(h)二価hAd5 S-融合物 + N-ETSD;LP-リーダーペプチドについてのコンストラクトを示す。
図34図34は、増強されたRBD表面発現をもたらす、hAd5 S-融合物 + ETSDによるHEK293Tトランスフェクションを示す。コンストラクト-トランスフェクト細胞を用いた抗RBD抗体のフローサイトメトリー分析は、S-WT又は(b)S-WT + N-ETSDトランスフェクト細胞のいずれにおいても、検出可能なRBD表面発現がないことを明らかにする。表面RBD発現は、S RBD-ETSD及びS RBD-ETSD + N-ETSD(c、d)で高かった。発現は、(e)S-融合物トランスフェクト細胞において低かった。RBDの細胞表面発現は、(f)S-融合物 + N-ETSDトランスフェクト細胞において、特に1日目及び2日目に高かった。(g)N-ETSD陰性対照では発現が検出されなかった。Y軸スケールは、モードに正規化されている(NM)。
図35図35は、S発現の免疫ブロット分析を示す。HEK 293T細胞における(a)hAd5 S-WT、S-融合物、及び(c)S-融合物 + N-ETSDを用いた細胞表面RBD発現は、(d)抗全長(S2)抗体を用いてプローブされたHEK 293T細胞溶解物の免疫ブロットにおけるSの発現と高い相関を示した。Y軸スケールは、モードに正規化されている(NM)。
図36図36は、トランスフェクション後の組換えACE2-Fc HEK293T細胞表面RBDの結合が、ナイーブタンパク質フォールディングを確認することを示す。組換えACE2-Fc間の結合(これにより、スパイクRBDがインビボで相互作用して感染を開始する)、及び(a)hAd5 S-WT、(b)hAd5 S-融合物、(c)hAd5 S-融合物 + N-ETSD、(d)hAd5 S RBD-ETSD、又は(e)hAd5 S RBD-ETSD + ETSDコンストラクトによるHEK293T細胞のトランスフェクション後に発現した細胞表面抗原のフローサイトメトリー分析は、2価S-融合物 + N-ETSDによるトランスフェクション後に、ACE-Fc及び抗RBD特異的抗原(f-j)の両方で最高の結合が見られることを明らかにしている。両方のS RBD-ETSD含有コンストラクトも結合を示した。Y軸スケールは、モードに正規化されている(NM)。
図37図37は、hAd5 N-ETSDから発現されるNがエンドソーム/リソソームコンパートメントに局在化することを示す。N-ETSDに感染したHeLa細胞において、(a)N(赤)は、(c)の矢印によって示されるようにエンドソームマーカーCD71(b)と共局在化する。トランスフェクトされたHeLa細胞において、(d)N-ETSDはまた、リソソームマーカーLamp1と共局在化するが、(e)N野生型(N-WT)はそうではなく、代わりに、拡散した細胞質分布を示す。
図38図38は、ペプチドプールに応答した、hAd5 S-融合物 + N-ETSD接種28日目CD-1マウスからのサイトカイン発現脾細胞のICS検出を示す。(a)最も高いCD8β脾細胞IFN-γ応答は、Sペプチドプール1(S-pepプール1)に曝露されたhAd5 S-融合物 + N-ETSD接種マウス脾細胞においてであった;これらのマウス由来の脾細胞はまた、Nペプチドプール(N-pepプール)に応答してIFN-γを発現した。(b)hAd5 S-融合物 + N-ETSD接種マウス由来のCD4+脾細胞は、Nペプチドプールに応答してIFN-γのみを発現した。(c)hAd5 S-融合物 + N-ETSD接種マウス由来のCD8β脾細胞のIFN-γ TNF-α応答は、(a)のものと非常に類似していた;(b)に対する(d)Nペプチドプールに対するCD4+脾細胞も同様であった。N=1群当たり5匹のマウス。全てのデータセットを平均としてSEMと共にグラフ化し、Mann-Whitney検定を用いて全ての統計を行った。<0.05、**<0.01、***<0.001、及び****<0.0001。
図39図39は、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種マウス由来の血清における抗スパイク及び抗ヌクレオカプシド抗体応答を示す。吸光度に基づいて、(a)抗S抗体及び(c)抗ヌクレオカプシド抗体の両方の有意な産生があった。(b、d)ng当量を示す。血清は、抗スパイクについては1:30に、抗ヌクレオカプシド抗体については1:90に希釈した。データを平均及びSEMとしてグラフ化した。統計分析は、対応のない両側スチューデントt検定を用いて行った。<0.05、**<0.01、***<0.001、及び****<0.0001。
図40図40は、cPass及びベロE6細胞SARS-CoV-2が抗体による中和を確認することを示す。(a)cPassアッセイにおいて、ACE2とのS RBD相互作用の阻害は、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種マウスからの血清の1:20及び1:60希釈の両方で有意であった。(b)ELISAによってS特異的抗体を示したマウスについてのベロE6細胞SARS-CoV-2ウイルス感染の結果もまた、マウスについて高い中和を示し、COVID-19回復期血清と比較しても、プールされた血清(G4プール、青線)について非常に高い中和を示した。G4プール-S特異的抗体を有するマウス;M1、M2、M3、M4-マウスID;+C-回復期血清;及び培地-培地のみの陰性対照。
図41図41は、抗スパイク抗体及び抗ヌクレオカプシド抗体のアイソタイプを示す。パネルA及びCは、IgG2a及びIgG2bアイソタイプ抗スパイク及び抗ヌクレオカプシド抗体が、hAd5ヌルマウスと比較してhAd5 S-融合物 + N-ETSDマウスについて有意に増加したことを示す。パネルB及びDは、抗体アイソタイプについてのng当量を示す。データを平均及びSEMとしてグラフ化した。統計分析は、対応のない両側スチューデントt検定を用いて行った。<0.05、**<0.01、***<0.001、及び****<0.0001。
図42図42は、分泌されたサイトカインのELISpotを示す。(a)hAd5 S-融合物+ N-ETSD脾細胞によるIFN-γ分泌は、Sペプチドプール1及びNペプチドプールの両方に応答してhAd5ヌルよりも有意に高かったが、(b)IL-4は、Nペプチドプールに応答してhAd5 S-融合物 + N-ETSDでのみ分泌された(hAd5ヌルにおける1つの高い外れ値が除去された)。N=1群当たり5匹のマウス。全てのデータセットを平均としてSEMと共にグラフ化し、Mann-Whitney検定を用いて全ての統計を行った。<0.05、**<0.01、***<0.001、****<0.0001。
図43図43は、T細胞及び液性応答の比がTh1優勢を明らかにすることを示す。(a)全Th1(IFN-γ)対Th2(IL-4)スポット形成単位の比を、組み合わされたSプール及びNプールに対する応答について示す。(b)S及びNに対する抗体のTh1/Th2比を示す。(a)及び(b)の両方について、破線は、1の比、又はTh1及びTh2のバランス(優勢なし)を示す。
図44図44は、hAd5ベクター、SARS-CoV-2、スパイク、及びコンストラクトを概略的に示す。(A)E1、E2b、及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5(hAd5[E1-、E2b-、E3-])を示す。(B)SARS-CoV-2ウイルスは、ウイルス表面上に三量体としてスパイク(S)タンパク質を表示する。Sタンパク質は、N末端(NT)、RBDを含むS1領域、S2及びTM領域、並びにC末端(CT);標識されていない他の機能領域を含む。(C)スパイク野生型(SWT)、(D)スパイク融合物(S-融合物)、(E)ETSDを有さず、主に細胞質局在化を有するヌクレオカプシド(N);(F)増強T細胞刺激ドメインを有するN(N-ETSD)、並びに(G)二価S-融合物 + N-ETSDコンストラクトが示される。
図45図45は、N-ETSDがエンドソーム、リソソーム、及びオートファゴソームに局在化することを立証する顕微鏡写真を示す。MoDCをAd5 N-ETSD又はETSDを含まないNに感染させ、抗フラグ(N、N-ETSDは、ここではフラグタグを有する)及び抗CD71(エンドソームマーカー)、抗Lamp1(リソソームマーカー)、又は抗LC3a/b抗体で共標識した。(A)N-ETSD、(B)CD71、及び(C)オーバーレイ。(D)N、(E)CD71及び(F)オーバーレイ。(G)NETSD、(H)Lamp-1、及び(I)オーバーレイ。(J)N、(K)Lamp-1及び(L)オーバーレイ。(M)N-ETSD、(N)LC3a/b、及び(O)オーバーレイ。N/N-ETSDは赤色であり、他のマーカーは緑色であり、共局在化は黄色の矢印で示され、白色の矢印はリンパ球を示す。
図46図46は、患者血漿抗体が、hAd5 S-融合物 + N-ETSD感染後にMoDCによって発現されるSARS-CoV-2抗原を認識することを実証する。(A)2人の正常な個体由来のMoDCをhAd5ワクチンに一晩感染させ、次いで、単一の個体由来の以前に感染した患者血漿に曝露した;DC細胞表面への抗体結合を、フローサイトメトリーによって検出した。hAd5 S-WT、S-融合物、S-融合物 + N-ETSD、及びヌルのフローヒストグラムは、2つの供給源(B)MoDC1及び(C)MoDC2からのMoDCについて示される。(D)DMFI(非感染細胞及び感染細胞への結合についてのMFIの差異)を、hAd5 S-WT、S-融合物、S-融合物 + N-ETSD及びヌル感染MoDCについてグラフ化する。
図47図47は、SARS-CoV-2ペプチドでパルスしたMoDCに対するT細胞応答(以前にSARS-CoV-2感染した患者及びウイルスナイーブT細胞の)の例示的な結果を示す。以前にSARS-CoV-2感染した患者(Pt)の4人全てのT細胞は、「なし」と比較して、S1、S2、及びNペプチドプールパルスMoDCに対して有意なIFN-γ応答を示す。ウイルスナイーブ(未曝露、UnEx)対照個体由来のT細胞は、はるかに低い応答を示した。統計分析は、各患者からのサンプルについて、一元配置ANOVA及びTukeyの事後分析を用いて行い、「なし」のみと比較した(p≦0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。平均及びSEMとしてグラフ化した;n=3~4。
図48図48は、以前にSARS-CoV-2に感染した患者由来のペプチドパルスMoDCがIFN-γを分泌するように自己患者T細胞を刺激することを立証する。(A)以前に感染したSARSCoV-2患者Pt4及びPt3に由来するMoDCを、SARS-CoV-2ペプチド混合物(S1、S2又はN)で一晩パルスし、次いで、自己CD4+(A、B)又はCD8+(C、D)T細胞と共にインキュベートした。IFN-γレベルをELISpotによって決定した。統計分析は、一元配置ANOVA及びDunnettの事後多重比較分析を用いて行って、各ペプチドプールをVeh(バーの上方に示す)と比較し、又はペプチドプール(線の上方)間で比較した(p<0.05、**p<0.01及び****p<0.00001)。データは、平均及びSEMとしてグラフ化した:n=3。
図49図49は、以前にSARS-CoV-2感染した患者からのT細胞によるIFN-γ分泌がNと比較してN-ETSDのMoDC発現に応答してより大きいことを実証する。(A)実験デザイン。(B~D)hAd5-N-ETSD-及びhAd5 N発現MoDCに応答した自己CD3+ T細胞によるIFN-γの分泌を示す。(E~G)感染MoDCに応答したCD3+細胞によるIL-4の分泌は、各々について、IFN-γと同じスケールで示される。ヌルと比較したhAd5-N-ETSDに応答した(H~J)CD4+及び(KM)CD8+ T細胞によるIFN-γ分泌を示す。統計分析は、一元配置ANOVA及びTukeyの事後多重比較分析を用いて行った(p<=0.05;**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001)。ヌルとの比較をバーの上方に示し、N-ETSD及びN間の比較を線の上方に示した。データは、平均及びSEMとしてグラフ化した;n=3~4。
図50図50は、二価ワクチン及びその個々の成分に対する、以前にSARS-CoV-2感染した患者のT細胞応答が、T細胞集団の異なる抗原特異性を明らかにすることを示す。(A~C)3人の患者についてのCD3+ T細胞IFN-γ応答。(D~F)CD3+ T細胞IL-4応答。(G~I)CD4+ IFN-γ応答。(J~L)CD8+ IFN-γ応答。統計分析は、一元配置ANOVA及びTukeyの事後多重比較分析を用いて行って、各抗原含有コンストラクトをヌルコンストラクトと比較した(p<0.05及び****p<0.00001)。ヌルとの比較はバーの上方のみ;抗原発現ワクチン間の比較は線の上方。データは、平均及びSEMとしてグラフ化した:n=3~4。
【発明を実施するための形態】
【0023】
SARS-CoV-2ウイルス並びにSARS-CoV-2ウイルスの密接に関連したウイルス及び突然変異体形態に対する免疫を誘導する様々なワクチン組成物及び方法は、治療的に有効な抗体の生成を促進するだけでなく、頑強なT細胞応答を誘発する。これらのワクチン組成物は、筋内、皮下、経口、及び粘膜経路(単独又は組み合わせで)を含む異なる経路を介して投与することができ、現在既知であるRNAベースのワクチンの後に経口ブーストとしても使用され得る。
【0024】
特に企図される実施形態では、組換えコンストラクトは、修飾ヌクレオカプシドタンパク質及び/又は修飾スパイクタンパク質を含む。好ましくは、修飾ヌクレオカプシドタンパク質は、修飾ヌクレオカプシドタンパク質をエンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメントに送る輸送配列を含み、それにより重要な抗原提示経路を利用してCD4+ T細胞を刺激し、これは次に樹状細胞にナイーブCD8+細胞傷害性T細胞を活性化させる。同様に、修飾スパイクタンパク質は、修飾スパイクタンパク質の表面発現を増強する修飾を有し、それによりスパイク抗原に対して免疫応答をより頑強にすることが好ましい。実際に、本明細書に開示されるワクチン(例えば、hAd5[E1-,E2b-]ワクチン)は、ETSDペプチドでタグ付けされたN抗原の使用を例示するが、原則として任意の抗原がエンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメントに有利に再指向され得る。アデノウイルス又は酵母ワクチンベクターにおいてこのように使用するためのETSDでタグ付けされる例示的な抗原は、CEA、ヒト上皮成長因子受容体1(HER1)、HER2/neu、HER3、HER4、前立腺特異的抗原(PSA)、PSMA、葉酸受容体α、WT1、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、DAM-10、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1R、Gp100、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、BRCA1、ブラキュリ、ブラキュリ(TIVS7-2、多型)、ブラキュリ(IVS7 T/C 多型)、T ブラキュリ、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC1(VNTR 多型)、MUC1c、MUC1n、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、AFP、β-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARα、HPV E6、HPV E7、及びTEL/AML1を含む。
【0025】
「N-ETSD」は、エンドソーム標的配列を含むSARS-CoV-2ウイルスの修飾ヌクレオカプシドタンパク質を指す。例示的なN-ETSDは、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のヌクレオチド酸配列を有する。
【0026】
「S-HA」又は「スパイク」又は「S」は、HAタグを有するSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質を指す。例示的なS-HAは、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号5のヌクレオチド配列を有する。
【0027】
「S-融合物」又は「スパイク-融合物」は、表面発現の増大を有するSARS-CoV-2ウイルスの修飾スパイクタンパク質を指す。例示的なS-融合物は、配列番号4のアミノ酸配列及び配列番号6のヌクレオチド酸配列を有する。
【0028】
「N」又は「N-wt」又は「ヌクレオカプシド」は、SARS-CoV-2ウイルスのヌクレオカプシドタンパク質を指す。例示的なNタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を有する。
【0029】
「ETSD」は、エンドソーム標的配列を指す。例示的なETSDは、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0030】
「ACE2」は、アンジオテンシン変換酵素2を指す。例示的な(ヒト)ACE2は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0031】
「可溶性ACE2タンパク質」は、生理学的条件下で可溶性のACEの突然変異体及び切断形態を指す。例示的な可溶性ACEは、配列番号10のアミノ酸配列を有する。
【0032】
修飾スパイク及びヌクレオカプシドコンストラクト並びに方法
組換えウイルス及び酵母が本明細書に開示される。本明細書に開示されるウイルス及び酵母は、多様な目的、例えばコロナウイルス疾患の治療及び/又は予防に有用であり得る。一態様では、複製欠損アデノウイルスが本明細書に開示され、ここでアデノウイルスは、E1遺伝子領域欠失;E2b遺伝子領域欠失;E3遺伝子領域欠失、コロナウイルス2(CoV2)ヌクレオカプシドタンパク質、エンドソーム標的配列に融合されたCoV2ヌクレオカプシドタンパク質(N-ETSD)をコードする核酸、及び細胞表面発現のために最適化されたCoV2スパイクタンパク質配列をコードする核酸(S-融合物)を含む。
【0033】
一実施形態では、N-ETSDポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。他の実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。さらに他の実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。N-ETSD融合タンパク質がN-ETSDドメインとヌクレオカプシドタンパク質との間にリンカーを含むこともさらに企図される。例えば、このリンカーは、配列(G3S)4を有する16アミノ酸リンカーであり得る。特定の実施形態では、細胞内抗原の免疫原性を増強するための方法が本明細書に開示され、方法は、抗原をETSDでタグ付けし、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)においてタグ付け抗原を発現させることを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、N-ETSD及びCoV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む融合タンパク質は、配列番号2に対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列によってコードされ得る。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。
【0035】
CoV-2スパイクタンパク質は、配列番号3に対して少なくとも85%の同一性を有することが企図される。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。CoV-2スパイクタンパク質をコードする核酸は、配列番号5に対して少なくとも85%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。
【0036】
CoV-2スパイク融合タンパク質は、配列番号4に対して少なくとも85%の同一性を有することが企図される。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。CoV-2スパイク融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号6に対して少なくとも85%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。
【0037】
本開示の第2の態様では、コロナウイルス2(CoV-2)ヌクレオカプシドタンパク質、CoV2 N-ETSDタンパク質、CoV2スパイクタンパク質、CoV2スパイク-融合タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードする核酸を含む組換え酵母が本明細書に提供される。さらに、これらのコードされたタンパク質の各々は、下記により詳細に記載されるように、さらに修飾され得る。好ましくは、組換え酵母はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0038】
この第2の態様のいくつかの実施形態では、CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質又はその変異体は、配列番号1又は配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。他の実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。さらに他の実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。
【0039】
この第2の態様のいくつかの実施形態では、CoV-2スパイクタンパク質又はスパイク融合タンパク質は、配列番号3又は配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。他の実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。さらに他の実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。
【0040】
いくつかの実施形態では、CoV-2スパイクタンパク質又はスパイク融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号5又は配列番号6に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。他の実施形態では、同一性値は少なくとも85%である。さらに他の実施形態では、同一性値は少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、同一性値は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、同一性値は100%である。
【0041】
本明細書に開示されるアデノウイルス及び酵母はさらに、輸送配列、同時刺激性分子、及び/又は免疫刺激性サイトカインをコードする核酸を含むことができる。同時刺激性分子は、CD80、CD86、CD30、CD40、CD30L、CD40L、ICOS-L、B7-H3、B7-H4、CD70、OX40L、4-1BBL、GITR-L、TIM-3、TIM-4、CD48、CD58、TL1A、ICAM-1、及びLFA3からなる群から選択される。免疫刺激性サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、ノガペンデキンα-インバキセプト(nogapendekin alfa-imbakicept)、IL-21、IPS1、及びLMP1からなる群から選択されてもよい。追加的又は代替的に、本明細書に開示されるワクチンは、ETSDタグを有する又は有さないSARS-CoV-2 Mタンパク質もコードし得る。追加的又は代替的に、アデノウイルス及び/又は酵母は、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、ノガペンデキンα-インバキセプト、IL-21、IPS1、& LMP1)と組み合わせて投与され得る。この文脈における「組み合わせて」は、免疫刺激性サイトカインがアデノウイルス及び/又は酵母の24時間以内に投与されることを意図する。即ち、アデノウイルス及び/又は酵母は、患者(例えば、50歳を超える患者)に投与され得、次いで24時間後以内に、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、ノガペンデキンα-インバキセプト、IL-21、IPS1、& LMP1)が同じ患者に投与され得る。追加的又は代替的に、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、ノガペンデキンα-インバキセプト、IL-21、IPS1、& LMP1)は、患者(例えば、50歳を超える患者)に投与され得、次いで24時間後以内に、アデノウイルス及び/又は酵母が同じ患者に投与され得る。
【0042】
40歳を超えると、患者がワクチンに対するT細胞応答を開始する能力は徐々に低下する。したがって、本明細書に記載されるアデノウイルス及び/又は酵母を、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、ノガペンデキンα-インバキセプト、IL-21、IPS1、& LMP1)と組み合わせて投与することは、高齢患者に特に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「高齢」は、50歳超の患者、例えば、55歳超、60歳超、65歳超、70歳超、75歳超、80歳超、85歳超、又は90歳超の患者を包含する。
【0043】
最も好ましくは、組換えウイルスは、皮下(subcutaneous)又は皮下(subdermal)注射を介して投与される。しかしながら、他の企図される態様では、投与は静脈内注射でもあり得る。代替的又は追加的に、抗原提示細胞は、患者の細胞から単離又は成長され、インビトロで感染され、次いで患者に注入され得る。
【0044】
本明細書において上記又は他の箇所で記載した実施形態のいずれかの一態様では、組成物は、対象への投与に適した薬学的に許容され得る賦形剤中で製剤化される。
【0045】
本明細書で企図される組換えウイルス及び酵母が、同時刺激性分子、免疫刺激性サイトカイン、及びチェックポイント阻害を妨害又は下方調節するタンパク質のうちの少なくとも1つをコードする配列をさらに含み得ることが尚さらに企図される。例えば、適切な同時刺激性分子は、CD80、CD86、CD30、CD40、CD30L、CD40L、ICOS-L、B7-H3、B7-H4、CD70、OX40L、4-1BBL、GITR-L、TIM-3、TIM-4、CD48、CD58、TL1A、ICAM-1、及び/又はLFA3を含む一方、適切な免疫刺激性サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニスト(N803)、IL-21、IPS1、及び/若しくはLMP1を含み、並びに/又は妨害する適切なタンパク質は、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、及び/又はCD160の抗体アゴニスト又はアンタゴニストを含む。
【0046】
上記の同時刺激性遺伝子の全ては当技術分野において周知であり、これらの遺伝子、アイソフォーム、及び変異体の配列情報は、NCBI、EMBL、ジェンバンク、RefSeqなどにおいてアクセス可能な配列データベースを含む様々な公共リソースから検索することができることを理解するべきである。さらに、上記の例示的な刺激分子は、好ましくは、ヒトにおいて発現するように全長形態で発現されるが、修飾及び非ヒト形態も、そのような形態がT細胞の刺激又は活性化を補助する限り、適切であると考えられる。したがって、ムテイン、切断形態及びキメラ形態は、本明細書で明確に企図される。
【0047】
本明細書に開示される免疫治療組成物は、「予防的」又は「治療的」のいずれかであり得る。予防的に提供される場合、本開示の組成物は、コロナウイルス疾患の発生を予防、阻害若しくは遅延させることを目標として、コロナウイルス疾患の発生に先立って若しくは発生の検出時に提供され;並びに/又は一般に個体におけるコロナウイルス疾患の進行を予防若しくは阻害する。したがって、予防組成物は、コロナウイルス疾患を有さない(健康な、又は正常な個体)と思われる個体、又はコロナウイルスが未だ検出されていない個体に投与され得る。コロナウイルス疾患を発生するリスクが高い個体は、本開示の組成物を用いて予防的に治療され得る。
【0048】
治療的に提供される場合、免疫治療組成物は、コロナウイルス疾患の改善又は治癒;個体の生存率を増加させること;個体におけるコロナウイルス疾患の発生を予防、阻害、逆転又は遅延させることを目的として、コロナウイルス疾患と診断された個体に提供される。
【0049】
さらなる別の実施形態では、上記に開示したアデノウイルス又は酵母を含むワクチン組成物が本明細書に開示され、ここで組成物は注射用に製剤化される。ワクチン組成物は、患者にワクチン組成物を投与することによって、それを必要とする患者においてCoV-2に対する免疫を誘導するために使用され得る。
【0050】
コロナウイルス疾患、特にCOVID-19を予防及び/又は治療するための方法も本明細書に開示される。好ましくは、方法は、コロナウイルスのヌクレオカプシドタンパク質の野生型若しくは修飾形態、及び/又はスパイクタンパク質の野生型若しくは修飾形態をコードするウイルス又は酵母ベクターを、対象個体に投与される免疫原性組成物中で使用することを含む。そのように投与されるウイルス及び/又は酵母ワクチンは、CoV-2、ヌクレオカプシド又はスパイクタンパク質の野生型又は修飾形態で個体を感染させるであろう。それが整った状態で、個体は、それに対する免疫応答を有し、ワクチン接種されるであろう。特に、ヌクレオカプシドタンパク質及びスパイクタンパク質は比較的保存されたポリペプチドであるため、コロナウイルスファミリーの多様なメンバーに対して免疫応答が誘発され得る。
【0051】
組換えベクターがアデノウイルスである場合、アデノウイルスベクターは、ヌクレオカプシドタンパク質、及び/又はスパイクタンパク質の野生型又は修飾形態をコードするように修飾され得る。同様に、酵母の場合、酵母ベクターもヌクレオカプシドタンパク質、及び/又はスパイクタンパク質の野生型又は修飾形態をコードするように修飾され得る。下記により詳細に示すように、それを必要とする患者において、ウイルス及び/又は酵母ベクターを含む免疫原性組成物を投与した後、陽性免疫応答は、細胞媒介免疫に対して得られる。したがって、一実施形態では、本開示は、酵母表面上でのコロナウイルススパイクの発現を作り上げることを企図する。そのような実施形態では、酵母はアバターコロナウイルスとして機能してB細胞を刺激し、次いで液性免疫をもたらす。
【0052】
