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特表2023-527295カーボンナノチューブを用いた非混和性ポリマーの相溶化
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  • 特表-カーボンナノチューブを用いた非混和性ポリマーの相溶化 図1
  • 特表-カーボンナノチューブを用いた非混和性ポリマーの相溶化 図2
  • 特表-カーボンナノチューブを用いた非混和性ポリマーの相溶化 図3
  • 特表-カーボンナノチューブを用いた非混和性ポリマーの相溶化 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブを用いた非混和性ポリマーの相溶化
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20230621BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20230621BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230621BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L67/03
C08L23/04
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570583
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021032700
(87)【国際公開番号】W WO2021236490
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/026,390
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521257466
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハート,アシュレイ
(72)【発明者】
【氏名】ゼイラ,アイタン
(72)【発明者】
【氏名】ロリンズ,ジェフ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AA012
4J002AA031
4J002AA032
4J002BB03X
4J002BB05X
4J002CF06W
4J002DA016
4J002FA036
4J002FD016
4J002GL00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】 多様な、互いに非混和性のポリマーどうしに対して添加することができ、安定的で、均一な、しかも非常に効率的で、良好な機械的特性を有するポリマーブレンドを生成することができる、新たな相溶化剤を提供する。
【解決手段】 本開示は、互いに非混和性の少なくとも2つのポリマーと、相溶化剤として絡まったカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブパルプと、を含むポリマーブレンドを提供し、また、その調製方法も提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの互いに非混和性のポリマーと、以下の特徴:(i)約10~100nmの直径;(ii)約0.1~10mmの長さ;(iii)約0.3~1.9g/cmの密度;(iv)少なくとも約250,000のアスペクト比;(v)約1.8~7%の破損歪;及び(vi)約100~300m/gの表面積のうちの1つ以上を有することを特徴とする絡まったカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブパルプとを含む、ポリマーブレンド。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが、官能化されていない、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、官能化されている、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブパルプが、前記非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%の量で存在している、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブパルプが、前記非混和性のポリマーの前記総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%の量で存在している、請求項4に記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
第1の非混和性のポリマー及び第2の非混和性のポリマーは、ポリエチレン及びポリエステル、ポリスチレン及びポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン及びポリエチレン、エチレン酢酸ビニル及びポリ塩化ビニル、無水マレイン酸グラフト化ポリ塩化ビニル及びエチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及びポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート及びポリ塩化ビニル、スチレンアクリロニトリル及びポリカーボネート、ポリカーボネート及びポリカプロラクタム、ポリカーボネート及びポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレン、エチレン酢酸ビニル及びポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー及びポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル、並びにポリスチレン及びポリ塩化ビニル、から選択される、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
前記第1の非混和性のポリマーは、前記非混和性のポリマーの前記総重量に基づいて、約10%~90重量%の量で存在し、前記第2の非混和性のポリマーは、約90%~10重量%の量で存在している、請求項6に記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
前記ポリマーブレンド中の前記非混和性のポリマーの総量が、前記ポリマーブレンドの前記総重量に基づいて、約5重量%~約99.9重量%である、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項9】
界面活性剤、導電性フィラー、耐衝撃性改良剤、抗酸化剤、造核剤、カップリング剤、UV吸収剤、UV安定化剤、色素、染料、補強フィラー、スリップ剤、可塑化剤、加工助剤、潤滑剤、粘度抑制剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、エクステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、難燃性フィラー、ブースター、触媒、煙抑制剤、離型剤、非導電性フィラーのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項10】
