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特表2023-527312ポリマレエート及び非ホウ酸塩緩衝剤を用いた閉ループ冷却水腐食抑制
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ポリマレエート及び非ホウ酸塩緩衝剤を用いた閉ループ冷却水腐食抑制
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/12 20060101AFI20230621BHJP
   C23F 11/14 20060101ALI20230621BHJP
   C23F 11/18 20060101ALI20230621BHJP
   C07C 57/15 20060101ALN20230621BHJP
   C07C 57/02 20060101ALN20230621BHJP
【FI】
C23F11/12 101
C23F11/14
C23F11/18 101
C07C57/15
C07C57/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571246
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021030916
(87)【国際公開番号】W WO2021242492
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】62/704,771
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ピンチー チェン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル パトリック ウェベルスキー,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】チャンチャン イン
【テーマコード(参考)】
4H006
4K062
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB90
4H006BS10
4K062AA03
4K062BA08
4K062BB06
4K062BB07
4K062BB18
4K062BC09
4K062BC19
4K062FA05
(57)【要約】
【課題】水性媒体と接触した金属表面の腐食を抑制する方法が提供される。
【解決手段】この方法は、金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み得、腐食抑制剤組成物は、式(I)の化合物又はその塩を含み得る。開示されている腐食抑制剤組成物は、閉ループシステムにおける腐食を抑制するのに特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と接触した金属表面の腐食を抑制する方法であって、前記方法は、
閉ループシステム内で前記金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み、前記腐食抑制剤組成物が、式(I)の化合物又はその塩を含み、
【化1】
式中、Lが、単結合又は二重結合であり、
が、水素、-CH-COOH、
【化2】
であり、nが、1~100の整数であり、mが、1~100の整数であり、pが、2~20の整数であり、
が、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルであり、かつ
が、水素、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルである、方法。
【請求項2】
が、
【化3】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、
【化4】
であり、Lが、二重結合であり、かつRが、水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が、
【化5】
であり、かつRが、-OHである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記腐食抑制剤組成物が、非ホウ酸塩緩衝剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記腐食抑制剤組成物が、硝酸塩を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記緩衝剤が、トリエタノールアミン(TEA)、モルホリン、N-メチルイミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、ウロトロピン、イミダゾール、メチルイミダゾール、p-フェノールスルホネート、ジエチルエタノールアミン、メトキシプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ホウ酸塩、リン酸塩、ビシン、グリシン、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記緩衝剤が、炭酸塩緩衝剤である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記腐食抑制剤組成物が、ケイ酸塩を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記腐食抑制剤組成物が、トリトリアゾール(TT)、ベンゾトリアゾール(BZT)、メセプトベンゾサジル(MBT)、ブチルベンゾトリアゾール(BBT)、ハロゲン耐性アゾール(HRA)、ベンゾイミダゾール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアゾールを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アゾールが、TTである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記腐食抑制剤組成物が、水を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水性媒体が、約6~約12のpHを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記腐食抑制剤組成物が、亜硝酸塩、リン、ホウ酸塩、又はモリブデン酸塩のうちの少なくとも1つを含まない、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
約10ppm~約50,000ppmの式Iの前記化合物の濃度で前記腐食抑制剤組成物を前記水性媒体に添加することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記腐食抑制剤組成物が、約1重量%~約99重量%の式(I)の前記化合物又はその塩と、約0.5重量%~約90重量%の前記ケイ酸塩と、約0.5重量%~約20重量%の前記緩衝剤とを含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属表面が、軟鋼、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アドミラルティ黄銅、約90%の銅と約10%のニッケル、約80%の銅と約20%のニッケル、約70%の銅と約30%のニッケル、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅、鉛入りネーバル青銅、リン青銅、亜鉛めっき鋼、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ケイ酸塩と、緩衝剤と、式(I)の化合物又はその塩とを含む、腐食抑制剤組成物であって、
【化6】
式中、Lが、単結合又は二重結合であり、
が、水素、-CH-COOH、
【化7】
であり、nが、1~100の整数であり、mが、1~100の整数であり、pが、2~20の整数であり、
が、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルであり、かつ
が、水素、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルである、腐食抑制剤組成物。
