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特表2023-527301着色接点を有する電子チップカードモジュール用電気回路を製造する方法およびこの方法によって作成される電気回路
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  • 特表-着色接点を有する電子チップカードモジュール用電気回路を製造する方法およびこの方法によって作成される電気回路 図1
  • 特表-着色接点を有する電子チップカードモジュール用電気回路を製造する方法およびこの方法によって作成される電気回路 図2
  • 特表-着色接点を有する電子チップカードモジュール用電気回路を製造する方法およびこの方法によって作成される電気回路 図3
  • 特表-着色接点を有する電子チップカードモジュール用電気回路を製造する方法およびこの方法によって作成される電気回路 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】着色接点を有する電子チップカードモジュール用電気回路を製造する方法およびこの方法によって作成される電気回路
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20230621BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20230621BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20230621BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20230621BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 164
G06K19/077 148
H01L23/14 M
C23C14/06 N
B42D25/305 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022570686
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063535
(87)【国際公開番号】W WO2021234118
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2005396
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512063092
【氏名又は名称】リンゼンス・ホールディング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ヴァサール
(72)【発明者】
【氏名】カトリーヌ・ラムサミー
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・グレミオン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ミショーデ
【テーマコード(参考)】
2C005
4K029
【Fターム(参考)】
2C005MA04
2C005MB01
2C005MB08
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA02
4K029BA07
4K029BA11
4K029BA16
4K029BA17
4K029BB02
4K029CA05
4K029CA06
4K029DC03
4K029DC16
(57)【要約】
本発明は、チップカードの中に一体化されることが意図されるモジュールを作るための、たとえば印刷回路タイプの電気回路に関する。このモジュールは、読出/書込システムとの間の、電気接点またはコネクタ(3)、すなわちチップの接続および通信用の区域を有する。それらに一般的に使用される金メッキまたは銀メッキしたものと異なる色を与えるために、これらの電気接点区域(3)は、Xタイプの化合物を含む表面層(14)で少なくとも部分的にカバーされ、Xが、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、またはScであり、p,q>0、およびr≧0、および/またはs≧0であってよい。本発明は、そのような電気回路を製造するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にチップカードモジュールを作るための電気接点を有する電気回路であって、
誘電体基板(4)上に載る導電性材料のシート(10)を有する誘電体基板(4)と、
導電性材料の前記シート(10)上に直接または間接的に載る導電性材料の少なくとも1つの層(14)であって、導電性材料のこの層(14)が少なくとも1つの導電性トラック(6)の表面の少なくとも1つの領域をカバーする表面層を形成し、この導電性トラック(6)が導電性材料の前記シート(10)に形成され、前記電気接点を形成するように構成される、少なくとも1つの層と
を備え、
前記表面層(14)が、Xタイプの化合物を含み、Xが、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、およびScからなるリスト中に含まれ、ここでpおよびqが真に正であり、rおよびsが、そのうちの少なくとも1つがゼロ以上である数であることを特徴とする、電気回路。
【請求項2】
