(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】CYP2C8及びCYP3A4の二重基質、糖質コルチコイド・レセプター・モジュレーターのリラコリラント及びパクリタキセルの併用投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4745 20060101AFI20230621BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230621BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230621BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230621BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20230621BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K31/337
A61P1/04
A61P1/18
A61P13/08
A61P15/00
A61P17/00
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573384
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021034332
(87)【国際公開番号】W WO2021242912
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハント、ヘイゼル
(72)【発明者】
【氏名】クストディオ、ジョーセフ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086BA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
癌を治療に有用な多くの薬物は、CYP2C8酵素、CYP3A4酵素、又はその両方によって代謝される。CYP2C8及びCYP3A4の両方の基質である癌を治療するために使用される薬物である、リラコリラント及びパクリタキセルの併用投与の効果を本明細書に開示する。リラコリラントはインビトロ試験でCYP2C8及びCYP3A4を強力に阻害したことから、リラコリラントとパクリタキセルの共投与はインビボでパクリタキセルの血漿曝露を5倍以上増加させることを示し、パクリタキセルとリラコリラントを共投与した場合、パクリタキセル用量の有意な減少を必要とする。驚くべきことに、パクリタキセルの血漿曝露は、併用のリラコリラントとパクリタキセルの投与で予想される5倍を超える増加ではなく、約80%のみ増加した。本出願人は、パクリタキセルの用量を、パクリタキセルが単独で投与される場合に使用されるパクリタキセル用量の約半分に減少させることによって、リラコリラントとパクリタキセルを共投与する安全な方法を開示する。癌、例えば卵巣癌又は膵臓癌を治療するために、リラコリラント及びそのような減少させた用量のパクリタキセルを共投与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療する方法であって、前記癌の治療を必要とする患者に、
a)有効量のリラコリラント(relacorilant)、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に約100mg/m
2~約125mg/m
2の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、前記パクリタキセルの単剤用量から約20%~約35%減量される、パクリタキセル
を投与することを含み、
a)及びb)が、前記患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに実施され、
これにより、前記癌が治療される、方法。
【請求項2】
前記パクリタキセルの有効量が、リラコリラントと共投与される場合に、前記パクリタキセルの単剤用量から約20%、約25%、約30%、及び約35%から選択される量を減量される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パクリタキセルの有効量が、前記パクリタキセルの単剤用量から、約72mg/m
2、約75mg/m
2、約80mg/m
2、約83mg/m
2、約88mg/m
2、約94mg/m
2、及び約96mg/m
2のパクリタキセルから選択されるパクリタキセルの有効量に減量される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パクリタキセルが、nab-パクリタキセルの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量のリラコリラントが、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日のリラコリラントである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量のリラコリラントが、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日のリラコリラントから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、固形腫瘍を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌、及び黒色腫から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、卵巣癌又は膵臓癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記リラコリラントが、経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リラコリラントが、毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
リラコリラントが、間欠的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
リラコリラント及びパクリタキセルの用量が、28日間のスケジュールに従って投与され、パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、前記用量のnab-パクリタキセルが、各28日間サイクルの第1、8及び15日に静脈内注入によって投与される約60mg/m
2、約72mg/m
2、約75mg/m
2、約80mg/m
2、及び約83mg/m
2のnab-パクリタキセルから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg及び200mgのリラコリラントから選択される用量で、リラコリラントを投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
癌を治療する方法であって、前記癌の治療を必要とする患者に、
a)有効量のリラコリラント、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に約100mg/m
2~約125mg/m
2の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、約60mg/m
2~約95mg/m
2である、パクリタキセル
を投与することを含み、
a)及びb)が、前記患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに実施され、
これにより、前記癌が治療される、方法。
【請求項18】
前記パクリタキセルが、nab-パクリタキセルの形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記有効量のパクリタキセルが、約60mg/m
2、約65mg/m
2、約70mg/m
2、約75mg/m
2、約80mg/m
2、約85mg/m
2、約90mg/m
2、及び約95mg/m