本明細書に開示されるように、既存のアデノウイルス免疫を有する患者において免疫を誘導することが可能な次世代二価ヒトアデノウイルス血清型5(hAd5)ワクチンであり、これは、細胞表面発現について最適化されたS配列(S-融合物)及びエンドソーム細胞内コンパートメントに輸送されるように設計された保存されたヌクレオカプシド(N)抗原の両方を含み、耐久性のある免疫防御を生成する可能性を有する。本明細書にさらに記載されるように、そのような二価ワクチンは、以下の知見により証明されるように免疫原性について最適化されていることが見出されている:
1)最適化されたS-融合物は、表面発現が殆ど検出されないS-WTと比較して、改善されたS受容体結合ドメイン(RBD)細胞表面発現を示した;
2)S-融合物からの発現RBDは、立体構造の完全性及びACE2-Fcによる認識を保持した;
3)増強されたT細胞刺激ドメイン(ETSD)で修飾されたウイルスNタンパク質は、MHC I/II提示のためにエンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメントに局在化した;並びに
4)これらのS及びN(S-融合物及びN-ETSD)への最適化は、抗原ネイティブ前臨床モデルにおいて、増強されたデノボ抗原特異的B細胞並びにCD4+及びCD8+ T細胞応答を生成した。
【0053】
S及びN成分へのT細胞及び抗体免疫応答の両方は、T-ヘルパー1(Th1)バイアスを示した。抗体応答は、独立SARS-CoV-2中和アッセイによって示されるように中和であった。したがって、一実施形態では、次世代二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、SARS-CoV-2感染に対して頑強で耐久性のある細胞媒介及び液性免疫を提供する。さらに、また下記により詳細にさらに記載されるように、ワクチンコンストラクトは、経口、鼻腔内又は舌下に投与され得る。したがって、一実施形態では、本開示はまた、注射用製剤(例えば、SC又はIM)以外に、経口、鼻腔内、及び舌下製剤中のワクチンコンストラクトを提供して、細胞媒介及び液性免疫に加えて粘膜免疫を誘導する。別の視点から見ると、実質的な免疫は、注射、経口/粘膜投与の単独又は組み合わせにより生成され得る。一実施形態では、本明細書に開示されるCOVID-19ワクチンは、長期T及びB細胞記憶を生成する。
【0054】
コロナウイルス及びそのためのワクチン
コロナウイルスは、鳥類及び哺乳動物種に見出される。それらは形態及び化学構造が互いに類似し:例えば、ヒト及び畜牛のコロナウイルスは、抗原的に関連する。しかしながら、ヒトコロナウイルスが物によって伝播し得る証拠は存在しない。動物では、様々なコロナウイルスが多くの異なる組織に侵入し、ヒトにおいて多様な疾患を生じる。そのような疾患の1つは、2002後半/2003前半にアジア、ヨーロッパ及び北アメリカのいくつかの国で広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス疾患である。別のそのような疾患は、世界中のいくつかの国に広がった2019年の新型コロナウイルス疾患(COVID 19)である。2019年の12月に、中国の武漢から、ヒトからヒトへの伝染を示す高い罹患率及び死亡率1-3を有する新しい感染性呼吸器疾患に関する報告が現れた。原因因子は新型コロナウイルスであると迅速に特定され、SARS-コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された。これを原因とする疾患はCOVID-19と称され、急速に世界的なパンデミックとなり、これは社会経済生活を混乱させ、2020年10月後半の時点で世界中で3,200万人を超える感染と1,100,000人を超える死亡をもたらした。
【0055】
COVID 19は、通常、38℃を超える熱から開始する。初期症状は、咳、のどの痛み、倦怠感及び軽度の呼吸器症状も含み得る。2日~1週間以内に、患者は呼吸困難となり得る。COVID 19のより進行した段階の患者は、肺炎又は呼吸促迫症候群のいずれかを発症する。公衆衛生介入、例えば監視、旅行制限及び検疫を用いてCOVID 19の広がりを封じ込めている。しかしながら、これらの厳格な封じ込め手段が、ヒトにおけるCOVID 19の各出現を持ちこたえ得るか否かは分かっていない。さらに、バイオテロの脅威としての、この新たな且つ時折致死的なCoVの可能性は明らかである。
【0056】
コロナウイルスビリオンは、球形から多形のエンベロープ化粒子である。エンベロープは、突出する糖タンパク質がちりばめられ、マトリクスタンパク質からなるコアを包囲し、その中にはヌクレオカプシドタンパク質に関連するプラスセンスRNA(Mr 6×10)の一本鎖が包み込まれている。その関連で、用語「ヌクレオカプシドタンパク質」、「核タンパク質」及び「ヌクレオカプシド」は、この開示全体を通して互換的に使用されることに留意するべきである。コロナウイルスヌクレオカプシド(N)は、COVID 19を含む全コロナウイルスで見出される構造タンパク質である。ヌクレオカプシドタンパク質は、ゲノムRNAと複合体を形成し、ビリオン組立て中にウイルス膜タンパク質と相互作用し、ウイルス転写及び組立ての効率を向上させる上で重要な役割を果たす。
【0057】
全コロナウイルスビリオンを通して見出された別のタンパク質は、ウイルススパイク(S)タンパク質である。コロナウイルスは、典型的には広範な宿主範囲を有する大きいプラス鎖RNAウイルスである。他のエンベロープ化ウイルスと同様に、CoVは、ウイルスと細胞膜との融合によって標的細胞に侵入し、そのプロセスはウイルススパイク(S)タンパク質によって媒介される。
【0058】
SARS-CoV-2は、4つの構造タンパク質:スパイク(S)、ヌクレオカプシド(N)、膜(M)、及びエンベロープ、並びにウイルス膜及びゲノムRNAから主に構成されるエンベロープ化プラスセンス、一本鎖RNA βコロナウイルスである。これらのうち、Sは最も大きく、Nは最も優勢である。S糖タンパク質は、ウイルス表面上に三量体として表示されるが(図33、パネルA)、Nはウイルス粒子中に位置する。Sの一次構造の概略を図33、パネルBに示す。SARS-CoV-2の配列は、掲載され、以前のコロナウイルスと比較された。この後すぐに、Sタンパク質の結晶構造が報告された。ウイルスはSタンパク質を使用して、S受容体結合ドメイン(S RBD)と、鼻、口腔、腸、及び肺、並びに他の器官内の多様な細胞タイプ上、及び重要なことには、感染が主に出現する肺の肺胞上皮細胞上に発現される酵素であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との相互作用によって宿主細胞に侵入する。図33、パネルBに表すように、S RBDは、スパイクポリペプチドのS1領域内に見出される。
【0059】
本明細書に開示される方法及び組成物は、コロナウイルスの全タイプに保存されている核タンパク質及びスパイクタンパク質を標的とする。一実施形態では、本開示は、組換え体を含むワクチン製剤を提供し、ここで組換え体は、コロナウイルス2(CoV2)のヌクレオカプシドタンパク質若しくはその修飾形態をコードする核酸を含み、及び/又は組換え体は、CoV2のスパイクタンパク質若しくはその修飾形態をコードする。ワクチン製剤は、コロナウイルス媒介性疾患又は感染症などの疾患の治療に有用であり得る。したがって、別の実施形態ではそれを必要とする患者のためのコロナウイルス疾患の治療方法が企図される。そのような方法は、好ましくは、組換え体を含む免疫治療組成物を対象に投与する工程を含み、組換え体は、コロナウイルス2(CoV2)のヌクレオカプシドタンパク質若しくはその修飾形態をコードする核酸、及び/又はコロナウイルス2(CoV2)のスパイクタンパク質若しくはその修飾形態をコードする核酸を含むであろう。本明細書で企図されるコロナウイルスは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)及び/又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)であり得る。
【0060】
例えば、本開示は、それを必要とする患者におけるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)及び/又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を治療する方法を提供し、該方法は:組換えウイルスを含む第1の免疫治療組成物を対象に投与することであって、組換えウイルスは、コロナウイルス2(CoV2)のヌクレオカプシドタンパク質又はその修飾形態をコードする核酸を含む、投与することと、組換え酵母を含む第2の免疫治療組成物を対象に投与することであって、組換え酵母は、CoV2のスパイクタンパク質をコードする核酸を含む、投与することとを含む。第1及び第2の免疫治療組成物は、同時に又は連続して、患者に投与され得る。
【0061】
異なる視点から見れば、(a)少なくとも1つのヌクレオカプシドタンパク質又はその修飾形態;及び(b)少なくとも1つのスパイクタンパク質又はその修飾形態をコードする核酸を含むウイルスベクター(例えば、組換えアデノウイルスゲノム、場合により欠失又は非機能性E2b遺伝子を有する)が、本明細書で企図される。ウイルスベクターは、1つ以上の同時刺激性分子をさらにコードしてもよい。最も典型的には、核酸は、核酸によりコードされるペプチド産物を細胞質、エンドソームコンパートメント、又はリソソームコンパートメントに指向させる輸送シグナルも含み、ペプチド産物は、ペプチド産物の細胞内代謝回転を増強する配列部分も含むことができる。
【0062】
開発中の現在のSARS-CoV-2ワクチンの大部分は、RBDに対する抗体の生成によって、ウイルスが宿主細胞に結合する能力を中和する可能性があるため、Sを標的とする。重要な抗原としてのRBDについてのサポートが最近確認され、44人の入院COVID-19患者において、RBD特異的IgG応答及び抗体力価の中和は、感染のPCR確認後6日までに全ての患者で検出可能であり、2つは相関することが報告された。液性応答に加えて、SエピトープはCOVID-19から回復した患者のT細胞の高頻度の標的でもあり、予防免疫化戦略にSを含めることのさらなる正当化を提供する。
【0063】
SARS-CoV-2ワクチンの急速な開発の緊急の必要性にもかかわらず、開発中の一価ワクチンに生じる抗原カーゴ又は免疫学的経路の任意の1つへの信頼性は、リスクがないわけではない。ほぼ4000のSARS-CoV-2ゲノム配列の評価により、Sにおいて多数の突然変異が同定され、元のウイルスの同定から6か月後に、D614G変異体が潜在的により感染性の高い株として最近出現した。
【0064】
本明細書に開示されるワクチンの設計においては、Sに突然変異を有するウイルスの新たな株の出現のリスクを克服し、追加の抗原(これに対する応答を誘発し得る)を提供するために、最適化されたN配列が追加された。Nタンパク質は、高度に保存され、SARS-CoVに対するコロナウイルスワクチン設計における抗原として以前に研究された抗原性SARS-CoV-2-関連タンパク質である。Nは、ウイルス内のウイルスRNAに関連し、ウイルスRNA複製、ウイルス粒子組立て、及び放出に役割を有する。SARS-CoV-2 Nは抗原性の高いタンパク質であり、SARS-CoV-2に感染したほぼ全ての患者がNに対する抗体応答を有する。さらに、別の研究は、試験した全員ではないが殆どのCOVID-19生存者が、N特異的CD4+ T細胞応答を有することを示すことを報告した。
【0065】
現在、ワクチンに対する液性応答の生成に強い関心が寄せられており、おそらく、T細胞応答にはあまり注意が払われていない。しかしながら、SARS-CoV-2感染に自然史は、ワクチン接種に対する頑強なT細胞応答は、少なくとも抗体の産生と同じく重要であり、COVID-19ワクチン効力についての重大な考慮事項でなければならないことを示唆している。
【0066】
第1に、液性応答とT細胞応答は高く相関し、中和抗体の力価はT細胞レベルに比例し、有効な液性応答にはT応答が必要であることを示唆している。CD4+ Tヘルパー細胞の活性化が抗体のB細胞産生を増強することが十分に確立されている。第2に、ウイルス特異的CD4+及びCD8+ T細胞は、COVID-19患者に広く検出されているだけでなく、密接に関連するSARS-CoVから回復した患者からの知見に基づき、そのようなT細胞は少なくとも6~17年間持続し、T細胞が長期免疫に重要な部分であり得ることを示唆している。これらのT細胞応答は、主にNに対するものであり、それらの研究における36人の回復期COVID-19患者の全員において、Nタンパク質の複数の領域を認識するCD4+及びCD8+ T細胞の存在を実証できたことが報告されている。SARS-CoVから回復した23個体からの血液を検査し、17年前に獲得した記憶T細胞もSARS-CoV-2の複数のタンパク質を認識することが見出された。これらの知見は、SARS-CoV及びSARS-CoV-2の両方に存在する高く保存されたヌクレオカプシドを用いてワクチンを設計することの重要性を強調している。第3に、SARS-CoV-2に曝露された回復した患者は、セロコンバージョンがなく、T細胞応答の証拠があることが見出された。T細胞ベースの応答は、少なくとも1つの研究において、中和抗体力価が約3ヵ月後にいくつかのCOVID-19患者で低下するという知見を考慮すると、より重要なものとなる。
【0067】
一実施形態では、本明細書に開示されるワクチンは、液性応答に加えてT細胞の産生をもたらす。多くの抗原、SD1、S1及びS2エピトープをNと共に含む全長Sの包含により表示されるS RBDを含む二価ワクチンが企図され、ユニーク且つ保存されたSARS-CoV-2抗原性部位の両方を免疫系に提示することによって、いずれかの抗原単独を用いたコンストラクトよりも、T細胞及び抗体ベースの応答の両方の誘発により有効であることが示された。S及びNの両方の重要性は、SARS-CoVウイルスの先験的に潜在的なB及びT細胞エピトープとしてのS及びN抗原の両方が、T及びB細胞応答の両方を誘導すると予測されるSARS-CoV-2に非常によく似ていることを特定することによって強調された。
【0068】
有効なワクチンの設計のための追加の考慮事項は、組換えタンパク質発現細胞の表面上の抗原提示の可能性、及び天然ウイルス感染を再現するコンフォメーションにおける発現の可能性である。第1に、野生型Nは、それをエンドソーム処理及び最終的にCD4+ T細胞へのMHCクラスII複合体提示に導くシグナル伝達ドメインを有さないため、野生型N配列は、細胞媒介及びB細胞記憶の両方に必要な活発なCD4+ T細胞応答の誘導に最適ではない。この制限を克服するために、Nに対する増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)は、必要な処理及び提示を可能にする。1つの好ましいETSDポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列を有する。勿論、この配列は、所望の活性を維持しながら修飾できることを理解するべきである。したがって、ETSD配列は、配列番号8に対して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95、又は少なくとも98%の同一性を有し得る。第2に、細胞表面上にSの高い抗原性のRBDを表示するために、野生型Sタンパク質の「S-融合物」配列への最適化は、天然の折り畳み、安定性の増大、及びRBDの適切な細胞表面発現の可能性を増大させる。したがって、一実施形態では、ワクチンコンストラクトは、S-融合物配列及びN-ETSD配列を含む。
【0069】
本明細書で使用されるワクチンプラットフォームは、E1、E2b、及びE3遺伝子領域における欠失(hAd5[E1-、E2b-、E3-])を有する次世代組換えヒトアデノウイルス血清型5(hAd5)ベクターである。このhAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクター(図33、パネルC)は、主に、ウイルスDNAポリメラーゼ(pol)の発現を除去する初期遺伝子2b(E2b)領域に、及び前末端タンパク質(pTP)遺伝子に追加の欠失を有すること、並びにE.C7ヒト細胞株におけるその増殖によって、他の第1世代[E1-、E3-]組換えAd5プラットフォームから区別される。これらのE2b領域の除去は、既存のアデノウイルス(Ad)免疫を有する患者において、ウイルスファイバーなどのAd5ウイルスタンパク質に対する免疫応答を最小限にし、それによって特定の抗原に対する強力な免疫応答を誘発することにより、有利な免疫特性を与える。これらの欠失のさらなる利益として、ベクターは、第1世代Ad5[E1-、E3-]ベクターと比較して拡大された遺伝子保有/クローニング能力を有する。この次世代hAd5[E1-、E2b-、E3-]ワクチンプラットフォームは、Ad5[E1-、E3-]ベースのプラットフォームとは対照的に、自然免疫シグナル伝達を抑制する活性を促進せず、それにより、以前のAd免疫とは独立して、改善されたワクチン効力及び優れた安全性プロファイルを可能にする。これらの欠失は、hAd5プラットフォームが既存のAd免疫の存在下でも有効であることを可能にするため、このプラットフォームは、抗ベクター免疫の有意な減少を伴わずに比較的長期の抗原発現を可能にする。したがって、既存の及びワクチン誘導Ad免疫の限界に直面する第1世代Adプラットフォームとは異なり、同じベクター/コンストラクトを同種プライムブースト治療レジメンに使用することも可能である。重要なことに、この次世代Adベクターは、固体腫瘍を有する125人を超える患者において安全性が証明されている。これらの第I/II相試験では、CD4+及びCD8+抗原特異的T細胞は、既存のAd免疫の存在下であっても、複数の体細胞抗原(CEA、MUC1、ブラキュリ)の生成に成功した。
【0070】
本開示は、ACE2-Fc結合によりS-融合物から発現されたS RBDの増強された細胞表面発現の確認、及び生理学的に関連するフォールディングの知見を提供する。N-ETSDタンパク質は、MHC提示のためにエンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメントに首尾よく局在化し、その結果CD4+及びCD8+ T細胞応答の両方を生成した。hAd5 S融合物 + N-ETSDワクチンによるCD-1マウスの免疫化は、ワクチン抗原に対する液性及び細胞媒介免疫応答の両方を誘発した。CD8+及びCD4+ T細胞応答は、S及びNの両方について認められた。S及びNに対する抗体産生について統計的に有意なIgG応答が見られた。hAd5 S融合物 + N-ETSD-免疫化マウスからの血清によるSARS-CoV-2の強力な中和が、2つの独立したSARS-CoV-2中和アッセイ:ACE2,44へのRBD結合の競合阻害を測定するcPassアッセイ、及び感染したベロE6細胞を用いた生SARS-CoV-2ウイルスアッセイによって確認された。S及びNに対するT細胞応答の応答及び液性応答は、Th1特異的応答に傾いた。
【0071】
総じて、これらの知見は、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン組成物がSARS-CoV-2に対して特に有効であろうことを示している。
【0072】
組換えウイルス
組換えウイルスに関連して、組換えウイルスの既知の作製方法の全てが本明細書での使用に適していると考えられるが、特に好ましいウイルスは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなどを含む、治療法において既に確立されたものであることが企図される。他の適切な選択肢の中でも、アデノウイルスが特に好ましい。
【0073】
さらに、一般に、ウイルスは複製欠損及び非免疫原性ウイルスであることがさらに好ましい。例えば、適切なウイルスは、遺伝子組換えアルファウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなどを含む。しかしながら、アデノウイルスが特に好ましい。例えば、複数のワクチン接種のみでなく、アデノウイルスに対する既存の免疫を有する個体のワクチン接種に適した遺伝子組換え複製欠損アデノウイルスが好ましい(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/006479号パンフレット及び国際公開第2014/031178号パンフレット参照)。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルス5ベクターを含む。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターは、E2b領域における欠失を含む。いくつかの実施形態では、複製欠損アデノウイルスベクターはさらに、El領域における欠失を含む。その点で、遺伝子組換え複製欠損アデノウイルスにおけるE2b遺伝子の欠失及び他の後期タンパク質が免疫原性を低下させることに留意するべきである。さらに、これらの特異的欠失に起因して、そのような遺伝子組換えウイルスは複製欠損であり、比較的大きい組換えカーゴが可能である。
【0074】
例えば、国際公開第2014/031178号パンフレットは、結腸癌に対する免疫反応を提供するためにCEA(結腸直腸胚性抗原)を発現するそのような遺伝子組換えウイルスの使用を記載している。さらに、組換えウイルスの比較的高い力価は、報告されているように、遺伝子組換えヒト293細胞を使用して達成することができる(例えば、J Virol.1998 Feb;72(2):926-933)。
【0075】
El欠失アデノウイルスベクターAd5[E1-]は、導入遺伝子が遺伝子のEl領域のみを置き換えるように構築されている。典型的には、野生型Ad5ゲノムの約90%がベクター中に保持される。Ad5[E1-]ベクターは複製能力が低下しており、Ad5 El遺伝子を発現していない細胞の感染後に感染性ウイルスを生成することができない。組換えAd5[E1-]ベクターはヒト細胞内で増殖し、Ad5[E1-]ベクター複製及びパッケージングを可能にする。Ad5[E1-]ベクターは、多くの正の特質を有し;そのうちの最も重要なものは、それらの規模拡大及びcGMP生成が比較的容易であることである。現在、220を優に超えるヒト臨床試験がAd5[E1-]ベクターを使用し、2000人を超える対象がウイルスをsc、im、又はivで付与されている。さらに、Ad5ベクターは組み込まれず;それらのゲノムはエピソームのままである。一般に、宿主ゲノムに組み込まれないベクターの場合、挿入変異誘発及び/又は生殖細胞系の伝達のリスクが、あったとしても非常に低い。従来のAd5[E1-]ベクターは、7kbに近づく保有能力を有する。
【0076】
第1世代(El-欠失)Ad5-ベースのベクターの使用に対する1つの障壁は、既存の抗アデノウイルスタイプ5中和抗体の高い頻度である。この免疫を克服する試みは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/031178号パンフレットに記載されている。詳細には、早期1(El)遺伝子領域における欠失と、早期2b(E2b)遺伝子領域における追加の欠失(Ad5[E1-、E2b-])を有する新規な組換えAd5プラットフォームが記載されている。E2b領域(DNAポリメラーゼ及び前末端タンパク質をコードする)の欠失は、ウイルスDNA複製の減少及び後期ウイルスタンパク質発現をもたらす。E2b欠失アデノウイルスベクターは、第1世代アデノウイルスベクターよりも安全で、有効で、より多用途の改善されたAd-ベースのベクターを提供する。
【0077】
さらなる実施形態では、他での使用に企図されるアデノウイルスベクターは、AdゲノムのE2b領域における欠失と、場合によりEl、E3における欠失と、また場合により、E4領域の部分的又は完全な除去を有するアデノウイルスベクターを含む。さらなる実施形態では、本明細書で使用されるアデノウイルスベクターは、El及び/又はE2b領域の前終端タンパク質機能の欠失を有する。いくつかの場合、そのようなベクターは、他の欠失を有さない。別の実施形態では、本明細書で使用されるアデノウイルスベクターは、El、DNAポリメラーゼ及び/又は前終端タンパク質機能の欠失を有する。
【0078】
本明細書で使用される用語「E2b欠失」は、少なくとも1つのE2b遺伝子産物の発現及び/又は機能を防止するよう突然変異された特定のDNA配列を指す。したがって、特定の実施形態では、「E2b欠失」は、Adゲノムから削除(除去)された特定のDNA配列に関して使用される。E2b欠失又は「E2b領域内に欠失を含む」は、AdゲノムのE2b領域内の少なくとも1つの塩基対の欠失を指す。したがって、特定の実施形態では、1つを超える塩基対が削除され、さらなる実施形態では、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、又は150塩基対が削除される。別の実施形態では、欠失は、AdゲノムのE2b領域内の150、160、170、180、190、200、250、又は300を超える塩基対のものである。E2b欠失は、少なくとも1つのE2b遺伝子産物の発現及び/又は機能を防止する欠失であってもよく、したがって、E2b-特異的タンパク質のコード部分のエキソン内の欠失、並びにプロモーター及びリーダー配列内の欠失を包含する。特定の実施形態では、E2b欠失は、DNAポリメラーゼ及びE2b領域の前終端タンパク質の両方の発現及び/又は機能を防止する欠失である。さらなる実施形態では、「E2b欠失」は、1つ以上のコード化タンパク質が非機能性であるような、Adゲノムのこの領域のDNA配列における1つ以上の点突然変異を指す。そのような突然変異は、非機能性タンパク質をもたらすアミノ酸配列の変化に繋がる、異なる残基で置き換えられた残基を含む。
【0079】
容易に理解されるように、所望の核酸配列(ウイルス感染細胞からの発現のための)は、当技術分野で周知の適切な調節エレメントの制御下にある。上記に鑑みて、提示される組成物及び方法は、ウイルス発現抗原を1つ又は別の(又は両方の)MHC系に特異的に導くのに適切だけではなく、様々な同時刺激性分子(例えば、ICAM-1(CD54)、ICOS-L、LFA-3(CD58)並びにB7.1(CD80)及びB7.2(CD86)の少なくとも1つ)の包含による、及びチェックポイント阻害剤の分泌又は膜結合提示による、CD8+及び/又はCD4+細胞に対する刺激効果の増加も提供することを理解するべきである。
【0080】
ウイルス発現及びワクチン接種システムに関連して、全ての治療的組換えウイルス発現系が、そのようなウイルスが感染細胞における組換えペイロードの発現をもたらすことが可能である限り、本明細書での使用に適していると考えられることが企図される。
【0081】
組換えウイルスのタイプにかかわらず、ウイルスはエクスビボ又はインビボで患者(又は非患者)細胞を感染させるのに使用され得ることが企図される。例えば、ウイルスは、患者の細胞、特に抗原提示細胞を感染させるために、皮下又は静脈内に注射されてもよく、又は鼻腔内若しくは吸入を介して投与されてもよい。或いは、患者の(又は同種源からの)免疫コンピテント細胞(例えば、NK細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞など)をインビトロで感染させた後、患者に注入してもよい。或いは、免疫療法は、ウイルスに依存する必要はなく、所望の細胞、特に免疫コンピテント細胞においてネオエピトープ(例えば、単一ペプチド、タンデムミニ遺伝子など)の発現をもたらすRNA又はDNA、又は他の組換えベクターを使用する核酸トランスフェクション又はワクチン接種によって達成され得る。そのような核酸は、典型的には脂質製剤に関連して送達されて、核酸を分解から保護し、標的細胞への核酸の取り込みを促進する。
【0082】
上記のように、所望の核酸配列(ウイルス感染細胞からの発現のための)は、当技術分野で周知の適切な調節エレメントの制御下にある。例えば、適切なプロモーターエレメントは、構成的強力プロモーター(例えば、SV40、CMV、UBC、EF1A、PGK、CAGGプロモーター)を含むが、特に誘導条件が腫瘍微環境にとって典型的である場合、誘導性プロモーターも本発明での使用に適していると考えられる。例えば、誘導性プロモーターは、低酸素に敏感なもの、及びTGF-β又はIL-8(例えば、TRAF、JNK、Erk、又は他の応答エレメントプロモーターを介して)に敏感なプロモーターを含む。他の例では、適切な誘導性プロモーターは、テトラサイクリン誘導性プロモーター、ミクソウイルス耐性1(Mx1)プロモーターなどを含む。
【0083】
本明細書に開示されるような、E1遺伝子領域欠失、E2b遺伝子領域欠失、及びコロナウイルス2(CoV2)ヌクレオカプシドタンパク質及び/又はCoV2スパイクタンパク質をコードする核酸を含む複製欠損アデノウイルスは、CoV2に対する免疫を誘導する必要がある患者に投与され得る。本明細書に記載される治療組成物の投与経路及び頻度、並びに投与量は、個体間で異なり、また疾患の重症度で異なり得、標準的な技術を用いて容易に確立することができる。いくつかの実施形態では、投与は、4.8~5.2x1011複製欠損アデノウイルス粒子、又は4.9~5.1x1011複製欠損アデノウイルス粒子、又は4.95~5.05x1011複製欠損アデノウイルス粒子、又は4.99~5.01x1011複製欠損アデノウイルス粒子を送達することを含む。
【0084】
ウイルス粒子の投与は、送達用の多様な適切な経路を介することができる。本明細書で企図される1つの好ましい経路は、皮内注射、筋内注射、静脈内注射又は皮下注射などの注射による。いくつかの実施形態では、皮下送達が好ましい可能性がある。
【0085】
組換え酵母
酵母発現及びワクチン接種システムに関連して、全ての公知の酵母株が本明細書での使用に適切と見なされることが企図される。しかしながら、酵母は、コロナウイルス2(CoV2)ヌクレオカプシドタンパク質、CoV2スパイクタンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードする核酸コンストラクトで遺伝子改変された組換えサッカロミセス(Saccharomyces)株であることが好ましく、それによりCoV2ウイルス疾患に対する免疫応答を開始する。上記又は本明細書の他の箇所に記載した開示の実施形態の任意の一態様では、酵母ビヒクルは、酵母全体である。酵母全体は、一態様では殺傷される。一態様では、酵母全体は熱不活性化される。好ましい一実施形態では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの熱不活性化酵母全体である。
【0086】
酵母ベースの治療組成物の使用は当技術分野に開示されている。例えば、国際公開第2012/109404号パンフレットは、慢性B型肝炎感染の治療のための酵母組成物を開示している。
【0087】
任意の酵母株を使用して本開示の酵母ビヒクルを生成できることが注目される。酵母は、3つのクラスのうちの1つに属する単細胞微生物である:子嚢菌(Ascomycetes)、担子菌(Basidiomycetes)及び不完全菌類(Fungi Imperfecti)。免疫モジュレーターとして使用するための酵母のタイプの選択に関する1つの考慮事項は、酵母の病原性である。好ましい実施形態では、非病原性酵母株は酵母ビヒクルが投与される個体への任意の悪影響を最小にするため、酵母はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの非病原性株である。しかしながら、酵母の病原性が薬学的介入を用いて否定できる場合、病原性酵母も使用され得る。
【0088】