前記表面層(14)が、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、またはScからなるリスト中に含まれる金属のうちの少なくとも1つを重量で30%~65%、窒素を重量で0%~40%、酸素を重量で15%~55%、炭素を重量で0%~6%含む、請求項1に記載の電気回路。
【請求項3】
前記表面層(14)の下にある結合層(13)を備え、この結合層(13)が、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の電気回路。
【請求項4】
10から1000ナノメートルの間の厚さを有する結合層(13)および100から2000ナノメートルの間の厚さを有する表面層(14)を備える、請求項3に記載の電気回路。
【請求項5】
X=Tiである、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項6】
カード本体と、前記カード本体に形成される空洞中に挿入されるモジュール(2)とを備え、このモジュール(2)が、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気回路を備えるコネクタ(3)を備える、チップカード。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気回路の製造のため専用に設計された製造方法であって、
誘電体基板(4)上に載る導電性材料のシート(10)を有する前記誘電体基板(4)を設けるステップと、
導電性材料の前記シート(10)上に導電性材料の少なくとも1つの層(14)を堆積するステップであって、導電性材料のこの層(14)が少なくとも1つの導電性トラック(6)の表面の少なくとも1つの領域をカバーする表面層(14)を形成し、この導電性トラック(6)が導電性材料の前記シート(10)に形成され、前記電気接点を形成するように構成される、ステップと
を含み、
前記表面層(14)の前記形成が、少なくとも1つの金属ターゲットからの物理的気相堆積のステップを含み、その組成物には、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つが含まれ、気体の雰囲気には、以下の元素、すなわち、アルゴン、窒素、および酸素のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記表面層(14)が、Xタイプの化合物を含み、Xが、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、およびScからなるリスト中に含まれ、ここでpおよびqが真に正であり、rおよびsが、そのうちの少なくとも1つがゼロ以上である数である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面層(14)が結合層(13)上に堆積され、結合層(13)自体がアルゴンを含む作動気体の雰囲気中で物理的気相堆積で形成され、ここでは少なくとも1つの金属ターゲットが使用され、その組成には、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つが含まれる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの導電性トラック(6)間にこれらの導電性トラック(6)の接続を断つために配置される前記表面層(14)および前記結合層(13)をレーザエッチングするステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リードフレームを前記誘電体基板(4)に転写するステップの前のステップの過程において、前記結合層(13)および前記表面層(14)が、導電性材料の前記シート(10)中に形成される前記リードフレーム上に堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
事前に支持体上に堆積された前記表面層(14)がレーザを用いて導電性材料の前記シート(10)に転写されるステップの過程において、少なくとも1つの導電性トラック(6)の表面の少なくとも1つの領域上に、前記表面層(14)が選択的に堆積される、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
導電性材料の前記シート(10)のある領域上にだけ前記表面層(14)を選択的に堆積するために、前記表面層(14)の前記形成の前に、マスクを作るステップ(800)を含む。請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの接点または導電性トラックを有する電気回路の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本文書では、本発明にしたがった電気回路の用途の例が、チップカード分野から取られるが、この例は、他の電気回路の用途に容易に移転可能である。とりわけ、本発明は、消費者によって使用されるときに、完成した製品上で導電性トラックを見ることができるすべての場合で特に有利である。たとえば、SDメモリカードまたはUSBスティックのコネクタ用の着色接点を製造することによって、さらなる美的価値を提供することもできる。
【0003】
チップカードは、読出/書込システムとの間の、電気接点またはコネクタ、すなわちモジュールに取り付けられる少なくとも1つの電子チップの接続および通信用の区域を有する電子モジュールを有する。
【0004】