ポリマーブレンドを形成する方法であって、前記方法が:カーボンナノチューブパルプ
を得ることと;カーボンナノチューブパルプの第1の部分を、第1の非混和性のポリマー内に分散させて、第1のブレンドを形成することと;第2の非混和性のポリマーを、前記カーボンナノチューブパルプの第2の部分内に分散させて、第2のブレンドを形成することと;前記第1のブレンドと前記第2のブレンドとを混合して、前記ポリマーブレンドを形成することと、を含み、
前記カーボンナノチューブパルプが、以下の特徴:(i)約10~100nmの直径;(ii)約0.1~10mmの長さ;(iii)約0.7~1.9g/cmの密度;(iv)少なくとも約250,000のアスペクト比;(v)約1.8~7%の破損歪;及び(vi)約100~300m/gの表面積のうちの1つ以上を有することを特徴とする絡まったカーボンナノチューブを含む、ポリマーブレンドを形成する方法。
【請求項11】
前記第1の非混和性のポリマーが、カーボンナノチューブパルプの前記第1の部分中に溶融混合され、前記第2の非混和性のポリマーが、前記カーボンナノチューブパルプの前記第2の部分中に溶融混合され、前記第1のブレンドが、前記第2のブレンド中に溶融混合される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
難燃材用途、高い耐衝撃性を要する用途、伝導性を要する用途に用いるための、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項13】
前記請求項1に記載のポリマーブレンドを含むペレット。
【請求項14】
前記請求項1に記載のポリマーブレンドを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2020年5月18日出願の、米国特許出願第63/026,390号の優先権の利益を主張し、この出願書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【連邦政府による支援を受けた研究又は開発に関する宣言】
【0002】
本発明は、米国エネルギー省エネルギー高等研究計画局により授与された政府支援DE-AR0001017を受けて実現したものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、一般的には、ポリマーブレンドに関し、より具体的には、混合した際に互いに不溶性であるポリマーと、相溶化剤としてのカーボンナノチューブパルプと、を含むポリマーブレンド、及びその新規の調整方法に関する。
【背景技術】
【0004】
多層ポリマーブレンドは、ポリマー産業において、経済的重要性の大きいものである。異なるポリマーをブレンドすることにより、物理的特性と機械的特性とのバランスが魅力的な新たなポリマー材料を生産することが可能になる。例えば、ポリスチレンのようなもろいポリマーの耐衝撃強さを向上させるために、少量の、例えばポリブタジエンのような弾性のあるポリマーを添加して、何もブレンドされていないポリスチレンよりも、粘りのあるしなやかなポリマーブレンドを作り出すことができる。しかしながら有用なポリマーブレンドの開発は困難である。というのも、それらのポリマーが元来非混和性であり、その結果、ざっくりと相分離をしたポリマー混合物となって、その構成成分どうしの間の界面が、組成上はっきりとしたものとなり、機械的に弱いものとなってしまうからである。
【0005】
非混和性のポリマーブレンドの特性を改善するための数多くの技法が、これまでに開発されてきた。これらの技法の中で、おそらくは最も効果的でかつ広く研究されてきたものが、ポリマーブレンドの相分離構造を変更するための相溶化剤の使用である。相溶化剤は、一般的には、相分離されたドメインの各々においてある程度の混和性を有し、それゆえにそのようなドメインどうしの間で架橋として機能し得る、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー、及びホモポリマー材料である。この架橋機能により、ドメイン間の界面エネルギーが減少し、それらがより細かく分散し、相互に混合されることが可能になる。これにより、得られるブレンドの特性が改善される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の相溶化剤を用いても、互いに非混和性ポリマーどうしの相互混合の改善を促すことができ、その特性の改善されたブレンドを得ることができるが、従来の相溶化剤の各々は、典型的にはブレンド特異性を有し、他のポリマーブレンドに対して使用するには好適ではない。更に、特定のポリマーブレンドに対して効果的な相溶化剤を開発するプロセスは、かなりの困難を伴うものである。したがって、非常に多様な、互いに非混和性のポリマーどうしに対して添加することができ、安定的で、均一な、しかも非常に効率的で、良好な機械的特性を有するポリマーブレンドを生成することができる、新たな相溶化剤の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一般的に、少なくとも2つの互いに非混和性のポリマーと、以下の特徴:(i
)約10~100nmの直径;(ii)約0.1~10mmの長さ;(iii)約0.7~1.9g/cmの密度;(iv)少なくとも約250,000のアスペクト比;(v)約1.8~7%の破損歪;及び(vi)約100~300m/gの表面積のうちの1つ以上を有することを特徴とする絡まったカーボンナノチューブ維管束を含むカーボンナノチューブパルプとを含む、ポリマーブレンドを対象とする。
【0008】
本開示はまた、ポリマーブレンドを形成する方法も開示し、その方法は、第1の非混和性のポリマーを、カーボンナノチューブパルプの第1の部分と、例えば溶融混合させて分散させることにより第1のブレンドを形成し、次に、第2の非混和性のポリマーを、カーボンナノチューブパルプの第2の部分と、例えば溶融混合させて分散させることにより、第2のブレンドを形成し、そして、第1のブレンドを第2のブレンド内に、例えば溶融混合させて分散させることにより、ポリマーブレンドを形成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】様々な実施形態による、カーボンナノチューブパルプの形成方法を示すフローチャートである。
図2】様々な実施形態による、非常に絡まったカーボンナノチューブ材料のネットワークを直接収集するためのシステムを示す図である。
図3】PET/LLDPEと、本開示によるカーボンナノチューブパルプとを含有するポリマーブレンドの、走査型電子顕微鏡写真を示す。
