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特表2023-527291トランス基数基底成分を用いた制御量子情報処理のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】トランス基数基底成分を用いた制御量子情報処理のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20230621BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570509
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021027795
(87)【国際公開番号】W WO2021236271
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,056
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522450288
【氏名又は名称】ソーントン, ミッチェル エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソーントン, ミッチェル エー.
(57)【要約】
トランス基数量子情報処理要素のためのシステム、方法、用途、および使用が、開示される。具体的には、本明細書に開示されるような実施形態は、r>2である1つまたはそれを上回る基数r回路要素を備える、トランス基数量子回路を利用する、基数2量子演算を提供し得る。そのような量子回路の実施形態はまた、1つまたはそれを上回る基数2回路要素を含み得、1つまたはそれを上回る基数r量子回路要素の入力または出力ポートは、基数2キュービット伝送チャネルの入力および出力をサポートするために利用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス基数量子回路であって、
Chrestenson変換行列を実装する量子回路要素
を備え、
前記量子回路要素は、トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合され、2つのキュービットは、第1の基数2キュービットと、第2の基数2キュービットとを含む、
トランス基数量子回路。
【請求項2】
前記量子回路要素に結合される1つまたはそれを上回る基数2量子回路要素をさらに備え、前記トランス基数量子回路は、制御量子回路として動作するように適合される、請求項1に記載のトランス基数量子回路。
【請求項3】
前記1つまたはそれを上回る基数2量子回路要素は、アダマール変換行列を実装する基数2量子回路要素を含み、前記トランス基数量子回路は、基数2制御S量子回路要素として動作するように適合される、請求項2に記載のトランス基数量子回路。
【請求項4】
前記基数2量子要素は、前記第1のキュービットが、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素に提供される前に、前記第1のキュービットに適用される、請求項3に記載のトランス基数量子回路。
【請求項5】
前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、前記第1のキュービットに適用された後、前記第1のキュービットに適用される、請求項4に記載のトランス基数量子回路。
【請求項6】
前記1つまたはそれを上回る基数2量子回路要素は、アダマール変換行列を実装する基数2量子回路要素を含み、前記トランス基数量子回路は、基数2制御Z量子回路要素として動作するように適合される、請求項2に記載のトランス基数量子回路。
【請求項7】
前記基数2量子要素は、前記第1のキュービットが、初めて前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記Chrestenson変換行列を実装する前記量子回路要素に提供される前に、前記第1のキュービットに適用される、請求項6に記載のトランス基数量子回路。
【請求項8】
前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、初めて前記第1のキュービットに適用された後、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、2度目に前記第1のキュービットに適用される前に、前記第1のキュービットに適用される、請求項7に記載のトランス基数量子回路。
【請求項9】
前記基数2量子要素は、前記第2のキュービットが、二度目に前記トランス基数2キュービット量子回路として動作するように適合される前記Chrestenson変換行列を実装する前記量子回路要素に提供される前に、前記第2のキュービットに適用される、請求項8に記載のトランス基数量子回路。
【請求項10】
前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、二度目に前記第2のキュービットに適用された後、前記第2のキュービット後に、前記第2のキュービットに適用される、請求項9に記載のトランス基数量子回路。
【請求項11】
前記1つまたはそれを上回る基数2量子回路要素は、アダマール変換行列を実装する基数2量子回路要素を含み、前記トランス基数量子回路は、基数2制御X量子回路要素として動作するように適合される、請求項2に記載のトランス基数量子回路。
【請求項12】
前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、初めて前記第1のキュービットに適用された後、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、2度目に前記第1のキュービットに適用される前に、前記第1のキュービットに適用され、前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、初めて前記第2のキュービットに適用された後、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、二度目に前記第2のキュービットに適用される前に、前記第2のキュービットに適用される、請求項11に記載のトランス基数量子回路。
【請求項13】
前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、二度目に前記第1のキュービットに適用された後、前記第1のキュービットに適用され、前記基数2量子要素は、前記トランス基数2キュービット量子回路要素として動作するように適合される前記量子回路要素が、二度目に前記第2のキュービットに適用された後、前記第2のキュービットに適用される、請求項12に記載のトランス基数量子回路。
【請求項14】
前記Chrestenson変換行列を実装する前記量子回路要素は、フォトニクスにおいて実装される、請求項1に記載のトランス基数量子回路。
【請求項15】
前記量子回路要素は、光学4ポート方向性結合器である、請求項14に記載のトランス基数量子回路。
【請求項16】
前記量子回路要素を前記第1の基数2キュービットおよび前記第2の基数2キュービットに適用することは、前記第1の基数2キュービットを前記光学4ポート方向性結合器の第1の面または第2の面に提供し、前記第2の基数2キュービットを前記光学4ポート方向性結合器の第3の面または第4の面に提供することを含む、請求項15に記載のトランス基数量子回路。
【請求項17】
前記1つまたはそれを上回る基数2量子回路要素は、アダマール変換行列を実装する基数2量子回路要素を含み、前記トランス基数量子回路は、基数2制御S量子回路要素として動作するように適合される、請求項2に記載のトランス基数量子回路。
【請求項18】
方法であって、
光学4ポート方向性結合器の第1のポートまたは第2のポートにおいて第1の基数2キュービットを提供することと、
前記光学4ポート方向性結合器の第3のポートまたは第4のポートにおいて第2の基数2キュービットを提供することと
によって、前記光学4ポート方向性結合器をトランス基数2キュービットQIP回路要素として動作させること
を含む、方法。
【請求項19】
前記第1の基数2キュービットおよび前記第2の基数2キュービットは、前記第1のポート、第2のポート、第3のポート、または第4のポートにおいて時間整合される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
トランス基数量子回路であって、
基数2量子演算を実装する量子回路要素
を備え、
前記量子回路要素は、r>2である1つまたはそれを上回る基数r回路要素を備える、トランス基数量子回路。
【請求項21】
1つまたはそれを上回る基数2回路要素をさらに備え、前記1つまたはそれを上回る基数r量子回路要素の入力ポートまたは出力ポートは、基数2キュービット伝送チャネルの入力または出力をサポートする、請求項20に記載のトランス基数量子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照することによってその全体として本明細書に完全に組み込まれる、Mitchell A. Thorntonによる、2020年5月19日に出願され、「SYSTEMS AND METHODS FOR CONTROLLED QUANTUM INFORMATION PROCESSING OPERATION WITH TRANS-RADIX BASIS COMPONENTS」と題された、米国仮特許出願第63/027,056号の35 U.S.C. § 119(米国特許法第119条)下の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して、量子コンピューティングに関する。具体的には、本開示は、限定ではないが、量子コンピュータ(QC)を含む、専用量子情報科学デバイスまたは汎用QIPデバイスにおける使用のために好適な量子情報処理(QIP)演算の実施形態に関する。さらにより具体的には、本開示は、トランス基数量子状態を伴う演算が可能なデバイスを含む、制御された桁の演算を実装するためのシステムおよび方法の実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
大きい数の因数分解等のある算出問題は、算出を完了するために要求される時間に起因して、従来のコンピュータを使用して容易に解かれることができない。しかしながら、量子コンピュータが、非古典的なアルゴリズム方法を使用し、これらのタイプの算出問題のうちのあるものに対する効率的な解決策を提供し得ることが示されている。
【0004】
量子コンピュータにおける量子情報の基本単位は、量子ビットまたはキュービットと呼ばれる。量子コンピュータは、従来の2進数コンピュータのように、数の2進表現を使用することができる。加えて、量子システムはまた、多値論理およびデータを利用することができ、その場合では、原子量子データは、「キューディット」と称される。個々のキュービットまたはキューディットデータは、量子システムの状態によって物理的に表されることができる。しかしながら、量子システムでは、データは、任意の単一の所与の時点において可能性として考えられる状態のうちの1つを上回るものにあると見なされることができる。したがって、キュービットの場合では、データは、同一の時点でゼロおよび1の両方を表す状態にあり得る。本状態は、重ね合わせと称される。このような量子重ね合わせは、古典的な確率が考慮されるときであっても、古典的なデータ表現と根本的に異なる。量子データが観察されるときのみ、その値は、明確に定義された単一の状態に「崩壊」する。本「崩壊」は、意図的な観察または測定に起因して起こる、もしくはこれは、デコヒーレンスと称される、環境の影響に起因して起こり得る。
【0005】
したがって、古典的なコンピューティングモデルにおけるビットは、常に、明確に定義された値(例えば、0または1)を有するが、重ね合わせにおけるキュービットは、0および1を表す2つの状態の両方にある、ある同時確率を有する。量子システムの一般的状態を|ψ>によって表し、|0>および|1>が、それぞれ、値0および1に対応する量子状態を表すものとすることが通例である。量子力学は、以下によって与えられる、これらの2つの状態の重ね合わせを可能にする。
