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特表2023-527443軽量化されたゴム補強材、その製造方法およびそれを含むタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(54)【発明の名称】軽量化されたゴム補強材、その製造方法およびそれを含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/22 20060101AFI20230621BHJP
   B60C 9/10 20060101ALI20230621BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B60C9/22
B60C9/10
B60C9/18 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573411
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2021010810
(87)【国際公開番号】W WO2022065692
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0125240
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ギュ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA39
3D131AA44
3D131AA51
3D131BA11
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC31
3D131DA01
3D131DA31
3D131LA28
(57)【要約】
本発明は軽量化されたゴム補強材、その製造方法およびそれを含むタイヤに関する。本発明によれば、薄い厚さと軽い重量を有しながらも優れた耐久性を有するゴム補強材が提供される。前記ゴム補強材は、タイヤを軽量化しながらも向上した転がり抵抗性の発現を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材;
前記繊維基材上に配置された接着層;および
前記接着層上に配置されたゴムコンパウンド層を含み、
前記繊維基材は経糸と緯糸で製織された織物であり、
前記経糸は420デニール~800デニールの繊度を有するシングルプライヤーン(single-ply yarn)であって55個/inch~65個/inchの経糸密度で前記織物に含まれ、
前記緯糸はASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する、
ゴム補強材。
【請求項2】
前記経糸および前記緯糸は、それぞれ独立して、ナイロン、レーヨン、アラミド、ポリエステル、および綿からなる群より選ばれた1種以上の素材を含む、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項3】
前記緯糸は、420デニール~800デニールの繊度を有するシングル-プライヤーン(single-ply yarn)であり、0.05個/mm~5個/mmの緯糸密度で前記織物に含まれる、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項4】
前記繊維基材は100μm~600μmの厚さを有する、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項5】
前記繊維基材はASTM D 885の標準試験法(試験片の大きさ:緯糸方向長さ60cm×幅1cm、177℃、2分、緯糸基準0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項6】
前記接着層はレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含む、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項7】
前記ゴムコンパウンド層は天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選ばれた1種以上の弾性重合体を含む、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項8】
前記ゴムコンパウンド層は5μm~200μmの厚さを有する、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項9】
前記ゴム補強材は、試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する150℃下の引張試験で1.0kgf~1.2kgfの最大荷重および11%~13%の引張変形率(tensile strain)を有する、請求項1に記載のゴム補強材。
【請求項10】
420デニール~800デニールの繊度を有するシングル-プライヤーン(single-ply yarn)の経糸とASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する緯糸を使用して、55個/inch~65個/inchの経糸密度で製織された繊維基材を準備する段階;
前記繊維基材上に接着層を形成する段階;および
前記接着層上にゴムコート液を塗布して熱処理して、前記接着層上にゴムコンパウンド層を形成する段階
を含む、請求項1による、ゴム補強材の製造方法。
【請求項11】
前記接着層はレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含む、請求項10に記載のゴム補強材の製造方法。
【請求項12】
前記ゴムコート液は、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選ばれた1種以上の弾性重合体組成物10重量%~40重量%および溶媒60重量%~90重量%を含む、請求項10に記載のゴム補強材の製造方法。
【請求項13】
請求項1によるゴム補強材を含む、タイヤ。
【請求項14】
