(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】電気システムのための溶存ガスを有する液体冷却剤
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
C09K5/10 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572734
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 US2021025293
(87)【国際公開番号】W WO2021242404
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ラック,デイビッド エイ
(72)【発明者】
【氏名】サターフィールド,アンドリュー ディ
(57)【要約】
電気システムのための液体冷却剤およびその作製方法が開示される。電気システムのための例示的な液体冷却剤は、基油;および液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量の溶存ガスを含み得、基油が液体冷却剤の主成分であり、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気システムのための液体冷却剤であって、
基油;および
液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量の溶存ガス
を含み、
基油が液体冷却剤の主成分であり、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、液体冷却剤。
【請求項2】
前記基油が、グループIのベース材料、グループIIのベース材料、グループIIIのベース材料、グループIVのベース材料、グループVのベース材料、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのベース材料を含む、請求項1に記載の液体冷却剤。
【請求項3】
前記基油がポリアルファオレフィンベース材料を含む、請求項1または請求項2に記載の液体冷却剤。
【請求項4】
前記基油が、ヒドロカルビル芳香族、アルキル化芳香族、モノエステル、ポリエステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、イオン液体、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのグループVのベース材料を含む、請求項1または2に記載の液体冷却剤。
【請求項5】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の不活性ガスを含む、請求項1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項6】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の二酸化炭素を含む、請求項1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項7】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の希ガスを含む、請求項1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項8】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量のアルゴンを含む、請求項1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項9】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の炭化水素を含む、請求項1~4のいずれかに記載の冷却剤の液体冷却剤。
【請求項10】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム~1リットル当たり約400グラムの量で存在する、請求項1~9のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項11】
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.5グラム~1リットル当たり約200グラムの量で存在する、請求項1~10のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項12】
液体冷却剤の100℃における動粘度が約1cSt~約4cStであり、液体冷却剤の熱容量が約2.0kJ/kgK以上であり、液体冷却剤の密度が約0.92g/mL以上である、請求項1~11のいずれかに記載の液体冷却剤。
【請求項13】
基油がポリアルファオレフィンベース材料を含み、溶存ガスが液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の二酸化炭素を含む、請求項12に記載の液体冷却剤。
【請求項14】
液体冷却剤を生成する方法であって、基油を容器内に導入することと、一定量のガスが基油に溶解して液体冷却剤を供するように容器をガスで加圧することを含み、液体冷却剤は100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、方法。
【請求項15】
前記ガスが、1リットル当たり約0.2グラム以上の量で液体冷却剤に溶解した希ガスを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ガスが、1リットル当たり約0.2グラム以上の量で液体冷却剤に溶解した二酸化炭素を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
容器内のガス雰囲気が、ガス雰囲気の約90体積%以上のガスを含む、請求項14~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
容器内の基油の粘度を粘度計で監視することをさらに含む、請求項14~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
粘度に応じて容器内の圧力を調整することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
容器内の基油の温度を監視することをさらに含む、請求項14~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
密閉容器内における前記ガスの雰囲気で密閉容器内に約1日以上液体冷却剤を保管することをさらに含み、密閉容器は前記容器または別の容器である、請求項14~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
電気システムを冷却する方法であって、電気システムの1つまたは複数のコンポーネントと接触するように液体冷却剤を循環させることを含み、前記液体冷却剤は、基油および溶存ガスを含み、前記基油が液体冷却剤の主成分であり、前記溶存ガスが液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量で液体冷却剤中に存在し、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、方法。
【請求項23】
前記循環させることが電気モーターを通じて前記液体冷却剤を循環させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ガスが液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の二酸化炭素を含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気システムのための液体冷却剤およびその製造方法に関する。このような液体冷却剤は、粘性を低下させて冷却を改善するために溶存ガスを含み得る。
【背景技術】
【0002】
伝熱システムは、発生した熱を除去し、電気システムの長期の動作を調整するために多くのタイプの電気システムに組み込まれる。多くの場合、さまざまな電気システムには電気モーターが含まれており、動作中に発生した熱を除去するために効率的な熱伝達システムが必要になり得る。電気モーターの冷却は、特別に設計された流体(本明細書では液体冷却剤と呼ぶ)の循環によって達成することができる。液体冷却剤の有効性は、熱伝導率などの他の特性とともに、粘度に依存し得る。低粘度の冷却剤を使用することで、流体ポンプのエネルギー効率と冷却効果とを向上させることができる。ただし、非常に粘度の低い冷却剤は問題になる可能性がある。たとえば、非常に低い粘度で設計された液体冷却剤は、吸入の危険性のみならず揮発性と可燃性が高くなり得る。ASTM D445に従って測定した100℃での動粘度が4センチストークス (cSt)未満で、40℃での動粘度が18cSt未満の冷却剤は非常に低い粘度を有すると解され得る。
【0003】
望ましいレベルの揮発性と可燃性も提供しながら、燃費を効果的に改善する液体冷却剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、電気システムのための例示的な液体冷却剤であって、電気システムのための液体冷却剤であって、基油;および液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量の溶存ガスを含み、基油が液体冷却剤の主成分であり、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、液体冷却剤が開示される。
【0005】
本明細書では、液体冷却剤を生成する例示的な方法であって、基油を容器内に導入することと、一定量のガスが基油に溶解して液体冷却剤を供するように容器をガスで加圧することを含み、液体冷却剤は100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、方法が更に開示される。
【0006】
本明細書では、電気システムを冷却する例示的な方法であって、電気システムの1つまたは複数のコンポーネント(または構成要素;components)と接触するように液体冷却剤を循環させることを含み、前記液体冷却剤は、基油および溶存ガスを含み、前記基油が液体冷却剤の主成分であり、前記溶存ガスが液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量で液体冷却剤中に存在し、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、方法が更に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面は、本開示の特定の態様を例示しており、本開示を限定または規定するために使用されるべきではない。
