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特表2023-527375低い後酸性化を有する生物防除乳酸菌
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】低い後酸性化を有する生物防除乳酸菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230621BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230621BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20230621BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230621BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230621BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20230621BHJP
   A23K 30/00 20160101ALI20230621BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23L33/135
C12N1/20 E
A23C9/123
A61K35/747
A61P31/04
A23K10/18
A23K30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572628
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021063460
(87)【国際公開番号】W WO2021239574
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20177382.7
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】スィスィーリェ ルゲ マービー ニルスン
(72)【発明者】
【氏名】スサネ ビストロプ
(72)【発明者】
【氏名】ビーラ コスィーナ ポウルスン
(72)【発明者】
【氏名】ソールバイ シーズラ
(72)【発明者】
【氏名】キム イプ ソーアンスン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B001
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB20
2B150AC06
2B150AD04
2B150BB01
2B150DD12
2B150DD13
2B150DD59
2B150EB04
2B150EB11
2B150EB20
4B001AC02
4B001AC31
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC14
4B001EC01
4B018LB07
4B018MD86
4B018ME09
4B018ME14
4B018MF05
4B018MF06
4B065AA30X
4B065AC04
4B065AC14
4B065AC20
4B065BC02
4B065BC50
4B065BD09
4B065BD10
4B065CA42
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA08
4C087MA52
4C087NA03
4C087NA20
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は乳業技術の分野にある。それは、細菌ラクトバチルス・ラムノサスDSM33515又はそこから入手可能な変異株が使用されることを特徴とする、発酵乳製品を製造する方法に関する。ラクトバチルス・ラムノサス菌DSM33515は、発酵乳製品における低い後酸性化を有し、かつ、抗菌効果を提供できる。本発明はまた、ラクトバチルス・ラムノサスDSM33515又はそこから入手可能な変異株、並びに関連組成物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又はその寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌であって:
(a) DSM32092として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌を含んでいる乳製品と比較して、発酵後の保存中にその寄託された細菌又は変異株を含む発酵乳製品のpHを上昇させ、ここで、そのpHの上昇は、少なくとも0.1の値であり、かつ、ここで、そのpHの上昇は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のそのラクトバチルス・ラムノサス菌株を用いて発酵させた生成物を25℃にて28日間保存した後に測定され;並びに
(b) その寄託された細菌又は変異株を含まない乳製品と比較して、発酵後の保存中にその寄託された細菌又は変異株を含んでいる発酵乳製品のカビの増殖を減少させる、ここで、そのカビの増殖の減少は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度の前記変異株を用いて発酵させた生成物を7℃にて28日間保存した後に測定される、
前記寄託された細菌又は変異株。
【請求項2】
DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌であって、前記寄託された細菌又は変異株が、DSM32092として寄託された菌株ラクトバチルス・ラムノサスといった菌を含んでいる乳製品と比較して、発酵後の保存中にその寄託された細菌又は変異株を含んでいる発酵乳製品のpHを上昇させ、前記pHの上昇が、少なくとも0.1の値であり、かつ、前記pHの上昇が、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のラクトバチルス・ラムノサス菌株を用いて発酵させた生成物を25℃にて28日間保存した後に測定される、前記細菌。
【請求項3】
DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌であって、前記寄託された細菌と変異株が、その寄託された細菌又は変異株を含まない乳製品と比較して、発酵後の保存中にその寄託された細菌又は変異株を含んでいる発酵乳製品中のカビの増殖を減少させ、前記カビの増殖の減少が、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のその寄託された細菌又は変異株を用いて発酵させた生成物を7℃にて28日間保存した後に測定される、前記細菌。
【請求項4】
前記寄託された細菌と変異株が、その寄託された細菌又は変異株を含まない乳製品と比較して、発酵後の保存中にその寄託された細菌又は変異株を含んでいる発酵乳製品中の酵母の増殖を減少させ、前記酵母の増殖の減少が、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のその寄託された細菌又は変異株を用いて発酵させた生成物を7℃にて28日間保存した後に測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を含んでいる組成物。
【請求項6】