【請求項19】
TT、BZT、MBT、BBT、HRA、ベンゾイミダゾール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアゾールを更に含む、請求項18に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項20】
水性媒体と接触した金属表面の腐食を抑制するための腐食抑制剤組成物の使用であって、前記腐食抑制剤組成物が、式(I)の化合物又はその塩と、ケイ酸塩と、緩衝剤とを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
1.技術分野
本開示は、一般的に、腐食抑制剤組成物に関する。より具体的には、本開示は、閉ループ水循環システムにおける腐食を抑制するためのポリマレエート含有腐食抑制剤組成物に関する。
【0002】
2.関連技術の説明
閉ループ水循環システムでは、水は、典型的には水の添加又は除去なしで、長時間循環させられる。汚染を理由として、水の除去が必要になる場合がある。例えば、一部の化学添加剤は、微生物が増殖し、効率的な熱伝達を妨げるバイオフィルム又は他の堆積物を形成するための栄養源を提供する。多くの場合、微生物の増殖を防止するために、又は循環水流と接触した金属の腐食を防止するために、化学薬品が添加される。
【0003】
炭素鋼の腐食抑制は、クロム酸塩から現在の重金属及びリン酸塩の化学物質の使用に至るまで、何十年にもわたって発展してきた。数十年前、クロム酸塩は禁止され、主に、モリブデン、亜鉛、ケイ酸塩、及びリン酸塩に取って代わられた。オルトリン酸塩からポリリン酸塩の使用、また有機リン酸塩、ホスホン酸塩、及びホスフィン酸塩の使用に至るまで、リン酸塩の化学物質においていくつかの進歩があった。現在、リンは、環境圧力下にあり、非常に低いレベルの量でしか使用され得ない。
【0004】
炭素鋼などの鉄系金属は、産業システムで最も一般的に使用される構造材料の1つである。全面腐食によって生じる表面からの金属の損失は、機械的強度の低下を原因として、システム又は構造の構造的完全性の低下を引き起こす。局部的な腐食(例えば、ピッティング)は、全面腐食よりもシステムの正常な動作に更に大きな脅威をもたらし得る。なぜなら、そのような腐食は、1つの特定の位置で激しく生じ、工業水流を運ぶシステム構造に穿孔を引き起こし得るからである。これらの穿孔は、漏れを引き起こす可能性があり、そのため、修理を行うことができるように産業用システム全体をシャットダウンする必要がある。実際に、腐食の問題は、通常、莫大なメンテナンスコストと、機器の故障を原因として招かれるコストをもたらす。
【0005】
鋼は依然として広く使用されているが、熱伝導性及び拡散性などのより望ましい熱特性を理由に、アルミニウム又はアルミニウム合金の使用が増加している。アルミニウム及びアルミニウム合金は、周囲条件では安定しているが、特に、高温において、かつ塩素イオンの存在下にて、水性条件で腐食する傾向がある。アルミニウム発熱体は、従来の高pH腐食抑制プログラムと互換性がない。
【0006】
工業用水システムにおける金属の腐食保護は、多くの場合、腐食抑制剤を添加することによって達成される。クロム酸塩、モリブデン酸塩、亜鉛、亜硝酸塩、オルトリン酸塩、及びポリリン酸塩を含む多くの腐食抑制剤が、単独又は組み合わせで、様々な化学処理配合物においてこれまでに使用されてきた。しかしながら、これらの無機化学物質は、特に経済的に実現可能及び/又は環境的に許容可能な低用量のレベルでは、毒性の可能性がある、環境に有害な可能性がある、及び/又は局部的な腐食に対してそれほど効果的ではない可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
水性媒体と接触した金属表面の腐食を抑制する方法が提供される。この方法は、閉ループシステム内で金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み得、腐食抑制剤組成物は、式(I)
【化1】
の化合物又はその塩を含み得、式中、Lは、単結合又は二重結合であり、Rは、水素、-CH-COOH、
【化2】
であり、nは、1~100の整数であり、mは、1~100の整数であり、pは、2~20の整数であり、Rは、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルであり、かつRは、水素、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルである。
【0008】
いくつかの態様では、Rは、
【化3】
である。
【0009】
いくつかの態様では、Rは、
【化4】
であり、Lは、二重結合であり、かつRは、水素である。
【0010】
いくつかの態様では、Rは、
【化5】
であり、かつRは、-OHである。
【0011】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、非ホウ酸塩緩衝剤を更に含む。
【0012】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、硝酸塩を更に含む。
【0013】
いくつかの態様では、緩衝剤は、トリエタノールアミン(TEA)、モルホリン、N-メチルイミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、ウロトロピン、イミダゾール、メチルイミダゾール、p-フェノールスルホネート、ジエチルエタノールアミン、メトキシプロピルアミン、ホウ酸塩、リン酸塩、ビシン、グリシン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0014】
いくつかの態様では、緩衝剤は、炭酸塩緩衝剤である。
【0015】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、ケイ酸塩を更に含む。
【0016】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、トリトリアゾール(TT)、ベンゾトリアゾール(BZT)、メセプトベンゾサジル(MBT)、ブチルベンゾトリアゾール(BBT)、ハロゲン耐性アゾール(HRA)、ベンゾイミダゾール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアゾールを更に含む。
【0017】
いくつかの態様では、アゾールは、TTである。
【0018】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、水を更に含む。
【0019】
いくつかの態様では、水性媒体は、約6~約12のpHを有する。
【0020】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、亜硝酸塩、リン、ホウ酸塩、又はモリブデン酸塩のうちの少なくとも1つを含まない。
【0021】
いくつかの態様では、この方法は、約10ppm~約50,000ppmの式(I)の化合物の濃度で腐食抑制剤組成物を水性媒体に添加することを含み得る。
【0022】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、約1重量%~約99重量%のポリマレイン酸と、約0.5重量%~約90重量%のケイ酸塩と、約0.5重量%~約20重量%の緩衝剤とを含む。
【0023】
いくつかの態様では、金属表面は、軟鋼、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アドミラルティ黄銅、約90%の銅と約10%のニッケル、約80%の銅と約20%のニッケル、約70%の銅と約30%のニッケル、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅、鉛入りネーバル青銅、リン青銅、亜鉛めっき鋼、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
ケイ酸塩と、緩衝剤と、式(I)
【化6】
の化合物又はその塩とを含む、腐食抑制剤組成物が提供され、式中、Lは、単結合又は二重結合であり、Rは、水素、-CH-COOH、
【化7】
