(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】統合型自動車用改質器及び触媒、並びに燃料改質方法
(51)【国際特許分類】
F02M 27/02 20060101AFI20230621BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20230621BHJP
F02M 31/16 20060101ALI20230621BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230621BHJP
B01J 23/50 20060101ALI20230621BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20230621BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20230621BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20230621BHJP
C01B 3/32 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
F02M27/02 F
F01N5/02 C
F01N5/02 H
F02M31/16 C
F02M31/16 F
F01N3/28 P
B01J23/50 Z
B01J23/44 Z
B01J23/46 311Z
B01J23/42 Z
C01B3/32 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022570589
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 BR2021050208
(87)【国際公開番号】W WO2021232126
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】BR102020009905-1
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(31)【優先権主張番号】BR102021009011-1
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517336050
【氏名又は名称】エフィセーアー フィアット クライスラー オートモベイス ブラジル リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】モンテイロ サレス ルイス カルロス
【テーマコード(参考)】
3G091
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA01
4G140EA02
4G140EA06
4G169AA11
4G169BC32
4G169BC71
4G169BC72
4G169BC75
4G169CB33
4G169CB81
4G169EA12
4G169EE04
4G169FA10
(57)【要約】
2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジング(11)を備える統合型触媒改質器(10)が記載され、第一のチャンバ(12)は、ICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、少なくとも1つの第二のチャンバ(13)は、燃料、エタノール等の改質を目的とし、第一のチャンバ(12)で発生した熱は熱伝導によって第二のチャンバ(13)に伝達される。第一のチャンバ(12)は、上流で、入口ノズル(14)からICE排気マニホールド(7)に接続され、出口ノズル(15)から車両の排気口(8)に接続され、第一のチャンバ(12)のプレナムは、触媒メッシュで満たされている。第二のチャンバ(13)が、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れるための吸気ノズル(16)と、改質される燃料を吸引できるように吸気マニホールド(4)の上流で接続された排気ノズル(18)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合型触媒改質器(10)であって、2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジング(11)を備え、第一のチャンバ(12)は、ICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、第二のチャンバ(13)は、燃料の改質を目的とし、前記第一のチャンバ(12)で発生した熱は熱伝導によって前記第二のチャンバ(13)に伝達される、触媒改質器。
【請求項2】
前記第一のチャンバ(12)は、上流で、入口ノズル(14)からICE排気コレクタ(7)に接続され、出口ノズル(15)から車両の排気口(8)に接続され、前記第一のチャンバ(12)のプレナムは触媒メッシュで満たされている、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項3】
前記第二のチャンバ(13)が、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れるための吸気ノズル(16)と、改質された前記燃料を吸引できるように吸気マニホールド(4)の上流で接続された排気ノズル(18)と、を備える、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項4】
前記吸気ノズル(16)の上流に配置され、改質される燃料を前記第二のチャンバ(13)に噴射する燃料インジェクタ(17)を備える、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項5】
前記第一のチャンバ(12)及び前記第二のチャンバ(13)を完全に、又は部分的に取り囲む熱絶縁カバー(23)を備える、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項6】
前記第一のチャンバ(12)が前記第二のチャンバ(13)を取り囲む、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項7】
前記第二のチャンバ(13)が前記第一のチャンバ(12)を取り囲む、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項8】
2つの第二のチャンバ(13)を備え、前記第二のチャンバ(13)のそれぞれは前記第一のチャンバ(12)に対して横方向に配置される、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項9】
