(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】マルチスペクトルイメージングCMOSセンサー
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20230621BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01L27/146 D
G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570317
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021031051
(87)【国際公開番号】W WO2021236336
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507245021
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ロチェスター
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】クルシュウィッツ, ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】カルデナス, ジェイム
【テーマコード(参考)】
2H148
4M118
【Fターム(参考)】
2H148BA01
2H148BC52
2H148BF02
2H148BG11
2H148BH02
2H148BH28
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA02
4M118GC07
4M118GC20
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 CMOSプロセスと適合性のある物質で形成されたカラーフィルターを使用するマルチピクセルセンサーであって、該フィルターは、400乃至900nm範囲における夫々の波長における中心で40nmを越えることの無いFWHMの夫々の帯域通過範囲と、シリコンウエハに関して50%以上の光透過率と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチピクセルイメージセンサーにおいて、
フロントエンドCMOSプロセスにおいて形成した複数のフォトダイードのアレイ、
前記フォトダイードの各々の上の夫々のカラーフィルターであって、前記フロントエンドCMOSプロセスと適合性のある物質で形成されているカラーフィルター、
を有しており、
前記カラーフィルターの各々が、400乃至900nmの波長範囲における中心で40nmを越えることの無い半値全幅の選択した帯域通過範囲と、シリコンウエハに関して50%以上の光透過率と、を有しており、及び
前記カラーフィルターの内の幾つかは第1帯域通過範囲を有しており、幾つかは該第1帯域通過範囲とは異なる第2帯域通過範囲を有しており、且つ幾つかは該第1及び第2帯域通過範囲とは異なる第3帯域通過範囲を有している、
マルチピクセルイメージセンサー。
【請求項2】
前記フィルターが一様な厚さの横方向に延在するアレイ内に配置されている請求項1に記載のマルチピクセルイメージセンサー。
【請求項3】
各カラーフィルターが、第1屈折率を有する第1物質を有しており、該第1物質は該第1屈折率とは異なる第2屈折率を有している物質により取り囲まれており、前記物質の結合屈折率が該第1及び第2屈折率とは異なり且つ夫々の一つ又は前記帯域通過範囲と一致する請求項2に記載のマルチピクセルイメージセンサー。
【請求項4】
前記カラーフィルターが等価指数フィルターである請求項2に記載のマルチピクセルイメージセンサー。
【請求項5】
前記カラーフィルターがマルチキャビティフィルターである請求項2に記載のマルチピクセルイメージセンサー。
【請求項6】
マルチピクセルイメージセンサーを製造する方法において、
フロントエンドCMOSプロセスで複数のフォトダイオードからなるアレイを形成し、
前記フォトダイオードの各々の上に前記フロントエンドCMOSプロセスと適合性のある物質で形成されている夫々のカラーフィルターを形成する、
ことを包含しており、
前記カラーフィルターの各々は、400乃至900nmの波長範囲の中心において40nmを越えることの無い半値全幅の選択した帯域通過範囲と、シリコンウエハに関して50%以上の光透過率と、を有しており、及び