前記組成物が、スターター培養物を更に含んでいる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤及び/又は栄養物を更に含んでいる、請求項5又は6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、冷凍又は凍結乾燥される、請求項5~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌又は請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物を、乳又は乳製品に加え、そして、その混合物を4.6又は4.6未満のpHが達成されるまで約22℃~約43℃の温度にて発酵させることを含む、発酵乳製品を製造する方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を含んでいる発酵乳製品。
【請求項11】
前記発酵乳製品が、請求項9に記載の方法によって得られる、請求項10に記載の発酵乳製品。
【請求項12】
前記発酵乳製品が、25℃にて少なくとも28日間保存したときに3.8超のpHを維持する、請求項10~11のいずれか一項に記載の発酵乳製品。
【請求項13】
前記種ラクトバチルス・ラムノサス菌株といった細菌が、少なくとも107CFU/gの濃度で存在する、請求項10~12のいずれか一項に記載の発酵乳製品。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌又は請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物を含んでいる食品、飼料又は医薬製品。
【請求項15】
請求項9に記載の方法によって入手可能な、請求項14に記載の食品、飼料又は医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、発酵乳製品における後酸性化を低減し、抗菌作用を提供できるラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)細菌に関する。後酸性化と微生物汚染は、冷蔵温度より高い温度にて保存された発酵乳製品で頻繁に観察される効果である。本発明は更に、その細菌を含んでいるスターター培養物、その細菌又はその培養物を使用した発酵乳製品の製造方法、これにより得られた、食品、餌料及び医薬製品を含めた、発酵乳製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
乳酸菌(LAB)は、食品製品の保存期限を延長するために何十年間にもわたって使用された。発酵の間、乳酸菌によって乳酸と他の有機化合物が産生され、それにより、食品製品のpHが低下して、その結果、それを酵母やカビなどの望ましくない微生物の成長に不利な状態にする。
【0003】
生物防除とは、天然の又は制御された抗菌性化合物を使用した保存期限の延長及び食品の安全性向上と定義される。乳製品では、カビや酵母細胞による腐敗が、保存期限にマイナスに影響する重大な問題の1つある。過去10年間で、LABの生物防除可能性について調査するため、様々な食物起源から生物防除特性を有する新しい菌株を同定するため、並びに観察された生理活性の隠れた機構を解明するために、非常に多くの労力が注ぎ込まれた。LABによって産生された多数の代謝産物が、抗真菌活性を有すると同定された。
【0004】
更なる研究では、別の生物体による限られた資源の競争的排除が乳酸細菌による真菌増殖阻害の主機構であることが、同定された。特に、必須微量元素マンガンの喪失は乳製品中の乳酸菌の主要な生物防除機構である。また、マンガン捕捉が活性機構であり、かつ、高マンガン勾配を維持するためにエネルギーが必要であることも示された(Siedler et al. "Competitive exclusion is a major bioprotective mechanism of lactobacilli against fungal spoilage in fermented milk products." Applied and environmental microbiology 86.7 (2020))。
【0005】
同時に、生物防除菌株の高い抗真菌活性が通常、高い活性に付随して起こり、そしてそれが、後酸性化、すなわち発酵終了後の酸性化の継続を引き起こすことがわかった。LABにおける生物防除化合物の産生は、通常、成長関連動態を示し、そのため成長が低下した場合、停止することが予想される(Lv et al. "Modelling the production of nisin by Lactococcus lactis in fed-batch culture." Applied microbiology and biotechnology 68.3 (2005): 322-326)。
【0006】
乳の酸性化は典型的に成長に関連しているので(Dandoy et al. "The fast milk acidifying phenotype of Streptococcus thermophilus can be acquired by natural transformation of the genomic island encoding the cell-envelope proteinase PrtS." Microbial cell factories. Vol. 10. No. S1. BioMed Central, 2011)、低減した後酸性化を示す菌株がまた、低減した生物防除効果を有することも予想される。
【0007】
欧州特許EP16182341B1は、抗菌作用を有するラクトバチルス・ラムノサス菌株CBS141584を開示している。しかしながら、低い後酸性化には言及されていなかった。
そのため、低い後酸性化と高い生物防除効果の組み合わせを提供する新しい生物防除菌株の開発が課題であると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
そのため、本発明は、DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を提供する。
【0009】
寄託された細菌又はそこから入手可能な変異株は、以下の:
(a) DSM32092として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌を含む乳製品と比較して、発酵後の保存中に寄託された細菌又は変異株を含む発酵乳製品のpHを上昇させること、ここで、そのpHの上昇は、少なくとも0.1の値であり;かつ、ここで、そのpHの上昇は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のラクトバチルス・ラムノサス菌株を用いて発酵させた生成物を25℃にて28日間保存した後に測定され、並びに
(b) 寄託された細菌又は変異株を含まない乳製品と比較して、発酵後の保存中に寄託された細菌又は変異株を含む発酵乳製品のカビの増殖を減少させること、ここで、そのカビの増殖の減少は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度の前記変異株を用いて発酵させた生成物を7℃にて28日間保存した後に測定される、
が可能である。
【0010】
更なる実施形態において、本発明は、DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を提供し、ここで、寄託された細菌又は変異株が、DSM32092として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌を含む乳製品と比較して、発酵後の保存中に寄託された細菌又は変異株を含む発酵乳製品のpHを上昇させ、ここで、そのpHの上昇は、少なくとも0.1の値であり、かつ、ここで、そのpHの上昇は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のラクトバチルス・ラムノサス菌株を用いて発酵させた生成物を25℃にて28日間保存した後に測定される。