2のパクリタキセルから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記有効量のリラコリラントが、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日のリラコリラントである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記有効量のリラコリラントが、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日のリラコリラントから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記癌が、固形腫瘍を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記癌が、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌、及び黒色腫から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、卵巣癌又は膵臓癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記リラコリラントが、経口投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
リラコリラントが、毎日投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
リラコリラントが、間欠的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg、及び200mgのリラコリラントから選択される用量で、リラコリラントを間欠的に投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
リラコリラント及びパクリタキセルの用量が、28日間のスケジュールに従って投与され、パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、前記用量のnab-パクリタキセルが、各28日間サイクルの第1、8及び15日に静脈内注入によって投与される約60mg/m
2、約72mg/m
2、約75mg/m
2、約80mg/m
2、及び約83mg/m
2のnab-パクリタキセルから選択される、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
対象における2つの薬物の同時又はほぼ同時(例えば、併用(concomitant))の存在は、一方若しくは他方又は両方の薬物の効果を変化させ得る。このような変化は、薬物-薬物相互作用(Drag-drug interaction:DDI)と呼ばれる。例えば、薬物の必要用量は、体内でのその分解及び体内からの(例えば、肝臓又は腎臓の作用による)排出の量及び速度によって強く影響されることが多い。しかしながら、例えば肝臓及び腎臓によっても作用されている体内の第2の薬物の存在は、第1の薬物の分解の量及び速度に著しい影響を及ぼす可能性があり、第2の薬物の非存在下でその時点に存在していたであろう量と比較して、所与の時点に体内に残る第1の薬物の量を増加又は減少させる可能性がある。したがって、例えば、第1の薬物を代謝する酵素の阻害剤である第2の薬物の存在は、第1の薬物の代謝を阻害するであろう、したがってしばしば有効量の第1の薬物を増加させることができる。第1の薬物が毒性副作用を有する場合、第1の薬物の有効量のこのような増加は、第2の薬物が存在しなければ予想されなかった危険な毒性をもたらし得る。
【背景技術】
【0002】
異なる薬物の併用投与は、各薬物の代謝及び/又は排出が他の薬物の代謝及び/又は排出を減少又は妨害する可能性があり、したがって単独で投与した場合のそれらの薬物の有効濃度と比較してそれらの薬物の有効濃度を変化させるので、しばしば有害作用をもたらす。したがって、薬物の併用投与は、共投与(co-administered)された薬物の一方又は両方の毒性作用のリスクを増加させ得る。
【0003】
シトクロムP450(CYP又はP450と略す)酵素は、約500個のアミノ酸のヘムタンパク質である。57個のヒト機能性CYP遺伝子が同定されている。ヒトCYP遺伝子は、ローマ数字で示される18のファミリーと、大文字で示される44のサブファミリーに分類される。分類は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列同一性に基づく(Nelson、2009年)。CYPファミリー1、2及び3由来の11個の酵素(CYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4及びCYP3A5)は、主に薬物及び化学代謝に寄与する(Guengerich 208;Zanger and Schwab 2013)。これらの酵素は、臨床的に使用される薬物の約70%の生体内変換に寄与する。一般に、これらの酵素は、薬物及び他の生体異物のクリアランス機構を提供し、尿及び/又は胆汁中の身体からの排出を促進する。CYPは、その広範な基質プロファイル及び生体内変換反応の種類に関して、自然界で最も汎用性の高い酵素の1つである。個々のCYP酵素は、異なるが、時には重複する基質及び阻害剤選択性を示す。多くの薬物は、1つ又はそれ以上のCYP酵素の活性を阻害するため、薬物-薬物相互作用を引き起こす可能性を有する。したがって、CYP酵素によって代謝される第1の薬物の治療用量は、第1の薬物をその同じCYP酵素を阻害する第2の薬物と共に投与した場合には中毒量になり得るが、それは、第1の薬物に対するCYP酵素作用が第2の薬物の存在によって減少し、(第2の薬物の非存在下での同じ用量の第1の薬物によって得られるレベルと比較して)第1の薬物のレベルが増加するからである。
【0004】
多くの治療上重要な薬物は、CYP酵素によって代謝される。CYP2C8基質薬物には、アモジアキン、セリバスタチン、ダサブビル、エンザルタミド、イマチニブ、ロペラミド、モンテルカスト、パクリタキセル、ピオグリタゾン、レパグリニド及びロシグリタゾンが含まれる(Beckmanら、Pharmacol Rev 68:168-241(2016))。CYP2C8基質と他の薬物との間のDDIは有意であり得る。Gibbonsらは、強力なCYP2C8阻害剤との併用中に、エンザルタミドの用量を単剤用量の約半分に減少させることを推奨した(Clin Pharmacokinet(2015)54:1057-1069)。CYP3A4によって代謝される基質としては、例えば、ミダゾラム、トリアゾラム及びパクリタキセルが挙げられる。パクリタキセル(タキソール)は、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、食道癌、黒色腫、及び他の固形腫瘍癌を含む様々な種類の癌を治療するための化学療法剤として広く使用されている。パクリタキセルの主要な排出経路は、CYP3A4及びCYP2C8の両方による代謝によるものである。クロピドグレル(強力なCYP2C8阻害剤)との薬物-薬物相互作用は、パクリタキセルのクリアランスを減少させ、パクリタキセル毒性のリスクを増加させる可能性があるため、「パクリタキセルとクロピドグレルの同時使用を避けることができない場合は常に注意を払うべきである」(Bergmanら、Br J Clin Pharmacol(2015)81(2):313-315)。パクリタキセルのラベルには、パクリタキセルをCYP2C8阻害剤及び/又はCYP3A4阻害剤と共投与する場合に注意を払うべきであるという警告が含まれる。Nab-パクリタキセルは、パクリタキセルのアルブミン結合形態であり、パクリタキセルよりも副作用が少ない。
【0005】
リラコリラント(relacorilant)(
図1参照;Huntら、J.Med.Chem.60:3405-3421(2017))は、クッシング症候群の患者並びに卵巣癌及び膵臓癌を含む様々な種類の癌の患者において臨床試験で研究されている糖質コルチコイドレセプターの選択的非ステロイド性モジュレーターである。
【発明の概要】
【0006】
多くの治療薬物は、CYP2C8酵素、CYP3A4酵素、又はその両方の基質である。これらのCYP酵素によって代謝される第1の薬物の他の安全な用量は、CYP酵素の阻害剤である第2の薬物と併用投与された場合の中毒量であり得る。治療薬の主要な排出経路がCYP2C8酵素及びCYP3A4酵素の両方による代謝を介する場合、CYP2C8及びCYP3A4の両方を阻害する併用薬物の投与は、その唯一の排出経路を遮断することによって治療薬の血漿レベルの実質的な増加を引き起こすと予想される。CYP2C8及びCYP3A4の二重阻害剤との共投与は、酵素の1つのみの阻害剤との共投与と比較して、より大きな薬物-薬物相互作用(DDI)をもたらすであろう。インビトロ試験を使用して、このような負のDDIに罹患すると予想される薬物組合せを示す。