例えば、酵母株の適切な属は、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ハンセヌラ(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ロドトルラ(Rhodotorula)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)及びヤロウイア(Yarrowia)を含む。一態様において、酵母属は、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)、ピキア(Pichia)又はシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)から選択され、好ましい態様では、サッカロミセス(Saccharomyces)が使用される。使用され得る酵母株の種は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・Saccharomyces carlsbergensis、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ケフィア(Candida kefyr)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・ラウレンティイ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ハンセヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロミセス・マルキシアヌスvar.ラクチス((Kluyveromyces marxianus var.lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を含む。
【0089】
これらの種の数は、前述した種に含まれることが意図される多様な亜種、タイプ、サブタイプなどを含むことをさらに理解するべきである。一態様では、本開示で使用される酵母種は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、C.アルビカンス(C.albicans)、H.ポリモルファ(H.polymorpha)、P.パストリス(P.pastoris)及びS.ポンベ(S.pombe)を含む。S.セレビシエ(S.cerevisiae)は、操作が比較的容易であるため有用であり、食品添加物として使用するために「一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe)」又は「GRAS」である(GRAS、FDA提案規則62FR18938、Apr.17、1997)。したがって、プラスミドを特に高いコピー数に複製することができる酵母株、例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)cir株が、本明細書で特に企図される。S.セレビシエ(S.cerevisiae)株は、1つ以上の標的抗原及び/又は抗原融合タンパク質及び/又は他のタンパク質を高いレベルで発現させる発現ベクターを支持することができる株の1つである。さらに、N結合グリコシル化を延長する酵素の突然変異などの、発現した標的抗原又は他のタンパク質の翻訳後修飾の低下を示すものを含む、任意の突然変異体酵母株を使用することができる。
【0090】
酵母内での企図されるペプチド/タンパク質の発現は、当業者に公知の技術を用いて達成され得る。最も典型的には、少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸分子は、宿主酵母細胞内に形質転換された際に、核酸分子の発現の構成的又は調節された発現を達成することが可能なように、核酸分子が転写制御配列に作動可能に連結されるように発現ベクターに挿入される。容易に理解されるように、1つ以上のタンパク質をコードする核酸分子は、1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された1つ以上の発現ベクター上に存在し得る。特に重要な発現制御配列は、転写開始を制御するものであり、例えばプロモーター及び上流活性化配列である。
【0091】
任意の適切な酵母プロモーターを本開示の方法及び組成物に使用することができ、多様なそのようなプロモーターは当業者に公知であり、上記に一般に論じられている。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のためのプロモーターは、以下の酵母タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターを含む:アルコールデヒドロゲナーゼ I(ADH1)又はII(ADH2)、CUP1、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、翻訳伸長因子EF-1 α(TEF2)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;トリオースリン酸デヒドロゲナーゼの場合、TDH3とも称される)、ガラクトキナーゼ(GAL1)、ガラクトース-1-リン酸ウリジル-トランスフェラーゼ(GAL7)、UDP-ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、シトクロムc1(CYC1)、Sec7タンパク質(SEC7)及び酸ホスファターゼ(PHO5)、(これはADH2/GAPDH及びCYC1/GAL10プロモーターなどのハイブリッドプロモーターを含み、及びADH2/GAPDHプロモーターを含み、これは細胞内のブドウ糖濃度が低い(例えば、約0.1~約0.2パーセント)場合に誘導される)、並びにCUP1プロモーター及びTEF2プロモーター。同様に、エンハンサーとも称される多数の上流活性化配列(UAS)が公知である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のための上流活性化配列は、以下のタンパク質をコードする遺伝子のUASを含む:PCK1、TPI、TDH3、CYC1、ADH1、ADH2、SUC2、GAL1、GAL7及びGAL10、並びにGAL4遺伝子産物により活性化される他のUAS、ここでADH2 UASが一態様で使用される。ADH2 UASはADR1遺伝子産物により活性化されるため、異種遺伝子がADH2 UASに作動可能に連結される場合、ADR1遺伝子を過剰発現することが好ましい可能性がある。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のための転写終結配列は、α-因子、GAPDH、及びCYC1遺伝子の終結配列を含む。メチル栄養性酵母において遺伝子を発現するための転写制御配列は、アルコールオキシダーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写制御領域を含む。
【0092】
同様に、本開示による酵母細胞内への核酸分子のトランスフェクションは、それによって核酸分子が細胞内に投与される任意の方法により達成することができ、核酸、能動輸送、浴超音波処理、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、及びプロトプラスト融合を含む。トランスフェクトされた核酸分子は、酵母染色体に組み込まれ、又は当業者に公知の技術を用いて染色体外ベクター上に維持される。上記に論じたように、酵母細胞質体、酵母ゴースト、及び酵母膜粒子又は細胞壁製剤も、無傷酵母微生物又は酵母スフェロプラストに所望の核酸分子をトランスフェクトし、内部で抗原を生成し、次いで微生物又はスフェロプラストを当業者に公知の技術を用いてさらに操作して、所望の抗原又は他のタンパク質を含む細胞質体、ゴースト又は細胞内酵母膜抽出物若しくはその画分を生成することによって、組換え的に生成することができる。本発明での使用に適したさらなる例示的な酵母発現系、方法、及び条件は、米国特許出願公開第20100196411A1号明細書、第2017/0246276号明細書、又は第2017/0224794号明細書、及び第2012/0107347号明細書に記載されている。
【0093】
そのように生成された組換えウイルス及び酵母は、次いで個々に又は組み合わせて、医薬組成物における治療的ワクチンとして使用され得、典型的には投与単位当たり10~1013ウイルス又は酵母粒子、又はより好ましくは投与単位当たり10~1012ウイルス又は酵母粒子のウイルスを有する無菌注射用組成物として製剤化される。或いは、ウイルス又は酵母は、エクスビボで患者細胞を感染させるように使用されてもよく、そのように感染した細胞は、次いで患者に注入される。しかしながら、代替的な製剤も本明細書での使用に適しているが考えられ、及び全ての公知の投与経路及びモードが本明細書で企図される。
【0094】
企図されるさらなる実施形態では、本明細書に開示される第2世代のhAd5[E1-、E2b-、E3-]ベースのワクチンは、既存の抗Ad5免疫を克服する。Ad免疫化バリアを避け、第1世代Ad5[E1- E3-]ベクターに対する悪条件を回避するために、E2b領域に2つの(2)追加の欠失を有し、DNAポリメラーゼ及び前終端タンパク質遺伝子を除去した高度な第2世代ヒトアデノウイルス(hAd5)ベクターを構築した[E1-、E2b-、E3-]。(アデノウイルスベクターの旧名は、Ad5、文献ではETBXであった)
【0095】
E2b欠失hAd5ベクターは、第1世代Ad5[E1-]ベクターの7-kb容量と比較して、12~14kbまでの遺伝子保有容量を有し、必要であれば多数の遺伝子のための空間を提供する。hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベースの組換えベクターは、ヒトE.C7細胞株を使用して生成される。E2b領域の削除はまた、これらの新規なAdベクターに対して有利な免疫特性を付与し、特定の非ウイルス抗原に対する強力な免疫応答を誘発する一方、Adウイルスタンパク質に対する免疫応答を最小限にする。
【0096】
hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターは、Ad免疫の存在下であっても、強力な細胞媒介免疫(CMI)応答、及びベクター化抗原に対するAbsを誘導する。hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターはまた、Ad5[E1-]ベクターと比較して、有害反応、特に肝毒性及び組織損傷の出現が低下されている。一実施形態では、hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターウイルスタンパク質に対する炎症応答の低下、及び結果としての既存のAd免疫の回避により、hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターが樹状細胞(DC)を感染させる能力が増大し、ワクチンによる免疫力が高まる。さらに、他の細胞タイプの感染の増大は、強力なCD8+及びCD4+ T細胞応答に必要な抗原提示の高いレベルを提供し、記憶T細胞の発達をもたらす。一実施形態では、hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターは、免疫原性及び安全性の点でAd5[E1-]ベクターより優れており、迅速且つ効率的な方法でCOVID-19ワクチンを開発するための最良のプラットフォームとなるであろう。一実施形態では、予防ワクチンは、他のAd5系で見出されたバリアを克服するこの新しいhAd5ベクターシステムを利用することによりCOVID-19に対して試験され、以前にAd5に曝露された人の免疫化を可能にする。
【0097】
パンデミック脅威中の第二世代ヒト(hAd5)アデノウイルスプラットフォームを利用した急速ワクチン開発の実績:2009年におけるH1N1経験。特にパンデミックの時代に、新たな病原体の脅威に対処するために、近代化されたワクチン技術を使用することが重要である。これらの技術は、高い免疫原性を有するコンストラクトを迅速に特定するために、ゲノム配列決定、確立されたワクチンベクターにおける迅速なトランスフェクションの力を利用するであろう。
【0098】
2009 H1N1パンデミックウイルスのような新たな病原体に対するワクチンは、最も生物学的に関連するワクチンを構築するための、迅速なゲノム配列決定などの現代の技術から利益を受けることができる。新規なプラットフォーム(hAd5[E1-、E2b-、E3-])は、様々な抗原性標的に対する免疫応答を誘導するのに使用されている。このベクタープラットフォームは、2009 H1N1パンデミックウイルスからヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を発現した。インサートは、ウイルス単離配列から設計されたコンセンサス配列であり、ワクチンは迅速に構築及び生産された。ワクチン接種はマウスにおいてH1N1免疫応答を誘導し、これは致命的なウイルスチャレンジからの保護を提供した。フェレットでは、ワクチン接種は疾患の発症を防御し、鼻洗浄液におけるウイルス力価を有意に低減した。H1N1細胞は、免疫並びに疾患症状の予防及びウイルス複製の減少と相関する抗体誘導を媒介した。したがって、hAd5[E1-、E2b-、E3-]は、感染性疾患に対する有効なワクチンの迅速な開発のための能力を示した。
【0099】
少なくともこれらの理由のために、企図されるワクチン組成物は、アデノウイルスベクターに基づく場合、組換えhAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォームを使用して、ヒトでの治療的使用のための組換え核酸を生成することが一般に好ましい。
【実施例
【0100】
実施例1:選択されたhAd5ワクチンコンストラクト及び結果
構築及び試験されたコンストラクト、特にSARS-CoV-2(S/N)タンパク質インサートを有するhAd5-COVID-19ワクチンコンストラクトE1-、E2b-、E3-hAd5ベクターが本明細書に開示される(図26)。このコンストラクトは、インビトロ発現(図27)及び小動物免疫原性を含む前臨床実験において試験された。複数のCOVID-19コンストラクトは、RBD単独、S1単独、S1融合タンパク質、並びにRBD、S1及びS1融合物とNとの組み合わせを含む。予備的なインビトロ研究は、これらのコンストラクト(図28)が回復期血清抗体を認識し、代替ワクチンとして機能し得ることを実証する。
【0101】
COVID-19のためのhAd5コンストラクトにおけるヌクレオカプシド(N)の包含の理論的根拠:SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)タンパク質は、高度に保存され、高度に発現される。SARSを引き起こす関連コロナウイルスに関する以前の研究は、Nタンパク質が細胞内輸送コンストラクトと一体化された場合、免疫原性であることを実証した。今日まで、開発における全てのワクチン戦略は、スパイク(S)タンパク質に対する免疫原性の開発を含む。しかしながら、COVID-19から回復した患者における非常に最近の証拠は、ヌクレオカプシド(N)に対して生じたTh1免疫を実証している。さらなる報告は、予測バイオインフォマティクスモデルにおいて、T及びB細胞エピトープがスパイク糖タンパク質及び核タンパク質の両方について最高であることをさらに確認した。本開示は、SをNと組み合わせることによって、Th1表現型を有する長期細胞媒介免疫が誘導され得ることを確認する。実際、Sにおける突然変異及び構造Nタンパク質がコロナウイルスファミリーにおいて高度に保存されているという知見に照らして、この組み合わせワクチンが長期の「普遍的」COVID-19ワクチンとして役立つ有意な可能性が存在する。
【0102】
実施例2:免疫原性試験(小動物モデル):
BALB-cマウスにおける相同プライムブースト免疫原性。マウスを1、2又は3用量のhAd5 COVID-19ワクチンで処置し、血清及び脾細胞サンプルをSARS-CoV-2抗原特異的免疫応答について試験する。血清をELISAによって抗スパイク及び抗ヌクレオカプシド抗体応答について試験する。脾細胞を、ELISPOT及び細胞内サイトカインシミュレーションアッセイによって、スパイク及びヌクレオカプシド特異的細胞媒介免疫応答について試験する。
【0103】
結果は、有望な免疫原性活性を示す。一実施形態では、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド+増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)を含むワクチンであるhAd5[E1-,E2b-、E3-]N-ETSDは、ヌクレオカプシドに対するT細胞応答を変化させる。マウスを1010VPの用量で7日間隔で2回皮下(SC)免疫した。いくつかの時点で血液を収集し、免疫原性実験を実施するために、屠殺時に脾臓を収集した。脾細胞を単離し、細胞媒介免疫(CMI)応答について試験した。結果は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗原特異的CMI応答がhAd5[E1-、E2b-、E3-]N-ETSDワクチンで免疫した全てのマウスの脾臓においてELISpot及びフローサイトメトリー分析によって検出されるが、ベクター対照(hAd5[E1-、E2b-、E3-]ヌル)で免疫されたマウスでは検出されないことを示した。さらに、抗体応答は、hAd5[E1-、E2b-、E3-]-N-ETSDワクチンで免疫した全てのマウスで検出されたが、ベクター対照(Ad5[E1-、E2b-、E3-]-ヌル)で免疫したマウスでは検出されなかった(図29及び図30)。
【0104】
実施例3:RBD細胞表面発現の増強:
Sと組み合わせた場合のNの潜在的な増強免疫原性値のさらなる証拠は、図31に見られるように、N-ETSD+Sコンストラクトでトランスフェクトされた293細胞におけるRBDタンパク質の増強された表面発現の驚くべき発見であった。RBDの発現及び提示は、COVID-19感染から回復した試験対象の全ての個体において、強力な抗ウイルス活性を有する稀ではあるが再発するRBD特異的抗体が見出されることを示した他者による最近の報告によって証明されているように、非常に重要であると思われる。NがS-融合物と組み合わされた場合のRBDの発現増強のこの知見は、COVID-19感染から回復した患者からの血漿を用いた研究において裏付けられた(図32)。RBD-ETSDの代替コンストラクトは、代替ワクチンとして役立ち得る。
【0105】
要約すると、S融合物及びS融合物+NコンストラクトによるRBDタンパク質の発現及び曝露の増強に基づいて、両方をhAd5ベクターにおいて試験した。さらに、COVID-19から回復した患者からの最近の臨床データ、並びにNコンストラクトが長期間持続するCD4及びTh1細胞媒介免疫を誘導するという裏付けとなる前臨床データに基づいて、S融合物+Nコンストラクトのこの組み合わせは、短期中和抗体を超える長期間持続する免疫を提供し得る。
【0106】
実施例4:候補COVID-19ワクチンコンストラクトの免疫原性試験
2つのアデノウイルスベースのCOVID-19ワクチンコンストラクトを、インビトロ発現;小動物免疫原性、並びに非ヒト霊長類免疫原性及び有効性を含む前臨床実験において試験する。
【0107】
コンストラクトの説明:2つの第2世代hAd5ベースのCOVID-19ワクチンコンストラクトを評価した。第1は、スパイクタンパク質インサートを有するSARS-CoV-2を有するhAd5ベクターである(図26参照)。第2は、SARS-CoV-2野生型スパイクタンパク質(S)インサート、及び同じベクター骨格中にエンドソーム標的化ドメイン配列(ETSD)を含むヌクレオカプシドタンパク質(N)インサートを有するE1-、E2b-、E3hAd5ベクターである。
【0108】
免疫原性研究:マウスにおける相同プライム-ブースト免疫原性を、図26に列挙したアデノウイルスワクチン候補の1、2又は3用量でマウスを処置することによって試験し、血清及び脾細胞サンプルをSARS-CoV-2抗原特異的免疫応答について試験する。血清は、ELISAによって抗スパイク及び抗ヌクレオカプシド抗体応答について試験されている。脾細胞を、ELISPOT及び細胞内サイトカインシミュレーションアッセイによって、スパイク及びヌクレオカプシド特異的細胞媒介免疫応答について試験する。これらの研究からのデータは、本開示を通して開示される。
【0109】
SARS-CoV-2ウイルス中和研究:上述した免疫原性研究の過程で免疫されたマウス由来の血清を使用し、それらのABSL-3施設で実施されるSARS-CoV-2中和研究のための試験研究室に送る。血清の様々な希釈物をCOVID 19ウイルスと混合し、混合物をインキュベートし、次いで混合物をVero細胞に曝露して細胞変性効果(CPE)を検出することによって、COVID 19ウイルス中和活性について血清を試験する。CPEを防止する最後の希釈は、終点中和力価とみなされる。
【0110】
非ヒト霊長類における免疫原性及び有効性評価:アカゲザルを、図26に列挙したアデノウイルスワクチン候補の3用量で処置する。SARS-CoV-2抗原特異的免疫応答を、治療の過程を通して、ELISA、ELISPOT及びICSによって血清及びPBMCにおいてモニターする。最終ワクチン接種の4週間後、動物をSARS-CoV-2でチャレンジし、疾患の特徴及びウイルスの排泄についてモニターする。
【0111】
実施例5:hAd5[E1-、E2b-、E3-]CoV-2ワクチンの第Ib相臨床試験。
試験デザイン:これは、成人健康対象における第1b相非盲検試験である。この臨床試験は、hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nワクチンの安全性、反応原性、及び免疫原性を評価するように設計されている。hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nワクチンは、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質を単独で、又はSARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)タンパク質と一緒にコードするhAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターベースの標的化ワクチンである。hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターは、これまで125人を超える癌患者において1用量当たり5×1011ウイルス粒子の高用量で安全性を実証している、標的ワクチンのためのプラットフォーム技術である。3つの異なるhAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターベースのワクチンを同日に各々1用量当たり5×1011ウイルス粒子(1.5×1012の総ウイルス粒子)で同時投与することも安全であることが実証されている。
【0112】
COVID-19感染は、世界中の集団において著しい罹患率及び死亡率を引き起こす。hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nワクチンは、既存のアデノウイルス免疫を有する個体においてさえ、液性及び細胞性応答の両方を誘導するように設計される。したがって、hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nが健康な対象において抗COVID-19免疫を誘導し、COVID-19感染の健康への影響を予防又は低減する可能性が存在する。
【0113】
第1b相安全性分析:第1b相の最初の安全性分析では、合計40人の健康な対象を4つの投与コホート(コホート1A、1B、2A、2B;各コホートについてn=10)に分ける:
・ コホート1A - hAd5-COVID-19-S 5×1010ウイルス粒子(VP)/用量(n=10)、
・ コホート1B - hAd5-COVID-19-S 1×1011VP/用量(n=10)、
・ コホート2A - hAd5-COVID-19-S/N 5×1010VP/用量(n=10)、
・ コホート2B - hAd5-COVID-19-S/N、1×1011VP/用量(n=10)。
【0114】
各対象は、1日目及び22日目(即ち、2用量)にhAd5-COVID-19-S又はhAd5-COVID-19-S/Nの皮下(SC)注射を受ける。この投与スケジュールは、現在臨床試験中のhAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターベースのワクチンと一致する。コホート1~2は並行して登録され、治験薬の供給に応じて、同時に、又は時差的に開かれ得る。コホート1A及び2Aにおける対象は、最初に低用量ワクチン接種レジメンを完了する。コホート1A及び2Aの全ての対象が試験8日目までの毒性評価期間中に少なくとも単回投与及びフォローアップ評価を完了した後、治験依頼者及び治験とは無関係に、安全性審査委員会(SRC)及び少なくとも1名の有資格の感染症医師が安全性の懸念がないことを確認した場合、登録を進める。次いで、対象を高用量コホート1B及び2Bに登録し、ワクチン接種する。全ての対象について、フォローアップ試験来院は、最終ワクチン接種後8、22、29、52日目、並びに3、6、及び12ヶ月目に行われる。安全性情報の追加フォローアップは、イベントのスケジュールに記載されているように、電話連絡により行われる。初期安全第1b相の主な目的は、hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nワクチンの予備的安全性及び反応原性を評価することである。副次的目的は、hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nワクチンの長期安全性及び免疫原性を評価することである。
【0115】
実施例6:拡大第1b相:コンストラクト選択のための安全性及び免疫原性
第1b相の安全性評価からの安全性データのレビューに基づいて、SRCがそれを行うのに安全であると判断した場合、第1b相の拡大に進む。第1b相の拡大では、合計60人の健康な対象を4つの投与コホート(コホート1A、1B、2A、2B;各コホートについてn=15)に分ける:
・ コホート1A - hAd5-COVID-19-S 5×1010VP/用量(n=15)
・ コホート1B - hAd5-COVID-19-S 1×1011VP/用量(n=15)
・ コホート2A - hAd5-COVID-19-S/N 5×1010VP/用量(n=15)
・ コホート2B - hAd5-COVID-19-S/N 1×1011VP/用量(n=15)
【0116】
各対象は、1日目及び22日目(即ち、2用量)にhAd5-COVID-19-S又はhAd5-COVID-19-S/NのSC注射を受ける。全ての対象について、フォローアップ試験来院は、最終ワクチン接種後8、22、29、52日目、並びに3、6、及び12ヶ月目に行われる。安全性情報の追加フォローアップは、イベントのスケジュールに記載されているように、電話連絡により行われる。拡大第1b相の主な目的は、hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nの間で最も免疫原性の高いコンストラクトと、液性及び細胞性免疫原性指数の変化によって決定される用量レベルとを選択することである。副次的目的は、hAd5-COVID-19-S及びhAd5-COVID-19-S/Nの安全性及び反応原性を評価することである。
【0117】
本開示の実施形態は、以下の実施例においてさらに説明される。実施例は単なる例示であり、特許請求される本発明の範囲を決して限定しない。
【0118】
実施例7:hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォーム及びコンストラクト
ここに示す実施例については、次世代hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターを使用して(図33、パネルC)、ウイルスワクチン候補コンストラクトを作製した。図33、パネルD~Hに示すように、多様なコンストラクトが作製された:図33、パネルD:S WT:1273個のアミノ酸及び全てのSドメインを含むSタンパク質:細胞外(1~1213)、膜貫通(1214~1234)、及び細胞質(1235~1273)(Unitprot P0DTC2);図33、パネルE:S RBD-ETSD:増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)を有するS受容体結合ドメイン;図33、パネルF:S融合物:RBDの表面発現及び表示を増強するために最適化されたS;図33、パネルG:N-ETSD:ETSDを有するヌクレオカプシド(N)配列;並びに図33、パネルH:二価S融合物+N-ETSD;S-WT + N-ETSD及びS RBD-ETSD + N-ETSDコンストラクトも作製されたが、示されていない。
【0119】
実施例8:Ad5 S融合物 + N-ETSDを用いたトランスフェクション後のRBDのHEK 293T細胞表面表現の増強
図34に示すように、抗RBD特異的抗体は、hAd5 S-WT(図34、パネルA)又はhAd5 S-WT + N-ETSD(図9b)コンストラクトでトランスフェクトされたHEK 293T細胞の表面上にRBDを検出せず、一方、hAd5 S-融合物のみがわずかに高かった(図34、パネルE)。予想通り、RBD、hAd5 RBD-ETSD及びRBD-ETSD + N-ETSDを有する両方のコンストラクトは、抗RBD抗体の高い結合を示した(図34、パネルC及びD)。特に、RBDの高い細胞表面発現は、二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDでのトランスフェクション後に検出された(図34、パネルF)。これらの知見は、適切なフォールディングを有する全長の最適化されたSとNの両方によって提供される多数の多様な抗原を含有するhAd5 S-融合物 + N-ETSDコンストラクトがワクチンコンストラクトにおけるRBDの発現及び細胞表面表示の増強をもたらすという提案を支持する。
【0120】
実施例9:S発現の増強とhAd5 S-融合物 + N-ETSDとの免疫ブロット相関
S発現の免疫ブロット分析は、S発現の増強と相関し(図35)、二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDコンストラクトがS-融合物単独と比較してSの発現を増強することを再び示す。図35は、S発現の免疫ブロット分析を示す。HEK 293T細胞における(a)hAd5 S-WT、S-融合物、及び(c)S-融合物 + N-ETSDを用いた細胞表面RBD発現は、抗全長(S2)抗体を用いてプローブされたHEK 293T細胞溶解物の免疫ブロットにおけるSの発現(d)と高い相関を示した。Y軸スケールは、モードに正規化されている(NM)。
【0121】
実施例10:hAd5 S-融合物 + N-ETSDトランスフェクション後の増強表面RBDのネイティブフォールディングの確認