【0008】
【
図1】
図1は、基油中への溶存ガスの導入のための例示のシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は、当業者が本開示を実施するのを助けるために供される本開示の詳細な説明である。当業者は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態の修正および変更をすることができる。別段の規定がされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書での本開示の説明で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、図面、およびその他の参考文献は参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【0010】
語句「電気システム」、「電気デバイス」、「電気的システム」、「電気的デバイス」、およびそれらの任意の変形語は、電気的手段を介して主として電力が供給されまたは操作され、長期の動作のため発生熱を除去するために熱伝達システムを必要とする、任意のシステム、デバイス、または装置を指す。電気システムの例としては、特に限定されるものではないが、電気車両(または自動車;vehicle)、電気車両に含まれるパワーエレクトロニクス(例えば「車載」電子機器)、電気モーター、バッテリー、充電式(または再充電可能な;rechargeable)バッテリーシステム、充電ステーション、電子機器、コンピューター、サーバーバンク(またはファーム)、データセンター、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0011】
「電気車両」およびその変形物は、単独または組み合わせて、さまざまな並列または直列のドライブトレイン構成のいずれかを有し得る、全電気式および完全電気式の車両、ハイブリッドおよびハイブリッド電気車両を指し、機械的および電気的システム、サブシステム、および車両で使用されるギアを備えたコンポーネントを含む。これらの機械的および電気的システム、サブシステム、およびギアを有するコンポーネントには、例えば、電気車両パワートレイン、パワートレイン・コンポーネント(または構成要素;components)、ドライブトレイン・コンポーネント、運動エネルギー回収システム(KERS)、エネルギー再生システムなどを含めることができる。電気車両およびハイブリッド車両という用語は同じ意味で使用され得る。さらに、「電気車両」という用語は、陸上車両(例えば、自動車)に限定されるものではなく、完全にまたは部分的に電力が供給され、航空車両(例えば、飛行機、無人機、宇宙船等)および船舶車両(例えば、任意のタイプのウォータークラフト、ホバークラフトなど)を含む任意のタイプの車両を含むことを意図している。「電気車両」は、手動または自動の車両、またはそれらのハイブリッドを指し得る。
【0012】
本開示は、電気システムのための液体冷却剤(または液体クーラント;liquid coolants)およびその作製方法に関する。本実施形態によれば、液体冷却剤は、基油(またはベースオイルまたはベース油;base oil)および溶存ガス(または溶解ガス;dissolved gas)を含み得る。液体冷却剤の例示的な実施形態は、酸化防止剤などの追加の添加剤も含み得る。本開示において、液体冷却剤という用語は、潤滑油、潤滑流体、潤滑剤、潤滑油、作動流体、冷却流体、および冷却油を包含する。そのような用語は同じ意味で使用され得る。
【0013】
基油に溶存ガスが含まれることにより、得られる液体冷却剤の粘度が低下する。この粘度の低下により、液体冷却剤の冷却力が改善される。さらに、他の手段による粘度の低下とは異なり、溶存ガスの基油への導入は、揮発性または可燃性の増加を引き起こすべきではない。粘度の低下は基油の分子構造の変化ではなく、溶存ガスの混入によって達成されたため、液体冷却剤の揮発性および可燃性に影響を与えるべきではない。
【0014】
液体冷却剤の粘度は、基油および溶存ガスの量と種類を選択することによって調整することができる。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、100℃および40℃で比較的低い動粘度(「KV100」)(「KV40」)を有し得る。本明細書で使用される場合、液体冷却剤の「100℃における動粘度」または「KV100」という用語は、ASTM D445に従って測定される100℃における動粘度を指す。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、約7センチストークス(cSt)以下、または約6cSt以下、または約5cSt以下、または約4cSt以下、または約3cSt以下、または約1cSt以下のKV100を有してよい。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、約1cSt~約5cSt、または約2cSt~約5cSt、または約2cSt~約4cStのKV100を有することができる。いくつかの実施形態では、液体冷却剤はまた、最小のKV100を有してよい。例えば、液体冷却剤は、約0.5以上、約0.6以上、約0.7以上、約0.8以上、約0.9以上、または約1.0以上のKV100を有することができる。
いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、約0.5cSt~約7cSt、または約0.5cSt~約6cSt、または約0.5cSt~約5cSt、または約1cSt~約7cSt、または約1cSt~約6cSt、または約1cSt~約5cStの範囲のKV100であってよい。
【0015】
本明細書で使用される場合にて、液体冷却剤の「4℃での動粘度」または「KV40」という用語は、ASTMD445に従って測定される100℃での動粘度を指す。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、約30センチストークス(cSt)以下、または約28cSt以下、または約26cSt以下、または約24cSt以下のKV40を有し得る。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、約15cSt~約30cSt、または約20cSt~約30cSt、または約20cSt~約28cStのKV40を有し得る。いくつかの実施形態では、液体冷却剤の実施形態が約4cSt以下のKV100および約28cSt以下のKV40を有し得るという点で、液体冷却剤は「非常に低い粘度」を有すると考えられ得る。
【0016】
溶存ガスを有する液体冷却剤は望ましい揮発性を有し得る。揮発性の1つの尺度は引火点であり得る。本明細書で使用される場合、引火点は、ASTM D92オープンカップ引火点に従って決定される。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、約90℃~約275℃の引火点、あるいは約150℃~約250℃の引火点を有し得る。
【0017】
液体冷却剤の冷却力は溶存ガスからの粘度低下により改善され得る。冷却力はさまざまな要因に依存し、さまざまな異なるテストによって定量化できる。1つの例は熱伝達係数であり、これは、次の式で示されるように、温度差で割った熱流束に等しくなる。
(1)
hは熱伝達係数であり、qは熱流束であり、ΔTは周囲の流体と固体表面の温度差である。熱伝達係数は、流体と固体との間の熱伝達を計算するために使用され得る。さまざまな熱伝達モードの熱伝達係数を計算するためのさまざまな定式化がある。Dittus-Bolter相関は多くの用途(またはアプリケーション;applications)で使用でき、以下に供される:
(2)
hは熱伝達係数であり、dは水力直径であり、kはバルク流体の熱伝導率であり、j
は質量流束であり、μは流体粘度であり、c
pは流体の等圧熱容量であり、nは、液体冷却剤が壁よりも低温である用途の場合にて0.33である。
【0018】
液体冷却剤の密度は、電気システムに十分な熱伝達性能を与えるための流体特性である。本明細書で使用される密度は、ASTM D4052に従って決定される。いくつかの実施形態では、40℃の温度で、液体冷却剤は、約0.25g/mL~約1.75g/mL、または約0.30g/mL~約1.70g/mL、または約0.35g/mL~約1.65g/mL、または約0.40g/mL~約1.60g/mL、または約0.45g/mL~約1.55g/mLの密度を有し得る。別の実施形態では、80℃の温度で、液体冷却剤は、約0.25g/mL~約1.75g/mL、または約0.30g/mL~約1.70g/mL、または約0.35g/mLmL~約1.65g/mL、または約0.40g/mL~約1.60g/mL、または約0.45g/mL~約1.55g/mLの密度を有し得る。
【0019】
液体冷却剤の比熱は、電気システムに十分な熱伝達性能を与えるための別の流体特性である。本明細書で使用される比熱は、ASTM E1269に従って決定される。いくつかの実施形態では、40℃の温度で、液体冷却剤は、約1.25kJ/kg・K~約3.50kJ/kg・K、または約1.35kJ/kg・K~約3.40kJ/kg・
K、または約1.45kJ/kg・K~約3.25kJ/kg・K、または約1.50kJ/kg・K~約3.20kJ/kg・K、または約1.55kJ/kg・K~約3.15kJ/kg・Kの比熱を有し得る。別の実施形態では、80℃の温度で、液体冷却剤は、約1.25kJ/kg・K~約3.50kJ/kg・K、または約1.35kJ/kg・K~約3.40kJ/kg・K、約1.45kJ/kg・K~約3.25kJ/kg・K、または約1.50kJ/kg・K~約3.20kJ/kg・K、または約1.55kJ/kg・K~約3.15kJ/kg・Kの比熱を有し得る。
【0020】
液体冷却剤の動粘度は、電気システムに十分な熱伝達性能を与えるための別の流体特性である。本明細書で使用される動粘度は、ASTM E1269に従って決定される。いくつかの実施形態では、平均流体温度が40℃である場合に、液体冷却剤は、約0.50センチポアズ(cP)~約7.50cP、または約0.55cP~約7.00cP、または約0.65cP~約6.50cP、または約0.70cP~約6.00cP、または約0.75cP~約5.50cPの動粘度を有し得る。別の実施形態では、平均流体温度が80℃である場合に、液体冷却剤は、約0.50cP~約7.50cP、または約0.55cP~約7.00cP、または約0.65cP~約6.50cP、または約0.70cP~約6.00cP、または約0.75cP~約5.50cPの動粘度を有し得る。