【0007】
リラコリラントは、癌及び副腎皮質機能亢進を含む多くの障害の治療に有用であると考えられている。リラコリラントは、癌の併用治療及び副腎皮質機能亢進の治療において有用であるとさらに考えられている。インビトロ試験は、リラコリラントがCYP2C8の強力な阻害剤(0.21μMのIC50)及びCYP3A4の強力な阻害剤(1.32μMのIC50)であることを実証した。CYP2C8及びCYP3A4の両方のこのような強力な二重阻害は、リラコリラントと共投与した場合、二重CYP2C8及びCYP3A4基質の血漿曝露を5倍超増加させると予想される。したがって、リラコリラントと組み合わせて投与した場合、CYP2C8及びCYP3A4の二重基質(例えば、パクリタキセル)の用量の有意な減少が必要であると予想された。
【0008】
リラコリラントと共投与すると、リラコリラントによるCYP2C8及びCYP3A4の両方のそのような強力な阻害は、CYP2C8媒介代謝及びCYP3A4媒介代謝を介したその主要な排出経路を遮断することによってパクリタキセルの血漿曝露を増加させると予想される。したがって、パクリタキセル用量の有意な減少が、リラコリラントと組み合わせて投与された場合に必要とされると予想された。パクリタキセル代謝に対するリラコリラントの予想される効果に基づいて、パクリタキセルとリラコリラントとの共投与は、パクリタキセルがリラコリラントと共に投与される場合、パクリタキセル用量の5倍以上の潜在的な減少を必要とすると予想された。
【0009】
驚くべきことに、本出願人は、パクリタキセルとリラコリラントとの共投与がパクリタキセル用量のこのような有意な減少を必要としないことを発見した。本出願人は、パクリタキセルの血漿レベルが5倍以上には増加しないが、驚くべきことに、リラコリラントと共投与した場合に(同じ用量のパクリタキセルを単独で投与した場合の血漿レベルと比較して)約80%のみ増加することを発見した。
【0010】
したがって、インビトロで強力なCYP2C8及びCYP3A4の両方の二重阻害に基づいて、パクリタキセルをリラコリラントと併用投与した場合、パクリタキセル曝露の5倍以上の有意な増加が予想される。驚くべきことに、本出願人は、パクリタキセルの用量をわずかに減少させるだけで、リラコリラント及びパクリタキセルを併用投与することができることを本明細書で開示している。したがって、パクリタキセル用量を5倍以上減少させるという予想される要件とは対照的に、本出願人は、パクリタキセルと一緒にリラコリラントを安全に投与することができ、パクリタキセルの用量は、リラコリラントの非存在下で投与されるパクリタキセル用量(典型的には約100~125mg/m2)と比較して、約20%~約35%(例えば、約20%、又は約25%、又は約30%、又は約35%)減少することを本明細書で開示する。本出願人は、リラコリラントがパクリタキセルと共に安全に投与され得ることを本明細書で開示しており、パクリタキセルの用量は、リラコリラントの非存在下で投与されるパクリタキセル用量(典型的には約100~125mg/m2)から約80mg/m2(例えば、約65mg/m2、又は約70mg/m2、又は約75mg/m2、又は約80mg/m2、又は約85mg/m2、又は約90mg/m2、又は約95mg/m2)に減少する。複数の実施形態では、パクリタキセルは、nab-パクリタキセルの形態で投与される。パクリタキセルとリラコリラントのこのような併用投与は、対象にとって安全であり、両方の薬物の治療上の利益を対象に提供すると考えられる。
【0011】
驚くべきことに、本明細書に開示される方法は、以前は安全ではないと予想されていた薬物の組合せ及び投与量を投与するための安全な方法を提供し、パクリタキセルとリラコリラントの安全かつ効果的な併用投与を可能にする。そのような薬物の組合せは、一方の薬物のみを他方の薬物の非存在下で用いる治療よりも効果的な治療を提供すると考えられる。これらの薬物の組合せを安全に投与する驚くべき能力は、より効果的な治療、以前に予想された副作用がないこと、及び他の利点を含む利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、リラコリラント((R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン)の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
標準的なインビトロ試験の結果に基づいて、リラコリラントはCYP2C8及びCYP3A4の強力な阻害剤であることが分かった。これらのインビトロ結果は、リラコリラントの共投与がCYP2C8基質及び/又はCYP3A4基質の血漿レベルを5倍超増加させることを示した。パクリタキセルは、CYP2C8及びCYP3A4の両方の代謝の基質である。したがって、リラコリラントとパクリタキセルとの共投与は、パクリタキセルを単独で投与した場合に得られる濃度よりもパクリタキセルの濃度を大幅に上昇させると予想される。インビトロ結果と同様に、ヒト臨床研究は、リラコリラントと併用投与した場合、ミダゾラム(標準的なCYP3A4基質)の曝露の8倍の増加を示した。驚くべきことに、ピオグリタゾン(標準的なCYP2C8基質)の濃度に対するリラコリラントの効果を評価するために健康な志願者で行われたヒト臨床試験では、ピオグリタゾンの濃度の増加は観察されなかった。また驚くべきことに、癌患者におけるヒト研究は、パクリタキセルとリラコリラントの共投与が、CYP2C8とCYP3A4の両方のインビトロでの強力な二重阻害によって予測される、予想されるより大きな増加の代わりに、パクリタキセル血漿レベルを約80%のみ増加させることを見出した。
【0014】
本出願人は、リラコリラントがパクリタキセルとわずかな用量調整で安全に共投与され得るという驚くべき発見を本明細書で開示する。このようなわずかな調節は、CYP2C8及びCYP3A4の両方のインビトロで強力な二重阻害によって予測されるより大きな増加に基づいて予想されるよりも、驚くほど小さい。複数の実施形態では、パクリタキセル単独による治療に必要な約100mg/m2~約125mg/m2のパクリタキセル用量から、パクリタキセル用量を約80mg/m2に減少させることによって、リラコリラント及びパクリタキセルを、治療を必要とする患者に共投与することができる。パクリタキセル単独による癌治療に必要な約100mg/m2~約125mg/m2のパクリタキセル用量から、パクリタキセル用量を約80mg/m2に減少させることによって、リラコリラントとパクリタキセルを共投与して、卵巣癌又は膵臓癌などの癌を治療することができる。リラコリラント及びパクリタキセルのこのような共投与は、いずれかの薬物の過剰用量又は中毒量を回避しながら、患者において同時に治療有効レベルのリラコリラント及びパクリタキセルの両方を提供する。
【0015】
複数の実施形態では、本出願人は、癌を治療する方法であって、前記癌の治療を必要とする患者に、
a)有効量のリラコリラント(relacorilant)、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に約100mg/m2~約125mg/m2の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、前記パクリタキセルの単剤用量から約20%~約35%減量される、パクリタキセル
を投与することを含み、
a)及びb)が、前記患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに実施され、
これにより、前記癌が治療される、方法を開示する。