組換えACE2-Fcの結合の決定を行って、hAd5 S-融合物 +N-ETSDワクチン候補からの発現後のS RBDの天然の生理学的に関連するフォールディングを確認した。S RBDは、SARS-CoV-2感染の経過中にACE2に結合し、有効な中和抗体は、この相互作用、ひいては感染を防止する。このような中和抗体は、正しいコンフォメーションで提示されたSに応答して産生された場合、より効果的である可能性が高い。細胞表面発現の増強に加えて、最適化されたSは、適切なタンパク質フォールディングを可能にする。hAd5 S-WT又はhAd5 S-融合物のいずれかと比較して(各々図36、パネルA及びB)、hAd5 S-融合物 + N-ETSDから発現されるS RBDへのACE2-Fc結合が明らかに増強されたことが見出された(図36、パネルC)。同じ実験で行った抗RBD抗体結合試験(図36、パネルF~J)は、ACE2-Fc結合によって示される増強された表面発現所見を確認した。hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン候補は、中和抗体の産生に重要である立体配座的に正確で増強されたS RBD発現のこれらの知見に基づいて、臨床試験のために選択された。
【0122】
実施例11:hAd5 N-ETSDは、Nをエンドソーム/リソソームコンパートメントに首尾よく導く
ETSD設計は、Nをエンドソームの細胞内コンパートメントに首尾よく転座させた。N-ETSDによるHeLa細胞の感染後、Nは、図37、パネルCに示すように、エンドソームマーカー45トランスフェリン受容体(CD71)と共局在化し、また、リソソームマーカーLamp1と共局在化し(図37、パネルD)、N-ETSDは、エンドソーム経路を通してリソソームに転座し、MHC II提示のためのプロセシングを可能にすることを実証する。N-ETSDと比較して、N-野生型(N-WT)は、拡散した細胞質分布を示し、リソソームマーカーと共局在化しない(図37、パネルE)。これらの知見は、NによるMHC II提示の増加及びCD4+活性化をもたらす、Nをエンドソーム/リソソームコンパートメントに導く際のETSDの役割を確認する。
【0123】
実施例12:インビボhAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン免疫原性試験
S-融合物 + N-ETSDが、生理学的に関連するRBDの発現の増強をもたらし、N-ETSDがエンドソーム/リソソームコンパートメントに首尾よく転座したという証拠に基づいて、二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンを7週齢の雌CD-1マウスの接種のために選択した。このコンストラクトの独特の特性は、CD8+及びCD4+ T細胞応答及び中和抗体の両方の生成をもたらす。方法に記載されるように、マウスは0日目に初回注射を受け、21日目に2回目の注射を受けた。抗体及び中和分析のために、血清を0日目及び28日目の試験の終わりに収集した。脾細胞も、細胞内サイトカイン染色(ICS)及びELISpot分析のために28日目に収集した。試験に割り付けられた全ての年齢及び性別をマッチさせた動物は、部位反応を有さず、投与全体を通して体重の減少が見られず、正常であると思われ、hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォームでの以前の観察と一致した
【0124】
実施例13:hAd5 S-融合物 + N-ETSDは、CD8β+及びCD4+ T細胞応答の両方を生じる
S及びNの両方によるCD8+活性化:Sペプチドプール1(RBD及びS1を含有する)に曝露されたhAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種マウス由来のCD8β+脾細胞は、hAd5ヌルマウスと比較して有意に高いIFN-γ発現を示し(図38、パネルA);これらのマウス由来の脾細胞はまた、Nペプチドプールに応答して細胞内IFN-γを発現した。CD8β+脾細胞からの同時IFN-γ/TNF-α発現の評価(図38、パネルC)は、IFN-γ発現単独についてのものを反映した。これらの結果は、S及びNの両方がCD8+ T細胞を活性化することを示す。
【0125】
NによるCD4+活性化:CD8+細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞の死滅を媒介するが、持続的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性にはCD4+ T細胞が必要である。したがって、ワクチン接種した動物におけるCD4+ T細胞を評価した。CD8β+脾細胞とは対照的に、Nペプチドプールのみが、hAd5 S-融合物 + N-ETSD接種マウス由来のCD4+脾細胞を刺激して、IFN-γ(図38、パネルB)又はIFN-γ/TNF-α(図38、パネルD)を、hAd5ヌル対照よりも実質的に高いレベルで発現させた。CD4+ T細胞応答のNによる寄与は、候補ワクチンに対する有効な免疫応答に不可欠である。
【0126】
実施例14:hAd5 S-融合物 + N-ETSDは、S抗原及びN抗原の両方に対する抗体応答を生じる
現在開発中のコロナウイルスワクチンの主な目的は、スパイクに対する中和抗体である。二価ワクチンをワクチン接種したマウスでは、試験の28日目にhAd5 S-融合物 + N-ETSDをワクチン接種したCD-1マウス由来の血清において、抗S(図39、パネルA)及び抗N(図39、パネルC)抗体の両方の有意な産生があった。抗S抗体と比較して、抗N抗体は、血清の希釈係数が抗N抗体分析について1:90であり、抗S抗体分析について1:30であるとすると、血清中でより高かった。
【0127】
IgGの検量線を作成し、次いで、吸光度値を、抗S及び抗N抗体の両方についての質量当量に変換した(図39、パネルB及びD)。これらの値を使用して、hAd5 S-融合物 + NETSDワクチン接種が血清1mL当たり5.8μgのS特異的IgG及び42μgのN特異的IgGの幾何平均値を生じ、したがって抗N抗体の相対μg量が抗S抗体のそれよりも高く、抗SARS-CoV-2抗体産生に対するNの強い寄与を反映することを計算した。
【0128】
実施例15:hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、cPass及び生ウイルス中和アッセイの両方によって評価されるように、強力な中和抗体を生成する
中和抗体活性を、無細胞アッセイ(cPass)及びインビトロでの生ウイルス感染を用いて評価した。図40、パネルAに見られるように、cPassアッセイは、1:20及び1:60の両方の希釈で、全てのマウスについてS RBD:ACE2結合の阻害、及び2匹のマウスについて約100%阻害を示した。ベロE6中和アッセイの結果を、ELISAによってS特異的抗体を示した4匹のマウスについて示す。高い希釈係数でさえ見られた高い持続的中和は、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンによる二価多抗原多エピトープ生成が、RBD-ACE2結合に関連するものに加えて、エピトープで中和免疫応答の相乗作用をもたらし得るという興味深い可能性を示唆する(図40、パネルB)。図40、パネルBに見られるように、50%中和(IC50)の値は、S特異的抗体を示したマウス由来の血清のG4プールについて1:10,000血清希釈で存在し、1:1,000希釈の回復期血清より10倍高い。2つのアッセイによって確認された強力な中和は、hAd5 S-融合物 + ETSDワクチン候補の予測される有効性及び臨床試験へのその進展を支持する。
【0129】
実施例16:hAd5 S-融合物 + N-ETSDは、液性免疫及びT細胞免疫の両方においてTh1優位応答を生成する
N及びSに応答した抗体Th1優位:IgG2a、IgG2b、及びIgG3は、Th1優位を表し;一方、IgG1は、Th2優位を表す。hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種マウス由来の血清中の抗S(図41、パネルA)及び抗N(図41、パネルC)抗体の両方について、IgG2a及びIgG2bアイソタイプは、hAd5 ヌル対照と比較して優勢(predominant)であり、有意に高かった。これらのデータは、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンに応答した抗体産生のTh1優位を示す。
【0130】
N及びSに応答したT細胞Th1優位:IFN-γ産生は、CTL活性47(Th1優位)と相関するが、IL-4は、遅延ウイルスクリアランス48(Th2優位)を引き起こす。1のIL-4に対するIFN-γの比は、バランスがとれており、1を超える比はTh1優位を示す。二価S+Nワクチンで免疫した動物由来のELISpotは、IFN-γ分泌がSペプチドプール1及びNペプチドプールの両方に応答して、hAd5ヌル脾細胞よりもhAd5 S-融合物 + N-ETSDについて有意に高いことを示したが(図42、パネルA)、IL-4は、Nペプチドプールのみに応答して、hAd5 S-融合物 + N-ETSDについて有意に高いレベルで分泌された(図42、パネルB)。
【0131】
Th1タイプ優勢はまた、組み合わされたSペプチドプール及びNペプチドプールに応答するスポット形成単位に基づくIL-4に対するIFN-γの比を考慮した場合にも見られる(図43、パネルA)。Th1優勢は液性応答において再度見られ、抗S及び抗N抗体の両方についてのTh2関連抗体(IgG1)に対するTh1関連抗体(IgG2a、IgG2b、及びIgG3)のng当量に基づく比が全てのマウスにおいて1よりも大きい(図43、パネルB)。
【0132】
hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン候補のこのTh1優位プロファイルは、hAd5 S-融合物 + N-ETSDが臨床試験のリード候補となるさらなる正当性を提供する。
【0133】
hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、Sのみのワクチンのリスクを克服し、T細胞免疫及び中和抗体の両方を誘発するように設計されており、T細胞が長期持続性抗体応答の生成及び感染細胞の直接殺傷において果たす重要な役割を活用している。CD4+及びCD8+ T細胞は、両方とも多機能性であり、ワクチンによるそのような多機能性T細胞の誘導は、感染に対するより良好な防御と相関した。表面表示のために最適化されたS抗原及びエンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメント局在化のために最適化されたN抗原の発現、ひいてはMHC I及びII提示から生じる増強されたCD4+ T細胞応答及びTh1優勢は、樹状細胞提示の増加、交差提示、B細胞活性化、及び最終的に高い中和能力をもたらした。さらに、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種マウスからのプールされた血清について見られた高希釈での強力な中和能力は、S抗原及びN抗原の両方に応答して生成された抗体のTh1優位と組み合わさって、このワクチン設計の目的を支持する。
【0134】
抗原提示細胞による抗原の同時MHC I及びMHC II提示は、CD4+及びCD8+ T細胞を同時に活性化し、記憶B及びT細胞の生成に最適である。コンストラクトの重要な発見は、N-ETSDがエンドソーム/リソソームコンパートメントに導かれることである。N-ETSDは、B細胞抗体産生のための記憶T細胞及びヘルパー細胞の誘導の必要性であるCD4+応答を誘発する。天然のN.50、51と比較して、最も強いT細胞IFN-γ及びCTL応答を誘発するためのリソソーム局在化の重要性についても報告されている
【0135】
hAd5 S-融合物 + N-ETSDによって発現されたS及びN抗原に対するT細胞応答は、IFN-γ及びTNF-aを含むポリサイトカインであり、細菌及びウイルス感染における抗菌免疫の成功と一致していた。ワクチン接種後のポリサイトカインT細胞応答は、ウイルスベクターによるものを含むワクチン効力と相関することが示されている。ここで高く関連することは、SARS-CoV-2 Nタンパク質に対するポリサイトカインT細胞応答が、回復したCOVID-19患者と一致しており、二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンがSARS-CoV-2に対するより大きな防御をワクチン対象に提供することを示唆している。
【0136】
Nとは対照的に、Sタンパク質は、ここではS融合として発現され、高いACE2-Fc結合によって証明されるように、RBD細胞表面発現及びコンフォメーション完全性の増強が確認され、主にCD8+ T細胞を生成した。本発明者らの結果は、ワクチン設計目標を確認し、S-融合物がS-WTと比較してSに対する抗原特異的T細胞応答のレベルの上昇を誘導したことを示した。MHC I(CD8+ T細胞活性化のため)及びMHC II(CD4+ T細胞活性化のため)の両方へのMHC提示を確実にするために、この協調した応答を生じるように最適化されたS及びN抗原の両方をワクチン接種することが必要である。
【0137】
生SARS-CoV-2ウイルスによる中和データは、hAd5 S-融合物 + N-ETSDによるワクチン接種後に生じた抗体応答の効力を実証し、高い希釈係数であっても高い中和の証拠を有した。さらに、プールされた血清の顕著な相乗効果が明らかであり、≧1:1,000希釈の対照回復期血清よりもさらに強力な中和を有した。
【0138】
上述したhAd5 S-融合物 + N-ETSDコンストラクトは、次世代hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォームによって送達され、ここでE2b欠失(pol)単独が、延長された導入遺伝子産生を可能にし、既存のアデノウイルス免疫の存在下で相同ワクチン接種(プライム及びブースト製剤は同じである)を可能にする。38。hAd5 S-融合物 + N-ETSDの皮下注射による細胞性及び液性免疫の生成に加えて、経口又は舌下製剤中の同じワクチンはまた、IgA粘膜免疫を誘導し得る。
【0139】
実施例17:方法及びコンストラクト
hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォーム及びコンストラクト
本明細書における試験のために、第2世代hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターを使用して(図44、パネルA)、ウイルスワクチン候補コンストラクトを作製した。SARS-CoV-2抗原発現インサート及びウイルス粒子を含有するhAd5[E1-、E2b-、E3-]骨格を、以前に記載されたように作製した。簡単に述べると、E1-及びE2b-発現E.C7パッケージング細胞株における連続増殖、続いてCsCl2精製、及びViraQuest Inc.(North Liberty、IA)による保存緩衝液(2.5%グリセロール、20mM Tris pH 8、25mM NaCl)への透析によって、高力価アデノウイルスストックを作製した。ドデシル硫酸ナトリウム破壊と260及び280nmでの分光光度法によってウイルス粒子数を決定し、Adeno-X(商標)Rapid Titer Kit(Takara Bio)を使用してウイルス力価を決定した。作製されたコンストラクトは、以下を含んでいた:
【0140】
S-WT:1273個のアミノ酸及び全てのSドメインを含むSタンパク質:細胞外(1~1213)、膜貫通(1214~1234)、及び細胞質(1235~1273)(Unitprot P0DTC2);S-ETSD:ETSDを有するS受容体結合ドメイン(S RBD)(配列番号11);N-ETSD:ETSDを有するヌクレオカプシド(N);S-WT + N-ETSD:増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)を有するS-WT;S-RBD-ETSD + N-ETSD;S-融合物:RBDの表面発現及び表示を増強するように最適化されたS;並びに二価S-融合物 + N-ETSD;
【0141】
hAd5コンストラクトによるHEK 293T細胞のトランスフェクション
ワクチン候補コンストラクトによるRBDエピトープの表面表現を決定するために、本発明者らは、hAd5コンストラクトDNAによりHEK 293T細胞をトランスフェクトし、抗RBD抗体を用いたフローサイトメトリー検出により、表面RBDを定量化した。試験した7つのコンストラクトが存在した:S-WT、S-WT + N-ETSD、S RBD-ETSD、S RBD-ETSD + N-ETSD、S-融合物、S-融合物 + N-ETSD、及びN-ETSD。HEK 293T細胞(24ウェルプレート中2.5×10細胞/ウェル)を、10% FBS及び1X PSA(100単位/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、0.25ug/mLアンホテリシンB)を有するDMEM(Gibco Cat# 11995-065)中で37℃で成長させた。製造業者の説明書にしたがって、JetPrimeトランスフェクション試薬(Polyplusカタログ# 89129-924)を用いて、0.5μgのhAd5プラスミドDNAを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの1、2、3、及び7日後に、細胞を培地中に穏やかにピペットで入れることによって細胞を回収し、抗RBDモノクローナル抗体(クローンD003 Sino Biological Catalog # 40150-D003)、及びR-フィコエリトリンとコンジュゲートさせたF(ab’)2-ヤギ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(ThermoFisher Catalog # H10104)で標識した。標識された細胞を、Thermo-Fisher Attune NxTフローサイトメーターを用いて獲得し、Flowjo Softwareを用いて分析した。
【0142】
hAd5感染HeLa細胞の免疫細胞化学的標識
HeLa細胞をhAd5 N-野生型(WT)又はhAd5 N-ETSD(各々、標識を可能にするフラグタグを有する)で感染又はトランスフェクトした後のNの細胞内局在化を決定するために、感染又はトランスフェクションの48時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、0.4% Triton X100、PBS中)で15分間、室温で透過処理した。Nを標識するために、次いで細胞を抗フラグモノクローナル(マウスにおいて産生された抗Flag M2、Sigma cat# F1804)抗体と共に、3% BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水中、1:1000で4℃で一晩インキュベートし、続いてPBS中で洗浄し、ヤギ抗マウスIgG(H+L)高度クロス吸着二次抗体、Alexa Fluor Plus 555(Life Technologies、CAt# A32727)と共に1:500で1時間インキュベートした。共局在化試験のために、細胞をまた、ヒツジ抗Lamp1 Alexa Fluor 488-コンジュゲート(リソソームマーカー)抗体(R&D systems、Cat# IC7985G)と共に1:10で、又はウサギ抗CD71(トランスフェリン受容体、エンドソームマーカー)抗体(ThermoFisher Cat# PA5-83022)と共に1:200で、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を除去し、PBS中で2回洗浄し、3% BSAを含むPBS中で3回洗浄した後、適用可能な場合、細胞を1:500で蛍光コンジュゲート二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG(H+L)高度クロス吸着二次抗体、Alexa Fluor 488、Life technologies、A-11034)と共に室温で1時間インキュベートした。短時間の洗浄後、DAPI(Fisher Scientific、カタログ番号NC9524612)を含むVectashield Antifade封入剤で細胞をマウントし、Keyence all-in-one Fluorescence顕微鏡カメラ及びKeyenceソフトウェアを使用して直ちに画像化した。
【0143】
S抗原発現の免疫ブロット分析
hAd5 S-WT、S-融合物、又はS-融合物 + N-ETSDコンストラクトでトランスフェクトされたHEK 293T細胞は、本稿に記載の通り培養及びトランスフェクトされ、トランスフェクションの3日後に1X final Protease Inhibitor cocktail(Roche)を含む150ml RIPA溶解緩衝液中に回収された。タンパク質アッセイの後、等量の総タンパク質を4~12%勾配ポリアクリルアミドゲル(タイプ)に充填し、流し込み、半乾燥転写装置を用いてニトロセルロース膜に転写した。抗スパイクS2(SinoBiological Cat#40590-T62)を一次抗体として、IRDye(登録商標)800CWヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Li-Cor,925-32211)をIbind Flexプラットフォームを用いた二次抗体として使用した。抗体特異的シグナルを赤外Licor Odyssey機器で検出した。
【0144】
hAd5トランスフェクトHEK 293T細胞へのACE2-IgG1Fcの結合
HEK 293T細胞を、hAd5 S-WT、S-融合物、S-融合物 + N-ETS、RBD-ETSD又はS RBD-ETSD + N-ETSDによるトランスフェクションのために、上述した条件下で37℃で培養し、2日間インキュベートし、ACE2-Fc結合分析のために回収した。組換えACE2-IgG1Fcタンパク質を、14日間培養したCHO-S細胞におけるMaxcyteトランスフェクションを用いて生成した。次いで、AKTA Explorer上のMabSelect SuReアフィニティーカラムを用いてACE2-IgG1Fcを精製した。
【0145】
精製ACE2-IgG1Fcを10mM HEPES、pH7.4、150mM NaClに透析し、2.6mg/mLに濃縮した。結合試験のために、ACE2-IgG1Fcを、結合のために1μg/mLの濃度で使用した。細胞をACE2-Fcと共に20分間インキュベートし、洗浄工程後、PEコンジュゲートF(ab’)2-ヤギ抗ヒトIgG Fc二次抗体で1:100希釈で標識し、20分間インキュベートし、洗浄し、フローサイトメーターで取得した。ヒストグラムは、細胞数の正規化モード(NM)-PEチャネルにおけるシグナルについて陽性の細胞数-に基づく。
【0146】
hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン候補によるCD-1マウスのワクチン接種
7週齢のCD-1雌マウス(Charles River Laboratories)を、Omeros Inc.(Seattle、WA)のビバリウム施設で実施した免疫学的試験に使用した。最初の採血後、0日目にhAd5ヌル(陰性対照)又はワクチン候補hAd5 S-融合物 + N-ETSDを1×1010ウイルス粒子(VP)の用量でマウスに注射した。1群当たり5匹のマウスが存在した。マウスは、21日目及び28日目に2回目のワクチン投与を受け、血清の単離のためにイソフルラン麻酔マウスから顎下静脈を介して血液を採取し、次いで、脾臓及び他の組織の採取のためにマウスを安楽死させた。
【0147】
脾細胞採取及び細胞内サイトカイン染色(ICS)
脾臓を各マウスから取り出し、RPMI(Gibco Cat# 22400105)、HEPES(Hyclone Cat# SH30237.01)、1X Pen/Strep(Gibco Cat# 15140122)、及び10% FBS(Gibco Cat# 16140-089)の滅菌培地5mLに入れた。脾細胞を採取から2時間以内に単離した。S及びNペプチドプールによる刺激に応答したCD8β+及びCD4+ T細胞関連IFN-γ及びIFN-γ/TNFα+産生のフローサイトメトリー検出のためのICS。
【0148】
刺激アッセイは、96ウェルU底板においてウェル当たり10個の生脾細胞を用いて行った。10% FBSを添加したRPMI培地中の脾細胞を、ペプチドプールを2μg/mL/ペプチドで5% CO2中37℃で6時間添加することによって刺激し、タンパク質輸送阻害剤、GolgiStop(BD)をインキュベーション開始の2時間後に添加した。次いで、刺激された脾細胞をリンパ球表面マーカーCD8β及びCD4について染色し、CytoFix(BD)で固定し、透過処理し、IFN-γ及びTNF-αの細胞内蓄積について染色した。マウスCD8β抗体(クローンH35-17.2、ThermoFisher)、CD4(クローンRM4-5、BD)、IFN-γ(クローンXMG1.2、BD)、及びTNF-α(クローンMP6-XT22、BD)に対する蛍光結合抗体、並びに染色を、非標識抗CD16/CD32抗体(クローン2.4G2)の存在下で行った。Beckman-Coulter Cytoflex Sフローサイトメーターを用いてフローサイトメトリーを行い、Flowjo Softwareを用いて分析した。
【0149】
ELISpotアッセイ
ELISpotアッセイを用いて、接種したマウスから脾細胞によって分泌されたサイトカインを検出した。新鮮脾細胞を、リンパ球を含む凍結保存脾細胞と同じ日に使用した。細胞(96ウェルプレートのウェル当たり2~4×10個の細胞)を、IFN-γ又はIL-4(BD)のいずれかに対する固定化一次抗体を含むELISpotプレートに添加し、2μg/mLペプチドプール又は10μg/mLタンパク質を含む様々な刺激(例えば、対照ペプチド、標的ペプチドプール/タンパク質)に36~40時間曝露した。細胞及び培地を除去するための吸引及び洗浄の後、ビオチン(BD)にコンジュゲートしたサイトカインに対する二次抗体によって、細胞外サイトカインを検出した。ストレプトアビジン/西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを使用して、ビオチンコンジュゲート二次抗体を検出した。ウェル当たり、又は2~4×10細胞当たりのスポット数を、ELISpotプレートリーダーを用いてカウントした。
【0150】
抗体の検出のためのELISA
接種マウス由来の血清における抗体検出のために、スパイク及びヌクレオカプシド抗体、並びにIgGサブタイプ(IgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3)抗体に特異的なELISAを使用した。マイクロタイタープレートを、100μLの被覆緩衝液(0.05M炭酸緩衝液、pH 9.6)中の100ngの精製組換えSARS-CoV-S-S-FTD(フィブリチン三量体化ドメインを有する全長S、ImmunityBio,Inc.、9920 Jefferson Blvd、Culver City、CA 90232)、SARS-CoV-2 S RBD(Sino Biological、Beijing、China;Cat# 401591-V08B1-100)又は精製組換えSARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)タンパク質(Sino Biological、Beijing、China;Cat# 40588-V08B)のいずれかにより一晩被覆した。ウェルを1% Tween 20(PBST)を含有する250μLのPBSで3回洗浄して、未結合タンパク質を除去し、プレートを250μLのPBSTで室温で60分間ブロックした。ブロック後、ウェルをPBSTで洗浄し、100μLの希釈血清サンプルをウェルに添加し、サンプルを室温で60分間インキュベートした。インキュベート後、ウェルをPBSTで洗浄し、100μLの1/5000希釈の抗マウスIgG HRP(GE Health Care;Cat# NA9310V)、又は抗マウスIgG1 HRP(Sigma;Cat# SAB3701171)、又は抗マウスIgG2a HRP(Sigma;Cat# SAB3701178)、又は抗マウスIgG2b HRP(Sigma;Cat# SAB3701185)、又は抗マウスIgG3 HRPコンジュゲート化抗体(Sigma;Cat# SAB3701192)をウェルに添加した。陽性対照については、100μLの1/5000希釈のウサギ抗N IgG Ab又は100μLの1/25希釈のマウス抗S血清(アジュバント中の精製S抗原で免疫したマウス由来)を適切なウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルをPBS-Tで洗浄し、200μLのo-フェニレンジアミン-二塩酸塩(OPD基質(Thermo Scientific Cat# A34006)と共に、適切な発色までインキュベートした。50μLの10%リン酸溶液(Fisher Cat# A260-500)を水に加えて発色反応を停止し、マイクロプレートリーダー(SoftMax(登録商標)Pro、Molecular Devices)を用いて490nmでの吸光度を決定した。
【0151】
抗体の相対μg量の計算
IgGの検量線を作成し、抗S抗体と抗N抗体の両方について吸光度値を質量当量に変換した。hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種は、血清1mL当たり5.8μgのS特異的IgGと42μgのN特異的IgGの幾何平均値を生じた。
【0152】
cPass(商標)中和抗体検出
中和抗体の検出のためのGenScript cPass(商標)を、製造業者の説明書に従って使用した。44キットは、S RBDとACE2細胞表面受容体との間の相互作用を遮断するSARS-CoV-2に対する循環中和抗体を検出する。これは、全ての抗体アイソタイプに適しており、変更なしで動物モデルでの使用に適している。
【0153】
ベロE6細胞中和アッセイ
ウイルスを使用するアッセイの全ての局面は、SARS-CoV-2細胞培養試験のためのISMMS Conventional Biocontainment Facility SOPにしたがって、BSL3封じ込め施設において行った。サバンナモンキー(Cercopithecus aethiops)(ATCC CRL-1586)由来のベロe6腎上皮細胞を、96ウェルフォーマットで20,000細胞/ウェルでプレーティングし、24時間後、2% FBS、1% NEAA、及び1% Pen-Strepを含むDMEM中で3倍段階で予め段階希釈した抗体又は熱不活化血清と共に細胞をインキュベートした;希釈したサンプルを、2% FBS、1% NEAA、及び1% Pen-Strepを含むDMEM中のSARS-CoV-2と37℃、5% CO2で1時間、10,000 TCID 50/mLで1:1混合した。このインキュベーションは、感染前に中和活性を生じさせるための細胞を含まなかった。試験のためのサンプルは、cPassにおけるACE2結合の>20%阻害を示した4匹のマウスからの血清、これら4匹のマウスからのプールされた血清、COVID-19回復期患者からの血清、及び培地のみを含んだ。中和の検出のために、120μLのウイルス/サンプル混合物をベロE6細胞に移し、48時間インキュベートした後、4% PFAで固定した。各ウェルは、60μLのウイルス又は600 TCID50の感染用量を受けた。ウイルスなし及びウイルスのみの対照について、各プレート上に6つのウェルを含む対照ウェルを使用した。パーセント中和は、Celigo Imaging Cytometer(Nexcelom Bioscience)上で画像化されたCoV-2 Npの染色を用いて、100-((目的のサンプル-[「ウイルスなし」の平均])/[「ウイルスのみ」の平均]*100)として計算した。
【0154】
ワクチンの特徴付け