具体的には、チップカードは、一般的に、カードの主な部分を構成する、たとえばプラスチック材料から作られる比較的剛性の支持体によって構成され、その中に別個に製造された電子モジュールが組み込まれる。この電子モジュールは、支持体の面上に、電子チップ(集積回路)、および、たとえば電子モジュールと同一平面の導電性金属トラックによって形成される接点によって構成される、接続手段またはコネクタを備える一般的に可撓性の印刷回路を有する。
【0005】
チップカードは、クレジットカード、モバイル電話用SIMカード、乗車カード、身分証明書など複数の使用法を有する。
【0006】
接点と読出/書込デバイスのコネクタとの間に良好な電気伝導を有する必要性だけでなく、チップカード製造業者は、今では、接点の色をカードの色に一致させることを望んでいる。このため接点は、一般的に、金色仕上げを得るための金の層、または、銀色仕上げを得るための銀もしくはパラジウムの層のいずれかでカバーされる。
【0007】
より多くの色を得るため、文書US6259035B1中に記載されるような方法を使用することが可能である。この方法は、より広いスペクトルの色を得るため、金、パラジウム、または銀に基づいた溶液を使用することに依拠する。しかし、このタイプの方法は、ある種の色、特に黒または黒に近い色を得るのを可能にしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6259035号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
接点または導電性トラックの面の少なくとも部分上に、特にたとえば黒または黒に近い色といった、着色接点または導電性トラックを有するが、特に電気的接続を確立するのに好適な電気的機械的特性を依然として保持する電気回路を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、電気回路を製造するため、特にチップカードモジュールを作るための方法が提案され、本方法は、以下のステップすなわち、
-誘電体基板上に載る導電性材料のシートを有する誘電体基板を設けるステップと、
-導電性材料のシート上に導電性材料の少なくとも1つの層を堆積するステップであって、導電性材料のこの層が少なくとも1つの導電性トラックの表面の少なくとも1つの領域をカバーする表面層を形成し、この導電性トラックが導電性材料のシートに形成される、ステップと、を含む。
【0011】
この方法の過程において、表面層の形成は、少なくとも1つの金属ターゲットからの物理的気相堆積のステップを含み、その組成物には、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つが含まれ、雰囲気には、以下の元素、すなわち、アルゴン、窒素、および酸素のうちの少なくとも1つが含まれる。任意選択で、この雰囲気は、アルゴン、窒素、および酸素を含む。
【0012】
具体的には、このタイプの物理的気相堆積によって、本発明者は、黒に近いまたはもっと言えば黒である非常に暗い色だけを有するのでなく、特にチップカード分野、より具体的には、銀行用途のチップカードの分野で必要な仕様を満たすことが可能になる導電性および堅牢性も有する表面層を得ることができた。このタイプの物理的気相堆積によって、表面層用に他の色を得ることも可能となった。
【0013】
この方法は、互いに独立して考えられる、または、1つまたは複数の他のものと組み合わせた以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数の他のものを含む。
-表面層は、Xタイプの化合物から構成され、Xは、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、およびScからなるリスト中に含まれ、ここでpおよびqは真に正であり、rおよびsは、そのうちの少なくとも1つがゼロ以上である数である。
-表面層は結合層上に堆積され、結合層自体は、アルゴンを含む作動気体の雰囲気中で物理的気相堆積に基づいて形成され、ここでは少なくとも1つの金属ターゲットが使用され、その組成には、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つが含まれる。
-方法が、少なくとも2つの導電性トラック間にこれらの導電性トラックの接続を断つために配置される表面層および結合層をレーザエッチングするステップを含む。
-導電性グリッドを誘電体基板に転写するステップの前のステップの過程において、結合層および表面層が、導電性材料のシート中に形成される導電性グリッド(すなわち、リードフレーム技術の範囲で使用されるもの)上に堆積される。
-事前に支持体上に堆積された表面層がレーザを用いて導電性材料のシートに転写されるステップの過程において、少なくとも1つの導電性トラックの表面の少なくとも1つの領域上に、表面層が選択的に堆積される。
-方法が、導電性材料のシートのある領域上にだけ表面層を選択的に堆積するために、表面層の形成の前に、マスクを作るステップを含む。
【0014】
別の態様によれば、特にチップカードモジュールを作るための電気回路が提案される。たとえば、この電気回路は、上で言及した方法によって作られる。
【0015】
この回路は、
-誘電体基板上に載る導電性材料のシートを有する誘電体基板と、
-導電性材料のシート上に直接または間接的に載る導電性材料の少なくとも1つの層であって、導電性材料のこの層が少なくとも1つの導電性トラックの表面の少なくとも1つの領域をカバーする表面層を形成し、この導電性トラックが導電性材料のシートに形成される、少なくとも1つの層と、を備える。
【0016】