|ψ>=α|0>+β|1>
式中、αおよびβは、複素数である。この場合では、状態|0>におけるシステムを観察する確率は、αに等しく、状態|1>の確率は、βである。
【0006】
量子コンピュータは、これらのキュービットまたはキューディットを表す、もしくは実装するために、物理的粒子を利用し得る。一実施例は、電子の急回転であり、上または下急回転は、0、1、またはこれが同時に上および下の両方である状態の重ね合わせに対応することができる。電子を使用して計算を実施することは、本質的に、0および1の両方に関する演算を同時に実施し得る。同様に、量子コンピューティングに対するフォトニックアプローチでは、「0」は、所与の経路において単一の光子を観察する可能性によって表され得る一方、異なる経路において同一の光子を観察する潜在性は、「1」を表し得る。
【0007】
例えば、2つの経路を伴う干渉計を通して通過する単一の光子を考慮し、位相偏移φおよびφが、それぞれ、2つの経路に挿入される。ビームスプリッタが、光子が一方の経路または他方を進行するであろう50%の確率を与える。測定が、光子が位置する場所を判定するために行われる場合、これは、2つの経路のうちの一方においてのみ見出されるであろう。しかし、いかなるそのような測定も、行われない場合、単一の光子が、何らかの方法で位相偏移φおよびφの両方を同時に経験することができる。これは、ある意味で、いかなる測定もその位置を判定するために行われない場合、光子が両方の経路に同時に位置しなければならないことを示唆する。本効果は、単一の光子のみが所与の時点でデバイスを通して通過することを可能にされるとき、2つの経路の相互作用からもたらされる干渉パターンを観察することによって実験的に検証されることができる。当然ながら、可能性として考えられるフォトニック経路の単一の対を上回るものが、存在する場合、結果として生じるシステムは、キューディットを表すと考えられることができる。
【0008】
したがって、制御キューディット演算が、ある特定のQIP処理タスクを可能にするために要求されることが周知である。実施例として、多くの量子通信プロトコルおよびプロセスは、2つのもつれ合ったキューディットの発生を要求する。この場合では、制御キューディット演算が、もつれ発生器を備えるQIPシステムにおいてもつれ演算子としての役割を果たすために一般的に採用される。少なくともこの理由から、(例えば、ある望ましい物理的性質に関して)最適化される制御キューディット演算を実現するための効率的な方法を考案する動機が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本必要性に対処するために、とりわけ、トランス基数量子状態を伴う演算が可能なデバイスを含む、制御された桁の演算を実装するためのシステムおよび方法の実施形態が、注目される。具体的には、本明細書に開示されるような実施形態は、r>2である1つまたはそれを上回る基数r回路要素を備える、トランス基数量子回路を利用する、基数2量子演算を提供してもよい。そのような量子回路の実施形態はまた、1つまたはそれを上回る基数2回路要素を含んでもよく、1つまたはそれを上回る基数r量子回路要素の入力または出力ポートは、基数2キュービット伝送チャネルの入力および出力をサポートするために利用される。
【0010】
特に、実施形態は、トランス基数方式で基数4ChrestensonゲートCを利用してもよい。特に、実施形態は、ChrestensonゲートCとともに2つのキュービット(例えば、光子)を利用してもよい。各キュービット(例えば、光子)は、ChrestensonゲートCの2つのみの関連付けられるポートに存在してもよい。特に、第1のキュービットが、第1のキュービットが第1のポートの導波管上または第2のポートの導波管上で基底状態にある、もしくは第1のキュービットが第1のポートの導波管および第2のポートの導波管の両方の上に重畳されるように、ChrestensonゲートCの第1または第2のポートの関連付けられる導波管において提供されてもよい。同様に、第2のキュービットが、第2のキュービットが第3のポートの導波管上または第4のポートの導波管上で基底状態にある、もしくは第2のキュービットが第1のポートの導波管および第2のポートの導波管の両方の上に重畳されるように、ChrestensonゲートCの関連付けられる第3および第4のポートにおいて提供されてもよい。多くの実施形態では、それらの個別のポートにおける第1および第2のキュービットの本提示が、時間整合されることが望ましくあり得る。
【0011】
故に、基数4ChrestensonゲートCにおける第1および第2のキュービットの相互作用に基づいて、第1のキュービットは、第1のポートの導波管または第2のポートの導波管上で基底状態において出現する、もしくはChrestensonゲートCの第1および第2のポートの両方からの両方の導波管上に重畳されてもよい一方、第2のキュービットは、第3のポートからの導波管または第4のポートの導波管上で基底状態において出現する、もしくはChrestensonゲートCの第3および第4のポートの両方からの両方の導波管上に重畳されてもよい。そのようなトランス基数ChrestensonゲートCの実施形態は、そのようなトランス基数Chrestonゲートとともに利用されるキュービットの相互作用(例えば、もつれ)を達成する際に最大100%の成功率を有し得る。
【0012】
理解され得るように、そのようなトランス基数ChrestensonゲートCの実施形態(例えば、トランス基数構成におけるQIP回路要素550を利用する実施形態)は、そのようなトランス基数Chrestensonゲートとともに利用される2つのキュービットの相互作用(例えば、もつれ)を達成する際に最大100%の成功率を有し得る。故に、そのようなトランス基数ChrestensonゲートCは、少なくとも2つのキュービットに基づくあるタイプの制御された量子回路として利用され得るため、そのようなトランス基数ChrestensonゲートCは、他の(例えば、標準的な)制御された量子回路の実施形態において有用に採用されることができる。例えば、トランス基数ChrestensonゲートCの実施形態は、信頼性のある制御Sゲート量子回路の実施形態、信頼性のある制御Z量子回路の実施形態、信頼性のある制御X量子回路の実施形態を実装するために、またはより一般的には、キュービットのもつれもしくは相互作用が所望される量子回路の信頼性のある実施形態を実装するために使用されてもよい。
【0013】
また、理解されるであろうように、制御Sゲート(例えば、または制御Xゲート)は、2進ドメインにおける全ての可能性として考えられる量子演算のサブセットであってもよい。故に、所望される殆ど全ての量子回路は、本明細書に開示されるようなトランス基数ChrestensonゲートCの実施形態、制御Sゲートの実施形態、制御Sゲートまたは制御Xゲートの実施形態を使用して、信頼性のある方式で構築されてもよい。したがって、本明細書の実施形態は、より一般的に、量子回路および量子コンピューティングの信頼性に対する基礎的な変化としての役割を果たし得る。
【0014】
したがって、開示されるシステムおよび方法の実施形態はまた、Chrestenson変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数4QIP要素、ユニタリ変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数2単一キュービットQIP要素を含み、基数2制御キュービット回路要素として動作するように適合されてもよい。
【0015】
本システムおよび方法のある実施形態は、Chrestenson変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数4QIP要素、アダマール変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数2単一キュービットQIP要素を含み、基数2制御S QIP回路要素として動作するように適合されてもよい。
【0016】
本システムおよび方法の他の実施形態は、Chrestenson変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数4QIP要素、アダマール変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数2単一キュービットQIP要素を含み、基数2制御Z QIP回路要素として動作するように適合されてもよい。
【0017】
本システムおよび方法のいくつかの実施形態は、Chrestenson変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数4QIP要素、アダマール変換行列の形態における特性変換行列を伴う1つまたはそれを上回る基数2単一キュービットQIP要素を含み、基数2制御X QIP回路要素として動作するように適合されてもよい。
【0018】
特定の実施形態では、量子Chrestensonゲートは、フォトニクスを使用して実装されてもよい。
【0019】
例えば、いくつかの実施形態は、トランス基数2キュービットQIP回路要素として動作するように構成される、光学4ポート方向性結合器を備えてもよい。
【0020】
本開示のこれらおよび他の側面は、以下の説明ならびに付随の図面と併せて考慮されるとき、より深く認識および理解されるであろう。しかしながら、以下の説明が、本開示の種々の実施形態およびその多数の具体的詳細を示しながら、限定ではなく、例証として与えられることを理解されたい。多くの代用、修正、追加、および/または再配列が、その精神から逸脱することなく、本開示の範囲内で行われ得、本開示は、全てのそのような代用、修正、追加、および/または再配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に付随し、その一部を形成する図面は、本開示のある側面を描写するために含まれる。図面に図示される特徴が、必ずしも縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。本開示およびその利点のより完全な理解が、同様の参照番号が同様の特徴を示す、付随の図面と併せて検討される、以下の説明を参照することによって入手され得る。
【0022】
図1図1は、QIP回路形態において、一般化された変換行列Uを伴う基数r単一キュービット演算の一般図を図示する。
【0023】
図2図2は、QIP回路形態において、一般化された標的キュービット変換行列Uを伴う基数r制御キュービット演算の一般図を図示する。
【0024】
図3図3は、QIP回路形態において、一般化された標的キュービット変換行列Uを伴う基数2制御キュービット演算の略図を図示する。本制御キュービット演算子に関する結果として生じる全体的変換行列は、Cとして表される。
【0025】
図4図4は、QIP回路形態において、具体的標的キュービット変換行列Sを伴う基数2制御キュービット演算の略図を図示する。本制御キュービット演算子に関する結果として生じる全体的変換行列は、Cとして表される。
【0026】
図5a図5aは、QIP回路形態において、Chrestensonゲートと称され、Cとして表される、基数4単一キューディット演算の略図を図示する。
【0027】
図5b図5bは、略図の形態において、QIP回路内で使用されるときに情報搬送属性としてフォトニックホスト粒子の位置観測可能量を利用する、Chrestensonゲートと称され、Cとして表される、基数4単一キューディット演算子の量子フォトニック実施形態を図示する。
【0028】
図6図6は、QIP回路形態において、2つの基数2キュービットが単一の基数4ChrestensonゲートCに適用される、トランス基数演算の一実施形態を図示する。
【0029】
図7図7aおよび7bは、QIP回路形態において、2つの基数2キュービットが基数2および基数4ChrestensonゲートCを備えるQIPシステムに適用され、2キュービット基数2制御キュービット演算子と同等の全体的アクションをもたらす、トランス基数演算子の実施形態を図示する。