【0011】
更なる態様において、本発明は、DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を提供し、ここで、寄託された細菌と変異株が、寄託された細菌又は変異株を含まない乳製品と比較して、発酵後の保存中に寄託された細菌又は変異株を含む発酵乳製品中のカビの増殖を減少させ、ここで、そのカビの増殖の減少は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度の寄託された細菌又は変異株を用いて発酵させた生成物を7℃にて28日間保存した後に測定される。
【0012】
本発明は更に、先に記載した種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を含む組成物を提供する。一実施形態において、その組成物は更に、スターター培養物を含む。別の実施形態において、その組成物は更に、少なくとも1つの凍結防止剤を含む。好ましい実施形態において、その組成物は、冷凍又は凍結乾燥されている。
【0013】
本発明は更に、乳又は乳製品に先に記載した種ラクトバチルス・ラムノサス菌株といった細菌又はそれらを含む組成物を加え、そして、4.6又は4.6未満のpHが達成されるまで約22℃~約43℃の温度にてその混合物を発酵させること、を含む発酵乳製品を製造する方法を提供する。
【0014】
本発明は、先に記載した種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を含む発酵乳製品を提供する。好ましくは、発酵乳製品は、先に触れた方法によって得られる。更なる実施形態において、発酵乳製品は、25℃にて少なくとも28日間にわたり保存されたとき、3.8超のpHを維持する。別の実施形態において、種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌は、少なくとも107CFU/gの濃度で存在する。
【0015】
加えて、本発明は、先に記載した種ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌又はそれらを含んでいる組成物を含んでいる食品、飼料又は医薬製品を提供する。好ましい実施形態において、その食品、飼料又は医薬製品が、先に触れた方法によって入手可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、25±1℃にて28日間にわたり保存したときの、経時的な発酵乳製品におけるpHの推移を示す。生成物は、スターター培養物(FD-DVS YF-L812、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)含有)(基準;△)のみを用いて、又はDSM33515として寄託された細菌と組み合わせたスターター培養物(□)を用いて、又はDSM32092として寄託された細菌と組み合わせたスターター培養物(○)を用いて発酵させた。
図2図2は、25±1℃にて28日間にわたり保存したときの、経時的な発酵乳製品におけるpHの推移を示す。生成物は、スターター培養物(FD-DVS Premium5.0、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルス含有)(基準、△)のみを用いて、又はDSM33515として寄託された細菌と組み合わせたスターター培養物(□)を用いて、又はDSM32092として寄託された細菌と組み合わせたスターター培養物(○)を用いて発酵させた。
図3図3は、スターター培養物単独を用いて(基準、一番目の列)、又はDSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌と組み合わせたスターター培養物を用いて(二番目の列)、又はDSM32092として寄託されたLb.ラムノサス菌と組み合わせたスターター培養物を用いて(三番目の列)発酵させた乳から調製したプレート上でのカビの増殖を示す。標的汚染菌:(A) P.ブレビコンパクツム(P. brevicompactum)、(B) P.クルストスム(P. crustosum)、(C) P.ソリツム(P. solitum)、(D) P.カルネウム(P. carneum)、(E) P.パネウム(P. paneum)及び(F) P.ロックフォルティ(P. roqueforti)は、500胞子/スポットの濃度で加えられた。そのプレートは、7±1℃にて28日間にわたってインキュベートされた。
図4図4は、7±1℃にて28日間にわたり保存したときの、経時的な発酵乳製品におけるpHの推移を示す。生成物は、スターター培養物(基準、○)のみを用いて、又はDSM33515として寄託された細菌と組み合わせたスターター培養物(□)を用いて、又はCBS141584と組み合わせたスターター培養物(△)を用いて発酵させた。
図5図5は、25±1℃にて28日間にわたり保存したときの、経時的な発酵乳製品におけるpHの推移を示す。生成物は、スターター培養物(基準、○)のみを用いて、又はDSM33515として寄託された細菌と組み合わせたスターター培養物(□)を用いて、又はLb ラムノサス菌株CBS141584と組み合わせたスターター培養物(△)を用いて発酵させた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細な説明
ラクトバチルス・ラムノサス培養物DSM32092を含めた、伝統的発酵製品のための安全な追加溶液を提供する生物防除効果を用いる食文化は利用可能である。これらの生物防除菌株は、通常のスターター培養物と組み合わせて使用されて、乳を発酵製品に共発酵させる。発酵中、DSM32092は生物防除効果を発揮し、これにより、カビと酵母に対して発酵製品の延長された保存期間を提供する。ヨーグルトなどの多くの乳製品の発酵は停止され、そして、その生成物は特定のpHにて冷まされ、発酵後、細菌は保存中でも活性であることが多い。これにより、更なる乳酸が産生され、そして、そのプロセスは後酸性化として知られている。結果として得られた最終製品の低いpHは、その生成物に対してマイナスの官能影響を与えるため、望ましくない。本明細書中に記載した発明は、低減された後酸性化と高い生物防除効果の組み合わせを示す新規かつ改良された生物防除菌株の開発を含む。DSM32092の11,000を超える変異株の大規模スクリーニングが、菌株DSM33515の同定につながった。この菌株は、低い後酸性化と高い抗真菌活性を提供する。
【0018】
これにより、本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株、すなわち、有利な特性を維持しているDSM33515として寄託された菌株及び変異株は、25℃にて少なくとも28日間にわたり保存されたとき、前記菌株を含んでいる発酵乳製品が3.8超のpHを維持することを特徴とし、ここで、その発酵乳製品が、乳又は乳製品に先に触れたように前記ラクトバチルス・ラムノサス菌株又はそれらを含んでいる組成物を加え、そしてその混合物を、4.6又は4.6未満のpHを達成するまで、約22℃~約43℃の温度にて発酵させ、その発酵製品を振盪し、そして冷却することを含む方法によって得られる。本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株が、25℃にて少なくとも28日間にわたり保存されたとき、3.8超のpHを維持することができることを特定する特徴が、その効果を測定するのに一般に使用されるアッセイを特徴づけているにすぎないことが理解されなければならない。本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株、食品又は飼料製品を含めた、それらを含んでいる組成物が、実際にこれらの条件下で保存されている必要はなく、それらを要求することもない。