複数の実施形態では、パクリタキセルの有効量は、リラコリラントと共投与した場合、前記パクリタキセルの単剤用量から約20%、又は約25%、又は約30%、又は約35%減少する。例えば、有効量のパクリタキセルが約100mg/m2の単剤用量であるリラコリラントと共投与される場合、パクリタキセル用量の減少は約20%減少して約80mg/m2になり得る。有効量のパクリタキセルが約110mg/m2の単剤用量である場合、リラコリラントと共投与された場合のパクリタキセル用量の減少は、約20%減少して約88mg/m2になり得る。有効量のパクリタキセルが約120mg/m2の単剤用量である場合、リラコリラントと共投与された場合のパクリタキセル用量の減少は、約20%減少して約96mg/m2になり得る。有効量のパクリタキセルが約125mg/m2の単剤用量である場合、リラコリラントと共投与された場合のパクリタキセル用量の減少は、約20%減少して約100mg/m2になり得る。さらなる例として、減少したパクリタキセル用量が、リラコリラントと共投与された場合に約25%減少し得る場合、約100mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約75mg/m2に減少するであろう。約110mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約83mg/m2に減少するであろう。約120mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約90mg/m2に減少するであろう。約125mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約94mg/m2に減少するであろう。パクリタキセル用量が、リラコリラントと共投与された場合に約30%減少し得る場合、約100mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約70mg/m2に減少するであろう。約110mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約77mg/m2に減少するであろう。約120mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約84mg/m2に減少するであろう。約125mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約88mg/m2に減少するであろう。パクリタキセル用量が、リラコリラントと共投与された場合に約35%減少し得る場合、約100mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約65mg/m2に減少するであろう。約110mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約72mg/m2に減少するであろう。約120mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約78mg/m2に減少するであろう。約125mg/m2の単剤用量のパクリタキセルは、約81mg/m2に減少するであろう。複数の実施形態では、パクリタキセルは、nab-パクリタキセルの形態で投与される。
【0016】
複数の実施形態では、本出願人は、癌を治療する方法であって、前記癌の治療を必要とする患者に、
a)有効量のリラコリラント、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に約100mg/m2~約125mg/m2の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、約60mg/m2~約95mg/m2である、パクリタキセル
を投与することを含み、
a)及びb)が、前記患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに実施され、
これにより、前記癌が治療される、方法を開示する。
複数の実施形態では、パクリタキセルの有効量は、約65mg/m2、又は約70mg/m2、又は約75mg/m2、又は約80mg/m2、又は約85mg/m2、又は約90mg/m2、又は約95mg/m2である。複数の実施形態では、パクリタキセルの有効量は、80mg/m2である。複数の実施形態では、パクリタキセルは、nab-パクリタキセルの形態で投与される。
【0017】
複数の実施形態では、癌は、卵巣癌、又は膵臓癌、又は前立腺癌、食道癌、黒色腫、及び他の固形腫瘍癌である。
【0018】
本出願人の驚くべき発見は、パクリタキセルによって及びリラコリラントによって治療可能な癌などの疾患又は障害に罹患している患者に適用されると考えられる。例えば、卵巣癌又は膵臓癌の治療のためにパクリタキセルを投与されている患者は、パクリタキセルとリラコリラントとの併用治療から恩恵を受けることができ、リラコリラントを投与されている間は、パクリタキセル用量を約100mg/m2~約125mg/m2のパクリタキセル用量(パクリタキセル単独による治療に必要なパクリタキセル用量)から約80mg/m2に減少させることによってパクリタキセルの投与を継続することができる。
【0019】
複数の実施形態では、リラコリラントは、経口投与される。複数の実施形態では、リラコリラントは、毎日投与される。例えば、実施形態では、リラコリラントは1日1回投与される。複数の実施形態では、リラコリラントは、食物と共に投与される。「食物と共に」投与されるとは、患者が、リラコリラントが投与された時間の30分以内、又は1時間以内に食事を始めたことを意味する。例えば、リラコリラントは、食事と共に、又は患者が食事を開始した直後(例えば、30分以内)に患者に投与され得る。
【0020】
代替の実施形態では、リラコリラントは、絶食患者、すなわち、リラコリラント投与の少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、又はそれ以上前に食物を摂取していない患者に投与される。例えば、午前中における絶食患者、すなわち、朝食をまだ食べておらず、夕方前の夕食からまだ食べていない患者には、リラコリラントを投与することができる。
【0021】
複数の実施形態では、リラコリラントは、毎日、約1~100mg/kg/日の間のリラコリラントの1日用量、好ましくは、約1~20mg/kg/日の間のリラコリラントの1日用量で投与される。複数の実施形態では、リラコリラントの1日用量は、約10~約2000ミリグラム(mg)、又は約50~約1500mg、又は約100~約1000mgのリラコリラントである。複数の実施形態では、リラコリラントの1日用量は、約10mg、又は15mg、又は20mg、又は25mg、又は50mg、又は100mg、又は150mg、又は200mg、又は250mg、又は300mg、又は350mg、又は400mg、又は450mg、又は500mg、又は550mg、又は600mg、又は650mg、又は700mg、又は750mgの、800mg、又は850mg、又は900mg、又は950mgのリラコリラントであり得る。複数の実施形態では、リラコリラントの有効量は、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日であり、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日から選択され得る。複数の実施形態では、リラコリラントの有効量は、100mg/日、125mg/日又は150mg/日である。複数の実施形態では、リラコリラントの有効量は、100mg/日、125mg/日又は150mg/日である。複数の実施形態では、リラコリラント用量は、治療の経過中に初期用量から調整(例えば、増加)され得る。
【0022】
複数の実施形態では、パクリタキセルは、nab-パクリタキセルとして投与される。複数の実施形態では、nab-パクリタキセルの用量は、約60~約95mg/m2、例えば、約70~90mg/m2であり、静脈内注入によって投与され得る。例えば、nab-パクリタキセルは、静脈内(iv)注入によって投与される80mg/m2の用量で投与され得る。そのような注入は、間欠的に投与され得る。例えば、そのような注入は、各28日間サイクルの第1、8及び15日目に投与され得る。複数の実施形態では、nab-パクリタキセルの用量は、各28日間サイクルの第1、8、及び15日目に静脈内注入によって投与される60mg/m2である。複数の実施形態では、リラコリラントは、毎日投与される。複数の実施形態では、リラコリラントは、約75~約250mgの用量、例えば100mg、又は125mg、又は150mg、又は175mg、又は200mgの用量で投与され得る。複数の実施形態では、リラコリラントは、100mgの用量で毎日投与される。複数の実施形態では、リラコリラントは、150mgの用量で毎日投与される。例えば、パクリタキセルがnab-パクリタキセルである実施形態では、リラコリラントは150mgの用量で毎日投与される。例えば、パクリタキセルがnab-パクリタキセルである実施形態では、リラコリラントは200mgの用量で毎日投与される。例えば、パクリタキセルがnab-パクリタキセルである実施形態では、リラコリラントは、150mgの用量で間欠的に(nab-パクリタキセル注入の前日、当日及び翌日)投与される。例えば、パクリタキセルがnab-パクリタキセルである実施形態では、リラコリラントは、200mgの用量で間欠的に(nab-パクリタキセル注入の前日、当日及び翌日)投与される。