前記第二のチャンバ(13)のそれぞれが、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れることを意図した吸気ノズル(16)と、前記吸気マニホールド(4)の上流で接続された排気ノズル(18)と、前記吸気ノズル(16)の上流に配置されて、改質される燃料をそれぞれの前記第二のチャンバ(13)に注入する燃料インジェクタ(17)と、を備える、請求項8に記載の触媒改質器。
【請求項10】
請求項1に記載の統合型触媒改質器(10)によって実施されるタイプの燃料を改質するための方法であって、前記ICE(1)の前記排気ガスの触媒変換によって発生する熱と、排気口で通常拒絶される熱とからも、触媒を介して、前記燃料を改質するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(ICE)のエンジン排気中の熱を最大限に利用するデバイスにおいて、燃料をエネルギー的に増加させるために、この燃料の一部を熱改質又は合成するシステムに統合された自動車用改質器及び触媒、又は触媒コンバータに関する。また、本発明は、燃料の触媒改質のための方法にも関する。内燃機関の従来の燃料(エタノール、メタノール、ガソリン、天然ガス又はディーゼル)は、本発明の範囲に含まれる。
【0002】
より具体的には、本発明は、触媒含有物(例えば、Pt、Pd、Rh等)を含浸させたデバイス内を、周囲空気及び/又は代替的に排気ガスの一部と共に流れる燃料の画分のエネルギー増大を促進することを意図しており、特定の温度下でこのデバイスは、元の燃料と比較して、より高い発熱量を有する化合物の生成を促進させる。このように、このプロセスに送られる蒸気の形の燃料の一部は、ICEに入る空気/燃料混合物と混合されるエネルギー含有量が高くなる。したがって、エネルギー含有量が高いために、好ましくはエタノール(又は他の燃料)で動作するICEの燃焼プロセスが改善され、エネルギー効率が向上し、温室効果ガス排出量と汚染物質のレベルが減少することになる。
【背景技術】
【0003】
ガソリンのエネルギー含有量、すなわち発熱量は、エタノールのそれよりも約30%大きいことは公知である。したがって、内燃機関がガソリンで運転する場合、エタノールで運転する場合と比較して燃料消費量が少なく、すなわち、自律性が高い。この差は、2つの燃料のエネルギー差に比例する。
【0004】
この問題を最小化するために、当技術分野で知られている代替案は、エタノールのいわゆる「改質」を提案するものである。科学文献及び特許文献には、主に水素(H2)を得るためのエタノールの熱改質に関連するいくつかのシステム又は方法論が示されており、これらの文献は、常に、ICEの排気中に放散される熱を利用する改質システム又はデバイスを採用している。この技術に関する文献は、2013年9月18日に公開された非特許文献1に見出すことができる。特許文献1は、内燃エンジンに適用される燃料を改質するためのコンパクトな触媒デバイスから、液相のアルコールを触媒的に変換するためのプロセスを教示している。
【0005】
これらの公知の解決策では、2つの別々のデバイスがICE排気システムに設けられ、排出レベルを低減するための従来の触媒コンバータと、主にH2の獲得を促進するための改質器とが設けられている。この解決策では、改質器の加熱とそれに伴う起動は、その内部で、改質器に供給されるエタノールからH2を得るための理想的な温度にその改質器が達するように、加熱された排気ガスの通過に依存している。すなわち、改質器によって促進される触媒反応は、ICE排気ガスによって生成される特定の温度以降にのみ開始されるのである。
【0006】
しかしながら、エタノール改質システムのこの構成には、いくつかの望ましくない効果を伴っている。例えば、このシステムには、排気ガスの一部を改質器の内部に導くための全ての支持体(パイプ及びバルブ)に加えて、改質器が追加されるために、排気システムがますます複雑になる。
【0007】
さらに、改質器を加熱し、熱改質反応にガスを供給するために排気ガスに排他的に依存することは、空気/燃料混合物と共に不活性ガス(例えばCO2)の混合を生じさせ、この混合ガスは、H2の生成が不活性ガスの存在を補償するのに十分でなければ、燃焼を損ねる可能性がある。これらのシステムでは、排気ガスが通過するにもかかわらず、エタノールの熱改質反応に理想的な温度は、エンジン運転条件の変動が改質器内の温度の安定性を保証しないため、H2の連続生産に望ましい形で維持されず、それによって、システム性能が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Atsushi Shimada and Takao Ishikawa, “Improved Thermal Efficiency Using Hydrous Ethanol Reforming in SI Engines”, SAE Technical Paper 2013-24-0118,2013年9月8日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の第一の目的は、内燃機関によるエネルギー収率の向上及び汚染物質排出の低減を可能にするために、燃料のエネルギー増大を促進するように設計されたデバイスである。
【0011】
本発明の補完的な目的には、単一の機器に統合された改質器と触媒デバイスが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これら及び他の目的は、少なくとも2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジングを備える統合型自動車用改質器及び触媒デバイスから達成及び充足され、第一のチャンバがICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、少なくとも1つの第二のチャンバが燃料の改質を目的とし、第一のチャンバで発生した熱は、熱伝導によって第二のチャンバに伝達される。
【0013】
これら及び他の目的は、ICE(1)からの排気ガスの触媒変換によって発生した熱と、排気ガスにおいて通常拒絶される熱とからも、触媒を介して燃料を改質するステップを含む燃料改質方法によって達成され、充足される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のデバイスの構成的態様について、燃料エネルギーを増加させるための化合物の生成を伴う改質システムは、車両の触媒コンバータを改質器に統合することを予見し、したがって、発生した熱を最大限に利用することが可能になる。触媒コンバータの熱は、その動作(有害な排気ガスの触媒変換による発熱化学反応)により発生する。このように、そして本発明のデバイスでは、内燃機関が排気を通して通常拒絶する熱に加えて、触媒コンバータの活動によって発生する熱も利用される。燃料の熱改質のためには適切な温度が必要であり、改質器を触媒コンバータに統合した状態では、熱の利用、ひいては適切な温度の維持が容易に行われることを想起されたい。