【0019】
本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株は、次のようにして作出された:
エチルメタンスルホネート(EMS)突然変異誘発を使用して、母菌株DSM32092から変異株プールを得た。予備実験を実施して、この菌株についてのEMSの有効性と殺菌速度を確立した。≧95%の殺菌速度を目標とした。これに基づいて、15μlのEMSを1mlの一晩培養物に加えた(OD620 約3~4)。次に、その培養物を、37℃にて4時間インキュベートし、次に、10-2~10-6に及ぶ一連の範囲に希釈した。それに続いて、希釈した培養物を、MRSプレート上に広げて、細胞数について試験した。変異株プールを、滅菌ガラスビーズを使用してMRS-Difco寒天上に広げ、37℃にて2日間嫌気的にインキュベートした。約11,000個の単一コロニーを、コロニーピッキングロボットを使用して釣り出し、次に、96浅ウェルマイクロタイタープレート内の200μlのMRS-Difcoブロス中に植菌し、そして37℃にて一晩、嫌気的インキュベートした。20μlの体積を、乳の後酸性化に使用し、残りの体積を、グリセロールを強化し(20%)、凍結させ、及び保存した。20μlの体積を、2%のスクロースとpH呈色指示薬を強化した1980μlのUHTスキムミルクを含む96深ウェルプレートに移し(1%の種菌)、そして40℃にて40時間インキュベートした。UHTスキムミルクを、38%のタンパク質、53%のラクトース、<1.25の脂質、及び3.9%の湿気(Arla Foods amba, Denmark)を含有するスキムミルクを9.5%の乾物量のレベルに再構成することによって調製し、そして99℃にて30分間低温殺菌し、続いて、40℃に冷ました。酸性化乳を含有するプレートを、呈色(色相)値がpH値に変換されるPoulsen et al. 2019 (Poulsen, V.K., Derkx, P., Oregaard, G. (2019): "High-Throughput Screening for Texturing Lactococcus Strains". FEMS Microbiological Letters)に記載のpH呈色法を使用して底面にてスキャンした。母菌株と比較してMRS-Difcoブロス中で良好な増殖及びより高い最終pHを有する462個の突然変異株を5枚の96ウェルマイクロタイタープレート内に回収し、そしてスターター培養物YF-L812(ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクスとストレプトコッカス・サーモフィルス)の存在又は不存在下で乳の酸性化に使用した。植菌したpH呈色指示薬乳サンプルを、40℃にて設定した温度制御フードを備えたフラットベッドスキャナ(HP ScanJet G4010)上で、スターター培養物があるときには20時間又はスターター培養物がないときには40時間インキュベートした。462個の発酵乳サンプルと対照(いずれの菌株及び母菌株DSM32092も植菌していない乳)を、ヨーグルトから腐敗菌株として以前に単離された種デバレオマイセス・ハンセニー(Debaryomyces hansenii)からの酵母株を阻害することができるそれらの能力について評価した。150μlの発酵乳を96ウェルプレートの個々のウェルに移し、そしてそのウェルに約20細胞のD.ハンセニイ菌株を植え付けた。17℃でのインキュベーションの4日後に、希釈列を、選択的YGC寒天プレート上にスポットして、光学的検査によって酵母増殖を分析した。(少なくともD.ハンセニイを阻害することができる)母菌株(少なくとも0.2ユニット)と比較して、高い最終pHを有するリード菌株、並びに母菌株を、
3ラウンドの単一コロニー精製にかけ、それに続いて、哺乳瓶(200mlスケール)中でのそれらの乳後酸性化特性及びそれらの酵母阻害能について特徴づけた。興味深いことに、後酸性化がないリード菌株の大部分は、酵母を阻害するそれらの能力を失った。462個のリード菌株のうちの約1%だけが、それらの生理活性を維持した、すなわち、後酸性化しないと同時に、母菌株と類似した生理活性を有する。それが非常に良好な官能特性を有する最も良く機能する菌株であるとして、そこからDSM33515を選択した。
【0020】
本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株は、それが後酸性化のリスクを軽減すると同時に、抗真菌活性を維持し、これにより、これらの細菌を用いて作った食品製品の保存安定性、特に、冷蔵温度を上回る状態下での保存安定性、を改善する特定の利点を有する。
【0021】
DSM32092として寄託された菌株ラクトバチルス・ラムノサス菌と比較して、変異株によって引き起こされたpHの上昇が、少なくとも0.1の値に達する。その上昇は、発酵製品を25℃にて28日間保存した後に測定される。
【0022】
本出願の文脈において、用語「乳酸菌」又は「LAB」は、糖の発酵の主な代謝最終産物として乳酸を生産する食品グレードの細菌を指す。これらの細菌は、共通の代謝的特徴及び生理学的特徴を有し、通常、グラム陽性、低GC、酸耐性、非胞子形成性、非呼吸性、棒状の桿菌又は球菌である。発酵段階では、これらの細菌による乳糖の消費が乳酸の形成を引き起こし、pHを低下させてタンパク質凝集物の形成をもたらす。したがって、これらの細菌は乳の酸性化及び乳製品の質感に関与する。本明細書で使用される用語「乳酸菌」は、ラクトバチルス属の種(Lactobacillus spp.)、ビフィドバクテリウム属の種(Bifidobacterium spp.)、ストレプトコッカス属の種(Streptococcus spp.)、ラクトコッカス属の種(Lactococcus spp.)といった属の細菌、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、及びロイコノストック属の種(Leuconostoc spp.)に属する細菌を包含するが、これらに限定されない。
【0023】
「カビ」とは、菌糸と呼ばれる多細胞フィラメントの形態で増殖する真菌である。カビに関して「阻害する」という用語は、例えば、本発明のラクトバチルス・ファーメンタム株を含む食料製品内部及び/又は食料製品表面上のカビの増殖又は胞子形成又は胞子数又は濃度が、かかる細菌を含まない食料製品に比べて低減することを指す。本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株によってもたらされる阻害の程度は、好ましくは、ラクトバチルス・ラムノサス菌の存在下及び非存在下での寒天固化発酵乳における増殖によって決定される。カビの例としては、ペニシリウム・ソリツム(Penicillium solitum)、ペニシリウム・ブレビコンパクツム(Penicillium brevicompactum)、ペニシリウム・クルストスム(Penicillium crustosum)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・パネウム(Penicillium paneum)及びペニシリウム・カルネウム(Penicillium carneum)などのペニシリウム属のメンバーが挙げられる。