前記ゴム補強材がキャッププライ、ベルトおよびカーカスの少なくとも一つに適用された、請求項13に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤの重量を減少させ得る軽量化されたゴム補強材とその製造方法およびそのようなゴム補強材を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の性能が次第に向上し、道路状況が改善されるにつれ、自動車の高速走行時に、タイヤの安定性と耐久性を維持することが求められている。また、環境問題、エネルギー問題および燃料効率などを考慮して、軽いながらも耐久性に優れるタイヤが求められている。このような要求を満たすための一つの方案として、タイヤのゴム補強材として使用されるタイヤコードに対する研究が活発に進められている。
【0003】
タイヤコードは、使用される部位および役割によって区分することができる。例えば、タイヤコードは、タイヤを全体的に支持するカーカスと、高速走行に伴う荷重の支持および変形の防止を行うベルトと、ベルトの変形を防止するキャッププライとに、大まかに区分することができる(図1を参照)。
【0004】
タイヤコードに使用される素材としては、ナイロン、レーヨン、アラミド、およびポリエステルなどが例として挙げられる。
【0005】
一般に、タイヤコードは、ゴムとの接着のためにゴム成分と共に圧延される。すなわち、タイヤの製造過程にて圧延工程が伴われる。しかし、タイヤの製造過程にてタイヤコードとゴムとの接着のための圧延工程が適用される場合、工程コストが増加するのであり、圧延によりタイヤの密度が必要以上に増加してタイヤの重量が不要に増加し得る。
【0006】
タイヤコードにゴムを圧延する工程では、一般に、固体状態のゴムが使用される。しかし、このような固体状態のゴムの圧延によって形成された製品は、200μm以下、特に5μm~30μm程度の薄い薄膜形態に作られることが難しく、このような製品がゴム補強材として使用される場合は、タイヤの厚さおよび重量が増加する。
【0007】
最近、タイヤ製造会社では、タイヤの超軽量化および補強材の軽量化のために、ゴム層の厚さを減少させようとしている。転がり抵抗(rolling resistance,R/R)は、タイヤの重量と関連があり、自動車の燃料消費と二酸化炭素の排出に大きな影響を及ぼす。例えば、転がり抵抗(R/R)が大きいほど、自動車の走行時に必要なエネルギーが増加する。また、自動車の回転、傾斜、加速に対する抵抗は、自動車重量と密接な関連がある。したがって、タイヤの軽量化により自動車を軽量化し、その結果としてエネルギー消費が減少するようにする研究も進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するタイヤ用ゴム補強材を提供する。
【0009】
本発明は、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するゴム補強材の製造方法を提供する。
【0010】
そして、本発明は、前記ゴム補強材を含むタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、
繊維基材;
前記繊維基材上に配置された接着層;および
前記接着層上に配置されたゴムコンパウンド層を含み、
前記繊維基材は、経糸(warp yarn)と緯糸(weft yarn)で製織された織物であり、
前記経糸は、420デニール~800デニールの繊度を有するシングルプライヤーン(single-ply yarn)であって、55個/inch~65個/inchの経糸密度で前記織物に含まれており、
前記緯糸は、ASTM D 885の規格の試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する、
ゴム補強材が提供される。
【0012】
本発明の他の一実施形態によれば、
420デニール~800デニールの繊度を有するシングルプライヤーン(single-ply yarn)の経糸(warp yarn)と、ASTM D 885の規格の試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する緯糸(weft yarn)を使用して、55個/inch~65個/inchの経糸密度で製織された繊維基材を準備する段階;
前記繊維基材上に接着層を形成する段階;および
前記接着層上にゴムコート液を塗布して熱処理することで、前記接着層上にゴムコンパウンド層を形成する段階
を含む、前記ゴム補強材の製造方法が提供される。
【0013】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記ゴム補強材を含むタイヤが提供される。
【0014】
以下、本発明の実施形態によるゴム補強材、その製造方法およびそれを含むタイヤについてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書で特に定義しない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する通常の技術者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に、特定の具体例を効果的に記述するためであり、本発明を制限する意図ではない。
【0016】
本明細書で使用される単数の形態は、文脈上明らかに反する意味を示さない限り複数の形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0018】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記にて詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、前記思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0019】
本明細書で、例えば「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~隣に」などでもって二つの部分の位置関係が説明される場合、「すぐに」または「直接」という表現が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置し得る。
【0020】
本明細書で、例えば「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などでもって時間的な前後関係が説明される場合、「すぐに」または「直接」という表現が使用されない限り連続的でない場合を含むこともできる。
【0021】
本明細書で「少なくとも一つ」という用語は、一つ以上の関連項目から提示可能なすべての組み合わせを含むものとして理解しなければならない。
【0022】
I.ゴム補強材
発明の一実施形態によれば、
繊維基材;
前記繊維基材上に配置された接着層;および
前記接着層上に配置されたゴムコンパウンド層を含み、