【0015】
一般に、本発明は、「フレックス燃料」エンジンの使用をより現実的なものとし、この燃料による性能及び自律性の改善により、エタノールの使用の増加をより魅力的なものとすることに寄与することを目的としている。一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)及びアルデヒド等の他の汚染ガス排出の他に、二酸化炭素(CO2)の排出レベル、したがって燃料消費量を低減することに加え、具体的には、エタノールの燃焼によるCO2の場合、光合成によって自然再生が起こり、温室効果の問題が最小限に抑えられる。しかしながら、メタン(CH4)や亜酸化窒素(N2O)等、温室効果を促進する他のガスも削減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、好ましい実施形態の詳細な説明に照らしてより良く理解され、その好ましい実施形態は、添付の図面によってサポートされ、説明されており、単なる例示と指導の目的で提示されたものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
【
図1】本発明のシステムに直接関連する要素を示す内燃エンジンの概略図である。
【
図2】本発明による触媒改質器システムの一実施形態を示す概略図である。
【
図3】本発明による触媒改質器システムの第二の実施形態の概略図であり、この場合、2つの燃料改質器が、触媒の両側に1つずつ設けられている。
【
図4】本発明による触媒改質器システムの第三の実施形態の概略図であり、この場合、改質器は、自動車用触媒の中央部に配置され、改質器が完全に半径方向に関与している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面によれば、(10)で、本発明による改質触媒システム又はデバイスを示し、これは、自動車の内燃機関(1)、すなわちICEに結合されることを意図している。
図1を特に参照すると、ICE(1)は、内部にシリンダ(3)を画定するブロック(2)を含む。この混合気は、間接注入システムの場合は吸気マニホールド(4)の上流に、直接注入システムの場合は各シリンダ(3)の内部に形成することができる。この目的のために、ECU(5)又は電子センターが、ドライバーの要求と(吸気口の負圧とバタフライ(6)の位置の関数で)システムに流入する新鮮な空気の流れに従って、インジェクタ(9)を通して一定量の燃料を供給する責任を負う。
【0019】
このようにして導入された空気/燃料混合物の燃焼後、排気ガスは、排気マニホールド(7)から排出され、その下流には、排気ガス中の残留O2量を決定し、したがって燃焼品質を決定するためのラムダプローブ(図示せず)が設けられ、この情報はECU(5)に送られ、導入されるべき空気/燃料混合物を調節するのに使用される。
【0020】
従来のシステムでは、排気ガスは、次に車両の排気口(8)を通過し、最も有害な化学形態、例えば、酸化されてCO2となる一酸化炭素、同じく酸化されてCO2とH2Oとなる炭化水素等を除去するために排気ガスを処理する触媒、又は触媒コンバータを通過しないわけにはいかない。従来から触媒で行われている別の反応には、N2及びO2の形で排出されるNOxの触媒還元がある。また、既知のように、このような触媒反応が起こるためには最低の初期温度が必要であるにもかかわらず、これらの反応は発熱性である。
【0021】
したがって、本発明は、特にエタノール燃料、又はエタノールを含む燃料混合物の燃料改質器に触媒を統合する触媒システム、又は触媒改質デバイス(10)を構成し、自動車用触媒、又は触媒コンバータによって発生する熱を燃料改質器によって最大限に利用するようにすることを目的としている。本明細書では、燃料としてエタノールについて具体的に言及しているが、本発明の触媒改質器の同じ概念及び構造は、メタノール、天然ガス又は圧縮天然ガス(CNG)、ガソリン及びディーゼル等の他の燃料についても同様に実施できることは、この分野の技術者にとって明らかである。
【0022】
図2の実施形態に特に示されているように、本発明のデバイス(10)は、2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジング(11)によって外的に規定されており、第一のチャンバ(12)は、ICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、第二のチャンバ(13)は、燃料アルコールの改質を目的としている。
【0023】
より具体的には、第一のチャンバ(12)は、入口ノズル(14)からICEの前記排気マニホールド(7)に上流で接続される。第一のチャンバ(12)のプレナムは、触媒メッシュで満たされており、ICEからの排気ガスがその中を流れるとき、このメッシュに分散された触媒が、排気ガスの成分の酸化又は還元の反応を、上述したより有害でない方法へと触媒化し、そのように処理されて最小限に抑えられたガスは、その後、出口ノズル(15)に接続する下流の排気口(8)から、デバイスから排出されるようになっている。
【0024】
これらの反応は発熱性であるので、第一のチャンバ(12)の内部環境全体が加熱され、したがって、熱伝達によって第二のチャンバ(13)も加熱される。
【0025】
前記第二のチャンバ(13)に関して具体的には、第一のチャンバのメッシュと同様の触媒メッシュで満たされたプレナムからなり、すなわち、パラジウム、白金、ロジウム、銀及び/又は他の適切な触媒であってもよい。第二のチャンバ(13)の吸気ノズル(16)は、周囲空気(あるいは排気ガスの一部)と改質されるエタノールの両方を受け入れるように設計されている。好ましくは、周囲空気は、吸気ノズル(16)に入る前に、フィルタ(20)を介して、濾過される。前記吸気ノズル(16)は、新鮮な周囲空気の流れを受け取るために、この目的のために特定の燃料インジェクタ(17)を介して気化した燃料アルコールの流れと局所的に結合させるように接続することができる。この実施形態では、前記燃料インジェクタ(17)は、燃料ポンプ出口(図示せず)に接続されるか、又はシリンダ(3)に供給するための燃料インジェクタ(9)が搭載される燃料ギャラリー(図示せず)の特定の出口に直接接続される。あるいは、前記吸気ノズル(16)は、触媒メッシュで行われる触媒反応に関心のある化学種からなる排気ガスの部分流を受け取ることもできる。
【0026】