【0030】
図8a図8aは、QIP回路形態において、直列の2つの基数2制御S回路から成る、基数2制御Z回路の従来技術の実装を図示する。
【0031】
図8b図8bは、QIP回路形態において、基数2制御Z回路の従来技術の表現を図示する。
【0032】
図9図9aおよび9bは、QIP回路形態において、2つの基数2キュービットが4つの基数2および2つの基数4ChrestensonゲートCを備えるQIPシステムに適用され、Cとして表される全体的変換行列をもたらす同等の具体的標的キュービット変換行列Zを伴う2キュービット基数2制御Zキュービット演算子と同等の全体的アクションをもたらす、トランス基数演算子の実施形態を図示する。
【0033】
図10a図10aは、QIP回路形態において、2つの基数2単一キュービットアダマールゲートHおよび制御Zゲートから成る、基数2制御X回路の従来技術の実装を図示する。
【0034】
図10b図10bは、QIP回路形態において、基数2制御X回路の従来技術の表現を図示する。
【0035】
図11a図11aは、QIP回路形態において、2つの基数2キュービットが4つの基数2アダマールゲートHおよび2つの基数4ChrestensonゲートCを備えるQIPシステムに適用され、2キュービット基数2制御XキュービットQIP回路と同等の全体的アクションをもたらす、トランス基数演算子の一実施形態を図示する。
【0036】
図11b図11bは、QIP回路形態において、2つの基数2キュービットが4つの基数2アダマールゲートHおよび2つの基数4ChrestensonゲートCを備えるQIPシステムに適用され、2キュービット基数2制御XキュービットQIP回路と同等の全体的アクションをもたらす、トランス基数演算子の一実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本開示ならびにその種々の特徴および利点の詳細は、付随の図面に図示され、以下の説明に詳述される、非限定的実施形態を参照することによってより完全に解説される。周知の出発材料、処理技法、コンポーネント、および機器の説明は、不必要に本発明を詳細に不明瞭にしないように省略される。しかしながら、詳細な説明および具体的実施例が、本発明のいくつかの実施形態を示しながら、限定ではなく、例証としてのみ与えられることを理解されたい。基礎となる発明的概念の精神および/または範囲内の種々の代用、修正、追加、ならびに/もしくは再配列が、本開示から当業者に明白となるであろう。
【0038】
実施形態を詳細に議論する前に、実施形態に関連するある側面の一般的な概観を与えることが、有用であり得る。上記の議論から思い返され得るように、量子情報処理(QIP)は、データを表し、処理するために、量子力学または量子電気力学の物理現象を使用する方法およびシステムを備える。以降では、「ホスト粒子」と称される、微視的、メゾスコピック、または準粒子の観察可能な特性は、処理されるべきデータ値を表す、もしくはエンコードする。ホスト粒子の波動関数は、量子力学または電気力学の公理に従って発展する。QIPフレームワーク内で、時間または空間におけるホスト粒子の波動関数発展の規定されたセットが、算出としての役割を果たす。量子コンピュータ(QC)の一実装では、所与の明確に異なる演算のシーケンスが、QCプロトグラムとしての役割を果たし、これは、それに応じて、ホスト粒子の波動関数の量子力学的発展を経由して実行される。本QC事例では、ユーザは、QCをプログラムする行為の間に、特定の演算のシーケンスを規定し得る。1つのタイプの専用QIPデバイスでは、明確に異なる演算のシーケンスの有限のサブセットが、QIPデバイスの専用機能性を規定する。
【0039】
ホスト粒子の量子状態は、
【化1】

またはLiouville-von Neumann波動方程式によって記述される周知の動的関係に従って発展することが理解されている。具体的発展が、これらの方程式の多くの異なる可能性として考えられる解のうちの1つによって統御される。波動方程式の具体的解は、ハミルトン演算子の複素指数をもたらし、その形態である、ユニタリ行列の形態である。特定のハミルトン演算子は、したがって、特定の明確に異なるQIP演算を規定する。数学的には、ユニタリ演算子は、波動関数の初期条件に適用され、ユニタリ演算子が依存する特定のハミルトンに起因して発展した形態をもたらす。
【0040】
準粒子は、集積マイクロ波電子回路の形態において実装され得る。ホスト準粒子は、回路に印加されるエネルギーのマイクロ波パルスの印加を経由して初期状態から異なる状態まで時間において発展することができる。その周波数、位相、および振幅の観点からの回路の形態ならびにパルスの形態は、QIP演算としての役割を果たす特定のユニタリ行列を規定する。異なるユニタリ行列の集合は、それによって、それに応じて、準粒子または集積マイクロ波電子回路に適用され得る情報処理演算の集合を表す。
【0041】
QIPのフレームワーク内で、ホスト粒子の集合は、量子桁または「キューディット」の対応する集合を抽象的に表す。キューディットの集合が、ある事前確立された秩序によって特徴付けられ、したがって、該集合がキューディットレジスタと見なされることを可能にする場合が典型的である。キューディットレジスタのコンテンツは、複合値を表す。該複合値は、したがって、QIPシステムの全体的な物理的量子状態または波動関数の抽象化されたビューである。キューディットレジスタ値は、QIPシステム量子状態が演算の適用に起因して発展するときに変化し得る。したがって、具体的QIPシステム算出が、キューディットレジスタ値を変換し得る具体的ユニタリ行列によって規定される。
【0042】
QIPシステムは、通常、システム底数または基数と称される、事前指定され、固定された、非ゼロの整数値rに基づいて実装され、該基数rは、各ホスト粒子の波動関数を表す量子状態ベクトルまたは密度行列の次元を制約する。量子力学または量子電気力学的観測可能量の固有の離散的性質は、各ホスト粒子の波動関数が、それぞれ、その次元がrまたはr×rを上回るベクトルもしくは行列を伴う表現を要求することを可能にされないように制御される。QIPの一実装は、2つの最も低い量子状態のみを占有し得るホスト粒子の観測可能量を利用し、したがって、2進法をもたらし、各ホスト粒子は、量子ビットまたは「キュービット」を表す。
【0043】
その観測可能量がr次元のみに限定される、n個の明確に異なるホスト粒子を使用して実装されるQIPシステムに関して、該QIPシステムの演算は、次元rn×rnを伴う具体的ユニタリ行列によって抽象的に表されることができる。代替として、該QIPシステムは、n個の個々の明確に異なる基数rキューディットのレジスタを備えるものと見なされることができる。単一のキューディットが、r次元ベクトルまたは純粋状態として抽象的に表される、該単一の基数rキューディットに対して実施される演算は、次いで、対応するr×rユニタリ行列によって表されるであろう。演算の適用は、単一のキューディットを、該r×rユニタリ行列と対応するr次元ベクトルによって表されるキューディットの初期状態との直積として表現可能である新しい状態に発展させる。
【0044】
当業者によって理解され得るように、任意の恣意的な基数r純粋量子状態|Ψ〉が、確率振幅
【化2】

によってスケーリングされる算出基底ベクトルのセットの線形組み合わせとして数学的に表されることができ、式中、
【化3】

は、以下として複素値のフィールドを表す。
【化4】

式中、|Ψ〉は、純粋状態である。加えて周知であるように、純粋状態の確率振幅も、同様に以下を満たさなければならない。
【化5】
【0045】
純粋状態の本表現に基づいて、算出基底ベクトルのセットは、k=0~k=r-1に関して|k〉として表されるr個の正規直交ベクトルのセットであり、各基底ベクトルの対応する確率振幅は、i≠kに関してa=0およびa=1である。したがって、算出基底状態は、セット{|0〉,|1〉,…,|r-2〉,|r-1〉}として定義される。
【0046】
同様に、純粋量子状態|Ψ〉に適用されるユニタリ発展行列Uは、r個の明確に異なる算出基底状態のうちの1つと同等である初期状態に対応する全ての可能性として考えられる発展した状態を表す、列ベクトルのセットを備えるものと見なされることができる。Uの左端の列ベクトルは、|0〉の発展した状態に対応し、右端の列ベクトルは、基底ベクトルの発展した状態|r-1〉に対応する。
【0047】
キューディット発展の数学的モデルの観点から、ユニタリ行列として表される演算は、レジスタにおいて1つまたはそれを上回るキューディット値を変化させることができる。「制御キューディット演算」として公知の1つの形態の演算は、レジスタにおける2つのキューディットの初期または現在の状態に依存する。ここでは、これらの演算が、2進数(または基数2)キュービット事例からキューディット事例に拡張され得、したがって、より一般的には、これらの量子オペランドが、キュービット(具体的には、基数2エンコードされ、本特定の事例のために使用される)またはキューディット(より一般的な事例を表すために使用され得る)のいずれかと称され得ることに留意されたい。したがって、本特定の事例では、キュービットに対する演算が、具体的に言及されるが、本明細書に例証される本および後続演算もまた全て、キューディットに適用されるようにより一般的に拡張されることができる。
【0048】
ここでは、n=2および対応するユニタリ変換行列は、次元r×rを有する。これらの2つのキュービットのうちの第1のものとは、「制御キュービット」として指定され、2つのキュービットのうちの第2のものは、「標的キュービット」として指定される。制御キュービット演算が、標的キュービットを、制御キュービットの値または現在の状態に応じて、条件付きで発展させる。より具体的には、制御キュービット演算は、2キュービット演算のセットを指し、第1の、または制御キュービットは、第2の標的キュービットに適用される変換の具体的な明確に異なる形態を示し、標的キュービット変換の明確に異なる形態は、第1の、または制御キュービットの状態に基づいて異なる。したがって、2キュービット制御キュービット演算は、標的キュービットの条件付き発展をもたらす。制御キュービット演算の完全な一群およびQIPシステムを合成する際のそれらの用途が、下記に参照される[TS+:08]に説明されている。
【0049】
より一般的には、制御キューディット演算が、制御キューディットによって満たされるとき、単一のキューディット変換演算子を標的キューディットに適用させる、ここでは「アクティブ化値」と称される、特定の基底ベクトル値を規定することによって定義される。標的キューディットは、制御キューディットが規定されたアクティブ化値基準を満たすときのみ、規定された単一のキューディット変換を受ける。制御キューディットが、アクティブ化値基準を満たさない場合、標的キューディットは、変化しないままであり、その発展は、単位行列演算子のものと同等である。制御キューディットは、可能性として、量子重ね合わせの状態にあり得るため、該制御キューディットは、同様に、その対応する波動関数のアクティブ化値成分に関して非ゼロの確率振幅を有することができる。この場合では、制御キューディット演算子は、適切な条件下でもつれゲートとしての役割を果たし、標的および制御キューディットの複合量子状態を量子もつれの条件に発展させる結果をもたらすことができる[ST:19]。
【0050】
制御キュービット演算の実施形態は、第1の制御キュービットおよび第2の明確に異なる標的キュービットを伴い、制御キュービットの状態は、2つの明確に異なる単一キュービット変換のうちのどちらが標的キュービットに適用されるかを統御する。「制御S」演算と称される、制御キュービット演算の一特定の実施形態では、制御キュービットは、標的キュービットに、その2つの波動関数成分間で90度の相対的位相偏移を受けさせるか、または変化しないままにさせるかのいずれかである。本実施形態では、制御Sユニタリ行列は、次元2×2=4×4である。標的キュービットは、2×2ユニタリ行列Sによって表される単一キュービット発展を受けるか、または代替として、標的キュービットは、制御キュービットの状態および規定されたアクティブ化基底値に応じて、変化しないままであるかのいずれかである。制御キュービット演算子が、制御キュービットに関して|1〉のアクティブ化値を仮定し、|1〉が、算出基底セットのメンバーである場合が通常である。r>2であるQIPシステムに関して、制御キューディットが、特定の制御キューディット演算に関してセット{|0〉,|1〉,…,|r-2〉,|r-1〉}からの規定されたアクティブ化基底値を有し、{|0〉,|1〉,…,|r-2〉,|r-1〉}が、r次元ベクトル空間における算出基底の一般化であることが慣例である。