開発中の現在の予防的抗SARS-CoV-2ワクチンの大部分は、ウイルス曝露前にレシピエントにおいて中和抗体応答を生成することを目的として、ウイルススパイク(S)タンパク質を標的とすることによって、さらなる疾患関連死亡及び罹患を予防するように設計されている。しかしながら、SARS-CoV-2に対するCOVID-19患者免疫応答の最近の特徴付けは、T細胞などの他の免疫細胞が感染を除去し、コロナウイルス感染に対する長期免疫を生じるのに重要であることを示している。CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の両方は、CD4+ T細胞がCD8+ T細胞のようなエフェクター細胞ではないが、抗体分泌形質細胞によってもたらされる強固で持続性の免疫の生成及び記憶細胞傷害性CD8+ T細胞による感染細胞の排除に重要であるため、耐久性のある液性応答を支える。本開示の二重抗原候補ワクチンは、液性応答を刺激するための最適化Sタンパク質(S-融合物)と共に、強力なCD4+及びCD8+ T細胞標的である修飾ウイルスヌクレオカプシド(N)抗原を含めることによって、SARS-CoV-2と戦うために免疫系をより広く活性化する。
【0155】
ヒトアデノウイルス血清型5(hAd5)E1、E2b、及びE3領域欠失[E1-、E2b-、E3-]ワクチンプラットフォーム(図44、パネルA)は、既存のアデノウイルス免疫の存在下で有効であり、ベクター標的化宿主免疫応答を生成する可能性が低く、したがってプライム及びブーストの両方として使用することができるため、現在臨床試験において他のCOVID-19ワクチンで使用されているアデノウイルスプラットフォームよりも優れている。このプラットフォームを使用して、ワクチンは、細胞表面表示及び液性応答を増加させるための最適化されたS表面タンパク質、S-融合物;並びにウイルス粒子内に見出される高度に保存された抗原性Nタンパク質を含み、ここでは、増強された抗原提示のための細胞内コンパートメント標的化配列を有する。この戦略は、SARS-CoV-2に対する液性及びT細胞応答の誘発において安全且つ堅牢である。Nの追加は、集団における経時的なSの突然変異の出現に起因する、Sのみの一価ワクチンに対するワクチン有効性の喪失のリスクに対処する。対照的に、Nは高度に保存されており、変異のリスクはより低く、一方、高度に免疫原性である。これは、天然免疫の既知の標的抗原であり、Nに対する抗体及びT細胞は、SARS-CoV-2及び類似のウイルスSARS-CoV感染から回復した大多数の人に見られる。本ワクチンにおいては、増強されたT細胞刺激ドメイン(ETSD)は、翻訳後にNタンパク質をエンドソーム-リソソーム細胞内コンパートメントに導いて、Tヘルパー細胞活性化のためのMHCクラスII提示及び樹状細胞ライセンシングによるCD8+ T細胞活性化の促進を支持する。突然変異が出現するリスクにもかかわらず、Sは、感染におけるその役割のため、ワクチン接種のための重要な抗原のままである。ウイルス表面上に三量体として表示されるスパイク(図44、パネルB)は、宿主アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と相互作用して宿主細胞への侵入及び増殖を促進する受容体結合ドメイン(RBD)を有し、したがって、Sに対する抗体は、感染の中和の鍵である。S RBDに対する抗体は、他のSエピトープに対する抗体と同様に、COVID19 51から回復した患者において一般に見出される。二価ワクチンコンストラクトでは、S-融合物は、ウイルス中和である抗S RBD抗体の生成を改善することを目的として、融合リンカーの追加によってSを最適化し、細胞表面上に生理学的に関連する形態でS RBDを表示する。
【0156】
本開示の二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、優れたT細胞応答を生じる。現在臨床試験中のワクチンは、感染を中和する手段として液性応答を生成することに焦点を当てている。しかしながら、たとえ抗体がうまく生成され、十分に中和したとしても、時間が経つにつれて減少し得ることを考慮すると、T細胞応答は重要になる。ウイルス誘発性リンパ球減少症のためにT細胞応答がない場合、たとえ多量の中和抗体の存在下であっても、感染した人は、疾患の急性症状を発症するリスクがある。S(及び他のウイルスタンパク質)がT細胞応答を誘導し得ることを除外することはできないが、文献における証拠は、Nの重要な役割を支持する。Nに対するT細胞応答がCOVID-19から回復した患者の大多数において見出されただけでなく、非常に類似したウイルスSARS-CoVに曝露された患者におけるNに対するこれらの応答は、著しく耐久性がある。天然T細胞におけるNの重要性の有力な証拠がFerretti et al.の最近の報告に見出すことができ、Ferretti et al.は、COVID-19患者の記憶CD8+ T細胞によって認識される正確なペプチド配列について、偏りのないゲノムワイドスクリーニングを用いて、29の共有エピトープのうち3つのみがスパイクタンパク質由来であるのに対し、最高密度のエピトープは、ヌクレオカプシドタンパク質中に位置することを見出した。したがって、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンにおいて、Nは、液性応答を誘発するだけでなく、疾患を制限する自然免疫をより良好に再現するT細胞応答も誘発することが期待される。
【0157】
最初の報告において、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、ACE2によって容易に認識されるS RBDの増強された細胞表面発現を提供し、そのコンフォメーション完全性を反映している。増強された抗原提示のためのエンドソーム/リソソーム局在化を有するN-ETSDは、接種マウスにおいて中和抗体及びTh1優勢を有するCD4+/CD8+ T細胞媒介応答の両方を生じた。本開示は、以前にSARS-CoV-2に感染した患者由来の血漿及び単球由来樹状細胞(MoDC)を用いて天然S抗原発現を確認して、これらの知見を拡張する。本発明者らは、抗原提示MoDCにおけるN-ETSD局在化を解明し、それがエンドソーム、リソソーム、及びオートファゴソームに局在化することを示した。この細胞内経路を介するタンパク質プロセシングは、MHCクラスII提示を増強し、ペプチド再利用を増加させて、MHCクラスI提示も可能にする。ヌクレオカプシドタンパク質を後期リソソーム-オートファゴソームコンパートメントに局在化することによって、CD4+及びCD8+ SARS-CoV-2特異的記憶T細胞の両方が、SARS-CoV-2に以前に感染した患者からリコールされる。さらに、これらの免疫応答リコール試験において、インビトロで、S-融合物及びN-ETSDを提示するhAd5感染MoDCは、以前にSARS-CoV-2感染した患者の自己記憶T細胞から優勢なTh1応答を誘発する。Nは特に、インビトロリコール試験においてCD8+ T細胞応答を駆動する。hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンによるワクチン接種によって達成できる程度までの自然感染及び免疫の再現は、それをSARS-CoV-2感染及びCOVID-19から個体を防御するその能力の臨床試験のための主要な候補とし、この第2世代ワクチンコンストラクトは、現在、第I相臨床試験に入っている。
【0158】
実施例18:hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォーム及びコンストラクト
ここでの試験のために、次世代hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターを使用して(図44、パネルA)、ウイルスワクチン候補コンストラクトを作製した。多様なコンストラクトを作製した:図44、パネルC:S WT:1274個のアミノ酸及び全てのSドメインを含むSタンパク質:細胞外(1~1213)、膜貫通(1214~1234)、及び細胞質(1235~1273)(Unitprot P0DTC2);図44、パネルD:S融合物:RBDの表面発現及び表示を増強するために最適化されたS;図44、パネルE:N(ETSDを含まないN):免疫検出のためのタグを有するが、ETSD修飾を含まない、及び主に細胞質局在化を有するヌクレオカプシド(野生型)配列。図44、パネルF。増強T細胞刺激ドメインを有するN(N-ETSD):リソソーム/エンドソーム局在化を導くためのETSD及び免疫検出のためのタグを有するヌクレオカプシド(野生型);並びに図44、パネルG:二価hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン。
【0159】
増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)で操作されたヌクレオカプシド抗原は、MoDCにおいてNをエンドソーム、リソソーム及びオートファゴソームに導き、増強されたCD4+ T細胞活性化を駆動する:
【0160】
hAd5二価ワクチンコンストラクトは、NをMHCクラスII抗原負荷コンパートメントに標的化するように設計された配列を含む。MoDCにおける抗原提示に影響を及ぼす因子をさらに調査するために、健康な対象由来のMoDCをhAd5 N-ETSD又はhAd5 Nで感染させ、免疫細胞化学によって局在化を決定した。N-ETSDは、リサイクリングエンドソームのマーカーであるCD71(図45、パネルA~C)、及び後期エンドソーム/リソソームのマーカーであるLAMP-1(図45、パネルG~I)といくらか一致する、別個の小胞への局在化を示したが、Nは、細胞質全体にわたって拡散的且つ均一に発現された(図45、パネルD~F及びJ~L)。リソソームはオートファゴソームと融合して、ペプチドプロセシング及びMHCクラスII提示を増強する。N-ETSDはまた、オートファゴソームマーカーとのいくらかの共局在化を示した(図45、パネルM~O)。オートファゴソームにおけるタンパク質プロセシングは、DCにおけるMHC媒介性抗原提示において重要な役割を果たし、ワクチンコンストラクトにおいてN-ETSDによって誘導される増強されたCD4+ T細胞の潜在的機構を提供する。オートファゴソーム(そして、エンドソーム及びリソソームもまた想定される)に転座したN-ETSDで感染したMoDCとのこのT細胞の相互作用の証拠は、N-ETSD及びLC3a/b共標識細胞のこの位相差顕微鏡検査で見られ、これは未分化リンパ球の球状形態とは対照的に、伸長したDC形態を明らかにする。hAd5 N-ETSDによる感染の非存在によっても区別されるリンパ球も(リンパ球はhAd5受容体を欠く)、N-ETSD発現MoDCと相互作用することが見られた。
【0161】
記憶T細胞リコール試験のための以前のSARS-CoV-2感染患者及びウイルスナイーブ患者からのSARS-CoV-2抗体及び細胞媒介免疫応答の検証:
【0162】
以下に記載される試験のために、以下に記載されるように抗体アッセイ及び患者の病歴によって確認されるように、SARS-CoV-2感染から回復した4人の個体から血漿サンプルを収集した。cPass 66及び生ウイルスアッセイの両方による抗スパイクIgGの存在、及び中和抗体の存在は、全ての患者サンプルにおいて確認された。4人のウイルスナイーブ個体からもサンプルを収集し、対照として使用した。SARS-CoV-2抗原に対する免疫反応を検証するための追加試験では、以前にSARS-CoV-2感染した患者及びウイルスナイーブ対照個人の血漿の、hAd5 S-融合物単独又はhAd5 S-融合物 + N-ETSDのいずれかによってトランスフェクトされたヒト胎児腎細胞(HEK)293T細胞への結合を評価した。この結合は、hAd5ベクター化ワクチンによって発現される抗原を認識する、血漿中の抗体の存在を反映する。ヒストグラムの定量化は、いずれかのコンストラクトを発現する細胞へのウイルスナイーブ血漿抗体の結合がほとんど又は全くなく、二価S融合物 + N-ETSDコンストラクトを発現する細胞への以前にSARSCoV-2に感染した患者からの血漿抗体の最高の結合を示した。これは、hAd5 S-融合物単独と比較して、hAd5 S-融合物 + N-ETSD感染HEK 293T細胞で見出されるSの増強された表面発現、又はS及びN抗原の両方の発現のいずれかによるものである。
【0163】
実施例19:N-ETSDは、スパイク抗原発現を最適化する:以前に感染したSARS-CoV-2患者由来の血漿抗体の結合は、hAd5 S-融合物又はhAd5 S-WTと比較して、hAd5 S-融合物 + N-ETSD感染MoDCについて増強される。
ここでの試験は、以前にSARS-CoV-2に感染した患者由来のT細胞の、hAd5ワクチンコンストラクトに感染した自己MoDCに対する応答に焦点を当てている。DCは、感染又は食作用を介して獲得された複合抗原を処理及び提示してT細胞応答を誘発するための強力な抗原提示細胞である。したがって、HEK 293T細胞を発現するhAd5ワクチンへの患者血漿抗体の結合の評価に加えて、2人の健康な個体からのMoDCをhAd5 S-WT、hAd5 S-融合物、hAd5 S-融合物 + N-ETSD、又はhAd5ヌルで一晩感染させ、次いで、以前にSARS-CoV-2に感染した患者からの血漿を用いて遺伝子発現を評価した(図46、パネルA)。両方のMoDC供給源について、以前に感染した患者からの血漿抗体のMoDCへの最高の結合は、hAd5 S-融合物 + N-ETSD感染後に見られ(図46、パネルB~D)、抗原発現がhAd5 S-融合物 + N-ETSD二価ワクチンにおいて最適化されるというさらなる証拠を提供した。ヒトMoDCと血漿のインビトロ系における非常に関連性の高いこの所見は、HEK 293T細胞及び市販の抗RBD抗体を用いた試験の結果の重要な確認であるだけでなく、SARS-CoV-2抗原反応性について血漿をスクリーニングする潜在的な方法を示している。
【0164】
実施例20:SARS-CoV-2ペプチドプール免疫反応:
以前に感染したSARS-CoV-2患者由来のT細胞は、ウイルスナイーブ対照由来のT細胞と比較して、S1、S2、及びN CoRSSAN-2ペプチドプールに応答して有意なレベルのインターフェロン-g(IFN-γ)を分泌する。4人の以前に感染したSARS-CoV-2患者由来のT細胞と、4人の非曝露個体由来のウイルスナイーブT細胞との反応性を実証するために、各群由来のT細胞を、N及びSタンパク質の配列にわたるペプチド混合物でパルスした自己MoDCと共に培養した。以前に感染したSARS-CoV-2患者由来のT細胞は、SARS-CoV-2抗原に応答してIFNgを分泌したが、未曝露の対象由来のT細胞は分泌せず(図47)、以前にSARS-CoV-2に感染した患者由来のT細胞の選択的反応性を確認した。
【0165】
実施例21:SARS-CoV-2ペプチドプール免疫反応:以前に感染したSARSCoV-2患者由来のCD4+ T細胞は、S及びNペプチドプール抗原を認識するが、CD8+ T細胞は、Nペプチド抗原のより大きな認識を示す。
試験した2つの患者サンプルのCD4+ T細胞は、S及びNペプチドプールの両方に応答し、Pt3によるNに対するより高い応答を有した(図48、パネルB)。対照的に、両方の患者由来のCD8+ T細胞は、Nに高い有意性で応答したが、S1又はS2ペプチドプールには応答しなかった(図48、パネルC及びD)。これらのデータは、以前に感染したSARS-CoV-2患者におけるS及びNを含む複数の抗原に対するT細胞応答を実証する発表された試験と一致する。
【0166】
実施例22:エンド/リソソーム指向性ヌクレオカプシド-ETSDに感染した自家MoDCは、細胞質ヌクレオカプシドタンパク質(hAd5 N)と比較して、以前に感染したSARS-CoV-2患者からのCD4+及びCD8+ T細胞からのより高いレベルのIFN-γ分泌を誘発する。
エンド/リソソーム局在化N-ETSD対細胞質Nの免疫有意性を評価するために、MoDCをhAd5コンストラクト(ヌル、N-ETSD又はN)に感染させ、次いで、自己CD3+及びCD4+又はCD8+選択T細胞と共にインキュベートした(図49、パネルA)。以前に感染したSARS-CoV-2患者由来のCD3+ T細胞は、N-ETSD及びNを比較した2人の患者において、ヌル及び細胞質Nの両方よりもNETSDに応答して有意に大きいIFN-γ分泌を示した(図49、パネルC及びD)。全ての患者について、CD3+ T細胞を分泌するインターロイキン-4(IL-4)は比較的少なかった(図49、パネルE~G)。CD4+及びCD8+選択T細胞集団の両方は、ヌルよりもN-ETSDに対して有意に大きいIFN-γ応答を示し(図49、パネルH~M)、3人の患者のうちの2人において、CD4+及びCD8+ T細胞は、Nと比較してN-ETSDのより大きい認識を示した。高いIFN-γ及び低いIL4応答は、N/N-ETSDに対する優勢なTh1サイトカイン応答を示す。NETSD及びNの細胞表現は、293T HEK細胞で同等であり、N-ETSDに対するT細胞応答の向上の理由は、エピトープのプロセシング及びMHC負荷である可能性が高いことを示唆した。
【0167】
実施例23:ヌクレオカプシド及びスパイク抗原に対するTh1優位SARS-CoV-2特異的CD4+及びCD8+記憶T細胞リコールは、以前にSARS-CoV2感染した患者からの自己MoDCのhAd5 S-融合物 + N-ETSD感染によって誘導される。
N-ETSDは、患者のT細胞サイトカイン応答の誘発においてNよりも有効である。全T細胞(CD3+)について、IFN-γ応答は、S-融合物 + N-ETSD及びN-ETSDについて同様であり、S-融合物に対する応答は比較的低かった(図50、パネルA~C)。IL-4分泌T細胞の数は、全てについて非常に低かった(図50、パネルD~F)。一価S融合物と比較した二価ワクチンにおけるSの発現の増加に基づいて、T細胞応答の増加は、Sの増加又はNの存在を認識するT細胞のいずれかによって説明することができる。重要なことに、これらのT細胞応答は、IL-4(Th2)と比較したIFN-γ(Th1)の優勢によって特徴付けられた。3人の患者全員からのCD4+ T細胞は、ヌルと比較して、3つのコンストラクト全ての有意に高い認識を示した(図50、パネルG~I)。一部の個体では、特定のコンストラクトに対する応答が高かったが、S-融合物、S-融合物 + N-ETSD及びN-ETSDに対する全体的な応答は類似していた。3人の患者全員からのCD8+ T細胞は、ヌルよりも有意に高いレベルで二価及びN-ETSDワクチンを認識した;3人の患者のうちの2人のみが、ヌルよりも有意に高い程度までS-融合物を認識した(図50、パネルJ~L)。これらのデータは、以前に感染したSARS-CoV-2患者由来のT細胞がワクチンベクター中のワクチン抗原(S及びN)の両方に対して反応性及び免疫記憶リコールを有することを示す。
【0168】
S-融合物の1つの特徴は、S-WTと比較して高いS RBDの発現である。これは、RBDエピトープが免疫検出にほとんど利用できないことを示唆するS低温電子顕微鏡構造の初期の研究からの知見に基づくワクチン設計の目標であった。さらなる利点は、二価ワクチンにおいてSをNと組み合わせることから、一般に遺伝子発現に関して他者によって観察されている現象であるSの免疫検出を増強するNの能力を介して生じる。ワクチンにより発現されたNタンパク質は、エンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメント、CD4+ T細胞を刺激するための重要な抗原提示経路に輸送され、その結果、それらは、樹状細胞をライセンスしてナイーブCD8+ CTLを活性化することができる。N-ETSDは、MoDCにおいてエンドソーム及びリソソーム、並びにオートファゴソームに局在化する。エンドソーム及びリソソームの両方の標的化は、抗原提示の増強及びCD4+ T細胞活性化のために望ましい。リソソームは酸性オートファゴソームを融合させ、タンパク質プロセシングを促進することができる;これは、MHCクラスII提示の調節による効果的な免疫刺激に重要な意味を有する。以前に感染したSARS-CoV-2患者のT細胞は、NよりもN-ETSDをより容易に認識した。本明細書に提示されたデータは、改変N-ETSDを特異的に発現するワクチンコンストラクトの効力の増強の可能性を強く支持する。
【0169】
T細胞は、SARS-CoV感染の排除に重要である。36,74-78 ここで、hAd5はS及びNを発現し、強い抗原特異的IFN-γを誘発したが、以前に感染したSARS-CoV-2患者のT細胞からのIL-4分泌は実質的に誘発せず、Th1優位を指摘した。抗ウイルス性Th1サイトカイン応答は、SARSCoV-2、SARS-CoVに密接に関連するウイルスを含む多様なウイルスを感染宿主79から排除する。80 これらのデータは、前臨床モデルにおける研究とも一致している。重要なことに、データは、S及びNの両方がB細胞及びCD8+ T細胞記憶からの抗体産生の両方を助けるCD4+ T細胞の標的であり、これらが一緒になってウイルス感染標的を死滅させるように機能することを示唆する。T細胞サブセットによるこれらのワクチン抗原の認識は、病原体の免疫制御と一致する。興味深いことに、hAd5 S-融合物 + N-ETSD T細胞バイアスワクチンは、非感染患者を保護するだけでなく、T細胞を活性化してウイルス感染細胞を死滅させることによってウイルスの迅速なクリアランスを誘導し、それによってウイルス複製及び側方伝播を減少させるために、既に感染した患者のための治療薬としても利用される可能性を有する。重要なことに、N-ETSDのT細胞リコールは、激しいインターフェロンg応答及び低いIL-4応答によって示されるように、Th1優位であることが示された。
【0170】
上記で使用した方法及びコンストラクト
実施例25:hAd5[E1-、E2b-、E3-]プラットフォーム及びコンストラクト
本明細書における試験のために、第2世代hAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターを使用して(図44、パネルA)ウイルスワクチン候補コンストラクトを作製した。SARSCoV-2抗原発現インサート及びウイルス粒子を含有するhAd5[E1-、E2b-、E3-]骨格を、以前に記載されたように作製した。簡単に述べると、E1及びE2b発現E.C7パッケージング細胞株における連続増殖、続いてCsCl2精製、及びViraQuest Inc.(North Liberty、IA)による保存緩衝液(2.5%グリセロール、20mM Tris pH 8、25mM NaCl)への透析によって、高力価アデノウイルスストックを作製した。ドデシル硫酸ナトリウム破壊及び260及び280nmでの分光光度法により、ウイルス粒子数を決定した。ウイルス力価は、Adeno-X(商標)Rapid Titer Kit(Takara Bio)を用いて決定した。作製されたコンストラクトは:i. S-WT:1273個のアミノ酸及び全てのSドメインを含むSタンパク質:細胞外(1~1213)、膜貫通(1214~1234)、及び細胞質(1235~1273)(Unitprot P0DTC2);ii. S融合物:RBDの表面発現及び提示を増強するように最適化されたS;iii. N:免疫検出のためのタグを含むヌクレオカプシド(N)野生型配列タンパク質;iv. N-ETSD:免疫検出のためのタグと共に増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)を有するN;並びにv. 二価S-融合物 + N-ETSD;
【0171】
以前のSARS-CoV-2感染が確認された患者及びウイルスナイーブ志願者からの血漿及び末梢血単核細胞の収集:ELISAによって確認されたようにSARS-CoV-2に曝露されていない(UNEX)志願者、及び複数の陰性SARSCoV-2試験によって確認された志願者、又は最近の病歴及び陽性SARS-CoV-2抗体試験によって示されたようにCOVID-19から回復した志願者(患者、Pt)からの静脈穿刺を介してインフォームドコンセントを得て血液を収集した。全血の第3の供給源は、商業的供給源(HemaCare)からの健康な対象のアフェレーシスであった。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離によって全血から単離し、密度勾配遠心分離後に血漿を収集した。
【0172】
単球由来樹状細胞(MoDC)は、前述したように86、GM-CSF(200U/ml)及びIL-4(100U/ml)を使用してPBMCから分化された。簡単に述べると、単球をプラスチック上での接着によって濃縮した一方、非接着細胞を保存し、リンパ球、特にT細胞の供給源として凍結した。接着細胞を樹状細胞に分化させ(10% FBSを含有するRPMI中3~5日)、次いで、後の使用のために液体窒素中で凍結した。T細胞を、MojoSort(BioLegend CD3濃縮)を用いてPBMCの非接着性画分から濃縮した。CD4+及びCD8+ T細胞を、同じ製造業者からの類似のキットを用いて濃縮した。細胞分離の効率をフローサイトメトリーによって評価した。
【0173】
MoDCのhAd5 N-WT又はN-ETSDによる感染、並びに抗N、抗CD71、抗LAMP-1、及び抗LC3a/b抗体による標識:解凍したてのMoDCを、4ウェルLab-Tek II CC2チャンバースライド上に、3×10細胞/ウェルを用いてプレーティングし、hAd5 N-ETSD又はhAd5 Nを用いて、プレーティングの1時間後にMOI 5000で形質導入を行った。スライドを37℃でo/nでインキュベートし、4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、次いで1% Triton X100、PBS中)で15分間室温で透過処理した。Nを標識するために、次いで細胞を3% BSA、0.5% Triton X100及び0.01%サポニンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、1:1000で、4Cで一晩、抗フラグモノクローナル(マウスにおいて産生された抗Flag M2)抗体と共にインキュベートし、続いて、PBS中で3回洗浄し、1:500で、ヤギ抗マウスIgG(H+L)高度クロス吸着二次抗体、Alexa Fluor Plus 555(Life Technologies)と共に1時間インキュベートした。共局在化試験のために、細胞をまた、1:200で、ウサギ抗CD71(トランスフェリン受容体、リサイクル/選別エンドソームマーカー)抗体(ThermoFisher)、1:10で、ヒツジ抗Lamp1 Alexa Fluor 488コンジュゲート化(リソソームマーカー)抗体(R&D systems)、又は1:100で使用されたウサギモノクローナル抗ヒトLC3a/b(Light Chain 3、オートファジーマーカー)抗体(Cell Signaling Tech #12741S)を用いて、4Cで一晩インキュベートした。一次抗体を除去した後、PBS中で2回洗浄し、3% BSAを含むPBS中で3回洗浄し、適用可能な場合、1:500(ヤギ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体、Alexa Fluor 488;1:500希釈)で細胞を蛍光コンジュゲート化二次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。短時間の洗浄後、DAPI(Fisher Scientific)を含むVectashield Antifade封入剤で細胞をマウントし、Keyence all-in-one Fluorescence顕微鏡カメラ及びKeyenceソフトウェアを使用して直ちに画像化した。
【0174】
以前にSARS-CoV-2に感染した患者由来の血漿抗体の、ワクチン感染MoDCによって発現された抗原への結合:以前に感染した対象由来の血漿抗体の、MoDCの表面上に発現された抗原への結合を、MoDCの末梢血単核細胞(PBMC)からDCへの分化、MoDCの感染、以前に感染した患者血漿とのインキュベーション、並びにフローサイトメトリーによる感染及び非感染MoDCへの結合の検出によって決定した。
【0175】
MoDCを、hAd5 S-WT、S融合物、S-融合物 + N-ETSD又は緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する「ヌル」コンストラクトを用いて、MOI 5000で感染させた(12ウェルプレート中0.5x106/ウェル)。感染の1日後、EDTA(0.5mM)を用いてMoDCを分離し、穏やかにピペットで移し、単一患者(Pt4)からの1:100希釈の以前に感染した患者の血漿とのインキュベーションのために、(4℃)で30分間移し、ヤギ抗ヒトIgG(フィコエリトリンコンジュゲート化)によってMoDC表面上で血漿抗体を検出した。フローサイトメトリー分析のために、細胞を上述したように取得した。データは、DMFI、即ち、感染MoDCと非感染MoDCとの間の結合の差としてグラフ化した。
【0176】
以前にSARS-CoV-2感染した患者及びウイルスナイーブ個体のT細胞、並びにSARS-CoV-2ペプチド抗原プールでパルスしたMoDCに応答したIFN-γの選択されたCD4+及びCD8+ T細胞分泌
【0177】
これらの試験で使用された以前に感染した患者由来のT細胞の、インビトロでSARS-CoV-2抗原を認識する能力を検証し、次いで、同様の分析を、選択されたCD4+及びCD8+ T細胞について実施した。簡単に述べると、MoDC(2×10)をSARS-CoV-2ペプチド抗原(1μg/ml、S1及びS2プールPM-WCPV-S-1を含むPepMix S;並びにN PM-WCPVNCAP-1、両方ともJPT Peptide Technologies)でパルスし、次いでMojoSort(BioLegend CD3濃縮)を用いてPBMCの非接着性画分から濃縮した自己T細胞(1×10)を濃縮RPMI(10%ヒトAB血清)に加えた。細胞を、IFN-γを標的とする固定化一次抗体を含むマイクロタイタープレート(Millipore)中で一晩(37℃)培養し、次いで、IFN-γスポット形成細胞をELISpotによって計数した。ELISpot検出のために、細胞及び培地を除去するための吸引及び洗浄後に、IFN-γを、ビオチンにコンジュゲートされたサイトカインに対する二次抗体によって検出した。ストレプトアビジン/西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを使用して、ビオチンコンジュゲート化二次抗体を検出した。ウェル当たりのスポット数(1×10細胞)を、ELISpotプレートリーダーを用いて計数した。IL-4は、抗IL-4抗体で予め被覆されたウェルを有するキット(MabTech)を使用し、製造業者の説明書に従って、ELISpotによって測定した。IL-4検出のための残りの工程は、IFN-γのためのものと同一であったが、ペルオキシダーゼではなくアルカリホスファターゼ検出であった。
【0178】
自己hAd5ワクチン感染MoDCに対する以前にSARS-CoV-2感染した患者由来のT細胞反応性の決定:MoDCをhAd5 S-融合物、S-融合物 + N-ETSD、N-ETSD、N又はGFP/ヌルコンストラクトで感染させ、37℃で一晩インキュベートした。感染したMoDCを、同じ個体由来のCD3+、CD4+、又はCD8+ T細胞と共に一晩培養した。抗原特異的T細胞応答を、上述したようにELISpotを用いて計数した。
【0179】
AdV/酵母組み合わせ及び酵母溶解物製剤
N-ETSD及び/又はS-融合物(又はN-ETSD及び/若しくはS-融合物と類似性を有するタンパク質)を発現するウイルスコンストラクトに加えて、N-ETSD及び/又はS-融合物(又はN-ETSD及び/若しくはS-融合物と類似性を有するタンパク質)はまた、以下でより詳細に議論されるように、抗原を提示する酵母細胞上、又は免疫原性をさらに高めるために溶解物として調製され得る酵母細胞内のいずれかで、酵母において発現され得る。