前記カラーフィルターの幾つかは、第1帯域通過範囲を有しており、幾つかは該第1帯域通過範囲とは異なる第2帯域通過範囲を有しており、及び幾つかは該第1及び第2帯域通過範囲とは異なる第3帯域通過範囲を有している、
方法。
【請求項7】
該複数のフィルターからなるアレイを形成することが、該フィルターを一様な厚さの横方向に延在するアレイ内に配置させることを包含している請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該フィルターを形成することが、第1屈折率を有する第1物質の各フィルターであって該第1屈折率とは異なる第2屈折率を有している物質によって取り囲まれている該フィルターを形成することを包含しており、前記物質の結合屈折率は該第1及び第2屈折率とは異なり且つ夫々の一つ又は前記帯域通過範囲と一致する、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記カラーフィルターを形成することが、等価指数フィルターを形成することを包含している請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記カラーフィルターを形成することが、マルチキャビティフィルターを形成することを包含している請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許明細書は、マルチピクセルCMOSセンサーなどのイメージセンサー用カラーフィルターの分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
マルチピクセルイメージセンサーは、デジタルカメラ、LIDAR、医学的イメージング装置、及びその他の機器において広く使用されている。複数のピクセル位置からなる典型的に矩形状のアレイが情景を観察し、各ピクセル位置におけるフォトダイオード等の光検出装置の出力がその情景を電気信号へ変換させ、該電気信号は次いで該情景の電子画像へ処理される。先に開発されたCCD(電荷結合装置)画像センサーがその特性の幾つかが好適である場合には未だに使用されているが、最近は、CMOS(相補的金属酸化物半導体)イメージセンサが支配的となっている。
【0003】
カラーイメージセンサーの場合、典型的に、複数のピクセル要素からなる複数のアレイが各ピクセル位置に対して使用される。光が夫々のカラーフィルターを介して各ピクセル要素に到達し、従って、各ピクセル要素は、主に、例えば赤、緑、青などの単一のカラーに応答する。各ピクセル位置に対しての個々のピクセル要素の電気的出力は、カラーイメージに処理される。この様なセンサーの空間分解能が長年にわたって改善されて、単一のセンサー内に、数ミクロン(μm)から1ミクロン未満のピッチで、数百万個のピクセル位置を詰め込むことを実際的なものとしている。従って、個々のカラーフィルターの寸法を減少させることが必要である。この様なイメージセンサーは、背面照射型とすることが可能であり、その場合には、光がレンズとカラーフィルターとを通過した後にのみフォトダイオードに到達し、又は正面照射型とすることも可能であり、その場合には、光はフォトダイオードに到達する前に金属配線層を通過する。CMOSイメージセンサーは、典型的に、その後の処理のためにダイシングされる300mm又は200mmのウエハ上に製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,278,690号
【特許文献2】欧州特許第0,472,371号
【特許文献3】米国特許第6,602,608号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L.I.Epstein:「オプチカルフィルターのデザイン(The Design of Optical Filters)」、JOSA、42.pp。806-810 (1952)
【非特許文献2】A.Thelen:「光学的干渉コーティングのデザイン(Design of Optical Interference Coatings)」 Chapter3.1 McGraw-Hill New York (1989)
【非特許文献3】A.Thelen、M.Tilsch、A.Tikhonravov、M.Trubetskov、U.Brauneck:「光学的干渉コーティングに関するトピック会合(OIC2001):デザインコンテスト結果(Topical Meeting on Optical Interference Coatings:design contest results)」 Appl.Opt.41、pp.3022-3038(2002)