【0051】
したがって、制御キューディット演算が、ある特定のQIP処理タスクを可能にするために要求される。実施例として、多くの量子通信プロトコルおよびプロセスは、2つのもつれ合ったキューディットの発生を要求する。この場合では、制御キューディット演算が、もつれ発生器を備えるQIPシステムにおいてもつれ演算子としての役割を果たすために一般的に採用される。この理由から、とりわけ、ある望ましい物理的性質に関して最適化される制御キューディット演算を実現するための効率的な方法を考案する動機が、存在する。
【0052】
より詳細に説明するために、多くの場合では、現在のQIP回路(本明細書では単に量子回路とも称される)は、制御演算子(例えば、キューディットのもつれに基づく、またはそれを実施し得る量子回路)を有し得る。しかしながら、多くの事例では、これらの制御演算は、実際には、時間のわずかな割合だけ(例えば、25%または同等物)そのようなキューディットをもつれさせる(または別様にそのようなキューディットが相互作用することを可能にする)ように機能し得る。そのような失敗は、例えば、少なくとも部分的に、そのようなキューディットのために使用される情報担体からもたらされ得る。例えば、光子が、情報担体として利用されるとき、光子を相互作用させることは、極めて困難であり得る。したがって、そのようなもつれが失敗する演算(例えば、時間の75%)では、量子演算全体が、失敗し得る。そのような高い失敗率(概して、もつれ演算および結果として生じる量子回路の失敗の両方)は、効率的なQIPに対する大規模な障害として作用する。したがって、キューディットのもつれおよびそのようなもつれ演算に依存する制御キューディット演算を含む、より高い成功率を有するそのような制御キューディット演算を実現する有意な動機が、存在する。
【0053】
いくつかの付加的文脈もまた、有用であることが証明され得る。次いで、最初に図1に目を向けると、QIP回路100の形態における単一キューディット演算が、描写される。QIP回路は、QIP回路ゲート120に起因するその発展に先立つキューディットを表す、水平線110とともに描写される。左から右への水平線の進行は、時間または空間におけるキューディットの発展を示し、キューディット110は、線110の進行に沿って一定の状態を留保する。QIPゲート120は、キューディットを表す水平線と交差し、キューディットに適用され、これを新しい状態に発展させる量子状態発展を表す。さらに、ボックス110に注釈を付ける記号Uは、キューディット発展を数学的にモデル化する特定の行列演算子を表し、したがって、変換行列としての発展の具体的形態を提供する。添字rは、波動関数および変換を表すベクトルならびに行列の基数または次元を表す。QIP回路100は、これがQIPゲート120に起因して発展し、線130の進行に沿って一定の発展した状態に留まった後のキューディットを表す、水平線130とともに描写される。
【0054】
数学的には、基数rキューディットは、典型的には、次元rの列ベクトルまたはケットの形態における純粋状態波動関数として表されるか、もしくは代替として、量子状態は、r×r密度行列として表されることができるかのいずれかである。キューディット表現のこれらの2つの代替形態は、それぞれ、|Ψ〉およびρとして表される。純粋状態に関して、これらの2つの形態の量子状態表現の間の関係は、ρ=|Ψ〉〈Ψ|である。より一般的には、量子状態が、kメンバーアンサンブル{p,|Ψri〉}から成る混合状態であり、pが、状態|Ψri〉が混合状態ρにおいて存在する客観的確率を表すとき、これは、以下として形成される密度行列として表される。
【化6】
【0055】
QIPゲート120に注釈を付ける行列演算子Uは、同様に、純粋状態|Ψ〉と乗算されると、発展した状態をもたらす、r×r変換行列として表される。物理的実装の観点から、基数rは、通常、波動関数が所与のQIPシステム実装に関して限定される、より下位のr個の離散的量子準位を表す。
【0056】
これらの数学的モデルを使用して、r×rユニタリ行列Uによって記述される演算子に関する単一基数rキューディットの時間発展は、以下として計算される、
【化7】

または、密度行列表現の観点から、以下として計算される。
【化8】
【0057】
純粋状態波動関数が、列ベクトルまたは密度行列のいずれかを用いて記述されることができるが、列ベクトル定式化が、一般性を損なわずに本明細書に利用されるものとする。
【0058】
これらの単一キューディット時間発展内で、時間tは、Uによって表される演算子が適用される前のキューディットの状態を表し、時間tは、キューディットがUに対して発展した後の時間を表す。例えば、時間tは、線110上のキューディットの状態を表し、時間tは、QIPゲート120の適用後の線130上のキューディットの状態を表す。一般に、ユニタリ変換行列U=[uijr×rは、次元r×rであり、成分
【化9】

を有し、
【化10】

は、複素数のフィールドを表す。
【0059】
以下の純粋状態ケット、
【化11】

および以下として規定される一般的演算子Uとして表されるr=3キューディットの代表的例証として、
【化12】

|Ψ〉の結果として生じる時間発展は、以下として計算される。
【化13】
【0060】
図2は、QIP回路200の形態における制御キューディット演算を描写する。QIP回路200は、任意のQIPゲートに起因するそれらの発展に先立つ別個かつ明確に異なるキューディットを表す、水平線210および220とともに描写される。左から右への水平線210および220の進行は、時間または空間におけるキューディットの発展を示す。垂直記号230は、演算子の存在を示す。図2では、単一の2キューディット演算子が、垂直線および「U」と標識化される接続されたQIPゲート250として描写される。最上位キューディット線210および垂直線と交差する、値mで注釈を付けられる円240の存在は、最上位キューディット210が制御キューディットであることを示す。円240に注釈を付ける値mは、アクティブ化基底値を|m〉として示す。最下位キューディット220および垂直線と交差する、「U」と標識化されるQIPゲート250は、最下位キューディット220が標的キューディットであることを示す。線260および270は、それらがQIP回路ゲート230に起因して発展した後のキューディットを表す。線260は、QIP回路ゲート230の適用に先立ってその形態から変化しないままである、制御キューディットの状態を表し、したがって、線210のものと同じ状態を有する。線270は、これがQIP回路ゲート230に起因して発展した後の標的キューディット(例えば、線220)の状態を表す。
【0061】
QIPゲート250に注釈を付ける記号Uは、制御キューディット210の現在の状態が、円240内の注釈mによって規定されるような|m〉のアクティブ化基底値を満たすときの標的キューディット220進展を記述する演算子を表す。制御キュービット210が、円240内の注釈mによって規定されるようなアクティブ化基底値基準を満たさないとき、標的キューディット220は、変化しないままであり、QIPゲート250によって実装されるU演算子によって影響を受けず、単一のキューディット演算子がr×r単位行列Iであるかのように発展する。
【0062】
図2の線210、220、260、および270によって表されるキューディットはまた、発展するr次元量子状態ケットまたはr×r密度行列として数学的に表されてもよい。線210および260は、QIP回路ゲート230に起因する発展の前後の制御キューディットとしての役割を果たす同一のホスト粒子を表す。同様に、線220および270は、QIP回路ゲート230に起因する発展の前後の標的キューディットとしての役割を果たす同一のホスト粒子を表す。左から右への線210、220、260、および270の進行は、時間または空間におけるキューディットの発展を示すため、線210、220、260、および270上の各点は、対応する量子状態ベクトルまたは密度行列の時間もしくは空間的発展の明確に異なる事例を表すものとして解釈されることができる。QIPゲート250によって実装される、Uとして表される単一キューディット発展演算子は、その一般的形態が以下である、キューディット210のアクティブ化値に応じて、キューディット220に条件付きで適用されるr×rユニタリ行列として数学的に表される。
【化14】
【0063】
QIP回路ゲート230によって実装される、制御キューディットQIP演算のより一般的な表現は、全体的な2キューディットユニタリ行列を、Cとして表されるr×rユニタリ行列として表すことである。Cの形態は、0が、その成分が全てゼロ値であるr×rヌル行列であり、Drkが、制御キューディット演算子行列の対角線に沿ったr×r単一キューディット演算子部分行列である、部分行列の象限において表されることができる。k=mであるとき、対角線部分行列Drmは、標的キューディット量子状態を新しい明確に異なる状態に発展させる単一キューディット演算子行列Uと同等である。そうでなければ、k≠mであるとき、各対角線r×r部分行列は、r×r密度行列Iと同等である。部分行列の象限の形態においてCを表すことは、以下である。
【化15】
【0064】
図3は、QIP回路300の形態における制御キュービット演算の一般的事例を描写する。QIP回路300は、QIP回路要素350に起因する発展に先立つ、およびその後の別個かつ明確に異なるキュービットを表す、水平線310、320、360、および370とともに描写される。左から右への水平線310および320の進行は、時間または空間におけるキュービットの発展を示す。QIP回路要素330は、QIP演算を実装する。図3では、単一の2キュービット演算子が、垂直線および「U」で注釈を付けられるQIPゲート350として描写される。最上位キュービット線310およびQIP回路要素330の垂直線と交差する黒色ドット340の存在は、最上位キュービット310が制御キュービットであることを示す。二進数、すなわち、r=2の基底を利用するQIPシステムに関して慣例であるように、制御キュービットのアクティブ化基底値は、|1〉であると仮定される。線320および370として示される最下位キュービットならびにQIP回路要素330のQIPゲート350と交差する、「U」で注釈を付けられるQIPゲート350は、線320および370によって表される最下位キュービットが標的キュービットであることを示す。したがって、標的キュービット310が、アクティブ化値|1〉を満たすとき、QIPゲート350によって実装される単一キュービット演算子Uは、標的キュービットの発展を線370として記述する。制御キュービット310が、|1〉のアクティブ化基底値を満たさないとき、標的キュービット(線320、370)は、2×2恒等作用素Iに対して発展し、線370によって表されるその量子状態は、線320によって表されるようなものと同じままである。
【0065】
制御キュービットQIP回路300の演算は、以下である4×4演算子Cの適用として数学的に記述されることができる。
【化16】
【0066】