【0180】
図12は、複数の経路にわたって耐久性があり、有効な免疫を誘発する理想的なワクチンの概念図を示す。容易に理解し得るように、ワクチン組成物は、好ましくは(必須ではないが)、酵母ワクチン組成物及びウイルスワクチン組成物から構成され、場合により、RP182などのマクロファージ分極剤及び免疫刺激性サイトカイン又はサイトカイン類似体(例えば、N-803)と合わせて構成される。
【0181】
酵母成分に関して、酵母は、組換え核酸1つ以上の目的の抗原、及びおそらくは、さらなるDAMP又はPAMP又はSTING経路シグナルから発現する組換え酵母であることが最も典型的に好ましい。そのように生成された組換え酵母は、典型的には、熱不活性化され、熱不活性化後に酵母は溶解される。最も好ましくは、酵母は圧力ホモジナイゼーションを用いて溶解され、次いで、ホモジネートは、好ましくは濾過によって清澄化される。しかしながら、細胞壁の酵素的又は化学的溶解、超音波処理、瞬間凍結/解凍などを含む、他の溶解方法も適切であると考えられることを理解するべきである。同様に、溶解物の清澄化はまた、遠心分離、沈降、凝集などを含み得る。
【0182】
容易に理解されるように、組換え抗原及び他の組換えタンパク質は、公知の発現カセットを用いて任意の適切なプロモーターから発現させることができる。例えば、図13は、SARS CoVヌクレオカプシドタンパク質(N)がサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において過剰発現される例示的な発現実験の結果を示す。図から分かるように、かなりの量の組換えタンパク質が酵母において発現された。
【0183】
マウスモデルを用いて、溶解したターモゲン(tarmogen)(組換え発現抗原を有する酵母)は、T細胞応答の誘導に関して、無傷ターモゲンよりも最大150倍高い免疫原性であった(数百匹のマウスにおける多数の抗原特異的T細胞活性化試験に基づく)。有利には、溶解された酵母は好ましい安全性プロファイルを有し、10,000の10 YU用量を2時間のうちに1つの小規模圧力ホモジナイザーで調製することができる。無傷酵母は、Th1-Th17を誘導し、IFNγ、IL2、IL12、IL6、TNFα、GM-CSFを誘発するが、酵母溶解物は、強力なTh1効果を明らかに誘導し、Th17を減少させた。したがって、無傷又は溶解酵母は、コロナウイルス特異的抗体を誘導する(例えば、doi.org/10.1016/j.jaut.2005.01.008、doi.org/10.1155/2016/4131324、又はsfamjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/lam.12188を参照されたい)。
【0184】
経口/粘膜投与のための製剤
さらなる実施形態では、保存中に安定であり、容易に投与され(例えば、経口投与)、ワクチンを受容した対象の胃を通過した後に溶解する(例えば、抗原性又はプレ抗原性ワクチン分子を放出する)固体剤形(例えば、粉末、錠剤、又はカプセル)を形成するためにアラゴナイトを使用するワクチン組成物の組成物及びワクチン組成物を製造するための方法が本明細書に開示される。
【0185】
特に、本開示は、粉末、錠剤、又はカプセルの形態の固体投与ワクチンを与えるワクチン活性成分を負荷した複数のアラゴナイト粒子から作製されたアラゴナイト組成物に関する。より具体的には、ワクチン組成物は、複数のアラゴナイト粒子とブレンドされ、それによってその表面上に負荷された、関連する感染/疾患に対応する抗原を発現するための粉末形態(例えば、凍結乾燥された)組換え発現コンストラクトを含み得る。例示的な実施形態では、ワクチン組成物は、コロナウイルスに対して免疫する。好ましくは、組換え発現コンストラクトは、少なくとも1つの抗原性コロナウイルスタンパク質又はタンパク質断片を発現するアデノウイルスコンストラクトである。
【0186】
特に、現在企図されている固体剤形におけるアラゴナイトの使用は、費用効率の高い製造及び安定なワクチン組成物の容易な投与を可能にする。このように、現在企図されているワクチン錠剤又はカプセルは、大量生産され、容易に輸送され得る。さらに、固体剤形は、医療従事者を必要とせずにほとんどの人が自己投与することができる経口投与を可能にする。錠剤形態はまた、ロゼンジを形成するために、追加の賦形剤及び/又は添加剤(例えば、香料及びゼラチン)を用いて作製され得る。
【0187】
アラゴナイト(例えば、魚卵状アラゴナイト)は、天然に沈殿した炭酸カルシウムの最も純粋な形態の1つである。図1を参照すると、アラゴナイトは、斜方晶系、両錐体、特徴的な針状結晶の結晶形態を有し、したがってカルサイト及びバテライトとは区別される。アラゴナイトは、炭酸カルシウム鉱物の機械的及び化学的特性を利用する様々な目的のために使用することができるように、様々な形状に再結晶及び/又は再形成するために加工することができる。本明細書に開示されるようなアラゴナイト粒子は、規則的(例えば、球形、又は卵形)又は不規則な形状を有する固体物質である。本明細書で使用される場合、アラゴナイト粒子は、100nm~1mmの平均粒径を有する。アラゴナイト粒子を粉砕するための方法は、米国特許出願公開第2020/0308015号明細書に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、アラゴナイト粒子をきれいなトップサイズを有する2.0~3.5ミクロンサイズに粉砕する方法が開示されている。きれいなトップサイズとは、2.0~3.5ミクロン又は2.5~3.5ミクロンのサイズ範囲に設定した分級機を用いて、開示された粉砕方法を用いて製造された場合、非常に少ない粒子が3.5ミクロンサイズよりも大きいことを意味する。したがって、米国特許出願公開第2020/0308015号明細書の方法を使用する本明細書に開示されるようなアラゴナイト粒子は、従来のGCCよりもきれいなトップサイズを有する。
【0188】
アラゴナイトの吸着容量は、3つのパラメータの関数である:(1)表面電荷(「ζ(ゼータ)電位」としても知られる);(2)表面積/空隙比;及び(3)粒子溶解度。これらの3つのパラメータを正確に測定することによって、所与の条件下でどの材料がアラゴナイト粒子表面に吸着するかを決定することができる。特に、アラゴナイトのゼータ電位は、グリセロール及びソルビトールなどの界面活性剤の安定性を増加させる。
【0189】
さらに、アラゴナイトは、2nm未満の直径(即ち、高い「微孔性」)を有する粒子中に、天然で多数の測定可能な細孔を有する。例えば、欧州特許第2719373号明細書を参照されたい。したがって、アラゴナイトプラットフォームは、活性成分粒子を強力に一緒に把持し、充填されたアラゴナイトを固体剤形(例えば、粉末、錠剤、又はカプセル)に製剤化することを可能にする。
【0190】
有利には、未処理のアラゴナイトは、中性pH(7.8~8.2)、天然の親水性、電子電荷(ゼータ電位)を有し、アミノ酸及びタンパク質との窒素性対合を既に作り出している。任意の1つの理論に束縛されるものではないが、アラゴナイトのこれらの有利な特性は、アラゴナイトを周囲条件下で準安定にする。より具体的には、アラゴナイト粒子は、天然で約2~3%のアミノ酸含有量を含み、その大部分は、アラゴナイト表面を親水性にするアスパラギン酸(約25~30%)及びグルタミン酸(約8~10%)である。例えば、Mitterer,1972,Geochimic et Cosmochimica Acta,36:1407-1422を参照されたい。したがって、いくつかの実施形態では、ワクチン組成物(例えば、組換えアデノウイルス)は、アラゴナイト粒子の天然の未処理表面に直接結合される。
【0191】
現在、市場で利用される炭酸カルシウムは、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)(合成)、及び/若しくは石灰石生産物として、又はそれらから加工される。生産される生成物は、異なる属性を有する商品グレードである。きれいな粒径分布(PSD)トップサイズ及び低い保持率を得るために、を得るために、ほとんどの企業は、ハイソリッド又はローソリッドのいずれかによる湿式粉砕プロセスを利用する。本明細書で使用される場合、アラゴナイトは、GCC、PCC及び石灰石とは区別される、斜方晶系、両錐体、及び特徴的な針状結晶の結晶形態を有する天然アラゴナイトを指す。例えば、米国特許出願公開第2020/0308015号明細書に開示されているシステム及び方法を用いてボールミル加工されたアラゴナイトは、きれいなトップサイズを有する2.0~3.5ミクロンサイズのアラゴナイト粒子を生成することができる。きれいなトップサイズとは、2.~3.5ミクロンサイズ範囲又は2.0~3.5ミクロンサイズ範囲に設定された分級機を用いて、このシステム及び方法を用いて製造された場合、非常に少ない粒子が3.5ミクロンサイズよりも大きいことを意味する。例えば、開示されたシステムを用いてこの設定範囲で生成されたアラゴナイトの場合、同じメジアン(D50)粒径分布(PSD)を有するGCC生成物と比較して、<0.0005%のみが325メッシュ上に保持され、<0.0007%のみが500メッシュ上に保持される。したがって、企図されるシステム及び方法を用いて生成されるアラゴナイトは、従来のGCCよりもきれいなトップサイズを有する。
【0192】
有利には、アラゴナイトから作製された固体剤形は、経口投与によって摂取することができる固体ワクチン形態を提供する。腸溶コーティングを有する本開示の固体形態は、摂取され、内側コアに負荷された抗原性分子は、胃を通過した後まで放出されず、それによって、血流中への抗原性又はプレ抗原性分子の吸収、及び免疫細胞への送達が可能になる。本明細書で使用される場合、抗原性分子とは、アラゴナイト粒子とブレンドされ、アラゴナイト粒子の表面上に負荷された所望のワクチン活性成分を指す。これらの抗原性分子は、アラゴナイト粒子上に負荷された形態で抗原性であり得るか、又はそれらは、少なくとも1つの抗原性タンパク質若しくは断片を産生(例えば、発現)することができる分子(例えば、発現ベクター)であり得る。このように、本明細書に開示される活性成分又はワクチン活性成分は、別段の指定がない限り、抗原性分子及びプレ抗原性分子の両方を含む抗原性分子と称される。
【0193】
例示的な実施形態では、アラゴナイトワクチン組成物は、i)アラゴナイト及び特異的抗原性分子から作製される内側コアと、ii)内側コアの外面全体が外側コアのみと接触し、内側コアの表面が露出しないように、内側コアを完全に囲むアラゴナイトの外側コアと、iii)外側コアの外面全体を覆うコーティングとを含む。好ましくは、内側コアは、少なくとも2um以上の直径を有するアラゴナイト粒子から作製され、それによって、その上に特異的抗原性分子を捕捉及び負荷するための表面積を提供する。好ましくは、外側コアは、いかなる抗原性分子も含まず、90%~100%のアラゴナイトから作製される。より好ましくは、外側コアは、100%のアラゴナイトのみを含む。固体組成物の外側コーティングは、胃の高酸性、低pH環境(例えば、約3のpH)で安定であり、小腸のより高いpH(例えば、約7~9のpH)で溶解する任意の適切なコーティング(例えば、腸溶コーティング)であり得る。腸溶コーティングの適切な例としては、メタクリル酸、アクリル酸エチル、及び/又は可塑剤/安定剤(例えば、クエン酸トリエチル(TEC))などのバイオポリマー分散液が挙げられる。さらに、粘着防止剤(anti-tacking agent)もまた、腸溶コーティング(例えば、モノステアリン酸グリセロール)と組み合わされ得る。
【0194】
特定の実施形態では、内側コアは、抗原性分子の凍結乾燥粉末とブレンドされた、少なくとも2um以上(例えば、2~3.5um)の直径を有するアラゴナイト粒子から作製される。いくつかの実施形態では、さらなる賦形剤がアラゴナイト及び抗原性分子とブレンドされる。例えば、ジメチルグリシン及び/又はメチルスルホニルメタン(MSM)を、抗原性分子の凍結乾燥粉末と組み合わせ、アラゴナイト粒子とブレンドすることができる。
【0195】
さらなる例示的な実施形態では、凍結乾燥された抗原性分子は、SARS-コロナウイルス2(SARS-CoV-2又はCoV2)の少なくとも1つの抗原性タンパク質又は最適化されたタンパク質又はその断片に対応する(即ち、コードする)核酸を有する凍結乾燥された組換え発現ベクターを含む。例えば、本明細書に開示される企図される固体剤形ワクチン組成物は、コロナウイルス2ウイルス(CoV2)の核タンパク質(N)タンパク質及びスパイク(S)タンパク質のうちの少なくとも1つの抗原をコードし得、その両方は、全てのタイプのコロナウイルスにおいて保存されている。一実施形態では、抗原コード分子は凍結乾燥された組換え体であり、組換え体は、CoV2のヌクレオカプシドタンパク質若しくはその断片をコードする核酸を含み、及び/又は組換え体は、CoV2のスパイクタンパク質若しくはその断片をコードする。ワクチン製剤は、コロナウイルス媒介疾患又は感染症などの疾患を治療するのに有用であり得る。したがって、別の実施形態では、それを必要とする患者におけるコロナウイルス疾患を治療するための方法が開示され、その方法は、少なくともCoV2 Nタンパク質又はその断片をコードし、好ましくは、CoV2 Nタンパク質又はその断片とCoV2 Sタンパク質又はその断片の両方をコードする核酸を含む組換え体を含む固体剤形ワクチン組成物を対象に投与することを含む。本明細書において企図されるコロナウイルスは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)及び/又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)であり得る。
【0196】
さらなる例示的な実施形態では、本明細書に開示される企図される固体剤形ワクチン組成物は、二価ヒトアデノウイルス血清型5(hAd5)発現ベクターで作製された凍結乾燥組換え体とブレンドされたアラゴナイトを含む。hAd5は、既存のアデノウイルス免疫を有する患者において免疫を誘導することができ、コロナウイルス2スパイク(S)タンパク質及び/又はヌクレオカプシド(N)タンパク質を標的とする抗体を産生するための抗原を発現する。例えば、hAd5 CoV2は、配列番号1に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する修飾ヌクレオカプシドタンパク質をコードし得る。より具体的な実施形態では、hAd5は、細胞表面発現に最適化されたS配列(S-融合物)と、エンドソーム細胞内コンパートメントに輸送されるように設計された保存されたヌクレオカプシド(N)抗原との両方を含み、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/883,263号明細書に開示されているように、CoV2に対する耐久性のある免疫防御を生じさせる可能性がある。例えば、hAd5 CoV2は、各々配列番号4又は配列番号3に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するS-融合物又はS-HAタンパク質をコードし得る。
【0197】
有利には、二価hAD5ワクチンは、以下を提供する:(i)表面発現がほとんど検出されなかったS-WT(野生型)と比較して改善されたS受容体結合ドメイン(RBD)細胞表面発現を有する最適化されたS-融合物;(ii)S-融合物からの発現されたRBDは、ACE2-Fcによるコンフォメーションの完全性及び認識を保持した;(iii)増強T細胞刺激ドメイン(ETSD)で修飾されたウイルスNタンパク質は、MHC I/II提示のためにエンドソーム/リソソーム細胞内コンパートメントに局在化された;並びに(iv)S及びNに対するこれらの最適化(S-融合物及びN-ETSD)は、下記により詳細に示すように、抗原ナイーブ前臨床モデルにおいて増強されたデノボ抗原特異的B細胞並びにCD4+及びCD8+ T細胞応答を生じた。
【0198】
好ましい実施形態では、凍結乾燥二価hAd5ワクチンは、エンドソーム標的化配列に融合されたコロナウイルス2(CoV2)ヌクレオカプシド(N)タンパク質をコードする核酸(N-ETSD)、及び細胞表面発現のために最適化されたCoV2スパイク(S)タンパク質配列をコードする核酸(S-融合物)と共に、E1、E2b、及びE3遺伝子領域欠失を有する複製欠損アデノウイルスを含む。典型的には、hAd5アデノウイルス中のCoV2 N-ETSDタンパク質をコードする核酸は、配列番号2に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。より典型的には、hAd5アデノウイルスにおいてコードされるCoV2 N-ETSDタンパク質は、配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。典型的には、hAd5アデノウイルス中のCoV2 S-HA又はS-融合物タンパク質をコードする核酸は、各々配列番号5又は配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。より典型的には、hAd5アデノウイルスにおいてコードされるCoV2 S-HA又はS-融合物タンパク質は、配列番号3又は配列番号4に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0199】
さらなる実施形態では、凍結乾燥二価hAd5ワクチンはまた、輸送配列、同時刺激性分子、及び/又は免疫刺激性サイトカインをコードする核酸を含み得る。コードされた同時刺激性分子の例としては、CD80、CD86、CD30、CD40、CD30L、CD40L、ICOS-L、B7-H3、B7-H4、CD70、OX40L、4-1BBL、GITR-L、TIM-3、TIM-4、CD48、CD58、TL1A、ICAM-1、及びLFA3のうちの1つ以上が挙げられる。免疫刺激性サイトカインの例としては、IL-2、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニスト(N803)、IL-21、IPS1、及びLMP1のうちの1つ以上が挙げられる。
【0200】
異なる視点から見ると、(a)少なくとも野生型若しくは修飾ヌクレオカプシドタンパク質;及び/又は(b)少なくとも1つの野生型若しくは修飾スパイクタンパク質をコードする核酸を含む、凍結乾燥形態のウイルスベクターとブレンドされたアラゴナイト粒子から作製されたコロナウイルスワクチン組成物(例えば、組換えアデノウイルスゲノムを含み、場合により欠失型又は非機能性E2b遺伝子を含む凍結乾燥粉末組成物)の固体剤形が本明細書で企図される。ウイルスベクターは、同時刺激性分子をさらに含み得る。典型的には、核酸は、核酸によってコードされるペプチド生成物を細胞質、エンドソームコンパートメント、又はリソソームコンパートメントに導くための輸送シグナルをコードし、ペプチド生成物は、ペプチド生成物の細胞内代謝回転を増強する配列部分をさらに含むであろう。
【0201】
議論したように、アラゴナイトは凍結乾燥ワクチン活性成分の直接結合を可能にするので、固体投与ワクチン組成物の製造及び調製が可能である。したがって、開示される固体剤形ワクチンを作製するための企図される方法は、本明細書及び米国特許出願公開第2020/0308015号明細書(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、ワクチン活性成分を(例えば、混合によって)粉砕アラゴナイト粒子に負荷することによって、アラゴナイト及びワクチン活性成分の内側コアを形成することを含む。凍結乾燥ワクチン活性成分をアラゴナイト粒子とブレンドする任意の適切な方法を使用することができる。粉砕アラゴナイト粒子(例えば、2um~3.5umのD50 PSDを有する)の凍結乾燥ワクチン活性成分との負荷又は混合は、任意の従来の方法論によって行うことができる。アラゴナイトと活性成分との混合は、アラゴナイト及び凍結乾燥活性成分の両方の乾燥重量を、回転/反転に適した密閉容器内に混合することを含む。例えば、アラゴナイト及び活性成分の反転又は回転は、約5分間~30分間まで行うことができる。例えば、ワクチン組成物は、ミキサー(例えば、タンブリングミキサー)又はブレンダー中で固体剤形上に負荷され得る。アラゴナイトの量は、凍結乾燥活性成分の量及び免疫応答を誘導するための活性成分の決定された力価に応じて変動し得る。例えば、本明細書に開示される凍結乾燥二価hAd5ワクチンの有効用量は、1カプセル(又は錠剤)当たり約1×10IUであり得る。したがって、2.21×10IU/mgの力価を有する凍結乾燥二価hAd5ワクチン組成物は、カプセル当たり約45.25mgの凍結乾燥二価hAd5粉末を必要とする。いくつかの実施形態では、固体単一カプセルの重量は、約300mg~600mgであり得る。特定の実施形態では、550mgカプセルの場合、約40~60mgの凍結乾燥活性成分(例えば、N及びS CoV2タンパク質の両方の凍結乾燥二価hAD5発現)を、490~510mgのアラゴナイトと混合する。2.21×10IU/mgの力価を有する活性成分の場合、45.25mgの凍結乾燥活性成分を約504.75mgのアラゴナイトとブレンドし得る。混合物の錠剤又はカプレット形成は、当技術分野で公知の任意の適切なカプセル化方法及び/又はキットを用いて実施することができる。たとえば、Capsule Machine Filler(Item# CPM1001/2081677)。
【0202】
好ましい実施形態では、固体用量ワクチン錠剤又はカプセル剤を作製するための企図される方法はまた、内側コアを包含する(例えば、完全に包み込む)アラゴナイトの外側コアを作製することを含む。典型的には、外側コアは、ほとんど(例えば、少なくとも90%の)アラゴナイトから作製され、より典型的には、外側コアは、少なくとも99%のアラゴナイトから作製される。
【0203】
経口投与のために錠剤又はカプセル中で抗原性分子を血流に送達するために、抗原性分子は、胃を通過し、腸(例えば、小腸)中での吸収に利用可能になるまで、外側コアによって包含される内側コア中に残存しなければならない。したがって、外側コアは、胃の低pH(例えば、約3のpH)で安定であり、腸のより高いpH(例えば、約7~9のpH)で溶解する腸溶コーティングで被覆される。固体組成物の外側コーティングは、任意の適切な腸溶コーティングであり得る。腸溶コーティングの例としては、トリエチルシトレート(TEC)中のメタクリル酸及び/又はエチルアクリレートポリマーが挙げられる。腸溶コーティングを適用するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、被覆デバイス又は装置を使用することができる。被覆デバイスの具体例としては、ProCoater(Torpac製)が挙げられる。
【0204】
hAD5-COVID-S/Nと混合したアラゴナイト粒子又はラクトースから作製した被覆(C)及び非被覆(NC)カプセルを酸(HCl)に曝露して、様々なカプセルの酸透過性を決定した。例えば、図2は、0.1M塩酸(HCL)中の非被覆アラゴナイトカプセル(サンプル#6)中の二価ヒトアデノウイルス血清型5 COVID-スパイク及びヌクレオカプシド抗原ワクチン(hAD5-COVID-S/N)の3つの写真(右から左:1、2、3)を示し、示されるように、カプセル中で観察されたしわ、膨潤、又は穴を有する:1):HCL酸曝露の2分後;2):HCL酸曝露の2時間後;並びに3)HCL酸曝露の2時間後、及び乾燥。図3は、0.1M HCL中の非被覆アラゴナイトカプセル(サンプル#7又は#8)中のhAD5-COVID-S/Nの3つの写真(右から左:1、2、3)を示し、示されるように、カプセル中で観察された膨潤、ねじれ、又は穴を有する:1):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#7;2):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#8;3)HCL酸曝露の2時間後、及び乾燥。図4は、0.1M HCL中の非被覆ラクトースカプセル(サンプル#3又は#4)中のhAD5-COVID-S/Nの2つの写真(右から左:1、2)を示し、示されるように、観察されたカプセルの膨潤を有する:1):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#3;2):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#4。図5は、0.1M HCL中の被覆アラゴナイトカプセル(サンプル#1又は#5)中のhAD5-COVID-S/Nの2つの写真(右から左:1、2)を示し、示されるように、観察されたカプセルの膨潤を有する:1):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#1;2):HCL酸曝露の2時間後のサンプル#5。明らかに、被覆されたカプセルは、酸中で安定であった。
【0205】
図6~11に示すように、サンプルカプセルを、グラム当たりの感染単位(IFU/グラム)及びウイルス回収率のパーセントについてさらにアッセイした。より具体的には、図6は、示されるように、示されたhAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについてのグラム当たりの感染単位(IFU/グラム)(y軸)を示す。図7は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについてのウイルス回収率の百分率(%)(y軸)を示す。図8は、示されるように、各hAD5-COVID-S/NカプセルタイプについてのIFU/グラム及び対応するpHを示す。図9は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについてのウイルス回収率の百分率(%)を示す。図10は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについて回収されたウイルスのパーセントを示し、酸処理は陰影を有するものについて示される。図11は、示されるように、各hAD5-COVID-S/Nカプセルタイプについての感染単位/グラムを示し、酸処理は陰影を有するものについて示される。結果を以下の表2にまとめる。
【0206】
【表1】
【0207】
代替的な実施形態では、企図される剤形は、ワクチン組成物の添加前に二酸化炭素(CO2)で含浸された(即ち、結合された)アラゴナイトの内側コアを含む。例えば、欧州特許第2719373号明細書及び米国特許出願公開第2020/0155458号明細書を参照されたい。さらなる実施形態では、企図される剤形は、ワクチン組成物の添加前に、アラゴナイトと混合及び処理した、生体適合性ポリマー及び/又は崩壊剤を有するアラゴナイトを含む。典型的には、ワクチン組成物を添加する前に、アラゴナイトにCO2を含浸させ、生体適合性ポリマー及び崩壊剤の両方と混合する。より典型的には、ワクチン組成物を添加する前に、アラゴナイトにCO2を含浸させ、生体適合性ポリマー及び崩壊剤と混合し、固体形態に形成する(例えば、圧縮する)。例えば、欧州特許第2719373号明細書及び米国特許出願公開第2020/0155458号明細書を参照されたい。
【0208】
さらなる実施形態では、本明細書に記載されるように、アラゴナイトを二酸化炭素(CO2)と結合させ、少なくとも1つの生体適合性ポリマーと混合してもよい。典型的には、CO2結合アラゴナイトと生体適合性ポリマーとの重量比は、約95:5~5:95である。さらなる実施形態では、生体適合性ポリマーは、ホットメルト押出生体適合性ポリマーである。例示的な生体適合性ポリマーとしては、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド66(ナイロン)、ポリカプロラクタム、ポリカプロラクトン、アクリルポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド/スルフィド、ポリポピレン(polypopylene)、テフロン、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、例えばポリヒドロキシブチレート、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバレレートコポリマー、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)、ポリグリコネート、ポリ(ジオキサノン)及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、生体適合性ポリマー樹脂は、PLAである。
【0209】
製造及び包装の必要性によって決定されるように、固体剤形の内側コア及び/又は外側コアに追加の賦形剤を加えてもよい。追加の賦形剤としては、イオン交換樹脂、ゴム、キチン、キトサン、粘土、ゲランゴム、架橋ポラクリリンコポリマー、寒天、ゼラチン、デキストリン、アクリル酸ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム/カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セラック又はその混合物、潤滑剤、内相潤滑剤、外相潤滑剤、衝撃改質剤、可塑剤、ロウ、安定剤、顔料、着色剤、香味剤、矯味剤、香料、甘味剤、口当たり改善剤、結合剤、希釈剤、フィルム形成剤、接着剤、緩衝剤、吸着剤、臭気マスキング剤及びそれらの混合物が挙げられる。
【0210】
代替的な実施形態では、アラゴナイト粒子表面を処理して、結合表面を改質することができる。例えば、ステアリン酸(即ち、オクタデカン酸)による処理は、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されているように、疎水性表面を提供する。タンパク質負荷のために、リン酸によるアラゴナイトの処理は、ラメラ構造を形成する。反応性基をアラゴナイトのアミノ酸表面に結合するためのさらなるコンジュゲーション技術は、例えば、Bioconjugate Techniques,Third Edition,Greg T.Hermanson,Academic Press,2013に開示されているように、当技術分野において公知である。
【0211】
経口/粘膜ワクチン
上記の製剤に少なくとも部分的に基づいて、本開示はまた、ワクチンを投与、モニタリング、及びアッセイするための方法及び組成物を提供する。企図される方法は、患者においてウイルスに対する免疫を誘導すること、患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化管(alimentary)粘膜への送達によって患者にワクチン組成物を投与することによって、患者にワクチン組成物を投与することを含む。好ましくは、ワクチンは、SARS様コロナウイルス(SARS-CoV-2)を標的とする。本明細書に記載される経口ワクチン組成物は、SARS-CoV-2 S又はNタンパク質に対する任意の初期プライムワクチン接種に対するブースターワクチン接種としての役割を果たすことができる。
【0212】