【非特許文献4】J.D.T.Kruschewitz、R.S.Berns:「高反射性ベース上の非偏光性カラーミラー(Nonpolarizing color mirrors on a high reflecting base)」 Appl.Opt.53、pp.3448-3453 (2014)
【非特許文献5】J.A.Dobrowolsk、LiLi、R.A.Kemp:「低反射率を具備する金属/誘電体透過干渉フィルター 1.デザイン(Metal/dielectric transmission interference filters with low reflectance 1. Design)」 Appl.Opt.34,pp.5673-5683 (1995)
【非特許文献6】S.A.Maier 「プラズモニクス:基本と応用、8章(Plasmonics:Fundamentals and Applications、Chapter 8)」、Springer Science and Business Media (2019)
【非特許文献7】Q.Chen及びD.R.S.Cummings、「アルミニウム膜内に三角状格子孔アレイを使用した高透過率及び低カラークロストークプラズモンカラーフィルター(High transmission and low color cross-talk plasmonic color filters using triangular-lattice hole arrays in alminum films)」、Opt.Express、18、pp.14056-14062 (2010)
【非特許文献8】J.M.Rabaey、A.P.Chandrakasan、B.Nikolic、「デジタル集積回路:デザイン展望、第2版(Digital Integrated Circuits:A Design Perspective,2nd ed.)」、Prentice-Hall Electronics and VLSI Series、Upper Sadde River、 NJ:Pearson Education、2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のピクセル要素、従って複数のカラーフィルターを、例えば、各々が4個のフィルタ、即ち1個の赤(R)と、1個の青(B)と、2個の緑(G)、からなる繰り返しアレイからなるバイエル(Bayer)フィルタのように、各ピクセル位置に対して各々4個の要素からなる繰り返しの矩形状アレイのパターンとすることが可能である。多くのその他のフィルタが既知であり、例えば、2,3例を挙げると、RGBE、RYYM、及びCYGMフィルタがある。伝統的に、この様なカラーフィルタは塗料又は染料に依存しており且つ後にイメージセンサーへ固着される別個の基板上に形成することが可能であり又はイメージセンサーの表面上に直接的にパターン形成(オンチップ)させることが可能である。
図1Aは、バイエルフィルタを具備するイメージセンサーの一部を示した斜視図である。
図1Bは、典型的な背面照射型イメージセンサーのレンズ、カラーフィルタ、フォトダイオード、金属配線及び基板の形態を例示した断面図であり、且つ
図1Cは、正面照射型イメージセンサーの同様の構成要素の形態を例示している。マルチスペクトルイメージングは、空間のみならずスペクトルイメージングも関与する変形例であり、それはピクセル位置当たり4個を越えるフォトダイオードを使用する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施例によれば、マルチピクセルイメージセンサーが、フロントエンドCMOSプロセスで形成された複数のフォトダイオードからなるアレイ、前記フォトダイオードの各々の上の夫々のカラーフィルターで各々が前記フロントエンドCMOSプロセスと適合性の或る物質から形成されているカラーフィルターを有しており、前記カラーフィルターの各々が、シリコンウエハに関し、50%以上の光透過性と400乃至900nmの波長範囲における中心で40nmを超えることのない半値全幅の選択された帯域通過範囲を有しており、且つ前記カラーフィルタ-の内の幾つかは第1帯域通過範囲を有しており、幾つかは該第1帯域通過範囲とは異なる第2帯域通過範囲を有しており、且つ幾つかは該第1及び第2帯域通過範囲とは異なる第3通過帯域範囲を有している。該センサーは以下の付加的な特徴の内の一つ又はそれ以上を包含することが可能であり、即ち、該付加的な特徴とは、該フィルターは一様な厚さの横方向に延在するアレイに配置させることが可能であること、各カラーフィルターが第1屈折率を有する第1物質とそれを取り囲んでおり該第1屈折率とは異なる第2屈折率を有している物質とを有することが可能であること、前記物質の結合屈折率は該第1及び第2屈折率とは異なり且つ夫々の一つ又は前記帯域通過範囲と一致すること、該カラーフィルターが同等の屈折率フィルター又は多空胴(マルチキャビティ)フィルターとすることが可能であることである。