【0021】
本明細書で言及される液体冷却剤は、液体冷却剤の寿命にわたって持続する液体冷却剤特性、ならびに本明細書で言及される電気システム、例えば電気車両およびそのコンポーネントおよび材料との適合性を提供する。本開示に従って冷却することができる例示的な電気システムおよび電気車両部品には、例えば、電気車両のバッテリー、電気モーター、発電機、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DCコンバーター、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DC変圧器、電源管理システム、バッテリーを制御する電子機器、車載充電器、車載パワーエレクトロニクス、超急速充電システム、充電ステーションの急速充電機器、定置型超急速充電器などが挙げられる。
【0022】
特定の電気システム(例: 電気車両のバッテリー、電気モーター、発電機、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DCコンバーター、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DC変圧器、電源管理システム、バッテリーを制御する電子機器、車載充電器、車載パワーエレクトロニクス、超急速充電システム、充電ステーションの急速充電機器、定置型超急速充電器など)に応じて、電気システムは、広い温度範囲で動作し得る。たとえば、電気システムは、約-40℃~約175℃、または約-25℃~約170℃、または約-10℃~約165℃、または約0℃~約160℃、または約10℃~約155℃、または約25℃~約150℃、または約25℃~約125℃、または約30℃~約120℃、または約35℃~約115℃、または約35℃~約105℃、または約35℃~約95℃、または約35℃~約85℃のある温度で動作できる。
【0023】
一実施形態では、単一の液体冷却剤を電気システムで使用することができる。別の実施形態では、電気システムで複数の液体冷却剤を使用することができ、例えば、1つの液体冷却剤をバッテリー用に、別の液体冷却剤を電気システムの別のコンポーネント用に使用することができる。
【0024】
本明細書で言及される液体冷却剤は、例えば、金属、金属合金、非金属、非金属合金、混合炭素金属複合材料および合金、混合炭素非金属複合材料および合金、鉄金属、鉄複合材料および合金、非鉄金属、非鉄複合材料および合金、チタン、チタン複合材料および合金、アルミニウム、アルミニウム複合材料および合金、マグネシウム、マグネシウム複合材料および合金、イオン注入金属および合金を含む装置のコンポーネントの表面;プラズマ変更された表面;表面改質材料、コーティング;単層、多層、および勾配層コーティング;研がれた表面;研磨表面;エッチングされた表面;織り目加工の表面;織り目加工された表面のマイクロおよびナノ構造;超仕上げの表面;ダイヤモンド状カーボン(DLC)、高水素含有量のDLC、中程度の水素含有量のDLC、低水素含有量のDLC、水素含有量がほぼゼロのDLC、DLC複合材料、DLC金属組成物および複合材料、DLC非金属組成物および複合材;セラミック、セラミック酸化物、セラミック窒化物、FeN、CrN、セラミック炭化物、混合セラミック組成物など;ポリマー、熱可塑性ポリマー、エンジニアリングポリマー、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、ポリマー複合材料;例えばグラファイト、炭素、モリブデン、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルエーテルなどを含む材料組成物および複合材料を冷却する。
【0025】
上記のとおり、液体冷却剤は本実施形態に従い電気システムの冷却のために使用され得る。本明細書で開示される液体冷却剤は、液体冷却剤の寿命にわたって持続する液体冷却剤特性、ならびに本明細書で言及される電気システム、例えば電気モーター、電気車両およびそれらの対応するコンポーネントおよび材料との適合性を供し得る。本開示に従って冷却することができる例示的な電気システムのコンポーネントには、例えば、電気バッテリー、電気モーター、発電機、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DCコンバーター、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DC変圧器、電源管理システム、バッテリーを制御する電子機器、車載充電器、車載パワーエレクトロニクス、超急速充電システム、充電ステーションの急速充電機器、定置型超急速充電器などが挙げられる。
【0026】
特定の電気システム(例: 電気バッテリー、電気モーター、発電機、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DCコンバーター、AC-DC/DC-AC/AC-AC/DC-DC変圧器、電源管理システム、バッテリーを制御する電子機器、車載充電器、車載パワーエレクトロニクス、超急速充電システム、充電ステーションの急速充電機器、定置型超急速充電器など)に応じて、電気システムは、広い温度範囲で動作し得る。たとえば、電気システムは、約-40℃~約175℃、または約-25℃~約170℃、または約-10℃~約165℃、または約0℃~約160℃、または約10℃~約155℃、または約25℃~約150℃、または約25℃~約125℃、または約30℃~約120℃、または約35℃~約115℃、または約35℃~約105℃、または約35℃~約95℃、または約35℃~約85℃のある温度で動作できる。
【0027】
一実施形態では、単一の液体冷却剤を電気システムで使用することができる。別の実施形態では、電気システムで複数の液体冷却剤を使用することができ、例えば、1つの液体冷却剤をバッテリー用に、別の液体冷却剤を電気システムの別のコンポーネント用に使用することができる。
【0028】
本明細書で言及される液体冷却剤は、例えば、金属、金属合金、非金属、非金属合金、混合炭素金属複合材料および合金、混合炭素非金属複合材料および合金、鉄金属、鉄複合材料および合金、非鉄金属、非鉄複合材料および合金、チタン、チタン複合材料および合金、アルミニウム、アルミニウム複合材料および合金、マグネシウム、マグネシウム複合材料および合金、イオン注入金属および合金を含む装置のコンポーネントの表面;プラズマ変更された表面;表面改質材料、コーティング;単層、多層、および勾配層コーティング;研がれた表面;研磨表面;エッチングされた表面;織り目加工の表面;織り目加工された表面のマイクロおよびナノ構造;超仕上げの表面;ダイヤモンド状カーボン(DLC)、高水素含有量のDLC、中程度の水素含有量のDLC、低水素含有量のDLC、水素含有量がほぼゼロのDLC、DLC複合材料、DLC金属組成物および複合材料、DLC非金属組成物および複合材;セラミック、セラミック酸化物、セラミック窒化物、FeN、CrN、セラミック炭化物、混合セラミック組成物など;ポリマー、熱可塑性ポリマー、エンジニアリングポリマー、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、ポリマー複合材料;例えばグラファイト、炭素、モリブデン、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルエーテルなどを含む材料組成物および複合材料で使用され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、電気システムは油冷却システムを含み得る。油冷却システムの例は、1つまたは複数の導管と、1つまたは複数の導管を通して液体冷却剤を循環させるように構成されたポンプとを含み得る。ポンプは、例えば、容積式ポンプまたは遠心ポンプを含むことができる。液体冷却剤は、本明細書で開示される液体冷却剤のいずれかを含み得、電気システムの一部を形成する電気システムのコンポーネント(例えば、電気モーター、電気バッテリー)を冷却するために使用され得る。いくつかの実施形態では、液体冷却剤は、電気システムのコンポーネントの1つまたは複数の表面を直接冷却し、それによって電気システムのコンポーネントから熱を奪うように構成され得る。電気システムのコンポーネントと熱交換した後、温められた液体冷却剤は、高温で電気システムのコンポーネント108から運び出される。次いで、温められた液体冷却剤は、導管内にて油冷却システムに含まれる熱交換器へと運ばれる。熱交換器は、温められた液体冷却剤から熱を奪うことにより、ラジエーターと同様に動作することができる。いくつかの実施形態では、熱交換器は、例えば、熱を別の流体にまたは周囲温度の空気に排出し得る。熱交換器は、特定の装置であってもよいし、伝熱流体が導管を通って流れる際に単に熱が大気に失われるものであってよい。次いで、液体冷却剤は、電気システムのコンポーネントに再循環され得る。電気冷却システムのこれらの説明は単なる例であり、液体冷却剤は、電気システムのコンポーネントを冷却するための任意の適切な電気冷却システムと共に使用することができる。
【0030】
油冷却システムの1つまたは複数の実施形態は、液体冷却剤を循環させて、電気バッテリーまたは電気モーターなどの電気システムの1つまたは複数のコンポーネントと接触させることを含み得る。液体冷却剤は、電気システムのコンポーネントから熱を吸収し、それによる熱除去によって電気システムのコンポーネントを冷却し得る。適切な油冷却システムは、電気モーターの表面冷却および/または内部冷却を含み得る。表面冷却を使用する油冷却システムの1つまたは複数の実施形態は、モーター固定子の外側の冷却ジャケットを通して液体冷却剤を循環させ得る。内部冷却を使用する油冷却システムの1つまたは複数の実施形態は、電気システムのコンポーネントを通して液体冷却剤を循環させ得る。電気モーターなどの電気システムのコンポーネントを通るように循環することにより、液体冷却剤は、冷却に加えて、電気システムのコンポーネント(例えば、モーター ベアリング)を潤滑する機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、表面および内部冷却技術を組み合わせることができる。しかしながら、冷却技術のこれらの説明は単なる例であり、電気モーターを冷却するための他の技術に従って液体冷却剤を使用できることを理解されたい。
【0031】
基油