であり、nは、1~100の整数であり、mは、1~100の整数であり、pは、2~20の整数であり、Rは、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルであり、かつRは、水素、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルである。
【0025】
水性媒体と接触した金属表面の腐食を抑制するための腐食抑制剤組成物の使用が提供される。腐食抑制剤組成物は、式(I)の化合物又はその塩と、ケイ酸塩と、緩衝剤とを含み得る。
【0026】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良好に理解できるように、本開示の特徴及び技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示の更なる特徴及び利点は、以下に説明される。開示される概念及び具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。そのような同等の実施形態が、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨及び範囲から逸脱しないことも、当業者によって認識されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
様々な実施形態が以下に説明される。実施形態の様々な要素の関係性及び機能は、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解され得る。しかしながら、実施形態は、以下に例解されるものに限定されることはない。特定の例では、本明細書に開示される実施形態の理解のために必要ではない詳細は、省略することができる。
【0028】
水性媒体と接触した金属表面の腐食を抑制する方法が提供される。この方法は、閉ループシステム内で金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「閉ループシステム」とは、水性媒体をパイプ又は容器内に完全に密閉した状態に保つシステムを指す。閉ループシステムは、水ベースの溶液を利用して熱を伝達する閉再循環ループ又は閉温水ループを含む。閉ループシステムは、鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、及び亜鉛めっき鋼などの様々な材料から構築され得る。
【0030】
閉ループシステムは、大気圧又は高圧で動作するサージタンク又は膨張タンクを含み得る。起動時にシステムから酸素及び他のガスを除去するのに役立つように、システムには通気孔が使用されている。閉ループシステムはまた、水性媒体をシステム全体に循環させるためのポンプも含み得る。
【0031】
対照的に、開放型システムは、水性媒体の表面を外気に曝し、それによって、水が蒸発して失われるか、又は水がより高い汚染リスクに曝される。
【0032】
本開示は、腐食抑制剤組成物、及び腐食を抑制するための方法に関する。抑制剤組成物は、金属を含むものなどの表面上で、軟水又は硬水において、腐食及び/又はスケールを効果的に低減、抑制、及び/又は防止することができる。
【0033】
腐食抑制剤組成物は、式(I)
【化8】
の化合物又はその塩を含み得、式中、Lは、単結合又は二重結合であり、Rは、水素、-CH-COOH、
【化9】
であり、nは、1~100の整数であり、mは、1~100の整数であり、pは、2~20の整数であり、Rは、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルであり、かつRは、水素、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルである。
【0034】
いくつかの態様では、Lは、単結合である。いくつかの態様では、Lは、二重結合である。いくつかの態様では、Lは、二重結合であり、かつRは、水素である。
【0035】
いくつかの態様では、Rは、水素である。いくつかの態様では、Rは、-CH-COOHである。
【0036】
いくつかの態様では、Rは、
【化10】
である。いくつかの態様では、Rは、-OH、-OCH、アリール基、又はC~Cアルキルである。いくつかの態様では、Rは、アリール基である。アリール基の例としては、ベンゼン及びC1~2アルキル置換フェニル基、例えばトルエン又はキシレンが挙げられるが、これらに限定されることはない。整数mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり得る。いくつかの態様では、mは、1~10の整数である。いくつかの態様では、mは、1~50の整数である。いくつかの態様では、mは、1~100の整数である。
【0037】
いくつかの態様では、Rは、
【化11】
であり、Lは、二重結合であり、かつRは、水素である。整数pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり得る。いくつかの態様では、pは、1~10の整数である。
【0038】
いくつかの態様では、Rは、
【化12】
であり、かつRは、-OHである。整数nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり得る。いくつかの態様では、nは、1~10の整数である。いくつかの態様では、mは、1~50の整数である。いくつかの態様では、mは、1~100の整数である。
【0039】
いくつかの態様では、Rは、水素である。いくつかの態様では、Rは、-OHである。いくつかの態様では、Rは、-OCHである。いくつかの態様では、Rは、C~Cアルキルである。いくつかの態様では、Rは、アリール基である。アリール基の例としては、ベンゼン及びC1~2アルキル置換フェニル基、例えばトルエン又はキシレンが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0040】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、以下に示される構造による加水分解ポリマレイン酸化合物を含む。組成物は、以下の化合物のうちの1つ又は複数を含み得る。
【化13】
【0041】
いくつかの態様では、加水分解ポリマレイン酸は、化合物IIIを含む。いくつかの態様では、加水分解ポリマレイン酸は、化合物IVを含む。いくつかの態様では、加水分解ポリマレイン酸は、化合物Vを含む。いくつかの態様では、加水分解ポリマレイン酸は、化合物VIを含む。いくつかの態様では、式(I)の化合物又はその塩は、(3-メチルフェニル)メチルブタン二酸ナトリウム又は(4-メチルフェニル)メチルブタン二酸ナトリウムである。いくつかの態様では、式(I)の化合物は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸又はその塩である。
【0042】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、トルエン、ベンゼン又はキシレン末端基を有するポリマレイン酸を含む。
【0043】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、ポリエポキシコハク酸又はその塩を含む。
【0044】
式(I)~(VI)の化合物の塩、加水分解ポリマレイン酸、及びポリマレイン酸は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、及び他のアンモニウムカチオン、例えば、トリエタノールアンモニウム、モルホリニウム、シクロヘキシルアンモニウムなどを含むが、これらに限定されることはない。
【0045】
腐食抑制剤組成物は、緩衝剤を更に含み得る。緩衝剤は、炭酸塩緩衝剤などの非ホウ酸塩緩衝剤であり得るか、又は緩衝剤は、一級アミン、二級アミン、又は三級アミンであり得る。緩衝剤の例としては、TEA、モルホリン、N-メチルイミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、ウロトロピン、イミダゾール、メチルイミダゾール、p-フェノールスルホネート、ジエチルエタノールアミン、メトキシプロピルアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、ホウ酸塩、リン酸塩、ビシン、グリシン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0046】