【0023】
定義
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、疾患又は症状に対する医療を受けている、受ける予定である、又は受けたことのあるヒトを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与している」、「投与された」又は「投与」という用語は、化合物又は組成物(例えば、本明細書に記載のもの)を対象又は患者に提供することを指す。投与は、経口投与によるものであり得る(すなわち、対象は、化合物又は組成物を、口を介して、丸薬、カプセル、液体として、又は口を介した投与に適した他の形態で投与される)。経口投与は、典型的には、丸薬、カプセル、液体、又は他の製剤を嚥下することを含む。経口投与には、頬側投与(化合物又は組成物は、口の中、例えば舌の下に保持され、そこで吸収される)が含まれ得る。
【0025】
投与様式の他の例としては、例えば、注射による、すなわち、針、マイクロニードル、圧力注射器、又は皮膚を穿刺する若しくは化合物若しくは組成物を対象の皮膚を強制的に通過させる他の手段を用いた化合物若しくは組成物の送達が挙げられる。注射は静脈内(すなわち、静脈の中へ)、動脈内(すなわち、動脈の中へ)、腹腔内(すなわち、腹膜の中へ)、筋肉内(すなわち、筋肉の中へ)、又は他の注入経路によってであってもよい。投与経路には、直腸、膣、経皮、肺を介したもの(例えば、吸入によって)、皮下によるもの(例えば、化合物又は組成物を含有するインプラントからの皮膚への吸収によって)、又は他の経路によるものも含まれ得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療量」という用語は、治療される疾患の少なくとも1つの徴候を治療、排除、又は緩和するのに有効な薬理学的薬剤の量を指す。場合によっては、「治療有効量」又は「有効量」は、検出可能な治療効果又は阻害効果を示すのに有用な機能性薬剤の量又は医薬組成物の量を指すことができる。効果は、当技術分野で公知の任意のアッセイ法によって検出することができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「共投与(co-administration)」、「併用投与(concomitant administration)」、「組み合わせた投与(combined administration)」、「組合せ治療(combination treatment)」などの用語は、疾患又は症状を治療するための対象への少なくとも2つの医薬品の投与を指す。2つの薬剤は、治療期間の全体又は一部の間に、同時に、又は任意の順序で連続的に投与され得る。少なくとも2つの薬剤は、同じ投与レジメン又は異なる投与レジメンに従って投与され得る。そのような薬剤には、例えば、リラコリラント及び別の薬物が含まれてよく、これらは、例えば、副腎皮質機能亢進の治療に有用な薬物であってよく、癌の治療に有用な薬物又は別の治療薬であり得る。場合によっては、一方の薬剤は予定されたレジメンに従って投与され、他方の薬剤は間欠的に投与される。場合によっては、両方の薬剤を間欠的に投与する。いくつかの実施形態では、一方の医薬品は毎日投与されてもよく、他方の医薬品は2、3、又は4日毎に投与されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「間欠」及び「間欠的に」という用語は、毎日の投与以外のある用量の医薬品又は化合物(「薬物」)の投与を指す。例えば、1日おきのある用量の化合物の投与は、化合物の間欠投与である。1日投与よりも少ない頻度の投与スケジュールは、間欠投与である。間欠投与のさらなる例としては、それだけに限らないが、例えば、2日毎、又は3日毎、又は4日毎の投与が挙げられる。間欠投与には、さらなる例として、第2の薬物の投与の前日、当日及び翌日における第1の薬物の投与、異なる投与スケジュールでの第2の薬物の投与を含んでよく、これは薬物投与の反復サイクルの1日目、15日目、及び28日目での第1の薬物の投与、並びに薬物投与の他のスケジュール及び順序を含み得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、医薬投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。治療剤、例えば、リラコリラント、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エンザルタミドなどは、典型的には、カプセル、錠剤、又は活性剤及び1つ以上の薬学的に許容され得る担体を含む他の製剤で投与される。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。補助活性剤も組成物に組み込むことができる。
【0030】
「糖質コルチコイド・レセプター・モジュレーター」(glucocorticoid receptor modulator:GRM)という用語は、GRへのGC結合を調節するか、又はアゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を調節する任意の化合物を指す。例えば、デキサメタゾンなどのアゴニストとして作用するGRMは、HepG2細胞のチロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrosine aminotransferase:TAT)の活性を増加させる(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC、UK)。ミフェプリストンなどのアンタゴニストとして作用するGRMは、HepG2細胞のチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を低下させる。TAT活性は、A.Aliら、J.Med.Chem.、2004、47、2441-2452による文献で概説されているように測定できる。
【0031】
リラコリラント(((R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン))は、GRMである。リラコリラントは、米国特許第8,859,774号(参照により本明細書に組み込まれる)の実施例18に記載されている。
【0032】
本明細書で使用される場合、「CYP2C8」という用語は、シトクロムP450酵素サブタイプ2C8を指す。ヒトでは、最も一般的な形態は490個のアミノ酸を有し、UniProtKB受託番号P10632.2を有する。CYP2C8をコードする遺伝子は、遺伝子ID1558を有する。
【0033】
CYP2C8基質薬物には、アモジアキン、セリバスタチン、ダサブビル、エンザルタミド、イマチニブ、ロペラミド、モンテルカスト、パクリタキセル、ピオグリタゾン、レパグリニド及びロシグリタゾンが含まれる(Beckmanら、Pharmacol Rev 68:168-241(2016))。
【0034】
本明細書で使用される場合、「CYP3A4」という用語は、シトクロムP450酵素サブタイプ3A4を指す。ヒトでは、一般的なアイソフォームは503個のアミノ酸(アイソフォーム1)又は502個のアミノ酸(アイソフォーム2)を有し、タンパク質はUniProtKB受託番号P10632.2を有する。CYP3A4をコードする遺伝子は、遺伝子ID1576を有する。
【0035】
CYP3A4基質薬物には、パクリタキセル、ミダゾラム及びトリアゾラムが含まれる。
【0036】
実施例1.インビトロCYP阻害アッセイ
大腸菌で異種発現されたシトクロムP450(CYP)アイソフォームCYP2B6、CYP2C8及びCYP3A5をCypexから入手し、混合して3-CYPミックスを作製した。別のアッセイでは、大腸菌で異種発現され、5つのアイソフォームの特注の混合物としてCypexから入手したCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4のアイソフォーム。各アイソフォームに対する選択的でFDAに認められた基質が、そのKm付近の濃度で反応中に存在した。
【0037】