【0008】
幾つかの実施例によれば、マルチピクセルイメージセンサーを製造する方法が、フロントエンドCMOSプロセスで複数のフォトダイオードからなるアレイを形成し、前記フォトダイオードの各々の上に夫々のカラーフィルターであって各々が前記フロントエンドCMOSプロセスと適合のある物質から形成されている該カラーフィルターを形成する、ことを包含しており、前記カラーフィルターの各々が、シリコンウエハに関して、50%以上の光透過性と400乃至900nmの波長範囲における中心で40nmを超えることの無い全幅半値の選択された帯域通過範囲を有しており、且つ前記カラーフィルターの内の幾つかは第1帯域通過範囲を有しており、幾つかは該第1帯域通過範囲とは異なる第2帯域通過範囲を有しており、且つ幾つかは該第1及び第2帯域通過範囲とは異なる第3帯域通過範囲を有している。該方法は、以下の特徴の内の一つ又はそれ以上を包含することが可能であり、即ち、該複数のフィルターからなるアレイを形成する該ステップが一様な厚さの横方向に延在するアレイ内に該フィルターを配置させることを包含することが可能であり、該フィルターを形成する該ステップが第1屈折率とは異なる第2屈折率を有している物質によって取り囲まれている第1屈折率を有している第1物質の各フィルターを形成することを包含することが可能であり、その場合に、前記物質の結合屈折率は該第1及び第2屈折率とは異なり且つ夫々の一つ又は前記帯域通過範囲と一致するものであり、前記カラーフィルターを形成する該ステップが同等の屈折率フィルター又は多空胴(multicavity)フィルターを形成することを包含することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)はバイエルフィルターを具備するイメージセンサーの一部の斜視図、(B)は幾つかの実施例に基づく、典型的な背面照射型イメージセンサーのレンズ、カラーフィルター、フォトダイオード、金属配線、及び基板の形態を例示している断面図、(C)は幾つかの実施例に基づく、正面照射型イメージセンサーの同様の構成部品の形態を例示している断面図。
【
図2】幾つかの実施例に基づく、カラーフィルターに対する水平、垂直、半径方向等価指数積層体を例示している概略図。
【
図3】幾つかの実施例に基づく、異なる厚さの層を具備する3領域E1フィルターに対する等価指数-波長のプロットを示したグラフ図。
【
図4】幾つかの実施例に基づく、カラーフィルター用の空胴(キャビティ)デザインを例示した概略図。
【
図5】幾つかの実施例に基づく、空胴フィルター例の性能を示したグラフ図。
【
図6】幾つかの実施例に基づく、CMOS適合性物質を使用してリバースエンジニアしたカラーフィルターにおいて有用な銀空胴(キャビティ)フィルター例を例示している概略図。
【
図7】幾つかの実施例に基づく、マルチスペクトルカラーフィルターを例示している概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、好適実施例の幾つかの例を詳細に説明する。幾つかの実施例について説明するが、本特許明細書において記載される新規な事項はいずれか一つの実施例又はここに記載される実施例のいずれかの組み合わせに制限されるものではなく、多数の代替例、修正例、及び均等例を包含するものである。更に、完全なる理解を与えるために、以下の説明においては多数の特定の詳細について記載するが、幾つかの実施例はこれらの詳細の幾つか又は全てが無しで実施することが可能である。更に、明確性のために、本書に記載される本新規事項を不必要にぼかすことが無いように、関連技術において既知である或る技術的事項については詳細な説明を割愛する。本書に記載される特定の実施例の内の一つ又は幾つかの個々の特徴は、その他の記載されている実施例の特徴又はその他の特徴と結合して使用することが可能である。更に、種々の図面中の同様の参照番号及び表示は同様の要素を表している。
【0011】
従来技術に基づいて