図4】PET/LLDPEと、本開示によるカーボンナノチューブパルプとを含有するポリマーブレンドの、ファイア/ドリップ試験後の射出成形試料を示す。示された試料は、右から左に、80重量%のPET/20重量%のLLDPEに1重量%のカーボンナノチューブパルプを加えたもの、80重量%のPET/20重量%のLLDPEに3重量%のカーボンナノチューブパルプを加えたもの、90重量%のPET/10重量%のLLDPEに3重量%のカーボンナノチューブパルプを加えたもの、及び90重量%のPET/10重量%のLLDPEの対照試料である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、一般的には、少なくとも2つの互いに非混和性のポリマーと、絡まったカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブパルプとを含むポリマーブレンドを提供し、そのカーボンナノチューブが、以下の特徴(i)~(vi)のうちの1つ以上を有することを特徴とする:(i)約10~100nm、約12~90nm、約15~80nm、約17~60nm、約20~50nm、又は約25~30nmの直径;(ii)約0.1~10mm、約0.2~9mm、約0.3~8mm、約0.44~7mm、又は約5~6mmの長さ;(iii)約0.3~1.9g/cm、約0.35~1.8g/cm約0.5~1.7g/cm、約0.1~1g/cm、又は約0.3~1.1g/cmの密度;(iv)少なくとも約250,000、少なくとも約350,000、少なくとも約500,000、又は少なくとも約600,000のアスペクト比;(v)約1.8~7%、約2~6.5%、又は約3~5%の破損歪;及び(vi)約100~300m/g、約125~275m/g、約150~250m/g、約175~225m/gの表面積。更なる実施形態では、上記の特徴に加えて、絡まったカーボンナノチューブは、約0.2~3.2GPa、約0.3~3GPa、若しくは約0.3~2.8GPaの引っ張り強さ、及び/又は約1800~2900kN・M/kg、約2000~2700kN・M/kg、若しくは約2200~2600kN・M/kgの比強度を有することも特徴とする。
【0011】
驚くべきことには、本開示による、絡まったカーボンナノチューブを含む特定のカーボンナノチューブパルプは、少なくとも2つの非混和性のポリマー(例えば、ポリエチレン(PE)及びポリエステル(PET)、又はポリカーボネート(PC)及びアクリロニト
リルブタジエンスチレン(ABS)が挙げられる(ただしそれらに限定されない))を相溶化させるために効果的に用いられ得るということ、また、それらの相挙動を制御して、例えば引っ張り/圧縮強度、破壊靭性、可撓性、及び弾性などの、様々な機械的特性を改善するのに相乗効果をもたらすように効果的に用いられ得るということが判明している。
【0012】
本明細書に記載されるポリマーブレンドは、様々な用途で使用しうるが、例としては、高い衝撃性が関わる用途、伝導性を要する用途、及び難燃材としての用途が挙げられるが、それらに限定されない。
【0013】
以下の用語は、以下に説明する意味で用いられる:
「備える、含む(comprising)」という用語とその派生形は、追加的構成要素、工程、又は手順が、本明細書において開示されているか否かに関わらず、それらの存在のいかなるものも排除する意図はない。対照的に、「本質的に(・・・)からなる(consisting essentially of)」という用語は、本明細書に用いられた場合には、後続の引用部のいかなる範囲からも、いかなる他の構成要素も、他の工程も、又は他の手順も排除する(ただし、動作可能性にとって本質的ではないものを除く)ものであり、「(・・・)からなる(consisting of)」という用語は、本明細書に用いられた場合には、具体的に叙述又は列挙されていない、いかなる構成要素、工程、又は手順も排除するものである。「又は・若しくは(or)」という用語は、特に他にことわらない限り、列挙されたメンバーに個別に言及するだけでなく、それらを任意で組み合わせたものにも言及するものである。
【0014】
冠詞「a」及び「an」が本明細書に用いられる場合には、その冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)に言及するものである。
【0015】
「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態によれば(according to one embodiment)」などのフレーズは、このフレーズに続く特定の機能、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの態様に含まれること、そして、本開示の2つ以上の態様に含まれ得ることを一般的に意味する。重要なことは、そのようなフレーズは、必ずしも同じ態様に言及するものではないということである。
【0016】
もし、明細書に、ある構成要素又は機能が、含まれ「得る」、「ることができる」、「ることができるであろう」、若しくは「得るであろう」、又はある特徴を有「し得る」、「することができる」、「することができるであろう」、又は「し得るであろう」と述べられている場合には、その特定の構成要素又は機能が含まれている必要はなく、またそのような特徴を有している必要もない。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「非混和性のポリマー」という用語は、可溶性が限られ、ゼロではない界面張力を有するブレンド、すなわち、ゼロより大きい混合自由エネルギー(ΔG)を有するブレンドを形成する、少なくとも2つのポリマーを指す:
【数1】
典型的には、少なくとも2つのポリマーどうしが、その構造が異なっているという場合、相互作用のエネルギーが大きく、ポリマーどうしが相互作用に抵抗するために、混合のエンタルピー(ΔHm)は、正である。逆に、ポリマーどうしが、その構造が似通っているという場合、混合のエンタルピーは負であるので、混合自由エネルギーもまた負となり
、それらのポリマーは、均質な混合物を形成することになる。ということは、「混和性のポリマー」とは、ゼロ未満の混合自由エネルギーを有するブレンドを形成する、少なくとも2つのポリマーということになる。少なくとも2つのポリマーの所与のブレンドの混和性又は非混和性はまた、当該技術分野において周知の技法を用いても決定しうる例えば、少なくとも2つのポリマーのブレンドは、溶融混合されてもよく、そして相分離されたドメインの存在又は不在が、例えば走査型電子顕微鏡法又は透過型電子顕微鏡法(それぞれ、SEM又はTEM)のような、顕微鏡を用いた技法によって決定され得る。少なくとも2つのポリマーのブレンドのガラス転移温度(T)はまた、熱機械分析法(TMA)によって測定され得るが、そのガラス転移温度(T)は、それらの少なくとも2つのポリマーが非混和性であるか否かを決定するためのガイドとして用いられ得る。この場合、もしポリマーブレンドが2つのガラス転移温度(T)を有するという場合には、そのポリマーは非混和性である可能性が高い。他方、もしただ1つだけのガラス転移温度(T)しか、そのポリマーブレンドに対して観察されなければ、そのポリマーは混和性である可能性が高い。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「実質的に含まない」という用語は、組成物又はブレンド内で、特定の化合物又は部分が、その組成物又はブレンドに重大な影響を及ぼすことのない量で存在する、組成物又はブレンドを指す。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」という用語は、組成物又はブレンド内で、特定の化合物又は部分が、その組成物又はブレンドの総重量に基づいて、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は更には0.01重量%未満の量で存在する、あるいは、その特定の化合物又は部分が、それぞれ対応する組成物またはブレンドにおいて全く存在しない組成物又はブレンドを指してもよい。
【0019】