この回路では、表面層は、Xタイプの化合物を含み、Xは、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、およびScからなるリスト中に含まれ、ここでpおよびqは真に正であり、rおよびsは、そのうちの少なくとも1つがゼロ以上である数である。
【0017】
層のこの化学量論によって、着色した導電性コーティングを得ることが可能になる。この層の粗さが、回路に(とりわけ、黒色について)多少濃い外観、および多少つや消しの外観を与えることにも寄与することができる。
【0018】
さらに、この回路は、互いに独立して考えられる、または、1つまたは複数の他のものと組み合わせた以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数の他のものを有することができる。
-表面層が、以下のリストに含まれる金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つを重量で30%~65%、窒素を重量で0%~40%、酸素を重量で15%~55%、炭素を重量で0%~6%含む。
-回路は、表面層の下にある結合層を備え、この結合層は、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つを含む。
-回路は、10から1000ナノメートルの間の厚さを有する結合層を備える。たとえば、結合層の厚さは、結合層が本質的にチタンを含む場合700ナノメートルに近い。しかし、結合層は、任意選択で、たとえば10から200ナノメートルの間またはさらに10から100ナノメートルの間といったより薄い厚さを有することができ、100から2000ナノメートルの間の厚さを有する表面層は、たとえばこの厚さが300から400ナノメートルの間となる。
【0019】
上で言及した本発明の他の特徴、目的、および利点は、非限定の例として与えられる、以下の詳細な記載を読み、添付図面を参照すると明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明にしたがったモジュールの例を有するチップカードを示す概略斜視図である。
図2図1に示されたようなチップカードモジュール用のコネクタの例を示す概略部分断面図である。
図3図1に示されたようなチップカードモジュールのコネクタ用の電気回路の一部を示す概略上面図である。
図4】本発明にしたがった方法の実施形態の複数の例の様々なステップを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に図示される本発明にしたがった電気回路の用途の一例によれば、チップカード1が、コネクタ3を備えるモジュール2を有する。モジュール2は、一般的に、チップカード1の本体に形成される空洞の中に挿入される別個の要素の形で作られる。この要素は、PET、エポキシガラス、またはポリイミドなどから作られる、一般的に可撓性の誘電体基板4を有し(図2参照)、電子チップ(図示せず)がその後接続されるコネクタ3がその上に作られる。
【0022】
図3は、2つのコネクタ3を備える電気回路5の一部の例を図示する。各コネクタ3は、導電性トラック6によって形成される接触区域8を備える。図示される例では、片面上に、8個の電気接点7が導電性トラック6から作られる(片面回路)。任意選択で、コネクタが両面回路に対応する場合、他の面上に、他のトラックおよび/または接点を作ることができる。
【0023】
より具体的には、図2中のセクションに示されるように、コネクタ3(すなわち、本質的に、電子チップなしのモジュール)は、誘電体基板4、接着剤の層9、導電性材料のシート10、第1の中間層11、任意選択の第2の中間層12、任意選択の結合層13、および最後に表面層14によって形成される多層構造を有する。
【0024】
たとえば、誘電体基板4は、110マイクロメートルの厚さを有するエポキシガラスのストリップによって形成される。たとえば、導電性材料のシート10は、35マイクロメートルの厚さを有する銅または銅合金のシートによって形成される。たとえば、第1の中間層11は、1000から7000ナノメートルの厚さを有するニッケルの電着層によって形成される。たとえば、第2の中間層12は、1から300ナノメートルの厚さを有する電着パラジウムまたは金の層によって形成される。より一般的には、第1の中間層11および第2の中間層12は、たとえば電着によって作られ、パラジウム、銅、アルミニウム、鉄、金、およびニッケルを含むリスト中に含まれる金属のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0025】
結合層13は、本質的に、以下の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの少なくとも1つを含む金属層から構成される。この層は気相堆積される。表面層14は、本質的に、Xタイプの化合物から構成され、Xは、Hf、Ta、Zr、Nb、Mo、Cr、V、Ti、およびScからなるリスト中に含まれ、ここでpおよびqは真に正であり、rおよびsは、そのうちの少なくとも1つがゼロ以上である数である。この層は、以下のリスト中の金属、すなわち、クロム、ハフニウム、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バナジウム、チタン、およびスカンジウムのうちの1つを重量で30%~65%、窒素を重量で0%~40%、酸素を重量で15%~55%、ならびに炭素を重量で0%~6%有してやはり気相堆積される。結合層13は、たとえば、10から1000ナノメートルの間の厚さを有し、表面層14は、たとえば、100から1000ナノメートルの間の厚さを有する。