図1A-1Cに示されているカラーフィルター用の染料又は塗料を使用することは、光波長の十分に狭い帯域通過、所望の透過特性、及びその他の光学的パラメータ等の達成可能な光学的パラメータにおける制限等の欠点を引き起こす。この様なフィルターでの別の重要なチャレンジは、異なるカラーフィルターの一様な厚さを達成することの困難性である。更に別の問題は、この様なフィルターを形成することは典型的なCMOSチップ製造プロセスにうまく組み込まれないことである。
【0012】
本特許明細書は、塗料又は染料カラーフィルターを、改良した光学的及びその他の特性を有しており且つCMOSプロセス等の製造プロセスとより良くマッチするフィルターと置換させるべく設計された技術を記載する。この新規な技術は、(1)金属及び誘電体フィルターの等価指数、(2)多空胴(マルチキャビティ)フィルター、及び(3)逆設計モデル用フィルターを包含している。その目的とするところは、シリコンウエハに関して例えば2.5%の高い透過率を有しており、例えば400-900nmの波長範囲にわたり狭い帯域通過フィルタ(例えば、40nm未満の半値全幅)などのフィルターを作成することである。
【0013】
本特許明細書は、発明を実施するための形態の欄の最後に幾つかの文献を引用しており、以下においては、角括弧で括った数字でそれらを引用する。その各々は引用によって本明細書に取り込むこととする。
【0014】
幾つかの実施例によれば、カラーフィルターデザインは金属及び誘電体の等価指数(EI)構造を利用する。光学的干渉コーティングにおけるハーピン(Herpin)等価指数[1]は、与えられた波長において第3屈折率をシミュレートするために3層シリーズにおいて2つの異なる屈折率誘電体物質(n
pびn
qを使用することが関与する。複数の層の対称的シリーズはn
pn
qn
pはn
qn
pn
q順番とすることが可能である。内側の層又は領域に対して2個の外側層又は領域の異なる物理的厚さ及び光学的特性は、設計者が、単一の波長又は狭い波長範囲において非常に高い又は非常に低い屈折率を擬態することを可能とする。所望の波長においてユニークな屈折率を発生させるために、各々が3つの層である複数の組の対称的積層体において、より多くの層を使用することが可能である。
図2は、3つの可能な配置においての2つの異なる物質n
pびn
q使用した幾つかのEI構成を示しており、該3つの配置とは、(1)物質nqの水平中間層又は領域と物質n
p水平上部及び底部層又は領域とからなる垂直積層体、(2)物質n
p垂直中央柱とそれを取り囲んでいる物質n
q筒と更にそれを取り囲んでいる物質n
pからなる水平積層体、及び(3)物質n
pびn
q水平積層体とである。各場合において、該積層体は、例示した如くに、その上部を金属層で被覆させることが可能である。
【0015】
EI構成の非制限的例において、単純なアルミニウムプラズモン層がSiO
2に形成され、該SiO
2は、別の屈折率酸化物物質又は多分薄い金属膜によって水平方向に半分に分割されて
図2に例示した構造(水平EI積層体)[9,10]を形成する。そのベースSiO
2のEIを変化させることは、該プラズモンフィルターの性能を変化させて特定の適用例に対して適切な形態を選択することを容易化させることが可能である。該SiO
2の垂直及び半径方向に分布されたEIを同様に形成させることが可能であり、且つ該ベースSiO
2の同様の変化が該プラズモンフィルターの性能を変化させ且つ特定の適用例に対して適切な形態の選択を容易化させることが可能である。多くの製造プロセスにおいてのこのタイプのカラーフィルターの重要な利点は、EIを使用することが、該フィルターアレイを介して一定の物理的厚さを維持することが可能であるということである。EIは、全体的なカラーフィルターシステムの物理的厚さを維持しながら、屈折率における除々で且つ意義のある変化を発生させることが可能である。
【0016】
図3は、幾つかの実施例に基づく、TiO
22つの層又は領域の間にSiO
2一つの層を有する3つの物質からなるEIカラーフィルター形態の1例を示している。
図3のプロットは、200nmの等価指数を例示している。実線細線は連続的なSiO
2の屈折率を表している。各付加的な線は、200nmの全体的な物理的厚さを維持しながら、該SiO
2(n
p内に水平方向に種々の厚さのTiO
2(n
qを挿入した場合を表している。該プロットは、屈折率の組み合わせが、同じ物理的厚さを維持しながら、異なる波長においてSiO
2屈折率を繰り返すことが可能であることを表している。次式1乃至3は、これらの関係を一般化させている。
【数1】
【数2】
【数3】
尚、Mは特性マトリックスの要素を指している(Jは、層(d)の物理的厚さと屈折率(n)とによって決定されるラジアン単位での層のフェーズ厚さを表しており、Iは虚部を示しており且つp及びqは2つの物質である)。