第二のチャンバ(13)のプレナムにおいて、エタノールと周囲空気との間の混合物の流れ、及び最終的には排気ガスの流れが触媒される。このような反応は、前記第一のチャンバ(12)からそれに隣接する第二のチャンバ(13)に向かって起こる熱伝達により、第二のチャンバ(13)のプレナムが適切に加熱されることに起因して可能になる。第二のチャンバ(13)内で触媒される反応の結果として、前記第二のチャンバ(13)の動作温度に依存して、したがって、第一のチャンバ(12)から第二のチャンバ(13)に発せられる熱の流れに依存して、新しい化学種(当技術分野で既知)が形成される。
【0027】
以下の表1は、関心のある化合物と、これらの関心のある化合物の製造に必要な触媒と、触媒システムが前記関心のある化合物を合成することができるのに必要な動作温度とを関連付けるために、技術からの情報を示し、編集したものである。
【表1】
【0028】
当該分野の技術者が容易に理解できるように、第二のチャンバ(13)のプレナムで促進される触媒反応から得られる化学種は、燃料エタノールと比較して、より大きなエネルギー効率を有する化合物の合成につながる。よく知られているように、化学物質のエネルギー収率は、その分子内に存在する化学結合の量と直接的に関連している。
【0029】
こうして、このように合成された化合物は、第二のチャンバ(13)の排気ノズル(18)から流れ、その後、吸気マニホールド(4)へ、又はその上流へ導かれ、続いてICE(1)のシリンダ(3)内に分配される。より具体的には、前記排気ノズル(18)は、供給システムにおいて、吸気マニホールド(4)から上流で、バタフライバルブ(6)から下流で、特に、窪み領域に接続され、このようにして、改質燃料は、実際には、車両の燃料システムによって吸引される。
【0030】
本発明のシステムに関連する他の考慮事項は、蒸発を促進し、改質率を高めるために、エタノール燃料を粉砕した形で、より好ましくは粉砕して予備加熱した状態で、第二のチャンバ(13)のプレナムに導入する必要性を含む。このことは、主にモータ(1)の始動後の初期段階においてである。この目的のために、前記燃料インジェクタ(17)によって注入されるアルコール燃料は、シリンダ(3)からの燃料の燃料インジェクタ(9)で用いられるものと同様の電気燃料予熱システム(コールドスタートシステム)を構成してもよく、及び/又はそれぞれのパイプ間の対流によって伝えられるICE排気ガスの熱を用いて加熱されることが可能である。同様に、改質器に導入される周囲空気、あるいは周囲空気と排気ガスの一部との混合物は、電気的に予熱することができ、及び/又はそれぞれのパイプの間の接触によって伝達されるICE排気ガスの熱を使用して加熱することができる。予熱は、燃料、特にエタノールを改質チャンバに注入する際の蒸発の保証を高めるために不可欠であり、そのチャンバもまた加熱されることに留意されたい。ICEの冷間運転の開始時に、ICE排気がこれら2つの流体に熱を伝達するのに十分な温度でない間、エタノール及び周囲空気のための電気予熱システムを作動させたままにすることができる。
【0031】
改質からの化合物の温度が高くなり得るので、このエネルギー的に増加した画分は、ICE吸気システムに導入される前に、熱交換器(19)を通過させることができる。同様に、ICE吸気システムに改質からの化合物が入る前に、不純物フィルタ(22)を含むと便利である。
【0032】
代替の実施形態では、本発明の触媒改質システムは、燃料改質のための最小運転条件に達した後(ICEの推定加熱時間)だけ、燃料の改質を開始するために、ICEの開始と関連して時間設定することができる。
【0033】
代替の実施形態では、本発明の触媒改質システムは、冷却水温度及び/又は周囲空気温度のようなICEの機能パラメータの識別(冷エンジン識別)に合わせて条件付けすることもできる。
【0034】
別の実施形態代替案では、2つの第二のチャンバ(13)が設けられ、第二のチャンバ(13)のそれぞれは、第一のチャンバ(12)に対して横方向に配置されている。各第二のチャンバ(13)は、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れることを意図した吸気ノズル(16)と、吸気マニホールド(4)の上流で接続された排気ノズル(18)と、吸気ノズル(16)の上流に配置されてそれぞれの第二のチャンバ(13)に改質される燃料を注入する燃料インジェクタ(17)と、を備える。
図3が示すように、この解決手段では、2つの改質器、すなわち、2つの第二のチャンバ(13)が触媒、又は第一のチャンバ(12)に対して反対側に配置されている。改質器の各第二のチャンバ(13)は、この場合、それぞれの吸気ノズル(16)とそれぞれのインジェクタ(17)を有する。この解決策では、第一のチャンバ(12)から第二のチャンバ(13)への熱交換に関連して、増加がある。
【0035】
また、代替として、第一のチャンバ(12)は第二のチャンバ(13)を取り囲むか、あるいは第二のチャンバ(13)は第一のチャンバ(12)を取り囲む。
図4に示されるこの構造の代替案では、第二のチャンバ(13)は円筒形であり、第一のチャンバ(12)を完全に取り囲むので、第一のチャンバ(12)によって生成された熱の非常に大きな部分が第二のチャンバ(13)へ排他的に向けられる。この解決策の変形例(図示せず)では、
図4の前記チャンバ間で反転が予見され、すなわち、第二の円筒形チャンバ(13)が、同じく円筒形の第一のチャンバ(12)によって完全に取り囲まれている。この状況では、第一のチャンバから発せられ、第二のチャンバ(13)に向けられる熱の割合に関して、より正確な制御を得ることが可能である。さらに、第一のチャンバ(12)が第二のチャンバ(13)を取り囲むことができ、これによっても、第一のチャンバ(12)から放出された熱を第二のチャンバ(13)がより有効に利用することができる。
【0036】
別の実施形態では、本発明の触媒改質デバイス(10)は、第一のチャンバ(12)で発生し第二のチャンバ(13)に伝達される熱量をより正確に制御できるようにするため、断熱カバー(23)で外装される。さらに、前記断熱カバー(23)は、前記第一のチャンバ(12)及び前記第二のチャンバ(13)を完全に又は部分的に取り囲んでいてもよい。
【0037】
別の図示されていない実施形態において、本発明の改質触媒デバイス(10)は、ターボ動力式ICE(1)に搭載されることが予見される場合、又はスーパーチャージャタイプのスーパーシードシステムを備える場合、排気ノズル(18)は、ターボチャージャ又はスーパーチャージャの上流の供給システム内の地点で接続されている。
【0038】
代替の実施形態(
図1参照)では、エアフィルタ(20)が設けられるが、その理由は、周囲空気が異物を混入して、第二のチャンバ(13)のプレナムの環境を損ない、その結果、この実施における反応触媒を損なうことを防止するためである。
【0039】