【0024】
酵母は単独細胞として増殖する真菌である。本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株、すなわち、有利な特性を維持している、DSM33515として寄託された菌株と変異株は、カビの増殖を阻害し、更に酵母の増殖を阻害することができる。酵母の増殖と関連して、「阻害する」という用語はまた、例えば、斯かる細菌を含まない食品製品と比べて本発明の細菌を含む食品製品中の、及び/又は食品製品表面上の、酵母の増殖の低下又は数若しくは濃度の減少を指す。この場合も先と同様に、本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌株によって提供された阻害の程度は、ラクトバチルス・ラムノサス菌の存在及び不存在下、寒天固化発酵乳上での増殖によって好ましくは測定される。
【0025】
発酵乳製品中のカビ又は酵母の増殖の低下を測定するためのアッセイは、スターター培養物単独、並びにスターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度の本発明のラクトバチルス・ラムノサスを乳に植え付け、その乳を4.6のpHに達するまで発酵させ、その発酵乳を寒天と混合し、その混合物を寒天プレートに充填し、500胞子/スポットの濃度にて標的カビ及び/又は酵母汚染菌を加え、7℃にて28日間にわたってプレートを保存し、そして、本発明のラクトバチルス・ラムノサスを含んでいるプレート上のカビ及び/又は酵母の増殖を、市販のスターター培養物のみを含むプレートと比較することによって、好ましくは実施される。それぞれのアッセイの一部始終は実施例2で提供される。
【0026】
本出願の文脈において、用語「変異株」は、遺伝子操作、放射線照射及び/又は化学処理などの手段により作製された本発明の株に由来する株として理解されるべきである。変異株は、本発明の寄託株と比較して機能的に同等の変異株、例えば、特に後酸性化及び/又は生物防除の阻害に対する効果に関し、実質的に同一、又は改善された特性を有する変異株である。それぞれの変異株は本発明の実施形態を表す。用語「変異株」は、特に、エタンメタンスルホン酸(EMS)又はN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)などの化学変異原やUV光などによる処理を含む通常使用される任意の突然変異形成処理に本発明の株を供することにより取得された株、又は自然発生した突然変異株を指す。変異株は、複数の突然変異形成処理(1つの処理は、1つの突然変異形成処理であって、その後にスクリーニング/選択工程が行われるものとして理解されるべきである)に供されたものでもよいが、好ましくは、20以下、又は10以下、又は5以下の処理(又はスクリーニング/選択工程)が実施されたものであることが望ましい。好ましい変異株では、親株と比較して、細菌ゲノム中のヌクレオチドの5%未満、又は1%未満、又は0.1%未満が、別のヌクレオチドによりシフトしているか又は欠失している。
【0027】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特に示さない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものとして解釈すべきである。
【0028】
それぞれの組成物は、LABを含め数多くの更なる細菌を含んでもよい。本発明の好ましい組成物は、ラクトバチル属の種、ビフィドバクテリウム属の種、ストレプトコッカス属の種、ラクトコッカス属の種、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びロイコノストック属の種の一つ又は複数から選択される少なくとも1種の細菌を更に含むという特徴を有する。
【0029】
特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌、及び1若しくは複数の更なる細菌を含む。一実施形態において、ラクトバチルス・ラムノサス菌のいくつかの異系統が組み合わせられる。
【0030】
本発明の組成物は、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤(lyoprotectants)、抗酸化剤、栄養物、増量剤、香味料又はその混合物を追加的に含んでもよい。その組成物は、冷凍又は凍結乾燥形態であってもよい。その組成物は、好ましくは、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤及び/又は栄養物のうちの1若しくは複数、より好ましくは、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤及び/又は抗酸化剤、最も好ましくは、凍結保護剤若しくは凍結乾燥保護剤、又はその両方を含む。凍結保護剤や凍結乾燥保護剤などの保護剤の使用が、当該技術分野の当業者に知られている。好適な凍結保護剤又は凍結乾燥保護剤としては、単糖、二糖、三糖及び多糖類(グルコース、マンノース、キシロース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、デンプン及びアラビアゴム(アカシア)など)、ポリオール(エリスリトール、グリセロール、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、トレイトール、キシリトールなど)、アミノ酸(プロリン、グルタミン酸など)、複合物質(スキムミルク、ペプトン、ゼラチン、酵母抽出物など)、並びに無機化合物(トリポリリン酸ナトリウムなど)が挙げられる。好適な抗酸化剤としては、アスコルビン酸、クエン酸とその塩、没食子酸塩、システイン、ソルビトール、マンニトール、マルトースが挙げられる。好適な栄養物としては、糖、アミノ酸、脂肪酸、ミネラル、微量元素、ビタミン(ビタミンBファミリー、ビタミンCなど)が挙げられる。その組成物は、任意選択で、増量剤(ラクトース、マルトデキストリンなど)及び/又は香味料を含めた更なる物質を含んでもよい。
【0031】
LABは、乳にスターター培養物の形態で添加するのが最も一般的である。本文脈において使用される用語「スターター」又は「スターター培養物」は、乳ベースの酸性化に関与する1種以上の食品グレードの微生物、特に乳酸菌の培養物を指す。スターター培養物は新鮮でもよいが、凍結又は凍結乾燥状態が最も頻繁に見られる。これらの製品は、「ダイレクトバットセット(Direct Vat Set)」(DVS)培養物としても知られ、発酵乳製品又はチーズなどの乳製品を製造するための発酵容器又はバットに直接植菌するように生産される。それぞれのスターター培養物は、多数の製造元から市販されており、その中には、Premium5.0、YF-L812、F-DBA YoFlex Mild 2.0、F-DVS YF-L901、FD-DVS CH-1が含まれる。これらの4つの培養物は、ストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカスの混合物を含み、Chr.Hansen社から市販されている。
【0032】