【0017】
幾つかの実施例によれば、マルチキャビティ(多空胴)カラーフィルターが設計される。これらのフィルターに対する設計手法は、キャビティと呼ぶことが可能な厚い誘電体スペーサによって離隔された多層誘電体ミラーを形成することが関与する[3]。単一のキャビティは、80%を越える透過率を有するワイドな帯域通過フィルターを生成することが可能である。積層キャビティ又はミラー/スペーサ/ミラー/・・・・ミラーの繰り返しは、極めて狭い帯域フィルターを生成することが可能である。これらの設計は、実際上は、極めて狭い波長透過要求である場合には、数百個の層となる場合がある。キャビティの帯域幅及び透過率におけるフィルター向上特性は、プラズモンフィルター設計のためにてこ入れすることが可能であり、一方、単一のキャビティは、金属膜とシリコンウエハとの間に挟まれた、又は金属膜とニッケルなどの別の金属膜との間に挟まれた、誘電体膜として考えることが可能である。
図4はこの様なキャビティ構成を示している。
【0018】
図5は、幾つかの実施例に基づいて、各物質に対して夫々の表示された層厚において、以下の表1に示した物質の複数の層からなる積層体で形成されたマルチキャビティカラーフィルターの性能を示している。この8層構成は、シリコンウエハ上にアルミニウム及びニッケル固体金属膜を使用している。その構造は、単一プラズモンアルミニウム膜キャビティの透過率を増加させ且つ同時により低い波長透過高調波を減少させて、より飽和した赤を透過させるフィルターを発生させる。
【表1】
キャビティ構造は、紙幣に関する偽造防止構造の或る側面と類似するカラーフィルタ^及びカラーミラーとすることが可能である[4]。これらの構造は、塗料に組み込まれて紙幣上に付着される観測角度破片と対比して有色の色変化のために誘電体膜スペーサ層を取り囲む灰色吸収金属膜を使用する。これらの構造の角度感度は、誘電体スペーサ層の指数の選択で最小とさせることが可能である。反射性対応物は、高い反射性のアルミニウムベースと該誘電体スペーサを取り囲む灰色金属上部層とを有している。これらの単一キャビティ構造の限界は、ファブリーペロー(Fabry-Perot)キャビティのように、一層低い波長においての透過又は反射のいずれかの周期性をゆうしていることである。単一キャビティでのこの様な既知のフィルター又はミラーを使用してオレンジ及び赤の色を生成するために可視光範囲における一層高い波長において単一帯域通過又は反射領域を隔離することは可能でも実際的でもないと考えられている。このタイプの偽造防止構造用のピーク抑圧は、誘電体スペーサと灰色(即ち、吸収性)金属を繰り返すことによって第2キャビティを使用することが可能である[5,6]。灰色金属は、これらに限定するわけではないが、ニッケル、クロム、インコネル及び/又はプラチナ等を包含することが可能である。灰色金属の光学的特性は、実部(n)及び虚部(k)の屈折率が興味の或る波長においてほぼ等しいというものである。該第2キャビティの主要な目的は、より低い波長の透過又は反射帯域を抑圧して、一層高い波長帯域を離隔させることである。このことは、帯域通過又は反射帯域が狭く且つ高い透過率又は反射率を有する場合に現れるより低い波長の帯域を抑圧することを助長することが可能である。ピーク抑圧及び多分主要ピークの向上された出力のために該第2キャビティに対して異なる吸収性物質を使用することが可能である。
【0019】
幾つかの実施例によれば、リバースエンジニアリングを使用して、狭帯域及び高送信性銀フィルターなどの銀を使用するカラーフィルターの所望の特性を複製する[8,9]。CMOSイメージセンサーを製造するためにソニー及びサムソンを含む会社によって現在使用されているような標準のCMOSプロセス[11]と適合性のある物質のみを使用するカラーフィルターにおいては、銀はCMOSプロセスと適合性があるものではない。この様なリバースエンジニアリングは、
図2及び3に示したタイプのEI構造における誘電体物質と共にアルミニウム及びその他のCMOS適合性のある金属を使用することが関与する。
【0020】
例えば、
図6は、2層の銀を使用した多層膜のデザイン即ち構造と透過率及び反射率とを示している[7]。銀はフロントエンドCMOS処理と適合性が無いので、この様なフィルターの所望の特性は、幾つかの実施例に基づいて、CMOS適合性のある物質で再現されるか又はリバースエンジニアリングされる。