別の代替実施形態では、新しい燃料が過度に高温で供給システムに入り、固体不純物を伴うことを防止するために、改質生成物の出口でフィルタと統合された熱交換器が予見される。
【0040】
最後の代替案として、改質器におけるH2の生産を増加させることを目的として、水蒸気を第二のチャンバ(13)内に注入するために、水リザーバ(21)も設けられる。この場合、前記水リザーバ(21)は、エタノール燃料中に元々予見される水の量を増加させることを目的としており、改質器におけるH2の十分な生成を保証するには十分でない可能性がある。さらに、燃料エチルアルコール以外の他の燃料が改質される場合、この水の追加供給は、ガス状水素の生成のために必要な原料を保証することになる。
【0041】
最後に、本発明の方法は、ICEからの排気ガスの触媒変換によって発生する熱と、この同じ排気システム(1)において通常拒絶される熱とから、触媒を介して燃料を改質するステップを含む。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合型触媒改質器(10)であって、2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジング(11)を備え、第一のチャンバ(12)は、ICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、第二のチャンバ(13)は、燃料の改質を目的とし、前記第一のチャンバ(12)で発生した熱は熱伝導によって前記第二のチャンバ(13)に伝達され
、前記第二のチャンバ(13)が、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れるための吸気ノズル(16)と、改質される前記燃料を吸引できるように吸気マニホールド(4)の上流に接続された排気ノズル(18)と、前記吸気ノズル(16)の上流に配置され、改質される前記燃料を前記第二のチャンバ(13)に注入する燃料インジェクタ(17)と、前記第一のチャンバ(12)及び前記第二のチャンバ(13)を完全に、又は部分的に取り囲む断熱カバー(23)と、を備える、触媒改質器。
【請求項2】
前記第一のチャンバ(12)は、上流で、入口ノズル(14)からICE排気マニホールド(7)に接続され、出口ノズル(15)から車両の排気口(8)に接続され、前記第一のチャンバ(12)のプレナムは触媒メッシュで満たされている、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項3】
前記第一のチャンバ(12)が前記第二のチャンバ(13)を取り囲む、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項4】
前記第二のチャンバ(13)が前記第一のチャンバ(12)を取り囲む、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項5】
2つの第二のチャンバ(13)を備え、前記第二のチャンバ(13)のそれぞれは前記第一のチャンバ(12)に対して横方向に配置される、請求項1に記載の触媒改質器。
【請求項6】
前記第二のチャンバ(13)のそれぞれが、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れることを意図した吸気ノズル(16)と、前記吸気マニホールド(4)の上流に接続された排気ノズル(18)と、前記吸気ノズル(16)の上流に配置されて、改質される燃料をそれぞれの前記第二のチャンバ(13)に注入する燃料インジェクタ(17)と、を備える、請求項
5に記載の触媒改質器。
【請求項7】
請求項1に記載の統合型触媒改質器(10)によって実施されるタイプの燃料を改質するための方法であって、前記ICE(1)の前記排気ガスの触媒変換によって発生する熱と、排気口で通常拒絶される熱とからも、触媒を介して、前記燃料を改質するステップを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(ICE)のエンジン排気中の熱を最大限に利用するデバイスにおいて、燃料をエネルギー的に増加させるために、この燃料の一部を熱改質又は合成するシステムに統合された自動車用改質器及び触媒、又は触媒コンバータに関する。また、本発明は、燃料の触媒改質のための方法にも関する。内燃機関の従来の燃料(エタノール、メタノール、ガソリン、天然ガス又はディーゼル)は、本発明の範囲に含まれる。
【0002】
より具体的には、本発明は、触媒含有物(例えば、Pt、Pd、Rh等)を含浸させたデバイス内を、周囲空気及び/又は代替的に排気ガスの一部と共に流れる燃料の画分のエネルギー増大を促進することを意図しており、特定の温度下でこのデバイスは、元の燃料と比較して、より高い発熱量を有する化合物の生成を促進させる。このように、このプロセスに送られる蒸気の形の燃料の一部は、ICEに入る空気/燃料混合物と混合されるエネルギー含有量が高くなる。したがって、エネルギー含有量が高いために、好ましくはエタノール(又は他の燃料)で動作するICEの燃焼プロセスが改善され、エネルギー効率が向上し、温室効果ガス排出量と汚染物質のレベルが減少することになる。
【背景技術】
【0003】
ガソリンのエネルギー含有量、すなわち発熱量は、エタノールのそれよりも約30%大きいことは公知である。したがって、内燃機関がガソリンで運転する場合、エタノールで運転する場合と比較して燃料消費量が少なく、すなわち、自律性が高い。この差は、2つの燃料のエネルギー差に比例する。
【0004】
この問題を最小化するために、当技術分野で知られている代替案は、エタノールのいわゆる「改質」を提案するものである。科学文献及び特許文献には、主に水素(H2)を得るためのエタノールの熱改質に関連するいくつかのシステム又は方法論が示されており、これらの文献は、常に、ICEの排気中に放散される熱を利用する改質システム又はデバイスを採用している。この技術に関する文献は、2013年9月18日に公開された非特許文献1に見出すことができる。特許文献1は、内燃エンジンに適用される燃料を改質するためのコンパクトな触媒デバイスから、液相のアルコールを触媒的に変換するためのプロセスを教示している。
【0005】
これらの公知の解決策では、2つの別々のデバイスがICE排気システムに設けられ、排出レベルを低減するための従来の触媒コンバータと、主にH2の獲得を促進するための改質器とが設けられている。この解決策では、改質器の加熱とそれに伴う起動は、その内部で、改質器に供給されるエタノールからH2を得るための理想的な温度にその改質器が達するように、加熱された排気ガスの通過に依存している。すなわち、改質器によって促進される触媒反応は、ICE排気ガスによって生成される特定の温度以降にのみ開始されるのである。
【0006】