リラコリラント(最終濃度範囲0.032~10μM、1%DMSO)又は対照CYP阻害剤のカクテルを96ウェルプレート形式で反応管に添加した。CYPミックス及びCYP基質カクテルを添加し、BioShake IQ(37℃、1500rpm)で混合しながら管を3分間加温した。NADPH(最終濃度1mM)を添加し、混合物を10分間インキュベートした。次いで、内部標準(1μMトルブタミド)を含有するメタノールをすべての試料に添加し、これらを混合し、-20℃で1時間以上置き、反応をクエンチし、タンパク質を沈殿させた。
【0038】
すべての試料を遠心分離した(2500×g、20分、4℃)。上清を、オートサンプラーに適合する新しい96ウェルプレートに移した。プレートを事前スリットシリコーンマットで密封し、代謝産物をLC-MS/MSによって分析した。
【0039】
対照CYP阻害剤(IC50-適切な濃度範囲、最終アッセイ濃度1%DMSO)をカクテルとして添加した。アッセイ1では、カクテルは、CYP2B6、チクロピジン、CYP2C8、ケルセチン、CYP3A5、ケトコナゾールからなった。アッセイ1では、カクテルは、CYP1A2、α-ナフトフラボンCYP2C9、スルファフェナゾール、CYP2C19、トラニルシプロミン、CYP2D6、キニジン、CYP3A4、ケトコナゾールからなった。
【0040】
アッセイ1では、3-CYPミックスの最終濃度は、CYP2B6(pmolはピコモルである)では18pmol/mL、CYP2Cでは1pmol/mL、CYP3A5では5pmol/mLであった。アッセイ2では、5-CYPミックスの最終濃度は、評価した各酵素(すなわち、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4)について32.5pmol/mlであった。アッセイ1では、CYP基質カクテルは、CYP2B6、ブプロピオン、CYP2C8、アモジアキン、CYP3A5、ミダゾラムの成分を含んでいた。溶媒はすべてのストック溶液についてメタノールであり、アッセイにおけるメタノールの最終濃度は0.625%であった。測定された代謝産物は、CYP2B6、ヒドロキシブプロピオン、CYP2C8、N-デスエチルアモジアキン、CYP3A5、1’-ヒドロキシミダゾラムであった。
【0041】
アッセイ2では、CYP基質カクテルは、CYP1A2、タクリン、CYP2C9、ジクロフェナク、CYP2C19、(S)メフェニトイン、CYP2D6、ブフラロール、CYP3A4、ミダゾラムの成分を含んでいた。測定された代謝産物は、CYP1A2、1-ヒドロキシタクリン、CYP2C9、4’-ヒドロキシジクロフェナク、CYP2C19,4’-ヒドロキシメフェニトイン、CYP2D6、ヒドロキシブフラロール、CYP3A4、1’-ヒドロキシミダゾラムであった。
【0042】
すべての反応を37℃及び0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中で二重反復試験で行った。アッセイ1では、最終タンパク質濃度は0.06mg/mlであった。アッセイ2では、最終タンパク質濃度は0.12mg/mlであった。
【0043】
データ処理
データを処理し、結果を、IC
50値(応答の50%阻害をもたらす濃度)として報告し、擬似ヒルプロットから生成し、勾配及びy軸切片を使用して、以下の式に従ってIC
50を計算した。
【数1】
【0044】
アッセイ1では、リラコリラントは、このアッセイにおいて0.21μMの平均IC50値でCYP2C8を阻害した。アッセイ2では、リラコリラントは1.32μMの平均IC50値でCYP3A4を阻害した。
【0045】
リラコリラントが0.21μMの平均IC50値でCYP2C8を強力に阻害したことを示すインビトロデータに基づいて、CYP28基質との治療濃度のリラコリラントの共投与は、CYP2C8基質単独の投与と比較して、CYP2C8基質の血漿曝露の5倍超の増加をもたらすと予想される。インビトロCYP2C8の結果に基づいて、及びリラコリラントが1.32μMの平均IC50値でCYP3CA4を強力に阻害したことを示すインビトロデータに基づいて、治療濃度のリラコリラントの共投与は、基質単独の投与と比較して、二重CYP2C8及びCYP3A4基質の血漿曝露を5倍超増加させると予想される。
【0046】
実施例2.健康な志願者における臨床薬物-薬物相互作用試験
CYP3A4の既知の基質であるミダゾラム及びCYP2C8の既知の基質であるピオグリタゾンの血漿曝露に対するリラコリラントの効果を決定するために、健康な対象で非盲検交差試験を実施した。単回用量のミダゾラム2.5mgを単独で投与し、集中的な薬物動態(PK)試料を投与前(0時間)並びに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、8、12、16及び24時間に収集した。翌日、ピオグリタゾンの15mgの単回用量を単独で投与し、集中的PK試料を投与前(0時間)並びに投与後0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、6、8、12、18、24、36、48、60及び72時間に収集した。次いで、リラコリラント350mgを9日間連続して1日1回投与した。1日1回のリラコリラント投与の10日目に、単回用量のミダゾラム2.5mgをリラコリラント350mgと組み合わせて投与し、集中的なPK試料を投与前から投与後24時間まで再び収集した。翌日、ピオグリタゾンの15mgの単回用量を、350mgのリラコリラントと組み合わせて投与し、集中的な薬物動態(PK)試料を、投与前から投与後72時間まで再び収集した。ミダゾラム及びその代謝産物である1-OHミダゾラム、並びにピオグリタゾン及びその代謝産物であるピオグリタゾンM4の血漿濃度を、ミダゾラム又はピオグリタゾンの投与機会のそれぞれについて検証された生物分析アッセイによって評価した。
【0047】
PK結果は、1日1回のリラコリラントの投与が、ミダゾラム単独と比較して、ミダゾラム及びその代謝産物の血漿曝露(AUC
inf)を8倍超増加させることを示し、インビボでのCYP3A4の強力な阻害を確認した(表1)。しかしながら、PK結果はまた、リラコリラントの1日1回の投与が、ピオグリタゾン又はその代謝産物の血漿曝露を増加させないことを示し、CYP2C8に対するリラコリラントの阻害効果の欠如を示した(表2)。リラコリラントによるCYP2C8阻害は、以前にインビトロで観察されていたが、臨床薬物相互作用試験の結果は、リラコリラントがインビボでCYP2C8を阻害しないことを実証した。
【表1】
【0048】
ANOVA、分散分析;AUC
inf、無限大に外挿した時間0からのAUC;AUC
0-tz、時間0から最後の測定可能な濃度の時間までのAUC;C
max、最大血漿濃度;CV%、変動係数;LSM、最小二乗平均。
治療A:単回経口投与用量2.5mgのミダゾラム塩酸塩を1日目に投与された(基準)。
治療D:単回経口投与用量2.5mgのミダゾラム塩酸塩及び350mgのリラコリラントが14日目に投与された(試験)。
分析前にパラメータをIn変換した。
幾何LSMは、ANOVAからLSMを指数化することによって計算した。
幾何LSMの比=100*(試験/基準)、式中、試験は治療dであり、基準は治療Aである。
【表2】
【0049】
ANOVA、分散分析;AUCinf、無限大に外挿した時間0からのAUC;AUC0-tz、時間0から最後の測定可能な濃度の時間までのAUC;Cmax、最大血漿濃度;CV%、変動係数;LSM、最小二乗平均。
治療B:単回経口投与用量15mgのピオグリタゾン塩酸塩(基準)。
治療E:単回経口投与用量15mgピオグリタゾン塩酸塩及びリラコリラント350mgを15日目に投与し、続いて16日目及び17日目にQD投与した経口投与用量350mgのリラコリラントを経口投与した(試験)。
分析前にパラメータをIn変換した。
幾何LSMは、ANOVAからLSMを指数化することによって計算した。
幾何LSMの比=100*(試験/基準)、式中、試験は治療Eであり、基準は治療Bである。
【0050】
実施例3.進行膵臓癌患者へのリラコリラント及びnab-パクリタキセルの投与
リラコリラントとnab-パクリタキセルとの組合せは、進行性固形腫瘍を有する患者において評価されている。nab-パクリタキセルの排出は、主にCYP3A4及びCYP2C8の両方によって媒介されるので、この研究は、薬物-薬物相互作用の可能性を評価するために、1週間のnab-パクリタキセル導入(1日目に1用量のnab-パクリタキセル)及びサイクル1の開始前に1週間のリラコリラント導入(7日間毎日のリラコリラント)を含むように特に設計された。インビトロでは、リラコリラントがCYP3A及びCYP2C8の強力な二重阻害剤であることが示されたので、相互作用が予想されるであろう。この研究導入からのPK結果は、nab-パクリタキセル単独と比較して、リラコリラントと組み合わせて投与した場合、nab-パクリタキセル曝露の増加(AUCが約80%高い)を示した(表3)。この小さなAUC増加は、CYP2C8及びCYP3A4の両方のインビトロで強力な二重阻害によって予測されるより大きな増加を考慮すると驚くほど低い。