前記繊維基材は経糸(warp yarn)と緯糸(weft yarn)で製織された織物であり、
前記経糸は420デニール~800デニールの繊度を有する単糸(single yarn)として55個/inch~65個/inchの経糸密度で前記織物に含まれ、
前記緯糸はASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する、
ゴム補強材が提供される。
【0023】
本発明者らの継続的な研究結果、前記繊維基材を含むゴム補強材は、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を示し得ることが確認された。
【0024】
また、前記実施形態のゴム補強材は、ゴムに対して優れた接着力を有するので、タイヤの製造過程で圧延工程を経ずとも、ゴムと強力に接着されることができる。そのため、前記ゴム補強材は、タイヤ製造コストの節減を可能にし、圧延によりタイヤの密度と重量が不要に増加することを防止することができる。
【0025】
また、前記ゴム補強材はゴムに対する優れた接着力を有し、グリーンタイヤの製造時にエアポケット(air pocket)が減少してタイヤの不良率を低くすることができる。
【0026】
前記ゴム補強材は、薄い厚さを有することで、タイヤの超軽量化のためにゴム層の厚さを減少させようとする要求を満たすことができる。さらに、前記ゴム補強材は、タイヤの転がり抵抗を低くすることができ、自動車の燃費の改善を可能にする。特に、前記ゴム補強材は、電気自動車の燃費改善と走行性向上を可能にする。
【0027】
図2は、本発明の一実施例によるゴム補強材201に対する概略的な断面図である。
【0028】
前記ゴム補強材201は、繊維基材210、前記繊維基材210上に配置された接着層220および前記接着層220上に配置されたゴムコンパウンド層230を含む。
【0029】
発明の実施形態によれば、前記繊維基材は経糸(warp yarn)と緯糸(weft yarn)で製織された織物である。
【0030】
前記繊維基材で、前記経糸および前記緯糸は、それぞれ独立してナイロン、レーヨン、アラミド、ポリエステル、および綿からなる群より選ばれた1種以上の素材を含むことができる。
【0031】
好ましくは、前記経糸は、ナイロン、レーヨン、アラミド、およびポリエステルからなる群より選ばれた1種以上の素材を含むことができる。そして、好ましくは、前記緯糸はナイロン、レーヨン、アラミド、ポリエステル、および綿からなる群より選ばれた1種以上の素材を含むことができる。
【0032】
特に、前記繊維基材210は、経糸方向に高密度化されたものである。
【0033】
具体的には、前記経糸は、420デニール~800デニールの繊度を有するシングルプライヤーン(single-ply yarn)であって、55個/inch~65個/inchの経糸密度で前記織物に含まれる。
【0034】
前記ゴム補強材201が、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を示し得るようにするために、前記繊維基材の経糸密度は、55個/inch以上であることが好ましい。
【0035】
経糸密度が過度に大きい場合、経糸の均一な配列が難しくなる。そして、配列がずれた経糸が重なる現象によって前記繊維基材上にシワができ、このようなシワにより、前記繊維基材の物性が不均一になる。したがって、前記繊維基材の経糸密度は65個/inch以下であることが好ましい。
【0036】
そして、前記経糸は、シングルプライヤーン(single-ply yarn)であって、その繊度は前記経糸密度を考慮して決定される。ただし、前記繊維基材の耐久性確保のために、前記経糸の繊度は420デニール以上であることが好ましい。
【0037】
前記繊維基材は、65%以上の経糸間密度を有することが好ましい。
【0038】
前記経糸間密度は、inch当たりの経糸が占める面積を示し、具体的には{(経糸1本の太さ(inch)*inch当たり経糸個数(n))/inch}*100(%)で示すことができる。
【0039】
具体的には、前記経糸間密度は、65%以上、または75%以上、または90%以上であり得る。前記経糸間密度が65%以上である場合、本発明で目標とする効果が十分に発現しうる。
【0040】
前記経糸は撚りが付与されたものであり得る。前記経糸が有する撚りの程度は0~250TPM(twist per meter)であり得る。前記経糸に撚りが付与される場合、前記繊維基材の集束性が向上して耐疲労性能が良くなる。
【0041】
前記繊維基材210は、高密度化された経糸を含むことにより、前記経糸が均一に配列できるようにするための物性を有する緯糸を含む。
【0042】
特に、前記緯糸は、ASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有することが好ましい。
【0043】
ここで、前記乾熱収縮率値が(+)の場合は収縮挙動を意味し、(-)の場合は弛緩挙動を意味する。
【0044】
前記ゴム補強材の製造過程で前記繊維基材に所定の熱が付与される。この際、前記繊維基材には、経糸方向の張力と熱による緯糸の収縮が発生する。しかし、前記繊維基材は高密度化された経糸を含むことにより、前記繊維基材上に配列がずれてしまった経糸同士の重なり現象によるシワが生じ得る。このようなシワは、前記繊維基材210上に順に配置される接着層220およびゴムコンパウンド層230が正しく形成され得ないようにする。
【0045】
発明の実施形態によれば、前記繊維基材210に含まれた前記緯糸がASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による±0.5%の乾熱収縮率を有することにより、前記経糸同士の重なり現象を効果的に抑制することができる。
【0046】
前記緯糸に対する乾熱収縮率の測定は、ASTM D 885の標準試験法により、緯糸試験片(長さ60cm)に、0.05g/deの荷重を付与して、2分間177℃の熱を加えた後、緯糸試験片の長さ変化量を測定する方法で行われる。
【0047】
好ましくは、前記緯糸はASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%、あるいは-1.0%~+2.0%、あるいは-0.5%~+2.0%、あるいは-0.5%~+1.5%、あるいは-0.5%~+1.0%、あるいは-0.50%~+0.50%、あるいは-0.40%~+0.50%、あるいは-0.40%~+0.40%、あるいは-0.30%~+0.40%、あるいは-0.30%~+0.30%、あるいは-0.20%~+0.30%の乾熱収縮率を有することができる。