範囲の形式で表現される値は、当該範囲の限界点として明示的に引用されている数値のみならず、当該範囲内に包摂される、すべての、個別の数値またはより狭い範囲を含むものとして、あたかも、個々の数値及びより狭い範囲が明示的に引用されているかのように、柔軟に解釈されるべきである。例えば、1~6という範囲は、具体的に開示されるより狭い範囲、例えば、1~3、2~4、3~6に加えて、当該範囲内の個別の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6も有するというように考えるべきである。このことは、当該範囲の広さに関わらず適用される。
【0020】
一実施形態によれば、ポリマーブレンドにおいて有用なカーボンナノチューブパルプは、上述の特定の特徴を有する絡まったカーボンナノチューブを含む。目下、ナノチューブを成長させ、それらのナノチューブから作られる撚糸構造体、シート構造体、ケーブル構造体を形成し、パルプ用のソースとなるカーボンナノチューブ材料として機能させるための多くのプロセス及びそのバリエーションが存在する。これらのプロセスとしては:(1)化学蒸着(CVD)、すなわち、環境圧力又は高圧下、及び約400℃超の温度下で実行し得るプロセス;(2)アーク放電、すなわち、高い完成度のチューブをもたらすことができる高温のプロセス;及び(3)レーザーアブレーション法、が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、CVDプロセス又は類似の、当該技術分野で既知の気相熱分解手順を用いて、適切なナノチューブ材料を生成することができる。CVDプロセスのための成長温度は、例えば約400℃~約1350℃のような、比較的低温の範囲であり得る。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)又は多層カーボンナノチューブ(MWNT)のいずれもが、いくつかの実施形態で、ナノスケールの触媒粒子を、炭素含有ガス試薬(すなわち、気相炭素源)の存在下で、曝露させることによって成長し得る。特に、ナノスケールの触媒粒子は、既存の粒子の追加によって、又は、金属有機前駆体からの粒子を、その場で合成することにより、又は非金属触媒からの粒子からでさえもその場で合成を行うことにより、試薬である炭素含有ガス内に導入され得る。S
WNT及びMWNTのいずれも成長させ得るが、ある一部の例では、SWNTが、その成長が比較的速く、またロープ様の構造体を形成しやすい傾向があって、取り扱い、熱伝導性、電気的特性、及び強度という点で有利な点を提供し得るということを理由に、選択され得る。
【0022】
なお、本出願書全般にわたって、炭素から合成されるナノチューブに言及されているが、他の化合物(複数可)、例えば、窒化ホウ素、MoS2、又はそれらの組み合わせも、本開示と関連させたナノチューブの合成に使用し得る。例えば、ということを理解されたい。窒化ホウ素ナノチューブもまた、異なる化学的前駆体により成長させることができる。なお、上の事に加えて、個々のカーボンナノチューブ内の抵抗を低減するために、ホウ素及び/又は窒素も使用できるということに留意されたい。更に、他の方法、例えばプラズマCVD法などもまた、本発明のナノチューブを作製するために使用され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブパルプは、例えば、図1を参照しながら以下に詳細に説明するようにして形成されるカーボンナノチューブパルプを含み得る。一般医、カーボンナノチューブパルプは、任意のナノチューブ材料から製造され得る。例えば、カーボンナノチューブシート、カーボンナノチューブ条片、カーボンナノチューブテープ、バルクで回収されるカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ撚糸、絡まったカーボンナノチューブを含む任意の他の好適なカーボンナノチューブ材料、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブ材料は、米国特許第8,999,285号(その内容は、全体が本明細書に組み込まれ得る)に記載のもののような、浮遊性触媒化学蒸着(FCCVD)法により製造され得る。カーボンナノチューブ製造のFCCVD法は、製造されるにつれ、気相中で、非常に長く(100μm超)、非常に絡まったナノチューブに繋がり得る。カーボンナノチューブ材料が、炉のホットゾーンから脱しつつある間に、ナノチューブが絡まり、束になり、あるいは合体して、相互に接続され分岐している束の拡張ネットワークをなすが、このようなネットワークは、他のカーボンナノチューブ製造プロセスでは、得ることができないものである。いくつかの実施形態では、FCCVDにより製造され、相互接続されたカーボンナノチューブによって製造される拡張ネットワークは、パルプ化プロセスにわたって維持され、それによって、電気的及び機械的特性を、従来のカーボンブラック及びカーボンナノチューブパウダーと比較して改善する。
【0025】
ここで図2を参照すると、カーボンナノチューブ材料が、回収システム2000により、FCCVD反応器から回収され得る。いくつかの実施形態では、システム2000は、合成チャンバー2001と連結され得る。一般的に、合成チャンバー2001は、反応ガスがその中に供給され得る、入口端2001aと、延伸した長さのナノチューブの合成が起こるホットゾーン2002と、反応からの生成物、すなわち延伸した長さのナノチューブ、及び排気ガスがそこから出て、回収される、出口端2001bと、を含む。いくつかの実施形態では、合成チャンバー2001は、ホットゾーン2002を貫通して延伸するクオーツチューブ2003を含み得る。図2に一般的に図示されているが、合成チャンバー2001の設計において、他の構成も用いることができるということを理解されたい。
【0026】
いくつかの実施形態では、システム2000は、ハウジング2005を含む。図2に図示されているようなハウジング2005は、実質的に気密性を有し、潜在的に危険な空中を漂う粒子が、合成チャンバー2001内から環境中に放出されるのを最小限に抑え、酸素がシステム2000内に進入して、合成チャンバー2001に到達するのを防止するものであってよい。特に、合成チャンバー2001内に酸素が存在すると、ナノチューブの完全性に対して影響を及ぼし、ナノチューブの製造を損なう可能性がある。
【0027】
システム2000はまた、合成チャンバー2001の出口端2001bと、実質的に気密的に係合するための、ハウジング2005のインレット2005aを含み得る。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブが合成チャンバー2001から出るにつれて、ナノチューブどうしが絡まり合い、束になり、更には他の様式で合体して、相互に接続され、分岐している束の拡張ネットワークをなす。いくつかの実施形態では、これらの拡張ネットワークは、そよ風によって膨らむ吹き流しに似た形状の、中空のカーボンナノチューブ「ソック」を形成する傾向がある。このように、図2に示すように、カーボンナノチューブソック2007を、回転するメッシュディスク2009(例えば、ディスク2009の背面に真空吸着することにより)上に引っ張り、カーボンナノチューブを、外科用メス又は「ドクター」ブレード2011を用いて、回転するディスク2009から取り外すことによって、カーボンナノチューブは、ハウジング2005内で、合成チャンバー2001から回収され得る。特に、カーボンナノチューブソック2007を、回転メッシュディスク2009上に引っ張ると、ディスク2009上に薄膜を形成し、カーボンナノチューブソック2007の新たな部分がディスク2009上に引っ張られるにつれて、その薄膜を、ブレード2011がこそげ落とし、切断する。その結果、カーボンナノチューブは、回収容器2015又は他の回収容器内に落下するか、あるいは運ばれて、後続のパルプ化に用いられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガス排出部2013として、真空吸引が提供され得るが、そこを通って、ガスと熱がハウジング2005から出て行くことが起こり得る。排出部2013から出て行くガスは、一実施形態では、例えば水のような液体又はフィルターを通されて、排出部2007の上流で回収されなかったナノチューブを回収され得る。加えて、排気ガスを炎で処理して、排気ガス中の様々な成分を、脱エネルギー化してもよく、例えば、反応性水素を酸化させて、水を形成させてもよい。