しかしながら、エタノール改質システムのこの構成には、いくつかの望ましくない効果を伴っている。例えば、このシステムには、排気ガスの一部を改質器の内部に導くための全ての支持体(パイプ及びバルブ)に加えて、改質器が追加されるために、排気システムがますます複雑になる。
【0007】
さらに、改質器を加熱し、熱改質反応にガスを供給するために排気ガスに排他的に依存することは、空気/燃料混合物と共に不活性ガス(例えばCO2)の混合を生じさせ、この混合ガスは、H2の生成が不活性ガスの存在を補償するのに十分でなければ、燃焼を損ねる可能性がある。これらのシステムでは、排気ガスが通過するにもかかわらず、エタノールの熱改質反応に理想的な温度は、エンジン運転条件の変動が改質器内の温度の安定性を保証しないため、H2の連続生産に望ましい形で維持されず、それによって、システム性能が制限される。
【0008】
非特許文献2は、2007年9月16日から20日にかけて、イタリアのカプリ島で開催された第8回国際会議の際に行われた講演を報告したもので、その著者らは、「On board Exhaust Gas Reforming of Gasoline using Integrated Reformer & TWC」と題する著作を採択している。この改質器において、この発明者らは、燃料改質器において触媒によって生成された熱の一部を使用するために、触媒(TWC)と直接接触するモノリシック環状燃料改質器を有する触媒を含むことを提案する。さらに、触媒と改質器のアセンブリは、TWC触媒への外部チャンバを画定するために、円筒形のケーシングで取り囲まれている。エンジンからの排気ガスは、TWC触媒の内部チャンバと改質器を収容する外部チャンバとに分離され、比例して導かれる。改質器の上流には、改質する燃料(この場合はガソリン)を注入するポイントもある。最後に、第一の出口がTWC触媒によって放出されたガスを排気システムに導き、第二の出口が改質器内の改質燃料をエンジンの吸気口に向けて放出する。この発明者らによる構造提案は、このテストの目標を達成する。つまり、「制御された」寸法の構造からの排気ガスからの燃料の改質が可能になる。しかしながら、この発明者らが提案した解決策は、改質器が燃料と排気ガスの組み合わせから動作するため、改質ガスには大量の不活性ガスが含まれ(この刊行物の項目2を参照)、改質したガスを内燃機関の吸気口に注入する利点を刺激するので、高効率とは言えない。
【0009】
非特許文献3は、「Improved Thermal Efficiency using Hydrous Ethanol Reforming in Advanced Spark-Ignition Engines」に関連する。提案された研究では、著者は一連のテストを実行して、具体的に水和エタノールを改質する効率と、この改質の生成物であるH
2
とCO
2
をエンジンの吸気口に注入する効率を検証している。エタノールが触媒(Pt/Al
2
O
3
)を使用して反応ライン内を循環する、ラジエータと同様の熱交換器(図7を参照)の使用を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Atsushi Shimada and Takao Ishikawa, “Improved Thermal Efficiency Using Hydrous Ethanol Reforming in SI Engines”, SAE Technical Paper 2013-24-0118,2013年9月8日
【非特許文献2】M. Ashur, J. Misztal, M. L. Wyszynski, A. Tsolakis, H. M. Xu, J. Qiao, and S. Golunski, “On board Exhaust Gas Reforming of Gasoline using Integrated Reformer & TWC”, SAE 2007-24-0078,2007年9月16日~20日
【非特許文献3】Atsushi Shimada, Yuzo Shirakawa, and Takao Ishikawa, “Improved Thermal Efficiency using Hydrous Ethanol Reforming in Advanced Spark-Ignition Engines”, SAE 2016-01-2262,2016年11月17日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の第一の目的は、内燃機関によるエネルギー収率の向上及び汚染物質排出の低減を可能にするために、燃料のエネルギー増大を促進するように設計されたデバイスである。
【0013】
本発明の補完的な目的には、単一の機器に統合された改質器と触媒デバイスが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これら及び他の目的は、少なくとも2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジングを備える統合型自動車用改質器及び触媒デバイスから達成及び充足され、第一のチャンバがICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、少なくとも1つの第二のチャンバが燃料の改質を目的とし、第一のチャンバで発生した熱は、熱伝導によって第二のチャンバに伝達される。
【0015】
これら及び他の目的は、ICE(1)からの排気ガスの触媒変換によって発生した熱と、排気ガスにおいて通常拒絶される熱とからも、触媒を介して燃料を改質するステップを含む燃料改質方法によって達成され、充足される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデバイスの構成的態様について、燃料エネルギーを増加させるための化合物の生成を伴う改質システムは、車両の触媒コンバータを改質器に統合することを予見し、したがって、発生した熱を最大限に利用することが可能になる。触媒コンバータの熱は、その動作(有害な排気ガスの触媒変換による発熱化学反応)により発生する。このように、そして本発明のデバイスでは、内燃機関が排気を通して通常拒絶する熱に加えて、触媒コンバータの活動によって発生する熱も利用される。燃料の熱改質のためには適切な温度が必要であり、改質器を触媒コンバータに統合した状態では、熱の利用、ひいては適切な温度の維持が容易に行われることを想起されたい。
【0017】