【0048】
発明の実施形態によれば、前記緯糸は、420デニール~800デニールの繊度を有するシングルプライヤーン(single-ply yarn)である。
【0049】
前記緯糸は、0.05個/mm~5個/mm、あるいは0.05個/mm~4.5個/mm、あるいは0.05個/mm~4個/mm、あるいは0.05個/mm~3.5個/mm、あるいは0.05個/mm~3個/mm、あるいは0.05個/mm~2.5個/mmの緯糸密度で前記織物に含まれ得る。
【0050】
前記繊維基材201は、100μm~600μm、あるいは200μm~500μm、あるいは200μm~400μmの厚さを有することができる。前記繊維基材は、上述した厚さの範囲内で優れた耐久性を有することができる。
【0051】
前記繊維基材はASTM D 885の標準試験法(試験片の大きさ:緯糸方向長さ60cm×幅1cm、177℃、2分、緯糸基準0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有することができる。ここで、前記乾熱収縮率値が(+)の場合は収縮挙動を意味し、(-)の場合は弛緩挙動を意味する。
【0052】
前記繊維基材に対する乾熱収縮率の測定は、ASTM D 885の標準試験法により、繊維基材試験片(緯糸方向長さ60cm×幅1cm)に緯糸の繊度を基準として0.05g/deの荷重を付与して2分間177℃の熱を加えた後に、繊維基材試験片の長さおよび幅の変化量を測定する方法で行われる。
【0053】
好ましくは、前記繊維基材は、ASTM D 885の標準試験法(試験片の大きさ:緯糸方向長さ60cm×幅1cm、177℃、2分、緯糸基準0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%、あるいは-1.0%~+2.0%、あるいは-0.5%~+2.0%、あるいは-0.5%~+1.5%、あるいは-0.5%~+1.0%、あるいは-0.50%~+0.50%、あるいは-0.40%~+0.50%、あるいは-0.40%~+0.40%、あるいは-0.30%~+0.40%、あるいは-0.30%~+0.30%の乾熱収縮率を有することができる。
【0054】
一方、前記ゴム補強材201は、前記繊維基材210上に配置された前記接着層220を含む。
【0055】
前記接着層220は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含む。
【0056】
例えば、前記接着層220は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および溶剤を含む接着コート液によって形成されうる。
【0057】
前記レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスは接着成分として作用する。レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスは、特に繊維基材210とゴム成分との間の親和度および接着力を向上させる。それにより、前記接着層220は、繊維基材210とゴムコンパウンド層230との内的接着力を向上させるとともに、ゴム補強材201とゴム(例えば、トレッドなど)との間の外的接着力を向上させる。
【0058】
そのため、前記繊維基材210とゴムコンパウンド層230とが、互いに分離されずに安定してくっ付けられうることから、タイヤ101の製造過程での不良率を低くすることができる。
【0059】
一方、前記ゴム補強材201は、前記接着層220に配置されたゴムコンパウンド層230を含む。
【0060】
前記ゴムコンパウンド層230は、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選ばれた1種以上の弾性重合体を含むことができる。
【0061】
前記ゴムコンパウンド層230は、前記弾性重合体を含む液体状態のゴムコート液を前記接着層220上に塗布することで形成されうる。これにより、前記ゴム補強材201は、固体状態のゴムを使用する圧延工程によっては達成することが難しい、薄い厚さのゴムコンパウンド層230を有することができる。ゴムコンパウンド層230の厚さが薄くなることにより、それを含むゴム補強材201および前記ゴム補強材201を含むタイヤ101の軽量化にも、寄与することができる。
【0062】
具体的には、前記ゴムコンパウンド層230は、弾性重合体組成物および溶媒を含むゴムコート液から形成されることができる。
【0063】
前記弾性重合体組成物は弾性重合体および添加剤を含むことができる。
【0064】
前記弾性重合体は、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選ばれた1種以上のゴムであり得る。例えば、前記弾性重合体は天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、イソブチレンゴム(IBR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、およびネオプレンゴムからなる群より選ばれた1種以上のゴムであり得る。
【0065】
前記弾性重合体組成物に含まれ得る前記添加剤としては、カーボンブラック、パラオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、活性剤、粘着剤、接着剤などが例として挙げられる。
【0066】
前記ゴムコート液に含まれる溶媒は、前記弾性重合体を溶解できるものであれば、その種類は特に制限されない。例えば、前記溶媒はトルエン、ナフサ、メタノール、キシレン、およびテトラヒドロフランより選ばれた少なくとも一つを含むことができる。
【0067】
前記ゴムコート液は、前記ゴムコート液の全体重量を基準として、10重量%~40重量%の弾性重合体組成物および60重量%~90重量%の溶媒を含むことができる。
【0068】
前記ゴムコート液にて前記弾性重合体組成物の濃度が過度に低いと前記ゴムコンパウンド層の厚さが過度に薄くなり、必要とする粘着性および接着力が発現できない可能性もある。したがって、前記ゴムコート液は10重量%以上の弾性重合体組成物を含むことが好ましい。
【0069】
ただし、前記ゴムコート液にて、前記弾性重合体組成物の濃度が過度に高いと粘度の上昇によりゴムコート液の攪拌性が低下し、構成成分の分散性が低くなりコート性が低下してコート厚さが不均一になる。したがって、前記ゴムコート液は40重量%以下の弾性重合体組成物を含むことが好ましい。
【0070】