本開示において有用な他の緩衝剤としては、グッド緩衝剤、例えば、BES、CAPS、HEPES、MES、EPPS、MOPS、PIPES、TAPS、TES、及びTRICINEが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0047】
本明細書に開示されている腐食抑制剤組成物は、亜硝酸塩などの市販の腐食抑制剤と同等の腐食保護を提供することができる。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、亜硝酸塩、リン、ホウ酸塩、又はモリブデン酸塩のうちの少なくとも1つを含まない。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、スズを含まない。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、亜鉛を含まない。
【0048】
腐食抑制剤組成物は、硝酸塩又はケイ酸塩などの他の添加剤を更に含み得る。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、硝酸塩を含む。硝酸塩の例としては、硝酸ナトリウムが挙げられるが、これに限定されることはない。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、ケイ酸塩を含む。ケイ酸塩の例としては、メタシリケート、オルトシリケート、ピロシリケート、及びそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されることはない。ケイ酸塩は、メタケイ酸ナトリウムであってもよい。
【0049】
腐食抑制剤組成物は、アゾールを含み得る。アゾールの例としては、TT、BZT、MBT、BBT、HRA、ベンゾイミダゾール、又はそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されることはない。ベンゾイミダゾールは、2置換ベンゾイミダゾールであり得る。いくつかの態様では、アゾールは、TTである。
【0050】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、溶媒を含み得る。溶媒の例としては、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ギ酸、ホルムアミド、プロピレングリコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、水を含み得る。
【0051】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、式(I)の化合物からなり得る。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、式(I)の化合物及び緩衝剤からなり得る。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、水と、式(I)の化合物と、緩衝剤と、ケイ酸塩とからなり得る。
【0052】
いくつかの態様では、ポリマレイン酸又はその塩と、ケイ酸塩と、緩衝剤とを含有する腐食抑制剤組成物は、約1重量%~約99重量%のポリマレイン酸と、約0.5重量%~約90重量%のケイ酸塩と、約0.5重量%~約20重量%の緩衝剤とを含み得る。
【0053】
いくつかの態様では、水性媒体に添加される式(I)の化合物又はその塩の量は、約10ppm~約50,000ppmの範囲にある。いくつかの態様では、式(I)の化合物の量は、約10ppm~約500ppmの範囲にある。いくつかの態様では、式(I)の化合物の量は、約60ppm~約100ppmの範囲にある。
【0054】
いくつかの態様では、水性媒体に添加される緩衝剤の量は、約10ppm~約50,000ppmの範囲にある。いくつかの態様では、添加される緩衝剤の量は、約10ppm~約500ppm又は約25ppm~約150ppmの範囲にある。
【0055】
いくつかの態様では、水性媒体に添加されるケイ酸塩の量は、約1ppm~約50,000ppmの範囲にある。いくつかの態様では、添加されるケイ酸塩の量は、約1ppm~約50ppm又は約15~約100ppmの範囲にある。
【0056】
いくつかの態様では、アゾール又はその塩は、約0.1ppm~約1,000ppmの量で水性媒体に添加され得る。いくつかの態様では、アゾールの濃度は、約20ppm~約500ppmであり得る。いくつかの態様では、アゾールの濃度は、約100ppm、約150ppm、約200ppm、約250ppm、又は約300ppmである。
【0057】
いくつかの態様では、この方法は、約0.1体積%~約2体積%の用量で腐食抑制剤組成物を水性媒体に添加することを含み得る。いくつかの態様では、用量は、約0.2体積%、約0.3体積%、約0.4体積%、約0.5体積%、約0.6体積%、約0.7体積%、約0.8体積%、約0.9体積%、又は約1.0体積%である。
【0058】
多くの異なる金属表面が、腐食抑制剤が添加された水性媒体と接触した状態にあることが可能である。例えば、異なる金属表面は、異なる金属又は金属合金、例えば、軟鋼、アルミニウム、又は銅を含み得る。いくつかの態様では、金属表面は、アルミニウムを含む第1の金属表面、軟鋼を含む第2の金属表面、銅を含む第3の金属表面、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、金属表面は、鉄、鉄合金、銅、銅合金、アドミラルティ黄銅、約90%の銅と約10%のニッケル、約80%の銅と約20%のニッケル、約70%の銅と約30%のニッケル、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅、鉛入りネーバル青銅、リン青銅、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの態様では、金属表面は、アルミニウムボイラーの少なくとも一部であり得る。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、アルミニウムボイラーに添加される。いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、熱交換器に添加される。
【0059】
いくつかの態様では、金属表面は、アルミニウム合金であり得る。アルミニウム合金の例としては、Al360、Al4032、Al6061、Al7075、AlSi10Mg、AlSi12、H9-6060、1000系合金、2000系合金、4000系合金、5000系合金、6000系合金、7000系合金、鋳造1xx系合金、鋳造2xx系合金、鋳造3xx系合金、鋳造4xx系合金、鋳造5xx系合金、鋳造6xx系合金、鋳造7xx系合金、又は鋳造8xx系合金が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0060】
腐食抑制剤組成物は、金属表面の腐食速度を低下させ得る。いくつかの態様では、金属表面の腐食速度は、約1mpy未満であり得る。いくつかの態様では、金属表面の腐食速度は、約0.5mpy未満であり得る。
【0061】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、アルミニウム合金の孔食、隙間腐食、剥離、及び粒界腐食を低下させ得る。本明細書で使用される場合、「孔食」とは、金属/合金表面上の他の保護不動態膜の破壊の結果として生じる、金属の加速された局部的な溶解を指す。一般的に、孔食は、ピッティング開始、準安定ピッティング、及びピッティング成長という3つの段階を伴う。
【0062】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、更なる添加剤を含み得る。添加剤の例としては、更なる腐食抑制剤、処理ポリマー、抗菌剤、着色剤、充填剤、界面活性剤、粘度調整剤、キレート剤、分散剤、脱臭剤、マスキング剤、脱酸素剤、又は指示染料が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0063】
腐食抑制剤組成物は、他の添加剤を含み得る。例えば、組成物は、ホスフィノコハク酸オリゴマー(PSO)を含み得る。いくつかの態様では、PSOは、式(II)