【0029】
回転するディスク2009による回収機構を有する回収システム2000を参照して上に説明したが、本開示を考慮すると、いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブを、その絡まりを破壊することなくFCCVD環境から回収し取り出すための任意の技法を、様々な実施形態にしたがって使用することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、米国特許第7,993,620号及び同8,722,171号(これらの文献、それぞれの内容は、その全体が、本明細書に組み込まれる)に記載されているように、FCCVDによって製造されたカーボンナノチューブの回収は、カーボンナノチューブ撚糸又は短線を形成することにより、及び/又はカーボンナノチューブシートを形成することにより、実行可能である。
【0030】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、最初に鉄又は他の含有物を含み得る。他の実施形態では、そのような含有物は望ましくなく、好ましくはパルプ化に先だって取り除くことができる。例えば、鉄の含有物は、いくつかの実施形態では、不活性又は還元雰囲気中でナノチューブを高温(例えば、約1800℃)になるまで加熱することによって、カーボンナノチューブから排除することが可能である。そのような温度では、カーボンナノチューブから鉄が抽出されて、より低温の表面上で再度固体化することができる。いくつかの実施形態では、例えば、上述のFCCVD反応器のようなCVD反応器中又は、例えば米国特許第8,999,285号及び第7,993,620号(その各々の内容全体が、本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような任意のCVD反応器中でそのような含有物の除去が実施され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、例えば、鉄含有物のような含有物が、カーボンナノチューブ材料を約500℃に空気中で加熱し、次に酸で処理することにより、除去され得る。いくつかの実施形態では、例えば、カーボンナノチューブ材料を、空気中、500℃で約2時
間にわたって加熱してから、塩酸で処理して、鉄含有物が除去される。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブパルプが、カーボンナノチューブシート、カーボンナノチューブ条片、カーボンナノチューブテープ、バルクで回収されたカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ撚糸、若しくは非常に絡まったカーボンナノチューブを含有する任意のカーボンナノチューブ材料、又はそれらの組み合わせのうちの任意のものから形成される。
【0033】
図1を参照すると、様々な実施形態による、カーボンナノチューブパルプの形成方法1100が提供されている。方法1100は、パルプ化マシンにより、カーボンナノチューブシート、カーボンナノチューブ条片、カーボンナノチューブテープ、バルクで回収されたカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ撚糸、若しくは非常に絡まったカーボンナノチューブを含有する任意のカーボンナノチューブ材料、又はそれらの組み合わせのうちの任意のもののうちの1つ以上のものから、カーボンナノチューブパルプを形成するための、パルプ化の工程1101を含む。その方法はまた、第1の粉砕機で、少なくとも一部のカーボンナノチューブパルプを粉砕させる工程1103も含む。その方法はまた、第2の粉砕機で、カーボンナノチューブパルプを脱凝集させる工程1105を含んでもよい。
【0034】
様々な実施形態によるパルプ化の工程1101は、カーボンナノチューブシート、カーボンナノチューブ条片、カーボンナノチューブテープ、カーボンナノチューブ撚糸、又は直接回収されたカーボンナノチューブを、パルプ化マシンに投入して、それらの材料をパルプ化してカーボンナノチューブパルプを形成することによって実行され得る。様々な実施形態によるパルプ化マシンは、例えば、オランダービーター、コニカルリファイナー、スタンプミル、若しくは任意の他の好適な機械的装置、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0035】
様々な実施形態によれば、カーボンナノチューブパルプは、パルプの粒径を確認するために試験され得るが、それによりユーザーは、引き続きパルプ化を継続するべきか否かを決定することができる。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブパルプは、カーボンナノチューブパルプを脱水させて、例えば、カーボンナノチューブのプレスケーキを形成することによって、粉砕する(例えば、粉砕の工程1103でのように)ために調製され得る。
【0036】
その後、いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブパルプは、更なる処理のために乾燥され得る。乾燥は、例えば、風乾、オーブン乾燥、真空オーブン乾燥、又は任意の他の好適な乾燥プロセスにより実施され得る。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブパルプは、温度約90℃~約110℃のオーブン内で、約4時間~約12時間かけて乾燥させることができる。
【0037】
様々な実施形態による粉砕の工程1103は、粉砕機を用いてカーボンナノチューブパルプを破壊してカーボンナノチューブパルプ粒子にすることによって実施され得る。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブパルプの粒径は、粉砕機(後続の乾燥のために、カーボンナノチューブパルプの大きな塊を、構成成分のカーボンナノチューブパルプ粒子に破壊するもの)によって変化はしない。いくつかの実施形態では、粉砕機は、例えば、コーヒー用粉砕機、工業用バーミル、それらの組み合わせ、又は任意の他の粉砕装置を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、官能化されてはいない。別の一実施形態では、カーボンナノチューブパルプ内のカーボンナノチューブは、物理的に変性(