前記ゴムコンパウンド層230は、5μm~200μm、あるいは5μm~150μm、あるいは5μm~100μm、あるいは5μm~50μmの厚さt1を有することができる。
【0071】
図2に示すように、ゴムコンパウンド層230の厚さt1は、接着層220と接するゴムコンパウンド層230の一面から、接着層220とは反対の側に位置するゴムコンパウンド層230の他の一面までの最長距離として測定される。
【0072】
従来のゴム補強材は、繊維基材上にゴム基材が圧延されてゴム層が形成されるので、前記ゴム層が、一般的に、1mm以上の厚さ、少なくとも0.8mm以上の厚さを有することになる。
【0073】
それに比べて、前記ゴムコンパウンド層230は、前記ゴムコート液によって形成されて200μm以下の薄い厚さを有しうる。そのため、ゴム補強材201の全体の厚さが薄くなり、さらにゴム補強材201を含むタイヤ101の厚さが薄くなりうる。
【0074】
前記ゴムコンパウンド層230の厚さが過度に薄いと、ゴムコンパウンド層230が十分な粘着性と接着力を有することができず、タイヤ製造時の不良率が高くなり、タイヤの耐久性が低下し得る。したがって、前記ゴムコンパウンド層230は、5μm以上の厚さt1を有することが好ましい。
【0075】
ただし、前記ゴムコンパウンド層230の厚さが過度に厚いと、薄い厚さのゴム補強材201を提供しようとする発明の目的に合致しなくなりうる。特に、ゴムコンパウンド層230の厚さt1が過度に厚いと、溶媒の揮発の過程で、前記ゴムコンパウンド層230内に気泡が形成されて、ゴム補強材201が均一な厚さを有することが難しくなりうる。そして、これを適用したタイヤ内にエアポケットが発生して、タイヤの品質が低下し不良率が高くなりうる。また、ゴムコンパウンド層230を厚く形成するために、コート作業を数回行わなければならないので工程の効率が低下し得る。したがって、前記ゴムコンパウンド層230は、200μm以下の厚さt1を有することが好ましい。
【0076】
一方、前記実施形態によるゴム補強材201は、ASTM D 885の標準試験法(試験片の大きさ:緯糸方向長さ60cm×幅1cm、150℃、2分、荷重10g)による-4%~-2%の乾熱収縮率を有することができる。
【0077】
前記ゴム補強材に対する乾熱収縮率の測定は、ASTM D 885の標準試験法により、ゴム補強材試験片(緯糸方向長さ60cm×幅1cm)に10gの荷重を付与し、2分間150℃の熱を加えた後、ゴム補強材試験片の長さおよび幅の変化量を測定する方法で行われる。
【0078】
前記実施形態によるゴム補強材201は、試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する150℃下の引張試験で1.0kgf~1.2kgf、あるいは1.1kgf~1.2kgfの最大荷重を示すことができる。
【0079】
前記ゴム補強材201は、試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する160℃下の引張試験で1.0kgf~1.2kgf、あるいは1.0kgf~1.1kgfの最大荷重を示すことができる。
【0080】
前記ゴム補強材201は試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する177℃下の引張試験で0.8kgf~1.1kgf、あるいは0.9kgf~1.1kgfの最大荷重を示すことができる。
【0081】
そして、前記実施形態によるゴム補強材201は、試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する150℃下の引張試験で11.0%~13.0%、あるいは11.0%~12.0%の引張変形率(tensile strain)を有しうる。
【0082】
前記ゴム補強材201は、試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する160℃下の引張試験で13.0%~15.0%、あるいは14.0%~15.0%の引張変形率(tensile strain)を有しうる。
【0083】
前記ゴム補強材201は、試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)に対する177℃下の引張試験で13.0%~15.0%、あるいは14.0%~15.0%の引張変形率(tensile strain)を有しうる。
【0084】
前記引張試験は、前記ゴム補強材の構成を考慮してハーフチャンバ(half chamber)を用いて行われうる。一般的な高温チャンバの場合、試験片全体をチャンバ内に入れ、熱を付与して、特定時間の間高温下で放置した後、引張物性を評価する。しかし、前記ゴム補強材は外側にゴムコンパウンド層230が形成されており、一般的な高温チャンバを用いる場合、高温によりグリップ部分のスリップ(slip)が発生して物性測定が難しい。したがって、前記ゴム補強材試験片の中央部分のみを加熱できる前記ハーフチャンバを用いて前記引張試験を行うことが好ましい。
【0085】
前記実施形態によるゴム補強材201は、タイヤ101のキャッププライ90、ベルト50、およびカーカス70の少なくとも一つに適用されうる。
【0086】
II.ゴム補強材の製造方法
発明の他の一実施形態によれば、
420デニール~800デニールの繊度を有するシングルプライヤーン(single-ply yarn)の経糸(warp yarn)と、ASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する緯糸(weft yarn)とを使用して、55個/inch~65個/inchの経糸密度で製織された繊維基材を準備する段階;
前記繊維基材上に接着層を形成する段階;および
前記接着層上にゴムコート液を塗布し熱処理して、前記接着層上にゴムコンパウンド層を形成する段階
を含む、前記ゴム補強材の製造方法が提供される。
【0087】
420デニール~800デニールの繊度を有するシングル-プライヤーン(single-ply yarn)の経糸(warp yarn)とASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.0%~+3.0%の乾熱収縮率を有する緯糸(weft yarn)を使用して、55デニール~65個/inchの経糸密度で製織された繊維基材210が準備される。
【0088】
前記繊維基材210に関する事項は、前記『I.ゴム補強材』項目で上述した内容に代える。
【0089】
前記繊維基材210上に接着層220を形成する段階が行われる。
【0090】