【化14】
に示される構造を有し得、式中、nは、1~5の整数であり、mは、0~5の整数である。いくつかの態様では、nは、1、2、3、4、又は5である。いくつかの態様では、nは、2~5の整数である。いくつかの態様では、nは、3~5の整数である。いくつかの態様では、nは、1~4の整数である。いくつかの態様では、nは、1~3の整数である。いくつかの態様では、mは、0、1、2、3、4、又は5である。いくつかの態様では、mは、0である。いくつかの態様では、mは、1である。いくつかの態様では、mは、2である。いくつかの態様では、mは、3である。いくつかの態様では、mは、4である。いくつかの態様では、mは、5である。いくつかの態様では、PSOは、式Iの1つ又は複数の化合物を含み得る。いくつかの態様では、PSOは、nが1であり、mが0である式Iの化合物を約10~40重量%含み、mが1であり、nが1である式Iの化合物を約30~60重量%含み、nが1であり、mが2~5である式Iの化合物を約20~40重量%含む。米国特許第6,572,789号は、腐食抑制剤組成物に使用可能なPSOポリマーを記載しており、参照によってその全体が組み込まれる。
【0064】
いくつかの態様では、PSOは、式1の化合物の混合物である。例えば、PSOは、混合物においてn=1、2、3、4、又は5を有する分子を有し得る。
【0065】
いくつかの態様では、PSOは、約10ppm~約10,000ppmの量で水性媒体に添加され得る。いくつかの態様では、PSOの濃度は、約50ppm~約1,000ppmであり得る。いくつかの態様では、PSOの濃度は、約100ppm、約150ppm、約200ppm、約250ppm、又は約300ppmである。
【0066】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、スケール抑制剤を含み得る。スケール抑制剤は、ポリマーであり得る。スケール抑制剤の例としては、ポリアクリレート(PAA)、無水ポリマレイン酸(PMA)、アルキルエポキシカルボキシレート(AEC)、ポリアクリルアミドコポリマー(AA/AM)、アクリル酸及びヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー(AA/HPA)、アクリル酸及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネートコポリマー(AA/AMPS)、無水マレイン酸及びスルホン化スチレンコポリマー(MA/SS)、アクリル酸/アクリルアミド/三級ブチルアクリルアミドコポリマー(AA/AM/t-BAM)、アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート/三級ブチルアクリルアミド(AA/AMPS/t-BAM)、アクリル酸/スルホン化スチレン/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート(AA/SS/AMPS)、アクリル酸/アクリルアミド/アミノメチルスルホネートコポリマー(AA/AM/AMS)、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0067】
いくつかの態様では、スケール抑制剤は、アクリル酸とt-BAMとのコポリマーをそれぞれ60:40のモル比で含む。
【0068】
いくつかの態様では、スケール抑制剤ポリマーは、約80~約99モルパーセントのアクリル酸及び約1~約20モルパーセントのAMPSを含み得る。いくつかの態様では、コポリマーは、約95%のアクリル酸と約4%のAMPSとを含み得るか、又は約90%のアクリル酸と約10%のAMPSとを含み得る。他の態様では、ポリマーは、アクリル酸と、イタコン酸と、AMPSと、三級ブチルアクリルアミドとを任意のモルパーセントで含むテトラポリマーであり得る。抑制剤組成物に使用され得る他のポリマーとしては、約40~約70%のアクリル酸と約30~約60%のAMPSとを含む、アクリル酸とAMPSとのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されることはない。他の態様では、ポリマーは、約60%のアクリル酸と約40%のAMPSとを含む、又は約50%のアクリル酸と約50%のAMPSとを含む、コポリマーであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、約5,000Da~約50,000Daの重量平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、約20,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0070】
いくつかの態様では、スケール抑制剤は、約52重量%の水、約47重量%のアクリル酸とアクリルアミド三級ブチルスルホン酸(ATBS)とのコポリマー、0.23重量%の硫酸ナトリウム、0.01重量%の重亜硫酸ナトリウム、及び痕跡量のピレンテトラスルホン酸四ナトリウム塩を含み得る。
【0071】
特定の態様では、組成物は、当業者によって適切に選択され得る有効量のスケール抑制剤を含む。水性媒体に添加されるスケール抑制剤の量は、約0.1ppm~約100ppmの範囲にあり得る。いくつかの態様では、スケール抑制剤の量は、約1ppm~約50ppm、約0.5ppm~約20ppm、約1ppm~約10ppm、又は約1ppm~約20ppmの範囲にあり得る。他の態様では、スケール抑制剤の量は、約5ppm~約30ppm、約10ppm~約20ppm、又は約5ppm~約20ppmの範囲にあり得る。いくつかの態様では、水性システムに添加されるスケール抑制剤の量は、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、約9ppm、約10ppm、約11ppm、約12ppm、約13ppm、約14ppm、又は約15ppmであり得る。
【0072】
いくつかの態様では、腐食抑制剤組成物は、不活性トレーサーを含み得、それによって、3D TRASAR(登録商標)技術(Nalco Water, an Ecolab Companyから入手可能)などの蛍光トレーシング技術と適合させることができる。他の態様では、不活性蛍光トレーサーは、用量レベルを決定する手段を提供するために、組成物に含まれ得る。既知の割合の蛍光トレーサーは、分散剤又は消泡剤と同時に又は連続的に添加することができる。有効な不活性蛍光トレーサーは、系内の他の成分と化学的に非反応性であり、かつ経時的に著しく劣化しない物質を含み得る。
【0073】
代表的な不活性蛍光トレーサーには、フルオレセイン又はフルオレセイン誘導体;ローダミン又はローダミン誘導体;ナフタレンスルホン酸(モノ、ジ、トリなど);ピレンスルホン酸(モノ、ジ、トリ、テトラなど);スルホン酸を含有するスチルベン誘導体(蛍光増白剤を含む);ビフェニルスルホン酸;フェニルアラニン;トリプトファン;チロシン;ビタミンB2(リボフラビン);ビタミンB6(ピリドキシン);ビタミンE(a-トコフェロール);エトキシキン;カフェイン;バニリン;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合ポリマー;フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物;リグニンスルホン酸;多環芳香族炭化水素;アミン官能基、フェノール官能基、スルホン酸官能基、カルボン酸官能基を任意の組み合わせで含有する(多)環芳香族炭化水素;N、O、又はSを有する(多)複素環芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、又はスチルベンスルホン酸のうちの少なくとも1つの部分を含有するポリマーが含まれる。
【0074】
いくつかの態様では、更なる腐食抑制剤は、亜鉛、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、ストロンチウム、チタン、クロム酸塩、コバルト、セリウム、それらの任意の塩、それらの任意の酸化物、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、更なる腐食抑制剤は、亜鉛又はその任意の酸化物を含み得る。更なる腐食抑制剤は、任意の塩又は任意の酸化物の形態にあり得る。無機塩の例示的な非限定的例は、塩化物、硝酸塩、亜硝酸塩、又は硫酸塩であり得る。塩の形態は、酢酸塩又はクエン酸塩を含むがこれらに限定されることはない有機物であり得る。