例えば、超音波処理又はコーティング処理)されるか、又は化学的に変性(例えば、酸、溶媒、ポリマー、又は酸化剤によって)され得る。そのような変性には、カーボンナノチューブの端部、側壁、又はその両方が関わり得る。物理的及び化学的変性としては、共有結合、イオン結合、化学吸着、インターカレーション、界面活性剤相互作用、ポリマーラッピング、切断、溶媒和、及びそれらの組み合わせが挙げられ得るが、それらに限定されず、その結果として、カーボンナノチューブに官能基、例えば、-COOH、-PO-、-SO-、-SOH、-SH、-NH、第三級アミン、第四級アミン、-CHO、及び/又は-OHが挙げられ得るが、それらに限定されないものが添加される。一実施形態では、化学的変性には、例えば、ポリシラザン、ポリウレアシラザン、導電性ポリマー、ポリアミン、ポリチオフェンによる変性、ポリアミドによる浸透、カルボキシレートまたはアミン官能性を導入するための化学的変性、イオン導電性を高めるための任意の変性、又はそれらの組み合わせが挙げられ得るが、それらに限定されない。別の一特定の実施形態では、官能化されたカーボンナノチューブは、その表面に付着した有機及び/又は無機化合物を含むものであり、そのような有機化合物の限定されない例としては、カルボキシル、アミン、ポリアミド、ポリアンフィフィル、ジアゾニウム塩、ピレニル、シラン、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化学基が挙げられ、また、無機化合物の非限定的な例としては、ホウ素、チタン、ニオビウム、タングステンのフッ素化合物のうちの少なくとも1つ、及びそれらの組み合わせが挙げられる。それらの無機化合物及び有機化合物はまた、ハロゲン原子又はハロゲン化化合物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、官能化のために利用できる部位のうちの約5%~100%、約10%~90%、約25%~75%、約50%~75%、又は約50%~100%で官能化されている。いくつかの実施形態では、物理的変性、化学的変性、及び/又はコーティングは、粉砕の工程1103の後、ただし脱凝集化の工程1105よりも前に実施され得る。しかしながら本開示を考慮すると、物理的変性、化学的変性、及び/又はコーティングは、例えば、パルプ化の工程1101の前、パルプ化の工程1101の後ただし粉砕の工程1103の前、粉砕の工程1103の後ただし脱凝集化の工程1105の前、脱凝集化の工程1105の後、又はそれらの組み合わせを含めて、いつでも実施できるということは明らかであろう。本開示を考慮すると、更に、いくつかの実施形態では、物理的変性、化学的変性、及び/又はコーティングは、パルプ化プロセス全体を通じて異なるポイントで段階的に実施できるということ、並びに/又は多くの修正及び/若しくはコーティングが適用できるということも明らかであろう。
【0039】
第2の粉砕機における、カーボンナノチューブパルプ脱凝集化の工程1105は、乾燥カーボンナノチューブパルプを、第2の粉砕機(例えば、コーヒー用粉砕機、工業用バーミル、それらの組み合わせ、又は任意の他の粉砕装置)に追加することによって実施され得る。いくつかの実施形態では、脱凝集化の工程1105はまた、乾燥カーボンナノチューブパルプを粉砕して、いかなる残りの塊又は凝集物も破壊することで、カーボンナノチューブパルプの体積を増やして、カーボンナノチューブパルプを形成することも含む。いくつかの実施形態では、脱凝集化の工程1105により、パルプ粉砕の工程1103で生成された粉砕されたカーボンナノチューブの体積の約5~約15倍の体積のカーボンナノチューブパルプが生成される(すなわち、粉砕されたカーボンナノチューブパルプは、脱凝集化されたカーボンナノチューブパルプよりも約5倍~約15倍大きいということになる)。カーボンナノチューブパルプの脱凝集化の工程1105は、有利なことに、カーボンナノチューブパルプのより大きな表面積と、より良好な分散が提供される。凝集物を減少又は除去することにより、カーボンナノチューブパルプの分散性が改善され、カーボンナノチューブパルプネットワークの形成中に塊が形成されることのリスクが低減される。対照的に、カーボンナノチューブパルプの分散性が悪い場合には、ナノチューブが塊をなして、活性材料の粒子同士を相互に接続するために、より多くの材料が必要となるため、活性材料の量が減少し、構造体の性能も低下してしまう。
【0040】
かくして、一実施形態によれば、カーボンナノチューブパルプは、図2に示されているシステム2000を用いて、FCCVDプロセスによって作製された、絡まったカーボンナノチューブを含み、それらのカーボンナノチューブは、以下の特徴(i)から(v)のうちの1つ以上を有することを特徴とする:(i)約2~20nm、又は約6~15nm、又は約7~10nmの直径;(ii)約1~10mm、約2~8mm、又は約3~6mmの長さ;(iii)約0.7~9g/cm、約0.8~7g/cm、又は約0.9~5g/cmの密度;(iv)少なくとも約250,000、少なくとも約500,000、少なくとも約750,000、又は少なくとも約1,000,000のアスペクト比;及び(v)約100~300m/g、約150~250m/g、又は約175~200m/gの表面積。
【0041】
一実施形態によれば、ポリマーブレンドは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、少なくとも約0.001重量%のカーボンナノチューブパルプを含む。また別の実施形態では、ポリマーブレンドは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、又は少なくとも約5重量%のカーボンナノチューブパルプを含む。
【0042】
別の一実施形態によれば、ポリマーブレンドは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約15重量%未満のカーボンナノチューブパルプを含む。また別の実施形態では、ポリマーブレンドは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約10重量%未満、約7.5重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4.5重量%未満、約4重量%未満、約3.5重量%未満、約3.25重量%未満のカーボンナノチューブパルプを含む。
【0043】
また別の一実施形態では、ポリマーブレンドは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%のカーボンナノチューブパルプを含む。更にまた別の一実施形態では、ポリマーブレンドは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、約0.25重量%~約7重量%、約0.5重量%~約5重量%、又は約0.75重量%~約3重量%のカーボンナノチューブパルプを含む。
【0044】
本開示のポリマーブレンドはまた、少なくとも2つの非混和性のポリマーを含む。本開示によって用いられ得る広範なポリマーを前提とすると、用いられ得る非混和性のポリマーの組み合わせの包括的なリストを提供することが現実的ではないということが理解されるであろう。とはいえ、ポリマーどうしのある組み合わせが非混和性であるか否かを判定するための、上に記載された一般的なガイドラインを鑑みると、好適なポリマーは、一般的に、熱可塑性ポリマーと大まかに分類可能なものである。好適なポリマーはまた、限定的な架橋度を示し得るものである。
【0045】