【0026】
図4は、コネクタ3を製造するための、本発明にしたがった方法の実施形態の複数の例の様々なステップを概略的に図示する。これらのステップは、
-導電性材料のシート10を設けるステップ100と、
-以下すなわち、
たとえば、エポキシガラス、PET、または、ポリイミドでできている基板4を設けるステップと、
接着剤の層9で基板4の片面をコーティングするステップと、
基板4および接着剤の層9を通して、接続ウェル15および任意選択で、電子チップが後で収容される空洞を作るために、その上に接着剤の層9が載る基板4に孔を開けるステップと、
導電性材料のシート10を、接着剤の層9でコーティングされた基板4上に、接続ウェル15および空洞を少なくとも部分的にカバーし、任意選択で、接着剤の層9を架橋結合して、積層するステップと、を含むステップ200と、
-導電性材料のシート10の中に導電性トラック6および/または接点7を形成するための、フォトリソグラフィステップ300と、
-たとえば電着によって、第1の中間層11および任意選択の第2の中間層12を堆積するステップ400と、
-任意選択の結合層13および表面層14を物理的気相堆積するステップ500と、
-導電性トラック6と接点7を互いに接続を断つため、領域16(図3)中の基板を露出させるように、接点7間に配置される領域16の上の結合層13および表面層14をレーザエッチングするステップ600であって、このステップについて、レーザが、たとえば、1から15ワットのパワーについて、直径が12から35マイクロメートルのスポット、および、各インパクト間で0から60マイクロメートルの間隔を有する、ステップ600と、
-(たとえば、コネクタ3毎に1つの電子チップといった)チップを転写する1つまたは複数のステップ700であって、前のステップの終わりで得られた電気回路5からコネクタ3などを別個に分離し、モジュール2の作成を実行し、および/または、そのようなモジュール2を有するチップカード1の仕上げを実行するステップ700と、を含む。
【0027】
代わりに、本方法の別の実施形態によれば、ステップ100からステップ500と同一または同様のステップを含む。しかし、ステップ400とステップ500の間で、電着した層11および12上に感光性樹脂の膜を堆積するステップを含むステップ800が実行される。この樹脂は、マスクを通過するように設計された放射にさらされ、次いで、導電性トラック6および接点7を露出するように現像され、導電性トラック6と接点7の間に配置される領域を保護する。したがって、任意選択の結合層13および表面層14の物理的気相堆積のステップ500の期間に、これらの層は、導電性であるように意図される領域(導電性トラック6および接点7)にだけ堆積される。もちろん、結合層13および表面層14の物理的気相堆積のステップ500の期間に、導電性トラック6と接点7の間に配置される領域16を保護した樹脂は、その後、ステップ900の期間に除去される。このステップでは、たとえば、腐食溶液は、摂氏15度と50度の間の温度および1から5バールの圧力で、酸性または塩基性であってよい。
【0028】
代わりに、本方法のさらに別の実施形態によれば、ステップ100で設けられた導電性材料のシート10は、導電性材料のシート10中に導電性トラック6および/または接点7を形成するように、ステップ300Bで切り取られる。言い換えると、ステップ300Bによって、リードフレームを作ることが可能になる。次に、ステップ500の期間に、リードフレーム上の物理的気相堆積によって、任意選択の結合層13および表面層14が作られる。次いで、たとえば、エポキシガラス、PET、またはポリイミドでできている基板4を設けるステップと、基板4の片面を接着剤の層9でコーティングするステップと、基板4および接着剤の層9を通して、接続ウェル15および任意選択で電子チップが後で収容される空洞を作るために、その上に接着剤の層9が載る基板4に孔を開けるステップと、接着剤の層9でコーティングされた基板4上にリードフレームを積層し、少なくとも部分的に接続ウェル15および空洞をカバーするステップと、任意選択で接着剤の層9を架橋結合するステップとを含む、ステップ200Bが実行される。こうして得られた構造は、次いで、上で言及した1つまたは複数のステップ700を受けることができる。任意選択の結合層13および表面層14が、上で記載した第1の実施形態でのように基板4上ではなく、リードフレーム上にだけ堆積されるために、この場合には、ステップ600は必要でない。リードフレームは、導電性トラック6および接点7が互いから適切に分離されるために、パンチ/ダイ穿孔工具によって最初に切り取ることができる。
【0029】
本方法のさらに別の実施形態によれば、上で述べたステップ100からステップ400が実行される。並行して、たとえば、各々がPETから作られる支持体上で、一方では結合層13、他方では表面層14の物理的気相堆積のステップ500C1が実行される。次に、各々がそのPET支持体上の任意選択の結合層13、次いで表面層14を、導電性層14でカバーすることが意図される領域に、すなわち基本的に、導電性トラック6および接点7に転写するように、選択的レーザ転写のステップ500C2が実行される。このステップ500C2では、レーザが、1から15ワットのパワーについて、直径が12から35マイクロメートルのスポット、および、2つのインパクト間で0から60マイクロメートルの間隔を有する。上で言及した1つまたは複数のステップ700は、次いで、モジュール2を作るため、および/または、そのようなモジュール2を有するチップカード1を仕上げるために続けて実行することができる。