【0075】
腐食抑制剤組成物の各成分は、別々に又は混合物として添加され得、この添加は、手動添加であり得るか、又は化学物質注入ポンプ及び本明細書に記載されている自動システムを使用した自動添加であり得る。組成物(又はそれらの成分)は、水性システムに定期的又は連続的に投与することができる。
【0076】
腐食抑制剤組成物が添加された水性媒体は、特定のプロセスに特有の特定の特性を有し得る。例えば、閉ループシステムは、推奨されるpH動作範囲又は溶質濃度を有し得る。いくつかの態様では、水性媒体は、約6~約12のpHを有し得る。いくつかの態様では、水性媒体は、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、又は約12のpHを有し得る。一般的に、かなりの量のアルミニウムを有するボイラーの場合、推奨されるpH範囲は、約7.5~約8.5である。
【0077】
いくつかの態様では、水性媒体は、約150ppm未満の塩化物濃度を有する。水性媒体の導電率は、約0μS/cm~数千又は数万μS/cmの範囲にあり得る。導電率は、約500μS/cm超、約1,000μS/cm超、又は約5,000μS/cm超であり得る。
【0078】
水性媒体は、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどの不凍剤を含み得る。グリコールの濃度は、約20体積%~約50体積%の範囲にあり得る。
【0079】
いくつかの態様では、水性媒体は、例えば漂白剤などの酸化性ハロゲン化合物を含む。酸化性ハロゲン化合物の例としては、次亜塩素酸塩漂白剤、塩素、臭素、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、二酸化塩素、ヨウ素/次亜ヨウ素酸、次亜臭素酸、ハロゲン化ヒダントイン、過酸化物、過硫酸塩、過マンガン酸塩、過酢酸、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0080】
いくつかの態様では、水性媒体は、非ハロゲン含有酸化性殺生物剤を含み得る。非ハロゲン含有酸化性殺生物剤の例としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、グルタルアルデヒド、ジブロモプロピオン酸、四級アンモニウム塩、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0081】
本開示の抑制剤組成物は、腐食を受けやすい表面を含む任意の水性システムで使用され得る。例えば、抑制剤組成物は、貫流型、開ループ、又は閉ループ再循環冷却水システムで使用され得る。他の水性システムとしては、石油生産及び油回収(例えば、井戸ケーシング輸送パイプラインなど)、並びに精製、地熱井、並びに他の油田用途に使用されるシステム;ボイラー及びボイラー水システム;発電に使用されるシステム、鉱物洗浄、浮遊選鉱及び選鉱を含む鉱物プロセス水;製紙工場のダイジェスタ、洗浄機、漂白プラント、白水システム、及び粉砕器水システム;パルプ工業における黒液蒸発器;ガススクラバー及びエアウォッシャー;冶金工業における連続鋳造プロセス;空調及び冷蔵システム;ビル防火加熱水、例えば滅菌水;水再利用及び精製システム;膜ろ過水システム;食品加工ライン及び廃棄物処理システム並びに浄化器、液体-固体用途、都市汚水処理システム;並びに工業又は都市配水システムに使用されるシステムが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0082】
いくつかの態様では、水性システムは、冷却システム、ボイラーシステム、加熱システム、膜システム、製紙システム、食品及び飲料システム、石油及びガスシステム、又は水を含む任意のシステムであり得る。
【0083】
本開示の特定の態様では、抑制剤組成物は、食器洗浄組成物と関連して使用され得る。食器洗浄組成物は、皿洗い機又は食器洗浄機における腐食からガラス製品又は銀製品などの物品を保護するために使用され得る。しかしながら、本開示の抑制剤組成物を含む食器洗浄組成物は、皿洗い機又は食器洗浄機の内部以外の清浄化環境に利用可能であり得ると理解されたい。
【0084】
特定の態様では、開示されている抑制剤組成物は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る:
約0.5ppmの遊離残留塩素(FRC)までのハロゲン安定性、
約100℃までの水温に対応する能力、
アゾール、分散剤、及び冷却水ポリマーとの適合性、
CaCOとしての約500ppmまでのカルシウム耐性、
Clとしての約600ppmまでの塩化物耐性、
約6~約9のpHにわたる安定性、
低毒性(例えば、LC50>100mg/L)、及び
数秒~約5年までの保持時間指数(HTI)にわたって安定。
【0085】
いくつかの態様では、水性媒体の温度は、約4℃~約100℃であり得る。加圧閉ループシステムでは、水の温度は、約100℃を上回ることがあり、本開示の組成物は、そのような温度で使用することができる。
【0086】
本開の水性システムのうちのいずれも、自動的に監視及び制御することができる。例えば、システムのpHを監視及び制御することができるか、又は水性システム内の抑制剤組成物の量を監視及び制御することができる。
【0087】
また、本開示には、水の1つ又は複数のシステムパラメータ又は特性を測定、制御、及び/又は最適化するためのオンラインユニット及びシステムも記載されている。最適化は、例えば、水に関連する1つ又は複数の特性を測定して1つ又は複数の特性が許容可能な所定の範囲にあることを確実にし、1つ又は複数の特性が許容可能な所定の範囲にない場合は、それぞれの特性についての所定の範囲を測定し、水において変化を生じさせて特性を許容可能な所定の範囲に戻すことを含み得る。
【0088】
特定の実施形態では、システムは、コントローラ及び複数のセンサを備える監視及び制御ユニットを含む。複数のセンサはそれぞれ、コントローラと通信した状態にあり得る。例えば、ユニットが5つのセンサを備える場合、5つのセンサそれぞれが、コントローラと通信した状態にあり得る。特定の態様では、コントローラは、移動が可能になるように、スキッド又は他のタイプの支持部材に取り付けることができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「コントローラ」という用語は、プロセッサ、メモリデバイス、デジタル記憶媒体、任意の数の通信プロトコル及び/若しくはネットワークにまたがる通信をサポートするように動作可能な通信回路を含む通信インターフェース、ユーザインターフェース(例えば、ブラウン管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチスクリーン、若しくは他のモニタを含み得るグラフィカルユーザインターフェース)、並びに/又は他の構成要素などの構成要素を有するマニュアルオペレータ又は電子デバイスを指す。
【0090】
コントローラは、好ましくは、1つ又は複数の特定用途向け集積回路、プログラム、コンピュータ実行可能命令若しくはアルゴリズム、1つ又は複数のハードワイヤードデバイス、無線デバイス、及び/又は1つ又は複数の機械デバイスと一体化するように動作可能である。更に、コントローラは、本発明のフィードバック、フィードフォワード、及び/又は予測ループ(複数可)を一体化するように動作可能である。コントローラシステム機能の一部又は全ては、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、無線ネットワーク、インターネット接続、マイクロ波リンク、赤外線リンク、有線ネットワーク(例えば、イーサネット(登録商標))などにおける通信用の、ネットワークサーバなどの中心位置にあってもよい。更に、信号調整器又はシステムモニタなどの他の構成要素が、信号伝送及び信号処理アルゴリズムを促進するために含まれていてもよい。
【0091】