液体冷却剤の例示的な実施形態は1つまたは複数の基油を含み得る。適当な基油には、天然油、鉱物油、および合成油が含まれ得、未精製、精製、または再精製された新たな油(またはそれらの混合物)が使用され得る(後者の油は再生油または再処理油としても知られている)。未精製油は、天然または合成源から直接得られ、追加の精製なしで使用されるものである。これらには、レトルト操作から直接得られるシェール油、一次蒸留から直接得られる石油、およびエステル化プロセスから直接得られるエステル油が含まれる。精製油は、少なくとも1つの液体冷却剤の基油特性を改善するために精製油が1つまたは複数の精製ステップにかけられることを除いて、未精製油について説明した油と同様である。当業者は多くの精製プロセスに精通している。これらのプロセスには、溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出、塩基抽出、ろ過、およびパーコレーション(または透過、浸出または濾過;percolation)が含まれる。再精製油は、精製油と同様のプロセスによって得られるが、既に原料として使用された油を使用している。
【0032】
グループI、II、III、IV、およびVは、液体冷却剤 基油のガイドラインを作成するために、米国石油協会(API文献1509)によって開発および規定された幅広い基油材料(または基油ストックまたはベースオイルストック;base oil stock)のカテゴリである。グループIのベース材料(またはベースストックまたは基原料または基材料またはベース原料;base stocks)は、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%を超える硫黄および/または約90%未満の飽和物を含む。グループIIのベース材料は、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄および約90%以上の飽和物を含む。グループIIIの原材料(またはストック;stocks)は、約120を超える粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄および約90%を超える飽和物を含む。グループIVには、ポリアルファオレフィン(PAO)が含まれる。グループVのベース材料には、グループI~IVに含まれないベース材料が含まれる。以下の表は、これら5つのグループのそれぞれの特性をまとめたものである。
表1
【0033】
天然油には、動物性油、植物性油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、鉱物油が挙げられる。良好な熱酸化安定性を有する動植物油を使用することができる。鉱物油は、その原油源に応じて、例えば、パラフィン、ナフテン、または混合パラフィン-ナフテンであるかに応じて大きく変わる。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油は、その製造と精製のために使用される方法に応じて、例えば、蒸留範囲、および直留か分解か、水素化精製か、または溶媒抽出かによっても異なる。
【0034】
アルキル芳香族および合成エステルなどの合成油を含む、グループIIおよび/またはグループIIIの水素化処理または水素化分解されたベース材料もよく知られているベース材料油である。
【0035】
合成油には、炭化水素油が含まれる。炭化水素油には、重合および共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー、およびエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が含まれる。ポリアルファオレフィン(PAO)油のベース材料は、一般的に使用される合成炭化水素油である。例として、C8、C10、C12、C14オレフィンまたはそれらの混合物に由来するPAOを利用し得る。
【0036】
PAOは100℃で約350cSt以下の粘度で製造され得るが、既知の物質であり、エクソンモービル ケミカル カンパニー、シェブロン フィリップス ケミカル カンパニー、BPなどのサプライヤーから主要な商業規模で一般に入手可能な、PAOの数平均分子量は通常、約250~約3000で変わる。PAOは、特に限定されるものではないが、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどのC8~約C16のアルファオレフィンを有するC2~約C32のアルファオレフィンを含むアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマーまたはオリゴマーから典型的構成される。適切なポリアルファオレフィンの例は、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセンおよびポリ-1-ドデセンおよびそれらの混合物、ならびに混合オレフィン由来ポリオレフィンである。しかしながら、C14~C18の範囲の高級オレフィンの二量体が、許容できる低揮発性の低粘度ベース材料を供するために使用され得る。粘度グレードおよび出発オリゴマーに応じて、PAOは、1.5cSt ~12cStの粘度範囲を有する少量の高級オリゴマーを有する、主に出発オレフィンの三量体および四量体であり得る。特定の用途のPAO流体は、3.0cSt、3.4cSt、および/または3.6cSt、ならびにそれらの組合せを含み得る。必要に応じて、1.5cSt~約350cSt以上の粘度範囲を有するPAO流体の混合物を使用することができる。
【0037】
例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、または、三フッ化ホウ素と、水、エタノール、プロパノールまたはブタノール等のアルコール、酢酸エチルまたはプロピオン酸エチルなどのカルボン酸またはエステルとの錯体を含む、フリーデル-クラフツ触媒などの重合触媒の存在下でアルファオレフィンを重合することによって、PAO流体が好都合に作製され得る。
【0038】
他の有用な液体冷却剤の油ベース材料は、水素化異性化ワックス状材料(例えば、軽油、スラックワックス、燃料水素化分解装置の残液などのワックス状材料)、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、ガス・ツー・リキッド(またはガスからの液体;Gas-to-Liquids)(GTL)のベース材料と基油、およびその他のワックス異性化水素異性化ベース材料と基油、またはそれらの混合物を含む、ワックス異性化ベース材料と基油を含む。フィッシャー・トロプシュ合成の高沸点残留物であるフィッシャー・トロプシュワックスは、硫黄含有量が非常に低い高パラフィン炭化水素である。そのようなベース材料の生成に使用される水素化処理は、特殊な潤滑油水素化分解(LHDC)触媒の1つなどの非晶質水素化分解/水素化異性化触媒、またはゼオライト触媒などの結晶性水素化分解/水素化異性化触媒を使用することができる。たとえば、ある有用な触媒はZSM-48である。
【0039】
ガス・ツー・リキッド(GTL)基油、フィッシャー・トロプシュワックス由来の基油、および他のワックス由来の水素化異性化(ワックス異性化)基油は、本開示において有利に使用され、約4.0cStのKV100および約141の粘度指数を有するGTL4によって例示されるように、約3cSt~約50cSt、あるいは約3cSt~約30cSt、あるいは約3.5cSt~約25cStの有用なKV100を有し得る。これらのガス・ツー・リキッド(GTL) 基油、フィッシャー・トロプシュワックス由来の基油、およびその他のワックス由来の水素化異性化基油は、約-20℃以下の有用な流動点を有し、ある条件下では約-30℃~約-40℃以下の有用な流動点を含む約-25℃以下の有用な流動点を有し得る。ガス・ツー・リキッド(GTL)基油、フィッシャー・トロプシュワックス由来の基油、およびワックス由来の水素化異性化基油の有用な組成物は以下に記載される。
【0040】
ヒドロカルビル芳香族は、基油または基油の成分として使用され得、ベンゼノイド部分またはナフテノイド部分などの芳香族部分、またはそれらの誘導体に由来する重量の少なくとも約5%を含む任意のヒドロカルビル分子であり得る。これらのヒドロカルビル芳香族には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルオキシド、アルキルナフトール、アルキルジフェニルスルフィド、アルキル化ビスフェノールA、アルキル化チオジフェノールなどが含まれる。芳香族は、モノアルキル化、ジアルキル化、ポリアルキル化などであることができる。芳香族は、単官能化または多官能化することができる。ヒドロカルビル基はまた、アルキル基、アルケニル基、アルキニル、シクロアルキル基、シクロアルケニル基および他の関連するヒドロカルビル基の混合物から構成され得る。ヒドロカルビル基は、約C6から約C60までの範囲、例えば、約C8~約C20の範囲であり得る。ヒドロカルビル基の混合物も使用することができ、約3個以下のそのような置換基が存在し得る。ヒドロカルビル基は、硫黄、酸素、および/または窒素含有置換基を任意に含むことができる。芳香族基は、分子の少なくとも約5%が上記タイプの芳香族部分から構成されるという条件で、天然(石油)源に由来することもできる。100℃で約3cSt~約50cStの粘度を使用することができ、ヒドロカルビル芳香族成分には約3.4cSt~約20cStの粘度がしばしば使用される。一実施形態では、アルキル基が主に1-ヘキサデセンから構成されるアルキルナフタレンが使用される。芳香族の他のアルキレートを有利に使用することができる。例えば、ナフタレンまたはメチルナフタレンは、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン以上、類似のオレフィンの混合物などのオレフィンでアルキル化することができる。 液体冷却剤中のヒドロカルビル芳香族の有用な濃度は、用途に応じて、約2%~約25%、あるいは約4%~約20%、あるいは約4%~約15%であり得る。
【0041】
本開示のヒドロカルビル芳香族などのアルキル化芳香族は、芳香族化合物の周知のフリーデル・クラフツ・アルキル化によって生成され得る。例えば、ベンゼンまたはナフタレンなどの芳香族化合物は、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で、オレフィン、ハロゲン化アルキルまたはアルコールによってアルキル化される。多くの均一系または不均一系の固体触媒が当業者に知られている。触媒の選択は、出発物質の反応性と製品の品質要件による。例えば、AlCl3、BF3、またはHFなどの強酸が使用され得る。場合によっては、FeCl3またはSnCl4などのよりマイルドな(またはより穏やかな:milder)触媒が使用され得る。新しいアルキル化技術では、ゼオライトまたは固体の超酸が使用される。