好適なポリマーの例としては、ポリエチレン、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び直鎖低密度ポリエチレンなど、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、及びポリアクリル酸とポリスチレンとのコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフロリド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、ポリ(4-メチル-ペンテン-1)、ポリブチレン、ボリビニリデンクロリド、ポリビニルブチラル、ポリビニルイミダゾール、塩化ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリメチル-メタクリレート、ポリメチルーアクリレート、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレン-アクリル酸金属塩コポリマー、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン13、ナイロン66、ポリカーボネ
ート、ポリスルホン、ポリアリーレン及びポリアルキレンオキシド;アグロース、セルロース、ゼラチン、アルギネート、エラスチン、キトサン、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コグリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリ酸無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミド)、ポリ(エステル-アミド)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(オルト-エステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(チオエステル)、ポリサッカリド及び混合物、ブレンド、及びそれらのポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0046】
特定の一実施形態によれば、ポリマーブレンドは、以下の非混和性のポリマーの組み合わせを含みうる:ポリエチレン及びポリエステル、ポリスチレン及びポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン及びポリエチレン、エチレン酢酸ビニル及びポリ塩化ビニル、無水マレイン酸グラフト化ポリ塩化ビニル及びエチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及びポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート及びポリ塩化ビニル、スチレンアクリロニトリル及びポリカーボネート、ポリカーボネート及びポリカプロラクタム、ポリカーボネート及びポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレン、エチレン酢酸ビニル及びポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー及びポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル及びポリスチレン及びポリ塩化ビニル。
【0047】
上記のブレンドにおいて、第1の非混和性のポリマーは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約1%~99重量%の量で存在してよく、第2の非混和性のポリマーは、約99%~1重量%の量で存在してよい。別の一実施形態では、上記のブレンドにおいて、第1の非混和性のポリマーは、非混和性のポリマーの総重量に基づいて、約10%~90重量%、約20%~80重量%、約30%~70重量%、約40~60重量%、又は約45%~55重量%の量で存在してよく、他方、第2の非混和性のポリマーは、約90%~10重量%、約80%~20重量%、約70%~30重量%、約60~40重量%、又は約55%~45重量%の量で存在してよい。1つ以上の他の非混和性のポリマーを上記のブレンドに添加して、3つ以上の非混和性のポリマーを含むポリマーブレンドを形成してもよいということが理解されよう。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリマーブレンド中の非混和性のポリマーの総量は、ポリマーブレンドの総重量に基づいて、約5重量%~約99.9重量%であり得る。他の実施形態では、ポリマーブレンド中の非混和性のポリマーの量は、ポリマーブレンドの総重量に基づいて、約50重量%~約98重量%、又は約70重量%~約95重量%の範囲であり得る。
【0049】
更にまた別の一実施形態では、ポリマーブレンドは、1つ以上の添加材を更に含み得るが、例としては、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びそれらの混合物)、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、メタルフィラー、導電性非金属フィラー、金属コーティングしたフィラー、及びそれらの組み合わせ)、耐衝撃性改良剤(例えば、コアーシェル型グラフトコポリマー、及びイオノマー樹脂)、従来の相溶化剤(例えば、米国特許第7,022,776号の、第10列、66行目~第14列、13行目(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている相溶化剤)、抗酸化剤、造核剤、カップリング剤、UV吸収剤、UV安定化剤、色素、染料、補強フィラー、
スリップ剤、可塑化剤、加工助剤、潤滑剤、粘度抑制剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、エクステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、難燃性フィラー、ブースター、触媒、煙抑制剤、離型剤、非導電性フィラー、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。存在する場合に、それらの添加剤は、ポリマーブレンドの総重量に基づいて、約0.1重量%~約40重量%の範囲である。特定の一実施形態によれば、ポリマーブレンドは、実質的に含まない。上述した従来の相溶化剤(すなわち、本開示のカーボンナノチューブパルプは、ポリマーブレンド中に存在する唯一の相溶化剤である)。
【0050】
別の一実施形態によれば,本開示は、一般的に、非混和性のポリマーとカーボンナノチューブパルプとを溶融混合することによって、ポリマーブレンドを製造する方法を提供する。一実施形態では、その方法は、カーボンナノチューブパルプの第1の部分を第1の非混和性のポリマー中に分散させて第1のブレンドを形成することと、カーボンナノチューブパルプの第2の部分を第2の非混和性のポリマー中に分散させて第2のブレンドを形成することと、第1のブレンド及び第2のブレンドを混合して、ポリマーブレンドを形成することと、を含み得る。代替的一実施形態では、ポリマーブレンドは、少なくとも2つの非混和性のポリマーどうしを組み合わせて混合物を形成することと、カーボンナノチューブパルプをその混合物中に分散させて、ポリマーブレンドを形成することとによって形成され得る。
【0051】