特定の態様では、コントローラは、システムパラメータに関連する任意の測定又は予測された特性に優先順位を付けるための階層ロジックを含む。例えば、コントローラは、導電率よりもシステムのpHを優先するように、又はその逆であるようにプログラムされ得る。そのような階層ロジックの目的は、システムパラメータに対する改善された制御を可能にすること及び循環制御ループを回避することであると理解されたい。
【0092】
いくつかの実施形態では、監視及び制御ユニット、並びにそれに関連する方法は、自動コントローラを含む。いくつかの実施形態では、コントローラは、手動又は半手動である。例えば、システムが、システム内の様々なセンサから受信した1つ又は複数のデータセットを含む場合、コントローラが、どのデータポイント/データセットを更に処理するかを自動的に決定することができるか、又はオペレータが、そのような決定を部分的若しくは完全に行うことができる。例えば、工業的水塊(industrial body of water)のデータセットは、酸化/還元電位(ORP)、溶存酸素(DO)、導電率、pH、濁度、殺生物剤、スケール抑制剤、摩擦低減剤、酸、塩基及び/若しくは脱酸素剤などの特定の化学物質の濃度、イオンレベル(例えば、経験的に、自動的に、蛍光的に、電気化学的に、比色的に決定され、直接測定され、計算される)、温度、圧力、流量、総溶解若しくは懸濁固形物などの変数又はシステムパラメータを含み得る。そのようなシステムパラメータは、典型的には、これらのパラメータのために特別に設計されたセンサ、例えば、pHセンサ、イオン分析器、温度センサ、熱電対、圧力センサ、腐食プローブ、及び/又は任意の他の好適なデバイス若しくはセンサなどの任意のタイプの好適なデータ収集機器によって測定される。データ収集機器は、コントローラと通信していることが好ましく、いくつかの実施形態によると、コントローラによって付与される先進的機能(本明細書に記載されている制御アルゴリズムの任意の部分を含む)を有し得る。
【0093】
監視及び制御ユニットは、水を分析することができ、かつ水に関するデータをコントローラに送信することができる複数のセンサを備え得る。複数のセンサは、例えば、水における導電率、pH、ORP、殺生物剤濃度、濁度、温度、流量、及びDOを測定するためのセンサを備え得る。監視及び制御ユニットは、これらのセンサのうちのいずれか、これらのセンサのうちの全て、これらのセンサのうちの2つ以上の組み合わせ、ここでは特に言及されていない1つ又は複数の更なるセンサを備え得、センサは、コントローラと通信した状態にあり得る。本開示によって企図される他のタイプのセンサとしては、水中油センサ(oil in water sensors)、全溶解固形物センサ、及び全懸濁固形物センサが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0094】
本開示の監視及び制御システムは、特定の実施形態では、1つ又は複数の化学物質注入ポンプを備える。化学物質注入ポンプはそれぞれ、貯蔵デバイスと流体連通した状態にあり得る。貯蔵デバイスはそれぞれ、1つ又は複数の化学物質を含み得、化学物質注入ポンプは、これらの化学物質を水塊に輸送することができる。いくつかの実施形態では、化学物質注入ポンプは、貯蔵デバイスを備える。化学物質注入ポンプは、有線接続、無線接続、電子的、セルラー方式、赤外線、衛星、又は任意の他のタイプの通信ネットワーク、トポロジー、プロトコル、標準などの任意の組み合わせなどによって、あらゆる手法でコントローラと通信した状態にあり得る。したがって、コントローラは、ポンプに信号を送って、それらの化学物質供給速度を制御することができる。
【0095】
特定の実施形態では、監視及び制御システムは、複数のセンサが、連続的又は断続的なフィードバック、フィードフォワード、及び/又は予測情報をコントローラに提供するように実装されており、このコントローラは、この情報をNalco Global Gatewayなどのリレーデバイスにリレーすることができ、このリレーデバイスは、この情報をセルラー方式通信を介して、携帯電話、コンピュータ、及び/又はセルラー方式通信を受信することができる任意の他のデバイスなどのリモートデバイスに伝送することができる。このリモートデバイスは、情報を解釈し、リレーデバイスを通じてコントローラへと信号(例えば、電子命令)を自動的に送信し返して、コントローラに、ポンプの出力に対する特定の調整を行わせることができる。この情報はまた、コントローラによって内部で処理されてもよく、コントローラは、例えば、化学物質注入量を調整するために、ポンプに信号を自動的に送信することができる。複数のセンサから又はリモートデバイスからの、コントローラによって受信される情報に基づいて、コントローラは、様々なポンプに信号を伝送して、ポンプが水に注入している化学物質の量を自動でリアルタイムに調整することができる。
【0096】
或いは、コントローラからセルラー方式通信を受信するリモートデバイスのオペレータは、リモートデバイスを通じて手動でポンプを操作することができる。オペレータは、リモートデバイスを通じて、セルラー方式で、又は他の方法でコントローラに指示を伝達することができ、コントローラは、化学物質注入ポンプの化学物質添加速度を調整することができる。例えば、オペレータは、コントローラからのセルラー通信を介してリモートデバイスから信号又は警告を受信し、リモートデバイスを使用してコントローラに指示又は信号を送信し返して、1つ又は複数の化学物質注入ポンプをオンにすること、1つ又は複数の化学物質注入ポンプをオフにすること、1つ又は複数の注入ポンプによって水に添加される化学物質の量を増加若しくは減少させること、又は前述の任意の組み合わせを行うことができる。コントローラ及び/又はリモートデバイスはまた、オペレータが実際に指示を送信又は入力することなく、前述の調整又は修正のいずれかを自動的に行うことができる。測定された特性が許容範囲外であるかどうかをコントローラ又はリモートデバイスが判定することができるように、予め設定されたパラメータ又はプログラムがコントローラ又はリモートデバイスに入力される。複数のセンサによって受信された情報に基づいて、コントローラ又はリモートデバイスは、ポンプを適切に調整すること又は適切な警告を送信することができる。
【実施例
【0097】
パイロット閉ループ試験装置は、再循環水浴上に構築されたクーポンラック(coupon rack)を含んでいた。水浴は、使用される循環媒体に応じて、約-30℃~200℃の範囲の動作温度を有していた。典型的には、試験温度は、冷却ループ及び加熱ループの両方を模倣するために、約10℃、約60℃、又は約80℃であった。腐食抑制剤の性能は、金属クーポン検査又はオンライン電気化学法(直線分極抵抗)によって評価した。
【0098】
腐食抑制剤の性能は、撹拌及び停滞ジャー(stagnant jar)試験も使用して評価した。これらの試験では、軟鋼クーポンを一定時間にわたって水中に沈めた。次いで、クーポンをジャーから取り出し、重量損失について検査した。
【0099】
ほとんどの試験について、3つの水マトリックスを使用した。イリノイ州ネイパービルの水道水(W1)は、カルシウム及びアルカリ度が比較的高く、塩化物及び硫酸塩などの腐食性イオンの濃度が低いため、腐食ストレスの低い水である。水の腐食性を高め、腐食抑制剤にストレスをかけるために、約150ppmの塩化物及び約200ppmの硫酸塩に達するように、ネイパービルの水道水に更なる塩化物(塩化ナトリウム)及び硫酸塩(硫酸ナトリウム)を添加した(W2)。典型的には、試験は、W2を用いて約60℃で実施して、新たに開発された配合物の性能をその堅牢性の性能について試験した。約150ppmの塩化物濃度及び約200ppmの硫酸塩濃度は、米国の補給水の80%に相当するであろう。第3の水マトリックスを使用して、閉ループ冷却水用途(W3)に典型的に使用される補給水をシミュレートした。これらの実験で使用された水の概要を表1に示す。
【表1】
【0100】
実施例1
ジャー試験の結果を表2及び3に示す。項目1~12は、約60℃で軟鋼クーポンを使用した、2つの異なる水における閉ループ腐食抑制剤パッケージの用量プロファイルを調査する一連の実験を示す。これらの実験で調査した成分は、ポリマレイン酸(約82~410ppm)、トリルトリアゾールナトリウム(約10~52ppm)、分散剤(ポリアクリル酸とAMPSとのコポリマー、約3~15ppm)、SiO(約16~79ppm)、及び炭酸ナトリウム(約23~114ppm)であった。実験で使用した2つの水は、W2及びW3であった。結果は、主要な軟鋼腐食抑制剤であるポリマレイン酸が、W2及びW3の両方において、約82ppmという低さの用量で軟鋼の腐食を軽減することができることを示す。項目1及び7は、腐食抑制剤成分が添加されない対照実験である。項目13~18は、PMAなしの個々の成分が、許容可能な腐食抑制剤ではないことを示す。