【表3】
【0051】
本明細書で引用されるすべての特許、特許公報、刊行物、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、前述の発明は、理解を明確にするために例示及び例としてある程度詳細に説明されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療する
ための組み合わせ医薬であって、
a)有効量のリラコリラント(relacorilant)、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に
100mg/m
2~
125mg/m
2の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、前記パクリタキセルの単剤用量から
20%~
35%減量される、パクリタキセル
を
含み、
a)及びb)が、前記
癌の治療を必要とする患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに
投与されるための、前記組み合わせ医薬。
【請求項2】
前記パクリタキセルの有効量が、リラコリラントと共投与される場合に、前記パクリタキセルの単剤用量から
20%、
25%、
30%、及び
35%から選択される量を減量される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項3】
前記パクリタキセルの有効量が、前記パクリタキセルの単剤用量から、
72mg/m
2、
75mg/m
2、
80mg/m
2、
83mg/m
2、
88mg/m
2、
94mg/m
2、及び
96mg/m
2のパクリタキセルから選択されるパクリタキセルの有効量に減量される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項4】
パクリタキセルが、nab-パクリタキセルの形態である、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項5】
前記有効量のリラコリラントが、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日のリラコリラントである、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項6】
前記有効量のリラコリラントが、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日のリラコリラントから選択される、請求項5に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項7】
前記癌が、固形腫瘍を含む、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項8】
前記癌が、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌、及び黒色腫から選択される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項9】
前記癌が、卵巣癌又は膵臓癌である、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項10】
前記リラコリラントが、経口投与される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項11】
リラコリラントが、毎日投与される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項12】
リラコリラントが、間欠的に投与される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項13】
パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、請求項12記載の
組み合わせ医薬。
【請求項14】
リラコリラント及びパクリタキセルの用量が、28日間のスケジュールに従って投与され、パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、前記用量のnab-パクリタキセルが、各28日間サイクルの第1、8及び15日に静脈内注入によって投与される
60mg/m
2、
72mg/m
2、
75mg/m
2、
80mg/m
2、及び
83mg/m
2のnab-パクリタキセルから選択される、請求項12に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項15】
nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、請求項14に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項16】
nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg及び200mgのリラコリラントから選択される用量で、リラコリラントを投与する、請求項15に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項17】
癌を治療する
ための組み合わせ医薬であって、
a)有効量のリラコリラント、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に
100mg/m
2~
125mg/m
2の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、
60mg/m
2~
95mg/m
2である、パクリタキセル
を
含み、
a)及びb)が、前記
癌の治療を必要とする患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに
投与されるための、前記組み合わせ医薬。
【請求項18】
前記パクリタキセルが、nab-パクリタキセルの形態である、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項19】
前記有効量のパクリタキセルが、
60mg/m
2、
65mg/m
2、
70mg/m
2、
75mg/m
2、
80mg/m
2、
85mg/m
2、
90mg/m
2、及び
95mg/m
2のパクリタキセルから選択される、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項20】
前記有効量のリラコリラントが、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日のリラコリラントである、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項21】
前記有効量のリラコリラントが、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日のリラコリラントから選択される、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項22】
前記癌が、固形腫瘍を含む、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項23】
前記癌が、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌、及び黒色腫から選択される、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項24】
前記癌が、卵巣癌又は膵臓癌である、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項25】
前記リラコリラントが、経口投与される、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項26】
リラコリラントが、毎日投与される、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項27】