特定の一実施形態では、第1の非混和性のポリマーは、カーボンナノチューブパルプの第1の部分とブレンドされ、押出機のスロート部にフィードされ得る;次に、第2の非混和性のポリマーと、カーボンナノチューブパルプの第2の部分とが、押出機の更に下流部に、サイドフィーダーを通じて添加され得る。また別の一実施形態では、第1の非混和性のポリマーと、第2の非混和性のポリマーとが、カーボンナノチューブパルプとともに同時に、押出機の供給用スロート部に供給され得る。
【0052】
一般的に好ましいのは、ツイン式、同時回転スクリュー型押出機を用いて、第1の非混和性のポリマーと、カーボンナノチューブパルプの第1の部分と、第2の非混和性のポリマーと、カーボンナノチューブパルプの第2の部分とを、順次、押出機に供給することであって、第1の非混和性のポリマーと、カーボンナノチューブパルプの第1の部分とは、供給用スロート部内に供給され、第2の非混和性のポリマーとカーボンナノチューブパルプの第2の部分が、サイドフィーダーを通して、更に下流に供給されることである。押出機の温度は、一般的に、第1の非混和性のポリマー及び第2の非混和性のポリマーの融点よりも高い、任意の温度に昇温させてもよい。押出機から現れる組成物は、水でクエンチされてよく、他の仕上げ又は形成作業で用いられるようにペレット化されてもよい。
【0053】
一般に、上に挙げた様々な成分を溶融混合するためには、押出機を用いることが望ましいが、他の溶融混合機器を使用することもでき、例としては、ロールミル、ヘリコン、バスニーダー、ドウミキサーなどを挙げることができる。
【0054】
ポリマーブレンドの成分は、様々な用途に適した物品を提供するために選択され得る。代表的な例としては、接着剤や、例えば自動車産業における用途としては、自動車の車体のモールディング、建設業における用途としては、構造的部品(例えば、規格寸法にカットした材木、形状を形成したトリム材、柱、梁、及び形状を形成した構造部材)、例えばプレキャスト及びその場でキャストする構造部材などの軽量セラミックス(例えば、セメント混合及び石膏材料、例えばブロック、ボード、パネル、ルーフデッキ、及びフローリング)、埋め立て地のカバー、悪臭バリア、埃カバー、電子及びコンピュータ産業における用途としては、例えば、大電力電気化学的コンデンサ及びバッテリー用の電流回収機、PEM燃料電池用の二極性プレート、及び二機能性添加剤(バインダ及び導電性向上剤)、リチウム電池のカソードに対する添加剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
実施例
本開示による、カーボンナノチューブパルプは、ポリエステル樹脂と、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂とに別々に混ぜ合わされた。Unifi社により供給された、使用済みポリエステル(PET)及びEntecにより供給されたLLDPE中、3重量%及び5重量%のカーボンナノチューブパルプのマスターバッチを、樹脂ペレットを、500~700gのバッチのカーボンナノチューブパルプと予め混合して作製した。次に、そのブレンドを、Thermo Fischer社製Pharma 11ツインスクリュー式押出機で、以下の表1に示す条件で押出成形した。PET/LLDPEのみの試料を、対照試料として、同じPET/LLDPE比で作製した。
【表1】
【0056】
ブレンドを、住友製SE75S単スクリュー型射出成形機で射出成形した。次に、追加的マスターバッチとブレンドとを、混ぜ合わせた。まず、ペレットとカーボンナノチューブパルプとを混合し、PET及びLLDPEの両方に、3重量%のカーボンナノチューブパルプを、Brabender Technologies社製のv-ホッパーモデル番号:F 18-0 VOLを用いて充填した。次に、18-mmツインスクリュー式押出機(Leistritz社製、モデル:ZSK-8HP-400)で、長さ:直径比(L/D)を40:1として、混ぜ合わせた。
【表2】
【0057】
次に上記の80/20のブレンドを、Battenfeld社製射出成形機(EcoPower 55/130 Unilog B6,134043-100)で射出成形した。
【0058】
SEM画像の撮影:
図3に示すSEM写真は、カーボンナノチューブパルプが、2つの相の間の境界を横断していることを示し、そのことは、界面での相互作用と機械的特性の改善をもたらし得る、相溶化のメカニズム、又は少なくとも、相どうしの間のアンカーの存在を示唆している。
【0059】
機械的試験:
射出成形試験の結果を以下の表3及び表4に示す。
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
次にドッグボーン試験片を作製し、直接的に、引っ張り強さの比較を行った。結果を表5に示す。試料を、450ポンドの荷重で、毎分20インチ(in/分)の速度で引っ張った。
【表5】
【0062】
次に、5mm/分のひずみ速度を20ポンドの負荷とともに用いて、弾性を試験した。結果を、以下の表6に示す。参考のため、標準的な建築材料の弾性を追加してある。
【表6】
【0063】
弾性は、建築材料において最適化する必要があるキーとなる特性の1つである。建築材料は、応力下で変更することがない程度には十分な剛性を有していなければならないが、脆くなり小さい応力下でも破壊されるほど剛性が高くなってはならない。80重量%のPETと20重量%のLLDPEとのブレンドに3重量%のカーボンナノチューブパルプを加えたものは、広く使われている建築材料の弾性に近い弾性を示した。
【0064】
TMA試験:
TMA試験を実施した。その結果を、以下の表7に示す:
【表7】
【0065】
耐火試験:
射出成形された試料で、耐火試験を行い、溶融したポリマーが滴り落ちるかどうかを判定した。このテストの間、試料は、三又クランプを有するリングスタンドに固定され、プロパンガスバーナーからの炎に曝露した。対照試料は、即座に着火し、ロウソクからロウが滴り落ちるように滴下し始めた。カーボンナノチューブパルプを有する試料は、炎に曝露した数秒後に着火したが、その形状を維持し、滴下することはなかった(図3を参照)。80重量%のPETと20重量%のLLDPEの試料に、3重量%のカーボンナノチューブパルプをプラスした試料は、自己消火することが判明した。
【0066】
上述した結果から、本開示によるカーボンナノチューブパルプは、そのカーボンナノチューブパルプがなければ本来使用不能な、非混和性のポリマーブレンドの性能を高めるということが示された。引っ張り強さが約25~27%増加し、しかもカーボンナノチューブパルプは、大量のハロゲン化化合物を添加しなければ得られないような難燃性を付与していた。
【0067】
本発明の様々な実施形態を作製し、使用することについてここまでに詳細に説明してきたが、本発明は、非常に多様な具体的コンテキストで具現化することが可能な、多くの適用可能な発明的概念を提供しているということを理解されたい。本明細書で論じた具体的な実施形態は、あくまでも、本発明を作製し、使用するための具体的な方法を例示的に示すためのものに過ぎず、発明の範囲を定めるものではない。
【符号の説明】
【0068】
2000 回収システム
2001 合成チャンバー
2001a 入口端
2001b 出口端
2002 ホットゾーン
2003 クオーツチューブ
2005 ハウジング
2005a インレット
2007 カーボンナノチューブソック
2009 メッシュディスク
2011 ドクターブレード
2013 ガス排出部
2015 回収容器
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】