したがって、本発明の一態様において、上記のような抗真菌活性を有するラクトバチルス・ファーメンタム種の細菌を含み、冷凍物1gあたり少なくとも109コロニー形成単位(CFU)の濃度、又は冷凍物1gあたり少なくとも1010CFU/gの濃度、又は冷凍物1gあたり少なくとも1011CFU/gの濃度で乳酸菌を含有する固体凍結又は凍結乾燥スターター培養物の形態の組成物を提供する。これらのスターター培養物は更に、DSM33515として寄託された種ラクトバチルス・ラムノサス又は寄託された細菌から入手可能な変異ラクトバチルス・ラムノサスといった細菌を含む。
【0033】
ラクトバチルス・ラムノサス菌株もまた記載され、ここで、その細菌は、DSM32092として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス菌を含んでいる同じスターター培養物を用いて発酵させた乳製品と比較して、発酵後の保存中にラクトバチルス・ラムノサス菌株を含んでいる発酵乳製品のpHを上昇させることを特徴とし、ここで、そのpHの上昇は、少なくとも0.1の値であり、かつ、ここで、そのpHの上昇は、スターター培養物と少なくとも107CFU/gの濃度のラクトバチルス・ラムノサスを用いて発酵させた生成物を25℃にて28日間保存した後に測定される。
【0034】
更なる実施形態において、本発明は、本発明の前記ラクトバチルス・ラムノサス菌株又はそれらを含んでいる組成物を乳又は乳製品に加え、そして、その混合物を、4.6又は4.6以下のpHに達するまで、約22℃~約43℃の温度にて発酵させることを含む発酵乳製品を製造する方法を提供する。
【0035】
本出願の文脈において、用語「乳」は、動物の乳腺又は植物によって産生される液体を指す一般的な意味で広範に使用される。本発明によれば、乳は加工されていてもよく、用語「乳」は、全乳、脱脂乳、無脂肪乳、低脂肪乳、全脂肪乳、低乳糖乳又は濃縮乳を含む。無脂肪乳は、無脂肪又はスキムミルクの製品である。低脂肪乳は、典型的には、約1%~約2%の脂肪を含む乳として定義される。全脂肪乳は2%以上の脂肪を含むことが多い。用語「乳」は、各種哺乳類及び植物由来のミルクを包含する意図である。乳の哺乳類の由来源としては、牛、羊、山羊、水牛、ラクダ、ラマ、メア、及びシカが含まれるが、これらに限定されない。乳の植物由来源としては、大豆、エンドウ豆、ピーナッツ、大麦、米、オート麦、キヌア、アーモンド、カシュー、ココナッツ、ヘーゼルナッツ、麻、ゴマの種及びヒマワリの種子から抽出された乳が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法及び製品において、牛由来の乳は、発酵のための出発物質として最も好ましく使用される。
【0036】
用語「乳」は、脂肪を低減した及び/又はラクトースを低減した乳製品も含まれる。それぞれの製品は、該技術分野で周知の方法を用いて調製することができ、市販されている。ラクトースを低減した乳は、ラクトースを、ラクトース酵素により、又はナノ濾過、電気透析、イオン交換クロマトグラフィー及び遠心分離によりグルコースやガラクトースに加水分解することを含む、該分野で公知の任意の方法に従って製造することができる。
【0037】
用語「乳製品」又は「乳ベース」は、本出願では、LABの増殖及び発酵のための培地として使用することができる乳又は乳成分ベースの組成物を指すのに広範に使用される。乳製品又は乳ベースは、LABを増殖又は発酵させる目的で使用できる乳由来の成分及びその他の成分を含む。
【0038】
発酵の前に、該技術分野で公知の方法に従い乳基質は均質化又は殺菌されてもよい。本明細書中、「均質化」とは、可溶性の懸濁物又は乳液を取得するための激しい混合を意味する。均質化を発酵の前に行う場合、乳脂肪が乳から分離しないほど小さなサイズに分散するように均質化してもよい。これは、乳を高圧で小さなオリフィスを通して押し出すことにより達成され得る。本明細書中、「殺菌」とは、生きた生物、例えば微生物を減少又は死滅させるために乳基質を処理することを意味する。好ましくは、殺菌は、一定時間、特定の温度で乳基質を維持することにより達成される。該特定の温度は、通常加熱により達成される。温度及び時間は、特定の細菌、例えば有害な細菌を死滅又は不活性化するように選択され得る。急速冷却工程が続いてもよい。
【0039】
本発明は方法を更に提供し、ここで、発酵製品は、7℃を上回る温度にて、好ましくは7℃~25℃の温度にて保存される。その生成物は、いずれの時期に保存されてもよいが、好ましくは、少なくとも14日間の期間にわたり保存され、そしてここで、その発酵乳製品のpHは、保存中、pH4.0超に維持される。
【0040】
本発明は更に、上述の発酵乳製品を製造する方法を含む、食料、飼料又は医薬製品を製造する方法、並びに、この方法によって得られる食料、飼料又は医薬製品を更に提供する。
【0041】
発酵は、食料製品、飼料製品又は医薬品を製造するために行われる。用語「発酵乳製品」、「食品」又は「飼料」製品は、本発明の発酵方法によって得られる製品を指し、チーズ、ヨーグルト、フルーツヨーグルト、ヨーグルト飲料、水切りヨーグルト(ギリシャヨーグルト、ラブネ)、クワルク、フロマージュ・フレ及びクリームチーズを含む。食料という用語は、発酵ソーセージといった発酵肉及び発酵魚製品を含む他の発酵食品を更に包含する。
【0042】
用語「チーズ」は、以下のタイプのチーズ:カッテージ、フェタ、チェダー、パルメザン、モッツァレラ、エメンタール、ダンボ、ゴーダ、エダム、フェタタイプ、ブルーチーズ、塩漬けチーズ、カマンベール及びブリーチーズなどのハード、セミハード及びソフトチーズを含めたあらゆるチーズを包含すると理解される。当業者は、凝塊をチーズにどのように変換するか知っており、方法は、各文献中に見られる、例えば、Kosikowski, F. V., and V. V. Mistry, "Cheese and Fermented Milk Foods", 1997, 3rd Ed. F. V. Kosikowski, L. L. C. Westport, CTを参照のこと。本明細書中に使用されるとき、1.7%(w/w)未満のNaCl濃度を有するチーズは、「低塩チーズ」と称される。
【0043】
本出願の文脈において、用語「ヨーグルト」は、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス、そして場合により他の微生物、例えばラクトバチルス・デルブルッキー亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・パラカゼイ、又はそれらに由来する任意の微生物を含む製品を指す。ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス以外の乳酸菌株も、最終製品に様々な特性、例えば腸内叢の平衡を促進する特性、を付与するために含まれる。本明細書で使用される用語「ヨーグルト」は、セットヨーグルト、スタードヨーグルト、飲用ヨーグルト、プチスイス、熱処理ヨーグルト、高タンパク質量及びヨーグルト風の製品であるという特徴を有する水切りヨーグルト又はギリシャスタイルヨーグルトを包含する。
【0044】
特に、用語「ヨーグルト」は、フランス及びヨーロッパの規制に従って定義される、特定の好熱性乳酸菌(つまり、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルス)のみによる乳酸発酵によって得られた凝固乳製品であり、これらの菌が同時に培養され最終製品中に少なくとも10×106CFU(コロニー-形成単位)/gの量で生存しているヨーグルトも包含するが、これらに限定されない。ヨーグルトは場合により、酪農原料(例えば、クリーム)、あるいは砂糖又は甘味剤、1つ又は複数の香味料、果物、穀物、又は栄養物質、特にビタミン、ミネラル及び繊維、ならびに安定剤及び増粘剤といった他の成分を含有してもよい。必要に応じて、ヨーグルトはAFNOR NF 04-600規格及び/又はcodex StanA-lla-1975規格の発酵乳及びヨーグルトの基準を満たす。AFNOR NF 04-600規格を満たすためには、製品は発酵後に加熱してはならず、酪農原料は完成品の最低70%(m/m)を占める必要がある。