リラコリラントが、間欠的に投与される、請求項1に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項28】
パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、請求項26に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項29】
パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg、及び200mgのリラコリラントから選択される用量で、リラコリラントを間欠的に投与する、請求項17に記載の
組み合わせ医薬。
【請求項30】
リラコリラント及びパクリタキセルの用量が、28日間のスケジュールに従って投与され、パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、前記用量のnab-パクリタキセルが、各28日間サイクルの第1、8及び15日に静脈内注入によって投与される
60mg/m
2、
72mg/m
2、
75mg/m
2、
80mg/m
2、及び
83mg/m
2のnab-パクリタキセルから選択される、請求項28に記載の
組み合わせ医薬。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
本明細書で引用されるすべての特許、特許公報、刊行物、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、前述の発明は、理解を明確にするために例示及び例としてある程度詳細に説明されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。
<付記>
本開示は以下の態様を含む。
<項1>
癌を治療する方法であって、前記癌の治療を必要とする患者に、
a)有効量のリラコリラント(relacorilant)、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に約100mg/m
2
~約125mg/m
2
の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、前記パクリタキセルの単剤用量から約20%~約35%減量される、パクリタキセル
を投与することを含み、
a)及びb)が、前記患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに実施され、
これにより、前記癌が治療される、方法。
<項2>
前記パクリタキセルの有効量が、リラコリラントと共投与される場合に、前記パクリタキセルの単剤用量から約20%、約25%、約30%、及び約35%から選択される量を減量される、項1に記載の方法。
<項3>
前記パクリタキセルの有効量が、前記パクリタキセルの単剤用量から、約72mg/m
2
、約75mg/m
2
、約80mg/m
2
、約83mg/m
2
、約88mg/m
2
、約94mg/m
2
、及び約96mg/m
2
のパクリタキセルから選択されるパクリタキセルの有効量に減量される、項1に記載の方法。
<項4>
パクリタキセルが、nab-パクリタキセルの形態である、項1に記載の方法。
<項5>
前記有効量のリラコリラントが、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日のリラコリラントである、項1に記載の方法。
<項6>
前記有効量のリラコリラントが、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日のリラコリラントから選択される、項5に記載の方法。
<項7>
前記癌が、固形腫瘍を含む、項1に記載の方法。
<項8>
前記癌が、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌、及び黒色腫から選択される、項1に記載の方法。
<項9>
前記癌が、卵巣癌又は膵臓癌である、項1に記載の方法。
<項10>
前記リラコリラントが、経口投与される、項1に記載の方法。
<項11>
リラコリラントが、毎日投与される、項1に記載の方法。
<項12>
リラコリラントが、間欠的に投与される、項1に記載の方法。
<項13>
パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、項12記載の方法。
<項14>
リラコリラント及びパクリタキセルの用量が、28日間のスケジュールに従って投与され、パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、前記用量のnab-パクリタキセルが、各28日間サイクルの第1、8及び15日に静脈内注入によって投与される約60mg/m
2
、約72mg/m
2
、約75mg/m
2
、約80mg/m
2
、及び約83mg/m
2
のnab-パクリタキセルから選択される、項12に記載の方法。
<項15>
nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、項14に記載の方法。
<項16>
nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg及び200mgのリラコリラントから選択される用量で、リラコリラントを投与する、項15に記載の方法。
<項17>
癌を治療する方法であって、前記癌の治療を必要とする患者に、
a)有効量のリラコリラント、及び
b)有効量のパクリタキセルであって、前記パクリタキセルが他の医薬品なしで投与される場合に約100mg/m
2
~約125mg/m
2
の単剤用量を有し、リラコリラントと共投与される場合、前記パクリタキセルの有効量は、約60mg/m
2
~約95mg/m
2
である、パクリタキセル
を投与することを含み、
a)及びb)が、前記患者に有効レベルのリラコリラント及び有効レベルのパクリタキセルを同時に提供するのに有効なときに実施され、
これにより、前記癌が治療される、方法。
<項18>
前記パクリタキセルが、nab-パクリタキセルの形態である、項17に記載の方法。
<項19>
前記有効量のパクリタキセルが、約60mg/m
2
、約65mg/m
2
、約70mg/m
2
、約75mg/m
2
、約80mg/m
2
、約85mg/m
2
、約90mg/m
2
、及び約95mg/m
2
のパクリタキセルから選択される、項17に記載の方法。
<項20>
前記有効量のリラコリラントが、75ミリグラム/日(mg/日)~200mg/日のリラコリラントである、項17に記載の方法。
<項21>
前記有効量のリラコリラントが、75mg/日、100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日及び200mg/日のリラコリラントから選択される、項17に記載の方法。
<項22>
前記癌が、固形腫瘍を含む、項17に記載の方法。
<項23>
前記癌が、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌、及び黒色腫から選択される、項17に記載の方法。
<項24>
前記癌が、卵巣癌又は膵臓癌である、項17に記載の方法。
<項25>
前記リラコリラントが、経口投与される、項17に記載の方法。
<項26>
リラコリラントが、毎日投与される、項17に記載の方法。
<項27>
リラコリラントが、間欠的に投与される、項1に記載の方法。
<項28>
パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、リラコリラントを投与する、項26に記載の方法。
<項29>
パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、nab-パクリタキセル投与の前日、当日及び翌日に、75mg、100mg、150mg、175mg、200mg、及び200mgのリラコリラントから選択される用量で、リラコリラントを間欠的に投与する、項17に記載の方法。
<項30>
リラコリラント及びパクリタキセルの用量が、28日間のスケジュールに従って投与され、パクリタキセルがnab-パクリタキセルの形態であり、前記用量のnab-パクリタキセルが、各28日間サイクルの第1、8及び15日に静脈内注入によって投与される約60mg/m
2
、約72mg/m
2
、約75mg/m
2
、約80mg/m
2
、及び約83mg/m
2
のnab-パクリタキセルから選択される、項28に記載の方法。
【国際調査報告】