図4は、「制御位相ゲート」または「制御sゲート」として公知である、QIP回路400の形態における制御キュービット演算の具体的事例を描写する。QIP回路400は、キュービットとしての役割を果たす2つの別個かつ明確に異なるホスト粒子を表す、水平線410、420、460、および470とともに描写される。再び、左から右への水平線410、420、460、および470の進行は、時間または空間におけるキュービットの発展を示す。線410および460は、QIP回路要素430に起因する発展の前後の制御キューディットとしての役割を果たす同一のホスト粒子を表す。同様に、線420および470は、QIP回路要素430に起因する発展の前後の標的キューディットとしての役割を果たす同一のホスト粒子を表す。QIP回路要素430は、「位相ゲート」と称される。図4では、単一の2キュービット演算子が、垂直線および「S」で注釈を付けられる接続されたゲート450として描写される。最上位キュービット線410および演算子要素430の垂直線と交差する黒色ドット440の存在は、最上位キュービット410が制御キュービットであることを示す。二進数、すなわち、r=2の基底を利用するQIPシステムに関して慣例であるように、制御キュービットのアクティブ化基底値は、|1〉であると仮定される。線420および470によって表される、最下位キュービットと交差する、「S」で注釈を付けられるQIPゲート450は、最下位キュービットが標的キュービットであることを示す。
【0067】
したがって、制御キュービット410が、アクティブ化値|1〉を満たすとき、ゲート450によって実装され、Sで注釈を付けられる単一キュービット演算子は、線470によって表される異なる状態をもたらす位相ゲート変換行列Sに従って、標的キュービット420の発展を記述する。制御キュービット410が、|1〉のアクティブ化基底値を満たさないとき、標的キュービットは、2×2恒等作用素Iに対して発展し、線470によって表されるようなその量子状態は、線420によって表されるその元の状態から変化しないままである。
【0068】
制御キュービットQIP回路400の演算は、以下であるCとして表される4×4行列演算子の適用として数学的に記述されることができる。
【化17】
【0069】
2キュービット変換行列Cに現れる値iは、i=-1を満たす虚数値である。単一キュービット位相演算子Sの作用は、制御キュービット410がアクティブ化基底基準を満たすとき、90度の相対的位相偏移を、標的キュービット420の算出基底成分の間に生じさせる。
【0070】
図5aは、「基数4Chrestensonゲート」として公知である、QIP回路500の形態における単一基数4キューディット演算の具体的事例を描写する。QIP回路500は、ゲート520によって実装されるQIP回路演算子に起因する発展に先立つ、およびその後の単一基数4キューディットを表す、水平線510および530とともに描写される。左から右への水平線510および530の進行は、時間または空間における基数4キュービットの発展を示す。ゲート520は、ゲート520の内側に注釈を付けられるようなCによって表される変換行列による具体的様式でキューディットを発展させる、単一キューディット演算子を表す。基数4Chrestenson演算子Cは、以下として数学的に記述される。
【化18】
【0071】
一般に、Chrestenson変換行列は、r>2である任意の基数に関して定式化されることができる。r>1である基数r Chrestenson変換行列Cに関する一般的形態は、r×rユニタリ行列であり、各行列成分は、以下として表される、(ωとして表される範囲[0,r-1]内の各整数乗に累乗されたr個の明確に異なるr番目の1の累乗根のうちの1つである。
【化19】
【0072】
基数r Chrestenson演算子Cの明示的な行列形態は、以下として数学的に記述される。
【化20】
【0073】
ゲート520によって実装されるC単一キューディット演算子は、一般的な基数r ChrestensonゲートCの特殊な事例であり、整数乗に累乗された明確に異なるr番目の1の累乗根に関する式におけるパラメータpおよびkは、それぞれ、セット{0,1,2,3}からの値を有するように制限される。Chrestenson変換行列が、二進数事例、すなわち、r=2に関して定式化されるとき、以下として与えられる、アダマール変換行列Hと称される、当業者に周知である演算子が、もたらされる。
【化21】
【0074】
単一キューディットChrestenson演算子は、アーベル群にわたる離散的フーリエ変換として導出される変換行列によって特徴付けられる。アーベル群にわたる離散的フーリエ変換の一般的理論が、[Ch:55][Vi:47]を参照して説明される。QIPシステムにおけるChrestenson変換の多くの有用な用途が、[ZK:02][ST:19]に実証されている。
【0075】
基数4Chrestenson変換の物理的実装の実施例が、[SL+:18a][SL+:18b]に説明されている。これらの物理的実装は、情報搬送観測可能量としての役割を果たす、導波管の指定された群間または自由空間内のそれらの空間位置とともに、光子をホスト粒子として利用する。それらの超伝導キュービット等の他の実装も、可能性として考えられ、本明細書に想定される。
【0076】
量子フォトニック集積回路(QPIC)におけるC実装は、単一の光子のための伝送媒体として4つの導波管を利用する。4つの導波管はそれぞれ、4つの算出基底ベクトル{|0〉,|1〉,|2〉,|3〉}のうちの1つを表し、「基底導波管」と称される。本物理的実装を図5aに関連させることは、次いで、水平線510および530を、4つの基底導波管の群間のある時間または空間位置における光子波動関数と同等にするであろう。同様に、そのようなシステムにおける光子等のホスト粒子が、等しい重ね合わせの状態にあるとき、その可能性として考えられる対応する完全に重畳された波動関数のうちの1つは、以下として表される。
【化22】
【0077】
完全な重ね合わせの状態にある間の光子の場所の観測可能量に関する投影測定が、QIP回路500における線510および530として表される、4つの基底導波管のうちのいずれか1つにおける光子の存在を測定する確率が、確率振幅の二乗の大きさと同等であることを示す。各確率振幅は、
【化23】

であるため、4つの基底導波管のうちのいずれか1つにおける光子の存在を測定する確率は、1/4である。
【0078】
変換行列によって特徴付けられるQIP回路要素が、最初に基底状態におけるキューディットを、キューディット状態ベクトルにおける各成分の二乗の大きさが同一の値を有する、完全な重ね合わせの状態に発展させるために採用されることができる。実施例として、キューディット510がQIP回路500aにおいて|Ψ〉=|0〉として初期化されることを考慮する。キューディット510が、Cゲート520に起因して量子状態発展を受けるとき、これは、以下として線520によって表される完全な重ね合わせの状態に発展する。
【化24】
【0079】
特性変換行列Cを伴うQIP回路要素の一実施例が、[SL+:18a]に説明されている。本デバイスは、元々、古典的に動作する光学回路における用途のための4ポート結合器として考案された[MT+:04]。デバイスに関する元の用途は、フォトニクス集積回路(PIC)における光学的光子フィルタをサポートする要素としての役割を果たすことであり、後に、量子フォトニック領域において動作するときに基数4Chrestensonゲートとして機能することが判定された。実施例は、集積回路における自由空間チャネルならびに導波管チャネルにわたって動作するように加工された。
【0080】
そのようなQIP回路要素の一実施例の幾何学形状は、それぞれ、「北(N)」560、「東(E)」570、「南(S)」580、および「西(W)」590として注釈を付けられる、要素550の各側または面上の双方向ポート560、570、580、および590を描写する要素550として図5bに描写される。本例示的要素550が、QPICにおける要素520として利用されるとき、導波管が、双方向ポート560、570、580、および590に結合される。例えば、4つの導波管の本群は、図5aに描写されるような線510および530としての役割を果たしてもよく、その状態が線510によって表される520への入射光子は、双方向ポート560、570、580、および590への導波管に対応する。同様に、C演算を受けた後に要素550から出現する光子は、要素550から離れて、4つの導波管560、570、580、および590の同一の群に沿って、双方向ポート560、570、580、および590に伝搬する(例えば、線530を用いてQIP回路500において表されるように)。言い換えると、単一の光子が、単一のポート560、570、580、および590への単一の導波管上にあってもよく、全てのポート560、570、580、および590への全ての導波管上に重畳されてもよい。光子の反射は、次いで、ポート560、570、580、および590からのそれらの導波管上の要素550から放出されることができる。したがって、基数4ChrestensonゲートC(例えば、QIP回路要素550を使用して実装され得る)が、単一基数4キューディット演算を実装するために利用されることができる。
【0081】
上記に議論されるように、多くの場合では、QIPは、制御演算の使用を要求し得、これは、ひいては、キューディットのもつれまたは相互作用に依拠し得る。しかしながら、多くの事例では、これらの制御演算は、実際には、時間のわずかな割合だけ(例えば、25%または同等物)そのようなキューディットをもつれさせる(または別様にそのようなキューディットの相互作用に依拠する)ように機能し得る。そのような失敗は、例えば、少なくとも部分的に、そのようなキューディットのために使用される情報担体からもたらされ得る。例えば、光子が、情報担体として利用されるとき、光子を相互作用させることは、極めて困難であり得る。したがって、そのようなもつれが失敗する演算(例えば、時間の75%)では、量子演算全体が、失敗し得る。そのような高い失敗率を示すQIP回路が、Knill et alによる「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」 Nature Vol. 409, 2001年1月4日およびOkamoto et alによる「Realization of a Knill-Laflamme-Milburn C-NOT gate - a photonic quantum circuit combining effective optical nonlinearities」 [arXiv:1006.4743v1], 2010年6月24日(両方とも、本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されている。そのような高い失敗率(概して、もつれ演算および結果として生じる量子回路の失敗の両方)は、効率的なQIPに対する大規模な障害として作用する。したがって、キューディットのもつれおよびそのようなもつれ演算に依存する制御キューディット演算を含む、より高い成功率を有するそのような制御キューディット演算を実現する有意な動機が、存在する。
【0082】
それらの所望に対処するために、他の目的の中でもとりわけ、本明細書に開示されるような実施形態は、r>2である1つまたはそれを上回る基数r回路要素を備える、トランス基数量子回路を利用する、基数2量子演算を提供してもよい。そのような量子回路の実施形態はまた、1つまたはそれを上回る基数2回路要素を含んでもよく、1つまたはそれを上回る基数r量子回路要素の入力または出力ポートは、基数2キュービット伝送チャネルの入力および出力をサポートするために利用される。
【0083】
具体的には、実施形態は、トランス基数方式で基数4ChrestensonゲートCを利用してもよい。例えば、実施形態は、ChrestensonゲートCとともに2つのキューディット(例えば、光子)を利用してもよい。各キューディット(例えば、光子)は、ChrestensonゲートCの2つのみの関連付けられるポートに存在してもよい。特に、第1のキューディットが、第1のキューディットが第1のポートの導波管上または第2のポートの導波管上で基底状態にある、もしくは第1のキューディットが第1のポートの導波管および第2のポートの導波管の両方の上に重畳されるように、ChrestensonゲートCの第1または第2のポートの関連付けられる導波管において提供されてもよい。同様に、第2のキューディットが、第2のキューディットが第3のポートの導波管上または第4のポートの導波管上で基底状態にある、もしくは第2のキューディットが第1のポートの導波管および第2のポートの導波管の両方の上に重畳されるように、ChrestensonゲートCの関連付けられる第3および第4のポートにおいて提供されてもよい。多くの実施形態では、それらの個別のポートにおける第1および第2のキューディットの本提示が、時間整合されることが望ましくあり得る。