前記接着層220は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および溶剤を含む、接着コート液によって形成されうる。
【0091】
例えば、前記繊維基材210を前記接着コート液に浸漬することによって、前記繊維基材210上に接着コート液が塗布されるようにすることができる。または、前記繊維基材210を、前記接着コート液に通過させることによって浸漬工程が行われる。このような浸漬は、張力、浸漬時間および温度が調節される浸漬装置で行われうる。
【0092】
この他に、ブレードあるいはコーターを用いたコート、または噴射器を用いた噴射によって、前記繊維基材210上に前記接着コート液を塗布することができる。
【0093】
前記接着層220を形成する段階は、前記繊維基材210上に前記接着コート液を浸漬または塗布して、130℃~250℃で80秒~120秒間熱処理する工程をさらに含むことができる。前記熱処理は通常の熱処理装置で行われる。前記熱処理によってレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)が硬化され固定されて、接着層220が形成されうる。このような熱処理によって、接着層220がより安定的に形成されうる。
【0094】
次に、前記接着層220上にゴムコート液を塗布し熱処理して、前記接着層220上にゴムコンパウンド層230を形成する段階が行われる。
【0095】
前記ゴムコンパウンド層230は、弾性重合体組成物および溶媒を含むゴムコート液から形成されうる。
【0096】
前記弾性重合体組成物は弾性重合体および添加剤を含むことができる。
【0097】
前記弾性重合体は、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選ばれた1種以上のゴムであり得る。例えば、前記弾性重合体は天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、イソブチレンゴム(IBR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、およびネオプレンゴムからなる群より選ばれた1種以上のゴムであり得る。
【0098】
前記弾性重合体組成物に含まれ得る前記添加剤としては、カーボンブラック、パラオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、活性剤、粘着剤、接着剤などが例に挙げられる。
【0099】
前記ゴムコート液に含まれる溶媒は、前記弾性重合体を溶解できるものであればその種類は特に制限されない。例えば、前記溶媒は、トルエン、ナフサ、メタノール、キシレン、およびテトラヒドロフランより選ばれた少なくとも一つを含むことができる。
【0100】
前記ゴムコート液は、前記ゴムコート液の全体重量を基準として、10重量%~40重量%の弾性重合体組成物および60重量%~90重量%の溶媒を含むことができる。
【0101】
前記ゴムコート液で前記弾性重合体組成物の濃度が過度に低いと前記ゴムコンパウンド層の厚さが過度に薄くなり、必要とする粘着性および接着力が発現できない。したがって、前記ゴムコート液は10重量%以上の弾性重合体組成物を含むことが好ましい。
【0102】
ただし、前記ゴムコート液で前記弾性重合体組成物の濃度が過度に高いと粘度の上昇によりゴムコート液の攪拌性が低下して構成成分の分散性が低くなりコート性が低下してコート厚さが不均一になる。したがって、前記ゴムコート液は40重量%以下の弾性重合体組成物を含むことが好ましい。
【0103】
前記ゴムコート液を前記接着層220上に塗布する方法は特に制限されず、公知のコート方法を適用することができる。
【0104】
例えば、ゴムコンパウンド層230の形成のために、接着層220が形成された繊維基材を前記ゴムコート液に浸漬することができる。浸漬によって接着層220上にゴムコート液が塗布されうる。
【0105】
コート方法としては、グラビア(gravure)コート、マイクログラビア(micro gravure)コート、コンマコート(comma coating)などを適用することができる。例えばコンマコーター(comma coater)を用いたコンマコート(comma coating)により前記ゴムコート液が接着層220上に塗布されうる。この際、コートは、溶媒が揮発できる温度、例えば65℃~100℃の温度条件で行われうる。
【0106】
前記接着層220上に前記ゴムコート液を塗布後、熱処理する過程がさらに行われる。前記熱処理は通常の熱処理装置で行われる。前記熱処理のために50℃~160℃の温度下で30秒~150秒間熱が印加されうる。
【0107】
前記ゴムコート液の単位面積当たり塗布量は、75g/m~300g/m、または100g/m~200g/mであり得る。前記接着層220に対する前記ゴムコート液の単位面積当たりの塗布量を前記範囲で調節することで、厚さが薄いながらもゴムに対して優れた接着性を有し耐久性に優れるゴム補強材101を製造することができる。
【0108】
前記ゴムコンパウンド層230は、5μm~200μm、あるいは5μm~150μm、あるいは5μm~100μm、あるいは5μm~50μmの厚さt1を有することができる。
【0109】
一方、前記ゴムコンパウンド層230の形成後に、選択的にスリッティング(slitting)段階が行われ得る。前記スリッティング段階は、板状に製造された前記ゴム補強材201を必要に応じて、または使用目的に適合するように裁断する段階である。前記スリッティングは、通常のカッターナイフまたはヒートナイフを用いて行われることができる。
【0110】
前記方法で製造されたゴム補強材201はワインダに巻き取られうる。
【0111】
III.タイヤ
発明のまた他の一実施形態によれば、上述したゴム補強材を含むタイヤが提供される。
【0112】
図1は本発明の一実施例によるタイヤ101の部分切切開図である。
【0113】
図1を参照すると、タイヤ101は、トレッド(tread,10)、ショルダ(shoulder,20)、サイドウォール(side wall,30)、ビード(bead,40)、ベルト(belt,50)、インナーライナ(inner liner,60)、カーカス(carcass,70)およびキャッププライ(capply,90)を含む。
【0114】
トレッド10は、直接に路面と接触する部分である。トレッド10は、キャッププライ90の外側に付いている強力なゴム層で、耐摩耗性に優れるゴムからなる。トレッド10は、自動車の駆動力および制動力を地面に伝達する直接的な役割をする。トレッド10領域にはグルーブ(groove,80)が形成されている。