【0042】
エステルは有用なベース材料を構成する。二塩基酸とモノアルカノールのエステルおよびモノカルボン酸のポリオールエステルなどのエステルを使用することにより、添加剤の溶解性およびシール適合性を確保することができる。前者のエステルには、例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸などのジカルボン酸と、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコールなどのさまざまなアルコールのエステルが挙げられる。これらのタイプのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼリン酸ジイソオクチル、アゼリン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジイコシルなどが挙げられる。
【0043】
特に有用な合成エステルは、ヒンダードポリオール(ネオペンチルポリオール、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール)等の1つまたは複数の多価アルコールと、少なくとも約4個の炭素原子を含むアルカン酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、およびベヘン酸を含む飽和直鎖脂肪酸などのC5~C30の酸、または対応する分枝鎖脂肪酸またはオレイン酸などの不飽和脂肪酸、またはこれらの材料のいずれかの混合物とを反応させることで得られるエステルである。
【0044】
適当な合成エステル成分は、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールおよび/またはジペンタエリスリトールと約5個の炭素原子~約10個の炭素原子を含む1つまたは複数のモノカルボン酸のエステルを含む。これらのエステルは、広く市販されており、例えば、エクソンモービル ケミカル カンパニーのモービルP-41およびP-51エステルである。
【0045】
ココナツ、ヤシ、ナタネ、大豆、ヒマワリなどの再生可能な材料に由来するエステルも有用である。これらのエステルは、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、複合エステル、またはそれらの混合物であり得る。これらのエステルは、広く市販されており、例えば、エクソンモービル ケミカル カンパニーのモービルP-51エステルである。
【0046】
再生可能なエステルを含有する液体冷却剤の調合物(または形成物または組成物;formulations)は本開示に含まれる。このような調合物では、エステルの再生可能な含有量は、典型的には約70重量%を超え、あるいは約80重量%を超え、あるいは約90重量%を超える。
【0047】
他の有用な流体には、高性能の伝熱特性を提供するために、例えば触媒によって処理された、または合成された非従来型(non-conventional)または新しい(従来型ではない;unconventional)ベース材料が含まれる。
【0048】
非従来型または新しいベース材料/基油には、1つまたは複数のガス・ツー・リキッド(GTL)材料に由来するベース材料の混合物、天然ワックスまたはワックス状原料由来の異性化/脱ろうベース材料(isomerate/isodewaxate base stock(s))、例えばスラックワックス、天然ワックス等の鉱油および/または非鉱油ワックス状供給原料、および軽油などのワックス原料、ワックス燃料水素化分解装置の残液、ワックスラフィネート、水素化分解物、熱分解物、または他の鉱物、鉱油、または石炭液化またはシェールオイルから得られるワックス状物質などの非石油由来のワックス状材料、およびそのようなベース材料の混合物の1つまたは複数が含まれる。
【0049】
GTL材料は、1つまたは複数の合成、結合、変形、転位、および/または分解/脱構築(または分解または解体;deconstructive)プロセスを通じた、ガス状の炭素含有化合物、水素含有化合物、および/または水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン、ブチン等の原材料(またはフィードストック;feedstocks)としての要素由来の材料である。GTLのベース材料および/または基油は、一般に、例えば、より単純なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料としての要素由来のワックス状合成炭化水素自体といった炭化水素に由来するGTL材料である。GTLベース材料および/または基油は、(1)合成GTL材料から、例えば蒸留などによって分離/分画され、続いて、流動点が低下した/低い潤滑油を生成するために、触媒脱ろうプロセスまたは溶媒脱ろうプロセスのいずれかまたは両方を含む最終ワックス処理工程に付される潤滑油沸点範囲で沸騰する油、(2)例えば、水素化脱ろうまたは水素化異性化触媒および/または溶媒脱ろう合成ワックスまたはワックス状炭化水素を含む合成ワックス異性化物;(3)水素化脱ろうまたは水素化異性化触媒および/または溶媒脱ろうフィッシャー・トロプシュ(F-T)材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス、および可能な類似の含酸素化合物)、例えば、水素化脱ろうまたは水素化異性化され/続いて触媒および/または溶媒脱ろうのF-Tワックス状炭化水素、または水素化脱ろうまたは水素異性化され/続いて触媒(または溶媒)脱ろうのF-Tワックス、またはこれらの混合物を含む。
【0050】
GTL材料由来のGTLベース材料および/または基油、特に、水素化脱ろうされまたは水素異性化され/続いて触媒および/または溶剤脱ろうされたワックスまたはワックス状原料、例えばF-T材料由来のベース材料および/または基油は、典型的には、約2cSt~約50cStのKVI00を有することを特徴とする。これらは更に、典型的には、(ASTM D97にて)流動点が-5℃~約-40℃以下を有することを特徴とする。それらはまた、典型的には、(ASTM D2270にて)約80~約140以上の粘度指数を有することを特徴とする。
【0051】
さらに、GTLベース材料および/または基油は、通常高いパラフィン性 (>90%の飽和)を有し、非環状イソパラフィンと組み合わせてモノシクロパラフィンとマルチシクロパラフィンの混合物を含み得る。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比率は、使用する触媒および温度によって変化する。さらに、GTLベース材料および/または基油は、典型的には硫黄および窒素含有量が非常に低く、これらの元素の各々を一般に約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満含む。F-T材料、特にF-Tワックスから得られるGTLベース材料および/または基油の硫黄および窒素含有量は本質的にゼロである。さらに、リンと芳香族化合物が含まれていないため、低SAP製品の形成に材料的に特に適している。
【0052】
GTLのベース材料および/もしくは基油、ならびに/またはワックス異性化ベース材料および/または基油という用語は、製造プロセスで回収されるような広い粘度範囲の材料の個々の画分(またはフラクションまたは留分;fraction)、2つ以上のそのような画分の混合物、およびブレンド(または混合物;blend)が目標動粘度を示すブレンドを生成するための1つまたは2つ以上の低粘度画分と1つ、2つ以上の高粘度画分との混合物を包含すると理解されるべきである。
【0053】
GTLベース材料および/または基油の由来元のGTL材料は、F-T材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス)であり得る。
【0054】
上記のように、グループVのベース材料には、グループI~IVに含まれないベース材料が含まれる場合がある。適切なグループVのベース材料の例としては、限定されないが、ヒドロカルビル芳香族およびアルキルナフタレンなどのアルキル化芳香族;モノおよびポリエステルを含むエステル;ケイ酸エステル;油溶性ポリアルキレングリコールを含むポリアルキレングリコール;ポリテトラヒドロフラン;およびイオン液体を含み得る。
【0055】
本開示で有用な調合された液体冷却剤で使用するための基油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVの油、およびこれらの混合物、あるいはAPIグループII、グループIII、グループIV、グループVの油、およびこれらの混合物、あるいはグループIII、グループIV、グループVの基油、およびこれらの混合物に対応する様々な油のいずれかである。高パラフィン基油は、本開示において有用な調合された液体冷却剤において有利に使用することができる。調合された潤滑油製品にブレンドするための添加剤を希釈するために使用される量など、少量のグループIの材料(またはストック;stock)も使用できる。グループIIの材料に関しても、グループIIの材料は、その材料に関連するより高い品質範囲、即ち100<VI<120の範囲の粘度指数を有するグループIIであり得る。
【0056】
本開示で有用な調合された液体冷却剤で使用するのに適したベース流体の例には、例えば、芳香族炭化水素、ポリオレフィン、パラフィン、イソパラフィン、エステル、エーテル、フッ素化流体、ナノ流体、およびシリコーン油が含まれる。
【0057】
基油は、典型的には本開示の液体冷却剤の主成分を構成し得、典型的には液体冷却剤の総重量基準で、約50重量%~約99重量%、例えば、約70重量%~約90重量%または約85重量%~約95重量%の範囲の量で存在し得る。基油は、火花点火および圧縮点火エンジン用のクランクケース潤滑油として典型的に使用される合成油または天然油のいずれかから選択され得る。基油は、2.5cSt~12cSt、あるいは2.5cSt~9cStのKV100を有し得る。必要に応じて、合成基油と天然基油の混合物が使用され得る。グループI、II、III、IV、および/またはVのベース材料のバイモーダル(Bi-modal)の混合物も必要に応じて使用される。
【0058】
溶存ガス
液体冷却剤の例示的な実施形態は溶存ガスを含み得る。前述のように、溶存ガスを含めることにより、液体冷却剤の粘度を下げることができ、その結果として、冷却が改善される。しかしながら、液体冷却剤にて溶存ガスからの粘度低下があるとしても、粘度低下に典型的に関連する揮発性および/または可燃性の望ましくない増加があるべきではない。
【0059】