【0084】
故に、基数4ChrestensonゲートCにおける第1および第2のキューディットの相互作用に基づいて、第1のキューディットは、第1のポートの導波管または第2のポートの導波管上で基底状態において出現する、もしくはChrestensonゲートCの第1および第2のポートの両方からの両方の導波管上に重畳されてもよい一方、第2のキューディットは、第3のポートからの導波管または第4のポートの導波管上で基底状態において出現する、もしくはChrestensonゲートCの第3および第4のポートの両方からの両方の導波管上に重畳されてもよい。そのようなトランス基数ChrestensonゲートCの実施形態は、そのようなトランス基数Chrestonゲートとともに利用されるキューディットの相互作用(例えば、もつれ)を達成する際に最大100%の成功率を有し得る。
【0085】
次いで、図6を参照すると、トランス基数方式で動作するように適合される基数4ChrestensonゲートCの一実施形態が、QIP回路600において描写される。水平線610、620、640、および650は、基数2キュービットを表す一方、Cゲート630は、基数4単一キューディット演算子である(例えば、それに応じて「C」と注釈を付けられる)。QIPシステムにおけるC演算子のある物理的実装は、C演算子への入力が、位置観測可能量が情報搬送属性としての役割を果たす、図5bに関して説明される量子フォトニック実装等のその算出基底成分に物理的に分離されることを可能にする。類似する様式では、位置観測可能量とともに採用されるフォトニックキュービットは、QIPシステム内の「二重レール」構成として公知の実装において基底状態{|0〉,|1〉}を表す2つの導波管を利用するであろう。基数4キューディットをサポートし、基底状態{|0〉,|1〉,|2〉,|3〉}を表す4つの導波管が、2つの導波管の2つのセットにパーティション化されるとき、トランス基数構成が、達成されることができ、第1の2つの導波管は、第1のキュービットのための媒体としての役割を果たし、導波管の第2のセットは、第2のキュービットのための媒体としての役割を果たす。
【0086】
多くの物理的実装が、そのようなゲートのトランス基数演算におけるChrestensonゲートC 630として利用されてもよいが、一実施形態では、トランス基数モードにおいて動作するC回路は、ChrestensonゲートC 630として図5bに描写されるような要素550の物理的実装を利用してもよい。そのような実施形態では、560および570として図5bに図示される「北(N)」および「東(E)」として注釈を付けられるポートに結合される導波管は、ChrestensoゲートC 630上で最上位キュービット610および640として表される第1のキュービットのための2つの基底導波管としての役割を果たす(合同して「NE」と称される)。同様に、最下位キュービット620および650は、ChrestensonゲートC 630上で場所「南(S)」および「西(W)」における導波管580および590を通して要素550に結合される2つの導波管において伝送される(合同して「SW」と称される)。
【0087】
言い換えると、一実施形態によると、1つキュービット610が、第1のキューディットが第1のポート(例えば、560、北)の導波管上または第2のポート(例えば、570、東)の導波管上で基底状態にある、もしくは第1のキューディットが第1のポートの導波管および第2のポートの導波管の両方(例えば、560、北および570、東の両方)の上に重畳されるように、ChrestensonゲートC(例えば、550)の第1のポート(例えば、560、北)または第2のポート(例えば、570、東)の関連付けられる導波管において提供されてもよい。同様に、第2のキューディットが、第2のキューディットが第3のポート(例えば、580、南)の導波管上または第4のポート(例えば、590、西)の導波管上で基底状態にある、もしくは第2のキューディットが第1のポートの導波管および第2のポートの導波管の両方(例えば、580、南および590、西の両方)の上に重畳されるように、ChrestensonゲートC(例えば、550)の関連付けられる第3のポート(例えば、580、南)および第4のポート(例えば、590、西)において提供されてもよい。再び、多くの実施形態は、それらの個別のポートにおける第1および第2のキューディットの本提示が、時間整合されることが望ましくあり得る。
【0088】
ゲート630が、2つのキュービットを伴う(例えば、単一のキューディットの代わりに)トランス基数演算子として使用されるとき、これは、2キュービット演算子として機能する。2つのキュービットのための媒体としての役割を果たす導波管の各対(例えば、第1の対は北および東(NE)であり、第2の対は南および西(SW)である)は、2進法{|0〉,|1〉}を表す。C演算子630がキュービット610および620の対に適用される前のトランス基数QIP回路600の全体的量子状態は、キュービットのテンソル積として計算される。実施例として、以下である、|Ψ〉として表される初期状態を有する最上位キュービット610および|Φ〉として表される最下位キュービット620を考慮する。
【化25】
【0089】
次いで、全体的状態が、テンソル積
【化26】

として計算され、以下をもたらす。
【化27】
【0090】
基底ベクトル値が、それらが基数2または2進値であり、10進値ではないことを示すために、添字「2」を利用することに留意されたい。
【0091】
キュービット610および620の複合状態が、本一般的形態において記述されると、C演算子630が、適用され、以下としてのキュービット640および650の対の発展した状態をもたらすことができる。
【化28】
【0092】
2つのキュービット610および620が、算出基底状態の全ての可能性として考えれる組み合わせ|ΨΦ〉={|00〉,|01〉,|10〉,|11〉}において初期化されると、4つの異なる発展が、C演算子630が以下のように適用されるときにキュービット640および650において起こる。
【化29】
【0093】
これらの計算は、2つの基数2キュービット610および620が、それらの個別の複合基底状態のうちの1つに初期化されるとき、C演算子630が、基数2キュービット|ΨΦ〉640および650の対とともに形成される複合状態の完全な基数4重ね合わせを発生させるように動作することを示す。一般に、より上位の基数のQIP回路のトランス基数演算は、その複合状態が該より上位の基数の全体的量子状態を表す、より下位の基数の情報搬送キューディットの使用を可能にする。
【0094】
理解され得るように、そのようなトランス基数ChrestensonゲートCの実施形態(例えば、トランス基数構成におけるQIP回路要素550を利用する実施形態)は、そのようなトランス基数Chrestensonゲートとともに利用される2つのキューディットの相互作用(例えば、もつれ)を達成する際に最大100%の成功率を有し得る。故に、そのようなトランス基数ChrestensonゲートCは、少なくとも2つのキューディットに基づくあるタイプの制御された量子回路として利用され得るため、そのようなトランス基数ChrestensonゲートCは、他の(例えば、標準的な)制御された量子回路の実施形態において有用に採用されることができる。例えば、トランス基数ChrestensonゲートCの実施形態は、信頼性のある制御Sゲート量子回路の実施形態、信頼性のある制御Z量子回路の実施形態、信頼性のある制御X量子回路の実施形態を実装するために、またはより一般的には、キュービットのもつれもしくは相互作用が所望される量子回路の信頼性のある実施形態を実装するために使用されてもよい。
【0095】
また、理解されるであろうように、制御Sゲート(例えば、または制御Xゲート)は、2進ドメインにおける全ての可能性として考えられる量子演算のサブセットであってもよい。故に、所望される殆ど全ての量子回路は、本明細書に開示されるようなトランス基数ChrestensonゲートCの実施形態、制御Sゲートの実施形態、制御Sゲートまたは制御Xゲートの実施形態を使用して、信頼性のある方式で構築されてもよい。したがって、本明細書の実施形態は、より一般的に、量子回路および量子コンピューティングの信頼性に対する基礎的な変化としての役割を果たし得る。
【0096】
トランス基数ChrestensonゲートCを利用する制御Sゲートの第1の実施形態を議論すると、図4に関する上記の議論から、制御Sゲート(例えば、単一キュービット位相演算子S)が、制御キュービットがアクティブ化基底基準を満たすとき、90度の相対的位相偏移を、標的キュービットの算出基底成分の間に生じさせることが思い返されるであろう。そのような制御Sゲートは、トランス基数ChrestensonゲートCを使用して確実に実装されてもよい。
【0097】
次いで、図7aに目を向けると、制御Sゲートを実装するためのトランス基数QIP回路700の一実施形態が、描写される。量子回路700は、それぞれ、線710aおよび720aとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットに対して動作する。加えて、QIP回路700は、線710aおよび720aの交換として描写される、交換またはスワップ演算(例えば、要素)730を備える。スワップ演算730は、これが記号的にリネーミング演算を表すため、物理的実装において要求されない場合があるが、しかしながら、これは、非可換テンソル積がQIP回路の数学的分析の間に計算されるとき、左端オペランドとして最上位キュービットを利用する数学的モデル化の慣例を保全するためにQIP回路図700に含まれる。
【0098】
QIP回路700はまた、Hとして注釈を付けられる基数2アダマールゲート740aと、Cとして注釈を付けられるトランス基数ChrestensonゲートC 750a(例えば、議論されるようなトランス基数Chrestensonゲートとして動作するChrestensonゲートC)と、Hとして注釈を付けられる別の基数2アダマールゲート760aとを備える。
【0099】
ここでは、TSWAP 730を通して通過した後、線710a上の基数2キュービット|Ψ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 750aの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 750の南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。線720a上の基数2キュービット|Φ〉は、TSWAP 730を通して通過した後、アダマールゲート740aに提供され、アダマールゲート740aから、トランス基数ChrestensonゲートC 750aの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 750aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 750aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート760aに提供される。
【0100】
QIP回路700の全体的伝達特性は、TCSとして表され、以下としての回路700における演算子の直積として計算されることができる。
【化30】
【0101】
式中、各項は、{H,H,C}ゲートの伝達特性に対応し、TSWAPは、単純にキュービットリネーミング演算として実際には物理的に実装され得る、スワップ演算730を表す。前述で言及されるように、アダマール演算子は、r=2を伴う基数r Chrestenson演算の2進数基底事例である。TSWAP伝達行列は、以下である。
【化31】
【0102】
したがって、QIP回路700の全体的変換行列TCSは、以下として明示的に算出されることができる。
【化32】
【0103】