【0045】
寄託株と専門家のみへの分譲
本出願人は、特許が付与される日まで、下記の寄託された微生物のサンプルを、ブダペスト条約の締約国の工業所有権庁によって管理された利用可能規定を条件として、専門家にのみ入手可能にすることを要求する。
【0046】
本出願人は、ラクトバチルス・ラムノサス菌株DSM32092を2013年6月5日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM32092が付与された。
本出願人は、ペニシリウム・ソリツムDSM32093を2015年7月16日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM32093が付与された。
本出願人は、ペニシリウム・ブレビコンパクツムDSM32094を2015年7月16日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM32094が付与された。
本出願人は、ラクトバチルス・ラムノサスDSM33515を2020年5月5日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM33515が付与された。
本出願人は、ペニシリウム・クルストスムDSM33517を2020年5月5日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM33517が付与された。
本出願人は、ペニシリウム・ロックフォルティDSM33518を2020年5月5日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM33518が付与された。
本出願人は、ペニシリウム・パネウムDSM33519を2020年5月5日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM33519が付与された。
本出願人は、ペニシリウム・カルネウムDSM33520を2020年5月5日付でドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ), Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweigに寄託し、寄託番号:DSM33520が付与された。
【実施例
【0047】
実施例1
DSM33515として寄託された生物防除Lb.ラムノサス菌株‐後酸性化に対するわずかな影響
DSM33515として寄託された菌株Lb.ラムノサスを、スターター培養物単独やDSM32092として寄託された母菌株と比較した、後酸性化に対する影響に関して試験した。
【0048】
その目的のために、2.8%のタンパク質、1.2%の脂質及び10%のスクロースから成る均質化したミルクベースを、95±1℃にて5分間熱処理し、そして急速に冷やした。市販のスターター培養物(FD-DVS YF-L812又はFD-DVS Premium5.0)を0.02%(v/w)にて植菌し、そして植菌した乳を3リットルバケットに分配した。1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、DSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌を植菌し、1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、DSM32092として寄託されたLb.ラムノサス菌を植菌し、そして、1個のバケットを基準参照として使用し、スターター培養物のみを植菌した。すべてのボトルを、43±1℃にて水浴中でインキュベートし、4.60±0.1のpHに達するまでこの状態で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく撹拌して凝塊を壊し、50mlのカップに分注し、氷上で急速に冷やした。
【0049】
後酸性化に対する効果を観察するために、3種類の発酵乳サンプル(スターターのみ、スターター+DSM33515として寄託された菌及びスターター+DSM32092として寄託された菌)を、7±1℃、12±1℃及び25±1℃にて28日間、並びに37±1℃にて7日間保存し、そしてpHを1、7、14、21及び28日目に計測した。
【0050】
FD-DVS YF-L812やFD-DVS Premium5.0と組み合わせたときの後酸性化に対する効果を、それぞれ図1及び図2で例示して、DSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌の添加が、DSM32092として寄託されたLb.ラムノサス菌と比較して、より少ない後酸性化を引き起こしたことを示す。
【0051】
実施例2
Lb.ラムノサス菌株DSM33515は、後酸性化に対する低い効果と高い防カビ効果を兼ね備える
DSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌の阻害効果の分析のために、ヨーグルトの製造プロセス及び生成物に類似している、準定量的寒天アッセイを使用した:
【0052】
2.8%のタンパク質、1.2%の脂質及び10%のスクロースから成る均質化したミルクベースを、95±1℃にて5分間熱処理し、そして急速に冷やした。市販のスターター培養物(FD-DVS YF-L812)を0.02%(v/w)にて植菌し、そして植菌した乳を3Lバケットに分配した。1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、DSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌を植菌し、別のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、Lb.ラムノサスDSM32092を植菌し、そして、1個のバケットを基準参照として使用し、スターター培養物のみを植菌した。すべてのバケットを、43±1℃にて水浴中でインキュベートし、4.60±0.1のpHに達するまでこの状態で発酵させた。発酵後、バケットを激しく撹拌して凝塊を壊し、200mlのカップに分注し、冷却チャンバー内で急速に冷やした。次に、発酵乳を40℃の温度まで温め、溶かしそして60℃に冷ました40mlの5%滅菌寒天溶液を加えた。次に、この発酵乳と寒天の溶液を滅菌ペトリ皿に注ぎ入れ、そしてそのプレートをLAFベンチ内で30分間乾燥させた。
【0053】
以下の6種類の異なったカビ:DSM32094として寄託されたP.ブレビコンパクツム、DSM33517として寄託されたP.クルストスム、DSM32093として寄託されたP.ソリツム、DSM33520として寄託されたP.カルネウム、DSM33519として寄託されたP.パネウム、及びDSM33518として寄託されたP.ロックフォルティの胞子懸濁液を500胞子/スポットの濃度にて寒天プレート上にスポットした。3種類のカビを各プレートにスポットし、そして標的汚染菌を500胞子/スポットの濃度で添加した。プレートを、7±1℃にて28日間インキュベートし、カビの増殖について定期的に調べた。
【0054】