一般に、本発明は、「フレックス燃料」エンジンの使用をより現実的なものとし、この燃料による性能及び自律性の改善により、エタノールの使用の増加をより魅力的なものとすることに寄与することを目的としている。一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)及びアルデヒド等の他の汚染ガス排出の他に、二酸化炭素(CO2)の排出レベル、したがって燃料消費量を低減することに加え、具体的には、エタノールの燃焼によるCO2の場合、光合成によって自然再生が起こり、温室効果の問題が最小限に抑えられる。しかしながら、メタン(CH4)や亜酸化窒素(N2O)等、温室効果を促進する他のガスも削減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、好ましい実施形態の詳細な説明に照らしてより良く理解され、その好ましい実施形態は、添付の図面によってサポートされ、説明されており、単なる例示と指導の目的で提示されたものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
【
図1】本発明のシステムに直接関連する要素を示す内燃エンジンの概略図である。
【
図2】本発明による触媒改質器システムの一実施形態を示す概略図である。
【
図3】本発明による触媒改質器システムの第二の実施形態の概略図であり、この場合、2つの燃料改質器が、触媒の両側に1つずつ設けられている。
【
図4】本発明による触媒改質器システムの第三の実施形態の概略図であり、この場合、改質器は、自動車用触媒の中央部に配置され、改質器が完全に半径方向に関与している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面によれば、(10)で、本発明による改質触媒システム又はデバイスを示し、これは、自動車の内燃機関(1)、すなわちICEに結合されることを意図している。
図1を特に参照すると、ICE(1)は、内部にシリンダ(3)を画定するブロック(2)を含む。この混合気は、間接注入システムの場合は吸気マニホールド(4)の上流に、直接注入システムの場合は各シリンダ(3)の内部に形成することができる。この目的のために、ECU(5)又は電子センターが、ドライバーの要求と(吸気口の負圧とバタフライ(6)の位置の関数で)システムに流入する新鮮な空気の流れに従って、インジェクタ(9)を通して一定量の燃料を供給する責任を負う。
【0021】
このようにして導入された空気/燃料混合物の燃焼後、排気ガスは、排気マニホールド(7)から排出され、その下流には、排気ガス中の残留O2量を決定し、したがって燃焼品質を決定するためのラムダプローブ(図示せず)が設けられ、この情報はECU(5)に送られ、導入されるべき空気/燃料混合物を調節するのに使用される。
【0022】
従来のシステムでは、排気ガスは、次に車両の排気口(8)を通過し、最も有害な化学形態、例えば、酸化されてCO2となる一酸化炭素、同じく酸化されてCO2とH2Oとなる炭化水素等を除去するために排気ガスを処理する触媒、又は触媒コンバータを通過しないわけにはいかない。従来から触媒で行われている別の反応には、N2及びO2の形で排出されるNOxの触媒還元がある。また、既知のように、このような触媒反応が起こるためには最低の初期温度が必要であるにもかかわらず、これらの反応は発熱性である。
【0023】
したがって、本発明は、特にエタノール燃料、又はエタノールを含む燃料混合物の燃料改質器に触媒を統合する触媒システム、又は触媒改質デバイス(10)を構成し、自動車用触媒、又は触媒コンバータによって発生する熱を燃料改質器によって最大限に利用するようにすることを目的としている。本明細書では、燃料としてエタノールについて具体的に言及しているが、本発明の触媒改質器の同じ概念及び構造は、メタノール、天然ガス又は圧縮天然ガス(CNG)、ガソリン及びディーゼル等の他の燃料についても同様に実施できることは、この分野の技術者にとって明らかである。
【0024】
図2の実施形態に特に示されているように、本発明のデバイス(10)は、2つの個別かつ隣接するチャンバを取り囲んで規定するハウジング(11)によって外的に規定されており、第一のチャンバ(12)は、ICEからの排気ガスの触媒変換を目的とし、第二のチャンバ(13)は、燃料アルコールの改質を目的としている。
【0025】
より具体的には、第一のチャンバ(12)は、入口ノズル(14)からICEの前記排気マニホールド(7)に上流で接続される。第一のチャンバ(12)のプレナムは、触媒メッシュで満たされており、ICEからの排気ガスがその中を流れるとき、このメッシュに分散された触媒が、排気ガスの成分の酸化又は還元の反応を、上述したより有害でない方法へと触媒化し、そのように処理されて最小限に抑えられたガスは、その後、出口ノズル(15)に接続する下流の排気口(8)から、デバイスから排出されるようになっている。
【0026】
これらの反応は発熱性であるので、第一のチャンバ(12)の内部環境全体が加熱され、したがって、熱伝達によって第二のチャンバ(13)も加熱される。
【0027】
前記第二のチャンバ(13)に関して具体的には、第一のチャンバのメッシュと同様の触媒メッシュで満たされたプレナムからなり、すなわち、パラジウム、白金、ロジウム、銀及び/又は他の適切な触媒であってもよい。第二のチャンバ(13)の吸気ノズル(16)は、周囲空気(あるいは排気ガスの一部)と改質されるエタノールの両方を受け入れるように設計されている。好ましくは、周囲空気は、吸気ノズル(16)に入る前に、フィルタ(20)を介して、濾過される。前記吸気ノズル(16)は、新鮮な周囲空気の流れを受け取るために、この目的のために特定の燃料インジェクタ(17)を介して気化した燃料アルコールの流れと局所的に結合させるように接続することができる。この実施形態では、前記燃料インジェクタ(17)は、燃料ポンプ出口(図示せず)に接続されるか、又はシリンダ(3)に供給するための燃料インジェクタ(9)が搭載される燃料ギャラリー(図示せず)の特定の出口に直接接続される。あるいは、前記吸気ノズル(16)は、触媒メッシュで行われる触媒反応に関心のある化学種からなる排気ガスの部分流を受け取ることもできる。
【0028】
第二のチャンバ(13)のプレナムにおいて、エタノールと周囲空気との間の混合物の流れ、及び最終的には排気ガスの流れが触媒される。このような反応は、前記第一のチャンバ(12)からそれに隣接する第二のチャンバ(13)に向かって起こる熱伝達により、第二のチャンバ(13)のプレナムが適切に加熱されることに起因して可能になる。第二のチャンバ(13)内で触媒される反応の結果として、前記第二のチャンバ(13)の動作温度に依存して、したがって、第一のチャンバ(12)から第二のチャンバ(13)に発せられる熱の流れに依存して、新しい化学種(当技術分野で既知)が形成される。
【0029】
以下の表1は、関心のある化合物と、これらの関心のある化合物の製造に必要な触媒と、触媒システムが前記関心のある化合物を合成することができるのに必要な動作温度とを関連付けるために、技術からの情報を示し、編集したものである。
【表1】
【0030】