溶存ガスは、基油に可溶な様々なガスのいずれかを含み得る。適当なガスには、限定されるものでないが、二酸化炭素、窒素を含む不活性ガス、およびアルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、およびキセノンなどの希ガスが含まれ得る。ヘリウムとネオンは非反応性であるため使用され得るが、基油に溶解するのが難しい場合があるため、二酸化炭素、アルゴン、およびクリプトンなどの他の不活性ガスと比較して粘度への影響が潜在的に少ない。追加のガスも適している。例えば、適当な追加のガスの例には、限定されるものでないが、空気、酸素、水素、窒素、アンモニア、一酸化炭素、およびメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、およびブタンなどの炭化水素が含まれ得る。空気および窒素などの追加の非反応性ガスを液体冷却剤で使用し得るが、不活性ガスのいくつかよりも基油に溶解する効果が低くなり得る。酸素、水素、アンモニア、一酸化炭素など、より反応性の高い追加のガスも使用し得るが、基油の溶解には中程度の効果のみある。メタン、エタン、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの可燃性炭化水素を使用することができ、粘度を下げるのに非常に効果的であるが、これらの炭化水素の可燃性が安全上の問題を引き起こす可能性があるため、予防策を講じる必要がある。
【0060】
液体冷却剤に溶解しているガスの濃度は、基油へのガスの溶解度、圧力、温度などの他の要因の関数である。例えば、温度はガスの溶解度に影響を与える要因であり、温度が上昇するとガスの溶解度が低下する。さらに、圧力はガスの溶解度に影響を与える別の要因であり、ガスの圧力が増加するにつれてガスの溶解度が増加する。ガスは、流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量で液体冷却剤に含まれ得る。本明細書で使用される場合、粘度に対して測定可能な影響(または測定可能な効果;measurable effect)とは、約1%の標準粘度測定の再現性(ASTM D445)と比較して、少なくとも2%の粘度の低下を指す。粘度の正確な低下は多くの要因による。例えば、約2cStのKV100を有するPAO基油に溶解した0.6グラム/リットル(g/L)のアルゴンは、粘度を少なくとも2%低下させることが示され、約4cStのKV100を有するPAO基油に溶解した0.2g/Lのアルゴンは、粘度を少なくとも2%低下させることが示された。二酸化炭素が粘度に強い影響を与えることも示された。したがって、いくつかの実施形態は、約0.2g/L以上の量で液体冷却剤中に溶存ガスを含み得る。例えば、溶存ガスは、約0.25g/L以上、約0.3g/L以上、約0.35g/L以上、約0.4g/L以上、約0.45g/L以上、または約0.5g/L以上の量で含まれ得る。液体冷却剤中の溶存ガスの最大量は、限定されるものでないが、特定のガスおよび基油、ならびに温度および圧力を含む多くの要因に基づいて変化し得る。例えば、溶存ガスは、15000psi(103000kPa)および20℃の二酸化炭素雰囲気にさらされた場合に約4cStのKV100を有するPAO基油中の二酸化炭素の濃度にほぼ等しい、約380g/L以下の量で含まれ得る。さらなる例として、溶存ガスは、1160psi(8000kPa)および60℃で二酸化炭素雰囲気にさらされた場合にこのPAO中の二酸化炭素の濃度にほぼ等しい約19.5以下の量で含まれ得る。いくつかの実施形態では、液体冷却剤中の溶存ガスの量は、約0.2g/L~約400g/Lの範囲であり得る。例えば、溶存ガスの量は、約0.2g/L~約200g/L、約0.2g/L~約100g/L、約0.2g/L~約40g/L、約0.2g/L~約20g/L、約0.2g/L~約10g/L、約0.2g/L~約5g/L、約0.2g/L~約1g/L、約0.3g/L~約400g/L、0.3g/L~約200g/L、約0.3g/L~約100g/L、約0.3g/L~約40g/L、約0.3g/L~約20g/L、約0.3g/L~約10g/L、約0.3g/L~約5g/L、約0.3g/L~約1g/L、0.4g/L~約400g/L、0.4g/L~約200g/L、約0.4g/L~約100g/L、約0.4g/L~約40g/L、約0.4g/L~約20g/L、約0.4g/L~約10g/L、約0.4g/L~約5g/L、または約0.4g/L~約1g/Lの範囲であり得る。
【0061】
本実施形態によれば、液体冷却剤中の溶存ガスの濃度は、空気雰囲気中の標準周囲温度および圧力での液体冷却剤中のガスの平衡体積を超え得る。本明細書で使用される標準周囲温度および圧力(SATP;standard ambient temperature and pressure)は、25℃および100kPaを指す。いくつかの実施形態では、液体冷却剤中の溶存ガスの濃度は、空気雰囲気中のSATPでの平衡体積を約10%以上、約20%以上、約30%以上、約50%以上、約100%以上、約200%以上、または約500%以上超え得る。
【0062】
液体冷却剤の基油中へのガスの溶解には、任意の適当な技術が使用され得る。ガスの溶解は、基油を含む液体冷却剤をガスの雰囲気に置くことを含み得る。ガス体積、ガス圧、および液体冷却剤の温度を選択することにより、液体冷却剤に溶解するガスの体積を制御し得る。液体冷却剤の粘度は、溶存ガスの濃度に依存するため、溶存ガスの体積を決定するために監視され得る。圧力を上げると、溶解が増加し、粘度が低下する。溶解後、液体冷却剤は、一定期間、例えば、約1日以上、または約2日以上、または約1週間以上、加圧容器内に保存され得る。
【0063】
図1は、ガス溶解システム10の一例を示す。図示するように、ガス溶解システム10は、容器12、液体冷却剤14、およびガス源16を含み得る。ガス源16からのガスは、容器12に供給され、液体冷却剤14に溶解し、それによって液体冷却剤の粘度が低下して、液体冷却剤の冷却力が向上する。
【0064】
図示する実施形態では、液体冷却剤14は容器12内に配置される。液体冷却剤14は、液体冷却剤での使用に適した前述の基油のいずれかを含み得る。ガス源16は、容器12がガス雰囲気18を有するように容器12にガスを供給するために使用され得る。容器12は、ガス源16からのガスが容器12内の液体冷却剤14を囲むため、ガス雰囲気18を有すると呼ばれる。ガス雰囲気18は、ガスの約90体積%以上、約95体積%以上、約96体積%以上、約97体積%以上、約98体積%以上、約99体積%以上、または約99.9体積%以上を含み得る。ガスは、液体冷却剤14の基油に溶解するため前述のガスのいずれであってよい。ガス源16は、例えば、大気圧を超えるガスを貯蔵するための圧力容器(またはベッセル;vessel)または他の適切な容器を含み得る。
【0065】
ガス溶解システム10は圧力調整器20をさらに含み得る。圧力調整器20は、例えば、ガス源16と容器12との間の流路22に配置され得る。圧力調整器20は、容器12内のガス圧を制御するために使用され得る。別個には示されていないが、圧力調整器20は、例えば、圧力センサ、コントローラ、および/または流量弁を含み得る。
【0066】
ガス溶解システム10は粘度計24をさらに含み得る。粘度計24は、液体冷却剤14の粘度の測定に使用され得る。いくつかの実施形態では、液体冷却剤14の粘度は、粘度計14で監視することができる。前述のように、ガス雰囲気18内のガスは液体冷却剤14に溶解する必要がある。ガス雰囲気18の圧力および液体冷却剤14の温度は、ガスの溶解を制御し、それによって液体冷却剤14の粘度を制御するために制御され得る。
【0067】
ガス溶解システム10は、液体冷却剤14の温度を監視するための温度コントローラ26をさらに含み得る。温度コントローラ26は、熱電対などの温度センサ28から液体冷却剤14の温度測定値を受け取り得る。設定温度値は、温度コントローラ26に入力および/または保存され得る。温度コントローラ26は、どの程度の加熱および/または冷却が必要であるかを決定するために温度測定値を設定温度値と比較し得る。この比較に応答して、温度コントローラ26は、熱調節装置30への出力信号を生成し得る。図示するように、熱調整装置30は液体冷却剤14と接触し得る。出力信号に基づいて、熱調整装置30は液体冷却剤14を加熱および/または冷却し得る。熱調節装置30は、加熱器、冷却器、またはそれらの組合せを含み得る。
【0068】
動作中、ガス溶解システム10は、ガスを液体冷却剤14に溶解するために使用され得る。基油を含む液体冷却剤14は容器12に導入され得る。ガス源16からのガスは、容器12内にガス雰囲気18を供するために使用され得る。容器内で、ガス雰囲気18からのガスは液体冷却剤14に溶解する必要がある。容器12内のガス雰囲気の圧力が制御され得る。例えば、圧力調整器20または他の適切な装置が、ガス雰囲気18の圧力を制御するために使用され得る。例えば、設定圧力値は、圧力調整器20に入力されるか、そうでなければ保存され得る。圧力調整器20は、容器12内へのガスの流れを制御して、ガス雰囲気18の容器12内の設定圧力値を供するために使用され得る。液体冷却剤14の温度は、例えば温度コントローラ26で制御され得る。
【0069】
液体冷却剤の添加剤
本開示において有用な調合された液体冷却剤は、限定されるものでないが、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、帯電防止添加剤、流動点降下剤、ナノ材料、ナノ粒子、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、金属不動態化剤、イオン液体、極圧添加剤、焼付き防止剤、ワックス調整剤、流体損失添加剤、シール適合剤、潤滑剤、摩擦調整剤、染色防止剤、発色剤、抗乳化剤、乳化剤、緻密化剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤などを含む1つまたは複数の一般に使用される液体冷却剤の性能添加剤を追加で含み得る。液体冷却剤が上記の添加剤の1つまたは複数を含む場合、添加剤は、その意図された機能を実行するのに十分な量で組成物にブレンドされる。これらの添加剤は、5重量%~50重量%の範囲であり得る様々な量の希釈油と共に使用され得る。本開示で有用な添加剤は液体冷却剤に可溶である必要はない。液体冷却剤において本開示と組み合わせて使用される性能添加剤のタイプおよび量は、本明細書に例示として示される例によって限定されない。
【0070】
したがって、前述の記載は、改善された冷却を提供するために粘度を低下させるための溶存ガスを含み得る液体冷却剤およびその作製方法を説明する。前述の液体冷却剤および対応する製作製方法は、以下の実施形態の任意の1つまたは複数をさらに含むことができる:
【0071】
実施形態1.