寒天アッセイの結果は、図3に提示され、そして、試験したカビのすべてがスターター培養物のみを用いて発酵させた乳(基準)から作られた寒天プレート上で非常によく増殖したことを示した。しかしながら、DSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌が乳発酵中に存在したとき、得られたプレートは、試験した6種類のペニシリウム種の増殖を阻害した。Lb.ラムノサスの効果はLb.ラムノサス DSM32092に類似したレベルであり、そしてそれは、より多くの後酸性化を引き起こすことが知られている。
【0055】
実施例3
官能評価
DSM33515として寄託された生物防除Lb.ラムノサス菌株を、2週間にわたりわずかに加速した温度(12℃)にて又は25℃にて保存した発酵乳製品において、スターター培養物のみ及び母菌株DSM32092と比較した、官能に対する影響について試験した。
【0056】
2.8%のタンパク質、1.2%の脂質及び10%のスクロースから成る均質化したミルクベースを、95±1℃にて5分間熱処理し、そして急速に冷やした。市販のスターター培養物(FD-DVS YF-L812)を0.02%(v/w)にて植菌し、そして植菌した乳を3Lバケットに分配した。1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、DSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌を植菌し、1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、DSM32092として寄託されたLb.ラムノサス菌を植菌し、そして、1個のバケットを基準参照として使用し、スターター培養物のみを植菌した。すべてのバケットを、43±1℃にて水浴中でインキュベートし、4.60±0.1のpHに達するまでこの状態で発酵させた。発酵後、バケットを激しく撹拌して凝塊を壊し、200mLのカップに分注し、冷却チャンバー内で急速に冷やした。1セットのサンプルを12℃にて2週間保存し、そして、もう1セットのサンプルを25℃にて2週間保存した。
【0057】
説明的分析では、訓練したパネルが、認識した強度の等級により生成物の指定の特性を評価する。次に、これらの定量的な格付けを、評価した生成物セットの生成物間の類似性や差異を説明するために使用した(Lawless, H. T., & Heymann, H. (2010). Sensory evaluation of food: principles and practices. Springer Science & Business Media):
【0058】
12人の訓練した判定者が試験に参加して、本明細書中の関連性の3つのみを用いて6個のサンプルを評価した。特性リストは、25℃にて保存した同じサンプルの評価に基づいた。評価のために、サンプルを、二連のラテン方格法に従って、すなわち、合計で12個のサンプルを、無作為化した順番で判定者に提示した。特性強度を、左端に「なし」及び右側に「強い」と標識した5つの区分を用いた体系的線形スケールにより格付けした。
【0059】
強度評価のための結果の統計的評価としては、総合的なサンプルの差異を確認するためのウイルクス検定を用いた三元配置MANOVA(多変量分散分析)と、要因である生成物、判断者及び繰り返し、並びにこれらの双方向の相関を共に考慮して、有意差がどの特性にあったかを見つけ出すためのANOVA(分散分析)が挙げられた。最小有意差(LSD)試験を使用して、その特性が有意な生成物効果を有したときの生成物サンプル間での有意差を検出するために使用した。α=0.05の有意水準を試験のために選択した。
【0060】
12℃及び25℃にて14日間保存したサンプルに対して実施した官能評価の結果を、それぞれ表1及び表2に示す。これらの結果は、スターター培養物と一緒のDSM33515として寄託されたLb.ラムノサス菌の添加が、母菌株DSM3351と比較して、12℃又は25℃にて14日間保存したときに、生成物の官能特性を改善したことを示す。具体的には、DSM32092を用いたサンプルでは、12℃にて14日間保存したサンプルにおいて、基準と比較して、わずかなバターの香りしか感知しなかった。サンプルを25℃にて14日間保存したとき、Lb.ラムノサスDSM32092は、スターター培養物のみを植菌したサンプルと比較して、より多くの酸味をもたらしたが、よりわずかな甘味及びミルクの香りしかもたらたさなかった。
【0061】
表1:12℃にて14日間保存したサンプルに対して実施した官能評価の結果
特性リスト、生成物間で有意差が見られた特性の最小有意差試験(LSD)に基づく、各特性、平均値及びグループ別サンプルに関して対応するp値及び有意性を有するサンプルの三元配置ANOVAからの要因生成物に関するF値、異なる文字はp<0.05にて有意差を示す。
【表1】
【0062】
表2:25℃にて14日間保存したサンプルに対して実施した官能評価の結果
特性リスト、生成物間で有意差が見られた特性の最小有意差試験(LSD)に基づく、各特性、平均値及びグループ別サンプルに関して対応するp値及び有意性を有するサンプルの三元配置ANOVAからの要因生成物に関するF値、異なる文字はp<0.05にて有意差を示す。
【表2】
【0063】
DSM33515を用いて調製したサンプルが、DSM32092を用いて調製したサンプルに比べて、ミルク感、甘味がより強く、酸味が少ないように感じられたことが表から読み取ることができた。
【0064】
実施例4
Lb.ラムノサスDSM33515は、CBS141584と比較して、後酸性化に対するよりわずかな影響しか示さない。
Lb.ラムノサスDSM33515を、スターター培養物のみ及び欧州特許EP16182341で開示されたCBS141584として寄託された菌株と比較した、後酸性化に対する影響に関して試験した。
【0065】
その目的のために、2.8%のタンパク質、1.2%の脂質及び10%のスクロースから成る均質化したミルクベースを、95±1℃にて5分間熱処理し、そして急速に冷やした。市販のスターター培養物(FD-DVS YF-L812, Chr. Hansen A/S Denmark、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスを含有)を0.02%(v/w)にて植菌し、そして植菌した乳を3リットルバケットに分配した。1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、DSM33515として寄託されたLb. ラムノサス菌を植菌し、1個のバケットには1×107CFU/gの総濃度で、CBS141584を植菌し、そして、1個のバケットを基準参照として使用し、スターター培養物のみを植菌した。すべてのボトルを、43±1℃にて水浴中でインキュベートし、4.60±0.1のpHに達するまでこの状態で発酵させた。発酵後、ボトルを激しく撹拌して凝塊を壊し、50mlのカップに分注し、氷上で急速に冷やした。
【0066】
後酸性化に対する効果を観察するために、3種類の発酵乳サンプル(スターターのみ、スターター+DSM33515として寄託された菌及びスターター+CBS141584として寄託された菌)を、7±1℃及び25±1℃にて28日間保存し、そしてpHを1、7、14、21及び28日目に計測した。
【0067】
図4及び図5は、スターター培養物と組み合わせられたときのDSM33515及びCBS141584の後酸性化に対する効果を示す。明らかに、Lb.ラムノサス菌DSM33515の添加は、CBS141584と比較して、より少ない後酸性化しか引き起こさなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】