トランス基数QIP回路700の全体的伝達行列が、制御S QIP回路400を記述する全体的伝達行列と同じであることに留意されたい。TCS=Cであるため、トランス基数QIP回路700が、QIP回路400と同等であり、2キュービット基数2制御S演算子を実現することが明白である。
【0104】
図7bは、制御Sゲートを実装するためのトランス基数QIP回路702の別の実施形態を描写する。量子回路702は、それぞれ、線710bおよび720bとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットに対して動作する。QIP回路702はまた、Hとして注釈を付けられる基数2アダマールゲート740bと、Cとして注釈を付けられるトランス基数ChrestensonゲートC 750b(例えば、議論されるようなトランス基数Chrestensonゲートとして動作するChrestensonゲートC)と、Hとして注釈を付けられる別の基数2アダマールゲート760bとを備える。
【0105】
ここでは、線710b上の基数2キュービット|Ψ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 750bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 750bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。線720b上の基数2キュービット|Φ〉は、アダマールゲート740bに提供され、アダマールゲート740bから、トランス基数ChrestensonゲートC 750bの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 750bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 750bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート760bに提供される。
【0106】
したがって、QIP回路702の全体的変換行列TCSは、以下として明示的に算出されることができる。
【化33】
【0107】
再び、トランス基数QIP回路702の全体的伝達行列が、制御S QIP回路400を記述する全体的伝達行列と同じであることに留意されたい。TCS=Cであるため、トランス基数QIP回路702が、QIP回路400と同等であり、2キュービット基数2制御S演算子を実現することが明白である。
【0108】
当技術分野で公知であるように、制御S演算子を利用して、いくつかの他の制御キュービット演算子が、構築されてもよい。例えば、図8aは、それぞれ、線810aおよび820aとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットから成る従来技術のQIP回路800aの高レベル図を描写する。加えて、QIP回路800aは、830aおよび840aと標識化される2つの制御Sゲートから成る。QIP回路800aに関する全体的伝達行列は、特性変換行列Cを伴う図8bに回路800bとして描写される単一基数2制御Z QIP回路のものと同等である。基数2QIP制御Z回路800bを特徴付ける変換行列Cは、以下である。
【化34】
【0109】
QIP回路800aに関する全体的変換行列は、以下の基数2制御Z変換行列と同等であるように示される。
【化35】
【0110】
QIP回路800aに関する全体的変換行列は、Cと同等であるため、基数2QIP回路800aが、QIP回路800bと同等であり、2キュービット基数2制御Z演算子を実現することが明白である。
【0111】
言い換えると、制御Z演算子は、2つの制御S演算子を連鎖させることによって取得されてもよい。故に、本明細書の実施形態は、信頼性のある制御S回路の実施形態を使用して、信頼性のある制御Z量子回路を達成してもよい。したがって、制御Z演算を実装するためのトランス基数量子回路900の実施形態を描写する、図9aが、参照される。トランス基数QIP回路900は、それぞれ、線910aおよび920aとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットに対して動作するように適合される。加えて、QIP回路900は、ボックス930a、950a、960a、および980aによって示されるような4つの単一基数2アダマールゲートHから成る。QIP回路900はまた、ボックス940aおよび970aによって示されるようなトランス基数モードにおいて動作する2つの基数4ChrestensonゲートCを備える。
【0112】
ここでは、TSWAP 912を通して通過した後、線910a上の基数2キュービット|Ψ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。線920a上の基数2キュービット|Φ〉は、TSWAP 912を通して通過した後、アダマールゲート930aに提供され、アダマールゲート930aから、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート950aに提供される。
【0113】
SWAP 914を通して通過した後、線910a上の基数2キュービット|Ψ〉は、アダマールゲート960aに提供され、アダマールゲート960aから、トランス基数ChrestensonゲートC 970aの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 970aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供されてもよい。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 970aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート980aに提供される。同様に、線920a上の基数2キュービット|Φ〉は、TSWAP 914を通して通過した後、トランス基数ChrestensonゲートC 970aの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 970aの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。
【0114】
トランス基数QIP回路900を通したそれらの伝搬に起因する線910aおよび920a上のキュービットの全体的発展は、全体的変換行列TCZを計算することによって検証されるような特性行列Cを伴う基数2制御Zゲート800bと同等である。QIP回路900の実施形態が、カスケードにおけるQIP回路700の実施形態の2つの事例を備え、したがって、TCZ=TCSCSであり、以下として計算されることに留意されたい。
【化36】
【0115】
CZ=Cであるため、トランス基数QIP回路900の実施形態が、QIP回路800bと同等であり、基数2制御Z演算子を実現することが明白であろう。
【0116】
図9bは、制御zゲートを実装するためのトランス基数QIP回路902の別の実施形態を描写する。トランス基数QIP回路902は、それぞれ、線910bおよび920bとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットに対して動作するように適合される。加えて、QIP回路902は、ボックス930b、950b、960b、および980bによって示されるような4つの単一基数2アダマールゲートHから成る。QIP回路902はまた、ボックス940bおよび970bによって示されるようなトランス基数モードにおいて動作する2つの基数4ChrestensonゲートCを備える。
【0117】
ここでは、線910b上の基数2キュービット|Ψ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 940bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)からの導波管は、アダマールゲート960bに提供される。線910b上の基数2キュービット|Ψ〉は、アダマールゲート960bからトランス基数ChrestensonゲートC 970bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 970bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に進む。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 970bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート980bに提供される。
【0118】
線920b上の基数2キュービット|Φ〉は、アダマールゲート930bに提供され、アダマールゲート930bから、トランス基数ChrestensonゲートC 940bの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 940aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート950bに提供される。線920b上の基数2キュービット|Φ〉は、アダマールゲート950bからトランス基数ChrestensonゲートC 970bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 970bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に進む。
【0119】
トランス基数QIP回路902を通したそれらの伝搬に起因する線910bおよび920b上のキュービットの全体的発展は、全体的変換行列TCZを計算することによって検証されるような特性行列Cを伴う基数2制御Zゲート800bと同等である。QIP回路902の実施形態が、カスケードにおけるQIP回路702の実施形態の2つの事例を備え、したがって、TCZ=TCSCSであり、以下として計算されることに留意されたい。
【化37】
【0120】
CZ=Cであるため、トランス基数QIP回路902の実施形態が、QIP回路800bと同等であり、基数2制御Z演算子を実現することが明白であろう。
【0121】
再び、当技術分野で公知であるように、制御Sまたは制御Z演算子を利用して、他の制御キュービット演算子が、構築されてもよい。例えば、図10aは、それぞれ、線1010aおよび1020aとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットから成る従来技術のQIP回路1000aを描写する。加えて、QIP回路1000aは、1030aと標識化される単一の制御Zゲートと、2つの単一キュービット基数2アダマールゲート1040aおよび1050aとから成る。QIP回路1000aに関する全体的伝達行列は、特性変換行列Cを伴う回路1000bとして描写される単一基数2制御X QIP回路のものと同等である。基数2QIP制御X回路1000bを特徴付ける変換行列Cは、以下である。
【化38】
【0122】
QIP回路1000aに関する全体的変換行列は、以下の基数2制御X変換行列と同等であるように示される。
【化39】
【0123】
CX=Cであるため、基数2QIP回路1000aが、QIP回路1000bと同等であり、2キュービット基数2制御X演算子を実現することが明白である。
【0124】
言い換えると、制御X演算子は、制御Z演算子を利用して取得されてもよい。加えて、上記に議論されるように、制御X演算子は、連鎖された制御S演算子を使用して取得されてもよい。故に、本明細書の実施形態は、議論されるような信頼性のある制御Sまたは信頼性のある制御Z回路の実施形態を使用して、信頼性のある制御X量子回路を達成してもよい。
【0125】