本明細書に記載される経口ワクチン組成物は、SARS-CoV-2スパイク(S)及び/又はヌクレオカプシド(N)タンパク質に対する任意の抗SARS-CoV-2ワクチンに対するブースターワクチンとして使用することができる。このブースターは、本明細書に記載されるもの以外の抗S又は抗Nワクチンで免疫された患者においてさえも機能し得る。特定の実施形態では、初期プライムワクチンは、Sタンパク質をコードするmRNAを含有する脂質ナノ粒子ワクチン、例えば、Moderna及びPfizerによって現在試験されているワクチンであり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載されるブーストは、初期プライムワクチン接種の少なくとも7日後に、例えば、少なくとも8日後、少なくとも9日後、少なくとも10日後、少なくとも11日後、少なくとも12日後、少なくとも13日後、少なくとも14日後、少なくとも15日後、少なくとも16日後、少なくとも17日後、少なくとも18日後、少なくとも19日後、少なくとも20日後、少なくとも21日後、少なくとも28日後、少なくとも35日後、又は少なくとも42日後に投与される。本明細書に記載されるブーストは、SARS-CoV-2に対する抗体産生及びSARS-CoV-2に対する細胞媒介免疫の両方を効果的に改善することができる。
【0213】
好ましくは、患者の粘膜組織における免疫を誘導するために投与されるワクチンは、SARS-CoV-2に対するワクチンである。例示的な実施形態では、ワクチンは、E1遺伝子領域欠失及びE2b遺伝子領域欠失を含む複製欠損アデノウイルスコンストラクトである。特定の実施形態では、アデノウイルスは、配列番号4に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の一次配列同一性を有するSARS-CoV-2スパイク融合タンパク質抗原をコードする配列(例えば、配列番号12)を含む。特定の実施形態では、アデノウイルスは、配列番号11に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の一次配列同一性を有するSARS-CoV-2修飾スパイクタンパク質抗原をコードする配列(例えば、配列番号13)を含む。特定の実施形態では、アデノウイルスは、米国特許出願第16/880,804号明細書及び米国特許第63/016,048号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、J鎖部分も含み得るACE2-Fcハイブリッドコンストラクトを形成する、免疫グロブリンFc部分に結合した可溶性ACE2タンパク質をコードする配列を含む。他の例示的な実施形態では、SARS-CoV-2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、組換え可溶性ACE2タンパク質(例えば、配列番号10)の突然変異体を含み、この突然変異体は、米国特許第63/022,146号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDタンパク質ドメインに対するACE2タンパク質の結合親和性の増大を付与する少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基(例えば、置換による)を有する。別の例示的な実施形態では、SARS-CoV-2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、米国特許出願第16/883,263号明細書及び米国特許第63/009,960号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、エンドソーム標的化配列(NETSD)に融合されたCoV2ヌクレオカプシドタンパク質又はCoV2スパイクタンパク質を含む。追加的又は代替的に、SARS-CoV-2ワクチンは、米国特許第63/010,010号明細書に開示されているように、酵母細胞表面上にコロナウイルススパイクタンパク質を発現するように遺伝子操作された改変酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))を含み、それによって、酵母提示細胞がB細胞を刺激する(例えば、液性免疫)。本明細書に記載される組成物及び方法の有利な特徴は、以下の実施例によってさらに例示される(ただし、これらに限定されない)。
【0214】
実施例26:NHPワクチン接種
アカゲザルの2つの群(1群当たり5匹)を、上述したアデノウイルス抗SARS-CoV-2ワクチンで0日目に皮下免疫した。免疫化前に各アカゲザルから血液を採取した。14日目に、アカゲザルの1つの群(群1)は、同じワクチンの別の皮下ブースター注射を受け、一方、別の群(群2)は、本明細書に記載される経口ワクチン(配列番号12又は配列番号13を有するE1-/E2b- Ad5)を受けた。28日目に、両群は、経口ワクチンブースター用量を受けた。2匹のアカゲザル(対照)に、示された時点でシャム(sham)を用いてワクチン接種した。14、21、28、35及び42日目に血液を採取した。
【0215】
次に、これらのアカゲザルから示された時点で採取された血清サンプルを、抗スパイクタンパク質IgG及びIgM血清反応性についてELISAによって評価した。簡単に述べると、96ウェルEIA/RIAプレート(ThermoFisher、Cat#07-200-642)を、被覆緩衝液(0.05M炭酸塩-炭酸水素塩、pH 9.6)に懸濁した精製組換えSARS-CoV-2由来スパイクタンパク質(S-融合物。ImmunityBio,Inc.)の1μg/mL溶液50μL/ウェルで被覆し、4℃で一晩インキュベートした。個々の96ウェルプレートを、各免疫グロブリン型(IgG又はIgM)について、150μLのTPBS溶液(PBS + 0.05%Tween 20)で各ウェル当たり3回洗浄することによって調製した。次いで、100μL/ウェルのブロッキング溶液(TPBS中の2%非脂肪乳)を添加し、室温(RT)で1時間インキュベートした。血漿及び血清サンプルを、使用前に56℃で1時間熱不活性化した。血漿、血清又は抗体サンプルの段階希釈物を、TPBS中の1%非脂肪乳中で調製した。プレートを上述したように洗浄し、50μL/ウェルの各段階希釈物をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを200μLのTPBSで3回洗浄した。各ヤギ抗ヒトIgG(H+L)クロス吸着、HRP、ポリクローナル;又はヤギ抗ヒトIgM(重鎖)クロス吸着二次抗体、HRP(各々ThermoFisher、Cat#62-842-0又はA18841)の希釈物(1:6000)を1%非脂肪乳/TPBS中で調製し、50μL/ウェルのこれらの二次抗体を、免疫グロブリン型(IgG又はIgM)ごとに別々の反応/プレートに加え、RTで1時間インキュベートした。プレートを200μLのTPBSで3回洗浄した。1つの成分(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質、50μL/ウェル、VWR、Cat#100359-156)を各ウェルに添加し、室温で10分間インキュベートし、次いで、50μL/ウェルの1N硫酸(H2SO4)を添加することによって反応を停止した。450nmにおける光学密度を、Synergy 2プレートリーダー(BioTek Instruments,Inc)を用いて測定した。Prism 8(GraphPad Software,LLC)を用いてデータを分析し、免疫化アカゲザルから採取した血清サンプル中のSARS-CoV-2スパイクに対するIgG血清反応性を検出するELISA結果を示す図14に示した。
【0216】
実施例27:NHPチャレンジ
56日目に、アカゲザルをSARS-CoV-2ウイルスへの呼吸器曝露でチャレンジした。56~63日目に、これらのアカゲザルから毎日鼻腔スワブを収集した。気管支肺胞洗浄(BAL)液を57、59、61、及び63日目に収集した。収集したサンプルからのSARS-CoV-2感染性を阻害する血清の能力を図15に示す。パネルAは、ワクチン接種した1群アカゲザル由来の血清がインビトロでSARS-CoV-2感染性を阻害する能力を示す。パネルBは、ワクチン接種した群2アカゲザル由来の血清がインビトロでSARS-CoV-2感染性を阻害する能力を示す。点線は、20%阻害を示す。図から理解し得るように、群1及び群2のアカゲザルの両方からの血清は、感染性を阻害し、後に収集された血清は、早期に収集された血清よりも強力に阻害した。対照アカゲザル由来の血清は、試験したいずれの時点でも阻害効果を有さなかった。鼻咽頭における経時的なウイルス負荷を図16に示す。パネルAは、SC+SC+経口ワクチン接種後の群1のアカゲザルからの鼻腔スワブ中のウイルス負荷(qPCR)を示し、パネルBは、SC+経口+経口ワクチン接種後の群1のアカゲザルからの鼻腔スワブ中のウイルス負荷(qPCR)を示す。肺(BAL)における経時的なウイルス負荷を図17に示す。図17。パネルAは、SC+SC+経口ワクチン接種後の群1のアカゲザル由来のBALにおけるウイルス負荷(qPCR)を示し、パネルBは、SC+経口+経口ワクチン接種後の群1のアカゲザル由来のBALにおけるウイルス負荷(qPCR)を示す。
【0217】
実施例28:血清反応性
様々な実験的抗SARS-CoV-2ワクチンを受けた様々な志願者由来の血清サンプルを収集し、SARS-CoV-2 Sタンパク質に対するIgG及びIgM血清反応性について上述したようにELISAによってアッセイした。結果を図18に示し、ELISA結果は、様々な実験的抗SARS-CoV-2ワクチンで免疫したヒト患者から採取した血清サンプル中のSARS-CoV-2スパイクに対するIgG及びIgM血清反応性を検出する。
【0218】
実施例29:ヒト免疫化
ヒト志願者を3つのコホートに分けた。コホート1(10個体)を、本明細書に記載されるワクチンの5×1010ウイルス粒子(配列番号12又は配列番号13を含むE1-/E2b- Ad5)を皮下注射することによって免疫した。コホート2(10個体)を、本明細書に記載されるワクチンの1011ウイルス粒子を皮下注射することによって免疫した。コホート3(15人の個体)を、本明細書に記載されるワクチンの1011ウイルス粒子(又は安全性の懸念がより低い投与量を示した場合、5×1010ウイルス粒子)を皮下注射することによって免疫した。初回プライムワクチン接種を投与した日と同じ日に各志願者から血液を採取した。8、15、及び22日目に再び血液を採取した。同じワクチンのブースター注射を22日目に投与した。
【0219】
1日目及び15日目に採取した血液についてELISpot試験を行って、SARS-CoV-2に対する細胞媒介免疫を評価した。各採血ウェルからの400,000の生存PBMC(Cellometer K2w/ AO/PI生存率染色)を、空の培地、SARS-CoV-2 S、SARS-CoV-2 N、SARS-CoV-2 M、CD3/CD28/CD2、及びCEFTで刺激した。刺激の48時間後、上清を後の試験のために凍結した(-80℃)。図19は、Th1 N応答性患者3、6、及び11からのELISpot試験の結果を示す。図20は、患者4(N非応答性)及び患者10(弱いTh1 N応答性)からの結果を示す。これらの患者のいずれもNに対するTh2応答を示さなかった。
【0220】
気道保護
なおさらなる実験において、企図されるワクチン製剤及び使用方法は、非ヒト霊長類におけるSARS-CoV-2チャレンジに対する鼻腔及び肺気道の保護をもたらした。以下により詳細に示すように、改変SARS-CoV-2スパイク(S-融合物)タンパク質及び増強T細胞刺激ドメインを有するウイルスヌクレオカプシド(N)タンパク質(N-ETSD)の遺伝子を組み込んだ二重抗原COVID-19ワクチンは、MHCクラスI/II応答を増加させる。使用したアデノウイルス血清型5プラットフォーム、hAd5[E1-、E2b-、E3-]は、Ad免疫の存在下で有効であることが以前に実証されており、コールドチェーンの制限を克服する経口製剤で送達することができる。hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンをアカゲザルで評価したところ、皮下プライム後に経口チャレンジを行うと、S及びNの両方に対する液性及びTh1優位T細胞応答が誘発され、上気道及び下気道が高力価(1x10 TCID50)のSARS-CoV-2チャレンジから保護されることが示された。特に、ウイルス複製は、肺及び鼻腔の両方においてチャレンジの24時間以内に阻害され、チャレンジ後7日以内に検出不能になった。図25は、hAd5プラットフォーム及びhAd5 S-融合物 + N-ETSDコンストラクトを示す。(A)E1、E2b、及びE3領域が欠失した()ヒトアデノウイルス血清型5ワクチンプラットフォームを示す。ワクチンコンストラクトをE1領域に挿入する(赤矢印)。(B)二重抗原ワクチンは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下のS-融合物及びN-ETSDの両方を含み、hAd5[E1-、E2B-、E3-]プラットフォームによって供給されるC末端SV40ポリA配列を有する。
【0221】
図25の二重抗原hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、シグナル配列に融合したウイルススパイク(S)タンパク質(S-融合物)を発現し、これは、類似の配列についての報告に基づいて予測されるように、インビトロ研究において、S野生型と比較して、スパイク受容体結合ドメイン(S RBD)の細胞表面発現を増強し、他のワクチンの大部分において使用される抗原が開発されている。このワクチンはまた、MHCクラスII応答を増強すると予測されるエンド/リソソーム細胞内コンパートメントにNを導く増強T細胞刺激ドメイン(N-ETSD)を有するウイルスヌクレオカプシド(N)タンパク質を発現する。
【0222】
SARS-CoV-2ワクチン抗原は、組換えヒトアデノウイルス血清型5(hAd5)[E1-、E2b-、E3-]ベクタープラットフォームによって送達され(図25)、複数の薬剤に対するワクチンを迅速に生成することができ、最小の時間枠で多数の用量の生産を可能にする。hAd5プラットフォームは、初期1(E1)、初期2(E2b)及び初期3(E3)領域に独特な欠失を有し(hAd5[E1-、E2b-、E3-])、これは、開発中の他のアデノウイルスワクチンプラットフォーム技術と区別され、既存のアデノウイルス免疫の存在下で有効であることを可能にする。このプラットフォームは、インフルエンザ、HIV-1及びラッサ熱などのウイルス抗原に対するワクチンを生成し、抗体及び細胞媒介免疫の両方の誘導を示した。2009年に、H1N1ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ遺伝子を発現するhAd5[E1-、E2b-、E3-]ベクターをマウスにワクチン接種すると、致死的ウイルスチャレンジから動物を保護する細胞媒介免疫及び液性応答の両方が誘発された。
【0223】
開発中の他のSARS-CoV-2ワクチンの圧倒的多数は、野生型S抗原のみを標的とし、SARS-CoV-2中和抗体応答を誘発すると予想される。ワクチンの開発は、呼吸及び防御免疫応答の持続時間を増強するために活性化T細胞を優先し;特にNの追加はT細胞応答のより大きな機会を与えると予測された。T細胞は、少なくとも抗体の産生と同じくらい重要な免疫防御を提供し得る。SARS-CoV-2回復期患者の試験において、ウイルス特異的T細胞は、検出不能な抗体応答を有する患者でさえも、無症候性個体を含むほとんどの患者において見られた。
【0224】
マウスモデルにおけるhAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンの予備試験において、ワクチンは、S及びNの両方に対するTヘルパー細胞1(Th1)優位抗体応答を誘発するだけでなく、T細胞を活性化する。SARS CoV-2回復期個体由来のMoDCを二重抗原ワクチンで形質導入し、S-融合物及びN ETSD発現MoDCをそれらの同じ個体由来のT細胞と共にインキュベートした。ワクチン抗原は、CD4+T細胞及びCD8+ T細胞の両方によるインターフェロン-g(IFN-γ)分泌を誘導する。これは、SARS-CoV-2回復期個体由来のT細胞が、形質導入MoDCによって提示されたS-融合物及びN-ETSD抗原を、それらがウイルス自体に再曝露されたかのように「リコール」することを実証する。このワクチン抗原のT細胞リコールは、逆に、hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種がウイルス感染時にSARS-CoV-2抗原を認識し、ワクチン接種された個体を疾患から保護するT細胞を生成することを示唆する。
【0225】
T細胞応答の生成は、その出現が少なくとも部分的に、第一波ウイルス(28)又は抗体ベースのワクチンのいずれかによって生成された抗体に対する逃避応答であり得る、多くの変異体に対して有効であるワクチンにとって重要な特徴であり得る。他のところで報告されているように、最も強力なmRNAワクチン誘発モノクローナル抗体(mAbs)の17のうちの14による中和は、変異体E484K、N501Y又はK417N:E484K:N501Y組み合わせの減少又は消失のいずれかであった。また、組換え水疱性口内炎ウイルス(rVSV)/SARS CoV-2 SがこれらのmAbの存在下で培養された場合に、これらの変異体が選択されることも見出され、これは、これらの抗体の存在が新しい変異体の出現を駆動する進化的な力として作用することを強く示唆している。T細胞は、そのような力に脆弱ではなく、ワクチン接種によって効果的に確立された場合、既存のウイルス株に対する防御を提供し、突然変異体を回避することができる。
【0226】
hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンの開発における次のステップにおいて、GMP(Good Manufacturing Practice)グレードの液体及び経口形態のワクチンを非ヒト霊長類(NHP)において試験した。NHP試験デザインの重要な目的は、皮下(SC)プライムとその後の熱的に安定な経口ブーストの有効性を評価することであった。経口ブーストは、SARS-CoV-2ワクチン接種においていくつかの利点を提供し、その利点は、特に感染の主要部位の1つである胃腸管において、粘膜免疫を生じさせる可能性がより大きいことを含む。SARS-CoV-2は、粘膜ウイルスであり、血液中ではまれにしか検出されず、したがって、粘膜免疫を特異的に標的とするワクチンが興味深い。熱的に安定な経口ブーストの説得力のあるさらなる利点は、特に発展途上国において、ワクチンの世界的な流通を変える可能性が高く、患者が家庭でブーストを自己投与できる可能性があることである。hAd5 S-融合物 + N-ETSDコンストラクトは、両方の抗原に対する液性応答及びCMI応答の両方を誘導するので、開発中の多数のSARS-CoV-2ワクチンに対する「普遍的」異種ブースターワクチンとして機能する可能性も有する。
【0227】
ある研究では、アカゲザルにおけるhAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンの有効性は、両方とも0日目のプライムと14日目及び28日目のブーストのレジメンを用いてSCプライムとSC及び経口ブースト(SC-SC-経口;n=5)又はSCプライム及び2つの経口ブースト(SC-経口-経口;n=5)のいずれかとして送達された場合、T細胞応答を最大にすることが究明された。この研究の目的は、SC製剤及び経口製剤の両方における二重抗原hAd5ワクチンの免疫原性、並びに単一のSCプライム後のブーストとして役立つ経口用量の可能性を評価することであった。チャレンジ後の細胞媒介T細胞応答、並びにSARS-CoV-2感染からの鼻腔及び肺の保護、並びにウイルスクリアランスの速度を評価した。
【0228】
臨床徴候、血液学及び臨床化学:ワクチン接種による毒性の臨床徴候についての1日2回の観察の間、臨床徴候は認められず、1×1011ワクチン粒子(VP)の1回の皮下免疫後の2週間、又は1×1010IUのhAd5-S-融合物+N ETSDの経口ブースト後の1週間の間、動物は死亡しなかった。さらに、肉眼的病理学的影響又は有害事象は観察されず、体重に顕著な変化はなかった。最後に、血液学及び臨床化学は、ワクチン接種の結果として異常を示さなかった。
【0229】
経口ブーストによるSCプライムは、中和、抗スパイク抗体の生成を誘発する:図21に示すように、全てのSC-経口-経口ワクチン接種NHPは、14日目及び28日目の両方の経口ブースト(パネルA及びB)の後に増加する抗S IgGを産生した。5匹のSC-経口-経口NHPのうちの4匹からの血清がベースラインで、及び14日目から開始して42日目まで毎週採取され、組換えアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)へのS RBDの結合の阻害を評価し、SARS-CoV-2ウイルスを中和する血清の能力と相関することが報告されている中和アッセイ(パネルC)において阻害を示した。抗S IgG産生は、SC-SC-経口(最初のブーストはSCであった)hAd5 S融合物 + N-ETSDワクチン接種NHP(パネルD及びE)について同様であり、この群の5匹のNHP全てからの血清は、ウイルス中和のための代理アッセイにおいて阻害を示した(パネルF)。
【0230】
SCプライム、経口ブーストワクチン接種は、SARS CoV-2チャレンジ後の鼻腔及び肺におけるウイルス負荷を低減する:ゲノムRNA(gRNA)のRT-qPCR分析を、鼻腔スワブ及び気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルに対して行って、存在するウイルスの量を決定した。NHPのSC-経口ワクチン接種は、チャレンジ後の最初の日である57日目からのプラセボ対照NHPと比較して、鼻腔スワブサンプル中のSARS-CoV-2 gRNAを減少させた(図22、パネルA及びB)。この群におけるウイルスgRNAは、チャレンジ7日後の63日目までに、全てのワクチン接種動物において検出レベル(LOD)よりも非常に低い又は低いレベルまで減少し続けた。プラセボ対照は、試験期間中、鼻腔スワブサンプル中に存在するSARS-CoV-2の中等度~高レベル(範囲2E+09~8.4E+03遺伝子コピー/mL)を有していた。
【0231】
SC-経口-経口 NHPの肺(気管支肺胞洗浄、BAL)において、gRNAも急速に減少し、幾何平均は、チャレンジのちょうど1日後、57日目にプラセボNHPと比較して、約2logのワクチン接種NHPの減少を示した(図22、パネルC及びD)。SC及び経口ブースト(SC-SC-経口)を受けた群では、鼻腔スワブサンプル中のSARS-CoV-2 gRNAも、SC-経口ワクチン接種霊長類において見られるものと同様に減少し、ウイルスgRNAは、63日目までに全てのワクチン接種動物においてLODより非常に低い又は低いレベルまで減少した(図22、パネルE及びF)。SC-SC-経口 NHPの肺では、gRNAはまた、57日目に約2log減少を示した(図22、パネルG及びH)。
【0232】
SCプライム、経口ブーストワクチン接種は、SARS-CoV-2チャレンジ後、鼻腔及び肺におけるウイルス複製188を直ちに阻害した:鼻腔スワブサンプルにおける複製ウイルスの存在を、サブゲノムRNA(sgRNA)のRT qPCRによって決定した。チャレンジの4日後の60日目までに、sgRNAは2つのSC-経口-経口霊長類についてLOD未満であり、61日目に開始して、経口ブーストのみを受けた全ての霊長類についてLOD未満であった(図23、パネルA及びB)。SC-経口-経口NHPの肺において、sgRNAも57日目に開始するプラセボと比較して減少し、63日目までに全てLOD未満であった(図23、パネルC及びD)。鼻腔における複製ウイルスの証拠も、SC-SC-経口NHPにおいて急速に減少し、2匹の霊長類において59日目までにLOD未満であり、63日目までに全ての霊長類においてLOD未満であり(図23、パネルE及びF);この群の肺において、sgRNAは、チャレンジの1日後の57日目にプラセボ対照と比較して約2log減少し、sgRNAは5匹の霊長類の4匹において63日目にLOD未満であり、5日目にLODの真上であった(図23、パネルG及びH)。鼻腔及び肺におけるウイルス負荷及び複製ウイルスの両方の急速な減少があっただけでなく、チャレンジ後にウイルスの増殖がなかったことが注目される。これは、感染時にウイルスの迅速なクリアランスをもたらす既存の液性及び細胞性免疫の存在を意味する。
【0233】
SARS-Cov-2チャレンジからのNHPの即時防御は、S及びNの両方に応答するT細胞の存在に起因する可能性があり、hAd5 S融合物 + N+ETSDワクチン、スパイク及びヌクレオカプシドによって送達される抗原に対する記憶B細胞末梢血単核細胞(PBMC)由来T細胞応答の活性化に対する迅速なウイルスクリアランスを、プライムワクチン接種前0日目、14日目(ブースト前)及び2回目の28日目のブーストの1週間後35日目にELISpotによって決定した。SC-経口-経口ワクチン接種霊長類由来のT細胞は、14日目及び35日目にS及びNペプチドの両方に応答してインターフェロン-γ(IFN-γ)を分泌した(図24、パネルA)。インターロイキン-4(IL-4)分泌は非常に低く(図24、パネルB)、IFN-γ/IL-4比によって反映されるように、T細胞応答がヘルパーT細胞1(Th1)優位であることを示した(図24、パネルC)。
【0234】
チャレンジ後期間に収集された血清について、マイクロ中和アッセイ(方法を参照されたい)を使用して、「MN50」によって反映されるSARS-CoV-2中和能力、即ち、無血清対照と比較してウイルス感染性の50%減少と相関する血清希釈を評価した。経口ブーストのみを受けたNHPについての血清の中和能力の急速な増加が、チャレンジ後2週間にわたって見られ、これは鼻腔gRNA及びsgRNA(図24、パネルE及びF、各々)並びに肺のgRNA及びsgRNA(図24、パネルG及びH、各々)の減少を反映した(図24、パネルD)。特に、プラセボ群霊長類由来の血清は、チャレンジ後の中和能力の増加を示さず(図24、パネルD及びL)、ワクチン接種群における記憶B細胞の存在及び非ワクチン接種プラセボ群におけるそのような細胞の非存在を示唆した。この仮説を確認するには、さらなる研究が必要である。
【0235】
SC-SC-経口ワクチン接種NHPについて、所見は、チャレンジ前ワクチン接種期間中の反応性T細胞(図24、パネルI~K)及びチャレンジ後期間中の中和能力(図24、パネルL)について、鼻腔及び肺におけるgRNA及びsgRNAの減少の反映を含めて、非常に類似していた(図24、パネルM~P)。
【0236】
ワクチン接種による細胞傷害性T細胞の存在(図24、パネルA~C及びI~K)は、チャレンジ後最初の24時間以内にウイルス複製のほぼ即時の減少をもたらし(図24、パネルF、H、N、及びP)、ワクチン接種されたがプラセボではないNHP由来の血清の中和能力の増加を反映する2週間にわたる継続的な減少は、抗S産生記憶B細胞の寄与を反映する(図24、パネルD及びL)。
【0237】
本研究は、アカゲザルNHPモデルにおいて、皮下プライム及び経口ブースト二重抗原hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種がSARS-CoV-2チャレンジに対して鼻腔及び肺気道の両方を保護することを実証する。ウイルスチャレンジ後の最初の日のsgRNAの減少によって証明されるような鼻腔におけるウイルス複製の阻害は顕著であり、全ての(10/10)動物においてチャレンジから7日以内に検出未満のレベルまでのウイルスの連続クリアランスであった(図22及び23);そしてアカゲザルは伝播の評価のためのモデルではないが、鼻ウイルス複製のこれらの急速な減少は、今後の研究においてこのワクチンが伝播を予防する能力の研究を奨励し、支持している。
【0238】
hAd5 S融合物 + N-ETSDワクチン接種がウイルス中和抗S抗体を誘発する能力(図21)と、S及びNの両方に応答するT細胞を誘発する能力(図23)は、特に、記憶B細胞の存在を示す可能性が高い、チャレンジ後の血清の中和能力の急速な増加を伴って見られた場合、ワクチンが、重度のSARS-CoV-2感染に対する広範な免疫を確立することを示唆する。
【0239】
細胞傷害性T細胞を生成するためのhAd5 S-融合物 + N-ETSD SCプライム、経口ブーストワクチンの可能性は、SARS-CoV-2特異的T細胞が抗体応答の非存在下でも同定されたCOVID-19回復期患者における感染からの防御においてT細胞が重要な役割を果たすことを考えると、重要な特徴である。hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種によるウイルス複製の明らかなほぼ即時の減少は、他のアデノウイルスベクター化S-のみワクチンNHP研究で報告されている所見とは対照的であり、その研究では、チャレンジ後少なくとも1日間、一部の動物でウイルス複製が継続する証拠があった。他のいくつかのNHPワクチン研究で用いられた力価と比較して、1×10 281 TCID50/mLの比較的高力価でチャレンジされた場合でさえ、研究におけるワクチン接種された動物は、評価された最も早い時点から保護されるようであった。この迅速な保護及びクリアランスは、肺において特に明白であり、ウイルス負荷及びウイルス複製の両方が、チャレンジのちょうど1日後、両方のワクチン接種群においてプラセボよりも約1~2log低かった。
【0240】
SC及び経口ブースト投与によるNHPのhAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチン接種によって付与される保護は、特に、抗体及び回復期血漿に耐性であり、現在世界中に急速に広がっている逃避変異体に照らして、このワクチンが世界中に流通するために開発される可能性を特に明らかにしている。経口hAd5 S-融合物 + N-ETSD製剤は、現在開発中の多くのCOVIDワクチンのような超低温冷凍を必要としない。地理的に離れた地域又は未開発地域への流通のためのコールドチェーンへの依存は、出荷及び保存上の課題を引き起こし、RNAベースのCOVID-19ワクチンの接近性を低下させる可能性が高い。
【0241】
熱的に安定な経口hAd5 S-融合物 + N-ETSDワクチンは、S及びNの発現のため、S抗原のみを送達する他の以前に投与されたワクチンに対する「普遍的」ブーストとして作用する可能性も有する。この使用は、コールドチェーン独立性によっても促進されるであろう。
【0242】
唾液試験
さらに企図される態様では、ワクチンを投与、モニタリング、及びアッセイするための方法及び組成物が本明細書に開示される。企図される方法は、患者においてウイルスに対する免疫を誘導すること、患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化管粘膜への送達によって患者にワクチン組成物を投与することによって、患者にワクチン組成物を投与することを含む。好ましくは、ワクチンは、SARS様コロナウイルス(SARS-CoV-2)を標的とする。
【0243】
特に、開示される方法はまた、ワクチンを投与した後のある期間に、患者から唾液のサンプルを得ることを含む。典型的には、唾液のサンプルは、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む安定化溶液中で保存される。より典型的には、安定化溶液は、0.10~2.0重量/体積%(w/v)のグルタルアルデヒド、0.10~1.0%w/vの安息香酸ナトリウム、及び/又は0.025~0.20%w/vのクエン酸を含む。さらなる実施形態は、ウイルス又はウイルスに特異的なタンパク質を標的とする抗体から選択される少なくとも1つについて唾液のサンプルを分析することを含み、サンプル唾液中の抗体の非存在下で、方法は、ワクチンのブースターを患者に投与することをさらに含む。
【0244】