図6の右側は、所望のEIを計算することが可能であるようにどのようにしてこの11層デザイン即ち構造を分解することが可能であるかの線図である。該デザインの各部分は銀層を包含している。EIを決定するためには、多層コーティングデザインの技術に精通している者は、上述した式1乃至3について概説した特性マトリックス技術の形式を使用することが可能である。
【0021】
明確性のために、上述した説明は幾らかの詳細について記載しているが、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形及び修正を行うことが可能であることは勿論である。本書に記載したプロセス及び装置の両方を実施する上で多くの代替例が存在することは明らかである。従って、上述した実施例は単に例示的なものであって制限的なものではなく、本明細書に記載されている詳細事項に限定されるべきものではなく、それらは本発明の技術的範囲内において修正することが可能なものである。
【0022】
文献:
1.L.I.Epstein:「オプチカルフィルターのデザイン(The Design of Optical Filters)」、JOSA、42.pp。806-810 (1952)
2.A.Thelen:「光学的干渉コーティングのデザイン(Design of Optical Interference Coatings)」 Chapter3.1 McGraw-Hill New York (1989)
3.A.Thelen、M.Tilsch、A.Tikhonravov、M.Trubetskov、U.Brauneck:「光学的干渉コーティングに関するトピック会合(OIC2001):デザインコンテスト結果(Topical Meeting on Optical Interference Coatings:design contest results)」 Appl.Opt.41、pp.3022-3038(2002)
4.米国特許第5,278,690(1994)、「透明な光学的に可変な装置(Transparent Optically Variable Device)」
5.欧州特許第0,472,371B1(1998)、「ピーク抑圧を具備する光学的に可変な干渉装置(Optically variable interference device with peak suppression)」
6.J.D.T.Kruschewitz、R.S.Berns:「高反射性ベース上の非偏光性カラーミラー(Nonpolarizing color mirrors on a high reflecting base)」 Appl.Opt.53、pp.3448-3453 (2014)
7.J.A.Dobrowolsk、LiLi、R.A.Kemp:「低反射率を具備する金属/誘電体透過干渉フィルター 1.デザイン(Metal/dielectric transmission interference filters with low reflectance 1. Design)」 Appl.Opt.34,pp.5673-5683 (1995)
8.米国特許第6,602,608 B2号、「改善したバリア層構造を具備するコーティングした物質及びその製造方法(Coated article with improved barrier layer structure and method of making the same)」
9.S.A.Maier 「プラズモニクス:基本と応用、8章(Plasmonics:Fundamentals and Applications、Chapter 8)」、Springer Science and Business Media (2019)
10.Q.Chen及びD.R.S.Cummings、「アルミニウム膜内に三角状格子孔アレイを使用した高透過率及び低カラークロストークプラズモンカラーフィルター(High transmission and low color cross-talk plasmonic color filters using triangular-lattice hole arrays in alminum films)」、Opt.Express、18、pp.14056-14062 (2010)
11.J.M.Rabaey、A.P.Chandrakasan、B.Nikolic、「デジタル集積回路:デザイン展望、第2版(Digital Integrated Circuits:A Design Perspective,2nd ed.)」、Prentice-Hall Electronics and VLSI Series、Upper Sadde River、 NJ:Pearson Education、2003
【国際調査報告】