電気システムのための液体冷却剤であって、基油;および液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量の溶存ガスを含み、基油が液体冷却剤の主成分であり、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、液体冷却剤。
【0072】
実施形態2.
前記基油が、グループIのベース材料、グループIIのベース材料、グループIIIのベース材料、グループIVのベース材料、グループVのベース材料、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのベース材料を含む、請求項1に記載の液体冷却剤。
【0073】
実施形態3.
前記基油がポリアルファオレフィンベース材料を含む、請求項1または請求項2に記載の液体冷却剤。
【0074】
実施形態4.
前記基油が、ヒドロカルビル芳香族、アルキル化芳香族、モノエステル、ポリエステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、イオン液体、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのグループVのベース材料を含む、請求項1または2に記載の液体冷却剤。
【0075】
実施形態5.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の不活性ガスを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0076】
実施形態6.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の二酸化炭素を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0077】
実施形態7.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の希ガスを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0078】
実施形態8.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量のアルゴンを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0079】
実施形態9.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の炭化水素を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の冷却剤の液体冷却剤。
【0080】
実施形態10.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム~1リットル当たり約400グラムの量で存在する、実施形態1~9のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0081】
実施形態11.
溶存ガスが、液体冷却剤の1リットル当たり約0.5グラム~1リットル当たり約200グラムの量で存在する、実施形態1~10のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0082】
実施形態12.
液体冷却剤の100℃における動粘度が約1cSt~約4cStであり、液体冷却剤の熱容量が約2.0kJ/kgK以上であり、液体冷却剤の密度が約0.92g/mL以上である、実施形態1~11のいずれかに記載の液体冷却剤。
【0083】
実施形態13.
基油がポリアルファオレフィンベース材料を含み、溶存ガスが液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の二酸化炭素を含む、実施形態12に記載の液体冷却剤。
【0084】
実施形態14.
液体冷却剤を生成する方法であって、基油を容器内に導入することと、一定量のガスが基油に溶解して液体冷却剤を供するように容器をガスで加圧することを含み、液体冷却剤は100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、方法。
【0085】
実施形態15.
前記ガスが、1リットル当たり約0.2グラム以上の量で液体冷却剤に溶解した希ガスを含む、請求項14に記載の方法。
【0086】
実施形態16.
前記ガスが、1リットル当たり約0.2グラム以上の量で液体冷却剤に溶解した二酸化炭素を含む、請求項14に記載の方法。
【0087】
実施形態17.
容器内のガス雰囲気が、ガス雰囲気の約90体積%以上のガスを含む、実施形態14~16のいずれかに記載の方法。
【0088】
実施形態18.
容器内の基油の粘度を粘度計で監視することをさらに含む、実施形態14~17のいずれかに記載の方法。
【0089】
実施形態19.
粘度に応じて容器内の圧力を調整することをさらに含む、実施形態18に記載の方法。
【0090】
実施形態20.
容器内の基油の温度を監視することをさらに含む、実施形態14~19のいずれかに記載の方法。
【0091】
実施形態21.
密閉容器内における前記ガスの雰囲気で密閉容器内に約1日以上液体冷却剤を保管することをさらに含み、密閉容器は前記容器または別の容器である、実施形態14~20のいずれかに記載の方法。
【0092】
実施形態22.
電気システムを冷却する方法であって、電気システムの1つまたは複数のコンポーネントと接触するように液体冷却剤を循環させることを含み、前記液体冷却剤は、基油および溶存ガスを含み、前記基油が液体冷却剤の主成分であり、前記溶存ガスが液体冷却剤の流体粘度に測定可能な影響を与えるのに十分な量で液体冷却剤中に存在し、液体冷却剤が100℃で約7cSt以下の動粘度を有する、方法。
【0093】
実施形態23.
前記循環させることが電気モーターを通じて前記液体冷却剤を循環させることを含む、請求項22に記載の方法。
【0094】
実施形態24.
前記ガスが液体冷却剤の1リットル当たり約0.2グラム以上の量の二酸化炭素を含む、請求項22に記載の方法。
【実施例】
【0095】
本開示のより良い理解を容易にするために、いくつかの実施形態の特定の態様の以下の例が与えられる。以下の例は、本開示の範囲全体を限定または規定するために読まれるべきではない。
【0096】
実施例1
この例については、基油へのガスの溶解を例示するために実施した。この実施例に使用した基油は、15℃で約0.82g/cm3の密度、約4cStのKV100、および約18.4cStのKV40を有するPAO4基油であった。PAO4基油は約218℃の引火点、および15.3MPa0.5の液体溶解パラメーターも有していた。ガスは、ガス溶解度パラメーターが14.81MPa0.5の二酸化炭素であった。
【0097】
この例については、サンプル液体冷却剤の特性を測定する試験システムを使用して実施した。試験システムは、気液平衡を達成するための撹拌を提供するだけでなく、液体冷却剤の連続循環を可能にした。PAO基油が、最初にバルク流体リザーバーに重量測定で充填され、室温より約10ケルビン低い温度まで冷却され、この時点で、ガスが小さなステンレス鋼セルからバルク流体リザーバーに重量測定で充填され、試験システムで所望のバルク組成物を得た。システムが充填されると、ギアポンプが起動され、各測定段階で液体冷却剤を循環させた。バルク流体リザーバーでは、較正された圧力変換器を使用してバルク混合圧力を測定した。液体の密度は、マスフローメーターを使用して最初の測定段階で測定した。マスフローメーターにより、液密度、循環液温度、循環液質量流量を測定した。液体の粘度は、範囲が重複する2つの高圧粘度計を使用して、2番目の測定段階で測定した。さまざまなコンポーネントの温度変化を3K未満に保つために、フローループ全体を温度チャンバー内に設置した。
【0098】
液体の密度、蒸気圧、および粘度の実験的測定値を-20℃~150℃の温度範囲で記録した。0バール~100バールの範囲の圧力で、この温度範囲にわたって実験を繰り返した。これらの実験的測定値から、液体冷却剤の粘度減少率とガス含有量を計算した。0バールでガス溶解のない比較サンプルと比較して、粘度の低下が算出された。この試験の結果を以下の表に示す。
表2
【0099】
上記の表2に示されるように、液体冷却剤の粘度は、溶存二酸化炭素の濃度が増加するにつれて減少した。例えば、液体冷却剤は、大気圧および100℃で二酸化炭素が溶解していない状態で4.87cStの粘度であったが、100バールおよび100℃で12g/Lの溶解二酸化炭素が存在する状態で2.45cStの粘度であり、49.7%の粘度低下が見られた。
【0100】
実施例2
この実施例については、ガスの基油への溶解をさらに示すために実施した。この実施例に使用した基油は、15℃で約0.82g/cm3の密度、約4cStのKV100、および約18.4cStのKV40を有するPAO4基油であった。PAO4基油はまた、約218℃の引火点、および15.3MPa0.5の液体溶解パラメーターを有していた。ガスは、ガス溶解度パラメーターが7.77MPa0.5のアルゴンであった。
【0101】
実施例1で説明した試験システムをこの実施例に使用した。液体の密度、蒸気圧、および粘度の実験的測定値については、-20℃~150℃の温度範囲で記録した。0バール~125バールの範囲の圧力で、この温度範囲にわたって実験を繰り返した。これらの実験測定値から、液体冷却剤の粘度減少率とガス含有量を算出した。0バールでガス溶解のない比較サンプルと比較して、粘度の低下が算出された。この試験の結果を以下の表に示す。
表3
【0102】
上記の表3に示すように、液体冷却剤の粘度は、溶存アルゴンの濃度が増加するにつれて減少した。例えば、液体冷却剤は、アルゴンが溶解していない状態で大気圧および100℃で5.02cStの粘度であったが、100バールおよび100℃で3.35g/Lの溶解アルゴンが存在する状態で3.35cStの粘度であり、21.9%の粘度低下が見られた。
【0103】
実施例3
この実施例については、ガスの基油への溶解をさらに説明するために実施した。この実施例に使用した基油は、15℃で約0.80g/cm3の密度、約1.7cStのKV100、および約5.1cStのKV40を有するPAO2基油であった。PAO2基油はまた、約162℃の引火点、および15.5MPa0.5の液体溶解パラメーターを有していた。ガスは、ガス溶解度パラメーターが7.77MPa0.5のアルゴンであった。
【0104】
実施例1で説明した試験システムをこの実施例に使用した。液体の密度、蒸気圧、および粘度の実験的測定値については、-20℃~150℃の温度範囲で記録した。0バール~125バールの範囲の圧力で、この温度範囲にわたって実験を繰り返した。これらの実験測定値から、液体冷却剤の粘度減少率とガス含有量を算出した。0バールでガス溶解のない比較サンプルと比較して、粘度の低下が算出された。この試験の結果を以下の表に示す。
表4
【0105】
上記の表4に示すように、液体冷却剤の粘度は、溶存アルゴンの濃度が増加するにつれて減少した。例えば、液体冷却剤は、アルゴンが溶解していない状態で大気圧および100℃で2.39cStの粘度であったが、100バールおよび100℃で3.25g/Lの溶解アルゴンが存在する状態で2.02cStの粘度であり、15.7%の粘度低下が見られた。