【0030】
表面層14の物理的気相堆積は、たとえば、100から700000ワットのパワーおよび平方メートル当たり10から200アンペアの電流密度を有する、直流、パルス状直流、または無線周波数の電流を使用するマグネトロンスパッタリングデバイスを用いて実行される。堆積は、1ミリバールと10x10-3ミリバールの間の残留圧力を有する真空中で実行される。
【0031】
代わりに、表面層14のこの物理的気相堆積は、熱蒸着または陰極アーク物理的気相堆積(CAPVD)技法を用いて実施することができる。
【0032】
表面層14の物理的気相堆積は、100から600立方センチメートル毎分(SCCM)の流量の作動気体としてのアルゴン、10から150立方センチメートル毎分の窒素、1から100立方センチメートル毎分の酸素、および1から20立方センチメートル毎分のアセチレン(炭素堆積モードが気体を使用する場合。これは、たとえば、黒または黒に近い色を有する表面層14を得ることを目的とする堆積に関係する。他の色では、アセチレンが常に必要なわけではない。)で実行される。
【0033】
表面層14の物理的気相堆積は、導電性トラック6および接点7上に直接行われる、または導電性トラック6および接点7への転写の前に支持体上に行われるが、40から70立方センチメートル毎分の流量を有する作動気体としてのアルゴンの流れを使用することによる、反応性物理的気相堆積方法を用いて実行することもできる。黒または黒に近い色を有する表面層14を得るために、100から600立方センチメートル毎分の流量のアルゴンの流れの下でスパッタされるグラファイトターゲットを用いて、または、1から20立方センチメートル毎分の流量を有するアセチレンガスプラズマのいずれかで、炭素の追加が実行される。さらに、このスパッタ手順期間に、窒素と酸素から構成される気体混合物でプラズマが形成される。
【0034】
すべてのこれらの実施形態からもたらされる表面層14を有する導電性トラック6または接点7は、有利なことに500ミリオーム未満の接触抵抗を有し、銀行用途で使用されるチップカードに要求されるものなどといった塩水噴霧腐食試験に対して高い抵抗性となる。
【0035】
本方法の上で記載した代替実施形態によれば、感光性樹脂マスクを使用することによって、黄色い背景(金の下層)または灰色の背景(パラジウム、銀、またはニッケルの下層)上の(表面層および任意選択の結合層を用いた)ロゴなどの着色パターンを作ることが可能になる。そのようなパターンは、グラフィック的な個性化、またはコピーに対する保護の目的で作ることができる。
【0036】
(実施例)
(実施例1)黒で堆積
の表面層14の堆積は、反応性物理的気相堆積(上を参照)によって実行される。この堆積は、たとえば、4キロワットのパワーを有するスパッタリングデバイスを用いて実行される。この堆積は、約700ナノメートルのチタン結合層13上で実行される(それ自体は、ニッケル次いで金でカバーされる銅基板上に載る)。この表面層14は、約300から400ナノメートルに相当する。この表面層14の堆積は、作動気体としてのアルゴンおよびとりわけ二窒素、二酸素、および炭素の存在中で実行される。この堆積は、10-2ミリバールに近い残留圧力を有する真空中で実行される。
【0037】
表面層の組成を結合層13のものから区別するのを可能にしないエネルギー分散分光分析(EDX)によって行われる測定によって、以下のそれぞれの重量濃度、すなわち、チタン61.8%、酸素17.5%、窒素16.7%、および炭素4.0%が与えられる。
【0038】
得られた接触抵抗は、ISO9227規格にしたがった、24hの塩水噴霧試験の前後で、500ミリオーム未満である。
【0039】
この実施形態から得られる表面層14は、IEC機関(国際照明委員会)によって導入されたCIELAB色空間中の40未満の指数Lを有する色彩を有する。同様に、この色空間中の指数aおよびbは、絶対値でゼロに近く5未満である。
【0040】
(実施例2)
緑または青での堆積
の表面層14の堆積は、PVD(物理的気相堆積)によって実行される。この堆積は、たとえば、20キロワットのパワーを有する(マグネトロンタイプの)スパッタリングデバイスを用いて実行される。この堆積は、チタンの結合層13なしで実行される。したがって、表面層14は、ニッケル次いで金でカバーされる銅基板上に直接載る。この表面層14は、約50から100ナノメートルに相当する。この表面層14の堆積は、作動気体としてのアルゴンおよび二窒素および二酸素の存在中で実行される。この堆積は、4x10-3ミリバールに近い残留圧力を有する真空中で実行される。
【0041】
エネルギー分散分光分析によって行われる測定によって、以下のそれぞれの重量濃度が与えられる。
(a)緑では、チタン62%、酸素38%、窒素微量に存在。
(b)青では、チタン51%、酸素49%、窒素微量に存在。
【0042】
得られた接触抵抗は、すべてのこれらの場合において、500ミリオーム未満である。
【符号の説明】
【0043】
1 チップカード
2 モジュール
3 コネクタ
4 誘電体基板
5 電気回路
6 導電性トラック
7 電気接点
8 接触区域
9 接着剤の層
10 導電性材料のシート
11 第1の中間層
12 第2の中間層
13 結合層
14 表面層
15 接続ウェル
16 領域
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】