【0115】
ショルダ20は、トレッド10のエッジ部分であり、サイドウォール30と連結される部分である。ショルダ20はサイドウォール30と共にタイヤの最も弱い部分の一つである。
【0116】
サイドウォール30は、トレッド10とビード40を連結するタイヤ101の側部であり、カーカス70を保護して、タイヤに側面安定性を提供する。
【0117】
ビード40は、カーカス70の端の部分を巻く鉄線が入っている領域であり、鉄線にゴム膜を被せてコードを包む構造である。ビード40はタイヤ101をホイールリム(wheel rim)に装着および固定する役割をする。
【0118】
ベルト50は、トレッド10とカーカス70との中間に位置するコート層である。ベルト50は、外部からの衝撃や外的条件による、カーカス70などの内部構成要素についての損傷を防止する役割をし、トレッド10の形状を扁平に維持して、タイヤ101と路面の接触が最良の状態を維持するようにする。ベルト50は、本発明の他の一実施例によるゴム補強材201を含むことができる(図2を参照)。
【0119】
インナーライナ60は、チューブレス(tubeless)タイヤにてチューブの代わりに使用されるものであり、空気透過性がないか非常に少ない、特殊ゴムで作られる。インナーライナ60は、タイヤ101に充填された空気が漏れないようにする。
【0120】
カーカス70は、強度が強い合成繊維からなるコードが複数枚重なって作られ、タイヤ101の骨格を形成する重要な部分である。カーカス70はタイヤ101が受ける荷重と衝撃に耐えて空気圧を維持する役割をする。カーカス70は本発明の他の一実施例によるゴム補強材201を含むことができる。
【0121】
グルーブ80は、トレッド領域にある太いボイド(void)を指す。グルーブ80はぬれた路面の走行時のタイヤの排水性を高め、タイヤの接地力を高める機能をする。
【0122】
キャッププライ90は、トレッド10の下の保護層であり、その内部の、他の構成要素を保護する。キャッププライ90は、高速走行車両に、必須のものとして適用される。特に、自動車の走行速度が増加するにつれてタイヤのベルト部分が変形されて乗車感が低下するなどの問題が発生しており、ベルト部分の変形を防止するキャッププライ90の重要性が増加している。キャッププライ90は、本発明の他の一実施例によるゴム補強材201からなる。
【0123】
本発明の一実施例によるタイヤ101はゴム補強材201を含む。ゴム補強材201は、キャッププライ90、ベルト50およびカーカス70の少なくとも一つに適用されうる。
【発明の効果】
【0124】
本発明によれば、薄い厚さと軽い重量を有しながらも優れた耐久性を有するゴム補強材が提供される。前記ゴム補強材は、タイヤを軽量化しながらも向上した転がり抵抗性の発現を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】本発明の一実施例によるタイヤの部分切切開図である。
図2】本発明の他の一実施例によるゴム補強材に対する概略的な断面図である。
図3】本発明の(a)実施例1および(b)比較例1による繊維基材に対する乾熱収縮率の測定後の外観をカメラで撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0126】
以下、発明の理解を深めるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのであり、本発明はこれらのみに限定されない。
【0127】
実施例1
経糸(warp yarn)として630デニールの繊度を有するナイロン素材のシングルプライヤーン(200TPMの撚り)を準備した。緯糸(weft yarn)として260デニールの繊度を有する綿素材のシングルプライヤーン(200TPMの撚り)を準備した。前記緯糸は、ASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-0.16%の乾熱収縮率を有する(下記試験例を参照)。
【0128】
前記経糸と緯糸を使用して、55個/inchの経糸密度(経糸間密度90%)および2.5個/mmの緯糸密度を有する厚さ45μmの繊維基材210を製織した。
【0129】
前記繊維基材210を、15重量%のレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および85重量%の溶剤(水、HO)を含む、接着コート液に浸漬した後、150℃で100秒の間熱処理して接着層220を形成した。
【0130】
次に、コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層220上にゴムコート層を単位面積当たりの塗布量120~130g/mで塗布した後、70℃の温度で溶媒を揮発させて、厚さt1が10μmのゴムコンパウンド層230が形成されたゴム補強材201を製造した。
【0131】
この際、前記ゴムコンパウンド層230を形成するための前記ゴムコート液としては、トルエンとテトラヒドロフランとが20:80の重量比で混合された混合溶媒に、弾性重合体組成物を12重量%の濃度で分散させたものを使用した。
【0132】
前記弾性重合体組成物としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)100重量部に対してカーボンブラック60重量部、パラオイル20重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸2重量部、老化防止剤(RUBBER ANTIOXIDANTS,BHT)2重量部、硫黄2重量部、および加硫促進剤(vulcanization accelerators,ZnBX)1重量部を混合したものを使用した。
【0133】
前記ゴム補強材201を10mm幅に裁断して、キャッププライ90用ゴム補強材を製造した。前記裁断にはカッターナイフが用いられた。
【0134】
裁断されたゴム補強材を205/55R16規格のタイヤの製造に適用した。前記タイヤの製造のために、1300De/2ply HMLSタイヤコードを含むボディプライおよびスチールコード(steel cord)ベルトが使用された。
【0135】
具体的には、インナーライナゴム上にボディプライ用ゴムを積層して、ビードワイヤおよびベルト部を積層した後に前記製造されたゴム補強材を投入し、トレッド部、ショルダ部およびサイドウォール部の形成のためのゴム層を、順次形成してグリーンタイヤを製造した。前記グリーンタイヤを加硫モールドに入れて170℃で15分間加硫してタイヤを製造した。
【0136】
実施例2