【0101】
項目19~24は、2つの異なるpH値で、モリブデン酸塩及び亜硝酸塩に基づく現行の腐食抑制剤に対して、本出願における組成物(項目19及び22)の性能を比較した。閉ループ用途で遭遇する一般的なpHを表すpH9では、項目19は、モリブデン酸塩ベースの腐食抑制剤(項目20)よりも優れており、亜硝酸塩ベースの腐食抑制剤(項目21)に対して性能が同等である。pH7.5では、亜硝酸塩ベースの腐食抑制剤は、優れた腐食抑制をもたらす(項目24)ものの、項目22及びモリブデン酸塩ベースの腐食抑制剤(項目23)はどちらも、不十分な腐食抑制をもたらす。PMAは、ポリマレイン酸であり、Na TTは、トリルトリアゾールナトリウムであり、Disp.は、ポリアクリル酸とAMPSとのコポリマーであり、Na PAAは、ポリアクリル酸ナトリウムであり、TEAは、トリエタノールアミンであり、Na BZTは、ベンゾトリアゾールナトリウムである。表中の量は、特に記載のない限り、ppmである。RTは、室温を指し、これは、約20℃であると考えられる。
【表2】
【表3】
【0102】
実施例2
閉ループ試験の結果を表4に示す。項目1~3は、ポリマレイン酸ベースの炭酸塩緩衝腐食抑制剤組成物の腐食抑制の結果を示す。項目1及び2は、異なる濃度の炭酸ナトリウム(115、204ppm)で良好な腐食抑制剤性能を示す。項目3は、SiOが存在しなくても組成物が有効であることを示す。項目4は、現行の亜硝酸塩ベースの腐食抑制剤の腐食抑制性能を示す。亜硝酸塩ベースの腐食抑制剤は、試験方法が有効であることを示す良好な性能を呈する。項目6~8は、炭酸ナトリウムの代わりに緩衝剤としてTEAを使用することの有効性を実証している。項目6は、TEA含有組成物が、W2において、約80℃、pH7.3でも良好な軟鋼腐食抑制が可能であることを示す。項目8は、約80℃で、W1において、PMAベースのTEA緩衝組成物の良好な性能を示す。N-メチルは、N-メチルイミダゾールである。ABは、アドミラルティ黄銅である。
【表4】
【0103】
実施例3
式(III)~(VI)の化合物である加水分解ポリマレイン酸(HPMA)をアルミニウム合金の腐食制御について試験した。HPMAは、なかでも、Al1100、Al6061などの一部のアルミニウム合金に素晴らしい保護を提供する。驚くべきことに、これはまた、W1水で約80℃においても軟鋼クーポンに素晴らしい腐食保護を提供する。HPMAを約80℃でW2水において更に試験し、軟鋼の素晴らしい腐食制御が実証された。HPMAは、閉ループ用途での軟鋼の腐食制御について、モリブデン酸塩及び亜硝酸塩に取って代わるのに十分効果的である。
【0104】
約17重量%のHPMAと、約63重量%のTEAと、約1.7重量%のTTとを含有するHPMAの配合物を調製した。W1水は、約7.9のpH及び約80℃の温度で使用した。金属試験クーポンを含有する水におけるHPMAの濃度は、約375ppmであった。TEAの濃度は、約1583ppmであった。TTの濃度は、約42ppmであった。
【0105】
結果は、約6日後に、軟鋼クーポンの腐食速度が約0.4mpyであり、銅が0.0mpyであり、アドミラルティメタルが約0.0mpyであり、Al1100が約4.8mpyであることを示した。
【0106】
約18重量%のHPMAと、約56重量%のTEAと、約3重量%のTTとを含有するHPMAの別の配合物を調製した。W2水は、約7.45~約7.57のpH及び約80℃の温度で使用した。金属試験クーポンを含有する水におけるHPMAの濃度は、約440ppmであった。TEAの濃度は、約1412ppmであった。TTの濃度は、約75ppmであった。分散剤の濃度は、約10ppmであった。
【0107】
結果は、約2週間後に、軟鋼クーポンの腐食速度が約0.53mpyであり、銅が0.05mpyであり、Al6061が約0.74mpyであり、Al1100が約0.6mpyであることを示した。
【0108】
実施例4
約21重量%のHPMAと、約10重量%のNaOHと、約3.6重量%のTTと、約2.75重量%のメルカプトベンゾチアゾールと、約5.4重量%のNaSiO.5HOとを含有するHPMAの配合物を調製した。W1水は、約9.4~約10.5のpH及び約25℃の温度で使用した。金属試験クーポンを含有する水におけるHPMAの濃度は、約520ppmであった。TTの濃度は、約90ppmであった。メルカプトベンゾチアゾールの濃度は、約69ppmであった。NaSiO.5HOの濃度は、約135ppmであった。
【0109】
結果は、約24日後に、配合物が、軟鋼、銅、アドミラルティメタル、亜鉛めっき鋼、及びAl7075の保護を提供することを示した。同じ配合物を使用するが80℃で約9.11~約10.32のpHでの別の試験は、軟鋼、銅、Al6061、Al1100、及び亜鉛めっき鋼について良好な保護を示した。
【0110】
実施例5
PMAと、NaOHと、TEAと、TTと、分散剤と、水と、NaNOとを含有するポリマレイン酸(PMA)の配合物を調製した。金属試験クーポンを含有する水におけるPMAの濃度は、約500ppmであった。TEAの濃度は、約600ppmであった。TTの濃度は、約84ppmであった。分散剤の濃度は、約13.5ppmであった。NaNOの濃度は、約801ppmであった。
【0111】
結果は、黄色金属を有するガルバニック結合したAl7075について、非常に良好な保護を示した。軟鋼及び黄色金属のクーポンも十分に保護された。60℃のW2水では、配合物は、Al360を保護した。
【0112】
実施例6
PESAと、水と、TEAと、TTと、分散剤と、NaSiO.5HOとを含有するポリエポキシコハク酸(PESA)の配合物を調製した。W2水は、約60℃の温度で使用した。金属試験クーポンを含有する水におけるPESAの濃度は、約2500ppmであった。
【0113】
結果は、軟鋼及び銅についての非常に良好な保護について、非常に良好な保護を示した。
【0114】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される化合物/成分のうちのいずれかを含むか、それから成るか、又は本質的にそれからなり得る。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」などの語句は、特許請求の範囲を、特定の材料又はステップ、及び特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップに限定する。
【0115】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、引用された値の10%以内を指す。
【0116】
本明細書で開示及び特許請求される組成物及び方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製及び実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。更に、明示的に反対の記載がない限り、「1つの(a)」という用語の使用は、「少なくとも1つの」又は「1つ又は複数の」を含むことを意図する。例えば、「1つのポリマー」は、「少なくとも1つのポリマー」又は「1つ又は複数のポリマー」を含むことを意図する。
【0117】
絶対項又は近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、双方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲及びパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(全ての小数値及び全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0118】
更に、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態の一部又は全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】