【0106】
実施例4
この実施例については、ガスの基油への溶解をさらに説明するために実施した。この実施例に使用した基油は、15℃で約0.86g/cm3の密度、約1.2cStのKV100、および約2.8cStのKV40を有する大幅に(または厳しくまたは極度に;severely)水素処理されたナフテン系基油であった。その基油はまた、約106℃の引火点、および15.6MPa0.5の液体溶解パラメーターを有していた。ガスは、ガス溶解度パラメーターが14.81MPa0.5の二酸化炭素であった。
【0107】
実施例1で説明した試験システムをこの実施例に使用した。液体の密度、蒸気圧、および粘度の実験的測定値については、-20℃~150℃の温度範囲で記録した。0バール~100バールの範囲の圧力で、この温度範囲にわたって実験を繰り返した。これらの実験測定値から、液体冷却剤の粘度減少率とガス含有量を算出した。0バールでガス溶解のない比較サンプルと比較して、粘度の低下が算出された。この試験の結果を以下の表に示す。
表5
【0108】
上記の表5に示すように、液体冷却剤の粘度は、溶存二酸化炭素の濃度が増加するにつれて減少した。例えば、液体冷却剤は、二酸化炭素が溶解していない状態で大気圧および100℃で1.9cStの粘度であったが、100バールおよび100℃で17.28g/Lの溶解二酸化炭素が存在する状態で1.3cStの粘度であり、32.3%の粘度低下が見られた。
【0109】
実施例5
この実施例については、ガスの基油への溶解をさらに説明するために実施した。この実施例に使用した基油は、15℃で約0.86g/cm3の密度、約1.2cStのKV100、および約2.8cStのKV40を有する大幅に(または厳しくまたは極度に;severely)水素処理されたナフテン系基油であった。その基油はまた、約106℃の引火点、および15.6MPa0.5の液体溶解パラメーターを有していた。ガスは、ガス溶解度パラメーターが7.77MPa0.5のアルゴンであった。
【0110】
実施例1で説明した試験システムをこの実施例に使用した。液体の密度、蒸気圧、および粘度の実験的測定値については、-20℃~150℃の温度範囲で記録した。0バール~125バールの範囲の圧力で、この温度範囲にわたって実験を繰り返した。これらの実験測定値から、液体冷却剤の粘度減少率とガス含有量を算出した。0バールでガス溶解のない比較サンプルと比較して、粘度の低下が算出された。この試験の結果を以下の表に示す。
表6
【0111】
上記の表6に示すように、液体冷却剤の粘度は、溶存アルゴンの濃度が増加するにつれて減少した。例えば、液体冷却剤は、アルゴンが溶解していない状態で大気圧および100℃で1.9cStの粘度であったが、100バールおよび100℃で3.21g/Lの溶解アルゴンが存在する状態で1.72cStの粘度であり、9.8%の粘度低下が見られた。
【0112】
本開示は、多くの実施形態および例に関して説明されてきたが、本開示の恩恵を受ける当業者は、本明細書に開示された本発明の範囲および精神から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。個々の実施形態が論じられているが、本発明は、それらすべての実施形態のすべての組合せをカバーする。
【0113】
値の範囲が示されている場合、(多数の炭素原子を含む基の場合などでは、その範囲内に入る各炭素原子数が供される等)文脈上明確に別段の指示がない限り、各介在する値は、下限の単位の10分の1まで(to the tenth of the unit of the lower limit)その範囲の上限と下限の間にあり、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値は本開示内に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立してより小さな範囲に含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として、本開示内に包含される。記載された範囲が限度の一方または両方を含む場合、含まれる限度の両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0114】
また、明確に反対のことが示されない限り、本明細書で特許請求される、複数のステップまたは行為を含む任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、ステップまたは行為が記載される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0115】
以下の用語は本開示を説明するために使用される。用語が本明細書で具体的に定義されていない場合、その用語は、本開示を説明する際のその使用に関連してその用語を適用する当業者によって技術的に認識された意味を与えられる。
【0116】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」および「an」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、冠詞の文法的目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0117】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」という句は、結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」でリストされた複数の要素は、結合された要素の「1つまたは複数」と同じように解釈されるべきである。「および/または」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、それらの具体的に特定される要素に関連するか、または関連しないかにかかわらず、任意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの制限のない文言と併せて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意にはB以外の要素を含む)を指し;別の実施形態では、Bのみ(場合によりA以外の要素を含む)を指し;さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(場合によっては他の要素を含む)等を指し得る。
【0118】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上記で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は包括的であると解釈される。つまり、多くの要素または要素のリストの少なくとも1つだけでなく、2つ以上、任意には、リストにない追加のアイテムを含むものとして解釈される。「の1つだけ」または「正確に1つ」、またはクレームで使用される場合は「からなる」など、反対に明確に示されている用語のみが、多くの要素または要素のリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「どちらか」、「の1つ」、「の1つのみ」または「正確に1つ」等の排他的用語により規定される際、排他的な代替物(即ち、一方または他方であって両方ではない)を示すものとしてのみ解釈される。
【0119】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な実験誤差を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるかに部分的に依存する。明細書および特許請求の範囲内のすべての数値は、本明細書において、「約」または「およそ」と示された値によって修正され、当業者によって予測されるであろう実験誤差および変動を考慮に入れる。
【0120】
明細書および特許請求の範囲の液体冷却剤内に含まれる成分に関する「主要な量」または「主要な成分」という語句は、液体冷却剤の総重量に基づいて、50重量%以上、または60重量%以上、または70重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上を意味する。明細書および特許請求の範囲の液体冷却剤内に含まれる成分に関する「微量」または「微量成分」という語句は、液体冷却剤の総重量に基づいて、50重量%未満、または40重量%以下、または30重量%以下、または20重量%以上、または10重量%以下、または5重量%以下、または2重量%以下、または1重量%以下を意味する。明細書および特許請求の範囲の液体冷却剤内に含まれる成分に関する「実質的に含まない」または「本質的に含まない」という語句は、特定の成分が潤滑油内で0重量%であること、または潤滑油内の不純物タイプレベル(100ppm未満、または20ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満)であることを意味する。
【0121】
上記の明細書と同様に、特許請求の範囲において、「含んで成る(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ」、「有する」、「含有する(containing)」、「含有する(involving)」、「保持する」、「構成される」などのすべての移行句は、限定のないもの、すなわち限定するものではないが含むことを意味すると理解されるべきである。「~からなる」および「~から本質的になる」という移行句のみが、それぞれ閉じたまたは半閉じた移行句となる。
【0122】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「少なくとも1つの」という語句は、1つまたは複数の要素のリストを参照して、要素のリスト内の任意のいずれかまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。ただし、要素のリスト内に具体的にリストされている各およびすべての要素の少なくとも1つを含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外するものではない。この定義により、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素は、具体的に特定された要素に関連するか関連しないかにかかわらず任意に存在することもできる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つのA、場合によっては2つ以上を含むA、Bは存在しない(および場合によってB以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つのB、場合により2つ以上を含むB、Aは存在しない(および場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA、場合により2つ以上を含むA、および、少なくとも1つのB、場合により2つ以上を含むB(および場合により他の要素を含む)等を指す。
【国際調査報告】