緯糸(weft yarn)として260デニールの繊度を有するレーヨン素材のシングル-プライヤーン(200TPMの撚り)を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でゴム補強材およびそれを含むタイヤを製造した。前記緯糸は、ASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による+0.27%の乾熱収縮率を有する(下記試験例を参照)。
【0137】
比較例1
緯糸(weft yarn)として630デニールの繊度を有するナイロン素材のシングルプライヤーン(200TPMの撚り)を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でゴム補強材およびそれを含むタイヤを製造した。前記緯糸は、ASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による+5.06%の乾熱収縮率を有する(下記試験例を参照)。
【0138】
比較例2
緯糸(weft yarn)として160デニールの繊度を有する綿糸カバーリングナイロン糸(200TPMの撚り)を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でゴム補強材およびそれを含むタイヤを製造した。前記緯糸は、ASTM D 885の標準試験法(177℃、2分、0.05g/deの荷重)による-1.04%の乾熱収縮率を有する(下記試験例を参照)。
【0139】
試験例
(1)厚さ測定
実施例および比較例によるゴム補強材で繊維基材およびゴムコンパウンド層の厚さを株式会社ミツトヨ(Mitutoyo社)のノギス(vernier calipers)を用いて測定した。
【0140】
(2)緯糸の乾熱収縮率測定
ASTM D 885の標準試験法により、実施例および比較例に適用された緯糸の試験片(長さ60cm)に、0.05g/deの荷重を付与して2分間177℃の熱を加えた後に、緯糸試験片の長さ変化量を測定した。合計5回測定し、緯糸試験片の長さ変化率(%)の平均値を下記表1に示した。前記乾熱収縮率値が(+)の場合は収縮挙動を意味し、(-)の場合は弛緩挙動を意味する。
【0141】
(3)繊維基材の乾熱収縮率測定
ASTM D 885の標準試験法により、実施例および比較例による繊維基材の試験片(緯糸方向長さ60cm×幅1cm)に緯糸の繊度を基準として0.05g/deの荷重を緯糸方向に付与して2分間177℃の熱を加えた後に繊維基材試験片の長さおよび幅の変化量を測定した。合計5回測定し、繊維基材試験片の面積変化率(%)の平均値を、下記表1に示した。前記乾熱収縮率値が(+)の場合は収縮挙動を意味し、(-)の場合は弛緩挙動を意味する。
【0142】
【表1】
【0143】
(4)ゴム補強材の乾熱収縮率測定
ASTM D 885の標準試験法により、実施例1および比較例1によるゴム補強材の試験片(緯糸方向長さ60cm×幅1cm)に、緯糸方向に荷重(5gまたは10g)を付与して2分間熱(25℃、150℃、160℃、または177℃)を加えた後、ゴム補強材試験片の長さおよび幅の変化量を測定した。合計5回測定し、ゴム補強材試験片の面積変化率(%)の平均値を下記表2に示した。前記乾熱収縮率値が(+)の場合は収縮挙動を意味し、(-)の場合は弛緩挙動を意味する。
【0144】
【表2】
【0145】
(5)繊維基材の外観
前記試験例(3)により繊維基材の乾熱収縮率の測定後、実施例1および比較例1による繊維基材の外観をカメラで撮影した。撮影されたイメージを図3に示した((a):実施例1,(b)比較例1)。
【0146】
図3を参照すると、比較例1の繊維基材は、配列がずれた経糸同士の重なり現象によってシワができたことが確認される。それに比べて、実施例1の繊維基材は経糸の配列が均一でシワができていないことが確認される。
【0147】
(6)ゴム補強材の引張物性測定
実施例1および比較例1によるゴム補強材の試験片(大きさ:緯糸方向長さ25cm×幅1cm)を、ハーフチャンバ(half chamber)に取り付けて引張物性を測定した。
【0148】
前記試験片は、前記ハーフチャンバの上部グリップと下部グリップ(グリップ間距離20cm)に、地平面に垂直方向に取り付けられた。これらのグリップの間に位置する前記試験片部分(加熱長さ12cm)に2分間、熱(25℃、150℃、160℃、または177℃)を加えた後、300mm/minの速度で前記試験片を引っ張った。前記試験片が破断される際の、最大荷重(kgf)および引張変形率(tensile strain)を測定した。合計5回測定し、その平均値を下記表3に示した。
【0149】
【表3】
【0150】
前記表3を参照すると、比較例1のゴム補強材は実施例1のゴム補強材に比べて高い引張変形率を示す。これは、比較例1のゴム補強材が、製造工程上、生地同士の重なり現象により、均一な製品を作り難いことを意味する。これにより、比較例1のゴム補強材は、相対的に劣った製造均一性を有することを予測することができる。
【0151】
(7)タイヤの物性評価
圧延工程により製造されたタイヤコード(840デニールの繊度を有するナイロン素材のツープライヤーン(two ply yarn)を経糸として使用、25個/inchの経糸密度)を適用した205/60R16規格のタイヤを参考例として準備した。
【0152】
前記参考例と前記実施例1のタイヤに対して、下記の物性を測定した。前記実施例1のタイヤが有する物性値は、前記参考例のタイヤの物性値を基準(100%)として換算した値である。
【0153】
-材料重量:実施例1のゴム補強材および参考例のタイヤコードの重量
-タイヤ重量:実施例1および参考例のタイヤの重量
-高速走行性:米国FMVSS 139Hの標準試験法により測定
-耐久力I:米国FMVSS 139Eの標準試験法により測定
-耐久力II:欧州ECE-R119の標準試験法により測定
-転がり抵抗性(RRc):ISO 28580の標準試験法により測定
【0154】
【表4】
【0155】
前記表4を参照すると、実施例1のタイヤは発明の実施形態によるゴム補強材を含むことにより参考例のタイヤに比べて軽いながらも高速走行性、耐久力、転がり抵抗性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0156】
10 トレッド
20 ショルダ
30 サイドウォール
40 ビード
50 ベルト
60 インナーライナ
70 カーカス
80 グルーブ
90 キャッププライ
101 タイヤ
201 ゴム補強材
210 繊維基材
220 接着層
230 ゴムコンパウンド層
図1
図2
図3
【国際調査報告】