当該分野の技術者が容易に理解できるように、第二のチャンバ(13)のプレナムで促進される触媒反応から得られる化学種は、燃料エタノールと比較して、より大きなエネルギー効率を有する化合物の合成につながる。よく知られているように、化学物質のエネルギー収率は、その分子内に存在する化学結合の量と直接的に関連している。
【0031】
こうして、このように合成された化合物は、第二のチャンバ(13)の排気ノズル(18)から流れ、その後、吸気マニホールド(4)へ、又はその上流へ導かれ、続いてICE(1)のシリンダ(3)内に分配される。より具体的には、前記排気ノズル(18)は、供給システムにおいて、吸気マニホールド(4)から上流で、バタフライバルブ(6)から下流で、特に、窪み領域に接続され、このようにして、改質燃料は、実際には、車両の燃料システムによって吸引される。
【0032】
本発明のシステムに関連する他の考慮事項は、蒸発を促進し、改質率を高めるために、エタノール燃料を粉砕した形で、より好ましくは粉砕して予備加熱した状態で、第二のチャンバ(13)のプレナムに導入する必要性を含む。このことは、主にモータ(1)の始動後の初期段階においてである。この目的のために、前記燃料インジェクタ(17)によって注入されるアルコール燃料は、シリンダ(3)からの燃料の燃料インジェクタ(9)で用いられるものと同様の電気燃料予熱システム(コールドスタートシステム)を構成してもよく、及び/又はそれぞれのパイプ間の対流によって伝えられるICE排気ガスの熱を用いて加熱されることが可能である。同様に、改質器に導入される周囲空気、あるいは周囲空気と排気ガスの一部との混合物は、電気的に予熱することができ、及び/又はそれぞれのパイプの間の接触によって伝達されるICE排気ガスの熱を使用して加熱することができる。予熱は、燃料、特にエタノールを改質チャンバに注入する際の蒸発の保証を高めるために不可欠であり、そのチャンバもまた加熱されることに留意されたい。ICEの冷間運転の開始時に、ICE排気がこれら2つの流体に熱を伝達するのに十分な温度でない間、エタノール及び周囲空気のための電気予熱システムを作動させたままにすることができる。
【0033】
改質からの化合物の温度が高くなり得るので、このエネルギー的に増加した画分は、ICE吸気システムに導入される前に、熱交換器(19)を通過させることができる。同様に、ICE吸気システムに改質からの化合物が入る前に、不純物フィルタ(22)を含むと便利である。
【0034】
代替の実施形態では、本発明の触媒改質システムは、燃料改質のための最小運転条件に達した後(ICEの推定加熱時間)だけ、燃料の改質を開始するために、ICEの開始と関連して時間設定することができる。
【0035】
代替の実施形態では、本発明の触媒改質システムは、冷却水温度及び/又は周囲空気温度のようなICEの機能パラメータの識別(冷エンジン識別)に合わせて条件付けすることもできる。
【0036】
別の実施形態代替案では、2つの第二のチャンバ(13)が設けられ、第二のチャンバ(13)のそれぞれは、第一のチャンバ(12)に対して横方向に配置されている。各第二のチャンバ(13)は、触媒メッシュで満たされたプレナムと、周囲空気と改質される燃料の両方を受け入れることを意図した吸気ノズル(16)と、吸気マニホールド(4)の上流に接続された排気ノズル(18)と、吸気ノズル(16)の上流に配置されてそれぞれの第二のチャンバ(13)に改質される燃料を注入する燃料インジェクタ(17)と、を備える。
図3が示すように、この解決手段では、2つの改質器、すなわち、2つの第二のチャンバ(13)が触媒、又は第一のチャンバ(12)に対して反対側に配置されている。改質器の各第二のチャンバ(13)は、この場合、それぞれの吸気ノズル(16)とそれぞれのインジェクタ(17)を有する。この解決策では、第一のチャンバ(12)から第二のチャンバ(13)への熱交換に関連して、増加がある。
【0037】
また、代替として、第一のチャンバ(12)は第二のチャンバ(13)を取り囲むか、あるいは第二のチャンバ(13)は第一のチャンバ(12)を取り囲む。
図4に示されるこの構造の代替案では、第二のチャンバ(13)は円筒形であり、第一のチャンバ(12)を完全に取り囲むので、第一のチャンバ(12)によって生成された熱の非常に大きな部分が第二のチャンバ(13)へ排他的に向けられる。この解決策の変形例(図示せず)では、
図4の前記チャンバ間で反転が予見され、すなわち、第二の円筒形チャンバ(13)が、同じく円筒形の第一のチャンバ(12)によって完全に取り囲まれている。この状況では、第一のチャンバから発せられ、第二のチャンバ(13)に向けられる熱の割合に関して、より正確な制御を得ることが可能である。さらに、第一のチャンバ(12)が第二のチャンバ(13)を取り囲むことができ、これによっても、第一のチャンバ(12)から放出された熱を第二のチャンバ(13)がより有効に利用することができる。
【0038】
別の実施形態では、本発明の触媒改質デバイス(10)は、第一のチャンバ(12)で発生し第二のチャンバ(13)に伝達される熱量をより正確に制御できるようにするため、断熱カバー(23)で外装される。さらに、前記断熱カバー(23)は、前記第一のチャンバ(12)及び前記第二のチャンバ(13)を完全に又は部分的に取り囲んでいてもよい。
【0039】
別の図示されていない実施形態において、本発明の改質触媒デバイス(10)は、ターボ動力式ICE(1)に搭載されることが予見される場合、又はスーパーチャージャタイプのスーパーシードシステムを備える場合、排気ノズル(18)は、ターボチャージャ又はスーパーチャージャの上流の供給システム内の地点で接続されている。
【0040】
代替の実施形態(
図1参照)では、エアフィルタ(20)が設けられるが、その理由は、周囲空気が異物を混入して、第二のチャンバ(13)のプレナムの環境を損ない、その結果、この実施における反応触媒を損なうことを防止するためである。
【0041】
別の代替実施形態では、新しい燃料が過度に高温で供給システムに入り、固体不純物を伴うことを防止するために、改質生成物の出口でフィルタと統合された熱交換器が予見される。
【0042】
最後の代替案として、改質器におけるH2の生産を増加させることを目的として、水蒸気を第二のチャンバ(13)内に注入するために、水リザーバ(21)も設けられる。この場合、前記水リザーバ(21)は、エタノール燃料中に元々予見される水の量を増加させることを目的としており、改質器におけるH2の十分な生成を保証するには十分でない可能性がある。さらに、燃料エチルアルコール以外の他の燃料が改質される場合、この水の追加供給は、ガス状水素の生成のために必要な原料を保証することになる。
【0043】
最後に、本発明の方法は、ICEからの排気ガスの触媒変換によって発生する熱と、この同じ排気システム(1)において通常拒絶される熱とから、触媒を介して燃料を改質するステップを含む。
【国際調査報告】