次いで、図11aに目を向けると、トランス基数QIP回路1100aの一実施形態は、それぞれ、線1110aおよび1120aとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットから成る。加えて、QIP回路1100aは、ボックス1150a、1170a、1192a、および1194aによって示されるような4つの単一基数2アダマールゲートHから成る。QIP回路1100aはまた、ボックス1140aおよび1180aによって示されるようなトランス基数モードにおいて動作する2つの基数4ChrestensonゲートCを備える。QIP回路1100aはまた、2つのスワップ演算TSWAP 1140aおよび1160aを備える。スワップ演算1140aおよび1160aは、単純に、全体的QIP回路変換行列TCXを分析する際の数学的便宜のために存在し、実際の物理的実装を示さない。
【0126】
ここでは、TSWAP 1130を通して通過した後、線1110a上の基数2キュービット|Ψ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 1140aの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140aの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140aの南(S)ポートおよび西(W)ポート)からの導波管は、TSWAP 1160を通して、アダマールゲート1170aに提供され、アダマールゲート1170aから、トランス基数ChrestensonゲートC 1180aの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)から、線1110a上の基数2キュービット|Ψ〉は、アダマールゲート1192aに提供されてもよい。
【0127】
線1120a上の基数2キュービット|Φ〉は、TSWAP 1130を通して通過した後、トランス基数ChrestensonゲートC 1140aの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140aの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート1150aに提供され、アダマールゲート1150aから、TSWAP 1160を通して、トランス基数ChrestensonゲートC 1180aの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180aの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供される。これらの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180aの南(S)ポートおよび西(W)ポート)から、線1120a上の基数2キュービット|Φ〉は、アダマールゲート1194aに提供されてもよい。
【0128】
トランス基数QIP回路1100aを通したそれらの伝搬に起因するキュービット1110aおよび1120aの全体的発展は、全体的変換行列TCXを計算することによって検証されるような特性行列Cを伴う基数2制御Xゲート1000bと同等である。トランス基数QIP回路1100aに関する全体的変換行列は、以下である。
【化40】
【0129】
CX=Cであるため、トランス基数QIP回路1100aが、QIP回路1000bと同等であり、基数2制御X演算子を実現することが明白である。
【0130】
図11bは、それぞれ、線1110bおよび1120bとして表され、|Ψ〉および|Φ〉として表される、入力における2つの基数2キュービットから成るトランス基数QIP回路1102の実施形態を描写する。加えて、QIP回路1100bは、ボックス1150b、1170b、1192b、および1194bによって示されるような4つの単一基数2アダマールゲートHから成る。QIP回路1100bはまた、ボックス1140bおよび1180bによって示されるようなトランス基数モードにおいて動作する2つの基数4ChrestensonゲートCを備える。トランス基数Chrestensonゲート1140bは、本デバイスの最上部部分において「SW」として表されるポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)ならびに底部における「NE」として表されるもの(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)とともに示される。
【0131】
本実施形態では、線1110b上の基数2キュービット|Ψ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供されてもよい。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)からの導波管は、アダマールゲート1170bに提供され、アダマールゲート1170bから、トランス基数ChrestensonゲートC 1180bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)から、線1110b上の基数2キュービット|Ψ〉は、アダマールゲート1192bに提供されてもよい。
【0132】
線1120b上の基数2キュービット|Φ〉は、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの他の2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)に提供される。これらのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1140bの北(N)ポートおよび東(E)ポート)からの導波管は、アダマールゲート1150bに提供され、アダマールゲート1150bから、トランス基数ChrestensonゲートC 1180bの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)に提供される。これらの2つのポート(例えば、トランス基数ChrestensonゲートC 1180bの南(S)ポートおよび西(W)ポート)から、線1120b上の基数2キュービット|Φ〉は、アダマールゲート1194bに提供されてもよい。
【0133】
回路1102の配列は、QIP回路1100のスワップ演算が除去されることを可能にし、したがって、QIP回路1102をQIP回路1100と構造的に類似させる。QIP回路1100において示されるスワップは、物理的実現に影響を及ぼさず、テンソル積を計算するときにQIP回路図における最上位キュービットが左端の演算子であることを決定付ける数学的分析の慣例と一貫したままであるためにのみ含まれる。しかしながら、本数学的慣例は、物理的実装に影響を及ぼさず、したがって、トランス基数QIP回路1102はまた、非制御ゲートとしても公知である、基数2制御X演算を実装する。
【0134】
本明細書に説明されるような実施形態は、下記の説明を参照することによって理解され得る。これらの説明が、特定の実施形態を説明し、それにおいて使用される任意の言語(例えば、「~しなければならない」、「~すべきである」、「~を要求する」等)が、それらの実施形態に関してのみ利用され、他の実施形態に対するいかなる制限、要件、または限定を課すものとしていかようにもとられるべきではないことを理解されたい。
【0135】
次いで、概して、本発明は、具体的実施形態を参照して説明された。しかしながら、当業者は、種々の修正および変更が、本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解する。故に、本明細書の説明は、制限的意味ではなく、例証的意味において見なされるものであり、全てのそのような修正は、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0136】
本発明は、その具体的実施形態に関して説明されたが、これらの実施形態は、単に例証的であり、本発明の制限ではない。本発明の例証される実施形態の本明細書の説明は、網羅的である、または本発明を本明細書に開示される精密な形態に限定することを意図していない(特に、任意の特定の実施形態、特徴、または機能の包含は、本発明の範囲をそのような実施形態、特徴、または機能に限定することを意図していない)。むしろ、説明は、本発明を任意の特に説明される実施形態、特徴、または機能に限定することなく、本発明を理解するための文脈を当業者に提供するために、例証的実施形態、特徴、および機能を説明することを意図している。本発明の具体的実施形態およびそれに関する実施例が、例証的目的のためにのみ本明細書に説明されるが、当業者が認識および理解するであろうように、種々の同等の修正が、本発明の精神および範囲内で可能性として考えられる。示されるように、これらの修正は、本発明の例証される実施形態の前述の説明に照らして本明細書に行われ得、本発明の精神および範囲内に含まれるものである。
【0137】
本明細書全体を通した「一実施形態(one embodiment)」、「ある実施形態(an embodiment)」、または「具体的実施形態(a specific embodiment)」、「具体的実装(a specific implementation)」、もしくは類似する専門用語の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれ、必ずしも全ての実施形態に存在するわけではない場合があることを意味する。したがって、本明細書全体を通した種々の箇所における語句「一実施形態では(in one embodiment)」、「ある実施形態では(in an embodiment)」、または「具体的実施形態では(in a specific embodiment)」、もしくは類似する専門用語の個別の表出は、必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。さらに、任意の特定の実施形態の特定の特徴、構造、または特性は、1つまたはそれを上回る他の実施形態と任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。本明細書に説明および例証される実施形態の他の変形例ならびに修正が、本明細書の教示に照らして可能性として考えられ、本発明の精神および範囲の一部と見なされるものであることを理解されたい。
【0138】
説明では、コンポーネントまたは方法の実施例等の多数の具体的詳細が、本発明の実施形態の徹底的な理解を提供するために提供される。しかしながら、当業者は、ある実施形態が、具体的詳細のうちの1つまたはそれを上回るものを伴わずに、もしくは他の装置、システム、アセンブリ、方法、コンポーネント、材料、部分、または同等物とともに実践されることが可能であり得ることを認識するであろう。他の事例では、周知の構造、コンポーネント、システム、材料、または動作は、本発明の実施形態の側面を不明瞭にすることを回避するために、具体的に詳細に示されない、または説明されない。本発明は、特定の実施形態を使用することによって例証され得るが、これは、任意の特定の実施形態への本発明の限定ではなく、そのように行わず、当業者は、付加的実施形態が、容易に理解可能であり、本発明の一部であることを認識するであろう。
【0139】
さらに、本明細書に使用されるような用語「または」は、概して、別様に示されない限り、「および/または」を意味することを意図している。本明細書に使用されるように、「a」または「an」(および先行詞が「a」または「an」であるときに「the」)によって先行される用語は、そのような用語の単数形および複数形の両方を含む(すなわち、言及「a」または「an」は、単数形のみもしくは複数形のみを明確に示す)。また、本明細書の説明に使用されるように、「~の中」の意味は、文脈が明確に別様に決定付けない限り、「~の中」および「~の上」を含む。
参考文献
【0140】
以下の参考文献は、本明細書に描写される実施形態の理解に対して有用であり得、あらゆる目的のために、参照することによってその全体として本明細書に完全に組み込まれる。
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
【国際調査報告】