さらに、安定化溶液は、100nm~1mmの平均粒径を有するアラゴナイト粒子ビーズをさらに含む。アラゴナイト粒子ビーズは、免疫グロブリン(Ig)タンパク質、抗SARS-CoV-2抗体、又はSARS-CoV-2ウイルスタンパク質に結合することができる。例示的な実施形態では、アラゴナイト粒子ビーズは、組換えACE2タンパク質又は組換えACE2αヘリックスタンパク質に結合される。
【0245】
企図される主題はまた、免疫グロブリン(Ig)タンパク質、抗SARS-CoV-2抗体タンパク質、又はSARS-CoV-2ウイルスタンパク質を結合するために製剤化されたアラゴナイト組成物を含む。アラゴナイト組成物は、100nm~1mmの平均粒径を有する複数のアラゴナイト粒子ビーズを含み、複数のアラゴナイト粒子ビーズは、免疫グロブリン(Ig)タンパク質、抗SARS-CoV-2抗体タンパク質及び/又はSARS-CoV-2ウイルスタンパク質に結合することができる部分で官能化されている。
【0246】
特定の実施形態では、複数のアラゴナイト粒子ビーズは、組換えACE2タンパク質を含む抗SARS-CoV-2に結合することができる部分で官能化される。例えば、抗SARS-CoV-2に結合可能な部分は、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有する組換えACE2タンパク質、配列番号10の組換えα-ヘリックスACE2タンパク質、又はT27F、T27W、T27Y、D30E、H34E、H34F、H34K、H34M、H34W、H34Y、D38E、D38M、D38W、Q24L、D30L、H34A及び/D355Lから選択される少なくとも1つの突然変異を有する組換えα-ヘリックスACE2タンパク質から選択され得る。
【0247】
企図される主題は、ワクチンに対する局所及び全身の両方の免疫応答を誘導するために、2つ以上の投与経路によって患者にワクチンを投与するための方法を含む。企図される主題はまた、患者サンプル(例えば、唾液、鼻腔粘膜、消化器粘膜、又は血清)中の関連抗体(例えば、抗SARS-CoV-2抗体)の存在又は非存在をアッセイするための組成物及び方法を含む。患者のサンプル中の抗体状態は、追加のワクチン用量(例えば、ブースター用量/ショット)の必要性を評価するために使用され得る。
【0248】
ワクチン中に提示される要求される分子エピトープに加えて、ワクチンの投与経路、及びワクチンの追加の(即ち、ブースター)用量を投与するためのレジメンもまた、患者の免疫応答が保護を確立するのに十分に強固であるかどうかに影響を及ぼし得る。
【0249】
SARS様コロナウイルス(SARS-CoV-2)などの新興ウイルスについて、SARS-CoV-2感染から回復した患者における免疫の持続時間(液性及び細胞媒介の両方)はまだ完全には知られておらず、さらに、ワクチンプロトコルは、様々な集団にわたってまだ試験されていない。現在のSARS-CoV-2パンデミック及びSARS-CoV-2ウイルスの高い伝播速度を考慮すると、強固なワクチン接種プロトコル及びウイルス又はウイルスに対する免疫(例えば、抗SARS-CoV-2抗体の存在)のための有効な試験が必要とされている。
【0250】
患者において免疫を誘導するための本明細書に開示される企図される方法は、少なくとも経口投与によって、好ましくは、経口投与によって及び血液供給への注射によってワクチンを投与することを含む。多くのワクチンは、筋肉内(IM)経路を介して与えられて、筋肉内の血液供給へのワクチンの直接送達を用いて免疫原性を最適化し、全身性免疫を誘導する。IM投与は、典型的には、IM注射よりも注射部位で有害反応を有する可能性が高い皮下(SC)注射よりも好ましい。
【0251】
IM注射に加えて、粘膜免疫の誘導は、病原性微生物のヒトからヒトへの伝播を阻止し、粘膜組織内でのそれらの増殖を制限するために不可欠であることが報告されている。さらに、粘膜病原体(例えば、SARSコロナウイルス)に対する防御免疫のために、粘膜恒常性を維持するための寛容のより一般的なアプローチの代わりに、粘膜組織における免疫活性化は、増強された粘膜免疫応答及びより良好な局所防御を可能にする。例えば、経鼻ワクチン接種(経鼻投与によるワクチンの送達)は、粘膜免疫及び全身免疫の両方を誘導する(例えば、Fujkuyama et al.,2012,Expert Rev Vaccines,11:367-379及びBirkhoff et al.,2009,Indian J.Pharm.Sci.,71:729-731を参照されたい)。
【0252】
患者において粘膜免疫及び全身免疫の両方を誘導するために、本開示の実施形態は、少なくとも患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化器粘膜への投与によって、患者にワクチンを提供することを含む。いくつかの実施形態では、投与経路は、血液供給への注射(例えば、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、又は皮下(SC))と一緒に、患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化管粘膜にワクチンを投与することを含む。本明細書で使用される場合、ワクチン組成物の経口投与は、経鼻注射、経鼻吸入、経口摂取、及び消化管粘膜への投与(例えば、吸入、摂取、注射)を含む。好ましくは、ワクチンを投与する経路は、筋肉内(IM)注射による投与と一緒に、消化器粘膜への送達、鼻腔注射、鼻腔吸入、経口摂取、又は経口による吸入から選択される経口投与を含む。
【0253】
特に、患者の粘膜組織における免疫を誘導するために投与されるワクチンは、SARS-CoV-2ワクチンである。例示的な実施形態では、SARS-CoV-2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、米国特許第16/880,804号明細書及び米国特許第63/016,048号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、J鎖部分も含み得るACE2-Fcハイブリッドコンストラクトを形成する、免疫グロブリンFc部分に結合された可溶性ACE2タンパク質を含む。他の例示的な実施形態では、SARS-CoV-2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、組換え可溶性ACE2タンパク質(例えば、配列番号10)の突然変異体を含み、この突然変異体は、米国特許第63/022,146号明細書(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDタンパク質ドメインに対するACE2タンパク質の結合親和性の増大を付与する少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基(例えば、置換による)を有する。別の例示的な実施形態では、SARS-CoV-2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、米国特許出願第16/883,263号明細書及び米国特許第63/009,960号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、エンドソーム標的化配列(N-ETSD)に融合されたCoV2ヌクレオカプシドタンパク質又はCoV2スパイクタンパク質を含む。追加的又は代替的に、SARS-CoV-2ワクチンは、米国特許第63/010,010号明細書に開示されているように、酵母細胞表面上にコロナウイルススパイクタンパク質を発現するように遺伝子操作された改変酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))を含み、それによって酵母提示細胞がB細胞を刺激する(例えば、液性免疫)。
【0254】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される2つ以上のワクチン組成物がSARS-CoV-2に対する免疫を誘導するために患者に投与され得る。例えば、患者は、コロナウイルススパイクタンパク質を発現する遺伝子改変酵母細胞を単一タイプのワクチンとして投与されてもよく、又は遺伝子改変酵母細胞は、本明細書に開示される1つ以上のSARS-CoV-2アデノウイルスコンストラクトと一緒に若しくは同時に投与されてもよい。
【0255】
さらなる実施形態では、本明細書に開示されるように投与されるワクチン(例えば、経口投与及び血液供給への注射によって)又はウイルスによる感染のいずれかに対する患者の免疫応答をモニタリング又は評価することができる。特に、SARS-CoV-2による感染後、又はSARコロナウイルスワクチンの投与によるSARS-CoV-2に対する接種後に、患者の呼吸器及び消化器粘膜における抗体の継続的な存在を評価するための組成物及び方法が本明細書に開示される。
【0256】
病原性感染に対するワクチン(例えば、SARS-CoV-2を標的とする)を受けた、及び/又はウイルス(例えば、SARS-CoV-2)に感染した患者からのサンプルをアッセイするために、病原体に対する抗体の存在は、多くの診断試験のいずれか1つを用いて実施され得る。いくつかの実施形態では、診断試験は、抗原の存在下での抗体の検出を可能にする細胞生存率アッセイである。抗SARS-CoV-2抗体検出のための細胞生存率アッセイを用いた診断試験は、米国特許第62/053,691号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。細胞診断アッセイは、免疫エフェクター細胞株(例えば、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞、NK-92細胞及びその誘導体など)の表面上の所与の病原体(例えば、SARS-CoV-2感染のためのACE2)の標的受容体の発現、及び代理細胞株(例えば、HEK293細胞又はSUP-B15細胞)の表面上の病原体リガンド(例えば、SARS-CoV-2感染のためのスパイクタンパク質)の発現に依存する。
【0257】
ACE2タンパク質の組換えタンパク質変異体(SARS-CoV-2スパイクタンパク質によって標的化されるヒト受容体)を使用するさらなる診断試験は、米国特許出願第16/880,804号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0258】
抗病原体抗体の存在について患者をより容易にモニタリングするために、患者からの唾液サンプルをアッセイすることは、迅速なサンプル収集、患者の参加の増加を可能にし、患者が自身のサンプルを入手し、サンプルを試験のために検査室に郵送又は輸送することを可能にし得る。しかしながら、SARS-CoV-2に対する中和抗体の存在について唾液をアッセイするためには、試験前のサンプル収集後の輸送及び保存中の分解に対して唾液中のタンパク質を安定化させる必要があり得る。
【0259】
唾液サンプルを収集したら、唾液を保存溶液に入れて、その中の成分(例えば、抗SARS CoV-2抗体又はウイルススパイクタンパク質)を安定化させる。生物学的サンプルのための保存剤は、例えば、Cunningham & al.(2018)report(“Effective Long-term Preservation of Biological Evidence,”U.S.Department of Justice grant # 2010-DN-BX-K193)及び米国特許第6,133,036号明細書に開示されている。例えば、患者の唾液サンプルのための安定化保存剤溶液は、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせのうちの任意の1つを含み得る。
【0260】
特定の実施形態では、唾液サンプルをグルタルアルデヒドの安定化保存剤溶液と混合して、0.1%(w/v)~2.0%(w/v)、例えば約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.8%(w/v)、約1.0%(w/v)、約1.1%(w/v)、約1.2%(w/v)、約1.3%(w/v)、約1.4%(w/v)、約1.5%(w/v)、約1.6%(w/v)、1.7%(w/v)、約1.8%(w/v)、又は約1.9%(w/v)の最終グルタルアルデヒド濃度を達成してもよい。
【0261】
追加的又は代替的な実施形態において、唾液サンプルは、約0.10%~約1.00%の安息香酸ナトリウム(サンプルの重量/体積)及び/又は約0.025%~約0.20%のクエン酸(サンプルの重量/体積)の安定化保存剤溶液と混合され得る。例えば、唾液サンプルは、0.10%、0.20%、0.30%、0.40%、0.50%、0.60%、0.70%、0.80%、0.90%、又は1.00%w/v安息香酸ナトリウムと混合され得る。さらなる実施形態では、唾液サンプルは、少なくとも0.5mg/mL(例えば、少なくとも0.6mg/mL、少なくとも0.7mg/mL、少なくとも0.8mg/mL、少なくとも0.9mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも2mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも3mg/mL、少なくとも3.5mg/mL、少なくとも4mg/mL、少なくとも4.5mg/mL、又はさらには5mg/mL)の安息香酸及び/又は少なくとも0.2mg/mL(例えば、少なくとも0.2mg/mL、少なくとも0.25mg/mL、少なくとも0.3mg/mL、少なくとも0.35mg/mL、少なくとも0.40mg/mL、0.50mg/mL、少なくとも0.75mg/mL、少なくとも1.0mg/mL、少なくとも1.25mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも1.75mg/mL、又はさらには2.0mg/mL)のクエン酸の安定化保存剤溶液と混合される。本明細書で使用される場合、「安息香酸」は、安息香酸塩(例えば、安息香酸ナトリウム)と交換可能であり、「クエン酸」は、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)と交換可能である。
【0262】
上述した保存剤を含む唾液サンプルは、15℃~40℃の温度で少なくとも1時間(例えば、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、又はさらには36時間)保存するのに安定である。したがって、中和抗体試験のための唾液サンプルを保存する方法であって、唾液サンプルを、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、及び/又はアジ化ナトリウムのうちの1つ以上から作製された安定化溶液と混合し、15℃~25℃で少なくとも1時間、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、又は48時間まで保存することを含む方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、唾液サンプルは、0.1%(w/v)~2.0%(w/v)のグルタルアルデヒド濃度と混合され、グルタルアルデヒド-唾液は、15℃~25℃で保存される。特定の実施形態では、グルタルアルデヒド-唾液は、本明細書に開示される濃度のクエン酸及び/又は安息香酸をさらに含み得る。
【0263】
アラゴナイト:いくつかの実施形態では、任意の抗体タンパク質又は任意の特異的抗体タンパク質を、魚卵状アラゴナイト粒子を用いて唾液サンプルから捕捉することができる。例えば、本明細書に開示されるグルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム及びクエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせの唾液保存溶液は、魚卵状アラゴナイト(炭酸カルシウム、CaCO)粒子も含むことができる。タンパク質への結合のためのアラゴナイト粒子の使用は、例えば、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されており、その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。したがって、アラゴナイト粒子は、唾液サンプル中に存在する任意の抗体を捕捉する(例えば、それに結合する)か、又は特定の抗原に対する抗体を特異的に捕捉するように修飾されているものに添加され得る。例えば、アラゴナイトは、免疫グロブリン(Ig)タンパク質に結合することができる部分で官能化され得る。好ましくは、Igタンパク質は、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンG(IgG)、又は免疫グロブリンE(IgE)タンパク質である。より好ましくは、アラゴナイトは、IgAタンパク質に結合するように官能化される。最も好ましくは、アラゴナイト粒子は、特異的抗体に結合することができる部分で官能化される。例えば、アラゴナイト粒子は、抗SARS-CoV-2抗体に特異的な部分と結合され得る。好ましくは、アラゴナイト粒子は、例えば、前出の米国特許出願第16/880,804号明細書に開示されている組換えACE2タンパク質と結合される。典型的な実施形態では、アラゴナイト粒子は、配列番号9に対して少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有する組換えヒトACE2タンパク質と結合される。
【0264】
追加的又は代替的な実施形態では、アラゴナイト粒子は、組換え可溶性ACE2タンパク質(例えば、配列番号10)に官能化(例えば、結合)される。抗SARS-CoV-2抗体又はSARS CoV-2のスパイクタンパク質のより効率的な捕捉又は結合のために、組換え可溶性ACE2を突然変異させて、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、スパイクタンパク質のRBDドメイン)に対してより高い結合親和性を有するACE2変異体を形成することができる。組換え可溶性ACE2タンパク質のこれらのACE2突然変異体は、T27F、T27W、T27Y、D30E、H34E、H34F、H34K、H34M、H34W、H34Y、D38E、D38M、D38W、Q24L、D30L、H34A、及び/又はD355Lを含む。
【0265】
本明細書で使用される場合、用語「官能化された」は、アラゴナイト粒子への部分の結合(coupling)又は結合(binding)を指し、それによって、結合された部分の任意の機能をアラゴナイト粒子に付与する。例えば、アラゴナイト粒子は、タンパク質部分で官能化され得る。アラゴナイト粒子ビーズを調製及び使用するための方法は、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、アラゴナイト組成物は、複数のアラゴナイト粒子ビーズを含む。好ましくは、複数のアラゴナイト粒子ビーズは、100nm~1mmの平均粒径を有する。
【0266】
いくつかの実施形態では、タンパク質部分はアラゴナイト粒子の天然の未処理表面に直接結合される。アラゴナイト粒子は、アラゴナイト表面を親水性にするアスパラギン酸及びグルタミン酸を含む、約2~3%のアミノ酸含有量を有する。したがって、いくつかの実施形態では、タンパク質部分は、アラゴナイト粒子の表面に直接結合され得る。
【0267】
代替的な実施形態では、結合表面を改質するために、アラゴナイト粒子表面を処理することができる。例えば、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されているように、ステアリン酸(即ち、オクタデカン酸)による処理は、疎水性表面を提供する。タンパク質負荷のために、リン酸によるアラゴナイトの処理は、ラメラ構造を形成する。反応性基をアラゴナイトのアミノ酸表面に結合するためのさらなるコンジュゲーション技術は、例えば、Bioconjugate Techniques,Third Edition,Greg T.Hermanson,Academic Press,2013開示されているように、当技術分野において公知である。
【0268】
唾液中の中和抗体の十分な力価(例えば、存在)を示さない患者に、各々のワクチン(例えば、本明細書に開示されるSARS-CoV-2ワクチン)の経口投与量を送ることができる。患者は、これらのワクチン投与量を吸入又は摂取し、次いで2週間後、上記と同じ様式で調製及び保存された別の唾液サンプルを試験施設に送って、経口ワクチン用量がその抗SARS-CoV-2抗体(例えば、IgA)力価を回復させたことを確認する。
【0269】
したがって、さらなる実施形態では、患者から唾液サンプルを収集するためのキットは、本明細書に開示される唾液保存剤溶液を有する収集容器を含む。例えば、キットは、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム及び/又はクエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、及びアジ化ナトリウムのうちのいずれか1つ又は組み合わせの溶液を含む収集容器を含む。キットはまた、輸送又は郵送のために、唾液サンプルを有する収集容器に固定するために、接着剤パッケージング及び/又は郵送供給物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットはまた、経口投与のための少なくとも1用量のワクチンを含んでもよい。
【0270】
免疫刺激
ワクチン接種に加えて、又はコロナウイルス感染、特にSARS-CoV-2である可能性が高いか又は実際に診断されている対象に対する代替治療としてさえも、1つ以上の免疫刺激性サイトカインによる免疫刺激は、COVID-19と頻繁に関連するリンパ球減少症を予防又は緩和し得る。他の免疫刺激性サイトカインの中でも、N-803が特に企図される。
【0271】
COVID-19感染は、リンパ球減少症、特にNK及びCD8 T細胞の抑制を引き起こし、重症症例及びその後の死亡は、リンパ球のこの有意な減少と関連する。証拠はまた、COVID-19感染がマクロファージ死滅及びナチュラルキラー(NK)細胞及びCD8+ T細胞の減少をもたらすことを示唆する。中国全土の552病院の検査室で確認されたCOVID-19患者1099人のデータの分析により、入院時に患者の83.2%にリンパ球減少症が認められることが明らかになった。平均して、重症疾患を有する患者は、非重症疾患を有する患者と比較して、より顕著な臨床検査異常、例えば、より低いリンパ球数を有した。同様に、別の研究グループは、ICUに入院した患者のリンパ球数中央値が、ICUケアを必要としない患者と比較して有意に低いことを示した。
【0272】
細胞レベルで、COVID-19は、NK、CD4+及びCD8+ T細胞の減少によって免疫回避を誘導するように思われる。リンパ球減少症の機構は依然として不明であるが、CD4及びCD8 T細胞の両方の急速な減少は、有害な転帰と関連し得る。SARSの最初の10日間におけるリンパ球減少及びウイルス負荷の増加は、SARSコロナウイルスによる免疫回避を示唆する。SARS感染細胞におけるインターフェロン(IFN)-γ応答の欠如は、ヒト初代骨髄由来樹状細胞及び上皮293細胞株を使用して、インビトロで報告されている。他の研究者らは、抗ウイルス性サイトカイン(TFN-α、TFN-β、TFN-γ、及びIL-12p40)の低い発現、炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子α[TNF-α]及びIL-6)の中程度のアップレギュレーション、及び炎症性サイトカイン(MIP-1a、RANTES、IPI 0、及びMCP-1)の有意なアップレギュレーションの発見に基づいて、樹状細胞(DC)におけるSARS-CoVによる免疫回避の機構を提案した。CD8+ T細胞の枯渇に加えて、不十分なT細胞多様性を介したT細胞反応性の欠如は、不十分な免疫応答に寄与し得る。これは、特に高齢者集団において起こる。
【0273】
N-803は、前臨床(マウス)及び臨床(乳癌、肺癌、及び膵臓癌)状況の両方において、広範なT細胞反応性の増加を誘導する有意な能力を実証した。T細胞多様性を活性化することにより、過去のコロナウイルス感染に対する交差反応性は、T細胞反応性のN-803増強後にCOVTD-19に対する免疫を提供し得、免疫回避を克服することが可能である。N-803は、健康なマウス及びカニクイザル、並びに膀胱癌、肺癌、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、結腸癌、乳癌及び神経膠芽腫を含む多様なマウス及びげっ歯類腫瘍モデルにおいて、NK細胞及びCD8- T細胞の増殖並びに末梢循環及びリンパ系器官の活性化を有意に促進する。マウス及び非ヒト霊長類(NHP)モデルを含む、N-803の抗ウイルス効果についてのさらなる前臨床証拠が存在する。
【0274】
初期相試験からの臨床的証拠はまた、NK細胞及びCD8+ T細胞の増殖及び活性化を示すこれらの前臨床試験を支持している。N-803は、パーフォリン及びグランザイムBを含む活性化マーカーの発現のアップレギュレーションによって示されるように、これらの免疫細胞の細胞傷害性を増加させる。N-803によってNK及びCD8+ T細胞において誘導された表現型の変化は、(抗体依存性細胞傷害性、直接的細胞傷害性、及び増強された腫瘍特異的細胞傷害性を介して)抗癌活性の増強及びインビボでの生存の延長をもたらした。
【0275】
健康な志願者において、NK細胞及びCD8+ T細胞活性化が実証されている。10μg/kg及び20μg/kgのSCの用量でN-803を投与された健康な志願者の試験では、N-803処置対象は、Ki-67染色NK及びCD8+T細胞の20倍を超える増加を示した。リンパ球減少反応の刺激におけるN-803の臨床的有効性は、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、肺癌、及び膵臓癌を有する患者において実証されている。
【0276】
したがって、前臨床インビトロ及びインビボ試験が臨床データと共に、N-803がIL-15受容体提示細胞に対してより高い親和性で結合し、リンパ球分布を増強し、半減期を延長し、エフェクターNK細胞及びCD8+記憶T細胞の増殖及び活性化を引き起こし、抗腫瘍活性をもたらすことを実証したので、N-803は、NK及びCD8 T細胞の両方を刺激するN-803と同様の様式でCOVID-19関連リンパ球減少症に対抗し、正常な健康な対象及び癌を有する患者におけるリンパ球減少症を救済するための治療選択肢として使用され得る。したがって、N-803は、COVID-19に感染した患者におけるリンパ球減少症の回復又は緩和のために、及び疾患転帰を改善するために使用され得る。例えば、感染した対象は、1日目、及び15日目(必要であれば)に腹部にN-803の皮下(SC)注射を受けることによって治療され得る。最も典型的には、N-803は10mcg/kgの投与量で液体注射可能形態で提供されるであろう。
【0277】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明し、特許請求するために使用される、成分の量、濃度、反応条件などの特性を表す数字は、いくつかの例では、「約」という用語によって修正されるものとして理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、記載された説明及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各別個の値を個々に参照する簡潔な方法としての役割を果たすことを意図している。本明細書に別段の指示がない限り、各個々の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0278】
本明細書で使用される場合、医薬組成物又は薬物を「投与する」という用語は、医薬組成物又は薬物の直接的及び間接的投与の両方を指し、医薬組成物又は薬物の直接的投与は、典型的には、医療専門家(例えば、医師、看護師など)によって行われ、間接的投与は、医薬組成物又は薬物を直接的投与(例えば、注射、注入、経口送達、局所送達などによる)のために医療専門家に提供又は利用可能にする工程を含む。状態、疾患の発症に対する感受性、又は意図される治療に対する応答を「予測する」又は「予測すること」という用語は、対象における状態の進行、改善、及び/又は持続の速度を含む、状態、感受性、及び/又は応答を予測する行為又は予測(治療又は診断ではない)をカバーすることを意図することにさらに留意するべきである。
【0279】
本明細書で記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は、明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書の特定の実施形態に関して提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に、本明細書に開示される技術をより良く明示することを意図し、さもなければ特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる言語も、特許請求される発明の実施に不可欠な、特許請求されない任意の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0280】
本明細書の説明及び以下の特許請求の範囲全体で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。また、本明細書の説明で使用される場合、「in」の意味は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「in」及び「on」を含む。また、本明細書で使用されるように、文脈が別段の指示をしない限り、用語「~に結合される」は、直接結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する)及び間接結合(少なくとも1つの追加の要素が2つの要素の間に位置する)の両方を含むことが意図される。したがって、「~に結合される」及び「~と結合される」という用語は、同義的に使用される。
【0281】
当業者には、本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明したもの以外のさらに多くの変更が可能であることが明らかであろう。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除いて、限定されるべきではない。さらに、明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈する際に、全ての用語は、文脈と矛盾しない可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む」及び「含むこと」は、非排他的な方法で要素、成分、又は工程を指すものとして解釈されるべきであり、参照された要素、成分、又は工程が明示的に参照されていない他の要素、成分、又は工程が存在し、利用され、又は組み合わされ得ることを示す。明細書又は特許請求の範囲がA、B、C...及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つに言及している場合、文章は、A+N、又はB+Nなどではなく、群からの1つの要素のみを必要とするとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
【配列表】
2023527261000001.app
【国際調査報告】